(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】皮膚微生物叢の多様性を増加させるためのN-メチルグリシンの新規化粧使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20221207BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20221207BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221207BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221207BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221207BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20221207BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K8/44
A61Q19/00
A61P17/00
A61P17/04
A61Q7/00
A61P17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520030
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 FR2020051836
(87)【国際公開番号】W WO2021074532
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオティ-オコンビ,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ガーレット,アリソン
(72)【発明者】
【氏名】デル ベーネ,ニコラス,ステファノ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC072
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC372
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC692
4C083AC782
4C083AD022
4C083AD132
4C083AD192
4C083CC31
4C083CC37
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE22
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZA92
(57)【要約】
【課題】 皮膚微生物叢の多様性を増加させるためのN-メチルグリシンの新規化粧使用を提供する。
【解決手段】 本発明は、皮膚微生物叢の多様性の増加のための、皮膚付属器の損失、とくに脱毛の予防及び/若しくは低減のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、皮膚プレバイオティックとしてのN-メチルグリシンの化粧使用に関する。他の一主題は、皮膚微生物叢の多様性の増加のための、皮膚付属器の損失の低減のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、N-メチルグリシン又はそれを含む組成物の局所適用を含む化粧ケアプロセスに関する。他の一主題は、皮膚の掻痒及び/若しくは刺激の低減、並びに/又は頭皮敏感性の予防及び/若しくは低減に使用するための、N-メチルグリシン又はそれを含む医薬組成物にさらに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚プレバイオティックとしてのN-メチルグリシンの使用。
【請求項2】
有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性の増加のための、請求項1に記載のN-メチルグリシンの非治療的化粧使用。
【請求項3】
皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の低減及び/若しくは予防のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、請求項1又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
局所使用であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記N-メチルグリシンが、少なくとも1種の化粧的に許容可能な賦形剤を含む化粧組成物に含まれ、前記N-メチルグリシンが、1×10
-6M~1×10
-1M、優先的には1×10
-5M~1×10
-2Mの最終濃度で、非常に優先的には7×10
-3Mの濃度で存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記N-メチルグリシンが、少なくとも1種の化粧的に許容可能な賦形剤を含む化粧組成物中に、前記組成物の合計重量を基準にして1%の最終重量濃度で存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物が、頭皮及び/又は皮膚付属器、有利には頭皮の全部又は一部に適用されることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、ロチア・ムシラギノサ(Rothia mucilaginosa)、ストレプトコッカス・パラサングイニス(Streptococcus parasanguinis)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、ストレプトコッカス・オーストラリス(Streptococcus australis)、ヘモフィルス・パラインフルエンゼ(Haemophilus parainfluenzae)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、ロチア・アエリア(Rothia aeria)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、アシネトバクター・ウルシンギイ(Acinetobacter ursingii)、プロピオニバクテリウム・ファージ(Propionibacterium phage)_P14_4、ベイロネラ・ディスパル(Veillonella dispar)、ストレプトコッカス・インファンティス(Streptococcus infantis)、ストレプトコッカス・クリスタタス(Streptococcus cristatus)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、アクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)、及びそれらの混合物から選ばれる、優先的にはS.パステウリ(S.pasteuri)、S.サプロフィティカス(saprophyticus)、S.ワルネリ(S.warneri)、S.ペッテンコフェリ(pettenkoferi)、及びそれらの混合物から選ばれる、より優先的にはS.パステウリ(S.pasteuri)、S.ワルネリ(S.warneri)、及びそれらの混合物から選ばれる、非常に優先的にはS.ワルネリ(S.warneri)である、有益な片利共生株の出現を促進するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性の増加のための、N-メチルグリシン又はそれを含む組成物の局所又は経口投与、有利には局所適用を含む、化粧ケアプロセス。
【請求項10】
皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の低減及び/若しくは予防のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、請求項9に記載の化粧ケアプロセス。
【請求項11】
皮膚の掻痒及び/若しくは刺激、有利には頭皮刺激の低減、並びに/又は皮膚敏感性、有利には頭皮敏感性の予防及び/若しくは低減に使用するための、N-メチルグリシン又はそれを含む医薬、有利には皮膚用、組成物。
【請求項12】
1×10
-6M~1×10
-1M、優先的には1×10
-5M~1×10
-2Mの濃度で、非常に優先的には7×10
-3Mの濃度で前記医薬組成物中に存在することを特徴とする、請求項11に記載の使用のためのN-メチルグリシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性を増加させるためのN-メチルグリシンの新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
顔や身体とまったく同様に、頭蓋は、それ自体の皮膚すなわち頭皮を有する。よく見えないので無視されることが多いが、頭皮は、掻痒や刺激を伴って頭部粃糠疹の形態で顕在化する可能性のある不快感の発生部位である。必ずしも頭部粃糠疹要因に関連するわけではないが、頭皮敏感性も生じる可能性がある。頭皮敏感性は、各種化学的又は熱的刺激への暴露後の頭皮のヒリヒリ感(痛覚を伴うことも伴わないこともある)により特徴付けられる。頭皮はまた、過剰又は早期脱毛をもたらす生物学的撹乱を患う可能性もある。こうした不快感には、とくに頭皮の皮膚微生物叢の破壊に相関付けられる、各種生物学的機序が関与する。
【0003】
とくに頭部粃糠疹に関して、それは、さまざまなタイプの頭皮(乾性、油性、若年、又は成人被験者)に影響を及ぼす可能性がある。頭部粃糠疹を呈する頭皮がより高い割合のスタフィロコッカス属(Staphylococcus)細菌を示すので、頭部粃糠疹の起源は、頭皮の微生物叢のアンバランスにある。
【0004】
他方、ヒリヒリ、掻痒、疼痛、及び灼熱タイプの嫌な不快感は、バクテロイデス属(Bacteroides)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、及びクリセオバクテリウム属(Chryseobacterium)の群のある特定の細菌の存在に有意に相関付けられてきた。そのほか、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)などのブドウ球菌に由来する外毒素は、掻痒性頭皮に関与するメディエーターの発現をトリガーする可能性がある。
【0005】
敏感頭皮に関しては、皮脂の増加のほか、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)の増加及び細菌多様性の減少にも相関付けられる。最後に、脱毛は、頭皮の敏感性に正に相関付けられてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、そのため、化粧品分野には、頭部粃糠疹のほか、それに伴うことが多い刺激及び掻痒にも対処できる、活性成分の必要性が常に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
きわめて驚くべきことに、N-メチルグリシン(サルコシンとも呼ばれる)が皮膚微生物叢の多様性を増加させる能力を有することにより、脱毛の予防及び/若しくは低減、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減、並びに/又は皮膚の、とくに頭皮の掻痒及び/若しくは刺激の低減を行うことができることを、本出願人は発見した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
N-メチルグリシンは、グリシンのメチル化誘導体(CAS番号107-97-1)であり、実験式C
3H
7NO
2を有し、89.09g/molのモル質量を有し、且つ式:
【化1】
を有する。N-メチルグリシンは、とくに、皮脂生成の低減、高脂漏症に関連する欠陥の低減、及び皮膚の毛穴の視認性の低減に使用するために、本出願人によりMAT-XS(商標)という名称で販売されている。
【0010】
N-メチルグリシン誘導体は、頭皮用化粧組成物に、とくに抗フケ用化粧組成物を含む陰イオン性洗剤として、使用されることが知られている。
【0011】
しかしながら、本出願人の知る限り、先行技術では、脱毛の予防及び/若しくは低減のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、並びに/又は皮膚の、とくに頭皮の掻痒及び/若しくは刺激の低減のための、とくに頭皮の皮膚敏感性の予防及び/若しくは低減のための、とくに頭皮の皮膚微生物叢の多様性の増加に効果がある、N-メチルグリシンの化粧使用の開示も提案もされていない。
【0012】
この分子の利点は、局所アレルギーリスクを伴うことなく、化粧組成物、とくに頭皮用組成物に容易に製剤化されることが知られていることである。それはさらに、市販品として簡単に入手可能である。
【0013】
そのため、本発明の第1の主題は、有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性を増加させるための、N-メチルグリシンの非治療的化粧使用である。第2の主題は、少なくとも1種の化粧的に許容可能な賦形剤を含む化粧組成物における、N-メチルグリシンの化粧使用である。第3の主題は、頭皮及び/又は皮膚付属器の全部又は一部への、N-メチルグリシン又はそれを含む組成物の局所適用を含む化粧ケアプロセスに関する。最後の主題は、皮膚の掻痒及び/又は刺激、有利には頭皮刺激の低減に使用するための、N-メチルグリシン又はそれを含む医薬、有利には皮膚用、組成物に関する。
【0014】
したがって、第1の主題は、有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性を増加させるための、N-メチルグリシンの非治療的化粧使用に関する。
【0015】
「化粧使用」という用語は、治療用でも医薬用でも皮膚科用でもない使用、すなわち、療法治療を必要としない且つ健常皮膚を対象とする使用を意味することが意図される。「健常皮膚」という用語は、当該分野の専門家の皮膚科医により非病理学的として記述される皮膚、すなわち、感染、瘢痕、皮膚疾患又は皮膚病態、たとえば、カンジダ症、膿痂疹、乾癬、湿疹、座瘡若しくは皮膚炎、創傷若しくは傷害、並びに/又は他の皮膚症及び/若しくはアンドロゲン性脱毛症をなんら呈さない皮膚を意味することが意図される。
【0016】
本発明の主題はまた、皮膚プレバイオティックとしてのN-メチルグリシンの非治療的化粧使用である。実際には、N-メチルグリシンは、皮膚微生物叢、とくに以下の属のものから選ばれる株の成長及び/又は活性を増加させることができる。
- ストレプトコッカス属(Streptococcus)、とくに、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・オーストラリス(Streptococcus australis)、ストレプトコッカス・パラサングイニス(Streptococcus parasanguinis)、及びストレプトコッカス・インファンティス(Streptococcus infantis)から選ばれるもの、
- スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、とくに、S.パステウリ(S.pasteuri)及びS.ワルネリ(S.warneri)、
- ロチア属(Rothia)、とくに、ロチア・アエリア(Rothia aeria)、
- アクチノマイセス属(Actinomyces)、とくに、A.オドントリティカス(A.odontoliticus)、
- ベイロネラ属(Veillonella)、とくに、V.パルブラ(V.Parvula)。
【0017】
本発明の目的のためには、「皮膚プレバイオティック」という用語は、皮膚微生物相の細菌、優先的には上述した株、優先的には、S.サリバリウス(salivarius)、S.パステウリ(S.pasteuri)、S.パラサングイニス(parasanguinis)、V.パルブラ(V.parvula)、S.オーストラリス(australis)、S.ワルネリ(S.warneri)、ロチア・アエリア(Rothia aeria)、S.インファンティス(infantis)、アクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontoliticus)の成長及び/又は活性を増加させる、いずれかの物質を意味することが意図される。皮膚微生物相の細菌のこうした成長及び/又は活性は、当該分野の従来法により測定可能である。
【0018】
いくつかの方法を使用して、皮膚若しくは粘膜上に存在するカウントされたコロニー数の増加又は懸濁状態の株の光学濃度によるin vitro測定での若しくはPCRによる測定における有意な増加を含めて、皮膚及び/又は粘膜上での微生物株の成長を測定することができる。有利には、微生物の含有量は、株を含有するサンプルの回収後に、in vitroで光学濃度により測定される。
【0019】
代替的に、とくに実施例2aに記載の方法により、N-メチルグリシンの存在下で細菌の相対含有量の変化をin situで測定することもできるであろう。
【0020】
微生物株の活性は、当業者であれば、たとえば、皮膚微生物叢の代謝物、とくに細菌の乳酸や酢酸などの有機酸の生成を調べることなどにより、従来法に従って測定可能である。
【0021】
N-メチルグリシンは、局所的に許容可能な成分である。「局所的に許容可能」という用語は、局所適用に好適な、皮膚に対して非毒性且つ非刺激性の、アレルギー反応を誘発しない、且つ化学的に不安定でない成分を意味することが意図される。
【0022】
この分子は、経口的又は局所的に使用されうる。有利には、それは局所的に使用される。「局所的」という用語は、皮膚の表面上への成分の直接局所適用及び/又はスプレー塗布を意味することが意図される。
【0023】
成分は、身体の全部又は一部(有利には、脚、足、腋窩、手、大腿、胃、襟足、頸、腕、胴、背中、顔(額、頬、鼻、こめかみ、Tゾーン(額、鼻、及び顎)を含む)、及び/又は頭皮から選ばれ、より有利には頭皮である)に局所適用可能である。
【0024】
本発明の目的では、皮膚は頭皮を含む。
【0025】
「皮膚付属器」という用語は、体毛、毛髪、爪、有利には毛髪を意味することが意図される。
【0026】
「皮膚微生物叢」という用語は、細菌及び/若しくは酵母及び/若しくは真菌の有益な相利片利共生株、並びに/又は病原性日和見株、とくに、以下から選択される有益な相利片利共生株を意味することが意図される。
- コリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)とくにコリネバクテリウム属(Corynebacterium)の細菌、マイクロコッカス科(Micrococcaceae)とくにマイクロコッカス属(Micrococcus)及び/又はコクリア属(Kocuria)の細菌、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)又はキューティバクテリウム属(Cutibacterium)を含むプロピオニバクテリア科(Propionibacteriaceae)の細菌、ブレビバクテリウム科(Brevibacteriaceae)とくにブレビバクテリウム属(Brevibacterium)の細菌を含むアクチノバクテリア門(Actinobacteria)の細菌、
- ロドバクター科(Rhodobacteriaceae)とくにパラコッカス属(Paracoccus)及び/又はアマリコッカス属(Amaricoccus)の細菌、アセトバクター科(Acetobacteraceae)とくにロセオモナス属(Roseomonas)の細菌、カウロバクター科(Caulobacteraceae)とくにブレブンディモナス属(Brevundimonas)の細菌、モラクセラ科(Moraxellaceae)とくにエンハイドロバクター属(Enhydrobacter)及び/又はアシネトバクター属(Acinetobacter)の細菌を含むプロテオバクテリア門(Proteobacteria)の細菌、
- スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、とくにスタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、S.ワルネリ(S.warneri)、S.キャピティス(capitis)、S.エピデルミディス(S.epidermidis)、S.パステウリ(S.pasteuri)、S.サプロフィティカス(saprophyticus)、優先的にはS.エピデルミディス(S.epidermidis)を有するスタフィロコッカス科(Staphylococcaceae)の細菌、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、とくにストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、S.オーストラリス(australis)を有するストレプトコッカス科(Streptococcaceae)の細菌、バチルス属(Bacillus)を有するバチルス科(Bacilliaceae)の細菌、ベイロネラ属(Veillonella)の細菌、並びにラクトバチルス科(Lactobacilliaceae)とくにラクトバチルス属(Lactobacillus)の細菌を含むフィルミクテス門(Firmicutes)の細菌。
【0027】
優先的には、有益な相利片利共生皮膚細菌は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、コクリア属(Kocuria)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、パラコッカス属(Paracoccus)、アマリコッカス属(Amaricoccus)、ロセオモナス属(Roseomonas)、ブレブンディモナス属(Brevundimonas)、エンハイドロバクター属(Enhydrobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、S.ホミニス(hominis)、S.ワルネリ(S.warneri)、S.キャピティス(capitis)、S.エピデルミディス(S.epidermidis)、S.パステウリ(S.pasteuri)、S.サプロフィティカス(saprophyticus)、優先的にはS.エピデルミディス(S.epidermidis)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、及びそれらの混合物から選ばれる。
【0028】
病原性日和見皮膚株は、以下から選ばれる。
- プロテオバクテリア門(Proteobacteria)のエンテロバクテリア科(Enterobacteriaceae)のとくにパントエア属(Pantoea)及び/又はシュードモナス科(Pseudomonaceae)のとくにシュードモナス属(Pseudomonas)の株、
- スタフィロコッカス科(Staphylococcaceae)とくにスタフィロコッカス属(Staphylococcus)とくにスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びストレプトコッカス科(Streptococcaceae)とくにストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)を有するフィルミクテス門(Firmicutes)の株、
- プロピオニバクテリア科(Propionibacteriaceae)とくにプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes))を含むアクチノバクテリア門(Actinobacteria)の株。
【0029】
優先的には、病原性日和見皮膚株は、パントエア属(Pantoea)、シュードモナス属(Pseudomonas)、S.アウレウス(S.aureus)、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、及びP.アクネス(P.acnes)から選ばれる。好ましい一実施形態によれば、病原性日和見皮膚株は、S.アウレウス(S.aureus)及び/又はP.アクネス(P.acnes)である。
【0030】
したがって、本発明の目的において、とくに頭皮の皮膚微生物叢は、マラセジア(Malassezia)属の種、有利にはM.レストリクタ(M.restricta)種をはじめとする酵母を含む。
【0031】
「皮膚微生物叢の多様性の増加」という表現は、皮膚微生物叢を構成する新しい細菌及び/又は細菌株の出現の促進を意味することが意図される。本発明の有利な一実施形態では、これは、実施例2に記載されるように、N-メチルグリシンを含まない同一製剤の適用の28日後に検出される株の集団と比較して、N-メチルグリシンを含む製剤の適用の28日後に少なくとも10%、有利には少なくとも20%の新しい株の出現を含む。とくに有利な一実施形態では、これは、有益な片利共生株、より有利にはストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、スタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、ロチア・ムシラギノサ(Rothia mucilaginosa)、ストレプトコッカス・パラサングイニス(Streptococcus parasanguinis)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、ストレプトコッカス・オーストラリス(Streptococcus australis)、ヘモフィルス・パラインフルエンゼ(Haemophilus parainfluenzae)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、ロチア・アエリア(Rothia aeria)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、アシネトバクター・ウルシンギイ(Acinetobacter ursingii)、プロピオニバクテリウム・ファージ(Propionibacterium phage)_P14_4、ベイロネラ・ディスパル(Veillonella dispar)、ストレプトコッカス・インファンティス(Streptococcus infantis)、ストレプトコッカス・クリスタタス(Streptococcus cristatus)、スタフィロコッカス・ペッテンコフェリ(Staphylococcus pettenkoferi)、アクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)、及びそれらの混合物、優先的にはS.パステウリ(S.pasteuri)、S.サプロフィティカス(saprophyticus)、S.ワルネリ(S.warneri)、S.ペッテンコフェリ(pettenkoferi)、及びそれらの混合物、より優先的にはS.パステウリ(S.pasteuri)、S.ワルネリ(S.warneri)、及びそれらの混合物(非常に優先的にはそれはS.ワルネリ(S.warneri)である)から選ばれる少なくとも10%の新しい株、有利には少なくとも20%の新しい株の出現を含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、N-メチルグリシンの使用は、皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の減少及び/又は予防のための、皮膚微生物叢の多様性の増加を目的とする。
【0033】
有利には、「脱毛の低減」という用語は、多くとも2%、優先的には多くとも1%、より優先的には多くとも0.5%の、休止期すなわち抜け期の毛髪密度の低減を意味することが意図される。休止期及び成長期の毛髪密度の測定は、N-メチルグリシンもそれを含む組成物も用いずに測定された休止期及び成長期の毛髪密度と比較して、N-メチルグリシン又はそれを含む組成物の存在下で、とくにシャンプーの形態の製剤で、フォトトリコグラム技術を用いてin vivo測定により行われうる。
【0034】
他の一実施形態では、N-メチルグリシンの使用は、頭部粃糠疹の出現予防及び/又は低減のための、有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性の増加を目的とする。そのため、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(いずれかの種)/P.アクネス(P.acnes)株の濃度比が、N-メチルグリシンを含む製剤の適用後、N-メチルグリシンを含まない同一製剤の適用後に測定された前記比の多くとも1/2、有利には多くとも1/3であるとき、N-メチルグリシンは、頭部粃糠疹の出現予防及び/又は低減に有効な量であるとみなされる。有利には、これは、実施例2に記載の条件下における、実施例1b)に従って調製されたN-メチルグリシン含有調製物を1重量%含む毛髪製剤の適用の28日後のスタフィロコッカス属(Staphylococcus)(いずれかの種)/P.アクネス(P.acnes)株の濃度比の測定である。
【0035】
そのため、N-メチルグリシンは、皮膚の、とくに頭皮の剥脱感を誘発する成分である。
【0036】
N-メチルグリシンは、粉末形態で市販品として入手され、いずれかの溶媒又は溶媒混合物、好ましくは水性溶媒、有利には水、アルコール、グリコール、ポリオール、又は99/1~1/99(w/w)の水/アルコール、水/グリコール、若しくは水/ポリオール混合物(たとえば、エタノール、グリセロール及び/又はブチレングリコール及び/又は他のグリコール、たとえば、キシリトール及び/又はプロパンジオールなどと混合された水)中に、有利には唯一の溶媒としての水中に可溶化可能である。
【0037】
特定的には、N-メチルグリシン溶液は水性溶液である。「N-メチルグリシンの水性溶液」という用語は、水性溶液の合計重量を基準にして60重量%超、有利には少なくとも70重量%、特定的には少なくとも80重量%、より特定的には少なくとも90重量%、とくに少なくとも95重量%の水を含有する、さらにより有利にはグリコールを含有しない、特定的にはアルコールを含有しない、より特定的には水のみを含有する、いずれかの水性溶液を意味することが意図される。
【0038】
化粧成分の形態で単独で使用されるとき、N-メチルグリシンは、有利にはグリセリンを含む水性溶媒中に可溶化され、有利には水性溶液の全重量を基準にして60%~90%、より有利には70%~85%の濃度で、非常に有利には82重量%の濃度で存在する。
【0039】
代替的に、N-メチルグリシンは、溶媒中に、特定的には極性溶媒中に、たとえば水、アルコール、ポリオール、グリコール、たとえばペンチレングリコール及び/若しくはブチレングリコール及び/若しくはヘキシレングリコール及び/若しくはカプリリルグリコール又はそれらの混合物、優先的には水性グリコール性混合物、より優先的にはヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びその混合物、又はグリセロールから選ばれるグリコールを含有する水性グリコール性混合物中に可溶化及び/又は希釈される。有利には、N-メチルグリシンは、ヘキシレングリコールを含有する、特定的には化粧成分の合計重量を基準にして0.1重量%~10重量%のヘキシレングリコール、優先的には0.5重量%~5重量%のヘキシレングリコールを含有する水性溶液中に希釈及び/又は溶解される。有利には、N-メチルグリシンは、カプリリルグリコールを含有する、特定的には水性溶液の合計重量を基準にして0.01重量%~5重量%のカプリリルグリコール、優先的には0.1重量%~1重量%のカプリリルグリコールを含有する水性溶液中に希釈及び/又は溶解される。
【0040】
本発明の第1の実施形態では、粉末形態のN-メチルグリシンは、実施例1a)に記載されるように、溶液の合計重量を基準にして7%の最終重量濃度で唯一の溶媒としての水中に可溶化される。
【0041】
第2の実施形態では、粉末形態のN-メチルグリシンは、最終溶液の合計重量を基準にして7%の重量濃度でグリセリン(82%w/w)の水性溶液中に可溶化される。次いで、溶液は、実施例1b)に記載されるように濾過(0.45μm)される。
【0042】
本発明の他の一主題は、有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性の増加のための、皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の減少及び/若しくは予防のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、少なくとも1種の化粧的に許容可能な賦形剤を含む化粧組成物におけるN-メチルグリシンの使用に関する。
【0043】
「許容可能」という用語は、皮膚に対して非刺激性であり、アレルギー反応を誘発せず、且つ化学的に安定な化粧賦形剤を意味することが意図される。
【0044】
本発明の一実施形態では、N-メチルグリシンは、1×10-6M~1×10-1M、優先的には1×10-5M~1×10-2Mの最終濃度で、非常に優先的には7×10-3Mの濃度で、化粧組成物中に存在する。
【0045】
代替的に、N-メチルグリシンは、少なくとも1種の化粧的に許容可能な賦形剤を含む化粧組成物中に、組成物の合計重量を基準にして1%の最終重量濃度で存在する。
【0046】
賦形剤は、界面活性剤及び/又は乳化剤、保存剤、緩衝剤、キレート化剤、変性剤、不透明化剤、pH調整剤、還元剤、安定化剤、増粘剤、ゲル化剤、フィルム形成ポリマー、充填剤、マット化剤、光沢剤、顔料、色素、香料、並びにそれらの混合物から選択されうる。(非特許文献1)には、本発明に使用するのに好適な各種化粧賦形剤が記載されている。
【0047】
有利には、賦形剤は、ポリグリセロール、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、スクロース系安定化剤、ビタミンE及びその誘導体、キサンタンガム、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不鹸化性物質、フィトステロール、シリコーン、タンパク質加水分解物、ベタイン、アミンオキシド、植物抽出物、スクロースエステル、二酸化チタン、グリシン、並びにパラベンを含む群から、より好ましくはステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、カプリリルグリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルナトリウムホスフェート、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、グリコールステアレート、トリイソノナノイン、オクチルココエート、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG-30ジポリヒドロキシステアレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、セテアリルオクタノエート、ジブチルアジペート、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ナトリウムラウリルスルフェート、ミネラルワックス及びオイル、イソステアリルイソステアレート、プロピレングリコールジペラルゴネート、プロピレングリコールイソステアレート、PEG8、ビーズワックス、水素化パーム核油からのグリセリド、ラノリン油、ゴマ油、セチルラクテート、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、スクロース、低密度ポリエチレン、等張生理食塩水溶液、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
本発明に係る化粧組成物は、水性又は油性溶液、クリーム状ゲル又は水性ゲル又は油性ゲル、とりわけシャワーゲル、シャンプー及びコンディショナー、ミルク、エマルジョン、マイクロエマルジョン、又はナノエマルジョン(とりわけ、水中油型又は油中水型又は複合型又はシリコーン型)、マスク、セラム、ローション、液状石鹸、皮膚用バー、軟膏、フォーム、パッチ、無水物質(好ましくは、液状、ペースト状、若しくは固形のもの、たとえば、メイクアップパウダー、ロッド、又はスティックの形態)から選択されうる。有利には、それはクリーム又はセラムである。
【0049】
化粧組成物はまた、他の化粧活性成分を含みうる。皮膚の健康及び/又は物理的外観を改善するための多くの化粧活性成分は、当業者に公知である。さらに、本発明に記載の化合物は、互いに組み合わせたときに相乗効果を有しうる。こうした組合せもまた、本発明によりカバーされる。(非特許文献1)には、局所使用にとくに好適な、化粧品及び医薬品産業に通常使用されるさまざまな化粧及び医薬成分が記載されている。こうしたクラスの成分の例は、限定されるものではないが、次の化合物:研磨剤、吸収剤、審美的目的の化合物、たとえば、香料、顔料、色素、精油、収斂剤、たとえば、チョウジ油、メントール、カンファー、ユーカリ油、オイゲノール、メンチルラクテート、ウィッチヘーゼル蒸留物、抗座瘡剤、抗フロキュラント剤、消泡剤、抗微生物剤(たとえば:ヨードプロピルブチルカルバメート)、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、膨張剤、キレート化剤、添加剤、殺生物剤、変性剤、増粘剤、及びビタミン、並びにそれらの誘導体又は等価物、フィルム形成材料、ポリマー、不透明化剤、pH調整剤、還元剤、脱色素剤又は薄色化剤(たとえば:ハイドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、マグネシウムアスコルビルホスフェート、アスコルビルグルコサミン)、コンディショニング剤(たとえば:保湿剤)を含む。
【0050】
化粧組成物はまた、本発明に係る抽出物と同一の性質を有して相乗効果を誘発する、他の化粧剤又は補完効果を有する化粧剤を含みうる。
【0051】
抗脱毛活性剤としては、スルホペプチドと、アミノ酸と、アミノ糖と、B群ビタミンと、亜鉛と、本出願人によりTrichogen(商標)LS8960という名称で販売されているパナックス・ジンセン(Panax ginseng)及びアルクティウム・マジュス(Arctium majus)の抽出物、又は毛髪用保護剤、たとえば、本出願人によりLitchiderm(商標)という名称で販売されているライチ・キネンシス(Litchi chinensis)果皮の抽出物、又は鎮静及び抗掻痒活性剤、たとえば、本出願人によりPhytosoothe(商標)LS9766という名称で販売されているナタネフィトステロールと、の組合せが挙げられよう。また、Purisoft(商標)やPuricare(商標)などの頭皮用活性保護剤との組合せも挙げられうる。
【0052】
頭皮敏感性低減用活性剤としては、Elestab(商標)HP100、PatcH2O(商標)、Sanicapyl(商標)などの活性剤が挙げられよう。
【0053】
最後に、N-メチルグリシンは、皮膚及び頭皮による皮脂生成をレギュレートする活性剤(たとえば、Asebiol(商標)、Betapur(商標)、Sebaryl(商標)が挙げられよう)との組合せが可能である。
【0054】
他のタイプの活性剤、たとえば、ヘアケア用抗酸化活性剤としてDN-Age(商標)という名称で販売されているカッシア・アラタ(Cassia alata)葉の抽出物、特定的には脱グリケート化剤としてCollRepair(商標)という名称で販売されているサルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorhizza)の抽出物とナイアシンアミドとの組合せ、又は皮膚の引締りを促進する活性剤、たとえば、Dermican(商標)という名称で販売されている合成テトラペプチド、Linefactor(商標)という名称で販売されているハイビスカス・アベルモスカス(Hibiscus abelmoschus)の抽出物、Proteasyl(商標)という名称で販売されている精製エンドウ抽出物、Elestan(商標)という名称で販売されているマニルカラ・ムルチネルビス(Manilkara multinervis)の抽出物、Collalift(商標)18という名称で販売されているカヤ・セネガレンシス(Khaya senegalensis)の抽出物、本出願人によりArgassential(商標)という名称で販売されているアルガン・パルプ(Argan pulp)の抽出物、Sqisandryl(商標)という名称で販売されているシザンドラ・キネンシス(Schizandra chinensis)の抽出物、Eperuline(商標)という名称で販売されているエペルア・ファルカタ(Eperua falcata)の抽出物、本出願人による市販品でMAT-XS(商標)Brightという名称で販売されているオルトシフォン・スタミネウス(Orthosiphon stamineus)の抽出物などが組成物中に存在しうる。活性剤のこうした組合せにより、毛包の強化及び脱毛の低減ができる。
【0055】
有利な一実施形態では、化粧組成物は、頭皮及び/又は皮膚付属器の、有利には頭皮の全部又は一部に適用される。
【0056】
他の一主題はまた、有利には頭皮の、皮膚微生物叢の多様性の増加のための、N-メチルグリシン又はそれを含む組成物の局所又は経口投与、有利には局所適用を含む、化粧ケアプロセスに関する。一実施形態では、プロセスは、頭皮及び/又は皮膚付属器の、有利には頭皮の全部又は一部へのN-メチルグリシン又はそれを含む組成物の局所適用を含む。
【0057】
そのため、有利には、本発明に係る化粧ケアプロセスは、特定的にはN-メチルグリシン又はそれを含む組成物の局所適用による、皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の低減及び/若しくは予防並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減を目的とする。
【0058】
本発明の主題はまた、下記工程を含む、必要とする及び/又は要望する個体における、皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の低減及び/若しくは予防のための並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための化粧処置方法である。
- 皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の低減及び/若しくは予防が望まれる並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減が望まれる皮膚及び/又は皮膚付属器の領域の個体上における同定、
- 皮膚付属器の損失、優先的には脱毛の低減及び/若しくは予防のための、並びに/又は頭部粃糠疹の出現予防及び/若しくは低減のための、皮膚及び/又は皮膚付属器のこうした領域への有効量のN-メチルグリシンを含む化粧組成物の局所適用。
【0059】
本発明の最後の主題は、皮膚の掻痒及び/若しくは刺激、有利には頭皮刺激の低減、並びに/又は皮膚敏感性、有利には頭皮敏感性の予防及び/若しくは低減に使用するための、N-メチルグリシン又はそれを含む医薬、有利には皮膚用、組成物に関する。「皮膚敏感性」という用語は、本明細書では、同様に皮膚微生物叢のアンバランスにより引き起こされる皮膚の張り感及び/又は接触痛及び/又は皮膚灼熱感(掻痒及び刺激と識別可能)を意味することが意図される。
【0060】
「掻痒及び/又は刺激の低減」という用語は、皮膚、とくに頭皮への、S.アウレウス(S.aureus)の接着の低減を意味することが意図される。そのため、N-メチルグリシンを用いずに測定されたパーセント接着と比較して、N-メチルグリシンの存在下で皮膚表面へのS.アウレウス(S.aureus)の接着が少なくとも30%、有利には少なくとも44%、より有利には少なくとも60%低減されたとき、N-メチルグリシンは、皮膚の掻痒及び/又は刺激の低減に有効な量であるとみなされる。より有利には、それは、頭皮の表面へのS.アウレウス(S.aureus)の接着の低減を含む。
【0061】
本発明の有利な一実施形態では、S.アウレウス(S.aureus)のパーセント接着の測定は、N-メチルグリシンの2つの識別可能濃度の存在下で、ヒトケラチノサイトのレベルで、実施例3に記載の条件下で、行われる。
【0062】
本発明の一実施形態では、医薬、有利には皮膚用、組成物は、少なくとも1種の皮膚科学的に許容可能な賦形剤を含む。有利には、N-メチルグリシンは、1×10-6M~1×10-1M、優先的には1×10-5M~1×10-2Mの濃度で、非常に優先的には7×10-3Mの濃度で、前記組成物に含まれる。代替的に、N-メチルグリシンは、組成物の合計重量を基準にして1%の最終重量濃度で医薬、有利には皮膚用、組成物中に存在する。
【0063】
説明を参照して実施例を以下に提示する。これらの実施例は、例示目的で与えられたものであり、本発明の範囲をなんら限定しないものとする。各実施例は一般的範囲を有する。実施例は、本発明の必須部分を形成し、実施例を含めてその全体に記された説明からいずれの先行技術に対しても新規に現れる特徴はいずれも、本発明の必須部分を形成する。
【0064】
とくに指定がない限り、温度は摂氏度(℃)で表現され、略号「w」は重量を意味し、且つ略号「v」は体積を意味する。
【実施例】
【0065】
実施例1:N-メチルグリシン溶液の調製
実施例1a):最終溶液の合計重量を基準にして7%の重量濃度で市販のN-メチルグリシン粉末(Sigma-Aldrich)を唯一の溶媒としての水に溶解させた。溶液を濾過した(0.45μm)。
【0066】
実施例1b):最終溶液の合計重量を基準にして7%の重量濃度で市販のN-メチルグリシン粉末(Sigma-Aldrich)をグリセリンの水性溶液(82%w/w)中に可溶化させた。溶液を濾過した(0.45μm)。
【0067】
実施例2:N-メチルグリシンの存在下での頭皮の微生物多様性の増加
プロトコル:
油性頭皮を有する23~66歳の29名の被験者集団(男性及び女性)で臨床試験を行った。17名の志願者群で、4週間にわたり週3回、組成物の合計重量を基準にして1重量%の、実施例1b)に従って調製されたN-メチルグリシン調製物を含む組成物を、頭皮全体にマスクの形態で適用し、続いて中性シャンプーを適用し、他の12名の志願者群には、本発明に係る物質を含有しない組成物を適用した(対照)。
【0068】
適用の2及び4週間後、頭皮上の皮脂量を評価した。
【0069】
試験開始時(T0)及び試験終了時(N-メチルグリシンを含む製剤の適用の4週間後、T28)、スワビング技術(綿棒)を用いて頭皮の微生物叢をサンプリングした。酵素ライシス後、微生物DNAを抽出し、シリコーン膜上で精製し、そして蛍光により定量した。サンプル中に含有されるすべてのDNAをゲノム全体の完全メタシーケンシングにより解析した。結果は、微生物多様性の全体的増加に関して表1に、及び検出された株の定性分析に関して表2に示される。
【0070】
結果:
2a) 頭皮の微生物多様性の増加
【0071】
【0072】
結論:N-メチルグリシンの存在下で、28日で頭皮の微生物多様性が21.7%増加した。
【0073】
2a)a 頭皮の微生物多様性の定性分析
負の値は、試験開始時(T0)に株が微生物集団を統計的に代表することを意味する。正の値は、試験終了時(T28)に株が微生物集団を統計的に代表することを意味する。
【0074】
したがって、それは、試験された製剤(対照製剤又はN-メチルグリシン含有製剤)の存在下での、細菌の相対含有量における変化の測定値である(すなわち、試験された合計集団にわたり合理的に説明される)。
【0075】
【0076】
2b) スタフィロコッカス属(Staphylococcus)株の全量の減少及び安定化
【0077】
【0078】
結論:N-メチルグリシンを含むシャンプーの適用の28日後以内に、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)株(すべての種)の全集団は、それを含まないシャンプーの適用と比較して有意に減少した。したがって、N-メチルグリシンは、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)株の集団を安定化することができる。
【0079】
2c) スタフィロコッカス属(Staphylococcus)/P.アクネス(P.acnes)比の減少及び安定化並びに頭部粃糠疹の低減に及ぼす影響
【0080】
【0081】
結論:頭部粃糠疹の出現は、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)集団の増加、とくにスタフィロコッカス属(Staphylococcus)/P.アクネス(P.acnes)比の増加に相関することが示された。しかしながら、化粧製剤中の0.07%(w/w)の最終濃度のN-メチルグリシンの存在は、P.アクネス(P.acnes)の量に対するスタフィロコッカス属(Staphylococcus)(いずれかの種)の量の比の増加を遅延して、頭部粃糠疹を低減するN-メチルグリシンの能力を示した。
【0082】
実施例3:S.アウレウス(S.aureus)の接着の減少並びに皮膚の掻痒及び刺激の減少
プロトコル:溶液の最終体積を基準にして3×10-2及び6×10-2%(w/v)の最終重量濃度のN-メチルグリシン溶液に、CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で事前に標識されたS.アウレウス(S.aureus)を、1.108~1.109CFU/mlの割合で混入させた。混入終了時、溶液をホモジナイズし、各混合物を37℃の温度で1時間にわたりインキュベートし、そしてケラチノサイト層に接触させた。全体を37℃の温度で1時間インキュベートした。細胞を濯ぎ、次いで、励起(max)=492nm及び放出(max)=517nmで蛍光を測定した。
【0083】
結果:
【0084】
【0085】
結論:N-メチルグリシンは、ケラチノサイトへのS.アウレウス(S.aureus)の接着を低減して、頭皮の掻痒及び刺激を低減する有効性を示した。
【0086】
実施例4:N-メチルグリシンを含む化粧成分の例
パーセントは、成分の最終体積を基準にして重量で表現される。
【0087】
【0088】
実施例5:マスクの形態の化粧製剤の例
【0089】
【国際調査報告】