(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】低ナトリウム血症の管理のための栄養組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/17 20060101AFI20221207BHJP
A61P 3/12 20060101ALI20221207BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221207BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221207BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221207BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221207BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221207BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221207BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221207BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221207BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221207BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K31/17
A61P3/12
A61P7/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/14
A23L33/10
A23L5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520694
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020054283
(87)【国際公開番号】W WO2021067947
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522133060
【氏名又は名称】ネフセントリック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】シン ブピンダー
(72)【発明者】
【氏名】ソウダース リー
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD04
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD33
4B018MD36
4B018ME14
4B018MF02
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4B035LC16
4B035LE01
4B035LG02
4B035LG04
4B035LG06
4B035LG17
4B035LK02
4B035LP21
4C076AA11
4C076AA16
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4C076CC14
4C076CC21
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4C076DD67T
4C076EE30
4C076FF07
4C076FF52
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA27
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA41
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA09
4C206NA10
4C206ZA51
4C206ZC21
(57)【要約】
本発明は、低ナトリウム血症の治療又は管理に有用な、経口投与用の新規な尿素組成物に関する。この尿素組成物の新規な製造方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)低ナトリウム血症の治療に有効な量の尿素と、
(b)3~20のデキストロース当量(DE)を有する多糖と、
(c)ケイ酸カルシウムであって、3~7ミクロン(3~7μm)の範囲の粒子サイズを有し、粒子の10重量%未満が3ミクロン(3μm)未満又は7ミクロン(7μm)超の直径を有するケイ酸カルシウムと
を含む粉末組成物。
【請求項2】
前記多糖がマルトデキストリンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
60~80重量%の尿素を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
5~15重量%のマルトデキストリンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
3~7重量%のケイ酸カルシウムを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
矯味矯臭剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
クエン酸、スクラロース、及び矯味矯臭剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
低ナトリウム血症の治療方法であって、低ナトリウム血症に罹患している患者に請求項1に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項9】
前記組成物が、摂取前に前記組成物を水に分散又は溶解することにより投与される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、摂取前に前記組成物を食品と混合することにより投与される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(a)60~80重量%の尿素と、
(b)4~15重量%のマルトデキストリンと、
(c)2~10重量%のケイ酸カルシウムであって、3~7ミクロン(3~7μm)の範囲の粒子サイズを有し、粒子の10重量%未満が3ミクロン(3μm)未満又は7ミクロン(7μm)超の直径を有するケイ酸カルシウムと
を含む粉末組成物。
【請求項12】
クエン酸、スクラロース、及び矯味矯臭剤をさらに含む請求項11に記載の粉末組成物。
【請求項13】
前記ケイ酸カルシウムの粒子サイズが4~6ミクロン(4~6μm)の範囲にあり、粒子の5重量%未満が4ミクロン(4μm)未満又は6ミクロン(6μm)超の直径を有する請求項11に記載の粉末組成物。
【請求項14】
低ナトリウム血症の治療方法であって、低ナトリウム血症に罹患している患者に請求項11に記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項15】
前記組成物が、摂取前に前記組成物を水に分散又は溶解することにより投与される請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低ナトリウム血症を治療又は管理するために有用な経口投与用の新規な尿素組成物に関する。その尿素組成物の新規な製造方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
低ナトリウム血症は、重大な病的状態及び死亡率をもたらす可能性のある電解質異常である。この状態は、人がナトリウムの欠損を伴うか伴わずに水の正のバランスを示すときに生じ、血漿ナトリウムが135mmol/Lのレベルを下回るときに認識される。低ナトリウム血症は、水を過剰に摂取している個体に単独で生じることがある。しかし、より頻繁に低ナトリウム血症は、水の排泄の減少につながる投薬又は他の基礎的な医学的状態の合併症に起因する。
【0003】
低ナトリウム血症は水中毒を引き起こす可能性がある。水中毒は、過剰な水の保持に起因して生じて、細胞外液の正常な浸透圧(張力)が安全限界を下回る原因となる。これは、脳機能における致命的になりうる障害をもたらす可能性がある。水中毒の典型的な症状には、吐き気、嘔吐、頭痛、及び倦怠感がある。吐き気は、水分貯留を引き起こす抗利尿ホルモン(ADH)を放出することもあるため、これは、低ナトリウム血症の症状をさらに悪化させる正のフィードバックループを引き起こす可能性がある。状態が悪化すると、患者は反射の低下、痙攣、昏迷、昏睡、又は死に至ることもある。
【0004】
低ナトリウム血症を治療する方法の1つは、患者に尿素を投与することである。例えば、2014 European Society of Endocrinology、European Society of Intensive Care、European renal Association-EDTA(2014年欧州内分泌学会、欧州集中治療学会、欧州腎臓学会-EDTA)を参照されたい。尿素の経口投与の利点は周知であるが、患者に受け入れられる経口尿素製剤の開発には課題が存在する。問題点としては、臨床的に有益な量の尿素を送達すること、及び尿素組成物の望ましくない感覚受容特性が挙げられる。苦味を低減させるために、クエン酸を使用する等の試みがなされてきた。そのような組成物の1つは、尿素10g、NaHCO3 2g+クエン酸1.5g+スクロース200mgを含み、これを50~100mLの水に溶解させるものである。しかしながら、得られた溶液は、あまり口当たりが良くないことが判明した。さらに、この組成物は、湿気にさらされると、炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが反応し、著しく劣化してしまう。
【0005】
これらの問題のいくつかに対処して現在市販されている製品の1つに、尿素の粉末形態であるUre-Na(商標)という商品名で販売されているものがある。この製品は、15gの尿素の用量を含んでいた。この組成物は、尿素15g、マルトデキストリン1.19g、及び天然フレーバー(矯味矯臭剤)、例えば、チェリー又はレモンライムを含んでいた。本発明者らは、オリジナルバージョンのUre-Naが、包装中に凝集塊になったり、くっついたりする等の問題を起こすことを発見した。また、この製品は、一定期間保存した後に固化しやすかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、低ナトリウム血症の治療に使用するために望ましい特性を維持しながら、尿素組成物を改良して製造しやすくする必要性を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、高ナトリウム血症を治療するために使用することができる粉末組成物に関する。当該粉末組成物は、低ナトリウム血症の治療に有効な量の尿素と、3~20のデキストロース当量(DE)を有する多糖と、ケイ酸カルシウムであって、3~7ミクロン(3~7μm)の範囲の粒子サイズを有し、粒子の10重量%未満が3ミクロン(3μm)未満又は7ミクロン(7μm)超の直径を有するケイ酸カルシウムとを含む。この多糖は、好ましくはマルトデキストリンである。本発明の組成物は、経口投与に有用な形態で、低ナトリウム血症に罹患している患者に尿素を送達するのに有用である。
【0008】
1つの態様では、本発明は、(a)60~80重量%の尿素と、(b)4~15重量%のマルトデキストリンと、(c)2~10重量%のケイ酸カルシウムであって、3~7ミクロン(3~7μm)の範囲の粒子サイズを有し、粒子の10重量%未満が3ミクロン(3μm)未満又は7ミクロン(7μm)超の直径を有するケイ酸カルシウムとを含む粉末組成物に関連する。
【0009】
別の態様では、本発明は、これらの尿素組成物を経口投与することにより低ナトリウム血症を治療する方法に関する。これは、上記製品を水に分散又は溶解させ、次いで摂取することを含んでもよい。あるいは、上記粉末は、食品又は予め包装された食品に添加されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、大別すると、低ナトリウム血症の治療に有効な量の尿素を含む、より安定な粉末組成物ということができる。また、低ナトリウム血症に罹患している者、又は低ナトリウム血症を発症するリスクのある者を、本発明の尿素組成物で治療することも含んでもよい。当該組成物は、患者が摂取する前に水若しくは他の液体に分散させてもよく、又は食品に添加してもよい。あるいは、当該組成物は、食品に添加され、使用できるようになるまで包装されてもよい。
【0011】
本発明は、活性成分である尿素に起因する製造及び包装の問題を回避する尿素組成物の製造方法にも関する。本発明者らは、吸湿性を含む尿素の特有の特性のために生じる、安定な尿素組成物の製造におけるいくつかの難点を特定した。例えば、Ure-Na粉末の処理は、製造及び包装機械の様々な部分への粉末の付着及び製品の凝集によって複雑になっていた。このため、一貫した製品の品質を維持するためには、製造ラインを頻繁に停止させ、処理装置を洗浄する必要があった。
【0012】
本発明者らは、Ure-Na製品が保管中にケーキ化し、完成品を無駄にすることがあることも見出した。一般的な投与方法は、小袋の粉末をコップに注いで撹拌することにより水に分散させることであるため、固化した製品はこれを難しくしている。このため、固化した製品は使用されず、その結果、製品の不要な廃棄物が発生する。
【0013】
これらの問題を解決するための以前の試みには、Ure-Naの製造においてケイ酸カルシウムを添加することが含まれていた。ケイ酸カルシウムは、公知のアンチケーキング剤(固化防止剤)である。しかしながら、この添加されたケイ酸カルシウムは、製品を改良するという利点を有するが、本発明者らは、組成物のさらなる改良が必要であることを見出した。本発明は、低ナトリウム血症の治療に使用するのに適した、凝集せず、望ましい感覚受容特性を有する粉末形態の尿素組成物に関する。
【0014】
本発明者らは、先行するUre-Na(商標)組成物が製造中にしばしば固まり、湿度を制御しても機械に固着することを発見した。これは、時間の経過とともに製品が凝集塊になることにつながる。当初のUre-Na(商標)組成物は、15gの尿素と1.19gのマルトデキストリンを含んでいた。この組成を変更し、凝集塊にならないように4.8gのケイ酸カルシウムを添加した。しかしながら、本発明者らは、最終的に包装された製品において、依然として凝集塊があることを確認した。この組成物に使用されたステアリン酸カルシウムは、7~10ミクロン(7~10μm)の間の平均粒子サイズ(粒子径)を有していた。
【0015】
本発明者らは、凝集塊を回避するために重要な2つの要因を発見した。第一に、ケイ酸カルシウムの適切な選択が重要である。平均粒子径が7ミクロン(7μm)より大きい大きい粒子サイズを有するある種のケイ酸カルシウムは、5ミクロン(5μm)の直径を有する粒子より少ない程度にしか凝集を低減しないようである。従って、3.0~7ミクロン(3.0~7μm)、より好ましくは4.0~6.0ミクロン(4.0~6.0μm)の平均直径を有するケイ酸カルシウム等の金属ケイ酸塩の適切な選択が望まれる。これらのカットオフ値より大きい粒子は、水に分散又は溶解するのに時間がかかり、一方、これらのカットオフ値より小さい粒子は、粉末状態での凝集塊に寄与する。
【0016】
加えて、ケイ酸カルシウムの粒子サイズ(粒度)分布が重要であり、上記上限ミクロン超及び下限未満のケイ酸カルシウムがかなりの量存在することは望ましくない。例えば、ケイ酸カルシウムの粒子サイズ分布は、かなりの量の3.0ミクロン(3.0μm)未満、及び7.0ミクロンン(7.0μm)超の存在が回避されるように特に適合されることが望ましい。従って、ケイ酸カルシウムは、3.0~7.0ミクロン(3.0~7.0μm)の範囲内の平均粒子径を有し、10重量%未満の粒子が直径で3.0ミクロン(3.0μm)未満又は7.0ミクロン(7.0μm)超であることが好ましい。別の実施形態では、ケイ酸カルシウムは、4.0~6.0ミクロン(4.0~6.0μm)の範囲内の平均粒子径、望ましくは5.0ミクロンのメジアン粒子サイズを有し、かつ10重量%未満の粒子が直径で4.0ミクロン(4.0μm)未満及び6.0ミクロン(6.0μm)超である。一方、10重量%の粒子が目標粒子径範囲外であるという閾値は許容できる。好ましくは、8%、6%、4%、又はさらに1%のような、さらに低い量の目標外粒子が望ましい。例えば、4~6ミクロン(4~6μm)の範囲内の平均粒子径を有し、1重量%未満がその範囲外である組成物が望ましい場合がある。
【0017】
第二に、本発明者らは、9.7%というマルトデキストリンのレベルの上昇(増加)が、凝集塊を減少させるために望ましいことを見出した。それゆえ、マルトデキストリンのレベルを7重量%より大きく、より好ましくは7~12重量%、最も好ましくは9.7%にすることが望ましい。1つの特定の実施形態では、本発明は、より高いレベルのマルトデキストリン(9.7%対6.7%)、より低いレベルのケイ酸カルシウム(5%対21%)、及びケイ酸カルシウムの制御された粒子サイズ分布を特徴としてもよい。他の実施形態は、本明細書に開示される範囲及び量によってより広く特徴付けられる。
【0018】
本発明者らは、経口尿素組成物に適した特性を提供しながら凝集しない新規な尿素組成物を見出した。この組成物は、好ましくは60~80重量%、より好ましくは65~75重量%、最も好ましくは約67重量%の尿素を有する。当該組成物は、好ましくは4~15重量%、より好ましくは7~12重量%、最も好ましくは約9.7重量%の、3~20の間のデキストロース当量(DE)を有する多糖を含む。好ましくは、この多糖はマルトデキストリンである。当該組成物は、好ましくは2~10重量%、より好ましくは3~8重量%、最も好ましくは約5重量%のケイ酸カルシウムを含む。ケイ酸カルシウムは、典型的には、99重量%のケイ酸カルシウム、及び1重量%の硫酸ナトリウムを含む。それゆえ、硫酸ナトリウムは、当該尿素粉末組成物中に存在してもよい。
【実施例】
【0019】
実施例1
以下の成分をミキサーに加えて乾燥粉末とし、次いでこれをパウチに15gの量で添加した。
【表1】
【0020】
この組成物は、尿素、マルトデキストリン、及びケイ酸カルシウムをミキサーに加えることによって調製される。得られた粉末は流動性があり、塊になりにくい。この粉末組成物は、好ましくは、食品に振りかけることができるパウチに包装されるか、又は水等の液体と混合される。この組成物は、水と混合されると懸濁液を形成し、これは便利な摂取を可能にする。この意味で、この粉末は、医療用食品として流通販売することができる。あるいは、この粉末を、ダイエットバーに似たクッキーやバー状等、別の医療用食品に組み込んでもよい。
【0021】
実施例1の製品を、ケイ酸カルシウムを欠く以前のUre-Na(商標)製品に使用したのと同じ包装を用いてパウチに包装した。以前のUre-Na(商標)製品の凝集塊に関する消費者返品は1.4%であった。実施例1の製品の返品データは0.2%であった。それゆえ、本発明により、従来のUre-Na(商標)製品に比べ、凝集塊に起因する返品が7分の1に減少したことになる。
【0022】
本発明の他の実施形態及び用途は、本明細書に開示された発明の説明及び実施態様を考慮すれば、当業者には明らかであろう。すべての米国及び外国の特許及び特許出願を含む、本明細書で引用されるすべての参考文献は、具体的かつ完全に、参照により本明細書に組み込まれる。上記説明及び実施例は、例示的なものにすぎないとみなされ、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
【国際調査報告】