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特表2022-551891ポリエーテルアミド(PEA)を含む成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ポリエーテルアミド(PEA)を含む成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
C08G69/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521558
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020077364
(87)【国際公開番号】W WO2021069277
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】19202721.7
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-エーリッヒ バウマン
(72)【発明者】
【氏名】カトリン サルヴィチェク
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA02
4J001DB04
4J001DC05
4J001EB10
4J001EC08
4J001EC09
4J001EC24
4J001FB03
4J001FC06
4J001HA02
4J001JA01
4J001JA12
4J001JB06
4J001JB27
4J001JB42
(57)【要約】
本発明は、5~15個のC原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族ジアミンおよび6~14個のC原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族または芳香族ジカルボン酸から構成されるサブユニット1をベースとするポリエーテルアミド(PEA)を含む成形材料に関する。さらに該PEAは、エーテル酸素1つあたり少なくとも2.3個のC原子を有し、鎖末端にNH基を有する少なくとも1つのポリエーテルジアミンから構成されるサブユニット2を含む。該成形材料は、官能基を含むゴムを最大で2.5質量%含む。ジアミンおよびジカルボン酸から選択されるサブユニット1の少なくとも1つの成分のC原子の数は少なくとも13であり、サブユニット2の数平均分子量は200~900g/molである。該成形材料から成形品を製造することができ、該成形品は、成形部品、シート、ブラシ、ファイバーまたはフォームであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~15個のC原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族ジアミンおよび6~14個のC原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族または芳香族ジカルボン酸から構成されるサブユニット1と、
エーテル酸素1つあたり少なくとも2.3個のC原子を有し、鎖末端にNH基を有する少なくとも1つのポリエーテルジアミンから構成されるサブユニット2と、
をベースとするポリエーテルアミド(PEA)を含み、
官能基を含むゴムを最大で2.5質量%含み、
ジアミンおよびジカルボン酸から選択される前記サブユニット1の少なくとも1つの成分のC原子の数は少なくとも13であり、前記サブユニット2の数平均分子量は200~900g/molであることを特徴とする、成形材料。
【請求項2】
前記サブユニット2の数平均分子量は、300~700g/molである、請求項1記載の成形材料。
【請求項3】
前記サブユニット1の数平均分子量は、250~4500g/molである、請求項1または2記載の成形材料。
【請求項4】
前記サブユニット1の数平均分子量は、400~2500g/molである、請求項3記載の成形材料。
【請求項5】
前記ポリエーテルジアミンは、ジアミノ化ポリプロピレングリコール、ジアミノ化ポリテトラメチレングリコール、それらのコポリエーテルおよびそれらの混合物から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項6】
ジアミンおよびジカルボン酸のC原子の合計は、19~24個である、請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項7】
前記サブユニット1は、ポリアミド6,13、ポリアミド6,14、およびポリアミド10,14から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項8】
前記ゴムの割合は、最大で0.5質量%、好ましくは最大で0.1質量%である、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項9】
前記ジアミンは、6~10個のC原子を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項10】
前記ジカルボン酸は、12~14個のC原子を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の成形材料から製造された、成形品。
【請求項12】
前記成形品は、成形部品、シート、ブラシ、ファイバーまたはフォームである、請求項11記載の成形品。
【請求項13】
プレス成形、発泡成形、押出成形、共押出成形、ブロー成形、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、共押出サクションブロー成形または射出成形により製造された、請求項11または12記載の成形品。
【請求項14】
繊維複合部品、靴底、スキーまたはスノーボードの上部カバー、媒体導管、眼鏡フレーム、デザイン物品、シール材、身体保護材、断熱材、箔押しハウジング部品としての、請求項11から13までのいずれか1項記載の成形品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルアミド(PEA)を含む成形材料、該成形材料から成形された物品およびその使用に関する。
【0002】
ポリエーテルアミド(PEA)は、(オリゴ)ポリアミド、特に酸変性ポリアミドとアルコールまたはアミノ末端ポリエーテルとの重縮合によって得られるブロックコポリマーである。酸変性ポリアミドは、過剰のカルボン酸末端基を有する。当業者は、ポリアミドブロックをハードセグメント、ポリエーテルブロックをソフトセグメントと呼んでいる。その製造方法は原理的に知られている。独国特許出願公開第2712987号明細書(米国特許第4207410号明細書)には、10~12個のC原子を有するラクタムとジカルボン酸とポリエーテルジオールとから構成されるこのようなポリアミドエラストマーが記載されている。これにより得られる生成物は、低温でも長く持続する可撓性および延性を特徴とするが、適度な層厚の成形部品とした際にすでに曇っているか不透明であり、室温での長期保存時にカビ様の外観を呈する表面被膜が顕著となる。6~20個のC原子を有するジアミンと脂肪族または芳香族ジカルボン酸とポリエーテルジオールとから構成される同様の構造のポリアミドエラストマーが、欧州特許出願公開第0095893号明細書から知られている。その特徴的な特性は、熱形状安定性および可撓性の向上である。成形部品の透光性および被膜形成に関して、当該明細書から情報を得ることはできない。
【0003】
PA11系およびPA12系のPEA成形材料も同様に、不透明で曇った外観や表面被膜の形成によりネガティブな印象を与える。さらに、顕著な被膜と低い透光性とを同時に示すことが確認された。そのため、現在の成形材料は、さほど用途に適していない。
【0004】
米国特許出願公開第2014/134371号明細書には、透明なポリアミドエラストマーが記載されている。これは、特にアルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)メタンおよび/またはアルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)プロパンを含む。しかし、これらの化合物には毒性がある。
【0005】
この点で、本発明の課題は、高透光性で低ヘイズであり、長期間にわたっても被膜の生じない適切な成形材料を提供することであった。また、該成形材料は、アルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)メタンおよび/またはアルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)プロパンよりも毒性が低いことが望ましい。
【0006】
この課題は、5~15個のC原子、好ましくは6~10個のC原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族ジアミンおよび6~14個のC原子、好ましくは12~14個のC原子を有する少なくとも1つの直鎖脂肪族ジカルボン酸から構成されるサブユニット1と、エーテル酸素1つあたり少なくとも2.3個のC原子を有し、鎖末端にNH基を有する少なくとも1つのポリエーテルジアミンから構成されるサブユニット2とをベースとするポリエーテルアミド(PEA)を含む成形材料によって解決することができた。該成形材料は、官能基を含むゴムを、該成形材料の総質量に対して最大で2.5質量%含む。ジアミンおよびジカルボン酸から選択されるサブユニット1の少なくとも1つの成分のC原子の数は少なくとも13であり、サブユニット2の数平均分子量は200~900g/molである。好ましくは、サブユニット2の分子量は、300~700g/molである。サブユニット1は、一般にハードセグメントと呼ばれる部分を形成しており、サブユニット2は、一般にソフトセグメントと呼ばれる部分を形成している。直鎖という用語は、炭素鎖に分岐がないことを意味すると理解される。
【0007】
好ましい実施形態において、サブユニット1の数平均分子量は、250~4500g/mol、特に好ましくは400~2500g/mol、さらに特に好ましくは400~2000g/mol、非常に特に好ましくは500~1600g/molである。これにより、より高い透光性を示すと同時に被膜形成を抑えた材料が得られる。
【0008】
PEAのポリエーテルジアミンは、ジアミノ化ポリプロピレングリコール、ジアミノ化ポリテトラメチレングリコール、それらのコポリエーテルおよびそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0009】
PEAに含まれるジアミンおよびジカルボン酸のC原子の合計は、19~24個である。
【0010】
サブユニット1の適切なポリアミドは、例えば、6,13、6,14、10,14から選択される。
【0011】
本発明による成形材料は、官能基を含むゴムを最大で2.5質量%含む。最大で0.5質量%、好ましくは最大で0.1質量%含まれていることが好ましい。ゴムが含まれていないことが特に好ましい。このようなゴムは、例えば、欧州特許出願公開第1518901号明細書に記載されている。
【0012】
本発明による成形材料は、好ましくは、アルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)メタンおよびアルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)プロパンから選択されるアルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)アルカン誘導体を最大で8mol%含む。この数字は、サブユニット1の直鎖脂肪族ジアミンとアルキル置換ビス(アミノシクロヘキシル)アルカン誘導体の物質量の合計に対するものである。最大で5mol%であることが好ましく、最大で2mol%であることが特に好ましい。非常に特に好ましい実施形態では、ビス(アミノシクロヘキシル)メタンおよびビス(アミノシクロヘキシル)プロパンは、成形材料に含まれていない。
【0013】
本発明は、本発明による成形材料から製造された成形品をさらに提供する。好ましくは、成形品は、成形部品、シート、ブラシ、ファイバーまたはフォームである。成形品は、例えば、プレス成形、発泡成形、押出成形、共押出成形、ブロー成形、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、共押出サクションブロー成形または射出成形により製造することができる。このようなプロセスは、当業者に知られている。
【0014】
本発明は、本発明による成形品の使用をさらに提供し、例えば、本発明による成形品は、繊維複合部品、靴底、スキーまたはスノーボードの上部カバー、媒体導管、眼鏡フレーム、デザイン物品、シール材、身体保護材、断熱材または箔押しハウジング部品として使用することが可能である。
【実施例
【0015】
[ポリエーテルアミド(PEA)の製造]
(PEA製造の全般的手順)
アンカー型スターラーを備えた100Lの2容器式重縮合装置のフィード容器に、ジアミン、ジアミンに対して10質量%の脱イオン水、ジカルボン酸およびポリエーテルジアミン(ELASTAMIN(登録商標)RP405またはRP2005)を60℃未満で連続的に装入する。PPGジアミンがサブユニット2を形成する。ポリエーテルジアミンに対して、プロセス安定剤として0.1%のIRGANOX(登録商標)1098(BASF SE)を添加する。全固形分に対して0.3%の50%次亜リン酸を触媒として添加する。Nによる加圧不活性化を複数回行った後、容器の内容物を180℃~190℃に加熱し、160℃でスターラーのスイッチを入れる。原料を1時間撹拌した後、スパイラル型スターラーおよびトルク検出器を備えた重縮合反応器に移す。2つの容器間の圧力を均等化した後、反応弁を閉じ、25rpmで撹拌しながら内容物を6時間以内に228℃~232℃とした。通常は210℃~215℃の内部温度で自生圧力が21barに達したら、2時間の圧力保持期間を経て、さらに高度に加熱しながら大気圧まで連続的に放圧する。大気圧で3~4時間経過した後、所望の最終トルクに達していない場合には、40~60mbarの最終減圧に達するまで真空引きを5時間以内で行う。この状態で、目的の最終トルクに達するまでさらに撹拌する。溶融物をストランドとして水浴中に排出し、造粒し、タンブル乾燥機で水分含有量が0.1%未満になるまで70℃~90℃で乾燥させる。
【0016】
サブユニット1:サブユニット2の物質量比 100:103
【0017】
以下の表1に、製造したPEAの概要を示す。サブユニット1の分子量は、使用したジカルボン酸とジアミンとの物質量比に起因する。
【0018】
【表1】
【0019】
製造したPEAを、ストランド外観、相対粘度ηrel、および融点Tmに関して試験した(表2参照)。
ストランド外観:目視による観察
粘度:ISO 307
Tm:ISO 11357に準拠したDSCの2回目昇温
【0020】
【表2】
【0021】
[製造したポリエーテルアミドの試験]
(被膜試験)
ポリエーテルアミドから寸法60mm×60mm×2mmの射出成形板を作製し、試験片とした。試験片を密閉容器に入れ,75℃で水蒸気飽和状態にて10日間の試験期間にわたって保管した後、被膜形成を判定した。目視により4段階の評点(0~3、0=被膜なし、3=強度の被膜)で被膜を評価した。
【0022】
(透光性の判定)
前述の試験片の透光性を目視で判断した。ここでは透光性が高い順に以下のように評価した。
【0023】
0=透光性++
1=透光性+
2=透光性0
3=不透明-乳白色、透光性0
4=不透明-乳白色、透光性-
5=乳白色-白色
【0024】
(ヘイズ値の決定)
ヘイズ値は、逆光時の被写体の照度を決定するものである。ここでは、ASTM規格D 1003に準拠し、60×60×2mmの板を用いて、コニカミノルタ社製CM-3600dでヘイズ値を測定する。試料が不透明-乳白色、あるいは乳白色-白色の場合は、通常はヘイズ値を測定しなかった。
【0025】
【表3】
【0026】
PEA6,13のサンプルは、高透光性、低ヘイズ値で、被膜を有しない。
【0027】
【表4】
【0028】
PEA6,14の試験片は、低ヘイズで透明である。これらは、被膜を全く有しないか、被膜をわずかにしか有しない。
【0029】
【表5】
【0030】
PEA10,14のサンプルは、高い透光性を示し、被膜試験に合格している。
【0031】
【表6】
【0032】
2005g/molの高分子量のモノマーを含むサブユニットを有するPEA10,14は、被膜をわずかしか示さないか、被膜を全く示さない。しかし、これらの試験片は乳白色-白色である。
【0033】
【表7】
【0034】
得られたジアミンBを含む成形体は透明であったが、被膜を有していた。また、射出成形の際に脱型の問題があった。さらに、試験ロッドは(長手軸線に沿って)半円形に成形されていた。
【国際調査報告】