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特表2022-551893抗老化活性を有するポリペプチド及びその使用
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  • 特表-抗老化活性を有するポリペプチド及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】抗老化活性を有するポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20221207BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221207BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61P17/00
A61K38/08
A61K9/20
A61K9/08
A61K9/19
A61P43/00 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521564
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2021104283
(87)【国際公開番号】W WO2022022226
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】202010729862.3
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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(71)【出願人】
【識別番号】518325921
【氏名又は名称】南京安吉生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING ANJI BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Level 6,Building A7,Hongfeng Sci-Tech Park,Kechuang Rd,Eco-Tech Development Zone,Nanjing City,Jiangsu Province 210000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】ジャン アルフォンス ジョセフ マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】徐 寒梅
(72)【発明者】
【氏名】王 棟
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA29
4C076AA36
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC09
4C076FF04
4C076GG06
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA23
4C084MA16
4C084MA35
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA311
4C084ZA312
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB221
4C084ZB222
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、C.elegansの寿命を延長可能なポリペプチド及びその使用を開示し、生物医薬の分野に属する。本発明の一連のポリペプチドは、アミノ酸配列XKFAA(Xは任意のアミノ酸であり、好ましくはT/Aである)又はその薬学的に許容される塩を有し、さらに、上記ポリペプチド配列のもとに、1つ又は複数のアミノ酸が削除、置換又は添加された後にも抗老化活性を有する前記ポリペプチド配列におけるポリペプチド、又は該ポリペプチドの薬学的に許容される塩を有する。ポリペプチドは、C.elegansの寿命を延ばし、老化を防止する効果を有すると共に、運動行動能力を強化し、ストレス能力を向上させ、老化プロセスにおける運動能力の低下を改善する効果も有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列XKFAA又はその薬学的に許容される塩を有し、ここで、X=任意の1つ以上のアミノ酸又はアシル基であることを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項2】
Xは、H-Pro-Pro-Thr-Thr-、H-Pro-Thr-Thr-、H-Thr-Thr-、T又はAであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチド配列はそれぞれ、PPTTKFAA、PTTKFAA、TTKFAA、TKFAA又はAKFAAであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドの各アミノ酸はD又はL型であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のポリペプチドの抗老化薬物又はヘルスケア製品の製造における使用。
【請求項6】
ポリペプチドに1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤がさらに添加され、前記賦形剤は、製薬分野における一般的な希釈剤、充填剤、接着剤、湿潤剤、吸収促進剤、界面活性剤、潤滑剤及び安定剤を含むことを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記ポリペプチドは、注射剤、凍結乾燥粉末注射剤、錠剤又は顆粒剤として製造されることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬品の分野に属し、より具体的には、抗老化活性を有するポリペプチド及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
老化とは、生体の性成熟期以降、細胞の自己再生と修復の能力が弱まり、組織器官の構造及び機能が低下し、最終的に死に至る過程をいい、ストレス能力の減退、平衡状態の崩れと疾患罹患リスクの増加により特徴付けられている。世界的な人口高齢化に伴い、様々な老年期変性疾患及びそれに伴う高額な医療費はますます深刻な社会問題になっている。高齢者人口の健康状態維持は、人口高齢化に伴う社会的・経済的負担を軽減するための重要な一環である。よって、簡単で実施しやすく、費用対効果に優れ、安全性が高く、普及に適する老化及び老化関連疾患の介入アプローチ及び方法を模索することが重要である。
【0003】
老化研究の初期では、純粋な老化研究は老化関連疾患と厳密に区別されるべきであると科学者たちが考えていた。老化関連疾患は、一般に、発生率が老化に伴い増加する疾患をいう。従来、老化関連疾患としては、主に心血管疾患、腫瘍、リウマチ、骨粗鬆症、白内障、2型糖尿病、高血圧及びアルツハイマー病等が認められていた。しかし、老化研究の進展に伴い、多くの老化関連疾患の発症と進行は、老化プロセスと相同性を示し、老化プロセス自体こそ、多くの老化関連疾患の基本的なリスク因子であることが発見された。また、社会的責任の観点からも、生物学者は、単なる寿命延長では高齢化による多大な社会経済的負担を軽減することができず、健康寿命の延長こそ現実的な意義があることに気付いた。従って、どのように老化関連疾患を低減し、後期高齢者の生存質を向上させ、健康寿命を延ばすかは、老化研究の焦点となっている。現在、健康寿命は、厳密な判定指標がなく、一般に、老化介入策で寿命を延ばすと共に、生体のストレス能力を向上させ、老化関連疾患の発症と進行を低減し、老化に関連する変性を改善することができれば、健康寿命の延長と言えるとされている。
【0004】
C.elegansは、老化研究の定番なモデル動物として、下記利点を有する。1つ目は、寿命が比較的短いことであり、標準的な実験室条件下では2~3週間のみであり、これにより全生存期間の解析が可能となる。2つ目は、制御された環境条件下で、遺伝子的に同一な動物を大量に容易に取得できることである。3つ目は、虫体が透明であるため、細胞と組織はどのように加齢に伴って変化するかを直接観察しやすいことである。4つ目は、線虫の細胞組織、ニューロン結合及び全ゲノムへの洞察が、抗老化の研究に寄与することである。C.elegansモデルの主な利点の1つは、遺伝的手法によって生物学的情報を得ることが容易である点であり、これにより、寿命を変化させ得る大量の遺伝子変異が特定される。最後に、C.elegansの寿命は著しい可塑性を示し、環境条件、栄養条件及び遺伝子変異に影響され得、制御された条件下でも、寿命に個体差が生じる場合があるため、老化のランダム因子を明らかにすることができる。従って、C.elegansは、薬物の抗老化活性研究のモデル動物とすることができる。
【0005】
現在、抗老化の方法として最も一般的なのは、抗老化薬物の使用である。臨床的に使用される老化遅延薬のほとんどは合成系薬物である。例えば、ビタミンEは、細胞分裂を促進し、酸素ラジカルの生成を抑制することができ、プロカイン製剤は、細胞の寿命を延ばすことができ、ピラセタムは、脳の老化を遅延させることができる。アスピリンは、酸化ストレスに対抗し、老化による生体機能の低下を遅延させることで、線虫の寿命を延ばす。アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性化剤として、メトホルミンも認知障害を改善することができ、老化遅延にも一定の効果がある。また、PAL-12(1つのヘキサペプチド)、レスベラトロール類似体等の薬物の抗老化作用も注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗老化活性を有するポリペプチド及びその使用を提供する。本発明のポリペプチドは、C.elegansの寿命を効果的に延長することができ、抗老化の効果が良好で、大きな開発見通しを有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に採用される技術的解決手段は次のとおりである。
【0008】
アミノ酸配列XKFAA又はその薬学的に許容される塩を有し、X=H-Pro-Pro-Thr-Thr-、H-Pro-Thr-Thr-、H-Thr-Thr-、又は任意のL/D型のアミノ酸、又はアセチル基、プロピオニル基のようなアシル基であることを特徴とする、ポリペプチド。
【0009】
XはT又はAであることを特徴とする、前記ポリペプチド。
【0010】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列はTKFAA(Aceと命名)又はAKFAA(RV1と命名)である。
【0011】
前記ポリペプチドの抗老化及び/又は寿命を延ばす薬物又はヘルスケア製品の製造における使用。
【0012】
前記ポリペプチドは、C.elegansの運動行動能力を強化し、ストレス能力を向上させ、老化プロセスにおける運動能力の低下を改善し、平均寿命を延ばすことができる。
【0013】
必要に応じて、上記薬物には1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに添加してもよく、前記賦形剤は、製薬分野における一般的な希釈剤、充填剤、接着剤、湿潤剤、吸収促進剤、界面活性剤、潤滑剤及び安定剤等を含む。
【0014】
本発明の薬物は、注射剤、凍結乾燥粉末注射剤、錠剤又は顆粒剤等の様々な形態として製造することができる。上記の様々な剤形の薬物は全て、製薬分野における通常の方法に従って製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は次のとおりである。
(1)本発明のポリペプチドは新規な構造を持ち、基本構成単位が全て天然アミノ酸であり、合成、分離および精製が容易である。
(2)C.elegansの寿命を効果的に延長することができ、抗老化活性を有する。
(3)本発明のポリペプチドは安全性が高く、有害作用及び毒性副反応が弱く、C.elegansの成長発育に影響せず、線虫の生殖能力に影響しない。
本発明に係るポリペプチドは、C.elegansモデルにおいて良好な抗老化効果を示し、具体的には、線虫の運動行動能力を有意に向上させ、線虫の老化プロセスにおける運動能力の低下を遅延させ、線虫の半数生存日数を延ばし、線虫のストレス能力を向上させ、線虫の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】C.elegansの寿命に対するポリペプチドの影響実験の生存曲線である。図から分かるように、Ace及びRV1ポリペプチド群は、両方ともC.elegansの寿命を延ばす効果がある。
図2】C.elegansの体長及び体幅に対するポリペプチドの影響結果である。そのうち、図Aは、体長の結果であり、図Bは、体幅の結果である。結果はMean±SEMで示され、空白対照群に対して、n.s.は有意差がないことを示し、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。ポリペプチド群は空白対照群に対して有意差がないことは、ポリペプチドAce及びRV1はC.elegansの正常な成長及び発育に影響せず、該ポリペプチドは高い安全性を有することを示している。
図3】C.elegansの1腹子数に対するポリペプチドの影響結果である。結果はMean±SEMで示され、空白対照群に対して、n.s.は有意差がないことを示し、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。ポリペプチド群は空白対照群に対して有意差がないことは、ポリペプチドAce及びRV1はC.elegansの正常な生殖能力に影響せず、該ポリペプチドは高い安全性を有することを示している。
図4】C.elegansの運動行動能力に対するポリペプチドの影響結果である。そのうち、図Aは、首振りの結果であり、図Bは、胴体曲げの結果であり、図Cは、咽頭ポンピング頻度の結果である。結果はMean±SEMで示され、空白対照群に対して、n.s.は有意差がないことを示し、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。RV4ポリペプチド群は空白対照群に対して有意差があることは、ポリペプチドAce及びRV1は両方ともC.elegansの筋肉運動を強化し、線虫の運動行動能力を向上可能であることを示している。
図5】C.elegansの急性熱ストレス実験の生存曲線である。そのうち、図Aは、Day4での急性熱ストレス実験における線虫の生存曲線であり、図Bは、Day8での急性熱ストレス実験における線虫の生存曲線である。図から分かるように、Ace及びRV1ポリペプチド群は、両方とも線虫の急性熱ストレス能力を有意に向上させることができ、このことから、該ポリペプチド薬物は、線虫の熱環境でのライフサイクルを延長可能であることが示されている。
図6】C.elegansの急性熱ストレス実験における運動能力の評価結果である。そのうち、図Aは、Day4での急性熱ストレス実験における線虫の運動能力の評価結果であり、図Bは、Day8での急性熱ストレス実験における線虫の運動能力の評価結果である。図から分かるように、Ace及びRV1ポリペプチド群のAランクの線虫の割合は空白対照群より高く、このことから、該ポリペプチド薬物はC.elegansの急性熱ストレス能力、即ち熱環境での運動行動能力を強化できることがさらに示されている。
図7】C.elegansの急性酸化ストレス実験の検出結果である。そのうち、図Aは、Day4での急性酸化ストレス実験の検出結果であり、図Bは、Day8での急性酸化ストレス実験の検出結果である。結果はMean±SEMで示され、空白対照群に対して、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。図から分かるように、Ace及びRV1ポリペプチド群の線虫の生存率は空白対照群より有意に高く、このことから、該ポリペプチド薬物は線虫の酸化環境でのライフサイクルを延長できることが示されている。
図8】C.elegansの急性酸化ストレス実験における運動能力の評価結果である。そのうち、図Aは、Day4での急性酸化ストレス実験における線虫の運動能力の評価結果であり、図Bは、Day8での急性酸化ストレス実験における線虫の運動能力の評価結果である。図から分かるように、Day8の時点での急性酸化ストレス実験において、Ace及びRV1ポリペプチド群のAランクの線虫の割合は空白対照群より高く、このことから、該ポリペプチド薬物は、C.elegansの急性酸化ストレス能力を強化できることがさらに示されている。Day4での急性酸化ストレス実験において、ポリペプチド群と空白対照群は、運動能力に差がない。
図9】異なる虫齢のC.elegansの運動能力の評価結果である。そのうち、図Aは、Day4の時点での線虫運動能力の評価結果であり、図Bは、Day8の時点での線虫運動能力の評価結果であり、図Cは、Day12の時点での線虫運動能力の評価結果である。図から分かるように、Day8とDay12の時点で、Ace及びRV1ポリペプチド群は空白対照群に対して、Aランクの線虫の割合が空白対照群より有意に高く、このことから、該ポリペプチドは、C.elegansの筋肉老化を遅延させ、線虫の行動能力を向上させ、さらに線虫の寿命を延ばすことができることが示されている。
図10】異なる虫齢のC.elegansの運動能力の検出結果である。そのうち、図Aは、Day4の時点での線虫運動能力の検出結果であり、図Bは、Day8の時点での線虫運動能力の検出結果であり、図Cは、Day12の時点での線虫運動能力の検出結果である。結果はMean±SEMで示され、空白対照群に対して、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。図から分かるように、Ace及びRV1ポリペプチド群は空白対照群に対して、首振りの回数が空白対照群より有意に高く、Day12の時点での咽頭ポンピング頻度も空白対照群より有意に高く、このことから、該ポリペプチドは、C.elegansの筋肉老化を遅延させ、線虫の運動行動能力を向上させ、線虫行動能力の低下を遅延させ、さらに線虫の寿命を延ばすことができることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。以下の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を他の形態で限定するものではなく、当業者であれば、以下に開示した技術的内容を利用して変更を行って同等に変化する等価実施例を得ることができる。本発明の解決手段の内容から逸脱することなく、本発明の技術的本質に基づいて以下の実施例に対して行われる簡単な修飾又は同等の変化は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0018】
ポリペプチドAce(TKFAA)及びポリペプチドRV1(AKFAA)は、江蘇省合成ポリペプチド薬物発見と評価工程中心により合成され、純度はそれぞれ96.30%、98.22%である。
【0019】
実施例1 C.elegansモデルでの寿命に対するポリペプチドの影響実験
1.実験材料
大腸菌OP50(培養条件:振盪培養器、220rpm、37℃で培養)。
野生型C.elegans(培養条件:恒温恒湿培養器、20℃、湿度45%~55%)。
5-FUDR:15.6μg/ml
NaN:0.4M
:30mM
Ace:TKFAA、10nM
RV1:AKFAA、10nM
WD1:PPTTKFAA、10nM
WD2:PTTKFAA、10nM
WD3:TTKFAA、10 nM
【0020】
2.実験方法
C.elegansの同調化
線虫密度が適度なNGM培養皿を選択し、ピッキングニードルでL4期の幼虫を採取し、空のNGM培養皿に移し、合計で約20匹を採取する。幼虫が成虫に発育して初めて産卵した後、成虫を全て取り除く。約12h後、卵から幼虫が孵化して、同調化したL1期の幼虫を得ることができる。
【0021】
C.elegans寿命実験の前準備
1mlのM9緩衝液でNGM培地を洗浄し、L1期の幼虫が含有される緩衝液をEPチューブに収集し、4℃のクロマトグラフィー装置に5min放置し、1500xg/4℃で3min遠心分離し、上清を廃棄する。100μlの緩衝液で再懸濁させて均一に混合した後、線虫を顕微鏡下で計数し、線虫の濃度を30worms/10μlに希釈する。大腸菌OP50が接種されているNGM培養皿に、10μlの線虫希釈液を添加する。最後に、顕微鏡下で観察して計数し、線虫の数を30匹前後にする。その後、NGM培地を恒温培養器に置いて培養する。
【0022】
C.elegans寿命実験
L1期の線虫がL4期に発育した後、15.6μg/mlの5-FUDRを100μl添加して、C.elegansの産卵を抑制する。線虫が成虫に発育した後、control群と10nM投与群に分けて、投与を開始し、投与開始の日を寿命実験の初日とする。これ以降は毎日投与し、生存、死亡及び不慮死亡の線虫数を毎日観察して記録し、最後の1匹の線虫が死亡するまで、線虫の状態を観察して記録する。死亡判断の基準としては、C.elegansが、強光又はプレート叩きに反応を示さず、高倍率顕微鏡下で咽頭部筋肉の運動がなく、最後に、ピッキングニードルで線虫の頭部を叩き、依然として反応を示さなかった場合、死亡と判断できる。死亡した線虫は培養皿から取り除く必要があり、大腸菌OP50がなくなった時は、遅れずに添加する。データに対してKaplan-Meier統計解析を行い、データ結果はMedian±SEで示され、Control群に対して、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。
【0023】
3.実験結果
(1)C.elegans寿命実験の結果記録
表1 C.elegans残存数の記録結果
【表1】
Aceポリペプチド群は空白対照群に対して、死亡発生日が相対的に遅くなり、線虫の最長寿命は37日であり、空白対照群より9日長い。RV1群は空白対照群に対して、死亡発生日に有意差がなく、線虫の最長寿命は36日であり、空白対照群より8日長い。WD1、WD2及びWD3群も空白対照群に対して死亡発生日に有意差がなく、線虫の最長寿命は31日、32日及び33日であり、空白対照群よりそれぞれ3日、4日及び5日長い。詳細は表1と図1に示される。
【0024】
(2)C.elegansの半数死亡日数
表2 C.elegansの半数死亡日数の検出結果
【表2】
注:上記結果はMedian±SEで示される。Control群に対して、*P<0.05、**P<0.01である。
Ace投与群の半数死亡日数は空白対照群に対して有意差があり、このことから、Aceポリペプチドは、C.elegansの寿命を延ばす効果があり、寿命を4日延ばすことができることが示されている。RV1ポリペプチドの半数死亡日数は空白対照群に対して有意差がないが、その半数死亡日数は空白対照群より2日多い。WD1、WD2及びWD3群の半数死亡日数は空白対照群に対して有意差がないが、それらの半数死亡日数は空白対照群より1日多い。WD1、WD2及びWD3群に比べて、Ace及びRV1ポリペプチド群の効果はより高いため、後続では、Ace及びRV1の2つのポリペプチドを対象に抗老化評価実験を行う。詳細は表2と図1に示され、実験結果は統計的に有意である。
【0025】
実施例2 C.elegansの成長発育に対するポリペプチドの影響実験
1.実験材料
実施例1と同様である。
【0026】
2.実験方法
C.elegansの同調化
実施例1と同様である。
【0027】
C.elegansの成長発育実験
L1期に同調化した幼虫を収集し、大腸菌OP50が接種されているNGM固形培地に載せ、Control群と10nM投与群に分けて、恒温恒湿培養器に置いて72h培養し、線虫成虫時期の体長及び体幅を検出する。検出方法としては、各群からC.elegansをそれぞれ20匹採取し、新しいNGM固形培地に移してから、濃度0.4MのNaNを50μl滴下し、虫体の大部分が硬直になった後、倒立顕微鏡下で撮像して記録し、その後、Photoshopの定規ツールを利用すれば、C.elegansの体長及び体幅を測定することができる。データに対してOne-way ANOVAY統計解析を行い、データ結果はMean±SEMで示され、Control群に対して、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。
【0028】
3.実験結果
表3 C.elegansの体長及び体幅に対するポリペプチドの影響
【表3】
注:上記結果はMean±SEMで示される。Control群に対して、*P<0.05、**P<0.01である。
ポリペプチド群は空白対照群に対して、C.elegansの体長及び体幅は両方とも有意差がなく、このことから、Ace及びRV1ポリペプチドは両方ともC.elegansの正常な成長及び発育に影響せず、該ポリペプチドは高い安全性を有することが示されている。詳細は表3と図2に示され、実験結果は統計的に有意である。
【0029】
実施例3 C.elegansの生殖能力に対するポリペプチドの影響実験
1.実験材料
実施例1と同様である。
【0030】
2.実験方法
C.elegansの同調化
実施例1と同様である。
【0031】
C.elegans生殖能力の検出
同調化したL1期の幼虫を収集し、大腸菌OP50が接種されているNGM固形培地に載せ、Control群と10nM投与群に分けて、恒温恒湿培養器に置いてL4期の幼虫に培養する。各群からそれぞれL4期の幼虫を1匹採取して新しいNGM固形培地に移し、該線虫の産卵期にわたって、毎日線虫を新しい培地に移すようにする。虫卵含有の培地を引き続き培養器において24h培養し、その後、該線虫の産卵が終わるまで、各プレート上の幼虫を計数して加算し、加算したデータは該線虫の子孫の総数である。1群あたり線虫10匹の子孫数を繰り返し記録する。データに対してOne-way ANOVAY統計解析を行い、データ結果はMean±SEMで示され、Control群に対して、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。
【0032】
3.実験結果
表4 C.elegansの1腹子数に対するポリペプチドの影響
【表4】
注:上記結果はMean±SEMで示される。Control群に対して、*P<0.05、**P<0.01である。
ポリペプチド群は空白対照群に対して、C.elegansの子孫総数に有意差がなく、このことから、Ace及びRV1ポリペプチドは、C.elegansの正常な生殖能力に影響せず、該ポリペプチドは高い安全性を有することが示されている。詳細は表4と図3に示され、実験結果は統計的に有意である。
【0033】
実施例4 C.elegansの運動行動能力に対するポリペプチドの影響実験
1.実験材料
実施例1と同様である。
【0034】
2.実験方法
C.elegansの同調化
実施例1と同様である。
【0035】
C.elegans運動行動能力の検出
同調化後のL1期の幼虫を、大腸菌OP50が接種されているNGM固形培地に載せ、Control群と10nM投与群に分けて、恒温恒湿培養器に置いて48h培養する。その後、首振り頻度、胴体曲げ頻度及び咽頭ポンピング運動頻度の3つの運動行動能力指標を検出する。首振り頻度の検出については、1群あたり線虫20匹を採取して新しい清潔な培地に移し、1h順応回復させた後、適量のM9緩衝液を添加し、30s内で線虫の頭部が一側から他側に振れてから元の側に戻る回数を倒立顕微鏡下で観察して記録する。胴体曲げ頻度については、1群あたり線虫20匹を採取して新しい清潔な培地に移し、1h順応回復させた後、30s内における線虫胴体曲げの回数を倒立顕微鏡下で観察記録し、線虫が前へ1波長分の距離這って行くと1回の胴体曲げと記録する。咽頭ポンピング運動頻度については、1群あたり線虫20匹を採取して大腸菌OP50が接種されている培地に移し、1h順応回復させた後、線虫の咽頭ポンピング運動を視認できるように倒立顕微鏡下で拡大し、1匹の線虫あたり30s録画し、その後、PotPlayerで録画を0.3倍速でスロー再生し、線虫の咽頭ポンピング回数を計数する。データに対してOne-way ANOVAY統計解析を行い、データ結果はMean±SEMで示され、Control群に対して、*P<0.05は有意差を示し、**P<0.01は顕著な有意差を示す。
【0036】
3.実験結果
表5 C.elegansの運動行動能力に対するポリペプチドの影響
【表5】
注:上記結果はMean±SEMで示される。Control群に対して、*P<0.05、**P<0.01である。
ポリペプチド群は空白対照群に対して、C.elegansの運動行動能力に有意差がある。このことから、Ace及びRV1ポリペプチドは、両方ともC.elegansの筋肉運動を有意に強化し、線虫の運動行動能力を向上可能であることが示されている。詳細は表5と図4に示され、実験結果は統計的に有意である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】