(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】新規カンナビノイドシンターゼを使用したカンナビゲロール酸からのカンナビノイドの生合成
(51)【国際特許分類】
C12P 7/22 20060101AFI20221207BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221207BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20221207BHJP
C12N 9/04 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
C12P7/22 ZNA
C12N1/19
C12N15/53
C12N9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521602
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 SG2020050583
(87)【国際公開番号】W WO2021071438
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507421865
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゴー,メイベル ダーリーン コー
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ウェン シャン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050DD13
4B050FF01
4B050FF03E
4B050LL01
4B064AC16
4B064AD29
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4B064DA01
4B065AA72X
4B065AA77X
4B065AA80X
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4B065BA02
4B065BB08
4B065CA05
4B065CA10
4B065CA18
4B065CA44
(57)【要約】
カンナビゲロール酸をカンナビノイドシンターゼオルソログと接触させることによりカンナビノイドを生成させるための方法。カンナビノイドシンターゼオルソログは、アサ(Cannabis sativa)以外の生物に由来する。また、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)の組み換え細胞であって、上記カンナビノイドシンターゼオルソログをコードする核酸をそのゲノムに含む、組み換え細胞が開示される。カンナビノイドシンターゼオルソログは、組み換え細胞においてその活性型で発現される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のカンナビノイドを生成させるための方法であって、カンナビゲロール酸(CBGA)を、アサ(Cannabis sativa)以外の生物に由来するカンナビノイドシンターゼオルソログと接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、オレンジ(Citrus sinensis)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニコチアナ・アテヌアータ(Nicotiana attenuata)、ワタ(Gossypium hirsutum)、イネ(インディカ種)(Oryza sativa subsp. indica)、ジャポニカ米(Oryza sativa subsp. japonica)、アラビドプシス・リラータ亜種リラータ(Arabidopsis lyrata subsp. lyrata)、パエニバシラス sp. Aloe-11(Paenibacillus sp. Aloe-11)、ストレプトマイセス・イポモエアエ 91-03(Streptomyces ipomoeae 91-03)、ハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis)、モモ(Prunus persica)、バチルス・サブティリス 168(Bacillus subtilis 168)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ケシ(Papaver somniferum)、またはファイトフトラ・パラシティカ P1569(Phytophthora parasitica P1569)に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、表1および表2に示されるものから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127、または配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127と70%以上の同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生成されるカンナビノイドが、358.5g/mol、374.5g/mol、または330.5g/molの式量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生成されるカンナビノイドが、カンナビエルソン酸およびカンナビエルソインを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生成されるカンナビノイドが、358.5g/molの式量を有するいずれのカンナビノイドも含まず、カンナビノイドシンターゼオルソログが、配列番号67、77、97、もしくは127のアミノ酸配列、または配列番号67、77、97、もしくは127と70%以上の同一性を有する配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)で産生される組み換え酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、表1および2に示されるものから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127、または配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127と70%以上の同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)の組み換え細胞であって、カンナビノイドシンターゼオルソログをコードする核酸をそのゲノムに含み、前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、オレンジ(Citrus sinensis)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニコチアナ・アテヌアータ(Nicotiana attenuata)、ワタ(Gossypium hirsutum)、イネ(インディカ種)(Oryza sativa subsp. indica)、ジャポニカ米(Oryza sativa subsp. japonica)、アラビドプシス・リラータ亜種リラータ(Arabidopsis lyrata subsp. lyrata)、パエニバシラス sp. Aloe-11(Paenibacillus sp. Aloe-11)、ストレプトマイセス・イポモエアエ 91-03(Streptomyces ipomoeae 91-03)、ハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis)、モモ(Prunus persica)、バチルス・サブティリス 168(Bacillus subtilis 168)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ケシ(Papaver somniferum)、またはファイトフトラ・パラシティカ P1569(Phytophthora parasitica P1569)に由来し、前記カンナビノイドシンターゼオルソログが、前記組み換え細胞において活性型で発現される、組み換え細胞。
【請求項12】
前記核酸が、表1および2に示されるものから選択されるカンナビノイドシンターゼオルソログをコードする、請求項11に記載の組み換え細胞。
【請求項13】
前記核酸が、配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127、または配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127と70%以上の同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むカンナビノイドシンターゼオルソログをコードする、請求項12に記載の組み換え細胞。
【請求項14】
前記核酸が、配列番号67、77、97、もしくは127のアミノ酸配列、または配列番号67、77、97、もしくは127と70%以上の同一性を有する配列を含むカンナビノイドシンターゼオルソログをコードする、請求項13に記載の組み換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
カンナビノイドの生合成経路は、徹底的な調査の対象となっている。カンナビノイド生合成経路における様々な酵素のクローニングおよび発現が、いくつかの研究グループにより達成されている。たとえば、Δ1-テトラヒドロカンナビノール酸シンターゼ、すなわちカンナビノイドシンターゼの構造および機能が解明されている。Shoyama et al., J. Mol. Biol. 2012, 423(1):96-105を参照されたい。
【0002】
2つのカンナビノイド、カンナビジオール酸およびΔ9-テトラヒドロカンナビノール酸の生合成は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において異種発現によりアサ(Cannabis sativa)および他の生物からのカンナビノイド生合成経路の酵素を発現することにより、達成されている。たとえば、Luo et al., Nature 2019, 567(7746):123-126およびZirpel et al., J. Biotechnol. 2017, 259:204-212を参照されたい。これらなどの研究は、異種性の系においてカンナビノイド生合成経路を構築することが可能であることを確立している。
【0003】
特異的かつ高い収率でカンナビノイドを合成するためのさらなる酵素および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
カンナビノイドを生成させるための方法が開示される。本方法は、カンナビゲロール酸を、カンナビノイドシンターゼオルソログと接触させるステップを含む。カンナビノイドシンターゼオルソログは、アサ(Cannabis sativa)以外の生物、たとえばオレンジ(Citrus sinensis)、メロン(Cucumis melo)、トウガラシ(Capsicum annuum)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニコチアナ・アテヌアータ(Nicotiana attenuata)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ノカエア・カエルレセンス(Noccaea caerulescens)(Thlaspi caerulescens)、ワタ(Gossypium hirsutum)(Gossypium mexicanum)、イネ(インディカ種)(Oryza sativa subsp. indica)、ジャポニカ米(Oryza sativa subsp. japonica)、アラビドプシス・リラータ亜種リラータ(Arabidopsis lyrata subsp. lyrata)、パエニバシラス sp. Aloe-11(Paenibacillus sp. Aloe-11)、ストレプトマイセス・イポモエアエ 91-03(Streptomyces ipomoeae 91-03)、ハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis)、モモ(Prunus persica)、バチルス・サブティリス 168(Bacillus subtilis 168)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ケシ(Papaver somniferum)、およびファイトフトラ・パラシティカ P1569(Phytophthora parasitica P1569)に由来する。
【0005】
また、それぞれがそれらのゲノムにカンナビノイドシンターゼオルソログをコードする核酸を含むサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)の組み換え細胞であって、カンナビノイドシンターゼオルソログが、先行する段落に列挙された生物のいずれかに由来し、カンナビノイドシンターゼオルソログが、上記組み換え細胞においてその活性型で発現される、組み換え細胞が提供される。
【0006】
1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明および実施例に記載する。他の特性、目的、および利点は、詳述した説明、図面、また添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【0007】
以下の本発明の説明は、添付の図面を表す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、基質としてのカンナビゲロール酸(「CBGA」)から形成され得るカンナビノイド産物を示す。カンナビエルソン酸(「CBEA」)の分子式および式量は、それぞれC
22H
30O
5および374.5である。カンナビエルソイン(脱カルボキシル化CBEA)の分子式および式量は、それぞれC
21H
30O
3および330.5である。示される他の全ての化合物の分子式および式量は、それぞれC
22H
30O
4および358.5である。CBCA=カンナビクロメン酸、CBTA=カンナビシトラン酸(cannabicitranic acid)、CBDA=カンナビジオール酸、THICA=テトラヒドロイソカンナビノール酸、THCA=テトラヒドロカンナビノール酸、およびCBLA=カンナビシクロール酸。
【
図2A】
図2Aは、カンナビノイドシンターゼオルソログの18の反応セットの代表的な全イオンクロマトグラムを示す。各反応セットは、分析のため1.7分を採用した。
【
図2B】
図2Bは、18の反応セットのうちの9つ、すなわちセット1-3、7-9、13-15に加えられたCBGAの存在を示す質量電荷比“(m/z”)=359.5で得たカンナビノイドシンターゼオルソログの18の反応セットの代表的な抽出イオンクロマトグラム(EIC)を示す。
【
図2C】
図2Cは、m/z=357.5を有するカンナビノイドの生成を示した18の反応セットの代表的なEICを示す。
【
図3A】
図3Aは、18のカンナビノイドシンターゼオルソログのグループの全イオンクロマトグラフを示す。各反応セットは、1.7分を採用した。
【
図3B】
図3Bは、18の反応セットのうちの9つ、すなわちセット1-3、7-9、13-15に加えたCBGAの存在を示すm/z=359.5で得たカンナビノイドシンターゼオルソログの18の反応セットの代表的なEICを示す。
【
図3C】
図3Cは、m/z=357.5を有するカンナビノイドの生成を呈した18の反応セットの代表的なEICを示す。
【
図4】
図4は、m/z=357.2071を有するカンナビノイドを生成したカンナビノイドシンターゼオルソログの代表的なクロマトグラムを示す。各反応セットは、分析するために15.70分を採用した。列1、2、および4のクロマトグラムは、CBGAを陽性カンナビノイドシンターゼオルソログとインキュベートした際のピークの存在を示し、このピークは、カンナビノイドシンターゼオルソログの非存在下で行った対照実験(列3)で見出されるピークよりも65倍大きい。
【
図5】
図5は、m/z=373.2020を有するカンナビノイドを生成したカンナビノイドシンターゼオルソログの代表的なクロマトグラムを示す。各反応セットは、分析するために15.70分を採用した。列2~4のクロマトグラムは、CBGAを陽性カンナビノイドシンターゼオルソログとインキュベートした際のピークの存在を示し、このピークは、カンナビノイドシンターゼオルソログの非存在下で行った対照実験(列1)で見出されるピークよりも120倍大きい。
【
図6】
図6は、m/z=329.2122を有するカンナビノイドを生成したカンナビノイドシンターゼオルソログの代表的なクロマトグラムを示す。各反応セットは、分析するために15.70分を採用した。列1、2、および4のクロマトグラムは、CBGAを陽性カンナビノイドシンターゼオルソログとインキュベートした際のピークの存在を示し、このピークは、カンナビノイドシンターゼオルソログの非存在下で行った対照実験(列3)で見出されるピークよりも300倍大きい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
CBGAからのカンナビノイドの生合成を触媒する酵素が開示される。カンナビノイドシンターゼとして以前には知られていないこれら酵素は、アサ(Cannabis sativa)以外の生物に由来する。これら酵素は、その活性型で、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)において組み換え技術により発現され得る。
【0010】
カンナビノイドを生成させるための上記に要約された方法は、CBGAをアサ(Cannabis sativa)に由来しないカンナビノイドシンターゼオルソログと接触させるステップを必要とする。カンナビノイドシンターゼオルソログの供給源は、限定するものではないが、オレンジ(Citrus sinensis)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ニコチアナ・アテヌアータ(Nicotiana attenuate)、ワタ(Gossypium hirsutum)、イネ(インディカ種)(Oryza sativa subsp. indica)、ジャポニカ米(Oryza sativa subsp. japonica)、アラビドプシス・リラータ亜種リラータ(Arabidopsis lyrata subsp. lyrata)、パエニバシラス sp. Aloe-11(Paenibacillus sp. Aloe-11)、ストレプトマイセス・イポモエアエ 91-03(Streptomyces ipomoeae 91-03)、ハクサイ(Brassica rapa subsp. pekinensis)、モモ(Prunus persica)、バチルス・サブティリス 168(Bacillus subtilis 168)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ケシ(Papaver somniferum)、およびファイトフトラ・パラシティカ P1569(Phytophthora parasitica P1569)であり得る。
【0011】
カンナビノイドシンターゼオルソログは、限定するものではないが、以下の表1および2に示されるものであり得る。例示的なカンナビノイドシンターゼオルソログは、配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127のアミノ酸配列、または配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127と70%以上(たとえば70%、75%、80%、85%、90%、95%、および99%)の同一性を有する配列を有し得る。
【0012】
上述の方法は、358.5g/mol、374.5g/mol、または330.5g/molの式量を有するカンナビノイドを生成し得る。特定の方法では、358.5g/mol、374.5g/mol、および330.5g/molの式量を有するカンナビノイドが、それぞれ生成される。
【0013】
別の方法は、カンナビエルソン酸およびカンナビエルソインを生成する。この方法の一例は、カンナビエルソン酸およびカンナビエルソインの両方を含むカンナビノイドを生成するが、この産物は358.5g/molの式量を有するカンナビノイドを全く含まない。この例示的な方法では、カンナビノイドシンターゼオルソログは、配列番号67、77、97、もしくは127のアミノ酸配列、または配列番号67、77、97、もしくは127と70%以上の同一性を有する配列を含む。
【0014】
上述の方法では、カンナビノイドシンターゼオルソログは、組み換え酵素であり得る。組み換え酵素は、たとえばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)で産生され得る。具体的な方法は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)で産生される組み換え酵素を特徴とする。
【0015】
また、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)の組み換え細胞が、カンナビノイドシンターゼオルソログをコードする核酸をそのゲノムに含むことが上述されている。このオルソログは、アサ(Cannabis sativa)以外の生物に由来する。カンナビノイドシンターゼオルソログの例示的な供給源は、上記に列挙されており、以下の表1および2に示されている。
【0016】
組み換え細胞は、配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127、または、配列番号7、16、23、31、37、47、57、67、77、87、97、107、117、および127と70%以上(たとえば70%、75%、80%、85%、90%、95%、および99%)の同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むカンナビノイドシンターゼオルソログをコードする核酸を含み得る。
【0017】
さらに詳述することなく、当業者は、本明細書中の開示に基づき、本開示を完全な度合いまで利用できることが考えられる。よって以下の具体的な実施例は、単なる説明と解釈すべきであり、いかなる方法であっても本開示の残りを限定すべきではない。本明細書中記載される全ての刊行物は、その全体が参照により組み込まれている。
【0018】
実施例
実施例1:見込みのあるカンナビノイドシンターゼの同定および調製
その配列に基づき、THCAシンターゼは、ベルベリン架橋FAD依存性酵素として分類され得る。利用可能な配列データベースの検索を通して、ベルベリン架橋FAD依存性酵素としてUniProtデータベースにて注記されている232の関連する遺伝子を同定した。言い換えると、232の遺伝子は、見込みのあるカンナビノイドシンターゼオルソログであった。
【0019】
各遺伝子配列を、S.cerevisiaeタンパク質発現に関してコドン最適化し、合成し、pYES2-CTベクター(Thermo Fisher)にクローニングした。これらベクターを、化学的な処置を使用してS.cerevisiae BY4741細胞に別々に形質転換し、SC-URAグルコース選択プレート上にて30℃で2日間増殖させた。各プレート由来の3つの単一のコロニーを採取し、SC-URAグルコース選択プレート上にて複製し、30℃で2日間インキュベートした。複製したコロニーを、10mLのSC-URAグルコース培地において30℃で16時間増殖させた。次に、細胞を回収し、5mLのSC-URAガラクトース培地に再懸濁し、タンパク質発現のため30℃で16時間増殖させた。16時間後に、細胞を再度回収し、-20℃で保存した。また、カンナビノイドシンターゼオルソログを全く担持しない細胞を、上述のように調製して陰性対照として扱った。
【0020】
細胞を、1mMのMgCl2および5ユニットのリチカーゼを伴う100mMのクエン酸塩バッファー(pH5.5)400μLに再懸濁した。細胞を、振とうさせながら37℃で1時間インキュベートした。1グラムのガラスのビーズを懸濁液に添加し、細胞を、MP Biomedical FastPrep 24 Tissue Homogenizerを使用して、ひびを入れて開けた。細胞片を14,800rpm、4℃で30分間遠心分離することにより除去した。
【0021】
実施例2:酵素によるアッセイ
見込みのあるカンナビノイドシンターゼオルソログを、以下のように酵素活性について試験した。55μLの反応容量で、1mg/LのCBGA2.5μL、20mMのFAD2.5μL、および上記のように調製した酵母細胞の上清50μLを組み合わせ、大気条件下でインキュベートした。またCBGAを欠いた対応する対照反応も行った。24時間後に、反応物を酢酸エチルで3回抽出した。抽出した物質のサンプルを真空乾燥させ、ネガティブイオンモードを使用した質量分析のため、アセトニトリルに再溶解した。各サンプルの、m/z=357.5およびm/z=373.5でのEICを作製し、カンナビノイドの生合成がこれらオルソログにより触媒されたかどうかを決定した。見込みのある反応産物を
図1に示す。
【0022】
それぞれの見込みのあるカンナビノイドシンターゼオルソログで、3つの単一の酵母コロニーを採取し、上述のように増殖させた。各コロニーから調製した細胞上清を、6つの部分に分けた。このうち3つの部分を、CBGAとインキュベートし、残りの3つの部分を陰性対照反応としてCBGAとインキュベートしなかった。まとめると、それぞれの見込みのあるオルソログにおいて、9つの反応をCBGAの存在下で行い、9つの反応物をCBGAとインキュベートしなかった。
【0023】
CBGAとインキュベートしたサンプルは、抽出した物質がm/z=357.5および/またはm/z=373.5で少なくとも800,000の存在量を有するEICのクロマトグラフのピーク領域を有した場合、カンナビノイド合成で陽性とみなした。見込みのあるカンナビノイドシンターゼオルソログは、合計9つのCBGAとの反応物のうちの7つが上記の基準を使用して陽性であった場合に、陽性とみなした。これら結果を、以下の表1、ならびに
図2A~2Cおよび
図3A~3Cに示す。
【0024】
図2A~2Cおよび3A~3Cは、Rapid-Fire/Triple Quad質量分析の代表的なクロマトグラムである。
図2Cは、m/z 357.5でピークの存在を示す代表的なクロマトグラムを示す。
図3Cは、m/z 373.5でピークの存在を比較する代表的なクロマトグラムを示す。
【0025】
【0026】
試験した72のカンナビノイドシンターゼオルソログのうち、20が、C22H30O4(MW=358.5;m/z 357.5)の分子式を有するカンナビノイドの生成を示し、16のオルソログが、C22H30O4(MW=374.5;m/z 373.5)の分子式を有するカンナビノイドの生成を示した。5つのオルソログが、両種類のカンナビノイドの生成を示した。上記の表1を参照されたい。
【0027】
実施例3:ピキア・パストリス(Pichia pastoris)におけるカンナビノイドシンターゼオルソログの発現
基質としてCBGAを使用するカンナビノイドシンターゼの活性を示したオルソログをコードする遺伝子を、より大規模なタンパク質発現のためP.pastoris発現系にクローニングした。P.pastorisにおけるTHCAシンターゼの発現は、以前に示されていた。たとえばZirpel et al., Biotechnology Lett. 2015, 37(9):1869-1875およびLange et al., J. Biotechnol. 2015, 211:68-76を参照されたい。
【0028】
これら遺伝子を、pPICZAプラスミド(Invitrogen)にクローニングし、その後標準的な技術を使用してP.pastorisのゲノムに組み込んだ。得られたP.pastoris組み込み体を、アガープレートから植菌し、バッフル付きフラスコにおいて、20mLの緩衝化複合グリセロール培地で、30℃で48時間、190rpmで振とうしながらインキュベートした。細胞を、遠心分離により回収し、0.5(w/v)%のカザミノ酸および0.01(w/v)%のリボフラビンを含む200mLの緩衝化メタノール複合培地に再懸濁した。オルソログタンパク質の発現を、合計120時間の間24時間ごとに1%のメタノールを添加することにより誘導した。
【0029】
細胞を、遠心分離により回収し、バッファーA(100mMのTris、pH8.0および150mMのNaCl)に再懸濁した。細胞を、M110P Microfluidizer(登録商標)(Microfluidics International Corp.)を使用して溶解した。細胞片を遠心分離により除去し、細胞のライセートを、5mLのStrepTrap(商標)HPカラム(Cytiva Life Sciences)上に、流速1mL/分で充填した。カラムを25mL、すなわち5カラム容量(「CV」)のバッファーAで洗浄し、6CVのバッファーB(100mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、および2.5mMのデスチオビオチン)で溶出した。280nmでの吸光度の増大により同定したタンパク質を含むフラクションを集め、濃縮し、-80℃で凍結した。
【0030】
50μLの反応容量で、精製したカンナビノイドシンターゼを、150μMのCBGAおよび0.2mMのFADを含む50mMのクエン酸塩(pH8.0)とインキュベートした。反応物を、30℃で24~48時間インキュベートし、次に160μLのアセトニトリルを添加して反応を停止させ、タンパク質を沈殿させた。この混合物(120μL)を、ネガティブイオンモードのAgilent 6550 iFunnel Q-TOF高分解能質量分析計と組み合わせたAgilent 1290 Infinity HPLCを使用する質量分析のため、Agilent InfinityLab Poroshell 120 EC-C18カラムに注入した。各サンプルに関するm/z=357.2071、m/z=373.2020、およびm/z=329.2122でのEICを作製し、見込みのあるカンナビノイドの生合成がオルソログにより触媒されるかどうかを決定した。
【0031】
【0032】
【0033】
スクリーニングした232の見込みのあるCBSオルソログのうち、7つのオルソログが、2種類のカンナビノイド、(i)C
22H
30O
4の分子式を有する「カンナビジオール酸基」型(FW=358.5;m/z=357.2071、
図4参照)、および(ii)C
22H
30O
4の分子式を有するカンナビエルソン酸(FW=374.5;m/z=373.2020、
図5参照)の生成を示した。カンナビエルソン酸の脱カルボキシル化産物、すなわちC
21H
30O
2の分子式を有するカンナビエルソイン(FW=330.5;m/z=329.2122、
図6参照)もまた観察された。3つのオルソログが、カンナビジオール酸基のカンナビノイドのみを生成した。4つのオルソログが、カンナビエルソン酸およびカンナビエルソインのみを生成した。
【0034】
他の実施形態
本明細書に開示される全ての特性は、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。本明細書で開示される各特性は、同じ、同等、または同様の目的に役立つ別の特性と置き換わり得る。よって、他の意味が明示されない限り、開示される各特性は、均等物または同様の特性の一般的なシリーズの単なる一例である。
【0035】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に解明でき、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適合するように本発明の様々な変更および修正を行うことができる。よって、他の実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】