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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】改良されたポリエステル
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20221207BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20221207BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08G18/08
C08G18/66 048
C08G18/76 057
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521695
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 US2020054755
(87)【国際公開番号】W WO2021072054
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/912,716
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIPLOC
(71)【出願人】
【識別番号】519393129
【氏名又は名称】デュポン ポリマーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドワード マクスウェル デ ブラント スミス
(72)【発明者】
【氏名】ピージュシュ デワンジー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ギルバート ガード
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC12
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA01
4J034PA03
4J034QB04
4J034QB14
4J034QB15
4J034QD01
4J034QD04
(57)【要約】
本発明は、架橋ポリエステルの成形された物品の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)少なくとも1種のポリエステルと、1~10重量%の、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、0.5~10重量%の、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの溶融ブレンドを形成する工程であって、前記重量パーセントは前記ポリエステルの重量基準である、工程;
(2)前記溶融ブレンドを形成し、それを固化させて固化した架橋ポリエステルにする工程;
(3)前記固化した架橋ポリエステルを再溶融する工程;及び
(4)架橋ポリエステル物品を形成する工程;
を含む、架橋ポリエステル物品の製造方法。
【請求項2】
前記ジイソシアネートが前記ジアミンに対してモル過剰で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリエステルが、少なくとも1種のジオールと少なくとも1種の二酸とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリエステルが以下のモノマー:
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びこれらの混合物から選択されるジオール;
テレフタル酸、イソテレフタル酸、及びこれらの混合物から選択される二酸;
を含む、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリエステルが、PET、PPT、PBT、及びこれらのブレンドから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジイソシアネートが300℃を超える沸点を有するものから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、並びにこれらの何れかの混合物及びポリマーから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ジイソシアネートがMDIである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアミンが、メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス-(O-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(「MCDEA」)、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアミンがMCDEAである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ジイソシアネートが、前記少なくとも1種のポリエステルに対して1~10重量%、より好ましくは2~8重量%、より特に好ましくは3~6重量%、最も好ましくは5重量%で使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジアミンが、前記少なくとも1種のポリエステルに対して0.5~10重量%、より好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2.5重量%で使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
共に前記少なくとも1種のポリエステルに対して、前記ジイソシアネートが5重量%で使用され、前記ジアミンが2.5重量%で使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(2)において、前記溶融ブレンドがストランドとして押し出され、続いて前記固化された架橋ポリエステルがペレットの形態になるように前記ストランドが切断される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ペレットが、
(1)3~4mmの直径、2~3mmの厚さ;又は
(2)3~4mmの直径、4~5mmの長さ;
の寸法を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(2)の後且つ工程(3)の前に、前記固化した架橋ポリエステルを粉砕して又は削ってフレーク、粉末、又は顆粒を形成することからなる追加の工程(2’)を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリエステルの重量を基準として、前記ジイソシアネートが5重量%のMDIであり、前記ジアミンが2.5重量%のMCDEAである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(1)において、前記溶融ブレンドが、前記少なくとも1種のポリエステルの融点よりも5~70℃高い温度で少なくとも30秒間維持される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種のポリエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとを溶融ブレンドすることにより得られる、押出形態の架橋ポリエステル。
【請求項20】
ペレットの形態である、請求項19に記載の架橋ポリエステル。
【請求項21】
前記ペレットが、
(1)3~4mmの直径、2~3mmの厚さ;又は
(2)3~4mmの直径、4~5mmの長さ;
の寸法を有する、請求項20に記載の架橋ポリエステル。
【請求項22】
少なくとも1種のポリエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとを溶融ブレンドすることにより得られる、顆粒、粉末、又はフレークの形態の架橋ポリエステル。
【請求項23】
(1)少なくとも1種のコポリエーテルエステルと、1~10重量%の、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、0.5~10重量%の、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの溶融ブレンドを形成する工程であって、前記重量パーセントは前記コポリエーテルエステルの重量基準である、工程;
(2)前記溶融ブレンドを形成し、それを固化させて固化した架橋コポリエーテルエステルにする工程;
(3)前記固化した架橋コポリエーテルエステルを再溶融する工程;及び
(4)架橋コポリエーテルエステル物品を形成する工程;
を含む、架橋コポリエーテルエステル物品の製造方法。
【請求項24】
前記ジイソシアネートが前記ジアミンに対してモル過剰で使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コポリエーテルエステルが、以下のモノマー:少なくとも1種のジオール、少なくとも1種の二酸、及び少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール;を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記コポリエーテルエステルが、500~4,000Da、より好ましくは700~3,000Da、特に好ましくは1,000~2,000Daの分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記コポリエーテルエステルが、以下のモノマー:ブタンジオール、テレフタル酸、及びPTMEG;を含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ジイソシアネートが300℃を超える沸点を有するものから選択される、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、並びにこれらの何れかの混合物及びポリマーから選択される、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ジイソシアネートがMDIである、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ジアミンが、メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス-(O-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(「MCDEA」)、及びこれらの混合物から選択される、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ジアミンがMCDEAである、請求項23~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ジイソシアネートが、前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルに対して1~10重量%、より好ましくは2~8重量%、より特に好ましくは3~6重量%、最も好ましくは5重量%で使用される、請求項23~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ジアミンが、前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルに対して0.5~10重量%、より好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2.5重量%で使用される、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
共に前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルに対して、前記ジイソシアネートが5重量%で使用され、前記ジアミンが2.5重量%で使用される、請求項23~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記コポリエーテルエステルが28重量%未満のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有し、前記ジイソシアネート(好ましくはMDI)が、前記コポリエーテルエステルの重量を基準として1~5重量%、より好ましくは2~4重量%、特に好ましくは3.25重量%で使用される、請求項23~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記コポリエーテルエステルが28重量%未満のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有し、前記ジアミン(好ましくはMCDEA)が、前記コポリエーテルエステルの重量を基準として0.5~4重量%、より好ましくは1~3重量%、特に好ましくは2重量%で使用される、請求項23~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記コポリエーテルエステルが28重量%以上のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有し、前記ジイソシアネート(好ましくはMDI)が、前記コポリエーテルエステルの重量を基準として1~7重量%、より好ましくは2~6重量%、特に好ましくは5重量%で使用される、請求項23~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ジアミン(好ましくはMCDEA)が、前記コポリエーテルエステルの重量を基準として0.5~4重量%、より好ましくは1~3重量%、特に好ましくは2.5重量%で使用される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程(2)において、前記溶融ブレンドがストランドとして押し出され、続いて前記固化された架橋コポリエーテルエステルがペレットの形態になるように前記ストランドが切断される、請求項23~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ペレットが、
(1)3~4mmの直径、2~3mmの厚さ;又は
(2)3~4mmの直径、4~5mmの長さ;
の寸法を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
工程(2)の後且つ工程(3)の前に、前記固化した架橋コポリエーテルエステルを粉砕して又は削ってフレーク、粉末、又は顆粒を形成することからなる追加の工程(2”)を含む、請求項23~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ジイソシアネートが5重量%のMDIであり、前記ジアミンが2.5重量%のMCDEAである、請求項23~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
工程(1)において、前記溶融ブレンドが、前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルの融点よりも5~70℃高い温度で少なくとも30秒間維持される、請求項23~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1種のコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとを溶融ブレンドすることにより得られる、押出形態の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項46】
前記コポリエーテルエステルが、以下のモノマー:少なくとも1種のジオール、少なくとも1種の二酸、及び少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール;を含む、請求項45に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項47】
前記コポリエーテルエステルが、500~4,000Da、より好ましくは700~3,000Da、特に好ましくは1,000~2,000Daの分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項45又は46に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項48】
前記コポリエーテルエステルが、以下のモノマー:ブタンジオール、テレフタル酸、及びPTMEG;を含む、請求項45、46、又は47に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項49】
前記ジイソシアネートが300℃を超える沸点を有するものから選択される、請求項45~49のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項50】
前記ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、並びにこれらの何れかの混合物及びポリマーから選択される、請求項45~49のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項51】
前記ジイソシアネートがMDIである、請求項45~50のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項52】
前記ジアミンが、メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス-(O-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(「MCDEA」)、及びこれらの混合物から選択される、請求項45~51のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項53】
前記ジアミンがMCDEAである、請求項45~52のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項54】
前記ジイソシアネートが、前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルに対して1~10重量%、より好ましくは2~8重量%、より特に好ましくは3~6重量%、最も好ましくは5重量%で使用される、請求項45~53のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項55】
前記ジアミンが、前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルに対して0.5~10重量%、より好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2.5重量%で使用される、請求項45~54のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項56】
共に前記少なくとも1種のコポリエーテルエステルに対して、前記ジイソシアネートが5重量%で使用され、前記ジアミンが2.5重量%で使用される、請求項45~55のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項57】
ペレットの形態である、請求項45~56のいずれか一項に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項58】
前記ペレットが、
(1)3~4mmの直径、2~3mmの厚さ;又は
(2)2~3mmの直径、4~5mmの長さ;
の寸法を有する、請求項57に記載の架橋コポリエーテルエステル。
【請求項59】
少なくとも1種のコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとを溶融ブレンドすることにより得られる、顆粒、粉末、又はフレークの形態の架橋コポリエーテルエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの特許、特許出願及び刊行物が、本発明が属する技術分野の先行技術をより十分に説明するために本説明で引用される。これらの特許、特許出願及び刊行物のそれぞれの全体開示は、本明細書に参照により援用される。
【0003】
ポリエステルは、ジオール部位と二酸部位とを反応させることによって製造されるポリマーの一群である。それらは、パッケージング及び高性能ポリマーの分野で広く使用されている。
【0004】
反発性及び弾性を必要とする用途で広く使用されているポリエステルの一群は、コポリエーテルエステルである。コポリエーテルエステルは、ポリエステルブロックを含むハードセグメントと長鎖ジオールを含むソフトセグメントとを有するエラストマーポリエステルの一群である。それらは、反発性及び弾性が要求される用途で広く使用されている。
【0005】
典型的なコポリエーテルエステルは、1つ以上の二酸部位を短鎖ジオール及び長鎖ポリ(アルキレンオキシド)ジオールと反応させることによって製造される。
【0006】
コポリエーテルエステルは、優れた弾性、低温における機械的特性の維持、及び優れた疲労性能を示す。しかしながら、これらは、典型的には、有機溶剤、高い及び低いpH、水の悪影響を受け、従来の熱硬化性エラストマーと比較して、中程度の耐摩耗性、耐切断性、高温高負荷下でのクリープ、及び不十分な圧縮永久歪みを示す。
【0007】
Tavaresらは、米国特許出願公開第2014/0046002号明細書の中で、これらの欠点のいくつかに対処する架橋コポリエステルの形成方法を記載している。この方法は、熱可塑性コポリエステルと、モノメリックジイソシアネートと、4,4’-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)及びジエチル2,4-トルエン-ジアミンなどの2種のジアミンの混合物とを溶融物中で混合することを含む。その後、溶融混合物はモールドキャビティの中に射出成形され、架橋されたコポリエステル物品を形成する。これらの物品は、長時間の引張又は圧縮負荷を受けたときの変形に対する耐性が改善されたとされている。架橋された材料の特性は優れているものの、この方法は、物品の製造業者(すなわち押出成形及び射出成形を行う者)がジイソシアネートを保管し、それを用いて作業しなければならないという欠点を有している。押出成形及び射出成形を行う業者は、典型的には、湿気に敏感で呼吸器系の危険性があるジイソシアネートを扱うための設備を有していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、
(1)少なくとも1種のポリエステルと、1~10重量%の、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、0.5~10重量%の、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの溶融ブレンドを形成する工程(重量パーセントはポリエステルの重量基準である);
(2)溶融ブレンドを形成し、それを固化させて固化した架橋ポリエステルにする工程;
(3)固化した架橋ポリエステルを再溶融する工程;及び
(4)架橋ポリエステル物品を形成する工程;
を含む、架橋ポリエステル物品の製造方法を提供する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、少なくとも1種のポリエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート(好ましくはポリエステルの重量を基準として1~10重量%)と、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミン(好ましくはポリエステルの重量を基準として0.5~10重量%)との反応により得られる、押出形態の、好ましくはペレット形態の架橋ポリエステルを提供する。
【0010】
第3の態様では、本発明は、少なくとも1種のポリエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート(好ましくはポリエステルの重量を基準として1~10重量%)と、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミン(好ましくはポリエステルの重量を基準として0.5~10重量%)との反応により得られる、顆粒又はフレークの形態の架橋ポリエステルを提供する。
【0011】
第4の態様では、本発明は、
(1)少なくとも1種のコポリエーテルエステルと、1~10重量%の、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、0.5~10重量%の、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの溶融ブレンドを形成する工程(重量パーセントはコポリエーテルエステルの重量基準である);
(2)溶融ブレンドを形成し、それを固化させて固化した架橋コポリエーテルエステルにする工程;
(3)固化した架橋コポリエーテルエステルを再溶融する工程;及び
(4)架橋コポリエーテルエステル物品を形成する工程;
を含む、架橋コポリエーテルエステル物品の製造方法を提供する。
【0012】
第5の態様では、本発明は、少なくとも1種のコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート(好ましくはポリエステルの重量を基準として1~10重量%)と、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミン(好ましくはポリエステルの重量を基準として0.5~10重量%)との反応により得られる、押出形態の、好ましくはペレット形態の架橋コポリエーテルエステルを提供する。
【0013】
第6の態様では、本発明は、少なくとも1種のコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート(好ましくはポリエステルの重量を基準として1~10重量%)と、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミン(好ましくはポリエステルの重量を基準として0.5~10重量%)との反応により得られる、顆粒又はフレークの形態の架橋コポリエーテルエステルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義及び略称
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
MCDEA:4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)
PBT:ポリ(ブチレンテレフタレート)
PET:ポリ(エチレンテレフタレート)
PPT:ポリ(プロピレンテレフタレート)
PTMEG:ポリテトラメチレンエーテルグリコール
コポリエーテルエステル又はTPE:少なくとも1種のジオールと、少なくとも1種の二酸と、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオールとの反応から得られる熱可塑性エラストマー
単純ポリエステル:少なくとも1種のC2~C10ジオールと、少なくとも一種の二酸とから製造され、感知できるほどの量のポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含まないポリエステル
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルが、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとで架橋された場合に、この材料が架橋の利点を示すが、架橋が溶融温度で可逆的であること、すなわち得られた架橋生成物を再溶融して熱可塑性材料のようにさらに加工できることを見出した。再び固化させると、架橋された材料の望ましい特性が回復する。これは驚くべきことであり、架橋された材料では完全に予想外である。
【0016】
特性/利点の大幅な特性の改善は、典型的には架橋により生じる(米国特許出願公開第2014/0046002号明細書においてTavaresらによって例示されている通り)。しかしながら、典型的な架橋した材料は、その最終製品が使用の終了時に、又は粉砕再生材料又はスクラップとしてすぐに、リサイクル可能ではないという欠点を抱えている。
【0017】
前述したように、Tavaresらは、TPEをMDI及びMCDEAと溶融ブレンドし、直接射出成形する方法について述べている。これは、架橋された物品が溶融物から直接成形されることから、直接プロセスと呼ばれる。パーツが射出成形又は押出成形されるのに伴い、架橋が生じる。その結果、1,1,2,2-テトラクロロエタンなどの有機溶媒中に不溶になるなど、架橋した材料の特性を示す架橋コポリエーテルエステルが得られる。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、これらの架橋ポリエステル、特にTPEに対して熱可塑性溶融加工工程を行うことが可能であることを見出した。架橋された材料を再溶融し、さらに加工して架橋された物品を得るこのプロセスは、間接法と呼ばれる。本出願との関係において、「間接的」、「間接法」、及び「間接プロセス」という表現は、本発明の方法を指す。
【0019】
直接プロセスによって形成されたパーツを粉砕することによって、又は従来の溶融混錬工程でポリエステル、特にTPEとジイソシアネート及びジアミンとの反応を行い、例えば一軸又は二軸押出プロセスを使用してペレットを製造することによって、容易に再加工できる形態でジイソシアネート及びジアミンによって変性されたポリエステル、特にTPEを単離することが可能である。
【0020】
反応した生成物の再加工は、再溶融とそれに続く射出成形、押出成形、又はブロー成形などの従来の溶融加工技術を使用して行うことができる。この間接プロセスを使用して製造された物品の特性は、直接プロセスから製造されたものと本質的に区別できないことが示されている。
【0021】
架橋の可逆的な性質は、架橋された材料を何度もリサイクルできることを意味するだけでなく、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルが、熱可塑性材料のように、ポリマーの製造現場で架橋され、顆粒、ペレット、フレーク、又は他の輸送可能及び保管可能な形態に押し出され、押出業者及び射出成形業者によって使用されることができることを意味する。これは、湿気に敏感なジイソシアネートを射出成形業者が扱ったり保管したりする必要がないという実質的な利点を有している。制御が不十分な架橋製品や有毒な副生成物への潜在的な曝露をもたらし得る保管中又は成形工場でのジイソシアネートの湿気への曝露のリスクとは対照的に、湿気に敏感なジイソシアネートの取り扱いを、そのような材料の取り扱いに最適化された樹脂製造業者の施設で行うことができる。加えて、イソシアネートは、粒子状物質、蒸気、又はエアロゾルのいずれの形態であっても、呼吸器への危険が存在することが知られている。本発明の方法を使用することは、これらの材料を、あまり専門ではない、設備の整っていない下流の加工業者にこの責任を押し付けるのではなく、適切な工学的制御(局所換気、適切なオペレーター監視、及び保護装置)を使用する樹脂製造業者が取り扱うことができることを意味する。ジイソシアネート及びジアミンは既に顆粒、ペレット、又はフレークで存在し、実際にポリマー主鎖と反応するため、水分への曝露による変動は本質的に排除され、樹脂を取り扱う者の危険性も本質的に排除される。
【0022】
本発明の方法は、パーツの製造業者が粉末及びペレットをブレンドし、それらを成形機の中に正確に計り入れる必要性も排除する。精度に問題があると、架橋された物品にばらつきのある予測できない特性が生じる可能性がある。
【0023】
本発明の方法は、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルと、ジイソシアネート及びジアミンとの最初の溶融処理を、混合及び反応副生成物の真空ストリッピングのために最適化された装置内で行うことができ、それによって、パーツ製造業者は、反応ガスが射出成形モールドの中に閉じ込められた場合に生じ得る空隙率の増加の懸念なしに、予め反応した製品を用いて作業することができることを意味する。
【0024】
第2の態様では、本発明は、本発明の方法の工程(2)又は工程(4)により得られる、押し出された形態の架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを提供する。好ましい実施形態では、押し出された形態はペレットである。ペレットは2つの主な方法により製造される:
1. ポリマー混合物は、ストランドの形態でダイから直接水中に押し出され、ブレードによって比較的迅速に切断される。この方法では、ストランドはその粘度及び切断速度に応じて部分的に変形する。その結果、レンズ形状のペレットが形成される。これらは、典型的には、2~6mm、好ましくは3~4mmの直径、及び1~5mm、好ましくは2~3mmの厚さを有する。好ましい実施形態では、ペレットは、3~4mmの直径及び2~3mmの厚さを有する。
2. ポリマー混合物は、ペレタイザーで切断する前に完全に固化するように、水浴中で冷却されたストランドの形態でダイを通して押し出される。その結果、短いストランドが得られる。これらは、典型的には、2~6mm、好ましくは3~4mmの直径、及び3~7mm、好ましくは4~5mmの長さを有する。好ましい実施形態では、ペレットは、3~4mmの直径及び4~5mmの長さを有する。
【0025】
好ましい実施形態では、ペレットは以下の寸法:
1. 2~6mm、好ましくは3~4mmの直径、及び1~5mm、好ましくは2~3mmの厚さ。特に好ましくは、ペレットは、3~4mmの直径及び2~3mmの厚さを有する。
2. 2~6mm、好ましくは3~4mmの直径、及び3~7mm、好ましくは4~5mmの長さ。特に好ましくは、ペレットは、3~4mmの直径及び4~5mmの長さを有する。
【0026】
架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルのペレットは、保管及び輸送に便利な形態であり、射出成形や押出成形などによって、必要に応じて再溶融及び成形されて成形された物品を形成することができる。
【0027】
第3の態様では、本発明は、本発明の方法の工程(2)又は工程(4)により得られる、顆粒、粉末、又はフレークの形態の架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを提供する。少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネートと、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとを溶融ブレンドした後、架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを粉砕する又は削ることで顆粒、粉末、又はフレークが得られる。
【0028】
本発明の方法で使用することができるポリエステル又は架橋ポリマーは、少なくとも1種のジオールを少なくとも1種の二酸と反応させることにより得られる任意のポリマーである。「二酸」という表現は、エステル及び二酸部位の活性化形態、例えばアシルジハライド又はジエステル(例えばジメチルエステル)を指すことが理解される。例えば、テレフタレート、テレフタル酸への言及には、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のエステル、及びテレフタロイルジクロリドなどのテレフタロイルジハライドが含まれる。
【0029】
単純ポリエステルについては、好ましいジオールはC2~C6ジオールから選択され、特に好ましいジオールは、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、及びそれらの混合物から選択される。
【0030】
単純ポリエステルについては、好ましい二酸は、芳香族二酸、特に好ましくはテレフタレート、イソフタレート、及びそれらの混合物から選択される。特に好ましいものはテレフタレートである。
【0031】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のポリエステルは、二酸としてのテレフタル酸と、ジオールとしてのエチレン、プロピレン、若しくはブチレングリコール、又はこれらの混合物とから製造されたものから選択される。さらに特に好ましくは、ポリエステルは、PPT、PBT、及びPETから選択される。
【0032】
本発明の方法又は架橋ポリマーで使用することができるコポリエーテルエステルは、少なくとも1種のジオールと、少なくとも1種の二酸と、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオールとを反応させることにより得られる任意のコポリエーテルエステルである。「二酸」という表現は、ポリエステルに関して上で詳細に説明したように、二酸部位のエステル形態及び活性化形態を指すことが理解される。
【0033】
好ましいジオールは、C2~C6ジオールから選択され、特に好ましいジオールは、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、及びそれらの混合物から選択される。
【0034】
好ましい二酸は、芳香族二酸、特に好ましくはテレフタレート、イソフタレート、及びそれらの混合物から選択される。特に好ましいものはテレフタレートである。
【0035】
好ましいポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、ポリ(エチレンオキシド)ジオール、ポリ(トリメチレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、例えばポリ(エチレンオキシド)ジオールなどでエンドキャップされた任意のこれらのもの、並びにこれらの混合物及びコポリマーから選択される。「エンドキャップされた」ポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、「HO-ポリ(アルキレンオキシド)1-ポリ(アルキレンオキシド)2-OH」又は「HO-ポリ(アルキレンオキシド)1-ポリ(アルキレンオキシド)2-ポリ(アルキレンオキシド)1-OH」の形態のブロックコポリマーである。「エンドキャップ」は同じであっても、或いは異なるポリ(アルキレンオキシド)であってもよい。
【0036】
ポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、鎖長の点で限定されず、好ましくは、500~4,000Da、より好ましくは700~3,000Da、特に好ましくは1,000~2,000Da、具体的には1,000又は1,400又は2,000Daの分子量を有する。好ましいポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、例えばポリ(エチレンオキシド)ジオールでエンドキャップされているポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(PTMEG)及びポリ(プロピレンオキシド)ジオールから選択される。特に好ましいポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(PTMEG)であり、より特に好ましくは、1,000~2,000g/モルの分子量を有するPTMEGである。特に好ましいものは、1,000、1,400、又は2,000g/モルの分子量を有するPTMEGである。同様に特に好ましいものは、ポリ(エチレンオキシド)でキャップされた、2,150~2,500g/モルの分子量を有するポリ(プロピレンオキシド)ジオールである。
【0037】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のコポリエーテルエステルは、二酸としてのテレフタル酸と、ジオールとしてのブタン及び/又はプロパンジオールと、ポリ(アルキレンオキシド)ジオールとしての、例えばポリ(エチレンオキシド)-ジオールでエンドキャップされたポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(PTMEG)及び/又はポリ(プロピレンオキシド)ジオールとから製造されたものから選択される。さらに特に好ましくは、コポリエーテルエステルは、テレフタル酸と、ブタンジオールと、PTMEGとから製造されたものから選択される。
【0038】
好ましいコポリエーテルエステルは、コポリエーテルエステルの総重量を基準として、7~80重量パーセントのポリ(アルキレンオキシド)ジオールの共重合した単位、特に7~80重量パーセントのPTMEGを有し、コポリエーテルエステルの重量パーセントの残部は、コポリエーテルエステル中の共重合した単位の重量パーセントの合計が100重量%であるような、二酸及びジオールの共重合した単位から構成される。
【0039】
好ましいコポリエーテルエステルは、平均分子量が約1,000~2,000g/モル、特に好ましくは約2,000g/モル、約1,400g/モル、又は約1,000g/モルのPTMEGを含む。
【0040】
特に好ましいものは、ポリエーテルブロックセグメントとして約2,000g/モルの平均分子量を有する約72.5重量パーセントのPTMEGを含むコポリエーテルエステルであり、重量パーセントは、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準であり、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位はPBTセグメントである。
【0041】
同様に特に好ましいものは、ポリエーテルブロックセグメントとして約1,000g/モルの平均分子量を有する約35.3重量パーセントのPTMEGを含むコポリエーテルエステルであり、重量パーセントは、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準であり、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位はPBTセグメントである。
【0042】
同様に本発明での使用に適しているものは、単純ポリエステルとコポリエーテルエステルとのブレンド、特に好ましくは、PET、PPT、及び/又はPBTとコポリエーテルエステルとのブレンドである。例としては、
1.7~80重量パーセントのポリ(アルキレンオキシド)ジオールソフトセグメントを有するコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT;
2.ソフトセグメントとしてのPTMEGを有するコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT;
3.ソフトセグメントとして7~80重量パーセントのPTMEGを有するコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT;
4.約1,000~2,000g/モル、特に好ましくは約2,000g/モル、約1,400g/モル、又は約1,000g/の平均分子量を有するPTMEGを含むコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT;
5.ポリエーテルブロックセグメントとして約2,000g/モルの平均分子量を有する約72.5重量パーセントのPTMEGを含むコポリエーテルエステルであって、重量パーセントが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準であり、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がPBTセグメントであるコポリエーテルエステル、とブレンドされたPBT;
6.ポリエーテルブロックセグメントとして約1,000g/モルの平均分子量を有する約35.3重量パーセントのPTMEGを含むコポリエーテルエステルエラストマーであって、重量パーセントが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準であり、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がPBTセグメントであるコポリエーテルエステルエラストマー、とブレンドされたPBT;
が挙げられる。
【0043】
少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルは、好ましくは、架橋剤(すなわちジイソシアネート及びジアミン)を添加する前に乾燥される。これは、これによってポリエステル、特にコポリエーテルエステル自体の加水分解並びにジイソシアネートの加水分解が低減され、より予測可能且つ再現性のある架橋が得られるためである。乾燥は、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルを、乾燥条件下、例えば乾燥空気又は乾燥不活性ガスの流れの下、又は真空下で、その融点未満に加熱することによって行うことができる。
【0044】
架橋剤は、少なくとも1種のジイソシアネート及び少なくとも1種のジアミンである。ジイソシアネートは、溶融加工中の蒸発損を防ぐため、少なくとも200℃の沸点を有するものから選択される。より好ましくは、ジイソシアネートは、250℃を超える、より具体的には300℃を超える沸点を有する。好ましいジイソシアネートは、200℃を超える沸点を有する芳香族ジイソシアネートである。好ましいジイソシアネートは室温で固体である。より好ましいジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、並びにこれらの何れか混合物及びポリマーから選択される。
【0045】
特に好ましいジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)である。
【0046】
本発明の方法は、200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンを必要とする。好ましいジアミンは、室温で固体である。例は、ジエチル2,4-トルエンジアミン、メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス-(O-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(「MCDEA」)、及びこれらの混合物である。特に好ましいジアミンはMCDEAである。
【0047】
特に好ましい組み合わせは、ジイソシアネートとしてのMDI及びジアミンとしてのMCDEAである。
【0048】
ジイソシアネート、好ましくはMDIは、好ましくは、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルに対して1~10重量%で、より好ましくは2~8重量%で、より特に好ましくは3~6重量%で、最も好ましくは5重量%で使用される。
【0049】
ジアミン、好ましくはMCDEAは、好ましくは、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルに対して0.5~10重量%で、より好ましくは1~3重量%で、最も好ましくは2.5重量%で使用される。好ましくは、ジイソシアネートは、ジアミンに対してモル過剰で使用される。好ましくは、ジイソシアネート対ジアミンのモル比は、4:1~1.5:1、より好ましくは2:1である。
【0050】
好ましくは、ジイソシアネート対ジアミンの重量%比は、4:1~1.5:1、より好ましくは2:1である。
【0051】
(少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルに対しての)ジイソシアネート及びジアミンの好ましい量は:
8重量%のジイソシアネート、好ましくはMDI、4重量%までのジアミン、好ましくはMCDEA、
5重量%のジイソシアネート、好ましくはMDI、2.5重量%までのジアミン、好ましくはMCDEA、
である。
【0052】
単純ポリエステル、例えばPET、PPT、PBT、及びより硬いコポリエーテルエステル、例えばソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有量が28重量%未満のものについては、ポリエステル及び/又はコポリエーテルエステルの重量を基準として1~5重量%、より好ましくは2~4重量%、特に好ましくは3.25重量%でジイソシアネート(好ましくはMDI)を使用することが好ましい。
【0053】
単純ポリエステル、例えばPET、PPT、PBT、及びより硬いコポリエーテルエステル、例えばソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有量が28重量%未満のものについては、ポリエステル及び/又はコポリエーテルエステルの重量を基準として0.5~4重量%、より好ましくは1~3重量%、特に好ましくは2重量%でジアミン(好ましくはMCDEA)を使用することが好ましい。
【0054】
単純ポリエステル、例えばPET、PPT、PBT、及びより硬いコポリエーテルエステル、例えばソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有量が28重量%未満のポリエステルについては、ジイソシアネートとジアミンとの好ましい組み合わせは、ポリエステル及び/又はコポリエーテルエステルの重量を基準として3.25重量%のジイソシアネート(好ましくはMDI)と2重量%のジアミン(好ましくはMCDEA)である。
【0055】
より柔らかいコポリエーテルエステル、例えばソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有量が28重量%以上のものについては、ポリエステル及び/又はコポリエーテルエステルの重量を基準として1~7重量%、より好ましくは2~6重量%、特に好ましくは5重量%でジイソシアネート(好ましくはMDI)を使用することが好ましい。
【0056】
より柔らかいコポリエーテルエステル、例えばソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有量が28重量%以上のものについては、ポリエステル及び/又はコポリエーテルエステルの重量を基準として0.5~4重量%、より好ましくは1~3重量%、特に好ましくは2.5重量%でジアミン(好ましくはMCDEA)を使用することが好ましい。
【0057】
より柔らかいコポリエーテルエステル、例えばソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有量が28重量%以上のものについては、ジイソシアネートとジアミンとの好ましい組み合わせは、ポリエステル及び/又はコポリエーテルエステルの重量を基準として5重量%のジイソシアネート(好ましくはMDI)と2.5重量%のジアミン(好ましくはMCDEA)である。
【0058】
好ましい実施形態では、ジイソシアネートはMDIであり、ジアミンはMCDEAである。特に好ましい組み合わせは、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルに対して1~10重量%、より好ましくは2~8重量%、特に好ましくは3~6重量%、最も好ましくは5重量%のMDIと、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルに対して0.5~10重量%、より好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2.5重量%のMCDEAである。5重量%のMDI及び2.5重量%のMCDEAが特に好ましい。2:1の比率のMDI及びMCDEAが特に好ましい。
【0059】
重量パーセントがポリエステル又はコポリエーテルエステルの総重量基準である、本発明の方法又は架橋ポリマーのためのいくつかの好ましい配合物は:
1.PBT、3.25重量%のMDI、及び2重量%のMCDEA;
2.PPT、3.25重量%のMDI、及び2重量%のMCDEA;
3.PET、3.25重量%のMDI、及び2重量%のMCDEA;
4.28重量%未満のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有するコポリエーテルエステル、3.25重量%のMDI、及び2重量%のMCDEA;
5.28重量%以上のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有するコポリエーテルエステル、5重量%のMDI、及び2.5重量%のMCDEA;
6.テレフタレートと、ブタンジオールと、PTMEGとから製造された、28重量%未満のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有するコポリエーテルエステル、3.25重量%のMDI、及び2重量%のMCDEA;
7.テレフタレートと、ブタンジオールと、PTMEGとから製造された、28重量%以上のソフトセグメント[ポリ(アルキレンオキシド)ジオール]含有率を有するコポリエーテルエステル、5重量%のMDI、及び2.5重量%のMCDEA;
8.約72.5重量パーセントの、ポリエーテルブロックセグメントとして約2,000g/モルの平均分子量を有するPTMEGを含み(重量パーセントはコポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準である)コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がPBTセグメントであるコポリエーテルエステル、5重量%のMDI、及び2.5重量%のMCDEA;
9.約35.3重量パーセントの、ポリエーテルブロックセグメントとして約1,000g/モルの平均分子量を有するPTMEGを含み(重量パーセントはコポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準である)コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がPBTセグメントであるコポリエーテルエステル、5重量%のMDI、及び2.5重量%のMCDEA;
7.7~80重量パーセントのポリ(アルキレンオキシド)ジオールソフトセグメントを有するコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT、PBT及びコポリエーテルエステルの総重量を基準として1~5重量%のMDI、及び0.5~3重量%のMCDEA;
8.ソフトセグメントとしてのPTMEGを有するコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT、1~5重量%のMDI、及び0.5~3重量%のMCDEA;
9.ソフトセグメントとしての7~80重量パーセントのPTMEGを有するコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT、1~5重量%のMDI、及び0.5~3重量%のMCDEA;
10.約1,000~2,000g/モル、特に好ましくは約2,000g/モル、約1,400g/モル、又は約1,000g/モルの平均分子量を有するPTMEGを含むコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT、1~5重量%のMDI、及び0.5~3重量%のMCDEA;
11.約72.5重量パーセントの、ポリエーテルブロックセグメントとして約2,000g/モルの平均分子量を有するPTMEGを含み(重量パーセントはコポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準である)コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がPBTセグメントであるコポリエーテルエステルとブレンドされたPBT、PBT及びコポリエーテルエステルの総重量を基準として1~5重量%のMDI、及び0.5~3重量%のMCDEA;
12.約35.3重量パーセントの、ポリエーテルブロックセグメントとして約1,000g/モルの平均分子量を有するPTMEGを含み(重量パーセントはコポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準である)コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がPBTセグメントであるコポリエーテルエステルエラストマーとブレンドされたPBT、PBT及びコポリエーテルエステルの総重量を基準として1~5重量%のMDI、及び0.5~3重量%のMCDEA。
【0060】
本発明の方法又は架橋ポリマーでは、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルと、ジイソシアネートと、ジアミンとが溶融状態でブレンドされ、均質なブレンドを形成する。これは、典型的には、一軸又は二軸押出機内で行われる。混合の順序は特に限定されない。好ましい実施形態では、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルが最初に溶融され、次にジイソシアネート及びジアミンが添加される。別の好ましい実施形態では、例えばペレット又は顆粒としての固体形態のポリマーが、乾燥ブレンドとしてのジイソシアネート及びジアミンと混合される。別の好ましい実施形態では、ジイソシアネート及び/又はジアミンは、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルが固体のままであるが、ジイソシアネート及び/又はジアミンが溶融するのに十分に温かい温度で、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルのペレットと混合される。これにより、一方又は両方の架橋剤がペレット上にコーティングを形成するドライブレンドが生成される。
【0061】
ドライブレンドは、一軸又は二軸押出機などの混錬装置に供給され、成分を溶融混合して架橋を生じさせる。押出機の温度は、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルの溶融温度よりも高くなければならず、好ましくは、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルの融点よりも5~70℃高い。溶融物の滞留時間は、好ましくは、少なくとも1種のポリエステル、好ましくはコポリエーテルエステルと、ジイソシアネートと、ジアミンとが均質なブレンドになるのに十分長い時間であるが成形が困難になるまで溶融粘度が増加するほどは長くはない時間である。好ましくは、滞留時間は少なくとも30秒、より好ましくは少なくとも90秒である。
【0062】
方法は、工程(2)の後且つ工程(3)の前に、架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを、100~150℃、好ましくは120℃で6~24時間、好ましくは12時間加熱することからなる後硬化工程を行う追加の工程(2’)も含み得る。
【0063】
ポリマーの架橋は、ジイソシアネートとジアミンが溶融物に添加されるとすぐに開始する。混合物が均質になるとすぐに、これは任意の望まれる形態に成形することができる。工程(2)における架橋ポリマーの溶融塊は、任意の形態に成形することができる。輸送、保管、及びさらなる加工のための再溶融の容易さのために好ましいものは、ペレット、顆粒、粉末、及びフレークである。ペレットは、典型的には、ストランドをダイから押し出し、続いて冷却し(例えば水中で急冷することにより)、続いてペレットへと切断することによって製造される。フレークは、任意の形態の架橋した材料を削る又は粉砕することによって製造することができる。これには、当然、直接プロセス若しくは間接プロセスによって製造された成形された物品の再粉砕、又は成形プロセスから生じる廃棄物若しくは不良品が含まれる。ペレット、顆粒、及びフレークは簡単に包装でき(例えば袋の中に)、また保管又は物品製造業者への輸送を行うことができる。したがって、本発明の方法は、固化した架橋コポリエーテルエステルを粉砕して又は削ってフレーク、粉末、又は顆粒を形成する工程(2’’)を追加的に含み得る。任意選択的な工程(2’’)は、工程(2)又は工程(2’)の後、且つ工程(3)の前に行われる。或いは、工程(2’’)は、工程(4)の後に行うことができ、粉砕又は削られた架橋ポリマーは、工程(3)に戻され、その結果再溶融されて再び成形される。
【0064】
架橋ポリマーの再加工又はリサイクルでは、ポリマーは、粉末又はフレークなど、再溶融及びさらなる加工のために押出機に容易に供給することができる適切な形態へと小さくされる。
【0065】
この方法でのリサイクルは、一般的には架橋した材料では不可能である。本発明の方法が、架橋された材料を提供し、架橋された材料の全ての利点を示しながらもリサイクルを可能にするという事実は驚くべきことであり、樹脂からのパーツの改善された歩留まり(廃棄物はパーツへとリサイクルすることができる)、プラスチック廃棄物の環境への影響の低減、及び成形業者のコスト削減の利点を提供する、
【0066】
この文脈での粉末とは、平均粒子サイズが75~750ミクロンであり、>95%が1,000ミクロンのふるいを通過する小さな粒子である。
【0067】
この文脈でのフレークとは、4~8mmのサイズ、0.5~2mのフレーク厚さを有し、8mm以上のフレークサイズが1重量%以下、2~4mmのフレークサイズが20重量%以下、2mm以下のフレークサイズが1重量%以下である、ポリマー片である。或いは、フレークは、厚さ対幅の比が1:4~1:12であり、面内の平均寸法が2~10mm×2~10mmであるポリマー片である。
【0068】
本発明の方法は、一実施形態では、直接法又は間接法によって製造された成形された物品のリサイクルも含む。そのような実施形態では、工程(2)又は工程(4)における成形は、特に、物品を成形するための押出成形、射出成形、圧縮成形、又はブロー成形である。使用後又は使用前に、得られた物品に対して上で詳述した工程(2’’)を行って、工程(3)及び(4)で再加工するために容易に保管、輸送、及び再溶融できる形態にすることができる。
【0069】
一態様では、本発明は、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート及び200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの反応により得られる、押し出された形態の架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを提供する。押し出された形態は、上述した通りに製造されたペレットであってよい。ペレットは、再溶融して架橋した成形物品へと加工するのに適している。さらなる態様では、本発明は、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート及び200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの反応により得られる、ペレットの形態の架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを提供する。
【0070】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルと、200℃を超える沸点を有するジイソシアネート及び200℃を超える沸点を有する芳香族ジアミンとの反応により得られる、粉砕された形態又はフレーク状の架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルを提供する。粉砕されたポリマー(典型的には、ポリマーの技術分野では「粉砕再生材料」と呼ばれる)は、再溶融され、架橋された成形された物品へと加工することができる。粉砕されたポリマー又はフレークは、粉砕によって製造される。
【0071】
架橋された物品を形成することが望まれる場合、工程(2)から得られる架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステルは、例えば、一軸又は二軸スクリュー押出機で再溶融され、望まれる任意の方法によって、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形によって成形される。押出機の温度は、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルの溶融温度よりも高くなければならず、好ましくは、少なくとも1種のポリエステル、特にコポリエーテルエステルの融点よりも5~70℃高い。
【0072】
工程(2)から得られる架橋ポリエステル、特にコポリエーテルエステル、及び工程(4)から得られる架橋された物品は、1,1,2,2-テトラクロロエタンなどの有機溶媒へのそれらの溶解度を決定することによって、架橋について試験することができる。工程(2)の架橋ポリマー及び工程(4)の架橋した物品は、本質的に1,1,2,2-テトラクロロエタンに不溶性であるが、架橋していないポリマーは溶解する。
【0073】
工程(4)の後、架橋された物品に対して、100~150℃、好ましくは120℃で6~24時間、好ましくは12時間加熱することからなる後硬化工程を行うことができる。
【0074】
工程(4)から得られた成形された架橋された物品は、良好な耐摩耗性、引張強度、反発挙動、及び圧縮永久歪みを有する。
【0075】
本明細書に記載の架橋した組成物は、限定するものではないが、以下の成分:ヒドラジンやヒドラジドなどの金属不活性化剤;熱安定剤;酸化防止剤;改良剤;着色剤;潤滑剤;フィラー(ガラス、マイカ、硫酸バリウム、ステンレス鋼、粘土など)及び強化剤;耐衝撃性改良剤;流動促進添加剤;帯電防止剤;結晶化促進剤;導電性添加剤;粘度調整剤;造核剤;可塑剤;離型剤;耐引掻き及び耐損傷性改良剤;液垂れ抑制剤;接着性改良剤;並びにポリマー配合技術分野で公知の他の加工助剤;のうちの1つ以上、並びにこれらのうちの2つ以上の組み合わせなどの添加剤をさらに含み得る。これらの添加剤は、当該技術分野で公知の方法によって、ポリエステル又はコポリエーテルエステルに添加することができる。
【0076】
特に、組成物は、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルの重量を基準として、好ましくは1~8重量%、より好ましくは2~5重量%又は3重量%のポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)で、PDMSを含み得る。無機フィラーは、使用される場合、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルの重量を基準として、好ましくは最大30重量%で存在する。使用される場合、他の添加剤は、好ましくは、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルの総重量を基準として約0.1~約20重量パーセントの量で存在する。好ましくは、個々の他の添加剤は、ポリエステル、特にコポリエーテルエステルの総重量を基準として5重量%を超えるレベルで存在しない。
【0077】
架橋によって改善される特性の1つは、耐溶剤性である。耐溶剤性は、例えば有機溶剤に浸漬した後の重量増加を測定することによって測定することができる。重量増加は、典型的には、元の、浸漬されていないサンプルを基準としたパーセント割合(%)として表される。
【0078】
架橋によって改善されるもう1つの特性は、有機溶剤への暴露後の引張特性の保持である。引張強さは、例えばISO527に従って測定することができる。引張強度の保持は、典型的には、曝露されていないサンプルに対するパーセントとして報告される。50%ひずみにおける応力は、例えばISO527に従って測定することができる。50%のひずみにおける応力の保持は、典型的には曝露されていないサンプルに対するパーセントとして報告される。
【0079】
成形された架橋された物品は、用途に関して特に限定されない。架橋コポリエーテルエステルのいくつかの例示的な応用分野には、石油及びガスの用途が含まれる。特に好ましい用途としては:モールドオンロッドガイド、吸盤ロッドガイド、コーンパック、O-リング、ガスケット、シール、スキーポールステム、ハウジング、コンベヤベルト、及び耐荷重ホイールが挙げられる。
【0080】
下記の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。本発明を実施するために現在考えられる好ましいモードを示す、これらの実施例は、本発明を例示することを意図し、それを限定することを意図するものではない。
【実施例
【0081】
化学物質:
MDI=4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
MCDEA=4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)
コポリエーテルエステル(「TPE」)、全てのグレードがPBTハードセグメントとPTMEGソフトセグメントとを有していた。
TPE1は、ポリエーテルブロックセグメントとして約2,000g/モルの平均分子量を有する約72.5重量パーセントのPTMEGを含むコポリエーテルエステルエラストマーであり、重量パーセントは、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準であり、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位はPBTセグメントである。
TPE2は、ポリエーテルブロックセグメントとして約1,000g/モルの平均分子量を有する約35.3重量パーセントのPTMEGを含むコポリエーテルエステルエラストマーであり、重量パーセントは、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量基準であり、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位はPBTセグメントである。
【0082】
本発明の方法又は架橋されたポリマーを実証するために、コポリエーテルエステルは、押出機の中でコポリエーテルエステル、MDI、及びMCDEAを溶融ブレンドすることによって架橋させた。架橋した試験片は、押出機から直接射出成形することによって直ちに形成した(従来の比較の方法、架橋と成形が本質的に同時に起こるため、直接法とも呼ばれる)。これらの試験片を、架橋されたコポリエーテルエステルフレークを再溶融し、続いて試験片へと射出成形することによって製造された試験片(本発明の方法、間接法とも呼ばれる)と比較した。追加の比較として、架橋されていないコポリエーテルエステルを射出成形して試験片にした。
【0083】
サンプルの作製
従来の比較の方法(直接法)
TPEは、80℃に維持されたエアオーブン中で16時間オーブン乾燥した。
サンプル:
(1)TPE1
(2)TPE1+5%のMDI+2.5%のMCDEA
(a)TPE1を乾燥機から取り出し、ペレット温度が約60℃になるまで冷却した。
(b)20lbのTPE1を1lbのMDIと共にカンコペール缶に入れ、蓋を取り付け、カンコペール缶を30分間回転させて、MDIフレークを溶かしてTPEペレットをコーティングし、ペレットが40℃未満に冷えるのに伴って凍結させた。
(c)カンコペール缶から蓋を外し、0.5lbのMCDEAを添加し、蓋を再び取り付け、カンコペール缶を10分間回転させて、MCDEAとMDIコーティングされたTPE1ペレットとを確実に混合した。これにより、射出成形機に供給されるドライブレンドが形成された。
(3)TPE2
(4)TPE2+5%のMDI+2.5%のMCDEA
TPE1に関して上述した方法と同じ方法でドライブレンドを調製した。
【0084】
射出成形機を使用して、ドライブレンドを溶融ブレンドし、6”×6”×1/8”のプラークを試験片として直接作製した。
【0085】
プラーク2及び4のサブセットは、空気循環オーブン中で250°Fで12時間加熱することにより熱処理した。これらのプラークは2H及び4Hとして印をつけた。
圧縮永久歪みボタン(1”のディスク)とISO 5A引張棒を、これらのプラークからダイカットした。
【0086】
本発明の方法(間接法)
TPEを、80℃に維持されたエアオーブン中で16時間オーブン乾燥した。
サンプル:
(A)TPE1
(B)TPE1+5%のMDI+2.5%のMCDEA
(a)TPEを乾燥機から取り出し、ペレット温度が約60℃になるまで冷却した。
(b)18.5lbのTPE1を1lbのMDIと共にカンコペール缶に入れた。蓋を取り付け、カンコペール缶を30分間回転させて、MDIフレークを溶かしてTPEペレットをコーティングし、ペレットが40℃未満に冷えるのに伴って凍結させた。
(c)蓋をとり、カンコペール缶に0.5lbのMCDEAを添加し、再度蓋をし、カンコペール缶を10分間回転させて、MCDEAとMDIコーティングされたTPE1ペレットとを確実に混合した。これにより、射出成形機に供給されるドライブレンドが形成された。
(C)上の(B)からの粉砕された架橋した材料。
(D)TPE2
(E)TPE2+5%のMDI+2.5%のMCDEA
ドライブレンドは、TPE1に関して上述した方法と同じ方法で調製した。
(F)上の(E)からのフレークへと粉砕された架橋した材料。
【0087】
混錬:
ドライブレンドBとEの混錬は、250rpmで作動する中程度の作業スクリューを含む長さ対バレル比が30:1のWerner&Pfleiderer 30mm共回転二軸押出機で行った。ドライブレンドは、フィードホッパーに窒素パージしながらK-tronロス・イン・ウェイト・フィーダーを使用して、25lb/yrで押出機に連続的に量り入れた。供給口と最初のバレルは加熱せず、残りのバレルは230℃に設定した。押出機の終端に向かって真空を適用した。押出機には、標準の8-0トランジションピースと単一の穴の3/16”ダイプレートが取り付けられた。押出機からのストランドを水槽中で急冷した後、エアナイフを通過させて固体ストランドから表面水を除去し、次いでストランドカッターを使用してペレット化した。
【0088】
射出成形:
射出成形するペレットを80℃の空気循環オーブン中で16時間乾燥させた。
Nissei FN4000成形機を使用して、ISO 5A引張棒を射出成形し、別の日に3”×5”×1/8”のプラークを射出成形した。
射出成形されたISO 5Aマイクロ引張棒と3”×5”×1/8”のプラークは、同じ装置を使用してTPE1(A)及びTPE2(D)から成形した。
Arburg成形機を使用して、(2)で製造したパーツを粉砕することにより得られたフレークから3”×5”×1/8”のプラークを射出成形し、新しく形成されたパーツに(C)と印をつけ、(4)で製造したパーツを粉砕することにより得られたフレークから3”×5”×1/8”のプラークを射出成形し、新しく形成されたパーツに(F)と印をつけた。
プラーク並びに引張棒B、C、E、及びFのサブセットを、空気循環オーブン中で250°Fで12時間加熱することによって熱処理した。これらの熱処理したパーツは、BH、CH、EH、及びFHと印をつけた。
【0089】
様々試験ピースが表1にまとめられている。様々なサンプルの製造を図1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
耐溶剤性
トルエン及び1,1,2,2-テトラクロロエタン(「TCE」)への暴露後の機械的特性の保持を使用して、成形された物品がオイルやガスの用途などの有機溶剤中に曝露される可能性のある過酷な環境で使用するための架橋されたパーツの適性を評価した。
【0092】
次の試験サンプルを引張強度について評価した:1、A、B、C、2H、BH、及びCH(TPE1ベース)、及び3、D、E、F、4H、EH、及びFH(TPE2ベース)。
【0093】
ベースラインの設定
ベースライン引張特性は、50mm/分の試験速度と、ISO 527-1:2012に概説されているその他の試験パラメーターとを使用して、Instronの単一ステーション引張フレームにおいて、成形されたISO 5A棒を引っ張ることによって測定した。ただし、引張グリップ分離から計算された公称ひずみを、伸び計を使用して測定されたひずみに使用した。
【0094】
トルエン曝露試験
各サンプルの重さを量り、その後室温においてトルエンに24時間浸漬した。曝露が完了した後、サンプルをペーパータオルで軽くたたいて水気を切り、その後再度秤量し、その後気密のZiplocバッグの中に密封した。60分以内に、ベースラインデータと同じ方法を使用してサンプルの引張特性を測定した。
【0095】
TPE1ベースのサンプルで得られた結果を表2に記載する。TPE2ベースのサンプルの結果を表3に記載する。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
表2及び3のデータは、予想した通り、架橋したTPE(2H、4H)を直接射出成形することによって作製した材料が、架橋していない材料(1、A、3、D)と比較して、トルエンへの暴露において大幅に改善された引張特性の保持を示すことを示している。驚くべきことに、本発明の方法によって作製された材料、すなわち、架橋されたTPEを再溶融し、続いて射出成形したもの(B、BH、C、CH)は、元の架橋された材料と本質的に同じ又は同様の改善を示す。これは、架橋が可逆的であり、熱可塑性材料の加工性を備えた架橋したTPEの利点を有する材料が得られることを明確に示している。
【0099】
耐溶剤性(1,1,2,2-テトラクロロエタン)
評価するサンプル:
20~30mgのサンプルを、1、2、A、B、C、2H、及びBH(TPE1ベース)、及び3、4、D、E、F、4H、及びEH(TPE2ベース)のマイクロ引張棒から切断した。各サンプルを、5mlの1,1,2,2-テトラクロロエタン溶剤が入っているガラスバイアルに室温で入れた。サンプル1、A、3、及びD(架橋なし)は30分以内に完全に溶解した。サンプル2、B、C、2H、BH、4、E、F、4H、及びEH(架橋)は膨潤したものの、48時間浸漬した後に溶解しなかった。
【0100】
これらの結果は、TPEとジイソシアネート及びジアミンとの反応によって製造された材料が、直接法によるか間接法によるかにかかわらず不溶性であり、そのため架橋されていることを示している。さらに、この結果は、間接法(本発明の方法)によって作製されたサンプルが不溶性であることから、架橋が可逆的であることを示している。
【0101】
圧縮永久歪み
圧縮永久歪みディスクを、1、2H、3、4Hの6”×6”×1/8”プラークから、並びにA、BH、CH、D、EH、及びFHの3”×5”×1/8”プラークから、ダイカットした。結晶化度は圧縮下ではなく元の形で発達することから、圧縮永久歪み試験を開始する前に結晶化度を完全に発達させると、結果が改善される(歪みが減少する)ことはよく知られている。1、3、A、及びDからのディスクを125℃で3時間アニール処理した。2H、4H、BH、CH、EH、及びFHのディスクは、元のプラークの熱処理工程によって既に結晶化度が完全に発達したため、アニール処理が行われなかった。
【0102】
圧縮永久歪み方法Bの測定[ASTM D395-18方法B(70℃、22時間)]は、70℃で22時間治具でかけられる25%の一定のひずみを使用して行った。元のサンプルの高さは、各サンプルの4つのディスクを積み重ねることによって達成された、名目上0.5インチであった。治具スペーサーは0.375インチに設定し、25%の一定のひずみを提供した。
【0103】
以下の結果を表4及び5に記載する。材料を圧縮下で使用する場合は、より低い歪みが有利である。
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
表4及び5のデータは、予想通り、架橋したTPE(2H、4H)を直接射出成形して作製した材料が、架橋されていない材料(1、A、3、D)と比較して大幅に改善された歪みを示すことを示している。驚くべきことに、架橋されたTPEを再溶融し、続いて射出成形することによって作製した材料は、元の架橋された材料と本質的に同じ改善を示す。架橋が可逆的であり、熱可塑性材料の加工性を備えた架橋されたTPEの利点を有する材料が提供されることを明確に示している。
【0107】
本発明の特定の好ましい実施形態を上で説明し、具体的に例示してきたが、本発明をそのような実施形態に限定することは意図されない。以下の特許請求の範囲に示されるような本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な修正形態がなされ得る。
【国際調査報告】