(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】硬化性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20221207BHJP
C08G 63/688 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08G81/00
C08G63/688
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521697
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 US2020054839
(87)【国際公開番号】W WO2021072118
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516228958
【氏名又は名称】ポリ-メッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン マイケル アーロン
(72)【発明者】
【氏名】サイニー プラブジョット
(72)【発明者】
【氏名】スタンフォード マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ブサリ ハフィズ
(72)【発明者】
【氏名】ティンダル デブラ
【テーマコード(参考)】
4J029
4J031
【Fターム(参考)】
4J029AA01
4J029AB01
4J029AB02
4J029AC02
4J029AC03
4J029AD01
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4J029JC152
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4J029KH01
4J031AA46
4J031AA49
4J031AA50
4J031AB04
4J031AC11
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE07
4J031AF03
(57)【要約】
付加印刷、特に光造形法(SLA)などの付加印刷技術において有用な化合物及び組成物が提供され、複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、及び複数のチオール基を有する化合物などの1つ又は複数の光硬化性化合物の組成物は、任意で、互いに反応し、熱重合する2つ以上の熱硬化性化合物の存在下で光重合し、固形の製造物品を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチオール基(SH)を有する第1の有機化合物(ポリSH)、複数のエチレン性不飽和基(EU)を有する第2の有機化合物(ポリEU)、及び光開始剤、並びに任意で安定剤を含む組成物。
【請求項2】
X:YのSH対EU当量比を有し、Xが25~75の範囲であり、且つYが75~25の範囲であり、且つXとYの合計が100である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリSHが水溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリSHが生体吸収性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリSHがマクロマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリSHが、分子量が1,000g/モル超のマクロマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリSHの分子量が500g/モル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリEUが水溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリEUが生体吸収性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリEUのEUがアクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ポリEUのEUがメタクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ポリEUのEUがノルボルネニルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ポリEUがマクロマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ポリEUが、分子量が1,000g/モル超のマクロマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のカルボニル基を更に有し、任意でポリEUが複数のカルボニル基を有し、又は任意でポリSH及びポリEUがそれぞれ複数のカルボニル基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のエステル基を更に有し、任意でポリEUが複数のエステル基を有し、又は任意でポリSH及びポリEUがそれぞれ複数のエステル基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
ポリEU及びポリSHのうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のカーボネート基を更に有し、任意でポリEUが複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を有し、又は任意でポリSHとポリEUの両方が複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を更に有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリEUが複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリSHとポリEUの両方が複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を更に有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のカーボネート基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリEUが複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリSHとポリEUの両方が複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を更に有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ポリSHの複数のSHが、2、3、及び4から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
ポリEUの複数のEUが、2、3、及び4から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
沸点が110℃未満の揮発性材料を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
無水物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
約18~約22℃の室温で液体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1~24のうちいずれか一項に記載の組成物の光化学的に硬化した反応生成物を含む組成物。
【請求項26】
生体吸収性である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
50℃で固体である、請求項25の組成物。
【請求項28】
付加製造法であって:
(a)請求項1~24のうちいずれか一項に記載の第1の組成物を含有する液槽を提供すること;
(b)光源からの化学線を前記液槽内の前記第1の組成物に当てることであって、前記化学線は前記組成物の成分の重合を誘発して第2の組成物を形成するのに有効である;及び
(c)前記第2の組成物を含む固形物を形成すること
を含む付加製造法。
【請求項29】
複数の光重合性基(hν)を有する第1の有機化合物(ポリhν)、複数の反応性基Δ1を有する第2の有機化合物(ポリΔ1)、及び複数の反応性基Δ2を有する第3の有機化合物(ポリΔ2)を含む組成物であって、50℃を超える温度に接触及び曝露すると、Δ1がΔ2と反応する組成物。
【請求項30】
ポリhνが生体吸収性である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
ポリhνがマクロマーである、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
ポリhνが、分子量が1,000g/モル超のマクロマーである、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
ポリhνの分子量が500g/モル未満である、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
ポリhνが水溶性である、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
ポリhνが、アクリレート及びメチアクリレートから選択されるポリEUである、請求項29に記載の組成物。
【請求項36】
ポリhνのhνがノルボルネニルである、請求項29に記載の組成物。
【請求項37】
Δ1が求核剤であり、且つΔ2が求電子剤である、請求項29に記載の組成物。
【請求項38】
Δ1がヒドロキシル及びアミノから選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項39】
Δ2がエポキシド及びイソシアネートから選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項40】
ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカルボニル基を更に有し、任意でポリhνが複数のカルボニル基を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカルボニル基を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項41】
ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基を更に有し、任意でポリhνが複数のエステル基を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項42】
ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のカーボネート基を更に有し、任意でポリhνが複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項43】
ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリhνが複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項44】
ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカーボネート基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリhνが複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項45】
ポリhνの複数のhνが、2、3、及び4から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項46】
ポリΔ1の複数のΔ1が、2、3、及び4から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項47】
ポリΔ2の複数のΔ2が、2、3、及び4から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項48】
沸点が110℃未満の揮発性材料を含まない、請求項29に記載の組成物。
【請求項49】
無水物である、請求項29に記載の組成物。
【請求項50】
約18~約22℃の温度で流体である、請求項29に記載の組成物。
【請求項51】
請求項29~50のうちいずれか一項に記載の組成物の光化学的に硬化した反応生成物及び熱的に硬化した反応生成物を含む組成物。
【請求項52】
生体吸収性である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
50℃で固体である、請求項51の組成物。
【請求項54】
付加製造法であって:
(a)請求項29~50のうちいずれか一項に記載の第1の組成物を含有する液槽を提供すること;
(b)光源からの化学線を前記液槽内の前記第1の組成物に当てることであって、前記化学線は前記第1の組成物の成分の重合を誘発して、光化学的に硬化した組成物を含む第2の組成物を形成するのに有効である;及び
(c)光化学的に硬化した組成物を含む前記第2の組成物に熱エネルギーを当て、光化学的に硬化した組成物及び熱的に硬化した組成物を含む第3の組成物を形成すること
を含む付加製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月9日に出願された米国仮特許出願第62/913,063号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、同出願はあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、一般に、付加製造法によって生体吸収性インプラントを作製するための光硬化性及び熱硬化性組成物などの硬化性組成物の調製及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
光造形法(SLA)は、3次元(3D)物体を作製するための比較的十分に発達した付加印刷技術である。光造形法では、紫外線(UV)や可視光線などの光を用いて液状材料を光重合させ、高精度で精密な3次元物品などの設計構造物を作製する。薄い連続相を紫外線又は可視光線によって、例えばスライスしたCAD(コンピューター支援設計)モデルに従って光重合させる。
SLAでは一般に、樹脂又はインク配合物と称し得る液状の光重合性組成物を使用する。SLAで製造される物品の巨視的性質及び分解特性の一部は、高分子化学及び加工技術によって決まる。
本開示は、光造形法(SLA)などの硬化工程において有用な、またこの目的のために現在既知の化合物及び組成物よりも優れた化合物及び組成物を提供する。
背景技術の項で検討する全ての主題が必ずしも先行技術であるわけではなく、また単に背景技術の項における検討を受けて先行技術であるとみなされるべきではない。これに従って、背景技術の項で検討する、又はかかる主題に関連する先行技術の問題点の認識は、先行技術であると明示されていない限り、先行技術として扱われるべきでない。代わりに、背景技術の項における任意の主題の検討は、特定の問題に対する発明者のアプローチの一部として扱われるべきであり、それ自体もまた発明的であり得る。
【発明の概要】
【0004】
つまり一態様では、本開示は、光硬化工程、又は光硬化工程と併せて用いられる熱硬化工程などの硬化工程において有用な化合物及び組成物を提供する。硬化工程は、医療機器やコーティングなどの物品製造において有用である。例示的な硬化工程は光造形法(SLA)であり、これは、例えば光反応性マクロマーなどの1つ又は複数の光反応性化合物を含有する本開示による硬化性組成物を、工程中に光重合(光硬化)させて製造物品を形成する付加製造法である。別の例示的な工程はコーティング工程であり、本開示の化合物及び/又は組成物を表面に配置した後で熱に曝露して硬化(熱硬化)及び/又は化学線に曝露して硬化(即ち光重合又は光硬化)させ、表面に固形コーティングを設ける。これらの硬化物、即ち本明細書に開示する組成物を硬化させて形成する生成物は、一般に本明細書では、物品、コーティング、フィルム、材料などと称し得る。従って、物品を作製することによって本開示を例示する場合、同様にコーティング又は他の材料も作製できると理解すべきである。一態様では、物品、コーティングなどは生分解性である。
一態様では、本開示は硬化工程によって作製した生分解性ポリマー材料を提供する。この材料は、生分解性材料から形成された物品が一定時間後に存在しなくなるような、寿命が限定された物品を製造するのに使用し得る。例えば、材料は医療機器などの装置にコーティングし得、コーティングは一定時間後に分解する。別の例では、材料を使用して医療機器、例えば組織修復用メッシュを作製し得、そのためしばらくすると物品の一部又は全部がなくなり、組織修復が完了する。別の例として、医療機器は組織接着剤又は密封剤であり得、接着剤又は密封剤を必要とする組織に本開示の重合性組成物を塗布した後に、この組成物を、組織上の組成物の光重合を引き起こすのに十分な化学線に曝露する。
【0005】
本開示に従って一態様では、光造形法を用い、例えば本明細書に開示する化合物及び組成物を使用して、そのような材料及び物品を作製し得る。本開示は、SLAで製造した物品などの熱硬化及び光硬化させた材料に関わる問題に取り組む。こうした物品は生命体と接触し、製造した物品の安全性及び有効性、特にこれらの生体適合性及び細胞毒性に関する懸念がある。
一態様では、本開示はポリマー組成物の調製及び使用を提供する。ポリマー組成物は、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ランダムブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む光重合性ポリマーを含み得る、又はこれから作成され得る。ポリマー組成物は、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ランダムブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む熱硬化性ポリマーを含み得る、又はこれから作製され得る。一態様では、ポリマー組成物は、化学的に異なる2種類のポリマーが組成物中に混合して存在する二重ネットワークであり、任意で、二重ネットワークポリマー組成物は固体であることを特徴とし得る。一態様では、ポリマー組成物は、組成物中に単一のポリマーが存在する単一ネットワークであり、任意で、単一ネットワークポリマー組成物は固体であることを特徴とし得る。一態様では、単一ネットワークは架橋ポリマーを含む。一態様では、二重ネットワークは架橋ポリマーを含む。ポリマー組成物を使用して、例えば付加製造法によって生体吸収性インプラントを作製し得る。
【0006】
一態様では、本開示は、(1)本明細書ではポリhνと称する、複数の光重合性基を有する化合物と、(2)互いに熱的に反応(熱硬化)してポリマーを形成する2つの化合物の混合物とを含む組成物を提供し、この2つの化合物は本明細書ではポリΔ1及びポリΔ2、又は集合的にポリΔ(即ち、ポリΔはポリΔ1とポリΔ2の混合物を指す)と称し得る。一態様では、組成物は更に光開始剤を含む。一態様では、組成物は更に安定剤を含む。一態様では、本開示は、光開始剤、ポリhν、及びポリΔを含む組成物の光重合により得られる硬化した、且つ任意で架橋した組成物を提供し、この硬化(例えば架橋)組成物は、それ自体と反応するポリhνから形成されるネットワークを指す単一ネットワークを有すると言い得る。一態様では、本開示は、ポリhνの光重合及びポリΔ1とポリΔ2の熱重合によって生じる二重ネットワーク組成物を提供し、ポリhνとポリΔのそれぞれが、独立したネットワークを形成し、片方又は両方が任意で架橋ネットワークである。2つの独立したネットワークは共に相互貫入二重ネットワークを形成する。従って二重ネットワークは、両方の熱反応性成分(ポリΔ1とポリΔ2)及び少なくとも1つの光反応性成分(ポリhν)を有する組成物を熱硬化及び光硬化させることによって形成される。一態様では、光硬化は熱硬化に先行する。一態様では、熱硬化は光硬化に先行する。
【0007】
一態様では、本開示は、1)本明細書ではポリSHと称する、複数の光重合性チオール基を有する化合物と、2)本明細書ではポリEUと称する、複数の光重合性エチレン性不飽和基とを含む組成物を提供し、ポリSH及びポリEUは互いに光反応性である。一態様では、組成物は更に光開始剤を含む。一態様では、組成物は更に安定剤を含む。一態様では、本開示は、光開始剤、ポリSH、及びポリEUを含む組成物の光硬化(光重合)により得られる単一ネットワークポリマー組成物を提供する。一態様では、本開示は、光開始剤、ポリSH、及びポリEUを含む組成物の光硬化(光重合)により得られる単一ネットワーク架橋組成物を提供する。別の態様では、本開示は、光開始剤、安定剤、ポリSH、及びポリEUを含む組成物の光硬化(光重合)により得られる単一ネットワーク架橋組成物を提供する。例示的なEU基は、アクリレート、メタクリレート、及びノルボルネニルであり、ポリEUは複数のEU基、任意で2個のEU基又は3個のEU基又は4個のEU基を含む化合物を指す。
【0008】
一態様では、3D印刷などの硬化工程のための、並びに得られる硬化物を作成及び使用するための方法及び組成物を本明細書で開示する。例えば本開示は、a)本明細書に開示するポリEUマクロマー及びポリSHを含む光重合性組成物を、任意で、少なくとも1つの光開始剤成分、及び/又は組成物中に懸濁させた光反射性材料を含む少なくとも1つの光反射性材料成分、及び/又は少なくとも1つの安定剤などの1つ又は複数の他の成分と組み合わせて、好適な波長の光に一時的に曝露すること;並びに光重合性組成物の重合生成物を含む印刷物を形成することを含む、物品を印刷する光重合方法を提供する。別の態様では、本開示は、a)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2を含む光重合性組成物を好適な波長の光に一時的に曝露すること、並びにb)ポリΔ1とポリΔ2を、任意で、少なくとも1つの光開始剤成分、及び/又は組成物中に懸濁させた光反射性材料を含む少なくとも1つの光反射性材料成分、及び/又は少なくとも1つの安定剤などの1つ又は複数の他の成分と組み合わせて熱重合させること;並びに光重合性組成物の重合生成物を含む印刷物を形成することを含む、物品を印刷する光重合方法を提供する。
【0009】
一態様では、コーティング工程を含むフィルム形成工程などの光重合工程のための、及びそのような光重合性材料を作成及び使用するための方法及び組成物を本明細書で開示する。例えば本開示は、a)本開示の光重合性組成物を表面に塗布すること、b)本明細書に開示するポリEU及びポリSHを含む光重合性組成物を、任意で、少なくとも1つの光開始剤成分、及び/又は組成物中に懸濁させた光反射性材料を含む少なくとも1つの光反射性材料成分、及び/又は少なくとも1つの安定剤などの1つ又は複数の他の成分と組み合わせて、好適な波長の光に一時的に曝露すること;並びに光重合性組成物の重合生成物を含む固形コーティングを形成することを含む、物品の光重合コーティング方法を提供する。
他の態様では、本開示はマクロマーの重合生成物(プレポリマーとも称し得る)を提供し、マクロマーは、例えば本明細書に開示する1つ又は複数の方法によって光重合されている。更に本開示は、光重合性化合物又は本明細書に開示する組成物から、任意で、本明細書に開示する1つ又は複数の方法によって製造した、ポリマー物品と称し得る物品を提供する。光重合させたマクロマー又は物品は無毒性物品であり得る。更に物品は、光重合させた生分解性マクロマーを、任意で無毒性量の光開始剤と混合して含み得る。任意で物品は、光重合させた生分解性マクロマーを、任意で無毒性量の安定剤と混合して含み得る。任意で物品は、光重合させた生分解性マクロマーを、任意で無毒性量の紫外線反射材料と混合して含み得る。一態様では、ポリマー物品は生理的条件下で全部又は一部が生分解性である。しかしながら代替的な態様では、ポリマー物品は生理的条件下で生分解性ではない。
【0010】
更に本開示は、多軸中心核(CC)、及び中心核から伸びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4個のアームを含む、本明細書ではマクロマーとも称する光重合性化合物を提供し、少なくとも1つのアームが光反応性官能基(Q)を含み、(A)がトリメチレンカーボネート(本明細書ではT又はTMCとも称する)及びε-カプロラクトン(本明細書ではカプロラクトン又はC又はCAPとも称する)から選択されるモノマーの重合生成物であり、(B)がグリコリド、ラクチド、及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーの重合生成物である。マクロマーは、本明細書に開示する組成物及び方法中の光重合性マクロマー成分であり得、光重合させて物品をもたらし得る。
任意で、本開示のいずれかの組成物は、硬化させる前に、有効量の光開始剤、即ち、光開始剤を活性化するのに適した選択波長の光を送達する光源から放出される放射線に組成物が曝露された時に、光重合性化合物の重合を達成するのに有効な量の光開始剤を含有し得る。
一態様では、本開示は、付加印刷としても知られる3D印刷の方法、例えば光造形法を提供し、この方法は、重合性化合物及び光開始剤を有する本明細書に開示する重合性組成物を提供すること、並びに重合性組成物中で光重合性化合物を光重合させるために光開始剤を活性化するのに有効な光にこの組成物を曝露することを含む。一態様では、組成物は光に選択的に曝露し、それにより、組成物の全てではなく選択した部分が光重合する。一態様では、光重合性化合物は、1つ又は複数のポリhν化合物、例えば本明細書でポリEU及びポリSHと表される2つの光重合性化合物を含む混合物である。一態様では、1つ又は複数の光重合性化合物は、1つ又は複数の熱反応性化合物、例えば本明細書でポリΔ1及びポリΔ2と表される2つの熱反応性化合物と混合される。
【0011】
本開示の上述及び追加の特徴、並びにこれらを得る方法が明らかとなり、また本開示は、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されよう。本明細書に開示する文献は全て、それぞれが個別に援用されるかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
本概要は、以下の詳細な説明で更に詳細に説明する特定の概念を簡略化して紹介するために提供されている。明示的に別段の記載がない限り、本概要は、クレームされる主題の重要な又は必須の特徴を特定することを意図しておらず、クレームされる主題の範囲を限定することも意図していない。
以下の説明に、1つ又は複数の実施形態の詳細を記載する。1つの例示的な実施形態に関連して図示又は説明する特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせ得る。従って、本明細書で説明する様々な実施形態のいずれかを組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。本明細書に記載する様々な特許、出願、及び出版物の概念を採用するために必要な場合には、実施形態の態様を変更し、更に別の実施形態を提供することができる。他の特徴、目的、及び利点は、本明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかになろう。
本開示の上述及び追加の特徴、並びにこれらを得る方法が明らかとなり、また本開示は、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されよう。本明細書に開示する文献は全て、それぞれが個別に援用されるかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
本開示の例示的な特徴、その性質、及び様々な利点は、添付の図面及び様々な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになろう。添付の図面を参照して非限定的で非網羅的な実施形態を説明するが、同様の表示又は参照番号は、別段の指定のない限り、様々な図を通して同様の部品を指す。図面の各要素の大きさ及び相対的な位置は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。例えば、様々な要素の形状は、図面の読みやすさを向上させるために選択、拡大、及び配置されている。描かれた要素の特定の形状は、図面での認識を容易にするために選択されている。以下、添付の図面を参照して、1つ又は複数の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の選択された硬化組成物の分解特性を示す図である。
【
図2】本開示の選択された硬化組成物の水膨張特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、本開示の好ましい実施形態の以下の詳細な説明及び本明細書に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。この詳細な説明を読む上で、別段の説明がない限り、本明細書において、全て技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における通常の技術者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他を指示しない限り、複数の指示物を含む。同様に、単語「又は」は、文脈上明らかに他を指示しない限り、「及び」を含むことを意図する。用語「comprises(含む)」は、「includes(含む)」を意味する。略語「e.g.」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では、非限定的な例を示すために使用する。従って、略語「e.g.」は、用語「for example(例えば)」と同義である。
【0014】
一態様では、本開示は、室温付近、即ち約18~約23℃の温度で液体であり、硬化させることができる組成物を提供する。硬化工程は、本明細書では光重合とも称する光硬化を含むものとし、組成物に応じて、本明細書では熱重合とも称する熱硬化も含み得る。光硬化は、選択した時間にわたって選択したエネルギーの化学線に組成物を曝露すると、組成物の光化学(本明細書では光反応性又は光重合性などとも称する)成分間で反応が起こり、組成物中の成分の平均分子量が増加することで生じる。熱硬化は、好適な時間にわたって室温よりも高い好適な温度まで組成物を加熱すると、組成物の熱的に反応する(本明細書では熱反応性又は熱重合性などとも称する)成分間で反応が起こり、組成物中の成分の平均分子量が増加することで達成される対応する工程である。反応物が、3つ以上の光反応性又は熱反応性化学基を有する化合物を含む場合、硬化工程で、架橋成分を有する組成物が得られる。本明細書において、硬化は光硬化を指し、組成物が熱反応性成分を有する場合、任意で熱硬化を伴う。
本開示の組成物は光反応性成分を含む。任意で、組成物は熱反応性成分も含み得る。組成物が熱反応性成分と光化学反応性成分の両方を含む場合、得られる硬化組成物は、本明細書では、光化学反応性化合物から形成された第1のネットワークと、熱反応性化合物から形成された第2のネットワークとの二重ネットワーク又はデュアルネットワークを有すると称し得る。組成物が光化学反応性成分を含み、熱反応性成分を含まない場合、得られる硬化組成物は単一ネットワークを有すると称し得る。
【0015】
以下に更に詳しく説明するように、本開示の組成物は、「hν」基と表される少なくとも2つの光化学反応性官能基を有する1つ又は複数の化合物を含み得、且つ任意で、「Δ」基と表される少なくとも2つの熱反応性官能基を有する2つ以上の化合物を含み得る。反応性官能基は、有機骨格、即ち炭素と水素を含む原子からなる骨格に結合する。簡単な例として、Δ基がヒドロキシルであれば、熱反応性化合物はエチレングリコール、即ちHO-CH2-CH2-OHであり得、骨格が-CH2-CH2-となる。
化合物の骨格が繰り返し化学単位を含む場合、化合物は、本明細書ではマクロマーと称し得る。例えば、少量のエチレングリコール(開始剤と称する)と主要量のヒドロキシル酸又は等価物、例えば乳酸又はラクチドとの反応により、エチレングリコール開始剤の両端から伸びる2つのポリラクチド(繰り返しラクチド単位)を有し、且つポリラクチド鎖の2つの終端のそれぞれにヒドロキシル基を有する化合物が得られる。一態様では、本開示の組成物は、光化学反応性成分としてのマクロマー及び/又は熱反応性成分としてのマクロマーを含む。
2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物は、本開示の例示的な熱反応性化合物である。そのようなヒドロキシル含有化合物は、エポキシド基又はイソシアネート基などの相補的官能基を有する化合物と熱的に反応する。従って、本開示の組成物は、2つ以上のヒドロキシル基を有する第1の化合物と、ヒドロキシル基と熱的に反応する2つ以上の官能基を有する第2の化合物とを有し得る。一態様では、ヒドロキシル基は求核基の一例であり、エポキシドは求電子基の一例である。従って一態様では、本開示の熱反応性組成物は、2つ以上の求核基を有する化合物と2つ以上の求電子基を有する化合物とを含むと言い表し得る。
ヒドロキシル含有化合物は、本明細書に開示する熱硬化性組成物において有用である化合物であることに加えて、光反応性化合物を調製するのに有用な出発物質でもある。例えば、本明細書に開示するように、ヒドロキシル基はチオール含有基に変換され得る。更に、ヒドロキシル基はエチレン性不飽和部分を有する基に変換され得る。従って、本明細書に開示するヒドロキシル含有化合物の骨格は、本明細書に開示する組成物中の光化学反応性化合物の骨格又は骨格の一部としても存在し得る。当然のことながら、本開示が、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を提供する場合、同時に本開示は、そのヒドロキシル含有化合物の骨格が、任意で、本開示の光化学反応性化合物中に存在することを提供する。
【0016】
ポリΔ化合物
一態様では、本開示は、本明細書でポリΔ1及びポリΔ2と表される2つのポリΔ化合物を含む組成物を提供する。化合物ポリΔ1は複数の(故に用語「ポリ」)Δ1基を有し、Δ1基はΔ2基と熱的に反応する。化合物ポリΔ2は複数のΔ2基を有し、Δ2基はΔ1基と熱的に反応する。ポリΔ1とポリΔ2はそれぞれ有機化合物である。用語「熱的に反応」は、Δ1とΔ2を互いに反応させるために、ポリΔ1とポリΔ2を含む組成物に熱を加える必要があることを意味する。室温、即ち約22℃で触媒が存在しない場合、Δ1とΔ2はかなりの程度まで互いに反応することはない。一実施形態では、本開示の組成物は、熱反応速度を高める触媒を含まない。反応すると、Δ1とΔ2は1つ又は複数の共有結合を形成するため、ポリΔ1とポリΔ2は、ポリマーネットワーク、任意で架橋ポリマーネットワークの一部となる。
一態様では、多価化合物(ポリオールとも称する)はポリΔ化合物である。例えば、アルキレン基を有する脂肪族ポリオールはポリΔとして使用し得る。例示的なアルキレン基に、エチレン、プロピレン(分岐又は直鎖)、ブチレン(分岐又は直鎖)、ヘキシレン(分岐、直鎖、又は環状)、及びオクチレン(分岐、直鎖、又は環状)がある。架橋が所望される時に使用し得る、2つより多くのヒドロキシル基を有する例示的なポリオールに、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,2,4-ブタントリオール、及び2,3,4-ペンタントリオールがある。
【0017】
一態様では、芳香族ジオールはポリΔとして使用し得る。例として、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びこれらの反応生成物、例えばレゾルシノールとエチレンカーボネートの反応生成物がある。他の好適な芳香族ジオールに、ビスフェノールA及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルがある。
一態様では、ポリエーテルジオールはポリΔ化合物として使用し得る。ポリエーテルジオールは、ポリオキシアルキレンセグメント、即ちポリエーテルセグメントを硬化組成物に導入する。ポリエーテルジオールは、オキシアルキレン基のホモポリマー、又は2種類のオキシアルキレン基のコポリマーを含み得る。コポリマーはランダム又はブロックコポリマー、例えばジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーであり得る。例示的なオキシアルキレン部分に、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン、及びオキシテトラメチレンがある。
一態様では、ポリカーボネートジオールはポリΔとして使用し得る。例として、トリメチレンカーボネート、ポリ(ヘキサメチレンカルボネート)ジオール、ポリ(エチレンカルボネート)ジオール、ポリ(プロピレンカルボネート)ジオール、及びポリ(ブチレンカルボネート)ジオールがある。
【0018】
例示的なポリΔマクロマーは、多軸中心核(CC)、及び繰り返し単位を有する2~4個のアームを有し得る。そのようなポリΔマクロマーは、本明細書では多軸マクロマーと称し得る。一実施形態では、アームのうち少なくとも2個は、求核基、例えばヒドロキシル基又はアミン基で終止する。一態様では、繰り返し単位は全て同じであり、即ちアームはホモポリマーである。一態様では、繰り返し単位は全てが同じわけではなく、即ちアームはコポリマーである。コポリマーはランダム又はブロックコポリマーであり得る。例えば、後述するように、アームは中心核から伸びる式(A)-(B)又は(B)-(A)を有し得る。アームは生分解性又は非生分解性であり得る。
一態様では、アームはエステル基を含み、またアームはポリエステルであると言い得る。エステル基を形成するために、アームは全部又は一部をヒドロキシ酸又は等価物から作製し得る。例示的なヒドロキシ酸及び等価物には、グリコール酸(及びその等価物、グリコリド)、乳酸(及びその等価物、ラクチド)、ε-カプロラクトン(C)、並びにp-ジオキサノンがある。一態様では、アームは全て同じモノマーから形成されるため、多軸マクロマーはホモポリマーアームを有する。一態様では、アームはカーボネート基を含み得る。カーボネート基を形成するために、アームは全部又は一部をトリメチレンカーボネート(本明細書では「T」とも表される)から作製し得る。
【0019】
一態様では、ポリΔ化合物は、中心核と、中心核から伸びる複数の、例えば2~4個のコポリマーアームとを有する多軸マクロマーであり得、各アームが熱反応性基、例えばヒドロキシル基で終わる(即ち終止する)。化合物は式CC-[アームΔ]nによって表し得、式中、CCは中心核を、nは2~18、又は2~14、又は2~8、又は2~6、又は2~4の範囲内の数から選択される。各アームは、2個の基から選択されるモノマーの重合によって形成され、2個の基は基A及び基Bと表される。従って、より具体的には、本開示の化合物において、CC-[アームΔ]nは、CC-[(A)p-(B)q-OH]n又はCC-[(B)q-(A)p-OH]nと書き得、(A)p-(B)qと(B)q-(A)pはそれぞれアームを表す。任意で、アームの末端官能基を示し得、例示的な末端官能基はヒドロキシルである。式中、Aは、トリメチレンカーボネート(T又はTMC)及びカプロラクトン(C又はCAP)を含む、また任意でこれらのみから選択される1つ又は複数のモノマーの重合生成物を表し、pは、重合生成物Aを形成するために重合したモノマーの数を表し、またpは、1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。式中、Bは、グリコリド(G又はGLY)、ラクチド(L又はLAC)、及びp-ジオキサノン(D又はDOX)を含む、また任意でこれらのみから選択される1つ又は複数のモノマーの重合生成物を表し、qは、重合生成物Bを形成するために重合したモノマーの数を表し、またqは、1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。
【0020】
例えば、式CC-[アームΔ]nの化合物が三官能性中心核から形成され、AがCCに添加された後にBが添加される場合、式CC-[アームΔ]nの化合物はCC-[(A)p-(B)q-OH]3と書き得る。この例で、Aが2つのTと1つのCの重合によって形成される場合、pは3となり、Aは、各アーム内で独立的にTTT、TTC、TCT、TCC、CCC、CCT、CTC、及びCTTから選択される。この例で続けると、Bが1つのGの重合によって形成される場合、qは1となり、BはGとなる。この例で、各アームは、TTTG、TTCG、TCTG、TCCG、CCCG、CCTG、CTCG、及びCTTGから選択される化学式を有することになる。この例示的な化合物は、CC-[アームΔ]3と書き得、各アームは独立的にTTTG-OH、TTCG-OH、TCTG-OH、TCCG-OH、CCCG-OH、CCTG-OH、CTCG-OH、及びCTTG-OHから選択され、又は別法としてCC-[(T,T,C)-(G)-OH]3若しくはCC-[(T,T,C)3-(G)1-OH]3と書き得る。
一態様では、本開示は、二官能性中心核と、中心核から伸びる2個のアームとを有する化合物を含む組成物を提供し、各アームがヒドロキシル基で終止する。一実施形態では、本開示は、三官能性中心核と、中心核から伸びる2又は3個のアームとを含む化合物を有する組成物を提供し、各アームがヒドロキシル基で終止する。一実施形態では、本開示は、四官能性中心核と、中心核から伸びる2又は3又は4個のアームとを含む化合物を有する組成物を提供し、各アームがヒドロキシル基で終止する。化合物中の各アームはホモポリマー又はコポリマーであり得、コポリマーの場合、ランダムコポリマー又はブロックコポリマー、例えば式(A)-(B)又は(B)-(A)で表されるブロックコポリマーあり得る。中心核と基Aのモノマーを反応させ、次いで、その反応生成物と、基Bから選択される1つ又は複数のモノマーとを反応させて化合物を作製すると、化合物は式CC-[(A)-(B)-OH]を有する。しかしながら、中心核と基Bのモノマーを反応させ、次いで、その反応生成物と、基Aから選択される1つ又は複数のモノマーとを反応させて組成物を作製すると、化合物は式CC-[(B)-(A)-OH]を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、マクロマーの分子量は250,000Da未満、又は200,000Da未満、又は150,000Da未満、又は100,000Da未満、又は50,000Da未満、又は25,000Da未満、又は20,000Da未満、又は15,000Da未満、又は10,000Da未満、又は9,000Da未満、又は8,000Da未満、又は7,000Da未満、又は6,000Da未満、又は5,000Da未満、又は1,000Da未満となる。
いくつかの実施形態では、組成物中に存在する多軸マクロマーは全て同じ中心核を持つ。例えば組成物のマクロマー成分は全て、トリメチロールプロパン又はペンタエリトリトールから作製される。しかしながら一態様では、本開示の組成物は多軸マクロマー成分の混合物を含有し、例えば一部のマクロマー成分は3軸で、例えばトリメチロールプロパンから作られ、同じ組成物の他のマクロマー成分は4軸で、例えばペンタエリトリトールから作られる。
いくつかの実施形態では、本開示の多軸マクロマーのアームは比較的短く、例えば1アーム当たりモノマー残基が1~10個である。本明細書において、モノマー残基とは、モノマーの重合生成物、即ちそのモノマーがポリマーに組み込まれ、そのためそのポリマー中にモノマー残基をもたらした後にモノマーが有する構造を指す。一実施形態では、本開示の化合物を付加印刷に使用する場合、これらの化合物は流体状態、即ち化合物自体が流体であるか、又は化合物を溶剤及び/若しくは希釈剤に溶解して流体組成物になるものとする。アームが長すぎると、通常、化合物を含有する組成物の粘度が過度に高くなり、組成物に大量の溶剤又は希釈剤を含有させて化合物を希釈しない限り、SLAなどの付加印刷では実用的でなく、またその場合、付加印刷工程で、望ましくない大量の溶剤の使用が必要となり得る。有利には、アームが比較的短い場合、化合物自体は付加印刷工程の適用温度で流体であり得る。ある態様では、適用温度は室温、即ち約18~約23℃であり、組成物はこの温度で液体である。
【0022】
任意の実施形態では、本開示の化合物及びそのような化合物を含有する組成物は、多軸マクロマーのA領域(ブロックとも称する)を特徴付ける以下の特徴の1つ又は複数によって説明できる:トリメチレンカーボネート(TMC又はT)から形成された残基、即ちTMCの重合生成物又は残基を含むブロックAを有する;カプロラクトン(CAP又はC)から形成された残基を含むブロックAを有する;TMCとCAPの両方から形成された残基を含むブロックAを有する;ブロックA中の残基の少なくとも90%が、TMC又はCAPから形成された残基である;化合物が、TMCから形成された1~45個又は2~45個の残基を含む;化合物が、TMCから形成された1~15個又は2~15個の残基を含む;化合物が、TMCから形成された1~10個又は2~10個の残基を含む;領域Aの分子量が102~2500g/モルである;領域Aの分子量が102~1000g/モルである;領域Aの分子量が102~900g/モルである;各A領域が2~45個のモノマー残基を含む;各A領域が2~15個のモノマー残基を含む;各A領域が2~10個のモノマー残基を含む。
任意の実施形態では、本開示の化合物及びそのような化合物を含有する組成物は、多軸マクロマーのBブロック(領域とも称する)を特徴付ける以下の特徴の1つ又は複数によって説明できる:各Bブロックが1~45個又は2~45個のモノマー残基を含む;各Bブロックが1~15個又は2~15個のモノマー残基を含む;各Bブロックが1~10個又は2~10個のモノマー残基を含む。
【0023】
一態様では、ポリアミンはポリΔ化合物である。例えば、アルキレン基を有する脂肪族ポリアミンはポリΔとして使用し得る。例示的なアルキレン基に、エチレン、プロピレン(分岐又は直鎖)、ブチレン(分岐又は直鎖)、ヘキシレン(分岐、直鎖、又は環状)、及びオクチレン(分岐、直鎖、又は環状)がある。2つより多くのアミン基を有する例示的なポリアミンに、ポリプロピレンイミンテトラアミン(Dab-Am-4としても知られる)及びトリエチレンテトラミンがある。Huntsman社は2つより多くのアミン基を有する多くの好適なポリアミン、例えばポリエーテルトリアミン(Huntsman社製品XTJ-566)、JEFFAMINE(登録商標)ST-404ポリエーテルアミン(Huntsman社製品XTJ-586)、及びJEFFAMINE(登録商標)T-403ポリエーテルアミンを販売している。
一態様では、芳香族ジアミンはポリΔとして使用し得る。例として、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、トルエンジアミン(例えば、1,2-ジアミノ-3-メチルベンゼン、1,2-ジアミノ-4-メチルベンゼン、1,3-ジアミノ-2-メチルベンゼン、1,3-ジアミノ-4-メチルベンゼン、1,4-ジアミノ-2-メチルベンゼン、1,4-ジアミノ-3-メチルベンゼン)、アルキル置換トルエンジアミン(例えば、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン及び3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン)、並びにp-キシリレンジアミンがある。
一態様では、ポリエーテルジアミンはポリΔ化合物として使用し得る。ポリエーテルジアミンがジイソシアネート含有ポリΔと反応すると、ポリエーテル尿素部分が得られる。ポリエーテルジアミンはオキシアルキレン基のホモポリマー、又は2つの異なるオキシアルキレン基のコポリマーを含み得る。コポリマーはランダム又はブロックコポリマー、例えばジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーであり得る。例示的なオキシアルキレン部分に、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン、及びオキシテトラメチレンがある。
【0024】
一態様では、ポリイソシアネートはポリΔ化合物である。例示的なポリイソシアネート化合物は、限定することなく、テトラメチレンジイソシアネート、l-リジンジイソシアネート、リジンエチルエステルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及びシクロヘキサンビス-(メチレンイソシアネート)などの脂肪族ポリイソシアネートである。別の例示的なポリイソシアネート化合物は、限定することなく、4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートである。
一態様では、ポリイソシアネートポリΔは複数のイソシアネート基を有するマクロマーである。そのようなマクロマーは本明細書ではポリイソシアネートマクロマーと称し得る。ポリイソシアネートマクロマーは、ポリ水酸化マクロマーとジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートとの反応によって、対応するポリ水酸化マクロマーから調製し得る。
例示的なポリイソシアネートマクロマーは、ジイソシアネート、及びジアミンとジオールの一方又は両方、例えばポリエーテルジアミン又はポリエーテルジオールを含む、又はこれらからなる反応物の反応生成物である。そのようなポリイソシアネートマクロマーは、追加のポリアミン及び/又は多価化合物と反応する末端イソシアネート基を有する。例えば、ジイソシアネートを使用して、ジアミン又はジオールとの反応によってマクロマーを形成し、末端イソシアネート基を有するポリΔ化合物(例えばポリΔ2化合物)をもたらし得る。次いで、このポリΔ2ポリイソシアネートマクロマーを、追加のジアミン又はジオール(ポリΔ1化合物)と熱的に反応させ、本開示の組成物中に熱硬化ポリマーを形成し得る。
【0025】
一態様では、本開示は、ポリイソシアネート、例えばジイソシアネートと、ポリオール、例えばポリエーテルジオールなどのジオールとの反応生成物であるポリイソシアネートマクロマーを提供する。任意で、以下のうちいずれか1つ又は複数を使用して、このポリイソシアネートマクロマー及びその調製品を更に説明し得る:ポリオールはジオールであり、且つポリイソシアネートはジイソシアネートであり、ジオールは、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン、及びオキシテトラメチレン配列からなる群から選択される少なくとも1種類のオキシアルキレン配列を含むポリエーテルジオールであり得;ポリオールは、アルキレン基を有する脂肪族ポリオールであり得、例示的なアルキレン基に、エチレン、プロピレン(分岐又は直鎖)、ブチレン(分岐又は直鎖)、ヘキシレン(分岐、直鎖、又は環状)、及びオクチレン(分岐、直鎖、又は環状)がある。架橋が所望される場合に使用し得る、2つより多くのヒドロキシル基を有する例示的なポリオールに、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,2,4-ブタントリオール、及び2,3,4-ペンタントリオールがある。ポリオールは芳香族ジオールであり得、例として、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びこれらの反応生成物、例えばレゾルシノールとエチレンカーボネートの反応生成物がある。他の好適な芳香族ジオールに、ビスフェノールA及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルがある。
【0026】
一態様では、ポリイソシアネート、例えばジイソシアネートと、ポリオール、例えばポリエーテルジオールなどのジオールとの反応生成物であるポリイソシアネートマクロマーは、ポリアミンなどのポリΔ1化合物と反応させ得るポリΔ2化合物をもたらす。反応生成物は、それを形成し得る反応物に関してではなく、その構造成分に関して説明し得る。一態様では、ポリマー鎖は、(脂肪族ジアミンによる)脂肪族基及び(マクロマーによる)ポリマーブロックによって交互に分離されている複数の尿素基を有するポリ尿素である。即ち、構造は-[尿素-脂肪族-尿素-ポリマーブロック]-単位を繰り返すことによって説明し得る。ポリマーブロックは、別法として(ジイソシアネートによる)脂肪族基及びポリエーテル基によって分離されている複数のウレタン(カルバメートとしても知られる)基を有するポリウレタンである。即ち、ポリマーブロックの構造は-[ウレタン-脂肪族-ウレタン-ポリエーテル]-単位を繰り返すことによって説明し得る。ポリエーテルセグメントは、任意でオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン、及びオキシテトラメチレンから選択し得、一実施形態では、ポリマー鎖はこれらのポリエーテルセグメントを2つ以上含有し、例えば、ポリマーはオキシエチレン、オキシプロピレン、及びオキシテトラメチレン基を含有し、任意で、オキシエチレン及びオキシプロピレンはブロックコポリマー配列(例えば、オキシエチレンブロック-オキシプロピレンブロック-オキシエチレンブロック)に配列されている。ポリマーブロックはポリエーテルポリウレタンとも称し得、ポリマー自体はポリエーテルウレタン尿素と称し得る。
組成物がポリΔ化合物として、例えばポリΔ2としてポリイソシアネートを含む場合、組成物は、ポリイソシアネートと反応する化合物、即ち多価化合物などのポリΔ1化合物も含むことになり、ポリイソシアネートと多価化合物の反応によりウレタン基が生成される。イソシアネート反応性基の別の例はアミン基であることから、組成物がポリΔ2としてポリイソシアネートを含有する場合、組成物はポリΔ1としてポリアミン化合物も含み得、ポリイソシアネートとポリアミンの反応により尿素基が生成される。
【0027】
一態様では、ポリΔ化合物はポリエポキシドである。例示的なポリエポキシドに、限定することなく、ジエポキシド、トリエポキシド、及びテトラエポキシドがある。一態様では、ポリΔ2はジエポキシドである。例示的なポリエポキシドに、ジエポキシブタン(ブタンジエポキシド、ブタジエンジエポキシド、又は1,2:3,4-ジエポキシブタンとしても知られる);1,2,7,8-ジエポキシオクタン;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル;分子量が約500~約6,000のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル;及び分子量が約500~約6,000のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルがある。
本開示はポリΔ化合物を提供し、Δはヒドロキシルである。そのような化合物は、ポリΔ化合物に変換し得、Δは、本開示のポリエポキシド化合物を提供するためのエポキシである。例えば、ポリヒドロキシル化合物を過剰当量のエピクロロヒドリンと反応させ、次いで水酸化ナトリウムなどの塩基で処理して、ヒドロキシル基をエポキシ基に変換し得る。
【0028】
ある態様では、Δ1は求核基である。一実施形態では、ポリΔ1は複数のヒドロキシル(-OH)基を有する。一実施形態では、ポリΔ1は複数のアミン(-NH2)基を有する。ある実施形態では、ポリΔ1はそれ自体と反応しない。ある実施形態では、ポリΔ1上に存在する唯一の反応性基がΔ1基であり、Δ1基は全て同じ、例えば全てヒドロキシル基である。ある実施形態では、ポリΔ1は2個のΔ1基を有する。ある実施形態では、ポリΔ1は3個のΔ1基を有する。ある実施形態では、ポリΔ1は4個のΔ1基を有する。ある実施形態では、ポリΔ1は5個以上のΔ1基を有する。他の全ての要素は同じであり、ポリΔ1の一部として存在するΔ1基が多いほど、ポリΔ1を含む組成物から生じる架橋が多くなる。
一態様では、Δ2は求電子基である。一実施形態では、ポリΔ2は複数のエポキシド(-CH(O)CH-)基を有する。一実施形態では、ポリΔ2は複数のイソシアネート(-N=C=O)基を有する。ある実施形態では、ポリΔ2はそれ自体と反応しない。ある実施形態では、ポリΔ2上に存在する唯一の反応性基がΔ2基であり、Δ2基は全て同じ、例えば全てイソシアネート基である。ある実施形態では、ポリΔ2は2個のΔ2基を有する。ある実施形態では、ポリΔ2は3個のΔ2基を有する。ある実施形態では、ポリΔ2は4個のΔ2基を有する。ある実施形態では、ポリΔ2は5個以上のΔ2基を有する。他の全ての要素は同じであり、ポリΔ2の一部として存在するΔ2基が多いほど、ポリΔ2を含む組成物から生じる架橋が多くなる。
【0029】
一態様では、ポリΔ1はポリヒドロキシル化合物であり、ポリΔ2はポリエポキシドである。
一態様では、ポリΔ1はポリヒドロキシル化合物であり、ポリΔ2はポリイソシアネートである。
一態様では、ポリΔ1はポリアミン化合物であり、ポリΔ2はポリエポキシドである。
一態様では、ポリΔ1はポリアミン化合物であり、ポリΔ2はポリイソシアネートである。
一態様では、ポリΔ1はポリチオール化合物であり、ポリΔ2はポリエポキシドである。
一態様では、ポリΔ1はポリチオール化合物であり、ポリΔ2はポリイソシアネートである。
一態様では、本開示の組成物は光開始剤を含む。
【0030】
ポリhν化合物
本開示のポリhν化合物は複数の光重合性基hνを含有する。例示的な光重合性基はエチレン性不飽和基であり、エチレン性不飽和基を有する例示的なポリhν化合物はポリEUと表され得る。別の例示的な光重合性基はチオール基であり、チオール基を有する例示的なポリhν化合物はポリSHと表され得る。
一態様では、本開示は本明細書で説明するマルチアーム化合物を提供し、アームはhν基で終止し、hν基は光重合性である。一実施形態では、例示的なhν基は、光重合性であるチオール基を含有し得る。一実施形態では、例示的なhν基は、光重合性である炭素-炭素二重結合を含有し得、例えばアームは、アクリレート又はメチアクリレート(methyacrylate)基中に存在するようなビニル基を含み得、それぞれが光重合性炭素-炭素二重結合を有する。
光重合性成分、例えば光重合性チオール又は炭素-炭素二重結合を含有するhν基は、末端ヒドロキシル基を適切な試薬と反応させることにより、本明細書で説明するマルチアーム化合物に導入し得る。ヒドロキシル基をチオール含有基又は炭素-炭素二重結合含有基に変換する方法は一般に知られており、本開示の化合物を調製するのに活用し得、例を本明細書に示す。
hν基は、光反応性基、特にhν含有マクロマーの重合を可能にする光反応性基を含有する一方で、光反応性基、例えば本明細書で説明する炭素-炭素二重結合に隣接するカルボニル基の光反応性に影響を及ぼす原子、及び/又は光反応性基をマクロマーに導入するのに使用された原子も追加的に含有し得、例えばコハク酸エステルは、本明細書で説明するように、チオール基を導入するのに使用し得る。
【0031】
例えば、ヒドロキシル基を、光重合性炭素-炭素二重結合を含有するhν基(ポリEU)に変換するために、本明細書で説明する末端ヒドロキシル基を有するマルチアーム化合物を、反応性アクリレート、メタクリレート、又はノルボルネニル化合物、例えばメタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、塩化メタクリロイル、又は塩化アクリロイルと反応させ得る。
例えば、ヒドロキシル基を、光重合性チオール基を含有するhν基(ポリSH)に変換するために、本明細書に開示する末端ヒドロキシル基を有するマルチアーム化合物を、エステル化反応させ得る。エステル化の1つの方法は、カルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)及び触媒(例えば、ジメチルアミノピリジン)の存在下で、化学量論的量のマクロマー及びメルカプトカルボキシル酸化合物を添加することである。例示的なメルカプトカルボキシル酸に以下の化合物があるが、これらに限定されない:3-メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸、チオグリコール酸、メルカプトブタン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプトオクタン酸、及びn-アセチルシステイン。例えば、本明細書に開示する末端ヒドロキシル基を有するマルチアーム化合物は、チオ乳酸と反応させ得、この場合、得られるQ基は、マルチアーム化合物の末端酸素に結合した式-C(=O)-CH2-SHを有する。
【0032】
チオール官能化マクロマー(ポリSH)を形成する別の例示的な方法は、対応するヒドロキシル末端マクロマーを最初に修飾し、末端カルボン酸基を形成することである。これの一例は、ヒドロキシル末端マクロマーと無水コハク酸を反応させることである。末端カルボン酸基があると、マクロマーは、エステル化反応によってメルカプトアルコールと、又はメルカプトアミンと反応して、アミド結合を形成することができる。メルカプトアルコールのいくつかの例に、メルカプトプロパノール、メルカプトヘキサノール、メルカプトオクタノール、及びメルカプトウンデカノールがあるがこれらに限定されない。メルカプトアミンのいくつかの例に、システイン、グルタチオン、6-アミノ-1-ヘキサンチオール塩酸塩、8-アミノ-1-オクタンチオール塩酸塩、及び16-アミノ-1-ヘキサデカンチオール塩酸塩があるがこれらに限定されない。例えば、本明細書に開示する末端ヒドロキシル基を有するマルチアーム化合物は、無水コハク酸と反応させて中間体を形成し得、次いでこれをシステインと反応させて末端チオール基を導入する。この場合、ポリSH化合物は、マルチアーム化合物の末端酸素に結合した式-C(=O)CH2CH2C(=O)NH-C(COOH)-CH2SHを有する部分を含む。
チオール官能化マクロマーポリSHを形成する更に別の方法は、末端ヒドロキシル基を有するマクロマーを、ペンダントチオール基を有するラクトンモノマーと反応させることである。これは、第3のステップの開環重合で生じる。
【0033】
一態様では、ポリSH化合物はチオマーとして知られるマクロマーである。いくつかの態様では、チオール化合物は、少なくとも2個の自由チオール基を含むマルチアームポリ(エチレングリコール)(PEG)、又は少なくとも2個の自由チオール基を含むマルチアームポリ(エチレンオキシド)である。例示的なチオマーに、限定することなく、4アームPEG2K-SH、4アームPEGSK-SH、4アームPEG10K-SH、4アームPEG20K-SH、4アームポリ(エチレンオキシド)チオール末端、8アームPEG10K-SH(ヘキサグリセロールコア)、8アームPEG10K-SH(トリペンタエリトリトールコア)、8アームPEG20K-SH(ヘキサグリセロールコア)、8アームPEG20K-SH(トリペンタエリトリトールコア)、及び8アームポリ(エチレンオキシド)チオール末端がある。これらのチオマーはMillipore Sigma(旧Sigma Aldrich)から入手可能である。
一態様では、ポリSHはマクロマーではないが、代わりに、分子量が1000ダルトン未満の小分子である。任意で、小分子のポリSHは水溶性であり得る。そのようなポリSH化合物の例に、ジチオール化合物、トリチオール化合物、及びテトラチオール化合物がある。例示的なポリSH化合物に、限定することなく、ジチオスレイトール(DTT);1,2-エタンジチオール;1,3-プロパンジチオール;1,4-ブタンジチオール;1,5-ペンタンジチオール;1,6-ヘキサンジチオール;1,7-ヘプタンジチオール;1,8-オクタンジチオール;1,9-ノナンジチオール;1,10-デカンジチオール;1,11-ウンデカンジチオール;1,12-ドデカンジチオール;1,13-トリデカンジチオール;1,14-テトラデカンジチオール;1,16-ヘキサデカンジチオール;ジチオールブチルアミン(DTBA);テトラ(エチレングリコール)ジチオール;ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール;2-メルカプトエチルエーテル;2,2’-チオジエタンチオール;2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール;プロパン-1,2,3-トリチオール;トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセタート);トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトアセタート);ペンタエリスリチルテトラチオール;ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート);1,2-ジチアン-4,5-ジオール;リポ酸(α-リポ酸及びβ-リポ酸);3H-1,2-ジチオール;3-プロピル-1,2-ジチオラン;3-アセチル-1,2-ジチオラン;1,2-ジチオラン-4-カルボン酸;1,2-ジチオラン-3-ペンタノール;1,2,4-ジチアゾリジン;1,2-ジチアン;1,2-ジチエパン;1,2-ジチオカン;及び1,2-ジチオカン-3,8-ジオールがある。
【0034】
光開始剤
光開始剤は、放射線に曝露されると反応種を生成する有機(炭素含有の)分子を指す。一実施形態では、光開始剤は、例えばカチオン又はアニオン反応種とは対照的にラジカル反応種を生成する。光重合開始剤は、光硬化性コーティング剤、接着剤、及び歯科用修復剤に使用されるフォトポリマーを調製するための成分としてよく知られている。
タイプI光開始剤は単分子のフリーラジカル発生剤である。つまり紫外・可視光を吸収すると、開始剤の構造中の特定の結合がホモリシス開裂を起こし、フリーラジカルが生成される。ホモリシス開裂とは、フリーラジカル生成物に至る結合電子対の均等分裂である。タイプI光開始剤のいくつかの一般的なクラスにおけるホモリシス開裂の例に、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシ-アセト-フェノン、α-ヒドロキシ-アルキル-フェノン、及びアルキルホスフィンオキシドがある。例示的な市販のタイプI光開始剤(例えばBASF、BASF SE、ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンから入手可能)に、Irgacure(登録商標)369、Irgacure(登録商標)379、Irgacure(登録商標)907、Darocur(登録商標)1173、Irgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)2959、Darocur(登録商標)4265、Irgacure(登録商標)2022、Irgacure(登録商標)500、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)819-DW、Irgacure(登録商標)2100、Lucirin(登録商標)TPO、Lucirin(登録商標)TPO-L、Irgacure(登録商標)651、Darocur(登録商標)BP、Irgacure(登録商標)250、Irgacure(登録商標)270、Irgacure(登録商標)290、Irgacure(登録商標)784、Darocur(登録商標)MBF、Ivocerin、およびIrgacure(登録商標)754、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸マグネシウム、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウムがあるがこれらに限定されない。
【0035】
タイプII光開始剤は、光開始剤に加えて共開始剤、つまり水素を容易に引き抜ける官能基(通常はアルコール又はアミン)を必要とする。タイプII光開始剤が紫外・可視光を吸収すると、光開始剤で励起電子状態が生じ、これにより共開始剤から水素が引き抜かれ、この過程で結合電子対が開裂する。ベンゾフェノン、チオキサントン、及びベンゾフェノン系光開始剤は、最も一般的なタイプII光開始剤である。ある程度一般的なタイプII光開始剤の更なる例に、リボフラビン、エオシンY、フルオレセイン、ローズベンガル、及びカンファーキノンがある。フリーラジカルが生成されると、重合機構はどのフリーラジカル重合工程でも類似している。
任意で、本開示の組成物は、少なくとも1つの光開始剤成分を、光反応性化合物の総質量に対して2質量%未満、又は1.5質量%未満、又は1質量%未満、又は0.9質量%未満、又は0.8質量%未満、又は0.7質量%未満、又は0.6質量%未満、又は0.5質量%未満、又は0.25質量%未満、又は0.1質量%未満の総濃度で含む。
【0036】
任意成分
本開示の組成物は、任意成分、例えば1つ、2つ、又は複数の任意成分を含有し得る。例示的な任意成分を本明細書で説明する。
一態様では、染料などの着色剤が、本開示の組成物及び対応する硬化物に含まれ得る。染料の添加によって、配合物を所望の色に合わせる目的を達成できる。一態様では、染料は非毒性生体適合性染料である。そのような染料は、組成物の総質量に対して約2質量%以下の濃度で存在し得る。例えば国際出願PCT/US2016/059910号明細書を参照されたい。なお、染料の使用に関する同出願の教示は本明細書に援用される。一実施形態では、染料は、吸収性縫合糸製品中に染料D&C Violetが存在する場合のFDA(U. S.Food and Drug Administration、米国食品医薬品局)推奨量である約0.1~0.3質量%の濃度で存在する。一実施形態では、染料は0.5質量%未満の濃度で存在する。場合によっては、染料が過度に高濃度で存在すると、本開示の光重合性組成物に毒性が付与され得る。
【0037】
一態様では、光反射性材料を含む光反射性材料成分は組成物中に懸濁し得、光反射性材料成分は、光反射性材料を含まない組成物の光線量と比べて、組成物の光線量を調節する。本開示の組成物に任意で含めるための好適な光反射性材料は、Methods and Compositions for Photopolymerizable Additive Manufacturingという名称で2018年4月6日に発明者をM.A.Vaughn及びP.Sainiとして出願人Poly-Med,Inc.が出願した米国仮特許出願第62/653584号で提供されており、同出願はその全体が本明細書に援用される。
好適な光反射性材料は、紫外線、可視光線、又はその両方を反射する光反射性材料を含む。例えば光反射性材料は、サイズが500ミクロン未満、又は30ミクロン未満、又は5ミクロン未満、又は1ミクロン未満の粒状の光反射性材料であり得る、又はこれを含み得る。光反射性材料は、例えば球、立方体、円錐、直方体、円柱、ピラミッド、プリズム、多面体、若しくは不規則な形状、又はこれらの混合物として成形され得る。一態様では、光反射性材料は滑らかな表面を有する。
【0038】
ある態様では、光反射性材料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸一カルシウム、二リン酸二カルシウム、三リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、アパタイト、及びリン酸四カルシウムを含むがこれらに限定されない無機固体を含み得る。ある態様では、光反射性材料は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ酸無水物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、及びポリヒドロキシアルカノエート、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない脂肪族ポリマー及びコポリマーを含む有機化合物を含み得る。ある態様では、光反射性材料は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ酸無水物、ポリケトン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びポリイミド、又は組み合わせを含むがこれらに限定されない芳香族ポリマー及びコポリマーを含む有機化合物を含み得る。ある態様では、光反射性材料は、シクロデキストリン、デンプン、ヒアルロン酸、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、マルトヘキサオース、キトヘキサオース、アガロース、キチン50、アミロース、グルカン、ヘパリン、キシラン、ペクチン、ガラクタン、グリコサミノグリカン、デキストラン、アミノ化デキストラン、セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、フコイダン、コンドロイチン硫酸、硫酸多糖類、ムコ多糖類、ゼラチン、ゼイン、コラーゲン、アルギン酸、寒天、カラギナン、グアーガム、アラビアゴム、ガティガム、カラヤガム、コンニャクガム、タマリンドガム、タラガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、ペクチン、及びキサンタンガムを含むがこれらに限定されない天然由来ポリマー及び誘導体を含む有機化合物を含み得る。ある態様では、光反射性材料は、結晶性脂肪族及び芳香族ポリマーを含む結晶性有機化合物を含み得る。ある態様では、光反射性材料は、結晶性天然由来ポリマー及び誘導体を含む結晶性有機化合物を含み得る。ある態様では、光反射性材料は結晶性アミノ酸及びこれらの誘導体を含み得る。ある態様では、光反射性材料は、パルミチン酸、パルミチン酸アスコルビル、ラウリン酸、モノラウリン酸グリセロール、ミリスチン酸、及びカプリン酸を含むがこれらに限定されない結晶性脂肪酸及びこれらの誘導体を含み得る。ある態様では、光反射性材料は結晶性ペプチドを含み得る。
一態様では、本開示の組成物は希釈剤を含有し得る。希釈剤は反応性又は非反応性であり得る。反応性希釈剤は光(紫外線又は可視光線)に曝露されると光重合反応を起こすのに対し、非反応性希釈剤はそのような光曝露に対して不活性である。例示的な反応性希釈剤はPEG-ジアクリレート(PEG-DA又はPEGDA)である。
【0039】
一態様では、生物活性剤が、本開示の組成物及び対応する硬化物に含有され得る。そのような生物活性剤の例に、線維症誘発剤、抗真菌剤、抗菌剤及び抗生物質、抗炎症剤、抗瘢痕剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、防腐剤、麻酔薬、抗酸化剤、細胞/組織成長促進因子、抗腫瘍剤、抗がん剤、並びにECM組み込みを助ける薬剤があるがこれらに限定されない。
線維症誘発剤の例に、タルク粉末、金属ベリリウム及びこれらの酸化物、銅、絹、シリカ、結晶質ケイ酸塩、タルク、石英粉、並びにエタノール;フィブロネクチン、コラーゲン、フィブリン、又はフィブリノーゲンから選択される細胞外マトリックス成分;ポリリジン、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、キトサン、N-カルボキシブチルキトサン、及びRGDタンパク質からなる群から選択されるポリマー;塩化ビニル又は塩化ビニルのポリマー;シアノアクリレート及び架橋ポリ(エチレングリコール)-メチル化コラーゲンからなる群から選択される接着剤;炎症性サイトカイン(例えば、TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM-CSF、IGF-a、IL-1、IL-1β、IL-8、IL-6、及び成長ホルモン);結合組織成長因子(CTGF);骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、又はBMP-7);レプチン、並びにブレオマイシン又はこれらの類似体もしくは誘導体があるがこれらに限定されない。任意で、デバイスは、細胞増殖を刺激する増殖剤を更に含み得る。増殖剤の例に、デキサメタゾン、イソトレチノイン(13-シスレチノイン酸)、17-β-エストラジオール、エストラジオール、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3、ジエチルスチベステロール、シクロスポリンA、L-NAME、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)、並びにこれらの類似体及び誘導体を含む。例えば米国特許出願公開第2006/0240063号明細書を参照されたい。また、同出願は参照によりその全体が援用される。抗真菌剤の例に、ポリエン抗真菌剤、アゾール抗真菌剤、及びエキノキャンディンがあるがこれらに限定されない。抗菌剤及び抗生物質の例に、エリスロマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、及びマイトマイシンがあるがこれらに限定されない。抗炎症剤の例に、ケトロラク、ナプロキセン、ジクロフェナクナトリウム、及びフルルビプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤があるがこれらに限定されない。抗瘢痕剤の例に、タキサンなどの細胞周期阻害剤、セロリムス又はバイオリムスなどの免疫調節剤があるがこれらに限定されない(例えば米国特許出願公開第2005/0149158号明細書を参照されたい。同出願は参照によりその全体が援用される)。免疫抑制剤の例に、グルココルチコイド、アルキル化剤、代謝拮抗剤、並びにシクロスポリン及びタクロリムスなどのイムノフィリンに作用する薬剤があるがこれらに限定されない。免疫刺激剤の例に、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、Toll様受容体(TLR)アゴニスト、サイトカイン受容体アゴニスト、CD40アゴニスト、Fc受容体アゴニスト、CpG含有免疫刺激性核酸、補体受容体アゴニスト、又はアジュバントがあるがこれらに限定されない。防腐剤の例に、クロルヘキシジン及びヨウ化チベゾニウムがあるがこれらに限定されない。麻酔剤の例に、リドカイン、メピバカイン、ピロカイン、ブピバカイン、プリロカイン、及びエチドカインがあるがこれらに限定されない。抗酸化剤の例に、抗酸化ビタミン、カロチノイド、及びフラボノイドがあるがこれらに限定されない。細胞成長促進因子の例に、上皮成長因子、ヒト血小板由来TGF-β、内皮細胞成長因子、胸腺細胞活性化因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、フィブロネクチン、又はラミニンがあるがこれらに限定されない。抗腫瘍剤/抗がん剤の例に、パクリタキセル、カルボプラチン、ミコナゾール、レフルナミド、及びシプロフロキサシンがあるがこれらに限定されない。ECM組み込みを助ける薬剤の例にゲンタマイシンがあるがこれらに限定されない。
【0040】
本開示の組成物及び対応する硬化物は、所望の効果を得るために生物活性剤の混合物を含有し得る。従って、例えば抗菌剤及び抗炎症剤は、組み合わせて単一の物品にし、複合効果をもたらし得る。
光重合性組成物の他の任意の成分は、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、溶剤、安定剤、チキソトロピー性材料、トレーサー材料、及び導電性材料である。安定剤は、存在する場合、任意で、トコフェロール、没食子酸、没食子酸のエステル、ブチルヒドロキシアニソール及びこれらの組み合わせからなる群から選択し得る。適切な成分の添加により、本開示の光重合性組成物(例えば物品又は部品)は、染料の存在により着色され得、又は蛍光性、放射性、反射性、柔軟性、剛性、順応性、破損性、若しくはこれらの組み合わせを有するがこれらに限定されない物品の少なくとも一部を有するなどの任意の他の望ましい属性を有し得る。
【0041】
一態様では、ポリhν又はポリΔを含む本開示の組成物は、水の非存在下で、例えば水が組成物中の希釈剤でない状態で重合する。具体的には一態様では、単一若しくは二重ネットワークを形成する、又はそれ自体が単一若しくは二重ネットワークである組成物の水分量(含水率)は、2500ppm未満、又は1000ppm未満、又は500ppm未満である。一態様では、単一ネットワークをもたらす本開示の光硬化性組成物は、外来性の水以外を含有していない無水組成物である。一態様では、二重ネットワークをもたらす本開示の光硬化性及び熱硬化性組成物は、外来性の水以外を含有していない無水組成物である。本開示の無水組成物は、例えばヒドロゲルではない。
エチレン性不飽和化合物とチオール化合物の両方を含む配合物を作製する際の課題の1つは、光や熱などの刺激を加える前に室温で混合すると重合する傾向があることである。従って、粘度が一定である作業時間が短くなる可能性があり、これらの配合物の用途が大幅に制限されることがある。具体的には、液槽光重合を用いる付加製造では、これらの配合物は、時間と共に粘度が変化する問題がある。本開示では、少なくとも24時間の安定性を与え得る生体適合性安定剤について概説しており、これは液槽光重合の作業時間に対処するのに有用なはずである。ある態様では、本開示の組成物及び対応する硬化生成物に1つ又は複数の安定剤化合物が含まれ得る。
【0042】
一実施形態では、ポリ(SH)又はポリ(EU)の組成物は安定剤を含む。安定剤は、ポリ(SH)、ポリ(EU)、又はこれらの組み合わせに含まれ得る。一態様では、安定剤は添加成分である。別の態様では、安定剤は、モノマー、希釈剤、溶剤、又はこれらの組み合わせに溶解した状態で添加物として含まれる。一態様では、安定剤は抗酸化剤である。別の態様では、安定剤は酸である。好ましくは、酸性安定剤のpKaは1~5である。別の態様では、安定剤は亜リン酸塩及びホスホン酸塩化合物から選択される。別の態様では、安定剤は、抗酸化剤、酸、亜リン酸塩、ホスホン酸塩、及びこれらの組み合わせを含み得る。抗酸化安定剤の例に、ヒドロキノン、モノ-tert-ブチルヒドロキノン(MTBHQ)、2,5-ジ-tert-ブチル-ヒドロキノン(DTBHQ)、p-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチル)フェノール(MBETBP)、p-tert-ブチルカテコール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(Anox330TM、Irganox1330TM)、ヒドロキシトルエンブチルエーテル、トコフェロール(全て異性体)、トコフェロールのエステル、ピロガロール、没食子酸ラウリル、没食子酸のエステル、又はこれらの組み合わせがあるがこれらに限定されない。酸性安定剤の例に、ホスホン酸、亜リン酸、シュウ酸、コハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、フェニルホスホン酸、又はこれらの組み合わせがあり得るがこれらに限定されない。亜リン酸塩及びホスホン酸塩安定剤の例に、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、又はこれらの組み合わせがあり得るがこれらに限定されない。一態様では、安定剤はポリ(SH)及び/又はポリ(EU)配合物に溶解する。好ましくは、安定剤は生体適合性を実現する濃度で添加される。好ましくは、生体適合性安定剤は、トコフェロール、没食子酸、没食子酸のエステル、ブチルヒドロキシアニソール、又はこれらの組み合わせを含む。一態様では、安定剤の濃度は、100,000ppm未満、より好ましくは50,000ppm未満、より好ましくは15,000ppm未満、より好ましくは5,000ppm未満、より好ましくは3,000ppm、及び更により好ましくは1,500ppm未満である。
【0043】
光重合反応条件
光重合性基を含む本明細書で説明する光重合性化合物ポリhν(ポリEU及びポリSHを含む)及びそのような化合物を含む本開示の組成物は、任意で光開始剤の存在下で、更に任意で他の成分の存在下で、適切な波長の光に十分に曝露すると重合する。適切な波長の選択、曝露時間、並びに硬化剤の特性及び量の選択は、当該技術分野において従来通り、化合物及び組成物中のhν基の特性及び量を考慮して選択される。光重合は放射線硬化と呼ばれることもあり、この場合、光開始剤は硬化剤と称し得る。
ある態様では、本開示の組成物中の光開始剤成分はタイプI光開始剤を含む。ある態様では、本開示の組成物中の光開始剤成分はタイプII光開始剤を含む。ある態様では、タイプI及びタイプII光開始剤の組み合わせが、本開示の光重合組成物中に存在する。
【0044】
本明細書で説明する光重合性化合物及び組成物のいずれかにおいて、hνは炭素-炭素二重結合、例えばビニル基であり得る。例示的なビニル基はアクリレート基及びメタクリレート基である。別の例示的な炭素-炭素二重結合はノルボルネニル中に存在する。追加的な態様では、1つ又は複数のhν基を有する光重合性化合物は、例として、波長が300~450nm、又は300~425nm、又は350~450nm、又は350~425nm、又は365~405nm、又は450~550nmの光に曝露されると光重合する。一実施形態では、ポリhν化合物及び関連組成物は、紫外線放射に曝露されると光重合する。
本明細書で説明する光重合性化合物及び組成物のいずれかにおいて、hνはチオール基であり得る。追加的な態様では、1つ又は複数のSH基を有する光重合性化合物ポリSHは、例として、光、例えば波長が300~450nm、又は300~425nm、又は350~450nm、又は350~425nm、又は365~405nm、又は450~550nmの光に曝露されると光重合する。一実施形態では、ポリSH化合物及び関連組成物は、紫外線放射に曝露されると光重合する。一実施形態では、ポリSH化合物及び関連組成物は、可視光放射に曝露されると光重合する。
一態様では、本開示は、複数の光重合性チオール基を有する化合物と、複数の光重合性エチレン性不飽和基とを含む組成物を提供する。チオール基及びエチレン性不飽和基は、光開始剤の存在下で適切な化学線に曝露すると互いに反応する。化学線は、代替的に光とも称し得、組成物は光反応性と称し得る。この反応は光重合又は硬化と称し得る。
【0045】
好適な光開始剤については、本明細書の他の場所で説明している。光開始剤で光反応性組成物をうまく硬化させるには、光開始剤の吸収帯が、硬化に使用する光源の発光スペクトルと重なっている必要がある。任意で、本明細書に開示する光重合性組成物は、約10~約770nm、又は約100~約770nm、又は約200~約770nmの範囲にある波長の光、及び前述の範囲の間にある全ての波長を吸収する少なくとも1つの光開始剤を含む。ある態様では、光開始剤成分は、300nm以上で約770nm以下の波長の光を吸収する光開始剤を含む。ある態様では、光開始剤成分は、365nm以上で約770nm以下の波長の光を吸収する光開始剤を含む。ある態様では、光開始剤成分は、375nm以上で約770nm以下の波長の光を吸収する光開始剤を含む。ある態様では、光開始剤成分は、400nm以上で約770nm以下の波長の光を吸収する光開始剤を含む。本開示の光重合条件は、組成物の光重合に適した所望の波長スペクトルを提供することができ、且つ提供する発光源からの波長スペクトルへの光反応性組成物の曝露を含むことになる。波長の選択は、光開始剤の特性によって異なる。市販の光開始剤の供給者は、その特定の光開始剤に適した波長を提示している。
【0046】
フリーラジカル発生光開始剤を使用して、本開示に従ったポリマー硬化を達成し得る。これらの光開始剤を使用して、本明細書に開示するようなチオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物の混合物を硬化し得る。タイプI及びタイプII光開始剤と表される、本開示に従って使用し得る2種類のフリーラジカル発生光開始剤があるが、これらについては本明細書の他の場所で説明する。
本明細書に開示する光重合性組成物は、所望の成分を組み合わせ、通常は撹拌して組成を均質にして作製する。所望の成分はホモジナイザーを使用して混合し得る。例えば、本明細書に開示する組成物は、上述したような成分を組み合わせて調製し得る。任意で、所望の成分は懸濁に役立つ分散剤を含み得る。列挙した成分は、任意で混合前に加熱し得る。列挙した成分は、任意で真空処理して気泡を除去し得る。
ある態様では、本開示は、複数のチオール基(SH)を有する第1の有機化合物(ポリSH)、複数のエチレン性不飽和基(EU)を有する第2の有機化合物(ポリEU)、及び光開始剤を含む組成物を提供する。組成物中のポリSHとポリEUの相対量は、SH対EU当量比のX:Yで記述し得、XはSHの当量を表し、YはEUの当量を表し、XとYの合計は100である。一態様では、Xは25~75の範囲であり、且つYは75~25の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xは30~70の範囲であり、且つYは70~30の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xは40~60の範囲であり、且つYは60~40の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xは45~55の範囲であり、且つYは55~45の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xの当量はYの当量とほぼ等しい。
【0047】
熱反応条件
本明細書で検討するように、本開示の組成物は、高温に曝露すると互いに反応するポリΔ1及びポリΔ2を含有し得る。特定の高温でポリΔ1とポリΔ2の反応を達成するのに必要な該特定の高温及び時間は、Δ1及びΔ2の固有の特性によって異なる。求核剤と求電子剤の反応の多くは、約100℃の温度で30分から5時間あれば十分である。
一態様では、本開示は、複数の光重合性基(hν)を有する第1の有機化合物(ポリhν)、複数の反応性基Δ1を有する第2の有機化合物(ポリΔ1)、及び複数の反応性基Δ2を有する第3の有機化合物(ポリΔ2)を含む組成物を提供し、約50℃を超える温度に接触及び曝露すると、Δ1はΔ2と反応する。組成物中のポリΔ1とポリΔ2の相対量は、Δ1対Δ2当量比のX:Yで記述し得、XはΔ1の当量を表し、YはΔ2の当量を表し、XとYの合計は100である。一態様では、Xは25~75の範囲であり、且つYは75~25の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xは30~70の範囲であり、且つYは70~30の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xは40~60の範囲であり、且つYは60~40の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xは45~55の範囲であり、且つYは55~45の範囲であり、XとYの合計は100である。一態様では、Xの当量はYの当量とほぼ等しい。
組成物を高温に曝露するために、組成物をオーブンに入れ得る。別法として、加熱ランプを組成物に当て得、ヘッドランプが放射する赤外線で組成物を加熱する。
【0048】
付加製造
本明細書に開示する方法は、硬化性組成物を用いて、物品、特に非毒性及び生分解性物品を作製する方法を含む。例えば、本明細書に開示する組成物は、3D印刷法において硬化性インク又は樹脂として使用し得る。例えば、本明細書に開示する硬化性組成物は、3D印刷の液槽重合工程において硬化性インク又は樹脂として使用し得る。例示的な液槽重合工程に、光造形法(SLA、SLとしても知られる)、デジタルライトプロセッシング(DLP(登録商標);Texas Instrument)、デイライトポリマー印刷(DPP)、Carbonデジタルライト合成(Carbon DLS(登録商標);Carbon,Inc.)、及び連続液体界面製造(CLIP(登録商標);Carbon,Inc.)がある。本開示の硬化性組成物を使用して物品を付加製造する他の好適な方法に、バインダージェッティング、マテリアルジェッティング、材料押出、計算軸リソグラフィ(computed axial lithography)、及び二光子重合印刷がある。本開示は、言及された3D印刷工程のいずれかにおける、本明細書に開示する硬化性組成物の使用を提供する。
従って一態様では、本開示は液槽重合、例えば一時的に光に曝露することを含む、物品をSLA印刷する方法を提供し、本明細書に開示する少なくとも1つの光重合性組成物を含む光重合性組成物は、通常、総濃度が1.0質量%未満である少なくとも1つの光開始剤成分を含む。本明細書に開示する光重合性組成物のいずれかを、物品をSLA印刷する方法に使用し得る。例えば組成物は、ポリΔ1とポリΔ2に加えてポリhνを含有し得る。別の例として、組成物はポリEU及びポリSHを含有し得る。任意で、光重合性組成物は反応性希釈剤又は非反応性希釈剤を含み得る。反応性希釈剤は重合反応に関与する希釈剤であり、例えば反応性希釈剤は、例えばマクロマーと重合する。本開示の光重合性組成物は、安定剤、例えばフリーラジカル安定剤を含み得る。
【0049】
本開示に従ってSLAにより物品を印刷する方法は、熱エネルギーを用いて印刷物を硬化することを含む第2の硬化ステップを含み得る。第2の硬化ステップは、印刷物の少なくとも一部を熱エネルギーに曝露することにより、印刷物の少なくとも一部に、熱による第2の重合反応を起こすことを伴う。例えば、物品の一部又は全部を、約100℃の温度に約30分から5時間曝露し得る。第2の硬化ステップを使用して、印刷物の性質を変化させ得る。
本開示に従ってSLAにより物品を印刷する方法は、印刷物の前処理及び/又は後処理を含み得る。例えば、印刷物は印刷後、熱硬化ステップの前又は後にすすぎ得る。
印刷物は3D印刷段階の終了後に得られる物品である。印刷物は構造物又は構造物の一部であり得る。印刷物は、表面上に印刷されるコーティングなどのフィルム状であり得る。本明細書において、用語「印刷」は、ポリマー組成物を表面と接触させること、及びポリマー組成物を更に重合させることを意味するために使用する。印刷は、ポリマー組成物を表面と接触させることを伴い得、それに続いて紫外線及び/又は可視光線に曝露することにより、ポリマー組成物が更に重合する。ポリマー組成物が接触する表面は、ポリマー組成物の重合層を含む任意の表面であり得る。前述のように、印刷物を高温に曝露することにより、第2の硬化ステップを行い得る。
【0050】
印刷物は硬化性組成物の成分の残留を含有してもしなくてもよい。例えば、印刷物は希釈剤若しくは光重合希釈剤、又は光開始剤を含み得る。ある態様では、印刷物又は硬化性組成物は添加剤を有し得る。添加剤は、チキソトロピー性材料、着色剤、トレーサー材料、又は導電性材料を含み得る。例えば、添加剤は染料であり得る。印刷物は、染料の存在により着色され得、又は蛍光性、放射性、反射性、柔軟性、剛性、順応性、破損性、若しくはこれらの組み合わせを有するがこれらに限定されない物品の少なくとも一部を有するなどの任意の望ましい属性を有し得る。
一般的な液槽印刷工程では、ビルドプラットフォームは樹脂液槽の上部から層厚分だけ下方に下げられる。化学線が組成物に向けられ、この光が組成物を光重合(光硬化)させる。ビルドプラットフォームが下方に移動し続け、前の層の上に追加の層が形成される。完了後、液槽から余分な樹脂が排出され、印刷物が回収され得る。この印刷物には追加の処理を施し得る。例えば、印刷物を洗浄して余分な樹脂を除去し得る。別の例として、特に物品がポリΔ1及びポリΔ2を含有する場合、印刷物を熱エネルギーに曝露して熱硬化させ得る。
液槽重合によって物品を形成する方法は、本明細書に開示するポリhν化合物などのオリゴマー及び/又はポリマーを形成する光重合反応が可能な官能基を有するモノマー又はマクロマーなど、重合可能なモノマー又はマクロマーを含む光重合性組成物の液槽に化学線を当てることを含み得る。
【0051】
一態様では、例えばSLAを用いた液槽重合では、光重合性組成物を用いて物品を印刷し、約10nm~約1mmの光波長で化学線を組成物の液槽に当てる。本明細書において、紫外線放射の波長は約10~400nmであり、可視光放射の波長は390~770nm、赤外線放射の波長は770nm~1mmである。一態様では、化学線は1つ又は複数の波長及び/又は1つ又は複数の放射線源からなる。ある態様では、光重合性組成物は、同じ重合条件下で光反射性材料成分なしで光重合が起こるよりも短い曝露時間で光重合を引き起こす光反射性材料成分を含み得る。任意で、硬化性組成物が熱反応性成分ポリΔ1及びポリΔ2を含有する場合、熱硬化工程は光重合工程前、工程中、又は工程後に実施される。任意で、硬化性組成物が熱反応性成分ポリΔ1及びポリΔ2を含有する場合、熱硬化工程は光重合工程後に実施される。
一態様では、本開示は、SLAによる印刷に適した装置で、液槽重合を用いて物品を印刷する方法、例えばSLA印刷の方法を提供する。方法は、約10~約770nmの波長の光を吸収する少なくとも1つの光開始剤を含む本明細書に開示する硬化性組成物を含む液槽を提供することを含む。ある態様では、光開始剤は300nm以上の波長の光を吸収する。ある態様では、光開始剤は365nm以上の波長の光を吸収する。ある態様では、光開始剤は375nm以上の波長の光を吸収する。ある態様では、光開始剤は400nm以上の波長の光を吸収する。硬化性組成物中の光開始剤は、タイプI、タイプII、カチオン光開始剤、又はこれらの組み合わせである光開始剤を含む少なくとも1つの光開始剤成分である。
一態様では、本開示は、例えばSLAによる印刷のための装置でSLAを用いて、液槽重合によって物品を印刷する方法を提供し、方法は、150ミクロン未満の深さで光重合性組成物を光重合又は硬化することを含む。ある態様では、本明細書に開示する方法は、約5~約50ミクロンの深さ、及びその間にある全ての深さで光重合性組成物を光重合又は硬化することを含む。
一態様では、本開示は、例えばSLAによる印刷のための装置でSLAを用いて、液槽重合によって物品を印刷する方法を提供し、方法は、生理的状態において吸収性である光反射性材料を含む光反射性材料成分を含む光重合性組成物を含む。ある態様では、光反射性材料成分は生体適合性のある光反射性材料を含む。ある態様では、光反射性材料成分は、光重合性マクロマー、希釈剤、光反射性材料、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つと光重合する光反射性材料を含む。
【0052】
一態様では、本開示は、以下を含む付加製造法を提供する:(a)ポリEU及びポリSHを含む本明細書に開示する第1の組成物を含有する液槽を提供すること;(b)光源からの化学線を液槽内の第1の組成物に当てることであって、化学線は組成物の成分の重合を誘発して第2の組成物を形成するのに有効である;(c)第2の組成物を含む固形物を形成すること。ステップ(c)は、特にビルドプラットフォームが移動している時に液槽内の第1の組成物に化学線を繰り返し当てることによって達成し得る。第2の組成物はポリEU及びポリSHの光重合生成物となる、又はこれを含む。
一態様では、本開示は、以下を含む付加製造法を提供する:(a)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2を含む本明細書に開示する第1の組成物を含有する液槽を提供すること;(b)光源からの化学線を液槽内の第1の組成物に当てることであって、化学線は組成物の成分の重合を誘発して、光化学的に硬化した組成物を含む第2の組成物を形成するのに有効である;並びに(c)光化学的に硬化した組成物を含む第2の組成物に熱エネルギーを当て、光化学的に硬化した組成物及び熱的に硬化した組成物を含む第3の組成物を形成する。第2の組成物はポリhνの光重合生成物となる、又はこれを含む。第3の組成物は、組み合わせたポリhνの光重合生成物と、熱的に誘発されたポリΔ1及びポリΔ2の重合生成物との二重ネットワークとなる、又はこれを含む。
【0053】
一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、二光子重合印刷による物品の製造方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、計算軸リソグラフィによる物品の製造方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、材料押出による物品の製造方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、マテリアルジェッティングによる物品の製造方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、バインダージェッティングによる物品の製造方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、連続液体界面製造(CLIP)による物品の製造方法を提供する。一態様では、本開示は、本明細書に開示する硬化性組成物を硬化して物品を形成することを含む、液槽重合による物品の製造方法を提供する。
【0054】
硬化組成物
本開示は、本明細書に開示する方法によって本明細書に開示する組成物から作製し得る物品(追加的に本明細書では印刷物又は固形物と称する)を含む。ある態様では、物品は医療機器であり得る。ある態様では、物品は医療機器の一部であり得る。ある態様では、物品は多孔質であり得る。ある態様では、物品は生理的条件下で生分解性であり得る。ある態様では、生分解性物品の分解時間は約3日間から約5年であり得る。ある態様では、物品は生分解性でなくてよい。ある態様では、物品の一部分は生分解性であり得、第2の部分は非生分解性であり得る、又は物品の第1の部分若しくは残りの部分とは分解時間が異なり得る。
他の場所で言及するように、一態様では、硬化組成物は相当量の水を含有しない。例えば、いくつかの態様では、硬化組成物は、2500ppm未満、又は1000ppm未満、又は500ppm未満の水を含有する。
【0055】
一態様では、硬化組成物は水中で、又は水性条件に曝露されると分解する。従って一態様では、硬化組成物は生分解性であり得、これは生分解性の植込み型医療機器を形成するために硬化組成物を使用する場合、特に有用であり得る。一態様では、硬化組成物は水性条件下で、例えば膨潤した材料、即ち水分を吸収して膨潤状態にある材料を形成するのではなく、分解して粒状の材料を形成する。例えば、pH7.0~7.4のリン酸緩衝液中の水を含む分解培地、又はリン酸緩衝生理食塩水中に硬化組成物を入れると、硬化組成物は分解培地に溶解する。硬化組成物の総質量の50質量%超、又は60質量%超、又は70質量%超、又は80質量%超、又は90質量%超が分解培地に溶解するように溶解すると、未溶解の材料は、膨潤形態ではなく特定の形態を有する。
一態様では、本開示の硬化組成物は、望ましくは水性媒体に入れた場合に低い膨潤性を示す。硬化組成物が水性媒体と長時間接触する場合、膨潤性は深刻な問題となる可能性がある。例えば、硬化組成物が生分解性植込み型医療機器の一成分又は全部であり、該装置が患者に植え込まれる場合、装置は分解(望ましい)も膨張(望ましくないこともある)もし得る。膨潤性はインプラントの分解の終わり頃、即ちインプラントの大部分が分解した後に特に問題となり得る。しかしながら、膨潤、特にインプラントの大部分が分解した(即ち50%超の質量減少、又は60%超の質量減少、又は70%超の質量減少、又は80%超の質量減少、又は90%超の質量減少)後に観察され得る後期膨潤の問題は、本開示の硬化性組成物の使用により軽減する可能性がある。
【0056】
以下は本開示の例示的な実施形態である。
1)複数のチオール基(SH)を有する第1の有機化合物(ポリSH)、複数のエチレン性不飽和基(EU)を有する第2の有機化合物(ポリEU)、及び光開始剤を含む組成物。安定剤は任意で組成物中に存在し得、安定剤はトコフェロール、没食子酸、没食子酸のエステル、ブチルヒドロキシアニソール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択し得る。
2)X:YのSH対EU当量比を有し、Xが25~75の範囲であり、且つYが75~25の範囲であり、且つXとYの合計が100である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態3~27に記載の組成物。
3)ポリSHが水溶性である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2に記載の組成物。
4)ポリSHが生体吸収性である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2又は3に記載の組成物。
5)ポリSHがマクロマーである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2又は3又は4に記載の組成物。
6)ポリSHが、分子量が1,000g/モル超のマクロマーである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2又は3又は4に記載の組成物。
7)ポリSHの分子量が500g/モル未満である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2又は3又は4に記載の組成物。
8)ポリEUが水溶性である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~7のうちいずれかに記載の組成物。
9)ポリEUが生体吸収性である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~8のうちいずれかに記載の組成物。
10)ポリEUのEUがアクリレートである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~9に記載の組成物。
11)ポリEUのEUがメタクリレートである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~9に記載の組成物。
12)ポリEUのEUがノルボルネニルである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~9に記載の組成物。
13)ポリEUがマクロマーである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~7に記載の組成物。
14)ポリEUが、分子量が1,000g/モル超のマクロマーである、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~7に記載の組成物。
15)ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のカルボニル基を更に有し、任意でポリEUが複数のカルボニル基を有し、又は任意でポリSH及びポリEUがそれぞれ複数のカルボニル基を有する、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~14に記載の組成物。
16)ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のエステル基を更に有し、任意でポリEUが複数のエステル基を有し、又は任意でポリSH及びポリEUがそれぞれ複数のエステル基を有する、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~15に記載の組成物。
17)ポリEU及びポリSHのうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のカーボネート基を更に有し、任意でポリEUが複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を有し、又は任意でポリSHとポリEUの両方が複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を更に有する、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~15に記載の組成物。
18)ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリEUが複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリSHとポリEUの両方が複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を更に有する、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~15に記載の組成物。
19)ポリSH及びポリEUのうち少なくとも1つが複数のカーボネート基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリEUが複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリSHとポリEUの両方が複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を更に有する、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~15に記載の組成物。
20)ポリSHの複数のSHが2、3、及び4から選択される、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~19に記載の組成物。
21)ポリEUの複数のEUが2、3、及び4から選択される、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~20に記載の組成物。
22)沸点が110℃未満の揮発性材料を含まない、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~21に記載の組成物。
23)無水物である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~22に記載の組成物。
24)約18~約22℃の室温で流体である、本明細書に開示する実施形態1又は実施形態1の任意の実施形態、例えば実施形態2~23に記載の組成物。
25)実施形態1~24のうちいずれかに記載の組成物の光化学的に硬化した反応生成物を含む組成物。
26)生体吸収性である、実施形態25に記載の組成物。
27)50℃で固体である、実施形態25に記載の組成物。
28)以下を含む付加製造法:
a.実施形態1~24のうちいずれか一項に記載の第1の組成物を含有する液槽を提供すること;
b.光源からの化学線を液槽内の第1の組成物に当てることであって、化学線は組成物の成分の重合を誘発して第2の組成物を形成するのに有効である;及び
c.第2の組成物を含む固形物を形成すること。
29)複数の光重合性基(hν)を有する第1の有機化合物(ポリhν)、光開始剤、複数の反応性基Δ1を有する第2の有機化合物(ポリΔ1)、及び複数の反応性基Δ2を有する第3の有機化合物(ポリΔ2)を含む組成物であって、50℃を超える温度に接触及び曝露すると、Δ1がΔ2と反応する組成物。
30)ポリhνが生体吸収性である、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態に記載の組成物。
31)ポリhνがマクロマーである、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30に記載の組成物。
32)ポリhνが、分子量が1,000g/モル超のマクロマーである、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30又は31に記載の組成物。
33)ポリhνの分子量が500g/モル未満である、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30又は31に記載の組成物。
34)ポリhνが水溶性である、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30又は31に記載の組成物。
35)ポリhνが、アクリレート及びメチアクリレートから選択されるポリEUである、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~34に記載の組成物。
36)ポリhνのhνがノルボルネニルである、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~34に記載の組成物。
37)Δ1が求核剤であり、且つΔ2が求電子剤である、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~36に記載の組成物。
38)Δ1がヒドロキシル及びアミノから選択される、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~36に記載の組成物。
39)Δ2がエポキシド及びイソシアネートから選択される、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~36に記載の組成物。
40)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカルボニル基を更に有し、任意でポリhνが複数のカルボニル基を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカルボニル基を有する、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~39に記載の組成物。
41)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基を更に有し、任意でポリhνが複数のエステル基を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基を有する、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~39に記載の組成物。
42)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のカーボネート基を更に有し、任意でポリhνが複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基と複数のカーボネート基の両方を有する、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~39に記載の組成物。
43)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリhνが複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のエステル基と複数のウレタン基の両方を有する、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~39に記載の組成物。
44)ポリhν、ポリΔ1、及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカーボネート基及び複数のウレタン基を更に有し、任意でポリhνが複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を有し、又は任意でポリhν、並びにポリΔ1及びポリΔ2のうち少なくとも1つが複数のカーボネート基と複数のウレタン基の両方を有する、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~39に記載の組成物。
45)ポリhνの複数のhνが2、3、及び4から選択される、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~44に記載の組成物。
46)ポリΔ1の複数のΔ1νが2、3、及び4から選択される、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~44に記載の組成物。
47)ポリΔ2の複数のΔ2νが2、3、及び4から選択される、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~44に記載の組成物。
48)沸点が110℃未満の揮発性材料を含まない、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~47に記載の組成物。
49)無水物である、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~47に記載の組成物。
50)約18~約22℃の温度で流体である、実施形態29又は実施形態29の任意の実施形態、例えば実施形態30~47に記載の組成物。
51)実施形態29~50のうちいずれかに記載の組成物の光化学的に硬化した反応生成物及び熱的に硬化した反応生成物を含む組成物。
52)生体吸収性である、実施形態51に記載の組成物。
53)50℃で固体である、実施形態51に記載の組成物。
54)以下を含む付加製造法:
a.実施形態29~50のうちいずれか一項に記載の第1の組成物を含有する液槽を提供すること;
b.光源からの化学線を液槽内の第1の組成物に当てることであって、化学線は第1の組成物の成分の重合を誘発して、光化学的に硬化した組成物を含む第2の組成物を形成するのに有効である;及び
c.光化学的に硬化した組成物を含む第2の組成物に熱エネルギーを当て、光化学的に硬化した組成物及び熱的に硬化した組成物を含む第3の組成物を形成すること。
【0057】
本開示は、本明細書において広範且つ一般的に説明している。全体的な開示に含まれる狭義の種及び下位の群もそれぞれ本開示の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、概念から任意の主題を除去する条件又は否定的な制限を伴う本開示の一般的な記述を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他を指示しない限り複数の指示物を含み、用語「X及び/又はY」は「X」若しくは「Y」又は「X」及び「Y」の両方を意味し、名詞に続く文字「s」はその名詞の複数と単数の両方の形態を共に表すことも理解されるものとする。更に、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群において説明される場合、本開示がマーカッシュ群の任意の個別要素及び要素の任意の下位群を包含し、またそれによりこれらに関して説明されることが意図され、且つ当業者はこれを認識するものとし、また出願人は、本願又はクレームを修正し、マーカッシュ群の任意の個別要素又は要素の任意の下位群に具体的に言及する権利を留保する。
以下の実施例は、限定のためではなく説明のために提供される。化学物質は市販品供給業者、例えばMilliporeSigma(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。
【実施例1】
【0058】
ヒドロキシル末端前駆体ポリマー
一態様では、本開示は、ポリhν、ポリSH、ポリEU、ポリΔ1、及びポリΔ2と表される化合物のうち少なくとも1つを含有する組成物を提供する。任意で、これらの化合物はそれぞれ、hν又はSH又はEU又はΔ1又はΔ2基の代わりにヒドロキシル基を有する前駆体ポリマーから作製し得、任意で、hν、SH、EU、Δ1、又はΔ2基は、適切な連結基を介して前駆体ポリマーと結合している。本実施例では、例示的なヒドロキシル含有前駆体ポリマーの調製について説明する。
【0059】
表1に、本開示による一般式CC-[アーム-OH]の化合物を有する又は含むと一般に説明され得る、3DP 1から3DP 16と一義的に名称を付けた16個の前駆体ポリマーを示す。用語「アーム-OH」は、ヒドロキシル基(OH)で終止する、即ちヒドロキシル末端基を有するアームを指す。
前駆体ポリマーが、式CC-[(A)-(B)]を含む化合物を含む場合、即ちアームが、中心核の近位にある(中心核に隣接した)基A(トリメチレンカーボネート及びε-カプロラクトンのうちいずれか1つ又は複数)のモノマーの残基と、中心核の遠位にある(中心核から最も離れた)基B(グリコリド、ラクチド、及びp-ジオキサノンのうちいずれか1つ又は複数)のモノマーの残基とから形成されている場合、そのような前駆体ポリマーは、官能化中心核(本明細書では開始剤とも称する)を基Aの1つ又は複数のモノマーと反応させた後、その反応生成物(本明細書では前駆体プレポリマーと称する)を基Bの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって調製し得る。その結果、中心核は1つ又は複数のアームと結合され、アームはそれぞれヒドロキシルを末端とし、且つ式-(A)-(B)-OHを有する。そのような前駆体ポリマーの調製について、以下の実施例1Aで説明する。ここでは中心核は三官能性であり、官能化中心核/開始剤はトリメチロールプロパンから得られる。
【0060】
実施例1A:3軸3DP-6前駆体ポリマーの調製
トリメチレンカーボネート(1.4モル)とε-カプロラクトン(1.4モル)を、開始剤のトリメチロールプロパン(0.6モル)及び触媒のオクタン酸第一スズ(7.0×10-5モル)を用いて、130℃で72時間共重合させ、ポリマー前駆体を得た。グリコリド(1.1モル)及び追加のオクタン酸第一スズ(2.1×10-4モル)をポリマー前駆体と160℃で3時間結合させ、ポリマー前駆体の末端にポリグリコリドがグラフトした前駆体ポリマーを得た。このようにして得られた非晶質液体前駆体ポリマーを脱揮し、1H NMR分光法、レオメトリー(せん断速度105s-1で粘度17,300cP)、示差走査熱量測定(Tg=-45℃)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=1884Da、PDI=1.80)によって特徴付けした。
前駆体ポリマーが、式CC-[(B)-(A)]を含む化合物を含む場合、即ち基B(グリコリド、ラクチド、及びp-ジオキサノン)のモノマーの残基が中心核の近位にあり(中心核に隣接し)、基A(トリメチレンカーボネート及びε-カプロラクトン)のモノマーの残基が中心核の遠位にある(中心核から最も離れている)場合、そのような前駆体ポリマーは、官能化中心核を基Bの1つ又は複数のモノマーと反応させた後、その反応生成物を基Aの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって調製し得る。その結果、中心核は1つ又は複数のアームと結合され、アームはそれぞれヒドロキシルを末端とし、且つ式-(B)-(A)-OHを有する。そのような前駆体ポリマーの調製について、以下の実施例1Bで説明する。ここでは中心核は三官能性であり、官能化中心核はトリメチロールプロパンから得られる。
【0061】
実施例1B:3軸3DP-4前駆体ポリマーの調製
第1のステップで、グリコリド(1.1モル)を、開始剤のトリメチロールプロパン(0.6モル)及び触媒のオクタン酸第一スズ(7×10-5モル)と、160℃で3時間共重合させ、ポリマー前駆体を得た。第1のステップの完了後に、等モル量のトリメチレンカーボネート(1.4モル)とε-カプロラクトン(1.4モル)の混合物を、更にオクタン酸第一スズ(2×10-4モル)を追加し、130℃で72時間反応させて、ポリマー前駆体の末端で共重合させた。得られた非晶質液体を脱揮し、1H NMR分光法、レオメトリー(せん断速度105s-1で粘度17,300cP)、示差走査熱量測定(Tg=-45℃)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=1909Da、PDI=1.83)によって特徴付けした。
実施例1A及び1Bで概略を述べた手順に続いて、表1に記載するように追加のポリエステル前駆体ポリマーを合成した。線状試料は全て、二官能性開始剤の1,3-プロパンジオールを用いて合成し、三官能性プレポリマーは全て、トリメチロールプロパンを用いて調製し、4アームブロックコポリエステル組成物は、四官能性開始剤のペンタエリトリトールを用いて開始させた。表1のM/Iは、表1に示したコポリエステルのそれぞれについて、アームの調製に使用したモノマーの総モル数(M)を開始剤(官能化中心核とも称する)のモル数(I)で割ったものを指す。同じく表1のM/Cは、アームの調製に使用したモノマーの総モル数(M)を、表1に示したコポリエステルプレポリマーのそれぞれの調製に使用した触媒の総モル数(C)で割ったものを指す。表1の前駆体ポリマーはそれぞれB領域を含み、その特徴は、グリコリド/ラクチド/p-ジオキサノンセグメントの略記であるG/L/p-Dを見出しとするカラムに示しており、またB領域は中心核の近位(この場合、B領域の位置は前駆体ポリマーの中心であるとみなされる)又は中心核の遠位(この場合、B領域の位置は前駆体ポリマーの末端にあるとみなされ、またこの場合、B領域はヒドロキシル基で終止する)のいずれかにあり得る。
実施例1に示したように調製した、選択された前駆体ポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって得られた選択された分子量の結果を表2に示す。表2において、Mnは数平均分子量、Mwは質量平均分子量、PDIは多分散性(即ちMw/Mn)、Daはダルトンを指す。
【0062】
【実施例2】
【0063】
本開示のメタクリレート化化合物の調製
式ポリEUの例示的なポリマー
表3に、本開示による一般式CC-[アーム-EU]の化合物を有する又は含むと一般に説明され得る、3DP 4m(mは、例示的なエチレン性不飽和(EU)基であるメタクリレートを表す)から3DP 7m及び3DP 9mから3DP 12mと一義的に名称を付けた8個のEU官能化前駆体ポリマーを示す。「アーム-EU」は、アクリレート(「a」)又はメタクリレート(「m」)基などの光反応性エチレン性不飽和基で終止するアームを指す。
表3のメタクリル化ポリマーは表1の対応する前駆体ポリマーから調製した。つまり、3DP 4mは3DP 4から、3DP 5mは3DP 5からなどのように調製した。
【0064】
3DP 6mを形成する3DP 6のメタクリル化
3DP 6前駆体ポリマー(0.131モル)は、3-tert-2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(6.724×10
-4モル)の存在下で、過量のメタクリル酸無水物と120℃で24時間反応させた。残りのメタクリル酸無水物とメタクリル酸副産物は、ロータリーエバポレーターを用いて未精製のポリマーから除去した。得られた非晶質液体ポリマーは、
1H NMR分光法、レオメトリー(せん断速度105s
-1で粘度16,400cP)、示差走査熱量測定(Tg=-38℃)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=2162Da、PDI=1.75)によって特徴付けした。各3DP配合物は、上述した手順の後にメタクリル化した。組成物及び分子量の結果を表3に、動的粘度を表4に示す。表3の3DP 5mにおいて、TMCカラムの40.15は、3DP 5mを作製するのに用いた1,3-プロパンジオールをTMCに加えた総モル%である。
【表3】
【表4】
【実施例3】
【0065】
本開示のチオール化化合物の調製
式ポリSHの例示的なポリマー
機械撹拌器と添加漏斗を装着した500mLの三口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で3DP 6(51.3g;0.0665モル;表1参照)、チオ乳酸(17.243mL;20.623g;0.1943モル)、及びジクロロメタン(DCM)(200mL)を入れた。反応槽の内容物を200rpmで撹拌し、氷浴を用いて反応槽を冷却した。これとは別に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(44.5g;0.2157モル)を200mLのDCMに溶解した。次いで、添加漏斗を用いて30分かけてDCM溶液中のDCCを反応槽に滴下した。DCC/DCM溶液の添加完了後、氷浴を取り除いた。粉末漏斗を用いて4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.366g;0.0193モル)を反応槽に添加した。反応混合物は、窒素雰囲気下、室温で72時間撹拌を続けた。DCMの量は、反応中に蒸発するため補充した。72時間後、反応混合物を吸引ろ過した。ろ液は2×100mLの0.25M HCl及び1×100mLの脱イオン(DI)水で洗浄した。抽出した有機相を活性化モレキュラーシーブ(3Å)上で18時間乾燥させた後、吸引ろ過した。溶剤はロータリーエバポレーターで真空下で除去し、液体ポリマー生成物(3DP 6t、「t」はチオール化を指し、本明細書ではポリSHポリマーとも称する)を得た。このようにして得られた非晶質液体ポリマーは、
1H NMR分光法、レオメトリー(せん断速度99s
-1で粘度=7690)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=1952Da、PDI=1.62)によって特徴付けした。以下の表に、他のチオール化3DP化合物をn-アセチルシステイン(NAC)、チオ乳酸(TLA)、及びチオグリコール酸(TGA)について示す。これらはそれぞれこの例示的な合成工程に基づいて合成した。
【表5】
【実施例4】
【0066】
本開示のチオール化化合物の調製
式ポリSHによる一般的な説明
ヒドロキシル基を有するポリマーは、ヒドロキシル基をカルボン酸基で置換した部分でキャップできる。次いで、カルボン酸基は、結合のために使用する置換基の機能単位に応じて、アミド又はエステル結合を介してチオール含有部分で置換できる。例えば、3DP前駆体ポリマーのヒドロキシル末端基(例えば表1を参照)は、無水コハク酸と反応させてコハク化中間体(3DP-SA)を形成でき、次にこれをシステインに存在するアミン基と反応させて、末端自由チオール基を有する生成物(3DP 6-SA-Cys)をもたらし得、これにより本開示の例示的なポリSH化合物を得る。この手法を本実施例によって説明する。
第1部:3DP 6-SAの形成:250mLの三口丸底フラスコに3DP 6(48.9g;0.0633モル、表1)を入れた。系を真空下(<0.5トル)40℃に18時間置いてプレポリマーを乾燥させた。18時間後に系を窒素でパージし、無水コハク酸(19.0g;0.1900モル)を反応槽に添加した。反応混合物は50rpm、120℃で24時間撹拌した。このようにして得たポリマーを室温で冷却し、ロータリーエバポレーターで脱揮して、室温で18時間、更に110℃で24時間かけて残りのモノマーを除去した。得られた透明な非晶質ポリマー生成物の構造を、1H NMRを用いて確認した。
第2部:3DP 6-SA-Cysの形成:100mLの二口フラスコに3DP 6-SA(10.1g;0.0093モル)、L-システイン(3.39g;0.0280モル)、及びジクロロメタン(DCM)(30mL)を入れた。反応物は窒素雰囲気中で200rpmで撹拌した。これとは別に、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(6.35g;0.0307モル)を10mLのDCMに溶解した。反応槽の周囲に氷浴を設置し、DCC/DCM溶液を滴下した。DCC/DCM溶液の添加完了後、氷浴を取り除き、反応物を、窒素雰囲気下、室温で72時間撹拌した。72時間後、反応混合物を50mLのDCMで希釈し、吸引ろ過した。ろ液は2×50mLの0.25M HCl及び1×50mLのDI水で洗浄した。抽出した有機相を活性化モレキュラーシーブ(3Å)上で18時間乾燥させた後、吸引ろ過した。溶剤はロータリーエバポレーターで真空下で除去し、ろう様のポリマー生成物(3DP 6-SA-Cys)を得て、その構造を、1H NMR分光法で確認した。
【実施例5】
【0067】
ポリEU及びポリSHの単一ポリマーネットワーク
チオール末端3DPポリマーとメタクリル化3DPポリマーを、2つの異なる比率で混合した。各組み合わせにTPO-L光開始剤を0.5%(w/w)の濃度で添加し、配合物をFlackTek高速ミキサーで2000rpmで2分間、次いで3000rpmで3分間混合した。配合物を0.75mm厚のフィルムに硬化させた。フィルムは75mm×7.5mm×0.75mmの試験片に切断し、pH7.4のリン酸緩衝液中で50℃で加速劣化させた。
図1に、50:50及び25:75の3DP 6t TLA/3DP 10mフィルムの分解特性を示す。
図1の情報は、ポリEU/ポリSH単一ポリマーネットワークの水膨張の影響を示している。
【実施例6】
【0068】
本開示のイソシアネート末端化合物の調製
式ポリΔの例示的なポリマー
実施例1で言及したように、ヒドロキシル末端ポリマーは本開示のポリΔ化合物に前駆体化合物をもたらし得る。ヒドロキシル基は、3DP 10のジイソシアネートキャッピングを説明する本実施例で示すように、熱反応性基、例えばイソシアネート基に変換され得る。
機械撹拌器と添加漏斗を装着した250mLの三口丸底フラスコに3DP 10(76.7g;0.0996モル)を入れた。3DP 10を40℃の減圧下で3日間乾燥させた。乾燥後、フラスコを乾燥窒素でパージし、220rpmで撹拌を開始した。フラスコに15mLの無水トルエン及びヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI;33.5mL;0.209モル)を入れた。反応混合物の温度を80℃に上昇させて2時間置き、それから室温に戻した。次いでポリマー混合物を一口フラスコに移し、ロータリーエバポレーターに設置した。残りのトルエンとHMDIをロータリーエバポレーターで減圧下で除去した。このようにして得られた非晶質液体ポリマーを、H1 NMR分光法(ポリマー:70.3質量%、イソシアネート:29.6質量%)で特徴付けした。
【実施例7】
【0069】
ポリEU及びポリΔ1+ポリΔ2の二重ポリマーネットワーク
光重合させたメタクリレートポリマーネットワーク、及び熱的に硬化した相互貫入ポリマーネットワークを用いて二重ネットワークのフィルムを調製した。3DP 12mと3DP 6前駆体ポリマー(例示的なポリΔ1)を50:50又は70:30の比率で混合した。TPO-L光開始剤をメタクリル化ポリマーの質量に対して0.5%(w/w)の濃度で混合物に添加した。ヘキサメチレンジイソシアネート(例示的なポリΔ2)を前駆体ポリマー中のヒドロキシル基のモル数(3軸ポリマー3DP6の場合、OH:ポリマーは3:1)の45%で混合物に添加した。FlackTek高速ミキサーを用いて、配合物を2000rpmで2分間、続いて3000rpmで2分間混合した。次いで、配合物を0.75mm厚のフィルムとして、照度30mW/cm
2の紫外線下で10分間硬化させた。
光硬化させたフィルムを100℃で1時間、更に熱的に硬化させた。フィルムは75mm×7.5mm×0.75mmの試験片に切断し、pH7.4のリン酸緩衝液中で50℃で加速劣化させた。試験中の様々な時点で材料の質量損失、含水率、及び機械的性質を分析した。結果を
図2に示す。
図2のデータは、ウレタン及びメタクリル化ポリエステル二重ネットワークの水膨潤挙動を示す。ウレタンネットワークを添加すると、水膨潤が25~30%の質量損失まで増加する。25~30%の質量損失を超えると、50:50の3DP12m:3DP 6U及び3DP6uは共に膨潤が大幅に低下する。
【実施例8】
【0070】
ポリ(SH)及びポリ(EU)材料の力学
架橋3DPポリマーブレンドの性質を評価するために、機械的検査用に張力試験片を作製した。いずれかの特定のポリマーブレンド用に、チオール末端3DPポリマーを1つ又は複数のメタクリル化3DPポリマー(3DPX M)と25:75及び50:50の質量比で混合し、チオール化ポリマーは、実施例3に説明するように、チオ乳酸(3DPX TLA)、N-アセチル-L-システイン(3DPX NAC)、又はチオグリコール酸(3DPX TGA)を用いて合成した。メタクリル化3DPポリマーに加えて、同比率の選択ブレンドを、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)の希釈剤成分を用いて試験した。光開始剤の(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸エチル(TPOL)を0.5%(w/w)で添加し、ブレンドをFlackTek高速ミキサーで2000回転毎分(rpm)で2分間、次いで3000rpmで3分間混合した。
0.75mmのスペーサーを装着した2枚の紫外線透過性アクリル板の間に各液体ポリマーブレンドを注ぎ、100Wの紫外線Blak-Rayランプ下で10分間硬化させた。架橋フィルムを取り除き、寸法が0.75×7.5×75mmの張力試験片に切断した。フィルム片はMTS試験フレームで機械的検査を行い、試験対象の各ブレンドについて少なくとも4つの試験片で引張特性を評価した。引張試験の試験パラメーターを表6に示す。試験したポリマーブレンド及びこれらの対応する引張特性は表7に記載する。
【0071】
【実施例9】
【0072】
ポリ(SH)及びポリ(EU)組成物の安定性
第1部:安定剤含有及び非含有ポリマーブレンドの早期架橋について調べた。チオール末端光反応性化合物をメタクリル化光反応性化合物と50:50の比率で混合した。有望な安定化化合物は、それぞれ反応混合物のアリコートに様々な濃度で添加した。各配合物ブレンドをFlackTek高速ミキサーで2000回転毎分(rpm)で2分間、続いて3000rpmで3分間混合した。各ブレンドのアリコートをペトリ皿に移し、室温(RT)又は50℃で保管した。ポリマーブレンドの安定性はブレンドの凝固によって定性的に評価した。結果を表8に記載する。
【表8】
【0073】
第2部:チオール末端ポリマー(3DP 19t TGA)をメタクリル化ポリマー(3DP 20m)と50:50の質量比で混合した。選択した安定剤はそれぞれ液体ポリマーブレンドのアリコートに添加し、配合物の粘度は24時間後にレオメトリー(せん断速度100s
-1で25℃)で評価し、安定性の定量測定値を得た。安定剤を含まない樹脂の初期粘度は3920±20cPであった。室温で24時間保管した安定化ポリマーブレンドの粘度を表9に示す。
【表9】
【0074】
本明細書に開示する文献は、特許文献及び非特許文献を含め全て、それぞれが個別に援用されるかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
当然のことながら、本明細書に使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではない。更に、本明細書で具体的に定義しない限り、本明細書に使用する用語は、関連する技術分野で知られている従来の意味が与えられることが理解されるものとする。
【0075】
本明細書を通して、「一実施形態」又は「ある実施形態」及びこれらの変形への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な場所で「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という句が登場しても、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容及び文脈上明らかに他を指示しない限り、複数の指示物、即ち1つ又は複数を含む。接続語である「及び」及び「又は」は、場合により、内容及び文脈が明らかに包含性又は排他性を指示しない限り、「及び/又は」を含む最も広い意味で一般に使用されることに留意されたい。従って、選択肢(例えば「又は」)の使用は、選択肢のいずれか一方、両方、又はこれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。加えて、本明細書で「及び/又は」として列挙する場合の「及び」と「又は」の構成は、関連する項目又はアイデアの全てを含む実施形態と、関連する項目又はアイデアの全てより少ないものを含む1つ又は複数の他の代替実施形態とを包含することを意図する。
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及びこれに続く請求項を通して、単語「comprise(含む)」、及び「have(有する)」と「include(含む)」などのその同義語及び変形語、並びに「comprises」や「comprising」などのその変化形は、例えば「含むがこれらに限定されない」などオープン且つ包含的な意味で解釈されるものとする。用語「から基本的になる」は、請求範囲を、特定の材料若しくはステップに、又はクレームされた開示の基本的且つ新規な特性に実質的に影響を与えないものに限定する。矛盾がある場合、用語の説明を含む本明細書が優先する。更に、全ての材料、方法、及び実施例は例示であり、限定を意図するものではない。
【0076】
本書内で使用する見出しは全て、読者による検討を促すために活用しているに過ぎず、いかなる方法によっても本開示又は特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。従って、本明細書で提供される開示の見出し及び要約は、便宜上用いられているだけであり、実施形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
本明細書で値の範囲を提示する場合、文脈上明らかに他に指示しない限り、その範囲の上限と下限の間の、下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載範囲内の他の任意の記載値又は介在値は、本開示内に包含されると理解される。記載範囲内の任意の具体的に除外された制限を条件として、これらのより小さな範囲の上限及び下限が、より小さな範囲に独立して含まれ得ることも本開示内に包含される。記載範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除外した範囲も本開示内に含まれる。
例えば、本明細書に提示する任意の濃度範囲、百分率範囲、比率範囲、又は整数範囲は、別段の指示がない限り、言及された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合にはこれらの端数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むと理解されるものとする。また、ポリマーサブユニット、サイズ、又は厚さなどの任意の物理的特徴に関連して本明細書で言及する任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、言及された範囲内の任意の整数を含むと理解されるものとする。本明細書において、用語「約」は、別段の指示がない限り、示した範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0077】
本明細書で言及されている、及び/又は出願データシートに記載されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許文献は全て、その全体が参照により本明細書に援用される。そのような文書は、例えば、現在説明されている開示に関連して使用される可能性のある、出版物に記載されている材料及び方法論を説明及び開示する目的で、参照により援用され得る。上述の出版物及び本文全体は、本願の出願日前のこれらの開示についてのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明者らが、先行開示により参照された任意の出版物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。
本明細書で参照又は言及した全ての特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、並びにその他の文書及び資料は、本開示が関係する当業者の技術レベルを示すものであり、またこれにより、かかる参照文書及び資料はそれぞれ、個別にその全体が参照により援用された場合、又はその全体が本明細書に定められた場合と同程度に、参照により援用される。出願人は、かかる特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、及びその他の参照された資料又は文書からのあらゆる資料及び情報を本明細書に物理的に援用する権利を留保する。
一般に、以下のクレームで使用する用語は、クレームを、明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、全ての可能な実施形態を、かかるクレームが権利を有する等価物の全範囲と併せて含むものと解釈されるべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
更に、本特許の明細書部分は全てのクレームを含む。更にこれにより、全ての原クレーム、並びにあらゆる優先権文書の全てのクレームを含む全てのクレームは、参照によりこれらの全体が本明細書の記述部分に援用され、且つ出願人は、本出願の記述部分又は他の部分に、かかるクレームの全てを物理的に援用する権利を留保する。従って、例えば、いかなる場合でも、クレームの正確な文言が本特許の記述部分にこの通りの言葉で記載されていないという主張に基づいて、本特許がクレームに対する記述を提供していないと解釈され得ない。
クレームは法律に従って解釈される。しかしながら、いかなる場合でも、任意のクレーム又はこれらの一部の解釈の容易性又は困難性が主張又は認識されているにもかかわらず、本特許につながる1つ又は複数の出願の審査中にクレーム又はこれらの任意の一部を調整又は修正することが、先行技術の一部を形成しないこれらのあらゆる等価物の権利を放棄したと解釈され得ない。
他の非限定的な実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。本特許は、本明細書に具体的及び/又は明示的に開示される特定の実施例又は非限定的な実施形態若しくは方法に限定されると解釈され得ない。いかなる場合でも、本特許は、任意の審査官又は特許商標庁の他の職員若しくは従業員によってなされたいかなる声明によって、かかる声明が出願人による応答書面において具体的に且つ無条件で明示的に採用されない限り、限定されると解釈され得ない。
【国際調査報告】