(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】昇華型印刷
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221207BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B41J2/01 111
B41J2/01 401
B41J2/325 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522341
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020015645
(87)【国際公開番号】W WO2021154242
(87)【国際公開日】2021-08-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】グラシア,ベルドゥーゴ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ガリンド,クインタス,カルロタ
(72)【発明者】
【氏名】ダフィノイウ,アンドレイ,アレキサンドル
【テーマコード(参考)】
2C056
2C065
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA25
2C056EB26
2C056EB47
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC15
2C056EC21
2C056EC29
2C056FD03
2C065AB10
2C065AC02
2C065DC03
(57)【要約】
例は、昇華型印刷されることになるイメージのイメージデータを受け取ることに関係し、イメージデータは、印刷されることになる1つ又は複数の色、及び1つ又は複数の色の対応する印刷液体密度を含む。受け取ったイメージデータに基づいて、イメージを表す印刷された印刷液体を素材へ転写するために使用するための昇華エネルギーが求められ、求められた昇華エネルギーが、イメージを転写するためにプリンタの昇華器に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
昇華型印刷されることになるイメージのイメージデータを受け取り、前記イメージデータが、印刷されることになる1つ又は複数の色、及び前記1つ又は複数の色の対応する印刷液体密度を含み、
受け取ったイメージデータに基づいて、イメージを表す印刷された印刷液体を素材へ転写するために使用する昇華エネルギーを求め、
イメージを転写するために、求められた昇華エネルギーをプリンタの昇華器に供給すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記昇華エネルギーを求めることは、前記印刷されることになる1つ又は複数の色と、前記1つ又は複数の色の対応する印刷液体密度と、昇華エネルギーとの間の所定の関係に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の関係は、複数の印刷液体密度における昇華温度で印刷されることになる1つ又は複数の色の彩度レベルの変化に基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イメージデータは印刷されることになる複数の色を含み、前記昇華エネルギーを求めることは、
昇華されることになる前記複数の色のそれぞれに関して複数の色に特有の昇華エネルギーを求め、
前記複数の色に特有の昇華エネルギーから昇華エネルギーを求めること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の関係は、印刷されることになる1つ又は複数の色の温度安定性範囲を示し、
前記昇華エネルギーを求めることは、昇華されることになる1つ又は複数の色の前記温度安定性範囲内の昇華エネルギーを求めることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記イメージデータは、印刷されることになる複数の色を含み、前記昇華エネルギーを求めることは、
印刷されることになる複数の色のそれぞれの温度安定性範囲内にある複数の色に特有の昇華エネルギーを求め、
前記複数の色のそれぞれの温度安定性範囲から求められた多色の温度安定性範囲内の複数の色に特有の昇華エネルギーから昇華エネルギーを求めること、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、受け取られたイメージデータから、
印刷されることになる1つ又は複数の色、及び
前記1つ又は複数の色の印刷液体密度の1つ又は複数を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数の色の印刷液体密度を計算することは、前記イメージデータから、イメージの領域、及びイメージを印刷するために前記領域に付着されることになる印刷液体の量を求めることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、イメージを表す印刷液体で印刷された前記素材を、求められた昇華温度で加熱して、印刷された印刷液体を前記素材へ転写することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
プロセッサと、
前記プロセッサに結合されたコンピュータ可読記憶装置と、
命令セットと、を含み、
前記命令セットは、
昇華型印刷液体のイメージで印刷された基材を加熱して、前記基材において昇華型印刷液体を定着するための昇華温度を、印刷液体の色と、印刷液体の密度と、印刷液体の昇華温度との間の所定の関係に基づいて求め、
前記基材においてイメージのプリントを定着するためにプリンタの昇華器に求められた昇華温度を提供するために、前記プロセッサ及び前記コンピュータ可読記憶装置と協働する、装置。
【請求項11】
前記命令セットは、
印刷されることになる1つ又は複数の色、及び前記1つ又は複数の色の印刷液体密度を示すデータを取得し、
所定の関係に基づいて、取得されたデータから前記昇華温度を求めるために、前記プロセッサ及び前記コンピュータ可読記憶装置と協働することになる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記命令セットは、
昇華型印刷液体で印刷されるイメージを表すイメージデータを取得し、
印刷されることになる1つ又は複数の色、及び前記1つ又は複数の色の印刷液体密度を示すデータを得るように、取得されたイメージデータを分析するために、前記プロセッサ及び前記コンピュータ可読記憶装置と協働することになる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
格納された実行可能命令を有する持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、前記実行可能命令は、プロセッサにより実行された際、前記プロセッサに以下のこと、即ち、
昇華型印刷されることになるイメージを表すデータを受け取り、
受け取られたデータを用いて、1つ又は複数の印刷液体の色、及び前記1つ又は複数の印刷液体の色の対応する印刷液体の密度を求め、
イメージを形成する印刷液体で印刷された素材を加熱して、前記素材において前記印刷液体を定着するための昇華エネルギーを求め、
求められた昇華エネルギーをヒータに提供すること、をさせる、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
昇華型印刷システムであって、
印刷区域と、
加熱区域と、を含み、
加熱ステーションは、
前記印刷区域において印刷液体のイメージで印刷された素材が前記印刷液体を前記素材へ昇華させるように加熱されることになる求められたエネルギーを受け取り、前記エネルギーは、イメージの印刷液体の1つ又は複数の色、及びイメージを印刷するために使用される印刷液体の量に基づいて求められ、
イメージを印刷された素材を、前記印刷区域から受け取り、
受け取った前記求められたエネルギーを用いて前記素材を加熱することになる、昇華型印刷システム。
【請求項15】
印刷ステーションは、前記素材上に印刷液体のイメージを印刷することができ、前記昇華型印刷システムは、
印刷液体で印刷された素材を前記印刷区域から加熱用の前記加熱区域に移動させるように構成された転送部材を更に含む、請求項14に記載の昇華型印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
昇華型印刷は、繊維製品のような素材上にデザインを印刷(プリント)するために使用され得る。印刷液体(例えば、インク)が素材上へ転写され、次いで加熱によって、当該素材の印刷液体が昇華により定着される。多くの様々な色およびイメージデザインが昇華型印刷を用いて印刷され得る。
【0002】
例示的な具現化形態が、添付図面に関連して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】幾つかの例による、昇華型印刷の方法を示す図である。
【
図2】幾つかの例による、昇華エネルギーを求めるための方法を示す図である。
【
図3】幾つかの例による、昇華型印刷の方法を示す図である。
【
図4】幾つかの例による、昇華型印刷用の装置の一例を示す図である。
【
図5】幾つかの例による、昇華型印刷システムの一例を示す図である。
【
図6a】幾つかの例による、異なる印刷液体密度におけるカラー印刷液体の温度に伴うクロマまたはL
*の変化を示す図である。
【
図6b】幾つかの例による、異なる印刷液体密度におけるカラー印刷液体の温度に伴うクロマまたはL
*の変化を示す図である。
【
図6c】幾つかの例による、異なる印刷液体密度におけるカラー印刷液体の温度に伴うクロマまたはL
*の変化を示す図である。
【
図6d】幾つかの例による、異なる印刷液体密度におけるカラー印刷液体の温度に伴うクロマまたはL
*の変化を示す図である。
【
図7】幾つかの例による、安定した昇華型印刷のための昇華温度と印刷液体密度との間の関係を示す図である。
【
図8】幾つかの例による、コンピュータ可読媒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
詳細な説明
昇華型印刷は、繊維製品のような素材上にデザインを印刷するために使用されることができ、ポリエステル繊維製品産業において使用される技術である。最初に、昇華型印刷液体(例えば、昇華インク)が素材上へ転写され、その後に当該印刷された素材を加熱することが続く。ひとたび印刷液体を用いた印刷が完了すれば、温度/エネルギー変化が、第2段階中に印加されて、印刷液体が最終の基材上へ転写/昇華される。昇華時間期間にわたって昇華温度で加熱することは、昇華印刷液体を昇華させる。また、当該加熱は、印刷液体が定着されるようになる細孔もポリエステル繊維製品に開ける。即ち、ポリエステル繊維は、ガラス質になり、ガス状態の昇華印刷液体が浸透して、ポリエステル繊維に着色することができる。かくして、印刷液体が素材に定着される。
【0005】
インスタント(又は「オンライン」)昇華システムにおいて、印刷液体(例えば、昇華インク)は、最初に直接的に当該繊維製品上に噴射される。次いで、当該繊維製品は、適切な昇華温度/エネルギーを受けて、当該印刷液体を昇華させ、当該印刷液体を当該繊維製品に定着する。これは、印刷液体が当該繊維製品に塗布されて昇華される前に当該印刷液体用の一時的な媒剤として紙を使用する転写型昇華システムとは異なる。
【0006】
異なる昇華印刷液体(例えば、インク)は、異なる昇華温度で昇華する場合があり、異なる転写/昇華速度を有する場合がある。例えば、マゼンタの塗りつぶし領域を昇華させることは、シアンの塗りつぶし領域を昇華させるためのエネルギーに比べて、少ないエネルギーを用いて行われ得る。また、例えば、小さい領域または小さいコンテンツを昇華させるための全エネルギーは、大きな色の濃い領域を昇華させるためのエネルギーより少ない場合がある。この異なる印刷液体の反応および異なるイメージ特性は一般に、考慮されていない。
【0007】
素材に印刷液体を定着するために使用するための昇華パラメータを求める際に、使用されている印刷液体のタイプを考慮することが望ましい場合がある。素材に印刷液体を定着するために使用するための昇華パラメータを求める際に、素材に印刷されたイメージの特性(例えば、印刷液体/インク、密度(濃度)、イメージサイズ)を考慮することが望ましい場合がある。
【0008】
本明細書で開示された例は、使用するための昇華エネルギーパラメータを求める際に、印刷液体(例えば、インク)のタイプ(単数または複数)及び/又はイメージの特性を考慮することができる。即ち、イメージコンテンツは、昇華型印刷において印刷液体を昇華させるために使用するエネルギーを求める際に考慮される。昇華パラメータの改善された選択により、本明細書で開示されたような昇華型印刷されたイメージにおいて、にじみ及びゴーストのような、望ましくないイメージ品質欠陥が低減され得る。こわばり及び黄変のような、望ましくない繊維製品の影響は、本明細書で開示されたような昇華型印刷パラメータの改善された選択により、低減され得る。かくして、印刷されることになる及び昇華されることになるイメージコンテンツを考慮する本明細書で開示された方法は、印刷液体を定着するために使用される昇華エネルギーの改善された選択によって、改善された昇華型印刷を提供することができる。
【0009】
本明細書で開示された例は、印刷液体の一例として与えられる「インク」の使用を説明する。インク密度(印刷液体の密度(濃度)の一例)は、特定の色付きインクで塗りつぶされることになる領域の割合として理解され得る。例えば、黒色インクで完全に着色されることになる単位正方形は、100%の黒色インク密度を有する。50%のシアンインク及び50%のイエローインクで着色されることになる単位正方形は、50%のシアンインク密度および50%のイエローインク密度を有する。4色カラー印刷(CMYK)の場合、400%の最大インク密度が可能である(4色の色付きインクのそれぞれの100%)。
【0010】
図1は、幾つかの例による、昇華型印刷の方法100を示す。方法は、昇華印刷されることになるイメージのイメージデータを受け取ること(102)を含む。イメージデータは、印刷されることになる1つ又は複数の色(104)、及び1つ又は複数の色の対応するインク密度(106)を含む。
【0011】
受け取ったイメージデータに基づいて(108)、方法は、イメージを表す印刷インクを素材へ転写するために使用するための昇華エネルギーを求める(110)。求められた昇華エネルギー(112)は、イメージを転写するためにプリンタの昇華器に提供される(114)。昇華エネルギーは、温度単位(例えば、℃、°F)又は関連した時間を伴うエネルギー/電力単位(例えば、J、kJ、W)のような、任意の適切なエネルギー単位で計算され得る。
【0012】
幾つかの例において、方法100は、印刷されることになる1つ又は複数の色(104)と、1つ又は複数の色の対応するインク密度(106)と、昇華エネルギーとの間の所定の関係に基づいて、昇華エネルギーを求める(110)。例えば、所定の関係は、特定のカラーインク及びそのインクの適用範囲の特定の密度、特定の密度の特定のインクが安定した方法で(例えば、印刷されている素材に対して又は素材にイメージを形成するインクに対して悪影響を与えずに)印刷される素材に昇華加熱することによって転写され得る適切な温度または温度範囲に関して、示すことができる。これは、
図6a~
図6d及び
図7に関連してより詳細に後述される。
【0013】
幾つかの例において、イメージデータは、色(単数または複数)(104)の指示および対応するインク密度(単数または複数)(106)の指示として受け取られ得る(102)。
図2は、幾つかの例による、受け取られたイメージデータから昇華エネルギーを求めるための方法200を示す。イメージデータは、例えばイメージファイルとして受け取られることができ(102)、それは、イメージを印刷するために色(単数または複数)を計算する(204)及び対応するインク密度(単数または複数)を計算する(206)ために処理され、これら計算されたパラメータ(204、206)から、イメージを印刷するための昇華エネルギーが求められ得る(110)。
【0014】
言い換えれば、方法は、受け取られたイメージデータ(102)から、印刷されることになる1つ又は複数の色(204)及び1つ又は複数の色のインク密度(206)の1つ又は複数を計算することを含むことができる。計算(単数または複数)は例えば、イメージファイルから1つ又は複数の色値の抽出、イメージを印刷するために色付きインクを決定するためにイメージファイルにより表されたイメージの色分析、イメージファイルから1つ又は複数のインク密度または色密度値の抽出、又はイメージを印刷するためのインクの1つ又は複数の色の密度を求めるためにイメージファイルにより表されたイメージの密度分析を含むことができる。幾つかの例において、1つ又は複数の色のインク密度を計算することは、イメージデータから、イメージの領域、及びイメージを印刷するために当該領域に付着されることになるインクの量を求めることを含む。これは、密度タイプ分析であると考えられ得る。
【0015】
例えば、印刷されることになるデータの分析は、内部密度計データの計算に基づくことができる。スワス(帯状領域)毎に噴射されるインクの量は、印刷されるイメージの様々な領域に塗布されることになるインク密度を求めるために、ピクセル計数または密度計数を実行することができる昇華型プリンタのモジュール又は当該プリンタの昇華器のモジュールを通じて、求められ得る。密度計数の例において、これは、基材または素材上に印刷されるインク量の推定値を提供することができる。これは、各色ピクセルが各密度計数領域において生じる回数を計数することにより、行われ得る。この領域の高さは、処理されているスワスの高さと同じであることができる。領域の幅は、プログラム可能であることができ、例えば、64ピクセル、128ピクセル、256ピクセル又は512ピクセルに設定され得る。密度計領域毎のインクピクセルの量が計数され得る。密度計領域の幅は、プログラム可能であることができ、例えば、64ピクセル幅、128ピクセル幅、256ピクセル幅または512ピクセル幅であることができる。密度計領域の数は、密度計領域の幅および処理されている512ピクセル幅の列の数に依存して変動する場合がある。計数値は、各密度計領域に関して格納され得る。これまで述べた事から、イメージにおけるインクの密度が求められ得る。
【0016】
図3は、幾つかの例による、昇華型印刷の方法300を示す。イメージを印刷するために、色(単数または複数)(104、204)及びインク密度(単数または複数)(106、206)を求めた後、昇華エネルギー(112)が求められて(110)、プリンタの昇華器に提供される(110)。次いで、イメージを表すインクで印刷される素材は、求められた昇華温度で加熱され(302)、印刷されたインクを素材へ転写することができる。例えば、昇華温度(112)は、印刷素材に印加されることになる熱を制御するために、加熱区域、加熱コントローラ、又はプリンタの昇華器の他の要素に提供され得る。
【0017】
図4は、幾つかの例による、昇華型印刷の装置400の一例を示す。装置400は、プロセッサ402、当該プロセッサ402に結合されたコンピュータ可読記憶装置404、及びプロセッサ402及びコンピュータ可読記憶装置404と協働するための命令セットを含む。当該命令セットは、基材に昇華インクを定着するために昇華インクのイメージを印刷された基材を加熱するための昇華温度112を求めることができる。当該求めることは、インク色と、インク密度と、インク昇華温度との間の所定の関係に基づく。求められた昇華温度(112)は、基材にイメージのプリントを定着するためにプリンタ408の昇華器に(例えば、電気接続または通信接続を介して)提供される(406)。当該装置は、幾つかの例において昇華型プリンタの一部、幾つかの例においてプリンタの昇華器の一部であることができ、或いは幾つかの例において昇華型プリンタ又はプリンタの昇華器の外部にあり且つそれらと通信することができる(例えば、遠隔サーバ)。
【0018】
幾つかの例示的な装置400において、命令セットは、プロセッサ402及びコンピュータ可読記憶装置404と協働することができ、それにより印刷されることになる1つ又は複数の色(104、204)及び1つ又は複数の色のインク密度(106、206)を示すデータが取得され、
図7で後述されるように、所定の関係に基づいて、当該取得されたデータから昇華温度(110)が求められる。
【0019】
幾つかの例示的な装置400において、命令セットは、プロセッサ402及びコンピュータ可読記憶装置404と協働することができ、それにより昇華インクで印刷されるイメージを表すイメージデータが取得され(102)、印刷されることになる1つ又は複数の色(104、204)及び1つ又は複数の色のインク密度(106、206)を示すデータを得るために、当該取得されたイメージデータが分析される。これは、上述されたように、密度タイプ分析を通じて行われ得る。
【0020】
図5は、幾つかの例による、昇華型印刷システム408の一例を示す。図示された例示的な昇華型印刷システム408は、印刷区域500、及び加熱区域504を含む。インクは、印刷ステーション500において、イメージを形成するために素材上へ付着され得る。加熱ステーション504は、印刷区域でインクのイメージを印刷された素材が当該インクを当該素材へ昇華させるために加熱されることになる、求められたエネルギー502を受け取ることができる。エネルギー502は、イメージにおけるインクの1つ又は複数の色およびイメージを印刷するために使用されるインク量に基づいて求められる。次いで、加熱ステーション504は、印刷区域500から、イメージを印刷した素材510を受け取り、当該受け取った求められたエネルギー502を用いて当該素材を加熱することができる。
【0021】
印刷ステーション500が素材上にインクのイメージを印刷することになる幾つかの例において、昇華型印刷システム506は更に、インクで印刷された素材510を印刷区域500から加熱用の加熱区域504に移動するように構成された転送部材506を含む。
【0022】
図6a~
図6dは、試験インクの異なるインク密度における異なるカラーインクに関する温度604a~604dに伴う色純度の変化606a~606dを示す例示的な結果600a~600dを示す。本明細書で説明された方法は、
図6a~
図6dに示されたものとは異なる、温度に伴う色純度の特性を呈することができる他の昇華インクに適用され得る。
図6aはシアンインクに関するクロマ-温度変化600aを示し、
図6bはマゼンタインクに関するクロマ-温度変化600bを示し、
図6cはイエローインクに関するクロマ-温度変化600cを示し、及び
図6dは黒色インクに関するL
*(明度値)-温度変化600dを示す。
【0023】
クロマは、色純度の尺度であり、例えば、より低いクロマ値は、純粋でない色(例えば、パステル調の色合い)を示し、より高いクロマ値は、より純粋な(例えば、より明るい)色を示す。100%のクロマ値は、理想的な最も純粋な色であり、達成することが望ましい場合がある。これらの例における色純度の測定値は、「クロマ(chroma)」として与えられるが、他の色純度尺度も検討され得る。例えば、色純度は、「カラフルネス(colorfulness)」として測定され、例えば「領域の知覚される色が多かれ少なかれ色彩のあるように見えることに従った視覚の属性」として定義され得る。色純度は、例えば「その輝度に比例して判断される領域のカラフルネス」として定義される、「彩度(saturation)」に関して測定され得る。クロマは、「白色または高度に透過するように見える、同様に照明された領域の輝度の割合として判定される領域のカラフルネス」として定義され得る。
【0024】
明度値L*は、黒色の純度の同等の指示であり、この場合、より高いL*値は、それ程純粋でない黒色(例えば、モノクロ階調)を示し、より低いL*値は、より純粋な(例えば、より黒い)黒色を示す。L*は、L*=0において最も黒い黒色を表し、L*=100において、最も明るい白色を表す。0%のL*値は、理想的な最も純粋な黒色であり、達成することが望ましい場合がある。
【0025】
上述されたように、特定のイメージを昇華型印刷するために使用されることになる昇華エネルギー(例えば、温度)を求めることは、印刷されることになる1つ又は複数の色と、1つ又は複数の色の対応するインク密度と、昇華エネルギーとの間の所定の関係に基づくことができる。幾つかの例において、係る所定の関係は、複数のインク密度における昇華温度604a~604dで印刷されることになる1つ又は複数の色の彩度レベル606a~606d(例えば、クロマ、色純度、又はL
*レベル)の変化に基づくことができる。温度600a~600dに伴う異なるカラーインクの彩度レベルの例示的な変化が、
図6a~
図6dに示される。従って、幾つかの例における所定の関係は、実験結果に基づくことができる。
【0026】
図6a~
図6dから、マゼンタ、イエロー及び黒色のインクが、温度の上昇と共にそれらのクロマ値を増加させ/それらのL
*値を減少させ、特定の温度602b~602dの後、クロマ/L
*値が一定のままであることが看取され得る。しかしながら、シアンインクの場合、クロマ値は、特定の温度602aに達するまで(この例において約200℃)、温度の上昇と共に増加し、その後(即ち、約200℃を上回るより高い温度で)、クロマ値は再び減少し始める。この影響は、より高い密度のシアンインクにおいて、より顕著である。
【0027】
図6a~
図6dの情報を用いて、望ましい最大クロマ(シアン、マゼンタ及びイエローのインクに関して)又は最小L
*値(黒色インクに関して)を提供する、各カラーインク及びインク密度に対する温度が取得され得る。この例において留意すべきは、温度上昇に伴うシアンインクのクロマの挙動が、特定のイメージに印加されることになるエネルギー量を決定する際に考慮するために可変であることである。例えば、昇華インクで印刷された多色のイメージを定着するために使用する温度は、最大クロマ(及び/又は最小L
*)値を与える個々のインクの温度のうちの最も高い温度では必ずしもない場合があり、その理由は、約200℃を超える温度において、シアンインクのクロマ品質が低下し始めるからである。
【0028】
かくして、幾つかの例において、イメージデータは、印刷されることになる複数の色(カラー)を含む場合があり、昇華エネルギーを求めることは、昇華されることになる複数の色のそれぞれに関する複数の色に特有の昇華エネルギーを求め、当該複数の色に特有の昇華エネルギーから、印刷された素材にイメージを転写するために使用する昇華エネルギーを求めることを含むことができる。
【0029】
幾つかの例において、
図6aにおいてシアンインクに関して示されたように、特定の温度を超えた際にクロマの減少を引き起こすインクがたとえ存在しなくても、より高い(即ち、印刷されている素材の閾値温度を上回る)昇華温度を使用することは望ましくない場合があり、その理由は、このことが印刷されている基礎をなす素材に損傷を与える場合があるからである(例えば、素材がこわばる又は黄変する場合がある)。従って、特定の昇華インクが許容できるクロマ/色純度の閾値を上回るクロマを提供する既知の温度/エネルギーが、特定の温度より上で劣化し始める熱に敏感なインク及び/又は熱に敏感な素材に対する損傷を低減するために使用され得る。
【0030】
上述された例は、異なる密度の異なるインクの色のクロマ値を考慮する。幾つかの例において、様々なインクはインクを素材へ昇華させるのに必要な時間に依存して異なるクロマ変化を提供する場合があるので、昇華を行うのに必要な時間が考慮される場合がある。
【0031】
幾つかの例において、様々な素材(例えば、異なるポリエステルの配合)が例えば異なる高い温度で黄変を示し始める場合があり及び/又は例えば、異なるより低い温度でインク定着の低下(印刷素材からのにじみ又はインク抜けの原因になる)を呈する場合があるので、印刷素材の特性が考慮され得る。かくして、適切な昇華温度を示す所定の関係は、素材に特有である場合がある。
【0032】
図7は、本例において調査された際のシアン、マゼンタ、イエロー及び黒色のインクの安定した昇華型印刷に関する昇華温度706とインク密度704との間の関係を示す。
図7のデータは、
図6a~
図6dに提示されたデータから取得されている。例えば、
図6aは、シアンインクが210℃の温度で且つ20%のインク密度においてピークのクロマ値(約100%の)を提供し、200℃のより低い温度で且つ40%と60%のインク密度においてピークのクロマ値(約100%の)を提供し、190℃の更に低い温度で且つ80%と100%のインク密度においてピークのクロマ値(約100%の)を提供することを示す。別の例として、
図6dは、黒色インクが220℃の温度で且つ20%、40%及び60%のインク密度において約0%のピークのL
*値を提供し、200℃のより低い温度で且つ80%及び100%のインク密度において約0%のピークのL
*値を提供することを示す。
【0033】
かくして、昇華エネルギーを求めることは、
図7に示されたように、印刷されることになる1つ又は複数の色と、1つ又は複数の色の対応するインク密度704と、昇華エネルギー706との間の所定の関係700に基づくことができるということである。所定の関係700は、
図6a~
図6dに示されたように、複数のインク密度における昇華温度604a~604dに伴う印刷されることになる1つ又は複数の色の彩度レベル606a~606dの変化に基づくことができる。
【0034】
イメージデータは、印刷されることになる複数の色を含むことができる。幾つかの例において昇華エネルギーを求めることは、昇華されることになる複数の色のそれぞれに関する複数の色に特有の昇華エネルギーを求め、当該複数の色に特有の昇華エネルギーから昇華エネルギーを求めることを含むことができる。例えば、
図7の関係は、同じ適切な(又は安定した)昇華温度を有さない、使用されることになる(同じ又は異なるインク密度の)2つのカラーインクの温度における妥協点を求めるために使用され得る。
【0035】
例示的なシナリオにおいて、イメージは、イエローインクが50%のインク密度であり且つマゼンタインクが50%のインク密度である塗りつぶし領域を有する場合がある。
図7の関係から、イエローインクに関する昇華の適切な温度は210℃であるが、マゼンタに関しては適切なインク昇華温度は200℃である。このイメージコンテンツを昇華させるために210℃を選択することは、双方の着色剤にとって安全であり、その理由は、
図6bから、マゼンタが200℃の昇華温度で高いクロマ値を提供するが、それは210℃で依然として高いクロマ値を提供するからである。
図6cから、イエローは210℃の昇華温度で高いクロマ値を提供するが、昇華温度が200℃に低減された場合にクロマ値は減少し、それが望ましくないことが看取され得る。
【0036】
別の例示的なシナリオにおいて、イメージは、イエローインクが40%のインク密度であり且つシアンインクが100%のインク密度である塗りつぶし領域を有する場合がある。40%の密度のイエローインクに関して、
図7に示されたような適切な温度は220℃であるが、190℃はシアンインクに適切な昇華温度である。40%の密度のイエローインクが220℃の昇華温度で高いクロマ値を提供するが、(
図6cに示されるように)210℃で依然として高いクロマ値を提供し、210℃より低い温度において、クロマ値は減少し始める。しかしながら、
図6aから、100%の密度のシアンは、190℃の昇華温度で高いクロマ値を提供し且つ210℃で高いクロマ値を提供するが、昇華温度が220℃まで更に上昇する場合、シアンのクロマ値は減少し始め、それが望ましくないことが看取され得る。かくして、210℃は、この色と密度の組み合わせのインクを昇華させるための良好な妥協の温度である。当然のことながら、図示された関係は、特定の生地上で特定の試験されたインクバッチの例である。
図7の例示的な所定の関係は、インク密度が増加するにつれて、全般的に昇華温度が減少することを示す。インクの他のバッチ及び異なる生地は、異なる関係を提供する場合がある。しかしながら、使用される特定のインク及び素材に関して求められた安定性の関係を用いて、改善された昇華型印刷を提供することができる。他のインク及び素材は、異なる絶対的な関係値に従った特性を示す場合があるが、
図6a~
図6d及び
図7の例に示されたものと同じ傾向をたどる。
【0037】
上記の例は、絶対的な望ましい昇華温度と考えられ、この場合、インクの組み合わせが使用され、プロットされた望ましい昇華温度に関する昇華温度のマージンは、イメージを印刷する際に使用されるインクの全てに対して妥協の温度を見出すためであると考えられる。かくして、幾つかの例において、所定の関係は、印刷されることになる1つ又は複数の色の温度安定性範囲を示すことができ、昇華エネルギーを求めることは、昇華されることになる1つ又は複数の色の温度安定性範囲内の昇華エネルギーを求めることを含むことができる。幾つかの例において、イメージデータは、印刷されることになる複数の色を含むことができ、昇華エネルギーを求めることは、印刷されることになる複数の色のそれぞれの温度安定性範囲内にある複数の色に特有の昇華エネルギーを求め、当該複数の色のそれぞれの温度安定性範囲から求められた多色の温度安定性範囲内にある複数の色に特有の昇華エネルギーから昇華エネルギーを求めることを含むことができる。
【0038】
図8は、幾つかの例による、コンピュータ可読媒体を示す。
図8は、実行可能命令が格納されたコンピュータ可読記憶媒体を示すと考えられ、当該実行可能命令は、プロセッサにより実行された際に、プロセッサに本明細書で開示された任意の方法を実行させることができる。機械可読記憶媒体800は、例えば、メモリ、ROM、RAM、EEPROM、光学式記憶および同種のもののような、任意のタイプ又は揮発性または不揮発性(持続性)記憶装置を用いて、実現され得る。
【0039】
また、
図1~
図3に示された方法の何れか又は本明細書で開示された任意の他の方法を実行することができる装置(例えば、
図4の装置400又は装置/デバイス408)が本明細書に開示された。係る装置は、プロセッサ402、当該プロセッサに結合されたコンピュータ可読記憶装置800、及びプロセッサ402とコンピュータ可読記憶装置800と協働するための命令セットを含むことができ、この場合、当該命令セットは、本明細書で開示された方法の何れかを実行することができる。
【0040】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、単語「含む」及び「包含する」及びそれらの変化形は、「以下に限定されないが、・・を含む」ことを意味し、それらは、他の構成要素、整数または要素を排除することを意図されていない(及び排除しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、単数は、文脈上他の意味を示唆しない限り、複数形を網羅する。特に、不定冠詞が使用される場合、明細書は、文脈上他の意味を示唆しない限り、複数形、並びに単数形を意図されているものとして理解されるべきである。
【国際調査報告】