(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】クルクミノイド組成物および肺線維症の管理におけるその治療能力
(51)【国際特許分類】
A61K 31/121 20060101AFI20221207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221207BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K31/121
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522601
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020055802
(87)【国際公開番号】W WO2021076771
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリヤナム
(72)【発明者】
【氏名】ムンドクル ラクシュミ
(72)【発明者】
【氏名】ラマヌジャム ラジェンドラン
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206KA17
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZC01
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物ならびにその治療用途を開示する。より具体的には、本発明は、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の、間質性肺疾患または肺線維症の治療管理における使用を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物。
【請求項2】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ラセミ形態またはその2つのキラル(SまたはR)形態の一方として存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記オクタヒドロクルクミノイドが、メソ形態または右旋性もしくは左旋性形態で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
哺乳動物の間質性肺疾患の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法。
【請求項9】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
治療効果が、コラーゲン沈着を減少させること、コラーゲン1A遺伝子発現を減少させること、TGF-βレベルを低下させること、酸化ストレスおよび炎症を減少させること、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の炎症細胞の蓄積を減少させること、ならびに肥満細胞脱顆粒を阻害することである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物の肥満細胞脱顆粒を阻害する方法であって、肥満細胞を、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と接触させて、ヒスタミンおよびサイトカイン放出の阻害をもたらす工程を含む方法。
【請求項16】
前記テトラヒドロクルクミノイドが、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘキサヒドロクルクミノイドが、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
オクタヒドロクルクミノイドが、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年10月15日に出願された米国仮特許出願第62915068号の優先権を主張するPCT出願であり、その主題を参照により本明細書に組み込む。
本発明は、クルクミノイド組成物およびその治療用途に関する。より具体的には、本発明は、テトラヒドロクルクミノイド(THC)、ヘキサヒドロクルクミノイド(HHC)、およびオクタヒドロクルクミノイド(OHC)を含む組成物ならびに肺線維症の症状の緩和におけるそれらの能力に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
間質性肺疾患(ILD)とも称される肺線維症は、慢性肺疾患を説明する総称である。それは、肺実質の炎症と線維化の組合せにより生じる(Kalchiem-Dekel et al., Interstitial Lung Disease and Pulmonary Fibrosis: A Practical Approach for General Medicine Physicians with Focus on the Medical History, J Clin Med. 2018 Dec; 7(12): 476)。その病態は、3つの方法で肺を冒す:1)肺組織を損傷すること、2)間質の炎症、ならびに3)間質および肺胞における線維化。
【0003】
ILDは、種々の環境的な、趣味の、職業的な、もしくは医薬品関連の曝露から、または全身性自己免疫もしくは結合組織病(CTD)から生じる。化学療法剤、抗不整脈剤、特定の精神科の医薬、および数種の抗生物質(シプロフロキサシンのような)もILDを起こすことが知られている。CMV、HIV、細菌/真菌感染症(肺炎、ヒストプラスマ症、および寄生虫感染(肺吸虫のような)のような特定の感染症も肺線維症を起こすことが報告されている(Ross MH & Murray J. Occupational respiratory disease in mining Occup Med (Lond). 2004, 54: 304-310; Camus et al, Drug-induced and iatrogenic infiltrative lung disease Clin Chest Med. 2004, 25: 479-519)。以下の従来技術文書は、ILDの重要な病理学的な特徴の原因を開示している。
i) Kalchiem-Dekel et al., Interstitial Lung Disease and Pulmonary Fibrosis: A Practical Approach for General Medicine Physicians with Focus on the Medical History, J Clin Med. 2018 Dec; 7(12): 476
ii) Raghu G, Brown KK. Interstitial lung disease: Clinical evaluation and keys to an accurate diagnosis. Clin Chest Med. 2004, 25: 409-419;
iii) King TE Jr. Clinical advances in the diagnosis and therapy of the interstitial lung diseases. Am J Respir Crit Care Med. 2005, 172: 268-279.
iv) Crystal et al., Interstitial lung disease: Current concepts of pathogenesis, staging and therapy, The American Journal of Medicine, Volume 70, Issue 3, March 1981, Pages 542-568
v) Harrison et al., Structural Features of Interstitial Lung Disease in Systemic Sclerosis, Am Rev Respir Dis, 1991, 144(3 Pt 1):706-13.
【0004】
ILDの最も一般的な症状は息切れであり、疾患の重症度と共に悪化する。ILDは、肺高血圧、呼吸不全、および肺性心(右心不全)を含む多数の合併症を起こし得る。COVID-19感染の世界的流行は、世界の全人口に影響を及ぼした。COVID-19の可能性がある合併症の1つは肺線維症であり、それは、慢性呼吸困難、長期の障害をもたらし、患者の生活の質に影響する。患者の臨床的、X線写真の、および剖検の報告が肺線維症を示す一方で、既存の線維性疾患はSARS-CoV-2による感染を悪化させ得る(Zumla et al., "Reducing mortality from 2019-nCoV: host-directed therapies should be an option," The Lancet, 2020, 395(10224):e35-e36; Ademola et al., Pulmonary Fibrosis in COVID-19 Survivors: Predictive Factors and Risk Reduction Strategies, Pulmonary Medicine, 2020, Article ID 6175964, 10 pages)。COVID-19における肺損傷の種々の機構は、ウイルスによる機構と免疫媒介性の機構の両方が関与するとして説明されてきた(Liu, et al., "Overlapping and discrete aspects of the pathology and pathogenesis of the emerging human pathogenic coronaviruses SARS-CoV, MERS-CoV, and 2019-nCoV," Journal of Medical Virology, vol. 92, no. 5, pp. 491-494, 2020)。さらに、酸化ストレスは、COVID-19の重症度を増加させる主要因子であり、抗酸化剤の補給がCOVID-19に対する治療戦略において推奨されている(Derouiche S, Oxidative Stress Associated with SARS-Cov-2 (COVID-19) Increases the Severity of the Lung Disease - A Systematic Review. J Infect Dis Epidemiol, 2020, 6:121. doi.org/10.23937/2474- 3658/1510121)。
【0005】
ILDの治療は、疾患の診断および重症度に依存する。最も一般的な治療方法としては、抗生物質およびコルチコステロイドの投与がある。場合によっては、ILDの結果として生じた低酸素症を減少させるために酸素吸入も与えられる。アザチオプリン、N-アセチルシステイン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ニンテダニブ、ピルフェニドンのような薬物も、ILDの治療のために投与される。進行した段階のILDは、肺移植により治療されなければならないことがある。
【0006】
ILDにおいて酸化還元不均衡が著しいので、抗酸化剤による治療も病状の軽減を助けるだろう(Day B J, Antioxidants as Potential Therapeutics for Lung Fibrosis, Antioxid Redox Signal. 2008; 10(2): 355-370)。薬用植物由来の天然分子も、肺の炎症および関連疾患を軽減させることが報告されている(Santana et al., Evidences of Herbal Medicine-Derived Natural Products Effects in Inflammatory Lung Diseases, Mediators Inflamm. 2016; 2016: 2348968)。しかし、ILDの症状の管理において非常に有効である天然植物系組成物の産業上の必要性が依然として存在する。
【0007】
クルクマ種から得られた化合物、具体的にはクルクミノイドならびに種々の疾患および障害の治療管理におけるそれらの役割は文書に記載されている。最近、クルクミノイドの代謝物が、クルクミンに類似のクルクミンより優れた効能のために、多くの注目を集めている(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。構造番号1により表されるテトラヒドロクルクミン、構造番号2により表されるヘキサヒドロクルクミン、および構造番号3により表されるオクタヒドロクルクミンなどのクルクミンの還元代謝物の薬理活性は未だ証明されておらず、工業的利用のために活用されていない。還元代謝物としては、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン(構造番号4)、テトラヒドロビス-デメトキシクルクミン(構造番号5)、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン(構造番号6)、ヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミン(構造番号7)、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン(構造番号8)、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミン(構造番号9)もある。
【0008】
【化1】
構造番号1
構造番号2
構造番号3
構造番号4
構造番号5
構造番号6
構造番号7
構造番号8
構造番号9
【0009】
クルクミンのこれらの還元代謝物は、通常、還元酵素により生体内変換される(Mimuraら、米国特許第5266344号;Pan et al., Biotransformation of curcumin through reduction and glucuronidation in mice, Drug Metab Dispos, 1999, 27(1):486-494)。それらは、また、天然に同定され、異なる植物源から単離される(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。本発明は、クルクミノイドの代謝物、具体的にはテトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物ならびに肺線維症の管理におけるその治療能力を開示する。
本発明の原理目的は、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物を開示することである。
【0010】
本発明の別の目的は、間質性肺疾患の治療管理における、テトラヒドロクルクミン、ヘキサヒドロクルクミン、およびオクタヒドロクルクミンを含む組成物の使用を開示することである。
本発明は上述の目的を満たし、さらなる関連した利益を提供する。
【発明の概要】
【0011】
最も好ましい実施形態において、本発明は、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を開示する。
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の間質性肺疾患の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を開示する。
【0012】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の間質性肺疾患の治療管理における、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の使用を開示する。
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の肥満細胞脱顆粒を阻害する方法であって、肥満細胞を、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と接触させて、ヒスタミンおよびサイトカイン放出の阻害をもたらす工程を含む方法を開示する。
【0013】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の肥満細胞脱顆粒の阻害における、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の使用を開示する。
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例として説明する以下のより詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処理された線維芽細胞中のROSの減少を示すグラフ表示である。
***、P<0.001
【
図2】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処理された肥満細胞によるヒスタミン放出の減少を示すグラフ表示である。
【
図3】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物による、IL1βにより誘導された肺上皮細胞(A549)細胞の上清中のIL6の減少を示すグラフ表示である。
*はP<0.05を示す。
【
図4A】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を使用する、リンパ球中に観察される炎症細胞の蓄積の減少を示すグラフ表示である。
***はP<0.001を示す。
【
図4B】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を使用する、好酸球中に観察される炎症細胞の蓄積の減少を示すグラフ表示である。
***はP<0.001を示す。
【
図5】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺ライセート中のIL6の相対的遺伝子発現を示すグラフ表示である。
***はP<0.001を示す。
【
図6】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺ライセート中のIFN-γの相対的遺伝子発現を示すグラフ表示である。
***はP<0.001を示す。
【
図7】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物内の肺MDAレベルの減少を示すグラフ表示である。
*はP<0.05を示す。
【
図8】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺ライセート中のSOD活性の増加を示すグラフ表示である。
***はP<0.001を示す。
【
図9】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺ライセート中のNRF-2タンパク質の発現の増加を示すウェスタンブロット画像である。
【
図10】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺ライセート中のTGF-β発現の減少を示すグラフ表示である。
*はP<0.05を示す。
【
図11】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物内の肺炎症の減少を示す肺切片の組織病理学的画像である。
【
図12】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物内のコラーゲン沈着の減少を示す肺切片の組織病理学的画像である。
【
図13】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺内のコラーゲン沈着の減少を示すグラフ表示である。
***はP<0.001を示す。
【
図14】テトラヒドロクルクミノイド ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物により処置された動物の肺ライセート中のCol-1Aの遺伝子発現の減少を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最も好ましい実施形態において、本発明は、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。別の関連する実施形態において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ラセミ形態、またはその2つのキラル(SまたはR)形態の一方として存在する。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに関連する実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、メソ形態、または右旋性もしくは左旋性形態で存在する(全ての形態は本実施形態内に存在し、活性型の一部であると主張されている)。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。
【0016】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の間質性肺疾患の治療管理の方法であって、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物を、そのような治療管理を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の関連する態様において、治療効果は、コラーゲン沈着を減少させること、コラーゲン1A遺伝子発現を減少させること、TGF-βレベルを低下させること、酸化ストレスおよび炎症を減少させること、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の炎症細胞の蓄積を減少させること、ならびに肥満細胞脱顆粒を阻害することによりもたらされる。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0017】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の間質性肺疾患の治療管理における、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の使用を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の関連する態様において、治療効果は、コラーゲン沈着を減少させること、コラーゲン1A遺伝子発現を減少させること、TGF-βレベルを低下させること、酸化ストレスおよび炎症を減少させること、気管支肺胞洗浄(BAL)液中の炎症細胞の蓄積を減少させること、ならびに肥満細胞脱顆粒を阻害することによりもたらされる。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0018】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の肥満細胞脱顆粒を阻害する方法であって、肥満細胞を、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物と接触させて、ヒスタミンおよびサイトカイン放出の阻害をもたらす工程を含む方法を開示する。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0019】
別の好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物の肥満細胞脱顆粒の阻害における、70質量/質量%~80質量/質量%のテトラヒドロクルクミノイド、10質量/質量%~20質量/質量%のヘキサヒドロクルクミノイド、および5質量/質量%~10質量/質量%のオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の使用を開示する。関連する実施形態において、肥満細胞脱顆粒の阻害は、肥満細胞からのヒスタミンおよびサイトカイン放出を阻害することによりもたらされる。関連する態様において、テトラヒドロクルクミノイドは、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロ-デメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビス-デメトキシクルクミンを含む。別の関連する態様において、ヘキサヒドロクルクミノイドは、ヘキサヒドロクルクミン、ヘキサヒドロ-デメトキシクルクミン、およびヘキサヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらに別の好ましい実施形態において、オクタヒドロクルクミノイドは、オクタヒドロクルクミン、オクタヒドロ-デメトキシクルクミン、およびオクタヒドロビス-デメトキシクルクミンをさらに含む。さらなる関連する態様において、組成物は、安定剤、バイオアベイラビリティ向上剤および酸化防止剤、薬学的または栄養補助的または薬用化粧的に許容される賦形剤および向上剤をさらに含む。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0020】
さらに別の関連する実施形態において、バイオアベイラビリティ向上剤は、ピペリン、クェルセチン、ニンニク抽出物、ショウガ抽出物、およびナリンギンからなる群から選択されるがこれらに限定されない。
別の関連する態様において、1つまたは複数の酸化防止剤および抗炎症剤は、ビタミンA、D、E、K、C、Bコンプレックス、ロスマリン酸、αリポ酸、エラグ酸、グリチルリチン酸、没食子酸エピガロカテキン、植物ポリフェノール、グラブリジン、モリンガ油、オレアノール酸、オレウロペイン、カルノシン酸、ウロカニン酸、フィトエン、リポイド酸(lipoid acid)、リポアミド、フェリチン、デスフェラール、ビリルビン(billirubin)、ビリベルジン(billiverdin)、メラニン、ユビキノン、ユビキノール、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル、トコフェロールおよびビタミンE酢酸エステルなどの誘導体、尿酸、α-グルコシルルチン、カタラーゼ(calalase)およびスーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオン、セレン化合物、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ピロ亜硫酸ナトリウム(SMB)、没食子酸プロピル(PG)、ならびにアミノ酸システインからなる群から選択されるがこれらに限定されない。
最も好ましい実施形態を述べる具体的な実例は以下に含まれる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
組成物
クルクミノイドの還元代謝物、すなわちテトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドは、通常、還元酵素により、および水素化により生体内変換される(Mimuraら、米国特許第5266344号;Pan et al., Biotransformation of curcumin through reduction and glucuronidation in mice, Drug Metab Dispos, 1999, 27(1):486-494)。それらは、また、天然に同定され、異なる植物源から単離される(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。テトラヒドロクルクミンは、そのアナログであるテトラヒドロデメトキシクルクミン、テトラヒドロビスデメトキシクルクミンと共に、ジンギベル属およびクルクマ属から単離されてきた(Peng et al., Chemical constituents of Zingiber officinale (Zingeberaceae). Yunnan Zhiwu Yanjiu, 2007; 29(1):125-128)。テトラヒドロデメトキシクルクミンおよびテトラヒドロビスデメトキシクルクミンは、タイのゼドアリー(クルクマ・ゼドアリア(Curcuma zedoaria))の根茎に存在すると報告された(Matsuda et al., Anti-allergic principles from Thai zedoary: structural requirements of curcuminoids for inhibition of degranulation and effect on the release of TNF-alpha and IL-4 in RBL-2H3 cells. Bioorg med hem, 2004; 12(22):5891-5898)。テトラヒドロクルクミンは、クルクミンからの生体内変換によっても得られる(Shimoda et al., Formation of tetrahydrocurcumin by reduction of curcumin with cultured plant cells of Marchantia polymmrpha, Nat Prod Commun, 2012, 7(4):529-530)。
【0022】
ヘキサヒドロクルクミノイドも、クルクマ、ジンギベル、およびアルピナの根および地下茎に存在する天然の植物代謝物である。ヘキサヒドロクルクミノイドは、新鮮なショウガの地下茎から単離されてきた(Peng et al., Cytotoxic, cytoprotective and antioxidant effects of isolated phenolic compounds from fresh ginger, Fitoterapia, 2012, 83(3):568-585)。ヘキサヒドロクルクミノイドは、2つのエナンチオマー型(SおよびR)のいずれかで、およびラセミ混合物としても存在すると報告されている(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。
【0023】
同様に、オクタヒドロクルクミノイドも、C.キサントリーザ(C.xanthorrhiza)の地下茎から単離される(Uehara et al., Diarylheptanoids from the rhizomes of Curcuma xanthorrhiza and Alpinia officinarum, Chem Pharm Bull, 1987, 35(8):3298-3304)。オクタヒドロクルクミンは、テトラヒドロクルクミンからの水素化、インビボおよび微生物生体内変換によっても調製される(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。
【0024】
本発明において特許請求される組成物を、以下の水素化プロセスを使用して製剤した。
クルクミノイドを、溶媒アセトン中で、水素圧の下で、パラジウム/炭素の存在下、室温で、出発物質の非存在消失まで還元する。生成物を、テトラヒドロクルクミン、テトラヒドロデメトキシクルクミン、およびテトラヒドロビスデメトキシクルクミンを含む灰白色粉末として単離する。さらに、テトラヒドロクルクミノイドを、溶媒エタノール中で、特定の温度および水素圧の下で、パラジウム/炭素の存在下、出発物質の消失まで選択的にヘキサヒドロクルクミノイドに還元する。生成物を、ヘキサヒドロクルクミノイドおよび5%未満のオクタヒドロクルクミノイドを含む灰白色粉末として単離する。オクタヒドロクルクミノイドの調製には、テトラヒドロクルクミノイドを、溶媒エタノール中で、高温および水素圧の下で、パラジウム/炭素の存在下、出発物質の完全な転化まで、オクタヒドロクルクミノイドに還元する。生成物を、痕跡量のヘキサヒドロクルクミノイドを有する基本的にオクタヒドロクルクミノイドとしての灰白色粉末として単離する。
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを以下の比率でブレンドする:
【0025】
【表1】
組成物は、Sami Labs LimitedからC3 Reduct(登録商標)Specialとしても市販されている。
【0026】
(実施例2)
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物の治療能力
テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物のORACおよびROS&DPPH捕捉能力を、クルクミノイドおよびテトラヒドロクルクミノイドと比べて評価することにより、組成物の治療能力を試験した。
【0027】
酸素ラジカル吸収能アッセイ(ORAC)
異なる濃度の標準(トロロックス)(T5~T1)または試験試料(S3~S1)、APPH(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン二塩酸塩)およびフルオレセイン二ナトリウム染料を、96ウェルダークプレートに加えた。蛍光読取り値を、1分ごとに35分間、485/520nmで記録した(Fluostar Optima Microplate Reader)(f1……f35)。曲線下面積(AUC)を
AUC=(1+f1/f0+f2/f0+……+f35/f0)
として計算した。
正味AUCを、ブランクのAUCを試料のAUCから引くことにより得た。最終ORAC値を、試料のリットルあたりまたはグラムあたりのトロロックス当量のマイクロモル(μmol TE/gまたはμmol TE/L)として表した。
【0028】
DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリル-ヒドラジル-水和物)フリーラジカルアッセイ
試験試料をDMSOに溶解させ、アッセイ用に50%メタノールで希釈した。異なる濃度の組成物および個別の活性成分を96ウェルプレート中でDPPHのメタノール溶液と混合した。プレートを暗所で15分間インキュベートし、マイクロプレートリーダー(TECAN Ltd、Mannedorf、Switzerland)を使用して吸光度を540nmで測定した。ブランク(DMSO、メタノール)および標準(トロロックスのDMSO溶液)を同時に記録した。
フリーラジカル捕捉活性を下記の通り計算した
捕捉活性%=(B-C)-(S-C)/(B-C)×100
式中、Bは基準溶液の吸光度であり、Cは基準溶液ブランク(メタノールのみ)の吸光度であり、Sは試験溶液の吸光度であり、Cは試験溶液ブランクの吸光度である。試料を、可変的な濃度によりスクリーニングして、阻害濃度(IC50、DPPH吸光度を50%減少させる濃度)を確立した。結果を表2としてまとめる:
【0029】
【表2】
結果は、テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物が、クルクミノイドおよびテトラヒドロクルクミノイドと比べてより良好なORACおよびDPPH捕捉を示したことを明らかにし、組成物のより高い治療効能を示した。さらなる治療活性を組成物自体に関して評価した。
【0030】
細胞内活性酸素種(ROS)アッセイ
Swiss 3T3(5×l04細胞/ウェル)細胞を、96ウェル黒色マイクロプレートに播種し、一晩成長させた。細胞を、H2O2(25mM)と共に、異なる濃度の試料と共に、または試料無しで、DMEM 1%FBS中で4時間誘導した。新たに調製したDCFH-DA試薬を、10μg/ウェルの濃度で全てのウェルに加え、37℃で30分間インキュベートした。蛍光を、485:520(Ex:Em)nmの波長で、BMG Fluo Star Optimaマイクロプレートリーダーで記録した。ROS捕捉のパーセンテージを、H2O2処理対照細胞の蛍光強度に対して計算した。
結果(
図1)は、組成物が、29.64μg/mLのIC50で、線維芽細胞中のROSを減少させるのに非常に有効であることを示した。
【0031】
(実施例3)
肺線維症-インビトロアッセイ
肺線維症を管理し、肥満細胞脱顆粒を阻害することにおける組成物の能力を、以下のインビトロアッセイにより試験した。
肥満細胞は、炎症反応および即時型アレルギー反応を管理し引き起こすことに重要な役割を有する。それらは、脈管構造、平滑筋、結合組織、粘液腺、および炎症細胞に作用するヒスタミン、プロテアーゼ、走化性因子、サイトカイン、およびアラキドン酸の代謝物などの種々の炎症メディエーターを放出する(Amin K, The role of mast cells in allergic inflammation, Respiratory Medicine, 2012;106;9-14)。線維性の肺疾患を有する患者の肺内の肥満細胞数が対照対象と比べて増加しており、線維化の重症度と正の相関があることが報告されている。さらに、IPFを有する患者のBAL液中のヒスタミン濃度は、対照対象の約10倍上昇している(Cruse et al., Mast cells in airway diseases and interstitial lung disease, Eur J Pharmacol. 2016; 778: 125-138)。そのため、ILDを有する対象の肥満細胞脱顆粒を阻害することが必須である。
組成物を、肥満細胞中のヒスタミンおよびサイトカイン放出を予防するその能力に関して試験した。
【0032】
ヒスタミン放出アッセイ
P815細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%(v/v)熱非働化ウシ胎児血清(FBS、Gibco、UK)を補ったダルベッコの最小必須培地(Gibco、UK)中で培養し、37℃の5%CO2インキュベーター内に保った。細胞が80%コンフルエンスに達すると、細胞を収集し、新鮮な培地に再懸濁させ、実験のためにウェルあたり5×105細胞で24ウェルプレートに播種した。
【0033】
細胞を、Ca++およびMg++を含まない0.1%ウシ血清アルブミンを含むタイロード液により緩衝した氷冷HEPES緩衝液(137mmol/L NaCl、5.6mmol/Lグルコース、2.7mmol/L KC1、0.4mmol/L NaH
2PO
4、および10mmol/L HEPES[pH 7.4]で構成される)で洗浄した後、細胞を、30μgの化合物48/80と共に異なる濃度の組成物により処理した。3時間のインキュベーションの後、プレートを氷上に10分間保って、脱顆粒を停止させた。次いで、5000rpmで5分間遠心分離の後で上清を収集した。50μLの上清に、50μLの4N NaOHおよび10μLのオプタルジアルデヒド(10mg/mL)を加え、暗所で、室温で10分間インキュベートした。次いで、反応を50μLの1N HClにより停止させ、蛍光を390/460 ex/emで記録した。ヒスタミン放出のパーセンテージを、化合物48/80処理対照細胞の蛍光強度に対して計算した。
結果(
図2)は、50μg/mLの組成物が肥満細胞の上清中でヒスタミン放出を減少させるのに有効であることを示した。
【0034】
インビトロ肺炎症アッセイ
A549(1×l04細胞/ウェル)細胞を96ウェルマイクロプレートに播種し、一晩成長させた。一晩の血清飢餓の後、細胞を、異なる濃度の組成物と共にまたは組成物無しで、IL1β(5ng/mL)により、1%FBS RPMI 1%FBS培地中で4時間前処理した。さらに細胞を試料のみにより24時間処理した。24時間後、上清を収集して、製造業者の説明書に従ってELISA(R&D Systems、Minneapolis、Minnesota、USA)によりIL6のレベルを測定した。IL6の阻害パーセンテージを、IL1β処理対照に対して計算した。
組成物は、A549細胞の上清中でIL1βに誘導されたIL6(炎症性サイトカイン)のレベルを低下させるのに有効であった(
図3)。
組成物は、ヒスタミン放出を予防し肥満細胞脱顆粒を阻害するのに非常に有効であったので、異なる形態のアレルギーを治療するのに使用され得る。
【0035】
(実施例4)
肺線維症のインビボ試験
動物実験のために守られるプロトコルは、インド政府の指針に従ったインドの動物実験の管理と監督を目的とした委員会(CPCSEA)の通りに施設の動物倫理委員会により承認され、アメリカ国立衛生研究所により発行された実験動物の管理と使用に関する指針(NIH Publication, 8th Edition, 2011)に従っている。全部で40匹のC57/BL6マウス(6~8週齢)を、それぞれ8匹のマウスの5群にランダムに分けた(平均体重20~22g)。動物を、標準的な実験室条件(温度23.5℃、湿度=58~64%)で、12時間明および12時間暗として飼育し、通常食および水を適宜与えた。
【0036】
肺線維症モデルを生成させるために、実験マウスに、5mg/kg体重のブレオマイシンを、気管内滴下により単回投与し、対照マウスには塩水を与えた。治療的処置のため、第3日から、マウスにC3Rブレンドを強制経口投与により(20、40、および80mg/kg)ブレオマイシン気管内投与の後3週間与えた。実験期間の最後に、動物を人道的に犠死させ、器官、組織、および血液をさらなる分析のために収集した。体重および器官重量を全動物で記録した。肺を切断し、秤量し、組織学的分析のためにRNA laterまたはOCT中に保存した。
【0037】
抗酸化および抗炎症作用
気管支肺胞洗浄(BAL)
BAL液(BALF)を、5mlの滅菌された塩水の肺への気管内滴下により収集した。次いで、BALF全体を1500rpmで5分間遠心分離した。遠心分離後、残留懸濁液を分析し、血液分析装置を使用して全細胞数、好中球数、好酸球数、およびリンパ球数を測定した。
炎症細胞の蓄積の減少が、リンパ球(
図4A)および好酸球(
図4B)の両方で、処置された動物のBAL中に観察された。
同様に、標準的な手順を利用して、IL-6およびIFN-γレベルを評価した。トリゾール法を利用して、RNAを肺試料から抽出した。肺組織を液体窒素中でホモジナイズし、それに続いてトリゾール抽出およびDNAseにより、DNAを完全に除いた。oligodTプライマーおよびSuperscript III逆転写酵素(cDNA合成キット、Invitrogen(商標))を使用して、第一鎖cDNAをRNA試料から調製した。定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を、SYBR Green I蛍光色素により、Light cycler 96を製造業者の説明書に従って使用して(Light Cycler(登録商標) FastStart DNA Master SYBR Green I、Roche)実施した。分析に使用したプライマーを表3に与える。18s遺伝子をハウスキーピング遺伝子として使用した。各試験試料中の標的遺伝子の遺伝子発現を、比較Ct(ΔΔCt)法を利用する相対的定量化により決定した。
【0038】
【表3】
組成物は、ブレオマイシン群と比べて、肺ライセート中のIL6(
図5)およびIFN-γ(
図6)の相対的遺伝子発現を減少させるのに有効であった。
【0039】
MDA
組織ホモジネート中の脂質過酸化最終産物であるマロンジアルデヒドを、いくらかの改変を加えたBeuge and Aust., 1978の方法に従って測定した。組織ホモジネートを、等体積のTBA-TCA-HCl溶液(0.5%TBA、20%TCA、および0.25N HCl)と混合した。混合物を30分間沸騰水浴(95~100℃)中で加熱して、直ちに冷却した。チューブを10,000rpmで10分間遠心分離し、上清の吸光度を532nmで読み取った。過酸化脂質のレベルを、形成されたMDAのμM/mgタンパク質で表した。
MDAレベルは、組成物で処理した群において著しく減少した(
図7)。
【0040】
SOD
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、スーパーオキシドの過酸化水素および酸素への不均化を触媒する抗酸化酵素。それは、肺線維症などの疾患で生じる酸化損傷から肺を保護する。
SODの活性を、WST-1法により、製造業者の説明書(Elabsciences)に従ってキットを使用して測定した。キサンチンオキシダーゼ(XO)は、水溶性ホルマザン染料を生成させるWST-1とO2-の反応を触媒する。SODはスーパーオキシドアニオンの不均化を触媒する。SODの活性は、ホルマザン染料の量と負の相関関係がある。
組成物はSODの活性を著しく増加させた(
図8)。
【0041】
Nrf2発現
抗酸化防御系の主要調節因子である核因子赤血球2関連因子2(Nrf2)は酸化ストレスに対して細胞を保護する。
動物由来の凍結させた肺をホモジナイズし、細胞を、プロテアーゼ(1×プロテアーゼ阻害剤カクテル-HI media)およびホスファターゼ(オルトバナジン酸ナトリウム1mM)を含む氷冷RIPA緩衝液を使用して溶解させた。タンパク質濃度をBCA法(G-Biodciences、USA)により評価した。細胞タンパク質(100μg)を、変性10%ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)中のレーンにロードした。分離したタンパク質を、ポリビニリデンジフルオリド膜(Invitrolon(商標)PVDF、Thermo Fisher Scientific、USA)に転写し、5%脱脂粉乳中で2時間ブロッキングした。次いで、膜を抗マウス一次抗体の適切な希釈液と共に4℃で18時間インキュベートし、それに続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体(Thermo Scientific、USA)と共に2時間37℃でインキュベートした。免疫反応性タンパク質バンドをECL((Pierce ECL plus、Thermo Scientific、USA)により検出した。イムノブロットを、Image Jソフトウェア(バージョン1.52a、National Institute of Health、USA)を使用して定量化した。表4は実験に使用した抗体を列記する。
【0042】
【表4】
組成物は、ブレオマイシン誘導群と比べて、肺ライセート中のNRF-2(抗酸化酵素を制御して組織を酸化損傷から保護するタンパク質)発現を回復するのに有効であった(
図9)。
【0043】
TGF-β発現
TGF-β経路は肺線維症において中心的役割を果たす。それは、結合組織の増殖を促進し、肺胞細胞中の上皮間葉転換(EMT)を促進し、メタロプロテイナーゼ活性および組織リモデリングを調節した成長因子の分泌を誘導する。TGF-βの阻害は、特発性肺線維症(IPF)の認可された臨床治療法である(例えば、ピルフェニドン)。
本発明において、肺ホモジネート中のTGF-βの濃度を、製造業者の説明書に従ってELISA(R&D Systems(Minneapolis、Minnesota、USA)により実施した。結果を、肺ホモジネートのmgタンパク質あたりの濃度として表した。組成物は、40および80mg/kg体重で肺ホモジネート中のTGF-βの濃度を低下させるのに有効であった(
図10)。
【0044】
組織学的分析
ヘマトキシリンおよびエオシン染色のために、ブアン液でプレフィックスした肺組織のパラフィンブロックから切片を切り出し、リリー・マイヤーヘマトキシリン(武藤化学株式会社、日本)およびエオシン溶液(和光純薬工業株式会社)により染色した。コラーゲン沈着を可視化するために、ブアンの固定化された肺切片を、ピクロシリウスレッド液(Waldeck、Germany)を使用して染色した。線維化面積の定量的な分析のために、シリウスレッド染色切片の明視野像および画像を、明視野顕微鏡(ニコン エクリプス)を使用して取込み、切片あたり5つの視野中の陽性面積を、ImageJソフトウェア(National Institute of Health、USA)を使用して測定した。
【0045】
肺炎症の著しい減少が、組織病理学的分析で観察された(
図11)。肺組織の肺胞でのコラーゲン沈着も、組成物を投与された群において著しく減少した(
図12および
図13)。
コラーゲン1A遺伝子発現も、定量的なRT-PCRを使用して評価した。トリゾール法を利用して、RNAを肺試料から抽出した。肺組織を液体窒素中でホモジナイズして、それに続いてトリゾール抽出およびDNAseにより、DNAを完全に除去した。oligodTプライマーおよびSuperscript III逆転写酵素(cDNA合成キット、Invitrogen(商標))を使用して、第一鎖cDNAをRNA試料から調製した。定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を、SYBR Green I蛍光染料により、製造業者の説明書(Light Cycler(登録商標)FastStart DNA Master SYBR Green I、Roche)に従ってLight cycler 96を使用して実施した。分析に使用したプライマーを表5に与える。18s遺伝子をハウスキーピング遺伝子として使用した。各試験試料中の標的遺伝子の遺伝子発現を、比較Ct(ΔΔCt)法を利用して相対的定量化により測定した。
【0046】
【0047】
組成物は、ブレオマイシン誘導群と比べて、肺ライセート中のCol-1A(結合組織に見られるI型コラーゲン)の相対的遺伝子発現を減少させるのに有効だった(
図14)。
全体として、テトラヒドロクルクミノイド、ヘキサヒドロクルクミノイド、およびオクタヒドロクルクミノイドを含む組成物は、マウスのブレオマイシン誘導性の肺線維症における線維化および炎症のマーカーを減少させるのに有効だった。それは、肥満細胞からのヒスタミン放出を減少させることができ、抗アレルギー活性を示唆している。組成物は、ILDおよびSARS-CoV-2誘導性急性呼吸器症候群を含む呼吸器疾患の管理のための栄養補助食品として非常に好適である。
【0048】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、本発明がそれに限定されないことが、当業者により明らかに理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるものとする。
【国際調査報告】