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特表2022-552008CAR mRNA送達のための脂質ナノ粒子とその製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】CAR mRNA送達のための脂質ナノ粒子とその製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20221207BHJP
   C07D 295/135 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 33/10 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221207BHJP
   C07D 295/13 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K31/7105
C07D295/135
A61K9/14
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/10
A61K31/713
A61K31/7088
A61K48/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/10
A61P31/16
A61P35/00
A61P19/02
A61P9/00
A61P25/00
A61P37/02
C07D295/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523023
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 US2020056255
(87)【国際公開番号】W WO2021077067
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/916,942
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット ビリンズリー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン シン
(72)【発明者】
【氏名】カール エイチ.ジューン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC27
4C076CC34
4C076CC35
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF34
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA43
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA36
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB39
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA43
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB39
(57)【要約】
本発明は、CARをコードするmRNA分子、核酸分子、及び/又は治療薬を、細胞などの選択された標的に送達するための、脂質ナノ粒子(LNP)又はその組成物に関する。すなわち様々な態様において本発明はまた、前記LNP又はその組成物を使用して、それを必要とする被験体における疾患又は障害を予防又は治療する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のmRNA分子と式(I)の構造を有する少なくとも1種の化合物又はその塩とを含む脂質ナノ粒子(LNP):
【化1】
[ここで、A1及びA2は、C、C(H)、N、S、及びPからなる群から独立して選択され;
ここで、各L1、L2、L3、L4、L5、及びL6は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、及びN(R19)からなる群から独立して選択され;
ここで、各R1、R2、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8a、R8b、R9a、R9b、R10a、R10b、R11a、R11b、R12a、R12b、R13a、R13b、R14a、R14b、R15a、R15b、R16、R17、R18、及びR19は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロシクロアルキル、置換-(R20z'(R21Z"-ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルケニル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキニル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキニル、アリール、置換アリール、-Y(R20z'(R21Z"-アリール、置換-Y(R20z'(R21Z"-アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロアリール、置換-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、-Y(R20z'(R21Z"-エステル、-Y(R20z'(R21Z"、=O、-NO2、-CN、及びスルホキシからなる群から独立して選択され;
ここで、Yは、C、N、O、S、及びPからなる群から選択され;
ここで、各R20及びR21は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、=O、-NO2、-CN、及びスルホキシからからなる群から独立して選択され;
ここで、各Z'及びZ”は、それぞれ独立して、0、1、又は2で表される整数であり;そして
ここで、各m、n、o、p、q、r、s、t、u、v、w、及びxは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、又は5で表される整数であり;及び
ここで、mRNA分子はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする]。
【請求項2】
式(I)の構造を有する化合物が、以下からなる群から選択される構造を有する化合物である、請求項1に記載のLNP:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
[ここで、各R1、R2、R3、R4、及びR5は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、及びエステルからなる群から独立して選択され;
ここで、m、n、o、p、及びqは、それぞれ独立して0~25の整数であり;そして
ここで、r、s、t、u、v、w、及びxは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、及び5で表される整数である]。
【請求項3】
式(I)の構造を有する化合物が、以下からなる群から選択される構造を有する化合物である、請求項1に記載のLNP:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】

【化13】
【化14】
【化15】
[ここで、各R1、R2、R3、R4、及びR5は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、及びエステルからなる群から独立して選択され;そして
ここで、m、n、o、p、及びqは、それぞれ独立して0~25の整数である]。
【請求項4】
式(I)の構造を有する化合物がイオン化可能脂質である、請求項1に記載のLNP。
【請求項5】
前記mRNA分子が、式(I)の構造を有する化合物内に封入されている、請求項1に記載のLNP。
【請求項6】
前記LNPが、式(I)の構造を有する化合物又はその塩を約1mol%~約100mol%の濃度範囲で含む、請求項1に記載のLNP。
【請求項7】
前記LNPが、式(I)の構造を有する化合物又はその塩を約10mol%~約50mol%の濃度範囲で含む、請求項6に記載のLNP。
【請求項8】
前記LNPが少なくとも1種のヘルパー脂質をさらに含む、請求項1に記載のLNP。
【請求項9】
前記LNPが、少なくとも1種のヘルパー脂質を約0.01mol%~約99.9mol%の濃度範囲で含む、請求項8に記載のLNP。
【請求項10】
前記LNPが、少なくとも1種のヘルパー脂質を約0.5mol%~約50mol%の濃度範囲で含む、請求項9に記載のLNP。
【請求項11】
前記ヘルパー脂質が、リン脂質、コレステロール脂質、ポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のLNP。
【請求項12】
前記リン脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)又はその誘導体、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)又はその誘導体、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)又はその誘導体、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン(SOPC)又はその誘導体、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)又はその誘導体、N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)又はその誘導体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載のLNP。
【請求項13】
前記LNPが、リン脂質を約15mol%~約50mol%の濃度範囲で含む、請求項11に記載のLNP。
【請求項14】
前記コレステロール脂質がコレステロール又はその誘導体である、請求項11に記載のLNP。
【請求項15】
前記LNPが、コレステロール脂質を約20mol%~約50mol%の濃度範囲で含む、請求項11に記載のLNP。
【請求項16】
前記ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である、請求項11に記載のLNP。
【請求項17】
前記LNPが、ポリマーを約0.5mol%~約10mol%の濃度範囲で含む、請求項11に記載のLNP。
【請求項18】
前記LNPが、核酸分子、アジュバント、治療薬、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のLNP。
【請求項19】
前記核酸分子が治療薬である、請求項18に記載のLNP。
【請求項20】
前記核酸分子がDNA分子又はRNA分子である、請求項18に記載のLNP。
【請求項21】
前記核酸分子が、cDNA、mRNA、miRNA、siRNA、sgRNA、修飾RNA、アンタゴミール、アンチセンス分子、ガイドRNA分子、クリスパーガイドRNA分子、ペプチド、治療用ペプチド、標的化核酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載のLNP組成物。
【請求項22】
前記mRNAが1種以上の抗原をコードする、請求項21に記載のLNP。
【請求項23】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、インフルエンザ抗原、腫瘍関連抗原、及び腫瘍特異的抗原からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項22に記載のLNP。
【請求項24】
前記核酸分子がプロモーター又は調節配列を含む、請求項18に記載のLNP。
【請求項25】
CARをコードするmRNA分子、核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせが、式(I)の構造を有する化合物内に封入されている、請求項18に記載のLNP。
【請求項26】
請求項1に記載の少なくとも1種のLNPを含む組成物。
【請求項27】
前記組成物がワクチンである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1に記載のLNP又はその組成物の治療有効量を被験体に投与することを含む、CARをコードする少なくとも1種のmRNA分子を、それを必要とする被験体に送達する方法であって、前記LNP又はその組成物が、CARをコードするmRNA分子を標的に送達する、方法。
【請求項29】
前記標的が、免疫細胞、T細胞、常在T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、癌性細胞、疾患又は障害に関連する細胞、疾患又は障害に関連する組織、脳組織、中枢神経系組織、肺組織、頂端表面組織、上皮細胞、内皮細胞、肝臓組織、腸組織、結腸組織、小腸組織、大腸組織、糞便、骨髄、マクロファージ、脾臓組織、筋肉組織、関節組織、腫瘍細胞、病変組織、リンパ節組織、リンパ循環、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、LNP又はその組成物の単回投与を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、LNP又はその組成物の複数回投与を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記LNP又はその組成物が、皮内送達経路、皮下送達経路、筋肉内送達経路、脳室内送達経路、髄腔内送達経路、経口送達経路、静脈内送達経路、気管内送達経路、腹腔内送達経路、子宮内送達経路、及びこれらの任意の組合わせからなる群から選択される送達経路によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記LNP又はその組成物が、少なくとも1種の核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記核酸分子が治療薬である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸分子がDNA分子又はRNA分子である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記核酸分子が、cDNA、mRNA、miRNA、siRNA、sgRNA、アンタゴミール、アンチセンス分子、ガイドRNA分子、クリスパーガイドRNA分子、ペプチド、治療用ペプチド、標的化核酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記mRNAが1種以上の抗原をコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗原が、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、インフルエンザ抗原、腫瘍関連抗原、及び腫瘍特異的抗原からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、インフルエンザ感染、癌、関節炎、心臓病、心血管疾患、神経障害又は疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、胎児性疾患、胎児の発育に影響を与える遺伝性疾患、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを治療又は予防する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記核酸分子がプロモーター又は調節配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
CARをコードするmRNA、核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせが、式(I)の構造を有する化合物内に封入されている、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記LNP組成物がワクチンである、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
請求項18に記載のLNP又はその組成物の治療有効量を被験体に投与することを含む、CARをコードする少なくとも1種のmRNA分子、及び少なくとも1種の核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせを、それを必要とする被験体に送達する方法であって、前記LNP又はその組成物が、前記mRNA分子、及び前記核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせを標的に送達する、方法。
【請求項44】
前記標的が、免疫細胞、T細胞、常在T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、癌性細胞、疾患又は障害に関連する細胞、疾患又は障害に関連する組織、脳組織、中枢神経系組織、肺組織、頂端表面組織、上皮細胞、内皮細胞、肝臓組織、腸組織、結腸組織、小腸組織、大腸組織、糞便、骨髄、マクロファージ、脾臓組織、筋肉組織、関節組織、腫瘍細胞、病変組織、リンパ節組織、リンパ循環、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記方法が遺伝子送達方法である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
請求項1に記載のLNP又はその組成物の治療有効量を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体における疾患又は障害を予防又は治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/916,942号の優先権及び利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する声明
本発明は、国立癌研究所によって授与されたR01-CA-226983の下で、及び国立衛生研究所によって授与されたDP2 TR002776の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有している。
【0003】
発明の背景
FDAに承認された癌治療であるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の生成は、患者のT細胞を改変して、癌を標的とするCAR膜貫通タンパク質を発現させ、それらを患者に再注入することに依存している。CARの発現を誘導するために、臨床応用のための現在の製造プロセスは、ウイルスベースの細胞工学操作に依存している。ウイルスを使用してT細胞を工学操作すると、T細胞表面に永続的なCARが発現が得られる。これは強力であるが、CAR T細胞療法に関連する有害な副作用(すなわちサイトカインストーム、神経毒性)を増幅する可能性がある。さらに、製造ミスも永続的であり、致命的な結果につながる可能性がある。従って臨床研究者は、CARをコードするmRNAがT細胞に送達されるmRNAベースのCAR T細胞産生の研究を開始した。これは、T細胞上で一時的に発現されるCARをもたらし、望ましくない毒性の副作用を軽減する手段として有望な結果を示している。
【0004】
ただしT細胞は、明らかにトランスフェクトすることが難しい。従って、mRNAをT細胞に送達するために、最も一般的に利用される方法は電気穿孔法(EP)である。EPは電気パルスを使用して細胞膜の細孔を開き、細胞と共に溶液中のあらゆるもの(この場合はmRNA)がサイトゾルに入ることを可能にする。EPはmRNAを細胞に取り込むのに有効であるが、T細胞に対して毒性を示しやすく、ゲノム発現の変化を引き起こす可能性があり、インビボでの翻訳の可能性はない。
【0005】
2017年、FDAは、CD19 CAR T細胞療法が高率の持続的寛解を誘導する能力があるため、これを再発性又は難治性の急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に承認した(Liu Y et al., 2017, Drugs of Today, 53:597-608; Maude SL et al., 2014, N Engl J Med., 371:1507-1517)。同じ年に、この治療法は、大多数の患者で完全な寛解を誘導することも示されたため、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫の治療に承認された(Bouchkouj N et al., 2019, Clin Cancer Res, 25:1702-1708; Yip A et al., 2018, Nat Rev Drug Discov, 17:161)。これらの成功以来、慢性リンパ芽球性白血病(Porter DL et al., 2011, N Engl J Med, 365:725-733)、神経膠芽腫(Brown CE et al., 2016, N Engl J Med, 375:2561-2569)、及び難治性多発性骨髄腫(Berdeja JG et al., 2017, J Clin Oncol, 35)を含む他の癌の治療のための多くのCAR T細胞療法が開始されたが、まだFDAの承認は受けていない。これらの自己療法の開発は、CAR T細胞を生成するためのエクスビボ細胞工学操作に依存している。この形態の癌免疫療法を創成するために、患者のT細胞が採取され、CD19特異的CARを発現するように改変され、患者に再注入されている。膜貫通型CAR構築物は、T細胞が癌性B細胞を標的にして結合して、アポトーシスを誘導し、こうして患者自身の免疫系を使用して癌を根絶することを可能にする(Benmebarek M et al., 2019, Int J Mol Sci, 20:1283)。
【0006】
このプロセスにより、大多数の患者に永続的な寛解を誘導する強力なCAR T細胞が得られるが(Maude SL et al., 2014, N Engl J Med, 371:1507-1517; Bouchkouj N et al., 2019, Clin Cancer Res, 25:1702-1708; Yip A et al., 2018, Nat Rev Drug Discov;17:161)、この治療法は、患者の免疫応答に起因する深刻な有害作用と、ウイルスの形質導入及び産生エラーに関連する潜在的なリスクを有する(N et al., 2019, Clin Cancer Res, 25:1702-1708; June CH et al., 2015, Sci Transl Med, 7; June CH et al., 2014, Cancer Immunol Immunother, 63:969-975; Fesnak AD et al., 2016, Nat Rev Cancer, 16: 566-581; Vormittag P et al., 2018, Curr Opin Biotechnol, 53:164-181; Ruella M et al., 2018, Nat Med., 24:1499-1503)。治療を受けている成人患者のほぼ70%で発生することがわかっている即時反応(Hartsell A et al., 2019, Biol Blood Marrow Transplant., 25:S336-S337)には、マクロファージ活性化症候群、神経毒性、及びサイトカインストームなどがある(Bouchkouj N et al., 2019, Clin Cancer Res, 25: 1702-1708; June CH et al., 2014, Cancer Immunol Immunother, 63:969-975; Zheng PP et al., 2019, Trends Immunol, 40:274-278)。初期の有害事象のいくつかは抗IL-6受容体抗体で軽減される可能性があるが(Maude SL et al., 2014, N Engl J Med, 371:1507-1517)、長期的な影響も同様に深刻な場合がある。癌性B細胞を標的とした後、持続するCD19特異的CAR T細胞は、すべてのCD19陽性細胞の排除をもたらし、これがB細胞形成不全と低ガンマグロブリン血症を引き起こす可能性がある(Porter DL et al., 2011, N Engl J Med, 365:725-733; June CH et al., 2014, Cancer Immunol Immunother, 63:969-975; Dotti G et al., 2014, Immunol Rev, 257:107-126; Yang G et al., 2015, Cell, 344:1173-1178)。これらの毒性の懸念に加えて、FDAが承認したものを含む継続的な発現を伴うCAR T細胞は、最も一般的にはウイルス形質導入を介して産生され、これはまた毒性の挿入型突然変異誘発に対する安全性の懸念も与える(Porter DL et al., 2011, N Engl J Med, 365:725-733; June CH et al., 2015, Sci Transl Med, 7; Fesnak AD et al., 2016, Nat Rev Cancer, 16:566-581; Vormittag P et al., 2018, Curr Opin Biotechnol, 53:164-181; Dotti G et al., 2014, Immunol Rev; 257:107-126)。さらに、永続的な改変は、産生エラーの場合に致命的な結果をもたらす可能性がある。ある例では、エクスビボのCAR T細胞の工学操作中に単一の癌性B細胞が偶発的に形質導入されたため、患者の死を招いた(Ruella M et al., 2018, Nat Med, 24:1499-1503)。全体として、これらの悪影響はこの強力な治療法に関連するリスクを浮き彫りにし、より安全なCAR T細胞を生成するために、CAR T細胞産生法の改善に関する研究の動機付けとなっている。
【0007】
ウイルスで工学操作されたCAR T細胞療法に関連する上記の課題(すなわち、神経毒性、サイトカインストーム、低ガンマグロブリン血症などの有害な副作用)を克服するための1つの可能性のある解決策は、mRNAトランスフェクションを利用してCAR発現を誘導することである。mRNAは、ゲノムの組み込みなしで翻訳されるため、CARの一過性発現を可能にする(Riley RS et al., 2019, Nat Rev Drug Discov, 18:175-196)。さらに、インビトロ転写(IVT)されたmRNAのカスタマイズ可能な構造は、それがトランスフェクションと翻訳を最大化するように設計されることを可能にする(Pardi N et al., 2018, Nat Rev Drug Discov, 17:261-279; Smits E et al., 2004, Leukemia, 18:1898-1902)。
【0008】
mRNA誘導CAR T細胞療法は、ALL、メラノーマ、ホジキンリンパ腫などのさまざまな癌に関する過去の研究で検証されており、CAR T細胞を安定して発現するのと同じくらい効果的に、短期間の疾患負荷を軽減することが示されている(Yang G et al., 2015, Cell, 344:1173-1178; Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Harrer DC et al., 2017, BMC Cancer, 17:551; Pardi N et al., 2015, J Control Release, 217:345-351; Svoboda J et al., 2018, Blood, 132:1022-1027; Rabinovich PM et al., 2006, Hum Gene Ther, 17: 1027-1035; Zhao Y et al., 2010, Cancer Res, 70:9053-9061; Singh N et al., 2014, Cancer Immunol Res, 2:1059-1070; Tasian SK et al., 2017, Blood, 129:2395-2407; Foster JB et al., 2018, Hum Gene Ther, 30:168-178; Barrett DM et al., 2014, Annu Rev Med, 65:333-347; Beatty GL et al., 2014, Cancer Immunol Res., 2:112-120; Yoon SH et al., 2009, Cancer Gene Ther, 16:489-497)。この可能性を考えると、mRNA CAR T細胞療法は、とりわけ結腸直腸癌やB細胞リンパ腫を含む癌に対して多数の臨床試験が進行中である(Foster JB et al., 2019, Mol Ther, 27:747-756)。これらの過去の研究では、CARの発現は通常1週間未満しか持続しないことが確認されており、これが、再投与なしで長期的な治療効果を提供するmRNA誘導療法の能力を制限している(Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Foster JB et al., 2018, Hum Gene Ther, 30:168-178; Beatty GL et al., 2014, Cancer Immunol Res., 2:112-120)。しかし、これはまた、より少ないオンターゲット効果、腫瘍外効果を引き起こす可能性があり、より低い毒性を提供することが示されている(Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Zhao Y et al., 2010, Cancer Res, 70:9053-9061; Foster JB et al., 2018, Hum Gene Ther, 30:168-178; Barrett DM et al., 2014, Annu Rev Med, 65:333-347; Beatty GL et al., 2014, Cancer Immunol Res, 2:112-120)。
【0009】
さらに、T細胞に送達されるmRNAの量は、T細胞上のCAR発現のレベルに影響を及ぼし、調整可能な毒性を可能にすることが示され、mRNAベースのCAR発現が、CAR T細胞療法に関連するサイトカイン放出などの副作用を軽減する手段を提供する可能性があることを示している(Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Zhao Y et al., 2010, Cancer Res, 70:9053-9061)。過去の研究では、さまざまな癌におけるmRNA誘導CAR T細胞療法が検証されており、CAR T細胞を安定して発現するのと同じくらい効果的に短期間の疾患負荷を軽減することが示されている(Yang G et al., 2015, Cell, 344:1173-1178; Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Harrer DC et al., 2017, BMC Cancer, 17:551; Pardi N et al., 2015, J Control Release, 217:345-351; Svoboda J et al., 2018, Blood, 132:1022-1027; Rabinovich PM et al., 2006, Hum Gene Ther, 17: 1027-1035; Zhao Y et al., 2010, Cancer Res, 70:9053-9061; Singh N et al., 2014, Cancer Immunol Res, 2:1059-1070; Tasian SK et al., 2017, Blood, 129:2395-2407; Foster JB et al., 2018, Hum Gene Ther, 30:168-178; Barrett DM et al., 2014, Annu Rev Med, 65:333-347; Beatty GL et al., 2014, Cancer Immunol Res., 2:112-120; Yoon SH et al., 2009, Cancer Gene Ther, 16:489-497)。この可能性を考慮して、mRNA CAR T細胞療法では、とりわけ結腸直腸癌やB細胞リンパ腫を含む癌に関する多数の臨床試験が進行中である(Foster JB et al., 2019, Mol Ther, 27:747-756)。
【0010】
しかし、裸のmRNAは急速に分解し、細胞膜を容易に通過できないため、T細胞に機能的に取り込まれるための送達方法が必要である。現在、T細胞を含むさまざまな細胞にmRNAを有効に送達するために、電気穿孔法(EP)が臨床的に使用されている(Smits E et al., 2004, Leukemia, 18:1898-1902; Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; DiTommaso T et al., 2018, PNAS, 115)が、これにはいくつかの欠点がある。EP中に発生する膜破壊は、細胞内容物の喪失と細胞毒性のリスクを伴うが、均一な送達のための、細胞全体の一貫した膜浸透が保証できない。このため、生存率が低下し、生存細胞集団の挙動の変化をもたらし得る(DiTommaso T et al., 2018, PNAS, 115; Dullaers M et al., 2004, Mol Ther, 10:768-779; Singh N et al., 2014, Cancer Immunol Res, 2:1059-1070)。従って、この核酸送達方法が引き起こす潜在的なリスクを理解するために、電気穿孔後のトランス遺伝子の長期発現と細胞内の挙動をさらに研究する必要がある(Lambricht L et al., 2016, Expert Opin Drug Deliv, 13: 295-310; Nickoloff JA et al., 1995, Animal Cell Electroporation and Electrofusion Protocols Methods in Molecular Biology, 273-280)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、当技術分野では、様々な疾患又は障害の治療のために、CARをコードするmRNA分子を細胞に送達するための改良された組成物及び方法が必要とされている。本発明は、この満たされていないニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な要約)
1つの態様において、本発明は一部は、少なくとも1種のmRNA分子と式(I)の構造を有する少なくとも1種の化合物又はその塩とを含む脂質ナノ粒子(LNP)に関する:
【化1】
【0013】
いくつかの実施態様において、A1及びA2は、独立して、C、C(H)、N、S、又はPである。いくつかの実施態様において、各L1、L2、L3、L4、L5、及びL6は、独立して、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。いくつかの実施態様において、各R1、R2、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8a、R8b、R9a、R9b、R10a、R10b、R11a、R11b、R12a、R12b、R13a、R13b、R14a、R14b、R15a、R15b、R16、R17、R18、及びR19は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロシクロアルキル、置換-(R20z'(R21Z"-ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルケニル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキニル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキニル、アリール、置換アリール、-Y(R20z'(R21Z"-アリール、置換-Y(R20z'(R21Z"-アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロアリール、置換-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、-Y(R20z'(R21Z"-エステル、-Y(R20z'(R21Z"、=O、-NO2、-CN、又はスルホキシである。
【0014】
いくつかの実施態様において、Yは、C、N、O、S、又はPである。いくつかの実施態様において、各R20及びR21は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、=O、-NO2、-CN、又はスルホキシである。
【0015】
いくつかの実施態様において、各Z'及びZ”は、独立して、0、1、又は2で表される整数である。いくつかの実施態様において、各m、n、o、p、q、r、s、t、u、v、w、及びxは、独立して、0、1、2、3、4、又は5で表される整数である。
【0016】
様々な実施態様において、mRNA分子はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
【0017】
いくつかの実施態様において、式(I)の構造を有する化合物は、以下の構造を有する化合物である:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0018】
いくつかの実施態様において、各R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、又はエステルである。
【0019】
いくつかの実施態様において、各m、n、o、p、及びqは、独立して、0~25の整数である。いくつかの実施態様において、各r、s、t、u、v、w、及びxは、独立して、0、1、2;3、4、又は5で表される整数である。
【0020】
いくつかの実施態様において、式(I)の構造を有する化合物は、以下の構造を有する化合物である:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0021】
いくつかの実施態様において、式(I)の構造を有する化合物はイオン化可能脂質である。いくつかの実施態様において、mRNA分子は、式(I)の構造を有する化合物内に封入されている。
【0022】
いくつかの実施態様において、LNPは、式(I)の構造を有する化合物又はその塩を約1mol%~約100mol%の濃度範囲で含む。いくつかの実施態様において、LNPは、式(I)の構造を有する化合物又はその塩を約10mol%~約50mol%の濃度範囲で含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、LNPは、少なくとも1種のヘルパー脂質をさらに含む。いくつかの実施態様において、LNPは、少なくとも1種のヘルパー脂質を約0.01mol%~約99.9mol%の濃度範囲で含む。いくつかの実施態様において、LNPは、少なくとも1種のヘルパー脂質を約0.5mol%~約50mol%の濃度範囲で含む。
【0024】
いくつかの実施態様において、ヘルパー脂質は、リン脂質、コレステロール脂質、ポリマー、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0025】
いくつかの実施態様において、リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)又はその誘導体、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)又はその誘導体、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)又はその誘導体、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン(SOPC)又はその誘導体、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)又はその誘導体、N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)又はその誘導体、又はこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施態様において、LNPは、リン脂質を約15mol%~約50mol%の濃度範囲で含む。
【0026】
いくつかの実施態様において、コレステロール脂質はコレステロール又はその誘導体である。いくつかの実施態様において、LNPは、コレステロール脂質を約20mol%~約50mol%の濃度範囲で含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。いくつかの実施態様において、LNPは、ポリマーを約0.5mol%~約10mol%の濃度範囲で含む。
【0028】
いくつかの実施態様において、LNPは、少なくとも1つの核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組み合わせをさらに含む。1つの実施態様において、核酸分子は治療薬である。
【0029】
いくつかの実施態様において、核酸分子は、DNA分子又はRNA分子である。いくつかの実施態様において、核酸分子は、cDNA、mRNA、miRNA、siRNA、sgRNA、修飾RNA、アンタゴミール (antagomir)、アンチセンス分子、ガイドRNA分子、クリスパー(CRISPR)ガイドRNA分子、ペプチド、治療用ペプチド、標的化核酸、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0030】
いくつかの実施態様において、mRNAは1種以上の抗原をコードする。いくつかの実施態様において、抗原は、少なくとも1つのウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、インフルエンザ抗原、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施態様において、核酸分子はプロモーター又は調節配列を含む。
【0032】
いくつかの実施態様において、CARをコードするmRNA分子、核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組み合わせは、式(I)の構造を有する化合物内に封入される。
【0033】
別の態様において、本発明はまた、一部は、本明細書に記載の少なくとも1種のLNPを含む組成物に関する。1つの実施態様において、組成物はワクチンである。
【0034】
別の態様において、本発明はまた、一部は、CARをコードする少なくとも1種のmRNA分子を、それを必要とする被験体に送達する方法に関する。様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本明細書に記載の1種以上のLNP又はその組成物を被験体に投与することを含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、CARをコードするmRNA分子を標的に送達する。
【0035】
いくつかの実施態様において、標的は、免疫細胞、T細胞、常在T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、癌性細胞、疾患又は障害に関連する細胞、疾患又は障害に関連する組織、脳組織、中枢神経系組織、肺組織、頂端表面組織(apical surface tissue)、上皮細胞、内皮細胞、肝臓組織、腸組織、結腸組織、小腸組織、大腸組織、糞便、骨髄、マクロファージ、脾臓組織、筋肉組織、関節組織、腫瘍細胞、病変組織、リンパ節組織、リンパ循環、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0036】
いくつかの実施態様において、この方法は、LNP又はその組成物の単回投与を含む。いくつかの実施態様において、この方法は、LNP又はその組成物の複数回投与を含む。
【0037】
いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、皮内送達経路、皮下送達経路、筋肉内送達経路、脳室内送達経路、髄腔内送達経路、経口送達経路、静脈内送達経路、気管内送達経路、腹腔内送達経路、子宮内送達経路、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される送達経路によって投与される。
【0038】
いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、少なくとも1種の核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施態様において、この方法は、少なくとも、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、インフルエンザ感染、癌、関節炎、心臓病、心血管疾患、神経障害又は疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、胎児性疾患、胎児の発育に影響を与える遺伝性疾患、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種を治療又は予防する。
【0040】
1つの実施態様において、LNP組成物はワクチンである。
【0041】
別の態様において、本発明はまた、一部は、CARをコードする少なくとも1種のmRNA分子、及び少なくとも1種の核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの任意の組合わせを、それを必要とする被験体に送達する方法に関する。様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本明細書に記載の1種以上のLNP又はその組成物を被験体に投与することを含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、mRNA分子及び核酸分子、アジュバント、治療薬、又はこれらの組み合わせを、標的に送達する。すなわち、様々な実施態様において、この方法は遺伝子送達方法である。
【0042】
別の態様において、本発明はまた、一部は、それを必要とする被験体の疾患又は障害を予防又は治療する方法に関する。様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本発明に記載の1種以上のLNP又はその組成物を被験体に投与することを含む。
本発明の好適な実施態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を説明する目的で、本発明で現在好適とされる実施態様が図面に示される。しかしながら、本発明は、図面に示される実施態様の正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1A図1Cを含む図1は、LNP製剤及びCAR mRNAを充填したLNPの概略図を示す。図1Aは、マイクロ流体混合によってLNPを生成するために使用される構成要素の概略図と、結果として得られるLNPの予想される構造を示す。図1Bは、動的光散乱を使用して直径が約70nmであることを示すC14-4(C14-494とも呼ばれる)LNPの代表的な試料のサイズ(z平均)分布を示す。エラーバーは、3つの試料の標準偏差を表す。図1Cは、T細胞中でCAR発現を誘導し、腫瘍細胞を標的化して癌性細胞を排除するCAR mRNAを充填したLNPの略図を示す。
図2図2A図2Cを含む図2は、この試験でスクリーニングされた脂質のライブラリーを作成するために使用される、代表的なエポキシド末端アルキル鎖と代表的なポリアミンコアとを示す。脂質はマイケル(Michael)付加化学によって作成された。本明細書に記載の発明は、この図で名前が付けられているC14-4(C14-494とも呼ばれる)である。図2Aは、イオン化可能脂質ライブラリーを生成するために使用される脂質テールの代表的な構造を示す。図2Bは、イオン化可能脂質ライブラリーを生成するために使用されるアミンコアの代表的な構造を示す。図2Cは、過剰な脂質テールをアミンコアと反応させてイオン化可能脂質を合成するために使用される、マイケル付加反応化学の概略図を示す。
図3図3A図3Eを含む図3は、さまざまな条件下での代表的なルシフェラーゼ発現を示す。バックグラウンドを差し引いた未処理の細胞に対して正規化された結果。図3B図3D、及び図3Eの場合、n=3。図3Aは、30ng/60,000細胞の用量のLNPライブラリーとリポフェクタミンで48時間処理した後の、ジャーカット細胞の代表的なルシフェラーゼ発現を示し、LNPが最高性能であることを示している。結果は未処理の細胞に対して正規化され、バックグラウンドを差し引いた。リポフェクタミンに対する対応のあるスチューデントT検定で *=p<0.05、n=4。図3Bは、最高のLNP製剤を決定するために、5つの上位性能LNP製剤で処理されたジャーカット細胞の代表的なルシフェラーゼ発現を示す。結果は未処理の細胞に対して正規化され、バックグラウンドを差し引いた。C14-4(C14-494とも呼ばれる)と他の各製剤との間のテューキーの多重比較検定(Tukey's multiple comparison test)において *=p<0.05。図3Cは、5つの上位性能LNP製剤の代表的な直径(z平均)、多分散度指数、及びmRNA濃度(±標準偏差)を記載している表を示す。図3Dは、30ng/60,000細胞のC14-4(C14-494とも呼ばれる)で24時間処理されたジャーカット細胞における経時的なルシフェラーゼ発現が、タンパク質の一過性発現を確認したことを示す。結果は24時間での発現に対して正規化され、バックグラウンドを差し引かれた。図3Eは、リポフェクタミン又はC14-4(C14-494とも呼ばれる)を使用して30ng mRNA/60,000細胞で48時間処理したジャーカット細胞の代表的な生存率を示し、C14-4(C14-494とも呼ばれる)LNPに関連する毒性が最小であることを示す。
図4図4A図4Cを含む図4は、さまざまな条件下での代表的なルシフェラーゼ発現を示す。図4A及び図4Cの場合、ルシフェラーゼ発現は最も低い処理(75ng/60,000細胞)に正規化され、生存率はバックグラウンドを差し引いた無処理に正規化された。n=3。図4Aは、粗C14-4(C14-494とも呼ばれる)LNPで24時間処理された初代T細胞の代表的なルシフェラーゼ発現と生存率を示す。図4Bは、ルシフェラーゼmRNAを封入した粗及び精製C14-4(C14-494とも呼ばれる)LNPについて、LNP pKaを決定するためのTNSアッセイの代表的な結果を示す。pKaは、最大TNS蛍光値の半分に対応するpHとして計算された。図4Cは、粗又は精製C14-4(C14-494とも呼ばれる)で処理された初代T細胞の代表的なルシフェラーゼ発現と生存率を示し、毒性の増加なしでルシフェラーゼ発現が増加したことを示す。対応のあるスチューデントのT検定で *=p<0.05。
図5図5A図5Dを含む図5は、CAR T細胞の代表的な結果を示す。図5Aは、フローサイトメトリーを使用して評価された初代T細胞でのCARの表面発現が、純粋なC14-4(C14-494とも呼ばれる)及びEP処理群では、粗C14-4(C14-494とも呼ばれる)と比較して、平均蛍光強度(MFI)として評価された発現の増加を明らかにしたことを示す代表的な結果を示している。図5Bは、未処理対照に対して正規化された代表的なMFI値の比較を示す。図5Cは、バックグラウンドを差し引いた処理に対して正規化された各群で処理された初代T細胞の代表的な生存率を示す(n=3)。図5Dは、さまざまなエフェクター対標的比でNalm6及びCAR T細胞を48時間、同時プレーティングした代表的な結果を示す。n=3ウェル。
図6図6は、イオン化可能脂質ライブラリーを生成するために使用されるアミンコアの代表的な名前付き構造を示す。
図7図7は、各LNP製剤の代表的な直径(z平均)、PDI、及びmRNA濃度を示しており、LNP製剤全体でのLNPサイズ、単分散性、及び同様のmRNA負荷の範囲が狭いことを示す。
図8】ルシフェラーゼmRNAを封入した粗及び精製C14-4(C14-494とも呼ばれる)LNPの特性の代表的な比較を示す。平均n=3+と±標準偏差。
図9図9A図9Bを含む図9は、スクリーニングされた異なるモル比%を有する代表的なライブラリーA製剤と、イオン化可能脂質(例えばC14-494)がLNPに組み込まれても、まだすべてイオン化可能であることを示すデータとを示す。本試験では「S2」製剤を賦形剤の標準C14-494製剤として設定した。図9Aは、代表的なライブラリーA製剤の代表的な製造パラメーターをモル比で表したものである。図9Bは、ライブラリーA製剤の代表的なpKa比を示す。TNSアッセイを使用したライブラリーAのpKaは、すべてがまだイオン化可能であることを示した
図10図10は、モル比%が異なる代表的なライブラリーA製剤の代表的な製造パラメーターを示す。これらの代表的な製剤の選択は、ライブラリーAのスクリーニングの結果に基づいて選択された。
図11図11は、両方のライブラリーの代表的な正規化され送達有効性を示す。1より大きい値(破線)は、陽性対照よりも送達有効性が向上していることを示す。
図12図12は、ライブラリーA製剤の代表的な正規化された細胞生存率を示す。破線は100%の生存率を示す。
図13図13は、ライブラリーB製剤の代表的な正規化された細胞生存率を示す。破線は100%の生存率を示す。
図14図14A及び図14Bを含む図14は、賦形剤組成物の代表的なmRNA送達及び生存率を示す:インビトロのライブラリー。ジャーカットは30ng/60,0000細胞で24時間処理された。ライブラリーAは、比較のためにオレンジ色で示され、ライブラリーBは青色で示されている。図14Aは、代表的なmRNA送達賦形剤組成物を示す:インビトロのライブラリー。図14Bは、代表的な生存率送達賦形剤組成物を示す:インビトロのライブラリー。
図15図14は、B10とリポフェクタミンについての相対的なルシフェラーゼ活性を示す代表的な結果を示す。
図16図16A及び図16Bを含む図16は、さまざまな濃度/用量のさまざまな代表的な製剤について代表的な発光(luminescence)と生存率の結果を示す。ジャーカットは、ルシフェラーゼをコードするmRNAを用いて24時間処理された(「S2」製剤は、賦形剤の標準的なC14-494製剤として設定された)。*発光及び毒性について0ngに対して正規化された-すべての処理群について図16A及び図16Bにグラフ化された値は、未処理群に対して正規化された値である。より詳しくは、各処理群の発光及び毒性の読み値は、発光の尺度であった。各処理の生の値(発光)を、処理を行わなかった細胞群で測定された生の値(発光)で割った。従って、グラフ化された値は、未処理の細胞と比較した送達又は毒性を表す。このため、実験ごとに異なるバックグラウンド発光を要因として取り除くことができた。さらに、この実験は、3つの別々のジャーカット細胞集団/継代で3つの別々の時間に完了し(3つの生物学的繰り返し)、各実験で、細胞を3つのウェルにプレーティングした(3つの技術的繰り返し)。従って、結果が再現可能(生物学的繰り返し)で信頼性が高い(技術的繰り返し)ことを保証している。図16Aは、さまざまな濃度のさまざまな代表的な製剤の代表的な発光の結果を示す。図16Bは、さまざまな濃度のさまざまな代表的な製剤の代表的な生存率の結果を示す。
図17図17A図17Cを含む図17は、代表的な賦形剤組成物を示す:患者A、患者B、及び患者Cについてエクスビボ。図17Aは、代表的な賦形剤組成物を示す:患者Aについてエクスビボ。図17Bは、代表的な賦形剤組成物を示す:患者Bについてエクスビボ。図17Cは、代表的な賦形剤組成物を示す:患者Cについてエクスビボ。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
本発明は、様々な標的(例えば細胞)へのキメラ抗原受容体(CAR)をコードするmRNAの送達のための、脂質及び脂質ナノ粒子(LNP)又はこれらの組成物に関する。様々な実施態様において、本発明は、少なくとも1種のLNP又はその組成物を使用して、CARをコードするmRNA、並びに様々な核酸分子、アジュバント、及び/又は治療薬を様々な標的(例えば細胞)に送達する方法に関する。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、少なくとも1種のイオン化可能脂質、及び少なくとも1種のヘルパー脂質を含む。特定の実施態様において、本発明は、それを必要とする被験体における様々な疾患又は障害を予防又は治療するための、少なくとも1種のイオン化可能脂質とCARをコードする少なくとも1種のmRNA分子とを含むLNP又はその組成物を提供する。
【0045】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料が記載されている。
【0046】
本明細書で使用される以下の各用語は、このセクションでそれに関連する意味を有する。
【0047】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例えば「要素」とは、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0048】
量、持続時間などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」は、指定された値からの±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味するが、そのような変動は、開示された方法を実行するのに適切であるためである。
【0049】
「アルキル」は、炭素原子及び水素原子のみからなる直鎖又は分岐炭化水素鎖ラジカルを指し、これは飽和又は不飽和(すなわち、1つ以上の二重及び/又は三重結合を含む)であり、1~24個の炭素原子(C1-C24アルキル)、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)、又は1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有し、これは分子の残りの部分に単一結合により結合しており、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、エテニル、プロップ-1-エニル、ブト-1-エニル、ペント-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどである。特に他に明記しない限り、アルキル基は任意選択的に置換される。「アルキル」という用語は、それ自体で、又は別の置換基の一部として、特に明記しない限り、指定された炭素原子の数を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味し(すなわち、C1-6は1~6個の炭素原子を意味する)、直鎖、分枝鎖、又は環状置換基を含む。
【0050】
本明細書で使用される「置換アルキル」という用語は、上記で定義されるように、ハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH2、-N(CH32、-C(=O)OH、トリフルオロメチル、-C≡N、-C(=O)O(C1-C4)アルキル、-C(=O)NH2、-SO2NH2、-C(=NH)NH2、及び-NO2からなる群から選択される1、2、又は3つの置換基、好ましくはハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH2、トリフルオロメチル、-N(CH32、及び-C(=O)OH、より好ましくは、ハロゲン、アルコキシ及び-OHから選択される置換基から選択される1つ又は2つの置換基、により置換されたアルキルを意味する。置換アルキルの例には、特に限定されるものではないが、2,2-ジフルオロプロピル、2-カルボキシシクロペンチル、及び3-クロロプロピルが含まれる。
【0051】
「アルキレン」又は「アルキレン鎖」は、分子の残りの部分を、炭素と水素のみからなるラジカル基に連結する直鎖又は分岐二価炭化水素鎖を指し、このラジカル基は、飽和又は不飽和(すなわち、1つ以上の二重結合(アルケニレン)及び/又は三重結合(アルキニレン)を含む)であり、例えば1~24個の炭素原子(C1-C24アルキレン)、1~15個の炭素原子(C1-C15アルキレン)、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキレン)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキレン)、1~6個の炭素原子(C1-C6アルキレン)、2~4個の炭素原子(C2-C4アルキレン)、1~2個の炭素原子(C1-C2アルキレン)、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどを有する。アルキレン鎖は、単結合又は二重結合を介して分子の残りの部分に結合し、単結合又は二重結合を介してラジカル基に結合している。分子の残りの部分及びラジカル基へのアルキレン鎖の結合点は、鎖内の1つの炭素又は任意の2つの炭素を介することができる。本明細書で特に明記しない限り、アルキレン鎖は任意選択的に置換され得る。
【0052】
「シクロアルキル」又は「炭素環式環」は、炭素原子と水素原子のみからなる安定な非芳香族単環式又は多環式炭化水素ラジカルを指し、これは、3~15個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子を有する縮合又は架橋環系が含むことができ、及びこれは飽和又は不飽和であり、単結合によって分子の残りの部分に結合している。単環式ラジカルには、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれる。多環式ラジカルには、例えばアダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが含まれる。特に明記しない限り、シクロアルキル基は任意選択的に置換される。
【0053】
「シクロアルキレン」は二価のシクロアルキル基である。本明細書で特に明記しない限り、シクロアルキレン基は、任意選択的に置換することができる。
【0054】
本明細書で使用される「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で又は別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、記載された数の炭素原子と、O、N、Si、P、及びSからなる群から選択される1つ又は2つのヘテロ原子とからなる安定な直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味し、ここで、窒素及び硫黄原子は任意選択的に酸化され得、窒素ヘテロ原子は任意選択的に四級化され得る。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の残りの部分とそれが結合している断片との間、及びヘテロアルキル基の最も遠位の炭素原子に結合しているものを含む、ヘテロアルキル基の任意の位置に配置することができる。例としては、-O-CH2-CH2-CH3、-CH2-CH2-CH2-OH、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、及び-CH2CH2-S(=O)-CH3が含まれる。例えば、-CH2-NH-OCH3又は-CH2-CH2-S-S-CH3のように、最大2つのヘテロ原子が連続している場合がある。
【0055】
「ヘテロシクリル」又は「複素環」は、2~12個の炭素原子と、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1~6個のヘテロ原子とからなる安定な3~18員の非芳香族環ラジカルを指す。本明細書で特に明記しない限り、ヘテロシクリルラジカルは、単環式、二環式、三環式、又は四環式環系であり得、これは、縮合又は架橋環系が含むことができ;及びヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素、又は硫黄原子は、任意選択的に酸化され得;及び窒素原子は任意選択的に四級化することができ;及びヘテロシクリルラジカルは部分的又は完全に飽和されていてもよい。そのようなヘテロシクリルラジカルの例には、特に限定されるものではないが、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが含まれる。特に明記しない限り、ヘテロシクリル基は任意選択的に置換され得る。
【0056】
本明細書で使用される「芳香族」という用語は、1つ以上の多価不飽和環を有し、芳香族特性を有する、すなわち(4n+2)個の非局在化π電子を有する炭素環又は複素環を指し、ここで、nは整数である
【0057】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単独で又は他の用語と組み合わせて使用され、特に明記しない限り、1つ以上の環(典型的には1つ、2つ又は3つの環)を含む炭素環式芳香族系を意味し、ここで、そのような環はぶら下がって結合され得(例えばビフェニル)、又は縮合され得る(例えばナフタレン)。例としては、フェニル、アントラシル、ナフチルが含まれる。好ましいのはフェニル及びナフチルであり、最も好ましいのはフェニルである。
【0058】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」という用語は、N、O、Si、P、及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基を指し;ここで、窒素及び硫黄原子は任意選択的に酸化され得、窒素原子は任意選択的に四級化され得る。ヘテロアリール基は、置換又は非置換であり得る。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。多環式ヘテロアリールは、部分的に飽和している1つ以上の環を含み得る。例としては、テトラヒドロキノリン、2,3-ジヒドロベンゾフリル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、及び6-キノリルが含まれる。
【0059】
非芳香族複素環の例には、単環式基、例えばアジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ジオキソラン、スルホラン、2,3-ジヒドロフラン、2,5-ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、1,4-ジヒドロピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、2,3-ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ホモピペラジン、ホモピペリジン、1,3-ジオキセパン、4,7-ジヒドロ-1,3-ジオキセピン、及びヘキサメチレンオキシドが含まれる。
【0060】
ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル(特に2-及び4-ピリミジニル)、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル(特に2-ピロリル)、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル(特に3-及び5-ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、及び1,3,4-オキサジアゾリルが含まれる。
【0061】
多環式複素環の例には、インドリル(特に3-、4-、5-、6-、及び7-インドリル)、インドリニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル(特に1-及び5-イソキノリル)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル、シノリニル、キノキサリニル(特に2-及び5-キノキサリニル)、キナゾリニル、フタラジニル、1,8-ナフチリジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、クマリン、ジヒドロクマリン、1,5-ナフチリジニル、ベンゾフリル(特に3-、4-、5-、6-、及び7-ベンゾフリル)、2,3-ジヒドロベンゾフリル、1,2-ベンズイソキサゾリル、ベンゾチエニル(特に3-、4-、5-、6-、及び7-ベンゾチエニル)、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル(特に2-ベンゾチアゾリル及び5-ベンゾチアゾリル)、プリニル、ベンズイミダゾリル(特に2-ベンズイミダゾリル)、ベンズトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニル、及びキノリジジニルが含まれる。
【0062】
前述のヘテロシクリル及びヘテロアリール部分のリストは代表的なものであり、限定的ではないことを意図している。
【0063】
本明細書で使用される「アミノアリール」という用語は、アミノ部分を含むアリール部分を指す。このようなアミノ部分は、特に限定されるものではないが、一級アミン、二級アミン、三級アミン、マスクされたアミン、又は保護されたアミンが含み得る。そのような三級アミン、マスクされたアミン、又は保護されたアミンは、一級アミン又は二級アミン部分に変換され得る。さらにアミン部分は、特に限定されるものではないが、化学反応性を含むアミン部分と同様の化学的特性を有するアミン様部分を含み得る。
【0064】
本明細書で使用される「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、及び「アルキルチオ」という用語は、これらの通常の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、アミノ基、硫黄原子を介して分子に連結されたアルキル基を指す。
【0065】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、単独で又は他の用語と組み合わせて使用され、特に明記しない限り、酸素原子を介して分子の残りの部分に接続された、上記で定義された指定数の炭素原子を有するアルキル基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)、及びより高い同族体及び異性体がある。(C1-C3)アルコキシ、特にエトキシ及びメトキシが好ましい。
【0066】
本明細書で使用される「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、単独で又は別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子、好ましくはフッ素、塩素、又は臭素、より好ましくはフッ素又は塩素を意味する。
【0067】
本明細書で使用される「置換された」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、水素ではない原子、例えば、特に限定されるものではないが:ハロゲン原子、例えばF、Cl、Br、I;オキソ基(=O);ヒドロキシル基(-OH);アルコキシ基(-ORa、ここでRaはC1-C12アルキル又はシクロアルキルである);カルボキシル基(-OC(=O)Ra又は-C(=O)ORa、ここでRaはH、C1-C12アルキル、又はシクロアルキルである);アミン基(-NRab、ここでRaとRbはそれぞれ独立して、H、C1-C12アルキル、又はシクロアルキルである);C1-C12アルキル基;及びシクロアルキル基への結合によって置換されている、上記の基(例えば、アルキル、シクロアルキル、又はヘテロシクリル)のいずれかを意味する。いくつかの実施態様において、置換基は、C1-C12アルキル基である。別の実施態様において、置換基はシクロアルキル基である。別の実施態様において、置換基は、フルオロなどのハロ基である。別の実施態様において、置換基はオキソ基である。別の実施態様において、置換基はヒドロキシル基である。別の実施態様において、置換基はアルコキシ基である。別の実施態様において、置換基はカルボキシル基である。別の実施態様において、置換基はアミン基である。
【0068】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、ナノメートルスケール、1マイクロメートル未満の粒子サイズを有する粒子を指す。例えば、ナノ粒子は約50nmまでの粒子サイズを有し得る。別の例では、ナノ粒子は約10nmまでの粒子サイズを有し得る。別の例では、ナノ粒子は約6nmまでの粒子サイズを有し得る。本明細書で使用される「ナノ粒子」は、特に限定されるものではないが、ナノクラスター、ナノベシクル、ミセル、ラメラ形状の粒子、ポリマーソーム、デンドリマー、及び当業者に公知の様々な他の小製品の他のナノサイズ粒子を含む、多くのナノ粒子を指す。ナノ粒子の形状と組成は、球、ロッド、ワイヤー、ディスク、ケージ、コアシェル構造、及び他の多くの形状を生成するように、特定の結晶面の成長を選択的に促進することにより、原子の凝縮中に誘導され得る。ナノカプセルの範囲内にある実体の定義及び理解は、当業者に公知であり、そのような定義は、参照により、及び本出願の主題の一般的な性質を理解する目的で、本明細書に組み込まれる。
【0069】
本明細書で使用される「核酸」は、デオキシリボヌクレオシド又はリボヌクレオシドで構成されているかどうか、及びホスホジエステル結合、又はホスホトリエステル、ホスホルアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート、カルバメート、チオエーテル、架橋ホスホルアミデート、架橋メチレンホスホネート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、架橋ホスホロチオエート、又はスルホン結合、及びそのような結合の組み合わせなどの修飾結合で構成されているかどうかにかかわらず、任意の核酸を含むことを意味する。核酸という用語はまた、生物学的に存在する5つの塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)以外の塩基から構成される核酸も具体的に含む。「核酸」という用語は、通常、大きなポリヌクレオチドを指す。
【0070】
「単離された」とは、自然の状態から変化又は取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸又はペプチドは「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離」されている。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形で存在することができるか、又は、例えば宿主細胞などの非天然環境に存在することができる。
【0071】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から分離された核酸セグメント又は断片、すなわち、通常はその断片に隣接する配列、すなわちそれが自然に存在するゲノム内の断片に隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。この用語はまた、核酸、すなわちRNA又はDNA、又はタンパク質に自然に付随する、細胞内でそれに自然に付随する他の成分から実質的に精製された核酸にも適用される。従ってこの用語は、例えば、ベクターに、自律的に複製するプラスミド若しくはウイルスに、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA若しくはRNAに組み込まれるか、又は、他の配列とは無関係に別個の分子として(すなわち、PCR又は制限酵素消化によって生成されたcDNA、又はゲノム若しくはcDNA断片として)存在する組換えDNA又はRNAを含む。これはまた、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNA又はRNAも含む。
【0072】
mRNA分子の「コード領域」はまた、mRNA分子の翻訳中に転移RNA分子のアンチコドン領域と一致するか、又は停止コドンをコードする、mRNA分子のヌクレオチド残基からなる。従ってコード領域は、mRNA分子によってコードされる成熟タンパク質には存在しないアミノ酸残基(例えば、タンパク質輸出シグナル配列中のアミノ酸残基)のコドンを含むヌクレオチド残基を含み得る。
【0073】
本明細書で使用される「DNA」という用語は、デオキシリボ核酸として定義される。
【0074】
本明細書で使用される「RNA」という用語は、リボ核酸として定義される。
【0075】
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)又は定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける、他のポリマー及び高分子の合成のためのテンプレートとして機能する遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド内のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、及びそれから生じる生物学的特性を指す。従って、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列リストに記載されているコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードすると言うことができる。
【0076】
「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用要素を含み、発現のための他の要素は、宿主細胞によって又はインビトロ発現システムにおいて供給され得る。発現ベクターには、当技術分野で公知のすべてのもの、例えばコスミド、プラスミド(例えば、裸又はリポソームに含まれた)RNA、及び組換えポリヌクレオチドを組み込んだウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などが含まれる。
【0077】
「相同」とは、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が、同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンによって占められている場合、それらの分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性の割合は、[(2つの配列が共有する一致する位置又は相同位置の数)/(比較された位置の数)]×100という関数である。例えば、2つの配列の10個の位置のうち6個が一致又は相同である場合、2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCは50%の相同性を共有している。一般に、比較は、2つの配列が整列されたて最大の相同性を与えるときに行われる。
【0078】
「免疫原」とは、免疫応答を生成するために体内に導入される任意の物質を指す。その物質は、タンパク質などの物理的な分子でも、DNA、mRNA、ウイルスなどのベクターによってコードされてもよい。
【0079】
本発明の文脈において、一般的に存在するヌクレオシド(N-グリコシド結合を介してリボース又はデオキシリボース糖に結合した核酸塩基)について以下の略語が使用される。「A」はアデノシン、「C」はシチジン、「G」はグアノシン、「T」はチミジン、「U」はウリジンを指す。
【0080】
特に他に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンであり、かつ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という用語はまた、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンでイントロンを含み得る程度に、イントロンを含み得る。
【0081】
特に他に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重したバージョンであり、かつ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質及びRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。さらに、ヌクレオチド配列は、細胞内の翻訳機構によって翻訳され得る修飾ヌクレオシドを含み得る。
【0082】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。従って、本明細書で使用される核酸及びポリヌクレオチドは交換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、これを加水分解して単量体の「ヌクレオチド」にすることができるという一般的な知識を有するている。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解することができる。本明細書で使用されるポリヌクレオチドには、特に限定されるものではないが、組換え手段、すなわち組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、通常のクローニング技術、及びPCR(商標)などを使用して、及び合成手段を含む当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が含まれる。
【0083】
特定の例において、本発明のポリヌクレオチド又は核酸は「核酸」であり、これは少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む核酸を指す。「修飾ヌクレオシド」とは、修飾を有するヌクレオシドを指す。例えばRNAでは、100を超える異なるヌクレオシド修飾が特定されている(Rozenski, et al., 1999, The RNA Modification Database: 1999 update. Nucl Acids Res 27: 196-197)。
【0084】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドには少なくとも2つのアミノ酸が含まれている必要があり、タンパク質又はペプチドの配列を構成できるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。本明細書で使用されるこの用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、当技術分野で一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を指し、タンパク質には多くの種類がある。「ポリペプチド」には、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変種、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質などが含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組み合わせが含まれる。
【0085】
本明細書で使用される「組換えポリペプチド」という用語は、組換えDNA又はRNA法を使用することによって生成されるポリペプチドとして定義される。
【0086】
本明細書で使用される「組換えDNA」という用語は、異なる供給源からDNAの断片を結合することによって生成されるDNAとして定義される。
【0087】
本明細書で使用される「組換えRNA」という用語は、異なる供給源からRNAの断片 を結合することによって生成されるRNAとして定義される。
【0088】
本明細書で使用される「同一」という用語は、同一である2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0089】
さらに、本明細書で使用される「実質的に同一」という用語は、比較ウィンドウ、又は比較アルゴリズム又は手動アライメントと目視検査により指定された領域上で、最大の対応のために比較及び整列されたときに同じである連続単位のあるパーセントを有する2つ以上の配列を指す。ほんの一例として、指定された領域で連続する単位が約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、又は約95%同一である場合、2つ以上の配列は「実質的に同一」であり得る。そのようなパーセントは、2つ以上の配列の「パーセント同一性」を説明する。配列の同一性は、少なくとも約75~100連続単位の長さの領域、約50連続単位の長さの領域、又は指定されていない場合は配列全体にわたって存在する可能性がある。この定義はまた、試験配列の相補体も指す。
【0090】
本明細書で使用される用語「変種(variant)」は、それぞれ参照核酸配列又はペプチド配列とは配列が異なるが、参照分子の本質的な生物学的特性を保持する核酸配列又はペプチド配列である。核酸変種の配列の変化は、参照核酸によってコードされるペプチドのアミノ酸配列を変えないかもしれないし、又はアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、及び末端切断をもたらすかもしれない。ペプチド変種の配列の変化は、通常、限定的又は保存的であるため、参照ペプチドと変種の配列は全体的に非常に類似しており、多くの領域において同一である。変種及び参照ペプチドは、任意の組み合わせにおける1つ以上の置換、付加、欠失によってアミノ酸配列が異なる可能性がある。核酸又はペプチドの変種は、対立遺伝子変種などの天然に存在するものであり得るか、又は天然に存在することが知られていない変種であり得る。天然に存在しない核酸及びペプチドの変種は、突然変異誘発技術又は直接合成によって作製することができる。様々な実施態様において、変種配列は参照配列と、少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも89%、少なくとも88%、少なくとも87%、少なくとも86%、少なくとも85%同一である。
【0091】
本明細書で使用される「断片」は、その標的、すなわち抗原結合領域に結合する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部として定義される。免疫グロブリンの定常領域のいくつかが含まれ得る。
【0092】
本明細書で使用される「結合」という用語は、リンカーの官能基と別の分子との間の化学反応から形成される結合又は化学部分を指す。そのような結合には、特に限定されるものではないが、共有結合及び非共有結合が含まれ得るが、そのような化学部分には、特に限定されるものではないが、エステル、炭酸塩、イミン、リン酸エステル、ヒドラゾン、アセタール、オルトエステル、ペプチド結合、及びオリゴヌクレオチド結合が含まれ得る。加水分解的に安定な結合とは、結合が水中で実質的に安定であり、特に限定されるものではないが、おそらく無期限でさえある長期間、生理学的条件下を含む有用なpH値で、水と反応しないことを意味する。加水分解的に不安定又は分解性の結合は、結合が水中又は例えば血液を含む水溶液中で分解可能であることを意味する。酵素的に不安定又は分解可能な結合は、結合が1つ以上の酵素によって分解される可能性があることを意味する。ほんの一例として、PEG及び関連するポリマーは、ポリマー主鎖中に、又はポリマー主鎖とポリマー分子の1つ以上の末端官能基との間のリンカー基中に分解性結合を含み得る。このような分解性結合には、特に限定されるものではないが、PEGカルボン酸又は活性化PEGカルボン酸と、生物学的活性物質上のアルコール基との反応によって形成されるエステル結合が含まれ、このようなエステル基は生理学的条件下で加水分解されて、生物学的活性物質を放出する。他の加水分解性結合には、特に限定されるものではないが、炭酸塩結合;アミンとアルデヒドの反応から生じるイミン結合;アルコールとリン酸基の反応によって形成されるリン酸エステル結合;ヒドラジドとアルデヒドの反応生成物であるヒドラゾン結合;アルデヒドとアルコールの反応生成物であるアセタール結合;ギ酸塩とアルコールの反応生成物であるオルトエステル結合;特に限定されるものではないが、PEGなどのポリマーの末端にあるアミン基及びペプチドのカルボキシル基によって形成されるペプチド結合;特に限定されるものではないが、ポリマーの末端にあるホスホルアミダイト基、及びオリゴヌクレオチドの5'ヒドロキシル基によって形成されるオリゴヌクレオチド結合が含まれる。
【0093】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、タンパク質又は機能的RNA(例えばtRNA)をコードする核酸分子を指す。遺伝子は、5'又は3'非翻訳領域、イントロン、リボソーム結合部位、プロモーター又はエンハンサー領域、又は他の関連及び/又は調節配列領域などの最終的なタンパク質又はRNA産物をコードしない領域を含むことができる。
【0094】
「遺伝子発現」及び「発現」という用語は、本明細書では互換的に使用され、DNA配列などの遺伝子からの遺伝可能な情報が、タンパク質又はRNAなどの機能的遺伝子産物にされるプロセスを指す。
【0095】
本明細書で使用される「プロモーター」又は「調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。いくつかの例ではこの配列はコアプロモーター配列であり得、他の例ではこの配列はまた、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列及び他の調節エレメントを含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば組織特異的な方法で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0096】
「作動可能に連結された」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されたDNA又はRNA配列は隣接しており、必要な場合、同じリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を結合させる。
【0097】
抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種からの抗原に特異的に結合する抗体はまた、1つ以上の他の種からのその抗原に結合し得る。しかし、そのような異種間反応性は、それ自体が抗体の特異的分類を変えることはない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、異なる対立遺伝子型の抗原にも結合し得る。しかし、そのような交差反応性は、それ自体が抗体の特異的分類を変えることはない。場合によっては「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語は、抗体、タンパク質、又はペプチドと第2の化学種との相互作用に関連して使用することができ、その相互作用が、化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する;例えば、抗体はタンパク質一般にではなく、特定のタンパク質構造を認識し結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」と抗体を含む反応において、エピトープA(又は遊離の非標識A)を含む分子が存在すると、抗体に結合する標識Aの量が減少する。
【0098】
本明細書で使用される「キメラ抗原受容体」又は代わりに「CAR」という用語は、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び以下に定義する刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメインを含む、組換えポリペプチド構築物を指す。1つの態様において、刺激分子は、T細胞受容体複合体に関連するゼータ鎖である。1つの態様において、細胞質シグナル伝達ドメインは、以下に定義されるように、少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。1つの態様において、共刺激分子は、4 1BB(すなわちCD137)、CD3、及び/又はCD28から選択される。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、を含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激性分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、を含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の共刺激分子に由来する2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、を含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の共刺激分子に由来する少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、を含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N末端)に任意のリーダー配列を含む。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、ここでリーダー配列は、細胞プロセシング及び細胞膜へのCARの局在化中に、任意選択的にscFvドメインから切断される。
【0099】
抗体又はその抗体断片を含むCAR組成物の一部は、抗原結合ドメインが、例えば単一ドメイン抗体断片(sdAb)、単一鎖抗体(scFv)、及びヒト化抗体を含む隣接するポリペプチド鎖の一部として発現される様々な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。1つの態様において、本発明のCAR組成物の抗原結合ドメインは抗体断片を含む。1つの実施態様において、CARは、scFvを含む抗体断片を含む。
【0100】
本明細書で使用される「抗原」又は「Ag」という用語は、適応免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、又は特定の免疫原性コンピテント細胞の活性化、あるいはその両方を含む場合がある。熟練した技術者は、事実上すべてのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原として機能し得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換え又はゲノムのDNA又はRNAに由来する可能性がある。熟練した技術者は、適応免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNA又はRNAが、従って、その用語が本明細書で使用される「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに当業者は、遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみ抗原がコードされる必要はないことを理解するであろう。本発明が、特に限定されるものではないが、複数の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むこと、及びこれらのヌクレオチド配列が様々な組み合わせで配置されて所望の免疫応答を誘導することは、容易に明らかである。さらに当業者は、抗原が「遺伝子」によってコード化される必要が全くないことを理解するであろう。抗原を合成して生成することができるか、又は生物学的試料から誘導することができることは容易に明らかである。そのような生物学的試料には、特に限定されるものではないが、組織試料、腫瘍試料、細胞、又は生体液が含まれ得る。
【0101】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、抗原特異的適応免疫応答を増強する任意の分子として定義される。
【0102】
「疾患」とは、動物が恒常性を維持できず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態のことである。
【0103】
対照的に動物の「障害」は、動物が恒常性を維持できる健康状態であるが、動物の健康状態は、障害がない場合よりも好ましくないものである。治療せずに放置しても、障害は必ずしも動物の健康状態をさらに低下させるわけではない。
【0104】
本明細書で使用される「癌」は、細胞の異常な増殖又は分裂を指す。一般に、癌細胞の増殖及び/又は寿命は、その周囲の正常な細胞及び組織の増殖及び/又は寿命を超えており、協調していない。癌は、良性、前悪性、又は悪性の可能性がある。癌は、口腔(例えば口、舌、咽頭など)、消化器系(例えば食道、胃、小腸、結腸、直腸、肝臓、胆管、膀胱、膵臓など)、呼吸器系(例えば喉頭、肺、気管支など)、骨、関節、皮膚(例えば基底細胞、扁平上皮細胞、髄膜腫など)、乳房、生殖器系(例えば子宮、卵巣、前立腺、精巣など)、泌尿器系(例えば膀胱、腎臓、尿管など)、目、神経系(例えば脳など)、内分泌系(例えば甲状腺など)、及び造血系(例えばリンパ腫、骨髄腫、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)を含むさまざまな細胞や組織で発生する、
【0105】
本明細書で使用される「有効量」は、治療的又は予防的利益を提供する量を意味する。
【0106】
本明細書で使用される「治療的」という用語は、治療及び/又は予防を意味する。治療効果は、疾患又は障害状態の少なくとも1つの兆候又は症状の抑制、減少、寛解、又は根絶によって得られる。
【0107】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師、又は他の臨床家によって求められている組織、システム、又は被験体の生物学的又は医学的応答を誘発する対象化合物の量を指す。「治療有効量」という用語は、投与されたときに、治療されている障害又は疾患の1つ以上の徴候又は症状の発症を予防するか、又はある程度緩和するのに十分な化合物の量を含む。治療有効量は、化合物、治療される被験体の疾患及びその重症度、並びに年齢、体重などによって異なる。
【0108】
「患者」、「被験体」、「個体」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、インビトロ又はインサイチュにかかわらず、本明細書に記載の方法に応答しやすい任意の動物若しくはその細胞又は任意の多細胞生物若しくはその細胞を指す。特定の非限定的な実施態様において、患者、被験体、又は個人はヒトである。特定の非限定的な実施態様において、患者、被験体、又は個人は胎児である。特定の非限定的な実施態様において、患者、被験体、又は個体は胚である。
【0109】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、未治療であること以外では同一である被験者の応答のレベルと比較して、被験体における応答のレベルの検出可能な増加又は減少を媒介することを意味する。この用語は、天然のシグナル又は応答を混乱させ及び/又は影響を及ぼし、それにより、被験体、好ましくはヒトにおいて有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0110】
本明細書で使用される用語としての疾患を「治療する」とは、被験体が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を低下させることを意味する。
【0111】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換、又は形質導入された細胞である。細胞は、1次被験体細胞及びその子孫を含む。
【0112】
本明細書で使用される「転写制御下」又は「作動可能に連結された」という用語は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するために、ポリヌクレオチドに対して正しい位置及び配向にあることを意味する。
【0113】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる組成物である。特に限定されるものではないが、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含む多数のベクターが当技術分野で公知である。従って「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどの、細胞への核酸の移動を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むと解釈すべきである。ウイルスベクターの例には、特に限定されるものではないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれる。
【0114】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」(例えば、任意選択的に置換される)とは、その後に記載される事象又は状況が発生する場合と発生しない場合があり、その記載には、前記事象又は状況が発生する場合と、それが発生しない場合とが含まれることを意味する。例えば「任意選択的に置換されたアルキル」は、アルキルラジカルが置換されてもされなくてもよく、その記載が、置換されたアルキルラジカルと置換を持たないアルキルラジカルの両方を含むことを意味する。
【0115】
範囲:本開示全体を通して、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔性のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は、具体的に開示されたすべての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を有すると見なすべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などなどの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などを具体的に開示していると見なすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0116】
説明
本発明は一部は、新規脂質ナノ粒子(LNP)又はその組成物が、CARをコードするmRNA分子をT細胞に、高い効率と低い毒性で送達するという発見に関する。従って、いくつかの態様において、本発明はまた、CARをコードするmRNA並びに様々な核酸分子、アジュバント、及び/又は治療薬を様々な標的(例えば細胞、組織など)に、少なくとも1種のLNP又はその組成物を使用して送達するための方法に関する。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、少なくとも1種のイオン化可能脂質及び少なくとも1種のヘルパー脂質を含む。特定の実施態様において、本発明は、少なくとも1種のLNP、又は少なくとも1種のmRNA分子及び少なくとも1種のLNPを含むその組成物を使用して、それを必要とする被験体における疾患又は障害を予防又は治療する方法を提供する。
【0117】
脂質ナノ粒子(LNP)とその組成物
本発明は一部は、少なくとも1種のmRNA分子と少なくとも1種の脂質を含む新規脂質ナノ粒子(LNP)に関する。1つの態様において、本発明は一部は、本発明の少なくとも1種のLNPを含む組成物に関する。従って、様々な態様において本発明は、一部は、少なくとも1種のmRNA分子と少なくとも1つの脂質を含む新規のLNP組成物に関する。
【0118】
様々な実施態様において、脂質はイオン化可能脂質である。様々な実施態様において、脂質は、式(I)の構造を有する化合物又はその塩である:
【化16】
【0119】
いくつかの実施態様において、A1は、C、C(H)、N、S、又はPである。いくつかの実施態様において、A2は、C、C(H)、N、S、又はPである。
【0120】
いくつかの実施態様において、L1は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。いくつかの実施態様において、L2は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。いくつかの実施態様において、L3は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。いくつかの実施態様において、L4は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。いくつかの実施態様において、L5は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。いくつかの実施態様において、L6は、C、C(H)2、C(H)(R19)、O、N(H)、又はN(R19)である。
【0121】
いくつかの実施態様において、R1、R2、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7b、R8a、R8b、R9a、R9b、R10a、R10b、R11a、R11b、R12a、R12b、R13a、R13b、R14a、R14b、R15a、R15b、R16、R17、R18、又はR19は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロシクロアルキル、置換-(R20z'(R21Z"-ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルケニル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキニル、置換-Y(R20z'(R21Z"-シクロアルキニル、アリール、置換アリール、-Y(R20z'(R21Z"-アリール、置換-Y(R20z'(R21Z"-アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロアリール、置換-Y(R20z'(R21Z"-ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、-Y(R20z'(R21Z"-エステル、-Y(R20z'(R21Z"、=O、-NO2、-CN、又はスルホキシである。
【0122】
様々な実施態様において、Yは、C、N、O、S、又はPである。
【0123】
いくつかの実施態様において、R20又はR21は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、エステル、=O、-NO2、-CN、又はスルホキシである。
【0124】
いくつかの実施態様において、z'は、0、1、2、又は3で表される整数である。いくつかの実施態様において、z”は、0、1、2、又は3で表される整数である。
【0125】
いくつかの実施態様において、m、n、o、p、q、r、s、t、u、v、w、又はxは、0~25の整数である。様々な実施態様において、m、n、o、p、q、r、s、t、u、v、w、又はxは、0、1、2、3、4、又は5で表される整数である。
【0126】
いくつかの実施態様において、式(I)の構造を有する化合物は、以下の構造を有する化合物である:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0127】
従って、様々な実施態様において、R1、R2、R3、R4、又はR5は、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキニル、置換シクロアルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシカルボニル、線状アルコキシカルボニル、分岐アルコキシカルボニル、アミド、アミノ、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノアリール、アミノアセテート、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアリール、アルコキシ、カルボキシル、カルボキシレート、又はエステルである。
【0128】
いくつかの実施態様において、m、n、o、p、又はqは、0~25の整数である。いくつかの実施態様において、r、s、t、u、v、w、又はxは、0、1、2、3、4、及び5で表される整数である。
【0129】
いくつかの実施態様において、式(I)の構造を有する化合物は、以下の構造を有する化合物である:
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0130】
様々な実施態様において、mRNA分子はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。いくつかの実施態様において、mRNA分子は、式(I)の構造を有する化合物内に封入される。いくつかの実施態様において、mRNA分子は、式(I)~(XV)の構造を有する化合物内に封入される。
【0131】
様々な実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.1mol%~約100mol%の濃度範囲の1種以上の脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約1mol%~約100mol%の濃度範囲の1種以上の脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約10mol%~約70mol%の濃度範囲の1種以上の脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約10mol%~約50mol%の濃度範囲の1種以上の脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約15mol%~約45mol%の濃度範囲の1種以上の脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約35mol%~約40mol%の濃度範囲の1種以上の脂質を含む。
【0132】
例えばいくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約1mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約2mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約5mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約5.5mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約10mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約12mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約15mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約20mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約25mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約30mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約35mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約37mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約40mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約45mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約50mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約60mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約70mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約80mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約90mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約95mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約95.5mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約99mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約99.9mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約100mol%の濃度の式(I)~(XV)の構造を有する1種以上の化合物を含む。
【0133】
様々な実施態様において、LNP又はその組成物は、少なくとも1つのヘルパー化合物をさらに含む。いくつかの実施態様において、ヘルパー化合物は、ヘルパー脂質、ヘルパーポリマー、又はこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施態様において、ヘルパー脂質は、リン脂質、コレステロール脂質、ポリマー、カチオン性脂質、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、ステロイド類似体、ポリマー結合脂質、安定化脂質、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0134】
様々な実施態様において、LNP又はその組成物は、約0mol%~約100mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.01mol%~約99.9mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.1mol%~約90mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.1mol%~約70mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約5mol%~約95mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.5mol%~約50mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.5mol%~約47mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約2.5mol%~約47mol%の濃度範囲の1種以上のヘルパー化合物を含む。
【0135】
例えばいくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.01mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.1mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約0.5mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約1mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約1.5mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約2mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約2.5mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約5mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約10mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約12mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約15mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約16mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約20mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約25mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約30mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約35mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約37mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約40mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約45mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約46.5mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約47mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約50mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約60mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約63mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約70mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約80mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約90mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約95mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約95.5mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約99mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は、約100mol%の濃度の1種以上のヘルパー化合物を含む。
【0136】
いくつかの実施態様において、リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)又はその誘導体、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)又はその誘導体、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)又はその誘導体、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン(SOPC)又はその誘導体、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)又はその誘導体、N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)又はその誘導体、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0137】
例えばいくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約0mol%~約100mol%の濃度範囲のリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約15mol%~約50mol%の濃度範囲のリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約10mol%~約40mol%の濃度範囲のリン脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約16mol%~約40mol%の濃度範囲のリン脂質を含む。
【0138】
いくつかの実施態様において、コレステロール脂質は、コレステロール又はその誘導体である。例えばいくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約0mol%~約100mol%の濃度範囲のコレステロール脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約20mol%~約50mol%の濃度範囲のコレステロール脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約20mol%~約47mol%の濃度範囲のコレステロール脂質を含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約47mol%の濃度のコレステロール脂質と約16mol%の濃度のDOPEを含む。
【0139】
いくつかの実施態様において、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。例えばいくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約0mol%~約100mol%の濃度範囲のポリマーを含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約0.5mol%~約10mol%の濃度範囲のポリマーを含む。いくつかの実施態様において、LNP又はその組成物は約0.5mol%~約2.5mol%の濃度範囲のポリマーを含む。
【0140】
本明細書で使用される「カチオン性脂質」という用語は、カチオン性であるか、又はpHが脂質のイオン化可能基のpKより低くなるとカチオン性(プロトン化)になるが、より高いpH値で次第により中性になる脂質を指す。pKより低いpH値では、脂質は負に荷電した核酸と結合することができる。特定の実施態様において、カチオン性脂質は、pH低下に対して正電荷を帯びる双性イオン性脂質を含む。
【0141】
いくつかの実施態様において、カチオン性脂質は、生理学的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を帯びるいくつかの脂質種のいずれかを含む。そのような脂質には、特に限定されるものではないが、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が含まれる。さらに、本発明で使用することができるカチオン性脂質の多くの市販の調製物が利用可能である。これらには、例えばLIPOFECTIN(登録商標)(GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y.からのDOTMA及び1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム);LIPOFECTAMINE(登録商標)(GIBCO/BRLからのN-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)及び(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム);及びTRANSFECTAM(登録商標)(Promega Corp., Madison, Wis.からのエタノール中のジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を含む市販のカチオン性脂質)が含まれる。以下の脂質はカチオン性であり、生理学的pH未満で正電荷を帯びている:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0142】
1つの実施態様において、カチオン性脂質はアミノ脂質である。本発明において有用な適切なアミノ脂質には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012/016184に記載されているものが含まれる。代表的なアミノ脂質には、特に限定されるものではないが、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)が含まれる。
【0143】
「中性脂質」という用語は、生理学的pHで非荷電又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する多くの脂質種のいずれかを指す。代表的な中性脂質には、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが含まれる。
【0144】
例示的な中性脂質には、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)-マレイミド-PEG、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)-マレイミド-PEG2000、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン(SOPC)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)が含まれる。1つの実施態様において、中性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0145】
いくつかの実施態様において、組成物は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、及びSMから選択される中性脂質を含む。
【0146】
「ステロイド」は、以下の炭素骨格を含む化合物である:
【化31】
【0147】
特定の実施態様において、ステロイド又はステロイド類似体はコレステロールである。これらの実施態様のいくつかにおいて、カチオン性脂質のモル比。
【0148】
「陰イオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に荷電している脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に結合した他の陰イオン性修飾基が含まれる。
【0149】
「ポリマー結合脂質」という用語は、脂質部分とポリマー部分の両方を含む分子を指す。ポリマー結合脂質の例は、ペグ化脂質である。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で公知であり、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-s-DMG)などが含まれる。
【0150】
特定の実施態様において、LNP又はその組成物は、ポリエチレングリコール-脂質(ペグ化脂質)である追加の安定化脂質を含む。適切なポリエチレングリコール-脂質には、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロールが含まれる。代表的なポリエチレングリコール-脂質には、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGが含まれる。1つの実施態様において、ポリエチレングリコール-脂質は、N-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。1つの実施態様において、ポリエチレングリコール-脂質は、PEG-c-DOMGである。別の実施態様において、LNP又はその組成物は、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば4-O-(2',3'-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、又はPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えばω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメート、又は2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートを含む。
【0151】
特定の実施態様において、追加の脂質は、LNP又はその組成物中に約1mol%~約10mol%の量で存在する。1つの実施態様において、追加の脂質は、LNP又はその組成物中に約1mol%~約5mol%の量で存在する。1つの実施態様において、追加の脂質は、LNP又はその組成物中に約1mol%又は約2.5mol%で存在する。
【0152】
「脂質ナノ粒子」という用語は、1種以上の脂質、例えば式(I)~(XV)の脂質を含む、ナノメートルのオーダー(例えば1~1,000nm)の少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。
【0153】
様々な実施態様において、LNPは、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、又は約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、又は150nmの平均直径を有する
【0154】
いくつかの実施態様において、本発明のLNPは実質的に無毒である。従って、様々な実施態様において、本発明のLNP組成物は実質的に無毒である。
【0155】
様々な実施態様において、本明細書に記載されるLNPは、目的の組織に容易に輸送される。例えばいくつかの実施態様において、本明細書に記載される脂質又はLNPは、細胞膜を通って細胞に容易に輸送される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるLNPは、細胞膜を通って細胞に効率的に輸送される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のLNPは、増強された効率で細胞膜を通って細胞に輸送される。
【0156】
従って、様々な実施態様において、本明細書に記載されるLNP組成物は、目的の組織に容易に輸送される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるLNP組成物は、細胞膜を通って細胞に容易に輸送される。様々な実施態様において、本明細書に記載されるLNP組成物は、細胞膜を通って効率的に細胞に輸送される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のLNP組成物は、細胞膜を通って増強された効率で細胞に輸送される。
【0157】
様々な態様において、本発明の組成物は、1種以上の核酸分子、1種以上のアジュバント、1種以上の治療薬、又はそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施態様において、1種以上の核酸分子、1種以上のアジュバント、1種以上の治療薬、又はそれらの組み合わせは、式(I)の構造を有する化合物に封入される。いくつかの実施態様において、1種以上の核酸分子、1種以上のアジュバント、1種以上の治療薬、又はそれらの組み合わせは、式(I)~(XV)の構造を有する化合物に封入される。いくつかの実施態様において、1種以上の核酸分子、1種以上のアジュバント、1種以上の治療薬、又はそれらの組み合わせは、LNPに封入される。
【0158】
様々な実施態様において、組成物は1種以上の核酸分子を含む。1つの実施態様において、核酸分子はDNA分子である。1つの実施態様において、核酸分子はRNA分子である。いくつかの実施態様において、核酸分子は、DNA分子又はRNA分子である。このような核酸の例には、特に限定されるものではないが、cDNA、mRNA、miRNA、siRNA、sgRNA、修飾RNA、アンタゴミール(antagomir)、アンチセンス分子、ガイドRNA分子、クリスパーガイドRNA分子、ペプチド、治療用ペプチド、標的化核酸、及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0159】
1つの実施態様において、mRNAはルシフェラーゼをコードする。
【0160】
様々な実施態様において、核酸分子は治療薬である。いくつかの実施態様において、治療薬は、単離された核酸である。様々な実施態様において、単離された核酸分子は、DNA分子又はRNA分子である。様々な実施態様において、単離された核酸分子は、cDNA、mRNA、miRNA、siRNA、アンタゴミール、アンチセンス分子、又はクリスパーガイドRNA分子である。1つの実施態様において、単離された核酸分子は、治療用ペプチドをコードする。いくつかの実施態様において、治療薬は、標的化核酸を阻害するsiRNA、miRNA、sgRNA、又はアンチセンス分子である。
【0161】
1つの実施態様において、組成物は、プロモーター又は調節配列を含む。1つの実施態様において、核酸は、核酸が核酸の発現を指示することができるように、プロモーター又は調節配列を含む。従って1つの実施態様において、本発明の代謝物ベースのポリマー又はポリマー粒子を含む組成物は、発現ベクターを含み、本発明は、目的の細胞又は組織中の外因性DNAの同時発現を伴う、目的の細胞又は組織への外因性DNAの導入のための方法を含む。
【0162】
1つの実施態様において、核酸分子はmRNAである。1つの実施態様において、組成物はmRNAを含む。1つの実施態様において、組成物はLNP内に封入されたmRNAを含む。様々な実施態様において、LNP内に封入されたmRNAを含む組成物は、単離されたmRNAに対する特定の利点を有し、例えば安定性の増加、自然免疫原性の低下又は欠如、及び翻訳の増強を含む。
【0163】
1つの実施態様において、mRNAはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
【0164】
1つの実施態様において、RNAは修飾されたRNAである。別の実施態様において、本発明の修飾RNA中の残基の0.1%~100%が修飾されている。別の実施態様において、残基の0.1%が修飾されている。別の実施態様において、修飾残基の割合は0.2%である。別の実施態様において、割合は0.3%である。別の実施態様において、割合は0.4%である。別の実施態様において、割合は0.5%である。別の実施態様において、割合は0.6%である。別の実施態様において、割合は0.8%である。別の実施態様において、割合は1%である。別の実施態様において、割合は1.5%である。別の実施態様において、割合は2%である。別の実施態様において、割合は2.5%である。別の実施態様において、割合は3%である。別の実施態様において、割合は4%である。別の実施態様において、割合は5%である。別の実施態様において、割合は6%である。別の実施態様において、割合は8%である。別の実施態様において、割合は10%である。別の実施態様において、割合は12%である。別の実施態様において、割合は14%である。別の実施態様において、割合は16%である。別の実施態様において、割合は18%である。別の実施態様において、割合は20%である。別の実施態様において、割合は25%である。別の実施態様において、割合は30%である。別の実施態様において、割合は35%である。別の実施態様において、割合は40%である。別の実施態様において、割合は45%である。別の実施態様において、割合は50%である。別の実施態様において、割合は60%である。別の実施態様において、割合は70%である。別の実施態様において、割合は80%である。別の実施態様において、割合は90%である。別の実施態様において、割合は100%である。
【0165】
別の実施態様において、割合は5%未満である。別の実施態様において、割合は3%未満である。別の実施態様において、割合は1%未満である。別の実施態様において、割合は2%未満である。別の実施態様において、割合は4%未満である。別の実施態様において、割合は6%未満である。別の実施態様において、割合は8%未満である。別の実施態様において、割合は10%未満である。別の実施態様において、割合は12%未満である。別の実施態様において、割合は15%未満である。別の実施態様において、割合は20%未満である。別の実施態様において、割合は30%未満である。別の実施態様において、割合は40%未満である。別の実施態様において、割合は50%未満である。別の実施態様において、割合は60%未満である。別の実施態様において、割合は70%未満である。
【0166】
別の実施態様において、所定のヌクレオシド(すなわち、ウリジン、シチジン、グアノシン、又はアデノシン)の残基の0.1%が修飾されている。別の実施態様において、修飾された所定のヌクレオチドの割合は0.2%である。別の実施態様において、割合は0.3%である。別の実施態様において、割合は0.4%である。別の実施態様において、割合は0.5%である。別の実施態様において、割合は0.6%である。別の実施態様において、割合は0.8%である。別の実施態様において、割合は1%である。別の実施態様において、割合は1.5%である。別の実施態様において、割合は2%である。別の実施態様において、割合は2.5%である。別の実施態様において、割合は3%である。別の実施態様において、割合は4%である。別の実施態様において、割合は5%である。別の実施態様において、割合は6%である。別の実施態様において、割合は8%である。別の実施態様において、割合は10%である。別の実施態様において、割合は12%である。別の実施態様において、割合は14%である。別の実施態様において、割合は16%である。別の実施態様において、割合は18%である。別の実施態様において、割合は20%である。別の実施態様において、割合は25%である。別の実施態様において、割合は30%である。別の実施態様において、割合は35%である。別の実施態様において、割合は40%である。別の実施態様において、割合は45%である。別の実施態様において、割合は50%である。別の実施態様において、割合は60%である。別の実施態様において、割合は70%である。別の実施態様において、割合は80%である。別の実施態様において、割合は90%である。別の実施態様において、割合は100%である。
【0167】
別の実施態様において、修飾される所定のヌクレオチドの割合は、8%未満である。別の実施態様において、割合は10%未満である。別の実施態様において、割合は5%未満である。別の実施態様において、割合は3%未満である。別の実施態様において、割合は1%未満である。別の実施態様において、割合は2%未満である。別の実施態様において、割合は4%未満である。別の実施態様において、割合は6%未満である。別の実施態様において、割合は12%未満である。別の実施態様において、割合は15%未満である。別の実施態様において、割合は20%未満である。別の実施態様において、割合は30%未満である。別の実施態様において、割合は40%未満である。別の実施態様において、割合は50%未満である。別の実施態様において、割合は60%未満である。別の実施態様において、割合は70%未満である。
【0168】
別の実施態様において、本発明のLNPに封入されたRNAは、同じ配列を有する単離されたRNA分子よりも効率的に細胞内で翻訳される。別の実施態様において、LNPに封入されたRNAは、標的細胞によって翻訳される増強された能力を示す。別の実施態様において、翻訳は、その修飾されていない対応物と比較して2倍増強される。別の実施態様において、翻訳は3倍増強される。別の実施態様において、翻訳は5倍増強される。別の実施態様において、翻訳は7倍増強される。別の実施態様において、翻訳は10倍増強される。別の実施態様において、翻訳は15倍増強される。別の実施態様において、翻訳は20倍増強される。別の実施態様において、翻訳は50倍増強される。別の実施態様において、翻訳は100倍増強される。別の実施態様において、翻訳は200倍増強される。別の実施態様において、翻訳は500倍増強される。別の実施態様において、翻訳は1000倍増強される。別の実施態様において、翻訳は2000倍増強される。別の実施態様において、係数は10~1000倍である。別の実施態様において、係数は10~100倍である。別の実施態様において、係数は10~200倍である。別の実施態様において、係数は10~300倍である。別の実施態様において、係数は10~500倍である。別の実施態様において、係数は20~1000倍である。別の実施態様において、係数は30~1000倍である。別の実施態様において、係数は50~1000倍である。別の実施態様において、係数は100~1000倍である。別の実施態様において、係数は200~1000倍である。別の実施態様において、翻訳は、他の任意の有意な量又は量の範囲だけ増強される。
【0169】
特定の実施態様において、mRNAは、病態生理学的経路を活性化せず、送達のほぼ直後に非常に効率的に翻訳し、数日間続くインビボでの連続的なタンパク質産生のためのテンプレートとして役立つ(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840; Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)。特定の例において、LNP内に封入されたmRNAによってコードされる抗原は、単離されたmRNAによってコードされる抗原と比較して、抗原特異的抗体産生のより大きな産生を誘導する。
【0170】
1つの実施態様において、核酸分子は抗原をコードする。1つの実施態様において、核酸分子は複数の抗原をコードする。いくつかの実施態様において、mRNAは1種以上の抗原をコードする。1つの実施態様において、治療薬は抗原である。
【0171】
様々な実施態様において、抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、インフルエンザ抗原、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、又はこれらの任意の組み合わせを含む。1つの実施態様において、本発明は、アジュバントをコードする核酸分子を含む。
【0172】
1つの実施態様において、抗原は核酸分子の核酸配列によってコードされる。特定の実施態様において、核酸配列は、DNA、RNA、cDNA、これらの変種、これらの断片、又はこれらの組み合わせを含む。1つの実施態様において、核酸配列は、修飾された核酸配列を含む。例えば1つの実施態様において、抗原をコードする核酸配列は、本明細書の他の場所で詳細に説明されているように、RNAを含む。特定の例において、核酸配列は、ペプチド結合によって抗原に連結されているリンカー又はタグ配列をコードする追加の配列を含む。
【0173】
特定の実施態様において、核酸分子によってコードされる抗原は、任意の数の生物、例えば、ウイルス、寄生虫、細菌、真菌、又は哺乳類からの、タンパク質、ペプチド、これらの断片、又はこれらの変種、又はこれらの組み合わせを含む。例えば特定の実施態様において、抗原は、自己免疫疾患、アレルギー、又は喘息に関連している。別の実施態様において、抗原は、癌、ヘルペス、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エボラ、肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌、デング熱、結核、マラリア、ノロウイルス、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に関連している。特定の実施態様において、抗原は、2つ以上の異なる生物のアミノ酸配列に基づくコンセンサス配列を含む。特定の実施態様において、抗原をコードする核酸配列は、組成物が送達される生物における有効な翻訳のために最適化されている。
【0174】
1つの実施態様において、抗原は、抗原が腫瘍に対する適応免疫応答を誘導するように、腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原を含む。1つの実施態様において、抗原は、抗原が腫瘍に対する適応免疫応答を誘導するように、腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原の断片を含む。特定の実施態様において、腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原は、宿主タンパク質の突然変異変種である。
【0175】
従って1つの実施態様において、組成物は抗原を含む。1つの実施態様において、組成物は、抗原をコードする核酸配列を含む。例えば特定の実施態様において、組成物は、抗原をコードするRNAを含む。抗原は、特に限定されるものではないが、被験体の適応免疫応答を誘導するポリペプチド、ペプチド、又はタンパク質を含む任意の分子又は化合物であり得る。
【0176】
1つの実施態様において、抗原が、抗原従って病原体に対する適応免疫応答を誘導するように、抗原は病原体に関連するポリペプチド又はペプチドを含む。1つの実施態様において、抗原が病原体に対する適応免疫応答を誘導するように、抗原は病原体に関連するポリペプチド又はペプチドの断片を含む。
【0177】
特定の実施態様において、抗原は、本明細書に記載の抗原のアミノ酸配列と実質的に相同であり、元のアミノ酸配列の免疫原性機能を保持するアミノ酸配列を含む。例えば特定の実施態様において、抗原のアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、有利には少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%の同一性の程度を有する。
【0178】
ウイルス抗原
1つの実施態様において、抗原は、ウイルス抗原、又はその断片、又はその変種を含む。特定の実施態様において、ウイルス抗原は、以下の科の1つからのウイルスに由来する:アデノウイルス科、アレナウイルス科、ブニヤビリダエ、カリシウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルソミクソウイルス科、パポバウイルス科、パラミクソウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、又はトガウイルス科。特定の実施態様において、ウイルス抗原は、パピローマウイルス、例えばヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポリオウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、天然痘ウイルス(大痘瘡及び小痘瘡)、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、デング熱ウイルス、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス、黄熱病ウイルス、ノーウォークウイルス、A型肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I)、毛細胞白血病ウイルス(HTLV-II)、カリフォルニア脳炎ウイルス、ハンタウイルス(出血熱)、狂犬病ウイルス、エボラ熱ウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、単純ヘルペス1(経口ヘルペス)、単純ヘルペス2(生殖器ヘルペス)、帯状疱疹ウイルス(水痘帯状疱疹、別名水痘ポックス)、サイトメガロウイルス(CMV)、例えばヒトCMV、エプスタインバーウイルス(EBV)、フラビウイルス、足口病ウイルス、チクングニアウイルス、ラッサ熱ウイルス、アレナウイルス、又は癌を引き起こすウイルスに由来する。
【0179】
肝炎抗原
1つの実施態様において、抗原は、肝炎ウイルス抗原(すなわち肝炎抗原)、又はその断片、又はその変種を含む。特定の実施態様において、肝炎抗原は、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、及び/又はE型肝炎ウイルス(HEV)由来の抗原又は免疫原を含む。特定の実施態様において、肝炎抗原は、全長タンパク質又は全長タンパク質の免疫原性断片である。
【0180】
1つの実施態様において、肝炎抗原はHAV由来の抗原を含む。例えば特定の実施態様において、肝炎抗原は、HAVキャプシドタンパク質、HAV非構造タンパク質、これらの断片、これらの変種、又はこれらの組み合わせを含む。
【0181】
1つの実施態様において、肝炎抗原はHCV由来の抗原を含む。例えば特定の実施態様において、肝炎抗原は、HCVヌクレオカプシドタンパク質(すなわちコアタンパク質)、HCVエンベロープタンパク質(例えばE1及びE2)、HCV非構造タンパク質(例えばNS1、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、及びNS5b)、これらの断片、これらの変種、又はこれらの組み合わせを含む。
【0182】
1つの実施態様において、肝炎抗原はHDV由来の抗原を含む。例えば特定の実施態様において、肝炎抗原は、HDVデルタ抗原、その断片、又はその変種を含む。
【0183】
1つの実施態様において、肝炎抗原はHEV由来の抗原を含む。例えば特定の実施態様において、肝炎抗原は、HEVキャプシドタンパク質、その断片、又はその変種を含む。
【0184】
1つの実施態様において、肝炎抗原はHBV由来の抗原を含む。例えば特定の実施態様において、肝炎抗原は、HBVコアタンパク質、HBV表面タンパク質、HBV DNAポリメラーゼ、遺伝子XによってコードされるHBVタンパク質、これらの断片、これらの変種、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施態様において、肝炎抗原は、HBV遺伝子型Aコアタンパク質、HBV遺伝子型Bコアタンパク質、HBV遺伝子型Cコアタンパク質、HBV遺伝子型Dコアタンパク質、HBV遺伝子型Eコアタンパク質、HBV遺伝子型Fコアタンパク質、HBV遺伝子型Gコアタンパク質、HBV遺伝子型Hコアタンパク質、HBV遺伝子型A表面タンパク質、HBV遺伝子型B表面タンパク質、HBV遺伝子型C表面タンパク質、HBV遺伝子型D表面タンパク質、HBV遺伝子型E表面タンパク質、HBV遺伝子型F表面タンパク質、HBV遺伝子型G表面タンパク質、HBV遺伝子型H表面タンパク質、これらの断片、これらの変種、又はこれらの組み合わせを含む。
【0185】
ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原
1つの実施態様において、抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、又はその断片、又はその変種を含む。例えば特定の実施態様において、抗原は、子宮頸癌、直腸癌、及び/又は他の癌を引き起こすHPVタイプ16、18、31、33、35、45、52、及び58由来の抗原を含む。1つの実施態様において、抗原は、尖圭コンジローマを引き起こし、頭頸部癌の原因であることが知られているHPVタイプ6及び11由来の抗原を含む。例えば特定の実施態様において、HPV抗原は、任意のHPVタイプからのHPV E6又はE7ドメイン、又はその断片又は変種を含む。
【0186】
RSV抗原
1つの実施態様において、抗原は、RSV抗原、又はその断片、又はその変種を含む。例えば特定の実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSV融合タンパク質(本明細書では「RSV F」、「RSV Fタンパク質」、及び「Fタンパク質」とも呼ばれる)、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、ヒトRSV融合タンパク質は、RSVサブタイプAとBとの間で保存されている。特定の実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23994.1)由来のRSV Fタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV A2株(GenBank AAB59858.1)由来のRSV Fタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。特定の実施態様において、RSV抗原は、RSV Fタンパク質の単量体、二量体、又は三量体、あるいはこれらの断片又は変種である。本発明によれば、特定の実施態様において、RSV Fタンパク質は、融合前形態又は融合後形態である。
【0187】
1つの実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSV付着糖タンパク質(本明細書では「RSV G」、「RSV Gタンパク質」、及び「Gタンパク質」とも呼ばれる)、又はその断片若しくは変種を含む。ヒトRSVGタンパク質は、RSVサブタイプAとBの間で異なる。1つの実施態様において、抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23993)由来のRSV Gタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、RSVサブタイプB分離株H5601、RSVサブタイプB分離株H1068、RSVサブタイプB分離株H5598、RSVサブタイプB分離株H1123、又はこれらの断片若しくは変種由来のRSVGタンパク質を含む。
【0188】
別の実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSV非構造タンパク質1(「NS1タンパク質」)、又はその断片若しくは変種を含む。例えば1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23987.1)由来のRSV NS1タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV非構造タンパク質2(「NS2タンパク質」)、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23988.1)由来のRSV NS2タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSVヌクレオカプシド(「N」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23989.1)由来のRSV Nタンパク質、又はその断片若しくは変種である。1つの実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSVホスホタンパク質(「P」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23990.1)由来のRSV Pタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSVマトリックスタンパク質(「M」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23991.1)由来のRSV Mタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。
【0189】
さらに別の実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSV小疎水性(「SH」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23992.1)由来のRSV SHタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、ヒトRSVマトリックスタンパク質2-1(「M2-1」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23995.1)由来のRSV M2-1タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、RSVマトリックスタンパク質2-2(「M2-2」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23997.1)由来のRSV M2-2タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。1つの実施態様において、RSV抗原は、RSVポリメラーゼL(「L」)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば、1つの実施態様において、RSV抗原は、RSV Long株(GenBank AAX23996.1)由来のRSV Lタンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。
【0190】
インフルエンザ抗原
1つの実施態様において、抗原は、インフルエンザ抗原、又はその断片、又はその変種を含む。インフルエンザ抗原は、1つ以上のインフルエンザ血清型に対して、哺乳動物で適応免疫応答を誘発することができるものである。特定の実施態様において、抗原は、全長翻訳産物血球凝集素(HA)0、サブユニットHA1、サブユニットHA2、これらの変種、これらの断片、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施態様において、インフルエンザ血球凝集素抗原は、インフルエンザA血清型H1、インフルエンザA血清型H2、又はインフルエンザBの1つ以上の株に由来する。
【0191】
1つの実施態様において、インフルエンザ抗原は、それに対して免疫応答が誘導され得る特定のインフルエンザ免疫原に対して有効であり得る少なくとも1種の抗原性エピトープを含む。特定の実施態様において抗原は、無傷のインフルエンザウイルスに存在する免疫原性部位及びエピトープの全レパートリーを提供し得る。
【0192】
いくつかの実施態様において、インフルエンザ抗原は、H1HA、H2HA、H3HA、H5HA、又はBHA抗原を含む。特定の実施態様においてインフルエンザ抗原は、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリックスタンパク質、核タンパク質、M2エクトドメイン-核タンパク質(M2e-NP)、これらの変種、これらの断片、又はこれらの組み合わせを含む。
【0193】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原
1つの実施態様において、抗原は、HIV抗原、又はその断片、又はその変種を含む。
【0194】
特定の実施態様において、HIV抗原は、エンベロープ(Env)タンパク質、又はその断片若しくは変種を含む。例えば特定の実施態様において、HIV抗原は、gp120、gp41、又はこれらの組み合わせから選択されるEnvタンパク質を含む。
【0195】
特定の実施態様において、HIV抗原は、nef、gag、pol、vif、vpr、vpu、tat、rev、又はこれらの断片若しくは変種のうちの少なくとも1つを含む。
【0196】
HIV抗原は、HIVの任意の株に由来し得る。例えば特定の実施態様において、HIV抗原は、HIV群M、N、O、及びP、並びにサブタイプA、HIVサブタイプB、HIVサブタイプC、HIVサブタイプD、サブタイプE、サブタイプF、サブタイプG、サブタイプH、サブタイプJ、又はサブタイプK由来の抗原を含む。1つの実施態様において、HIV抗原は、HIV-R3A株(R3A-Env)由来のEnv、又はその断片若しくは変種を含む。
【0197】
寄生虫抗原
特定の実施態様において、抗原は、寄生虫抗原、又はその断片若しくは変種を含む。特定の実施態様において寄生虫は、原生動物、蠕虫、又は外部寄生虫である。特定の実施態様において、蠕虫(すなわち、ワーム)は、扁形動物(例えば、吸虫及び条虫)、鉤頭虫、又は回虫(例えば、ぎょう虫)である。特定の実施態様において、外部寄生虫は、シラミ、ノミ、ダニ(tick)、及びダニ(mite)である。
【0198】
特定の実施態様において、寄生虫は、以下の疾患を引き起こす任意の寄生虫である:アカントアメーバ角膜炎、アメーバ症、回虫症、バベシア症、バランチジウム症、アライグマ回虫症、シャガス病、肝吸虫症、コクリオマイア症、クリプトスポリジウム症、裂頭条虫症、メジナ虫症、エキノコッカス症、象皮病、蟯虫症、肝蛭症、肥大吸虫症、フィラリア症、ジアルジア症、顎口虫症、膜様条虫症、イソスポラ症、片山熱、リーシュマニア症、ライム病、マラリア、横川吸虫症、ハエ幼虫症、オンコセルカ症、シラミ寄生症、疥癬、住血吸虫症、眠り病、糞線虫症、条虫症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫病、及び鞭虫症。
【0199】
特定の実施態様において、寄生虫は、アカントアメーバ、アニサキス、回虫、ヒツジバエ、大腸バランチジウム、トコジラミ、サナダムシ(条虫)、ツツガムシ、ラセンウジバエ、赤痢アメーバ、肝蛭、ランブル鞭毛虫、フックワーム、リーシュマニア、イヌシタムシ、肝吸虫、ロア糸状虫、ウェステルマン肺吸虫、蠕虫、熱帯熱マラリア原虫、住血吸虫、糞線虫、ダニ、条虫、トキソプラズマゴンディ、トリパノソーマ、鞭虫、又はバンクロフト糸状虫である。
【0200】
マラリア抗原
1つの実施態様において、抗原は、マラリア抗原(すなわち、PF抗原又はPF免疫原)、又はその断片、又はその変種を含む。例えば1つの実施態様において、抗原は、マラリアを引き起こす寄生虫由来の抗原を含む。1つの実施態様において、マラリアを引き起こす寄生虫は熱帯熱マラリア原虫である。
【0201】
いくつかの実施態様において、マラリア抗原は、熱帯熱マラリア原虫免疫原CS;LSA1;TRAP;CelTOS;及びAma1の1つ以上を含む。免疫原は、全長又は全長タンパク質の免疫原性断片であり得る。
【0202】
細菌抗原
1つの実施態様において、抗原は、細菌抗原、又はその断片若しくは変種を含む。特定の実施態様において、細菌は以下の門のいずれかからのものである:アシドバクテリア、放線菌、アクウィフェクス、バクテロイデス、カルディセリクム、クラミジア、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、クリシオゲネス、シアノバクテリア、デフェリバクター、デイノコッカス-サーマス、ディクチオグロムス、エルシミクロビア、フィブロバクター、ファーミキューテス、フソバクテリア、ゲンマティモナス、レンティスファエラ、ニトロスピラ、プランクトミケス、プロテオバクテリア、スピロヘータ、シネルギステス、テネリクテス、サーモデスルフォバクテリア、テルモトガ、及びベルコミクロビウム。
【0203】
特定の実施態様において、細菌はグラム陽性菌又はグラム陰性菌である。特定の実施態様において、細菌は好気性細菌又は嫌気性細菌である。特定の実施態様において、細菌は独立栄養細菌又は従属栄養細菌である。特定の実施態様において、細菌は、中温菌、中性菌、極限環境微生物、好酸性菌、好アルカリ菌、好熱菌、好冷菌、好塩菌、又は好濃菌である。
【0204】
特定の実施態様において、細菌は、炭疽菌、抗生物質耐性菌、病原菌、食中毒菌、感染性菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、破傷風菌である。 特定の実施態様では、細菌は、マイコバクテリア、破傷風菌、ペスト菌、炭疽菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、又はクロストリジウム・ディフィシルである。
【0205】
結核菌抗原
1つの実施態様において、抗原は、結核菌抗原(すなわち、TB抗原又はTB免疫原)、又はその断片、又はその変種を含む。TB抗原は、TB抗原のAg85ファミリー、例えばAg85A及びAg85Bに由来し得る。TB抗原は、TB抗原のEsxファミリー、例えば、EsxA、EsxB、EsxC、EsxD、EsxE、EsxF、EsxH、EsxO、EsxQ、EsxR、EsxS、EsxT、EsxU、EsxV、及びEsxWに由来し得る。
【0206】
真菌抗原
1つの実施態様において、抗原は、真菌抗原、又はその断片若しくは変種を含む。特定の実施態様において、真菌は、アスペルギルス種、ブラストミセス・デルマチチディス、カンジダ酵母(例えば、カンジダ・アルビカンス)、コクシジオイデス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ガッティ、皮膚糸状菌、フサリウム種、ヒストプラズマ・カプスラタム、ケカビ、ニューモシスチス肺炎菌、スポロトリックス・シェンキイ、エキセロヒラム、又はクラドスポリウムである。
【0207】
腫瘍抗原
特定の実施態様において、抗原は、例えば腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原を含む腫瘍抗原を含む。本発明の文脈において、「腫瘍抗原」又は「過剰増殖性障害抗原」、又は「過剰増殖性障害に関連する抗原」は、特定の過剰増殖性障害に共通する抗原を指す。特定の態様において、本発明の過剰増殖性障害抗原は、特に限定されるものではないが、原発性又は転移性黒色腫、中皮腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンスリンパ腫、白血病、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌、及び腺癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌などを含む癌から得られる。
【0208】
腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞性免疫応答を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。1つの実施態様において、本発明の腫瘍抗原は、哺乳動物の癌腫瘍に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)によって免疫原的に認識される1種以上の抗原性癌エピトープを含む。抗原の選択は、本発明の組成物によって治療又は予防される特定の種類の癌に依存するであろう。
【0209】
腫瘍抗原は当技術分野で公知であり、例えば神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、サバイビン(survivin)、及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、及びメソテリンを含む。
【0210】
1つの実施態様において、腫瘍抗原は、悪性腫瘍に関連する1種以上の抗原性癌エピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原として機能し得る多くのタンパク質を発現する。これらの分子には、特に限定されるものではないが、組織特異抗原、例えば黒色腫のMART-1、チロシナーゼ、GP100、並びに前立腺癌の前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異抗原(PSA)が含まれる。他の標的分子は、癌遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の群に属する。標的抗原のさらに別の群は、癌胎児性抗原(CEA)などの癌-胎児性抗原である。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に特有の真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20、CD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫の標的抗原の他の候補である。これらの抗原のいくつか(CEA、HER-2、CD19、CD20、イディオタイプ)は、モノクローナル抗体を用いた受動免疫療法の標的として使用されているが、あまり成功していない。
【0211】
本発明で言及される腫瘍抗原のタイプはまた、腫瘍特異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)であり得る。TSAは腫瘍細胞に特有のものであり、体内の他の細胞には存在しない。TAA関連抗原は腫瘍細胞に固有のものではなく、代わりに、抗原に対する免疫寛容の状態を誘導できない条件下では、正常細胞にも発現される。腫瘍での抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件下で起こる可能性がある。TAAは、免疫系が未成熟で応答できない場合、胎児の発育中に正常細胞で発現される抗原であり得るか、又は正常細胞では通常非常に低いレベルで存在するが、腫瘍細胞でははるかに高いレベルで発現される抗原であり得る。
【0212】
TSA又はTAA抗原の非限定的な例には、以下が含まれる:分化抗原、例えばMART-1/MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、及び腫瘍特異的多系統抗原、例えばMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15;CEAなどの過剰発現した胚性抗原;過剰発現した癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER-2/neu;染色体転座に起因する独特の腫瘍抗原;例えばBCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;及びウイルス抗原、例えばエプスタインバーウイルス抗原EBVA、並びにヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7。他の大きなタンパク質ベースの抗原には、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3\CA27.29\BCAA、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\サイクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSが含まれる。
【0213】
好適な実施態様において、抗原は、特に限定されるものではないが、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、MY-ESO-1 TCR、MAGE A3 TCRなどを含む。
【0214】
特定の実施態様において、核酸分子は、抗原に対する適応免疫応答を誘導する抗原をコードする。特定の実施態様において、治療薬は、抗原に対する適応免疫応答を誘導する抗原である。
【0215】
本明細書に記載の抗原又はアジュバントをコードするヌクレオチド配列は、代わりに、元のヌクレオチド配列に関する配列変化、例えば、結果として生じるポリヌクレオチドが本発明によるポリヌクレオチドコードするという条件で、1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入、及び/又は欠失を含むことができる。従って本発明の範囲は、本明細書に記載のヌクレオチド配列に実質的に相同であり、目的の抗原又はアジュバントをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0216】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列が、本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%、有利には少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%の同一性の程度を有する場合、本明細書に記載の任意のヌクレオチド配列と「実質的に相同」である。抗原をコードするヌクレオチド配列と実質的に相同であるヌクレオチド配列は、典型的には、例えば保存的又は非保存的置換を導入することによって、ヌクレオチド配列に含まれる情報に基づいて、抗原の生産生物から単離することができる。可能な修飾の他の例には、配列中の1つ以上のヌクレオチドの挿入、配列のいずれかの末端への1つ以上のヌクレオチドの付加、又は任意の末端又は配列内の1つ以上のヌクレオチドの欠失が含まれる。2つのポリヌクレオチド間の同一性の程度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズム及び方法を使用して決定される。
【0217】
1つの実施態様において、本発明は、抗原をコードするヌクレオチド配列を含む構築物に関する。1つの実施態様において、構築物は、複数の抗原をコードする複数のヌクレオチド配列を含む。例えば特定の実施態様において、構築物は、1つ以上、2つ以上、5つ以上、10以上、15以上、又は20以上の抗原をコードする。1つの実施態様において、本発明は、アジュバントをコードするヌクレオチド配列を含む構築物に関する。1つの実施態様において、構築物は、抗原をコードする第1のヌクレオチド配列とアジュバントをコードする第2のヌクレオチド配列を含む。
【0218】
1つの実施態様において、組成物は、それぞれが1種以上の抗原をコードする複数の構築物を含む。特定の実施態様において、組成物は、1つ以上、2つ以上、5つ以上、10以上、15以上、又は20以上の構築物を含む。1つの実施態様において、組成物は、抗原をコードするヌクレオチド配列を含む第1の構築物と、アジュバントをコードするヌクレオチド配列を含む第2の構築物を含む。
【0219】
別の特定の実施態様において、構築物は、翻訳制御要素に作動可能に結合されている。構築物は、本発明のヌクレオチド配列の発現のための作動可能に結合された調節配列を組み込むことができ、従って発現カセットを形成する。
【0220】
1つの実施態様において、本発明の組成物は、インビトロ転写(IVT)RNAを含む。例えば特定の実施態様において、本発明の組成物は、抗原をコードするIVT RNAを含み、ここで、抗原は適応免疫応答を誘導する。特定の実施態様において、抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、腫瘍特異的抗原、又は腫瘍関連抗原のうちの少なくとも1つである。しかしながら本発明は、特定の抗原又は抗原の組み合わせに限定されない。
【0221】
例えば、1つの実施態様において、組成物は、LNP内に封入された、抗原をコードする核酸分子を含む。特定の例において、LNPは、核酸分子の細胞取り込みを増強する。
【0222】
1つの態様において、核酸分子は、抗原をコードするIVT RNAである。従って、1つの実施態様において、本発明の組成物は、抗原をコードするIVT RNAを含む。1つの実施態様において、本発明の組成物は、複数の抗原をコードするIVT RNAを含む。1つの実施態様において、本発明の組成物は、アジュバントをコードするIVT RNAを含む。1つの実施態様において、本発明の組成物は、1種以上の抗原及び1種以上のアジュバントをコードするIVT RNAを含む。
【0223】
1つの実施態様において、組成物は、アジュバントをコードする核酸分子を含む。従って、1つの実施態様において、組成物はアジュバントを含む。1つの実施態様において、アジュバントをコードする核酸分子は、IVT RNAである。1つの実施態様において、アジュバントをコードする核酸分子はRNAである。
【0224】
例示的なアジュバントには、特に限定されるものではないが、アルファインターフェロン、ガンマインターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、表皮増殖因子(EGF)、皮膚T細胞誘引ケモカイン(CTACK)、上皮胸腺発現ケモカイン(TECK)、粘膜関連上皮ケモカイン(MEC)、IL-12、IL-15、MHC、CD80、CD86(シグナル配列が削除されたIL-15を含み、任意選択的にIgE由来のシグナルペプチドを含む)が含まれる。有用なアジュバントとなり得る他の遺伝子には、以下をコードする遺伝子が含まれる:MCP-I、MIP-Ia、MIP-Ip、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-I、VLA-I、Mac-1、pl50.95、PECAM、ICAM-I、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、G-CSF、IL-4、変異体型IL-18、CD40、CD40L、血管増殖因子、線維芽細胞増殖因子、IL-7、神経増殖因子、血管内皮増殖因子、Fas、TNF受容体、Fit、Apo-1、p55、WSL-I、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-I、Ap-I、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性NIK、SAP K、SAP-I、JNK、インターフェロン応答遺伝子、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANK LIGAND、Ox40、Ox40 LIGAND、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2、抗CTLA4-sc、抗LAG3-Ig、抗TIM3-Ig及びこれらの機能的断片。
【0225】
いくつかの実施態様において、組成物は、カチオン性脂質と、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、及びポリマー結合脂質(例えばペグ化脂質)から選択される1つ以上の賦形剤とをさらに含む。いくつかの実施態様において、核酸分子は、脂質ナノ粒子の脂質部分、又は脂質ナノ粒子の脂質部分の一部又はすべてによって包まれた水性空間に封入され、こうして、宿主生物又は細胞のメカニズム、例えば有害な免疫応答によって誘導される酵素分解又は他の望ましくない効果からそれを保護する。
【0226】
1つの実施態様において、組成物は、1つ以上のカチオン性脂質、及び1つ以上の安定化脂質を含む。安定化脂質には、中性脂質とペグ化脂質が含まれる。
【0227】
1つの実施態様において、組成物はカチオン性脂質を含む。本明細書で使用される「カチオン性脂質」という用語は、カチオン性であるか、又はpHが脂質のイオン化可能基のpKより低くなるとカチオン性(プロトン化)になるが、より高いpH値では次第により中性になる脂質を指す。pKより低いpH値では、脂質は負に荷電した核酸と結合することができる。特定の実施態様において、カチオン性脂質は、pH低下により正電荷を帯びる双性イオン性脂質を含む。
【0228】
特定の実施態様において、カチオン性脂質は、生理学的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を帯びるいくつかの脂質種のいずれかを含む。そのような脂質には、特に限定されるものではないが、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が含まれる。さらに、本発明で使用することができるカチオン性脂質の多くの市販の調製物が利用可能である。これらには、例えばLIPOFECTIN(登録商標)(GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y.からのDOTMA及び1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム);LIPOFECTAMINE(登録商標)(GIBCO/BRLからのN-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)及び(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム);及びTRANSFECTAM(登録商標)(Promega Corp., Madison, Wis.からのエタノール中のジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を含む市販のカチオン性脂質)が含まれる。以下の脂質はカチオン性であり、生理学的pH未満で正電荷を帯びている:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0229】
1つの実施態様において、カチオン性脂質はアミノ脂質である。本発明において有用な適切なアミノ脂質には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012/016184に記載されているものが含まれる。代表的なアミノ脂質には、特に限定されるものではないが、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)が含まれる。
【0230】
特定の実施態様において、カチオン性脂質は、組成物中に約30~約95mol%の量で存在する。1つの実施態様において、カチオン性脂質は、組成物中に約30~約70mol%の量で存在する。1つの実施態様において、カチオン性脂質は、組成物中に約40~約60mol%の量で存在する。1つの実施態様において、カチオン性脂質は、組成物中に約50mol%の量で存在する。1つの実施態様において、組成物はカチオン性脂質のみを含む。
【0231】
特定の実施態様において、組成物は、粒子の形成中に粒子の形成を安定化させる1つ以上の追加の脂質を含む。適切な安定化脂質には、中性脂質及び陰イオン性脂質が含まれる。
【0232】
「中性脂質」という用語は、生理学的pHで非荷電又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する多くの脂質種のいずれかを指す。代表的な中性脂質には、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが含まれる。
【0233】
例示的な中性脂質には、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)-マレイミド-PEG、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)-マレイミド-PEG2000、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン(SOPC)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)、及びSMが含まれる。1つの実施態様において、中性脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0234】
いくつかの実施態様において、組成物は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、及びSMから選択される中性脂質を含む。
【0235】
様々な実施態様において、組成物は、ステロイド又はステロイド類似体をさらに含む。「ステロイド」は、以下の炭素骨格を含む化合物である:
【化32】
【0236】
特定の実施態様において、ステロイド又はステロイド類似体はコレステロールである。これらの実施態様のいくつかでは、カチオン性脂質のモル比。
【0237】
「陰イオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に荷電している脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に結合した他の陰イオン性修飾基が含まれる。
【0238】
特定の実施態様において、組成物は、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)を含む。特定の実施態様において、組成物は、コレステロールなどのステロールを含む。
【0239】
いくつかの実施態様において、組成物はポリマー結合脂質を含む。「ポリマー結合脂質」という用語は、脂質部分とポリマー部分の両方を含む分子を指す。ポリマー結合脂質の例は、ペグ化脂質である。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で公知であり、1(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-s-DMG)などが含まれる。
【0240】
特定の実施態様において、LNPは、ポリエチレングリコール-脂質(ペグ化脂質)である追加の安定化脂質を含む。適切なポリエチレングリコール-脂質には、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロールが含まれる。代表的なポリエチレングリコール-脂質には、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGが含まれる。1つの実施態様において、ポリエチレングリコール-脂質は、N-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。1つの実施態様において、ポリエチレングリコール-脂質は、PEG-c-DOMGである。別の実施態様において、LNPは、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば4-O-(2',3'-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、又はPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えばω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメート、又は2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートを含む。様々な実施態様において、カチオン性脂質とペグ化脂質とのモル比は、約100:1~約25:1の範囲である。
【0241】
特定の実施態様において、追加の脂質は、LNP中に約1mol%~約10mol%の量で存在する。1つの実施態様において、追加の脂質は、LNP中に約1mol%~約5mol%の量で存在する。1つの実施態様において、追加の脂質は、LNP中に約1mol%又は約1.5mol%で存在する。
【0242】
特定の実施態様において、核酸分子は、脂質ナノ粒子中に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に対して耐性がある。
【0243】
様々な実施態様において、組成物は、1種以上のトランスフェクション試薬を含む。別の実施態様において、トランスフェクション試薬は、脂質ベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様において、トランスフェクション試薬は、タンパク質ベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様において、トランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミンベースのトランスフェクション試薬である。別の実施態様において、トランスフェクション試薬はリン酸カルシウムである。別の実施態様において、トランスフェクション試薬は、Lipofectin(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)、又はTransIT(登録商標)である。別の実施態様において、トランスフェクション試薬は、当技術分野で公知の他の任意のトランスフェクション試薬である。
【0244】
別の実施態様において、トランスフェクション試薬はリポソームを形成する。別の実施態様において、リポソームは、細胞内安定性を増加させ、取り込み効率を増加させ、そして生物学的活性を改善する。別の実施態様において、リポソームは、細胞膜を構成する脂質と同様の方法で配置された脂質から構成される中空の球状小胞である。これらは、別の実施態様において、水溶性化合物を捕捉するための内部水性空間を有し、直径が0.05~数ミクロンの範囲のサイズである。別の実施態様において、リポソームは、RNAを生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる。
【0245】
様々な実施態様において、本発明の組成物は、1種以上の核酸分子が付着している又は1種以上の核酸分子が封入されている粒子を形成することができる任意の脂質を含み得る。「脂質」という用語は、脂肪酸の誘導体(例えばエステル)であり、一般に水に不溶性であるが多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする一群の有機化合物を指す。脂質は通常、少なくとも3つのクラスに分類される:(1)「単純脂質」、これには油脂とワックスが含まれる;(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」;及び(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0246】
特定の実施態様において、組成物は、LNPを、目的の細胞、細胞集団、組織、又はこれらの任意の組み合わせに標的化することができる1つ以上の標的化部分を含む。例えば1つの実施態様において、標的化部分は、LNPを細胞表面上に見られる受容体に向けるリガンドである。
【0247】
特定の実施態様において、組成物は、1つ以上の内在化ドメインを含む。例えば、1つの実施態様において、組成物は、細胞に結合してLNPの内在化を誘導する1つ以上のドメインを含む。例えば1つの実施態様において、1つ以上の内在化ドメインは、細胞表面に見られる受容体に結合して、受容体を介するLNPの取り込みを誘導する。特定の実施態様において、LNPは、インビボで生体分子に結合することができ、ここで、LNPに結合した生体分子は、細胞表面受容体によって認識されて内在化を誘導することができる。例えば1つの実施態様において、LNPは全身性ApoEに結合し、これは、LNP及び関連する荷物(cargo)(例えば、1種以上の核酸分子、1種以上の治療薬、又はこれらの任意の組み合わせ)の取り込みをもたらす。
【0248】
RNAは、合成的に生成されたプラスミドDNAテンプレートを使用するインビトロ転写によって生成される。任意の供給源からの目的のDNAは、PCRによって適切なプライマーとRNAポリメラーゼを使用して、インビトロmRNA合成用のテンプレートに直接変換できる。DNAの供給源は、例えばゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、又は任意の他の適切なDNAの供給源であり得る。1つの実施態様において、インビトロ転写のための所望のテンプレートは、適応免疫応答を誘導することができる抗原であり、本明細書の他の場所に記載されるように、例えば病原体又は腫瘍に関連する抗原を含む。1つの実施態様において、インビトロ転写のための所望のテンプレートは、適応免疫応答を増強することができるアジュバントである。
【0249】
1つの実施態様において、PCRに使用されるDNAはオープンリーディングフレームを含む。DNAは、生物のゲノムからの天然のDNA配列に由来する場合がある。1つの実施態様において、DNAは、遺伝子の一部の目的の全長遺伝子である。遺伝子は、5'及び/又は3'非翻訳領域(UTR)の一部又はすべてを含み得る。遺伝子は、エクソンとイントロンを含み得る。1つの実施態様において、PCRに使用されるDNAは、ヒト遺伝子である。別の実施態様において、PCRに使用されるDNAは、5'及び3'UTRを含むヒト遺伝子である。別の実施態様において、PCRに使用されるDNAは、細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌を含む病原性又は共生生物由来の遺伝子である。別の実施態様において、PCRに使用されるDNAは、5'及び3'UTRを含む、細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌を含む病原性又は共生生物に由来する。あるいはDNAは、天然に存在する生物では通常は発現されない人工DNA配列であり得る。例示的な人工DNA配列は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成するために一緒に連結される遺伝子の部分を含むものである。一緒に連結されるDNAの部分は、単一の生物又は複数の生物に由来することができる。
【0250】
PCRのDNA源として使用できる遺伝子には、生物の適応免疫応答を誘導又は増強するポリペプチドをコードする遺伝子が含まれる。好ましい遺伝子は、短期間の治療に、又は投与量若しくは発現された遺伝子に関して安全性の懸念がある場合に、有用な遺伝子遺伝子である。
【0251】
様々な実施態様において、プラスミドは、トランスフェクションに使用されるmRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを生成するために使用される。
【0252】
安定性及び/又は翻訳効率を促進する能力を有する化学構造もまた使用され得る。RNAは好ましくは5'及び3'UTRを有する。1つの実施態様において、5'UTRは、長さが0~3000ヌクレオチドの間である。コード領域に追加される5'及び3'UTR配列の長さは、特に限定されるものではないが、UTRの異なる領域にアニーリングするPCR用のプライマーの設計を含む異なる方法によって変更することができる。このアプローチを使用して当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後の最適な翻訳効率を達成するために必要とされる5'及び3'のUTRの長さを修飾することができる。
【0253】
5'及び3'UTRは、目的の遺伝子の天然に存在する内因性の5'及び3'UTRであり得る。あるいは、目的の遺伝子に内因性ではないUTR配列は、UTR配列を前進プライマー及び逆進プライマーに組み込むことによって、又はテンプレートの任意の他の修飾によって追加することができる。目的の遺伝子に内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を修飾するのに役立つ。例えば3'UTR配列のAUに富む要素は、mRNAの安定性を低下させる可能性があることが知られている。従って3'UTRは、当技術分野でよく知られているUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を高めるように選択又は設計することができる。
【0254】
1つの実施態様において、5'UTRは、内因性遺伝子のコザック配列を含むことができる。あるいは、上記のように目的の遺伝子に内因性ではない5'UTRがPCRによって追加されている場合、コンセンサスコザック配列は5'UTR配列を追加することによって再設計することができる。コザック配列は、一部のRNA転写物の翻訳効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするために、すべてのRNAにとって必要なわけではないようである。多くのmRNAに対するコザック配列に対する要件は当技術分野で公知である。別の実施態様において、5'UTRは、RNAゲノムが細胞内で安定しているRNAウイルスに由来し得る。別の実施態様において、様々なヌクレオチド類似体を3'又は5'UTRで使用して、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げることができる。
【0255】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNAテンプレートからのRNAの合成を可能にするには、転写される配列の上流のDNAテンプレートに、転写プロモーターを付加する必要がある。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列が前進プライマーの5'末端に付加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に組み込まれるようになる。1つの好適な実施態様において、プロモーターは、本明細書の他の場所に記載されているように、T7 RNAポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、特に限定されるものではないが、T3及びSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれる。T7、T3、及びSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は当技術分野で公知である。
【0256】
好適な実施態様において、mRNAは、細胞内のmRNAのリボソーム結合、翻訳の開始、及びmRNAの安定性を決定する5'末端及び3'ポリ(A)テールの両方にキャップを有する。環状DNAテンプレート、例えばプラスミドDNAでは、RNAポリメラーゼが、真核細胞での発現には適さない長いコンカテマー生成物を生成する。3'UTRの末端で線状化されたプラスミドDNAの転写は、通常サイズのmRNAをもたらし、これは、転写後にポリアデニル化される時、真核生物のトランスフェクションに有効である。
【0257】
線状DNAテンプレートでは、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写物の3'末端をテンプレートの最後の塩基を超えて拡張できる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
【0258】
ポリA/TストレッチをDNAテンプレートに組み込む従来の方法は、分子クローニングである。ただし、プラスミドDNAに組み込まれたポリA/T配列はプラスミドの不安定にする可能性があり、これは、組換え能のない細菌細胞をプラスミドの増殖に使用することで改善することができる。
【0259】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)や酵母ポリAポリメラーゼなどのポリ(A)ポリメラーゼを使用して、インビトロ転写後にさらに拡張できる。1つの実施態様において、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増加させると、RNAの翻訳効率が約2倍増加する。さらに、3'末端への異なる化学基の結合はmRNAの安定性を高めることができる。このような結合は、修飾された/人工のヌクレオチド、アプタマー、及び他の化合物を含み得る。例えばATP類似体は、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)テールに組み込むことができる。ATP類似体はRNAの安定性をさらに高めることができる。
【0260】
5'キャップオンは、mRNA分子に安定性も提供する。好適な実施態様において、この方法によって生成されたRNAは5'cap1構造を含む。このようなcap1構造は、ワクシニアキャッピング酵素及び2'-O-メチルトランスフェラーゼ酵素(CellScript, Madison, WI)を使用して生成することができる。あるいは5'キャップは、当技術分野で公知の本明細書に記載されている技術を使用して提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001); Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001); Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0261】
抗原又はアジュバントをコードする核酸配列は、当該分野で公知の組換え方法、例えば遺伝子を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングすることによって、同じものを含むことが知られているベクターから遺伝子を誘導することによって、又は同じものを含む細胞や組織から直接分離することによって、標準的な技術を使用して得ることができる。あるいは、目的の遺伝子を合成的に生成することができる。
【0262】
核酸は、多くの種類のベクターにクローン化することができる。例えば核酸は、特に限定されるものではないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むベクターにクローン化することができる。特に関心のあるベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、配列決定ベクター、及びインビトロ転写用に最適化されたベクターが含まれる。
【0263】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散システム、例えば高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースのシステム、例えば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが含まれる。インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイドシステムは、リポソーム(例えば人工膜小胞)である。
【0264】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)のために脂質配合物の使用が企図されている。別の態様において、核酸は脂質と結合され得る。脂質に結合した核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合した連結分子を介してリポソームに結合され、リポソームに捕捉され、リポソームと複合体を形成し、脂質含有液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組合わされ、脂質に懸濁液として含まれ、ミセルを含むか又は複合体を形成し、あるいは脂質と結合され得る。脂質、脂質/RNA、又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の特定の構造に限定されない。例えば、これらは、二層構造でミセルとして又は「崩壊した」構造で存在し得る。これらはまた、単に溶液中に散在し、サイズ又は形状が均一でない凝集体を形成する可能性がある。脂質は、天然に存在する脂質又は合成脂質である可能性のある脂肪性物質である。例えば脂質には、細胞質に自然に存在する脂肪滴や、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素とその誘導体を含む化合物のクラスが含まれる。
【0265】
使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma, St. Louis, MOから入手することができる。リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories (Plainview, NY)から入手できる。コレステロール(「Chol」)はCalbiochem-Behringから入手できる。ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc. (Birmingham, AL)から入手することができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも蒸発しやすいため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される様々な単一及び多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重膜と内部水性媒体とを備えた小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。マルチラメラリポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると自然に形成される。脂質成分は自己再配列した後に、閉じた構造を形成し、水と溶解した溶質を脂質二重層の間に捕捉する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかしながら、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も含まれる。例えば、脂質はミセル構造をとるか、脂質分子の不均一な凝集体として単に存在する可能性がある。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0266】
LNPワクチン
本発明の1つの態様において、本明細書に記載の組成物はワクチンである。組成物がワクチンとして有用であるためには、組成物は、細胞、組織、又は哺乳動物(例えばヒト)において抗原に対する適応免疫応答を誘導しなければならない。特定の例において、ワクチンは哺乳動物で防御免疫応答を誘導する。本明細書で使用される「免疫原性組成物」は、抗原(例えばペプチド又はポリペプチド)、抗原をコードする核酸、抗原又は細胞成分を発現又は提示する細胞、又はこれらの組み合わせを含み得る。特定の実施態様において、組成物は、本明細書に記載の任意のペプチド抗原の全部又は一部、又はその免疫原的に機能の同等物を含むか又はコードする。別の実施態様において、組成物は、追加の免疫刺激剤又はそのような薬剤をコードする核酸を含む混合物である。免疫刺激剤には、特に限定されるものではないが、追加の抗原、免疫調節剤、抗原提示細胞、又はアジュバントが含まれる。別の実施態様において、1つ以上の追加の薬剤は、任意の組み合わせで、抗原又は免疫刺激剤に共有結合している。特定の実施態様において、抗原性組成物は、HLAアンカーモチーフアミノ酸に結合しているか又はそれを含む。
【0267】
本発明の文脈において、「ワクチン」という用語は、動物への接種時に免疫を誘導する物質を指す。
【0268】
本発明のワクチンは、核酸及び/又は細胞成分の組成が異なり得る。非限定的な例において、抗原をコードする核酸はまた、アジュバントと共に配合され得る。もちろん、本明細書に記載の様々な組成物は、追加の成分をさらに含み得ることが理解されよう。例えば、1つ以上のワクチン成分は、脂質、リポソーム、又は脂質ナノ粒子に含まれ得る。別の非限定的な例において、ワクチンは、1種以上のアジュバントを含み得る。本発明のワクチン及びその様々な成分は、本明細書に開示されるか又は本開示の観点から当業者に公知と思われる任意の方法によって、調製及び/又は投与することができる。
【0269】
抗原の発現による免疫の誘導は、抗原に対する宿主の免疫系の全部又は一部の応答を、インビボ又はインビトロで観察することによって検出することができる。
【0270】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出する方法はよく知られている。生体内に侵入した異物は、APCの作用によりT細胞やB細胞に提示される。APCによって提示された抗原に抗原特異的に応答するT細胞は、抗原による刺激によって細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球又はCTLとも呼ばれる)に分化する。その後、これらの抗原に刺激された細胞は増殖する。このプロセスは、本明細書ではT細胞の「活性化」と呼ばれる。従ってポリペプチド又はペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープによるCTL誘導は、ポリペプチド又はペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープをAPCによってT細胞に提示し、CTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、B細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、好酸球、及びNK細胞を活性化する作用がある。
【0271】
樹状細胞(DC)をAPCとして使用してCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野でよく知られている。DCは、APCの中で強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。本発明の方法において、ポリペプチド又はペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープは、最初にDCによって発現され、次にこのDCはT細胞と接触させられる。DCとの接触後の目的の細胞に対する細胞傷害性作用を有するT細胞の検出は、ポリペプチド又はペプチド又はこれらの組み合わせのエピトープが、細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することを示す。さらに、誘導された免疫応答は、固定化ペプチド又はペプチドの組み合わせを運ぶ抗原提示細胞の存在下で、ELISPOTアッセイなどの抗IFN-ガンマ抗体を使用して視覚化することにより、CTLによって産生及び放出されるIFN-ガンマを測定することによって試験することもできる。
【0272】
DCとは別に、末梢血単核細胞(PBMC)もまたAPCとして使用することができる。CTLの誘導は、GM-CSF及びIL-4の存在下でPBMCを培養することによって増強されることが報告されている。同様にCTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが証明されている。
【0273】
これらの方法によりCTL誘導活性を有することが確認された抗原は、DC活性化作用とそれに続くCTL誘導活性を有する抗原である。さらに、APCによる抗原の提示により細胞障害性を獲得したCTLは、抗原関連障害に対するワクチンとしても使用できる。
【0274】
抗原の発現による免疫の誘導は、抗原に対する抗体産生の誘導を観察することによってさらに確認することができる。例えば、抗原をコードする組成物で免疫された実験動物において抗原に対する抗体が誘導される場合、及び抗原関連の病状がこれらの抗体によって抑制される場合、組成物は免疫を誘導すると判定される。
【0275】
抗原の発現による免疫の誘導は、CD4+T細胞の誘導を観察することによってさらに確認することができる。CD4+T細胞は標的細胞を溶解することもできるが、主にCTLや抗体生成などの他のタイプの免疫応答の誘導に役立つ。CD4+T細胞ヘルプのタイプは、Th1、Th2、Th9、Th17、T調節性、又はT濾胞ヘルパー(Tfh)細胞として特徴付けることができる。CD4+T細胞供給の各サブタイプは、特定のタイプの免疫応答に役立つ。本発明にとって特に関心のあるのは、Tfhサブタイプが高親和性抗体の生成に役立つことである。
【0276】
医薬用LNP組成物
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で知られているか又は今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調製方法は、有効成分を担体又は1種以上の他の付属成分と結合させ、次に、必要な又は所望の場合、生成物を所望の単回又は複数回投与単位に成形又は包装する工程を含む。
【0277】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトへの医療向け投与に適した医薬組成物に向けられているが、当業者は、そのような組成物が一般にあらゆる種類の動物への投与に適していることを理解するであろう。組成物を様々な動物への投与に適したものにするために、ヒトへの投与に適した医薬組成物を修飾することはよく理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、もしあれば、通常の実験でそのような修飾を設計及び実施することができる。本発明の医薬組成物の投与が企図される被験体には、特に限定されるものではないが、ヒト及び他の霊長類、非ヒト霊長類、及び哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、及びイヌなどの商業的に関連する哺乳動物が含まれる。
【0278】
本発明の方法において有用な医薬組成物は、眼、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、頬側、静脈内、側脳室内、皮内、筋肉内、皮下、脳室内、髄腔内、気管内、腹腔内、子宮内送達、又は別の投与経路、又はこれらの任意の組み合わせに適した製剤で、調製、包装、又は販売され得る。他の企図される製剤には、計画されたナノ粒子、リポソーム調製物、有効成分を含む再密封された赤血球、及び免疫原性ベースの製剤が含まれる。
【0279】
本発明の医薬組成物は、単位用量として又は複数の単位用量として、バルクで調製、包装、又は販売することができる。本明細書で使用される「単位用量」は、所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別の量である。有効成分の量は、一般に被験体に投与される有効成分の投与量、又はそのような投与量の便利な割合、例えば、そのような投与量の半分又は3分の1に等しい。
【0280】
本発明の医薬組成物中の有効成分、医薬的に許容し得る担体、及び任意の追加の成分の相対量は、治療される被験体の本体、サイズ、及び状態に応じて、さらに組成物が投与される経路に応じて変化する。例として、組成物は0.1%~100%(w/w)の有効成分を含み得る。
【0281】
有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1種以上の追加の医薬活性物質をさらに含み得る。
【0282】
本発明の医薬組成物の制御放出又は徐放性製剤は、従来の技術を使用して作成することができる。
【0283】
本明細書で使用される医薬組成物の「非経口投与」は、被験体の組織の物理的破裂を特徴とする任意の投与経路、及び組織の破裂を介する医薬組成物の任意の投与経路を含む。従って、非経口投与には、特に限定されるものではないが、組成物の注射による、外科的切開による組成物の適用による、組織貫通性の非外科的創傷による組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が含まれる。いくつかの実施態様において非経口投与は、特に限定されるものではないが、眼内、硝子体内、皮下、腹腔内、子宮内送達、筋肉内、皮内、胸骨内注射、腫瘍内、静脈内、側脳室内投与、及び腎臓の透析注入技術を含む。
【0284】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、無菌水又は無菌等張食塩水などの医薬的に許容し得る担体と組み合わされた有効成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、又は販売することができる。注射可能な製剤は、防腐剤を含むアンプル又は複数回投与容器などの単位剤形で調製、包装、又は販売することができる。非経口投与用の製剤には、特に限定されるものではないが、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、及び移植可能な徐放性又は生分解性の製剤が含まれる。そのような製剤は、特に限定されるものではないが、懸濁剤、安定剤、又は分散剤を含む1種以上の追加の成分をさらに含み得る。非経口投与用の製剤の1つの実施態様において、有効成分は、適切なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で復元するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供された後、復元された組成物が非経口投与される。
【0285】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で、調製、包装、又は販売することができる。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従って調製することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加の成分を含むことができる。このような無菌の注射可能な製剤は、例えば水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒を使用して調製することができる。他の許容し得る希釈剤及び溶媒には、特に限定されるものではないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油、例えば合成モノグリセリド又はジグリセリドが含まれる。有用な他の非経口投与可能な製剤には、有効成分を微結晶形態で、リポソーム調製物で、又は生分解性ポリマー系の成分として含むものが含まれる。徐放又は移植用の組成物は、医薬的に許容し得るポリマー又は疎水性材料、例えばエマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、又は難溶性塩を含み得る。
【0286】
本発明の医薬組成物は、頬側口腔を介する肺投与に適した製剤で調製、包装、又は販売することができる。そのような製剤は乾燥粒子を含むことができ、この乾燥粒子は有効成分を含み、約0.5~約7ナノメートル、好ましくは約1~約6ナノメートルの範囲の直径を有する。そのような組成物は、粉末を分散させるために噴射剤の流れを向けることができる乾燥粉末貯蔵器を含む装置を使用して、又は密封された容器内の低沸点噴射剤に溶解又は懸濁された有効成分を含む装置などの自己噴射溶媒/粉末分配容器を使用して、投与するための乾燥粉末の形態であることが便利である。好ましくは、そのような粉末は、粒子の重量の少なくとも98%が0.5ナノメートルを超える直径を有し、粒子の数の少なくとも95%が7ナノメートル未満の直径を有する粒子を含む。より好ましくは、粒子の重量の少なくとも95重量%が1ナノメートルを超える直径を有し、粒子の数の少なくとも90%が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、好ましくは、糖などの固体微粉末希釈剤を含み、単位剤形で便利に提供される。
【0287】
低沸点噴射剤は、一般に大気圧で65°F未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般に噴射剤は組成物の50~99.9%(w/w)を構成することができ、有効成分は組成物の0.1~20%(w/w)を構成することができる。噴射剤はさらに、液体非イオン性又は固体陰イオン性界面活性物質、又は固体希釈剤(好ましくは、有効成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有する)などの追加の成分を含み得る。
【0288】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、無菌水又は無菌等張食塩水などの医薬的に許容し得る担体と組み合わされた有効成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、又は販売することができる。注射可能な製剤は、防腐剤を含むアンプル又は複数回投与容器などの単位剤形で調製、包装、又は販売することができる。非経口投与用の製剤には、特に限定されるものではないが、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルジョン、ペースト、及び移植可能な徐放性又は生分解性の製剤が含まれる。そのような製剤は、特に限定されるものではないが、懸濁剤、安定剤、又は分散剤を含む1種以上の追加の成分をさらに含み得る。非経口投与用の製剤の1つの実施態様において、有効成分は、適切なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で復元するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供された後、復元された組成物が非経口投与される。
【0289】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で、調製、包装、又は販売することができる。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従って調製することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加の成分を含むことができる。このような無菌の注射可能な製剤は、例えば水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒を使用して調製することができる。他の許容し得る希釈剤及び溶媒には、特に限定されるものではないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油、例えば合成モノグリセリド又はジグリセリドが含まれる。有用な他の非経口投与可能な製剤には、有効成分を微結晶形態で、リポソーム調製物で、又は生分解性ポリマー系の成分として含むものが含まれる。徐放又は移植用の組成物は、医薬的に許容し得るポリマー又は疎水性材料、例えばエマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、又は難溶性塩を含み得る。
【0290】
本明細書で使用される「追加の成分」には、特に限定されるものではないが、以下のうちの1つ以上が含まれる:賦形剤;界面活性物質;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味料;香味剤;着色剤;防腐剤;ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶媒;懸濁剤;分散剤又は湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;及び医薬的に許容し得る高分子又は疎水性材料。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「追加の成分」は、当技術分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (1985, Genaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0291】
本発明の治療用化合物又は組成物は、疾患又は障害を患っているか又は発症するリスクがある(又は発症しやすい)被験体に、予防的に(すなわち、疾患又は障害を予防するために)又は治療的に(すなわち、疾患又は障害を治療するために)投与することができる。このような被験体は、標準的な臨床的方法を使用して特定することができる。本発明の文脈において、予防的投与は、疾患又は障害が予防されるかあるいはその進行が遅延されるように、疾患の明白な臨床症状が現れる前に行われる。医学分野の文脈において、「予防する」という用語は、疾患による死亡率又は罹患率の負担を軽減するあらゆる活動を包含する。予防は、一次、二次、三次の予防レベルで行われ得る。一次予防は病気の発症を回避し、二次及び三次レベルの予防は、疾患の進行と症状の出現を防ぎ、並びに機能を回復することにより、すでに確立された疾患の悪影響を減らし、疾患に関連する合併症を減らすことを目的とした活動を含む。
【0292】
送達方法
1つの態様において、本発明は、CARをコードするmRNA分子、核酸分子、治療薬、又はこれらの任意の組み合わせを目的の標的に送達するための方法を提供する。そのような標的の例には、特に限定されるものではないが、免疫細胞、T細胞、常在T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、癌性細胞、疾患又は障害に関連する細胞、疾患又は疾患に関連する組織、脳組織、中枢神経系組織、肺組織、頂端表面組織、上皮細胞、内皮細胞、肝臓組織、腸組織、結腸組織、小腸組織、大腸組織、糞便、骨髄、マクロファージ、脾臓組織、筋肉組織、関節組織、腫瘍細胞、疾患組織、リンパ節組織、リンパ循環、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0293】
様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本発明の少なくとも1種のLNP又は組成物を投与することを含む。例えばいくつかの実施態様において、本発明は、CARをコードするmRNA分子を送達する本発明のLNP又はその組成物、核酸分子、治療薬、又はこれらの任意の組み合わせを、細胞に送達するための方法を含む。そのような細胞の例には、特に限定されるものではないが、T細胞、常在T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、癌性細胞、疾患又は障害に関連する細胞、上皮細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0294】
1つの態様において、本発明はまた、CARをコードするmRNA分子を、それを必要とする被験体に送達するための方法を開示する。様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本発明の少なくとも1種のLNP又はその組成物を、被験体に投与することを含む。
【0295】
1つの態様において、本発明はまた、CARをコードするmRNA分子、並びに核酸分子、アジュバント、及び/又は治療薬を、それを必要とする被験体に送達するための方法を開示する。様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本発明の少なくとも1種のLNP又はその組成物を対象に投与することを含む。様々な実施態様において、この方法は、mRNA分子並びに核酸分子、アジュバント、及び/又は治療薬を、被験体の細胞、組織、又はその両方に送達する本発明のLNP又はその組成物を含む。
【0296】
1つの態様において、この方法は遺伝子送達法である。
【0297】
1つの実施態様において、この方法は、本発明のLNP組成物を使用する一過性トランスフェクションの形態として、目的の標的(例えば細胞、組織など)に導入することができる本明細書に記載のIVT RNAを含む。
【0298】
1つの実施態様において、この方法は、組成物の単回投与を含む。1つの実施態様において、この方法は、組成物の複数回投与を含む。
【0299】
いくつかの実施態様において、組成物は、皮内送達経路、皮下送達経路、筋肉内送達経路、脳室内送達経路、髄腔内送達経路、経口送達経路、静脈内送達経路、気管内送達経路、腹腔内送達経路、子宮内送達経路、又はこれらの任意の組み合わせによって投与される。
【0300】
いくつかの実施態様において、本発明の少なくとも1種のLNP又はその組成物の治療有効量を投与することを含む、目的の標的(例えば細胞、組織など)への、CARをコードするmRNA分子、核酸分子、治療薬、又はこれらの任意の組み合わせの送達のための方法は、多くの異なる方法、例えば商業的に入手可能な方法のいずれかと同時に行われ、この商業的に入手可能な方法には、特に限定されるものではないが、電気穿孔法(Amaxa Nucleofector-II (Amaxa Biosystems, Cologne, Germany))、ECM830(BTX)(Harvard Instruments, Boston, Mass.)、又はGene Pulser II(BioRad, Denver, Colo.)、マルチポレーター(Multiporator)(Eppendort, Hamburg Germany)、TransIT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキット(Mirus, Madison WI)、リポフェクションを使用するカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマー封入、ペプチド媒介トランスフェクション、又は「遺伝子銃」(例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)を参照)などの微粒子銃送達システムが含まれる。
【0301】
特定の例において、コードするmRNAを送達することによってタンパク質を発現させることは、タンパク質、プラスミドDNA、又はウイルスベクターを使用する方法に比べて多くの利点がある。mRNAトランスフェクション中、所望のタンパク質のコード配列が細胞に送達される唯一の物質であるため、プラスミド骨格、ウイルス遺伝子、及びウイルスタンパク質に関連するすべての副作用を回避できる。さらに重要なことに、DNAベース及びウイルスベースのベクターとは異なり、mRNAはゲノムに組み込まれるリスクがなく、タンパク質の生産はmRNAの送達直後に開始される。例えば、コードするmRNAのインビボ注入から15~30分以内に、高レベルの循環タンパク質が測定されている。特定の実施態様において、タンパク質ではなくmRNAを使用することにも多くの利点がある。循環中のタンパク質の半減期は短いことが多いため、タンパク質治療には頻繁な投与が必要であるが、mRNAは数日間の継続的なタンパク質生産のテンプレートを提供する。タンパク質の精製には問題があり、悪影響を引き起こす凝集体やその他の不純物が含まれている可能性がある(Kromminga and Schellekens, 2005, Ann NY Acad Sci 1050:257-265)。
【0302】
宿主細胞中のmRNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを実施することができる。そのようなアッセイには、例えば、当業者に公知の「分子生物学的」アッセイ、例えばノーザンブロッティング及びRT-PCR;例えば、免疫原性手段(ELISA及びウエスタンブロット)によって又は本明細書に記載のアッセイによって、本発明の範囲内にある薬剤を同定して、特定のペプチドの有無を検出するなどの「生化学的」アッセイが含まれる。
【0303】
治療法
本発明は、CARをコードする1種以上のmRNA分子を含む本発明の少なくとも1種のLNP又はその組成物の有効量を投与することを含む、被験体において適応免疫応答を誘導する方法を提供する。様々な態様において、本発明は、1種以上のLNPとCARをコードする1種以上のmRNA分子とを含む少なくとも1種のLNP組成物の有効量を投与することを含む、被験体において適応免疫応答を誘導する方法を提供する。いくつかの実施態様において、組成物は、核酸分子、治療薬、又はこれらの任意の組合わせをさらに含む。いくつかの実施態様において、核酸分子は1種以上の抗原をコードする。
【0304】
1つの実施態様において、この方法は、抗原に関連する感染症、癌、又は疾患若しくは障害に対する免疫を、被験体に提供する。従って本発明は、抗原に関連する感染症、癌、又は疾患若しくは障害を治療又は予防する方法を提供する。例示的な抗原及び関連する感染症、疾患、及び腫瘍は、本明細書の他の場所に記載されている。
【0305】
例えば、この方法は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、関節炎、心臓病、心血管疾患、神経障害又は疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、胎児性疾患、胎児の発育に影響を与える遺伝性疾患、又は癌を、投与される組成物の抗原のタイプに応じて、治療又は予防するために使用され得る。
【0306】
以下は、開示された方法及び組成物によって治療することができる癌の非限定的な例である:急性リンパ芽球性;急性骨髄性白血病;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児期;虫垂癌;基底細胞癌;胆管癌、肝外;膀胱癌;骨癌;骨肉腫及び悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫、小児期;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児期;脳腫瘍、中枢神経系の異型奇形/ラブドイド腫瘍、小児期;中枢神経系胚性腫瘍;小脳星状細胞腫;脳星状細胞腫/悪性神経膠腫;頭蓋咽頭腫;上胚葉腫;上衣腫;髄芽腫;髄上皮腫;中分化の松果体実質腫瘍;テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体芽細胞;視覚経路及び視床下部神経膠腫;脳及び脊髄腫瘍;乳癌;気管支腫瘍;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍;カルチノイド腫瘍、消化管;中枢神経系の異型奇形/ラブドイド腫瘍;中枢神経系胚性腫瘍;中枢神経系リンパ腫;小脳星状細胞腫大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児期;子宮頸癌;脊索腫、小児期;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;結腸癌;結腸直腸癌;頭蓋咽頭腫;皮膚T細胞リンパ腫;食道癌;ユーイングファミリーの腫瘍;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼の癌、眼内黒色腫;眼の癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃(胃)癌;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(gist);胚細胞腫瘍、頭蓋外;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫;神経膠腫、小児脳幹;神経膠腫、小児脳星状細胞腫;神経膠腫、小児視覚経路及び視床下部;有毛細胞白血病;頭頸部癌;肝細胞(肝臓)癌;組織球症、ランゲルハンス細胞;ホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部及び視覚経路神経膠腫;眼内黒色腫;膵島細胞腫瘍;腎臓(腎細胞)癌;ランゲルハンス細胞組織球症;喉頭癌;白血病、急性リンパ芽球性;白血病、急性骨髄性;白血病、慢性リンパ性;白血病、慢性骨髄性;白血病、有毛細胞;唇癌及び口腔癌;肝臓癌;肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ腫、エイズ関連;リンパ腫、バーキット;リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、非ホジキンリンパ腫;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンストレーム;骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫;髄芽腫;黒色腫;黒色腫、眼内(眼);メルケル細胞癌;中皮腫;潜在性原発を伴う転移性頸部扁平上皮癌;口腔癌;多発性内分泌腺腫症症候群、(小児期);多発性骨髄腫/形質細胞新生物;真菌症;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔及び副鼻腔癌;鼻咽頭癌;神経芽細胞腫;非小細胞肺癌;口腔癌;口腔癌;中咽頭癌;骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣の低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、膵島細胞腫瘍;パピローマ症;副甲状腺癌;陰茎癌;咽頭癌;褐色細胞腫;中分化の松果体実質腫瘍;松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎盂及び尿管、移行上皮癌;第15染色体上のnut遺伝子が関与する気道癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺癌;肉腫、ユーイング肉腫;肉腫、カポジ;肉腫、軟部組織;肉腫、子宮;セザリー症候群;皮膚癌(非黒色腫);皮膚癌(黒色腫);皮膚癌、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟部組織肉腫;扁平上皮癌、潜在性原発性、転移性を伴う頸部扁平上皮癌;胃(胃)癌;テント上原始神経外胚葉性腫瘍;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;咽喉癌;胸腺腫及び胸腺癌;甲状腺癌;腎盂及び尿管の移行上皮癌;絨毛性腫瘍、妊娠;尿道癌;子宮癌、子宮内膜;子宮肉腫;膣癌;外陰癌;ワルデンストレームマクログロブリン血症;及びウィルムス腫瘍。
【0307】
1つの実施態様において、組成物は、感染症、疾患、心臓病、心血管疾患、神経障害又は疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、又は抗原に関連する癌を有する被験体に投与される。1つの実施態様において、組成物は、感染症、疾患、心臓病、心血管疾患、神経障害又は疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、又は抗原に関連する癌を発症するリスクのある被験体に投与される。例えば、組成物は、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などと接触するリスクがある被験体に投与することができる。1つの実施態様において、組成物は、遺伝的要因、環境的要因などにより、癌を発症する可能性が高い被験体に投与される。
【0308】
いくつかの実施態様において、組成物は、皮内送達経路、皮下送達経路、筋肉内送達経路、脳室内送達経路、髄腔内送達経路、経口送達経路、静脈内送達経路、気管内送達経路、腹腔内送達経路、子宮内送達経路、又はこれらの任意の組み合わせによって投与される。。
【0309】
別の実施態様において、抗原をコードするRNAを含む本発明の組成物は、同じ配列を有する未修飾のインビトロで合成されたRNA分子よりも有意に適応性の高い免疫応答を誘導する。別の実施態様において、組成物は、その未修飾の対応物よりも2倍大きい適応免疫応答を示す。別の実施態様において、適応免疫応答は3倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は5倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は7倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は10倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は15倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は20倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は50倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は100倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は200倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は500倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は1000倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は2000倍上昇している。別の実施態様において、適応免疫応答は、別の倍数の差だけ上昇している。
【0310】
別の実施態様において、「有意により大きな適応免疫応答を誘導する」とは、適応免疫応答の検出可能な上昇を指す。別の実施態様において、この用語は、適応免疫応答の倍数の上昇を指す(例えば、上に列挙された倍数の上昇の1つ)。別の実施態様において、この用語は、RNAを含む本発明の組成物が、同じ種の単離されたRNA分子よりも低い用量又は頻度で投与しても、有効な適応免疫応答を誘導することができることを指す。別の実施態様において、この上昇は、RNAを含む本発明の組成物が、単回投与の使用により投与して、有効な適応免疫応答を誘導することができるようなものである。
【0311】
別の実施態様において、RNAを含む本発明の組成物は、同じ配列を有する単離されたインビトロで合成されたRNA分子よりも有意に小さい自然免疫原性を示す。別の実施態様において、RNAを含む本発明の組成物は、その単離された対応物より2倍小さい自然免疫応答を示す。別の実施態様において、自然免疫原性は3倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は、5倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は7倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は10倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は15倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は20倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は50倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は100倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は200倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は500倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は1000低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は2000倍低下している。別の実施態様において、自然免疫原性は、別の倍数の差だけ低下している。
【0312】
別の実施態様において、「有意に小さい自然免疫原性を示す」とは、自然免疫原性の検出可能な低下を指す。別の実施態様において、この用語は、自然免疫原性の倍数の減少を指す(例えば、上に列挙された倍数の低下の1つ)。別の実施態様において、この用語は、RNAを含む本発明の組成物の有効量が、検出可能な自然免疫応答を誘発することなく、投与され得るような低下を指す。別の実施態様において、この用語は、RNAを含む本発明の組成物が、組換えタンパク質の産生を検出可能に低下させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、繰り返し投与され得るような低下を指す。別の実施態様において、低下は、RNAを含む本発明の組成物が、組換えタンパク質の検出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、繰り返し投与され得るようなものである。
【0313】
1つの実施態様において、本発明は一部は、それを必要とする被験体における疾患又は障害を予防又は治療する方法に関連する。様々な実施態様において、この方法は、治療有効量の本発明の少なくとも1種のLNP又はその組成物を被験体に投与することを含む。いくつかの実施態様において、組成物は、核酸分子、治療薬、又はこれらの組み合わせを目的の標的(例えば細胞、組織など)に送達する。
【0314】
1つの実施態様において、この方法は、1種以上の抗原及び1種以上のアジュバントをコードする1種以上の核酸分子を含む組成物を投与することを含む。1つの実施態様において、この方法は、1種以上の抗原をコードする第1の核酸分子と1種以上のアジュバントをコードする第2の核酸分子とを含む組成物を投与することを含む。1つの実施態様において、この方法は、1種以上の抗原をコードする1種以上の核酸分子を含む第1の組成物を投与し、1種以上のアジュバントをコードする1種以上の核酸分子を含む第2の組成物を投与することを含む。
【0315】
特定の実施態様において、この方法は、複数の抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードする複数の核酸分子を被験体に投与することを含む。
【0316】
特定の実施態様において、本発明の方法は、投与後少なくとも数日間、本明細書に記載される抗原又はアジュバントの持続的発現を可能にする。しかしながら、特定の実施態様において、核酸が被験体ゲノムに組み込まれていないため、特定の実施態様においてこの方法は一過性の発現も提供する。
【0317】
特定の実施態様において、この方法は、本明細書に記載の抗原又はアジュバントの安定した発現を提供するRNAを投与することを含む。いくつかの実施態様において、RNAの投与は、自然免疫応答をほとんど又は全く引き起こすことなく、有効な適応免疫応答を誘導する。
【0318】
治療方法における本発明の組成物の投与は、当技術分野で公知の方法を使用していくつかの異なる方法で達成することができる。1つの実施態様において、本発明の方法は、例えば経腸又は非経口投与を含む被験体の全身投与を含む。特定の実施態様において、この方法は組成物の皮内送達を含む。別の実施態様において、この方法は組成物の静脈内送達を含む。いくつかの実施態様において、この方法は組成物の筋肉内送達を含む。1つの実施態様において、この方法は組成物の皮下送達を含む。1つの実施態様において、この方法は組成物の吸入を含む。1つの実施態様において、この方法は組成物の鼻腔内送達を含む。
【0319】
本発明の組成物は、単独で、又は別の薬剤と組み合わせて、被験体に投与することができることが理解されよう。
【0320】
従って、本発明の治療方法及び予防方法は、本発明の方法を実施するために、本明細書に記載の抗原、アジュバント、又はこれらの組み合わせをコードする医薬組成物の使用を包含する。本発明を実施するのに有用な医薬組成物は、ng/kg/日~100mg/kg/日の用量を送達するように投与することができる。1つの実施態様において、本発明は、哺乳動物において本発明の化合物の濃度が10nM~10μMになる用量の投与を想定している。
【0321】
典型的には、本発明の方法で哺乳動物、好ましくはヒトに投与され得る用量は、哺乳動物の体重1キログラムあたり0.01μg~約50mgの量の範囲であり、投与される正確な用量は、特に限定されるものではないが、哺乳動物の種類及び治療される病状の種類、哺乳動物の年齢及び投与経路を含む多くの要因により変動するであろう。好ましくは、化合物の投与量は、哺乳動物の体重1キログラムあたり約0.1μgから約10mgまで変動するであろう。より好ましくは、投与量は、哺乳動物の体重1キログラムあたり約1μgから約1mgまで変動するであろう。
【0322】
組成物は、哺乳動物に1日数回の頻度で投与するか、又はより少ない頻度で、例えば1日1回、週1回、2週間に1回、月に1回、又はさらに少ない頻度で、例えば数か月ごとに1回、又は1年に1回以下で投与され得る。投与の頻度は、当業者には容易に明らかであり、特に限定されるものではないが、治療される疾患の種類と重症度、哺乳動物の種類と年齢などであるの任意の数の要因に依存するであろう。
【0323】
特定の実施態様において、本発明の組成物又はワクチンの投与は、単回投与によって実施され得るか、又は複数回投与によって追加免疫され得る。
【0324】
1つの実施態様において、本発明は、本明細書に記載の1種以上の抗原又はアジュバントをコードする1つ以上の組成物を投与することを含む方法を含む。特定の実施態様において、この方法は相加効果を有し、組み合わせを投与することの全体的な効果は、各抗原又はアジュバントを投与することの効果の合計にほぼ等しい。別の実施態様において、この方法は相乗効果を有し、組み合わせを投与することの全体的な効果は、各抗原又はアジュバントを投与することの効果の合計よりも大きい。
【0325】
1つの実施態様において、この方法は、例えば皮内投与を含む、被験体への組成物の全身投与を含む。特定の実施態様において、この方法は、被験体に複数回の投与を行うことを含む。別の実施態様において、この方法は、組成物の単回投与を行うことを含み、ここで、単回投与は、適応免疫応答を誘導するのに有効である。
【0326】
実験例
本発明は、以下の実験例を参照してさらに詳細に説明される。これらの例は、例示のみを目的として提供されており、特に明記されていない限り、限定することを意図したものではない。従って本発明は、決して以下の例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるすべての変更態様を包含すると解釈されるべきである。
【0327】
当業者は、さらなる説明なしで、前述の説明及び以下の例示的実施例を使用して、本発明を作成及び利用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の好適な実施態様を具体的に指摘するものであり、本開示の残りの部分を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0328】
実施例1:mRNAベースのT細胞工学操作のためのイオン化可能脂質ナノ粒子
脂質ベース及びポリマーベースの材料で構成されるナノ粒子(NP)ベースの送達システムは、機械的及びウイルス細胞工学手法を使用して、直面する課題を克服するための有望な手段を提供する(DiTommaso T et al., 2018, PNAS, 115; Hajj KA et al., 2017, Nat Rev Mater, 2; McKinlay CJ et al., 2018, PNAS, 115:E5859-E5866, Mukalel AJ et al., 2019, Cancer Lett, 458:102-112)。NPには、核酸荷物を安定化し、細胞内送達を補助し、毒性を軽減する能力を含む多くの潜在的な利点がある(Pardi N et al., 2018, Nat Rev Drug Discov, 17:261-279; Fornaguera C et al., 2018, Adv Healthc Mater, 7:1-11; Zhang R et al., 2018, J Control Release, 292:256-276; Islam MA et al., 2015, Biomater Sci, 1519-1533)。細胞へのmRNA送達のためのポリマーベースのNPについていくつかの研究が行われ、EPと比較して毒性が低下するなどの有望な結果が得られている(CJ et al., 2018, PNAS, 115:E5859-E5866; Olden BR et al., 2018, J Control Release, 282:140-147; Moffett HF et al., 2017, Nat Commun, 8:389; Demoulins T et al., 2016, Biol Med, 12:711-722; Anderson DG et al., 2003, Angew Chem Int Ed Engl, 42:3153-3158)。
【0329】
しかし、イオン化可能脂質ナノ粒子(LNP)送達システムは、Alnylam's Onpattro(Pardi N et al., 2018, Nat Rev Drug Discov, 17:261-279; Garber K et al., 2018, Nat Biotechnol, 36:777)の承認を得ており、RNA送達の文脈でポリマーよりも臨床的に進歩している。さらに、LNPはイオン化可能脂質コアを有し、これは生理学的に適切なpHで中性を維持するが、エンドソームなどの酸性環境で電荷を蓄積して、最終的にエンドソームの脱出を助け、強力な細胞内核酸送達を引き起こす(Hajj KA et al., 2017, Nat Rev Mater, 2; Kauffman KJ et al., 2016, J Control Release, 240:227-234; Oberli MA et al., 2017, Nano Lett, 17:1326-1335; Fan YN et al., 2018, Biomater Sci Royal Society of Chemistry, 6:3009-3018)。これは、免疫細胞を含むさまざまな細胞タイプで検証されており、毒性は最小限に抑えられており、リンパ球送達に関する過去の研究では、LNPが市販のリポフェクタミンよりも有効にmRNAを送達することが明らかになった(Hajj KA et al., 2017, Nat Rev Mater, 2; McKinlay CJ et al., 2018, PNAS, 115:E5859-E5866; Zhang R et al., 2018, J Control Release, 292:256-276; Kauffman KJ et al., 2016, J Control Release, 240:227-234; Oberli MA et al., 2017, Nano Lett, 17:1326-1335; Love KT et al., 2010, Proc Natl Acad Sci, 107:9915-9915)。
【0330】
さらに、LNPの容易に変更可能な組成により、物理化学的特性を調整して特定の細胞型への取り込みを最大化でき、イオン化可能な特性により、負に荷電した核酸荷物との静電的な複合体形成を可能にする(Hajj KA et al., 2017, Nat Rev Mater, 2; McKinlay CJ et al., 2018, PNAS, 115:E5859-E5866; Zhang R et al., 2018, J Control Release, 292:256-276; Kauffman KJ et al., 2016, J Control Release, 240:227-234; Love KT et al., 2010, Proc Natl Acad Sci, 107:9915-9915; Kauffman KJ et al., 2015, Nano Lett, 15:7300-7306)。これらの特性により、LNPは、ヒトCAR T細胞工学操作用のLNPプラットフォームの開発に関するこの研究にとって理想的なプラットフォームになっている。
【0331】
本明細書に記載の研究は、新規のイオン化可能脂質C14-4を利用し、C14-4脂質ナノ粒子(LNP)を生成してT細胞をトランスフェクトする。データは、C14-4 LNPを使用すると、EPと比較してより低い毒性で、同じ効力のT細胞トランスフェクションが得られることを示している。さらに、C14-4 LNPを用いて作成されたCAR T細胞は、癌細胞の死滅に関して、EPで生成されたCAR T細胞と同じように機能した。C14-4 LNPのさらなる利点には、患者のT細胞の採取と再注入を回避するために、インビボのT細胞工学操作に適用できる可能性があること、及び(C14-4 LNP製剤パラメーターを変更することによって)さらに最適化されて、mRNA送達を強化できる能力がすでに示されていることが含まれる。
【0332】
C14-4 LNPは、CAR T細胞の生成などの臨床製造環境や研究環境の両方で、T細胞を工学操作するための新しい方法を提供することができる。C14-4は、リポフェクタミン(細胞ベースの研究におけるゴールドスタンダードのトランスフェクション試薬)と比較してmRNA送達を増強することができたため、CAR適用を超えてT細胞を研究するために使用することができる。
【0333】
より具体的には、24個のLNPの多様なライブラリーが生成され(図2A)、特性評価され(図2B)、不死化ヒトT細胞株であるジャーカット細胞へのルシフェラーゼmRNA送達についてスクリーニングされた。イオン化可能脂質は、最初にマイケル付加化学によって合成され、ここで、ポリアミンコアはさまざまな長さの過剰のエポキシド末端アルキル鎖と反応された(図2C)。ここで、脂質はT細胞へのmRNA送達について評価された。
【0334】
LNPを調製するために、イオン化可能脂質をエタノール中で他の3つの賦形剤と組み合わせた:(i)LNPの安定性と膜融合のためのコレステロール、(ii)LNPの二重層構造を強化し、エンドソーム脱出を促進する1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び(iii)凝集と非特異的エンドサイトーシスを低減するC14-PEG(Granot Y et al., 2017, Semin Immunol, 34:68-77; Varkouhi AK et al., 2011, J Control Release, 151:220-228; Mui BL et al., 2013, Mol Ther Acids, 2:1-8)。次に、このエタノール相をマイクロ流体デバイスで水相mRNAと混合した(図1)。これらの賦形剤とこれらのモル比は、mRNA送達用に以前に最適化されたLNP製剤に基づいて選択され、これは、一般に(i)リン脂質成分としてのDOPE、(ii)モルパーセントの低下したイオン化可能脂質、及び(iii)濃度が上昇したコレステロール及び脂質-PEG、を利用した(Kauffman KJ et al., 2015, Nano Lett, 15: 300-7306; Ball RL e al., 2018, Nano Lett, 18:3814-3822)。賦形剤のモル比の変化が物理化学的特性と最終的にLNPの強力な送達に影響を与えるため、成分の比はこれらの実験を通じて一定に保たれた(Kauffman KJ et al., 2015, Nano Lett, 15: 300-7306; Ball RL e al., 2018, Nano Lett, 18:3814-3822; Cheng Q et al., 2018, Adv Mater, 30:1805308)。
【0335】
機能的mRNAを送達するLNPの能力を評価するために、コード化されたレポータータンパク質としてルシフェラーゼを選択した。このスクリーニングにより、一般的に使用されるトランスフェクション試薬であるリポフェクタミンと比較して、mRNA送達を強化する7つのLNP製剤が明らかになった(Cardarelli F et al., 2016, Sci Reports, 6:25879)。さらに、ジャーカット細胞(不死化ヒトT細胞)へのmRNA送達について24個のLNPをスクリーニングすると、最高のLNP製剤であるC14-4 LNPが、その強力な送達と低毒性のためにさらなる開発のために選択された。次に、C14-4 LNPを初代T細胞のトランスフェクション用に最適化すると、飽和イオン化脂質の精製が、粗生成物よりも改善されたmRNA送達が得られることが示された。プラットフォームの翻訳可能性を例示するために、最適化されたC14-4 LNPを使用して、CAR mRNAを封入し、CAR T細胞を生成した(図1C)。EPベースのmRNA送達と比較して、C14-4 LNPは、処理されたT細胞で毒性が少なく、トランスフェクトされたT細胞で、同様の量の表面CAR発現をもたらした。ALL細胞との共培養アッセイでは、LNPで生成されたCAR T細胞は、EPで生成されたCAR T細胞と同じ強力な癌細胞死滅能力を示した。従って、LNPは、CAR T細胞のmRNAベースのエクスビボ工学操作の代替戦略として検証された。
【0336】
このデータに基づいて、C14-4 LNPは、CAR T細胞の生成などの臨床製造環境や研究環境の両方で、T細胞を工学操作するための新しい方法を提供することができる。C14-4は、リポフェクタミン(細胞ベースの研究におけるゴールドスタンダードのトランスフェクション試薬)と比較してmRNA送達を増強することができたため、CAR適用を超えてT細胞を研究するために使用することができる。その後の研究では、C14-4 LNP製剤を最適化して、T細胞及びT細胞株へのmRNA送達をさらに強化するための有望な結果が示されている。C14-4 LNPは、CD-19 CAR mRNAを初代ヒトT細胞に、より毒性の低いEPと同程度に効果的に送達することも示された。
【0337】
LNPライブラリーの特性評価
この試験では、イオン化可能脂質ナノ粒子(LNP)を、T細胞へのmRNA送達について調べた。LNPが選択されたのは、これらが、インビボ及びエクスビボで広範囲の細胞及び組織標的に対して高い効力と低い毒性で、mRNAを細胞内に送達することが示されているためである。最近では、LNPは広範囲の免疫細胞タイプへの核酸送達に利用されている(Berdeja JG et al., 2017, J Clin Oncol, 35; Oberli MA et al., 2017, Nano Lett, 17:1326-1335; Love KT et al., 2010, Proc Natl Acad Sci, 107:9915-9915; Kauffman KJ et al., 2015, Nano Lett, 15:7300-7306; Midoux P et al., 2014, Expert Rev Vaccines, 14:221-234; Lokugamage MP et al., 2019, Adv Mater, 1902251:1-8)。
【0338】
T細胞へのmRNA送達を具体的に調べるために、最初にマイケル付加化学を介してイオン化可能脂質材料を合成して、24個の異なるLNP製剤のライブラリーを生成し、ここで、ポリアミンコアを過剰の様々な長さのエポキシ末端アルキル鎖と反応させた(図2図5)。このライブラリーの合成された特定のイオン化可能脂質は、以前にLNPに調製され、免疫細胞にsiRNAとmRNAを送達することが示されているイオン化可能脂質の構造類似体である(Oberli MA et al., 2017, Nano Lett, 17:1326-1335; Love KT et al., 2010, Proc Natl Acad Sci, 107:9915-9915; Leuschner F et al., 2012, Nat Biotechnol, 29:1005-1010)。
【0339】
脂質は、広範囲の細胞タイプではなく、具体的にT細胞へのmRNA送達について評価された。LNPを調製するために、イオン化可能脂質をエタノール中で他の3つの賦形剤と組み合わせた:(i)LNPの安定性と膜融合のためのコレステロール、(ii)LNPの二重層構造を強化し、エンドソーム脱出を促進するDOPE、及び(iii)凝集と非特異的エンドサイトーシスを低減するC14-PEG(Granot Y et al., 2017, Semin Immunol, 34:68-77; Varkouhi AK et al., 2011, J Control Release, 151:220-228; Mui BL et al., 2013, Mol Ther Acids, 2:1-8)。次に、このエタノール相をマイクロ流体デバイスで水相mRNAと混合した(図1A)。これらの賦形剤とこれらのモル比は、mRNA送達用に以前に最適化されたLNP製剤に基づいて選択され、これは、一般に(i)リン脂質成分としてのDOPE、(ii)モルパーセントの低下したイオン化可能脂質、及び(iii)濃度が上昇したコレステロール及び脂質-PEG、を利用した(Kauffman KJ et al., 2015, Nano Lett, 15: 300-7306; Ball RL e al., 2018, Nano Lett, 18:3814-3822)。賦形剤のモル比の変化が物理化学的特性と最終的にLNPの強力な送達に影響を与えるため、成分の比はこれらの実験を通じて一定に保たれた(Kauffman KJ et al., 2015, Nano Lett, 15: 300-7306; Ball RL e al., 2018, Nano Lett, 18:3814-3822; Cheng Q et al., 2018, Adv Mater, 30:1805308)。
【0340】
次に、得られたLNPを、動的光散乱(DLS)とA260吸光度測定を使用して、サイズとmRNA濃度について特性評価した。z平均測定値として報告されるLNPの直径は、51.05~97.01nmの範囲で、PDIは0.3未満であった(図7)。A260吸光度として測定されたmRNA濃度は、33.3~48.3ng/μLの範囲のLNP製剤全体で一貫性を示した。まとめるとこれらの結果は、T細胞送達のためのこの試験で使用されたmRNAを封入する24個の異なるLNP製剤の調製を確認した。
【0341】
ジャーカット細胞へのmRNA送達のためのLNPのスクリーニング
機能的mRNAを送達するLNPの能力を評価するために、コード化されたレポータータンパク質としてルシフェラーゼを選択した。ルシフェリンの添加後、mRNAから翻訳されたルシフェラーゼタンパク質のみが反応して発光シグナルを生成し、機能的なmRNA送達と相関する容易に検出可能な出力を生成する(Hajj KA et al., 2019, Small, 15:1-7)。これらの実験で使用されたルシフェラーゼmRNAは、N1-メチル-シュードU及び5-メチル-C修飾を利用し、これらは、mRNAの翻訳を強化し、LNP内にうまく封入されることが示されている(Pardi N et al., 2015, J Control Release, 217:345-351; Svitkin YV et al., 2017, Nucelic Acids Res, 45:6023-6036; Trixl L et al., 2018, WIREs RNA, 10:1-17)。これらの修飾は、LNP内のmRNA封入、mRNAの送達、及び全体的な免疫原性を変化させる可能性があるため、これらの特定のLNP送達ビヒクルについて最適化された修飾についてのさらなる試験は、将来の研究で検討することができる(Pardi N et al., 2015, J Control Release, 217:345-351; Zhang R et al., 2018, J Control Release, 292:256-276; Kariko K et al., 2005, Immunity, 23:165-175; Li J et al., 2017, ACS Nano, 11:2531-2544; Shen X et al., 2018, Nucleic Acids Res, 46:1584-1600; Sahin U et al., 2014, Nat Rev Drug Discovery,13:759-780)。
【0342】
ルシフェラーゼmRNAの機能的送達は、T細胞の挙動を研究するために一般的に利用される不死化ヒトT細胞の系統であるジャーカット細胞を使用して観察された(Olden BR et al., 2018, J Control Release, 282:140-147; Abraham RT et al., 2004, Nat Rev Immunol, 4:1-8; Cancer P et al., 2018, Nucleic Acid Ther, 28:285-296)。ルシフェラーゼmRNAを封入したLNPを使用して、30ng/60,000細胞の濃度でジャーカット細胞を処理した。48時間後、発光測定によりルシフェラーゼ発現が評価された。LNP製剤からの発光測定値は、未処理の細胞群に対して正規化され、インビトロでゴールドスタンダードと広く見なされている一般的に使用されるトランスフェクション試薬である市販のリポフェクタミンと比較した(Cardarelli F et al., 2016, Sci Reports,1-8; Wang T et al., 2018, Molecules, 23)。ライブラリースクリーニングにより、リポフェクタミンよりも有意に高いルシフェラーゼ発現をもたらし、ルシフェラーゼmRNAをジャーカット細胞に送達する能力の改善を示す7つのLNP製剤が明らかになった(図3A)。これらの7つのうち、3つの製剤はC12テールを有するイオン化可能脂質を有し、3つはC14-テールを有し、1つはC16テールを有した。ポリアミンコア3、6、及び7は、脂質テールの長さに関係なく、リポフェクタミンと比較してトランスフェクションを強化しなかった。しかし、ポリアミンコア2、4、及び5はすべて、1つの環と追加の酸素のみの類似した構造を有し、ルシフェラーゼの発現が最も高い5つの製剤、つまりC14-4、C14-2、C14-5、C16-2、及びC12-4 LNPの生成に関与していた。
【0343】
次に、これらの上位5つのLNP製剤を、広範囲のmRNA濃度にわたって比較して、上位のLNP製剤とジャーカット細胞トランスフェクションに最適なLNP用量との両方を決定した。結果は、元のライブラリーのスクリーニングからの最高性能のLNP製剤であるC14-4 LNPが、上位5つの製剤の中で最も高いルシフェラーゼ発現を誘導することを確認した(図3B)。このルシフェラーゼ発現の上昇は、20ngを超える用量で他のすべてのLNP製剤と比較して有意であり、ジャーカット細胞におけるC14-4 LNPの最適用量が30ngであることを示した。C14-4 LNP製剤の直径は70.17nmで濃度は35.6ng/μLであるため、C14-4 LNPの性能の向上は、サイズやmRNA濃度の違いを反映していない(図3C)。ジャーカット細胞に対するC14-4 LNPの毒性は最小限であり、細胞生存率はリポフェクタミン処理及び未処理の細胞群と同等であり、C14-4 LNPによる処理後に95%を超える生存率が測定された。
【0344】
さらに、C14-4を介して送達されたmRNAの一過性発現を検証するために、LNPで処理されたジャーカット細胞におけるルシフェラーゼ発現を96時間にわたって観察した。結果は、24時間と比較して48時間では23%の発現の低下を、72時間までに84%の低下を示し、96時間までに検出可能な発現はなく(図3D)、一過性のルシフェラーゼ発現が確認され、その後の実験のための24時間の時点の使用を教示していた。まとめると、これらの結果は、mRNA送達のトップ製剤としてC14-4 LNPの選択を認めており、インビトロのC14-4 LNPの最適化されたトランスフェクション法を提供した。
【0345】
初代ヒトT細胞への脂質ナノ粒子媒介mRNA送達
外来診療所で癌免疫療法で使用されたCAR T細胞が、採取されたT細胞(CD3+)を使用して生成されるため、最高性能のC14-4 LNPを、初代ヒトT細胞へのmRNA送達に利用し、ジャーカット細胞株を超える翻訳可能性を証明した。ジャーカット細胞株の制限は、それがCD4+T細胞のみに由来されることを含むが、初代T細胞はCD8+表現型も含む(Abraham RT et al., 2004, Nat Rev Immunol, 4:1-8)。しかし、初代T細胞はトランスフェクションを達成するために活性化を必要とする(Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Harrer DC et al., 2017, BMC Cancer, 17:551)。CD3及びCD28抗体で表面がコーティングされた広く臨床的に利用されている磁気ビーズであるダイナビーズは、CAR T臨床試験で使用されているものと同様の方法でT細胞の活性化に利用された(Hajj KA et al., 2019, Small, 15:1-7; Wang X et al., 2016, Mol Ther Oncolytics, 3:1-7; Lee DW et al., 2015, Lancet, 385:517-528)。単離されたT細胞はCD4+:CD8+の1:1の比率で懸濁され、広範囲の濃度でルシフェラーゼmRNAを封入したC14-4 LNPで処理された。24時間後、ルシフェラーゼの発現と細胞生存率を定量化した(図4A)。LNPは、mRNAの用量依存的にT細胞中のルシフェラーゼ発現を誘導し、ルシフェラーゼmRNAがT細胞にうまく送達されたことを示した。さらに、わずかな毒性が最高用量でのみ観察され、C14-4 LNPの一次細胞との生体適合性を示している。
【0346】
T細胞へのmRNA送達についてのC14-4の可能性をさらに試験するために、完全に飽和したイオン化可能脂質をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、精製した生成物を利用してC14-4 LNPを作成した。これらの精製C14-4 LNPを、粗C14-4イオン化可能脂質から作成されたC14-4 LNPと比較して、どの構造が強力なmRNA送達に関与しているかを検証した。精製C14-4 LNPのDLS及びA260吸光度の特性評価により、直径65.19nm及びmRNA濃度29.8ng/μLが明らかになり、これは、粗C14-4生成物で作成されたLNPと大きな違いはなかった(図8)。リボグリーン(Ribogreen)アッセイを使用して各製剤がmRNAを封入する能力を評価すると、粗製剤と精製製剤は、同様の封入効率を有しそれぞれ92.5%と86.3%であることが明らかになった。最後に、TNSアッセイで、2つのLNP製剤をその表面イオン化すなわちpKaを評価した。pKaは、LNPが50%プロトン化されるpHとして定義され、pHがLNPの表面電荷と安定性にどのように影響するかを示す(Hajj KA et al., 2019, Small,15:1-7)。イオン化可能脂質のpKaは7未満であるため、これは酸性のエンドソーム区画で荷電され、封入されたmRNAが放出される(Hajj KA et al., 2019, Small,15:1-7; Zhang J et al., 2011, Langmuir, 27:9473-9483)。粗C14-4 LNPと精製C14-4 LNPの両方がイオン化可能であることが証明され、精製製剤のpKa値がわずかに高かった(図4B)。
【0347】
次に、粗C14-4 LNP及び精製C14-4 LNPを、初代T細胞にmRNAを送達する能力について比較した。T細胞は、1:1の比率のCD4+とCD8+に懸濁され、Dynabeadsで活性化された後にLNPで処理された。ルシフェラーゼmRNAを封入した粗C14-4 LNP及び精製C14-4 LNPは、2つの濃度でルシフェラーゼの発現と生存率について試験された(図4C)。両方の濃度で、精製C14-4 LNPは、粗LNP製剤と比較してルシフェラーゼ発現が有意に上昇しており、両方の製剤は細胞生存率に最小限の影響しか与えなかった。全体として、毒性を上昇させることなくルシフェラーゼ発現を上昇させることは、精製C14-4 LNPが初代T細胞mRNA送達のための最高性能の製剤であることを示している。
【0348】
LNPは、毒性の低い初代T細胞にEPと同じくらい効果的にCAR mRNAを送達する
発光測定を介して、T細胞への機能的なルシフェラーゼコード化mRNAの送達を定量化した後、送達ビヒクルの臨床的に関連する応用として、C14-4 LNPをCAR mRNA送達に利用した。最初の研究で、一過性のCAR発現が毒性及びオフターゲット効果に関連する障害を克服する可能性があることが示唆されたため、mRNAを用いて生成されたCAR T細胞が多くの臨床試験で利用されてきた(Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Zhao Y et al., 2010, Cancer Res, 70:9053-9061; Foster JB et al., 2019, Mol Ther, 27:747-756)。しかし、これらの研究では、mRNAは、電気的に透過性のT細胞膜に依存する一般的に使用され強力で毒性のあるトランスフェクション法である電気穿孔法(EP)を介して、T細胞に送達された(Smits E et al., 2004, Leukemia, 18:1898-1902; Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Svoboda J et al., 2018, Blood, 132:1022-1027; DiTommaso T et al., 2018, PNAS, 115; Dullaers M et al., 2004, Mol Ther, 10:768-779; Singh N et al., 2014, Cancer Immunol Res., 2:1059-1070)。ここで、CD19+ CAR mRNAを封入しているC14-4 LNPはEPと比較され、毒性を引き起こすことなく機能的なCAR T細胞を生成する能力を決定した。
【0349】
LNPを使用して、同一の450ng/μLのmRNA濃度でEPと比較して、1:1のCD4+:CD8+比で初代T細胞を処理した。得られたT細胞集団は、蛍光標識抗体とフローサイトメトリーを使用してCD19+ CAR発現について分析され、平均蛍光強度(MFI)の観点から定量化された(図5A)。結果として得られた最高のMFIは、EP及び精製C14-4 LNPを使用して処理されたT細胞に由来し、一方、粗C14-4 LNPはより低いMFIを生成した。これらの値をT細胞の未処理対照群に対して正規化すると、EPは未処理の細胞よりもMFIの10倍の増加を示し、精製されたC14-4 LNPは9.4倍の増加を示したが、粗C14-4 LNPはMFIを4.5倍しか増加させなかった。従って、ルシフェラーゼmRNA送達で観察されたように、粗C14-4製剤は発現を誘導する効果が、その精製された対応物よりも低かった。EP処理と比較してLNP製剤で処理されたT細胞の生存率も定量化され(図5C)、EPと比較してLNP処理は、毒性を大幅に低下させたことを示している。ルシフェラーゼmRNA送達で以前に見られたように、精製されたLNPと粗LNPは、それぞれ76%と78%の同様に高い生存率を有した。これは、EP処理T細胞で観察された31%の生存率とは対照的であり、現在使用されているこのmRNA送達プロセスの細胞毒性を強調している。全体として、これらの結果は、エクスビボでのT細胞へのmRNA送達について、EPよりもC14-4 LNPを利用することの安全上の利点を強調している。
【0350】
EP及び精製されたC14-4 LNPがT細胞で同様のCD19+ CAR発現を誘導するため、2つのmRNA送達方法を、共プレート癌細胞死滅アッセイを使用して機能的CAR発現について評価した。工学操作されたCAR T細胞を、ルシフェラーゼを発現するCD19+急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞Nalm6と共にプレーティングすることにより、癌細胞の死滅を、Nalm6細胞のみと比較した場合の発光の減少として評価することができる。このアッセイと細胞株の両方が、CAR T細胞の機能と治療の可能性を実証するために、過去の研究で日常的に利用されてきた(Barrett DM et al., 2011, Hum Gene Ther, 22:1575-1586; Castella M et al., 2019, Mol Ther Methods Clin Dev, 12:134-144; An N et al., 2016, Oncotarget., 7; Li X et al., 2018, Cell Rep, 23:2130-2141; .Pan Y et al., 2018, PNAS, 115:1-6)。ここで、精製されたC14-4 LNP又はEPを介して送達されたmRNAで工学操作されたCAR T細胞を、ある範囲のT細胞対エフェクター細胞比で比較した。48時間後、EP及びC14-4 LNP処理群はほぼ同じように機能し、未処理群よりも多くの癌細胞死滅をもたらした(図5A)。従って、精製されたC14-4 LNPは、mRNA CAR T細胞の現在の送達基準であるEPに匹敵するmRNA誘導CAR T細胞の生成に成功した。まとめると、これらの結果は、精製されたC14-4 LNPを、EPと比較して同様の効力と減少したT細胞毒性を備えたmRNAベースのCAR T細胞工学操作の方法として検証している。
【0351】
要約すると、本明細書に記載のデータは、T細胞へのmRNA送達に有効な新規イオン化可能脂質と新規LNP製剤とを開示している。本発明は一部は、新規のLNPシステムを使用して、T細胞へのmRNAの標的化された送達の問題に対処している。本発明は一部は、T細胞へのmRNAの強力な送達に利用されてきた、C14-4と呼ばれるイオン化可能脂質と、T細胞へのmRNAの強力な送達に利用されているそのLNP製剤(コレステロール、リン脂質、及びPEG成分を含む)とを開示する。粗脂質と精製された完全飽和脂質の両方が使用された。本明細書に記載の試験はまた、C14-4及びC14-4 LNP製剤が、低い毒性でT細胞にmRNAを送達する能力を示し、そして現在のゴールドスタンダード試薬であるリポフェクタミンの有効性の増強は、T細胞が工学操作される方法を変える可能性をC14-4に与えることを示す。これは、本発明が将来の商業的可能性を秘めている臨床分野(例えばCAR T治療薬)に適用できるが、これはまた、T細胞のトランスフェクションが特に難しいため、実験室ベース/研究環境にも適用できる。
【0352】
追加の研究は、おそらく抗体ベースの標的化物質又は他の標的化リガンドを追加して、T細胞へのインビボのmRNA送達のためにこの脂質ナノ粒子を使用するようになっている。賦形剤の比率(リン脂質、コレステロール、PEG、及びC14-4のモル比の変化)及びイオン化可能脂質とmRNAの比率の観点で、LNP製剤のさらなる最適化が試験される。このため、新しい賦形剤の導入や、線状の代わりに分岐アルキル鎖を使用するなどのC14-4脂質自体への修飾が行われる可能性がある。さらに、ルシフェラーゼ及びCARを超える他のmRNA荷物が探索される。
【0353】
ここで、これらの実験で使用される材料と方法について説明する。
【0354】
脂質合成
イオン化可能脂質は、マイケル付加化学を使用してエポキシド末端アルキル鎖(Avanti Polar Lipids)をポリアミンコア(Enamine, Monmouth Jct, NJ)と反応させることによって合成された。成分を7倍過剰のアルキル鎖と一緒にして、磁気攪拌棒で80℃で48時間混合した。次に、粗生成物をRotavapor R-300(BUCHI, Newark, DE)に移して溶媒を蒸発させ、脂質をエタノールに懸濁した。最後に、最高性能の脂質(C14-4)を精製するために、脂質画分をCombiFlash(登録商標) Nextgen 300+クロマトグラフィーシステム(Teledyne ISCO, Lincoln, NE)で分離し、飽和脂質画分を液体クロマトグラフィー-質量分析計を使用して分子量により同定した。
【0355】
CAR mRNA合成
既に記載されたように(Singh N et al., 2014, Cancer Immunol Res, 2:1059-1070)、標準的なインビトロ転写法を使用して、mRNAを生成した。簡単に説明すると、CD19を標的としCD3ゼータ及び4-1BB共刺激ドメインを有する第2世代レンチウイルスベクターをコードするプラスミドDNAを一晩線状化し、次に製造業者の説明書に従ってT7 mMessage ULTRAキット(Thermo Fisher)を使用してmRNAを生成した。次に、mRNAをポリAテール化及びキャップをして、RNeasy miniキット(Qiagen)を使用して精製した。
【0356】
LNPの調製と特性評価
LNPを合成するために、mRNAを含む水相と、脂質及びコレステロール成分を含むエタノール相とを、前述のようにマイクロ流体デバイスを使用して混合した(Chen D et all., 2012, J Am Chem Soc, 134:6948-6951)。簡単に説明すると、水相は10mMクエン酸緩衝液と、1mg/mLのN1-メチル-シュードUと5-メチル-C置換を有するルシフェラーゼmRNA(Trilink Biotechnologies, San Diego, CA)又はCAR mRNA(上述したように合成された)のいずれかとを使用して調製された。エタノール相を調製するために、イオン化可能脂質、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-エタノールアミン(DOPE)(Avanti Polar Lipids, Alabaster, AL)、コレステロール(Sigma, St. Louis, MO)、及び脂質固定されたPEG(Avanti Polar Lipids)成分を、それぞれ35%、16%、46.5%、及び2.5%の設定モル比で一緒にした。Pump33DSシリンジポンプ(Harvard Apparatus, Holliston, MA)を使用して、エタノール相と水相を3:1の比率でマイクロ流体デバイス内で混合した(Chen D et all., 2012, J Am Chem Soc, 134:6948-6951)。混合後、LNPを1xPBSに対して2時間透析した後、0.22μmフィルターで滅菌した。次に、Zetasizer Nano(Malvern nstruments, Malvern, UK)で実行された動的光散乱(DLS)を使用して、1xPBSに懸濁されたLNPの直径(z平均)と多分散度指数(PDI)を3重測定で測定した。NanoDrop ND-1000分光光度計(ThermoFisher, Waltham, MA)を使用して、各LNP製剤のmRNA濃度を得た。
【0357】
最高性能のLNP製剤のさらなる分析は、LNPの封入効率とpKaをそれぞれ決定するためのQuant-iT Ribogreen (ThermoFisher) 及び6-(p-トルイジニル)ナフタレン-2-スルホン酸(TNS)アッセイを含んだ。Quant-iT Ribogreen は前述のように実行した(Heyes J et al., 2005, J Control Release, 107:276-287)。簡単に説明すると、等濃度のLNPをトリトンX-100(Sigma)で処理してLNPを溶解するか、未処理のままで、10分後、群をRNA標準とともに96ウェルプレートに3重測定でプレーティングした。蛍光リボグリーン試薬を製造業者の説明書に従って添加し、得られた蛍光をプレートリーダーで測定した。測定値を標準曲線と比較してRNA含有量を定量化し、封入効率を計算した。LNP pKaを決定するために、TNSアッセイを使用して、前述のように表面イオン化を測定した(Hajj KA et al., 2019, Small, 15:1-7)。150mM塩化ナトリウム、20mMリン酸ナトリウム、25mMクエン酸アンモニウム、及び20mM酢酸アンモニウムの緩衝液を、0.5刻みで2~12の範囲のpH値に達するように調整した。LNPを、96ウェルプレートの各pH調整溶液に3重測定で添加した。次にTNSを各ウェルに添加して、6μMの最終TNS濃度に到達させ、得られた蛍光をプレートリーダーで読み取った。次にpKaは、蛍光強度が最大値の50%になるpH(50%のプロトン化を反映)として計算された。
【0358】
ジャーカット細胞のmRNAトランスフェクション
不死化ヒトT細胞株(Abraham RT et al., 2004, Nat Rev Immunol, 4:1-8)であるジャーカット細胞(ATCC TIB-152)を、L-グルタミン(ThermoFisher)を有し、10%胎児牛血清と1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補足したRPMI-1640中で培養した。細胞を96ウェルプレートのウェルあたり60,000細胞で60μLの培地中でプレーティングし、直ちに、PBSでさまざまな濃度に希釈した60μLのLNPで処理した。陽性対照比較として使用したLipofectamine MessengerMAXトランスフェクション試薬(ThermoFisher)を、製造業者のプロトコールに従って10分間mRNAと一緒にし、LNP群と同じmRNA濃度を使用してウェルを処理した。48時間のインキュベーション後、細胞を300×gで4分間遠心分離し、50μLの1×溶解バッファー(Promega, Madison, WI)及び100μLのルシフェラーゼアッセイ基質(Promega)に再懸濁した。次に、Infinite M Plexプレートリーダー(Tecan, Morrisville, NC)を使用して、発光を定量化した。各群からの発光シグナルを、未処理の細胞、又は最低濃度の処理群のいずれかに対して正規化し、試薬はあるが細胞のないウェルとして測定したバックグラウンドを差し引いた。細胞毒性を評価するために、ジャーカット細胞を同じ条件下でプレーティングし、60,000細胞あたり30ngのmRNAでC14-4又はリポフェクタミンのいずれかで処理した。48時間後、60μLのCellTiter-Glo(Promega)を各ウェルに添加し、ATP生成に対応する発光をプレートリーダーを使用して定量した。各群からの発光シグナルを未処理の細胞に対して正規化し、バックグラウンドを差し引いた。
【0359】
初代T細胞のmRNAトランスフェクション
初代T細胞(CD3+)を、ペンシルベニア大学のヒト免疫学コア(University of Pennsylvania Human Immunology core)から入手し、CD4:CD8の1:1の比率で一緒にした。次に、LNPで処理する細胞を、ビーズと細胞の比率が3:1のHuman Tactivator CD3/CD28 Dynabeads(ThermoFisher)で一晩活性化した。活性化後、細胞を96ウェルプレートにウェルあたり60,000細胞で60μLの培地中でプレーティングし、さまざまなmRNA濃度のLNPで処理した。電気穿孔法では、T細胞を培地で3回洗浄し、108細胞/mLで再懸濁し、T細胞1mLあたり100μgのmRNAの濃度で転写されたmRNAと混合した。次に、ECM830 Electro Square Wave Porator(Harvard Apparatus BTX)を使用して、細胞を2mmキュベットで電気穿孔した。ルシフェラーゼmRNA処理を用いた実験では、上記と同じプロトコールを使用して、48時間後に発光を、そして24時間後に毒性を評価した。CAR mRNA処理の場合、表面CARの発現は、Novartis Pharmaceuticalsから寛大に提供されたCD19 CARに対する抗イディオタイプ抗体を使用して検出された。CAR mRNA処理の毒性は、CellTiter Gloキットを使用して、上記のように評価した。
【0360】
機能的アッセイ
CAR T細胞は、エフェクター対標的の比率を変えて、ALL細胞株であるルシフェラーゼ発現Nalm-6細胞と共プレーティングした。共培養で48時間後、D-ルシフェリンカリウム塩(Perkin-Elmer, Waltham, MA)を細胞培養に添加して最終濃度を15μg/mLにし、37℃で10分間インキュベートした。次に、Synergy H4 imager(BioTek, Winooski, VT)を使用して発光を検出し、BioTek Gen5ソフトウェアを使用してシグナルを分析した。特異的溶解パーセントは、エフェクターを含まない標的細胞対照を使用して計算された。
【0361】
実施例2:T細胞送達のための脂質ナノ粒子の工学操作
賦形剤比に関するC14-4製剤パラメーターのさらなる最適化はすでに開始されている。生成された製剤の2つのライブラリーが添付されている(ライブラリーAの結果に基づいて、ライブラリーAと次にライブラリーB;ライブラリーAの代表的な製剤をA#、ライブラリーBの代表的な製剤をB#と命名する)。どちらもC14-4脂質を使用して作成されたが、新しい製剤のいくつかは、毒性を上昇させることなく、元のC14-4製剤よりもT細胞株でmRNA送達の増強を示した。
【0362】
イオン化可能なLNPは、核酸を含む治療用高分子の細胞内送達の媒体として大きな有望性を示した(Mukalel A.J., 2019, Cancer Lett, 458:102-112)。LNP製剤は多数あるが、これらは一般的な賦形剤を利用している:膜の安定性のためのコレステロール、エンドソーム脱出を助けるリン脂質、免疫原性を低下させるためのポリエチレングリコール(PEG)である(Reichmuth A.M., 2016, Ther Deliv, 7:319-334)。さまざまな賦形剤の組み合わせは、LNPの物理化学的特性を大幅に変化させることができ、それによってこれらの送達能力に影響を与える可能性がある(Kauffman K., 2015, Nano Lett, 15:7300-7306)。この試験の過程で、LNPの2つのライブラリーがT細胞用に設計された(図9及び図10)。直交DOE計画法を使用して製剤が選択されたため、広範囲の成分変動は16の代表的な製剤のみで観察された。
【0363】
各製剤には、さまざまなモル比率のイオン化可能脂質、コレステロール、ヘルパー脂質、及び脂質結合PEGが含まれていた。各製剤のz平均直径とpKaは、それぞれ、動的光散乱法、2-(p-トルイジニル)ナフタレン-6-スルホン酸(TNS)アッセイ、及び260nmの吸光度測定を使用して決定された。不死化したヒトT細胞であるジャーカット細胞を各製剤で48時間処理し、インビトロでの細胞内送達を評価した。各製剤の細胞毒性は、市販のCell-Titer Gloアッセイによって同様に評価された。
【0364】
最適化された製剤に関するデータを図9及び図10に示す。各製剤のインビトロ送達効率は、標準的なルシフェラーゼ発現アッセイを使用して評価された。簡単に説明すると、ホタルルシフェラーゼをコードするmRNAを含むLNPが、不死化したヒトT細胞であるジャーカット細胞に、60,000細胞あたり30ngのmRNA濃度で送達された。48時間のインキュベーション後、細胞は溶解され、ホタルルシフェリンで処理された。次に、LNP媒介トランスフェクションの程度をプレートリーダーで発光強度として測定した。各製剤の細胞毒性は、市販のCell-Titer Gloアッセイを使用して同様に評価された。
【0365】
ライブラリーAの特性評価により、賦形剤の組成に関連する送達のいくつかの傾向が明らかになった。ライブラリーAの最適な賦形剤条件により、次世代ライブラリーBが開発された。ライブラリーBの製剤は、ライブラリーAの製剤よりもはるかに優れた封入効率とより大きなz平均直径を示し、ライブラリーBの製剤のいくつかはライブラリーAの最高性能の製剤より優れており、上記の傾向を支持していた。さらにライブラリーBのすべての製剤は、48時間にわたって80%を超える生存率を示すことが観察された。従って、T細胞への細胞内送達のための複数の非常に強力なLNP製剤の開発が報告されている。これらのLNPは、癌免疫療法を含む将来のT細胞工学操作用途に使用できる可能性がある。
【0366】
実施例3:LNPの賦形剤組成物を変更して、mRNAをT細胞に送達する能力を向上させる(毒性は最小限で)
この例は、代表的なライブラリーA及びライブラリーBの製剤で得られたインビトロ及びエクスビトロ(ex vitro)データを示す。インビトロ試験において、様々な賦形剤濃度(例えば図9A)を有するC14-494の16個の代表的な製剤を含むライブラリーAが、ルシフェラーゼmRNAをジャーカット細胞株(不死化ヒトT細胞)に送達する能力についてスクリーニングされた。ライブラリーAの結果に基づいて生成されたライブラリーB(例えば図10)も、ジャーカットでインビトロ試験でスクリーニングされた。さらなるエクスビボ試験は、ライブラリーA及びBの代表的な最高性能の製剤を使用して、初代T細胞へのルシフェラーゼmRNAの送達に焦点を当てた。
【0367】
より具体的には、ジャーカットは0ng/60,0000細胞で24時間処理された。ライブラリーAからのデータに基づいてライブラリーBに加えられた調整により、より多くの「ヒット」製剤(すなわち、標準製剤S2よりも高い送達を達成した製剤)がもたらされ、LNP製剤全体の毒性が低下した。LNP(ルシフェラーゼmRNAを含む)とのインキュベーションの24時間後に、ルシフェラーゼアッセイを使用してルシフェラーゼ活性を測定した(図14A)。生存率パーセントは、Cell Titer Gloアッセイを使用して同じ時点で測定された(図14B)。各バーには3つの生物学的複製物(それぞれ3つの技術的複製物)が含まれており、0ng処理に対して正規化された。
【0368】
リポフェクタミンの比較(図15)は、製剤B10がこの市販の標準物質を上回っていることを示した。さらに、毒性試験の結果はどちらもジャーカットに対して毒性がないことを示した。
【0369】
さらに、ジャーカットをルシフェラーゼをコードするmRNAで24時間処理して、さまざまな濃度/用量でさまざまな代表的な製剤の発光と生存率を評価した(図16A及び図16B)。さらに、3つの異なる初代患者T細胞試料を一晩活性化し、標準物質、A16、又はB10製剤の投与で処理した(図17A図17C)。ルシフェラーゼをコードするmRNAの送達値は、0ng処理に対して正規化された。ドナーの変動により、異なる全体的なルシフェラーゼ読み取り値が得られた。さらに、追加の試験は、CAR mRNAを初代T細胞に送達するための最高性能のLNP(製剤B10)に注目している。
【0370】
本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明は特定の実施態様を参照して開示されてきたが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の別の実施態様及び変更態様が当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての実施態様及び同等の変更態様を含むと解釈されることを意図している。
図1A
図1B-1C】
図2A-2B】
図2C
図3A
図3B-3C】
図3D-3E】
図4A
図4B
図4C
図5A-5B】
図5C-5D】
図6
図7
図8
図9A-9B】
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
【国際調査報告】