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特表2022-552016高アンモニア血症を治療するためのオルニチンフェニル酢酸塩の投与量および使用
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  • 特表-高アンモニア血症を治療するためのオルニチンフェニル酢酸塩の投与量および使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】高アンモニア血症を治療するためのオルニチンフェニル酢酸塩の投与量および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20221207BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523088
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 US2020055706
(87)【国際公開番号】W WO2021076709
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/916,159
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/965,330
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/979,197
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/034,602
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506164729
【氏名又は名称】オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522153622
【氏名又は名称】マリンクロット エンタープライズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ワン リアーズ,シャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】マク,カーメン
(72)【発明者】
【氏名】ポーラ,ナガラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ビルチェス,レジス
(72)【発明者】
【氏名】ポトニス,アニルッダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンミター,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】シュタンゲ,ジャン
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206KA15
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA51
(57)【要約】
本開示の実施形態は、高アンモニア血症を治療または寛解させるためのオルニチンフェニル酢酸塩の用量、およびこれを、慢性肝疾患、例えば硬変を有する患者に投与する方法に関する。一部の実施形態において、患者は、肝疾患の合併症として肝性脳症も有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に前記患者に投与することと、
第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第2の時間帯に前記患者に投与することと、
を含み、
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約10g~約30gであり、前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が前記第1の量よりも少ない、方法。
【請求項2】
前記第1の時間帯が約1時間~約10時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の時間帯が前記第1の時間帯より長く、前記第1の時間帯および前記第2の時間帯の合計が、約18時間~36時間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約20gである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の時間帯が約6時間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約15gである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の時間帯が約18時間である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が、前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が静脈内注入で投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が静脈内注入で投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第3の時間帯において、前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与することをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の時間帯が約2日間~約10日間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3の時間帯が約4日間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1日(24時間)当たりに投与される前記第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩が、前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩と同じである、または前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少ない、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1日当たりに投与される前記第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約15gである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩が静脈内注入で投与される、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が標準治療も受けている、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
腎機能の障害を患い、15mL/分/1.73m~29mL/分/1.73mの推定糸球体濾過率(eGFR)を有する、高アンモニア血症の治療が必要な患者を選択することと、
第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に前記患者に投与することと、
第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第2の時間帯に前記患者に投与することと、
を含み、
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約5g~約20gであり、前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が前記第1の量よりも少ない、方法。
【請求項19】
前記第1の時間帯が約1時間~約10時間であり、前記第2の時間帯が前記第1の時間帯より長い、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の時間帯および前記第2の時間帯の合計が、約18時間~36時間である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約7.5g~約15gである、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の時間帯が約4時間~約6時間である、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約7.5g~約15gである、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の時間帯が約12時間~約18時間である、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が、前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に投与される、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が静脈内注入で投与される、請求項18から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が静脈内注入で投与される、請求項18から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第3の時間帯において、前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与することをさらに含む、請求項18から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第3の時間帯が約2日間~約10日間である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第3の時間帯が約3日間~約4日間である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1日(24時間)当たりに投与される前記第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩が、前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩と同じである、または前記第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少ない、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
1日当たりに投与される前記第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約7.5g~約15gである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩が静脈内注入で投与される、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が標準治療も受けている、請求項18から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
高アンモニア血症の治療が必要な患者の腎機能を決定する、または腎機能についての情報を受け取ることと、
第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に前記患者に投与し、前記患者の推定クレアチニンクリアランスが35mL/分を超える場合、前記第1の量が約10g~約30gであること、または
第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に前記患者に投与し、前記患者の推定クレアチニンクリアランスが35mL/分/1.73m以下である場合、前記第1の量が約5g~約15gであること、
を含む、方法。
【請求項36】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
高アンモニア血症の治療が必要な患者の体重もしくは身体サイズを決定する、または体重もしくは身体サイズについての情報を受け取ることと、
第1の時間帯に前記患者に投与される第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与することと、
前記患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすることと、
第2の時間帯に前記患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量を、前記フェニル酢酸の血漿濃度に基づいて調整することと、
を含む、方法。
【請求項37】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
高アンモニア血症の治療が必要な患者の肝障害の程度を決定する、または肝障害の程度についての情報を受け取ることと、
第1の時間帯に前記患者に投与される第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与することと、
前記患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすることと、
第2の時間帯に前記患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量を、前記フェニル酢酸の血漿濃度に基づいて調整することと、
を含む、方法。
【請求項38】
前記第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を前記患者に投与する前に、前記患者の血清アンモニアレベルを測定することをさらに含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記患者の血清アンモニアレベルが≧21μmol/Lである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
急性または慢性の肝疾患または状態を有する、または有するリスクのある患者を確認または選択することと、
前記患者の血清アンモニアレベルを測定する、または血清アンモニアレベルについての情報を受け取ることと、
前記患者の血清アンモニアレベルが≧21μmol/Lの場合、第1の量のオルニチンフェニル酢酸を前記患者に投与することと、
を含む、方法。
【請求項41】
前記患者が硬変を有する、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、肝性脳症のリスクがある、または肝性脳症の少なくとも1つのエピソードを有する、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記患者が、1つまたは複数の肝性脳症エピソードが原因で入院する、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与前に、少なくとも4時間~6時間の標準治療を受けている、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
オルニチンフェニル酢酸塩が、約200mg/mL~約400mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を含む水溶液として投与される、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記水溶液が約300mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記オルニチンフェニル酢酸塩の水溶液が、少なくとも約5のpHを有する、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記オルニチンフェニル酢酸塩の水溶液が、約5.4~約6.5のpH範囲を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
約200mg/mL~400mg/mLのオルニチンフェニル酢酸の水溶液と、少なくとも1種のpH調整剤とを含み、前記水溶液が少なくとも約5のpHを有する、医薬製剤。
【請求項50】
前記水溶液のpHが、約5.4~約6.5のpH範囲を有する、請求項49に記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記pH調整剤が、HClもしくはクエン酸、またはこれらの組合せである、請求項49または50に記載の医薬製剤。
【請求項52】
約2℃~約8℃の範囲の温度で保存される、請求項49から51のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項53】
前記水溶液が、約300mg/mLのL-オルニチンフェニル酢酸塩を含む、請求項49から52のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項54】
1%未満のオルニチンフェニル酢酸塩沈殿物を含む、請求項49から53のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項55】
約2℃~約8℃の範囲の保存温度で6か月間まで約0.1重量%未満の3-アミノ-2-ピペリドンを含む、請求項49から54のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項56】
約5℃で6か月間まで3-アミノ-2-ピペリドンが、約0.05重量%以下である、請求項55に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
慢性肝不全の急性増悪(acute on-chronic liver failure)は、初期には異常な行動および損なわれた認知(compromised cognition)として現れる。肝性脳症(HE)の発症を臨床で正確に指摘できることはまれであるが、進行性肝疾患を有する患者にとっての標識点である。硬変を有する患者のおよそ60%~70%が、神経認知障害(neurocognitive impairment)の少なくともかすかな兆候を有し、HEが、硬変で入院した患者の主要な診断である。顕性HEは、硬変母集団においておよそ30%の有病率を有し、米国で毎年入院する患者のおよそ150,000人を占める。硬変を有する重症HE患者は、最初の1年間だけで50%を超える死亡率に関連している。
【0002】
肝性脳症は、主にアンモニアである腸由来毒素が、通常ではそのような薬剤を解毒する欠陥肝臓を迂回し、これらの毒素が循環に入り、血液脳関門を通過し、神経伝達および中枢神経系の機能に障害をもたらすときに発生する精神神経障害である。肝性脳症は、急性肝不全、進行性肝硬変の状況における慢性進行性肝疾患(顕性HE)、および/または肝疾患を伴う、もしくは伴わない門脈大静脈吻合術の結果という状況で起こりうる。HEの病理発生は不完全にしか理解されていないが、静脈血中アンモニア濃度の増加が依然としてHEを理解するための中枢であることに変わりなく、HEのエピソードを治療する、ならびに予防する新規の安全で有効な静脈血中アンモニア低下療法が必要であることを支持している。
【0003】
食事によるタンパク質制限は、硬変を有する患者において循環静脈血中アンモニアを間接的に低減する戦略として、長い間提唱されてきた。しかし、最近のデータは、この戦略がHEの予防に有効ではなく、より筋消耗になりやすくして患者に有害でありうることが示されている。
【0004】
顕性HEのエピソードを有する患者の治療のための現行の治療指針は、毎日3回の便通を生じるように調整された非吸収性二糖であるラクツロースを第一選択薬剤として、25mlの用量で1日2回投与することを推奨している。腸内細菌叢を変更するリファキシミンは、顕性HEの再発のリスクを低減するために承認されている。
【0005】
L-オルニチンL-アスパラギン酸塩(本明細書以下、LOLAと称される)は、ヨーロッパおよびアジアにおいてIV製品として入手可能であり、循環静脈血中アンモニアをグルタミンの形態で捕捉することによって患者の利益になりうるが、急性肝不全における利益は実証できなかった。フェニル酢酸およびそのプロドラッグであるフェニル酪酸(塩またはエステル)は、非常に高い循環グルタミンレベルを有する遺伝的尿素サイクル異常症患者において、アンモニアを低減することに成功裏に使用されてきた。高静脈血中アンモニア負荷を低減するためにフェニル酢酸またはフェニル酪酸(塩またはエステル)のみを使用する手法は、慢性肝疾患の患者において有効に働くことが期待されず、それは、これらの患者は典型的には低い循環グルタミンレベル(グルタミンシンターゼの低減された発現)を有するからであるが、グリセロールフェニル酪酸による再発性HEを予防するための経口予防法についての最近のデータは、有望な結果を示している。加えて、不十分な除脂肪筋量を有する硬変患者における慢性的治療および持続的なグルタミン枯渇のリスクは、依然として懸念材料のままである。このように、慢性肝疾患、例えば硬変を有する患者において、HEの代替的で有効な治療の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与すること、および第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第2の時間帯に患者に投与することを含み、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が第1の量よりも少ない方法に関する。
【0007】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、腎機能の障害または低下を患い、前記患者が30mL/分/1.73m以下の推定糸球体濾過率(eGFR)を有する、高アンモニア血症の治療が必要な患者を選択すること、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与すること、および第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第2の時間帯に患者に投与することを含み、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約5g~約20gであり、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が第1の量よりも少ない方法に関する。一部の実施形態において、患者は、15mL/分/1.73m~29mL/分/1.73mのeGFRを有する。
【0008】
本開示の追加の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、高アンモニア血症の治療が必要な患者の腎機能を決定する、または腎機能についての情報を受け取ること、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与し、患者の推定糸球体濾過率(eGFR)が30mL/分/1.73mを超える、もしくは推定クレアチニンクリアランスが35mL/分を超える場合、第1の量が約10g~約30gであること、または第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与し、患者の推定糸球体濾過率(eGFR)が30mL/分/1.73m以下である、もしくは推定クレアチニンクリアランスが35mL/分以下である場合、第1の量が約5g~約20gであることを含む方法に関する。
【0009】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、高アンモニア血症の治療が必要な患者の体重もしくは身体サイズを決定する、または体重もしくは身体サイズについての情報を受け取ること、第1の時間帯に、患者に投与される第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与すること、患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすること、および第1の時間帯に患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の第1の量を、フェニル酢酸の血漿濃度に基づいて調整することを含む方法に関する。
【0010】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、高アンモニア血症の治療が必要な患者の肝障害の程度を決定する、または肝障害の程度についての情報を受け取ること、第1の時間帯に、患者に投与される第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与すること、患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすること、および第1の時間帯に患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の第1の量を、フェニル酢酸の血漿濃度に基づいて調整することを含む方法に関する。
【0011】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、急性または慢性の肝疾患または状態を有する、または有するリスクのある患者を特定または選択すること、患者の血清アンモニアレベルを測定する、または血清アンモニアレベルについての情報を受け取ること、および患者の血清アンモニアレベルが≧21μmol/Lの場合、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を患者に投与することを含む方法に関する。
【0012】
本開示の一部の追加の実施形態は、約200mg/mL~400mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩の水溶液と、少なくとも1種のpH調整剤とを含み、水溶液が少なくとも約5のpHを有する医薬製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】3つの臨床研究(実施例2に記載されている研究2、研究3および研究5)の35mL/分を超えるベースラインクレアチニンクリアランスレベルを有する群(d、eおよびf)と比較した、35mL/分未満のベースラインクレアチニンクリアランスレベルを有する群(a、bおよびc)における、フェニル酢酸(PAA)、フェニルアセチルグルタミン(PAGN)およびアンモニア曝露の血漿濃度を示す。
図2】健康な対象における有害事象(AE)とPAA血漿濃度の相関関係を示す(実施例2に記載されている研究1)。
図3】慢性肝疾患(硬変)を有する患者における有害事象(AE)とPAA血漿濃度の相関関係を示す(実施例2に記載されている研究2)。
図4】実施例4に記載されている研究における硬変患者の血清アンモニア分布を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態は、対象において、例えば、肝性脳症(HE)の1つまたは複数のエピソードを患っている、または患ったことがある対象において、高アンモニア血症および関連状態を治療する、または寛解させるためのオルニチンフェニル酢酸塩の方法または使用に関する。方法または使用は、いくつかの時間帯における投薬される様々な量のオルニチンフェニル酢酸塩の投薬スケジュールを含む。方法または使用は、また、対象の1つまたは複数の既存の状態、例えば、腎障害、肝障害に基づいてオルニチンフェニル酢酸塩の用量を調整することを含んでもよい。方法または使用は、また、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与する前に、患者の血清アンモニアレベルを測定すること、または血清アンモニアレベルについての情報を得ることを含んでもよい。方法または使用は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後に患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターし、用量を調整することをさらに含んでもよい。方法または使用は、高アンモニア血症が原因の肝性脳症を患っている患者の治療を選択するステップを含んでもよい。例えば本明細書に記載されている顕性肝性脳症スクリーニングツール(O-HEST)などの、肝性脳症スクリーニングツール(HEST)を使用して、患者が顕性肝性脳症を患った、または患っているかを決定してもよい。
【0015】
本開示の追加の実施形態は、オルニチンフェニル酢酸塩を含有する医薬製剤、例えば、オルニチンフェニル酢酸塩と1種以上のpH調整剤とを含む静脈内注入用の医薬液剤に関する。
【0016】
定義
本明細書に使用されるセクションの見出しは、編成の目的のみであり、記載される主題を制限するものと解釈されるべきではない。
【0017】
特に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術および科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。用語「含む(including)」、ならびに他の形態、例えば「含む(include)」、「含む(includes)」および「含んだ(included)」の使用は、制限的ではない。用語「有する(having)」、ならびに他の形態、例えば「有する(have)」、「有する(has)」および「有した(had)」の使用は、制限的ではない。本出願に使用されるとき、移行句または請求項本文であっても、用語「含む(comprise(s))」および「含む(comprising)」は、制約のない意味を有すると解釈されるべきである。すなわち、上記用語は、語句「少なくとも~を有する」または「少なくとも~を含む」の同義語として解釈されるべきである。例えば、方法の文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、方法が少なくとも列挙されたステップを含むが、追加的なステップも含みうることを意味する。化合物、組成物、製剤、またはデバイスの文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、製剤、またはデバイスが、少なくとも列挙された特徴または構成成分を含むが、追加的な特徴または構成成分も含みうることを意味する。
【0018】
フェニル酢酸(PAA)のL-オルニチン塩であるL-オルニチンフェニル酢酸塩(LOPAまたはL-OPAとも称される)は、様々な程度の肝性脳症(HE)を有する患者において、アンモニア濃度を低減するためにアンモニア除去経路を使用する新規のアンモニア低下剤である。
【0019】
LOPAの静脈内(IV)製剤は、オルニチンとフェニル酢酸の相乗効果により高められたアンモニア排除を介して、硬変の状況でアンモニア排泄用の代替的経路を許容する固定用量組合せ療法である。オルニチンはグルタミンシンターゼの活性を刺激し、体筋が、アンモニアの非毒性担体であるグルタミンの形態で循環アンモニアを捕捉することを誘導する。次いで、グルタミンはフェニル酢酸と抱合して、フェニルアセチルグルタミン(PAGN)を形成し、尿中に排泄される。この戦略は、グルタミナーゼによるグルタミンの最終的な再循環および分解を予防し、アンモニアの再形成を回避する。
【0020】
当該技術において良く理解されているように、異なる機器によりX線回折パターンが測定されるときの実験変動のため、2シータ(2θ)値が0.2°以内(すなわち、±0.2°)であると認められる場合、ピーク位置は等しいと推定される。例えば、米国薬局方は、10個の最強回折ピークの角度状況が標準物質の±0.2°以内にあると認められ、ピークの相対強度が20%を超えて変動しない場合、素性が確証されると記述している。したがって、本明細書に列挙されている位置の0.2°以内のピーク位置は、同一であると推定される。
【0021】
用語「HEST」は、本明細書に記載されるとき、患者のHEの重症度を評価する一連の基準を指す。一部の場合において、HESTは下記の表A、BまたはCを指す。HESTの詳細およびHEを患っている患者の診断に関連するその使用は、その全体が参照により組み込まれるPCT特許出願第PCT/US2020/031854号明細書に見出すことができる。
【0022】
用語「OHEST」または「O-HEST」は、本明細書で使用されるとき、顕性肝性脳症スクリーニングツールを指す。OHESTは、患者が潜在性のHE(CHE)から顕性HE(OHE)へ移行する時期を確認するために重要である、HEの治療を評価する臨床試験に使用することができる。OHEの発生または再発の率を文書化することは、治療の利益または効果を理解するために重要なステップである。OHESTの詳細およびその使用は、その全体が参照により組み込まれるPCT特許出願第PCT/US2020/031854号明細書に見出すことができる。
【0023】
「治療する(treat)」、「治療(treatment)」または「治療している(treating)」は、本明細書で使用されるとき、予防および/または治療目的で医薬組成物/製剤を投与することを指す。用語「予防処置(prophylactic treatment)」は、まだ疾患を患っていないが特定の疾患にかかりやすい、または特定の疾患のリスクがある患者を治療することを指し、それによって治療は患者が疾患を発症する可能性を低減する。用語「治療処置(therapeutic treatment)」は、すでに疾患を患っている患者に治療を施すことを指す。
【0024】
オルニチンフェニル酢酸塩の投薬スケジュール
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与すること、および第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第2の時間帯に患者に投与することを含み、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が第1の量よりも少ない方法に関する。
【0025】
一部の実施形態において、第1の時間帯は、約1時間~約10時間、例えば、約2時間~約9時間、約3時間~約8時間、約4時間~約7時間、または約5時間~約6時間である。一実施形態において、第1の時間帯は約6時間である。一部の実施形態において、第2の時間帯は第1の時間帯より長い。一部の実施形態において、第2の時間帯は、約12時間~約24時間、または約16時間~約20時間である。一実施形態において、第2の時間帯は約18時間である。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯および第2の時間帯の合計は、約18時間~約36時間、または約20時間~約30時間である。一実施形態において、第1および第2の時間帯の合計は約24時間である。
【0026】
一部の実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約10g、12g、14g、16g、18g、20g、22g、24g、26g、28gもしくは30g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約12g~約28g、約14g~約26g、約16g~約24g、または約18g~約22gでありうる。一実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は約20gである。
【0027】
一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約25g、例えば、約5g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5g、20g、22.5gもしくは25g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約7.5g~約22.5g、約10g~約20g、または約12.5g~約17.5gである。一実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は約15gである。
【0028】
一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に投与される。一部の他の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した短時間後に、例えば、第1の量の投与が完了した5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.5時間、または2時間以内に投与される。
【0029】
第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、6時間の連続静脈内注入で投与される。
【0030】
第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、18時間の連続静脈内注入で投与される。
【0031】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている方法は、第3の時間帯において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与の完了後に、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与することをさらに含む。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に投与される。他の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した短時間後に、例えば、第2の量の投与が完了した5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.5時間、または2時間以内に投与される。
【0032】
一部の実施形態において、第3の時間帯は、約2日間~約10日間、例えば、約3日間~約9日間、または約4日間~約8日間である。一実施形態において、第3の時間帯は4日間(96時間)である。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第3の時間帯に連続的に投与される。他の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第3の時間帯の範囲内で別々の投薬時間帯で投与される。
【0033】
一部の実施形態において、1日(24時間)に投与される第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩と同じである、または第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少ない。例えば、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約25g、例えば、約5g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5g、20g、22.5gもしくは25g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約7.5g~約22.5g、約10g~約20g、または約12.5g~約17.5gである。一実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は約15gである。
【0034】
第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、4日間(96時間)の連続静脈内注入で投与される。
【0035】
腎機能障害を有する患者を治療する方法
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、腎機能の障害または低下を患い、前記患者が30mL/分/1.73m以下の推定糸球体濾過率(eGFR)を有する、高アンモニア血症の治療が必要な患者を選択すること、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与すること、および第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第2の時間帯に患者に投与することを含み、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩が約5g~約20gであり、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩が第1の量よりも少ない方法に関する。一部の実施形態において、患者は、15mL/分/1.73m~29mL/分/1.73mのeGFRを有する。一部の実施形態において、患者は35mL/分以下の推定クレアチニンクリアランスを有する。
【0036】
一部の実施形態において、第1の時間帯は、約1時間~約24時間、例えば、約2時間~約9時間、約3時間~約8時間、約4時間~約7時間、または約5時間~約6時間である。一実施形態において、第1の時間帯は約6時間である。一部の実施形態において、第2の時間帯は第1の時間帯より長い。一部の実施形態において、第2の時間帯は、約12時間~約24時間、または約16時間~約20時間である。一実施形態において、第2の時間帯は約18時間である。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯および第2の時間帯の合計は、約18時間~約36時間、または約20時間~約30時間である。一実施形態において、第1および第2の時間帯の合計は約24時間である。
【0037】
一部の実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g、7g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5gもしくは20g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約17.5g、または約7g~約12.5gでありうる。一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約20g、例えば、約5g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5gもしくは20g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約17.5g、または約7g~約12.5gである。一部の実施形態において、第1の時間帯が約24時間である場合、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は省かれる、または投与されない。
【0038】
一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に投与される。一部の他の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した短時間後に、例えば、第1の量の投与が完了した5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.5時間、または2時間以内に投与される。
【0039】
第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約4~6時間の連続静脈内注入で投与される。
【0040】
第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約12~18時間の連続静脈内注入で投与される。
【0041】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている方法は、第3の時間帯において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与の完了後に、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与することをさらに含む。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後に投与される。他の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した短時間後に、例えば、第2の量の投与が完了した5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、1.5時間、または2時間以内に投与される。
【0042】
一部の実施形態において、第3の時間帯は、約2日間~約10日間、例えば、約3日間~約9日間、または約4日間~約8日間である。一実施形態において、第3の時間帯は4日間(96時間)である。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第3の時間帯に連続的に投与される。他の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第3の時間帯の範囲内で別々の投薬時間帯で投与される。
【0043】
一部の実施形態において、1日(24時間)に投与される第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩と同じである、または第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少ない。例えば、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約20g、例えば、約5g、7g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5gもしくは20g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約7.5g~約17.5g、または約10g~約15g、または約7g~約12.5gである。
【0044】
第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、3~4日間(72~96時間)の連続静脈内注入で投与される。
【0045】
腎機能の評価に基づいて様々な用量のオルニチンフェニル酢酸塩により患者を治療する方法
本開示の追加の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、高アンモニア血症の治療が必要な患者の腎機能を決定する、または腎機能についての情報を受け取ること、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与し、患者の推定糸球体濾過率(eGFR)が30mL/分/1.73mを超える、もしくは患者の推定クレアチニンクリアランスレベルが35mL/分を超える場合、第1の量が約10g~約30gであること、または第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与し、患者の推定糸球体濾過率(eGFR)が30mL/分/1.73m以下である、もしくは患者の推定クレアチニンクリアランスレベルが35mL/分を超える場合、第1の量が約5g~約20gであることを含む方法に関する。
【0046】
腎機能障害を有する患者を治療する方法の一部のさらなる実施形態において、患者が重症の腎障害を有する場合、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、本明細書に記載されている標準的な第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少なくとも約50%(例えば、約53%)低減されうる。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯において患者に投与される第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約5g~約15g、または約7g~約12.5g、または約10gである。一部のそのような実施形態において、投与は静脈内注入によるものである。一部の実施形態において、第1の時間帯は、約1時間~約24時間、例えば、約2時間~約9時間、約3時間~約8時間、約4時間~約7時間、または約5時間~約6時間である。一実施形態において、第1の時間帯は約6時間である。別の実施形態において、第1の時間帯は約24時間である。
【0047】
腎機能障害を有する患者を治療する方法の一部のさらなる実施形態において、腎障害を有する患者には、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後に第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩がさらに投与される。第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、上記に記載されているように、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後または短時間後に投与されうる。第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約12~18時間の連続静脈内注入で投与される。患者が重症の腎機能障害を有する場合、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、また、本明細書に記載されている標準的な第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少なくとも約50%(例えば、約53%)低減されてもよく、例えば、低減された第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約2.5g~約12.5g、約5g~約10g、または約7gでありうる。一部のさらなる実施形態において、組み合わせた第1および第2の時間帯は約24時間である。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯が約24時間である場合、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は省かれる、または投与されない。
【0048】
腎機能障害を有する患者を治療する方法の一部のさらなる実施形態において、腎障害を有する患者には、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後に第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩がさらに投与される。第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、上記に記載されているように、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与が完了した直後または短時間後に投与されうる。第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入で投与される。一実施形態において、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、3~4日間(72~96時間)の連続静脈内注入で投与される。患者が重症の腎障害を有する場合、第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、本明細書に記載されている標準的な第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩より少なくとも約50%(例えば、約53%)低減されてもよく、例えば、低減された第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約2.5g~約12.5g、約5g~約10g、または約7gでありうる。
【0049】
肝障害の評価に基づいて様々な用量のオルニチンフェニル酢酸塩により患者を治療する方法
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、高アンモニア血症の治療が必要な患者の肝障害の程度を決定する、または肝障害の程度についての情報を受け取ること、第1の時間帯に、患者に投与される第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を投与すること、患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすること、および第2の時間帯に患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量を、フェニル酢酸の血漿濃度に基づいて調整することを含む方法に関する。
【0050】
一部の実施形態において、患者が重症の肝障害を有する(例えば、チャイルド・ピュー分類(Child-Pugh)Cの患者である)場合、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後に、上昇した血漿フェニル酢酸(PAA)の曝露を受けることがある。例えば、同じ体重の患者では、チャイルド・ピュー分類Cの患者は、チャイルド・ピュー分類Bの患者より約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%高いPAAに定常状態で曝露される。一部のそのような実施形態において、上昇した血漿PAAレベルは、有害事象、例えば、神経系の有害事象(例えば、傾眠、疲労、意識朦朧、頭痛、味覚異常、聴力低下、見当識障害、記憶障害、末梢神経障害、またはこれらの組合せ)を引き起こすことがある。一部のそのような実施形態において、第2の時間帯に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後にモニターされた血漿PAAレベルに基づいて低減される。一部のさらなる実施形態において、血漿PAAレベルは、測定時に定常状態(例えば、注入中)のものである。一部の実施形態において、第2の時間帯に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量(すなわち、第2の量)は、本明細書に記載されている標準的な第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩(例えば、15g)と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。一部のさらなる実施形態において、第3の時間帯に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量(すなわち、第3の量)も、本明細書に記載されている標準的な第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩(例えば、15g/24時間)と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。
【0051】
あるいは、方法は、以下のステップ:高アンモニア血症の治療が必要な患者の肝障害の程度を決定する、または肝障害の程度についての情報を受け取るステップ、対象が10以上のチャイルド・ピュー分類スコア(分類C)を有する場合、第1の時間帯に患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の第1の量を調整するステップ、を含んでもよい。方法は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後に、患者においてフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすることをさらに含んでもよい。一部のそのような実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、本明細書に記載されている標準的な第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩(例えば、約20g)と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。一部のさらなる実施形態において、第2および第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩も、本明細書に記載されている標準的な第2および第3の量(例えば、第2および第3の両方とも15g)のオルニチンフェニル酢酸塩より、第1の量について上記に記載されたパーセンテージと同様の、または同じパーセンテージで低減される。
【0052】
体重または身体サイズの評価に基づいて様々な用量のオルニチンフェニル酢酸塩により患者を治療する方法
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、高アンモニア血症の治療が必要な患者の体重もしくは身体サイズを決定する、または体重もしくは身体サイズについての情報を受け取ること、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を第1の時間帯に患者に投与すること、患者のフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすること、および第2の時間帯に患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量を、フェニル酢酸の血漿濃度に基づいて調整することを含む方法に関する。
【0053】
一部の実施形態において、患者の体重または身体サイズが標準体重/サイズ(例えば、成人では、標準体重は約70kgである)を有意に下回る場合、患者は、上昇した血漿フェニル酢酸(PAA)の曝露を受けることもある。一部のそのような実施形態において、上昇した血漿PAAレベルは、有害事象、例えば、神経系の有害事象(例えば、傾眠、疲労、意識朦朧、頭痛、味覚異常、聴力低下、見当識障害、記憶障害、末梢神経障害、またはこれらの組合せ)を引き起こすことがある。一部のそのような実施形態において、第2の時間帯に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後にモニターされた血漿PAAレベルに基づいて低減される。一部のさらなる実施形態において、血漿PAAレベルは、測定時に定常状態(例えば、注入中)のものである。一部の実施形態において、第2の時間帯に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量(すなわち、第2の量)は、本明細書に記載されている標準的な第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩(例えば、15g)と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。一部のさらなる実施形態において、第3の時間帯に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の量(すなわち、第3の量)も、本明細書に記載されている標準的な第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩(例えば、15g/24時間)と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。
【0054】
あるいは、方法は、以下のステップ:高アンモニア血症の治療が必要な患者の体重もしくは身体サイズを決定する、または体重もしくは身体サイズについての情報を受け取るステップ、対象の体重または身体サイズが標準体重または身体サイズを有意に下回る場合、第1の時間帯に患者に投与されるオルニチンフェニル酢酸塩の第1の量を調整するステップ、を含んでもよい。方法は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与後に、患者においてフェニル酢酸の血漿濃度をモニターすることをさらに含んでもよい。一部のそのような実施形態において、対象の体重または身体サイズは、対象が未成年の子供または乳幼児である場合、標準体重または身体サイズを有意に下回ることもある。一部の他の実施形態において、対象の体重または身体サイズは、対象が低体重である、または非常に低いBMIを有する(例えば、典型的な70kgの成人より少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、または50%少ない体重またはサイズを有する)場合、標準体重または身体サイズを有意に下回ることもある。一部のそのような実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、本明細書に記載されている標準的な第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩(例えば、約20g)と比較して、約25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減される。一部のさらなる実施形態において、第2および第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩も、本明細書に記載されている標準的な第2および第3の量(例えば、第2および第3の量の両方とも15g)のオルニチンフェニル酢酸塩より、第1の量について上記に記載されたパーセンテージと同様の、または同じパーセンテージで低減される。
【0055】
血清アンモニア分析の評価に基づいて様々な用量のオルニチンフェニル酢酸塩により患者を治療する方法
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、急性または慢性の肝疾患または状態を有する、または有するリスクのある患者を特定または選択すること、患者の血清アンモニアレベルを測定する、または血清アンモニアレベルについての情報を受け取ること、および第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を患者に投与することを含む方法に関する。一部の実施形態において、血清アンモニアレベルは、ほぼ正常値上限(ULN)である、または正常値上限(ULN)をほぼ超えるものである。一部の実施形態において、血清アンモニアレベルは、約15μmol/L、16μmol/L、17μmol/L、18μmol/L、19μmol/L、20μmol/L、21μmol/L、25μmol/L、30μmol/L、35μmol/L、40μmol/L、45μmol/L、50μmol/L、60μmol/L、70μmol/L、80μmol/L、90μmol/L、100μmol/L、120μmol/L、140μmol/L、160μmol/L、180μmol/Lもしくは200μmol/L、またはこれらをほぼ超えるもの、あるいは前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。一部の実施形態において、患者は硬変を患っている、または硬変のリスクがある。一実施形態において、硬変を患っている患者の血清アンモニアレベルは、患者が肝性脳症のリスクがある場合、または肝性脳症の少なくとも1つのエピソードを患ったことがある場合、≧21μmol/Lである。
【0056】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、方法は第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩を患者に投与する前に、患者の血中アンモニアレベルを測定することをさらに含んでもよい。一部の場合において、患者の血清アンモニアレベルは正常レベルを上回る。一実施形態において、患者の血清アンモニアレベルは≧21μmol/Lである。
【0057】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、患者は、また、標準治療(standard of care)も受け、例えば、患者はリファキシミンを伴って、または伴うことなくラクツロースを受ける。
【0058】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、患者は硬変を有する。一部の場合において、患者は、肝性脳症のリスクがある、または肝性脳症(HE)の少なくとも1つのエピソードを、例えば硬変の合併症として顕性HE(肝性脳症ステージ分けツール(HEST)により定義して、ステージ2、3、または4)を患ったことがある。一部の場合において、患者は1つまたは複数の肝性脳症エピソードが原因で入院することもある。一部のそのような場合において、患者は、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩の投与前に、少なくとも4時間~6時間の標準治療を受けている。
【0059】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、オルニチンフェニル酢酸塩はL-オルニチンフェニル酢酸塩である。
【0060】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、第1、第2、および第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩のうちの少なくとも1つは、約100mg/mL~約500mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を含む水溶液として投与される。一部の実施形態において、第1、第2、および第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩のそれぞれは、約200mg/mL~約400mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を含む水溶液として投与される。一実施形態において、第1、第2、および第3の量のオルニチンフェニル酢酸塩のそれぞれは、約300mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を含む水溶液として投与される。一部のそのような実施形態において、オルニチンフェニル酢酸塩の水溶液は、少なくとも約5のpH、例えば、約5.4~約6.5のpH範囲を有する。一部の実施形態において、オルニチンフェニル酢酸塩の水溶液は、投与前に、約2℃~約8℃(例えば、5℃)の温度で保存される。
【0061】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、オルニチンフェニル酢酸塩は静脈内注入により投与されうる。一部のさらなる実施形態において、オルニチンフェニル酢酸塩は、連続静脈内注入により投与される。一部の実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約6時間かけて連続静脈内注入により投与され、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は、約18時間かけて連続静脈内注入により投与され、第3量のオルニチンフェニル酢酸塩は、1、2、3、4、または5日間(24、48、72、96、または120時間)かけて連続静脈内注入により投与される。一部の実施形態において、第1の量のオルニチンフェニル酢酸塩は約20gであり、約6時間かけて連続静脈内注入により投与され、第2の量のオルニチンフェニル酢酸塩は約15gであり、約18時間かけて連続静脈内注入により投与され、第3量のオルニチンフェニル酢酸塩は約15g/24時間であり、3または4日間(72または96時間)かけて連続静脈内注入により投与される。オルニチンフェニル酢酸塩の静脈内注入の時間および/または量は、対象が有害事象、例えば、上昇した血漿フェニル酢酸レベルが原因の有害事象を有する場合に低減されうる。一部の実施形態において、患者は、本明細書に記載されているように、重症の腎障害、肝障害、または低体重を有する。
【0062】
オルニチンフェニル酢酸塩の製剤および調製方法
本開示の追加の実施形態は、オルニチンフェニル酢酸塩の水溶液を含む医薬製剤に関する。一部の実施形態において、水溶液は、約100mg/mL、125mg/mL、150mg/mL、175mg/mL、200mg/mL、225mg/mL、250mg/mL、275mg/mL、300mg/mL、325mg/mL、350mg/mL、375mg/mL、400mg/mL、425mg/mL、450mg/mLもしくは500mg/mL、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲の濃度のオルニチンフェニル酢酸塩を有する。例えば、一部の実施形態において、水溶液は約200~400mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を有する。一実施形態において、水溶液は約300mg/mLのオルニチンフェニル酢酸塩を有する。一部の実施形態において医薬製剤は、少なくとも1種のpH調整剤をさらに含む。一部のそのような実施形態において、pH調整剤は、塩酸(HCl)、クエン酸、もしくは医薬製剤に適した任意の水溶性の酸性pH調整剤、またはこれらの組合せである。一実施形態において、pH調整剤はHClである。一部の実施形態において、水溶液は、少なくとも約4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9もしくは7、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲のpHを有する。例えば、一部の実施形態において、水溶液は約5.4~約6.5のpH範囲を有する。一部の実施形態において、医薬製剤は室温で保存される。他の実施形態において、医薬製剤は、約-5℃、0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃もしくは15℃の温度、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲で保存される。例えば、一部の実施形態において、医薬製剤は約2℃~8℃の温度で保存される。一実施形態において、医薬製剤は、投与前に約5℃で保存される。一部のさらなる実施形態において、医薬製剤は、約2℃~8℃(例えば、5℃)の温度で5.4~6.5のpH範囲(例えば、pH=5.5)を有する。
【0063】
pH範囲の選択は、オルニチンフェニル酢酸塩が長期保存の間(例えば、約2℃~8℃)で水溶液に沈殿するのを有利に予防することができる。水溶液のpHが5.4から5.3、5.2、5.1、または5に減少する場合、水溶液が約5℃で保存されると、12日後に様々な量の結晶形態のオルニチンフェニル酢酸塩が水溶液に沈殿することが観察されている。加えて、pHは、また、L-オルニチンのラクタム不純物である3-アミノ-2-ピペリドンの形成の主な推進要因でもある。ラクタムの形成は、安定性研究の加速温度条件下において、低いpH値で遅くなったことが観察された。一部の実施形態において、本明細書に記載されているオルニチンフェニル酢酸塩の水溶液は、約2℃~8℃の温度で少なくとも2週間、4週間、2か月間、3か月間、6か月間、または9か月間保存された場合、約5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%未満のオルニチンフェニル酢酸塩沈殿物を有する。一部の実施形態において、本明細書に記載されているオルニチンフェニル酢酸塩の水溶液は、約2℃~約8℃の範囲の保存温度で、3、6、または9か月間まで、約0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%、0.1重量%、0.09重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、または0.01重量%未満のラクタム不純物である3-アミノ-2-ピペリドンを含む。一部のさらなる実施形態において、本明細書に記載されているオルニチンフェニル酢酸塩の水溶液は、約2℃~約8℃の範囲(例えば、5℃)の保存温度で、6か月間まで、約0.05重量%以下のラクタム不純物である3-アミノ-2-ピペリドンを含む。
【0064】
一部の実施形態において、医薬製剤は、オルニチンフェニル酢酸塩を水溶液に溶解することによって調製される。一部のそのような実施形態において、オルニチンフェニル酢酸塩はL-オルニチンフェニル酢酸塩である。一部のさらなる実施形態において、L-オルニチンフェニル酢酸塩は、結晶形態であり、例えば、その全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第2010/0280119号明細書に開示されている形態II、形態I、または形態IIIである。形態IIのL-オルニチンフェニル酢酸塩は、およそ6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°の2θからなる群から選択される少なくとも3つの特徴的ピークを含む、X線粉末回折パターンを有する。形態IのL-オルニチンフェニル酢酸塩は、およそ5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°の2θからなる群から選択される少なくとも3つの特徴的ピークを含む、X線粉末回折パターンを有する。形態IIIのL-オルニチンフェニル酢酸塩は、およそ4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°の2θからなる群から選択される少なくとも3つの特徴的ピークを含む、X線粉末回折パターンを有する。一部の実施形態において、方法は、少なくとも1種のpH調整剤を水溶液に添加することをさらに含む。一部の実施形態において、方法は、水溶液を冷却することをさらに含んでもよい。
【0065】
オルニチンフェニル酢酸塩の医薬製剤は、高アンモニア血症を治療する、または寛解させるための、本明細書に記載されている方法または使用のいずれかに使用することができる。
【0066】
HESTおよびO-HEST
以下のツールは、HEまたは顕性HEを患っている患者の診断に使用することができる。表A~CはHESTであり、表DはO-HESTである。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
OHESTを使用する場合、OHEST文書化のための情報源(例えば、臨床医の観察、介護者からの情報、外部の医療専門家の観察、診療録の審査、または仮想来診など)を確認する必要がある。精神変容状態(altered mental status)の他の潜在的原因(例えば、アルコール中毒、睡眠不足)は、OHE事象を確証する前に合理的に除外されなければならない。一部の場合において、臨床知見は、OHE事象が考慮されるために少なくとも1時間にわたって存在するべきである。
【0071】
【表4】
【0072】
患者が、4つの「時」の質問の2つ以上に間違って答える場合、患者は、時に関して見当識障害があると考慮され、OHE事象を有すると文書化される。患者が、4つの「場所」の質問の1つまたは複数に間違って答える場合、患者は、場所に関して見当識障害があると考慮され、OHE事象を有すると文書化される。場所に関して見当識障害がある人(典型的には、時に関する見当識障害より重篤であると見なされる)は、一般に、時に関してすでに見当識障害がある。患者が、「注意力があり、応答性がある」または「眠そうであるが、応答性がある」のいずれかであると確認される場合、OHE事象は、患者が時または場所のいずれかに関して見当識障害がある場合にのみ発生する。より重篤なステージの肝性脳症(すなわち、ステージ3または4)を経験している患者は、あらゆる意味のある会話をする、または見当識の質問に応答できる可能性が低い。したがって、これらの患者は、主に意識レベル(「重篤な眠気、嗜眠もしくは傾眠」、「昏迷」、または「昏睡」)に基づいて、OHE事象を有すると文書化される。OHESTは、HE重症度の決定において、羽ばたき振戦の存在または非存在に依存しない。
【0073】
多数および様々な変更を本発明の精神から逸脱することなく行うことができることを、当業者は理解する。したがって、本開示の実施形態は、例示のためだけであり、本発明の範囲を制限することを意図しないことが、明確に理解されるべきである。本明細書に参照される任意の参考文献は、本明細書に考察される材料として、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例
【0074】
以下の実施例は、非限定的であり、本開示の様々な態様の単なる代表例である。

[実施例1]
肝性脳症のエピソードに関連する硬変および高アンモニア血症を有する入院患者において、LOPA(L-オルニチンフェニル酢酸塩の静脈内製剤)の有効性、安全性、および耐性を評価するための、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験。
【0075】
目的および終点
下記に列挙されている第1の目的および終点を、高アンモニア血症に関連する顕性HEのエピソードを経験している硬変の入院患者において、プラセボ+SoCと比べてLOPA+標準治療(SoC)により評価する。
【0076】
【表5】
【0077】
確証された臨床応答までの時間、および完全応答までの時間は、患者が十分に改善されない場合に測定された最終的な時点で打ち切られる。しかし、死亡または肝移植の場合、この時間は終点の時間枠の終了前に打ち切られず、それは、患者が全体を通して改善されないことが分かっているからである。
【0078】
下記に列挙されている主な第2および他の第2の目的および終点を、高アンモニア血症に関連する顕性HEのエピソードを経験している硬変の入院患者において、LOPA+SoC対プラセボ+SoCにより以下のように評価する。
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
試験設計
これは、2つの並行群による無作為化プラセボ対照二重盲検多施設優位第3相試験である。およそ400人の患者が、世界中のおよそ150箇所の試験場に登録する計画である。この試験には、硬変の合併症として、高アンモニア血症に関連する(肝性脳症ステージ分けツール[HEST]によりステージ2、3または4と評価された)顕性HEのエピソードを経験している入院患者が登録する。患者を2つの治療群の1つに無作為化する。
1.LOPA+SoC。
2.プラセボ+SoC。
【0083】
患者を、3つの要因に従って無作為層別化する対話型電話/ウエブ応答システム(IXRS)を使用して、治療群に1:1比で割り当てる。
・リファキシミンの使用(あり対なし)。
・HESTステージ2対HESTステージ3およびステージ4。
・チャイルド・ピュー分類(C-P)の分類C対AおよびB。
【0084】
顕性HEの標準治療(SoC)としてラクツロース±リファキシミンの治療は、研究者の臨床判断および通常の医療施設診療に従って投与されるべきである。患者は、医療状態および通常の臨床トリアージに従って病院のいずれかの場所に配置されうる(すなわち、患者は、この試験に参加するために特定のユニット、例えば集中治療室に、配置される必要はなく、救急部門を含む任意の入院設定が受け入れられる)。
【0085】
患者の50%までが、SoCの一部としてリファキシミンを受けることが許容される。リファキシミン包含の条件は、以下の通りである。
・スクリーニングの10日以内にリファキシミン治療を開始した、またはリファキシミン治療に変更した患者は、除外される。
・スクリーニング前の10日以内にリファキシミンの投与を全く受けなかった患者は、HEの治療の一部としてリファキシミンを始めることができる。これらの患者では、リファキシミンを試験治療の1日目の開始と同時に始めるべきである。
【0086】
独立データ安全性モニタリング委員会(Independent data and safety monitoring board)(IDSMB)は、およそ10%(±40)の患者が治療を完了したとき、または最初の患者が登録してから約6か月間経過したときのいずれか早いほうの場合、非盲検安全性データおよびPAA/PAGN濃度、神経学的検査、アンモニア濃度、ならびに有害事象(AE)(中枢神経系(CNS)のAEを含む)を審査する。
【0087】
2回目の審査は、最初の年のおよそ6か月後に行われてもよい。IDSMBは、治験依頼者(sponsor)の要請によって、またはIDSMBが決定して、毎年の追加の登録患者についての安全性データをモニターし続ける。
【0088】
試験は、以下の試験期間を含む。
【0089】
スクリーニング/無作為化/ベースライン期間。顕性HEを有すると診断された患者が、ラクツロース±リファキシミンのSoC治療を最低6時間受けた後(ただし、用量は、スクリーニング前の10日以内に開始されず、変更もされないことが条件である)、書面によるインフォームドコンセントから始めて、スクリーニング作業を開始してもよい。スクリーニングおよびベースライン評価は、患者が試験治療を可能な限り早く、顕性HEの診断時からおよそ24時間以内に受け始めることができるように、可能な限り迅速に完了されるべきである。スクリーニング中に、評価および手順を実施し、情報を収集して、試験の適格性を決定し、患者のベースライン情報を確立する。すべてのスクリーニング手順が完了した後、患者を治療のために無作為化する。
【0090】
治療期間。患者は1:1に無作為化されて、LOPA+SoCまたはプラセボ+SoCのいずれかを5日間(120時間)まで受ける。以下の投薬レジメンがこの試験のために計画される。
・最初の24時間の治療(0~24時間未満)
初期投薬(LD):20gのLOPA+SoCまたはプラセボ+SoCを含有する6時間のIV注入(0~6時間)。
中間投薬:最初のLDの直後に、15gのLOPA+SoCまたはプラセボ+SoCを含有する18時間のIV注入(6~24時間)。
・治療の残り(24時間以上~120時間以下)
維持投薬:15gのLOPA+SoCまたはプラセボ+SoCを24時間当たり15gの速度の連続IV注入で4日間まで(24時間~120時間まで)。
【0091】
注入開始時間は0時間(1日目)であり、120時間(5日目)まで続く。治療期間は、有効性、安全性、およびPKの評価を含む。注入は、退院の少なくとも3時間前に停止させなければならない。したがって、連続試験治療の5日目(120時間)の前に(医学的に適切であれば)退院する患者は、完全な120時間の意図される治療を受けないことになる。治療終了時(EOT)評価は、最後の注入の終了後に実施される。最後の評価は、最後の注入の終了後の3時間以内(±1時間)に実施されるべきである。すべての患者は、治療終了時(EOT)評価を完成することが予測される(完全な120時間の意図される治療を受けなかった患者も含まれる)。
【0092】
安全性のために、患者が試験薬物治療を受けている間は、静脈血中アンモニア濃度およびPAA濃度がモニターされる。独立した非盲検医療監視員(independent unblinded medical monitor)は、PAAおよびアンモニア濃度データを継続的にレビューする。独立した非盲検医療監視員は、安全性モニタリング計画(Safety Monitoring Plans)に概説されたように、IDSMBと特別安全性審査会議を開催する必要がある治験依頼者に通知することがある。
【0093】
治療終了時(EOT)までに臨床応答を達成した、チャイルド・ピュー分類の分類AまたはBを有する最低216人の患者は、85%の検出力を達成するために一次分析を必要とし、したがって、チャイルド・ピュー分類の分類AまたはBを有する少なくとも360人(1群当たり180人)の患者の登録が、この試験には予期される。チャイルド・ピュー分類の分類Cを有する追加の40人までの患者も、この患者母集団における試験治療の安全性および有効性を探究するために登録される。この試験の合計試料サイズは400人と推定されるが、試験は、216の臨床事象がチャイルド・ピュー分類AおよびB母集団に観察されるまで、400人を超えて登録し続ける。
【0094】
最初の患者の最初の来診から最後の患者の最後の来診までの試験継続期間は、適格な患者を確認および登録する試験場所の能力によって左右される。試験全体は、最初の患者が無作為化される時間から完了するまでおよそ30~36か月間を必要とすると予測される。
【0095】
追跡期間。EOT評価が完了した後、患者は、この試験の30日間までの追跡(F/U)期間に入る。F/U期間は、安全性評価を含む。すべての患者は、2回のF/U来診のために試験場所に戻り、これは、14日目(±2日)および30日目(±2日)に行われる。
【0096】
最終EOI後に24時間以上にわたって依然として入院している患者では、適切であれば、追加の安全性および有効性評価を、最終EOIの24時間後および退院前の時点の2つの時点で実施する。
【0097】
患者は、合計でおよそ5週間まで試験に参加することができる。患者の試験参加は、最後の追跡評価が完了した後に完了したと考慮される。試験は、24時間までのスクリーニング/ベースライン/無作為化期間、5日治療期間(120時間またはEOTまで)、および30日追跡(F/U)期間を含む。
【0098】
包含基準
スクリーニング期間中(下記に示されているものを除く)に、それぞれの患者は、この試験に登録するために以下の基準をすべて満たさなければならない。
1.患者または介護者による書面のインフォームドコンセントを、あらゆるスクリーニング評価が実施される前に入手しなければならない。患者または介護者は、試験の性質およびリスクを適切に知らされ、理解しなければならない。同意が患者により書面で表すことができない場合、介護者または適切な法定代理人は、地方条例に従って、参加する患者のために同意書を提出しなければならない。
2.スクリーニングの来診時に年齢が18歳以上かつ80歳以下であり、男性または女性でありうる。
3.既知の、または明らかな肝硬変。肝硬変の診断は、以下の1つまたは複数が含まれる、臨床的、放射線学的、および/または組織学的基準に基づいたものでありうる。
a.肝生検の以前の組織学的診断、例えば、3を超えるMetavirスコア(3/4または3~4を含む)、4を超えるIshakスコア、あるいは
b.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ>アラニンアミノトランスフェラーゼ(すなわち、AST>ALT)、血小板数<15,000、およびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたは磁気共鳴画像法(MRI)による結節性肝表面として定義される、硬変の臨床的証拠、あるいは、
c.内視鏡検査による現在の食道胃静脈瘤もしくはその病歴、門脈体静脈側枝(portosystemic collateral)の証拠(造影CTもしくは造影剤を用いるMRIによる)、および/または腹水の存在に基づいた、著しい門脈圧亢進症の臨床的証拠、あるいは、
d.硬変と一致するトランジエントエラストグラフィー、すなわち、13.0kPaを超える結果。
4.硬変の合併症として顕性HEのエピソードを経験している入院患者。適格な患者は、すでに入院している(おそらくは、無関係の診断によって)、または救急部門から入院を待っていることもありうることに留意すること。
5.地域の研究室で、上昇した静脈血中アンモニア濃度>ULNと定義された、スクリーニング時の高アンモニア血症。
6.妊娠可能な女性(women of childbearing potential)(WOCBP)はスクリーニング時に陰性の尿妊娠検査を受けなければならない。血清妊娠検査は、尿妊娠検査の結果が陽性である場合、妊娠を確証するために実施され、確証は、試験薬物に無作為化される前に入手されなければならない。
7.無作為化前のHEST評価を含む、スクリーニング期間の全体にわたってステージ2以上(HEST)と定義される、顕性HEエピソード。
注:スクリーニング期間の終了時に、HEのSoC治療としてラクツロース(治療が顕性HE診断前の10日以内に開始または変更されない場合は、±リファキシミン)を、適宜少なくとも6時間+最大2時間にわたって受けているにもかかわらず、HESTはスクリーニング手順中および無作為化前の評価時にステージ2以上のままで、患者は依然として明らかに顕性脳症であること。
8.末期肝疾患モデル(Model for End stage Liver Disease)(MELD)スコア≦25。
【0099】
除外基準
以下の基準のいずれかを(下記に示されたものを除いて、スクリーニング期間中に)満たす患者は、試験から除外される。
1.臨床場所の従業員(臨時、非常勤、常勤など)である、または試験を行っている研究職員の家族、もしくは治験依頼者の家族、もしくは契約研究機関の家族、もしくは施設内審査委員会(institutional review board)(IRB)/独立倫理委員会(independent ethics committee)(IEC)の家族である。
2.5週間未満の平均余命を有する。悪性腫瘍(例えば、肝細胞癌)を有する患者は、この平均余命を超える場合、除外される必要はない。
3.血中ナトリウムレベル≦125mmol/Lと定義される、低ナトリウム血症を有する。
4.スクリーニング時に重症の腎障害、末期腎疾患、または急性腎不全を有する。患者は、以下の基準のどちらかを満たす場合に試験から除外されなければならない。
・eGFR≦30mL/分/1.73m
・腎不全のために任意の方法の血液濾過(例えば、血液透析、腹膜透析、持続的静脈血液濾過)を必要とする。
注:eGFR≦30mL/分/1.73mの患者は、この母集団における継続試験の結果が適切であると示された後でのみ、治験依頼者の試験医療監視員の承認によって、参加することができる。
5.ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)分類3または分類4のうっ血性心不全、またはうっ血性心不全の顕性臨床兆候を有する。
6.人工呼吸を必要とする患者は、挿管が選択肢であり、重症のHEが原因で(すなわち、誤嚥を予防するために)気道を保護するのみであり、継続的鎮静の必要がない場合に登録が容認されうる。24時間未満であることが予期されている、特定の手順または介入のための鎮静用の一時的な挿管は容認される。呼吸不全または重症の肺炎のために挿管を必要とする患者を除外する意図によって、以下の設定の人工呼吸器の使用は、患者を不適格にする。
・吸入酸素濃度(Fraction of inspired oxygen)(FiO2)>0.5(>50%の酸素)。
・終末呼気陽圧(PEEP)>10cmH2O(水)。
注:持続的気道陽圧法は容認される。
7.残存性認知後遺症(residual cognitive sequelae)を伴う以前の脳血管発作の病歴を有する。
8.HESTを使用したHEの評価を妨げる統合失調症、認知症、または他の重症の精神障害を有する。
9.急性アルコールまたは薬物中毒による来院(アルコールが原因のアルコール性肝疾患/硬変を有するが、現在は酩酊状態ではない患者は許容される)。酩酊患者、および直前の病歴によって、全体的な臨床評価によって、または血中アルコールレベル≧1.6g/L(0.16%w/v、160mg/dL、34.74mmol/L)である、来院時に急性アルコール作用を有するものは、スクリーニング期間に血中アルコールレベルが検出不能レベルに戻らない限り、および急性禁断症状またはアルコール関連脳症の兆候がない限り、除外される。スクリーニングまたはベースラインのどちらかにおいて重篤なアルコール禁断症状を有する患者は、除外される。
10.胃腸出血を有する患者は、以下のいずれかかがスクリーニング時に発生する場合に除外される。
・激しく、制御不能な胃腸出血のために継続的輸血が必要である、および/または
・研究者が、患者が胃腸出血により死亡する可能性を考慮する。
注:門脈圧亢進症性胃疾患のみが原因の出血を有する患者は登録されうるが、上記に特定された除外基準10番を満たさないことが条件である。経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を有する患者は、この試験に容認される。
11.以下のいずれかを満たすと定義される、血行動態不安定を有する。
・平均動脈圧<60mmHg、
・不十分な臓器灌流の証拠がある、または
・血圧を維持する2種以上の昇圧薬を使用する。
注:この母集団に特異的な複雑な血管力学的問題(例えば静脈瘤出血、腎灌流)に対処するためのテルリプレシン、バソプレシン(および類似体)、ならびにオクトレオチド(およびソマトスタチン類似体)の使用は容認される。しかし、2種以上の昇圧薬が、ショックおよび後遺症が示唆される不安定な平均動脈圧の血行動態維持のために与えられる場合、患者は除外される。
12.PAGNの腎排泄を妨げることが知られている薬物、例えば、プロベネシドの同時投与。
13.分子吸着剤再循環システム(Molecular Adsorbent Recirculating System )(MARS)の使用。
14.以下のいずれかを現在受けている、または患者が受けると予測される。L-オルニチンL-アスパラギン酸塩(LOLA/Hepa Merz(登録商標))、安息香酸ナトリウム、Ammonul(登録商標)、フェニル酪酸ナトリウム(Buphenyl(登録商標))、フェニル酪酸グリセロール(Ravicti(登録商標))、またはセクション6.5.2に従って禁止されている他の服薬/療法(例えば、鎮静薬、高アンモニア血症を引き起こす薬物)。
15.試行の全体にわたって、参加が許される前の30日以内に別の介入的調査実験用装置、または新規薬物臨床試験への参加。確立された服薬(HE用ではない)または新たな技術の試行は、医療監視員により事例ごとに審査されなければならない。
注:観察試験は許容される。
16.肝移植の最優先候補者としてリストに挙げられている、すなわち、全米臓器配分ネットワーク(United Network for Organ Sharing)の定義に従って「ステータス1」である、または、5日以内に差し迫った肝移植があることを研究者が予期する患者。
17.以前の移植レシピエントである(実質臓器、骨髄、または幹細胞)。
18.不可逆性の脳損傷、大量誤嚥性肺炎、および/または研究者により決定される精神変容状態の原因である非肝性脳症、すなわち、敗血症を有する。
19.ORN、PAA、またはLOPAの任意の構成成分に対する既知の、または推定される過敏症またはアレルギー反応を有する。
20.女性の場合、妊娠している、または母乳で育てている。
21.任意の他の臨床的に有意な疾患、障害、または検査所見の異常(laboratory abnormality)、あるいは研究者の意見では、試験への参加が原因で患者にリスクを負わせるかもしれない、または試験の結果に、もしくは患者が試験を完了する能力に影響を及ぼすかもしれない状況を有する。
22.スクリーニング来診時に以下の検査所見の異常のいずれかを有する。
・ヘモグロビンが8.0g/dL以下である。
・血小板数が25,000細胞/μL以下である。
・絶対好中球数が1000細胞/μL以下である。
23.患者は、スクリーニングの10日以内にリファキシミン治療を開始している、またはその用量を変更している。
【0100】
[実施例2]
異なる亜集団におけるフェニル酢酸(PAA)およびフェニルアセチルグルタミン(PAGN)の曝露、およびそれらの有害事象との相関関係
この実施例は、健康な対象および様々な程度の硬変を有する対象の両方における、L-オルニチンフェニル酢酸塩(LOPA)の静脈内投与による様々な臨床試験をまとめる。
【0101】
臨床試験および分析方法
5つの臨床試験のPKおよびAEデータを下記に記載する。
【0102】
試験1:LOPAの2つの静脈内投与用量、(a)単回上昇用量(SAD)および(b)多回上昇用量(MAD)を健康な対象に投与した。SADの試験用量は、4時間の注入による1g、10g、20gおよび30g、ならびに24時間の注入による30g、40gおよび60gであった。MADの試験用量は、24時間の注入により5日間投与した1g、3g、10gおよび20gであった。
【0103】
試験2:SAD試験は、安定した硬変[チャイルド・ピュー分類A(C-P A)、n=31、チャイルド・ピュー分類B(C-P B)、n=12]を有する患者に実施して、LOPAの耐容性およびPKを評価した。4時間の静脈内注入による1g、3g、10gおよび20gの用量、ならびに24時間の静脈内注入による30g、40gおよび60gの用量を試験した。
【0104】
試験3:肝硬変(C-P A、n=3、C-P B、n=66、C-P C、n=132)、高アンモニア血症、およびHEの急性エピソードを有する入院患者において、LOPAの安全性、PK、および有効性を評価する第2b相プラセボ対照無作為化二重盲検臨床試験を実施した。LOPAまたはプラセボのどちらかを、連続静脈内投与として、標準治療と一緒に5日間まで患者に投与した。投与量は、肝臓合成門脈元素(hepatic synthetic and portal element)のベースライン計算に従い、4~6ポイント:20g/24時間、7~9ポイント、15g/24時間、および10~12ポイント、10g/24時間であった。
【0105】
試験4:非盲検試験は、健康な中国人漢民族および日本人対象においてLOPAのPKおよび安全性を評価した。この試験のために選択された用量は、24時間の静脈内注入による20gであった。
【0106】
試験5:非盲検試験は、重症の腎障害を有する成人へのLOPAの静脈内投与の後、PKおよび安全性について評価した。重症の腎障害を有する7人の対象、および正常な腎機能を有し、年齢、性別および体重が適合している7人の対象が参加し、両群において男性5人および女性2人が参加した。平均年齢および体重が正常な腎機能群と重症の腎障害群で類似していた(それぞれ、62歳対59.1歳、および87.7kg対84.8kg)。正常な腎機能(ベースラインのCLcr≧90mL/分)を有する対象は、15g/24時間の単回IV注入を受け、重症の腎機能障害(ベースラインのeGFRが15~29mL/分/1.73m)を有する対象は、低減された用量の7g/24時間を受けた。
【0107】
薬物動態分析
ORN、PAAおよびPAGNの完全PKプロファイルを得るために、豊富な血液試料を試験1、2、4および5において収集し、低密度のPK試料のみを試験3から収集した。ORN、PAA、PAGNの血漿濃度、およびPAGNの尿中濃度を、検証済LC-MS/MS法を使用して測定した。
【0108】
ノンコンパートメント分析(non-compartmental analysis)および母集団PK分析の両方を実施して、PAA、ORNおよびPAGNのPKに起用する要因を確認した。PAAのPKにおける民族的要因を、試験1および4の白人、中国人および日本人の健康な対象からのPKデータを使用して探索した。PAAのPKにおける肝機能不全を、試験2および3の患者からのPKデータを使用して調査した。PAAおよびPAGN血漿曝露における腎機能不全を、試験2、3および5からのPKデータを使用して探索した。
【0109】
有害事象の評価
有害事象(AE)を評価し、医薬品規制用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA)の好ましい用語および器官別大分類(system organ class)を使用してコード化した。LOPAの特に注目すべきAE(AESI)には、傾眠、疲労、意識朦朧、頭痛、味覚異常、聴力低下、見当識障害、記憶障害、および末梢神経障害が含まれた。
【0110】
AEとPAA/PAGN曝露との関係性
中枢神経系(CNS)AEとPAA曝露との潜在的な相関関係の評価を、試験1~3のデータで実施した。最初に報告された薬物関連CNSのAEが分析に含まれた。そのようなCNSのAEのそれぞれにおいて、2つのPAA濃度が、AEの発症時点およびPAA評価の時点に基づいて確認され、(1)AEの発症前に一番近いPAA濃度、および(2)AEの発症後に一番近いPAA濃度であった。すべての時点を試験薬物注入開始に対して計算した。
【0111】
腎機能不全は、PAGN血漿濃度を上昇させることが予測される。重症の腎障害を有する対象からのAEデータをまとめた。加えて、試験3のクレアチンクリアランス(CLcr)≦35mL/分およびCLcr>35mL/分を有する患者間において、PAA、PAGN血漿濃度、血漿循環中のアンモニアレベルの低減、およびAEの比較を実施した。35mL/分のCLcrをカットオフ値として選択して、相対的に悪い腎機能を有する群の相対的に十分な試料サイズを得た。
【0112】
結果
PAAの薬物動態
PAAは、健康な対象および安定した硬変を有する対象の両方において、10g/4時間から、または20g/24時間までのCmaxおよびAUCの両方に、用量比例増加よりも大きな非線形PKを実証した。PAAの半減期の幾何平均は、用量を3g/4時間から30g/4時間に増加すると、0.65時間から5.99時間に増加し、用量を30g/24時間から60g/24時間に増加すると、1.25時間から4.09時間に増加した。PAGNの血漿濃度は、PAAピーク濃度と比較してわずかに遅れてピークに達し、PAGNの迅速な形成が確証された。PAGNの尿中回収は、等用量が4時間または24時間の注入で投与された場合に類似していた。尿中に不変化合物として回収されたPAAは、PAAの投与用量の<1%を占めた。
【0113】
PAA血漿曝露は、健康な白人、中国人および日本人の対象の間に目立った差を示した。肝障害もPAA血漿曝露を変えた。PAA血漿曝露が寄与する要因を確認するため、母集団PKモデル化を実施した。PAAからのPAGNの形成を記載するミカエリスメンテン速度式(Michaelis-Menten kinetics)の1コンパートメントモデルは、健康な対象および患者においてPAA血漿濃度プロファイルを適切に定量化した。体重は、健康な対象および患者の両方において、PAAのPKの有意な共変数と確認された。PAAのPKにおける他の要因、例えば、民族性および肝/腎障害が下記に記載される。
【0114】
PAAのPKにおける肝および腎機能不全
試験3の様々な肝機能不全を有する患者に観察された定常状態PAA濃度は、定常状態(注入期間中)の血漿PAA濃度が、15g/24時間の投与後のチャイルド・ピュー分類B(C-P B)患者より、チャイルド・ピュー分類C(C-P C)患者においておよそ35%高いことを明らかにした。患者母集団(試験2および3)に実施された母集団PKモデル化は、体重に加えて、肝障害がPAA血漿曝露を変更する別の有意な共変数であることを確証した。したがって、同じ体重の患者で比べると、チャイルド・ピュー分類Cの患者は、チャイルド・ピュー分類Bの患者より36%高くPAAに定常状態で曝露される。PAAのPKにおける軽症、中等症、または重症の腎機能不全を、試験2、3および5のデータセットにより母集団PK分析を介して評価した。腎機能不全は、PAAの曝露に大した影響を与えなかった。試験5において、平均用量正規化PAA曝露(CmaxおよびAUC)は、正常な腎機能を有する対象では、それぞれ2.61μg/mL/gおよび54.9μg・時間/mL/gであり、重症の腎機能障害を有する対象では、それぞれ1.58μg/mL/gおよび45.4μg・時間/mL/gであった。加えてORN曝露(CmaxおよびAUC0-inf)に修正された平均用量正規化ベースラインは、正常な腎機能を有する対象のほうが、重症の腎機能障害を有する対象より低かった(それぞれ、2.09μg/mL/gおよび64.1μg・時間/mL/g対2.28μg/mL/gおよび80.3μg・時間/mL/g)。
【0115】
PAGNが尿によりほぼ100%排泄されるので、腎機能不全は、PAGN血漿曝露を増加させると予測される。重症の腎障害試験では、用量を重症の腎障害群で53%低減したが、PAGN血漿曝露(CmaxおよびAUC)は、正常な腎機能群よりはるかに高かった。具体的には、平均用量正規化PAGN曝露(CmaxおよびAUC)は、正常な腎機能を有する対象のほうが、重症の腎機能障害を有する対象と比較して低かった(それぞれ、3.35μg/mL/gおよび69.9μg・時間/mL/g対16.1μg/mL/gおよび383μg・時間/mL/g)。24.5L/時間の腎クリアランスを有する正常な腎機能の対象と比較して、重症の腎障害対象のPAGNの平均腎クリアランスは実質的に低く、約4.66L/時間であった。試験3において、ベースラインの最低クレアチニンクリアランスは28.7mL/分であった。28.7~35mL/分のベースラインクレアチニンクリアランスを有する対象が9人いた。これらの9人の対象のうち、6人がチャイルド・ピュー分類スコアCを有し、2人がチャイルド・ピュー分類スコアBを有し、1人がチャイルド・ピュー分類スコアAを有した。この部分群におけるC-P C患者の分布(67%)は、ベースラインクレアチニンクリアランスが>35mL/分の部分群(66%)と類似していた。
【0116】
図1は、試験2、3、および5の35mL/分を超えるベースラインクレアチニンクリアランスレベルを有する群(d、eおよびf)と比較した、35mL/分未満のベースラインクレアチニンクリアランスレベルを有する腎障害群(a、bおよびc)における、観察されたPAA、PAGN、およびアンモニアの血漿曝露を示す。結果は、2つの群間でPAA血漿濃度に差が観察されなかったことを示唆している。しかし、PAGNの血漿曝露は明らかに高く、CLcr≦35mL/分を有する患者における連続的な蓄積を示した。PAGN血漿曝露が上昇したが、2つの部分群のアンモニア低減は似ており、低減されたPAGN排泄は、血漿循環からのアンモニアの除去と解釈されないこと、および重症の腎機能不全がPAAの排除に影響を示さなかったことを示唆している。
【0117】
PAAのPKにおける民族性
試験4の結果は、中国人と日本人におけるPKの差が、むしろ、体重(中国人74.2kg対日本人56.7kg)における差および不均衡な性別分布(中国人の群ではすべて男性対日本人の群では25%が男性)に起因していることを明らかにした。性別は、PAAの分布量にのみ寄与しており、PAAのクリアランスに寄与していないことが注目に値する。このことは、男性および女性の対象が同じ体重を有する場合、定常状態血漿PAA曝露が両方の性別で似ていることを示している。分析を白人母集団に広げると、この結論は白人対アジア人の群にも当てはまる。要するに、民族群の健康な対象において観察されたPKの差は、P450の遺伝的多型ではなく、むしろ体重の差および不均衡な性別分布が原因であった。性別の差が、安定した硬変を有する患者またはHE患者において統計的に有意ではなかったので、体重および肝不全が、アジア人のHE患者への投薬レジメンを決定する2つの重要な要因である。
【0118】
安定性/耐容性
健康な対象における試験1において、SAD部分のLOPA治療関連TEAEには、頭痛(22人の対象)、体位性眩暈(dizziness postural)(10人の対象)、嘔気(12人の対象)、傾眠(8人の対象)、耳鳴(7人の対象)、嘔吐(6人の対象)、および眩暈(4人の対象)が含まれた。試験のMAD部分において、LOPA治療関連TEAEには、頭痛(5人の対象)、傾眠(4人の対象)、および耳鳴(4人の対象)が含まれ、すべて20g/4時間のレジメンで報告された。臨床的に有意な異常検査パラメーターはなく、試験の際に死亡または他のSAEはなかった。10g/4時間以下の用量は、十分に耐容された。24時間の注入による投薬は、耐容性のために好ましいレジメンであると思われた。
【0119】
健康な中国人および日本人の単回用量20g/24時間試験において、検査パラメーター、バイタルサイン、身体検査、またはECGに臨床的に有意な知見は観察されなかった。試験薬物におそらく関連するであろう唯一のTEAEは、1人の日本人対象における軽度な嘔気であり、他のLOPA試験における健康な対象で報告された嘔気の胃腸AEと一致していた。
【0120】
安定した硬変を有する患者の試験2において、LOPAは、20g/4時間まで、または24時間注入による40gまで十分に耐容された。40g/24時間コホートのLOPA関連TEAEには、頭痛、傾眠、および不穏状態が含まれた。
【0121】
硬変およびHEの急性エピソードを有する入院患者の試験3において、TEAEを経験した大多数の患者(62.3%)は、重症度が最大で軽度または中等度であった事象を有した。TEAEを有する患者のパーセンテージにおける臨床的に有意な差は、LOPA用量群およびプラセボにおいて観察されなかった。合計で26人の患者(プラセボの15人、LOPAの11人)が試験中に死亡した。LOPAとプラセボの死亡率は、それぞれ、10g/24時間では24%対26%、15g/24時間では5%対12%、および20g/24時間では4%対0%であった。
【0122】
試験5において、LOPAの単回7gまたは15g用量は、重症の腎障害または適合正常腎機能を有するすべての対象でそれぞれ十分に耐容され、試験を中止した対象はいなかった。TEAEに関連したLOPAは報告されなかった。すべてのAEは軽度であり、重篤なAE、AEが原因の用量中断、AEが原因の薬物取り止め、または死亡につながるAEを経験した対象はいなかった。
【0123】
PAAの曝露、およびCNSのAEとの関連性
試験1は、研究者により試験薬物に関連すると考慮される、安全性母集団における29人の健康な対象から36件のCNSのAEを報告した。36件の薬物関連CNSのAEのうち16件は、中等度から重度の重症度を報告し、36件の薬物関連CNSのAEのうち32件(89%)は、試験薬物注入の開始後の8時間より前に発生した。この健康な対象の母集団において、CNSのAEの重症度は、図2に示されているように、PAA血漿濃度と相関していると思われた。
【0124】
試験2の安全性母集団の43人の患者のうち、35人がLOPAを受け、8人がプラセボを受けた。LOPAを受けた14人の対象は、CNのAEを経験し、そのうち10人は重症度が軽度であり、事象のうちで重度と報告されたものはなかった。PAA濃度とCNSのAE発生との間に相関関係は、図3に示されているように観察されなかった。
【0125】
試験3の安全性母集団の226人の患者のうち11人(4.87%)は、CNS関連AEを経験した。これらの11人の患者のうち、8人はプラセボを受け、3人はLOPAを受けた。LOPAで治療された3人の患者は、すべてチャイルド・ピュー分類Cの患者であり、治療の際に1回の軽度頭痛の発生を経験した。AEまでの時間は、試験薬物注入の開始後およそ29~43時間の範囲であった。PAA濃度は、事象前ではおよそ91~109mcg/mLの範囲、事象後ではおよそ123~238mcg/mLの範囲であった。試験の際にLOPAで治療されたすべてのチャイルド・ピュー分類C患者の定常状態のPAA濃度中間値は、10g/24時間(n=23)および15g/24時間(n=38)用量群の患者において、それぞれ118μg/mL(11.4~223mcg/mLの範囲)および120μg/mL(7.15~454mcg/mLの範囲)であった。ゆえに、CNSのAEの時点あたりのPAA濃度は、一般に中央値あたりであった。
【0126】
全体として、PAA濃度とCNSのAEとの相関関係は、母集団にわたって変動すると思われる。健康な対象において、CNSのAEの重症度は、血漿PAA濃度と共に増えた。しかし、そのような相関関係は、安定した硬変を有する患者、または肝硬変、高アンモニア血症および肝臓HEの急性エピソードを有する入院患者において観察されなかった。
【0127】
AEを伴うPAGN曝露
試験3においてCLcr≦35mL/分を有する9人の患者は、はるかに高いPAGNレベルを経験し、5日間の注入の間にPAGNを蓄積し続けた。9人の患者のうち3人は、起こりうる薬物関連AEを経験した。しかし、AEのうちで重篤と認められるものはかなった。AEデータは、悪化した腎機能が原因の高いPAGN血症濃度が、AEプロファイルに寄与しなかったことを示唆している。
【0128】
考察
低下したPAGN排泄がPAA曝露および血漿循環中のアンモニアレベルの低下に影響を与えなかったという事実は、PAAからPAGNへの形成は、不可逆的過程であること、したがって上昇したPAGN血漿濃度は、PAAとグルタミンとの抱合速度を変更しないことを確証した。
【0129】
高アンモニア血症およびHEの急性エピソードを有する入院患者において、LOPA関連肝毒性または腎機能低下は観察されなかった。PAA曝露関連神経毒性も観察されなかった。神経学的AEを経験する見込み率は、UCDまたはHE患者において、上昇したPAA濃度と共に増えなかった。したがって、他の母集団のPAA閾値(例えば、癌患者の閾値500μg/mL)は、異なっていることがあり、慢性肝疾患(硬変)およびHEを有する患者に推測されるべきではない。
【0130】
まとめると、様々な試験結果は、PAA曝露がHE患者における神経学的AEと相関しなかったことを示唆している。体重/体表面積は、PAAプロドラッグのPKに有意に影響を与えており、身体サイズに基づいた投薬を支持する。固定用量(flat dose)のLOPAが選択される場合、低体重かつ重症の肝障害を有する患者に注意が払われるべきである。腎障害はPAGN血漿曝露を有意に増加するが、AEおよび血漿アンモニアレベルに比較的小さい影響を有する。
【0131】
[実施例3]
この実施例では、長期保存安定性について異なる濃度および様々なpHでL-オルニチンフェニル酢酸塩を含む水溶液を調製し、試験し、評価した。
【0132】
溶解度およびpH
初期試験では、LOPAの400mg/mL濃度の溶解度を5.0、5.1、5.2、5.3および5.4のpHで評価した。LOPA溶液のpHを濃HClの添加で調整し、溶解を室温で実施し、2~8℃で保存した。5℃で5.4を超えるpHはLOPAの沈殿を回避したことが見出されたが、様々な量の結晶化が、pH5.4を下回るすべての試料において見出され、結晶化の増加は、試料のpHが減少すると観察された。
【0133】
追跡試験では、LOPAの溶解度を様々なpHにより室温および5℃で調査し、結果を下記の表5に示す。LOPA溶液のpHをクエン酸の添加により調整し、溶液を24時間混合した。
【0134】
【表9】
【0135】
表5に示されているように、400mg/mL濃度のLOPAが沈殿する確率は、pHが5℃で5.5を下回る場合、300mg/mL濃度より相対的に高くなる。
【0136】
DOE安定性試験(6か月間まで)の結果に基づいて、安定性を示す観察された唯一の不純物は、L-オルニチンのラクタム不純物である3-アミノ-2-ピペリドンであった。オルニチンラクタムの形成における主な推進要因はpHであると思われ、ラクタム形成は加速温度条件下で低いpH値において示され、一方、5℃での長期保存は、ラクタム不純物にいかなる有意な変化も示さなかった。冷蔵試料のラクタムレベルは、正常なオルニチン濃度と比べて0.05%w:wのレベルを上回って上昇しなかった。長期保存の臨床バッチ安定性試験は、約9か月間まで関連物質にいかなる増加も示さなかった。
【0137】
[実施例4]
この実施例では、匿名化患者レベルデータ(anonymized patient level data)(APLD)に基づいた米国一般人口における肝性脳症(HE)の有病率の横断的コホートベース分析(cross-sectional cohort-based analysis)。特に、硬変診断の1年以内にAPLDデータセットにおいて硬変と診断された患者を使用して、データセットの範囲内でHEの有病率を推論し、1年間の有病率(本明細書以下、「有病率」)の米国一般人口におけるHEの患者数を推定する。加えて、匿名化患者診断検査データ(de-identified patient diagnostic laboratory data)を使用して、HE事象を血清アンモニアレベル検査データと適合させた。
【0138】
対象
硬変有病率分析は、医療要件または病院要件活動(medical-claim or hospital-claim activity)を有し、国際疾病分類(ICD)、第9および10版、クリニカルモディフィケーション(clinical modification)(ICD-9-CM、ICD-10-CM)の硬変用の診断コードを有するAPLDデータベース内の成人患者(≧18歳)を含んだ。HE有病率分析では、観察期間(12か月間)の開始の1年前の24か月の時間枠内で最初に硬変の診断を有した場合に、APLDデータベース内の成人患者(≧18歳)を確認した。インデックス日は、観察期間内の最も早い硬変診断日として定義した。患者は、新たに診断されることを確実にするため、少なくとも12か月間の要件プレインデックス日を有することが求められた。患者は、インデックス日の前にHEの診断コードを有した場合、または観察期間の四分の二より少ないときに要件活動を有した場合、分析から除外された。得られた硬変分析コホートにおいて、硬変診断(インデックス日)の1年以内のHEのICD-9-CMおよびICD-10-CMコードの有病症例数を、観察期間中に分析した。
【0139】
現実の患者レベルの診断検査データを使用して、HEを有する確認済患者内のアンモニアレベルの分布を評価した。血清アンモニア値は、有病率分析に使用されたHE診断要件を有する患者部分群で確認した。検査データを、独自の患者識別子を使用してAPLDデータに結合して、記録されたHE事象の際または±2日以内に測定された血清アンモニアレベルを有する患者(≧18歳)を記述した。
【0140】
検査データが、より大きなHE患者母集団の疾患重症度を反映するように、HE事象の数を検査データセットとAPLDデータの間で比較した。APLDデータベースのHEコホートを、最初のHE診断(インデックス日:観察期間開始の2年前)を有するすべての患者と定義し、事象数を、インデックス日の2年前から出発して、インデックス日の2年後に終了する長期間を見ることによって定義した。検査コホートは、HE事象の±2日以内に測定した血清アンモニアレベルデータを有する、HEの患者を含んだ。
【0141】
統計分析
患者の計数は、医療または病院要件を硬変有病率分析における年齢群(18~25歳、26~34歳、35~44歳、45~64歳、≧65歳)に入れることによって集合体とした。硬変を有する患者内のHEの有病率は、HE診断コードを有する患者数を、最初の硬変診断コードを有する患者数で割ることによって計算した。次いで、得られたHE有病率を米国硬変患者推定数に適用して、HEを有する患者の亜集団を計算した。HEを有する患者のアンモニアレベル分布を分析するため、HEを有する患者の割合を、事前指定血清アンモニアレベル群について報告した。
【0142】
結果
硬変要件を有する全体の272,256人の患者を、APLDデータベースから確認した。分析の硬変患者は、年齢が45~64歳であり、男性であり(54%)、メディケア保障(Medicare coverage)を有する(52%)可能性が最も高かった。有病率は、年齢が45~64歳の個人において最も高かった(それぞれ、0.56%および0.29%)。ソースデータで説明すると、1年間の観察期間中の米国における硬変を有する患者の重み付け合計数は、0.21%の有病率をもたらす536,856人だった。
【0143】
APLDデータベースの範囲内において、硬変を有する患者の37.6%(n=37,214)は、硬変診断の対応するインデックス日の1年以内にHEの診断を受けたことが決定された。この割合を米国の硬変患者の推定数に適用して、観察期間においてHEを有する硬変患者の有病推定数の201,858人という結果になった。
【0144】
血清アンモニアデータを有することが確認された、HEを有する患者の11,113人の範囲内では、血清アンモニアレベルは、平均濃度の93.5μmol/Lを呈し、図4に示されている。200,000人より少ない、HEを有する硬変患者は、21μmol/Lを超える血清アンモニアレベルを有すると推定された(n=196,191)。
【0145】
【表10】
【0146】
考察
この分析は、米国の一般公衆におけるHE有病率推定についての独自の段階的手法を提供する。肝硬変有病率についての以前の試験は、米国の一般人口におけるHEの有病率を評価しなかった。この試験は、硬変を有する患者に37.6%のHE有病率を実証し、このことは、観察期間において推定201,858人の患者が硬変およびHEを有すると解釈される。検査データと結合すると、HEを有するおよそ196,000人の患者が、21μmol/Lを超える血清アンモニアレベルを有した。HEの有病率とアンモニアレベルとの関連性は、この試験の予想外の有益な結果である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】