(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料、及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
C05G 1/00 20060101AFI20221208BHJP
C05G 5/14 20200101ALI20221208BHJP
C05D 9/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C05G1/00 F
C05G5/14
C05D9/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543325
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2020122739
(87)【国際公開番号】W WO2022016715
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】202010696951.2
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325754
【氏名又は名称】中国科学院南京土壌研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 火焔
(72)【発明者】
【氏名】陳 小琴
(72)【発明者】
【氏名】盧 殿君
(72)【発明者】
【氏名】周 健民
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061AA02
4H061AA04
4H061BB03
4H061BB15
4H061BB23
4H061BB32
4H061BB52
4H061BB54
4H061CC02
4H061CC12
4H061CC17
4H061CC24
4H061DD02
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4H061EE17
4H061FF07
4H061GG13
4H061GG19
4H061GG26
4H061GG41
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4H061GG52
4H061HH03
4H061KK01
4H061KK02
4H061LL07
4H061LL25
(57)【要約】
【課題】通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料、及びその製造方法と応用を提供する。
【解決手段】肥料技術分野に属する。前記大粒肥料には、通常の速効性窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料が含まれ、前記窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、質量比は(20~40):(4~15):(4~15)であり、前記大粒肥料の単粒質量は1.5~8gである。提供される大粒肥料は様々な徐放性コーティング材料、硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤または相乗剤などを添加する必要がなく、低コストであり、環境への汚染がなく、また、肥料利用率が高く、作物を植えたり移植したりする際に作物の種子/根系の水平距離から3~10cm、土壌表面から5~15cmの深さで一度に土壌に施用するか、または碁盤模様のように穴を掘って肥料を施すだけにより、後期ではいかなる追肥を必要とせず、作物の全成長期の養分要求量を満たすことができる。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大粒肥料には、通常の速効性窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料が含まれ、前記窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P
2O
5、K
2Oとして計算され、質量比は(20~40):(4~15):(4~15)であり、前記大粒肥料の単粒質量は1.5~8gであることを特徴とする通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料。
【請求項2】
前記窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P
2O
5、K
2Oとして計算され、質量比は(30~35):(5~8):(5~8)であり、前記大粒肥料の単粒質量は2.5~4.5gであることを特徴とする請求項1に記載の大粒肥料。
【請求項3】
前記窒素肥料には、尿素、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムリンのうちの1種類または複数種類が含まれることを特徴とする請求項1に記載の大粒肥料。
【請求項4】
前記リン酸肥料には、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、通常の過リン酸石灰、重過リン酸石灰、硝酸アンモニウムリンのうちの1種類または複数種類が含まれることを特徴とする請求項1に記載の大粒肥料。
【請求項5】
前記カリ肥料には、塩化カリウム及び/又は硫酸カリウムが含まれることを特徴とする請求項1に記載の大粒肥料。
【請求項6】
前記大粒肥料の質量に基づいて、土壌の栄養不足状況や作物の必要性に応じて、前記大粒肥料にはまた、質量百分率1.0%~10.0%のシリカ、1.0%~4.0%の酸化カルシウム、0.5%~2.0%の酸化マグネシウム、0.01%~0.3%ホウ素、0.1%~0.3%の酸化亜鉛のうちの1種類または複数種類が含まれることを特徴とする請求項1に記載の大粒肥料。
【請求項7】
前記大粒肥料には、結合剤及び/又は固結防止剤も含まれることを特徴とする請求項1に記載の大粒肥料。
【請求項8】
窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料を混合して、撹拌して造粒し、ふるいにかけて破片を取り除き、乾燥させて大粒肥料を得るステップを含む請求項1~7のいずれか一項に記載の大粒肥料の製造方法。
【請求項9】
前記大粒肥料は、作物の種子/根系またはその行から水平距離3~10cm、土壌表面から深さ5~15cmの土壌に施用されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の大粒肥料または請求項8に記載の製造方法により得られた大粒肥料の畑作物の作付けにおける応用。
【請求項10】
前記作物を穴に播いたり、穴に植えたりする場合、1つの穴に一粒の肥料を施用するか、または1つの穴に2粒の肥料を施用するか、または2つの穴に一粒の肥料を施用することを特徴とする請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年7月21日に中国特許庁に提出された、出願番号CN202010696951.2、発明の名称「通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料、及びその製造方法と応用」の中国特許出願の優先権を要求し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、肥料の技術分野、具体的には通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料、及びその製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0003】
中国は人口が多く土地が少ない大規模な農業国であり、化学肥料の量はすでに多いが、人口の増加に伴い、国の食糧や農産物の安全を確保するために、単位面積あたりの作物の収量をさらに増やす必要があり、化学肥料への依存度はさらに高まる。しかしながら、現在では、中国の化学肥料の利用率は低く、主要食用作物である窒素、リン、カリウム肥料の平均利用率はそれぞれ30%、15%、30%未満であるため、施肥量によって総穀物生産量が増加することはなく、水系、大気、土壌などの環境への悪影響も引き起こす。同時に、都市化の進展に伴い、農村部の若年・中年の労働力が不足し、コストも増加し、したがって、高収量、高効率、施用が容易で、施用回数を減らす、全成長期で一度だけ施用するのが最適である肥料の研究開発は、生産対投資比率の高くない畑植栽産業の発展にとって非常に重要である。
【0004】
高収量で高効率の肥料に関する研究は、中国の農業科学技術の研究のホットスポットの1つであった。従来技術には多くの関連するレポートがあった。例えば:
【0005】
特許文献1は、大粒子無機コーティング肥料を開示し、それは、肥料コアとして尿素と少量のアンモニウム窒素肥料を使用し、リン酸とカルシウムマグネシウムリン酸肥料を使用して肥料コアの表面を包み、シーリング処理にはポリマー樹脂材料を使用し、シーリング回数によって養分の放出を決定する。粒径が4mmを超えるため、コーティング材料の使用量が減り、それによってコストが削減される。肥効は、3回のシーリング後に50~60日間続く可能性がある。
【0006】
特許文献2は粒状農作物化学肥料を開示し、それは、尿素と硫黄の粉末、ポリビニルアルコールとフェニルアクリレートでコーティングを作り、尿素粒子の表面に噴霧する。
【0007】
特許文献3は、畑作物の施基肥用の追肥不要肥料を開示し、それは、通常の尿素、放出期間の異なる3種類の樹脂被覆尿素、粒状リン酸二アンモニウム、粒状過リン酸石灰、通常の塩化カリウムと樹脂被覆塩化カリウム、およびマイクロ肥料と添加剤を混合してなり、水稲とコムギに対する良好な増産効果がある。
【0008】
特許文献4はスーパーライス専用の同期栄養肥料を開示し、それは内部肥料と外部肥料で構成され、内部と外部の肥料は徐放性膜によって分離され、外部肥料は別の徐放性膜で包まれている。
【0009】
特許文献5は、中国南西部における水稲とトウモロコシ専用の一度限りの肥料を開示し、それは尿素、塩化アンモニウム、リン酸一アンモニウム、塩化カリウムなどに尿素ホルムアルデヒド、硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤、植物成長調節剤などを加えて作られている。
【0010】
特許文献6は水稲の一度限り施肥に適した肥料を開示し、これは、通常の尿素と、放出期間の異なる2つの樹脂被覆尿素、粒状リン酸肥料、通常の塩化カリウム、樹脂被覆塩化カリウム、および亜鉛肥料を混合することによって製造される。
【0011】
特許文献7および特許文献8は、それぞれ、返青および分げつ肥の追肥不要水稲基肥および返青および分げつ肥の追肥不要コムギ基肥を開示し、それらはすべて、粒状尿素、粒状リン酸肥料、粒状塩化カリウム、粒状硫酸亜鉛、および窒素肥料相乗剤としてのジシアンジアミドの添加で構成されている。
【0012】
従来の研究ではさまざまな種類または用途の農業用肥料が開発されているが、これらの肥料組成物には依然として特定の性能上の欠陥があり、窒素肥料の損失を減らし、肥効を高めるために、さまざまなコーティング材料または窒素肥料相乗剤を追加する必要がある場合、製造プロセスは複雑であり、コストも増加し、使用する膜材料の分解期間が長い場合や分解が不完全な場合は、農地や環境の持続可能な利用にも圧力がかかる。ただし、従来の一度施肥方法では、肥料形態や肥料配合成分に変更はなく、施肥位置が制限されるだけであるため、その施肥効果は、従来の散布やストリップ施肥よりも一般的に優れているが、畑機械化施肥場合の肥料利用率と作物増産の効果はすべて、非常に不安定である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】CN103724062A
【特許文献2】CN105732177A
【特許文献3】CN109608272A
【特許文献4】CN106365827A
【特許文献5】CN107266269A
【特許文献6】CN108440054A
【特許文献7】CN110698253A
【特許文献8】CN110790617A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料、及びその製造方法と応用を提供することを目的とする。本発明によって提供される大粒肥料は、様々な徐放性コーティング材料、硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤または相乗剤などを添加する必要がなく、低コストであり、環境への汚染がなく、また、肥料利用率が高く、作物を植えたり移植したりする際に一度だけ施肥する必要があり、後期ではいかなる追肥を必要とせず、作物の全成長期の養分要求量を満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料を提供し、前記大粒肥料には、通常の速効性窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料が含まれ、前記窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、質量比は(20~40):(4~15):(4~15)であり、前記大粒肥料の単粒質量は1.5~8gである。
【0016】
好ましくは、前記窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、質量比は(30~35):(5~8):(5~8)であり、前記大粒肥料の単粒質量は2.5~4.5gである。
【0017】
好ましくは、前記窒素肥料には、尿素、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムリンのうちの1種類または複数種類が含まれる。
【0018】
好ましくは、前記リン酸肥料には、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、通常の過リン酸石灰、重過リン酸石灰、硝酸アンモニウムリンのうちの1種類または複数種類が含まれる。
【0019】
好ましくは、前記カリ肥料には、塩化カリウム及び/又は硫酸カリウムが含まれる。
【0020】
好ましくは、大粒肥料の質量に基づいて、土壌の栄養不足状況や作物の必要性に応じて、前記大粒肥料にはまた、質量百分率1.0%~10.0%のシリカ、1.0%~4.0%の酸化カルシウム、0.5%~2.0%の酸化マグネシウム、0.01%~0.3%ホウ素、0.1%~0.3%の酸化亜鉛のうちの1種類または複数種類が含まれる。
【0021】
好ましくは、前記大粒肥料には、結合剤及び/又は固結防止剤も含まれる。
【0022】
本発はまた、上記技術的解決手段に記載の大粒肥料の製造方法を提供し、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料を混合して、撹拌して、造粒し、ふるいにかけて破片を取り除き、乾燥させて大粒肥料を得るステップを含む。
【0023】
本発明はまた、上記の技術的解決手段に記載の大粒肥料、または上記の技術的解決手段に記載の製造方法によって得られた大粒肥料の畑作物の作付けへの応用を提供し、前記大粒肥料は、作物の種子/根系または作物の種子/根系が位置する行から水平距離3~10cm、土壌表面から深さ5~15cmの土壌に施用される。
【0024】
好ましくは、前記作物を穴に播いたり、穴に植えたりする場合、1つの穴に一粒の肥料を施用するか、または1つの穴に2粒の肥料を施用するか、または2つの穴に一粒の肥料を施用する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料を提供する。本発明の大粒肥料は、従来技術における通常の速効性肥料の短肥効、複数回の追肥の必要性、または徐放性膜材料または硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤、様々な相乗剤等の様々な追加材料の必要性等の欠点を克服することができ、そして、それは、従来技術における不均一な施肥、不安定な肥効、および機械化施肥不利等の問題を克服することができ、従来技術と比較して、本発明によって生産される通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料は、明らかに徐放性効果があり、作物の肥料によって提供される窒素の吸収率を大幅に増加させ、同じ施肥量の従来技術と比較して、30%以上増産し、同じ施肥量の従来の一度穴施用技術と比較して、10%以上増産する。本発明の大粒肥料は、一度だけ施肥し、いかなる追肥を必要とせず、全成長期の畑作物の養分要求量を満たすことができ、窒素肥料の損失率は低く、窒素肥料養分の利用率は高くなり、従来技術や従来の一度穴施用技術と比較して、畑作物の作付けによる収入が大幅に増加する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料を提供し、前記大粒肥料には、通常の速効性窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料が含まれ、前記窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、質量比は(20~40):(4~15):(4~15)、より好ましくは(30~35):(5~8):(5~8)であり、前記大粒肥料の単粒質量は1.5~8g、より好ましくは2.5~4.5gである。本発明の大粒肥料の配合比および単粒重量範囲は、作物の全成長期の養分の需要比率および需要量を確保することができる。
【0027】
本発明は、前記作物の種類を具体的に限定するものではなく、当業者に周知の畑作物を使用すればよい。本発明において、「全成長期」という用語は、水稲、アブラナなどの畑移植作物にとって、苗が畑への移植の開始から完全に成熟して収穫できるまでの全期間を指し、小麦、トウモロコシ、直播アブラナなどの直播作物にとって、種子が土壌に播種されてから完全に成熟して収穫できるまでの全期間を指す。
【0028】
本発明の大粒肥料は、従来技術における通常の速効性肥料の短肥効、複数の追肥の必要性、または徐放性膜材料または硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤、様々な相乗剤等の様々な追加材料の必要性等の欠点、及び従来技術における不均一な施肥、不安定な肥効、および機械化施肥不利等の問題を克服することができ、本発明の通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料は、土壌に施用した後、土壌と肥料の界面が大幅に減少し、肥料マイクロサイト効果がより明確になり、肥料の徐放性が増加し、それは「根外被覆肥料」状態の形成に有利であり、肥料の損失率を大幅に減らすことができ、また、機械を使用してより均一に施肥することができ、各ポイント/穴の施肥量は完全に同じであり、いかなる追肥を必要とせず、一度の施用で、全成長期の畑作物の養分要求量を満たすことができる。一度に施肥した場合の大面積の畑作物の肥料利用率と増産効果が保証され、効果も安定している。
【0029】
本発明は、当業者に周知の従来の通常の速効性窒素、リンおよびカリウム肥料を使用できる限り、前記窒素肥料、リン酸肥料およびカリ肥料の供給源を特に限定するものではない。本発明の大粒肥料は、徐放性膜材料または硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤、様々な相乗剤などを添加しない。本発明において、前記窒素肥料には、尿素、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムリン等の通常の速効性窒素肥料のうちの1種類または複数種類が含まれる。本発明において、前記リン酸肥料には、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、通常の過リン酸石灰、重過リン酸石灰、硝酸アンモニウムリンの通常の速効性リン酸肥料のうちの1種類または複数種類が含まれる。本発明において、前記カリ肥料には、塩化カリウム及び/又は硫酸カリウム及び他の通常の速効性カリ肥料のうちの1種類または複数種類が含まれる。
【0030】
本発明において、前記大粒肥料は、好ましくは、微量元素または有益元素が不十分な特定の土壌(または作物)に補充する必要がある元素も含み、例えば、本発明において、大粒肥料の質量に基づいて、前記大粒肥料には好ましくは、質量百分率1.0%~10.0%のシリカ、1.0%~4.0%の酸化カルシウム、0.5%~2.0%の酸化マグネシウム、0.01%~0.3%ホウ素、0.1%~0.3%の酸化亜鉛のうちの1種類または複数種類がさらに含まれる。上記の元素が土壌に欠けていない場合、上記の元素を前記大粒肥料に添加しなくてもよい。
【0031】
本発明は、前記大粒肥料の形状を特に限定するものではなく、球形、円柱形、楕円形、菱形など、造粒や施用に便利な形状を使用すればよい。本発明において、前記大粒肥料には、結合剤及び/又は固結防止剤も含まれてもよい。大粒肥料の貯蔵および輸送性能を改善するために、本発明は、少量の従来の結合剤を添加して物理的強度を改善するか、または少量の固結防止剤または防湿剤等の他の材料を添加することができる。
【0032】
本発明はまた、上記の技術的解決手段に記載の大粒肥料を製造するための方法を提供する。
窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料を混合して、撹拌して造粒し、ふるいにかけて破片を取り除き、乾燥させて大粒肥料を得るステップを含む。
【0033】
本発明は、前記混合方法を特に限定するものではなく、当業者に周知の従来のミキサーを使用して直接混合または粉砕後の混合を行ってもよい。本発明は、前記造粒方法を特に限定するものではなく、溝付き背圧機械または溶融法等の一般的な造粒方法により造粒して成形するなど、当業者に知られている従来の造粒機を使用して造粒すればよい。造粒後、本発明は、好ましくは、成形された大粒肥料をふるいにかけ、破片を除去し、それを分けて包装して必要な乾燥を行って大粒肥料製品を得る。本発明の前記大粒肥料は、好ましくは一定の強度を有し、輸送中に容易に破壊されてはならず、貯蔵中に潮解してはならない。本発明の製造方法における混合および撹拌、ならびに造粒された成形製品のスクリーニングは、肥料の各粒中の養分の均一性を確保する。必要とする大粒肥料の強度は、大粒肥料が土壌に施用された後の肥料マイクロサイトの形成と連続性を保証し、これは、大粒肥料の徐放と長い期間での有効性を保持する鍵であり、輸送中に壊れにくいようにする。
【0034】
本発明はまた、上記の技術的解決手段に記載の大粒肥料、または上記の技術的解決手段に記載の製造方法によって得られた大粒肥料の畑作物の作付けへの応用を提供する。前記大粒肥料は、作物の種子/根系または作物の種子/根系が位置する行から水平距離3~10cm、土壌表面から深さ5~15cmの土壌に施用される。本発明において、前記作物には好ましくは、直播または畑に移植するアブラナ、小麦、水稲、トウモロコシが含まれる。本発明の前記大粒肥料を施肥する時間は、作物を植えたり移植したりする時間と同じであることが好ましい。具体的には、穴に播くまたは穴に植える作物の場合、本発明は好ましくは、大粒肥料を、作物の種子/根系の水平距離から3~10cm、土壌表面から5~15cmの深さに置けばよく、1つの穴の苗/野菜の苗に一粒の肥料、または1つの穴の苗/野菜の苗に2粒の肥料または複数の穴の苗/野菜の苗に一粒の肥料の方式(即ち1つの穴に一粒の肥料を施用するか、または複数の穴に一粒の肥料を施用する)で移植機械と同時に行うことができる。筋まき(筋植え)作物の場合、本発明は好ましくは、大粒肥料を、作物の種子/根系が位置する行から水平距離3~6cm、土壌表面から5~10cmの深さに置けば良い。撒播作物の場合、畑をすき起こして耕して畑を整えた後、好ましくは施肥点間12~22cmの間隔で大粒肥料を碁盤模様のように穴を掘って施し、土を覆って種を撒播すればよい。本発明は、大粒肥料の施肥位置を規定することにより、大粒肥料が施用された後、作物の根系が養分を吸収できるが、放出された養分濃度が種子および根端を燃やさないことを確保することができる。
【0035】
本発明では、大粒肥料の形で肥料を集中的に施用することにより、人工的に肥料マイクロサイトを形成し、且つその肥料マイクロサイト効果をさらに強化し、通常の速効性肥料の緩効性能を高めることができる。養分の損失を大幅に減らすことができ、肥料の利用率を大幅に向上させる。本発明は、作物が播種または移植されるときに一度に(超)大粒肥料を施用し、後の段階でいかなる追肥を必要とせず、これは必要とする全成長期の作物の養分を満たすことができる。本発明は、通常の速効性肥料に基づいて、いかなる徐放性膜材料または硝化抑制剤、ウレアーゼ阻害剤、様々な相乗剤などを添加せず、1度の施用で全成長期の畑作物の養分への要件を満たすことができる。労力とエネルギーを節約でき、窒素肥料の利用率が高く、環境にやさしく、増産増収効果も優れている。
【0036】
以下では、具体的な実施例を参照しながら、本発明の通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される大粒肥料、及びその製造方法と応用をさらに詳細に説明する。本発明の技術的解決手段には、以下の実施例が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
実施例1
通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料であって、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、N 29%、P2O5 11%、K2O 12%を含み、残りは単肥から調製された配合肥料に持ち込まれた炭素、水素、酸素などであった。上記の元素は、次の物質によって提供された。N:尿素、P2O5:リン酸水素二アンモニウム、K2O:塩化カリウム。
【0038】
商品用化学肥料に換算する実物量は次のとおりであった(通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料の10,000粒を生産するごとに計算された)。
尿素 15.6kg
リン酸水素二アンモニウム 7.8kg
塩化カリウム 5.6kg。
【0039】
上記の商品用肥料を均一に混合して粉末状に粉砕して、押出造粒機によって押し出して成形した。本実施例で製造された通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料は球形で、単粒の質量が2.9g、直径が13mmであった。
【0040】
実施例2
通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料であって、その組成及び製造方法は実施例1と同じであるが、そのうちの尿素は15N標識された商品用尿素であった。
【0041】
実施例3
通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料であって、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、N 33%、P2O5 6%、K2O 6%を含み、さらに、0.3%の亜鉛(ZnO)が添加され、残りは単肥から調製された配合肥料に持ち込まれた硫黄、炭素、水素、酸素などであった。上記の元素は、次の物質によって提供された。N:尿素、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、P2O5:リン酸水素二アンモニウム、K2O:塩化カリウム、ZnO:硫酸亜鉛。
【0042】
商品用化学肥料に換算する実物量はそれぞれ次のとおりであった(通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料の10,000粒を生産するごとに計算された)。
尿素 10.2kg
硫酸アンモニウム 2.2kg
リン酸水素二アンモニウム 2.6kg
塩化カリウム 1.7kg
硫酸亜鉛 0.2kg。
【0043】
上記の商品用肥料を撹拌して均一に混合して、押出造粒機によって押し出して成形した。本実施例で製造された通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料は円柱形で、単粒の質量は1.7g、直径は13mm、高さは7mmであった。
【0044】
実施例4
通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料であって、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の質量は、それぞれN、P2O5、K2Oとして計算され、N 32%、P2O5 8%、K2O 5%を含み、さらに、0.2%のホウ素(B)が添加され、残りは単肥から調製された配合肥料に持ち込まれた硫黄、炭素、水素、酸素などであった。上記の元素は、次の物質によって提供された。N:尿素、硫酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、P2O5:リン酸二水素アンモニウム、K2O:塩化カリウム、硫酸カリウム、B:ホウ砂。
【0045】
商品用化学肥料に換算する実物量はそれぞれ次のとおりであった(通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料の10,000粒を生産するごとに計算された)。
尿素 28.6kg
硫酸アンモニウム 1.8kg
リン酸二水素アンモニウ 7.3kg
塩化カリウム 2.7kg
硫酸カリウム 0.9kg
ホウ砂 0.9kg。
【0046】
上記の商品用肥料を撹拌して均一に混合して、押出造粒機によって押し出して成形した。本実施例で製造された通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料は扁球形で、単粒の質量は4.2g、直径は20mm、厚さは14mmであった。
【0047】
試験例1
実施例1で製造した通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料に対して、畑現場試験を行った。90日後、大粒肥料施肥サイトから6cm離れた場所での土壌のアンモニウム態窒素含有量は約385mg/kg程度であった。
【0048】
比較例1:
使用する肥料は、実施例1の大粒肥料の製造に使用した等量の通常の速効性尿素、リン酸水素二アンモニウム、および塩化カリウム肥料であった。それらを撹拌して混合して、一度に土壌の表面に均一に肥料を施した。90日後、土壌表面から6cmの深さの土壌のアンモニウム態窒素含有量は約12mg/kgであった。
【0049】
比較例2:
使用した肥料は比較例1と同じであった。それらを撹拌して混合して、一度に穴に肥料を施した。90日後、施肥の中心から約6cmの場所での土壌のアンモニウム態窒素含有量は約118mg/kgであった。
【0050】
該比較実験は、本発明の大粒肥料がより優れた徐放性効果を有することを示している。
【0051】
試験例2
実施例2で製造された通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料に対して、水稲(品種南粳9108)の田畑試験を実施した。同時に実施例2の大粒肥料の製造に使用した等量の尿素(15N標識尿素)、リン酸水素二アンモニウム、塩化カリウム肥料を混合した後の肥料を施すこと(比較例3)と穴に施肥すること(比較例4)との比較試験を設定した。ここで大粒肥料は、水稲の苗根系から3cm、土壌表面から6cm離れた場所に一度に置き、後期では、追肥は不要であった。比較例3は、すべての窒素肥料の40%とすべてのリン肥料とカリウム肥料を基肥として一緒に施し、残りのそれぞれの30%窒素肥料をそれぞれ分げつ肥と穗肥として別々に追肥した、農民の従来の方法であった。比較例4では、すべての窒素、リン、カリウムの肥料を混合した後、水稲苗の根系から約3cm、土壌表面から約6cm離れた場所に、一度限りの穴に施肥することを行い、後の段階で追肥しなかった。
【0052】
実施例2で製造した大粒肥料で処理した水稲の収量は11.5t/haに達し、比較例3より47.4%増産し、比較例4より21.1%増産した(表1)。15N標識法(文献:「Mary B.、 Recous S.、and Robin D.1998.Model for calculation nitrogen fluxes in soil using 15N tracing. Soil Biol.Biochem.30 (14):1963-1979」、文献:「劉徳林、聶軍、肖剣.2002.窒素利用効率を改善する
ための15N標識水稲徐放性窒素肥料に関する研究.レーザー生物学雑誌(Acta Laser Biology Sinica).11(2):87-92.」、及び文献:「Zhang J.、Zhu T.、Cai Z.、Qin S.、Muller C.2012.Effects of long-term repeated mineral and organic fertilizer applications on soil nitrogen transformations.Eur.J.Soil Sci.63:75-85」を参照)によって大粒肥料処理による窒素肥料の損失率は約21.5%、肥料による窒素利用率は56.1%と測定されたが、比較例3と4では、処理された窒素肥料の損失率はそれぞれ63.1%と45.7%であり、肥料の窒素利用率は11.1%と32.5%であった。大粒肥料の施肥は施肥の利用率を高めることができることを示しており、高効率でクリーンな農業生産においては、土壌を盲目的に枯渇させたりその肥沃度を改善したりせずに、作物の成長に必要な養分量だけを投資することは理想的な施肥理念である。
【0053】
試験例3
実施例3で製造された通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料に対して、小麦(品種が淮麦20)の畑試験を行った。同時に実施例3の大粒肥料の製造に使用した等量の尿素、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、塩化カリウム、硫酸亜鉛肥料を混合した後の肥料を施すこと(比較例5)と穴に施肥すること(比較例6)との比較試験を設定した。整地後、施肥機により、15cm×15cmの施肥距離で、実施例3の大粒肥料を土壌表面から5~8cmの深さに置き、その後、小麦の種子を撒播し、後期には追肥しなかった。比較例5は、すべての窒素肥料の40%とすべてのリンカリウム亜鉛肥料を整地耕地とともに基肥として施し、残りのそれぞれの30%窒素肥料をそれぞれ分げつ肥と節間伸長穂孕み肥として追肥した、農民の従来の方法であった。比較例6では、すべての窒素、リン、カリウム、亜鉛肥料を混合した後に施肥機を介して、約15cm×15cmの施肥距離に応じて、土壌表面から5~8cmの深さに一度限り穴に施肥し、後期には追肥しなかった。
【0054】
実施例3で製造された大粒肥料は、田畑でより均一に分配され、平均収量は7.4t/haであり、比較例5および6と比較して、それぞれ32.6%および13.2%増産した(表1)。
【0055】
試験例4
実施例4で製造された通常の速効性肥料に基づく畑作物の全成長期に一度に施用される(超)大粒肥料に対して、アブラナ(品種寧雑1818)季節で施用し、同時に実施例4の大粒肥料の製造に使用した等量の尿素、硫酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、塩化カリウム、硫酸カリウム肥料及びホウ砂を混合した後の肥料を施すこと(比較例7)と穴に施肥すること(比較例8)との比較試験を設定した。ここで大粒肥料の施用:整地して施肥溝を開け、アブラナ苗を移植し、施肥溝はアブラナの行から5cmずれ、溝の深さは10cmであり、施肥機を介して大粒肥料を約20cm間隔で溝に入れて土壌で覆い、後期にはいかなる追肥しなかった。比較例7は、すべての窒素肥料の60%とすべてのリンカリウムホウ素肥料を整地とともに基肥として施し、残りの40%の窒素肥料を抽苔肥として施した農民の従来の方法であった。比較例8では、すべての窒素、リン、カリウム、およびホウ素肥料を混合し、約20cmの穴間隔で一度に施肥溝に施した。
【0056】
実施例4で製造した大粒肥料で処理したアブラナの収量は4.9t/haに達し、比較例7および8と比較してそれぞれ53.9%および19.2%増産した(表1)。
【0057】
【0058】
注記:
*比較例3と4は、実施例2の製造で使用した肥料と同じで、種類と質量がすべて同じであった。比較例5と6は、実施例3の製造で使用した肥料と同じで、種類と質量がすべて同じであった。比較例7と8は、実施例4の製造で使用した肥料と同じで、種類と質量がすべて同じであった。比較例3、5、および7は、農民の従来の基肥と追肥の組み合わせ方法を採用しており、比較例4、6、および8は、従来の一度限りの穴に施す技術であった。
【0059】
**この表の増産は、穀物収量の増加のみを示している。
【0060】
***水稲を2回追肥し、毎回150RMB/haで計算し、小麦を2回追肥し、毎回120RMB/haで計算し、アブラナを1回追肥し、120RMB/haで計算した。
【0061】
****水稲種子の価格は2.9元/kg、小麦種子の価格は2.5元/kg、菜種の価格は5.0元/kgで計算した。
【0062】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改善および修正を行うことができ、これらの改善および修正はまた、本発明の保護範囲と見なされるべきである。
【国際調査報告】