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特表2022-552043ピッチ可変光学要素のための液晶混合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ピッチ可変光学要素のための液晶混合物
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20221208BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20221208BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20221208BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13 500
G02F1/1343
G02F1/133 505
C09K19/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577388
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020049618
(87)【国際公開番号】W WO2021076244
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】16/657,585
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】チアン, インフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャマリ, アフスーン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】トラビス, エードリアン
(72)【発明者】
【氏名】マイモニ, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ルー
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H193
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA42
2H088EA48
2H088GA02
2H088GA08
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA18
2H088JA06
2H088JA11
2H088KA02
2H088KA26
2H088KA27
2H088MA20
2H092GA03
2H092GA13
2H092HA04
2H092NA25
2H092PA02
2H092PA11
2H092QA08
2H092RA03
2H092RA10
2H193ZA27
2H193ZB51
2H193ZH30
2H193ZH39
2H193ZH53
2H193ZP03
2H193ZP04
2H193ZP15
2H193ZQ07
2H193ZQ12
2H193ZR16
4H027BA01
4H027BD10
4H027BD11
4H027BE03
4H027BE06
4H027BE07
(57)【要約】
ピッチ可変光学要素のための液晶(LC)混合物が提供される。LC混合物は、ホストLCと、ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体とを含む。ホストLCおよび1つまたは複数のLC二量体は、ネマチック相において反対の符号のそれぞれの誘電異方性を有する。LC混合物の正味の誘電異方性は、実質的に中性である。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ可変光学要素のための液晶(LC)混合物であって、
ホストLCと、
前記ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体であって、前記ホストLCおよび前記1つまたは複数のLC二量体が、ネマチック相において反対の符号のそれぞれの誘電異方性を有する、1つまたは複数のLC二量体と
の組成物を備え、
前記LC混合物の正味の誘電異方性が、実質的に中性である、
液晶(LC)混合物。
【請求項2】
前記LC混合物が、室温を含む温度範囲において前記ネマチック相を有する、請求項1に記載のLC混合物。
【請求項3】
前記ホストLCおよび前記1つまたは複数のLC二量体が、室温を含む温度範囲において前記ネマチック相を有する、請求項1または請求項2に記載のLC混合物。
【請求項4】
前記ホストLCが、前記ネマチック相において負の誘電異方性を有し、前記1つまたは複数のLC二量体が、前記ネマチック相において正の誘電異方性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のLC混合物。
【請求項5】
前記1つまたは複数のLC二量体のうちのLC二量体は、メソゲン基の長軸が、互いに対して非ゼロ角度で傾斜された、曲がった形状の分子構造を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のLC混合物。
【請求項6】
前記1つまたは複数のLC二量体のうちのLC二量体が、洋ナシ形状の分子構造を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のLC混合物。
【請求項7】
前記1つまたは複数のLC二量体のうちのLC二量体が、シアノビフェニルベースLC二量体を含み、好ましくは、前記シアノビフェニルベースLC二量体が、1,ω-ビス(4-シアノビフェニル-4’-イル)アルカン(CBnCB)同族列のメンバーを含み、および/または好ましくは、前記シアノビフェニルベースLC二量体が、前記CBnCB同族列の奇数メンバーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のLC混合物。
【請求項8】
前記シアノビフェニルベースLC二量体が、CB5CBまたはCB7CBのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のLC混合物。
【請求項9】
前記LC混合物中の前記1つまたは複数のLC二量体の重量パーセンテージが、約15%~約40%の範囲中にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のLC混合物。
【請求項10】
前記ホストLCが、約-1.9の前記誘電異方性と、約0.15の光学異方性とを有するHNG7267を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のLC混合物。
【請求項11】
光学要素であって、
前記光学要素に駆動電圧を供給するように構成された第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極に結合された液晶(LC)混合物であって、前記LC混合物中で誘起されたフレクソエレクトリック磁区のピッチが、前記駆動電圧とともに連続的に可変である、液晶(LC)混合物と
を備え、
前記LC混合物は、
ホストLCと、
前記ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体であって、前記ホストLCおよび前記1つまたは複数のLC二量体が、ネマチック相において反対の符号のそれぞれの誘電異方性を有し、前記LC混合物の正味の誘電異方性が、実質的に中性である、1つまたは複数のLC二量体と
を含む、
光学要素。
【請求項12】
前記駆動電圧が、直流(DC)電圧または超低周波交流(AC)電圧である、請求項11に記載の光学要素。
【請求項13】
前記第1の電極および前記第2の電極が、互いに対向して配列された平面電極であり、好ましくは、それぞれ、前記第1の電極および前記第2の電極に配設された第1の整合層および第2の整合層をさらに備え、前記第1の整合層および前記第2の整合層が、前記LC混合物中のLCに、反対の整合方向を提供する、請求項11または請求項12に記載の光学要素。
【請求項14】
前記第1の電極および前記第2の電極が、互いに対向して配列され、前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも1つが、複数のサブ電極を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項15】
前記駆動電圧が、前記第1の電極および前記第2の電極のうちの前記少なくとも1つの前記サブ電極にわたって空間的に変動するか、または好ましくは、前記駆動電圧が、前記第1の電極および前記第2の電極のうちの残りの1つにわたって空間的に均一である、請求項14に記載の光学要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、液晶(LC)混合物に関し、特に、室温において実質的に中性の正味の誘電異方性を呈し、ピッチ可変光学要素を対象とするネマチックLC混合物、およびそれを含んでいるピッチ可変光学要素に関する。
【背景技術】
【0002】
機能材料の周知のタイプの1つとして、LCが、回折格子、回折レンズなど、回折光学要素において広く適用されている。LCは、低コスト、低電力消費および簡単な準備というLCの利点により、将来の情報処理にとってますます重要になっている。一般的に、LCを使用する旧来の電気的に切替え可能な回折光学要素は、2つのカテゴリーを有し、1つは、一方または両方の基板上のパターニングされた電極によって誘起された、LCにおける均一でない電界分布に基づき、他方は、ポリマーネットワーク液晶複合材料における複数の整合領域またはホログラフィック記録によって誘起された周期的屈折率プロファイルに基づく。しかしながら、LCを使用する既存の回折光学要素の製造および制御は、複雑で費用がかかり、さらに重要なことには、LCを使用する既存の回折光学要素における回折構造のピッチは、固定され、電気的に連続的に調整され得ない。これにより、回折角は、固定であるか、または電気的に連続的に調整され得ない。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、ピッチ可変光学要素のためのLC混合物を提供する。LC混合物は、ホストLCと、ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体とを含む。ホストLCおよび1つまたは複数のLC二量体は、ネマチック相において反対の符号のそれぞれの誘電異方性を有する。LC混合物の正味の誘電異方性は、室温において実質的に中性である。
【0004】
LC混合物は、室温を含む温度においてネマチック相を有し得る。
【0005】
ホストLCおよび1つまたは複数のLC二量体は、室温を含む温度範囲においてネマチック相を有し得る。
【0006】
ホストLCは、ネマチック相において負の誘電異方性を有し、1つまたは複数のLC二量体は、ネマチック相において正の誘電異方性を有し得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のLC二量体のうちのLC二量体は、メソゲン基の長軸が、互いに対して非ゼロ角度で傾斜された、曲がった形状の分子構造を有する。
【0008】
他の実施形態では、1つまたは複数のLC二量体のうちのLC二量体は、洋ナシ形状の分子構造を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のLC二量体のうちのLC二量体は、シアノビフェニルベースLC二量体を含む。シアノビフェニルベースLC二量体は、1,ω-ビス(4-シアノビフェニル-4’-イル)アルカン(CBnCB)同族列のメンバーを含み得る。シアノビフェニルベースLC二量体は、CBnCB同族列の奇数メンバーを含み得る。シアノビフェニルベースLC二量体は、CB5CBまたはCB7CBのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、LC混合物中の1つまたは複数のLC二量体の重量パーセンテージは、約15%~約40%の範囲中にある。
【0011】
いくつかの実施形態では、ホストLCは、約-1.9の誘電異方性と、約0.15の光学異方性とを有するHNG7267を含む。
【0012】
本開示の別の態様は、本開示によるLC混合物を含んでいる光学要素を提供する。光学要素は、光学要素に駆動電圧を供給するように構成された第1の電極および第2の電極と、第1の電極および第2の電極に結合された、開示されるLC混合物とを含む。LC混合物中で誘起されたフレクソエレクトリック磁区(FD)のピッチは、駆動電圧とともに連続的に可変である。LC混合物は、ホストLCと、ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体であって、ホストLCおよび1つまたは複数のLC二量体が、ネマチック相において反対の符号のそれぞれの誘電異方性を有し、LC混合物の正味の誘電異方性が、実質的に中性である、1つまたは複数のLC二量体とを含む。
【0013】
駆動電圧は、直流(DC)電圧または超低周波交流(AC)電圧であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、互いに対向して配列された平面電極である。
【0015】
光学要素は、それぞれ、第1の電極および第2の電極に配設された第1の整合層および第2の整合層をさらに備え得、第1の整合層および第2の整合層は、LC混合物中のLCに、反対の整合方向を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、互いに対向して配列され、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、複数のサブ電極を含む。駆動電圧は、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つのサブ電極にわたって空間的に変動し得る。代替的に、駆動電圧は、第1の電極および第2の電極のうちの残りの1つにわたって空間的に均一であり得る。
【0017】
本開示の他の態様が、本開示の発明を実施するための形態、特許請求の範囲、および図面に照らして当業者によって理解され得る。
【0018】
以下の図面は、様々な開示される実施形態による例示目的のために提供され、本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】スプレイ変形下の洋ナシ形状の液晶(LC)分子の自発分極を例示する概略図である。
図1B】曲がり変形下の曲がり形状のLC分子の自発分極を例示する概略図である。
図2A】本開示の実施形態による、LC混合物を含んでいるLCセルの断面を例示する概略図である。
図2B】本開示の実施形態による、相対的に低い駆動電圧下で図2A中のLCセル中で誘起されたフレクソエレクトリック磁区(FD)を例示する概略図である。
図2C】本開示の実施形態による、相対的に高い駆動電圧下で図2A中のLCセル中で誘起されたFDを例示する概略図である。
図3A】本開示の実施形態による、異なる駆動電圧下の、LC混合物が充填されたLCセルを例示する顕微鏡写真の集まりである。
図3B】本開示の実施形態による、図3A中のLCセル中で誘起されたFDのピッチと、駆動電圧の振幅との間の関係を例示する概略図である。
図4】本開示の実施形態による、異なる駆動電圧下の図3A中のLCセルによってもたらされたレーザー回折スポットを例示する画像の集まりである。
図5A】本開示の別の実施形態による、LC混合物を含んでいるLCセルの断面を例示する概略図である。
図5B】本開示の実施形態による、図5A中のLCセルの上面図を例示する概略図である。
図6A】本開示の実施形態による、ピッチ可変光学要素を含む光学アセンブリを例示する概略図である。
図6B】本開示の実施形態による、図6A中のコントローラを例示する概略図である。
図7】本開示の別の実施形態による、ピッチ可変光学要素を含む光学アセンブリを例示する概略図である。
図8】本開示の実施形態による、ニアアイディスプレイ(NED)を例示する概略図である。
図9A】本開示の別の実施形態による、NEDのワイヤ図を例示するアイソメトリック図である。
図9B】本開示の実施形態による、図9A中のNEDの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付の図面中に例示されている、本開示の例示的な実施形態への言及が、詳細に行われる。以下、本開示に合致する実施形態が、図面を参照しながら説明される。図面において、形状およびサイズは、明快のために、誇張されるか、ひずまされるか、または簡略化され得る。可能な場合はいつでも、同じ参照番号が、同じまたは同様の部分を指すために図面全体にわたって使用され、同じまたは同様の部分の詳細な説明は、省略され得る。
【0021】
さらに、本開示では、開示される実施形態、および開示される実施形態の特徴は、矛盾がない条件下で組み合わせられ得る。説明される実施形態は、本開示の実施形態のうちのいくつかであるが、すべてではないことが明らかである。開示される実施形態に基づいて、当業者は、本開示に合致する他の実施形態を導き出し得、それらのうちのすべては、本開示の範囲内に入る。
【0022】
LC分子は、通常、永続的なダイポールを有するが、LC分子は、ダイポールが、それぞれ2つの反対の方向を向くという等しい確率のために、自発分極を呈しない。LCは、異方性誘電体媒体であり、LCの配向は、外部電界など、外部から印加された界によって変化され得る。外部から印加された電界とLCとの間の相互作用エネルギーは、以下の式、
によって与えられ、ここで、Δεは、LCの誘電異方性であり、
は、平均分子配向の方向を向くLCダイレクタであり、
は、外部から印加された電界の強度である。式(1)によれば、相互作用エネルギーfdielectricは、電界の極性に対して不感応性である。しかしながら、完全な棒形状の構造を有しないが、曲がり形状または洋ナシ形状のいずれかの構造を有するLC分子の場合、LC配向が、空間中で均一でないとき、LC分子のダイポールは、同じ方向を向き得、これにより、(フレクソエレクトリック分極とも呼ばれる)自発分極が、以下の式、
によってもたらされ、与えられ得、ここで、eおよびeは、それぞれ、スプレイおよび曲がりフレクソエレクトリック係数である。図1Aは、長手方向ダイポールをもつ洋ナシ形状のLC分子100が、スプレイ変形下で自発分極を呈し得ることを例示する。図1Bは、長手方向ダイポールをもつ曲がり形状のLC分子150が、曲がり変形下で自発分極を呈し得ることを例示する。自発分極と外部から印加された電界との相互作用エネルギーは、以下の式、
によって説明される。上記の式(3)によれば、相互作用エネルギーfflexoelectricは、外部から印加された電界の極性、すなわち、印加された電圧の極性に対して感応性である。
【0023】
外部から印加された電界下のLCの配向は、通常、誘電効果とフレクソエレクトリック効果の両方によって、すなわち、fflexoelectricとfdielectricの両方によって決定される。しかしながら、誘電効果が、フレクソエレクトリック効果よりもはるかに強いとき、誘電効果は、LCの配向を決定するための優性効果になる。逆に、フレクソエレクトリック効果が、誘電効果よりもはるかに強いとき、フレクソエレクトリック効果は、LCの配向を決定するための優性効果になる。理論的研究は、フレクソエレクトリック効果自体が、LCの誘電異方性(Δε)を増加させることによって抑制され、対照的に、LCの誘電異方性(Δε)を減少させることによって増強されることを実証する。
【0024】
本開示は、外部から印加された電界下で、増強されたフレクソエレクトリック効果を呈するLC混合物を提供する。LC混合物は、室温においてネマチック相を有し得る。本明細書で使用される、「室温」は、15℃以上40℃以下の温度を意味する。LC混合物の組成物は、ネマチックホストLCと、ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体とを含み得、ここで、ホストLCおよび1つまたは複数のLC二量体は、ネマチック相において反対の符号のそれぞれの誘電異方性を有し得る。LC混合物中のLC二量体の重量パーセンテージは、LC混合物の正味の誘電異方性が、中性にかなり近づき得、すなわち、正味の誘電異方性Δεが、0にかなり近づき得るというやり方で設計される。開示されるLC混合物は、室温において動作される電気光学要素のために使用され得る。電気光学要素は、本開示によるLC混合物中で誘起されたフレクソエレクトリック磁区(FD)のピッチが、電気的に連続的に可変である、ピッチ可変光学要素であり得る。
【0025】
ホストLCは、LC混合物の大部分であり得、すなわち、LC混合物中のホストLCの重量パーセンテージは、50%よりも大きいことがある。ホストLCは、ネマチック相において実質的に低い誘電異方性(Δε)を有し得る。いくつかの実施形態では、ホストLCは、正のLC材料であり得、すなわち、ホストLCの誘電異方性(Δε)は正である。いくつかの実施形態では、ホストLCは、負のLC材料であり得、すなわち、ホストLCの誘電異方性(Δε)は負である。いくつかの実施形態では、ホストLCは、室温においてネマチック相にあり得、すなわち、ホストLCのネマチック相の温度範囲は、室温を含み得る。ホストLCとして好適である化合物および混合物は、かなりの程度まで知られており、また、それらの多くは市販されている。
【0026】
LC二量体は、ねじり曲がりネマチック相と呼ばれる新しいタイプのネマチック相を呈すること、異常に小さい曲がり弾性定数を有すること、および大きいフレクソエレクトリシティを所有することなど、いくつかの固有の特性を所有する新しいタイプのLCである。本開示によるLC混合物は、ホストLC中にゲストとして溶解された1つまたは複数のLC二量体を含み得る。1つまたは複数のLC二量体は、ネマチック相において実質的に低い誘電異方性(Δε)を有し得、1つまたは複数のLC二量体の誘電異方性(Δε)は、ネマチック相においてLCホストのものと反対の符号を有し得る。たとえば、ホストLCが、正のLC材料であるとき、1つまたは複数のLC二量体は、負のLC材料であり得、ホストLCが、負のLC材料であるとき、1つまたは複数のLC二量体は、正のLC材料であり得る。加えて、1つまたは複数のLC二量体は、室温におけるねじり曲がりネマチック相および大きいフレクソエレクトリシティの形成を促進することができる分子構造、たとえば、大きいスプレイフレクソエレクトリック係数を呈する洋ナシ形状の分子構造、大きい曲がりフレクソエレクトリック係数を呈する曲がった形状の分子構造、セミフレキシブルで曲がったコア分子構造を有し得る。さらに、1つまたは複数のLC二量体は、LCホスト中での良好な溶解度を有し得る。LC混合物中の1つまたは複数のLC二量体の重量パーセンテージは、LC混合物中のLC二量体の溶解度、LC混合物の所望の正味の誘電異方性および所望のフレクソエレクトリック係数など、様々な要因によって決定され得る。LC混合物の正味の誘電異方性およびフレクソエレクトリック係数は、LC混合物中のLC二量体の重量パーセンテージを変動させることによって調整可能であり得るが、ネマチックホストLC中のLC二量体の溶解度が、考慮されることが望まれる。
【0027】
ホストLC中にゲストとして溶解される1つまたは複数のLC二量体として好適である化合物および混合物は、かなりの程度まで知られており、また、それらの多くは市販されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のLC二量体は、シアノビフェニルベースLC二量体を含み得る。いくつかの実施形態では、シアノビフェニルベースLC二量体は、以下の化学構造、
を有する1,ω-ビス(4-シアノビフェニル-4’-イル)アルカン同族列のメンバーを含み得、ここで、2つのメソゲンユニット(換言すれば、シアノビフェニル基)は、アルキル鎖からなるフレキシブルな連結を使用して接続される。1,ω-ビス(4-シアノビフェニル-4’-イル)アルカン同族列は、頭字語CBnCBを使用して指され、ここで、CBは、シアノビフェニルを指し示し、nは、フレキシブルな連結におけるメチレンユニットの数を指し示す。CBnCBの奇数番号のメンバーは分子構造を有し得、ここで、2つの端にある2つのシアノビフェニル基は、奇数個の炭素をもつアルキル鎖を介して接続され、互いに対してある角度で傾斜される。すなわち、CBnCBの奇数番号のメンバーは、曲がった分子形状を有し得、そのような適合は、大きい曲がりフレクソエレクトリック係数を容易にする。CBnCBの偶数番号のメンバーは、2つの端にある2つのシアノビフェニル基の長軸が互いに平行である分子構造を有し得る。すなわち、CBnCBの偶数番号のメンバーは、直線的な分子形状を有し得、CBnCBの偶数番号のメンバーの曲がりフレクソエレクトリック係数は、CBnCBの奇数番号のメンバーのものと比較して、抑制され得る。
【0028】
CB7CB、CB9CBおよびCB11CBは、奇数メンバーのLC二量体の例である。CB7CBは、以下の分子構造、
を有し、ここで、2つの端にある2つのシアノビフェニル基は、7つの炭素をもつアルキル鎖を介して接続され、互いに対してある角度で傾斜される。CB9CBは、アルキル鎖が、9つの炭素からなることを除いて、CB9CBのものに類似する以下の分子構造、
を有する。約-31pC/mの大きい曲がりフレクソエレクトリック係数eが、LC二量体CB7CBについて報告され、類似の曲がりフレクソエレクトリック係数が、LC二量体CB9CBについて予想される。CB7CBおよびCB9CBはまた、約2の類似の正の誘電異方性(Δε)を有する。
【0029】
本開示によるLC混合物は、それ自体公知の様式で、たとえば、透明点を近似的に上回る温度に、ホストLCと1つまたは複数のLC二量体の混合物を加熱し、次いで、混合物を室温に冷却して準備され得る。考察の目的で、(LC混合物Aと呼ばれる)本開示によるLC混合物が、ホストLCとしてのHNG7267(Δε=-1.9、Δn=0.15、Jiangsu Hecheng Display Technology Co.,Ltd製(HCCH))を、LC二量体としてのCB7CBおよびCB9CBと混合することによって準備され、ここで、LC混合物A中のホストLCおよびLC二量体の重量パーセンテージは、それぞれ、約70%および30%である。CB7CBとCB9CBの両方は、ネマチックホストLC中でのLC二量体の溶解度を増強するために、ホストLCの中にドープされた。LC混合物Aは、室温において、実質的に中性である約-0.2の負の誘電異方性(Δε)を有することが測定された。LC混合物Aの曲がりフレクソエレクトリック係数は、約-10pC/mである。
【0030】
本開示によるLC混合物は、好適なLCセルの中に充填され、好適な外部駆動電圧を印加された後、室温において、光回折、回折構造の電気的にチューニング可能なピッチ、電気的にチューニング可能な回折角、および電気的にチューニング可能な回折効率など、固有の光学特性を呈し得る。本開示によるLC混合物を含んでいるLCセルの製作は、それ自体公知の様式で、たとえば、LCセルを真空にすることと、真空のLCセルの中にLC混合物を導入することとによって行われ得る。
【0031】
図2Aは、本開示の実施形態による、LC混合物を含んでいるLCセル200の断面を例示する。図2A中に示されているように、LCセル200は、2つの対向する基板210と、2つの基板210の間にはさまれたLC混合物層220とを含み得る。LC混合物層220は、本開示の実施形態によるLC混合物の薄膜であり得る。基板210は、LC混合物層220に支持および保護を提供し得る。基板210は、可視帯域(約380nm~約700nm)において実質的に透明であり得る。いくつかの実施形態では、基板210はまた、赤外線(IR)帯域(約700nm~約1mm)の一部または全部において透明であり得る。基板210は、上に挙げられた波長範囲の光に対して実質的に透明である好適な材料、たとえば、ガラス、プラスチック、サファイアなどを含み得る。酸化インジウムスズ(ITO)電極など、導電性電極230が、電源280による駆動電圧をLCセル200に印加するために、基板210の対向表面上に配設され得る。駆動電圧は、直流(DC)電圧または超低周波交流(AC)電圧(たとえば、0.01HzAC電圧)であり得る。電源のすべての代替使用は、本開示の範囲内にある。導電性電極230は、たとえば、連続平面電極、パターニングされた平面電極、または突起電極であり得る。整合層240が、導電性電極230の対向表面上に配設され得、LC混合物層220は、2つの整合層240の間にはさまれ得る。整合層240は、LC混合物層220中のLC分子250に元の整合を提供し得る。整合層240の様々な材料、ならびに整合方向および強度は、境界にあるLC分子250が、異なる元の整合を有することを引き起こし得る。いくつかの実施形態では、導電性電極230は、各々、導電性電極230を通る電荷キャリアの注入を防ぐために、たとえば、SiOの絶縁層で覆われ得る。一実施形態では、図2A中に示されているように、導電性電極230は、連続平面電極であり得、2つの整合層240は、それぞれ、均質な逆並列整合方向を用いて、たとえば、それぞれ、+y方向および-y方向に構成され得、それを通して、LC分子250は、電圧オフ状態(V=0)において逆並列方向に配向され得る。
【0032】
図2Bおよび図2Cは、電源280によって供給された異なる駆動電圧下の電圧オン状態におけるLC分子250の配向を例示する。電源280の駆動電圧Vは、2つの導電性電極230上に印加され、z方向に沿った電界が生成される。図2B中に示されているように、駆動電圧Vが、しきい値を超えると、複数のフレクソ磁区(FD)260が、LC混合物層220中で誘起され始め得る。例示目的のために、図2Bは、3つのFD260を示し、単一のFD260が、点線ボックスによって指し示されている。FD260は、フレクソエレクトリック効果によってのみ現れる、一種の電界誘起された変形である。LC混合物層220中でのFDの出現は、駆動電圧の振幅および周波数、動作温度など、様々な要因に関係し得る。FD260の構造は、光回折格子に類似し得る。図2B中に示されているように、LC混合物層220中で誘起されたFD260は、均一なピッチ(または周期)Λをもつ空間的に周期的なパターン中に配列され得、単一のFD260は、元の整合方向(たとえば、図2B中のy方向)に平行に拡張し得る。すなわち、単一のFD260の長さ方向は、元の整合方向(たとえば、図2B中のy方向)に平行であり得る。LC分子250の方位角(φ)は、均一なピッチ(または周期)Λをもつ、LC混合物層220の中心からエッジに向かって直線的に反復的なパターンで変化され得る。ピッチΛは、単一のFD260の幅方向(たとえば、x方向)に沿ったサイズであり得るか、またはピッチΛは、パターンの繰り返された部分の間のx方向に沿った距離であり得る。ピッチΛは、部分的に、FD260からなる光回折格子の光学特性を決定し得る。たとえば、ピッチΛは、入射光ビームの回折角を決定し得る。概して、ピッチΛが、小さければ小さいほど、設計された波長についての回折角は大きくなる。
【0033】
LCセル200は、偏光選択的であり得ることに留意されたい。LCセル200は、第1の偏光を有する光ビームを選択的に回折するが、無視できる回折をもつ第2の偏光を有する光ビームを透過し得る。たとえば、図2B中に示されているように、整合方向(たとえば、図2B中のx方向)において直線的に偏光された光ビーム265は、LCセル200中を伝搬するとき、周期的屈折率変調を受け得、これにより、LCセル200によって回折され得る。例示目的のために、図2Bは、光ビーム260の+1次回折を示し、ここで、回折角θは、回折光ビーム270と光入射表面の法線との間の角度である。整合方向に対して垂直な方向(たとえば、図2B中のy方向)において直線的に偏光された光ビームは、LCセル200中を伝搬するとき、均一な屈折率を受け得、これにより、無視できる回折をもって透過され得る。いくつかの実施形態では、LCセル200の上に入射する光ビームが、LCセル200の要件に一致する所望の偏光を有し得るように、直線偏光子が、LCセル200に光学的に結合され得る。
【0034】
LC混合物層220中で誘起されたFD260の構造は、電源280によって供給された駆動電圧の振幅および周波数、動作温度など、様々な要因によって制御され得る。図2C中に示されているように、駆動電圧の振幅が増加する(駆動電圧が、図2B中の駆動電圧Vlowと比較して、図2C中のVhighになる)につれて、LC混合物層220中で誘起されたFD260のピッチΛは、減少し得る。それゆえに、回折角は増加し得る。例示目的のために、図2Cは、光ビーム260の+1次回折を示し、ここで、回折角θは、回折光ビーム275と光入射表面の法線との間の角度である。図2C中の回折角θは、図2B中のものと比較して明らかに増加する。駆動電圧の振幅が、連続的に増加するにつれて、LC混合物層220中で誘起されたFD260のピッチΛは、連続的に減少し得る。すなわち、FD260からなる光回折格子のピッチΛは、外部から印加された電圧によって連続的に調整可能であり得る。それゆえに、FD260からなる光回折格子の上に入射する光ビームの回折角は、外部から印加された電圧によって連続的に調整可能であり得る。連続的に調整可能なピッチは、光回折格子の重要で広範な用途の大きな可能性を有し得る。
【0035】
LC混合物層220中で誘起されたFD260のピッチΛは、マイクロメートル(μm)スケールにあり得、偏光顕微鏡(POM)下で観測され得る。図3Aは、異なる駆動電圧下の、LC混合物Aが充填されたLCセルの顕微鏡写真を例示する。LCセルは、図2A中に示されているセル構造を有し得る。セルギャップは約3.7μmであり、動作温度は室温である。顕微鏡写真は、2つの交差偏光子の間に配列されたLCセルを用いて、POM下で取られた。図3A中に示されているように、LC混合物A中で誘起されたFDのモフォロジは、LCセルに印加される駆動電圧が変動するにつれて、変化している。FDは、駆動電圧が0Vから6Vに徐々に増加するとき、LC混合物A中で観測されない。駆動電圧が8Vに増加すると、FDは、LC混合物A中で誘起されたことが観測され、ここで、FDは、POM下で、初期LCダイレクタ整合方向に平行な明暗の縞の空間的に周期的なアレイとして現れる。FDのピッチΛは、約5μmである。駆動電圧の振幅がさらに増加するにつれて、LC混合物A中のFDのピッチΛは、明らかに減少し、たとえば、駆動電圧が12V、16V、20Vおよび24Vに増加するにつれて、それぞれ、約2.7μm、1.7μm、1.5μmおよび1.1μmに減少する。図3Bは、LC混合物A中で誘起されたFDのピッチΛと、駆動電圧の振幅との間の関係を例示する。図3B中の曲線310によって示されているように、LC混合物A中で誘起されたFDのピッチΛは、駆動電圧の振幅の逆数と実質的に直線の関係を有する。また、直線フィッティングが、曲線310に実質的に一致する、図3B中の曲線320によって示されているように、ピッチΛと、駆動電圧の様々な振幅の逆数との間で行われる。
【0036】
上記で考察されたように、LC混合物中で誘起されたFDの構造は、光回折格子に類似し、これにより、FDは、入射レーザービームが、ある回折条件、たとえば、ブラッグ条件を満たすとき、レーザー回折スポットを生成し得る。図4は、異なる駆動電圧下の図3A中のLCセルによってもたらされたレーザー回折スポットの画像を例示する。回折スポットがその上に表示されるためのスクリーンとして、紙が使用され、回折スポットを示すスクリーンの様々な画像をキャプチャするために、固定位置に置かれたカメラが使用された。図3Aおよび図4を参照すると、駆動電圧が8Vに増加すると、回折スポットは、FDからなる光回折格子が現れたときに発現し、0次、±1次、±2次および±3次回折によって生成された回折スポットが、カメラによって観測およびキャプチャされた。駆動電圧が8Vから20Vに増加するにつれて、ピッチΛは徐々に減少し、これにより、回折角は徐々に増加する。スクリーンとLCセルとの間の距離が一定であるという条件で、0次回折スポットと非ゼロ次回折スポットとの間の距離は、非ゼロ次回折の回折角が徐々に増加するにつれて、徐々に増加し得る。たとえば、駆動電圧が12Vであるとき、±3次回折の回折スポットは、カメラのビューの外側にあり、0次、±1次、および±2次回折の回折スポットのみが観測される。駆動電圧が、16Vであるとき、2次および±3次回折の回折スポットは、ピッチΛの減少とともに、最終的にカメラのビューの外側に存在し、0次および±1次回折の回折スポットのみが観測される。
【0037】
図2A図2B図3A図3Bおよび図4を参照すると、本開示によるLC混合物(たとえば、LC混合物A)が充填されたLCセル200は、空間的に周期的に配列されたFDによって形成された光回折格子として機能し得、ここで、光回折格子のピッチ(または空間的に周期的に配列されたFDのピッチ)は、電気的に連続的にチューニング可能であり得、それゆえに、入射光ビームの回折角は、電気的に連続的にチューニング可能であり得る。連続的に可変のピッチをもつそのような光学要素は、回折光学素子、レーザーディスプレイ、ビーム整形またはステアリング、切替え可能なホログラム、およびアダプティブマイクロデバイスなど、光ビームを操作するための著しい潜在的用途を有し得る。
【0038】
図5Aは、本開示の別の実施形態による、LC混合物を含んでいるLCセル500の断面を例示し、図5Bは、図5A中のLCセル500の上面図を例示する。LCセル500は、回折レンズ500として機能し得る。図5A図2A図2Cとの間の類似点は、ここでは繰り返されず、いくらかの差が解説され得る。図5A中に示されているように、LCセル500は、互いに対向して配列された第1の基板510-1および第2の基板510-2と、2つの基板510の間にはさまれたLC混合物層520とを含み得る。LC混合物層520は、本開示の実施形態によるLC混合物の薄膜であり得る。第1および第2の基板510は、各々、透明導電性電極530および整合層540を備え得、ここで、LC混合物層520は、2つの整合層540の間にはさまれる。整合層540は、均質な逆並列整合方向を用いて、たとえば、図5A中のy方向に構成され得、それを通して、LC分子550は、電圧オフ状態(V=0、図5A中に描かれていない)において逆並列方向に配向され得る。各導電性電極530は、複数のサブ電極を含むパターニングされた電極であり得る。サブ電極は、中心電極532と、中心電極532を取り囲む複数の同心リング電極534とを含み得る。いくつかの実施形態では、中心電極532は、円形電極であり得る。対応して、LCセル500は、複数のサブ電極に1対1で対応している複数のリセットを含み得、ここで、LCセル500のリセットは、図5Bが示すように、中心リセット502と、中心リセット502を取り囲む、増加する半径の複数の同心リング形状のリセット504とを含み得る。
【0039】
図5Aに戻ると、第1の基板510-1上のサブ電極は、均一な駆動電圧が印加され得、たとえば、接地され得る。第2の基板510-2上のサブ電極に印加される駆動電圧の振幅は、最外同心リング電極534から最内同心リング電極534または中心電極532に向かって漸進的に減少され得る。第2の基板510-2上の中心電極532は、第1の基板510-1上のサブ電極と同じ駆動電圧が印加され得、たとえば、接地され得る。図2A図2C中で考察されたように、FDによって形成された光回折格子のピッチは、駆動電圧が増加するにつれて、減少し得る。これにより、図5A図5Bを参照すると、第2の基板510-2上のサブ電極に印加される駆動電圧の振幅が、最外同心リング電極534から中心電極532に向かって漸進的に減少されるとき、FDによって形成された光回折格子のピッチは、LCセル500の、最外のリング形状のリセット504から中心リセット502に向かって増加され得る。それゆえに、所望の偏光をもつ入射光ビームの同じ回折次数の回折角は、LCセル500の、最外のリング形状のリセット504から中心リセット502に向かって減少され得る。第2の基板510-2上のサブ電極534に印加される駆動電圧の振幅を個々に制御することによって、LCセル500の複数のリセットからの回折光ビームは、集束され、LCセル500が、回折レンズ500として機能することを可能にし得る。たとえば、LC分子550の整合方向(たとえば、図5A中のx方向)において直線的に偏光された光ビーム555が、LCセル500の上に実質的に垂直に入射するとき、±1次回折光ビーム560の回折角は、±1次回折光ビーム560が点Fに集束され得るように、LCセル500の、最外のリング形状のリセット504から中心リセット502に向かって減少され得る。
【0040】
LCセル500は、単一の入射光ビームが、伝搬軸に沿って数個の位置に同時に集束されることを可能にし得ることに留意されたい。回折次数が増加するにつれて、回折効率が減少するとき、より高次の回折光ビームの焦点スポットは、視覚的に観測できないことがある。加えて、第1の基板510-1上のサブ電極は、均一な駆動電圧が印加されるので、いくつかの実施形態では、第1の基板510-1上の透明導電性電極530は、均一な駆動電圧が印加される均一な平面電極として構成され得、たとえば、接地され得る。すなわち、第1の基板510-1および第2の基板510-2上の透明導電性電極530のうちの少なくとも1つは、複数のサブ電極を含むパターニングされた電極であることが望まれ得る。
【0041】
さらに、回折レンズ500の焦点距離または光パワーは、第2の基板510-2上のそれぞれのサブ電極に印加される駆動電圧の振幅を変動させることによって、調整可能であり得る。たとえば、第2の基板510-2上のそれぞれの同心リング電極に印加される駆動電圧の振幅を徐々に増加させることを通して、LCセル500のそれぞれのリセットにおけるFDによって形成された光回折格子のピッチは、徐々に減少し得、それゆえに、回折角は増加し得る。これにより、回折レンズ500の焦点距離は、減少され得る。反対に、第2の基板510-2上のそれぞれの同心リング電極に印加される駆動電圧の振幅を徐々に減少させることを通して、LCセル500のそれぞれのリセットにおけるFDによって形成された光回折格子のピッチは、徐々に増加し得、それゆえに、回折角は減少し得る。これにより、回折レンズ500の焦点距離は、増加され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、(第1の電極と呼ばれる)第1の基板510-1上の透明導電性電極530、および(第2の電極と呼ばれる)第2の基板510-2上の透明導電性電極530のうちの少なくとも1つは、複数のサブ電極を含み得る。駆動電圧は、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つのサブ電極にわたって空間的に変動し得、駆動電圧は、第1の電極および第2の電極のうちの残りの1つにわたって空間的に均一であり得、これは、図5A中のレンズ様の偏向パターンに加えて、任意の偏向パターンを可能にし得る。
【0043】
チューニング可能な光回折格子および回折レンズを実現するための、本開示によるLC混合物の使用は、例示目的のためのものにすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことに留意されたい。チューニング可能な光回折格子および回折レンズは、本開示によるLC混合物中で誘起されたFDのピッチが、電気的に連続的に可変である、ピッチ可変光学要素の例にすぎない。本開示によるLC混合物は、本開示によって限定されない、チューニング可能なプリズムなど、LC混合物中で誘起されたFDのピッチが、電気的に連続的に可変である、他のピッチ可変光学要素を実現するように構成され得る。さらに、本開示によるLC混合物を含んでいるピッチ可変光学要素は、多種多様な分野における多数の用途を有し得、これらは、すべて、本開示の範囲内にある。拡張現実(AR)、仮想現実(VR)および複合現実(MR)分野におけるいくつかの例示的な用途が、以下で解説される。
【0044】
図6Aは、本開示の実施形態による、ピッチ可変光学要素620を含む光学アセンブリ600の概略図を例示する。ピッチ可変光学要素620は、連続ビームステアリングを提供するチューニング可能な光回折格子であり得る。光学アセンブリ600は、ニアアイディスプレイ(NED)の一部であり得、AR、VRまたはMR用途のためのNEDの瞳孔ステアリングを可能にし得る。図6A中に示されているように、光学アセンブリ600は、示されている例示的な光学系中に配列された、光源605、第1の光学レンズ610、光学ディフューザ615、チューニング可能な光回折格子620および第2の光学レンズ625を含み得る。上記の光学アセンブリにおいて説明された光学要素は、光学系中で異なるシーケンスにおいて構成され得、そのような異なる構成は、すべて、本開示の範囲内にあることを、当業者は諒解されたい。光学系は、光が、複数の光学要素のうちの各光学要素について、その光学要素によって、複数の光学要素のうちの別の光学要素によって透過される前に、透過されるような、複数の光学要素の相対的配置を指す。その上に、光学要素の順序は重要ではない。たとえば、光学要素Bの前に置かれた光学要素A、または光学要素Aの前に置かれた光学要素Bは、両方とも、光学系中にある。電気回路類設計に類似して、光学系は、直列に置かれたときにそれらの光学特性がコンパウンドされる光学要素を表す。
【0045】
図6Aを参照すると、光学アセンブリ600は、アイトラッキングデバイス635およびコントローラ640をさらに含み得る。コントローラ640は、アイトラッキングデバイス635およびチューニング可能な光回折格子620など、他のデバイスのうちの1つまたは複数と電気的に結合され得る。光学アセンブリ600は、本開示によって限定されない、他の要素を含み得る。光源605は、収束または発散している、コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光を生成するように構成された点光源を含み得る。光源605は、たとえば、レーザーダイオード、ファイバーレーザー、垂直共振器面発光レーザー、および/または発光ダイオードを含み得る。いくつかの実施形態では、光源605は、光学アセンブリ600中に含まれた構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、光源605は、コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光を生成する、何らかの他の光学アセンブリまたは他のシステムの一部であり得る。いくつかの実施形態では、光学アセンブリ600は、光源605によって生成された光を調節する、1つまたは複数の光学構成要素をさらに含み得る。光源605からの光を調節することは、たとえば、光源605のコントローラからの命令に従って、偏光することおよび/または配向を調整することを含み得る。いくつかの実施形態では、光源605は、たとえば、それぞれ、約448nm、524nm、および638nmの中心波長を有する、それぞれ、赤、緑および青色光を発する3つのレーザーダイオードに結合された単一の光ファイバーを含み得る。光源605によって生成された光ビームは、チューニング可能な光回折格子620の要件に一致するように直線的に偏光され得る。
【0046】
光学系中に配列された、第1の光学レンズ610、光学ディフューザ615、チューニング可能な光回折格子620および第2の光学レンズ625は、光源605によって生成された光を、光学アセンブリ600のアイボックス630のほうへ向け得る。第1の光学レンズ610は、第1の光学レンズ610が、光源605から出力された発散光ビーム602を、光学ディフューザ615のほうへ伝搬する平行光ビーム604に変換し得るように、光源605に対して配列され得る。光学ディフューザ615は、平行光ビーム604を、チューニング可能な光回折格子620に向かう複数の散乱光ビーム606に一次的に順方向散乱させ得る。光学ディフューザ615は、複数の所望の方向において均一に入射光ビームを拡散させ得、それによって、光学アセンブリ600の視野(FOV)は、増強され得る。光学ディフューザ615は、ガラスディフューザ、またはホログラフィックディフューザなど、任意の好適な光学ディフューザを含み得る。いくつかの実施形態では、光学ディフューザ615は、ホログラフィックディフューザ615であり得、ホログラフィックディフューザ615の機能は、たとえば、ホログラフィック記録を介して、ホログラフィック材料の薄膜、すなわち、ホログラフィックフィルムでもたらされたホログラフィック光学要素(HOE)によって提供され得る。HOEは、ホログラフィック記録において複数の格子構造(たとえば、ブラッグ格子構造)を用いて構成され得、得られたホログラフィックディフューザ615は、ブラッグ回折によって一次的に光ビームを拡散させる(換言すれば、ブラッグ条件を満たす光ビームを回折する)ことがある。ホログラフィックディフューザ615は、ブラッグ条件を満たす光を拡散させるのに大いに有効であり得る。いくつかの実施形態では、ホログラフィックディフューザ615は、等方性記録材料にホログラフィック的に記録された偏光不感応性ブラッグ格子を含み得る。いくつかの実施形態では、ホログラフィックディフューザ615は、偏光感応性記録材料にホログラフィック的に記録された偏光体積格子(PVG)を含み得る。いくつかの実施形態では、ホログラフィックディフューザ615の波長スペクトルを広げるために(たとえば、様々な可視波長に平行入射光ビームを回折するために)、フルカラー記録のための波長多重化が、ホログラフィック記録において使用され得る。
【0047】
チューニング可能な光回折格子620は、回折条件(たとえば、ブラッグ条件)を満たす散乱光ビーム606を、回折を介して回折光ビーム608にステアリングし得、第2の光学レンズ625は、光学アセンブリ600の射出瞳(または光学アセンブリ600を含むNEDの射出瞳)が位置決めされた表面における1つまたは複数の光スポットに、回折光ビーム608を集束させ得る。射出瞳は、ユーザがNEDを着用したとき、ユーザの眼瞳孔645がアイボックス630領域に配置されるロケーションであり得る。1つまたは複数の光スポットは、アイボックス630領域において利用可能な1つまたは複数の射出瞳と考えられ得る。アイボックス730領域において利用可能な1つまたは複数の射出瞳のうちの1つが、眼瞳孔645の位置と実質的に合致するとき、光源605から出力された光ビーム602は、眼瞳孔645に最終的に向けられ得る。
【0048】
チューニング可能な光回折格子620は、図2A図2Cに関連して説明されたLCセル200の実施形態であり得る。チューニング可能な光回折格子620は、駆動電圧が連続的に変化するとき、LC混合物中の誘起されたFDの連続的に調整可能なピッチを有し、それゆえに、入射光ビームの連続的に調整可能な回折角を有し得る。いくつかの実施形態では、チューニング可能な光回折格子620は、コントローラ640からの命令に従って、入射光ビームに複数のステアリング状態を提供し得る。チューニング可能な光回折格子620は、駆動電圧を切り替えることによって、複数のステアリング状態の間で電気的に切替え可能であり得る。複数のステアリング状態は、入射光ビームの複数のステアリング角度を生じ得、ここで、複数のステアリング角度は、連続し得る。すなわち、チューニング可能な光回折格子620は、入射光ビームにステアリング角度の連続調整範囲を提供し得、これは、光学アセンブリ600の射出瞳の連続シフトを可能にし得る。
【0049】
続けて図6Aを参照すると、アイトラッキングデバイス635は、それに基づいて、眼瞳孔645の位置が決定され得、それゆえに、チューニング可能な光回折格子620のステアリング状態が決定され得る、アイトラッキング情報を提供し得る。任意の好適なアイトラッキングデバイス635が、使用され得る。アイトラッキングデバイス635は、たとえば、ユーザの一方または両方の眼を照らす1つまたは複数のソースと、ユーザの一方または両方の眼の画像をキャプチャする1つまたは複数のカメラとを含み得る。アイトラッキングデバイス635は、ユーザの眼瞳孔645の位置、動き、および/または閲覧方向をトラッキングするように構成され得る。いくつかの実施形態では、アイトラッキングデバイス635は、各眼の最高6つの自由度の眼位置および/または眼の動き(換言すれば、3D位置、ロール、ピッチ、およびヨー)を測定し得る。いくつかの実施形態では、アイトラッキングデバイス635は、瞳孔サイズを測定し得る。アイトラッキングデバイス635は、眼瞳孔645の位置および/または動きに関する信号(フィードバック)をコントローラ640に提供し得る。
【0050】
アイトラッキングデバイス635によって提供されたアイトラッキング情報に基づいて、コントローラ640は、アイボックス630において利用可能な1つまたは複数の射出瞳の位置が変化され得、アイボックス630において利用可能な1つまたは複数の射出瞳のうちの1つが、眼瞳孔645の位置と実質的に合致し、眼瞳孔645の上に来得るように光ビームのステアリング角度を調整するように、チューニング可能な光回折格子620を制御するように構成され得る。これは、図2A図2C中の電源280の電圧を調整することによってなされ得る。これにより、第2の光学レンズ625によって集束された光ビームは、眼瞳孔645の中に向けられ得る。すなわち、チューニング可能な光回折格子620および第2の光学レンズ625は、ともに、アイトラッキングデバイス635によって提供されたアイトラッキング情報に基づいて、拡大されたアイボックスエリアをカバーするように、光学アセンブリ600の射出瞳を連続的にシフトし得る。
【0051】
例示目的のために、図6Aは、チューニング可能な光回折格子620の2つのステアリング状態を示す。たとえば、アイトラッキングデバイス635は、ユーザの眼瞳孔645が、アイボックス630領域における位置P1に位置決めされたことを検出し得る。アイトラッキング情報に基づいて、チューニング可能な光回折格子620は、回折条件(たとえば、ブラッグ条件)を満たす散乱光ビーム606が、回折を介してチューニング可能な光回折格子620によって光ビーム608になるようにステアリングされ得るような、第1のステアリング状態に切り替わるようにコントローラ640によって制御され得る。コントローラ640は、光回折格子620に印加される電圧を調整するために、図2A図2C中の電源280と結合されるように構成され得る。
【0052】
第2の光学レンズ625は、眼瞳孔645の位置P1と実質的に合致する射出瞳に回折光ビーム608を集束させ得る。ユーザの眼瞳孔645がアイボックス630領域における新しい位置P2に動かされたことを、アイトラッキングデバイス635が検出した後、それに基づいて、チューニング可能な光回折格子620は、回折条件(たとえば、ブラッグ条件)を満たす散乱光ビーム606が、回折を介してチューニング可能な光回折格子620によって光ビーム608’になるようにステアリングされ得るように、第1のステアリング状態から第2のステアリング状態に切り替わるようにコントローラ640によって制御され得る。第2の光学レンズ625は、眼瞳孔645の新しい位置P2と実質的に合致する射出瞳に回折光ビーム608’を集束させ得る。すなわち、NEDの射出瞳は、眼瞳孔645の動きに従って位置P1から位置P2にシフトされ得、それを通して、アイボックス630は拡大され得る。これにより、ユーザが、アイボックス630内で眼を動かしたとき、光出力(たとえば、表示された仮想画像)は、アイボックス630の外側に動いてユーザのビューから消えることがないようにし得る。
【0053】
開示される実施形態では、チューニング可能な光回折格子620は、光学ディフューザ615から受光された拡散光ビームに、複数のステアリング状態を提供するように構成され得、ここで、複数のステアリング状態は、光学ディフューザ615から受光された拡散光ビームのステアリング角度の連続調整範囲に対応し得る。これにより、光学アセンブリ600の射出瞳の連続シフトは、アイトラッキングデバイス635によって提供されたアイトラッキング情報に基づいて、拡大されたアイボックスエリアをカバーするように提供され得る。チューニング可能な光回折格子620は、NEDのフォームファクタを低減するために、コンパクトであり、数ミリメートルの厚さをもち得る。加えて、チューニング可能な光回折格子620は、異なるステアリング状態の間で切り替わるとき、実質的に速い切替え速度、たとえば、眼瞳孔645の動きとペースを合わせるのに十分に早いことがあるミリ秒程度の切替え速度を有し得る。これにより、リアルタイムアイトラッキング、および射出瞳位置のリアルタイムシフティングが提供され得る。
【0054】
図6Bは、図6A中のコントローラ640の概略図を例示する。図6B中に示されているように、コントローラ640は、プロセッサ641、ストレージデバイス642、および入出力インターフェース643を含み得る。プロセッサ641は、中央処理ユニット、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路、プログラマブル論理デバイス、複合プログラマブル論理デバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイなど、任意の好適なプロセッサを含み得る。プロセッサ641は、アイトラッキングデバイス635によって提供されたフィードバック(たとえば、眼位置情報)に基づいて、チューニング可能な光回折格子620を通過する光ビームのステアリング角度を調整するように、チューニング可能な光回折格子620を制御するように特別にプログラムされ得る。言い換えれば、プロセッサ641は、アイトラッキングデバイス635によって提供された、眼の位置および/または動きに基づいて、アイボックス630において利用可能な1つまたは複数の射出瞳のロケーションを変化させるように構成され得る。1つまたは複数の射出瞳のロケーションは、任意のインスタンスにおいて、1つまたは複数の射出瞳のうちの少なくとも1つの射出瞳が、眼瞳孔645の上に来得るようにシフトされ得る。
【0055】
ストレージデバイス642は、データ、信号、情報、あるいはコンピュータ可読コードまたは命令を記憶するように構成され得る。ストレージデバイス642は、磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、読取り専用メモリ(ROM)、またはランダムアクセスメモリ(RAM)など、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み得る。プロセッサ641は、ストレージデバイス642にアクセスし、ストレージデバイス642からデータまたは命令を取り出し得る。いくつかの実施形態では、ストレージデバイス642は、アイトラッキングデバイス635によって提供されたフィードバックデータを記憶し得る。プロセッサ641は、分析のために、アイトラッキングデバイス635によって提供されたフィードバックデータを取り出し得る。いくつかの実施形態では、ストレージデバイス642は、チューニング可能な光回折格子620のステアリング状態を記憶し得、プロセッサ641は、チューニング可能な光回折格子620のための次のステアリング状態を決定するとき、現在のステアリング状態を取り出し得る。
【0056】
入出力インターフェース643は、任意の好適なデータまたは信号インターフェースであり得る。入出力インターフェース643は、ワイヤードまたはワイヤレス通信のために構成されたインターフェースであり得る。いくつかの実施形態では、入出力インターフェース643は、信号を受信および送信するように構成されたトランシーバを含み得る。いくつかの実施形態では、入出力インターフェース643は、アイトラッキングデバイス635およびチューニング可能な光回折格子620と通信するように構成され得、アイトラッキングデバイス635およびチューニング可能な光回折格子620から(またはアイトラッキングデバイス635およびチューニング可能な光回折格子620に)データまたは信号を受信(あるいはデータまたは信号を送信)し得る。
【0057】
図7は、本開示の別の実施形態による、ピッチ可変光学要素725を含む光学アセンブリ700の概略図を例示する。ピッチ可変光学要素は、連続ビームステアリングを提供するチューニング可能な光回折格子であり得、光学アセンブリ700は、NEDの一部であり、AR、VRまたはMR用途のためのNEDの瞳孔ステアリングを達成し得る。図7中に示されているように、光学アセンブリ700は、画像光を生成するプロジェクタ705と、光学アセンブリ700のアイボックス730のほうへ画像光を向けるために光学系中に配列された画像コンバイナ720およびチューニング可能な光回折格子725とを含み得る。光学アセンブリ700は、アイトラッキングデバイス735およびコントローラ740をさらに含み得る。コントローラ740は、アイトラッキングデバイス735およびチューニング可能な光回折格子725など、他のデバイスのうちの1つまたは複数と電気的に結合され得る。光学アセンブリ700は、本開示によって限定されない、他の要素を含み得る。アイトラッキングデバイス735は、図6A中のアイトラッキングデバイス635に類似し得、コントローラ740は、図6Aおよび図6B中のコントローラ640に類似し得、詳細は、ここでは繰り返されない。
【0058】
プロジェクタ705は、ソース710および光学システム715を含み得る。ソース710は、コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光を生成する光源であり得る。ソース710は、たとえば、レーザーダイオード、垂直共振器面発光レーザー、および/または発光ダイオードを含み得る。いくつかの実施形態では、ソース710は、液晶ディスプレイ(LCD)パネル、液晶オンシリコン(LCoS)ディスプレイパネル、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイパネル、マイクロLED(マイクロ発光ダイオード)ディスプレイパネル、デジタル光処理(DLP)ディスプレイパネル、またはそれらの何らかの組合せなどのディスプレイパネルであり得る。いくつかの実施形態では、ソース710は、OLEDディスプレイパネルまたはマイクロLEDディスプレイパネルなどの自発光パネルであり得る。いくつかの実施形態では、ソース710は、LCDパネル、LCoSディスプレイパネル、またはDLPディスプレイパネルなど、外部ソースによって照らされるディスプレイパネルであり得る。外部ソースの例は、レーザー、LED、OLED、またはそれらの何らかの組合せを含み得る。光学システム715は、ソース710からの光を調節する1つまたは複数の光学構成要素を含み得る。ソース710からの光を調節することは、たとえば、偏光させること、減衰させること、拡大すること、平行にすること、および/または配向を調整することを含み得る。いくつかの実施形態では、プロジェクタ705から出力された画像光は、チューニング可能な光回折格子725の要件に一致するように直線的に偏光され得る。
【0059】
画像コンバイナ720は、NEDの射出瞳が位置決めされた表面における1つまたは複数の光スポットに、プロジェクタ705から受光された画像光を集束させ得る。射出瞳は、ユーザがNEDを着用したとき、ユーザの眼瞳孔745がアイボックス730領域に配置されるロケーションであり得る。言い換えれば、画像コンバイナ720は、プロジェクタ705から受光された画像光を、アイボックス730領域におけるNEDの1つまたは複数の射出瞳に集束させ得る。AR用途で使用されるとき、画像コンバイナ720は、プロジェクタ705から受光された画像光ビームと、(図7中に示されていない)現実世界の環境からの光ビームとを組み合わせ、NEDのアイボックス730のほうへ両方の光ビームを向け得る。いくつかの実施形態では、画像コンバイナ720は、広いFOVを有するホログラフィック光学要素(HOE)を含み得、画像コンバイナ720は、HOE画像コンバイナとも呼ばれる。HOEは、大きく軸を外れた光ビームからの光を、眼瞳孔745の前の軸上光ビームの中に集束させる固定ホログラムを含み得る。いくつかの実施形態では、HOEは、体積(またはブラッグ)ホログラムを含み得、角度および波長の狭セット上でのみ機能し、それにより、プロジェクタ705から受光された光ビームを向け直し、集束させ、一方、クリアで、大いに透明なシースルービューをユーザに提供し得る。HOEは、複数の波長(たとえば、赤、緑および青色波長)において高い回折効率を有するように多重化され、それにより、フルカラー表示を可能にし得る。
【0060】
チューニング可能な光回折格子725は、図6A中のチューニング可能な光回折格子620に類似し得、詳細は、ここでは繰り返されない。動作中に、アイトラッキングデバイス735によって提供されたアイトラッキング情報に基づいて、コントローラ740は、1つまたは複数の射出瞳のうちの少なくとも1つが、眼瞳孔745の位置と実質的に合致し、眼瞳孔745の上に来るようにビームステアリングを介して1つまたは複数の射出瞳の位置を変化させるように、チューニング可能な光回折格子725を制御し得る。すなわち、プロジェクタ705から発せられた画像光は、眼瞳孔745の中に最終的に向けられ得る。チューニング可能な光回折格子は、入射光ビームのステアリング角度の連続調整範囲を提供するので、光学アセンブリ700の射出瞳は、アイトラッキングデバイス735によって提供されたアイトラッキング情報に基づいて、拡大されたアイボックスエリアをカバーするように連続的にシフトされ得る。
【0061】
例示目的のために、図7は、チューニング可能な光回折格子725の2つのステアリング状態を示す。たとえば、アイトラッキングデバイス735は、ユーザの眼瞳孔745が、アイボックス730領域における位置P1に位置決めされたことを検出し得る。アイトラッキング情報に基づいて、チューニング可能な光回折格子725は、1つまたは複数の射出瞳のうちの少なくとも1つが、眼瞳孔745の位置P1と実質的に合致し、眼瞳孔745の上に来るように回折を介してチューニング可能な光回折格子725によってステアリングされ得るような、第1のステアリング状態に切り替わるようにコントローラ740によって制御され得る。ユーザの眼瞳孔745がアイボックス730領域における新しい位置P2に動かされたことを、アイトラッキングデバイス735が検出した後、それに基づいて、チューニング可能な光回折格子725は、1つまたは複数の射出瞳のうちの少なくとも1つが、眼瞳孔745の新しい位置P2と実質的に合致し、眼瞳孔745の上に来るように回折を介してチューニング可能な光回折格子725によってステアリングされ得るように、第1のステアリング状態から第2のステアリング状態に切り替わるようにコントローラ740によって制御され得る。コントローラ740は、光回折格子725に印加される電圧を調整するために、図2A図2C中の電源280と結合されるように構成され得ることに留意されたい。
【0062】
図6Aおよび図7は、例示目的のためのものであって、本開示の範囲を限定するものではない、開示されるチューニング可能な光回折格子を使用することによってNEDの瞳孔ステアリングを達成することができる、2つの光学アセンブリを例示することに留意されたい。異なる光学構成をもつ光学アセンブリも、開示されるチューニング可能な光回折格子を使用することによってNEDの瞳孔ステアリングを達成し得る。
【0063】
図8は、本開示の実施形態による、NED800の概略図を例示する。図8中に示されているように、NED800は、ユーザの頭に載るように構成されたフレーム805と、フレーム805に取り付けられた右眼および左眼ディスプレイシステム810Lおよび810Rとを含み得る。右眼および左眼ディスプレイシステム810および815の各々は、コンピュータ生成された仮想画像を、ユーザのFOV中の左および右ディスプレイウィンドウ815Rおよび815Lの中に投影するように構成された画像ディスプレイ部品を含み得る。右眼および左眼ディスプレイシステム810Lおよび810Rを代表する例示的なディスプレイシステムは、図6A中に示されている光学アセンブリ600、または図7中に示されている光学アセンブリ700を含み得る。NED800は、VRデバイス、ARデバイス、複合現実MRデバイス、またはそれらの任意の組合せとして機能し得る。いくつかの実施形態では、NED800が、ARまたはMRデバイスとして機能するとき、右および左ディスプレイウィンドウ815Rおよび815Lは、周囲の現実世界の環境のビューをユーザに与えるために、ユーザから見ると完全にまたは部分的に透明であり得る。いくつかの実施形態では、NED800が、VRデバイスとして機能するとき、右および左ディスプレイウィンドウ815Rおよび815Lは、ユーザが、NEDを介して提供されたVR像中に完全に没入され得るように、不透明であり得る。いくつかの実施形態では、NED800は、右および左ディスプレイウィンドウ815Rおよび815Lを通して閲覧される現実世界のオブジェクトの透過率を動的に調整し得る調光要素をさらに含み得、それにより、VRデバイスとARデバイスとの間で、またはVRデバイスとMRデバイスとの間でNED800を切り替え得る。いくつかの実施形態では、AR/MRデバイスとVRデバイスとの間で切り替えることとともに、調光要素は、現実および仮想オブジェクトの輝度の差を緩和するために、ARデバイスにおいて使用され得る。
【0064】
図9Aは、本開示の別の実施形態による、NED900のワイヤ図を例示し、図9Bは、図9A中に示されているNED900の前剛体905の断面950を例示する。NED900は、NED中のよせ運動適応矛盾を緩和するために光パワーの連続調整範囲を提供する回折レンズである、開示されるピッチ可変光学要素を含み得る。NED900は、人工現実システムの一部であり得る。NED900は、ユーザにコンテンツを表示し得る。図9A中に示されているように、NED900は、前剛体905およびバンド910を含み得る。前剛体905は、(図9A中に描かれていない)電子ディスプレイの1つまたは複数の電子ディスプレイ要素、慣性測定ユニット(IMU)915、1つまたは複数の位置センサー920、およびロケータ925を含み得る。図9Aによって示されている実施形態では、位置センサー920は、IMU915内に位置決めされ得、IMU915も位置センサー920もユーザに見えないことがある。NED900は、VRデバイス、ARデバイスまたはMRデバイス、あるいはそれらの何らかの組合せとして機能し得る。いくつかの実施形態では、NED900が、ARまたはMRデバイスとして機能するとき、NED900の部分、およびNED900の内部構成要素は、少なくとも部分的に透明であり得る。
【0065】
図9Bは、図9A中に示されているNED900の実施形態の前剛体905の断面950である。図9B中に示されているように、前剛体905は、ともに射出瞳975に画像光を提供する、電子ディスプレイ955および可変焦点ブロック960を含み得る。射出瞳975は、ユーザの眼965が配置された、前剛体905のロケーションであり得る。例示目的のために、図9Bは、単一の眼965に関連する断面950を示すが、可変焦点ブロック960とは別個の、別の可変焦点ブロック960が、改変された画像光をユーザの別の眼に提供し得る。いくつかの実施形態では、前剛体905は、ユーザの眼965についてのアイトラッキング情報を決定するアイトラッキングデバイス970をさらに含み得る。アイトラッキングデバイス970は、たとえば、ユーザの一方または両方の眼を照らす1つまたは複数のソースと、ユーザの一方または両方の眼の画像をキャプチャする1つまたは複数のカメラとを含み得る。決定されたアイトラッキング情報は、アイボックスにおけるユーザの眼965の配向の情報、すなわち、視線の角度に関する情報を含み得る。いくつかの実施形態では、ユーザの眼965は、構造化光を用いて照らされ得、アイトラッキングデバイス970は、眼位置および視線を決定するために、キャプチャされた画像中の反射された構造化光のロケーションを使用し得る。いくつかの実施形態では、アイトラッキングデバイス970は、複数の時刻にわたってキャプチャされた画像光のマグニチュードに基づいて、眼位置および視線を決定し得る。
【0066】
電子ディスプレイ955は、ユーザに画像を表示し得る。いくつかの実施形態では、電子ディスプレイ955は、単一の電子ディスプレイ、または複数の電子ディスプレイ(たとえば、ユーザの各眼のためのディスプレイ)を備え得る。電子ディスプレイ955の例は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、アクティブマトリックス有機発光ダイオードディスプレイ(AMOLED)、量子ドット有機発光ダイオード(QOLED)、量子ドット発光ダイオード(QLED)、何らかの他のディスプレイ、またはそれらの何らかの組合せを含む。いくつかの実施形態では、電子ディスプレイ955は、限定はしないが、スタック型の導波路ディスプレイを含む、1つまたは複数の導波路ディスプレイのスタックを含み得る。いくつかの実施形態では、スタック型の導波路ディスプレイは、それらの画像光が、異なる色のそれぞれの単色ソースからのものである導波路ディスプレイをスタックすることによって作成された、多色ディスプレイ(たとえば、赤緑青(RGB)ディスプレイ)であり得る。いくつかの実施形態では、スタック型の導波路ディスプレイは、単色ディスプレイであり得る。
【0067】
可変焦点ブロック960は、電子ディスプレイ955から発せられた光からの配向を、光が、ユーザからの特定の焦点距離に現れるように調整し得る。可変焦点ブロック960は、可変焦点ブロック960に光パワーの連続調整範囲を提供する回折レンズ980である、開示されるピッチ可変光学要素980を含み得る。回折レンズ980は、図5A中のLCセル500の実施形態であり得、詳細は、ここでは繰り返されない。追加として、いくつかの実施形態では、可変焦点ブロック960は、受光された光を大きくし、画像光に関連する光学誤差を補正し、NED900のユーザに、補正された画像光を提示し得る。可変焦点ブロック960は、光学系中に1つまたは複数の光学要素を追加として含み得る。光学要素は、アパーチャ、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ、フィルタ、直線偏光子、または画像光を改変する任意の他の好適な光学要素であり得る。たとえば、直線偏光子は、回折レンズ980の上に入射する光が、所望の偏光方向を有する直線的に偏光された光であることを保証するために、回折レンズ980に光学的に結合され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、コントローラ985が、アイトラッキングデバイス970から得られたアイトラッキング情報に基づいて回折レンズ980の光パワーを決定するために、回折レンズ980に結合され得る。コントローラ985は、ユーザが現在見ている、仮想画像内のロケーションまたはオブジェクトを決定するために、アイトラッキングデバイス970からの画像情報を使用してユーザの眼965の位置およびロケーションをトラッキングし得る。いくつかの実施形態では、コントローラ985は、少なくとも、眼の3D位置、ロール、ピッチ、およびヨーのサブセットをトラッキングし、各眼の3D凝視点を推定するためにこれらの量を使用し得る。いくつかの実施形態では、コントローラ985は、眼965の3D凝視点を推定するために、過去の眼位置からの情報、ユーザの頭の位置を記述する情報、およびユーザに提示されたシーンを記述する情報を使用し得る。
【0069】
凝視ラインの推定交差に基づいて、コントローラ985は、眼965が現在見ている、仮想画像内のロケーションまたはオブジェクトのよせ運動距離を決定し得る。決定されたよせ運動距離および他の情報に基づいて、コントローラ985は、回折レンズ980の所望の光パワーを決定し得る。回折レンズ980の決定された光パワー、およびアイトラッキング情報に基づいて、コントローラ985は、回折レンズ980のための構成パラメータを決定し得る。たとえば、アイトラッキング情報に基づいて、コントローラ985は、回折レンズ980のそれぞれのサブ電極に印加される、(図2A図2C中の)電源280によって供給される所望の駆動電圧を決定し、それにより、眼965が現在見ている、仮想画像内のロケーションまたはオブジェクトを、よせ運動距離に対応する所望の画像距離をもって画像面に合焦させ得る。
【0070】
本開示の実施形態の上記の説明は、例示の目的のために提示された。上記の説明は、網羅的なものではないか、または開示された厳密な形態に本開示を限定するものではない。当業者は、多くの変更形態および変形形態が、上記の開示に照らして可能であることを諒解することができる。
【0071】
この説明のいくつかの部分は、情報に対する動作のアルゴリズムおよび記号表現に関して本開示の実施形態を説明する。これらのアルゴリズム説明および表現は、一般に、データ処理技術の当業者によって、他の当業者に効果的に彼らの作業の要旨を伝えるために使用される。これらの動作は、機能的に、計算的に、または論理的に説明されたが、コンピュータプログラムまたは等価電気回路、マイクロコード、あるいは同様のものによって実装されることが理解される。その上、一般性の喪失なしに、モジュールとして動作のこれらの配列を指すことが時々好都合であることも判明している。説明された動作と、動作の関連するモジュールとは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組合せにおいて具現され得る。
【0072】
本明細書で説明されたステップ、動作、またはプロセスのいずれも、単独でまたは他のデバイスと組み合わせて、1つまたは複数のハードウェアまたはソフトウェアモジュールを用いて実施または実装され得る。いくつかの実施形態では、ソフトウェアモジュールは、説明されたステップ、動作、またはプロセスのうちのいずれかまたはすべてを実施するためにコンピュータプロセッサによって実行され得る、コンピュータプログラムコードを含んでいるコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品を用いて実装される。
【0073】
本開示の実施形態は、本明細書における動作を実施するための装置にも関し得る。この装置は、必要とされる目的のために特別に構築され得、および/または装置は、コンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的にアクティブにされるかまたは再構成される汎用コンピューティングデバイスを備え得る。そのようなコンピュータプログラムは、非一時的、有形コンピュータ可読記憶媒体、またはコンピュータシステムバスに結合され得る、電子命令を記憶するのに好適な任意のタイプの媒体に記憶され得る。その上、本明細書で言及されたどのコンピューティングシステムも、単一のプロセッサを含み得るか、または増加された計算能力のためにマルチプロセッサ設計を採用するアーキテクチャであり得る。
【0074】
本開示の実施形態は、本明細書で説明された計算プロセスによってもたらされる製品にも関し得る。そのような製品は、計算プロセスから生じた情報を備え得、ここで、情報は、非一時的、有形コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、コンピュータプログラム製品または本明細書で説明された他のデータ組合せの任意の実施形態を含み得る。
【0075】
最後に、本明細書で使用される言葉は、主に、読み易さおよび教示目的のために選択されており、言葉は、本発明の主題を線引きまたは制限するために選択されたものではない。それゆえ、本開示の範囲は、この発明を実施するための形態によってではなく、むしろ、本明細書に基づく出願に関して生じる特許請求の範囲によって限定されるものとする。それゆえに、実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に記載されている本開示の範囲の限定ではなく、例示であるものとする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】