(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】音響トランスデューサ及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
H04R17/00 332A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516450
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2020059611
(87)【国際公開番号】W WO2021074792
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100039
【氏名又は名称】ダークヴィジョン テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ホープ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マンダース グラハム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンバーグ コナー
(72)【発明者】
【氏名】ローズ ジェイコブ ウィリアム
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA26
5D019BB05
5D019BB14
5D019BB18
5D019HH01
(57)【要約】
音響トランスデューサアレイ及びその製造方法。第1の金属層が共通電極を形成するために圧電複合体の第1の側に堆積され、第2の金属層が表面側上にわたって設けられる。第2の金属層の一部分が除去されて、複数の個々の電極が形成される。第3の金属層が、複数の個々の電極上に堆積されてもよく、第3の金属層は第2の金属層よりも厚い。個々の電極は、圧電複合体を高さ方向で越えて延在して電極リードを形成する。金属層は、リソグラフィ、ワイヤフレーム、又は、箔シートによって設けられてよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響トランスデューサのアレイを製造する方法であって、
共通電極を形成するために圧電複合体の第1の側に第1の金属層を堆積させることと、
前記圧電複合体の前記第1の側とは反対側の第2の側に第2の金属層を堆積させることと、
前記第2の金属層を第3の金属層で覆うことであって、前記第3の金属層が、前記第2の金属層よりも厚く、前記トランスデューサの高さ方向で前記圧電複合体を越えて延在する延在部を備える、ことと、
前記第2の側で前記金属層の一部分を選択的に除去して、それぞれが前記延在部に電気リードを有する複数の個々の電極を画定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記選択的に除去される部分は、前記第2の金属層及び前記第3の金属層のための異なる技術を使用して除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の金属層は、箔を前記第2の金属層に電気メッキする又は接着剤を使用して結合することによって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の金属層は、共通の支持フレームから延在する前記複数の電気リードを画定するワイヤフレームを備え、前記第2の金属層を覆う前記ことは、前記ワイヤフレームを前記第2の金属層に結合した後に前記共通の支持フレームを除去することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の金属層を覆う前記ことは、前記第2の金属層の縁部にワイヤを結合することと、前記ワイヤ上及び前記第2の金属層上にわたって金属を電気メッキして前記第3の層を形成することとを含み、好ましくは、前記ワイヤは、導電接着剤、半田付け、及び、超音波溶接のうちの1つによって前記第2の金属層に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の金属層は、接着剤によって前記第2の金属層に結合される箔シートであり、その後、前記複数の個々の電極を形成するために第2の金属層及び前記第3の金属層を一緒に選択的に除去するように処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の金属層が15~40umの厚さである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
音響トランスデューサのアレイを製造する方法であって、
共通電極を形成するために圧電複合体の第1の側に第1の金属層を堆積させることと、
前記圧電複合体の前記第1の側とは反対側であって前記トランスデューサの高さ方向で前記圧電複合体を越えて延在する延在部を備える第2の側に、第2の金属層を堆積させることと、
前記第2の金属層の一部分を選択的に除去して、それぞれが前記延在部に電気リードを有する複数の個々の電極を画定することと、
を含む方法。
【請求項9】
前記延在部は、前記圧電複合体基板に隣接する支持構造体上にわたって堆積され、前記支持構造体は、前記延在部を露出させるようにその後に除去される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記延在部は、前記第2の側の金属層のための支持構造体として作用する前記圧電複合体の犠牲部分上にわたって堆積され、前記犠牲部分は、前記延在部を露出させるように機械加工されて除去される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択的に除去される部分は、フォトリソグラフィ及びエッチング、レーザエッチング、ダイシングソーのうちの少なくとも1つによって除去される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の金属層が真空蒸着又は無電解メッキによって堆積される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ダウンホール撮像工具に適合するようにバッキング層を成形することと、前記共通電極を前記バッキング層に結合することとを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の側で前記金属層の一部分を選択的に除去する前記ステップは、前記延在部の幅よりも広い前記複合体の上方に位置される部分を含むように前記個々の電極をパターニングする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の金属層は、接着剤によって前記複合体に結合される箔シートである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の金属層が15~40umの厚さである、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
音響トランスデューサアレイであって、
圧電複合体と、
共通電極を画定する前記圧電複合体の第1の側の第1の金属層と、
前記第1の側とは反対側の圧電複合体の第2の側の第2の金属層と、
前記第2の金属層に導電接続されて前記第2の金属層を実質的に覆うとともに、前記トランスデューサの高さ方向で前記圧電複合体を越えて延在する第3の金属層と、
を備え、
前記第3の金属層が前記第2の金属層よりも厚く、
前記第2及び第3の層が複数の個々の電極を画定するように形成される、
音響トランスデューサアレイ。
【請求項18】
前記第3の金属層が電着箔である、請求項17に記載のアレイ。
【請求項19】
前記第3の金属層が圧延箔である、請求項17に記載のアレイ。
【請求項20】
前記第3の金属層が電気メッキ層である、請求項17に記載のアレイ。
【請求項21】
前記第2の金属層と前記第3の金属層との間に接着剤を更に備える、請求項17に記載のアレイ。
【請求項22】
音響トランスデューサアレイであって、
圧電複合体と、
共通電極を画定する前記圧電複合体の第1の側の第1の金属層と、
前記第1の側とは反対側の圧電複合体の第2の側の第2の金属層であって、前記トランスデューサの高さ方向で前記圧電複合体を越えて延在するとともに、複数の個々の電極を画定するように形成される、第2の金属層と、
を備える音響トランスデューサアレイ。
【請求項23】
前記個々の電極を覆うマッチング層を更に備える、請求項17から22のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項24】
前記共通電極を覆うバッキング層を更に備える、請求項17から23のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項25】
前記第2の金属層が0.2um~3umの厚さを有する、請求項17から24のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項26】
前記個々の電極が15um~40umの厚さを有する、請求項17から25のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項27】
前記金属層は、銅、金、ニッケル、及び、銀のうちの1つ以上を含む、請求項17から26のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項28】
前記複合体の上方に位置される前記個々の電極の一部が前記延在部の幅よりも広い、請求項17から27のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項29】
前記第2の金属層と前記複合体の前記第2の側との間に接着剤を更に備える、請求項22に記載のアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
この出願は、2019年10月17日に出願された英国特許出願第1915002.8号の優先権を主張し、この出願の開示は参照によりその全体が本願に組み入れられる。
【0002】
本開示は、音響トランスデューサ、特に、パイプ、杭井、又は、製造部品などの構造体の医学的検査及び非破壊検査のために撮像プローブに組み込むことができる圧電トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0003】
圧電トランスデューサは、しばしば、トランスデューサによって送信される音響波で前記物体又は構造体をソニファイして表面特徴及び内部特徴から音響反射を受信することによって物体及び構造体を非破壊試験(NDT)及び検査する際に使用される。受信された反射はトランスデューサによって電気信号に変換され、その信号は音響画像プロセッサによって処理される。
【0004】
超音波トランスデューサは、より短い波長を有する物体特徴を調べることによって、より高い分解能(サブmm)での検査を可能にする。数十又は数百のトランスデューサ素子のアレイを一緒に製造することができる。音響トランスデューサを形成する多くの方法がある。「Acoustic sensor for downhole measurement tool」と題されるSchlumbergerの特許文献1は、1つの製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20050000279号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2は既知のトランスデューサスタックを示し、この場合、単一のPZT/エポキシ複合スラブ22には上面及び底面に薄い金層23、25がコーティングされる。個々の電極が、上端金層25を通じてダイシングした後にリード24を半田29により各電極に半田付けすることによって画定される。
【0007】
トランスデューサスタックが形成された時点で、電気リードを電極に半田付けしなければならない。これは、このように形成されたトランスデューサの欠陥につながる。高分解能アレイにおける素子及びリードの微細な間隔は、それらを機能させることを困難にするとともに、隣接する素子間の短絡の可能性を増大させる。圧電素子の半田29及びリード被覆は、送信機又は受信信号に異常をもたらす。トランスデューサへの半田付けに使用される熱は、それがキュリー温度を超えると圧電効果に影響を及ぼす可能性がある。また、本発明者らは、高温、高圧、及び、化学物質の存在などの特定の過酷な環境で動作すると、半田接合部に亀裂をもたらす可能性があることも分かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、音響トランスデューサのアレイを製造する方法が提供され、該方法は、共通電極を形成するために圧電複合体の第1の側に第1の金属層を堆積させることと、第1の側に対して垂直な複合体の側に圧電複合体基板に隣接して支持構造体を設けることと、フォトリソグラフィを使用して、支持構造体上及び圧電複合体の第1の側とは反対側の第2の側上にわたって第2の金属層を堆積させることと、第2の金属層の一部分を選択的に除去して複数の個々の電極を形成することと、複数の個々の電極上に第3の金属層を堆積させることであって、第3の金属層が、第2の金属層よりも厚く、圧電複合体を越えて[素子の長手方向で]延在して電極リードを形成する、ことと、支持構造体を、圧電複合体及び金属層から構成されるトランスデューサスタックから分離することとを含む。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、音響トランスデューサのアレイを製造する方法が提供され、該方法は、圧電複合体基板を用意することと、共通電極を形成するために圧電複合体基板の第1の側に第1の金属層を堆積させることと、第1の側とは反対側の圧電複合体の第2の側に第2の金属層を堆積させることと、第2の金属層を第3の金属層で覆って接続することであって、第3の金属層が、第2の金属層よりも厚く、[複合体の幅方向で]圧電複合体を越えて延在する、ことと、第2の金属層及び第3の金属層の一部分を除去して、複数の別個の電極を形成することとを含む。
【0010】
方法は、少なくとも2つの別個の基板又は少なくとも2つのアレイ用のサイズの基板を用意した後に基板を越えて延在する厚い電極を堆積させて形成することによって単一バッチで少なくとも2つのアレイを形成するために使用され得る。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、音響トランスデューサアレイが提供され、該音響トランスデューサアレイは、圧電複合体と、共通電極を画定する圧電複合体の第1の側の第1の金属層と、第1の側とは反対側の圧電複合体の第2の側の第2の金属層と、第1の金属層に接続されて圧電複合体を越えて延在する第2の金属層であって、第2の金属層が第1の金属層よりも厚い、第2の金属層とを備え、金属層が複数の個々の電極を画定するように形成される。
【発明の効果】
【0012】
したがって、高温及び高圧に耐えることができるより堅牢なトランスデューサを形成することが可能である。
【0013】
本発明の様々な目的、特徴、及び、利点は、添付図面に示されるように、本発明の実施形態の以下の説明から明らかになる。図面は必ずしも原寸に比例しているとは限らず、代わりに、本発明の様々な実施形態の原理を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】好ましい実施形態に係るトランスデューサスタックの断面図である。
【
図2】従来技術のデバイスに係るトランスデューサスタックの断面図である。
【
図3】単一の金属層アドレス可能電極を有する一実施形態に係るトランスデューサスタックの断面図である。
【
図4A】リソグラフィの様々な初期段階におけるトランスデューサの平面図である。
【
図4B】リソグラフィの様々な後期段階におけるトランスデューサの平面図である。
【
図5】ワイヤフレームを重ね合わせてダイシングしたトランスデューサスタックの側面図である。
【
図6A】ダイシング前のワイヤフレームの平面図である。
【
図6B】ダイシング前のアドレス可能電極の拡大平面図である。
【
図7A】ダイシング後のワイヤフレームの平面図である。
【
図7B】ダイシング後のアドレス可能電極の拡大平面図である。
【
図8】トランスデューサのためのフォトリソグラフィプロセスにおけるステップのセットである。
【
図9】トランスデューサアレイを形成するためのフローチャートである。
【
図10A】トランスデューサアレイを有する円錐プローブの図である。
【
図10B】トランスデューサアレイを有するラジアルプローブの図である。
【
図11】管状のダウンホール音響プローブの断面図である。
【符号の説明】
【0015】
同様の参照番号は、以下のキーを有する同様の構成要素を示す。
2 調査対象表面;
10 デバイス;
11 走査線;
12 音響トランスデューサアレイ;
15 円錐台マウント;
21 マッチング層;
22 圧電複合体;
23 共通電極;
24 延在/リード部
25 薄い電極;
26 厚い電極;
27 電極部;
28 バッキング層;
29 半田;
30 ワイヤフレーム;
37 支持構造体;
42 ダイシングされた圧電複合体;
43 フォトレジスト;
44 UVマスク;
45 エッチング領域
46 硬化フォトレジスト
47 薄い金属シード層;
48 厚い金属電気メッキ層;
49 バックボーン/支持フレーム;
51 金属箔
53 切断線
54(導電性)接着剤
55 レーザ
59 ダイシングソー
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照して、音響トランスデューサ、それらの組成、及び、構造に関する好ましい実施形態について説明する。トランスデューサは、一次元アレイとして配置される複数のトランスデューサ素子を備える。各トランスデューサ素子上にわたる個々の電極は、駆動回路からのワイヤと電気的及び機械的に接続するために下層の圧電複合体を越えて連続層として延在する。個々の電極は、単一の厚い金属層であってもよく、或いは、少なくとも2つの金属層(シード層及び厚い金属層)を備えてもよい。
【0017】
音響スタックに共通の他の層に加えて、製造は、金属層を付加した後に一部分を選択的に除去して素子における個々の電極を形成するための様々な技術を組み合わせることを含み、電極の一部は圧電複合体を越えて延在する。幾つかの方法は、層を堆積させるために支持構造体を使用する。
トランスデューサアレイ
【0018】
トランスデューサ12によって生成される音波の周波数は、一般に200kHz~30MHzの範囲内であり、流体のタイプ、杭井内の速度、及び、撮像デバイスが移動している速度を含む幾つかの因子に基づいて設計されてもよい。殆どの用途において、波の周波数は、1~10MHzで動作する超音波である。より高い周波数(より短い波長)は、各特徴からの別個の反射を返すことによって表面上のより細かい特徴を区別することができる。
【0019】
トランスデューサアレイ内の個々の素子の数は、生成される画像の分解能に影響を及ぼす。一般的には、各トランスデューサアレイは、32~2048個の素子、好ましくは128~1024個の素子で構成される。比較的多数の素子を使用すると、物体の精細な分解能の画像が生成される。これらのアレイを駆動及び捕捉するための回路も一般に利用可能である。
【0020】
図2は、共通電極23、圧電複合体スラブ22、上部電極20、及び、マッチング層21を備える、既知の方法にしたがって形成される典型的なトランスデューサスタックの側面図である。電気リード24が、素子を個別に作動させることができるように半田29によって上部電極25に取り付けられる。半田29及びリード24の近くの素子の部分は、半田付けがキュリー温度を超えた場合、不規則な形状及び失われた圧電効果に起因する音響異常を発する。
【0021】
したがって、好ましいトランスデューサ及び製造方法において、電極は、素子の高さの全体にわたって略連続的に配置され、それにより、高さ方向で圧電基板を越えて延在する。したがって、半田付け又はクランプによるリードへの接続は、圧電領域から離れるように行われる。好ましくは、延在部24は、トランスデューサの高さ方向で少なくとも2mmだけ複合体を越えて延在する。
【0022】
図1は、素子のアレイがページ内へと延在する、単一素子におけるトランスデューサスタックの側面図を示す。圧電複合体22は、第1の主表面が、アレイのための共通電極23として作用する導電材料で覆われる。反対側の第2の表面は、アドレス可能(薄い)電極25を形成するために素子ごとに第2の導電材料で覆われる。これらの電極は、第1及び第2の表面の両方に対して略垂直に振動するように複合体22における圧電ポストを作動させる。
【0023】
電極表面のいずれかは、調査対象の物体に面するように設計されるプローブ内の伝送表面と称されてもよく、一方、他方の電極表面は背面と称される。バッキング層28がこの背面に接続され、それにより、構造体及び音響減衰をトランスデューサにもたらし及び/又はトランスデューサをプローブに固定するための接着をもたらしてもよい。バッキング層28は、導電性(例えば、タングステン含浸エポキシ)又は非導電性(例えば、ガラス充填PEEK)であってもよい。
【0024】
マッチング層21は、伝送表面を覆い、好ましくは、レンズ及び複合体の幾何平均であってトランスデューサの設計波長の4分の1の厚さを有する音響インピーダンス値を有するように設計される。これは、音響波が最大のエネルギー及び最小のアーチファクトを伴ってマッチング層を通じて伝わることができるようにすることを意図している。マッチング層は、Al2O3が充填されたエポキシであってもよい。
【0025】
一例として、スタックは、厚さ0.3mmの複合体と、厚さ10mmのバッキング層と、厚さ0.6ミクロンのスパッタリングされた薄い電極と、厚さ15~40ミクロンの厚い電極とを備えてもよい。
【0026】
簡潔にするために、複合体22は、現在市販されているようなエポキシなどのより柔らかい材料のマトリックスによって取り囲まれる、プレートの厚さを通じてダイシングされた圧電ポストから形成されるプレートとして設けられると仮定する。これは、全てのポストの結果として生じる振動がプレートの主表面に対して垂直に作用するようにする。複合体は、一般に入手可能な2-2又は1-3PZTであってもよい。
【0027】
図1のスタックは、薄い電極層25又はその一部と電気的に接触する厚い導電層26を更に備える。したがって、各素子の全電極は、第1の薄い層25及び第2のより厚い層26から構成される。一般に、層26は、層25よりも少なくとも一桁厚い。両方の層は、下層の圧電材料を作動させるように各トランスデューサ素子の高さの全体にわたって延在し、また、層26は、圧電複合体を越えて延在し、一般に、高さ寸法の方向に連続してリード部24を形成する。
【0028】
層25及び26は、導電材料、一般に金属から形成され、同じ材料であってもよい。これらの材料にとって良好な選択肢としては、金、クロム、銀、銅、及び、ニッケルが挙げられる。選択は、後述するように、プロセスの所定のステップにおける材料のコスト及び製造可能性によってもたらされ得る。
一般的な製造
【0029】
既知の方法と同様に、本トランスデューサアレイは層状に構築され、それにより、その材料が望ましくない層の領域が除去される。
図4Aは、両方の主表面上に平らに研削された、圧電複合体プレート22から始まる製造の初期段階を示す。プレートは一般に単一のアレイに対して非常に幅広いため、複合体の複数のストリップ42は、ダイシングされ(ステップ2)、その後、ベース上に離間して配置され、好ましくは所定位置に保持され、一時的な犠牲支持体37によって分離される(ステップ3)。支持材料は、蝋、金属、エポキシ、又は、プラスチックフレームであってもよい。支持構造体は、複合体ストリップを保持するために内部に空隙を有してもよい。支持材料は、ストリップを所定位置に保持するだけでなく、金属原子を受け入れて電極層を支持する方法ももたらし、複合体ストリップを越えて延在する。支持構造体は、複合体に隣接して配置され又は複合体の周囲に成形された後に複合体と共に研削されてそれらを同一平面上にする材料であってもよい。
【0030】
別の実施形態において、圧電複合体ストリップ42は、能動的使用においてトランスデューサに必要な幅よりも広い。この余分な「犠牲」部分は、金属層25及び/又は26を受け入れて支持するための支持体をもたらし、また、「犠牲」部分は、延在部24を露出させるべく製造プロセスの終わりに向かって機械加工により除去される。
【0031】
図4Bに示されるように、導電材料の薄層47が、複合体表面の上端及び下端に電極23、25として並びに支持体37上にわたって堆積される。これらの層は、一般型的には市販の圧電複合体で行われるように、プロセスの早い段階で複合体プレートに付加されてもよい。複合体は導電性ではないため、真空蒸着(物理/化学蒸着、蒸着、及び、スパッタリングを含む)、箔シート又は薄いワイヤフレームの浸漬又は接着による無電解メッキなどの無電解堆積の形態を使用して、薄い電極層を付加する。この層47は薄くて(すなわち、0.2um~3um)弱くてもよいが、目的は複合体と後続の層との間に結合を形成することである。薄層47は、実際には、異なる金属の幾つかの副層又は連続的に変化する層を備えてもよい。
【0032】
薄層47の上には、高温及び高圧において強度及び堅牢性を与えるために厚い電極層48が付加される。この層は、その後にフレキシブル回路ワイヤに接続され得る電極リード部24をもたらすべく複合体スタックを越えて延在する電極26を形成する。支持体37は、特にアドレス可能素子が存在する又は形成されているときに、延在部を堆積して保持するためのグランドをもたらす。
【0033】
或いは、共通電極層23には、デバイスに組み立てられるときに共通電極が電気リードによって容易に接触され得るように、接着層28、好ましくは導電接着層がコーティングされる。共通電極は、0.6umの厚さであってもよく、複合体を備えてもよい。
【0034】
電極層26には、それぞれが延在部24を有する別個の電極が予め形成され、或いは、層が薄い電極に結合した後に別個の電極が形成される。
図4Bの中間ステップは、(エッチング又はダイシングによって)領域45を除去し、各圧電素子上にわたって無傷の電極26を残すことを示す。より好ましくは、電極26は、複合体上にわたって部分27よりも狭い延在部24を形成するように(エッチング又はアブレーションによって)パターニングされる(
図7B参照)。このように狭くすることにより、その後の電気リードへの接続を容易にするために又は回路内にトレースを形成するためにリード間により多くの空間がもたらされる(以下を参照)。例えば、アレイは、僅か75umがトランスデューサ素子(したがって、電極部27)を分離する状態で400umのピッチを有する場合があり、それにより、半田付け又はクランプが非常に困難になる。したがって、延在部24は、少なくとも250umの分離をもたらすために150um未満に狭められてもよい。
【0035】
トランスデューサ素子の数、それらのピッチ、及び、駆動周波数λは、撮像品質に影響を及ぼす。音響トランスデューサにおいて、有用なルールは、グレーティングローブを最小にするためにピッチがλ/2及びλの範囲内でなければならないことである。したがって、一実施形態では、水中で5MHzで駆動される、300um(λに等しい)離間した128個の素子が存在し得る。非常に高分解能のアレイでは、ピッチが150umとなり得る。
【0036】
トランスデューサアレイは、支持体を除去する(すなわち、蝋を溶融する又はフレームを引き離す)ことによって分離されてもよく、
図4Bの最後のステップに示されるように、複数のアレイ12が一度に形成されている。剛性のために、延在部は、電気リードに接続するときに切断される横方向「バックボーン」部49によって互いに接続されてもよい(
図8のバックボーン49を参照)。
【0037】
マッチング層21が、成形され、研削され、別々に成形された後、厚い電極26に結合される。その後、複数のアレイが支持体37から除去されて互いから分離されてもよい。
【0038】
アレイは、それらの形成後にバッキング層に結合される。その後、この平坦なスタックは、デバイスのハウジングの形状、一般的には円錐又はリングの形状に一致するように成形される。フレキシブル回路からのリードは、半田付け又は超音波溶接によって個々の延在部に接続される。レンズが、掘削穴内の流体と同様のインピーダンス値を有するように選択された材料を使用してマッチング層に結合する。
箔積層:
【0039】
図5は、電極26用の箔シートを使用するアレイの側面を示す。箔51は、好ましくは導電接着剤54によってスタック23/22/25の上に結合される薄く展性のある金属シートであり、セラミック22を越えて延在する端部を有する。接着剤は、Bステージエポキシなどのエポキシを含むことができ、薄い電極層25を箔51に電気的に結合するために銀又は他の導電性粒子を含むことができる。これは、厚さ50ミクロンのエポキシ及び厚さ15ミクロンの箔を含み得る。適切な接着剤の例は、Loctite(商標)Ablestik(商標)CF3350、Mereco(商標)Metacase(商標)401、及び、Rogers Corporation(商標)CoolSpan(商標)TECAフィルムである。
【0040】
箔51は、(
図6Aに示されるワイヤフレームと同様に)結合前に形成された個々の電極を有することができる。共通のコネクタ49が、組み立て中に素子を一緒に保持するためのバックボーンをもたらし、このバックボーンは、電極が結合された後にダイシング又は切断によってライン53で示されるように除去される。
【0041】
或いは、個々の電極は、結合後に箔に形成され、各電極は、複合体を越えて延びる部分を含む。電極は、化学エッチング、レーザアブレーション、又は、ダイシングによって形成されてもよい。
図5に示されるように、レーザ55は、アブレーションによって箔の張り出した端部を通じて電極をパターニングする。張り出し部は、レーザ切断中に必要に応じて支持シム(図示せず)によって支持されてもよい。箔51は、薄い電極25よりも厚くて強い個々の厚い電極/リード26を形成するためにソー59によってダイシングされる。このステップ中、切り口が層25、26、54を貫いて僅かだけ複合体22に形成される。切り口の深さは10~200umであってもよい。これにより、複合体は、それに結合される電極26によって個別にアドレス可能な別個のトランスデューサ素子に分離される。
別個のワイヤフレーム
【0042】
好ましい実施形態では、ワイヤフレーム30が、別個に形成されて、薄い電極25を伴うダイシングされた複合体上にレイアップされてもよい。
図6A/
図6Bに示されるように、別個に形成されたワイヤフレーム30は、バックボーン49によって互いに接続される予め形成されたリード24のアレイを備えてもよい。リード24は、各トランスデューサ素子に位置合わせするように離間されて寸法付けられ、これらの素子は複合体をダイシングすることによって形成されてしまっている(又は形成されることになる)。各リードの端部は、薄い電極25の端部に超音波溶接又は半田付けされてもよい。
【0043】
この接続は、弱いとともに、圧電効果に影響を及ぼす場合があるが、これは、これらの端部を最小限の重なりを伴って接続した後にリード24及び薄い電極25の上にわたって厚いコンフォーマル層を電気メッキすることにより接続を強化することによって最小限に抑えられてもよい。ワイヤフレーム及び複合体は、カソードがバックボーン49に接続された状態で銅イオン浴内に配置される。電気メッキ層は厚い電極26となる。
【0044】
ワイヤフレームは、15~40umの銅箔などの薄い導電材料の層から形成される。スタックへの接続の前に、電極の周りの導電材料の望ましくない領域が、好ましくはエッチング、切断、又は、レーザアブレーションによって除去される。
リソグラフィ:
【0045】
電極は、
図8に示されるように、付加フォトリソグラフィによって形成されてもよい。ダイシングされたエポキシ充填複合体22から始まって、ネガ型レジスト43が複合体上面22及び支持体37上にわたってスピンコーティングされる。支持体37は、複合体を所定位置に保持するために複合体を取り囲み、電極延在部24を構築するための基板をもたらす。クリアフィールドマスク44が複合体上にわたって配置され、クリアフィールドマスクを通じてUV光が適用されてレジストが選択的に硬化される。未硬化領域は、電極25によって覆われる領域を画定し、この領域は、幅広い電極部、狭い延在リード部、及び、リードを互いに接合するバックボーン49を含むようにパターニングされてもよい。その後、未硬化フォトレジストが洗剤(例えば、2%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)で洗い流される。
【0046】
薄い金属層47は、既存のレジスト、支持体、及び、複合体の上に蒸着などによって無電解で堆積される。金属は、銅、クロム、金、又は、複合体及び支持体への何らかの結合を形成できる組み合わせであってもよい。
【0047】
厚い金属層48が薄い金属層47に電気メッキされ、全電極26が形成される。この厚い金属層48は、薄層47に導電的且つ機械的に結合され、(各電極25の上の)層47を実質的に覆う。したがって、リード24に印加される電圧は、電極全体及びその下の複合体材料に加わり、また、均一な被覆は、波が金属層を一貫して透過するようにする。バックボーン49は、銅などの金属イオンを含む電気メッキ浴内のカソードへの電気的接続をもたらすことができる。フォトレジスト層は、硬化及び未硬化の上の金属が架橋されないように、電気メッキ層47、48よりも十分に厚いことが好ましい。同様に、電気メッキの金属イオン濃度及び速度は、別個の電極間に架橋が生じないように十分に低くなければならない。
【0048】
硬化したフォトレジストを除去するためにアセトンを使用することができ、これにより、硬化したフォトレジストに付着した薄い及び厚い金属層が除去される。その後、延在リード24を伴う完全なスタックは、その後の回路への半田付け及びバックボーン49の切断のために支持体37から除去される。
単一電極層
【0049】
特定の好ましい実施形態において、個々の電極は、
図3に示されるような1つの層26として形成される。ここで、厚い層26は、電気リードをトランスデューサスタックに接続する機械的強度と、波が通過することができる均一な層との両方を与える。金属層26は、無電解メッキ、真空蒸着(VD)によって、或いは、箔もしくはワイヤフレームを複合体の上端に直接に結合するための接着層54を使用して形成することができる。全ての場合において、電極は、回路コネクタの個々のリードに接続するために複合体を越えて高さ方向に延在する。金属層26の厚さは10~40umであってもよい。
【0050】
好適には、この方法を使用して形成される特定のトランスデューサは、波が移動することができるより一貫した層を形成して設けるのがより簡単である。
湾曲アレイ
【0051】
円錐形のラジアルトランスデューサアレイは、円錐台形の表面上にアレイバッキングを重ね合わせることによって径方向外側及び部分的に長手方向(すなわち、ダウンホール又はアップホール)に面する素子を配置する(
図10A参照)。平坦な積層構造からそのようなアレイを形成することは、特定の幾何学的課題を提示する。
図6Aに示されるように、平面内で湾曲される平坦なワイヤフレームを設けることができ、ワイヤフレームは、スタックが形成された後、デバイスの円錐台形状のマウント15の周囲にコンフォーマルに成形される。完全な円形アレイは、円錐(例えば、
図6Aに示される断面当たり180°)の周りの別個の部分を覆うために2つ以上の湾曲部分から構築することができ、これらは、その後、それぞれフレキシブル回路に配線されて単一のアレイとして作用する。
【0052】
この場合、ダイシングソーの相対角度をスタックに対して数分の1度変化させることによって、平坦なスタックに対するダイシング作業を行なうことができる。このプロセスは、好ましくは、スタックを保持するための治具であって、-45°~+45°の複数の角度で割り出される治具を使用する。
回路
【0053】
デバイスは、回路基板、電気部品、及び、端子コネクタを備える。端子コネクタは、複合体スタックよりも遠位側の端部で延在部24に接続される導体トレースを伴うフレキシブル回路であってもよい。この回路は、電気部品、信号条件付き部品、ADC、ドライバ、プロセッサを有することができる。これにより、好適には、特定の電気部品が可能な限りトランスデューサの近くに位置され、それにより、更なるノイズの導入が低減され、プローブの残りの部分への接続が単純化される。他の構成要素は、極端な環境条件からそれらを保護するためにデバイスの加圧ハウジング内に位置される。
【0054】
一製造実施形態において、回路トレースは、例えばリソグラフィによって個々の素子電極と共にレイダウンされる。
用途
【0055】
この組成及び製造のトランスデューサは、医療検査、杭井、及び、パイプラインなどの用途に使用される様々なプローブで使用することができる。
図11は、杭井及びパイプで使用されるとともにフェーズドアレイとして動作可能なトランスデューサアレイを備える撮像デバイスを示す。このトランスデューサは、通常は使用中に電極がばらばらになる高圧又は高温などの大きな物理的歪みを伴う用途において特に有利である。
【0056】
図11は、杭井内又はパイプ2内に配置可能な撮像デバイス10を示す。撮像デバイス10は、一般に、少なくとも1つの超音波トランスデューサ12と、随意的に1つ以上のセントラライザ20とを備える。杭井又はパイプ2は、水、油、又は、ガスを輸送する又はこれらにアクセスするために使用され得る。この用語は、ケーシングされた杭井、ケーシングされない杭井、開孔、ボアホール、水パイプライン、オイルパイプライン、チューブ、及び、ボイラーチューブを含むことを意図している。
【0057】
図10A/
図10Bに示されるように、ラジアルトランスデューサは、デバイスの本体の周りに径方向に分離されたトランスデューサ素子12の1Dアレイである。トランスデューサ(任意のレンズ及び反射器を含む)の形状は、杭井、パイプ、又は、製造部品の表面をソニファイするためにパルスを外側に向ける。
【0058】
アレイが厚さプローブとして知られる純粋に径方向に面する場合、反射は、表面及び壁の欠陥までの距離を示す。径方向アレイが円錐台の表面上に20-40°の円錐角で形成されると、波面は、部分的に長手方向軸に向けられ、集束スポットから表面及び深さの特徴を反射する。
【0059】
上記のデバイス及び方法は、特定のモデル及び科学理論を使用して明確にするために説明されてきたが、本発明は、それらの理論の正確さ又はそれらの理論に従う実施形態によって限定されない。
【0060】
「上部」、「下部」、「遠位」、「近接」、「隣接」、「下方」、「上方」、「上側」などの用語は、図面に示されるように又は表面データを参照して、トランスデューサスタックの素子の相対的な位置決めを説明する際の簡単さのために本明細書で使用される。好ましい実施形態及びその好ましい使用に関して本発明を説明して例示してきたが、当業者であれば分かるように、本発明の完全な意図された範囲内にある修正及び変更を行なうことができるため、そのように限定されるべきではない。
【国際調査報告】