(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】リチウム硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20221208BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221208BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20221208BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221208BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221208BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20221208BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221208BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20221208BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01M4/36 B
H01M4/13
H01M4/58
H01M4/62 Z
H01M10/0569
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517208
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 GB2020052605
(87)【国際公開番号】W WO2021074634
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】クーク、アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】クック、クリス
(72)【発明者】
【氏名】アミゲス、エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】リア、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ロイド、ベン
(72)【発明者】
【氏名】ロック、ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ローランズ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】オルシ、アンジェリカ
(72)【発明者】
【氏名】リアタール、セバスチャン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK05
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029CJ30
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5H029EJ12
5H029HJ00
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5H029HJ10
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5H050GA03
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5H050GA10
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5H050GA29
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA09
5H050HA10
(57)【要約】
【解決手段】 電気化学電池であって、
i.アルカリ金属若しくはアルカリ金属合金又はシリコンを含むアノードと、
ii.集電体上に堆積された粒子状混合物を含むカソードであって、上記粒子状混合物が、電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を含み、カソードの多孔度が、40%未満である、カソードと、
iii.500mM未満の多硫化物溶解度を有する電解質と、を含む、電気化学電池。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池であって、
i.アルカリ金属若しくはアルカリ金属合金又はシリコンを含むアノードと、
ii.集電体上に堆積された粒子状混合物を含むカソードであって、前記粒子状混合物が、電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を含み、前記カソードの気孔率が、40%未満である、カソードと、
iii.500mM未満の多硫化物溶解度を有する電解質と、を含む、電気化学電池。
【請求項2】
前記電気化学的活性硫黄材料の前記粒子サイズが、5μm未満である、請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記炭素材料の前記粒子サイズが、5μm未満である、請求項1又は2に記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記電気化学的活性硫黄及び電子伝導性炭素が、複合材料の形態で存在している、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項5】
前記炭素材料が、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、グラファイト、グラフェン、還元グラフェン酸化物、及びカーボンブラックのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項6】
前記硫黄材料が、元素硫黄又はLi
2Sから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項7】
前記カソードが、追加の電子伝導性材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項8】
前記カソードが、イオン伝導性材料を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項9】
前記電解質が、直鎖状エーテル、ジエチルエーテル(DEE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、ジオキソラン(DIOX)、ジグリム、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルホルメート(MF)、エチルホルメート(EF)、メチルプロピオネート(MP)、酢酸エチル(EA)及びメチルブチレート(MB)、メチルエチルケトン、アセトニトリル(ACN)、プロピオニトリル(PN)、イソブチロニトリル(iBN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ヘキサメチルホスホラミド、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、キシレン及びジクロロメタン、イオン性液体、フッ素化エーテル、ゲル及びそれらの混合物、並びに少なくとも1つのアルカリ金属塩のうちの少なくとも1つから選択される溶媒を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項10】
前記アルカリ金属塩が、ヘキサフルオロヒ酸リチウムLiAsF
6、ヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF
6、過塩素酸リチウムLiCLO
4、硫酸リチウムLi
2SO
4、硝酸リチウムLiNO
3、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiOTf、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドLiTFSI、リチウムビス(フルオロスフオニル)イミドLiFSI、リチウムビス(シュウ酸塩)ボレートLiBOB、リチウムジフルオロ(シュウ酸塩)ボレートLiDFOB、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドLiBETI、リチウム2-トリフルオロメチル-4、5-ジシアノイミダゾールLiTDI、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのリチウム塩である、請求項9に記載の電気化学電池。
【請求項11】
前記電解質負荷が、2μL/mAh未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項12】
前記カソードが、結合剤を更に含み、前記結合剤が、好ましくは、PEO、PVDF、Nafion、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリフェニレンスルフィド、及びゼラチンのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項13】
前記電池が、リチウム-硫黄電池である、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気化学電池。
【請求項14】
電気化学電池組立体であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電気化学電池を備え、かつ前記少なくとも1つの電気化学電池に圧力を印加する手段を更に備える、電気化学電池組立体。
【請求項15】
前記圧力を印加する手段が、前記電池組立体の外側に位置決めされたバンド、ラップ、又はチューブのうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の電気化学電池組立体。
【請求項16】
リチウム-硫黄又はナトリウム-硫黄バッテリのためのカソードを形成するための方法であって、前記方法が、
a.電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を組み合わせることと、
b.前記電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を研削して、前記粒径を5μm未満に低減させることと、
c.前記得られた混合物を集電体上に堆積させることと、を含み、
前記混合物の堆積の後、前記カソードが、40%未満の気孔率を有する、方法。
【請求項17】
前記方法が、前記カソードをカレンダ加工又は押圧加工することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記炭素材料及び硫黄材料が、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、溶融注入、共押出、又はジェットミル粉砕によって組み合わされる、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学電池、特に、リチウム-硫黄電池に関する。本発明は、更に、電気化学電池、特にリチウム-硫黄電池のためのカソードを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム-硫黄電池などの二次電池は、外部電流を電池に印加することによって再充電され得る。このタイプの再充電可能な電池は、広範囲の潜在的な用途を有する。リチウム-硫黄二次電池を開発する際の重要な考慮事項には、質量エネルギー及び容積エネルギー、サイクル寿命、並びに電池組み立ての容易さが含まれる。二次電池の別の例は、ナトリウム-硫黄電池である。
【0003】
典型的には、リチウム-硫黄電池は、高気孔率(典型的には60~80%)を有するカソードを含有する。高気孔率により、標準的な電解質がカソードに浸透することが可能になり、カソード全体にわたって高い硫黄利用率を達成するために、電池の電解質における効果的な物質移行が可能になる。しかしながら、そのような電池の容積エネルギー密度は、カソードの高気孔率を考慮して相対的に低くなり得る。加えて、高気孔率カソードは、電極を完全に湿潤させ、十分なイオン伝導性を提供するために、電解質負荷(mlelectrolyte/mgS)を増加させる必要があるが、これにより、電池重量が増加し、質量エネルギー密度が低減する。高多孔質カソードはまた、例えば、外部圧力を受けたときに堅牢性を欠き得る。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明の様々な態様が、例として、添付の図を参照して説明される。
【0005】
【
図1】
図1は、カソード材料が単純な混合によって形成された電池と比較して、ボールミル粉砕を使用してカソード材料が形成される本発明の実施形態による電池の電気化学的性能データを示す。
【0006】
【
図2a】
図2aは、カレンダ加工されていないカソードと比較して、カレンダ加工されたカソードが採用される本発明の実施形態による電池の電気化学的性能データを示す。
【
図2b】
図2bは、カレンダ加工されていない高気孔率カソードと比較して、カレンダ加工された従来の(高多孔質)カソードが採用される電池の電気化学的性能データを示す。
【0007】
【
図3】
図3は、標準的な電解質と比較して、高度に濃縮された(低多硫化物溶解度)電解質が採用される本発明の実施形態による電池の電気化学的性能データを示す。
【0008】
【
図4a】
図4aは、電池がサイクル中に約0.2MPaの圧力を受ける、本発明の実施形態による電池の電気化学的性能データを示す。
【
図4b】
図4bは、圧力下での標準的な高気孔率カソードの電気化学的性能データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特定の例を説明する前に、本開示は、本明細書に開示される特定の電池、方法、又は材料に限定されないことを理解されたい。保護範囲は特許請求の範囲及びその等価物によって定義されるため、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0010】
本発明の電池及び方法を説明及び請求する際に、以下の用語が使用される。単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確にそうではないことを示さない限り、複数形を含む。これにより、例えば、「カソード」は、そのような要素のうちの1つ以上への言及を含む。
【0011】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という語及びそれらの変形は、「含むが、これらに限定されない」という意味であり、他の部分、添加物、成分、整数、又はステップを除外することを意図するものではない(及び除外しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、文脈が別途必要とされない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈が他に必要とされない限り、複数並びに単数を企図するものとして理解されるべきである。
【0012】
本発明の一態様によれば、電気化学電池は、アルカリ金属若しくはアルカリ金属合金、又はシリコンを含むアノードと、集電体上に堆積された粒子状混合物を含むカソードとを含み、上記粒子状混合物は、電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を含み、カソードの気孔率は、40%未満である。
【0013】
本発明の別一態様によれば、電気化学電池が提供され、電気化学電池は、
i.アルカリ金属若しくはアルカリ金属合金又はシリコンを含むアノードと、
ii.集電体上に堆積された粒子状混合物を含むカソードであって、上記粒子状混合物が、電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を含み、カソードの気孔率が、40%未満である、カソードと、
500mM未満の多硫化物溶解度を有する電解質と、を含む。
【0014】
本発明の更なる態様によれば、リチウム-硫黄又はナトリウム-硫黄電バッテリ用のカソードを形成するための方法であって、上記方法は、
a.電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を組み合わせることと、
b.電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を研削して、粒径を5μm未満に低減させることと、
c.得られた混合物を集電体上に堆積させることと、を含み、
混合物の堆積の後、カソードは、40%未満の気孔率を有する。
【0015】
一実施形態では、上記に詳述されるリチウム-硫黄バッテリ又はナトリウム-硫黄バッテリのためのカソードを形成するための方法が提供され、上記方法は、
a.電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を組み合わせることと、
b.電気化学的活性硫黄材料及び電子伝導性炭素材料を研削して、粒径を5μm未満に低減させることと、
c.得られた混合物を集電体上に堆積させることと、を含み、
混合物の堆積後、カソードは、40%未満の気孔率を有する。
【0016】
上記に説明されるように、本発明による電池は、40%未満の気孔率などの低気孔率を有するカソードを含む。驚くべきことに、低気孔率のカソードと高濃度の電解質との組み合わせが、リチウム硫黄電池などの電池に特定の利点を提供することができることが見出された。特に、高い硫黄利用率が達成され得る。更に、カソードの低気孔率により、典型的な高気孔率のカソードと比較して、相対的に薄いカソードが使用されることを可能にすることができるため、高い容積エネルギー密度が達成され得る。例えば、本発明によるリチウム-硫黄電池に使用されるようなカソードは、従来のリチウム-硫黄電池の高気孔率のカソードよりも約50%薄い厚さを有し得る。低気孔率のカソードの存在により、電池が外部圧力に耐えることも可能になり得、これは、例えば、サイクル寿命及び電池の完全性の保全に関して、様々な更なる利益を提供し得る。
【0017】
加えて、カソード中の硫黄と炭素との間の界面を最大化することは、特に高い硫黄利用率(理論容量に近くなり得る)を達成するという点で有益であり得る。
アノード
【0018】
任意の好適なアノードが、採用され得る。好ましくは、アノードは、アルカリ金属、特にリチウム又はナトリウムを含み得る。リチウム-硫黄電池では、リチウムアノードは、リチウムを含む電気化学的活性基材を含む。電気化学的活性基材は、リチウム金属又はリチウム金属合金を含み得る。好ましくは、電気化学的活性基材は、リチウム金属又はリチウム金属合金で形成された箔を備える。リチウム合金の例には、リチウムアルミニウム合金、リチウムマグネシウム合金、及びリチウムホウ素合金が含まれる。好ましくは、リチウム金属箔が使用される。電池がナトリウム-硫黄電池である場合、アノードは、ナトリウム金属又はナトリウム金属合金を含む。好ましくは、アノードは、ナトリウム金属又はナトリウム金属合金で形成された箔を含む。ナトリウム合金の例には、ナトリウムアルミニウム合金、ナトリウムマグネシウム合金、及びナトリウムホウ素合金が含まれる。好ましくは、ナトリウム金属箔が使用される。代替として、アノードは、シリコン、例えば、炭素-シリコン複合体などのシリコン含有複合材を含み得る。アノードがシリコンを含む場合、これはリチウム化又はナトリウム化され得る。
【0019】
アノードの表面上に被覆が含まれ得る。少なくとも1つ以上の被覆層が想定され得る。この被覆は、アノード保護層を形成し得る。このようなアノード被覆層は、例えば、アノード中に存在するアルカリ金属の不均一な剥離及びめっきを低減させることによって、電池性能に有益な効果を有し得、これにより、アノード表面における亀裂又は空隙が低減し得、サイクル寿命及び容量寿命の改善が提供され得る。
【0020】
例えば、リチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属と合金を形成することができる少なくとも1つの金属及び/又は非金属を含む1つ以上の被覆層が、採用され得る。「合金」という用語は、2つ以上の金属の組み合わせ、又は1つ以上の金属と他の非金属元素との組み合わせを指す。好適な合金金属及び非金属の例としては、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウム、亜鉛、炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、銀、金、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びそれらの混合物が挙げられる。リチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属と合金を形成することができる少なくとも1つの金属及び/又は非金属を含む被覆層の厚さは、1nm~5000nm、好ましくは10nm~3000nm、例えば100nm~1000nmであり得る。一実施形態では、アルカリ金属と合金を形成することができる少なくとも1つの金属及び/又は非金属を含む被覆層は、電気化学的活性アルカリ金属層上に直接堆積される。
【0021】
追加的又は代替的に、1つ以上のイオン伝導性被覆層は、電気化学的活性アルカリ金属層上に直接か、又は更なる被覆層の上に、アノード構造の一部分として含まれ得る。上記イオン伝導性被覆層は、10-5Scm-1未満の電子伝導率を有し得る。これにより、この層は、低い電子伝導率、すなわち、実質的に電子的絶縁性を有し得る。低い電子伝導率を有する層を含めることにより、リチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属と合金を形成することができる少なくとも1つの金属及び/又は非金属を含む層の頂部へのLi+及びNa+などのアルカリ金属イオンの堆積を回避し得、そのような層は、イオン伝導性被覆層とアノードとの間に存在する。低い電子伝導率はまた、イオン伝導性被覆層が電池内で更なる集電体として効果的に機能することを防止する役割を果たし得る。イオン伝導性被覆層は、10-5Scm-1未満、好ましくは10-8Scm-1未満、より好ましくは10-10Scm-1未満の電子伝導率を有し得る。一例では、電子伝導率は10-12Scm-1未満である。上記イオン伝導性被覆層は、1nm~5000nm、好ましくは10nm~1000nm、例えば100nm~500nmの厚さを有し得る。
【0022】
イオン伝導性被覆層は、セラミック材料若しくはガラス材料、ポリマー材料、ポリマー材料及びセラミック複合材料、並びにそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。好適なセラミック又はガラス材料には、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、酸素、リン、窒素、シリコン、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、硫黄、ホウ素、セレン、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素から選択される1つ以上の元素を含む。好適なセラミック材料は、化学量論的であってもよく、又は非化学量論的であってもよい。セラミック材料は、酸窒化物、硫化物、リン酸塩、酸化物、オキシ硫化物、チオリン酸塩、ホウ酸塩、オキシホウ酸塩、ホウ水素化物、ケイ酸塩、アルミン酸塩、若しくはチオアルミン酸塩化合物、又はそれらの組み合わせであってもよい。好適な材料の例としては、酸窒化リチウム、硫化リチウム、リン酸リチウム、酸化リチウム、オキシ硫化リチウム、チオリン酸リチウム、ホウ酸リチウム、オキシホウ酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、ケイ酸リチウム、アルミン酸リチウム、及びチオアルミン酸リチウム、又はそれらの組み合わせが挙げられる。代替的に、材料は、酸窒化ナトリウム、硫化ナトリウム、リン酸ナトリウム、酸化ナトリウム、オキシ硫化ナトリウム、チオリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、オキシホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、及びチオアルミン酸ナトリウムのうちの1つ以上から選択され得る。セラミック材料は、非晶質材料であってもよい。
【0023】
イオン伝導性被覆層は、伝導性ポリマー材料、例えばイオン伝導性ポリマーを含み得る。追加的又は代替的に、イオン伝導性被覆層は、ポリマー材料内に分散されたアルカリ金属塩を有するポリマー材料を含み得る。これにより、ポリマー内のイオン伝導性を提供又は増加させることができる。イオン伝導性被覆層は、その代わりに又はそれに加えて、ポリマー-セラミック複合材料を含み得る。ポリマー-セラミック複合材料は、少なくとも1つのポリマー材料によってともに結合されたセラミック粒子を含み得る。ポリマー-セラミック複合材料を形成するために使用される1つ又は複数のポリマーは、固有のアルカリ金属イオン伝導率を有し得るか、又はアルカリ金属塩と混合され得る。
【0024】
例えば、ポリマー材料は、ポリマー相、例えばポリ酸化エチレン内に溶解されたリチウム塩(例えば、LiTFSI)を含み得る。リチウム塩の更なる塩としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、リチウムビス(オキサレート)ホウ酸塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが挙げられる。好適なナトリウム塩としては、ヘキサフルオリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、ナトリウムトリフルオロメタンスルホンイミド、ナトリウムビス(オキサレート)ホウ酸塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。塩の組み合わせが採用され得る。
【0025】
ポリマーは、アミン、アミド、カルボニル、カルボキシル、エーテル、チオエーテル、及びヒドロキシル基、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの官能基を含み得る。ポリマーの非限定的な例としては、ポリ無水物、ポリケトン、ポリエステル、ポリストリン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニリデンが挙げられる。イオン伝導性ポリマーの非限定的な例としては、窒素又は硫黄含有ポリマー、例えば、ポリピロール(polypyrroles、PPY)、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、PEDOT、PPSが挙げられ得る。イオン伝導性ポリマーの更なる例としては、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリ(アセチレン)(poly(acetylene)、PAC)、及びポリ(p-フェニレンビニレン)(poly(p-phenylene vinylene)、PPV)が挙げられ得る。好ましい実施形態では、ポリマー材料は、ポリ酸化エチレンである。
【0026】
好ましい実施形態では、アノードは、アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金属を含む第1の層、及び第1の層上に堆積される第2の層で被覆され、第2の層は、10-5Scm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導性層であり、第1の層及び第2の層は上記に詳述される通りである。アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金を含む属、又はイオン伝導性層のいずれかを2つ以上を含む被覆が想定され得る。追加の層も含まれ得る。任意の好適な方法を使用して、1つ又は複数の層を形成し得る。好適な方法の例としては、物理的又は化学的蒸着などの物理的又は化学的堆積方法が挙げられる。例えば、プラズマ増強化学蒸着、スパッタリング、蒸発、電子ビーム蒸着、及び化学蒸着(chemical vapour deposition、CVD)が使用され得る。被覆層を形成する代替的な方法としては、インクジェット印刷、スロットダイ及びスプレー被覆が挙げられ得る。
カソード
【0027】
電気化学電池のカソードは、炭素及び硫黄の混合物を含む。任意の好適な形態の炭素及び硫黄が組み合わされて使用され得る。代替的に、1つ以上の炭素-硫黄複合体が使用され得、任意選択的に、更なる炭素材料及び/又は硫黄材料と組み合わされて使用され得る。炭素及び硫黄混合物は、集電体上に堆積された粒子状混合物の形態を採り得る。カソード中の硫黄対炭素の比は、6:4(60%S、40%C)~19:1(95%S~5%C)、例えば7:3~8:2であり得る。一実施形態では、炭素を含む1つ以上の材料は、硫黄を含む1つ以上の材料と混合され得る。カソード内の炭素と硫黄との間の界面は、任意の好適な方法によって測定することができる。例えば、界面は、インピーダンス法又は画像化技術(例えば、電子エネルギー損失分光法又はエネルギー分散型X線分光法などの元素マッピング技術と組み合わせたSEM/TEM画像化)を使用して定量化され得る。例えば、粒子は、炭素上の硫黄の被覆率が60%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、例えば90%超であり得るように、カソード中に配置され得る。「界面」とは、炭素粒子上の硫黄の被覆率として定義される。
【0028】
本発明による電池中のカソードは、低気孔率を有する。言い換えれば、(炭素材料、硫黄材料、及び結合剤などの)カソード材料の量に対するカソード中の空隙の量は、相対的に少ない。カソード中の「空隙」とは、カソード材料を含まないカソード内の空隙であり、例えば、虚空であってもよく、又は電解質で充填されていてもよい。例えば、カソードは、40%未満、好ましくは30%未満、より好ましくは15%未満、例えば5%未満の容積気孔率を有し得る。一例では、カソードは、5%~40%、好ましくは10%~30%、例えば15%~25%の容積気孔率を有し得る。カソードの気孔率は、任意の好適な方法、例えば、水銀(Hg)又はBrunauer-Emmett-Teller(Brunauer-Emmett-Teller、BET)ポロシメトリーによって測定することができる。カソードの厚さは、10~100μm、好ましくは15μm~80μm、例えば20μm~50μmの範囲であり得る。カソードの気孔率が低いことを考慮すると、高い容積密度が達成することができる。このことにより、カソードの厚さを相対的に小さくすることが可能になり得る。
【0029】
電気化学電池のカソードには、少なくとも1つの電気化学的活性硫黄材料が含まれる。電気化学的活性硫黄材料は、元素硫黄、硫黄系有機化合物、硫黄系無機化合物及び硫黄含有ポリマーを含み得る。好ましくは、元素硫黄又はLi2Sが使用される。この材料は、硫黄並びに、Li、Na、Mg、P、N、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、B、A、F、Cl、Br、I、O、又はそれらの任意の組み合わせなどの追加の元素を含有し得る。硫黄含有材料の例としては、LGPS、Li3PS4、Li7P3S11又はSPAN(硫黄/ポリアクリロニトリル)が挙げられる。電気化学的活性硫黄材料は、カソードの総重量の50~95重量%、好ましくは70~90重量%、例えば75~85重量%を形成し得る。
【0030】
一実施形態では、カソードは、電気化学的活性硫黄材料として、硫黄-炭素複合材料を含む。硫黄-炭素複合体の例としては、カーボンナノチューブ-硫黄、グラフェン-硫黄、カーボンブラック-硫黄、カーボンナノファイバ-硫黄、又は酸化グラフェン-硫黄が挙げられる。2つ以上の形態の炭素及び/又は2つ以上の形態の硫黄が複合体中に存在し得る。
【0031】
一実施形態では、カソードは、1つ以上のタイプの炭素で形成された固体電子伝導性材料を更に含む。例としては、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、グラファイト、グラフェン、還元酸化グラフェン及びカーボンナノチューブ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、カーボンブラックが採用される。電子伝導性炭素材料は、カソードの総重量の5~45重量%、好ましくは10~40重量%、例えば15~30重量%を形成し得る。代替的に、カソードが硫黄-炭素複合体を含む場合、更なる固体炭素材料はカソード中に存在しなくてもよい。
【0032】
一実施形態では、カソードは、イオン伝導性である添加剤、例えば、1つ以上のセラミック材料、1つ以上のポリマー材料、又はそれらの混合物を更に含み得る。理論に束縛されるものではないが、このような添加剤は、カソード内のリチウム/ナトリウムカチオンの伝導率を増加させ得、より小さい過電圧(より高い放電電圧プロファイル、より低い電荷電圧プロファイル)及びより高い硫黄利用率を可能にする。イオン伝導性材料は、25℃で10-7S/cm超、例えば10-6S/cm超のバルクイオン伝導率を有し得る。イオン伝導性材料は、カソードの総重量の1~60重量%、好ましくは5~50重量%、例えば10~30重量%を形成し得る。
【0033】
イオン伝導性材料の例としては、Li含有酸化物、例えばLi3.3La0.56TiO3;ナシコン構造(例えば、LiTi(PO4)3);LiSICON(Li14Zn(GeO4)4);Li10GeP2S12;ガーネットLi7La3Zr2O12;Li2O;他の酸化物、例えばAl2O3、TiO2、ZrO2、SiO2、ZnO;硫化物、例えばLi2S-P2S5;アンチペロブスカイト、例えばLi3OCl;水素化物、例えばLiBH4、LiBH4-LiX(X=Cl、Br、I)、LiNH、LiNH2、Li3AlH6、Li2NH;ホウ酸塩又はリン酸塩、例えばLi2B4O7、Li3PO4、LiPON;炭酸塩又は水酸化物、例えばLi2CO3、LiOH;フッ化物、例えばLiF;窒化物、例えばLi3N;硫化物、例えばリチウムボロスルフィド、リチウムホスホスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、オキシ硫化物、酸化プラセオジム、などのセラミックが挙げられる。上記セラミック材料のうちの少なくとも1つが使用され得るか、又はそれらの組み合わせが使用され得る。ナトリウム硫黄電池では、これらの伝導性材料のいずれかのナトリウムイオン同等物が使用され得る。
【0034】
イオン伝導性材料の他の例としては、EO系ポリマー(例えば、PEO);アクリレート系ポリマー(例えば、PMMA);ポリアミン(ポリエチレンイミン);シロキサン(ポリ(ジメチルシロキサン));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンゾイミダゾール);ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリイミド(例えば、カプトン);ポリビニル(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル);無機ポリマー(例えば、ポリシラン、ポリシラザン、ポリホスファゼン、ポリホスホネート);ポリウレタン;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート)などのポリマーが挙げられる。一実施形態では、ナフィオンなどのコブロックポリマーが使用され得る。一実施形態では、カソードは、1つ以上のイオン伝導性ポリマーと組み合わせてセラミック粒子を含有する。
【0035】
任意選択的に、カソードは、結合剤を更に含む。結合剤は、カソード成分をともに結合するように作用し得る。追加的又は代替的に、結合剤はまた、カソード成分を電子伝導性集電体に結合させ得る。その際に、結合剤は、カソードに改善された機械的堅牢性を提供することができるか、又はカソードの加工性を改善することができる。結合剤は、ポリマー結合剤、例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(polytetramethylene glycols、PTMG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(polytetramethylene ether glycols、PTMEG)、又はそれらの混合物であり得る。
【0036】
結合剤は、ハロゲン化ポリマーから、より好ましくは、フッ素化ポリマーからも選択され得る。好適な結合剤の例としては、好ましくはα形態のポリ(フッ化ビニリデン)(poly(vinylidene fluoride)、PVDF)、ポリ(トリフルオロエチレン)(poly(trifluoroethylene)、PVF3)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene、HFP)若しくはトリフルオロエチレン(trifluoroethylene、VF3)若しくはテトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene、TFE)若しくはクロロトリフルオロエチレン(chlorotrifluoroethylene、CTFE)とのコポリマー、フルオロエチレン/プロピレン(fluoroethylene/propylene、FEP)コポリマー、エチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)若しくはテトラフルオロエチレン(TFE)若しくはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のコポリマー、パーフルオロプロピルビニルエーテル(perfluoropropyl vinyl ether、PPVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(perfluoroethyl vinyl ether、PEVE)、及びエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテル(perfluoromethyl vinyl ether、PMVE)とのコポリマー、又はそれらの配合物若しくは混合物が挙げられる。
【0037】
好適な結合剤の他の例としては、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、PVDF-アクリルコポリマー、ポリアクリル酸、ポリイミド、及びポリビニルアルコールが挙げられる。更なる好適な結合剤としては、ゴム(例えば、スチレンブタジエンゴム)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)又はゼラチンが挙げられる。
【0038】
いくつかの例では、結合剤は、PEO、PVDF、Nafion、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、及びポリフェニレンスルフィドのうちの少なくとも1つから選択される。例えば、結合剤は、ポリエチレンオキシド又はPVDFを含み得る。
【0039】
カソードは、カソードの総重量に基づいて、0.05~20重量%の結合剤、好ましくは、0.5~10重量%、例えば、1~5重量%、例えば、2~3重量%の結合剤を含み得る。
電解質
【0040】
任意の好適な電解質が、電気化学電池内に含まれ得る。本発明による電解質は、多硫化物に対して低い溶解度を有するか、又はいくつかの場合において、電解質は多硫化物を溶解し得ない。電解質は、室温(20℃)で500mM未満の多硫化物溶解度を有し得る。例えば、電解質は、室温で、400mM未満、好ましくは200mM未満、より好ましくは150mM未満、例えば100mM未満、例えば10mM未満、例えば、1mM未満の多硫化物溶解度を有し得る。相応して、電解質は、一般に(多硫化物及び硫黄などの)硫黄含有種に対して低い溶解度を有し得る。例えば、電解質は、室温(20℃)で500mM未満の硫黄溶解度を有し得る。例えば、電解質は、室温で、400mM未満、好ましくは200mM未満、より好ましくは150mM未満、例えば100mM未満、例えば10mM未満、例えば、1mM未満の多硫化物溶解度を有し得る。
【0041】
多硫化物の溶解度が低いか、又は溶解しない電解質の使用、例えば、飽和濃度に近い濃度でリチウム塩を含有する電解質の使用は、電解質内で多硫化物シャトルを抑制することができ、したがってリチウム-硫黄電池などの電池において有益である。多硫化物シャトル効果は、クーロン効率の結果として生じる損失のために望ましくない。理論に束縛されるものではないが、高濃度の電解質、及び飽和濃度に近い濃度でのリチウム(又はナトリウム)塩の存在により、少量の多硫化物のみが電解質に溶解することが可能になり、これは、多硫化物シャトリングがほとんど又は全く生じないことを意味する。電解質内のアルカリ金属塩の濃度は、電解質が多硫化物に対して低い溶解度を有することを意味し得る。代替的に、イオン性液体などの電解質は、多硫化物の溶解度が低いか、又は溶解し得ない。
【0042】
高気孔率のカソードと組み合わせた低多硫化物/硫黄溶解度を有する電解質の使用は、電気化学的性能の低下をもたらす傾向がある。これは、活性硫黄種の利用率が低いためである。これは、中間硫黄種(多硫化物)が電解質によって溶媒和されることができないことから生じ得る。この観点から、固体状態メカニズムによって、すなわち固体(非溶媒和)多硫化物種の形成によって、低多硫化物/硫黄溶解度を有する電解質を含む電池を動作させることが有益であり得る。このような固体状態メカニズムでは、従来の高多孔質のカソードは、カソード中に存在する活性硫黄種へのリチウムイオンの輸送が不十分であり、及び/又は固体状態メカニズムを介した高い硫黄利用率を可能にする硫黄/炭素界面が不十分であり得る。
【0043】
ただし、低気孔率のカソードと不十分な多硫化物溶解度を有する電解質との組み合わせは、カソード中に残留する固体多硫化物種の形成によってこの問題を軽減し得る。固体状態メカニズムによる硫黄利用率は、炭素/硫黄界面が高い場合に、更に改善され得る(これは、高多孔質の標準カソードにおける場合には当てはまらない場合がある)。本発明では、多硫化物溶解度が低電解質、例えば、電解質の飽和濃度に近い濃度で塩類を含有する電解質は、固体状態カソード(低多孔質、高密度カソード)と組み合わせて効率的に使用され得る。
【0044】
本発明による電解質とカソードとの組み合わせにより、電解質システム内の多硫化物の溶解度が低いにもかかわらず、低容量の電解質を電池に採用されることも可能になり得る。従来のリチウム-硫黄電池では、リチウム多硫化物種に対して高い溶解度を有する電解質が必要であり、そのような電池の容量は、溶解度に依存し、したがって電池内で利用率可能な電解質容積に依存する。高度に濃縮された電解質は、多硫化物中間体に対して低い溶解度を有する。これにより、高度に濃縮された電解質が従来のカソードと組み合わせて使用される場合、活性材料を可溶化するのにはるかに多くの電解質が必要とされるため、高容量を達成するのにはるかに多くの電解質が必要とされる。電解質の量が多いほど、電池のサイズ及び重量を増加させ、低い比エネルギーをもたらすため、不利である。本発明では、固体多硫化物種の形成は、大量の電解質を必要とし得ない。更に、カソードの気孔率が低いと、カソード/電解質界面が減少し、大きな電解質容積の必要性が更に低下する。したがって、本発明の実施形態による電池は、<2μL/mAh、好ましくは<1.5μL/mAh、例えば、<1μL/mAhの電解質負荷を有し得る。これは、>2μL/mAhの典型的な電解質負荷を有し得る標準的なリチウム-硫黄電池との比較である。
【0045】
電解質は、1つ以上のアルカリ金属塩、例えば、リチウム又はナトリウム金属塩を含み得る。リチウム塩又はナトリウム塩は、高濃度、すなわち電解質の飽和濃度に近いレベルで電解質中に存在し得る。例えば、電解質中の1つ又は複数のリチウム塩若しくはナトリウム塩の濃度は、0.05M~10M、好ましくは1M~5Mの範囲内、例えば、3Mであり得る。溶媒中の少なくとも1つのリチウム塩又はナトリウム塩の濃度は、溶媒システムの飽和濃度の少なくとも75%、好ましくは溶媒の飽和濃度の少なくとも80%、例えば、溶媒の飽和濃度の少なくとも85%、例えば、溶媒の飽和濃度の少なくとも90%であり得る。一例では、溶媒の濃度は、飽和濃度の約100%であり、すなわち、電解質は完全に飽和され得る。
【0046】
「飽和濃度」という用語は、特定の溶媒中の特定の基質の溶解度の程度である。飽和濃度に達すると、より多くの溶質(例えば、より多くのリチウム塩)を添加しても、溶液の濃度は増加しない。代わりに、過剰な溶質が溶液から沈殿する。飽和濃度は、室温、例えば20℃で決定される。特定の溶媒内の多硫化物の飽和濃度は、既知の方法によって、例えば、すべての固体残留物を溶解するのに十分な電解質が添加される点を決定することによって、決定され得る。
【0047】
典型的なリチウム-硫黄電池では、電解質は高い多硫化物溶解度を有しており、多硫化物シャトルが生じ得る。電解質内に多硫化物の溶解度が高い場合、この多硫化物シャトルは、サイクル性能に影響を及ぼすことがあり、クーロン効率を低下させ得る。多硫化物シャトルの効果を防止又は制限するために、特定の添加剤、例えば、N-O接着剤を含む特定の添加剤が、そのような典型的なリチウム-硫黄電池の電解質に含まれ得る。このような犠牲添加剤の例が、LiNO3である。ただし、これらの添加剤は、特に高温における、電池動作中の消耗、及びサイクル中のガスの形成による電池膨潤の原因となること、などの特定の欠点を有する。これは、安全性の問題、並びにサイクル寿命に対する悪影響を有し得る。可溶性多硫化物の酸化還元シャトルを抑制するためにLiNO3などの添加剤を使用することは、電池の電圧範囲をも制限し得る。例えば、LiNO3添加剤を使用することは、放電電圧を1.8V(LiNO3の還元電位)に制限し得る。本発明による電池は、LiNO3などの添加剤を使用することなく、多硫化物シャトルを低減又は防止し得る。好ましくは、本発明による電解質は、犠牲添加剤を含まない。好ましい実施形態では、電解質は、N-O接着剤を含む添加剤、例えばLiNO3を含有しない。
【0048】
任意の好適な溶媒システム若しくは液体若しくはゲル、又は液体及び/若しくはゲルの混合物が、電解質に使用され得る。電解質は、電池の動作温度範囲にわたって液体であり、その範囲は、-30~120℃、好ましくは-10~90℃、例えば0~60℃であり得る。電池の動作圧力は、5mbar~100bar、好ましくは10mbar~50bar、例えば100mbar~20barであり得る。一例では、電池は、室温及び室圧で動作され得る。本発明による高濃度の電解質は、電解質が標準的な電解質よりも低い蒸気圧を有することを意味する。これにより、本発明による電池は、低圧力において標準的なリチウム-硫黄電池よりも良好に機能し得る。液体電解質は、ゲル電解質であり得る。
【0049】
電解質で使用するのに好適な有機溶媒は、エーテル(例えば、直鎖エーテル、ジエチルエーテル(diethyl ether、DEE)、ジグリム(2-メトキシエチルエーテル)、テトラグリム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン(dimethoxyethane、DME)、ジオキソラン(dioxolane、DIOX));炭酸塩(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC);スルホン(例えば、ジメチルスルホン(dimethyl sulfone、DMS)、エチルメチルスルホン(ethyl methyl sulfone、EMS)、テトラメチルスルホン(tetramethyl sulfone、TMS));エステル(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、メチルプロピルプロピオネート、エチルプロピルプロピオネート、酢酸エチル、及び酪酸メチル);ケトン(例えば、メチルエチルケトン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロプリニトリル、イソブチロニトリル);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホアミド、N、N、N、N-テトラエチルスルファミド);ラクタム/ラクトン(例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ブチロラクトン);尿素(例えば、テトラメチル尿素);スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド);ホスフェート(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート);ホスホルラミド(例えば、ヘキサメチルホスホラミド)である。更なる好適な溶媒としては、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、キシレン、ジクロロメタン、及びピリジンが挙げられる。
【0050】
エーテル、炭酸塩、スルホン、エステル、ケトン、ニトリル、アミド、ラクタム、尿素、ホスホルラミドのいずれも、フッ素化され得る。フッ素化エーテルの例は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルである。
【0051】
上記溶媒のうちの1つ以上の任意の組み合わせが、電解質中に含まれ得る。
【0052】
代替的な実施形態では、電解質は、溶媒として1つ以上のイオン性液体を含み得る。上記イオン性液体は、イミダゾリウム、アンモニウム、ピロリジニウムなどの有機カチオン、及び/又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドTFSI-、ビス(フルオロスルホニル)イミドFSI-、トリフレート、テトラフルオロボレートBF4
-、ジシアナミドDCA-、塩化物CI-などの有機アニオンを含む塩類を含み得る。イオン性液体は、室温(20℃)において液体である。好適なイオン性液体の例としては、(N,N-ジエチル-N-メチル-N(2メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-トリブチル-N-メチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-トリブチル-N-メチルアンモニウムジシアナミド、N-トリブチル-N-メチルアンモニウムヨージド、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウムブロマイド、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、(N,N-ジエチル-N-メチル-N(2メトキシエチル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-(2-メトキシエチル)ピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N-プロピル-N-メチルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、N-メチル-N-ブチル-ピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
代替的に又は追加的に、液体電解質は、ゲル電解質であり得る。ゲル電解質は、ゲル化液体電解質、例えばジメチルエーテルなどのエーテルとともにポリエチレンオキシドを含み得る。一例では、電解質は、ジメチルエーテル中にLiTFSIと組み合わせてポリエチレンオキシドを含み得る。
【0054】
上記の溶媒の任意の組み合わせが、電解質に採用され得る。例えば、電解質は、イオン性液体とフッ素化エーテルとの組み合わせ、又はゲル内のイオン性液体の組み合わせ、又はゲル内のフッ素化エーテルの組み合わせを含み得る。上記で詳述される液体及び/又はゲルのうちの2つ以上の任意の他の組み合わせが想定され得る。
【0055】
好ましい実施形態では、溶媒は、エーテル、例えば、ジメトキシエタン(DME)、ジオキソラン(DIOX)、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、又はそれらの混合物である。別の好ましい実施形態では、溶媒は、フッ素化エーテルである。
【0056】
電解質に含めるのに好適なアルカリ金属塩としては、リチウム塩又はナトリウム塩が挙げられる。好適なリチウム塩としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホンイミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム、ビス(オキサラート)ボレートリチウム及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが挙げられる。好適なナトリウム塩としては、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロヒ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドナトリウム、ビス(オキサラート)ボレートナトリウム及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。好ましくは、リチウム塩は、リチウムトリフルオロメタンスルホネート(リチウムトリフラートとしても知られる)である。塩の組み合わせが採用され得る。例えば、リチウムトリフレートは、硝酸リチウムと組み合わせて使用され得る。リチウム塩は、0.1~6M、好ましくは0.5~3M、例えば1Mの濃度で電解質中に存在し得る。
電池
【0057】
本発明による電池は、リチウム-硫黄又はナトリウム-硫黄電池である。したがって、本発明による電池は、本明細書で説明されるカソード、本明細書で説明されるアノード、及び本明細書で説明される電解質を含むリチウム-硫黄電池又はナトリウム-硫黄電池を提供する。任意選択的に、カソードとアノードとの間にセパレータが位置決めされ得る。例えば、電池を組み立てる場合、セパレータがカソード上に配置され、リチウムアノード又はナトリウムアノードがセパレータ上に配置され得る。次いで、組み立てられた電池に電解質が導入され、カソード及びセパレータを湿潤させ得る。代替的に、電解質が、アノードがセパレータ上に配置される前に、例えば、被覆又は噴霧によってセパレータに塗布され得る。セパレータは、ポリマー材料、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、及びポリエチレンで形成されたメッシュで形成され得る。
【0058】
本発明による電池は、好適なハウジング内に提供され得る。このハウジングは、電気化学区画を画定することができる。一実施形態では、ハウジングは可撓性であり、例えば可撓性パウチである。パウチは、複合材料、例えば、金属及びポリマー複合材料で形成され得る。一実施形態では、1つ以上の電池がハウジング内に封入される。1つ又は複数の電池が、パウチ内に封止され得る。電池又は電池の各々の領域は、ハウジングから突出し得る。この領域は、例えば、ニッケルで形成された接触タブに結合され得る。接触タブは、任意の好適な方法、例えば(超音波)溶接によってアルカリ金属又はアルカリ金属合金に接続され得る。代替的に、接触タブ自体は、ハウジングから突出し得る。複数の電気化学電池が電池組立体内に存在する場合、電極の各々の領域は、接触タブに接続され得る多数のアノードを形成するために、ともに押圧又は結合され得る。
方法
【0059】
カソード出発材料は、任意の好適な方法によって組み合わされ得る。好ましくは、本方法は、得られる粒子間の効果的な混合及び高い界面を提供することに加えて、小さな粒子サイズをもたらすために、1つ又は複数の出発物質を研削することを含む。例えば、出発材料内の粒子が互いに及び/又は他の物体(例えば、ボールミル粉砕又はビーズミル粉砕におけるボールなど)と衝突すると、粒子サイズが低減する。好適な方法としては、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、溶融注入、共押出又はジェットミル粉砕、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、カソードは、ビーズミル粉砕によって制作される。理論に束縛されるものではないが、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、溶融注入、共押出又はジェットミル粉砕などの方法は、高い硫黄/炭素界面を有するカソードをもたらし得、これは、本発明による低気孔率カソードの使用を容易にし得る。カソード材料は、上記の方法のいずれかが採用される前に、単純な混合プロセスによって最初に混合され得る。任意選択の結合剤が、以下に詳述される混合プロセスの前又は後のいずれかで添加され得る。
【0060】
ビーズミル粉砕は、粉砕チャンバ内で実施され、粉砕チャンバ内では、低減された粒子サイズを提供するために研削ビーズがカソード材料を研削する。ビーズミル粉砕は、乾燥カソード材料に対して実施され得、又は任意選択的に、溶媒が存在する場合でも湿式粉砕が実施され得る。ボールミル粉砕は、ボールミルの中で実施される。ボールミル粉砕は、ボールミルの中で実施される。ボールミル粉砕では、ボールミルは、(例えば、鋼、チタン、めのう、セラミック、又はゴムで作製された)ボールが、ミル内で、カソード材料と衝突するように、回転される。ジェットミル粉砕は、ジェットミルの中で実施される。ジェットミルは、圧縮空気又は不活性ガスのジェットを使用して材料を互いに衝突させることによって、カソード材料を研削し、混合する。ミル粉砕は、1分~48時間、好ましくは10分~24時間、より好ましくは25分~10時間、例えば25分~4時間の期間にわたって実施され得る。ボールミルの回転速度は、50rpm~1,000rpm、好ましくは250~750rpm、例えば350~500rpmの範囲であってもよい。好適なボールミルの例は、Fritsch社「Pulverisette6」遊星型ボールミルである。
【0061】
上記で詳述されるプロセスの後、粒子サイズが低減され得る。最終粒子サイズは、最大10μm、好ましくは最大5μm、例えば最大3μmの範囲内であり得る。粒子サイズは、0.5μm~10μm、好ましくは2μm~5μm、例えば3μm~4μmの範囲内であり得る。粒子サイズとは、任意の方向における粒子の最大長を意味する。例えば、粒径は、最大10μm、好ましくは最大5μm、例えば最大3μmの範囲内であり得る。
【0062】
上記で詳述されるプロセスの後、カーボンブラックなどの追加の電子伝導性添加剤及び/又はLGPSなどのイオン伝導性添加剤が、電気化学的活性硫黄/炭素混合物に添加され得る。電気化学的活性硫黄/炭素混合物全体に添加剤を分布させるために、更なる混合が行われ得る。
【0063】
カソード出発物質を組み合わせた後、混合物は、好適なカソードをもたらすために任意の好適なプロセスによって処理され得る、例えば、溶媒(例えば、水又は有機溶媒)及び任意選択の結合剤と混合されて懸濁液を形成し得る。懸濁液は、集電体に塗布され、次いで乾燥させて溶媒を除去する。代替的に、カソードは、乾燥プロセス(例えば、押出加工によって)によって被覆され得る。次いで、得られた構造が所望の形状に切断され、カソードを形成し得る。得られたカソードの厚さは、1~100μm、好ましくは15~80μm、例えば20~50μmの範囲であり得る。
【0064】
カソードは、低気孔率に達するために、任意選択的に押圧加工され得るか、又は好ましくは、カレンダ加工され得る。カレンダ加工が実施される場合、カソードは、例えば、ローラに1回以上、好ましくは1~5回、例えば1~2回通され得る。ローラは、任意の好適な材料、例えば、鋼、ガラス、又はセラミックで作製され得る。0kN~100kN、好ましくは0~80kN、例えば20~80kNの力が、ローラに印加され得る。任意選択的にローラに加熱を加え得、それによって、ローラの温度は20~80℃の範囲にある。カレンダ加工又は押圧加工中に、カソードの厚さが減少することになる。カレンダ加工又は押圧加工後のカソードの厚さは、1~50μm、好ましくは10~40μm、例えば、15~30μmであり得る。カソードをカレンダ加工又は押圧加工することにより、炭素と硫黄との界面接触が増加し得る。カソードをカレンダ加工又は押圧加工することにより、追加的又は代替的に、カソードの最終的な気孔率が減少し得る。カレンダ加工はまた、カソードの平滑化及び圧縮をもたらし得る。これにより、サイクル寿命の延長は、電池利用率を損なうことなく、カソードをカレンダ加工して気孔率を低下させることによって達成され得る。
【0065】
本発明による電池、又は1つ以上の、例えば、本発明による2つ以上の電池の組立体は、力を受け得る。好ましくは、力は異方性力である、すなわち、異なる方向で測定されるときに異なる値を有する。力の成分は、例えば、電気化学電池のアノードの活性表面に垂直に印加される。一実施形態では、力は、電池に連続的に印加される。一実施形態では、力は、特定の値に維持される。代替的に、力は、経時的に変化し得る。力は、アノードの表面全体にわたって印加され得る。代替的に、力は、アノードの表面の一部分にわたって、例えば、表面の少なくとも80%にわたって、好ましくは表面の少なくとも60%にわたって、好ましくは表面の少なくとも40%にわたって、表面の少なくとも20%にわたって、印加され得る。力は、電池に直接印加され得る。代替的に、力は、電池の外側に位置する1つ以上のプレート、例えば金属プレートに印加され得る。力は、1つ以上の電池が含まれるハウジングの外部に印加され得る。例えば、1つ以上の電池が可撓性パウチ内に含まれ得、可撓性パウチの外部に力が印加され得る。
【0066】
力は、電気化学電池の性能を向上させることができる。例えば、力の印加は、電池のサイクル寿命を延ばし得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書で説明されるカソードの構造は、電池サイクル中の圧力の使用を可能にすることができると考えられる。高気孔率カソードを有する電池に圧力を印加することは、カソード材料が相対的に脆弱である場合があり、カソード構造の一部が外部圧力下で失われ得、これにより、電池寿命を低減し得るという点で有益ではない場合がある。しかしながら、本発明によるカソードの構造は、それがより低気孔率であるために圧力下で維持され得る。言い換えれば、カソードの構造はより堅牢である。製造方法(例えば、カソードのカレンダ加工又は押圧加工)はまた、サイクル中にカソード構造を圧力下で維持することを可能にし得る。
【0067】
加えて、Li-S電池のサイクル寿命は、Li-金属アノードの劣化によって制限される。外部圧力の印加は、Li金属アノードの劣化を弱化させることが知られている。印加される圧力中のサイクルは、これにより、Li-金属アノードのサイクル寿命の延長のため、及びLi金属アノードの保護層の維持のために望ましい。これは、電池のサイクル寿命の延長につながる。これは、ナトリウム-硫黄電池及びシリコン-硫黄電池に同様に適用される。
【0068】
加えて、圧力の印加は、カソードの完全性を保全するのに役立ち得る。サイクル中、カソードは、カソードの膨潤に起因して容積膨張を受け得る。この膨張は、炭素-硫黄界面を低減させ、及び/又はカソード内の気孔率を増加させ得、それにより、サイクル寿命の低減をもたらし得る。電池への外部圧力の印加は、そのような膨張を防止又は制限し、これにより、カソード構造を保全し得る。
【0069】
電池サイクル中の圧力の印加はまた、保護層を含むアノードの使用を可能にし得る。上記で詳述されるように、アノードは、アルカリ金属と合金化する金属及び/若しくは非金属を含む層、並びに10-5Scm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導性層である層、又は上記層のうちのいずれか1つ以上の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含み得る保護層を含み得る。電池への、特にアノードへの圧力の印加は、保護層の下に、すなわち、保護層とアルカリ金属/アルカリ金属合金との間にアルカリ金属めっきの形成を可能にし得る。これにより、均質でなく、表面に亀裂又は点食をもたらし得る保護層上へのめっきの形成を回避又は低減することができる。めっきが保護層の下に生じる場合、アノードの平滑な表面が保全され得、表面上の亀裂又は空隙の形成が低減され得る。次いで、樹枝状突起の形成が防止され得る。
【0070】
一実施形態では、力は、締付力であってもよい。代替的に、力は、圧縮力であってもよい。締付力は、クランプを使用して電池に印加され得る。代替的に、1つ以上の狭窄要素が、1つ又は複数の電池の外部の周りに位置決めされ得る。狭窄要素は、1つ又は複数の電池の外部の少なくとも一部を取り囲むバンド又はチューブの形態を採り得る。バンドは、任意の好適な材料で作製され得る。一実施形態では、バンドは、1つ又は複数の電池の周りに延伸され得る弾性材料で形成され、定位置にあるとき、狭窄力を印加する。一実施形態では、バンドは、弾性バンドである。代替的に、バンドは、1つ又は複数の電池の周りで締められ得る。狭窄要素はまた、収縮ラップ材料の形態を採り得る。更なる構成では、1つ以上の圧縮ばねが使用され得、例えば、1つ又は複数の電池は格納構造内に収容され得、ここでは、1つ以上の圧縮ばねが、格納構造と電池との間に位置する。力を印加する他の手段は、ねじ又はおもりを含むことができる。
【0071】
力を印加する上記の方法のうちの1つ以上が採用され得る。0MPa超の任意の好適な力が使用され得る。電池又は電池に印加される力は、最大0.5MPa、好ましくは最大2MPa、例えば最大5MPaの範囲内であってもよい。力は、少なくとも0.1MPa、好ましくは少なくとも0.5MPa、例えば、少なくとも1MPaであってもよい。力は、0.1MPa~5MPa、好ましくは0.5MPa~3MPa、例えば1MPa~1.5MPaであってもよい。
【実施例】
【0072】
実施例1
低気孔率カソード(正極)を制作した。低気孔率カソードは、活性材料として60重量%の硫黄、25重量%のカーボンブラック、及び結合剤として15重量%のPEOを含んでいた。カソード粉末は、硫黄及び炭素を400rpmで4時間乾式ボールミル粉砕することによって調製され、硫黄と炭素との間に高い界面接触度をもたらした。第2のステップにおいて結合剤を添加して水性懸濁液を形成し、これをアルミニウム系集電体上に被覆してカソードを形成した。
【0073】
比較の「従来の」高気孔率カソードは、活性材料として60重量%の硫黄、25重量%のカーボンブラック、及び結合剤として15重量%のPEOを含んで形成した。カソード粉末は、3本ロールミルを使用して、簡単な撹拌及び混合方法によって調製した。第2のステップにおいて結合剤を添加して水性懸濁液を形成し、これをアルミニウム系集電体上に被覆してカソードを形成した。
【0074】
両方の電池は、その飽和濃度の75%を上回る濃度でリチウム塩を含有する液体電解質を含んでいた。上記液体電解質は、3Mのモル濃度までジオキソラン(DIOX)内に溶解したLiTFSIからなっていた。リチウム金属箔を負極として利用した。液体電解質成分は、電極間に配置された不活性セパレータ内に保持された。
【0075】
図1に示されるように、標準的な混合プロセスによって調製された「従来の」高多孔質カソード(60~80%の気孔率)を有するリチウム硫黄電池の電気化学的性能を、ボールミル粉砕によって調製された低気孔率(<40%)カソードの電気化学的性能と比較している。
【0076】
電池の各々を、質量で測定したカソードの総硫黄含有量に基づいてC/10の速度に等しい電流を印加し、硫黄の理論容量を1672mAhg-1と仮定して、1.0~3.0Vでサイクルさせた。
【0077】
活性材料の利用率は、従来の高多孔質カソードでは不十分である。利用率は、硫黄と炭素との間の界面接触度が高い低気孔率カソードにおいて著しく改善されている。
実施例2
【0078】
活性材料として60重量%の硫黄、導電性添加剤として25重量%のカーボンブラック、及び結合剤として15重量%のPEOを含むカソード(正極)を用意した。カソード粉末は、硫黄及び炭素を400rpmで4時間乾式ボールミル粉砕することによって調製し、硫黄と炭素との間に高い界面接触度をもたらした。第2のステップにおいて結合剤を添加して水性懸濁液を形成し、これをアルミニウム系集電体上に被覆してカソードを形成した。「カレンダ加工されていないカソード」は、更なる処理ステップなしで、そのまま使用した。「カレンダ加工されたカソード」は、二次処理ステップにおいて室温でカレンダ加工した。カソードは、ローラ間で80kNの印加力でカレンダ加工した。
【0079】
上記カソードを含む電池を制作した。これらのカソードは、その飽和濃度の75%を上回る濃度でリチウム塩を含有する液体電解質を含有していた。液体電解質は、3Mのモル濃度までジオキソラン(DIOX)内に溶解したLiTFSIからなっていた。厚さ100ミクロンの金属箔を負極(アノード)として利用した。液体電解質成分は、電極間に配置された不活性セパレータ内に保持された。
【0080】
図2aは、多硫化物溶解度がないか又は低多硫化物溶解度を有する電解質を用いてサイクルされる場合、カレンダ加工されたカソードを含む電池が、同等のカレンダ加工されていないカソードよりも容量減衰が低減しており、これにより、サイクル寿命が延長していることを示すことを明示している。電池を、質量で測定したカソードの総硫黄含有量に基づいてC/10の速度に等しい電流を印加し、硫黄の理論容量を1672mAhg
-1であると仮定して、1.0~3.0Vでサイクルさせた。
【0081】
図2bは、高多硫化物溶解度電解質を使用する「従来の」Li-Sシステムにおける高気孔率カソード上の活性材料の利用率に対するカレンダ加工の負の影響を明示している。加えて、カソードのカレンダ加工は、このシステムにおける容量減衰又はサイクル寿命延長を弱化するという利点を提供していない。
【0082】
図2b(正極)に説明されるカソードは、活性材料として60重量%の硫黄、25重量%のカーボンブラック、及び結合剤として15重量%のPEOを含んでいた。カソード粉末は、3本ロールミルを使用して、簡単な撹拌及び混合方法によって調製した。第2のステップにおいて結合剤を添加して水性懸濁液を形成し、これをアルミニウム系集電体上に被覆してカソードを形成した。「カレンダ加工されていないカソード」は、更なる処理ステップなしで、そのまま使用した。「カレンダ加工されたカソード」は、二次処理ステップにおいて室温でカレンダ加工した。カソードは、80kNの印加力で、ローラ間でカレンダ加工した。
【0083】
電池は、ジオキソラン対ジメトキシエタン(1対1)中に0.5M LiTFSI及び0.2M LiNO3で作製された液体電解質を含有した。厚さ100ミクロンのリチウム金属箔を負極(アノード)として利用した。液体電解質成分は、電極間に配置された不活性セパレータ内に保持された。
【0084】
電池は、質量によって測定しカソードの総硫黄含有量に基づいてC/10の速度に等しい電流を印加し、硫黄の理論容量を1672mAhg-1であると仮定して、1.9~2.6Vでサイクルさせた。
実施例3
【0085】
実施例3で利用されるカソードは、実施例2aで説明されるものと同じであった。カソードは、二次処理ステップにおいて室温でカレンダ加工した。カソードは、ローラ間で80kNの印加力でカレンダ加工した。
【0086】
実施例2aに詳述されるカソード、及びその飽和濃度の75%を上回る濃度でリチウム塩を含有する液体電解質を含む電池を制作した。上記液体電解質は、3Mのモル濃度までジオキソラン(DIOX)内に溶解したLiTFSIからなっていた。厚さ100ミクロンのリチウム金属箔を負極(アノード)として利用した。液体電解質成分は、電極間に配置された不活性セパレータ内に保持された。
【0087】
多硫化物を溶解する電解質と同等の電池も形成された。上記電池は、実施例2aに詳述されるカソードを含み、ジオキソラン対ジメトキシエタン(1:1)中の0.5MLiTFSIで作製された液体電解質もまた形成された。厚さ100ミクロンのリチウム金属箔を負極(アノード)として利用した。液体電解質成分は、電極間に配置された不活性セパレータ内に保持された。
【0088】
電池は、質量によって測定したカソードの総硫黄含有量に基づいてC/10の速度に等しい電流を印加し、硫黄の理論容量を1672mAhg-1であると仮定して、1.0~3.0Vでサイクルさせた。
【0089】
図3は、多硫化物を溶解する標準的な電解質と比較して、対応する低多硫化物溶解度を有する高度に濃縮された電解質を含む電池のサイクル中の放電容量を示している。多硫化物を溶解する標準的な電解質が採用される場合、サイクル中に放電容量は観察されない。
【0090】
実施例1及び実施例3(
図1及び
図3)は、硫黄と炭素との間の界面接触度が高い低気孔率カソードと組み合わせた低多硫化物電解質の両方に対する必要性を明示している。単離では、高気孔率の「従来の」カソードは、低多硫化物溶解度電解質を有する高容量ではサイクルしないことになる(
図1)。同様に、硫黄と炭素との間の界面接触度が高い低多孔質カソードは、「従来の」高溶解度電解質では全くサイクルしないことになる(
図3)。低気孔率カソード及び低多硫化物溶解度電解質の両方は、多硫化物シャトルなしで、持続的なサイクルのために高利用率の活性材料にアクセスするのに必要とされる。
実施例4
【0091】
外部圧力の印加は、2つのステンレス鋼プレート間に電池をクランプすることによって達成した。トルクレンチで締め付けたねじによって、プレートに力が印加された。各ねじに印加されるトルクは、ロード電池を使用して独立して印加される圧力に対して較正された。電池は、サイクル全体にわたって印加される力を維持するために、この設定下でサイクルさせた。
【0092】
図4aは、本発明による電池のサイクル中の容量データを提供しており、0.2MPaの外部圧力が印加されるときに改善された性能が示されている。
図4aは、サイクル寿命が改善されること、及び電池の容量減衰が低減することを示している。これは、カソード性能が外部圧力の印加によって負の影響を受けず、Li-金属アノード劣化及びサイクル寿命の改善が実現されることを可能にすることを示唆している。加えて、圧力の印加は、サイクル時の容積膨張中にカソードの完全性を維持することによって、容量減衰を弱化させる。これにより、電池のサイクル寿命が更に高まる。
【0093】
図4bは、標準的な高気孔率カソードが使用される同等のリチウム-硫黄システムに圧力を印加することが、圧力を印加することからは利益をもたらさないことを示している。標準的な高気孔率カソード電池が印加される圧力中の従来のリチウム-硫黄システムをサイクルすることは、カソード構造の破壊による容量の損失をもたらし得る。
【0094】
本発明の特定の態様、実施形態、又は実施例と併せて記載された特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は基は、互いに不適合でない限り、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態、又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示される特徴のすべて、及び/又はそのように開示された方法又はプロセスのステップのすべてが、そのような特徴及び/又はステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、いずれの前述の実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示される特徴の任意の新規の1つ又は任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示された方法又はプロセスのステップの任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせまで拡張される。
【0095】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時に又はそれより前に出願され、本明細書とともに公衆の閲覧に供されるすべての論文及び文書に向けられ、すべてのそのような論文及び文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】