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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】可撓性リチウム硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/489 20210101AFI20221208BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20221208BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/497
H01M50/403 D
H01M10/052
H01M4/13
H01M50/414
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517864
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 AU2020050986
(87)【国際公開番号】W WO2021051164
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】2019903509
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522108976
【氏名又は名称】エルアイ-エス エナジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LI-S ENERGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン イアン チェン
(72)【発明者】
【氏名】パオジー ユー
(72)【発明者】
【氏名】イエ ファン
(72)【発明者】
【氏名】タオ タオ
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB13
5H021CC02
5H021EE04
5H021EE18
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H029AJ11
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ12
5H029CJ13
5H029DJ04
5H029HJ01
5H029HJ06
5H029HJ12
5H029HJ14
5H029HJ17
5H029HJ19
5H029HJ20
5H050AA14
5H050BA16
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA12
5H050FA04
5H050HA01
5H050HA06
5H050HA12
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
高性能可撓性リチウム硫黄可撓性エネルギー貯蔵デバイスは、3D階層型MnOナノシート親リチウム性材料で修飾された導電性布を含むエネルギー貯蔵デバイス用の可撓性リチウム金属アノードと、FBN/G中間層で保護された可撓性グラフェン/硫黄カソードと、エネルギー貯蔵デバイス用の可撓性セパレータとを備え、前記セパレータは、リチウムイオン選択的透過性ポリオレフィン材料の1以上の微多孔膜を含み、前記微多孔膜の孔の少なくとも一部は、前記アノードと前記カソードの間に配置されたナノ多孔性ポリスルホンポリマーと関連している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイスのためのセパレータであって、前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を備え、各多孔膜の孔の少なくとも一部は多孔性硫黄含有ポリマーに関連付けられ、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の孔よりも、少なくとも0.5桁(2倍以上の係数)小さい、セパレータ。
【請求項2】
前記リチウムイオン選択的透過性材料の各多孔膜の前記孔は100nmより大きな平均孔サイズを有し、前記硫黄含有ポリマーの前記平均孔サイズは約50nm以下、より好ましくは約10nm以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を有し、リチウムイオン選択的透過性材料の前記微多孔膜の微小孔の少なくとも一部はナノ多孔硫黄含有ポリマーに関連付けられている、請求項1または2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記硫黄含有ポリマーは、前記セパレータの約20重量%以下、より好ましくは約15重量%以下、最も好ましくは約10重量%以下、存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記硫黄含有ポリマーは、250℃以上、より好ましくは275℃以上、最も好ましくは280℃以上の融点を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記硫黄含有ポリマーは、リチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有しない、請求項1~5のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記セパレータの前記孔は、転相ステップを伴う方法によって前記硫黄含有ポリマーで満たされている、請求項1~6のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記硫黄含有ポリマーは、約0.10mg/cm-2~約0.2mg/cm-2の質量負荷で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記硫黄含有ポリマーは、スルホニル化ポリマー、好ましくは修飾または未修飾芳香族ポリスルホン、好ましくはポリアリールエーテルスルホン(PAES)、例えばポリスルホンである、請求項1~8のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記多孔膜の前記材料は、有機ポリマー、特にポリオレフィンポリマーを含み、それは修飾または未修飾でよい、請求項1~9のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記セパレータは可撓性である、請求項1~10のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記セパレータは、25℃で6.87mS cm-1より大きなイオン伝導度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項13】
エネルギー貯蔵デバイスのためのセパレータを用意する方法であって、
(i)少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を備える前記エネルギー貯蔵デバイスのための多孔性セパレータを用意するステップと、
(ii)少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の前記多孔膜の前記微小孔を少なくとも1つの硫黄含有ポリマーで充填することによって、硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップと、
(iii)前記硫黄含有ポリマーにナノ孔を導入するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記硫黄含有ポリマー修飾膜を形成する前記ステップは、例えば溶液流延法によって前記イオン含有ポリマーの溶媒への溶液を少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の表面膜に提供するステップと、前記溶液を除去して前記硫黄含有ポリマーを形成するステップと、前記表面膜の表面から過剰なポリマーを拭き取るまたは払い落として前記孔の中にない過剰な硫黄含有ポリマーを前記セパレータから除去するステップとを伴う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ナノ孔を前記硫黄含有ポリマーに導入する前記ステップは、前記修飾膜に対して湿式転相プロセスを施して、相界面での溶媒/非溶媒変換処理によって、前記多孔膜の前記孔の中の前記硫黄含有ポリマー中に前記ナノ孔構造を形成する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
リチウム金属アノードと、硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に位置するセパレータとを備え、前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を有し、リチウムイオン選択的透過性材料の各膜の孔の少なくとも一部は硫黄含有ポリマーに関連付けられており、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の孔よりも少なくとも0.5桁以上(2倍以上の係数)小さい、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項17】
前記セパレータは、請求項1~13のいずれか一項により規定されたセパレータである、請求項16に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項18】
前記カソードは少なくとも1つのFBN/G中間層によって保護されている、請求項16または17に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項19】
可撓性エネルギー貯蔵デバイスであり、前記アノード、前記カソードおよび前記セパレータは可撓性である、請求項16~18のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項20】
前記1以上のアノードおよび前記カソードは自立型である、請求項16~19のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項21】
前記アノード、前記カソードおよび前記セパレータは耐蒸気性筐体中に入れられている、請求項16~20のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項22】
電解質をさらに備える、請求項16~21のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項23】
布自身の自重下で、90°折りである折り曲げ、または、例えば180°折りなどの端から端への折り曲げのような手動変形力を受けても、元の抵抗値の50%以下の電気抵抗を保持する、請求項16~22のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項24】
前記エネルギー貯蔵デバイスは、0.5Cの電流密度で、少なくとも800サイクル後に、60%までの初期容量を保持する、請求項16~23のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項25】
180°以下の曲げ角度の曲げ状態にて800サイクル後、少なくとも約100WhL-1、より好ましくは少なくとも約300WhL-1、最も好ましくは少なくとも約500WhL-1の体積エネルギー密度を示す、請求項16~24のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項26】
180°以下の曲げ角度の曲げ状態にて800サイクル後、少なくとも約75Whkg-1、より好ましくは少なくとも約250Whkg-1、最も好ましくは少なくとも約470Whkg-1の重量エネルギー密度を示す、請求項16~25のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項27】
前記リチウム金属アノードは、繊維の相互接続ネットワークを有する可撓性導電性布を有し、各繊維は1以上の親リチウム性材料で修飾されており、リチウム金属は修飾繊維間の空隙または空間に注入、貯蔵および除去可能である、請求項16~26のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項28】
前記リチウム金属アノードは、階層的ナノ構造を有する親リチウム性材料のネットワークを形成する、好ましくはナノシートまたはナノフレーク形状の親リチウム性材料を含む、請求項16~27のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項29】
親リチウム性材料はMnO、SnO、ZnO、Co、好ましくは階層的MnOナノシートを含む、請求項28に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項30】
前記リチウム金属アノードは布を有し、前記リチウム金属アノードの前記布は、相互接続、好ましくは交絡または編み合わされた繊維のネットワークによって提供される多孔性3D微細構造と、前記布の繊維上に前記親リチウム性材料が添加されたナノ構造とを有する、請求項16~27のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項31】
前記布は1.4×10-3Ω・cmの抵抗率を有する、請求項16~30のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項32】
前記布は炭素布である、請求項16~31のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項33】
前記リチウム金属は2mg cm-2~10mgcm-2の負荷で存在する、請求項16~32のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項34】
可撓性エネルギー貯蔵デバイスであって、
3D階層的MnOナノシート親リチウム性材料で修飾された導電性布を有する、エネルギー貯蔵デバイスのための可撓性リチウム金属アノードと、
FBN/G中間層によって保護された可撓性グラフェン/硫黄カソードと、
エネルギー貯蔵デバイスのための可撓性セパレータであって、前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を有し、前記微多孔膜の孔の少なくとも一部は、前記アノードと前記カソードとの間に位置するナノ多孔性ポリスルホンポリマーに関連付けられている、可撓性エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項35】
多孔性硫黄ポリマー、好ましくはポリスルホンの、リチウムイオン選択的透過性材料の多孔膜における孔充填材としての使用。
【請求項36】
エネルギー貯蔵デバイス、好ましくは可撓性リチウム硫黄電池における可撓性セパレータの使用であって、前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を有し、前記多孔膜の孔の少なくとも一部は多孔性硫黄ポリマーに関連付けられている、使用。
【請求項37】
請求項1~12のいずれか一項に記載の前記セパレータ、および/または請求項16~34のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵デバイスを備える電子デバイス。
【請求項38】
電子時計のような装着可能デバイス、およびLEDまたはLEDスクリーンの形態である、請求項37に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能可撓性リチウム硫黄電池およびその要素、特に、可撓性電池における使用に特に適したアノードおよびセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性/装着可能電子機器に電力を供給するために、可撓性で高性能の電池が緊急に必要とされているが、現在の可撓性リチウムイオン電池は、比較的低いエネルギー密度を有する。リチウム硫黄電池のエネルギー密度ははるかに高いものの、柔軟なリチウム硫黄電池の開発は依然として大きな課題である。
【0003】
リチウム硫黄(Li-S)電池は、理論的なエネルギー密度が高く、低コストであり、環境に優しい硫黄活物質が自然に豊富にあるため、現在のリチウムイオン電池(LiB)よりも優れた性能を発揮できる有望な代替品として考えられている。可撓性Li-S電池は、繰り返し曲げたり、折り畳んだり、伸ばしたりするときに、安定した電気化学的性能を提供する必要がある。カソード、アノード、セパレータ、電解質、および集電体を含む可撓性電池内の全ての要素は、繰り返される機械的変形に耐えるのに十分に機械的可撓性である必要がある。さらに、電池の故障を防止するために、連続的な電子/イオン経路の維持が必要となる。硫黄、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭化ポリマー、市販の炭素繊維およびそれらの複合材料を含む可撓性導電性ホストとの組み合わせを含む可撓性硫黄カソードが知られている。また、多硫化物(PSU)のシャトル効果を低減するために、カソード用に機能性(修飾)中間層が開発されてきた。特に、修飾窒化ホウ素ナノシート/グラフェン(FBN/G)の選択的中間層は、電荷移動抵抗を減少させ、シャトル問題を軽減する大きな可能性を示している。しかしながら、改良された可撓性カソードのみでは、可撓性Li-S全電池の良好な性能を保証することはできない。
【0004】
可撓性リチウムベースアノードの研究に関する報告はほぼ存在しない。リチウム金属アノードに関する主な課題は、機械的可撓性が低いことであり、曲げおよびねじりの後に回復するのが困難である。しわ、折り目、または座屈を含む永続的な歪みは、局所的な押し出しによって導入される。また、Liアノードの無限の体積変化およびデンドリマー(樹枝状)成長も、リチウム金属アノードのサイクル寿命に大きな悪影響を及ぼす。最近、可撓性リチウムアノードを製造するための2つの戦略が報告され、そこでは、導電性ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)や窒化ホウ素/Tiマキシン(Mxene)などの可撓性材料とともにリチウム箔を機械的圧延して薄膜にしている。上記複合アノードは機械的可撓性が向上したものの、使用されている可撓性材料は、Liめっき/ストリッピングサイクル中のアノードの体積変化の問題を有している。新規の可撓性アノードを開発するための別のアプローチが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Li-S電池用の市販のセパレータは、アノードとカソードとの間のLiの通過を妨げることなく直接的な電子輸送を防止するように設計されている。しかし、これらの市販のセパレータの大きな細孔は、Liのみならず可溶性多硫化物をも通過させ、時間の経過とともに電池を劣化させる。セパレータを改善するための一般的な戦略は、主にフィルタとして機能する追加の層でセパレータを被覆するステップを含む。しかしながら、追加の層の厚みおよび重量は、全電池の総厚みおよび総重量の増加に繋がり、重量エネルギー密度および体積エネルギー密度の減少に繋がる。また、こうしたセパレータの可撓性は利用されていない。
【0006】
モノのインターネット(IoT)や可撓性/装着可能電子機器の使用が増加しているため、高エネルギー密度、電気化学的持続可能性、かつ軽量な可撓性電源が緊急に必要とされている。様々な新規の電池システムの中で、リチウム硫黄(Li-S)電池は、理論的なエネルギー密度が高く、低コストであり、環境に優しい硫黄活物質が自然に豊富にあるため、現在のリチウムイオン電池(LIB)よりも優れた性能を発揮できる有望な代替品と考えられている。可撓性装着可能電子機器に電力を供給するために、可撓性かつ高性能な電池が緊急に必要とされている。
【0007】
優れた電気化学的かつ機械的性能を有する可撓性Li-S全電池を得るために、3つの構成要素(カソード、アノードおよびセパレータ)全ての可撓性が保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、エネルギー貯蔵デバイス用のセパレータを提供し、セパレータは、1つ以上のLiイオン選択的透過性材料の多孔膜を含み、多孔膜の孔の少なくとも一部が多孔性硫黄含有ポリマーに関連付けられており、硫黄含有ポリマーの孔は、Liイオン選択的透過性材料の孔よりも少なくとも1桁小さい。
【0009】
多孔膜中の孔は、孔径が100nmよりも大きく、最大約10マイクロメートル(μm)まで変化する異なる形状およびサイズを有し得る。一実施形態では、多孔性硫黄ポリマーを充填した後、膜の元の孔サイズは、実質的に50nm以下に減少する。したがって、平均細孔径は、0.5桁(2倍以上の係数)、より好ましくは0.75桁(5倍以上の係数)、最も好ましくは、1桁以上(10倍以上の係数)だけ減少する。
【0010】
特に好ましい実施形態では、硫黄含有ポリマーの孔は、Liイオン選択的透過性材料の多孔膜の孔よりも約1桁以上(10倍以上の係数)小さい。
【0011】
関連する態様では、本発明は、エネルギー貯蔵デバイス用のセパレータを提供し、セパレータは、1以上のLiイオン選択的透過性材料の微多孔膜を含み、微多孔膜のマイクロメートル孔の少なくとも一部は、ナノ多孔性硫黄含有ポリマーに関連付けられている。
【0012】
望ましくは、硫黄含有ポリマーは、250℃以上、より好ましくは275℃以上、最も好ましくは280℃以上の融点を有する。好ましい硫黄含有ポリマーは、硫黄含有ポリマーである。
【0013】
市販のセパレータは、典型的には、100nmを超える平均孔径を有する膜を含む。本発明において、硫黄含有ポリマーで修飾した後の平均孔径は約10nmである。
【0014】
適切には、セパレータの膜は、微多孔ポリマーを含む。適切には、膜は、膜の表面積の約20%から約70%の微多孔性を有する。
【0015】
望ましくは、硫黄含有ポリマーは、リチウムイオンおよび電解質に対して選択的に透過性を有しているが、多硫化物に対しては透過性を有していない。好ましくは、ナノ多孔性硫黄含有ポリマーは、約5nm~約20nmの範囲の孔径を有する。ナノ多孔性硫黄含有ポリマーの好ましい多孔度は、膜の表面積の10%~30%の範囲である。
【0016】
好ましい実施形態では、膜厚は、約10μm~50μm、より好ましくは約20μm~35μm、最も好ましくは約25μm~28μmの範囲である。
【0017】
本明細書で定義されるセパレータにおいて、硫黄含有ポリマーは、膜の孔の少なくとも一部を満たす。セパレータ膜の孔の少なくとも一部を満たすと、膜の微孔性が減少し、リチウムイオンがセパレータを通過できるようにしつつ、セパレータを通過するポリ多硫化物の通過がより防止される。より好ましくは、膜の実質的に全ての孔は、修飾後に硫黄含有ポリマーで満たされる。硫黄含有ポリマーは、膜の表面に存在しないか、またはセパレータが必要以上に重くおよび/または厚くなるのを避けるために、その上にごくわずかな量でしか存在しないことが好ましい。硫黄含有ポリマー間の関連性を膜表面ではなく膜の孔の少なくとも一部に制限することは、本発明のセパレータを含むエネルギー貯蔵デバイスの総厚みおよび総重量またはエネルギーを実質的に増加させることなく、多硫化物を排除するためのよりよいセパレータを有利にもたらす。これは、本発明のセパレータが従来技術のセパレータよりもポリ多硫化物の通過/シャトルを防止するのにより効果的であることを意味するが、ポリ多硫化物濾過層または被覆がセパレータに添加される従来技術のセパレータで観察される重量エネルギー密度および体積エネルギー密度の低下はない。
【0018】
好ましくは、本発明のセパレータは、25℃で6.87mScm-1を超えるイオン伝導度を有する。例示的なセパレータの1つは、25℃で約6.41mScm-1のイオン伝導度を有する。
【0019】
適切には、製造中に、セパレータ膜の微孔は、硫黄含有ポリマーで埋められる。次に、膜の微孔に提供された硫黄含有ポリマーは、好ましくは転相プロセスを介してナノ多孔性にされる。転相プロセスを利用すると、硫黄含有ポリマーにナノ孔が容易に生成されることが分かった。このように硫黄含有ポリマーを含めると、全体的な熱的および機械的セパレータの安定性も向上します。
【0020】
好ましくは、膜中の硫黄含有ポリマーの総量は、約20重量%以下、より好ましくは、10重量%以下である。
【0021】
適切には、硫黄含有ポリマーの質量負荷は、約0.20mg/cm-2~約0.4mg/cm-2、より好ましくは約0.10mg/cm-2~約0.2mg/cm-2である。
【0022】
最も好ましくは、膜の実質的に全ての孔は、多孔性硫黄含有ポリマーで満たされているが、充填材ポリマーを含めることは、セパレータの総重量を約10重量%を超えて増加させない。好ましくは、硫黄含有ポリマーは、約20重量%以下、より好ましくは約15重量%以下、最も好ましくは約10重量%以下で存在する。
【0023】
好ましい実施形態では、膜の材料は、膜の微孔を満たす硫黄含有ポリマーとは異なる。
【0024】
特に好ましい実施形態において、硫黄含有ポリマーは、修飾または非修飾芳香族ポリスルホン、好ましくは、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、例えば、ポリスルホンである。幾つかの実施形態では、第四級アンモニアポリスルホンポリマーはあまり好ましくない。
【0025】
幾つかの実施形態では、膜は、Liイオン選択的透過性材料の2つ以上の膜のラミネートの形態である。
【0026】
望ましくは、硫黄含有ポリマーは、250℃以上、より好ましくは275℃以上、最も好ましくは280℃以上の融点を有する。そのような材料は、融点で、膜の多孔性が失われ、有効性がデバイスをシャットダウンするため、エネルギー貯蔵デバイスの熱ヒューズとして有利に使用することができる。
【0027】
望ましくは、膜の材料は、修飾されていても修飾されていなくてもよい有機ポリマー、特にポリオレフィンポリマーを含む。非修飾ポリオレフィンである有機ポリマーが特に好ましい。さらに望ましくは、膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらの組み合わせを含む。
【0028】
特に好ましい実施形態では、本発明のセパレータは、可撓性セパレータである。セパレータの可撓性は、膜厚と剛性によって決定される。ただし、手動で曲げられる、手動でねじることができる、および/または手動で折り畳むことができるセパレータが特に好ましい。
【0029】
特に好ましい実施形態では、膜の厚みは、硫黄含有ポリマー処理後、実質的に同じであり、例えば、約26ミクロンである。
【0030】
望ましくは、修飾フィルムの湿潤性は、実質的に未処理フィルムの湿潤性と同じである。
【0031】
本発明の第2の態様では、以下のステップを含む、エネルギー貯蔵デバイス用のセパレータを容易する方法が提供される。
(i)少なくとも1つのLiイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を含む、エネルギー貯蔵デバイス用の多孔性セパレータを提供するステップと、
(ii)少なくとも1つのLiイオン選択的透過性材料の膜の孔に少なくとも1つの硫黄含有ポリマーを充填することにより、硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップと、
(iii)硫黄含有ポリマーに孔を導入するステップであって、硫黄含有ポリマーの孔は、Liイオン選択的透過性材料の孔よりも少なくとも1桁小さい、ステップと、
を含む。
【0032】
本発明の関連する態様において、以下のステップを含む、エネルギー貯蔵デバイス用のセパレータを容易する方法が提供される。
(i)少なくとも1つのLiイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を含むエネルギー貯蔵デバイス用の多孔性セパレータを用意するステップと、
(ii)少なくとも1つのLiイオン選択的透過性材料の膜の微孔に少なくとも1つの硫黄含有ポリマーを充填することにより、硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップと、
(iii)硫黄含有ポリマーにナノ孔を導入するステップと、
を含む。
【0033】
望ましくは、硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップは、例えば、溶媒流延法によって、溶媒への硫黄含有ポリマーの溶液を少なくとも1つのLiイオン選択的透過性材料の表面膜に提供するステップを含む。
【0034】
適切には、本方法は、硫黄含有ポリマー層の厚みを所望のレベル、好ましくは約200μmに調整するステップをさらに含む。一実施形態では、適用および調整ステップは、ドクターブレーディングを含む。本方法は、続いて溶媒を除去して硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップをさらに含む。適切には、溶媒は、真空支援蒸発によって除去することができる。
【0035】
本方法は、例えば、膜の表面から過剰のポリマーを拭き取るかまたはブラッシングする(払い落とす)ことによって、膜から過剰の硫黄含有ポリマーを除去するステップをさらに含むことができる。このステップは、セパレータから孔の中にない過剰な硫黄含有ポリマーを除去することが理解されよう。言い換えれば、過剰な硫黄含有ポリマーはポリマー表面から除去されるが、孔からは除去されない。一実施形態では、過剰の硫黄含有ポリマーは、真空によって膜表面から除去される。
【0036】
好ましくは、セパレータの厚みは、硫黄含有ポリマーを膜の孔に導入する前の厚みと実質的に同じである。
【0037】
好ましくは、ナノ孔は、修飾膜を転相湿潤プロセスで処理することによって、修飾膜の硫黄含有ポリマーに導入される。転相湿潤プロセス中、修飾は、DMFなどの有機溶媒中で提供され、次いで、例えば、浸漬によって、水などの非溶媒相に接触させる。これにより、ポリマーリッチ相とポリマープア相の2つの相が形成される。これにより、溶媒/非溶媒交換プロセスにより、相界面で、膜の孔内の硫黄含有ポリマー成分にナノ多孔性構造が形成される。
【0038】
導電性布を含むエネルギー貯蔵デバイス用のリチウム金属アノードは、1以上の親リチウム性材料で修飾された繊維の相互接続ネットワークを有することも記載されている。
【0039】
適切には、布は可撓性布である。
【0040】
望ましくは、リチウム金属は、機能化(修飾)された繊維間のギャップまたはスペースから挿入可能、格納可能、および除去可能である。
【0041】
関連する態様では、本発明は、導電性布を含むエネルギー貯蔵デバイス用のリチウム金属アノードを提供し、1以上の親リチウム性材料で修飾された繊維の相互接続ネットワークを有し、リチウム金属は、修飾繊維。リチウム金属はまた、親リチウム性材料から形成されたナノ構造内に位置することが理解されよう。
【0042】
関連する態様では、繊維の相互接続ネットワークを有する可撓性導電性布を含むエネルギー貯蔵デバイス用のリチウム金属アノードが提供され、各繊維は1以上の親リチウム性材料で修飾され、それによって、リチウム金属は、修飾繊維間の隙間または空間で挿入、貯蔵および除去可能である。
【0043】
本発明の可撓性アノードは、しわ、折り目、および座屈の1以上の局所的な抽出から生じる永久的な歪みに対して、リチウム金属よりも耐性が高い。本発明の可撓性アノードは、リチウム金属と比較して、リチウムストリッピング/めっきサイクル中に発生する体積変化に対してより耐性がある。
【0044】
修飾された布アノードの優れた機械的特性および階層的ナノ構造ネットワークは、これらの可撓性リチウムアノードの前例のない可撓性および安定性に大きく寄与する。
【0045】
本明細書で定義されるリチウム金属アノードにおいて、リチウム金属アノードは、好ましくは相互接続された、好ましくはインターレース(交絡されたまたは織り合わされた繊維のネットワークを有する布を含む。相互接続、インターレース(交絡された)、または織り合わされた繊維のネットワークは、3D繊維構造を有する微細構造を形成し、繊維間に空隙および/または空間が形成され、リチウム金属を注入、貯蔵、および除去可能な全体的な多孔性構造を布に与える。言い換えれば、繊維ネットワークの微細構造は、修飾繊維上の親リチウム性材料によって付与されたナノ構造とともに、布がリチウム金属ホストとして機能することを可能にする。
【0046】
破損または性能の大幅な低下なしに3000サイクルを超えて繰り返し曲げられ、折り畳まれる必要があるため、高可撓性布は、可撓性Li-Sエネルギー貯蔵デバイスに好ましい。また、十分に高い電気伝導率および大きな表面積を備えた布のみが、可撓性Li-Sエネルギー貯蔵デバイスでの使用に適している。さらに、理想的な布は、エネルギー貯蔵デバイスで経験される環境条件下で化学的に安定である。また、さらに好ましい布は、特に溶融リチウムの湿潤性に関して、布の表面化学を改善するために布上に(すなわち、MnO)などの金属酸化物を成長させることができる熱水処理後にこれらの特性を保持する。最後に、布は、かなりの量の曲げ、折り畳み、および伸びの下で、機械的強度および弾性を維持する必要がある。したがって、炭素布は、必要とされる高い機械的可撓性およびその他の特性を備えた適切な材料の1つである。さらに、好ましい布は、デバイス劣化の構成要素であるLiデンドライト形成を制限するのに適した3D多孔質構造/3D微細構造を有している。適切には、布は炭素布である。好ましくは、布は、導電性炭素布などの導電性布である。好ましい布の電気抵抗率は1.4×10-3Ω・cmである。
【0047】
適切には、布は、1以上の親リチウム性材料のナノ構造で修飾されている。布地、特に親リチウム性材料で布の繊維を修飾することは、布ホストによるリチウム金属の吸着を助ける。より適切には、ナノ構造は、3D親リチウム性ナノ構造であり、好ましくは、布の表面積を著しく増加させるナノフレークまたはナノシートの形態である。特に好ましい実施形態では、3D親リチウム性ナノ構造は、MnOを含む。最も好ましくは、3D親リチウム性ナノ構造が3D階層型MnO2ナノシートを含む。適切には、ナノ構造は布の繊維上に均一に製造される。
【0048】
望ましくは、リチウム金属は、布繊維および/またはナノ構造と関連している。最も好ましくは、リチウム金属は、布繊維およびナノ構造と関連している。
【0049】
適切には、アノードの製造中に、リチウム金属は、溶融リチウム金属注入の形態でアノードと関連付けされる。好ましくは、リチウム金属アノードへのリチウム負荷は、約2mgcm-2~約10mg cm-2である。幾つかの実施形態では、リチウム金属の負荷は、好ましくは3mgcm-2または6mg cm-2である。
【0050】
特に好ましい実施形態では、本発明のリチウム金属アノードは、可撓性リチウム金属アノードである。
【0051】
(i)1以上の親リチウム性材料で導電性布を修飾するステップと、
(ii)修飾された布をリチウム金属と関連付けるステップと、
を含む、電気化学セル用のリチウム金属アノードを容易する方法も記載されている。
【0052】
適切には、布は可撓性である。
【0053】
好ましくは、布は、導電性炭素布などの導電性布であり、最も好ましくは炭素布、例えば市販の炭素布である。
【0054】
望ましくは、親リチウム性材料で布を修飾するステップは、例えば、過マンガン酸カリウム粉末、濃塩酸および脱イオン水を用いた水熱法を伴う。水熱法は単結晶成長技術であり、結晶は高温水溶液から高温蒸気圧で、例えばテフロンで裏打ちされたオートクレーブ内で高温高圧で成長します。
【0055】
適切には、修飾された布をリチウム金属と関連付けるステップは、布にリチウム、好ましくは溶融リチウム金属を注入するステップを含む。望ましくは、これは、修飾された布の端を溶融リチウム金属と接触させるステップによって達成することができる。
【0056】
好ましくは、上記関連付けるステップは、不活性雰囲気、好ましくはアルゴン雰囲気下で行われる。
【0057】
好ましい実施形態では、本方法は、布に関連するリチウムの量を制御するために注入時間を調整する追加のステップをさらに含む。言い換えれば、注入時間を調整するステップにより、リチウムの質量負荷を制御することができる。好ましい実施形態では、注入時間は、約3mgcm-1のリチウム質量負荷を与えるように制御される。
【0058】
適切には、親リチウム性材料の少なくとも1つは、ナノ構造化されている。そのようなモーフォロジーは、ホストの表面積を増加させる。好ましくは、親リチウム性材料は、好ましくはナノフレーク形態、最も好ましくは3D階層的MnOナノシートであり、理想的には布の表面、特に布の繊維上に成長する、MnO、SnO、ZnO、Coなどの金属酸化物である。最も好ましくは、親リチウム性材料の極薄ナノシートは、炭素繊維上に均質に製造される。この配置により、布の表面積が大幅に向上する。
【0059】
好ましくは、本明細書に記載のエネルギー貯蔵デバイスにおいて、カソードは、グラフェン/硫黄カソード、好ましくは、ポリ多硫化物シャトル効果を低減するために、および/または電荷移動抵抗を低減するために、適切な選択的修飾中間層を有するグラフェン/硫黄カソードである。一実施形態では、そのような中間層の例は、例えば、硫黄/グラフェン/窒化ホウ素ナノシートカソードを提供するための窒化ホウ素/グラフェン(FBN/G)中間層である。
【0060】
適切には、カソードは自立型カソードである。
【0061】
特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のカソードは、可撓性カソードである。
【0062】
特に、FBN/G中間層で保護されたグラフェン/硫黄カソードが本発明の硫黄含有ポリマー修飾セパレータとともにデバイスに使用される場合、これらの要素間の相乗効果のために、エネルギー貯蔵デバイスは、高い体積エネルギー密度および重量エネルギー密度を示しながら、折り畳み状態または曲げ状態でも長いサイクル寿命に達することができる。
【0063】
本発明の第3の態様では、
リチウム金属アノードと、
硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、
アノードとカソードとの間に配置された本発明の第1の態様で定義されたセパレータとを備えるエネルギー貯蔵デバイスが提供される。
【0064】
本発明の第3の態様で定義されるリチウム金属アノードと、
硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、
アノードとカソードとの間に配置されたセパレータとを備えるエネルギー貯蔵デバイスも記載されている。
【0065】
本発明の第1の態様で定義されるリチウム金属アノードと、
硫黄および1以上の複数の導電性物質を含むカソードと、
アノードとカソードとの間に配置された本発明の第1の態様で定義されたセパレータとを備えるエネルギー貯蔵デバイスも記載されている。
【0066】
本発明の好ましいエネルギー貯蔵デバイスでは、1以上のアノードおよびカソードは自立している。言い換えれば、追加の集電体構成要素、特に金属集電体は必要なく、本明細書に記載のアノードおよび/またはカソードが電気化学セルで使用され、導電性布および/またはカソードのグラフェンが十分に導電性であり、追加の集電要素の必要性を排除する。これは、有利なことに、デバイスの質量を低減できることを意味し、これらの要素を使用するデバイスにおいて、より高い重量エネルギー密度および体積エネルギー密度が可能であることを意味する。
【0067】
特に好ましい実施形態では、本発明のエネルギー貯蔵デバイスは、可撓性エネルギー貯蔵デバイスである。可撓性(柔軟性)とは、電気抵抗を大幅に増加させることなく、つまり導電性を失うことなく、それぞれの要素および/またはエネルギー貯蔵デバイスを曲げたり、折り畳んだり、1以上の物理的変形力を受けたりできることを意味する。例えば、好ましい導電性布は、布の自重下で、90°折りである折り曲げ、または端から端までの折り目、例えば180°折りのような手動の変形力を受けた際に、その元の抵抗値の50%以内、より好ましくは25%以下、最も好ましくは10%以内の電気抵抗を保持する。
【0068】
適切には、1以上のアノード、カソード、およびセパレータは可撓性であり、適切に可撓性の筐体に封入されると、可撓性のエネルギー貯蔵デバイスを形成する。好ましくは、エネルギー貯蔵デバイスの構成要素は、可撓性筐体、好ましくは可撓性ポーチ、例えば、可撓性Al-プラスチック膜エンベロープに封入される。特に好ましい筐体は、湿気を通さない。
【0069】
好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、
1以上の親リチウム性材料で修飾された導電性布を含む、エネルギー貯蔵デバイス用の可撓性リチウム金属アノードと、
硫黄および1以上の導電性物質を含む可撓性カソードと、
エネルギー貯蔵デバイス用の可撓性セパレータであって、該セパレータは、1以上のLiイオン選択的透過性材料の多孔膜を含み、多孔膜の孔の少なくとも一部は、アノードとカソードの間に配置された多孔性硫黄含有ポリマーと関連付けられている、セパレータと、
を備える。
【0070】
特に好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、
3D階層型MnOナノシート親リチウム性材料で修飾された導電性布を含むエネルギー貯蔵デバイス用の可撓性リチウム金属アノードと、
FBN/G中間層で保護された可撓性グラフェン/硫黄カソードと、
エネルギー貯蔵デバイス用の可撓性セパレータであって、該セパレータは、1以上のLiイオン選択的透過性ポリオレフィン材料の微多孔膜を含み、微多孔膜の孔の少なくとも一部は、アノードとカソードとの間に配置されたナノ多孔性ポリスルホンポリマーと関連付けられている、セパレータと、
を備える。
【0071】
好ましいデバイスでは、カソード、アノード、セパレータ、電解質、および集電体を含む可撓性電池内の全ての構成要素は、連続的な電子/イオン経路を維持し、電池の故障を防止しながら、繰り返される機械的変形に耐えるのに十分な機械的可撓性を有する。本発明の可撓性エネルギー貯蔵デバイスは、超長期サイクル寿命および高エネルギー密度を備えた優れた機械的可撓性および電気化学的性能を示しており、全ての要素は優れた機械的特性を備えており、繰り返し曲げたり折り畳んだりしたときに電池の優れた電気化学的性能に貢献する。リチウムアノードの体積変化およびデンドライトの成長は、布の修飾繊維の安定した導電性の相互接続ネットワークによって制限される。硫黄含有ポリマーで修飾されたセパレータは、該セパレータの機械的性能および熱安定性を改善し、全電池の安全性をさらに改善する。カソードおよびセパレータの双方が、ポリ多硫化物を捕獲し、ポリ多硫化物のアノードへの経路を遮断するように変更されているため、シャトル効果が抑制される。
【0072】
本発明の自立型超安定リチウム布アノード、本発明の硫黄含有ポリマー修飾セパレータ、およびFBN/G中間層によって保護された自立型グラフェン/硫黄カソードを含むデバイスは、極めて高いエネルギー密度および機械的可撓性の双方を有するデバイスを可能にする。
【0073】
適切には、エネルギー貯蔵デバイスは、電解質をさらに含む。好ましい電解質は、リチウム塩を含む有機液体である。
【0074】
望ましくは、本発明のエネルギー貯蔵デバイスにおいて、電解質は、約5/1~30[mLg-1]の電解質対硫黄(E/S)比で存在する。好ましい実施形態では、電解質対硫黄(E/S)比は、約20/1[mLg-1]である。
【0075】
適切には、電解質は、リチウムイオン、例えば1以上のリチウム塩と組み合わせた有機溶媒を含む有機液体を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、電解質は、例えばLiTFSIおよびLiNOを含むことができる。1つの好ましい実施形態では、電解質は、1重量%のLiNOを含むDOL/DME中の1MLiTFSIである。
【0076】
特に好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、0.5℃の電流密度で少なくとも800サイクル後、初期容量の最大60%を保持する。
【0077】
特に好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、折り畳み状態で、800サイクル後、少なくとも約100WhL-1、より好ましくは少なくとも約300WhL-1、最も好ましくは少なくとも約500WhL-1の体積エネルギー密度を示す。
【0078】
特に好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、折り畳み状態で、800サイクルの後に、少なくとも約75WhKg-1、より好ましくは少なくとも約250WhKg-1、最も好ましくは少なくとも約470WhKg-1の重量エネルギー密度を示す。
【0079】
一実施形態では、折り畳み状態は、90°以下の曲げ角度を意味する。一実施形態では、折り畳み状態は、180°以下の曲げ角度を意味する。
【0080】
特に好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、1ボルトに充電した後のリチウム重量に基づいて、約3,500mAhg-1の容量を示す。
【0081】
好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、アノード、カソード、およびセパレータの1以上が可撓性であり、0.5Cの電流密度で、少なくとも800サイクル後に初期容量の最大約60%を保持しながら、90°構成に曲げることができる。
【0082】
さらに好ましいエネルギー貯蔵デバイスは、アノード、カソード、およびセパレータの1以上が可撓性であり、0.5Cの電流密度で、少なくとも800サイクル後に初期容量の最大約60%を保持しながら、180°構成で折り畳むことができる。
【0083】
「約」という用語は、一般に、特に明記しない限り、記載された値の±5%からを意味する。
【0084】
本発明の第4の態様では、Liイオン選択的透過性材料の多孔膜の孔充填剤としての多孔性硫黄含有ポリマーの使用が提供される。好ましくは、孔が充填されたLiイオン選択的透過性材料は、エネルギー貯蔵デバイス、特にリチウム硫黄エネルギー貯蔵デバイスのためのセパレータとして使用される。
【0085】
本発明の第5の態様では、エネルギー貯蔵デバイス用のセパレータの使用が提供され、セパレータは、1以上のLiイオン選択的透過性材料の多孔膜を含み、多孔膜は、エネルギー貯蔵デバイス、特にリチウム硫黄電池の多孔質硫黄含有ポリマーと関連付けられている。
【0086】
エネルギー貯蔵デバイス、特にリチウム硫黄電池において、1以上の親リチウム性材料で修飾された導電性布を含むリチウム金属アノードの使用も記載されている。
【0087】
本発明の第6の態様では、第1の態様のセパレータ、第2の態様のリチウム金属アノード、および/または第3の態様のエネルギー貯蔵デバイスを含む電子デバイスが提供される。望ましくは、電子デバイスは装着可能(ウェアラブル)デバイスである。適切には、電子デバイスは、電子時計、およびLEDまたはLEDスクリーンである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1図1は、可撓性Li-S全電池の設計および製造の概略図を示している。可撓性Li-S全電池は、リチウム布アノード、PSU-セルガードセパレータ、およびFBN/G中間層で保護された自立型グラフェン/硫黄カソードを使用して製造されている。
図2図2は、リチウム布アノードの製造および特徴付けを示しており、(a)は材料設計とその結果としての合成手順の概略図、(b-d)は修飾炭素布のSEM画像、(e-g)は得られたリチウム布のSEM画像、(h)はねじれたリチウム布の光学写真、(i)は修飾炭素布およびリチウム布のXRDパターンである。
図3図3は、リチウム布電極に基づく対称ポーチ電池の電気化学的安定性および機械的安定性を示しており、(a)は平坦状態および曲げ状態でのリチウム布電極に基づく対称ポーチ電池の定電流サイクリング性能、(b)は組み立てられた対称ポーチ電池の概略図、(c)は100、200および250サイクルの電圧プロファイル、(d)は1Vまでの対Li/Liに対するLi布電極の完全Liストリッピング曲線、(e)は250回目のストリッピング後のリチウム布電極のSEM画像、(f、g)は250回目のストリッピング/めっき後のリチウム布電極のSEM画像である。
図4図4は、PSU修飾セパレータの製造および特性評価を示しており、(a)はPSU-セルガードセパレータの合成手順の概略図、(b)はプリスティンセルガード2400(Pristine Celgard 2400)、(c)はPSUセルガードセパレータの上面SEM画像、(d)はプリスティンセルガード2400の側面SEM画像、(e)はPSU-セルガードセパレータの側面SEM画像、(f)はプリスティンセルガード2400およびPSU-セルガードセパレータのTGA曲線、(g)はプリスティンセルガード2400およびPSU-セルガードセパレータのFTIRスペクトル、(g)はプリスティンセルガード2400およびPSU-セルガードセパレータのイオン伝導度、(i)は、プリスティンセルガード2400およびPSU-セルガードセパレータに対する電解質の接触角、(j)はPSUセパレータを有するHボトルシステムの光学写真である。
図5図5は、Li-S試験コイン電池の電気化学的性能を示しており、(a)は1、50、100、200および500サイクルでのLi-S試験電池の充電/放電曲線、(b)はLi-S試験電池およびLi-S制御電池のサイクル性能、(c)はLi-S試験電池およびLi-S制御電池のレート性能、(d-k)は500サイクル後の様々なアノードおよびセパレータの低倍率および高倍率SEM画像であり、(d、e)はリチウム布アノード、(f、g)はリチウム箔アノード、(h,i)はPSU-セルガードセパレータ、(j、k)はセルガードセパレータである。
図6図6は、可撓性Li-Sポーチ電池の電気化学的性能および用途を示しており、(a)は可撓性Li-Sポーチ電池の構造の概略図、(b)はLi-Sポーチ電池の充電/放電曲線、(c)はLi-Sポーチ電池のサイクル性能、(d)は異なる角度で曲がったソフトパッケージLi-S電池の充電/放電曲線、(e)は報告された可撓性Li-S電池の体積(Wh Lcell -1)/重量(Wh kgcell -1)エネルギー密度の比較、(f)は曲げ状態の可撓性Li-S全電池電源LED光の光学写真、(g)は曲げ状態の電気時計の光学写真、(h、g)はシングルチップを有するLEDスクリーンの光学写真であり、(h)は平坦状態、(i)は曲げ状態である。
図7図7は、(a)溶融リチウムと接触する炭素布および(b)修飾炭素布の写真であり、(c)~3mgcm-2および(d)~6mg cm-2のリチウム質量負荷で得られたリチウム布の写真である。
図8図8は修飾炭素布およびリチウム布の窒素吸着等温線を示している。
図9図9は、市販の炭素布の低倍率および高倍率のSEM画像を示す。
図10図10は、(a)はFBN/G中間層を有する自立型グラフェン/硫黄の写真、(b)はSEM画像であり、(c)はFBN/G中間層の低倍率SEM画像、(d)は高倍率SENM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明者らは、超安定リチウム布アノード、ポリスルホン修飾セパレータ、および自立型硫黄/グラフェン/窒化ホウ素ナノシートカソードを用いて設計および製造された可撓性リチウム硫黄全電池を考案した。シャトル効果およびデンドライト形成の制御に成功したため、可撓性リチウム硫黄全電池は、優れた機械的柔軟性および優れた電気化学的性能を示し、折り畳み状態で800サイクルの超長サイクル寿命を示し、前例のない497WhL-1の高体積エネルギー密度および463.6Whkg-1の高重量エネルギー密度を実現している。
【0090】
【表1】
【0091】
実験的に、3mg cm-2のリチウム布アノード、中間層を有するカソード、およびPSU-セルガードセパレータの質量は、それぞれ9.3mgcm-2、6.5mg cm-2、および1.35mg cm-2である。リチウム布およびカソードの測定された厚みは、標準応力(400Ncm-2、標準コイン電池の圧縮に使用される圧力)の下で、135μm程度である。セパレータの厚みは通常25μm程度である。重量密度と体積密度は、集電体、電極、およびセパレータの総重量および総体積に基づいて計算される。
【0092】
本発明の可撓性Li-S全電池は、超安定リチウム布アノード、ポリスルホン(PSU)修飾セパレータ、およびFBN/G中間層によって保護された自立型グラフェン/硫黄カソードに基づいており、非常に高いエネルギー密度と機械的な柔軟性の双方を可能にする。超安定可撓性リチウム布アノードは、事前に修飾されたカーボン布に溶融リチウム注入によってリチウムを被覆することによって製造される。修飾カーボン布の優れた機械的特性および階層的ナノ構造ネットワークは、リチウム布電極の前例のない可撓性および安定性に大きく貢献する。また、市販のセパレータであるセルガード2400には、真空および転相プロセスによってPSUが充填されているため、細孔径が小さくなり、熱的および機械的安定性が向上する。PSU充填材およびFBN/G中間層の相乗効果により、最終的な全電池は、折り畳み状態で800サイクルの長いサイクル寿命に達し、非常に高い体積エネルギー密度497WhL-1および重量エネルギー密度464Whkg-1に達することができる。1つの可撓性Li-Sポーチ電池は、複数のLEDライトまたは電子時計に電力を供給することができる。接続された3つの可撓性電池は、平坦状態および曲げ状態の双方で、公称5Vの電圧で動作するシングルチップでLEDスクリーンを点灯することができる。
【0093】
結果
可撓性L-S全電池の設計
図1は、可撓性リチウムアノード、セパレータおよび硫黄カソードを含む可撓性Li-S全電池の構造を示している。可撓性アノードであるリチウム布は、3D親リチウム性MnOナノフレークで修飾された炭素布にリチウムを事前に保存することによって合成された。「転相」プロセスの新規のアプローチを利用して、PSUを有する市販のセパレータの大きな孔径を縮小した。自立型グラフェン/硫黄カソードを被覆するために、FBN/グラフェン中間層が採用された。
【0094】
リチウム布電極
リチウム布の製造は、3D親リチウム性ナノ構造を有するカーボン布の修飾ステップと、溶融リチウム注入プロセスによる修飾ホストへのLiの保存ステップの2つのステップを含む(図2a)。ホスト材料の優れた親リチウム性は、溶融Li注入の前提条件である。市販の炭素布は親リチウム性が低く、溶融リチウムを吸着しない(図S1a)。表面の親リチウム性を向上させるために、3D階層型MnOナノシートを炭素布の表面に成長させた。これにより、炭素布に優れた親リチウム性だけでなく、大きな表面積も提供される(図S2)。2番目のステップは、修飾カーボン布にLiを均一に注入することである。修飾炭素布の端を溶融Liと接触させるだけで、高速で均一なLiの取り込みを実現できる(図S1b)。
銀色のリチウムが布全体に素早く広がり、最終的に可撓性リチウム布を得ることができる。修飾炭素布に予め蓄えられているリチウムの量は、注入時間を調整することによって制御できる(図S1cおよびd)。修飾炭素布および得られたリチウム布のモーフォロジーおよび構造を図2に示す。
【0095】
リチウム布アノードの製造および性能
図2aは、材料設計とその結果としての合成手順の概略図を示しています。図2b~2dは修飾カーボン布のSEM画像、図2e~2gは得られたリチウム布のSEM画像、図2hはツイスト(ねじれ)リチウム布の光学写真、図2iは修飾カーボン布のおよびリチウム布のXRDパターンを示している。図2bは、修飾炭素布の低倍率の上面SEM画像を示している。多孔質インターレース(交絡)微細構造の典型的な繊維構造を明確に見ることができる。図2cのSEM画像は修飾炭素布の高倍率の上面図、図2dは階層的MnOナノ構造の側面SEM画像である。極薄ナノシートで構築された3D階層ネットワークが炭素繊維上に均一に製造されていることが明確に見ることができる。これにより、布の表面積が大幅に拡大する。図2eおよび図2fは、リチウムの質量負荷が約3mgcm-2のリチウム布の低倍率SEM画像である。リチウム布もインターレース構造を有している。高倍率のSEM画像(図2g)は、多孔質ネットワークの内部空間がリチウムで満たされていることを示している。結果は、リチウムが繊維間の隙間とナノスケールネットワーク内に完全に閉じ込められていることを示している。また、得られたリチウム布は容易にねじれ(図2h)、これはリチウム布の優れた可撓性を示している。XRDパターン(図2i)は、布に蓄積されたリチウムの存在を示している。
【0096】
可撓性リチウム布の電気化学的持続可能性は、対称ポーチ電池を使用して調査された。図3bに示すように、2つの同一のリチウム布電極がポーチ電池に組み立てられた。リチウム布電極は3mg/cmリチウム程度の質量負荷を有している。電池の定電流サイクリング性能は、1mAcm-2の電流密度および3mAh cm-2の容量密度で調査された(図3a)。対称リチウム布電池は、100サイクルで120mV程度の安定した電圧ヒステリシスを示しており、これはLiストリッピングおよびLiめっきの過電圧の合計として認められる。100回サイクル後、園地を折り畳み、さらに100サイクル続けた。充電状態および放電状態の双方でのフラットな電圧プラトーは、ヒステリシスにおいて明確な増加なしに、100サイクル全体を通して維持できた。200回サイクル後、電池は展開され、さらに50回サイクリングされた。結果は、セルが依然として優れたサイクリング安定性および常に低いヒステリシスを示している。電圧プロファイルの変化をさらに詳しく調べるために、1番目(平坦状態)、200番目(曲げ状態)、および200番目のサイクル(平坦状態)の対称電池を拡大して図3cに示す。これらの3つの電圧プロファイルの間に電圧ヒステリシスの明確な増加は見られず、曲げ状態と平坦状態の双方でリチウム布電極の高い安定性および可撓性を示している。また、リチウム布電極は優れた電気化学的特性を示すだけでなく、ほとんどの容量を保持している。図3dに示すように、1Vに充電すると、約3536mAhg-1の容量(リチウムの重量に基づく)を抽出でき、これは純粋なLiアノードの理論容量に非常に近い値である(純粋なLiと比較して91.4%程度の容量保持)。したがって、本発明の修飾炭素布は、高いサイクル安定性および容量の双方を有する高性能リチウムアノードを製造するという魅力的な可能性を提供する。多数のめっき/ストリッピングサイクル後のリチウム布電極のモーフォロジー変化を確認するために、対称ポーチ電池は250回目のストリッピングおよび250回目のストリッピング/めっきサイクル後に分解される。リチウム布電極の高倍率SEM画像(図3e)は、元々金属Liで満たされていたネットワーク内の空間が、Liが除去された後、以前の3D階層多孔質構造に戻ったことを示している。これは、最初のLi注入とその後のサイクル中に表面ナノ構造が変化しないことも示している。Liめっき後、多孔質構造のほとんどの空間が再び埋められ(図3f)、リチウム注入後の電極のモーフォロジーに近くなった。250サイクル後のリチウム布電極の低倍率SEMは、観察可能なデンドライト形成のないリチウム布の滑らかな表面を示している。
【0097】
リチウム布電極ベースの対象ポーチ電池の電気化学的安定性および機械的安定性
図3aは、平坦状態および曲げ状態でのリチウム布電極ベースの対称ポーチ電池の定電流サイクリング性能を示しており、図3bは、組み立てられた対称ポーチ電池セルの概略図を示しており、図3cは、100、200、および250サイクル目の電圧プロファイルを示しており、図3dは、Li/Liに対する1VまでのLi布電極の完全Liストリッピング曲線を示している。250回目のストリッピング後のリチウム布電極のSEM画像を図3eに示し、250回目のストリッピング/めっき後のリチウム布電極のSEM画像を図3fおよび図3gに示す。
【0098】
PSU修飾セパレータの製造および特性評価
図4aは、PSU-セルガードセパレータの合成手順の概略図を示している。図4bの上面SEM画像は、元のセルガード2400を示しており、図4cはPSU-セルガードセパレータの上面SEM画像を示している。図4dは元のセルガード2400の側面SEM画像を示しており、図4eはPSU-セルガードの側面SEM画像を示している。図4Fはプリスティンセルガード2400およびPSU-セルガードセパレータのTGA曲線、図4gはFTIRスペクトル、図4hはイオン伝導率を示している。図4jはPSUセパレータを有するHボトルシステムの光学写真を示している。
【0099】
PSU-セルガードセパレータの合成手順は、図4aに示されるように、被覆ステップと、真空引きステップと、湿潤ステップとの3つのステップからなる。セパレータの以前の被覆戦略と比較して、被覆材料の追加の層がセルガードセパレータの表面から除去され、セパレータに残った大きな細孔が真空引きステップの後にPSUで埋められ、被覆材料の重量が大幅に減少した。また、PSUに微細孔を形成するために、転相戦略が使用された。ポリマーおよびDMF(溶媒相)を水(非溶媒相)に浸すと、熱力学的平衡が瞬時に崩れ、2つの相(ポリマーリッチ相とポリマープア相)が形成された。溶媒-非溶媒交換プロセスは、スラリー/水界面で直ちに発生し、多孔質構造となった(図4aの挿入図)。PSUの質量負荷は0.12mgcm-2程度である。市販のセルガードセパレータの大きな細孔(100nm以上)を観察できる(図4b)。PSUと組み合わせた後、細孔は埋められ、セパレータのフレームはまだ明瞭に見え(図4c)、その厚み(25μm程度)はセパレータの元の厚み(26μm程度)とほぼ同じである(図4dおよび図4e)。追加の層が市販のセパレータに被覆される以前のほとんどの戦略と比較して、本方法は、最終電池の厚みの減少を容易にするであろう。セパレータの熱安定性を、熱重量分析装置(TGA)を使用して調べた(図4f)。セルガード2400セパレータの大幅な重量減少は250℃から開始するのに対して、PSU-セルガードセパレータは360℃まで重量変化がなく、500℃程度で2回目の重量減少が発生する。改良されたセパレータのこのより高い熱安定性は、520℃程度のより高い融点のより安定したPSUの導入に起因するとすることができる。PSUで修飾されたセルガードセパレータの表面化学変化は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって評価された(図4g)。ポリエチレンの全ての特徴的なピークに加えて、1583cm-1、1335cm-1、および1153cm-1の3つの新しいピークがスペクトルから観察でき、PSUのベンゼン環、スルホン(C-SO-C)およびスルホニル基(O=S=O)の伸縮振動バンドにそれぞれ対応しており、セルガードセパレータへのPSUの導入が成功したことを示している。PSUで充填する前後のセルガードセパレータのイオン伝導度は、ステンレス鋼対称電池を使用して評価した。図4hは、セルガードセパレータおよびPSU-セルガードセパレータの双方のイオン伝導度の温度依存性を示している。活性化エネルギーは、以下のアレニウスの式を使用して推定された。
【数1】
ここで、σ(T)は温度Tでのイオン伝導度、Aは指数前係数、Eaは活性化エネルギーおよびRは理想気体定数である。結果は、セルガードセパレータおよびPSU-セルガードセパレータのイオン伝導度が、25℃でそれぞれ6.87mS cm-1、6.41mS cm-1であることを示している。また、活性化エネルギーもごくわずかな違いを示している。これは、PSUがイオン伝導に悪影響を及ぼさないことを示している。さらに、電解質への湿潤性もセパレータの重要な要素であり、これは電解質とセパレータの接触角によって特性評価された。PSUセパレータは、元のセルガード2400セパレータと同じ湿潤性を電解液に提供し、これはセルガード2400およびPSU-セルガードセパレータに対する電解液のほぼ同じ接触角で示される。多硫化物のシャトル効果を抑制する能力を実証するために、硫黄カソードおよびリチウム箔アノードが正反対側に配置され、PSU-セルガードセパレータが中央にある「Hボトル」にモデル電池が設置された(図4i)。10サイクル後、カソード側の電解質は黄色に変わった一方、アノード側の電解質は元の色を維持している。これは、PSU-セルガードセパレータが多硫化物イオンのそれを通過する移動を防止して多硫化物のシャトル効果の防止に成功していることの強力な証拠である。
【0100】
Li-Sコイン電池の電気化学的性能
新規のアノードおよびセパレータの性能を評価するために、試験用コイン電池は、リチウム布アノード、PSU-セルガードセパレータおよびFBN/G中間層で保護されたグラフェン/Sカソードを用いて製造された。硫黄カソードのホストとして、高多孔性グラフェンと高表面グラフェンとが混合されている。自立型グラフェン/硫黄カソードは、カソードを保護するためにFBN/G中間層でさらに被覆された。カソードのモーフォロジーを図S4に示す。
【0101】
Li-S試験コイン電池の電気化学的性能
図5aは、1、50、100、200、および500サイクルでのLi-Sコイン電池の充電/放電曲線を示しており、図5bは、サイクリング性能を示しており、図5cは、Li-Sセルおよび対照Li-Sセルのレート性能を示している。500サイクル後の様々なアノードおよびセパレータの低倍率および高倍率のSEM画像を図5d~図5kに示す。リチウム布アノードを図5dおよび図5eに、リチウム箔アノードを図5fおよび図5gに、PSU-セルガードセパレータを図5hおよび図5iに、セルガードセパレータを図5jおよび図5kに示す。
【0102】
カソード中の硫黄の質量負荷は2mg/cmに制御された。図5aは、0.2Cの電流密度での様々なサイクルでのLi-S試験電池の放電/充電曲線を示している。2つの放電/充電プラトーは、500サイクル後でも十分に保持されている。試験電池のサイクリング性能を図5bに示す。リチウム箔アノード、セルガード2400セパレータ、グラフェン/硫黄カソードを有するLi-Sコイン電池を対照電池として使用する。Li-S試験電池は、0.2Cの電流密度で1320mAh g-1の初期放電容量を提供し、容量は500サイクル後も1100mAh g-1に保持される。Li-S電池のサイクルあたりの減衰は、0.0334%程度であり、対照電池の減衰(0.15%程度)よりもはるかに低い。試験電池のレート性能は、0.2C、0.5C、1C、2C、および3Cレートで、それぞれ1200mAh g-1、1112.8mAh g-1、1020.5mAh g-1、921mAh g-1、および877mAh g-1の大容量を保持している(図5c)。アノードおよびセパレータのモーフォロジー変化を調査するために、500サイクル後の事後分析を実施した。500サイクル後、リチウム布アノードの表面は織り交ぜられたままである。さらに、リチウムデンドライトは見つからない(図5dおよび図5e)。これに対して、対照電池のLi箔電極の表面は、500サイクル後にランダムに配置された典型的なリチウムデンドライトモーフォロジーを示している(図5fおよび図5g)。リチウムデンドライトの形成と成長は、電解質および新鮮なリチウムの継続的な消費をもたらし、最終的に電解質の枯渇と電極の崩壊を引き起こす可能性があり、これが対照電池のより大きな減衰の原因となる可能性がある。図5hおよび図5iは、500サイクル後のPSU-セルガードセパレータのSEM画像であり、大きな細孔は観察できない。これに大使邸、市販のセパレータのいくつかの細孔は、500サイクル後にはるかに大きくなった。
【0103】
可撓性Li-Sポーチ電池
可撓性Li-Sポーチ全電池は、図6aに示すように製造された。自立型グラフェン/硫黄複合材料が3.5mg cm-2程度(硫黄)の質量負荷を有するカソードとして使用され、リチウム布がアノードとして使用される。適切な電解質を添加した後、ポーチセルをAlプラスチックフィルムエンベロープに密封した。図6bおよび図6cは、平坦状態および曲げ状態での可撓性Li-Sポーチ電池の放電/充電曲線およびサイクリング性能を示している。平坦状態および曲げ状態の双方で2つの放電/充電プラトーが明確に観察でき、平坦状態および曲げ状態でのバッテリーの放電容量は、それぞれ5.13mAh g-1と5.02mAh g-1である。電池のサイクル性能は180°の曲げ状態で試験され、容量は0.5Cの電流密度で800サイクル後、初期容量の最大60%を保持している。この超長寿命は、リチウム布アノードおよびグラフェン/硫黄カソードの優れた機械的特性および電気化学的安定性に起因するとすることができる。電池の放電/充電性能は、曲げプロセス中に試験される(図6dおよび挿入図)。放電/充電曲線に電圧変動は見られず、曲げ状態で安定した電気化学的性能を示している。Li-Sポーチ電池の体積エネルギー密度および重量エネルギー密度は、電池のパラメータに基づいて計算される(表S1)。以前に報告された可撓性Li-S電池のデータ35-40と比較して、リチウム布アノードおよびグラフェン/硫黄カソードに基づく現在のLi-S全電池は、497WhL-1および464Whkg-1のより高い体積エネルギー密度およびより高い重量エネルギー密度を示す(図6e)。
【0104】
可撓性Li-Sポーチ電池の電気化学的性能および用途
図6aは、可撓性Li-Sポーチセルの構造の概略図を示し、図6bは、充電/放電曲線を示し、図6cは、Li-Sポーチ電池のサイクル性能を示し、図6dは、様々な角度で曲げられたソフトパッケージLi-S電池の充電/放電曲線を示している。図6eは、報告された可撓性Li-S電池の体積(Wh Lcell -1)/重量(Wh kgcell -1)エネルギー密度の比較を示している。曲げ状態の可撓性Li-S全電池電源LEDライトの光学写真(図6f)、折り畳み状態の電気時計の光学写真(図6g)、および平坦状態(図6h)および曲げ状態(図6h)のシングルチップを有するLEDスクリーンの光学写真である。
【0105】
可撓性Li-S全電池は、可撓性かつ装着可能装置のための理想的な電源である。この機能を紹介するために、得られたLi-Sポーチ電池を電子デバイスへの電力供給に適用した。曲げポーチ電池は、図6fに示すように、5つの赤色発光ダイオード(LED、公称電圧2.0~2.2V)を点灯させることができる。右下隅の挿入図は、暗い環境において点灯したときと同じLEDモデルを示している。また、Li-Sポーチ電池を電子時計に接続して折り畳んだ。時計に電力が供給され、正常に機能した(図6g)。最後に、シングルチップマイクロプロセッサを有するLEDスクリーンが設置された。マイクロプロセッサの公称動作電圧は5Vであるのに対し、Li-S電池の放電プラトーは2.3Vと2.1Vであるため、3つのLi-Sポーチ電池を接続して5Vより高い電圧を実現した。電池が平坦であるか、90°を超える角度で曲がっているとき、LEDスクリーンが点灯し、「可撓性LiSディーキン大学」という明確なキャプションが表示され、これは得られた可撓性Li-Sポーチ電池の高いエネルギー密度および優れた機械的特性を示している。したがって、興味深い可撓性および優れた電気化学的性能により、リチウム布ベースのLi-S電池は、可撓性電子デバイス用途に大きな可能性を秘めている。
【0106】
本発明者らは、超安定リチウム布アノード、ポリスルホン(PSU)修飾セパレータ、および修飾窒化ホウ素/グラフェン(FBN/G)保護自立グラフェン/硫黄カソードを含む可撓性Li-Sポーチ電池を開発した。リチウム布アノードは、溶融リチウム注入プロセスによって、修飾炭素布のマイクロ/ナノ多孔質構造にリチウムを貯蔵することによって製造される。新規の可撓性ポーチ電池は、いくつかの利点を有する。(1)リチウム布アノードとグラフェン/硫黄カソードの双方が自立型であり、追加の金属集電体は必要ない。全ての要素は優れた機械的柔軟性を保持しており、繰り返し曲げたり折り畳んだりされたときに電池の優れた電気化学的性能を保証する。(2)リチウムアノードの体積変化およびデンドライトの成長は、修飾炭素繊維の安定した導電性の相互接続ネットワークによって制限される。(3)ポリエチレンセパレータにPSUを添加することにより、ポリエチレンセパレータの機械的性能および熱安定性が向上し、全電池の安全性がさらに向上する。(4)PSU被覆セパレータおよびFBN/G中間層の相乗効果により、シャトル効果は大幅に限定される。これらは、Li-S電池の可撓性全電池の優れた性能に繋がる。可撓性ポーチ電池の寿命は、折り畳み状態で800サイクルに達し得、体積エネルギー密度および重量エネルギー密度はそれぞれ497WhL-1と464Whkg-1である。1つの可撓性Li-Sポーチ電池はLEDライトまたは電子時計に電力を供給することができ、3つの接続された電池は平坦状態および曲げ状態の双方で5Vの公称電圧のシングルチップを有するLEDスクリーンを点灯できる。この研究は、高エネルギー密度の可撓性エネルギー貯蔵装置におけるLi-S電池の有望な実用的用途に光を当てる。
【0107】
材料および方法
リチウム布の合成:リチウム布は2つのステップで用意した。まず、市販の炭素布を熱水法を使用してMnOナノシートの3Dネットワークで修飾し、1.25ミリモルの過マンガン酸カリウム(KMnO)粉末と5ミリモルの濃塩酸を34mLの脱イオン水に加えて前駆体溶液を生成した。得られた溶液を容量45mLのテフロンで裏打ちしたオートクレーブに移し、炭素布を溶液に入れた。テフロンで裏打ちされたステンレス鋼のオートクレーブをオーブン内で140℃にて30分間加熱した。加熱後、サンプルを洗浄して回収した。次に、修飾されたままの炭素布を、アルゴンを充填したグローブボックス内の溶融Liの表面に配置した。修飾炭素布は、MnOの親リチウム性により、溶融Liで簡単に濡らして充填でき、安定したリチウム布を形成する。
【0108】
対称リチウム布ポーチ電池の製造:市販の軟質Alプラスチックフィルムを封入した対称リチウム布ポーチ電池を、2枚のリチウム布およびセパレータ(セルガード2400)を使用して、アルゴンを充填したグローブボックス内で組み立てた。電解質は、1重量%LiNOを含むDOL/DME中の1MLiTFSIだった。
【0109】
PSU-セルガードセパレータの合成:まず、2.5gのPSUペレットを7.5gのジメチルホルムアミド(DMF)に加えた。次に、溶液を撹拌し、80℃にて10時間加熱した。得られた溶液を、ドクターブレードを備えた市販のセルガード2400セパレータにキャストし、厚みを200μmに調整した。PSU被覆を有するセパレータを真空に搬送した。真空引き後、セパレータの表面のPSUを拭き取った。得られたセパレータを水で洗浄した後、60℃のオーブンで乾燥させた。
【0110】
FBN/G中間層を有する自立グラフェン/硫黄カソードの合成:グラフェン/硫黄電極を合成するために、12重量%の高多孔質グラフェン(グラフェンスーパーマーケット、米国)、8重量%の高表面グラフェン(グラフェンスーパーマーケット、米国)、および80重量%の硫黄からなる混合物を、密閉容器内で300℃にて24時間加熱した。自立型グラフェン/硫黄カソードは、吸引ろ過法によって製造される。得られたグラフェン/硫黄粉末を硫黄で飽和させたエタノールに導入し、濃度は8gL-1である。フィルタとして陽極酸化アルミニウム膜(AAO、Wahatman、直径47mm程度、孔径0.2μm程度)を用いた真空ろ過を使用して、自立型グラフェン/硫黄カソードを生成した。得られたままの自立カソードを、60℃の真空オーブンで80時間乾燥させた。これらの電極は、FBN/G中間層でさらに被覆された。FBN/G中間層は、20重量%のFBN、70重量%のグラフェン、および10重量%のポリビニルデンフルオリド結合剤をN-メチルピロリジノン(Sigma-Aldrich)溶液中で混合することによって調製した。スラリーをグラフェン/硫黄カソード電極の表面に被覆し、エアオーブンで60°にて24時間乾燥させた。
【0111】
Li-Sコイン電池の製造:リチウム布アノード、PSU-セルガードセパレータ、およびFBN/G中間層を有するグラフェン/Sカソードを使用して、Li-Sコイン電池を製造する。電解質は、1重量%のLiNOを含むDOL/DME中の1MLiTFSIであり、硫黄の質量に応じて適切に添加された。対照Li-Sコイン電池は、リチウム箔アノード、セルガード2400セパレータ、およびグラフェン/硫黄カソードを用いて形成される。
【0112】
可撓性Li-Sポーチ電池の製造:市販の軟質Al-プラスチックフィルムを封入した完全に可撓性のLi-S電池セルを、自立グラフェン/硫黄カソードおよびリチウム布アノードを使用して、アルゴン充填グローブボックス内で組み立てた。電解質と硫黄(E/S)の比率は20/1[mL g-1]である。
【0113】
特性評価:電界放出走査型電子顕微鏡(FESEM、日立s-8600顕微鏡)を使用して、サンプルのモーフォロジーを調べた。D8 Advance X線回折計(Bruker)を使用して、X線回折(XRD)分析を実施しました。XRD測定中は、空気との直接接触を避けるために、サンプルをホルダーのカプトンテープで覆った。熱重量分析(TGA)は、NETZSCH TG 209F1 Libra(NETZSCH)機器で実行された。Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積は、窒素の吸着についてTristar II 3020を使用して分析された。
【0114】
電気化学的測定:全てのコイン電池およびソフトパッケージ電池は、1ppm未満のOおよびHOのArで満たされたグローブボックス内で組み立てられた。対称Li/LiセルのACインピーダンス(10mVの振幅で0.1~10Hzの周波数範囲)を、Solartron 1255B周波数応答アナライザーを使用して調べた。定電流サイクリング試験は、LAND 8チャンネルバッテリーテスターで実施された。
【0115】
実施形態
実施形態1.エネルギー貯蔵デバイスのためのセパレータであって、前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を備え、前記多孔膜の孔の少なくとも一部は多孔性硫黄含有ポリマーと関連付けられており、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の前記孔よりも少なくとも0.5桁以上(2倍以上の係数)だけ小さい、セパレータ。
実施形態2.前記多孔膜の前記孔は、100nmより大きな平均孔サイズを有し、前記硫黄含有ポリマーの平均孔サイズは約50nm以下、より好ましくは10nm以下である、実施形態1または実施形態2に記載のセパレータ。
実施形態3.前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を備え、前記微多孔膜の微孔の少なくとも一部はナノ多孔性硫黄含有ポリマーに関連付けられている、実施形態1または実施形態2に記載のセパレータ。
実施形態4.前記硫黄含有ポリマーは約10重量%以下、より好ましくは約15重量%以下、最も好ましくは約10重量%以下存在する、実施形態1~3のいずれか1に記載のセパレータ。
実施形態5.前記硫黄含有ポリマーは250°以上、より好ましくは275°以上、最も好ましくは280°以上の融点を有する、実施形態1~4のいずれか1に記載のセパレータ。
実施形態6.前記硫黄含有ポリマーはリチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有しない、実施形態1~5のいずれか1に記載のセパレータ。
実施形態7.前記セパレータの前記孔は、転相ステップを伴う方法によって前記硫黄含有ポリマーで充填されている、実施形態1~6のいずれか1に記載のセパレータ。
実施形態8.前記硫黄含有ポリマーは約0.10mg・cm-2~0.2mg・cm-2の質量負荷で存在する、実施形態1~7のいずれか1に記載のセパレータ。
実施形態9.前記硫黄含有ポリマーは、スルホニル化ポリマー、好ましくは修飾または未修飾芳香族ポリスルホン、好ましくはポリアリールエーテルスルホン(PAES)、例えばポリスルホンである、実施形態1~8のいずれか1に記載のセパレータ。
実施形態10.前記多孔膜の前記材料は、有機ポリマー、特にポリオレフィンポリマーを含み、それは修飾または未修飾でよい、実施形態1~9のいずれか1に記載に記載のセパレータ。
実施形態11.前記セパレータは可撓性である、実施形態1~10のいずれか1に記載に記載のセパレータ。
実施形態12.前記セパレータは、25℃で6.87mScm-1より大きなイオン伝導度を有する、実施形態1~11のいずれか1に記載に記載のセパレータ。
実施形態13.エネルギー貯蔵デバイスのためのセパレータを用意する方法であって、
(i)少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を備える前記エネルギー貯蔵デバイスのための多孔性セパレータを用意するステップと、
(ii)少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の前記多孔膜の前記微小孔を少なくとも1つの硫黄含有ポリマーで充填することによって、硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップと、
(iii)前記硫黄含有ポリマーにナノ孔を導入するステップと、
を含む方法。
実施形態14.前記硫黄含有ポリマー修飾膜を形成する前記ステップは、例えば溶液流延法によって前記イオン含有ポリマーの溶媒への溶液を少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の表面膜に提供するステップと、前記溶液を除去して前記硫黄含有ポリマーを形成するステップと、前記表面膜の表面から過剰なポリマーを拭き取るまたは払い落として前記孔の中にない過剰な硫黄含有ポリマーを前記セパレータから除去するステップとを伴う、実施形態13に記載の方法。
実施形態15.ナノ孔を前記硫黄含有ポリマーに導入する前記ステップは、前記修飾膜に対して湿式転相プロセスを施して、相界面での溶媒/非溶媒変換処理によって、前記多孔膜の前記孔の中の前記硫黄含有ポリマー中に前記ナノ孔構造を形成するステップを伴う、実施形態13または14に記載の方法。
実施形態16.繊維の相互接続ネットワークを有する可撓性導電性布を備えるエネルギー貯蔵デバイスのためのリチウム金属アノードであって、各繊維は1以上の親リチウム性材料で修飾されており、前記修飾された繊維間の空隙または空間からリチウム金属は注入、貯蔵および除去可能である、リチウム金属アノード。
実施形態17.前記親リチウム性材料は階層的ナノ構造、特にナノシートまたはナノフレーク形態を有する親リチウム性材料のネットワークを形成する、実施形態16に記載のリチウム金属アノード。
実施形態18.親リチウム性材料はMnO、SnO、ZnO、Co、好ましくは階層的MnOナノシートを含む、実施形態16または実施形態17に記載のリチウム金属アノード。
実施形態19.前記リチウム金属アノードの前記布は、相互接続された、好ましくは交絡されたまたは折り合わされた繊維のネットワークによって提供された多孔性3D微小構造と、前記布の繊維上に前記親リチウム性材料が注入されたナノ構造とを有する、実施形態16または実施形態17に記載のリチウム金属アノード。
実施形態20.前記布は、1.4×10-3Ω・cmの電気抵抗を有する、実施形態16~19のいずれか1に記載のリチウム金属アノード。
実施形態21.前記布は炭素布である、実施形態16~20のいずれか1に記載のリチウム金属アノード。
実施形態22.前記リチウム金属は、2mgcm-2~10mg cm-2の負荷で存在する、実施形態16~21のいずれか1に記載のリチウム金属アノード。
実施形態23.電気化学セルのためのリチウム金属アノードを用意する方法であって、
(i)可撓性導電性布を1以上の親リチウム性材料で修飾するステップと、
(ii)前記修飾された布をリチウム金属と関連付けるステップと、
を含む方法。
実施形態24.前記布を前記親リチウム性材料で修飾する前記ステップは、例えば過マンガン酸カリウム粉末、濃塩酸、脱イオン水を用いる水熱法を伴う、実施形態23に記載の方法。
実施形態25.前記修飾された布をリチウム金属と関連付ける前記ステップは、前記布にリチウム、好ましくは溶融リチウム金属を注入するステップを伴う、実施形態23または実施形態24に記載の方法。
実施形態26.注入時間を調整して前記二のに関連付けられるリチウムの量を制御するステップをさらに含む、実施形態23~25のいずれか1に記載の方法。
実施形態27.リチウム金属アノードと、硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に位置する、実施形態1~12のいずれか1に記載のセパレータとを備える、エネルギー貯蔵デバイス。
実施形態28.実施形態16~22のいずれか1に記載のリチウム金属アノードと、硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に位置するセパレータと、を備えるエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態29.実施形態16~22のいずれか1に記載のリチウム金属アノードと、硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に位置する、実施形態1~12のいずれか1に記載のセパレータと、を備えるエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態30.前記カソードは少なくとも1つのFBN/G中間層によって保護されている、実施形態27~29のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態31.可撓性エネルギー貯蔵デバイスであり、前記アノード、前記カソードおよび前記セパレータは可撓性である、実施形態27~30のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態32.前記1以上のアノードおよび前記カソードは自立型である、実施形態27~31のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態33.前記アノード、前記カソードおよび前記セパレータは耐蒸気性筐体中に入れられている、実施形態27~32のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態34.電解質をさらに備える、実施形態27~33のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態35.布自身の自重下で、90°折りである折り曲げ、または、例えば180°折りなどの端から端への折り曲げのような手動変形力を受けても、元の抵抗値の50%以下の電気抵抗を保持する、実施形態27~34のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態36.前記エネルギー貯蔵デバイスは、0.5Cの電流密度で、少なくとも800サイクル後に、60%までの初期容量を保持する、実施形態27~35のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態37.180°以下の曲げ角度の曲げ状態にて800サイクル後、少なくとも約100WhL-1、より好ましくは少なくとも約300WhL-1、最も好ましくは少なくとも約500WhL-1の体積エネルギー密度を示す、実施形態27~35のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態38.180°以下の曲げ角度を意味する折りたたみ状態で、800サイクル後に、少なくとも約75Whkg-1、より好ましくは少なくとも約250Whkg-1、最も好ましくは少なくとも約470Whkg-1の重量エネルギー密度を示す、実施形態27~35のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
実施形態39.硫黄含有ポリマー、好ましくはポリスルホンの、リチウムイオン選択的透過性材料の多孔膜における孔充填材としての使用。
実施形態40.エネルギー貯蔵デバイス、好ましくは可撓性リチウム硫黄電池における可撓性セパレータの使用であって、前記セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を有し、前記多孔膜の孔の少なくとも一部は多孔性硫黄ポリマーに関連付けられている、使用。
実施形態41.1以上の親リチウム性材料で修飾された導電性布を備える可撓性リチウム金属アノードの、エネルギー貯蔵デバイス、特に可撓性リチウム硫黄電池における使用。
実施形態42.実施形態1~12のいずれか1に記載のセパレータ、実施形態16~26のいずれか1に記載のリチウム金属アノード、および/または実施形態27~38のいずれか1に記載のエネルギー貯蔵デバイスを備える電子デバイス。
実施形態43.電子時計、およびLEDまたはLEDスクリーンのような装着可能デバイスの形態にある、実施形態42に記載の電子デバイス。
実施形態44.可撓性エネルギー貯蔵デバイスであって、3D階層型MnOナノシート親リチウム性材料で修飾された導電性布を含むエネルギー貯蔵デバイス用の可撓性リチウム金属アノードと、FBN/G中間層で保護された可撓性グラフェン/硫黄カソードと、エネルギー貯蔵デバイス用の可撓性セパレータとを備え、前記セパレータは、リチウムイオン選択的透過性ポリオレフィン材料の1以上の微多孔膜を含み、前記微多孔膜の孔の少なくとも一部は、前記アノードと前記カソードの間に配置されたナノ多孔性ポリスルホンポリマーと関連付けられている、可撓性エネルギー貯蔵デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイスのための多孔性セパレータであって、前記セパレータは、任意に可撓性であり、リチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を備え、各多孔膜の孔の少なくとも一部は多孔性硫黄含有ポリマーに関連付けられ、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の前記孔よりも2倍以上小さく、前記硫黄含有ポリマーは、リチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有しない、セパレータ。
【請求項2】
前記リチウムイオン選択的透過性材料の各多孔膜の前記孔は100nmより大きな平均孔サイズを有し、前記硫黄含有ポリマーの前記平均孔サイズは約50nm以下、より好ましくは約10nm以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記硫黄含有ポリマーは、前記セパレータの約20重量%以下、より好ましくは約15重量%以下、最も好ましくは約10重量%以下、存在する、請求項1または2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記硫黄含有ポリマーは、250℃以上、より好ましくは275℃以上、最も好ましくは280℃以上の融点を有する、請求項1~のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記セパレータの前記孔は、前記多孔性セパレータの用意の間の転相ステップの結果として前記硫黄含有ポリマーで満たされている、請求項1~のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記硫黄含有ポリマーは、スルホニル化ポリマー、好ましくは修飾または未修飾芳香族ポリスルホン、好ましくはポリアリールエーテルスルホン(PAES)、例えばポリスルホンである、請求項1~のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記リチウムイオン選択的透過性材料は、有機ポリマー、特にポリオレフィンポリマーを含み、それは修飾または未修飾でよい、請求項1~のいずれか一項に記載に記載のセパレータ。
【請求項8】
エネルギー貯蔵デバイスのための、任意に可撓性の多孔性セパレータを用意する方法であって、
チウムイオン選択的透過性材料の1以上の微多孔膜を備える前記エネルギー貯蔵デバイスのための多孔性セパレータを用意するステップと、
前記リチウムイオン選択的透過性材料の前記多孔膜の前記孔の少なくとも一部を少なくとも1つの硫黄含有ポリマーで充填することによって、硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップと、
前記硫黄含有ポリマーに孔を導入するステップであって、導入された前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の前記孔よりも2倍以上小さく、前記硫黄含有ポリマーは、リチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有しない、ステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記硫黄含有ポリマー修飾膜を形成する前記ステップは、例えば溶液流延法によって溶媒中の前記イオン含有ポリマーの溶液を少なくとも1つのリチウムイオン選択的透過性材料の表面膜に提供するステップと、前記溶液を除去して前記硫黄含有ポリマー修飾膜を形成するステップと、前記修飾膜の前記表面から過剰なポリマーを拭き取るまたは払い落として前記孔の中にない過剰な硫黄含有ポリマーを前記セパレータから除去するステップとを伴う、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記孔を前記硫黄含有ポリマーに導入する前記ステップは、前記修飾膜に対して湿式転相プロセスを施して、相界面での溶媒/非溶媒変換処理によって、前記膜の前記孔の中の前記硫黄含有ポリマー中に前記を形成する、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
任意に可撓性のエネルギー貯蔵デバイスであって、
リチウム金属アノードと、
硫黄および1以上の導電性物質を含むカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に位置する多孔性セパレータとを備え、
前記多孔性セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を有し、リチウムイオン選択的透過性材料の各膜の孔の少なくとも一部は硫黄含有ポリマーに関連付けられており、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の孔よりも2倍以上小さく、その結果、前記硫黄含有ポリマーはリチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有さず、任意に、前記アノード、前記カソードおよび前記セパレータの1以上は可撓性である、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項12】
可撓性エネルギー貯蔵デバイスであって、
3D階層的MnOナノシート親リチウム性材料で修飾された導電性布を有する、エネルギー貯蔵デバイスのための可撓性リチウム金属アノードと、
FBN/G中間層によって保護された可撓性グラフェン/硫黄カソードと、
撓性多孔性セパレータであって、前記可撓性多孔性セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を有し、膜の孔の少なくとも一部は、多孔性硫黄含有ポリマーで充填されており、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の孔よりも2倍以上小さく、その結果、前記硫黄含有ポリマーはリチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有さず、
前記可撓性多孔性セパレータは前記アノードと前記カソードとの間に配置されている、可撓性エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項13】
多孔性硫黄含有ポリマー、好ましくはポリスルホンの、リチウムイオン選択的透過性材料の多孔膜における孔充填材としての使用であって、その結果、前記硫黄含有ポリマーはリチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有しない、使用
【請求項14】
エネルギー貯蔵デバイス、好ましくは可撓性リチウム硫黄電池における、任意に可撓性の多孔性セパレータの使用であって、前記多孔性セパレータはリチウムイオン選択的透過性材料の1以上の多孔膜を有し、膜の孔の少なくとも一部は多孔性硫黄含有ポリマーに関連付けられており、前記硫黄含有ポリマーの前記孔は前記リチウムイオン選択的透過性材料の孔よりも2倍以上小さく、その結果、前記硫黄含有ポリマーはリチウムイオンおよび電解質に対する選択的透過性を有し、多硫化物に対する選択的透過性を有しない、使用。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の前記セパレータ、および/または請求項11または12に記載のエネルギー貯蔵デバイスを備え、任意に、電子時計のような装着可能デバイス、およびLEDまたはLEDスクリーンの形態である電子デバイス。
【国際調査報告】