(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】大粒球状塩及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C01D 3/22 20060101AFI20221208BHJP
A23L 27/40 20160101ALI20221208BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20221208BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221208BHJP
C01D 3/04 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C01D3/22
A23L27/40
A23L29/25
A23L5/00 D
C01D3/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519570
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2020115974
(87)【国際公開番号】W WO2021196535
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202010257039.7
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513148853
【氏名又は名称】天津科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】唐娜
(72)【発明者】
【氏名】盧敏
(72)【発明者】
【氏名】杜威
(72)【発明者】
【氏名】程鵬高
(72)【発明者】
【氏名】項軍
(72)【発明者】
【氏名】張蕾
(72)【発明者】
【氏名】王松博
(72)【発明者】
【氏名】張建平
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LC06
4B035LE01
4B035LG01
4B035LG28
4B035LK09
4B035LP09
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4B035LP24
4B041LC04
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4B041LK03
4B041LP01
4B041LP07
4B041LP14
4B047LB01
4B047LB08
4B047LE07
4B047LG03
4B047LG30
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP07
(57)【要約】
粒度が400-950μmであり、球形度が0.5-1.0である大粒球状塩を提供し、粒子粒度が大きく、且つ球形度が高いというジレンマを解決した。また、前記大粒球状塩の調製方法を開示し、調製プロセスにおいて、2%のアラビアガム(塩化ナトリウム飽和溶液における溶質塩化ナトリウムの質量パーセントに基づく)を適切に添加し、蒸発温度が60℃であり、撹拌速度が350r/minであり、蒸発時間が8hである場合、粒度が921.593μmであり、球形度が0.904である大粒球状塩の調製に成功した。該方法で調製された大粒球形塩は粒径が均一に分布し、外観が良好で、他の物質と結合でき、塩の付加価値を増加させる。同時に、調製された大粒球状塩の安全グレードは食品レベルに達し、食用塩、栄養塩又は足浴塩に用いることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度が400-950μmであり、球形度が0.5-1.0である大粒球状塩であって、塩化ナトリウム飽和溶液から蒸発させて得られ、前記塩化ナトリウム飽和溶液にアラビアガムが添加され、前記アラビアガムの添加量は、前記塩化ナトリウム飽和溶液の溶質質量の0.5-5%である、大粒球状塩。
【請求項2】
粒度が921.593μmであり、球形度が0.904であり、塩化ナトリウム飽和溶液から蒸発させて得られ、前記塩化ナトリウム飽和溶液にアラビアガムが添加され、前記アラビアガムの添加量は、前記塩化ナトリウム飽和溶液溶質質量の2%である、請求項1に記載の大粒球状塩。
【請求項3】
請求項1に記載の大粒球状塩の調製方法であって、
(1)晶析装置に塩化ナトリウム飽和溶液を用意し、添加剤を加え、加熱、攪拌し、蒸発させ、結晶を析出させるステップであって、前記添加剤はアラビアゴムであるステップ、及び
(2)ステップ(1)で得られた結晶を吸引濾過して収集し、前記結晶を乾燥させ、前記大粒球状塩を得るステップ
を含む、調製方法。
【請求項4】
ステップ(1)における添加されたアラビアガムの質量は、塩化ナトリウム飽和溶液の溶質質量の0.5-5%であり、加熱、攪拌し、蒸発させるプロセスにおいて、加熱温度が55-75℃であり、撹拌速度が300-400r/minであり、蒸発時間が4-12hである、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(1)における添加されたアラビアガムの質量は、塩化ナトリウム飽和溶液の溶質質量の2%であり、加熱、攪拌し、蒸発させるプロセスにおいて、加熱温度が60℃であり、撹拌速度が350r/minであり、蒸発時間が8hである、請求項3に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(1)における結晶化誘導期は、38-65minである、請求項4に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(1)における飽和塩化ナトリウム溶液を55-75℃で用意する、請求項3に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)における乾燥温度は60℃であり、乾燥時間が2hである、請求項3に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩科学技術の分野に関し、特に大粒球状塩及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ナトリウムは用途が広く、非常に重要な化学原料であり、その消費量は国家の工業化の程度を判断する重要な指標の一つである。社会の発展に伴い、塩化ナトリウムの応用分野はますます広くなり、人々の食塩に対する品質要求もますます高まっている。しかし、塩化ナトリウム結晶は極めて固結しやすく、常に解決すべき問題があり、これは特に高温多湿の季節において、長期保管及び積み重ねてプレスする際により顕著である。固結は製品の自由流動状態を破壊し、使用の時に破砕処理を行う必要があり、これは人々に大きな不便をもたらす。また、通常の塩化ナトリウムは安価で付加価値が低い。
【0003】
塩化ナトリウム結晶の固結を防止するために、現在機械的方法、物理的方法及び添加剤による方法があり、機械的方法は塩固結のメカニズムに基づき、一定の時間ごとに、塩堆積層に空気を圧入し、塩の結晶粒子が吸湿及び除湿のプロセスにおいて、結合点が「架橋」したことにより形成されたばかりの微弱な結合がまだ強固でない間に、空気圧入の振動によってそれらの間の相対位置を変化させ、それにより塩の粒が強固な「架橋」結合を形成することを妨げ、塩の固結を防止する目的を達成する。該方法の欠点は貯蔵条件が厳しく、エネルギーの消費が大きく、また貯蔵能力が限られていることなどである。したがって国内外では基本的にこの方法は採用されていない。物理的方法を利用して塩の固結を防止するには、主に塩を保存する環境湿度、温度、圧力などの条件を制御する。しかし、これらの条件は制御性が低く、且つ固結を防止する効果が通常のレベルにとどまる。工業生産における塩の固結を防ぐために多くの国で広く使用されている方法のほとんどは、添加剤による方法である。しかし、海外で使用されている添加剤は主にクエン酸鉄アンモニウム、リン酸第一鉄などであるが、中国で現在は主にK4[Fe(CN)6]が塩の固結を防ぐ添加剤として使用されている。K4[Fe(CN)6]はフェロシアン化カリウム(黄血塩)とも呼ばれ、淡黄色の結晶又は粉末であり、水、酢酸に溶解し、アルコールには溶解せず、60℃に加熱すると結晶水が失われ、高温で分解されると有毒である。そのため、食塩の生産プロセスにおいて、固結を防止するために一定量のK4[Fe(CN)6]を添加する必要があるが、過剰にしてはならず、添加プロセスにおいて均一である必要がある。長期的な生産実践の観察及び試験により、添加剤による方法を採用する場合、どこから添加しても、どの方式で添加しても、適量で均一に実現しにくいことが判明している。これは、添加剤溶液は塩の表面層のみに散布でき、中下部の塩までは散布できないためである。そのためこの方法は、長期的に塩化ナトリウムの固結防止製造に用いることができない。
【0004】
大粒球状塩は立方体塩結晶に比べて接触面積が小さく、流動性がよく、固結しにくい。そこで、中国の国内外の一部の研究者は、塩の形態を球状に制御することに取り組み始めた。現在、一部の研究者は塩化ナトリウム飽和溶液に添加剤であるグリシンを加えることにより八面体塩を得て、形状を球状に近づけ、結晶の流動性を高めている。しかし、八面体塩の球形度は低く、対応する塩の耐固結性も最適ではない。また一部の研究者は、撹拌速度、気化分率及び蒸発強度を制御することによって楕円形大粒球状塩を得るが、球形度が依然として高くなく、塩の流動性及び耐固結性も最高ではない。また、ある研究者は溶媒をメタノール-水の混合溶液に制御することにより、塩化ナトリウムを混合溶液に溶解させて球状結晶としたが、球状に溶解した結晶の粒度が約150μmと小さく、結晶が凝集して固結になりやすい。つまり、従来技術では球形度が高く、結晶粒度が大きく、流動性及び耐固結性が優れた塩粒子を得ることが困難である。
【0005】
要約すると、製品塩の流動性及び耐固結性を向上するために、接触面積が小さく、粒子が大きい大粒球状塩を調製することが望まれる。塩化ナトリウム結晶化プロセスにおいて、温度及び撹拌速度は製品塩結晶の形状及び粒度に重要な影響を有し、高温での蒸発は、結晶の球状化に有利であるが、結晶プロセスにおいて結晶は核生成を主とし、結晶粒度が小さくなる。蒸発温度を下げると蒸発強度が小さく、より大きい粒度の結晶粒子を得るためには有利であるが、結晶の球形度が低く、生産量も少ない。同様に、撹拌速度が速すぎる場合、結晶の間は衝突摩耗により、結晶の球形度を向上させるためには有利であるが、衝突摩耗により結晶粒度が小さい。撹拌速度が遅すぎると、結晶の間の衝突摩耗が不足であり、製品結晶粒度が大きいが球状化しにくい。すなわち、蒸発結晶のプロセスを調整することによって結晶の粒度及び球形度を制御することは常にトレード・オフの関係であり、そのため、製品塩の粒度が大きいことを保証するだけでなく、製品塩がより高い球形度も有することは、両立できていない。
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明を提案した。
【発明の概要】
【0007】
従来技術の欠点に鑑み、本発明の目的は、大粒球状塩及びその調製方法を提供することである。本発明で調製する大粒球状塩は明らかな利点を有する。まず、結晶の流動性が良く、塩が固結しにくい。そして、大粒球状塩の外観は良好であり、他の物質と結合でき、塩の付加価値を増加させる。同時に、本発明は上記大粒球状塩の調製方法を提供し、適用範囲が広く、食用塩、栄養塩、足浴塩などに用いることができ、且つ塩製造方法が簡単で、制御性が強く、安全グレードが食品レベルに達する。
【0008】
本発明の第1の態様は、粒度が400-950μmであり、球形度が0.5-1.0である大粒球状塩を提供し、前記大粒球状塩が塩化ナトリウム飽和溶液から蒸発させて得られ、前記塩化ナトリウム飽和溶液にアラビアゴムが添加され、前記アラビアゴムの添加量は前記塩化ナトリウム飽和溶液の溶質質量の0.5-5%である。
【0009】
前記大粒球状塩の粒度が921.593μmであり、前記大粒球状塩の球形度が0.904であり、前記大粒球状塩が塩化ナトリウム飽和溶液から蒸発して得られ、前記塩化ナトリウム飽和溶液にアラビアガムが添加され、前記アラビアガムの添加量は、前記塩化ナトリウム飽和溶液溶質質量の2%である。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記大粒球状塩の調製方法を提供し、当該調製方法は、以下のステップを含む:
(1)晶析装置に塩化ナトリウム飽和溶液を用意し、添加剤を加え、加熱、攪拌し、蒸発させ、結晶を析出させるステップであって、前記添加剤はアラビアゴムであるステップ、及び
(2)ステップ(1)で得られた結晶を吸引濾過して収集し、前記結晶を乾燥させ、前記大粒球状塩を得るステップ。
【0011】
前記大粒子球状塩の形態を偏光顕微鏡で観察し、前記大粒子球状塩について粒度分析器で粒度及び粒度分布の測定を行い、前記大粒子球状塩について粒度粒形アナライザーで球形度の測定を行う。
【0012】
好ましくは、ステップ(1)における添加されたアラビアガムの質量は、塩化ナトリウム飽和溶液溶質質量の0.5-5%であり、加熱、撹拌し、蒸発させるプロセスにおいて、加熱温度が55-75℃であり、撹拌速度が300-400r/であり、蒸発時間が4-12h(時間)である。
【0013】
好ましくは、ステップ(1)における添加されたアラビアガムの質量は、塩化ナトリウム飽和溶液溶質質量の2%であり、加熱、撹拌し、蒸発させるプロセスにおいて、加熱温度が60℃であり、撹拌速度が350r/minであり、蒸発時間が8hである。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)における蒸発温度が55~75℃である場合、結晶化誘導期は38~65分である。結晶化誘導期とは、結晶核生成の時間であり、結晶化誘導期は主に蒸発温度に関連し、結晶化誘導期が短いと結晶核生成に有利であり、本発明において蒸発時間は、結晶が結晶核を生成し始めてから蒸発結晶のプロセスが終了するまでで計算する。
【0015】
好ましくは、飽和塩化ナトリウム溶液は55~75℃で用意される。100mLの蒸留水に約37-38g塩化ナトリウムを溶解させる。そのうち、飽和塩化ナトリウム溶液を用意する温度は、その後の加熱、撹拌し蒸発させるプロセスにおける蒸発温度と一致する。
【0016】
好ましくは、ステップ(2)における乾燥温度は60℃であり、乾燥時間が2hである。
【0017】
本発明が提供する前記大粒球状塩は食用塩、栄養塩、足浴塩などに用いることができる。
【0018】
従来技術に比べ、本発明は以下の有利な効果を有する。
1.本発明は塩化ナトリウムの蒸発と塩への結晶化のプロセスにおいて、0.5-5%のアラビアガム(塩化ナトリウム飽和溶液における溶質である塩化ナトリウムの質量パーセントに基づく)を適切に添加することにより、調製した前記大粒球状塩の粒度が400-950μmであり、前記大粒子球状塩の球形度が0.5-1.0であり、本発明は粒子粒度が大きく、且つ球形度が高い大粒球状塩の調製に成功し、粒子粒度が大きく、且つ球形度が高いというジレンマを解決した。
2.本発明の好ましい実施形態において、大粒球状塩の調製プロセスを次のとおりにさらに最適化する。アラビアガムの添加質量は、塩化ナトリウム飽和溶液の溶質質量の2%であり、加熱、撹拌し、蒸発させるプロセスにおいて、加熱温度が60℃であり、撹拌速度が350r/minであり、蒸発時間が8hであり、粒度が921.593μmである場合に、球形度が0.904である大粒球状塩の調製に成功した。これを環境温度23℃、環境湿度15%に置いたところ、30日後には顕著な固結は見られなかった。
3.本発明により調製された大粒球状塩は、粒径が均一に分布し、低倍顕微鏡(拡大倍率は4倍)で、大部分の塩は表面が滑らかで丸みを帯びた球状塩であり、且つ粒径がほぼ同じレベルに分布する。
4.本発明の前記大粒球状塩は外観が良好で、他の物質と結合でき、塩の付加価値を増加させる。
5.本発明の塩製造方法は簡単で、制御性が強く、且つアラビアガムは、食品の粘度を向上させるために食品によく使用され、無毒で無害で、本発明により調製された大粒球状塩の安全グレードは食品レベルに達し、食用塩、栄養塩又は足浴塩に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】比較例1で調製された粒子塩比較サンプル1表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図2】比較例2で調製された粒子塩比較サンプル2表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図3】実施例1で調製された大粒球状塩1表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図4】実施例2で調製された大粒球状塩2表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図5】実施例3で調製された大粒球状塩3表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図6】実施例4で調製された大粒球状塩4表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図7】実施例5で調製された大粒球状塩5表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図8】実施例6で調製された大粒球状塩6表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図9】実施例7で調製された大粒球状塩7表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図10】実施例8で調製された大粒球状塩8表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図11】実施例9で調製された大粒球状塩9表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図12】実施例10で調製された大粒球状塩10表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図13】実施例11で調製された大粒球状塩11表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図14】実施例12で調製された大粒球状塩12表面のEMS図である(拡大倍率は40)。
【
図15】実施例2で調製された大粒球状塩2表面のEMS図である(拡大倍率は4)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は具体的な実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0021】
以下の比較例及び実施例では、大粒球状塩の形態を偏光顕微鏡(EMS)で観察し、粒度分析器を用いて前記大粒球状塩の粒度及び粒度分布を測定し、粒度粒形アナライザーを用いて前記大粒球状塩の球形度を測定した。
【0022】
比較例1
晶析装置で塩化ナトリウム飽和溶液300mLを用意し、水浴で恒温加熱し、60℃で蒸発させ、350r/minの撹拌速度で撹拌し、8h蒸発させ、大量の結晶が析出し、結晶を吸引濾過し、60℃のオーブンで2時間乾燥させ、粒子塩比較サンプル1を得た。偏光顕微鏡で結晶の形状(
図1)を観察し、粒度分析器で測定すると、結晶の粒度は382.744μmであり、粒度粒形アナライザーで測定すると、結晶の球形度は0.136であった。
【0023】
比較例2
晶析装置で塩化ナトリウム飽和溶液300mLを用意し、飽和塩化ナトリウム溶液の溶質質量の2%の質量のグリシンを加え、水浴で恒温加熱し、60℃で蒸発させ、350r/minの撹拌速度で撹拌し、8h蒸発させ、大量の結晶が析出し、結晶を吸引濾過し、60℃のオーブンで2時間乾燥させ、粒子塩比較サンプル2を得た。偏光顕微鏡で結晶の形状(
図2)を観察し、粒度分析器で測定すると、結晶の粒度は391.628μmであり、粒度粒形アナライザーで測定すると、結晶の球形度は0.426であった。
【0024】
実施例1-12
実施例1-12ではそれぞれ、大粒球状塩サンプル1-12を調製し、具体的な調製方法は比較例2と基本的に同じだが、ただし、添加剤の種類、添加剤の添加量(塩化ナトリウム飽和溶液における溶質である塩化ナトリウムの質量に対する)、蒸発温度、蒸発プロセスにおける撹拌速度、蒸発時間が異なり、具体的な違いは表1を参照せよ。粒度分析器を用いて大粒球状塩サンプル1-12に対して粒度及び粒度分布の測定を行い、粒度粒形アナライザーを用いて大粒球状塩サンプル1-12に対して球形度の測定を行い、その結果を表1に示す。
【0025】
【0026】
表1から分かるように、粒子塩比較サンプル1-2と比べ、大粒球状塩サンプル1-12の粒径は顕著に増大し、撹拌速度、温度、時間などを制御した条件で、球形度も顕著に向上する。
【0027】
大粒球状塩サンプル1-3を比較すると、アラビアガムの添加量を適切に向上させると、大粒球状塩の粒度及び球形度を向上させることができるが、アラビアガムの添加量が多すぎると、逆に粒度及び球形度が低下することが分かる。大粒球状塩サンプル2、4-6を比較すると、蒸発プロセス中の撹拌速度を適切に向上させると、大粒球状塩の粒径及び球形度を向上させることができるが、撹拌速度が速すぎると、粒径及び球形度が低下することが分かる。大粒球状塩サンプル2、7-9を比較すると、蒸発時間が短すぎると、結晶が完全に成長せず、結晶の粒度及び球形度がいずれも低く、蒸発時間が長すぎると、大量の結晶が衝突摩耗し、結晶の粒度及び球形度が逆に低下し、蒸発時間が8時間の場合、結晶の球形度が最高、粒度も最大であることが分かる。大粒球状塩サンプル2、10-12を比較し、蒸発温度は大粒球状塩の粒度及び球形度に大きな影響を与え、温度が低い場合、結晶核生成の成長が困難であり、結晶粒度及び球形度が低下し、収率も低く、実際の生産に不利であり、温度が高い場合、蒸発強度が大きすぎるため、同様に粒度及び球形度も低下する。他の実験条件が最適であれば、蒸発温度が60℃の場合、製品塩の球形度は0.904に達し、蒸発温度が55℃にわずかに低下すると、製品塩の球形度がわずかに低下して0.892になる。
【0028】
実施例13
粒子塩比較サンプル1、粒子塩比較サンプル2、大粒球状塩サンプル2、大粒球状塩サンプル6をそれぞれ、環境温度23℃、環境湿度15%で30日間置き、各サンプルを観察すると、粒子塩比較サンプル1、粒子塩比較サンプル2では、いずれも異なる程度の固結現象が見られたが、大粒球状塩サンプル2、大粒球状塩サンプル6では、顕著な固結現象が見られず、特に大粒球状塩サンプル2では固結現象がほとんど見られず、流動性がよい。このような現象が発生する原因は正確には、球状塩は立方体塩結晶よりも接触面積が小さく、流動性がよく、固結しにいからであり、本発明が調製した球状塩は粒度が大きいため、固結しにくくなるのである。
【国際調査報告】