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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】低減された脈動を有する蠕動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20221208BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61M1/00 150
A61F9/007 130G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520098
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 IB2020059338
(87)【国際公開番号】W WO2021070037
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/912,120
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ウィリアム マクドネル
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA26
4C077AA30
4C077BB10
4C077DD07
4C077EE10
4C077KK30
(57)【要約】
蠕動ポンプにおける脈動を低減するためのシステム及び方法が開示される。いくつかの例では、カセットは、カセット本体及びカセット本体に接合された可撓性シートを含み、可撓性シートの遷移領域は、カセット本体遷移チャネルの中心線からオフセットされる位置において最大高さを有する少なくとも1つの隆起部を含む。いくつかの例では、カセット本体遷移チャネルは、流体経路のアクティブ領域に向かって且つ/又は遷移チャネルの底部に向かって先細になっている側壁を含む。蠕動ポンプを動作させる例示的な方法は、そうでなければ平均よりも低い流量をもたらすであろう回転の一部分中により高い速度において、且つそうでなければ平均よりも高い流量をもたらすであろう回転の一部分中により低い速度においてローラを動作させることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセットであって、
前面及び背面を有するカセット本体であって、前記カセット本体の前記前面は、カセット本体流体経路を含み、前記カセット本体流体経路は、複数のポート、カセット本体流体経路アクティブ領域及び前記ポートの1つと前記カセット本体流体経路アクティブ領域との間のカセット本体流体経路遷移領域を含み、前記カセット本体流体経路遷移領域は、前記カセット本体流体経路アクティブ領域に対して凹んでいるカセット本体流体経路遷移チャネルを含む、カセット本体と、
前記カセット本体に接合された可撓性シートであって、シート流体経路を含む背面及びローラ係合面を含む前面を有するシートポンプセグメントを含み、前記可撓性シートが前記カセット本体に接合されると、前記シート流体経路は、前記カセット本体流体経路と接続されてポンプ流体経路を形成し、前記シートポンプセグメントは、前記カセット本体流体経路アクティブ領域の上に配置されたシートポンプセグメントアクティブ領域と、前記カセット本体流体経路遷移領域の上に配置されたシートポンプセグメント遷移領域とを含む、可撓性シートと
を含み、前記シートポンプセグメント遷移領域は、少なくとも1つの隆起部であって、前記カセット本体流体経路遷移チャネルの中心線からオフセットされる位置においてその最大高さを有する少なくとも1つの隆起部を含む、カセット。
【請求項2】
前記シートポンプセグメント遷移領域は、前記カセット本体流体経路遷移チャネルの前記中心線の上の位置においてくぼみを含む、請求項1に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項3】
前記シートポンプセグメント遷移領域は、前記くぼみにおける厚さよりも大きい、前記少なくとも1つの隆起部における厚さを有する、請求項2に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項4】
前記シートポンプセグメント遷移領域は、2つの隆起部を含み、前記2つの隆起部の各々は、前記カセット本体流体経路遷移チャネルの前記中心線からオフセットされる位置においてその最大高さを有する、請求項1に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項5】
前記シートポンプセグメント遷移領域は、前記カセット本体流体経路遷移チャネルの前記中心線の上の位置においてくぼみを含む、請求項4に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項6】
前記2つの隆起部の一方は、前記くぼみの一方の側部上にあり、及び前記2つの隆起部の他方は、前記くぼみの反対の側部上にある、請求項5に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項7】
前記シートポンプセグメント遷移領域は、前記くぼみにおける厚さよりも大きい、各隆起部における厚さを有する、請求項6に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項8】
前記シートポンプセグメント遷移領域の前記2つの隆起部は、前記シートポンプセグメントアクティブ領域の単一の隆起部に合流する、請求項6に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項9】
眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセットであって、
前面及び背面を有するカセット本体であって、前記カセット本体の前記前面は、カセット本体流体経路を含み、前記カセット本体流体経路は、複数のポート、カセット本体流体経路アクティブ領域及び前記ポートの1つと前記カセット本体流体経路アクティブ領域との間のカセット本体流体経路遷移領域を含み、前記カセット本体流体経路遷移領域は、前記カセット本体流体経路アクティブ領域に対して凹んでいるカセット本体流体経路遷移チャネルを含む、カセット本体と、
前記カセット本体に接合された可撓性シートであって、シート流体経路を含む背面及びローラ係合面を含む前面を有するシートポンプセグメントを含み、前記可撓性シートが前記カセット本体に接合されると、前記シート流体経路は、前記カセット本体流体経路と接続されてポンプ流体経路を形成する、可撓性シートと
を含み、前記カセット本体流体経路遷移チャネルは、前記ポートの1つに隣接する第1の端部、前記アクティブ領域に隣接する第2の端部及び2つの側壁を含み、前記2つの側壁間の距離は、前記第2の端部に向かって先細になっている、カセット。
【請求項10】
前記2つの側壁間の距離は、前記カセット本体流体経路遷移チャネルの底部に向かって先細になっている、請求項9に記載の眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセット。
【請求項11】
蠕動ポンプを動作させる方法であって、前記ポンプは、少なくとも1つのポンプセグメント及びローラのセットを含み、前記方法は、
前記ローラのセットの各回転中、各ローラが前記ポンプセグメントの周りで1回転するように回転方式で前記ローラのセットを動作させることと、
前記ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも低い流体流量をもたらすであろう前記ローラのセットの回転の一部分中、前記公称速度よりも高い速度で前記ローラのセットを動作させることと、
前記ローラのセットが前記公称速度で動作された場合、平均よりも高い流体流量をもたらすであろう前記ローラのセットの前記回転の一部分中、前記公称速度よりも低い速度で前記ローラのセットを動作させることと
を含む、方法。
【請求項12】
前記ローラのセットの前記動作は、複数の補償サイクルで実行され、各補償サイクルは、前記公称速度よりも高い速度になり、次いで公称速度よりも低い速度になる、請求項11に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項13】
前記ローラのセットの前記動作は、前記ローラのセットの回転ごとに複数の補償サイクルで実行される、請求項12に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項14】
前記ローラのセットの回転ごとの補償サイクルの数は、前記蠕動ポンプのローラの数に前記蠕動ポンプのポンプセグメントの数を乗算したものに等しい、請求項13に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項15】
前記ローラのセットの前記動作は、前記ローラのセットの前記速度を判定する補償プロファイルに従って実行される、請求項11に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項16】
前記補償プロファイルは、固定プロファイルである、請求項15に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項17】
前記補償プロファイルは、前記ローラのセットの前記速度に応じて変動する、請求項15に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項18】
前記補償プロファイルは、前記蠕動ポンプの前記動作中に判定される、請求項15に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項19】
前記補償プロファイルは、前記蠕動ポンプの前記動作前に判定される、請求項15に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【請求項20】
前記補償プロファイルは、前記蠕動ポンプの取り外し可能な部分上に配置された指標に関連付けられる、請求項15に記載の蠕動ポンプを動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、眼科手術中に使用される蠕動ポンプに関連するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術処置では、多くの場合、手術中に眼から流体が吸引される。例えば、硝子体網膜手術では、眼から硝子体物質を吸引するために装置が使用され得る。別の例として、白内障手術では、レンズを細分化又は乳化させ、且つ破壊又は乳化されたレンズを眼から吸引するために装置が使用され得る。
【0003】
加えて、いくつかの眼科手術処置では、眼内に流体を注入することが望ましい場合がある。例えば、硝子体網膜手術、白内障手術又は他の処置では、平衡塩類溶液(BSS)又は他の灌注液が眼内に導入され得る。流体は、吸引された流体の一部として処置中に除去される場合がある。
【0004】
そのような眼科手術処置では、蠕動ポンプは、流体の吸引及び/又は注入のために使用され得る。蠕動ポンプは、ポンプと流体との間の接触が制限されているため、医療装置において多くの場合に使用される容積式ポンプの一種である。典型的な設計では、ポンプで送られる流体は、ポンプシステムの簡単に取り外し可能な構成要素のみと接触する。フローを達成するために、流体は、フローを遮断する点まで局所的につぶれる柔軟な導管内に存在する。シール点は、導管に沿ってフローの方向に移動される。無制限のフローを達成するために、導管のこの変形は、ローラに隣接して配置された可撓性導管を有する回転ハブに取り付けられたローラのセットを使用することなどにより、導管に沿った複数の場所において繰り返し生成される。
【0005】
いくつかの従来のシステムでは、蠕動ポンプは、剛性カセット本体に接合されたエラストマーシートを含み、1つ以上の流体チャネルがエラストマーシートとカセット本体との間の空間に形成される。回転ハブに取り付けられたローラは、エラストマーシートを押してポンプ作用をもたらす。
【0006】
蠕動ポンプを使用する、流体吸引及び/又は注入のための従来のシステムは、米国特許第6,261,283号明細書、米国特許第6,293,926号明細書、米国特許第6,572,349号明細書、米国特許第6,632,214号明細書、米国特許第6,740,074号明細書、米国特許第6,902,542号明細書、米国特許第6,962,488号明細書、米国特許第7,393,189号明細書、米国特許第7,775,780号明細書、米国特許第8,011,905号明細書、米国特許第8,545,198号明細書、米国特許第8,790,096号明細書、米国特許第9,482,216号明細書及び米国特許第9,931,447号明細書で開示されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
典型的には、蠕動ポンプでは、フローは、周期的なフローで一定ではない。例えば、各ローラの通過に伴って繰り返されるフロープロファイルが一般的である。より安定した流量を達成するために、蠕動ポンプにおける脈動を低減するための試みがこれまでなされてきた。例えば、米国特許第6,293,926号明細書は、先細のチャネル遷移領域を有するエラストマーシートを開示しており、このエラストマーシートのチャネル遷移領域は、チャネルのゼロ断面から全断面まで先細になっている内部断面を有する。米国特許第7,775,780号明細書は、カセットとシートとの間に比較的一定の断面を有する遷移チャネル領域を提供するために、カセット内のチャネル遷移領域の底面がエラストマーシートに向かって先細になって、エラストマーシートの先細のチャネル遷移領域の形状に対応する、カセット本体を開示している。米国特許第8,790,096号明細書は、一方のポンプ導管セグメントに作用するローラが、他方のポンプ導管セグメントに作用するローラと位相がずれている2つのポンプ導管セグメントを有する蠕動ポンプなど、脈動を低減することを意図する他の設計を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの従来の設計は、蠕動ポンプにおける脈動を低減することにおいていくらかの成功を収めてきたが、蠕動ポンプにおける脈動を低減するための改良された設計が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、蠕動ポンプにおける脈動を低減するための改善されたシステム及び方法に関する。
【0010】
いくつかの例示的な実施形態では、眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセットは、カセット本体及びカセット本体に接合された可撓性シートを含み、可撓性シートの遷移領域は、少なくとも1つの隆起部であって、カセット本体遷移チャネルの中心線からオフセットされる位置においてその最大高さを有する少なくとも1つの隆起部を含む。可撓性シートの遷移領域は、カセット本体遷移チャネルの中心線の上の位置においてくぼみを含み得る。隆起部におけるシート厚さは、くぼみにおけるシート厚さよりも大きいことができる。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態では、可撓性シートの遷移領域は、複数の隆起部であって、カセット本体遷移チャネルの中心線からオフセットされる位置においてその最大高さを有する複数の隆起部を含み得る。可撓性シートの遷移領域は、2つの隆起部を含み得、2つの隆起部の各々は、カセット本体遷移チャネルの中心線からオフセットされる位置においてその最大高さを有する。2つの隆起部の一方は、くぼみの一方の側部上にあり得、及び2つの隆起部の他方は、くぼみの反対の側部上にあり得る。可撓性シートの遷移領域の2つの隆起部は、可撓性シートのアクティブ領域において単一の隆起部に合流し得る。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態では、眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセットは、カセット本体及びカセット本体に接合された可撓性シートを含み、カセット本体流体経路遷移チャネルは、ポートに隣接する第1の端部、アクティブ領域に隣接する第2の端部及び側壁を含み、側壁間の距離は、第2の端部に向かって先細になっている。いくつかの例示的な実施形態では、側壁間の距離は、カセット本体流体経路遷移チャネルの底部に向かって先細になっている。
【0013】
いくつかの例示的な実施形態では、蠕動ポンプを動作させる方法は、ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも低い流体流量をもたらすであろうローラのセットの回転の一部分中、公称速度よりも高い速度でローラのセットを動作させることと、ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも高い流体流量をもたらすであろうローラのセットの回転の一部分中、公称速度よりも低い速度でローラのセットを動作させることとを含む。ローラのセットは、複数の補償サイクルで動作され得、各補償サイクルは、公称速度よりも高い速度になり、次いで公称速度よりも低い速度になる。ローラのセットは、ローラのセットの回転ごとに複数の補償サイクルで動作され得る。いくつかの例示的な実施形態では、ローラのセットの回転ごとの補償サイクルの数は、蠕動ポンプのローラの数に蠕動ポンプのポンプセグメントの数を乗算したものに等しいことができる。
【0014】
いくつかの例示的な実施形態では、ローラのセットは、ローラのセットの速度を判定する補償プロファイルに従って動作される。補正プロファイルは、固定プロファイル又は変動プロファイルであり得る。例えば、補正プロファイルは、ローラのセットの速度に応じて変動し得る。補償プロファイルは、蠕動ポンプの動作中又は蠕動ポンプの動作前に判定され得る。補償プロファイルは、蠕動ポンプの取り外し可能な部分上に配置された指標に関連付けられ得る。
【0015】
これら及び他の例は、当業者により本開示に基づいて理解されるであろう。
【0016】
添付の図面は、本明細書に開示されるシステム及び方法の複数の例を示し、記載と共に本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a図1aは、米国特許第8,790,096号明細書に開示されている、2つのポンプ導管セグメントを有するエラストマーシートの正面図を示す。
図1b図1bは、米国特許第8,790,096号明細書に開示されている、図1aのエラストマーシートの背面図を示す。
図1c図1cは、米国特許第8,790,096号明細書に開示されている、2つのポンプ導管セグメントを有するカセット本体の正面図を示す。
図1d図1dは、米国特許第8,790,096号明細書に開示されている、図1cのカセット本体の背面図を示す。
図2図2は、図1cの線2--2に沿った断面を示し、図1c~dのカセット本体上に組み立てられた、図1a~bのエラストマーシートを有する、その平面における断面図を示す。
図3図3は、本開示による蠕動ポンプの第1の例の一部の断面図を示す。
図4図4は、本開示による蠕動ポンプの第2の例の一部の上面図を示す。
図5図5は、図4のカセット本体流体経路遷移チャネルの拡大図を示す。
図6図6は、一定速度で動作される従来の蠕動ポンプシステムを、本開示に従って変動速度で動作される蠕動ポンプと比較するグラフを示す。
図7図7は、本開示に従って変動速度で蠕動ポンプを動作させるための補償プロファイルのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な記述を参照することにより、添付の図面がよりよく理解され得る。
【0019】
本開示の原理を説明することを目的として、図面を参照し、特定の言語を使用して図面を説明する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定を意図するものではないことを理解されたい。説明するシステム、装置、機器、方法に対するあらゆる変更形態及び更なる修正形態並びに本開示の原理の任意の更なる応用は、本開示に関連する当業者であれば通常想起されるものと十分に考えられる。特に、本開示のある例に関して説明される特徴、構成要素及び/又は工程は、本開示の他の例に関して説明される特徴、構成要素及び/又は工程と組み合わされ得る。簡素化のために、場合により、同じ参照番号が、同じ又は同様の部品を参照するために図面全体で用いられる。
【0020】
図1a~1dは、米国特許第8,790,096号明細書の図1a~1dに示されている可撓性シート107及び剛性カセット本体105を示す。可撓性シート107及びカセット本体105は、眼科手術システムの蠕動ポンプのためのカセットの一部、例えば眼科手術用コンソールで使用され得るカセットの一部を構成し得る。本明細書で使用される「カセット」という用語は、ポンプ作用のための流体経路を含む蠕動ポンプの構成要素を指し、カセットは、眼科手術用コンソールから取り外し可能であっても又はなくてもよい。眼科手術用コンソールは、米国特許第9,931,447号明細書に示され、記載されているように、眼科手術用コンソールと同様であり得る。眼科手術用コンソールは、Alcon Laboratories,Inc.(Fort Worth,Texas)から入手可能なCONSTELLATION(登録商標)Vision System若しくはAlcon Laboratories,Inc.(Fort Worth,Texas)から入手可能なCENTURION(登録商標)Vision System又は本明細書に記載される原理と共に使用するのに好適な任意の他の眼科手術用コンソールなど、既知であり、使用されている眼科手術用コンソールに類似し得る。
【0021】
眼科手術用コンソールは、典型的には、眼科手術処置を実施する際に使用され得る1つ以上のシステムを含む。例えば、コンソールは、典型的には、眼から流体を吸引するための吸引システム及び/又は眼に流体を注入するための注入システムを含み得る流体システムを含む。流体システムは、米国特許第9,931,447号明細書に示され、記載されている流体システムに類似し得るか、又はCONSTELLATION(登録商標)Vision System若しくはCENTURION(登録商標)Vision Systemなど、既知であり、使用されている流体システムに類似し得るか、又は本明細書に記載される原理と共に使用するのに好適な任意の他の流体システムに類似し得る。
【0022】
図1a~1dに示されるようなシート107及びカセット本体105は、眼科手術用コンソールの流体工学システムで使用され得るカセットの一部を構成することができる。カセットは、米国特許第9,931,447号明細書に示され、記載されているカセットに類似し得るかく、又はCONSTELLATION(登録商標)Vision System若しくはCENTURION(登録商標)Vision Systemなど、既知であり、使用されているカセットに類似し得るか、又は本明細書に記載される原理と共に使用するのに好適な任意の他のカセットに類似し得る。コンソールは、回転ハブ上で回転するように取り付けられているローラのセットを有し得る。ハブ及びローラ及びカセット(又はカセットの一部)は、一緒に蠕動ポンプを形成することができる(蠕動ポンプモータなどの他の構成要素も含まれ得る)。
【0023】
シート107は、シリコーンゴム又は熱可塑性エラストマーなどの可撓性材料で作製され得る。他の可撓性材料が使用され得る。本明細書に記載のシートに関して使用される場合の「可撓性」という用語は、シートが、ポンプ作用のために変形することができるように十分な可撓性を有することを意味する。シート107は、1つ又は複数であり得る。シートは、成形又は他の任意の適切な方法によって作製され得る。
【0024】
カセット本体105は、剛性及び構造体を提供するために、剛性の熱可塑性材料、例えばポリカーボネート及び/又はポリスルホンなどの剛性材料で作製され得る。カセット本体105は、1つの部品又は複数の部品であり得る。カセット本体は、射出成形、機械加工又は他の任意の適切な方法によって作製され得る。カセット本体105は、ポンプ流体経路を形成するために、エラストマーシート107によって係合され得るポンプインターフェース部分を有し得、シートのポンプセグメントは、ポンプローラによって係合される。吸引流体経路及び/又は注入流体経路の一部分は、カセット本体105内のチャネル及び/又はチューブとして延び得る。
【0025】
カセット本体105は、カセットがコンソール内にロードされるときにカセットをコンソールと整列するための穴及び/又はノッチを設けられ得る。いくつかの例では、カセットは、単一の患者の処置に使用することができる取り外し可能で使い捨て可能又は消耗可能なアイテムであり得る。新しいカセットは、新しい処置のために使用され得る。
【0026】
米国特許第8,790,096号明細書に記載されているように、シート107は、カセット本体105に結合されて、シートポンプセグメント103a、103b(総称してポンプセグメント103)として指定された領域において、接合されたシート107及びカセット本体105の2つ以上のポンプ流体経路を画定するように適合される。いくつかの例では、シート107は、カセット本体105に接合されるか、又は機械的に(例えば、接着剤、熱融着、機械的圧着、リベットなどを介して)取り付けられ得る。いくつかの例では、シート107の外周上及び/又は内部の151a~nとラベル付けされた突出部などの突出部は、カセット本体105上における153a~nとラベル付けされた凹部などの対応する凹部に係合して、シート107をカセット本体105に接続し、ローラが作用する際のシート107の回転を防ぐことを促進し得る。
【0027】
図1c及び1dに見られ得るように、カセット本体105は、前面121及び背面123を有する。前面121は、カセット本体流体経路125a、125bを含むポンプインターフェース部分109を有する。カセット流体経路125aは、入口ポート112a及び出口ポート112b、カセット本体流体経路アクティブ領域163、入口ポート112aとカセット本体流体経路アクティブ領域163との間のカセット本体流体経路遷移領域127a並びに出口ポート112bとカセット本体流体経路アクティブ領域163との間のカセット本体流体経路遷移領域127bを含む。カセット流体経路125bは、入口ポート112c及び出口ポート112d、カセット本体流体経路アクティブ領域165、入口ポート112cとカセット本体流体経路アクティブ領域165との間のカセット本体流体経路遷移領域127c並びに出口ポート112dとカセット本体流体経路アクティブ領域165との間のカセット本体流体経路遷移領域127dを含む。カセット本体流体経路遷移領域127a、127b、127c、127dのそれぞれは、それぞれ隣接するカセット本体流体経路アクティブ領域163又は165に対して凹んでいるカセット本体流体経路遷移チャネル157a、157b、157c、157dを含む。
【0028】
図1a及び1bに見られ得るように、可撓性シート107は、前面131及び背面133を有する。可撓性シート107は、シートポンプセグメント103a、103bを含む。各シートポンプセグメント103a、103bの背面は、それぞれシート流体経路135a、135bを画定する。各シートポンプセグメント103a、103bの前面は、それぞれローラ係合面137a、137bを含む。シートポンプセグメント103aは、カセット本体流体経路アクティブ領域163の上に配置されるように適合されたシートポンプセグメントアクティブ領域143、カセット本体流体経路遷移領域127aの上に配置されるように適合されたシートポンプセグメント遷移領域147a及びカセット本体流体経路遷移領域127bの上に配置されるように適合されたシートポンプセグメント遷移領域147bを含む。シートポンプセグメント103bは、カセット本体流体経路アクティブ領域165の上に配置されるように適合されたシートポンプセグメントアクティブ領域145、カセット本体流体経路遷移領域127cの上に配置されるように適合されたシートポンプセグメント遷移領域147c及びカセット本体流体経路遷移領域127dの上に配置されるように適合されたシートポンプセグメント遷移領域147dを含む。
【0029】
図1a~dの例では、(それぞれのシート流体経路135a、135bの概要を示し得る)シート107上の突出部117a、117bは、(それぞれのカセット本体流体経路125a、125bの概要を示し得る)カセット本体105内の対応する凹部119a、119b内にフィットし得る。可撓性シート107がカセット本体105に接合されると、シート流体経路135aは、カセット本体流体経路125aと接続されて第1のポンプ流体経路を形成し、シート流体経路135bは、カセット本体流体経路125bと接続されて第2のポンプ流体経路を形成する。
【0030】
突出部117a、117bは、それぞれの凹部119a、119bに固定されて、シート107をカセット本体105に保持することができる。いくつかの例では、突出部151a~n及び/又は突出部117a、117bは、機械的/摩擦嵌合、接着剤、熱融着などを介してそれぞれの凹部153a~n及び/又は凹部119a、119bに固定され得る。いくつかの例では、突出部117a、117bは、ポンプ流体経路からのポンプ流体の漏れを防ぐためのシールを形成するように、それぞれの凹部119a、119bに固定され得る。
【0031】
米国特許第8,790,096号明細書に記載されているように、一連のローラが2つ以上のポンプセグメント103a、103bに係合すると、流体は、カセットを介してポンプで送られ得る。ローラは、蠕動ポンプモータ(例えば、ステッパ若しくは直流(DC)サーボモータ又は他のモータ(交流(AC)モータなど))の回転軸から放射状に取り付けられ得、シート107のポンプセグメント103を、下にあるカセット本体105に対して圧縮するように構成され得る。第1及び第2のポンプ流体経路(125a及び135a、125b及び135b)は、カセット本体105内のポート、例えばポート112a、112b、112c、112d(総称して、ポート112)を流体接続することができる。ポート112a~dは、ポンプ流体経路を介してポンプで送られる流体のためのそれぞれの入口及び出口を提供することができる。ローラが回転して入口ポート(例えば、入口ポート112a、112c)から離れると、対応する流体ボーラスは、(ローラが流体を入口から押し出すことによって作成される真空のため)入口ポートを介してそれぞれのポンプ流体経路(125a及び135a、125b及び135b)内に引き込まれ得る。ローラが出口ポート(例えば、出口ポート112b、112d)に接近して回転すると、対応する流体ボーラスは、出口ポートを介して移動することができる。
【0032】
シート107内の2つ(以上)のアクティブポンプセグメント103は、単一のハブローラアセンブリによって作用され得る。ローラがポンプセグメント103と係合すると、各ローラは、最初に、下にある遷移チャネル(例えば、遷移チャネル157a、157c)を有する遷移領域(例えば、遷移領域147a、147c)の上を回転することができる。いくつかの例では、シート107は、遷移領域147a~dを含まなくてもよく、カセット本体105は、遷移チャネル157a~dを含まなくてもよい。ローラが遷移領域147a、147cから転がり落ちる(且つそれに対応して遷移チャネル157a、157cから転がり落ちる)と、ローラは、シール点においてシート107をカセット本体105に対して完全に押し付けることにより、(例えば、ポンプセグメント103a上の破線で示されている点161において又はポンプセグメント103b上の点169において)ポンプセグメント103内に内部シールを形成することができる(遷移領域及び遷移チャネルがない場合、ローラは、シート107とのローラの係合の開始時にシールを形成することができる)。内部シールは、ローラが「アクティブ」領域163又は165を通して回転するときに動き得る。ローラが動くと、ローラの動きの前の流体がポンプセグメント103を通して押し出され、その結果、ローラの動きの後ろの流体が入口(例えば、入口112a、112c)から引き出され得る。ローラヘッド上の次のローラが、現在内部シールを形成するローラの後ろの遷移領域147a、147c(遷移チャネル157a、157cの上)に近づくと、次のローラは、シールされていないローラの下にあるシート107とカセット本体105との間の断面積を減少させ始め得る。遷移領域147a、147c及び下にある遷移チャネル157a、157cの形状のため、遷移領域147a、147c上のシールされていないローラは、ローラの下(例えば、遷移チャネル157a、157c内)に流体を有してシールを妨げ得る。断面積が減少するにつれて(例えば、シールされていないローラがアクティブ領域163、165のシール点又は開始点に近づくにつれて)、シールされたローラによって引き出されている流体は、ゆっくりと拘束され得る。シールされたアクティブローラの結果としての入口からの流体フローは、遷移ローラがシール点161(又は169)において新しいシールを形成し、且つ(以前にシールされたローラを効果的に分離し得る)新しいアクティブローラになるまで、遷移ローラによってゆっくりと減少され得る。次いで、このシーケンスは、ローラヘッド上の次のローラが遷移領域147a、147c(遷移チャネル157a、157cの上)の開始点に係合するときに繰り返され得る。
【0033】
遷移領域147a、147c(遷移チャネル157a、157cの上)に係合し、次いで移動する(後続のローラがシールを形成するまで、後続のローラが流体フローをゆっくりと減少させる)内部シールを形成する一連のローラは、入口(例えば、入口112a、112c)から引き出され、且つ/又は出口若しくは排出口(例えば、出口若しくは排出口112b、112d)に押し出される流体の流体フロー/圧力プロファイルに周期的な変動(又は「パルス」)をもたらし得る。
【0034】
図2は、図1cの線2--2に沿った断面を示し、図1c~dのカセット本体105上に組み立てられた、図1a~bのシート107を有する、その平面における断面図を示す。シート107の突出部117aは、カセット本体105の凹部119a内に見られ得る。図2の線159は、カセット本体流体経路遷移チャネル157aの中心線を記している。図2に見られ得るように、シート107のポンプセグメント103aは、カセット本体105のカセット本体流体経路遷移チャネル157aの中心にわたって隆起している隆起した中央部分171を有する。シート107のポンプセグメント103aがカセット本体流体経路遷移チャネル157aの始点からアクティブ領域163の始点まで続くにつれて、隆起した中央部分171は、アクティブ領域163の上方の全高さの単一の隆起部まで高さが徐々に増大する。隆起した中央部分171は、アクティブ領域163を通してカセット本体流体経路遷移チャネル157bまでの全高さの単一の隆起部として続く。シート107のポンプセグメント103aがカセット本体流体経路遷移チャネル157bの始点から出口112bまで続くにつれて、隆起した中央部分は、高さが徐々に減少する。出口112bの上方において、エラストマーシート107は、図2で入口112aの上方に示されているものとプロファイルが類似している。ポンプセグメント103bの形状は、ポンプセグメント103aの形状と同じである。
【0035】
図3は、本開示による蠕動ポンプの第1の例の一部の断面図を示す。図3は、カセット本体205上にシート207を有する、図2のものと同様の図を示す。カセット本体205は、カセット本体105と同様であり、その全ての特徴を有し得る。シート207のポンプセグメントのシートポンプセグメント遷移領域が、シート107のポンプセグメント103a、103bのシートポンプセグメント遷移領域147a~dと異なるプロファイルを有することを除いて、シート207は、シート107の全ての機能に類似しており且つそれらを有し得る。
【0036】
図3に見られ得るように、入口212aの上方の領域において、シート207のポンプセグメント203aは、シート207の中央部分208のいずれかの側部上で隆起している2つの隆起した側部隆起部209を有するシートポンプセグメント遷移領域247aを有し、シート207の中央部分208は、カセット本体流体経路遷移チャネル257aの上にあるシート207の一部分である。シート207の中央部分208は、中央部分208のいずれかの側部上の2つの隆起した側部隆起部209に対して凹んでいる。中央部分208は、カセット本体流体経路遷移チャネル257aの中心線259の上の位置においてくぼみを含む。
【0037】
図3に見られ得るように、シートポンプセグメント遷移領域247aは、少なくとも1つの隆起部209、この例では2つの隆起部209を含み、カセット本体流体経路遷移チャネル257aの中心線259からオフセットされる位置においてその最大高さ209Hを有する。この例では、シート207上の点の高さは、カセット本体流体経路アクティブ領域のレベルにあるカセット本体205の表面から測定された、各隆起部209の高さ209Hをもたらすシート207の前面の高さを表す。
【0038】
シートポンプセグメント遷移領域247aは、中央部分208のくぼみにおけるその厚さよりも大きい、各隆起部209における厚さを有する。示されている例では、各隆起部209において、シート207の厚さは、隆起部209の高さ209Hの全範囲に対して延びている。他の例では、シート207の背面は、カセット本体流体経路アクティブ領域のレベルの上方に隆起され得、それにより、隆起部の厚さは、カセット本体流体経路アクティブ領域のレベルから測定された隆起部の高さよりも低くなり得る。
【0039】
可撓性シート207の遷移領域は、複数の隆起部であって、カセット本体205の遷移チャネルの中心線からオフセットされる位置においてその最大高さを有する複数の隆起部を含み得る。図示された例では、2つの隆起部209の一方は、くぼみ208の一方の側部上にあり、及び2つの隆起部209の他方は、くぼみ208の反対の側部上にある。他の例では、隆起部の他の数及び配置が可能である。
【0040】
シート207のポンプセグメント203aが入口212aにおけるカセット本体流体経路遷移チャネル257aの始点から(図1cのアクティブ領域163に対応する)カセット本体流体経路アクティブ領域の始点まで続くと、隆起した側部隆起部209は、それらがアクティブ領域において隆起した側部隆起としてもはや存在しなくなるまで、高さが徐々に減少する。同様に、シート207のポンプセグメント203aが(図1cのアクティブ領域163に対応する)カセット本体流体経路アクティブ領域の始点に近づくにつれて、凹んでいる中央部分208は、それがカセット本体流体経路アクティブ領域の上の全サイズの中央領域になるまで、高さが徐々に増大する。(図1cのアクティブ領域163に対応するカセット本体流体経路アクティブ領域の上に位置する)ポンプセグメント203aのシートポンプセグメントアクティブ領域は、カセット本体流体経路のアクティブ領域の中心上に整列された単一の隆起した中心部分と共に、ポンプセグメント103aのシートポンプセグメントアクティブ領域143と同様のプロファイルを有する。シート207のポンプセグメント203aが入口212aにおけるカセット本体流体経路遷移チャネル257aの始点からカセット本体流体経路アクティブ領域の始点まで続くと、シートポンプセグメント遷移領域247aの2つの隆起部209は、シートポンプセグメントアクティブ領域の単一の隆起部に合流する。
【0041】
アクティブ領域から出口までのポンプセグメント203aの後続遷移領域は、入口からアクティブ領域までのポンプセグメント203aの遷移領域と同様である。アクティブ領域から出口まで、隆起した中央部分は、図3の入口212aの上方の凹んでいる中央部分208と同様に、出口の上方の凹んでいる中央部分208になるまで、高さが徐々に減少する。同様に、アクティブ領域から出口まで、側部隆起部が形成され、図3に見られ得るように、それらが2つの隆起した側部隆起部209の全高さになるまで高さが増大する。
【0042】
シート207は、ポンプセグメント203aがポンプセグメント103aから有するのと同じ差異をポンプセグメント103bから有することを除いて、ポンプセグメント103bと同様である第2のポンプセグメント203bを有する。ポンプセグメント203bの形状は、ポンプセグメント203aの形状と同じである。
【0043】
図3のエラストマーシート207のプロファイルは、蠕動ポンプにおける脈動を低減するのに役立つ。図2の例では、ローラが入口112a、112c及び遷移領域の上を転がるとき、ローラは、隆起した中央部分171を下向きにカセット本体流体経路遷移チャネル157a、157c内に押して、脈動流を引き起こすか又はそれに寄与し得る。同様に、図2の例では、ローラが遷移領域及び出口112b、112d上を転がるとき、ローラは、隆起した中央部分171を再び下向きにカセット本体流体経路遷移チャネル157b、157d内に押して、脈動流を引き起こすか又はそれに寄与し得る。対照的に、図3の実施形態では、ローラが入口及び遷移領域の上を転がると、ローラは、主に隆起した側部隆起部209に対して作用する。隆起した側部隆起部209及び対応して凹んでいる中央領域208は、ローラが入口及び流体経路遷移チャネルを通過するとき、中央領域の突出部を下向きに低減又は排除するのに役立ち、それによりフローの脈動を低減する。同様に、図3の実施形態では、ローラは、遷移領域及び出口にわたってアクティブ領域から転がり、ローラは、再び、主に隆起した側部隆起部209に対して作用する。隆起した側部隆起部209及び対応して凹んでいる中央領域208は、ローラが流体経路遷移チャネル及び入口を通過するとき、中央領域の突出部を下向きに低減又は排除するのに役立ち、それによりフローの脈動を低減する。隆起した側部隆起部209は、中央領域から圧力を取り除き、中央領域が流体経路遷移チャネル内に押し下げられることを防ぎ、したがって流量の脈動を低減するのに役立つ。
【0044】
代替の実施形態(図示せず)として、カセット本体205自体が、遷移領域の領域内における1つ以上の隆起した肩部又は傾斜部を設けられ得る。これらの隆起した肩部又は傾斜部は、ローラが可撓性シートの中央領域上を押さないように保つのに役立つ。図3の実施形態と同様に、これは、可撓性シートの遷移領域の中央領域から圧力を取り除き、可撓性シートの中央領域が流体経路遷移チャネル内に押し下げられることを防ぎ、したがって流量の脈動を低減するのに役立つであろう。
【0045】
図4は、本開示による蠕動ポンプの第2の例の一部の上面図を示す。図4は、図1cでのカセット本体105のものと同様の図でカセット本体305を示す。カセット本体305は、以下に示され、説明されるように、カセット本体流体経路遷移チャネルの形状に関することを除いて、カセット本体105の全ての特徴に類似しており且つそれらを有し得る。カセット本体305は、シート107又はシート207などの任意の適切な可撓性シートと共に使用され得る。
【0046】
カセット本体305は、エラストマーシート(例えば、エラストマーシート107又は207)が結合され得るポンプインターフェース部分309を有する。ポンプインターフェース部分309は、エラストマーシートの対応する突出部(例えば、突出部117a、117b)を受容するように適合された凹部319a、319bを有する。これらの凹部319a、319bによって境界が定められた領域及びエラストマーシートの対応する突出部は、カセット本体流体経路325a、325bによって部分的に画定された流体経路内の流体フローのための領域を構成する。流体は、第1の流体経路において入口312aから出口312bまで流れ、第2の流体経路において入口312cから出口312dまで流れる。
【0047】
カセット本体流体経路325a、325bは、図1bのアクティブ領域163、165と同様のアクティブ領域363、365を含む。ポンプセグメントは、流体フローにおける脈動を低減するように設計されたカセット本体流体経路遷移チャネル357a、357b、357c、357dを含む。
【0048】
図5は、カセット本体流体経路遷移チャネル357aの拡大図を示す。遷移セクション357aは、底面381、側壁382、383、側壁上端384、385、第1の端部386及び第2の端部387を含む。第1の端部386は、入口312aに隣接するカセット本体流体経路遷移チャネル357aの端部を表し、第2の端部387は、アクティブ領域363に隣接するカセット本体流体経路遷移チャネル357aの端部を表す。カセット本体流体経路遷移チャネル357aの形状は、他のカセット本体流体経路遷移チャネル357b~dの形状を表す。カセット本体流体経路遷移チャネル357b及び357dなど、ポンプセグメントの端部にあるカセット本体流体経路遷移チャネルの場合、第1の端部386は、それぞれ出口312b、312dに隣接するカセット本体流体経路遷移チャネル357b、357dの端部を表す。
【0049】
図4及び5に見られ得るように、側壁382、383及び側壁上端384、385は、それらがカセット本体流体経路遷移チャネル357aの第1の端部386から第2の端部387に向かって移動するにつれて、徐々に共に接近する。したがって、カセット本体流体経路遷移チャネル357aの幅は、第2の端部387に向かって徐々に狭くなる(幅は、ポンプインターフェース部分の半径に沿った方向でカセット本体流体経路遷移チャネルにわたる寸法である)。図4及び5に見られ得るように、2つの側壁382、383間の距離は、第2の端部387に向かって先細になっている。加えて、側壁382、383は、側壁382、383が側壁上端384、385と遭遇する上面ではなく、底面381において共に接近するように傾斜している。図4及び5に見られ得るように、2つの側壁382、383間の距離は、カセット本体流体経路遷移チャネル357aの底部381に向かって先細になっている。底面381も第2の端部387に向かって上向きに傾斜している。他のカセット本体流体経路遷移チャネル357b~dは、カセット本体流体経路遷移チャネル357aと同じ形状を有する。
【0050】
図1cのカセット本体などの従来の設計では、カセット本体流体経路遷移チャネル157a~dの端部に向かって上向きに傾斜している底面(例えば、図1cの傾斜面158a~dを参照されたい)を有する一方、カセット本体流体経路遷移チャネル157a~dは、カセット本体流体経路遷移チャネルにわたる全ての場所において一定の幅を有する。対照的に、図4~5の設計では、カセット本体流体経路遷移チャネル357a~dの幅が徐々に変化し、すなわち側壁382、383(及び側壁上端384、385)が端部387に向かって共に接近するために端部387に向かって狭くなる。加えて、側壁382、383の傾斜のため、カセット本体流体経路遷移チャネル357a~dの幅は、カセット本体流体経路遷移チャネル357a~dの上部よりも底部においてより狭くなる。
【0051】
図4~5に示されるような形状のため、アクティブ領域に出入りする流体フローは、より滑らかでより緩やかになる。カセット本体流体経路遷移チャネル357a~dの端部387及び底部381の両方に向かう側壁382、383の先細りは、アクティブ領域に出入りするより滑らかでより緩やかなフローを作り出す。このより滑らかでより緩やかなフローにより、以前の形状に存在し得るフローの脈動を低減する。
【0052】
図6は、一定速度での従来の蠕動ポンプシステムを、本開示に従って変動速度で動作される蠕動ポンプと比較するグラフを示す。図6のグラフにおける(「一定速度」とラベル付けされた)例示的な従来の蠕動ポンプシステムは、米国特許第8,790,096号明細書に記載されているものと同様に、2つのポンプセグメント及び7つのローラを有する。ローラは、ステッピングモータによって動作され、この例ではローラのセットの回転ごとに200ステップを有する。ローラのセットが1回転するたびに、各ローラは、2つのポンプセグメントの各々の上を2回通過する。図6に見られ得るように、この例示的な以前のシステムは、約9.5ml/分の低位から約13.8ml/分の最大までの範囲のパルスフローをもたらした。フローは、サイクルで進み、14個の高点及び14個の低点を有し、ポンプセグメント上のローラの14回の通過を表している(7個のローラがそれぞれ2つのポンプセグメントを通過している)。図6に見られ得るように、全ての他の低点は、異なって現れ、低点の一方のセットは、約9.5ml/分~約9.8ml/分の範囲にあり、低点の他方のセットは、約10.5ml/分~約10.8ml/分の範囲にあり、2つのポンプセグメント間の差異を示唆している。
【0053】
本開示に従い、蠕動ポンプシステムのモータの速度は、測定された流量出力に基づいて調整された。モータは、測定された低流量の領域でより速く動作され、測定された高流量の領域でより遅く動作された。図7は、本開示に従って変動速度で動作された蠕動ポンプの速度調整倍数のグラフを示す。測定された流量出力に基づいて、モータ速度は、公称動作速度の約0.75倍~公称動作速度の1.15倍の速度に連続的に調整された。図7に見られ得るように、補償は、パルスフローを反映するサイクルごとにあり、公称速度を上回る14の調整値及び公称速度を下回る14の調整値を伴い、ポンプセグメント上のローラの14回の通過を表した(7つのローラがそれぞれ2つのポンプセグメント上を通過している)。
【0054】
図6に見られ得るように、(図6において「変動速度」とラベル付けされた)図6の補償プロファイルに従って変動速度で動作された場合、結果としての流体フローは、脈動が低減したはるかに滑らかなものであった。このシステムでは、約12ml/分+/-0.2ml/分の狭い範囲のフローが結果として生じた。
【0055】
本開示による蠕動ポンプを動作させる方法は、ローラのセットの各回転中、各ローラがポンプセグメントの周りで1回転するように回転方式でローラのセットを動作させることと、ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも低い流体流量をもたらすであろうローラのセットの回転の一部分中、公称速度よりも高い速度でローラのセットを動作させることと、ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも高い流体流量をもたらすであろうローラのセットの回転の一部分中、公称速度よりも低い速度でローラのセットを動作させることとを含む。その間にローラのセットが公称速度よりも高い速度で動作される回転の一部分は、ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも低い流体流量をもたらすであろう回転の全ての部分である必要はない。同様に、ローラのセットが公称速度よりも低い速度で動作される回転の一部分は、ローラのセットが公称速度で動作された場合、平均よりも高い流体流量をもたらすであろう回転の全ての部分である必要はない。
【0056】
ローラのセットの動作は、複数の補償サイクルで実行され得、各補償サイクルは、公称速度よりも高い速度になり、次いで公称速度よりも低い速度になる。ローラのセットは、ローラのセットの回転ごとに複数の補償サイクルで動作され得る。いくつかの実施形態では、ローラのセットの回転ごとの補償サイクルの数は、蠕動ポンプのローラの数に蠕動ポンプのポンプセグメントの数を乗算したものに等しい。例えば、図6及び7の例では、蠕動ポンプは、7つのローラ及び2つのポンプセグメントを有し、図7に見られ得るように、ローラのセットの回転ごとの補償サイクルは、14である。
【0057】
ローラのセットの動作は、図7に示される補償プロファイルなど、ローラのセットの速度を判定する補償プロファイルに従って実行され得る。補償プロファイルは、ポンプの動作中に固定プロファイルであり得るか、又はローラのセットの速度に応じて変動し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、補償プロファイルは、蠕動ポンプの動作中に判定され得る。例えば、流量を測定し、ローラの速度をリアルタイムで調整することができる。別の例として、流量を測定し、ローラの速度を1つ以上の最近のポンプサイクルに基づいて調整することができる。他の実施形態では、補償プロファイルは、蠕動ポンプの動作前に判定され得る。例えば、補償プロファイルは、蠕動ポンプのテスト中又は同様の蠕動ポンプのテスト中に判定され得る。
【0059】
補償プロファイルは、蠕動ポンプの取り外し可能な部分に配置された指標に関連付けられ得る。例えば、カセットは、補償プロファイルをコンソールに通知するバーコード又は他の機械可読指標を含み得る。
【0060】
当業者であれば、本開示に包含される実装形態が、上述した特定の例示的な実装形態に限定されないことを理解するであろう。この点に関して、例示的な実装形態を図示及び説明してきたが、前述した本開示に対する広範囲の修正形態、変更形態及び置換形態が考えられる。本開示の範囲から逸脱しない限り、前述のものに対するこのような変形形態がなされ得ることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、広く且つ本開示と整合するように解釈されることが適切である。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】