(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】Ti及びZrで置換されたベータゼオライト(*BEA)骨格を含む水素化分解触媒並びにその調製及び使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20221208BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221208BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20221208BHJP
C01B 39/06 20060101ALI20221208BHJP
C10G 45/12 20060101ALI20221208BHJP
C10G 47/16 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J35/10 301A
B01J29/70 M
C01B39/06
C10G45/12 Z
C10G47/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520259
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 US2020052554
(87)【国際公開番号】W WO2021067119
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピーター・ホジキンス
(72)【発明者】
【氏名】オマー・レファ・コセオグル
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】香川 智靖
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA20
4G073BA21
4G073BA22
4G073BA28
4G073BA29
4G073BA30
4G073BA36
4G073BA40
4G073BA41
4G073BA44
4G073BA45
4G073BA46
4G073BA49
4G073BA50
4G073BA59
4G073BA75
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4G073BD13
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4H129CA01
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4H129GA13
4H129GA14
4H129KA12
4H129KC17X
4H129KC17Y
4H129KD10X
4H129KD10Y
4H129NA23
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、炭化水素を含有する供給原料を水素化分解又は水素化処理するための方法に関する。これは、*BEA骨格のβゼオライトを含む触媒の使用によって達成され、ここでその*BEA骨格中のアルミニウム原子の一部が、酸化物を基準にして計算してTi及びZrのそれぞれ0.1~50質量%によって置換されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を含む供給原料を水素化分解又は水素処理するための方法であって、前記供給原料を(i)触媒(前記触媒は、活性相金属及び
*BEA骨格のβゼオライトを含み、前記
*BEA骨格中のアルミニウム原子の一部が、0.1~5.0質量%のTi原子及び0.1~5.0質量%のZr原子に置換されており、前記の質量%は酸化物を基準にして計算されている)及び(ii)水素と接触させて、前記供給原料を水素化分解又は水素処理する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記触媒が、酸化物を基準にして計算して0.1~5.0質量%のHf原子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒において前記βゼオライトが以下の特徴:
(a)a=1.260~1.270nm、b=1.260~1.270nm、及びc=2.620~2.650nmの結晶格子定数;
(b)400~800m
2/gの比表面積、及び
(c)10~200の、Al
2O
3に対するSiO
2のモル比、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のゼオライト含有触媒担体が、15~500m
2/gの比表面積;0.40~0.75ml/gの範囲の、600Å以下の径を有する細孔の容積;及び、0.01~40質量%の範囲の活性相金属成分量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
流動反応器(フローリアクター)である反応容器に水素化分解触媒を充填する工程;及び300℃~450℃の反応器温度、4~30MPaの水素圧、0.1~10h
-1の液空間速度(LHSV)、及び500~2500Nm
3/m
3の水素/油比で、水素の存在下において、300℃~833℃の沸点を有する供給原料を処理する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の流動反応器(フローリアクター)が、撹拌浴型反応器、沸騰床型反応器、バッフル付きスラリー浴型反応器、固定床型反応器、回転管型反応器、及びスラリー床型反応器からなる群から選択される流動反応器である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
炭化水素油が、(1)原油、(2)合成原油、(3)ビチューメン(瀝青)、(4)オイルサンド、(5)シェルオイル、又は(6)液化石炭から得られる精製油を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
炭化水素油が、原油、合成原油、ビチューメン(瀝青)、オイルサンド、シェルオイル、又は液化石炭から得られる精製油を含み、前記精製油が、a)減圧軽油(VGO)、b)溶媒脱アスファルトプロセスから得られた脱アスファルト油(DAO)もしくは脱金属油、c)コーカープロセスから得られる軽質コーカー軽油又は重質コーカー軽油、d)流動接触分解(FCC)プロセスで得られるサイクルオイル、又はe)ビスブレーキングプロセスから得られる軽油である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
流動反応器である水素処理の装置に水素化分解触媒を充填する工程;及び、375~650℃の沸点を有する供給原料を、水素の存在下で、330℃~450℃の反応器温度にて、7~15MPaの水素圧、0.2~1.5h
-1の液空間速度(LHSV)、及び1000~2000Nm
3/m
3の水素/油比で処理して、中間留分を得ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記βゼオライトが、酸化物を基準にして、Ti及びZrのそれぞれを0.1~2.0質量%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記βゼオライトが、酸化物を基準にして、0.1~2.0質量%のHfを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が無機担体の上に存在している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記無機担体が、アルミナ及びシリカのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記βゼオライトは、Al
2O
3に対するSiO
2のモル比が10~100である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記モル比が30~70である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記比表面積が500~700m
2/gである、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が150~500m
2/gの比表面積を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記比表面積が150~450m
2/gである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記活性相金属の成分が、酸化物を基準にして計算して前記触媒の0.01~40質量%を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記活性相金属の成分が、酸化物を基準にして計算して前記触媒の10~35質量%を構成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記活性相金属が、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ag、In、Pt、Au、Cr、Mo、又はWを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記βゼオライトが前記触媒の1~80質量%を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記βゼオライトが前記触媒の5~50質量%を構成する、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年10月1日に出願された米国特許出願番号16/589,719に対する優先権を主張し、その内容を、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、新しい触媒組成物を使用して、炭化水素供給原料を水素化分解するための方法に関する。具体的には、触媒組成物は、そのゼオライト骨格中のアルミニウムイオンの一部が、酸化物基準で計算して、チタン及びジルコニウムの両方の0.1~5質量%で置換されている*BEAゼオライトを含み、また、水素化及び/又は水素化脱硫及び/又は水素化脱窒素の機能を有する少なくとも1つ活性相金属も含む。
【背景技術】
【0003】
長年、ゼオライト、並びにチタン及びジルコニウムのうち一つ又は両方を含み、その金属がメソ細孔上に担持されている触媒が、ボトムオイルを処理するために使用されてきた。例えば、特開2003-334305号公報、同2002-255537号公報、及び同2003-226519号公報を参照されたい。また、参照により本明細書に援用する米国特許第10,293,332号明細書及び同9,221,036号明細書も参照されたい。
【0004】
特開2000-334305号公報は、ゼオライト担体上に活性相金属を含む水素化分解触媒を教示している。その支持体は、メソ細孔(メソポア)の内面に結合されている酸化チタン又は酸化ジルコニウムの超微粒子を含んでいる。そのSiに対するAlの原子比は0.01~0.1であり、これは20~200のSiO2/Al2O3モル比、すなわち「SAR」に相当する。これらの触媒は、0.8~2のpHにおいて、メソ細孔含有ゼオライトをTi又はZrの酸化物の水溶液と混合することによって調製される。そのゼオライトを次に洗浄し、400~600℃で焼成する。
【0005】
上記「255537」刊行物は、高いメソ細孔含有量及び0.01~0.2のSiに対するAlの原子比(10~200のSAR)、50~100Åの細孔径を有するメソ細孔容積30~50%をもつゼオライトを教示している。そのメソ細孔は0.14cc/g以上の容積を有し、そのAl原子の25%以上が四配位である。容易に還元されないTi又はZrの酸化物の超微粒子は、ゼオライトのメソ細孔の内面と結合する。これが、活性相金属のための担体として機能する。この触媒を製造するプロセスは、上記「334305」刊行物についてのプロセスと類似しており、そのプロセスでは、ゼオライトを、0.8~2のpHにおいて、Ti又はZrの酸化物の水溶液と接触させ、次に50~200℃で乾燥させ、350~600℃で焼成する。
【0006】
上記「226519」出願は、また、FAU(フォージャサイト)構造のゼオライトがTi、Zr、又はHfを含む水素化分解触媒を教示している。その金属含有量は0.1~10質量%(元素を基準にして計算して)であり、Al/Si原子比が0.01~0.1(20~200のSAR)、及びさらに活性相金属を含む。FAUゼオライトは、24.28~24.46Åの結晶格子定数を有する。その調製は、上記の触媒の調製と同様である。
【0007】
しかしながら、これらの水素化分解触媒では、メソ細孔は、供給原料中に存在する金属、例えば、バナジウム及びニッケルなどの原料に存在する金属で閉塞しており、したがって、これらの触媒は、予め保護する水素化脱金属保護層がなく、重質炭化水素油、例えば、VGO及びDAOあるいはその他の石油系炭化水素原料の水素処理(すなわち水素化分解)には適していない。
【0008】
参照によりその全体を本明細書に援用する国際公開第2007/032232号に開示されるように、担体としてY型ゼオライトを含む水素化分解触媒は、ゼオライト骨格中に組み込まれたチタン原子を含む。(言い換えれば、骨格を構成するアルミニウム原子の一部がチタン原子に置換されたY型ゼオライト)が開発されている。上記ゼオライトは、Y型ゼオライトを、チタンを含むpH1.5以下の酸性水溶液で処理し、次に、濾過、洗浄、及び乾燥することにより調製することができる。これにより、メソ細孔を詰まらせることなく、ゼオライトを、ゼオライト骨格構造に組み込まれたチタン原子を含むようにすることができる。この参考文献は、上記ゼオライトを担体として含む水素化分解触媒を使用して重質炭化水素油を水素化分解する場合、重質炭化水素油がメソ細孔中に容易に拡散することにより、中間留分の収率が向上すると述べている。
【0009】
その開示を参照によってその全体を本明細書に援用する米国特許第10,081,009号明細書は、FAU骨格を有するUSYゼオライトを、それらのゼオライト骨格中のアルミニウムの一部を置き換えるように処理して、そのアルミニウムが0.1~5.0質量%のTi及びZr(の両方)で置き換えることができることを教示しており、その質量%は酸化物を基準にして計算される。得られる触媒は、供給原料、例えば炭化水素油を水素処理及び水素化分解するために非常に有用であることが判明している。この触媒は、中間留分の高い収率をもたらした。
【0010】
また、同様にその全体を参照により本明細書に援用する公開された米国特許出願公開第2015/0375218号明細書を参照されたい。米国特許出願公開第2013/0319910号明細書も参照により本明細書に援用する。これらの公開された特許出願はすべて、上で論じた骨格置換されたUSY触媒を使用している。
【0011】
ベータゼオライトは、水素化処理又は水素化分解との関連ではないが、触媒技術において知られている。米国特許第4,826,586号明細書は、例えば、流動接触分解(fluidized catalytic cracking, FCC)プロセスにおいてベータゼオライトを使用する可能性を教示している。FCCプロセスが実施される条件は、水素化分解/水素化処理で使用される条件とは非常に異なり、当業者はこれらのプロセスを同等のものとしては扱わない。FCCプロセスはまた、水素化分解/水素化処理とは対照的に、水素を使用しない。ベータゼオライトの修飾を教示する中国特許出願公開第106145136号明細書、並びに中国特許出願公開第104549543号明細書及び中国特許出願公開第106140289号明細書も参照されたい。各場合において、調製方法は、骨格の置換というよりむしろイオン交換がその方法であって、それによって金属がゼオライト中に包含され、骨格置換が起こった触媒とは同等ではない触媒をもたらす。
【0012】
米国特許第6,063,944号明細書は、ベータゼオライト中へのチタンの挿入を教示しているが、Zrについては言及していない。また、骨格置換なしで、ベータゼオライト中への金属の含浸を教示している米国特許第6,017,840号明細書も参照されたい。また、この点について、Reddyら, Studies in Surface Science and Catalysts, 94:309-316(1995)及びHamdyら, Mol. Catalysts, 441:140-149(2017)、及びRaksheら, J. Catalysis, 188:252-260(1999)もあり、これらはZrによる修飾を論じているが、Tiではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003-334305号公報
【特許文献2】特開2002-255537号公報
【特許文献3】特開2003-226519号公報
【特許文献4】米国特許第10,293,332号明細書
【特許文献5】米国特許第9,221,036号明細書
【特許文献6】特開2000-334305号公報
【特許文献7】国際公開第2007/032232号
【特許文献8】米国特許第10,081,009号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2015/0375218号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2013/0319910号明細書
【特許文献11】米国特許第4,826,586号明細書
【特許文献12】中国特許出願公開第106145136号明細書
【特許文献13】中国特許出願公開第104549543号明細書
【特許文献14】中国特許出願公開第106140289号明細書
【特許文献15】米国特許第6,063,944号明細書
【特許文献16】米国特許第6,017,840号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Reddyら, Studies in Surface Science and Catalysts, 94:309-316(1995)
【非特許文献2】Hamdyら, Mol. Catalysts, 441:140-149(2017)
【非特許文献3】Raksheら, J. Catalysis, 188:252-260(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、所望の生成物、例えば中間留分の収率を向上させる水素化分解又は水素化処理の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、FAU骨格を有する、米国特許第10,081,009号明細書のUSYゼオライトを、*BEA骨格を有するベータゼオライトで置き換えることによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の触媒の構造的完全性を示すためのXRDデータを示している。
【
図2】
図2は、本発明のベースゼオライト及び最終触媒のUV-Visスペクトルを示している。
【
図3】
図3は、USYベースの触媒と本発明の
*BEA触媒の間の総酸性度及び酸性度強度の違いをグラフで示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<好ましい実施形態の詳細な説明>
本発明は、触媒を用いて、水素化分解条件下で、石油に基づく炭化水素供給原料を水素化分解するための方法であり、前記の触媒は、*BEA骨格を有するベータゼオライトを含む担体上に担持された活性相金属化合物を含み、前記骨格中のアルミニウム原子の一部がTi及びZrのそれぞれの0.1~5質量%で置換され/置き換わっており、ここで、Ti及びZrの質量は酸化物に基づいて計算されている。任意選択により場合によっては、0.1~5質量%のHfを、Alを置換するためにも使用することができる。活性相金属は、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Ag、In、Pt、Au、Cr、Mo、又はWの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、Ti及びZrの量は、酸化物に基づいて0.1~2.0質量%である。さらなる実施形態において、存在するHfの量は、酸化物を基準にして0.1~2.0質量%である。
【0019】
本発明のTi及びZr原子を含む修飾ベータゼオライト骨格は、好ましくは、以下の特徴のうちの1つ又は複数、最も好ましくは全てを有する。
(a)a=1.260~1.270nm、b=1.260~1.270nm、及びc=2.620~2.650nmの結晶格子定数;
(b)400~800m2/g、好ましくは500~700m2/gの比表面積、及び
(c)Al2O3に対するSiO2に関して10~200(好ましくは10~100、より好ましくは30~70)のモル比。
【0020】
上で言及している「比表面積」は、挙げているその他の全ての特性がそうであるように、修飾ゼオライト自体に関する。ゼオライト含有触媒の担体は、15~500m2/g、より好ましくは150~450m2/gの比表面積を有する。
【0021】
本発明による炭化水素油のための水素化分解触媒において、その比表面積は、好ましくは15~500m2/g、好ましくは150~400m2/gの範囲にあり;600Å以下の径を有する細孔の容積は、好ましくは0.40~0.75ml/gの範囲であり;かつ、活性相金属成分の量は、酸化物を基準にして、0.01~40質量%、好ましくは10~35質量%の範囲である。触媒中のTiZrベータゼオライトの量は、触媒の質量の1~80質量%、好ましくは5~50質量%の範囲である。いくつかの実施形態では、触媒は、無機担体、好ましくはアルミナ及びシリカを含む無機担体の上にのっている。
【0022】
本発明の水素化分解触媒を製造する方法は、*BEA骨格をもつベータゼオライトのアルミニウム原子の一部を、ジルコニウム原子及びチタン原子に置き換え、続いて、そのゼオライトを55~700℃の温度において焼成する工程を含む。本発明のジルコニウム及びチタン原子を有する*BEA骨格を備えたベータゼオライトは、a=1.260~1.270nm、b=1.269~1.270nm、及びc=2.620~2.650nmの範囲内の結晶格子定数、400~800m2/gの比表面積、及び10~200、好ましくは10~100、さらに好ましくは30~70のAl2O3に対するSiO2のモル比を有しており、上述した焼成したゼオライトから、液体/固体に関し5~15の質量比を有する懸濁液を調製し、そこへ懸濁液のpHが2.0未満となるように無機酸又は有機酸を添加し、次にジルコニウム化合物及びチタン化合物を添加し、それらを混合し、次にその混合した溶液を中和して触媒を得る。
【0023】
本発明の水素化分解触媒を製造するための別の方法において、上記のゼオライトを使用して、液体/固体ゼオライトに関して5~15の質量比を有する懸濁液を調製し、その懸濁液のpHが2.0未満になるように無機酸又は有機酸を添加し、ゼオライト化合物及びチタン化合物を添加し、混合し、次いでその混合した溶液を中和して触媒を得る。
【0024】
本発明の第3の側面は、上記の水素化分解触媒を用いて、水素の存在下及び適切な反応条件のもとで、石油に基づく炭化水素供給原料、例えば炭化水素油を水素化分解するための方法である。
【0025】
好ましくは、本発明による石油に基づく炭化水素供給原料を水素化分解する方法は、流動反応器(フローリアクター)である水素化分解装置の反応容器に本発明の触媒を入れる工程、及び300℃~450℃の反応温度、4~30MPaの水素圧、0.1~10h-1の液空間速度(LHSV)、及び500~2500Nm3/m3の水素/油比で、水素の存在下において、300℃~833℃の沸点を有する供給原料を処理する工程を含む。
【0026】
好ましくは、本発明による炭化水素油を水素化分解するための方法は、375~650℃の沸点を有する供給原料を、触媒を用いて、かつ水素の存在下で、330℃~450℃の反応器温度、7~15MPaの水素圧、0.2~1.5h-1の液空間速度(LHSV)、及び1000~2000Nm3/m3の水素/油比で処理して、中間留分を得ることを含む。好ましくは、この中間留分は、ケロシン及びガスオイルに富んでいる。
【0027】
本発明による炭化水素油の水素化分解のための方法において、上記の流動反応器(フローリアクター)は、好ましくは、撹拌浴型反応器、沸騰床型反応器、バッフル付きスラリー浴型反応器、固定床型反応器、回転管型反応器、及びスラリー床型反応器からなる群から選択される流動反応器である。
【0028】
本発明による石油供給原料を水素化分解する方法において、上述した炭化水素供給原料には、好ましくは、(1)原油、(2)合成原油、(3)ビチューメン(瀝青)、(4)オイルサンド、(5)シェルオイル、又は(6)液化石炭から得られる精製油が含まれる。
【0029】
本発明による炭化水素油の水素化分解のための方法において、上述した炭化水素油は、原油、合成原油、ビチューメン(瀝青)、オイルサンド、シェルオイル、又は液化石炭から得られる精製油を含み、上記精製油は、好ましくは、a)減圧軽油(vacuum gas oil,VGO)、b)溶媒脱アスファルトプロセスから得られた脱アスファルト油(DAO)もしくは脱金属油、c)軽質コーカー軽油(light coker gas oil)又は重質コーカー軽油(heavy coker gas oil)、d)流動接触分解(fluid catalytic cracking,FCC)プロセスで得られるサイクルオイル、又はe)ビスブレーキング(visbraking)プロセスから得られる軽油のいずかである。
【0030】
本発明による炭化水素油用の水素化分解触媒は、その骨格を構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及びチタンイオンで置換されている*BEA型のベータゼオライトを含む担体上に担持された水素化金属成分を含む。
【0031】
したがって、本発明の水素化分解触媒は、従来の水素化分解触媒と比較して、VGO、DAOなどの重質炭化水素をそのメソ細孔中へ拡散することを容易にする。
【0032】
図3は、本発明及び従来技術の触媒の酸性度を決定するための試験の結果を示している。
【実施例1】
【0033】
28.5のシリカ/アルミナ比(以下「SAR」)を有する*BEA骨格のベータゼオライトを使用した。合計51.4gのこのゼオライトを450gの脱イオン水に懸濁させ、40℃に加熱した。合計14.8gのH2SO4(25質量%)を10.0gの硫酸チタン水溶液(5質量%のTiO2に相当する)と一緒に添加した。この溶液は、8.48gの脱イオン水及び1.52gの硫酸チタン(33質量%のTiO2に相当する)を含んでいた。追加の硫酸ジルコニウム水溶液(2.8g,18質量%のZrO2を構成する)を添加し、その混合物を4時間撹拌し、次に濾過し、1.5リットルの脱イオン水で洗浄した。これを60℃で行った。得られたゼオライトを110℃において乾燥させて、骨格が置換されたTi/Zrベータゼオライトを得た。
【0034】
骨格置換前及び骨格置換後の
*BEAゼオライトのXRDデータを
図1に示す。ゼオライトの構造の完全性が残っていることが分かる。
【実施例2】
【0035】
*BEAゼオライト及び骨格置換された*BEAゼオライトを分析して、その結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
追加のデータを
図2に示しており、これは、元のβゼオライト、及び骨格置換されたβゼオライトのUV-Visスペクトルを示している。Tiの4配位種と約250nmの波長が見られる。6配位種が存在する場合、約285nmにおける、より高い波長へのシフトが予想される。これは、
図2に示されているように起こらなかった。
【実施例3】
【0038】
Ti及びZrによるアルミナ骨格の置換が、ゼオライトの酸性度にどのような影響を与えるかを決定するために試験を行った。
【0039】
USYゼオライトと*BEAゼオライトの両方について、酸性度、未修飾、並びにTi及びZrの置換による修飾について試験をした。
【0040】
図3はこれらの結果を示しており、
図3において全酸性度はバーの高さによって示され、一方、水平バーは弱(100~200℃)、中(200~400℃)、及び強(400~500℃)い酸の部位の含有量を示している。
【0041】
本発明のその他の特徴は当業者には明らかであり、ここで繰り返す必要はない。
【0042】
使用している用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定するものではなく、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴の均等物又はその一部を除外する意図はなく、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。
【国際調査報告】