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特表2022-552153抗KIR3DL3抗体およびそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】抗KIR3DL3抗体およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221208BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221208BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221208BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221208BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221208BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221208BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221208BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221208BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12M1/34 F
C12P21/08
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/68
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520449
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 US2020054063
(87)【国際公開番号】W WO2021067800
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/910,594
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン, ゴードン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アルラナンダム, アントニオ アール.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB17
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB10
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA94X
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC752
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC02
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、KIR3DL3に特異的に結合するモノクローナル抗体およびそれらの抗原結合断片、KIR3DL3およびPD-1に結合する二重特異性抗体およびそれらの抗原結合断片、ならびにそれらの免疫グロブリン、ポリペプチド、核酸、ならびに予後、免疫調節、および治療目的のためにこのような抗体を使用する方法の発見に部分的に基づいている。本開示は、KIR3DL3を標的とする薬剤(例えば、抗体)が、HHLA2-KIR3DL3相互作用を特異的に遮断することができ、免疫応答を調節するための方法に使用することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する重鎖配列、ならびに/または
b)表2、7、および8に列記される前記配列からなる群から選択される軽鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する軽鎖配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される重鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/または
b)表2、7、および8に列記される前記配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列、ならびに/または
b)表2、7、および8に列記される前記配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2、7、および8に列記される配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/または
b)表2、7、および8に列記される前記配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、キメラ、ヒト化、複合、マウス、またはヒトである、請求項1~4のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、(a)検出可能に標識され、(b)細胞毒性薬剤、任意に、化学療法剤、生物学的薬剤、毒素、および/もしくは放射性同位体にコンジュゲートされ、(c)エフェクタードメインを含み、(d)Fcドメインを含み、かつ/または(e)Fv、Fav、F(ab’)2)、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、およびダイアボディ断片からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、寄託受入番号______で寄託されたハイブリドーマ______から得ることができる、請求項1~6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、KIR3DL3へのHHLA2の結合を阻害する、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が、KIR3DL3に特異的に結合する、請求項1~8のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する重鎖配列、ならびに/または
b)表2および7~9に列記される前記配列からなる群から選択される軽鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する軽鎖配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される重鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/または
b)表2および7~9に列記される前記配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列、ならびに/または
b)表2および7~9に列記される前記配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、
a)表2および7~9に列記される配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/または
b)表2および7~9に列記される前記配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片が、キメラ、ヒト化、複合、マウス、またはヒトである、請求項10~13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片が、(a)検出可能に標識され、(b)細胞毒性薬剤、任意に、化学療法剤、生物学的薬剤、毒素、および/もしくは放射性同位体にコンジュゲートされ、(c)エフェクタードメインを含み、(d)Fcドメインを含み、かつ/または(e)Fv、Fav、F(ab’)2)、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、およびダイアボディ断片からなる群から選択される、請求項10~14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片が、寄託受入番号______で寄託されたハイブリドーマ______から得ることができる、請求項10~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片が、(a)KIR3DL3へのHHLA2の結合、ならびに(b)PD-L1および/またはPD-L2へのPD-1の結合を阻害する、請求項10~16のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片が、KIR3DL3およびPD-1に特異的に結合する、請求項10~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
前記二重特異性抗体またはその抗原結合断片が、
a)表9に列記される重鎖配列、および/または
b)表9に列記される軽鎖配列を含む、請求項10~18のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
表2および7~9に列記される免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列からなる群から選択される、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖。
【請求項21】
(a)請求項1~20のいずれか一項に記載の、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、および/または抗体もしくはその抗原結合断片をコードする、かつ/あるいは(b)表2および7~9に列記されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸の相補体、または表2および7~9に列記される前記ポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸と少なくとも約95%の相同性を有する配列と、ストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズする、単離された核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項21に記載の単離された核酸を含むか、請求項22に記載のベクターを含むか、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片を発現するか、または寄託受入番号______で入手可能である、宿主細胞。
【請求項24】
請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合断片を含むデバイスまたはキットであって、前記デバイスまたはキットが、前記少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合断片、または前記抗体もしくはその抗原結合断片を含む複合体を検出するための標識を任意に含む、デバイスまたはキット。
【請求項25】
請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、前記方法が、(i)前記抗体またはその抗原結合断片の発現を可能にするのに好適な条件下で、請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体をコードする配列を含む核酸によって形質転換された形質転換宿主細胞を培養するステップと、(ii)前記発現された抗体またはその抗原結合断片を回収するステップと、を含む、方法。
【請求項26】
KIR3DL3ポリペプチドの存在またはレベルを検出する方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片の使用によって試料中の前記ポリペプチドを検出することを含む、方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が、KIR3DL3ポリペプチドと複合体を形成し、前記複合体が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の形態で、放射免疫アッセイ(RIA)の形態で、免疫化学的に、ウエスタンブロットの形態で、または細胞内フローアッセイを使用して検出される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
KIR3DL3を標的とする療法に対する応答性を予測する方法であって、前記方法が、
a)請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を使用して、対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルを決定することと、
b)前記少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を使用して、KIR3DL3を標的とする療法に対する良好な応答性を有する少なくとも1つの対照対象由来の試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の前記レベルを決定することと、
c)前記対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の前記レベルと、前記対照対象由来の前記試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の前記レベルとを比較することと、を含み、
前記少なくとも1つの対照対象由来の前記試料中の前記レベルと比較して前記対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の同じまたはより高いレベルが、前記対象が前記療法に対して応答することを示す、方法。
【請求項29】
前記療法が、請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を使用してKIR3DL3を標的とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を使用して、KIR3DL3を標的とする療法に対する応答性を予測する方法であって、前記方法が、
a)対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルを決定することと、
b)KIR3DL3を標的とする療法に対する良好な応答性を有する少なくとも1つの対照対象由来の試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の前記レベルを決定することと、
c)前記対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の前記レベルと、前記対照対象由来の前記試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の前記レベルとを比較することと、を含み、
前記少なくとも1つの対照対象由来の前記試料中の前記レベルと比較して前記対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の同じまたはより高いレベルが、前記対象が前記療法に対して応答することを示す、方法。
【請求項31】
前記試料が、少なくとも1つの対象から得られた単一試料の一部であるか、または少なくとも1つの対象から得られたプールされた試料の一部である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記療法が、(a)HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用および/もしくはシグナル伝達、ならびに/または(b)PD-1とPD-L1および/もしくはPD-L2との間の相互作用および/もしくはシグナル伝達を遮断する、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記試料が、前記対象から得られた細胞、血清、腫瘍周辺組織、および/または腫瘍内組織を含む、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
がんに罹患している対象を治療する方法であって、前記対象に、請求項1~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が、(a)前記がんにおける増殖性がん細胞の数を減少させ、(b)前記がんの腫瘍の体積もしくはサイズを減少させ、かつ/または(c)T細胞および/もしくはNK細胞を活性化する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が、薬学的に許容される製剤で投与される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象に、がんを治療するための治療薬またはレジメンを投与することをさらに含む、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象に、免疫療法、チェックポイント遮断、がんワクチン、キメラ抗原受容体、化学療法、放射線、標的療法、および手術からなる群から選択される追加の療法を投与することをさらに含む、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記キメラ抗原受容体が、CD19を標的とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象におけるがん細胞および/または腫瘍免疫浸潤細胞が、HHLA2を発現する、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、腺がん、慢性骨髄性白血病(CML)、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮がん、神経膠腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、乳がん、膵管がん、胸腺腫、B-CLL、白血病、B細胞リンパ腫、およびHHLA2に対する受容体を発現する免疫細胞が浸潤したがんからなる群から選択される、請求項35~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記がんが、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病(AML)、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、および子宮がんからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、がんの動物モデルである、請求項35~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記動物モデルがマウスモデルであり、任意に、前記マウスモデルがヒト化マウスモデルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が哺乳動物である、請求項35~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記哺乳動物がヒト化マウスまたはヒトである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記哺乳動物がヒトである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片を使用して免疫応答を調節する、方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片が、HHLA2と、その結合阻害剤受容体であるKIR3DL3との間の相互作用を阻害または破壊する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片が、細胞毒性薬剤にコンジュゲートされている、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞毒性薬剤が、化学療法剤、生物学的薬剤、毒素、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫応答が、下方制御または上方制御される、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片が、請求項1~19のいずれか一項に記載されている、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
(a)HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用、ならびに/または(b)PD-1とPD-L1および/もしくはPD-L2との間の相互作用が遮断される、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片が、がん免疫療法のためのT細胞活性化のチェックポイント阻害剤である、請求項49~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
免疫応答を前記調節することが、T細胞機能またはNK細胞機能を調節することを含む、請求項49~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記T細胞機能またはNK細胞機能が、細胞毒性活性を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記細胞毒性活性が、がん細胞に対する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記がん細胞が、HHLA2を発現する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記がんが、腺がん、慢性骨髄性白血病(CML)、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮がん、神経膠腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、乳がん、膵管がん、胸腺腫、B-CLL、白血病、B細胞リンパ腫、およびHHLA2に対する受容体を発現する免疫細胞が浸潤したがんからなる群から選択される、請求項56~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記がんが、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病(AML)、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、および子宮がんからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
免疫療法、チェックポイント遮断、がんワクチン、キメラ抗原受容体、化学療法、放射線、標的療法、および手術からなる群から選択される追加の療法をさらに含む、請求項49~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記キメラ抗原受容体が、CD19を標的とする、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記免疫応答が、がんの動物モデルにおいて調節される、請求項49~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記動物モデルがマウスモデルであり、任意に、前記マウスモデルがヒト化マウスモデルである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記免疫応答が、哺乳動物において調節される、請求項49~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記哺乳動物がヒト化マウスまたはヒトである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記哺乳動物がヒトである、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月04日に出願された米国仮特許出願第62/910,594号の優先権の利益を主張し、当該出願の全内容は、その全体が、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府権利の陳述
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された認可番号P50CA101942に基づく政府支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、ブチロフィリン、およびA2aR、ならびにさらに多くのもの等の免疫チェックポイントは、多数の入力間の複雑なコンビナトリアル相互作用に基づいて免疫応答の進行を負に制御する。免疫チェックポイント阻害剤は、いくつかの対象における免疫応答を調節することができるが、免疫チェックポイント発現および天然結合パートナーとの相互作用は、対象間および対象の組織内で異なる。かなりの割合の患者が、この治療に応答せず、応答する多くの患者は、最終的に耐性を生じる。したがって、PD-1経路と冗長ではない追加の免疫経路を見つけるための重要な満たされていない必要性が存在する。
【0004】
HERV-H LTR関連2(B7-H5、B7-H7としても知られているHHLA2)は、T細胞機能を調節するB7ファミリーメンバーである。HHLA2は、様々な腫瘍(例えば、原発性ヒト腎細胞がん(RCC)を含む固形がんおよび血液がん)および抗原提示細胞において広範に発現され、T細胞に対する活性化および阻害性リガンドの両方として関与している。HHLA2は、TMIGD2(CD28H、IGPR-1)に対する特異的リガンドとして同定されており、HHLA2/TMIGD2相互作用は、AKT依存性シグナル伝達カスケードを介してヒトT細胞増殖およびサイトカイン産生を選択的に共刺激する(Zhu et al.(2013)Nat.Comm.4:2043、Janakiram et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2359-2366)。ナイーブT細胞で発現されるTMIGD2は、HHLA2に対する活性化受容体であり、T細胞抗原受容体(TCR)連結後に共刺激シグナルを伝達する。TMIGD2は、反復TCR刺激後に下方制御される。HHLA2に対する推定阻害性受容体が活性化T細胞上で上方制御されて、T細胞活性化を調節することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zhu et al.(2013)Nat.Comm.4:2043
【非特許文献2】Janakiram et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2359-2366
【発明の概要】
【0006】
本開示の前に、共阻害機能を発揮する活性化T細胞上のHHLA2に対する特徴付けられていない受容体の存在が、いくつかの研究によって示唆された(Zhao et al.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:9879-9884、Xiao and Freeman et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2201-2203、Wang et al.(2014)J.Immunol.192:126.11)。HHLA2が、T細胞およびNK細胞上の受容体であるKIR3DL3に結合し、HHLA2-KIR3DL3相互作用の結果が、T細胞およびNK細胞活性化の阻害であることが発見された(PCT/US2019/026034)。したがって、本開示は、KIR3DL3受容体が、がん免疫療法についての候補であるという認識を包含し、本明細書では、免疫応答を調節するためにKIR3DL3を標的化するための組成物および方法を提供する。
【0007】
本開示は、KIR3DL3を標的とする薬剤(例えば、抗体)が、HHLA2-KIR3DL3相互作用を特異的に遮断することができ、免疫応答を調節するための方法に使用することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。重要なことに、本明細書では、KIR3DL3を標的化することは、HHLA2の全体的な機能を破壊しないことを提示し、これには、TMIGD2との相互作用を介した免疫応答の活性化も含まれる。したがって、本開示は、KIR3DL3を標的化することで、HHLA2の免疫阻害機能のみを遮断し、それによってHHLA2の免疫活性化機能を下方制御することなく、(例えば、がん細胞に対して)効果的な免疫応答を誘発するという特異性がもたらされるという、重要で驚くべき知見を提供する。HHLA2経路の免疫阻害活性を特異的に遮断し、その刺激機能を維持する薬剤の開発は、がん(例えば、明細胞腎細胞がん(ccRCC)を含む、血液がんおよび固形腫瘍)を有する患者における免疫チェックポイント遮断に対する新たなアプローチを表す。
【0008】
本開示はまた、KIR3DL3およびPD-1の両方を標的とする薬剤を使用して、免疫応答を調節し、かつ/またはがんを治療することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるKIR3DL3×PD-1二重特異性抗体は、腫瘍におけるT細胞およびNK細胞を活性化する等の、チェックポイント免疫療法として有用である。いくつかの実施形態では、KIR3DL3×PD-1二重特異性抗体は、PD-1もしくはPD-L1、または他のチェックポイント免疫療法と相加的または相乗的である。さらに、腫瘍におけるHHLA2および/またはKIR3DL3発現は、KIR3DL3 mAbおよび/またはKIR3DL3×PD-1二重特異性抗体チェックポイント遮断に対する応答性を決定するための有用なバイオマーカーである。
【0009】
例示的で、代表的な抗KIR3DL3ヒトモノクローナル抗体(mAb)のパネルは、免疫チェックポイント阻害剤薬剤として本明細書に記載されている。遮断および非遮断抗KIR3DL3 mAbが同定され、KIR3DL3に結合するHHLA2を遮断する抗KIR3DL3 mAbが、T細胞およびNK細胞アッセイにおけるチェックポイント阻害剤抗体であることが示された。
【0010】
一態様では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する重鎖配列、ならびに/またはb)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される軽鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する軽鎖配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0011】
別の態様では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される重鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/またはb)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0012】
なお別の態様では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列、ならびに/またはb)表2、7、および8に列記される配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0013】
さらに別の態様では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2、7、および8に列記される配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/またはb)表2、7、および8に列記される配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0014】
本明細書に記載される本開示によって包含されるいずれかの態様に適用され得る多数の実施形態がさらに提供される。例えば、一実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、キメラ、ヒト化、複合、マウス、またはヒトである。別の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、(a)検出可能に標識され、(b)細胞毒性薬剤、任意に、化学療法剤、生物学的薬剤、毒素、および/もしくは放射性同位体にコンジュゲートされ、(c)エフェクタードメインを含み、(d)Fcドメインを含み、かつ/または(e)Fv、Fav、F(ab’)2)、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、およびダイアボディ断片からなる群から選択される。なお別の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、寄託受入番号______で寄託されたハイブリドーマ______から得ることができる。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、HHLA2のKIR3DL3への結合を阻害する。T細胞活性化アッセイにおいてHHLA2のKIR3DL3への結合を遮断するKIR3DL3 mAbが、チェックポイント遮断剤であることが示された。別の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、KIR3DL3に特異的に結合する。
【0015】
KIR3DL3およびPD-1に結合する例示的で、代表的な二重特異性抗体のパネルは、免疫チェックポイント阻害剤薬剤として本明細書に記載されている。
【0016】
一態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する重鎖配列、ならびに/またはb)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される軽鎖配列と少なくとも約95%の同一性を有する軽鎖配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片が本明細書で提示される。
【0017】
別の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される重鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/またはb)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される軽鎖CDR配列と少なくとも約95%の同一性をそれぞれ有する1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0018】
なお別の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される重鎖配列、ならびに/またはb)表2および7~9に列記される配列からなる群から選択される軽鎖配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0019】
さらに別の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片であって、a)表2および7~9に列記される配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDR配列、ならびに/またはb)表2および7~9に列記される配列からなる群からそれぞれ選択される1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR配列を含む、二重特異性抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0020】
本明細書に記載される本開示によって包含されるいずれかの態様に適用され得る多数の実施形態が提供される。例えば、一実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、キメラ、ヒト化、複合、マウス、またはヒトである。別の実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、(a)検出可能に標識され、(b)細胞毒性薬剤、任意に、化学療法剤、生物学的薬剤、毒素、および/もしくは放射性同位体にコンジュゲートされ、(c)エフェクタードメインを含み、(d)Fcドメインを含み、かつ/または(e)Fv、Fav、F(ab’)2)、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、およびダイアボディ断片からなる群から選択される。なお別の実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、寄託受入番号______で寄託されたハイブリドーマ______から得ることができる。さらに別の実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、(a)HHLA2のKIR3DL3への結合、ならびに(b)PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。KIR3DL3およびPD-1の両方に結合する二重特異性抗体は、チェックポイント遮断剤であることが示された。別の実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、KIR3DL3およびPD-1に特異的に結合する。なお別の実施形態では、二重特異性抗体またはその抗原結合断片は、a)表9に列記される重鎖配列、および/またはb)表9に列記される軽鎖配列を含む。
【0021】
別の態様では、表2および7~9に列記される免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖が提供される。
【0022】
なお別の態様では、(a)本明細書に記載される本開示によって包含される、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、および/またはモノクローナル抗体もしくはその抗原結合断片をコードする、かつ/あるいは(b)表2および7~9に列記されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸の相補体、または表2および7~9に列記されるポリペプチド配列からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸と少なくとも約95%の相同性を有する配列と、ストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズする、単離された核酸分子が提供される。
【0023】
さらに別の態様では、本明細書に記載される単離された核酸を含むベクターが提供される。
【0024】
別の態様では、本明細書に記載される単離された核酸を含むか、本明細書に記載されるベクターを含むか、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合断片を発現するか、または寄託受入番号______で入手可能である、宿主細胞が提供される。
【0025】
なお別の態様では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、またはそれらの抗原結合断片)を含むデバイスまたはキットであって、少なくとも1つの抗体もしくはその抗原結合断片、または抗体もしくはその抗原結合断片を含む複合体を検出するための標識を任意に含む、デバイスまたはキットが提供される。
【0026】
さらに別の態様では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、またはそれらの抗原結合断片)を産生する方法であって、(i)当該抗体またはその抗原結合断片の発現を可能にするのに好適な条件下で、本開示による少なくとも1つをコードする配列を含む核酸によって形質転換された形質転換宿主細胞を培養するステップと、(ii)発現された抗体またはその抗原結合断片を回収するステップと、を含む、方法が提供される。
【0027】
別の態様では、KIR3DL3ポリペプチドの存在またはレベルを検出する方法であって、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、またはそれらの抗原結合断片)を使用して試料中の当該ポリペプチドを検出することを含む、方法。一実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片は、KIR3DL3ポリペプチドと複合体を形成し、複合体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の形態で、放射免疫アッセイ(RIA)の形態で、免疫化学的に、ウエスタンブロットの形態で、または細胞内フローアッセイを使用して検出される。
【0028】
なお別の態様では、KIR3DL3を標的とする療法に対する応答性を予測する方法であって、当該方法が、a)本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体またはそれらの抗原結合断片)を使用して、対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルを決定することと、b)本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片を使用して、KIR3DL3を標的とする療法に対する良好な応答性を有する少なくとも1つの対照対象由来の試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルを決定することと、c)対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルと、対照対象由来の試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルとを比較することと、を含み、少なくとも1つの対照対象由来の試料中のレベルと比較して対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の同じまたはより高いレベルが、対象が療法に対して応答することを示す、方法が提供される。一実施形態では、療法は、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体またはそれらの抗原結合断片)を使用してKIR3DL3を標的とする。
【0029】
さらに別の態様では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体またはそれらの抗原結合断片)を使用して、KIR3DL3を標的とする療法に対する応答性を予測する方法であって、当該方法が、a)対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルを決定することと、b)KIR3DL3を標的とする療法に対する良好な応答性を有する少なくとも1つの対照対象由来の試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルを決定することと、c)対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルと、対照対象由来の試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2のレベルとを比較することと、を含み、少なくとも1つの対照対象由来の試料中のレベルと比較して対象試料中のKIR3DL3および/またはHHLA2の同じまたはより高いレベルが、対象が療法に対して応答することを示す、方法が提供される。
【0030】
上述のように、ある特定の実施形態が本明細書に記載のいずれかの方法に適用可能である。例えば、一実施形態では、試料は、少なくとも1つの対象から得られた単一試料の一部であるか、または少なくとも1つの対象から得られたプールされた試料の一部である。別の実施形態では、療法は、(a)HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用および/もしくはシグナル伝達、ならびに/または(b)PD-1とPD-L1および/もしくはPD-L2との間の相互作用および/もしくはシグナル伝達を遮断する。なお別の実施形態では、試料は、細胞(例えば、対象から得られたT細胞もしくはナチュラルキラー(NK)細胞、血清、腫瘍周辺組織、および/または腫瘍内組織)を含む。
【0031】
さらに別の態様では、がんに罹患している対象を治療する方法であって、対象に、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体またはそれらの抗原結合断片)を投与することを含む、方法が提供される。
【0032】
上述のように、ある特定の実施形態が本明細書に記載のいずれかの方法に適用可能である。例えば、一実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体またはそれらの抗原結合断片)は、(a)がんにおける増殖性がん細胞の数を減少させ、(b)がんの腫瘍の体積もしくはサイズを減少させ、かつ/または(c)T細胞および/もしくはNK細胞を活性化する。別の実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体またはそれらの抗原結合断片)は、薬学的に許容される製剤で投与される。なお別の実施形態では、対象に、がんを治療するための治療薬またはレジメンを投与することをさらに含む本明細書に記載される方法。さらに別の実施形態では、対象に、免疫療法、チェックポイント遮断、がんワクチン、キメラ抗原受容体(例えば、CD19を標的とするCAR)、化学療法、放射線、標的療法、および手術からなる群から選択される追加の療法を投与することをさらに含む、本明細書に記載される方法。別の実施形態では、対象におけるがん細胞および/または腫瘍免疫浸潤細胞は、HHLA2を発現する。なお別の実施形態では、がんは、腺がん、慢性骨髄性白血病(CML)、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮がん、神経膠腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、乳がん、膵管がん、胸腺腫、B-CLL、白血病、B細胞リンパ腫、およびHHLA2に対する受容体を発現する免疫細胞が浸潤したがんからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、がんは、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病(AML)、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、および子宮がんからなる群から選択される。別の実施形態では、対象は、がんの動物モデルである。なお別の実施形態では、動物モデルは、マウスモデルであり、任意に、マウスモデルは、ヒト化マウスモデルである。さらに別の実施形態では、対象は、ヒト化マウスまたはヒト等の、哺乳動物である。
【0033】
別の態様では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片を使用して免疫応答を調節する方法が提供される。例えば、一実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片は、HHLA2と、その結合阻害剤受容体であるKIR3DL3との間の相互作用を阻害または破壊する。別の実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片は、細胞毒性薬剤(例えば、化学療法剤、生物学的薬剤、毒素、および/または放射性同位体)にコンジュゲートされている。なお別の実施形態では、免疫応答は、下方制御される。別の実施形態では、免疫応答は、上方制御される。さらに別の実施形態では、(a)HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用、ならびに/または(b)PD-1とPD-L1および/もしくはPD-L2との間の相互作用が遮断される。別の実施形態では、抗KIR3DL3抗体またはその抗原結合断片は、がん免疫療法のためのT細胞活性化のチェックポイント阻害剤である。なお別の実施形態では、免疫応答を調節することは、T細胞機能またはNK細胞機能(例えば、HHLA2を発現するがん細胞のようながん細胞に対する等の、細胞毒性)を調節することを含む。さらに別の実施形態では、がんのがんは、腺がん、慢性骨髄性白血病(CML)、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮がん、神経膠腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、乳がん、膵管がん、胸腺腫、B-CLL、白血病、B細胞リンパ腫、およびHHLA2に対する受容体を発現する免疫細胞が浸潤したがんからなる群から選択される。別の実施形態では、がんは、肺がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、急性骨髄性白血病(AML)、頭頸部がん、肝臓がん、卵巣がん、前立腺がん、および子宮がんからなる群から選択される。なお別の実施形態では、方法は、対象に、免疫療法、チェックポイント遮断、がんワクチン、キメラ抗原受容体(例えば、CD19を標的とするCAR)、化学療法、放射線、標的療法、および手術からなる群から選択される追加の療法を投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、免疫応答は、がんの動物モデル(例えば、マウスモデルおよび/またはヒト化動物モデル)において調節される。別の実施形態では、免疫応答は、ヒト化マウスまたはヒト等の哺乳動物において調節される。
【0034】
棒ヒストグラム、曲線、または説明文に関連する他のデータを示すいずれの図についても、各指標について左から右に提示される棒、曲線、または他のデータは、説明文のボックスの上から下に、または左から右に直接かつ順に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A図1A図1Bは、HHLA2に対する受容体としてKIR3DL3を同定する発現スクリーニングの結果を示す。図1Aは、HEK293細胞において個別に発現される示される細胞表面受容体に結合する可溶性HHLA2-mIgG2a(HHLA2-Ig)を使用した細胞マイクロアレイ分析結果を示す。HHLA2-Igは、TMIGD2、KIR3DL3、および対照(FCGR2A)に結合するが、KIRファミリーの他のメンバー、PD-1、PD-L1、またはHHLA2には結合しないことが示される。図1Bは、示される濃度のHHLA2-Igまたはアイソタイプ対照(0.1μg/mL~160μg/mL)を使用した、対照300.19細胞またはKIR3DL3、TMIGD2、もしくはHHLA2を安定的に発現する300.19細胞へのHHLA2-Igまたは対照Igの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図1B図1A図1Bは、HHLA2に対する受容体としてKIR3DL3を同定する発現スクリーニングの結果を示す。図1Aは、HEK293細胞において個別に発現される示される細胞表面受容体に結合する可溶性HHLA2-mIgG2a(HHLA2-Ig)を使用した細胞マイクロアレイ分析結果を示す。HHLA2-Igは、TMIGD2、KIR3DL3、および対照(FCGR2A)に結合するが、KIRファミリーの他のメンバー、PD-1、PD-L1、またはHHLA2には結合しないことが示される。図1Bは、示される濃度のHHLA2-Igまたはアイソタイプ対照(0.1μg/mL~160μg/mL)を使用した、対照300.19細胞またはKIR3DL3、TMIGD2、もしくはHHLA2を安定的に発現する300.19細胞へのHHLA2-Igまたは対照Igの結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図2A図2A図2Dは、HHLA2に対する第2の受容体としてのKIR3DL3の同定および特徴付けを示す。図2Aは、384個のヒト受容体を発現する細胞およびGFPを共発現する細胞の複製マイクロアレイスライドを示し、HHLA2-Igに対する受容体としてKIR3DL3を同定し(上側パネル)、トランスフェクションおよびスポット局在についての対照としてGFPの発現を示す(下側パネル)。図2Bは、HEK293細胞において個別に発現される示される細胞表面受容体に結合する可溶性HHLA2-mIgG2a(HHLA2-Ig)を使用した図1Aに示される細胞マイクロアレイ分析結果を示す。HHLA2-Igは、TMIGD2、KIR3DL3、および対照(FCGR2A)に結合するが、KIRファミリーの他のメンバー、PD-1、PD-L1、またはHHLA2には結合しないことが示される。図2Cは、図2B(および図1A)に示される受容体アレイのトランスフェクション対照(GFP発現)結果を示す。図2Dは、受容体アレイの陽性対照処理結果を示す。図2Bおよび図1Aと同じパネルの過剰発現受容体とインキュベートした可溶性PD-1-IgおよびPD-L1-Igを使用した細胞マイクロアレイ分析は、FCGR2A、PD-1およびPD-L1への結合を示すが、いずれのKIRへの結合も示さない。PD-1-Igに結合しないPD-L1スポットは、代替的にスプライシングされたアイソフォームである。
図2B図2A図2Dは、HHLA2に対する第2の受容体としてのKIR3DL3の同定および特徴付けを示す。図2Aは、384個のヒト受容体を発現する細胞およびGFPを共発現する細胞の複製マイクロアレイスライドを示し、HHLA2-Igに対する受容体としてKIR3DL3を同定し(上側パネル)、トランスフェクションおよびスポット局在についての対照としてGFPの発現を示す(下側パネル)。図2Bは、HEK293細胞において個別に発現される示される細胞表面受容体に結合する可溶性HHLA2-mIgG2a(HHLA2-Ig)を使用した図1Aに示される細胞マイクロアレイ分析結果を示す。HHLA2-Igは、TMIGD2、KIR3DL3、および対照(FCGR2A)に結合するが、KIRファミリーの他のメンバー、PD-1、PD-L1、またはHHLA2には結合しないことが示される。図2Cは、図2B(および図1A)に示される受容体アレイのトランスフェクション対照(GFP発現)結果を示す。図2Dは、受容体アレイの陽性対照処理結果を示す。図2Bおよび図1Aと同じパネルの過剰発現受容体とインキュベートした可溶性PD-1-IgおよびPD-L1-Igを使用した細胞マイクロアレイ分析は、FCGR2A、PD-1およびPD-L1への結合を示すが、いずれのKIRへの結合も示さない。PD-1-Igに結合しないPD-L1スポットは、代替的にスプライシングされたアイソフォームである。
図2C図2A図2Dは、HHLA2に対する第2の受容体としてのKIR3DL3の同定および特徴付けを示す。図2Aは、384個のヒト受容体を発現する細胞およびGFPを共発現する細胞の複製マイクロアレイスライドを示し、HHLA2-Igに対する受容体としてKIR3DL3を同定し(上側パネル)、トランスフェクションおよびスポット局在についての対照としてGFPの発現を示す(下側パネル)。図2Bは、HEK293細胞において個別に発現される示される細胞表面受容体に結合する可溶性HHLA2-mIgG2a(HHLA2-Ig)を使用した図1Aに示される細胞マイクロアレイ分析結果を示す。HHLA2-Igは、TMIGD2、KIR3DL3、および対照(FCGR2A)に結合するが、KIRファミリーの他のメンバー、PD-1、PD-L1、またはHHLA2には結合しないことが示される。図2Cは、図2B(および図1A)に示される受容体アレイのトランスフェクション対照(GFP発現)結果を示す。図2Dは、受容体アレイの陽性対照処理結果を示す。図2Bおよび図1Aと同じパネルの過剰発現受容体とインキュベートした可溶性PD-1-IgおよびPD-L1-Igを使用した細胞マイクロアレイ分析は、FCGR2A、PD-1およびPD-L1への結合を示すが、いずれのKIRへの結合も示さない。PD-1-Igに結合しないPD-L1スポットは、代替的にスプライシングされたアイソフォームである。
図2D図2A図2Dは、HHLA2に対する第2の受容体としてのKIR3DL3の同定および特徴付けを示す。図2Aは、384個のヒト受容体を発現する細胞およびGFPを共発現する細胞の複製マイクロアレイスライドを示し、HHLA2-Igに対する受容体としてKIR3DL3を同定し(上側パネル)、トランスフェクションおよびスポット局在についての対照としてGFPの発現を示す(下側パネル)。図2Bは、HEK293細胞において個別に発現される示される細胞表面受容体に結合する可溶性HHLA2-mIgG2a(HHLA2-Ig)を使用した図1Aに示される細胞マイクロアレイ分析結果を示す。HHLA2-Igは、TMIGD2、KIR3DL3、および対照(FCGR2A)に結合するが、KIRファミリーの他のメンバー、PD-1、PD-L1、またはHHLA2には結合しないことが示される。図2Cは、図2B(および図1A)に示される受容体アレイのトランスフェクション対照(GFP発現)結果を示す。図2Dは、受容体アレイの陽性対照処理結果を示す。図2Bおよび図1Aと同じパネルの過剰発現受容体とインキュベートした可溶性PD-1-IgおよびPD-L1-Igを使用した細胞マイクロアレイ分析は、FCGR2A、PD-1およびPD-L1への結合を示すが、いずれのKIRへの結合も示さない。PD-1-Igに結合しないPD-L1スポットは、代替的にスプライシングされたアイソフォームである。
図3A図3A図3Eは、KIR3DL3およびHHLA2 mAbのパネルの特徴付けを示す。(図3A)KIR3DL3を発現する300.19細胞へのKIR3DL3 mAbの結合のフローサイトメトリー分析。図3Bは、KIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するKIR3DL3 mAbの能力を示す。図3Cは、2C4、2G2ならびに最も強い結合を示す6F10および弱い結合を示す6D10を用いたHHLA2を発現する300.19細胞へのHHLA2 mAb結合を示す。図3Dは、2C4、2G2、および最も強い結合を示す6F10を用いたKIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAbの能力を示す。図3Eは、TMIGD2を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAb 2G2および6F10の能力を示す。
図3B図3A図3Eは、KIR3DL3およびHHLA2 mAbのパネルの特徴付けを示す。(図3A)KIR3DL3を発現する300.19細胞へのKIR3DL3 mAbの結合のフローサイトメトリー分析。図3Bは、KIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するKIR3DL3 mAbの能力を示す。図3Cは、2C4、2G2ならびに最も強い結合を示す6F10および弱い結合を示す6D10を用いたHHLA2を発現する300.19細胞へのHHLA2 mAb結合を示す。図3Dは、2C4、2G2、および最も強い結合を示す6F10を用いたKIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAbの能力を示す。図3Eは、TMIGD2を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAb 2G2および6F10の能力を示す。
図3C図3A図3Eは、KIR3DL3およびHHLA2 mAbのパネルの特徴付けを示す。(図3A)KIR3DL3を発現する300.19細胞へのKIR3DL3 mAbの結合のフローサイトメトリー分析。図3Bは、KIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するKIR3DL3 mAbの能力を示す。図3Cは、2C4、2G2ならびに最も強い結合を示す6F10および弱い結合を示す6D10を用いたHHLA2を発現する300.19細胞へのHHLA2 mAb結合を示す。図3Dは、2C4、2G2、および最も強い結合を示す6F10を用いたKIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAbの能力を示す。図3Eは、TMIGD2を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAb 2G2および6F10の能力を示す。
図3D図3A図3Eは、KIR3DL3およびHHLA2 mAbのパネルの特徴付けを示す。(図3A)KIR3DL3を発現する300.19細胞へのKIR3DL3 mAbの結合のフローサイトメトリー分析。図3Bは、KIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するKIR3DL3 mAbの能力を示す。図3Cは、2C4、2G2ならびに最も強い結合を示す6F10および弱い結合を示す6D10を用いたHHLA2を発現する300.19細胞へのHHLA2 mAb結合を示す。図3Dは、2C4、2G2、および最も強い結合を示す6F10を用いたKIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAbの能力を示す。図3Eは、TMIGD2を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAb 2G2および6F10の能力を示す。
図3E図3A図3Eは、KIR3DL3およびHHLA2 mAbのパネルの特徴付けを示す。(図3A)KIR3DL3を発現する300.19細胞へのKIR3DL3 mAbの結合のフローサイトメトリー分析。図3Bは、KIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するKIR3DL3 mAbの能力を示す。図3Cは、2C4、2G2ならびに最も強い結合を示す6F10および弱い結合を示す6D10を用いたHHLA2を発現する300.19細胞へのHHLA2 mAb結合を示す。図3Dは、2C4、2G2、および最も強い結合を示す6F10を用いたKIR3DL3を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAbの能力を示す。図3Eは、TMIGD2を発現する300.19細胞へのHHLA2-Igの結合を遮断するHHLA2 mAb 2G2および6F10の能力を示す。
図4A図4A図4Cは、KIR3DL3およびTMIGD2へのHHLA2-mIgG2a結合を示す。図4Aは、図1Bの正規化された結合データを示す。KIR3DL3(青色)またはTMIGD2(シアン色)または対照HHLA2(赤色)トランスフェクトもしくは親300.19細胞(緑色)に結合するHHLA2-mIgG2a。図4Bおよび図4Cは、フローサイトメトリーによるKIR3DL3トランスフェクト293T細胞(図4B)またはTMIGD2トランスフェクト293T細胞(図4C)に結合するHHLA2-mIgG2aまたはアイソタイプ対照(10μg/ml)を示す。
図4B図4A図4Cは、KIR3DL3およびTMIGD2へのHHLA2-mIgG2a結合を示す。図4Aは、図1Bの正規化された結合データを示す。KIR3DL3(青色)またはTMIGD2(シアン色)または対照HHLA2(赤色)トランスフェクトもしくは親300.19細胞(緑色)に結合するHHLA2-mIgG2a。図4Bおよび図4Cは、フローサイトメトリーによるKIR3DL3トランスフェクト293T細胞(図4B)またはTMIGD2トランスフェクト293T細胞(図4C)に結合するHHLA2-mIgG2aまたはアイソタイプ対照(10μg/ml)を示す。
図4C図4A図4Cは、KIR3DL3およびTMIGD2へのHHLA2-mIgG2a結合を示す。図4Aは、図1Bの正規化された結合データを示す。KIR3DL3(青色)またはTMIGD2(シアン色)または対照HHLA2(赤色)トランスフェクトもしくは親300.19細胞(緑色)に結合するHHLA2-mIgG2a。図4Bおよび図4Cは、フローサイトメトリーによるKIR3DL3トランスフェクト293T細胞(図4B)またはTMIGD2トランスフェクト293T細胞(図4C)に結合するHHLA2-mIgG2aまたはアイソタイプ対照(10μg/ml)を示す。
図5図5は、フローサイトメトリーによるKIR3DL3トランスフェクト300.19マウスプレB細胞白血病細胞株に対する抗KIR3DL3 mAbについての結合データを示す。
図6図6は、ウエスタンブロッティングによるKIR3DL3に対する抗KIR3DL3 mAbについての結合データを示す。特に、KIR3DL3でトランスフェクトされたJurkat細胞を使用したKIR3DL3 mAbのウエスタンブロット分析結果を示す。
図7図7は、Jurkat親細胞、KIR3DL3でトランスフェクトされたJurkat、NK-92細胞、およびNK-92-MI細胞におけるKIR3DL3発現を示す。溶解物を5ug/mlで抗KIR3DL3 mAb 574.1F12でブロットした。
図8図8は、公開されているデータベースで評価されているKIR3DL3発現の単一細胞RNAシーケンシング分析を示す(ebi.ac.uk/gxa/sc/homeのワールドワイドウェブで利用可能なEMBL-EBIデータベースおよびbiorxiv.org/content/10.1101/429589v1のワールドワイドウェブで利用可能な“Reconstructing the human first trimester fetal-maternal interface using single cell transcriptomics”と題された対応する刊行物を参照のこと)。KIR3DL3の発現は、右側パネルに青色の点として示される。黒色のボックスは、ほとんどのKIR3DL3発現が示される、脱落膜NK細胞を強調している。
図9図9は、KIR3DL3へのHHLA2結合の抗KIR3DL3 mAb遮断を示す。
図10A図10A図10Dは、活性化ヒトT細胞およびNK92-MI細胞上でのKIR3DL3発現を示す。図10Aは、4人の正常なドナーの全血から精製され、CD3/CD28抗体四量体で活性化され、示される日に2連で実施されるFACS分析に供されて、ゲーティングされたCD3+CD4+およびCD3+CD8+T細胞におけるKIR3DL3発現を評価する、T細胞の結果を示す。0日目(非活性化)(図10B)および活性化後21日目(図10C)におけるKIR3DL3発現を示す代表的なFACSプロット。図10Dは、NK92-MI(左側パネル)上のKIR3DL3発現を示すが、NK-92細胞(右側パネル)上のKIR3DL3発現は最小である。
図10B図10A図10Dは、活性化ヒトT細胞およびNK92-MI細胞上でのKIR3DL3発現を示す。図10Aは、4人の正常なドナーの全血から精製され、CD3/CD28抗体四量体で活性化され、示される日に2連で実施されるFACS分析に供されて、ゲーティングされたCD3+CD4+およびCD3+CD8+T細胞におけるKIR3DL3発現を評価する、T細胞の結果を示す。0日目(非活性化)(図10B)および活性化後21日目(図10C)におけるKIR3DL3発現を示す代表的なFACSプロット。図10Dは、NK92-MI(左側パネル)上のKIR3DL3発現を示すが、NK-92細胞(右側パネル)上のKIR3DL3発現は最小である。
図10C図10A図10Dは、活性化ヒトT細胞およびNK92-MI細胞上でのKIR3DL3発現を示す。図10Aは、4人の正常なドナーの全血から精製され、CD3/CD28抗体四量体で活性化され、示される日に2連で実施されるFACS分析に供されて、ゲーティングされたCD3+CD4+およびCD3+CD8+T細胞におけるKIR3DL3発現を評価する、T細胞の結果を示す。0日目(非活性化)(図10B)および活性化後21日目(図10C)におけるKIR3DL3発現を示す代表的なFACSプロット。図10Dは、NK92-MI(左側パネル)上のKIR3DL3発現を示すが、NK-92細胞(右側パネル)上のKIR3DL3発現は最小である。
図10D図10A図10Dは、活性化ヒトT細胞およびNK92-MI細胞上でのKIR3DL3発現を示す。図10Aは、4人の正常なドナーの全血から精製され、CD3/CD28抗体四量体で活性化され、示される日に2連で実施されるFACS分析に供されて、ゲーティングされたCD3+CD4+およびCD3+CD8+T細胞におけるKIR3DL3発現を評価する、T細胞の結果を示す。0日目(非活性化)(図10B)および活性化後21日目(図10C)におけるKIR3DL3発現を示す代表的なFACSプロット。図10Dは、NK92-MI(左側パネル)上のKIR3DL3発現を示すが、NK-92細胞(右側パネル)上のKIR3DL3発現は最小である。
図11A図11A図11Cは、KIR3DL3が、T細胞における阻害性受容体であり、T細胞活性化が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図11Aは、抗CD3 scFVを発現するCHO細胞、抗CD3 scFVおよびHHLA2を共発現するCHO細胞、または示されるようにCD28 mAbの存在下もしくは非存在下で未トランスフェクトCHO細胞と共培養されたKIR3DL3を発現するJurkat IL-2-レポーターT細胞の結果を示す。ルシフェラーゼ活性は、相対光単位(RLU)として表される。図11Bおよび図11Cは、CD28 mAbおよびHHLA2 mAb(図11B)またはKIR3DL3 mAb(図11C)の存在下で抗CD3 scFVおよびHHLA2を共発現するCHO細胞と共培養されたKIR3DL3を発現するJurkat IL-2-レポーターT細胞の結果を示す。IL-2レポータールシフェラーゼ活性の活性化倍率は、平均±S.D.として提示される(n≧3;****P≦0.0001)。
図11B図11A図11Cは、KIR3DL3が、T細胞における阻害性受容体であり、T細胞活性化が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図11Aは、抗CD3 scFVを発現するCHO細胞、抗CD3 scFVおよびHHLA2を共発現するCHO細胞、または示されるようにCD28 mAbの存在下もしくは非存在下で未トランスフェクトCHO細胞と共培養されたKIR3DL3を発現するJurkat IL-2-レポーターT細胞の結果を示す。ルシフェラーゼ活性は、相対光単位(RLU)として表される。図11Bおよび図11Cは、CD28 mAbおよびHHLA2 mAb(図11B)またはKIR3DL3 mAb(図11C)の存在下で抗CD3 scFVおよびHHLA2を共発現するCHO細胞と共培養されたKIR3DL3を発現するJurkat IL-2-レポーターT細胞の結果を示す。IL-2レポータールシフェラーゼ活性の活性化倍率は、平均±S.D.として提示される(n≧3;****P≦0.0001)。
図11C図11A図11Cは、KIR3DL3が、T細胞における阻害性受容体であり、T細胞活性化が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図11Aは、抗CD3 scFVを発現するCHO細胞、抗CD3 scFVおよびHHLA2を共発現するCHO細胞、または示されるようにCD28 mAbの存在下もしくは非存在下で未トランスフェクトCHO細胞と共培養されたKIR3DL3を発現するJurkat IL-2-レポーターT細胞の結果を示す。ルシフェラーゼ活性は、相対光単位(RLU)として表される。図11Bおよび図11Cは、CD28 mAbおよびHHLA2 mAb(図11B)またはKIR3DL3 mAb(図11C)の存在下で抗CD3 scFVおよびHHLA2を共発現するCHO細胞と共培養されたKIR3DL3を発現するJurkat IL-2-レポーターT細胞の結果を示す。IL-2レポータールシフェラーゼ活性の活性化倍率は、平均±S.D.として提示される(n≧3;****P≦0.0001)。
図12図12は、HHLA2/TMIGD2相互作用が、T細胞活性化を増強することを示す。TMIGD2を発現し、ルシフェラーゼに結合したNFATプロモーターを有するJurkat T細胞を、抗CD3 scFV CHO細胞またはHHLA2-抗CD3 scFV CHO細胞と共培養し、ルシフェラーゼ活性(RLU)をアッセイした。定量は、平均±S.D.として提示される(n≧3;***P≦0.001)。
図13図13は、抗CD3-scFVおよびHHLA2媒介性シグナルに応答する、Jurkat-KIR3DL3 T細胞におけるIL-2プロモーター駆動型ルシフェラーゼ発現の抗KIR3DL3 mAbの増強を示す。
図14図14は、抗CD3-scFVおよびHHLA2媒介性シグナルに応答する、Jurkat-KIR3DL3 T細胞におけるIL-2プロモーター駆動型ルシフェラーゼ発現の抗HHLA2 mAbの増強を示す。
図15A図15A図15Dは、CD19およびHHLA2を発現するHeLa腫瘍に対するKIR3DL3-CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を示す。図15Aは、KIR3DL3/CAR-19発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図15Aは、PMC456-Ef1a発現プラスミドの概略図を示す。図15Bは、KIR3DL3/CD19-CAR-T細胞の生成および増殖を示す。特に、図15Bは、KIR3DL3/CAR-19T細胞(PMC456細胞)のFACSプロファイルを示す。図15Cは、安定なHeLa-CD19およびHeLa-CD19+KIR3DL3発現細胞の生成を示す。特に、図15Cは、HeLa-CD19およびHeLa-CD19-KIR3DL3腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。図15Dは、HHLA2 mAbが、HHLA2+CD19トランスフェクトHeLa腫瘍細胞に対するKIR3DL3 CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を増強することを示す。
図15B図15A図15Dは、CD19およびHHLA2を発現するHeLa腫瘍に対するKIR3DL3-CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を示す。図15Aは、KIR3DL3/CAR-19発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図15Aは、PMC456-Ef1a発現プラスミドの概略図を示す。図15Bは、KIR3DL3/CD19-CAR-T細胞の生成および増殖を示す。特に、図15Bは、KIR3DL3/CAR-19T細胞(PMC456細胞)のFACSプロファイルを示す。図15Cは、安定なHeLa-CD19およびHeLa-CD19+KIR3DL3発現細胞の生成を示す。特に、図15Cは、HeLa-CD19およびHeLa-CD19-KIR3DL3腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。図15Dは、HHLA2 mAbが、HHLA2+CD19トランスフェクトHeLa腫瘍細胞に対するKIR3DL3 CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を増強することを示す。
図15C図15A図15Dは、CD19およびHHLA2を発現するHeLa腫瘍に対するKIR3DL3-CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を示す。図15Aは、KIR3DL3/CAR-19発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図15Aは、PMC456-Ef1a発現プラスミドの概略図を示す。図15Bは、KIR3DL3/CD19-CAR-T細胞の生成および増殖を示す。特に、図15Bは、KIR3DL3/CAR-19T細胞(PMC456細胞)のFACSプロファイルを示す。図15Cは、安定なHeLa-CD19およびHeLa-CD19+KIR3DL3発現細胞の生成を示す。特に、図15Cは、HeLa-CD19およびHeLa-CD19-KIR3DL3腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。図15Dは、HHLA2 mAbが、HHLA2+CD19トランスフェクトHeLa腫瘍細胞に対するKIR3DL3 CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を増強することを示す。
図15D図15A図15Dは、CD19およびHHLA2を発現するHeLa腫瘍に対するKIR3DL3-CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を示す。図15Aは、KIR3DL3/CAR-19発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図15Aは、PMC456-Ef1a発現プラスミドの概略図を示す。図15Bは、KIR3DL3/CD19-CAR-T細胞の生成および増殖を示す。特に、図15Bは、KIR3DL3/CAR-19T細胞(PMC456細胞)のFACSプロファイルを示す。図15Cは、安定なHeLa-CD19およびHeLa-CD19+KIR3DL3発現細胞の生成を示す。特に、図15Cは、HeLa-CD19およびHeLa-CD19-KIR3DL3腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。図15Dは、HHLA2 mAbが、HHLA2+CD19トランスフェクトHeLa腫瘍細胞に対するKIR3DL3 CD19-CAR-T細胞の細胞毒性を増強することを示す。
図16A図16A図16Cは、HHLA2を発現するか、または発現しないHeLa腫瘍標的細胞に対するKIR3DL3を発現するNK92細胞の細胞毒性アッセイを示す。図16Aは、KIR3DL3発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図16Aは、PMC579 KIR3DL3発現プラスミドの概略図を示す。図16Bは、KIR3DL3形質導入NK92細胞の誘導を示す。特に、図16Bは、KIR3DL3/NK92 FACSプロファイルを示す。図16Cは、それぞれ、HHLA2でトランスフェクトまたは形質導入されたK562およびHeLa細胞の誘導を示す。特に、図16Cは、HHLA2でトランスフェクトされたK562細胞およびHHLA2で形質導入されたHeLa腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。
図16B図16A図16Cは、HHLA2を発現するか、または発現しないHeLa腫瘍標的細胞に対するKIR3DL3を発現するNK92細胞の細胞毒性アッセイを示す。図16Aは、KIR3DL3発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図16Aは、PMC579 KIR3DL3発現プラスミドの概略図を示す。図16Bは、KIR3DL3形質導入NK92細胞の誘導を示す。特に、図16Bは、KIR3DL3/NK92 FACSプロファイルを示す。図16Cは、それぞれ、HHLA2でトランスフェクトまたは形質導入されたK562およびHeLa細胞の誘導を示す。特に、図16Cは、HHLA2でトランスフェクトされたK562細胞およびHHLA2で形質導入されたHeLa腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。
図16C図16A図16Cは、HHLA2を発現するか、または発現しないHeLa腫瘍標的細胞に対するKIR3DL3を発現するNK92細胞の細胞毒性アッセイを示す。図16Aは、KIR3DL3発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。特に、図16Aは、PMC579 KIR3DL3発現プラスミドの概略図を示す。図16Bは、KIR3DL3形質導入NK92細胞の誘導を示す。特に、図16Bは、KIR3DL3/NK92 FACSプロファイルを示す。図16Cは、それぞれ、HHLA2でトランスフェクトまたは形質導入されたK562およびHeLa細胞の誘導を示す。特に、図16Cは、HHLA2でトランスフェクトされたK562細胞およびHHLA2で形質導入されたHeLa腫瘍細胞のFACSプロファイルを示す。
図17A図17A図17Cは、HeLa単独およびHeLaで形質導入されたHHLA2発現腫瘍標的細胞に対するNK92の細胞毒性を示す。図17Aは、KIR3DL3-HHLA2相互作用/経路によるNK92の細胞毒性の阻害を示す。図17Bは、HHLA2 mAbおよびKIR3DL3 mAbによるNK92-KIR3DL3の細胞毒性の増強を示す。図17Cは、ある特定の細胞毒性アッセイの概略図を示す。
図17B図17A図17Cは、HeLa単独およびHeLaで形質導入されたHHLA2発現腫瘍標的細胞に対するNK92の細胞毒性を示す。図17Aは、KIR3DL3-HHLA2相互作用/経路によるNK92の細胞毒性の阻害を示す。図17Bは、HHLA2 mAbおよびKIR3DL3 mAbによるNK92-KIR3DL3の細胞毒性の増強を示す。図17Cは、ある特定の細胞毒性アッセイの概略図を示す。
図17C図17A図17Cは、HeLa単独およびHeLaで形質導入されたHHLA2発現腫瘍標的細胞に対するNK92の細胞毒性を示す。図17Aは、KIR3DL3-HHLA2相互作用/経路によるNK92の細胞毒性の阻害を示す。図17Bは、HHLA2 mAbおよびKIR3DL3 mAbによるNK92-KIR3DL3の細胞毒性の増強を示す。図17Cは、ある特定の細胞毒性アッセイの概略図を示す。
図18図18は、フローサイトメトリーによる、Raji-B2M KOおよびHHLA2でトランスフェクトされたRaji-B2M KOにおけるβ2-マイクログロブリンおよびHHLA2発現を示す。
図19A図19A図19Eは、KIR3DL3が、NK細胞における阻害性受容体であり、NK細胞毒性が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図19Aは、B2M欠失を有するRaji細胞(Raji-B2M KO細胞)およびHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Bおよび図19Cは、10ug/mlのKIR3DL3抗体(図19B)またはHHLA2抗体(図19C)およびアイソタイプ対照の存在下で、示されるE/T比でHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Dは、示されるE:T比でRaji B2M KO細胞またはHHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞とインキュベートしたNK92-MI細胞の結果を示す。脱顆粒は、CD56+集団のCD107a陽性細胞の%として測定した。対照は、エフェクター細胞単独または全脱顆粒をもたらすPMA/IONを有するエフェクター細胞であった。図19Eは、アイソタイプ対照と比較して、KIR3DL3 mAb(1G7)の存在下で、HHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞を標的とするNK92-MI細胞の増強した脱顆粒を示す。定量は、平均±S.D.として提示される(N≧3;P≧0.05;*P≦0.05;**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001)。
図19B図19A図19Eは、KIR3DL3が、NK細胞における阻害性受容体であり、NK細胞毒性が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図19Aは、B2M欠失を有するRaji細胞(Raji-B2M KO細胞)およびHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Bおよび図19Cは、10ug/mlのKIR3DL3抗体(図19B)またはHHLA2抗体(図19C)およびアイソタイプ対照の存在下で、示されるE/T比でHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Dは、示されるE:T比でRaji B2M KO細胞またはHHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞とインキュベートしたNK92-MI細胞の結果を示す。脱顆粒は、CD56+集団のCD107a陽性細胞の%として測定した。対照は、エフェクター細胞単独または全脱顆粒をもたらすPMA/IONを有するエフェクター細胞であった。図19Eは、アイソタイプ対照と比較して、KIR3DL3 mAb(1G7)の存在下で、HHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞を標的とするNK92-MI細胞の増強した脱顆粒を示す。定量は、平均±S.D.として提示される(N≧3;P≧0.05;*P≦0.05;**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001)。
図19C図19A図19Eは、KIR3DL3が、NK細胞における阻害性受容体であり、NK細胞毒性が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図19Aは、B2M欠失を有するRaji細胞(Raji-B2M KO細胞)およびHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Bおよび図19Cは、10ug/mlのKIR3DL3抗体(図19B)またはHHLA2抗体(図19C)およびアイソタイプ対照の存在下で、示されるE/T比でHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Dは、示されるE:T比でRaji B2M KO細胞またはHHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞とインキュベートしたNK92-MI細胞の結果を示す。脱顆粒は、CD56+集団のCD107a陽性細胞の%として測定した。対照は、エフェクター細胞単独または全脱顆粒をもたらすPMA/IONを有するエフェクター細胞であった。図19Eは、アイソタイプ対照と比較して、KIR3DL3 mAb(1G7)の存在下で、HHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞を標的とするNK92-MI細胞の増強した脱顆粒を示す。定量は、平均±S.D.として提示される(N≧3;P≧0.05;*P≦0.05;**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001)。
図19D図19A図19Eは、KIR3DL3が、NK細胞における阻害性受容体であり、NK細胞毒性が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図19Aは、B2M欠失を有するRaji細胞(Raji-B2M KO細胞)およびHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Bおよび図19Cは、10ug/mlのKIR3DL3抗体(図19B)またはHHLA2抗体(図19C)およびアイソタイプ対照の存在下で、示されるE/T比でHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Dは、示されるE:T比でRaji B2M KO細胞またはHHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞とインキュベートしたNK92-MI細胞の結果を示す。脱顆粒は、CD56+集団のCD107a陽性細胞の%として測定した。対照は、エフェクター細胞単独または全脱顆粒をもたらすPMA/IONを有するエフェクター細胞であった。図19Eは、アイソタイプ対照と比較して、KIR3DL3 mAb(1G7)の存在下で、HHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞を標的とするNK92-MI細胞の増強した脱顆粒を示す。定量は、平均±S.D.として提示される(N≧3;P≧0.05;*P≦0.05;**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001)。
図19E図19A図19Eは、KIR3DL3が、NK細胞における阻害性受容体であり、NK細胞毒性が、HHLA2/KIR3DL3遮断によって増強されることを示す。図19Aは、B2M欠失を有するRaji細胞(Raji-B2M KO細胞)およびHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Bおよび図19Cは、10ug/mlのKIR3DL3抗体(図19B)またはHHLA2抗体(図19C)およびアイソタイプ対照の存在下で、示されるE/T比でHHLA2を発現するRaji-B2M KO細胞に対するNK92-MIの細胞毒性を示す。図19Dは、示されるE:T比でRaji B2M KO細胞またはHHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞とインキュベートしたNK92-MI細胞の結果を示す。脱顆粒は、CD56+集団のCD107a陽性細胞の%として測定した。対照は、エフェクター細胞単独または全脱顆粒をもたらすPMA/IONを有するエフェクター細胞であった。図19Eは、アイソタイプ対照と比較して、KIR3DL3 mAb(1G7)の存在下で、HHLA2を過剰発現するRaji B2M KO細胞を標的とするNK92-MI細胞の増強した脱顆粒を示す。定量は、平均±S.D.として提示される(N≧3;P≧0.05;*P≦0.05;**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001)。
図20図20は、HHLA2発現が、PD-L1発現とは異なることを示す。図20は、The Cancer Genome Atlas(TCGA)試料からの正常な腎臓と比較したRCC中のB7遺伝子ファミリーメンバーの発現レベルを示す。
図21A図21A図21Bは、HHLA2経路モデルを示す。HHLA2は、ナイーブT細胞またはNK細胞内でTMIGD2を介して免疫刺激シグナルを送達する。図21Aは、T細胞活性化が、TMIGD2発現の喪失およびKIR3DL3の獲得をもたらすことを示す。HHLA2は、活性化T細胞において、KIR3DL3を介して免疫阻害性シグナルを送達する。図21Bは、阻害性および活性化受容体によって制御されるNK細胞溶解活性を示す。阻害性受容体には、MHCクラスI、E、およびGをそれぞれ認識する、ほとんどのKIR、CD94/NKG2A、およびLILRBIが含まれる。活性化受容体には、ULBP-1、MICA、MICB、B7-H6、HLA-E、HHLA2、およびその他を認識する、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CD94/NKG2C、およびTMIGD2が含まれる。腫瘍がMHCの発現を喪失する(自己喪失)場合、阻害性シグナルは減少し、活性化シグナルが優勢であり、NK細胞による腫瘍溶解をもたらす。腫瘍上のHHLA2は、MHCとは独立して、KIR3DL3陽性NK細胞による溶解を阻害する阻害性シグナルである。
図21B図21A図21Bは、HHLA2経路モデルを示す。HHLA2は、ナイーブT細胞またはNK細胞内でTMIGD2を介して免疫刺激シグナルを送達する。図21Aは、T細胞活性化が、TMIGD2発現の喪失およびKIR3DL3の獲得をもたらすことを示す。HHLA2は、活性化T細胞において、KIR3DL3を介して免疫阻害性シグナルを送達する。図21Bは、阻害性および活性化受容体によって制御されるNK細胞溶解活性を示す。阻害性受容体には、MHCクラスI、E、およびGをそれぞれ認識する、ほとんどのKIR、CD94/NKG2A、およびLILRBIが含まれる。活性化受容体には、ULBP-1、MICA、MICB、B7-H6、HLA-E、HHLA2、およびその他を認識する、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CD94/NKG2C、およびTMIGD2が含まれる。腫瘍がMHCの発現を喪失する(自己喪失)場合、阻害性シグナルは減少し、活性化シグナルが優勢であり、NK細胞による腫瘍溶解をもたらす。腫瘍上のHHLA2は、MHCとは独立して、KIR3DL3陽性NK細胞による溶解を阻害する阻害性シグナルである。
図22図22は、KIR3DL3×PD-1二重特異性抗体の構築についての概略図を示す。
図23図23は、OctetアッセイにおけるKIR3DL3およびPD-1ヒトIgG4およびscFV抗体の結合センソグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
B7遺伝子ファミリーメンバーである、HHLA2は、様々な腫瘍および抗原提示細胞において広範に発現され、T細胞に対する活性化リガンドおよび阻害性リガンドの両方として関与している。ナイーブT細胞で発現されるTMIGD2は、HHLA2に対する活性化受容体であり、T細胞抗原受容体(TCR)連結後に共刺激シグナルを伝達する。TMIGD2は、反復TCR刺激後に下方制御される。HHLA2は、T細胞およびNK細胞において発現される別の受容体である、KIR3DL3に結合する。本明細書に記載されるように、本開示は、HHLA2-TMIGD2相互作用の免疫活性化機能とは異なり、HHLA2-KIR3DL3相互作用が、免疫応答を阻害することができ、例えば、がんを含む、様々な疾患、障害または状態における調節のための魅力的な標的を提供することができるという認識を包含する。
【0037】
本開示は、KIR3DL3を標的とすることで、免疫応答を阻害するHHLA2-KIR3DL3相互作用を特異的に遮断することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。重要なことに、KIR3DL3を標的とすることは、HHLA2の全体的な機能を破壊するものではなく、これには、TMIGD2との相互作用を介した免疫応答の活性化も含まれる。したがって、KIR3DL3を正確に標的とすることは、HHLA2の免疫阻害機能のみを遮断する特異性を提供し、それによって、HHLA2の免疫活性化機能を下方制御することなく、例えば、がん細胞に対する有効な免疫応答を誘発する。
【0038】
本開示はまた、KIR3DL3およびPD-1の両方を標的とする薬剤を使用して、免疫応答を調節し、かつ/またはがんを治療することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるKIR3DL3×PD-1二重特異性抗体は、腫瘍におけるT細胞およびNK細胞を活性化するためのチェックポイント免疫療法である。いくつかの実施形態では、KIR3DL3×PD-1二重特異性抗体は、PD-1もしくはPD-L1、または他のチェックポイント免疫療法と相加的または相乗的である。さらに、腫瘍におけるHHLA2および/またはKIR3DL3発現は、KIR3DL3 mAbおよび/またはKIR3DL3×PD-1二重特異性抗体チェックポイント遮断に対する応答性を決定するための有用なバイオマーカーである。
【0039】
例示的で、代表的な抗KIR3DL3ヒトモノクローナル抗体(mAb)のパネルは、免疫チェックポイント阻害剤薬剤として本明細書に記載されている。遮断および非遮断抗KIR3DL3 mAbが同定され、KIR3DL3に結合するHHLA2を遮断する抗KIR3DL3 mAbが、T細胞およびNK細胞アッセイにおけるチェックポイント阻害剤抗体であることが示された。これらの候補治療的抗KIR3DL3抗体についての結合特性ならびに可変領域重鎖および軽鎖遺伝子配列が本明細書に記載されている。
【0040】
KIR3DL3およびPD-1の両方に結合する、例示的で、代表的な二重特異性抗体またはその抗原結合断片のパネルは、免疫チェックポイント阻害剤薬剤として本明細書にも記載されている。重複しない発現を有する2つの免疫チェックポイントを標的とすると、相加的または相乗的な抗腫瘍活性を有する併用療法が提供される。
【0041】
したがって、本開示は、KIR3DL3に特異的に結合するモノクローナル抗体およびそれらの抗原結合断片、KIR3DL3およびPD-1に結合する二重特異性抗体およびその抗原結合断片、ならびにそれらの免疫グロブリン、ポリペプチド、核酸、ならびに免疫調節および治療目的等のためにかかる抗体を使用する方法を提供する。
【0042】
I.定義
「a」および「an」という冠詞は、冠詞の文法的目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。一例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0043】
マーカーの「変化した量」という用語は、対照試料中のマーカーのものと比較して、ある試料中のマーカーの増加もしくは減少したコピー数および/または特定のマーカー遺伝子(複数可)の増加もしくは減少した核酸レベルを指す。マーカーの「変化した量」という用語は、正常対照試料中のマーカーのタンパク質レベルと比較して、ある試料中のマーカーの増加または減少したタンパク質レベルも含む。
【0044】
マーカーの「変化した活性」という用語は、正常対照試料中のマーカーの活性と比較して、例えば生体試料中のある病状で増加または減少するマーカーの活性を指す。マーカーの変化した活性は、例えば、マーカーの変化した発現、マーカーの変化したタンパク質レベル、マーカーの変化した構造、または、例えば、マーカーと同じもしくは異なる経路に関与する他のタンパク質との変化した相互作用、または転写活性化因子もしくは阻害剤との変化した相互作用の結果であり得る。
【0045】
マーカーの「変化した構造」という用語は、正常または野生型遺伝子またはタンパク質と比較して、マーカー遺伝子またはマーカータンパク質中での変異または対立遺伝子バリアント、例えば、マーカーの発現または活性に影響を及ぼす変異の存在を指す。例えば、変異には、置換、欠失、または付加変異が含まれるが、これらに限定されない。変異は、マーカーのコーディング領域または非コーディング領域に存在し得る。
【0046】
「活性化受容体」という用語は、抗原、複合抗原(例えば、MHCポリペプチドとの関連で)、または抗体に結合する免疫細胞受容体を含む。かかる活性化受容体は、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、サイトカイン受容体、LPS受容体、補体受容体、およびFc受容体を含む。
【0047】
T細胞受容体は、T細胞上に存在し、CD3ポリペプチドと関連している。T細胞受容体は、MHCポリペプチドとの関連で抗原によって(かつポリクローナルT細胞活性化試薬によって)刺激される。TCRを介したT細胞活性化により、多数の変化、例えば、タンパク質リン酸化、膜脂質変化、イオン流出、環状ヌクレオチド改変、RNA転写変化、タンパク質合成変化、および細胞体積変化がもたらされる。
【0048】
「キメラ抗原受容体」、「CAR」、または「CAR-T」という用語は、所望の抗原特異性を有する操作されたT細胞受容体(TCR)を指す。Tリンパ球は、T細胞受容体(TCR)と主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子によって提示される短ペプチドとの相互作用により特異的抗原を認識する。初期活性化およびクローン増殖について、ナイーブT細胞は、追加の共刺激シグナルを提供する専門的な抗原提示細胞(APC)に依存している。共刺激の不在下でのTCR活性化により、無応答性およびクローンアネルギーがもたらされ得る。免疫化をバイパスするために、認識特異性がグラフトされた細胞毒性エフェクター細胞を誘導するための異なるアプローチが開発されている。TCR関連CD3複合体の細胞表面成分に特異的な天然リガンドまたは抗体に由来する結合ドメインからなるCARが構築されている。抗原結合時、かかるキメラ抗原受容体は、エフェクター細胞における内因性シグナル伝達経路に連結し、TCR複合体によって開始されるシグナルと同様の活性化シグナルを生成する。例えば、血液がん細胞上で高度に発現されるタンパク質である、CD19を標的とするCARは、良好な臨床効果を示している。キメラ抗原受容体についての最初の報告以来、この概念は着実に改良されており、キメラ受容体の分子設計は最適化されており、いくつもの周知の結合ドメイン、例えば、scFV、Fav、および本明細書に記載の別のタンパク質結合断片が通例的に使用されている。
【0049】
一般に、CARは、本開示による使用のために企図された一種の「細胞療法」(例えば、T細胞療法)である。KIR3DL3経路を調節することによって、例えば、KIR3DL3とHHLA2等のKIR3DL3天然結合パートナーとの間の相互作用を調節することによって免疫細胞活性を調節するための薬剤および方法の多数の代表的な実施形態が包含されるが、免疫細胞に基づく療法および方法も包含される。例えば、KIR3DL3のノックアウト、ノックダウン、または増加した発現を有するように操作されたT細胞が企図される。同様に、KIR3DL3、HHLA2に対するリガンドのノックアウト、ノックダウン、または増加した発現を有するように操作された免疫細胞または他の細胞も企図される。
【0050】
B細胞受容体(BCR)は、B細胞上に存在する。B細胞抗原受容体は、膜Ig(mIg)と他の膜貫通ポリペプチド(例えば、IgαおよびIgβ)との間の複合体である。mIgのシグナル伝達機能は、オリゴマー抗原または多量体抗原による受容体ポリペプチドの架橋によって誘発される。B細胞は、抗免疫グロブリン抗体によって活性化される場合もある。BCR活性化時、チロシンリン酸化を含む多数の変化がB細胞で生じる。
【0051】
Fc受容体は、免疫応答に関与する多くの細胞上に見られる。Fc受容体(FcR)は、免疫グロブリンポリペプチド(Ig)のFc部分に対する細胞表面受容体である。これまでに特定されているヒトFcRのうち、IgG(Fcγ Rに指定)、IgE(Fcε R1)、IgA(Fcα)、および重合IgM/A(Fcμα R)を認識するものがある。FcRは、以下の細胞型:Fcε R I(マスト細胞)、Fcε R.II(多くの白血球)、Fcα R(好中球)、およびFcμα R(腺上皮、肝細胞)に見られる(Hogg,N.(1988)Immunol.Today 9:185-86)。広く研究されたFcγRは、細胞性免疫防御の中心となり、自己免疫疾患の発病に関与する炎症メディエーターおよび加水分解酵素の放出の刺激に関与する(Unkeless,J.C.et al.(1988)Annu.Rev.Immunol.6:251-81)。マクロファージ/単球、多形核白血球、およびナチュラルキラー(NK)細胞FcγRがIgGによって媒介される特異的認識要素を付与するため、FcγRは、エフェクター細胞とIgを分泌するリンパ球との間に重要な関連性を提供する。ヒト白血球は、IgGに対する少なくとも3つの異なる受容体:hFcγ RI(単球/マクロファージに見られる)、hFcγ RII(単球、好中球、好酸球、血小板、恐らくB細胞、およびK562細胞株に見られる)、およびFcγ III(NK細胞、好中球、好酸球、およびマクロファージに見られる)を有する。
【0052】
T細胞に関して、T細胞への共刺激シグナルの伝達は、シクロスポリンAによって阻害されないシグナル伝達経路を伴う。加えて、共刺激シグナルは、T細胞におけるサイトカイン分泌(例えば、IL-2および/もしくはIL-10)を誘導することができ、かつ/または抗原に対する無応答性の誘導、アネルギーの誘導、もしくはT細胞における細胞死(欠失)の誘導を阻止することができる。
【0053】
「活性」という用語は、ポリペプチド、例えば、KIR3DL3および/またはKIR3DL3天然結合パートナー、例えば、HHLA2に関して使用される場合、タンパク質の構造に固有の活性を含む。例えば、HHLA2リガンドに関して、「活性」という用語は、免疫細胞における阻害性シグナルを調節することによって(例えば、免疫細胞上の天然受容体を連結することによって)免疫細胞阻害を調節する能力を含む。当業者であれば、HHLA2リガンドポリペプチドの活性化形態が、KIR3DL3等の阻害性受容体に結合すると、阻害性シグナルが免疫細胞で生成されることを認識するであろう。
【0054】
「阻害性シグナル」という用語は、免疫細胞上のポリペプチドに対する阻害性受容体(例えば、KLRB1、CTLA4、PD-1等)を介して伝達されるシグナルを指す。かかるシグナルは、活性化受容体を介して(例えば、TCR、CD3、BCR、TMIGD2、またはFcポリペプチドを介して)シグナルをアンタゴナイズし、例えば、第2のメッセンジャー生成の阻害、増殖の阻害、免疫細胞におけるエフェクター機能の阻害、例えば、食作用の低減、抗体産生の低減、細胞毒性の低減、免疫細胞がメディエーター(サイトカイン(例えば、IL-2)および/またはアレルギー応答メディエーター等)を産生することができないこと、またはアネルギーの発生をもたらし得る。
【0055】
対象におけるバイオマーカーの量は、バイオマーカーの量が、それぞれ、正常レベルまたは対照レベルよりも、量を評価するために用いられるアッセイの標準誤差を超える量だけ、好ましくはその量の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、350%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%高いまたは低い場合、バイオマーカーの正常量よりも「有意に」高いまたは低い。あるいは、対象におけるバイオマーカーの量は、その量が、それぞれ、バイオマーカーの正常量および/または対照量よりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、2倍、3倍、4倍、5倍、もしくはそれ以上、または5%~100%等のそれらの間の任意の範囲高いまたは低い場合、正常量および/または対照量よりも「有意に」高いまたは低いとみなされ得る。かかる有意な調節値は、変化した発現レベル、変化した活性、がん細胞過剰増殖性成長の変化、がん細胞死の変化、バイオマーカー阻害の変化、試験薬剤結合の変化等の本明細書に記載のいずれの測定基準にも適用され得る。
【0056】
マーカーの「変化した発現レベル」という用語は、発現またはコピー数を評価するために用いられるアッセイの標準誤差よりも高いかまたは低く、好ましくは対照試料(例えば、関連疾患を有しない健常対象由来の試料)中のマーカーまたは染色体領域の発現レベルまたはコピー数、好ましくはいくつかの対照試料中のマーカーまたは染色体領域の平均発現レベルまたはコピー数の少なくとも2倍、より好ましくは3倍、4倍、5倍、もしくは10倍、またはそれ以上である、試験試料、例えば、がんに罹患している対象に由来する試料中のマーカーの発現レベルまたはコピー数を指す。変化した発現レベルは、発現またはコピー数を評価するために用いられるアッセイの標準誤差よりも高いかまたは低く、対照試料(例えば、関連疾患を有しない健常対象由来の試料)中のマーカーの発現レベルまたはコピー数、好ましくはいくつかの対照試料中のマーカーの平均発現レベルまたはコピー数の好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3倍、4倍、5倍、もしくは10倍、またはそれ以上である。
【0057】
本明細書で別途特定されない限り、「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」という用語は、抗体の天然に存在する形態(例えばIgG、IgA、IgM、IgE)および組換え抗体、例えば、一本鎖抗体、キメラおよびヒト化抗体、ならびに多重特異性抗体、ならびに前述のすべての断片および誘導体(これらの断片および誘導体は少なくとも抗原結合部位を有する)を広範に包含する。抗体誘導体は、抗体にコンジュゲートされたタンパク質または化学的部分を含み得る。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、またはそれらの抗原結合部分を含む糖タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVと略される)および重鎖定常領域から成る。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3から成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVと略される)および軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから成る。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに細分され得る。VおよびVは各々、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシル末端に配置される3つのCDRおよび4つのFRから成る。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。「不活性化抗体」という用語は、補体系を誘導しない抗体を指す。
【0058】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)も含む。本明細書で使用される「抗原結合部分」という用語は、抗原(例えば、KIR3DL3ポリペプチドまたはその断片)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHが別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、それらがVL領域およびVH領域が対合して一価ポリペプチドを形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって連結され得る(一本鎖Fv(scFv)として知られている、例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426、およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883、およびOsbourn et al.1998,Nature Biotechnology 16:778を参照のこと)。かかる一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されるようにも意図されている。特異的scFvの任意のVH配列およびVL配列は、完全IgGポリペプチドまたは他のアイソタイプをコードする発現ベクターを生成するために、ヒト免疫グロブリン定常領域cDNAまたはゲノム配列に連結され得る。VHおよびVLは、タンパク質化学もしくは組換えDNA技術のいずれかを使用した免疫グロブリンのFab断片、Fv断片、または他の断片の生成にも使用され得る。ダイアボディ等の一本鎖抗体他の形態も包含される。ダイアボディは、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用して発現され、それにより、これらのドメインを別の鎖の相補性ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製する、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448、Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照のこと)。
【0059】
なおさらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合によって形成されるより大きい免疫接着ポリペプチドの一部であり得る。かかる免疫接着ポリペプチドの例には、四量体scFvポリペプチドを作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびに二価のビオチン化scFvポリペプチドを作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド、およびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)が挙げられる。Fab断片およびF(ab’)2断片等の抗体部分は、それぞれ、全抗体のパパイン消化またはペプシン消化等の従来の技法を使用して、全抗体から調製され得る。さらに、抗体、抗体部分、および免疫接着ポリペプチドは、本明細書に記載の標準の組換えDNA技法を使用して得られ得る。
【0060】
抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル、異種、同種、もしくは同系、またはそれらの修飾形態(例えば、ヒト化、キメラ等)であり得る。抗体は、完全にヒトである場合もある。一実施形態では、本開示によって包含される抗体は、KIR3DL3ポリペプチドまたはそれらの断片に特異的にまたは実質的に特異的に結合する。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」および「モノクローナル抗体組成物」という用語は、抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる1種のみの抗原結合部位を含む抗体ポリペプチドの集団を指し、「ポリクローナル抗体」および「ポリクローナル抗体組成物」という用語は、特定の抗原と相互作用することができる複数の種の抗原結合部位を含む抗体ポリペプチドの集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する特定の抗原に対する単一結合親和性を呈する。
【0061】
「体液」という用語は、身体から排泄または分泌される流体、ならびに通常は身体から排泄または分泌されない流体(例えば、羊水、房水、胆汁、血液および血漿、脳脊髄液、耳垢(cerumen)および耳垢(earwax)、カウパー液または前射精液、乳糜、糜粥、糞便、雌性射出液、間質液、細胞内液、リンパ液、月経、母乳、粘液、胸膜液、膿汁、唾液、皮脂、精液、血清、汗、滑液、涙、尿、腟粘滑液、硝子体液、嘔吐物)を指す。
【0062】
「がん」または「腫瘍」または「過剰増殖性障害」という用語は、制御不能な増殖、不死性、転移能、速い成長および増殖速度、ならびにある特定の特有の形態学的特徴等のがんを引き起こす細胞に特有の特性を有する細胞の存在を指す。がん細胞は、多くの場合、腫瘍の形態にあるが、かかる細胞は、動物に単独で存在し得るか、または白血病細胞等の非腫瘍形成性がん細胞であり得る。がんには、B細胞がん、例えば、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、例えば、アルファ鎖病、ガンマ鎖病、およびミュー鎖病等、良性単クローン性ガンマグロブリン血症、ならびに免疫球性アミロイドーシス、黒色腫、乳がん、肺がん、気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、脳または中枢神経系がん、末梢神経系がん、食道がん、子宮頸がん、子宮または子宮内膜がん、口腔または咽頭がん、肝臓がん、腎臓がん、睾丸がん、胆道がん、小腸または虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液学的組織がん等が含まれるが、これらに限定されない。本開示によって包含される方法に適用可能ながんのタイプの他の非限定的な例には、ヒト肉腫およびがん腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、肝臓がん、絨毛腫、精上皮腫、胎生期がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、骨がん、脳腫瘍、睾丸がん、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、例えば、急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)、および真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ならびに重鎖病が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、本来、上皮がんであり、がんには、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、婦人科がん、腎臓がん、喉頭がん、肺がん、口腔がん、頭頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、または皮膚がんが含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、がんは、乳がん、前立腺がん、肺がん、または結腸がんである。なお他の実施形態では、上皮がんは、非小細胞肺がん、非乳頭状腎細胞がん、子宮頸がん、卵巣がん(例えば、漿液性卵巣がん)、または乳がんである。上皮がんは、漿液性、類内膜、粘液性、明細胞、ブレンナー、または未分化を含むが、これらに限定されない様々な他の方法で特徴付けられ得る。
【0063】
「CDR」という用語およびその複数形「CDRs」は、3つが軽鎖可変領域の結合特性(CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)を構成し、3つが、例えば抗体上に重鎖可変領域の結合特性(CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を構成する、相補性決定領域(CDR)を指す。CDRは、抗体分子の機能的活性に寄与し、足場またはフレームワーク領域を含むアミノ酸配列によって分離される。正確な定義CDR境界および長さは、異なる分類および番号付けシステムに付される。したがって、CDRは、Kabat、Chothia、接触、または任意の他の境界定義によって参照され得る。異なる境界にもかかわらず、これらのシステムは各々、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成するものにある程度の重複を有する。したがって、これらのシステムに従うCDR定義は、隣接するフレームワーク領域に関して長さおよび境界領域の点で異なり得る。例えば、Kabat、Chothia、および/またはMacCallum et al.(各々参照により全体が組み込まれる、Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Edition,U.S.Department of Health and Human Services,1992、Chothia et al.(1987)J.Mol.Biol.196,901、およびMacCallum et al.,J.Mol.Biol.(1996)262,732)を参照されたい。
【0064】
本明細書で使用される場合、「分類すること」という用語は、試料を病状と「関連付けること」または試料を病状で「カテゴリー化すること」を含む。ある特定の例では、「分類すること」は、統計的証拠、実験的証拠、または両方に基づいている。ある特定の実施形態では、分類する方法およびシステムは、いわゆる既知の病状を有する試料の訓練セットを使用する。確立された時点で、訓練データセットは、試料の未知の病状を分類するために、未知の試料の特徴が比較される基礎、モデル、またはテンプレートとしての機能を果たす。ある特定の例では、試料の分類は、試料の病状の診断に似ている。ある特定の他の例では、試料の分類は、試料の病状の別の病状との区別に似ている。
【0065】
本明細書で使用される場合、「コーディング領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指し、「非コーディング領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないヌクレオチド配列の領域(例えば、5’および3’非翻訳領域)を指す。
【0066】
「[に対する]相補体」または「相補的」とは、2つの核酸鎖の領域間または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広範な概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、残基がチミンまたはウラシルである場合に第1の領域に逆平行の第2の核酸領域の残基と特異的水素結合(「塩基対合」)を形成することができることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、残基がグアニンである場合に第1の鎖に逆平行の第2の核酸鎖の残基と塩基対合することができることが知られている。核酸の第1の領域は、2つの領域が逆平行様式で配置されたときに、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対合することができる場合、同じまたは異なる核酸の第2の領域に相補的である。一実施形態では、第1の領域が第1の部分を含み、第2の領域が第2の部分を含み、それにより、第1および第2の部分が逆平行様式で配置されたときに、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。別の実施形態では、第1の部分のすべてのヌクレオチド残基が、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「複合抗体」という用語は、2つ以上の非連関可変領域由来の生殖系列または非生殖系列免疫グロブリン配列を含む可変領域を有する抗体を指す。加えて、「複合ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列または非生殖系列免疫グロブリン配列に由来する定常領域および2つ以上の非関連ヒト可変領域由来のヒト生殖系列または非生殖系列配列を含む可変領域を有する抗体を指す。複合ヒト抗体は、ヒト体内の複合ヒト抗体の抗原性が低下するため、本開示による治療薬における有効な成分として有用である。
【0068】
「対照」という用語は、試験試料中の発現産物との比較を提供するのに好適な任意の参照基準を指す。一実施形態では、対照は、発現産物レベルが、検出され、試験試料由来の発現産物レベルと比較される、「対照試料」を得ることを含む。かかる対照試料は、既知の転帰を有する対照がん患者由来の試料(保管された試料もしくは先行試料測定であり得る)、健常患者もしくはがん患者等の対象から単離された正常組織もしくは細胞、がん患者の同じ臓器もしくは身体位置から得られた正常細胞/組織に隣接する、健常対象もしくはがん患者等の対象から単離された培養初代細胞/組織、健常対象から単離された組織もしくは細胞試料、または寄託所から得られた初代細胞/組織を含むが、これらに限定されない、任意の好適な試料を含み得る。別の好ましい実施形態では、対照は、ハウスキーピング遺伝子、正常組織(または他の以前に分析された対照試料)由来の発現産物レベル範囲、ある特定の転帰(例えば、1、2、3、4年等の生存期間)を有するか、またはある特定の治療(例えば、標準治療がん療法)を受けている患者群または一組の患者由来の試験試料中の以前に決定された発現産物レベル範囲を含むが、これらに限定されない、任意の好適な源由来の参照基準発現産物レベルを含み得る。当業者であれば、かかる対照試料および参照基準発現産物レベルが対照として、本開示によって包含される方法と組み合わせて使用され得ることを理解するであろう。一実施形態では、対照は、正常または非がん性細胞/組織試料を含み得る。別の好ましい実施形態では、対照は、一組の患者、例えば、一組のがん患者の発現レベル、またはある特定の治療を受けている一組のがん患者発現レベル、またはある転帰に対して別の転帰を有する一組の患者の発現レベルを含み得る。前者の場合、各患者の特異的発現産物レベルは、発現のパーセンタイルレベルに割り当てられ得るか、または参照基準発現レベルの平均値もしくは平均よりも高いもしくは低いのいずれかとして表され得る。別の好ましい実施形態では、対照は、正常細胞、併用化学療法で治療された患者由来の細胞、および良性がんを有する患者由来の細胞を含み得る。別の実施形態では、対照は、測定値、例えば、ある集団におけるハウスキーピング遺伝子の発現レベルと比較した同じ集団における特定の遺伝子の平均発現レベルも含み得る。かかる集団は、健常対象、いずれの治療も受けていない(すなわち、未治療)がん患者、標準治療療法を受けているがん患者、または良性がんを有する患者を含み得る。別の好ましい実施形態では、対照は、試験試料中の2つの遺伝子の発現産物レベルの比率を決定し、それを参照基準で同じ2つの遺伝子の任意の好適な比率と比較すること、試験試料中の2つ以上の遺伝子の発現産物レベルを決定し、任意の好適な対照中の発現産物レベルの差を決定すること、および試験試料中の2つ以上の遺伝子の発現産物レベルを決定し、それらの発現を試験試料中のハウスキーピング遺伝子の発現に正規化し、任意の好適な対照と比較することを含むが、これらに限定されない、発現産物レベルの比率変換を含む。特に好ましい実施形態では、対照は、試験試料と同じ系統および/またはタイプのものである対照試料を含む。別の実施形態では、対照は、がんを有するすべての患者等の一組の患者試料中のパーセンタイルとしてまたはそれに基づいて群分けされる発現産物レベルを含み得る。一実施形態では、対照発現産物レベルが確立され、例えば特定のパーセンタイルと比較してより高いまたはより低い発現産物レベルが転帰を予測するための基礎として使用される。別の好ましい実施形態では、対照発現産物レベルが既知の転帰を有するがん対照患者由来の発現産物レベルを使用して確立され、試験試料由来の発現産物レベルが転帰を予測する基礎として対照発現産物レベルと比較される。以下のデータによって実証されるように、本開示によって包含される方法は、試験試料中の発現産物レベルを対照と比較する際の特定のカットポイントの使用に限定されない。
【0069】
「共刺激する」という用語は、活性化免疫細胞に関して使用される場合、増殖またはエフェクター機能を誘導する第2の非活性化受容体媒介性シグナル(「共刺激シグナル」)を提供する共刺激ポリペプチドの能力を含む。例えば、共刺激シグナルは、例えば、T細胞-受容体媒介性シグナルを受けたT細胞におけるサイトカイン分泌をもたらし得る。例えば、活性化受容体を介して細胞-受容体媒介性シグナルを受けた免疫細胞は、本明細書で「活性化免疫細胞」と称される。
【0070】
「共刺激受容体」という用語は、共刺激シグナルを免疫細胞、例えば、CD28に伝達する受容体を含む。本明細書で使用される場合、「阻害性受容体」という用語は、負のシグナルを免疫細胞(例えば、CTLA4、KIR3DL3、またはPD-1)に伝達する受容体を含む。阻害性受容体によって伝達された阻害性シグナルは、共刺激受容体(CD28等)が免疫細胞上に存在せず、それ故に、単に共刺激ポリペプチドの結合についての阻害性受容体と共刺激受容体との間の競合の機能ではない場合でさえも生じ得る(Fallarino et al.(1998)J.Exp.Med.188:205)。阻害性シグナルの免疫細胞への伝達により、免疫細胞に無応答性またはアネルギーまたはプログラム細胞死がもたらされ得る。好ましくは、阻害性シグナルの伝達は、アポトーシスを伴わない機構により作動する。本明細書で使用される場合、「アポトーシス」という用語は、当該技術分野で既知の技法を使用して特徴付けられ得るプログラム細胞死を含む。アポトーシス細胞死は、例えば、結果的に細胞断片化に至る細胞収縮、膜ブレブ形成、およびクロマチン凝縮によって特徴付けられ得る。アポトーシスを受けている細胞は、ヌクレオソーム間DNA切断の特徴的パターンも呈する。受容体に結合するポリペプチドの形態に応じて、例えば、1つ以上の天然結合パートナーへの結合についてHHLA2および/またはKIR3DL3の活性化形態と競合することによって、シグナルが伝達され得る(例えば、HHLA2および/またはKIR3DL3ポリペプチドの多価形態によって)か、またはシグナルが阻害され得る(例えば、HHLA2および/またはKIR3DL3の可溶性一価形態によって)かのいずれかである。しかしながら、可溶性ポリペプチドが刺激性であり得る例も存在する。調節剤の効果は、本明細書に記載の通例のスクリーニングアッセイを使用して容易に実証され得る。
【0071】
「対象に好適な治療レジメンを決定すること」という用語は、本開示による分析の結果に基づいてまたは本質的に基づいてまたは少なくとも部分的に基づいて開始、変更、および/または終了される、対象の治療レジメン(すなわち、対象におけるがんの予防および/または治療のために使用される単回療法または異なる療法の組み合わせ)の決定を意味するとみなされる。一例は、免疫調節療法(例えば、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とKIR3DL3等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーター))を提供するためにがんに対する標的療法を提供するかを決定することである。別の例は、再発の危険性を低下させることを目的とする手術後にアジュバント療法を開始することであり、別の例は、特定の化学療法の投薬量を変更することであろう。決定は、本開示による分析の結果に加えて、治療される対象の個人的特徴に基づき得る。多くの場合、対象に好適な治療レジメンの実際の決定は、主治医または医師によって行われるであろう。
【0072】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで及ぶと定義される。本開示によって包含される抗体における使用に好適な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、およびIgG4が含まれる。
【0073】
本明細書で使用される場合、「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、好ましいFcRには、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体(これらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的にスプライスされた形態を含む)が含まれ、FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)で概説されている。今後特定されるものを含む他のFcRも、本明細書における「FcR」という用語によって包含される。
【0074】
分子は、かなりの割合の分子が基質から解離することなく基質が流体(例えば標準のクエン酸生理食塩水、pH7.4)ですすがれ得るように、分子が基質に共有結合的または非共有結合的に会合している場合、基質に「固定」または「付着(affix)」されている。
【0075】
本明細書で使用される場合、「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるCDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0076】
「機能保存的バリアント」とは、タンパク質または酵素中の所与のアミノ酸残基が、あるアミノ酸と同様の特性(例えば、極性、水素結合能、酸性、塩基性、疎水性、芳香族等)を有するアミノ酸との置換を含むが、これに限定されない、ポリペプチドの全体的な立体配座および機能を改変することなく変化したものである。保存されたものとして示されるもの以外のアミノ酸は、同様の機能を有する任意の2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列類似性パーセントが変化し得るように、タンパク質中で異なり得、例えば、類似性がMEGALIGNアルゴリズムに基づくクラスター法等のアライメントスキームに従って決定される、70%~99%であり得る。「機能保存的バリアント」は、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定される、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、なお好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、かつそれが比較される天然または親タンパク質と同じまたは実質的に同様の特性または機能を有するポリペプチドも含む。
【0077】
本明細書で使用される場合、「異種抗体」という用語は、かかる抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物との関連で定義される。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物からなるものではなく、一般にトランスジェニック非ヒト動物種以外の種由来の生物に見られるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
【0078】
細胞バイオマーカー発現に関連した「高」、「低」、「中間」、および「陰性」という用語は、1つ以上の参照細胞によるバイオマーカーの細胞発現と比較した発現されたバイオマーカーの量を指す。バイオマーカー発現は、1つ以上のバイオマーカーゲノム核酸、リボ核酸、および/またはポリペプチドの細胞レベル、活性、構造等の分析を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載の任意の方法に従って決定され得る。一実施形態では、これらの用語は、バイオマーカーを、それぞれ、最高レベル、中間レベル、または最低レベルで発現する細胞集団の定義されたパーセンテージを指す。かかるパーセンテージは、バイオマーカーを高度にまたは弱くのいずれかで発現する細胞集団の上位0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、またはそれ以上、またはそれらの間の任意の範囲(境界値も含む)として定義され得る。「低」という用語は、バイオマーカーを検出可能に発現しない細胞を除外し、これは、かかる細胞がバイオマーカー発現に対して「陰性」であるためである。「中間」という用語は、バイオマーカーを発現するが、それを「高」レベルで発現する集団よりも低いレベルで発現する細胞を含む。別の実施形態では、これらの用語は、質的または統計的プロット領域によって特定されたバイオマーカー発現の細胞集団も指し得るか、またはそれを代わりに指し得る。例えば、フローサイトメトリーを使用して選別された細胞集団は、当該技術分野で周知の方法に従って、検出可能な部分の分析に基づいて、例えば、平均蛍光強度等に基づいて別個のプロットを特定することによって、バイオマーカー発現レベルに基づいて区別され得る。かかるプロット領域は、目的とするバイオマーカーについて当該技術分野で周知の方法に基づいて、数、形状、重複等に従って精製され得る。なお別の実施形態では、これらの用語は、追加のバイオマーカーの発現の存在または不在に従って決定される場合もある。
【0079】
本明細書で使用される「相同」とは、同じ核酸鎖の2つの領域間または2つの異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列類似性を指す。両領域におけるヌクレオチド残基位置が同じヌクレオチド残基によって占有されている場合、それらの領域は、その位置で相同である。第1の領域は、各領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同じ残基によって占有されている場合、第2の領域と相同である。2つの領域間の相同性は、同じヌクレオチド残基によって占有されている2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合で表される。一例として、ヌクレオチド配列5’-ATTGCC-3’を有する領域およびヌクレオチド配列5’-TATGGC-3’を有する領域は、50%の相同性を共有する。好ましくは、第1の領域が第1の部分を含み、第2の領域が第2の部分を含み、それにより、それらの部分の各々のヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が同じヌクレオチド残基によって占有される。より好ましくは、それらの部分の各々のすべてのヌクレオチド残基位置が同じヌクレオチド残基によって占有される。
【0080】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示によって包含される組換え発現ベクター等の本開示によって包含される核酸が導入された細胞を指すことが意図されている。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で同義に使用される。かかる用語が特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫または潜在的子孫も指すことを理解されたい。変異または環境影響のいずれかによりある特定の修飾が後世で生じ得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではない場合があるが、依然として本明細書で使用される本用語の範囲内に含まれる。
【0081】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト細胞によって作製されるであろう抗体により厳密に似るように改変された可変領域および定常領域を有する非ヒト細胞によって作製された抗体を含むよう意図されている。例えば、非ヒト抗体アミノ酸配列を改変することにより、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に見られるアミノ酸を組み込む。ヒト化抗体は、例えば、CDRにおける、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)によってコードされていないアミノ酸残基を含み得る。本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、マウス等の別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体も含む。
【0082】
本明細書で使用されるヒト化マウスとは、機能するヒト遺伝子(例えば、HHLA2、および/またはKIR3DL3)、細胞、組織、および/または臓器を持つマウスである。ヒト化マウスは、ヒト治療薬のための生物学的および医学的研究で小動物モデルとして一般に使用されている。ヌードマウスおよび重症複合免疫不全(SCID)マウスがこの目的のために使用され得る。NCGマウス、NOGマウス、およびNSGマウスが、ヒト細胞および組織を他のモデルよりも効率的に生着させるために使用され得る。かかるヒト化マウスモデルは、健康および病理学のシナリオでヒト免疫系をモデル化するために使用され得、ヒト生理学に関連するインビボ状況での治療候補の評価を可能にし得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列で超可変であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指し、CDRを含む。
【0084】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という用語は、免疫応答において役割を果たす細胞を指す。免疫細胞は造血起源のものであり、免疫細胞には、リンパ球、例えば、B細胞およびT細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄細胞、例えば、単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球が含まれる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「免疫障害」という用語には、がん、慢性炎症性疾患および障害(例えば、クローン病、炎症性腸疾患、反応性関節炎、およびライム病等)、インスリン依存性糖尿病、臓器特異的自己免疫(例えば、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、自己免疫性ブドウ膜炎、およびグレーブス病等)、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性状態(例えば、喘息およびアレルギー(アレルギー性鼻炎および食品アレルギー等の消化管アレルギーを含むが、これらに限定されない)等)、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、全身性紅斑性狼瘡、強皮症、蠕虫等のある特定の病原体易感染性(例えば、リーシュマニア症等)およびある特定のウイルス感染(例えば、HIVおよび細菌感染(結核および癩腫癩等)等)、ならびにマラリアを含むが、これらに限定されない免疫疾患、状態、およびそれらの素因が含まれる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、T細胞媒介性および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。例示の免疫応答には、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生、および細胞毒性が含まれる。加えて、免疫応答という用語には、T細胞活性化、例えば、抗体産生(体液性応答)およびサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化によって間接的にもたらされる免疫応答が含まれる。
【0087】
「免疫治療薬」という用語は、対象における腫瘍またはがんに対する免疫応答をもたらすように宿主免疫系を刺激することができる任意の分子、ペプチド、抗体、または他の薬剤を含み得る。様々な免疫治療薬が本明細書に記載の組成物および方法で有用である。
【0088】
「免疫チェックポイント」という用語は、抗腫瘍免疫応答を下方調節または阻害することによって免疫応答を微調整するCD4+および/またはCD8+T細胞の細胞表面上の分子群を指す。免疫チェックポイントタンパク質は当該技術分野で周知であり、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、GITR、4-IBB、OX-40、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン、およびA2aRが含まれるが、これらに限定されない(例えば、WO2012/177624を参照のこと)。この用語は、生物学的に活性なタンパク質断片、ならびに全長免疫チェックポイントタンパク質およびそれらの生物学的に活性なタンパク質断片をコードする核酸をさらに包含する。いくつかの実施形態では、この用語は、本明細書に提供される相同性の説明に従う任意の断片をさらに包含する。
【0089】
免疫チェックポイントおよびそれらの配列は当該技術分野で周知であり、代表的な実施形態が以下に記載される。例えば、「PD-1」という用語は、既知のリガンドとしてPD-L1およびPD-L2を有する共阻害受容体として機能する免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーを指す。PD-1は、TCR誘導性活性化T細胞死中に上方制御された遺伝子を選択するためのクローニングベースの減算アプローチを使用して以前に特定された。PD-1は、PD-L1に結合するその能力に基づいた分子のCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーである。CTLA-4と同様に、PD-1は、抗CD3に応答してT細胞の表面上で迅速に誘導される(Agata et al.25(1996)Int.Immunol.8:765)。しかしながら、CTLA-4とは対照的に、PD-1はB細胞上でも誘導される(抗IgMに応答して)。PD-1は、胸腺細胞および骨髄細胞のサブセット上でも発現される(Agata et al.(1996)(上記参照)、Nishimura et al.(1996)Int.Immunol.8:773)。
【0090】
本明細書で使用される場合、「阻害すること」という用語およびその文法的等価物は、特定の作用、機能、または相互作用の低減、制限、および/または遮断を指す。一実施形態では、この用語は、所与の出力またはパラメータのレベルを、対応する対照における量よりも少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ未満の量(例えば、背景染色、KIR3DL3シグナル伝達、KIR3DL3免疫阻害性機能等)に減少させることを指す。所与の出力またはパラメータのレベルの減少は、出力またはパラメータの絶対不在を意味し得るが、意味する必要はない。本発明は、出力またはパラメータを完全に排除する方法を必要とせず、それに限定されない。所与の出力またはパラメータは、本明細書および実施例で論じられる免疫組織化学的アッセイ、分子生物学的アッセイ、細胞生物学的アッセイ、臨床的アッセイ、および生化学的アッセイを含むが、これらに限定されない当該技術分野で周知の方法を使用して決定され得る。「促進すること」、「増加させること」という反意用語、およびそれらの文法的等価物は、阻害または低減について記載されたものと反対である所与の出力またはパラメータのレベルの増加を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「相互作用」という用語は、2つの分子間の相互作用を指すとき、分子の互いとの物理的接触(例えば、結合)(例えば、HHLA2のTMIGD2への結合またはHHLA2のKIR3DL3への結合)を指す。一般に、かかる相互作用は、当該分子の一方または両方の活性をもたらす(それにより、生物学的効果がもたらされる)。活性は、それらの分子の一方または両方の直接活性(例えば、シグナル伝達)であり得る。あるいは、相互作用における一方または両方の分子は、それらのリガンドへの結合を阻止される場合があり、それ故に、リガンド結合活性(例えば、そのリガンドに結合し、免疫応答を誘発または阻害する)に関して不活性で保持される。かかる相互作用を阻害することにより、相互作用に関与する1つ以上の分子の活性の破壊がもたらされる。かかる相互作用を増強することは、当該物理的接触を延長するか、またはその可能性を高めることであり、当該活性の可能性を延長するか、またはその可能性を高めることである。
【0092】
「ネオアジュバント療法」という用語は、一次治療の前に施される治療を指す。ネオアジュバント療法の例には、化学療法、放射線療法、およびホルモン療法が挙げられ得る。
【0093】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、KIR3DL3に特異的に結合し、KIR3DL3に結合しない抗体を実質的に含まない単離された抗体)を指すよう意図されている。しかしながら、KIR3DL3に特異的に結合する単離された抗体は、それぞれ、異なる種由来の他のKIRファミリータンパク質に対する交差反応性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、この抗体は、少なくとも2つの種、例えば、ヒトおよび非齧歯類動物等の他の動物、または他の哺乳動物もしくは非哺乳動物種に対して特異的結合親和性を維持する。しかしながら、いくつかの実施形態では、この抗体は、ヒトKIR3DL3に対してより高いまたは実際に特異的な親和性および選択性を維持する。加えて、単離された抗体は、典型的には、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない。本開示によって包含される一実施形態では、ヒトKIR3DL3に対する異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせが、明確に定義された組成物中で組み合わせられる。
【0094】
本明細書で使用される場合、「単離されたタンパク質」とは、他のタンパク質、細胞物質、分離培地、および培養培地(細胞から単離される場合または組換えDNA技法によって産生される場合)、または化学的前駆体もしくは他の化学物質(化学的に合成される場合)を実質的に含まないタンパク質を指す。「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは融合タンパク質が由来する細胞もしくは組織源由来の細胞物質もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まず、または化学的前駆体もしくは他の化学物質(化学的に合成される場合)を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言語は、タンパク質が、それが単離されるか、または組換え的に産生される細胞の細胞成分から分離される標的ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン)またはその断片の調製物を含む。一実施形態では、「細胞物質を実質的に含まない」という言語は、約30%未満(乾燥重量で)の非標的タンパク質(本明細書で「夾雑タンパク質」とも称される)、より好ましくは約20%未満の非標的タンパク質、なおより好ましくは約10%未満の非標的タンパク質、最も好ましくは約5%未満の非標的タンパク質を有する標的タンパク質またはその断片の調製物を含む。抗体、ポリペプチド、ペプチド、もしくは融合タンパク質、またはそれらの断片、例えば、それらの生物学的に活性な断片が組換え的に産生される場合、これは、好ましくは、培養培地、すなわち、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当する培養培地を実質的に含まない。
【0095】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「K」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指すよう意図されている。開示される本発明の抗体の結合親和性は、標準の抗体-抗原アッセイ、例えば、競合的アッセイ、飽和アッセイ、またはELISAもしくはRIA等の標準の免疫アッセイによって測定または決定され得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「キット」とは、本開示によって包含されるマーカーの発現を特異的に検出または調節するための少なくとも1つの試薬、例えば、プローブを含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。本キットは、本開示によって包含される方法を行うための装置として販売促進、流通、または販売され得る。
【0098】
「マーカー」または「バイオマーカー」は、ある組織または細胞での発現レベルの正常または健常組織または細胞におけるその発現レベルからの変化が、がん等の病状に関連する遺伝子またはタンパク質である。「マーカー核酸」は、本開示によって包含されるマーカーによってコードされるか、またはそれに対応する核酸(例えば、mRNA、cDNA)である。かかるマーカー核酸には、配列表に記載の核酸配列のうちのいずれかの全配列もしくは部分配列、またはかかる配列の相補体を含むDNA(例えば、cDNA)が含まれる。マーカー核酸は、配列表に記載の核酸配列のうちのいずれかの全配列もしくは部分配列、またはかかる配列の相補体を含むRNAも含み、すべてのチミジン残基がウリジン残基で置換されている。「マーカータンパク質」は、本開示によって包含されるマーカーによってコードされるか、またはそれに対応するタンパク質である。マーカータンパク質は、配列表に記載の配列のうちのいずれかの全配列または部分配列を含む。いくつかの実施形態では、KIR3DL3またはHHLA2の全体がマーカーとして使用される。他の実施形態では、KIR3DL3またはHHLA2の断片がマーカーとして使用される。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は同義に使用される。
【0099】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、上方制御および下方制御、例えば、応答の増強または阻害を含む。
【0100】
「所定の」バイオマーカー量および/または活性測定値という用語は、ほんの一例として、特定の治療のために選択され得る対象を評価するために、KIR3DL3モジュレーター等のKIR3DL3経路の1つ以上のモジュレーター、ならびにHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナー等の治療への応答を単独でもしくは1つ以上の免疫療法と組み合わせてのいずれかで評価するために、かつ/または病状を評価するために使用されるバイオマーカー量および/または活性測定値であり得る。所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、がんを有する患者集団またはがんを有しない患者集団において決定され得る。所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、あらゆる患者に平等に適用可能な単数であり得るか、または所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、特定の患者亜集団により異なり得る。対象の年齢、体重、身長、および他の因子は、その個体の所定のバイオマーカー量および/または活性測定値に影響を及ぼし得る。さらに、所定のバイオマーカー量および/または活性は、対象毎に個別に決定され得る。一実施形態では、本明細書に記載の方法で決定および/または比較される量は、絶対測定値に基づいている。別の実施形態では、本明細書に記載の方法で決定および/または比較される量は、比率(例えば、細胞比、またはハウスキーピングもしくはさもなければ概ね一定のバイオマーカーの発現に正規化された血清バイオマーカー)等の相対測定値に基づいている。所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、任意の好適な基準であり得る。例えば、所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、患者選択が評価される同じまたは異なるヒトから得られ得る。一実施形態では、所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、同じ患者の以前の評価から得られ得る。かかる様式で、患者の選択の経過が経時的に監視され得る。加えて、対照は、別のヒトまたは複数のヒト、例えば、対象がヒトである場合、選択されたヒト群の評価から得られ得る。かかる様式で、選択が評価されるヒトの選択の程度が、好適な他のヒト、例えば、同様もしくは同じ状態に罹患しているヒトおよび/または同じ民族集団のヒト等の目的とするヒトと同様の状況下にある他のヒトと比較され得る。
【0101】
「予測的」という用語は、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーターを単独でまたは免疫療法、例えば、免疫チェックポイント阻害療法等の1つ以上の追加療法と組み合わせてのいずれかで)等の免疫調節療法に対するがんの応答の可能性を決定するための、療法前、療法中、または療法後のバイオマーカー核酸および/またはタンパク質状態、例えば、過剰もしくは過小活性、出現、発現、成長、寛解、再発、または腫瘍の抵抗性の使用を含む。バイオマーカーのかかる予測的使用は、例えば、(1)増加もしくは減少したコピー数(例えば、FISH、FISH+SKY、単一分子配列決定、例えば、当該技術分野において少なくともJ.Biotechnol.,86:289-301に記載されるもの、もしくはqPCRによる)、バイオマーカー核酸の過剰発現もしくは過小発現(例えば、ISH、ノーザンブロット、もしくはqPCRによる)、増加もしくは減少したバイオマーカータンパク質(例えば、IHCによる)および/もしくはバイオマーカー標的、または増加もしくは減少した活性(例えば、アッセイされたヒトがんタイプまたはがん試料の約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%超、もしくはそれ以上)、(2)生体試料、例えば、がんに罹患している対象、例えば、ヒト由来の組織、全血、血清、血漿、頬掻爬物、唾液、脳脊髄液、尿、糞便、もしくは骨髄を含有する試料におけるその絶対または比較的調節された存在または不在、(3)がんを有する患者(例えば、特定の免疫調節療法(例えば、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーターを単独でまたは免疫療法と組み合わせてのいずれかで)に応答する患者、またはそれに対する抵抗性を発症する患者)の臨床サブセットにおけるその絶対または比較的調節された存在または不在によって確認され得る。
【0102】
「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防的治療」等の用語は、疾患、障害、または状態を有しないが、それを発症する危険性があるか、またはそれに罹患し易い対象における疾患、障害、または状態を発症する可能性を低下させることを指す。
【0103】
「予後」という用語は、がんの起こり得る経過および転帰または疾患からの回復の可能性の予測を含む。いくつかの実施形態では、統計的アルゴリズムの使用により、個体におけるがんの予後が提供される。例えば、予後は、手術、がんの臨床亜型(例えば、肺がん、黒色腫、および腎細胞がん等の固形腫瘍)の発症、1つ以上の臨床的因子の発症、腸がんの発症、または疾患からの回復であり得る。
【0104】
「ポリペプチド断片」または「断片」という用語は、参照ポリペプチドに関して使用される場合、アミノ酸残基が参照ポリペプチド自体と比較して欠失しているが、残りのアミノ酸配列が、通常、参照ポリペプチドにおける対応する位置と同一であるポリペプチドを指す。かかる欠失は、参照ポリペプチドのアミノ末端で内部的に、またはそのカルボキシル末端で、または代替的に両方で生じ得る。断片は、典型的には、少なくとも5、6、8、もしくは10アミノ酸長、少なくとも14アミノ酸長、少なくとも20、30、40、もしくは50アミノ酸長、少なくとも75アミノ酸長、または少なくとも100、150、200、300、500、もしくはそれ以上のアミノ酸長である。それらは、例えば、それらが全長ポリペプチドの長さ未満である限り、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980、1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340、もしくはそれ以上の長さであり得、および/またはそれを含み得る。あるいは、それらは、それらが全長ポリペプチドの長さ未満である限り、かかる範囲を超えず、かつ/またはかかる範囲を除外し得る。
【0105】
「プローブ」という用語は、特異的に意図される標的分子、例えば、マーカーによってコードされるか、またはそれに対応するヌクレオチド転写物またはタンパク質に選択的に結合することができる任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成されるか、または適切な生物学的調製物に由来するかのいずれかであり得る。標的分子の検出のために、プローブは、本明細書に記載されるように、標識されるように特異的に設計され得る。プローブとして利用され得る分子の例には、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書で使用される場合、「再編成された」という用語は、Vセグメントが、それぞれ、完全VおよびVドメインを本質的にコードする立体配座におけるD-JまたはJセグメントに直接隣接して位置付けられている、重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の立体配置を指す。再編成された免疫グロブリン遺伝子座は、生殖系列DNAとの比較によって特定され得、再編成された遺伝子座は、少なくとも1つの組換えられた七量体/九量体相同性要素を有する。
【0107】
本明細書で使用される場合、「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指すよう意図されている。かかる用語が、特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫も指すよう意図されていることを理解されたい。変異または環境影響のいずれかによりある特定の修飾が後世で生じ得るため、かかる子孫は、実際には親細胞と同一ではない場合があるが、依然として本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0108】
「抵抗性」という用語は、免疫調節療法に対するがん試料または哺乳動物の獲得抵抗性または自然抵抗性(すなわち、治療的治療に対して無応答性であるか、または治療的治療に対する低下したまたは限定された応答を有すること)を指し、例えば、治療的治療に対して5%またはそれ以上、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、またはそれ以上低下した応答を有する。応答の低下は、抵抗性が獲得される前に同じがん試料または哺乳動物と比較することによって、または治療的治療に対する抵抗性を有しないことが知られている異なるがん試料または哺乳動物と比較することによって測定され得る。化学療法に対する典型的な獲得抵抗性は、「多剤抵抗性」と呼ばれる。多剤抵抗性は、P糖タンパク質によって媒介され得るか、または他の機構によって媒介され得るか、または哺乳動物が多剤抵抗性微生物または微生物の組み合わせに感染したときに生じ得る。治療的治療に対する抵抗性の決定は、当該技術分野で通例であり、当業者の技術の範囲内であり、例えば、「感作」として本明細書に記載の細胞増殖性アッセイおよび細胞死アッセイによって測定され得る。いくつかの実施形態では、「抵抗性を逆転させる」という用語は、一次がん療法(例えば、化学療法または放射線療法)単独では治療されていない腫瘍の腫瘍体積と比較して腫瘍体積の統計的に有意な減少をもたらすことができない状況下で、一次がん療法(例えば、化学療法または放射線療法)と組み合わせた第2の薬剤の使用が、治療されていない腫瘍の腫瘍体積と比較して統計的に有意なレベル(例えば、p<0.05)で腫瘍体積の有意な減少をもたらすことができることを意味する。これは、一般に、治療されていない腫瘍が対数律動的に成長しているときに行われる腫瘍体積測定に適用される。
【0109】
上述のように、「応答」という用語は、概して、例えば、臨床的介入の経過、有効性、または転帰への影響を決定することに関連している。例えば、療法に対する応答(例えば、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーターを単独でまたは免疫チェックポイント阻害療法等の免疫療法と組み合わせてのいずれかで)は、療法に対する任意の応答(例えば、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とKIR3DL3等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーターを単独でまたは免疫チェックポイント阻害療法等の免疫療法と組み合わせてのいずれかで)に関し、がんの場合、好ましくは、ネオアジュバントまたはアジュバント化学療法の開始後のがん細胞数、腫瘍質量、および/または体積の変化に関する。過剰増殖性障害応答が、例えば、有効性についてまたはネオアジュバントもしくはアジュバント状況で評価され得、全身介入後の腫瘍サイズが、CT、PET、マンモグラム、超音波、または触診によって測定される初期サイズおよび寸法と比較され得る。応答は、生検または外科的切除後の腫瘍のキャリパー測定または病理学検査によっても評価され得る。応答は、腫瘍体積のパーセンテージ変化等の量的様式で、または「病理学的完全寛解」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、もしくは他の質的基準等の質的様式で記録され得る。過剰増殖性障害応答の評価は、ネオアジュバントまたはアジュバント療法開始後早期に、例えば、数時間後、数日後、数週間後、または好ましくは数ヶ月後に行われ得る。応答評価の典型的なエンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終了時または残留腫瘍細胞および/もしくは腫瘍床の外科的除去時である。これは、典型的には、ネオアジュバント療法開始の3ヶ月後である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療的治療の臨床的有効性は、臨床的有用率(CBR)を測定することによって決定され得る。臨床的有用率は、療法終了の少なくとも6ヶ月後の時点での完全寛解(CR)にある患者のパーセンテージ、部分寛解(PR)にある患者の数、および安定疾患(SD)を有する患者の数の合計を決定することによって測定される。この公式の省略表現は、6ヶ月にわたるCBR=CR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、特定のがん治療レジメンのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、またはそれ以上である。がん療法に対する応答を評価するための追加の基準は、「生存期間」に関連し、これには、死亡までの生存期間、別名、全生存期間(当該死亡は、原因を問わないか、または腫瘍関連のいずれかであり得る)、「無再発生存期間」(再発という用語は、局所再発および遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存期間、無病生存期間(疾患という用語は、がんおよびそれに関連する疾患を含むものとする)のすべてが含まれる。当該生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)および終了点(例えば、死、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。加えて、治療有効性についての基準は、化学療法に対する応答、生存確率、所与の期間以内の転移確率、および腫瘍再発確率を含むように拡大され得る。例えば、適切な閾値を決定するために、特定のがん治療レジメンが対象集団に投与され得、転帰が任意の免疫調節療法の投与前に決定されたバイオマーカー測定値と相関付けられ得る。転帰測定値は、ネオアジュバント状況で施される療法に対する病理学的応答であり得る。あるいは、バイオマーカー測定値が既知である免疫調節療法後の対象について、全生存期間および無病生存期間等の転帰測定値がある期間にわたって監視され得る。ある特定の実施形態では、投与される用量は、当該技術分野で既知のがん治療薬の標準用量である。対象が監視される期間は異なり得る。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヶ月間監視され得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」という用語は、抗体の所定の抗原への結合を指す。典型的には、抗体は、ヒトKIR3DL3を分析物として、かつ抗体をリガンドとして使用したBIACORE(登録商標)アッセイ器具における表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定される場合、およそ10-7M未満、例えば、およそ10-8M、10-9M、もしくは10-10M未満、またはそれよりもさらに低い親和性(K)で結合し、所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)または密接に関連した抗原への結合に対するその親和性よりも少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、もしくは10.0倍、またはそれ以上高い親和性で所定の抗原に結合する。「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書で「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義に使用され得る。
【0111】
「対象」という用語は、任意の健常動物、哺乳動物、もしくはヒト、または目的とする状態(例えば、がん)に罹患している任意の動物、哺乳動物、もしくはヒトを指す。「対象」という用語は、「患者」と同義である。いくつかの実施形態では、この用語は、免疫応答が誘発され得る、生きている生物を含むように意図されている。対象の代表的な非限定的な例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「生存期間」という用語には、死亡までの生存期間、別名、全生存期間(当該死亡は、原因を問わないか、または腫瘍関連のいずれかであり得る)、「無再発生存期間」(再発という用語は、局所再発および遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存期間、無病生存期間(病という用語は、がんおよびそれに関連する疾患を含むものとする)のすべてが含まれる。当該生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)および終点(例えば、死、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。加えて、治療有効性についての基準は、化学療法に対する応答、生存確率、所与の期間以内の転移確率、および腫瘍再発確率を含むように拡大され得る。
【0113】
「耐性」または「無応答性」という用語は、刺激、例えば、活性化受容体またはサイトカインによる刺激に対する免疫細胞等の細胞の屈折性を含む。無応答性は、例えば、免疫抑制剤への曝露または高用量の抗原への曝露により生じ得る。いくつかの独立した方法が耐性を引き起こし得る。1つの機構は、「アネルギー」と称され、細胞がエフェクター機能を有する細胞に分化するのではなく、非応答性細胞としてインビボで存続する状態として定義される。かかる屈折性は、一般に、抗原特異的であり、耐性化抗原への曝露が終了した後に持続する。例えば、T細胞におけるアネルギーは、IL-2等のサイトカイン産生の欠如を特徴する。T細胞アネルギーは、T細胞が抗原に曝露され、第1のシグナル(T細胞受容体またはCD-3媒介性シグナル)を第2のシグナル(共刺激シグナル)の不在下で受けるときに生じる。これらの条件下で、細胞の同じ抗原への再曝露(再曝露が共刺激ポリペプチドの存在下で生じる場合でさえも)により、サイトカインの産生に失敗し、それ故に、増殖に失敗する。しかしながら、アネルギーT細胞は、サイトカイン(例えば、IL-2)で培養された場合、増殖することができる。例えば、T細胞アネルギーは、ELISAまたは指標細胞株を使用した増殖アッセイによって測定されるTリンパ球によるIL-2産生の欠如によっても観察され得る。あるいは、レポーター遺伝子構築物が使用され得る。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL-2遺伝子エンハンサーの制御下で異種プロモーターによってまたはエンハンサー中に見られ得るAP1配列の多量体によって誘導されるIL-2遺伝子転写を開始することができない(Kang et al.(1992)Science 257:1134)。別の機構は、「疲弊」と称される。T細胞疲弊は、多くの慢性感染症およびがん発症中に生じるT細胞機能障害の状態である。これは、不良なエフェクター機能、阻害性受容体の持続発現、および機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは別個の転写状態によって定義される。
【0114】
「転写ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド転写物」とは、本開示によって包含されるマーカーの転写、RNA転写物(存在する場合)の正常転写後プロセシング(例えば、スプライシング)、およびRNA転写物の逆転写によって作製される成熟mRNAのすべてまたは一部に相補的なまたはそれと相同のポリヌクレオチド(例えば、mRNA、hnRNA、cDNA、またはかかるRNAもしくはcDNAの類似体)である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「T細胞」という用語は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞を含む。T細胞という用語は、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞の両方も含む。「抗原提示細胞」という用語は、専門的抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、単球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞)、ならびに他の抗原提示細胞(例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイト)を含む。従来のT細胞、別名、TconvまたはTeffは、1つ以上のT細胞受容体の発現により免疫応答を増強するためのエフェクター機能(例えば、サイトカイン分泌、細胞毒性活性、抗自己認識等)を有する。TconまたはTeffは、一般に、Tregではない任意のT細胞集団として定義され、それらには、例えば、ナイーブT細胞、活性化T細胞、メモリーT細胞、静止Tcon、または例えばTh1もしくはTh2系統に分化したTconが含まれる。いくつかの実施形態では、Teffは、非Treg T細胞のサブセットである。いくつかの実施形態では、Teffは、CD4+TeffまたはCD8+Teff、例えば、CD4+ヘルパーTリンパ球(例えば、Th0、Th1、Tfh、またはTh17)およびCD8+細胞毒性Tリンパ球である。本明細書にさらに記載されるように、細胞毒性T細胞は、CD8+Tリンパ球である。「ナイーブTcon」とは、骨髄で分化しており、胸腺での正および負の中枢選択プロセスを成功させたが、抗原への曝露によって活性化されていないCD4T細胞である。ナイーブTconは、L-セレクチン(CD62L)の表面発現、CD25、CD44、またはCD69等の活性化マーカーの不在、およびCD45RO等のメモリーマーカーの不在を一般に特徴としている。したがって、ナイーブTconは、静止状態にあり、非分裂性であり、恒常的生存にインターロイキン-7(IL-7)およびインターロイキン-15(IL-15)を必要とすると考えられている(少なくとも、WO2010/101870を参照のこと)。かかる細胞の存在および活性は、免疫応答の抑制との関連で望ましくない。Tregとは異なり、Tconは、アネルギー性ではなく、抗原ベースのT細胞受容体活性化に応答して増殖することができる(Lechler et al.(2001)Philos.Trans.R.Soc.Lond.Biol.Sci.356:625-637)。腫瘍では、疲弊した細胞がアネルギーの特徴を提示し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、Vセグメントに関して「再編成されていない」または「生殖系列立体配置」という用語は、VセグメントがDセグメントまたはJセグメントに直接隣接するように組換えられていない立体配置を指す。
【0117】
II.モノクローナル抗体、免疫グロブリン、およびポリペプチド
本開示は、部分的に、KIR3DL3に対して産生される単離されたモノクローナル抗体またはそれらの断片(本明細書に列記されるモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体等)に関する。かかる分子は、部分的に、それらが、診断アッセイ、例えば、免疫組織化学的(IHC)、ウエスタンブロット、細胞間フロー、ELISA等においてKIR3DL3タンパク質を認識する能力を呈することを特徴とする。かかる分子は、部分的に、それらが、HHLA2等の結合パートナーへのKIR3DL3の結合を阻害する能力を呈することを特徴とする。
【0118】
「HHLA2」という用語、別名、ヒト内因性レトロウイルスH長末端反復関連タンパク質2、HERV-H LTR関連2、B7y、B7H7、B7-H5、B7-H7は、B7ファミリーのメンバーを指す。HHLA2タンパク質は、正常ヒト組織では限定された発現を有するが、ヒトがんでは広範に発現される。HHLA2タンパク質が3つのIg様ドメイン(IgV-IgC-IgV)を有する膜タンパク質である一方で、B7ファミリーの他のメンバーは、一般に、2つのみのIgドメイン(IgV-IgC)を有する。正常ヒト組織中のHHLA2タンパク質は、腎臓、腸、胆嚢、および乳房の上皮、ならびに胎盤栄養膜細胞で発現される。免疫系では、HHLA2タンパク質は、ヒト単球/マクロファージ上で構成的に発現される。HHLA2は、ヒトT細胞機能を制御し、例えば、HHLA2は、T細胞増殖およびサイトカイン産生を阻害し、T細胞産生およびサイトカイン産生を増加させる。HHLA2は、結腸直腸、腎臓、肺、膵臓、卵巣、および前立腺由来の広範なヒトがんにおいてより高いレベルで発現される。HHLA2は、甲状腺、黒色腫、肝臓、膀胱、結腸、腎臓、乳房、および食道のヒトがんでも発現される。
【0119】
ある特定のHHLA2の構造および機能は、当該技術分野で周知である(例えば、Xiao et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2201-2203、Janakiram et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2359-2366、Mager et al.(1999)Genomics 21:2359-2366、Flajnik et al.(2012)Immunogenet.64:571-590、Zhao et al.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110:9879-9884、およびZhu et al.(2013)Nat.Commun.4:2043を参照のこと)。
【0120】
「HHLA2」という用語は、その断片、バリアント(例えば、対立遺伝子バリアント)、および誘導体を含むよう意図されている。代表的なヒトHHLA2 cDNAおよびヒトHHLA2タンパク質配列は、当該技術分野で周知であり、National Center for Biotechnology Information(NCBI)から公的に入手可能である。ヒトHHLA2バリアントには、バリアント1(NM_007072.3およびNP_009003.1、最長転写物を表し、最長アイソフォームをコードする)、バリアント2(NM_001282556.1およびNP_001269485.1、代替プロモーターの使用を表し、バリアント1と比較して5’UTRが異なる)、バリアント3(NM_001282557.1およびNP_001269486.1、代替プロモーターの使用を表し、バリアント1と比較して5’UTRが異なる)、バリアント4(NM_001282558.1およびNP_001269487.1、アイソフォームbをコードし、代替プロモーターの使用を表し、バリアント1と比較して5’UTRが異なり、かつ3’コーディング領域内に代替インフレームエクソンを欠き、アイソフォームaよりも短いアイソフォームをもたらす)、およびバリアント5(NM_001282559.1およびNP_001269488.1、アイソフォームcをコードし、代替プロモーターの使用を表し、バリアント2と比較して複数の相違点を有し、別個の5’UTRをもたらし、バリアント1と比較して代替開始コドンで翻訳を開始させ、別個のN末端およびアイソフォームaよりも短いアイソフォームをもたらす)が含まれる。ヒト以外の生物中のHHLA2オルソログの核酸およびポリペプチド配列が周知であり、例えば、カエルHHLA2(NM_001128644.1およびNP_001122116.1)が含まれる。HHLA2オルソログの代表的な配列が以下の表1に提示される。
【0121】
HHLA2タンパク質の検出に好適な抗HHLA2抗体が当該技術分野で周知であり、例えば、抗体カタログ番号ab107119およびab214327(abcam)、抗体PA5-24146およびPA5-6313(ThermoFisher Scientific)、抗体MAB80841、AF8084、FAB80841R、FAB80841T、およびMAB8084(R&D systems)、抗体AP52042PU-N(Origene)、抗体NBP2-49187、MAB80842、H00011148-B01P、およびNBP2-32420(Novus Biologicals)、抗体GTX51981(GeneTex)、抗体HPA055478(Atlas Antibodies)、抗体LS-C321945、LS-C308228、LS-C246742、LS-C246743、LS-C246744、LS-C236210、およびLS-C249186(LifeSpan Biosiences)等が含まれる。さらに、HHLA2発現を減少させるための複数のsiRNA、shRNA、CRISPR構築物、例えば、shRNA製品番号TL312462、TF312462、TR312462、TG312462、およびTL312462V、siRNA製品番号SR323358(Origene Technologies)、SiRNA製品番号i009616、i009616a、i009616b、i009616c、i009616d、iV009616、iV009616a、iV009616b、iV009616c、iV009616d、iAAV00961600、iAAV00961601、iAAV00961602、iAAV00961603、iAAV00961604、iAAV00961605、iAAV00961606、iAAV00961607、iAAV00961608、およびiAAV00961609、CRISPR製品番号K0950321、K0950301、K0950302、K0950303、K0950304、K0950305、K0950306、K0950307、K0950308、およびK0950311(abm)、siRNA製品番号sc-78498、shRNA製品番号sc-78498-Vおよびsc-78498-SH、CRISPR製品番号sc-411576、sc-411576-HDR、sc-411576-NIC、sand c-411576-NIC-2(Santa Cruz Biotechnology)等は、上記の会社の市販製品リストで見つけることができる。この用語がHHLA2分子に関して本明細書に記載される特徴の任意の組み合わせを指すためにさらに使用され得ることに留意されたい。例えば、配列組成、同一性の割合、配列長さ、ドメイン構造、機能的活性等の任意の組み合わせを使用して、本開示によって包含されるHHLA2分子を記述することができる。
【0122】
「HHLA2経路」という用語は、HHLA2およびHHLA2とTMIGD2およびKIR3DL3等のその天然結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を含む。
【0123】
「KIR3DL3経路」という用語は、KIR3DL3およびKIR3DL3とHHLA2等のその天然結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を含む。
【0124】
「TMIGD2」という用語は、2、CD28H、IGPR1、およびIGPR-1を含む膜貫通および免疫グロブリンドメインを指し、これは、CD28、CTLA-4、ICOS、およびPD-1と約10%のアミノ酸同一性を有する膜タンパク質である。TMIGD2は、1つの細胞外IgV様ドメイン、膜貫通領域、および2つのチロシンシグナル伝達モチーフを有するプロリンリッチ細胞質ドメインを有する。TMIGD2タンパク質は、すべてのナイーブT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の大半上で構成的に発現されるが、T制御性細胞またはB細胞上では構成的に発現されない。TMIGD2発現は、T細胞の反復刺激により緩徐に失われる。これと一致して、TMIGD2は、メモリーT細胞の約半数のみで発現され、TMIGD2陰性T細胞は、末端が分化した老化表現型を有する。TMIGD2が内皮および上皮細胞で発現され、細胞遊走を減少させる機能を果たし、血管新生中に毛細管形成を促進することも示されている。
【0125】
ある特定のTMIGD2の構造および機能は、当該技術分野で周知である(例えば、Xiao et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2201-2203、Janakiram et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2359-2366、Zhu et al.(2013)Nat.Commun.4:2043、およびRahimi(2012)Cell 23:1646-1656)。
【0126】
「TMIGD2」という用語は、その断片、バリアント(例えば、対立遺伝子バリアント)、および誘導体を含むよう意図されている。代表的なヒトTMIGD2 cDNAおよびヒトTMIGD2タンパク質配列は、当該技術分野で周知であり、National Center for Biotechnology Information(NCBI)から公的に入手可能である。ヒトTMIGD2アイソフォームには、アイソフォーム1(NM_144615.2およびNP_653216.2)、アイソフォーム2(NM_001169126.1およびNP_001162597.1、バリアント1と比較して3’コーディング領域内で代替インフレームスプライス部位を使用し、アイソフォーム1と比較してより短いアイソフォームをもたらす)、およびアイソフォーム3(NM_001308232.1およびNP_001295161.1、バリアント1と比較して5’コーディング領域内に代替インフレームエクソンを欠き、アイソフォーム1と比較してより短いアイソフォームをもたらす)が含まれる。ヒト以外の生物中のTMIGD2オルソログの核酸およびポリペプチド配列が周知であり、例えば、チンパンジーTMIGD2(XM_009434393.2およびXP_009432668.2、ならびにXM_001138228.4およびXP_001138228.3)、およびウシTMIGD2(XM_005208980.3およびXP_005209037.1、XM_005208979.3およびXP_005209036.1、ならびにXM_002688933.5およびXP_002688979.1)が含まれる。TMIGD2オルソログの代表的な配列が以下の表1に提示される。
【0127】
TMIGD2タンパク質の検出に好適な抗TMIGD2抗体が当該技術分野で周知であり、例えば、抗体カタログ番号MAB8316、MAB83162、FAB8316R、FAB83162R、FAB83162G、FAB83162N、FAB83162S、FAB83162T、FAB83162U、およびFAB83162V(R&D systems)、抗体TA326695(Origene)、抗体PA5-52787、およびPA5-38055(ThermoFisher Scientific)、抗体MAB83161およびNBP1-81164(Novus Biologicals)等が含まれる。さらに、TMIGD2発現を減少させるための複数のsiRNA、shRNA、CRISPR構築物、例えば、shRNA製品番号TF317829、TG317829、TL317829、TR317829、およびTL317829V、siRNA製品番号SR314913、ならびにCRISPR製品番号KN204938、KN204938LP、KN204938RB、およびKN204938BN(Origene Technologies)、siRNA製品番号i024914、i024914a、i024914b、i024914c、i024914d、iV024914、iV024914a、iV024914b、iV024914c、iV024914d、iAAV02491400、iAAV02491401、iAAV02491402、iAAV02491403、iAAV02491404、iAAV02491405、iAAV02491406、iAfAV02491407、iAAV02491408、およびiAAV02491409、ならびにCRISPR製品番号K2409321、K2409301、K2409302、K2409303、K2409304、K2409305、K2409306、K2409307、K2409308、およびK2409311(Abm)、siRNA製品番号sc-97757、shRNA製品番号sc-97757-SHおよびsc-97757-V、ならびにCRISPR製品番号sc-414261、sc-414261-HDR、sc-414261-NIC、およびsc-414261-NIC-2(Santa Cruz Biotechnology)、shRNA製品番号SH888208およびSH874720(Vigene Biosciences)等は、上記の会社の市販製品リストで見つけることができる。さらに、TMIGD2発現を増加させるための複数のCRISPR構築物、例えば、CRISPR製品番号K2409378、K2409377、K2409376、K2409375、K2409374、K2409373、K2409372、およびK2409371(Abm)、CRISPR製品番号sc-414261-ACT、sc-414261-ACT-2、sc-414261-LAC、およびsc-414261-LAC-2(Santa Cruz Biotechnology)等は、上記の会社の市販製品リストで見つけることができる。この用語がTMIGD2分子に関して本明細書に記載される特徴の任意の組み合わせを指すためにさらに使用され得ることに留意されたい。例えば、配列組成、同一性の割合、配列長さ、ドメイン構造、機能的活性等の任意の組み合わせを使用して、本開示によって包含されるTMIGD2分子を記述することができる。
【0128】
上述のTMIGD2とHHLA2との間の相互作用、ならびにそれらの機能は、当該技術分野で周知である(例えば、Xiao et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2201-2203、およびJanakiram et al.(2015)Clin.Cancer Res.21:2359-2366を参照のこと)。
【0129】
「KIR3DL3」という用語、別名、キラー細胞免疫グロブリン様受容体3DL3、CD158Z、KIR3DL7、KIR44、KIRC1、KIR2DS2、キラー細胞免疫グロブリン様受容体、3つのIgドメインおよび長い細胞質尾部3とは、ナチュラルキラー細胞およびT細胞のサブセットによって発現される膜貫通糖タンパク質ファミリーのメンバーを指す。キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)遺伝子は、多型であり、高度に相同であり、それらは、1Mb白血球受容体複合体(LRC)内の染色体19q13.4上のクラスターに見られる。KIR遺伝子クラスターの遺伝子含有量はハプロタイプ間で異なるが、いくつかの「フレームワーク」遺伝子がすべてのハプロタイプに見られる(KIR3DL3、KIR3DP1、KIR3DL4、KIR3DL2)。KIRタンパク質は、細胞外免疫グロブリンドメイン(2Dまたは3D)の数およびそれらが長い(L)細胞質ドメインを有するか短い(S)細胞質ドメインを有するかによって分類される。長い細胞質ドメインを有するKIRタンパク質が免疫チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を介してリガンド結合時に阻害性シグナルを伝達する一方で、短い細胞質ドメインを有するKIRタンパク質はITIMモチーフを欠き、その代わりに、TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質に結合して、活性化シグナルを伝達する。いくつかのKIRタンパク質のリガンドはHLAクラスI分子のサブセットであり、それ故に、KIRタンパク質が免疫応答の制御に重要な役割を果たすと考えられている。この遺伝子は、すべてのハプロタイプに存在する「フレームワーク」遺伝子座のうちの1つである。KIR3DL3タンパク質は、N末端シグナル配列、3つのIgドメイン、正電荷残基を欠く膜貫通領域、および免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を含む長い細胞質尾部を有する。KIR3DL3は、他のKIRに見られるストーク領域を欠く。
【0130】
ある特定のKIR3DL3の構造および機能は、当該技術分野で周知である(例えば、Hsu et al.(2002)Immunol Rev.190:40-52、Trompeter et al.(2005)J.Immunol.174:4135-4143、Trundley et al.(2006)Immunogenet.57:904-916、およびJones et al.(2006)Immunogenet.58:614-627を参照のこと)。
【0131】
「KIR3DL3」という用語は、その断片、バリアント(例えば、対立遺伝子バリアント)、および誘導体を含むよう意図されている。代表的なヒトKIR3DL3 cDNAおよびヒトKIR3DL3タンパク質配列は、当該技術分野で周知であり、National Center for Biotechnology Information(NCBI)から公的に入手可能である。例えば、少なくとも1つのヒトKIR3DL3アイソフォームが既知であり、ヒトKIR3DL3(NM_153443.4)は、転写物(NP_703144.3)によってコード可能である。ヒト以外の生物中のKIR3DL3オルソログの核酸およびポリペプチド配列が周知であり、例えば、チンパンジーKIR3DL3(XM_003316679.3およびXP_003316727.3)、アカゲザルKIR3DL3(NM_001104552.2およびNP_001098022.1)、マウスKIR3DL3(NM_001310690.1およびNP_001297619.1、NM_177749.4およびNP_808417.2、NM_177748.2およびNP_808416.1)、ならびにラットKIR3DL3(NM_181479.2およびNP_852144.1)が含まれる。KIR3DL3オルソログの代表的な配列が以下の表1に提示される。
【0132】
KIR3DL3タンパク質の検出に好適な抗KIR3DL3抗体が当該技術分野で周知であり、例えば、抗体カタログ番号FAB8919R、MAB8919、FAB8919G、FAB8919N、FAB8919S、FAB8919T、FAB8919U、およびFAB8919V(R&D systems)、抗体AP52374PU-N(Origene)、抗体PA5-26178(ThermoFisher Scientific)、抗体OAAB05761、OAAF08125、OAAN04122、OACA09134、OACA09135、OACD04988、およびOASG01190(Aviva Systems Biology)等が含まれる。さらに、KIR3DL3発現を減少させるための複数のsiRNA、shRNA、CRISPR構築物、例えば、shRNA製品番号TF303684、TR303684、TG303684、TL303684、TL303684V、siRNA製品番号SR314516、ならびにCRISPR製品番号KN224383、KN224383BN、KN224383RB、およびKN224383LP(Origene Technologies)、siRNA製品番号i011627、i011627a、i011627b、i011627c、i011627d、iV011627、iV011627a、iV011627b、iV011627c、iV011627d、iAAV01162700、iAAV01162701、iAAV01162702、iAAV01162703、iAAV01162704、iAAV01162705、iAAV01162706、iAAV01162707、iAAV01162708、およびiAAV01162709、ならびにCRISPR製品番号K1151421、K1151401、K1151402、K1151403、K1151404、K1151405、K1151406、K1151407、K1151408、およびK1151411(Abm)、siRNA製品番号sc-60892、shRNA製品番号sc-60892-SHおよびsc-60892-V、ならびにCRISPR製品番号sc-406227、sc-406227-KO-2、sc-406227-HDR-2、sc-406227-NIC、およびsc-406227-NIC-2(Santa Cruz Biotechnology)等は、上記の会社の市販製品リストで見つけることができる。この用語がKIR3DL3分子に関して本明細書に記載される特徴の任意の組み合わせを指すためにさらに使用され得ることに留意されたい。例えば、配列組成、同一性の割合、配列長さ、ドメイン構造、機能的活性等の任意の組み合わせを使用して、本開示によって包含されるKIR3DL3分子を記述することができる。
【0133】
「末梢血球亜型」という用語は、好酸球、好中球、T細胞、単球、NK細胞、顆粒球、およびB細胞を含むが、これらに限定されない末梢血中に通常見られる細胞型を指す。
【0134】
「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックもしくはトランス染色体である動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体(以下にさらに記載される)、(b)形質転換されて抗体を発現する宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列および/または非生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)に供され得、それ故に、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V配列およびV配列に由来し、かつそれに関連している一方で、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー中に天然に存在しない場合がある配列である。
【0135】
少なくとも1つのバイオマーカーの存在またはレベルを検出または決定するために使用される「試料」という用語は、典型的には、全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便(例えば、糞)、涙、および任意の他の体液(例えば、上の「体液」の定義下で記載されたもの)、または組織試料(例えば、生検)、例えば、小腸、結腸試料、または外科的切除組織である。ある特定の例では、本開示によって包含される方法は、試料中の少なくとも1つのマーカーの存在またはレベルの検出または決定前に、個体から試料を得ることをさらに含む。
【0136】
本明細書で使用される「RNA干渉剤」は、RNA干渉(RNAi)によって標的バイオマーカー遺伝子の発現に干渉するか、またはそれを阻害する任意の薬剤として定義される。かかるRNA干渉剤には、本開示によって包含される標的バイオマーカー遺伝子と相同のRNA分子を含む核酸分子またはその断片、短干渉RNA(siRNA)、およびRNA干渉(RNAi)によって標的バイオマーカー核酸の発現に干渉するか、またはそれを阻害する小分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
「RNA干渉(RNAi)」とは、標的バイオマーカー核酸と同一または極めて同様の配列のRNAの発現または導入により、標的とされた遺伝子から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の配列特異的分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)がもたらされ(Coburn,G.and Cullen,B.(2002)J.of Virology 76(18):9225を参照のこと)、それにより、標的バイオマーカー核酸の発現を阻害する、進化的に保存されたプロセスである。一実施形態では、RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)である。このプロセスは、植物、脊椎動物、および哺乳類細胞で説明されている。自然界では、RNAiは、dsRNA特異的エンドヌクレアーゼDicerによって開始され、それにより、長いdsRNAのsiRNAと呼ばれる二本鎖断片への前進的な切断が促進される。siRNAは、標的mRNAを認識して切断するタンパク質複合体に組み込まれる。RNAiは、核酸分子、例えば、合成siRNA、shRNA、または他のRNA干渉剤の導入によって開始されて、標的バイオマーカー核酸の発現を阻害またはサイレンシングすることもできる。本明細書で使用される場合、「標的バイオマーカー核酸発現の阻害」または「マーカー遺伝子発現の阻害」は、標的バイオマーカー核酸または標的バイオマーカー核酸によってコードされるタンパク質の発現またはタンパク質活性もしくはレベルの任意の減少を含む。この減少は、RNA干渉剤によって標的とされていない標的バイオマーカー核酸の発現または標的バイオマーカー核酸によってコードされるタンパク質の活性もしくはレベルと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは99%、またはそれ以上の減少である。
【0138】
RNAiに加えて、ゲノム編集を使用して、目的とするバイオマーカーのコピー数または遺伝子配列、例えば、HHLA2、TMIGD2、および/またはKIR3DL3等のKIR3DL3経路成分等の目的とするバイオマーカーの構成的もしくは誘導性ノックアウトまたは変異を調節することができる。例えば、CRISPR-Cas系が、ゲノム核酸の正確な編集のために(例えば、非機能的またはヌル変異を作製するために)使用され得る。かかる実施形態では、CRISPRガイドRNAおよび/またはCas酵素が発現され得る。例えば、ガイドRNAのみを含むベクターが、Cas9酵素に対してトランスジェニックな動物または細胞に投与され得る。同様の戦略が使用され得る(例えば、デザイナー亜鉛フィンガー、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、またはホーミングメガヌクレアーゼ)。かかる系は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,697,359号、Sander and Joung(2014)Nat.Biotech.32:347-355、Hale et al.(2009)Cell 139:945-956、Karginov and Hannon(2010)Mol.Cell 37:7、米国特許公開第2014/0087426号および同第2012/0178169号、Boch et al.(2011)Nat.Biotech.29:135-136、Boch et al.(2009)Science 326:1509-1512、Moscou and Bogdanove(2009)Science 326:1501、Weber et al.(2011)PLoS One 6:e19722、Li et al.(2011)Nucl.Acids Res.39:6315-6325、Zhang et al.(2011)Nat.Biotech.29:149-153、Miller et al.(2011)Nat.Biotech.29:143-148、Lin et al.(2014)Nucl.Acids Res.42:e47を参照のこと)。かかる遺伝子戦略は、当該技術分野で周知の方法に従って構成的発現系または誘導性発現系を使用することができる。
【0139】
「Piwi相互作用RNA(piRNA)」とは、低分子非コーディングRNAの最大クラスである。piRNAは、Piwiタンパク質との相互作用によりRNA-タンパク質複合体を形成する。これらのpiRNA複合体は、生殖系列細胞、特に精子形成時の生殖系列細胞におけるレトロトランスポゾンおよび他の遺伝要素の後成的遺伝子サイレンシングおよび転写後遺伝子サイレンシングの両方に関連している。これらは、サイズ(21~24ヌクレオチドではなく26~31ヌクレオチド)、配列保存の欠如、および複雑さの増大の点でマイクロRNA(miRNA)と異なる。しかしながら、他の低分子RNAと同様に、piRNAは、遺伝子サイレンシング、特にトランスポゾンサイレンシングに関与すると考えられている。piRNAの大半がトランスポゾン配列に対してアンチセンスであり、これは、トランスポゾンがpiRNA標的であることを示唆する。哺乳動物において、トランスポゾンサイレンシング時のpiRNAの活性が胚発生中に最も重要であると思われ、C.elegansおよびヒトの両方において、piRNAが精子形成に必要である。piRNAは、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)の形成によるRNAサイレンシングにおいて役割を果たす。
【0140】
「アプタマー」とは、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチドまたはペプチド分子である。「核酸アプタマー」とは、様々な分子標的、例えば、小分子、タンパク質、核酸、さらには細胞、組織、および生物に結合するようにインビトロ選択ラウンドの繰り返しまたは同等にSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)により操作された核酸種である。「ペプチドアプタマー」とは、特定の標的分子に結合するように選択または操作された人工タンパク質である。これらのタンパク質は、タンパク質骨格によって呈される可変配列の1つ以上のペプチドループからなる。これらは、典型的には、コンビナトリアルライブラリから単離され、その後、多くの場合、定方向変異または可変領域変異誘発および選択ラウンドによって改善される。ペプチドアプタマーの進化である「アフィマータンパク質」とは、特定の標的タンパク質に高親和性結合表面を提供するペプチドループを呈するように操作された高度に安定した小さいタンパク質である。これは、シスタチンのシステインプロテアーゼ阻害剤ファミリーに由来する低分子量(12~14kDa)のタンパク質である。アプタマーは、一般に使用される生体分子である抗体と競合する分子認識特性を提供するため、生物工学的用途および治療的用途に有用である。それらの区別認識に加えて、アプタマーは、試験管内で完全に操作され得、化学合成によって容易に産生され、望ましい保管特性を有し、かつ治療的用途において免疫原性をほとんどまたは全く誘発しないため、抗体に優る利点を提供する。
【0141】
本明細書で「低分子干渉RNA」とも称される「短干渉RNA」(siRNA)は、例えば、RNAiによって標的バイオマーカー核酸の発現を阻害する機能を果たす薬剤として定義される。siRNAは、化学的に合成され得るか、インビトロ転写によって産生され得るか、または宿主細胞中に産生され得る。一実施形態では、siRNAは、約15~約40ヌクレオチド長、好ましくは約15~約28ヌクレオチド長、より好ましくは約19~約25ヌクレオチド長、より好ましくは約19、20、21、または22ヌクレオチド長の二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、約0、1、2、3、4、または5ヌクレオチド長を有する3’および/または5’オーバーハングを各鎖に有し得る。オーバーハングの長さは、これらの2つの鎖間で独立しており、すなわち、一方の鎖上のオーバーハングの長さは、第2の鎖上のオーバーハングの長さに依存しない。好ましくは、siRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)によりRNA干渉を促進することができる。
【0142】
別の実施形態では、siRNAは、小ヘアピン(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)である。一実施形態では、これらのshRNAは、短い(例えば、19~25ヌクレオチドの)アンチセンス鎖、続いて、5~9ヌクレオチドのループ、および類似センス鎖から成る。あるいは、センス鎖がヌクレオチドループ構造に先行する場合があり、アンチセンス鎖が続き得る。これらのshRNAは、プラスミド、レトロウイルス、およびレンチウイルス中に含まれ得、例えば、ポリメラーゼIII U6プロモーター、または別のプロモーターから発現され得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれるStewart,et al.(2003)RNA Apr;9(4):493-501を参照のこと)。
【0143】
RNA干渉剤、例えば、siRNA分子は、がんで過剰発現されるバイオマーカー遺伝子の発現を阻害し、それにより、対象におけるがんを治療、予防、または抑制するために、がんを有するか、またはがんを有する危険性のある患者に投与され得る。
【0144】
「小分子」という用語は、当該技術分野の用語であり、約1000分子量未満または約500分子量未満の分子を含む。一実施形態では、小分子は、ペプチド結合を排他的に含まない。別の実施形態では、小分子は、オリゴマーではない。活性についてスクリーニングされ得る例示の小分子化合物には、ペプチド、ペプチド模倣薬、核酸、炭水化物、有機小分子(例えば、ポリケチド)(Cane et al.1998.Science 282:63)、および天然産物抽出物ライブラリが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、これらの化合物は、非ペプチド性有機小分子化合物である。さらなる実施形態では、小分子は、生合成のものではない。
【0145】
生物学的に活性な薬剤に適用される「選択的モジュレーター」または「選択的に調節する」という用語は、標的との直接または相互作用相互作用により、オフターゲット細胞集団、シグナル伝達活性等と比較して、細胞集団、シグナル伝達活性等の標的を調節する薬剤の能力を指す。例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用をKIR3DL3と別の結合パートナーとの間の別の相互作用よりも選択的に阻害する薬剤、および/または目的とする細胞集団におけるかかる相互作用は、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーター、少なくとも1つの他の結合パートナーに対する薬剤の活性の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、2倍、またはそれ以上である(例えば、少なくとも約3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍、105倍、110倍、120倍、125倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍、400倍、450倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、3000倍、3500倍、4000倍、4500倍、5000倍、5500倍、6000倍、6500倍、7000倍、7500倍、8000倍、8500倍、9000倍、9500倍、10000倍、もしくはそれ以上、またはそれらの間の任意の範囲(境界値も含む)である相互作用)に対する活性を有し得る。かかる測定基準は、典型的には、相互作用/活性を半減させるのに必要な薬剤の相対量の観点で表現される。
【0146】
より一般には、「選択的」という用語は、優先的な作用または機能を指す。「選択的」という用語は、他の標的と比較した目的とする特定の標的における優先的効果の観点で定量化され得る。例えば、測定変数(例えば、他の細胞(Tcon等の他の免疫細胞等)に対するTreg/Bregの調節)は、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、もしくはそれ以上、またはそれらの間の任意の範囲(境界値も含む)(例えば、50%~16倍)であり得、意図されないまたは望ましくない標的に対する目的とする標的では異なる。同じ倍率分析を使用して、所与の組織、細胞集団、測定変数、測定効果等、例えば、Treg:Tcon比、Breg:Tcon比、過剰増殖性細胞成長速度または体積、Treg/Breg増殖速度または数等における効果の規模を確認することができる。
【0147】
対照的に、「特異的」という用語は、排他的作用または機能を指す。例えば、HHLA2-KIR3DL3相互作用の特異的調節は、HHLA2-KIR3DL3相互作用の排他的調節を指し、KIR3DL3と別のリガンドとの間の相互作用の調節ではない。別の例では、抗体の所定の抗原への特異的結合とは、他の抗原に結合することなく目的とする抗原に結合する抗体の能力を指す。典型的には、抗体は、目的とする抗原を分析物として、かつ抗体をリガンドとして使用したBIACORE(登録商標)アッセイ器具における表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定される場合、およそ1×10-7M未満、例えば、およそ10-8M、10-9M、10-10M、10-11M未満、またはそれよりもさらに低い親和性(K)で結合し、所定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)または密接に関連した抗原への結合に対するその親和性よりも少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、もしくは10.0倍、またはそれ以上高い親和性で所定の抗原に結合する。加えて、Kは、Kの逆数である。「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書で「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義に使用され得る。
【0148】
「感作させる」という用語は、療法(例えば、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーター)を単独でまたは免疫チェックポイント阻害療法等の免疫療法と組み合わせてのいずれかで)を用いてより有効な治療を可能にする方法で、がん細胞または腫瘍細胞等の細胞を改変することを意味する。いくつかの実施形態では、正常細胞は、療法(例えば、KIR3DL3経路モジュレーター療法(例えば、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用のモジュレーター)を単独でまたは免疫チェックポイント阻害療法等の免疫療法と組み合わせてのいずれかで)によって正常細胞を過度に損傷させる程度に影響を及ぼされない。治療的治療に対する感受性の増加または感受性の低下は、細胞増殖性アッセイ(Tanigawa N,Kern D H,Kikasa Y,Morton D L,Cancer Res 1982;42:2159-2164)、細胞死アッセイ(Weisenthal L M,Shoemaker R H,Marsden J A,Dill P L,Baker J A,Moran E M,Cancer Res 1984;94:161-173、Weisenthal L M,Lippman M E,Cancer Treat Rep 1985;69:615-632、Weisenthal L M,In:Kaspers G J L,Pieters R,Twentyman P R,Weisenthal L M,Veerman A J P,eds.Drug Resistance in Leukemia and Lymphoma.Langhorne,P A:Harwood Academic Publishers,1993:415-432、Weisenthal L M,Contrib Gynecol Obstet 1994;19:82-90)を含むが、これらに限定されない、以下の本明細書に記載の特定の治療および方法について当該技術分野で既知の方法に従って測定される。感受性または抵抗性は、腫瘍サイズ減少をある期間、例えば、ヒトの場合6ヶ月およびマウスの場合4~6週間にわたって測定することによって動物においても測定され得る。組成物または方法は、治療感受性の増加または抵抗性の減少が、かかる組成物または方法の不在下での治療感受性または抵抗性と比較して、5%またはそれ以上、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上~2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、またはそれ以上である場合、治療的治療に対する応答を感作させる。治療的治療に対する感受性または抵抗性の決定は、当該技術分野で通例であり、当業者の技術の範囲内である。免疫調節の有効性を増強するための本明細書に記載のいずれの方法も、過剰増殖性またはさもなければがん性細胞(例えば、耐性細胞)を療法に対して感作させる方法に同等に適用され得ることを理解されたい。
【0149】
「相乗効果」という用語は、2つ以上のKIR3DL3経路モジュレーター、KIR3DL3経路モジュレーターおよび免疫療法、KIR3DL3経路モジュレーターを単独でまたは免疫チェックポイント阻害療法等の免疫療法と組み合わせてのいずれか等の2つ以上の治療薬の併用効果が、抗がん剤単独の個別の効果の合計を上回り得ることを指す。
【0150】
「生存期間」という用語には、死亡までの生存期間、別名、全生存期間(当該死亡は、原因を問わないか、または腫瘍関連のいずれかであり得る)、「無再発生存期間」(再発という用語は、局所再発および遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存期間、無病生存期間(病という用語は、がんおよびそれに関連する疾患を含むものとする)のすべてが含まれる。当該生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)および終点(例えば、死、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。加えて、治療有効性についての基準は、化学療法に対する応答、生存確率、所与の期間以内の転移確率、および腫瘍再発確率を含むように拡大され得る。
【0151】
「治療効果」という用語は、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、具体的には哺乳動物、より具体的にはヒトにおける局所または全身効果を指す。したがって、この用語は、動物もしくはヒトにおける疾患の診断、治癒、緩和、治療、もしくは予防、または望ましい身体もしくは精神発達および状態の増強における使用を目的とした任意の物質を意味する。
【0152】
本明細書で使用される「治療有効量」および「有効量」という用語は、いずれの医学的治療にも適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で動物における細胞の少なくとも部分集団にいくらかの所望の治療効果をもたらすのに有効な、化合物、材料、または本開示によって包含される化合物を含む組成物の量を意味する。対象化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50およびED50を決定するための、細胞培地または実験動物における標準の医薬品手順によって決定され得る。高い治療指数を呈する組成物が好ましい。いくつかの実施形態では、LD50(致死投薬量)が測定され得、薬剤の投与なしと比較して、薬剤に対して、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれ以上減少し得る。同様に、ED50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する濃度)が測定され得、薬剤の投与なしと比較して、薬剤に対して、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれ以上増加し得る。また、同様に、IC50(すなわち、がん細胞への半最大細胞毒性または細胞増殖抑制効果を達成する濃度)が測定され得、薬剤の投与なしと比較して、薬剤に対して、例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれ以上増加し得る。いくつかの実施形態では、アッセイにおけるがん細胞成長が、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%阻害され得る。がん細胞死が、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%促進され得る。別の実施形態では、がん細胞数および/または固形悪性腫瘍の少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%の減少が達成され得る。
【0153】
「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という用語は、タンパク質がタンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離される、抗体、ポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質の調製を含む。一実施形態では、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言語は、約30%未満(乾燥重量で)の化学的前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質化学物質、より好ましくは約20%未満の化学的前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質化学物質、なおより好ましくは約10%未満の化学的前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質化学物質、最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または非抗体、ポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質化学物質を有する抗体、ポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質の調製物を含む。
【0154】
「転写ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド転写物」とは、本開示によって包含されるマーカーの転写およびRNA転写物(存在する場合)の正常転写後プロセシング(例えば、スプライシング)、およびRNA転写物の逆転写によって作製される成熟mRNAのすべてまたは一部に相補的なまたはそれと相同のポリヌクレオチド(例えば、mRNA、hnRNA、cDNA、成熟miRNA、プレmiRNA、プリmiRNA、miRNA、抗miRNA、もしくはmiRNA結合部位、またはそれらのバリアント、またはかかるRNAもしくはcDNAの類似体)である。
【0155】
「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸を指す。1つの種類のベクターは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の種類のベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得るウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌性複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。かかるベクターは、本明細書で「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技法で有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態にある。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般に使用されている形態であるため、同義に使用され得る。しかしながら、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)等の同等の機能を果たす発現ベクターの他の形態を含むよう意図されている。
【0156】
特定のタンパク質のアミノ酸配列と、遺伝子コード(以下に示される)によって定義されるタンパク質をコードし得るヌクレオチド配列との間に既知の明確な対応関係が存在する。同様に、特定の核酸のヌクレオチド配列と、遺伝子コードによって定義される核酸によってコードされるアミノ酸配列との間に既知の明確な対応関係が存在する。
【表1A】
【0157】
遺伝子コードの重要な周知の特徴は、その冗長性であり、それにより、タンパク質を作製するために使用されるアミノ酸の大半には、1つより多くのコーディングヌクレオチドトリプレットが用いられ得る(上で例証される)。したがって、いくつかの異なるヌクレオチド配列が所与のアミノ酸配列をコードし得る。かかるヌクレオチド配列は、すべての生物における同じアミノ酸配列の産生をもたらすため(ある特定の生物はいくつかの配列を他の配列よりも効率的に翻訳し得るが)、機能的に同等であるとみなされる。さらに、時折、プリンまたはピリミジンのメチル化バリアントが所与のヌクレオチド配列に見られ得る。かかるメチル化は、トリヌクレオチドコドンと対応するアミノ酸との間のコーディング関係に影響を及ぼさない。
【0158】
前述を考慮して、バイオマーカー核酸(またはその任意の部分)をコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列は、DNAまたはRNAをアミノ酸配列に翻訳するための遺伝子コードを使用してポリペプチドアミノ酸配列を得るために使用され得る。同様に、ポリペプチドアミノ酸配列について、ポリペプチドをコードすることができる対応するヌクレオチド配列が遺伝子コードから推定され得る(その冗長性のため、任意の所与のアミノ酸配列に対して複数の核酸配列がもたらされる)。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の本明細書における説明および/または開示は、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の説明および/または開示も含むとみなされるべきである。同様に、本明細書におけるポリペプチドアミノ酸配列の説明および/または開示は、アミノ酸配列をコードすることができるすべての可能なヌクレオチド配列の説明および/または開示も含むとみなされるべきである。
【0159】
最後に、本開示に有用な核酸およびポリペプチド分子についての核酸およびアミノ酸配列情報は、当該技術分野で周知であり、National Center for Biotechnology Information(NCBI)等の公的に利用可能なデータベースで容易に入手可能である。例えば、公的に利用可能な配列データベースに由来する例示の核酸およびアミノ酸配列が、以下の表1に提供される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0160】
「KIR3DL3活性」という用語は、例えば、がん細胞上の天然HHLA2リガンドを連結することによって、活性化免疫細胞における阻害性シグナルを調節するKIR3DL3ポリペプチドの能力を含む。免疫細胞における阻害性シグナルの調節により、免疫細胞の増殖および/または免疫細胞によるサイトカイン分泌の調節がもたらされる。したがって、「KIR3DL3活性」という用語には、KIR3DL3ポリペプチドのその天然リガンドに結合する能力、免疫細胞阻害性シグナルを調節する能力、および免疫応答を調節する能力が含まれる。
【0161】
いくつかの実施形態では、がん等の状態は、KIR3DL3遮断単独に対して応答性である。他の実施形態では、がん等の状態は、KIR3DL3遮断単独に対して応答性であるが、KIR3DL3遮断と少なくとも1つの他の療法との組み合わせで治療された場合、著しくまたは相乗的により応答性である。KIR3DL3遮断に対して単独でまたは組み合わせで応答性である多くの状態には、黒色腫(例えば、進行性または転移性黒色腫)、肺がん(例えば、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がん)、乳がん(例えば、HER-2陰性乳がん、エストロゲン受容体陽性/HER-2陰性乳がん、およびトリプルネガティブ乳がん)、膵臓がん(例えば、膵臓腺がん)、およびホジキンリンパ腫、ならびに膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、腎臓がん、前立腺がん、婦人科がん、結腸直腸がん、卵巣がん、腺がん、腺がん、慢性骨髄性白血病(CML)、および血液がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0162】
好ましいB7ポリペプチドは、共刺激または阻害性シグナルを免疫細胞に提供し、それにより、免疫細胞応答を促進または阻害することができる。例えば、共刺激受容体に結合するB7ファミリーメンバーがT細胞活性化および増殖を増加させる一方で、阻害性受容体に結合するB7ファミリーメンバーは共刺激を減少させる。さらに、同じB7ファミリーメンバーがT細胞共刺激を増加させる場合も減少させる場合もある。例えば、共刺激受容体に結合すると、HHLA2は免疫細胞の共刺激を誘導することができ、阻害性受容体に結合すると、HHLA2は免疫細胞を阻害することができる。阻害性受容体に結合すると、HHLA2は、阻害性シグナルを免疫細胞に伝達することができる。好ましいB7ファミリーメンバーには、HHLA2、B7-1、B7-2、B7h、PD-L1、またはPD-L2、およびそれらの可溶性断片または誘導体が含まれる。一実施形態では、免疫細胞上の1つ以上の受容体、例えば、TMIGD2、KIR3DL3、CTLA4、CD28、ICOS、PD-1、および/または他の受容体に結合するB7ファミリーメンバーは、受容体に応じて、阻害性シグナルまたは共刺激シグナルを免疫細胞、好ましくは、T細胞に伝達する能力を有する。
【0163】
共刺激シグナルの調節により、免疫細胞のエフェクター機能の調節がもたらされる。したがって、「KIR3DL3活性」という用語には、KIR3DL3リガンドポリペプチドのその天然受容体(例えばHHLA2)に結合する能力、免疫細胞における共刺激または阻害性シグナルを調節する能力、および免疫応答を調節する能力が含まれる。
【0164】
KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用の調節により免疫機能が調節され得るように、KIR3DL3経路は免疫機能の負の制御因子である。したがって、KIR3DL3と1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用を調節する本明細書に記載される本開示によって包含される薬剤は、直接的か間接的かにかかわらず、免疫系を上方制御または下方制御し、それによって、免疫応答を上方制御または下方制御することができる。かかる相互作用を調節する薬剤は、直接的または間接的のいずれかでそうすることができる。
【0165】
免疫応答を上方制御するための例示の薬剤には、HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用を遮断するHHLA2またはKIR3DL3に対する抗体、HHLA2またはKIR3DL3の非活性化形態(例えば、優性ネガティブポリペプチド)、HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用を遮断する小分子またはペプチド、それぞれ、HHLA2またはKIR3DL3に結合し、HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用を阻害する融合タンパク質(例えば、抗体または免疫グロブリンのFc部分に融合したHHLA2またはKIR3DL3の細胞外部分)、HHLA2および/またはKIR3DL3転写または翻訳を遮断する核酸分子および/または遺伝的修飾、天然HHLA2リガンドの非活性化形態、ならびに天然KIR3DL3リガンドの可溶性形態が挙げられる。
【0166】
他の例示の実施形態では、HHLA2ポリペプチドのKIR3DL3ポリペプチド等の1つ以上の天然結合パートナーへの結合を促進する薬剤は、免疫細胞への阻害性シグナルを促進する。かかる相互作用を調節する薬剤は、直接的または間接的のいずれかでそうすることができる。したがって、一実施形態では、HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用を直接増強する薬剤(HHLA2アゴニストおよび/またはKIR3DL3アゴニスト)は、阻害性シグナル伝達を促進し、免疫応答を下方制御することができる。あるいは、KIR3DL3の他の標的への結合を遮断する薬剤は、HHLA2への結合に利用可能なKIR3DL3の有効濃度を増加させる。免疫応答を下方制御するための例示の薬剤には、HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用を活性化または促進するHHLA2またはKIR3DL3に対する抗体、HHLA2とKIR3DL3との間の相互作用を活性化または促進する小分子またはペプチド、ならびにそれぞれ、HHLA2およびKIR3DL3以外のHHLA2およびKIR3DL3の天然結合パートナーに結合する遮断抗体が挙げられる。
【0167】
本開示によって包含される方法で有用な追加の薬剤には、表1に列記されるバイオマーカーを含む本開示によって包含されるタンパク質バイオマーカーまたはその断片に結合および/またはそれを活性化するか、またはそれを阻害するかのいずれかを行うことができる抗体、小分子、ペプチド、ペプチド模倣薬、天然リガンド、および天然リガンドの誘導体;表1に列記されるバイオマーカーを含む本開示によって包含されるバイオマーカーまたはそれらの断片の発現および/または活性を下方制御することができるRNA干渉、アンチセンス、核酸アプタマー等が含まれる。
【0168】
KIR3DL3に対して産生される単離されたモノクローナル抗体またはそれらの断片が提供される。いくつかの実施形態では、ハイブリドーマによって産生されたmAbは、ブダペスト条約の条項に従って、______に寄託番号______でAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託されている。
【0169】
抗体重鎖および軽鎖CDR3ドメインが抗体の抗原に対する結合特異性/親和性に特に重要な役割を果たすことが当該技術分野で周知であるため、上述のように調製された本開示によって包含される組換えモノクローナル抗体は、好ましくは、本開示によって包含される可変領域の重鎖および軽鎖CDR3(例えば、表2の配列またはその一部を含む)を含む。本抗体は、本開示によって包含される可変領域のCDR2(例えば、表2の配列またはその一部を含む)をさらに含み得る。本抗体は、本開示によって包含される可変領域のCDR1(例えば、表2の配列またはその一部を含む)をさらに含み得る。他の実施形態では、本抗体は、これらのCDRの任意の組み合わせを含み得る。
【0170】
上述の操作された抗体のCDR1、2、および/または3領域は、本開示によって包含される可変領域のもの(例えば、表2の配列またはその一部を含む)として正確なアミノ酸配列を含み得る。しかしながら、当業者であれば、KIR3DL3に有効に結合する抗体の能力(例えば、保存的配列修飾)を依然として保持しながら、正確なCDR配列からのいくらかの逸脱が可能であり得ることを理解するであろう。したがって、別の実施形態では、操作された抗体は、例えば、本開示によって包含される1つ以上のCDR(例えば、表2の配列またはその一部を含む)と50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一の1つ以上のCDRから成り得る。
【0171】
既知の非ヒトまたはヒト抗体(例えば、マウスまたは非齧歯類抗ヒトKIR3DL3抗体)の構造的特徴を使用して、KIR3DL3の結合等の本開示によって包含される抗体の少なくとも1つの機能的特性を保持する構造的に関連したヒト抗ヒトKIR3DL3抗体を作製することができる。別の機能的特性には、競合ELISAアッセイにおける本来の既知の非ヒトまたはヒト抗体の結合の阻害が含まれる。
【0172】
いくつかの実施形態では、可変ドメインが、表2に提示される重鎖可変ドメインCDR群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖を含む、ヒトKIR3DL3に結合することができるモノクローナル抗体が提供される。
【0173】
同様に、可変ドメインが、表2に提示される軽鎖可変ドメインCDR群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖を含む、ヒトKIR3DL3に結合することができるモノクローナル抗体も提供される。
【0174】
可変ドメインが、表2に提示される重鎖可変ドメインCDR群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖を含み、かつ可変ドメインが、表2に提示される軽鎖可変ドメインCDR群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖を含む、ヒトKIR3DL3に結合することができるモノクローナル抗体も提供される。
【0175】
当業者であれば、かかる相同性パーセンテージが、所与のCDR内での1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換と同等であり、その保存的アミノ酸置換を導入することによって達成されることに留意するであろう。
【0176】
本開示によって包含されるモノクローナル抗体は、可変ドメインが表2に提示される重鎖可変ドメインCDRからなる群から選択される配列を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖、および可変ドメインが表2に提示される軽鎖可変ドメインCDRからなる群から選択される配列を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖を含み得る。
【0177】
かかるモノクローナル抗体は、可変ドメインが本明細書に記載されるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3からなる群から選択される配列を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖、ならびに/または可変ドメインが本明細書に記載されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3からなる群から選択される配列を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒトKIR3DL3に結合することができるモノクローナル抗体は、本明細書に記載のCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含むか、またはそれからなる。
【0178】
本開示によって包含されるモノクローナル抗体の重鎖可変ドメインは、表2に記載のvHアミノ酸配列を含み得るか、またはそれからなり得、かつ/または本開示によって包含されるモノクローナル抗体の軽鎖可変ドメインは、表2に記載のvLアミノ酸配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0179】
本開示によって包含されるモノクローナル抗体は、当該技術分野で周知の任意の技法によって産生および修飾され得る。例えば、かかるモノクローナル抗体は、マウスまたは非齧歯類抗体、例えば、______に寄託______でATCCに寄託されたハイブリドーマから入手可能なものであり得る。同様に、かかるモノクローナル抗体は、キメラ抗体、好ましくはキメラマウス/ヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、可変ドメインが、ヒトアクセプターフレームワーク領域、および任意にヒト定常ドメイン(存在する場合)、ならびに上で定義されるマウスまたは非齧歯類CDR等の非ヒトドナーCDRを含むようなヒト化抗体である。
【0180】
本開示は、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、およびダイアボディが含まれるが、これらに限定されない当該モノクローナル抗体の断片、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体をさらに提供する。例えば、HHLA2、PD-L2、PD-L1、CTLA-4、KIR3DL3等のいくつかの免疫阻害性分子は、かかる分子の発現を効率的に特徴付けるために、二重特異的または多重特異的様式で検出され得る。
【0181】
本開示によって包含されるモノクローナル抗体の他の断片も企図される。例えば、個別の免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖が提供され、その可変ドメインは、表2に提示される少なくとも1つのCDRを含む。一実施形態では、免疫グロブリン重鎖は、表2に提示される重鎖または軽鎖可変ドメインCDR群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。別の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖は、本明細書に記載の(例えば、表2に提示される)軽鎖または重鎖可変ドメインCDR群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖は、本明細書に記載のCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、またはCDR-H3のうちの少なくとも1つを含む可変ドメインを含む。かかる免疫グロブリン重鎖は、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のうちの少なくとも1つを含み得るか、またはそれからなり得る。かかる免疫グロブリン軽鎖は、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの少なくとも1つを含み得るか、またはそれからなり得る。
【0183】
他の実施形態では、本開示による免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖は、それぞれ、表2に提供されるvH可変ドメイン配列またはvL可変ドメイン配列を含むか、またはそれからなる。
【0184】
本開示は、本明細書に記載のvH可変ドメイン、vL可変ドメイン、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列からなる群から選択される配列を有するポリペプチドをさらに提供する。
【0185】
本開示によって包含される抗体、免疫グロブリン、およびポリペプチドは、単離された(例えば、精製された)形態で使用され得るか、または膜もしくは脂質小胞(例えば、リポソーム)等のベクター中に含まれ得る。
【表2-1】
1C7重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
2A3重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
8F7重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
1G7重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
2D8重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列*
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
2F11重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-22】
【表2-23】
【表2-24】
【表2-25】
2H1重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-26】
【表2-27】
【表2-28】
【表2-29】
1D12重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-30】
【表2-31】
【表2-32】
【表2-33】
8C2重鎖可変(vH)および軽鎖可変(vL)DNAおよびアミノ酸配列
【表2-34】
【表2-35】
【表2-36】
【表2-37】
CDRの定義およびKabatに従うタンパク質配列の番号付け。
RNA核酸分子(例えば、チミンがウリジンで置き換えられたもの)、コードされたタンパク質のオルソログをコードする核酸分子、ならびに表2に列記されるいずれかの配列番号の核酸配列またはその一部と全長にわたって少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上の同一性を有する核酸配列を含むDNA、cDNA、またはRNA核酸配列が表2に含まれる。かかる核酸分子は、本明細書にさらに記載される全長核酸の機能を有し得る。
【0186】
III.核酸、ベクター、および組換え宿主細胞
本開示によって包含されるさらなる態様は、本開示によって包含されるモノクローナル抗体およびそれらの断片、免疫グロブリン、ならびにポリペプチドをコードする核酸配列に関する。
【0187】
典型的には、核酸は、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ、またはウイルスベクター等の任意の好適なベクター中に含まれ得るDNAまたはRNA分子である。
【0188】
ベクターは、対象への投与時に当該ポリペプチドの発現を引き起こすか、または指示するための制御要素、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等を含み得る。動物細胞の発現ベクターに使用され得るプロモーターおよびエンハンサーの例には、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー(Mizukami T.et al.1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー(Kuwana Y et al.1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason J O et al.1985)およびエンハンサー(Gillies S D et al.1983)等が挙げられる。
【0189】
動物細胞のいずれの発現ベクターも使用され得る。好適なベクターの例には、pAGE107(Miyaji H et al.1990)、pAGE103(Mizukami T et al.1987)、pHSG274(Brady G et al.1984)、pKCR(O’Hare K et al.1981)、pSG1ベータd2-4-(Miyaji H et al.1990)等が挙げられる。プラスミドの他の代表的な例には、複製起点を含む複製プラスミド、または組み込み型プラスミド、例えば、pUC、pcDNA、pBR等が挙げられる。ウイルスベクターの代表的な例には、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびAAVベクターが挙げられる。かかる組換えウイルスは、パッケージング細胞のトランスフェクションまたはヘルパープラスミドもしくはウイルスでの過渡的トランスフェクション等の当該技術分野で既知の技法によって産生され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例には、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv陽性細胞、293細胞等が挙げられる。かかる複製欠損組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコルは、例えば、WO95/14785、WO96/22378、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号、およびWO94/19478で見つけることができる。
【0190】
本開示によって包含されるさらなる態様は、本開示による核酸および/またはベクターによってトランスフェクト、感染、または形質転換された細胞に関する。「形質転換」という用語は、「外来」(すなわち、外因性または細胞外)遺伝子またはDNAもしくはRNA配列の宿主細胞への導入を意味し、これにより、宿主細胞が導入された遺伝子または配列を発現して、導入された遺伝子または配列によってコードされる所望の物質、典型的には、タンパク質または酵素を産生するようになる。導入されたDNAまたはRNAを受容および発現する宿主細胞が「形質転換されている」。
【0191】
本開示によって包含される核酸を使用して、好適な発現系において本開示によって包含される組換えポリペプチドを産生することができる。「発現系」という用語は、例えば、ベクターによって運搬されて宿主細胞に導入された外来DNAによってコードされたタンパク質の発現に好適な条件下での宿主細胞および適合性ベクターを意味する。
【0192】
一般的な発現系には、E.coli宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳類宿主細胞およびベクターが含まれる。宿主細胞の他の例には、原核細胞(細菌等)および真核細胞(酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞等)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例としては、E.coli、Kluyveromyces、またはSaccharomyces酵母、哺乳類細胞株(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)、ならびに初代または樹立哺乳類細胞培養物(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から産生される)が挙げられる。例としては、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、「DHFR遺伝子」と称される)が欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al;1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL 1662、以下、「YB2/0細胞」と称される)等も挙げられる。キメラまたはヒト化抗体のADCC活性がYB2/0細胞で発現されたときに増強されるため、YB2/0細胞が好ましい。
【0193】
本開示は、本開示に従って本開示によって包含される抗体またはポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を産生する方法であって、(i)上述の組換え核酸またはベクターをコンピテント宿主細胞にインビトロまたはエクスビボで導入するステップ、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロまたはエクスビボで培養するステップ、および(iii)任意に、当該抗体またはポリペプチドを発現および/または分泌する細胞を選択するステップからなるステップを含む、方法にも関する。かかる組換え宿主細胞は、本明細書に記載される抗体およびポリペプチドの産生に使用され得る。
【0194】
別の態様では、本開示は、選択的ハイブリダイゼーション条件下で本明細書に開示されるポリヌクレオチドにハイブリダイズする単離された核酸を提供する。したがって、この実施形態のポリヌクレオチドは、かかるポリヌクレオチドを含む核酸の単離、検出、および/または定量化に使用され得る。例えば、本開示によって包含されるポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリにおける部分長または全長クローンを特定、単離、または増幅することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ヒトもしくは哺乳類核酸ライブラリから単離されるか、またはさもなければヒトもしくは哺乳類核酸ライブラリ由来のcDNAと相補的なゲノムもしくはcDNA配列である。好ましくは、cDNAライブラリは、少なくとも80%の全長配列、好ましくは、少なくとも85%または90%の全長配列、より好ましくは、少なくとも95%の全長配列を含む。cDNAライブラリは、珍しい配列の提示を増加させるために正規化され得る。低または中程度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、排他的ではなく典型的に、相補的配列と比較して配列同一性が減少した配列に用いられる。中程度および高ストリンジェンシー条件は、任意に、より高い同一性の配列に用いられ得る。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性を有する配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オルソロガスまたはパラロガス配列を特定するために用いられ得る。任意に、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされる抗体の少なくとも一部をコードする。本発明のポリヌクレオチドは、本開示によって包含される抗体をコードするポリヌクレオチドへの選択的ハイブリダイゼーションのために用いられ得る核酸配列を包含する。例えば、各々参照により本明細書に全体的に組み込まれる、Ausubel(上記参照)、Colligan(上記参照)を参照されたい。
【0195】
IV.抗体を産生する方法
本開示によって包含される抗体およびそれらの断片、免疫グロブリン、ならびにポリペプチドは、単独でまたは組み合わせでのいずれかでの任意の化学的、生物学的、遺伝的、または酵素的技法等であるが、これらに限定されない当該技術分野で既知の任意の技法によって産生され得る。
【0196】
所望の配列のアミノ酸配列を知ることにより、当業者であれば、ポリペプチドを産生するための標準技法によって当該抗体またはポリペプチドを容易に産生することができる。例えば、それらは、周知の固相法を使用して、好ましくは、製造業者の指示に従って市販のペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)製のもの)を使用して合成され得る。あるいは、本開示によって包含される抗体および他のポリペプチドは、当該技術分野で周知の組換えDNA技法によって合成され得る。例えば、これらの断片は、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列の発現ベクターへの組み込みおよびかかるベクターの所望のポリペプチドを発現する好適な真核または原核宿主への導入後にDNA発現産物として得られ得、所望のポリペプチドは、周知の技法を使用して後に単離され得る。
【0197】
具体的には、本開示はさらに、本開示によって包含される抗体またはポリペプチドを産生する方法であって、(i)当該抗体またはポリペプチドの発現を可能にするのに好適な条件下で本開示による形質転換宿主細胞を培養するステップ、および(ii)発現された抗体またはポリペプチドを回収するステップからなるステップを含む、方法に関する。
【0198】
本開示によって包含される抗体および他のポリペプチドは、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地から好適に分離される。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に用いられ得る。例えば、各々参照により本明細書に全体的に組み込まれる、Colligan,Current Protocols in Immunology、またはCurrent Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,N.Y.,(1997-2001)、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたい。
【0199】
本開示によって包含されるキメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラまたは非齧歯類-ヒトキメラ)は、前述のようにVLおよびVHドメインをコードする核配列を得て、それらを、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞の発現ベクターに挿入することによってヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを動物細胞に導入することによってコーディング配列を発現することによって産生され得る。ヒトキメラ抗体のCHドメインは、IgGクラスまたはそのサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4等のヒト免疫グロブリンに属する任意の領域であり得る。同様に、ヒトキメラ抗体のCLは、カッパクラスまたはラムダクラス等のIgに属する任意の領域であり得る。標準の組換えDNA技法を使用して作製され得るヒト部分および非ヒト部分の両方を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、本開示によって包含される範囲内である。かかるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の組換えDNA技法によって、例えば、国際特許公開第PCT/US86/02269号(Robinson et al.)、欧州特許出願第184,187号(Akira et al.)、欧州特許出願第171,496号(Taniguchi,M.)、欧州特許出願第173,494号(Morrison et al.)、PCT出願第WO86/01533号(Neuberger et al.)、米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.)、欧州特許出願第125,023号(Cabilly et al.)、Better et al.(1988)Science 240:1041-1043、Liu et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-3443、Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521-3526、Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.84:214-218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559)、Morrison,S.L.(1985)Science 229:1202-1207、Oi et al.(1986)Biotechniques 4:214、米国特許第5,225,539号(Winter)、Jones et al.(1986)Nature 321:552-525、Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534、およびBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053-4060に記載の方法を使用して産生され得る。
【0200】
加えて、ヒト化抗体は、米国特許第5,565,332号に開示されるプロトコル等の標準のプロトコルに従って作製され得る。いくつかの実施形態では、抗体鎖または特異的結合対メンバーは、当該技術分野で既知の技法、例えば、米国特許第5,565,332号、同第5,871,907号、または同第5,733,743号に記載の技法を使用して、特異的結合対メンバーのポリペプチド鎖と複製可能なジェネリックディスプレイパッケージの構成成分との融合物をコードする核酸分子を含むベクターと、単一の結合対メンバーの第2のポリペプチド鎖をコードする核酸分子を含むベクターとの間の組換えによって産生され得る。本開示によって包含されるヒト化抗体は、前述のようにCDRドメインをコードする核酸配列を得て、それらを、(i)ヒト抗体と同一の重鎖定常領域および(ii)ヒト抗体と同一の軽鎖定常領域をコードする遺伝子を有する動物細胞の発現ベクターに挿入することによってヒト化抗体発現ベクターを構築し、発現ベクターを動物細胞に導入することによって遺伝子を発現することによって産生され得る。ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子および抗体軽鎖をコードする遺伝子が別個のベクター上に存在するタイプのもの、またはこれらの両方の遺伝子が同じベクター上に存在するタイプ(タンデムタイプ)のもののいずれかであり得る。
【0201】
従来の組換えDNA技法および遺伝子トランスフェクション技法に基づいてヒト化抗体を産生するための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Riechmann L.et al.1988、Neuberger M S.et al.1985を参照のこと)。抗体は、例えば、CDRグラフティング(EP239,400、PCT公開第91/09967号、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、および同第5,585,089号)、ベニヤリングまたはリサーフェシング(EP592,106、EP519,596、Padlan EA(1991)、Studnicka G M et al.(1994)、Roguska M A.et al.(1994))、および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む、当該技術分野で既知の様々な技法を使用してヒト化され得る。かかる抗体を調製するための一般的な組換えDNA技術も既知である(欧州特許出願第EP125023号および国際特許出願第WO96/02576号を参照のこと)。
【0202】
同様に、本明細書に記載の二重特異性または多重特異性抗体は、標準の手順に従って作製され得る。例えば、トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは、二重特異性または多重特異性抗体を分泌することができる細胞株の2つの例である。ハイブリッドハイブリドーマまたはトリオーマによって産生される二重特異性および多重特異性抗体の例は、米国特許第4,474,893号に開示されている。かかる抗体は、化学的手段(Staerz et al.(1985)Nature 314:628、およびPerez et al.(1985)Nature 316:354)、およびハイブリドーマ技術(Staerz and Bevan(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:1453、およびStaerz and Bevan(1986)Immunol.Today 7:241)によっても構築され得る。あるいは、かかる抗体は、異なる抗体を作製するハイブリドーマまたは他の細胞を融合させることによってヘテロハイブリドーマを作製し、その後、所望の抗体を産生して共集合させるクローンを特定することによっても生成され得る。それらは、完全免疫グロブリン鎖またはFabおよびFv配列等のその一部の化学的または遺伝的コンジュゲーションによっても生成され得る。抗体成分は、本明細書に記載の1つ以上の免疫阻害性バイオマーカーを含む、本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーのポリペプチドまたはその断片に結合することができる。
【0203】
加えて、抗体断片を産生するための方法が周知である。例えば、本開示によって包含されるFab断片は、ヒトKIR3DL3と特異的に反応する抗体をパパイン等のプロテアーゼで処理することによって得られ得る。また、Fabは、抗体のFabをコードするDNAを原核発現系または真核発現系のベクターに挿入し、そのベクターを原核生物または真核生物(適切な場合)に導入してFabを発現させることによって産生され得る。
【0204】
同様に、本開示によって包含されるF(ab’)2断片は、KIR3DL3と特異的に反応する抗体をプロテアーゼ、ペプシンで処理することによって得られ得る。また、F(ab’)2断片は、チオエーテル結合またはジスルフィド結合により以下に記載のFab’に結合することによって産生され得る。
【0205】
本開示によって包含されるFab’断片は、ヒトKIR3DL3と特異的に反応するF(ab’)2を還元剤ジチオスレイトールで処理することによって得られ得る。また、Fab’断片は、抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物の発現ベクターまたは真核生物の発現ベクターに挿入し、そのベクターを原核生物または真核生物(適切な場合)に導入してそれを発現させることによって産生され得る。
【0206】
加えて、本開示によって包含されるscFvは、前述のようにVHおよびVLドメインをコードするcDNAを得て、scFvをコードするDNAを構築し、そのDNAを原核生物の発現ベクターまたは真核生物の発現ベクターに挿入し、その後、その発現ベクターを原核生物または真核生物(適切な場合)に導入してscFvを発現させることによって産生され得る。ヒト化scFv断片を生成するために、ドナーscFv断片から相補性決定領域(CDR)を選択することと、それらを、既知の三次元構造を有するヒトscFv断片フレームワークにグラフトすることとを含む、CDRグラフティングと呼ばれる周知の技術が使用され得る(例えば、WO98/45322、WO87/02671、米国特許第5,859,205号、米国特許第5,585,089号、米国特許第4,816,567号、EP0173494を参照のこと)。
【0207】
V.抗体、免疫グロブリン、およびポリペプチドの修飾
本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。ヒト化抗体が非ヒト動物に由来する抗体のVHおよびVL内のCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに単にグラフトすることによって産生された場合、抗原結合活性は、非ヒト動物に由来する元の抗体と比較して減少することが知られている。CDR内のみならずFR内の非ヒト抗体のVHおよびVLのいくつかのアミノ酸残基が抗原結合活性に直接または間接的に関連するとみなされる。したがって、これらのアミノ酸残基の、ヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基での置換により、結合活性が減少し、アミノ酸を、非ヒト動物に由来する元の抗体のアミノ酸残基で置き換えることによって補正され得る。
【0208】
修飾および変化が、本開示によって包含される抗体の構造およびそれらをコードするDNA配列中でなされてもよく、望ましい特徴を有する抗体およびポリペプチドをコードする機能的分子を依然として得ることができる。例えば、ある特定のアミノ酸は、活性の認識可能な損失なしにタンパク質構造における他のアミノ酸によって置換され得る。タンパク質の相互作用的能力および性質がタンパク質の生物学的機能的活性を定義するため、ある特定のアミノ酸置換が、タンパク質配列に、ひいては言うまでもなくそのDNAコード配列になされ得、それにもかかわらず、同様の特性を有するタンパク質を得ることもできる。したがって、様々な変化が、それらの生物学的活性の認識可能な消失なく、本開示によって包含される抗体配列または当該ポリペプチドをコードする対応するDNA配列中でなされてもよいことが企図される。
【0209】
いくつかの実施形態では、アミノ酸変化は、DNA配列内のコドンを変化させて、遺伝子コードの保存に基づいて保存的置換をコードすることによって達成され得る。具体的には、特定のタンパク質のアミノ酸配列と、遺伝子コード(以下に示される)によって定義されるタンパク質をコードし得るヌクレオチド配列との間に既知の明確な対応関係が存在する。同様に、特定の核酸のヌクレオチド配列と、遺伝子コード(上記の遺伝子コード図表を参照のこと)によって定義される核酸によってコードされるアミノ酸配列との間に既知の明確な対応関係が存在する。
【0210】
ポリペプチドのアミノ配列を変化させる際に、アミノ酸の疎水性親水性指標が考慮され得る。相互作用的生物学的機能をタンパク質に付与する際の疎水性親水性アミノ酸指数の重要性は、当該技術分野で一般に理解されている。アミノ酸の相対的疎水性親水性特性が、結果として生じたタンパク質の二次構造に寄与し、次いで、タンパク質と、他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原等との相互作用を定義することが認められている。各アミノ酸には、それらの疎水性および電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられており、それらは、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(<RTI 3.5)、アスパラギン(-3.5)、リジン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)である。
【0211】
ある特定のアミノ酸が同様の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換されてもよく、同様の生物学的活性を有するタンパク質が依然としてもたらされる、すなわち、機能的に同等の生物学的タンパク質が依然として得られることが当該技術分野で既知である。
【0212】
したがって、上で概説されるように、アミノ酸置換は、一般に、置換基のアミノ酸側鎖の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズ等に基づいている。前述の様々な特性を考慮した例示の置換が当業者に周知であり、これらには、アルギニンおよびリジン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、セリンおよびトレオニン、グルタミンおよびアスパラギン、ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシンが含まれる。
【0213】
本開示によって包含される抗体の別の種類のアミノ酸修飾が、例えば、安定性を増加させるための抗体の元のグリコシル化パターンを改変させる際に有用であり得る。「改変させる」とは、抗体に見られる1つ以上の炭水化物部分を欠失させること、および/または抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することを意味する。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合であり得る。「N結合」とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N結合グリコシル化部位について)上に記載されるトリペプチド配列のうちの1つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。共有結合的修飾の別のタイプは、グリコシドを抗体に化学的または酵素的にカップリングすることを含む。これらの手順は、N結合またはO結合グリコシル化のためのグリコシル化能力を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としないという点で有利である。使用されるカップリング様式に応じて、糖が、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインの遊離スルフヒドリル基、(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合していてもよい。例えば、かかる方法は、WO87/05330に記載されている。
【0214】
同様に、抗体上に存在するいずれの炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物への抗体の曝露を必要とする。この処理により、抗体をインタクトに保った状態で、結合糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除く大半またはすべての糖の切断がもたらされる。化学的脱グリコシル化は、Sojahr H.et al.(1987)およびEdge,A S.et al.(1981)によって説明されている。抗体上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura,N R.et al.(1987)によって説明される様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。
【0215】
他の修飾は、イムノコンジュゲートの形成を含み得る。例えば、1つのタイプの共有結合的修飾では、抗体またはタンパク質が、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、または同第4,179,337号に記載の様式で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン等の様々な非タンパク質性ポリマーのうちの1つに共有結合的に連結される。
【0216】
本開示によって包含される抗体または他のタンパク質と異種薬剤とのコンジュゲーションは、限定されないが、N-スクシンイミジル(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を含む、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して行われ得る。例えば、炭素標識1-イソチオシアナトベンジルメチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示のキレート剤である(WO94/11026)。
【0217】
別の態様では、本開示は、細胞毒素、薬物、および/または放射性同位体等の治療的部分にコンジュゲートされたKIR3DL3に特異的に結合する抗体を特色とする。細胞毒素にコンジュゲートされると、これらの抗体コンジュゲートは、「免疫毒素」と称される。細胞毒素または細胞毒性薬剤には、細胞に有害な(例えば、細胞を死滅させる)任意の薬剤が含まれる。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または相同体が挙げられる。治療薬には、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の抗体は、放射性同位体、例えば、放射性ヨウ素にコンジュゲートされて、がん等の関連障害を治療するための細胞毒性放射性医薬品を生成することができる。
【0218】
コンジュゲートされた抗KIR3DL3抗体を使用して、とりわけ、臨床試験手順の一環として組織中のポリペプチドレベルを診断的または予後的に監視して、例えば、所与の治療レジメンの有効性を決定するか、または免疫療法に応答する可能性が最も高い患者を選択することができる。例えば、細胞がフローサイトメトリーアッセイで透過処理されて、KIR3DL3に結合する抗体その認識された細胞内エピトープを標的とさせ、コンジュゲートされた分子から発せられるシグナルを分析することによって結合の検出を可能にすることができる。検出は、抗体を検出可能な物質にカップリングする(すなわち、物理的に連結する)ことによって促進され得る。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリン(PE)が挙げられ、発光物質の例には、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例には、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。本明細書で使用される場合、抗体に関して「標識される」という用語は、検出可能な物質、例えば、放射性薬剤またはフルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)またはインドシアニン(Cy5))を抗体にカップリングする(すなわち、物理的に連結する)ことによる抗体の直接標識、ならびに検出可能な物質との反応による抗体の間接的標識を包含するよう意図されている。
【0219】
本開示によって包含される抗体コンジュゲートを使用して、所与の生物学的応答を調整することができる。化学的部分が古典的な化学的薬剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるタンパク質には、例えば、腫瘍壊死因子もしくはインターフェロン-ガンマ、または生物学的応答修飾因子(例えば、リンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、または他のサイトカインもしくは成長因子等)が含まれ得る。
【0220】
かかる治療的部分を抗体にコンジュゲートするための技法が周知であり、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243 56(Alan R.Liss,Inc.1985)、Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623 53(Marcel Dekker,Inc.1987)、Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475 506(1985)、“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303 16(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119 58(1982)を参照されたい。
【0221】
いくつかの実施形態では、コンジュゲーションは、細胞における細胞毒性薬剤または成長阻害剤の放出を促進する「切断可能なリンカー」を使用して行われ得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(例えば、米国特許第5,208,020号を参照のこと)が使用され得る。あるいは、抗体および成長阻害剤を含む融合タンパク質が組換え技法またはペプチド合成によって作製され得る。DNAの長さは、互いに隣接しているか、またはコンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域によって分離されているかのいずれかのコンジュゲートの2つの部分をコードするそれぞれの領域を含み得る。
【0222】
VI.使用および方法
本明細書に記載される本開示によって包含される抗KIR3DL3抗体、免疫グロブリン、ポリペプチド、および核酸は、KIR3DL3検出方法、治療目的(例えば、治療的、予防的、および免疫調節的)、単独で、または他の治療薬との組み合わせ等の様々な用途に有用であり得る。さらに、本明細書に記載される本開示によって包含される抗KIR3DL3抗体、免疫グロブリン、ポリペプチド、および核酸は、KIR3DL3レベルの検出に基づく多数の予測的医薬アッセイで使用され得る。例えば、本開示は、個体が特定の療法(例えば、KIR3DL3を標的とする療法)に応答するかどうかを決定するための予後(または予測的)アッセイを提供する。本明細書に記載されるように、本開示によって包含されるKIR3DL3ポリペプチドまたはその断片は、以下の活性:1)HHLA2等のその天然結合パートナーに結合し、かつ/またはその活性を調節すること、2)共免疫阻害性シグナル伝達等の細胞内または細胞間シグナル伝達を調節すること、3)T細胞またはNK細胞の活性化を調節すること、4)生物、例えば、マウス、非齧歯類動物、またはヒト等の哺乳類生物の免疫応答を調節すること、および5)免疫細胞アネルギーを調節することのうちの1つ以上を有する。
【0223】
本発明は、KIR3DL3シグナルを伝達する薬剤を特定するための手段としてKIR3DL3の検出も提供する。KIR3DL3シグナルを伝達する薬剤は、免疫応答を減弱させ、自己免疫疾患、喘息、および耐性の確立に有用であり得る。
【0224】
本明細書に記載のいずれの方法においても、KIR3DL3は、単独で、または他の免疫チェックポイントおよび/もしくは共刺激分子等の他の分子の発現と組み合わせて検出され得る。いくつかの分子のコンビナトリアル検出(例えば、順次または同時)は、治療的介入の相乗作用および/または障害亜型の個別化された高分解能診断に関する有用な情報を提供し得る。いくつかの実施形態では、KIR3DL3は、もう1つのマーカーでコンビナトリアル的に検出される。
【0225】
1.治療的方法および使用
いくつかの実施形態では、本開示によって包含される抗体、断片、またはイムノコンジュゲート(例えば、抗KIR3DL3抗体)は、異常なまたは望ましくないKIR3DL3活性化に関連する任意の障害(例えば、がん)の治療に有用である。ある特定の実施形態では、治療は、ヒト等の哺乳動物のものである。本開示によって包含されるかかる抗体は、目的とする障害を治療するために、単独で、または任意の好適な薬剤もしくは適切な療法と組み合わせて使用され得る。例えば、抗KIR3DL3 mAbおよび別の免疫チェックポイント阻害剤または細胞療法、例えばCARを含む療法で細胞を治療したときに治療的相乗作用が現れるようになると考えられる。
【0226】
本明細書に記載される本開示によって包含される抗体またはそれらの断片は、KIR3DL3と、その天然リガンドであるHHLA2との相互作用を阻止または破壊することによって、免疫応答を調節するのに有用である。同様に、本明細書に記載される抗体またはそれらの断片は、がん細胞に対する免疫応答ならびにT細胞および/またはNK細胞活性を増加させることによって、疾患、例えば、がんを治療するのに有用である。したがって、本開示によって包含される目的は、異常なKIR3DL3活性化に関連する免疫応答を調節するため、かつ/または障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、本開示によって包含される抗体、その断片の治療有効量を投与することを含む、方法に関する。
【0227】
免疫応答の上方制御は、既存の免疫応答を増強する形態または初期免疫応答を誘発する形態にあり得る。例えば、主題の組成物および方法を使用した免疫応答の増強は、がんおよび微生物(例えば、細菌、ウイルス、または寄生虫)感染に対する免疫学的防御を改善する場合に有用である。例えば、本明細書に記載の免疫応答機能の上方制御または増強は、腫瘍免疫の誘導に有用である。
【0228】
別の実施形態では、免疫応答は、既存の耐性、クローン欠失、および/または疲弊(例えば、T細胞疲弊)が克服されるように、本明細書に記載の方法によって刺激され得る。例えば、対象が有意な免疫応答を開始することができない抗原、例えば、腫瘍特異的抗原等の自己抗原に対する免疫応答は、免疫応答を上方制御する本明細書に記載の適切な薬剤を投与することによって誘導され得る。一実施形態では、腫瘍特異的抗原等の自己抗原が同時投与され得る。別の実施形態では、免疫応答は、神経学的障害を治療するための抗原(例えば、自己抗原)に対して刺激され得る。別の実施形態では、主題の薬剤は、能動免疫化の過程で外来抗原に対する応答を高めるためのアジュバントとして使用され得る。
【0229】
ある特定の例では、免疫応答をさらに増強するために、免疫応答を上方制御する他の薬剤、例えば、共刺激受容体を介してシグナルを伝達する他のB7ファミリーメンバーの形態をさらに投与することが望ましくあり得る。また、免疫応答を上方制御する薬剤が様々なポリペプチド(例えば、病原体に由来するポリペプチド)に対するワクチンにおいて予防的に使用され得る。病原体(例えば、ウイルス)に対する免疫は、適切なアジュバントにおいて免疫応答を上方制御する薬剤とともにウイルスタンパク質をワクチン接種することによって誘導され得る。
【0230】
あるいはまたはさらに、いくつかの実施形態では、本開示によって包含される抗体および抗原結合断片は、診断、予後、および予防用途に加えて、免疫反応を上方制御する疾患、例えば、喘息、自己免疫疾患(糸球体腎炎、関節炎、拡張型心筋症様疾患、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、クローン病、全身性紅斑性狼瘡、慢性リウマチ性関節炎、多発性硬化症、乾癬、アレルギー性接触皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、尋常性白斑、インスリン依存性糖尿病、ベーチェット病、橋本病、アジソン病、皮膚筋炎、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、不妊症、慢性活動性肝炎、天疱瘡、自己免疫性血小板減少性紫斑病、および自己免疫性溶血性貧血、活動性慢性肝炎、アジソン病、抗リン脂質症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫無塩酸症(achlorhydra autoimmune)、セリアック病、クッシング症候群、皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、グッドパスチャー症候群、橋本甲状腺炎、特発性副腎萎縮、特発性血小板減少症、インスリン依存性糖尿病、ランバート・イートン症候群、ルポイド肝炎、いくつかのリンパ球減少症例、混合結合組織病、類天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、水晶体起因性ブドウ膜炎、結節性多発性動脈炎、多腺性自己免疫症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、レイノー症候群、再発性多発性軟骨炎、シュミット症候群、限局性強皮症(またはクレスト症候群)、交感性眼炎、全身性紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎、甲状腺機能亢進症、B型インスリン抵抗性、潰瘍性大腸炎、およびヴェグナー肉芽腫症)を抑制するための治療的用途(疾患の治療およびその発症または進行の遅延等)に有用である。
【0231】
同様に、本開示によって包含される抗体および抗原結合断片は、診断、予後、および予防用途に加えて、持続する感染性疾患(例えば、HPV、HBV、C型肝炎ウイルス(HCV)、レトロウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2)、ヘルペスウイルス、例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、HSV-1およびHSV-2、ならびにインフルエンザウイルスを含むウイルス感染性疾患のための治療的用途(疾患の治療およびその発症または進行の遅延等)に有用である。本明細書に記載されるように使用され得る病原体に関連する他の抗原は、マラリア、好ましくはNANPの反復に基づくマラリアペプチドを含む、様々な寄生虫の抗原である。加えて、Aspergillus、Brugia、Candida、Chlamydia、Coccidia、Cryptococcus、Dirofilaria、Gonococcus、Histoplasma、Leishmania、Mycobacterium、Mycoplasma、Paramecium、Pertussis、Plasmodium、Pneumococcus、Pneumocystis、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Staphylococcus、Streptococcus、Toxoplasma、およびVibriocholerae等の細菌性、真菌性、および他の病原性疾患が含まれる。例示の種には、Neisseria gonorrhea、Mycobacterium tuberculosis、Candida albicans、Candida tropicalis、Trichomonas vaginalis、Haemophilus vaginalis、B群Streptococcus菌種、Microplasma hominis、Hemophilus ducreyi、Granuloma inguinale、Lymphopathia venereum、Treponema pallidum、Brucella abortus、Brucella melitensis、Brucella suis、Brucella canis、Campylobacter fetus、Campylobacter fetus intestinalis、Leptospira pomona、Listeria monocytogenes、Brucella ovis、Chlamydia psittaci、Trichomonas foetus、Toxoplasma gondii、Escherichia coli、Actinobacillus equuli、Salmonella abortus ovis、Salmonella abortus equi、Pseudomonas aeruginosa、Corynebacterium equi、Corynebacterium pyogenes、Actinobaccilus seminis、Mycoplasma bovigenitalium、Aspergillus fumigatus、Absidia ramosa、Trypanosoma equiperdum、Babesia caballi、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、または真菌、例えば、Paracoccidioides brasiliensis等、または他の病原体、例えば、Plasmodium falciparumが含まれる。国立アレルギー感染病研究所(NIAID)優先病原体も含まれる。これらには、カテゴリーA薬剤、例えば、大痘瘡(天然痘)、Bacillus anthracis(炭疽)、Yersinia pestis(ペスト)、Clostridium botulinum毒素(ボツリヌス中毒症)、Francisella tularensis(野兎病)、フィロウイルス(エボラ出血熱、マールブルグ出血熱)、アレナウイルス(ラッサ(ラッサ熱)、フニンウイルス(アルゼンチン出血熱)、および関連ウイルス)、カテゴリーB薬剤、例えば、Coxiella burnetti(Q熱)、Brucella種(ブルセラ症)、Burkholderia mallei(鼻疽)、アルファウイルス(ベネズエラ脳脊髄炎、東部および西部ウマ脳脊髄炎)、Ricinus communis(ヒマシ実)由来のリシン毒素、Clostridium perfringensのイプシロン毒素、StaphylococcusエンテロトキシンB、Salmonella種、Shigella dysenteriae、Escherichia coli菌株O157:H7、Vibrio cholerae、Cryptosporidium parvum、カテゴリーC薬剤、例えば、ニパウイルス、ハンタウイルス、ダニ媒介性出血熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱、および多剤耐性結核菌、蠕虫、例えば、SchistosomaおよびTaenia、ならびに原虫、例えば、Leishmania(例えば、L.mexicana)およびPlasmodiumが含まれる。
【0232】
一部の実施形態では、本開示によって包含される抗体または抗原結合断片は、予後、および予防用途に加えて、免疫学的耐性、臓器移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)、アレルギー性疾患、およびKIR3DL3によって媒介された免疫反応の減弱によって引き起こされる疾患の誘導に関して治療的用途に有用である。
【0233】
本発明との関連で、本明細書で使用される「治療すること」または「治療」という用語は、かかる用語が適用される障害もしくは状態、またはかかる障害もしくは状態の1つ以上の症状を逆転させるか、軽減するか、その進行を抑制することを意味する。本明細書で使用される「がんを治療する」という用語は、がんの細胞の成長および/または増殖の抑制を意味する。好ましくは、かかる治療は、腫瘍成長の退縮(すなわち、測定可能な腫瘍のサイズの減少)ももたらす。最も好ましくは、かかる治療は、腫瘍の完全退縮をもたらす。
【0234】
本開示によって包含される抗体を1つ以上含む治療用製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する抗体を、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって保管用に調製される。抗体組成物は、良好な医療行為と一致する任意の様式で製剤化、投薬、および投与され得る。この関連での考慮すべき因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与のスケジュール、および医師に既知の他の因子が含まれる。
【0235】
治療用量は、少なくとも約0.001μg/kg体重、0.005μg/kg体重、0.01μg/kg体重、少なくとも約0.05μg/kg体重、少なくとも約0.1μg/kg体重、少なくとも約0.5μg/kg体重、少なくとも約1μg/kg体重、少なくとも約2.5μg/kg体重、少なくとも約5μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、または少なくとも約100μg/kg体重であり得る。当業者であれば、かかるガイドラインが、例えば、抗体断片の使用時または抗体コンジュゲートの使用時に、活性薬剤の分子量に応じて調整されることを理解するであろう。投薬量は、局所投与、例えば、経鼻、吸入等、または全身投与、例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内等によっても変化し得る。
【0236】
本組成物は、活性を増強するか、または別様に治療効果を高める1つ以上の薬剤を必要としないが、任意にそれと製剤化される。
【0237】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、これらには、リン酸、クエン酸、および他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質錯体)、および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。インビボ投与に使用される製剤は、滅菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0238】
これらの活性成分は、例えば、液滴形成技法または界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)に、またはマクロエマルジョンに封入される場合もある。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0239】
本明細書に記載の組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻内を含む任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。加えて、本組成物は、特に本抗体の用量の減少に伴うパルス注入によって好適に投与され得る。
【0240】
疾患の予防または治療のために、抗体の適切な投薬量は、上で定義される治療される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防のために投与されるか、以前の療法、患者の臨床歴および抗体に対する応答、および主治医の判断に依存するであろう。抗体は、1回または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。
【0241】
KIR3DL3とHHLA2との間の相互作用を直接遮断する薬剤、例えば、抗HHLA2抗体、抗KIR3DL3抗体、抗KIR3DL3/抗免疫チェックポイント二重特異性抗体(例えば、抗KIR3DL3/PD-1二重特異性抗体)等は、KIR3DL3シグナル伝達およびその下流免疫応答を阻止することができる。あるいは、KIR3DL3とHHLA2との間の相互作用を間接的に遮断する薬剤は、KIR3DL3シグナル伝達およびその下流免疫応答を阻止することができる。例えば、いくつかの実施形態では、KIR3DL3の細胞外ドメイン等のKIR3DL3の可溶性形態は、HHLA2への結合により、細胞表面上のKIR3DL3への結合に利用可能なHHLA2の有効濃度を間接的に減少させることができる。例示の薬剤には、受容体とリガンドとの間の相互作用を遮断するKIR3DL3および/またはHHLA2に対する単一特異性または二重特異性遮断抗体、HHLA2および/またはKIR3DL3の非活性化形態(例えば、優性ネガティブまたは可溶性ポリペプチド)、KIR3DL3とHHLA2との間の相互作用を遮断する小分子またはペプチド、KIR3DL3および/またはHHLA2に結合し、その受容体とリガンドとの間の相互作用を阻害する融合タンパク質(例えば、抗体または免疫グロブリンのFc部分に融合したHHLA2および/またはKIR3DL3の細胞外部分)、天然KIR3DL3および/またはHHLA2の非活性化形態、ならびに天然KIR3DL3および/またはHHLA2の可溶性形態が挙げられる。
【0242】
いくつかの実施形態では、抗KIR3DL3抗体療法または療法の組み合わせ(例えば、別の免疫チェックポイント阻害剤等の1つ以上の追加の抗がん療法と組み合わせた1つ以上の抗KIR3DL3抗体療法)が、投与され得る。併用療法は、例えば、1つ以上の化学療法剤および放射線、1つ以上の化学療法剤および免疫療法、または1つ以上の化学療法剤、放射線、および化学療法を含み得、これらの組み合わせは各々、抗免疫チェックポイント療法との併用であり得る。加えて、特定の標的を調節するための薬剤の任意の代表的な実施形態は、当業者によって本明細書および以下に記載の任意の他の標的に適応され得る(例えば、本明細書に記載の直接および間接的KIR3DL3阻害剤は、他の免疫チェックポイント阻害剤および/または単一特異性抗体、二重特異性抗体、非活性化形態、小分子、ペプチド、干渉核酸等に適用され得る)。
【0243】
したがって、本開示によって包含される治療薬は、単独で使用されてもよく、または例えば、化学療法剤、ホルモン、抗血管新生剤、CAR、放射性標識化合物、または手術、凍結療法、および/もしくは放射線療法との併用療法で投与されてもよい。前述の治療法は、従来の療法と連続して、従来の療法の前に、または従来の療法の後のいずれかで、従来の療法の他の形態(例えば、当業者に周知の標準治療がん治療)と併せて施され得る。例えば、本開示によって包含される薬剤は、治療有効用量の化学療法剤とともに投与されてもよい。別の実施形態では、本開示によって包含される薬剤は、化学療法剤の活性および有効性を増強するために化学療法と組み合わせて投与される。医師用添付文書集(PDR)は、様々ながんの治療に使用されている化学療法剤の投薬量を開示している。治療的に有効なこれらの前述の化学療法薬の投薬レジメンおよび投薬量は、治療される特定のがん、疾患の程度、および当該技術分野の医師が精通している他の因子に依存し、医師によって決定され得る。
【0244】
抗KIR3DL3剤も、標的療法、例えば、免疫療法と組み合わせて投与され得る。免疫応答を誘発または増幅するように設計された免疫療法は、「活性化免疫療法」と称される。免疫応答を低下または抑制するように設計された免疫療法は、「抑制免疫療法」と称される。遺伝学的に修飾された移植がん細胞に免疫系効果をもたらすと考えられる任意の薬剤をアッセイして、薬剤が免疫療法であるかを決定し、所与の遺伝子修飾が免疫応答の調節にもたらす効果を決定することができる。いくつかの実施形態では、免疫療法は、がん細胞特異的である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、「非標的」であり得、これは、免疫系細胞と選択的に相互作用しないが、免疫系機能を調節する薬剤の投与を指す。非標的療法の代表的な例には、化学療法、遺伝子療法、および放射線療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
「標的療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用し、例えば、それにより、がんを治療する薬剤の投与を指す。例えば、本開示によって包含される方法と組み合わせた免疫チェックポイント阻害剤の阻害に関する標的療法が有用である。「免疫チェックポイント阻害剤」という用語は、抗腫瘍免疫応答を下方調節または阻害することによって免疫応答を微調整するCD4+および/またはCD8+T細胞の細胞表面上の分子群を意味する。免疫チェックポイントタンパク質は、当該技術分野で周知であり、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、2B4、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPアルファ(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、TMIDG2、KIR3DL3、およびA2aR(例えば、WO2012/177624を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤の阻害により、阻害性シグナル伝達が遮断またはさもなければ中和され、それにより、免疫応答が上方制御されて、がんがより有効に治療され得る。
【0246】
免疫療法は、例えば、1つ以上のがんワクチンおよび/または感作抗原提示細胞の使用を含み得る、標的療法の一形態である。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、正常細胞を無傷のまま残しながらがん細胞に感染して溶解させることができるウイルスであり、それらをがん療法に潜在的に有用なものにする。腫瘍溶解性ウイルスの複製は、腫瘍細胞破壊を促進し、腫瘍部位での用量増幅ももたらす。それらは、抗がん遺伝子のベクターとして作用することもでき、それらを腫瘍部位に特異的に送達させる。この免疫療法は、がん抗原または疾患抗原に対して産生された予め形成された抗体の投与(例えば、任意に化学療法剤または毒素に結合しているモノクローナル抗体の腫瘍抗原への投与)によって達成される宿主を短期間保護するために受動免疫を伴い得る。例えば、抗VEGFおよびmTOR阻害剤は、腎細胞がんの治療に有効であることが既知である。この免疫療法は、がん細胞株の細胞毒性リンパ球によって認識されるエピトープの使用にも焦点を合わせることができる。あるいは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチド等を使用して、腫瘍またはがんの発症、進行、および/または病理に関連した生体分子を選択的に調節することができる。この免疫療法は、がん細胞株の細胞毒性リンパ球によって認識されるエピトープの使用にも焦点を合わせることができる。あるいは、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉分子、三重らせんポリヌクレオチド等を使用して、腫瘍またはがんの発症、進行、および/または病理に関連した生体分子を選択的に調節することができる。上述のように、免疫チェックポイント標的、例えば、HHLA2、KIR3DL3等に対する免疫療法が有用である。
【0247】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、1つ以上の養子細胞ベースの免疫療法を含み得る。照射自己または同種腫瘍細胞、腫瘍溶解物またはアポトーシス腫瘍細胞、抗原提示細胞ベースの免疫療法、樹状細胞ベースの免疫療法、養子T細胞移入、養子CAR T細胞療法、自己免疫増強療法(AIET)、がんワクチン、および/または抗原提示細胞を含むが、これらに限定されない、周知の養子細胞ベースの免疫療法様式。かかる細胞ベースの免疫療法は、1つ以上の遺伝子産物を発現して免疫応答をさらに調節する、例えば、GM-CSF等のサイトカインを発現するように、かつ/またはMage-1、gp-100、患者特異的ネオ抗原ワクチン等の腫瘍関連抗原(TAA)抗原を発現するようにさらに修正され得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、1つ以上の非細胞ベースの免疫療法を含み得る。いくつかの実施形態では、ワクチン増強アジュバントを有するまたは有しない抗原を含む組成物が使用される。かかる組成物は、ペプチド組成物、腫瘍溶解性ウイルス、融合タンパク質を含む組換え抗原等の多くの周知の形態で存在する。なお別の実施形態では、免疫調節インターロイキン、例えば、IL-2、IL-6、IL-7、IL-12、IL-17、IL-23等、ならびにそのモジュレーター(例えば、遮断抗体またはより強力な形態もしくはより長い時間持続する形態)が使用される。さらに別の実施形態では、免疫調節サイトカイン、例えば、インターフェロン、G-CSF、イミキモド、TNFアルファ等、ならびにそのモジュレーター(例えば、遮断抗体またはより強力な形態もしくはより長い時間持続する形態)が使用される。別の実施形態では、免疫調節ケモカイン、例えば、CCL3、CCL26、およびCXCL7等、ならびにそのモジュレーター(例えば、遮断抗体またはより強力な形態もしくはより長い時間持続する形態)が使用される。別の実施形態では、免疫抑制を標的とする免疫調節分子、例えば、STAT3シグナル伝達モジュレーター、NFカッパBシグナル伝達モジュレーター、および免疫チェックポイントモジュレーターが使用される。「免疫チェックポイント」および「抗免疫チェックポイント療法」という用語は、上で説明されている。
【0249】
いくつかの実施形態では、免疫調節薬、例えば、免疫細胞増殖抑制薬、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、イムノフィリン、およびそのモジュレーター(例えば、ラパマイシン、カルシニューリン阻害剤、タクロリムス、シクロスポリン(ciclosporin))、ピメクロリムス、アベチムス、グスペリムス、リダフォロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、ゾタロリムス等)、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベータメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(doca)アルドステロン、非グルココルチコイドステロイド、ピリミジン合成阻害剤、レフルノミド、テリフルノミド、葉酸類似体、メトトレキサート、抗胸腺細胞グロブリン、抗リンパ球グロブリン、サリドマイド、レナリドミド、ペントキシフィリン、ブプロピオン、クルクミン、カテキン、オピオイド、IMPDH阻害剤、ミコフェノール酸、ミリオシン、フィンゴリモド、NF-xB阻害剤、ラロキシフェン、ドロトレコギンアルファ、デノスマブ、NF-kBシグナル伝達カスケード阻害剤、ジスルフィラム、オルメサルタン、ジチオカルバメート、プロテアソーム阻害剤、ボルテゾミブ、MG132、Prol、NPI-0052、クルクミン、ゲニステイン、レスベラトロル、パルテノリド、サリドマイド、レナリドミド、フラボピリドール、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、三酸化ヒ素、デヒドロキシメチルエポキシキノマイシン(DHMEQ)、I3C(インドール-3-カルビノール)/DIM(ジインドールメタン)(13C/DIM)、Bay 11-7082、ルテオリン、細胞透過性ペプチドSN-50、IKBα-スーパーリプレッサー過剰発現、NFKBデコイオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、またはそれらのいずれかの誘導体もしくは類似体が使用される。さらに別の実施形態では、免疫調節抗体またはタンパク質が使用される。例えば、CD40、Toll様受容体(TLR)、OX40、GITR、CD27、または4-1BB、T細胞二重特異性抗体、抗IL-2受容体抗体、抗CD3抗体、OKT3(ムロモナブ)、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビジリズマブ、抗CD4抗体、クレノリキシマブ、ケリキシマブ、ザノリムマブ、抗CD11a抗体、エファリズマブ、抗CD18抗体、エルリズマブ、ロベリズマブ、抗CD20抗体、アフツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、パスコリズマブ、リツキシマブ、抗CD23抗体、ルミリキシマブ、抗CD40抗体、テネリキシマブ、トラリズマブ、抗CD40L抗体、ルプリズマブ、抗CD62L抗体、アセリズマブ、抗CD80抗体、ガリキシマブ、抗CD147抗体、ガビリモマブ、Bリンパ球刺激因子(BLyS)阻害抗体、ベリムマブ、CTLA4-Ig融合タンパク質、アバタセプト、ベラタセプト、抗CTLA4抗体、イピリムマブ、トレメリムマブ、抗エオタキシン1抗体、ベルチリムマブ、抗a4-インテグリン抗体、ナタリズマブ、抗IL-6R抗体、トシリズマブ、抗LFA-1抗体、オデュリモマブ、抗CD25抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、抗CD5抗体、ゾリモマブ、抗CD2抗体、シプリズマブ、ネレリモマブ、ファラリモマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、セデリズマブ、ドルリモマブアリトクス、ドルリキシズマブ、フォントリズマブ、ガンテネルマブ、ゴミリキシマブ、レブリリズマブ、マスリモマブ、モロリムマブ、パキセリズマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトクス、バパリキシマブ、ベパリモマブ、アフリベルセプト、アレファセプト、リロナセプト、IL-1受容体アンタゴニスト、アナキンラ、抗IL-5抗体、メポリズマブ、IgE阻害剤、オマリズマブ、タリズマブ、IL12阻害剤、IL23阻害剤、ウステキヌマブ等に結合する抗体。
【0250】
いくつかの実施形態では、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC等の免疫応答を増強する栄養補助剤が当該技術分野で周知であり(例えば、米国特許第4,981,844号および同第5,230,902号ならびにPCT公開第WO2004/004483号を参照のこと)、本明細書に記載の方法で使用され得る。
【0251】
同様に、薬剤および免疫療法以外の療法を抗KIR3DL3抗体と組み合わせて使用して、免疫応答を刺激し、それにより、それから恩恵を受けるであろう状態を治療することができる。例えば、化学療法、放射線、後成的修飾因子(例えば、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)修飾因子、メチル化修飾因子、リン酸化修飾因子等)、標的療法等が当該技術分野で周知である。
【0252】
「非標的療法」という用語は、選択された生体分子と選択的に相互作用しないが、がんを治療する薬剤の投与を指す。非標的療法の代表的な例には、化学療法、遺伝子療法、および放射線療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0253】
一実施形態では、化学療法が使用される。化学療法は、化学療法剤の投与を含む。かかる化学療法剤は、以下の化合物の群:白金化合物、細胞毒性抗生物質、代謝拮抗剤、抗分裂剤、アルキル化剤、ヒ素化合物、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、ヌクレオシド類似体、植物アルカロイド、および毒素、ならびにそれらの合成誘導体から選択されるものであり得るが、これらに限定されない。例示の化合物としては、限定されないが、アルキル化剤:シスプラチン、トレオスルファン、およびトロホスファミド;植物アルカロイド:ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル;DNAトポイソメラーゼ阻害剤:テニポシド、クリスナトール、およびマイトマイシン;抗葉酸剤:メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびヒドロキシウレア;ピリミジン類似体:5-フルオロウラシル、ドキシフルリジン、およびシトシンアラビノシド;プリン類似体:メルカプトプリンおよびチオグアニン;DNA代謝拮抗剤:2’-デオキシ-5-フルオロウリジン、アフィジコリングリシネート、およびピラゾロイミダゾール;ならびに有糸分裂阻害剤:ハリコンドリン、コルヒチン、およびリゾキシンが挙げられる。1つ以上の化学療法剤(例えば、FLAG、CHOP)を含む組成物も使用され得る。FLAGには、フルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)、およびG-CSFが含まれる。CHOPには、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびプレドニゾンが含まれる。別の実施形態では、PARP(例えば、PARP-1および/またはPARP-2)阻害剤が使用され、かかる阻害剤は当該技術分野で周知である(例えば、Olaparib、ABT-888、BSI-201、BGP-15(N-Gene Research Laboratories,Inc.)、INO-1001(Inotek Pharmaceuticals Inc.)、PJ34(Soriano et al.,2001、Pacher et al.,2002b)、3-アミノベンズアミド(Trevigen)、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド(Trevigen)、6(5H)-フェナントリジノン(Trevigen)、ベンズアミド(米国特許Re第36,397号)、およびNU1025(Bowman et al.)。作用機構は、一般に、PARPに結合し、その活性を低下させるPARP阻害剤の能力に関連する。PARPは、ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のニコチンアミドおよびポリ-ADP-リボース(PAR)への変換を触媒する。ポリ(ADP-リボース)およびPARPはいずれも、転写制御、細胞増殖、ゲノム安定性、および発がんに関連付けられている(Bouchard V.J.et.al.Experimental Hematology,Volume 31,Number 6,June 2003,pp.446-454(9)、Herceg Z.;Wang Z.-Q.Mutation Research/Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis,Volume 477,Number 1,2 Jun.2001,pp.97-110(14))。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)は、DNA一本鎖破壊(SSB)の修復における重要な分子である(de Murcia J.et al.1997.Proc Natl Acad Sci USA 94:7303-7307、Schreiber V,Dantzer F,Ame J C,de Murcia G(2006)Nat Rev Mol Cell Biol 7:517-528、Wang Z Q,et al.(1997)Genes Dev 11:2347-2358)。PARP1機能の阻害によるSSB修復のノックアウトにより、相同性指向DSB修復に欠陥のあるがん細胞における合成致死を誘発し得るDNA二本鎖破壊(DSB)が誘導される(Bryant H E,et al.(2005)Nature 434:913-917、Farmer H,et al.(2005)Nature 434:917-921)。化学療法剤の前述の例は例示的なものであり、限定するようには意図されていない。
【0254】
別の実施形態では、放射線療法が使用される。放射線療法で使用される放射線は、電離放射線であり得る。放射線療法は、ガンマ線、X線、または陽子ビームでもあり得る。放射線療法の例には、外部ビーム放射線療法、放射性同位体(I-125、パラジウム、イリジウム)、ストロンチウム-89等の放射性同位体の間質埋め込み、胸部放射線療法、腹腔内P-32放射線療法、ならびに/または全腹部および骨盤放射線療法が挙げられるが、これらに限定されない。放射線療法の一般概要については、Hellman,Chapter 16:Principles of Cancer Management:Radiation Therapy,6th edition,2001,DeVita et al.,eds.,J.B.Lippencott Company,Philadelphiaを参照されたい。放射線療法は、放射線が遠隔源から向けられる外部ビーム放射線または遠隔療法として施され得る。放射線治療は、放射性源ががん細胞または腫瘍塊に近接して体内に設置される内部療法または小線源療法として施される場合もある。ヘマトポルフィリンおよびその誘導体、ベルトポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、感光剤Pc4、デメトキシ-ヒポクレリンA、ならびに2BA-2-DMHA等の感光剤の投与を含む光線力学的療法の使用も包含される。
【0255】
別の実施形態では、ホルモン療法が使用される。ホルモン治療的治療は、例えば、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、ビカルタミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、酢酸ロイプロリド(LUPRON)、LH-RHアンタゴニスト)、ホルモン生合成および処理阻害剤、ならびにステロイド(例えば、デキサメタゾン、レチノイド、デルトイド、ベータメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)、ビタミンA誘導体(例えば、オールトランス型レチノイン酸(ATRA))、ビタミンD3類似体、抗ゲスターゲン(例えば、ミフェプリストン、オナプリストン)、または抗アンドロゲン(例えば、酢酸シプロテロン)を含み得る。療法を用いた治療の持続期間および/または用量は、特定の治療薬またはそれらの組み合わせによって異なり得る。当業者であれば、特定のがん治療薬の適切な治療時間を理解するであろう。本開示は、各がん治療薬の最適治療スケジュールの継続的な評価を企図しており、ここで、本開示によって包含される方法によって決定される対象のがんの表現型が、最適治療用量およびスケジュールを決定する際の因子である。
【0256】
ポリヌクレオチドを哺乳動物、ヒト、もしくは非ヒト、またはそれらの細胞に導入するための任意の手段は、本開示によって包含される様々な構築物を対象とするレシピエントに送達するための本発明の実施に適応され得る。本開示によって包含される一実施形態では、DNA構築物は、トランスフェクションによって、すなわち、「ネイキッド」DNAの送達によって、またはコロイド分散系との複合体で細胞に送達される。コロイド系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質ベースの系、例えば、水中油乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームが含まれる。本発明の好ましいコロイド系は、脂質複合体化DNAまたはリポソーム製剤化DNAである。前者のアプローチでは、例えば、脂質でのDNAの製剤化の前に、所望のDNA構築物を有するトランス遺伝子を含むプラスミドが発現(例えば、イントロンの5’非翻訳領域への包含および不要な配列の排除(Felgner,et al.,Ann NY Acad Sci 126-139,1995)について最初に実験的に最適化され得る。その後、例えば、様々な脂質またはリポソーム材料でのDNAの製剤化が、既知の方法および材料を使用して達成され得、レシピエント哺乳動物に送達され得る。例えば、Canonico et al,Am J Respir Cell Mol Biol 10:24-29,1994、Tsan et al,Am J Physiol 268、Alton et al.,Nat Genet.5:135-142,1993、および米国特許第5,679,647号(Carson et al.)を参照されたい。
【0257】
リポソームの標的は、解剖学的要因および機構的要因に基づいて分類され得る。解剖学的分類は、選択性レベル、例えば、臓器特異的、細胞特異的、および細胞小器官特異的に基づいている。機構的標的は、それが受動的であるか能動的であるかに基づいて区別され得る。受動的標的は、洞様毛細血管を含む臓器内の細網内皮系(RES)の細胞に分布するリポソームの生来の傾向を利用する。その一方で、能動的標的は、天然に存在する局在化部位以外の臓器および細胞型への標的を達成するために、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質、もしくはタンパク質等の特異的リガンドに結合することによる、またはリポソームの組成またはサイズを変化させることによるリポソームの改変を伴う。
【0258】
標的とされた送達系の表面は、様々な方法で修飾され得る。リポソーム標的送達系の場合、脂質基は、標的リガンドをリポソーム二重層と安定した会合で維持するために、リポソームの脂質二重層に組み込まれ得る。脂質鎖を標的リガンドに連結するために様々な連結基が使用され得る。送達ビヒクル、例えば、リポソームと会合したネイキッドDNAまたはDNAは、対象におけるいくつかの部位に投与され得る(以下を参照のこと)。
【0259】
核酸は、任意の所望のベクターで送達され得る。これらには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびプラスミドベクターを含むウイルスまたは非ウイルスベクターが含まれる。例示のウイルスタイプには、HSV(単純ヘルペスウイルス)、AAV(アデノ随伴ウイルス)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、BIV(ウシ免疫不全ウイルス)、およびMLV(マウス白血病ウイルス)が挙げられる。核酸は、十分に効率的な送達レベルを提供する任意の所望の形式で、例えば、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ粒子で投与され、ポリマーに複合体化され得る。
【0260】
目的とするタンパク質または核酸をコードする核酸は、プラスミドもしくはウイルスベクター、または当該技術分野で既知の他のベクターに存在し得る。かかるベクターは周知であり、任意のベクターが特定の用途のために選択され得る。本開示によって包含される一実施形態では、遺伝子送達ビヒクルは、プロモーターおよびデメチラーゼコーディング配列を含む。好ましいプロモーターは、組織特異的プロモーターおよび細胞増殖によって活性化されるプロモーター、例えば、チミジンキナーゼおよびチミジル酸シンターゼプロモーターである。他の好ましいプロモーターには、ウイルス感染によって活性化可能なプロモーター、例えば、α-およびβ-インターフェロンプロモーター、ならびにエストロゲン等のホルモンによって活性化可能なプロモーターが含まれる。使用され得る他のプロモーターには、モロニーウイルスLTR、CMVプロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターが含まれる。プロモーターは、構成的または誘導性であり得る。
【0261】
別の実施形態では、ネイキッドポリヌクレオチド分子が、WO90/11092および米国特許第5,580,859号に記載されるように遺伝子送達ビヒクルとして使用され得る。かかる遺伝子送達ビヒクルは、成長因子DNAまたはRNAのいずれかであり得、ある特定の実施形態では、死滅アデノウイルスに連結される。Curiel et al.,Hum.Gene.Ther.3:147-154,1992。任意に使用され得る他のビヒクルには、DNA-リガンド(Wu et al.,J.Biol.Chem.264:16985-16987,1989)、脂質-DNA組み合わせ(Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413 7417,1989)、リポソーム(Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.84:7851-7855,1987)、およびマイクロプロジェクタイル(Williams et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.88:2726-2730,1991)が含まれる。
【0262】
遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス複製起源またはパッケージングシグナル等の1つ以上のウイルス配列を任意に含み得る。これらのウイルス配列は、アストロウイルス、コロナウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルス、トガウイルス、またはアデノウイルス等のウイルスから選択され得る。好ましい実施形態では、成長因子遺伝子送達ビヒクルは、組換えレトロウイルスベクターである。組換えレトロウイルスおよびその様々な使用が、多数の参考文献、例えば、Mann et al.,Cell 33:153,1983,Cane and Mulligan,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 81:6349,1984、Miller et al.,Human Gene Therapy 1:5-14,1990、米国特許第4,405,712号、同第4,861,719号、および同第4,980,289号、ならびにPCT出願第89/02,468号、同第89/05,349号、および同第90/02,806号に記載されている。例えば、EP0,415,731、WO90/07936、WO94/03622、WO93/25698、WO93/25234、米国特許第5,219,740号、WO9311230、WO9310218、Vile and Hart,Cancer Res.53:3860-3864,1993、Vile and Hart,Cancer Res.53:962-967,1993、Ram et al.,Cancer Res.53:83-88,1993、Takamiya et al.,J.Neurosci.Res.33:493-503,1992、Baba et al.,J.Neurosurg.79:729-735,1993(米国特許第4,777,127号、GB2,200,651、EP0,345,242、およびWO91/02805)に記載のものを含む、多数のレトロウイルス遺伝子送達ビヒクルが本開示で利用され得る。
【0263】
本開示によって包含されるポリヌクレオチドを送達するために使用され得る他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルス(米国特許第5,631,236号(Woo et al.、1997年5月20日発行)およびWO00/08191(Neurovex))、ワクチニアウイルス(Ridgeway(1988)Ridgeway,“Mammalian expression vectors,”In:Rodriguez R L,Denhardt D T,ed.Vectors:A survey of molecular cloning vectors and their uses.Stoneham:Butterworth、Baichwal and Sugden(1986)“Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses:Transient and stable expression of transferred genes,”In:Kucherlapati R,ed.Gene transfer.New York:Plenum Press、Coupar et al.(1988)Gene,68:1-10)、およびいくつかのRNAウイルスに由来している。好ましいウイルスには、アルファウイルス、ポキシウイルス、アレナウイルス、ワクチニアウイルス、ポリオウイルス等が含まれる。それらは、様々な哺乳類細胞にいくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann(1989)Science,244:1275-1281、Ridgeway,1988(上記参照)、Baichwal and Sugden,1986(上記参照)、Coupar et al.1988、Horwich et al.(1990)J.Virol.,64:642-650)。
【0264】
他の実施形態では、ゲノム中の標的DNAは、当該技術分野で周知の方法を使用して操作され得る。例えば、ゲノム中の標的DNAは、欠失、挿入、および/または変異によって操作され得、これらは、レトロウイルス挿入、人工染色体技法、遺伝子挿入、組織特異的プロモーターによるランダム挿入、遺伝子標的、転移性因子、および/または外来DNAを導入するためのもしくは修飾DNA/修飾核DNAを産生するための任意の他の方法である。他の修飾技法は、DNA配列をゲノムから欠失させることおよび/または核DNA配列を改変することを含む。例えば、核DNA配列は、部位特異的変異誘発によって改変され得る。
【0265】
他の実施形態では、組換えバイオマーカーポリペプチドおよびそれらの断片が対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、増強された生物学的特性を有する融合タンパク質が構築および投与され得る。加えて、バイオマーカーポリペプチドおよびその断片は、増加したバイオアベイラビリティおよび減少したタンパク質分解等の望ましい生物学的活性をさらに増強するために、当該技術分野で周知の薬理学的方法(例えば、ペグ化、グリコシル化、オリゴマー化等)に従って修飾され得る。
【0266】
2.アッセイおよびスクリーニング法
本開示によって包含される別の態様は、非細胞ベースのアッセイおよび異種移植片動物モデルアッセイを含むスクリーニングアッセイに関する。一実施形態では、これらのアッセイは、KIR3DL3シグナル伝達を減少させ、それにより、免疫応答を増加させる薬剤を特定し、かつ/またはKIR3DL3シグナル伝達を増加させ、それにより、免疫応答を減少させる薬剤を特定するために、ヒトまたは動物モデルアッセイ等においてKIR3DL3シグナル伝達を調節する薬剤を特定するための方法を提供する。
【0267】
一実施形態では、本開示は、HHLA2、TMIGD2、およびKIR3DL3等の本明細書(例えば、表、図、実施例、またはさもなければ本明細書)に記載の少なくとも1つのバイオマーカーに結合するか、またはその生物学的活性を調節する試験薬剤をスクリーニングするためのアッセイに関する。一実施形態では、かかる薬剤を特定するための方法は、本明細書に記載の少なくとも1つのバイオマーカーを調節する、例えば、阻害する薬剤の能力の決定を伴う。
【0268】
一実施形態では、アッセイは、本明細書に記載の少なくとも1つのバイオマーカーを試験薬剤と接触させることと、以下に記載されるように基質の直接結合を測定することまたは間接的パラメータを測定すること等によって、バイオマーカーの酵素活性を調節する(例えば、阻害する)試験薬剤の能力を決定することとを含む、無細胞アッセイまたは細胞ベースのアッセイである。
【0269】
例えば、直接結合アッセイでは、結合が複合体中の標識タンパク質または分子を検出することによって決定され得るように、バイオマーカータンパク質(またはそれらのそれぞれの標的ポリペプチドまたは分子)が放射性同位体または酵素標識にカップリングされ得る。例えば、標的は、直接的または間接的のいずれかで、125I、35S、14C、またはHで標識され得、放射性同位体が放射線放出の直接計数またはシンチレーション計数によって検出され得る。あるいは、標的は、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識され得、酵素標識が適切な基質の産物への変換の決定によって検出され得る。バイオマーカーと基質との間の相互作用の決定が標準の結合または酵素分析アッセイを使用して達成される場合もある。上述のアッセイ方法の1つ以上の実施形態では、ポリペプチドまたは分子を固定化して、タンパク質または分子の一方または両方の複合体形成されていない形態からの複合体形成された形態の分離を促進し、かつアッセイの自動化を適応させることが望ましくあり得る。
【0270】
試験薬剤の標的への結合は、反応物を収容するのに好適な任意の容器内で達成され得る。かかる容器の非限定的な例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微小遠心管が挙げられる。本明細書に記載の抗体の固定化された形態は、多孔性、微孔性(約1ミクロン未満の平均細孔径を有する)またはマクロ多孔性(約10ミクロン超の平均細孔径を有する)材料、例えば、膜、セルロース、ニトロセルロース、またはガラス繊維;ビーズ、例えば、アガロースもしくはポリアクリルアミドもしくはラテックス製のもの;または皿、プレート、もしくはウェルの表面、例えば、ポリスチレン製のもの等の固相に結合した抗体も含み得る。
【0271】
代替の実施形態では、バイオマーカーと基質またはバイオマーカーとその天然結合パートナーとの間の相互作用を調節する薬剤の能力決定は、シグナル伝達経路(例えば、フィードバックループ)内のその位置の下流または上流で機能するポリペプチドまたは他の産物の活性を調節する試験薬剤の能力を決定することによって達成され得る。かかるフィードバックループは当該技術分野で周知である(例えば、Chen and Guillemin(2009)Int.J.Tryptophan Res.2:1-19を参照のこと)。
【0272】
KIR3DL3の状態は、本明細書に記載の抗KIR3DL3抗体を使用して測定され得る。HHLA2へのKIR3DL3結合の減少は、この薬剤がKIR3DL3活性/シグナル伝達を阻害することを示し、KIR3DL3活性/シグナル伝達の阻害および免疫応答の増加に有用なものとして薬剤を特定する。対照的に、HHLA2へのKIR3DL3結合の増加は、この薬剤がKIR3DL3活性/シグナル伝達を促進することを示し、KIR3DL3活性/シグナル伝達の促進および免疫応答の減少に有用なものとして薬剤を特定する。
【0273】
本開示はさらに、上述のスクリーニングアッセイによって特定された新規の薬剤に関する。したがって、本明細書に記載されるように特定された薬剤を適切な動物モデル等にさらに使用することは本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載されるように特定された薬剤が動物モデルに使用されて、かかる薬剤での治療の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、本明細書に記載されるように特定された抗体が動物モデルに使用されて、かかる薬剤の作用機構を決定することができる。
【0274】
本開示によって包含される一態様は、非細胞ベースのアッセイおよび異種移植片動物モデルアッセイを含むスクリーニングアッセイに関する。一実施形態では、これらのアッセイは、異種移植片動物モデルアッセイを使用することによってヒト等におけるがんが抗KIR3DL3抗体療法に応答する可能性があるかを特定し、かつ/または薬剤が抗KIR3DL3抗体療法に応答する可能性の低いがん細胞の成長を阻害するか、またはそれを死滅させることができるかを特定するための方法を提供する。
【0275】
3.予防的方法
一態様では、本開示は、対象における、望ましくないまたは決して望ましいとはいえない免疫応答に関連する疾患または状態を予防するための方法を提供する。特許請求される薬剤または方法での治療から恩恵を受けるであろう疾患を発症する危険性のある対象が、例えば、当該技術分野で既知の診断アッセイまたは予後アッセイのうちのいずれかまたはそれらの組み合わせによって特定され得る。予防薬の投与は、望ましくないまたは決して望ましいとはいえない免疫応答に関連する症状の兆候の前に起こり得る。治療に使用される適切な薬剤(例えば、抗体、ペプチド、融合タンパク質、または小分子)は、臨床的適応に基づいて決定され得、例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイを使用して特定され得る。
【0276】
4.予後アッセイ
さらに、本明細書に記載の検出方法を利用して、活性を調節するためのKIR3DL3を標的とする療法、および/またはHHLA2等の結合パートナーとの相互作用等の、特定の療法に応答する対象を特定することができる。同様に、本明細書に記載の予後アッセイを使用して、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、または他の薬物候補)が対象に投与されて、過剰または過少なKIR3DL3活性に関連するかかる障害を治療することができるかを決定することができる。例えば、かかる方法を使用して、対象が1つの薬剤または薬剤の組み合わせで有効に治療され得るかを決定することができる。したがって、本開示は、対象が、過剰または過少なKIR3DL3活性に関連する障害を治療するための1つ以上の薬剤で有効に治療され得るかを決定するための方法であって、試験試料が得られ、KIR3DL3が検出される、方法を提供する。試験試料は、目的とする対象から得られた生体試料であり得る。試験試料は、目的とする対象から得られてもよい。例えば、試料は、生体液(例えば、脳脊髄液または血清)、細胞試料、または組織、例えば、腫瘍微小環境、腫瘍周辺領域、および/もしくは腫瘍内領域の組織病理学的スライドであり得る。いくつかの実施形態では、試験試料は、成熟膜結合型KIR3DL3および/またはKIR3DL3断片を発現する細胞を含み得る。
【0277】
本明細書に記載の方法は、例えば、KIR3DL3を伴う疾患または疾病の症状または家族歴を呈する患者の予後を予測するための臨床状況において好都合に使用され得、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つの抗体試薬を含む予めパッケージングされた診断キットを利用することによって行われ得る。
【0278】
さらに、KIR3DL3が発現される任意の細胞型または組織が本明細書に記載の予後アッセイで利用され得る。
【0279】
本開示の別の態様は、過剰または過少なKIR3DL3活性に関連する障害を有する個体由来の生体試料中のKIR3DL3が分析され、その情報が好ましくは同様の年齢および人種の対照(例えば、その障害を有しない個体であり、対照は、「健常」もしくは「正常」個体と称され得るか、または所与の経時的研究における初期の時点のもの)と比較される、関連および/または層別化分析のための本明細書に記載の組成物および方法の使用を含む。あるいは、対照は、KIR3DL3を標的とする療法、例えば、KIR3DL3の活性またはKIR3DL3とその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を調節する療法に良好に応答した、過剰または過少なKIR3DL3活性を有する障害に悩まされている個体であってもよい。いくつかの実施形態では、患者および対照の適切な選択は、関連および/または層別化研究に有用であるため、十分に特徴付けられた表現型を有する個体のプールを含むことが非常に望ましくあり得る。層別化研究のための異なる研究設計が使用され得る(Modern Epidemiology,Lippincott Williams & Wilkins(1998),609-622)。
【0280】
VII.薬学的組成物
例えば、抗体、ペプチド、融合タンパク質、または小分子を遮断することを含む、KIR3DL3とHHLA2等の1つ以上の天然結合パートナーとの間の相互作用を調節する(例えば、阻害または促進する)薬剤が、対象への投与に好適な薬学的組成物に組み込まれ得る。かかる薬学的組成物は、本明細書に記載されるもの等の追加の成分および/または治療剤をさらに含むことができる。薬学的組成物は、典型的には、1つ以上の薬剤と薬学的に許容される担体とを含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という言語は、薬学的投与と適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤等を含むよう意図されている。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。いずれの従来の媒体または薬剤も活性化合物と適合性のない場合を除いて、本組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的活性化合物も本組成物に組み込まれ得る。
【0281】
本開示によって包含される薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、またはリン酸;および張度を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整され得る。これらの非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与バイアル内に封入され得る。
【0282】
注射用に好適な薬学的組成物には、滅菌注射用溶液または分散剤の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤および滅菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、好適な担体には、生理学的生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,NJ)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、本組成物は滅菌でなければならず、容易なシリンジ通過性(syringeability)が存在する程度に流体であるべきである。本組成物は、製造および保管条件下で安定しているべきであり、細菌および真菌等の微生物の混入作用から保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチン等のコーティング剤の使用、必要な粒径の維持(分散剤の場合)、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持され得る。微生物作用の阻止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、本組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、本組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらされ得る。
【0283】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、活性化合物を必要な量で上に列挙される成分のうちの1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒に組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散剤は、活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙されるもの由来の必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と事前に滅菌濾過された溶液由来の任意の追加の所望の成分との粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。
【0284】
経口組成物には、一般に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。それらは、ゼラチンカプセル内に封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。治療的経口投与の目的のために、活性化合物が、賦形剤と組み込まれ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物は、洗口液としての使用のための流体担体を使用して調製される場合もあり、流体担体中の化合物は、経口適用され、口内でグチュグチュされ、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント材料が、本組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガム、もしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリン;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味料のうちのいずれか、または同様の性質を有する化合物を含有し得る。
【0285】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な推進剤、例えば、二酸化炭素等のガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からのエアゾールスプレーの形態で送達される。
【0286】
全身投与は、経粘膜または経皮手段による場合もある。経粘膜または経皮投与の場合、浸透される障壁に適切な浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られており、これらには、例えば、経粘膜投与の場合、洗剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬の使用によって達成され得る。経皮投与の場合、活性化合物は、当該技術分野で一般的に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化され得る。
【0287】
化合物は、坐薬(例えば、ココアバターおよび他のグリセリド等の従来の坐薬基剤を用いて)または直腸送達の場合には保持浣腸剤の形態で調製される場合もある。
【0288】
一実施形態では、調節剤は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む、放出制御製剤等の体内からの迅速な排除から化合物を保護する担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の生分解性生体適合性ポリマーが使用され得る。かかる製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであるはずである。これらの材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞を標的としたリポソームを含む)も薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、当業者に既知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法に従って調製され得る。
【0289】
投与の簡便性および投薬量の均一性のために経口または非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形とは、治療される対象の単位投薬量に適した物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された活性化合物の所定の量を含有する。本開示によって包含される単位剤形の仕様は、活性化合物の特有の特性、達成される特定の治療効果、および個体の治療のためのかかる活性化合物を化合する当該技術分野に固有の制限によって決定され、かつそれらに直接依存する。
【0290】
かかる化合物の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって決定され得、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するためのものである。毒性作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表現され得る。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性副作用を呈する化合物が使用され得るが、非感染細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それにより、副作用を軽減するために、かかる化合物を罹患組織部位に標的させる送達系を設計する際に注意を払われなければならない。
【0291】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータが、ヒトにおける使用のためのある範囲の投薬量の製剤化に使用され得る。かかる化合物の投薬量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全く有しないED50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。本開示によって包含される方法で使用されるいずれの化合物についても、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定され得る。用量が動物モデルで製剤化されて、細胞培養において決定されるIC50(すなわち、症状の半最大抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0292】
上述の調節剤は、当該薬剤をコードする発現可能な核酸の形態で投与され得る。これらが含まれるかかる核酸および組成物も本開示によって包含される。例えば、本開示によって包含される核酸分子は、ベクターに挿入され、遺伝子療法ベクターとして使用され得る。遺伝子療法ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)、または定位注射(例えば、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054-3057を参照のこと)によって対象に送達され得る。遺伝子療法ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤中の遺伝子療法ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれる徐放性マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞からインタクトで産生され得る場合、例えば、レトロウイルスベクターの場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含み得る。
【0293】
薬学的組成物は、投与についての指示と一緒に容器、パック、またはディスペンサー内に含まれ得る。
【0294】
VIII.薬剤の投与
本開示によって包含される免疫調節薬剤は、免疫細胞媒介性免疫応答を増強するか、または抑止するかのいずれかのために、インビボでの医薬品投与に好適な生物学的に適合性の形態で対象に投与される。「インビボ投与に好適な生物学的に適合性の形態」とは、いずれの毒性作用もタンパク質の治療効果を上回る投与されるタンパク質の形態を意味する。本明細書に記載の薬剤の投与は、薬剤の治療的に活性な量を単独でまたは薬学的に許容される担体と組み合わせて含む任意の薬理学的形態であり得る。
【0295】
本開示によって包含される治療的組成物の治療的に活性な量の投与は、必要な投薬量で必要な期間にわたって所望の結果を達成するのに有効な量として定義される。例えば、薬剤の治療的に活性な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重等の因子、ならびに個体に所望の応答を誘発するペプチドの能力により異なり得る。投薬量レジメンは、最適治療応答を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割用量が1日1回投与され得るか、または用量は、治療状況の緊急事態によって示されるように比例的に減少し得る。
【0296】
本明細書に記載の薬剤または本発明は、注射(皮下、静脈内等)、経口投与、吸入、経皮適用、または直腸投与等の簡便な様式で投与され得る。投与経路に応じて、活性化合物は、化合物を不活性化し得る酵素、酸、および他の自然条件の作用から化合物を保護するための材料でコーティングされ得る。例えば、薬剤の投与について、非経口投与以外の方法により、薬剤をその不活性化を阻止するための材料でコーティングするか、または薬剤をその材料と同時投与することが望ましくあり得る。
【0297】
薬剤は、個体に、適切な担体、希釈剤、もしくはアジュバント中で投与されるか、酵素阻害剤と同時投与されるか、またはリポソーム等の適切な担体中で投与される。薬学的に許容される希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝溶液が含まれる。アジュバントは、その最も広い意味で使用され、インターフェロン等の任意の免疫刺激化合物を含む。本明細書で企図されるアジュバントには、レゾルシノール、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルが含まれる。酵素阻害剤には、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DEEP)、およびトラジロールが含まれる。リポソームには、水中油中水乳剤、ならびに従来のリポソーム(Sterna et al.(1984)J.Neuroimmunol.7:27)が含まれる。
【0298】
分散剤が、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中で調製される場合もある。通常の保管および使用条件下で、これらの調製物は、微生物増殖を阻止するための保存料を含有し得る。
【0299】
注射用に好適な薬剤の薬学的組成物には、滅菌注射用溶液または分散剤の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤および滅菌粉末が含まれる。すべての場合において、本組成物は、好ましくは滅菌であり、容易なシリンジ通過性が存在する程度に流体であるべきである。本組成物は、好ましくは製造および保管条件下で安定しており、細菌および真菌等の微生物の混入作用から保護されるであろう。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチン等のコーティング剤の使用、必要な粒径の維持(分散剤の場合)、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持され得る。微生物作用の阻止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、本組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、本組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらされ得る。
【0300】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、本開示によって包含される薬剤(例えば、抗体、ペプチド、融合タンパク質、または小分子)を必要な量で上に列挙される成分のうちの1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒に組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散剤は、活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙されるもの由来の必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、薬剤と事前に滅菌濾過された溶液由来の任意の追加の所望の成分との粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。
【0301】
上述のように薬剤が好適に保護される場合、タンパク質は、例えば、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と経口投与され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤等を含む。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。いずれの従来の媒体または薬剤も活性化合物と適合性のない場合を除いて、治療的組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的活性化合物も本組成物に組み込まれ得る。
【0302】
投与の簡便性および投薬量の均一性のために非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される「単位剤形」とは、治療される哺乳類対象の単位投薬量に適した物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された活性化合物の所定の量を含有する。本開示によって包含される単位投与形態の仕様は、(a)活性化合物の特有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の治療のためにかかる活性化合物を混合する当該技術分野に固有の制限によって示され、かつそれらに直接的に依存する。
【0303】
一実施形態では、本開示によって包含される薬剤は、抗体である。本明細書で定義されるように、抗体の治療有効量(すなわち、有効投薬量)は、約0.001~100 mg/kg体重、好ましくは約0.01~25 mg/kg体重、より好ましくは約0.1~20 mg/kg体重、さらにより好ましくは約1~10 mg/kg、2~9 mg/kg、3~8 mg/kg、4~7 mg/kg、または5~6 mg/kg体重の範囲である。当業者であれば、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、これらに限定されないある特定の因子が、対象を有効に治療するのに必要な投薬量に影響を及ぼし得ることを理解する。さらに、抗体の治療有効量での対象の治療は、単回治療を含み得るか、または好ましくは一連の治療を含み得る。好ましい例では、対象は、約0.1~20mg/kg体重の範囲の抗体で、約1~10週間、好ましくは2~8週間、より好ましくは約3~7週間、さらにより好ましくは約4、5、または6週間にわたって週1回治療される。治療に使用される抗体の有効投薬量が特定の治療の過程にわたって増加または減少し得ることも理解されるであろう。投薬量の変化により、診断アッセイの結果がもたらされ得る。
【0304】
上述のように、いくつかの実施形態では、投与のための薬剤は、細胞ベースである。細胞ベースの薬剤は、対象宿主と免疫適合性関係にあり、任意のかかる関係が本開示による使用のために企図される。例えば、養子T細胞等の細胞は同系であり得る。「同系」という用語は、特に抗原または免疫学的反応に関して遺伝学的に同一である同じ種に由来するか、それに起源するか、またはそのメンバーである状態を指し得る。これらには、一致するMHC型を有する同一の双子が含まれる。したがって、「同系移植」とは、ドナーからドナーと遺伝学的に同一であるか、または望ましくない有害な免疫原性応答(例えば、本明細書に記載の免疫学的スクリーニング結果の解釈に反するであろうもの等)なしに移植を可能にするのに十分に免疫学的に適合性であるレシピエントへの細胞の移入を指す。
【0305】
移入された細胞が同じ対象から得られ、同じ対象に移植される場合、同系移植は、「自己」のものであり得る。「自己移植」は、対象自身の細胞または臓器の採取および再注入または移植を指す。自己細胞の排他的または補足的使用により、細胞の宿主への戻し投与、特定の移植片対宿主反応の多くの有害作用が排除または軽減され得る。
【0306】
移入された細胞が同じ種から得られ、かつその同じ種の異なるメンバーに移植されるが、有害な免疫原性応答を回避するのに十分に一致した主要組織適合性複合体(MHC)抗原を有する場合、同系移植は、「一致した同種」のものであり得る。MHC不一致の程度の決定は、当該技術分野で既知の使用されている標準の試験に従って達成され得る。例えば、ヒトにおいて、移植生物学で重要であると特定されているMHC遺伝子の少なくとも6つの主要なカテゴリーが存在する。HLA-A、HLA-B、HLA-Cは、HLAクラスIタンパク質をコードし、HLA-DR、HLA-DQ、およびHLA-DPは、HLAクラスIIタンパク質をコードする。これらの群の各々の群内の遺伝子は、ヒト集団に見られる多数のHLA対立遺伝子またはバリアントに反映されるように高度に多型であり、個体間のこれらの群の差は、移植細胞の免疫応答の強度に関連する。MHC一致の程度を決定するための標準方法は、HLA-B群およびHLA-DR群、またはHLA-A群、HLA-B群、およびHLA-DR群内の対立遺伝子を試験する。したがって、試験は、それぞれ、2つまたは3つのHLA群内の少なくとも4つ、さらには5つまたは6つのMHC抗原からなり得る。血清学的MHC試験では、各HLA抗原型に対して産生された抗体が1体の対象(例えば、ドナー)由来の細胞と反応して、その抗体と反応するある特定のMHC抗原の存在または不在を決定する。これは、他の対象(例えば、レシピエント)の反応性プロファイルと比較される。抗体のMHC抗原との反応は、典型的には、抗体を細胞とインキュベートし、その後、補体を添加して細胞溶解を誘導すること(すなわち、リンパ球毒性試験)によって決定される。反応は、この反応において溶解した細胞の量に従って試験および等級分けされる(例えば、Mickelson and Petersdorf(1999)Hematopoietic Cell Transplantation,Thomas,E.D.et al.eds.,pg 28-37,Blackwell Scientific,Malden,Mass.を参照のこと)。他の細胞ベースのアッセイには、標識抗体を使用したフローサイトメトリーまたは酵素結合免疫アッセイ(ELISA)が含まれる。MHC型を決定するための分子法が周知であり、HLAタンパク質をコードする特定の遺伝子配列を検出するための合成プローブおよび/またはプライマーを一般に用いる。合成オリゴヌクレオチドは、特定のHLA型に関連する制限断片長多型を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る(Vaughn(2002)Method.Mol.Biol.MHC Protocol.210:45-60)。あるいは、(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応またはライゲーション連鎖反応により)HLA配列を増幅するためのプライマーが使用され得、その産物は、直接DNA配列決定、制限断片多型分析(RFLP)、または一連の配列特異的オリゴヌクレオチドプライマー(SSOP)とのハイブリダイゼーションによってさらに試験され得る(Petersdorf et al.(1998)Blood 92:3515-3520、Morishima et al.(2002)Blood 99:4200-4206、およびMiddleton and Williams(2002)Method.Mol.Biol.MHC Protocol.210:67-112)。
【0307】
移入された細胞と対象の細胞が、典型的には同系交配により、単一遺伝子座等の定義された遺伝子座で異なる場合、同系移植は、「類遺伝子性」であり得る。「類遺伝子性」という用語は、同じ種に由来するか、それに起源するか、またはそのメンバーであることを指し、これらのメンバーは、小さい遺伝領域、典型的には単一遺伝子座(すなわち、単一遺伝子)を除いて遺伝学的に同一である。「類遺伝子移植」とは、レシピエントが単一遺伝子座を除いてドナーと遺伝学的に同一である、細胞または臓器のドナーからレシピエントへの移入を指す。例えば、CD45は、いくつかの対立遺伝子形態で存在し、マウス株がCD45.1またはCD45.2対立遺伝子バージョンが発現されるかに関して異なる類遺伝子マウス株が存在する。
【0308】
対照的に、「不一致同種」とは、有害な免疫原性応答を誘発するのに十分なMHC抗原の定義されたメンバーの血清学的分析または分子分析等の当該技術分野で使用されている標準のアッセイによって典型的に決定される、非同一の主要組織適合性複合体(MHC)抗原(すなわち、タンパク質)を有する同じ種に由来するか、それに起源するか、またはそのメンバーであることを指す。「部分的不一致」とは、メンバー間、典型的にはドナーとレシピエントとの間で試験されたMHC抗原の部分的一致を指す。例えば、「半不一致」とは、試験されたMHC抗原の50%が2つのメンバー間で異なるMHC抗原型を示すことを指す。「完全(full)」または「完全(complete)」不一致とは、試験されたすべてのMHC抗原が2つのメンバー間で異なることを指す。
【0309】
同様に、対照的には、「異種」とは、異なる種、例えば、ヒトおよび齧歯類、ヒトおよびブタ、ヒトおよびチンパンジー等に由来するか、それに起源するか、またはそのメンバーであることを指す。「異種移植」とは、レシピエントがドナーの種とは異なる種である、細胞または臓器のドナーからレシピエントへの移入を指す。
【0310】
加えて、細胞は、単一の源または複数の源(例えば、単一の対象または複数の対象)から得られ得る。複数とは、少なくとも2つ(例えば、1つより多く)を指す。なお別の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウスである。目的とする細胞型が得られる動物は、成体、新生児(例えば、48時間齢未満)、未熟、または子宮内であり得る。目的とする細胞型は、初代がん細胞、がん幹細胞、樹立がん細胞株、不死化初代がん細胞等であり得る。ある特定の実施形態では、宿主対象の免疫系は、移植がん細胞と免疫学的に適合性のあるように操作されるか、または別様に選出され得る。例えば、一実施形態では、対象は、ヒトがん細胞と適合性になるように「ヒト化」され得る。「免疫系ヒト化」という用語は、ヒトHSC系統細胞ならびにヒト後天性および先天性免疫細胞を含むマウス等の動物が、宿主動物から拒絶されることなく生存し、それにより、ヒト造血ならびに後天性免疫および先天性免疫の両方の宿主動物における再構成を可能にすることを指す。後天性免疫細胞には、T細胞およびB細胞が含まれる。先天性免疫細胞には、マクロファージ、顆粒球(好塩基球、好酸球、好中球)、DC、NK細胞、およびマスト細胞が含まれる。代表的な非限定的な例には、SCID-hu、Hu-PBL-SCID、Hu-SRC-SCID、NSG(先天性免疫系、B細胞、T細胞、およびサイトカインシグナル伝達を欠くNOD-SCID IL2r-ガンマ(ヌル))、NOG(NOD-SCID IL2r-ガンマ(切断))、BRG(BALB/c-Rag2(ヌル)IL2r-ガンマ(ヌル))、およびH2dRG(Stock-H2d-Rag2(ヌル)IL2r-ガンマ(ヌル))マウス(例えば、Shultz et al.(2007)Nat.Rev.Immunol.7:118、Pearson et al.(2008)Curr.Protocol.Immunol.15:21、Brehm et al.(2010)Clin.Immunol.135:84-98、McCune et al.(1988)Science 241:1632-1639、米国特許第7,960,175号、および米国特許公開第2006/0161996号を参照のこと)、ならびに免疫関連遺伝子の関連ヌル変異体、例えば、Rag1(B細胞およびT細胞を欠く)、Rag2(B細胞およびT細胞を欠く)、TCRアルファ(T細胞を欠く)、パーフォリン(cD8+T細胞が細胞毒性機能を欠く)、FoxP3(機能的CD4+T制御性細胞を欠く)、IL2rg、またはPrfl、ならびにHHLA2、KIR3DL3、TMIGD2、PD-1、PD-L1、Tim3、および/または2B4の変異体またはノックアウトが挙げられ、マウス等の免疫不全動物のコンパートメント特異的モデルにおけるヒト免疫細胞の効率的な生着を可能にし、かつ/またはそのモデルを提供する(例えば、PCT公開第WO2013/062134号を参照のこと)。加えて、NSG-CD34+(NOD-SCID IL2r-ガンマ(ヌル)CD34+)ヒト化マウスは、マウス等の動物モデルにおけるヒト遺伝子および腫瘍活性の研究に有用である。
【0311】
本明細書で使用される場合、生物学的材料源から「得られる」とは、ドナー由来の生物学的材料を採取するか、またはその源を分配する任意の従来の方法を意味する。例えば、生物学的材料は、固形腫瘍、末梢血もしくは臍帯血試料等の血液試料から得られ得るか、または骨髄もしくは羊水等の別の体液から採取され得る。かかる試料を得るための方法は、当業者に周知である。本開示では、試料は、新鮮なもの(すなわち、凍結することなくドナーから得られたもの)であり得る。さらに、試料は、増殖前に外来性のまたは望ましくない成分を除去するようにさらに操作され得る。試料は、保存ストックから得られる場合もある。例えば、細胞株または末梢血もしくは臍帯血等の体液の場合、試料は、かかる細胞株または体液の低温貯蔵的にまたは別様に保存されたバンクから採取され得る。かかる試料は、任意の好適なドナーから得られ得る。
【0312】
得られた細胞集団は、直接使用され得るか、または後日使用するために凍結され得る。凍結保存のための様々な媒体およびプロトコルが当該技術分野で既知である。一般に、凍結媒体は、約5~10%のDMSO、10~90%の血清アルブミン、および50~90%の培養培地を含む。細胞の保存に有用な他の添加物には、例として、トレハロース等の二糖(Scheinkoniget al.(2004)Bone Marrow Transplant.34:531-536)、またはヘタスターチ(すなわち、ヒドロキシエチルデンプン)等の血漿増量剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リン酸緩衝生理食塩水等の等張緩衝溶液が使用され得る。例示の凍結保存組成物は、4%のHSA、7.5%のジメチルスルホキシド(DMSO)、および2%のヘタスターチを有する細胞培養培地を有する。凍結保存のための他の組成物および方法は、当該技術分野で周知であり、説明されている(例えば、Broxmeyer et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:645-650を参照のこと)。細胞は、約-135℃未満の最終温度で保存される。
【0313】
細胞は、対象の体重1キログラム当たり0.1×10、0.2×10、0.3×10、0.4×10、0.5×10、0.6×10、0.7×10、0.8×10、0.9×10、1.0×10、5.0×10、1.0×10、5.0×10、1.0×10、5.0×10個の細胞、もしくはそれ以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくはそれらの間の任意の値で投与され得る。移植される細胞の数は、所与の時間量での所望の生着レベルに基づいて調整され得る。一般に、1×10~約1×10細胞/kg体重、約1×10~約1×10細胞/kg体重、もしくは約1×10細胞/kg体重、またはそれ以上の細胞が必要に応じて移植され得る。いくつかの実施形態では、平均サイズのマウスに対して少なくとも約0.1x10、0.5x10、1.0×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、または5.0×10個の総細胞の移植が有効である。
【0314】
細胞は、他の抗がん剤の前に、それと同時に、またはその後に投与される場合もある。
【0315】
上述のように、細胞のような薬剤の投与は、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、髄腔内、胸骨内、関節内、滑液嚢内、鞘内、動脈内、心臓内、または筋肉内、静脈内、皮下、特定の組織(例えば、焦点移植)、大腿骨髄腔、脾臓、胎児肝モードの腎被膜等による投与を含むが、これらに限定されない当該技術分野で一般に知られている方法を使用して達成され得る。
【0316】
移植細胞の生着は、腫瘍体積、サイトカインレベル、投与時間、移植後の1つ以上の時点で対象から得られた目的とする細胞のフローサイトメトリー分析等であるが、これらに限定されない様々な方法のうちのいずれかによって評価され得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28日待ちの時間ベースの分析、または腫瘍採取時間を示し得る。任意のかかる測定基準は、抗がん免疫療法に対する応答への変数の影響を決定するために周知のパラメータに従って調整され得る変数である。加えて、移植細胞は、他の薬剤、例えば、サイトカイン、細胞外マトリックス、細胞培養支持体等と共移植され得る。
【0317】
IX.対象
いくつかの実施形態では、本開示(例えば、抗KIR3DL3抗体、またはその抗原結合断片)が、療法または免疫調節のために使用される対象は、哺乳動物(例えば、マウス、ヒト化マウス、ラット、霊長類、非ヒト哺乳動物、家畜、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等)であり、好ましくはヒトである。別の実施形態では、対象は、がんの動物モデルである。例えば、動物モデルは、ヒト由来のがんの同所性異種移植片動物モデルであり得る。
【0318】
本開示によって包含される方法の別の実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的療法、および/または抗免疫チェックポイント療法等の治療を受けていない。なお別の実施形態では、対象は、化学療法、放射線療法、標的療法、および/または抗免疫チェックポイント療法等の治療を受けている。
【0319】
ある特定の実施形態では、対象は、がん性または前がん性組織を取り除くための手術を受けている。他の実施形態では、がん性組織は取り除かれておらず、例えば、がん性組織は、生命に不可欠な組織または外科的手技が患者に危害を及ぼすかなりの危険性を引き起こすであろう領域等の身体の手術不能な領域に位置し得る。
【0320】
本開示によって包含される方法を使用して、本明細書に記載のもの等の対象におけるKIR3DL3療法に対する応答性を決定することができ、かつ/または多くの異なるがんを治療することができる。
【0321】
X.試料の収集、調製、および分離
いくつかの実施形態では、対象由来の試料中のバイオマーカー量および/または活性測定値が所定の対照(基準)試料と比較される。対象由来の試料は、典型的には、がん細胞または組織等の罹患組織由来である。対照試料は、同じ対象または異なる対象由来であり得る。対照試料は、典型的には、罹患していない正常試料である。しかしながら、いくつかの実施形態では、疾患の病期分類または治療の有効性の評価等のために、対照試料は罹患組織由来であり得る。対照試料は、いくつかの異なる対象由来の試料の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、対象由来のバイオマーカー量および/または活性測定値が所定のレベルと比較される。この所定のレベルは、典型的には、正常試料から得られる。本明細書に記載される場合、「所定の」バイオマーカー量および/または活性測定値は、ほんの一例として、治療に選択され得る対象を評価する(例えば、ゲノム変異の数および/またはDNA修復遺伝子の非機能性タンパク質を引き起こすゲノム変異の数に基づいて)、抗KIR3DL3抗体療法に対する応答を評価する、かつ/または1つ以上の追加の抗がん療法を伴う抗KIR3DL3抗体療法に対する応答を評価するために使用されるバイオマーカー量および/または活性測定値であり得る。所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、がんを有する患者集団またはがんを有しない患者集団において決定され得る。所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、あらゆる患者に平等に適用可能な単数であり得るか、または所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、特定の患者亜集団により異なり得る。対象の年齢、体重、身長、および他の因子は、その個体の所定のバイオマーカー量および/または活性測定値に影響を及ぼし得る。さらに、所定のバイオマーカー量および/または活性は、対象毎に個別に決定され得る。一実施形態では、本明細書に記載の方法で決定および/または比較される量は、絶対測定値に基づいている。
【0322】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法で決定および/または比較される量は、比率等の相対的測定(例えば、治療前対治療後のバイオマーカーコピー数、レベル、および/または活性、スパイクまたは人工対照に対するかかるバイオマーカー測定値、ハウスキーピング遺伝子の発現に対するかかるバイオマーカー測定値等)に基づいている。例えば、相対的分析は、治療後バイオマーカー測定と比較した治療前バイオマーカー測定の比率に基づき得る。治療前バイオマーカー測定は、抗がん療法開始前の任意の時点で行われ得る。治療後バイオマーカー測定は、抗がん療法開始後の任意の時点で行われ得る。いくつかの実施形態では、治療後バイオマーカー測定は、抗がん療法開始の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に、継続的監視のために無期限に近いさらに長い期間後に行われる。治療は、1つ以上の抗KIR3DL3抗体を単独でまたは免疫チェックポイント阻害剤等の他の抗がん剤と組み合わせて含む治療レジメン等の抗がん療法を含み得る。
【0323】
所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、任意の好適な基準であり得る。例えば、所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、患者選択が評価される同じまたは異なるヒトから得られ得る。一実施形態では、所定のバイオマーカー量および/または活性測定値は、同じ患者の以前の評価から得られ得る。かかる様式で、患者の選択の経過が経時的に監視され得る。加えて、対照は、別のヒトまたは複数のヒト、例えば、対象がヒトである場合、選択されたヒト群の評価から得られ得る。かかる様式で、選択が評価されるヒトの選択の程度が、好適な他のヒト、例えば、同様もしくは同じ状態に罹患しているヒトおよび/または同じ民族集団のヒト等の目的とするヒトと同様の状況下にある他のヒトと比較され得る。
【0324】
本開示によって包含されるいくつかの実施形態では、所定のレベルからのバイオマーカー量および/または活性測定値の変化は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0倍、またはそれ以上、あるいはそれらの間の任意の範囲(境界値も含む)である。測定値が相対的変化に基づいている、例えば、治療前バイオマーカー測定を治療後バイオマーカー測定と比較した比率に基づいている場合に、かかるカットオフ値が平等に適用される。
【0325】
生物学的試料は、核酸および/またはタンパク質を含む体液試料、細胞試料、または組織試料を含む患者由来の様々な源から収集され得る。「体液」とは、身体から排泄または分泌される流体、ならびに通常は身体から排泄または分泌されない流体(例えば、羊水、房水、胆汁、血液および血漿、脳脊髄液、耳垢(cerumen)および耳垢(earwax)、カウパー液または前射精液、乳糜、糜粥、糞便、雌性射出液、間質液、細胞内液、リンパ液、月経、母乳、粘液、胸膜液、膿汁、唾液、皮脂、精液、血清、汗、滑液、涙、尿、腟粘滑液、硝子体液、嘔吐物)を指す。好ましい実施形態では、対象試料および/または対照試料は、細胞、細胞株、組織学的スライド、パラフィン包埋組織、生検、全血、乳頭吸引液、血清、血漿、頬掻爬物、唾液、脳脊髄液、尿、糞便、および骨髄からなる群から選択される。一実施形態では、試料は、血清、血漿、または尿である。別の実施形態では、試料は、血清である。
【0326】
試料は、長期間にわたって個体から繰り返し収集され得る(例えば、約数日間、数週間、数ヶ月に1回以上、年1回、年2回等)。ある期間にわたって個体から多数の試料を得ることは、早期検出からの結果を検証し、かつ/または生物学的パターンの変化を、例えば、疾患進行、薬物治療等の結果として特定するために使用され得る。例えば、対象試料は、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、または本開示による1、2、もしくは3ヶ月間隔の組み合わせで採取および監視され得る。加えて、経時的に得られた対象のバイオマーカー量および/または活性測定値は、監視期間中に、互いに、かつ正常対照のものと好都合に比較され、それにより、対象自身の値を長期監視のための内部対照または個人的対照として提供することができる。
【0327】
試料調製および分離は、収集された試料のタイプおよび/またはバイオマーカー測定値の分析に応じて、手順のうちのいずれかを含み得る。かかる手順には、ほんの一例として、濃縮、希釈、pHの調整、高濃度ポリペプチド(例えば、アルブミン、ガンマグロブリン、およびトランスフェリン等)の除去、保存料および検量体の添加、プロテアーゼ阻害剤の添加、変性剤の添加、試料の脱塩、ならびに試料タンパク質の濃縮、脂質の抽出および精製が含まれる。
【0328】
試料調製は、非共有結合複合体中で他のタンパク質(例えば、担体タンパク質)に結合した分子を単離することもできる。このプロセスは、特定の担体タンパク質(例えば、アルブミン)に結合したこれらの分子を単離することができるか、またはタンパク質変性による、例えば、酸を使用した、すべての担体タンパク質からの結合した分子の放出、その後の担体タンパク質の除去等のより一般的なプロセスを使用することができる。
【0329】
望ましくないタンパク質(例えば、高濃度の、無益な、または検出不能なタンパク質)の試料からの除去は、高親和性試薬、高分子量フィルター、超遠心分離および/または電気透析を使用して達成され得る。高親和性試薬には、高濃度タンパク質に選択的に結合する抗体または他の試薬(例えば、アプタマー)が含まれる。試料調製には、イオン交換クロマトグラフィー、金属イオン親和性クロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水性クロマトグラフィー、クロマト分画、吸着クロマトグラフィー、等電点分画、および関連技法も含まれ得る。分子量フィルターには、サイズおよび分子量に基づいて分子を分離する膜が含まれる。かかるフィルターは、逆浸透、ナノ濾過、限外濾過、および精密濾過をさらに用い得る。
【0330】
超遠心分離とは、望ましくないポリペプチドを試料から除去するための方法である。超遠心分離とは、光学系で粒子の沈降(またはその欠如)を監視しながら、約15,000~60,000rpmで試料を遠心分離することである。電気透析とは、イオンが電位勾配の影響下で半透性膜を通して1つの溶液から別の溶液に輸送されるプロセスにおいて電気膜または半透性膜を使用する手技である。電気透析に使用される膜は、正電荷または負電荷を有するイオンを選択的に輸送するか、反対電荷のイオンを拒絶するか、または種がサイズおよび電荷に基づいて半透性膜を通って移動することを可能にする能力を有し得るため、電気透析を電解質の濃縮、除去、または分離に有用なものにする。
【0331】
本開示における分離および精製は、当該技術分野で既知の任意の手技、例えば、キャピラリー電気泳動(例えば、キャピラリー内もしくはチップ上)またはクロマトグラフィー(例えば、キャピラリー内、カラム、もしくはチップ上)を含み得る。電気泳動とは、電場の影響下でイオン性分子を分離するために使用され得る方法である。電気泳動は、ゲル中、キャピラリー内、またはチップ上のマイクロチャネル内で行われ得る。電気泳動に使用されるゲルの例には、デンプン、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アガロース、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ゲルは、その架橋結合、洗剤または変性剤の添加、酵素または抗体(アフィニティー電気泳動)または基質(ザイモグラフィー)の固定化、およびpH勾配の組み込みによって修飾され得る。電気泳動に使用されるキャピラリーの例には、エレクトロスプレーと連動するキャピラリーが挙げられる。
【0332】
キャピラリー電気泳動(CE)は、複合親水性分子と高度に荷電された溶質の分離に好ましい。CE技術は、マイクロ流体チップ上に実装される場合もある。使用されるキャピラリーおよび緩衝液のタイプに応じて、CEは、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリー等速電気泳動(cITP)、およびキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)等の分離技法にさらに分けられ得る。CE技法をエレクトロスプレーイオン化に連結するための実施形態は、揮発性溶液、例えば、揮発性酸および/または塩基を含有する水性混合物ならびにアルコールまたはアセトニトリル等の有機物の使用を含む。
【0333】
キャピラリー等速電気泳動(cITP)とは、分析物がキャピラリーを通って一定速度で移動するが、それにもかかわらずそれらのそれぞれの移動度によって分離される技法である。キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、別名、自由溶液CE(FSCE)とは、分子上の電荷によって決定される種の電気泳動移動度の差および分子が移動中に遭遇する摩擦抵抗(多くの場合、分子のサイズに正比例する)に基づいている。キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)は、弱イオン性両性分子がpH勾配で電気泳動によって分離されることを可能にする。CECは、伝統的な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とCEとの間のハイブリッド技法である。
【0334】
本開示で使用される分離および精製技法は、当該技術分野で既知の任意のクロマトグラフィー手順を含む。クロマトグラフィーは、ある特定の分析物の示差的吸着および溶出または移動相と固定相との間での分析物の分配に基づき得る。クロマトグラフィーの異なる例としては、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0335】
XI.バイオマーカーポリペプチド
本開示によって包含される別の態様は、バイオマーカータンパク質およびその生物学的に活性な部分の使用に関する。一実施形態では、マーカーに対応する天然ポリペプチドは、標準のタンパク質精製技法を使用して適切な精製スキームによって細胞源または組織源から単離され得る。別の実施形態では、本開示によって包含されるマーカーに対応するポリペプチドは、組換えDNA技法によって産生される。組換え発現の代替案として、本開示によって包含されるマーカーに対応するポリペプチドは、標準のペプチド合成技法を使用して化学的に合成され得る。
【0336】
バイオマーカーポリペプチドの生物学的に活性な部分は、本明細書に記載のバイオマーカータンパク質アミノ酸配列と十分に同一であるか、またはそれに由来するアミノ酸配列を含むが、全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を呈するポリペプチドを含む。典型的には、生物学的に活性な部分は、対応するタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。本開示によって包含されるタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100、またはそれ以上のアミノ酸長のポリペプチドであり得る。さらに、タンパク質の他の領域が欠失している他の生物学的に活性な部分は、組換え技法によって調製され、本開示によって包含されるポリペプチドの天然形態の機能的活性のうちの1つ以上について評価され得る。
【0337】
好ましいポリペプチドは、本明細書に記載の核酸分子によってコードされるバイオマーカータンパク質のアミノ酸配列を有する。他の有用なタンパク質は、これらの配列のうちの1つと実質的に同一であり(例えば、少なくとも約40%、好ましくは50%、60%、70%、75%、80%、83%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)、対応する天然に存在するタンパク質のタンパク質の機能的活性を保持するが、天然対立遺伝子変異または変異誘発によりアミノ酸配列が異なる。
【0338】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性パーセントを決定するために、配列が最適比較目的のためにアラインされる(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列との最適アライメントのために第1のアミノ酸または核酸配列の配列にギャップが導入され得る)。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、それらの分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/総位置数(例えば、重複している位置)×100)である。一実施形態では、2つの配列は、同じ長さである。
【0339】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877にあるように修正されたKarlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれる。本開示によって包含される核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチド検索が、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行われ得る。本開示によって包含されるタンパク質分子と相同のアミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索が、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行われ得る。比較目的のためにギャップドアライメントを得るために、ギャップドBLASTがAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されるように利用され得る。あるいは、PSI-Blastを使用して、分子間の距離関係を検出する反復検索を行うことができる。BLAST、ギャップドBLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller,(1988)Comput Appl Biosci,4:11-7のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4が使用され得る。局所配列類似性およびアライメントの領域の特定に有用なさらに別のアルゴリズムは、Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444-2448に記載のFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列を比較するためにFASTAアルゴリズムを使用する場合、例えば、PAM120重み残基表がk-タプル値2で使用され得る。
【0340】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容してまたはギャップを許容することなく、上述の技法と同様の技法を使用して決定され得る。同一性パーセントを計算する際、正確な一致のみが計数される。
【0341】
本開示は、バイオマーカータンパク質に対応するキメラまたは融合タンパク質も提供する。本明細書で使用される場合、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、マーカーに対応するポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結された本開示によって包含されるマーカーに対応するポリペプチドのすべてまたは一部(好ましくは、生物学的に活性な部分)を含む。融合タンパク質において、「作動可能に連結される」という用語は、本開示によって包含されるポリペプチドと異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合していることを示すよう意図されている。異種ポリペプチドは、本開示によって包含されるポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に融合し得る。
【0342】
1つの有用な融合タンパク質は、本開示によって包含されるマーカーに対応するポリペプチドがGST配列のカルボキシル末端に融合しているGST融合タンパク質である。かかる融合タンパク質は、本開示によって包含される組換えポリペプチドの精製を容易にし得る。
【0343】
別の実施形態では、融合タンパク質は、異種シグナル配列、免疫グロブリン融合タンパク質、毒素、または他の有用なタンパク質配列を含む。本開示によって包含されるキメラおよび融合タンパク質は、標準の組換えDNA技法によって産生され得る。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技法によって合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片間の相補的オーバーハングをもたらすアンカープライマーを使用して行われ得、その後、これがアニールおよび再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubel et al.(上記参照)を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をすでにコードする多くの発現ベクターが市販されている。本開示によって包含されるポリペプチドをコードする核酸は、融合部分が本開示によって包含されるポリペプチドにインフレームで連結されるように、かかる発現ベクターにクローニングされ得る。
【0344】
シグナル配列を使用して、分泌タンパク質または目的とする他のタンパク質の分泌および単離を容易にすることができる。シグナル配列は、典型的には、一般に1つ以上の切断事象において分泌中に成熟タンパク質から切断される疎水性アミノ酸のコアを特徴とする。かかるシグナルペプチドは、分泌経路を通過する際に成熟タンパク質からのシグナル配列の切断を可能にする処理部位を含む。したがって、本開示は、シグナル配列を有する記載のポリペプチド、ならびにシグナル配列がタンパク質分解的に切断されたポリペプチド(すなわち、切断産物)に関する。一実施形態では、シグナル配列をコードする核酸配列は、通常は分泌されないか、またはさもなければ単離が困難なタンパク質等の目的とするタンパク質に発現ベクター内で作動可能に連結され得る。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換される真核宿主等からのタンパク質の分泌を指示し、シグナル配列がその後にまたは同時に切断される。その後、タンパク質は、当該技術分野によって認識された方法によって細胞外培地から容易に精製され得る。あるいは、シグナル配列は、GSTドメイン等の精製を容易にする配列を使用して目的とするタンパク質に連結され得る。
【0345】
本開示は、本明細書に記載のバイオマーカーポリペプチドのバリアントにも関する。かかるバリアントは、アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能し得る改変されたアミノ酸配列を有し得る。バリアントは、変異誘発、例えば、離散点変異または切断によって生成され得る。アゴニストは、タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性と実質的に同じものまたはそのサブセットを保持し得る。タンパク質のアンタゴニストは、例えば、目的とするタンパク質を含む細胞シグナル伝達カスケードの下流または上流メンバーに競合的に結合することによって、タンパク質の天然に存在する形態の活性のうちの1つ以上を阻害し得る。したがって、特定の生物学的効果が限定された機能を有するバリアントでの処理によって誘発され得る。タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性のサブセットを有するバリアントでの対象の治療は、タンパク質の天然に存在する形態での治療と比較して対象におけるより少ない副作用を有し得る。
【0346】
アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能するバイオマーカータンパク質のバリアントは、本開示によって包含されるタンパク質の突然変異体、例えば、切断変異体のコンビナトリアルライブラリをアゴニストまたはアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって特定され得る。一実施形態では、バリアントの多様化ライブラリが核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発によって生成され、多様化遺伝子ライブラリによってコードされる。バリアントの多様化ライブラリは、潜在的なタンパク質配列の縮重セットが個々のポリペプチドとしてまたはあるいはより大きい融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイ用に)発現可能であるように、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることによって産生され得る。縮重オリゴヌクレオチド配列から本開示によって包含されるポリペプチドの潜在的なバリアントのライブラリを産生するために使用され得る様々な方法が存在する。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該技術分野で既知である(例えば、Narang,1983,Tetrahedron 39:3、Itakura et al.,1984,Annu.Rev.Biochem.53:323、Itakura et al.,1984,Science 198:1056、Ike et al.,1983 Nucleic Acid Res.11:477を参照のこと)。
【0347】
加えて、本開示によって包含されるマーカーに対応するポリペプチドのコーディング配列の断片のライブラリを使用して、バリアントのスクリーニングおよびその後の選択のためのポリペプチドの多様化集団を生成することができる。例えば、コーディング配列断片のライブラリは、ニッキングが1分子当たり約1回のみ生じる条件下で目的とするコーディング配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性させ、DNAを復元して異なるニッキング産物由来のセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼでの処理により再形成された二本鎖から一本鎖部分を除去し、結果として生じた断片ライブラリを発現ベクターにライゲートすることによって生成され得る。この方法により、目的とするタンパク質の様々なサイズのアミノ末端および内部断片をコードする発現ライブラリが得られ得る。
【0348】
点変異または切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするための、かつ選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリをスクリーニングするためのいくつかの技法が当該技術分野で既知である。大きい遺伝子ライブラリをスクリーニングするためのハイスループット分析に従う最も広く使用されている技法は、典型的には、遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクターにクローニングすることと、適切な細胞をベクターの結果として生じたライブラリで形質転換することと、所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させることとを含む。ライブラリにおける機能的変異体の頻度を高める技法である再帰的アンサンブル突然変異誘発(REM)が、本開示によって包含されるタンパク質のバリアントを特定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(Arkin and Yourvan,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811-7815、Delgrave et al.,1993,Protein Engineering 6(3):327-331)。
【0349】
表1に列記されるバイオマーカーまたはそれらの断片を含む本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーに対応する単離されたポリペプチドまたはその断片(またはかかるポリペプチドをコードする核酸)は、当該技術分野で周知の方法に従ってポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製するための標準の技法を使用して、当該免疫原に結合する抗体を生成するために、免疫原として使用され得る。抗原ペプチドは、少なくとも8個のアミノ酸残基を含み、ペプチドに対して産生された抗体がそれぞれの全長分子と特異的免疫複合体を形成するように、それぞれの全長分子中に存在するエピトープを包含する。好ましくは、抗原ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸残基を含む。一実施形態では、かかるエピトープは、マウスまたはヒト等の1つの種由来の所与のポリペプチド分子に対して特異的であり得る(すなわち、種にわたって保存されていないポリペプチド分子の領域にわたる抗原ペプチドが免疫原として使用され、かかる保存されていない残基が本明細書に提供されるアライメント等のアライメントを使用して決定され得る)。
【0350】
一実施形態では、抗体は、KIR3DL3に実質的に特異的に結合し、例えば、それとHHLA2との相互作用を妨害することによってその機能を阻害または遮断する。
【0351】
例えば、ポリペプチド免疫原は、典型的には、好適な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、ヒト化マウス、または他の哺乳動物)を免疫原で免疫化することによって抗体を調製するために使用される。適切な免疫原性調製物は、例えば、免疫応答が生成される組換え的に発現されたまたは化学的に合成された分子またはその断片を含み得る。この調製物は、フロインド完全もしくは不完全アジュバント等のアジュバント、または同様の免疫刺激剤をさらに含む。好適な対象の免疫原性調製物での免疫化により、内部に含まれる抗原ペプチドに対するポリクローナル抗体の応答が誘導される。
【0352】
ポリクローナル抗体は、好適な対象をポリペプチド免疫原で免疫化することによって上述のように調製され得る。免疫化された対象におけるポリペプチド抗体力価が、固定化ポリペプチドを使用した酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等の標準の技法によって経時的に監視され得る。所望の場合、抗原に対して産生された抗体が哺乳動物から(例えば、血液から)単離され、タンパク質Aクロマトグラフィー等の周知の技法によってさらに精製されて、IgG画分を得ることができる。免疫化後の適切な時点で、例えば、抗体力価が最も高い時点で、抗体を産生する細胞が対象から得られ、それを使用して、ハイブリドーマ技法(Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495-497によって最初に説明された)(Brown et al.(1981)J.Immunol.127:539-46、Brown et al.(1980)J.Biol.Chem.255:4980-83、Yeh et al.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.76:2927-31、Yeh et al.(1982)Int.J.Cancer 29:269-75も参照のこと)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al.(1983)Immunol.Today 4:72)、EBV-ハイブリドーマ技法(Cole et al.(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96)、またはトリオーマ技法等の標準の技法によってモノクローナル抗体を調製する。モノクローナル抗体ハイブリドーマを産生するための技術が周知である(概して、Kenneth,R.H.in Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,New York(1980)、Lerner,E.A.(1981)Yale J.Biol.Med.54:387-402、Gefter,M.L.et al.(1977)Somatic Cell Genet.3:231-36を参照のこと)。簡潔には、不死細胞株(典型的には、骨髄腫)が上述のように免疫原で免疫化された哺乳動物由来のリンパ球(典型的には、脾細胞)に融合し、結果として生じたハイブリドーマ細胞の培養上清がスクリーニングされて、ポリペプチド抗原に好ましくは特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが特定される。いくつかの実施形態では、免疫化は、目的とする標的抗原のノックアウトを有する(例えば、免疫化前に抗原を産生しない)細胞または動物宿主で行われる。
【0353】
リンパ球を不死化細胞株に融合させるために使用される多くの周知のプロトコルのうちのいずれか、表1に列記されるバイオマーカーを含む本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーまたはその断片に対するモノクローナル抗体を生成する目的のために適用され得る(例えば、Galfre,G.et al.(1977)Nature 266:55052、Gefter et al.(1977)(上記参照)、Lerner(1981)(上記参照)、Kenneth(1980)(上記参照)を参照のこと)。さらに、当業者であれば、同様に有用であろうかかる方法の多くの変形が存在することを理解する。典型的には、不死細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)は、リンパ球と同じ哺乳類種に由来する。例えば、マウスハイブリドーマは、本開示によって包含される免疫原性調製物で免疫化されたマウス由来のリンパ球を不死化マウス細胞株に融合させることによって作製され得る。好ましい不死細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性のマウス骨髄腫細胞株である。P3-NS1/1-Ag4-1、P3-x63-Ag8.653、またはSp2/O-Ag14骨髄腫株等のいくつかの骨髄腫細胞株のうちのいずれかが、標準の技法に従って融合パートナーとして使用され得る。これらの骨髄腫株は、American Type Culture Collection(ATCC)(Rockville,MD)から入手可能である。典型的には、HAT感受性マウス骨髄腫細胞は、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾細胞に融合する。その後、この融合から生じたハイブリドーマ細胞が、融合していない骨髄腫細胞および非生産的に融合した骨髄腫細胞を死滅させるHAT培地を使用して選択される(融合していない脾細胞は形質転換されていないため、数日後に死ぬ)。本開示によって包含されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準のELISAアッセイを使用して、ハイブリドーマ培養上清を所与のポリペプチドに結合する抗体についてスクリーニングすることによって検出される。
【0354】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代替案として、上述のポリペプチドのうちの1つに特異的なモノクローナルは、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリ)を適切なポリペプチドでスクリーニングし、それにより、ポリペプチドに結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離することによって特定および単離される。ファージディスプレイライブラリを生成およびスクリーニングするためのキットが市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System(カタログ番号27-9400-01)、およびStratagene SurfZAP(商標)Phage Display Kit(カタログ番号240612))。加えて、抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングにおける使用に特に従う方法および試薬の例は、例えば、Ladner et al.(米国特許第5,223,409号)、Kang et al.(国際公開第92/18619号)、Dower et al.(国際公開第91/17271号)、Winter et al.(国際公開第92/20791号)、Markland et al.(国際公開第92/15679号)、Breitling et al.(国際公開第93/01288号)、McCafferty et al.(国際公開第92/01047号)、Garrard et al.(国際公開第92/09690号)、Ladner et al.(国際公開第90/02809号)、Fuchs et al.(1991)Biotechnology(NY)9:1369-1372、Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81-85、Huse et al.(1989)Science 246:1275-1281、Griffiths et al.(1993)EMBO J.12:725-734、Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889-896、Clarkson et al.(1991)Nature 352:624-628、Gram et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576-3580、Garrard et al.(1991)Biotechnology(NY)9:1373-1377、Hoogenboom et al.(1991)Nucleic Acids Res.19:4133-4137、Barbas et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978-7982、およびMcCafferty et al.(1990)Nature 348:552-554で見つけることができる。
【0355】
非ヒト抗体またはヒト抗体(例えば、ラット抗マウス/抗ヒト抗体)の構造的特徴を使用して、KIR3DL3への結合等の本開示によって包含される抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する構造的に関連したヒト抗体を作製することができる。別の機能的特性には、競合ELISAアッセイにおける本来の既知の非ヒトまたはヒト抗体の結合の阻害が含まれる。
【0356】
いくつかの実施形態では、可変ドメインが、本明細書に提示されるか、またはさもなければ公的に入手可能な重鎖可変ドメインCDRの群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖を含む、KIR3DL3に結合し、かつそれを阻害/遮断することができるモノクローナル抗体が提供される。
【0357】
同様に、可変ドメインが、本明細書に提示されるか、またはさもなければ公的に入手可能な軽鎖可変ドメインCDRの群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖を含む、KIR3DL3に結合し、かつそれを阻害/遮断するモノクローナル抗体も提供される。
【0358】
可変ドメインが、本明細書に提示されるか、またはさもなければ公的に入手可能な重鎖可変ドメインCDRの群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖を含み、かつ可変ドメインが、本明細書に提示されるか、またはさもなければ公的に入手可能な軽鎖可変ドメインCDRの群と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一の配列を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖を含む、KIR3DL3に結合し、かつそれを阻害/遮断することができるモノクローナル抗体も提供される。
【0359】
当業者であれば、かかる相同性パーセンテージが、所与のCDR内での1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換と同等であり、その保存的アミノ酸置換を導入することによって達成されることに留意するであろう。
【0360】
加えて、完全ヒト抗体が、表1に列記されるバイオマーカーを含む本開示によって包含されるバイオマーカーまたはそれらの断片に対して作製され得る。完全ヒト抗体は、例えば、Hogan,et al.,“Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manuel,”Cold Spring Harbor Laboratoryに従って、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックであるマウスに作製され得る。簡潔には、トランスジェニックマウスは、精製された免疫原で免疫化される。脾臓細胞が採取され、骨髄腫細胞に融合して、ハイブリドーマが産生される。ハイブリドーマは、免疫原に結合する抗体を産生するそれらの能力に基づいて選択される。完全ヒト抗体は、ヒトにおけるかかる抗体の免疫原性を低下させるであろう。
【0361】
一実施形態では、本発明で使用するための抗体は、二重特異性または多重特異性抗体である。二重特異性抗体は、単一の抗体ポリペプチド内に2つの異なる抗原に対する結合部位を有する。抗原結合は、同時または順次であり得る。トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは、二重特異性抗体を分泌することができる細胞株の2つの例である。ハイブリッドハイブリドーマまたはトリオーマによって産生された二重特異性抗体の例は、米国特許第4,474,893号に開示されている。二重特異性抗体は、化学的手段(Staerz et al.(1985)Nature 314:628およびPerez et al.(1985)Nature 316:354)、およびハイブリドーマ技術(Staerz and Bevan(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:1453およびStaerz and Bevan(1986)Immunol.Today 7:241)によって構築されている。二重特異性抗体は、米国特許第5,959,084号にも記載されている。二重特異性抗体の断片は、米国特許第5,798,229号に記載されている。
【0362】
二重特異性薬剤は、異なる抗体を作製するハイブリドーマまたは他の細胞を融合させることによりヘテロハイブリドーマを作製し、その後、これらの両方の抗体を産生して共集合させるクローンを特定することによっても生成され得る。それらは、完全免疫グロブリン鎖またはFabおよびFv配列等のその一部の化学的または遺伝的コンジュゲーションによっても生成され得る。抗体成分は、表1に列記される1つ以上のバイオマーカーを含む、本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーのポリペプチドまたはその断片に結合することができる。一実施形態では、二重特異性抗体は、ポリペプチドまたはその断片およびその天然結合パートナーまたはその断片の両方に特異的に結合し得る。
【0363】
本発明の別の態様では、ペプチドまたはペプチド模倣物を使用して、表1に列記される1つ以上のバイオマーカーを含む本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーまたはその断片の活性をアンタゴナイズすることができる。一実施形態では、それぞれの全長タンパク質の調節剤として機能する表1に列記される1つ以上のバイオマーカーのバリアントは、変異体、例えば、切断変異体のコンビナトリアルライブラリをアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって特定され得る。一実施形態では、バリアントの多様化ライブラリが核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発によって生成され、多様化遺伝子ライブラリによってコードされる。バリアントの多様化ライブラリは、潜在的なポリペプチド配列の縮重セットがポリペプチド配列のセットを内部に含む個々のポリペプチドとして発現可能であるように、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることによって産生され得る。縮重オリゴヌクレオチド配列からポリペプチドバリアントのライブラリを産生するために使用され得る様々な方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学的合成が自動DNA合成機で行われ、その後、合成遺伝子が適切な発現ベクターにライゲートされ得る。遺伝子の縮重セットの使用により、1つの混合物における、潜在的なポリペプチド配列の所望のセットをコードする配列のすべての提供が可能になる。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該技術分野で既知である(例えば、Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3、Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323、Itakura et al.(1984)Science 198:1056、Ike et al.(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照のこと。
【0364】
加えて、ポリペプチドコーディング配列の断片のライブラリを使用して、所与のポリペプチドのバリアントのスクリーニングおよびその後の選択のためのポリペプチド断片の多様化集団を生成することができる。一実施形態では、コーディング配列断片のライブラリは、ニッキングが1ポリペプチド当たり約1回のみ生じる条件下でポリペプチドコーディング配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性させ、DNAを復元して異なるニッキング産物由来のセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼでの処理により再形成された二本鎖から一本鎖部分を除去し、結果として生じた断片ライブラリを発現ベクターにライゲートすることによって生成され得る。この方法により、ポリペプチドの様々なサイズのN末端、C末端、および内部断片をコードする発現ライブラリが得られ得る。
【0365】
点変異または切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするための、かつ選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリをスクリーニングするためのいくつかの技法が当該技術分野で既知である。かかる技法は、ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリの迅速なスクリーニングに適応可能である。大きい遺伝子ライブラリをスクリーニングするためのハイスループット分析に従う最も広く使用されている技法は、典型的には、遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクターにクローニングすることと、適切な細胞をベクターの結果として生じたライブラリで形質転換することと、所望の活性の検出が、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させることとを含む。ライブラリにおける機能的変異体の頻度を高める技法である再帰的アンサンブル変異誘発(REM)が、目的とするバリアントを特定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(Arkin and Youvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811-7815、Delagrave et al.(1993)Protein Eng.6(3):327-331)。一実施形態では、細胞ベースのアッセイが、多様化ポリペプチドライブラリを分析するために利用され得る。例えば、発現ベクターのライブラリは、表1に列記される1つ以上のバイオマーカーを含む、本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカー、またはその断片を通常で合成する細胞株にトランスフェクトされてもよい。その後、トランスフェクト細胞は、全長ポリペプチドおよび特定の変異体ポリペプチドが産生されるように培養され、細胞上清における全長ポリペプチド活性への変異体の発現の影響が、例えば、いくつかの機能的アッセイのうちのいずれかによって検出され得る。その後、プラスミドDNAが、全長ポリペプチド活性の阻害、またはあるいは増強をスコア化する細胞から回収され、個々のクローンがさらに特徴付けられ得る。
【0366】
ポリペプチドアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸の同じタイプのD-アミノ酸での系統的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を使用して、より安定したペプチドを生成することができる。加えて、目的とするポリペプチドアミノ酸配列または実質的に同一の配列変形を含む制限ペプチドが、当該技術分野で既知の方法(参照により本明細書に組み込まれる、Rizo and Gierasch(1992)Annu.Rev.Biochem.61:387)によって、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加することによって生成され得る。
【0367】
本明細書に開示されるアミノ酸配列は、当業者がペプチド配列およびその配列バリアントに対応するポリペプチドを産生することを可能にするであろう。かかるポリペプチドは、多くの場合、より大きいポリペプチドの一部として、ペプチド配列をコードするポリヌクレオチドの発現によって原核または真核宿主細胞中に産生され得る。あるいは、かかるペプチドは、化学的方法によって合成され得る。組換え宿主で異種タンパク質を発現させるための方法、ポリペプチドの化学的合成、およびインビトロ翻訳は、当該技術分野で周知であり、参照により本明細書に組み込まれる、Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1989),2nd Ed.,Cold Spring Harbor,N.Y.、Berger and Kimmel,Methods in Enzymology,Volume 152,Guide to Molecular Cloning Techniques(1987),Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.、Merrifield,J.(1969)J.Am.Chem.Soc.91:501、Chaiken I.M.(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.11:255、Kaiser et al.(1989)Science 243:187、Merrifield,B.(1986)Science 232:342、Kent,S.B.H.(1988)Annu.Rev.Biochem.57:957、およびOfford,R.E.(1980)Semisynthetic Proteins,Wiley Publishing)にさらに記載されている。
【0368】
ペプチドは、典型的には、直接化学合成によって産生され得る。ペプチドは、非ペプチド部分がN末端および/またはC末端への共有結合的結合によって結合している修飾ペプチドとして産生され得る。ある特定の好ましい実施形態では、カルボキシ末端もしくはアミノ末端のいずれか、または両方が、化学的に修飾されている。末端アミノ基および末端カルボキシル基の最も一般的な修飾は、それぞれ、アセチル化およびアミド化である。アシル化(例えば、アセチル化)またはアルキル化(例えば、メチル化)等のアミノ末端修飾およびアミド化等のカルボキシ末端修飾、ならびに環化を含む他の末端修飾が、本開示によって包含される種々の実施形態に組み込まれ得る。コア配列に対するある特定のアミノ末端修飾および/もしくはカルボキシ末端修飾ならびに/またはペプチド伸長により、増強された安定性、増加した効力および/または有効性、血清プロテアーゼに対する抵抗性、望ましい薬物動態学的特性等の有利な物理的、化学的、生化学的、および薬理学的特性が提供され得る。本明細書に開示されるペプチドは、例えば、患者における共刺激を改変することによって、疾患を治療するために治療的に使用され得る。
【0369】
ペプチド模倣薬(参照により本明細書に組み込まれる、Fauchere(1986)Adv.Drug Res.15:29、Veber and Freidinger(1985)TINS p.392、およびEvans et al.(1987)J.Med.Chem.30:1229)は、通常、コンピュータ化された分子モデリングを用いて開発される。治療的に有用なペプチドと構造的に同様のペプチド模倣物を使用して、同等の治療または予防効果をもたらすことができる。一般に、ペプチド模倣薬は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に同様であるが、当該技術分野で既知であり、かつ以下の参考文献:各々参照により本明細書に組み込まれる、Spatola,A.F.“Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins”Weinstein,B.,ed.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983)、Spatola,A.F.,Vega Data(March 1983),Vol.1,Issue 3,“Peptide Backbone Modifications”(一般概説)、Morley,J.S.(1980)Trends Pharm.Sci.pp.463-468(一般概説)、Hudson,D.et al.(1979)Int.J.Pept.Prot.Res.14:177-185(-CH2NH-、CH2CH2-)、Spatola,A.F.et al.(1986)Life Sci.38:1243-1249(-CH2-S)、Hann,M.M.(1982)J.Chem.Soc.Perkin Trans.I.307-314(-CH-CH-、シスおよびトランス)、Almquist,R.G.et al.(190)J.Med.Chem.23:1392-1398(-COCH2-)、Jennings-White,C.et al.(1982)Tetrahedron Lett.23:2533(-COCH2-)、Szelke,M.et al.European Appln.EP 45665(1982)CA:97:39405(1982)(-CH(OH)CH2-)、Holladay,M.W.et al.(1983)Tetrahedron Lett.(1983)24:4401-4404(-C(OH)CH2-)、およびHruby,V.J.(1982)Life Sci.(1982)31:189-199(-CH2-S-)にさらに記載される方法により、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、および-CH2SO-からなる群から選択される結合によって任意に置き換えられる1つ以上のペプチド結合を有する。特に好ましい非ペプチド結合は、-CH2NH-である。かかるペプチド模倣物は、例えば、より経済的な産生、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性等)、改変された特異性(例えば、生物学的活性の広域スペクトル)、低下した抗原性等を含む、ポリペプチド実施形態に優る重大な利点を有し得る。ペプチド模倣薬の標識は、通常、定量的構造活性データおよび/または分子モデリングによって予測されるペプチド模倣薬上の非干渉位置への1つ以上の標識の直接またはスペーサー(例えば、アミド基)を介した共有結合的結合を伴う。かかる非干渉位置は、概して、ペプチド模倣薬が結合して治療効果をもたらすマクロポリペプチドとの直接接触を形成しない位置である。ペプチド模倣薬の誘導体化(例えば、標識)は、ペプチド模倣薬の所望の生物学的または薬理学的活性に実質的に干渉してはならない。
【0370】
例えば、本明細書に記載のまたは表1に列記されるバイオマーカーとそれらの天然結合パートナーとの間の相互作用を調節する(増強または阻害のいずれか)ことができる小分子も本開示によって包含される。本開示によって包含される小分子は、空間的にアドレス可能な並列固相または溶液相ライブラリ、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法、「1ビーズ1化合物」ライブラリ法、およびアフィニティクロマトグラフィー選択を使用した合成ライブラリ法を含む、当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリ方法における多数のアプローチのうちのいずれかを使用して得られ得る。(Lam,K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0371】
分子ライブラリを合成するための方法の例は、当該技術分野で、例えば、DeWitt et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909、Erb et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422、Zuckermann et al.(1994)J.Med.Chem.37:2678、Cho et al.(1993)Science 261:1303、Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059、Carell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061、およびGallop et al.(1994)J.Med.Chem.37:1233で見つけることができる。
【0372】
化合物のライブラリは、溶液中に(例えば、Houghten(1992)Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ上に(Lam(1991)Nature 354:82-84)、チップ上に(Fodor(1993)Nature 364:555-556)、細菌上に(Ladner USP5,223,409)、胞子上に(Ladner USP5,223,409)、プラスミド上に(Cull et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865-1869)、またはファージ上に(Scott and Smith(1990)Science 249:386-390)、(Devlin(1990)Science 249:404-406)、(Cwirla et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6378-6382)、(Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301-310)、(Ladner(上記参照))提示され得る。化合物は、細胞ベースのアッセイまたは非細胞ベースのアッセイでスクリーニングされ得る。化合物は、プール中で(例えば、各試験試料中の複数の化合物)または個別の化合物としてスクリーニングされ得る。
【0373】
本発明は、表1に列記されるバイオマーカーを含む本開示によって包含されるバイオマーカー、またはそれらの断片のキメラまたは融合タンパク質にも関する。本明細書で使用される場合、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、それぞれのバイオマーカーと実質的に相同ではないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有する別のポリペプチドに作動可能に連結された、表1に列記される1つ以上のバイオマーカーを含む本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーまたはその断片を含む。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、表1に列記される1つ以上のバイオマーカーを含む本開示によって包含される1つ以上のバイオマーカーまたはその断片の少なくとも1つの生物学的に活性な部分を含む。融合タンパク質において、「作動可能に連結される」という用語は、融合から独立して発現されたときに呈される機能を保存する方法で、バイオマーカー配列および非バイオマーカー配列が互いにインフレームで融合していることを指すよう意図されている。「別の」配列が、それぞれ、バイオマーカー配列のN末端またはC末端に融合し得る。
【0374】
かかる融合タンパク質は、第1のペプチドをコードするヌクレオチド配列および第2のペプチドをコードするヌクレオチド配列の組換え発現によって産生され得る。第2のペプチドは、任意に、第1のペプチドの溶解度、親和性、安定性、または原子価を改変する部分、例えば、免疫グロブリン定常領域に対応し得る。別の好ましい実施形態では、第1のペプチドは、生物学的に活性な分子の一部(例えば、ポリペプチドの細胞外部分またはリガンド結合部分)からなる。第2のペプチドは、免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトCγ1ドメインまたはCγ4ドメイン(例えば、ヒトIgCγ1またはヒトIgCγ4のヒンジ、CH2、およびCH3領域、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Capon et al.米国特許第5,116,964号、同第5,580,756号、同第5,844,095号等を参照のこと)を含み得る。かかる定常領域は、エフェクター機能(例えばFc受容体結合)を媒介する領域を保持し得るか、またはエフェクター機能を低下させるように改変され得る。結果として生じた融合タンパク質は、独立して発現された第1のペプチドと比較して改変された溶解度、結合親和性、安定性、および/または原子価(すなわち、1ポリペプチド当たりの利用可能な結合部位の数)を有し得、タンパク質精製の効率を高め得る。組換え技法によって産生された融合タンパク質およびペプチドが分泌され、細胞とそのタンパク質またはペプチドを含有する培地との混合物から単離され得る。あるいは、タンパク質またはペプチドは、細胞質的に保持され、細胞が採取され、溶解し、タンパク質が単離され得る。細胞培養物は、典型的には、宿主細胞、培地、および他の副産物を含む。細胞培養に好適な培地は、当該技術分野で周知である。タンパク質およびペプチドは、タンパク質およびペプチドを精製するための当該技術分野で公知の技法を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、または両方から単離され得る。宿主細胞をトランスフェクトするための技法およびタンパク質およびペプチドを精製するための技法は、当該技術分野で既知である。
【0375】
好ましくは、本開示によって包含される融合タンパク質は、標準の組換えDNA技法によって産生される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片が、従来の技法に従って、例えば、ライゲーションのための平滑末端化またはスタッガー末端化末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合、付着末端の充填、望ましくない連結を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを用いて、一緒にインフレームでライゲートされる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技法によって合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片間の相補的オーバーハングをもたらすアンカープライマーを使用して行われ得、その後、これがアニールおよび再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel et al.John Wiley & Sons:1992を参照のこと)。
【0376】
特に好ましいIg融合タンパク質は、免疫グロブリン定常領域(例えば、Fc領域)にカップリングされた表1に列記される1つ以上のバイオマーカーの細胞外ドメイン部分または可変領域様ドメインを含む。免疫グロブリン定常領域は、免疫グロブリン構造に固有のエフェクター活性を低減または排除する遺伝子修飾を含み得る。例えば、目的とするポリペプチドの細胞外部分をコードするDNAは、例えば、WO97/28267に教示される部位特異的変異誘発によって修飾されたヒトIgGγ1および/またはIgGγ4のヒンジ、CH2、およびCH3領域をコードするDNAに連結され得る。
【0377】
別の実施形態では、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含む。ある特定の宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)において、ポリペプチドの発現および/または分泌が異種シグナル配列の使用により増加し得る。
【0378】
本開示によって包含される融合タンパク質を免疫原として使用して、対象において抗体を産生することができる。かかる抗体は、融合タンパク質が生成されたそれぞれの天然ポリペプチドを精製するために使用され得るか、またはスクリーニングアッセイにおいて1つ以上のバイオマーカーポリペプチドまたはその断片とその天然結合パートナーまたはその断片との間の相互作用を阻害するポリペプチドを特定するために使用され得る。
【0379】
本明細書に記載の調節剤(例えば、抗体、小分子、ペプチド、融合タンパク質、または小核酸)が薬学的組成物に組み込まれ、インビボで対象に投与され得る。本組成物は、単一のかかる分子もしくは薬剤または本明細書に記載の薬剤の任意の組み合わせを含み得る。本明細書に記載の「単一の活性薬剤」は、本明細書に提供される方法および組成物による当該技術分野で既知の他の薬理学的に活性な化合物(「第2の活性薬剤」)と組み合わせられ得る。
【0380】
本明細書に記載のバイオマーカー核酸および/またはバイオマーカーポリペプチド分子の産生および使用は、標準の組換え技法を使用することによって容易になり得る。いくつかの実施形態では、かかる技法は、バイオマーカーポリペプチドまたはかかるポリペプチドの一部をコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターを使用する。本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つの種類のベクターは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の種類のベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得るウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌性複製起源を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクター、すなわち、発現ベクターは、それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。一般に、組換えDNA技法で有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミド(ベクター)の形態にある。しかしながら、本開示は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)等の同等の機能を果たす発現ベクターの他の形態を含むよう意図されている。
【0381】
本開示によって包含される組換え発現ベクターは、宿主細胞での核酸の発現に好適な形態で本開示によって包含される核酸を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現される核酸配列に作動可能に連結される、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の制御配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「作動可能に連結される」とは、目的とするヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系での、またはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞での)ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で制御配列に連結されることを意味するよう意図されている。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現対照要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むよう意図されている。かかる制御配列は、例えば、Goeddel,Methods in Enzymology:Gene Expression Technology vol.185,Academic Press,San Diego,CA(1991)に記載されている。制御配列には、多くの種類の宿主細胞でのヌクレオチド配列の構成的発現を指示するものおよびある特定の宿主細胞のみでのヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的制御配列)が含まれる。当業者であれば、発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の因子に依存し得ることを理解するであろう。本開示によって包含される発現ベクターが宿主細胞に導入され、それにより、本明細書に記載の核酸によってコードされる融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチドを産生することができる。
【0382】
本開示における使用のための組換え発現ベクターは、原核(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、昆虫細胞{バキュロウイルス発現ベクターを使用}、酵母細胞、または哺乳類細胞)での開示によって包含されるマーカーに対応するポリペプチドの発現のために設計され得る。好適な宿主細胞は、Goeddel(上記参照)に詳述されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写および翻訳され得る。
【0383】
原核生物でのタンパク質の発現は、多くの場合、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指示する構成的または誘導性プロモーターを含むベクターを用いてE.coliで行われる。融合ベクターは、いくつかのアミノ酸をそれにコードされるタンパク質に、通常、組換えタンパク質のアミノ末端に付加する。かかる融合ベクターは、典型的には、1)組換えタンパク質の発現を増加させる、2)組換えタンパク質の溶解度を増加させる、および3)親和性精製においてリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を助けるという3つの目的を果たす。多くの場合、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解的切断部位が融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入されて、融合タンパク質の精製後に融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。かかる酵素、およびそれらの同族認識配列には、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはタンパク質Aを標的組換えタンパク質に融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc、Smith and Johnson,1988,Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)、およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)が含まれる。
【0384】
好適な誘導性非融合E.coli発現ベクターの例には、pTrc(Amann et al.,1988,Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studier et al.,p.60-89,In Gene Expression Technology:Methods in Enzymology vol.185,Academic Press,San Diego,CA,1991)が挙げられる。pTrcベクターからの標的バイオマーカー核酸発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターからの標的バイオマーカー核酸発現は、共発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されたT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下でT7 gn1遺伝子を保有する常在性プロファージ由来の宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)によって供給される。
【0385】
E.coliでの組換えタンパク質発現を最大化するための1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれた宿主細菌でタンパク質を発現することである(Gottesman,p.119-128,In Gene Expression Technology:Methods in Enzymology vol.185,Academic Press,San Diego,CA,1990。別の戦略は、各アミノ酸の個々のコドンがE.coliで優先的に利用されるものになるように発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を改変することである(Wada et al.,1992,Nucleic Acids Res.20:2111-2118)。本開示によって包含される核酸配列のかかる改変は、標準のDNA合成技法によって行われ得る。
【0386】
別の実施形態では、発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.cerevisiaeでの発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari et al.,1987,EMBO J.6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,1982,Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz et al.,1987,Gene 54:113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation、San Diego,CA)、およびpPicZ(Invitrogen Corp、San Diego,CA)が挙げられる。
【0387】
あるいは、発現ベクターは、バキュロウイルス発現ベクターである。昆虫培養細胞(例えば、Sf 9細胞)でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAc系列(Smith et al.,1983,Mol.Cell Biol.3:2156-2165)およびpVL系列(Lucklow and Summers,1989,Virology 170:31-39)が含まれる。
【0388】
さらに別の実施形態では、本開示によって包含される核酸は、哺乳類発現ベクターを使用して哺乳類細胞で発現される。哺乳類発現ベクターの例には、pCDM8(Seed,1987,Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al.,1987,EMBO J.6:187-195)が挙げられる。哺乳類細胞で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、多くの場合、ウイルス制御要素によって提供される。例えば、一般に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の両方に好適な他の発現系については、Sambrook et al.(上記参照)の第16章および第17章を参照されたい。
【0389】
別の実施形態では、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞型で優先的に核酸の発現を指示することができる(例えば、組織特異的制御要素を使用して核酸を発現させる)。組織特異的制御要素は、当該技術分野で既知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的、Pinkert et al.,1987,Genes Dev.1:268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton,1988,Adv.Immunol.43:235-275)、具体的にはT細胞受容体プロモーター(Winoto and Baltimore,1989,EMBO J.8:729-733)および免疫グロブリンプロモーター(Banerji et al.,1983,Cell 33:729-740、Queen and Baltimore,1983,Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター、Byrne and Ruddle,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.,1985,Science 230:912-916)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター、米国特許第4,873,316号および欧州出願公開第264,166号)が挙げられる。発生的に制御されたプロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss,1990,Science 249:374-379)およびα-フェトプロテインプロモーター(Camper and Tilghman,1989,Genes Dev.3:537-546)も包含される。
【0390】
本開示は、アンチセンス配向で発現ベクターにクローニングされたDNA分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、DNA分子は、本開示によって包含されるポリペプチドをコードするmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の(DNA分子の転写による)発現を可能にする様式で制御配列に作動可能に連結される。様々な細胞型でのアンチセンスRNA分子の連続発現を指示する、アンチセンス配向でクローニングされた核酸に作動可能に連結された制御配列、例えば、ウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーが選択され得るか、またはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的、もしくは細胞型特異的発現を指示する制御配列が選択され得る。アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒化ウイルスの形態にあり得、そこで、アンチセンス核酸が高効率制御領域の制御下で産生され、その活性が、ベクターが導入される細胞型によって決定され得る。アンチセンス遺伝子を使用した遺伝子発現の制御の考察については、(Weintraub et al.,1986,Trends in Genetics,Vol.1(1)を参照されたい)。
【0391】
本開示によって包含される別の態様は、本開示によって包含される組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で同義に使用される。かかる用語が特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。変異または環境影響のいずれかによりある特定の修飾が後世で生じ得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではない場合があるが、依然として本明細書で使用される本用語の範囲内に含まれる。
【0392】
宿主細胞は、任意の原核(例えば、E.coli)細胞または真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母、もしくは哺乳類細胞)であり得る。
【0393】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技法によって原核または真核細胞に導入され得る。本明細書で使用される場合、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔を含む、外来核酸を宿主細胞に導入するための様々な当該技術分野で認識されている技法を指すよう意図されている。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションに好適な方法は、Sambrook,et al.((上記参照))および他の研究室マニュアルで見つけることができる。
【0394】
哺乳類細胞の安定したトランスフェクションのために、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技法に応じて、わずかな細胞のみが外来DNAをそれらのゲノムに組み込むことができることが既知である。これらの組み込み体を特定および選択するために、一般に、(例えば、抗生物質に対する抵抗性のための)選択可能なマーカーをコードする遺伝子が目的とする遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサート等の薬物に対する抵抗性を付与するものが含まれる。導入された核酸で安定してトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって特定され得る(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞が生存する一方で、他の細胞は死ぬ)。
【0395】
XII.バイオマーカー核酸およびポリペプチドの分析
バイオマーカー核酸および/またはバイオマーカーポリペプチドは、本明細書に記載の方法および当業者に既知の技法に従って分析されて、1)バイオマーカー転写物またはポリペプチドのレベルの改変、2)バイオマーカー遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの欠失または付加、4)バイオマーカー遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの置換、5)発現制御領域等のバイオマーカー遺伝子の異常な修飾を含むが、これらに限定されない、本開示に有用な遺伝子改変または発現改変を特定することができる。
【0396】
a.コピー数を検出するための方法
バイオマーカー核酸のコピー数を評価する方法は、当業者に周知である。染色体獲得または喪失の存在または不在は、単に本明細書で特定された領域またはマーカーのコピー数を決定することによって評価される。
【0397】
バイオマーカー遺伝子座のコピー数を評価する方法には、ハイブリダイゼーションベースのアッセイが含まれるが、これに限定されない。ハイブリダイゼーションベースのアッセイには、伝統的な「直接プローブ」法、例えば、サザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISHおよびFISHプラスSKY)法、および「比較プローブ」法、例えば、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、例えば、cDNAベースまたはオリゴヌクレオチドベースのCGHが含まれるが、これらに限定されない。これらの方法は、基質(例えば、膜もしくはガラス)結合方法またはアレイベースのアプローチを含むが、これらに限定されない多種多様の形式で使用され得る。
【0398】
一実施形態では、試料中のバイオマーカー遺伝子のコピー数の評価は、サザンブロットを伴う。サザンブロットでは、ゲノムDNA(典型的には、電気泳動ゲル上で断片および分離されたもの)が標的領域に特異的なプローブにハイブリダイズされる。標的領域に対するプローブからのハイブリダイゼーションシグナルと、正常ゲノムDNA(例えば、同じまたは関連細胞、組織、臓器等の非増幅部分)の分析からの対照プローブシグナルとの強度の比較により、標的核酸の相対コピー数の推定値が提供される。あるいは、試料中のコード核酸のコピー数を評価するためにノーザンブロットが利用され得る。ノーザンブロットでは、mRNAが標的領域に特異的なプローブにハイブリダイズされる。標的領域に対するプローブからのハイブリダイゼーションシグナルと、正常RNA(例えば、同じまたは関連細胞、組織、臓器等の非増幅部分)の分析からの対照プローブシグナルとの強度の比較により、標的核酸の相対コピー数の推定値が提供される。あるいは、適切な対照(例えば、同じまたは関連細胞組織、臓器等の非増幅部分)と比較してより高いまたはより低い発現により、標的核酸の相対コピー数の推定値が提供されるように、RNAを検出するための当該技術分野で周知の他の方法が使用され得る。
【0399】
ゲノムコピー数を決定するための代替手段は、インサイチュハイブリダイゼーション(例えば、Angerer(1987)Meth.Enzymol 152:649)である。一般に、インサイチュハイブリダイゼーションは、以下のステップ:(1)分析される組織または生物学的構造の固定、(2)標的DNAのアクセス可能性を高め、かつ非特異的結合を減少させるための生物学的構造のプレハイブリダイゼーション処理、(3)生物学的構造または組織における核酸混合物の核酸へのハイブリダイゼーション、(4)ハイブリダイゼーションで結合しなかった核酸断片を除去するためのポストハイブリダイゼーション洗浄、および(5)ハイブリダイズされた核酸断片の検出を含む。これらのステップの各々で使用される試薬および使用条件は、特定の用途に応じて異なる。典型的なインサイチュハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞が、固体支持体、典型的には、スライドガラスに固定される。核酸がプローブされる場合、細胞は、典型的には、熱またはアルカリで変性される。その後、これらの細胞は適度な温度でハイブリダイゼーション溶液と接触して、タンパク質をコードする核酸配列に特異的な標識プローブのアニーリングを可能にする。その後、標的(例えば、細胞)は、典型的には、適切なシグナル対ノイズ比が得られるまで所定のストリンジェンシーでまたは増加するストリンジェンシーで洗浄される。プローブは、典型的には、例えば、放射性同位体または蛍光レポーターで標識される。一実施形態では、プローブは、ストリンジェントな条件下で標的核酸と特異的にハイブリダイズするのに十分に長い。プローブは、一般に、約200塩基長~約1000塩基長の範囲である。いくつかの用途では、反復配列のハイブリダイゼーション能力を阻止することが必要である。したがって、いくつかの実施形態では、非特異的ハイブリダイゼーションを阻止するために、tRNA、ヒトゲノムDNA、またはCot-I DNAが使用される。
【0400】
ゲノムコピー数を決定するための代替手段は、比較ゲノムハイブリダイゼーションである。一般に、ゲノムDNAは、正常参照細胞および試験細胞(例えば、腫瘍細胞)から単離され、必要に応じて増幅される。これらの2つの核酸は、差次的に標識され、その後、参照細胞の分裂中期の染色体にインサイチュでハイブリダイズされる。参照DNAおよび試験DNAの両方の反復配列は、ある手段によって、例えば、適切な遮断核酸とのプレハイブリダイゼーションによって、かつ/または当該ハイブリダイゼーション中に当該反復配列に対するかかる遮断核酸配列を含むことによって除去されるか、またはそれらのハイブリダイゼーション能力が低下するかのいずれかである。その後、結合した標識DNA配列は、必要に応じて、視覚可能な形態にされる。コピー数が増加または減少した試験細胞における染色体領域は、2つのDNAからのシグナル比が変化する領域を検出することによって特定され得る。例えば、試験細胞におけるコピー数が減少した領域は、ゲノムの他の領域と比較して参照よりも試験DNAから比較的より低いシグナルを示すであろう。試験細胞におけるコピー数が増加した領域は、試験DNAから比較的より高いシグナルを示すであろう。染色体の欠失または増倍が存在する場合、2つの標識からのシグナルの比率の差が検出され、この比率により、コピー数の尺度が提供される。CGHの別の実施形態であるアレイCGH(aCGH)では、固定化された染色体要素がアレイ上の一群の固体支持体に結合した標的核酸で置き換えられ、ゲノムの大部分またはすべてが一群の固体支持体に結合した標的に表されることを可能にする。標的核酸は、cDNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチド(例えば、単一ヌクレオチド多型を検出するため)等を含み得る。アレイベースのCGHは、(対照および可能な腫瘍試料を2つの異なる色素で標識し、ハイブリダイゼーション前にそれらを混合し、それにより、アレイ上のプローブの競合的ハイブリダイゼーションに起因する比率がもたらされることとは対照的に)単色標識で行われる場合もある。単色CGHでは、対照が標識され、1つのアレイにハイブリダイズされ、絶対シグナルが読み取られ、可能な腫瘍試料が標識され、第2のアレイ(同一の含有量)にハイブリダイズされ、絶対シグナルが読み取られる。コピー数の差が2つのアレイからの絶対シグナルに基づいて計算される。固定化された染色体またはアレイを調製する方法および比較ゲノムハイブリダイゼーションを行う方法は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,335,167号、同第6,197,501号、同第5,830,645号、および同第5,665,549号、ならびにAlbertson(1984)EMBO J.3:1227-1234、Pinkel(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:9138-9142、欧州特許庁公開第430,402号、Methods in Molecular Biology,Vol.33:In situ Hybridization Protocols,Choo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.(1994)等を参照のこと)。別の実施形態では、Pinkel,et al.(1998)Nature Genetics 20:207-211またはKallioniemi(1992)Proc.Natl Acad Sci USA 89:5321-5325(1992)のハイブリダイゼーションプロトコルが使用される。
【0401】
なお別の実施形態では、増幅ベースのアッセイを使用して、コピー数を測定することができる。かかる増幅ベースのアッセイでは、核酸配列は、増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において鋳型としての機能を果たす。定量的増幅では、増幅産物の量は、元の試料中の鋳型の量に比例するであろう。適切な対照、例えば、健常組織との比較により、コピー数の尺度が提供される。
【0402】
「定量的」増幅法は、当業者に周知である。例えば、定量的PCRは、同じプライマーを使用して既知の量の対照配列を同時に共増幅することを含む。これにより、PCR反応を較正するために使用され得る内部標準が提供される。定量的PCRの詳細なプロトコルは、Innis,et al.(1990)PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.)に提供されている。定量的PCR分析を使用したマイクロサテライト遺伝子座でのDNAコピー数の測定は、Ginzonger,et al.(2000)Cancer Research 60:5405-5409に記載されている。遺伝子の既知の核酸配列は、当業者が遺伝子の任意の部分を増幅するためにプライマーを通例的に選択することを可能にするのに十分である。蛍光発生的定量的PCRも、本開示によって包含される方法で使用され得る。蛍光発生的定量的PCRでは、定量は、蛍光シグナル、例えば、TaqManおよびSYBRグリーンの量に基づいている。
【0403】
他の好適な増幅法には、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace(1989)Genomics 4:560、Landegren,et al.(1988)Science 241:1077、およびBarringer et al.(1990)Gene 89:117を参照のこと)、転写増幅(Kwoh,et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173)、自己持続配列複製(Guatelli,et al.(1990)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 87:1874)、ドットPCR、およびリンカーアダプターPCR等が含まれるが、これらに限定されない。
【0404】
ヘテロ接合性の喪失(LOH)および主要コピー比率(MCP)マッピング(Wang,Z.C.,et al.(2004)Cancer Res 64(1):64-71、Seymour,A.B.,et al.(1994)Cancer Res 54,2761-4、Hahn,S.A.,et al.(1995)Cancer Res 55,4670-5、Kimura,M.,et al.(1996)Genes Chromosomes Cancer 17,88-93、Li et al.,(2008)MBC Bioinform.9,204-219)も、増幅または欠失の領域を特定するために使用され得る。
【0405】
b.バイオマーカー核酸発現を検出するための方法
バイオマーカー発現は、転写分子またはタンパク質の発現を検出するための多種多様の周知の方法のうちのいずれかによって評価され得る。かかる方法の非限定的な例には、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、または核タンパク質を検出するための免疫学的方法、タンパク質精製法、タンパク質機能または活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、および核酸増幅法が挙げられる。
【0406】
好ましい実施形態では、特定の遺伝子の活性は、遺伝子転写物(例えば、mRNA)の尺度、翻訳されたタンパク質の量の尺度、または遺伝子産物活性の尺度によって特徴付けられる。マーカー発現は、mRNAレベル、タンパク質レベル、またはタンパク質活性(これらはいずれも標準の技法を使用して測定され得る)を検出することを含む様々な方法で監視され得る。検出は、遺伝子発現(例えば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、タンパク質、または酵素活性)レベルの定量化を含むか、またはあるいは、具体的には対照レベルと比較した遺伝子発現レベルの質的評価であり得る。検出されるレベルのタイプは、文脈から明らかであろう。
【0407】
別の実施形態では、バイオマーカーおよびその機能的に同様の相同体(その断片または遺伝子改変を含む)の(例えば、その制御領域またはプロモーター領域における)発現レベルの検出または決定は、目的とするマーカーのRNAレベルを検出または決定することを含む。一実施形態では、1つ以上の細胞が試験される対象から得られ、その細胞からRNAが単離される。好ましい実施形態では、乳房組織細胞の試料が対象から得られる。
【0408】
一実施形態では、RNAは、単一細胞から得られる。例えば、細胞は、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)によって組織試料から単離され得る。この技法を使用して、細胞が、染色された組織切片を含む組織切片から単離され、それにより、所望の細胞が単離されることを確実にすることができる(例えば、Bonner et al.(1997)Science 278:1481、Emmert-Buck et al.(1996)Science 274:998、Fend et al.(1999)Am.J.Path.154:61、およびMurakami et al.(2000)Kidney Int.58:1346を参照のこと)。例えば、Murakami et al.(上記参照)は、事前に免疫染色された組織切片からの細胞の単離について説明している。
【0409】
対象から細胞を得て、その細胞をインビトロで培養すること、例えば、RNAが抽出され得るより大きい細胞集団を得ることも可能である。非形質転換細胞の培養物、すなわち、初代細胞培養物を確立するための方法が当該技術分野で既知である。
【0410】
個体由来の組織試料または細胞からRNAを単離する際に、組織または細胞が対象から採取された後に遺伝子発現のいかなるさらなる変化も阻止することが重要であり得る。発現レベルの変化は、撹乱後に、例えば、熱ショックまたはリポ多糖(LPS)もしくは他の試薬での活性化後に急速に変化することが知られている。加えて、組織および細胞中のRNAは、急速に分解し得る。したがって、好ましい実施形態では、対象から得られた組織または細胞は、可能な限り迅速に瞬間凍結される。
【0411】
RNAは、様々な方法、例えば、チオシアン酸グアニジウム溶解に続くCsCl遠心分離によって組織試料から抽出され得る(Chirgwin et al.,1979,Biochemistry 18:5294-5299)。単一細胞由来のRNAは、例えば、Dulac,C.(1998)Curr.Top.Dev.Biol.36、245およびJena et al.(1996)J.Immunol.Methods 190:199に記載の単一細胞からcDNAライブラリを調製するための方法に記載されるように得られ得る。例えば、RNAsinの包含により、RNA分解を回避するために注意を払われなければならない。
【0412】
その後、RNA試料は、特定の種で濃縮され得る。一実施形態では、ポリ(A)+RNAがRNA試料から単離される。一般に、かかる精製は、mRNA上のポリ-A尾部を利用する。具体的には、上述のように、ポリ-Tオリゴヌクレオチドは、固体支持体内に固定化されて、mRNAに対する親和性リガンドとしての機能を果たし得る。この目的のためのキット、例えば、MessageMakerキット(Life Technologies、Grand Island,NY)が市販されている。
【0413】
好ましい実施形態では、RNA集団は、マーカー配列で濃縮される。濃縮は、例えば、プライマー特異的cDNA合成によって、またはcDNA合成および鋳型特異的インビトロ転写に基づく複数回の線形増幅によって行われ得る(例えば、Wang et al.(1989)PNAS 86、9717、Dulac et al.(上記参照)、およびJena et al.(上記参照)を参照のこと)。
【0414】
特定の種または配列で濃縮されたRNA集団または濃縮されていないRNA集団がさらに増幅され得る。本明細書で定義される場合、「増幅プロセス」は、RNA中の分子を強化するか、増加させるか、または増大させるように設計されている。例えば、RNAがmRNAである場合、シグナルが検出可能であるか、または検出が増強されるように、RT-PCR等の増幅プロセスが利用されて、mRNAを増幅することができる。かかる増幅プロセスは、特に生体試料、組織試料、または腫瘍試料のサイズまたは体積が小さい場合に有益である。
【0415】
様々な増幅法および検出法が使用され得る。例えば、mRNAからcDNAへの逆転写に続くポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、または米国特許第5,322,770号に記載される両ステップでの単一の酵素の使用、またはR.L.Marshall et al.,PCR Methods and Applications 4:80-84(1994)に記載されるmRNAからcDNAへの逆転写に続く対称ギャップリガーゼ連鎖反応(RT-AGLCR)は、本開示によって包含される範囲内である。リアルタイムPCRも使用され得る。
【0416】
本明細書で利用され得る他の公知の増幅法には、限定されないが、PNAS USA 87:1874-1878(1990)に記載され、Nature 350(No.6313):91-92(1991)にも記載されている、いわゆる「NASBA」または「3SR」技法;公開されている欧州特許出願(EPA)第4544610号に記載されているQ-ベータ増幅、鎖置換増幅(G.T.Walker et al.,Clin.Chem.42:9-13(1996)および欧州特許出願第684315号に記載されている;PCT公開第9322461号に記載されている標的媒介増幅;PCR;リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Wu and Wallace,Genomics 4,560(1989),Landegren et al.,Science 241,1077(1988)を参照);自立配列複製(SSR)(例えば、Guatelli et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87,1874(1990)を参照);および転写増幅(例えば、Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,1173(1989)を参照)が挙げられる。
【0417】
遺伝子発現の絶対レベルおよび相対レベルを決定するための多くの技法が当該技術分野で既知であり、本開示での使用に好適な一般に使用されている技法には、ノーザン分析、RNase保護アッセイ(RPA)、マイクロアレイ、およびPCRベースの技法、例えば、定量的PCRおよび差次的発現PCRが含まれる。例えば、ノーザンブロッティングは、RNA調製物を変性アガロースゲル上に泳動させ、それを、活性化セルロース、ニトロセルロース、またはガラスもしくはナイロン膜等の好適な支持体に移送することを含む。その後、放射性標識cDNAまたはRNAが調製物にハイブリダイズされ、洗浄され、オートラジオグラフィーによって分析される。
【0418】
放射活性的に標識されたアンチセンスRNAプローブが生検試料の薄切片とハイブリダイズされ、洗浄され、RNaseで切断され、オートラジオグラフィーのために感受性乳剤に曝露されるインサイチュハイブリダイゼーション視覚化も用いられ得る。試料がヘマトキシリンで染色されて、試料の組織学的組成が示され、好適な光フィルターを用いた暗視野撮像により、現像された乳剤が示される。ジゴキシゲニン等の非放射性標識も使用され得る。
【0419】
あるいは、mRNA発現は、DNAアレイ、チップ、またはマイクロアレイ上で検出され得る。対象から得られた試験試料の標識核酸が、バイオマーカーDNAを含む固体表面にハイブリダイズされ得る。正のハイブリダイゼーションシグナルがバイオマーカー転写物を含有する試料で得られる。DNAアレイを調製する方法およびそれらを使用する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,618,6796号、同第6,379,897号、同第6,664,377号、同第6,451,536号、同第548,257号、米国2003/0157485号、ならびにSchena et al.(1995)Science 20,467-470、Gerhold et al.(1999)Trends In Biochem.Sci.24,168-173、およびLennon et al.(2000)Drug Discovery Today 5,59-65を参照のこと)。遺伝子発現の連続分析(SAGE)も行われ得る(例えば、米国特許出願第2003/0215858号を参照のこと)。
【0420】
mRNAレベルを監視するために、例えば、mRNAが試験される生体試料から抽出され、逆転写され、蛍光標識cDNAプローブが生成される。その後、マーカーcDNAにハイブリダイズすることができるマイクロアレイが標識cDNAプローブでプローブされ、スライドがスキャンされ、蛍光強度が測定される。この強度は、ハイブリダイゼーション強度および発現レベルと相関する。
【0421】
本明細書に記載の方法で使用され得るプローブのタイプには、cDNA、リボプローブ、合成オリゴヌクレオチド、およびゲノムプローブが含まれる。使用されるプローブのタイプは、一般に、例えば、インサイチュハイブリダイゼーションの場合にはリボプローブおよびノーザンブロッティングの場合にはcDNA等の特定の状況によって決定される。一実施形態では、プローブは、RNAに特有のヌクレオチド領域に向けられる。プローブは、マーカーmRNA転写物を差次的に認識するのに必要な程度に短くてもよく、例えば、15塩基程度に短くてもよいが、少なくとも17、18、19、もしくは20塩基、またはそれ以上の塩基のプローブが使用されてもよい。一実施形態では、プライマーおよびプローブは、ストリンジェントな条件下で、マーカーに対応するヌクレオチド配列を有するDNA断片に特異的にハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「ストリンジェントな条件」という用語は、ヌクレオチド配列に少なくとも95%の同一性が存在する場合にのみハイブリダイゼーションが生じることを意味する。別の実施形態では、「ストリンジェントな条件」下でのハイブリダイゼーションは、配列間に少なくとも97%の同一性が存在する場合に生じる。
【0422】
プローブの標識の形態は、放射性同位体、例えば、32Pおよび35Sの使用等の任意の適切なものであり得る。好適に標識された塩基の使用により、プローブが化学的に合成されるか生物学的に合成されるかにかかわらず、放射性同位体での標識が達成され得る。
【0423】
一実施形態では、生体試料は、試験対象由来のポリペプチド分子を含有する。あるいは、生体試料は、試験対象由来のmRNA分子または試験対象由来のゲノムDNA分子を含有し得る。
【0424】
別の実施形態では、本方法は、対照対象から対照生体試料を得ることと、マーカーポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片の存在が生体試料中で検出されるように、対照試料を、マーカーポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片を検出することができる化合物または薬剤と接触させることと、対照試料中のマーカーポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片の存在を、試験試料中のマーカーポリペプチド、mRNA、ゲノムDNA、またはそれらの断片の存在と比較することとをさらに含む。
【0425】
c.バイオマーカータンパク質発現を検出するための方法
バイオマーカータンパク質の活性またはレベルは、発現されたポリペプチドを検出または定量化することによって検出および/または定量化され得る。ポリペプチドは、当業者に周知のいくつかの手段のうちのいずれかによって検出および定量化され得る。バイオマーカー核酸およびその機能的に同様の相同体(その断片または遺伝子改変を含む)によってコードされるポリペプチドの(例えば、その制御領域またはプロモーター領域における)異常なポリペプチド発現レベルは、抗KIR3DL3抗体療法に対するがんの応答の可能性と関連付けられる。ポリペプチドを検出するための当該技術分野で既知の任意の方法が使用され得る。かかる方法には、免疫拡散、免疫電気泳動、放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウエスタンブロッティング、結合剤リガンドアッセイ、免疫組織化学的技法、凝集、補体アッセイ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー等が含まれるが、これらに限定されない(例えば、参照により組み込まれる、Basic and Clinical Immunology,Sites and Terr,eds.,Appleton and Lange,Norwalk,Conn.pp 217-262,1991)。抗体をエピトープ(複数可)と反応させることと、標識ポリペプチドまたはその誘導体を競合的に置き換えることとを含む、結合剤リガンド免疫アッセイ法が好ましい。ある特定の実施形態では、表2に列記される抗体を使用して、表1に列記されるバイオマーカーを検出および/または定量化する。
【0426】
例えば、ELISAおよびRIA手順は、所望のバイオマーカータンパク質標準が(125Iもしくは35S等の放射性同位体、またはセイヨウワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリ性ホスファターゼ等のアッセイ可能な酵素で)標識され、非標識試料と一緒に、対応する抗体と接触させられるように行われ得、そこで、第2の抗体が第1の抗体に結合するために使用され、放射活性または固定化酵素がアッセイされる(競合的アッセイ)。あるいは、試料中のバイオマーカータンパク質が対応する固定化抗体と反応させられ、放射性同位体標識または酵素標識抗バイオマーカータンパク質抗体がこの系と反応させられ、放射活性または酵素がアッセイされる(ELISA-サンドイッチアッセイ)。好適な場合、他の従来の方法も用いられ得る。
【0427】
いくつかの実施形態では、本開示によって包含される抗体は、放射性免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、化学発光アッセイ、免疫組織化学的アッセイ、ドットブロットアッセイ、またはスロットブロットアッセイを含むが、これらに限定されない周知の免疫アッセイ形態のうちのいずれか1つで使用され得る。上述の様々な免疫アッセイおよびそれらの技法の他の変形、例えば、インサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、蛍光免疫アッセイ(FIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、比濁阻害免疫アッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および放射性免疫アッセイ(RIA)、ELISA等を、単独でまたはNMR、MALDI-TOF、LC-MS/MSと組み合わせて、もしくは代替的に行う際に使用される一般的な技法が、当業者に既知である。
【0428】
かかる試薬は、臨床試験手順の一環として、例えば、阻害剤の最適投薬量を監視するために、細胞または組織、例えば、白血球またはリンパ球中のタンパク質レベルを監視するためにも使用され得る。検出は、抗体を検出可能な物質にカップリング(例えば、物理的に連結する)ことによって促進され得る。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例には、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例には、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。
【0429】
上述の技法は、「一段階」アッセイまたは「二段階」アッセイとして本質的に行われ得る。「一段階」アッセイは、抗原を固定化抗体と接触させ、洗浄することなく、混合物を標識抗体と接触させることを含む。「二段階」アッセイは、混合物を標識抗体と接触させる前に洗浄することを含む。好適な場合、他の従来の方法も用いられ得る。
【0430】
一実施形態では、バイオマーカータンパク質レベルを測定するための方法は、生物学的検体を、バイオマーカータンパク質に選択的に結合する抗体またはそのバリアント(例えば、断片)と接触させるステップと、当該抗体またはそのバリアントが当該試料に結合しているかを検出するステップと、それにより、バイオマーカータンパク質レベルを測定するステップとを含む。
【0431】
バイオマーカータンパク質および/または抗体の酵素標識および放射標識は、従来の手段によって達成され得る。かかる手段は、一般に、特に酵素の活性に悪影響を及ぼさないように、例えば、グルタルアルデヒドによる、問題となっている抗原または抗体への酵素の共有結合的連結を含み、これは、酵素がその基質と依然として相互作用することができなければならないことを意味するが、酵素のすべてが活性である必要はないが、但し、アッセイの達成を可能するのに十分な活性のままであることを条件とする。実際には、酵素に結合するためのいくつかの技法は非特異的であり(例えば、ホルムアルデヒドを使用して)、ある割合の活性酵素しかもたらさない。
【0432】
アッセイ系の1つの成分を支持体上に固定化し、それにより、系の他の成分がその1つの成分と接触し、多大な労力と時間を必要とすることなく容易に除去されることを可能にすることが通常望ましい。第2の相が第1の相から離れて固定化されることが可能であるが、通常、1つの相で十分である。
【0433】
酵素自体を支持体上に固定化することが可能であるが、固相酵素が必要とされる場合、これは、通常、抗体に結合し、その抗体を当該技術分野で周知の支持体、モデル、および系に付着することによって最も良好に達成される。単純なポリエチレンが好適な支持体を提供し得る。
【0434】
標識に用いられ得る酵素は特に限定されていないが、例えばオキシダーゼ群のメンバーから選択され得る。これらは、それらの基質との反応により過酸化水素の産生を触媒し、グルコースオキシダーゼは、その良好な安定性、入手の容易さおよび安価、ならびにその基質(グルコース)の入手し易さのため、使用されることが多い。オキシダーゼの活性は、当該技術分野で周知の制御された条件下で酵素標識抗体と基質との反応後に形成された過酸化水素の濃度を測定することによってアッセイされ得る。
【0435】
他の技法を使用して、本開示に基づいて専門家の選好に従ってバイオマーカータンパク質を検出することができる。かかる技法の1つは、好適に処理された試料をSDS-PAGEゲル上で泳動させた後にニトロセルロースフィルター等の固体支持体に移すウエスタンブロッティング(Towbin et at.,Proc.Nat.Acad.Sci.76:4350(1979))である。その後、抗バイオマーカータンパク質抗体(非標識)を支持体と接触させ、標識タンパク質Aまたは抗免疫グロブリン(125I、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、およびアルカリ性ホスファターゼを含む好適な標識)等の二次免疫学的試薬によってアッセイする。クロマトグラフ検出も使用され得る。
【0436】
免疫組織化学を使用して、例えば、生検試料中のバイオマーカータンパク質の発現を検出することができる。好適な抗体が、例えば、細胞の薄層と接触させられ、洗浄され、その後、第2の標識抗体と接触させられる。標識は、蛍光マーカー、酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、アビジン、または放射標識により得る。このアッセイは、顕微鏡を使用して視覚的にスコア化される。
【0437】
イントラボディ等の抗バイオマーカータンパク質抗体(例えば、表2に列記される)も撮像目的のために使用されて、例えば、対象の細胞および組織中のバイオマーカータンパク質の存在を検出することができる。好適な標識には、放射性同位体、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)、フルオレセインおよびローダミン等の蛍光標識、ならびにビオチンが含まれる。
【0438】
インビボ撮像の目的のために、抗体は、それ自体が体外から検出不能であるため、検出を可能にするために標識されるか、または別様に修飾されなければならない。この目的のためのマーカーは、抗体結合を実質的に妨害しないが、外部検出を可能にする任意のマーカーであり得る。好適なマーカーには、X線ラジオグラフィー、NMR、またはMRIによって検出され得るものが含まれ得る。X線ラジオグラフィー技法の場合、好適なマーカーには、検出可能な放射線を放出するが、対象に明らかに有害ではない任意の放射性同位体(例えば、バリウムまたはセシウム等)が含まれる。NMRおよびMRIに好適なマーカーには、一般に、例えば、関連ハイブリドーマの栄養素の好適な標識によって抗体に組み込まれ得る重水素等の検出可能な特徴的スピンを有するものが含まれる。
【0439】
対象のサイズおよび使用される撮像システムにより、診断的画像を生成するのに必要な撮像部分の量が決定される。放射性同位体部分の場合、ヒト対象について、注射される放射活性の量は、通常、テクネチウム-99約5~20ミリキュリーの範囲である。その後、標識された抗体または抗体断片は、バイオマーカータンパク質を含有する細胞の場所に優先的に蓄積する。その後、標識された抗体または抗体断片が既知の技法を使用して検出され得る。
【0440】
バイオマーカータンパク質を検出するために使用され得る抗体には、天然であるか合成であるか、全長であるかその断片であるか、モノクローナルであるかポリクローナルであるかにかかわらず、検出されるバイオマーカータンパク質に十分に強くかつ特異的に結合する任意の抗体(例えば、表2に列記される)が含まれる。抗体は、最大約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12MのKを有し得る。「特異的に結合する」という語句は、例えば、結合が、同一または同様のエピトープ、抗原、または抗原決定基の第2の調製物で置き換えられ得るか、またはそれと競合され得るような様式での、抗体のエピトープまたは抗原または抗原決定基への結合を指す。抗体は、関連タンパク質等の他のタンパク質と比較してバイオマーカータンパク質に優先的に結合し得る。
【0441】
抗体は、市販されているか、または当該技術分野で既知の方法に従って調製され得る。
【0442】
使用され得る抗体およびその誘導体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、キメラ、ヒト、ヒト化、霊長類化(CDR-グラフト化)、ベニヤ化、または一本鎖抗体、ならびに抗体の機能的断片、すなわち、バイオマーカータンパク質結合断片を包含する。例えば、バイオマーカータンパク質またはその一部(Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片を含むが、これらに限定されない)に結合することができる抗体断片が使用され得る。かかる断片は、酵素的切断または組換え技法によって産生され得る。例えば、パパインまたはペプシン切断により、それぞれ、Fab断片またはF(ab’)2断片が生成され得る。必要な基質特異性を有する他のプロテアーゼもFab断片またはF(ab’)2断片を生成するために使用され得る。抗体は、1つ以上の終止コドンが天然終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を使用して様々な切断形態で産生される場合もある。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、重鎖のCH、ドメイン、およびヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計され得る。
【0443】
合成抗体および操作された抗体は、例えば、Cabilly et al.(米国特許第4,816,567号)、Cabilly et al.(欧州特許第0,125,023号B1)、Boss et al.(米国特許第4,816,397号)、Boss et al.(欧州特許第0,120,694号B1)、Neuberger,M.S.et al.(WO86/01533)、Neuberger,M.S.et al.(欧州特許第0,194,276号B1)、Winter(米国特許第5,225,539号)、Winter(欧州特許第0,239,400号B1)、Queen et al.(欧州特許第0451216号B1)、およびPadlan,E.A.et al.(欧州特許第0519596号A1)に記載されている。霊長類化抗体についてはNewman,R.et al.,BioTechnology,10:1455-1460(1992)、一本鎖抗体についてはLadner et al.(米国特許第4,946,778号)およびBird,R.E.et al.,Science,242:423-426(1988))も参照されたい。ライブラリ、例えば、ファージディスプレイライブラリから産生された抗体も使用され得る。
【0444】
いくつかの実施形態では、抗体以外のバイオマーカータンパク質に特異的に結合する薬剤、例えば、ペプチドが使用される。バイオマーカータンパク質に特異的に結合するペプチドは、当該技術分野で既知の任意の手段によって特定され得る。例えば、バイオマーカータンパク質の特異的ペプチド結合剤は、ペプチドファージディスプレイライブラリの使用についてスクリーニングされ得る。
【0445】
d.バイオマーカーの構造的改変を検出するための方法
以下の例証的な方法は、例えば、過剰発現される、過剰機能的である等のHHLA2、またはKIR3DL3を特定するために、バイオマーカー核酸および/またはバイオマーカーポリペプチド分子の構造的改変の存在を特定するために使用され得る。
【0446】
ある特定の実施形態では、改変の検出は、アンカーPCRもしくはRACE PCR等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号を参照のこと)、またはあるいはライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al.(1988)Science 241:1077-1080、およびNakazawa et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:360-364を参照のこと)におけるプローブ/プライマーの使用を含み、後者は、バイオマーカー遺伝子等のバイオマーカー核酸の点変異の検出に特に有用であり得る(Abravaya et al.(1995)Nucleic Acids Res.23:675-682を参照のこと)。この方法は、対象から細胞試料を収集するステップ、試料の細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNA、または両方)を単離するステップ、バイオマーカー遺伝子(存在する場合)のハイブリダイゼーションおよび増幅が生じるような条件下で、核酸試料を、バイオマーカー遺伝子に特異的にハイブリダイズする1つ以上のプライマーと接触させるステップ、増幅産物の存在もしくは不在を検出するステップ、または増幅産物のサイズを検出して、対照試料と長さを比較するステップを含み得る。PCRおよび/またはLCRを予備的増幅ステップとして本明細書に記載の変異を検出するために使用される技法のうちのいずれかと併せて使用することが望ましくあり得ることが理解される。
【0447】
代替の増幅法には、自立配列複製(Guatelli,J.C.et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh,D.Y.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardi,P.M.et al.(1988)Bio-Technology 6:1197)、または任意の他の核酸増幅法が含まれ、その後に、当業者に周知の技法を使用した増幅された分子の検出が続く。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数で存在する場合の核酸分子の検出に特に有用である。
【0448】
代替の実施形態では、試料細胞由来のバイオマーカー核酸の変異は、制限酵素切断パターンの改変によって特定され得る。例えば、試料DNAおよび対照DNAが単離され、増幅され(任意に)、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼと消化され、断片長サイズがゲル電気泳動によって決定され、比較される。試料DNAと対照DNAとの間の断片長サイズの差が、試料DNAの変異を示す。さらに、配列特異的リボザイムの使用(例えば、米国特許第5,498,531号を参照のこと)を使用して、リボザイム切断部位の発生または喪失による特異的変異の存在についてスコア化することができる。
【0449】
他の実施形態では、バイオマーカー核酸の遺伝子変異は、試料核酸および対照核酸、例えば、DNAまたはRNAを、何百または何千ものオリゴヌクレオチドプローブを含有する高密度アレイにハイブリダイズすることによって特定され得る(Cronin,M.T.et al.(1996)Hum.Mutat.7:244-255、Kozal,M.J.et al.(1996)Nat.Med.2:753-759)。例えば、バイオマーカーの遺伝子変異は、Cronin et al.(1996)(上記参照)に記載されるように、光生成DNAプローブを含む二次元アレイで特定され得る。簡潔には、プローブの第1のハイブリダイゼーションアレイを使用して、試料および対照中のDNAの長いストレッチを走査して、連続的な重複プローブの線形アレイを作製することによって配列間の塩基の変化を特定することができる。このステップにより、点変異の特定が可能になる。このステップの後に、検出されるすべてのバリアントまたは変異に相補的なより小さい特殊化されたプローブアレイを使用することによって特異的変異の特徴付けを可能にする第2のハイブリダイゼーションアレイが続く。変異アレイは各々、並列プローブセットから成り、一方は野生型遺伝子に相補的であり、他方は変異体遺伝子に相補的である。かかるバイオマーカーの遺伝子変異は、例えば、生殖系列および体細胞変異を含む様々な状況で特定され得る。
【0450】
さらに別の実施形態では、当該技術分野で既知の様々な配列決定反応のうちのいずれかを使用して、バイオマーカー遺伝子を直接配列決定し、試料バイオマーカーの配列を対応する野生型(対照)配列と比較することによって変異を検出することができる。配列決定反応の例には、Maxam and Gilbert(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560またはSanger(1977)Proc.Natl.Acad Sci.USA 74:5463によって開発された技法に基づくものが挙げられる。質量分析による配列決定(例えば、PCT国際公開第94/16101号、Cohen et al.(1996)Adv.Chromatogr.36:127-162、およびGriffin et al.(1993)Appl.Biochem.Biotechnol.38:147-159を参照のこと)を含む、様々な自動配列決定手順のうちのいずれかが、診断アッセイを行う際に利用され得ることも企図される(Naeve(1995)Biotechniques 19:448-53)。
【0451】
バイオマーカー遺伝子の変異を検出するための他の方法には、切断薬剤からの保護を使用してRNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖中のミスマッチ塩基を検出する方法が含まれる(Myers et al.(1985)Science 230:1242)。一般に、当該技術分野の技法である「ミスマッチ切断」は、野生型バイオマーカー配列を含有する(標識された)RNAまたはDNAを組織試料から得られた潜在的に変異のRNAまたはDNAとハイブリダイズすることによって形成されたヘテロ二重鎖を提供することから開始する。二本鎖二重鎖は、対照鎖と試料鎖との間の塩基対ミスマッチにより存在するもの等の二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理される。例えば、RNA/DNA二重鎖がRNaseで処理され、DNA/DNAハイブリッドがSIヌクレアーゼで処理されて、ミスマッチ領域を酵素的に消化することができる。他の実施形態では、DNA/DNA二重鎖またはRNA/DNA二重鎖のいずれかがヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムおよびピペリジンで処理されて、ミスマッチ領域を消化することができる。ミスマッチ領域を消化した後、結果として生じた物質が変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズにより分離されて、変異の部位を決定する。例えば、Cotton et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397およびSaleeba et al.(1992)Methods Enzymol.217:286-295を参照されたい。好ましい実施形態では、対照DNAまたはRNAが検出のために標識され得る。
【0452】
なお別の実施形態では、ミスマッチ切断反応は、細胞試料から得られたバイオマーカーcDNAの点変異を検出およびマッピングするための定義された系において二本鎖DNA中のミスマッチ塩基対を認識する1つ以上のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ修復」酵素)を用いる。例えば、E.coliのmutY酵素は、G/AミスマッチでAを切断し、HeLa細胞由来のチミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチでTを切断する(Hsu et al.(1994)Carcinogenesis 15:1657-1662)。例示の実施形態に従って、バイオマーカー配列、例えば、DNAミスマッチ修復酵素で処理された野生型バイオマーカーおよび切断産物(存在する場合)に基づくプローブが、電気泳動プロトコル等から検出され得る(例えば、米国特許第5,459,039号)。
【0453】
他の実施形態では、電気泳動移動度の改変を使用して、バイオマーカー遺伝子の変異を特定することができる。例えば、一本鎖立体配座多型(SSCP)を使用して、変異核酸と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差を検出することができる(Orita et al.(1989)Proc Natl.Acad.Sci USA 86:2766、Cotton(1993)Mutat.Res.285:125-144およびHayashi(1992)Genet.Anal.Tech.Appl.9:73-79も参照のこと)。試料および対照バイオマーカー核酸の一本鎖DNA断片は変性され、復元され得る。一本鎖核酸の二次構造は配列によって異なり、電気泳動移動度の結果として生じた改変は、単一塩基の変化の検出さえも可能にする。DNA断片は、標識プローブで標識または検出され得る。アッセイの感度は、二次構造が配列の変化により敏感である(DNAではなく)RNAを使用することによって増強され得る。好ましい実施形態では、主題の方法は、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖ヘテロ二重鎖分子を分離するためのヘテロ二重鎖分析を利用する(Keen et al.(1991)Trends Genet.7:5)。
【0454】
さらに別の実施形態では、変性剤勾配を有するポリアクリルアミドゲル中での変異断片または野生型断片の移動が変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用してアッセイされる(Myers et al.(1985)Nature 313:495)。DGGEが分析法として使用される場合、DNAは、例えば、PCRによっておよそ40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを付加することによって、完全に変性しないことを確実にするように修飾される。さらなる実施形態では、温度勾配が変性勾配の代わりに使用されて、対照DNAと試料DNAとの移動度の差を特定する(Rosenbaum and Reissner(1987)Biophys.Chem.265:12753を参照のこと)。
【0455】
点変異を検出するための他の技法の例には、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、既知の変異が中心に配置されるように調製され得、その後、完全マッチが見つけられた場合にのみハイブリダイゼーションを許容する条件下で標的DNAにハイブリダイズされ得る(Saiki et al.(1986)Nature 324:163、Saiki et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6230)。かかる対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ膜に付着され、標識された標的DNAとハイブリダイズされる場合に、PCR増幅された標的DNAまたはいくつかの異なる変異にハイブリダイズされる。
【0456】
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術が、本発明と併せて使用され得る。特異的増幅のためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、目的とする変異を、分子の中心に(これにより、増幅が差次的ハイブリダイゼーションに依存するようになる)(Gibbs et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:2437-2448)、または適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を阻止または低減する1つのプライマーの最も3’側に(Prossner(1993)Tibtech 11:238)有し得る。加えて、切断ベースの検出を行うために変異の領域内に新規制限部位を導入することが望ましくあり得る(Gasparini et al.(1992)Mol.Cell Probes 6:1)。ある特定の実施形態では、増幅が増幅用のTaqリガーゼを使用して行われる場合もあることが理解される(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci USA 88:189)。そのような場合、5’配列の3’末端に完全マッチが存在する場合にのみライゲーションが生じ、増幅の存在または不在を探すことによって特定の部位での既知の変異の存在を検出することを可能にする。
【0457】
XIII.臨床的有効性
臨床的有効性は、当該技術分野で既知の任意の方法によって測定され得る。例えば、抗KIR3DL3抗体療法等の療法に対する応答は、療法に対する、がん、例えば、腫瘍等の任意の応答、好ましくは、ネオアジュバントまたはアジュバント化学療法の開始後の腫瘍質量および/または体積の変化に関連する。腫瘍応答は、CT、PET、マンモグラム、超音波、または触診によって測定される全身介入後の腫瘍サイズが初期サイズおよび寸法と比較され得るネオアジュバントまたはアジュバント状況下で評価され得、腫瘍の細胞充実度が組織学的に推定され得、治療開始前に採取された腫瘍生検の細胞充実度と比較され得る。応答は、生検または外科的切除後の腫瘍のキャリパー測定または病理学的試験によっても評価され得る。応答は、腫瘍体積もしくは細胞充実度のパーセンテージ変化等の定量様式で記録され得るか、または残留がん組織量等の半定量スコア化システム(Symmans et al.,J.Clin.Oncol.(2007)25:4414-4422)もしくはミラー・ペインスコア(Ogston et al.,(2003)Breast(Edinburgh,Scotland)12:320-327)を使用して、「病理学的完全応答」(pCR)、「臨床的完全寛解」(cCR)、「臨床的部分寛解」(cPR)、「臨床的安定疾患」(cSD)、「臨床的進行性疾患」(cPD)、または他の質的基準等の質的様式で記録され得る。腫瘍応答の評価は、ネオアジュバントまたはアジュバント療法の開始後早期に、例えば、数時間後、数日後、数週間後、または好ましくは数ヶ月後に行われ得る。応答評価の典型的なエンドポイントは、ネオアジュバント化学療法の終了時または残留腫瘍細胞および/もしくは腫瘍床の外科的除去時である。
【0458】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療的治療の臨床的有効性は、臨床的有用率(CBR)を測定することによって決定され得る。臨床的有用率は、療法終了の少なくとも6ヶ月後の時点での完全寛解(CR)にある患者のパーセンテージ、部分寛解(PR)にある患者の数、および安定疾患(SD)を有する患者の数の合計を決定することによって測定される。この公式の省略表現は、6ヶ月にわたるCBR=CR+PR+SDである。いくつかの実施形態では、特定の抗免疫チェックポイント治療レジメンのCBRは、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、またはそれ以上である。
【0459】
抗免疫チェックポイント療法に対する応答を評価するための追加の基準は、「生存期間」に関連し、これには、死亡までの生存期間、別名、全生存期間(当該死亡は、原因を問わないか、または腫瘍関連のいずれかであり得る)、「無再発生存期間」(再発という用語は、局所再発および遠隔再発の両方を含むものとする)、無転移生存期間、無病生存期間(病という用語は、がんおよびそれに関連する疾患を含むものとする)のすべてが含まれる。当該生存期間の長さは、定義された開始点(例えば、診断時または治療開始時)および終了点(例えば、死、再発、または転移)を参照することによって計算され得る。加えて、治療有効性についての基準は、化学療法に対する応答、生存確率、所与の期間以内の転移確率、および腫瘍再発確率を含むように拡大され得る。
【0460】
例えば、適切な閾値を決定するために、特定の抗がん治療レジメンが対象集団に投与され得、転帰が任意の抗免疫チェックポイント療法の投与前に決定されたバイオマーカー測定値と相関付けられ得る。転帰測定値は、ネオアジュバント状況で施される療法に対する病理学的応答であり得る。あるいは、バイオマーカー測定値が既知である抗免疫チェックポイント療法後の対象について、全生存期間および無病生存期間等の転帰測定値がある期間にわたって監視され得る。ある特定の実施形態では、同じ用量の抗免疫チェックポイント薬剤が各対象に投与される。関連実施形態では、投与される用量は、抗免疫チェックポイント薬剤の当該技術分野で既知の標準用量である。対象が監視される期間は異なり得る。例えば、対象は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヶ月間監視され得る。抗免疫チェックポイント療法の転帰と相関するバイオマーカー測定閾値は、実施例の節に記載の方法等の方法を使用して決定され得る。
【0461】
XIV.キット
加えて、本開示は、生体試料中のKIR3DL3ポリペプチドまたはその断片の存在を検出するためのキットも包含する。例えば、キットは、生体試料中のKIR3DL3ポリペプチドまたはその断片を検出することができる標識化合物または薬剤、試料中のKIR3DL3ポリペプチドまたはその断片の量を決定するための手段、および試料中のKIR3DL3ポリペプチドまたはその断片の量を標準と比較するための手段を含み得る。あるいは、キットは、予後、治療、および/または免疫調節方法で使用するための1つ以上の抗KIR3DL3抗体および/または抗HHLA2抗体(例えば、本明細書に記載のもの)を含むことができる。化合物または薬剤は、好適な容器内にパッケージングされ得る。本開示によって包含されるキットは、固体支持体、例えば、組織培養プレートまたはビーズ(例えば、セファロースビーズ)に結合した抗体を含み得る。
【0462】
キットは、キットが設計される特定の用途を容易にするために追加の成分を含み得る。例えば、インビトロでの、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットでのKIR3DL3の検出および定量化のための抗体を含むキットが提供され得る。キットが含み得る追加の例示の薬剤には、標識を検出する手段(例えば、酵素標識のための酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、ヒツジ抗マウス-HRP等の適切な二次標識等)および対照に必要な試薬(例えば、対照生体試料またはKIR3DL3タンパク質標準)が挙げられる。キットは、開示される本発明の方法での使用が認められている緩衝液および他の試薬をさらに含み得る。非限定的な例には、担体タンパク質または洗剤等の非特異的結合を減少させる薬剤が挙げられる。本開示によって包含されるキットは、本明細書に提供される開示される本発明の方法における開示される本発明のキットまたは抗体の使用を開示または記載する教材も含み得る。
【0463】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証され、これらは、限定するものと解釈されるべきではない。本明細書を通じて引用されるすべての参考文献、特許、および公開された特許出願の内容、ならびに図面は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0464】
実施例1:材料および方法
HHLA2に対する新規受容体を同定するための発現スクリーニング
細胞マイクロアレイ技術を使用して、新規のHHLA2受容体を同定した(Retrogenix、High Peak,UK)。3,500個を超える異なる原形質膜タンパク質を網羅する約5500個の全長cDNAクローンのライブラリを、13個のマイクロアレイスライド(「スライドセット」)にわたって二連でアレイした。ヒトHEK293細胞を、cDNAクローン上で増殖させ、リバーストランスフェクトした。発現ベクター(pIRES-hEGFR-IRES-ZsGreen1)をすべてのスライド上で、四連でスポッティングし、これを使用して、すべてのスライド上でトランスフェクション効率の最小閾値が達成または超過されたことを確実にした。得られた細胞マイクロアレイを、可溶性ヒトHHLA2-mIgG2a融合タンパク質への結合について評価した。
【0465】
ヒトHHLA2-mIgG2a融合タンパク質を、固定細胞マイクロアレイスライドに20μg/mlの濃度で添加し、結合相互作用を、AF647標識抗マウスIgG検出抗体で検出した。2つの複製スライドを13個のスライドセット毎にスクリーニングした。蛍光画像を、ImageQuantソフトウェア(GE)を使用して分析および定量した(トランスフェクション効率について)。タンパク質「ヒット」を、バックグラウンドレベルと比較して上昇したシグナルを示す重複スポットとして定義した。これを、ImageQuantソフトウェア上にグリッドされた画像を使用して目視検査によって達成した。
【0466】
存在する場合、どのヒットが再現可能であり、かつヒトHHLA2に特異的であるかを決定するために、すべてのライブラリスクリーニングヒットをコードするベクター、および適切な対照KIR受容体を新たなスライド上にアレイし、HEK293細胞において発現させた。同一のスライドを、ライブラリスクリーニングで使用した用量およびインキュベーション条件を使用して、可溶性HHLA2-mIgG2aで、または適切な陽性および陰性対照処理(処理当たりn=2のスライド)でスクリーニングした。
【0467】
KIR3DL3抗体特異性アッセイ
完全なKIRファミリーcDNAパネルを発現する複製マイクロアレイスライドを固定し、PBS/0.5%BSAを含有する緩衝液で遮断し、PBS/0.1%BSA中の1:5、1:25、および1:250希釈液で、個々のKIR3DL3 mAbハイブリドーマ上清と室温で1時間インキュベートした。細胞アレイをPBSで洗浄し、AF647コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)(Life Technologies、A21235)を含有するPBS/0.1%BSA中で、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し、乾燥させ、ZsGreen1およびAF647蛍光について画像化した。HHLA2-mIgG2a(20μg/ml)を陽性対照として使用して、スポッティングアレイ上のKIR3DL3およびTMIGD2への結合を検出した。
【0468】
受容体結合および遮断アッセイ
KIR3DL3 mAbを、KIR3DL3トランスフェクト300.19細胞と4℃で30分間プレインキュベートした。HHLA2マウスIgG2a(IgG2a L235E、E318A、K320A、K322Aで変異した)(10μg/mlの25μl)を添加し、4℃で30分間インキュベーションを続けた。細胞を洗浄し、5μg/mlのAlexa 647コンジュゲート298.6F8 mAb(L235E、E318A、K320A、K322Aで変異したマウスIgG2aに特異的なマウス抗体)でHHLA2マウスIgG2aの結合を検出した。EC50およびIC50分析を、GraphPad Prism(登録商標)8を使用して行った。
【0469】
細胞株および細胞培養
Raji細胞株(ATCC CCL-86)、Jurkat(クローンE6-1)(ATCC TIB-152)、CHO-K1(ATCC CCL-61)、A498(ATCC HTB-44)、786-O(ATCC CRL-1932)およびK562(ATCC CCL-243)ならびにNK-92MI(ATCC CRL-2408)細胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Manassas,VA,USA)から入手した。786-O、A498、Raji、JurkatおよびK562細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS、Life Technologies 26140-079)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone SV30010.01)を補充したRPMI1640培地(Life Technologies A10491-01)中で37℃、5%COでインキュベートした。NK-92MI細胞を、10%FBS(Life Technologies 26140-079)を補充し、10%ヒト血清(Sigma Aldrich H3667-100ML)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone SV30010.01)を補充したX-VIVO 15(商標)無血清造血細胞培地(Lonza 04-418Q)を使用して、37℃、5%COで培養した。示した場合、細胞を、IFN-γ(R&D #285-IF/CF、10ng/ml)、IL-10(R&D #1064-IF/CF、10ng/ml)またはTGF-β1(R&D #4454-BH、10ng/ml)で処理した。
【0470】
TMIGD2-NFAT-Jurkat安定細胞株培養物に1000μg/mlのGeneticin(商標)(Life Technologies 11811031)、および200μg/mlのハイグロマイシン(Invitrogen 10687010)を補充して、TMIGD2およびNFATレポーターの組換え発現が維持されることを確実にした。KIR3DL3-IL2-Jurkat安定細胞株培養物に1000μg/mlのGeneticin(商標)、および0.25μg/mlのピューロマイシン(InvivoGen ant-pr-1)を補充して、KIR3DL3およびIL-2レポーターの発現が維持されることを確実にした。K562 HHLA2安定細胞株に、1μg/mLのピューロマイシンを補充した。CHO細胞を、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したF12-K(Hyclone SH30526.01)培地中に維持した。HHLA2-抗CD3 scFV-CHO安定細胞株培養物に1000μg/mlのGeneticin(商標)、および500μg/mlのハイグロマイシンを補充して、HHLA2およびTCR活性化因子の組換え発現が維持されることを確実にした。
【0471】
ヒトT細胞およびNK細胞の活性化および培養
RosetteSep(商標)ヒトT細胞濃縮カクテル(Stemcell# 15021)を使用して、健常なドナーの血液からの陰性選択によってT細胞を単離した。T細胞を、製造業者の推奨プロトコル(Stemcell 10971)に従ってImmunoCult(商標)Human CD3/CD28T細胞活性化因子四量体を使用して活性化し、100U/mlのIL-2(Peprotech #200-02)の存在下でImmunoCult(商標)-XF T細胞増殖培地(Stemcell 10981)を使用して培養した。示した時間に、T細胞を以下の抗体で染色した。Alexa 647 1G7抗体(KIR3DL3抗体)またはAlexa 647マウスIgG2b、5ug/mlのκアイソタイプ対照(Biolegend# 400330)、BV785抗ヒトCD3(Biolegend #344842)、PE/シアニン7抗ヒトCD8抗体(Biolegend #344712)、PE/シアニン7抗ヒトCD4抗体(Biolgend #317414)、PE/シアニン7マウスIgG2b、κアイソタイプ(Biolegend #400325)、PE/シアニン7マウスIgG1、κアイソタイプ(Biolegend# 400125)、およびBV785マウスIgG1、κアイソタイプ(Biolegend#400169)。
【0472】
NK-92(ATCC CRL-2407)およびNK-92MI(ATCC CRL-2408)細胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Manassas,VA,USA)から入手した。NK-92MI細胞を、10%FBS(Life Technologies 26140-079)を補充し、10%ヒト血清(Sigma Aldrich H3667-100ML)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone SV30010.01)を補充したX-VIVO 15(商標)無血清造血細胞培地(Lonza 04-418Q)を使用して、37℃、5%CO2で培養した。
【0473】
プラスミドの構築
膜アンカーキメラ抗体であるTCR活性化因子を、ヒトCD3 mAb OKT3(Kipriyanov et al.1997,PEDS 10:445-453)の一本鎖可変断片(scFv)をマウスCD8α(受入番号:NP_001074579.1)のC末端ドメイン(113~220)に融合することによって構築した。TCR活性化因子をコードするDNA配列を合成し、pIRES-hyg3ベクター(ClonTech)に挿入して、構築物TCRa_pIREShyg3を作製した。ヒトHHLA2(受入番号:NM_009003)、TMIGD2(受入番号:NM_144615)およびKIR3DL3(KIR3DL3*00402対立遺伝子に対応するGenbank受入番号BC143802.1)のDNA配列を合成し、pIRES-Hyg3またはpIRES-Neo3に個別に挿入して、HHLA2_pIRESneo3、TMIGD2_pIREShyg3およびKIR3DL3_pIREShyg3を作製した。NFATレポーターは、NFAT応答要素の4つのコピーの制御下で蛍ルシフェラーゼ遺伝子を含有し、その後に最小プロモーターが続く。IL2レポーターは、内因性IL2プロモーターの制御下で蛍ルシフェラーゼ遺伝子を含有する。これらのレポーターをコードするDNA配列をpcDNA 3.1に挿入して、NFAT-Luc-pcDNAおよびIL2-Luc-pcDNAを生成した。
【0474】
安定した細胞株の生成
Jurkat細胞(クローンE6-1)を電気穿孔によってNFAT_Luc_pcDNAおよびTMIGD2_pIREShyg3で順次に同時トランスフェクトした。安定したクローンをハイグロマイシン(200μg/ml)ならびにG418(1000μg/ml)二重選択および限界希釈によって生成した。選択された安定した細胞クローンを、ハイグロマイシンおよびG418を補充した完全細胞培養培地で維持した。Jurkat細胞(クローンE6-1)を電気穿孔によってIL2_Luc_pcDNAおよびKIR3DL3_puroで順次に同時トランスフェクトした。安定したクローンをピューロマイシン(0.25μg/ml)ならびにG418(1000μg/ml)二重選択および限界希釈によって生成した。選択された安定した細胞クローンを、ピューロマイシンおよびG418を補充した完全細胞培養培地で維持した。CHO-K1細胞をLipofectamine 2000(Invitrogen)によってTCRa_pIREShyg3およびHHLA2_pIRESneo3で順次に同時トランスフェクトした。安定したクローンをハイグロマイシンならびにG418二重選択および限界希釈によって生成した。選択された安定した細胞クローンを、ハイグロマイシンおよびG418を補充した完全細胞培養培地で維持した。
【0475】
最初および最後の3ヌクレオチドに2’-O-メチル3’ホスホロチオネート修飾を有する、ヒトβ2-マイクログロブリン遺伝子(5’-GCTACTCTCTCTTTCTGGCC)(addgene.org/84381/のワールドワイドウェブ)を標的とするsgRNAを、Synthegoから注文した。2μlの66.88μMのCas9ヌクレアーゼ(Aldevron、SpyFi Cas9ヌクレアーゼ9214-0.25MG)を3μlの100μM sgRNAと混合した。Cas9ヌクレアーゼおよびsgRNAを室温で20分間インキュベートした。Raji細胞を、Raji細胞のためのLonzaにより推奨されるセットアップに従って、Lonza 4D Nucleofectorを使用して、Cas9 RNPで電気穿孔した。Raji細胞を48時間培養し、次いでヒトβ2-マイクログロブリン抗体(Biolegend 395711)を使用して、β2-マイクログロブリン陰性度について選別した。β2-マイクログロブリン陰性細胞を培養し、純粋なβ2-マイクログロブリン陰性細胞集団が得られるまで、複数回再選別した。
【0476】
レポータアッセイ
TMIGD2_NFAT_Jurkatレポーター活性:
HHLA2-TCR-CHO細胞およびTCR-CHO細胞を、白色の不透明な底の96ウェルプレート中のCHOK1増殖培地中に2×10細胞/ウェルの密度で播種し、37℃、5%COで一晩インキュベートした。翌日、培地を取り除き、細胞を、50μlのJurkat細胞培地中でHHLA2抗体と1時間インキュベートし、その後、TMIGD2_NFAT_Jurkatレポーター細胞株(クローン#62)を、50μlのJurkat細胞培地中に4~5×10細胞/ウェルで添加した。培養物を3~6時間インキュベートした。ルシフェラーゼシグナルは、製造業者のプロトコルに従って、100μlのONE-Step(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(BPS Bioscience 60690)を添加することによって生じ、発光をルミノメーターで測定した。
【0477】
KIR3DL3_IL2_Jurkatレポーター活性
HHLA2-TCR-CHO(クローン#28)またはTCR-CHO細胞を、白色の不透明な底の96ウェルプレート中のCHO-K1増殖培地中に2×10細胞/ウェルの密度で播種し、37℃、5%COで一晩インキュベートした。翌日、培地を取り除き、細胞を50μlのJurkat細胞培地中でHHLA2またはKIR3DL3抗体と1時間インキュベートし、その後、KIR3DL3_IL2_Jurkatレポーター細胞株(クローン#2-12)を、50μlのJurkat細胞培地中に4~5×10細胞/ウェルで添加し、さらに、ウェル当たり100μLのアッセイ混合物中に1μg/mLの最終濃度でCD28抗体を添加した(クローン9.3、BioXcell BE0248)。ルシフェラーゼシグナルは、製造業者のプロトコルに従って、100μlのONE-Step(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(BPS Bioscience、60690)を添加することによって生じ、発光をルミノメーターで測定した。
【0478】
抗体生成
HHLA2 mAb:BALB/cマウスを、皮下注射により完全フロイントアジュバント中の50μgの組換えHHLA2-mIg2aでプライミングし、その後、腹腔内注射により不完全フロイントアジュバント中の50μgの組換えHHLA2-mIgG2a、続いて変性HHLA2-mIgG2aで3~4ラウンドのブーストを行った。最も高いHHLA2抗体価を示したマウスからの脾臓およびリンパ節細胞をSP2/0骨髄腫細胞に融合させ、ハイブリドーマ上清を、HHLA2トランスフェクト細胞および親300.19細胞上でフローサイトメトリーによってスクリーニングした。
【0479】
KIR3DL3 mAb:BALB/cマウスを、心毒素(10mMの50μl)での筋肉内注射によってプライミングし、同じ注射経路によってKIR3DL3 cDNAを含有する100μgのプラスミドで免疫化した。KIR3DL3プラスミドDNAおよびKIR3DL3トランスフェクトNIH-3T3細胞による2ラウンドの追加の心毒素前処置およびブーストを実施した。最も高いKIR3DL3抗体価を示したマウスからの脾臓およびリンパ節細胞をSP2/0骨髄腫細胞に融合させ、ハイブリドーマ上清を、KIR3DL3トランスフェクト細胞および親300.19細胞上でフローサイトメトリーによってスクリーニングした。
【0480】
NK細胞毒性アッセイ
NK92-MI細胞の細胞毒性を、KILR検出キット(Eurofins/Discoverx 97-0001M)を使用して決定した。製造業者の推奨を使用して、標的細胞であるK562細胞を、KILR Retroparticles(KILR(登録商標)Retroparticles for Adherent & Suspension Cells(G418)、Eurofins/Discoverx 97-0006)で感染させた。500μg/mlのG418中で感染細胞を選択した。NK92-MI(エフェクター)細胞を、1:1、3:1、および5:1のエフェクター対標的(E:T)比で、96ウェルプレート中で、37℃で4時間、10K562標的細胞と共培養した。室温でエフェクター細胞または標的細胞に100μlのKILR検出試薬を添加してから1時間後に、ルミノメーターで細胞溶解を検出した。示した場合、NK92-MI(エフェクター)細胞を、0.1、1.0および10μg/mlの濃度のHHLA2またはKIR3DL3遮断抗体、および適切なアイソタイプ対照とインキュベートし、3:1の固定したエフェクター対標的(E:T)比で、37℃で4時間、K562(標的)細胞と共培養した。特異的溶解の割合を以下のように計算した。
【0481】
特異的溶解(%)=[光学密度(OD)実験群-OD標的細胞自然放出対照]/(OD標的細胞最大放出対照-OD標的細胞自然放出対照)×100。製造業者から提供された溶解剤で処理した後、最大放出を測定した。
【0482】
RajiおよびHHLA-2トランスフェクトRaji細胞(β2-マイクログロブリンノックアウト)を、PBS中の1μMのカルセインAM(BioLegend 425201)で、室温で20分間染色し、次いでPBSで2回洗浄し、2x10/mlでRPMI完全培地中に再懸濁した。5×10Raji標的細胞およびNK-92MIエフェクター細胞を、1:1、2:1、および3:1のE/T比で、HHLA2もしくはKIR3DL3抗体またはアイソタイプ対照の存在下で、丸底96ウェルプレートで、37℃、5%COで4時間培養した。次いで、プレートを氷上に置き、フローサイトメトリーによって分析した。FlowJoを使用して分析を行った。細胞溶解の割合を以下のように計算した。細胞毒性%=エフェクター不在下でのカルセインAM+標的細胞%(100%)-エフェクター存在下でのカルセインAM+標的細胞%(E/T比+1)。
【0483】
CD107脱顆粒アッセイ
Raji β2-マイクログロブリンKOおよびHHLA-2をトランスフェクトしたRaji β2-マイクログロブリンKOを、37℃、5%COで、丸底96ウェルプレート中で、1:1、2:1および3:1のエフェクター対標的の比(E:T)で3時間、NK-92MIと共培養した。抗KIR3DL3抗体(1G7)およびマウスIgG2bアイソタイプを10μg/mlで使用した。抗体BV421抗ヒトCD107a(Biolegend #328625)、APC抗ヒトCD56(Biolegend #362503)、APCマウスIgG1、κアイソタイプCtrl(Biolegend #400121)、およびBV421マウスIgG1、κアイソタイプCtrl(Biolegend #400157)を1:100希釈で使用した。モネンシン溶液(1,000×)(Biolegend #420701)を1:1000希釈で使用し、細胞刺激カクテル、PMA/イオノマイシン(Biolegend #423301)を1:500希釈で使用した。その後、プレートを氷上に置き、フローサイトメトリーおよびFlowJoソフトウェアを使用して、細胞をCD56ゲーティング細胞上でのCD107a発現について分析した。
【0484】
HHLA2トランスフェクトK562およびRAJI ベータ-2マイクログロブリンノックアウト標的細胞の誘導:
K562細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS、Life Technologies 26140-079)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone SV30010.01)を補充したRPMI1640培地(Life Technologies A10491-01)中で、37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0485】
K562細胞を、pEF-Puroベクター中の50ugのMluI線形化HHLA2 cDNAで電気穿孔し(300ボルト、1600マイクロファラド)、ピューロマイシン耐性について選択し、PEコンジュゲートHHLA2 mab 6F10で染色し、選別し、単一細胞をクローニングした。K562 HHLA2安定細胞株を、1μg/mLのピューロマイシンを補充した上記のRPMI1640培地中で培養した。
【0486】
ウエスタンブロット分析
タンパク質溶解物を、製造業者の説明書(Thermo Scientific;complete Ultra tablets、小型、EDTAフリー、Roche)に従って、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含むRIPA緩衝液で調製した。溶解物を単一の広いレーン4~15%勾配のmini-Protean TGXゲル(Biorad)にロードし、半乾燥法によって移動させた。膜を、Tween(登録商標)20(TBST)を有するトリス緩衝生理食塩水中の12%無脂肪乳および1%正常ヤギ血清で、室温で1時間遮断した。膜をTBSTで洗浄し、マルチウェルミニブロッター中で、4℃で一晩、TBSTおよび1%BSA中に5ug/mlで抗KIR3DL3 mAb、574.1F12とインキュベートした。膜を室温のTBSTで3回洗浄し、TBST中の二次抗体(1:4000、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG、Southern Biotech)、6%無脂肪乳、および0.5%正常ヤギ血清と30分間インキュベートした。TBSTでさらに3回洗浄した後、1:1比のECL基質:エンハンサーを膜に添加し(SuperSignal West Pico Stable Peroxide Solution、Supersignal West Pico Luminol/Enhancer Solution、ThermoScientific)、Hyblot CLオートラジオグラフィーフィルム(Denville Scientific)上で画像化した。
【0487】
RNA抽出および定量的リアルタイムPCR
全RNAを、Purelink RNA mini Kit(ThermoFisher)を使用して細胞ペレットから抽出した。cDNA合成を、製造業者の推奨に従って、High Capacity RNA-to-cDNA Kit(Applied Biosystems、ThermoFisher)を用いて行った。RT-PCRは、製造者の推奨に従って、Power SYBR(商標)Green PCR Master Mixを使用して実施した。使用したプライマーには以下が含まれる。
【表3A】
【0488】
各試料についての内部対照として18Sを使用した。相対的なmRNAレベルを、2-ΔΔCTの式によって決定し、実験を3回繰り返した。
【0489】
ccRCC患者におけるmRNA発現の分析
TCGA腎明細胞患者についてのTCGA RSEM RNASeqV2データを、gdac.broadinstitute.org/runs/stddata__2016_01_28/data/KIRC/20160128/gdac.broadinstitute.org_KIRC.Merge_rnaseqv2__illuminahiseq_rnaseqv2__unc_edu__Level_3__RSEM_genes__data.Level_3.2016012800.0.0.tar.gz)のワールドワイドウェブでTCGA GDACからダウンロードした。100万当たりの転写産物(TPM)を導出するために、「スケーリングされた推定値」の出力値に106を乗じた。これらのTPM値をlog2(TPM+1)に変換し、Wilcoxon順位和検定を使用して各遺伝子について腫瘍および正常発現を比較した。
【0490】
サイトメトリー:
細胞を、Galliosフローサイトメーター(構成:488nm、561nm、405nm、355nm、および635nm)またはBD Fortessaフローサイトメーターで分析した。FlowJoまたはKaluzaソフトウェアでデータを分析した。各実験について、10,000~20,000個の細胞を分析した。
【0491】
統計学:
別段の指示がない限り、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア7を使用してデータを分析した。別段の記載がある場合を除いて、すべてのデータは、平均値±S.D.(エラーバー)として表される(図の凡例を参照のこと)。スチューデントのt検定および二元配置分散分析を凡例に示されるように使用した(非有意(ns)、P≧0.05;P≦0.05;**P≦0.01;***P≦0.001;****P≦0.0001)。
【0492】
実施例2:HHLA2に対する第2の受容体としてのKIR3DL3の同定および特徴付け
HHLA2に対する阻害性受容体を同定するために、スライドガラス上のHEK293細胞においてそれぞれ個別に発現される約5500個の細胞表面受容体のライブラリ上で、可溶性ヒトHHLA2-mIgG2a融合タンパク質(HHLA2-Ig)を使用して受容体スクリーニングを行った。スクリーニングにより、KIR3DL3を、HHLA2結合についての陽性シグナルとして同定した(図1Aおよび2A)。予想通り、HHLA2-Igは、TMIGD2およびFc受容体、FCGR2Aにも結合したが、EGFR、PD-1またはPD-L1には結合しなかった(図1A)。KIR3DL3は、リガンドがまだ記載されていないKIR遺伝子ファミリーのメンバーである。KIR3DL3のみを同定した5500cDNAスクリーニングにおいてKIRファミリーの他のメンバーが存在したが、特異性を確認するために、本発明者らは、KIR3DL3およびKIR遺伝子ファミリーの他のメンバーにHHLA2-Igが結合することを個別に試験した。HHLA2-IgはKIR3DL3のみに結合し、KIRファミリーの他のメンバーには結合しなかった(図1Aおよび2A)。
【0493】
HHLA2/KIR3DL3およびHHLA2/TMIGD2相互作用を確認するために、TMIGD2およびKIR3DL3を発現する細胞へのHHLA2-Igの結合を試験した。KIR3DL3およびTMIGD2を、300.19マウスプレB細胞白血病細胞株において安定に過剰発現させ、トランスフェクト細胞をHHLA2-mIgG2aとインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。HHLA2の、その2つの受容体であるKIR3DL3およびTMIGD2への用量依存的結合が、これらの2つの受容体に対する同様の結合親和性を示す非常に類似した50%の最大結合レベルであることが、本明細書で発見された(図1Bおよび4A)。トランスフェクトされていない300.19細胞またはHHLA2自体(HHLA2でトランスフェクトされた300.19細胞)への結合はなかった。同様の特異的結合は、KIR3DL3およびTMIGD2一過性トランスフェクト293T細胞で観察された(図4Bおよび4C)。
【0494】
実施例3:KIR3DL3モノクローナル抗体の誘導
いくつかの抗KIR3DL3モノクローナル抗体を生成および分析した。簡潔に述べると、ヒトKIR3DL3 cDNAプラスミドおよびKIR3DL3トランスフェクト3T3または300.19細胞を産生し、利用して、KIR3DL3マウスモノクローナル抗体の誘導のためにマウスを免疫化した。4~6週間齢の5匹のマウス(Balb/c、C57Bl/6、Swiss-Webster)をCharles River Laboratories(Wilmington,MA)から入手した。すべての動物を、Institutional Animal CareおよびUse Committee of Harvard Standing Committee on Animalsのガイドラインに従って入手および維持した。マウスを、プラスミドDNAの筋肉内注射の5日前に、50ulの10mMの心毒素(Naja nigricollis venom、Latoxan Laboratories、France)の前注射で脛骨筋にプライミングした。マウスを麻酔し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、GIBCO、Grand Island,NY)中に懸濁した100マイクログラムのcDNAを両脛骨筋(各50ul)に注射した。処置前の心毒素およびcDNAブーストを、14日目および28日目に繰り返した。5週間後、マウスを、PBS中のKIR3DL3トランスフェクト300.19細胞で免疫化した。2週間後、マウスを、PBS中のKIR3DL3トランスフェクトNIH-3T3細胞で免疫化した。10日後、マウスを出血させ、血清KIR3DL3 mAb価を、フローサイトメトリーによってKIR3DL3トランスフェクト細胞上で評価した。最も高い血清KIR3DL3 mAb価を示したBalb/Cマウス動物番号2を、融合のために選択した。前回の免疫化の5週間後、マウス番号2を、PBS中のKIR3DL3トランスフェクトNIH-3T3細胞でブーストし、4日後に融合した。採取した脾臓およびリンパ節を細胞懸濁液にし、その後、DMEMで洗浄した。脾臓/リンパ節細胞を計数し、2:1の脾臓:骨髄腫比を使用して、重鎖免疫グロブリン鎖も軽鎖免疫グロブリン鎖もいずれも分泌することができないSP 2/0骨髄腫細胞と混合した(Kearney et al.(1979)J Immunol 123:1548-1550およびKilpatrick et al.(1997)Hybridoma 16:381-389)。細胞を、標準手順(Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495-497)に従ってHAT選択培地中の8個の96ウェル組織培養プレート内でポリエチレングリコール1450と融合させた。融合の10~21日後、ハイブリドーマコロニーが可視になり、培養上清を収集し、その後、KIR3DL3 cDNAでトランスフェクトされた300.19細胞上でフローサイトメトリーによってKIR3DL3結合に対して、かつトランスフェクトされていない300.19細胞上で反応性の欠如に対してスクリーニングした。
【0495】
誘導されたKIR3DL3 mAbの結合特性、例えば、結合親和性が表3に要約される。
【0496】
実施例4:KIR3DL3 mAbの結合および選択性
図5は、KIR3DL3 mAbがKIR3DL3陽性細胞に結合することを示す。示した濃度のKIR3DL3 mAbを、KIR3DL3トランスフェクト300.19プレB細胞と4℃で30分間インキュベートした。KIR3DL3 mAbのトランスフェクト300.19細胞への結合を、10μg/mlのPE標識ヤギ抗マウスIgGで検出した(H+L)。したがって、KIR3DL3 mAbは、細胞によって発現されるKIR3DL3に結合する。
【0497】
表4は、ほとんどのKIR3DL3 mAbがKIR3DL3に特異的に結合するが、KIRファミリーの他のメンバーには結合しないことを示す。いくつかのKIR3DL3 mAbはまた、KIR3DL1、KIR2DL5A、および/またはKIR2DL5Bへの弱~中程度の結合を示した。KIRファミリー遺伝子をコードするcDNAプラスミドのパネルを、ヒトHEK293細胞を含有するスライドガラス上にスポッティングし、HEK293細胞にリバーストランスフェクトして、細胞表面KIR分子を発現させた。1:5、1:25および1:250の希釈でのKIR3DL3 mAbハイブリドーマ上清をKIR分子パネル上でインキュベートし、AlexaFlour647標識抗マウスIgG(H+L)抗体を使用して結合を検出し、続いて蛍光について画像化した(表4)。HHLA2-mIgG2a(20ug/ml)を陽性対照として使用して、スポッティングアレイ上のKIR3DL3およびTMIGD2への結合を検出した。
【0498】
図6は、ウエスタンブロットでKIR3DL3 mAbがKIR3DL3に結合することを示す。KIR3DL3トランスフェクトJurkat細胞のタンパク質溶解物を、製造業者の説明書(Thermo Scientific)に従ってRIPA緩衝液で調製し、溶解物の調製前にプロテアーゼ阻害剤カクテルを緩衝液(complete Ultra tablets、小型、EDTAフリー、Roche)に添加した。タンパク質溶解物を、ヒトKIR3DL3で安定してトランスフェクトされたJurkat細胞から作製した。700μgの溶解物を単一の広いレーン4~15%勾配のmini-Protean TGXゲル(Biorad)にロードし、半乾燥法によって移動させた。膜を、Tween(登録商標)20(TBST)を有するトリス緩衝生理食塩水中の12%無脂肪乳および1%正常ヤギ血清で、室温で1時間遮断した。膜をTBSTで洗浄し、一次抗体(TBSTおよび1%BSA中のハイブリドーマ上清抗KIR3DL3 mAbの1~10、1~30、および1~90の最終希釈物とマルチウェルミニブロッター中で、4℃で一晩インキュベートした。膜を室温のTBSTで3回洗浄し、TBST中の二次抗体(1:4000、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG、Southern Biotech)、6%無脂肪乳、および0.5%正常ヤギ血清と30分間インキュベートした。TBSTでさらに3回洗浄した後、1:1比のECL基質:エンハンサーを膜に添加し(SuperSignal West Pico Stable Peroxide Solution、Supersignal West Pico Luminol/Enhancer Solution、ThermoScientific)、Hyblot CLオートラジオグラフィーフィルム(Denville Scientific)上で画像化した。
【0499】
図3A図3Eおよび表5は、抗体の抗原への結合のさらなる特徴付けおよびKIR3DL3またはTMIGD2のいずれかへのHHLA2結合を遮断する能力を示す。KIR3DL3およびHHLA2抗体の用量依存的結合は、それぞれ、KIR3DL3およびHHLA2トランスフェクト300.19細胞で観察された(図3Aおよび3C)。6D10を除くすべてのHHLA2抗体は、それらの抗原への高親和性結合を示した。遮断抗体および非遮断抗体を同定した。HHLA2抗体2G2および6F10は、HHLA2と、KIR3DL3およびTMIGD2の両方との相互作用を遮断し、一方、2C4および6D10抗体は、HHLA2/KIR3DL3相互作用のみを遮断したが、HHLA2/TMIGD2相互作用は遮断しなかった(図3Dおよび3E、表5)。KIR3DL3 mAb 1G7、2F11、および8F7は、用量依存的様式でKIR3DL3への強力な結合を示した(図3A)。1G7および2F11は、KIR3DL3とHHLA2との相互作用を遮断し、一方、8F7は、相互作用を弱く遮断しただけであった(図3Bおよび表5)。すべてのKIR3DL3抗体は、KIR3DL3に特異的に結合し、2F11抗体を除いて他のKIRファミリーメンバーには結合せず、KIR2DL5Aへの結合も弱いことが示された(表4)。
【0500】
実施例5:KIR3DL3へのHHLA2結合のKIR3DL3 mAb遮断
図9は、KIR3DL3 mAbが、KIR3DL3へのHHLA2の結合を遮断することを示す。示した濃度のKIR3DL3 mAbを、KIR3DL3トランスフェクト300.19細胞と4℃で30分間プレインキュベートした。HHLA2マウスIgG2a(IgG2a L235E、E318A、K320A、K322Aで変異した)(10ug/mlの25ul)を添加し、4℃で30分間インキュベーションを続けた。細胞を洗浄し、5ug/mlのAlexa 647コンジュゲート298.6F8 mAb(L235E、E318A、K320A、K322Aで変異したマウスIgG2aに特異的なマウス抗体)でHHLA2マウスIgG2aの結合を検出した。EC50およびIC50分析を、GraphPad Prism(登録商標)を使用して行った。
【表3】
【表4】
【0501】
表4において、(図1A図2B、および図2Cのように)KIRファミリーcDNAパネルを発現する複製マイクロアレイスライドを固定し、PBS/0.5%BSAを含有する緩衝液で遮断し、PBS/0.1%BSA中の1:5、1:25、および1:250希釈液で、個々のKIR3DL3 mAbハイブリドーマ上清と室温で1時間インキュベートした。細胞アレイをPBSで洗浄し、AF647コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)(Life Technologies、A21235)を含有するPBS/0.1%BSA中で、室温で1時間インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し、乾燥させ、ZsGreen1およびAF647蛍光について画像化した。
【0502】
実施例6:KIR3DL3は、T細胞活性化後のいくつかのT細胞上で誘導され、NK92-MI細胞上で発現される
以前に発表された研究は、TMIGD2がナイーブT細胞およびNK細胞上で発現され、活性化によって下方制御されることを示した。NKG2AおよびKIR受容体等のいくつかのNK細胞受容体は、CD8リンパ球上で発現され得る。T細胞上でのKIR3DL3の発現を評価した。T細胞をドナー全血から精製し、CD3/CD28抗体四量体で活性化し、ゲーティングされたCD3+CD4+およびCD3+CD8+T細胞においてKIR3DL3発現を決定した(図10A)。最小限のKIR3DL3発現(CD4+細胞の0.26%およびCD8+細胞の0.39%)が、0日目(非活性化)に観察され(図10B)、活性化後21日目にピークに達した3日目および10日目のCD4+およびCD8+細胞の両方におけるKIR3DL3発現が増加した(CD4+細胞の6.60%およびCD8+細胞の5.69%)(図10C)。
【0503】
KIR3DL3を内因的に発現するNK細胞株であるNK92-MIを本明細書で同定した。NK92-MIは、IL-2 cDNAのトランスフェクションによって元のNK92から誘導され、IL-2を過剰発現し、IL-2の外因性適用の必要性を排除した。KIR3DL3は少数の親NK92細胞上で発現されたが、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットによってNK92-MI細胞で確認された(図10Dおよび図7)。加えて、KIR3DL3発現は、脱落膜NK細胞上で報告されており、これは、公開されているアクセス可能なデータベース内の単一細胞RNAデータを分析することによって本明細書で確認された(図8)。
【0504】
実施例7:KIR3DL3は、HHLA2に対する免疫阻害性チェックポイント受容体であり、遮断抗体は、T細胞およびNK活性を増強する
KIR3DL3の細胞質ドメインは、1つのITIMモチーフを含有し、免疫阻害機能を有することが予測される。HHLA2/KIR3DL3相互作用の機能を評価するために、KIR3DL3を発現するJurkat T細胞、ならびにルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動するNFAT、AP-1およびNFkB応答要素を含有するIL-2プロモーターを、細胞表面抗CD3 scFVを単独でまたはHHLA2と組み合わせて安定に発現するCHO細胞と共培養した。可溶性抗CD28 mAbを添加して、強力な共刺激シグナルをもたらし、ルシフェラーゼ活性を評価した。予想通り、CD3シグナルは、T細胞活性化に必要とされ、CD28共刺激シグナルは、IL-2レポーター活性を有意に増加させた(図11A)。本明細書では、KIR3DL3を介したHHLA2媒介性シグナルが、IL-2レポーター活性によって測定した場合、T細胞活性の有意な低下をもたらしたことが観察された。これらの結果は、KIR3DL3が阻害性チェックポイント受容体であることを示す。
【0505】
HHLA2連結および抗CD3 mAb活性化後のTMIGD2シグナル伝達の効果を評価するために、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動するNFAT応答要素を発現するJurkat細胞においてTMIGD2を過剰発現させた。TMIGD2トランスフェクトJurkat細胞を、細胞表面抗CD3 scFVを単独で、またはHHLA2と組み合わせて安定に発現するCHO細胞と共培養すると、本発明者らは、HHLA2が、CD3シグナル伝達単独よりもT細胞活性化を増加させることを観察し(図12)、これは、TMIGD2の報告された共刺激活性と一致する。
【0506】
HHLA2/KIR3DL3相互作用を遮断する機能的結果を評価するために、受容体遮断および非遮断HHLA2およびKIR3DL3抗体の両方を、KIR3DL3 Jurkatレポーター遺伝子アッセイにおいて評価した。それらの受容体遮断活性と一致して、遮断HHLA2 mAb 2C4、2G2、および6F10は、IL-2レポーター活性を増強したが、弱い遮断剤6D10は増強しなかった(図11B)。同様に、KIR3DL3 mAb 1G7および2F11は、IL-2レポーター活性およびT細胞活性を、それらの受容体遮断活性と一致して増強したが、弱い遮断剤8F7は増強しなかった(図11Cおよび表5)。2F11 mAbは、1G7と比較して、IL-2レポーター活性のより高い倍率の誘導を示したが、1G7の結合親和性はより高かった。
【0507】
実施例8:KIR3DL3 mAbまたはHHLA2 mAbは、T細胞活性化を促進する
図13は、KIR3DL3 mAbが、抗CD3-scFVおよびHHLA2媒介性シグナルに応答して、Jurkat-KIR3DL3 T細胞におけるIL-2プロモーター駆動型ルシフェラーゼ発現を増強することを示す。CHO-抗CD3 scFv-HHLA2細胞またはCHO-抗CD3 scFV細胞を、わずか0.15の培地を含有する陰性対照として、ウェルA1を用いて、0.15mlの培地中で3.5×10の濃度で96ウェルプレートに播種した。細胞を、37℃、5%COで一晩インキュベートした。翌日、抗KIR3DL3または対照MOPC21抗体の8つの連続2倍希釈を適切なウェルに添加した。1つの列には、別の陰性対照として抗体を添加しなかった。抗体を添加した後、プレートを37℃、5%COで30分間インキュベートした。次に、16μg/mLの抗CD28抗体25μlを適切なウェルに添加した。陰性対照の列には、抗CD28を添加しなかった。KIR3DL3およびIL-2プロモーター駆動型ルシフェラーゼ遺伝子を発現するJurkat細胞を採取し、遠心沈殿させ、洗浄し、培地中に2×10/mlの濃度で再懸濁した。最後に、25ulの培地中の50,000個のJurkat細胞を各ウェル(陰性対照A1を除く)に添加し、ウェルを混合した。すべての添加物の最終体積は、100ulであった。プレートを37℃、5%COで6時間インキュベートした。6時間のインキュベーション時間後、BPS BioscienceのONE-Step(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムからの試薬を解凍し、アルミ箔被覆チューブ(試薬は光感受性である)中で、製造業者の説明書に従って適切な比で混合した。試薬混合物100μlを各ウェルに添加し、次いでプレートをオービタルシェーカー上で、室温で15分間揺動させた。プレートを揺動させた直後に、それらをルミノメーターで読み取った。
【0508】
図14は、HHLA2 mAbが、抗CD3-scFVおよびHHLA2媒介性シグナルに応答して、Jurkat-KIR3DL3 T細胞におけるIL-2プロモーター駆動型ルシフェラーゼ発現を増強することを示す。CHO-抗CD3 scFv-HHLA2細胞またはCHO-抗CD3 scFV細胞を、わずか0.15の培地を含有する陰性対照として、ウェルA1を用いて、0.15mlの培地中で3.5×10の濃度で96ウェルプレートに播種した。細胞を、37℃、5%COで一晩インキュベートした。翌日、抗HHLA2または対照MOPC21抗体の8つの連続2倍希釈を適切なウェルに添加した。1つの列には、別の陰性対照として抗体を添加しなかった。抗体を添加した後、プレートを37℃、5%COで30分間インキュベートした。次に、16μg/mLの抗CD28抗体25μlを適切なウェルに添加した。陰性対照の列には、抗CD28を添加しなかった。KIR3DL3およびIL-2プロモーター駆動型ルシフェラーゼ遺伝子を発現するJurkat細胞を採取し、遠心沈殿させ、洗浄し、培地中に2×10/mlの濃度で再懸濁した。最後に、25ulの培地中の50,000個のJurkat細胞を各ウェル(陰性対照A1を除く)に添加し、ウェルを混合した。すべての添加物の最終体積は、100ulであった。プレートを37℃、5%COで6時間インキュベートした。6時間のインキュベーション時間後、BPS BioscienceのONE-Step(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムからの試薬を解凍し、アルミ箔被覆チューブ(試薬は光感受性である)中で、製造業者の説明書に従って適切な比で混合した。試薬混合物100μlを各ウェルに添加し、次いでプレートをオービタルシェーカー上で、室温で15分間揺動させた。プレートを揺動させた直後に、それらをルミノメーターで読み取った。
【0509】
実施例9:HHLA2-KIR3DL3相互作用の遮断は、腫瘍細胞に対するCD19 CAR-T細胞毒性を増強する
図15Aは、KIR3DL3/CAR-19発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。KIR3DL3およびCD19 CAR(FMC63マウス抗CD19 scFvを含有する)をコードするDNAを、EF-1aプロモーター、GM-CSF由来のシグナルペプチド、ヒンジ領域、CD28およびCD3zeta活性化ドメイン由来の膜貫通および共刺激ドメインを含有する第2世代のCARカセットに挿入した。KIR3DL3 cDNAを、CARの後に挿入し、自己切断可能なT2Aリボソームスキッピング配列によって分離した。KIR3DL3/CD19 CAR DNAを第3世代のレンチウイルスベクターにサブクローニングして、PMC456発現プラスミドを生成した。HEK293細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクションキット(Takara、Mountain View,CA)を使用して、PMC456プラスミドおよびpPACKH1レンチベクターパッケージングミックスでトランスフェクトした。48時間後に細胞培養上清を採取し、110Kgで10分間の遠心分離によって細胞残屑を除去し、次にAIM V-AlbuMAX(登録商標)培地(Thermo Fisher)中に再懸濁し、アリコートし、-80℃で凍結させた。Lenti-X(商標)qRT-PCRキット(Takara)および7099HTサーマルサイクラー(Thermo Fisher)を使用して、ウイルス価を定量的RT-PCRによって決定した。
【0510】
図15Bは、KIR3DL3/CD19-CAR-T細胞の生成および増殖、ならびにKIR3DL3/CD19 CAR-T細胞(PMC456細胞)のFACSプロファイルを示す。PBMCをヒト末梢血バフィーコートから単離し、10%FBSおよび100IU/mlのIL-2を含有するAIM V(商標)培地中に1×10細胞/mlで懸濁した。T細胞をCD3/CD28 Dynabeads(商標)(Thermo Fisher)で一晩活性化し、次にDEAEデキストラン(5ug/ml)で処理し、24時間後および48時間後にKIR3DL3/CAR19レンチウイルスに感染させた(10のMOI)。細胞を8日間にわたって2~3日毎に計数し、IL-2を含有する新鮮な培地を補充して、細胞密度を1~3×10細胞/mlで維持した。10日目に、CAR-T細胞を、ビオチン化抗FMC63抗体でコーティングされた磁気ビーズに順次結合することによって単離した。10日目の細胞を、CAR-T細胞単離の前後に、抗KIR3DL3 mAb 1G7とビオチン化抗FMC63抗体との混合物で染色した。すすいだ後、細胞を、APCコンジュゲートヤギ抗マウスIgGとPEコンジュゲートストレプトアビジンとの混合物で染色した。細胞をすすぎ、フローサイトメトリーによって分析した。
【0511】
図15Cは、安定したHeLa-CD19およびHeLa-CD19+HHLA2発現腫瘍細胞の生成ならびにそれらのFACSプロファイルを示す。HeLa細胞を、ヒトCD19を発現するレンチウイルスベクターで形質導入して、HeLa-CD19細胞を生成した。別途、HeLa細胞を、ネオマイシン耐性遺伝子を含有するHHLA2をコードするプラスミドでトランスフェクトし、1mg/mlのG418を使用してネオマイシン耐性を選択した。次いで、これらの細胞を、ヒトCD19をコードするレンチウイルスで形質導入して、HeLa-CD19+HHLA2発現細胞を生成した。腫瘍細胞を、PEコンジュゲート抗HHLA2 6F10 mAb、抗CD19 mAb、またはアイソタイプ対照(マウスIgG1)mAbで染色した。細胞をすすぎ、フローサイトメトリーによって分析した。
【0512】
図15Dは、HHLA2 mAbを使用してHHLA2-KIR3DL3相互作用を遮断することで、HHLA2+CD19トランスフェクトHeLa腫瘍細胞に対するKIR3DL3 CD19-CAR-T細胞毒性が増強されることを示す。リアルタイム細胞分析(RTCA(登録商標))を使用して、濃縮されたKIR3DL3/CAR19T細胞の細胞溶解活性を測定した。付着したHeLa-CD19-HHLA2細胞を96ウェルE-プレート(登録商標)(Acea Biosciences)にウェル当たり1×10細胞で播種し、インピーダンスベースのxCELLigence(登録商標)システム(Acea Biosciences)を用いて培養下で一晩監視した。翌日、培地を取り除き、3×10または1×10のエフェクター細胞(KIR3DL3/CAR19 T細胞または非形質導入T細胞)、ならびに示したHHLA2 mAbまたはアイソタイプ対照を含有する培地と三連で交換した。E-プレート(登録商標)をRTCA(登録商標)システムで別の日に監視し、腫瘍細胞単層のインピーダンスを経時的にプロットした。細胞毒性パーセント(%)を、(エフェクター細胞なしの標的細胞のインピーダンス-エフェクター細胞ありの標的細胞のインピーダンス)/エフェクター細胞なしの標的細胞のインピーダンス×100として計算した。
【0513】
実施例10:HHLA2-KIR3DL3相互作用の遮断は、腫瘍細胞に対するNK細胞毒性を増強する
図16Aは、KIR3DL3発現プラスミドおよびレンチウイルス産生を示す。KIR3DL3 cDNAを第3世代のレンチウイルスベクターにサブクローニングして、PMC579発現プラスミドを生成した。プラスミドはまた、PGKプロモーター下でeGFP cDNAを含有した。レンチウイルスを前節に記載されるように調製し、ヒトNK細胞株NK-92を形質導入するために使用した。
【0514】
図16Bは、KIR3DL3形質導入NK92細胞の誘導を示す。300万個のNK92細胞を、10のMOIでKIR3DL3発現レンチウイルス(MNDU3プロモーターを含有するPMC579発現プラスミド)で形質導入し、20%FBSおよび50ng/mlのIL-2を有するRPMI培地中で、10日間培養下で増殖させ、その後、細胞の一部(1900万個)をGFP発現レベルによって選別した。これらの細胞を、20%FBSおよび50ng/mlのIL-2を有するRPMI培地中での培養下にさらに10日間戻した。
【0515】
図16Cは、HHLA2トランスフェクトK562およびHeLa腫瘍細胞の誘導を示す。K562細胞を、pEF-Puroベクター中の50ugのMlu I線形化HHLA2 cDNAで電気穿孔し(300ボルト、1600マイクロファラド)、ピューロマイシン耐性について選択し、PEコンジュゲートHHLA2 mab 6F10で染色し、選別し、単一細胞をクローニングした。HeLa腫瘍細胞を、HHLA2をコードするレンチウイルスで形質導入した。
【0516】
図17Aは、KIR3DL3-HHLA相互作用/経路によるNK92細胞毒性の阻害を示す。NK92親細胞またはKIR3DL3形質導入NK92細胞を、HeLa単独またはHeLa+HHLA2発現細胞に対するNK細胞毒性アッセイにおいて利用した。Acea xCelligence(登録商標)インピーダンスアッセイにおいて、0.5:1のエフェクター対標的(E/T)比でNK細胞を培養することによって、NK媒介性細胞死滅を測定した。標的細胞を96ウェルEプレート(登録商標)(20,000個のHeLa、HeLa-HHLA2)に添加し、インピーダンスを一晩監視する。翌日、培地を除去し、NK-92培地中のNK-KIR3DL3またはNK-NV(ウイルスベクターなし)細胞150ulを各ウェルに添加する。プレートを、インピーダンスの機会について一晩監視する。
【0517】
図17Bは、HHLA2 mAbおよびKIR3DL3 mAbによるNK92細胞毒性の増強を示す。HHLA2 mAb 2G2、2C4ならびにKIR3DL3 mAb 1C7および2F11を遮断することにより、HHLA2によるNK92細胞毒性の阻害が逆転する。非遮断HHLA2 mAb 6G8およびKIR3DL3 mAb 8F7は、HHLA2によるNK92細胞毒性の阻害を逆転しなかった。図17Cは、細胞毒性アッセイの概略図を示す。
【0518】
実施例11:HHLA2-KIR3DL3相互作用は、HHLA2またはKIR3DL3抗体によって可逆的であるNK細胞の細胞溶解活性を阻害する
NK細胞毒性に対するHHLA2-KIR3DL3相互作用の効果を評価するために、IL2を内因的に産生し、KIR3DL3を発現するNK細胞株、NK92-MIを使用した(図10B)。HHLA2発現がNK細胞毒性を阻害することを確認するために、まず、Raji細胞を操作して、β2-マイクログロブリン(B2M)のCRISPR媒介性欠失によってMHCクラスIの表面発現を排除し、それらをNK細胞の良好な標的とした。NK細胞は、標的細胞上にMHCクラスIが存在しないことによって活性化され、本明細書において、Raji-B2M KO細胞がNK92-MI細胞によって効率的に溶解されたことが確認された(図18)。Raji-B2M KO細胞を操作してHHLA2を発現させ、図19Aは、Raji-B2M KO細胞上でのHHLA2発現が、すべてのエフェクター対標的比でNK-92-MI細胞による細胞毒性を阻害することを示す。
【0519】
NK細胞毒性のHHLA2媒介性阻害に対するHHLA2またはKIR3DL3抗体の効果を評価するために、HHLA2-Raji-B2M KOモデルを、様々なE/T比ならびに一定濃度のKIR3DL3抗体である1G7および2F11で、NK92-MI細胞とインキュベートした。
KIR3DL3遮断mAb 1G7および2F11は、アイソタイプ対照と比較して、NK細胞毒性を増強した(図19B)。さらに、HHLA2遮断抗体2C4および2G2は、NK細胞毒性を増強した(図19C)。KIR3DL3:HHLA2相互作用の弱い遮断剤である、KIR3DL3抗体である8F7、およびHHLA2抗体である6D10は、細胞毒性を増強しなかった(図19Bおよび図19C)。
【0520】
NK細胞溶解活性を調節する際のKIR3DL3の役割を調べるために、CD107a脱顆粒アッセイを行った。NK92-MI細胞表面上でのCD107a発現(脱顆粒)によって測定されるように、Raji B2M KO細胞上でのHHLA2発現は、NK92-MI脱顆粒を阻害し(図19D)、1G7 mAbでのKIR3DL3の遮断は、これらのNK細胞の脱顆粒の増強をもたらす(図19E)。
【0521】
実施例12:HHLA2はRCC腫瘍において発現され、PD-L1発現とは異なる
汎がんトランスクリプトーム分析は、HHLA2が複数の腫瘍型において発現され、腎細胞がん(RCC)が正常組織と比較して最も高いレベルの発現を示すことを実証している。TCGAにおけるB7ファミリーメンバーのmRNA発現の分析において、本明細書では、HHLA2が、正常な腎組織と比較して、ccRCCにおける最も高度に上方制御されたB7ファミリーメンバーであることが見出された(図20)。PD-L1、PD-L2、B7-H3、およびVISTA転写産物は、正常な腎臓と比較してccRCCにおいてわずかに高いだけであり、B7-H4転写産物は、ccRCCにおいて顕著に低下した。予想通り、CD8転写産物は、正常な腎臓と比較してccRCCにおいて上方制御され、ccRCCにおける高い免疫浸潤を反映した。特に腫瘍内では、PD-L1発現とHHLA2発現との間に負の関連性があった。
【0522】
HHLA2は、免疫刺激機能および阻害機能の両方を有するB7ファミリーメンバーである。TMIGD2は、以前に、T細胞およびNK細胞の両方におけるHHLA2に対する免疫刺激受容体として特徴付けられていたが、HHLA2がTおよびNKを阻害し得る機構は知られていなかった(図21Aおよび図21B)。本明細書において、この効果を媒介し得る阻害性受容体の存在が仮定された。細胞表面受容体のアレイ上の可溶性組換えHHLA2-mIgG2aを使用して、さらなるHHLA2受容体についてスクリーニングを本明細書で実施し、KIR3DL3をHHLA2に対する新規の受容体として同定した。KIR3DL3は、受容体のKIRファミリーのメンバーであるが、これまでそのリガンドは知られていなかった。HHLA2-KIR3DL3相互作用が、T細胞およびNK細胞において免疫阻害性であること、ならびにこの相互作用を遮断する抗体が免疫阻害を逆転させることが本明細書で実証されている。RCC患者の腫瘍におけるHHLA2発現についての分析は、PD-L1とほぼ重複しない発現パターンを示す。まとめると、これらの知見は、KIR3DL3/HHLA2相互作用の遮断が、がん免疫療法のための新規なアプローチを表す可能性があることを示している。
【0523】
キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)は、NK細胞およびT細胞によるそれらの発現を通じて、先天性免疫応答および適応性免疫応答の両方に寄与する。HLAクラスIのリガンドは、13個のKIRのうちの9個について同定されているが、KIR3DL3に対するHLAリガンドは同定されていない。KIRファミリーのメンバーは、2つまたは3つの細胞外Igドメイン、および免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を含有する短い(活性化DS形態)または長い細胞内ドメイン(阻害性DL形態)のいずれかを有する類似のタンパク質構造を有する。KIR3DL3遺伝子は、3つの細胞外Igドメインをコードし、1つのITIMのみを有し、Igドメインと膜貫通領域との間のステムをコードするエクソンを欠いている。KIR3DL3の構造は阻害性受容体を示唆するが、KIR3DL3の機能は実証されておらず、同族リガンドは同定されていない。
【0524】
KIR遺伝子ファミリーは、阻害性または活性化受容体のいずれかをコードする13個の遺伝子からなる。個々のKIR遺伝子の発現は、所与のKIRレパートリーを発現するNK細胞およびT細胞の一部のみでクローン的に分布している。個体では、13個のKIR遺伝子は、それらの存在およびコピー数で変化するが、KIR3DL3は、すべての個体に存在するため、KIRファミリーでは固有である。KIR3DL3プロモーターは、KIRプロモーターの中で最も強いが、一般にメチル化によってサイレンシングされる。KIR3DL3は高度に多型であるが、157個の多型残基の大部分は、KIR3DL3構造モデルに基づいて、他のKIRの既知のHLAリガンド結合部位とは異なる部位にマッピングする。これは、これらの多型がHHLA2リガンド結合に影響を及ぼす可能性が低いことを示す。
【0525】
KIR3DL3は、胎盤脱落膜NK細胞および活性化NK細胞を除いて、正常組織において発現されることはほとんどない。HHLA2は、胎盤栄養芽層において高度に発現される。この発現パターンは、胎盤栄養芽層および他の免疫特権部位上のPD-L1発現と類似しており、免疫抑制における主要な天然の役割と一致する。HHLA2がKIR3DL3に対するリガンドであり、NK細胞およびT細胞における阻害性受容体として機能することが本明細書で初めて実証された。
【0526】
HHLA2/KIR3DL3相互作用が、T細胞におけるCD28依存性CD3シグナル伝達を阻害するという本観察と一致して、Reiderらはまた、HHLA2-Fcが、CD3およびCD28シグナル伝達ならびにERK2チロシンリン酸化によって媒介されるT細胞活性化を阻害することを示した。これらの観察は、PD-L1/PD-1相互作用が、チロシンリン酸化およびMEK-1/ERK2活性化に依存するCD3シグナル伝達経路を阻害することを示す結果と同様である。PD-L1によるCD3シグナル伝達の阻害は、PD-1 ITSMモチーフのチロシンリン酸化、ならびにTCRおよびCD28経路の近位シグナル伝達分子を脱リン酸化するSHP-2ホスファターゼの動員によって行われる。以上の結果をまとめると、PD-1およびKIR3DL3は、T細胞の活性化後に類似の経路を共有することができ、両方の経路の阻害は、付加的である可能性があることが示される。
【0527】
T細胞上の阻害性免疫受容体の発現は、活性化とともに動的に調節される。HHLA2:KIR3DL3経路は、B7:CTLA-4経路と並行である。休止T細胞は、CD28(CD80/86について)およびTMIGD2(HHLA2について)等の免疫刺激性受容体を発現する。TMIGD2は、主にナイーブT細胞上で発現され、T細胞活性化時に下方制御され、記憶CD4+T細胞の22%および記憶CD8+T細胞の29%のみで発現される。同様に、CD28は、抗原を経験したヒトCD8 T細胞の50%のみで発現される。活性化すると、T細胞は、本明細書に提示されるCTLA-4、PD-1、およびKIR3DL3を含む阻害性受容体の発現を上方制御する。本発明者らは、KIR3DL3発現が、非活性化T細胞において稀であり、抗CD3およびCD28 mAbで刺激した後、CD4およびCD8 T細胞の適度な亜集団において誘導されることを示す。T細胞活性化後の初期PD-1発現とは異なり、KIR3DL3は後で発現され、T細胞活性化後21日目頃にピークを迎える。この調節パターンにより、新抗原を経験したT細胞が、活性化後の異なる時点で優位な免疫阻害性受容体を発現することが予測される。同族リガンド(B7またはHHLA2)が存在する場合、T細胞阻害は優位な転帰となり得る。
【0528】
RCCは悪性腫瘍であり、最近、大きく治療的に進歩している。RCCは高度に免疫浸潤されており、歴史的には免疫応答性であった。IL-2療法は、1992年以来、患者にとっての免疫選択肢である。より最近では、PD-1経路の阻害剤は、単剤療法としての活性を示すだけでなく、VEGFR TKI療法またはCTLA-4と組み合わせても承認されている。しかしながら、療法に対する耐性が多くの患者で見られ、新しい治療の選択肢が必要とされている。
【0529】
HHLA2発現およびPD-L1発現が、RCCにおいて重複しないことが本明細書で実証される。これは、腫瘍試料の64%がHHLA2陽性であり、それらのうちの67%がPD-L1陰性であった、非小細胞肺がん(NSCLC)に関する以前の報告と一致する。NSCLCにおけるこの研究は、本明細書に提示されるccRCCにおけるHHLA2およびPD-L1発現研究とともに、HHLA2/KIR3DL3免疫チェックポイント経路を単独で、またはHHLA2阻害経路が関与しているこれらのがんおよび他のがんにおけるPD-1阻害剤と組み合わせて標的化するための根拠を提供する。
【0530】
この研究の主要な成果の1つは、KIR3DL3を、HHLA2に対する阻害性受容体として特定し、T細胞およびNK細胞におけるHHLA2-KIR3DL3媒介性阻害を逆転させるチェックポイント阻害剤抗体を生成することである。この研究の前に、TMIGD2およびKIR3DL3へのHHLA2の結合が、1つの共通の重複エピトープによって、または異なる相互作用部位を介して生じたかどうかは知られていなかった。本知見は、ほとんどのHHLA2抗体が、TIMGD2およびKIR3DL3の両方へのHHLA2の遮断結合を生じたことを示す。これらの2つの受容体相互作用のうちの1つのみを遮断する抗体は稀であり、したがって、TMIGD2およびKIR3DL3上のHHLA2結合部位は、重複しているが同一ではないように見える。KIR3DL3-HHLA2相互作用を遮断するが、TMIGD2刺激性シグナルを保存するHHLA2抗体は、治療開発のための1つの選択肢であることが本明細書で実証される。加えて、KIR3DL3-HHLA2相互作用を選択的に遮断するKIR3DL3抗体も、治療開発のための魅力的な候補である。
【0531】
多くの免疫併用は、前臨床モデルで試験されており、複数の候補が臨床試験に進んでいる。ほとんどは、まだ際立った臨床活性を示していない。この限定された有効性についての1つの仮説は、PD-L1と同時標的化される多くの経路が、発現の上方制御についての機構を共有することである。例えば、がんにおけるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害は興味深いが、IDO-PD-1併用の臨床試験は、有望な結果をもたらさなかった。IFN-γは、IDOおよびPD-L1発現の両方を上方制御する。HHLA2の発現は、IFN-γによって制御されず、したがって、腫瘍免疫回避の独立して制御された機構を表すことが本明細書で実証される。加えて、HHLA2免疫シグナル伝達は、T細胞だけではなく、NK細胞においても重要であり、KIR3DL3を介したHHLA2シグナル伝達の阻害は、先天性免疫応答および適応性免疫応答の両方を媒介する免疫微小環境における多様なリンパ球のセットに影響を及ぼし得る。腫瘍において、HHLA2およびPD-L1発現は、重複せず、独立して制御されるように見える。
【0532】
HHLA2-KIR3DL3-TMIGD2経路の受容体およびリガンドの両方は、霊長類において発現され、B7およびCD28ファミリー内で特有である齧歯類を含む複数の他の哺乳動物には見られない。したがって、この経路の機能的研究は、ヒト細胞株および初代免疫細胞を使用するインビトロモデルに限定される。この経路のインビボでの役割を評価するために、ヒト化モデルを開発する必要がある。受容体およびリガンドの両方がマウスオルソログを有しないため、ゲノム調節領域および完全遺伝子を含むトリプルノックインアプローチが必要であろう。
【0533】
PD-1経路の免疫チェックポイント阻害は、現在、がんの免疫療法の基礎となっている。PD-1阻害の成功にもかかわらず、多くの患者が耐性を発現し、新規で非冗長の免疫阻害経路の同定がこの分野における重要な必要性である。免疫阻害および刺激経路のバランスを阻害から離れさせることにより、抗腫瘍免疫応答を最適化することができる。要約すると、KIR3DL3は、本明細書においてHHLA2に対する免疫阻害性受容体として同定される。また、免疫阻害活性を特異的に遮断するが、TMIGD2の共刺激活性を免れるHHLA2およびKIR3DL3抗体も本明細書で開発される(図21Aおよび図21B)。HHLA2経路阻害の安全性および予備的有効性を試験する第I相臨床試験が現在開発されている。
【0534】
実施例13:KIR3DL3×PD-1 mAb IgG-scFV二重特異性抗体の誘導
二重特異性抗体を構築するために、KIR3DL3 mAb 574.2.2F11(2F11と称される)およびPD-1 mAb EH13.2A11(EH13と称される)マウスハイブリドーマクローンを選択した。2F11およびEH13クローンを、標的に対するそれらの高い親和性およびT細胞におけるチェックポイント阻害に対する効力に基づいて選択した。第1のステップとして、2F11ならびにEH13 VHおよびVL遺伝子を、ヒトIgG4またはscFv抗体のいずれかとして発現させ、表6の方法に記載されるOctet結合アッセイにおいて、それぞれ、それらの抗原KIR3DL3およびPD-1への結合について試験した。結合親和性を、それぞれの親ハイブリドーマクローンと比較した。表6および図23に示すように、KIR3DL3 mAb 2F11ヒトIgG4およびscFVフォーマットについてのKDは、対照親ハイブリドーマクローンの2~3倍の範囲内であった(0.29nM~0.51nM)。PD-1 mAb EH13ヒトIgG4は、対照ハイブリドーマ(6.9nM~7.1nM)と比較して1~2倍の範囲内で同様の結合を示した。しかしながら、EH13 scFVは、親対照ハイブリドーマと比較して4~5倍低い親和性を示した(31.6nM対6.88nM)。
【0535】
これらの結果に基づいて、PD-1 mAb EH13ヒトIgG4およびKIR3DL3 mAb 2F11 scFVから構成される二重特異性抗体フォーマットを、二重特異性抗体の構築のために選択した。
【0536】
PD-1およびKIR3DL3 IgG4、scFVおよび二重特異性抗体についてのアミノ酸配列を、それぞれ、表7、8、および9に示す。
【0537】
KIR3DL3およびPD-1の両方を標的とする薬剤を使用して、免疫応答を調節し、かつ/またはがんを治療することができる。例えば、KIR3DL3×PD-1二重特異性抗体は、腫瘍におけるT細胞およびNK細胞を活性化するチェックポイント免疫療法である。いくつかの場合において、KIR3DL3×PD-1二重特異性抗体は、PD-1もしくはPD-L1、または他のチェックポイント免疫療法と相加的または相乗的である。さらに、腫瘍におけるHHLA2またはKIR3DL3の発現は、KIR3DL3 mAbおよび/またはKIR3DL3×PD-1二重特異性抗体チェックポイント遮断に対する応答性の有用なバイオマーカーである。
【表5】
【0538】
表5において、HHLA2またはKIR3DL3トランスフェクト300.19細胞へのHHLA2(上)またはKIR3DL3(下)mAbの結合をEC50値で示す。HHLA2およびKIR3DL3 mAbによるKIR3DL3およびTMIGD2トランスフェクト細胞へのHHLA2-mIgG2a結合の遮断をIC50値で示す。
【表6】
【表7】
【表8】
【0539】
いくつかの実施形態では、重鎖/Fc構築物は、Cai et al.(2011)Biotechnol Bioeng,108(2):404-12によって参照されるように、C末端リジンを除去して、より均質な生成物を作製するように設計される。表8に示す配列は、末端リジンが除去されている配列である。
【0540】
いくつかの実施形態では、配列は、哺乳類発現のためにコドン最適化されている。
【0541】
いくつかの実施形態では、列記された要素およびタグを有する遺伝子挿入物は、発現のための最終構築物に含まれる。いくつかの実施形態では、完全な挿入物は、高発現哺乳類ベクターにクローニングされる。
【表9】
【0542】
いくつかの実施形態では、重鎖/Fc構築物は、Cai et al.(2011)Biotechnol Bioeng,108(2):404-12によって参照されるように、C末端リジンを除去して、より均質な生成物を作製するように設計される。表9に示す配列は、末端リジンが除去されている配列である。
【0543】
いくつかの実施形態では、配列は、哺乳類発現のためにコドン最適化されている。表9の配列は、以前にコドンを最適化し、SR-18230において構築されている。
【0544】
いくつかの実施形態では、列記された要素およびタグを有する遺伝子挿入物は、発現のための最終構築物に含まれる。いくつかの実施形態では、完全な挿入物は、高発現哺乳類ベクターにクローニングされる。
【0545】
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【0546】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が各々参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書のいずれの定義も含む本出願が支配する。
【0547】
The Institute for Genomic Research(TIGR)のワールドワイドウェブtigr.orgおよび/またはNational Center for Biotechnology Information(NCBI)のワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.govによって管理されているもの等の公開データベースのエントリと相関する受入番号を参照する任意のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0548】
等価物
当業者であれば、通例の実験のみを使用して、本明細書に記載の本開示によって包含される特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確定することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるよう意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図20
図21A
図21B
図22
図23
【配列表】
2022552153000001.app
【国際調査報告】