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特表2022-552157一定のアノードインピーダンスを備えたマイクロ波マグネトロンとそれを用いたシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】一定のアノードインピーダンスを備えたマイクロ波マグネトロンとそれを用いたシステム
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/34 20060101AFI20221208BHJP
   H01J 23/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01J23/34 B
H01J23/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520596
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 US2020042451
(87)【国際公開番号】W WO2021066925
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】16/593,942
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ブラギロリ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・バロッキ
(57)【要約】
マイクロ波マグネトロンは、電子を放出するためのカソード、フィラメント電流を受け取ってカソードを加熱し、カソードが電子を放出することを可能にするためのフィラメント、及び電子の流れに影響を与えるためにアノード電力を印加できるアノードを含む。アノード電力入力は、アノードに印加されるアノード電力を受け取り、アノード電力は、アノード電流、アノード電圧、及びアノードインピーダンスによって特徴付けられ、アノードインピーダンスは、アノード電圧とアノード電流の商である。電磁石電力入力は、電磁石電力を受け取り、電磁石電力を電磁石に適用して、磁場の強度を制御し、電磁石電力は、電磁石電流によって特徴付けられる。コントローラはマグネトロンのパラメータの少なくとも1つを調整して、アノードインピーダンスを一定に保ちながら、電子の流れに影響を与える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波マグネトロンであって、
電子を放出するためのカソードと、
フィラメント電流を受け取ってカソードを加熱し、カソードが電子を放出することを可能にするためのフィラメントと、
電子の流れに影響を与えるためにアノード電力を印加できるアノードと、
前記アノードに印加されるアノード電力を受け取るためのアノード電力入力であって、前記アノード電力は、アノード電流、アノード電圧、及びアノードインピーダンスによって特徴付けられ、前記アノードインピーダンスは、アノード電圧とアノード電流の商である、アノード電力入力と、
電子が流れる磁場を提供するための電磁石と、
電磁石電力を受け取り、前記電磁石電力を前記電磁石に適用して、前記磁場の強度を制御するための電磁石電力入力であって、前記電磁石電力が電磁石電流によって特徴付けられる、磁石電力入力と、
マイクロ波マグネトロンのパラメータを制御するためのコントローラであって、前記コントローラはマグネトロンのパラメータの少なくとも1つを調整して、前記アノードインピーダンスを一定に保ちながら、電子の流れに影響を与える、コントローラと
を含む、マイクロ波マグネトロン。
【請求項2】
前記コントローラによって制御されるマイクロ波マグネトロンのパラメータは、前記アノード電流、前記フィラメント電流、及び前記電磁石電流を含む、請求項1に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項3】
前記コントローラはマイクロ波マグネトロンのパラメータを監視する、請求項1に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項4】
前記コントローラは、マイクロ波マグネトロンの監視されたパラメータの少なくとも1つに基づいてアラームを発するように適合されている、請求項3に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項5】
前記コントローラはアノード電圧を監視する、請求項1に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項6】
前記コントローラは、監視されたアノード電圧に基づいてアラームを発するように適合されている、請求項3に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項7】
前記コントローラと前記フィラメントとの間にフィラメント制御モジュールをさらに含み、前記フィラメント制御モジュールはフィラメント電流監視信号を生成し、前記フィラメント電流監視信号を前記コントローラに転送し、前記フィラメント制御モジュールは前記コントローラからフィラメント電流設定信号を受信する、請求項1に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項8】
前記フィラメント制御モジュールと前記フィラメントとの間にフィラメントトランスをさらに含む、請求項7に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項9】
前記コントローラと前記電磁石との間に電磁石制御モジュールをさらに含み、前記電磁石制御モジュールは、電磁石電流監視信号を生成し、前記電磁石電流監視信号を前記コントローラに転送し、前記電磁石制御モジュールは、前記コントローラから電磁石電流設定信号を受信する、請求項1に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項10】
前記マイクロ波マグネトロンから出力マイクロ波エネルギーを提供するためのマイクロ波出力をさらに含む、請求項1に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項11】
前記マイクロ波出力は、基板を処理するためのシステムに接続可能である、請求項10に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項12】
前記システムはプラズマ生成システムである、請求項12に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項13】
前記システムは化学蒸着(CVD)システムである、請求項12に記載のマイクロ波マグネトロン。
【請求項14】
前記システムは合成ダイヤモンド成長の化学蒸着(CVD)システムである、請求項12に記載のマイクロ波マグネトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月4日に出願された、「一定のアノードインピーダンスを備えたマイクロ波マグネトロンとそれを用いたシステム」と題される米国非仮出願第16/593,942号の優先権を主張し、その内容は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野
本開示は、マイクロ波マグネトロン及びマイクロ波マグネトロンを用いたシステム、特に、改善されたマグネトロン性能及び信頼性を提供するためにアノードインピーダンスが制御されるマイクロ波マグネトロン及びマイクロ波マグネトロンを用いたシステムに関する。
【0003】
2.関連技術の検討
マグネトロンは、アノードに提供された電力をマイクロ波放射に変換することによってマイクロ波エネルギーを生成するデバイスである。それらは本質的に真空ダイオードであり、垂直磁場に浸されたカソードの周りの円形の共振空洞で構成されている。この磁場は、電子の動きを直線経路から曲線経路に変える力をもたらす。マグネトロンは、一連の開いた金属キャビティ、すなわち、キャビティ共振器を通過するこの電子の流れと磁場との相互作用を使用してマイクロ波を生成する。電子はこれらのキャビティの開口部を通過し、電波を内部で振動させる。生成されるマイクロ波の周波数、すなわち、共振周波数は、キャビティの物理的寸法によって決定される。マグネトロンは、真空管に供給された直流電気から高電力マイクロ波出力信号を生成する。
【0004】
マグネトロンは、マイクロ波放射が使用される多くの用途で使用される。例えば、連続波(continuous wave、CW)マグネトロンの最も一般的な商業用途は電子レンジである。マグネトロンの工業用途は、プラズマ生成の分野にある。プラズマ発生器では、マグネトロンを使用して、プラズマキャビティにマイクロ波励起エネルギーを提供し、プラズマの生成を点火及び維持することができる。マグネトロンを用いたプラズマ発生器には、例えば、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)などの半導体デバイス製造プロセスを含む多くの用途がある。CVDは、合成ダイヤモンドの成長などの他のプロセスでも使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマを使用するプロセスの多くは、非常に複雑で時間がかかる可能性がある。例えば、CVD合成ダイヤモンド成長プロセスは、複数日にわたって継続的に拡張でき、プロセスを中断することなく、合成ダイヤモンドを層ごとにゆっくりと成長させる。この長いプロセスでは、通常、プラズマ生成ステップの複雑なレシピが実行される。これらの複数のステップは、プラズマ生成の調整を必要とする場合があり、それは今度、マグネトロンによって生成されるマイクロ波プラズマ信号の調整を必要とする場合がある。例えば、プラズマの点火は、点火後にプラズマを一定レベルに維持するのに必要とされるよりも、マイクロ波信号においてより高い電力レベルを必要とすることはよく知られている。したがって、プラズマ点火と持続プラズマ生成との間で、マグネトロンの1つ又は複数のパラメータの調整が必要である。同様に、プロセス中に必要なプラズマの量も調整が必要な場合があり、これにより、プロセス中にマグネトロンを調整する必要も生じる。
【0006】
マグネトロンが、シャットダウンすることによって、又はマイクロ波出力機能の変化を予期せず経験することによってなど、安定せずに動作する必要がある場合、プラズマ生成の中断又は変化が発生する可能性があり、これにより、プロセス全体、例えば、CVD合成ダイヤモンドの成長が中断される可能性がある。これにより、中断された製品のバッチを廃棄し、プロセスを最初からやり直す必要があるため、時間と製品の製造に非常にコストのかかる損失が発生する可能性がある。したがって、プロセス中に複数のパラメータを調整した場合でも、マグネトロンを非常に高いレベルの安定性と信頼性で動作させることが非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、マイクロ波マグネトロンが提供される。マイクロ波マグネトロンは、電子を放出するためのカソード、フィラメント電流を受け取ってカソードを加熱し、カソードが電子を放出することを可能にするためのフィラメント、及び電子の流れに影響を与えるためにアノード電力を印加できるアノードを含む。アノード電力入力は、アノードに印加されるアノード電力を受け取り、アノード電力は、アノード電流、アノード電圧、及びアノードインピーダンスによって特徴付けられ、アノードインピーダンスは、アノード電圧とアノード電流の商である。電磁石は、電子が流れる磁場を提供する。電磁石電力入力は、電磁石電力を受け取り、電磁石電力を電磁石に適用して、磁場の強度を制御し、電磁石電力は、電磁石電流によって特徴付けられる。コントローラはマイクロ波マグネトロンのパラメータを制御し、コントローラはマグネトロンのパラメータの少なくとも1つを調整して、アノードインピーダンスを一定に保ちながら、電子の流れに影響を与える。
【0008】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラによって制御されるマイクロ波マグネトロンのパラメータは、アノード電流、フィラメント電流、及び電磁石電流を含む。いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、マイクロ波マグネトロンのパラメータを監視する。いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、マイクロ波マグネトロンの監視されたパラメータの少なくとも1つに基づいてアラームを発するように適合されている。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、アノード電圧を監視する。いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、監視されたアノード電圧に基づいてアラームを発するように適合されている。
【0010】
いくつかの例示的な実施形態では、マイクロ波マグネトロンは、コントローラとフィラメントとの間にフィラメント制御モジュールをさらに含み、フィラメント制御モジュールはフィラメント電流監視信号を生成し、フィラメント電流監視信号をコントローラに転送し、フィラメント制御モジュールはコントローラからフィラメント電流設定信号を受信する。いくつかの例示的な実施形態では、マイクロ波マグネトロンは、フィラメント制御モジュールとフィラメントとの間にフィラメントトランスをさらに含む。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態では、マイクロ波マグネトロンは、コントローラと電磁石との間に電磁石制御モジュールをさらに含み、電磁石制御モジュールは、電磁石電流監視信号を生成し、電磁石電流監視信号をコントローラに転送し、電磁石制御モジュールは、コントローラから電磁石電流設定信号を受信する。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態では、マイクロ波マグネトロンは、マイクロ波マグネトロンから出力マイクロ波エネルギーを提供するためのマイクロ波出力をさらに含む。いくつかの例示的な実施形態では、マイクロ波出力は、基板を処理するためのシステムに接続可能である。いくつかの例示的な実施形態では、システムはプラズマ生成システムである。いくつかの例示的な実施形態では、システムは、化学蒸着(CVD)システムである。いくつかの例示的な実施形態では、システムは、合成ダイヤモンド成長の化学蒸着(CVD)システムである。
【0013】
本開示は、本開示の実施形態の非限定的な例として、注記された複数の図面を参照して、以下の詳細な説明においてさらに説明される。同様の参照番号は、図面のいくつかのビューを通して、同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1A及び1Bは、いくつかの例示的な実施形態に従って使用される2つのマグネトロンの概略図を含む。
図1B図1A及び1Bは、いくつかの例示的な実施形態に従って使用される2つのマグネトロンの概略図を含む。
図2図2は、図1に示されるアノードの概略LC回路等価図を含む。
図3図3は、図1に示されているカソードとアノードとの間の電子雲の概略図である。
図4A図4Aは、典型的な従来のマグネトロンのアノード電流に対する出力電力及びアノード電圧を示す曲線である。
図4B図4Bは、図4Aのマグネトロンの動作に関連する特定のパラメータを示す概略図を含む。
図5図5は、典型的な従来のマグネトロンの磁場に対する出力電力を示す曲線である。
図6A図6Aは、いくつかの例示的な実施形態による、マグネトロンを用いたシステムの概略ブロック図を含む。
図6B図6Bは、いくつかの例示的な実施形態による、1つ又は複数の電気キャビネットに取り付けられた図6Bのシステムの物理的構成の概略正面図を含む。
図7図7は、いくつかの例示的な実施形態によるマグネトロンのパラメータ曲線を含むグラフである。
図8A図8A及び8Bは、いくつかの例示的な実施形態による、アノード電圧とマグネトロンの磁場との間の関係を示す曲線を有するグラフを含む。
図8B図8A及び8Bは、いくつかの例示的な実施形態による、アノード電圧とマグネトロンの磁場との間の関係を示す曲線を有するグラフを含む。
図9A図9A及び9Cは、いくつかの例示的な実施形態による、制御モジュール202の概略図を含む。
図9B図9Bは、いくつかの例示的な実施形態による、図9A及び9Cに示される回路の動作に関連する信号の概略波形図を含む。
図9C図9A及び9Cは、いくつかの例示的な実施形態による、制御モジュール202の概略図を含む。
図10図10は、従来のマグネトロン及び本開示のマグネトロンの、マグネトロン出力電力に対するアノードインピーダンスを示すグラフである。
図11図11は、いくつかの例示的な実施形態による、図6A及び6Bに示されるシステムの概略機能ブロック図であり、システムの追加の機能の詳細を示す。
図12図12は、いくつかの例示的な実施形態による、本開示のマグネトロン100を用いたシステム500の概略図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来のマグネトロンの周知の構造及び機能の説明については、「Handbook of Microwave Technology」、第2章「Magnetrons」、Wayne Love著、T.Koryu Ishii編、Academic Press、Inc.出版(1995年)を参照されたい。図1A及び1Bは、いくつかの例示的な実施形態に従って使用される、図1A及び1Bにおいてそれぞれ参照番号100A、100Bで示される2つの例示的なマグネトロン100の概略図を含む。本開示のマグネトロンは、本明細書では参照番号100によって非特定的に言及されていることに留意されたい。図1及び2を参照すると、マグネトロン100A、100Bは、カソード104を取り囲むアノード102及び永久磁石106を含む。マグネトロン100A、100Bによって生成されたマイクロ波放射は、出力アンテナ112で導波管103に放出され、これは、マグネトロン100A、100Bから出力されたマイクロ波エネルギーをシステムに結合するための出力フランジ105を含む。典型的には、マグネトロン100A、100Bは、熱除去のための複数の冷却フィン108を含む。マグネトロン100A、100Bは、交差場真空管であり、これは、電子の流れ、電場、及び磁場が相互に垂直であることを意味する。
【0016】
カソード104は電子源であり、アノード102に対して負の電位を有する。カソード104は、タングステンなどの導電性金属製であり、らせん状に巻かれている。カソード104は、(i)電流をカソード104に流すことによるカソード104の直接加熱、又は(ii)発振マグネトロン内の電子がカソード104に戻り、熱を発生させることのいずれかにより加熱されて、電子を放出する。
【0017】
図2は、アノード102の概略LC回路等価図を含む。図2を参照すると、アノード102は、銅などの導電性金属製である。それは、カソード104の周りに配置された一組の共振キャビティ116を含み、並列LC回路として特徴付けられ、各キャビティ116は、インダクタンスL及び静電容量Cによって特徴付けられる。各キャビティ116は、一対のベーン118の間に配置される。キャビティ116がPIモード(「PI」は何を表すか)で動作しているとき、LC回路は、発振の共振周波数を有し、これは、他の望ましくない発振モードがあるが、最も効率的な動作モードである。マグネトロン100からの出力は、キャビティ116内のマイクロ波エネルギーをアンテナ112に結合することによって達成される。
【0018】
磁場がない場合、マグネトロン100はダイオードとして機能し、カソード104から放出された電子は、カソード104とアノード102の間の電場によって電子に加えられた力の下で、アノード102への直線経路で半径方向外向きに移動する。永久磁石106によって提供される、電場に垂直である磁場の存在下では、電場力に加えて電子に力がかかり、この磁場は電子の経路を妨げる。磁場があると、電子の経路は円形になる。ハルカットオフ(Hull cutoff)電圧を超えるアノード電圧で、磁場及び電場の存在下で、電子はアノード102に到達し、電流が流れる。この電圧を下回ると、電流は流れない。ハルカットオフ電圧は、磁場、電位、アノード102の半径、及びカソード104の半径に依存する。
【0019】
PIモード電磁場の存在下では、正と負の電圧が交互にベーン118に存在する。電子がカソードを離れて加速場に入ると、電子は加速し、電磁場からエネルギーを抽出する。これらのより高いエネルギーの電子は、磁場の影響を大きく受け、カソード104に戻され、カソード104の加熱を引き起こす。アノード102の電圧が上昇するにつれて、カソードの温度を一定に保つために、カソード104のフィラメント電圧を低下させる必要がある。減速場から電磁場に入る電子は、DCエネルギーの一部を電磁場に放出する。電子の角速度が、それが常に減速場にあるようなものである場合、エネルギーのほとんどすべてが電磁場に放出され、アノード102に衝突する。
【0020】
加速場ではなく減速場にある電子の領域があるため、また、これらの領域は共振キャビティ周波数に比例する角周波数で移動するため、図3に示されるように、スポークを備えた電子の雲113があり、これは、カソード104とアノード102との間の電子「雲」の概略図であり、スポーク115を示している。スポーク115が減速RF場内を移動すると、負の電位のベーンに近い電子が減速され、正の電位のベーンに近い電子が加速される。これにより、スポーク内の電子がさらに束になる。各スポーク内の電子の束は、スポーク115を等間隔に保つ傾向がある。アノード102に到達する電子は、ほとんどエネルギーを放出したものである。
【0021】
磁場は、電子雲内の電子の循環経路を引き起こす。相互作用領域では、それは、カソードの軸に対して可能な限り平行に近くなければならない。また、出力電力を一定に保つために、フィールドが時間とともに変化しないことも重要である。磁場は、永久磁石106又は電磁石から形成することができる。
【0022】
通常、動作中にマグネトロンの出力電力を調整する必要がある。負荷に適用される電力を変更するには、いくつかの方法が一般的に使用される。これらの方法には、以下のものが含まれる:(i)マグネトロンの出力電力のパルス化、(ii)アノード電流の変更、(iii)磁場の変更、及び(iv)負荷に供給されるマイクロ波エネルギーの調整。項目(ii)を参照すると、入力電力が減少すると、出力電力が変化する。マグネトロンの出力電力は、アノード電流に正比例する。アノード電圧が最初に増加したため、アノード電流はほとんどない。磁場によって部分的に決定される電圧で、電流が流れ始め、マグネトロンが発振し始める。ハートリー(Hartree)電圧と呼ばれるこの電圧は、磁場、アノード半径、カソード半径、及び波長に依存する。発振領域では、アノード電流の大きな変化がアノード電圧の小さな変化をもたらす。ほとんどの電源装置は、出力電力を維持するために電流が安定化されている。図4Aは、典型的な従来のマグネトロンのアノード電流に対する出力電力及びアノード電圧を示す曲線である。図4Bは、図4Aのマグネトロンの動作に関連する特定のパラメータを示す概略図を含む。図4A及び4を参照すると、図4Aの曲線から、アノード電流Iaが減少するにつれてフィラメント電圧を増加させなければならないことに留意されたい。フィラメント電流Ifは、フィラメントを暖めてフィラメントが電子を放出できるようにする、フィラメントを流れる電流であることに留意されたい。本開示の文脈におけるフィラメント電流Ifの典型的な値は、12ボルトで115アンペアである。本開示のマグネトロン100では、フィラメントトランスT1のフィラメントタップの1つは、カソードの負の高電圧にも接続されている。アノード電流Iaは、アノード電圧VaでのDC電流であり、これは、本開示の文脈において、4~5アンペアの典型的な値を有する。フィラメントはカソードと同じであるが、フィラメント電流Ifはカソード電流と同じではないことに留意されたい。上記項目(iv)に関して、図5は、典型的な従来のマグネトロンの磁場に対する出力電力を示す曲線である。この特定の例から、磁場が10%変化すると、出力電力が60%変化することに留意されたい。磁場を変更するには、電磁石に電力を供給するために別の電源が必要であるが、それは低電力電源であってもよい。この低電力電源は高電圧電源から分離されており、必要な出力電力を提供するように簡単に調整できる。
【0023】
上記のように、マグネトロン100は、電気アノード電力をマイクロ波放射に変換する真空管である。マグネトロン100のマイクロ波出力電力は、アノード電圧Vaとアノード電流Iaの積によって与えられる入力電力に比例する。熱いフィラメントは電子を放出し、電子は電場と磁場の影響を受ける。電(E)場は、アノード102とカソード104との間の高いアノード電圧によって生成される。磁(B)場は、永久磁石又は電磁石であり得る磁石106によって生成される。好ましくは、磁場調整を可能にするために、磁石106は電磁石である。電磁石を使用すると、磁場Bの強度が制御され、コイルの電流強度が調整される。管又はマグネトロン100は、印加されたE及びB場が電子を曲線軌道に押し込むときにマイクロ波放射を放出する。相互作用は、振動キャビティ構造と電子雲の間で発生し、それによって電子はそれらのエネルギーを発振電磁場に伝達する。典型的な大規模な商業用途では、マグネトロン100は2.45GHzや915MHzなどの公称周波数で放射を生成する。2.45GHzでの典型的なマグネトロン100の効率は、約65%であり、915MHzでは約85%である。本開示は、任意のマイクロ波周波数で動作するマグネトロンに適用可能であることが理解される。
【0024】
マグネトロン100を作動させるための電力を供給するための電源は、マグネトロン100に高電圧を供給する。また、それは、放出のためにフィラメントを加熱するのに必要なアノード電流Iaとフィラメント電流Ifと電圧も供給する。電源はまた、必要な磁場を生成するための磁石電流を提供する。電源は、スイッチング構成又はリニア構成とすることができる。スイッチモード電源は、毎秒50,000パケット以上のエネルギーを供給できるが、リニア電源は、対照的に、ライン周波数によって駆動され、毎秒100~120パケット(50又は60Hz)を供給する。スイッチング電源を使用すると、電源投入、電力の増減、障害後の再起動などのイベントに対する応答時間が短縮される。また、アークなどの障害イベント中にマグネトロン100に供給される蓄積エネルギーが少なくなる。
【0025】
図6Aは、いくつかの例示的な実施形態による、マグネトロン100を用いたシステム200の概略ブロック図を含む。図6Bは、いくつかの例示的な実施形態による、1つ又は複数の電気キャビネット201A、201Bに取り付けられたシステム200の物理的構成の概略正面図を含む。図6A及び6Bを参照すると、システム200は、電源システム201に接続されたマグネトロン100を含む。電源システム201は、制御バス212によって複数の、例えば4つのパワーモジュール204、206、208、210に接続された制御モジュール202を含む。いくつかの例示的な実施形態では、制御モジュール202は、米国マサチューセッツ州アンドーバーのMKS Instrumentsによって製造及び販売されているAC571コントローラ、又は他の同様の制御モジュールであり得る。いくつかの例示的な実施形態では、各パワーモジュールル204、206、208、210は、米国マサチューセッツ州アンドーバーのMKS Instrumentsによって製造及び販売されているSM1818パワーモジュール、又は他の同様のパワーモジュールである。
【0026】
制御モジュール202は、電磁石106及びマグネトロンフィラメントに対する制御を提供する。制御モジュール202はまた、その前面パネル上のディスプレイ及び様々な押しボタン、ノブなどを通じて、ユーザインターフェースとしても機能する。特定の用途の要件に応じて、任意の数のパワーモジュールを使用できることが理解される。システム電力、例えば、3相480ACメインは、電力バス214を介して制御モジュール202及びパワーモジュール204、206、208、210に提供される。電源システム201は、フィラメント供給ライン216及び電磁供給ライン218上の制御モジュール202から、及び高電圧供給ライン220上の電源モジュール204、206、208、210から、マグネトロン100を動作させるための信号を提供する。いくつかの例示的な実施形態では、フィラメント供給ライン216上の電流は0~5アンペアであり、その機能はフィラメントを加熱することである。電磁供給ライン218は、マグネトロン制御のための磁場を生成するために、DCで0~5アンペアの電流を流す。高電圧供給ライン220は、マイクロ波電力に主マグネトロン電流を供給するために、負の6,000~18,000ボルトの電圧で、DCで0~5アンペアの電流を流す。パワーモジュール204、206、208、210は、電磁石106によって調整された、指定された電圧でマグネトロン100にアノード電流を供給する。出力電力は、ユーザーの要求に応じて、公称電力の3~100%の範囲で制御できる。本開示によれば、出力電力を制御する際に、マグネトロン出力電力は、マグネトロンアノード電力に依存することが理解される。ルックアップ(look-up)テーブルに基づいて、システムは電磁石電流を変更することによってアノード電圧を設定し、アノード電流を制御することができる。このようにして、システムは、マグネトロンに供給されるアノード電力を制御することができ、したがって、間接的に、マグネトロン出力電力を制御することができる。本開示によれば、ルックアップテーブルは、パラメータIa(アノード電流)、If(フィラメント電流)、Ic(電磁石電流)、Va(アノード電圧)のそれぞれについて、フルスケールの0%から100%までの11の値から開始して生成される。
【0027】
図7は、いくつかの例示的な実施形態によるマグネトロン100のパラメータ曲線を含むグラフである。図7を参照すると、曲線231はアノード電圧Va(モジュラス、負)を表し、曲線233はワット単位の出力のマイクロ波電力Pmwを表し、曲線235はmAdc単位の電磁石電流Iaを表し、曲線237はmAdc単位のアノード電流Iaを表す。図8A及び8Bは、いくつかの例示的な実施形態による、アノード電圧とマグネトロン100の磁場との間の関係を示す曲線を有するグラフを含む。図8A及び8Bの曲線は、異なる設定値でのVa、Ia、Ic、Pmwの値を示している。図7、8A及び8Bの曲線は、異なる出力電力レベルでのマグネトロン100の寿命パラメータ、及びマグネトロン磁場とマグネトロンアノード電圧との間の関係を示している。本開示によれば、出力電力は、アノード電圧対アノード電流の比、すなわち、Va/Iaを一定に保ちながら制御される。
【0028】
本開示によれば、電磁石コイル電流の正確な制御によってアノード電圧が制御される。所与の出力電力設定値ごとに、制御モジュール202は、必要なアノード電流レベルを決定する。また、それは、一定のVa/Ia比を維持するように、一定のアノードインピーダンスを維持するために必要なアノード電圧を決定し、電磁石コイル電流、そして磁場を変化させることによってアノード電圧を制御する。アノード電圧は、磁場、つまりマグネットコイル電流を制御することで制御できる。専用のマグネットコイル電流制御を備えたシステムは、すべての電力レベルで適切なレベルのアノード電圧と電流を設定できる。
【0029】
図9A及び9Cは、いくつかの例示的な実施形態による、制御モジュール202の概略図を含む。図9Bは、いくつかの例示的な実施形態による、図9A及び9Cに示される回路の動作に関連する信号の概略波形図を含む。図9A及び9Bを参照すると、回路のこの部分で使用されるのは3相ラインのうちの2つだけである。フィラメントトランスT1の一次側の電流は、逆並列構成で配線された1対のサイリスタTR1のゲートに電力を供給するライン同期ゲートドライバによって位相カットされる。図9Bの波形を参照すると、ライン電圧は正弦波(A)である。サイリスタTR1がトリガーされ、ラインと同期してスイッチがオンになり、可変遅延dTは、トランスT1の一次側の平均電流に反比例し、すなわち、遅延が長いほど、電流の平均値は低くなり、したがって、(B)のようになる。
【0030】
ライン同期ゲートドライバ回路は、トランスT3によって提供されるライン同期電圧から開始して、(C)及び(D)に示されるように、サイリスタゲートごとに1つずつ、2つの異なる駆動信号を生成する。一次側電流は変流器TA1によって検出され、真のRMSコンバータがそれをDC値に変換する。この値は、ライン同期ゲートドライバによって生成されたのこぎり波信号(E)と比較され、この比較により、ゲートドライバパルス(C)及び(D)の開始が促される。これには安定化作用がある:RMS電流値が増加すると、閉ループで駆動パルスの開始が遅延する。この比較レベルは、CPUから受信した電流設定値信号によっても変更される:必要な電流が大きい場合、回路はレベルを下げ、またその逆もできる。
【0031】
ENABLE入力は、(E)に示される比較レベルを最大値に強制し、したがって、駆動パルス、したがって電流をゼロにする。フィラメントトランスT1の一次側の電圧は、電圧トランスTV1によって検出され、抵抗分割器RA、RBによってスケーリングされ、別の真のRMSコンバータによってDC値に変換される。電流と電圧の両方のRMS値は、監視のためにCPUに戻される。
【0032】
図9Cを参照すると、3相ラインは、完全なダイオードブリッジB1によって整流され、次いで、コンデンサC1によってフィルタリングされる。DCバスは準共振電源に供給され、そこで、共振コンデンサC2と直列のダウントランスT1は、IGBTのペアを含む絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated-gate bipolar transistor、IGBT)パワーモジュールIGBT1によって駆動される。IGBT1モジュールは、専用のダブルIGBTドライバーDRV1によって駆動され、準共振ゼロ電流スイッチング(zero-current switching、ZCS)集積回路コントローラCNT1によって操縦される。コントローラは、HIGH信号を介して上部IGBTに、LOWを介して下部IGBTに駆動パルスを交互に送信する。
【0033】
下部IGBTがオンに切り替えられると、コンデンサC2は、T1の一次側を介して充電される。次のパルスが上部IGBTを駆動し、T1の一次巻線を介してコンデンサC1を再び放電させるが、この場合、電流は逆になる。したがって、トランスは一連の電流パルスによって駆動され、それぞれが前のパルスとは逆の極性になる。パルスの時間幅は同じであるが、トランスの一次側の平均電流を増減するために時間的に間隔が空けられている。
【0034】
トランスT1の二次電圧は、ダイオードブリッジB2によって整流され、コンデンサC3によってフィルタリングされる。この電圧の正は電磁石に直接接続され、負は電流検出デバイスCSEN1を介してグラウンド接続される。CSEN1は、流れる電流に比例した電圧を提供し、この情報をコントローラCNT1にフィードバックして、制御ループを閉じる。電磁石の両端の電圧は、抵抗RAとRBで作られた抵抗分割器によっても検出され、情報は制御回路に提供される。制御回路は、ENABLE入力(電子磁石電流のオンとオフを切り替えるため)と電流SETPOINT入力を介して制御CPUから駆動され、必要な電流量(0~5アンペア)を設定する。それは、回路が電磁石に必要な電流を供給できない場合に備えて、アラーム出力も提供する。電磁石電流の値も差動モニター出力に変換され、監視のためにCPUに送信される。
【0035】
図6A、6B、7、8A、8B、9A、及び9Bを参照すると、制御モジュール202は、本開示によるシステム200を操作するために必要とされる制御機能を実行する。例えば、制御モジュール202は、フィラメント加熱電流If、アノード電流Ia及び電磁石電流Icを駆動し、したがって、作動アノード電圧Vaを設定する。制御モジュール202はまた、アラームを認識し、ユーザーに正しい再起動シーケンスを促す。また、共振周波数以外のキャビティでの発振が発生するマグネトロンの「変更」イベントからシステムを保護する。制御モジュール202はまた、パワーモジュール202、204、206、208の割り当てを管理する。例えば、パワーモジュール202、204、206、208の1つが故障した場合、CPUは、失われた機能を、他の機能しているパワーモジュール202、204、206、208の1つ又は複数で置き換えるように機能する。制御モジュール202はまた、システム200が電力を変更する速度を設定する機能を提供する。制御モジュール202はまた、ディスプレイ及びフィールドバス(Fieldbus、リアルタイム分散制御に使用される産業用コンピュータネットワークプロトコルのファミリ。)を介してマグネトロン動作に関する完全な情報を提供する。
【0036】
いくつかの例示的な実施形態では、パワーモジュール202、204、206、208は、中/高アノード電圧でアノード電流を生成する。例えば、いくつかの例示的な実施形態では、アノード電圧供給電流は、DCで0~5アンペアの範囲にあり、アノード電圧は、6,000~18,000ボルトの範囲にあり、負である。マグネトロンのアノード電圧は、マグネトロンの設計と磁場の強さによって決定される。本開示のマグネトロン100では、アノード電流及び電磁石磁場強度は独立して制御される。電磁場は、磁気駆動電流又は電磁石電流を変化させることによって制御され、したがって、マグネトロン100の指定された動作特性内で、所望の作動アノード電圧を設定する。したがって、マグネトロン100に供給される電気(アノード)電力は、アノード電流及び電圧の任意の組み合わせで構成することができる。例えば、35kWのアノード電力Pは、15kVの電圧Vと2.33Aの電流I、又は12.5kVの電圧Vと2.8Aの電流Iで達成できる。これらの場合、アノードインピーダンスZ=V/Iはそれぞれ6.44kohmと4.46kohmになる。
【0037】
本開示によれば、アノード電圧及びアノード電流は同時に制御される。結果として、マグネトロン100は、任意の必要な電力レベル、すなわち、P=V×I、及び所望のアノードインピーダンス値Z=V/Iを供給することができ、これは、本開示によれば、一定に維持される。
【0038】
所与の負荷に対するマグネトロン性能は、アノード電圧をアノード電流で割ることによって決定される等価インピーダンスに大きく依存する。本開示によれば、体系化された計算を実施することにより、一定の等価インピーダンスが達成される。これにより、マグネトロンの性能とスペクトル出力が大幅に向上する。一定のインピーダンススケジュールは、アノード電流が増加する間、アノード電圧を制御することによって達成される。電磁石コイル電流を正確に制御することにより、アノード電圧が制御される。所与の出力電力設定点ごとに、制御モジュール202は、必要なアノード電流レベル及びフィラメント電流を決定する。また、それは、一定のアノードインピーダンスを維持するために必要なアノード電圧を決定し、電磁石コイル電流、そして、磁場を変更することによってアノードインピーダンスを制御する。
【0039】
図10は、従来のマグネトロン及び本開示のマグネトロン100の、マグネトロン出力電力に対するアノードインピーダンスを示すグラフである。図10を参照すると、従来のマグネトロンの場合は曲線271であり、本開示のマグネトロン100の場合は曲線273である。図10に示されるように、本質的に一定のアノードインピーダンスは、例示的な実施形態に従って実施される。このアプローチにより、マグネトロンの性能とスペクトル出力が大幅に向上する。例えば、本開示の一定のアノードインピーダンスアプローチの下で、システムの信頼性及び可用性が改善される。また、マグネトロン出力のよりクリーンで狭いマイクロ波スペクトルが実現される。これにより、特に共振キャビティでのプロセス効率が向上する。例示的な実施形態によれば、電力制御スケジュールは、マグネトロンシステムのアノード電流及び電圧仕様の範囲内で動作する。本開示のこの改善されたアプローチは、CVD合成ダイヤモンド成長などの分野における、1日24時間、週7日、連続的な高価プロセスが含まれる用途で特に効果的である。本開示によれば、等価の一定インピーダンスを使用して、マグネトロンスペクトル出力の広帯域が実質的に低減又は排除される。これにより、マグネトロン100を安全で信頼できる状態で動作させることが大幅に改善される。
【0040】
図11は、いくつかの例示的な実施形態による、図6A及び6Bに示されるシステム200の概略機能ブロック図であり、マグネトロン100を用いたシステムの追加の機能の詳細を示す。図11を参照すると、制御モジュール202は、例示的な実施形態の機能を実行するために、必要な処理、データ/命令記憶、入力/出力、及び他の必要なタスクを実行する中央処理装置(CPU)215を含む。図示のように、CPU215は、フィラメント制御モジュール又はボード217を介してフィラメント電流Ifを監視及び制御し、電磁石制御モジュール又はボード219を介して電磁石電流Icを監視及び制御する。フィラメント制御ボード217は、フィラメントトランスT1を駆動して、所望のフィラメント電流Ifを生成する。電磁石制御ボード219は、電磁石106を駆動して、所望の電磁石電流Icを生成する。CPU215はまた、アノード電流Iaを監視及び制御し、アノード電圧Vaを監視する。上記のように、パワーモジュール204、206、208、210は、高電圧を生成し、個々の電流Ia1、Ia2、Ia3、Ia4それぞれの合計として、全体的なアノード電流Iaを駆動する。
【0041】
続いて、図11を参照すると、CPU215は、3つのセットポイント信号を発する:マグネトロンアノード電流設定値であるSET_Ia;マグネトロンフィラメント電流設定値であるSET_If;マグネトロン電磁石電流設定値であるSET_Ic。CPU215はまた、4つのモニター信号も監視する:マグネトロンアノード電流モニターであるMON_Ia;マグネトロンフィラメント電流モニターであるMON_If;マグネトロン電磁石電流モニターであるMON_Ic;マグネトロンアノード電圧モニターであるMON_Va。すべての監視信号は、監視及びアラーム目的でCPU215に戻される。例示的な実施形態では、アノード電圧Vaは、他の3つの制御された値、すなわち、Ia、If、及びIcに依存するので、制御された値ではないことに留意されたい。アノード電圧Vaは、チェック及びアラームの目的でMON_Vaを介して監視される。いくつかの例示的な実施形態では、設定値は、CPU215のメモリに格納された値からの補間によって計算される。値は、10%の設定値間隔で保存され、すなわち、各パラメータIa、If、Ic、Vaのフルスケールの0%から100%までの11個の値である。保存された設定値は、例示的な実施形態によれば、一定のインピーダンスでマグネトロンを駆動することができるレシピである。同じマイクロ波電力を生成できる3つの主要な設定値(Ia、If、Ic)には多くの異なる組み合わせがあるが、すべての組み合わせが一定のインピーダンスにあるわけではない。本開示によれば、一定のインピーダンス、すなわち一定のVa/Iaを維持する組み合わせが選択される。以下の表1は、いくつかの例示的な実施形態による、75kWのフルスケールマグネトロンの例示的なルックアップテーブルである。表1には、0%から100%までの11のマイクロ波電力(ワット)のパラメータVa(ボルト)、Ia(mA)、If(A)、及びIc(mA)の11の例示的な設定値が含まれる。
【0042】
【表1】
【0043】
図12は、いくつかの例示的な実施形態による、本開示のマグネトロン100を用いたシステム500の概略図を含む。システム500は、例えば、化学蒸着(CVD)システム、CVD合成ダイヤモンド成長システム、又は他のそのようなシステムであり得る。図12を参照すると、システム500は、チャンバ517を含み、そこで、処理される基板509は、カーボンヒーターなどのヒーター513によって加熱され得るステージ511上に取り付けられ得る。処理中、チャンバ517内の圧力は、チャンバ517内の圧力を監視及び制御する圧力コントローラ507を介して、チャンバ517に接続される真空ポンプ(図示せず)などによって低下させることができる。
【0044】
システム500は、処理されている基板509の存在下で、チャンバ517内のプラズマ515を点火及び維持するように動作する。プラズマ515は、マグネトロン100によって生成された励起マイクロ波エネルギーによって点火され、維持される。励起マイクロ波エネルギーは、マグネトロン100から、接続された導波管103及び出力フランジ105を介して、任意選択のパワーモニタ及び/又はスタブチューナ501を介して、別の導波管503(マイクロ波ポート527を介して、マイクロ波透過窓505を介して、プラズマ515を励起するチャンバ517の内部に接続される)を介して結合される。プラズマ用及び/又は基板509の処理用のプロセスガスは、ガス源からプロセスガスポート521を介してチャンバ517の内部に導入することができる。例えば、水素(H2)及び/又はメタン(CH4)などのガスは、ガス源(図示せず)からバルブ523を通って送ることができる。ガスの流れは、マスフローコントローラ519によって制御される。
【0045】
CSV合成ダイヤモンド成長などの長いプロセスは、異なる電力レベルのマイクロ波を数週間連続して必要とする。したがって、この環境では、安定性、信頼性、及び可用性が非常に重要である。従来の高出力マグネトロンシステムでは、出力電力はアノード電流を変化させることによって制御される。このスケジュールは電力の制御に効果的であるが、より低い電力レベル、より広いスペクトルで不必要に高い電圧を提供し、アーク放電のリスクを増加させる。対照的に、本開示のスケジュール、すなわち、マグネトロンの寿命パラメータと異なる出力電力レベルとの間の関係は、異なる電力レベルで一定のアノードインピーダンス、すなわち、電圧/電流比を実現し、したがって、従来のアプローチのこれらの欠点を克服し、所有者/ユーザーにより高い価値を提供する。本開示のアプローチによって提供されるよりクリーンでより狭いスペクトルはまた、共振キャビティが使用されるこれらの用途において高い価値がある。
【0046】
前述の説明を読んだ後、本開示の多くの変更及び修正が当業者には明らかになるであろうが、例示として示され説明されている特定の実施形態は、決して限定的であると見なされることを意図していないことを理解されたい。さらに、実質内容は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本開示の精神及び範囲内のバリエーションは、当業者から生まれるだろう。前述の例は、単に説明の目的で提供されたものであり、本開示を限定するものとして解釈されるものではないことに留意されたい。
【0047】
本発明の概念は、その例示的な実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の精神及び範囲から逸脱することなく、その中で形態及び詳細の様々な変更を行うことができることが当業者によって理解されるであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
【国際調査報告】