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特表2022-552169シクロアルカン脱水素用触媒及びその製造と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】シクロアルカン脱水素用触媒及びその製造と応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/055 20060101AFI20221208BHJP
   C01B 3/26 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20221208BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20221208BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20221208BHJP
   C07C 5/367 20060101ALI20221208BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
B01J27/055 Z
C01B3/26
B01J35/10 301A
B01J37/04 102
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J37/18
B01J37/02 101D
B01J37/03 A
B01J37/30
B01J27/055 M
C07C15/06
C07C5/367
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520737
(86)(22)【出願日】2020-10-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 CN2020120172
(87)【国際公開番号】W WO2021068934
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】201910962010.6
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598152091
【氏名又は名称】ハイケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】高 潮
(72)【発明者】
【氏名】曾 建任
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DC03
4G140DC05
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA26C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB04C
4G169BB05C
4G169BB06C
4G169BB08C
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BB10C
4G169BB20C
4G169BC01A
4G169BC01C
4G169BC03B
4G169BC16C
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169BC22C
4G169BC65A
4G169BC65C
4G169BC69A
4G169BC69C
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169BD08C
4G169BD12C
4G169BE42C
4G169CB07
4G169CB66
4G169CB81
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA02Y
4G169EB14Y
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169EC05Y
4G169EC07Y
4G169EC08Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB19
4G169FB26
4G169FB30
4G169FB44
4G169FB57
4G169FB67
4G169FC02
4G169FC06
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA11
4H006BA26
4H039CA41
4H039CC10
(57)【要約】
シクロアルカン脱水素用触媒は、アルミナ担体と、第VIII族元素と、Sn元素と、硫黄元素と、アルカリ金属から選択される少なくとも1種のドープ金属とを含み、第VIII族元素及びSn元素は、VIIISn金属間化合物の形態で存在する。また、上記触媒の製造及びそのシクロアルカン脱水素における用途に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担体と、第VIII族元素と、Sn元素と、硫黄元素と、アルカリ金属から選択される少なくとも1種のドープ金属とを含み、第VIII族元素及びSn元素は、VIIISn金属間化合物の形態で存在する、シクロアルカン脱水素用触媒。
【請求項2】
アルミナ担体は、比表面積が150m/g以上であり、細孔容積が0.5cm/g以上であり、平均細孔径が70~200Åであり、好ましくは、比表面積が210m/g以上であり、細孔容積が0.55cm/g以上であり、平均細孔径が80~150Åである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第VIII族元素は、Pt、Pd、Irから選択される1種又は複数種であり、好ましくはPtであり、触媒の重量に基づいて、含有量が0.2~5.0wt%であり、好ましくは0.3~2.0wt%である、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
Sn元素は、触媒の重量に基づいて、含有量が0.04~1.0wt%であり、好ましくは0.06~0.4wt%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
硫黄元素は、触媒の重量に基づいて、含有量が0.1~3wt%であり、好ましくは0.3~1wt%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
アルカリ金属元素は、触媒の重量に基づいて、含有量が0.1~1wt%であり、好ましくは0.2~0.5wt%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒を製造する方法であって、
a.アルミニウム源とバインダーを均一に混合した後、混練し、ストリップ状に押出してアルミナ担体を得るステップと、
b.乾燥させ、焼成した後、第VIII族元素及びSn元素を担持するステップと、
c.乾燥させ、焼成した後、アルカリ金属化合物を添加するステップと、
d.焼成、還元処理によりアルカリ金属を酸化物の形態で存在させ、担持された金属をVIIISn金属間化合物の形態で存在させるステップと、を含み、
硫黄又は硫黄化合物は、アルミニウム源に存在し、或いはアルミナ担体の製造過程中又は製造後にアルミナ担体に添加される、方法。
【請求項8】
アルミニウム源は、擬ベーマイト、ベーム石、水酸化アルミニウムから選択される1種又は複数種であり、好ましくは擬ベーマイトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
硫黄又は硫黄化合物は、硫黄粉末、硫酸、硫酸塩から選択される1種又は複数種である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
第VIII族元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、イオン交換、含浸又は沈殿の方法で第VIII族元素の担持を実現する、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
Sn元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、逐次含浸又は共含浸の方法でSn元素の担持を実現する、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップbにおける、第VIII族元素とSn元素のモル比nVIII:nSnは、2~4であり、好ましくは2.5~3.5である、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アルカリ金属元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、イオン交換、含浸又は沈殿の方法でアルカリ金属元素の担持を実現する、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第VIII族元素とSn元素を担持した後に乾燥させ、静置後に焼成し、焼成温度が300~750℃であり、焼成時間が1~12時間である、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
触媒を使用する前に還元剤、例えば、水素ガスで還元し、還元温度が350~800℃であり、還元時間が0.5~24時間である、請求項7~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒のシクロアルカン脱水素における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロアルカン脱水素用触媒及びその製造方法に関し、さらに、上記触媒のシクロアルカン脱水素における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、清潔で、効率的な環境に優しいエネルギーとして、21世紀で発展可能性が最も高いエネルギーと見なされ、その開発及び利用が既に世界的に注目されている。現在、水素ガスの貯蔵技術には大きく分けて、主に物理的水素貯蔵、吸着式水素貯蔵及び化学的水素貯蔵の三種類がある。物理的水素貯蔵の技術は、水素貯蔵装置に対して厳しい要件及び過酷な操作条件を要求するため、この技術の使用コストが高い。吸着式水素貯蔵及び化学的水素貯蔵は、現在の研究の重点である。化学的水素貯蔵において、液体有機ハイドライドによる水素貯蔵の技術は、不飽和液体芳香族炭化水素とその対応するシクロアルカンとの間の水素化-脱水素の可逆反応サイクルを用いて、水素ガスの貯蔵及び放出を実現する。液体有機ハイドライドの水素貯蔵能力は、高圧圧縮水素貯蔵法及び金属水素化物水素貯蔵法よりもはるかに高い。液体有機ハイドライドにおいて、シクロアルカンは、常温常圧で液体状態であるため、該技術は、既存の石油化学品の輸送方法で遠距離輸送を実現することができる。しかしながら、この過程における脱水素反応は可逆的であるため、水素生成速度が低く、かつ副反応が発生するため、生成された水素ガスの純度が高くなく、分離コストを増加させる。したがって、高い安定性、高い転化率及び高い選択性を備える脱水素触媒の開発は、液体有機ハイドライドによる水素貯蔵技術の応用の鍵となる。
【0003】
一般的に使用されるシクロアルカン脱水素用触媒は、担持型金属触媒であり、活性成分がPt、Pd、Rh、Ni、Coなどである。アルミナは、貴金属脱水素用触媒の最も一般的に使用される担体として、入手しやすく、反応活性が高いという特徴を有するが、その表面に酸性の活性中心が多いため、触媒をコークス化し不活性化しやすい。文献1(燃料化学ジャーナル、1998、26(6)、543~547)には、Pt担持脱水素触媒に適量のKOを添加すると、触媒表面の強い酸点を変更することができ、炭素堆積物の形成を防止し、触媒の安定性を向上させるのに役立つことが報告されている。しかし、この方法は、触媒の選択性を高める効果が明らかではなく、副反応が発生してメタンを生成するという問題を解決することができない。また、第2金属成分、例えば、Ni、Mo、W、Re、Ir、Snなどを添加することにより、触媒の脱水素活性をさらに向上させ、触媒の性能を改善することができる。CN107376907Aには、白金スズ担持型ハイドロタルサイト脱水素触媒及びその製造方法が開示されており、該触媒において、Ptは、還元状態であり、Snは、還元状態及び酸化状態で共存し、シクロアルカンの脱水素反応において反応条件が温和で、選択性が高く、水素放出速度が大きいなどの利点を有する。しかし、該触媒の担持量が低い条件下での転化率は、さらに改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の上記状況に鑑み、本発明者は、改善されたシクロアルカン転化率、改善された芳香族炭化水素選択性及び安定性を有するシクロアルカン脱水素用触媒を見出すために、シクロアルカン脱水素用触媒に対して広範囲で詳細な研究を行った。本発明者は、アルミナ担体と、第VIII族元素と、Sn元素と、硫黄元素と、アルカリ金属から選択される少なくとも1種のドープ金属とを含む脱水素触媒を見出し、該触媒において、アルカリ金属が酸化物の形態で存在し、第VIII族元素及びSn元素がVIIISn金属間化合物の形態で存在する。該触媒は、シクロアルカン脱水素反応に用いられる場合、第VIII族元素の担持量が低い条件下でも高い転化率及び選択性、高い安定性を保持することができる。本発明は、前述の知見に基づくものである。
【0005】
本発明は、シクロアルカンから水素ガスを放出する際に発生する脱水素反応に用いられる触媒を提供することを目的とする。該触媒は、シクロアルカン脱水素に用いられる場合、改善されたシクロアルカン転化率及び芳香族炭化水素選択性を得ることができ、さらに改善された安定性を有する。
【0006】
本発明は、シクロアルカン脱水素用触媒を製造する方法を提供することを他の目的とする。該方法でシクロアルカン脱水素用触媒を簡単に製造することができるだけでなく、該方法で製造された触媒は、シクロアルカン脱水素に用いられる場合、改善されたシクロアルカン転化率及び芳香族炭化水素選択性を得ることができ、さらに改善された安定性を有する。
【0007】
本発明は、本発明の触媒又は本発明の方法で製造された触媒の、シクロアルカン脱水素における触媒とする用途を提供することを最後の目的とする。該応用において、改善されたシクロアルカン転化率及び芳香族炭化水素選択性を得ることができ、さらに改善された安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的を達成できる技術案は、以下のようにまとめられる。
【0009】
1.シクロアルカン脱水素用触媒であって、アルミナ担体と、第VIII族元素と、Sn元素と、硫黄元素と、アルカリ金属から選択される少なくとも1種のドープ金属とを含み、第VIII族元素及びSn元素は、VIIISn金属間化合物の形態で存在する。
【0010】
2.第1項に記載の触媒において、アルミナ担体は、比表面積が150m/g以上であり、細孔容積が0.5cm/g以上であり、平均細孔径が70~200Åであり、好ましくは、比表面積が210m/g以上であり、細孔容積が0.55cm/g以上であり、平均細孔径が80~150Åである。
【0011】
3.第1又は2項に記載の触媒において、第VIII族元素は、Pt、Pd、Irから選択される1種又は複数種であり、好ましくはPtであり、触媒の重量に基づいて、含有量が0.2~5.0wt%であり、好ましくは0.3~2.0wt%である。
【0012】
4.第1~3項のいずれか1項に記載の触媒において、Sn元素は、触媒の重量に基づいて、含有量が0.04~1.0wt%であり、好ましくは0.06~0.4wt%である。
【0013】
5.第1~4項のいずれか1項に記載の触媒において、硫黄元素は、触媒の重量に基づいて、含有量が0.1~3wt%であり、好ましくは0.3~1wt%である。
【0014】
6.第1~5項のいずれか1項に記載の触媒において、アルカリ金属元素は、触媒の重量に基づいて、含有量が0.1~1wt%であり、好ましくは0.2~0.5wt%である。
【0015】
7.第1~6項のいずれか1項に記載の触媒を製造する方法は、
a.アルミニウム源とバインダーを均一に混合した後、混練し、ストリップ状に押出してアルミナ担体を得るステップと、
b.乾燥して、焼成した後、第VIII族元素及びSn元素を担持させるステップと、
c.乾燥して、焼成した後、アルカリ金属化合物を添加するステップと、
d.焼成、還元処理によりアルカリ金属を酸化物の形態で存在させ、担持された金属をVIIISn金属間化合物の形態で存在させるステップと、を含み、
硫黄又は硫黄化合物は、アルミニウム源に存在し、或はアルミナ担体の製造過程中又は製造後にアルミナ担体に添加される。
【0016】
8.第7項に記載の方法において、アルミニウム源は、擬ベーマイト、ベーム石、水酸化アルミニウムから選択される1種又は複数種であり、好ましくは擬ベーマイトである。
【0017】
9.第7又は8項に記載の方法において、硫黄又は硫黄化合物は、硫黄粉末、硫酸、硫酸塩から選択される1種又は複数種である。
【0018】
10.第7~9項のいずれか1項に記載の方法において、第VIII族元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、イオン交換、含浸又は沈殿の方法で第VIII族元素の担持を実現する。
【0019】
11.第7~10項のいずれか1項に記載の方法において、Sn元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、逐次含浸又は共含浸の方法でSn元素の担持を実現する。
【0020】
12.第7~11項のいずれか1項に記載の方法において、ステップbでは、第VIII族元素とSn元素のモル比nVIII:nSnは、2~4であり、好ましくは2.5~3.5である。
【0021】
13.第7~12項のいずれか1項に記載の方法において、アルカリ金属元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、イオン交換、含浸又は沈殿の方法でアルカリ金属元素の担持を実現する。
【0022】
14.第7~13項のいずれか1項に記載の方法において、第VIII族元素とSn元素を担持した後に乾燥させ、静置後に焼成し、焼成温度が300~750℃であり、焼成時間が1~12時間である。
【0023】
15.第7~14項のいずれか1項に記載の方法において、触媒を用いる前に還元剤、例えば、水素ガスで還元し、還元温度が350~800℃であり、還元時間が0.5~24時間である。
【0024】
16.第1~6項のいずれか1項に記載の触媒のシクロアルカン脱水素における用途。
【発明の効果】
【0025】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、以下の内容を参照して本発明を考えた後、当業者に理解されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】PtSn及びPtSn金属間化合物の原子構造を示す。
図2】比較例1、比較例3及び実施例1におけるPt、PtSn及びPtSn金属間化合物のXRD回折図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一態様に係るシクロアルカン脱水素用触媒は、アルミナ担体と、第VIII族元素と、Sn元素と、硫黄元素と、アルカリ金属から選択される少なくとも1種のドープ金属とを含み、第VIII族元素及びSn元素は、VIIISn金属間化合物の形態で存在する。
【0028】
2種以上の金属を含む触媒において、金属粒子は、単体又は合金の状態で存在する以外に、異なる配合比率の金属間化合物を形成する。金属間化合物とは、2種以上の金属間に形成される定比化合物を意味する。
【0029】
一実施形態において、上記アルミナ担体に対して、多孔性担体は、比表面積が150m/g以上であり、細孔容積が0.5cm/g以上であり、平均細孔径が70~200Åであり、好ましくは、比表面積が210m/g以上であり、細孔容積が0.55cm/g以上であり、平均細孔径が80~150Åである。
【0030】
好ましくは、上記触媒において、第VIII族元素は、Pt、Pd、Irから選択される1種又は複数種であり、好ましくはPtであり、上記触媒の重量に基づいて、含有量が0.2~5.0wt%であり、好ましくは0.3~2.0wt%である。
【0031】
好ましくは、上記触媒において、Sn元素は、上記触媒の重量に基づいて、含有量が0.04~1.0wt%であり、好ましくは0.06~0.4wt%である。
【0032】
好ましくは、上記触媒において、硫黄元素は、上記触媒の重量に基づいて、含有量が0.1~3wt%であり、好ましくは0.3~1wt%である。
【0033】
好ましくは、上記触媒において、アルカリ金属は、Li、Na、K、Rbから選択される1種又は複数種であり、好ましくはKであり、上記触媒の重量に基づいて、含有量が0.1~1wt%であり、好ましくは0.2~0.5wt%である。
【0034】
本発明の第2態様に係る本発明の触媒を製造する方法は、
a.アルミニウム源とバインダーを均一に混合した後、混練し、ストリップ状に押出してアルミナ担体を得るステップと、
b.乾燥させ、焼成した後、第VIII族元素及びSn元素を担持するステップと、
c.乾燥させ、焼成した後、アルカリ金属化合物を添加するステップと、
d.焼成、還元処理によりアルカリ金属を酸化物の形態で存在させ、担持された金属をVIIISn金属間化合物の形態で存在させるステップと、を含み、
硫黄又は硫黄化合物は、アルミニウム源に存在し、或いはアルミナ担体の製造過程中又は製造後にアルミナ担体に添加される。
【0035】
一実施形態において、アルミニウム源とバインダーなどを均一に混合した後、混練し、ストリップ状に押出し、乾燥させ、焼成して成形アルミナ担体を得る。ここで混練、ストリップ押出、乾燥、焼成のステップは、特に制限されず、当該分野で公知の任意の方法を用いることができる。
【0036】
好ましくは、上記アルミニウム源は、擬ベーマイト、ベーム石、水酸化アルミニウムから選択される1種又は複数種であり、好ましくは擬ベーマイトである。
【0037】
好ましくは、上記バインダーは、硝酸、セスバニア粉、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウムから選択される1種又は複数種であり、好ましくは硝酸、セスバニア粉及びメチルセルロースである。
【0038】
好ましい実施形態において、硫黄又は硫黄化合物は、触媒の担体を製造するためのアルミニウム源に予め存在してもよく、或いは触媒の担体の製造過程中又は製造後に触媒の担体に分散されてもよい。例えば、硫黄粉末と、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウムなどを含む硫酸塩、硫酸などのような硫黄化合物とを挙げることができる。硫黄が担体に分散される可能性があるという観点から、水又は有機溶媒に溶解性を有する硫黄化合物が好ましく、このような硫黄化合物として硫酸、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウムなどを挙げることができる。
【0039】
好ましくは、第VIII族元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、イオン交換、含浸又は沈殿の方法で第VIII族元素の担持を実現する。
【0040】
好ましくは、Sn元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、逐次含浸又は共含浸の方法でSn元素の担持を実現する。
【0041】
好ましくは、ステップbでは、第VIII族元素とSn元素のモル比nVIII:nSnは、2~4であり、好ましくは2.5~3.5である。
【0042】
第VIII族元素及びSn元素を担持した後、アルカリ金属を添加する方式で触媒の表面の酸性を調整する。好ましくは、アルカリ金属元素の金属酸、金属酸塩、塩化物、アンモニア錯体、カルボニル錯体又はそれらの混合物を原料として、イオン交換、含浸又は沈殿の方法でアルカリ金属元素の担持を実現する。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明の触媒は、第VIII族元素及びSn元素を担持した後、適切な時間、例えば、24時間静置し、次に例えば、約30℃で徐々に撹拌して表面の水を蒸発させ、乾燥させ、適切な室温で一晩静置した後に焼成し、焼成温度が300~750℃であり、焼成時間が1~12時間である。第VIII族元素及びSn元素は、VIIISn金属間化合物の形態で存在する。アルカリ金属元素を添加した後に再び焼成し、焼成温度が300~500℃であり、焼成時間が1~12時間である。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明の触媒を用いる前に還元処理を行い、従来の触媒還元方法を用いることができ、すなわち、水素ガスなどの還元剤を触媒と接触させて触媒を還元する方法で外部予備還元又はインライン還元を実現する。好ましくは、還元温度が350~800℃であり、還元時間が0.5~24時間である。
【0045】
本発明の最後の一態様によれば、本発明の触媒又は本発明の方法で製造された触媒の、シクロアルカン脱水素における触媒とする用途を提供する。
【0046】
好ましい実施形態において、シクロアルカンは、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン及びデカヒドロナフタレンから選択される1種又は複数種であり、好ましくはメチルシクロヘキサン又はシクロヘキサンである。
【0047】
好ましい実施形態において、メチルシクロヘキサンを原料として、固定床反応器内で脱水素反応を行う。触媒の充填量は、反応器の容積に応じて変化する。供給前に触媒に対して還元処理を行うことにより、担持された金属を単体の形態で存在させ、還元条件は、水素ガス圧が0.1~10MPaで、温度が300~800℃で、時間が0.5~24時間であることであり、好ましい条件は、水素ガス圧が0.2~5MPaで、温度が300~550℃で、時間が3~8時間であることである。反応条件は、水素ガス圧が0.1~10MPaで、温度が250~500℃で、重量空間速度が0.5~20h-1で、水素と油のモル比が0~15であることであり、好ましい条件は、水素ガス圧が0.2~2MPaで、温度が300~450℃で、重量空間速度が1~10h-1で、水素と油のモル比が1~10であることである。
【実施例
【0048】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
比較例1
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.5wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0050】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0051】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元し、0.5wt%Pt/Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0052】
比較例2
10gの擬ベーマイト、0.2gのセスバニア粉、0.2gのカルボキシメチルセルロースを秤量し、均一に混合した後に、撹拌しながら12.5gの3.6wt%硝酸を滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0053】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0054】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=3であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0055】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0056】
比較例3 (PtSn構造)
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.5wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0057】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0058】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=0.6であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0059】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/S-Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0060】
実施例1 (PtSn構造)
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.5wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0061】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0062】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=3であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0063】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/S-Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0064】
実施例2 (PtSn構造)
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.5wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0065】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0066】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=3.4であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0067】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/S-Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0068】
実施例3 (PtSn構造)
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.8wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0069】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0070】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=3であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0071】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/S-Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0072】
実施例4 (PtSn構造)
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.3wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0073】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0074】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=3であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0075】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/S-Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで降温する。原料油であるメチルシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度320℃、反応圧力0.4MPaである。メチルシクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、2である。5時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表1に示す。24時間後のメチルシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表2に示す。
【0076】
実施例5 (PtSn構造)
擬ベーマイト10gに、含浸法により硫黄の担持量が0.5wt%の硫酸アルミニウム溶液に含浸させ、得られたS含有アルミニウム粉末と、セスバニア粉0.2gと、カルボキシメチルセルロース0.2gとを均一に混合した後に、撹拌しながら3.6wt%硝酸12.5gを滴下し、混合物を混練機へ移して約1時間練り、粉体を完全に練り上げた後にストリップ押出機で押出成形する(直径が1~2mmであり、長さが約5mmである)。押出されたストリップ状の担体を120℃で12時間乾燥させた後、700℃で3時間焼成して、成形担体を得る。
【0077】
孔充填含浸法でHPtCl溶液(1mL当たり0.00748gのPtを含む)に含浸した後に24時間静置し、次に60℃で3時間減圧乾燥させ、120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成して単一白金触媒を得る。
【0078】
調製された単一白金触媒を純粋な水素ガスで還元した後、孔充填含浸法でSnCl溶液に含浸し、モル比がnPt:nSn=3であり、24時間静置した後に30℃で撹拌しながら表面の水分を蒸発させ、次に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。続いて孔充填含浸法でKNO溶液に含浸し、Kの担持量が0.3wt%であり、24時間静置した後に120℃で12時間乾燥させ、400℃で3時間焼成する。
【0079】
調製された触媒2mLを純粋な水素ガスでインライン還元して、0.5wt%Pt-Sn-KO/S-Al触媒を得る。還元条件は、水素ガスの流速が50mL/minである。10℃/minで400℃まで昇温し、1時間恒温した後、水素ガス流中で反応温度まで昇温する。原料油であるシクロヘキサンを導入して反応させ、生成物をガスクロマトグラフィーで分析する。反応条件は、温度480℃、反応圧力0.4MPaである。シクロヘキサンの液体空間速度は、2h-1であり、水素と油の比(mol/mol)は、4である。5時間及び24時間後のシクロヘキサンの脱水素反応の結果を表3に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
以上の実施例及び比較例から分かるように、本発明に係る触媒は、メチルシクロヘキサン及びシクロヘキサンの脱水素反応に用いられる場合、より高いシクロアルカン転化率及び芳香族炭化水素選択性を有し、かつ安定性がより高い。
【0083】
以上の説明は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、なお、当業者にとって、本発明の原理の範囲内で行われたいくつかの改良及び修飾も同様に本発明の保護範囲にあるものと見なすべきである。
図1
図2
【国際調査報告】