(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】グロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する単一ドメイン抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221208BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221208BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221208BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221208BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221208BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520820
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2020077754
(87)【国際公開番号】W WO2021064227
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501497655
【氏名又は名称】マックス プランク ゲゼルシャフト ツゥアー フェデルゥン デル ヴィッセンシャフテン エー フォー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジーバーガー ペーター ハー.
(72)【発明者】
【氏名】モスコヴィッツ オレン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA19
4C085BB01
4C085BB24
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、グロボ(globo)シリーズのグリカン、特にグロボHに向けて行われた単一ドメイン抗体(sdAb)の分野に関する。より詳細には、本発明は、グロボH、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される1つ以上のグリカンを特異的に結合するsdAbに関する。本発明は、多量体単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、および前記抗-グリカンsdAbsを含むT細胞キメラ抗原受容体も提供する。したがって、本発明は、前記グロボHおよび/またはGb3、Gb4、Gb5を過剰発現する細胞に関連するいくつかの型の癌を標的化する、および/または治療するために使用されることができるポリペプチドを提供する。本発明は、前記ポリペプチドをコードする組換え核酸配列、並びに前記ポリペプチドをコードする組換え核酸配列を含む発現ベクターおよび宿主細胞にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであって、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボH、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する、ポリペプチド。
【請求項2】
前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:137、およびSEQ ID NO:138からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、前記単一ドメイン抗体は前記細胞外ヒンジ領域に連結される、請求項1または請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、ヒト化単一ドメイン抗体である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の104および108に位置する1つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化される、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする組換え核酸分子。
【請求項7】
請求項6に記載の組換え核酸分子を含むベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の組換え核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項9】
少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤および/または希釈剤と共に、請求項1、請求項2、請求項4、および請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項10】
癌の治療および/または診断に使用のための、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項9に記載の医薬組成物であって、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボH、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現する、ポリペプチド、または医薬組成物。
【請求項11】
前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される、請求項10に記載の使用のためのポリペプチド、または使用のための医薬組成物。
【請求項12】
グロボH、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する細胞によって特徴付けられる癌のスクリーニングのための、請求項1、請求項2、請求項4、および請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む診断キット。
【請求項13】
グロボH、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、少なくとも2である、請求項1、請求項2、請求項4、および請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記2つ以上の単一ドメイン抗体は、配列が異なる、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記2つ以上の単一ドメイン抗体は、配列が同一である、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項16】
グロボH、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、3である、請求項13~請求項15のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:5と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項16に記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、グロボ(globo)シリーズのグリカン、特にグロボ(Globo)Hに向けて行われた単一ドメイン抗体(sdAb)の分野に関する。より詳細に、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される1つ以上のグリカンを特異的に結合するsdAbに関する。本発明は、多量体単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、および前記抗-グリカンsdAbsを含むT細胞キメラ抗原受容体も提供する。したがって、本発明は、前記グロボ(Globo)Hおよび/またはGb3、Gb4、Gb5を過剰発現する細胞に関連するいくつかの型の癌を標的化する、および/または治療するために使用されることができるポリペプチドを提供する。本発明は、前記ポリペプチドをコードする組換え核酸配列、並びに前記ポリペプチドをコードする組換え核酸配列を含む発現ベクターおよび宿主細胞にも関する。
【0002】
[発明の背景]
グロボ(Globo)シリーズグリカンは、セラミドがGalNAcβ3Galα4Galβ4Glcの基本構造を有するグリカンに結合している中性スフィンゴ糖脂質のグループを含む。一般的には、これらのグリカンは、原形質膜に保持され、脂質ラフトにクラスター化する。このグリカンファミリーの内因性機能は、ほとんど知られていない。しかしながら、それらの発現は、発生の初期段階で起こり、細胞の接触および接着を仲介すると考えられている。重要なことに、これらのグリカンの変化は、分化の間中ずっと、および腫瘍形成中に観察される。このファミリーの2つの注目すべき六糖メンバーは、時期特異的な胚性抗原-4(SSEA-4)およびグロボ(Globo)Hである(
図2)。これらのグリカンは、共通の前駆体、SSEA-3(Galβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc)を共有するが、末端単糖が異なり、SSEA-4の場合はβ3-結合N-アセチルノイラミン酸であり、グロボ(Globo)Hの場合はα2-結合L-フコースである。
【0003】
SSEA-4は、多くの幹細胞型で、誘導された多能性幹細胞で、胚性癌細胞で、乳癌細胞で、および成人において最も攻撃的で一般的な脳腫瘍を形成する悪性神経膠腫細胞で発現される。結果として、SSEA-4に対する抗体は、癌ワクチンにおけるSSEA-4の標的化を支持する可能性がある。
【0004】
グロボ(Globo)Hは、化学式Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1→O-Cerを有する六糖である。グロボ(Globo)H発現は、例えば、子宮内膜癌、結腸癌、卵巣癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、前立腺癌、および乳癌などのいくつかの上皮癌で明らかにされており、正常組織においては、乳房、結腸、食道、小腸、前立腺、直腸、精巣、および子宮頸部に中程度に存在するが、内腔境界で頂端上皮細胞にのみ存在する。Wang et al.(PNAS,2008)は、グリカンアレイによって、正常なドナーおよび乳癌患者の両方がSSEA-3に対する高レベルの抗体を発現したが、乳癌患者が正常なドナーよりもはるかに高いレベルのグロボ(Globo)Hに対する抗体を発現したことを明らかにした。SSEA-3またはグロボ(Globo)Hのいずれかが正常組織において発見される可能性のある部位は、免疫細胞に一般的に接近できないと考えられる領域にあるため、SSEA-3およびグロボ(GloboH)の両方は、癌ワクチンにとって魅力的な標的になる。
【0005】
しかしながら、ほとんどの炭水化物抗原は、免疫系によって許容されることが多く、その結果として、炭水化物抗原によって誘導される免疫原性は制限される。さらに、特定の免疫原に対する抗体の産生は、一般的に、2つの型のリンパ球、すなわち、B細胞およびヘルパーT細胞との間の協同的な相互作用を伴う。グロボ(Globo)H単独ではヘルパーT細胞を活性化することができず、このことは、グロボ(Globo)Hの免疫原性が低いことにも起因する。したがって、グロボ(Globo)H単独での免疫付与は、免疫グロブリンM(IgM)の低力価、および免疫グロブリンG(IgG)へのクラススイッチの失敗、並びに非効果的な抗体親和性成熟をしばしばもたらす。最近、適切なアジュバントを添加することにより、IgMからIgGへのクラススイッチを含む、グロボ(Globo)Hに対する抗体を誘導することができると実証されている。したがって、グロボ(Globo)Hは、癌ワクチンの有望な治療標的である。このアプローチは、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、および肺癌を含む、種々の癌に対する様々な段階で臨床試験において試験されている。
【0006】
ヒトにおける抗多糖応答がIgMおよびIgG1型によって明らかに支配され、一方、ラクダ科動物からの重鎖抗体がIgG2およびIgG3クラスに属することを示す以前の研究によって、グリカンに反応して単一ドメイン抗体の生成の欠如は支持される(Daley et al.,Clin Vaccine Immunol.2010)。さらに、多糖とタンパク質における個々の結合部位との間の相互作用は一般的に弱く、結合強度および特異性は、多糖とオリゴマー多糖結合タンパク質との間のポリマー相互作用によって増強されることが知られている。VHHは、本質的に厳密に単量体の結合剤であるため、この点においてVHHは多糖の結合にはあまり適していない。したがって、当業者は、グロボ(globo)-シリーズグリカンに対して、軽鎖を欠く免疫グロブリンを高めることは非常に困難であると当業者は想定するだろう。
【0007】
グロボ(Globo)Hに対する従来の抗体は、癌の診断および治療に有望であることが示されているが(WO2015/143123A)、より優れた抗グロボ(GloboH)抗体が、いまだに必要とされる。使用目的のために、モノクローナル抗体、および好ましくは単一ドメイン抗体が必要とされる。グロボ(Globo)Hまたはグロボ(Globo)Hの断片などのグロボ(globo)-シリーズスフィンゴ糖脂質を特異的に結合する単一ドメイン抗体(sdAbまたはVHH)は、当該抗体を作製する試みが行われているが、今までのところ当技術分野において開示されていない。
【0008】
特許出願WO2015/143123Aは、グロボ(Globo)H陽性癌を予防する、または治療するための従来の抗グロボ(Globo)H抗体、およびこれらの抗体を含む医薬組成物を開示する。しかしながら、これらの抗体は、化学的不安定性を与えうるCDR配列を有し、そのことは、これらの抗体を、更なる生産のスケールアップおよび臨床研究にとって、望ましくないものにする。
【0009】
国際特許出願WO2018/054353Aは、グロボ(Globo)Hを結合し、高発現製造条件下で起こる可能性がある望ましくない修飾および大きな凝集体形成に対する安定性を高めるために設計されたCDR配列を有する治療用ヒト従来型モノクローナル抗体を開示する。
【0010】
従来の哺乳類IgG抗体とは対照的に、sdAbは重鎖のみを含み、軽鎖を欠いている。単一ドメイン抗体の抗原結合ドメインは、VHHまたはナノボディ(Nanobody)(登録商標)と呼ばれる。VHHは、従来の抗体に比べていくつかの一般的な利点を有する。第一に、それらは、サイズがわずか13~15kDaであり、従来のIgG抗体(150kDa)より約10分の1小さい。それらは、混雑した細胞環境においてさえ、エピトープにさらに良く接近することができ、組織、器官、および動物にさらに良く侵入することができる。
【0011】
それらは、従来の抗体と比較して、はるかに高い化学的(例えば、最大8M尿素)および熱安定性(最大83℃)、およびより長い貯蔵寿命を有する。
したがって、本発明の目的は、グロボ(Globo)H、並びにGb3(グロボトリアオース)、Gb4(グロボテトラオース)、およびGb5(グロボペンタオースGb5)などのグロボ(globo)シリーズグリカンを特異的に結合する単一ドメイン抗体を提供することである。
【0012】
この目的は、独立請求項の教示によって解決される。本発明のさらに有利な特徴、態様および詳細は、本出願の従属請求項、明細書、図面、および実施例から明らかである。
【0013】
[本発明の簡単な説明]
本出願は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する。
【0014】
いくつかの実施形態において、グロボ-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:137、およびSEQ ID NO:138からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含み、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択された少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する。ある種の実施形態において、グロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドは、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含み、少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択され、SEQ ID NO5と少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する。
【0015】
特定の実施形態において、グロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドは、本明細書に開示されるような少なくとも一つの単一ドメイン抗体、および前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体に連結された少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、抗癌ペプチド、細胞溶解性ペプチド、L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース、ジニトロフェニル、血清安定化分子、蛍光分子、リン光性分子、化学発光分子、生物発光分子、放射性同位体、発色団、アジピン酸ジスクシンイミジル、ヒトFc抗体断片からなる群から選択される。より具体的な実施形態において、グロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドは、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含み、少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカン、および、修飾システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される少なくとも一つの溶解性ペプチドを結合する。さらにより具体的な実施形態において、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含み、および少なくとも一つの単一ドメイン抗体に連結された少なくとも一つの溶解性ペプチドをさらに含む、グロボ-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドは、SEQ ID NO:19~63、142~156、179~226から選択される配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0016】
本発明は、本明細書に開示される少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドにも向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合し、並びに少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結される。前記細胞外ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および細胞内活性化ドメインは、T細胞キメラ抗原受容体(CAR)のモジュールまたは要素を表す。本明細書に開示されるキメラ抗原受容体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグロボ-シリーズグリカンを特異的に認識するCAR T細胞を生成するために使用されることができる。したがって、前記CAR T細胞は、癌の治療において使用されることができ、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現する。
【0017】
本発明は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドも提供し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、ヒト化単一ドメイン抗体であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する。さらに、本発明は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドを提供し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、ヒト化単一ドメイン抗体であり、および、少なくとも一つのヒト化単一ドメイン抗体に連結された少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここで、前記少なくとも一つのヒト化単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する。本発明にしたがって、少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する1つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化される。
【0018】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードする組換え核酸分子、および前記組換え核酸分子を含むベクターも提供する。本発明における組換え核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も、本明細書において提供される。
【0019】
さらに、本発明は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤および/または希釈剤と共に、グロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する本発明のポリペプチドの治療有効量を含み、および少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む、医薬組成物にも関する。
【0020】
本発明は、癌の治療および/または診断における本発明のポリペプチドの使用、または本発明に係る医薬組成物の使用も提供し、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。言い換えると、本発明は、癌の治療および/または診断における本発明のポリペプチドの使用、または本発明に係る医薬組成物の使用を提供し、ここで、前記癌は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する細胞によって特徴付けられる。
【0021】
本発明は、癌の治療および/または診断における本発明のポリペプチドの使用、または本発明に係る医薬組成物の使用も提供し、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌、から選択される。
【0022】
本発明は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドを含む診断用キットも提供し、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメインであり、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する細胞によって特徴付けられる癌のスクリーニングのために、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する。
【0023】
本発明の更なる実施形態は、上述のようなポリペプチドを提供し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、少なくとも2である。2つ以上の単一ドメイン抗体は、配列が異なる、または配列が同一である。
【0024】
本発明の特定の実施形態は、上述のようなポリペプチドを提供し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、3である。本発明の特定の実施形態は、上述のようなポリペプチドを提供し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、3であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:5と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0025】
[発明の詳細な説明]
定義
腫瘍関連抗原(TACAs)および型
癌細胞は、癌細胞表面の炭水化物構造の異常なレベル、および型を示すことで、正常細胞と区別されることができる。これらの炭水化物構造は、腫瘍関連炭水化物抗原(TACAs)として知られている。TACAsは、抗がんワクチンの設計のために有望な標的と見なされた。残念ながら、炭水化物単独では、癌治療に重要であるT細胞依存性免疫応答を誘導することができないため、低い免疫原性を引き起こすことのみ可能である。
【0026】
スフィンゴ糖脂質(GSLs)は、スフィンゴ脂質セラミドを含む脂質尾部に結合されたグリカン構造で構成される複合脂質のグループを表す。スフィンゴ糖脂質の基本構造は単糖であり、一般的にグルコースまたはガラクトースであり、単糖はセラミド分子に直接結合し、結果的に、それぞれグルコシルセラミド(グルコセレブロシド;GlcCer)またはガラクトシルセラミド(ガラクトセレブロシド;GalCer)をもたらす。GSLsは細胞膜に遍在しており、そこでGSLsは、シグナル伝達、接着、および細胞分化などの細胞プロセスにおいて、他の機能の間で関与することが知られている。腫瘍細胞または組織において高度に発現される特定のスフィンゴ糖脂質は、特定のモノクローナル抗体によって定義されており、そのことによって、腫瘍における異常なGSL合成に起因する腫瘍関連炭水化物抗原(TACAs)として識別される。腫瘍細胞は、GSLsで異常なグリコシル化を発現し、前駆体の蓄積につながる不完全な合成、または新しい構造を形成するためのグリカン残基の更なる付加のいずれかを示す。
【0027】
グロボトリオシルセラミド(Gb3Cer)およびグロボシド(Gb4Cer)は、P血液型システムの基礎を構成するが、ガラクトシルグロボシド(Gb5Cer)およびシアリルガラクトシルグロボシド(シアリルGb5Cer)は、それぞれステージ特異的胚性抗原-3(SSEA-3)、およびSSEA-4としても知られており、ヒト胚性幹細胞を定義するための細胞表面マーカーとして広範囲に使用される。
【0028】
グロボ(Globo)-シリーズGSLは腫瘍においても観察されている:グロボ(Globo)H(フコシルGb5Cer)は、例えば、子宮内膜癌、結腸癌、卵巣癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、前立腺癌、および乳癌などの多くの上皮癌で過剰発現している。
【0029】
本明細書において使用される「グロボ(Globo)H」は、式、Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1→O-cerの六糖に関し、構造:
【0030】
【0031】
「グロボ(Globo)H-陽性癌」は、細胞表面にグロボ(Globo)Hを発現する癌細胞を含む癌に関する。
研究では、癌細胞の表面にグロボ(Globo)Hの切断型または断片の存在も報告される。当該切断型は、Gb3(グロボトリアオース)、Gb4(グロボテトラオース)、およびGb5(グロボペンタオース)である(
図2)。
【0032】
「抗体」(Abs)および「免疫グロブリン」(Igs)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は、特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体および一般に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、最も広い意味で互いに交換可能に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長または無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、多特異的(またはヘテロコンジュゲート(heteroconjugate))抗体(例えば、二重特異性抗体)、一価抗体、多価抗体、抗原-結合抗体断片(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rIgG、scFv断片、sdAbs、VHH)、抗体融合、および合成抗体(または抗体模倣物)を含む。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体であることができ、および/または親和性成熟させることができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、免疫応答を誘発することができる任意の物質として定義される。
本明細書で使用される場合、用語「免疫原性」は、免疫応答を刺激するための免疫原、抗原、またはワクチンの能力を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、抗体の、またはT細胞受容体の抗原結合部位に接触する抗原分子の部分として定義される。
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合」または「特異的に結合する(specifically binding)」または「特異的に結合する(binds specifically)」は、結合対(例えば、抗体および抗原)間の相互作用を指す。様々な例において、特異的結合は、約10-6モル/リットル、約10-7モル/リットル、または約10-8モル/リットル、またはそれ以下の親和性定数によって具体化されることができる。
【0035】
「結合親和性」は、一般に、分子の単一結合部位(例えば、抗体)と当該結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原など)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの当該パートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表されることができる。低親和性抗体は、一般に、抗原をゆっくりと結合し、および容易に解離する傾向があるが、一方、高親和性抗体は、一般に、抗原をより速く結合し、より長く結合されたまま残る傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、それらのいずれかは、本発明の目的に使用されることができる。特定の例示的な実施形態を以下に記述する。
【0036】
抗体の「機能的抗原結合部位」は、標的抗原を結合することができる部位である。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が得られる親抗体ほど強力である必要はないが、抗原を結合する能力は、抗原への抗体結合を評価するために公知の様々な方法のいずれか1つを使用して測定可能でなければならない。
【0037】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、ベクターが連結されている核酸分子に、他の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことを意図している。ある型のベクターは「プラスミド」であり、プラスミドは、付加的なDNA断片がライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターは、ファージベクターである。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、付加的なDNA断片は、ウイルスゲノムに結合され得る。ある種のベクターは、ベクターが導入される宿主細胞において自己複製することができる。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに挿入される(integrated)ことができ、そのことにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、ベクターが動作可能に連結される遺伝子に、遺伝子の発現を指示することができる。当該ベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」もしくは「組換えベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形である。本明細書において、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、「プラスミド」および「ベクター」を、交換可能に使用してもよい。
【0038】
本明細書において交換可能に使用される「組換えポリヌクレオチド」または「組換え核酸分子」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基、および/またはそれらの類似体、またはDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込まれることができる任意の基質であることができる。ポリヌクレオチドは、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびメチル化ヌクレオチドの類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの集合前または後に加えられてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって妨げられてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、標識との結合などによって、合成後にさらに修飾されてもよい。他の型の修飾は、例えば、「キャップ」、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの類似体との置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)、および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有するものなど、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジンなど)などの懸垂(pendant)部分を含むもの、挿入剤(intercalator)(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された結合を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、およびポリヌクレオチドの未修飾形態、を含む。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えば、ホスホン酸基、リン酸基などによって置き換えてもよく、標準的な保護基によって保護してもよく、または付加的なヌクレオチドへの付加的な結合を調製するために活性化してもよく、または固体支持体もしくは半固体支持体に結合してもよい。5’末端OHおよび3’末端OHは、リン酸化されることができる、またはアミンもしくは1個から20個の炭素原子の有機キャッピング基部分と置換されることができる。他のヒドロキシルも、標準的な保護基に誘導体化されてもよい。
【0039】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、必ずしもそうではないが、一般的に長さが約200ヌクレオチド未満であり、短く、一般的に一本鎖である、合成ポリヌクレオチドを一般的に指す。用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、互いに排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、オリゴヌクレオチドにも同様に、および完全に適用可能である。
【0040】
「グロボ(globo)-シリーズグリカン結合単一ドメイン抗体(sdAb)」または「グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグロボ-シリーズグリカンを結合するsdAb」は、sdAbが標的グリカンを結合することにより診断用薬および/または治療薬として有用であるように、十分な親和性を有するグロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5グロボから選択されるグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合するsdAbを指す。「グロボ(Globo)H結合単一ドメイン抗体(sdAb)」または「グロボ(Globo)Hを結合するsdAb」は、sdAbがグロボ(Globo)Hを結合することにより診断用薬および/または治療薬として有用であるように、十分な親和性を有するグロボ(Globo)Hを結合するsdAbを指す。「Gb3結合単一ドメイン抗体(sdAb)」または「Gb3を結合するsdAb」は、sdAbがGb3を結合することにより診断用薬および/または治療薬として有用であるように、十分な親和性を有するGb3を結合するsdAbを指す。「Gb4結合単一ドメイン抗体(sdAb)」または「Gb4を結合するsdAb」は、sdAbがGb4を結合することにより診断用薬および/または治療薬として有用であるように、十分な親和性を有するGb4を結合するsdAbを指す。「Gb5結合単一ドメイン抗体(sdAb)」または「Gb5を結合するsdAb」は、sdAbがGb5を結合することにより診断用薬および/または治療薬として有用であるように、十分な親和性を有するGb5を結合するsdAbを指す。
【0041】
「完全長抗体」、「無傷抗体」または「全抗体」は、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書において互いに交換可能で使用される。
【0042】
「抗体断片」は、全長抗体の場合と同じ抗原を結合することができる全長抗体の一部を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2;二重特異性抗体;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFvなど)、単一ドメイン抗体;抗体断片から形成された多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。
【0043】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖(それぞれ、VHおよびVL)の可変ドメインは、同様の構造を一般的に有する。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であってもよい。特に、本明細書に開示される単一ドメイン抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、重鎖のアミノ末端ドメインを指す。
【0044】
用語「可変」は、可変ドメインの特定の部分が抗体間で配列において広く異なり、当該特定の抗原のための各特定の抗体の結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインにおける相補性決定領域(CDR)または超可変領域(HVR)と呼ばれる3つの部分に集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、4つのFR領域をそれぞれ含み、主にベータシート構造を採用し、3つのCDRによって接続され、そのことは、ループ接続を形成し、場合によってはベータシート構造の一部を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域によって、他の鎖からのCDRと近接して結合し、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,免疫学的興味におけるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、国立衛生研究所(National Institute of Health)、メリーランド州ベセスダ(1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、例えば、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など、さまざまなエフェクター機能を示す。
【0045】
本明細書で使用される「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変である、および/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインにおける各領域を指す。一般的に、天然抗体は、6つのHVRを有する4つの鎖を含み、6つのHVRのうちの3つは重鎖可変ドメイン、VH(H1、H2、H3)において、および3つは軽鎖可変ドメイン、VL(L1、L2、L3)において存在する。単一ドメイン抗体は、重鎖可変ドメインにおいて3つのHVRのみを含む。HVRは、超可変ループからの、および/または「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含む。別段の指示がない限り、可変ドメインにおけるHVR残基および他の残基(例えば、FR残基など)は、Kabat et al.,1991に従って本明細書において番号付けされる。
【0046】
本明細書において使用される「相補性決定領域」または「CDR」は、最高の配列変動性を有する、および/または抗原認識に関与する、可変ドメインにおける超可変領域内の領域を指す。一般的に、天然抗体は、6つのCDRを有する4つの鎖を含み6つのCDRのうちの3つは重鎖可変ドメイン、VH(H1、H2、H3)において、および3つは軽鎖可変ドメイン、VL(L1、L2、L3)において存在する。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2のアミノ酸残基50~56、L3のアミノ酸残基89~97、H1のアミノ酸残基31~35、H2のアミノ酸残基50~65、およびH3のアミノ酸残基95~102に存在する(Kabat et al.,1991)。例えば、本明細書に開示されるような単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠くため、CDR-H1またはCDR1、CDR-H2またはCDR2、およびCDR-H3またはCDR3のみを含む。
【0047】
「天然抗体」は、天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、約150ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変領域(VH)を有し、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれ、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変領域(VL)を有し、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれ、続いて定常軽鎖(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、当該定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのうちのいずれかの型に割り当てられてもよい。
【0048】
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、可能な変異抗体(例えば、自然に発生し、またはモノクローナル抗体の産生中に発生し、一般的に少量存在している変異を含む変異抗体)を除いて、同一であり、および/または同じエピトープを結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を一般的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定基に対して向けられる。したがって、用語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。
【0049】
「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、一方、重鎖および/または軽鎖の残りが異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0050】
「ヒト化抗体」は、非ヒトHVRからのアミノ酸配列、およびヒトFRからのアミノ酸配列を含むキメラ抗体を指す。ある実施形態において、ヒト化抗体は、単一ドメイン抗体を実質的に含み、ここで、すべての、または実質的にすべてのCDRは、非ヒト抗体のものに対応し、すべての、または実質的にすべてのFRは、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体の「ヒト化形態」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けている抗体を指す。
【0051】
「ヒト抗体」は、ヒトまたはヒト細胞によって産生される、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。
【0052】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般的に、配列におけるサブグループは、Kabat et al.,1991にあるようなサブグループである。
【0053】
本明細書で使用される「多価抗体」は、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体である。多価抗体は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般的に、天然配列のIgM抗体またはIgA抗体ではない。
【0054】
「多特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる結合部位を有し、各部位が異なる結合特異性を有する抗体である。多特異性抗体は、全長抗体、または抗体断片であることができ、異なる結合部位は、それぞれ異なる抗原に結合し得るか、または異なる結合部位は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。
【0055】
「Fc領域」または「Fc抗体断片」は、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含む二量体複合体を指し、ここで、C末端ポリペプチド配列は、無傷抗体のパパイン消化によって得られるものである。Fc領域は、天然の、または変異型のFc配列を含み得る。
【0056】
「Fab断片」は、軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン、並びに重鎖の可変ドメインおよび第一の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一の抗原結合部位を有する2つの同一の「Fab」断片、および残留「Fc」断片を生成し、「Fc」という名前は、容易に結晶化する能力を反映する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として架橋抗原の能力があるF(ab’)2断片を生じさせる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。F(ab’)2抗体断片は、元々、Fab’断片間にヒンジシステインを有する、Fab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的結合も、当技術分野で知られている。
【0057】
「Fv断片」は、完全な抗原認識および結合部位を含む抗体断片を指す。この領域は、緊密に会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなり、例えばscFvにおいて自然に共有結合することができる。この構成において、この領域は、各可変ドメインの3つのHVRが、VH-VL二量体の表面における抗原結合部位を明確にするために相互作用するということである。まとめると、6つのHVRまたはそのサブセットは、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、一般的に結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0058】
「単鎖Fv」または「scFv」は、抗体のVHドメイン、およびVLドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このことは、scFvが所望の抗原結合構造を形成することを可能にする。
【0059】
「二重特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VHおよびVL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖における2つのドメイン間で対形成することを可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは他の鎖の相補的ドメインと対形成することを強いられ、2つの抗原結合部位を作成する。
【0060】
「裸(Naked)抗体」は、異種部分(例えば、細胞毒性部分)または放射性標識に結合されていない抗体を指す。
「単離された」抗体は、自然環境の成分から同定され、および分離され、および/または回収されているものである。当該自然環境の汚染物質成分は、抗体のための研究利用、診断的または治療的用途を妨げることになる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含んでもよい。通常、単離された抗体は、少なくとも一つの精製ステップによって調製されるだろう。
【0061】
本明細書で使用される用語「実質的に類似」、「実質的に同じ」、「同等」、または「実質的に同等」は、2つの数値(例えば、1つは試験抗体に関連する数値、もう一つは参照抗体に関連する数値)の間の十分に高度な類似性を指し、例えば、当業者は、2つの値の間の差が、前記値(例えば:Kd値)によって測定される生物学的特徴の関連の中で、生物学的および/または統計的有意性がほとんどない、または全くないとみなすであろう。前記2つの値の間の差は、参照/比較(comparator)分子の値の関数として、例えば、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、および/または約10%未満である。
【0062】
本明細書で使用される「実質的に異なる」は、2つの数値(一般的に、1つは分子に関連する数値、もう一つは参照分子に関連する数値)の間の十分に高度な違いを指し、例えば、当業者は、2つの値の間の差が、前記値(例えば:Kd値)によって測定される生物学的特徴の関連の中で、統計的有意性があるとみなすであろう。前記2つの値の間の差は、参照/比較分子の値の関数として、例えば、約10%より大きい、約20%より大きい、約30%より大きい、約40%より大きい、および/または約50%より大きい。
【0063】
本発明は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合する。
【0064】
本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:137、およびSEQ ID NO:138からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する(表4)。好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:5と少なくとも90%の配列同一性を有する(表4)。本発明の好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:3と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:7と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:9と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:11と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:13と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:15と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:17と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の更に他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:136と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の更なる実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:137と少なくとも90%の配列同一性を有する。本発明の他の更なる実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:138と少なくとも90%の配列同一性を有する。
前記配列SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:137、およびSEQ ID NO:138(sdAbまたはVHH)は、グロボ(Globo)Hグリカンに対して免疫化されているアルパカ(ビクーニャ パコス(Vicugna Pacos))の重鎖抗体に由来する。
【0065】
本発明は、前記ポリペプチドをコードすることができる組換え核酸分子、並びに前記組換え核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞にも関する。
単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。単一ドメイン抗体は、例えば、WO1994004678A1に開示される。明確な理由のために、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体に由来する可変ドメインを、本明細書において、4本鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するためにVHHまたはsdAb(単一ドメイン抗体)と呼ぶ。当該VHH分子を、ラクダ科の種で、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、およびグアナコで産生される抗体に由来することができる。ラクダ科以外の種は、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を生産し得る。
【0066】
本発明の一態様によると、本明細書で使用される単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠き、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体、または前記可変ドメインの変異体である。
【0067】
sdAbは約13~15kDaであるため、IgG分子のほぼ10分の1の大きさである。sdAbは単一のポリペプチドであり、保存中および利用中の両方で非常に安定であり、そのことは、抗原-結合タンパク質の完全性は、昇温、凍結-融解サイクル、pHの変化、またはイオン強度、UV-照射、有害な化学物質および同様の物を含みうる保存および/または利用条件下で維持されることを意味する。さらに、sdAbは、プロテアーゼの作用に耐性がり、従来の抗体に該当しない。さらに、本発明に係る単一ドメイン抗体は、インビトロ(in vitro)で、高収率で生成することが容易であり、適切に折りたたまれ、および機能的である。さらに、アルパカ、またはより一般的にはラクダ科動物において生成された抗体は、抗体ライブラリーの使用を介して、またはラクダ科動物以外の哺乳類の免疫化によって、インビトロ(invitro)で生成された抗体によって認識されるもの以外のエピトープを認識するであろう(WO2005044858A1)。結果として、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、またはGb5に対するsdAbは、従来の抗体よりもより効率的に標的抗原と相互作用し得、それによって、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、またはGb5をはるかに高い効率で発現する細胞によって特徴付けられる癌の検出または治療を可能にする。sdAbは、例えば腔や溝などの異常なエピトープに結合することが知られているため(WO 2005044858A1)、当該抗体の親和性は治療的治療に適し得る。
【0068】
したがって、一般的に、単一ドメイン抗体は、(一般的な)構造を有するアミノ酸配列として定義されることができ、
【0069】
【0070】
ここで、FR1からFR4は、フレームワーク領域1からフレームワーク領域4をそれぞれ指し、CDR1からCDR3は、相補性決定領域1から相補性決定領域3をそれぞれ指す。
【0071】
したがって、本発明に係る「単一ドメイン抗体」は、FR1~FR4およびCDR1-CDR3を含むアミノ酸配列、またはそれらの変異体配列を含み、並びにグロボ(globo)-シリーズスフィンゴ脂質に対する単一ドメイン抗体の結合特異性は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列によって与えられる。
【0072】
本発明において開示される単一ドメイン抗体のFR1~FR4およびCDR1~CDR3の配列は、SEQ ID NO:64~126、157~177である。FR領域およびCDR領域における注釈は、カバット(Kabat)による特有のナンバリングシステムに基づく。
【0073】
したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドにも向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記単一ドメイン抗体は、相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、ここで:
(a)CDR1は、SEQ ID NO:64~72、157~159、またはそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)CDR2は、SEQ ID NO:73~81、160~162、またはそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)CDR3は、SEQ ID NO:82~90、163~165、またはそれらの変異体から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0074】
本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記単一ドメイン抗体は、相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、ここで:
(a)CDR1は、SEQ ID NO:64~72、157~159、から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
(b)CDR2は、SEQ ID NO:73~81、160~162、から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
(c)CDR3は、SEQ ID NO:82~90、163~165、から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
グロボ(Globo)Hは本発明に係る主要な標的である。標的に対する単一ドメイン抗体は、10-6Mを超える親和性で前記標的に結合することができる単一ドメイン抗体を意味する。
【0076】
標的は、前記主要な標的の断片でもあり得る。したがって、標的は、前記標的の断片でもあり、免疫応答を誘発することができる。標的は、前記標的の断片であり、全長標的に対して産生される単一ドメイン抗体に結合することができる。主要な標的グロボ(Globo)Hの好ましい断片は、Gb3、Gb4、およびGb5である。
【0077】
グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるスフィンゴ糖脂質への単一ドメイン抗体の結合は、好ましくは高い親和性で起こり、一般的に、単一ドメイン抗体とグロボ(globo)-シリーズ標的グリカンとの間の結合の解離定数は、10-5M未満であり、より好ましくは、解離定数は、10-6M未満であり、さらにより好ましくは、解離定数は、10-7M未満であり、最も好ましくは、解離定数は、10-8M未満である。あるいは、単一ドメイン抗体とグロボ(Globo)Hとの間の結合の解離定数は、10-5M未満であり、より好ましくは、解離定数は、10-6M未満であり、さらにより好ましくは、解離定数は、10-7M未満であり、最も好ましくは、解離定数は、10-8M未満である。あるいは、単一ドメイン抗体とGb3との間の結合の解離定数は、10-5M未満であり、より好ましくは、解離定数は、10-6M未満であり、さらにより好ましくは、解離定数は、10-7M未満であり、最も好ましくは、解離定数は、10-8M未満である。あるいは、単一ドメイン抗体とGb4との間の結合の解離定数は、10-5M未満であり、より好ましくは、解離定数は、10-6M未満であり、さらにより好ましくは、解離定数は、10-7M未満であり、最も好ましくは、解離定数は、10-8M未満である。あるいは、単一ドメイン抗体とGb5との間の結合の解離定数は、10-5M未満であり、より好ましくは、解離定数は、10-6M未満であり、さらにより好ましくは、解離定数は、10-7M未満であり、最も好ましくは、解離定数は、10-8M未満である。
【0078】
「変異体配列」
本発明の一態様によると、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグリカンに結合するポリペプチドは、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグリカンに結合する全長ポリペプチドの変異体配列であり得る。本発明の一態様によると、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグリカンに結合するポリペプチドは、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグリカンに結合する全長ポリペプチドの配列を含み得る。
【0079】
本発明の一態様によると、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択されるグリカンに結合するポリペプチドに含まれる単一ドメイン抗体は、完全な単一ドメイン抗体(例えば、sdAbまたはVHH)またはその変異体配列であり得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、本発明における変異体配列は、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含んでもよく、これは、参照ポリペプチドとも呼ばれる未修飾の親ポリペプチドと比較して、本発明のポリペプチドの機能的特徴を実質的に変えない。
【0081】
本発明に係る変形体配列は、例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、グアナコなどの他のラクダ科の種に存在する配列であり得る。
親配列と比較した変異体配列におけるアミノ酸の欠失数または置換数は、好ましくは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸である。
【0082】
変異体配列が配列同一性を示す場合、それは、親配列との例えば70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%を超える配列同一性など、高い配列同一性を示す変異体配列を意味し、好ましくは、親配列の類似の特性、すなわち親和性によって特徴付けられ、前記同一性は以下に記述されるように計算される。
【0083】
「配列同一性」の割合は、参照配列の全長における「比較ウィンドウ(comparison window)」にわたって2つの最適に整列された核酸またはポリペプチド配列を比較することによって決定される。本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適に整列された後の参照配列と変異体配列との間の最適な配列を指し、ここで、比較ウィンドウ内の変異体核酸またはポリペプチド配列は、最適な配列のために、参照配列(参照配列は、付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、一般的に5~15パーセント、または10~12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。同一性割合は、両方の配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、一致する位置の数を得て、一致する位置の数を参照配列の位置の総数(すなわち、アミノ酸またはヌクレオチドの全長)で割り、結果に100を掛けることによって配列同一性の割合を得る。2つの核酸またはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が上述のように最適に整列されたときに同じである場合、「同一」であると言われる。
【0084】
あるいは、変異体配列は、以下の式:
Ser、Thr、Gly、およびAsnによって置換されるSer;
Arg、His、Gin、Lys、およびGluのいずれかによって置換されるArg;
Leu、Ile、Phe、Tyr、Met、Valのいずれかによって置換されるLeu;
Pro、Gly、Ala、およびThrのいずれかによって置換されるPro;
Thr、Pro、Ser、Ala、Gly、His、およびGinのいずれかによって置換されるThr;
Ala、Gly、Thr、およびProのいずれかによって置換されるAla;
Val、Met、Tyr、Phe、Ile、およびLeuのいずれかによって置換されるVal;
Gly、Ala、Thr、Pro、およびSerのいずれかによって置換されるGly;
Ile、Met、Tyr、Phe、Val、およびLeuのいずれかによって置換されるIle;
Phe、Trp、Met、Tyr、lie、Val、およびLeuのいずれかによって置換されるPhe;
Tyr、Trp、Met、Phe、Ile、Val、およびLeuのいずれかによって置換されるTyr;
His、Glu、Lys、Gin、Thr、およびArgのいずれかによって置換されるHis;
Gin、Glu、Lys、Asn、His、Thr、およびArgのいずれかによって置換されるGln;
Asn、Glu、Asp、Gin、およびSerのいずれかによって置換されるAsn;
Lys、Glu、Gln、His、およびArgのいずれかによって置換されるLys;
Asp、Glu、およびAsnのいずれかによって置換されるAsp;
Glu、Asp、Lys、Asn、Gln、His、およびArgのいずれかによって置換されるGlu;
Met、Phe、Ile、Val、Leu、およびTyrのいずれかによって置換されるMet
に従って、親配列の任意の位置数で許容される置換から生じる任意のアミノ酸配列であり得る。
【0085】
本明細書で使用される変異体は、各フレームワーク領域FRおよび各相補性決定領域CDRが、参照配列における対応する領域と少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは90%の同一性、さらにより好ましくは95%の同一性を示す配列であることもできる。この場合において、配列同一性は、FR1変異体対FR1参照、CDR1変異体対CDR1参照、FR2変異体対FR2参照、CDR2変異体対CDR2参照、FR3変異体対FR3参照、CDR3変異体対CDR3参照、FR4変異体対FR4参照について上述のように決定される。
【0086】
他の実施形態において、上記の抗原-結合タンパク質またはその変異体のいずれかをコードする組換え核酸配列も、本発明の一部である。
本発明は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:137、およびSEQ ID NO:138からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のポリペプチドをコードする組換え核酸分子を提供する。
【0087】
したがって、本発明は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141(表4)の1つ以上に記載の核酸配列、またはそれらの変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:2に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:4に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:6に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:8に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:10に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:12に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:14に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:16に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:18に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:139に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:140に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。本発明は、SEQ ID NO:141に記載の核酸配列、またはその変異体を含む組換え核酸分子を提供する。
【0088】
さらに、本発明は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141の1つ以上に記載される1つ以上の組換え核酸分子またはそれらの変異体を含む宿主細胞を提供する。特に、本発明は、SEQ ID NO:6に記載の1つ以上の組換え核酸分子、またはその変異体を含む細胞を提供する。
【0089】
別の態様において、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子およびその変異体を提供し、ここで、当該変異体組換え核酸分子は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141のいずれかに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有し、配列同一性の割合は、上述のように決定される。これらの値は、限定的であることを意図されておらず、列挙される割合間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。具体的には、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子およびその変異体を提供し、ここで、当該変異体組換え核酸分子は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141のいずれかに対して、少なくとも80%の配列同一性を共有する。より具体的には、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子およびその変異体を提供し、ここで、当該変異体組換え核酸分子は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141のいずれかに対して、少なくとも85%の配列同一性を共有する。更により具体的には、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子およびその変異体を提供し、ここで、当該変異体組換え核酸分子は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141のいずれかに対して、少なくとも90%の配列同一性を共有する。更により具体的には、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子およびその変異体を提供し、ここで、当該変異体組換え核酸分子は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141のいずれかに対して、少なくとも95%の配列同一性を共有する。更により具体的には、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子およびその変異体を提供し、ここで、当該変異体組換え核酸分子は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:139、SEQ ID NO:140、およびSEQ ID NO:141のいずれかに対して、少なくとも98%の配列同一性を共有する。
【0090】
任意の当該配列に相補的なポリヌクレオチドまたは核酸分子も、本開示に含まれる。核酸分子は、一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であってもよく、およびDNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であってもよい。RNA分子は、イントロンを含み、1対1の方法でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子を含む。付加的なコード配列または非コード配列は、本開示のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、存在する必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持材料に連結してもよいが、連結する必要はない。
【0091】
核酸分子は、天然の配列(すなわち、抗体または抗体の一部をコードする内因性配列)を含み得る、または当該配列の変異体を含み得る。
核酸変異体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに特異的に結合するコードされたポリペプチドの免疫反応性が、参照の天然免疫反応性ポリペプチドと比較して実質的に異ならないように、1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する効果は、一般に、本明細書に記述されるように評価され得る。いくつかの実施形態において、核酸変異体は、参照の天然の単一ドメイン抗体、またはその一部をコードする核酸配列に対して、少なくとも約70%の同一性、いくつかの実施形態において、少なくとも約80%の同一性、いくつかの実施形態において、少なくとも約85%の同一性、いくつかの実施形態において、少なくとも約90%の同一性、およびいくつかの実施形態において、少なくとも約95%の同一性を示し、ここで、配列同一性の割合は、上述のように決定される。これらの値は、限定的であることを意図されておらず、および列挙される割合間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0092】
本開示における組換え核酸分子を、化学合成、組換え法、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当技術分野でよく知られており、本明細書において詳細に説明される必要はない。当業者は、所望のDNA配列を生成するために、本明細書において提供される配列、および市販のDNA合成装置を使用することができる。組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドを、適切なベクターに挿入することができ、次に、ベクターを、本明細書でさらに記述されるように、複製および増幅のために適切な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドを、当技術分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に挿入してもよい。細胞は、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F-交配(mating)またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入されることによって形質転換される。導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非統合ベクター(例えば、プラスミドなど)として細胞内に維持されることができる、または宿主細胞ゲノムに統合されることができる。そのように増幅されたポリヌクレオチドは、当技術分野でよく知られている方法によって宿主細胞から単離されることができる。
【0093】
適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、例えば、プロモーター、エンハンサー、および他の転写調節配列などの様々な成分を含むことができる。ベクターは、抗体可変ドメインの異なるベクターへの続くクローニングを可能にするように構築され得る。適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得る、または当技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用することを意図される宿主細胞に従って異なり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼのための単一の標的を有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択することに使用されることができるマーカーのための遺伝子を保有し得る。適切な例は、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、ブルースクリプト(Bluescript)(例えば、pBS SK+、など)および当該誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、およびシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28など、を含む。これらの、および多くの他のクローニングベクターは、メルク社(Merck)、バイオラッド社(BioRad)、ストラタジーン社(Strategene)、およびインビトロジェン社(Invitrogen)などの商用ベンダーから入手可能である。
【0094】
さらに、本発明は、本明細書に開示される単一ドメイン抗体またはその変異体のいずれかをコードする核酸配列を含む発現ベクター、および当該発現ベクターを含む宿主細胞も想定する。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可欠な部分として、宿主細胞で複製可能でなければならないことを暗示する。ベクター成分は、一般的に、次の、単一配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、適切な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、およびターミネーターなど)の1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。発現(すなわち、翻訳)のために、1つ以上の翻訳制御要素、例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および終止コドンなども通常必要とされる。
【0095】
目的の組換え核酸分子を含むベクター、および/または組換え核酸分子自体を、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を用いるトランスフェクション、微粒子銃、照射、リポフェクション、および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性病原体である場合など)を含む、いくつかの適切な方法のいずれかによって宿主細胞に導入することができる。特定の手順の選択は、宿主細胞の特徴にしばしば依存するであろう。
【0096】
適切な発現システムは、細菌または酵母における恒常的および誘導的発現システム、例えば、バキュロウイルス、セムリキ森林熱ウイルスおよびレンチウイルス、などのウイルス発現システム、または昆虫もしくは哺乳動物細胞における一過性トランスフェクションを含む。特に好ましくは、大腸菌(E.coli)における組換えタンパク質のクローニングおよび発現のためのpET発現ベクター(ノバジェン社(Novagen))である。pETシステムにおいて、標的遺伝子は、強力なバクテリオファージT7転写および任意に翻訳シグナルの制御下で、pETプラスミドでクローン化され、発現は、宿主細胞においてT7RNAポリメラーゼの供給源を提供することによって誘導される。T7 RNAポリメラーゼは、非常に選択的であり、および活性があるので、完全に誘導されると、ほとんど全ての細胞の供給源が標的遺伝子発現に変換され、所望の生成物は、誘導の数時間後に全細胞タンパク質の50%以上を含むことができる。pET-22b(+)ベクターは、潜在的なペリプラズム局在化のためのN末端pelBシグナル配列、さらに任意のC-末端ヒス・タグ(His・Tag)(登録商標)配列を有する。
【0097】
適切な宿主細胞は、大腸菌(E.coli)、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus lactis)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、などを含む。適切な動物宿主細胞は、HEK293、COS、S2、CHO、NSO、DT40などを含む。特に好ましくは、アークティック エクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)大腸菌(E.Coli)細胞である。抗原結合タンパク質のクローニング、発現および/または精製を、バキュロウイルス感染昆虫細胞系を含む、当業者によって知られている技術に従って行うことができる。
【0098】
[単一ドメイン抗体の機能化]
単一ドメイン抗体の任意の多価性および多重特異性に加えて、単一ドメイン抗体(sdAbs)の重要な利点は、単一のDNAプラスミドでエフェクター分子と一緒に容易にクローン化され、および発現される能力である。これらの拡張(extensions)は、抗原結合自体以外の幅広い適用においてsdAbsの使用を可能にする。単一ドメインの性質のおかげで、sdAbsは、分子工学または生物化学工学を通じて、様々なエフェクター機能を容易に備えることができる。適切なエフェクター分子は、例えば、抗体依存性細胞毒性の活性化、寄生虫および癌細胞膜の溶解、インビトロ(in vitro)/インビボ(in vivo)イメージング、および診断など、のような多くの異なる機能を有する。本発明において特に好ましいエフェクター分子は、抗癌ペプチド、溶解性ペプチド、L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース、ジニトロフェニル、血清安定化分子、蛍光分子、リン光性分子、化学発光分子、生物発光分子、放射性同位体、発色団、アジピン酸ジスクシンイミジル、ヒトFc抗体断片である。
【0099】
したがって、本発明の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体、または前記可変ドメインの変異体、を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、および更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、
ここで、エフェクター分子は、抗癌ペプチド、溶解性ペプチド、L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース、ジニトロフェニル、血清安定化分子、蛍光分子、リン光性分子、化学発光分子、生物発光分子、放射性同位体、発色団、アジピン酸ジスクシンイミジル、ヒトFc抗体断片、からなる群から選択される。
【0100】
具体的には、エフェクター分子は、好ましくは、単一ドメイン抗体のC末端に連結される。さらに、エフェクター分子は、好ましくは、リンカーを用いて単一ドメイン抗体のC末端に連結される。好ましいリンカーは、GS_リンカー(SEQ ID NO:127:GGGGSGGGGS)、GSAA_リンカー(SEQ ID NO:128:GGGGSEAAAKGGGGS)、SRGS_リンカー(SEQ ID NO:178:SRGSSGSSSSGSSGGSG)、およびGGGGS_リンカー(SEQ ID NO:228:GGGGSGGGGSGGGGS、を含む群から選択される。好ましくは、酵素制限部位に対応する2つのアラニンおよび2つのアミノ酸「XX」の配列を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸であることができる「短い接続配列」(SEQ ID NO:227:AAXX、ここで、Xは、任意のアミノ酸であることができる)は、リンカー配列の前に単一ドメイン抗体のC末端に連結される。
【0101】
「抗癌ペプチド」は、植物、動物、および他の生物において、それらの抗菌活性のために最初に発見された発見されたペプチドである。これらのペプチドは、膜相互作用を通じて細菌および癌細胞を殺すことができる。細菌細胞またはガン細胞と、健康な哺乳類細胞との間の違いは、膜の電荷において明らかにされる。細菌細胞および癌細胞の両方は、全体的に負に帯電された膜を有する。細菌細胞の膜と癌細胞の膜との間の類似性のために、膜破壊が起こり、細胞死を誘導するメカニズムも類似していると考えられる。抗癌活性を有する抗菌ペプチドの例は、LL-37、ラクトフェリシン、または血小板第4因子(PF4)のC-末端である。単一ドメイン抗体(sdAb)および抗癌ペプチドは、好ましくはリンカーを用いて結合されて発現し、リンカーは、好ましくは、(Gly4Ser)nまたは(Gly2Ser)nユニットの異なる反復、または配列GGGGSEAAAKGGGGSの異なる反復である。好ましいリンカーは、GS_リンカー(SEQ ID NO:127:GGGGSGGGGS)、GSAA_リンカー(SEQ ID NO:128:GGGGSEAAAKGGGGS)、およびSRGS_リンカー(SEQ ID NO:178:SRGSSGSSSSGSSGGSG)である。より具体的には、リンカーおよび抗癌ペプチドは、sdAbのC末端に連結される。さらに、酵素制限部位に対応する2つのアラニンおよび2つのアミノ酸「XX」の配列を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸であることができる「短い接続配列」(SEQ ID NO:227:AAXX、ここで、Xは、任意のアミノ酸であることができる)は、好ましくは、リンカー配列の前に単一ドメイン抗体のC末端に連結される。
【0102】
本発明に係る「溶解性ペプチド」は、修飾システイン欠失タキプレシン(Tachyplesin)-I(KWFRVYRGIYR、SEQ ID NO:130)、BMAP28A(GGLRSLGRKILRAWKKYGPIIVPIIRIG、SEQ ID NO:131)、ポリビア(Polybia)-MP1(IDWKKLLDAAKQIL、SEQ ID NO:132)を含む。
【0103】
タキプレシン-Iは、カブトガニから分離された抗菌ペプチドであり、細胞膜を透過する能力を用いて、さまざまな種類の細菌の増殖を阻害する。以前に報告されたシステインを欠く線状タキプレシン類似体(システイン欠失タキプレシン、CDT、KWFRVYRGIYRRR-CONH2)を初めとして、Wangらの研究(Int J Pept Res Ther.2014)は、CDTからの2つのC末端アルギニン残基の除去が、抗菌活性を保持するが、溶血性が減少し、治療薬に望まれる選択性を有するペプチド([des-Arg12,13]CDT)をもたらすことを示す。本明細書で使用される場合、修飾システイン欠失タキプレシン-Iは、配列KWFRVYRGIYRを指す。
【0104】
ポリビア-MP1は、既知の抗がん特性を有するブラジルのハチ毒(Brazilian wasp venom)からの溶解性ペプチドである。ポリビア-MP1で実施されたインビトロ(in vitro)研究は、急性細胞傷害、膨張、および膜の破壊または膜貫通孔の形成を介した破裂の結果としての壊死によって引き起こされた殺傷の証拠を提供する。
【0105】
BMAP-28は、カテリシジンファミリーのウシ抗菌ペプチドであり、ヒト腫瘍細胞株および活性化されているが休止していないヒトリンパ球において、膜透過性および死を誘導する。
【0106】
L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース(αGal)およびジニトロフェニル(DNP)は、単一ドメイン抗体に存在しない断片結晶化可能(Fc)領域に関係なく、抗体依存性細胞傷害を成功裏に開始することができる。確かに、L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース(αGal)およびジニトロフェニル(DNP)は、腫瘍細胞に対して天然に産生された抗体を動員することができる。このようにして標的化された細胞は、免疫系によって異物として認識され、破壊のマークが付けられる。腫瘍細胞に対する内因性抗体の動員は、2つの抗体エフェクターメカニズムである補体依存性細胞障害(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)による破壊を可能にする。
【0107】
【0108】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される少なくとも一つの溶解性ペプチドである。
【0109】
本発明の特に好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、溶解性ペプチドは、リンカーを用いて単一ドメイン抗体のC末端に結合される。好ましいリンカーは、GS_リンカー(SEQ ID NO:127:GGGGSGGGGS)、GSAA_リンカー(SEQ ID NO:128:GGGGSEAAAKGGGGS)、およびSRGS_リンカー(SEQ ID NO:178:SRGSSGSSSSGSSGGSG)を含む群から選択される。好ましくは、短い接続配列(SEQ ID NO:227:AAXX、ここで、Xは、任意のアミノ酸であることができる)は、リンカー配列の前に単一ドメイン抗体のC末端に連結される。
【0110】
本発明の特に好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、溶解性ペプチドは、リンカーを用いて単一ドメイン抗体のC末端に結合される。好ましいリンカーは、GS_リンカー(SEQ ID NO:127:GGGGSGGGGS)、GSAA_リンカー(SEQ ID NO:128:GGGGSEAAAKGGGGS)、およびSRGS_リンカー(SEQ ID NO:178:SRGSSGSSSSGSSGGSG)を含む群から選択される。好ましくは、短い接続配列(SEQ ID NO:227:AAXX、ここで、Xは、任意のアミノ酸であることができる)は、リンカー配列の前に単一ドメイン抗体のC末端に連結される。
【0111】
本発明の更に好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:19~63、142~156、179~226から選択される配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0112】
本発明の更に特に好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、溶解性ペプチドは、GS_リンカー(SEQ ID NO:127:GGGGSGGGGS)、GSAA_リンカー(SEQ ID NO:128:GGGGSEAAAKGGGGS)、およびSRGS_リンカー(SEQ ID NO:178:SRGSSGSSSSGSSGGSG)を含む群から選択されるリンカーを用いて単一ドメイン抗体のC末端に結合され、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:19~63、142~156、179~226から選択される配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。好ましくは、短い接続配列(SEQ ID NO:227:AAXX、ここで、Xは、任意のアミノ酸であることができる)は、リンカー配列の前に単一ドメイン抗体のC末端に連結される。
【0113】
言い換えると、本発明の更に特に好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、更に、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、溶解性ペプチドは、GS_リンカー(SEQ ID NO:127:GGGGSGGGGS)、GSAA_リンカー(SEQ ID NO:128:GGGGSEAAAKGGGGS)、およびSRGS_リンカー(SEQ ID NO:178:SRGSSGSSSSGSSGGSG)を含む群から選択されるリンカーを用いて単一ドメイン抗体のC末端に結合され、ここで、短い接続配列(SEQ ID NO:227:、ここで、Xは、任意のアミノ酸であることができる)は、リンカー配列の前に単一ドメイン抗体のC末端に連結され、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:19~63、142~156、179~226から選択される配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0114】
sdAbは、Fc領域を欠くため、Fc受容体-依存性エフェクター機能自体を誘導することはできない。しかしながら、ヒトFc抗体断片は、新生児Fc受容体またはFcRnと相互作用する能力を回復するために単一ドメイン抗体に連結され、または融合されることができる。sdAb-Fc融合コンストラクトの重要な利点は、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、および補体依存性細胞傷害(CDC)などのFc受容体依存性エフェクター機能の導入である。様々なヒトおよびマウス抗体サブクラスのFc領域(CH2-CH3)は、sdAbに遺伝的に融合されている。sdAbのFc抗体断片への連結または融合は、血清半減期を大幅に増加させ、親和性効果を通じて標的抗原結合を高めるという利点もある。
【0115】
単一ドメイン抗体の安定化
sdAbの半減期を延長するための別の戦略は、sdAbを、長寿命血清タンパク質に、またはこれらの長寿命タンパク質を標的とする構成単位に結合することである。血清アルブミンの長い血清半減期は、例えば、細胞取り込み後に異化作用から逃れる能力に起因する。他のアプローチは、sdAbをアルブミン結合sdAbに融合することからなる。
【0116】
したがって、本発明は、対象の1つ以上の血清タンパク質に対して向けられるある種の抗体(例えば、単一ドメイン抗体)をさらに含むポリペプチドにも関し、抗体は、前記ポリペプチドの循環において有意に延長された半減期を有する。血清タンパク質は、対象の血清またはその断片に見られる任意の適切なタンパク質であり得る。本発明の一態様において、血清タンパク質は、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリン、またはフィブリノーゲンである。例えば、標的抗原の効果的な治療および/または区画化に必要な半減期などの使用目的に応じて、抗体を上記の血清タンパク質の1つに対して向けることができる。
【0117】
単一ドメイン抗体に基づくCAR-T細胞療法
本明細書で使用される用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、T細胞膜貫通ドメインに連結される抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変フラグメント(scFv)またはsdAb)を含む人工的に構成されたハイブリッドタンパク質またはポリペプチドを指し、これは、次に、T細胞内シグナル伝達または活性化ドメインに連結され、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間の連結は、ヒンジ領域を介して起こる。CARのドメイン、または他の機能的もしくは構造的配列、例えば、膜貫通ドメイン、または細胞内活性化もしくはシグナル伝達ドメインは、前記CARの要素またはモジュールと呼ばれる。
【0118】
CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、MHC非拘束性方法において、選択された標的に向けてT細胞特異性およびT細胞反応性を向け再指示(redirect)することができる。
【0119】
CAR T細胞の抗原認識モジュールは、エクトドメインとも呼ばれ、通常scFvであり、ヒンジ領域、膜貫通領域、共刺激ドメイン、および細胞質活性化ドメイン、例えば、CD3-ゼータ(zeta)またはFcRγ細胞内シグナル伝達ドメインなど、に連結される。しかしながら、scFvは、必ずしも効率的に折りたたまれるとは限らず、凝集する傾向がある可能性がある。対照的に、重鎖のみの抗体(VHHまたはsdAb)の可変領域は、従来のscFvに匹敵する親和性を有する小さく安定した単一ドメイン抗体断片である。
【0120】
癌治療のためのCAR T細胞を開発することにおける主な困難は、標的となる抗原の欠如である(Xie et al.,2018)。癌を治療するためのCAR T細胞標的として提案されるほとんどの抗原は、特定の癌の種類に限定されており、大多数の癌の癌特異的抗原に関する限られた情報は、不適切なCAR T細胞療法を提供する。
【0121】
したがって、本発明の特定の利点の態様は、様々な癌で発現され、および抗グリカンCAR T細胞を操作するために使用されることができるグロボ(Globo) H、Gb3、Gb4、またはGb5などのグロボ-シリーズグリカンを特異的に標的とするCARを提供することであり、CARは、その後、いくつかの異なる癌を治療するために使用されることができる。
【0122】
したがって、本発明の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、および、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結される。前記ポリペプチドは、T細胞キメラ抗原受容体であり、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインは、N-末端からC-末端の方向でキメラ抗原受容体に含まれる。
【0123】
言い換えると、本発明の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、並びに、N-末端からC-末端の方向で、少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結される。
【0124】
より具体的には、本発明の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、並びに、少なくとも一つの細胞外CD8-アルファヒンジ領域、少なくとも一つのCD8-アルファまたはCD28膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCD28、4-IBB、ICOS共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCD3-ゼータ細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結される。
【0125】
本発明の更なる実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:136、SEQ ID NO:137、およびSEQ ID NO:138からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0126】
本発明の更に好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、ヒト化単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する1つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化されることも開示される。
【0127】
本発明は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子にも向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、並びに少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結される。さらに、本発明は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含むベクター、および宿主細胞を提供し、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、並びに少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結される。
【0128】
本発明のより好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、癌の治療における使用のために、細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現する。
【0129】
本発明のより好ましい実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、癌の治療における使用のために、細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現し、ここで、癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0130】
キメラ抗原受容体のヒンジ領域は、通常、ヒトCD8-アルファ鎖(WO2016019300 A1の例示的なSEQ ID NO:4、またはUS 20160303166 A1に記載の断片)に由来する。
【0131】
キメラ抗原受容体の膜貫通ドメインは、原形質膜を通過し、および細胞外ドメインと細胞内シグナルドメインとを連結する。膜貫通ドメインの例は、ヒトCD28(例示的な配列:US 20160303166 A1のSEQ ID NO:4の残基153~179)、CD8-アルファ(WO2016019300 A1の例示的な配列SEQ ID NO:12)が含むが、これらに限定されない。
【0132】
細胞内活性化ドメインは、CAR T細胞のエフェクター機能の発揮に必要なシグナルを伝達する。より具体的には、細胞外ドメインが標的のグロボ(Globo) Hシリーズグリカンと結合すると、細胞外活性化ドメインは細胞の活性化に必要なシグナルを伝達する。細胞内活性化ドメインは、通常、ヒトCD3-ゼータ(WO2016019300 A1の例示的な配列SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20)である。
【0133】
本明細書で使用される「共刺激ドメイン」(CSD)は、記憶細胞の増殖、生存および/または発達を増強するCARの部分を指す。本発明のCARは、1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。各共刺激ドメインは、例えば、CD28(WO2016019300 A1の例示的な配列SEQ ID NO:44)、4-1BB(CD137、WO2016019300 A1の例示的な配列SEQ ID NO:14)、およびICOS(WO2016014553A1の例示的な配列SEQ ID NO:263)などの共刺激ドメインを含むことができる。
【0134】
キメラ抗原受容体を構築するための方法は、先行技術、例えば、US 20160303166 A1、WO2016014553 A1、Xie et al.PNAS2018などに記載されている。
【0135】
さらに、本発明は、遺伝子操作されたキメラ抗原受容体T-細胞(CAR T-細胞)を生成するための方法も記載し、以下の方法を含む:
a)少なくとも一つの単一ドメイン抗体を有するキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトを生成すること、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカン、キメラ抗原受容体における少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインを結合し、ここで、単一ドメイン抗体は、細胞外ヒンジ領域に連結される、
b)対象の血液から除去されたT細胞をトランスフェクションすること、
c)グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に認識するCAR T細胞を生成するためにT細胞において機能的CARを生成するCARコンストラクトを発現させること。
【0136】
本発明のCARを含み、発現し得る遺伝子組換えT細胞は、T-リンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、記憶T細胞(例えば、セントラル記憶T細胞(TCM)、エフェクター記憶細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞、造血幹細胞、および/または治療に関連する子孫を生じさせることができる多能性胚性/誘導性幹細胞を含むが、これらに限定されない。実施形態において、遺伝子組換え細胞は、自家細胞である。例として、本発明における個々のT-細胞は、CD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4-/CD8-、またはCD4+/CD8+であり得る。T-細胞は、CD4+/CD8-細胞およびCD4-/CD8+細胞の混合集団、または単一クローンの集団であり得る。本発明のCD4+T-細胞は、インビトロ(in vitro)で標的抗原を発現する細胞(すなわち、グロボ(Globo)Hシリーズグリカンを発現する癌細胞)と共培養されると、IL-2、IFNγ、TNFaおよび他のT細胞エフェクターサイトカインを産生し得る。本発明のCD8+T-細胞は、インビトロ(in vitro)で標的細胞(すなわち、グロボ(Globo)Hシリーズグリカンを発現する癌細胞)をと共培養されると、抗原-特異的標的細胞を溶解させ得る。
【0137】
最後に、本発明は、癌を有する対象を治療するための方法も記載し、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、前記癌を有する対象に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に認識するキメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)を投与することを含み、前記CAR T細胞は、本明細書に開示されるような、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体、少なくとも一つの細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つの膜貫通ドメイン、少なくとも一つの共刺激ドメイン、および少なくとも一つの細胞内活性化ドメインを含む機能的CARポリペプチドを、前記癌を有する対象を治療するために有効量で発現する。
【0138】
単一ドメイン抗体のヒト化
本発明における変異配列は、ヒト化されているグロボ(Globo)H、GB3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグリカンを特異的に結合する単一ドメイン抗体を含み得る。sdAbのヒト化は、投与時にヒト個体における望ましくない免疫反応の可能性をさらに減らすことを目的としている。本発明の一実施形態は、アルパカ抗体に基づかれる改変された単一ドメイン抗体に関し、ここで、標的に対するドメインの天然の親和性に影響を及ぼさないsdAbのアミノ酸残基は、ヒトに対するsdAb免疫原性を低下させるように改変される。
【0139】
より具体的には、本発明は、ヒトへの投与のために改変されたsdAb、およびヒトの疾患の治療における当該「ヒト化された」sdAbの使用に関する。本発明に係る単一ドメイン抗体をヒト化することは、単一ドメイン抗体が典型的な特徴を失うことなく、すなわち、ヒト化が、結果として生じる単一ドメイン抗体の、さらに、結果として生じる単一ドメイン抗体を含むポリペプチドの抗原結合能力にそれほど影響を与えることなく、ヒトコンセンサス配列に見られるようなヒト対応物によって、アルパカアミノ酸の一つ以上を置換するステップを含む。当該方法は、当業者に知られている。
【0140】
アルパカ単一ドメイン抗体、またはより一般的にはラクダ科単一ドメイン抗体のヒト化は、単一のポリペプチド鎖において限られた量のアミノ酸の導入、および突然変異誘発が必要である。
【0141】
したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、ヒト化単一ドメイン抗体である。
【0142】
一般に、ヒト化単一ドメイン抗体は、EP1687338 B1に記載されているように、アルパカ単一ドメイン抗体において、以下の残基のいずれかを、単独で、または組み合わせてのいずれかで置換することによって得られ:
FR1 位置1、5、11、28、および30で特徴アミノ酸、
FR2 位置44および45で特徴アミノ酸、
FR3 位置74、75、76、83、84、93および94で特徴アミノ酸、
FR4 位置103、104、108および111で特徴アミノ酸:
ここで、番号付けは、カバット ナンバリング(Kabat numbering)に従う。
【0143】
FR1、FR3、FR4の残基のヒト化は、単一ドメイン抗体の機能および安定性に最小限の影響を与えることになるが、一方、位置44および45でFR2の変異は、単一ドメイン抗体を安定化さえするであろう(Vincke et al.,J.Biol.Chem.2009)。しかしながら、EP 1687338 B1は、FR4でQ108Lの突然変異誘発が、大腸菌における生産レベルの低下をもたらしうることを報告する。位置108は、ラクダ類のVHHに溶媒暴露されるが、ヒト抗体において、この位置はVH-VL界面で埋もれる。極性非荷電Glnの代わりに非極性疎水性Leuの導入は、分子の固有の折り畳み/安定性に劇的な影響を与えることができる。FR2の位置37位および47位にある単一ドメイン抗体特徴残基は、抗原相互作用の完全性に大きな影響を与えるため、ヒト化することはできない(Vincke et la.,2009)。
【0144】
表1は、US 7807162 B2に記載されるように、本発明のアルパカsdAbの特徴残基、および最も密接に関連しているヒトVHドメインVH3の対応する位置でのアミノ酸残基を報告する。この表は、本明細書に開示されるアルパカ単一ドメイン抗体の位置103および111での特徴アミノ酸が、ヒトVH3の最も一般的な残基と同じであることを示す。
【0145】
したがって、本発明の更なる実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化される。
【0146】
したがって、ヒト化ポリペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ポリペプチドは、そこからの望ましくない免疫応答を予期せずに、および更なるヒト化の負担なしに、ヒトに直接投与され得る。本発明は、前記ヒト化ポリペプチドをコードすることができる組換え核酸にも関する。
【0147】
本発明の好ましい実施形態は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドであり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および9、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、並びに前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここで、エフェクター分子は、抗癌ペプチド、溶解性ペプチド、L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース、ジニトロフェニル、血清安定化分子、蛍光分子、リン光性分子、化学発光分子、生物発光分子、放射性同位体、発色団、アジピン酸ジスクシンイミジル、ヒトFc抗体断片からなる群から選択される。本発明のより好ましい実施形態は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドであり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、並びに前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここで、エフェクター分子は、修飾システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドである。
【0148】
【0149】
医薬組成物
「医薬組成物」は、有効成分の生物学的活性が効果的であるようにし、製剤が投与される対象に毒性のある追加の成分を含まない形態の製剤を指す。
【0150】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な」、「生理学的に耐容可能な」およびその文法的変形は、交換可能に使用され、材料は、例えば、吐き気、めまい、胃の不調、および同様のものなどの、望ましくない生理学的効果を生成することなく、哺乳動物に、または哺乳動物に対して投与することができることを示す。
【0151】
医薬組成物は、効果的な方法で単一ドメイン抗体を含む本発明のポリペプチドの投与を容易にするように設計される。
「薬学的に許容可能なビヒクル」は、それが投与される対象に対して無毒である、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能なビヒクルは、緩衝液、安定剤、または防腐剤を含むが、これらに限定されない。
【0152】
適切なビヒクルまたは賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、粉末糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、デンプン、アカシアガム、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、メスキートガム、フェヌグリークガム、ローカストビーンガム、ガッティガム、トラガカントガム、イノシトール、モラセス、マルトデキストリン、アイリッシュモスの抽出物、パンワーガム、イサポール(isapol)殻の粘液、ビーガム、カラマツアラボガラクタン、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギネート、ゼラチン、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、例えば、カルボポール(Carbopol)941、カルボポール980、カルボポール981などのカルボポールのようなポリアクリル酸、および例えば、ファーマガム(Pharmagum)(商標)(SPI ファーマグループ(Pharma Group);ニューキャッスル、デラウェア州)などのガムベース、および同様のものを含むが、これらに限定されない。典型的には、本発明の組成物は、約10重量%から約90重量%のビヒクル、賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む。
【0153】
好ましくは、医薬組成物は、約0.001重量%から約90重量%、好ましくは約0.01重量%から約75重量%、より好ましくは約0.1重量%から50重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%から10重量%の本発明のポリペプチドを含み、残りは適切な医薬ビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤からなる。
【0154】
医薬組成物は、粉末に、顆粒に、錠剤に、カプセルに、懸濁液に、エマルションに、シロップに、経口剤形に、外用製剤に、坐剤に、または例えば、通常の方法でエアロゾル化されるなど、無菌注射溶液の形態で、それぞれ製剤化されることができる。製剤化される場合、医薬組成物は、希釈剤または賦形剤、例えば、一般的に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤など、を使用して調製されることができる。
【0155】
医薬組成物において、経口投与のための固体調製物は、錠剤、ピル、粉末、顆粒、またはカプセルであってもよい。固体調製物は、賦形剤をさらに含んでもよい。賦形剤は、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、またはゼラチンであってもよい。さらに、固体調製物は、潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどをさらに含んでもよい。医薬組成物において、経口投与のための液体調製物は、最良の懸濁液、溶液、エマルション、またはシロップであってもよい。液体製剤は、水または流動パラフィンを含んでもよい。液体製剤は、賦形剤に関して、例えば、湿潤剤、甘味料、芳香剤または防腐剤を含んでもよい。非経口投与の目的のために、本発明のポリペプチドを含む組成物は、好ましくは蒸留水に溶解され、pHは、好ましくは約6から8に調整される。
【0156】
非経口投与のための本発明の組成物における有用な調製物は、無菌の水性および非水性溶媒、懸濁液およびエマルションも含む。有用な非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油、および注射可能な有機エステルを含む。
【0157】
本発明の実施形態は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤と共に、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドを含む医薬組成物であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する。
【0158】
本発明の他の実施形態は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤と共に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含み、および、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含む医薬組成物であり、ここで、エフェクター分子は、抗癌ペプチド、溶解性ペプチド、L-ラムノース、ガラクトース-α-1,3-ガラクトース、ジニトロフェニル、血清安定化分子、蛍光分子、リン光性分子、化学発光分子、生物発光分子、放射性同位体、発色団、アジピン酸ジスクシンイミジル、ヒトFc抗体断片からなる群から選択される。
【0159】
本発明の他の特定の実施形態は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤と共に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含み、および、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含む医薬組成物であり、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドである。
【0160】
本発明のより特定の実施形態は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤と共に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含み、および、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含む医薬組成物であり、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:19~63、142~156から選択される配列と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0161】
本発明の更なる実施形態は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤と共に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含む医薬組成物であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する1つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化される。わずかに言い換えると、本発明の一実施形態は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、および/または希釈剤と共に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つのヒト化単一ドメイン抗体を含むある種のポリペプチドを含む医薬組成物である。
【0162】
癌に対する単一ドメイン抗体の使用
本発明の他の実施形態は、癌の治療および/または診断における使用のための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチド、または、前記ポリペプチドを含む医薬組成物に向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現する。
【0163】
本発明の他の実施形態は、癌の治療および/または診断における使用のための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチド、またはその変異体、または、前記ポリペプチドを含む医薬組成物に関し、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合しここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現し、ここで、癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0164】
さらに、本発明の一態様は、癌の治療および/または診断における使用のための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドに向けられ、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ-シリーズグリカンを発現する。本発明の一実施形態をわずかに言い換えると、癌の治療および/または診断における使用のための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つのヒト化単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドに関し、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。
【0165】
さらに、本発明の一態様は、癌の治療および/または診断における使用のための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含む医薬組成物に向けられ、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。
【0166】
本発明の好ましい実施形態は、癌の治療および/または診断における使用のための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む医薬組成物であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0167】
本発明の更により好ましい実施形態は、癌の治療における使用のための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む医薬組成物であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、および前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。
【0168】
本発明の更により好ましい実施形態は、癌の治療における使用のための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む医薬組成物であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、および前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここで、エフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0169】
本発明の更なる実施形態は、癌の治療における使用のための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、および少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。
【0170】
本発明の他の更なる実施形態は、癌の治療における使用のための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、および、少なくとも一つの細胞外CD8-アルファヒンジ領域、少なくとも一つのCD8-アルファまたはCD28膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCD28、4-IBB、ICOS共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCD3-ゼータ細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。
【0171】
本発明の更なる実施形態は、癌の治療における使用のための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、および、少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0172】
本発明の他の更なる実施形態は、癌の治療における使用のための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドに向けられ、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、Globo(グロボ)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、および、少なくとも一つの細胞外CD8-アルファヒンジ領域、少なくとも一つのCD8-アルファまたはCD28膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCD28、4-IBB、ICOS共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCD3-ゼータ細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0173】
更に本明細書に記載されるのは、癌の治療のための方法であり、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、本明細書に開示される治療有効量のポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を前記癌に罹患している患者に投与することを含む。
【0174】
具体的には、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する治療有効量のポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を前記癌に罹患している患者に投与することを含み、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、および、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する。
【0175】
更に本明細書に記載されるのは、癌の治療のための方法であり、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、本明細書に開示される治療有効量のポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を前記癌に罹患している患者に投与することを含み、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0176】
具体的には、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化される。
【0177】
さらに、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、カバット ナンバリング(Kabat numbering)にしたがって、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0178】
より具体的には、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、および前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここでエフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドである。
【0179】
更により具体的には、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチド、または前記ポリペプチドを含む治療有効量の医薬組成物を、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化され、および前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここでエフェクター分子は、システイン欠失タキプレシン-I、BMAP28A、ポリビア-MP1を含む群から選択される溶解性ペプチドであり、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0180】
更に、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、および少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結される。
【0181】
更に、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、および少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、および少なくとも一つの細胞外CD8-アルファヒンジ領域、少なくとも一つのCD8-アルファまたはCD28膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCD28、4-IBB、ICOS共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCD3-ゼータ細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結される。
【0182】
更により具体的には、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、および少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0183】
更に、癌の治療のための方法が記載され、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現し、方法は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含む治療有効量のグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを、前記癌に罹患している患者に投与することを含み、および少なくとも一つのCAR細胞外ヒンジ領域、少なくとも一つのCAR膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCAR共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCAR細胞内活性化ドメインを更に含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、および少なくとも一つの細胞外CD8-アルファヒンジ領域、少なくとも一つのCD8-アルファまたはCD28膜貫通ドメイン、少なくとも一つのCD28、4-IBB、ICOS共刺激ドメイン、および少なくとも一つのCD3-ゼータ細胞内活性化ドメインをさらに含み、ここで、単一ドメイン抗体は、CAR細胞外ヒンジ領域に連結され、ここで、前記癌は、脳癌、肝臓癌、胆管癌、腎臓癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、および結腸直腸癌から選択される。
【0184】
更なる実施形態は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する癌細胞によって特徴付けられる癌を診断する方法を記載し、次のステップを含む:
a)本明細書に開示されるように、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)シリーズグリカンに特異的に結合するポリペプチドと試料を接触させること
b)前記試料への前記ポリペプチドの結合を検出すること
c)ステップb)で検出された結合を標準と比較すること、ここで、前記試料に関連する結合の違いは、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する癌細胞によって特徴付けられる癌の特徴である。
【0185】
「疾患」は、本明細書に記載される物質/分子または方法を用いて治療から利益を得るであろう任意の状態である。
「細胞増殖性疾患」および「増殖性疾患」は、例えば癌などのある程度の異常な細胞増殖に関連する疾患を指す。
【0186】
「癌」および「癌性」は、典型的には細胞増殖性疾患によって特徴付けられる哺乳動物の生理学的状態を指す、または記載する。癌は、一般的に、癌腫(carcinoma)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含むことができるが、これらに限定されない。癌のより具体的な例は、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、白血病および他のリンパ増殖性疾患、および様々な型の頭頸部癌を含むことができる。
【0187】
「腫瘍」は、悪性か良性かに関わらず、全ての腫瘍性細胞の成長および増殖、および全ての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」、および「腫瘍」は、本明細書で言及される通り相互に排他的ではない。
【0188】
「転移」は、個人の体内の原発部位から他の場所へ、癌および/または腫瘍が広がることを指す。
「治療」、「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」は、治療される個人の疾患の自然な経過を変える試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理学の過程の間のいずれかで実施されることができる。治療における望ましい結果は、疾患の発生または再発を防止すること、症状の緩和、疾患における任意の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移を防止すること、進行速度を低下させること、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善を含むことができるが、これらに限定されない。例えば、治療は、癌の発展を遅らせる、または進行を遅らせるために、抗グロボH抗体を含む治療有効量の医薬製剤を、患者へ投与することを含むことができ、ここで、前記癌の癌細胞は、癌細胞の表面に、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する。
【0189】
「医薬製剤」は、有効成分の生物学的活性を有効にし、製剤が投与される対象に対して毒性のある追加の成分を含まない形態の調製物を指す。
「薬学的に許容可能な担体」は、医薬製剤が投与される対象に対して無毒である、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容可能な担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含むが、これらに限定されない。
【0190】
「治療有効量」は、例えば、対象の疾患(disease)または疾患(disorder)を治療する、または予防するために、所望の治療結果、または予防結果を達成するための有効成分、または薬剤(例えば、製剤)の量を指す。癌の場合、治療薬の治療有効量は、癌細胞の数を減らす、原発腫瘍サイズを減らす、末梢組織への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅くする、好ましくは停止する)、腫瘍の成長をある程度阻害する、および/または癌に関連する一つ以上の兆候をある程度緩和する量である。薬物が癌細胞の成長を予防し得る、および/または既存の癌細胞を殺し得る範囲で、薬物は細胞増殖抑制性および/または細胞毒性であり得る。癌治療の場合、インビボ(in vivo)での有効性は、例えば、生存期間、無増悪期間(TTP)、奏効率(RR)、奏効期間、および/または生活の質を評価することによって測定されることができる。
【0191】
「個体」または「対象」とは、家畜(例えば、牛、羊、猫、犬、および馬など)、霊長類の動物(例えば、ヒト、並びにサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、を含むが、これらに限定されない、哺乳動物を指す。
【0192】
「抗癌治療薬」は、癌の治療に有用な薬剤を指す。例示的な抗癌治療薬は、化学療法剤、成長阻害剤、細胞毒性剤、放射線療法において使用される薬剤、抗-血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、および癌を治療するための他の薬剤、抗-CD20抗体、血小板由来成長因子阻害剤、COX-2阻害剤、インターフェロン、サイトカイン、一つ以上の標的に結合するアンタゴニスト(例えば、PDGFR-ベータ、APRIL、BCMA受容体、TRAIL/Apo2)、他の生物活性物質および有機化学物質、並びにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0193】
癌の診断のための単一ドメイン抗体の使用
本発明の更なる実施形態は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する細胞の検出のための診断キットであり、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含み、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体である。グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンに結合している前記ポリペプチドだけでなく、キットは、抗原-結合細胞の標識および/または検出および/または定量化に必要な試薬をさらに含み得る。
【0194】
わずかに言い換えると、本発明は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する細胞によって特徴づけられる癌のスクリーニングのための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体、または前記可変ドメインの変異体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含む診断キットにも向けられる。
【0195】
本発明の他の態様は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを細胞の表面に発現することによって特徴づけられる癌のスクリーニングのための、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカン結合ポリペプチドを含む診断キットであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記少なくとも一つの単一ドメイン抗体は、FR1の位置1、5、11、28および30、FR2の位置44および45、FR3の位置74、75、76、83、84、93、および94、FR4の位置104および108に位置する一つ以上のアミノ酸残基を置換することによって、ヒト化される。
【0196】
上記のように、本発明における単一ドメイン抗体は、検出可能な標識であるエフェクター分子に連結された場合、診断目的に使用されることができる。
本発明における単一ドメイン抗体を結合する、使用する、および検出するための適切な検出可能な標識および技術は、当業者に明らかであり、例えば、蛍光分子(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、およびフルオレスカミン、並びにランタニドシリーズからのEuまたは他の金属などの蛍光金属など)、リン光性分子、化学発光分子または生物発光分子(例えば、ルミナル、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ジオキセタンまたはGFP、およびその類似体など)、放射性同位体、金属、金属キレート、または金属カチオン、または他の金属、またはインビボ(in vivo)、インビトロ(invitro)、インサイチュ(in situ)診断およびイメージングのために特に適している金属カチオン、並びに発色団および酵素(例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-V-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ビオチナビジンペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-VI-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼなど)を含むが、これらに限定されない。
【0197】
したがって、本発明の更なる実施形態は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを細胞の表面に発現する細胞によって特徴づけられる癌のスクリーニングのための、少なくとも一つの単一ドメイン抗体、または前記可変ドメインの変異体、を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドを含む診断キットであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、前記単一ドメイン抗体に連結される少なくとも一つのエフェクター分子を更に含み、ここで、エフェクター分子は、蛍光分子、リン光性分子、化学発光分子、生物発光分子、放射性同位体、および発色団を含む群から選択される。
【0198】
多量体単一ドメイン抗体を含むポリペプチド
本発明の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、少なくとも2である。
【0199】
少なくとも2つの単一ドメイン抗体を含む当該ポリペプチドは、sdAb46三量体で示されるように、標的に対する親和性がより高いという利点を有する(
図23)。
【0200】
本発明の特定の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、少なくとも2であり、ここで、二つ以上の単一ドメイン抗体は、配列が異なる。
【0201】
本発明のより特定の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、少なくとも2であり、ここで、二つ以上の単一ドメイン抗体は、配列が同一である。
【0202】
本発明の更により特定の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、3であり、ここで、二つ以上の単一ドメイン抗体は、配列が同一である。
【0203】
本発明の更により特定の実施形態は、少なくとも一つの単一ドメイン抗体を含むグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合するポリペプチドであり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、軽鎖を天然に欠く、および定常領域1を天然に欠く重鎖抗体の可変ドメイン、または前記可変ドメインの変異体であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合し、ここで、グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、およびGb5から選択される少なくとも一つのグロボ(globo)-シリーズグリカンを結合する単一ドメイン抗体の数は、3であり、ここで、前記単一ドメイン抗体は、SEQ ID NO5と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0204】
単一ドメイン抗体は、当技術分野で知られる方法または任意の将来の方法を使用して、本明細書に開示されるグロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合し、および2つ以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチドのいずれかを形成するために結合され得る。単一ドメイン抗体は、非共有結合的に(例えば、ストレプトアビジン/ビオチンの組み合わせ、抗体/タグの組み合わせを使用する)または共有結合的に結合され得る。それらは、アミノ酸残基を有機誘導体化剤と反応させることによる化学的架橋によっても融合され得る。
【0205】
あるいは、単一ドメイン抗体は、DNAレベルで遺伝的に融合され得る。単一ドメイン抗体を結合する1つの方法は、単一ドメイン抗体コード配列を直接的に、またはペプチドリンカーを介してのいずれかで連結することによる遺伝的経路を介することである。例えば、単一ドメイン抗体のC末端は、次の単一ドメイン抗体のN末端に連結され得る。この連結方法は、トリ-、テトラ-、等の機能的コンストラクトの構築および生成のために追加の単一ドメイン抗体を連結するために拡張されることができる。さらに、単一ドメイン抗体は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)(例えば、Smith DB,Johnson KS,Gene 1988;Tudyka T,Skerra A,Protein Sci 2008に記載される)、およびマイコバクテリウム ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)mtDod由来の足場タンパク質ドデシン使用するドデカマー(Bordeaux et al.,Sci Rep 2020;CA3076791A1)を介して二量体を形成するために連結されることができる。
[図面の説明]
【図面の簡単な説明】
【0206】
【
図1】グロボ(globo)-シリーズグリカンを特異的に結合する本発明のアルパカsdAbsの開発のために使用される手順のスキームを示す。
【
図2】グロボシリーズグリカン グロボ(Globo)H、Gb3、Gb4、Gb5、SSEA3、およびSSEA4の構造を示す。
【
図3】グロボ(Globo)H上のCRM197キャリアタンパク質の負荷(load)を評価するための電気泳動ブロットを示す。
【
図4】ネイティブグロボ(globo)-シリーズグリカンへの血清抗体の結合を示す。0週目(赤)および7週目(青、最終週)からの免疫化アルパカ血清のフローサイトメトリーの結果は、グロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する乳がん細胞(MCF-7)に結合できる抗体の生成を示す。
【
図5】グリカンアレイの印刷パターンを示す。グリカンは、エポキシ被覆されたスライドに3回印刷された。各色は、ある特定のグリカン型を示す。対照およびオリゴ糖は、グリッドに隣接して表示され、およびガラクトース、6×ヒス(His)-タグ付けされたsdAb、グロボ(Globo)H、および様々な型のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)を含む。凡例:対照;PB、緩衝液;FS8、ガラクトース;C6、ラムノース;2ヒス(His)タグ、6×ヒス(His)特異的抗体のためのsdAb対照(Atto 6479);297、Fuc(a1-2)Gal(b1-3)GalNAc(b1-3)Gal(a1-4)Gal(b1-4)Glc(b1-1)アミノペンタノール-グロボ(Globo)H;221、Glc(a1-4)GalNac(b1-4)[Man-6-PEtN(a1-2)Man(a1-6)Man(a1-4)GlcN(a1-6)Ino(1-P)ホスホチオヘキサノール-GPI;222、GalNac(b1-4)[Man-6-PEtN(a1-2)Man(a1-6)]Man(a1-4)GlcN(a1-6)Ino(1-P)ホスホチオヘキサノール-GPI29(T.ゴンディ(gondii));223、GalNac(b1-4)[Man-6-PEtN(a1-2)Man(a1-6)]Man-2-PEtN(a1-4)GlcN(a1-6)Ino(1-P)ホスホチオヘキサノール-GPI32(哺乳類);224、GalNac(b1-4)[Man(a1-2)Man(a1-6)]Man(a1-4)GlcN(a1-6)Ino(1-P)ホスホチオヘキサノール-GPI37(非天然);228、GlcN(a1-6)Ino(1-P)ホスホチオヘキサノール-GPI疑似二糖;225、Glc(a1-4)GalNAc(b1-4)Man(a1-1)アミノペンタノール-GPI部分構造(substructure);226、Glc(a1-4)GalNAc(b1-4)[Man(a1-2)Man(a1-1)アミノペンタノール-GPI部分構造;227、Glc(a1-4)GalNAc(b1-4)[Man-6-PEtN(a1-2)Man(a1-6)]Man(a1-1)アミノペンタノール-GPI部分構造;172、Gal(b1-3)GalNAc(b1-3)Gal(a1-4)Gal(b1-4)Glc(b1-1)アミノペンタノール-GB5(アミノリンカー);174、Gal(a1-4)Gal(b1-4)Glc(b1-1)アミノペンタノール-GB3(アミノリンカー);371、GlcNAc(b1-3)Gal(a1-4)Gal(b1-4)Glc(b1-1)アミノペンタノール;11、Gal(b1-4)Glc(b1-1)アミノヘキサノール-ラクトース(アミノリンカー);位置D2~D10、E3、F4~F6は、96プレート上のストック化合物の位置を示し、これは、各サンプルの位置を個別化するためにプリンティングロボットによって使用される。
【
図6】合成グロボ(Globo)HおよびGb5に対する免疫化アルパカにおける免疫応答が数週間ごとに徐々に増加することを示すグリカンアレイ結果の定量化を示す。
【
図7】様々なグロボ(globo)ファミリー合成グリカンに対する血清抗体の特異的結合を示す血清検査のための7週目(最終週)のグリカンアレイ画像(図解入りの構造)を示す。黒の星印は、対照グリカン構造を表す。
【
図8】グリカンアレイによる親和性溶出抗体のグロボ(Globo)Hグロボ(Globo)H結合の分析を示す。グラフのバーは、空の(赤)およびグロボ(Globo)H被覆されたビーズ(青)から溶出された抗体の平均蛍光強度を表す。結果は、親和性精製抗体の特異性を示し、親和性精製抗体は、その後、sdAbを分離するためにゲル電気泳動にかけられた。
【
図9】親和性精製抗体におけるゲル電気泳動分離を示す。緑の矢印は、更なるトリプシン消化および質量分析のためにゲルから抽出された13kDa sdAb(VHH)を示す。
【
図10】選択された単一ドメイン抗体配列の大腸菌(E.coli)における組換え体発現を示す。A)sdAb46を発現するように設計されたアークティック エクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)大腸菌(E.Coli)からの細胞抽出物の様々な精製ステップおよび洗浄ステップの後に得られた試料のゲルエレクトロポレーション。アークティック エクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)大腸菌(E.Coli)の沈殿物(P)および溶解物(L)、フロースルー(FT)、洗浄画分1および洗浄画分2(W1およびW2)、ニッケル-NTA後の溶出液(E)、および最終sdAb生成物(sdAb)を示す。矢印は、最終洗浄ステップおよび高純度のsdAb試料の存在を示す。B)下のパネルは、sdAb46のS200サイズ排除クロマトグラフィーを示し、14kDaタンパク質と相関して、高収率(50mAU)および高溶出量での発現を示す(矢印)。
【
図11】精製されたsdAbの合成グロボ(Globo)Hへの結合を示す。合成グロボ(Globo)Hグリカンを、C1表面プラズモン共鳴チップに固定化し、様々なsdAbの結合を試験した。試験された様々なsdAbの中で、sdAb37(
図11)を示す。SdAb46は、平均54nMの親和性を有し最高値を示した。
【
図12】精製されたsdAbの合成グロボ(Globo)Hへの結合を示す。合成グロボ(Globo)Hグリカンを、C1表面プラズモン共鳴チップに固定化し、様々なsdAbの結合を試験した。試験された様々なsdAbの中で、sdAb46(
図12)を示す。SdAb46は、平均54nMの親和性を有し最高値を示した。
【
図13】精製されたsdAbの合成グロボ(Globo)Hへの結合を示す。合成グロボ(Globo)Hグリカンを、C1表面プラズモン共鳴チップに固定化し、様々なsdAbの結合を試験した。試験された様々なsdAbの中で、sdAb62(
図13)を示す。SdAb46は、平均54nMの親和性を有し最高値を示した。
【
図14A】癌細胞を発現する天然のグロボファミリーグリカンへの精製sdAbsの結合を示す。フローサイトメトリー(FACS)分析を、グロボ(globo)ファミリーグリカンを発現する癌細胞(MCF-7)への様々なsdAbsの結合を試験するために行った(上のパネル)。陽性の結果を、共焦点顕微鏡法を使用して更に検証した(下のパネル)。市販の抗グロボ(Globo)H抗体VK9を陽性対照として使用し、二次抗体のみを、二次抗体の非特異的結合を除外するために使用した(右下のパネル)。
【
図14B】癌細胞を発現する天然のグロボファミリーグリカンへの精製sdAbsの結合を示す。フローサイトメトリー(FACS)分析を、グロボ(globo)ファミリーグリカンを発現する癌細胞(MCF-7)への様々なsdAbsの結合を試験するために行った(上のパネル)。陽性の結果を、共焦点顕微鏡法を使用して更に検証した(下のパネル)。市販の抗グロボ(Globo)H抗体VK9を陽性対照として使用し、二次抗体のみを、二次抗体の非特異的結合を除外するために使用した(右下のパネル)。
【
図15】発現され、および精製されたsdAbsのMCF-7癌細胞への結合レベルを示すFACS結果のグラフ表示を示す。
【
図16】FACS結合分析によって試験された様々なグロボ(globo)-シリーズグリカンの結合特異性を示す。様々な癌細胞へのsdAbsの特異的結合は、分析された癌細胞の表面でのグロボ(globo)ファミリーグリカンの発現レベルの違いにより異なる。sdAb62の特異性を、様々なグロボ(globo)-シリーズグリカンを発現する癌細胞株で試験した。結果は、HEK293腎臓細胞での明確なGb3発現による結合集団サイズの違い(黒い曲線)を示す。
【
図17】グロボ(Globo)H結合sdAbsの精製を示す。SdAbを、シャッフル細胞(SHuffle cells)(登録商標)で発現させ、フレンチプレス(French press)細胞溶解によって抽出し、Ni
2+-NTA親和性クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。a)sdAb46の精製中に採取された試料のSDS-PAGEを示す。ゲルを、ページブルータンパク質染色溶液(PageBlue Protein Staining Solution)を用いて染色した。Mは、ページルーラー プレステインド タンパク質ラダー(PageRuler Prestained Protein Ladder)10~180kDaを示す。FTは、フロースルーを示す。W1は、洗浄1画分を示す。W2は、洗浄2画分を示す。b)SECクロマトグラムは、タンパク質の溶出を検出する280nmでのUV吸光度を示す。ハイロード(HiLoad) 16/600スーパーデックス(Superdex)75(S75)プレップグレード(prep grade)カラムを、FPLCシステムで使用した。アスタリスク(*)は、SDS-PAGEに使用される画分を示す。
【
図18A】飽和移動差核磁気共鳴(STD NMR)によって分析された、グロボ(Globo)-HのsdAb46への結合エピトープおよび結合構造を示す。a)sdAb46とグロボ(Globo)-Hとの相互作用を反映するSTD NMR実験を示す。上から下へ:(1)グロボ(Globo)-Hの参照スペクトル。磁化移動を示す孤立信号を、太字で強調する。(2)60μM sdAb46の存在下での4mMグロボ(Globo)-HのSTDスペクトル。(3)110μM sdAb46の存在下での4mMGb5のSTDスペクトル。(4)4mMグロボ(Globo)-HのSTDスペクトル。FucおよびGal3アノマープロトンの観測を可能にするために、残留水信号を抑制しなかった。
【
図18B】飽和移動差核磁気共鳴(STD NMR)によって分析された、グロボ(Globo)-HのsdAb46への結合エピトープおよび結合構造を示す。b)4秒の単一飽和時間からのsdAb46に結合されたグロボ(Globo)-Hの結合エピトープを示す。示されていないプロトンのSTD増幅定数は、信号重複のために利用できていない。STD NMR実験を、600MHzおよび277Kで得た。XXX=100~67%、XX=67~33%、X=33~0%を示す。
【
図18C】飽和移動差核磁気共鳴(STD NMR)によって分析された、グロボ(Globo)-HのsdAb46への結合エピトープおよび結合構造を示す。c)sdAb46を使用した場合および使用しない場合のグロボ(Globo)-HのNOE上昇率対600MHzおよび298Kでの混合時間(ms)を示す。曲線はピラノース内(Fuc-CH
3/Fuc-H5)およびピラノース間(Fuc-H1/Gal5-H2)部分の結合性を表す。sdAb対炭水化物比は1:16.4である。I)グロボ(Globo)-H+sdAb46、Fuc-CH
3/Fuc-H5、II):グロボ(Globo)-H+sdAb46、Fuc-H1/Gal5-H2、III)グロボ(Globo)-Hフリー、Fuc-CH
3/Fuc-H5、IV)グロボ(Globo)-Hフリー、Fuc-H1/Gal5-H2である。
【
図19A】3価のsdAb46融合タンパク質の生成および精製を示す。a)分子クローニング戦略の略図を示す。細胞溶解性ペプチドTACHYの発現を排除するために突然変異誘発PCRを行い、終止コドン(
*)を挿入した。b)PCR産物(左)および制限酵素消化産物(右)のアガロースゲル電気泳動を示す。Lは、1kbDNAラダーを示す。
【
図19B】3価のsdAb46融合タンパク質の生成および精製を示す。c)シャッフル(SHuffle)細胞におけるsdAb46トリマーコンストラクトの発現試験を示す。IPTG誘導前(pre)およびIPTG誘導後(post)の細菌沈殿物におけるSDS-PAGEを示す。d)sdAb46トリマーコンストラクトの溶解度試験を示す。超音波処理による細胞溶解後の沈殿物および溶解物のSDS-PAGEを示す。e)~f)FPLCを使用したsdAb46トリマー封入体のNi
2+-NTA精製を示す。クロマトグラムをe)に示し、インプット(input)、フロースルー(FT)、および溶出画分1~4のSDS-PAGEゲル画像をf)に示す。Mは、ページルーラー プレステインド タンパク質ラダー(PageRuler Prestained Protein Ladder)10~180kDaを示す。
【
図20A】sdAb46モノマーおよびsdAb46トリマーの癌細胞への結合を示す。a)~c)IMR5神経芽腫細胞(陰性対照)およびMCF7乳癌細胞を、sdAb46モノマー、sdAb46トリマー、またはグロボ(Globo)H特異的市販抗体VK9を用いて染色し、続いて抗6×His-AF647または抗IgG-Atto635二次抗体を用いてそれぞれ染色した。a)フローサイトメトリーのヒストグラムは、蛍光標識されたIMR5細胞(上のパネル)およびMCF7細胞(下のパネル)の頻度を示す。二次抗体のみの対照を、左側に灰色で示す。左のグラフを、VK9抗体を用いて得て、右のグラフを、sdAb46を用いて得る。データは、それぞれ2回または3回行われた3つの独立した実験を表す。
【
図20B】sdAb46モノマーおよびsdAb46トリマーの癌細胞への結合を示す。a)~c)IMR5神経芽腫細胞(陰性対照)およびMCF7乳癌細胞を、sdAb46モノマー、sdAb46トリマー、またはグロボ(Globo)H特異的市販抗体VK9を用いて染色し、続いて抗6×His-AF647または抗IgG-Atto635二次抗体を用いてそれぞれ染色した。b)a)に示されるゲートに基づく陽性細胞の頻度を示す。
【
図20C】sdAb46モノマーおよびsdAb46トリマーの癌細胞への結合を示す。a)~c)IMR5神経芽腫細胞(陰性対照)およびMCF7乳癌細胞を、sdAb46モノマー、sdAb46トリマー、またはグロボ(Globo)H特異的市販抗体VK9を用いて染色し、続いて抗6×His-AF647または抗IgG-Atto635二次抗体を用いてそれぞれ染色した。c)MCF7(左)およびIMR5(右)の共焦点レーザー走査顕微鏡の撮影画像を示す。赤は抗-6×His-AF647または抗-IgG-Atto635二次抗体によって生成されたシグナルの検出を示す。細胞核を、DAPI(ブルーチャンネル(BLUE channel)を用いて染色した。TMライトは、透過ライトの画像を示す。白いスケールバーは、20μmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0207】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するために発明者によって発見された技術を表し、したがって、当該実施のための好ましい様式を構成すると見なすことができることは、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変更を、開示される具体的な実施形態において行うことができ、更に、本発明の範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0208】
本発明の様々な態様における更なる修正および代替的な実施形態は、本明細書を考慮して当業者に明らかであるだろう。結果的に、この明細書は、例示としてのみ解釈されるべきであり、当業者に本発明を実施する一般的な方法を教示することを目的としている。本明細書に示され、および記載される本発明の形態は、実施形態の実施例とされるべきであることが理解されるべきである。要素および材料は、本明細書に説明され、および記載されたものの代わりに使用されてもよく、部分および工程を逆にしてもよく、本発明の特定の特徴を独立して利用してもよく、本発明のこの明細書の利益を得た後、全ては当業者に明らかになるだろう。以下の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更を行ってもよい。
【0209】
[実施例]
方法:
アルパカ免疫化のためのCRM197-チオールグロボ(Globo)H複合糖質の調製
チオールリンカーを用いて官能基化された1mgのグロボ(GloboH)を、120μlの水中で、1時間、1500rpmで、0.6当量(eq.)の樹脂結合トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を用いて還元した。樹脂を0.22μmシリンジフィルターでろ過することによって除去し、フィルターを、50μlの水を用いて5回洗浄した。最後の洗浄を、薄層クロマトグラフィーおよび糖染色によって分析し、グロボ(Globo)Hがフィルター上に残っていないことを確認した。濾液および全ての洗浄画分を合わせて凍結乾燥した。100eq.のスクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネートを、30μlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、および750μlのカップリング緩衝液(0.1M Na2HPO4/NaH2PO4 pH7.4)中に1mgCRM197を有する溶液に撹拌しながら滴下した。1時間後、溶液を、10,000rpmで8分間、平衡化した0.5ml遠心フィルター(アミコン ウルトラ(Amicon Ultra)、MWCO=10k)上で、350μlの水を用いて4回洗浄した。最後の洗浄の前に、10μlのアリコートを質量分析のために収集した。続いて、溶液を350μlのコンジュゲーションバッファー(pH8.0で0.1M Na2HPO4/NaH2PO4)を用いて洗浄し、フィルターを逆さまにして1,000rpmで2分間遠心分離することにより、新しいチューブに収集した。凍結乾燥され、還元されたGloboHを、コンジュゲーションバッファー(pH8)に戻し、タンパク質溶液に添加した。反応溶液を24時間ゆっくりと撹拌したままにした。
【0210】
翌日、反応溶液を、350μlの水を用いて3回洗浄した。最後の洗浄の前に、10μlのアリコートを、質量分析のために収集した。続いて、溶液を、350μlのコンジュゲーションバッファー(pH8)を用いて洗浄し、および150当量のシステインを、遠心フィルターに直接加えた。1時間インキュベーション後、反応溶液を350μlの水を用いて3回洗浄した。最後の洗浄の前に、10μlのアリコートを、質量分析のために収集した。最後に、溶液を、350μlの滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄し、フィルターを逆さまにして1,000rpmで2分間遠心分離することにより、新しいチューブに収集した。コンジュゲーション全体で収集された試料の質量分析後、CRM197のグロボ(Globo)H負荷(以下に示される)を、コンジュゲーション前後の質量ピークの比較によって決定した(
図3)。
【0211】
【0212】
アルパカ免疫化
大人の雌アルパカを、リン酸緩衝生理食塩水中に15μgのグロボ(Globo)H/用量を含むCRM197-グロボ(Globo)H複合糖質を用いて免疫化した。アルパカを、22G針を使用して首の基部に沿って皮下注射した。合計6週の免疫期間は、3回目と4回目との注射の間に2週間の空白を含むため、ワクチン接種日は0/7/14/28/35/42になる。全血抽出を、最後の免疫化から9日後(51日目)に行った。
【0213】
血清および末梢血単核細胞(PBMC)の分離
血清分離用の全血(150ml)を、50mlチューブに収集し、RTで1時間インキュベーションした後、2,000g/10分/RTで遠心分離した。血清を、滅菌15mlチューブに等分し(各7.5ml)、液体窒素を使用して急速冷凍し、-80℃でさらに保存した。
【0214】
PBMC分離のために、100mlの全血を、10mlのEDTA被覆チューブ(BD バキュテイナ(Vacutainer)(商標))に収集し、10回反転させた。希釈されていない全血からのPBMCを、UNI-SEPmaxi U16(ノバメド(NOVAMED))を使用して、1000g/30分/RTで中断せずに遠心分離することにより分離した。PBMC層を、滅菌50mlチューブに分け、PBSを用いて洗浄し、400g/10分/4cで3回遠心分離することによって分離した。最後の25mlを遠心分離し、14mlのRNAlater(商標)に溶解した。細胞を、バイアルあたり5*107/ml PBMCで1.5mlRNAseフリーチューブに分割し、-80℃で24時間、緩慢凍結容器(Mr.Frosty(商標))に保存し、続いて-80℃で保存した。
【0215】
合成グロボ(Globo)-シリーズグリカンへの血清抗体の結合を分析するためのグリカンアレイ
グリカンマイクロアレイは、0.2mMの合成グリカン、および対照として250μg/mLのHis-タグ付きsdAbを使用して、エポキシ被覆スライドガラスに研究室で印刷された。各スライドは、異なるグリカンの16個のスポットをそれぞれ含むことを伴う繰り返しのグリカングリッドを含む。印刷パターンを
図5に示す。スライドを、1%BSAを添加されたヘぺス(HEPES)緩衝液(10mM ヘぺス(HEPES)(pH7.4)、1mM CaCl
2、1mM MgCl
2)で、1時間、37℃でブロックした。同時に、同じ緩衝液中に4μg/mL、10μg/mL、および20μg/mLのsdAb溶液を50μL有する溶液を、暗所で、30℃で、6×His特異的抗体(Atto647)の1:5000希釈液とともにインキュベーションした。ブロックされたスライドを、BSAを含まないヘペス(HEPES)緩衝液を用いて1回、ddH
2Oを用いて1回洗浄した。全ての液体を取り除くために、スライドを、300gで3分間遠心分離した。スライドをマイクロプレートホルダーに組み立てて、異なるsdAbで単一グリッドを別々に染色できるようにした。sdAb/抗体混合物を、ウェルにピペットで移し、sdAb-グリカン結合を、暗所の加湿チャンバー内で、30℃で1時間放置した。ウェルを、0.05%トゥイ―ン(Tween)を添加されたヘペス(HEPES)緩衝液を用いて3回洗浄し、ddH2Oを用いて1回洗浄し、遠心分離によって乾燥させた後、グリカンアレイスキャナーアクソンジェーンピックス(Glycan Array Scanner Axon GenePix)(登録商標)4300Aを使用して直接スキャンした。結合を、ジェーンピックスプロ(GenePix Pro)7を使用して分析した。
【0216】
VHHcDNAライブラリー構築およびハイスループットシーケンシング
RNイージー ミニキット(RNeasy MiniKit)(キアゲン社(Qiagen))を使用してアルパカPBMCからRNAを単離した。cDNAを、オリゴ-dTプライマーおよびスーパースクリプト(SuperScript)II逆転写酵素キット(インビトロジェン社(Invitrogen))を使用して作成した。VHH可変領域を、2段階のネステッドPCRでcDNAから特異的に増幅した。最初のステップにおいて、プライマーCALL001:GTCCTGGCTGCTCTTCTACAAGG(リーダー配列特異的、SEQ ID NO:132)およびCALL002:GGTACGTGCTGTTGAACTGTTCC(CH2特異的、SEQ ID NO:133)を使用した。ゲル精製および600bp領域のサイズ選択、続いてミニエリュート クリーンアップ(MinElute cleanup)(キアゲン社(Qiagen))の後、2回目のPCRを、プライマーVHH_back:GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGRGGAGG(SEQ ID NO:134)およびVHH_For:GGACTAGTGCGGCCGCTGGAGACGGTGACCTGG(SEQ ID NO:135)を使用してVHH領域を抽出するために行い、続いて400bpバンドのゲル抽出を行った。
【0217】
イルミナ(Illumina)シーケンシングライブラリーは、TruSeqプロトコルに従って、せん断せずに、すなわち、末端修復ステップで開始せずに作成した。各ライブラリーを、イルミナMiSeq機器で2×250bpケミストリーでシーケンスし、試料あたり690万/660万のリードペアを得た。BBマージ(merge)(https://github.com/BioInfoTools/BBMap/blob/master/sh/bbmerge.sh)を使用して、順方向および逆方向の読み取りを重ね合わせ、元のPCR断片を再構築した。
【0218】
アルパカ血清からグロボ(Globo)H結合VHH断片を単離するためのグロボ(Globo)H特異的標準抗体および重鎖のみの抗体の親和性精製
合成グロボ(Globo)H-結合ビーズの調製
チオールリンカーを用いて官能基化された1mgのグロボ(Globo)Hを、120μl水中に0.6当量の樹脂結合TCEPを有する溶液を用いて、1時間、1500rpm、RTで還元した。樹脂を、0.22μmシリンジフィルターに通してろ過することによって除去し、フィルターを、50μlの水を用いて5回洗浄した。最後の洗浄を、薄層クロマトグラフィーおよび糖染色によって分析し、グロボ(Globo)Hがフィルターに残っていないことを確認した。濾液および全ての洗浄画分を合わせて凍結乾燥した。還元されたグロボ(Globo)Hを、製造者の指示に従って1mlのアガロースビーズスルホリンク(SulfoLink)(登録商標)カップリング樹脂(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))に結合した。
【0219】
タンパク質A/Gビーズを使用したIgGおよび重鎖抗体の分離
従来のIgGおよび重鎖のみの抗体を分離するために、アルパカ血清の試料を解凍し、7.5mlのアリコートを、67.5mlの20mMリン酸ナトリウムを用いてpH=7で希釈し、0.22mmフィルターを使用してろ過した。3mlのタンパク質A/G電磁ビーズ(ピアス(Pierce))を、20mMリン酸ナトリウムを用いてpH=7で事前に洗浄した。その後、これらの試料を、回転させながらRTで1時間インキュベーションした。フロースルーを収集後、ビーズを、100mlの20mMリン酸ナトリウムを用いてpH=7で洗浄した。結合した抗体を、39mlの100mMクエン酸を用いてpH=2.75で、溶出された抗体を中和するために11mlの1.5Mトリス(Tris)pH=8.8を事前に充填した50mlチューブに溶出した。溶出試料を合わせて、アミコン(Amicon)10kDaを使用してRTで濃縮し、5Lの20mMリン酸ナトリウムを用いてpH=7.4で一晩透析した。
【0220】
合成グリカン結合ビーズを使用してグロボ(Globo)H特異的抗体の単離
グロボ(Globo)H-結合ビーズ/空のビーズコントロールカラムを、水を用いて3回、続いて20mMリン酸ナトリウムpH=7で洗浄した。A/Gビーズを使用して得られた透析抗体の試料を、その後、透析緩衝液を用いて事前に平衡化された空のビーズカラムおよびGloboH結合ビーズカラムに均等に分配し、1時間RTで回転させた。その後、各カラムからのフロースルーを、更に1時間、RTで、カラム間で切り替えた。20mMリン酸ナトリウムpH=7を用いて両方のカラムからの溶出を行い、NaCl濃度を増加させた(100mM/500mM/1M/3M)、続いてpH5.2に調節された20mmNaH2PO4の最終洗浄ステップを行った。両方のカラムからの各洗浄ステップの75ml容量を、アミコン(Amicon)10kDを使用して濃縮し、パパイン消化緩衝液(20mMリン酸ナトリウム/10mM EDTA pH=7.1)に対して4℃で一晩透析した。
【0221】
GloboH特異的抗体のパパイン切断
20mmリン酸ナトリウム/10mmEDTA緩衝液中に親和性精製抗体を有する溶液を、5mM L-システイン(シグマ-アルドリッチ社(Sigma-Aldrich))を添加して、10~20μlのパパイン固定化ビーズ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))と共に、37c/300rpmで最大90分間インキュベーションした。その後、混合物を遠心分離し、上清を、VHHドメインに対応する13kDaバンドを抽出するために、4~20%アクリルアミドSDS-PAGEゲルにロードした(
図9)。
【0222】
親和性精製されたVHH断片の質量分析
SDS-PAGE分離からのVHH断片をゲルから切除し、トリプシンを用いて消化した。結果的に得られたトリプシンペプチドをゲルから抽出し、C18 ステイジ チップス(Stage Tips)を使用して脱塩した。LC-MS/MS分析を、アルティメット(Ultimate) 3000 RSLCano システムズ(Systems)(ディオネックス社(Dionex)、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))にオンラインで連結されたオルビタップ(Orbitrap) フュージョン(Fusion)TM ルーモス(Lumos)TM トリブリッド(Tribrid)TM質量分析(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))で行った。溶出ペプチドを、イージ―スプレイソース(EASY-Spray source(サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))によってイオン化する。移動相Aは、水、0.1%v/vギ酸からなり、移動相Bは、80%v/vアセトニトリルおよび0.1%v/vギ酸からなる。MS1およびMS2の両方のスペクトルに対して高分解能のルーモス(Lumos)機器を使用して、最高速度オプションを用いてデータ依存モードでMSデータを得る。HCDを断片化のために適用した。MSデータのピークリストを、MS変換を使用して生成した。ハイスループットcDNAシーケンスライブラリーに対するデータベース検索を、ラボ内で変更されたマスコット(Mascot)検索エンジン(マトリックス サイエンス社(Matrix Science))、並びにラママジック(Llama Magic)v1.0のローカルインストールおよびデフォルトパラメーター(https://github.com/FenyoLab/llama-magic)の組み合わせを使用して行った。
【0223】
グロボ(Globo)-シリーズグリカン結合sdAbの発現
細菌の形質転換:形質転換用のプラスミドベクター(pET-22(+)b)は、C末端ヒスチジンタグに融合されたsdAb配列、IPTG誘導性調節システム、アンピシリン耐性、およびPelBペリプラズムシグナル配列を含んだ。ベクターを、製造業者のプロトコルに従って、熱ショック形質転換を使用して、アークティックエクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)(DE3)大腸菌(E.coli)コンピテント細胞に形質転換した。20ngのDNAを、20~40μLの細菌に加えた。熱ショック後、SOC培地で、37℃で1時間インキュベーションした後、形質転換細胞を、アークティックエクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)細胞のためのゲンタマイシン耐性、および所望のsdAb配列を有する発現プラスミドのためのアンピシリン耐性を含むLB寒天プレートに広げた。プレートを37℃で一晩インキュベーションした。
【0224】
コロニーPCR:形質転換細胞の単一コロニーを、コロニーPCRで形質転換効率に関して試験した。PCR反応ミックスを、10μL反応における2×PCR マスター ミックス(Master Mix)、0.1μMの順方向および逆方向プライマー、並びにヌクレアーゼフリー水を使用して、PCRチューブ内で、氷上で調製した。各形質転換プロトコルの3つのクローンを、10μLのピペットチップを用いて採取し、反応ミックス中に直接ピペットで移し、再懸濁した。PCR反応を、表2に示される製造業者の推奨の熱サイクリング条件に従って行った。2μLの6×DNAローディングダイをPCR産物に添加し、1%アガロースゲルで分析した。
【0225】
【0226】
細菌の保存:成功した形質転換細胞のコロニーを植菌し、50μg/mLアンピシリンおよび20μg/mLゲンタマイシンを添加された5mLのLB培地で、37℃、振とうインキュベーター(250rpm)で一晩培養した。翌朝、750μLの一晩培養物を、750μLの50%グリセロールと共に混合し、ストックを、-80℃で保存した。
【0227】
アークティックエクスプレス(ArcticExpress)細胞からのグロボ(GloboH)sdAbの発現および精製:一晩培養物を、形質転換後にLB寒天プレートに陽性クローンを植菌する、または50μg/mLアンピシリンおよび20μg/mLゲンタマイシンを添加されたLB培地にクライオストックから植菌する、のいずれかによって開始した。スターターを、37℃振とう機(250rpm)で一晩インキュベーションした。翌朝、150mLまたは1Lの主培養物を、50μg/mLアンピシリンを用いて継代培養し、1:100希釈で一晩培養した。これらの培養物を、OD600が0.6に達するまで250rpmで振とうしながら30℃でインキュベーションした。500μLの各培養物を、誘導されていない試料としての発現試験のために、清潔なマイクロ遠心チューブにピペットで移した。培養物を、250rpmで12℃振とう器に移し、0.4mM IPTGを用いて誘導し、24時間インキュベーションした。インキュベーション時間の後、さらに500μLの試料を、誘導試料として各培養物に対して採取した。細菌を、6000g、4℃で20分間遠心分離することによって採取し、沈殿物を-20℃で保存した。発現効率を試験するために、誘導されていない試料および誘導された試料を、LB培地で、1mLの容量で0.1のOD600に希釈した。これらの懸濁液を14000gで5分間遠心分離した。沈殿物を、20μLのPBSおよび5μLの5×SDS試料緩衝液に溶解し、試料をSDS-PAGEによって分析した。
【0228】
アークティックエクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)細胞の溶解およびグロボ(GloboH)sdAbの精製:sdAbプラスミドのPelBシグナル配列は、発現したsdAbの分泌物を大腸菌(E.coli)ペリプラズムへ誘導した。E.coli(大腸菌)細胞のペリプラズム画分を得るために、外膜のみが破壊される必要がある。150mLの培養物からの沈殿物を解凍し、プロテアーゼ阻害剤ミックスを添加された300μLのPBSに再懸濁した。ドライアイスおよび37℃の水浴を使用して6回の凍結融解サイクル後、試料を3200g、4℃で1時間遠心分離した。溶解物を、MCF-7細胞での結合分析に直接使用した。1Lの培養物からの沈殿物を解凍し、プロテアーゼ阻害剤を含む20mLのリン酸ナトリウム試料緩衝液に再懸濁した。前述のように、凍結融解サイクルを行い、20ユニットのDNAseIを試料に添加し、その後、42000gで、20分間、4℃で遠心分離した。溶解物を、更なる精製のために直接使用した。
【0229】
ニッケル-NTA親和性クロマトグラフィー:親和性精製のために、1mLのニッケル-NTAビーズをクロマトグラフィーカラムにロードし、2カラム容量(CV)のddH2Oを用いて洗浄し、2CVの試料緩衝液を用いて平衡化した。1Lの大腸菌(E.coli)アークティックエクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)細胞から得られた溶解物を、ビーズに添加し、回転下、90分間、RTでインキュベーションした。その後、フロースルーを収集し、ビーズを、1CVの試料緩衝液、2CVの洗浄緩衝液1、および2CVの洗浄緩衝液2を用いて洗浄した。sdAbを、2CVの溶出緩衝液を用いてニッケルビーズから溶出した。試料を、後のSDS-PAGE分析のために、全ての精製および洗浄ステップから採取した。溶出物を、3kDaのサイズ排除限界を伴うアミコン(Amicon)(登録商標)ウルトラ(Ultra)遠心フィルターユニットで、3200gで、4℃で濃縮し、濃度を、ナノドロップ(Nanodrop)(商標)を用いて280nmでの吸光度を測定することにより過程中に測定した。濃度が2.5mg/mLを超えなかった場合は、溶出物を最終容量が2mL未満になるように濃縮し、3500分子量カットオフのスネイクスキン(SnakeSkin)(商標)透析チューブを使用して、PBS(pH7.4)で、4℃で一晩透析した。
【0230】
精製手順を実証するためのSDS-PAGE(
図10A)
sdAbの精製工程を実証するために、手順中に以下の試料を採取した:凍結融解試料の遠心分離後のアークティックエクスプレス(ArcticExpress)(登録商標)細胞の沈殿物(P)および溶解物(L)、フロースルー(FT)、洗浄画分1および2(W1およびW2)およびニッケル-NTA後の溶出液(E)、および最終sdAb生成物(sdAb)、および/またはFPLCクロマトグラムに示された他のタンパク質ピーク。試料を、5×SDS試料緩衝液を用いて調製し、5分間、95℃で変性させた。不連続SDS-PAGEは、レムリ(Laemmli)によって記述されるように行い、ゲルを、マイクロ波で急速煮沸後、ページブルー(PageBlue)(商標)タンパク質染色溶液を用いて、15分間染色した。脱色を、ddH
2Oを用いて行い、ゲル ドック(Gel Doc)EZ撮像装置を使用して、ゲルを画像化した。
【0231】
サイズ排除クロマトグラフィー(
図10B):
サイズ排除を、AKTA(商標)精製機に接続されたハイロード(HiLoad)(商標)スーパーデックス(Superdex)16/600 75pgカラムを備えたFPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィー)を使用して行った。透析試料は、2mLのローディングループに注入され、ろ過および脱気されたPBS(pH7.4)で、流速0.75mL/minで実行された。タンパク質ピークを、UV280で測定し、1mL画分を、96の深いウェルプレートに収集した。SdAbは、75~85mLで溶出すると予想されたが、全てのタンパク質含有画分からの試料を、SDS-PAGEで分析した。sdAb含有画分を合わせ、3kDaカットオフ アミコンズ(Amicons)(登録商標)で、4℃で、3200gで濃縮し、最終濃度を~1mg/mLにし、更なる分析のために直接使用した、または分割し、液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。
【0232】
表面プラズモン共鳴(SPR)
SPR測定を、ビアコア(BIAcore) T100機器(GEヘルスケア社(GE Healthcare))を使用して行った。7.5μgの合成グロボ(Globo)Hを、アミン-カップリング化学によって市販のC1センサーチップ(GEヘルスケア社(GE Healthcare))に固定化した。チップを、0.3%トリトン(Triton)X-100を用いて添加された100mMグリシン-NaOH(pH=12)を用いて事前に活性化した。固定化を、接触時間700秒、流速15μL/分で、10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で行った。チップは2つのフロー細胞を含み、そのうちの1つはブランクとして機能し(フロー細胞3)、そのうちの1つはグリカンが固定化された(フロー細胞4)。SdAbを、SPRランニング緩衝液(ヘぺス(HEPES)緩衝液)で、4℃で一晩透析した。接触、解離時間、流速、および最大試験濃度は、sdAbごとに異なり、表3に示される。各sdAbを、5つの異なる濃度で試験し、ここで、低濃度は、示された最大濃度の連続1:2希釈である。各結合イベント後の再生のために、2MのMgCl2を添加された同じ緩衝液を使用した。センサーグラムを、ビアコア(Biacore) T200制御および評価ソフトウェア(GEヘルスケア社(GE Healthcare))を使用して分析し、データ分析のために、両方のフロー細胞間の信号差を評価した。平衡解離定数(KD)を、親和性および速度論的分析によって決定した。親和性分析において、定常状態結合レベルに基づく結合応答を、sdAb濃度に対してプロットし、平衡解離定数を決定した。速度論的パラメーターを、ビアエバリューション(BIAevaluation)ソフトウェアを使用して、センサーグラムを1:1結合モデルに適合することによって得た。測定の精度を、ソフトウェアによって評価し、カイ二乗値を表示する。
【0233】
【0234】
哺乳動物細胞の培養
全ての細胞を、37℃で、5%CO2で培養した。MCF-7細胞およびHEK293T細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)、2mMグルタミン、および1%非必須アミノ酸を添加されたDMEMで培養した。それらを、PBS(w/o Ca2+/Mg2+)を用いて洗浄し、続いてトリプシン処理して付着細胞を剥離することにより、2~3日ごとに継代した。トリプシン処理を、培地を用いて停止させ、細胞を300gで5分間遠心分離し、トリプシンを除去した。沈殿物を、新鮮な培地に再懸濁し、細胞を、MCF-7の場合は1:3/1:4の比率で、HEK293T細胞の場合は1:6/1:8の比率で、新しい培養皿に播種した。MDA-MB231細胞を、10%FBSおよび1%P/Sを添加されたRPMI1640で培養した。培地を、2~3日ごとにリフレッシュし、細胞を、上述のように1:4の比率で週に1回継代した。
【0235】
凍結アリコートを調製するために、コンフルエントな75cm2培養フラスコから細胞を前述のように収集し、5%DMSOを添加された1mL培地に再懸濁し、-80℃で、凍結容器内で、1日凍結した。凍結細胞を液体窒素に移した。細胞を、37℃で2分間迅速に解凍し、すぐに新鮮な培地に再懸濁した。それらをペレット状にしてDMSOを取り除き、新鮮な培地に再度懸濁し、75cm2の培養フラスコに播種した。
【0236】
癌細胞に結合するsdAbのフローサイトメトリー分析
FACS分析のための最適な設定の確立:フローサイトメトリーでsdAbsの癌細胞への結合を分析するために、次のパラメーターを、事前に決定する必要がある:sdAbを検出する二次抗体の濃度(Atto647を用いて標識化された抗6×Hisタグ)、試験された各細胞株のための、陽性対照として使用される抗-グロボ(Globo)H抗体クローンVK9の濃度、前方散乱および側方散乱のためのフローサイトメトリー測定中の電圧、およびFITC(フルオレセイン イソチオシアネート)およびAPC(アロフィコシアニン)検出器。各フローサイトメトリー分析のために、細胞を、上述の「哺乳動物細胞の培養」で記述されたように、70~80%の培養密度で採取した。細胞沈殿物を、PBS+1%BSAに再懸濁し、条件ごとに0.5x106個の細胞を、1.5mLのエペンドルフチューブに移した。これらを再び、250gで、5分間ペレット化した後、一方の細胞沈殿物を、ブランク細胞としてPBSで希釈し、もう一方を、250μLのFACS緩衝液(PBS+1%BSA+SYBR(商標)セーフ(Safe)(FITCチャネルで放出))に再懸濁した。抗-His抗体の希釈を調節するために、PBS+1%BSAでの1:100、1:500、1:1000、1:5000希釈を試験した。沈殿物を、50μLの対応する溶液中に再懸濁し、45分間、RTでインキュベーションした。同時に、3つの沈殿物を、PBS+1%BSA中に50μLの5、10、または20μg/mLVK9を有する溶液中でインキュベーションした。その後、細胞を、遠心分離および500μLのPBS+1%BSAでの再懸濁により2回洗浄した。VK9処理された試料を、抗マウス二次抗体(アレクサフルオロ(Alexa Fluor)635)を用いて、RTでさらに45分間染色し、その後前述のように洗浄した。最後の遠心分離ステップ後、染色された細胞沈殿物を、250μLのFACS緩衝液に再懸濁した。全ての試料を、FACSチューブに移し、データ収集を、FACSCanto(商標)II装置(BD)で行った。
【0237】
MCF-7細胞を使用したグロボ(globo)-シリーズグリカンに結合する抗体のスクリーニング
上述のように150mLの培養物から得られた大腸菌(E.coli)溶解物を、MCF-7細胞で直接試験した。この目的のために、細胞を上述のように採取し、試料あたり0.5x106個の細胞を1.5mLチューブに移した。300gで5分間遠心分離した後、細胞沈殿物を、50μLの対応する溶解物に再懸濁し、振とう機上で、45分間、RTでインキュベーションした。さらに、PBSのみを用いる陰性対照および5μg/mLVK9を用いる陽性対照を、すべての実行に含んだ。その後、細胞を2回洗浄し、最後の洗浄ステップの後、VK9対照を除く全ての沈殿物を、前のステップで決定された抗-His抗体溶液(PBS+1%BSAで1:1000)に再懸濁し、さらに45分間、振とう機上で、RTでインキュベーションした。VK9染色細胞を、対応する蛍光抗-マウス抗体(アレクサフルオロ(AlexaFluor)635)の1:400希釈液の50μlに再懸濁した。さらに2回洗浄後、細胞を、PBS中に4%パラホルムアルデヒド(PFA)の溶液100μLで固定し、遠心分離後、沈殿物を、250μLのFACSバッファーに再懸濁した。データを、前のステップで決定された設定を使用して記録し、フロージョ(FlowJo)(登録商標)ソフトウェアを使用して分析した。記録された事象は、分析のために単一の無傷細胞のみを選択するようにゲートされた。ゲートを、全ての試料に適用し、sdAb染色細胞のAPCヒストグラムを、陰性対照細胞のAPCヒストグラムと重ね合わせることにより、ピークのシフトによって結合を観察することができた。シフトを定量化し、最も強力な潜在的な結合剤のランク付けをするために、結合剤の正のゲートを定義する追加のゲートを、単一細胞選択において作成した。親ゲート上のAPC+細胞(単一細胞)の頻度を、フロージョ(FlowJo)(登録商標)ソフトウェアを使用して、全てのsdAbに関して決定した。
【0238】
異なる細胞株での精製sdAbのフローサイトメトリー結合分析
上記のように大腸菌(E.coli)溶解物の結合を試験した後、sdAbを同定された陽性結合剤から精製し、MCF-7細胞への結合をさらに試験した。手順はスクリーニングにおいて記述されたのと同じであったが、細胞沈殿物を大腸菌(E.coli)溶解物の代わりに、PBS中に0.4mg/mL精製sdAbの溶液50μLに再懸濁したことが異なる。同じ濃度を使用することにより、異なるsdAbsの結合強度を比較した。さらに、同じ結合アッセイを、全てのグロボ(Globo)ファミリーグリカンを発現するMDA-MB231細胞、およびグロボ(Globo)Hを発現しないHEK293T細胞で行った。
【0239】
共焦点レーザー走査顕微鏡(LSM)
共焦点顕微鏡を使用してsdAbのMCF-7細胞への結合を検証するために、20,000個の細胞を、分析の2日前に、染色用に50~60%コンフルエントになるように、24ウェル細胞培養プレートの12mmカバースリップに播種した。培地を吸引し、細胞を、PBSを用いて2回リンスした後、4%PFAで、10分間、RTで固定した。PFAを取り除くために、ウェルをPBSで3×5分間洗浄し、その後、PBS+1%BSAで1時間ブロックした。1μg/μLの精製sdAbの50μLを滴下してパラフィルムの一部に置き、細胞が接着したカバースリップを上に置いた。1つのカバースリップを、陰性対照としてウェルに置き、PBS中に5μg/mL VK9を有する溶液を、陽性対照として使用した。カバースリップを、sdAbと共に、RTで、加湿チャンバー内で、1時間インキュベーションした。その後、それらをウェルに戻し、PBSで3×5分洗浄した。200μLのAtto647抗-6×His抗体(PBS+1%BSAで1:5000)を、細胞に添加し、わずかに振とうしながら、RTで1時間、インキュベーションした。VK9陽性対照を、PBS+1%BSA中にマウス-IgG特異的(アレクサフルオロ(AlexaFluor635))二次抗体を有する1:400希釈液で染色した。PBSを用いてさらに3回洗浄後、10μLの封入剤を、顕微鏡用スライドにピペットで移し、染色された細胞を有するカバースリップを上に置いた。スライドを一晩乾燥させ、顕微鏡検査を、翌日、アキシオイメージャー(AxioImager).M2共焦点LSM800(ツァイス社(Zeiss))を使用して行った。分析のパラメーターを、陰性対照、および陽性対照としてのVK9染色に基づいて設定した。
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
組換えグロボ(Globo)H結合単一ドメイン抗体sdAb46、sdAb56、およびsdAb59の精製
以前は、グロボ(Globo)H sdAbを、合成グリカンを用いてアルパカを免疫化することによって生成した。各遺伝子配列を、タンパク質発現のために商業的に合成されたベクターとして同定し、得た。最強のグロボ(Globo)H結合剤を、MCF7癌細胞を使用して以前のスクリーニングで決定した。
【0258】
グリカン結合を検証し、さらに特徴付けるために、最も有望なsdAbを、インビトロ(in vitro)で合成グリカンへのsdAbの結合について、直ちに、分析した。精製されたsdAb37、sdAb62、およびsdAb63の凍結アリコートは、すでに入手可能であった。sdAb46、sdAb56、およびsdAb59は、最初に精製されなければならなかった。したがって、pET-28b(+)-sdAbプラスミドを、シャッフル(SHuffle)大腸菌(E.coli)コンピテント細胞(登録商標)に形質転換し、1Lの細菌培養物に増殖させた。タンパク質発現を、0.5mMのIPTGを用いて誘導した。凝集または多量体化を分析するために、組換えsdAbは、Hisタグ付けされ、Ni
2+-NTA親和性クロマトグラフィー、続くサイズ-排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製された。沈殿物、溶解物、フロースルー(FT)、洗浄1(W1)、洗浄2(W2)、Ni
2+-NTA親和性クロマトグラフィーからの溶出、およびサイズ-排除クロマトグラフィー(SEC)のタンパク質含有画分の試料を、SDS-PAGEのために採取した。
図17aは、代表的な精製SDS-PAGE画像およびSECからのクロマトグラムを示す。sdAb46の理論分子量は16.8kDaであり、これは観察されたバンドに対応する。精製されたナノボディモノマーは、部分的に溶解したが、大量のタンパク質が、溶解後も沈殿物に残っていた。洗浄緩衝液2は、30mMのイミダゾールを含み、このことは、すでに、いくつかのナノボディの溶出および生成物の損失を引き起こした。しかしながら、他のタンパク質不純物は残っており、溶出液中にも発見された。その後のサイズ-排除クロマトグラフィーのために、PBSを用いて事前に洗浄されたハイロード(HiLoad)(登録商標)16/600スーパーデックス(Superdex)(登録商標)75(S75)調製グレードカラムを、FPLCシステムで使用した。
【0259】
実施例1:sdAbの生成および選択
アルパカの免疫化
アルパカ免疫化のために、合成グロボ(Globo)Hを、キャリアタンパク質CRM197(交差反応性材料(Cross-Reactive-Material)-197)に結合させ、これは、ジフテリア毒素の変異型であり、ここで52位のグリシンのグルタミン酸への単一アミノ酸交換は、タンパク質を無毒にする。アルパカは、グロボ(Globo)H-CRM197コンジュゲートを用いて(詳細のために方法のセクションを参照)、3回目と4回目との注射の間の2週間の空白を含む合計6週間の免疫期間で免疫化された。全血を、51日目に収集した。
【0260】
免疫化されたアルパカにおける免疫応答の評価
免疫化の前(0週目)および終了時(7週目)に収集された血清試料を、天然のグロボ(globo)ファミリーグリカンへの結合を試験するために使用した。血清試料を、グロボファミリーグリカンを発現することが知られているMCF-7細胞と直接インキュベーションし、45分間、RTでインキュベーションした。その後、細胞を、2回洗浄し、FITC-結合抗-ラマ二次抗体を含む溶液に再懸濁し、さらに45分間、RTでインキュベーションした。さらに2回の洗浄後、細胞を固定し、FACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメーターで分析した。
図4に示されるように、7週間免疫化されたアルパカの血清は、乳がん細胞(MCF-7)に結合することができる抗体を含んだ。さらに、血清試料を、詳細な方法のセクションで記述されるように、グリカンアレイを使用して試験した。
図6は、7週目までの合成グロボ(Globo)Hに対する免疫化アルパカの免疫応答における週ごとの段階的な増加を示す。
図7は、図に示される異なるグロボ(globo)ファミリー合成グリカンへの血清抗体の特異的結合を示す最後の7週の血清試料を用いて得られたグリカンアレイ画像を示す。
【0261】
ライブラリー構築:
アルパカ血清からのsdAbドメインの分離
全抗体を、タンパク質A/G磁気ビーズを使用して、免疫化されたアルパカの血清から単離した。その後、これらの試料を使用して、グロボ(Globo)H-被覆ビーズ、および未被覆対照ビーズを使用した親和性精製により、グロボ(Globo)H特異的sdAbを分離した。その後、これらの抗体を、グリカンアレイによりグロボ(Globo)Hへの抗体の結合について試験した。
図8は、異なる濃度の塩化ナトリウムで、空の(黒)およびグロボ(Globo)Hビーズ(灰色)から溶出された抗体試料を用いて得られた平均蛍光強度を示す。最高の蛍光強度は、100mM、500mM、および1Mの塩化ナトリウムを使用して得られた試料で得られ、その後、試料は、パパイン切断後にゲル電気泳動SDS-PAGEを受け、13kDaの単一ドメイン抗体(sdAb)を得た。
図9は、分解前に、NaCl 100mM、500mM、および1Mで得られた試料は、従来のIgG(150kDa)および重鎖のみ抗体(55kDa)を含んだことを示す。パパイン消化後、これらの試料は、FcおよびFab断片(両方とも約25kDa)、未消化の抗体断片(約50kDa)、および13kDaの単一ドメイン抗体を含んだ。したがって、sdAbは、これらのバンドから抽出され、トリプシン消化後に質量分析を受けた。
【0262】
生物情報分析によるsdAb配列の検索
VHH可変領域(sdAb)は、方法のセクションで記述されたように、アルパカPBMCのcDNAを使用して2段階のネステッドPCRによって特異的に増幅され、その後シーケンシングを受けた。
【0263】
生物情報分析を、親和性精製されたsdAbの完全長シーケンスを取得するために、PBMC(cDNA)のハイスループットシーケンシングおよび質量分析(ペプチド)(手順は
図1に示される)によって得られた2つのライブラリーを比較することにより行った。この目的のために、「ラママジックソフトウェア(Llama magic software)」v1.0(https://github.com/FenyoLab/llama-magic)、およびタンパク質同定用の検索エンジンであるマスコット(Mascot)ソフトウェアの社内(in-house)修正バージョン」を使用した。ソフトウェアの修正版は、ハイスループットシーケンシングの非常に大規模なデータベースとプロテオミクス分析の非常に大規模なデータベースとを比較することができ、MSからの各ペプチド解離スペクトルを得て、ハイスループットシーケンシングによって生成されたオープンリーディングフレームと比較する。
【0264】
この分析は、102個の異なるsdAb配列の取得を可能にし、36個が大腸菌(E.coli)での組換え発現、および更なる結合分析による更なる分析のために選択された。
【0265】
実施例2:大腸菌(E.Coli)において選択されたsdAbsの発現、および更なる分析
選択されたsdAb配列を、方法のセクションで詳細に記述されるように、アークティブエクスプレス(ArctivExpress)(登録商標)細胞(大腸菌(E.Coli))で発現させた。
図10(パネルAおよびB)は、例としてsdAb46を使用して、手順の有効性を示す。その後、単離されたsdAbを、グロボ(Globo)H Gb4およびGb5を低レベルで発現することが知られているMCF-7細胞への結合について、および表面プラズモン共鳴(SPR)によって、試験した。
図11~
図13は、sdAb37、sdAb46、およびsdAb62でのSPRの結果を示す。SdAb46は、平均54nMの親和性で、最も高い親和性値を示した。さらに、単離されたsdAbsのグロボシリーズグリカン発現細胞への結合を、フローサイトメトリーによって試験した(
図14、15、16)。また、これらの実験において、sdAb46は、グロボ(Globo)Hへの最も高い結合能力を有する抗体であるという結果になった。
【0266】
これらの結果は、単離された単一ドメイン抗体が、癌細胞上に発現される天然のグロボ(globo)ファミリー構造、並びにSPRチップ上の合成および十分に特徴付けられたグロボ(globo)H構造の両方に比較的高い親和性で結合できることを示す。
【0267】
例えば、sdAb62は、MCF-7またはMDA-MB-231細胞よりも高い親和性でHEK293細胞(
図16)に結合するという結果になった。この発見は、sdAb62が、HEK293によって発現されるグリカンGb3およびGb4を、MCF-7によって発現されるがHEK293細胞によっては発現されないグロボ(Globo)Hよりも高い親和性で結合することを示唆する。
【0268】
実施例3:NMRは、グロボ(Globo)-HのsdAb46への結合エピトープおよび結合配座を特徴付けする。
飽和移動差核磁気共鳴(STD NMR)分光法は、タンパク質と接触している炭水化物部分を調べる、原子分解能でグリカン-タンパク質相互作用を研究するための強力な手法である。
【0269】
結合するためにsdAb46に必要である最小認識モチーフを調査するために、我々は、STD NMRによってsdAb46結合グロボ(Globo)-Hの結合エピトープをマッピングした。4秒の長い飽和時間が、タンパク質からリガンドへの飽和の正確な磁化移動に、必要であった。Fucα(1-2)Galβ部分からのほとんど全てのプロトンは、タンパク質から飽和磁化移動を受けたが、信号の重複により、STD増幅定数は、プロトンのサブセットに対してのみ取得された(
図18a)。対応する結合エピトープは、Fucα(1-2)Galβ-モチーフが、タンパク質結合ポケットにあるプロトンと、より密接に接触していることを示唆する(
図18b)。Gb5は、110μMのsdAb46の存在下で有意なSTDシグナルを示さず、フコースがリガンド認識に必要であることを示唆する。
【0270】
グロボ(Globo)-HへのsdAb46の結合をさらに支持するために、我々は、sdAb46の存在下および非存在下でグロボ(Globo)-Hから移動された核オーバーハウザー効果(trNOE)を得た。NOEビルドアップ(build-up)の著しく速い速度を、sdAb46の存在下のグロボ(Globo)-Hで観察し、グロボ(Globo)-Hのタンパク質への結合をさらに確認した(
図18c)。
【0271】
結論として、NMRの結果は、選択された単一ドメイン抗体が、明確に定義された合成構造に、およびこれらのエピトープを含む細胞表面に、特異的に結合することを示す。
【0272】
実施例4:sdAb46トリマーの分子クローニング
sdAb結合を改善するために、次の目的は、sdAb46の3価型を構築することであった。別のプロジェクトから、GSリンカー、N末端のHisタグ、およびC末端の溶解性ペプチド(タキプレシン-I、TACHYと略される)によって結合された3つのsdAb46ユニットで構成される融合タンパク質をコードする市販の発現プラスミドが利用可能であった。3価のsdAb46コンストラクトが、分子クローニングにより、TACHYペプチドを除いて生成され、分子クローニングにおいて、ストップコドンがTACHYコード配列の前に挿入される(
図19a)。突然変異誘発プライマーを設計し、PCR反応を行って、追加の終止コドンを含むDNA配列を生成した。PCR反応を、アガロースゲル電気泳動を使用して確認し、~1500bp(予想サイズ:1448bp)のサイズを有する産物を観察した。PCR産物およびプラスミドを、同じ制限酵素(XbaI、XhoI)を用いて両方とも消化し、産物を、再びアガロースゲルで泳動した。6571bpプラスミドの消化のために、5192bpおよび1385bpの大きな断片が予想されたが、わずかに大きなバンドが、6000bpと1500bp付近で観察された。それにもかかわらず、上部バンドは、骨格を表すと想定され、抽出され、インサートとして機能する消化されたPCR産物と共にライゲーションされた。クローニングの成功を、DNAシーケンシングによって確認した。
【0273】
形質転換後、タンパク質を、SDS-PAGEによって示されるように、シャッフル(SHuffle)細胞で成功裏に発現し、ここで、46.2kDaの予想されたサイズを有するバンドを観察した(
図19b)。その後、細胞沈殿物を溶解し、sdAb46トリマーコンストラクトの溶解度を評価したが、残念ながら、トリマーコンストラクトに対応するバンドは、沈殿物試料でのみ観察され、封入体の形成を示唆する溶解物では観察されなかった。これは、元のsdAb46トリマー-TACHYコンストラクトでも以前に観察された。発現条件(異なるIPTG濃度、発現温度、発現期間)を最適化する試みは、TACHYコンストラクトの溶解性を改善できなかったため、sdAb46トリマーの封入体分離およびリフォールディングプロトコルを確立することを検討した。単離を、Li Xuらによるプロトコルに基づいて行った。(Biotechnol Appl Bioc,2017)。洗浄ステップ後、無色の沈殿物を得て、これを6M尿素にほぼ完全に可溶化した。可溶化された封入体を、ヒストラップ(His Trap)カラムを備えた高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)機構を使用して、Ni
2+-NTA精製によってさらに精製し、5ステップのイミダゾールグラジエントを用いて溶出した。2番目の溶出ステップ(~39mMイミダゾール)は、sdAb46トリマーを溶出するのにすでに十分であり、sdAb46トリマーを、クロマトグラムで観察し、SDS-PAGEによって確認した。280nmでの最高の吸光度値、~170mAUは、~97mMのイミダゾール濃度で到達し、より高いイミダゾール濃度は、残りの結合タンパク質の最低限の溶出のみを結果的にもたらした。フロースルーのSDS-PAGE分析は、標的タンパク質の大部分が未結合のままであることを示した。これにも関わらず、変性した単一ドメイン抗体の全てがリフォールディングされてはいないが、1.1mgの折り畳みタンパク質を得た。
【0274】
実施例5:3価グロボ(Globo)H単一ドメイン抗体の細胞結合
インビトロ(in vitro)結合分析を、グロボ(Globo)H発現乳がん細胞株MCF7を用いて行った。グロボ(Globo)Hを発現しない神経芽細胞腫細胞株IMR5を、陰性対照として使用した。これらの分析様式は、フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法によって実行された。
【0275】
フローサイトメトリーについて、細胞を0.4mg/mlのsdAb46モノマーまたはsdAb46トリマー溶液と共にインキュベーションした。5μg/mlの抗-グロボ(Globo)H IgG VK9を陽性対照として使用した。抗IgG-Atto635および抗6×His-AF647を二次抗体として使用した。フローサイトメトリーによって測定された蛍光強度を、二次抗体のみの陰性対照と比較してプロットした。細胞への結合を、二次抗体のみの対照の蛍光強度に基づいて作成された「陽性細胞」ゲートを使用して定量化した(
図20a)。予想通り、VK9結合は、MCF7細胞でのみ観察され(73.47±4.83%)、IMR5細胞では観察されず(0.04±0.13%)、MCF7細胞でのグロボ(Globo)H発現を確認した(
図20b)。以前のデータと一致して、2つのMCF7集団はヒストグラムに見られ、異なるグロボ(Globo)H発現レベルを示す。わずかなシフトは、sdAb46モノマー(1.17±0.71%)と共に、およびsdAb46トリマー(4.19±3.92%)と共にインキュベーションされたIMR5細胞で観察されたが、MCF7細胞は、sdAb(モノマー(曲線I)の場合、3.65±0.51%、およびトリマー(曲線II)の場合、50.58±20.82%)によってより頻繁に結合された。2標本t検定は、MCF7への結合の増加は、VK9および両方のsdAbコンストラクトにとって重要であることを示した。予想通り、sdAb46トリマーは、sdAb46モノマーと比較して改善されたMCF7結合を示した。
【0276】
共焦点レーザー走査顕微鏡に基づくアッセイ(
図20c)のために、細胞を、ポリ-L-リジン被覆されたカバースリップに播種し、0.4mg/mlの単一ドメイン抗体溶液または0.5μg/mlのVK9と共にインキュベーションした。抗-IgG-Atto635および抗-6×His-AF647を、二次抗体として使用し、細胞核を、DAPIを用いて染色した。MCF7の二次抗体対照は、どちらの抗体にも蛍光シグナルを示さなかったが、IMR5細胞への非特異的な抗-6×His-AF647の結合を観察した。予想通り、IMR5ではなくMCF7へのVK9の結合を観察し、フローサイトメトリー実験において検出された2つのMCF7集団は、顕微鏡検査においても異なる蛍光強度によって区別できた。sdAb46結合も確認されたが、驚くべきことに、蛍光強度の違いは、モノマーおよびトリマーについて観察されなかった。興味深いことに、2つの型のsdAb46は、主に細胞内で観察されたが、一方、VK9は、細胞膜上でより強く、どちらかというとパッチとして検出されたように、2つのsdAb46型の染色パターンは、VK9抗体の染色パターンと異なった。IMR5細胞は、抗-6×His-AF647によって非特異的に染色されたが、蛍光の増加が、sdAb46モノマーおよびトリマーで観察され、フローサイトメトリー結果と一致する弱いNb結合を示した。
【配列表】
【国際調査報告】