IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソマロジック,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-552192レチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質に結合する核酸化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】レチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質に結合する核酸化合物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20221208BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20221208BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12Q1/6806
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520930
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 US2020055711
(87)【国際公開番号】W WO2021076713
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/915,842
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505373306
【氏名又は名称】ソマロジック オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンジック ネボイシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジェリナス エイミー
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR48
4B063QS32
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】ヒトのレチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質(RIG-I)への結合能のあるアプタマー、RIG-I結合アプタマーをRIG-Iと共に含む組成物、及びその製造方法と使用方法の提供。
【解決手段】本明細書では、ヒトのレチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質(RIG-I)への結合能のあるアプタマー、RIG-I結合アプタマーをRIG-Iと共に含む組成物、及びその製造方法と使用方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーであって、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)
[ここで、
Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、
Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、
Sは、GまたはCであり、
Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、
Vは、C、A、またはGである]
を含み、かつ
少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである、前記アプタマー。
【請求項2】
RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーであって、配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)
[ここで、
Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、
Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、
Sは、GまたはCであり、
Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、G、またはAである]
を含み、かつ
少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである、前記アプタマー。
【請求項3】
RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーであって、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)及び配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)
[ここで、
Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、
Eは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、
Sは、独立して、各出現について、GまたはCであり、
Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、
Vは、C、AまたはGであり、かつ
Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、GまたはAである]
を含み、
少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである、前記アプタマー。
【請求項4】
RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーであって、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)、配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)、及び配列5’-AAPGAPGAGG-3’(配列番号51)
[ここで、
Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、
Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、
Sは、GまたはCであり、
Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、
Vは、C、AまたはGであり、かつ
Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、GまたはAである]
を含み、
少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである、前記アプタマー。
【請求項5】
RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーであって、配列5’-PGPGPCAPGPGPPPZAZQQCZMGPPAAPGAPGAGG-3’(配列番号52)
[ここで、
Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、
Zは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、
Qは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはGであり、
Mは、CまたはAであり、かつ
nは、独立して、各出現について、0または1である]
を含み、
少なくとも35、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである、前記アプタマー。
【請求項6】
C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドが、独立して、
5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-フェネチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PEdU)、5-(N-チオフェニルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-チロシルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TyrdU)、5-(N-3,4-メチレンジオキシベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(MBndU)、5-(N-4-フルオロベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(FBndU)、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)、5-(N-イミジゾリルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ImdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-R-トレオニニルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThrdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項7】
C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドが、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項8】
前記アプタマーが、配列番号65の配列を含み、Jで表される各ヌクレオシドが5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンである、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項9】
前記アプタマーが、配列番号66の配列を含み、Jで表される各ヌクレオシドが5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンである、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項10】
前記アプタマーが、配列番号67の配列を含み、Jで表される各ヌクレオシドが5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンである、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項11】
前記アプタマーが、配列番号4~47及び68~99から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも98%同一な配列を含み、Jで表される各ヌクレオシドが5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンである、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項12】
前記アプタマーが、配列番号4~47及び68~99から選択される配列を含み、Jで表される各ヌクレオシドが5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンである、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項13】
RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーであって、配列番号4~47及び68~99から選択される配列を含み、Jで表される各ヌクレオシドが5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンである、前記アプタマー。
【請求項14】
前記アプタマーが、35~60ヌクレオチドの長さ、または35~50ヌクレオチドの長さ、または40~50ヌクレオチドの長さである、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項15】
前記RIG-Iタンパク質がヒトRIG-Iタンパク質である、先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項16】
先行請求項のいずれか1項に記載のアプタマーとRIG-Iタンパク質とを含む、組成物。
【請求項17】
前記RIG-Iタンパク質がヒトRIG-Iタンパク質である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
RIG-Iタンパク質に対する結合親和性を有するアプタマーを選択するための方法であって、
(a)候補混合物とRIG-Iタンパク質とを接触させることであって、前記候補混合物が修飾核酸を含み、前記候補混合物の少なくとも1つまたはそれぞれの核酸にある1つ、いくつか、もしくはすべてのピリミジンがC-5修飾ピリミジンを含む、前記接触させること、
(b)前記候補混合物を低解離速度濃縮プロセスに曝露させることであって、前記候補混合物中の他の核酸と比べて前記標的分子からの解離の速度が遅い核酸が前記RIG-Iタンパク質と結合して、核酸-標的分子複合体を形成する、前記曝露させること、
(c)前記候補混合物から低解離速度の核酸を分割すること、
(d)前記低解離速度の核酸を増幅させて、前記RIG-Iタンパク質への結合能のある低解離速度の核酸配列に富む核酸混合物を生成すること、
を含み、これにより、前記RIG-Iタンパク質分子に対する低解離速度アプタマーが選択される、前記方法。
【請求項19】
前記候補混合物が、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)を含む核酸を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、A、またはGであり、Sは、GまたはCであり、Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Vは、C、A、またはGである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記候補混合物が、配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)を含む核酸を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Fは、C-5修飾ピリミジン、C、G、またはAである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記候補混合物が、配列5’-AAPGAPGAGG-3’(配列番号51)を含む核酸を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
各核酸が、独立して、35~60ヌクレオチドの長さ、または35~50ヌクレオチドの長さ、または40~50ヌクレオチドの長さである、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドが、独立して、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-フェネチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PEdU)、5-(N-チオフェニルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-チロシルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TyrdU)、5-(N-3,4-メチレンジオキシベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(MBndU)、5-(N-4-フルオロベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(FBndU)、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)、5-(N-イミジゾリルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ImdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-R-トレオニニルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThrdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドが、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)である、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記RIG-Iタンパク質がヒトRIG-Iタンパク質である、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月16日に出願された米国仮出願第62/915,842号の優先権の利益を主張するものであり、いかなる目的であっても参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、核酸の分野に関し、具体的には、ヒトのレチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質(RIG-I)への結合能のあるアプタマー、RIG-I結合アプタマーとRIG-Iとを含む組成物、及びそのようなアプタマーを使用してRIG-Iを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
RIG-Iは、ウイルスRNAと結合し、インターフェロン(IFN)産生のためのシグナル伝達を開始させることによって、抗ウイルス自然免疫における役割を果たす受容体である。RIG-IのC末端ドメイン(CTD)は、ウイルスRNAを検出するための重要なモチーフであり、多くのウイルスゲノムの折り畳まれた「フライパンの取っ手(panhandle)」構造で見られるRNA二重鎖の平滑末端の5’末端上かまたはウイルス複製中間体上の、三リン酸塩部分及び二リン酸塩部分に高い親和性で結合する。機構的には、RIG-I CTDへのRNA結合によりRIG-Iタンパク質構造全体のコンホメーション変化が誘導され、これがシグナル伝達カスケードを開始させ、IFN誘導の開始を引き起こす。
【0004】
RIG-Iは、抗ウイルス免疫に必須の受容体であるが、この受容体の過剰活性化は、自己免疫から慢性閉塞性肺疾患(COPD)に至るまで様々な病理に関連している。CTDが果たす重要な役割、及びRIG-Iといくつかの異なる病理との関連を考えると、RIG-Iタンパク質、例えば、RIG-IのCTDに、特異的に結合するタンパク質結合アプタマーが有益であろう。
【0005】
本開示は、ヒトRIG-Iタンパク質に特異的に結合するアプタマーを提供する。
【発明の概要】
【0006】
本開示には、ヒトのレチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質(RIG-I)への結合能のあるアプタマーが記載されている。その製造方法及び使用方法が記載されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーが提供される。いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Vは、C、A、またはGである。いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、G、またはAである。そのようないくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号49及び50を含む。そのようないくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号49及び50ならびに配列5’-AAPGAPGAGG-3’(配列番号51)を含む。そのようないくつかの実施形態では、アプタマーは、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである。
【0008】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列5’-PGPGPCAPGPGPPPZAZQQCZMGPPAAPGAPGAGG-3’(配列番号52)を含み、ここで、Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Zは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Qは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはGであり、Mは、CまたはAであり、下付き文字のnは、独立して、各出現について、0または1である。
【0009】
いくつかの実施形態では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、独立して、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-フェネチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PEdU)、5-(N-チオフェニルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-チロシルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TyrdU)、5-(N-3,4-メチレンジオキシベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(MBndU)、5-(N-4-フルオロベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(FBndU)、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)、5-(N-イミジゾリルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ImdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-R-トレオニニルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThrdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号65~67から選択される1つ以上の配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列番号4~47及び68~99から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一な配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、5~60ヌクレオチドの長さ、または35~50ヌクレオチドの長さ、または40~50ヌクレオチドの長さである。
【0014】
いくつかの実施形態では、アプタマーが結合するRIG-Iタンパク質は、ヒトRIG-Iタンパク質である。
【0015】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質に対する結合親和性を有するアプタマーを選択するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような方法は、RIG-Iタンパク質に対する結合親和性を有するアプタマーを選択することを含み、これは、候補混合物とRIG-Iタンパク質とを接触させることであって、候補混合物が修飾核酸を含み、候補混合物の少なくとも1つまたはそれぞれの核酸にある1つ、いくつか、もしくはすべてのピリミジンがC-5修飾ピリミジンを含む、前記接触させること;候補混合物を低解離速度濃縮プロセスに曝露させることであって、候補混合物中の他の核酸と比べて標的分子からの解離の速度が遅い核酸がRIG-Iタンパク質と結合して、核酸-標的分子複合体を形成する、前記曝露させること;候補混合物から低解離速度の核酸を分割すること;低解離速度の核酸を増幅させて、RIG-Iタンパク質への結合能のある低解離速度の核酸配列に富む核酸混合物を生成すること、を含み、これにより、RIG-Iタンパク質分子に対する低解離速度アプタマーが選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、候補混合物は、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)を含む核酸を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Vは、C、A、またはGである。いくつかの実施形態では、候補混合物は、配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)を含む核酸を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、G、またはAである。いくつかの実施形態では、候補混合物は、配列5’-AAPGAPGAGG-3’(配列番号51)を含む核酸を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、各核酸は、独立して、35~60ヌクレオチドの長さ、または35~50ヌクレオチドの長さ、または40~50ヌクレオチドの長さである。
【0018】
いくつかの実施形態では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、独立して、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-フェネチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PEdU)、5-(N-チオフェニルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-チロシルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TyrdU)、5-(N-3,4-メチレンジオキシベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(MBndU)、5-(N-4-フルオロベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(FBndU)、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)、5-(N-イミジゾリルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ImdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-R-トレオニニルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThrdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質は、ヒトRIG-Iタンパク質である。
【0021】
本発明の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図を参照しながら進められる以下の詳細な説明からさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】32の独立して誘導されたアプタマー配列の40ヌクレオチドのランダム領域のアラインメントを示す。32のアプタマー配列から同定された4つのパターンが示されている。「J」は、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)ウラシルである。
図1B】26の独立して誘導されたアプタマー配列の40ヌクレオチドのランダム領域を示す。パターン4(配列番号65)に整列する核酸塩基が、各配列内で強調表示されている。
図1C図1Bで示されている26の独立した配列に基づくパターン4のヌクレオチド位置とコンセンサス配列を示す。コンセンサス配列を定義する各位置での、アプタマーパターン4における各核酸塩基の頻度も示されている。
図1D】17の独立して誘導されたアプタマー配列の40ヌクレオチドのランダム領域を示す。パターン3(配列番号66)に整列する核酸塩基が、各配列内で強調表示されている。
図1E図1Dで示されている17の独立した配列に基づくパターン3のヌクレオチド位置とコンセンサス配列を示す。コンセンサス配列を定義する各位置での、アプタマーパターン3における各核酸塩基の頻度も示されている。
図1F】2つの独立して誘導されたアプタマー配列の40ヌクレオチドのランダム領域を示す。パターン1の一部分(配列番号67)に整列する核酸塩基が、各配列内で強調表示されている。
図1G図1Fで示されている2つの独立した配列に基づくパターン1の一部分のヌクレオチド位置とコンセンサス配列を示す。コンセンサス配列を定義する各位置での、アプタマーパターン1の一部分における各核酸塩基の頻度も示されている。
図1H】独立して誘導されたアプタマー配列に基づくパターン1~4を統合した場合のヌクレオチド位置とコンセンサス配列を示す。コンセンサス配列を定義する各位置での各核酸塩基の頻度も示されている。
図2A】全長RIG-Iタンパク質及び様々なRIG-Iタンパク質の切断型のタンパク質ドメインの略図を示す。図2Aで、「CARDs」とは、カスパーゼの活性化及び動員ドメインを意味し、「HD」とは、ヘリカーゼドメインを意味し、「CTD」とは、C末端調節ドメインを意味する。図2Aに示されている略図は、Vela et al.The Thermodynamic Basis for Viral RNA Detection by the RIG-I Innate Immune Sensor.J.Biol.Chem.287(51):42564,2012からのものである。
図2B】タンパク質濃度(x軸)の関数としてプロットした結合アプタマーの割合(y軸)のグラフ表示を示す。ヒトRIG-I-CTDタンパク質濃度は1×10-8M~1×10-14Mの範囲であり、y=(最大-最小)(P)/(K+P)+最小を用いて平衡結合定数(K)を計算した。
図3】アプタマーに組み込まれ得る特定の例示的な5位修飾のウラシル及びシトシンを示す。
図4】ウラシルの5位に存在し得る特定の例示的修飾を示す。C-5修飾の化学構造には、ウラシルの5位に修飾を連結する例示的アミド結合が含まれる。図示の5位部分には、ベンジル部分(例えば、Bn、PE及びPP)、ナフチル部分(例えば、Nap、2Nap、NE)、ブチル部分(例えば、iBu)、フルオロベンジル部分(例えば、FBn)、チロシル部分(例えば、Tyr)、3,4-メチレンジオキシベンジル(例えば、MBn)、モルホリノ部分(例えば、MOE)、ベンゾフラニル部分(例えば、BF)、インドール部分(例えば、Trp)及びヒドロキシプロピル部分(例えば、Thr)が含まれる。
図5】例示的なC-5修飾ピリミジンを含有するヌクレオシド、及びシトシンの5位に存在し得る修飾を示す。C-5修飾の化学構造には、シトシンの5位に修飾を連結する例示的アミド結合が含まれる。図示の5位部分には、ベンジル部分(例えば、Bn、PE及びPP)、ナフチル部分(例えば、Nap、2Nap、NE、及び2NE)及びチロシル部分(例えば、Tyr)が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
別段の注記がない限り、技術用語は従来の使用法に従って使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes V,Oxford University Pressにより出版,1994(ISBN 0-19-854287-9)、Kendrew et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Science Ltd.により出版,1994(ISBN 0-632-02182-9)、及びRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により出版,1995(ISBN 1-56081-569-8)に見出され得る。
【0024】
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするため、特定の用語について以下のように説明する。
【0025】
アプタマー:アプタマーという用語は、本明細書で使用される場合、標的分子に対して望ましい作用を有する、天然には存在しない核酸を指す。望ましい作用としては、標的の結合、標的の活性の増強、及び標的の活性の阻害が含まれるが、これらに限定されない。アプタマーは、「核酸リガンド」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、アプタマーは、SOMAmerである。本明細書で使用される場合、用語「アプタマー」には、別段の具体的な指示がない限り、アプタマー及びその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、ワトソン/クリック塩基対形成または三重らせん形成とは独立した機構を介してRIG-Iと特異的に結合し、ここで、アプタマーは、RIG-Iによって結合されるという既知の生理学的機能を有していない。いくつかの実施形態では、RIG-Iと結合するアプタマーには、核酸の候補混合物から同定される核酸が含まれ、手段とする方法は、(a)候補混合物と標的とを接触させることであって、候補混合物中の他の核酸と比べて標的に対する親和性が高い核酸が、候補混合物の残部から分割され得る、前記接触させること、(b)親和性がより高い核酸を候補混合物の残部から分割すること、及び(c)親和性がより高い核酸を増幅させて、リガンドに富む核酸混合物を生成すること、を含み、これにより、RIG-Iと結合するアプタマーが同定される。親和性相互作用は程度の問題であると認識されているが、この文脈では、自身の標的に「特異的に結合する」アプタマーとは、アプタマーがその標的に、混合物または試料中の他の非標的成分に結合する場合の親和性の程度よりもはるかに高い程度で結合することを意味する。「アプタマー」または「核酸リガンド」は、特定のヌクレオチド配列を有する1つの型または種の核酸分子のコピーのセットである。アプタマーには、任意の好適な数のヌクレオチドを含めることができる。「アプタマー」とは、2つ以上のそのようなセットの分子を指す。異なるアプタマーは、同数のヌクレオチドを有することも、異なる数のヌクレオチドを有することもできる。アプタマーは、DNA、RNA、DNAとRNAの両方、及びいずれかまたは両方の修飾型を含んでよく、また、一本鎖、二本鎖であっても、あるいは二本鎖もしくは三本鎖領域、または他の任意の三次元構造を含有してもよい。
【0027】
生物活性:生物活性という用語は、本明細書で使用される場合、生理学的または病態生理学的過程に影響を及ぼし得る、細胞間、細胞内または細胞外の1つ以上のプロセス(例えば、細胞間結合、リガンド-受容体結合、細胞シグナル伝達等)を指す。
【0028】
C-5修飾ピリミジン:C-5修飾ピリミジンとは、本明細書で使用される場合、C-5位での修飾のあるピリミジンを指す。C-5修飾ピリミジンの例には、米国特許第5,719,273号及び同第5,945,527号に記載のものが含まれる。C-5修飾ピリミジンの特定の非限定的な例を本明細書で提供する。
【0029】
RIG-Iアプタマー:「RIG-Iアプタマー」とは、本明細書で使用される場合、RIG-Iタンパク質への結合能のあるアプタマーを指す。
【0030】
修飾:本明細書で使用される場合、用語「修飾する」、「修飾されている」、「修飾」、及びその任意の変形は、オリゴヌクレオチドに関して使用される場合、そのオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの非天然部分、例えば、少なくとも1つの非天然糖部分、少なくとも1つの非天然ヌクレオシド間結合、少なくとも1つの非天然ヌクレオチド塩基部分、及び/または天然ではオリゴヌクレオチドに存在しない少なくとも1つの部分(例えば、炭素3個のスペーサーまたはヘキサエチレングリコール(HEG)等)を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの4つの構成ヌクレオチド塩基(すなわち、A、G、T/U、及びC)のうちの少なくとも1つは、修飾ヌクレオチドである。そのようないくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、天然に存在する塩基よりも疎水性である塩基部分を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与する。いくつかの実施形態では、アプタマーが、疎水性塩基部分を含む1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む場合、そのアプタマーは、その標的、例えばタンパク質に、主に疎水性相互作用を介して結合する。いくつかの実施形態では、そのような疎水性相互作用により高い結合効率と安定な共結晶複合体がもたらされる。C-5位に置換を有するピリミジンは、修飾ヌクレオチドの一例である。修飾として、キャッピング等の3’及び5’の修飾も含めることができる。他の修飾としては、類似体による天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の置換、ヌクレオシド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)を用いるもの、荷電結合(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を用いるもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレン等)を用いるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、及び修飾結合(例えば、アルファアノマー型核酸等)を用いるもの等を挙げることができる。さらに、ヌクレオチドの糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、ホスホナート基もしくはリン酸基で置き換えられ得るか、標準的な保護基で保護され得るか、または追加のヌクレオチドもしくは固体支持体への追加の結合を調製するために活性化され得る。5’末端及び3’末端のOH基を、リン酸化させるか、あるいはアミン、炭素原子約1~約20個の有機キャッピング基部分、いくつかの実施形態において約10~約80kDaの範囲であるポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、いくつかの実施形態において約20~約60kDaの範囲であるPEGポリマー、または他の親水性もしくは疎水性の生体高分子もしくは合成ポリマーで置換することができる。一実施形態では、修飾は、ピリミジンのC-5位のものである。これらの修飾は、直接C-5位でアミド結合を介するか、または他の種類の結合により生成することができる。
【0031】
ポリヌクレオチドは、一般に当該技術分野で公知のリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態を含有することもでき、これには、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-リボースもしくは2’-アジド-リボース、炭素環状糖類似体、α-アノマー型糖、エピマー型糖(アラビノース、キシロースまたはリキソース等)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体及び脱塩基ヌクレオシド類似体(メチルリボシド等)が含まれる。上記のように、1つ以上のホスホジエステル結合を代替的連結基により置き換えてよい。これらの代替的連結基には、リン酸塩が、P(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセタール」)によって置き換えられている実施形態が挙げられ、ここで、各RまたはR’は、独立して、Hであるか、またはエーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジル(araldyl)を任意選択で含有する置換もしくは非置換のアルキル(1~20C)である。ポリヌクレオチド内のすべての結合が同一である必要はない。類似形態の糖、プリン、及びピリミジンの置換は、例えば、ポリアミド骨格のような代替的骨格構造が有利であり得るように、最終生成物を設計する際に有利になり得る。
【0032】
調節する:本明細書で使用される場合、「調節する」とは、標的のレベル、安定性、プロセシング、及び/または活性を増大または減少させることにより変化させることを意味する。
【0033】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマーを指すために同じ意味で使用され、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド及びそのような実体の修飾型が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸」には、二本鎖または一本鎖の分子ならびに三重らせん分子が含まれる。核酸という用語にはアプタマーが含まれるが、それに限定されない(すなわち、この用語には、ヌクレオチドの他のポリマーが含まれる)。
【0034】
ヌクレアーゼ:本明細書で使用される場合、用語「ヌクレアーゼ」とは、オリゴヌクレオチドのヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を切断する能力がある酵素を指す。本明細書で使用される場合、用語「エンドヌクレアーゼ」とは、オリゴヌクレオチドの内部の部位でホスホジエステル結合(複数可)を切断する酵素を指す。本明細書で使用される場合、用語「エキソヌクレアーゼ」とは、オリゴヌクレオチド末端ヌクレオチドを連結しているホスホジエステル結合(複数可)を切断する酵素を指す。生体液は典型的に、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼの両方の混合物を含有する。
【0035】
ヌクレアーゼ耐性:本明細書で使用される場合、用語「ヌクレアーゼ耐性の」及び「ヌクレアーゼ耐性」とは、オリゴヌクレオチドがエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼの基質として機能する能力の低下であって、そのために、そのような酵素と接触した際に、そのオリゴヌクレオチドが分解されない、あるいはヌクレアーゼ耐性測定対象のオリゴヌクレオチドと長さ及び配列は同様であるが1つ以上の修飾を欠く対照オリゴヌクレオチドよりもり緩徐にもしくは低い程度で分解されることを指す。
【0036】
ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、用語「ヌクレオチド」とは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはその修飾形態を指す。ヌクレオチドには、プリン(例えば、アデニン、ヒポキサンチン、グアニン等)及びピリミジン(例えば、シトシン、ウラシル、チミン等)を含む種が含まれる。塩基が、「A」、「C」、「G」、「U」、または「T」として示されている場合、それは、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの両方、及びその修飾形態を包含することを意図している。
【0037】
薬学的に許容される:本明細書で使用される場合の薬学的に許容される、とは、動物、より具体的にはヒトでの使用のために、連邦もしくは州政府の規制当局により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0038】
薬学的に許容される塩:ある化合物の薬学的に許容される塩(例えば、アプタマー)とは、本明細書で使用される場合、その化合物と、その化合物にイオン結合(複数可)を介して結合している1つ以上の追加の薬学的に許容される原子もしくは基と、を含有する生成物を指す。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、化合物を酸または塩基と接触させることによって生成される。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アリールアルキルスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、及び酒石酸塩;アルカリ金属カチオン、例えば、Li、Na、K、アルカリ土類金属塩、例えば、MgもしくはCa、または有機アミン塩が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
医薬組成物:医薬組成物とは、本明細書で使用される場合、個体への投与に好適な形態にある、化合物(アプタマー等)を含む製剤を指す。医薬組成物は典型的には、その意図される投与経路に適合するよう製剤化される。投与経路の例としては、硝子体内、経腸及び非経口等、例えば、皮下注射もしくは注入、静脈内注射もしくは注入、関節内注射、動脈内注射及び注入、房水内注射及び移植、ならびに硝子体内注射及び移植が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
タンパク質:本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「ペプチド断片」と同義で使用される。「精製された」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、またはペプチド断片は、精製タンパク質を取得する元となる細胞、組織、もしくは無細胞材料からの、細胞物質または他の汚染タンパク質を実質的に含まないか、あるいは化学合成される場合は化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。
【0041】
SELEX:SELEXという用語は、本明細書で使用される場合、一般に、望ましい方法で標的分子と相互作用する核酸、例えば、あるタンパク質に高い親和性で結合する核酸の選択;及びそれらの選択された核酸の増幅を指す。SELEXは、特定の標的分子に対して親和性が高いアプタマーを同定するために使用され得る。SELEXという用語と「SELEX法」とは、同じ意味で使用され得る。いくつかの実施形態では、RIG-Iに結合するアプタマーを選択する方法が提供され、これは、(a)核酸の候補混合物を調製することであって、候補混合物が修飾核酸を含み、候補混合物の少なくとも1つまたはそれぞれの核酸にある少なくとも1つのピリミジンがC5位で化学的に修飾されている、前記調製すること、(b)候補混合物をRIG-Iと接触させることであって、候補混合物中の他の核酸と比べてRIG-Iに対する親和性が高い核酸がRIG-Iと結合して、核酸-RIG-I複合体を形成する、前記接触させること、(c)親和性がより高い核酸を候補混合物の残部から分割すること、及び(d)親和性がより高い核酸を増幅させて、より高い親和性でRIG-Iに結合する能力がある核酸配列に富む核酸混合物を生成すること、を含み、これにより、RIG-Iに結合するアプタマーが同定される。特定の実施形態では、かかる方法にはさらに、低解離速度濃縮プロセスを実施することが含まれる。
【0042】
配列同一性:本明細書で使用される場合、2つ以上の核酸配列との関連における配列同一性とは、その配列により共有される、同一のヌクレオチド位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一位置の数/比較される2配列のうち短い方での位置総数×100)であり、その際、ギャップの数、及び2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入する必要がある各ギャップの長さを考慮に入れる。2つ以上の配列間の配列比較及び同一性パーセントの決定は、BLAST及びGapped BLASTプログラム等の数学アルゴリズムをそのデフォルトのパラメータで使用して達成することができる(例えば、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403,1990、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのBLASTNも参照のこと)。配列比較の場合、典型的には1つの配列が参照配列となり、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列(subsequence)の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列(複数可)の配列同一性パーセントを計算する。比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482,1981の局所的相同性アルゴリズムによるか、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443,1970の相同性アラインメントアルゴリズムによるか、Pearson and Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444,1988の類似性検索法によるか、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によるか、または目視検査によって(概要は、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Assoc.and Wiley-Interscience(1987)により出版)を参照のこと)行うことができる。本明細書で使用される場合、アプタマー等の核酸の同一性パーセントの記載では、参照核酸塩基配列と少なくとも、例えば、約95%同一である配列の場合、その核酸配列に、参照核酸配列の各100ヌクレオチドあたり最大で5つの点変異が含まれ得ることを除いては、その核酸配列は参照配列と同一であることが意図される。言い換えれば、所望の核酸配列、すなわち、参照核酸配列と少なくとも約95%同一な配列を得るために、参照配列中の最大5%のヌクレオチドが欠失もしくは別のヌクレオチドで置換され得るか、または参照配列中の総ヌクレオチド数の5%を最大とするいくつかのヌクレオチドが参照配列に挿入され得る(本明細書では挿入と呼ぶ)。所望の配列を生成するための参照配列のこれらの変異は、参照核酸塩基配列の5’末端もしくは3’末端の位置、またはそれらの末端に挟まれた位置において、参照配列内のヌクレオチド間に個々別々に、または参照配列内部に1つ以上の連続する群になって散在して出現し得る。
【0043】
SOMAmer:本明細書で使用される場合、「SOMAmer」または低解離速度の修飾アプタマーとは、解離速度(t1/2)が30分以上、60分以上、90分以上、120分以上、150分以上、180分以上、210分以上、または240分以上であるアプタマー(疎水性修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含むアプタマーを含む)を指す。いくつかの実施形態では、SOMAmerは、“Method for Generating Aptamers with Improved Off-Rates”と題された米国特許第7,947,447号に記載の改良SELEX法を使用して生成される。
【0044】
標的分子:標的分子(または標的)とは、本明細書で使用される場合、アプタマーが望ましい様態で作用することができるポリヌクレオチド以外の、三次元化学構造を有する任意の化合物または分子を指す。標的分子の非限定的な例としては、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、病原体、毒性物質、基質、代謝物、遷移状態類似体、補因子、阻害剤、薬物、色素、栄養、増殖因子、細胞、組織、前述のうちのいずれかの任意の部分または断片等が挙げられる。事実上、いかなる化学的または生物学的エフェクターも好適な標的であり得る。どの大きさの分子でも標的となり得る。標的はまた、標的と核酸の間の相互作用の可能性または強度を高めるために、特定の方法で修飾され得る。標的にはまた、特定の化合物または分子の任意の小規模変異、例えば、タンパク質の場合は、例えば、そのアミノ酸配列の小規模変異、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、またはその分子の固有性を実質的に変化させることのない他の任意の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーション等も含まれ得る。「標的分子」または「標的」は、アプタマーに対する結合能のある、1つの型または種の分子または多分子構造のコピーのセットである。「標的分子」または「標的」とは、2つ以上のそのようなセットの分子を指す。いくつかの実施形態では、標的分子は、ヒトRIG-Iタンパク質である。
【0045】
治療的有効量:本明細書で使用される場合、用語「治療的有効量」とは一般に、本明細書に記載されるように予防、軽減、または治療されるべき障害または状態の少なくとも1つの症状を改善するために必要な量を意味する。本開示のアプタマーに関する場合の語句「治療的有効量」とは、特定の薬理学的応答を提供するアプタマー投与量であり、その応答のために、そのような治療を必要とするかなりの数の個体でアプタマーが投与される、アプタマー投与量を意味する。特定の個体に対して特定の場合に投与されるアプタマーの治療的有効量は、そのような投与量を当業者が治療的有効量であるとみなしたとしても、本明細書に記載される状態/疾患の治療において常に有効であるとは限らないことが強調される。
【0046】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」には、文脈で特に明確な指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAとBが含まれることを意味する。核酸またはポリペプチドについて与えられる、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、及びすべての分子量または分子質量の値は概数であり、説明のために提供されていることがさらに理解されるべきである。
【0047】
さらに、本明細書で提供される範囲は、その範囲内の値のすべてが省略されていると理解される。例えば、1~50という範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または下位範囲(ならびにその分数、ただし、文脈で特に明確な指示がある場合を除く)が含まれることが理解される。いかなる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲も、特に指示がない限り、記述範囲内のあらゆる整数値、及び必要に応じ、その分数値(整数の10分の1及び100分の1等)を含むと理解されるべきである。また、ポリマーのサブユニット、サイズまたは厚さ等の任意の物理的特徴に関して本明細書で引用される任意の数字範囲は、特に指示がない限り、記述範囲内のいかなる整数も含むと理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」または「から本質的になる」とは、特に指示がない限り、示されている範囲、値、または構造の±20%を意味する。本明細書で使用される場合、用語「含む(include)及び「含む(comprise)」は、非限定的であり、かつ同義で使用される。本明細書で使用される場合の用語「a」及び「an」は、列挙されている構成要素のうちの「1つ以上」を指すことを理解されるべきである。選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢のうちの1つ、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0048】
本開示の実施または試験においては本明細書に記載される方法及び材料と類似または同等のものを使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合は、用語の説明も含め、本明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0049】
例示的実施形態
本発明は、RIG-Iタンパク質と特異的に結合するアプタマー(「RIG-Iアプタマー」と呼ばれる場合もある)を提供する。いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列5’-PEPSZV-3’(配列番号49)を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、A、またはGであり、Sは、GまたはCであり、Zは、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Vは、C、A、またはGである。いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列5’-PEPSFP-3’(配列番号50)を含み、ここで、各Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、G、またはAである。そのようないくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号49及び50を含む。そのようないくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号49及び50ならびに配列5’-AAPGAPGAGG-3’(配列番号51)を含む。そのようないくつかの実施形態では、アプタマーは、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチドの長さである。
【0050】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列5’-PGPGPCAPGPGPPPZAZQQCZMGPPAAPGAPGAGG-3’(配列番号52)を含み、ここで、Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Zは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Qは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはGであり、Mは、CまたはAであり、nは、独立して、各出現について、0または1である。
【0051】
いくつかの実施形態では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、独立して、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-フェネチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PEdU)、5-(N-チオフェニルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-チロシルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TyrdU)、5-(N-3,4-メチレンジオキシベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(MBndU)、5-(N-4-フルオロベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(FBndU)、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)、5-(N-イミジゾリルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ImdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-R-トレオニニルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThrdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)である。
【0053】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、配列番号65~67から選択される1つ以上の配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、RIG-Iタンパク質と結合するアプタマーは、配列番号4~47及び68~99から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一な配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、35~60ヌクレオチドの長さ、または35~50ヌクレオチドの長さ、または40~50ヌクレオチドの長さである。
【0056】
いくつかの実施形態では、アプタマーが結合するRIG-Iタンパク質は、ヒトRIG-Iタンパク質である。
【0057】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、アプタマーは、35~60ヌクレオチドの長さ、または35~50ヌクレオチドの長さ、または40~50ヌクレオチドの長さであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、RIG-Iアプタマーには、最大100ヌクレオチド、最大95ヌクレオチド、最大90ヌクレオチド、最大85ヌクレオチド、最大80ヌクレオチド、最大75ヌクレオチド、最大70ヌクレオチド、最大65ヌクレオチド、最大60ヌクレオチド、最大55ヌクレオチド、最大50ヌクレオチド、最大45ヌクレオチド、最大40ヌクレオチド、または最大35ヌクレオチドが含まれ得る。
【0059】
本開示の別の態様では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iに対する解離定数(K)が約10nM以下であり得る。別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約15nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約20nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約25nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約30nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約35nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約40nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約45nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約50nM以下である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が約2pM~約10nMの範囲(または2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、15pM、20pM、25pM、30pM、35pM、40pM、45pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、150pM、200pM、250pM、300pM、350pM、400pM、450pM、500pM、550pM、600pM、650pM、700pM、750pM、800pM、850pM、900pM、950pM、1000pM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nMもしくは10nM)である。さらに別の例示的実施形態では、RIG-Iアプタマーは、RIG-Iタンパク質に対する解離定数(K)が少なくとも2pMの範囲(または少なくとも2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、15pM、20pM、25pM、30pM、35pM、40pM、45pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、150pM、200pM、250pM、300pM、350pM、400pM、450pM、500pM、550pM、600pM、650pM、700pM、750pM、800pM、850pM、900pM、950pM、1000pM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nMもしくは10nM)である。好適な解離定数は、実施例2に記載のように、多点滴定を使用して、y=(最大-最小)(タンパク質)/(K+タンパク質)+最小という方程式に当てはめる結合アッセイで決定することができる。解離定数の決定は、解離定数が測定される条件に大きく依存し、そのため、これらの数値は、例えば平衡時間等のような要因に関して大幅に変動し得ることを理解されるべきである。
【0060】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、アプタマー、すなわち、核酸分子は、DNA、RNAのヌクレオチドまたはその組み合わせを含む。
【0061】
SELEX
SELEXには一般に、核酸の候補混合物を調製すること、候補混合物と所望の標的分子とを結合させて親和性複合体を形成させること、未結合の候補核酸から親和性複合体を分離すること、親和性複合体から核酸を分離し単離すること、核酸を精製すること、及び特定のアプタマー配列を同定することが含まれる。工程には、選択されたアプタマーの親和性をさらに高めるために複数ラウンドが含まれ得る。工程には、その工程の1つ以上のポイントにおいて増幅ステップを含めることができる。例えば、”Nucleic Acid Ligands”と題された米国特許第5,475,096号を参照のこと。自身の標的と共有結合で結合するアプタマー、及び自身の標的と非共有結合で結合するアプタマーを生成するためにSELEX法を使用することができる。例えば、“Systematic Evolution of Nucleic Acid Ligands by Exponential Enrichment:Chemi-SELEX”と題された米国特許第5,705,337号を参照のこと。
【0062】
例えば、改善された生体内安定性または改善された送達特性等の、改善された特徴をアプタマーに付与する修飾ヌクレオチドを含有する高親和性アプタマーを同定するためにSELEX法を使用することができる。そのような修飾の例には、リボース及び/またはリン酸塩及び/または塩基の位置での化学的置換が含まれる。SELEX法で同定された、修飾ヌクレオチドを含有するアプタマーは、“High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides”と題された米国特許第5,660,985号に記載されており、それには、ピリミジンの5’位及び2’位で化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。米国特許第5,580,737号(上記参照)には、2’-アミノ(2’-NH2)、2’-フルオロ(2’-F)、及び/または2’-O-メチル(2’-OMe)で修飾された1つ以上のヌクレオチドを含有する高度に特異的なアプタマーが記載されている。物理的特性及び化学的特性が拡張された核酸ライブラリー、ならびにSELEX及びフォトSELEXにおけるそれらの使用を記載している“SELEX and PHOTOSELEX”と題された米国特許出願公開第20090098549号も参照のこと。
【0063】
SELEXはまた、望ましい解離速度特性を有するアプタマーを同定するために使用することができる。標的分子に結合することができるアプタマーを生成するための改良SELEX方法が記載されている“Method for Generating Aptamers with Improved Off-Rates”と題された米国特許出願公開第20090004667号を参照のこと。上述のように、これらの低解離速度アプタマーは「SOMAmer」として知られている。各自の標的分子からの解離速度が遅いアプタマーまたはSOMAmer及びフォトアプタマー(photoaptamer)またはSOMAmerを生成する方法が記載されている。かかる方法は、候補混合物と標的分子とを接触させること、核酸-標的複合体の形成を生じさせること、及び低解離速度濃縮プロセス、すなわち、解離速度が速い核酸-標的複合体は解離して再形成することはなく、解離速度が遅い複合体が完全な状態で残るプロセスを実施することを伴う。さらに、方法には、解離速度性能が改善されたアプタマーまたはSOMAmerが生成されるよう、候補核酸混合物の生成における修飾ヌクレオチドの使用が含まれる。
【0064】
このアッセイの変形では、アプタマーが自身の標的分子と共有結合で結合するかまたは「光架橋する」ことを可能にする光反応性官能基を含めたアプタマーを使用する。例えば、“Nucleic Acid Ligand Diagnostic Biochip”と題された米国特許第6,544,776号を参照のこと。これらの光反応性アプタマーはフォトアプタマー(photoaptamer)とも呼ばれる。例えば、各々が“Systematic Evolution of Nucleic Acid Ligands by Exponential Enrichment: Photoselection of Nucleic Acid Ligands and Solution SELEX”と題された米国特許第5,763,177号、米国特許第6,001,577号、及び米国特許第6,291,184号を参照のこと。また、例えば、“Photoselection of Nucleic Acid Ligands”と題された米国特許第6,458,539号も参照のこと。マイクロアレイを試料と接触させ、フォトアプタマー(photoaptamer)に自身の標的分子に結合する機会を与えた後、フォトアプタマー(photoaptamer)が光活性化され、固体支持体を洗浄して非特異的に結合した分子を除去する。フォトアプタマー(photoaptamer)に結合している標的分子は一般に、フォトアプタマー(photoaptamer)上の光活性化官能基(複数可)により生じた共有結合のために除去されないことから、過酷な洗浄条件を使用してよい。
【0065】
これらのアッセイフォーマットのいずれにおいても、アプタマーまたはSOMAmerは、試料と接触させる前に固体支持体に固定化される。しかしながら、特定の状況下では、試料と接触させる前にアプタマーまたはSOMAmerを固定化しても、最適なアッセイが得られない場合がある。例えば、アプタマーまたはSOMAmerの事前固定化では、アプタマーまたはSOMAmerと固体支持体表面の標的分子との混合効率が悪くなる場合があり、おそらく反応時間が長くなり、そのため、アプタマーまたはSOMAmerが自身の標的分子に効率的に結合することを可能にするためのインキュベーション期間の長期化につながる。さらに、アッセイでフォトアプタマー(photoaptamer)またはフォトSOMAmerが使用される場合、固体支持体として使用される材料に応じて、固体支持体が、使用される光を散乱または吸収する傾向があり、フォトアプタマー(photoaptamer)またはフォトSOMAmerとそれらの標的分子との間での共有結合の形成に影響を与える場合がある。さらに、使用される方法によっては、固体支持体の表面もまた、使用される標識物質に曝露され、それによる影響をうける場合があることから、アプタマーまたはフォトSOMAmerに結合しているそれらの標的分子の検出が不正確になり得る。最後に、固体支持体上へのアプタマーまたはSOMAmerの固定化では一般に、試料へのアプタマーまたはSOMAmerの曝露より前にアプタマーまたはSOMAmerの調製ステップ(すなわち、固定化)を伴うが、この調製ステップが、アプタマーまたはSOMAmerの活性または機能性に影響を与える場合がある。
【0066】
SOMAmerにその標的を溶液中で捕捉させて、その次に、SOMAmerと標的の混合物の特定の成分を除去するよう設計された分離ステップを検出より前に採り入れているSOMAmerアッセイもまた報告されている(“Multiplexed Analyses of Test Samples”と題された米国特許出願公開第20090042206号を参照のこと)。記載されているSOMAmerアッセイ方法は、核酸(すなわち、SOMAmer)を検出及び定量化することによって、試験試料中の核酸以外の標的(例えば、タンパク質標的)の検出及び定量を可能にする。記載されている方法では、核酸以外の標的を検出及び定量化するための核酸サロゲート(すなわち、SOMAmer)を作製し、これにより、増幅等の多種多様な核酸技術を、タンパク質標的等の広範な所望の標的に適用することを可能にしている。
【0067】
標的がペプチドであるSELEX法の実施形態が、“Modified SELEX Processes Without Purified Protein”と題された米国特許第6,376,190号に記載されている。ここでの場合、標的は、RIG-I-タンパク質である。
【0068】
アプタマーでの化学修飾
アプタマーは、その特性及び特徴を改善する修飾ヌクレオチドを含有し得る。そのような改善の非限定的な例としては、インビボ安定性、分解に対する安定性、その標的に対する結合親和性、及び/または送達特性改善が挙げられる。
【0069】
そのような修飾の例には、ヌクレオチドのリボース及び/またはリン酸塩及び/または塩基の位置での化学的置換が含まれる。SELEX法で同定された、修飾ヌクレオチドを含有するアプタマーは、“High Affinity Nucleic Acid Ligands Containing Modified Nucleotides”と題された米国特許第5,660,985号に記載されており、それには、ピリミジンの5’位及び2’位で化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。米国特許第5,580,737号(上記参照)には、2’-アミノ(2’-NH)、2’-フルオロ(2’-F)、及び/または2’-O-メチル(2’-OMe)で修飾された1つ以上のヌクレオチドを含有する高度に特異的なアプタマーが記載されている。物理的特性及び化学的特性が拡張された核酸ライブラリー、ならびにSELEX及びフォトSELEXにおけるそれらの使用を記載している“SELEX and PHOTOSELEX”と題された米国特許出願公開第20090098549号も参照のこと。
【0070】
C-5修飾を含むヌクレオシドの具体例としては、この直下に例示されているように、ベンジルカルボキシアミド(別法では、ベンジルアミノカルボニル)(Bn)、ナフチルメチルカルボキシアミド(別法では、ナフチルメチルアミノカルボニル)(Nap)、トリプタミノカルボキシアミド(別法では、トリプタミノカルボニル)(Trp)、及びイソブチルカルボキシアミド(別法では、イソブチルアミノカルボニル)(iBu)から独立して選択される置換基での、C-5位のデオキシウリジンの置換が挙げられる。
【化1】
【0071】
C-5修飾ピリミジンの化学修飾はまた、単独または任意の組み合わせで、2’位の糖修飾、環外アミンにおける修飾、及び4-チオウリジンの置換等と組み合わせることができる。
【0072】
C-5修飾ピリミジンを含有する代表的ヌクレオシドとしては、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-0-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-0-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-0-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-0-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンまたは5-(N-[l-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)が挙げられる。
【0073】
ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合、ポリヌクレオチドのアセンブリの前でも後でも付与することができる。ヌクレオチドの配列に非ヌクレオチド成分を割り込ませることができる。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより、さらに修飾することができる。
【0074】
さらに、C-5修飾ピリミジンを含有するヌクレオチドには、以下が含まれる。
【化2】
【0075】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与する。C-5位に置換を有するピリミジンは、修飾ヌクレオチドの一例である。修飾としては、骨格修飾、メチル化、稀な塩基対合の組み合わせ、例えば、イソ塩基のイソシチジンとイソグアニジン等を挙げることができる。修飾として、キャッピング等の3’及び5’の修飾も含めることができる。他の修飾としては、類似体による天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の置換、ヌクレオシド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)を用いるもの、荷電結合(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を用いるもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレン等)を用いるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、及び修飾結合(例えば、アルファアノマー型核酸等)を用いるもの等を挙げることができる。さらに、ヌクレオチドの糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、ホスホナート基もしくはリン酸基で置き換えられ得るか、標準的な保護基で保護され得るか、または追加のヌクレオチドもしくは固体支持体への追加の結合を調製するために活性化され得る。5’末端及び3’末端のOH基を、リン酸化させるか、あるいはアミン、炭素原子約1~約20個の有機キャッピング基部分、一実施形態において約10~約80kDaの範囲であるポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、別の実施形態において約20~約60kDaの範囲であるPEGポリマー、または他の親水性もしくは疎水性の生体高分子もしくは合成ポリマーで置換することができる。一実施形態では、修飾は、ピリミジンのC-5位のものである。これらの修飾は、直接C-5位でアミド結合を介するか、または他の種類の結合によって生成することができる。
【0076】
ポリヌクレオチドはまた、当該技術分野で一般に知られているリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-リボースもしくは2’-アジド-リボース、炭素環状の糖類似体、a-アノマー型糖、エピマー型糖(アラビノース、キシロースまたはリキソース等)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体及び脱塩基ヌクレオシド類似体(メチルリボシド等)を含有することもできる。上記のように、1つ以上のホスホジエステル結合を代替的連結基により置き換えてよい。これらの代替的連結基としては、リン酸塩が、P(0)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、(0)NR(「アミダート」)、P(0)R、P(0)OR’、COまたはCH(「ホルムアセタール」)によって置き換えられている実施形態が挙げられ、ここで、各RまたはR’は、独立して、Hであるか、またはエーテル(-0-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジル(araldyl)を任意選択で含有する置換もしくは非置換のアルキル(1-20C)である。ポリヌクレオチド内のすべての結合が同一である必要はない。類似形態の糖、プリン、及びピリミジンの置換は、例えば、ポリアミド骨格のような代替的骨格構造が有利であり得るように、最終生成物を設計する際に有利になり得る。
【0077】
本開示はさらに、配列番号4~47及び68~99からなる群から選択される2つ以上の核酸配列を含む製剤を提供する。
【0078】
別の態様では、C-5修飾ピリミジンを含有する各ヌクレオシドは、独立して、
5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BndU)、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ベンジルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-フェネチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PEdU)、5-(N-チオフェニルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(iBudU)、5-(N-チロシルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TyrdU)、5-(N-3,4-メチレンジオキシベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(MBndU)、5-(N-4-フルオロベンジルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(FBndU)、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)、5-(N-イミジゾリルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ImdU)、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-イソブチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(TrpdU)、5-(N-R-トレオニニルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(ThrdU)、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-トリプタミノカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(3-トリメチルアンモニウム)プロピル]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジンクロリド、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-[1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)]カルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される。
【0079】
別の態様では、C-5修飾ピリミジンを含有するヌクレオシドは、独立して、
5-(N-1-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NapdU)、5-(N-1-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NapdU)、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルメチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(NEdU)、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-1-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(2NEdU)、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-2-ナフチルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BFdU)、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、5-(N-3-ベンゾフラニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジン、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(BTdU)、5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-O-メチルウリジン、及び5-(N-3-ベンゾチオフェニルエチルカルボキシアミド)-2’-フルオロウリジンから選択される。
【0080】
別の態様では、C-5修飾ピリミジンを含有するヌクレオシドは、5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン(PPdU)である。
【0081】
別の態様では、製剤の2つ以上の核酸分子は各々、独立して、35~60ヌクレオチドの長さ、もしくは35~50ヌクレオチドの長さ、もしくは40~50ヌクレオチドの長さであるか、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50の追加のヌクレオチドをさらに含む。
【0082】
別の態様では、補体成分3(RIG-I)タンパク質は、ヒト補体成分3(RIG-I)タンパク質である。
【0083】
アプタマーを含む医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つのアプタマーと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、含む医薬組成物を提供する。好適な担体は、Lippincott Williams & Wilkinsにより出版されている“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Twenty-first Edition”に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
本明細書に記載のアプタマーは、任意の薬学的に許容される剤形で使用することができ、これには、注射用剤形、液体分散液、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、凍結乾燥製剤、乾燥粉末、錠剤、カプセル、放出制御製剤、速溶性(fast melt)製剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、即放性と放出制御の混合型製剤等が含まれるが、これらに限定されない。具体的には、本明細書に記載のアプタマーは、(a)硝子体内、経口、肺、静脈内、動脈内、髄腔内、関節内、直腸、点眼、結腸、非経口、大槽内、腟内、腹腔内、局所、口腔、経鼻、及び外用投与のいずれかから選択される投与用に製剤化すること、(b)液体分散液、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム剤、錠剤、小袋及びカプセルのいずれかから選択される剤形に製剤化すること、(c)凍結乾燥製剤、乾燥粉末、速溶性(fast melt)製剤、放出制御製剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、及び即放性と放出制御の混合型製剤のいずれかから選択される剤形に製剤化すること、または(d)それらの任意の組み合わせで製剤化すること、が可能である。
【0085】
非経口、皮内、または皮下の適用に使用される溶液もしくは懸濁液は、以下の成分のうち1つ以上を含むことができる:(1)注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒等の無菌希釈剤、(2)ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤、(3)アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、(4)エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、(5)酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩等の緩衝剤、及び(5)塩化ナトリウムまたはデキストロース等の等張性調節用薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジもしくは複数用量バイアルに密封することができる。
【0086】
注射使用に好適な医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び無菌の注射用の溶液もしくは分散液の用時調製のための無菌粉末が含まれ得る。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合にも、組成物は無菌であるべきであり、かつ、容易に注射針を通過できる程度に流動性があるべきである。医薬組成物は、製造及び保管の条件下で安定であるべきであり、かつ、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保存されるべきである。
【0087】
用語「安定な」とは、本明細書で使用される場合、対象への投与に好適な状態または条件のままであることを意味する。
【0088】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びその好適な混合物等を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合に要求される粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトール等の多価アルコール、及び塩化ナトリウム等の無機塩を組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0089】
無菌注射液は、適切な溶媒に適切な量で入れた活性試薬(例えば、アプタマー)を、上掲成分のうちの1つまたはそれらの組み合わせと必要に応じて組み合わせ、その後、濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒及び他の任意の所望成分を含有する無菌ビヒクルに、少なくとも1つのアプタマーを組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液調製用の無菌粉末の場合、例示的調製方法には、真空乾燥及び凍結乾燥が含まれ、そのどちらでも、アプタマーと追加の所望成分との粉末は、それより前のそれらの無菌濾過溶液から得られる。
【0090】
[00176]いくつかの実施形態では、アプタマーは、硝子体内注射用に製剤化される。硝子体内投与のための好適な製剤は、例えば、Lippincott Williams & Wilkinsにより出版されている“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Twenty-first Edition”に記載されている。眼薬物送達は、例えば、Rawas-Qalaji et al.(2012)Curr.Eye Res.37:345、Bochot et al.(2012)J.Control Release 161:628、Yasukawa et al.(2011)Recent Pat.Drug Deliv.Formul.5:1、及びDoshi et al.(2011)Semin.Ophthalmol.26:104において考察されている。いくつかの実施形態では、アプタマーを含む医薬組成物は、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、11週間に1回、12週間に1回、または12週間に1回より少ない頻度で硝子体内注射により投与される。
【0091】
経口組成物には一般に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。それらは、例えば、ゼラチンカプセルに密封することも、または圧縮して錠剤にすることもできる。経口治療投与の目的の場合、アプタマーを添加剤と組み合わせて、錠剤、トローチ剤、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤として使用するための液体担体を使用して調製することもでき、ここで、液体担体中の化合物は経口で適用され、口中ですすいで喀出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性のある結合剤、及び/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。
【0092】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素等のガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサーからのエアロゾルスプレー、噴霧液体、または好適なデバイスからの乾燥粉末の形態で送達される。経粘膜または経皮による投与の場合、透過対象の障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は一般に当該技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与の場合は、洗浄液、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤の使用により達成することができる。経皮投与の場合、活性試薬は、当該技術分野で一般に知られているような軟膏(ointments)、軟膏(salves)、ゲル、またはクリームに製剤化する。試薬はまた、坐剤(例えば、カカオ脂及び他のグリセリド類等の従来の坐薬基剤を用いて)または直腸送達のための停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0093】
いくつかの実施形態では、アプタマーは、体からの急速な排出から保護する担体を用いて調製される。例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達システム等の放出制御製剤を使用することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生物分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は当業者には明らかであろう。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。
【0094】
リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に指向させるリポソームを含む)はまた、薬理学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載のような、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0095】
さらに、アプタマーの懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームが挙げられる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもまた送達のために使用され得る。任意選択で、懸濁液にはまた、化合物の溶解度を高め、高濃度溶液の調製を可能にするための好適な安定化剤または薬剤が含まれ得る。
【0096】
場合によっては、投与の簡便性及び投与量の均一性のために、経口または非経口の組成物を投与単位形態で製剤化することが特に都合がよい場合がある。本明細書で使用される場合の投与単位形態とは、治療されるべき対象にとっての単位用量として適している物理的個別単位であって、各単位が、要求される医薬担体と共同で所望の治療効果を生み出すよう計算された所定量のアプタマーを含有しているものを指す。本明細書に記載のアプタマーの投与単位形態の仕様は、特定のアプタマーの特性及び達成すべき特定の治療効果、ならびに個人の治療用のそのような活性薬剤を配合する技術に本質的な制約により決定され、かつ、それらに直接依存する。
【0097】
少なくとも1つのアプタマーを含む医薬組成物には、1つ以上の医薬品添加剤を含めることができる。そのような添加剤の例としては、結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁剤、甘味料、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、及び他の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような添加剤は、当該技術分野で公知である。例示的添加剤としては、(1)様々なセルロース及び架橋ポルビニルピロリドン、微結晶セルロース、例えば、Avicel PH101とAvicel PHI 02、ケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))、トラガカントガム及びゼラチンが含まれる、結合剤、(2)様々なデンプン、乳糖、乳糖水和物、及び無水乳糖等の充填剤、(3)アルギン酸、Primogel、トウモロコシデンプン、軽度に架橋したポリビニルピロリドン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、及び化工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びそれらの混合物等の崩壊剤、(4)圧縮対象粉末の流動性に対して作用する薬剤が含まれ、また、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素(例えば、Aerosil 200)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、及びシリカゲルが含まれる、滑沢剤、(5)コロイド状二酸化ケイ素等の滑剤、(6)ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸とその塩、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル(ブチルパラベン等)、アルコール(エチルアルコールまたはベンジルアルコール等)、フェノール化合物(フェノール等)、または第四級化合物(塩化ベンザルコニウム等)等の保存剤、(7)薬学的に許容される不活性賦形剤(微結晶セルロース、乳糖、リン酸水素カルシウム、糖類、及び/または前述のうちのいずれかの混合物等)等の希釈剤;希釈剤の例として、微結晶セルロース(Avicel PH101とAvicel PHI 02等);乳糖(乳糖水和物、無水乳糖、及びPharmatose DCL21等);リン酸水素カルシウム(Emcompress等);マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;及びグルコースが含まれる、(8)任意の天然または人工の甘味料が含まれる甘味剤(ショ糖、サッカリンスクロース(saccharin sucrose)、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラミン酸塩、アスパルタム、及びアセスルファム等)、(9)香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ香味剤、Magnasweet(MAFCOの商標)、バブルガム風味、果実風味等、ならびに(10)有機酸と炭酸塩または炭酸水素塩のような発泡性対が含まれる発泡剤が挙げられる。好適な有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、及びアルギン酸ならびに無水物及び酸性塩が挙げられる。好適な炭酸塩及び炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、L-リジン炭酸塩、及びアルギニン炭酸塩が挙げられる。別法として、発泡性対の炭酸水素ナトリウム成分のみが存在し得る。
【0098】
様々な実施形態では、本明細書に記載される製剤は実質的に純粋である。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、その活性成分(例えば、アプタマー)が、存在している主要な種である(すなわち、それが、モルベースで、組成物中の他のどの個々の種よりも豊富である)ことを意味する。いくつかの実施形態では、実質的に精製された画分は、組成物であって、活性成分が、存在している全巨大分子種のうちの少なくとも約50パーセント(モルベースで)を構成しているものである。一般に、実質的に純粋な組成物には、組成物中に存在する全巨大分子種のうち約80%超が含まれる。様々な実施形態では、実質的に純粋な組成物には、組成物中に存在する全巨大分子種のうち少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が含まれる。様々な実施形態では、活性成分は均質に精製され(汚染種は、従来の検出方法によって組成物で検出することができない)、その組成物が本質的に単一の巨大分子種からなる。
【0099】
アプタマーを含むキット
本開示は、本明細書に記載のアプタマーのうちいずれかを含むキットを提供する。そのようなキットは、例えば、(1)少なくとも1つのアプタマー、及び(2)溶媒または溶液等の少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含むことができる。追加のキット構成要素には、任意選択で、例えば、(1)本明細書で特定される薬学的に許容される添加剤のうちのいずれか、例えば、安定化剤、緩衝剤等、(2)キット構成要素を保持及び/または混合するための少なくとも1つの容器、バイアルもしくは同様の器具、ならびに(3)送達器具を含めることができる。
【0100】
ある特定の特徴及び/または実施形態を例示するために以下の実施例を提供する。これらの実施例は、本開示を、記載されている特定の特徴または実施形態に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0101】
実施例1:RIG-Iタンパク質に対する結合特異性を有するアプタマーの選択及び同定
本実施例では、ヒトRIG-Iタンパク質に対するDNAアプタマーの選択及び生成のための代表的方法を提供する。
【0102】
候補混合物の調製
部分的にランダム化されているssDNAオリゴヌクレオチドの候補混合物を、ビオチン化ssDNA鋳型にアニールしたDNAプライマーのポリメラーゼ伸長によって調製した(下表1に示す)。候補混合物には、dATP、dGTP、dCTP及び5-(N-3-フェニルプロピルカルボキシアミド)-2’-デオキシウリジン三リン酸(PPdUTP)を含有する、40ヌクレオチドのランダム化カセットを含有していた。
【0103】
【表1】
B’=ビオチン
750マイクロリットルのStreptavidin Plus UltraLink Resin(PIERCE)50%スラリーを、3.5mLのSB18T0.01(NaOHでpH7.5に調整した40mMのHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)緩衝液、102mMのNaCl、5mMのKCl、5mMのMgCl2及び0.01%TWEEN(商標)20)で1回、及び3.5mLの16mM NaClで3回洗浄した。2つのビオチン残基(配列でB’として表記)と、40のランダム化された位置(配列でN40として表記)とを有する、30ナノモルの鋳型1(配列番号1)を、洗浄済みUltraLink SAビーズに加え、37℃で30分間回転させた。次いで、ビーズを16mMのNaClで3回洗浄した。各洗浄の合間に、ビーズを遠心分離により回収した。この時点でビーズは捕捉した鋳型を含有しており、これらを0.75mLの伸長反応緩衝液[20nmolのプライマー1(配列番号2)、1X SQ20緩衝液(120mMのTris-HCl、pH7.8、10mMのKCl、7mMのMgSO、6mMの(NHSO、0.001%BSA及び0.1%Triton(商標) X-100)、75ユニットのKOD XL DNAポリメラーゼ(EMD MILLIPORE)、ならびに0.5mMずつのdATP、dCTP、dGTP及びPPdUTPを含有]に懸濁した。ビーズを68℃で2時間インキュベートした。次いで、ビーズを16mMのNaClで3回洗浄した。0.5mLの20mM NaOHでビーズからアプタマーライブラリーを溶出させた。溶出したライブラリーを、15μLの1N HCl及び10μLのHEPES(pH7.5)及び1μLの10%TWEEN-20で直ちに中和させた。ライブラリーを、AMICON Ultracel YM-10フィルターで約0.09mLまで濃縮し、ライブラリーの濃度を紫外吸収分光法によって決定した。
【0104】
ヒトRIG-Iタンパク質のビオチン標識
E.coli Rosetta II細胞から精製したタグなしヒトRIG-I C末端ドメインタンパク質(アミノ酸792~925、配列番号56)を、NHS-PEO4-ビオチン(PIERCE,EZ-Link NHS-PEG4-ビオチン)と第一級アミン含有残基との共有結合によるカップリングによってビオチン化した。タンパク質(14μL中270pmol)を、22倍モル過剰のNHS-PEG4-ビオチンと混合し、反応物を室温で45分間インキュベートした。反応完了後、緩衝液を交換し、未反応NHS-PEG4-ビオチンを、YM3フィルター(MILLIPORE)を使用して限外濾過によって除去した。交換緩衝液はSB18T0.01であった。
【0105】
標的タンパク質の固定化
SELEXのラウンド1からラウンド3及びラウンド7~9のために、ビオチン標識した標的タンパク質を、MyOne-SA常磁性ビーズ(MyOne SA,Invitrogen、または以下、SAビーズと呼ぶ)に固定化した。ビーズ(250mg)を25mLのSB18T0.01で3回洗浄することによって調製した。最後に、ビーズをSB18T0.01に10mg/mLで懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0106】
SELEXのラウンド4からラウンド6のために、Hisタグの付いた生成標的タンパク質をHis-tag Dynabead(Thermo Fisher)常磁性ビーズ(MyOne SA、Invitrogen、または以下、Hisビーズと呼ぶ)に固定化した。ビーズ(40mg)を、20mLのSB18T0.01で3回洗浄することによって調製した。最後に、ビーズをSB18T0.01に2.5mg/mLで懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0107】
低解離速度濃縮プロセスによるアプタマー選択
親和性と低解離速度についての選択をもってSELEX法の合計9ラウンドを完了した。バックグラウンドを抑制するため、及びタンパク質への非特異的結合のあるアプタマーが取得される可能性を減らすため、各ラウンドの前に対抗選択を実施した。対抗選択を以下のとおり実施した。
【0108】
ラウンド1では、約1nmoleのDNAを含むSB18T0.01を含有する100μLのDNA候補混合物を95℃で5分間加熱し、その後、70℃まで5分間、次いで、48℃まで5分間冷却した後、37℃でのブロックに5分間移した。その後、試料を、10μLのタンパク質競合混合物(SB18T0.01中に、0.1%HSA、10μMのカゼイン、及び10μMのプロトロンビン)、及び0.1mg(10μL)のSAビーズと合わせ、混合しながら37℃で10分間インキュベートした。ビーズを磁気分離によって除去した。
【0109】
ラウンド2~9では、前のラウンドから得られたDNA候補混合物の65μLの分注(前のラウンドから得られたeDNAの65%)を、16μLの5x SB18T0.01と混合した。試料を95℃まで3分間加熱し、0.1℃/秒の速度で37℃まで冷却した。その後、試料を、9μLのタンパク質競合混合物(SB18T0.01中に、0.1%HSA、10μMのカゼイン、及び10μMのプロトロンビン)、及び0.1mg(10μL)のSAビーズ(ラウンド2~3、ラウンド7~9)または0.025mg(10uL)のHisビーズ(ラウンド4~6)と合わせ、混合しながら37℃で10分間インキュベートした。ビーズを磁気分離によって除去した。
【0110】
最初の対抗選択に続いて、ラウンド1の選択工程のために標的タンパク質をSAビーズに事前に固定化した。これを達成するために、0.5mgのタンパク質SAビーズを、100pmoleの短ヘアピンRNA(以下、HP10と呼ぶ)と予混合した50pmoleの標的タンパク質と混合し、37℃で30分間インキュベートした。ビーズをSB18T0.01で洗浄することにより未結合標的を除去した。対抗選択されたDNA候補混合物(100μL)をビーズに加え、混合しながら37℃で60分間インキュベートした。最初のラウンドでは低解離速度濃縮プロセスは使用せず、ビーズは、100μLのビオチン洗浄(SB18T0.01中に25μMのビオチン)で2回、及び100μLのSB18T0.01で3回、簡易洗浄された。洗浄に続き、85μLの2mM NaOHを加え、混合しながら37℃で5分間インキュベートすることによってビーズから結合したアプタマーを溶出させた。ビーズの磁気分離後、アプタマー含有溶出液(80μL)を新たなチューブに移し、20μLの中和緩衝液(500mMのTris-HCl(pH7.5)、8mMのHCl)を加えて溶液を中和させた。
【0111】
ラウンド2~9では、DNA候補混合物及び以下に記載の標的タンパク質を用いて選択を実施し、並行して、DNA候補混合物は用いるが、標的タンパク質は用いずに同一の選択を実施した。標的タンパク質を含む試料(シグナルS)のPCRと、標的タンパク質を含まない試料(バックグラウンドB)のPCRから取得されたCt値の比較を、次ラウンドでの標的濃度を減少させるための指標として使用した。デルタCt値が4を超えるが8未満であった場合は、次ラウンドにおいて標的タンパク質を3分の1に減らした。デルタCt値が8を超えた場合は、次ラウンドにおいて標的を10分の1に減らした。
【0112】
ラウンド2では、標識された標的タンパク質(10μL中5pmole)を、25pmoleのHP10及び40μLの対抗選択されたDNA候補混合物と混合し、37℃で15分間インキュベートした。低解離速度濃縮プロセスを、50μLの10mMデキストラン硫酸を加え、その後、直ちに0.1mgのSAビーズを加えることにより開始した。これを、混合しながら37℃で15分間インキュベートした。その後、ビーズを、100μLのビオチン洗浄で2回、及び100μLのSB18T0.01で3回洗浄した。100μLの過塩素酸ナトリウムを加え、混合しながら37℃で10分間インキュベートすることによってビーズからアプタマー鎖を溶出させた。ビーズを磁気分離によって除去し、100μLのアプタマー溶出液を新たなチューブに移した。
ラウンド3及びラウンド7~9を、ラウンド2で記載されているように実施したが、ただし、標的タンパク質の量は、ラウンド7では1.6pmole、ラウンド8では0.5pmole、及びラウンド9では0.16pmoleであった。SAビーズを加える前に、デキストラン硫酸を10分間(ラウンド3)、45分間(ラウンド7)、120分間(ラウンド8及び9)加えた。
【0113】
ラウンド4~6を、Hisタグ付き標的タンパク質を使用して実施した。ラウンド4では、標的(10μL中1.6pmole)を、25pmoleのHP10及び40μLの対抗選択されたDNA候補混合物と混合し、混合しながら37℃で15分間インキュベートした。次いで、低解離速度濃縮プロセスを、50μLの10mMのデキストラン硫酸を加えることにより開始し、混合物を、混合しながらさらに20分間インキュベートした。標的タンパク質-アプタマー複合体を捕捉するためにHisビーズ(0.025mg)を加えた(混合しながら37℃にて15分間インキュベーション)。その後、ビーズを、100μLのSB18T0.01で5回洗浄した。100μLの過塩素酸ナトリウムを加え、混合しながら37℃で10分間インキュベートすることによってビーズから結合したアプタマーを溶出させた。ビーズを磁気分離によって除去し、100μLのアプタマー溶出液を新たなチューブに移した。
【0114】
ラウンド5及び6を、ラウンド4のように実施したが、ただし、30分間のデキストランチャレンジを使用した。
【0115】
ラウンド2~9では、過塩素酸溶出の後、0.0625mg(25μL)の、プライマー2(配列番号3)と予め結合させたSAビーズ(以下、プライマービーズと呼ぶ)で100μLのアプタマー溶出液を捕捉し、振盪しながら50℃で10分間インキュベートし、続いて、振盪しながら25℃でのインキュベーションを10分間行った。ビーズを100μLのSB18T0.01で2回、及び16mMのNaClで1回洗浄した。結合したアプタマーを80μLの水で溶出させ、75℃で2分間インキュベートした。ビーズを磁気分離によって除去し、80μLのアプタマー溶出液を新たなチューブに移した。プライマービーズは、20mgのSAビーズ(2mLのSAビーズ(10mg/mL)を2mLの20mM NaOHで1回、2mLのSB18T0.01で2回洗浄したもの)を、0.75mLの1M NaCl、0.01%tween-20中に再懸濁し、4nmoleのプライマー2(配列番号3)を加えることによって調製した。混合物を37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ビーズを1mLのSB18T0.01で2回、及び1mLの16mM NaClで2回洗浄した。ビーズを5M NaCl、0.01%tween-20中に2.5mg/mlとなるよう再懸濁した。
【0116】
アプタマーの増幅及び精製
各ラウンドからの選択されたアプタマーDNAをQPCRにより増幅させ、定量した。12μLのQPCR Mix(10X KOD DNA Polymerase Buffer;Novagen #71157の5X希釈、25mMのMgCl、5μMのフォワードPCRプライマー(プライマー1、配列番号2)、5μMのビオチン化リバースPCRプライマー(プライマー2、配列番号3)、5X SYBR Green I、0.075U/μLのKOD XL DNAポリメラーゼ、及び1mMずつのdATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)に、48μLのDNAを加え、Bio-Rad MyIQ QPCR装置で以下のプロトコルに従ってサーマルサイクラーにかけた:96℃で15秒、55℃で10秒、及び71℃で30分を1サイクル;続いて、96℃で15秒、71℃で1分を30サイクル。装置のソフトウェアで定量を実施し、標的タンパク質を含む場合と含まない場合の選択されたDNAのコピー数を比較して、シグナル/バックグラウンド比を決定した。
【0117】
増幅後、PCR産物をビオチン化アンチセンス鎖によりSAビーズに捕捉した。25mLのSAビーズ(10mg/mL)を、25mLの20mM NaOHで1回、25mLのSB18T0.01で2回洗浄して25mLのSB18T0.01に再懸濁し、4℃で保存した。25μLのSAビーズ(SB18T0.01中に10mg/mL)を、50μLの二本鎖QPCR産物に加え、混合しながら25℃で5分間インキュベートした。「センス」鎖は、100μLの20mM NaOHを加えて、混合しながら25℃で1分間インキュベートすることによってビーズから溶出させた。溶出した鎖を廃棄し、ビーズをSB18T0.01で2回、16mMのNaClで1回洗浄した。
【0118】
PPdUTPを含有するアプタマーセンス鎖を、固定化したアンチセンス鎖からのプライマー伸長により調製した。40μLのプライマー伸長反応混合物(1X プライマー伸長緩衝液(120mMのTris-HCl(pH7.8)、10mMのKCl、7mMのMgSO、6mMの(NHSO、0.1%TRITON X-100及び0.001%ウシ血清アルブミン)、3μMのフォワードプライマー(プライマー1、配列番号2)、0.5mMずつのdATP、dCTP、dGTP、及びPPdUTP、ならびに0.015U/μLのKOD XL DNAポリメラーゼ)中にビーズを懸濁し、混合しながら71℃で30分間インキュベートした。ビーズをSB18T0.01で2回、16mMのNaClで1回洗浄し、85μLの20mM NaOHを加え、混合しながら37℃で1分間インキュベートすることによってビーズからアプタマー鎖を溶出させた。磁気分離後に80μLのアプタマー溶出液を新たなチューブに移し、20μLの80mM HClで中和させ、5μLの0.1M HEPES、pH7.5で緩衝した。
【0119】
選択の厳密性とフィードバック
選択ステップの相対的標的タンパク質濃度を、各ラウンドでQPCRシグナル(ΔCt)に応じて以下の規則に従って下げた:
ΔCt<4の場合、[P](i+1)=[P](i)
4≦ΔCt<8の場合、[P](i+1)=[P](i)/3.2
ΔCt≧8の場合、[P](i+1)=[P](i)/10
【0120】
式中、[P]=タンパク質濃度、及びi=現在のラウンド番号
【0121】
各選択ラウンドの後で、濃縮されたDNA混合物の収束状態を決定した。10μLの二本鎖QPCR産物を、1X SYBR Green I含有4mM MgClで200μLに希釈した。二本鎖オリゴヌクレオチドの複合体混合物のハイブリダイゼーション時間を測定するCt分析を使用して、試料を収束について分析した。試料を、以下のプロトコルに従ってサーマルサイクラーにかけた:98℃で1分、85℃で1分を3サイクル;98℃で1分、次いで、85℃で30分を2サイクル。この85℃で30分の間に、5秒間隔で蛍光画像を測定した。蛍光強度を時間の対数の関数としてプロットしたところ、各SELEXラウンドでハイブリダイゼーション速度の増加が観察され、配列の収束を示している。
【0122】
濃縮プールの配列決定とアプタマーの同定
SELEXの9ラウンドの後、ラウンド7及びラウンド9からの収束プールを配列決定した。配列準備を以下のとおり実施した。固有のバーコード/インデックス配列(各プールの固有の配列識別子)を含有するSELEXライブラリー特異的プライマーを使用して、プールをPCRで増幅させた。個々のPCR産物を、Quant-iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA試薬(Life Technologies)アッセイを使用して定量し、等モル濃度で合わせ、Amicon Ultra-0.5遠心式フィルターデバイス(Millipore)を使用して濃縮/緩衝液交換を行った。その後、混合物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で精製し、溶出液を、Amicon Ultra-0.5遠心式フィルターデバイスを使用して濃縮し、PAGEで視覚化して最終混合物のサイズ、純度及び収量を確認した。試料は、Ion Torrent PGMシーケンシングのためにSeqWright Genomic Services(GE Healthcare,Houston,TX)に提出された。配列のカウント/コピー数を決定し、ローカルアラインメントアルゴリズムを使用して共通収束パターンを特定するという特注ソフトウェアを使用して、40,000超の配列を含有する各配列プールから384をランダムに選択し、収束について分析した。プール内で表現/コピー数が最も大きい配列、及びあらゆる収束パターンから少なくとも1つの配列を、さらなる特徴付けのために選択した。
【0123】
配列パターンの1a及び1bは、最初に、配列14832~55(配列番号68)、及び14833~149(配列番号69)の40ヌクレオチドのランダム領域から同定された。パターン1aを有する配列及びそれらの同等物(差異5%未満)は、3つの保存された領域を含有しており、ラウンド7のプールの4%、ラウンド9のプールの13%を占めていた。配列パターン1において見られる3パターンのうちの2つまたは3パターンのうちの1つを含有したラウンド7及びラウンド9のプールにおいて追加の配列を同定した。特定のアプタマーの配列を下表2に示す。配列パターンを下表3に示す。特定のアプタマーの40ヌクレオチドのランダム領域を有する配列パターンのアラインメントを図1A図B図D、及び図Fに示す。
【0124】
アプタマー合成
結合能の決定のため、個々のアプタマーを固相合成によって調製した。固相合成に使用したアミダイト試薬の修飾デオキシウリジン-5-カルボキサミドを以下により調製した:5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-5-トリフルオロエトキシカルボニル-2’-デオキシウリジン(Nomura et al.(1997)Nucl.Acids Res.25:2784)と、適切な[1-ナフチルメチルアミン]第一級アミンとの縮合(RNH,1.2当量;EtN、3当量;アセトニトリル;60℃;4時間);2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトによる3’-O-ホスフィチジル化(3’-O-phophitidylation)(1.2当量;iPrEtN、3当量;CHCl;-10~0℃;4時間)、及び中性シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによる精製(Still,et al.(1978)J.Org.Chem.43:2923)。ホスホロアミダイト法(Beaucage and Caruthers(1981)Tetrahedron Lett.22:1859)を、本明細書に記載される固有の塩基修飾を説明するためにプロトコルにいくつかの調整を加えて使用して、固相合成によってアプタマーを調製した。脱トリチル化を、10%ジクロロ酢酸含有トルエンを45秒用いて達成し;カップリングを、アセトニトリル:ジクロロメタン(1:1)中の0.1Mのホスホロアミダイト、5-ベンジルメルカプトテトラゾールで活性化させ、5分間3回反応させて達成し;キャッピングと酸化を装置ベンダーの推奨事項に従って実施した。脱保護は、Parrステンレス鋼リアクターで最適化された圧力、時間、及び温度の下、気体状のアンモニアまたはメチルアミンによりもたらされた。生成物を脱イオン水(dI water)で好適な96ウェルプレートに溶出させ、LCMSでの特徴付け用に統計的に検体採取し(√N+1)、UV分光光度法で定量し、緩衝水溶液中でタンパク質結合親和性について試験した。
【0125】
【表2-1】
【0126】
【表2-2】
【0127】
【表2-3】
【0128】
【表3】
【0129】
表3において、Pは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンであり、Eは、C-5修飾ピリミジン、AまたはGであり、Sは、GまたはCであり、Zは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはAであり、Vは、C、AまたはGであり、Fは、C-5修飾ピリミジン、未修飾のC、GまたはAであり、Qは、独立して、各出現について、C-5修飾ピリミジンまたはGであり、Mは、CまたはAであり、nは、独立して、各出現について、0または1である。
【0130】
実施例2:RIG-Iタンパク質に対するアプタマーの平衡結合定数(K
本実施例では、アプタマー-RIG-Iタンパク質の結合親和性を測定するため、及びKを決定するために本明細書で使用される方法を提供する。アプタマー14832-55_3(配列番号4)、14833-10_3(配列番号17)、及び下表4に示される14832-55_3の切断型の結合親和性を決定した。簡単に言えば、RIG-I CTDへの結合についての電気泳動移動度シフト解析(EMSA)によって、ならびに野生型全長RIG-I、RIG-I-変異体、及び他のRIG-I切断型への結合についてのフィルター結合アッセイによって、修飾アプタマーの結合定数(K値)を決定した。結合アッセイに使用されるRIG-Iタンパク質をE.coli Rosetta II細胞から精製した。修飾アプタマーのK値を、20%グリセロールと1mMのDTTを添加したSB18T0.01緩衝液中(EMSA)または1mMのDTTを添加したSB18T0.01中(フィルター結合)で測定した。修飾アプタマーを、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)及びγ-[32P]ATP(Perkin-Elmer)を使用して5’末端標識した。放射標識アプタマー(20,000~40,000CPM、約0.03nM)を、10-9~10-14M(EMSA)または10-7~10-12M(フィルター結合)の範囲の様々な濃度のRIG-Iタンパク質と混合し、37℃で40分間インキュベートした。
【0131】
EMSAの場合、結合した複合体を、0.5X TBE緩衝液(44.5mMのTris塩基、44.5mMのホウ酸、1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA))中で120Vにて45分間実施した10%TBEゲル上で遊離DNAから分離した。ゲルを、ホスホイメージング(phosphorimaging)スクリーンに-20℃で一晩曝露し、結合アプタマーの割合をホスフォイメージャー(Typhoon FLA 9500,GE)で定量し、データをImageQuant(GE)で分析した。
【0132】
フィルター結合の場合、結合した複合体をZorbaxビーズ(Agilent)で分割し、Duraporeフィルタープレート(EMD Millipore)上に捕捉させ、結合アプタマーの割合をホスフォイメージャー(Typhoon FLA 9500,GE)で定量し、データをImageQuant(GE)で分析した。
【0133】
結合親和性を決定するため、方程式:
y=(最大-最小)(タンパク質)/(K+タンパク質)+最小、を使用してデータを当てはめ、GraphPad Prism バージョン7.00を使用してプロットした。
【0134】
結合結果を表5に示す。結合アッセイに使用されるRIG-Iタンパク質のアミノ酸配列を表6に示し、またVela et al.The Thermodynamic Basis for Viral RNA Detection by the RIG-I Innate Immune Sensor.J.Biol.Chem.287(51):42564,2012からの特定のRIG-Iタンパク質の略図を図2Aに示す。
【0135】
【表4-1】
【0136】
【表4-2】
【0137】
【表5-1】
【0138】
【表5-2】
【0139】
【表6-1】
【0140】
【表6-2】
【0141】
【表6-3】
【0142】
【表6-4】
【0143】
【表6-5】
【0144】
【表6-6】
【0145】
【表6-7】
【0146】
【表6-8】
【0147】
【表6-9】
【0148】
【表6-10】
【0149】
【表6-11】
図1A-1】
図1A-2】
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
【配列表】
2022552192000001.app
【国際調査報告】