(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】自己細胞療法で免疫療法の非応答者を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20221208BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221208BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221208BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20221208BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20221208BHJP
C07K 14/73 20060101ALI20221208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221208BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221208BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20221208BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20221208BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221208BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221208BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221208BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
C12N15/09 110
C12N15/12
C12N15/85 Z
C07K14/725
C07K14/73
C12N5/10
C12N5/0783
A61K31/711
A61K38/46
A61K31/7105
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K48/00
C07K16/28
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520959
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020055016
(87)【国際公開番号】W WO2021072218
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520032608
【氏名又は名称】パクト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PACT PHARMA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】センニノ, バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ポン, ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】マンデル-キャッシュマン, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】フランズソフ, アレックス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
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4H045AA10
4H045AA11
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4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
改変されたNeoTCR生成物を用いて非応答患者におけるがんを治療する方法がここに記載される。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NeoTCR生成物を用いて非応答患者におけるがんを治療する方法。
【請求項2】
非応答患者からのがん細胞を、そのような患者のためにデザインされ作製されたNeoTCR生成物を用いて殺傷する方法。
【請求項3】
非応答患者がチェックポイント阻害剤療法又は免疫療法に応答しない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
非応答患者が、チェックポイント阻害剤療法又は免疫療法に対して応答を示さなかった、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非応答患者が最初はチェックポイント阻害剤療法又は免疫療法に応答し、次に耐性を発現し、応答を停止したか、又は応答の低下を示した、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
非応答患者がCTLA-4結合剤療法に応答しなかった、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
CTLA-4結合剤療法が抗CTLA-4抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CTLA-4結合剤療法がイピリムマブである、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非応答患者がPD-1軸結合剤療法に応答しなかった、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
PD-1軸結合剤療法が抗PD-1抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
PD-1軸結合剤療法が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、及びスパルタリズマブから選択される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PD-1軸結合剤療法が抗PD-L1抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
PD-1軸結合剤療法が、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブから選択される、請求項9又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非応答患者が免疫療法に応答しない、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
免疫療法ががんワクチン療法である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
免疫療法がT-VECである、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
NeoTCR生成物が非応答患者からのCD8+及び/又はCD4+ T細胞を含み、T細胞が少なくとも一のneoTCRを発現するように改変されている、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
NeoTCR生成物中のT細胞が、一、二、又は三のneoTCRを発現するように改変されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
NeoTCR生成物中のT細胞が、一のneoTCRを発現するように改変されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
NeoTCR生成物中のT細胞が第一のneoTCR及び第二のneoTCRを発現するように改変され、各T細胞が第一のneoTCR又は第二のneoTCRの何れかを発現する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
NeoTCR生成物中のT細胞が第一のneoTCR、第二のneoTCR、及び第三のneoTCRを発現するように改変され、各T細胞が第一のneoTCR、第二のNeoTCR、及び第三のneoTCRから選択される一のneoTCRを発現する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
各neoTCRが、患者のがんに存在する体細胞コーディング変異に起因するアミノ酸変異を含むネオエピトープに結合する、請求項17から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
NeoTCR生成物中のneoTCRが、T細胞ゲノムの内因性TCR遺伝子座に存在する、請求項17から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
NeoTCR生成物が非ウイルス改変法によって産生される、請求項1から23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
NeoTCR生成物がCRISPRを使用して産生される、請求項1から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
NeoTCR生成物が、T細胞のゲノム中に外因性DNA配列を含まない、請求項17から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
NeoTCR生成物のT細胞が、患者からのT細胞に由来する、請求項17から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
ポリヌクレオチドを含む非応答患者におけるがんの治療のための組成物であって、ポリヌクレオチドが、
a)第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列に相同な第一の相同性アーム及び第二の相同性アーム;
b)第一の相同性アーム及び第二の相同性アームの間に位置するTCR遺伝子配列;
c)TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列;
d)P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;及び
e)第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含む、組成物。
【請求項29】
ポリヌクレオチドの第一の相同性アーム及び第二の相同性アームが、それぞれ約300塩基長から約2000塩基長である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
ポリヌクレオチドの第一の相同性アーム及び第二の相同性アームが、それぞれ約600塩基長から約1000塩基長である、請求項28又は29に記載の組成物。
【請求項31】
ポリヌクレオチドが、第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列との間に位置するヒト成長ホルモンシグナル配列を更に含む、請求項28から30の何れか一項に記載の組成物。
【請求項32】
ポリヌクレオチドが、第二のP2Aコード配列と第二の相同性アームとの間に位置する第二のTCR遺伝子配列を更に含む、請求項28から31の何れか一項に記載の組成物。
【請求項33】
ポリヌクレオチドが、
a)第一のP2Aコード配列と第一のTCR遺伝子配列との間に位置する第一のヒト成長ホルモンシグナル配列;及び
b)第二のP2Aコード配列と第二のTCR遺伝子配列との間に位置する第二のヒト成長ホルモンシグナル配列
を更に含み、
c)第一のヒト成長ホルモンシグナル配列と第二のヒト成長ホルモンシグナル配列は、互いにコドンが異なる、
請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
ポリヌクレオチドが、目的の外因性配列を更に含む、請求項28から33の何れか一項に記載の組成物。
【請求項35】
目的の外因性配列が、自己細胞療法で有用なタンパク質をコードする、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
ポリヌクレオチドが環状DNAである、請求項28から35の何れか一項に記載の組成物。
【請求項37】
ポリヌクレオチドが直鎖DNAである、請求項28から36の何れか一項に記載の組成物。
【請求項38】
TCR遺伝子配列が、がん抗原を認識するTCRをコードする、請求項28から37の何れか一項に記載の組成物。
【請求項39】
がん抗原がネオ抗原である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
がん抗原が患者特異的ネオ抗原である、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
TCR遺伝子配列が患者特異的TCR遺伝子配列である、請求項28から40の何れか一項に記載の組成物。
【請求項42】
ヌクレアーゼを更に含む、請求項28から40の何れか一項に記載の組成物。
【請求項43】
ヌクレアーゼが、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)ファミリーヌクレアーゼ又はその誘導体である、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
sgRNAを更に含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
ヌクレアーゼが内因性TCR遺伝子座を標的とする、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
ヌクレアーゼがTCR-アルファ遺伝子座及びTCR-ベータ遺伝子座を標的とする、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列が、内因性TCR遺伝子座内に位置する、請求項28から47の何れか一項に記載の組成物。
【請求項48】
内因性TCR遺伝子座がTCR-アルファ遺伝子座である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
ポリヌクレオチドが非ウイルス性である、請求項28から48の何れか一項に記載の組成物。
【請求項50】
ポリヌクレオチドが遺伝子療法ベクターである、請求項28から49の何れか一項に記載の組成物。
【請求項51】
ポリヌクレオチドを含む非応答患者におけるがんの治療のための組成物であって、ポリヌクレオチドが、
a)第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列に相同な第一の相同性アーム及び第二の相同性アーム;
b)第一の相同性アーム及び第二の相同性アームの間に位置するTCR遺伝子配列;
c)TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列;
d)P2Aコード配列の直ぐ上流に位置する可動性リンカーをコードする配列;及び
e)第二のP2Aコード配列の上流に位置するプロテアーゼ切断配列をコードする配列
を含む、組成物。
【請求項52】
環状ポリヌクレオチドを含む非応答患者におけるがんの治療のための組成物であって、環状ポリヌクレオチドが、
a)第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列に相同な第一の相同性アーム及び第二の相同性アーム;
b)第一の相同性アーム及び第二の相同性アームの間に位置するTCR遺伝子配列;
c)TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列;
d)P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;及び
e)第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含む、組成物。
【請求項53】
非応答患者におけるがんを治療する方法であって、
a)改変された初代細胞の治療上有効な集団をヒト患者に投与することを含み、ここで、改変された初代細胞が、外因性ヌクレアーゼ及び内因性遺伝子座に組み込まれた非ウイルス性外因性核酸配列を含み、非ウイルス性外因性核酸が、
i. がん性細胞に存在する抗原に結合することができるTCRの少なくとも一部をコードするTCR遺伝子配列、
ii. TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列、
iii. P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;
iv. 第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含み、それにより、ヒト患者におけるがんを治療する、方法。
【請求項54】
外因性ヌクレアーゼが、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)ファミリーヌクレアーゼ又はその誘導体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
外因性核酸が、第二のP2Aコード配列の直ぐ下流に位置する第二のTCR遺伝子配列を含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
外因性核酸が、第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列との間に位置するヒト成長ホルモンシグナル配列を更に含む、請求項53から55の何れか一項に記載の方法。
【請求項57】
外因性核酸が、
a)第一のP2Aコード配列と第一のTCR遺伝子配列との間に位置する第一のヒト成長ホルモンシグナル配列;及び
b)第二のP2Aコード配列と第二のTCR遺伝子配列との間に位置する第二のヒト成長ホルモンシグナル配列
を更に含み、第一のヒト成長ホルモンシグナル配列と第二のヒト成長ホルモンシグナル配列は、互いにコドンが異なる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
改変された初代細胞の治療上有効な集団をヒト患者に投与する前に、骨髄非破壊的リンパ球枯渇レジメンが患者に施される、請求項53から57の何れか一項に記載の方法。
【請求項59】
がんが、メラノーマ、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、前立腺がん、及び結腸直腸がんから選択される、請求項53から58の何れか一項に記載の方法。
【請求項60】
非応答患者におけるがんを治療する方法において、
a)非ウイルス性ポリヌクレオチドのT細胞へのヌクレアーゼ媒介導入により導入することによって患者由来のT細胞を改変する工程であって、非ウイルス性ポリヌクレオチドが、
i. 細胞の第一の内因性配列と第二の内因性配列とに相同な第一の相同性アームと第二の相同性アーム;
ii 第一の相同性アームと第二の相同性アームとの間に位置するTCR遺伝子配列;及び
iii. TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列、
iv. P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;
v. 第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含む、工程;及び
b)非ウイルス性ポリヌクレオチドをT細胞の内因性遺伝子座に組み換える工程であって、内因性遺伝子座が、非ウイルス性ポリヌクレオチドの第一の相同性アームと第二の相同性アームとに相同な第一の内因性配列と第二の内因性配列とを含む工程;及び
c)改変されたT細胞を培養してT細胞の集団を産生する工程;及び
d)治療上有効な数の改変されたT細胞をヒト患者に投与し、それにより、がんを治療する工程
を含む、方法。
【請求項61】
前記組み換えが、
a)ヌクレアーゼによる内因性遺伝子座の切断;及び
b)相同性指向修復による内因性遺伝子座への非ウイルス性ポリヌクレオチドの組み換え
を更に含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
非ウイルス性ポリヌクレオチドが、第二のP2Aコード配列と第二の相同性アームとの間に位置する第二のTCR遺伝子配列を更に含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
第一の相同性アームと第二の相同性アームが、それぞれ約300塩基長から約2000塩基長である、請求項60から62の何れか一項に記載の方法。
【請求項64】
非ウイルス性ポリヌクレオチドが、第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列との間に位置するヒト成長ホルモンシグナル配列を更に含む、請求項60から63の何れか一項に記載の方法。
【請求項65】
治療上有効な数の改変されたT細胞を投与する前に、非骨髄破壊的リンパ球枯渇レジメンが対象に施される、請求項60から64の何れか一項に記載の方法。
【請求項66】
がんがメラノーマ、肺がん、及び結腸直腸がんから選択される、請求項60から65の何れか一項に記載の方法。
【請求項67】
ヌクレアーゼが、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(CRISPR)ファミリーヌクレアーゼ又はその誘導体である、請求項60から66の何れか一項に記載の方法。
【請求項68】
非ウイルス性ポリヌクレオチドが、
a)第一のP2Aコード配列と第一のTCR遺伝子配列との間に位置する第一のヒト成長ホルモンシグナル配列;及び
b)第二のP2Aコード配列と第二のTCR遺伝子配列との間に位置する第二のヒト成長ホルモンシグナル配列
を更に含み、第一のヒト成長ホルモン配列と第二のヒト成長ホルモン配列は、互いにコドンが異なる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
患者由来のT細胞が、ポリヌクレオチドの導入前に凍結されている、請求項60から68の何れか一項に記載の方法。
【請求項70】
第一の相同性アーム及び第二の相同性アームがそれぞれ約600塩基長から約1000塩基長である、請求項60から69の何れか一項に記載の方法。
【請求項71】
明細書に記載の任意の方法又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この出願は、それぞれがあらゆる目的のためにその全体において出典明示により援用される、2019年10月10日に出願された米国仮出願第62/913630号、及び2020年5月14日に出願された米国仮出願第63/024909号の優先権の利益を主張する。
【0002】
[分野]
がんの対象に、ネオエピトープ特異的T細胞受容体を発現するように改変されたCD8+及び/又はCD4+ T細胞を投与することを含む、がんを治療する方法が提供される。幾つかの実施態様では、対象は免疫療法の非応答者(ノンレスポンダー)である。
【背景技術】
【0003】
がんとがんの進行は免疫抑制に関連している。実際、がん細胞は免疫抑制機能を引き出すために免疫チェックポイント経路を活性化することができる。従って、チェックポイント阻害剤が、共抑制シグナル伝達経路を妨害し、がん細胞の免疫介在性殺傷を促進することにより、患者の抗腫瘍免疫応答を再活性化するために開発された。免疫チェックポイントを標的とするチェックポイント阻害剤は、そのような治療法に応答するがん患者のサブセットに有望である。しかし、全てのがん患者を治療するためのチェックポイント阻害剤の主流の使用は、そのような患者の大きなサブセットでの低い奏効率(一次及び二次抵抗を含む)と免疫関連の有害事象のために採用されていない。実際、腫瘍のおよそ60-70%が単剤のチェックポイント阻害剤に応答性ではなく、チェックポイント阻害剤に応答する腫瘍を有している患者は時間の経過と共に耐性を示すようになる(Yan等,Front Immunol.208;9:1739)。
【0004】
チェックポイント阻害剤に加えて、広い意味でのがん免疫療法もまたチェックポイント阻害剤の限界に屈する-多くの患者が現在の免疫療法に応答せず、殆どが最終的に再発する。更に、多くの患者は免疫療法の結果として有害事象を経験する。例えば、がんワクチンが有望な免疫療法として探求されてきた;しかし、獲得耐性及び/又は毒性を伴わない腫瘍治療の効果的な手段を提供する開発はがんワクチンの分野での殆どなかった。免疫療法の別の大きな制約は、患者の奏効率を予測し、既存の免疫療法に対する改善を最適化して有効性を高め、獲得された一次耐性を低減させ、有害事象を減少させるためにバイオマーカーが利用できないことである。
【0005】
感染症では、免疫優勢エピトープに対するポリクローナルT細胞応答が成功裡の免疫応答を駆動する。がんでは、ウイルス感染症における免疫優勢エピトープと同様に、非同義変異に由来するネオエピトープは、これらの抗原を認識するT細胞が中枢性及び末梢性トレランスの機序にさらされないため、潜在的に免疫原性が高い。実際、初期の研究は、非同義変異に由来するネオエピトープがチェックポイント阻害剤療法によって誘導されるT細胞応答の第一標的であることを支持しており、複数のがん組織学において養子移入されたT細胞療法によって成功裡に標的にされている。しかし、ネオエピトープの免疫優勢と進化、又はこれらのネオエピトープに対するT細胞応答のクローン性に関する知識は限られている。更に、ネオエピトープ特異的T細胞の存在及び増殖と患者のチェックポイント阻害剤療法に対する臨床反応との相関関係については殆ど知られていない。
【0006】
従って、チェックポイント阻害剤及び他の既存の免疫療法に応答しない患者のためのがんを治療するための治療法を開発する必要がある。ここに開示されるのは、チェックポイント阻害剤及び他の免疫療法に応答しない患者におけるがんの治療のための治療法及びそのような治療法を使用する方法である。
【発明の概要】
【0007】
ここに記載の本発明は、NeoTCR生成物を用いるそれを必要とする非応答患者(ノンレスポンダー患者)の方法を提供する。
実施態様1. NeoTCR生成物を用いて非応答患者におけるがんを治療する方法。
実施態様2. 非応答患者からのがん細胞を、そのような患者のためにデザインされ作製されたNeoTCR生成物を用いて殺傷する方法。
実施態様3. 非応答患者がチェックポイント阻害剤療法又は免疫療法に応答しない、実施態様1又は2の方法。
実施態様4. 非応答患者が、チェックポイント阻害剤療法又は免疫療法に対して応答を示さなかった、実施態様3の方法。
実施態様5. 非応答患者が最初はチェックポイント阻害剤療法又は免疫療法に応答し、次に耐性を発現し、応答を停止したか、又は応答の低下を示した、実施態様3の方法。
実施態様6. 非応答患者がCTLA-4結合剤療法に応答しなかった、実施態様1-5の何れか一の方法。
実施態様7. CTLA-4結合剤療法が抗CTLA-4抗体である、実施態様6の方法。
実施態様8. CTLA-4結合剤療法がイピリムマブである、実施態様6又は実施態様7の方法。
実施態様9. 非応答患者がPD-1軸結合剤療法に応答しなかった、実施態様1-5の何れか一の方法。
実施態様10. PD-1軸結合剤療法が抗PD-1抗体である、実施態様9の方法。
実施態様11. PD-1軸結合剤療法が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、及びスパルタリズマブから選択される、実施態様9又は実施態様10の方法。
実施態様12. PD-1軸結合剤療法が抗PD-L1抗体である、実施態様9の方法。
実施態様13. PD-1軸結合剤療法が、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブから選択される、実施態様9又は実施態様12の方法。
実施態様14. 非応答患者が免疫療法に応答しない、実施態様1-5の何れか一の方法。
実施態様15. 免疫療法ががんワクチン療法である、実施態様14の方法。
実施態様16. 免疫療法がT-VECである、実施態様14又は実施態様15の方法。
実施態様17. NeoTCR生成物が非応答患者からのCD8+及び/又はCD4+ T細胞を含み、T細胞が少なくとも一のneoTCRを発現するように改変されている、実施態様1-16の何れか一の方法。
実施態様18. NeoTCR生成物中のT細胞が、一、二、又は三のneoTCRを発現するように改変されている、実施態様17の方法。
実施態様19. NeoTCR生成物中のT細胞が、一のneoTCRを発現するように改変されている、実施態様18の方法。
実施態様20. NeoTCR生成物中のT細胞が第一のneoTCR及び第二のneoTCRを発現するように改変され、各T細胞が第一のneoTCR又は第二のneoTCRの何れかを発現する、実施態様18の方法。
実施態様21. NeoTCR生成物中のT細胞が第一のneoTCR、第二のneoTCR、及び第三のneoTCRを発現するように改変され、各T細胞が第一のneoTCR、第二のNeoTCR、及び第三のneoTCRから選択される一のneoTCRを発現する、実施態様18の方法。
実施態様22. 各neoTCRが、患者のがんに存在する体細胞コーディング変異に起因するアミノ酸変異を含むネオエピトープに結合する、実施態様17-21の何れか一の方法。
実施態様23. NeoTCR生成物中のneoTCRが、T細胞ゲノムの内因性TCR遺伝子座に存在する、実施態様17-22の何れか一の方法。
実施態様24. NeoTCR生成物が非ウイルス改変法によって産生される、実施態様1-23の何れか一の方法。
実施態様25. NeoTCR生成物がCRISPRを使用して産生される、実施態様1-24の何れか一の方法。
実施態様26. NeoTCR生成物が、T細胞のゲノム中に外因性DNA配列を含まない、実施態様17-25の何れか一の方法。
実施態様27. NeoTCR生成物のT細胞が、患者からのT細胞に由来する、実施態様17-26の何れか一の方法。
実施態様28. ポリヌクレオチドを含む非応答患者におけるがんの治療のための組成物であって、ポリヌクレオチドが、
a)第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列に相同な第一の相同性アーム及び第二の相同性アーム;
b)第一の相同性アーム及び第二の相同性アームの間に位置するTCR遺伝子配列;
c)TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列;
d)P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;及び
e)第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含む、組成物。
実施態様29. ポリヌクレオチドの第一の相同性アーム及び第二の相同性アームが、それぞれ約300塩基長から約2000塩基長である、実施態様28の組成物。
実施態様30. ポリヌクレオチドの第一の相同性アーム及び第二の相同性アームが、それぞれ約600塩基長から約1000塩基長である、実施態様28又は29の組成物。
実施態様31. ポリヌクレオチドが、第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列との間に位置するヒト成長ホルモンシグナル配列を更に含む、実施態様28-30の何れかの組成物。
実施態様32. ポリヌクレオチドが、第二のP2Aコード配列と第二の相同性アームとの間に位置する第二のTCR遺伝子配列を更に含む、実施態様28-31の何れかの組成物。
実施態様33. ポリヌクレオチドが、
a)第一のP2Aコード配列と第一のTCR遺伝子配列との間に位置する第一のヒト成長ホルモンシグナル配列;及び
b)第二のP2Aコード配列と第二のTCR遺伝子配列との間に位置する第二のヒト成長ホルモンシグナル配列
を更に含み、
c)第一のヒト成長ホルモンシグナル配列と第二のヒト成長ホルモンシグナル配列は、互いにコドンが異なる、実施態様32の組成物。
実施態様34. ポリヌクレオチドが、目的の外因性配列を更に含む、実施態様28-33の何れかの組成物。
実施態様35. 目的の外因性配列が、自己細胞療法で有用なタンパク質をコードする、実施態様34の組成物。
実施態様36. ポリヌクレオチドが環状DNAである、実施態様28-35の何れかの組成物。
実施態様37. ポリヌクレオチドが直鎖DNAである、実施態様28-36の何れかの組成物。
実施態様38. TCR遺伝子配列が、がん抗原を認識するTCRをコードする、実施態様28-37の何れかの組成物。
実施態様39. がん抗原がネオ抗原である、実施態様38の組成物。
実施態様40. がん抗原が患者特異的ネオ抗原である、実施態様38の組成物。
実施態様41. TCR遺伝子配列が患者特異的TCR遺伝子配列である、実施態様28-40の何れかの組成物。
実施態様42. ヌクレアーゼを更に含む、実施態様28-40の何れかの組成物。
実施態様43. ヌクレアーゼが、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)(CRISPR)ファミリーヌクレアーゼ又はその誘導体である、実施態様42の組成物。
実施態様44. sgRNAを更に含む、実施態様43の組成物。
実施態様45. ヌクレアーゼが内因性TCR遺伝子座を標的とする、実施態様42の組成物。
実施態様46. ヌクレアーゼがTCR-アルファ遺伝子座及びTCR-ベータ遺伝子座を標的とする、実施態様42の組成物。
実施態様47. 第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列が、内因性TCR遺伝子座内に位置する、実施態様28-47の何れかの組成物。
実施態様48. 内因性TCR遺伝子座がTCR-アルファ遺伝子座である、実施態様47の組成物。
実施態様49. ポリヌクレオチドが非ウイルス性である、実施態様28-48の何れかの組成物。
実施態様50. ポリヌクレオチドが遺伝子療法ベクターである、実施態様28-49の何れかの組成物。
実施態様51. ポリヌクレオチドを含む非応答患者におけるがんの治療のための組成物であって、ポリヌクレオチドが、
a)第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列に相同な第一の相同性アーム及び第二の相同性アーム;
b)第一の相同性アーム及び第二の相同性アームの間に位置するTCR遺伝子配列;
c)TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列;
d)P2Aコード配列の直ぐ上流に位置する可動性リンカーをコードする配列;及び
e)第二のP2Aコード配列の上流に位置するプロテアーゼ切断配列をコードする配列
を含む、組成物。
実施態様52. 環状ポリヌクレオチドを含む非応答患者におけるがんの治療のための組成物であって、環状ポリヌクレオチドが、
a)第一の標的核酸配列及び第二の標的核酸配列に相同な第一の相同性アーム及び第二の相同性アーム;
b)第一の相同性アーム及び第二の相同性アームの間に位置するTCR遺伝子配列;
c)TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列;
d)P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;及び
e)第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含む、組成物。
実施態様53. 非応答患者におけるがんを治療する方法であって、
a)改変された初代細胞の治療上有効な集団をヒト患者に投与することを含み、ここで、改変された初代細胞が、外因性ヌクレアーゼ及び内因性遺伝子座に組み込まれた非ウイルス性外因性核酸配列を含み、非ウイルス性外因性核酸が、
i. がん性細胞に存在する抗原に結合することができるTCRの少なくとも一部をコードするTCR遺伝子配列、
ii. TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列、
iii. P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;
iv. 第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含み、それにより、ヒト患者におけるがんを治療する、方法。
実施態様54. 外因性ヌクレアーゼが、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)(CRISPR)ファミリーヌクレアーゼ又はその誘導体である、実施態様53の方法。
実施態様55. 外因性核酸が、第二のP2Aコード配列の直ぐ下流に位置する第二のTCR遺伝子配列を含む、実施態様53又は54の方法。
実施態様56. 外因性核酸が、第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列との間に位置するヒト成長ホルモンシグナル配列を更に含む、実施態様53-55の何れかの方法。
実施態様57. 外因性核酸が、
a)第一のP2Aコード配列と第一のTCR遺伝子配列との間に位置する第一のヒト成長ホルモンシグナル配列;及び
b)第二のP2Aコード配列と第二のTCR遺伝子配列との間に位置する第二のヒト成長ホルモンシグナル配列
を更に含み、第一のヒト成長ホルモンシグナル配列と第二のヒト成長ホルモンシグナル配列は、互いにコドンが異なる、実施態様56の方法。
実施態様58. 改変された初代細胞の治療上有効な集団をヒト患者に投与する前に、骨髄非破壊的リンパ球枯渇(lymphodepletion)レジメンが患者に施される、実施態様53-57の何れかの方法。
実施態様59. がんが、メラノーマ、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、前立腺がん、及び結腸直腸がんから選択される、実施態様53-58の何れかの方法。
実施態様60. 非応答患者におけるがんを治療する方法において、
a)非ウイルス性ポリヌクレオチドのT細胞へのヌクレアーゼ媒介導入により導入することによって患者由来のT細胞を改変する工程であって、非ウイルス性ポリヌクレオチドが、
i. 細胞の第一の内因性配列と第二の内因性配列とに相同な第一の相同性アームと第二の相同性アーム;
ii 第一の相同性アームと第二の相同性アームとの間に位置するTCR遺伝子配列;及び
iii. TCR遺伝子配列の上流に位置する第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列の下流に位置する第二のP2Aコード配列であって、互いにコドンが異なる同じアミノ酸配列をコードする第一のP2Aコード配列と第二のP2Aコード配列、
iv. P2Aコード配列の直ぐ上流に位置するアミノ酸配列Gly Ser Glyをコードする配列;
v. 第二のP2Aコード配列の上流に位置するフューリン切断部位をコードする配列
を含む、工程;及び
b)非ウイルス性ポリヌクレオチドをT細胞の内因性遺伝子座に組み換える工程であって、内因性遺伝子座が、非ウイルス性ポリヌクレオチドの第一の相同性アームと第二の相同性アームとに相同な第一の内因性配列と第二の内因性配列とを含む工程;及び
c)改変されたT細胞を培養してT細胞の集団を産生する工程;及び
d)治療上有効な数の改変されたT細胞をヒト患者に投与し、それにより、がんを治療する工程
を含む、方法。
実施態様61. 前記組み換えが、
a)ヌクレアーゼによる内因性遺伝子座の切断;及び
b)相同性指向修復による内因性遺伝子座への非ウイルス性ポリヌクレオチドの組み換え
を更に含む、実施態様60の方法。
実施態様62. 非ウイルス性ポリヌクレオチドが、第二のP2Aコード配列と第二の相同性アームとの間に位置する第二のTCR遺伝子配列を更に含む、実施態様60又は61の方法。
実施態様63. 第一の相同性アームと第二の相同性アームが、それぞれ約300塩基長から約2000塩基長である、実施態様60-62の何れかの方法。
実施態様64. 非ウイルス性ポリヌクレオチドが、第一のP2Aコード配列とTCR遺伝子配列との間に位置するヒト成長ホルモンシグナル配列を更に含む、実施態様60-63の何れかの方法。
実施態様65. 治療上有効な数の改変されたT細胞を投与する前に、非骨髄破壊的リンパ球枯渇レジメンが対象に施される、実施態様60-64の何れかの方法。
実施態様66. がんがメラノーマ、肺がん、及び結腸直腸がんから選択される、実施態様60-65の何れかの方法。
実施態様67. ヌクレアーゼが、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)(CRISPR)ファミリーヌクレアーゼ又はその誘導体である、実施態様60-66の何れかの方法。
実施態様68. 非ウイルス性ポリヌクレオチドが、
a)第一のP2Aコード配列と第一のTCR遺伝子配列との間に位置する第一のヒト成長ホルモンシグナル配列;及び
b)第二のP2Aコード配列と第二のTCR遺伝子配列との間に位置する第二のヒト成長ホルモンシグナル配列
を更に含み、第一のヒト成長ホルモン配列と第二のヒト成長ホルモン配列は、互いにコドンが異なる、実施態様67の方法。
実施態様69. 患者由来のT細胞が、ポリヌクレオチドの導入前に凍結されている、実施態様60-68の何れかの方法。
実施態様70. 第一の相同性アーム及び第二の相同性アームがそれぞれ約600塩基長から約1000塩基長である、実施態様60-69の何れかの方法。
実施態様71. ここに記載の任意の方法又は組成物。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1A-1Bは、ネオエピトープ特異的T細胞単離及びTCRシークエンシングを示す。
図1Aは、患者サンプルからのネオ抗原特異的TCR単離の概略図である。NeoEはネオエピトープ。
【
図1B】
図1Bは、抗PD-1療法に対して応答する患者(それぞれPT1及びPT2とも呼ばれる患者#1及び#2)又は応答しない患者(それぞれPT3、PT4、及びPT5とも呼ばれる患者#3、#4、及び#5)において単離された、非同義変異、スクリーニングされた変異、スクリーニングされた推定ネオエピトープ-HLA、ネオエピトープ特異的T細胞が標的とする変異、及びネオエピトープ特異的T細胞クローン型の数を円にまとめて表す。
【0009】
【
図2A】
図2A-2Dは、抗PD-1療法に応答する患者における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びPBMCからのネオエピトープ特異的T細胞の単離を示している。
図2Aは、患者#1に対する経時的な腫瘍測定とサンプル収集を示す。
【
図2B】
図2Bは、患者#1における経時的なネオエピトープ特異的T細胞のランドスケープ分析を示す。下のパネルは、mRNA発現とスクリーニングされたネオ抗原の予測されたHLA結合親和性を示す。ネオエピトープは異なるパターンのバーで強調表示され、変異した遺伝子名、点変異を伴うネオエピトープの配列が点変異に下線を付して示され、HLAが上部に示されている。単離されたT細胞のネオエピトープ特異性を示すために、同じパターンコードが上のパネルで使用されている。上の五つのパネルは、TIL及びPBMCにおけるネオエピトープ特異的T細胞の経時的進化を示している。小さな各ボックスは一個の単離したT細胞を表し、クロスは10個の単離したT細胞に相当する。破線の各ボックスは、異なるネオエピトープ特異的T細胞クローン型を表している。単離したT細胞の数は、プロットするために端数切り上げ法を使用して100000のCD8+T細胞に正規化する。検証したT細胞クローン型のみを示す。
【
図2C】
図2Cは、患者#2に対する同じ図である。この患者には二つの標的病変があった;最長径の平均を示す。
【0010】
【
図3A-3B】
図3A-3Eは、キャプチャーされたneoTCRの検証を示している。ネオエピトープ特異的T細胞のキャプチャー後、同族TCRがシークエンシングされ、その配列を使用して、内因性TCRをneoTCRに置き換えて健康なドナーT細胞を遺伝子編集する。neoTCRの特異性と安定性を、遺伝子編集されたT細胞のデキストラマー染色によって検証する。検証済みのTCRのみを示す。
図3A-3Eは、それぞれ患者#1-#5からの遺伝子編集T細胞生成物のデキストラマー染色を示す。
図3Aは患者1を示し、
図3Bは患者2を示す。
【0011】
【
図4A】
図4A-4Iは、抗PD-1に応答しない患者におけるTIL及びPBMCからのネオエピトープ特異的T細胞の単離とneoTCR抗腫瘍活性を示す。
図4A-4Cは、それぞれ患者#3、#4、及び#5に対するネオエピトープ特異的T細胞のランドスケープである。下のパネルは、mRNA発現とスクリーニングされたネオ抗原の予測されたHLA結合親和性を示す。ネオエピトープは異なるパターンのバーで強調表示され、変異した遺伝子名、点変異が赤でマークされたネオエピトープの配列、及びHLAが上部に示されている。患者#5におけるネオエピトープに対する予測されたHLA結合親和性は、発現が負であると見なされるため、矢印で強調表示している。単離されたT細胞のネオエピトープ特異性を示すために、同じパターンコードが上のパネルで使用される。小さな各ボックスは、一個の単離したT細胞を表している。各色は、異なるネオエピトープ特異的T細胞クローン型を表している。単離したT細胞の数は、プロットするために端数切り上げ法を使用して100000のCD8+T細胞に正規化する。検証したT細胞クローン型のみを示す。
【
図4D-4E】
図4D-4Fは、自己(それぞれM485、M486及びM488)又はミスマッチ(M202)細胞株と共培養した際の、それぞれ患者#3、#4、#5からのCD8+neoTCR+遺伝子編集T細胞における4-1BBのアップレギュレーションを示す(n=3)。
【
図4F-4G】
図4G-4Iは、自己細胞株及びミスマッチ対照におけるそれぞれ患者#3、#4、#5からのneoTCR遺伝子編集T細胞による特異的標的細胞殺傷を示す(患者#3及び#5に対して(P:T)比5:1、n=4、患者#4に対してP:T比10:1、n=3)。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、
図4D、4E、4G、及び4Hにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。多重比較のための調整を伴わない同じ検定を
図4F及び4Iで使用した。(n)は生物学的複製物の数を示す。平均値±SDが示される。全てのT細胞生成物は、CD8+及びCD4+遺伝子編集T細胞を含む。
【0012】
【
図5A】
図5A-5Dは、抗PD-1に応答した患者において単離されたネオエピトープ特異的TCRの抗腫瘍活性を示している。健康なドナーT細胞を遺伝子改変して、患者#1(
図5A及び5B)及び患者#2(
図5C及び5D)からの単離neoTCRで内因性TCRを置き換え、これらのneoTCRの抗腫瘍活性を特徴付けるために使用した。
図5Aは、自己(M489)又はミスマッチ(M202)細胞株と共培養した際の、患者#1からのCD8+neoTCR+遺伝子編集T細胞における4-1BBのアップレギュレーションを示す(n=3)。
【
図5B】
図5Bは、自己細胞株(M489)及びミスマッチ対照(M202)における患者#1からのneoTCR遺伝子編集T細胞による特異的標的細胞殺傷を示す(生成物:標的-P:T-比1:1、n=4)。
【
図5C】
図5Cは、IFNγで24時間前処理した自己(M490)又はミスマッチ(M202)細胞株と共培養した際の、患者#2からのCD8+neoTCR+遺伝子編集T細胞における4-1BBのアップレギュレーションを示す(n=3)。
【
図5D】
図5Dは、自己細胞株(M490)及びミスマッチ対照(M202)におけるneoTCR遺伝子編集T細胞による特異的標的細胞殺傷を示し(P:T比10:1、n=4)、標的細胞はIFNγで24時間前処理した。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。(n)は生物学的複製物の数を示す。平均値±SDが示される。全てのT細胞生成物は、CD8+及びCD4+遺伝子編集T細胞を含む。
【0013】
【
図6A】
図6A-6Dは、自己細胞株との共培養時の患者#1からのネオエピトープ特異的TCRによって誘導される活性化、サイトカイン分泌、細胞傷害性、及び増殖を示す。患者#1からのキャプチャーされたneoTCRを発現するように遺伝子改変された健康なドナーT細胞を、自己(M489)又はミスマッチ細胞株(M202)と共培養した。
図6Aは、共培養後のCD8+neoTCR+T細胞における4-1BB、OX-40、及びCD107aのアップレギュレーションである。メラノーマ細胞株を、T細胞との共培養の24時間前に通常の培地又はIFNγを含む培地で前処理した(n=3)。
図6Aのグラフは、M202-IFNγ、M202+IGNγ、M489-IFNγ、及びM489+IFNγの4プレックスプロットである(各4プレックスの順序でM489-IFNγ及びM489+IFNγが右の二つのバーである順序で示される)。
【
図6B】
図6Bは、共培養後24時間でのサイトカイン放出(n=3)である。
【
図6C】
図6Cは、24、48、72及び96時間で培地単独中の細胞増殖と比較した腫瘍増殖阻害%を示す(n=4)。
【
図6D】
図6Dは、自己メラノーマ細胞株(M485、上のパネル)又はミスマッチ細胞株(M202、下のパネル)との24、48及び72時間の共培養時のKi67平均蛍光強度によって測定されたCD8+neoTCR+T細胞の増殖(n=3)である。1時間ごとの測定の各セットを、トリプレックスバーとして示す;バーの左から右への順序は24時間、48時間、及び72時間である。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、図a、b及びcにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、
図6Dにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。(n)は生物学的複製物の数を示す。平均値±SDが示される。全てのT細胞生成物は、CD8+及びCD4+遺伝子編集T細胞を含む。
【0014】
【
図7A】
図7A-7Dは、自己細胞株との共培養時の患者#2からのネオエピトープ特異的TCRによって誘導される活性化、サイトカイン分泌、細胞傷害性、及び増殖を示す。患者#2からのキャプチャーされたneoTCRを発現するように遺伝子改変された健康なドナーT細胞を、自己(M490)又はミスマッチ細胞株(M202)と共培養した。
図7Aは、共培養後のCD8+neoTCR+T細胞における4-1BB及びOX-40のアップレギュレーションである。メラノーマ細胞株を、T細胞との共培養の24時間前に通常の培地又はIFNγを含む培地で前処理した(n=3)。
図7Aのグラフは、M202-IFNγ、M202+IGNγ、M489-IFNγ、及びM489+IFNγの4プレックスプロットである(各4プレックスの順序でM489-IFNγ及びM489+IFNγが右の二つのバーである順序で示される)。
【
図7B】
図7Bは、自己細胞株(上のパネル)又はミスマッチ細胞株(下のパネル)における特異的標的細胞殺傷を示す(P:T比10:1、n=4)。
【
図7C】
図7Cは、共培養後24時間でのサイトカイン放出である(n=3)。メラノーマ細胞株を、T細胞との共培養の24時間前にIFNγで前処理した。
【
図7D】自己メラノーマ細胞株(M490、上のパネル)又はミスマッチ細胞株(M202、下のパネル)との24、48及び72時間の共培養時のKi67平均蛍光強度によって測定されたCD8+neoTCR+T細胞の増殖(n=3)である。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、
図7A-7Cにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、
図7Dにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。
図7Dの1時間ごとの測定値の各セットを、トリプレックスバーとして示す;バーの左から右への順序は24時間、48時間、72時間である。(n)は生物学的複製物の数を示す。平均値±SDが示される。全てのT細胞生成物は、CD8+及びCD4+遺伝子編集T細胞を含む。
【0015】
【
図8A】
図8A-8Fは、抗PD-1への応答がない患者からのネオエピトープ特異的TCRによって誘導される活性化、サイトカイン分泌、及び増殖を示している。患者#3(
図8A-8C)、#4(
図8D-8E)及び#5(
図7F)からのキャプチャーされたneoTCRを発現するように遺伝子改変された健康なドナーT細胞を、自己(それぞれM485、M468及びM488)又はミスマッチ細胞株(M202)と共培養した。
図8Aは、培養後の患者#3からのCD8+neoTCR+T細胞における4-1BB、OX-40、及びCD107aのアップレギュレーションである。メラノーマ細胞株を、T細胞との共培養の24時間前に通常の培地又はIFNγを含む培地で前処理した(n=3)。
図8Aのグラフは、M202-IFNγ、M202+IGNγ、M489-IFNγ、及びM489+IFNγの4プレックスプロットである(各4プレックスの順序でM489-IFNγ及びM489+IFNγが右の二つのバーである順序で示される)。
【
図8B】
図8Bは、共培養後24時間でのサイトカイン放出(n=3)である。
【
図8C】
図8Cは、自己メラノーマ細胞株(M485、上のパネル)又はミスマッチ細胞株(M202、下のパネル)との24、48及び72時間の共培養時のKi67平均蛍光強度によって測定された患者#3からのCD8+neoTCR+T細胞の増殖(n=3)である。
図8Cの1時間ごとの測定の各セットを、トリプレックスバーとして示す;バーの左から右への順序は24時間、48時間、72時間である。
【
図8D】
図8Dは、共培養後の患者#4からのCD8+neoTCR+T細胞における4-1BB及びOX-40のアップレギュレーションである。メラノーマ細胞株を、T細胞との共培養の24時間前に通常の培地又はIFNγを含む培地で前処理した(n=3)。
図8Dのグラフは、M202-IFNγ、M202+IGNγ、M489-IFNγ、及びM489+IFNγの4プレックスプロットである(各4プレックスの順序でM489-IFNγ及びM489+IFNγが右の二つのバーである順序で示される)。
【
図8E-8F】
図8Eは、共培養後24時間でのサイトカイン放出である(n=3)。
図8Fは、共培養後の患者#5からのCD8+neoTCR+T細胞における4-1BBのアップレギュレーションである。メラノーマ細胞株を、T細胞との共培養の24時間前に通常の培地又はIFNγを含む培地で前処理した(n=3)。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs Neo12、
図8A、8B、8D、8E、及び8Fにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。
図8Fのグラフは、M202-IFNγ、M202+IGNγ、M489-IFNγ、及びM489+IFNγの4プレックスプロットである(各4プレックスの順序でM489-IFNγ及びM489+IFNγが右の二つのバーである順序で示される)。
*p<0.05、
**p<0.005、
***p<0.0005、
****p<0.0001 vs M202、図cにおける多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定。(n)は生物学的複製物の数を示す。平均値±SDが示される。全てのT細胞生成物は、CD8+及びCD4+遺伝子編集T細胞を含む。
【0016】
【
図9】
図9は、特定の非応答患者に対してデザインされたNeoTCR生成物ががん細胞死を引き起こすことを示している(培養したがん細胞の上の三枚の写真を参照のこと)。上の三枚の写真は、患者のために特別にデザインされたNeoTCR生成物の投与から0日目及び2日目及び5日目に培養物中の非応答者患者のがん細胞を示している。がん細胞死は目に見えて明らかである。
【0017】
【
図10】
図10は、ネオエピトープが非応答患者において検出できることを示している。検出されたネオエピトープに基づいて、NeoTCR生成物を、各非応答患者に対して個別にデザインし、作製することができる。
【0018】
【
図11】
図11は、陰性対照(「Neo12」)に曝露された場合、非応答患者からの腫瘍細胞(レジェンドに示される「自己腫瘍細胞」)が抗腫瘍因子/シグナル(4-1BB、Ox40、Ki67、INFγ、TNFα、及びCD107)のアップレギュレーションを誘発しないことを示している。しかし、非応答患者が自身の腫瘍ネオ抗原に基づいてデザインされたNeoTCR生成物(「TCR212」と呼ばれるTCR36及び「TCR213」と呼ばれるTCR37)に曝露されると、抗腫瘍因子/シグナルがアップレギュレーションされ、発現した。異なる患者からの腫瘍細胞(TCR212及びTCR213 NeoTCR生成物とミスマッチ)は追加の対照となり、抗腫瘍因子/シグナルのアップレギュレーションを示さなかった。
【0019】
【
図12A-12B】
図12A-12Cは、NeoTCR生成物を作製するために使用できるNeoETCRカセットと遺伝子編集方法の例を示している。
図12Aは、ネオ抗原特異的TCRコンストラクト(neoTCR)をTCRα遺伝子座に組み込むために使用される一般的なターゲティング戦略を表す概略図を示す。
図12B及び12Cは、NeoTCRをTCRα遺伝子座に組み込むために使用されるネオ抗原特異的TCRコンストラクトのデザインを示し、カセットは、シグナル配列(「SS」)、プロテアーゼ切断部位(「P」)、及び2Aペプチド(「2A」)と共に示される。
図12Bは、標的TCRα遺伝子座(内因性TRAC、上のパネル)とそのCRISPR Cas9標的部位(水平縞、切断部位は矢印で示される)、及びneoTCRをコードするポリヌクレオチドを含む環状プラスミドHR鋳型(下のパネル)を示しており、これは、組み込み前は左右の相同性アーム(それぞれ「LHA」と「RHA」)間に位置している。
【
図12C】
図12Cは、TCRα遺伝子座に組み込まれたneoTCR(上のパネル)、転写されスプライシングされたneoTCR mRNA(中央のパネル)、及び発現されたneoTCRの翻訳とプロセシング(下のパネル)を示している。
【発明を実施する形態】
【0020】
本開示は、NeoTCR生成物を、非応答患者を治療するために使用することができるという発見に基づいている。
【0021】
[定義]
別段の定義がない限り、ここで使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。次の参考文献は、本開示の主題で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singleton等,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2版 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編,1988);The Glossary of Genetics,5版,R.Rieger等(編),Springer Verlag(1991);並びにHale及びMarham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。ここで使用される場合、次の用語は、特に明記しない限り、以下の定義に帰する意味を有している。
【0022】
ここに記載の発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様を「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」ことを含むことが理解される。「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という用語は、米国特許法においてそれらに帰する広い意味を有することを意図しており、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味しうる。
【0023】
ここで使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、値がどのように測定され又は決定されるかに、すなわち、測定系の制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、技術分野の慣行に従って、3又は3を超える標準偏差内を意味しうる。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、例えば、最大10%、最大5%、又は最大1%の範囲を意味しうる。あるいは、特に生物システム又はプロセスに関して、この用語は、値の一桁分以内、例えば、値の5倍以内又は2倍以内を意味しうる。
【0024】
ここで使用される「チェックポイント阻害剤」は、所定のタイプの免疫系細胞(例えば、T細胞)及びがん細胞のサブセットによって作製される所定のタンパク質をブロックするタイプの薬物を意味する。所定の免疫細胞及びがん細胞によって作製されるこのようなタンパク質は、免疫応答を抑えるのに役立ち、T細胞ががん細胞を殺すのを防ぎうる。従って、これらのタンパク質がチェックポイント阻害剤によってブロックされると、T細胞は所定のがん細胞を殺すことができる。チェックポイント阻害剤は免疫療法であり、該用語はここで使用される場合相互に排他的ではない。
【0025】
「がん」及び「腫瘍」という用語は、ここでは交換可能に使用される。ここで使用される場合、「がん」又は「腫瘍」という用語は、悪性か良性かを問わず、全ての新生物細胞の成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん性細胞及び組織を指す。該用語は、更に、典型的には未制御の細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を参照し又は記述するために使用される。がんは、限定されないが、膀胱、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、ファロピウス管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、泌尿生殖器、尿管、尿道、子宮、及び膣、又はその組織若しくは細胞型から選択される器官を含む、様々な細胞型、組織、又は器官を罹患させうる。がんには、肉腫、癌腫、又は形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などのがんが含まれる。がんの例には、限定されないが、ここに記載されているものが含まれる。「がん」又は「腫瘍」及び「増殖性障害」という用語は、ここで使用される場合、相互に排他的ではない。
【0026】
ここで使用される「CTLA-4結合剤」とは、CTLA-4に結合し、PD-1と、B7-1及び/又はB7-2などのその結合パートナーの一又は複数との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し、又は妨害する分子を意味する。幾つかの実施態様では、CTLA-4結合剤は、CTLA-4のその結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する分子である。幾つかの実施態様では、CTLA-4結合剤は、CTLA-4のB7-1及び/又はB7-2への結合を阻害する。例えば、CTLA-4結合剤には、抗CTLA-4抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びCTLA-のB7-1及び/又はB7-2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し、又は妨害する他の分子が含まれる。幾つかの実施態様では、CTLA-4結合剤は、抗CTLA-4抗体である。特定の実施態様では、CTLA-4結合剤はイピリムマブである。
【0027】
ここで使用される「デキストラマー」は、その同族NeoTCRに特異的に結合する多量体化されたネオエピトープ-HLA複合体を意味する。
【0028】
ここで使用される「内因性」は、通常は、細胞又は組織において発現される核酸分子又はポリペプチドを指す。
【0029】
ここで使用される「外因性」は、細胞内に内因的には存在しない核酸分子又はポリペプチドを指す。従って、「外因性」という用語は、外来、異種、及び過剰発現された核酸分子及びポリペプチドなど、細胞内で発現される任意の組み換え核酸分子又はポリペプチドを包含するであろう。「外因性」核酸とは、天然の野生型細胞に存在しない核酸を意味する;例えば、外因性核酸は、配列、位置(position)/位置(location)、又はその両方によって内因性の対応物とは異なりうる。明確にするために、外因性核酸は、その天然の内因性対応物と比較して同じ又は異なる配列を有しうる;それは、遺伝子工学によって細胞自体又はその前駆細胞に導入され得、任意選択的に、非天然プロモーター又は分泌配列などの代替制御配列に連結されうる。
【0030】
ここで使用される「免疫療法」又は「がん免疫療法」は、免疫系を活性化又は抑制することによってがんなどの疾患を治療するようにデザインされた治療法を意味する。免疫療法は、免疫応答を誘発させ若しくは増幅させ(すなわち、活性化免疫療法)、又は免疫応答を低減させ若しくは抑制するように(すなわち、抑制免疫療法)デザインすることができる。チェックポイント阻害剤は免疫療法であり、該用語はここで使用される場合は相互に排他的ではない。
【0031】
「ネオ抗原」、「ネオエピトープ」又は「neoE」は、例えば、体細胞変異から生じ、「非自己」として認識される、新しく形成された抗原決定基を指す。「ネオ抗原」、「ネオエピトープ」又は「neoE」を生じさせる変異には、フレームシフト又は非フレームシフトインデル、ミスセンス又はナンセンス置換、スプライス部位変化(例えば、選択的スプライシングされた転写物)、ゲノム再編成又は遺伝子融合、何らかのゲノム又は発現変化、又は何らかの翻訳後修飾が含まれうる。
【0032】
ここで使用される「NeoTCR」は、例えば、遺伝子編集法によってT細胞中に導入されるネオエピトープ特異的T細胞受容体を意味する。ここで使用される場合、「TCR遺伝子配列」という用語は、NeoTCR遺伝子配列を指す。
【0033】
ここで使用される「NeoTCR細胞」は、一又は複数のNeoTCRを発現するように精密改変された一又は複数の細胞を意味する。所定の実施態様では、細胞はT細胞である。所定の実施態様では、T細胞は、CD8+及び/又はCD4+T細胞である。所定の実施態様では、CD8+及び/又はCD4+T細胞は、NeoTCR生成物が投与される患者からの自己細胞である。「NeoTCR細胞」及び「NeoTCR-P1 T細胞」及び「NeoTCR-P1細胞」という用語は、ここでは交換可能に使用される。幾つかの実施態様では、NeoTCR細胞は、例えば、T細胞のゲノムに、如何なる外因性DNA配列も含まない。
【0034】
ここで使用される「NeoTCR生成物」は、一又は複数のNeoTCR細胞を含む薬学的製剤を意味する。NeoTCR生成物は、自己の精密ゲノム改変されたCD8+及びCD4+T細胞からなる。標的DNAを介した非ウイルス精密ゲノム改変アプローチを使用して、内因性TCRの発現が排除され、腫瘍排他的ネオエピトープを標的とする末梢CD8+T細胞から単離された患者特異的NeoTCRによって置換される。所定の実施態様では、得られた改変CD8+及び/又はCD4+T細胞は、天然配列、天然発現レベル、及び天然TCR機能のNeoTCRをその表面に発現する。NeoTCR外部結合ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインの配列は、天然CD8+T細胞から単離されたTCRから未改変である。NeoTCR遺伝子発現の調節は、NeoTCR遺伝子カセットがゲノムに組み込まれている場所の上流に位置する天然の内因性TCRプロモーターによって駆動される。このアプローチにより、NeoTCR発現の天然レベルが、未刺激の抗原活性化T細胞状態で観察される。幾つかの実施態様では、NeoTCR生成物は、例えば、T細胞のゲノムに、如何なる外因性DNA配列も含まない。
【0035】
各患者向けに製造されたNeoTCR生成物は、その同じ患者の末梢血から個別に単離されたneoE特異的CD8+T細胞からクローン化された単一のネオエピトープ(neoE)特異的TCRを発現するように精密ゲノム改変された自己CD8+及び/又はCD4+T細胞の定まった用量を表す。
【0036】
ここで使用される「NeoTCRウイルス生成物」は、ゲノム改変がウイルス媒介法を使用して実施されることを除き、NeoTCR生成物と同じ定義を有する。
【0037】
ここで使用される「非応答患者」は、それぞれの治療に応答しなかったため、あるいは最初は応答したが耐性を発現し、時間の経過と共にそれぞれの治療に対して応答を停止したか、応答の低下を示したため、がんがチェックポイント阻害剤及び/又は免疫療法に応答しないがん患者を指す。非応答患者には、チェックポイント阻害剤及び/又は免疫療法に対して応答がないか、部分的にしか応答しない患者が含まれる。
【0038】
「PD-1軸結合剤」という用語は、PD-1シグナル伝達軸でのシグナル伝達から生じるT細胞機能障害を除去するように、PD-1軸結合パートナーとその結合パートナーの一又は複数との相互作用を阻害し、その結果、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞殺傷)を回復し又は増強する分子を指す。ここで使用される場合、PD-1軸結合剤という用語には、PD-1結合剤、PD-L1結合剤、及びPD-L2結合剤が含まれる。
【0039】
「PD-1結合剤」という用語は、PD-1とその結合パートナーの一又は複数、例えばPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する分子を指す。幾つかの実施態様では、PD-1結合剤は、PD-1のその結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する分子である。幾つかの実施態様では、PD-1結合剤は、PD-1のPD-L1及び/又はPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合剤には、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-1のPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する他の分子が含まれる。幾つかの実施態様では、PD-1結合剤は、機能障害性T細胞をより機能障害にしないようにする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ようにPD-1を介したシグナル伝達を介してTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して負の共刺激シグナルを低減する。幾つかの実施態様では、PD-1結合剤は抗PD-1抗体である。特定の実施態様では、PD-1結合剤はニボルマブである。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はペムブロリズマブである。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はセミプリマブである。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はピジリズマブである。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はAMP-224である。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はMED1-0680(Medimmune)である。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はスパルタリズマブ(PDR001)である。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はREGN2810(Regeneron)である。別の特定の実施態様では、PD-1結合剤はBGB-108(BeiGene)である。
【0040】
「PD-L1結合剤」という用語は、PD-L1とその結合パートナーの一又は複数、例えば、PD-1及び/又はB7-1との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する分子を指す。幾つかの実施態様では、PD-L1結合剤は、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。幾つかの実施態様では、PD-L1結合剤は、PD-L1のPD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合剤には、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-1、B7-1などのその結合パートナーの一又は複数とのPD-L1の相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する他の分子が含まれる。幾つかの実施態様では、PD-L1結合剤は、機能障害性T細胞をより機能障害にしないようにする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ようにPD-L1を介したシグナル伝達を介してTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して負の共刺激シグナルを低減する。幾つかの実施態様では、PD-L1結合剤は抗PD-L1抗体である。特定の実施態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。特定の実施態様では、抗PD-L1抗体はアベルマブである。特定の実施態様では、抗PD-L1抗体はデュルバルマブである。別の特定の実施態様では、抗PD-L1抗体はMDX-1105(BMS)である。別の特定の実施態様では、抗PD-L1抗体はMSB0015718Cである。
【0041】
「PD-L2結合剤」という用語は、PD-L2とその結合パートナーの何れか一又は複数、例えばPD-1との相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する分子を指す。幾つかの実施態様では、PD-L2結合剤は、PD-L2のその結合パートナーの一又は複数への結合を阻害する分子である。幾つかの実施態様では、PD-L2結合剤は、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。幾つかの実施態様では、PD-L2結合剤には、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とPD-1などの何れか一又は複数の結合パートナーとの相互作用から生じるシグナル伝達を減少させ、遮断し、阻害し、抑止し又は妨害する他の分子が含まれる。幾つかの実施態様では、PD-L2結合剤は、機能障害性T細胞をより機能障害にしないようにする(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強する)ようにPD-L2を介したシグナル伝達を介してTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって又はそれを介して負の共刺激シグナルを低減する。幾つかの実施態様では、PD-L2結合剤はイムノアドヘシンである。
【0042】
「薬学的製剤」は、そこに含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にする形態であり、製剤が投与される対象に許容できないほど毒性がある追加の成分を含まない調製物を指す。明確にするために、NeoTCR生成物において使用される量のDMSOは許容できないほど毒性があるとは考えられない。
【0043】
治療の目的での「対象」、「患者」、又は「個体」とは、ヒト、家畜及び農場動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等々を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0044】
ここで使用される「TCR」は、T細胞受容体を意味する。
【0045】
ここで使用される「TIM3結合剤」は、TIM3に結合し、TIM3のガレクチン-9、ホスファチジルセリン、HMGB1、及びCEACAM1又はTIM-3に結合する別のタンパク質への結合をブロックする分子を意味する。
【0046】
「治療する(Treat)」、「治療(Treatment)」、及び「治療すること(treating)」は互換的に使用され、ここで使用される場合、臨床結果を含む有益な又は望ましい結果を得ることを意味する。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理的帰結の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、病状の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。幾つかの実施態様では、本発明のNeoTCR生成物は、増殖性障害(例えば、がん)の発症を遅らせるために、又はそのような疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0047】
ここで使用される「腫瘍抗原」は、正常又は非腫瘍性細胞と比較して腫瘍細胞上に独特に又は差次的に発現される抗原(例えば、ポリペプチド)を指す。所定の実施態様では、腫瘍抗原は、抗原認識受容体を介して免疫応答を活性化し又は誘導することができるか、あるいは受容体-リガンド結合を介して免疫応答を抑制することができる腫瘍によって発現される任意のポリペプチドを含む。
【0048】
「2A」及び「2Aペプチド」は、ここでは交換可能に使用され、真核細胞での翻訳中にペプチドの切断を媒介することができる18-22アミノ酸長のウイルスの自己切断型ペプチドのクラスを意味する。
【0049】
2Aペプチドクラスの四種のよく知られたメンバーは、T2A、P2A、E2A、及びF2Aである。T2Aペプチドは、Thosea asignaウイルス2Aにおいて最初に同定された。P2Aペプチドは、ブタのテッショウウイルス-1 2Aで最初に同定された。E2Aペプチドは、ウマ鼻炎Aウイルスで最初に同定された。F2Aペプチドは、口蹄疫ウイルスで最初に同定された。
【0050】
2Aペプチドの自己切断メカニズムは、リボソームが2AのC末端でのグリシル-プロリルペプチド結合の形成をスキップした結果である。具体的には、2Aペプチドは、立体障害の形成とリボソームスキッピングに必要なC末端保存配列を有している。リボソームスキッピングは、次の三つの選択肢の一つをもたらしうる:1)スキッピングが成功し、翻訳が再開し、二つの切断タンパク質(C末端プロリンを除く完全な2Aペプチドに結合する2Aタンパク質の上流とN末端で一つのプロリンに結合する2Aタンパク質の下流)が生じ;2)スキッピングは成功するが、リボソームの脱落により翻訳が中断され、2Aの上流のタンパク質のみが生じ;あるいは3)スキッピングが失敗し、翻訳が継続する(すなわち、融合タンパク質)。
【0051】
[NeoTCR生成物]
幾つかの実施態様では、その全体が出典明示によりここに援用されるPCT/US2020/017887及びPCT/US2019/025415に記載されている遺伝子編集技術及びneoTCR単離技術を使用して、NeoTCRは、neoTCRを発現するように(
図12A-12Cに記載されているDNA媒介(非ウイルス)法を使用して)精密ゲノム改変された同じがん患者からの自己CD8+及びCD4+T細胞にクローン化される。言い換えれば、腫瘍特異的であるNeoTCRが、がん患者において同定され、ついでそのようなNeoTCRがクローン化され、ついでクローン化されたNeoTCRががん患者のT細胞に挿入される。次に、NeoTCRを発現するT細胞が、「幼若」T細胞表現型を維持する形で増殖され、T細胞の大部分がTメモリー幹細胞とTセントラルメモリー表現型を示すNeoTCR-P1生成物(すなわち、NeoTCR生成物)を生じる。幾つかの実施態様では、例えば、ここで提供される精密ゲノム改変の結果として、NeoTCR生成物は、例えば、T細胞のゲノムに、如何なる外因性DNA配列も含まない。
【0052】
これらの「幼若」又は「より幼若の」又は低分化のT細胞表現型は、改善された生着能及び注入後の長期持続性を与えると記述される。従って、「幼若」T細胞表現型から有意に構成されるNeoTCR生成物の投与は、生着可能性の改善、注入後の持続性の延長、及びエフェクターT細胞への迅速な分化を通して、身体全体の腫瘍細胞を根絶する利益をがん患者にもたらす可能性がある。
【0053】
エクスビボでの作用機序研究を、がん患者のT細胞で製造されたNeoTCR生成物でまた実施した。T細胞殺傷活性、増殖、及びサイトカイン産生の抗原特異性によって測定される、同等の遺伝子編集効率及び機能的活性が観察され、ここに記載の製造方法が、出発物質としてがん患者からのT細胞を用いて生成物を作製することに成功したことを実証している。
【0054】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物の製造方法は、ガイドRNA配列に結合したCRISPR-Cas9ヌクレアーゼの二重リボ核タンパク質種のエレクトロポレーションを含み、各種がゲノムTCRα及びゲノムTCRβ遺伝子座を標的とする。Cas9ヌクレアーゼを各ゲノム遺伝子座にターゲティングする特異性は、以前に文献において高度に特異的であると記載されている。NeoTCR生成物の包括的な試験を、それぞれCOSMID及びGUIDE-seqを使用して、可能性のあるオフターゲットゲノム切断部位を調査するインビトロ及びインシリコ分析で実施した。健康なドナーからの複数のNeoTCR生成物又は同等の細胞生成物を、ディープシークエンシングによって候補オフターゲット部位の切断について評価し、選択されたヌクレアーゼが高度に特異的であるという公表された証拠を裏付けた。
【0055】
精密ゲノム改変法の更なる態様は、安全性について評価されている。精密ゲノム改変後のゲノム不安定性の証拠は、標的遺伝子座増幅(TLA)又は標準的FISH細胞遺伝学による複数のNeoTCR生成物の評価では見出されなかった。NeoTCR配列のゲノムへのオフターゲット組み込みはどこにも検出されなかった。細胞生成物にCas9が残っている証拠は見出されなかった。
【0056】
NeoTCR生成物と精密ゲノム改変法の包括的な評価は、NeoTCR生成物が患者への注入後に十分に許容されることを示している。
【0057】
ここに記載のゲノム改変アプローチは、固形及び液性腫瘍を有する患者のための個別化された養子細胞治療法のための特注のNeoTCR T細胞(すなわち、NeoTCR生成物)の非常に効率的な作製を可能にする。更に、改変手法はT細胞での使用に限定されず、ナチュラルキラー細胞及び造血幹細胞を含む他の初代細胞型にも成功裡に適用されている。
【0058】
チェックポイント阻害剤に応答性の固形腫瘍は、より多い体細胞遺伝子変異数を抱える可能性が高く(腫瘍排他的ネオ抗原の発現をもたらし)、腫瘍はより高いCD8 T細胞浸潤性を示し、及び/又は既存の高PD-L1腫瘍発現を示すことを示唆する証拠が増加している(Schumacher及びSchreiber,2015)。これらの特徴のそれぞれは、これらの腫瘍の内因性免疫原性の可能性が高いこと、つまり、その患者の免疫系が、チェックポイント阻害剤療法の開始前に有意なT細胞免疫応答を開始した可能性があることを表している(Lawrence等,2013);(Tumeh等,2014);(Wargo等,2017)。腫瘍の次世代ディープシークエンシングの適用と内因性腫瘍標的T細胞応答の免疫学的分析は、がん免疫療法の利益、腫瘍遺伝子変異数、及びネオ抗原特異的T細胞の既存の集団の間の関係についての説得力のある証拠を提供した。これらの腫瘍排他的変異(ネオ抗原)を抱える腫瘍細胞を特異的に認識して殺傷するT細胞のネオ抗原特異的集団は、臨床的利益を引き起こす効果的ながん免疫療法の主要なメディエーターであると提案されている(Tran等,2017)(Schumacher及びSchreiber,2015)。
【0059】
ネオエピトープを標的とする養子TCR-T細胞療法は、上述の制限を克服する可能性がある。NeoTCR生成物は、患者の個人的な内因性T細胞がん免疫応答から同定され単離された天然配列の自己NeoTCRで改変された新規の養子TCR-T細胞療法である。がん病理の「ドライバー」変異を含む、各患者の創始者(トランカル)変異を最初は表す腫瘍特異的ゲノム変化は、数が増え、後期悪性腫瘍の「ブランチ」又は「パッセンジャー」変異として時間と共に多様化する。これらの蓄積された腫瘍特異的変異スペクトラムは、各がん患者における免疫認識のための標的の特有の個人シグネチャー(個人ネオ抗原)を表している。これらの個人及び腫瘍排他的ネオ抗原(ネオエピトープ又はneoE特異的T細胞)を標的とするT細胞は、これらの腫瘍特異的変異を発現しない健康な細胞を無視しながら、腫瘍細胞を排他的に標的にして殺傷する可能性がある。このように、各患者の免疫系は腫瘍に関与し、適切に活用される場合、適切に調整された内因性免疫応答が腫瘍を根絶することが示されている。
【0060】
全てのがんは根底にある創始者又はトランカル変異によって引き起こされるため、トランカルネオエピトープを標的とするNeoTCR生成物は、あらゆるがん患者の治療の可能性がある。NeoTCR生成物の養子個別化細胞療法は、腫瘍排他的ネオ抗原(neoE)を既に認識する天然に生じるNeoTCRを発現するように、個体自身のCD8及びCD4 T細胞を改変することを含む。従って、これらのNeoTCRは、既存の変異標的化CD8 T細胞に由来する天然配列であり、各患者における腫瘍排他的neoE標的を認証する独自の単離技術によって末梢血からキャプチャーされる。製造方法では、同じ患者のロイコパックから新たに得られたCD4及びCD8 T細胞が、「天然」自己T細胞機能を再構成し、選択プロセスを通して自己患者の予測される抗原との相互作用が検証されている形で一つのNeoTCRを発現するように精密ゲノム改変される。従って、がんの参加者への臨床的利益は、エクスビボで改変された、腫瘍変異を標的とした自己NeoTCR細胞の単回投与から生じ、よって、一部は根治的治療の選択肢がない患者に迅速で持続性のある反応を引き起こす可能性を提供する。
【0061】
NeoTCR生成物の薬理学的評価により、ここに記載のエクスビボ製造方法を用いて産生されたNeoTCR細胞は、同族ネオ抗原発現腫瘍細胞との接触で、強力な抗原特異的殺傷性、エフェクターサイトカイン分泌、及び増殖活性を有していることが実証された。更に、NeoTCR生成物は、バルクT細胞及び単一細胞セクレトーム分析によって示されるように、強力な多機能エフェクタータンパク質分泌応答で標的腫瘍細胞に応答することが示されている。観察された多機能T細胞エフェクター表現型は、血液悪性腫瘍患者に注入された多機能CAR-T細胞で観察されるものと同様の形で、NeoTCR生成物をがん患者に注入した際の臨床的利益の可能性に寄与することが予測される。
【0062】
NeoTCR生成物は、ここに記載のエクスビボ製造方法の結果としてメモリー幹細胞(TMSC)及びセントラルメモリー(TCM)T細胞表現型を含む。これらの「より幼若の」又は低分化のT細胞表現型は、血液悪性腫瘍の患者の改変CAR-T細胞のマウスモデル及び臨床試験において、改善された生着能と注入後の長期持続性をもたらすと記載されている。従って、「より幼若の」T細胞表現型から有意になるNeoTCR生成物の投与は、生着能の改善、注入後の持続性の延長、及びエフェクターT細胞への迅速な分化により、全身の腫瘍細胞を根絶することにより、がん患者に利益をもたらす可能性がある。
【0063】
がん患者からのT細胞で製造されたNeoTCR生成物を用いてエクスビボでの作用機序研究をまた実施した。T細胞殺傷活性、増殖、及びサイトカイン産生の抗原特異性によって測定される、同等の遺伝子編集効率及び機能的活性が観察され、ここに記載の製造方法が、出発物質としてがん患者由来のT細胞を用いて生成物を作製することに成功していることを証明している。
【0064】
NeoTCR生成物製造方法は、それぞれの種がゲノムTCRα及びゲノムTCRβ遺伝子座を標的とする、ガイドRNA配列に結合したCRISPR-Cas9ヌクレアーゼの二重リボ核タンパク質種のエレクトロポレーションを含む。Cas9ヌクレアーゼを各ゲノム遺伝子座にターゲティングする特異性は、以前に文献に高度に特異的であると記載されている。NeoTCR生成物の包括的試験をインビトロ及びインシリコ分析で実施し、COSMID及びGUIDE-seqをそれぞれ使用して、可能性のあるオフターゲットゲノム切断部位を調査した。複数のNeoTCR生成物と健康なドナーからの同等の細胞生成物を、ディープシークエンシングによって候補オフターゲット部位の切断について評価したが、選択されたヌクレアーゼが高度に特異的であるという公表された証拠を裏付けている。
【0065】
精密ゲノム改変法の更なる態様を安全性について評価した。標的遺伝子座増幅(TLA)又は標準的FISH細胞遺伝学による複数のNeoTCR生成物の評価では、精密ゲノム改変後のゲノム不安定性の証拠は見出されなかった。NeoTCR配列のゲノムへのオフターゲット組み込みはどこにも検出されなかった。細胞生成物に残留Cas9の証拠は見出されなかった。
【0066】
所定の実施態様では、化学療法プレコンディショニングレジメンが、NeoTCR生成物の投与の前に、非応答患者に施されうる。
【0067】
従って、NeoTCR生成物は、非応答患者のためのがん治療における新しい発展をもたらす。
【0068】
[チェックポイント阻害剤]
チェックポイント阻害剤は、がんの治療向けに過去数年にわたって承認されてきている;しかし、それらは費用がかかり、患者に毒性をもたらす場合があり、患者のがんの大部分がこれらのチェックポイント阻害剤に応答しない。例えば、メラノーマと肺がんの約20-50%が免疫療法に有意に応答するが、他のものは応答しない。
【0069】
更に、PD-1、PD-L1、PD-2及びPD-L2を標的とするチェックポイント阻害剤(「PD-1軸」及び「PD-1軸結合剤」)が広く探求されており、他のチェックポイント阻害剤と同様に、大部分のがんにおいて毒性と有効性の欠如に苦しんでいる(選択チェックポイント阻害剤での乳がんの臨床試験の要約について表1を参照のこと)。診断を使用して奏効率を予測することはできるが(例えば、治療前の腫瘍細胞によるPD-L1発現が、抗PD-1及び抗PD-L1療法に対する奏効率を予測するために使用されている)、PD-L1(+)腫瘍の患者の大部分はPD-1経路遮断には応答せず、奏効率を精確に予測する過去に開示された診断法は存在しない。
【0070】
PD-1軸結合剤に加えて、他のチェックポイント阻害剤は、同じ主要な制限(limitations-primarily)、毒性及び効力の欠如(無応答及び獲得耐性)を示す。チェックポイント阻害剤には、限定されないが、PD-1結合剤、PD-L1結合剤、PD-L2結合剤、CTLA-4結合剤、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン-3(TIM3)結合剤、Tリンパ球マーカー(限定されないが、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、TIM-3(ここに記載)、T細胞活性化のIgサプレッサーを含むVドメイン(VISTA)、T細胞免疫グロブリン及びITIMドメイン(TIGIT)、B7-H3、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS/ICOS-L)、CD27/CD70を含む)、及びグルココルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)、マクロファージマーカー(限定されないが、CD47/シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)及びインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を含む)、ナチュラルキラー細胞マーカー(限定されないが、CD94/NKG2A及びキラー免疫グロブリン様受容体ファミリー(KIR)を含む)、並びに免疫系ががん細胞を殺傷し及び/又はがん細胞の増殖を止め若しくは遅らせるのを止めるタンパク質をブロックする他の薬剤が含まれる。
【0071】
所定のPD-1軸結合剤には、限定されないが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、並びにPD-1に結合する他のモノクローナル抗体が含まれる。所定のPD-L1軸結合剤には、限定されないが、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、並びにPD-L1に結合するその他のモノクローナル抗体が含まれる。ここで検討されるように、これらの薬剤の一つの制約は、免疫系が患者の幾つかの正常細胞及び器官を攻撃することを可能にし、それが深刻な副作用をもたらすことが示されていることである。これらの薬剤の追加の副作用には、限定されないが、肺、腸、肝臓、腎臓、ホルモン産生腺、又は他の器官の深刻な問題が含まれる。
【0072】
所定のCTLA-4結合剤には、イピリムマブ並びにCTLA-4に結合する他のモノクローナル抗体が含まれる。PD-1軸結合剤と同様に、CTLA-4結合剤は、深刻で生命を脅かす副作用を引き起こし、全てのがん及びがんを患う全ての患者の治療に効果的である訳ではない。
【0073】
所定のTIM-3結合剤には、TIM-3に結合するモノクローナル抗体が含まれる。PD-1軸結合剤と同様に、TIM-3結合剤は、深刻で生命を脅かす副作用を引き起こす場合があり、全てのがん及びがんを患う全ての患者の治療に効果的である訳ではない。
【0074】
治療に応答しないか(無応答又は部分応答)又は治療に対する獲得耐性を構築する(すなわち、集合的に、非応答患者)ためにチェックポイント阻害剤に応答しないがん(及びがんを有する患者)を治療するための治療法が必要であることは明らかである。更に、応答(例えば、全奏効率(ORR)及び全生存(OS)率)を増強しかつ改善するための治療法がまた必要である。
【0075】
従って、NeoTCR生成物は、非応答患者のためのがん治療法の新しい発展をもたらす。
【0076】
[がん免疫療法]
がん免疫療法、すなわち、チェックポイント阻害剤が分類されるより広いクラスの治療法は、がんの治療のためにここ数年にわたって承認されてきている;しかし、それらは費用がかかり、患者に毒性をもたらす可能性があり、患者のがんの大部分がこれらのチェックポイント阻害剤に応答しない。例えば、がん免疫療法には、限定されないが、ここに記載のチェックポイント阻害剤、CAR-T療法、がんワクチン、及びサイトカイン療法(すなわち、薬学的製剤に製剤化されるサイトカイン及び修飾体、誘導体、及びそれらの融合タンパク質)が含まれる。腫瘍のおよそ60-70%が単剤チェックポイント阻害剤に応答せず、チェックポイント阻害剤に応答する腫瘍を有している患者は時間の経過と共に耐性になる(Yan等,Front Immunol.208;9:1739)。
【0077】
がん免疫療法の低い奏効率と高い耐性率に基づいて、治療に応答しないか(無応答又は部分応答)又は治療に対する獲得耐性を構築する(すなわち、集合的に、非応答患者)ために免疫療法に応答しないがん(及びがんを有する患者)を治療するための治療法が必要であることは明らかである。更に、応答(例えば、全奏効率(ORR)及び全生存(OS)率)を増強しかつ改善するための治療法がまた必要である。
【0078】
従って、NeoTCR生成物は、非応答患者のためのがん治療法における新しい発展をもたらす。
【0079】
[遺伝子編集法]
所定の実施態様では、本開示は、部分的に、ヒト細胞を改変する方法、例えば、改変されたT細胞又は改変されたヒト幹細胞を含む。所定の実施態様では、本開示は、部分的に、ヒト細胞、例えば、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、造血幹細胞(HSC)、HSCに由来する細胞、又は樹状/抗原提示細胞を改変する方法を含む。所定の実施態様では、そのような改変はゲノム編集を含む。例えば、限定ではないが、そのようなゲノム編集は、一又は複数の内因性遺伝子座、例えば、TCRアルファ(TCRα)遺伝子座及びTCRベータ(TCRβ)遺伝子座を標的とするヌクレアーゼを用いて達成することができる。所定の実施態様では、ヌクレアーゼは、内因性標的配列に一本鎖DNAニック又は二本鎖DNA切断を生成しうる。所定の実施態様では、ヌクレアーゼは、ゲノムのコーディング部分又は非コーディング部分、例えば、エクソン、イントロンを標的としうる。所定の実施態様では、ここで考えられるヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、メガTALヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及びClustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)(CRISPR)/Casヌクレアーゼを含む。所定の実施態様では、ヌクレアーゼは、切断活性の効率を高めるために、例えば、アミノ酸置換及び/又は欠失の導入により、それ自体が改変されうる。
【0080】
所定の実施態様では、CRISPR/Casヌクレアーゼ系が、ヒト細胞を改変するために使用される。所定の実施態様では、CRISPR/Casヌクレアーゼ系は、Casヌクレアーゼと、Casヌクレアーゼを内因性標的配列に動員する一又は複数のRNA、例えば、単一のガイドRNAとを含む。所定の実施態様では、CasヌクレアーゼとRNAは、例えば、異なるベクター又は組成物を使用して別々に、又は例えば、ポリシストロニックコンストラクト又は単一タンパク質-RNA複合体で一緒に、細胞に導入される。所定の実施態様では、CasヌクレアーゼはCas9又はCas12aである。所定の実施態様では、Cas9ポリペプチドは、限定されないが、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)又は髄膜炎菌(Neisseria menengitidis)を含む細菌種から得られる。CRISPR/Cas系の追加の例は当該技術分野で知られている。それが教示する全てについて出典明示によりここに援用される、Adli,Mazhar.“The CRISPR tool kit for genome editing and beyond.”Nature communications vol.9,1 1911(2018)を参照のこと。
【0081】
所定の実施態様では、ゲノム編集は、免疫応答を調節する一又は複数のゲノム遺伝子座で行われる。所定の実施態様では、遺伝子座には、限定されないが、TCRアルファ(TCRα)遺伝子座、TCRベータ(TCRβ)遺伝子座、TCRガンマ(TCRγ)、及びTCRデルタ(TCRδ)が含まれる。
【0082】
所定の実施態様では、ゲノム編集は、非ウイルス送達系を使用して実施される。例えば、リポフェクションの存在下での核酸の投与(Feigner等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413,1987;Ono等,Neuroscience Letters 17:259,1990;Brigham等,Am.J.Med.Sci.298:278,1989;Staubinger等,Methods in Enzymology 101:512,1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wu等,Journal of Biological Chemistry 263:14621,1988;Wu等,Journal of Biological Chemistry 264:16985,1989)、又は手術条件下でのマイクロインジェクション(Wolff等,Science 247:1465,1990)により、核酸分子を細胞に導入することができる。遺伝子導入のための他の非ウイルス手段には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、及びプロトプラスト融合を使用したインビトロでのトランスフェクションが含まれる。リポソームはまた、細胞へのDNAの送達に潜在的に有益でありうる。対象の罹患組織への正常遺伝子の移植はまた、正常核酸をエクスビボで培養可能な細胞型(例えば、自己又は異種の初代細胞又はその子孫)に導入し、その後、細胞(又はその子孫)を標的組織に注入するか、又は全身的に注入することによって達成されうる。
【0083】
所定の実施態様では、ゲノム編集は、ウイルス送達系を使用して実施される。所定の実施態様では、ウイルス法には、標的組み込み(限定されないが、AAVを含む)とランダム組み込み(限定されないが、レンチウイルスアプローチを含む)が含まれる。所定の実施態様では、ウイルス送達は、ヌクレアーゼの組み込みなしに達成されるであろう。そのような実施態様では、ウイルス送達系は、Lentiflash又は別の同様の送達系でありうる。
【0084】
[相同組み換え鋳型]
所定の実施態様では、本開示は、相同組み換え(HR)鋳型核酸配列を細胞の内因性遺伝子座に導入して組み換えることにより、細胞のゲノム編集をもたらす。所定の実施態様では、HR鋳型核酸配列は直鎖状である。所定の実施態様では、HR鋳型核酸配列は環状である。所定の実施態様では、環状HR鋳型は、プラスミド、ミニサークル、又はナノプラスミドでありうる。所定の実施態様では、HR鋳型核酸配列は、第一の相同性アーム及び第二の相同性アームを含む。所定の実施態様では、相同性アームは、約300塩基から約2000塩基でありうる。例えば、各相同性アームは1000塩基でありうる。所定の実施態様では、相同性アームは、細胞の第一の内因性配列及び第二の内因性配列に相同でありうる。所定の実施態様では、内因性遺伝子座はTCR遺伝子座である。例えば、第一の内因性配列及び第二の内因性配列は、TCRアルファ遺伝子座又はTCRベータ遺伝子座内にある。所定の実施態様では、HR鋳型はTCR遺伝子配列を含む。非限定的な実施態様では、TCR遺伝子配列は、患者特異的TCR遺伝子配列である。非限定的な実施態様では、TCR遺伝子配列は腫瘍特異的である。非限定的な実施態様では、TCR遺伝子配列は、その内容が出典明示によりここに援用されるPCT/US2020/017887に記載された方法を使用して同定され取得されうる。所定の実施態様では、HR鋳型は、TCRアルファ遺伝子配列とTCRベータ遺伝子配列を含む。
【0085】
所定の実施態様では、HR鋳型はポリシストロニックポリヌクレオチドである。所定の実施態様では、HR鋳型は、可動性ポリペプチド配列をコードする配列(例えば、Gly-Ser-Gly配列)を含む。所定の実施態様では、HR鋳型は、配列内リボソーム侵入部位(IRES)をコードする配列を含む。所定の実施態様では、HR鋳型は2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A、及びF2A)を含む。HR鋳型核酸及びその細胞を改変する方法に関する追加の情報は、その内容が出典明示によりここに援用される国際特許出願第PCT/US2018/058230号に見出すことができる。
【0086】
[治療方法]
ここに開示されるNeoTCR生成物は、非応答患者を治療するために使用することができる。
【0087】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、非応答患者に、そのような患者が以前にチェックポイント阻害剤で治療された後に、投与することができる。
【0088】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、チェックポイント阻害剤未経験の非応答患者に投与することができる。
【0089】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、チェックポイント阻害剤と同時に非応答患者に投与することができる。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、チェックポイント阻害剤と共に逐次的に非応答患者に投与されうる。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、抗CTLA抗体である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はイピリムマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1軸結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はニボルマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はセミプリマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はPD-L1結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はアベルマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はデュルバルマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はPD-L2結合剤である。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、標準治療である任意の他の化学療法剤、又は疾患、年齢、病歴、及び医師が考慮するその他の要因などの要因に基づいてそのような患者を治療するための他の許容可能な薬剤と組み合わせて、非応答患者に投与することができる。
【0090】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、非応答患者に、そのような患者が以前に免疫療法で治療された後に、投与することができる。
【0091】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、免疫療法と同時に非応答患者に投与することができる。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、免疫療法と共に逐次的に非応答患者に投与することができる。所定の実施態様では、免疫療法はがんワクチンである。所定の実施態様では、免疫療法は、サイトカイン療法(すなわち、薬学的製剤に製剤化されるサイトカイン及び修飾体、誘導体、及びそれらの融合タンパク質)である。所定の実施態様では、免疫療法は、NeoTCR生成物以外の細胞療法である。所定の実施態様では、免疫療法は、CAR-T細胞療法である。所定の実施態様では、免疫療法はインターフェロンである。所定の実施態様では、免疫療法はインターロイキンである。所定の実施態様では、免疫療法は、腫瘍溶解性ウイルス療法である。所定の実施態様では、免疫療法は、NK細胞療法である。所定の実施態様では、免疫療法は、NeoTCR生成物以外のT細胞療法である。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、標準治療である任意の他の化学療法剤、又は疾患、年齢、病歴、及び医師が考慮するその他の要因などの要因に基づいてそのような患者を治療するための他の許容可能な薬剤と組み合わせて、非応答患者に投与することができる。
【0092】
所定の実施態様では、有効量のNeoTCR生成物は、IV投与により送達される。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、単回投与でIV投与により送達される。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、複数回投与でIV投与により送達される。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、二回以上の投与でIV投与により送達される。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、二回の投与でIV投与により送達される。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、三回の投与でIV投与により送達される。
【0093】
がんの非限定的な例には、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)、卵巣がん、乳がん、膀胱がん、脳がん、結腸がん、腸がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、神経膠芽腫、咽頭がん、メラノーマ、神経芽腫、腺癌、神経膠腫、軟部組織肉腫、及び様々な癌腫(前立腺がん及び小細胞肺がんを含む)が含まれる。適切な癌腫には、限定されないが、星状細胞腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、乏突起膠腫、上衣腫、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)、軟骨肉腫、骨肉腫、膵管腺癌、小細胞及び大細胞肺腺癌、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、扁平上皮がん、気管支肺胞がん、上皮腺癌、及びそれらの肝転移、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、肝細胞腫、胆管細胞がん、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、横紋筋肉腫、結腸がん、基底細胞がん、汗腺がん、乳頭がん、皮脂腺がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性肺がん、腎細胞がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及び重鎖病、乳房腫瘍、例えば乳管及び小葉腺癌、子宮頸部の扁平上皮及び腺癌、子宮及び卵巣上皮がん、前立腺腺癌、膀胱の移行扁平上皮がん、B及びT細胞リンパ腫(結節性及びびまん性)形質細胞腫、急性及び慢性白血病、悪性メラノーマ、軟部組織肉腫及び平滑筋肉腫を含む腫瘍学の分野で知られている任意のものが更に含まれる。所定の実施態様では、新生物は、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、膀胱がん、脳がん、結腸がん、腸がん、肝がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、神経膠芽腫、及び咽頭がんから選択される。所定の実施態様では、本開示の幼若T細胞及びそれを含む組成物は、一般的な治療的介入が受け入れられない血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫)又は卵巣がんを治療し及び/又は予防するために使用することができる。
【0094】
所定の実施態様では、新生物は固形がん又は固形腫瘍である。所定の実施態様では、固形腫瘍又は固形がんは、神経膠芽腫、前立腺腺癌、腎臓乳頭細胞がん、肉腫、卵巣がん、膵臓腺癌、直腸腺癌、結腸腺癌、食道がん、子宮体部類内膜がん、乳がん、皮膚メラノーマ、肺腺癌、胃腺癌、頸部及び子宮頸部がん、腎臓明細胞がん、精巣胚細胞腫瘍、及び侵攻性B細胞リンパ腫から選択される。
【0095】
対象は、進行形態の疾患を有する可能性があり、その場合、治療目的は、疾患進行の緩和又は逆転、及び/又は副作用の改善を含みうる。対象は、既に治療された状態の病歴を有する可能性があり、その場合、治療目的は、典型的には、再発のリスクの減少又は遅延を含むであろう。
【0096】
治療に適したヒト対象は、典型的には、臨床基準によって区別することができる二種の治療群を含む。「進行した疾患」又は「高腫瘍負荷」の対象は、臨床的に測定可能な腫瘍を有する対象である。臨床的に測定可能な腫瘍は、腫瘍量に基づいて検出できる腫瘍である(例えば、触診、CATスキャン、超音波検査、マンモグラム、又はX線による;陽性の生化学的又は病理組織マーカーだけでは、この集団を特定するには不十分である)。薬学的組成物は、これらの対象に、その状態を緩和する目的で、抗腫瘍応答を誘発するために投与される。理想的には、結果として腫瘍量の減少が起こるが、何らかの臨床的改善が利点を構成する。臨床的改善には、進行のリスク又は速度の低下あるいは腫瘍の病理的帰結の低下が含まれる。
【0097】
[組成物及び製造品]
NeoTCR生成物は、製造品と組み合わせて使用されうる。そのような製造品は、増殖性障害(例えば、がん)の予防又は治療に有用でありうる。製造品の例には、限定されないが、容器(例えば、注入バッグ、ボトル、貯蔵容器、フラスコ、バイアル、注射器、チューブ、及びIV溶液バッグ)、及び容器上の又は容器に付随したラベル又は添付文書が含まれる。容器は、NeoTCR生成物内のNeoTCR細胞の貯蔵及び保存に受け入れられる任意の材料で作製されうる。所定の実施態様では、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有するバイアルでありうる。例えば、容器は、CryoMACS凍結バッグでありうる。ラベル又は添付文書は、NeoTCR生成物が、選択された状態及び端緒の患者を治療するために使用されることを示している。NeoTCR生成物は自己細胞から作製され、患者特異的な個別化された治療剤として設計されているため、患者はNeoTCR生成物の容器上で特定される。
【0098】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器を含みうる。
【0099】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)第一の容器と同じNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器を含みうる。場合によっては、第一の容器及び第二の容器と同じNeoTCR生成物を含む追加の容器が準備され作製されうる。場合によっては、異なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む組成物を含む追加の容器がまた、上述の容器と組み合わせられうる。
【0100】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)組成物がその中に含まれる第二の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第二の容器を含みうる。
【0101】
製造品は、1)二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)組成物がその中に含まれる第二の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第二の容器を含みうる。
【0102】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;及び3)場合によっては、組成物がその中に含まれる第三の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第三の容器を含みうる。所定の実施態様では、第一及び第二のNeoTCR生成物は異なるNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、第一及び第二のNeoTCR生成物は同じNeoTCR生成物である。
【0103】
製造品は、1)三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)場合によっては、組成物がその中に含まれる第二の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第二の容器を含みうる。
【0104】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;3)第三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第三の容器;及び4)場合によっては、組成物がその中に含まれる第四の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第四の容器を含みうる。所定の実施態様では、第一、第二及び第三のNeoTCR生成物は異なるNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、第一、第二及び第三のNeoTCR生成物は同じNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、第一、第二、及び第三のNeoTCR生成物の二つが同じNeoTCR生成物である。
【0105】
製造品は、1)四のNeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)場合によっては、組成物がその中に含まれる第二の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第二の容器を含みうる。
【0106】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;3)第三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第三の容器;4)第四のNeoTCR生成物がその中に含まれる第四の容器;及び5)場合によっては、組成物がその中に含まれる第五の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第五の容器を含みうる。所定の実施態様では、第一、第二、第三、及び第四のNeoTCR生成物は、異なるNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、第一、第二、第三、及び第四のNeoTCR生成物は、同じNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、第一、第二、第三、及び第四のNeoTCR生成物のうち二つが同じNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、第一、第二、第三、及び第四のNeoTCR生成物のうち三つが同じNeoTCR生成物である。
【0107】
製造品は、1)五以上のNeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)場合によっては、組成物がその中に含まれる第二の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、第二の容器を含みうる。
【0108】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;3)第三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第三の容器;4)第四のNeoTCR生成物がその中に含まれる第四の容器;5)第五のNeoTCR生成物がその中に含まれる第五の容器;6)場合によっては、第六以上のNeoTCR生成物がその中に含まれる第六以上の追加の容器;及び7)場合によっては、組成物がその中に含まれる追加の容器であって、組成物が更なる細胞傷害性又は他の治療剤を含む、追加の容器を含みうる。所定の実施態様では、NeoTCR生成物の容器の全てが、異なるNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、NeoTCR生成物の容器の全てが、同じNeoTCR生成物である。所定の実施態様では、患者の腫瘍サンプル中の検出可能なNeoTCRの利用可能性、患者に対する複数のNeoTCR生成物の必要性及び/又は要望、及び一又は複数の容器を必要としうるかそれから利益を得うる何れか一のNeoTCR生成物の利用可能性に基づいて、五以上の容器内に同じ又は異なるNeoTCR生成物の任意の組み合わせが存在しうる。
【0109】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;及び3)第三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第三の容器を含みうる。
【0110】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;3)第三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第三の容器;及び4)場合によっては第四のNeoTCR生成物がその中に含まれる第四の容器を含みうる。
【0111】
製造品は、1)NeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;2)第二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器;3)第三のNeoTCR生成物がその中に含まれる第三の容器;4)第四のNeoTCR生成物がその中に含まれる第四の容器;及び5)場合によっては第五のNeoTCR生成物がその中に含まれる第五の容器を含みうる。
【0112】
製造品は、一のNeoTCR生成物がその中に含まれる容器を含みうる。製造品は、二のNeoTCR生成物がその中に含まれる容器を含みうる。製造品は、三のNeoTCR生成物がその中に含まれる容器を含みうる。製造品は、四のNeoTCR生成物がその中に含まれる容器を含みうる。製造品は、五のNeoTCR生成物がその中に含まれる容器を含みうる。
【0113】
製造品は、1)一のNeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器を含みうる。製造品は、1)二のNeoTCR生成物がその中に含まれる第一の容器;及び2)一のNeoTCR生成物がその中に含まれる第二の容器を含みうる。上の例において、一又は複数の追加のNeoTCR生成物を含む第三及び/又は第四の容器が製造品に含まれうる。加えて、一又は複数の追加のNeoTCR生成物を含む第五の容器が製造品に含まれうる。
【0114】
更に、ここに記載のNeoTCR生成物の任意の容器は、複数の投与時点のために、及び/又は患者のための適切な用量に基づいて、二、三、又は四の別個の容器に分割できる。
【0115】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物はキットで提供される。キットには、非限定的な例として、添付文書、ラベル、NeoTCR生成物の使用説明書、注射器、廃棄説明書、投与説明書、チューブ、針、及びNeoTCR生成物を適切に管理するために臨床医が必要とするその他のものを含めることができる。
【0116】
非応答患者を治療するために使用される、ここに開示されるNeoTCR生成物は、その使用のための薬学的製剤に製剤化される。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。
【0117】
所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、以前にチェックポイント阻害剤による治療を受けた非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、チェックポイント阻害剤未経験の非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、チェックポイント阻害剤による治療を同時に受ける非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、チェックポイント阻害剤による治療を逐次的に受ける非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。
【0118】
所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、以前に免疫療法による治療を受けた非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、免疫療法に未経験である非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、免疫療法と同時に治療を受ける非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。所定の実施態様では、そのようなNeoTCR生成物のラベルは、免疫療法による治療を逐次的に受ける非応答患者を治療するためのインストラクションを提供する。
【0119】
また提供されるのは、患者におけるがんを治療する方法である。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従って、チェックポイント阻害剤に対する非応答者として患者を特定することと、NeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従ってチェックポイント阻害剤に対する非応答者として患者を特定することと、患者がチェックポイント阻害剤未経験である場合はNeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従ってチェックポイント阻害剤に対する非応答者として患者を特定することと、患者が以前にチェックポイント阻害剤を投与された場合はNeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従ってチェックポイント阻害剤に対する非応答者として患者を特定することと、患者が現在チェックポイント阻害剤による治療を受けている場合はNeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤は、抗CTLA抗体である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はイピリムマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はPD-1軸結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はPD-1結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はニボルマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はセミプリマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はPD-L1結合剤である。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はアベルマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はデュルバルマブである。所定の実施態様では、チェックポイント阻害剤はPD-L2結合剤である。
【0120】
また提供されるのは、NeoTCR生成物と場合によっては免疫療法を用いて患者におけるがんを治療する方法である。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従って免疫療法に対する非応答者として患者を特定することと、NeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従って免疫療法に対する非応答者として患者を特定することと、患者が免疫療法に未経験である場合はNeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従って免疫療法に対する非応答者として患者を特定することと、患者が以前に免疫療法を受けたことがある場合はNeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、この方法は、当該技術分野で知られている方法に従って免疫療法に対する非応答者として患者を特定することと、患者が現在免疫療法による治療を受けている場合はNeoTCR生成物で患者を治療することとを含む。所定の実施態様では、免疫療法はがんワクチンである。所定の実施態様では、免疫療法は、サイトカイン療法(すなわち、薬学的製剤に製剤化されるサイトカイン及び修飾体、誘導体、及びそれらの融合タンパク質)である。所定の実施態様では、免疫療法は、NeoTCR生成物以外の細胞療法である。所定の実施態様では、免疫療法は、CAR-T細胞療法である。所定の実施態様では、免疫療法はインターフェロンである。所定の実施態様では、免疫療法はインターロイキンである。所定の実施態様では、免疫療法は、腫瘍溶解性ウイルス療法である。所定の実施態様では、免疫療法は、NK細胞療法である。所定の実施態様では、免疫療法は、NeoTCR生成物以外のT細胞療法である。所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、標準治療である任意の他の化学療法剤、あるいは疾患、年齢、病歴、及び医師が考慮するその他の要因などの要因に基づいてそのような患者を治療するために許容可能な薬剤などと組み合わせて、非応答患者に投与することができる。
【0121】
所定の実施態様では、NeoTCR生成物は、免疫療法に応答しなかった非応答患者を治療するためのインストラクションを含むキットで提供される。
【0122】
[治療用組成物及び製造方法]
ここに記載されるように、NeoTCR生成物の優良製造規範(GMP)製造のためのプラスミドDNA媒介精密ゲノム改変法を開発した。患者特異的neoTCRの標的組み込みを、プラスミドDNAによってコードされた、個別化されたneoTCR遺伝子カセットと共にCRISPRエンドヌクレアーゼリボ核タンパク質(RNP)で電気穿孔することによって、達成した。neoTCRに加えて、NeoTCRコンストラクトを、それらをneoTCRベクターに組み込んだ後、上記のようにCRISPRエンドヌクレアーゼリボ核タンパク質(RNP)で電気穿孔することにより挿入した。
【0123】
NeoTCR生成物は、臨床製造方法を使用して医薬品に製剤化されうる。この方法では、NeoTCR生成物はCryoMACS凍結バッグで凍結保存される。患者の必要性に応じて、一又は複数のバッグが各患者のために現場に出荷されうる。この生成物は、その患者の腫瘍細胞の表面に排他的に提示される内因性HLA受容体の一つと複合体を形成したネオエピトープを標的とする一又は複数の自己neoTCRを発現するように精密ゲノム改変されている、アフェレーシス由来の患者自己CD8及びCD4 T細胞で構成されている。
【0124】
最終生成物は、5%のジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン、及びPlasma-Lyteを含むであろう。最終細胞生成物は、全有核NeoTCR細胞(cGMP製造)、Plasma-Lyte A(USP)、0.02-0.08Mのカプリル酸ナトリウム及びトリプトファン酸ナトリウム(USP)中のHAS、及びCryoStor CS10(USP等級材料でcGMP製造)を含むであろう。
【0125】
[組成物及びベクター]
本開示の主題は、ここに開示される細胞(例えば、免疫応答性細胞)を含む組成物を提供する。
【0126】
所定の実施態様では、本開示の主題は、ここに開示されるNeoTCRをコードするポリヌクレオチドを含む核酸組成物を提供する。所定の実施態様では、ここに開示される核酸組成物は、ここに開示されるNeoTCRコンストラクトをコードするポリヌクレオチドを含む。また提供されるのは、そのような核酸組成物を含む細胞である。
【0127】
所定の実施態様では、核酸組成物は、ここに開示されるNeoTCRに作用可能に連結されているプロモーターを更に含む。所定の実施態様では、核酸組成物はここに開示されるNeoTCRコンストラクトに作用可能に連結されているプロモーターを更に含む。
【0128】
所定の実施態様では、プロモーターは内因性又は外因性である。所定の実施態様では、外因性プロモーターは、伸長因子(EF)-1プロモーター、CMVプロモーター、SV40プロモーター、PGKプロモーター、末端反復配列(LTR)プロモーター及びメタロチオネインプロモーターから選択される。所定の実施態様では、プロモーターは誘導性プロモーターである。所定の実施態様では、誘導性プロモーターは、NFAT転写応答エレメント(TRE)プロモーター、CD69プロモーター、CD25プロモーター、IL-2プロモーター、IL-12プロモーター、p40プロモーター、及びBcl-xLプロモーターから選択される。
【0129】
組成物及び核酸組成物は、当該技術分野で知られている方法によって又はここに記載されるように、対象に投与され、及び/又は細胞に送達されうる。細胞(例えば、T細胞)の遺伝子改変は、組換えDNAコンストラクトで実質的に均質な細胞組成物を形質導入することによって達成することができる。所定の実施態様では、DNAコンストラクトを細胞に導入するために、レトロウイルスベクター(ガンマレトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターの何れか)が用いられる。非ウイルスベクターもまた使用されうる。
【0130】
可能な形質導入方法には、例えば、Bregni等(1992)Blood 80:1418-1422の方法による、プロデューサー細胞との細胞の直接共培養、あるいは例えば、Xu等(1994)Exp.Hemat.22:223-230;及びHughes等(1992)J.Clin.Invest.89:1817の方法による、ウイルス上清のみ、又は適切な成長因子及びポリカチオンを含むか又は含まない濃縮ベクターストックを用いた培養がまた含まれる。
【0131】
他の形質導入ウイルスベクターを使用して細胞を改変することができる。所定の実施態様では、選択ベクターは、高い感染効率と安定した組み込み及び発現を示す(例えば、Cayouette等,Human Gene Therapy 8:423-430,1997;Kido等,Current Eye Research 15:833-844,1996;Bloomer等,Journal of Virology 71:6641-6649,1997;Naldini等,Science 272:263-267,1996;及びMiyoshi等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:10319,1997を参照のこと)。使用できる他のウイルスベクターには、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、又はヘルペスウイルス、例えばエプスタイン・バーウイルスが含まれる(また、例えば、Miller,Human Gene Therapy 15-14,1990;Friedman,Science 244:1275-1281,1989;Eglitis等,BioTechniques 6:608-614,1988;Tolstoshev等,Current Opinion in Biotechnology 1:55-61,1990;Sharp,The Lancet 337:1277-1278,1991;Cornetta等,Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322,1987;Anderson,Science 226:401-409,1984;Moen,Blood Cells 17:407-416,1991;Miller等,Biotechnology 7:980-990,1989;LeGal La Salle等,Science 259:988-990,1993;及びJohnson,Chest 107:77S-83S,1995のベクターを参照)。レトロウイルスベクターは特に十分に開発されており、臨床現場で使用されている(Rosenberg等,N.Engl.J.Med 323:370,1990;Anderson等,米国特許第5399346号)。
【0132】
非ウイルスアプローチをまた細胞の遺伝子改変に用いることができる。例えば、リポフェクションの存在下での核酸の投与(Feigner等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413,1987;Ono等,Neuroscience Letters 17:259,1990;Brigham等,Am.J.Med.Sci.298:278,1989;Staubinger等,Methods in Enzymology 101:512,1983)、アシアロロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wu等,Journal of Biological Chemistry 263:14621,1988;Wu等,Journal of Biological Chemistry 264:16985,1989)、又は手術条件下でのマイクロインジェクション(Wolff等,Science 247:1465,1990)により、核酸分子を投与することにより、核酸分子を細胞に導入することができる。遺伝子導入のための他の非ウイルス手段には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、及びプロトプラスト融合を使用したインビトロでのトランスフェクションが含まれる。リポソームはまた、細胞へのDNAの送達に潜在的に有益でありうる。対象の罹患組織への正常遺伝子の移植はまた、正常核酸をエクスビボで培養可能な細胞型(例えば、自己又は異種の初代細胞又はその子孫)に導入し、その後、細胞(又はその子孫)を標的組織に注入するか、又は全身的に注入することによって達成することができる。
【0133】
ポリヌクレオチド治療法は、任意の適切なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、又はメタロチオネインプロモーター)から方向付けられ、任意の適切な哺乳動物調節エレメント又はイントロン(例えば、伸長因子1aエンハンサー/プロモーター/イントロン構造)によって調節されうる。例えば、所望されるならば、特定の細胞型において遺伝子発現を優先的に方向付けることが知られているエンハンサーを使用して、核酸の発現を方向付けることができる。使用されるエンハンサーには、限定されないが、組織特異的又は細胞特異的エンハンサーとして特徴付けられるものが含まれうる。あるいは、ゲノムクローンが治療用コンストラクトとして使用される場合、調節は、同族調節配列によって、又は所望されるならば、上記のプロモーター又は調節エレメントの何れかを含む異種源由来の調節配列によって媒介されうる。
【0134】
得られた細胞は、未改変細胞と同様の条件下で増殖させることができ、それにより、改変細胞を増殖させ、様々な目的に使用することができる。
【0135】
[キット]
本開示の主題は、対象における免疫応答を誘導し、及び/又は増強し、及び/又はがん若しくは病原体感染を治療し、及び/又は予防するためのキットを提供する。所定の実施態様では、キットは、有効量の本開示の細胞又はそれを含む薬学的組成物を含む。所定の実施態様では、キットは滅菌容器を含み;そのような容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック、又は当該技術分野で知られている他の適切な容器形態でありうる。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、又は医薬を保持するのに適した他の材料で作製されうる。所定の非限定的な実施態様では、キットは、本開示のHR鋳型をコードする単離された核酸分子を含む。
【0136】
所望されるならば、細胞及び/又は核酸分子は、がん又は病原体又は免疫不全を有するか又は発症するリスクのある対象に細胞又は核酸分子を投与するためのインストラクションと共に提供される。インストラクションは一般にがん又は病原体感染の治療及び/又は予防のための組成物の使用に関する情報を含む。所定の実施態様では、インストラクションは、次のうちの少なくとも一を含む:治療薬の説明;新生物、病原体感染、又は免疫不全あるいはそれらの症状の治療又は予防のための投与スケジュール及び投与;注意;警告;適応症;禁忌;過量投与情報;有害反応;動物薬理;臨床試験;及び/又は参考文献。インストラクションは、容器(存在する場合)に直接に印刷され、又は容器に貼付されるラベルとして、又は容器内に若しくは容器と共に提供される別のシート、パンフレット、カード、又はフォルダーとして印刷されうる。得られた細胞は、未改変細胞と同様の条件下で増殖させることができ、それにより、改変細胞を増殖させ、様々な目的に使用することができる。
【0137】
ここに開示される実施態様の範囲から逸脱することなく、適切な均等物を使用して、ここに記載される方法の他の適切な変更及び適応化を行うことができることは、当業者なら直ぐに分かるであろう。ここで所定の実施態様を詳細に説明したが、例示のみを目的として含まれ、限定を意図するものではない、次の実施例を参照することにより、実施態様はより明確に理解されるであろう。本開示の範囲は、前述の明細書ではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって示され、従って、特許請求の範囲の意義及び均等の範囲内に入るあらゆる変更がここに含まれることが意図される。
【実施例】
【0138】
次は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供した一般的な説明を前提として、様々な他の実施態様を実施できることが理解される。
【0139】
実施例1:材料と方法
患者、検体収集及び応答評価。 抗PD-1療法を単独で又は他の薬剤との併用で受けながら、PBMC及び腫瘍生検を採取することに署名し、インフォームドコンセントに同意した転移性メラノーマの患者を選択した。患者の状態が許せば、追加の生検及びPBMCサンプルを長期的に採取した。この研究では、マッチド細胞株(n=5)、PBMC(n=11)、及びTIL(n=7)を使用した。臨床反応を、RECIST基準に従って評価した(Wolchok等 Clinical Cancer Research 15,7412-7420(2009)。患者特性の要約を以下の表2に示す。
【0140】
PBMC精製、TIL増殖、及び細胞株樹立。 5-20mLの血液サンプルからのPBMCを、SepMateTM-50チューブ(Stem Cell Technologies)を利用したFicoll-Hypaque(GE Healthcare)傾斜分離を使用して精製した。精製後、PBMCを凍結培地(FBS(Omega Scientific)+10%DMSO(Sigma-Aldrich))で凍結保存し、液体窒素中に保存した。細胞株及びTIL培養物を、転移性病変のコア針生検から樹立した。TIL培養物は、以前に記載されたように腫瘍断片を使用して樹立し(Dudley等,Journal of Immunotherapy 26,332-342(2003))、CTL Cryo ABC凍結キット(ImmunoSpot)又はCryoStor CS10(StemCell Technologies)の何れかに凍結保存した。TIL培養物は、ベースライン及び治療中の生検から樹立した。細胞株を樹立するために、組織を使い捨てスカルペルで細かく切り刻んで単一細胞懸濁液を作製し、DMEM10%ヒトAB血清(Omega Scientific,Inc)を含む組織培養プレートに維持し、細胞が増殖し始めるまで抗生物質とL-グルタミンを補充した。残存線維芽細胞の汚染の証拠がなく、少なくとも10-15継代後に細胞株が樹立されると考える。細胞株をベースライン生検からのみ樹立した。
【0141】
細胞株及び細胞培養。 全てのメラノーマ細胞株(M202、M495、M486、M488、M489及びM490)を、10%ウシ胎児血清(Omega Scientific,Inc)、抗生物質、及びL-グルタミンを補充したRPMI中に維持し、5%CO2の加湿雰囲気中37℃で保った。細胞株は、ショートタンデムリピート分析(GenePrint(登録商標)10システム、Promega、分析はLaragen社に外部委託)を使用して定期的に認証し、マイコプラズマの存在について試験した(Mycoalert、マイコプラズマ検出キット、Lonza)。細胞傷害性研究では、全ての細胞株に、製造メーカーの指示書に従ってEF1aプロモーター(Essen Bioscience)の制御下で、核赤色蛍光タンパク質(nRPF)を発現するレンチウイルスベクターをレンチウイルス形質導入し、増殖させ、FACS ARIA又はFACS ARIA-H(BD bioscience)を使用して選別した。
【0142】
腫瘍体細胞コーディング変異の同定とネオ抗原の選択。 患者の腫瘍生検及びマッチドPBMCに由来する腫瘍細胞株を全エクソーム解析(WES)に供した。加えて、腫瘍細胞株についてRNA-シーケンス解析(RNA-Seq)を実施した。DNA及びRNAを、Qiagen DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)及びQiagen RNeasyキット(Qiagen)を製造元の説明書に従って使用して、細胞株(100万細胞)及びPBMC(100万-300万細胞)から単離した。全エクソーム及びRNAシーケンス解析は、UCLAのTechnology Center for Genomics & Bioinformatics(TCGB)コアにおいて、リード長が2×150bpのペアエンドのIllumina Hiseq3000プラットフォームを使用して実施した。全エクソーム解析用のライブラリーを、Nimblegen SeqCap EZヒトエクソームライブラリーv3.0(Roche)を使用して作製した。RNAseqライブラリー構築にはポリA選択を使用した。
【0143】
ネオエピトープ予測及びランク付けを実施した。簡単に説明すると、第一に、WES配列をヒトhg19リファレンスゲノムに整列させた。VarScan2とMuTectの双方によって同定された体細胞コーディング変異を、潜在的なネオ抗原として保持した。第二に、RNA-Seq配列をヒトhg19にマッピングし、定量し、HISAT2とStringTieで正規化した。第三に、患者のPBMC WESから同定されたネオ抗原配列と患者のHLA型を、netMHCpanでのHLA-ペプチド結合親和性予測の入力として使用した。最後に、各HLAに関して上位2%のランク付けの予測結合親和性を持つHLA-ペプチド複合体を選択し、それらの選択した複合体でRNA-Seqによる発現が確認されたペプチドのみをタンパク質試薬作製に進めた。
【0144】
HLA-ペプチド複合体ライブラリーの調製。 HLA-ペプチド複合体ライブラリーを、PCT/US2019/025415(出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されるようにして作製した。簡単に説明すると、NeoEをコードするDNA断片を、96ウェル形式で可溶性HLA対立遺伝子をコードする改変pcDNA3.1ベクターにクローニングした。DNAクローンをサンガーシークエンシングによって検証し、プラスミドをExpiFectamineTM(Thermo Fisher)と複合体化し、製造元の推奨事項を使用してHEK293F細胞にトランスフェクトした。分泌されたNeo-HLA複合体を、BirAリガーゼ(ブランド)で酵素的にビオチン化し、IMAC(ブランド)によって清澄化した細胞培養培地から精製した。精製したタンパク質ライブラリーを脱塩クロマトグラフィー(ブランド)でバッファー交換し、タンパク質濃度を280nmでの吸光度で測定した。
【0145】
患者ネオエピトープ特異的T細胞の同定。 ネオエピトープ特異的T細胞の同定を、PCT/US2020/17887(出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されているようにして実施した。簡単に説明すると、各ネオエピトープ-HLAエレメントを、DNAバーコード化し、二つの異なる蛍光ストレプトアビジン(フィコエリトリン-PE-又はアロフィコシアニン-APC-)によって多量体化した。DNAバーコードは次の構造に従った:ユニバーサルプライマー1-NNNNN-バーコード-NNNNNN-ユニバーサルプライマー2。バーコード化し蛍光多量体化したネオエピトープ-HLAエレメントを一緒にプールして、PBMCとTILを染色した。バーコード化し多量体化したネオエピトープ-HLAライブラリーを患者のPBMC又はTILと共にインキュベートした後、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を行った。二重蛍光標識(PE+APC)多量体結合CD8 T細胞を、単細胞としてプレートの個々のウェルにソートした。次に、これらのウェルを逆転写及びPCRに供して、T細胞受容体(TCR)及びバーコードDNA配列を増幅させた。次に、配列をIlluminaのmini-seqマシンによる次世代シークエンシングに供し、TCR及びバーコード情報を解読した。
【0146】
非特異的結合事象のために、必ずしも全ての二重蛍光陽性細胞がネオエピトープ特異的であるわけではない。DNAバーコードを解析すると、ネオエピトープ特異的T細胞は主に同じバーコードを持ち、非特異的T細胞は異なるバーコードを持つであろう。ネオエピトープ特異的T細胞からTCR配列を選択し、以下に記載されるように健康なドナーT細胞を遺伝子改変するために使用した。
【0147】
相同性指向修復(HDR)鋳型の作製。 HDR鋳型の作製を、PCT/US2018/058230(出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されているようにして実施した。先のステップで単離されたネオエピトープ特異的T細胞からのTCRペアード可変領域を、PCRによって増幅し、精製した。精製されたPCR産物を、患者特異的HDR鋳型を作製するために、定常領域と相同性アームと共にアセンブルした。患者特異的HDR鋳型を、サンガーシークエンシングとアガロースゲル電気泳動によって検証した。
【0148】
細胞編集とネオエピトープ特異性の検証。 非ウイルス性T細胞遺伝子編集を、PCT/US2018/058230(出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されているようにして実施した。初代ヒトT細胞を、磁気親和性選択を使用して、健康なドナーの濃縮白血球アフェレーシスから単離した。単離したT細胞を抗CD3/CD28粒子で活性化し、48-72時間培養した。活性化後、T細胞を遠心分離し、P3バッファー(Lonza)中に再懸濁した。リボ核タンパク質(RNP)を、TRAC及びTRBCを標的とするガイドRNAをCas9タンパク質に複合化することによって形成した。患者特異的HDR鋳型とRNPを細胞懸濁液と共に混合し、電気穿孔した後、完全T細胞培地に移した。クローン化されたTCRのネオエピトープ特異性を確認するために、遺伝子編集T細胞をネオエピトープ-HLAデキストラマー(30nM、上記のように社内で製造)で染色した。
【0149】
T細胞機能研究:T細胞活性化、サイトカイン放出、増殖、脱顆粒、及び細胞傷害性。 T細胞の活性化、サイトカイン放出、及び増殖を、自己(M485、M486、M488、M489及びM490)又はミスマッチ(M202)細胞株との共培養時に測定した。簡単に説明すると、メラノーマ細胞(T細胞増殖及びサイトカイン放出では25×103細胞/ウェル、又はT細胞活性化では30×103)を96ウェルプレートに播種し、培地のみ、又は示されている場合はIFNγ(2000IU/mL、millipore)を補充した培地と共に一晩インキュベートした。次に、メラノーマ細胞を洗浄し、neoTCR遺伝子編集T細胞を、5:1の生成物:標的(P:T)で加えた。
【0150】
サイトカイン放出を測定するために、共培養上清を24時間で収集し、-80℃で保存した。分析の準備ができたときに、上清を室温で解凍し、IFNγ、TNFα、IL2及びIL6の濃度を、サイトカインビーズアレイ(ヒトTh1/Th2サイトカインキット、BD bioscience)を使用して測定した。データは、編集細胞によって正規化されて示される。
【0151】
T細胞活性化を測定するために、20-24時間の共培養後にT細胞を収集し、PBSで洗浄し、PBS中のZombieバイオレット(1:100、Biolegend)ライブ/デッド染色で染色した。インキュベーション後、細胞をネオエピトープ-HLAデキストラマー-PE(30nM、上で示したように製造)、ついでCD45-FITCクローンHI30(BD Bioscience)、OX40-PECy7クローンBer-ACT35、4-1BB-APCクローン4B4-1、CD4-BV501クローンOKT4、及びCD8-BV605クローンRPA-T8(全てBiolegendから)抗体で製造元が推奨する濃度で染色した。
【0152】
T細胞増殖を測定するために、24、48、及び72時間の共培養後、T細胞を収集し、洗浄し、ライブ/デッドNIR蛍光反応性(1:250 Invitrogen)で染色した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、ネオエピトープ-HLAデキストラマー-PE(30nM、上に示したように製造)と、次にCD4-AlexaFluor700クローンSK3(1:400,BD Biosciences)、及びCD8-BV605クローンRPA-T8(1:50,Biolegend)で染色した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、固定/透過処理希釈標準溶液(Foxp3/転写因子染色バッファーセット,ThermoFisher)で透過処理し、透過処理バッファー(Foxp3/転写因子染色バッファーセット,ThermoFisher)で洗浄し、Ki67-BV421クローンB56(1:100,BD Biosciences)抗体で染色した。
【0153】
T細胞脱顆粒を、自己又はミスマッチ細胞株との12-16時間の共培養時に測定した。50×103のメラノーマ細胞を48ウェルプレートに播種し、培地のみ又はIFNg(2000IU/mL,Millipore)を補充した培地の何れかと共に8時間インキュベートした。インキュベーション後、メラノーマ細胞を洗浄し、推奨濃度でCD107a-APC-H7クローンH4A3(BD)と共に250×103のneoTCR遺伝子編集T細胞を添加した(P:T=5:1)。1時間のインキュベーション後、タンパク質輸送を阻害するために、ブレフェルジンAとモネシン(BDゴルジプラグ及びBDゴルジストップ、BD Biosciences)を推奨濃度の半分で添加した。細胞を更に11-15時間インキュベートした後、CD107aの表面発現をフローサイトメトリーによって測定した。簡単に説明すると、T細胞を収集し、Zombieバイオレットライブ/デッド、ネオエピトープ-HLAデキストラマー-APC、CD45-FITCクローンHI30、CD107a-APC-H7クローンH4A3 BD(両方ともBD Bioscience製)、CD4-BV501クローンOKT4、及びCD8-BV605クローンRPA-T8(両方ともBiolegend製)で染色した。
【0154】
全てのフローサイトメトリー染色において、抗体との最後のインキュベーション後、細胞を洗浄し、固定し、フローサイトメトリーが取得されるまで4℃で保存する。特に明記しない限り、全ての染色及び洗浄は染色バッファー(BD bioscience)中で実施した。フローサイトメトリーの取得は、Attune NxTフローサイトメーター(Invitrogen)で実施した。
【0155】
細胞傷害性を測定するために、25×103細胞/ウェルのnRFPメラノーマ細胞株を96ウェルプレートに播種し、培地のみ、又は示されている場合はIFNγ(2000IU/mL,Millipore)を補充した培地の何れかと共に一晩インキュベートした。次に、メラノーマ細胞を洗浄し、neoTCR遺伝子編集T細胞を、10:1から1:1の範囲のP:T比で添加した。T細胞の添加後、メラノーマ細胞をリアルタイム生細胞イメージングシステム(Incucyte,Essen Biosciences)を使用して画像化し、少なくとも150時間追跡した。
【0156】
これらの細胞株における無関係な変異(Neo12)を標的とするNeoTCR遺伝子編集T細胞を、全ての実験において対照として使用した。全ての機能研究は、サイトカインを補充していないメラノーマ細胞培地で行った。T細胞活性化、脱顆粒、増殖及びサイトカイン放出は、生物学的に三通り行った。細胞傷害性実験は、特に明記しない限り、生物学的に四通り行った。
【0157】
ソフトウェア。 FlowJoソフトウェアを使用してフローサイトメトリーデータを解析し、データ表現と統計分析にGraphpad Prismを使用し、円にまとめた視覚化にRAWgraphを使用した。
【0158】
統計。 T細胞機能研究では、多重比較のためのHolm-Sidak調整を含む独立t検定を使用して、ネオ-エピトープ特異的TCRとneo12TCR対照の間、又は自己とミスマッチ対照細胞株の間で比較した。
【0159】
実施例2 NeoTCR生成物は非応答患者の治療に効果的である
チェックポイント阻害剤療法後に誘導されたネオエピトープ特異的T細胞応答を特徴付けるために、末梢血単核細胞(PBMC)を経時的に(長期的に)収集し、患者の腫瘍生検からの増殖腫瘍浸潤リンパ球培養物(TIL)及び自己腫瘍細胞株を樹立した。患者特異的ネオエピトープの計算による予測とランク付けのために、腫瘍及び正常組織対照に対して全エクソーム及びRNAシークエンシングを実施した。予測されるネオエピトープがロードされた患者HLAクラスI分子からなるキャプチャー試薬のライブラリーを作製し(Peng等 AACR2019を参照)、患者のPBMC又はTILサンプルからネオエピトープ特異的T細胞を単離した。ひとたび単離されると、単離されたT細胞からペアードネオエピトープ特異的TCRアルファ及びベータ鎖(NeoTCR)を、単細胞シークエンシングによって得た。このデータを使用して、各患者の六のHLAクラスI対立遺伝子を定義し、患者特異的メラノーマの非同義変異を検出し、得られた推定ネオエピトープの計算による予測を実施した。推定ネオエピトープに、腫瘍によるその発現レベルと、患者自身のHLAクラスI対立遺伝子への予測される結合親和性に基づいて優先順位を付けた。選択後、数十から数百の可溶性推定ネオエピトープ-HLAクラスIタンパク質を単鎖三量体技術によって産生した。次に、これらの個別化されたタンパク質ライブラリーをDNAバーコード化し、キャプチャー試薬として使用するために蛍光多量体化した。ひとたび構築されたら、ライブラリーを、患者のPBMC又は腫瘍生検から増殖させたリンパ球と共にインキュベートし、ネオエピトープ特異的T細胞を単細胞選別によってキャプチャーした。次に、各推定ネオエピトープ-HLA多量体に固有のバーコードを使用して、キャプチャーされたT細胞の抗原特異性を解読した(
図1A)。
【0160】
NeoTCRの機能的特徴付けのために、健康なドナー初代ヒトT細胞を、内因性TCRをそれぞれのNeoTCRに置き換えることにより、CRISPRベースの非ウイルス精密ゲノム改変を使用してneoTCRを発現するように改変した(Jacoby等,AACR 2019,Sennino等,AACR 2019)。次に、これらの遺伝子編集T細胞を、患者の自己細胞株との共培養実験で使用した。
【0161】
T細胞応答を、チェックポイント阻害剤療法を受けている転移性メラノーマの五名の患者(PT1、PT2、PT3、PT4、及びPT5)で分析した。二名の患者(PT1及びPT2)は、治療開始から二年以上継続しているニボルマブ注入に対して長期にわたる部分応答を示しており、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングによって18フルオロデオキシグルコースを取り込まなかった残存病変のみがあり、患者には活動性メラノーマはなかったことを示唆している。PT3は、ニボルマブの計画された最初の注入の前に急速に進行した。PT4は、ペムブロリズマブを4か月間投与された後に進行した。PT5は、ペンブロリズマブとトール様受容体アゴニスト9(TLR9)SD101の腫瘍内注射の併用を受け、SD101注射を受けた皮下部位の退縮と、17か月間続いた副腎転移の安定状態の後、骨及び腹膜転移の広範な進行が続いた。表2を参照のこと。
【0162】
患者由来のメラノーマ細胞株の全エクソームシークエンシングにより、患者PT1の2562からPT4の31までの範囲の幅広い変異が同定された(中央値193、以下の表3を参照)。抗PD-1療法に応答した二名の患者は、療法に応答しなかった三名の患者よりも高い変異腫瘍負荷を示した。発現された変異の範囲が広いにもかかわらず、T細胞によってネオエピトープとして認識される変異の数は、1から5の範囲で、遥かに変動が少なかった(
図1B;表3)。従って、免疫優勢の証拠があった。つまり、変異ネオ抗原に対するT細胞応答は、変異の数と線形的に相関していなかったが、抗PD-1療法への臨床応答のある患者とない患者の両方で、ネオエピトープとして認識されたそれらの限られたセットに焦点が当てられているようである。しかし、(治療に対して臨床応答を示した)患者PT1及びPT2の血液及び腫瘍から単離されたネオエピトープ特異的T細胞の単細胞TCRシークエンシングにより、複数の個別のTCRアルファ及びベータ鎖ペア(TCRクローン型)、それぞれ14及び21のクローン型があることが明らかになった。これは、治療に応答しないそれぞれ二、二、及び一のTCRクローン型があった三名の患者から単離されたネオエピトープ特異的T細胞とは対照的である(
図1B及び表3)。
【0163】
続いて、各患者に対するネオエピトープ認識の長期的分析を、入手可能な全ての連続的な血液及び腫瘍サンプルで実施し、単離されたTCRの機能性を、自己メラノーマ細胞株に対して試験した。
【0164】
PT1は、肺転移における抗PD-1療法に対して迅速かつ持続性のある抗腫瘍応答を示した(
図2A)。シークエンシングにより2562の体細胞コーディング変異を同定し、そのうち1099がRNAシークエンシングによって発現されると予測された。3つのHLA型、HLA-A03:01、A24:01、及びC12:03にわたる183の変異をカバーする243のネオエピトープ特異的pMHCキャプチャー試薬のライブラリーを作製し、複数の長期的な時点に由来するPBMC又はTILからCD8T細胞をスクリーニングするために使用した。三の変異のみを標的とする14の異なるTCRクローン型を含んでいた186のネオエピトープ特異的T細胞を単離した。特に、解析された殆どの時点で同じ変異がネオエピトープとして認識され、免疫優勢仮説を裏付けた。表2及び3を参照のこと。14のネオエピトープ特異的TCR(neoTCR)を、異なる時点で一部は広がり又は収縮する異なる量の連続した血液及び腫瘍サンプルで検出した。末梢血採血は5から20ミリリットルであり、腫瘍生検はコア針生検であり、どの時点でも各コンパートメントの少数のT細胞のみを採取したことに留意すべきである。
【0165】
メラノーマからのリンパ節転移における抗PD-1療法に対して持続性の応答を示したPT2のサンプルで、同様の所見が観察された(
図2C)。この場合、308の体細胞コーディング変異のうち、126が発現した(表3)。患者特異的ライブラリーは、六のHLAクラスIによって提示された80の変異をカバーする176のキャプチャー試薬を含んでおり、五の変異を標的とする296のネオエピトープ特異的T細胞を単離した;これらの変異を標的とする21の異なるneoTCRクローン型を検証した(
図2D、表3及び4、並びに
図3A-3E)。
【0166】
他方、PT4、PT3、及びPT5は、チェックポイント阻害剤に対して僅かな応答しか示さず、非応答患者として分類した。
【0167】
PT3のメラノーマ細胞株には71の非同義変異があり、そのうち33が発現していた。五つのHLAによって提示された36の変異をカバーする132のキャプチャー試薬のライブラリーを調製し、ベースラインの血液及び腫瘍からネオエピトープ特異的T細胞をキャプチャーするために使用した(表3)。注目すべきことに、幾つかの変異では、シークエンシングによってmRNAの発現が検出されなかった。HLA-A
*03:01によって提示されたACER3の同じ変異を標的とするT細胞の二つの異なるクローン型を血液において同定した(
図4A並びに表3及び4)。PT4のメラノーマ細胞株には全31の非同義変異があり、そのうち20が発現していた。ライブラリーには、三つのHLAクラスIによって提示された7つの変異をカバーする17のキャプチャー試薬が含まれていた(表3)。PRELP及びMSI2の変異を標的とした腫瘍内の二のネオエピトープ特異的T細胞(
図4B並びに表3及び4)が同定された。PT5のメラノーマ細胞株には193の非同義変異があり、そのうち61が発現していた。六のHLAクラスIによって提示された71の変異をカバーする172のキャプチャー試薬のライブラリーを構築した。四の血液又は腫瘍サンプルのうちの一つでネオエピトープ特異的T細胞の一つのneoTCRクローン型が同定され、これはHLA-C
*05:01によって提示されるGSTCDにおける変異を標的としていた(
図4C並びに表3及び4)。従って、抗PD-1療法に応答しなかった患者からの変異ネオエピトープ特異的T細胞応答はオリゴクローナルであり、血液及び腫瘍サンプルでは経時的に再発性ではなかった。
【0168】
表3は、各患者の変異及び標的とされるネオエピトープの要約を示している。
【0169】
単離されたTCRのネオエピトープ特異性を機能的に試験するために、キャプチャーされた個々のT細胞のペアードneoTCRアルファ及びベータ鎖を配列決定し、非ウイルス性CRISPR/Cas9遺伝子編集法を使用して健康なドナーT細胞を遺伝子改変するために使用し、内因性TCRをネオエピトープ特異的TCRで置き換えた。この方法では、TCR-アルファ定常領域(TRAC)遺伝子座の最初のエクソンを標的とするガイドRNA、完全なneoTCRベータ鎖と可変neoTCRアルファ鎖をコードするDNA相同性指向修復鋳型、及びCas9タンパク質を、先に活性化されたT細胞に電気穿孔した。相同性指向修復の後、完全に機能的なneoTCRを、内因性TCRアルファ調節の制御下でゲノムに組み込んだ。検証ステップとして、得られたneoTCRトランスジェニックT細胞の抗原特異性を、デキストラマー染色によって確認した(
図3A-3E)。
【0170】
PT1について、変異したIL8、PUM1及びTPP2遺伝子におけるネオエピトープに特異的な十四(14)の異なるneoTCRを特徴付けた。neoTCR遺伝子編集T細胞と、患者のベースライン生検(M489)から樹立された細胞株、又は不適合細胞株(M202)との共培養実験を実施した。これらの細胞株に無関係な変異Neo12を標的とする別の患者から単離されたneoTCRを陰性対照として使用した。これらの十四(14)のNeoTCR生成物のそれぞれは、PT1の生検から樹立されたマッチド自己メラノーマ細胞株に対して特異的な細胞傷害性を示した(各比較でp<0.000001で、1:1の生成物対標的比(P:T)を使用した96時間アッセイにおいてミスマッチ対照TCRとの共培養におけるメラノーマ細胞株増殖と比較して50-75%の腫瘍増殖阻害)。不適合ヒトメラノーマ細胞株に対する細胞傷害性効果は観察されなかった(
図5B及び
図6C)。更に、NeoTCR生成物は4-1BBとOX-40をアップレギュレートしたが、これらは、最近のTCRの関与を反映したT細胞の表面マーカーである。14のneoTCRトランスジェニックT細胞は、インターフェロンガンマ(IFNγ)、インターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、及びIL6を放出し、患者適合メラノーマ細胞株との共培養時にT細胞の脱顆粒及び増殖を示した。この場合も、NeoTCR生成物を不適合標的と共培養した場合、非特異的なT細胞活性化は観察されなかった。
【0171】
同様に、PT2から単離された21のneoTCRクローン型を、この患者の六のHLAクラスIによって提示されるNAT10、ATP11A、HP1BP3、PRPPAS2、及びUVSSAの点変異を標的とした対応するneoTCR T細胞生成物の作製のために選択した。患者特異的メラノーマ細胞株(M490)との共培養時のT細胞活性化、サイトカイン応答、及び細胞傷害性についてこれらのneoTCRを試験する最初の試みでは、活性が殆ど示されず、これは、この患者のPD-1遮断療法に対する良好な臨床応答を考えると驚くべきことであった。ネオエピトープの提示はM490細胞株では低い場合があり、インターフェロンガンマ(IFNγ)への前曝露によってアップレギュレートされる必要があるかも知れないという仮説が立てられた。このステップが追加されたとき、この患者から単離された21のneoTCRを発現するCD8
+T細胞は、4-1BBの表面発現のアップレギュレーションをもたらした(
図5C)。ATP11Aの変異を標的とするTCR24、25、及び26は、IFNγ及びTNFαを分泌し、T細胞増殖を誘導した(
図7C-7D)。加えて、TCR25はIFNγ前曝露なしでもマッチドメラノーマ細胞株に対して特異的な細胞傷害性を誘導したが、TCR25及びTCR26はIFNγ前曝露で細胞傷害性を誘導した(
図5D及び
図7B)。
【0172】
抗PD-1に対する臨床応答のない三名の患者からのNeoTCR遺伝子編集T細胞生成物を、これらの患者からの生検から樹立されたその対応する自己メラノーマ細胞株に対する機能的特異性について分析した(
図4D-4I及び
図8)。患者PT4、PT3、及びPT5から単離されたneoTCRを発現するT細胞は、マッチドメラノーマ細胞株を認識し、共培養時に4-1BB及びOX40活性化マーカーをアップレギュレートした(
図4D及び4F並びに
図8A、8D、及び8F)。PT3からのTCR36及びTCR37、並びにPT4からのTCR39もまたIFNγ、TNFα、IL2、及びIL6の分泌と増殖を誘導した(
図8B及び8E)。全てのneoTCRを発現するT細胞は、ミスマッチ対照細胞株に影響を与えることなく、対応する自己メラノーマ細胞株に対して特異的な細胞傷害性を示した(ミスマッチ対照TCRとの共培養におけるメラノーマ細胞株の増殖と比較して35-100%の腫瘍増殖阻害、P:T 5:1を使用した96時間アッセイ、各比較に対してp<0.05)(
図4G-4I)。
【0173】
図4A-4Iに提示されたデータに対する追加の裏付けを
図9に示す。
図9は、患者特異的NeoTCR生成物に応答した非応答患者からのがん細胞死を示している。画像の一番上の列は、非応答患者向けにデザインされたNeoTCR生成物ががん細胞を殺傷し、またneoTCR T細胞が増殖したことを示している。細胞死がNeoTCR生成物によるものであったことを示すために、陰性対照を実施し、画像の下の列に示した。下の列の画像では、非応答患者のがん細胞のネオエピトープと相関しないNeo12 NeoTCR生成物は、非応答患者のがん細胞を殺傷しない。その上、非応答患者のがん細胞がNeo12 NeoTCR生成物陰性対照と一緒に培養されていた時間が長ければ長いほど、がん細胞はより多く増殖した。
【0174】
表4は、ネオエピトープ特異的T細胞の単離をまとめたものである。
【0175】
実施例3 非応答患者と免疫優勢
neoE特異的単一T細胞を単離しキャプチャーするために新規に開発された技術、並びに非ウイルス遺伝子編集を使用して、がん細胞を認識し、抗腫瘍応答を誘導することができるネオエピトープ特異的T細胞を単離し、特徴付けた。天然T細胞レパートリーの経時的なネオエピトープ免疫優勢及びTCRクローン性をまた研究した。経時的なネオエピトープ免疫優勢及びTCRクローン性は、チェックポイント阻害剤療法に対する抗腫瘍応答を誘導したことが示された。結果は、抗PD-1に対して良好な応答を示す患者では、限られた数のネオエピトープ-HLA複合体(患者1の場合、試験されたneoEの2%)を標的とするポリクローナル応答があることを示しており、これらのエピトープの免疫優勢を強調している。
【0176】
興味深いことに、同じ変異を標的とする異なるT細胞クローン型は時間と共に進化し、TCR間の機能差を示唆している。
【0177】
非応答患者がneoE特異的T細胞を保有していることを見出したことは予想外であった。更に、ネオエピトープ特異的T細胞を単離し、患者由来のがん細胞を認識し殺傷することができたNeoTCR生成物を作製することができたことが発見された。これは、ネオエピトープ特異的TCRを非応答患者から単離することができ、NeoTCR生成物などの個別化された養子T細胞療法に使用できることを示している。
【0178】
実施例4 NeoTCR生成物は患者特異的がん細胞を殺傷する
二の患者特異的NeoTCR生成物(TCR36(TCR212とも呼ばれる)及びTCR37(TCR213とも呼ばれる))を、非応答患者のために作製した。陰性対照として、オフターゲットNeoTCR生成物(Neo12)を使用した。Neo12は、この実施例の非応答患者と同じネオエピトープシグネチャーを持たない別の患者に特異的なNeoTCR生成物である。TCR36及びTCR37NeoTCR生成物は、両方とも、1)非応答患者の腫瘍細胞の殺傷、2)非応答患者の腫瘍細胞の成長と増殖の防止、及び3)非応答患者の腫瘍の腫瘍細胞コンフルエンシーの低減に効果的であった。陰性対照として、非応答患者の腫瘍細胞のネオエピトープと相関しないNeo12 NeoTCR生成物は、非応答患者の腫瘍細胞を殺傷せず、非応答患者の腫瘍細胞サンプルにおけるがん細胞の増殖を防げなかった。
【0179】
追加の対照を実施した。具体的には、Neo12、TCR36、及びTCR37 NeoTCR生成物を、TCR36及びTCR37 NeoTCR生成物がデザインされ作製された非応答患者以外の患者に由来する腫瘍細胞株と共培養した。示されているように、TCR36及びTCR37 NeoTCR生成物は患者特異的であり、ミスマッチ腫瘍細胞を殺傷しない。
【0180】
総合すると、患者特異的NeoTCR生成物を非応答患者向けに作製することができ、そのようなNeoTCR生成物は非応答患者のがん細胞の殺傷に効果的であることが示された。
【0181】
従って、NeoTCR生成物を、非応答患者のがん細胞を特異的に殺傷することにより、非応答患者を治療するためにデザインし、作製し、及び使用することができる。
【0182】
実施例5 ネオエピトープは非応答患者において検出できる
非応答患者は、しばしば腫瘍遺伝子変異数が少ない。この既知の事実に基づいて、ネオエピトープは、不可能ではないにしても、非応答患者の腫瘍生検において検出することは難しいと予想された。驚いたことに、ここで使用された方法では、非応答患者の腫瘍生検からneo-TCRを検出することができ、患者のがん細胞を殺傷することができたNeoTCR生成物をそこから作製することができた。
【0183】
実施例6 NeoTCR生成物の作製
PCT/US2020/17887(出典明示によりその全体がここに援用される)に記載されているimPACT単離技術によって同定されたネオエピトープ特異的TCRを使用して、相同組み換え(HR)DNA鋳型を作製した。これらのHR鋳型を、部位特異的ヌクレアーゼとタンデムで初代ヒトT細胞にトランスフェクトした(
図12A-12Cを参照)。一段階の非ウイルス精密ゲノム改変により、内因性TCRを、内因性プロモーターによって発現される患者のネオエピトープ特異的TCRでシームレスに置換した。表面に発現されるTCRは配列が完全に天然である。
【0184】
neoTCR-T細胞ゲノム改変の精度を、オフターゲット組み込みホットスポット又は転座について標的遺伝子座増幅(TLA)によって、また次世代シークエンシングベースのオフターゲット切断アッセイによって評価し、意図しない結果の証拠がないことを見出した。
【0185】
図12A-12Cに示されるように、目的の遺伝子を含むコンストラクトを内因性遺伝子座に挿入した。これは、左右のHRアームに隣接する目的の遺伝子のコード配列を含む相同修復鋳型を使用して達成した。HRアームに加えて、目的の遺伝子を、2Aペプチド、目的の上流の翻訳遺伝子から2Aペプチドを除去するための2Aペプチドの上流にあるプロテアーゼ切断部位、及びシグナル配列の間に挟んだ(
図1B)。ゲノムに組み込まれると、目的の発現遺伝子カセットの遺伝子は、単一メッセンジャーRNAとして転写された。メッセンジャーRNAにおけるこの目的の遺伝子の翻訳中に、隣接領域は、自己切断2Aペプチドによって目的の遺伝子から切り離され、プロテアーゼ切断部位は、翻訳された目的の遺伝子から上流の2Aペプチドの除去のために切断された(
図1C)。2Aペプチド及びプロテアーゼ切断部位に加えて、gly-ser-gly(GSG)リンカーを各2Aペプチドの前に挿入して、発現カセット内の他のエレメントからの目的の遺伝子の分離を更に促進した。
【0186】
P2Aペプチドは、その効率的な切断のため、細胞生成物には他の2Aペプチドよりも優れていたと判断された。従って、二(2)のP2Aペプチド及びコドン分岐を使用して、P2Aペプチドからの目的の遺伝子の何れの末端にも残りのアミノ酸からの何らかの外因性エピトープを導入することなく、目的の遺伝子を発現させた。外因性エピトープを持たない(すなわち、目的の遺伝子の何れの側にも隣接するP2Aペプチドアミノ酸がない)遺伝子編集細胞の利点は、免疫原性が強烈に低下し、遺伝子編集細胞に対して免疫反応を起こす遺伝子編集細胞を含む細胞生成物が患者に注入される可能性が低くなることである。
【0187】
PCT/US/2018/058230に記載されているように、NeoTCRをT細胞のTCRα遺伝子座に組み込んだ。具体的には、左右のHRアームに隣接するNeoTCRコード配列を含む相同修復鋳型を使用した。加えて、内因性TCRβ遺伝子座を破壊し、NeoTCRコンストラクトによってコードされるTCR配列のみを発現させた。一般的な戦略を、環状HR鋳型並びに直鎖状鋳型を使用して適用した。
【0188】
標的TCRα遺伝子座(Cα)がプラスミドHR鋳型と共に示され、得られた編集配列と下流のmRNA/タンパク質生成物が
図12B及び12Cに示される。標的TCRα遺伝子座(内因性TRAC)とそのCRISPR Cas9標的部位(水平縞、切断部位は矢印で示される)が示される(
図12A-12C)。NeoTCRをコードするポリヌクレオチドを含む環状プラスミドHR鋳型が、左右の相同性アーム(それぞれ「LHA」と「RHA」)の間に位置する。コドン最適化されたHR鋳型によって導入されたTRACの領域が示される(縦縞)。TCRβ定常ドメインは、TRBC1と機能的に同等であることが示されているTRBC2から誘導した。NeoTCRカセットにおける他のエレメントには次のものが含まれる:2A=2Aリボソームスキッピングエレメント(非限定的な例では、カセットで使用される2Aペプチドは両方ともP2A配列であり、コドン分岐と組み合わせて使用され、翻訳産物における何らかの他の形で生じる非内因性エピトープを排除する);P=上流のTCRβタンパク質から2Aタグを除去する2Aの上流のプロテアーゼ切断部位(非限定的な例では、プロテアーゼ切断部位は、フューリンプロテアーゼ切断部位でありうる);SS=シグナル配列(非限定的な例では、プロテアーゼ切断部位は、ヒト成長ホルモンシグナル配列でありうる)。NeoTCR発現遺伝子カセットのHR鋳型には、TCRαガイドRNAを伴うCRISPR Cas9ヌクレアーゼRNPの標的となるTCRαゲノム遺伝子座への挿入を方向付ける二つの隣接する相同性アームが含まれる。これらの相同性アーム(LHA及びRHA)は、NeoTCR発現遺伝子カセットのneoE特異的TCR配列に隣接している。この実施例において使用されたプロテアーゼ切断部位はフューリンプロテアーゼ切断部位であったが、当業者に知られている任意の適切なプロテアーゼ切断部位を使用することができる。同様に、HGHがこの実施例のために選択されたシグナル配列であったが、当業者に知られている任意のシグナル配列を、所望の輸送に基づいて選択し、使用することができる。
【0189】
ゲノムに組み込まれると(
図12C)、NeoTCR発現遺伝子カセットは、その個々のT細胞からの内因性TCRαポリペプチドの一部をなおも含む(
図12C)、内因性TCRαプロモーターから単一メッセンジャーRNAとして転写される。この単一NeoTCRメッセンジャーRNAのリボソームポリペプチド翻訳中に、NeoTCR配列は、P2Aペプチドでの自己切断によって内因性のCRISPR破壊TCRαポリペプチドから分離される(
図12C)。コードされたNeoTCRα及びNeoTCRβポリペプチドはまた内因性細胞性ヒトフューリンプロテアーゼによる切断及びNeoTCR発現遺伝子カセットに含まれる第二の自己切断P2A配列モチーフを通して互いに分離される(
図12C)。NeoTCRα及びNeoTCRβポリペプチドは、多量体構築及びT細胞表面へのNeoTCRタンパク質複合体の輸送のために、シグナルリーダー配列(ヒト成長ホルモン、HGHに由来)によって別々に小胞体に標的化される。フューリンプロテアーゼ切断部位を含めることにより、上流のTCRβ鎖からの2A配列の除去が促進され、TCRβ機能との潜在的な干渉が減少する。各2Aの前にgly-ser-glyリンカーを含めると(図示せず)、三つのポリペプチドの分離が更に促進される。
【0190】
加えて、三つの反復タンパク質配列は、ゲノム安定性を促進するためにHR鋳型内でコドン分岐される。二つのP2Aは、エクスビボ改変T細胞のゲノム内に導入されたNeoTCRカセット配列の安定性を促進するためにTCR遺伝子カセット内で、二つのHGHシグナル配列も互いに同様に、互いにコドン分岐される。同様に、TRACエクソン1の再導入された5’末端(縦縞)は、二つの直接リピートの介在配列を除去することにより、カセット全体が経時的に失われる可能性を低減させる。
【0191】
In-Out PCRを使用して、NeoE TCRカセットの正確な標的組み込みを確認した。アガロースゲルは、組み込みカセットに特異的なプライマーを使用し、部位がヌクレアーゼ及びDNA鋳型(KOKIとKOKIKO)の両方で処理された細胞に対してのみ予想されたサイズの生成物を産生するPCRの結果を示しており、部位特異的で正確な組み込みを証明している。
【0192】
更に、標的遺伝子座増幅(TLA)を使用して、標的組み込みの特異性を確認した。架橋、ライゲーション、及びNeoTCR挿入断片に特異的なプライマーの使用によって、組み込み部位周辺の配列を取得した。ゲノムにマッピングされたリードを、10kb間隔でビニングする。有意なリードデプスが、14番染色体上の組み込み部位の目的部位周囲でのみ得られ、一般的なオフターゲット挿入部位の証拠がないことが示された。
【0193】
内因性TCRの抗体染色とneoTCRのペプチド-HLA染色は、改変がNeoTCRの高頻度のノックインをもたらし、一部のTCR細胞と少しのWT T細胞が残っていることを明らかにした。ノックインは、外因性プロモーターの非存在下でのneoTCR発現によって証明される。同じneoTCRを使用して改変を複数回実施したところ、同様の結果が得られた。従って、NeoTCRの効率的且つ一貫した発現と改変されたT細胞における内因性TCRのノックアウトが達成された。
【国際調査報告】