(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】結晶化可能な反応器級樹脂のための触媒システム
(51)【国際特許分類】
C08G 63/183 20060101AFI20221208BHJP
C08G 63/82 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520987
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020054691
(87)【国際公開番号】W WO2021072016
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル,アール・エドモンドソン,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】エデンズ,アーロン・ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,アン・マーティン・シャーベック
(72)【発明者】
【氏名】キレン,ドンナ・ライス
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,キャロル・ジュリアード
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,マーク・アレン
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,ジョナサン・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キーヴァー,トラヴィス・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】エカート,マイケル・ポール
(72)【発明者】
【氏名】エカート,エリン・ジー
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE03
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA08
4J029BA10
4J029BB06A
4J029BD02
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4J029BF09
4J029BF18
4J029BF25
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CD03
4J029FC05
4J029FC08
4J029FC35
4J029FC36
4J029JA091
4J029JA251
4J029JA253
4J029JB131
4J029JB171
4J029JC431
4J029JC433
4J029JC531
4J029JC533
4J029JF321
4J029JF471
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
本開示は、再資源化性を含む特定の利点および改良特性を有する特定の組成範囲で、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、エチレングリコール(EG)、およびジエチレングリコール(DEG)の各残基を含む結晶化可能なポリエステル組成物を製造するための触媒システムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能な反応炉級ポリエステル組成物であって、前記少なくとも1種のポリエステルは、
(a)以下を含むジカルボン酸成分
(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、および
(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基
ならびに
(b)以下を含むジオール成分
約75モル%以上のエチレングリコール残基、および
以下うちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコール
(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、
(ii)約0.1~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および
(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基
を含み、 前記ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、前記ジオール成分の総モル%は100モル%である、結晶化可能な反応炉級ポリエステル組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能な反応炉級ポリエステル組成物であって、前記少なくとも1種のポリエステルは、
(a)以下を含むジカルボン酸成分
(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、および
(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基
ならびに
(b)以下を含むジオール成分
約80モル%以上のエチレングリコール残基、および
以下うちの1種以上を含む約20モル%以下の他のグリコール
(i)約5~約17モル%未満のネオペンチルグリコール残基、
(ii)約2~約10モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および
(iii)約1~約5モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基
を含み、
前記ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、前記ジオール成分の総モル%は100モル%である、結晶化可能な反応炉級ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記反応器級ポリエステル組成物はさらに、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~90ppmのリンを含む触媒システム残基を含み、前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とし、あるいは
前記反応器級ポリエステル組成物はさらに、3~10ppmのチタン、50~125ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含む触媒システム残基を含み、前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とし、あるいは
前記反応器級ポリエステル組成物はさらに、4~12ppmのチタン、100~120ppmのアンチモン、および2~50ppmのリンを含む触媒システム残基を含み、前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とする、請求項1または2に記載の結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記反応器級ポリエステル組成物の歪み誘起結晶の融点は190℃以上である、請求項1または2に記載の結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記反応器級ポリエステル組成物の歪み誘起結晶の融点は200℃以上である、請求項1または2に記載の結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物。
【請求項6】
結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物を調製するプロセスであって、
(a)テレフタル酸残基を含む二酸成分を、ネオペンチルグリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ジエチレングリコール残基、およびエチレングリコール残基を含むジオール成分と、2~15ppmのチタン化合物、50~150ppmのアンチモン化合物の存在下で240~270℃の温度かつ5~50psiの圧力で反応させてエステル化生成物を製造する工程;
(b)前記エステル化生成物を、0~90ppmのリン安定剤の存在下で255~275℃の温度かつ200~500mmHgの圧力で予備重合して重縮合生成物を製造する工程;および
(c)前記重縮合生成物を仕上げ処理してポリエステルを製造する工程を含み、
前記ポリエステルは、少なくとも0.50dL/gまたは0.50~0.90dL/gの固有粘度を有し、前記仕上げ処理時の重合温度は280~320℃へ高くして圧力は0.3~7mmHgとする、プロセス。
【請求項7】
結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物を調製するプロセスであって、
(a)テレフタル酸残基を含む二酸成分を、ネオペンチルグリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ジエチレングリコール残基、およびエチレングリコール残基を含むジオール成分と、240~270℃の温度かつ5~50psiの圧力で反応させてエステル化生成物を製造する工程;
(b)前記エステル化生成物を、2~15ppmのチタン化合物、50~150ppmのアンチモン化合物、および0~90ppmのリン安定剤の存在下で255~275℃の温度で予備重合して予備重縮合生成物を製造する工程;および
(c)前記重縮合生成物を仕上げ処理してポリエステルを製造する工程を含み、
前記ポリエステルは、少なくとも0.50dL/gまたは0.50~0.90dL/gの固有粘度を有し、前記仕上げ処理時の重合温度は280~320℃へ高くして圧力は0.3~7mmHgとする、プロセス。
【請求項8】
前記チタン化合物は、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、またはチタンテトラブトキシドなどのチタンテトラアルコキシド、あるいはチタン酸テトライソプロピルなどのチタン酸テトラアルキルエステル、およびこれらの混合物から選択され、あるいは
前記アンチモン化合物は、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、またはシュウ酸アンチモンのうちの1種以上であり、あるいは
前記リン含有化合物は、リン酸トリアルキル、リン酸アルコール、リン酸トリフェニル、または亜リン酸トリスノニルフェニルなどのリン酸エステル、あるいはリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、およびこれらの各種エステルや塩である、請求項6または7に記載の触媒システム。
【請求項9】
前記アンチモン化合物をグリコールのうちの1種に溶解させる工程をさらに含む、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記仕上げ処理時の重合温度は290℃または300℃である、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項11】
前記チタン成分および前記アンチモン成分を一緒に添加して、前記リン成分を別の供給物として添加する、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項12】
結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物を製造するための触媒システムであって、
2~15ppmのチタン化合物、
50~150ppmのアンチモン化合物、および
0~90ppmのリン化合物を含み、
前記ポリエステル組成物は、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、およびジエチレングリコールを含む、触媒システム。
【請求項13】
前記チタン化合物および前記アンチモン化合物を一緒に添加し、かつリンを安定剤として作用させて前記触媒の添加に続いて別の供給物として添加する、請求項12に記載の触媒システム。
【請求項14】
前記チタン化合物、前記アンチモン化合物、および前記リン化合物を前記テレフタル酸のエステル化に続いて添加する、請求項12に記載の触媒システム。
【請求項15】
前記リン化合物は、リン酸トリアルキル、リン酸アルコール、リン酸トリフェニル、または亜リン酸トリスノニルフェニルなどのリン酸エステル、あるいはリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、およびこれらの各種エステルや塩であり、あるいは
前記チタン化合物は、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、またはチタンテトラブトキシドなどのチタンテトラアルコキシド、あるいはチタン酸テトライソプロピルなどのチタン酸テトラアルキルエステル、およびこれらの混合物から選択され、あるいは
前記アンチモン化合物は、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、またはシュウ酸アンチモンのうちの1種以上である、請求項12に記載の触媒システム。
【請求項16】
前記アンチモン化合物を前記グリコールのうちの1種に溶解させ、あるいは前記チタン化合物を前記グリコールのうちの1種またはブタノールに溶解させる、請求項12に記載の触媒システム。
【請求項17】
少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであって、前記少なくとも1種のポリエステルは、
(a)以下を含むジカルボン酸成分
(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、および
(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基
(b)以下を含むジオール成分
約75モル%以上のエチレングリコール残基、および
以下うちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコール
(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、
(ii)0~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および
(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基
ならびに
(c)以下を含む触媒システム残基
2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~90ppmのリン
を含み、 前記ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、前記ジオール成分の総モル%は100モル%であり、
前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とし、
前記ポリエステルの固有粘度は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で、25℃かつ0.5g/dLの濃度で測定される場合に0.68~0.75dL/gであり、前記ポリエステルは、Thermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて20℃/分の走査速度で測定される場合に72℃~77℃のTgを有する、結晶化可能なフィルム。
【請求項18】
少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであって、前記少なくとも1種のポリエステルは、
(a)以下を含むジカルボン酸成分
(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、および
(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基
(b)以下を含むジオール成分
約80モル%以上のエチレングリコール残基、および
以下うちの1種以上を含む約20モル%以下の他のグリコール
(i)約5~約17モル%未満のネオペンチルグリコール残基、
(ii)約2~約10モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および
(iii)約1~約5モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基
ならびに
(c)以下を含む触媒システム残基
2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~90ppmのリン
を含み、 前記ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、前記ジオール成分の総モル%は100モル%であり、
前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とし、
前記ポリエステルの固有粘度は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で、25℃かつ0.5g/dLの濃度で測定される場合に0.68~0.75dL/gであり、前記ポリエステルは、Thermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて20℃/分の走査速度で測定される場合に72℃~77℃のTgを有する、結晶化可能なフィルム。
【請求項19】
少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであって、前記少なくとも1種のポリエステルは、
(a)以下を含むジカルボン酸成分
(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、および
(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基
(b)以下を含むジオール成分
約76モル%以上のエチレングリコール残基、および
以下うちの1種以上を含む約24モル%以下の非晶質成分
(i)ネオペンチルグリコール残基、
(ii)シクロヘキサンジメタノール残基、および
(iii)最終ポリエステル組成物中のジエチレングリコール残基
ならびに
(c)以下を含む触媒システム残基
2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~90ppmのリン
を含み、 前記ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、前記ジオール成分の総モル%は100モル%であり、
前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とし、
前記ポリエステルの固有粘度は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で、25℃かつ0.5g/dLの濃度で測定される場合に0.68~0.75dL/gであり、前記ポリエステルは、Thermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて20℃/分の走査速度で測定される場合に72℃~77℃のTgを有する、結晶化可能なフィルム。
【請求項20】
少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであって、前記少なくとも1種のポリエステルは、
(a)以下を含むジカルボン酸成分
(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、および
(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基
(b)以下を含むジオール成分
(i)約1~約30モル%のネオペンチルグリコール残基、
(ii)約1~約30モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および
(iii)約1.5~6モル%のジエチレングリコール残基
ここで前記グリコール成分の残部は、
(iv)エチレングリコール残基、および
(v)0~20モル%の少なくとも1種の修飾グリコール残基を含む
ならびに
(c)以下を含む触媒システム残基
2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~90ppmのリン
を含み、 前記ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、前記ジオール成分の総モル%は100モル%であり、
前記触媒システム残基の濃度は前記ポリエステルの重量を基準とし、
前記ポリエステルの固有粘度は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で、25℃かつ0.5g/dLの濃度で測定される場合に0.68~0.75dL/gであり、前記ポリエステルは、Thermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて20℃/分の走査速度で測定される場合に72℃~77℃のTgを有する、結晶化可能なフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本開示は、再資源化性を含む特定の利点および改良特性を有する特定の組成範囲内で、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、エチレングリコール(EG)、およびジエチレングリコール(DEG)の各残基を含む結晶化可能なポリエステル組成物を製造するための触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ネオペンチルグリコール(NPG;2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)などの適度の反応性を持つ特定のグリコールを含有するポリエステル組成物は周知であり、かつ種々の用途に使用されている。しかしこれらのグリコールは、エステル化反応においてエチレングリコール(EG)や1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)などの他のグリコールよりも反応性が劣る場合が多く、これらのグリコールを組み込む組成物の製造では、妥当な生産効率で所望の生成物の分子量を達成するには、極端な反応条件、グリコール類の過剰に高い担持量、特殊な触媒、反応物の段階的な添加、あるいはこれらの変動因子のいくつかの組合せが必要とされる場合がある。さらに、これらのグリコールから製造される組成物での生産効率およびグリコールの組込みを向上させるのに通常に使用される対策では、グリコールの分解レベルが高くなり、製品の色調が劣り、望ましくないポリマー末端基の集団が発生し、かつ他のグリコールとの組合せにより製造されるポリエステルへのこのグリコールの組込みが劣ることが多くなる。
【0003】
[0003]歴史的には、チタンの単独含有触媒が、テレフタル酸(TPA)、エチレングリコール(EG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、およびジエチレングリコール(DEG)の組合せから生成される共重合ポリエステル組成物の製造には好ましい触媒である。これらの触媒システムは、典型的には、20~25ppmのチタンと、調整剤として作用する25ppmのリンを含んでいる。しかし、これらの組成物中にはNPGが含まれるので、これらのチタン単独のシステムは、本開示の結晶化可能なポリエステル組成物には適するものではなかった。
【0004】
[0004]本開示では、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、エチレングリコール(EG)、およびジエチレングリコール(DEG)の各残基を含む結晶化可能なポリエステル組成物は、PET再資源化の流れにおいて再資源化が可能であることが見出された。これらの結晶化可能なポリエステル組成物中にはNPGが含まれることにより、新規の触媒システムが必要とされた。具体的には、チタン単独の触媒システムを用いて調製された場合に、本開示のポリエステルの色調は非常に高いb*値(すなわち非常に黄色い色)を示した。リンの担持量を増加させても、重合速度は低下するものの、強い黄色を低減するのには効果が無かった。チタン濃度を減少させても色調の改善は僅かであったが、それでも経時的に達成される固有粘度を監視して分かるように、重合速度は低下した。
【0005】
[0005]リン化合物との組合せで用いた場合のチタン-アンチモン触媒システムにより、チタン単独のシステムを用いて製造した組成物に比べて、同一のまたは改善された重合速度において遥かに優れた色調を有するポリエステル組成物が製造できることが見出された。
【0006】
[0006]優れた性能特性を示すPET再資源化の流れにおいて、再資源化が可能となる結晶化可能なポリエステル組成物に対して商業的な要求が存在する。優れた重合速度および優れた色調を有する結晶化可能なポリエステル組成物を製造するための触媒システムに対して商業的な要求が存在する。
【発明の概要】
【0007】
[0007]グリコールモノマーの特定の組合せにより、再資源化中に付随するPETの再資源化に影響を及ぼさないような結晶化可能なポリエステル組成物を製造できることが判明した。これらの結晶化可能なポリエステル樹脂を用いて製造された物品は、PET物品とともに処理されて、最後には再資源化工程から発生する再資源化可能なPET薄片中の成分になる。またグリコールモノマーの特定の組合せの選択およびその量は、優れた性能特性を有しかつ結晶化が可能なポリエステルを製造するのに重要であることが判明した。本開示の最適なポリエステル樹脂組成物は、非晶質ではあるが結晶化が可能である。そのためにこれら組成物は、収縮フィルムや熱成形性シートを含むフィルムやシートなどの用途で優れた特性を示すものの高い歪み誘起結晶の融点を有し、それにより再資源化工程への適合性が提供される。本開示のポリエステル組成物で製造された物品は、再資源化工程中に除去する必要はなく、再資源化工程に影響を及ぼさない。
【0008】
[0008]さらに、アンチモン化合物と組合せた、かつリン化合物を組み込む低濃度のチタン化合物を含む触媒システムにより、安定剤/触媒減衰剤としてリンを組み込んだ従来からのチタン単独のシステムに比較して、より優れた色調および同等の反応速度を有するネオペンチルグリコールを含む結晶化可能な共重合ポリエステル組成物を製造できることが判明した。低チタン-アンチモンの組合せは、広い温度範囲に亘って効果的であり、開示される最高のリン濃度であっても、製品の色調を犠牲にすることなく300℃を超える反応温度を用いることが可能となる。
【0009】
[0009]一実施態様では、本開示の結晶化可能なポリエステル組成物から製造される熱収縮性フィルムは、種々の使用適合性基準を満たす必要がある。このフィルムは強靭であり、制御された方式で収縮し、かつ内容物を押し潰すことなくボトル表面にフィルムを保持させるのに十分な収縮力を提供する必要がある。さらにこれらのラベルをポリエステル容器またはボトルに適合する場合には、これらのポリエステル収縮フィルム製ラベルは、ポリエステル容器またはボトルの再資源化工程を妨害してはならない。本開示の収縮フィルムは、ラベルをボトルまたは容器とともに再資源化できるので好都合である。このようにラベルを含む容器またはボトルの全体を、追加の作業要件あるいは新たな環境問題を生じさせることなく、再資源化しかつ新たな製品に変換できる。熱収縮性フィルムは、一定の範囲の材料要求に合致させるように様々な原材料から製造されてきた。本開示は、収縮フィルム樹脂組成物のために特定のモノマーの組合わせにより対策された独特かつ予想外の効果について説明している。
【0010】
[0010]ポリエステル収縮フィルム組成物は、食品、飲料、身の回り用品、家庭用品などの収縮フィルムラベルとして商業的に用いられてきた。多くの場合にこれらの収縮フィルムは、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)製ボトルまたは容器と組合せて使用されている。次いでボトルとラベルを合わせた容器全体は、再資源化工程に回される。典型的な再資源化センターでは、PETと収縮フィルム材料は組成および密度が類似しているので、この工程の最後には一緒に処理することになる。PETの薄片は、再資源化工程中にPETとともに残留する水分を除去するために乾燥させる必要がある。典型的には、PETは200℃を超える温度で乾燥される。これらの温度では、一般的なポリエステル収縮フィルム樹脂は軟化して粘着性となり、PETの薄片とともに塊状になることがよくある。これらの塊は、次の処理の前に除去する必要がある。これらの塊は、工程からのPET薄片の収量を低下させ、かつ追加の作業工程を必要にする。本開示の一側面では、塊状化の評価は、APR塊状化試験:2018年11月16日付け改訂のPET-S-08「PET薄片塊状化評価(PET Flake Clumping Evaluation)」を用いて実施され、再資源化の流れの適合性に関する判断は、2019年4月11日付けの文書番号PET-CG-02「ラベルおよび封止を備える透明なPET物品のための重要な指示要綱(Critical Guidance Protocol for Clear PET Articles with Labels and Closures)」に従っている。
【0011】
[0011]本開示では、ポリエステル組成物中のグリコールモノマーの特定の組合せにより優れた性能特性を有する組成物を製造でき、かつその組合せによりPETの再資源化に影響を及ぼさないように結晶化可能となることが判明した。さらに、フィルムまたはシート樹脂組成物中のグリコールモノマーの特定の組合せにより優れた性能特性を有するフィルムまたはシートを製造でき、かつその組合せによりPET薄片の再資源化に影響を及ぼさないように結晶化可能となることが判明した。これらの結晶化可能なフィルムまたはシート樹脂は、再資源化されるPETとともに処理されて、最後には再資源化工程から発生する再資源化可能なPET薄片中の成分になる。さらに、グリコールモノマーの特定の組合せの選択および量は、優れた性能特性を有するフィルムまたはシートを製造し、かつ結晶化が可能となるフィルムまたはシートを製造するために重要であることが判明した。言い換えれば、本開示のポリエステル組成物は非晶質ではあるが、それらは高い歪み誘起結晶の融点を有するという意味では「結晶化可能」である。そのために、これらポリエステル組成物は、収縮フィルム、形成、熱成形、または成型の各部品および/または物品を含むフィルム用途またはシート用途では優れた特性を示すが、それらはまた高い歪み誘起結晶の融点を有するので、それにより再資源化PET薄片が高温乾燥条件に供される場合に、本開示の結晶化可能なポリエステルは、薄片化、乾燥、および(再資源化)ポリエステルペレットへのさらなる加工のための押出機中への供給などの通常の機械的操作を妨害する塊を形成しないので、PETとともに再資源化することができる。同様に、本開示の樹脂組成物から製造される押出シートは、再資源化工程中に除去する必要がなく、従って再資源化工程に悪影響を及ぼさない。(例えば、https://www.thebalancesmb.com/recycling-polyethylene-terephthalate-pet-2877869を参照)。
【0012】
[0012]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分および(b)ジオール成分を含む少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)0~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%である。
【0013】
[0013]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分および(b)ジオール成分を含む少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約80モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約5~約17モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約2~約10モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約5モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基を含む約20モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%である。
【0014】
[0014]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分および(b)ジオール成分を含む少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約76モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)ネオペンチルグリコール残基、(ii)シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)最終ポリエステル組成物中のジエチレングリコール残基から選択される約24モル%以下の非晶質含量を含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%である。
【0015】
[0015]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分および(b)ジオール成分を含む少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、(i)約1~約30モル%のネオペンチルグリコール残基、(ii)約1~約30モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、(iii)約1.5~6モル%のジエチレングリコール残基を含み、ここでグリコール成分の残部は、(iv)エチレングリコール残基および(v)0~20モル%の少なくとも1種の修飾グリコール残基を含み、ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%である。
【0016】
[0016]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれか1つの結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この反応器級のポリエステル組成物は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含む触媒システム残基をさらに含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0017】
[0017]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれか1つの結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この反応器級のポリエステル組成物は、3~10ppmのチタン、50~125ppmのアンチモン、および0~50ppmのリンを含む触媒システム残基をさらに含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0018】
[0018]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれか1つの結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この反応器級のポリエステル組成物は、4~12ppmのチタン、100~120ppmのアンチモン、および2~50ppmのリンを含む触媒システム残基をさらに含み、ここで触媒システム残基の量はポリエステルの重量を基準とする。
【0019】
[0019]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかの結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この組成物は、190℃以上または200℃以上の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0020】
[0020]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかの結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物であり、この組成物は200℃以上の歪み誘起結晶の融点を有する。
[0021]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能なポリエステル組成物または結晶化可能なポリエステルブレンドであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約0.1~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の量はポリエステルの重量を基準とし、あるいは(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンから本質的になり、ここで触媒システム残基の量はポリエステルの重量を基準とし、あるいはこの(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンからなり、ここで触媒システム残基の量はポリエステルの重量を基準とし、このポリエステルの歪み誘起結晶の融点は、190℃以上または200℃以上である。
【0021】
[0022]本開示の一実施態様は、結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物を調製するプロセスであり、このプロセスは(a)テレフタル酸残基を含む二酸成分を、ネオペンチルグリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ジエチレングリコール残基、およびエチレングリコール残基を含むジオール成分に、2~15ppmのチタン化合物、50~150ppmのアンチモン化合物の存在下でエステル化反応温度を240~270℃かつ圧力を5~50psiとして反応させてエステル化生成物を製造する工程;(b)このエステル化生成物を、0~60ppmのリン安定剤の存在下で予備重合温度を255~275℃かつ圧力を200~500mmHgとして予備重合して重縮合生成物を製造する工程;および(c)この重縮合生成物を仕上げ処理してポリエステルを製造する工程を含み、ここで前記ポリエステルは、少なくとも0.50dL/gまたは0.50~0.90dL/gの固有粘度を有し、仕上げ処理時の重合温度は280~320℃へ高くしてかつ圧力は0.3~7mmHgとする。
【0022】
[0023]本開示の一実施態様は、結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物を調製するプロセスであり、このプロセスは(a)テレフタル酸残基を含む二酸成分を、ネオペンチルグリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ジエチレングリコール残基、およびエチレングリコール残基を含むジオール成分に、エステル化反応温度を240~270℃かつ圧力を5~50psiとして反応させてエステル化生成物を製造する工程;(b)このエステル化生成物を、2~15ppmのチタン化合物、50~150ppmのアンチモン化合物、および0~90ppmのリン安定剤の存在下で予備縮合温度を255~275℃として予備重合して、予備重合による重縮合生成物を製造する工程;および(c)この重縮合生成物を仕上げ処理してポリエステルを製造する工程を含み、ここで前記ポリエステルは、少なくとも0.50dL/gまたは0.50~0.90dL/gの固有粘度を有し、仕上げ処理時の重合温度は280~320℃へ高くして圧力は0.3~7mmHgとする。
【0023】
[0024]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのプロセスであり、ここでポリエステルは、優れた色調または20以下のb*値を有する。
[0025]本開示の一実施態様は、結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物を製造するための触媒システムであり、このシステムは、2~15ppmのチタン化合物、50~150ppmのアンチモン化合物、および0~90ppmのリン化合物を含み、このポリエステル組成物は、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、およびジエチレングリコールを含む。
【0024】
[0026]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約0.1~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0025】
[0027]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)0~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約0~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0026】
[0028]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約0.1~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0027】
[0029]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約80モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約5~約17モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約2~約10モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約5モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基を含む約20モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0028】
[0030]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約76モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)ネオペンチルグリコール残基、(ii)シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)最終ポリエステル組成物中のジエチレングリコール残基を含む約24モル%以下の非晶質含量を含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0029】
[0031]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む結晶化可能なフィルムであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、その場で形成されるか否かに拘わらず(i)約1~約30モル%のネオペンチルグリコール残基、(ii)約1~約30モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1.5~6モル%のジエチレングリコール残基を含み、グリコール成分の残部は、(iv)エチレングリコール残基および(v)0~10モル%の少なくとも1種の修飾グリコール残基を含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0030】
[0032]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかの結晶化可能なフィルムであり、このフィルムは少なくとも1つの方向に延伸され、この延伸フィルムは190℃以上の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0031】
[0033]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかの結晶化可能なフィルムであり、このフィルムは少なくとも1つの方向に延伸され、この延伸フィルムは200℃以上の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0032】
[0034]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかの結晶化可能なフィルムであり、このフィルムは少なくとも1つの方向に延伸され、この延伸フィルムは190~200℃の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0033】
[0035]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかの結晶化可能なフィルムを含む、押出しフィルムあるいは圧延フィルムである。
[0036]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む熱成形シートであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約0.1~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0034】
[0037]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む、厚さが約0.25mm~約6.4mmの熱成形シートであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約80モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約5~約17モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約2~約10モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約5モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約20モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0035】
[0038]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む、厚さが約0.25mm~約6.4mmの熱成形シートであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約76モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)ネオペンチルグリコール残基、(ii)シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)最終ポリエステル組成物中のジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約24モル%以下の非晶質含量を含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0036】
[0039]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル組成物を含む、厚さが約0.25mm~約6.4mmの熱成形シートであり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、その場で形成されるか否かに拘わらず(i)約1~約30モル%のネオペンチルグリコール残基、(ii)約1~約30モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1.5~約6モル%のジエチレングリコール残基を含み、グリコール成分の残部は、(iv)エチレングリコール残基および(v)必要に応じて0~10モル%または0~5モル%の少なくとも1種の修飾グリコール残基を含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の濃度はポリエステルの重量を基準とする。
【0037】
[0040]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのシートを含む、あるいはそれから調製される、形成、熱成形、または成型された各物品であり、このシートは190℃以上の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0038】
[0041]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのシートを含む、あるいはそれから調製される、形成、熱成形、または成型された各物品であり、このシートは200℃以上の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0039】
[0042]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのシートを含む、あるいはそれから調製される、形成、熱成形、または成型された各物品であり、このシートは190℃~215℃の歪み誘起結晶の融点を有する。
【0040】
[0043]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのシートを含む、あるいはそれから調製される、形成、熱成形、または成型された各物品である。
[0044]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのシートを含む、あるいはそれから調製された医療機器の梱包品、医療関連の梱包品、健康管理用品梱包品、商業食品供給製品、トレイ、容器、食品皿、タンブラー、収納箱、ボトル、調理器具、ブレンダーおよびミキシングボウル、家庭用品、水ボトル、野菜庫トレイ、洗浄機部品、冷蔵庫部品、真空掃除機部品、眼科用レンズ、および枠組材または玩具から選択される物品である。
【0041】
[0045]本開示の一実施態様は、前述の実施態様のいずれかのシートから形成または熱成形された物品または部品を作製する方法であり、この方法は、A)本開示のポリエステル組成物を含むシートを加熱する工程、B)熱で軟化したシートに空気圧、真空、および/または物理的圧力を加える工程、C)真空または加圧によってシートを型形状に適合させる工程、D)シートをそのTg未満の温度まで冷却する工程、およびE)形成または熱成形された部品または物品を型から取り出す工程を含む。
【0042】
[0046]本開示の一実施態様は、少なくとも約0.1重量%の本開示の結晶化可能な再資源化収縮フィルムを共に混合させた再資源化ポリエチレンテレフタレート薄片を含むポリエステル再資源化処理の流れである。
【0043】
[0047]本開示の一実施態様は、少なくとも約0.1重量%の本開示の結晶化可能な反応器級ポリエステル組成物を共に混合させた再資源化ポリエチレンテレフタレート薄片を含むポリエステル再資源化処理の流れである。
【0044】
[0048]本開示の一実施態様は、少なくとも約0.1重量%の本開示の結晶化可能な再資源化熱成形性シートを共に混合させた再資源化ポリエチレンテレフタレート薄片を含むポリエステル再資源化処理の流れである。
【0045】
[0049]本開示の一実施態様は、少なくとも約0.1重量%の本開示の結晶化可能な再資源化収縮フィルムを共に混合させた再資源化ポリエチレンテレフタレート薄片を含むポリエステル再資源化処理の流れであり、前記流れは、プラスチック再資源業者協会(APR:The Association for Plastic Recyclers)の試験項目PET-CG-02に合格している。
【0046】
[0050]このように本開示の結晶化可能な組成物は、この組成物が追加の分離工程を必要とせずに再資源化の流れの中にPETを随伴できる限りは、PET再資源化の流れに好都合な成分として提供される。従って本開示の一実施態様では、少なくとも約0.1重量%の本開示の結晶化可能な組成物を共に混合させた再資源化ポリエチレンテレフタレート薄片を含むポリエステル再資源化処理の流れが提供される。別の実施態様では、前記流れは、2019年4月11日付けの文書番号PET-CG-02「ラベルおよび封止を備える透明なPET物品のための重要な指示要綱」に合格している。
【0047】
[0051]本開示の一実施態様は、(a)ジカルボン酸成分、(b)ジオール成分、および(c)触媒システム残基を含む少なくとも1種のポリエステルを含む結晶化可能なポリエステル組成物であり、この(a)ジカルボン酸成分は、(i)約70~約100モル%のテレフタル酸残基、ならびに(ii)最大20個の炭素原子を有する約0~約30モル%の芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸残基を含み、この(b)ジオール成分は、約75モル%以上のエチレングリコール残基、ならびに(i)約0.1~約24モル%未満のネオペンチルグリコール残基、(ii)約0.1~約24モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、および(iii)約1~約10モル%未満の最終ポリエステル組成物中の総ジエチレングリコール残基のうちの1種以上を含む約25モル%以下の他のグリコールを含み、ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、ジオール成分の総モル%は100モル%であり、この(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンを含み、ここで触媒システム残基の量はポリエステルの重量を基準とし、あるいはこの(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンから本質的になり、ここで触媒システム残基の量はポリエステルの重量を基準とし、あるいはこの(c)触媒システム残基は、2~15ppmのチタン、50~150ppmのアンチモン、および0~60ppmのリンからなり、ここで触媒システムの残基の量はポリエステルの重量を基準とし、このポリエステルの歪み誘起結晶の融点は、190℃以上または200℃以上である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】[0052]
図1は、相対結晶化度に対するPET凝集率(%)を示す。三角形の点は1%を超えるPETの凝集率を示している。円形の点は1%未満のPET凝集率を示していて、従ってこれらは2019年4月11日付けの文書番号PET-CG-02「ラベルおよび封止を備える透明なPET物品のための重要な指示要綱」に合格している。
【発明の詳細な説明】
【0049】
[0053]本開示の特定の実施態様および実施例の以下の詳細な説明を参照することで、本開示の理解が深まる。本開示の目的に従って、本開示の特定の実施態様を、「発明の要旨」の中に説明し、本明細書で以下のようにさらに説明する。本開示の他の実施態様をまた本明細書では説明する。
【0050】
[0054]本開示では、ポリエステル組成物中のグリコールモノマーの特定の組合せにより、優れた性能特性を有する結晶化可能なポリエステル樹脂を生成でき、またその樹脂は結晶化可能であるので、再資源化プロセス中のPET薄片の再資源化に影響を及ぼさないことが判明した。本開示の結晶化可能な樹脂を用いて製造された収縮フィルムや熱成形性シートなどの物品は、PETボトルとともに処理されて、最後には再資源化工程から発生する再資源化可能なPET薄片中の成分にできる。さらにグリコールモノマーの特定の組合せの選択および量は、優れた性能特性を有しかつ結晶化可能な収縮フィルムなどのフィルムまたはシートなどの物品を製造するために重要であることが判明した。
【0051】
[0055]本明細書で使用される用語「ポリエステル」は、「共重合ポリエステル」を含むことを意図しており、1種以上の二官能性カルボン酸および/または多官能性カルボン酸と1種以上の二官能性ヒドロキシル化合物および/または多官能性ヒドロキシル化合物、例えば分岐剤との反応により調製される合成ポリマーを意味すると理解される。典型的には、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であってもよく、二官能性ヒドロキシル化合物は二価アルコール、例えばグリコールおよびジオールであってもよい。本明細書で使用される用語「グリコール」は、限定はされないが、ジオール、グリコール、および/または多官能性ヒドロキシル化合物、例えば分岐剤を含む。あるいは二官能性カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸、例えばp-ヒドロキシ安息香酸であってもよく、二官能性ヒドロキシル化合物は、ヒドロキノンなどの2個のヒドロキシル置換基を保持する芳香族核を有していてもよい。本明細書で使用される用語「残基」は、対応するモノマーから重縮合および/またはエステル化反応によってポリマー中に組み込まれたいずれかの有機構造を意味する。本明細書で使用される用語「繰返し単位」は、エステル基を介して結合されたジカルボン酸残基とジオール残基を有する有機構造を意味する。従って、例えばジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー、あるいはその関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物、および/またはそれらの混合物に由来してもよい。さらに本明細書で使用される用語「二酸」は、多官能性酸、例えば分岐剤を含む。従って、本明細書で使用される用語「ジカルボン酸」は、ポリエステルを製造するためのジオールとの反応工程に有用なジカルボン酸、およびジカルボン酸の任意の誘導体、例えばその関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、および/またはそれらの混合物などを含むことを意図している。本明細書で使用される用語「テレフタル酸」は、ポリエステルを製造するためのジオールとの反応工程に有用なテレフタル酸自体およびその残基、ならびにその関連の酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、および/またはそれらの混合物またはそれらの残基などのテレフタル酸の任意の誘導体を含むことを意図している。
【0052】
[0056]本開示で使用されるポリエステルは、典型的には、実質的に等しい比率で反応し、かつそれらの対応する残基としてポリエステルポリマー中に組み込まれるジカルボン酸およびジオールから調製できる。従って本開示のポリエステルは、繰返し単位の総モル数が100モル%に等しくなるように、酸残基(100モル%)およびジオール(および/または多官能性ヒドロキシル化合物)残基(100モル%)を実質的に等モル比で含有してもよい。従って本開示に示されるモル%は、酸残基の総モル数、ジオール残基の総モル数、または繰返し単位の総モル数に基づいてもよい。例えば、総酸残基に基づいて10モル%のイソフタル酸を含むポリエステルは、そのポリエステルが100モル%の総酸残基のうちに10モル%のイソフタル酸残基を含むことを意味している。従って、100モルの酸残基ごとに10モルのイソフタル酸残基が存在することになる。別の例では、総ジオール残基に基づいて25モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルは、このポリエステルが100モル%の総ジオール残基のうちに25モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基を含むことを意味している。従って、100モルのジオール残基ごとに25モルの1,4-シクロヘキサンジメタノール残基が存在することになる。
【0053】
[0057]特定の実施態様では、テレフタル酸またはそのエステル、例えばテレフタル酸ジメチルまたはテレフタル酸残基とそのエステルとの混合物は、本開示で有用なポリエステルを生成するために用いられるジカルボン酸成分の一部または全部を構成してもよい。特定の実施態様では、テレフタル酸残基は、本開示で有用なポリエステルを生成するために用いられるジカルボン酸成分の一部または全部を構成してもよい。本開示の目的のための用語「テレフタル酸」および「テレフタル酸ジメチル」は、本明細書では互換的に用いられる。一実施態様では、テレフタル酸ジメチルは、本開示に有用なポリエステルを製造するために用いられるジカルボン酸成分の一部または全部となる。実施態様によっては、70~100モル%、または80~100モル%、または90~100モル%、または99~100モル%、または100モル%のテレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルおよび/またはそれらの混合物を用いてもよい。
【0054】
[0058]テレフタル酸に加えて、本開示で有用なポリエステルのジカルボン酸成分は、最大30モル%、最大20モル%、最大10モル%、最大5モル%、または最大1モル%の1つ以上の修飾芳香族ジカルボン酸を含んでもよい。さらに別の実施態様は0モル%の修飾芳香族ジカルボン酸を含む。従って存在する場合には、1つ以上の修飾芳香族ジカルボン酸の量は、これらの前述の終点値のいずれかからの範囲、例えば、0.01~10モル%、0.01~5モル%、および0.01~1モル%であってもよいと想定される。一実施態様では、本開示に用いてもよい修飾芳香族ジカルボン酸は、限定はされないが、最大20個の炭素原子を有し、かつ直鎖状、パラ配向性、または対称性であってもよいジカルボン酸を含む。本開示で用いられてもよい修飾芳香族ジカルボン酸の例としては、限定はされないが、イソフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-、1,5-、2,6-、2,7-ナフタレンジカルボン酸、およびトランス-4,4’-スチルベンジカルボン酸、ならびにそれらのエステルが挙げられる。一実施態様では、修飾芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸である。
【0055】
[0059]本開示で有用なポリエステルのカルボン酸成分は、最大10モル%、例えば最大5モル%、または最大1モル%の、2~16個の炭素原子を含む1つ以上の脂肪族ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、および/またはドデカン二酸ジカルボン酸でさらに修飾されてもよい。特定の実施態様はまた、0.01~10モル%、例えば、0.1~10モル%、1~10モル%、5~10モル%の1つ以上の修飾脂肪族ジカルボン酸を含んでもよい。さらに別の実施態様では、0モル%の修飾脂肪族ジカルボン酸を含む。ジカルボン酸成分の総モル%は100モル%である。一実施態様では、アジピン酸および/またはグルタル酸は、ポリエステルの修飾脂肪族ジカルボン酸成分中に提供され、かつ本開示で有用である。
【0056】
[0060]テレフタル酸およびその他の修飾ジカルボン酸のエステル、あるいはそれらの対応するエステルおよび/または塩を、ジカルボン酸に代えて使用してもよい。ジカルボン酸エステルの好適な例としては、限定はされないが、ジメチル、ジエチル、ジプロピル、ジイソプロピル、ジブチル、ジフェニルエステルが挙げられる。一実施態様では、エステルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびフェニルエステルのうちの少なくとも1種から選択される。
【0057】
[0061]一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。別の実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,3-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。シス構造/トランス構造の1,4-シクロヘキサンジメタノールのモル比は、50/50~0/100の範囲、例えば40/60~20/80の範囲で変動させてもよい。
【0058】
[0062]特定の実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、限定はされないが、最終ポリエステル組成物中の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基とネオペンチルグリコール残基の合計が1~30モル%、または1~25モル%、1~20モル%、または1~15モル%、または1~10モル%、または2~30モル%、または2~25モル%、または2~20モル%、または2~15モル%、または2~10モル%、または3~30モル%、または3~25モル%、または3~20モル%、または3~15モル%、または3~10モル%、4~30モル%、または4~25モル%、または4~20モル%、または4~15モル%、または4~10モル%、または5~30モル%、または5~25モル%、または5~20モル%、または5~15モル%、または5~10モル%。または6~30モル%、または6~25モル%、または6~20モル%、または6~15モル%、または6~10モル%、または7~30モル%、または7~25モル%、または7~20モル%、または7~15モル%、または7~10モル%、または8~30モル%、または8~25モル%、または8~20モル%、または8~15モル%、または8~10モル%、または9~30モル%、または9~25モル%、または9~20モル%、または9~15モル%、または9~10モル%、または10~30モル%、または10~25モル%、または10~20モル%、または10~15モル%、または11~30モル%、または11~25モル%、11~20モル%、または11~15モル%、または12~30モル%、12~25モル%、または12~20モル%、12~15モル%、または13~30モル%、または13~25モル%、13~20モル%、または13~15モル%、14~30モル%、または14~25モル%、または14~20モル%、または14~15モル%、または15~30モル%。15~25モル%、または15~20モル%、または16~20モル%、または18~20モル%、または10~18モル%、または16~18モル%、または12~16モル%、または16~20モル%、または14~18モル%、または11~30モル%、または13~30モル%、または14~30モル%、または10~29モル%、または11~29モル%、または12~29モル%、または13~29モル%、または14~29モル%、または15~29モル%、または10~28モル%、または11~28モル%、または12~28モル%、または13~28モル%、または14~28モル%、または15~28モル%である組成物を含んでもよい。一実施態様では、最終ポリエステル組成物中の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基とネオペンチルグリコール残基の合計は、1~16モル%、2~14モル%、4~15モル%、または2~21モル%、または2~20モル%未満、または4~20モル%、または5~18モル%、または10~21モル%、または12~21モル%であってもよく、ここでジオール成分の総モル%は100モル%である。
【0059】
[0063]一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0~30モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0.1~30モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、1~30モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、1~25モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、1~17モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、5~20モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、10~20モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、10~15モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、15~25モル%のネオペンチルグリコールを含んでもよい。
【0060】
[0064]一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0~30モル%、または0.01~30モル%、または1~30モル%、または2~30モル%、または0~20モル%、または0.1~20モル%、または1~20モル%、または2~20モル%、または0~15モル%、または0.01~15モル%、または1~15モル%、または2~15モル%、または0.01~14モル%、または0.01~13モル%、または0.01~12モル%、または0.01~11モル%、または0.01~10モル%、または0.01~9モル%、または0.01~8モル%、または0.01~7モル%、または0.01~6モル%、または0.01~5モル%、または3~15モル%、または3~14モル%、または3~13モル%、または3~12モル%、または3~11モル%、または3~10モル%、または3~9モル%、または3~8モル%、または3~7モル%、または2~10モル%、または2~9モル%、または2~8モル%、または2~7モル%、または2~5モル%、または1~7モル%、または1~5モル%、または1~3モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基を含んでもよい。
【0061】
[0065]一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0.01~15モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0~15モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0.01~10モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0~10モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0.01~5モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、0~5モル%未満の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。
【0062】
[0066]当然なことではあるが、いくつかの他のジオール残基は加工中にその場で生成されてもよい。一実施態様では、本開示に記載のポリエステル組成物のジオール成分は、加工中にその場で生成されたジエチレングリコール残基を含んでもよく、または故意に添加されてもよく、または任意の量でその両方からであってもよい。例えば一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、1~15モル%、または2~12モル%、または2~11モル%、または2~10モル%、または2~9モル%、または3~12モル%、または3~11モル%、または3~10モル%、または3~9モル%、または4~12モル%、または4~11モル%、または4~10モル%、または4~9モル%、または5~12モル%、または5~11モル%、または5~10モル%、または5~9モル%のジエチレングリコール残基を含んでもよい。
【0063】
[0067]一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物中に存在するジエチレングリコール残基の総量は、加工中にその場で形成されるか否か、意図的に添加されるか否か、またはその両方に拘わらず、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、4モル%以下、または3.5モル%以下、または3.0モル%以下、または2.5モル%以下、または2.0モル%以下、または1.5モル%以下、または1.0モル%以下、または1~4モル%、または1~3モル%、または1~2モル%、または2~8モル%、または2~7モル%、または2~6モル%、または2~5モル%、または3~8モル%、または3~7モル%、または3~6モル%、または3~5モル%のジエチレングリコール残基であってもよく、あるいは実施態様によっては、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、意図的に添加されたジエチレングリコール残基は存在させない。
【0064】
[0068]全ての実施態様では、ジオール成分の残部は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、任意の量のエチレングリコール残基を含んでもよい。一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のポリエステル部分は、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、50モル%以上、または55モル%以上、または60モル%以上、または65モル%以上、または70モル%以上、または75モル%以上、または80モル%以上、または85モル%以上、または90モル%以上、または95モル%以上、または50~85モル%、または50~80モル%、または55~80モル%、または60~80モル%、または50~75モル%、または55~75モル%、または60~75モル%、または65~75モル%、または70~80モル%、または75~85モル%のエチレングリコール残基であってもよい。
【0065】
[0069]一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物のジオール成分は、最大20モル%、または最大19モル%、または最大18モル%、または最大17モル%、または最大16モル%、または最大15モル%、または最大14モル%、または最大13モル%、または最大12モル%、または最大11モル%、または最大10モル%、または最大9モル%、または最大8モル%、または最大7モル%、または最大6モル%、または最大5モル%、または最大4モル%、または最大3モル%、または最大2モル%、または最大1モル%の1種以上の修飾ジオールを含んでもよい(修飾ジオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、または1,4-シクロヘキサンジメタノールではないジオールとして定義する)。特定の実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物は、10モル%以下の1種以上の修飾ジオールを含んでもよい。特定の実施態様では、本開示で有用なポリエステルは、5モル%以下の1種以上の修飾ジオールを含んでもよい。特定の実施態様では、本開示で有用なポリエステルは、3モル%以下の1種以上の修飾ジオールを含んでもよい。別の実施態様では、本開示で有用なポリエステルは、0モル%の1種以上の修飾ジオールを含んでもよい。しかしいくつかの他のジオール残基がその場で形成されてもよく、その結果としてその場で形成される残基量もまた本開示の実施態様であると見做される。
【0066】
[0070]実施態様によっては、本明細書で定義される、ポリエステルに使用される修飾ジオールは、使用する場合には2~16個の炭素原子を含む。修飾ジオールの例としては、限定はされないが、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、イソソルビド、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、p-キシレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施態様では、イソソルビドは修飾ジオールである。別の実施態様では、修飾ジオールは、限定はされないが、1,3-プロパンジオールおよび1,4-ブタンジオールのうちの少なくとも1種を含む。一実施態様では、1,3-プロパンジオールおよび/または1,4-ブタンジオールは除外されてもよい。1,4-または1,3-ブタンジオールを使用する場合に、一実施態様では、4モル%以上または5モル%以上を提供してもよい。一実施態様では、少なくとも1種の修飾ジオールは、5~25モル%の量で存在する1,4-ブタンジオールである。特定の実施態様では、ポリエステル組成物は、修飾ジオールの添加を含まない。
【0067】
[0071]一実施態様では、結晶化可能なポリエステル組成物を提供し、この組成物では、100モル%であるジオール成分の総モル%を基準として、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基が0.01~約10モル%の量で存在し、ジエチレングリコール残基が2~9モル%の量で存在し、ネオペンチルグリコール残基が5~30モル%の量で存在し、かつエチレングリコール残基が60モル%以上の量で存在する。
【0068】
[0072]一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物は、少なくとも1種の鎖延長剤を含んでもよい。適切な鎖延長剤には、限定はされないが、(限定はされないが二官能性を含む)多官能性イソシアネート、例えばエポキシ化ノボラックを含む多官能性エポキシド、およびフェノキシ樹脂が含まれる。特定の実施態様では、鎖延長剤は、重合工程の終点時に添加してもよく、重合工程の後に添加してもよい。重合工程の後に添加する場合には、鎖延長剤を、射出成形または押出成形などの転換工程中に調合あるいは添加によって組み込んでもよい。
【0069】
[0073]特定の実施態様では、使用する鎖延長剤の量は、用いる特定のモノマー組成物および所望の物理特性に応じて変更してもよいが、一般的には、ポリエステルの総重量を基準にして約0.1重量%~約10重量%、例えば約0.1重量%~約5重量%である。
【0070】
[0074]本開示で有用なポリエステル組成物は、特に指示の無い限り、本明細書に説明の固有粘度範囲のうちの少なくとも1種、および本明細書に説明のポリエステル組成物のモノマー範囲のうちの少なくとも1種を保有してもよいと考えられる。さらに本開示で有用なポリエステル組成物は、特に指示の無い限り、本明細書に説明のTg範囲のうちの少なくとも1種、および本明細書に説明のポリエステル組成物のモノマー範囲のうちの少なくとも1種を保有してもよいと考えられる。さらに本開示で有用なポリエステル組成物は、特に指示の無い限り、本明細書に説明の固有粘度範囲の少なくとも1種、本明細書に説明のTg範囲の少なくとも1種、および本明細書に説明のポリエステル組成物のモノマー範囲の少なくとも1種を保有してもよいと考えられる。
【0071】
[0075]本開示の実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で、25℃かつ0.5g/dLの濃度で測定される、0.50~1.2dL/g、0.50~1.0dL/g、0.50~0.90dL/g、0.50~0.80dL/g、0.55~0.80dL/g、0.60~0.80dL/g、0.65~0.80dL/g、0.70~0.80dL/g、0.50~0.75dL/g、0.55~0.75dL/g、または0.60~0.75dL/gの固有粘度のうちの少なくとも1種を示してもよい。
【0072】
[0076]一実施態様では、ポリエステルのガラス転移温度および歪み誘起結晶の融点(それぞれTgおよびTm)を、Thermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて20℃/分の走査速度で測定する。Tmを延伸試料の1回目の加熱工程で測定し、Tgを2回目の加熱工程中に測定した。さらに別の実施態様では、試料を強制空気オーブン中で165℃で30分間または170℃で2時間結晶化させて、その後にDSCで分析した。全ての試料では、結晶融点は、典型的には20℃/分の加熱速度によるDSC走査の2回目の加熱中には存在しない。
【0073】
[0077]特定の実施態様では、本開示の配向フィルム、収縮フィルム、熱成形シートは、ポリエステルのTgが60~80℃、70~80℃、65~80℃、74~77℃、72~77℃、または65~75℃である結晶化可能なポリエステル/ポリエステル組成物を含む。特定の実施態様では、ポリエステルの固有粘度は、60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で、25℃かつ0.5g/dLの濃度で測定される場合に0.68~0.75dL/gであり、このポリエステルは、Thermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて20℃/分の走査速度で測定される場合に72℃~77℃のTgを有する。
【0074】
[0078]特定の実施態様では、重合中または押出し中または配合中に添加される少なくとも1種の可塑剤の有無に拘わらず、これらのTg範囲を満たすことができる。
[0079]一実施態様では、本開示で有用な特定の結晶化可能なポリエステル組成物は、視覚的に透明であってもよい。用語「視覚的に透明」は、視覚的に検査した際に曇り、霞み、および/または濁りが明らかに存在しないこととして本明細書では定義される。
【0075】
[0080]一実施態様では、本開示で有用な結晶化可能なポリエステル組成物のポリエステル部分は、文献から既知のプロセス、例えば、均一溶液中でのプロセス、溶融体中でのエステル交換反応プロセス、および二相界面プロセスによって生成されてもよい。ポリエステルの製造法については米国特許第3,772,405号を参照し、この方法に関する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
[0081]特定の実施態様では、結晶化可能なポリエステル組成物は、不活性雰囲気中での縮合過程中に温度を徐々に上昇させて、触媒の存在下でジカルボン酸またはジカルボン酸エステルをジオールと縮合する工程、次いで縮合工程の後半部では低圧で縮合を実施する工程によって調製してもよく、これらの工程は、米国特許第2,720,507号にさらに詳細に説明されていて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
[0082]一側面では、本開示はポリエステル組成物の調製のための触媒システムである。一側面では、本開示は、ネオペンチルグリコール(NPGまたは2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)を含むポリエステル組成物の調製のための触媒システムである。一実施態様では、本開示の触媒システムは、ネオペンチルグリコール(NPG)および/または1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含むポリエステルに好適である。一実施態様では、本開示の触媒システムはまた、テレフタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、NPG、およびCHDMを含むポリエステル組成物とともに使用するのに好適である。一実施態様では、この触媒システムはまた、NPGを含まないが、テレフタル酸、エチレングリコール、および1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステル組成物とともに使用するのに好適である。一実施態様では、チタン濃度を非常に低く保持し、かつ反応温度をこれらの種類のポリエステル組成物の製造に典型的に用いられる温度範囲を超える温度まで上昇させた場合に、プロセスの改善が観察される。
【0078】
[0083]一側面では、本開示の触媒システムは、低濃度のチタンとアンチモンの組合せであり、このシステムは、広範囲の重合温度に亘って、特に高い重合温度で活性である。一実施態様では、リンは触媒調整剤(catalyst moderetor)として必要に応じて使用される。特定の実施態様では、リンを使用する場合には、リン化合物の濃度は、触媒システムに用いられるチタンおよびアンチモンの濃度に基づいて決定する。一実施態様では、使用されるリン化合物の量は、最終の重合温度に基づいて決定される。
【0079】
[0084]一実施態様では、本開示の触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して2~15ppmのチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、本開示の触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して4~12ppmのチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、本開示の触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して3~10ppmのチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、本開示の触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して1~20ppmのチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して20ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して15ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して14ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して13ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して12ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して10ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して7ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して5ppm以下のチタンの濃度水準でチタン化合物を含む。一実施態様では、チタン化合物は、チタン酸テトライソプロピルなどのチタン酸テトラアルキルエステルである。一実施態様では、チタン化合物は、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラエトキシド、またはチタンテトラブトキシドなどのチタンテトラアルコキシド、あるいはチタン酸テトライソプロピルなどのチタン酸テトラアルキルエステル、およびこれらの混合物から選択される。
【0080】
[0085]一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して50~150ppmのアンチモンの濃度水準のアンチモン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して70~140ppmのアンチモンの濃度水準のアンチモン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して90~130ppmのアンチモンの濃度水準のアンチモン化合物を含む。一実施態様では、触媒システムは、製造されるポリエステルの重量に対して100~120ppmのアンチモンの濃度水準のアンチモン化合物を含む。一実施態様では、アンチモン化合物は三酸化アンチモンである。一実施態様では、アンチモン化合物は、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、またはシュウ酸アンチモンである。一実施態様では、触媒システムのアンチモン化合物は、ポリエステル組成物に用いられるグリコールのうちの1種に溶解される。
【0081】
[0086]一実施態様では、リンの濃度水準は、製造されるポリエステルの重量を基準にして0~90ppmである。一実施態様では、リンの濃度水準は、製造されるポリエステルの重量を基準にして0~50ppmである。一実施態様では、リンの濃度水準は、製造されるポリエステルの重量を基準にして2~75ppmである。一実施態様では、リンの濃度水準は、製造されるポリエステルの重量を基準にして2~50ppmである。一実施態様では、リンの濃度水準は、製造されるポリエステルの重量を基準にして10~60ppmである。一実施態様では、アンチモン化合物の濃度水準は、最終反応段階または仕上げ区域での温度に依存する。一実施態様では、アンチモン化合物の濃度水準は、使用されるチタンの濃度に依存する。一実施態様では、アンチモン化合物の濃度水準は、最終反応段階の温度ならびに使用されるチタンの濃度に依存する。
【0082】
[0087]本開示の一側面では、重合温度は、標準的な共重合ポリエステル生成反応よりも遙かに高い。一実施態様では、重合温度は275℃~310℃である。一実施態様では、重合温度は285℃~300℃である。一実施態様では、重合温度は290℃~300℃である。
【0083】
[0088]一実施態様では、優れた色調を示す高IV(固有粘度)ポリエステルを製造するには、重合温度は290℃であり、125ppmのアンチモンの担持量および0~8ppmのリンの担持量とともにチタンの濃度は8ppm以下である。一実施態様では、優れた色調を示す高IVポリエステルを製造するには、重合温度は300℃であり、100ppmのアンチモンの濃度および59~60ppmのリンの濃度とともにチタンの濃度は13ppm以下である。
【0084】
[0089]一実施態様では、触媒成分およびリン供給源の両方とも、テレフタル酸のエステル化に続いて添加される。一実施態様では、使用されるグリコールのうちの1種以上によるテレフタル酸基のそれらのエステル形態への転化率は90%である。一実施態様では、利用可能なカルボン酸末端の最大100%までのより高い転化率は、本開示の触媒システムにより達成できる。一実施態様では、触媒成分は一緒に添加してもよく、またはそれらは別々に添加してもよい。別の実施態様では、リンは触媒の添加に続いて別の供給物として添加される。
【0085】
[0090]一実施態様では、より高い仕上げ(重合反応)温度を利用する選択肢以外には、高チタン-リンシステムで典型的に用いる反応手順を変更する必要はない。
[0091]この触媒システムにより、その使用者は、チタン単独のシステムに対して優れた生産速度および優れた製品色調でNPGを含有するポリエステルを調製できる。色調に悪影響を及ぼすことなく高い反応温度を使用できる適合性により、生産速度を変更する変数として温度を用いることができる。従来からのチタン触媒システムは温度上昇に敏感であるので、この選択肢は通常利用できない。
【0086】
[0092]一側面では、本開示のポリエステル組成物は、当該技術分野で既知の任意の重縮合反応条件を用いて製造されてもよい。これらは、連続、半連続、およびバッチの各操作モードによって製造されてもよく、様々な反応器の種類を利用してもよい。適切な反応器の種類の例としては、限定はされないが、攪拌槽、連続攪拌槽、スラリー型、管状型、拭取り膜型(wiped-film)、落下膜型、または押出型の各反応器が挙げられる。
【0087】
[0093]本明細書で使用される用語「連続」は、反応物が導入されかつ生成物が中断されない方式で同時に取り出されるプロセスを意味する。このプロセスは、経済的な理由のために連続プロセスとして都合よく運転され、かつ長過ぎる期間に亘って高温で反応器内に滞在させるとポリエステルが外観の劣化を引き起こす可能性があるので、色の薄いポリマーを製造するために運転される。
【0088】
[0094]本開示のポリエステルは、当業者に既知の任意の手順によって調製される。ジオール成分とジカルボン酸成分の反応は、従来からのポリエステル重合条件を用いて実施してもよい。例えばジカルボン酸成分のエステル形態からエステル交換反応によって、例えばポリエステルを調製する場合には、反応工程は少なくとも2つの工程を含んでもよい。
【0089】
[0095]本開示の一実施態様では、ポリエステルは2つの主要な段階で製造される。第1段階は、出発材料を反応させてモノマーおよび/またはオリゴマーを生成する。第1段階に入る出発材料がTPAまたはイソフタル酸などの酸末端基を含む場合には、この第1段階はエステル化と呼ばれる。第2段階では、モノマーおよび/またはオリゴマーをさらに反応させて最終的なポリエステル製品を生成する。この第2段階は一般に重縮合段階と呼ばれる。重縮合段階は、単一の工程であってもよく、あるいは予備重縮合(または予備重合)工程および最終(または仕上げ)重縮合工程に分けてもよい。
【0090】
[0096]第1段階であるエステル化工程では、例えばエチレングリコールなどのジオール成分と、例えばテレフタル酸などのジカルボン酸成分とを、約5~60ポンド/平方インチ(「psig」または「psi」)の範囲の圧力で、約150℃~約270℃の温度で約0.5~約8時間反応させる。一実施態様では、エステル化またはエステル交換反応の温度は約1時間~約4時間に亘って約180℃~約230℃であり、圧力は約103kPa大気圧基準(15psig)~約276kPa大気圧基準(40psig)の範囲である。一実施態様では、エステル化またはエステル交換反応の温度は、約1時間~約4時間に亘って約240℃~約270℃であり、圧力は約5psig~約50psigの範囲である。その後に反応生成物をより高い温度および減圧下で加熱して、ジオールを排除してポリエステルを生成するが、このジオールはこれらの条件下で容易に揮発しシステムから排除される。
【0091】
[0097]第2段階である予備重合または重縮合工程は、より高い真空度で一般に約0.1~約6時間、または約0.2~約2時間に亘って約250℃~約275℃、または約255℃~約270℃、または約260℃~約270℃の範囲の温度の下で、固有粘度により測定される所望の重合度を有するポリマーが得られるまで継続される。重縮合工程は、約200mmHg~500mmHgの範囲の減圧下で実施してもよい。一実施態様では、予備重合反応または重縮合反応の温度は、約1時間~約4時間に亘って約240℃~約270℃の範囲であり、圧力は約200mmHg~約500mmHgの範囲である。攪拌あるいは他の適切な手段または条件を両方の段階に用いて、反応混合物の十分な熱伝達および表面の再生を確実にする。
【0092】
[0098]特定の実施態様では、両方の段階であるエステル化および重縮合の反応速度を、触媒の存在によって上昇させてもよい。一実施態様では、触媒をエステル化反応に添加する。一実施態様では、触媒を重縮合反応に添加する。一実施態様では、チタン化合物およびアンチモン化合物を一緒に添加して、リン化合物を触媒の添加に続いて別の供給物として添加する。一実施態様では、チタン化合物、アンチモン化合物、およびリン化合物を、テレフタル酸のエステル化に続いて添加する。
【0093】
[0099]一実施態様では、仕上げ工程すなわち最終重縮合工程を存在させる。この工程では、反応を所望のIVに到達するまで継続する。本開示の一側面では、この最終の仕上げ工程は、(チタン単独の触媒システムに比較すると)より高い温度で実施される。一実施態様では、有用な仕上げ温度は、280~310℃、または285~300℃の範囲である。高い仕上げ温度は、優れた色調を有する高IVポリエステルの製造を可能にする。
【0094】
[00100]本開示の一実施態様は、ポリエステルを製造するための重縮合物を仕上げ加工するプロセスであり、前記ポリエステルは少なくとも0.50g/dLまたは0.50~0.90g/dLの固有粘度を有し、仕上げ時の重合温度は280~320℃に上昇させて、圧力は0.3~7mmHgとする。
【0095】
[00101]例えば本開示の一実施態様は、結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物を調製するプロセスであり、このプロセスは、テレフタル酸残基を含む二酸成分と、ネオペンチルグリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ジエチレングリコール残基、およびエチレングリコール残基を含むジオール成分を、2~15ppmのチタン化合物および50~150ppmのアンチモン化合物の存在下で240~270℃のエステル化反応温度かつ5~50psiの圧力で反応させてエステル化生成物を製造する工程;このエステル化生成物を0~90ppmのリン化合物の存在下で255~275℃の予備重合温度かつ200~500mmHgの圧力で予備重合して重縮合生成物を製造する工程;およびこの重縮合生成物を仕上げ処理してポリエステルを製造する工程を含み、ここで前記ポリエステルの固有粘度は、少なくとも0.50g/dLまたは0.50~0.90g/dLであり、仕上げ処理時の重合温度は280~320℃に上昇させて、圧力は0.3~7mmHgとする。
【0096】
[00102]別の実施態様は、結晶化可能な反応器級のポリエステル組成物を調製するプロセスであり、このプロセスは、テレフタル酸残基を含む二酸成分と、ネオペンチルグリコール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、ジエチレングリコール残基、およびエチレングリコール残基を含むジオール成分を、240~270℃のエステル化反応温度かつ5~50psiの圧力で反応させてエステル化生成物を製造する工程;このエステル化生成物を2~15ppmのチタン化合物および50~150ppmのアンチモン化合物および0~90ppmのリン化合物の存在下で255~275℃の重縮合温度で予備重合して予備重縮合生成物を製造する工程;およびこの重縮合生成物を仕上げ処理してポリエステルを製造する工程を含み、ここで前記ポリエステルの固有粘度は、少なくとも0.50g/dLまたは0.50~0.90g/dLであり、仕上げ処理時の重合温度は280~320℃に上昇させて、圧力は0.3~7mmHgとする。
【0097】
[00103]エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分の反応の完結を確実にするために、ジカルボン酸成分1モルに対してジオール成分を過剰量の約1.05~約2.5モルにすることが望ましい場合がある。しかし当業者なら、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比は、一般的に、反応工程が起こる反応器の設計によって決定されることが分かっている。
【0098】
[00104]実施態様によっては、適切なグリコールとして、限定はされないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、p-キシレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、ポリテトラメチレングリコール、イソソルビド、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
[00105]一実施態様では、本開示での使用に適する共重合ポリエステルは、例えば、テレフタル酸ジメチル(DMT)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、および2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)などのモノマーから調製される。
【0100】
[00106]本開示に従って、ポリエステル製品を調製するプロセスが提供される。
[00107]一実施態様では、反応区域は、典型的には連続攪拌槽反応器(CSTR)である別々の容器であってもよく、これら容器は、適切な仕切りと制御部を備える複数のエステル化区域を有する一体型ユニットであってもよい。同様に、反応区域は典型的には拭取り膜型または薄膜型のCSTRである別々の容器であってもよく、これら容器は、適切な仕切りおよび制御部を備える複数の重縮合区域を有する1つ以上の一体型ユニットに組み合わされてもよい。種々のその他の型のエステル化反応器および重縮合反応器ならびに反応器配置が当技術分野では既知であり、本開示に従って使用に適合させてもよい。
【0101】
[00108]一実施態様では、2:1のモル比のEGとTPAにより構成されるペーストをペースト槽に供給する。一実施態様では、追加のEGを第1の反応区域または反応器1に供給し、CHDM、TMCD、NPG、およびDEGなどの他のグリコールも同じ位置で第1の反応区域に供給する。一実施態様では、これらのモノマーを、別々にかつ/あるいは直接的に第1の反応区域に添加してもよい。
【0102】
[00109]一実施態様では、第1の反応区域内の反応混合物は、熱交換器を含むリサイクルループを介して加熱される。エステル化が第1の反応区域内で起こり、共重合ポリエステルのモノマー、オリゴマー、またはその両方、および未反応のTPA、EG、ならびにCHDM、TMCD、NPG、またはDEGなどの他のグリコールを含む第1のエステル化生成物が形成される。次いで第1の反応区域の反応生成物は第2の反応区域へ送達される。第2の反応区域内でさらなるエステル化が起こり、追加のポリエステルのモノマー、オリゴマー、またはその両方を含む第2のエステル化生成物が形成される。特定の実施態様では、エステル化段階が終了したモノマーおよび/またはオリゴマーの平均鎖長は、25未満、1~20、あるいは5~15であってもよい。
【0103】
[00110]一実施態様では、次いで第2の反応区域の反応生成物は第3の反応区域に送達されて、共重合ポリエステルのオリゴマーを含む予備重合生成物を生成する。実施態様によっては、第3の反応区域は、エステル化段階を終了したモノマーを、2~40、5~35、または10~30の範囲の平均鎖長を有するオリゴマーに転化する。
【0104】
[00111]次いで予備重合生成物は、1つ以上の最終反応区域または仕上げ区域に送達される。仕上げ区域内ではさらなる重縮合が起こり、所望の平均鎖長またはIVを有する共重合ポリエステルが生成される。次いで共重合ポリエステルは、仕上げ区域から引き出されて、水中ペレット製造機に連結された押出機を介してペレットに形成するなどの後続の処理が実施される。
【0105】
[00112]一実施態様では、反応工程での反応物の平均滞留時間は、2時間以下、1.75時間以下、1.5時間以下、1.25時間以下、1時間以下、または0.75時間以下である。種々の実施態様では、反応工程での反応物の平均滞留時間は、30分~40分である。
【0106】
[00113]一実施態様では、エステル化工程での反応物の平均滞留時間は、2時間以下、1.75時間以下、1.5時間以下、1.25時間以下、1時間以下、または0.75時間以下である。種々の実施態様では、エステル化工程(d)での反応物の平均滞留時間は、30~40分である。
【0107】
[00114]種々の実施態様では、プロセスに導入されるEG:TPAの全体のモル比は、2.3:1~3.0:1の範囲にある。
[00115]種々の実施態様では、プロセスに導入されるEG:TPAの全体のモル比は、2.3:1~2.71:1の範囲にある。
【0108】
[00116]触媒は、エステル化段階中または重縮合段階中のいずれかで添加してもよい。一実施態様では、それら触媒を第1反応区域に供給材料とともに添加する。
[00117]実施態様によっては、リン化合物は、熱安定性を向上させるために触媒とともに添加されることが多い。熱安定剤として有用なリン化合物には、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスホン酸、およびそれらの種々のエステルおよび塩が含まれる。エステルは、アルキル、分岐アルキル、置換アルキル、二官能性アルキル、アルキルエーテル、アリール、および置換アリールであってもよい。実施態様によっては、好適な熱安定剤には、リン酸トリフェニルが含まれる。一実施態様では、リンは、共重合ポリエステルの重量を基準にして、0~90ppmの範囲で添加される。
【0109】
[00118]種々の実施態様では、1つ以上の他の添加剤を、プロセス内の1つ以上の位置で、出発材料、共重合ポリエステル、および/または共重合ポリエステルモノマー/オリゴマーに添加してもよい。種々の実施態様では、適切な添加剤は、例えば、トリメリット酸無水物、トリメチロールプロパン、ピロメリト酸二無水物、ペンタエリスリトール、またはその他のポリ酸またはポリオールなどの三官能性または四官能性の共モノマー;架橋または他の分岐剤;着色剤;トナー;顔料;カーボンブラック;ガラス繊維;フィラー;衝撃改良剤;抗酸化剤;紫外線吸収性化合物;脱酸素化合物などを含んでもよい。
【0110】
[00119]本開示によるプロセスは、工業的規模での使用に特に適している。例えばそれらのプロセスを、ポリマーを500~30,000ポンド/時の速度で流すことができる商業的生産ラインで実施してもよい。
【0111】
[00120]別の側面では、本開示は、本開示のプロセスから製造される共重合ポリエステルに関する。
[00121]実施態様によっては、本開示で有用なポリエステルを製造するプロセス中に、トナーまたは染料を含むポリマーを着色する特定の薬剤を溶融物に添加してもよい。一実施態様では、得られるポリエステルポリマー溶融相生成物のb*値を低下させるために、青色トナーを溶融物に添加する。そのような青色化剤には、青色の無機および有機トナーおよび/または染料が含まれる。さらに赤色のトナーおよび/または染料を用いてa*色値を調整してもよい。有機トナー、例えば米国特許第5,372,864号および第5,384,377号に記載される青色および赤色有機トナーを用いてもよく、これら特許はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。有機トナーは、予備混合組成物として供給されてもよい。予備混合組成物は、赤色および青色化合物のニートブレンドであってもよく、あるいはこの組成物を、エチレングリコールなどのポリエステル原料のうちの1種に予め溶解またはスラリー化しておいてもよい。
【0112】
[00122]添加されるトナー成分の総量は、基質ポリエステル中の固有の黄色の量およびトナーの効力に依存してもよい。一実施態様では、組合せた有機トナー成分を約15ppmの最大濃度と約0.5ppmの最小濃度で使用してもよい。一実施態様では、青色化添加剤の総量は、0.5~10ppmの範囲であってもよい。一実施態様では、トナーは、エステル化区域または重縮合区域に添加してもよい。好ましくは、トナーは、エステル化区域あるいは予備重合反応器などの重縮合区域の初期段階に添加される。
【0113】
[00123]実施態様では、ポリエステル組成物は、組成物全体の0.01~25重量%で、離型剤、滑止め剤、粘着防止剤、難燃剤、可塑剤、ガラスバブル、核剤、限定はされないが紫外線安定剤、熱安定剤を含む安定剤、および/またはそれらの反応生成物、充填剤、および衝撃改質剤などの一般的な添加剤を含んでもよい。市販の衝撃改質剤の例としては、限定はされないが、エチレン/プロピレン三元重合体、アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸グリシジルなどの官能化ポリオレフィン、スチレン系ブロック共重合体である各衝撃改質剤、および種々のアクリルコア/シェル型衝撃改質剤が含まれる。このような添加剤の残基もまた、ポリエステル組成物の一部と見做される。
【0114】
[00124]一実施態様では、本開示の結晶化可能な組成物を、熱収縮性フィルムおよび熱成形性シートを含むフィルムおよびシートの製造に用いる。熱収縮性プラスチックフィルムを、物体を一緒に保持する被覆材として、かつボトル、缶、および他種の容器の外装材として用いる。例えば、このようなフィルムを、ボトルの蓋部、首部、肩部、胴部、またはボトル全体の被覆のために、ラベル付け、保護、包装、または製品価値の向上の目的のために、またその他の理由のために用いる。さらにこのようなフィルムは、箱、ボトル、板、棒、ノートなどの対象物を群に纏めて包装するための被覆材として使用してもよく、かつこのようなフィルムをまた包装として密着させてもよい。上述のような使用には、フィルムの収縮性および内部収縮応力を利用する。
【0115】
[00125]歴史的に、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムは、収縮フィルム市場の主流であった。しかし、ポリエステルフィルムはPVCフィルムが関与する環境問題を抱えていないために、ポリエステルフィルムは重要な代替品となってきた。ポリエステル収縮フィルムは、PVCフィルムと非常に類似した特性を理想的に備えているので、ポリエステルフィルムは「落とし込み(drop-in)」方式の代替フィルムとして機能でき、既存の熱収縮トンネル装置で処理できる。代替品に対して望まれるPVCフィルムの特性には、(1)比較的低い収縮開始温度、(2)温度の上昇につれ徐々にかつ制御された方式で増加する総収縮率、(3)下に存在する容器の潰れを防ぐための低い収縮力、(4)高い総収縮率(例えば50%以上)、および(5)収縮の前後でのフィルムの不要な引き裂けおよび分裂を防ぐための固有のフィルム靭性が挙げられる。
【0116】
[00126]熱収縮性フィルムは、この用途で実行化するには、使用基準に対し様々な適合性を満たす必要がある。フィルムは丈夫であり、制御された方式で収縮し、内容物を潰すことなくボトル表面にそれ自体を保持するのに十分な収縮力を提供する必要がある。さらに、これらのラベルをポリエステル容器に貼付ける場合には、これらラベルがペットボトルの再資源化工程を妨害してはならない。実際のところ、ラベルもまた再資源化可能であり、追加の操作要件が発生せずに、あるいは新しい環境問題を発生することなく、ボトル全体が再資源化できて新規の製品に変換できるのであれば、好都合なこととなる。熱収縮フィルムは、一定範囲の材料の需要を満たすために、様々な原材料から製造されている。この開示は、ポリエステル収縮フィルムからなるラベルの再資源化性を改善する特定のモノマーとの組合せにより対処された類のないかつ予想外の効果を説明している。
【0117】
[00127]ポリエステル収縮フィルム組成物は、食品、飲料、身の回り用品、家庭用品などの収縮フィルムラベルとして商業的に使用されている。多くの場合に、これらの収縮フィルムは、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルまたは容器と組み合わせて使用される。その後に、製品の全体(ボトルとラベル)は再資源化プロセスに入れられる。典型的な再資源化拠点では、組成と密度が類似することにより、PETおよび収縮フィルム材料は、プロセスの最後には混在されることがよくある。PET薄片の乾燥は、再資源化プロセス中にPETに付着する残留水を除去するのに必要となる。典型的には、再資源化プロセス中に、PETは200℃を超える温度で乾燥されるが、これらの温度では、典型的なポリエステル収縮フィルム樹脂は、軟化して粘着性になり、PET薄片とともに凝集塊を形成する場合が多い。これらの凝集塊は、その後の処理の前に除去する必要がある。これらの凝集塊により、このプロセスからのPET薄片の収率が低下し、追加の操作工程が必要となる。
【0118】
[00128]本開示の実施態様では、本開示で有用なポリエステルおよび/またはポリエステル組成物を含む特定の配向フィルムおよび/または収縮フィルムは、以下の特性の全ての固有の組合せを持つことができる:優れた延伸性、制御された収縮特性、特定の強靭性、特定の固有粘度、特定のガラス転移温度(Tg)、特定の歪み誘起結晶の融点、特定の曲げ弾性率、特定の密度、特定の引張弾性率、特定の表面張力、優れた溶融粘度、優れた透明度、および優れた色調。
【0119】
[00129]一実施態様では、本開示によるフィルムおよび収縮フィルムは、0.01~10重量%のポリエステル可塑剤、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,329,393号に記載されている可塑剤を含んでもよい。一実施態様では、収縮フィルムは0.1~5重量%のポリエステル可塑剤を含んでもよい。
【0120】
[00130]一側面では、本開示は、本開示の結晶化可能なポリエステル組成物を含む収縮フィルム、押出シート、熱成形物品、および成形物品に関する。ポリエステル組成物をフィルムおよび/またはシートに成形する方法は、当技術分野では周知である。本開示の有用なシートの例には、限定はされないが、押出シート、圧縮成形フィルム、圧延フィルムおよび/またはシート、溶液キャストフィルムおよび/またはシートが含まれる。一側面では、本開示の収縮フィルムを製造するのに有用なフィルムおよび/またはシートを製造する方法には、限定はされないが、押出成形、圧縮成形、圧延加工、および溶液キャストが含まれる。
【0121】
[00131]一実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物は、ポリエステルからフィルムを製造する当技術分野で既知の任意の方法、例えば、溶液キャスト、押出、圧縮成形、または圧延加工を用いてフィルムに製造される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,846,440号;第6,551,699号;第6,551,688号;および第6,068,910号を参照。
【0122】
[00132]一実施態様では、形成したままのフィルムは、続いて(例えば一軸および/または二軸配向フィルムとして)1つ以上の方向に配向される。フィルムのこの配向は、標準的な配向条件を用いて、当技術分野で既知の任意の方法によって実施できる。一実施態様では、本開示の配向フィルムは、約100~400μmの厚さを有するフィルム、例えば押出、キャスト、または圧延加工したフィルムから製造してもよく、この配向フィルムは、Tg~Tg+55℃、または70℃~125℃の温度で5:1~3:1の比率に、例えば70℃~100℃の温度で5:1または3:1の比率に配向されてもよく、またこのフィルムは、20~80μmの厚さに配向されてもよい。一実施態様では、初期の予備収縮されたフィルムの配向は、これらの配向条件に従って幅出し機(tenter frame)で実行してもよい。本開示の収縮フィルムは、本開示の配向されたフィルムから製造してもよい。
【0123】
[00133]一実施態様では、本開示の収縮フィルムは、約55~約80℃、または約55~約75℃、または約55~約70℃の収縮開始温度を有してもよい。収縮開始温度は、収縮の開始が起こる温度である。
【0124】
[00134]特定の実施態様では、本開示で有用なポリエステル組成物は、1.6g/cc以下、または1.5g/cc以下、または1.4g/cc以下、または1.1g/cc~1.5g/cc、または1.2g/cc~1.4g/cc、または1.2g/cc~1.35g/ccの密度を有してもよい。
【0125】
[00135]一実施態様では、フィルムまたは成型物品に多くの小さな空孔または穴を導入して、フィルムの密度を低下させる。このプロセスは「空孔形成(voiding)」と呼ばれ、「空洞形成(cavitating)」または「微細空孔形成(microvoiding)」と呼ばれることもある。これらの孔は、約1~約50重量%の小さな有機粒子または(ガラス製微小球を含む)無機粒子あるいは「介在物」(当技術分野では「空孔形成」剤または「空洞形成」剤と呼ばれる)を母材ポリマー中に組み込み、かつ少なくとも一方向に延伸してポリマーを配向させて得られる。延伸中に、空孔形成剤の周囲に小さな空洞または空孔が形成される。空孔がポリマーフィルム中に導入されると、得られた空孔付きフィルムは、空孔不含フィルムよりも密度が低いだけでなく、不透明になり紙のような表面が現れる。この表面はまた、印刷適性を向上させる利点を有し、すなわち表面は、空孔不含フィルムよりも実質的に大きな容量で多くのインクを受け入れることができる。空孔付きフィルムの典型的な例は、米国特許第3,426,754号;3,944,699号;4,138,459号;4,582,752号;4,632,869号;4,770,931号;5,176,954号;5,435,955号;5,843,578号;6,004,664号;6,287,680号;6,500,533号;6,720,085号;米国特許出願公開第2001/0036545号;2003/0068453号;2003/0165671号;2003/0170427号;日本特許出願公開第61-037827号;63-193822号;2004-181863号;欧州特許第0 581 970 B1号;欧州特許出願公開第0 214 859 A2号に記載されている。
【0126】
[00136]特定の実施態様では、押し出されたままのフィルムは、延伸中に配向される。本開示の配向フィルムまたは収縮性フィルムは、所望の最終用途に応じて任意の厚さを持つフィルムから作製できる。一実施態様では、望ましい条件は、配向フィルムおよび/または収縮性フィルムとして、ラベル、紙などの基板に接着し得る写真フィルムなどの用途のために、および/またはそれらフィルムが、ボトルまたは容器に有用で、かつそれらの外側を包囲するように収縮できるその他の用途のためにインクで印刷できることである。本開示で有用なポリエステルを、PETなどの別のポリマーと共押出して、フィルムを本開示の配向フィルムおよび/または収縮フィルムとして使用可能とすることが望ましい場合がある。後者の共押出を実施することの1つの利点としては、実施態様によっては、結合層(tie layer)を必要としなくてもよいことである。
【0127】
[00137]特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、殆どあるいは全くしわが入らないように緩やかに収縮する。特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、5℃の温度上昇ごとに横断方向に40%以下の収縮率を有する。
【0128】
[00138]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、65℃の水に10秒間浸漬した際に、機械方向に10%以下、または5%以下、または3%以下、または2%以下の収縮率を有するか、あるいは収縮しない。本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、65℃の水に10秒間浸漬した際に、機械方向に-10%~10%、-5%~5%、または-5%~3%、または-5%~2%、または-4%~4%、または-3%~4%、または-2%~4%、または-2%~2.5%、または-2%~2%、または0~2%の収縮率を有するか、あるいは収縮しない。ここで機械方向の負の収縮率は、機械方向への膨張を示す。機械方向の正の収縮率は、機械方向への収縮を示す。
【0129】
[00139]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、95℃の水に10秒間浸漬した際に、主収縮方向に50%以上、または60%以上、または70%以上の収縮率を有する。
【0130】
[00140]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、95℃の水に10秒間浸漬した際に、主収縮方向に50~90%の収縮率を有し、かつ機械方向に10%以下または-10%~10%の収縮率を有する。
【0131】
[00141]一実施態様では、本開示で有用なポリエステルは、ポリエステルからフィルムを製造するための当技術分野で既知の任意の方法、例えば、溶液キャスト、押出、圧縮成形、または圧延加工を用いてフィルムにされる。次に、押し出されたままの(または形成されたままの)フィルムは、1つ以上の方向に配向される(例えば一軸および/または二軸配向されたフィルム)。フィルムのこの配向は、標準的な配向条件を用いて、当技術分野で既知の任意の方法によって実施してもよい。例えば、本開示の一軸配向フィルムは、厚さが約100~400μmのフィルム、例えば、押出、キャスト、または圧延されたフィルムから作製してもよく、このフィルムは、フィルムのTg~Tg+55℃の温度で6.5:1~3:1の比率で延伸してもよく、かつ20~80μmの厚さまで延伸してもよい。一実施態様では、初期の押し出されたままのフィルムの配向は、これらの配向条件に従って幅出し機で実行してもよい。
【0132】
[00142]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、約55~約80℃、または約55~約75℃、または約55~約70℃の収縮開始温度を有してもよい。収縮開始温度は、収縮の開始が起こる、あるいは収縮性フィルムが収縮を開始する温度である。
【0133】
[00143]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、55℃~70℃の収縮開始温度を有してもよい。
[00144]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、ASTM法D882に従って、主収縮方向に直交する方向に500mm/分の延伸速度で200%を超える破断歪み率を有してもよい。
【0134】
[00145]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、ASTM法D882に従って、主収縮方向に直交する方向に500mm/分の延伸速度で300%を超える破断歪み率を有してもよい。
【0135】
[00146]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、ASTM法D882に従って測定して、20~400MPa、または40~260MPa、または42~260MPaの破断時の引張応力(破断応力)を有してもよい。
【0136】
[00147]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、延伸条件および所望の最終用途に応じて、ISO法14616によって測定して、4~18MPa、または4~15MPaの収縮力を有してもよい。例えば、LabThink社製のFST-02熱収縮試験器を使用してISO法14616によって測定され、MPaの単位で記録される場合に、プラスチックボトル用に作製された特定のラベルは、4~8MPaの収縮力を有してもよく、ガラスボトル用に作製された特定のラベルは、10~14Mpaの収縮力を有してもよい。
【0137】
[00148]本開示の一実施態様では、ポリエステル組成物は、典型的には反応器級(reactor grade)の組成物と呼ばれるポリエステルを製造するための既知の方法によって、モノマーを反応させて生成してもよい。
【0138】
[00149]収縮フィルムからなる成形品、あるいは収縮フィルムからなるのでなく、そのフィルムを含む成形物品はまた、本明細書に開示されるポリエステル組成物のいずれかから製造でき、かつ本開示の範囲内に含まれる。
【0139】
[00150]一実施態様では、約100~400μmの予備配向された厚さを有し、続いてTg~Tg+55℃の温度かつ6.5:1~3:1の比率で約20~約80μmの厚さまで幅出し機で配向される場合に、本開示の収縮フィルムは、以下の特性、すなわち(1)95℃の水に10秒間浸漬した際に、主収縮方向すなわち横断方向に60%を超える(または70%を超える)量で収縮、かつ機械方向に10%以下(または-5%~4%)で収縮、(2)約55℃~約70℃の収縮開始温度、(3)ASTM法D882に従って、横断方向、機械方向、あるいは両方向に、500mm/分の延伸速度で200%超、または200~600%、または200~500%、または226~449%、または250~455%の破断歪み率、(4)5℃の温度上昇ごとに40%以下の収縮、および/または(5)200℃以上の歪み誘起結晶の融点、のうちの1つ以上を有してもよい。これらの特性の任意の組合せ、またはこれらの特性の全ては、本開示の収縮フィルムに存在してもよい。本開示の収縮フィルムは、上述の収縮フィルム特性のうちの2つ以上の組合せを有してもよい。本開示の収縮フィルムは、上記の収縮フィルム特性のうちの3つ以上の組合せを有してもよい。本開示の収縮フィルムは、上述の収縮フィルム特性のうちの4つ以上の組合せを有してもよい。特定の実施態様では、(1)~(2)の特性が存在する。特定の実施態様では、(1)~(5)の特性が存在する。特定の実施態様では、(1)~(3)などの特性が存在する。
【0140】
[00151]本明細書での収縮率は、Tg~Tg+55℃の温度で6.5:1~3:1の比率で、例えば70℃~85℃の温度で5:1の比率で幅出し機で配向された約20~80μmの厚さを有する初期の生成されたままのフィルムに基づいている。一実施態様では、本開示の収縮フィルムを作製するのに用いられる配向フィルムの収縮特性に、そのフィルムが配向された温度よりも高い温度でフィルムを熱処理しても変動はなかった。
【0141】
[00152]本開示の配向フィルムまたは収縮フィルムを作製するのに有用なフィルムの形状は、全く制限を受けない。例えば、その形状は、平坦なフィルム、あるいは管状に形成されたフィルムであってもよい。管状に形成されたフィルムは、縫合溶剤または縫合接着剤を用いて、収縮中にフィルムの端部を一緒に結合または保持できる。本開示で有用な収縮フィルムを製造するために、ポリエステルは、まず平坦なフィルムに形成され、次いで「一軸延伸」され、これは、ポリエステルフィルムを一方向に配向することを意味し、次いで延伸フィルムの端部を縫合溶剤または縫合接着剤を用いて結合して管またはスリーブを形成する。フィルムはまた「二軸配向」してもよく、これは、ポリエステルフィルムを2つの異なる方向に配向することを意味し、例えば、フィルムは、機械方向と機械方向とは異なる方向の両方向に延伸される。典型的には2つの方向は実質的に垂直であるが、常にそうとは限らない。例えば、一実施態様では、2つの方向は、フィルムの長手方向または機械方向(「MD」)(フィルム製造機でフィルムが製造される方向)およびフィルムの横断方向(「TD」)(フィルムのMDに対し垂直な方向)である。二軸配向フィルムは、連続的に配向されてもよく、同時に配向されてもよく、あるいは同時および連続的な延伸の何らかの組合せによって配向されてもよい。
【0142】
[00153]フィルムは、ロール延伸法、長間隙延伸(long-gap stretching)法、幅出し延伸法、および管状延伸法などの任意の通常の方法によって配向させてもよい。これらの方法のいずれかを使用して、連続二軸延伸、同時二軸延伸、一軸延伸、またはこれらの組合せを実施してもよい。上述の二軸延伸により、機械方向と横断方向の延伸を同時に実施してもよい。また延伸を、まず一方向に実施し、次に他の方向に実施して、効率的に二軸延伸をもたらすこともできる。一実施態様では、フィルムの延伸を、フィルムをそれらのガラス転移温度(Tg)よりも5℃~80℃高く予備的に加熱して実施する。一実施態様では、フィルムを、それらのTgより5℃~30℃高い温度で予備的に加熱してもよい。一実施態様では、延伸速度は、毎秒0.5~20インチ(1.27~50.8cm)である。次にフィルムを、例えば、機械方向、横断方向、または両方向のいずれかに、元の寸法の2~6倍に配向してもよい。フィルムは、単一フィルム層として配向させてもよく、あるいは多層フィルムとしてPET(ポリエチレンテレフタレート)などの別のポリエステルと共押出ししてその後配向させてもよい。
【0143】
[00154]一実施態様では、本開示は、本開示の収縮フィルムの実施態様のうちのいずれかの収縮フィルムを含む製造物品または成形物品を含む。別の実施態様では、本開示は、本開示の配向フィルムの実施態様のうちのいずれかの配向フィルムを含む製造物品または成形物品を含む。
【0144】
[00155]特定の実施態様では、本開示は、限定はされないが、容器、プラスチックボトル、ガラスボトル、梱包品、電池、高温充填容器、および/または工業製品または他の用途に適合する収縮フィルムを含む。一実施態様では、本開示は、限定されないが、容器、梱包品、プラスチックボトル、ガラスボトル、紙などの写真用基板、電池、高温充填容器、および/または工業製品または他の用途に適合する配向フィルムを含む。
【0145】
[00156]本開示の特定の実施態様では、本開示の収縮フィルムは、ラベルまたはスリーブに形成してもよい。次にラベルまたはスリーブを、容器の壁、電池などの製造物品に、あるいはシートまたはフィルムの上に貼付してもよい。
【0146】
[00157]本開示の配向フィルムまたは収縮フィルムは、管またはボトルなどの成型物品に貼付でき、様々な包装用途に一般的に使用される。例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)などのポリマーから製造されたフィルムおよびシートは、プラスチック飲料容器または食品容器用の収縮ラベルの製造に頻繁に使用される。例えば、本開示の収縮フィルムは、多くの包装用途で使用でき、この用途では、成型物品に貼付される収縮フィルムは、優れた印刷適性、優れた収縮力、優れた質感、高い収縮率、制御された収縮速度、高い剛性、および再資源化性などの特性を示す。
【0147】
[00158]収縮特性の改善ならびに再資源化性により、限定はされないが、容器、プラスチックボトル、ガラスボトル、梱包品、電池、高温充填容器、および/または工業製品または他の用途に貼付される収縮フィルムなどの新規の商業的な選択肢を提供できるはずである。
【0148】
[00159]本開示の一側面では、開示されたポリエステル組成物は、熱成形シート、および/または熱成形性シートとして有用である。本開示はまた、本開示の熱成形シートを組込んだ製造物品を対象とする。一実施態様では、本開示のポリエステル組成物は、成型または形成された物品または部品に容易に成形されるシートとして有用である。一実施態様では、本開示のフィルムおよび/またはシートは、熱成形によって成形物品または部品に加工できる。本開示のポリエステル組成物は、様々な成形および押出の用途で使用されてもよい。
【0149】
[00160]さらに一実施態様では、本開示の熱成形シートで有用なポリエステル組成物はまた、着色剤、粘着防止剤、滑り剤、離型剤、難燃剤、可塑剤、核生成剤、限定はされないが紫外線安定剤、熱安定剤などの安定剤、充填剤、および衝撃改質剤などの一般的な添加剤を、組成物全体の0.1~25重量%で含んでもよい。
【0150】
[00161]一実施態様では、補強材が、本開示のポリエステル組成物を含む熱成形シート中に含まれてもよい。例えば適切な補強材として、炭素繊維、ケイ酸塩、雲母、クレー、タルク、二酸化チタン、ウォラストナイト、ガラス薄片、ガラスビーズおよび繊維、ポリマー繊維、およびそれらの組合せが含まれてもよい。
【0151】
[00162]一実施態様では、本開示の熱成形シートは、多層シートである。一実施態様では、多層シートの少なくとも一層は、発泡体層、あるいは発泡ポリマーまたはポリエステル層である。
【0152】
[00163]本開示の一側面は、熱成形を使用して形成または成型された部品および物品を製造する方法である。当業者に既知の任意の熱成形技術またはプロセスを使用して、本開示の形成または成型された物品および部品を製造できる。
【0153】
[00164]一実施態様では、熱成形プロセスは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる「熱成形の技術」"Technology of Thermoforming "(Throne, James; Hanser Publishers; 1996; pp. 16-29を参照)で教示されているように、いくつかの手法で実施できる。実施態様によっては、そのプロセスは、ガス圧または空気圧を軟化させたシートに加え、次にシートをバブルのように延伸かつ引き出し、雄型を内側からそのバブル内に入れる雄型の熱成形プロセスである。次に真空を加えて、部品をさらに引き出して、雄型の表面に適合させる。この熱成形プロセスでは、軟化させたシートにガス圧または空気圧が加えられた際に、主に1回の工程で2軸延伸/配向が実行される。次に成形工程は、シートのTg未満まで冷却し、真空および雄型を使用して、物理特性と外観特性の良好なバランスを取るために配向をシート内に固定して完了させる。他の実施態様では、そのプロセスは、真空または物理的プラグを熱軟化させたシートに加えて、シートをほぼ最終部品寸法まで延伸かつ引き出し、次に、内部からの正の空気圧または外部からのさらなる外側の真空引きによりシートを引き出し、外側の雌型に適合させる雌型の熱成形プロセスであり、シートのTg未満まで冷却して配向を固定して、シートを物品に成形する。
【0154】
[00165]実施態様によっては、バブルの生成は、さらにプラグ補助具を利用して形成されることがあり、これに続いて上昇する雄型をシートで覆ってかつ成型し、次いで角部および棚案内部などを真空を加えて型内に引き込む。実施態様によっては、型から取り外した後に、形成された部品または物品を、必要に応じて、切除し、穴開けし、角部を切り取ることができる。
【0155】
[00166]他の実施態様では、熱成形は、本開示のポリエステル組成物のシートが、それが変形できるのに十分な温度に加熱され、次いで加熱されたシートを、真空補助、空気圧補助、およびマッチドモールド補助のような手段によって型の輪郭に適合させるプロセスである。別の実施態様では、加熱されたシートは型内に配置され、例えば、空気圧をかける、真空プラグ補助具を使用する、またはマッチドモールドを使用することで、型の輪郭に合致するように強制される。実施態様によっては、熱成形により薄肉物品を製造する。実施態様によっては、熱成形により厚肉物品を製造する。
【0156】
[00167]一実施態様では、熱成形プロセスは、雄型を加熱されたシートに押し込むことによって、シートを所望の形状に成形する。特定の実施態様では、熱成形は、真空にした表面またはテーブルの間に支持された物品の雄型を有することを含む。これらの実施態様では、熱風送風機、熱ランプ、またはその他の放射熱源などの外部熱源からの熱をシートに向ける。これらの実施態様では、シートは軟化点まで加熱される。これらの実施態様では、次にテーブル、テーブルの下、かつ型の周りを真空にして、熱で軟化したシートをテーブルに向かって引き寄せて、軟化したシートを型表面と接触させるように配置する。これらの実施態様では、真空により、軟化したシートを型表面の輪郭と緊密に接触させて、それに合致するように引き寄せる。これによりシートは型の形状となる。これらの実施態様では、シートが冷却された後にシートは硬化して、得られた物品または部品を型から取り出すことができる。
【0157】
[00168]一実施態様では、熱成形プロセスは、本開示のポリエステル組成物からシートを形成する工程;シートが軟化するまで加熱しそのシートを型の上に配置する工程;予熱されたシートを加熱された型表面に引き寄せる工程;シートを冷却する工程;次に形成された物品または部品を型の窪みから取り出す工程、あるいは、必要に応じてシートを部分的に結晶化するのに十分な時間で、加熱された型に対してシートを接触させ続けて成形シートを加熱硬化させる工程を含む。
【0158】
[00169]一実施態様では、熱成形プロセスは、本開示のポリエステル組成物からシートを形成する工程;ポリエステルのTg以上の温度にシートを加熱する工程;熱で軟化したシートにガス圧、真空、および/または物理的圧力を加えて、シートをほぼ最終部品寸法に延伸する工程;真空または圧力によってシートを型の形状に適合させる工程;シートをポリエステルのTg未満の温度に冷却する工程;次に熱成形された物品または部品を型から取り出す工程を含む。
【0159】
[00170]熱成形プロセスで使用するシートは、当業者に既知の任意の従来からの方法によって作製してもよい。一実施態様では、シートは押出しによって形成される。一実施態様では、シートは圧延によって形成される。一実施態様では、熱成形プロセス中に、シートはポリエステルのTg以上の温度に加熱される。一実施態様では、この温度は、ポリエステルのTgよりも約10℃~約60℃高い。一実施態様では、より短い成形時間を実現するために、熱成形型の上に配置する前にシートを加熱することが必要である。一実施態様では、シートをそのTgより高く、かつ型の窪みの上に配置中にシートが過度に撓む温度よりも低く加熱する必要がある。一実施態様では、成形されたシートを型から取り出す前に、ポリエステルのTg未満の温度に冷却するのがよい。一実施態様では、熱成形方法には、真空補助具、空気補助具、機械的プラグ補助具、またはマッチドモールドを含んでもよい。実施態様によっては、型をシートのTg以上の温度に加熱する。最適な型温度の選択は、熱成形装置の型、形成される物品の構造および肉厚、およびその他の因子に依存する。
【0160】
[00171]実施態様によっては、加熱されたシートを、真空を発生させてかつ真空引きして延伸する。
[00172]一実施態様では、加熱硬化は、明らかな配向を存在させずに、ポリエステルシートの部分的な結晶化を熱的に誘発するプロセスである。一実施態様では、加熱硬化は、シートと加熱された型表面との接触を、完成部品に適切な物理的特性を付与する結晶化度の水準を達成するのに十分な時間で維持して達成される。特定の実施態様では、結晶化度(相対結晶化度)の水準を、8cal/gより大きくすべきである。
【0161】
[00173]一実施態様では、加熱硬化された部品は、取り出しのための既知の手段によって型の窪みから取り出してもよい。例えば、一実施態様では、吹き戻し(blowback)を使用し、それは圧縮空気を導入して、型と成形されたシートとの間に構築された真空を破ることを含む。実施態様によっては、形成された物品または部品の余分な部分を、その後切り取って廃物は粉砕して再資源化する。
【0162】
[00174]実施態様によっては、核生成剤の添加により、熱成形中のより速い結晶化を提供し、従ってより速い成形を提供する。一実施態様では、微粒子サイズの無機材料または有機材料などの核生成剤を使用してもよい。例えば、一実施態様では、適切な核生成剤として、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、および非混和性ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。一実施態様では、核生成剤は、物品の重量に基づいて、約0.01%~約20%で変動する量で使用してもよい。一実施態様では、顔料、色素、可塑剤、亀裂防止剤、および安定剤などのその他の従来からの添加剤を、熱成形のために必要に応じて使用してもよい。実施態様によっては、亀裂防止剤は衝撃強度を改善し、核生成剤はより速い結晶化を提供する。実施態様によっては、結晶化は、高温安定性を達成するために必要である。
【0163】
[00175]一実施態様では、発泡ポリエステルシートは、本開示のポリエステル組成物を化学的および/または物理的な発泡剤で発泡させ、発泡ポリエステルをシートに押し出し、発泡ポリエステルシートを熱成形して作製される。発泡ポリエステルシートの特性を向上するための添加剤を、発泡前にポリエステルに添加してもよい。その添加剤の例としては、滑り剤、粘着防止剤、可塑剤、蛍光増白剤、および紫外線阻害剤が挙げられる。一実施態様では、発泡ポリエステルシートは、その特性を向上するために、従来からの技術を使用して片面または両面に被覆がなされた押出成形品または積層品であってもよい。一実施態様では、被覆材料は、発泡シート自体ではなく、製品のラベル付けを提供する印刷面であってもよい。
【0164】
[00176]特定の実施態様では、本開示の組成物は、形成または成型されたプラスチック部品として、または固形プラスチック物品として有用である。実施態様によっては、本開示の組成物は、熱成形された部品または物品として有用である。実施態様によっては、本開示の組成物は、透明で硬質のプラスチックが必要とされる任意の用途での使用に適している。実施態様によっては、例えば本開示の組成物は、使い捨てのナイフ、フォーク、スプーン、皿、カップ、ストロー、ならびに眼鏡フレーム、歯ブラシの柄、玩具、自動車装備品、工具の柄、カメラ部品、電子機器の部品、かみそり部品、インクペン軸、使い捨て注射器、ボトルなどの部品としての使用に適している。一実施態様では、本開示の組成物は、プラスチック、フィルム、繊維、およびシートとして有用である。
【0165】
[00177]一実施態様では、組成物は、ボトル、ボトル蓋、眼鏡フレーム、刃物類、使い捨て刃物類、刃物類の柄、棚、棚仕切り板、電子機器の筐体、電子機器ケース、コンピュータモニター、プリンター、キーボード、管、自動車部品、自動車内装部品、自動車装備品、看板、熱成形文字、壁板、玩具、熱伝導性プラスチック、眼科用レンズ、工具、工具の柄、および家庭用品を製造するプラスチックとして有用である。別の実施態様では、本開示の組成物は、フィルム、シート、繊維、形成物品、成型物品、形成部品、成型部品、医療機器、歯科用トレイ、歯科用器具、容器、食品容器、輸送用容器、梱包品、ボトル、ボトル蓋、眼鏡フレーム、刃物類、使い捨て刃物類、刃物類の柄、棚、棚仕切り板、家具部品、電子機器筐体、電子機器ケース、コンピューターモニター、プリンター、キーボード、管、歯ブラシの柄、自動車部品、自動車内装部品、自動車装備品、看板、屋外看板、天窓、多壁層フィルム、多層フィルム、断熱部品、断熱物品、断熱容器、熱成形文字、壁板、玩具、玩具部品、トレイ、食品トレイ、歯科用トレイ、熱伝導性プラスチック、眼科用レンズおよび枠材、工具、工具の柄、および家庭用品、健康管理用品、市販の食品供給製品、箱、グラフィックアート用フィルム、プラスチックガラス積層板用プラスチックフィルム、購入ポイント表示部、天窓、排煙口、積層カード、窓割り(fenestration)、ガラス窓(glazing)、仕切り板、天井タイル、照明、機械防護板、グラフィックアート、レンズ、押出し積層シートまたはフィルム、装飾積層板、オフィス家具、フェイスシールド、医療用梱包品、表示棚の看板ホルダー、および棚の価格ホルダーとしての使用に適している。
【0166】
[00178]本開示の熱成形シートまたは熱成形性シートは、フィルム、形成物品、形成部品、成型物品、成型部品、およびシートを形成するのに有用である。熱成形組成物または熱成形性組成物を、フィルム、形成物品、形成部品、成型物品、成型部品、およびシートに製造する方法は、当技術分野で既知の任意の方法に従ってもよい。形成物品の例には、限定はされないが、医療機器梱包品、医療用梱包品、健康管理用品、トレイ、容器、食品皿、タンブラー、収納箱、ボトル、食品加工器、ブレンダーおよびミキシングボウルなどの市販の食品供給製品、家庭用品、水ボトル、野菜室トレイ、洗濯機部品、冷蔵庫部品、掃除機部品、眼科用レンズとフレーム、および玩具が含まれる。
【0167】
[00179]本開示はさらに、本明細書に説明のポリエステル組成物を含むシートを含む製造物品に関する。実施態様によっては、本開示のシートは意図される用途に必要な任意の厚さであってもよい。
【0168】
[00180]本開示はさらに、本明細書に説明のシートに関する。ポリエステル組成物をシートに形成する方法には、当技術分野で既知の任意の方法が含まれる。本開示のシートの例として、限定はされないが、押出シート、圧延シート、圧縮成形シート、および溶液キャストシートが挙げられる。本開示のシートを作製する方法として、限定はされないが、押出し、圧延、圧縮成形、湿式ブロック加工、乾式ブロック加工、および溶液キャストが挙げられる。
【0169】
[00181]本開示はさらに、本明細書に説明の形成物品または成型物品に関する。ポリエステル組成物を形成物品または成型物品に形成する方法には、当技術分野で既知の任意の方法が含まれる。本開示の形成物品または成型物品の例としては、限定はされないが、熱成形物品または熱成形性物品、射出成形物品、押出成形物品、射出ブロー成形物品、射出延伸ブロー成形物品、および押出ブロー成形物品が挙げられる。形成物品の製造方法には、限定はされないが、熱成形、射出成形、押出、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、および押出ブロー成形が含まれる。本開示のプロセスは、当技術分野で既知の任意の熱成形プロセスを含んでもよい。本開示のプロセスには、限定はされないが、押出ブロー成形、押出延伸ブロー成形、射出ブロー成形、および射出延伸ブロー成形を含む、当技術分野で既知の任意のブロー成形プロセスを含んでもよい。
【0170】
[00182]本開示は、当技術分野で既知の任意の射出ブロー成形製造プロセスを含む。限定はされないが、典型的な射出ブロー成形(IBM:injection blow molding)製造プロセスは、1)往復スクリュー押出機中で組成物を溶融する工程、2)溶融組成物を射出成形金型に注入して、一端が閉じられた部分的に冷却された管(すなわち予備成形物)を形成する工程、3)予備成形物を、予備成形物の周りに所望の最終形状を有するブロー金型内に移動して、予備成形物の周りのブロー金型を閉じる工程、4)予備成形物中に空気を吹き込み、予備成形物を延伸・膨張させて金型を満たす工程、5)成形物品を冷却する工程、および6)金型から物品を取り出す工程を含む。
【0171】
[00183]本開示は、当技術分野で既知の任意の射出延伸ブロー成形製造プロセスを含む。限定はされないが、典型的な射出延伸ブロー成形(ISBM:injection stretch blow molding)製造プロセスは、1)往復スクリュー押出機中で組成物を溶融する工程、2)溶融組成物を射出金型中に注入して、一端が閉じられた部分的に冷却された管(すなわち予備成形物)を形成する工程、3)予備成形物を、予備成形物の周りに所望の最終形状を有するブロー金型に移動して、予備成形物の周りのブロー金型を閉じる工程、4)内部延伸ロッドを用いて予備成形物を延伸し、予備成形物中に空気を吹き込み、予備成形物を延伸・膨張させて金型を満たす工程、5)成形物品を冷却する工程、および6)金型から物品を取り出す工程を含む。
【0172】
[00184]本開示は、当技術分野で既知の任意の押出ブロー成形製造プロセスを含む。限定はされないが、典型的な押出ブロー成形製造プロセスは、1)押出機中で組成物を溶融する工程、2)溶融組成物をダイを通して押し出して、溶融ポリマーの管(すなわちパリソン)を形成する工程、3)パリソンの周りに所望の最終形状を有する金型を固定する工程、4)パリソン中に空気を吹き込んで、押出物を延伸・膨張させて金型を満たす工程、5)成形物品を冷却する工程、6)金型から物品を取り出す工程、および7)物品から余剰のプラスチック(一般にバリと呼ばれる)を除去する工程を含む。
【0173】
[00185]以下の実施例では、本開示のポリエステルが如何に製造されかつ評価され得るかをさらに例示し、かつ純粋に例示であることを意図していてその範囲を制限することを意図しない。特に指示の無い限り、部は重量部であり、温度はoC(摂氏)で示されるかあるいは室温であり、圧力は大気またはほぼ大気である。
【0174】
[00186]本開示は、本明細書に記載の実施態様、特徴、特性、パラメータ、および/または範囲の任意の組合せおよび全ての組合せを含み、それら組合せを明確に考察しかつ開示する。すなわち、本開示の主題は、本明細書に記載する実施態様、特徴、特性、パラメータ、および/または範囲の任意の組合せによって規定できる。
【0175】
[00187]本開示の任意のプロセス/方法、装置、化合物、組成物、実施態様、または成分は、「含む」、「本質的にからなる」、または「からなる」、またはそれらの用語の変形である移行句によって修飾されてもよい。
【0176】
[00188]本明細書で使用される不定冠詞「a」および「an」は、文脈で明確に指示しない限り、1つ以上を意味する。同様に名詞の単数形は、文脈で明確に指示しない限り、その複数形を含み、その逆もまた同様である。
【0177】
[00189]精度を高くするように試みてはいるが、本明細書に記載の数値および範囲は、文脈で特に指示しない限り、近似値として考慮すべきである。これらの数値および範囲は、本開示によって得ようとする所望の特性、ならびに測定技術に見られる標準偏差に起因する変動に応じてその記載の数値から変動してもよい。さらに本明細書に記載の範囲は、記載の範囲内の全ての部分範囲および数値を含むことが意図されてかつ具体的に考察される。例えば、50~100の範囲は、60~90、70~80などの部分範囲を含む範囲内の全ての数値を含むことを意図している。
【0178】
[00190]実施例に報告された同一の特性またはパラメータの任意の2つの数値により、範囲を規定してもよい。それらの数値を、範囲を規定するために、最も近い千分の一、百分の一、十分の一、整数、十、百、または千の台に四捨五入してもよい。
【0179】
[00191]特許文献ならびに非特許文献を含む本明細書に引用された全ての文書の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。任意の組み込まれた主題が本明細書の任意の開示と矛盾する場合には、本明細書の開示が組み込まれた内容に対して優先する。
【0180】
[00192]本開示を、以下の実施例によってさらに説明できるが、当然のことであるが、これらの実施例は単に説明の目的で含まれていて、本開示の範囲を制限することを意図していない。
【実施例】
【0181】
[00193]これらの実施例で使用されたオリゴマーは、バッチ式の試験設備で調製されて、そのままで用いた。評価した組成物は、テレフタル酸、エチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、およびネオペンチルグリコールの共重合体であった。グリコールのそれぞれの濃度は、NPGが13モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールが3モル%、ジエチレングリコールが5モル%であり、残部の79モル%がエチレングリコールであった。投入された全グリコール類の重量を基準にして、テレフタル酸に対する全グリコール類のモル比を1.55としてオリゴマーを調製した。
【0182】
[00194]各ポリエステル試料を、100gのポリエステルを生成するのに十分なオリゴマーを500mLの一首丸底フラスコ内に投入して調製した。目標濃度のチタンおよびアンチモン触媒を、所望の濃度のリンとともにエチレングリコール溶液としてフラスコに添加した。1つの直径2.5インチの攪拌翼と、これに取り付けられた直径1/4インチの軸からなるステンレス鋼製の攪拌装置をフラスコ内に挿入し、次いでガラスポリマーヘッドをフラスコに取り付けた。標準的なテーパー24/40雄型結合部からなるポリマーヘッドを、反応フラスコに接続した。当該フラスコは、揮発性物質を除去できるようにフラスコの首部に対して約45°に配置されたサイドアームと、攪拌軸が通されるフラスコの首部より上に延びるガラス管部分を備えていた。攪拌軸が通る管部分には、テフロン(登録商標)軸受筒とゴムホースを取り付けて、攪拌軸周りを真空密閉した。この軸を、可撓性の「ユニバーサル」ジョイントを用いてその軸に接続された1/8馬力のモーターによって回転させた。サイドアームを、ドライアイス冷却凝縮器と真空ポンプからなる真空システムに接続した。反応フラスコ内の圧力を、真空流路内に窒素を流し込んで制御した。反応フラスコを溶融金属浴を用いて加熱した。全ての反応パラメータを、分散型データ収集および制御システムを用いて監視かつ制御した。
【0183】
[00195]表1は、この評価に含まれたポリエステル試料を調製するために、全ての場合に用いた反応の順序を示す。
【0184】
【0185】
[00196]合成に続いて、各ポリマーを攪拌軸の羽根から取り外し、ハンマーミルで6mmの孔を開けた篩を通過できるのに十分な小粒子径まで粉砕した。全ての試験を、これらの顆粒に対してさらに処理することなく実施した。
【0186】
[00197]以下の表2は、チタン単独の触媒システムで調製した8種の対照組成物と、様々な温度による本開示の触媒システムのいくつかの実施例を含む。
【0187】
【0188】
[00198]表2のデータでは、標準的な重合温度(280℃)での対照であるチタン単独触媒システム(25ppmのTi;25ppmのP)の平均b*が約20であることを示している。しかしb*のデータは、Sb(110~125ppm)と組合せたTi(5~15ppm)およびP(5~50ppm)を用いる全ての触媒システムで改善されている。これらの結果は、本発明のポリマーが、チタン単独で作製された対照樹脂よりもb*すなわち黄色度が低いことを示している。280℃の標準重合温度では、固有粘度は同等であるがb*は改善されて20より低い。より高い温度(290℃および300℃)では、IVとb*の両方とも改善されて、固有粘度はより高くb*は依然20より低い。
【0189】
[00199]本明細書でのポリエステルの固有粘度を、25℃かつ0.5g/dLの濃度の60/40(重量/重量)フェノール/テトラクロロエタン中で測定して、その値をdL/gで記録する。
【0190】
[00200]共重合ポリエステル樹脂試料を、本明細書に説明の手順を用いて作製した。全ての場合で、樹脂試料を押出し前に乾燥した。
[00201]試験用フィルム試料を、2.5インチのDavis and Standard社製の単軸スクリュー押出機を使用して、樹脂試料を10ミル(250μm)のフィルムに押し出して作製した。これらの10ミルのフィルムを切断し、Bruckner社製のKaro 4幅出し機(tenter frame
)で、押し出されたフィルムのガラス転移温度(Tg)より5~15℃高い温度かつ約5:1の延伸比で、50μmの最終厚さまで延伸した。
【0191】
[00202]幅出し機によるフィルム試料を、樹脂試料を押し出し、かつ(Parkinson Technologies社の一部門であるMarshall and Williamsに配置された)市販の幅出し機で延伸して作製した。ここでこのフィルムはA-B-Cのダイからの3層を用いて押し出し、B層を2.5インチの単軸スクリュー押出機から押し出し、A層とC層を別々の1.25インチの単軸スクリューサテライト押出機から押し出す。このフィルムは約10ミル(250μm)の厚さで成形され、その後5:1の延伸比で50μmの厚さに延伸される。一般に、成形厚さは250μmで、最終的な膜厚は50μmである。ライン速度は45fpmであった。
【0192】
[00203]押し出されたフィルム組成物のグリコール含量を、NMRによって測定した。全てのNMRスペクトルは、ロック用に重水素化クロロホルムを添加したポリマーに対して、いずれもクロロホルム-トリフルオロ酢酸(70-30:体積/体積)を用いて、JEOL社製のEclipse Plus 600 MHz核磁気共鳴分光計により記録した。本明細書での実施例に用いられた混合ポリマーの酸成分は、100モル%のテレフタル酸であった。グリコール成分の総モル%は100モル%に等しく、酸成分の総モル%は100モル%に等しかった。
【0193】
[00204]本明細書でのポリエステルの固有粘度を、25℃かつ0.5g/dLの濃度で60/40(重量/重量)のフェノール/テトラクロロエタン中で測定し、その値をdL/gで記録する。
【0194】
[00205]収縮率を、本明細書では、50mm×50mmの正方形のフィルム試料を65℃~95℃の間の5℃刻みの温度で水中に配置して測定した。フィルムをいずれの方向にも収縮を制限せずに10秒間水中に浸漬し、フィルム試料の収縮(または膨張)を測定する。収縮率を次の式で計算する。
【0195】
収縮率(%)=[(50mm-収縮後の長さ)/50mm]×100%
[00206]収縮率は、主収縮方向に直交する方向(機械方向:MD)で測定し、また主収縮方向(横断方向:TD)でも測定した。
【0196】
[00207]収縮力を、LabThink社製のFST-02熱収縮試験機を用いて、本明細書の実施例について、フィルムを延伸するのに用いるのと同一の温度で、MPaの単位で測定した。
[00208]引張フィルム特性を、ASTM法D882を用いて、本明細書の実施例について測定した。複数のフィルム延伸速度(300mm/分および500mm/分)を用いて、フィルムの靭性を評価した。
【0197】
[00209]ポリエステルのガラス転移温度および歪み誘起結晶の融点(それぞれTgおよびTm)を、20℃/分の走査速度でThermal Analyst Instrument社製のTA DSC 2920を用いて測定した。延伸された試料の第1の加熱でTmを測定し、第2の加熱工程でTgを測定した。さらに、試料を強制空気循環オーブン中で165℃かつ30分間で結晶化し、その後DSCで分析することもできる。全ての試料について、結晶融点は、20℃/分の加熱速度でのDSC走査の第2の加熱中には、通常は存在しなかった。
【0198】
[00210]再資源化プロセスへの材料の適合性は、プラスチック再資源化業者協会(APR)によって公開された手順に規定されている。PETG樹脂の場合には、PETの凝集は本発明により対処された主要な問題である。この業界標準を模倣するように、実験室プロセスを開発した。実験的な凝集試験のパラメータは以下の通りである。
・582gのPET薄片に、18gの収縮薄片フィルム(PET薄片に対し3%のフィルム)をその収縮状態で組み合わせる(フィルムは、85℃の水に10秒間浸漬して組合せ前に収縮させた)
・PET薄片+フィルムをアルミニウム皿に入れて、1.5インチの深さとした。
・薄片の入った皿を208℃の強制空気循環オーブン内に1.5時間載置した。
・次いで薄片を0.5インチの篩いを通して慎重に注ぎ出して、皿に残った、あるいは篩いを通過できなかった薄片の量を計測し、凝集率(%)を出発重量の百分率として計算した。
【0199】
[00211]プラスチック再資源化業者協会(APR)は、材料が現状の再資源化プロセス(2019年4月11日に改訂または制定のラベルおよび封止を備える透明なPET物品のための重要な指示要綱;PET-CG-02)に適合しているか否かを測定するための試験を確立した。この方法は、PETの凝集を測定する方法(2018年11月16日に改訂のPET薄片凝集評価;PET-S-08)を参照している。この試験の詳細は以下の通りである。
・ラベル(最小重量:3重量%、85℃で10秒間予備収縮済み)およびボトルを、1/4~1/2インチの薄片寸法に粉砕して、ラベル付きボトル薄片を作製する。
・ラベル付きボトル薄片を、ラベルのない参照ボトル薄片と50:50で混合する。
・次に1.2%以下のPETがラベル付きで持ち越されることを許可する条件で、試料を湿式分級した。
・次に薄片を、0.3%のTriton X-100および1.0%の苛性アルカリで、88℃かつ15分間洗浄する。
・次に薄片を全ての浮遊物質を取り除いた後に水で洗浄し、次いで濾過して余分な水を除去する。
・薄片を前回と同様に再度湿式分級する。
・(ラベルを含む)2ポンドの洗浄済み薄片を、洗浄済みの試料ごとにテフロン(登録商標)加工の焼成皿に入れ、この薄片を1.5インチの層の厚さまで追加する。
・薄片が入っている皿を、208℃の循環オーブン内に1時間半載置する。
・薄片を冷却して、次いで0.0625インチの開口部を備える篩いを通過させる。材料が篩いを通過するのなら、この材料は凝集しておらず、すなわち粗大化し過ぎて篩いを通過できないということではない。
・この試験に続いて、薄片の品質を確認するための押出/ペレット化かつ成形工程を実施した。
【0200】
[00212]変調型示差走査熱量測定(MDSC)は、時間および温度の関数として、試料と不活性な参照との間の熱流の差を測定する技術である。さらに、従来からのDSCで使用されるものと同一の熱流束セル設計が使用される。但しMDSCでは、異なる加熱形態(温度状態)を試料および参照に加える。具体的には、正弦波変調(振幅)が従来の線形加熱または冷却の勾配に重ねられ、平均試料温度が時間とともに連続的に変化するが線形には変化しない形態が生成される。このより複雑な加熱形態を試料に加えることの正味の効果は、まるで2つの試験、すなわち1つは従来の線形の(平均的な)加熱速度での試験、もう1つは正弦波の(瞬間的な)加熱速度での実験が、材料に対して同時に実行されたのと同じようになることである。これら2つの同時試験の実際の速度は、操作者が選択可能な3種の変数に依存する。
・基礎となる加熱速度(3℃/分)
・変調の周期(60秒)
・変調の温度振幅(±1℃)
[00213]反転熱流を用いて、ガラス転移温度および溶融ピークの面積を分析した。加熱時の融解熱(Hf)を、積分された反転熱流信号として測定した。加熱時の結晶化熱(Hc)を、総熱流信号から積分した。試料の相対結晶化度(C)を、加熱時の結晶化熱(Hc)から融解熱(Hf)を差し引いて測定した。
【0201】
実施例1~4
[00214]種々のグリコール組成物を有する共重合ポリエステル樹脂を作製し、実験用フィルムプロセスを用いて収縮性フィルムに転換し、対応する収縮性フィルムの特性を測定した。フィルム試料をまた、実験的な凝集試験を用いて、PET薄片との凝集について試験した。主要な性能特性を以下に示す。樹脂の実施例1および2で作製されたフィルムでは、PET薄片の凝集率は1%未満であった。樹脂の実施例1、3、および4で作製されたフィルムは、優れた収縮性フィルム特性を有していた。樹脂の実施例1で作製されたフィルムのみが、優れた収縮性フィルム特性と1%未満の凝集率を有していた。
【0202】
【0203】
[00215]実施例5~7:樹脂の実施例5~7を作製し、市販の幅出し機で収縮性フィルムに転換し、PETの再資源化への適合性についてAPR試験手順を用いて試験した。
【0204】
【0205】
[00216]実施例8~11:実施例8~11に基づく樹脂を収縮性フィルム試料に転換し、収縮性フィルム特性について試験し、実験的な凝集試験を用いてPET薄片による凝集について試験した。
【0206】
【0207】
[00217]実施例12~16:多層フィルムを市販の幅出し機プロセスを使用して作製し、実験的な凝集試験を用いてPET薄片との凝集について試験した。これらのフィルムは、実施例4をコア層として、実施例1をキャップ層として作製した。
【0208】
【0209】
熱成形シートの実施例:
[00218]実施例A、B、およびCを、2.5インチのDavis and Standard社製の押出機を使用して、30ミル(750μm)の厚さのシート材料に押し出した。次にシート試料を、形状全体に亘って真空引きを可能とするように設計されたアルミニウム製の雌型を用いて、基本とするトレイ形状(寸法:169mm×136mm×44mm)に熱成形した。この型をHydrotrim社製の実験室用熱成形機に取り付けた。オーブン温度および金型温度を、それぞれ260℃および42℃で一定に保った。シート試料を種々の滞留時間でオーブン内に載置し、オーブンから取り出し、直ぐにトレイに成形して、冷却した後に金型から取り出した。シートの温度を、熱成形機の一部である赤外線温度センサーを用いて測定し、かつ携帯型の赤外線温度計で確認した。
【0210】
[00219]滞留時間を変更して、15秒から開始しその後毎回2秒ずつ増加させて、高品質の部品が作製できる熱成形の条件範囲を確認した。滞留時間を変更して、成形前に試料が種々の温度に加熱されるようにした。滞留時間が29秒に達した後は試験を中止したが、その理由は、実施例Cでは非常に濁りが出て製品にできるトレイとは見做せなかったからである。部品の品質および結晶化の指標として、各試料の濁度を測定した。
【0211】
[00220]実施例Cから作製されたトレイは、23秒の滞留時間で僅かな濁りを示し始めた。このことは、実施例AおよびBでは、この範囲の滞留時間にわたって濁度の増大を示さなかったので、実施例AおよびBと比較して実施例Cでの熱成形の範囲が小さいことを示している。熱成形部品の品質を、許容可能な品質を示す「+」、あるいは品質が劣ることを示す「-」で表示している。これらの品質の格付けは、熱成形後の濁度と部品精度の組合せに基づいている。
【0212】
[00221]押出しシートおよび熱成形部品の試料を、実験的な凝集手順を用いて、PET再資源化への適合性について評価した。さらに、PETの凝集に関するAPR選別試験で説明されるように予備結晶化工程を使用した。この凝集試験の結果を以下に示す。
【0213】
[00222]実施例Bは、望ましくかつ格差のある特性を示し、すなわち処理をより容易にするようなより広い熱成形の条件範囲を有し、また再資源化プロセスでの結晶化を可能として、PET再資源化プロセスへの適合性を有する。
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
射出成形試料:
[00223]試料A、B、C、ならびに実施例1および実施例3を射出成形し、当業者に周知の射出成形の通常の手順を用いて、それらの機械的特性について試験した。試験部品を、ASTM法D638、ASTM法D3763、ASTM法D256、ASTM法D4812、およびASTM法D64の各試験法に従って試験した。これらの反応器級の樹脂で作製された射出成形部品の機械的特性を表10に示す。
【0218】
【0219】
[00224]本開示を、その好ましい実施態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本開示の趣旨および範囲内で複数の変更および修正を実施できることは当然のことである。
【国際調査報告】