(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】骨移植片、並びに製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/32 20150101AFI20221208BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221208BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221208BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20221208BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20221208BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20221208BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20221208BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20221208BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20221208BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K35/32
A61P19/08
A61K35/28
A61K35/35
A61K35/44
A61L27/36 110
A61L27/36 130
A61L27/36 311
A61L27/38 111
A61L27/38 300
A61L27/40
A61L27/38 200
A61K38/39
A61K38/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520992
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020054965
(87)【国際公開番号】W WO2021072180
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521399906
【氏名又は名称】アドバンスド ソリューションズ ライフ サイエンシズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホイング、ジェイムズ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュマン、セアラ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081CD111
4C081CD121
4C081CD18
4C081CD34
4C084AA01
4C084BA44
4C084DA40
4C084DC10
4C084MA02
4C084MA67
4C084NA05
4C084ZA962
4C084ZB212
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB44
4C087BB46
4C087BB64
4C087CA03
4C087CA16
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA96
(57)【要約】
本明細書では、脱灰骨マトリックス及び担体を含むバイオファブリケートされた移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に覆う血管新生前シェルとを含む生体骨移植片であって、血管新生前シェルが単離された無傷の脂肪由来の微小血管断片、間葉系幹細胞及びコラーゲンを含む生体骨移植片が提供される。開示される骨移植片は、分化する間質細胞と、機能的微小血管系を提供するために吻合する微小血管とを含み、それにより、移植片が患者において成熟するにつれて天然の骨修復に近似する。本明細書では、特注の生体血管新生化骨移植片を製造する方法、及び患者において区域性骨欠損を処置する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨移植片であって、
脱灰骨マトリックス及び担体を含むバイオファブリケートされた(biofabricated)移植片コアと、
移植片コアを少なくとも部分的に被覆する血管新生前シェルとを含み、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む、上記骨移植片。
【請求項2】
担体がフィブリノゲン及びゼラチンを含む、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項3】
移植片コアが、1つ以上の間葉系幹細胞及び脂肪幹細胞を更に含む、請求項2に記載の骨移植片。
【請求項4】
移植片コアが、特定の患者の欠損の幾何学的形状(defect geometry)に適合するように構成された特注の移植片コアである、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項5】
移植片コアが、患者固有の画像データに基づいて成形される、請求項4に記載の骨移植片。
【請求項6】
移植片コアが3D印刷される、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項7】
単離された微小血管断片がヒト脂肪由来の全微小血管セグメントである、請求項1~6のいずれか一項に記載の骨移植片。
【請求項8】
骨移植片が、成長因子で外因的にドープされていない、請求項1に記載の骨移植片。
【請求項9】
骨移植片を製造する方法であって、
(a)脱灰骨マトリックス及び担体を含む前骨構成成分から移植片コアをバイオファブリケートする工程、
(b)第1のインキュベーション期間にわたって、架橋剤を含む第1の培養培地中で移植片コアをインキュベートする工程、
(c)移植片コアの少なくとも一部を、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む血管新生前シェル構成成分で覆う工程、並びに
(d)工程(c)の被覆された移植片コアを第2の培養培地中で第2のインキュベーション期間インキュベートして、生体骨移植片を提供する工程、
を含む、上記方法。
【請求項10】
担体がフィブリノゲン及び皮膚ゼラチンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前骨構成成分が、1つ以上の間葉系幹細胞及び脂肪幹細胞を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
移植片コアをバイオファブリケートすることが、移植片コアを3D印刷することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
移植片コアが、患者固有の画像データに基づいて3D印刷される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の培養培地がトロンビン、第XIII因子及びトランスグルタミナーゼを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
第1のインキュベーション期間が約12時間~約48時間の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
移植片コアの少なくとも一部を血管新生前シェル構成成分で被覆することが、3D印刷によって行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
第2の培養培地がRPMI、B-27サプリメントマイナスビタミンA、及び血管内皮増殖因子(VEGF)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
第2のインキュベーション期間が約3日間~約14日間の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
インキュベートすることが、約37℃でインキュベートすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
患者において区域骨欠損を処置する方法であって、
バイオファブリケートされた移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に被覆する血管新生前シェルとを含む骨移植片を提供する工程であって、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む上記工程、並びに
骨移植片を患者の区域性骨欠損領域に配置する工程であって、微小血管断片が吻合し、骨移植片が患者において天然の成熟骨へと進行する上記工程、を含む、
上記方法。
【請求項21】
骨移植片を配置することが、インプラントを区域性骨欠損領域に機械的に補強することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
骨移植片が、患者の区域性骨欠損領域に適合するように成形された特注の骨移植片である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
骨移植片が、患者固有の画像データに基づいて成形される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
移植片コアが、脱灰骨マトリックス、フィブリノゲン、皮膚ゼラチン、及び間葉系幹細胞を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
移植片の成熟及び血管新生を促進し、患者の区域性骨欠損領域に骨移植片を配置する前に遊離又はリーシュ皮弁を作るために、患者において異所位置に骨移植片を配置する工程を更に含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年10月11日に出願された米国仮出願第62/914,053号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、骨置換並びにそれらの製造及び使用の分野に関する。より具体的には、本開示は、特注の生体血管新生前骨移植片、並びにそれらの製造方法及び骨欠損の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
先天性疾患、外傷に起因するか、又は他の疾患状態(例えば、癌)の処置に続発するかにかかわらず、骨置換に対する必要性が存在する。理想的な解決策は、血管新生され、天然の材料及び構成成分からなり、患者の解剖学的構造に適合するようにカスタマイズすることができ、欠損の幾何学的形状(defect geometry)に適合するようにカスタマイズすることができ、患者にとって自己由来である骨移植片である。
【0004】
現在の処置法は、金属若しくは合成代替物、又は患者の他のドナー部位からの自己骨移植片の採取のいずれかを含む。多くの骨置換の解決策は、天然の骨に類似する、又は更には天然の骨よりも優れた構造的特徴を提供しながら、インプラント部位で天然の骨と良好に一体化せず、その後の改善のため(例えば、顎骨インプラントに歯科装置を追加するため)に外科医によって修正することができず、患者と共に変化しない(例えば、小児患者では成長しない)金属(例えば、チタン)又は他の人工材料を含む。また、合成代替物では、患者及び欠損に適合する既製の解決策を見つけることはしばしば困難である。逆に、採取された自家骨移植片は、手術中に欠損部位に適合するように成形及び再構成されなければならず、手術にかなりの時間がかかり、患者のリスクが高まる。更に、更なる罹患率が、移植片のドナー部位に関連し得る。現在の解決策の欠点は、移植片の形状及びサイズのカスタマイズが不可能である(例えば、チタンインプラントの場合)か、又は手間がかかり困難である(天然の骨移植片の場合)ことである。
【0005】
カスタマイズのための現在の戦略は、パテを形成するために担体と混合された骨粒子の使用、又は所定の形状への死体骨のコンピュータ数値制御された(CNC)粉砕を含む。骨パテでは、小さな欠損のみを修復することができ、そのような修復は、パテを欠損にパッキングすることを含む。そのようなパテは、欠損によって作られた空隙を埋めることとは無関係に形状を保持することができない。死体骨の粉砕は形状のカスタマイズを提供するが、粉砕工程は手間がかかり高価である。
【0006】
骨欠損の修復のためのカスタマイズ可能な生体血管新生化骨移植片が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本明細書では、特注の生体血管新生化骨移植片、並びにそれらの製造方法及び使用が提供される。開示される骨移植片は、合成ポリマー又はセラミック成分を含まない。開示される骨移植片は、患者に移植されると、移植片コアの未成熟な前骨成分が進行して、天然の骨膜に近似するシェル成分を介して血管新生化された天然の骨を形成するように、前骨移植片コアと、吻合が可能な血管新生前シェルコーティングとを含む。本明細書で提供される骨移植片は、歯科インプラント等の器具を受け入れるための移植後の修正に適している。
【0008】
一実施形態では、脱灰骨マトリックス及び担体を含むバイオファブリケートされた(biofabricated)移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に覆う血管新生前シェルとを含み、血管新生前シェルが、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む、骨移植片が提供される。
【0009】
別の実施形態では、骨移植片を製造する方法が提供され、方法は、(a)脱灰骨マトリックス及び担体を含む前骨構成成分から移植片コアをバイオファブリケートする工程、(b)第1のインキュベーション期間にわたって、架橋剤を含む第1の培養培地中で移植片コアをインキュベートする工程、(c)移植片コアの少なくとも一部を、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む血管新生前シェル構成成分で覆う工程;(d)工程(c)の被覆された移植片コアを第2の培養培地中で第2のインキュベーション期間インキュベートして、生体骨移植片を提供する工程、を含む。
【0010】
別の実施形態では、患者の区域骨欠損を処置する方法が提供され、方法は、バイオファブリケートされた移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に被覆する血管新生前シェルとを含む骨移植片を提供する工程であって、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む工程、並びに骨移植片を患者の区域性骨欠損領域に配置する工程であって、微小血管が吻合し、骨移植片が患者の天然の成熟骨へと進行する工程、を含む。
【0011】
これら、並びに他の目的、特徴、実施形態及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことによって当業者には明らかになるであろう。
【0012】
現在開示されている主題の実施形態の詳細は、本明細書に記載されている。本明細書に記載される実施形態に対する変更及び他の実施形態は、本明細書に提供された情報を検討した後に当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本開示による骨移植片の一実施形態の上面図を示す画像である。
【
図1B】
図1Bは、本開示による骨移植片の一実施形態の側面図を示す画像である。
【
図2A】
図2Aは、UEA-1レクチンで染色された本開示による生体骨移植片の一実施形態の画像であり、脱灰骨マトリックスは薄灰色で示され、拡張した微小血管は暗灰色で示される。
【
図2B】
図2Bは、UEA-1レクチンで染色された本開示による生体骨移植片の一実施形態の画像であり、脱灰骨マトリックスは薄灰色で示され、拡張した微小血管は暗灰色で示される。
【
図2C】
図2Cは、UEA-1レクチンで染色された本開示による生体骨移植片の一実施形態の増殖した微小血管の顕微鏡画像である。
【
図3】
図3は、本開示による生体骨移植片を作製する方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、本開示による例示的なバイオファブリケートされた移植片コアの斜視図の画像である。
【
図4B】
図4Bは、本開示による例示的なバイオファブリケートされた移植片コアの上面図の画像である。
【
図4C】
図4Cは、本開示による血管新生前シェルで実質的に覆われた例示的なバイオファブリケートされた移植片コアの上面図の画像である。
【
図5】
図5は、区域性骨欠損領域における特注の生体骨移植片の配置の段階を示す。(A)区域性骨欠損(丸)を有するヒト下顎骨モデルを示す画像である。(B)
図5(A)の区域性骨欠損に適合するように設計された特注の生体骨移植片を示す画像である。(C)(D)は、区域性欠損領域における特注の生体骨移植片の配置の2つの異なる図を示す画像である。
【
図6A】
図6Aは、例示的な患者固有の撮像データからTSIM(登録商標)ソフトウェアを使用してモデル化されたヒト下顎骨のスライス切片の3Dモデルを示す。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aの区域性骨欠損の幾何学的形状に実質的に適合するように構成された生体骨移植片を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、ピクロシリウスレッド/ファーストグリーンで染色した組織切片の顕微鏡画像であり、DBMを含む構築物中の骨形成の前駆体としての構造化コラーゲンを示す。
【
図6D】
図6Dは、ピクロシリウスレッド/ファーストグリーンで染色した組織切片の顕微鏡画像であり、DBMを含む構築物中の骨形成の前駆体としての構造化コラーゲンを示す。
【
図7】
図7は、天然のヒト骨修復の段階の参照図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
現在開示されている主題の1つ以上の実施形態の詳細は、本明細書に記載されている。本明細書に記載される実施形態に対する変更及び他の実施形態は、本明細書に提供された情報を検討した後に当業者には明らかとなろう。
【0015】
以下の用語は当技術分野において十分に理解されていると考えられるが、現在開示されている主題の説明を容易にするために定義を記載する。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、現在開示されている主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件等の特性等を表す数字はいずれも、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、特にそれとは反対の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、現在開示されている主題によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0017】
本明細書で使用される場合、値又は質量、重量、時間、体積、濃度若しくはパーセンテージの量を指す場合の「約」という用語は、特定の量からいくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、及びいくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は開示される方法を実施するのに適切である。
【0018】
本明細書を通して与えられるあらゆる最大の数値限定は、あらゆるより低い数値限定を、あたかもそのようなより低い数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように含むことを理解されたい。本明細書を通して与えられるあらゆる最小の数値限定は、あらゆるより高い数値限定を、あたかもそのようなより高い数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように含む。本明細書を通して与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を、あたかもそのようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように含む。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、別段の明確な指示がない限り、複数の言及を含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、イヌ、ラット、マウス等を含む任意の哺乳動物の対象を指す。具体的な実施形態では、患者はヒト患者である。
【0021】
本明細書で使用される「バイオファブリケートされた」は、例えばバイオプリンティング又はバイオアセンブリによる、生物学的に機能的な製品の自動生成を指す。実施形態では、バイオファブリケーション(biofabrication)は、3次元(3D)プリンティング、又はより具体的には3Dバイオプリンティングを含む。3Dプリンティング設計及び製造のための様々なシステムが当該技術分野で利用可能であり、使用に適している。実施形態では、開示される骨移植片は、BioAssemblyBot(登録商標)(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)及びTSIM(登録商標)ソフトウェア(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)又は同等の3Dモデリング/印刷ソフトウェアパッケージを使用して生物学的に作製(バイオファブリケート)される。有利には、バイオファブリケーションは、コスト(例えば、粉砕と比較して)を削減し、製造工程を加速する迅速プロセスである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「前骨(pre-bone)」は、例えば、細胞分化、石灰化、骨カルス形成、及び適切な成熟条件下での成熟骨への進行を通して成熟骨に発達することができる未成熟骨成分(例えば、間葉系幹細胞、脱灰骨マトリックス等)を含む本明細書に開示される構築物又は構成成分を指す。
【0023】
本明細書で使用される「血管新生前」は、単離された無傷の生体微小血管断片を含む構築物又は構成成分を指す。実施形態では、そのような生体微小血管断片は、例えば、適切な増殖条件下で、吻合又は発芽することができる。実施形態では、「血管新生前」とは、推定微小血管系を形成するために吻合を開始した生体微小血管断片を含む構築物又は構成成分を指す。本明細書に開示される骨移植片は、血管新生前移植片が微小血管増殖条件下で血管新生化移植片に進行するように構成される。本明細書で使用される場合、「血管新生化、血管新生(vascularized)」とは、機能的な微小血管系を形成するために吻合又は発芽した生体微小血管断片を含む構築物又は構成成分を指す。
【0024】
「区域性骨欠損」は、空隙を埋めるための医学的介入なしに自然に治癒しない骨の空隙を指す。典型的には、区域性骨欠損は、外傷、感染、又は悪性腫瘍に起因する。骨の空隙は、骨形成を形作り、支持するためにフレームワーク又は足場を必要とする。本開示の骨移植片は、本明細書で以下に記載されるように、区域性骨欠損の処置に特に適している。しかしながら、本開示の骨移植片の使用は、区域性骨欠損の処置に限定されず、欠損の幾何学的形状にかかわらず、骨置換処置を必要とする任意の患者における使用に適したものとなり得ることを理解されたい。
【0025】
微小血管(MV)は、生体組織から単離された無傷の微小血管断片又はセグメントである。実施形態において、微小血管は、脂肪組織、特にヒト脂肪組織から採取される。MVは天然であり、天然の血管新生を再現する微小血管細胞の完全な供給源を提供する。MVは、血管新生を介して、成熟条件下で表現型可塑性及び動的適応を示す。実施形態では、本開示で使用するためのMVは、同種MVであってもよく、又は脂肪組織等の患者組織に由来する自己MVであってもよい。具体的な実施形態では、MVはAngiomics(商標)MV(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)である。
【0026】
脱灰骨マトリックス(DBM)は、粉末化、脱細胞化、及び脱灰され、骨形成に必要なタンパク質が濃縮された骨マトリックスを残した骨から得られる天然材料である。DBMは、骨誘導性(骨形成につながるシグナルを生成する)、骨伝導性(骨形成のための許容環境を作り出す)、及び骨形成性(骨を生成する)である。
【0027】
フィブリノゲン又は第I因子は、酵素的にフィブリンに変換される糖タンパク質複合体であり、フィブリンは、とりわけ毛細血管形成及び血管新生を媒介し、それによって血管新生を促進する。
【0028】
間葉系幹細胞(MSC)は、骨髄又は脂肪組織等の様々な供給源に由来する間質細胞である。MSCは、骨芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞及び脂肪細胞(骨髄脂肪組織を生じさせる脂肪細胞)を含む種々の細胞型に分化し得る天然細胞である。脂肪組織に由来する場合、MHCは脂肪幹細胞(ASC)と称される場合がある。骨誘導環境では、MSCは骨芽細胞及び骨細胞になり、骨マトリックスを作製及び再構築することができる。実施形態において、本開示における使用に適したMSCは、患者由来の自己MSCであり得る。他の態様では、MSCは同種細胞である。
【0029】
コラーゲンは、体内の様々な結合組織における細胞外マトリックス中の主要な構造タンパク質である。石灰化の程度に応じて、コラーゲン組織は、剛性(例えば、骨)、柔軟性(例えば、腱)であり得る、又は剛性から柔軟性(例えば、軟骨)の勾配を有し得る。
【0030】
ゼラチンは、コラーゲンの酸性消化に由来するタンパク質の不均一な混合物であり、様々なアミノ酸を含む。実施形態では、開示される製品及び方法に使用されるゼラチンは、皮膚ゼラチン、又はより具体的にはブタ皮膚ゼラチンである。ブタ皮膚ゼラチンの適切な供給源は、当該技術分野において周知である。
【0031】
成人における生得的骨修復の自然な過程を
図7に示す。骨折すると、例えば、血腫又は血栓が損傷部位に形成される(1)。間葉系幹細胞が血餅に浸潤し、血管新生が血餅領域で開始される。新たな血管の成長は、骨膜、又は骨を取り囲む血管新生化結合組織、並びに骨髄において生じる(2)。MSCは、骨修復領域内で骨形成細胞に分化される。仮骨(provisional bone)マトリックス(例えば、コラーゲン)が堆積し、その後石灰化して骨カルスを形成する(3)。骨カルスは成熟し、骨再構築によって損傷領域を修復する(4)。
【0032】
本開示は、特注の生体血管新生前の天然の骨移植片の製造を記載する。開示される方法は、骨形成細胞及び微小血管の生物学を活用して、カルス形成(
図7参照)を介して天然の骨修復を再現し、それによって成形骨同等物の生成を可能にする。血管新生化骨に必要な構成成分は、移植に適した骨構築物の自然発生を促進するように構成される。最終的な成熟及び骨の形成は、患者への移植後に起こる。重要なことに、このプロセスは、同種及び/又は自己の生体物質に適応することができる。
【0033】
生体血管新生前骨移植片及び製造方法
有利には、開示される骨移植片は、脱灰骨マトリックス、血管新生を可能にする無傷の微小血管、及び天然成分のみを含む。開示される骨移植片は、患者、骨欠損、及び移植部位にカスタマイズ可能である。本明細書に開示される骨移植片は、能動的な骨再構築を可能にする生体材料を含み、その結果、移植片は、患者に配置された後に必要に応じて更に修正され得る。
【0034】
図1A、1Bを参照すると、開示される骨移植片10の製造は、少なくとも2つの構成成分:(1)骨形成性、骨伝導性及び/又は骨誘導性の構成成分を含み、以下の(2)によって少なくとも部分的に囲まれた骨移植片コア20、及び(2)天然の血管新生化骨膜に近似する天然の微小血管系を含む血管新生前結合組織シェル30を含む。骨形成骨移植片コア20は、患者の解剖学的構造及び欠損の幾何学的形状に適合するように選択された規定された、及び任意に特注の形状を作り出すために、生物学的作製(バイオファブリケーション)法(例えば、3Dバイオプリンティング)によって生成され得る。コア20の配合は、この生物学的作製(バイオファブリケーション)アプローチ、すなわち脱灰骨マトリックス(DBM)、フィブリノゲン、及びゼラチンを任意の組み合わせで含む前駆体骨混合物を可能にする。また、天然マトリックス等の他の非細胞成分を含んでもよい。その後の移植片コアの成熟骨への進化のため、間葉系幹細胞(造血又は脂肪由来)がコア20の製造中に含まれ得る。戦略的時点(複数可)において、コア20は、間質細胞及び単離された脂肪由来の微小血管と混合された天然マトリックス(例えば、コラーゲン)の層によって取り囲まれる。この血管新生前シェル30は、3Dバイオプリンティング等の様々な製造アプローチによってコアに追加することができる。コア20及び血管新生前シェル10で覆われたコアの両方の培養は、本明細書で以下に記載されるように、規定の培地及び条件を含む。生物学的作製(バイオファブリケーション)プロセス及び成分の実施形態を本明細書で提供する。
【0035】
一実施形態では、骨移植片が提供され、骨移植片はバイオファブリケートされた移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に覆う血管新生前結合組織シェルとを含み、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片を含む。
【0036】
移植片コアは、脱灰骨マトリックス(DBM)及び担体を含む前骨構成成分から形成される。実施形態において、担体は、フィブリノゲン及びゼラチン(例えば、皮膚ゼラチン)を含む。DBM及び担体成分(複数可)の濃度は、製造される構築物、並びに選択される試薬及び条件に基づいて変化し得る。実施形態では、前骨構成成分中のDBMの濃度は、残りの前骨構成成分の総体積1ml当たり0.3ml~15mlのDBM粒子の範囲であり得る。実施形態において、前骨構成成分中のフィブリノゲンの濃度は、0.01mg/ml~100mg/mlの範囲であり得る。実施形態において、ゼラチンの濃度は、1%w/v~20%w/vの範囲であってもよい。
【0037】
任意に、前骨構成成分は、間葉系幹細胞(MSC)及び/又はASC及び/又はフィブロネクチン等の更なる天然成分を更に含み得る。MSCは、骨髄組織又は脂肪組織等様々な供給源から得られてもよく、自己由来である場合があり、又は同種である場合がある。MSCの濃度は、100,000MSC/ml~1,000,000MSC/mlで変動し得る。実施形態において、前骨構成成分に含まれるMSCの濃度は、約500,000MSC/mlである。ASCの濃度は、100,000細胞/ml~1,000,000細胞/mlで変動し得る。実施形態において、前骨構成成分に含まれるASCの濃度は、約500,000細胞/mlである。フィブロネクチンの濃度は、0mg/ml~1mg/mlで変動し得る。実施形態において、前骨構成成分に含まれるフィブロネクチンの濃度は、約10μg/mlである。
【0038】
実施形態において、本明細書に開示される骨移植片は、ヒト又は他の哺乳動物等の哺乳動物に生得の材料のみを含み、ポリマー又はセラミック等の合成人工材料を実質的に含まない。実施形態において、本明細書で提供される骨移植片は、任意に、外因性成長因子を実質的に含まない。
【0039】
実施形態において、血管新生前シェルは、微小血管(MV)と、任意に間葉系幹細胞及び/又は脂肪幹細胞と、任意にコラーゲンとを含む血管新生前シェル構成成分から形成される。実施形態において、微小血管は、ヒト脂肪組織から得られた、単離された無傷の微小血管のセグメント又は断片である。本方法及び移植片における使用に適したMVとしては、Angiomics(商標)MV(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)が挙げられる。MVの濃度は、80,000MV/ml~500,000MV/mlで変化し得る。実施形態において、血管新生前の構成成分に含まれるMVの濃度は、約200,000MV/mlである。MSC及び/又はASCの濃度は、50,000細胞/ml~2,000,000細胞/mlで変動し得る。実施形態において、血管新生前シェル構成成分に含まれるMSC及び/又はASCの濃度は、約200,000MSC/mlである。
【0040】
任意に、骨移植片コアは、設計において特注であり、特定の患者の欠損の幾何学的形状に適合するように構成される。具体的な実施形態では、移植片コアは、MRI、CTスキャン、X線、又は特注の骨移植片を調製するための欠損の幾何学的形状を規定するために使用され得る任意の他の適切な画像データ等の患者固有の画像データに基づいて成形又は構成され得る。
【0041】
実施形態では、移植片コアは、3Dプリンティング技術及び互換性のあるソフトウェアを使用してバイオファブリケートされる。例えば、実施形態において、移植片コアは、2軸、3軸、4軸、5軸、6軸、又は所望の構築物の形状を印刷するのに適した他の多軸プリンタ等の多軸3Dプリンタを使用して3D印刷される。適切な3Dプリンタプラットフォームとしては、例えば、BioAssemblyBot(登録商標)(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)及びTSIM(登録商標)ソフトウェア(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)又は同等の3Dモデリング/印刷ソフトウェアパッケージが挙げられる。
【0042】
別の実施形態では、骨移植片を製造する方法が提供され、方法は、(a)脱灰骨マトリックス及び担体を含む前骨構成成分から移植片コアをバイオファブリケートする工程、(b)第1のインキュベーション期間にわたって、架橋剤を含む第1の培養培地中で移植片コアをインキュベートする工程、(c)移植片コアの少なくとも一部を、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む血管新生前シェル構成成分で覆う工程;(d)工程(c)の被覆された移植片コアを第2の培養培地中で第2のインキュベーション期間インキュベートして、生体骨移植片を提供する工程、を含む。
【0043】
一実施形態では、バイオプリンティングプラットフォームを使用してコアをバイオプリントし、血管新生前シェルをキャストする。一般に、このプロセスは、DBMベースの配合を混合すること、患者固有の及び/又は欠損固有の幾何学的形状に基づいてコア構造を印刷すること、印刷された構造をトランスグルタミナーゼ及びトロンビン/FXIIIaを含む架橋溶液と共にインキュベートしてコアを「セット」すること、コアを培養して骨生成プロセスを開始すること、微小血管含有シェルをキャスティングすること、並びに培養して移植片を移植のためにコンディショニングすること、を含む。
【0044】
図3を参照すると、本開示による骨移植片をバイオファブリケートする方法100の例示的な実施形態を説明するフローチャートが示されている。方法は、前骨構成成分を調製又は提供する(101)第1の工程を含む。具体的な実施形態では、前骨構成成分は、ゼラチン、脱灰骨マトリックス、フィブリノゲン、並びに任意に1つ以上の間葉系幹細胞及び/又はASC、並びに任意にフィブロネクチンを含む。前骨構成成分の配合は、印刷される構築物及び使用される条件に応じて変化し得ることを理解されたい。
【0045】
次に、骨移植片コアを、本明細書に記載されるように、バイオファブリケートする(105)。バイオファブリケーション(105)の例示的で適切な方法は、例えば、BioAssemblyBot(登録商標)多軸3Dプリンタ(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)及びTSIM(登録商標)ソフトウェア(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)、又は同等の3Dモデリング/印刷ソフトウェアパッケージを使用する3D印刷を含む。骨移植片コアは、特注の成形された移植片コアを提供するために、患者固有の画像データに従ってバイオファブリケート(105)され得る。
【0046】
次いで、血管新生前シェルの添加に先立って、骨移植片コアを、架橋剤を含む培養培地と共にインキュベートする(110)。例示的な架橋剤は、トロンビン、第XIII因子及びトランスグルタミナーゼから選択され得る。別の実施形態において、架橋剤は、メタクリル化ゼラチンを含む。トロンビン、第XIII因子及びトランスグルタミナーゼの濃度は、製造される特定の構築物、並びに選択される製造試薬及び条件に応じて変化し得る。実施形態において、架橋溶液中のトロンビンの濃度は、約0.01U/ml~約10U/mlの範囲であり得、第XIII因子の濃度は、約0.01U/ml~約10U/mlの範囲であり得、トランスグルタミナーゼの濃度は、約1mg/ml~約100mg/mlの範囲であり得る。或いは、架橋溶液中のメタクリル化ゼラチンの濃度は、約1%w/v~約20%w/vの範囲であり得る。
【0047】
実施形態において、架橋剤を含む培養培地は、トランスグルタミナーゼ、トロンビン、及び第XIII因子に加えて、ビタミンA及びVEGFを除いたB27サプリメントを補充したRPMI 1640系培地である。実施形態において、培地中のB27サプリメントマイナスビタミンAの濃度は、約0.5倍~約2倍の範囲である。実施形態において、培地中のVEGFの濃度は、約0ng/ml~約500ng/mlの範囲である。具体的な実施形態では、架橋剤を含む適切な培養培地は、以下に示す表1に従って配合される。
【0048】
移植片コアを第1の培養培地中で約12時間~約60日間の範囲の第1のインキュベーション期間にわたりインキュベートする(110)。実施形態において、移植片コアを、5%CO2インキュベーターにおいて37℃の温度で培養培地と共にインキュベートする。具体的な実施形態では、第1のインキュベーション期間は、約12時間~約48時間である。より具体的な実施形態では、第1のインキュベーション期間は約24時間である。第1のインキュベーション期間は、コアを架橋し、細胞を印刷された足場に接着させるように選択される。
【0049】
更に
図3を参照すると、第1のインキュベーション期間の後、血管新生前シェル構成成分が調製又は提供される(115)。
図3に示される例示的な方法では、血管新生前シェルの構成成分は、無傷の天然の微小血管断片、間葉系幹細胞及びコラーゲンを含む。しかしながら、他の実施形態では、血管新生前シェルの構成成分は、無傷の天然の微小血管断片、コラーゲン、及び任意に1つ以上の間葉系幹細胞及びASCを含み得ることを理解されたい。
【0050】
実施形態において、MSC懸濁液に対する微小血管懸濁液の比は、以下の式に従って求められる。
【数1】
【0051】
血管新生前シェル構成成分が調製又は提供されると、骨移植片コアは、血管新生前シェル構成成分で少なくとも部分的に覆われる(120)。そのような被覆(enrobing)を、前述のように、例えば3D印刷を介して、バイオファブリケーションツールを使用して行うことができる。バイオファブリケーションの例示的で適切な方法は、例えば、BioAssemblyBot(登録商標)多軸3Dプリンタ(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)及びTSIM(登録商標)ソフトウェア(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)、又は同等の3Dモデリング/印刷ソフトウェアパッケージを使用する3D印刷を含む。
【0052】
次いで、少なくとも部分的に被覆された骨移植片コアを、第2の培養培地中で第2のインキュベーション期間インキュベートする(125)。適切な培養培地は、RPMI 1640系培養培地であり、上記のように補充されるが、架橋剤成分は添加されない。任意に、第2の培養培地は、StemPro Osteogenic Supplement(Fisher A1007201)等の骨形成サプリメントを更に含む。実施形態において、骨形成サプリメントの濃度は、約1:1希釈~1:100希釈の範囲である。具体的な実施形態では、適切な培養培地は、以下に示す表2に従って配合される。
【0053】
被覆された又は部分的に被覆された移植片コアは、約5日間~約60日間又はそれを超える範囲の第2のインキュベーション期間にわたって第2の培養培地中でインキュベートされる(125)。実施形態において、移植片コアを、5%CO2インキュベーターにおいて37℃の温度で第2の培養培地と共にインキュベートする。具体的な実施形態では、第2のインキュベーション期間は約14日間である。第2のインキュベーション期間は、微小血管断片の発芽及び吻合を開始するように選択され、それにより、患者における移植及び更なる成熟の準備ができた生体の血管新生前の又は血管新生した骨移植片を提供する(130)。骨形成補助剤が含まれる場合、第2のインキュベーション期間はまた、MSCの骨芽細胞及び骨細胞への変換を促進し、それにより、骨形成及び骨移植片コアの成熟並びにシェル内の脈管構造の拡大が開始する。
【0054】
更なる実施形態では、被覆された又は部分的に被覆された移植片コアは、インプラントが移植の準備ができるまで、特注の型等の型内でインキュベートされ得る。例えば、実施形態において、被覆された又は部分的に被覆された移植片コアを、第2のインキュベーション期間中に骨移植片の形状に適合するように構成された可撓性シリコーン型内に入れてもよい。そのようなモデルは、任意に、患者固有の画像データに基づいて3D印刷されてもよい。実施形態において、特注の移植片は、インプラントが患者に配置される準備ができるまで、パッケージ化され、輸送され、及び/又は型に保存されてもよい。
【0055】
使用方法
実施形態では、患者の区域骨欠損を処置する方法が提供され、方法は、バイオファブリケートされた移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に被覆する血管新生前シェルとを含む骨移植片を提供する工程であって、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む工程、並びに骨移植片を患者の区域性骨欠損領域に配置する工程であって、微小血管断片が吻合し、骨移植片が患者の天然の成熟骨へと進行する工程、を含む。
【0056】
実施形態では、構築物を機械的に支持し、構築物を患者の所定の位置に保持するために、区域性欠損の部位で骨移植片を機械的に補強することが必要な場合がある。そのような機械的補強は、当該技術分野で知られている方法によって、例えば、ブラケット、ピン、ねじ、プレート、ワイヤ等を配置することによって達成することができる。
【0057】
実施形態では、骨移植片は特注であり、特定の患者の欠損の幾何学的形状に適合するように構成される。具体的な実施形態では、骨移植片、より具体的には移植片コアは、MRI、CTスキャン、X線、又は他の適切な画像データ等の患者固有の画像データに基づいて成形又は構成され得る。
【0058】
実施形態では、移植片コアは、3Dプリンティング技術及び互換性のあるソフトウェアを使用してバイオファブリケートされる。例えば、実施形態において、移植片コアは、2軸、3軸、4軸、5軸、6軸、又は所望の構築物の形状を印刷するのに適した他の多軸プリンタ等の多軸3Dプリンタを使用して3D印刷される。適切な3Dプリンタプラットフォームとしては、例えば、BioAssemblyBot(登録商標)(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)及びTSIM(登録商標)ソフトウェア(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)又は同等の3Dモデリング/印刷ソフトウェアパッケージが挙げられる。
【0059】
図5は、本開示の実施形態による特注の骨移植片のヒト下顎骨モデルの区域性骨欠損領域における例示的な配置を示す。
図5Aは、区域性骨欠損領域50を有するヒト下顎骨モデルを示す。
図5Bは、本明細書に開示される特注の生体骨移植片10を示し、これは、区域性欠損50の幾何学的形状に適合するようにバイオファブリケートされている。
図5Bでは、特注の骨移植片10が上下逆に示されており、下顎骨の内部と接触する移植片部分は上方に向けられ、患者の歯列に沿う移植片部分は下方に向けられている。
図5C~
図5Dは、区域性欠損領域50に配置された特注のインプラント10を示す。
【0060】
図6Aは、例示的な患者固有の画像データからTSIM(登録商標)ソフトウェアプラットフォームを使用してモデル化された区域性骨欠損(ここでは、ヒト下顎骨のスライス切片)の例示的な3Dモデルを示す。
図6Bは、本明細書に記載されるように、区域性骨欠損の幾何学的形状に実質的に適合するように構成された3D印刷された骨移植片を示す。
図6C及び6Dは、それぞれ、DBMを含む場合及び含まない場合の骨形成の前駆体としての構造化コラーゲンを示すピクロシリウスレッド及びファーストグリーンで染色した組織切片を示す。
【0061】
特定の実施形態では、生体骨移植片は、任意に、区域性欠損の部位に配置する前に、患者の体内の異所の場所又は位置に「バンク(banked)」されてもよい。そのようなバンキングは、例えば、間葉系幹細胞及び/又は脂肪幹細胞が成熟細胞に分化することを可能にするため、及び/又は微小血管が更に吻合し、より完全な毛細血管床及び機能的微小血管系を発達させることを可能にするために、インプラントのコンディショニングを容易にする。実施形態では、生体骨移植片は、患者の身体のバンキング部位(例えば、異所性部位)の組織の皮弁の下に外科的に配置される。例えば、下顎骨インプラントの場合、骨移植片は、異所性部位からの除去及び骨欠損部位への配置の前に、より複合的なインプラントへの分化及び成熟を促進するために、一定期間、患者の顎の組織皮弁の下にバンキングされてもよい。そのような組織バンキングは、移植片の成熟及び血管新生を促進し、欠損部位への移植のための遊離又はリーシュ(leashed)皮弁(例えば、筋骨皮弁)も作り出す。
【0062】
例
以下の例は、例示として与えられており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0063】
例1.移植片コアをバイオファブリケートするための試薬の調製
全ての試薬を使用前に滅菌する。適切な無菌技術が処置全体にわたって利用される。
【0064】
移植片コア前骨構成成分のストック溶液の調製
ゼラチン:1×PBS中のブタ皮膚300ブルーム由来のゼラチン(Sigma G1890-500G)の15%w/v溶液を調製する。溶液をホットプレート上に置き、ゼラチンが溶解するまで高熱で激しく混合する。ゼラチンが溶解した後、溶液を0.22μmフィルタで滅菌濾過し、37℃の水浴に入れて冷却する。滅菌ゼラチンストックを4℃で1週間保存し、再加熱して使用することができる。骨移植片コア構成成分インクに用いられるゼラチンの濃度は、印刷される構築物及び具体的な製造条件に応じて調整され得る。
【0065】
フィブリノゲン:1×PBS中のヒト血漿由来のフィブリノゲン(Sigma F4883-1G)の60mg/ml溶液を調製する。溶液をボルテックスして混合し、次いで37℃の水浴に20分間入れてフィブリノゲンを溶解する。フィブリノゲンを溶解した後、0.22μmフィルタで滅菌濾過する。フィブリノゲン溶液は、調製した日に使用することが好ましい。骨移植片コア構成成分インクに用いられるフィブリノゲンの濃度は、印刷される構築物及び製造条件に応じて調整され得る。
【0066】
凍結乾燥脱灰骨マトリックス(DBM):粒径500μm以下のDBM(動物供給源:獣医学的移植サービス;ヒト供給源:AlloSource、オハイオ州シンシナティ;LifeLink Tissue Bank、フロリダ州タンパ)が使用に適している。
【0067】
ヒト間葉系幹細胞(MSC):継代3以下のMSC(RoosterBio、メリーランド州フレデリック、MSC-003 KT-002)が使用に適している。
【0068】
フィブロネクチン:ヒト血漿由来のフィブロネクチン(Sigma番号F1056)を1×PBSに1mg/mlのストック濃度で溶解する。フィブロネクチンは、凍結/解凍サイクルを避けるため、等分して-20℃で貯蔵する必要がある。
【0069】
架橋剤を含む細胞培養培地
トロンビン:ヒト血漿由来のトロンビン(Sigma番号T6884-250UN)を250U/mlのストック濃度で1×PBSに溶解する。トロンビンは、凍結/解凍サイクルを避けるため、等分して-20℃で保存する。用いられるトロンビンの濃度は、印刷される構築物及び製造条件に応じて調整され得る。
【0070】
第XIII因子:第XIII因子(Enzyme Research Labs HFXIIIa 1314)を300~400U/mlのストック濃度で1×PBSに溶解する。第XIII因子は、凍結/解凍サイクルを避けるため、等分して-20℃で保存する必要がある。用いられる第XIII因子の濃度は、印刷される構築物及び製造条件に応じて調整され得る。
【0071】
トランスグルタミナーゼ:60mg/mlトランスグルタミナーゼ(Amazon MooGloo-TI製剤)のRPMI 1640中ストック溶液を調製する。溶液をボルテックスして混合し、次いで37℃の水浴に20分間入れてトランスグルタミナーゼを溶解する。トランスグルタミナーゼを溶解した後、20μmフィルタで滅菌濾過する。
【0072】
VEGF:0.1%BSAを超純水に添加し、滅菌濾過する。VEGF(Peprotech 100-20)を滅菌溶液中で50μg/mlの濃度に再構成する。
【0073】
B27サプリメント:50倍マイナスビタミンA(Fisher 12587010)
架橋剤を含む適切な培養培地を表1に従って配合する。
【表1】
【0074】
MSC培地の調製
MSC培養培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM:F12を含む。
【0075】
例2.移植片コアのバイオファブリケーション及び架橋
移植片コア前骨構成成分(例えば、3D印刷インク)の量は、印刷される構築物のサイズに応じて変化する。シャーレ内でフィブロネクチン、フィブリノゲン、MSC、DBMをそれぞれ10μg/ml、10mg/ml、500,000MSC/ml、1/8tsp/mlの濃度で混合し、穏やかに混合する。
【0076】
滅菌ゼラチンを水浴から取り出し、7%w/vゼラチンの最終濃度になるようにフィブロネクチン/フィブリノゲン/MSC/DBM溶液に添加する。印刷インクに添加する前に、ゼラチンが37℃以下であることを確実にする。完成した印刷インク混合物を十分に混合する。
【0077】
完成した印刷インクを、滅菌された印刷カートリッジに転写する。懸濁を維持するために、溶液がゲル化している間にカートリッジを反転させる。溶液がゲル化した後、18GA円錐針を印刷カートリッジの端部に配置する。この時、この溶液は、3D印刷用途に使用する準備ができている。
【0078】
インクは、任意の適切な3Dシステムを使用して印刷することができるが、印刷設定は変動し得る。BioBot(登録商標)Basic又はBioAssemblyBot(登録商標)3Dプリンタ(Advanced Solutions、ケンタッキー州ルイビル)での空気圧印刷法を使用すると、推奨される印刷設定は以下の通りである:圧力:7~20PSI;速度:5~10mm/秒;加速度:650mm/sec^2;開始遅延:25msec;ライン高さ:1mm;線幅:0.5mm。細胞生存率を確実にするために、構築物を2時間解凍したMCSで印刷しなくてはならない。
【0079】
インクを調製した後、実行可能性を確保するために、MCSを解凍してから2時間以内に構築物を印刷する必要がある。
【0080】
3D印刷後、構築物を、トランスグルタミナーゼ架橋剤を含有する組織培養培地に浸漬し、37℃の5%CO2インキュベーター内で約2~24時間インキュベートする。
【0081】
図4A及び4Bは、本明細書に記載のバイオファブリケートされた骨移植片コア構築物を示す画像である。
【0082】
例3.血管新生前シェル構成成分のための試薬の調製
印刷のおよそ1日後、血管新生前シェル構成成分(例えば、キャスティング溶液)を印刷した構築物に加える。試薬を以下のように調製する。
4×DMEM:10gの粉末DMEM(フェノールレッドを含む低グルコース;Fisher Scientific番号31600-034)及び3.7gの重炭酸ナトリウム(Fisher Scientific番号S233-3)を10mlの1M HEPES(Lonza番号17-737E)に添加する。成分を溶解するまで混合し、超純水中で250mlの最終容量にする。溶液を0.22μmフィルタで滅菌濾過する。4×DMEMを4℃で最大7日間保存し得る。
【0083】
コラーゲンI:希釈されていないコラーゲンストックを4℃で最大約6ヶ月間保存することができる。貯蔵時間が長くなると、新生細胞の増殖が悪くなる可能性がある。コラーゲン混合物の全ての成分を、調製全体を通して氷上に保つ。ピペット先端を冷却することはまた、コラーゲンがゲル化するのを防ぐのに役立つ場合がある。粘性コラーゲンの管及びピペット壁の接着を補償するため、余分なコラーゲンを調製してもよい(例えば、およそ50%余分に)。調製したら、コラーゲン溶液を30分以内に使用しなくてはならない。
【0084】
コラーゲンは、4×DMEM、滅菌UltraPure又はMilliQ水、及び高濃度ストックコラーゲン(例えば、ラット尾コラーゲンI、Corning(登録商標)番号354249)から調製される。ストックコラーゲンを所望の濃度に希釈するのに必要な試薬の体積は、以下のように計算される。
【数2】
4×DMEMの体積=(所望のコラーゲンの体積)*(0.25)
NAOHの体積=ストックコラーゲン体積*0.023
DI水の体積=所望のコラーゲンの体積-(4×DMEMの体積+ストックコラーゲンの体積+NAOHの体積+50μl MV懸濁液)
【0085】
これらの式は、50μlの微小血管/MSC懸濁液が下記のコラーゲンの総体積に加えられることを想定している。これは、異なる体積が使用される場合に調整され得る。
【0086】
全ての試薬を15ml遠心管に一緒に添加し、コラーゲンストックを最後に添加した試薬とする。溶液の色がオレンジ色又は黄色である場合、数マイクロリットルの滅菌1N NaOHを添加し、よく混合する。混合物が赤/ピンクに変わるまで(pH7.4を反映する)繰り返し、各添加の間に1分間待つ。溶液がマゼンタに変わる場合、溶液は塩基性になりすぎであり、pHを調整するために1M HClを再び添加する必要がある。オレンジ色は溶液が酸性すぎることを示し、7.4のpHを示す所望の赤色/ピンク色に達するまで追加のNaOHを添加する必要がある。重要なことに、微小血管をコラーゲン混合物に添加したら、NaOH又はHClを添加すべきではない。
【0087】
解凍培地を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM:F12 50:50混合物として調製する。
【0088】
血管新生前シェル構成成分(キャスティング溶液):血管新生前シェル構成成分は、コラーゲンストック、ヒト脂肪微小血管及び間葉系幹細胞を組み合わせることによって調製される。
【0089】
任意の骨形成補助剤を含む細胞培養培地:0.1%BSAを超純水に添加し、滅菌濾過する。VEGFを滅菌溶液で50μg/mlの濃度に再構成する。B27、VEGF及び任意のStemPro SupplementをRPMIに添加して、表2に示す最終濃度にする。
【表2】
【0090】
血管新生前シェルにおけるMSCの所望の濃度に応じて、種々のキャスティング戦略が使用に適している。様々なMSC密度が、コラーゲンの収縮率及び圧縮率を決定する。例4は、DBM骨移植片コア上に血管新生前シェルをキャスティングするための例示的な手順を示す。
【0091】
例4.血管新生前シェルの添加
必要とされる微小血管、MSCの総数、及びコラーゲン/微小血管懸濁液の体積が決定される。微小血管は、堅牢な血管新生のために200,000微小血管/mlの密度で日常的に使用されている。より低い微小血管密度は、増殖の遅延及び/又は微小血管死をもたらし得る。
【0092】
有効コラーゲン濃度は1.5mg/ml~7mg/mlの範囲である。この実施形態では、5mg/mlが用いられる濃度である。MSC濃度は約200,000MSC/mlである。コラーゲン及びMSCの懸濁物の体積は、印刷された構築物を浸漬するのに十分でなくてはならない。
【0093】
微小血管を37℃の水浴中で急速に解凍し、約10mlの解凍媒体を含む遠心管に移動させる。マイクロピペット及び培養培地を使用してバイアルをすすぐ。
【0094】
所望の数のMSCを解凍培地と共にMVに加える。次いで、微小血管/MSC懸濁液を400×Gで4分間遠心分離する。遠心分離後、血管/MSCをコラーゲン中に直接再懸濁する。複数のコラーゲン又は微小血管濃度が企図される場合、懸濁液を分割してもよく、各群を別々に遠心分離してもよい。
【0095】
MSCを継代し、計数し、次いで、200×Gで8分間遠心分離することによってペレット化する。
【0096】
微小血管が遠心分離機にある間に、コラーゲンゲルを調製する。希釈されていないコラーゲンストックを4℃で最大約6ヶ月間保存することができる。貯蔵時間が長くなると、新生細胞の増殖が悪くなる可能性がある。コラーゲン混合物の全ての成分を、調製全体を通して氷上に保つ。ピペット先端を冷却することはまた、コラーゲンがゲル化するのを防ぐのに役立つ場合がある。粘性コラーゲンの管及びピペット壁の接着を補償するため、余分なコラーゲンを調製してもよい(例えば、およそ50%余分に)。調製したら、コラーゲン溶液を30分以内に使用すべきである。コラーゲンを例3で論じたように調製する。
【0097】
次いで、50μl未満の培地がペレットの上に残るように、上清を微小血管/MSCペレットから吸引する。微小血管をマイクロピペットで再懸濁し、遠心管を氷上に置く。管を氷上で最低1分間維持し、それによって管を冷却し、コラーゲンが時期尚早にゲル化するのを防ぐ。
【0098】
所望の体積の冷コラーゲン溶液を、微小血管ペレットを含む管に分注し、次いで、気泡の導入を避けるように注意しながら、ペレットをマイクロピペットで再懸濁する。
【0099】
ウェルプレートを氷浴上に置き、少なくとも1分間冷却する。次いで、MSC/コラーゲン混合物を、例えば3D印刷法によってウェルプレートに分注する。滅菌鉗子を使用して、DBM/MSC/ゼラチン移植片コア構築物を冷コラーゲン/MSC浴中に慎重に入れる。
【0100】
マイクロピペットを使用して、50μlのMV/コラーゲン懸濁液の複数のスポットを、印刷された構築物の周りに放射状パターンで添加する。微小血管が追加された後は、微小血管が動かないように、プレートを傾斜させないようにする。
【0101】
次いで、プレートを37℃、5%CO2インキュベーターに1時間入れてコラーゲンをゲル化させる。
【0102】
次いで、培養培地を各ウェルに、ウェル中のコラーゲンの体積に等しい体積で添加する。次いで、ウェルプレートを%CO2インキュベーター中37℃でインキュベートし、最初の1週間は2日ごとに、その後は4日ごとに培地を交換する。より頻繁な培地交換は、新生細胞の増殖を遅らせる場合がある。
【0103】
新生血管の発芽は3~4日以内に目で見ることができる。新生血管の発芽が開始された後、コラーゲンの収縮が始まる。血管前シェルを、所望の組織剛性まで収縮させることができる。
【0104】
図4Cは、本明細書中に記載されるように、実質的に血管前シェルに被覆された例示的な骨移植片を示す画像である。
【0105】
例5.生体骨移植片の血管新生
生体血管新生化骨移植片を、本明細書中に開示される方法に従ってバイオファブリケートした。次いで、構築物をピクロシリウスレッド及びファーストグリーンで染色して、脱灰骨マトリックス及び微小血管、より具体的には移植片の吻合微小血管を可視化した。
図2A~2Cは、染色された移植片の顕微鏡画像であり、脱灰された骨マトリックス60は緑色に染色され、より明るい灰色の陰影として画像に可視化され、微小血管70は赤色に染色され、より暗い灰色の陰影として画像に可視化される。
図2A~2Cに示すように、骨移植片は、吻合して生体骨移植片において機能する毛細血管床を提供する微小血管断片を含む。
【0106】
実施形態は、従属項に記載された好ましい特徴と共に、以下の番号付けされた項を参照して説明され得る。
【0107】
1.骨移植片であって、
脱灰骨マトリックス及び担体を含むバイオファブリケートされた移植片コアと、
移植片コアを少なくとも部分的に被覆する血管新生前シェルとを含み、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む、骨移植片。
【0108】
2.担体はフィブリノゲン及びゼラチンを含む、項1に記載の骨移植片。
【0109】
3.移植片コアは、1つ以上の間葉系幹細胞及び脂肪幹細胞を更に含む、項1又は2のいずれかに記載の骨移植片。
【0110】
4.移植片コアは、特定の患者の欠損の幾何学的形状に適合するように構成された特注の移植片コアである、項1~3のいずれかに記載の骨移植片。
【0111】
5.移植片コアは患者固有の画像データに基づいて成形される、項1~4のいずれかに記載の骨移植片。
【0112】
6.移植片コアは3D印刷される項1~5のいずれかに記載の骨移植片。
【0113】
7.単離された微小血管断片はヒト脂肪由来の全微小血管セグメントである、項1~6のいずれかに記載の骨移植片。
【0114】
8.骨移植片は、成長因子で外因的にドープされていない、項1~7のいずれかに記載の骨移植片。
【0115】
9.骨移植片を製造する方法であって、
(a)脱灰骨マトリックス及び担体を含む前骨構成成分から移植片コアをバイオファブリケートする工程、
(b)第1のインキュベーション期間にわたって、架橋剤を含む第1の培養培地中で移植片コアをインキュベートする工程、
(c)移植片コアの少なくとも一部を、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む血管新生前シェル構成成分で覆う工程、並びに
(d)工程(c)の被覆された移植片コアを第2の培養培地中で第2のインキュベーション期間インキュベートして、生体骨移植片を提供する工程、
を含む方法。
【0116】
10.担体はフィブリノゲン及び皮膚ゼラチンを含む、項9に記載の方法。
【0117】
11.前骨構成成分は、1つ以上の間葉系幹細胞及び脂肪幹細胞を更に含む、項9~10のいずれかに記載の方法。
【0118】
12.移植片コアをバイオファブリケートすることは、移植片コアを3D印刷することを含む、項9~11のいずれかに記載の方法。
【0119】
13.移植片コアは、患者固有の画像データに基づいて3D印刷される、項9~12のいずれかに記載の方法。
【0120】
14.第1の培養培地がトロンビン、第XIII因子及びトランスグルタミナーゼを含む、項9~13のいずれかに記載の方法。
【0121】
15.第1のインキュベーション期間は約12時間~約48時間の範囲である、項9~14のいずれかに記載の方法。
【0122】
16.移植片コアの少なくとも一部を血管新生前シェル構成成分で被覆することは、3D印刷によって行われる、項9~15のいずれかに記載の方法。
【0123】
17.第2の培養培地はRPMI、B-27サプリメントマイナスビタミンA、及び血管内皮増殖因子(VEGF)を含む、項9~16のいずれかに記載の方法。
【0124】
18.第2のインキュベーション期間は約3日間~約14日間の範囲である、項9~17のいずれかに記載の方法。
【0125】
19.インキュベートすることは、約37℃でインキュベートすることを含む、項9~18のいずれかに記載の方法。
【0126】
20.患者において区域骨欠損を処置する方法であって、
バイオファブリケートされた移植片コアと、移植片コアを少なくとも部分的に被覆する血管新生前シェルとを含む骨移植片を提供する工程であって、血管新生前シェルは、単離された無傷の微小血管断片、間葉系幹細胞、及びコラーゲンを含む工程、並びに
骨移植片を患者の区域性骨欠損領域に配置する工程であって、微小血管断片が吻合し、骨移植片が患者において天然の成熟骨へと進行する工程、
を含む、方法。
【0127】
21.骨移植片を配置することは、インプラントを区域性骨欠損領域に機械的に補強する工程を含む、項20に記載の方法。
【0128】
22.骨移植片は、患者の区域性骨欠損領域に適合するように成形された特注の骨移植片である、項20~21に記載の方法。
【0129】
23.骨移植片は患者固有の画像データに基づいて成形される、項20~22のいずれかに記載の方法。
【0130】
24.移植片コアは、脱灰骨マトリックス、フィブリノゲン、皮膚ゼラチン、及び間葉系幹細胞を含む、項20~23のいずれかに記載の方法。
【0131】
25.移植片の成熟及び血管新生を促進し、患者の区域性骨欠損領域に骨移植片を配置する前に遊離又はリーシュ皮弁を作るために、骨移植片を患者において異所位置に配置する工程を更に含む、項20~24のいずれかに記載の方法。
【0132】
26.骨移植片は合成材料を実質的に含まない、項1~8のいずれかに記載の骨移植片、又は項9~25のいずれかに記載の方法。
【0133】
引用された全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれ、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【0134】
様々な実施形態の説明が「含む(comprising)」及び/又は「含む(including)」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例では、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」という用語を使用して実施形態を代替的に説明できることを理解するであろうことを更に理解されたい。
【0135】
前述の説明は、本発明の特定の実施形態を例示するものであり、その実施を限定するものではない。特定の実施形態を図示及び説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を網羅することが意図されている。
【国際調査報告】