(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】光学構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20221208BHJP
C03B 19/12 20060101ALI20221208BHJP
C03C 27/10 20060101ALI20221208BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20221208BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B5/20
C03B19/12 Z
C03C27/10 B
G02B1/11
G02B5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521075
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2020079099
(87)【国際公開番号】W WO2021074324
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596096180
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ
(71)【出願人】
【識別番号】510309020
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(71)【出願人】
【識別番号】512291156
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリュール デ リヨン
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】パロラ,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,シーザー
(72)【発明者】
【氏名】シャトー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】シャピュウ,フレデリック
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4G014
4G061
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA12
2H148CA06
2H148CA12
2K009AA02
2K009BB02
4G014AH04
4G061AA02
4G061AA20
4G061BA03
4G061BA12
4G061CA02
4G061CB13
4G061CC02
4G061CD02
4G061DA23
4G061DA29
4G061DA30
(57)【要約】
本発明は、中央フィルタ(1)と、該中央フィルタが間に挟まれた2つのサンドイッチ光学素子(2,3)と、を有する少なくとも1つの積層体を含む光学構造に関する。前記中央フィルタ(1)は、マトリクス材料内にあり、前記マトリクス材料は、少なくとも1つのドーピング剤でドープされ、前記中央フィルタ(1)と、そのそれぞれの側の2つの光学素子(2,3)とは、前記中央フィルタ(1)と同じマトリクス材料系の材料の接合層(4a,4b)により組み立てられる。前記中央フィルタ(1)のそれぞれの側の前記光学素子(2,3)、および接合層(4a,4b)の各々は、前記中央フィルタ(1)の材料と等しい屈折率を有し、またはこの屈折率から、プラスマイナス0.05の範囲内、好ましくはプラスマイナス0.02の範囲内でのみ異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央フィルタと、該中央フィルタが間に挟まれる2つのサンドイッチ光学素子と、を有する少なくとも1つの積層体を含む光学構造であって、
前記中央フィルタは、マトリクス材料内にあり、前記マトリクス材料は、少なくとも1つのドーピング剤でドーピングされ、
前記中央フィルタおよび両側の前記2つの光学素子は、前記中央フィルタと同じマトリクス材料系の材料の接合層により組み立てられ、
前記中央フィルタのそれぞれの側の前記光学素子および前記接合層の各々は、前記中央フィルタの材料と等しい屈折率を有し、またはこの屈折率とは、プラスマイナス0.05の範囲内、好ましくはプラスマイナス0.02の範囲内で異なる屈折率を有する、光学構造。
【請求項2】
間に前記中央フィルタが挟まれた前記光学素子は、前記中央フィルタと同じマトリックス材料系の未ドープ材料内にある、請求項1に記載の光学構造。
【請求項3】
間に前記中央フィルタが挟まれた前記光学素子は、溶融シリカガラスの未ドープ材料内にある、請求項1に記載の光学構造。
【請求項4】
前記中央フィルタのマトリクス材料、および前記接合層のマトリックス材料は、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、フェニルトリメトキシシラン(PTMOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYMO)、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン(GLYDMO)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン(HMDEOS)、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、ビニルトリエトキシシラン(VTEOS)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYEO)、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン(GLYDEO)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン、および2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ならびにそれらの混合物、有意にはメチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、およびそれらの混合物の材料の群内で選択される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項5】
前記接合層の前記マトリックス材料は、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)であり、溶媒中のメチルトリエトキシシラン(MTEOS)の濃度は、80重量%よりも高く、有意には、82から90重量%の間である、請求項4に記載の光学構造。
【請求項6】
前記ドーピング剤は、可視光および/または近赤外線フォトクロミックおよび/または光パワー制限剤である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項7】
当該構造の少なくとも前面は、抗反射層で被覆される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項8】
前記中央フィルタと、間に該中央フィルタが配置された前記2つの光学素子とを有する前記積層体は、2つのシリカガラスの間に挟まれ、少なくとも前記前面ガラスは、抗反射層で被覆される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項9】
前記中央フィルタ、および間に該中央フィルタが配置された前記光学素子は、各々、0.5mmから10mmの厚さであり、有意には、0.75mmから3mmの間の厚さである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項10】
前記ドーピング剤は、当該光学構造が50J/cm
2のエネルギー入力に対して、3μJ未満の透過エネルギーを有するようなものである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項11】
前記ドーピング剤は、当該光学構造が透過エネルギーを3.5μJ未満に制限するようなものである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項12】
前記ドーピング剤は、当該光学構造が0から100J/cm
2のエネルギー入力に対して、透過エネルギーを3.5μJ未満に制限するようなものである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項13】
前記ドーピング剤は、0.1から500mMのドーピング濃度を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の光学構造。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の光学構造を製造する方法であって、
前記中央フィルタおよび該中央フィルタのそれぞれの側の前記2つの光学素子は、45℃から120℃、有意には50℃から70℃の温度で、0.1から30kg/cm
2の圧力、有意には5から20kg/cm
2の圧力で接合される、方法。
【請求項15】
前記中央フィルタおよび該中央フィルタのそれぞれの側の前記2つの光学素子は、温度調節プレスを用いて接合される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光学構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非線形光学の分野では、数年にわたって、特に光学的制限の用途向けに、非線形光学特性を有するハイブリッド材料の研究が行われている。これらの材料は、レーザ放射に起因する損傷を防ぐ光学保護装置(目、センサー)に使用される場合、特に興味深い。後者は、レーザに関する技術の強力な開発により急激に進展している。
【0003】
非線形吸収現象の利点は、これらの特性を備える分子または材料が、極めて短い応答時間または反応時間、および極めて広い波長範囲で、例えば同じ材料の可視光または赤外線の全体にわたって、照射下において自発的に反応するという事実にある。一方、市販のフィルタは、光を直線的に遮断するため、狭小の波長保護バンドを有する。
今日のレーザは、放出波長を容易に変更することができ、市販の線形ブロッキングフィルターは、時代遅れになりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の非線形光学特性を有するハイブリッド材料の1つの種類は、分子、錯体、および/またはナノ粒子が組み込まれたシリケート系のマトリックスを有する。この点に関し、国際公開第WO2011/128338号には、ケイ酸塩ゾル、すなわち、ゾルゲル法による酸化ケイ素のオリゴマーを含むゾルの凝縮により、そのようなハイブリッド材料を調製する方法が記載されている。しかしながら、そのような材料の光学的および機械的特性は、しばしば、急速に劣化し、従って、これらの材料では、非線形光学装置内の光学センサーの最適な保護が常に提供できるとは限られない。
【0005】
本発明の目的は、非線形の光学特性を有し、前述の問題を克服できる光学構造を提供することである。
【0006】
特に、本発明の目的は、従来の光学構造に比べて改善された光学的および機械的な特性を有する、そのような光学構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、中央フィルタと、間に該中央フィルタが配置された2つの光学素子と、を有する少なくとも1つの積層体を含む光学構造が提供される。前記中央フィルタは、マトリクス材料内にあり、前記マトリクス材料は、少なくとも1つのドーピング剤でドーピングされる。前記中央フィルタおよび両側の前記2つの光学素子は、前記中央フィルタと同じマトリクス材料系の材料の接合層により組み立てられ、前記中央フィルタのそれぞれの側の前記光学素子および前記接合層の各々は、前記中央フィルタの材料と等しい屈折率を有し、またはこの屈折率とは、プラスマイナス0.05の範囲内、好ましくはプラスマイナス0.02の範囲内で異なる屈折率を有する。
【0008】
ドーピング剤は、光制限ドーピング剤であり、すなわち、電力制限剤である。ドーピング剤は、光学構造の光学素子と組み合わされ、電力伝送(power transmission)を制限する。ドーピング剤は、構造に電力伝送閾値(下記の保護閾値)を提供する。
【0009】
そのような光学構造は、保護構造または保護装置として使用されてもよい。これは、例えば、レーザ放射線から他の装置または眼を保護するために使用することができる。
【0010】
光学構造は、非線形光学特性を有し、これは、エネルギー入力が高いほど、構造によるエネルギーの吸収が高いという事実によって定められる。構造のエネルギー吸収の割合は、エネルギー入力とともに増加する。
【0011】
驚くべきことに、本発明によるそのような構造は、光学素子を有さず中央フィルタのみを有する場合と比べて、(以下の
図6から示されるように)保護閾値を大幅に改善する。また、これは、(以下の
図5から示されるように)波長の透過窓における低エネルギー波長の透過性を改善し、光学素子を有さず中央フィルタのみを有する場合と比べて、高いレーザ誘起損傷閾値を有する。
【0012】
さらに、ドープされた材料が2つの光学素子の間に介在されるそのような構造では、ドープ化材料における酸素の拡散が制限され、より良好なビーム集束を確保することが可能となる。
【0013】
さらに、これは、ドープ化材料の暗色化を回避する。これは、接着剤に含まれる物質に対して感度のあるドーパントの場合、ある接着剤で生じ得る。
【0014】
従って、優れた光学特性および制限された光学損失を有する構造が提供される。ドープされた材料と接着剤との間の屈折率が等しく、または少なくとも小さな差の勾配を有するためである。
【0015】
本発明の一実施形態では、光学構造は、非線形光学特性を有する。
【0016】
本発明の一実施形態では、マトリクス材は、ゾル-ゲルマトリクス材である。この実施形態では、中央フィルタの材料は、ドーピング剤が組み込まれたゾル-ゲルマトリックス材料である。
【0017】
本発明の一実施形態では、中央フィルタのドーピング剤でドーピングされたゾル-ゲルマトリックス材料は、ドーピング剤の存在下での塩基前駆体材料の無機重合によって得られる、ハイブリッドまたは無機ポリマーである。
【0018】
本発明の一実施形態では、マトリクス材料は、ケイ素酸化物系のマトリクスであってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態では、中央フィルタのドーピング剤でドーピングされたゾル-ゲルマトリックス材料は、シリコン系ゾル(シリコーンオキシド系材料)、すなわち、ドーピング剤の存在下でケイ素酸化物のオリゴマーを含むゾルの凝縮によって構成された材料である。
【0020】
例えば、中央フィルタのドーピング剤でドーピングされるゾル-ゲルマトリクス材料は、以下のステップによって得られる。ケイ素酸化物およびドーピング剤のオリゴマーのゾルを、溶媒中に分散し、低温または周囲温度で液体にする。次に、ゾルを凝縮させてゲルを形成する。その後、溶媒が抽出され、固体材料が得られる。
【0021】
本発明の一実施形態では、中央フィルタ内にいくつかのドーピング剤が存在してもよい。
【0022】
本発明の一実施形態では、構造の少なくとも前面は、抗反射層で被覆される。
【0023】
本発明の一実施形態では、中央フィルタと、間に該中央フィルタが設置される2つの光学素子とを含む積層体は、2つのシリカガラスの間に挟まれ、そのうちの少なくとも前面ガラスは、抗反射層で被覆される。
【0024】
本発明の一実施形態では、中央フィルタと、間に該中央フィルタが設置される光学素子は、各々、0.5mmから10mmの厚さであり、有意には、0.75mmから3mmの厚さである。
【0025】
前記ドーピング剤は、当該光学構造が50J/cm2のエネルギー入力に対して、3μJ未満の透過エネルギー(transmitted energy)を有するようなものである。
【0026】
本発明の一実施形態では、ドーピング剤は、当該光学構造が透過エネルギーを3.5μJ未満に制限するようなものである。
【0027】
本発明の一実施形態では、ドーピング剤は、0から100J/cm2のエネルギー入力に対して、当該光学構造が透過エネルギーを3.5μJ未満に制限するようなものである。
【0028】
本発明の一実施形態では、ドーピング剤は、当該光学構造が150J/cm2よりも高い、または200J/cm2よりも高いレーザ誘起損傷閾値を有するようなものである。
【0029】
本発明の一実施形態では、ドーピング剤は、0.1から500mM、0.1から100mM、または1から100mMのドーピング濃度を有する。
【0030】
本発明の一実施形態では、可視光の波長の透過窓に対して、ドーピング剤は、5mMから500mM、より好ましくは10mMから70mMのドーピング濃度を有する。
【0031】
本発明の一実施形態では、近赤外の波長の透過窓に対して、ドーピング剤は、1mMから500mM、より好ましくは1mMから100mMのドーピング濃度を有する。
【0032】
本発明の一実施形態では、ドーピング剤は、中央フィルタのマトリクス材料中のケイ素酸化物系の材料について、20mMから50mM、または30mMから50mMのドーピング濃度を有する。
【0033】
本発明の一実施形態では、間に中央フィルタが設置される光学素子は、未ドープ材料内にある。
【0034】
本発明の一実施形態では、間に中央フィルタが設置される光学素子は、中央フィルタと同じマトリクス材料系の未ドープ材料、すなわち、ドーピング剤が存在しない材料である。前述の実施形態は、その後、ドーピング剤を含まない光学素子の材料に適用されてもよい。特に、光学素子は、中央フィルタと同じゾル-ゲル材料内にあるが、ドーピング剤を含まなくてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態では、間に中央フィルタが設置される光学素子は、溶融シリカガラスの未ドープ材料内にある。
【0036】
本発明の一実施形態では、中央フィルタおよび接合層のゾル-ゲルマトリックスは、以下の材料の群内で選択されることが好ましい:メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、フェニルトリメトキシシラン(PTMOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYMO)、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン(GLYDMO)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン(HMDEOS)、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、ビニルトリエトキシシラン(VTEOS)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYEO)、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン(GLYDEO)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシラン、および2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ならびにそれらの混合物、有意にはメチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、およびそれらの混合物、有意には、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、およびそれらの混合物。
【0037】
接合層のゾル-ゲルマトリックスは、例えば、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)であってもよい。溶媒中のメチルトリエトキシシラン(MTEOS)の濃度は、80重量%よりも高く、有意には82から90重量%の間である。
【0038】
ドーピング剤は、材料に対する電力伝送を制限する、特定の光学特性を付与する任意の機能物質であってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態では、ドーピング剤は、可視光および/または近赤外線フォトクロミックおよび/または光パワー制限剤である。
【0040】
フォトクロミック剤および光パワー制限剤は、そのようなドーピング剤の例である。ドーピング剤は、有機分子種、有機金属分子種、無機分子種、および無機ナノ材料の中から選択されてもよい。導入された有機または有機金属ドーピング剤の溶解度は、溶媒中で十分に高く、ゾルに匹敵する必要がある。ある場合には、追加の溶媒がゾルに導入され、有機または有機金属ドーピング剤が完全に溶解される。ゾルの温度を高めることでも、同じ役割を果たすことができる。ドーピング剤の混合物は、それらが異なる溶解度を示す場合であっても、このプロセスを用いて、容易に得ることができる。
【0041】
当然のことながら、ドーピング剤は、記載された例とは異なっていてもよい。
【0042】
網羅されるバンド幅に応じて、単一の分子または複数の分子の混合物を使用して、必要な波長全体をカバーすることができる。典型的には、可視光の場合、大きなバンド幅のため、2つまたは3つのドーピング分子の混合物が使用されてもよい。一方、近赤外における狭小のバンド幅の保護の場合、単一のドーピング分子が考慮される。
【0043】
本発明の一実施形態では、可視光波長に関して、好ましいドーピング剤は、以下の群内から選択することができる:
【0044】
【化1】
(以下の文中ではPE2およびPE3とも称される)、またはそれらの混合物。
【0045】
オリゴフルオレン(可視光波長用)、または近赤外-赤外線場における波長用の非線形吸収性発色体(azabodipy)、またはその他のドーピング剤も考えられる。
【0046】
本発明の一実施形態では、中央フィルタ、および間に該中央フィルタが配置される光学素子は、各々、0.5mmから10mmの厚さであり、有意には、0.75mmから3mmの厚さである。これらは、通常、1mmまたは2mmに等しい厚さである。
【0047】
また、本発明では、光学構造を製造する方法が提案される。当該方法において、中央フィルタおよび該中央フィルタのそれぞれの側の2つの光学素子は、45℃から120℃、有意には50℃から70℃の温度で、0.1から30kg/cm2の圧力、有意には5から20kg/cm2の圧力で接合される。
【0048】
本発明の一実施形態では、当該方法において、温度調節プレスが使用される。中央フィルタおよび該中央フィルタのそれぞれの側の2つの光学素子は、温度調整プレスを用いて接合される。
【0049】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として提供される本発明の特定の実施形態の以下の記載、および添付図面を参照することにより、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明による光学構造の概略的な代表図である。
【
図2】抗反射層を有する場合と有しない場合の透過スペクトルを示した図である。
【
図3a】比較試験に使用された第1のサンプルの光学構造の概略的な断面図である。
【
図3b】比較試験に使用された第1のサンプルの光学構造の概略的な断面図である。
【
図4a】前記比較試験に使用された第2のサンプルの光学構造の概略的な断面図である。
【
図4b】前記比較試験に使用された第2のサンプルの光学構造の概略的な断面図である。
【
図5】
図3a、3b、4a、4bのサンプルの透過曲線が提供されたグラフである。
【
図6】532nmの波長で同じサンプルで評価された、レーザエネルギー入力と透過エネルギーとの間の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(光学構造)
図1に示した光学構造は、以下を有するスタックである:
中央フィルタ1、
フィルタ素子1が間に挟まれた光学素子2、3、
中央フィルタ1と光学素子2との間に介在された接着剤4aの層、および中央フィルタ1と光学素子3との間に介在された、接着剤4bの層、
層2および層3の上に配置された抗反射層5a、5b。
【0052】
中央フィルタ1および光学素子2、3は、例えば、それぞれ、0.5mmから10mmの間の厚さであり、典型的には、1または2mmのオーダーの厚さである。
【0053】
例えば、中央のフィルタ1の厚さは1mmであり、2つの光学素子2、3の厚さは、2mmである。
【0054】
(中央フィルタ1)
本発明の一実施形態では、中央フィルタ1は、シリカ系のゾルゲルマトリックス、すなわち、ケイ素酸化物のベース材料を含むマトリックス材料を有し、これには、電力伝送を制限する光学発色体が組み込まれている。
【0055】
マトリックスは、可視光、NIR、またはIR波長で良好な透過特性を可能にする一方、組み込まれた発色体は、通常380nmから1800nmまでの高強度の可視光またはNIR波長のいずれかをブロックするように選定される。
【0056】
本開示において、可視光波長は、450nmから650nmの波長の透過窓であってもよく、NIR(近赤外放射線)は、750nmから3500nmの波長の透過窓であってもよい。特に、800nmから1700nmもしくは1800nmの波長、特に1400から1600nm、または約1500nmの透過窓であってもよい。IR(赤外線)波長は、750nmから15μmの波長の透過窓であってもよい。
【0057】
(無機マトリックス)
本発明の一実施形態では、無機マトリックスは、例えば、前述の国際公開第WO2011/128338号に記載された種類のものである。以下のモノマー材料が記載される:メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、エチルトリエトキシシラン(ETEOS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、ジエトキシメチルシラン(HMDEOS)、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、およびビニルトリエトキシシラン(VTEOS)。
【0058】
また、これらの材料の混合物も考慮され得る。
【0059】
ある実施形態では、モノマーは、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物から選定される。
【0060】
本発明の一実施形態では、溶媒はアルコールであり、有意にはエタノールであってもよい。
【0061】
国際公開第WO00/35818号には、より詳しく記載されている。
【0062】
(導入ドーピング剤)
本発明の一実施形態では、可視波長に関し、電力伝送を制限するドーピング剤は、国際公開第WO201128338号において提案されているような白金系の発色体、例えば、以下の式に対応する白金フェニルアセチレン(phenylacetylure)であってもよい:
【0063】
【化2】
ここで、
- nおよびmは、鎖の長さ、
- Lは、一般にホスフィン型のリガンドを表し、
- Rは、末端基、典型的には-H、-OH、またはt-Bu3としての溶解度を改善する反応基を表す。
【0064】
有意には、nおよびmは、2または3であり、Lは、PBu3であり、Rは、CH2OHである。
【0065】
本発明の一実施形態では、可視光領域の発色体は、以下の通りである:
【0066】
【化3】
本願において、それぞれは、PE2とPE3と称される。一実施形態では、PE2は、PE3と共に存在する。他の実施形態では、中央フィルタは、PE2でドープされ、PE3を含まない。他の実施形態では、中央フィルタは、PE3でドープされ、PE3を含まない。
【0067】
典型的なドーピング濃度は、
PE2については、1から500mM、好ましくは10mMから400mM、より好ましくは20mMから70mM であり、
PE3については、0.1から100mM、好ましくは1mMから50mM、より好ましくは5mMから30mMである。
【0068】
これらのドープされた発色体を有する無機マトリックスは、通常、可視領域内(450から700nm)で高い透過率を有するとともに、700から800nmの範囲で良好な吸収特性を有する。
【0069】
オリゴフルオレン(可視光波長用)のような、他のドーピング剤も考慮される。
【0070】
本発明の一実施形態では、近赤外線領域(1200から1600nm)の波長において、azabodipyファミリーに属し、ゾル-ゲルモノリシックマトリクスに組み込まれる非線形吸収性発色体が使用され得る。
【0071】
それらは、約1300nm付近で最大の効率を提供する。
【0072】
そのような非線形発色体の例は、“電気通信波長における光パワー制限のための効率的なハイブリッド材料”-Denis Chateau、Quentin Bellier、Frederic Chaput、Patrick Feneyrou、Gerrad Berginc、Olivier Maury、Chantal AndraudおよびStephane Parola-Mater.Chem.C,2014,2,5105-5110に記載されている。
【0073】
(光学素子2、3)
本発明の一実施形態では、光学素子2および3は、中央フィルタと同じゾル-ゲルマトリックス材料系のガラス材料で構成される。
【0074】
それらは、ドープされていない。
【0075】
それらの屈折率は、中央フィルタ1の屈折率に等しく、またはわずかプラスまたはマイナス0.05(好ましくはプラスまたはマイナス0.02)の範囲内で、中央フィルタ1と異なっている。
【0076】
(接合層4a、4b)
中央フィルタ1を2つの光学素子2および3と結合させるために使用される接着材料は、屈折率が中央フィルタハイブリッド材料の屈折率のプラスまたはマイナス0.05とほぼ等しくなるように、好ましくはプラスまたはマイナス0.02の屈折率となるように、選択される。
【0077】
中央フィルタ材料と接着剤材料との間で等しい屈折率(または少なくとも、中央フィルタ材料と接着剤との間における低い屈折率勾配)を使用することにより、光学的損失の制限が助長され、良好な集束化が可能となる。
【0078】
本発明の一実施形態では、接着材料は、中央フィルタ1と同じゾル-ゲルマトリックス材料から選択される。
【0079】
中央フィルタ1に存在し得る発色体は、接着剤に含まれる多くの物質に対して感度を有してもよく、ドープされた材料の黄色化の可能性があり、さらには褐色化が生じてもよい。
【0080】
中央フィルタ1に使用されるゾル-ゲルマトリックス材料と同じマトリックス中に接着材料を選択することにより、この問題が回避され、極めて良好な光学特性を得ることができる(前後述の実験結果を参照)。
【0081】
エリプソメトリー(偏光解析)測定では、屈折率に対するドーピングの影響が小さいことが示され、従って、アセンブリにおける屈折率の変動は、抑制される。
【0082】
本発明の一実施形態では、接着層のゾル-ゲルマトリックスは、好ましくは(少なくとも80重量%に)濃縮され、粘性接着剤が得られ、低温での接着が可能になる。
【0083】
(抗反射層5a、5b)
本発明の一実施形態では、抗反射層5a、5bは、国際公開第WO2009133264号に記載され提案されているような、従来の抗反射化合物であり得る。
【0084】
本発明の一実施形態では、それらは、ゾル-ゲル技術を介して得られたコーティングであってもよく、例えば、テトラアルコキシシラン、好ましくはテトラメトキシシラン(頭字語TMOS)、および/または国際公開第WO2010034936号において提案されているような、別のテトラエトキシシラン(またはTEOS)である、鉱物アルコキシドであってもよい。
【0085】
本発明の一実施形態では、これらは、
図1に示すように、光学構造を構成する積層体の自由面の各々に設けられることが有意である。
【0086】
想定される実施形態では、構造体の前面のみが抗反射層を有する(潜在的な損傷が最も生じ易いため)。
【0087】
(組立プロセス)
以下、前述の種類の光学構造体の組立の例について説明する。
【0088】
本発明の一実施形態では、これらの例において、光学素子2および3ならびに接合層4a、4bは、MTEOS内にある一方、中央フィルタ1は、PE2およびPE3のドーパントの混合物(MTEOSドープされたPE2は、50mMであり、PE3は、10mMである)を含む。
【0089】
本発明の一実施形態では、接合層4aおよび4bは、MTEOSのゾル-ゲルマトリックスから構成され、これは、真空気化および溶媒変化により、エタノール中で96質量%に濃縮される。
【0090】
本発明の一実施形態では、このゾル-ゲルマトリックスは、接着剤として使用され、光学素子2および3をフィルタ1に組み立てる(接合層4a、4b)。
【0091】
本発明の一実施形態では、45℃で72時間、約60g/cm2の圧力が印加され、確実に接着が行われる。
【0092】
あるいは、別の実施形態では、結合は、
-より高温で接着剤をより迅速に乾燥させ、
-より高い圧力で接着剤の層が薄くなるように、
行われる。
【0093】
再現性を確保するため、温度制御された状態で、加圧が使用される。
【0094】
この加圧は、例えば手動加圧である。
【0095】
これにより、50℃から70℃の間、有意には55℃から65℃の間、通常60℃の温度で、制御された加圧が可能となり、使用されるMTEOSマトリックスの溶媒であるエタノールの迅速な蒸発が可能になる。
【0096】
接合圧力は、従来の接合圧力よりもはるかに大きく、典型的には0.1から30kg/cm2の間であり、有意には10から20kg/cm2の間である。
【0097】
通常、提案の無機マトリックス、特にMTEOSマトリックスは、加圧下において極めて良好な機械的強度を有することが留意される。MTEOSのマトリックスは、最大2T/cm2の圧力を支持する。
【0098】
そのような接合により、可視光波長において良好な透過性を有する接合材料を得ることが可能となり、特に、フィルタおよびサンドイッチ光学素子の組立体をわずか1h30で同時に得ること、すなわち、6日間の時間節約が可能となる。
【0099】
他の接着組成物、特にゲル中の濃度が低い接着剤も可能である。
【0100】
本発明の一実施形態では、通常、MTEOSマトリックスに関し、エタノール中の濃度は、82%から90%(86%±4%)の間であり得る。
【0101】
これにより、接着剤の分布が良好な前述の条件下での作動が可能となる。
【0102】
高加圧での接合により、材料中の気泡の形成によるクラックのリスクが制限される。
【0103】
本発明の一実施形態では、抗反射層または層5a、5bは、層2および/または層3上に予め成膜することにより、従来の方法で堆積される。
【0104】
別の実施形態では、フィルタ1と、間に該フィルタ1が介在する接合光学素子2および3とを含む積層体は、中性シリカガラス間にサンドイッチすることができる。2つのサンドイッチガラスの中で、前面ガラスの少なくとも前面は、抗反射層で被覆される。
【0105】
(実験結果)
このようにして製造された構造は、極めて良好な光学的品質を有する。
【0106】
これらにより、システム全体の特性が実質的に改善されることにより、電力伝送の光学的制限に優れた結果が得られる。
【0107】
本発明による光学構造の以下に記載される2つの実施例S1およびS2を、従来技術の参照試料R(以下に記載される)と比較して評価した。
【0108】
本発明による光学構造では、高いレーザ誘起損傷閾値とともに、透過エネルギーの良好な保護閾値が得られることが示されている。グローバルな伝送品質も改善される。
【0109】
ドープされた材料と組立体の間の透過損失は、極めて低く(可視光範囲において最大0.5%のオーダー)、これは5倍厚い。
【0110】
これは、接合層の良好な挙動、および未ドープ材料の優れた透明性を示唆するものである。
【0111】
さらに、
図2では、抗反射層がある場合とない場合(「AR」および「ARなし」)で得られた透過スペクトルを示す。抗反射層5a、5bも、光学的品質の改善を可能にする。
【0112】
(例 サンプルS1(
図3aおよび3b))
直径15mmの光学構造が評価された。前記光学構造は、ドープされたガラスの中央フィルタDGを有し、これは、2つの中性光学素子Gの間にサンドイッチされる。
【0113】
ドープされた中央フィルタDGは、PE2およびPE3の混合物(PE2 50mM、PE3 10mM)がドープされたMTEOS系のマトリックスであった。
【0114】
厚さは1mmであった。
【0115】
中性光学素子Gは、純粋なシリカであり、すなわち、市販の溶融シリカガラス(DGの材料ではなく、ゾル-ゲル材料ではない)であった。
【0116】
それらは、厚さが1.6mmであった。
【0117】
それらは、米国EPOXY TECHNOLOGY社からのEPO-TEK OG175の接合層Lを介して、フィルタDGに接着された(従って、前記接合層は、ドープされた中央フィルタの場合のように、MTEOSマトリックスを有する材料から構成されていない)。
【0118】
得られた光学構造の幅は、4.2mmである。
【0119】
シリカガラスGは、その外面ARが抗反射層ARで被覆された。
【0120】
(サンプルS2(
図4aおよび4b))
サンプルS2は、中央フィルタ1を有し、DGは、前述のドープされた材料(PE2 50mM、PE3 10mM)に対応するドープされた前述のMTEOS系のマトリックス内に形成され、2つの中性光学素子2、3、OGの間にサンドイッチされ、これらは、中央フィルタDGと同じMTEOS系のマトリックスであるものの、未ドープであった。
【0121】
光学素子OGは、厚さが2mmであるのに対して、中央フィルタ1、DGは、厚さが1mmである。構造は、直が径15mmである。
【0122】
中央フィルタDGとサンドイッチする光学素子OGとの間の接合は、中央フィルタDGと同じMTEOSマトリックスの接着材料、および未ドープのサンドイッチ化光学素子OGの接着材料を使用した、前述のアセンブリプロセスによって達成された。
【0123】
得られた光学構造は、さらに、2つの市販の純粋なシリカガラスG(厚さ1.6mm)、すなわち市販の溶融シリカガラス(DGの材料ではなく、ゾル-ゲル材料ではない)の間に挟まれる。シリカガラスGは、その外面の抗反射層ARで被覆された。
【0124】
ガラスGと光学素子OGとの間の接合は、サンプルS1(層L)に使用されるものと同じ市販の接着材料を介して実現される。
【0125】
(通常の従来技術の限定光学構造の参照サンプルR)
典型的な従来技術の参照サンプルRは、PE2およびPE3の混合物(PE2 50mM、PE3 10mM)でドープされた、MTEOS系のマトリックスのDG中心フィルタである。ただし、単独ではあるが、厚さが1mmであり、サンプルS2と同じDG中心フィルタであり、すなわち、光学素子OGを含まないサンプルS2であり、接着材料Lを含まず、2つの市販の純粋なシリカガラスGを含まず、抗反射層ARを含まない。
【0126】
図5には、3つの例S1、S2、Rの低エネルギー入力に対する透過曲線を示す。一方、
図6には、とレーザエネルギー入力と、該レーザエネルギー入力に対する透過エネルギーの関係を示す。横軸において、3つの例S1、S2、Rの高い値が得られている。
図5には、低エネルギー入力における、市販の溶融シリカガラスG(1.6mm厚さ)のみの透過曲線UDも、示されている。
【0127】
サンプルS2は、最も良好な透過曲線を示し、サンプルS1およびS2の両方は、可視光に対応する波長450nmから650nmの透過窓において、通常の従来技術の限定光学構造(
図5)の参照サンプルRよりも良好な透過応答を有する。透過曲線(
図5)のゲインは、数%であり、これは、
図6による透過エネルギーの減少と組み合わされた場合、ある用途では、必要かつ重要である。
【0128】
図6から、参照サンプルRでは、4から4.5μJの透過エネルギーが可能となり、一方、サンプルS1およびS2では、エネルギー入力の少なくとも0から100J/cm
2において、3から3.5μJの透過エネルギーが可能となる。
【0129】
図6から、サンプルS1およびS2の50 J/cm
2での透過エネルギーは、3μJ(2.1から2.7μJに等しい)未満であり、一方、参照サンプルRの50 J/cm
2での透過エネルギーは、3.50μJ(3.5から3.7μJに等しい)よりも大きい。従って、本発明によるサンプルS1およびS2では、50J/cm
2の同じ入射レーザエネルギーに対して、光学構造の透過エネルギーの25%の減少が提供され、従って、従来の参照サンプルRよりも25%高い(より良い)透過エネルギーの保護閾値(
図6からの吸収エネルギーによって定められる)を有する。従って、サンプルS1およびS2は、光学素子を含まず中央フィルタのみを有する参照サンプルRと比べて、電力伝送の制限(
図6参照)を大幅に改善する。また、サンプルS1およびS2は、波長の透過窓における低エネルギーの波長の透過性を改善し(
図5から示される)、光学素子を有さず中央フィルタのみを有する参照サンプルRと比べて、より高いレーザ誘起損傷閾値を有する。
【0130】
レーザ誘起損傷閾値(LIDT)は、532nmの波長、5.5ナノ秒のパルス、およびサンプルの中央の焦点(サンプルは、レーザパルス毎に移動)で評価された。
【0131】
従来技術の参照サンプルRのレーザ誘起損傷閾値は、~100J/cm
2であり、
図6にも示されているように、損傷は、前面入口で生じる。
【0132】
サンプルS1のレーザ誘起損傷閾値は、約160から190J/cm2である(前面での市販の接合層Lにおける損傷)。
【0133】
レーザ誘起損傷閾値は、中央ドープ化フィルタDG(
図6参照)と同じゾル-ゲルマトリックスを有する接合層を使用することにより、サンプルS2では、かなり改善される(~250J/cm
2)(市販のボンディング層Lでは前面での損傷)。
【国際調査報告】