(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体、その生産方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20221208BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20221208BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221208BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221208BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221208BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221208BHJP
C12P 7/6427 20220101ALI20221208BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20221208BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221208BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20221208BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221208BHJP
A23L 33/12 20160101ALN20221208BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N9/02
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
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A61K31/202
A61P17/00
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K8/36
A61Q19/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A23L33/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521086
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2019017246
(87)【国際公開番号】W WO2021112310
(87)【国際公開日】2021-06-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(71)【出願人】
【識別番号】505448855
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ソン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョル ホ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ベク ロク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ギル ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,キョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ ウォン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B050
4B064
4B065
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
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4C206ZB21
4C206ZC41
4C206ZC52
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、多価不飽和脂肪酸のヒドロキシ誘導体生成用酵素、これを用いた多価不飽和脂肪酸のヒドロキシ誘導体の生産方法、および多価不飽和脂肪酸ヒドロキシ誘導体を含むSPMs複合組成物に関する。前記酵素は、一度の反応により多価不飽和脂肪酸のヒドロキシ誘導体を生産することができるため、生体外生産に非常に有用に利用することができる。多価不飽和脂肪酸ヒドロキシ誘導体を含むSPMs複合組成物は、コラーゲン生成を促進し、NO生成およびTNF-α、IL-6の発現を抑制し、フィラグリン(Filaggrin)およびロリクリン(Loricrin)の発現を増加させるため、皮膚老化やシワを予防または改善するか、皮膚バリアを強化するか、またはアトピー性皮膚炎を含む皮膚疾患を予防、改善または治療するのに有用に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体(mono-hydroxy or di-hydroxy derivatives)生成用酵素。
【請求項2】
前記多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸(DHA)またはエイコサペンタエン酸(EPA)である、請求項1に記載の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素。
【請求項3】
請求項1に記載のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子は、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列からなる、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項3に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の組換え発現ベクターが宿主細胞に導入された形質転換体。
【請求項7】
請求項1に記載の酵素を多価不飽和脂肪酸と反応させるステップを含む、インビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項8】
前記酵素と多価不飽和脂肪酸の反応物からモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を回収するステップをさらに含む、請求項7に記載のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項9】
前記反応させるステップを、10℃~40℃およびpH4~pH10の条件で行う、請求項7に記載のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項10】
前記多価不飽和脂肪酸は、DHA(Docosahexaenoic acid)またはEPA(Eicosapentaenoic acid)である、請求項7に記載のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項11】
請求項6に記載の形質転換体を多価不飽和脂肪酸の存在下で培養するステップ;および
前記培養された培養物から多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を分離するステップを含む、
インビボ(in vivo)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項12】
前記多価不飽和脂肪酸は、DHA(Docosahexaenoic acid)またはEPA(Eicosapentaenoic acid)である、請求項11に記載のインビボ(in vivo)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項13】
17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項14】
前記皮膚状態改善は、皮膚シワの予防または改善、皮膚老化の予防または改善、皮膚炎症の予防または改善、皮膚再生および皮膚バリアの強化からなる群より選択される1種以上である、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項15】
前記皮膚状態は、紫外線による光老化、しみ、そばかす、皮膚創傷、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、掻痒症、湿疹性皮膚疾患、乾燥性湿疹、紅斑、じんましん、乾癬、薬疹およびニキビからなる群より選択されたいずれか一つ以上である、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項16】
前記組成物は、i)細胞中のコラーゲン合成を促進するか、ii)コラーゲン分解を抑制するか、またはiii)マトリックスメタロプロテイナーゼ-1(matrix metalloproteinase-1;MMP-1)の発現または活性を抑制する、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項17】
前記組成物は、抗酸化活性を有する、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項18】
前記組成物は、炎症因子を抑制する、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項19】
前記組成物は、フィラグリン(Filaggrin)またはロリクリン(Loricrin)の発現を増加させる、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項20】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを3~85:10~60:6~50の重量比で含む、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項21】
前記組成物は、化粧料組成物である、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項22】
前記組成物は、食品組成物である、請求項13に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項23】
17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項24】
前記皮膚疾患は、皮膚創傷、皮膚瘢痕、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、掻痒症、湿疹性皮膚疾患、乾燥性湿疹、水虫、紅斑、じんましん、乾癬、薬疹、ニキビおよび脱毛からなる群より選択される1種以上である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含有する複合組成物の有効量を皮膚状態の改善が必要な個体に投与するステップを含む、皮膚状態を改善させる方法。
【請求項26】
17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含有する複合組成物の有効量を皮膚疾患の治療が必要な個体に投与するステップを含む、皮膚疾患の予防または治療方法。
【請求項27】
皮膚疾患の予防または治療に用いるための、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含有する複合組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法、および多価不飽和脂肪酸の誘導体を含む複合組成物の皮膚シワの改善、皮膚炎症の改善または皮膚バリアの強化の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症反応は、病原菌の感染および各種毒性物質に対する人体の一次的な防御手段として重要な役割をするが、それと同時に多様な慢性疾患を誘発する基礎要因として作用し得るため、体内の精巧な調節メカニズムにより厳格に調節されなければならない生理現象である。
【0003】
オメガ-6多価不飽和脂肪酸に該当するアラキドン酸(arachidonic acid、C20:4n-6)の誘導体であるプロスタグランジン(prostaglandin)あるいはロイコトリエン(leukotriene)は、代表的な炎症反応開始シグナル物質であって、体内で多様な慢性疾患を誘発し得る炎症反応の不均衡を誘導する。一般的に、炎症反応は、炎症反応開始シグナル物質が生成されないと、自然に終結するものと認識され、前記物質の生成を阻害する多様なステロイドまたは非ステロイド系の抗炎症治療剤が開発された。しかしながら、近年、炎症反応の終結メカニズムも精巧な調節過程によりなされ、その過程で、オメガ-3多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA、C22:6n-3)およびエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA、C20:5n-3)の水酸化誘導体が前記炎症反応の終結メカニズムに作用するシグナル物質としての役割として作用し得ることが確認された。このように炎症反応の終結メカニズムのシグナル物質として作用するものをSPM(specialized proresolving mediators;resolvins、protectins、maresins)と命名し、これらは、既存の抗炎症治療剤であるコルチコステロイド(corticosteroids)およびNSAID(non-steroid anti-inflammatory drug)であるアスピリンに比べて著しく優れた効果を発揮することが確認された。
【0004】
また、前記SPMは、主に炎症反応開始シグナル物質の生成抑制を誘導する既存のステロイドまたは非ステロイド系の抗炎症治療剤とは異なり、炎症反応の全段階にわたって効能を示すという長所がある。そこで、前記SPMを用いて、各種慢性炎症疾患(血管、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、骨関節炎、喘息をはじめとする肺疾患、胃腸管炎、歯周炎、眼球乾燥症、脂肪肝などの各種慢性炎症疾患)、感染敗血症、火傷、創傷回復、疼痛、癌、糖尿などのような多様な疾患について治療効能の存在有無に対する研究が活発に進められている。
【0005】
一方、生体内の炎症反応終結シグナル物質SPMは、オメガ-3多価不飽和脂肪酸にヒドロキシ基が2個あるいは3個挿入された構造であって、2以上の酵素の連続的な作用を介して非常に極微量生成されるものと知られている。そこで、炎症反応終結シグナル物質の効能および治療剤の開発のために十分なSPMを生成するために、有機合成工程により製造するための努力が続けられているが(非特許文献1の参照)、その工程が非常に複雑であるという限界がある。
【0006】
そこで、生体外酵素反応を介して、オメガ-3多価不飽和脂肪酸を用いてモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を効率的に生産可能な技術開発の必要性が持続的に求められている現状である。
【0007】
一方、皮膚は、外部の有害環境から人体を保護する重要な器官であるとともに、最も大きい面積を有する免疫器官である。皮膚の最外郭を構成している角質層は、物理的、化学的な損傷に対する抵抗力を有し、微生物および有害な化学物質などが体内に浸透するのを防止する。また、ケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、線維芽細胞、肥満細胞、樹枝状細胞および毛細血管内皮細胞などが複雑な免疫体系を形成し、外部からの抗原浸透時に免疫反応を介して人体を保護する。
【0008】
皮膚は、外部から刺激(紫外線、化学物質、熱、物理的摩擦)を絶えず受けており、近年、微小粒子状物質(PM2.5)、ブルーライト(blue light)などのように新しい刺激源が増えている。それのみならず、精神的なストレス、睡眠障害、栄養不均衡および薬物治療などの内的な要因も皮膚にストレスを与える原因として知られている。
【0009】
最近の研究によれば、皮膚の刺激により炎症反応が起こり、このような炎症反応が皮膚の老化を招くという研究結果が発表されている。Franceschiは、2000年、炎症性老化(inflammaging)という用語を初めて使用して炎症と老化の相関関係を説明し、慢性的な炎症が老化や老化と関わる疾病である糖尿、動脈硬化、痴呆などの原因になるという研究結果が持続的に発表されている。
【0010】
炎症開始段階に分泌される前炎症性サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(Matrix metalloproteinases、MMPs)の発現を促進する。MMPsの増加は、皮膚老化と直接的に関わりがあることが知られており、皮膚の構成成分中の70%を占めるコラーゲンなどを分解してシワ生成および弾力減少などの老化を促進する。
【0011】
一般的に、皮膚老化を抑制するために用いられる物質としては、活性酸素除去のためのスーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase)などの酵素またはビタミンC、トコフェロールなどの抗酸化剤、ボツリヌス関連ペプチド、およびレチノールのようなビタミンA誘導体などが挙げられる。中でも、ビタミンA誘導体類は、コラーゲン合成能に優れるためシワ除去の効果に最も優れるのに対し、光や熱に不安定であるため皮膚刺激を誘発するなどの副作用があり、剤形内含量が不安定な問題がある。
【0012】
アトピー性皮膚炎は、遺伝的、環境的、免疫学的な異常反応および皮膚バリアの崩壊により発病する疾患であって、乾燥症、掻痒症、紅斑性湿疹を引き起こす慢性炎症性皮膚疾患である。近年、全世界的に環境変化、食習慣および環境汚染などにより有病率が増加しており、解決手段に対する関心も増加している。しかし、原因が究明されておらず、根本的な治療が難しいため、症状治療に依存している場合が大半である。
【0013】
一方、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA、C22:6n-3)およびエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA、C20:5n-3)の水酸化誘導体は、炎症反応の終結メカニズムに作用するシグナル物質として作用し得ることが確認され、このように炎症反応の終結メカニズムのシグナル物質として作用するものをSPM(specialized proresolving mediators;resolvins、protectins、maresins)と命名した。
【0014】
近年、前記SPMを用いて、各種慢性炎症疾患(例えば、血管、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、骨関節炎、喘息をはじめとする肺疾患、胃腸管炎、歯周炎、眼球乾燥症、脂肪肝など)、感染敗血症、火傷、創傷回復、疼痛、癌、糖尿の治療剤として研究が活発に進められてきたが、皮膚老化の改善、皮膚バリアの強化およびアトピー性皮膚炎に及ぼす効果に対する研究および実験は微々たる現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一目的は、多価不飽和脂肪酸からモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を生成することができる酵素、およびそれを用いてインビボ(in vivo)またはインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を生産することができる方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、皮膚シワの予防または改善、皮膚老化の予防または改善、皮膚炎症の予防または改善、皮膚再生および皮膚バリアの強化により皮膚状態を改善するための化粧料組成物、または食品組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のまた他の目的は、皮膚創傷、皮膚瘢痕、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、掻痒症、湿疹性皮膚疾患、乾燥性湿疹、水虫、紅斑、じんましん、乾癬、薬疹、ニキビおよび脱毛からなる群より選択される1種以上の皮膚疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、多価不飽和脂肪酸のヒドロキシ誘導体を有効成分として含有する複合組成物の有効量を個体に投与するステップを含む、皮膚状態を改善させる方法を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、多価不飽和脂肪酸のヒドロキシ誘導体を有効成分として含有する複合組成物を個体に投与するステップを含む、皮膚疾患の予防または治療方法を提供することにある。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、皮膚疾患の予防または治療のための医薬の製造における、多価不飽和脂肪酸のヒドロキシ誘導体を有効成分として含有する複合組成物の使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、配列番号1または配列番号2と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシ(mono-hydroxy)またはジ-ヒドロキシ(di-hydroxy)誘導体生成用酵素を提供する。
【0022】
本発明の他の態様は、前記モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素を多価不飽和脂肪酸と反応させるステップを含む、インビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法を提供する。
【0023】
本発明のまた他の態様は、前記モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする遺伝子が形質導入された形質転換体を、多価不飽和脂肪酸の存在下で培養するステップと、前記培養された培養物から多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を分離するステップとを含む、インビボ(in vivo)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法を提供する。
【0024】
本発明のさらに他の態様は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用の化粧料組成物を提供する。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用の食品組成物を提供する。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0027】
本発明のさらに他の態様は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含有する複合組成物の有効量を皮膚状態の改善が必要な個体に投与するステップを含む、皮膚状態を改善させる方法を提供する。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含有する複合組成物を皮膚疾患の治療が必要な個体に投与するステップを含む、皮膚疾患の予防または治療方法を提供する。
【0029】
本発明のさらに他の態様は、皮膚疾患の予防または治療に用いるための、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含有する複合組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0030】
本発明の酵素は、多価不飽和脂肪酸を基質として用いてモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を一度の反応により生産することができるため、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生体外生産に非常に有用に利用することができる。
【0031】
本発明のドコサヘキサエン酸ヒドロキシ誘導体を含むSPMs複合組成物は、コラーゲン合成を増加させ、損傷した皮膚バリアを回復させ、経表皮水分蒸散を減少させるため、皮膚老化の抑制や皮膚シワの改善の効果がある。
【0032】
また、本発明のSPMs複合組成物は、TNF-α、IL-6の発現抑制効果、フィラグリン(Filaggrin)、ロリクリン(Loricrin)の発現増加効果および抗酸化効果が顕著に向上して皮膚バリアを強化させ、アトピー性皮膚炎を含む多様な皮膚疾患を予防または治療するという効果がある。
【0033】
但し、本発明の効果は、上記で言及した効果に制限されず、言及していないまた他の効果は、下記の記載から当業者に明らかに理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質(A)および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質(B)の過剰発現可否をSDS-PAGEで確認した結果を示したものである。
【
図2】配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質とドコサヘキサエン酸(DHA)の反応生成物を対象に順相HPLC分析を行った結果を示したものである。
【
図3】配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質とドコサヘキサエン酸(DHA)の反応生成物を対象に順相HPLC分析を行った結果を示したものである。
【
図4a】
図4a~
図4dは、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質(K1)および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質(K2)に対し、類似した活性を有するリポキシゲナーゼ酵素であるヒト5LOX(AAA36183)、ヒト12LOX(AAA51533)、ヒト15LOX(AAA36183)、大豆15LOX(AAA33986)、ジャガイモLOX(AAB81595)および紅藻類PhLOX2(AGN54275)とのアミノ酸配列の相同性をそれぞれ分析した結果を示したものである。
【
図5】ヒト真皮線維芽細胞に対する、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM2)の細胞毒性を確認した結果を示したものである。
【
図6】ヒトケラチノサイト(human keratinocyte)に対する、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM2)の細胞毒性を確認した結果を示したものである。
【
図7】ヒトケラチノサイトに対し、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM2)のTNF-α発現抑制活性を確認した結果を示したものである。
【
図8】ヒトケラチノサイトに対し、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM2)のIL-6発現抑制活性を確認した結果を示したものである。
【
図9】ヒト真皮線維芽細胞に対し、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM2)のコラーゲン生成向上活性を確認した結果を示したものである。
【
図10】ヒト真皮線維芽細胞に対し、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質により生成されたヒドロキシ誘導体(SPM2)のコラーゲン分解酵素の生成阻害活性を確認した結果を示したものである。
【
図11a】ヒトケラチノサイトに対し、単独成分およびSPMs複合組成物のIL-6発現抑制活性を比較した結果を示したものである:
図11aは、17S-HDHA、プロテクチンDXおよびレゾルビンD5それぞれの濃度別IL-6発現抑制活性を示したものであり、
図11bは、本発明のSPMs複合組成物1~3の濃度別IL-6発現抑制活性を示したものであり、
図11cは、単独成分と対比して本発明のSPMs複合組成物の相乗的IL-6発現抑制効果を示したものである[Untreated control:UVBを照射していない群、Con(-):UVBの照射後に何も処理していない群、Con(+)H.C.:UVBの照射後にヒドロコルチゾンを処理した陽性対照群]。
【
図12a】ヒト真皮線維芽細胞に対し、単独成分およびSPMs複合組成物のプロコラーゲン合成効果を確認した結果を示したものである:
図12aは、17S-HDHA、プロテクチンDXおよびレゾルビンD5それぞれの濃度別プロコラーゲン合成効果を示したものであり、
図12bは、本発明のSPMS複合組成物1~3の濃度別プロコラーゲン合成効果を示したものであり、
図12cは、SPM単独成分と対比して本発明のSPMs複合組成物の相乗的プロコラーゲン合成効果を示したものである[Untreated control:何も処理していない群、Con(+)R.P.:レチニルパルミテートを処理した陽性対照群]。
【
図13】ヒト真皮線維芽細胞に対し、本発明のSPMs複合組成物のコラーゲン分解酵素(MMP-1)発現抑制能の向上効果を確認した結果を示したものである[Untreated control:UVBを照射していない群、Control:UVBの照射後に何も処理していない群、Retinoic acid:UVBの照射後にレチノイン酸を処理した陽性対照群]。
【
図14】ヒトケラチノサイトに対し、本発明のSPMs複合組成物のTNF-α発現抑制能の向上効果を確認した結果を示したものである[Untreated control:UVBを照射していない群、Control:UVBの照射後に何も処理していない群、Hydrocortisone:UVBの照射後にヒドロコルチゾンを処理した陽性対照群]。
【
図15】本発明のSPMs複合組成物のNO生成減少効果を確認した結果を示したものである[Untreated control:UVBを照射していない群、Control:UVBの照射後に何も処理していない群、Hydrocortisone:UVBの照射後にヒドロコルチゾンを処理した陽性対照群、Vit.C:UVBの照射後にビタミンCを処理した陽性対照群]。
【
図16】微小粒子状物質により誘導された刺激に対し、本発明のSPMs複合組成物の脂質過酸化物生成減少効果を確認した結果を示したものである[Untreated control:微小粒子状物質を処理していない群、Control:微小粒子状物質により刺激の誘導後に何も処理していない群、Hydrocortisone:微小粒子状物質により刺激の誘導後にヒドロコルチゾンを処理した陽性対照群、Vit.C:微小粒子状物質により刺激の誘導後にビタミンCを処理した陽性対照群]。
【
図17a】本発明のSPMs複合組成物による皮膚バリアの改善効果を、皮膚バリアを構成する核心タンパク質の発現レベルを介して確認した結果を示したものである:
図17aは、フィラグリン(filaggrin)の発現増加を確認した結果であり、
図17bは、ロリクリン(loricrin)の発現増加を確認した結果である[Untreated control:何も処理していない群、Hyaluronic acid:ヒアルロン酸を処理した陽性対照群]。
【
図18a】人体効能評価を介して、本発明のSMPs複合組成物による皮膚バリアの改善効果を確認した結果を示したものである:
図18aは、皮膚バリア指数変化率(%)を示したものであり、
図18bは、皮膚バリア回復率(%)を示したものである。
【
図19a】人体効能評価を介して、本発明のSMPs複合組成物によるアトピー性皮膚炎の改善効果を確認した結果を示したものである:
図19aは、病変部位での皮膚水分変化率(%)を示したものであり、
図19bは、病変部位での経表皮水分蒸散量変化率(%)を示したものであり、
図19cは、病変部位での皮膚痒み指数変化率(%)を示したものである。
【
図20a】人体効能評価を介して、本発明のSPMs複合組成物による目尻シワおよび皮膚水分の改善効果を確認した結果を示したものである:
図20aは、目尻シワ変化率(%)を示したものであり、
図20bは、目尻皮膚水分量を示したものであり、
図20cは、目尻皮膚水分改善率(%)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0036】
多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシ(mono-hydroxy)またはジ-ヒドロキシ(di-hydroxy)誘導体生成用酵素
本発明の一態様は、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシ(mono-hydroxy)またはジ-ヒドロキシ(di-hydroxy)誘導体生成用酵素を提供する。
【0037】
また、本発明の他の態様は、前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする核酸分子を提供する。
【0038】
本発明の前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の機能に影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換またはこれらの組み合わせにより異なる配列を有するアミノ酸の変異体、または断片であってもよい。前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドレベルでのアミノ酸交換は、当該分野で公知のものである。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などにより修飾されてもよい。よって、本発明は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質およびその変異体またはその活性断片を含む。前記実質的に同一のタンパク質とは、90%以上、好ましくは93%以上、最も好ましくは95%以上のアミノ酸配列の相同性を有するものを意味するが、これに限定されず、90%以上のアミノ酸配列の相同性を有し、同一の酵素活性を有するのであれば、本発明の範囲に含まれる。
【0039】
前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の遺伝子は、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列からなることが好ましい。しかし、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素およびその変異体またはその活性断片をコードする核酸分子は、コード領域から発現される前記酵素およびその変異体またはその活性断片のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形がなされてもよく、コード領域を除いた部分においても、遺伝子の発現に影響を及ぼさない範囲内で多様な変異がなされてもよく、このような変異遺伝子もまた本発明の範囲に含まれる。よって、本発明は、配列番号3または配列番号4の核酸分子と実質的に同一のヌクレオチド配列からなる遺伝子および前記遺伝子の断片を含む。前記実質的に同一のヌクレオチド配列からなる遺伝子とは、80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列相同性を有するものを意味するが、これに限定されず、80%以上の配列相同性を有し、コードされたタンパク質が同一の酵素活性を有するのであれば、本発明に含まれる。上記のように、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の遺伝子は、それと同等の活性を有するタンパク質をコードする限り、一つ以上の核酸塩基が置換、欠失、挿入またはこれらの組み合わせにより変異がなされてもよく、これらもまた本発明の範囲に含まれる。
【0040】
前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素に含まれる、配列番号1のアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号3のヌクレオチド配列からなる遺伝子によりコードされ、配列番号2のアミノ酸配列は、好ましくは、配列番号4のヌクレオチド配列からなる遺伝子によりコードされるが、本発明は、これに限定されず、同一のアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質をコードできる限り、配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列と実質的に同一の他のヌクレオチド配列からなる遺伝子によりコードされてもよい。このようなヌクレオチド配列は、一本鎖または二本鎖であってもよく、DNA分子またはRNA分子であってもよい。
【0041】
本発明の具体的な実施形態において、本発明者らは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を明らかにするために、前記配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を分離および精製し(
図1参照)、その活性を研究した結果、前記配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質が、多価不飽和脂肪酸に2個の水酸基が導入されたモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を生成できる酵素としての活性を有することを確認した(
図2、3参照)。
【0042】
多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の発現ベクターおよび形質転換体
本発明のまた他の態様は、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の遺伝子が含まれた組換え発現ベクター、および前記発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。
【0043】
本発明の組換え発現ベクターは、前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の遺伝子を含む。
【0044】
前記発現ベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクターおよびウイルスベクターなどを含むが、これに限定されない。
【0045】
前記組換え発現ベクターは、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素を生産しようとする宿主細胞の種類に応じて、プロモーター(promoter)、ターミネーター(terminator)、エンハンサー(enhancer)などのような発現調節配列、または分泌のための配列などを適切に目的に応じて組み合わせてもよい。
【0046】
前記発現ベクターは、ベクターが導入された宿主細胞を選択するための選択マーカーをさらに含んでもよく、複製可能な発現ベクターである場合、複製起点を含んでもよい。
【0047】
また、前記組換え発現ベクターは、発現タンパク質の精製を容易にするための配列を含んでもよく、具体的には、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする遺伝子に、分離精製用タグをコードする遺伝子が作動可能に連結されてもよい。この際、前記分離精製用タグは、GST、poly-Arg、FLAG、ヒスチジン-タグ(His-tag)およびc-mycなどが単独で用いられるか、またはこれらのうち2個以上を順次連結して用いてもよい。
【0048】
前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする遺伝子は、制限酵素切断位置を介してクローニングされてもよい。前記ベクターにタンパク質切断酵素の認識部位をコードする遺伝子が用いられた場合には、前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の遺伝子とフレームが合うように(in frame)連結され、前記酵素を得た後にタンパク質切断酵素で切断する際、本来の形態の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素が生産されるようにすることができる。
【0049】
本発明の具体的な実施形態においては、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素遺伝子(配列番号3または配列番号4のヌクレオチド配列を含む遺伝子)をプラスミドベクターであるpET28a(+)に挿入することで、組換えクローニングベクターを製造した。前記クローニングベクターの製造に用いられたpET28a(+)の他にも、多様な原核細胞用ベクターまたは真核細胞用ベクター(pPICおよびpPICZなど)が知られているため、発現の目的に応じて前記ベクター以外の多様な発現ベクターを用いることができる。
【0050】
本発明の前記組換え発現ベクターは、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素遺伝子が含まれており、これを生産できるベクターとして有用に利用することができる。
【0051】
また、本発明の形質転換体には、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターが導入される。
【0052】
本発明に係る前記組換え発現ベクターを発現目的に応じてバクテリア、酵母、大腸菌、真菌類、植物細胞および動物細胞からなる群より選択されるいずれか一つの適切な宿主細胞に形質転換させることで、形質転換体を製造することができる。例えば、前記宿主細胞は、大腸菌(E.coli BL21(DE3)、DH5αなど)または酵母細胞(Saccharomyces属、Pichia属など)などであってもよい。この際、宿主細胞の種類に応じた適切な培養方法および培地条件などは、当該分野の公知技術から当業者が容易に選択することができる。
【0053】
本発明の形質転換体を製造するための組換え発現ベクターの導入方法としては、公知の技術、すなわち、熱衝撃法、電気衝撃法などを用いてもよい。
【0054】
本発明の具体的な実施形態において、大腸菌を宿主細胞とし、本発明の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを大腸菌に形質転換させ、形質転換体を製造した。
【0055】
前記形質転換体から発現されたタンパク質は、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素が酵素活性を有する新規な配列のタンパク質であるため、前記形質転換体を大量培養して前記遺伝子を発現させることで、前記多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の大量生産を容易にすることができる。
【0056】
インビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法
本発明のさらに他の態様は、インビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法を提供する。
【0057】
本発明のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法は、前記「1.多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシ(mono-hydroxy)またはジ-ヒドロキシ(di-hydroxy)誘導体生成用酵素」欄で説明したモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素と多価不飽和脂肪酸を反応させるステップを含む。前記多価不飽和脂肪酸は、炭素間の二重結合が3個以上含まれている脂肪酸であって、オメガ-3脂肪酸であってもよく、より具体的には、ドコサヘキサエン酸またはエイコサペンタエン酸であってもよいが、これに限定されない。このように、前記多価不飽和脂肪酸をモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の基質として用いる場合、基質は、ヒドロキシ基が導入され得る二重結合を多数含んでいるため、モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生成を達成することができる。
【0058】
本発明の前記インビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法は、前記酵素と多価不飽和脂肪酸の反応物からモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を回収するステップをさらに含む。
【0059】
前記回収は、遠心分離、濾過などの当該分野で通常行われる方法を行うことで達成されてもよく、通常の方式で精製する過程をさらに行うことで達成されてもよい。例えば、前記精製する過程は、溶媒沈殿、透析、ゲル濾過、イオン交換、逆相カラムクロマトグラフィーのようなクロマトグラフィーなどの技法を単独でまたは組み合わせて行ってもよい。
【0060】
前記モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素と多価不飽和脂肪酸を反応させるステップは、10℃~40℃の温度範囲、好ましくは15℃~35℃の温度範囲で行われてもよいが、これに限定されない。また、前記反応させるステップは、pH4~pH10の範囲、好ましくはpH7~pH9の範囲で行われてもよいが、これに限定されない。前記温度およびpHの範囲で行う場合、モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の活性が最大となることにより、モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体をさらに効率的に生産することができる。
【0061】
インビボ(in vivo)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法
本発明のさらに他の態様は、インビボ(in vivo)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法を提供する。
【0062】
本発明のインビボ(in vivo)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法は、前記「2.多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素の発現ベクターおよび形質転換体」欄で説明した形質転換体を多価不飽和脂肪酸の存在下で培養するステップと、前記培養された培養物から多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を分離するステップとを含む。
【0063】
前記モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素をコードする遺伝子が含まれた組換え発現ベクターが導入された形質転換体においては、モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素が発現されることができるため、前記形質転換体内に存在するモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素に対しては、前記「1.多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシ(mono-hydroxy)またはジ-ヒドロキシ(di-hydroxy)誘導体生成用酵素」欄の説明を援用し、詳細な説明は省略することにする。
【0064】
前記形質転換体は、モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素が発現されるため、それを利用すれば、多価不飽和脂肪酸を基質として含む培養培地で培養させることで、酵素を分離する別の過程がなくてもモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を生産することができる。
【0065】
前記形質転換体の培養は、本技術分野で周知の適当な培地および培養条件に応じて行われてもよい。通常の技術者であれば、選択される形質転換体の種類に応じて、培地および培養条件を容易に調整して使用することができる。培養方法は、回分式、連続式、流加式、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0066】
前記培地は、多様な炭素源、窒素源および微量元素成分を含んでもよい。
【0067】
前記炭素源は、例えば、ブドウ糖、蔗糖、乳糖、果糖、マルトース、デンプン、セルロースのような炭水化物、大豆油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ココナツ油のような脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸のような脂肪酸、グリセロールおよびエタノールのようなアルコール、酢酸のような有機酸、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。前記培養は、グルコースを炭素源として行われてもよい。前記窒素源は、ペプトン、酵母抽出物、ブロス、麦芽抽出物、コーンスティープリカー(CSL)および大豆・小麦のような有機窒素源、および尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムのような無機窒素源、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。前記培地は、リンの供給源であって、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムおよび対応するナトリウム-含有塩、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄のような金属塩を含んでもよい。
【0068】
また、アミノ酸、ビタミン、および適切な前駆体などが培地に含まれてもよい。前記培地または個別の成分は、培養液に回分式または連続式で添加されてもよい。
【0069】
また、培養中に脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡の生成を抑制してもよい。
【0070】
皮膚状態改善用または皮膚疾患の予防または治療用の組成物
一方、本発明のさらに他の態様は、皮膚状態改善用または皮膚疾患の予防または治療用の組成物を提供する。
【0071】
具体的な一実施形態において、本発明は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用組成物を提供する。
【0072】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5、およびプロテクチンDXは、オメガ-3脂肪酸、すなわち、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)に由来したリポキシゲナーゼ(lipoxygenase;LOX)代謝産物であり、炎症解消促進物質(specialized pro-resolving mediator;SPM)である。
【0073】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)は、(±)17-ヒドロキシ(dihydroxy)-4Z,7Z,10Z,13Z,15E,19Z-ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)であって、下記化学式1の構造で表される。
【0074】
【0075】
前記レゾルビンD5(Resolvin D5;RvD5)は、7S,17S-ジヒドロキシ(dihydroxy)-4Z,8E,10Z,13Z,15E,19Z-ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)であって、下記化学式2の構造で表される。
【0076】
【0077】
前記プロテクチンDX(Protectin DX;PDX)は、10S,17S-ジヒドロキシ(dihydroxy)-4Z,7Z,11E,13Z,15E,19Z-ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)であって、プロテクチンD1の異性体であり、下記化学式3の構造で表される。
【0078】
【0079】
前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXは、本発明の配列番号1または配列番号2の酵素をドコサヘキサエン酸に処理して生合成するか、化学的に合成するか、または商業的に購入したものを用いてもよいが、これに制限されない。
【0080】
本発明の具体的な実施形態において、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物をヒト真皮線維芽細胞に処理した結果、UV照射により増加した炎症因子の発現を抑制し、プロコラーゲン合成を増加させることを確認した。特に、本発明の複合組成物が、単独化合物と対比して、コラーゲン合成効果および炎症抑制効果を相乗的に誘導することを確認した。さらに、人体適用実験において、本発明の複合組成物は、損傷した皮膚バリアを回復させ、経表皮水分蒸散を減少させることで、アトピーによる皮膚乾燥症および痒み症を緩和させることを確認した。
【0081】
したがって、本発明の組成物は、皮膚状態を改善するためのものであってもよい。
【0082】
本発明において、「皮膚状態」は、紫外線による皮膚老化、しみ、そばかす、皮膚創傷、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、掻痒症、湿疹性皮膚疾患、乾燥性湿疹、紅斑、じんましん、乾癬、薬疹またはニキビであってもよい。
【0083】
前記皮膚の老化は、皮膚の弾力減少、ツヤ減少、シワ生成、再生力の弱化または激しい乾燥などの症状が現れるものであって、時間の経過または外部環境などにより誘発される内因性老化および外因性老化のいずれも含む。特に、前記皮膚老化は、光老化であってもよく、前記光老化は、皮膚が紫外線に繰り返しまたは長期間露出される際に発生する皮膚損傷を意味する。
【0084】
また、前記シワは、顔面を含む全ての身体部位で発生するシワを意味し、静的シワ(static rhytides)および動的シワ(dynamic rhytides)のいずれも含む。
【0085】
本発明において、「皮膚状態改善」とは、皮膚シワの予防または改善、皮膚老化の予防または改善、皮膚炎症の予防または改善、皮膚細胞の増殖および再生、毛穴収縮、縮小、または皮膚バリア機能の改善、皮膚刺激の緩和、抗酸化、コラーゲン合成の増進などを全て含む概念である。
【0086】
本発明において、「有効成分として含む」とは、皮膚改善効果を示すことができる、例えば、シワ改善、炎症改善、皮膚再生、アトピー性皮膚炎の改善、または皮膚バリアの強化、改善を示すことができる程度の有効量を含有することを意味する。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、前記組成物は、細胞中のコラーゲン合成を促進するか、マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase;MMP)の発現または活性を抑制してコラーゲン分解を抑制してもよい。前記組成物は、例えば、タイプ1コラーゲンを分解するMMP-1の発現または活性を抑制して細胞外基質の分解を抑制してもよい。
【0088】
本発明の一実施形態によれば、前記組成物は、抗酸化活性を有してもよい。前記組成物は、脂質過酸化物の生成を抑制してもよい。本発明の他の一実施形態によれば、前記組成物は、炎症因子を抑制してもよい。前記組成物は、炎症開始因子であるNO、TNF-α、IL-6を抑制してもよい。
【0089】
前記TNF-α(tumor necrosis factor-a)およびIL-6(Interleukin-6)は、代表的な炎症誘導サイトカインであって、TNF-αは、グラム陰性細菌の細胞膜に存在する内毒素(endotoxin)であるリポ多糖類(Lipopolysaccharide:LPS)により活性化されたリンパ球により作られるpro-inflammatoryサイトカインであり、IL-6は、マクロファージおよびT細胞により分泌され、免疫反応を刺激して炎症を促進する。
【0090】
前記本発明の17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物は、炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-6の発現を抑制して優れた抗炎作用を実現することができ、皮膚に発生する酸化的ストレスによる脂質過酸化物の生成を抑制する抗酸化効果に優れるため外部刺激に対する皮膚抵抗能力を向上させることができる。
【0091】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記組成物は、皮膚バリアを強化してもよい。
【0092】
前記皮膚バリア(skin barrier)は、表皮の最外郭層である角質層(stratum corneum)は、主に無核の扁平な角質細胞(corneocyte)からなっている。正常な表皮細胞の分裂および分化過程を介して維持される皮膚バリアの角質細胞が合成するセラミド、コレステロール、および脂肪酸のような細胞間脂質で形成された多層ラメラ脂質層(multi lamella lipid layer)は、皮膚内の水分が蒸発しないように防御膜の役割をする。一方、これらの細胞間脂質のうちオメガヒドロキシセラミドは、角質細胞(corneocyte)外郭層のタンパク質であるインボルクリン(involucrin)と化学的共有結合により連結されて角層細胞脂質エンベロープ(corneocyte lipid envelope、CLE)を形成することで、多層ラメラ脂質層形態の細胞間脂質を物理的に安定化させる役割をしてバリア機能を強化させる役割をすることになる。
【0093】
本発明の組成物は、皮膚塗布により角質層に伝達されて角質細胞の分化を促進させ、表皮層の厚さを厚く改善させる効果を有するだけでなく、皮膚バリアの損傷を回復させる効果に優れるため、皮膚バリアの損傷により誘発される皮膚疾患の治療および予防に有用に用いることができる。前記皮膚バリアの損傷により誘発される皮膚疾患としては、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、皮膚乾燥症(xeroderma)、乾癬(psoriasis)、魚鱗癬(ichthyosis)、ニキビなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0094】
また、皮膚バリアの強化効果は、フィラグリンおよびロリクリンの発現増加により確認した。フィラグリンは、ケラチノサイトが分化段階で発現させる種々の構造タンパク質のうち一つであって、表皮の基底層から角質層への分化に関与し、皮膚組織の水分保持に必須の天然保湿因子(Natural moisture factor、NMF)の主をなしてもいるため、皮膚の水分保持および皮膚膜機能の主な指標として用いられる。本発明に係る17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物は、フィラグリンまたはロリクリンの遺伝子発現を顕著に増加することにより、優れた皮膚バリアの保護、強化、改善機能を有する。
【0095】
本発明の17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物は、有効成分として含有している17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXの複合相乗作用により、これらの化合物それぞれを同一濃度で用いたものと比べて、特に顕著に向上したIL-6発現抑制効果およびプロコラーゲン合成効果を実現することができる(
図11および
図12)。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記複合物は、前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを3~85:10~60:5~50の重量比、例えば、3:10:5の重量比、5:60:50の重量比、85:10:5の重量比で含んでもよいが、これに限定されるものではない。本発明の一実施形態においては、17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを3:47:50の重量比、25:56:19の重量比、84:10:6の重量比で含む複合組成物を用いて皮膚改善効果を確認した。
【0097】
一方、前記皮膚状態改善用組成物は、化粧料組成物、薬学的組成物、または食品組成物として利用することができる。
【0098】
したがって、一態様において、本発明は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用の化粧料組成物を提供する。
【0099】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物および皮膚状態改善と関わる内容は、前述したとおりである。
【0100】
本発明の複合組成物が化粧料組成物として活用される場合、前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXの他に、化粧料組成物に通常用いられる成分が含まれ、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料および香料のような通常の補助剤、および担体を含む。
【0101】
本発明の化粧料組成物は、当業界で通常製造される如何なる剤形に製造されてもよく、例えば、溶液、懸濁液(無水および水系)、無水生成物(オイルおよびグリコール系)、乳濁液、ペースト、ゲル、マスク、パック、粉末、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーションおよびスプレーなどに剤形化されてもよいが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水(スキン)、栄養化粧水(乳液)、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形に製造されてもよい。この場合、前記化粧料組成物の接近性がさらに向上することができ、保湿効果を実現してアトピー性皮膚炎の慢性的な再発を予防することができる。
【0102】
前記化粧料組成物の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが用いられてもよい。
【0103】
前記化粧料組成物の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが用いられてもよく、特にスプレーである場合には、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのようなプロペラントを含んでもよい。
【0104】
前記化粧料組成物の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられてもよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0105】
前記化粧料組成物の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁化剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天またはトラガカントなどが用いられてもよい。
【0106】
前記化粧料組成物の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてもよい。
【0107】
前記化粧料組成物が石鹸の形態である場合には、添加剤として、皮膚保湿剤、乳化剤、硬水軟化剤などを含んで製造されてもよく、前記石鹸の基材としては、ココナツ油、パーム油、大豆油、オリーブ油、パーム核油、ホホバ油などの植物油脂や、牛脂、豚脂、羊脂、漁油などの動物油脂が用いられてもよく、保湿剤としては、グリセリン、デティプリトール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシルグリコール、イソプロピルミリステート、アロエベラ、ソルビトールなどが用いられてもよく、乳化剤としては、天然オイル、ワックス、炭化水素類などが用いられてもよく、硬水軟化剤としては、テトラナトリウムEDTAなどが用いられてもよいが、これに限定されない。
【0108】
前記石鹸には、添加剤として、抗菌剤、泡抑制剤、溶媒、腐食防止剤、香料、色素、金属イオン封鎖剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0109】
本発明の組成物が化粧料組成物として用いられる場合、前記組成物中の前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXは、30μM以上、具体的には35μM以上、より具体的には40μM以上の濃度で含まれてもよいが、これは、化粧料組成物が製造される形態に応じて、またその具体的な適用部位(顔や手)や適用用量に応じて異なるため、これに限定されない。
【0110】
他の一態様において、本発明は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0111】
前記皮膚疾患は、皮膚創傷、皮膚瘢痕、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、掻痒症、湿疹性皮膚疾患、乾燥性湿疹、水虫、紅斑、じんましん、乾癬、薬疹、ニキビまたは脱毛であってもよい。
【0112】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物および皮膚疾患と関わる内容は、前述したとおりである。
【0113】
前記組成物が薬学的組成物として活用される場合、17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXの他に、薬学的に許容可能な担体(carrier)または添加剤をさらに含んでもよい。
【0114】
前記「薬学的に許容可能な」とは、有効成分の活性を抑制せず、且つ、適用(処方)対象が適応可能な以上の毒性を有しないという意味である。前記「担体」は、細胞または組織内への化合物の付加を容易にする化合物と定義される。
【0115】
本発明の前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXは、単独でまたは或る適当な担体などとともに混合して投与されてもよく、その投与剤形は、単回投与または繰り返し投与剤形であってもよい。前記薬学的組成物は、固形製剤または液状製剤であってもよい。固形製剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、坐剤などが挙げられるが、これに限定されるものではない。固形製剤には、担体、着香剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、充填剤などが含まれてもよいが、これに限定されるものではない。液状製剤としては、水、プロピレングリコール溶液のような溶液剤、懸濁液剤、乳剤などが挙げられるが、これに限定されず、適当な着色剤、着香剤、安定化剤、粘性化剤などを添加して製造してもよい。例えば、散剤は、本発明の有効成分である17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXと、乳糖、デンプン、微結晶性セルロースなどの薬学的に許容可能な適当な担体を単純混合することで製造されてもよい。顆粒剤は、本発明の前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDX、薬学的に許容可能な適当な担体、並びに、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの薬学的に許容可能な適当な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒を用いた湿式顆粒法または圧縮力を用いた乾式顆粒法を用いて製造されてもよい。また、錠剤は、前記顆粒剤をマグネシウムステアレートなどの薬学的に許容可能な適当な滑沢剤と混合した後、打錠機を用いて打錠することで製造されてもよい。
【0116】
本発明の前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXは、治療すべき疾患および個体の状態に応じて、経口剤、注射剤(例えば、筋肉注射、腹腔注射、静脈注射、注入(infusion)、皮下注射、インプラント)、吸入剤、鼻腔投与剤、膣剤、直腸投与剤、舌下剤、経皮剤、局所剤などとして投与されてもよいが、これに限定されるものではない。投与経路に応じて、通常用いられ、且つ、非毒性である、薬学的に許容可能なキャリア、添加剤、ビヒクルを含む適当な投与ユニット剤形に製剤化されてもよい。
【0117】
本発明の薬学的組成物は、約0.0001mg/kg~約10g/kgが毎日投与されてもよく、約0.001mg/kg~約1g/kgの1日投与用量で投与されてもよい。しかし、前記投与量は、前記混合物の精製程度、患者の状態(年齢、性別、体重など)、治療している状態の深刻性などに応じて多様である。必要に応じて、利便性のために、1日総投与量を1日の間に数回に分けて投与されてもよい。
【0118】
本発明の組成物が薬学的組成物として用いられる場合、前記組成物中の前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXは、30μM以上、具体的には35μM以上、より具体的には40μM以上の濃度で含まれてもよい。
【0119】
また他の一態様において、本発明は、17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用の食品組成物を提供する。
【0120】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(17-HDHA)、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを含む複合組成物および皮膚状態改善と関わる内容は、前述したとおりである。
【0121】
前記組成物が食品組成物として用いられる場合、許容可能な食品補助添加剤を含んでもよく、食品の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。
【0122】
本発明において、食品は、栄養素を一つまたはそれ以上含有している天然物または加工品を意味し、具体的には、ある程度の加工工程を経て直接食べることができる状態となったものを意味し、通常の意味として、各種食品、機能性食品、飲料、食品添加剤および飲料添加剤を全て含む意味として用いられる。前記食品の例としては、各種食品類、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、機能性食品などが挙げられる。さらに、本発明の食品には、特殊栄養食品(例えば、調乳、乳幼児食など)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐類、寒天類、麺類(例えば、ラーメン類、うどん・そば類など)、健康補助食品、調味食品(例えば、醤油、味噌、コチュジャン、混合醤など)、ソース類、菓子類(例えば、スナック類)、乳加工品(例えば、発酵乳、チーズなど)、その他の加工食品、キムチ、漬物食品(各種キムチ類、醤油漬など)、飲料(例えば、果実、野菜類飲料、豆乳類、発酵飲料類、アイスクリーム類など)、天然調味料(例えば、ラーメンスープなど)、ビタミン複合剤、アルコール飲料、酒類およびその他の健康補助食品類を含むが、これに限定されない。前記機能性食品、飲料、食品添加剤または飲料添加剤は、通常の製造方法により製造されてもよい。
【0123】
前記「機能性食品」とは、食品に物理的、生化学的、生物工学的な手法などを用いて、当該食品の機能を特定の目的で作用、発現するように付加価値を付与した食品群や食品組成が有する生体防御リズムの調節、疾病の防止と回復などに関する体内調節機能を生体に対して十分に発現するように設計して加工した食品を意味し、具体的には、健康機能食品であってもよい。
【0124】
本発明で用いられる用語「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状および丸剤などの形態に製造および加工した食品をいう。ここで、「機能」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか、または生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、当業界で通常用いられる方法により製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料および成分を添加して製造してもよい。また、前記健康機能食品の剤形も、健康機能食品として認められる剤形であれば、制限されずに製造されてもよい。本発明の食品用組成物は、多様な形態の剤形に製造されてもよく、一般薬品とは異なり、食品を原料としており、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがないという長所があり、携帯性に優れるため、本発明の健康機能食品は、皮膚改善効果を増進させるためのサプリメントとして摂取可能である。
【0125】
また、前記機能性食品は、食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含んでもよく、機能性食品の製造に通常用いられる適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。
【0126】
また、前記食品組成物において、前記組成物中の前記17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXは、30μM以上、具体的には35μM以上、より具体的には40μM以上の濃度で含まれてもよい。
【0127】
本発明の食品組成物には、その有効成分の他に、甘味剤、風味剤、生理活性成分、ミネラルなどが含まれてもよい。甘味剤は、食品が適当な甘みを出すようにする量で用いられてもよく、天然のものや合成のものであってもよい。具体的には、天然甘味剤を用いる場合がある。天然甘味剤としては、コーンシロップ固形物、蜂蜜、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトースなどの糖甘味剤が挙げられる。風味剤は、味や香りを良くするために用いられ、天然のものまたは合成のものが用いられる。具体的には、天然のものを用いる場合がある。天然のものを用いる場合、風味の他に栄養強化の目的を並行してもよい。天然風味剤としては、リンゴ、レモン、柑橘、ブドウ、イチゴ、桃などから得られたものや、緑茶の葉、アマドコロ、竹葉、桂皮、菊葉、ジャスミンなどから得られたものであってもよい。また、高麗人参(紅参)、竹の子、アロエベラ、銀杏などから得られたものを用いてもよい。天然風味剤は、液状の濃縮液や固形状の抽出物であってもよい。場合によっては、合成風味剤が用いられてもよく、合成風味剤としては、エステル、アルコール、アルデヒド、テルペンなどが用いられてもよい。生理活性物質としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキンなどのカテキン類や、レチノール、アスコルビン酸、トコフェロール、カルシフェロール、チアミン、リボフラビンなどのビタミン類などが用いられてもよい。ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、クロム、コバルト、銅、フッ素化物、ゲルマニウム、ヨード、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、セレニウム、ケイ素、ナトリウム、硫黄、バナジウム、亜鉛などが用いられてもよい。
【0128】
また、本発明の食品組成物は、前記甘味剤などの他にも、必要に応じて、保存剤、乳化剤、酸味料、増粘剤などを含んでもよい。このような保存剤、乳化剤などは、それが添加される用途を達成できる限り、極微量で添加されて用いられることが好ましい。極微量とは、数値的に表す際、食品組成物の全体重量を基準とすると、約0.0005重量%~約0.5重量%の範囲を意味する。使用可能な保存剤としては、ナトリウムソルビン酸カルシウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)などが挙げられる。使用可能な乳化剤としては、アカシアガム、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチンなどが挙げられる。使用可能な酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、リン酸などが挙げられる。このような酸味料は、味を増進させる目的の他に、微生物の増殖を抑制する目的で、食品組成物が適正酸度となるように添加されてもよい。使用可能な増粘剤としては、懸濁化剤、沈降剤、ゲル形成剤、膨化剤などが挙げられる。
【0129】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。
【0130】
但し、下記の実施例は本発明を具体的に例示するためのものであって、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
【0131】
[実施例1]
配列番号1、2のアミノ酸配列を含むタンパク質の製造
【0132】
[1-1]タンパク質の発現用ベクターの作製
配列番号1および配列番号2のアミノ酸をそれぞれコードする配列番号3および配列番号4のヌクレオチド配列をバイオニア社(Bioneer Co., Ltd.)に依頼してそれぞれ合成し、前記合成されたそれぞれのヌクレオチド配列を鋳型とし、配列番号5~配列番号8のプライマー対を用いて5分間94℃で前変性(pre-denaturation)させた後、94℃で30秒、61℃で30秒、72℃で2分間反応させるサイクルを20回繰り返すPCRを行うことで、前記配列番号3および配列番号4の遺伝子をそれぞれ増幅した。
【0133】
【0134】
上記のように増幅された配列番号3および配列番号4のヌクレオチド配列を含むそれぞれのPCR産物をプラスミドベクターpET28a(+)(Novagen、米国)に挿入して組換え発現ベクターを作製し、ヌクレオチド配列分析(Solgent)により前記配列番号3および配列番号4のヌクレオチド配列が正しく挿入されたことを確認した。
【0135】
[1-2]タンパク質の発現および精製
前記実施例[1-1]で製造されたそれぞれの組換え発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、それぞれの形質転換体を3mLのLB培地に接種し、600nmでの吸光度が2.0となるまで37℃で種菌培養した。その次に、前記種菌培養された培養液を500mLのLB培地に添加して本培養を行い、600nmでの吸光度が0.6となる際、IPTG(isopropyl-1-thio-β-D-galactopyranoside)を最終濃度1mMとなるように添加し、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の過剰発現を誘導した。上記のように過剰発現を誘導する過程で、IPTGの添加前には培養温度を37℃に維持し、IPTGの添加後には培養温度を20℃に下げた。
【0136】
前記過剰発現が誘導された形質転換体の培養液を遠心分離して上澄み液を分離し、上澄み液を分離し出したペレットにおいて形質転換体の細胞を破砕し、形質転換体の細胞溶解物(cell lysate)を得た。
【0137】
上記のように得られた細胞溶解物100μLを対象にSDS-PAGEを行った結果、
図1に示すように、約96.9KDaの大きさを有する配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質(
図1の(A))、および約96.8KDaの大きさを有する配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質(
図1の(B))が過剰発現されたことを確認した。
【0138】
上記のように配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質が過剰発現していることが確認された細胞溶解物を対象に、Ni-NTA吸着クロマトグラフィーを用いて、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を分離および精製した。
【0139】
[実施例2]
タンパク質の活性の確認-モノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成活性の確認
前記実施例[1-2]において精製および分離した配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質に対し、これらのそれぞれのタンパク質6KUまたは10KUと、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)100μMをpH7、室温で30分間反応させ、最終濃度が50mMとなるように1Mの水素化ホウ素ナトリウム(sodium borohydride)を添加して反応産物を還元させた後、5μL/mlの酢酸を添加して前記反応を終了させた。
【0140】
固相カートリッジ(SPE、C18 500mg)を用いて前記反応産物を精製した後、順相HPLC(Normal phase HPLC)を用いて前記反応生成物中の化合物の種類を分析した。
【0141】
具体的には、前記順相HPLC分析は、supelcosil LC-Diolカラム(Supelco、25cm×3mm、5μm)に、95% n-ヘプタン、5%イソプロパノール、0.1%酢酸、0.1% 2,2-ジメトキシプロパンで構成された移動相を流量0.5ml/minの速度で、40分間20mL展開し、DAD(Diode Array Detector)を用いて反応産物中の化合物を最終的に検出する方法で行われた。
【0142】
その結果、
図2、
図3に示すように、前記配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および前記配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質は、いずれもDHAから17S-モノヒドロキシ-DHA、7S,17S-ジ-ヒドロキシ-DHA(resolvin D5)、10S,17S-ジヒドロキシ-DHA(protectin DX)を生成できることが確認され、それぞれの場合、上記の三つのモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の含量がそれぞれ下記表2に記載されたような比率で存在することが確認された。
【0143】
【0144】
[実施例3]
タンパク質のアミノ酸配列の分析
配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を対象に、ヒト5LOX(AAA36183)、ヒト12LOX(AAA51533)、ヒト15LOX(AAA36183)、大豆15LOX(AAA33986)、ジャガイモLOX(AAB81595)および紅藻類PhLOX2(AGN54275)と対比して、アミノ酸配列の相同性分析および系統分析を行った。
【0145】
その結果、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質は、
図4a~
図4dに示すように、ヒト5LOX(AAA36183)、ヒト12LOX(AAA51533)、ヒト15LOX(AAA36183)、大豆15LOX(AAA33986)、ジャガイモLOX(AAB81595)および紅藻類PhLOX2(AGN54275)と非常に低い配列相同性を示すことが確認された。
【0146】
また、
図4a~
図4dから分かるように、前記配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質のいずれも、膜脂質との結合を行うN-末端領域が存在し、C-末端領域において高い類似性を示すことが確認された。特に、鉄イオンと結合する残基であるHis、His、HisおよびAsn/Ser、ならびに末端アミノ酸が存在し、酵素の水酸化特性と密接な関わりがあるAlaが存在することが確認された。
【0147】
また、前記配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質および前記配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の二次構造を分析した結果、α-ヘリックス、拡張されたストランドおよびランダムコイルがそれぞれ下記表3に記載されたような比率で存在することが確認された。
【0148】
【0149】
[実施例4]
本発明のタンパク質の酵素活性により生成された反応生成物の効果の確認-皮膚老化およびシワ改善抑制
前記実施例2のように、ドコサヘキサエン酸を、本発明の配列番号1を有するタンパク質と反応させて得た生成物(SPM1)、および配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質と反応させて得た生成物(SPM2)をヒト真皮線維芽細胞(human dermal fibroblast)に処理して細胞毒性、MMP-1発現およびプロコラーゲン合成効果を確認し、ヒトケラチノサイト(human keratinocyte)に処理して細胞毒性、TNF-α発現およびIL-6発現の変化を確認した。
【0150】
[4-1]細胞毒性の確認
ヒト真皮線維芽細胞およびヒトケラチノサイトに前記SPM1およびSPM2をそれぞれ0.001、0.01、0,1および1ppmの濃度で処理して細胞生存率(cell viability)を確認した。
【0151】
その結果、
図5および
図6に示すように、二つの反応生成物(SPM1、SPM2)のいずれも全ての濃度において90%以上の細胞生存率を示し、このことから、本発明のタンパク質によりDHAから生成される生成物はいずれも細胞毒性がないことが分かる。
【0152】
[4-2]TNF-αおよびIL-6の発現抑制能の向上効果の確認
ヒトケラチノサイトを48ウェルプレートに4×104個/ウェルの濃度で分注し、5% CO2、37℃で24時間培養した後に培地を除去し、DMEM Serum Free mediaで飢餓状態を24時間維持した。
【0153】
前記SPM1およびSPM2をDMEM(FBS 2%)で希釈して1ppmに作り、それを順次希釈して0.1、0.01および0.001ppmに作った後、上記のように培養されて培地が除去されたヒトケラチノサイトに1時間処理した。その次に、TNF-αまたはIL-6の発現のために、培地を250μLのDPBS(WelGENE)に交換し、160mJ/cm2のUVBを照射した後、再びSPM1およびSPM2を処理した後に24時間培養した。そして、培地を回収した後、Human TNF-α DuoSet ELISA(R&D system)を用いてTNF-αの量を、そしてHuman IL-6 DuoSet ELISA(R&D system)を用いてIL-6の量をそれぞれ測定し、底面に付着している細胞をDPBSで洗浄した後、1N NaOHで溶解させ、BCA分析によりタンパク質の量を測定し、一定タンパク質当たりのTNF-αまたはIL-6の合成量を測定した。この際、何も処理していない場合を陰性対照群とし、そして10ppmのデキサメタゾン(dexamethasone)を処理した場合を陽性対照群とし、二つの反応生成物SPM1、SPM2の効果を確認した。
【0154】
先ず、TNF-αの場合、
図7に示すように、UVBを照射することでTNF-αの発現が約2倍程度増加し、このように増加したTNF-αの発現は、10ppmのデキサメタゾンを処理することにより約35%程度減少する一方、1ppmのSPM1により約24%程度、そして1ppmのSPM2により約56%程度減少し、このようなTNF-αの発現抑制効果は、SPM1、2の処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0155】
次に、IL-6の場合、
図8に示すように、UVBを照射することでIL-6の発現が約1.6倍程度増加し、このように増加したIL-6の発現は、10ppmのデキサメタゾンを処理することにより約88%程度減少する一方、1ppmのSPM1により約35%程度、そして1ppmのSPM2により約92%程度減少し、このようなIL-6の発現抑制効果も、SPM1、2の処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0156】
上記のような結果から、本発明のタンパク質によりDHAから生成される生成物は、いずれも炎症を終結させる効果を有することが分かる。
【0157】
[4-3]プロコラーゲン(procollagen)合成能の向上効果の確認
細胞外基質の主要構成成分であるコラーゲンは、プロコラーゲンという前駆物質の形態で合成される。前記プロコラーゲンは、重合反応が起こる際、コラーゲン分子から切断、分離されるものと知られているところ、プロコラーゲンの量を測定することで、細胞内でのコラーゲン生合成の程度を推し量ることができる。
【0158】
ヒト真皮線維芽細胞に前記SPM1およびSPM2をそれぞれ0.01、0,1および1ppmの濃度で処理し、24時間培養した後、培養された細胞の培地を回収し、procollagen typeI c-peptide(PIP)EIAキット(TAKARA、MK101)を用いてプロコラーゲンの量を測定した。この際、何も処理していない場合を陰性対照群とし、そして26.2ppmのレチニルパルミテート(retinyl palmitate)を処理した場合を陽性対照群とし、二つの反応生成物SPM1、SPM2の効果を確認した。
【0159】
その結果、
図9に示すように、二つの反応生成物(SPM1、2)のいずれも、何も処理していない陰性対照群に比べて、さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。特にSPM2の場合、0.1ppm以上の濃度において、陽性対照群(26.2ppmのレチニルパルミテート)に比べて、さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。このことから、本発明のタンパク質によりDHAから生成される生成物は、いずれもプロコラーゲンの合成能を向上させることが分かる。
【0160】
[4-4]コラーゲン分解酵素(MMP-1)発現抑制能の向上効果の確認
MMPs(matrix metalloproteinases)は、タンパク質分解活性を有する酵素であって、細胞外基質を構成するタンパク質を分解することにより、細胞外基質を構成するタンパク質と細胞の結合に重要な影響を及ぼす。MMPsは28個のタイプとして存在し、中でも、MMP-1はコラーゲンを分解する酵素である。本実施例においては細胞内MMP-1の発現程度を確認した。
【0161】
ヒト真皮線維芽細胞を24時間培養した後、培地を250μL/ウェル濃度のDPBS(WelGENE)に交換し、100mJ/cm2のUVBを照射した後、前記SPM1およびSPM2がそれぞれ0.01、0,1および1ppmの濃度に希釈されたDMEM(2% FBS)を処理して48時間培養した。培養された細胞の培地を回収した後、human total MMP-1 ELISA kit(R&D systems、DY901)を用いてMMP-1の量を測定した。この際、何も処理していない場合を陰性対照群とし、そして6ppmのレチノイン酸(retinoic acid)を処理した場合を陽性対照群とし、二つの反応生成物SPM1、SPM2の効果を確認した。
【0162】
その結果、
図10に示すように、UVBを照射することでMMP-1の発現が約2倍程度増加し、このように増加したMMP-1の発現は、6ppmのレチノイン酸を処理することにより約70%程度減少する一方、SPM1を処理した場合には、0.1ppmと1ppmにおいてそれぞれ17.2%、80.1%減少し、SPM2を処理した場合には、0.01ppmにおいて11.4%、0.1ppmにおいて26.1%、そして1ppmにおいて63.3%減少した。このようなMMP-1の発現抑制効果も、SPM1、2の処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0163】
[実施例5]
SPMs複合組成物の製造および単独化合物の準備
【0164】
[5-1]17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXの複合組成物(以下、「SPMs複合組成物」という)
配列番号1のアミノ酸配列を有するリポキシゲナーゼを多様な濃度のドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)に添加してpH7、室温で30分間反応させ、最終濃度が50mMとなるように1Mの水素化ホウ素ナトリウム(sodium borohydride)を添加して反応産物を還元させた後、5μL/mlの酢酸を添加して前記反応を終了させた。固相カートリッジ(SPE、C18 500mg)を用いて前記反応産物を精製した後、順相HPLC(Normal phase HPLC)を用いて前記反応生成物中の化合物の種類を分析した。
【0165】
その結果、DHAから17S-HDHA、レゾルビンD5(7S,17S-diHDHA)、プロテクチンDX(10S,17S-diHDHA)が生成されたことを確認し、これよりそれぞれ下記表4に記載されたような比率で混合された状態で存在するSPMs複合組成物であるComplex1~3を製造した。
【0166】
【0167】
[5-2]17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXの分離および精製
17S-HDHA、レゾルビンD5(7S,17S-diHDHA)、プロテクチンDX(10S,17S-diHDHA)は、前記実施例[5-1]のSPMs複合組成物から、C18カラムあるいはDiolカラムを取り付けたprep HPLCにより各産物を分離精製して用いた。
【0168】
[実施例6]
SPMs複合組成物による相乗的IL-6の発現抑制効果の確認
SPMs複合組成物の相乗的炎症緩和効果を確認するために、17-HDHA、レゾルビンD5およびプロテクチンDXの複合組成物(Complex1~3)、および各SPM単独物質をヒトケラチノサイト(human keratinocyte)であるHaCaT細胞に処理し、IL-6発現の変化を確認した。
【0169】
[6-1]実験方法
具体的には、先ず、ヒトケラチノサイトを48ウェルプレートに4×104個/ウェルの濃度で分注し、5% CO2、37℃で24時間培養した後に培地を除去し、DMEM Serum Free mediaで飢餓状態を24時間維持した。
【0170】
前記SPMs複合組成物をDMEM(FBS 2%)で希釈して0.5、1、2および5μg/mlに作った後、上記のように培養されて培地が除去されたヒトケラチノサイトに1時間処理した。その次に、IL-6発現のために培地を250μLのDPBS(WelGENE)に交換し、160mJ/cm2のUVBを照射した後、再びSPMsを処理した後に24時間培養した。そして、培地を回収した後、Human IL-6 DuoSet ELISA(R&D system)を用いてIL-6の量をそれぞれ測定し、底面に付着している細胞をDPBSで洗浄した後、1N NaOHで溶解させ、BCA分析によりタンパク質の量を測定し、一定タンパク質当たりのIL-6の合成量を測定した。この際、UVB照射後に何も処理していない場合をCon(-)とし、そして10μMのヒドロコルチゾン(hydrocortisone)を処理した場合をCon(+)とし、本発明のSPMs複合組成物およびそれぞれの単独成分のIL-6発現抑制効果を確認した。
【0171】
[6-2]
SPM単独成分のIL-6抑制効果の確認
その結果、表5および
図11aに示すように、ヒトケラチノサイトにUVBを照射することでIL-6の発現が増加し、このように増加したIL-6の発現は、2μg/mlの17S-HDHA、プロテクチンDXおよびレゾルビンD5それぞれを処理した際、Con(-)と対比してそれぞれ10.8%、11.8%、0.5%程度減少し、SPMの処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0172】
このことから、17-HDHA、プロテクチンDX、レゾルビンD5は、いずれも炎症緩和効能を有することが分かる。
【0173】
【0174】
[6-3]
SPMs複合組成物のIL-6抑制効果の確認
次に、SPMs複合組成物の場合、表3および
図1bに示すように、UVBを照射することでIL-6の発現が増加し、このように増加したIL-6の発現は、本発明のSPMs複合組成物(組成1、2、3)2μg/mlを処理した際、Con(-)と対比してそれぞれ18%、33.8%、29.5%程度減少し、SPMの処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0175】
このことから、本発明のSPMs複合組成物は、いずれも優れた炎症緩和効能を有することが分かる。
【0176】
【0177】
[6-4]
SPMs複合組成物の相乗的IL-6抑制効果の確認
下記表7および
図11cに示すように、2μg/mlの複合組成物を処理する場合、Con(-)と対比して、組成1は18%、組成2は33.8%、組成3は29.5%程度IL-6の発現が減少し、SPM単独成分を同一の濃度で処理した時と対比して、IL-6の発現減少効果が相乗したことが確認された。
【0178】
【0179】
このことから、本発明のSPMs複合組成物は、単独成分と対比して、顕著に相乗した炎症緩和効果を有することが分かる。また、前記結果は、17S-HDHA、PDXおよびRvD5の相乗効果により、これらを単独で用いるときよりも複合組成物として用いる際に、その使用量を減少できるということを意味し、このことから、SPMを過量使用する場合に現れ得る潜在的な副作用を防止可能であることが分かる。
【0180】
[実施例7]
SPMs複合組成物による相乗的プロコラーゲン(procollagen)合成効果の確認
細胞外基質の主要構成成分であるコラーゲンは、プロコラーゲンという前駆物質の形態で合成される。前記プロコラーゲンは、重合反応が起こる際、コラーゲン分子から切断、分離されるものと知られている。プロコラーゲンの量を測定することで、細胞内でのコラーゲン生合成の程度を推し量ることができる。
【0181】
[7-1]実験方法
ヒト真皮線維芽細胞に前記SPM単独物質およびこれらの複合組成物(組成1~3)をそれぞれ0.1、1、2および5μg/mlの濃度で処理し、24時間培養した後、培養された細胞の培地を回収し、procollagen typeI c-peptide(PIP)EIAキット(TAKARA、MK101)を用いてプロコラーゲンの量を測定した。この際、何も処理していない場合をUntreated controlとし、そして50μMのレチニルパルミテート(retinyl palmitate)を処理した場合をCon(+)とし、SPM単独成分およびこれらの複合組成物(組成1~3)の効果を確認した。
【0182】
[7-2]
SPM単独成分のプロコラーゲン合成効果の確認
下記表8および
図12aに示すように、17-HDHA、プロテクチンDXおよびレゾルビンD5のいずれも、Untreated controlに比べて、さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。特にプロテクチンDXおよびレゾルビンD5は、1μg/ml以上の濃度において、陽性対照群(50μMのレチニルパルミテート)に比べて、さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。
【0183】
このことから、17-HDHA、プロテクチンDX、レゾルビンD5は、いずれもプロコラーゲンの合成能を向上させることが分かる。
【0184】
【0185】
[7-3]
SPMs複合組成物のプロコラーゲン合成効果の確認
次に、SPMs複合組成物の場合、下記表9および
図12bに示すように、混合比率を異にした組成1~3のいずれも、Untreated controlに比べて、2倍~3倍以上さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。特にSPMs複合組成物は、組成1~3のいずれも、0.1μg/ml以上の濃度において、50μMのレチニルパルミテートを処理したCon(+)に比べて、さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。
【0186】
このことから、本発明のSPMs複合組成物は、いずれもプロコラーゲンの合成能を顕著に向上させることが分かる。
【0187】
【0188】
[7-4]
SPMs複合組成物の相乗的プロコラーゲン合成効果の確認
下記表10および
図12cに示すように、SPMs複合組成物(組成1、2、3)は、いずれも17-HDHA、プロテクチンDxまたはレゾルビンD5の単独成分に比べて、さらに多い量のプロコラーゲンが確認された。
【0189】
【0190】
このことから、本発明のSPMs複合組成物は、単独成分と対比して、顕著に相乗したプロコラーゲン合成能を有することが分かる。また、前記結果は、17S-HDHA、PDXおよびRvD5の相乗効果により、これらを単独で用いるときよりも複合組成物として用いる際に、その使用量を減少できるということを意味し、このことから、SPMを過量使用する場合に現れ得る潜在的な副作用を防止可能であることが分かる。
【0191】
[実施例8]
SPMs複合組成物によるコラーゲン分解酵素(MMP-1)発現抑制能の向上効果の確認
MMPs(matrix metalloproteinases)は、タンパク質分解活性を有する酵素であって、細胞外基質を構成するタンパク質を分解することにより、細胞外基質を構成するタンパク質と細胞の結合に重要な影響を及ぼす。MMPsは28個のタイプとして存在し、中でも、MMP-1はコラーゲンを分解する酵素である。本実施例においては細胞内MMP-1の発現程度を確認した。
【0192】
具体的に、ヒト真皮線維芽細胞を24時間培養した後、培地を250μL/ウェル濃度のDPBS(WelGENE)に交換し、100mJ/cm2のUVBを照射した後、前記組成2がそれぞれ0.1、1、2および5ppmの濃度に希釈されたDMEM(2% FBS)を処理して48時間培養した。培養された細胞の培地を回収した後、human total MMP-1 ELISA kit(R&D systems、DY901)を用いてMMP-1の量を測定した。この際、何も処理していない場合を陰性対照群とし、そして20μMのレチノイン酸(retinoic acid)を処理した場合を陽性対照群とし、組成2の効果を確認した。
【0193】
その結果、
図13に示すように、UVBを照射することでMMP-1の発現が約2倍程度増加し、このように増加したMMP-1の発現は、20μMのレチノイン酸を処理することにより約70%程度減少する一方、SPMs複合組成物を処理した場合には、0.01ppmにおいて11.4%、0.1ppmにおいて26.1%、そして1ppmにおいて63.3%減少し、このようなMMP-1の発現抑制効果も、SPMs複合組成物の処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0194】
このことから、本発明のSPMs複合組成物は、皮膚シワを改善する効果に優れることが分かる。
【0195】
[実施例9]
SPMs複合組成物によるTNF-α発現抑制能の向上効果の確認
TNF-αは、代表的な炎症性サイトカインであって、発現量が増加すると、炎症性皮膚疾患を深化させるものと知られている。腫瘍壊死因子であるTNF-αは、多くの炎症反応において最も中枢的役割をする重要因子であって、TNF-αの発現調節は、炎症性疾患において重要な役割をする。よって、本発明のSPMs複合組成物の炎症緩和効果を確認するために、TNF-αの発現パターンを確認した。
【0196】
具体的には、ヒトケラチノサイトを48ウェルプレートに4×104個/ウェルの濃度で分注し、5% CO2、37℃で24時間培養した後に培地を除去し、DMEM Serum Free mediaで飢餓状態を24時間維持した。
【0197】
前記組成2をDMEM(FBS 2%)で希釈して0.5、1、2および5μg/mlとした後、上記のように培養されて培地が除去されたヒトケラチノサイトに1時間処理した。その次に、TNF-α発現のために培地を250μLのDPBS(WelGENE)に交換し、160mJ/cm2のUVBを照射した後、再びSPMsを処理した後に24時間培養した。そして、培地を回収した後、Human TNF-αDuoSet ELISA(R&D system)を用いてTNF-αの量をそれぞれ測定し、底面に付着している細胞をDPBSで洗浄した後、1N NaOHで溶解させ、BCA分析によりタンパク質の量を測定し、一定タンパク質当たりのTNF-αの合成量を測定した。この際、何も処理していない場合を陰性対照群とし、そして10μMのヒドロコルチゾン(hydrocortisone)を処理した場合を陽性対照群とし、SPMs複合組成物の効果を確認した。
【0198】
その結果、TNF-αの場合、
図14に示すように、UVBを照射することでTNF-αの発現が約5倍程度増加し、このように増加したTNF-αの発現は、10μMのヒドロコルチゾンを処理することにより約52%程度減少する一方、1ppmのSPMs複合組成物により約49%程度減少し、このようなTNF-αの発現抑制効果は、SPMs複合組成物の処理濃度に依存的な傾向を示した。
【0199】
このことから、本発明のSPMs複合組成物は、炎症を終結させる効果に優れることが分かる。
【0200】
[実施例10]
SPMs複合組成物によるNO生成減少能の向上効果の確認
活性酸素の一種として炎症誘発に重要な役割をするものと知られたNO(nitric oxide)は、高い反応性を有する生体生成分子である。炎症反応に関与する核心的な分子であるNOは、炎症媒介物として炎症反応を加速させ、炎症反応をさらに悪化させる。そこで、微小粒子状物質により誘導された刺激に対してNO生成量を確認した。
【0201】
具体的には、細胞から生成されたNOの量を、細胞培養液中に存在するnitrite濃度をGriess Reagent Systemを用いて測定し、sodium nitriteの濃度別の標準曲線を用いて前記培養液中のNO濃度を決めることにより、測定した。
【0202】
その結果、
図15に示すように、SPMs複合組成物を0.1~5ppm処理した細胞において、NOの生成が39.2~70%まで減少することを確認した。
【0203】
このことから、本発明のSPMs複合組成物が炎症を緩和させる効果を有することが分かる。
【0204】
[実施例11]
SPMs複合組成物による脂質過酸化物の生成量減少能の向上効果の確認
細胞の脂質過酸化(Lipid peroxiation)は、動植物における老化や疾病状態で発生する細胞損傷(cellular damage)メカニズムのうち一つであって、脂質過酸化の産物であるtotal malondialdehyde(MDA)測定を介して細胞損傷程度を確認することができる。よって、微小粒子状物質により誘導された刺激に対し、SPMs複合組成物によるMDA生成量を確認した。
【0205】
具体的には、脂質過酸化の産物であるtotal malondialdehyde(MDA)の量をチオバルビツール酸(TBA)と反応させ、MDA-TBA adductをTBARS Methodにより測定した。
【0206】
その結果、
図16に示すように、SPMs複合組成物を0.1~5ppm処理した細胞において、MDAの生成が19.1~62.7%まで減少することを確認した。
【0207】
このことから、本発明のSPMs複合組成物が皮膚老化を抑制する効果を有することが分かる。
【0208】
[実施例12]
SPMs複合組成物による皮膚バリア改善能の向上効果の確認
皮膚バリアを構成する核心タンパク質としては、フィラグリン(Filaggrin)、ロリクリン(Loricrin)およびインボルクリン(Involucrin)が知られている。中でも、フィラグリンは、表皮の顆粒細胞に存在するケラトヒアリン顆粒(KG)を構成するプロフィラグリンが分解されることで生成されるタンパク質であって、ケラチノサイト内でケラチンフィラメントを凝集して皮膚バリアに重要な役割を担う。そこで、試料によるフィラグリンおよびロリクリンの発現を確認して皮膚バリアの強化効果を確認した。
【0209】
ヒトケラチノサイトをDMEM培地において実施例9と同様の条件で培養した。皮膚バリア改善能と関わる遺伝子発現を確認するために、培養された細胞に本発明のSPMs複合組成物を濃度別に処理して培養後にRNAを抽出し、RT-PCRを行った。増幅された遺伝子は、GelドキュメンテーションシステムおよびImage Jプログラムを用いて分析した。
【0210】
その結果、
図17aおよび
図17bに示すように、陽性対照群であるヒアルロン酸を50ppm処理時、フィラグリンは52.6%、ロリクリンは97.7%発現が増加し、本発明のSPMs複合組成物を0.1~5ppm処理時、フィラグリンは31.3~52.8%、ロリクリンは31.8~88.5%増加することを確認した。
【0211】
このことから、本発明のSPMs複合組成物が皮膚バリアを強化させる効果を有することが分かる。
【0212】
[実施例13]
SPMsクリームを用いた人体効能評価
SPMs複合組成物を用いて、下記表11のような組成でクリーム(クリームS)を製造した。比較実験のために、セラミドクリーム(クリームC)およびベースクリーム(クリームB)も下記のような組成で製造した。
【0213】
【0214】
[13-1]SPMsクリームによる皮膚バリアの改善効能の確認
女性12名(平均年齢45歳±5.54)を対象に、皮膚バリアの改善に対する人体効能評価を行った。前腕部を試験部位とし、物理的損傷を試験部位の3部位と対照部位(無塗布)に分けて4部位に加えた後、クリームS(SPMクリーム)、クリームC(セラミドクリーム)、クリームB(ベースクリーム)をそれぞれ定められた部位に1週間、1日に2回使用するようにし、対照部位(無塗布)と比較して機器測定を行った。皮膚損傷前、皮膚損傷直後、試験製品の使用1日後、4日後、7日後に測定および有効性の設問評価を行った。皮膚バリアの改善効果は、Tewameter TM300を用いて、TEWL(Transepidermal Water Loss;経表皮水分蒸散量)を測定して確認した。
【0215】
その結果、
図18aに示すように、皮膚バリアの改善素材として最も広く用いられているセラミドクリームは、ベースクリームと対比して有意的な改善がないのに対し、SPMクリームは、無塗布群およびベースクリームと対比して統計的に有意に皮膚バリアの改善効能を示した(等分散仮定の2群、両側検定、t-test;使用4日後、p<0.034、使用7日後、p<0.027)。また、皮膚バリア回復率(%)の比較結果、
図18bに示すように、ベースクリームおよびセラミドクリームと対比して、SPMクリームが比較優位にあることが確認された(ウィルコクソン(Wilcoxon)の符号順位検定;*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001)
【0216】
[13-2]SPMsクリームによるアトピー性皮膚炎の改善効能の確認
試験対象者22名を対象に、乾燥症に起因した痒み症の緩和に対する人体効能評価を行った。皮膚水分の測定後に群間平均値を合わせ、試験製品クリームS、クリームCを11名ずつランダムに割り当て、各製品を使用するようにした。前腕部と乾燥症の病変部位を試験部位とし、製品使用前、製品使用2週後、製品使用4週後に機器測定および有効性の設問評価を行った。
【0217】
アトピー性皮膚炎の改善効果は、Comeometer CM825を用いた皮膚水分の測定、Tewameter TM300を用いた皮膚水分蒸散量の測定、痒み症改善度の評価(VAS)を介して確認した。
【0218】
皮膚保湿効果の確認
図19aに示すように、アトピー性皮膚炎の乾燥症状の緩和のために最も広く用いられているセラミドクリームは、製品使用前と対比して、皮膚水分量の増加数値は見られるが、統計学的有意性がないのに対し、SPMクリームは、統計的に有意に病変部位の皮膚水分の改善効能を示すことが確認された(使用2週、4週;<0.014、p<0.0115)。
【0219】
病変部位の皮膚バリアの改善効果の確認
図19bに示すように、経表皮水分蒸散量変化率においても、セラミドクリームは、製品使用前と対比して、経表皮水分蒸散量の減少は見られるが、統計学的有意性がないのに対し、SPMクリームは、統計的に有意に病変部位の経表皮水分蒸散の改善効能を示した(使用4週;P<0.01451)。
【0220】
痒み症の改善効果の確認
図19cに示すように、痒み症の改善効果においては、SPMクリームおよびセラミドクリームのいずれも使用2週、4週後に統計的に有意に痒み症指数が改善されることが確認された。
【0221】
このことから、本発明のSPMクリームは、皮膚バリアの改善、アトピーのような皮膚乾燥症に起因した皮膚掻痒症、水分、痒み症の改善のための機能性素材として汎用的に用いられているセラミドよりも同等レベル以上に皮膚保湿、皮膚バリアの改善および痒み症の改善効果を示すことが分かる。
【0222】
[13-3]SPMsクリームによる目尻シワおよび皮膚水分の改善効果の確認
選定された試験対象者20名を対象に、クリームA、クリームSの目尻シワおよび皮膚水分の改善に対する人体効能評価を行った。目尻を試験部位とし、10名の試験対象者はクリームAを、残りの10名の試験対象者はクリームSをそれぞれ8週間、1日に2回使用するようにした。試験製品の使用前、使用4週後、使用8週後に試験対象者を対象に機器測定によりシワおよび皮膚水分の改善効果を確認した。
【0223】
具体的には、目尻シワの測定にはAntera 3D CSを用い、皮膚水分の測定にはComeometerを用いて測定した。
【0224】
目尻シワの改善効果の確認
図20aに示すように、シワ改善機能性の告示成分であるレチノールが含まれたクリームAの被験者別の皮膚シワ改善率(%)は、製品使用前と対比して統計的有意性がないが、SPMクリームは、使用4週、8週において使用前と対比して有意的な皮膚シワ改善率(%)を示すことが確認された(t-test(等分散仮定の2群、両側検定);*、p≦0.05);**、p≦0.01;***、p≦0.001)。
【0225】
目尻保湿効果の確認
図20bおよび
図20cに示すように、SPMクリームおよびレチノールクリームの使用8週において目尻皮膚の水分が統計的に有意に増加し、SPMクリームとレチノールクリームとの間の統計的有意差はなかった。
【0226】
このことから、本発明のSPMクリームは、シワ改善の告示原料であるレチノールと同等レベル以上に目尻皮膚水分量および目尻皮膚シワの改善効果を示すことが分かる。
【0227】
以上、本発明の好ましい実施形態を例示的に説明したが、本発明の範囲は上記のような特定の実施形態に限定されるものではなく、当該分野における通常の知識を有する者であれは、本発明の特許請求の範囲に記載された範囲内で適切に変更することができるであろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む、多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体(mono-hydroxy or di-hydroxy derivatives)生成用酵素。
【請求項2】
前記多価不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸(DHA)またはエイコサペンタエン酸(EPA)である、請求項1に記載の多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体生成用酵素。
【請求項3】
請求項1に記載の酵素を多価不飽和脂肪酸と反応させるステップを含む、インビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項4】
前記酵素と多価不飽和脂肪酸の反応物からモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体を回収するステップをさらに含む、請求項
3に記載のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項5】
前記反応させるステップを、10℃~40℃およびpH4~pH10の条件で行う、請求項
3に記載のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項6】
前記多価不飽和脂肪酸は、DHA(Docosahexaenoic acid)またはEPA(Eicosapentaenoic acid)である、請求項
3に記載のインビトロ(in vitro)での多価不飽和脂肪酸のモノ-ヒドロキシまたはジ-ヒドロキシ誘導体の生産方法。
【請求項7】
17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを有効成分として含む、皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項8】
前記皮膚状態改善は、皮膚シワの予防または改善、皮膚老化の予防または改善、皮膚炎症の予防または改善、皮膚再生および皮膚バリアの強化からなる群より選択される1種以上である、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項9】
前記組成物は、i)細胞中のコラーゲン合成を促進するか、ii)コラーゲン分解を抑制するか、またはiii)マトリックスメタロプロテイナーゼ-1(matrix metalloproteinase-1;MMP-1)の発現または活性を抑制する、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項10】
前記組成物は、抗酸化活性を有する、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項11】
前記組成物は、炎症因子を抑制する、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項12】
前記組成物は、フィラグリン(Filaggrin)またはロリクリン(Loricrin)の発現を増加させる、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項13】
前記17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸、レゾルビンD5およびプロテクチンDXを3~85:10~60:6~50の重量比で含む、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項14】
前記組成物は、化粧料組成物である、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【請求項15】
前記組成物は、食品組成物である、請求項
7に記載の皮膚状態改善用の複合組成物。
【国際調査報告】