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特表2022-552263CNSリンパ腫を治療するためのグルカルピダーゼとメトトレキサート/リツキシマブとの併用療法
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  • 特表-CNSリンパ腫を治療するためのグルカルピダーゼとメトトレキサート/リツキシマブとの併用療法 図1
  • 特表-CNSリンパ腫を治療するためのグルカルピダーゼとメトトレキサート/リツキシマブとの併用療法 図2
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  • 特表-CNSリンパ腫を治療するためのグルカルピダーゼとメトトレキサート/リツキシマブとの併用療法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】CNSリンパ腫を治療するためのグルカルピダーゼとメトトレキサート/リツキシマブとの併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20221208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221208BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20221208BHJP
   C12N 9/48 20060101ALN20221208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K31/56
A61K31/675
A61K31/17
A61K31/7048
A61K31/475
A61K31/166
A61K31/4188
A61K31/7068
A61K38/48
C12N9/48 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521244
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020054569
(87)【国際公開番号】W WO2021071941
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/912,424
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】522140758
【氏名又は名称】ユーエイビー リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】シャッフ ローレン
(72)【発明者】
【氏名】グロムス クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】デアンジェリス リサ
(72)【発明者】
【氏名】ネイバース バート
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK03
4B050LL01
4C084AA22
4C084BA44
4C084DC02
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA06
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG05
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB21
4C086DA08
4C086DA35
4C086DA38
4C086EA11
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA03
4C206HA26
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本技術は、中枢神経系リンパ腫の治療を必要とする対象において、メトトレキサートおよびグルカルピダーゼを投与して中枢神経系リンパ腫を治療することを含む方法に関する。方法の実施に使用するためのキットも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系リンパ腫の治療を必要とする対象において、その治療をするための方法であって、
(a)有効量のメトトレキサートを前記対象に投与する工程と、
(b)前記対象の血清中のメトトレキサートのレベルを90%を超えて低下させるのに十分な量のグルカルピダーゼを前記対象に投与する工程であって、前記グルカルピダーゼが、メトトレキサートの投与の10~48時間後に投与される、工程とを含み、
工程(a)~(b)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクル行われる、方法。
【請求項2】
高用量メトトレキサート療法に関連する毒性の低減を必要とする対象において、その毒性を低減するための方法であって、
(a)有効量のメトトレキサートを前記対象に投与する工程と、
(b)前記対象の血清中のメトトレキサートのレベルを90%を超えて低下させるのに十分な量のグルカルピダーゼを前記対象に投与する工程であって、前記グルカルピダーゼが、メトトレキサートの投与の10~48時間後に投与される、工程とを含み、
工程(a)~(b)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクル行われ、前記対象は、中枢神経系リンパ腫に罹患しているか、または中枢神経系リンパ腫と診断されている、方法。
【請求項3】
前記メトトレキサートの有効量が約3~10g/m2である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に罹患しているか、またはDLBCLと診断されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記中枢神経系リンパ腫が、原発性CNSL(PCNSL)または二次性CNSL(SCNSL)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記PCNSLが、脳実質、脊髄、髄膜、脳脊髄液、および眼からなる群から選択される1つまたは複数の組織において発症している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、骨髄、精巣、副鼻腔、骨、腹腔後リンパ節および硬膜外腔からなる群から選択される1つまたは複数の組織部位において転移を呈する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象がCNSL再発を患っている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
メトトレキサートが、皮下、静脈内、腹腔内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、経口、局所、経粘膜、イオン導入、または頭蓋内注射を介して投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
グルカルピダーゼが、皮下、静脈内、腹腔内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、経口、局所、経粘膜、イオン導入、または頭蓋内注射を介して投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
グルカルピダーゼおよびメトトレキサートが、逐次的に、または別個に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)~(b)が、最大10サイクル行われる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)~(b)が、3~8サイクル行われる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1回のサイクルにおける前記グルカルピダーゼの量が、約1800~2200単位である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1回のサイクルにおける前記グルカルピダーゼの量が、約800~1200単位である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
最初の2~4サイクルにおける前記グルカルピダーゼの量が約1800~2200単位であり、前記最初の2~4サイクルの後の前記グルカルピダーゼの量が約800~1200単位である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
最初の2~4サイクルにおける前記グルカルピダーゼの量が約2000単位であり、前記最初の2~4サイクルの後の前記グルカルピダーゼの量が約1000単位である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
CNSLを標的とする有効量の追加の治療剤を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
CNSLを標的とする前記追加の治療剤が、抗CD20抗体、抗CD19抗体、ステロイド、化学療法剤、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗CD20抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、131Iトシツモマブ、AME-133v、PRO131921、TRU-015、またはGA101である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗CD19抗体が、ブリナツモマブ、GBR401、コルツキシマブラブタンシン(Coltuximabravtansine)、MOR208、MEDI-551、デニンツズマブマホドチン、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomabpaptox)、XmAb5871、MDX-1342、AFM11、またはSAR3419(huB4-DM4)である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記化学療法剤が、シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド、ビスルファン、ビンクリスチン、プロカルバジン、テモゾロミド、シタラビン、またはチオテパである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記抗CD20抗体が、メトトレキサートおよびグルカルピダーゼと共に1回または複数回のサイクルで投与される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項25】
各サイクルが、(i)3日間にわたって行われ、(ii):
1日目に約300~600mg/m2の抗CD20抗体を前記対象に投与する工程、
2日目に約3~10mg/m2のメトトレキサートを前記対象に投与する工程、および
3日目に約800~2200単位のグルカルピダーゼを前記対象に投与する工程
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、CNSLと診断された未治療の対照対象において観察される転移発生および/または腫瘍増殖と比較して、MTXおよびグルカルピダーゼの投与後に転移発生および/または腫瘍増殖の遅延を示す、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
MTXと、グルカルピダーゼと、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法に従ってCNSLを治療するための説明書とを含むキット。
【請求項28】
抗CD20抗体、抗CD19抗体、ステロイド、化学療法剤、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される追加の治療剤をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月8日に出願された米国仮特許出願第62/912,424号の利益および優先権を主張するものであり、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、中枢神経系リンパ腫の治療を必要とする対象において、メトトレキサートおよびグルカルピダーゼを投与して中枢神経系リンパ腫を治療することを含む方法に関する。方法の実施に使用するためのキットも提供される。
【背景技術】
【0003】
本技術の背景の以下の説明は、本技術を理解するための補助として単に提供され、本技術に先行する技術を説明または構成するとは認められない。
中枢神経系リンパ腫(CNSL)は、顕著な患者罹患率および死亡率をもたらす侵襲性悪性腫瘍である。原発性CNSL(PCNSL)は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の侵襲的サブタイプであり、高用量メトトレキサート(HD-MTX)に典型的に応答し、初期の段階で全奏効率(ORR)は最大74%である(Batchelor, T., et al., J Clin Oncol, 21(6): p. 1044-9 (2003))。それでも予後は悪く、治癒するのは20~30%である(Ferreri, A.J., Blood 118(3): p. 510-22 (2011); Gavrilovic, I.T., et al., J Clin Oncol 24(28): p. 4570-4 (2006))。骨髄、精巣、副鼻腔、骨、腹腔後リンパ節および硬膜外腔の疾患を有する患者ならびに節外性疾患を有する患者では、二次性CNSL(SCNSL)の発症リスクが増加する。SCNSLは予後不良であり、生存期間中央値は1~5ヶ月である。Grier, J. and T. Batchelor, Curr Oncol Rep, 7(1): p. 55-60 (2005)を参照されたい。
高用量メトトレキサート(MTX)をベースとするレジメンが、CNSLの標準治療である。CNSLに使用するためのMTXの最適投与は、明確に定義されていない。MTXは、MTXから7-ヒドロキシメトトレキサートへの変換を介する肝臓系からの寄与を伴って、主に腎排泄(70~90%)を介して排出される。成人の2~12%は、HD-MTXの結果として急性腎損傷を患う可能性がある。Widemann, B.C., et al., J Clin Oncol, 28(25): p. 3979-86 (2010)を参照されたい。急性腎損傷は、翻って、遅延したMTXクリアランスおよび毒性レベルをもたらし、肝損傷、肺炎、および骨髄抑制などの全身的影響をもたらす可能性がある。これらの毒性は稀ではあるが(10%未満)、発生率の低さは、一部には、MTX関連急性腎損傷下でのMTXの用量減少(患者の14~44%で必要)または治療の早期中止(患者の5~8%)によるものである。Jahnke, K. et al., Ann Oncol 16(3): p. 445-9 (2005)を参照されたい。
したがって、高用量メトトレキサート療法(HD-MTX)に関連する腎毒性リスクを低減する方法が緊急に必要とされており、特に、医療が限られたリソースであることを強調することとなった進行中のCOVID-19パンデミックを考慮すれば、選択的入院が特に問題である。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、中枢神経系リンパ腫の治療を必要とする対象において、中枢神経系リンパ腫を治療するための方法であって、(a)有効量のメトトレキサートを対象に投与する工程と、(b)対象の血清中のメトトレキサートのレベルを90%を超えて低下させるのに十分な量のグルカルピダーゼを対象に投与する工程であって、グルカルピダーゼが、メトトレキサートの投与の10~48時間後に投与される、工程とを含み、工程(a)~(b)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクル行われる、方法を提供する。別の態様では、本開示は、高用量メトトレキサート療法に関連する毒性の低減を必要とする対象において、高用量メトトレキサート療法に関連する毒性を低減するための方法であって、(a)有効量のメトトレキサートを対象に投与する工程と、(b)対象の血清中のメトトレキサートのレベルを90%を超えて低下させるのに十分な量のグルカルピダーゼを対象に投与する工程であって、グルカルピダーゼが、メトトレキサートの投与の10~48時間後に投与される、工程とを含み、工程(a)~(b)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクル行われ、対象は、中枢神経系リンパ腫に罹患しているか、または中枢神経系リンパ腫と診断されている、方法を提供する。中枢神経系リンパ腫は、原発性CNSL(PCNSL)または二次性CNSL(SCNSL)でありうる。さらなる実施形態では、PCNSLは、脳実質、脊髄、髄膜、脳脊髄液、および眼からなる群から選択される1つまたは複数の組織において発症している。
【0005】
追加的または代替的に、本明細書に開示される方法の一部の実施形態では、メトトレキサートの有効量は、約3~10g/m2である。ある特定の実施形態では、メトトレキサートの有効量は、約3g/m2、約3.5g/m2、4g/m2、約4.5g/m2、5g/m2、約5.5g/m2、6g/m2、約6.5g/m2、7g/m2、約7.5g/m2、8g/m2、約8.5g/m2、約9g/m2、約9.5g/m2、または約10g/m2である。
【0006】
本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態では、対象は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に罹患しているか、またはDLBCLと診断されている。ある特定の実施形態では、対象は、骨髄、精巣、副鼻腔、骨、腹腔後リンパ節および硬膜外腔からなる群から選択される1つまたは複数の組織部位において転移を呈する。追加的または代替的に、一部の実施形態では、対象は、CNSL再発を患っている。
【0007】
本明細書に開示される方法の前述のいずれかの実施形態では、グルカルピダーゼおよびメトトレキサートは、逐次的に、または別個に投与される。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、メトトレキサートは、皮下、静脈内、腹腔内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、経口、局所、経粘膜、イオン導入、または頭蓋内注射を介して投与される。追加的または代替的に、一部の実施形態では、グルカルピダーゼは、皮下、静脈内、腹腔内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、経口、局所、経粘膜、イオン導入、または頭蓋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0008】
追加的または代替的に、一部の実施形態では、工程(a)~(b)は、最大10サイクル行われる。他の実施形態では、工程(a)~(b)は、3~8サイクル行われる。本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態では、少なくとも1つのサイクルにおけるグルカルピダーゼの量は、約1800~2200単位である。追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサイクルにおけるグルカルピダーゼの量は、約800~1200単位である。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのサイクルにおけるグルカルピダーゼの量は、約800単位、約850単位、約900単位、約950単位、約1000単位、約1050単位、約1100単位、約1150単位、約1200単位、約1250単位、約1300単位、約1350単位、約1400単位、約1450単位、約1500単位、約1550単位、約1600単位、約1650単位、約1700単位、約1750単位、約1800単位、約1850単位、約1900単位、約1950単位、約2000単位、約2050単位、約2100単位、約2150単位、または約2200単位である。本明細書に開示される方法の前述のいずれかの実施形態では、最初の2~4サイクルにおけるグルカルピダーゼの量は約1800~2200単位であり、最初の2~4サイクルの後のグルカルピダーゼの量は約800~1200単位である。ある特定の実施形態では、最初の2~4サイクルにおけるグルカルピダーゼの量は約2000単位であり、最初の2~4サイクルの後のグルカルピダーゼの量は約1000単位である。
追加的または代替的に、一部の実施形態では、本技術の方法は、CNSLを標的とする有効量の追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む。CNSLを標的とする追加の治療剤は、抗CD20抗体、抗CD19抗体、ステロイド(例えば、グルココルチコイド)、化学療法剤、およびこれらの任意の組合せでありうる。抗CD20抗体としては、リツキシマブ(例えば、MabThera(登録商標)、Rixathon(登録商標)およびTruxima(登録商標))、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、131Iトシツモマブ、AME-133v、PRO131921、TRU-015、およびGA101が挙げられるが、これらに限定されない。抗CD19抗体としては、ブリナツモマブ、GBR401、コルツキシマブラブタンシン(Coltuximabravtansine)、MOR208、MEDI-551、デニンツズマブマホドチン、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomabpaptox)、XmAb5871、MDX-1342、AFM11、およびSAR3419(huB4-DM4)が挙げられるが、これらに限定されない。追加的または代替的に、一部の実施形態では、少なくとも1種の追加の治療剤は、シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド、ビスルファン、ビンクリスチン、プロカルバジン、テモゾロミド、シタラビン、およびチオテパからなる群から選択される化学療法剤である。
【0009】
本明細書に開示される方法の前述のいずれかの実施形態では、抗CD20抗体は、メトトレキサートおよびグルカルピダーゼと共に1回以上のサイクルで投与される。ある特定の実施形態では、各サイクルは、(i)3日間にわたって行われ、(ii)1日目に約300~600mg/m2の抗CD20抗体を対象に投与すること、2日目に約3~10mg/m2のメトトレキサートを対象に投与すること、および3日目に約800~2200単位のグルカルピダーゼを対象に投与することを含む。ある特定の実施形態では、1日目に対象に投与される抗CD20抗体の量は、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約450mg/m2、約500mg/m2、約550mg/m2、または約600mg/m2である。
【0010】
本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態では、対象は、CNSLと診断された未治療の対照対象において観察される転移発生および/または腫瘍増殖と比較して、MTXおよびグルカルピダーゼの投与後に転移発生および/または腫瘍増殖の遅延を示す。
【0011】
本開示は、MTXと、グルカルピダーゼと、本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態に従ってCNSLを治療するための説明書とを含むキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】2つの異なるコホート(3mg/m2および6mg/m2のメトトレキサート(MTX))で対象に投与される治療レジメンの模式図を示す。
図2】登録された8人の患者のそれぞれの治療レジメンを示す。患者1~4の臨床応答が示される。
図3】グルカルピダーゼの投与前後の、HD-MTX3または6g/m2後の血清MTX濃度を示す。
図4】グルカルピダーゼの投与前後の、HD-MTX3、6、または8g/m2後の血清およびCSF MTX濃度を示す。
図5】グルカルピダーゼとの併用でHD-MTXを用いた場合のX線撮影応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本技術の実質的な理解を提供するために、本発明の方法の特定の態様、様式、実施形態、変形、および特徴が、様々なレベルで以下に詳細に記載されることを理解されたい。
【0014】
本方法の実施に際しては、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの従来技術が用いられる。例えば、Sambrook and Russell eds. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition; the series Ausubel et al. eds. (2007) Current Protocols in Molecular Biology; the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); MacPherson et al. (1991) PCR 1: A Practical Approach (IRL Press at Oxford University Press); MacPherson et al. (1995) PCR 2: A Practical Approach; Harlow and Lane eds. (1999) Antibodies, A Laboratory Manual; Freshney (2005) Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 5th edition; Gait ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Anderson (1999) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins eds. (1984) Transcription and Translation; Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986)); Perbal (1984) A Practical Guide to Molecular Cloning; Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Cold Spring Harbor Laboratory); Makrides ed. (2003) Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells; Mayer and Walker eds. (1987) Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London); およびHerzenberg et al. eds (1996) Weir’s Handbook of Experimental Immunologyを参照されたい。ポリペプチド遺伝子発現産物のレベル(すなわち、遺伝子翻訳レベル)を検出および測定する方法は、当技術分野で周知であり、その方法には、抗体検出および定量化技術等のポリペプチド検出方法の使用が含まれる。(Strachan & Read, Human Molecular Genetics, Second Edition (John Wiley and Sons, Inc., NY, 1999)も参照されたい)。
【0015】
本開示は、反復高用量メトトレキサートを、反復低用量グルカルピダーゼと組み合わせて、より具体的にはリツキシマブと併せて、CNSL患者を治療するための方法を提供する。本技術の方法は、治療レベルのメトトレキサート(MTX)脳脊髄液濃度を維持しながら、MTX血清濃度を全身毒性について問題がないと考えられるレベルまで低下させる。他の研究では、MTX/グルカルピダーゼ治療レジメンを受けている患者においてグルカルピダーゼ中和抗体が出現することおよびグルカルピダーゼ活性に対するそれらの潜在的な影響についての懸念が提起されている。Adamson et al., J. Clinical Oncology 10(8): 1359-1364 (1992)を参照されたい。しかしながら、本研究では、グルカルピダーゼの反復投与を受けている治療された患者のサブセットにおけるグルカルピダーゼ抗体の出現は、CNSリンパ腫の改善に関してMTX/グルカルピダーゼ治療レジメンの有効性に悪影響はないようであることが示される。実際、本明細書に開示される方法は、複数回のMTX-リツキシマブ投与に続いて12~48時間以内のグルカルピダーゼの投与を含む治療レジメンにわたり、完全またはほぼ完全な患者応答を提供することが可能である。
【0016】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別のことを指示しない限り、複数の参照物を含む。例えば、「細胞」への言及は、2つ以上の細胞等の組合せを含む。概して、本明細書で使用する呼称、ならびに以下に記載される細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学、核酸化学およびハイブリダイゼーションにおける実験手順は、周知であり、当技術分野で通常用いられるものである。
【0017】
本明細書で使用する場合、数値に関する「約」という用語は、別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、数値のいずれかの方向(それを超えるまたはそれ未満)において1%、5%、または10%の範囲内に収まる数値を含む(そのような数値が、可能な値の0%未満であるか、または100%を超える場合を除く)と一般的に理解される。
本明細書で使用する場合、薬剤または薬物の対象への「投与」は、対象に化合物を導入または送達して、その意図された機能を実行する任意の経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、腫瘍内、または局所を含む任意の好適な経路によって実施することができる。投与には、自己投与および他による投与が含まれる。
【0018】
本明細書で使用する場合、「対照」は、実験において使用される比較目的のための代替試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であることができる。例えば、実験の目的が、特定のタイプの疾患または状態の治療のための治療剤の有効性の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが知られている化合物または組成物)および陰性対照(治療を受けていないまたはプラセボを受けている対象または試料)が典型的に用いられる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、所望の治療および/または予防効果を達成するために十分な量、例えば、本明細書に記載される疾患もしくは状態の予防もしくは減少、または本明細書に記載される疾患もしくは状態に関連する1つまたは複数の徴候もしくは症状の予防もしくは減少をもたらす量を指す。治療的または予防的適用の文脈において、対象に投与される組成物の量は、組成物、疾患の程度、種類および重症度、ならびに個体の特徴、例えば全体的健康状態、年齢、性別、体重および薬物耐性などに応じて変化する。当業者であれば、これらおよび他の要因に応じて適切な投与量を決定することができる。組成物はまた、1つまたは複数の追加の治療用化合物と組み合わせて投与することもできる。本明細書に記載される方法において、治療用組成物は、疾患または状態の1つまたは複数の徴候または症状を有する対象に投与されうる。本明細書で使用する場合、組成物の「治療有効量」とは、疾患または状態の生理学的影響が改善されるまたは取り除かれる組成物レベルを指す。治療有効量は、1回以上の投与で与えられてもよい。
本明細書で使用する場合、「発現」には、以下の1つまたは複数が含まれる:遺伝子の前駆体mRNAへの転写;成熟mRNAを生成するための前駆体mRNAのスプライシングおよび他のプロセシング;mRNA安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン用法およびtRNA可用性を含む);ならびに適切な発現および機能に必要な場合、翻訳生成物のグリコシル化および/または他の修飾。
本明細書において、「KPS」または「カルノフスキー・パフォーマン・スステータス」とは、がん患者が通常の日常活動を行う能力を測定する標準的な方法を指す。Karnofsky D, Burchenal J, The clinical evaluation of chemotherapeutic agents in cancer. In: MacLeod C, ed. EVALUATION OF CHEMOTHERAPEUTIC AGENTS. New York, NY: Columbia University Press 191-205 (1949)を参照されたい。KPSのスコアは0~100の範囲である。スコアが高いほど、患者は日常活動をよりよく遂行することができる。KPSは、患者の予後を決定し、患者の機能能力の変化を測定し、または患者が臨床試験に含まれうるかどうかを決定するために使用しうる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌化合物および抗真菌化合物、等張化合物および吸収遅延化合物等を含むことが意図されている。薬学的に許容される担体およびその処方は、当業者に公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (20th edition, ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)に記載されている。
【0021】
本明細書で使用する場合、疾患または状態に関する「予防」、「予防する」、または「予防すること」とは、統計試料において、未治療の対照試料と比較して、治療された試料における疾患もしくは状態の発生を減少させるか、または未治療の対照試料と比較して疾患もしくは状態の1つまたは複数の症状の発生を遅延させる、1種または複数種の化合物を指す。本明細書で使用する場合、予防は、疾患または状態の症状の開始を予防または遅延させることを含む。また、本明細書で使用する場合、予防は、疾患または状態の1つまたは複数の徴候または症状の再発を予防することを含む。
【0022】
「RECIST」は、「固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)」を表す頭文字を意味し、がん患者の治療中に改善すること(「奏効」)、同じ状態に留まること(「安定」)、または悪化すること(「進行」)を定義する一連の公開された規則である。RECIST基準によって定義される奏効は、例えば、Journal of the National Cancer Institute, Vol. 92, No. 3, Feb, 2, 2000に公開されている。RECIST基準は、他の同様の公開された定義および規則のセットを含むことができる。当業者は、本明細書で使用する「部分奏効(PR)」、「完全奏効(CR)」、「安定(SD)」、および「進行(PD)」等のRECIST基準に従う定義を理解する。
【0023】
irRECIST腫瘍全体評価は、測定された標的病変および新たな病変の全測定可能腫瘍量(TMTB)、非標的病変評価、ならびに新たな測定不能病変に基づいている。ベースラインで、全ての標的病変の最長径(SumD)の合計(臓器当たり最大2つの病変、合計で最大5つの病変)を測定する。その後の各腫瘍評価(TA)において、標的病変および新たな測定可能病変(臓器当たり最大2つの新たな病変、合計5つの新たな病変)のSumDを合わせ、TMTBを得る。
【0024】
【表1】
本明細書で使用する場合、「試料」または「生体試料」とは、対象から単離された体液または組織試料を指す。一部の場合では、生体試料は、全血、血小板、赤血球、白血球、血漿、血清、尿、糞便、表皮試料、膣試料、皮膚試料、頬スワブ、精子、羊水、培養細胞、骨髄試料、腫瘍生検、吸引液および/または絨毛膜絨毛、培養細胞、内皮細胞、滑液、リンパ液、腹水、間質液または細胞外液などから構成されてもよく、またはそれを含んでもよい。「試料」という用語は、歯肉口蓋液、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、精液、汗、尿、または任意の他の体液を含む、細胞間の空間における流体を包含しうる。試料は、静脈穿刺、排泄、射精、マッサージ、生検、針吸引、洗浄、擦過、外科的切開、または介入、または当技術分野で公知の他の手段を含むがこれらに限定されない任意の手段によって、対象から取得することができる。血液試料は、全血、または血液細胞(赤血球、白血球(white blood cell)もしくは白血球(leukocyte)、および血小板)、血清、および血漿を含むその任意の画分であることができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「別個」の治療的使用という用語は、異なる経路による少なくとも2つの活性成分の同時または実質的に同時の投与を指す。
本明細書で使用する場合、「逐次的」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分の異なる時間での投与を指し、投与経路は同一であるか、または異なる。より具体的には、逐次的な使用は、1種または複数種の他の成分の投与が開始される前の活性成分の1種の全投与を指す。したがって、1種または複数種の他の活性成分を投与する前に、数分、数時間、または数日にわたって活性成分のうちの1種を投与することがありうる。この場合において治療は同時ではない。
【0026】
本明細書で使用する場合、「同時」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を、同じ経路によって、同時にまたは実質的に同時に投与することを指す。
本明細書で使用する場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、互換的に使用され、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、またはヒトを指す。ある特定の実施形態では、個体、患者、または対象は、ヒトである。
【0027】
本明細書で使用する「治療すること」、「治療する」、または「治療」は、対象、例えばヒトにおける、本明細書に記載の疾患または障害の治療を包含し、(i)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること、(ii)疾患もしくは障害を緩和すること、すなわち、その障害の退縮を引き起こすこと、(iii)その障害の進行を遅らせること、および/または(iv)その疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状の進行を阻害すること、緩和すること、もしくは遅延させることを含む。一部の実施形態では、治療は、疾患に関連する症状が、例えば、緩和する、低減する、治癒する、または寛解状態となることを意味する。
【0028】
記載される医学的疾患および状態の治療または予防の様々な様式が、全治療または予防を含むがそれに満たない治療または予防も含み、いくらかの生物学的または医学的に関連する結果が達成されるものを含む「実質的」なものを意味することが意図されていることも理解されたい。治療は、慢性疾患に対する継続的な長期治療、または急性状態の治療のための単回もしくは数回の投与であってもよい。
【0029】
メトトレキサート
メトトレキサート(MTX)をベースとするレジメンは、CNSLの標準治療である。MTXは、高用量(>1.5g/m2)で急速注入として投与されると、血液脳関門を貫通する(Borsi, J.D. and P.J. Moe, Cancer 1987. 60(1): p. 5-13 (1987); Shapiro, W.R., D.F. Young, and B.M. Mehta, N Engl J Med, 293(4): p. 161-6 (1975))。357人の患者の後ろ向き分析は、3g/m2以上の用量を含むレジメンで統計的に有意な生存利益を示唆したが(Reni, M., et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2001. 51(2): p. 419-25 (2001))、8g/m2までの用量が、リンパ腫管理において一般的である(Herrlinger, U., et al., Ann Neurol, 51(2): p. 247-52 (2002); Illerhaus, G., et al., J Clin Oncol, 24(24): p. 3865-70 (2006); Rubenstein, J.L., et al., J Clin Oncol, 31(25): p. 3061-8 (2013); Illerhaus, G., et al., Lancet Haematol, 3(8): p. e388-97 (2016))。MTXの構造を以下に示す。
【0030】
【化1】

MTXは概して忍容性が良好であるが、MTX毒性、腎不全、および他の副作用のある患者は、用量減少、および稀に治療の中止を必要としうる。MTXは、MTXから7-ヒドロキシメトトレキサートへの変換を介する肝臓系の寄与を伴って主に腎排泄(70~90%)を介して除去される。成人の2~12%が、HD-MTXの結果として急性腎損傷を患う可能性がある。Widemann, B.C., et al., J Clin Oncol, 28(25): p. 3979-86 (2010)を参照されたい。MTX毒性は、時に重度で致命的となりうる。MTXは弱酸であり、低いpHほど可溶性である。腎小管におけるMTXの沈殿が腎毒性のメカニズムである可能性が高いが(Garneau, A.P., J. Riopel, and P. Isenring, N Engl J Med, 373(27): p. 2691-3 (2015))、血管収縮および直接的な管毒性も要因でありうる。腎毒性のリスクを低減するために、補水(体積膨張)および尿中アルカリ化の形態で全ての患者に予防的に支持療法が提供される。その結果、HD-MTXは、ほぼ常に、継続的な静脈内補水ならびに尿pHおよび血清中MTXレベルの頻繁なモニタリングを伴って入院状況下で投与される。患者は、典型的には、イムノアッセイによって測定される血清レベルが≦100nmolに達するまで、定期的なモニタリングを伴う支持的補水が維持される。IV MTXの半減期は8~12時間であり、クリアランス時間には患者間および患者内の変動が大きい。治療は、少なくとも数日間の多数回の入院を必要とする。
【0031】
MTXの投薬および投与は全身毒性によって制限されるため、このための救済療法が開発されている。ロイコボリン、またはフォリン酸は、MTXの全身毒性作用に対して保護するために投与される救済剤であり、5-メチル-テトラヒドロ葉酸に代謝され、MTXの効果を回避することができる還元型葉酸の供給源を提供する。ロイコボリンは、MTX投与の24~36時間後から投与される。MTXの48時間後を超える遅延は、重度毒性のリスク増加と関連する(Bertino, J.R., Semin Oncol,4(2): p. 203-16 (1977))。ロイコボリンは、細胞の取込み、ならびに細胞内保持および標的酵素に対する親和性を増強する細胞内ポリグルタミル化について、MTXと競合する。競合阻害が働くため、ロイコボリンは、MTXレベルが高い場合には作用が低下する。ロイコボリンはMTXの毒性および致命的副作用の発生率を低下させるが、MTX投与後の入院および緊密なモニタリングの必要性を排除するものではない。
【0032】
グルカルピダーゼ
グルカルピダーゼまたはカルボキシペプチダーゼG2(例えば、Voraxaze(登録商標))は、血清中のMTXを切断して不活性代謝産物とする組換え細菌酵素である。グルカルピダーゼのアミノ酸配列を以下に示す。
グルカルピダーゼ(配列番号1)
【0033】
Voraxaze(登録商標)は現在、腎不全およびMTX毒性を有する患者のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。承認されている用量は50単位/kgであり、この用量は、腎障害の結果としてMTX排出が遅延している患者において、安全で有効であることが実証されている。この用量では、グルカルピダーゼの常用は費用抑制的である。良好な忍容性があり、吐き気、嘔吐、低血圧、知覚異常、紅潮、および頭痛の報告がある患者は3%未満である。MTXが切断されると、グルタミン酸代謝産物と4-デオキシ-4-アミノ-N10-メチルプテロイン酸(DAMPA)が形成される。DAMPAは細胞毒性ではなく、主に肝臓によって取り除かれるが、非ヒト霊長類におけるデータでは、尿中排泄もクリアランスに寄与することが示唆されている。
【0034】
【化2】
グルカルピダーゼは、細菌源(シュードモナス(Pseudomonas)sp.(RS-16株))に由来し、潜在的に免疫原性である。抗体の発生が、グルカルピダーゼの1回目または2回目の投与を受けた患者の約17%で記述されている(Ramsey, L.B., et al., Oncologist 23(1): p. 52-61 (2018))。抗体発生の臨床的な意義は明らかではないが、抗グルカルピダーゼ抗体の形成は、MTX切断およびMTX毒性の治療のためのグルカルピダーゼの有効性を低下させる可能性がある。例えば、メトトレキサート毒性の治療におけるグルカルピダーゼの使用に関するEMEA/CHMP/171907/2008の事前承認評価では、グルカルピダーゼ後の抗体形成は臨床試験で37~43%であり、年齢または性別とは無関係のようであることが記されている。インビトロデータでは、抗体がいくらかの中和効力を有しうることが示され、抗体応答を有する22人の患者のうち4人からの血清が、インビトロでのグルカルピダーゼ酵素活性を28~58%阻害した。このシナリオでのグルカルピダーゼの予想される使用は1回の単独投与であったため、抗体の形成は重要な問題とは考えられなかった。しかし、抗グルカルピダーゼ抗体が、MTXクリアランスを目的とした低用量グルカルピダーゼの反復投与の有効性に与える影響は不明である。
【0035】
現在、Voraxaze(登録商標)は、MTXのクリアランスが期待される患者または正常もしくはわずかに低い腎機能を有する患者には適応されない。これは、グルカルピダーゼの投与によって、MTXが治療量以下の用量でもたらされることとなり、したがって、CNSL療法の有効性を低下させることが懸念されるためである。グルカルピダーゼは、83kDaの大分子であり、血漿に匹敵する3.6Lの分布体積を有する。グルカルピダーゼの半減期は、腎機能にかかわらず、6~9時間である。グルカルピダーゼは、そのサイズのために血液脳関門または細胞膜を通過するとは考えられていないが、臨床データの少なさを考慮すると、このことは明確には実証されていない。
【0036】
メトトレキサートおよび/またはグルカルピダーゼを含む製剤
本技術の医薬組成物は、従来の造粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または乳化プロセスなどの当技術分野で周知の方法によって製造することができる。組成物は、顆粒、沈殿物、粒状物、粉末、例えば凍結乾燥、回転乾燥もしくは噴霧乾燥粉末、非晶質粉末、錠剤、カプセル、シロップ、坐剤、注射剤、乳濁液、エリキシル剤、懸濁液、または溶液を含む様々な形態で製造されうる。製剤は、所望の特定の剤形に適するように、溶媒、希釈剤、および他の液体媒体、分散助剤または懸濁助剤、表面活性剤、pH調節剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、安定剤および保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを任意に含有してもよい。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、ヒト等の哺乳動物への投与用に製剤化される。
【0037】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物の他に、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、シクロデキストリン、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含みうる。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、風味料、および香料等の佐剤も含むことができる。
【0038】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液または乳濁液、例えば1,3-ブタンジオール中溶液であってもよい。使用することができる許容される媒体および溶媒としては、水、リンゲル液、U.S.P.、等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の低刺激性の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。注射用製剤は、例えば、細菌を保持するフィルターに通して濾過することによって、または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。非経口投与用に製剤化された組成物は、ボーラス注射または時限プッシュによって注射されてもよく、または連続注入によって投与されてもよい。
【0039】
本開示の化合物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、水溶性の低い結晶または非晶質物質の液体懸濁液の使用によって達成しうる。化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次いで溶解速度は、結晶の大きさおよび結晶形態に依存しうる。代替的に、非経口投与される化合物形態の遅延吸収は、化合物を油性媒体に溶解または懸濁することによって達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中で化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する化合物の比および使用される特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤は、身体組織と適合しうるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に化合物を捕捉させることによっても調製される。
【0040】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム等の少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、ならびに/またはa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア等の結合剤、c)グリセリン等の保水剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリン等の湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物等の潤滑剤と混合される。剤形は、カプセル、錠剤および丸剤の場合、リン酸塩または炭酸塩などの緩衝剤を含んでもよい。
【0041】
同様の種類の固形組成物は、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコール等の賦形剤等を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、および顆粒の固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および医薬製剤分野で周知の他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、不透明化剤を含んでもよく、活性成分のみを放出する組成物、または、任意に遅延様式で、腸管の特定の部分で活性成分を放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0042】
活性化合物は、上述のように、1種または複数種の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。そのような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合することができる。そのような剤形はまた、常法のとおりに、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤潤滑剤および他の錠剤補助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロース等を含んでもよい。剤形は、カプセル、錠剤および丸剤の場合、緩衝剤を含んでもよい。剤形は、不透明化剤を含んでもよく、活性成分のみを放出する組成物、または、任意に遅延様式で、腸管の特定の部分で活性成分を放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0043】
投与様式および有効用量
本明細書に開示される方法において有用な有効量のMTXまたはグルカルピダーゼは、医薬化合物を投与するためのいくつかの周知の方法のうちのいずれかによって、それを必要とする哺乳動物に投与されてもよい。有効量は、前臨床試験および臨床試験中に、医師および臨床医が精通している方法によって決定されてもよい。MTXまたはグルカルピダーゼは全身的または局所的に投与されうる。
MTXまたはグルカルピダーゼは、本明細書に開示の疾患または状態の治療または予防のために、対象に単独でまたは組み合わせて投与するための医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的には、活性剤、および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語には、薬学的投与と適合する生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。本開示の組成物には、追加的な活性化合物を組み込むこともできる。
【0044】
医薬組成物は、典型的には、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン導入、および経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩等の緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張度調整剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨ての注射器、または複数回投与用のガラス製もしくはプラスチック製バイアルに封入することができる。患者または治療を行う医師の便宜のために、投与製剤は、治療経過(例えば、治療の7日間)のために必要な全ての機器(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、注射器、および針)を含むキットで提供されてもよい。
【0045】
注射用に適した医薬組成物は、注射可能な滅菌溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末を含むことができる。静脈内投与に関して、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合で、非経口投与用組成物は滅菌されていなければならず、容易に注射針を通過できる程度の流体であるべきである。組成物は、製造条件および保存条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0046】
MTXまたはグルカルピダーゼを有する医薬組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒でありうる担体を含むことができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを用いることによって、分散剤の場合には所要の粒径を保つことによって、また界面活性剤を用いることによって、保つことができる。微生物作用の阻止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール(thiomerasol)などによって達成しうる。酸化を防ぐために、グルタチオンおよび他の抗酸化物質を含むことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅らせる作用剤、例えば、アルミニウムモノステアレートまたはゼラチンをその組成物に含めることによって実現しうる。
【0047】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記で列挙した成分の1種または組合せと共に活性化合物を必要量で適切な溶媒に組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製できる。一般的に、分散液は、塩基性分散媒と上記で列挙したその他の成分のうちの必要な成分とを含む滅菌媒体に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合に、典型的な調製方法は、真空乾燥および冷凍乾燥手法であり、これにより、先に滅菌濾過された溶液から、活性成分と任意のさらなる所望の成分とを含む粉末がもたらされる。
【0048】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的のために、活性化合物を賦形剤に組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、洗口液として使用するための流体担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を組成物の一部として含めてもよい。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分または同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン等の結合剤;デンプンもしくは乳糖等の賦形剤;アルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の滑沢剤;スクロースもしくはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料等の香味剤。
吸入による投与のために、化合物は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素などの気体を含む加圧容器もしくはディスペンサーまたはネブライザからエアロゾルスプレーの形態で送達されうる。そのような方法としては、米国特許第6,468,798号に記載されている方法が挙げられる。
【0049】
本明細書に記載される治療用化合物の全身投与は、経粘膜または経皮的手段によることもできる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透する障壁に適した浸透剤が製剤中に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与用には、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用を介して達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。一実施形態では、経皮投与は、イオン導入によって行われうる。
【0050】
治療剤は、担体系で製剤化することができる。担体は、コロイド系でありうる。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであることができる。一実施形態では、治療剤は、薬剤の構造的完全性を維持しながら、リポソーム内に封入される。当業者は、リポソームを調製するための様々な方法があることを理解している。(Lichtenberg, et al., Methods Biochem. Anal., 33:337-462 (1988); Anselem, et al., Liposome Technology, CRC Press (1993)を参照されたい)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅延させ、細胞の取込みを向上させることができる(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000)を参照されたい)。活性剤はまた、限定はされないが、可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生分解性、または消化促進性ポリマーまたはリポソームを含む薬学的に許容される成分から調製される粒子に装填されてもよい。かかる粒子としては、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、マイクロ粒子、生分解性マイクロ粒子、ナノスフェア、生分解性ナノスフェア、マイクロスフェア、生分解性マイクロスフェア、カプセル、エマルジョン、リポソーム、ミセル、およびウイルスベクター系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
担体は、ポリマー、例えば、生分解性の生体適合性ポリマーマトリックスであってもよい。一実施形態では、治療剤は、薬剤の構造的完全性を維持しながら、ポリマーマトリックスに包埋されてもよい。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質もしくは多糖類等の天然物、またはポリα-ヒドロキシ酸等の合成物であってもよい。例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖類、フィブリン、ゼラチン、およびこれらの組合せからなる担体が挙げられる。一実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。高分子マトリックスは、マイクロスフェアおよびナノスフェアを含む種々の形態およびサイズで調製および単離することができる。ポリマー製剤は治療効果の持続時間の延長をもたらすことができる(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000)を参照されたい)。ヒト成長ホルモン(hGH)のポリマー製剤は、臨床試験で使用されている。(Kozarich and Rich, Chemical Biology, 2:548-552 (1998)を参照されたい)。
【0052】
ポリマーマイクロスフィア持続放出製剤としては、PCT公報国際公開第99/15154号(Tracy, et al.)、米国特許第5,674,534号および同第5,716,644号(いずれもZale, et al.)、PCT公報国際公開第96/40073号(Zale, et al.)およびPCT公報国際公開第00/38651号(Shah, et al.)が挙げられる。米国特許第5,674,534号および同第5,716,644号、ならびにPCT公報国際公開第96/40073号は、塩による凝集に対して安定化されたエリスロポエチンの粒子を含有する高分子マトリックスを記載している。
【0053】
一部の実施形態では、治療用化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤など、体内からの急速な排出に対して治療用化合物を保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用してもよい。そのような製剤は既知の技術を使用して調製することができる。材料は、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を用いた特異的細胞を標的にするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0054】
治療用化合物は、細胞内送達を増強するように製剤化することもできる。例えば、リポソーム送達系が当技術分野で公知であり、例えば、Chonn and Cullis, “Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,” Current Opinion in Biotechnology 6:698-708 (1995); Weiner, “Liposomes for Protein Delivery: Selecting Manufacture and Development Processes,” Immunomethods, 4(3):201-9 (1994);およびGregoriadis, “Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems,” Trends Biotechnol., 13(12):527-37 (1995)を参照されたい。Mizguchi, et al., Cancer Lett., 100:63-69 (1996)は、インビボおよびインビトロの両方でタンパク質を細胞に送達するための融合リポソームの使用を記載している。
【0055】
治療方法
以下の考察は、例としてのみ提示されるものであり、限定することを意図するものではない。
一態様では、本開示は、中枢神経系リンパ腫の治療を必要とする対象において、中枢神経系リンパ腫を治療するための方法であって、(a)有効量のメトトレキサートを対象に投与する工程と、(b)対象の血清中のメトトレキサートのレベルを90%を超えて低下させるのに十分な量のグルカルピダーゼを対象に投与する工程であって、グルカルピダーゼが、メトトレキサートの投与の10~48時間後に投与される、工程とを含み、工程(a)~(b)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクル行われる、方法を提供する。別の態様では、本開示は、高用量メトトレキサート療法に関連する毒性の低減を必要とする対象において、高用量メトトレキサート療法に関連する毒性を低減するための方法であって、(a)有効量のメトトレキサートを対象に投与する工程と、(b)対象の血清中のメトトレキサートのレベルを90%を超えて低下させるのに十分な量のグルカルピダーゼを対象に投与する工程であって、グルカルピダーゼが、メトトレキサートの投与の10~48時間後に投与される、工程とを含み、工程(a)~(b)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクル行われ、対象は、中枢神経系リンパ腫に罹患しているか、または中枢神経系リンパ腫と診断されている、方法を提供する。中枢神経系リンパ腫は、原発性CNSL(PCNSL)または二次性CNSL(SCNSL)でありうる。さらなる実施形態では、PCNSLは、脳実質、脊髄、髄膜、脳脊髄液、および眼からなる群から選択される1つまたは複数の組織において発症している。
追加的または代替的に、本明細書に開示される方法の一部の実施形態では、メトトレキサートの有効量は、約3~10g/m2である。ある特定の実施形態では、メトトレキサートの有効量は、約3g/m2、約3.5g/m2、4g/m2、約4.5g/m2、5g/m2、約5.5g/m2、6g/m2、約6.5g/m2、7g/m2、約7.5g/m2、8g/m2、約8.5g/m2、約9g/m2、約9.5g/m2、または約10g/m2である。
【0056】
本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態では、対象は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に罹患しているか、またはDLBCLと診断される。ある特定の実施形態では、対象は、骨髄、精巣、副鼻腔、骨、腹腔後リンパ節および硬膜外腔からなる群から選択される1つまたは複数の組織部位において転移を呈する。追加的または代替的に、一部の実施形態では、対象は、CNSL再発を患っている。
【0057】
本明細書に開示される方法の前述のいずれかの実施形態では、グルカルピダーゼおよびメトトレキサートは、逐次的に、または別個に投与される。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、メトトレキサートは、皮下、静脈内、腹腔内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、経口、局所、経粘膜、イオン導入、または頭蓋内注射を介して投与される。追加的または代替的に、一部の実施形態では、グルカルピダーゼは、皮下、静脈内、腹腔内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、経口、局所、経粘膜、イオン導入、または頭蓋内注射を介して投与される。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0058】
追加的または代替的に、一部の実施形態では、工程(a)~(b)は、最大10サイクル行われる。他の実施形態では、工程(a)~(b)は、3~8サイクル行われる。本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態では、少なくとも1回のサイクルにおけるグルカルピダーゼの量は、約1800~2200単位である。追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、少なくとも1回のサイクルにおけるグルカルピダーゼの量は、約800~1200単位である。ある特定の実施形態では、少なくとも1回のサイクルにおけるグルカルピダーゼの量は、約800単位、約850単位、約900単位、約950単位、約1000単位、約1050単位、約1100単位、約1150単位、約1200単位、約1250単位、約1300単位、約1350単位、約1400単位、約1450単位、約1500単位、約1550単位、約1600単位、約1650単位、約1700単位、約1750単位、約1800単位、約1850単位、約1900単位、約1950単位、約2000単位、約2050単位、約2100単位、約2150単位、または約2200単位である。本明細書に開示される方法の前述のいずれかの実施形態では、最初の2~4サイクルにおけるグルカルピダーゼの量は約1800~2200単位であり、最初の2~4サイクルの後のグルカルピダーゼの量は約800~1200単位である。ある特定の実施形態では、最初の2~4サイクルにおけるグルカルピダーゼの量は約2000単位であり、最初の2~4サイクルの後のグルカルピダーゼの量は約1000単位である。
【0059】
追加的または代替的に、一部の実施形態では、本技術の方法は、CNSLを標的とする有効量の追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む。CNSLを標的とする追加の治療剤は、抗CD20抗体、抗CD19抗体、ステロイド(例えば、グルココルチコイド)、化学療法剤、およびこれらの任意の組合せでありうる。抗CD20抗体としては、リツキシマブ(例えば、MabThera(登録商標)、Rixathon(登録商標)およびTruxima(登録商標))、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、131Iトシツモマブ、AME-133v、PRO131921、TRU-015、およびGA101が挙げられるが、これらに限定されない。抗CD19抗体としては、ブリナツモマブ、GBR401、コルツキシマブラブタンシン、MOR208、MEDI-551、デニンツズマブマホドチン、タプリツモマブパプトクス、XmAb5871、MDX-1342、AFM11、およびSAR3419(huB4-DM4)等が挙げられるが、これらに限定されない。追加的または代替的に、一部の実施形態では、少なくとも1種の追加の治療剤は、シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド、ビスルファン、ビンクリスチン、プロカルバジン、テモゾロミド、シタラビン、およびチオテパからなる群から選択される化学療法剤である。
【0060】
本明細書に開示される方法の前述のいずれかの実施形態では、抗CD20抗体は、メトトレキサートおよびグルカルピダーゼと共に1回以上のサイクルで投与される。ある特定の実施形態では、各サイクルは、(i)3日間にわたって行われ、(ii)1日目に約300~600mg/m2の抗CD20抗体を対象に投与すること、2日目に約3~10mg/m2のメトトレキサートを対象に投与すること、および3日目に約800~2200単位のグルカルピダーゼを対象に投与することを含む。ある特定の実施形態では、1日目に対象に投与される抗CD20抗体の量は、約300mg/m2、約350mg/m2、約400mg/m2、約450mg/m2、約500mg/m2、約550mg/m2、または約600mg/m2である。
【0061】
本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態では、対象は、CNSLと診断された未治療の対照対象において観察される転移発生および/または腫瘍増殖と比較して、MTXおよびグルカルピダーゼの投与後に転移発生および/または腫瘍増殖の遅延を示す。
【0062】
追加的または代替的に、本明細書に開示される方法の一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、逐次的に、同時に、または別個に投与される。MTXおよび/またはグルカルピダーゼは、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、鼻腔内に、口腔内に、または移植されたリザーバを介して投与されうる。「非経口」という用語は、本明細書で使用する場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、経口的に、静脈内に、または皮下に投与される。MTXおよび/またはグルカルピダーゼを含む製剤は、短時間作用型、急速放出型、または長時間作用型となるように設計されてもよい。他の実施形態では、化合物は、腫瘍部位での投与(例えば、注射による)などの全身的手段ではなく、局所的手段で投与されてもよい。
【0063】
追加的または代替的に、本明細書に開示される方法の一部の実施形態では、MTXは、CNSLを有する患者へのグルカルピダーゼの投与の前(例えば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、8時間前、10時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前、または12週間前)に、同時に、またはその後(例えば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後、または12週間後)に投与されうる。
【0064】
一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、患者に、例えば、哺乳動物に、例えば、ヒトに、2つの組成物が一緒に作用して、各組成物が単独で投与される場合よりも大きな利益をもたらすように、順次に、およびある時間間隔内に投与される。例えば、MTXおよびグルカルピダーゼは、同時に、または異なる時点で任意の順序で逐次的に投与されてもよい。但し、同時に投与されない場合、MTXおよびグルカルピダーゼは、2つの組成物の組合せの所望の治療または予防効果を提供するように十分近い時間で投与される。一実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、重複する時間においてそれらの効果を発揮する。一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、それぞれ、別個の剤形として、任意の適切な形態で、および任意の適切な経路によって投与される。他の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、単一の剤形で同時に投与される。
【0065】
これらの治療剤のいずれかを投与することができる頻度は、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約20日間、約24日間、約28日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月ごと、約3ヶ月ごと、約4ヶ月ごと、約5ヶ月ごと、約6ヶ月ごと、約7ヶ月ごと、約8ヶ月ごと、約9ヶ月ごと、約10ヶ月ごと、約11ヶ月ごと、約1年ごと、約2年ごと、約3年ごと、約4年ごと、または約5年ごとの期間にわたって1回または1回より多い回数であってもよいことが理解される。
例えば、MTXおよびグルカルピダーゼレジメン(MTX/グルカルピダーゼレジメン)は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くのサイクルで毎週、隔週(2週間ごとに)、または毎月投与されてもよい。追加的または代替的に、一部の実施形態では、各サイクルは、14日サイクル、13日サイクル、12日サイクル、11日サイクル、10日サイクル、9日サイクル、8日サイクル、7日サイクル、6日サイクル、5日サイクル、4日サイクル、または3日サイクルである。
【0066】
追加的または代替的に、一部の実施形態では、MTX/グルカルピダーゼレジメンは、週に1回投与された後、特定の非治療期間が続いてもよく、または週に2回投与され、この場合、MTX/グルカルピダーゼレジメンの第1の用量、続いて特定の非治療期間(例えば、1、2、3、4、または5日)があり、その後、MTX/グルカルピダーゼレジメンの第2の用量が投与されてもよい。追加的または代替的に、一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼが同じ日に逐次投与され、続いて6~27日の非治療期間があってもよい。他の実施形態では、MTXは、1日目に投与され、グルカルピダーゼは、2日目、3日目、4日目、または5日目のいずれかに投与され、続いて5~26日の非治療期間がある。
【0067】
一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼの個々の用量は、2つの組成物が一緒に作用することができるような時間間隔内(例えば、1時間以内、2時間以内、4時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内、48時間以内、72時間以内、96時間以内、5日以内、6日以内、1週間以内、または2週間以内)に投与される。一部の実施形態では、治療剤が投与される治療期間の後に、治療剤が患者に投与されない特定の非治療期間が続く。この非治療期間には、次いで、同じまたは異なる時間の長さの、同じまたは異なる頻度の一連の後続の治療および非治療期間が続いてもよい。一部の実施形態では、治療期間と非治療期間が交互にある。サイクリング療法における治療期間は、患者が完全奏効または部分奏効を達成するまで継続してもよく、その達成時点で、治療を中止してもよいことが理解されるであろう。代替的に、サイクリング療法における治療期間は、患者が完全奏効または部分奏効を達成するまで継続してもよく、その達成時点に際し、治療期間は特定のサイクル数にわたって継続されてもよい。一部の実施形態では、治療期間の長さは、患者の応答に関係なく、特定数のサイクルであってもよい。一部の他の実施形態では、治療期間の長さは、患者が再発するまで継続されてもよい。
一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、患者に周期的に投与される。サイクリング療法は、第1の薬剤(例えば、第1の予防剤または治療剤)を一定期間投与し、続いて第2の薬剤および/または第3の薬剤(例えば、第2および/または第3の予防剤または治療剤)を一定期間投与し、この逐次的投与を繰り返すことを含む。サイクリング療法は、1つまたは複数の治療法に対する抵抗性の発生を低減し、治療法の1つの副作用を回避もしくは低減し、および/または治療の有効性を改善することができる。
【0068】
一部の実施形態では、MTXは、グルカルピダーゼの投与前の特定の長さの時間にわたって投与される。例えば、21日サイクルにおいて、MTXは1~5日目、1~7日目、1~10日目、または1~14日目に投与され、グルカルピダーゼは6~21日目、8~21日目、11~21日目、または15~21日目に投与されてもよい。他の実施形態では、グルカルピダーゼは、MTXの投与前の特定の長さの時間、投与される。例えば、21日サイクルにおいて、グルカルピダーゼが、1~5日目、1~7日目、1~10日目、または1~14日目に投与され、MTXが、6~21日目、8~21日目、11~21日目、または15~21日目に投与されてもよい。
一実施形態では、MTXを開始1日目に投与し、続いて、グルカルピダーゼをMTXの投与の約4~96時間後(例えば、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後)に投与し(例えば、グルカルピダーゼを、スケジュールの1日目、2日目、3日目、4日目、または5日目に投与し、MTXを、1日目に投与する)、その後に0~28日間の非治療が続く投与スケジュールで投与する。
【0069】
一部の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼは、単剤療法でその薬剤について典型的に使用される用量およびスケジュールでそれぞれ投与される。他の実施形態では、MTXおよびグルカルピダーゼが同時に投与される場合、薬剤の一方または両方は、その薬剤が単剤療法で使用されるときに通常投与されるよりも少ない用量で、したがって有害な副作用が誘発される閾値を下回るような用量で、有利に投与することができる。
【0070】
MTXおよびグルカルピダーゼの併用での治療有効量または適切な投与量は、治療される状態の重症度の性質、特定の治療組成、投与経路、ならびに個々の患者の年齢、体重、全体的健康状態、および応答を含むいくつかの因子に依存する。ある特定の実施形態では、好適な用量レベルは、リンパ腫の退縮、または疾患進行、無増悪生存、もしくは全生存期間の他の標準的な尺度によって測定される治療的応答を達成する用量レベルである。他の実施形態では、好適な用量レベルは、この治療的応答を達成し、かつ治療剤の投与に関連する任意の副作用を最小限に抑える用量レベルである。
MTXの好適な1日投与量は、単回用量もしくは分割用量もしくは複数回用量で、一般的にその最大許容用量の約10%~約120%の範囲でありうる。ある特定の実施形態では、MTXの好適な投与量は、その最大許容用量の約20%~約100%である。他の実施形態では、MTXの好適な投与量は、その最大許容用量の約25%~約90%である。一部の実施形態では、MTXの好適な投与量は、その最大許容用量の約30%~約80%である。他の実施形態では、MTXの好適な投与量は、その最大許容用量の約40%~約75%である。一部の実施形態では、MTXの好適な投与量は、その最大許容用量の約45%~約60%である。他の実施形態では、MTXの好適な投与量は、その最大許容用量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約105%、約110%、約115%、または約120%である。
【0071】
グルカルピダーゼの好適な1日投与量は、単回用量もしくは分割用量もしくは複数回用量で、一般的にその最大許容用量の約10%~約120%の範囲でありうる。ある特定の実施形態では、グルカルピダーゼの好適な投与量は、その最大許容用量の約20%~約100%である。一部の他の実施形態では、グルカルピダーゼの好適な投与量は、その最大許容用量の約25%~約90%である。一部の他の実施形態では、グルカルピダーゼの好適な投与量は、その最大許容用量の約30%~約80%である。一部の他の実施形態では、グルカルピダーゼの好適な投与量は、その最大許容用量の約40%~約75%である。一部の他の実施形態では、グルカルピダーゼの好適な投与量は、その最大許容用量の約45%~約60%である。他の実施形態では、グルカルピダーゼの好適な投与量は、その最大許容用量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約105%、約110%、約115%、または約120%である。
【0072】
任意の治療剤の投与量、毒性、および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。有毒な副作用を呈する化合物を使用してもよいが、そのような化合物を組織患部に向ける送達系を設計して、感染していない細胞に対する潜在的損傷を最小化し、副作用を低減することに注意を払うべきである。
【0073】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲を定式化するために使用することができる。そのような化合物の投与量は、毒性がわずかであるか全くないED50を含む循環濃度の範囲内でありうる。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動しうる。本発明の方法で用いられる任意の化合物について、治療有効用量は、まず細胞培養アッセイから推定することができる。動物モデルにおける用量は、細胞培養で決定されたIC50(すなわち、最大の症状抑制の半量を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように定式化することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定されてもよい。
【0074】
典型的には、治療または予防効果を達成するのに十分なMTXまたはグルカルピダーゼの有効量は、約0.000001mg/キログラム体重/日~約10,000mg/キログラム体重/日の範囲でありうる。好適には、投与量の範囲は、約0.0001mg/キログラム体重/日~約100mg/キログラム体重/日である。例えば、投与量は、毎日、2日ごと、もしくは3日ごとに1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または1週間ごと、2週間ごと、もしくは3週間ごとに1~10mg/kgの範囲内でありうる。一実施形態では、MTXまたはグルカルピダーゼの単回投与量は、kg体重当たり0.001~10,000μgの範囲である。一実施形態では、担体中のMTXまたはグルカルピダーゼ濃度は、送達される1ミリリットル当たり0.2~2000μgの範囲である。例示的な治療レジメンは、1日1回または週1回の投与を必要とする。治療適用では、疾患の進行が減少または終了するまで、または対象が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い用量を必要とすることが時々ある。その後で、患者は、防御的レジメンを投与されてもよい。
一部の実施形態では、MTXまたはグルカルピダーゼの治療有効量は、10-12~10-6モル、例えば約10-7モルの標的組織におけるMTXまたはグルカルピダーゼの濃度として定義されてもよい。この濃度は、0.001~100mg/kgの全身用量または体表面積による等価用量によって送達されてよい。投与スケジュールは、標的組織における治療濃度を維持するように、例えば、単回の毎日もしくは毎週の投与によって、または継続的投与(例えば、非経口注入もしくは経皮的適用)等によって、最適化される。
【0075】
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の全体的健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患などが含まれるが限定されない特定の因子が、対象を効果的に治療するために必要な投与量および時期に影響を及ぼしうることを理解する。さらに、治療有効量の本明細書に記載の治療用組成物による対象の治療は、単一治療または一連の治療を含んでもよい。
本方法に従って治療される哺乳動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ等の農場動物;イヌ、ネコ等のペット動物;ラット、マウス、ウサギ等の実験動物を含む任意の哺乳動物であることができる。一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0076】
CNSリンパ腫を標的とする他の治療剤との併用療法
一部の実施形態では、MTXまたはグルカルピダーゼのうちの1つまたは複数を、CNSLの予防または治療のための1種または複数種の追加の治療剤と組み合わせてもよい。追加の治療剤としては、抗CD20抗体、抗CD19抗体、ステロイド療法(例えば、グルココルチコイド)、化学療法剤、幹細胞移植を伴う高用量化学療法、放射線療法、またはそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
一部の実施形態では、MTXおよび/またはグルカルピダーゼは、抗CD20抗体、抗CD19抗体、ステロイド療法(例えば、グルココルチコイド)、化学療法剤、幹細胞移植を伴う高用量化学療法、放射線療法、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の追加の治療剤と共に、別個に、逐次的に、または同時に投与されてもよい。抗CD20抗体としては、リツキシマブ(例えば、MabThera(登録商標)、Rixathon(登録商標)およびTruxima(登録商標))、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、131Iトシツモマブ、AME-133v、PRO131921、TRU-015およびGA101が挙げられるが、これらに限定されない。抗CD19抗体としては、例えば、ブリナツモマブ、GBR401、コルツキシマブラブタンシン、MOR208、MEDI-551、デニンツズマブマホドチン、タプリツモマブパプトクス、XmAb5871、MDX-1342、AFM11、およびSAR3419(huB4-DM4)等が挙げられるが、これらに限定されない。Naddafi et al., Int J Mol Cell Med. 4(3): 143-151 (2015)を参照されたい。追加的または代替的に、一部の実施形態では、MTXおよび/またはグルカルピダーゼは、シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド、ビスルファン、ビンクリスチン、プロカルバジン、テモゾロミド、シタラビン、およびチオテパからなる群から選択される少なくとも1種の追加の治療剤と共に、別個に、逐次的に、または同時に投与されてもよい。
【0078】
追加的または代替的に、一部の実施形態では、MTXおよび/またはグルカルピダーゼは、少なくとも1種の追加の治療剤と共に、別個に、逐次的に、または同時に投与されてもよい。少なくとも1種の追加の治療剤の例としては、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、アルキルスルホネート、白金剤、タキサン、ビンカ剤、抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、卵巣機能抑制剤、VEGF/VEGFR阻害剤、EGF/EGFR阻害剤、PARP阻害剤、細胞抑制性アルカロイド、細胞毒性抗生物質、代謝拮抗剤、内分泌/ホルモン剤、ビスホスホネート療法剤、フェンホルミンおよび標的化生物学的療法剤(例えば、米国特許第6306832号、国際公開第2012007137号、国際公開第2005000889号、国際公開第2010096603号等に記載の治療ペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、少なくとも1種の追加の治療剤は、化学療法剤である。
【0079】
特定の化学療法剤としては、シクロホスファミド、フルオロウラシル(または5-フルオロウラシルまたは5-FU)、メトトレキサート、エダトレキサート(10-エチル-10-デアザ-アミノプテリン)、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イキサベピロン、テモゾロミド、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ロイプロリド、アバレリックス、ブセルリン、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、デノスマブ、ゾレドロネート、トラスツズマブ、タイケルブ、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、クラドリビン、ミドスタウリン、ベバシズマブ、オキサリプラチン、メルファラン、エトポシド、メクロレタミン、ブレオマイシン、微小管毒素、アノナセオス・アセトゲニン(annonaceous acetogenin)、クロラムブシル、イホスファミド、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、ブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、6-メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、ペメトレキセド、エピルビシン、イダルビシン、SN-38、ARC、NPC、カンポテシン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、アムサクネ、リン酸エトポシド、テニポシド、アザシチジン(Vidaza)、デシタビン、アクカチンIII、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバッカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、ストレプトゾトシン、ニムスチン、ラニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、マンノスルファン、カンプトテシン、エキサテカン、ルルトテカン、ラメラリンD9-アミノカンプトテシン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、HU-331、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
代謝拮抗剤としては、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、およびそれらの混合物が挙げられる。
タキサンとしては、アクカチンIII、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバッカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、およびこれらの混合物が挙げられる。
DNAアルキル化剤としては、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾトシン、ブスルファン、マンノスルファン、およびこれらの混合物が挙げられる。
トポイソメラーゼI阻害剤としては、SN-38、ARC、NPC、カンプトテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、エキサテカン、ルルトテカン、ラメラリンD9-アミノカンプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、およびこれらの混合物が挙げられる。トポイソメラーゼII阻害剤としては、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチン、アウリントリカルボン酸、ドキソルビシン、およびHU-331、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0081】
いずれの場合においても、複数の治療剤は、任意の順序で、または同時に投与されうる。同時に投与される場合、複数の治療剤は、単一で、統一された形態で、または複数の形態で(例として、単一の丸剤として、または2つの別個の丸剤としてのいずれかで)提供されうる。治療剤のうちの1つが複数回投与で投与されてもよく、または両方が複数回投与として投与されてもよい。同時でない場合、複数回投与間の時期は、ゼロ週を超えて4週未満で変化しうる。加えて、併用方法、併用組成物および併用製剤は、2つの薬剤のみの使用に限定されるものではない。
【0082】
キット
本開示は、MTXと、グルカルピダーゼと、本明細書に開示される方法のいずれかおよび全ての実施形態に従ってCNSLを治療するための説明書を含むキットを提供する。同時投与が企図される場合、キットは、錠剤等の単一の医薬組成物または別個の医薬組成物として製剤化されたMTXおよびグルカルピダーゼを含んでもよい。MTXおよびグルカルピダーゼが同時に投与されない場合、キットは、単一のパッケージ、または別々のパッケージのいずれかで、別個の医薬組成物として製剤化されたMTXおよびグルカルピダーゼを含んでもよい。本技術のキットの上述の構成要素は、適切な容器に詰められ、CNSLの治療のために標識されてもよい。CNSLは、原発性CNSL(PCNSL)であってもよく、二次性CNSL(SCNSL)であってもよい。
【0083】
追加的または代替的に、一部の実施形態では、キットは、CNSLを治療するために有用な、本明細書に開示の少なくとも1種の追加の治療剤をさらに含む。そのような治療剤の例としては、ステロイド(例えば、グルココルチコイド)、リツキシマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、131Iトシツモマブ、AME-133v、PRO131921、TRU-015、GA101、ブリナツモマブ、GBR401、コルツキシマブラブタンシン、MOR208、MEDI-551、デニンツズマブマホドチン、タプリツモマブパプトクス、XmAb5871、MDX-1342、AFM11、SAR3419(huB4-DM4)、シクロホスファミド、カルムスチン、エトポシド、ビスルファン、ビンクリスチン、プロカルバジン、テモゾロミド、シタラビン、およびチオテパが挙げられるが、これらに限定されない。
上述の成分は、水性の、好ましくは滅菌の、溶液として、または凍結乾燥された、好ましくは滅菌の、復元用製剤として、密封アンプル、バイアル、ボトル、シリンジ、および試験管等のユニットまたは複数用量容器内に保存されてもよい。キットは、より高体積に医薬組成物を希釈するために適した希釈剤を保持する第2の容器をさらに含んでもよい。好適な希釈剤としては、医薬組成物の薬学的に許容される賦形剤および生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、キットは、希釈されているか否かにかかわらず、医薬組成物を希釈するための説明書および/または医薬組成物を投与するための説明書を含んでもよい。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてよく、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって突き通しうるストッパーを有するバイアルであってもよい)。キットはさらにリン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含むさらなる容器を含んでもよい。キットは、商業的およびユーザの立場から望ましい他の材料、例えば他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、1種または複数種の好適な宿主のための培養培地をさらに含んでもよい。キットは、治療製品の市販のパッケージに通常含まれる、例えばそのような治療製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、製造、投与、禁忌および/または警告に関する情報を含む、説明書を含んでもよい。
【0084】
キットは、例えば、緩衝剤、保存剤、または安定化剤も含むことができる。キットはまた、アッセイされ、被験試料と比較することができる対照試料または一連の対照試料を含むことができる。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入することができ、様々な容器の全ては、キットを使用して行われたアッセイの結果を解釈するための説明書と共に、単一のパッケージ内にあってもよい。本技術のキットは、キット容器の上部または内部に製品説明文書を含んでもよい。製品説明文書には、キットに含まれる試薬の使用方法が記載されている。ある特定の実施形態では、試薬の使用は、本技術の方法に従って行うことができる。
【実施例
【0085】
本技術は、以下の実施例によってさらに例示されるが、これらはいかなる方法でも限定されるものと解釈されるべきではない。本明細書の実施例は、本技術の利点を示すため、ならびに本技術の組成物およびシステムの調製または使用に関して当業者をさらに支援するために提供される。実施例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。実施例には、上述の本技術の変形、態様、または実施形態のいずれかを含めるまたは組み込むことができる。上述の変形例、態様、または実施形態には、それぞれ、本技術のいずれかまたは全ての他の変形、態様、または実施形態の変形をさらに含めるまたは組み込むことができる。
【0086】
(実施例1)本技術の併用療法は、患者におけるCNSリンパ腫の治療に有用である。
方法:全身関与のないCNSリンパ腫を有し、KPS50以上および年齢18歳以上で、正常な末端器官機能を有する適格患者を、リツキシマブおよびメトトレキサートによる治療のために、腫瘍学者によって選択した。MTX3g/m2を受けるコホートAおよびMTX6g/m2を受けるコホートBの2つのコホートに患者を登録した。2000Uまたは1000Uのグルカルピダーゼを、MTX注入の開始後24時間で投与した。サイクルは通常14±7日である。本実施例では、リツキシマブを1日目に、MTXを2日目に、グルカルピダーゼを3日目に投与し、続いて11日の非治療期間の後、次のサイクルを開始した。
【0087】
血清を所定の時点(例えば、グルカルピダーゼ投与の前、グルカルピダーゼ投与の1時間後、グルカルピダーゼ投与の6時間後、グルカルピダーゼ投与の24時間後、その後、クリアランスまで24時間ごと)で収集し、MTXおよび2,4-ジアミノ-N10-メチルプテロイン酸(DAMPA)の濃度を質量分析によって分析した。治療中に脳脊髄液(CSF)を収集した。抗グルカルピダーゼ抗体の分析のために血清を収集した。図1は、コホートAおよびコホートBの対象に投与される投与レジメンを示す。リツキシマブ、MTXおよびグルカルピダーゼは静脈内投与した。リツキシマブは常に500mg/m2で投与した。
【0088】
結果:試験には8人の患者を登録した。図2は、8人の登録患者それぞれについての治療レジメンを示す。合計42用量のMTXを8人の患者に集約的に投与した(3g/m2で24用量、6g/m2で24用量)。患者は、32用量の2000Uのグルカルピダーゼおよび10用量の1000Uのグルカルピダーゼを集約的に受けた。図2を参照されたい。
登録された5人の患者のうち、グルカルピダーゼの投与は、24用量のうち23用量(96%)で、投与から15分以内に血清MTXレベルの少なくとも95%の低下をもたらした。残りの用量(2000U)では、93%の低下が見られた。24用量のうち23用量では、グルカルピダーゼ投与の15分以内に、MTXレベルが100nmol/L未満に低下した。100nmol/Lを超えるMTXレベルの一時的増加が、24用量のうち8用量(33%)の後に見られ、典型的にはグルカルピダーゼの投与の約24時間後に見られた(MTXの中央値が290nmol/Lへ上昇;範囲119~516nmol/L)。2人の患者でCSFメトトレキサート濃度が評価され、グルカルピダーゼ投与後も治療的状態に維持されていた。
【0089】
治療終了応答は、完全奏効(CR)を示した1人と、ほぼCRを示した1人の、2人の患者で評価した。治療中間応答は、部分奏効(PR)を示した1人と、安定(SD)を示した1人の、2人のさらなる患者で評価した。1人の患者は、治療継続のため、奏効評価の対象とはならなかった。肺感染(肺胞性肺炎)、中心ライン感染に関連する敗血症、およびリンパ球数減少を含む3つのグレード3の有害事象が2人の患者で見られた。グレード4または5の有害事象は発生しなかった。グルカルピダーゼ投与に関連する有害事象は見られなかった。最も一般的な有害事象は、治療に関連しない可能性の高い低血糖(Holdhoff, M., et al., Neurology, 83(3): p. 235-9 (2014))、貧血、およびリンパ球数減少(Kansara, R., et al., Am J Hematol, 90(12): p. 1149-54 (2015))であった。抗グルカルピダーゼ抗体の分析は、後の時点で決定された。
【0090】
MTXの24時間後の低用量グルカルピダーゼの投与は、血清MTXレベルの急速な低下をもたらした。これまでに分析された患者において、CSF MTXレベルの治療的状態は維持され、臨床反応が観察された。2人の患者について抗グルカルピダーゼ抗体力価レベルを得た。第1の患者は、検出可能な抗グルカルピダーゼ抗体を示したが、依然としてMTX/グルカルピダーゼレジメンの反復投与に応答した。第2の患者は、抗グルカルピダーゼ抗体を発生せず、MTX/グルカルピダーゼレジメンに良好に応答した。
これらの結果は、本技術の併用療法が、CNSリンパ腫の治療を必要とする対象においてCNSリンパ腫を治療するための方法に有用であることを実証する。
【0091】
(実施例2)CNSリンパ腫患者における本技術の併用療法の拡張効果
方法。HD-MTX後の計画使用グルカルピダーゼの第I相用量設定試験では、患者を、3g/m2、6g/m2、または8g/m2のいずれかでMTXで治療した。グルカルピダーゼを1000Uまたは2000Uに用量減少させ、MTXの24時間後に投与した。これまでに、12人の患者に50回の治療が行われた。イムノアッセイではMTXと副生物とを区別することができないため、グルカルピダーゼ後のMTXレベルは質量分析によって決定した。
【0092】
1000U(14治療)または2000U(36治療)のグルカルピダーゼは、50用量のうち49用量で、15分以内に血清MTXレベルの少なくとも95%の低下をもたらした。残りの用量では93%の減少が見られた(図3)。MTXレベルのリバウンドは、5人の患者で50用量のうち19用量後に見られ、グルカルピダーゼの6時間後に最も頻繁に見られた。リバウンドは、1000Uのグルカルピダーゼで14用量のうち11用量後で起こり、開始MTXレベルの平均39%に達し、2000Uのグルカルピダーゼで36用量のうち9用量後で起こり、開始MTXレベルの平均18%に達した。グルカルピダーゼは、これまでに分析された7人の患者のCSFにおいて検出されなかった。抗グルカルピダーゼ抗体は、これまでに分析された8人の患者のうち6人で検出された。
【0093】
潜在的な細胞毒性MTX濃度(10-6M)が、MTX投与(グルカルピダーゼ後1時間)後のCSF25時間で観察された(10/11)(図4)。9人の患者でX線撮影応答の評価が可能であり、5人は完全奏効と評価され、2人は部分奏効と評価され、全奏効率(ORR)は78%であった(図5)。1人の患者の評価は安定であり、1人の患者の評価は進行であった。非奏効患者は、複数回再発し、3回の以前の治療に失敗していた。グルカルピダーゼは、良好な忍容性を有し、グレード4のアナフィラキシー反応は1つのみであり、グレード3の事象はなかった。これらのデータに基づいて、2000Uの用量をさらなる試験のために選択した。
【0094】
これらの結果は、低用量グルカルピダーゼが、95%を超えてMTXレベルを低下させるのに有効であり、反復用量後、ならびに抗グルカルピダーゼ抗体の生成にもかかわらず、有効であり続けることを実証する。これらの結果は、以前の研究において、そのような抗グルカルピダーゼ抗体が中和効力を有しうること、したがってMTX/グルカルピダーゼ治療レジメンを受ける患者のグルカルピダーゼ酵素活性に悪影響を及ぼすことが報告されていることを考慮すると、予想外であった。Adamson et al., J. Clinical Oncology 10(8): 1359-1364 (1992); EMEA Pre-authorisation Evaluation EMEA/CHMP/171907/2008を参照されたい。実際、患者のCSFにおいてグルカルピダーゼは検出されず、グルカルピダーゼ後のCSF MTX濃度は細胞毒性レベルにとどまっていた。臨床反応は高いままであり、奏効率は78%であった。
したがって、これらの結果は、本技術の併用療法が、CNSリンパ腫の治療を必要とする対象において、CNSリンパ腫を治療するための方法に有用であることを実証する。
【0095】
(実施例3)CNSリンパ腫患者における、計画的使用の低用量グルカルピダーゼとの併用での外来HD-MTX投与の実行可能性
2020年春、COVID-19のパンデミックは、ニューヨーク市でピークに達していた。COVID-19感染患者のための病床を確保するため、待機的手続と入院がキャンセルされた。HD-MTX治療中の患者との対面接触を最小限に抑えるため、本試験を修正して、外来でのHD-MTX投与と併せた低用量グルカルピダーゼの計画的使用を試験した。この試験では、10回の単独の外来でのHD-MTX治療が可能であった。適格患者は、ベースライン時に正常な腎機能を有し、以前に忍容性のある標準的な入院HD-MTX治療を受けていた。患者は、1日目に、外来患者用の化学療法注入特別室で、3.5g/m2のMTXで補水前および補水後に治療された。患者は、翌日、追加のIV補水および2000Uのグルカルピダーゼのために再来し、次いで3日目にMTXレベルの質量分析のために再来した。入院の適用については、MTXレベルおよびグレード3以上のクレアチニン上昇の発生によって定義した。これまでに3人の患者に7回の外来HD-MTX治療を行った。いずれの場合も、血清MTXレベルは、48時間で100nmol/L未満に低下した。いずれの治療後も入院は必要なかった。3つの治療により、グレード1のAST/ALT上昇が生じた(2人の患者)。1つの治療により、グレード2のクレアチニン増加が生じたが、外来での追加の補水後に消失した。
これらの結果は、計画的使用の低用量グルカルピダーゼとの併用での外来HD-MTX投与の実行可能性を実証する。
したがって、これらの結果は、本技術の併用療法が、CNSリンパ腫の治療を必要とする対象においてCNSリンパ腫を治療するための方法に有用であることを実証する。
【0096】
(実施例4)CNSリンパ腫患者における、計画的使用の低用量グルカルピダーゼと組み合わせた外来でのHD-MTX投与の拡張分析
本試験の目的は、外来でのHD-MTXと続いてのグルカルピダーゼ(2000単位)の安全性および忍容性を決定し、それを用いて治療されるCNSL患者における全体的腫瘍応答率を、国際的原発CNSL協議グループ(International Primary CNSL Collaborate Group、(IPCG))ガイドラインによって定義されるように特徴付けることである。
【0097】
方法。新たに診断されたまたは再発したCNSLを有し、3.5g/m2のHD-MTXでの治療に適格である12人の患者を採用する。活動性全身疾患を有する患者は、グルカルピダーゼが全身療法を妨げる可能性があるため除外する。ベースラインで腎機能障害を有する患者も、MTX関連腎毒性のリスクが増加するため除外する。全ての患者で、3.5g/m2の用量で8サイクルのHD-MTXを計画する。リツキシマブ、ビンクリスチン、およびプロカルバジン等の追加の薬剤は、治療する医師の裁量で、標準治療に従って同時に投与することが可能である。
【0098】
治療投与:サイクル1日目に、患者は、4時間にわたってD5W NaHCO3で予備補水を受け、続いて3.5g/m2でMTXを受け、次いで追加の2時間の補水を受ける。2000Uのグルカルピダーゼが、2日目のMTXの24時間後に、追加の補水と共に投与される。MTXレベルのため、血液を3日目に採取し、質量分析にかける。最初の2サイクルは、忍容性を確実にするために入院患者に投与し、残りの6サイクルは外来患者に行う。この試験では、MTX療法を完了した後に、医師が強化療法を選択することができる。
【0099】
モニタリング:1~3日目に、全血球数、包括的代謝パネル、および尿pHを含む臨床検査を実施する。MTXレベルを2日目および3日目に評価する。グルカルピダーゼ投与後48時間以内に抽出されたMTXレベルを、質量分析によって処理する。外来サイクル(3~8)中に、患者は、MTXクリアランスが記述されるまで、自宅で尿のpHをチェックし、記録する。尿のpHが7.0未満の場合、患者は追加の炭酸水素ナトリウムを経口服用する。神経画像診断およびCSFサンプリングは、ベースライン時、サイクル4後、および治療終了時に行う。全ての患者で有害事象についての評価を行い、評価は、有害事象共通毒性基準(Common Toxicity Criteria for Adverse Event、(CTCAE))バージョン5.0に基づいてまとめる。有害事象(AE)は、発生および重症度の観点で報告および記載する。応答は、腫瘍応答評価のためのIPCGガイドラインに基づいて決定する。前向き研究では、治療された患者の50~90%において、MTXベースの療法に対する全奏効率(ORR)が報告されている。この事例と、この研究の小さなサンプルサイズに基づいて、登録された患者の70%が治療に対する応答を示すと予想される。
CSFを、サイクル1および2において、それぞれ、グルカルピダーゼ投与の6時間後および1時間後にサンプリングする。MTX濃度およびグルカルピダーゼの存在についてCSFを分析する。収集されたデータは非特定化し、分析のためにMedidataに保存する。この試験を通じて得られたCSF試料を使用して、CSF MTX濃度を応答および生存の指標とさらに相関させる。
【0100】
患者報告アウトカム(PRO)測定を行い、半構造化定性面接を、グルカルピダーゼとの併用での外来MTXの試験に登録された患者に行う。また、現行の対照とするために、入院状況下の標準治療HD-MTXについて12人の追加の患者を登録する。PROは、ベースライン、HD-MTX治療の途中(サイクル4)、および治療の終了時に、全ての患者で評価する。患者は、CNSLからの症状、治療に関連する副作用、治療中の心理的および感情的な健康状態(well-being)、ならびに医療システムとの接触に費やされる時間が評価される一連の調査を受ける。次の指標が得られる。
【0101】
(1)FACT-CNS(バージョン5):身体的健康状態、社会的/家庭的健康状態、感情的健康状態、機能的健康状態、およびCNS下位スケールの5つのドメインに分かれた39項目の一般的な質問の編集物。これは、FACT-Gを補足するものであり、腫瘍学的集団において十分に検証されたスケールであり、CNS悪性腫瘍を有する成人患者での使用に適したものである。この指標は、治療過程にわたる疾患の身体的および実存的症状を把握するために取得される。
(2)CTCAEのPROバージョン(PRO-CTCAE):国立がん研究所によって、がん臨床試験における患者の症候性毒性を評価するために開発されたものであり、AE報告のためのCTCAE標準スケールの補助として機能する。この指標は、治療からの副作用/毒性を把握するために含まれる。
(3)病院不安およびうつスケール:がん集団において検証されている簡潔な評価であり、不安/うつの有無を示し、重症度と相関する。
(4)がんケアの時間的側面調査:脳腫瘍集団において使用される5分間の調査である。生活の質を評価し、医療システムとの接触に費やされる患者の時間に取り組む。合計調査時間は35分間である。治療中に調査を実施する。治験参加を早期に終了した場合は、治療終了調査は、診療所においてまたは患者自身の時間において実施する。
【0102】
PROデータを補完するために、半構造化定性面接を両グループの患者に実施する。治療トラジェクトリー全体にわたる患者の経験を理解し、経時的な認識の変化を評価するために、患者は、治療開始前、治療の途中(サイクル4)、および治療終了時の合計3回の面接に参加する。各時点で別個の半構造化モデレーターガイドを作成し、ガイドにはモデレーターがフォローアップ質問(「探索」)をする柔軟性を含めており、患者が詳細を説明できるようにする。面接では、医療利用と家族の負担の影響を把握し、他の課題を引き出すことを試みる。面接は、最長で30分間行い、録音し、分析のために複写する。
【0103】
PRO投与:グルカルピダーゼを併用する外来HD-MTXについて、試験に登録された12名の患者に対してPRO調査を実施する。さらに、入院状況下で標準HD-MTXを受ける単独CNSLを有する12人の対照患者から、同意を得る。対照患者は、治療の同じ時間点で同じ調査を受ける。全ての患者にわたって4回の面接が完了した後、面接官の間の一貫性を評価するための信頼性保証(quality assurance)レビューを実施する。
チャート調査および患者面接は、サイクル4(途中)および治療終了時に実施し、治療開始以降の医療システムとの計画外の接触点を決定する。この評価は、計画外の入院、入院日数、計画外の救急治療室または緊急治療の利用、ならびに、計画外のあらゆる種類の医療専門家およびプライマリケア提供者への臨床外来を対象とする。来院および入院時のチェックインおよびチェックアウトの時間に基づいて、医療システム(入院および外来)との接触に費やされた時間数を表にする。入手できない場合、推定時間が患者によって提出される。
グルカルピダーゼとの併用での外来HD-MTXは、安全かつ有効であると予測される。この結果は、標準的CNSL治療を用いたPROに対するベースライン情報を提供し、将来のCNSL治験のためにそれらの指標を標準化する。さらに、定性的面接により、CNSL患者の新たな経験的課題が明らかになることが予想され、これは将来のPROのための新たな項目を設けるために使用することができる。
したがって、これらの結果は、本技術の併用療法が、CNSリンパ腫の治療を必要とする対象においてCNSリンパ腫を治療するための方法に有用であることを実証する。
【0104】
均等論
本技術は、本技術の個々の態様の一つの例示として意図されている本出願に記載の特定の実施形態の観点に限定されるものではない。当業者には明らかであるように、本技術の多くの改変および変形が、その趣旨および範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書に列挙されたものに加え、機能的に同等の本開示の範囲内の方法および装置が、前述の説明から当業者には明らかである。そのような改変および変形は、本技術の範囲内に含まれることが意図される。本技術は、当然ながら変動がありうる特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用する用語は特定の実施形態のみを記載するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0105】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で説明されている場合、当業者は、本開示が、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても説明していることを認識するであろう。
【0106】
当業者によって理解されるように、あらゆる目的のために、特に書面による説明を提供することに関して、本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組合せも包含する。任意の列挙された範囲は、少なくとも等分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されたその範囲を十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1などに容易に分解されうる。さらに当業者によって理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「を超え」、「未満」等の全ての言語は、列挙された数を含み、上記で論じたように、順次、部分範囲に分解されうる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有するグループは、1、2、または3個の細胞を有するグループを指す。同様に、1~5個の細胞を有するグループは、1、2、3、4または5個の細胞を有するグループを指し、他も同様である。
【0107】
本明細書で言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、全ての図および表を含むそれらの全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022552263000001.app
【国際調査報告】