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特表2022-552264粒子を識別、選択、および純化するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】粒子を識別、選択、および純化するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/34 20060101AFI20221208BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20221208BHJP
   G01N 27/623 20210101ALI20221208BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20221208BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20221208BHJP
   H01J 49/46 20060101ALI20221208BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20221208BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20221208BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01N1/34
G01N27/62 E
G01N27/623
H01J49/42 100
H01J49/02 500
H01J49/46
H01J49/42 200
G01N1/28 J
C12Q1/00
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521245
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020054975
(87)【国際公開番号】W WO2021072186
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/913,460
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/949,559
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/972,403
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ブルック・エイ
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,デヴィッド・イー
(72)【発明者】
【氏名】ジャロルド,マーティン・エフ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
4B029
4B063
5C038
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041CA02
2G041DA05
2G041FA10
2G041FA11
2G041GA03
2G041GA08
2G041GA10
2G041GA11
2G041GA13
2G041HA03
2G052AA28
2G052AB20
2G052BA24
2G052GA24
4B029AA07
4B029FA01
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS39
4B063QX04
5C038KK05
(57)【要約】
粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成し、生成された荷電粒子の質量と、電荷の大きさと、移動度とのうちの少なくとも1つを測定し、(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比と、(d)選択された移動度と等しい又は選択された移動度の範囲内にある測定された移動度とのうちの少なくとも1つを有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させる。幾つかの実施形態では、収集された粒子を採取して増幅することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子純化デバイスであって、
サンプルから荷電粒子を生成するように構成されるイオン生成器と、
前記イオン生成器により生成された前記荷電粒子を受け取り、生成された前記荷電粒子の質量と電荷の大きさとのうちの少なくとも1つを測定するように構成されるイオン処理領域と、
粒子収集ターゲットと、
前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる手段と、
プロセッサと、
前記プロセッサにより実行可能な命令を格納するメモリであって、前記荷電粒子を選択的に通過させる前記手段を前記プロセッサが制御して、(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比とのうちの少なくとも1つを有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、前記粒子収集ターゲットへと通過させるようにする命令を格納するメモリと
を含む粒子純化デバイス。
【請求項2】
請求項1の粒子純化デバイスであって、前記メモリに格納されている前記命令は、前記プロセッサにより実行可能な命令であって、前記荷電粒子を選択的に通過させる前記手段を前記プロセッサが制御して、別の場合には、測定された前記荷電粒子の前記粒子収集ターゲットへの通過を阻止するようにする命令を更に含む、粒子純化デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2の粒子純化デバイスであって、前記イオン処理領域は、前記イオン生成器により生成された前記荷電粒子を受け取るように、および生成された前記荷電粒子の質量および電荷の大きさを測定するように構成される電荷検出質量分析装置を含む、粒子純化デバイス。
【請求項4】
請求項3の粒子純化デバイスであって、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段は、荷電粒子偏向またはステアリング・デバイスを含み、前記荷電粒子偏向またはステアリング・デバイスは、その中を、前記粒子収集ターゲットへと荷電粒子を選択的に通過させるように、前記プロセッサにより制御可能である、粒子純化デバイス。
【請求項5】
請求項3の粒子純化デバイスであって、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段は、前記電荷検出質量分析装置の電荷検出器を含み、前記電荷検出器は、その中を、前記粒子収集ターゲットへと荷電粒子を選択的に通過させるように、前記プロセッサにより制御可能である、粒子純化デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかの請求項の粒子純化デバイスであって、
前記粒子収集トラップと、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段との間に配されるイオン・トラップを更に含み、
前記メモリに格納されている前記命令は、前記プロセッサにより実行可能な命令であって、前記プロセッサが前記イオン・トラップを制御して、その中に、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段から出て行く荷電粒子を選択的にトラップするように、および前記イオン・トラップを制御して、その中にトラップした荷電粒子を解放して前記荷電粒子を前記粒子収集ターゲットへ向けて加速するようにする命令を更に含む、
粒子純化デバイス。
【請求項7】
請求項1または請求項2の粒子純化デバイスであって、質量アナライザと、質量スペクトロメータと、選択された質量対電荷比である又は選択的された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比を有する荷電粒子を通過させるように構成される質量対電荷比フィルタのうちの少なくとも1つを含み、その後ろに電荷検出アレイがあり、前記電荷検出アレイは、前記質量アナライザ、質量スペクトロメータ、および質量対電荷比フィルタから出て行く荷電粒子の電荷の大きさを測定するように構成される、粒子純化デバイス。
【請求項8】
請求項7の粒子純化デバイスであって、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段は、荷電粒子偏向またはステアリング・デバイスを含み、前記荷電粒子偏向またはステアリング・デバイスは、その中を、前記粒子収集ターゲットへと荷電粒子を選択的に通過させるように、前記プロセッサにより制御可能である、粒子純化デバイス。
【請求項9】
請求項7または請求項8の粒子純化デバイスであって、
前記粒子収集トラップと、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段との間に配されるイオン・トラップを更に含み、
前記メモリに格納されている前記命令は、前記プロセッサにより実行可能な命令であって、前記プロセッサが前記イオン・トラップを制御して、その中に、前記粒子収集ターゲットへと、前記イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる前記手段から出て行く荷電粒子を、選択的にトラップするように、および前記イオン・トラップを制御して、その中にトラップした荷電粒子を解放して、前記荷電粒子を前記粒子収集ターゲットへ向けて加速するようにする命令を更に含む、
粒子純化デバイス。
【請求項10】
粒子を純化する方法であって、
サンプルから荷電粒子を生成することと、
生成された前記荷電粒子の質量と電荷の大きさとのうちの少なくとも1つを測定することと、
(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比とのうちの少なくとも1つを有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることと
を含む方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、前記粒子収集ターゲットの収集面で、それへ向けて選択的に通過させられた測定された前記荷電粒子を集めることを更に含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、前記粒子収集ターゲットの前記収集面で集められた前記荷電粒子を採取することを更に含む方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、採取した前記荷電粒子を増幅することを更に含む方法。
【請求項14】
粒子を純化する方法であって、
サンプルから荷電粒子を生成することと、
生成された前記荷電粒子の電荷の大きさを測定することと、
選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさを有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることと
を含む方法。
【請求項15】
請求項14の方法であって、前記粒子収集ターゲットの収集面で、それへ向けて選択的に通過させられた測定された前記荷電粒子を集めることを更に含む方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記粒子収集ターゲットの前記収集面で集められた前記荷電粒子を採取することを更に含む方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、採取した前記荷電粒子を増幅することを更に含む方法。
【請求項18】
粒子を純化する方法であって、
サンプルから荷電粒子を生成することと、
生成された前記荷電粒子の質量を測定することと、
選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量を有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることと
を含む方法。
【請求項19】
請求項18の方法であって、前記粒子収集ターゲットの収集面で、それへ向けて選択的に通過させられた測定された前記荷電粒子を集めることを更に含む方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記粒子収集ターゲットの前記収集面で集められた前記荷電粒子を採取することを更に含む方法。
【請求項21】
請求項20の方法であって、採取した前記荷電粒子を増幅することを更に含む方法。
【請求項22】
粒子を純化する方法であって、
サンプルから荷電粒子を生成することと、
生成された前記荷電粒子の質量と電荷の大きさとを測定することと、
測定された前記質量と前記電荷の大きさとに基づいて、測定された前記荷電粒子の質量対電荷比を計算することと、
選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある計算された質量対電荷比を有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることと
を含む方法。
【請求項23】
請求項22の方法であって、前記粒子収集ターゲットの収集面で、それへ向けて選択的に通過させられた測定された前記荷電粒子を集めることを更に含む方法。
【請求項24】
請求項23の方法であって、前記粒子収集ターゲットの前記収集面で集められた前記荷電粒子を採取することを更に含む方法。
【請求項25】
請求項24の方法であって、採取した前記荷電粒子を増幅することを更に含む方法。
【請求項26】
粒子を純化する方法であって、
サンプルから荷電粒子を生成することと、
生成された前記荷電粒子の質量と、電荷の大きさと、移動度とのうちの少なくとも1つを測定することと、
(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比と、(d)選択された移動度と等しい又は選択された移動度の範囲内にある測定された移動度とのうちの少なくとも1つを有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることと
を含む方法。
【請求項27】
請求項26の方法であって、前記粒子収集ターゲットの収集面で、それへ向けて選択的に通過させられた測定された前記荷電粒子を集めることを更に含む方法。
【請求項28】
請求項27の方法であって、前記粒子収集ターゲットの前記収集面で集められた前記荷電粒子を採取することを更に含む方法。
【請求項29】
請求項28の方法であって、採取した前記荷電粒子を増幅することを更に含む方法。
【請求項30】
粒子を純化する方法であって、
サンプルから荷電粒子を生成することと、
生成された前記荷電粒子の移動度を測定することと、
選択された移動度と等しい又は選択された移動度の範囲内にある測定された移動度を有する測定された前記荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることと
を含む方法。
【請求項31】
請求項30の方法であって、前記粒子収集ターゲットの収集面で、それへ向けて選択的に通過させられた測定された前記荷電粒子を集めることを更に含む方法。
【請求項32】
請求項31の方法であって、前記粒子収集ターゲットの前記収集面で集められた前記荷電粒子を採取することを更に含む方法。
【請求項33】
請求項32の方法であって、採取した前記荷電粒子を増幅することを更に含む方法。
【請求項34】
細胞外小胞の試料の中の粒子を測定する方法であって、
前記細胞外小胞の試料からイオンを生成することと、
電荷検出質量分析装置を用いて、生成された前記イオンの少なくともサブセットの質量および電荷を測定することと
を含む方法。
【請求項35】
請求項34の方法であって、前記細胞外小胞の試料はエクソソームを含む、方法。
【請求項36】
請求項35の方法であって、生成された前記イオンの少なくともサブセットの質量および電荷を測定することは、前記細胞外小胞の試料の前記エクソソームの少なくとも幾らかのものの質量および電荷を測定することを含む、方法。
【請求項37】
請求項34の方法であって、前記イオンを生成する前に、前記細胞外小胞に関して前記試料を濃厚にすることを更に含む方法。
【請求項38】
請求項35または請求項36の方法であって、前記エクソソームの少なくとも幾らかのものの質量および電荷を測定する前に、前記エクソソームに関して前記試料を濃厚にすることを更に含む方法。
【請求項39】
請求項34または請求項37の方法であって、測定された生成された前記イオンの少なくともサブセットの少なくとも幾らかのものを、収集して純化することを更に含む方法。
【請求項40】
サンプルの試料の中のエクソソームを測定する方法であって、
サンプルの試料からイオンを生成することと、
電荷検出質量分析装置を用いて、生成された前記イオンの少なくとも幾らかのものの質量および電荷を測定することと、
生成された前記イオンの前記少なくとも幾らかのものの測定された前記質量から、エクソソーム・イオンである測定された前記イオンのサブセットを識別することと
を含む方法。
【請求項41】
請求項40の方法であって、生成された前記イオンの前記少なくとも幾らかのものの質量および電荷を測定する前に、前記エクソソームに関して前記サンプルの試料を濃厚にすることを更に含む方法。
【請求項42】
請求項41または請求項42の方法であって、生成された前記イオンの少なくとも2つの分離したサブファミリーを決定するように、統計モデルを用いて、生成された前記イオンの前記少なくとも幾らかのものの測定された前記質量および前記電荷を処理することを更に含む方法。
【請求項43】
請求項40から請求項42の何れかの請求項の方法であって、エクソソーム・イオンである測定された前記イオンの前記サブセットの少なくとも一部を収集することを更に含む方法。
【請求項44】
請求項43の方法であって、収集した、前記エクソソーム・イオンである測定された前記イオンの前記サブセットの前記少なくとも一部を、純化することを更に含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
[0001] この特許出願は、2019年10月10日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/913460、2019年12月18日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/949559、および2020年2月10日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/972403の利益および優先権を主張するものであり、この参照によりこれらの開示の全体をここに明確に組み込む。
【0002】
政府の権利
[0002] この発明は、アメリカ国立衛生研究所から与えられたGM131100の下で、政府の支援を受けてなされた。アメリカ合衆国の政府は、この発明の特定の権利を有する。
【0003】
技術分野
[0003] 本開示は、一般に、粒子を識別、選択、および純化するための装置および方法に関し、より具体的には、1以上の分子特性に基づいて粒子を識別、選択、および純化するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004] スペクトロメトリ装置は、物質の1以上の分子特性を測定することにより、物質の化学成分の識別を提供する。幾つかのそのような装置は、溶液の中の物質を分析するように構成され、他のものは、気相内の物質の荷電粒子を分析するように構成される。多くのそのような荷電粒子測定装置により作り出される分子情報は、測定可能な分子特性の数および型に関する制限がある。従って、そのような装置を用いての純化も同様に制限される。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本開示は、添付の請求の範囲に記載された特徴の1以上のもの、および/または下記の特徴の1以上のもの及びそれらの組み合わせを含むことができる。1つの構成では、粒子純化デバイスは、サンプルから荷電粒子を生成するように構成されるイオン生成器と、イオン生成器により生成された荷電粒子を受け取り、生成された荷電粒子の質量と電荷の大きさとのうちの少なくとも1つを測定するように構成されるイオン処理領域と、粒子収集ターゲットと、粒子収集ターゲットへと、イオン処理領域から出て行く荷電粒子を選択的に通過させる手段と、プロセッサと、プロセッサにより実行可能な命令を格納するメモリであって、荷電粒子を選択的に通過させる手段をプロセッサが制御して、(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比とのうちの少なくとも1つを有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと通過させるようにする命令を格納するメモリとを、含むことができる。
【0006】
[0006] 別の構成では、粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成することと、生成された荷電粒子の質量と電荷の大きさとのうちの少なくとも1つを測定することと、(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比とのうちの少なくとも1つを有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることとを、含むことができる。
【0007】
[0007] 更に別の構成では、粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成することと、生成された荷電粒子の電荷の大きさを測定することと、選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさを有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることとを、含むことができる。
【0008】
[0008] 更に別の構成では、粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成することと、生成された荷電粒子の質量を測定することと、
選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量を有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることとを、含むことができる。
【0009】
[0009] 更なる構成では、粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成することと、生成された荷電粒子の質量と電荷の大きさとを測定することと、測定された質量と電荷の大きさとに基づいて、測定された荷電粒子の質量対電荷比を計算することと、選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある計算された質量対電荷比を有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることとを、含むことができる。
【0010】
[0010] 別の更なる構成では、粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成することと、生成された荷電粒子の質量と、電荷の大きさと、移動度とのうちの少なくとも1つを測定することと、(a)選択された質量と等しい又は選択された粒子質量の範囲内にある測定された質量と、(b)選択された電荷の大きさと等しい又は選択された電荷の大きさの範囲内にある測定された電荷の大きさと、(c)選択された質量対電荷比と等しい又は選択された質量対電荷比の範囲内にある質量対電荷比と、(d)選択された移動度と等しい又は選択された移動度の範囲内にある測定された移動度とのうちの少なくとも1つを有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることとを、含むことができる。
【0011】
[0011] 別の更なる構成では、粒子を純化する方法は、サンプルから荷電粒子を生成することと、生成された荷電粒子の移動度を測定することと、
選択された移動度と等しい又は選択された移動度の範囲内にある測定された移動度を有する測定された荷電粒子のそれぞれを、粒子収集ターゲットへと選択的に通過させることとを、含むことができる。
【0012】
[0012] 別の更なる構成では、細胞外小胞の試料の中の粒子を測定する方法は、細胞外小胞の試料からイオンを生成することと、電荷検出質量分析装置を用いて、生成されたイオンの少なくともサブセットの質量および電荷を測定することとを、含むことができる。
【0013】
[0013] 更に別の構成では、サンプルの試料の中のエクソソームを測定する方法であって、サンプルの試料からイオンを生成することと、電荷検出質量分析装置を用いて、生成されたイオンの少なくとも幾らかのものの質量および電荷を測定することと、生成されたイオンの少なくとも幾らかのものの測定された質量から、エクソソーム・イオンである測定されたイオンのサブセットを識別することとを、含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、粒子を純化するための装置およびプロセスの簡素化した図である。
図2図2は、荷電粒子を生成および測定するように、および結果的スペクトルを生成するように図1の装置を制御するためのプロセスの実施形態の簡素化したフローチャートであり、結果的スペクトルから、純化のために荷電粒子のサブポピュレーションを識別または選択できる。
図3図3は、荷電粒子を生成、測定、およびフィルタ処理することにより粒子を純化するように図1の装置を制御するため、および純化した粒子を収集するためのプロセスの実施形態の簡素化したフローチャートである。
図4A図4Aは、図1の装置の実施形態により尿エクソームのサンプルから作り出された粒子の電荷対質量の散布図であり、イオン処理領域は、電荷検出質量分析装置の形でインプリメントされる。
図4B図4Bは、純化のための図1の装置による粒子のサブポピュレーションの例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子質量値の範囲により定められる。
図4C図4Cは、純化のための粒子のサブポピュレーションの別の例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子電荷値の範囲により定められる。
図4D図4Dは、純化のための粒子のサブポピュレーションの更に別の例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子電荷値の範囲および特定の粒子質量値の範囲により定められる。
図4E図4Eは、純化のための粒子のサブポピュレーションの更に別の例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子の質量対電荷比の値の範囲により定められる。
図4F図4Fは、純化のための粒子のサブポピュレーションの更なる例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子の質量対電荷比の値の範囲および特定の粒子質量値の範囲により定められる。
図4G図4Gは、純化のための粒子のサブポピュレーションの更に別の例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子の質量対電荷比の値の範囲および特定の粒子電荷値の範囲により定められる。
図4H図4Hは、純化のための粒子のサブポピュレーションの更に別の例示の選択を、図4Aのプロットに重ねたものであり、選択されたサブポピュレーションは、特定の粒子の質量対電荷比の値の範囲、特定の粒子質量値の範囲、および特定の粒子電荷値の範囲により定められる。
図5図5は、指定のタイプの荷電粒子のポピュレーションおよび/またはサブポピュレーションを識別、収集、および/または純化するように図1の装置を制御するための別のプロセスの実施形態の簡素化したフローチャートである。
図6A図6Aは、図1の装置の実施形態により且つ図5に例示するプロセスの使用によりエクソソームが豊富なウシ乳のサンプルから作り出された粒子の電荷対質量の散布図であり、装置のイオン処理領域は、電荷検出質量分析装置の形でインプリメントされる。
図6B図6Bは、複数の境界を図6Aの散布図に重ねたものであり、プロットされたデータを荷電粒子の様々なサブポピュレーションにする処理を説明している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0028] この開示の原理の理解を促進するために、添付の図面に示される複数の例としての実施形態をここで参照し、また、これらを説明するために特定の言語を用いる。
【0016】
[0029] この開示は、1以上の分子特性に基づいて粒子を識別および/または純化するための装置および技術に関するものであり、分子特性の例は、質量、電荷、質量対電荷比、移動度などを含むことができるが、これらには限定されない。この開示を目的として、「荷電粒子」および「イオン」という用語は、置き換え可能に使用され得、双方の用語は、正味の正または負の電荷を有する任意の粒子を指すことを意図する。「純化する」および「純化」という用語は、1以上の分子特性に基づいての、サンプルから生成された荷電粒子のサブポピュレーションの識別および抽出、即ち、分離を指すことを意図する。
【0017】
[0030] ここで図1を参照すると、粒子を純化するための装置10の図が示されている。図1は、更に、純化した粒子を収集するため、および幾つかの実施形態では収集して純化した粒子を処理するための、例示の処理12を示す。例示の実施形態では、装置10は、例として、イオン・ソース領域14を含み、その放出口は荷電粒子処理領域16の取込口へ結合される。荷電粒子処理領域16の放出口は、荷電粒子デフレクタ(CPD)またはステアリング・デバイス(CPSD)18の取込口へ結合される。幾つかの実施形態では、装置10は、更に、オプションとして、図1において破線で例示しているように、取込口と、その取込口の反対側の放出口とを含む従来のイオン・トラップ(IT)20を含み、取込口は、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18の放出口へ結合される。そのような実施形態では、イオン・トラップ20の放出口は、装置10の荷電粒子の放出口を定める。イオン・トラップ20が省かれる他の実施形態では、装置10の放出口は、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18の放出口である。
【0018】
[0031] イオン・ソース領域14は、例として、サンプル24からイオン、即ち、荷電粒子を生成するように構成されたイオン生成器22を含む。イオン生成器22は、例として、サンプルからイオンを生成するための任意の従来のデバイスまたは装置の形でインプリメントされる。何れの限定とも考慮すべきではない1つの例として、イオン生成器22は、従来のエレクトロスプレー・イオン(EIS)ソース、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)ソース、またはサンプル24からイオン生成するように構成された他の従来のイオン生成器であり得るか、またはそれを含む。イオンを生成するためのサンプル24は、任意の生物学的材料または他の材料とすることができる。幾つかの実施形態では、サンプル24は、溶液に溶かすか、分散させるか、坦持させるが、他の実施形態では、サンプルは、溶液の中に無いことや溶液の一部ではないこともある。
【0019】
[0032] 例示の実施形態では、電圧源VS1は、任意の正の整数であり得る数Fの信号経路を介して、プロセッサ26へ電気的に接続され、更に、上記と同様に任意の正の整数であり得る数Gの信号経路を介して、イオン・ソース領域14へ電気的に接続される。幾つかの実施形態では、電圧源VS1は、1つの電圧源の形でインプリメントすることができ、別の実施形態では、電圧源VS1は、任意の数の個別の電圧源を含むことができる。幾つかの実施形態では、電圧源VS1は、選択可能な大きさの1以上の時不変(即ち、DC)電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS1は、1以上の切り替え可能な時不変電圧、即ち、1以上の切り替え可能なDC電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS1は、選択可能な形状、デューティ・サイクル、ピークの大きさ、および/または周波数の1以上の時変信号を作り出して供給するように、構成すること又は制御可能とすることができる。
【0020】
[0033] プロセッサ26は、例として、従来のものであり、1つの処理回路または複数の処理回路を含むことができる。プロセッサ26は、例として、命令を格納するメモリ28を含むか又はこれへ結合され、命令がプロセッサ26により実行されると、プロセッサ26は、イオン生成器22の動作を選択的に制御するための1以上の出力電圧を作り出させるように電圧源VS1を制御するようにされる。幾つかの実施形態では、プロセッサ26は、1以上の従来のマイクロプロセッサまたはコントローラの形でインプリメントすることができ、そのような実施形態では、メモリ28は、マイクロプロセッサが実行可能な1以上の命令または命令セットの形の命令を格納する1以上の従来のメモリ・ユニットの形でインプリメントすることができる。他の実施形態では、プロセッサ26は、代替的または付加的に、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)又はこれと同様の回路の形でインプリメントすることができ、そのような実施形態では、メモリ28は、内部に命令をプログラムし格納することができる、FPGAに含まれる及び/又はFPGAの外部のプログラマブル・ロジック・ブロックの形でインプリメントすることができる。更に別の実施形態では、プロセッサ26および/またはメモリ28は、1以上の特定用途向け集積回路(ASIC)の形でインプリメントすることができる。当業者は、プロセッサ26および/またはメモリ28をインプリメントできる他の形に気づくであろうし、また、実施における任意のそのような他の形は、この開示から予測されるものであり、且つこの開示の範囲内にあると考えられることが、理解されるであろう。幾つかの代替の実施形態では、電圧源VS1は、それ自体が、1以上の一定および/または時変の出力電圧を選択的に作り出すようにプログラム可能であり得る。
【0021】
[0034] 例示の実施形態では、電圧源VS1は、例として、プロセッサ26により作り出される制御信号に応答して、イオン生成器22にサンプル24からイオンを生成させるようにする1以上の電圧を作り出すように、構成される。幾つかの実施形態では、サンプル24は、図1に例示するように、イオン・ソース領域14内に配され、他の実施形態では、サンプル24は、イオン・ソース領域14の外部に配することができる。何れの限定とも考慮すべきではない1つの例示の実施形態では、サンプル24は溶液の形で提供され、イオン生成器22は従来のエレクトロスプレー・イオン(EIS)ソースであり、これは、VS1により供給される1以上の電圧に応答して、荷電小滴の細霧の形で、サンプル24からイオンを生成するように構成される。上述のように、ESIおよびMALDIは、多数の従来のイオン生成器のうちの2つの例のみを表すものであること、およびイオン生成器22が、溶液の形またはそうではないサンプルからイオンを生成するための任意のそのような従来のデバイスまたは装置であり得ること又はこれを含むことが、理解されるであろう。
【0022】
[0035] イオン処理領域16は、例として、任意の正の整数であり得る数Mのイオン処理段またはデバイス16-16を含む。1以上のイオン処理デバイス16-16は、例として、イオン・ソース領域14で生成されてイオン処理領域16へと送られた荷電粒子を処理するように動作可能であり、これは、荷電粒子の1以上の分子特性を測定する形に行われ、これは、1以上の分子特性に基づいて荷電粒子をフィルタ処理して、少なくとも1つの指定された分子特性を有する荷電粒子のサブポピュレーションまたはサブセットを提供させる形に、および/または荷電粒子を分離、例えば、分解する形に行われる。
【0023】
[0036] 例示の実施形態では、電圧源VS2は、任意の正の整数であり得る数Hの信号経路を介して、プロセッサ26へ電気的に接続され、更に、上記と同様に任意の正の整数であり得る数Jの信号経路を介して、イオン処理領域16へ電気的に接続される。幾つかの実施形態では、電圧源VS2は、1つの電圧源の形でインプリメントすることができ、別の実施形態では、電圧源VS2は、任意の数の個別の電圧源を含むことができる。幾つかの実施形態では、電圧源VS2は、選択可能な大きさの1以上の時不変(即ち、DC)電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS2は、1以上の切り替え可能な時不変電圧、即ち、1以上の切り替え可能なDC電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS2は、選択可能な形状、デューティ・サイクル、ピークの大きさ、および/または周波数の1以上の時変信号を作り出して供給するように、構成すること又は制御可能とすることができる。一般に、電圧源VS2の1以上の出力が、例として、イオン処理領域16の1以上のイオン処理デバイス16-16のそれぞれへ結合され、また、そのような出力の数および/またはそこで作り出される電圧のタイプ(1以上)が、1以上のイオン処理デバイス16-16を形成するイオン処理デバイス(1以上)の数および/またはタイプに応じたものであることが、理解されるであろう。何れの場合でも、メモリ28は、例として、その中に命令を格納し、命令がプロセッサ26により実行されると、プロセッサ26は、イオン処理領域16の1以上のイオン処理デバイス16-16の動作を選択的に制御するための1以上の出力電圧を作り出させるように電圧源VS2を制御するようにされる。
【0024】
[0037] イオン処理デバイス(1以上)16-16の例は、任意の順および/または組み合わせで、1以上の分子特性に従って荷電粒子を分離、収集、および/またはフィルタ処理するため1以上のデバイスおよび/または装置、および/または荷電粒子を分離、例えば、分解するための1以上のデバイスおよび/または装置を含み得るが、これらには限定されない。1以上の分子特性に従って荷電粒子を分離するため1以上のデバイスおよび/または装置の例は、1以上の質量分析装置または質量アナライザ、1以上のイオン移動度スペクトロメータ、1以上のガス・クロマトグラフなどを含み得るが、これらには限定されない。1以上の質量分析装置を含むイオン処理デバイス(1以上)16-16の実施形態における、質量分析装置の例は、少なくともイオンの質量対電荷比を測定するように、および測定されたイオンを質量分析装置から荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18へ送るように動作する任意の質量分析装置を含むが、これには限定されない。質量分析装置がイオンの質量対電荷比のみを測定するように動作するそのような実施形態では、質量分析装置は従来のものとすることができる。他のそのような実施形態では、質量分析装置は、例として、イオン・ソース領域14で生成されてイオン処理領域16へ送られた荷電粒子の質量と電荷との双方の大きさを測定するように構成された質量分析装置の形で、提供することができる。何れの限定とも考慮すべきではないこの実施形態の1つの例では、質量分析装置は、例として、電荷検出質量分析装置(CDMS)の形でインプリメントすることができ、その場合、イオン処理デバイス(1以上)16-16は、従来のスルーイオン(through-ion)の質量分析装置または質量アナライザ、および1以上の対応するCDMS電荷検出器を含む。幾つかの実施形態では、1以上のCDMS電荷検出器は、1以上の静電リニア・イオン・トラップ(electrostatic linear ion trap)(ELIT)の形で提供することができ、別の実施形態では、1以上のCDMS電荷検出器は、少なくとも1つのオービトラップの形で提供することができる。幾つかの実施形態では、CDMS検出器(1以上)は、少なくとも1つのELITと少なくとも1つのオービトラップとを含むことができる。CDMSは、例として、典型手には1つのイオンの質量および電荷の大きさの値を測定するように動作する1粒子技術(single-particle technique)であるが、幾つかのCDMS検出器は、一度に1より多くの荷電粒子の質量および電荷を測定するように設計され且つ/又は動作させられている。図1のイオン処理デバイス(1以上)16-16として又はこの一部として質量分析装置にインプリメントされ得るCDMS装置および/または技術の幾つかの例、およびCDMS電荷検出器および/または技術の幾つかの例は、同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019/013251号、第PCT/US2019/013274号、第PCT/US2019/013277号、第PCT/US2019/013278号、第PCT/US2019/013280号、第PCT/US2019/013283号、第PCT/US2019/013284号、および第PCT/US2019/013285号、に開示されており、これらは全て2019年1月11日に出願されたものであり、これらの出願の開示の全体がこの参照によりここに明確に組み込まれる。
【0025】
[0038] イオン・ソース領域14で生成されてイオン処理領域16へ送られた荷電粒子の質量と電荷との双方の大きさを測定するように構成された質量分析装置を含む別の実施形態において、そのような質量分析装置は、指定された質量対電荷比のイオンまたは指定範囲内の質量対電荷比のイオンを選択的に通過させるように構成された従来の質量アナライザ(例えば、四重極質量アナライザなど)の形で、または同様に構成されたスルーイオン質量分析装置の形で提供することができ、何れの場合も、質量アナライザまたは質量分析装置から出てくる荷電粒子の電荷の大きさ又は電荷の状態を測定するように構成された電荷検出器アレイ(CDA)を含む電場フリー・ドリフト領域(electric field-free drift region)がそれに続くようにされる。図1のイオン処理デバイス(1以上)16-16として又はこの一部としてインプリメントされ得るそのような質量分析装置の幾つかの例示の構成は、同時係属中の米国特許出願シリアル番号62/949555および/または同時係属中の米国特許出願シリアル番号62/949554に開示されており、これらは共に2019年12月18日に出願されたものであり、これらの出願の開示の全体がこの参照によりここに明確に組み込まれる。
【0026】
[0039] 上述のようにイオン処理デバイス(1以上)16-16がイオン・ソース領域14により供給された荷電粒子の質量と電荷との双方を測定するように構成された質量分析装置を含む幾つかの実施形態では、図1に示すように、関連する電荷検出器(1以上)または電荷検出器アレイは、数Nの電荷検出増幅器CAのそれぞれの入力(1以上)へ電気的に接続され、数Nの電荷検出増幅器CAの出力(1以上)は、プロセッサ26へ電気的に接続され、Nは任意の正の整数とすることができる。電荷増幅器(1以上)CAは、それぞれ、例として、従来のものであり、1以上の個々の電荷検出器で荷電粒子により誘導された電荷に応答して、その出力で対応する電荷検出信号を作り出し、その電荷検出信号をプロセッサ26へ供給する。
【0027】
[0040] 1以上の従来の質量分析装置を含む何れの実施形態でも、そのような質量分析装置は、飛行時間型(TOF)質量分析装置、反射型質量分析装置、フーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析装置、四極質量分析装置、三連四極質量分析装置、磁気セクター型質量分析装置、オービトラップ質量分析装置などのうちの1つ又は任意の組み合わせの形で提供することができる。
【0028】
[0041] 1以上のイオン移動度スペクトロメータを含むイオン処理デバイス(1以上)16-16の実施形態における、イオン移動度スペクトロメータの例は、単一管(single-tube)リニア・イオン移動度スペクトロメータ、複数管(multiple-tube)リニア・イオン移動度スペクトロメータ、円形管(circular-tube)イオン移動度スペクトロメータなどを含むが、これらには限定されない。荷電粒子を収集するための1以上のデバイスおよび/または装置を含むイオン処理デバイス(1以上)16-16の実施形態における、荷電粒子を収集するための1以上のデバイスおよび/または装置の例は、四重極イオン・トラップ、六重極イオン・トラップ、イオン・ファンネルなどを含むが、これらには限定されない。荷電粒子のフィルタ処理を行うための1以上のデバイスおよび/または装置を含むイオン処理デバイス(1以上)16-16の実施形態における、荷電粒子のフィルタ処理を行うための1以上のデバイスおよび/または装置の例は、質量対電荷比に従って荷電粒子に対してフィルタ処理を行うための1以上のデバイスまたは装置、粒子移動度に従って荷電粒子に対してフィルタ処理を行うための1以上のデバイスまたは装置などを含むが、これらには限定されない。荷電粒子を分離するための1以上のデバイスおよび/または装置を含むイオン処理デバイス(1以上)16-16の実施形態における、荷電粒子を分離するための1以上のデバイスおよび/または装置の例は、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、および/または光誘起解離(PID)などにより荷電粒子を分離するための1以上のデバイスまたは装置を含むが、これらには限定されない。
【0029】
[0042] イオン処理デバイス(1以上)16-16が、上記の装置、デバイス、または段の1つのもの又は任意のものを任意の順の任意の組み合わせで含み得ること、および幾つかの実施形態が、任意のそのような装置、デバイス、または段のうちの複数の隣接する又は離れたものを含み得ることは、理解されるであろう。図1に例示する装置10の1つの限定ではない実装例として、イオン処理デバイス(1以上)16-16は、上述のように荷電粒子の質量および電荷を測定するように、そしてその後に、測定した荷電粒子を荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18へ供給するように構成された1つのCDMSを含むことができる。図1に例示する装置10の別の限定ではない実装例として、イオン処理デバイス(1以上)16-16は、上記で簡単に説明したように、荷電粒子の質量および電荷を測定するように、そして測定した荷電粒子を荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18へ供給するように構成された電荷検出器アレイを含む1つの質量分析装置を含むことができる。これらの例の何れにおいても、プロセッサ26は、例として、質量分析装置に荷電粒子の質量および電荷を測定させるように電圧源VS2を制御するように、プログラムされる。図1に例示する装置10の更に別の限定ではない実装例として、イオン処理デバイス(1以上)16-16は、質量対電荷比フィルタを、例えば、四重極質量アナライザの形で含むことができる。この例では、プロセッサ26は、例として、電圧源VS2を制御して、それにより質量対電荷比フィルタを、指定された質量対電荷比を有するイオンのみ又は指定された質量対電荷比の範囲内の質量対電荷比を有するイオンのみを、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18へ向けて選択的に通過させるものとするように、プログラムされる。幾つかのそのような実施形態では、イオン処理デバイス(1以上)16-16は、質量対電荷比フィルタと荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18との間に配される質量分析装置を更に含むことができ、これは、質量対電荷比フィルタから出て行く荷電粒子の質量および電荷を測定するように構成される。幾つかのそのような実施形態では、イオン処理デバイス(1以上)16-16は、質量対電荷比フィルタと質量分析装置との間に配される粒子分離段またはデバイスを更に含むことができ、これは、質量対電荷比フィルタから出て行く荷電粒子を分離するように構成される。そのような実施形態では、プロセッサ26は、例として、電圧源VS2を制御して、それにより例示のデバイス(1以上)および/または段(1以上)を従来の様式で動作させるように、プログラムされる。イオン処理デバイス(1以上)16-16の他の例および組み合わせ例は、当業者には思いつくものであり、そのような例および組み合わせ例がこの開示の範囲内にあると考えられることは、理解されるであろう。何れの場合でも、プロセッサ26は、電圧源VS2を制御して、それにより、イオン処理デバイス(1以上)16-16を従来の様式および/またはここで説明したように動作させるように制御するための1以上の電圧を作り出させるように、構成、例えば、プログラムされる。
【0030】
[0043] これを含む実施形態では、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18は、例として、1以上の指定された分子特性を有する又は或る分子特性の範囲内の1以上の分子特性を有する荷電粒子のみを、その放出口を選択的に通過させるように、構成される。残りの荷電粒子は、荷電粒子デフレクタの場合には、例えば、そのような荷電粒子を導電構造へと向けることにより進路が妨げられ、また、荷電粒子ステアリング・デバイスの場合には、荷電粒子が集められる放出口から離れた方へ向けられ、例えば、荷電粒子が収集も格納もされない別の通路または放出口を通るように向ける。
【0031】
[0044] 1つの例示の実施形態では、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18は、イオンを選択的に通過させる又はイオンの通過を阻止するように構成され制御可能な、従来の取込口が1つで放出口が1つの電荷検出器の形でインプリメントすることができる。別の例示の実施形態では、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18は、1つの取込口へ入ってくるイオンを、純化した荷電粒子を収集するための複数の異なるイオン放出口の1つを通るように選択的にステアリングするように構成され制御可能な、従来の取込口が1つで放出口が複数の電荷ステアリング・デバイスの形でインプリメントすることができる。何れの場合でも、別の電圧源VS3が、任意の正の整数であり得る数Kの信号経路を介してプロセッサ26へ電気的に接続され、更に、上記と同様に任意の正の整数であり得る数Lの信号経路を介して、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18へ電気的に接続される。幾つかの実施形態では、電圧源VS3は、1つの電圧源の形でインプリメントすることができ、別の実施形態では、電圧源VS3は、任意の数の個別の電圧源を含むことができる。幾つかの実施形態では、電圧源VS3は、選択可能な大きさの1以上の時不変(即ち、DC)電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS3は、1以上の切り替え可能な時不変電圧、即ち、1以上の切り替え可能なDC電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS3は、選択可能な形状、デューティ・サイクル、ピークの大きさ、および/または周波数の1以上の時変信号を作り出して供給するように、構成すること又は制御可能とすることができる。一般に、電圧源VS3の1以上の出力が、例として、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18へ結合され、また、そのような出力の数および/またはそこで作り出される電圧のタイプ(1以上)が、インプリメントされる荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18のタイプに応じたものであることが、理解されるであろう。何れの場合でも、メモリ28は、例として、その中に命令を格納し、命令がプロセッサ26により実行されると、プロセッサ26は、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18の動作を選択的に制御するための1以上の出力電圧を作り出させるように電圧源VS3を制御するようにされる。
【0032】
[0045] 荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18が、取込口が1つで放出口が1つの電荷検出器の形でインプリメントされる幾つかの実施形態では、プロセッサ26は、例として、取込口へ入ってくる荷電粒子を、例えば、導電性の板、管、または棒である導電構造へと偏向するように動作するが、これは、電圧源VS3を制御して、荷電粒子Pを導電構造へと駆動し加速するのに十分な大きさの電場Eを作り出すことによりなされる。プロセッサ26は、このような実施形態では、例として、取込口へ入ってくる荷電粒子を、放出口を通過させるように動作するが、これは、電圧源VS3を制御して、デフレクタ内で、荷電粒子がそれを通ることを可能にする状態、例えば、小さい電場または無電場を作り出すことによりなされる。荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18が、取込口が1つで放出口が複数の電荷検出器の形でインプリメントされる幾つかの実施形態では、プロセッサ26は、例として、取込口へ入ってくるイオンを、純化された荷電粒子が収集されない通路へと及び/又は放出口を通るように、ステアリングするように動作するが、これは、電圧源VS3を制御して、荷電粒子Pがそのような放出口を通るようにステアリングするための十分な大きさの電場Eを作り出すことによりなされる。プロセッサ26は、このような実施形態では、例として、取込口へ入ってくる荷電粒子を、純化された荷電粒子が収集される放出口を通過させるように動作するが、これは、電圧源VS3を制御して、電荷ステアリング・デバイス内で、荷電粒子が個々の放出口を通ることを可能にする状態を作り出すことによりなされる。荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18の多くの代替の実施形態は、2019年12月18日に出願された米国特許出願シリアル番号62/52/949555において例示され説明されており、この出願は参照によりここに組み込まれているが、そのような実施形態が単なる例として提供されていることは理解されるであろう。他の荷電粒子偏向および/またはステアリングの装置またはデバイスは、当業者には思いつくものであり、何れの他のそのような荷電粒子偏向および/またはステアリングの装置またはデバイスも、この開示の範囲内にあると考えられることは、理解されるであろう。
【0033】
[0046] 幾つかの実施形態では、上記で簡単に説明して図1において破線表現で例示したように、イオン・トラップ20を、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18へ結合することができる。そのような実施形態では、更に別の電圧源VS4は、任意の正の整数であり得る数Pの信号経路を介して、プロセッサ26へ電気的に接続され、更に、上記と同様に任意の正の整数であり得る数Qの信号経路を介して、イオン・トラップ20へ電気的に接続される。幾つかの実施形態では、電圧源VS4は、1つの電圧源の形でインプリメントすることができ、別の実施形態では、電圧源VS4は、任意の数の個別の電圧源を含むことができる。幾つかの実施形態では、電圧源VS4は、選択可能な大きさの1以上の時不変(即ち、DC)電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS4は、1以上の切り替え可能な時不変電圧、即ち、1以上の切り替え可能なDC電圧を作り出して供給するように、構成または制御することができる。代替的または付加的に、電圧源VS4は、選択可能な形状、デューティ・サイクル、ピークの大きさ、および/または周波数の1以上の時変信号を作り出して供給するように、構成すること又は制御可能とすることができる。電圧源VS4の1以上の出力が、例として、イオン・トラップ20へ結合され、メモリ28は、例として、その中に命令を格納し、命令がプロセッサ26により実行されると、プロセッサ26は、イオン・トラップ20を制御するようにされ、それにより、イオン・トラップ20内に荷電粒子を選択的にトラップおよび格納するようにイオン・トラップ20を制御するための1以上の出力電圧を作り出させ、また、トラップされた粒子をイオン・トラップ20から選択的に解放して加速するようにイオン・トラップ20を制御するための1以上の出力電圧を作り出させる。
【0034】
[0047] プロセッサ26は、更に、例として、任意の正の整数であり得る数Rの信号経路を介して、1以上の周辺デバイス(PD)30へ結合される。幾つかの実施形態では、周辺デバイス30は、従来のディスプレイ・モニタ、プリンタ、および/または他の出力デバイスのうちの少なくとも1つを含み、そのような実施形態では、メモリ28は命令を格納し、その命令がプロセッサ26により実行されると、プロセッサ26は、1以上のそのような出力用周辺デバイス30を制御するようにされ、装置10の動作の分析を、表示および/または記録するようにさせ、この分析は、例えば、装置10により測定された粒子スペクトル情報を含むが、これには限定されない。
【0035】
[0048] 上記で簡単に説明したように、例として、装置10は、例として、電圧源VS1、VS2、VS3、そして幾つかの実施形態ではVS4の制御を介してのプロセッサ26の制御の下で、イオン生成器22により生成された荷電粒子を純化するように動作するが、これは、1以上の分子特性を有する又は1以上の分子特性の或る範囲内の分子特性を有する生成された荷電粒子のサブポピュレーションまたはサブセットのみを、それを選択的に通過させことによりなされる。そのような実施形態では、例えば、サブポピュレーションまたはサブセットは、例として、指定された質量または指定された質量範囲内の質量を有する荷電粒子のみを含むことができる。他の実施形態では、サブポピュレーションまたはサブセットは、例として、指定された電荷または指定された電荷の大きさ又は電荷の状態の範囲内の質量を有する荷電粒子のみを含むことができる。更に別の実施形態では、サブポピュレーションまたはサブセットは、例として、指定された電荷または電荷の大きさ又は電荷の状態の範囲であり、指定された質量である荷電粒子のみ、または指定された電荷または電荷の大きさ又は電荷の状態の範囲であり、指定された質量値範囲内の質量値を有する荷電粒子のみを、含むことができる。更に別の実施形態では、サブポピュレーションまたはサブセットは、例として、指定された質量対電荷比の荷電粒子のみ、または指定された質量対電荷比の値の範囲内の質量対電荷比の値を有する荷電粒子のみを、含むことができる。幾つかのそのような実施形態では、サブポピュレーションまたはサブセットは、更に、指定された質量値も有する又は指定された質量値の範囲内の質量値も有するそのような荷電粒子のみ、および/または指定された電荷の大きさまたは電荷の状態の値も有する又は指定された電荷の大きさまたは電荷の状態の値の範囲内の電荷の大きさまたは電荷の状態の値も有する荷電粒子のみを、含むことができる。更に別の実施形態では、サブポピュレーションまたはサブセットは、例として、指定された移動度の荷電粒子のみ又は指定された移動度の値の範囲内の移動度を有する荷電粒子のみを、含むことができる。幾つかのそのような実施形態では、サブポピュレーションまたはサブセットは、更に、指定された荷電粒子の質量値または質量値範囲に、または指定された電荷の大きさ又は電荷の状態またはその指定された範囲に、または指定された質量対電荷比またはその範囲に制限され得る。装置10の何れの特定の実施形態においてインプリメントされる荷電粒子装置16-16の数および/またはタイプ(1以上)も、純化に求められる荷電粒子の特定のサブポピュレーションまたはサブセットに応じたものであること、および望まれるサブポピュレーションまたはサブセットを集めるために上述の荷電粒子装置16-16の様々な異なるタイプおよび組み合わせを使用できることが、当業者は認識するであろう。更に、当業者は、純化に求められ得る他の分子特性のサブポピュレーション又はサブセットおよび/またはそれらの組み合わせに気づくであろうし、また、そのような他の分子特性のサブポピュレーション又はサブセットおよび/またはそれらの組み合わせ、およびそれらを集めるための様々な装置と装置の組み合わせとがこの開示の範囲内にあると考えられることは、理解されるであろう。
【0036】
[0049] また、図1には、粒子を収集し、幾つかの実施形態では収集して純化した粒子を処理するための、簡略化したプロセス12が描かれている。幾つかの実施形態では、例えば、装置10から出て行く荷電粒子のサブポピュレーションまたはサブセットは、粒子のデポジション、例えば、低エネルギ・デポジションを介して、または他の従来の粒子収集技術を介して、粒子収集ターゲット40の面40Aで集められる。粒子収集ターゲット40、または少なくともその面40Aは、例として、非反応型または不活性の材料であり、装置10から出て行く純化した荷電粒子と結合又は反応しないようにしている。幾つかの実施形態では、粒子収集ターゲット40の粒子収集面40Aは、粘性または油性とすることができ、また、そうではない場合、その中に、装置10から出て行く純化した荷電粒子が或る期間の時間にわたって有効に収集され得るように構成または構築することができる。イオン・トラップ20が含まれる別の実施形態では、装置10から出て行く純化した荷電粒子は、或る期間の時間にわたってイオン・トラップ20内にトラップされ収集され得、次に、まとめてイオン・トラップ20から粒子収集ターゲット40の粒子収集面40Aへと解放され得る。何れの場合でも、粒子収集ターゲット40の粒子収集面40Aは、例として、装置10から出て行く純化した荷電粒子を収集するだけではなく、収集され純化された粒子をそこから採取するために提供されるように、構成される。幾つかの実施形態では、例えば、粒子収集ターゲット40の粒子収集面40Aで収集された純化された粒子は、溶液源42から与えられる溶液45で面40Aをすすぎ落として、純化された粒子を坦持する結果的な溶液45の組み合わせ46を適切な容器44へ送ることにより、採取することができる。当業者は、粒子収集ターゲット40の面40Aで収集された純化された荷電粒子を採取するための他の技術、装置、デバイスなどを認識でき、何れの他のそのような技術、装置、デバイスなども、この開示の範囲内にあると考えられることは、理解されるであろう。
【0037】
[0050] 幾つかの実施形態では、採取された純化された粒子の集まりは、従来の粒子増幅器または粒子増幅プロセス48で増幅する、即ち、複製する又は増殖させることができる。純化された粒子がDNAである又はDNAを含む実装では、例えば、粒子増幅器または増幅プロセス48は、例として、数オーダーの大きさ、例えば、数千または数百万のコピーにわたっての粒子の増幅または複製のための従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)装置またはプロセスの形となることができる。当業者は、採取された純化された粒子がDNAである又はDNAを含むものであるか否かにかかわらず、取り入れられた純化された粒子を増幅する他の装置および/またはプロセスを認識でき、何れのそのような他の粒子増幅の装置および/またはプロセスも、この開示の範囲内にあると考えられることは、理解されるであろう。
【0038】
[0051] 幾つかの場合には、サンプル24の分子特性スペクトルの全て又は少なくとも一部を、純化のためにそのサブポピュレーションまたはサブセットを識別するため又は識別を容易にするために、観察することが望ましいであろう。この点に関して、図2は、サンプル24から生成された荷電粒子の1以上の分子特性を測定するため、およびそのような測定値を、多次元、例えば、2以上の次元の分子特性スペクトルを作り出すように処理するために、図1の装置10を動作させるためのプロセス100を表す簡素化したフローチャートを示す。プロセス100の少なくとも幾つかのステップは、このスペクトルの測定、分析、および視覚化を行うためにプロセッサ26により実行可能な命令の形で、メモリ28に格納される。プロセス100は、ステップ102で開始し、ここで、プロセッサ26は、例として、電圧源VS1を制御するように動作し、これにより、イオン生成器22がサンプル24から荷電粒子を生成するようにし、生成した荷電粒子がイオン処理領域16へ送られるようにする。その後、ステップ104で、プロセッサ26は、電圧源VS2を制御するように動作し、これにより、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスが2以上の分子特性を測定するようにする。
【0039】
[0052] 幾つかの実施形態では、図1に関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、粒子の質量および粒子の電荷を測定するように構成される質量分析装置を含むこと又は質量分析装置の形にインプリメントすることができる。幾つかのそのような実施形態では、例えば、そのような質量分析装置は、電荷検出質量分析装置(CDMS)の形でインプリメントすることができ、別の実施形態では、そのような質量分析装置は、電荷検出アレイ(CDA)が後ろにある質量アナライザ、質量対電荷フィルタ、または質量対電荷比(従来のMS)を測定するように構成される他の装置の形で、インプリメントすることができ、これらの幾つかの例は、2019年12月18日に出願された米国特許出願シリアル番号62/949555において例示され説明されており、この出願は参照によりここに組み込まれている。別の実施形態では、イオン処理領域16は、そのような電荷検出アレイが後ろにあるイオン移動度スペクトロメータ(IMS)を含むこと又はイオン移動度スペクトロメータの形にインプリメントすることができる。更に別の実施形態では、イオン処理領域16は、質量分析装置と、イオン移動度スペクトロメータと、荷電粒子電荷測定装置またはデバイスとの組み合わせを含むこと又はその組み合わせの形にインプリメントすることができる。幾つかのそのような実施形態では、例えば、イオン処理領域16は、CDMSが後ろにあるIMS、またはCDAが後ろにある従来のMSが後ろにあるIMSを、含むことができる。他のそのような実施形態では、更なる例として、イオン処理領域16は、CDAが後ろにあるIMSが後ろにある従来のMS、またはIMSが後ろにあるCDAが後ろにある従来のMS、またはIMSが後ろにあるCDMSを、含むことができる。イオン処理領域16のこれらの例示の実施形態では、プロセッサ26は、例として、ステップ104で、電圧源VS2を制御するように動作し、これにより、図2に例示するように、スペクトロメータ装置(1以上)が、生成された荷電粒子の電荷の大きさ又は電荷の状態、および生成された荷電粒子の質量および/または移動度の値を測定するようにする。
【0040】
[0053] ステップ104に続いて、プロセッサ26は、ステップ104でなされた測定の処理を行い、そこから荷電粒子スペクトルを生成するように動作する。サンプル24が尿エクソソームの溶液であり、イオン処理領域16が、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされる1つの例として、プロセッサ26は、例として、ステップ106で、図4Aで示すような、荷電粒子の電荷の大きさ(単位は電気素量e)対荷電粒子の質量(単位はメガダルトンMDa)の散布図を生成するように動作する。
【0041】
[0054] ステップ106に続いて、プロセス100はステップ108へ進み、そこで、純化するための粒子の適切なサブポピュレーションまたはサブセットを決定するために、ステップ106で作り出されたスペクトルが、プロセッサ26により、例えば、視覚的に又は自動的に分析される。粒子のサブポピュレーションまたはサブセットは、例として、粒子の質量、質量対電荷比、電荷(大きさ又は荷電状態)、または移動度の値(1以上)または範囲(1以上)のうちの1つまたは任意の組み合わせに基づいて選択され得る。
【0042】
[0055] ここで図3を参照すると、図1に示す装置10の様々な実施形態のうちの何れかを用いて、サンプル24からの粒子を純化するためのプロセス200の簡素化したフローチャートが示されている。幾つかの実施形態では、図2に示すプロセス100を実行するために用いられた装置10の実装はまた、プロセス100に続いて図3に示すプロセス200を実行するために、用いることができる。例えば、純化のための分子特性の値および/または範囲が予め知られている別の実施形態では、図2に例示したプロセス100を行わないようにし、装置10の構成は、望まれる純化を達成する又は容易にするように、特定的に選択することができる。何れの場合でも、プロセス200の少なくとも幾つかのステップは、例として、プロセッサ26により実行可能な命令の形でメモリ28に格納され、図1に例示するサンプル24から生成された荷電粒子の選択されたサブポピュレーションまたはサブセットの純化が実行されるようにする。プロセス200はステップ202で始まり、そこでは、プロセッサ26は、例として、電圧源VS1を制御するように動作し、それにより、イオン生成器22がサンプル24から荷電粒子を生成するようにし、生成した荷電粒子をイオン処理領域16へ供給するようにする。その後、ステップ204で、プロセッサ26は電圧源VS2を制御して、それにより、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスが2以上の分子特性を測定するようにする。装置またはデバイスの様々な組み合わせを、任意の2以上の分子特性を測定するように、イオン処理領域16でインプリメントすることができ、そのような装置またはデバイスおよびそのような1以上の分子特性の幾つかの例は、上記のプロセス100の説明で示されている。イオン処理領域16のそれらの例示の実施形態では、プロセッサ26は、例として、ステップ204で、電圧源VS2を制御するように動作し、それにより、スペクトロメータ装置(1以上)が、図3の例に示されるような、生成された荷電粒子の電荷の大きさ又は電荷の状態、および生成された荷電粒子の質量および/または移動度の値を測定するようにされるが、ステップ204で、イオン処理領域16が、代替的に、別の形で、即ち、別の装置を用いてインプリメントされ得ること、および/または1以上の分子特性が、粒子の質量、質量対電荷比、移動度、および電荷(大きさ又は電荷状態)とは別の又はこれらに加えての測定可能な分子特性であり得ることは、理解されるであろう。
【0043】
[0056] ステップ204に続いて、プロセス200はステップ206へ進み、そこにおいて、プロセッサ26は、電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたはステアリング・デバイス18は、イオン生成器22により生成された荷電粒子放の選択されたサブポピュレーションまたはサブセットの中の荷電粒子のみが、その荷電粒子放出口を通るようにするか、又はその複数の荷電粒子放出口のうちの指定された1つを通るようにする。上述のように、イオン生成器22により生成された荷電粒子のサブポピュレーションまたはサブセットは、粒子の質量、質量対電荷比、電荷(大きさ又は電荷状態)、または移動度の値(1以上)または範囲(1以上)の測定値のうちの1つ又は任意の組み合わせに基づいて、選択することができる。個々の荷電粒子がイオン処理領域16から出るときにプロセッサ26にそのような測定値が知られると、プロセッサ26は、電圧源VS3の制御を介して荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18を制御するように動作し、それにより、イオン生成器22により生成された荷電粒子の選択されたサブポピュレーションまたはサブセットにより定められた、測定された分子特性値の1つ又は組み合わせを有する荷電粒子のみを、収集のために、選択的に通過させるようにする。プロセス200のステップ204および206の動作の説明を目的として、図4Aに例示する尿エクソソームのスペクトルの幾つかの例としてのサブポピュレーションまたはサブセットと、そのようなサブポピュレーションを純化するための装置10の幾つかの例としての構成および実装とを、下記で図4B-4Hに関して説明する。
【0044】
[0057] ステップ206に続いて、プロセス200はステップ208へ進み、そこにおいて、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18から、その1つの放出口を通って又はその複数の放出口のうちの選択された1つを通って出て行く荷電粒子が、収集される。イオン・トラップ20を含む装置10の実施形態では、ステップ208は、例として、イオン・トラップ20へ1以上の電圧を供給するためのプロセッサ26による電圧源VS4の制御を含み、それにより、イオン・トラップ20は、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18から、その1つの放出口を通って又はその複数の放出口のうちの選択された1つを通って出て行くそのような荷電粒子を、収集して格納するようにされる。出て行く荷電粒子をイオン・トラップ20がその中へ収集して格納するように動作する収集時間期間の満了に続いて、プロセッサ26は、更に、ステップ208で、イオン・トラップ20へ1以上の電圧を供給するように電圧源VS4を制御するように動作し、それにより、イオン・トラップ20が格納したイオンを解放して収集ターゲット40の収集面40Aの方へ向けて送るようにする。イオン・トラップ20を含まない装置10の実施形態では、ステップ208は、例として、荷電粒子が荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18から出ると、荷電粒子放を収集ターゲット40の収集面40A上に収集することを含む。その後、ステップ210で、収集ターゲット40の収集面40Aに収集された純化した荷電粒子は、例えば、図1に関して上記で説明したように、採取される。幾つかの実施形態では、プロセス200は、ステップ210に続いて別のステップ212を含み、そこにおいて、採取された粒子の増幅、即ち、複製又は増殖が、上述のように従来の様式で行われる。
【0045】
[0058] ここで図5を参照すると、サンプル24からの粒子を純化する指定されたタイプの荷電粒子のポピュレーションおよび/またはサブポピュレーションを識別、収集、および/または純化するために、図1に示す装置10の様々な実施形態のうちの何れかを制御するためのプロセス500の簡素化したフローチャートが示されている。プロセス500はステップ502で開始し、そこにおいて、指定されたタイプの粒子が存在するサンプルが提供される。指定された粒子は、任意の粒子、例えば、分子、またはその集まりとすることができ、これは、細胞内にあるもの又は細胞の一部、および/または細胞間で運ばれるもの、およびメガダルトン範囲又はこれより大きい質量を有するものである。サンプルに存在する粒子のタイプの例、およびそのためにサンプルが選択され提供されるものは、エクソーム、エンドソーム、マイクロベシクル全般、エクトソーム(ectosome)、アポトーシス小体、レトロウィルス、エクソメア(exomere)、カイロミクロン、DNA、RNA、タンパク質、脂質、酸、炭水化物、酵素、ウィルス、バクテリアなどであり得るか、又はこれらを含み得るが、これらには限定されない。この開示の範囲内にあると考えられる他のサンプルおよび/またはサンプルに存在する対象となる粒子の例は、任意の生物学的な組織(1以上)、液体(1以上)、および/または他の生物学的材料(1以上)であるか、またはこれらの一部である、エクソソームまたは細胞外小胞を放出する任意の細胞や、例えばウィルスのようなバイオレイヤー(bio-layer)に包まれた任意の分子または分子の集合や、グループ化されているが、バイオレイヤーにより結合されておらず、またバイオレイヤー内にはない任意の非区画化オルガネラ(non-compartmentalized organelle)、例えば、1以上の小さい分子を付加することや、制癌剤などのような薬品を付加することなどにより、検出可能な質量シフトを生じさせるように変更されている任意の細胞外小胞を含むが、これらには限定されない。
【0046】
[0059] 幾つかの実施形態では、ステップ502で提供される、特定のタイプの粒子が存在するサンプルは、図1に示されたサンプル24であり得、装置10での分析のために、このサンプル24から荷電粒子が生成される。幾つかの代替の実施形態では、プロセス500は、破線の輪郭で示すステップ504を含むことができ、そこにおいて、ステップ502で提供されたサンプルが、特定の粒子タイプに関して濃厚にされる。ステップ504に続いて、それを含む実施形態では、プロセス500は、例として、1つの実施形態では、ステップ506へ進み、そこにおいて、濃厚にされたサンプル24、即ち、ステップ502で提供されてステップ504で特定の粒子タイプに関して濃厚にされたサンプルを用いて、図2に例示するプロセス100が実行される。ステップ504を含まない実施形態では、ステップ502に続いてステップ506が実行されるが、この場合、指定されたタイプの粒子が存在するサンプル24を用いて図2に例示するプロセス100が実行されるようにする。幾つかの実施形態では、純化のために粒子スペクトルのサブポピュレーションが識別および/または選択されるプロセス100のステップ108は、粒子の1以上のサブポピュレーションを識別および/または選択するために粒子のデータセットに対して行われる1以上の従来の統計および/またはモデリングのプロセスの実行を、含むことができる。そのような統計はプロセスの一例は、例8に関して後に説明する。
【0047】
[0060] 幾つかの実施形態では、プロセス500は、ステップ506を実行した後に終了する。幾つかの代替の実施形態では、プロセス500は、ステップ506からステップ508へ進み、そこにおいて、濃厚にされたサンプル24を用いて図3に例示するプロセス200が実行され、ステップ506で識別された指定されたタイプの粒子またはその1以上のサブポピュレーションが純化される。幾つかの代替の実施形態では、図3に関して上記で説明したように、プロセス500は、ステップ508へ、ステップ504を含む実施形態ではステップ504から直接に進むことができ、また、ステップ504を含まない実施形態ではステップ502から直接に進むことができる。
【0048】
[0061] ステップ504を含む幾つかの実施形態では、指定された粒子タイプに関してサンプルを濃厚にするために用いられるプロセス(1以上)は、サンプル・タイプおよび/または指定された粒子タイプに応じたものであり得、何れの場合でも当業者には知られている。そのような実施形態では、ステップ504の結果として得られる濃厚にされたサンプルは図1に示すサンプル24であり、このサンプル24から、装置10による分析のために荷電粒子が生成される。ウシ乳のサンプルからのエクソソームを濃厚にするために用いられるそのようなプロセスの一例が例8において後に説明されるが、これは何れの限定とも考慮すべきではない。ステップ504を含む又は含まない別の実施形態では、装置10のイオン処理領域16の様々な構成および/または実装を、指定されたタイプ粒子に関してサンプルを濃厚にするため、および/または濃厚にすることを支援するために、用いることができる。例えば、幾つかの実施形態では、指定されたタイプのサンプルにおける粒子の質量、質量対電荷比、および/または移動度の範囲(1以上)とは異なる粒子の質量、質量対電荷比、および/または移動度の1以上の範囲に存在することが知られている望まれない粒子を含み得、そのような実施形態では、イオン処理領域16は、上述のように、そのような望まれない粒子の幾らか又は全てを、ステップ506および/またはステップ508を実行する前にフィルタ処理で除去するように、様々に構成することができる。
【0049】

例1
[0062] ここで図4Bを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットが再作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子のサブポピュレーションまたはサブセット300の選択の例が、重ねられている。この例では、選択されたサブポピュレーション300は、単に、粒子質量値の指定された範囲、20MDaと30MDaの間、により定められている。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、20-30MDaという指定された粒子質量範囲内の粒子質量を有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、ステップ206の前にプロセッサ26により粒子質量を決定することができる粒子質量情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子質量を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子質量を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子質量を測定するように構成された又は粒子質量を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、ステップ204で粒子質量情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の質量が20-30MDaという指定された粒子質量範囲内である場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0050】
例2
[0063] ここで図4Cを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットが再作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子の別のサブポピュレーションまたはサブセット302の別の選択の例が、重ねられている。この例では、選択されたサブポピュレーション302は、単に、粒子の電荷の大きさの値の指定された範囲、750eと900eの間、により定められている。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、750-900eという指定された粒子電荷範囲内の粒子電荷値を有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、ステップ206の前にプロセッサ26により粒子電荷を決定することができる粒子電荷情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子の電荷を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子の電荷を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子の電荷を測定するように構成された又は粒子の電荷を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、ステップ204で粒子電荷情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の電荷が750-900eという指定された粒子の電荷の大きさの範囲内である場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0051】
例3
[0064] ここで図4Dを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットが更に再作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子の更に別のサブポピュレーションまたはサブセット304の更に別の選択の例が、重ねられている。この例では、選択されたサブポピュレーション304は、10MDaと15MDaの間という粒子質量値の指定された範囲と、600eと700eの間という粒子の電荷の大きさの値の指定された範囲とにより、定められている。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、10-15MDaという指定された粒子質量値の範囲内の粒子質量値と600-750eという指定された粒子電荷範囲内の電荷値とを有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、ステップ206の前にプロセッサ26により粒子の質量および電荷を決定することができる粒子の質量および電荷の情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子の質量および電荷を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子の質量および電荷を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子の質量および電荷を測定するように構成された又は粒子の質量と電荷との双方を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、ステップ204で粒子の質量および電荷の情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の質量が10-15MDaという指定された粒子質量範囲内にあり且つその粒子の電荷の大きさが600-750eという指定された粒子の電荷の大きさの範囲内である場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0052】
例4
[0065] ここで図4Eを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットがもう一度再作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子の更に別のサブポピュレーションまたはサブセット400の更に別の選択の例が、重ねられている。図4Aのプロットから明らかなように、尿エクソームの全ポピュレーションは、複数の異なる斜線状または傾斜型になったサブポピュレーション、サブセット、またはファミリーに沿っているように見え、それらのそれぞれは、異なる一定の質量対電荷比(1以上)の値または範囲に関して又はそれに沿ってグループ化される。この例では、選択されるサブポピュレーション400は、そのような質量対電荷比(1以上)の値または範囲のうちの指定された1つのものにより定められる。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、指定された質量対電荷比値を有する又は指定された質量対電荷比値範囲内の質量対電荷比を有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、ステップ206の前にプロセッサ26により質量対電荷比を決定することができる粒子質量対電荷比情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子の質量および電荷を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子の質量および電荷を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子の質量および電荷を測定するように構成された又は粒子の質量と電荷との双方を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、プロセッサ26は、この実施形態において、測定された粒子の質量および電荷の関数として粒子の質量対電荷比を計算するように動作する。
【0053】
[0066] ステップ204で粒子の質量対電荷比の情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の質量対電荷比が指定された質量対電荷比を有する又は指定された質量対電荷比値範囲内の質量対電荷比を有する場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0054】
[0067] 装置10の代替の実施形態では、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18を省くことができ、イオン処理領域16を、従来の質量アナライザまたは質量対電荷比フィルタ、例えば、四重極質量対電荷比フィルタなどの形で、インプリメントすることができる。この実施形態では、粒子の電荷をイオン処理領域16で測定する必要はなく、従って、1以上の電荷増幅器CAも省くことができる。装置10のこの実施形態では、プロセス200のステップ206を省くことができ、プロセッサ26は、ステップ204で、電圧源VS2を制御して、それにより質量アナライザまたは質量対電荷比フィルタが、その中を、選択された質量対電荷の値の範囲400内の質量対電荷の値を有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにする。
【0055】
例5
[0068] ここで図4Fを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットがもう一度再作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子の更なるサブポピュレーションまたはサブセット402の更なる選択の例が、重ねられている。この例では、例4と同様に、選択されたサブポピュレーション402は、一定の質量対電荷比または質量対電荷比範囲の複数の異なるファミリーのうちの指定された1つのものにより定められ、更に、10MDaと20MDaの間という質量値の指定された範囲により定められる。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、指定された質量対電荷比を有する又は指定された質量対電荷比範囲内の質量対電荷比を有するものであり且つ指定された質量値の範囲内の質量値を有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、ステップ206の前にプロセッサ26により粒子の質量および質量対電荷比を決定することができる粒子の質量および質量対電荷比の情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子の質量および電荷を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子の質量および電荷を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子の質量および電荷を測定するように構成された又は粒子の質量と電荷との双方を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、プロセッサ26は、測定された粒子の質量および電荷の関数として粒子の質量対電荷比を計算するように動作する。
【0056】
[0069] ステップ204で粒子の質量および質量対電荷比の情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の質量対電荷比および質量が指定された粒子の質量および質量対電荷比の範囲402内にある場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0057】
例6
[0070] ここで図4Gを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットがもう一度再作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子の更なるサブポピュレーションまたはサブセット404の更なる選択の例が、重ねられている。この例では、例4および5と同様に、選択されたサブポピュレーション404は、複数の異なる一定の質量対電荷比または質量対電荷比範囲のファミリーのうちの指定された1つのものにより定められ、更に、300eと450eの間という電荷の大きさの値の指定された範囲により定められる。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、指定された質量対電荷比を有する又は指定された質量対電荷比範囲内の質量対電荷比を有するものであり且つ指定された電荷の大きさの値の範囲内の電荷の大きさの値を有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、ステップ206の前にプロセッサ26により粒子の質量対電荷比および電荷の大きさを決定することができる粒子の質量対電荷比および電荷の大きさの情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子の質量および電荷を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子の質量および電荷を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子の質量および電荷を測定するように構成された又は粒子の質量と電荷との双方を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、プロセッサ26は、測定された粒子の質量および電荷の関数として粒子の質量対電荷比を計算するように動作する。
【0058】
[0071] ステップ204で粒子の質量対電荷比および電荷の大きさの情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の質量対電荷比および電荷の大きさが指定された粒子の質量対電荷比および電荷の大きさの値の範囲404内にある場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0059】
例7
[0072] ここで図4Hを参照すると、図4Aの尿エクソームのプロットが更に再び作成され、その上に、図3に例示するプロセス200のステップ204および206に従った純化のための、図1の装置による粒子の更なるサブポピュレーションまたはサブセット406の更なる選択の例が、重ねられている。この例では、例4、5および6と同様に、選択されたサブポピュレーション406は、複数の異なる一定の質量対電荷比または質量対電荷比範囲のファミリーのうちの指定された1つのものにより定められ、更に、15MDaと25MDaの間という質量値の指定された範囲と、300eと450eの間という電荷の大きさの値の指定された範囲とにより定められる。ステップ206でプロセッサ26が電圧源VS3を制御して、それにより荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、その中を、指定された質量対電荷比を有する又は指定された質量対電荷比範囲内の質量対電荷比を有するものであり且つ指定された電荷の大きさの値の範囲内の電荷の大きさの値と指定された質量値範囲内の質量値とを有する荷電粒子のみを、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにするために、イオン処理領域16の1以上の装置またはデバイスにより作り出される粒子測定情報は、質量および電荷の大きさの情報で、ステップ206の前にプロセッサ26により粒子の質量、質量対電荷比、および電荷の大きさを決定することができる質量対電荷比および電荷の大きさの情報または粒子測定情報を含む必要がある。この例では、図4Aに関して上記で説明したように、イオン処理領域16は、例として、CDAが後ろにある従来のMSまたはCDMSの形でインプリメントされるが、何れも、ステップ204で粒子の質量および電荷を直接に測定するように、または装置(1以上)によりなされた荷電粒子の測定から粒子の質量および電荷を決定するように、構成される。しかし、イオン処理領域16が、代替として、粒子の質量および電荷を測定するように構成された又は粒子の質量と電荷との双方を決定または推定することができる粒子の1以上の特性または特質を測定するように構成された、任意の装置またはデバイス、または装置またはデバイスの組み合わせであり得るか、またはこれを含み得ることが、理解されるであろう。何れの場合でも、プロセッサ26は、測定された粒子の質量および電荷の関数として粒子の質量対電荷比を計算するように動作する。
【0060】
[0073] ステップ204で粒子の質量対電荷比および電荷の大きさの情報が決定されると、ステップ206で、プロセッサ26は電圧源VS3を制御するように動作し、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、イオン処理領域16から出て行く荷電粒子を、その粒子の質量対電荷比、電荷の大きさ、および質量が指定された粒子の質量対電荷比、電荷の大きさ、および質量の値の範囲406内にある場合のみ、粒子ターゲット40の方へと通過させるようにし、そうでなければ、電圧源VS3を制御して、それにより、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18が、ターゲット40の方への粒子の通過を阻止するか、又は荷電粒子をターゲット40から離れるようにステアリングするようにされる。
【0061】
[0074] 図4A-4Hに示す例で用いられたサンプル24は尿エクソームであるが、別の応用では、サンプル24が、本質的に生物学的なものか否か、液体であるか他のものであるかにかかわらない任意の材料であり得ることが、理解できるであろう。サンプル24として使用でき得る追加の例としての生物学的な物質や材料は、他のエクソーム、エンドソーム、マイクロベシクル全般、エクトソーム、アポトーシス小体、レトロウィルス、エクソメア、カイロミクロン、DNA、RNA、タンパク質、脂質、酸、炭水化物、酵素、ウィルス、バクテリアなどを含み得るが、これらには限定されない。幾つかの実施形態では、純化(幾つかの場合には、増幅)された粒子を、遺伝子療法製品および/または他の製品の研究、組み立て、および/または製造のために用いることができる。また、図4A-4Hに示す例は、粒子質量、電荷、および/または質量対電荷比の様々な値または範囲により定められた、サンプル24から生成された荷電粒子のサブポピュレーションまたはサブセットを例示するが、図1に例示する装置10と、装置10を動作させるプロセス100、200とは、そのように限定されないことが理解されるであろう。特に、粒子移動度および/または他の分子特性の値または範囲により代替的または付加的に定められた荷電粒子のサブポピュレーションまたはサブセットを収集するように、装置10を構成、およびプロセス100および/または200を変更することができることが、理解されるであろう。何れの限定とも考慮すべきではない特定の1つの例として、イオン処理領域16を、粒子の質量、電荷、および移動度を測定するため、また、そうでない場合は決定するための装置を含むように構成することができ、また、荷電粒子の様々な純化された多次元のサブポピュレーションを、粒子の質量、質量対電荷比、電荷の大きさ又は電荷の状態、および移動度の値および/または範囲により定めることができる。
【0062】
例8
[0075] 再び図5を参照するが、プロセス500はウシ乳のサンプルを用いて行われ、ウシ乳内の指定されたタイプの粒子はエクソソームであった。ステップ502で、プールされた未処理(生)のウシ乳(約20頭からのもの)が提供された。その後、ステップ504で、生のウシ乳のサンプルが、下記のように、エクソソームが豊富になるようにされた。約200分の収集のウシ乳サンプルの中で、50ミリリットル・アリコートの生乳が脱脂され、次に、サンプル内のアポトーシス小体の量を低減するように更に遠心分離された。これは、例として、濃縮された乳脂の層を除去するため、生乳を、摂氏4度で10分の間、2000×gで遠心分離することにより達成された。残りの懸濁液は、細胞および他の破片を除去するために、隔離され、摂氏4度で20分の間、12000×gで遠心分離された。次に、非EV(非細胞外小胞)蛋白質、特に、等電点が4.6であるカゼインを沈殿させるために、上清へ酢酸が加えられ(1体積百分率の濃度)、5分間混ぜられた。沈殿物は、従来の方法に従った摂氏4度での10分の10000×gでの遠心分離により分離された。EV(乳清と呼ばれる)を含む、蛋白質、脂質、および他の種のものの混合物である、結果として得られた上清は、摂氏4度で70分の間、210000×gで超遠心分離された。結果として得られたペレットは、500マイクロリットルの100mMの酢酸アンモニウムの中で再可溶化され、残りの沈殿物を除去するために、摂氏4度で5分の間、10000×gで遠心分離された。結果として得られたエクソソーム含有EV上清は、次に、100mMの酢酸アンモニウムの溶液で100倍に希釈されて、サンプル24が形成されたが、このサンプル24から、図1の装置10を用いてイオンが生成された。
【0063】
[0076] 装置10は、例として、下記のように構成されたが、装置10の下記の構成は、単に、図1に例示され上記で説明された装置10の幾つかの異なる可能な構成のうちの1つのものであることが、理解されるであろう。この特定の例に関して、イオン生成器22は、約5μmの直径のホウケイ酸毛管放射体(borosilicate capillary emitter)を有するエレクトロスプレー・イオン化(EIS)装置であり、濃縮されたサンプル24からイオンを生成するために約1.4kVの放射体電位が用いられた。エレクトロスプレーされたイオンは、毛管境界面を通って、例として上記のCDMS装置として構成される装置10のソース領域内へ、送られる。この特定の実施形態では、イオン処理領域16は、ハイブリッド型のイオン・ファンネル-イオン・カーペット・インターフェースを含んでおり、これは、例えば、同時係属中でありこの参照によりここに組み込まれる国際出願PCT/US2019/0132274に例示され説明されたものであり、これを通して、ソースの毛管からのイオンが送られる。このインターフェースに続いて、イオンは、RFオンリ六重極(RF-only hexapole)を通って送られ、ここで、イオンは衝突するようにされ、これがイオン運動エネルギの分布を熱平衡化する。イオンが六重極から出ると、それらは、RFオンリ四重極(RF-only quadrupole)へ入り、これは、約12000を超える質量対電荷(m/z)比の値を持つ大きいイオンを透過させるように調節されたロー・パス・フィルタとして働く。低いm/zの種類のものを除くことは、高いm/zのイオンに関して測定時間が最適化されることを保証する。六重極での100VのDCオフセット電圧は、電荷あたりの名目イオン・エネルギを設定するために用いられた。次に、イオンは、デュアル・ヘミスフェリカル・デフレクション・エネルギ・アナライザ(dual hemispherical deflection energy analyzer)の入口内へと集められ、次に、エネルギ・アナライザから出て行くエネルギ選択されたイオンは、電荷検出シリンダを含む静電リニア・イオン・トラップ(ELIT)へ入れられた。
【0064】
[0077] 各イオンがELITへ入ると、それは、電荷検出シリンダで電荷を誘導する。収集および各トラッピング・イベントの開始の時、ELITの双方のエンド・キャップは透過モードにあり、イオンがトラップを通って移動することを可能とした。トラッピング・イベントは、後方のエンド・キャップを透過モードからトラッピング・モードへと切り替えることにより開始され、イオンを、電荷検出シリンダを通ってELITの入口へ戻るように反射した。0.3msの短い遅延に続いて、前方のエンド・キャップがトラッピング・モードへと切り替えられ、トラップされたイオンは、ELITの中で前後に振動した。100msの後、トラッピング・イベントは終了され、ELITの双方のエンド・キャップは透過モードへ戻るように切り替えられた。1msの遅延の後、処理は、イオンのそれぞれについて反復された。100msの測定時間の間、各イオンは、ELITの電荷検出シリンダを通って振動し、周期的信号を誘導し、これは、電荷感応型前置増幅器CAにより増幅され、デジタル化され、次に、高速フーリエ変換を用いて分析される。イオンの質量対電荷比は、測定の基本周波数から導き出され、電荷は、基本周波数の大きさから導き出される。質量分布は、各イオンに関して測定された電荷を質量対電荷比の値に乗算し、結果として得られた質量をビニング(binning)することにより、生成された。
【0065】
[0078] ステップ506において、図2のプロセス100が上述のように実行され、プロセス100のステップ106で、図6Aに示す荷電粒子の電荷の大きさ(単位は電気素量e)対荷電粒子の質量(単位はメガダルトンMDa)の散布図が生成された。その後、ステップ108で、散布図は、エクソソームとして識別され得るプロット・データのサブポピュレーションを決定するように、処理された。プロセス500の1つの実施形態では、9.8メガダルトン(一般にはエクソソームの最小質量と理解されている)より大きい質量を有する全ての粒子がエクソソームであると考えられ、図6Aでは、垂直の破線状のエクソソーム質量スレッショルド線EMTHの右側の全ての荷電粒子は、そのように識別される。幾つかの実施形態では、プロセス200は、例として、ステップ108で識別したエクソソームを収集および/または純化するように、上述のように実行することができる。
【0066】
[0079] プロセス500の代替の実施形態では、図6Aの散布図のデータは、エクソソームと識別でき得る荷電粒子の1以上のサブポピュレーションを決定するように、および/または互いに区別可能な荷電粒子の複数のサブポピュレーションが存在するか否か、即ち、CDMSデータから粒子のファミリーとすることができ得るサブポピュレーションが存在するか否かを決定するように、ステップ108で処理された。この点に関して、ステップ108で、プロセッサ26は、図6Aの二次元の質量対電荷のデータを適合させるように従来の二次元ガウス混合モデル(GMM)を実行するようにプログラムされ、これは、粒子のサブポピュレーションが、関連する質量および電荷のファミリーに分類されることと、これらのファミリーの分布が、正規分布に従うこととを、仮定する。このように仮定して、プロセッサ26は、荷電粒子データに対して従来のクラスタリング分析を実行するようにプログラムされ、その結果が、二次元の質量対電荷のサブポピュレーションの複数の分布である。組み合わされると、これらのサブポピュレーションの合計は、二次元CDMSデータの主な特徴を捕らえる。簡素化するために、可能なサブポピュレーションの数は、1から10の二次元ガウシアンの間に制限された。この制限を除き、分析は無監督であり、アルゴリズムは、合計するときに二次元CDMSデータセットに最も適合するサブポピュレーションの数と、各サブポピュレーションと関連する位置および幅とを決定した。図6Aに示すCDMSデータセットに関して、この分析は、図6Bの例で示された6つの独立のサブポピュレーションS1-S6から構成された最良適合モデルへとまとまった。図6Bに例示する荷電粒子の6つのサブポピュレーションのそれぞれはガウシアン分布であるので、S1-S6のそれぞれの境界は単なる近似によるものであり、単に、サブポピュレーションS1-S6の互いに対しての位置および近似的なサイズを示すために図6Bに含まれていることが、理解されるであろう。別の実施形態では、1以上の別の従来の統計モデルを用いて、CDMS10により作り出された粒子の質量および電荷のデータセットを、分析することができる。
【0067】
[0080] 図6Bのデータは、サンプル24で観察された最低質量サブポピュレーションS1は、質量(m)=5.7±1.6MDaおよび電荷(z)=145±38eに中心がある比較的狭い分布に対応することを示す。このサブポピュレーションS1は、このデータセットの荷電粒子の合計数の約27%(3586のうちの975)を含む。サンプル24で観察された最高質量サブポピュレーションS6は、m=27.7±5.4MDaおよびz=594±76eに中心がある広い分布に対応する。このサブポピュレーションS6は、このデータセットの荷電粒子の合計数の約22%(3586のうちの772)を含む。m=10.2±1.9MDaおよびz=189±44eに中心があるS2サブポピュレーション(またはファミリー)は、このデータセットの荷電粒子の合計数の3%のみを占め、豊富さが最低のサブポピュレーションとなっている。荷電粒子の合計数の約4%を含むS3(m=12.5±2.9MDa、z=296±31e)サブポピュレーションと、荷電粒子の合計数の約18%を含むS4(m=17.6±2.6MDa、z=488±76e)サブポピュレーションとは、質量よりは電荷に基づいて実質的により良く決定される。これは、これらのサブポピュレーションまたはファミリーが、分子レベルで実質的に異なる似たサイズの粒子からなり、従って、各粒子の質量よりも各粒子の電荷に影響を及ぼすことを、暗示する。荷電粒子の合計数の約26%を含むS5(m=23.4±3.4MDa、z=550±113e)サブポピュレーションは、電荷の次元よりも質量でより良く決定されるように見え、これは、それらがサイズよりも電荷特性において似ていることを示す。
【0068】
[0081] ここで説明したプロセス100のステップ108で着手されたガウシアン・モデル・クラスタ分析から、エクソソームであるデータセットの粒子の小部分を推定することができる。様々なサブポピュレーションの平均質量に関して、S1サブポピュレーション(m=5.7±1.6MDa)のみが、エクソソームとするには小さすぎる(最小のエクソソーム質量が約9.8MDaであるということに基づく)。S1はデータセットの荷電粒子の合計数の27%を表すので、データセットの荷電粒子の残りの73%は、エクソソームと考えられる質量範囲内にある。幾つかの実施形態では、プロセス200は、例として、ステップ108のこの実施形態において識別されたエクソソームを収集および/または純化するために、上述のように実行することができる。
【0069】
[0082] この発明は、上述の図面および記載で詳細に例示され説明されたが、これは、例示と考えられ、特徴の限定ではなく、その例示的な実施形態のみが示され説明されていること、およびこの発明の精神の範囲内にある全ての変更および改造の保護が望まれることが、理解されている。例えば、イオン処理領域16がCDMSの形でインプリメントされる幾つかの実施形態では、CDMSの電荷検出器が、例として、電圧源VS2の選択的制御により、荷電粒子を選択的に解放するように、またはそこからの粒子の解放を阻止するように、制御される。電荷検出器が例えば静電リニア・イオン・トラップ(ELIT)であるCDMSの実施形態では、そのエンド・キャップの一方または双方へ電圧源VS2により印加される電圧は、例として、その中にトラップされ振動しているイオンが、粒子収集ターゲット40の方向に、ELITから出ることを可能にするように、またはELIT内でのイオンの振動を不安定にしてその中の構造に接触させて、イオンがELITから解放されないように、制御される。そのような実施形態では、ELITのそのような制御は、荷電粒子デフレクタまたは荷電粒子ステアリング・デバイス18を不要とすることができ、それが省かれるようにすることができる。電荷検出器がオービトラップであるCDMSの実施形態では、電圧源VS2は、同じ効果を有するように同様に制御することができる。

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】