(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】メッセンジャーRNAの組成物、方法および使用
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20221208BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20221208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221208BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221208BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221208BHJP
A61K 38/20 20060101ALN20221208BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20221208BHJP
A61K 38/21 20060101ALN20221208BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20221208BHJP
C12N 15/27 20060101ALN20221208BHJP
C12N 15/22 20060101ALN20221208BHJP
C12N 15/28 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K45/08
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/12
A61K47/28
A61K47/10
A61K47/18
A61K38/20
A61K38/19
A61K38/21
C12N15/24 ZNA
C12N15/27
C12N15/22
C12N15/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521307
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 US2020054952
(87)【国際公開番号】W WO2021072172
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316797
【氏名又は名称】トランスレイト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コバー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ウースター, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】デローサ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ディアス, アヌシャ
(72)【発明者】
【氏名】カーブ, シュリラング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA31
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB27
4C076CC27
4C076DD49
4C076DD70
4C076EE23
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA18
4C084DA19
4C084DA22
4C084DA24
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA41
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB261
(57)【要約】
本発明は、特に、がん治療のための方法および組成物を提供する。本明細書に開示される方法および組成物は、腫瘍のサイズ/体積を低減させ、腫瘍増殖を阻害するのに特に有効である。一態様では、本発明は、とりわけ、がんを治療する方法であって、腫瘍のサイズが低減するまたは腫瘍の増殖が阻害されるような有効用量および投与間隔で脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドをコードするmRNAを含む組成物を、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療する方法であって、腫瘍のサイズが低減するまたは腫瘍の増殖が阻害されるような有効用量および投与間隔で、脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドをコードするmRNAを含む組成物を、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
がんを治療する方法であって、腫瘍のサイズが低減するまたは腫瘍の増殖が阻害されるような有効用量および投与間隔で、1つ以上の脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドを各々コードする2つ以上のmRNAを含む組成物を、がんの治療を必要とする対象に投与することを含み、前記2つ以上のmRNAのうちの少なくとも2つは、各々、他のmRNAとは異なるタンパク質またはペプチドをコードする、方法。
【請求項3】
前記2つ以上のmRNAが、第1の脂質ナノ粒子内に封入された第1のタンパク質またはペプチドをコードする第1のmRNAと、第2の脂質ナノ粒子に封入された第2のタンパク質またはペプチドをコードする第2のmRNAとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質または前記ペプチドのうちの少なくとも1つが、免疫反応を調節する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質または前記ペプチドが、IL-12、IL-2、IL-6、IL-15、STING、MCP-3、GM-CSF、FLT-3L、NLRP3、IFN-γ、TNF-α、NLRP1、CCL5、またはそれらの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記2つ以上のmRNAのうち2つが、それぞれIL-12およびSTINGをコードする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
前記2つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、およびGM-CSFをコードする少なくとも3つのmRNAを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項8】
前記2つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、FLT-3LおよびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項9】
前記2つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、NLRP3およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
前記2つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、IL-2およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項11】
前記STINGが、前記STINGの変異体型である、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記変異体型が、前記STINGが構成的活性型になることを可能にする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質またはペプチドのうちの少なくとも1つが、免疫反応を調節しない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、50%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、60%超、70%超、または80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、80%超、85%超、または90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物の前記投与が、対照と比較して、15%未満、10%未満、または5%未満の前記対象における体重の変化率をもたらす、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対照が、治療を受けていない同等の疾患状態を有する対象である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
前記対照が、前記組成物の前記投与前の前記対象の体重である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記脂質ナノ粒子が、1種以上のカチオン性脂質、1種以上の非カチオン性脂質、および1種以上のPEG修飾脂質を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記脂質ナノ粒子が、コレステロールまたは1種以上のコレステロールベースの脂質をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の脂質ナノ粒子が、第1のカチオン性脂質を含み、前記第2の脂質ナノ粒子が、第2のカチオン性脂質を含み、前記第1のカチオン性脂質が、前記第2のカチオン性脂質とは異なる、請求項3に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、腫瘍内投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、皮下投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、皮内投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、静脈内投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、肺内投与によって投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、噴霧によって投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、単回用量を注射することを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、複数回用量を定期的に注射することを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記単回用量または前記複数回用量が、0.1μg~100mgのmRNAの範囲である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記単回用量または前記複数回用量が、0.1μg~50mg、0.1μg~25mg、0.1μg~10mg、1μg~1mg、または1μg~100μgのmRNAの範囲である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項33】
前記単回用量または前記複数回用量が、0.1μg、0.3μg、0.5μg、1μg、5μg、10μg、25μg、50μg、または100μgから選択される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項34】
前記単回用量または前記複数回用量が、0.01μg/kg~10mg/kg(mRNA/体重)の範囲である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項35】
前記単回用量または前記複数回用量が、0.01μg/kg~8mg/kg、0.01μg/kg~6mg/kg、0.01μg/kg~5mg/kg、0.1μg/kg~5mg/kg、0.1μg/kg~1mg/kg、または0.1μg/kg~0.5mg/kg(mRNA/体重)の範囲である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項36】
前記複数回用量の各々が、同じ投薬量のmRNAを含む、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記複数回用量の各々が、異なる投薬量のmRNAを含む、請求項30~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記複数回用量の各々が、1日~3週間の間隔を空けて注射される、請求項30~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記複数回用量の各々が、毎週注射される、請求項30~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記mRNAが、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記mRNAが、5’非翻訳領域(5’UTR)および/または3’非翻訳領域(3’UTR)を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物の前記投与が、前記対象においてT細胞を活性化する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、前記対象に、チェックポイント阻害剤を含む組成物を投与することをさらに含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、前記対象に、チェックポイント阻害剤を含む組成物を投与することを含まない、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記チェックポイント阻害剤が、PD1、PD-L1、CTLA-4、B7、BTLA、HVEM、TIM-3、GAL-9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、またはそれらの組み合わせを阻害する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
がんを治療するための医薬組成物であって、それぞれIL-12、IL-2、IL-6、IL-15、STING、MCP-3、GM-CSF、FLT-3L、NLRP3、IFN-γ、TNF-α、NLRP1、CCL5、またはそれらの組み合わせを各々コードする、1つ以上のmRNAを含み、前記1つ以上のmRNAが、カチオン性脂質として、cKK-E12を含む少なくとも1つの脂質ナノ粒子を含む1つ以上の脂質ナノ粒子内に封入される、医薬組成物。
【請求項47】
前記組成物が、チェックポイント阻害剤をコードする追加のmRNAをさらに含む、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記1つ以上のmRNAが、それぞれIL-12およびSTINGをコードする少なくとも2つのmRNAを含む、請求項46または47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記1つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、およびGM-CSFをコードする少なくとも3つのmRNAを含む、請求項46または47に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記1つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、FLT-3L、およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む、請求項46または47に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記1つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、NLRP3、およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む、請求項46または47に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記1つ以上のmRNAが、それぞれSTING、IL-12、IL-2、およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む、請求項46または47に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記STINGが、前記STINGの変異体型である、請求項46~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記変異体型が、前記STINGが構成的活性型になることを可能にする、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
免疫反応を調節しないタンパク質またはペプチドをコードする追加のmRNAをさらに含む、請求項46~54のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記チェックポイント阻害剤が、PD1、PD-L1、CTLA-4、B7、BTLA、HVEM、TIM-3、GAL-9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、またはそれらの組み合わせを阻害する、請求項47~55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記脂質ナノ粒子が、1つ以上の非カチオン性脂質、および1つ以上のPEG修飾脂質をさらに含む、請求項46~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
コレステロールまたはコレステロールベースの脂質をさらに含む、請求項57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
第2の脂質ナノ粒子であって、cKK-E12を含まず、かつ、OF-02、C12-200、MC3、DLinDMA、DLinkC2DMA、ICE(イミダゾールベース)、HGT5000、HGT5001、HGT4003、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、DODMAおよびDMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin-K-DMA、DLin-K-XTC2-DMA、3-(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)-6-(4-((2-ヒドロキシドデシル)(2-ヒドロキシウンデシル)アミノ)ブチル)-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(ターゲット23)、3-(5-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ペンタン-2-イル)-6-(5-((2-ヒドロキシドデシル)(2-ヒドロキシウンデシル)アミノ)ペンタン-2-イル)-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(ターゲット24)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオン性脂質を含む、第2の脂質ナノ粒子をさらに含む、請求項46~58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記方法が、アスコパル(ascopal)効果をもたらす、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記方法が、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、50%超の未治療腫瘍の腫瘍増殖阻害率をもたらす、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記方法が、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、60%超、70%超、または80%超の未治療腫瘍の腫瘍増殖阻害率をもたらす、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記方法が、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、80%超、85%超、または90%超の未治療腫瘍の腫瘍増殖阻害率をもたらす、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記方法が、がんを有する対象の生存を増加させる、請求項1~45または60~63のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月9日に出願された米国仮特許出願第62/913,035号に対するその利益および優先権を主張するものであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界の多くの地域で最も一般的な死因であり、毎年250万人を超えるがん症例が世界中で診断されている。がんの分子生物学的な理解における最近の進歩は、がんが、罹患細胞の異常な増殖を引き起こす遺伝的障害であることを示している。手術、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、ならびに小分子およびタンパク質分子を含む、多くのがん治療が存在する。しかしながら、これらの治療は、多くの場合、細胞標的との非特異的な相互作用によって機能し、望ましくない副作用を引き起こし、疾患の根本を治療しない。がんは、現在利用可能な治療法に対して依然として高い耐性を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、がんの治療のための改善されたmRNA治療薬を提供する。特に、本明細書に記載の方法は、がん免疫療法(immune-oncology)に有用な、免疫調節タンパク質またはペプチドをコードするmRNAの効果的なインビボ送達を提供する。
【0004】
一態様では、本発明は、とりわけ、がんを治療する方法であって、腫瘍のサイズが低減するまたは腫瘍の増殖が阻害されるような有効用量および投与間隔で脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドをコードするmRNAを含む組成物を、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、がんを治療する方法であって、腫瘍のサイズが低減するまたは腫瘍の増殖が阻害されるような有効用量および投与間隔で、1つ以上の脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドを各々コードする2つ以上のmRNAを含む組成物を、がんの治療を必要とする対象に、投与することを含み、2つ以上のmRNAのうちの少なくとも2つは、各々、他のmRNAとは異なるタンパク質またはペプチドをコードする、方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、2つ以上のmRNAは、第1の脂質ナノ粒子内に封入された第1のタンパク質またはペプチドをコードする第1のmRNAと、第2の脂質ナノ粒子で封入された第2のタンパク質またはペプチドをコードする第2のmRNAとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドのうちの少なくとも1つは、免疫反応を調節する。いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドのうちの少なくとも1つは、IL-12、IL-2、IL-6、IL-15、STING、MCP-3、GM-CSF、FLT-3L、NLRP3、IFN-γ、TNF-α、NLRP1、CCL5、またはそれらの組み合わせである。
【0008】
いくつかの実施形態では、2つ以上のmRNAのうちの2つは、それぞれIL-12およびSTINGをコードする。いくつかの実施形態では、2つ以上のmRNAは、それぞれSTING、IL-12、およびGM-CSFをコードする少なくとも3つのmRNAを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上のmRNAは、それぞれSTING、IL-12、FLT-3L、およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上のmRNAは、それぞれSTING、IL-12、NLRP3およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上のmRNAは、それぞれSTING、IL-12、IL-2およびGM-CSFをコードする少なくとも4つのmRNAを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、STINGは、STINGの変異体型である。いくつかの実施形態では、変異体形態は、STINGが構成的活性型になることを可能にする。
【0010】
いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドのうちの少なくとも1つは、免疫反応を調節しない。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、50%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、60%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、70%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、85%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、15%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、10%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、5%未満の対象における体重の変化率をもたらす。
【0013】
いくつかの実施形態では、対照は、治療をしていない同等の疾患状態を有する対象である。いくつかの実施形態では、対照は、組成物の投与前の対象の体重である。
【0014】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、および1つ以上のPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、コレステロールまたは1種以上のコレステロールベースの脂質を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の脂質ナノ粒子は、第1のカチオン性脂質を含み、第2の脂質ナノ粒子は、第2のカチオン性脂質を含み、第1のカチオン性脂質は、第2のカチオン性脂質とは異なる。
【0016】
いくつかの実施形態では、1種以上のカチオン性脂質は、cKK-E12、OF-02、C12-200、MC3、DLinDMA、DLinkC2DMA、ICE(イミダゾールベース)、HGT5000、HGT5001、HGT4003、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、DODMAおよびDMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin-K-DMA、DLin-K-XTC2-DMA、3-(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)-6-(4-((2-ヒドロキシドデシル)(2-ヒドロキシウンデシル)アミノ)ブチル)-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(ターゲット23)、3-(5-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ペンタン-2-イル)-6-(5-((2-ヒドロキシドデシル)(2-ヒドロキシウンデシル)アミノ)ペンタン-2-イル)-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(ターゲット24)、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1種以上のカチオン性脂質は、cKK-E12を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍内投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、皮内投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、肺内投与によって投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、噴霧によって投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、単回用量を注射することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、複数回用量を定期的に注射することを含む。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg~100mgのmRNAの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg~50mgのmRNAの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg~25mgのmRNAの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg~10mgのmRNAの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、1μg~1mgの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、1μg~100μgのmRNAの範囲である。
【0019】
いくつかの実施形態では、単回用量は、0.1μgであるか、または複数回用量は、0.1μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、0.3μgであるか、または複数回用量は、0.3μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、0.5μgであるか、または複数回用量は、0.5μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、1μgであるか、または複数回用量は、1μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、5μgであるか、または複数回用量は、5μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、10μgであるか、または複数回用量は、10μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、25μgであるか、または複数回用量は、25μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、50μgであるか、または複数回用量は、50μgである。いくつかの実施形態では、単回用量は、100μgであるか、または複数回用量は、100μgである。
【0020】
いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.01μg/kg~10mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.01μg/kg~8mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.01μg/kg~6mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.01μg/kg~5mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg/kg~5mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg/kg~1mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、約0.1μg/kg~0.5mg/kg(mRNA/体重)の範囲である。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、同じ投薬量のmRNAを含む。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、異なる投薬量のmRNAを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、1日~3週間の間隔で注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、毎日注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、3日間隔で注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、毎週注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、10日間隔で注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、隔週で注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、毎月注射される。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、隔月で注射される。
【0023】
いくつかの実施形態では、mRNAは、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、5’非翻訳領域(5’UTR)および/または3’非翻訳領域(3’UTR)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、5’非翻訳領域(5’UTR)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、3’非翻訳領域(3’UTR)を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対象においてT細胞を活性化する。いくつかの実施形態では、方法は、チェックポイント阻害剤を含む組成物を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、チェックポイント阻害剤を含む組成物を対象に投与することを含まない。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD1、PD-L1、CTLA-4、B7、BTLA、HVEM、TIM-3、GAL-9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、またはそれらの組み合わせを阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD1を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-L1を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、B7を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、BTLAを阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、HVEMを阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、TIM-3を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、GAL-9を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、LAG3を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、VISTAを阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、KIRを阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、2B4を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CD160を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CGEN-15049を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤はCHK1を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CHK2を阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、A2aRを阻害する。
【0025】
いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、同じ脂質ナノ粒子内に封入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、別個の脂質ナノ粒子内に封入される。
【0026】
一態様では、本発明は、がんを治療するための医薬組成物を提供し、それぞれIL-12、IL-2、IL-6、IL-15、STING、MCP-3、GM-CSF、FLT-3L、NLRP3、IFN-γ、TNF-α、NLRP1、CCL5、またはそれらの組み合わせをコードする1つ以上のmRNAを含み、この1つ以上のmRNAは、カチオン性脂質としてcKK-E12を含む少なくとも1つの脂質ナノ粒子を含む1種以上の脂質ナノ粒子内に封入される。
【0027】
いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、IL-12およびSTINGをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、およびGM-CSFをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、FLT-3L、およびGM-CSFをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、NLRP3、およびGM-CSFをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、IL-2およびGM-CSFをコードする。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、チェックポイント阻害剤をコードする追加のmRNAをさらに含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD1、PD-L1、CTLA-4、B7、BTLA、HVEM、TIM-3、GAL-9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、またはそれらの組み合わせを阻害する。
【0029】
いくつかの実施形態では、方法は、アスコパル(ascopal)効果をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、アブスコパル効果をもたらす。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、50%超の未治療腫瘍の腫瘍増殖阻害率をもたらす。
【0031】
いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、60%超、70%超、または80%超の未治療腫瘍の腫瘍増殖阻害率をもたらす。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、80%超、85%超、または90%超の未治療腫瘍の腫瘍増殖阻害率をもたらす。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法は、がんを有する対象の生存を増加させる。
【0034】
図面は、例示を目的とするものであり、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】インビボでの抗腫瘍活性における様々なmRNA-LNPの有効性に関する比較データを示すグラフである。表2に示すような用量および頻度に従って、MC38マウスへのmRNA-LNPの腫瘍内投与後、試験全体を通して各群の平均腫瘍体積を測定した。
【
図2】対照群であるA群と比較した、B~I群の平均腫瘍体積パーセントを示すグラフである。
【
図3】対照群であるA群と比較した、B~I群の腫瘍体積の平均阻害率を示すグラフである。
【
図4】46日目の各群における個々のマウスの腫瘍体積を示す散布図である。各群の平均腫瘍体積が示されている。
【
図5A】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5B】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5C】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5D】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5E】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5F】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5G】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5H】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図5I】各々A群(
図5A)、B群(
図5B)、C群(
図5C)、D群(
図5D)、E群(
図5E)、F群(
図5F)、G群(
図5G)、H群(
図5H)、およびI群(
図5I)の個々のマウスの腫瘍体積(mm
3)を示す一連の表である。平均値および標準偏差値が、最後の2行に示される。空白は死亡を示す。各群の標本サイズは10であった。
【
図6】1日目の体重と比較した、試験期間中の体重の平均変化率を示すグラフである。
【
図7】脂質封入された構成的活性型STING mRNA、陰性対照、またはビヒクル対照をMC38マウスがんモデルマウスに投与した後の腫瘍増殖を示すグラフである。
【
図8】1)脂質封入された構成的活性型STING mRNAおよび抗PD-1抗体、2)陰性対照mRNAおよび抗PD-1抗体、または3)ビヒクル対照を投与されたMC38がんマウスと比較する、1)脂質封入、構成的活性型STING mRNAおよびアイソタイプ対照抗体、2)陰性対照mRNAおよびアイソタイプ対照抗体、または3)ビヒクル対照の投与後のMC38がんマウスの生存を示す一連のグラフである。
【0036】
定義
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語および他の用語の追加の定義は、明細書全体を通して定められている。
【0037】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発育段階のヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発育段階の非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物には、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚、昆虫、および/または寄生虫が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであり得る。
【0038】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、目的とする1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、明記された参照値と同様の値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段明記されない限り、または文脈から別段明らかでない限り(そのような数が、可能性のある値の100%を超える場合を除いて)、明記された参照値のいずれかの方向(より大きいかまたはより小さい)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満内に収まる値の範囲を指す。
【0039】
送達:本明細書で使用される際に、「送達」という用語は、局所送達および全身送達の両方を包含する。例えば、mRNAの送達は、mRNAが標的組織に送達され、そのコードされたタンパク質が発現され、そしてその標的組織内で保持される状況(「局所分布」または「局所送達」とも称される)、mRNAが標的組織に送達され、そのコードされたタンパク質が発現され、そして患者の循環系(例えば、血清)内に分泌され、そして全身に分布され、他の組織によって取り込まれる状況(「全身分布」または「全身送達」とも称される)を包含する。
【0040】
封入:本明細書で使用される場合、「封入」という用語、または文法的等価物は、ナノ粒子内に個々のmRNA分子を閉じ込めるプロセスを指す。
【0041】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」とは、mRNAのポリペプチドへの翻訳、複数のポリペプチドのインタクトなタンパク質(例えば、酵素)への集合、および/またはポリペプチドもしくは完全に集合したタンパク質(例えば、酵素)の翻訳後修飾を指す。この用途において、用語「発現」および「産生」ならびに文法的等価物は互換的に使用される。
【0042】
半減期:本明細書で使用される場合、用語「半減期」は、核酸またはタンパク質の濃度または活性などの量が、ある期間の開始時に測定された値の半分まで下がるのに要する時間である。
【0043】
改善する、増加させる、または低減する:本明細書で使用される場合、「改善する」、「増加させる」、もしくは「低減させる」、または文法的同義語は、ベースライン測定、例えば、本明細書に記載の治療の開始前の同じ個体における測定、または本明細書に記載の治療の不在下での対照対象(または複数の対照対象)における測定と比較した値を示す。「対照対象」とは、治療されている対象と同じ疾患形態に罹患しており、治療されている対象とほぼ同じ年齢の対象である。
【0044】
インビトロ:本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、多細胞生物内というよりむしろ、人工環境下で、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養下などで生じる事象を指す。
【0045】
インビボ:本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物内で生じる事象を指す。細胞型系の文脈において、該用語は、生細胞内で生じる事象を意味するのに(例えば、インビトロ系の対語として)使用され得る。
【0046】
局所分布または局所送達:本明細書において使用される場合、「局所分布」、「局所送達」という用語、または文法的等価物は、組織特異的な送達または分布を指す。典型的には、局所分布または局所送達は、細胞内で翻訳および発現される、または分泌が限定的で、患者の循環系へ入ることを回避する、mRNAにコードされるタンパク質(例えば酵素)を必要とする。
【0047】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA(mRNA)」という用語は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。本明細書で使用されるmRNAは、修飾および未修飾の両方のRNAを包含する。mRNAは1つ以上のコード領域および非コード領域を含み得る。mRNAは、自然源から精製されてもよく、組換え発現系を用いて産生されてもよく、また任意選択的に精製、化学合成などをされてもよい。必要に応じて、例えば、化学合成された分子の場合、mRNAは、化学修飾された塩基または糖類、骨格修飾などを有する類似体といった、ヌクレオシド類似体を含み得る。mRNA配列は、別途指示されない限り、5’から3’の方向に提示される。いくつかの実施形態では、mRNAは、天然のヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン);化学的に修飾された塩基;生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基);介在塩基(intercalated base);修飾された糖類(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース);ならびに/または修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホルアミダイト結合)を含む。
【0048】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療目的のために、提供される組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な患者には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトなどの哺乳動物)が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。ヒトには、出生前形態および出生後形態が含まれる。
【0049】
薬学的に許容される:本明細書で使用される際に、用語「薬学的に許容される」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、炎症刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的なベネフィット/リスクの比率に相応で、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用することに適した物質を指す。
【0050】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトには、出生前形態および出生後形態が含まれる。多くの実施形態では、対象は、ヒトである。対象は、患者であり得、疾患の診断または治療のために医療提供者を受診するヒトを指す。「対象」という用語は、本明細書で「個体」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患または障害に罹患し得るか、またはそれに罹り易いが、疾患または障害の症状を呈する場合も呈さない場合もある。
【0051】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的とする特徴または特性の全またはほぼ全範囲または程度を呈する質的状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的現象が、完了すること、および/または完了に至ること、または絶対的結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしてもめったにないことを理解するであろう。したがって、用語「実質的に」は、本明細書において、多くの生物学的および化学的現象に固有の潜在的な完全性の欠如を捉えるのに用いられる。
【0052】
全身分布または全身送達:本明細書で使用される場合、「全身分布」、「全身送達」という用語、または文法的同義語は、全身または生物全体に影響する送達または分布機構またはアプローチを指す。典型的には、全身分布または全身送達は、身体の循環系、例えば、血流を介して成し遂げられる。「局所分布または局所送達」の定義と比較される。
【0053】
標的組織:本明細書で使用される場合、「標的組織」という用語は、治療される疾患に影響される任意の組織を指す。いくつかの実施形態では、標的組織には、疾患に関連する病態、症状、または特徴を呈する組織が含まれる。
【0054】
治療有効量:本明細書で使用される場合、治療薬の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または状態に罹患しているか、またはそれに罹り易い対象に投与されたときに、その疾患、障害、および/または状態の症状を治療する、診断する、予防する、および/またはその発症を遅延させるのに十分な量を意味する。当業者であれば、治療有効量が、典型的には、少なくとも1つの単位用量を含む投薬レジメンにより投与されることを理解する。
【0055】
治療すること:本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、特定の疾患、障害、および/もしくは状態の1つ以上の症状もしくは特徴を部分的にまたは完全に緩和する、改善する、軽減する、抑制する、予防する、その発症を遅延させる、その重症度を低減する、および/またはその発生率を低減するために使用される任意の方法を指す。治療は、疾患の徴候を呈していない対象、および/または疾患の初期の徴候のみを呈している対象に、その疾患に関連する病態を発症させるリスクを減少させることを目的として施され得る。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、がんの治療のための改善されたmRNA治療薬を提供する。特に、本明細書に開示される方法は、有効用量および投与間隔にて、免疫反応を直接的または間接的に調節するタンパク質またはペプチドをコードする1つ以上のmRNAを含む組成物を投与することによって、それを必要とする対象における腫瘍のサイズ、質量、および/または体積を低減または減少させるか、または腫瘍増殖を阻害または遅延させるのに有効である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、生存を増加させる。
【0057】
本発明の様々な態様は、以下のセクションで詳細に記載される。セクションの使用は、本発明を限定することを意味しない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、「または」の使用は、別段の記述がない限り、「および/または」を意味する。
【0058】
がん
がん細胞は、非がん性細胞または組織によっては一般的に発現しない抗原を発現する。これらのがん抗原は、ウイルス抗原と同様の様式で、すなわち抗原を異質として分類するMHC-1分子と関連して、抗原提示細胞(APC)によって提示されないが、細胞傷害性T細胞は、変異型自己抗原を分化し特定することが可能で、変異型抗原を有する細胞を捜して破壊する固有の特性を有する。したがって、がんの免疫療法の1つの目的は、変異型抗原に対して向けられる細胞傷害性T細胞の最適な活性化を達成することである。本発明による方法および組成物は、腫瘍細胞を破壊するために必要な免疫反応を生成するために、対象自身の細胞傷害性T細胞を誘導するのに有効である。
【0059】
正常な組織の恒常性は、高度に制御された細胞増殖および細胞死のプロセスである。細胞または細胞死の増殖の不均衡は、がん性状態となり得る(Solyaniket al.,1995、Stokkeet al.,1997、Mumbyand Walter,1991、Natoliet al.,1998、Magi-Galluzziet al.,1998)。例えば、子宮頸がん、腎臓がん、肺がん、膵がん、結腸直腸がんおよび脳がんは、発生する可能性のある多くのがんのほんの一例である(Erlandsson,1998、Kolmel,1998、Mangrayand King,1998、Gertig and Hunter,1997、Mouginet al.,1998)。実際にはがんの発生は非常に高いため、米国では年間50万人以上の死者が、がんに起因する。
【0060】
細胞増殖および細胞死の維持は、がん原遺伝子によって少なくとも部分的に調節されている。がん原遺伝子は、細胞増殖を誘導するタンパク質(例えば、sis、erbB、src、rasおよびmyc)、細胞増殖を阻害するタンパク質(例えば、Rb、p53、NF1およびWT1)、またはプログラム細胞死(例えばbcl-2)を調節するタンパク質をコードすることができる(Ochiet al.,1998、Johnson and Hamdy,1998、Liebermannet al.,1998)。しかしながら、これらのがん原遺伝子に対する遺伝子再配列または変異は、がん原遺伝子をがんを引き起こす強力ながん遺伝子に変換させる。多くの場合、単一の点変異が、がん原遺伝子をがん遺伝子に変換するのに十分である。例えば、K-ras遺伝子におけるコドン12または13の変異は、がん原遺伝子をがん遺伝子に変換することができる。
【0061】
現在、多くの一般的ながんの治療に有効な選択肢はほとんどない。特定の個人に対する治療の方針は、診断、疾患が発症した段階、および患者の年齢、性別および全体的な健康などの要因によって異なる。がん治療の最も通常の選択肢は、手術、放射線療法と化学療法である。手術はがんの診断と治療において重要な役割を果たす。典型的には、生検およびがん性増殖の除去には外科的アプローチが必要である。ただし、がんが転移し、広範囲に広がっている場合、手術では治癒する可能性が低く、別のアプローチを取る必要がある。放射線療法、化学療法および免疫療法は、がんの外科的治療にかわるものである(Mayer,1998、Ohara 1998、Hoet al.,1998)。放射線療法は、高エネルギー放射線を正確に標的にしてがんを破壊することを含み、外科手術の細胞と同様に、転移ではなく、主に局在性がん細胞の治療に有効である。放射線療法の副作用には、皮膚刺激、嚥下困難、口渇、悪心、下痢、抜け毛と活力の喪失が含まれる(Curran,1998、Brizel,1998)。
【0062】
抗がん剤によるがん治療である化学療法は、がん治療の別の方法である。すべての固形腫瘍(el-Kareh and Secomb,1997)で薬物投与を達成することは困難であるため、抗がん剤療法の有効性はしばしば制限される。化学療法戦略は、固形腫瘍の増殖に基づき、標的のがん細胞が急速に分裂しているところから抗がん剤が選択される。ほとんどの化学療法アプローチは、様々ながんの奏効率を高めることが示されている複数の抗がん剤の組み合わせが含まれる。化学療法薬の主な副作用は、正常な組織細胞にも影響を及ぼし、細胞が急速に分裂して影響を受ける可能性が高いことである(例えば、骨髄、消化管、生殖系、および毛包)。化学療法薬の他の副作用は口の中の潰瘍、嚥下困難、口渇、悪心、下痢、嘔吐、疲労、出血、脱毛および感染症である。その他の形態の化学療法は、非がん性過剰増殖性障害を治療するために使用することができる。これらは、関節リウマチおよび乾癬などの過剰増殖性疾患のためのメトトレキサートおよびシクロホスファミドなどの従来の化学療法剤の使用を含む。足(paw)化学療法増殖性疾患はまた、ステロイド、アザチオプリン、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、およびフマル酸誘導体などの免疫調節剤も含むことができる。
【0063】
がん研究の急速に発展している分野である免疫療法は、特定の種類のがんを治療するためのさらに別の選択肢である。例えば、免疫系は、腫瘍細胞を異質物として識別し、したがって、免疫系による破壊の標的として選択される。残念なことに、応答は通常、ほとんどの腫瘍増殖を防ぐのに十分ではない。しかしながら、最近では、免疫療法の分野で、免疫系の天然防御機構を増強または補完する方法を開発することに焦点が当てられている。
【0064】
前述したように、がん原遺伝子はがん生物学において重要な役割を果たしている。例えば、Rb腫瘍抑制因子、p53、NF1、およびWT1は、細胞の非腫瘍形成表現型の維持に不可欠である(Soddu and Sacchi,1998による概説)。全がんの約50%が、p53遺伝子の変異と関連し、腫瘍抑制因子p53としての特性が喪失されることが分かっている(Levine et al.,1991、Vogelstein and Kinzler,1992、Hartmann et al,1996a、Hartmann et al,1996b)を参照されたい。がんにおけるp53遺伝子の変異の発生率が高いため、多くの研究グループが、遺伝子導入または置換を介したがん治療の経路としてp53を調査するようになった。細胞増殖を誘発するタンパク質をコードするsisがん原遺伝子、erbB、src、ras、およびmyc、ならびにプログラム細胞死を調節するBcl-2ファミリーのがん原遺伝子もまた、細胞の非腫瘍形成表現型において重要な役割を果たしている。
【0065】
いくつかの実施形態では、がんは、頭部がん、頸部がん、卵巣がん、乳がん、結腸がん、前立腺がん、肝がん、白血病、神経膠腫、黒色腫、膵がん、精巣がん、黒色腫、膀胱がん、肺がん、肉腫、扁平上皮がん、小細胞肺がん、乳腺管がん、乳腺浸潤性小葉型がん、乳管内がん、乳腺粘液がん、末梢血中の前骨髄球性白血病、卵巣腺がん、腹腔内に転移した卵巣腺がん、前立腺腺がん、膀胱移行上皮がん、膵管の類上皮がん(an epitheliod carcinoma in a pancreatic duct)、膵管の腺がん、子宮頸部上皮の腺がん、子宮頸がん、消化器がん、泌尿生殖器がん、脳がん、中皮腫、腎細胞がん、婦人科系がん、または子宮内膜がんである。
【0066】
がん治療
一態様では、本発明は、がんを治療する方法を提供する。本明細書に開示される方法は、有効用量および投与間隔にて、免疫反応を直接的または間接的に調節するタンパク質またはペプチドをコードする1つ以上のmRNAを含む組成物を投与することによって、それを必要とする対象における腫瘍のサイズ、質量、および/または体積を低減または減少させるか、または腫瘍増殖を阻害または遅延させるのに有効である。本明細書に開示される方法はまた、対象の生存を増加させるのに有効である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、がんに罹患する対象の生存を、約1か月~12か月、1年および5年、5年および10年、10年および15年間、増加させることができる。
【0067】
一態様では、本発明は、がん免疫療法(IO)に有用な免疫調節タンパク質またはペプチドをコードするmRNAの投与を介してがんを治療する方法に関する。免疫調節タンパク質またはペプチドには、インターロイキン1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15/15R、IL-18、IL-21、IL-27、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-Iβ、MIP-la、単球走化性タンパク質(MCP)-1 MCP-3、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、RANTES(CCL5)、インターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、分化抗原群(cluster of differentiation)(CD)80、CD86、EFNα、IFNp、IFN、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、NLRファミリーパイリンドメイン含有1(NLRP1)、NLRP3、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)、黒色腫2(AIM2)に存在しない、パイリン、IFN誘導性タンパク質16(IFI16)、およびOX40Lを含む。
【0068】
腫瘍サイズ
本明細書に開示されるがんを治療する方法は、対照と比較して、それを必要とする対象における腫瘍のサイズを低減させるのに有効である。いくつかの実施形態では、対照は、同等の疾患状態を有する未治療の対象である。いくつかの実施形態では、対照は、治療前の対象である。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも5%~99%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも5%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも10%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも15%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも20%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも25%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも30%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも35%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも40%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも45%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも50%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも60%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも70%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも80%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも85%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも90%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも95%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、腫瘍のサイズを少なくとも99%低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、腫瘍の消失をもたらす。
【0069】
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与1日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与2日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与4日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与5日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与7日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与10日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与12日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与15日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与18日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与20日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与25日後に腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、投与30日後に腫瘍のサイズを低減させる。
【0070】
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、治療期間中、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、5日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、7日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、10日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、15日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、20日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、25日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、30日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、35日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、40日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、45日間、対照と比較して腫瘍サイズの低減をもたらす。
【0071】
腫瘍増殖阻害
本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、腫瘍の増殖を阻害するまたは遅延させるのに有効である。腫瘍増殖阻害率は、次のように計算される:(平均(C)-平均(T))/平均(C)*100%、式中、Tは試験群腫瘍体積であり、Cは対照群腫瘍体積であり、対照は未治療の対象である。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して5%~99%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して5%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して10%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して15%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して20%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して25%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して30%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して35%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して40%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して45%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して50%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して60%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して70%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して75%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して85%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して95%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、対照と比較して99%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の1日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の3日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の5日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の15日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の25日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の30日後に腫瘍増殖の阻害をもたらす。
【0073】
いくつかの実施形態では、組成物の投与は、治療期間中、対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、1日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、5日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、7日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、10日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、15日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、20日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、25日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、30日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、35日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、40日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、45日間対照と比較して、腫瘍増殖の阻害をもたらす。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の5日後に対照と比較して、50%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、50%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の5日後に対照と比較して、60%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、60%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、50%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の5日後に対照と比較して、70%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、70%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、70%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の5日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の10日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の15日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の25日後に対照と比較して、80%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、85%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の15日後に対照と比較して、85%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、85%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の25日後に対照と比較して、85%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の15日後に対照と比較して、90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の25日後に対照と比較して、90%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の7日後に対照と比較して、95%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の15日後に対照と比較して、95%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の20日後に対照と比較して、95%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。いくつかの実施形態では、方法は、初回用量の投与の25日後に対照と比較して、95%超の腫瘍増殖阻害率をもたらす。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される組成物を投与することによって、抗腫瘍効果(例えば、T細胞増殖を誘導する、腫瘍にT細胞浸潤を誘導する、メモリーT細胞応答を誘導する、K細胞の数を増加させるなど)を促進するのに有効である。一実施形態では、本発明は、T細胞の活性化を必要とする対象においてT細胞を活性化する方法、T細胞増殖の誘導を必要とする対象においてT細胞増殖を誘導する方法、腫瘍にT細胞浸潤の誘導を必要とする対象の腫瘍にT細胞浸潤を誘導する方法、および/またはメモリーT細胞応答の誘導を必要とする対象においてメモリーT細胞応答を誘導する方法であって、本明細書に開示される組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与は、対象においてT細胞を活性化する。T細胞活性化は、当該技術分野で公知の任意の方法で特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、活性化T細胞は、CD4を発現する。いくつかの実施形態では、活性化T細胞は、CD8を発現する。特定の実施形態では、活性化T細胞は、CD4およびCD8を発現する。特定の実施形態では、活性化T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方を含む。いくつかの実施形態では、T細胞活性化は、腫瘍浸潤性T細胞の数を増加させることを含む。特定の実施形態では、腫瘍内の腫瘍浸潤性T細胞の数が、組成物の投与前の腫瘍内の腫瘍浸潤性T細胞の数と比較して、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍増加している。
【0076】
体重変化
体重減少は、がんの対象によくみられる。体重減少を含む副作用の緩和は、がんのケアと治療の重要な部分である。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して60%~1%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、対照は、組成物の投与前の対象の体重である。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、60%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、50%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、40%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、30%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、25%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、20%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、15%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、10%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、5%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、1%未満の対象における体重の変化率をもたらす。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、対照と比較して、対象における体重の実質的に変化をもたらさない。
【0077】
完全奏功
がん治療では、長期的な有効性が別の重要な要素である。いくつかの実施形態では、本方法は、完全寛解、部分寛解、安定的疾患、部分奏功、または完全奏功をもたらす。いくつかの実施形態では、完全奏功は、がんの徴候が消失しているか、または腫瘍増殖の阻害が維持されていることを意味する。いくつかの実施形態では、部分奏功は、治療に応答して複数の腫瘍の損傷の程度が、低減していることを意味する。完全奏功率は、組成物の投与後に完全奏功を示す対象のパーセンテージである。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、50%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、60%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、70%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、80%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、85%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、90%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、95%超である。いくつかの実施形態では、完全奏効率は、99%超である。
【0078】
用量および投与間隔
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は、主として、本発明のワクチン組成物に含まれるmRNAの総量に基づいている。概して、治療有効量は、対象に対して意義のある利益(例えば、がんまたはその症状を治療、調節、治癒、阻害予防するおよび/または遅延させる)を達成するのに十分な量である。例えば、治療有効量は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するのに十分な量であり得る。概して、治療を必要とする対象に投与される治療剤(例えば、治療用タンパク質またはペプチドをコードするmRNA)の量は、その対象の特徴によって異なる。このような特徴には、対象の状態、疾患重篤度、全般的健康、年齢、性別および体重が含まれる。当業者は、これらおよび他の関連因子に応じて適切な投薬量を容易に決定することができるであろう。さらに、最適な投薬量範囲を特定するために、客観的および主観的アッセイの両方を任意に用いることができる。
【0079】
mRNAを含む送達ビヒクルは、対象の臨床状態、投与の部位および投与方法(例えば、腫瘍内、静脈内、および注射によるものを含む、局所的および全身的)、投与スケジュール、対象の年齢、性別、体重、ならびに当該技術分野の臨床医に関連する他の要因を考慮して、現在の医療行為に従い投与および投薬され得る。本明細書における目的に適う「有効量」は、実験臨床研究、薬理学、臨床、および医療分野の当業者に既知のこうした関連する考慮すべき事項により決定され得る。いくつかの実施形態では、投与される量は、症状の少なくともいくらか安定化、改善、または排除(例えば、腫瘍サイズの低減および/または腫瘍増殖の阻害)を、ならびに当業者によるがんの進行、退行、または改善の適切な尺度として選択される他の指標を、達成するのに有効である。
【0080】
いくつかの実施形態では、方法は、単回用量を注射することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、複数回用量を定期的に注射することを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、好適な用量は、0.1μg~100mgのmRNAの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、0.1μg~50mgの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、0.1μg~25mgの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、0.1μg~10mgの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、1μg~1mgの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、1μg~100μgのmRNAの範囲である。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、0.1μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、0.3μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、0.5μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、1μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、5μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、7.5μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、10μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、15μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、20μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、25μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、30μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、40μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、50μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、100μgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、1mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、5mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、7.5mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、10mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、20mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、30mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、50mgである。いくつかの実施形態では、単回用量または複数回用量は、100mgである。
【0082】
いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~500mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~400mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~300mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~200mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~100mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~90mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~80mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~70mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~60mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~50mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~40mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~30mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~25mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~20mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~15mgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.005mg~10mgの範囲である。
【0083】
いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.1mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約0.5mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約1.0mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約3mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約5mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約10mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約15mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約20mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約30mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約40mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約50mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約60mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約70mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約80mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約90mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約100mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約150mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約200mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約250mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約300mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約350mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約400mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約450mgより大きい。いくつかの実施形態では、組成物の治療有効用量は、体重1kg当たり、約500mgより大きい。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、体重1kg当たり、1.0mgである。いくつかの実施形態では、体重1kg当たり、1.0mgの治療有効用量が、皮下、筋肉内または静脈内に投与される。
【0084】
本発明の提供される方法は、本明細書に記載される治療剤の治療有効量の単回投与ならびに複数回投与を企図する。組成物は、腫瘍のサイズ、転移の進行、またはがんの病期など、対象の状態の性質、重症度および程度に応じて、一定の間隔で投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物の治療有効量は、一定の間隔で(例えば、毎日、週に2回、4日に1回、週に1回、10日に1回、隔週、毎月、隔月、月2回、30日に1回、28日に1回、または連続的に定期的に投与されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、提供されるリポソームおよび/または組成物は、その中に含まれるmRNAの徐放に適するように製剤化される。こうした徐放性組成物は、投薬間隔を延長させて対象に適宜投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1日2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、1日2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、毎日対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、1日おきに対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、週に2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、週に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、7日に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、10日に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、14日に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、28日に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、30日に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、2週間に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、3週間に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、4週間に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、月に2回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、6週間に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、8週間に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、隔月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、3か月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、4か月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、6か月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、8か月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、9か月に1回対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、毎年対象に投与される。長期間にわたるmRNAの送達または放出のいずれかを行うために、デポー投与(例えば、筋肉内、皮下、硝子体内)用に製剤化される組成物およびリポソームも企図される。好ましくは、採用される徐放手段は、安定性を強化するためにmRNAに施される修飾と組み合わされる。
【0086】
治療有効量は、複数の単位用量を含み得る投薬レジメンで一般的に投与される。任意の特定のワクチンについて、治療有効量および投与間隔(および/または有効な投薬レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路に応じて、他の医薬品との組み合わせに応じて変化し得る。また、任意の特定の患者に固有の治療有効量(および/または単位用量)は、治療される障害および障害の重篤度;採用される特定のワクチン剤の活性;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食事;投与時間、投与経路、および/または採用される特定のタンパク質の排出または代謝速度;治療期間;ならびに医療分野において周知の類似要因を含む様々な要因に依存し得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、初回用量と後続の用量とは、同じ量である。いくつかの実施形態では、初回用量と後続の用量とは、異なる量である。いくつかの実施形態では、初回用量は、後続の用量よりも大きい。いくつかの実施形態では、初回用量は、後続の用量よりも少ない。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、同じ投薬量のmRNAを含む。いくつかの実施形態では、複数回用量の各々は、異なる投薬量のmRNAを含む。
【0088】
発明の組成物
一態様では、本発明は、脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドをコードする1つ以上のmRNAを含む組成物の投与を介してがんを治療する方法に関する。一態様では、本発明は、それぞれ免疫調節タンパク質またはペプチドをコードする1つ以上のmRNAを含み、1つ以上のmRNAが脂質ナノ粒子内に封入される、がんを治療するための医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上のチェックポイント阻害剤をコードする2つ以上のmRNAを含む。
【0089】
mRNA
いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、がん免疫療法(IO)に有用な免疫調節タンパク質またはペプチドをコードする。免疫調節タンパク質またはペプチドには、インターロイキン1(IL-1)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15/15R、IL-18、IL-21、IL-27、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-Iβ、MIP-la、単球走化性タンパク質(MCP)-1 MCP-3、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、RANTES(CCL5)、インターフェロン(IFN)-γ、腫瘍壊死因子(TNF)-α、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、分化抗原群(cluster of differentiation)(CD)80、CD86、EFNα、IFNp、IFN、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、NLRファミリーパイリンドメイン含有1(NLRP1)、NLRP3、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)、黒色腫2(AIM2)に存在しない、パイリン、IFN誘導性タンパク質16(IFI16)、およびOX40Lを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、コドン最適化されている。いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされるタンパク質またはペプチドは、野生型である。いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされるタンパク質またはペプチドは、変異または修飾を含有する。いくつかの実施形態では、STINGは、R293M変異を含有する。いくつかの実施形態では、NLRP3は、D301N変異を含有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされるタンパク質またはペプチドは、免疫反応を調節する。いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドは、断片または完全長サイトカインである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-1である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-2である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-3である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-4である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-5である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-6である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-7である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-8である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-10である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-11である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-12である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-13である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-15/15Rである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-18である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-21である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IL-27である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、MIP-Iβである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、MIP-laである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、単球走化性タンパク質(MCP)-1である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、MCP-3である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、M-CSFである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、GM-CSFである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、RANTESまたはCCL5である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IFN-γである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、TNF-αである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、G-CSFである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、CD80である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、CD86である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、EFNαである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IFNpである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IFNである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、FLT3Lである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、NLRP1である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、NLRP3である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、STINGである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、AIM2である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、パイリンである。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、IFI16である。いくつかの実施形態では、好適なタンパク質またはペプチドは、OX40Lである。
【0092】
いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、IL-12およびSTINGをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、およびGM-CSをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、FLT-3L、およびGM-CSFをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、NLRP3、およびGM-CSFをコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、STING、IL-12、IL-2およびGM-CSFをコードする。
【0093】
一態様では、本発明は、がんを治療する方法であって、腫瘍のサイズが低減するまたは腫瘍の増殖が阻害されるような有効用量および投与間隔で、脂質ナノ粒子内に封入されたタンパク質またはペプチドを各々コードする2つ以上のmRNAを含む組成物を、がんの治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、この2つ以上のmRNAは各々、免疫調節酵素および/またはチェックポイント阻害剤をコードする。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD1、PD-L1、CTLA-4、B7、BTLA、HVEM、TIM-3、GAL-9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、またはそれらの組み合わせを阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、PD1を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、PD-L1を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、CTLA-4を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、B7を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、BTLAを阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、HVEMを阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、TIM-3を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、GAL-9を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、LAG3を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、VISTAを阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、KIRを阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、2B4を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、CD160を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、CGEN-15049を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、CHK1を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、CHK2を阻害する。いくつかの実施形態では、適切なチェックポイント阻害剤は、A2aRを阻害する。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD1、PD-L1、CTLA-4、B7、BTLA、HVEM、TIM-3、GAL-9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、またはそれらの組み合わせに対する拮抗薬である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗体またはその断片である。いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、ヒト化されている。いくつかの実施形態では、組成物は、チェックポイント阻害剤を含む。
【0094】
mRNAの合成
本発明によるmRNAは、様々な既知の方法のうちのいずれかに従って合成され得る。例えば、本発明によるmRNAは、インビトロ転写(IVT)を介して合成され得る。簡潔に述べると、IVTは多くの場合、プロモーターを含む直線状または環状のDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTTおよびマグネシウムイオンを含み得る緩衝系、ならびに適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、またはSP6 RNAポリメラーゼ)、DNAseI、ピロホスファターゼ、ならびに/またはRNAse阻害剤を用いて行われる。正確な条件は、具体的な用途によって変動するであろう。
例示的なmRNAのコンストラクト設計
コンストラクト設計:
X-mRNAコード領域-Y
5’および3’UTR配列:
X(5’UTR配列)=
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGACCUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCCGGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAGUGACUCACCGUCCUUGACACG(配列番号1)
Y(3’UTR配列)=
CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU(配列番号2)
または
GGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAAGCU(配列番号3)
【0095】
本発明を使用して、様々な長さのmRNAを送達することができる。いくつかの実施形態では、本発明を使用して、長さ約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、または20kb以上のインビトロで合成されたmRNAを送達することができる。いくつかの実施形態では、本発明を使用して、長さ約1~20kb、約1~15kb、約1~10kb、約5~20kb、約5~15kb、約5~12kb、約5~10kb、約8~20kb、または約8~15kbの範囲のインビトロで合成されたmRNAを送達することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明によるmRNAの調製のために、DNA鋳型がインビトロで転写される。好適なDNA鋳型は、典型的には、インビトロ転写のためのプロモーター、例えば、T3、T7、またはSP6プロモーター、続いて、所望のmRNAの所望のヌクレオチド配列および終結シグナルを有する。
【0097】
SP6 RNAポリメラーゼを使用するmRNAの合成
いくつかの実施形態では、mRNAは、SP6 RNAポリメラーゼを使用して産生される。SP6 RNAポリメラーゼは、SP6プロモーター配列に対して高い配列特異性を有するDNA依存性RNAポリメラーゼである。SP6ポリメラーゼは、そのプロモーターの下流にある一本鎖DNAまたは二本鎖DNAのいずれかで、RNAの5’→3’インビトロ合成を触媒し、天然リボヌクレオチドおよび/または修飾リボヌクレオチドおよび/または標識リボヌクレオチドを重合転写物に組み込む。かかる標識リボヌクレオチドの例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、アミノアリル、および同位体標識ヌクレオチドが挙げられる。
【0098】
バクテリオファージSP6 RNAポリメラーゼの配列は、最初に以下のアミノ酸配列を有するものとして記載されていた(GenBank:Y00105.1)。MQDLHAIQLQLEEEMFNGGIRRFEADQQRQIAAGSESDTAWNRRLLSELIAPMAEGIQAYKEEYEGKKGRAPRALAFLQCVENEVAAYITMKVVMDMLNTDATLQAIAMSVAERIEDQVRFSKLEGHAAKYFEKVKKSLKASRTKSYRHAHNVAVVAEKSVAEKDADFDRWEAWPKETQLQIGTTLLEILEGSVFYNGEPVFMRAMRTYGGKTIYYLQTSESVGQWISAFKEHVAQLSPAYAPCVIPPRPWRTPFNGGFHTEKVASRIRLVKGNREHVRKLTQKQMPKVYKAINALQNTQWQINKDVLAVIEEVIRLDLGYGVPSFKPLIDKENKPANPVPVEFQHLRGRELKEMLSPEQWQQFINWKGECARLYTAETKRGSKSAAVVRMVGQARKYSAFESIYFVYAMDSRSRVYVQSSTLSPQSNDLGKALLRFTEGRPVNGVEALKWFCINGANLWGWDKKTFDVRVSNVLDEEFQDMCRDIAADPLTFTQWAKADAPYEFLAWCFEYAQYLDLVDEGRADEFRTHLPVHQDGSCSGIQHYSAMLRDEVGAKAVNLKPSDAPQDIYGAVAQVVIKKNALYMDADDATTFTSGSVTLSGTELRAMASAWDSIGITRSLTKKPVMTLPYGSTRLTCRESVIDYIVDLEEKEAQKAVAEGRTANKVHPFEDDRQDYLTPGAAYNYMTALIWPSISEVVKAPIVAMKMIRQLARFAAKRNEGLMYTLPTGFILEQKIMATEMLRVRTCLMGDIKMSLQVETDIVDEAAMMGAAAPNFVHGHDASHLILTVCELVDKGVTSIAVIHDSFGTHADNTLTLRVALKGQMVAMYIDGNALQKLLEEHEVRWMVDTGIEVPEQGEFDLNEIMDSEYVFA(配列番号4)。
【0099】
本発明に適したSP6 RNAポリメラーゼは、バクテリオファージSP6 RNAポリメラーゼと実質的に同じポリメラーゼ活性を有する任意の酵素であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、本発明に適したSP6 RNAポリメラーゼは、配列番号4から改変される。例えば、好適なSP6 RNAポリメラーゼは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、または付加を含有してもよい。いくつかの実施形態では、好適なSP6 RNAポリメラーゼは、配列番号4と約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、75%、70%、65%、または60%同一または相同であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、好適なSP6 RNAポリメラーゼは、トランケートタンパク質(N末端、C末端、または内部から)であるが、ポリメラーゼ活性は保持されるものであってもよい。いくつかの実施形態では、好適なSP6 RNAポリメラーゼは融合タンパク質である。
【0100】
本発明に適したSP6 RNAポリメラーゼは、例えば、Aldevron、Ambion、New England Biolabs(NEB)、Promega、およびRocheからの市販製品であってもよい。SP6は、本明細書に記載される配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4のバリアントに従って、市販の供給源もしくは非市販の供給源から注文および/またはカスタム設計されてもよい。SP6は、標準忠実度のポリメラーゼであってもよく、または、RNAポリメラーゼ活性を促進するために改変された(例えば、SP6 RNAポリメラーゼ遺伝子の変異、またはSP6 RNAポリメラーゼ自体の翻訳後修飾)高忠実度/高効率/高能力のものであってもよい。こうした改変SP6の例としては、AmbionのSP6 RNA Polymerase-Plus(商標)、NEBのHiScribe SP6、およびPromegaのRiboMAX(商標)およびRiboprobe(登録商標)システムが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、好適なSP6 RNAポリメラーゼは融合タンパク質である。例えば、SP6 RNAポリメラーゼは、酵素の単離、精製、または溶解性を促進するための1つ以上のタグを含み得る。適切なタグは、N末端、C末端、および/または内部に配置され得る。好適なタグの非限定的な例としては、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)、Fasciola hepatica 8-kDa抗原(Fh8)、FLAGタグペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジンタグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグ(His6))、マルトース結合タンパク質(MBP)、N-利用物質(NusA)、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)融合タグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(STREP)、タンデムアフィニティ精製(TAP)、およびチオレドキシン(TrxA)が挙げられる。本発明では他のタグを使用することができる。これらおよび他の融合タグは、例えば、Costa et al.Frontiers in Microbiology 5(2014):63およびPCT/US16/57044に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、Hisタグは、SP6のN末端に位置する。
【0102】
SP6プロモーター
SP6 RNAポリメラーゼによって認識され得る任意のプロモーターが、本発明で使用され得る。典型的には、SP6プロモーターは、5’ATTTAGGTGACACTATAG-3’(配列番号5)を含む。SP6プロモーターのバリアントは、そのプロモーターに対するSP6の認識および/または結合を最適化するように発見および/または作製されている。非限定的なバリアントには、以下が含まれるが、これらに限定されない。5’-ATTTAGGGGACACTATAGAAGAG-3’、5’-ATTTAGGGGACACTATAGAAGG-3’、5’-ATTTAGGGGACACTATAGAAGGG-3’、5’-ATTTAGGTGACACTATAGAA-3’、5’-ATTTAGGTGACACTATAGAAGA-3’、5’-ATTTAGGTGACACTATAGAAGAG-3’、5’-ATTTAGGTGACACTATAGAAGG-3’、5’-ATTTAGGTGACACTATAGAAGGG-3’、5’-ATTTAGGTGACACTATAGAAGNG-3’、および5’-CATACGATTTAGGTGACACTATAG-3’(配列番号6~配列番号15)。
【0103】
さらに、本発明に適したSP6プロモーターは、配列番号5~配列番号15のうちのいずれか1つと約95%、90%、85%、80%、75%、または70%同一または相同であり得る。さらに、本発明に有用なSP6プロモーターは、本明細書に記載されるプロモーター配列のいずれかに対して、1つ以上の追加のヌクレオチド5’および/または3’を含み得る。
【0104】
DNA鋳型
典型的には、DNA鋳型は、完全に二本鎖であるか、または二本鎖SP6プロモーター配列を有するほぼ一本鎖のいずれかである。
【0105】
線形化プラスミドDNA(1つ以上の制限酵素を介して線形化)、線形化ゲノムDNA断片(制限酵素および/または物理的手段を介して)、PCR産物、および/または合成DNAオリゴヌクレオチドは、転写されるDNA配列の上流に(および正しい向きで)二本鎖SP6プロモーターを含有することを条件に、SP6を用いたインビトロ転写の鋳型として使用することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、線形化DNA鋳型は、平滑末端を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、転写されるDNA配列は、より効率的な転写および/または翻訳を促進するために最適化されてもよい。例えばDNA配列は、シス調節エレメント(例えば、TATAボックス、終結シグナル、およびタンパク質結合部位)、人工組換え部位、Chi部位、CpGジヌクレオチド含量、ネガティブCpGアイランド、GC含量、ポリメラーゼのずれ部位、および/もしくは転写に関連する他の要素に関して最適化することができ;DNA配列は、隠れた(cryptic)スプライス部位、mRNA二次構造、mRNAの安定的な自由エネルギー、反復配列、RNA不安定性モチーフ、および/もしくはmRNAの処理と安定性に関連する他の要素に関して最適化することができ;DNA配列は、コドン使用頻度バイアス、コドン適応性、内部Chi部位、リボソーム結合部位(例えば、IRES)、早期(premature)ポリA部位、Shine-Dalgarno(SD)配列、および/もしくは翻訳に関連するその他の要素に関して最適化することができ;ならびに/またはDNA配列は、コドンコンテキスト、コドン-アンチコドン相互作用、翻訳休止部位(translational pause site)、および/もしくはタンパク質フォールディングに関連する他の要素に関して最適化することができる。当技術分野で既知の最適化方法、例えば、ThermoFisherによるGeneOptimizerおよびOptimumGene(商標)が、本発明で使用されてもよく、これらはUS2011/0081708に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型は、5’および/または3’非翻訳領域を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を及ぼす1つ以上の要素、例えば、鉄応答要素を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチド長であり得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、細胞におけるmRNAの位置安定性に影響するタンパク質の結合部位、またはmiRNAの1つ以上の結合部位のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、50~500ヌクレオチド長以上であり得る。
【0110】
例示的な3’および/または5’UTR配列は、センスmRNA分子の安定性を増加させるために、安定したmRNA分子(例えば、グロビン、アクチン、GAPDH、チューブリン、ヒストン、またはクエン酸回路酵素)から得ることができる。例えば、5’UTR配列は、ヌクレアーゼ耐性を改善するおよび/またはポリヌクレオチドの半減期を改善するために、CMV前初期1(IE1)遺伝子の部分配列またはその断片を含み得る。ポリヌクレオチドをさらに安定させるために、ヒト成長ホルモン(hGH)をコードする配列またはその断片のポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の3’末端または非翻訳領域への包含も企図される。概して、これらの修飾は、ポリヌクレオチドの安定性および/または薬物動態特性(例えば、半減期)を、それらの修飾されていない対応物と比較して改善し、例えば、かかるポリヌクレオチドのインビボヌクレアーゼ消化に対する耐性を改善するために行われる修飾を含む。
【0111】
大規模なmRNA合成
本発明は、野生型またはコドン最適化されたmRNAの大規模な産生に関する。いくつかの実施形態では、本発明による方法は、単回バッチで少なくとも100mg、150mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、5g、10g、25g、50g、75g、100g、250g、500g、750g、1kg、5kg、10kg、50kg、100kg、1000kg、またはそれ以上のmRNAを合成する。本明細書で使用される場合、用語「バッチ」は、一度に合成される、例えば、単回の製造設定に従って産生される、mRNAの数量(quantity)または量(amount)を指す。バッチは、1セットの条件下での連続合成のために、酵素の単回アリコートおよび/またはDNA鋳型の単回アリコートを介して発生する、1回の反応で合成されたmRNAの量を指す場合がある。単一バッチで合成されたmRNAは、所望の量を達成するために組み合わされる異なる時点で合成されたmRNAを含まない。概して、反応混合物は、SP6 RNAポリメラーゼ、線形DNA鋳型、およびRNAポリメラーゼ反応緩衝液(リボヌクレオチドを含む場合もあれば、またはリボヌクレオチドの添加を必要とする場合がある)を含む。
【0112】
本発明によれば、典型的には、産生されたmRNAの1グラム(g)当たり1~100mgのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、産生されたmRNAの1グラム当たり約1~90mg、1~80mg、1~60mg、1~50mg、1~40mg、10~100mg、10~80mg、10~60mg、10~50mgのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、約1グラムのmRNAを産生するために約5~20mgのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、約100グラムのmRNAを産生するために約0.5~2グラムのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、約1キログラムのmRNAのために約5~20グラムのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1グラムのmRNAを産生するために少なくとも5mgのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも100グラムのmRNAを産生するために少なくとも500mgのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1キログラムのmRNAを産生するために少なくとも5グラムのSP6ポリメラーゼが使用される。いくつかの実施形態では、産生されたmRNAの1グラム当たり約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、または100mgのプラスミドDNAが使用される。いくつかの実施形態では、約1グラムのmRNAを産生するために約10~30mgのプラスミドDNAが使用される。いくつかの実施形態では、約100グラムのmRNAを産生するために約1~3グラムのプラスミドDNAが使用される。いくつかの実施形態では、約1キログラムのmRNAのために約10~30グラムのプラスミドDNAが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1グラムのmRNAを産生するために少なくとも10mgのプラスミドDNAが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも100グラムのmRNAを産生するために少なくとも1グラムのプラスミドDNAが使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1キログラムのmRNAを産生するために少なくとも10グラムのプラスミドDNAが使用される。
【0113】
いくつかの実施形態では、反応混合物中のSP6 RNAポリメラーゼの濃度は、約1~100nM、1~90nM、1~80nM、1~70nM、1~60nM、1~50nM、1~40nM、1~30nM、1~20nM、または約1~10nMであり得る。特定の実施形態では、SP6 RNAポリメラーゼの濃度は、約10~50nM、20~50nM、または30~50nMである。100~10000ユニット/mlのSP6 RNAポリメラーゼの濃度を使用することができ、例として、100~9000ユニット/ml、100~8000ユニット/ml、100~7000ユニット/ml、100~6000ユニット/ml、100~5000ユニット/ml、100~1000ユニット/ml、200~2000ユニット/ml、500~1000ユニット/ml、500~2000ユニット/ml、500~3000ユニット/ml、500~4000ユニット/ml、500~5000ユニット/ml、500~6000ユニット/ml、1000~7500ユニット/ml、および2500~5000ユニット/mlの濃度を使用することができる。
【0114】
反応混合物中の各リボヌクレオチド(例えば、ATP、UTP、GTP、およびCTP)の濃度は、約0.1mM~約10mMであり、例えば、約1mM~約10mM、約2mM~約10mM、約3mM~約10mM、約1mM~約8mM、約1mM~約6mM、約3mM~約10mM、約3mM~約8mM、約3mM~約6mM、約4mM~約5mMである。いくつかの実施形態では、各リボヌクレオチドは、反応混合物中、約5mMである。いくつかの実施形態では、反応に使用されるrNTP(例えば、ATP、GTP、CTPおよびUTPの組み合わせ)の総濃度は、1mM~40mMの範囲である。いくつかの実施形態では、反応に使用されるrNTP(例えば、ATP、GTP、CTPおよびUTPの組み合わせ)の総濃度は、1mM~30mM、または1mM~28mM、または1mM~25mM、または1mM~20mMの範囲である。いくつかの実施形態では、総rNTPs濃度は、30mM未満である。いくつかの実施形態では、総rNTPs濃度は、25mM未満である。いくつかの実施形態では、総rNTPs濃度は、20mM未満である。いくつかの実施形態では、総rNTPs濃度は、15mM未満である。いくつかの実施形態では、総rNTPs濃度は、10mM未満である。
【0115】
RNAポリメラーゼ反応緩衝液は、典型的には、塩/緩衝剤、例えば、Tris、HEPES、硫酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および塩化マグネシウムを含む。
【0116】
反応混合物のpHは、約6~8.5、6.5~8.0、7.0~7.5の間であってもよく、いくつかの実施形態では、pHは7.5である。
【0117】
線形または線形化DNA鋳型(例えば、上述のように、および所望の量のRNAを提供するのに十分な量/濃度で)、RNAポリメラーゼ反応緩衝液、およびSP6 RNAポリメラーゼを組み合わせて、反応混合物を形成する。反応混合物を、約37℃~約42℃で、30分~6時間、例えば、約60~約90分間インキュベートする。
【0118】
いくつかの実施形態では、好適なRNAポリメラーゼ反応緩衝液(約7.5の最終反応混合物pH)中の、約5mMのNTP、約0.05mg/mLのSP6ポリメラーゼ、および約0.1mg/mlのDNA鋳型を、約37℃~約42℃で60~90分間インキュベートする。
【0119】
いくつかの実施形態では、反応混合物は、SP6ポリメラーゼ特異的プロモーター、SP6 RNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ピロホスファターゼ、29mMのNTP、10mMのDTT、および反応緩衝液(10xの場合、800mMのHEPES、20mMのスペルミジン、250mMのMgCl2、pH7.7)とともに線形化二本鎖DNA鋳型、ならびにRNaseを含まない水で所望の反応体積にする十分な量(QS)を含有し、次いで、この反応混合物を37℃で60分間インキュベートする。次に、ポリメラーゼ反応をDNase IおよびDNase I緩衝液(10xの場合-100mMのTris-HCl、5mMのMgCl2および25mMのCaCl2、pH7.6)を添加することによりクエンチして、精製のための調製で二本鎖DNA鋳型の消化を促進した。この実施形態は、100グラムのmRNAを産生するのに十分であることが示されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、反応混合物は、1~10mMの範囲の濃度のNTP、0.01~0.5mg/mlの範囲の濃度のDNA鋳型、および0.01~0.1mg/mlの範囲の濃度のSP6 RNAポリメラーゼを含み、例えば、反応混合物は、5mMの濃度のNTP、0.1mg/mlの濃度のDNA鋳型、および0.05mg/mlの濃度のSP6 RNAポリメラーゼを含む。
【0121】
ヌクレオチド
様々な天然由来のまたは修飾されたヌクレオシドを使用して、本発明によるmRNAを産生してもよい。いくつかの実施形態では、mRNAは、天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、プソイドウリジン(例えば、N-1-メチル-プソイドウリジン)、2-チオウリジンおよび2-チオシチジン)、化学修飾された塩基、生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、介在塩基(intercalated base)、修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)、および/もしくは修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホルアミダイト結合)であるか、またはそれを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、mRNAは、1つ以上の非標準的なヌクレオチド残基を含む。非標準的なヌクレオチド残基は、例えば、5-メチル-シチジン(“5mC”)、プソイドウリジン(“ψU”)、および/または2-チオ-ウリジン(“2sU”)を含み得る。このような残基およびそのmRNAへの組み込みについての考察については、例えば、米国特許第8,278,036号またはWO2011/012316を参照されたい。mRNAは、U残基の25%が2-チオ-ウリジンであり、C残基の25%が5-メチルシチジンであるRNAと定義される、RNAであってもよい。RNAの使用に関する教示は、米国特許出願公開第2012/0195936号および国際公開第2011/012316号に開示されており、それら両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非標準的なヌクレオチド残基の存在は、mRNAを、同じ配列を有するが標準的な残基のみを含有する対照mRNAよりも、より安定かつ/またはより少ない免疫原性にすることができる。さらなる実施形態では、mRNAは、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、および2-クロロ-6-アミノプリンシトシン、ならびにこれらの修飾および他の核酸塩基修飾の組み合わせから選択される1つ以上の非標準的なヌクレオチド残基を含み得る。いくつかの実施形態は、フラノース環または核酸塩基への追加の修飾をさらに含み得る。追加的な修飾は、例えば、糖修飾または置換(例えば、2’-O-アルキル修飾、ロックド核酸(LNA)のうちの1つ以上)を含み得る。いくつかの実施形態では、RNAは、追加のポリヌクレオチドおよび/またはペプチドポリヌクレオチド(PNA)と複合体化またはハイブリダイズされてもよい。糖修飾が2’-O-アルキル修飾であるいくつかの実施形態では、このような修飾には、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾、2’-O-メトキシエチル修飾、および2’-デオキシ修飾を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、これらの修飾のいずれかは、ヌクレオチドの0~100%で、例えば、構成ヌクレオチドの0%、1%、10%、25%、50%、75%、85%、90%、95%、または100%超を個別にまたは組み合わせて存在し得る。
【0123】
合成後処理
典型的には、5’キャップおよび/または3’テールは、合成後に添加されてもよい。キャップの存在は、大半の真核細胞にみられるヌクレアーゼへの耐性を提供する上で重要である。「テール」の存在は、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護する役割を果たす。
【0124】
5’キャップは、典型的には、以下のように付加される。最初に、RNA末端ホスファターゼが、5’ヌクレオチドから末端リン酸基のうちの1つを除去し、2つの末端リン酸を残す。次いで、グアノシン三リン酸(GTP)が、グアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加され、5’5’5三リン酸結合をもたらす。次いで、グアニンの7-窒素が、メチルトランスフェラーゼによってメチル化される。キャップ構造の例としては、以下に限定されないが、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5’)AおよびG(5’)ppp(5’)G)が挙げられる。追加のキャップ構造は、公開された米国特許出願第2016/0032356号および2017年2月27日に出願された米国仮特許出願第62/464,327号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
テール構造は典型的に、ポリ(A)テールおよび/またはポリ(C)テールを含む。mRNAの3’末端上のポリAテールまたはポリCテールは、典型的には、少なくとも50個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも150個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも200個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも250個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも300個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも350個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも400個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも450個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも500個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも550個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも650個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも700個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも750個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも800個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも850個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも900個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、少なくとも950個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、または少なくとも1kbのアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチドをそれぞれ含む。いくつかの実施形態では、ポリAテールまたはポリCテールはそれぞれ、約10~800個のアデノシンヌクレオチドまたはシトシンヌクレオチド(例えば、約10~200個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~300個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~400個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~500個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~550個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約50~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約100~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約150~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約200~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約250~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約300~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約350~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約400~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約450~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約500~600個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~150個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約10~100個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、約20~70個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド、または約20~60個のアデノシンヌクレオチドもしくはシトシンヌクレオチド)であり得る。いくつかの実施形態では、テール構造は、本明細書に記載の様々な長さを有するポリ(A)テールおよびポリ(C)テールの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、テール構造は、少なくとも50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアデノシンヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、テール構造は、少なくとも50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のシトシンヌクレオチドを含む。
【0126】
本明細書に記載されるように、5’キャップおよび/または3’テールの添加は、キャッピングおよび/またはテーリングなしでは、それらの早期に中止した(prematurely aborted)mRNA転写物のサイズが検出するには小さすぎる場合があるため、インビトロ合成中に生成された不全型(abortive)転写物の検出を容易にする。したがって、いくつかの実施形態では、5’キャップおよび/または3’テールは、mRNAが純度(例えば、mRNA中に存在する不全型転写物のレベル)について試験される前に、合成mRNAに加えられる。いくつかの実施形態では、5’キャップおよび/または3’テールは、本明細書に記載されるようにmRNAが精製される前に合成mRNAに付加される。いくつかの実施形態では、5’キャップおよび/または3’テールは、本明細書に記載されるようにmRNAが精製された後に合成mRNAに付加される。
【0127】
本発明に従って合成されたmRNAは、さらなる精製を行うことなく使用され得る。特に、本発明に従って合成されたmRNAは、ショートマー(shortmer)を除去する工程なしに使用され得る。いくつかの実施形態では、本発明に従って合成されたmRNAは、さらに精製されてもよい。本発明に従って合成されたmRNAを精製するために様々な方法を使用することができる。例えば、mRNAの精製は、遠心分離、濾過、および/またはクロマトグラフィー法を使用して実行することができる。いくつかの実施形態では、合成されたmRNAは、エタノール沈殿もしくは濾過もしくはクロマトグラフィー、またはゲル精製もしくは任意の他の好適な手段により精製される。いくつかの実施形態では、mRNAは、HPLCにより精製される。いくつかの実施形態では、mRNAは、当業者に周知の標準的なフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液で抽出される。いくつかの実施形態では、mRNAは、接線流濾過を使用して精製される。好適な精製方法には、US2016/0040154、US2015/0376220、2018年2月27日に出願された「METHODS FOR PURIFICATION OF MESSENGER RNA」と題されたPCT出願PCT/US18/19954、および2018年2月27日に出願された「METHODS FOR PURIFICATION OF MESSENGER RNA」と題されたPCT出願PCT/US18/19978に記載されている方法が含まれ、それらすべてが参照により本明細書に組み込まれ、本発明を実施するために使用することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、mRNAは、キャッピングおよびテーリングの前に精製される。いくつかの実施形態では、mRNAは、キャッピングおよびテーリングの後に精製される。いくつかの実施形態では、mRNAは、キャッピングおよびテーリングの前および後に精製される。
【0129】
いくつかの実施形態では、mRNAは、遠心分離により、キャッピングとテーリングの前もしくは後のいずれか、またはキャッピングとテーリングの前および後の両方で精製される。
【0130】
いくつかの実施形態では、mRNAは、濾過により、キャッピングとテーリングの前もしくは後のいずれか、またはキャッピングとテーリングの前および後の両方で精製される。
【0131】
いくつかの実施形態では、mRNAは、接線流濾過(TFF)により、キャッピングとテーリングの前もしくは後のいずれか、またはキャッピングとテーリングの前および後の両方で精製される。
【0132】
いくつかの実施形態では、mRNAは、クロマトグラフィーにより、キャッピングとテーリングの前もしくは後のいずれか、またはキャッピングとテーリングの前および後の両方で精製される。
【0133】
mRNAの特性評価
mRNAの全長転写物または不全型転写物は、当技術分野で利用可能な任意の方法を使用して検出および定量化されてもよい。いくつかの実施形態では、合成されたmRNA分子は、ブロッティング、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー、蛍光、ゲル電気泳動、HPLC、銀染色、分光法、紫外線(UV)、またはUPLC、またはそれらの組み合わせを使用して検出される。本発明には、当該技術分野で公知の他の検出方法が含まれる。いくつかの実施形態では、合成されたmRNA分子は、キャピラリー電気泳動による分離を伴うUV吸収分光法を使用して検出される。いくつかの実施形態では、mRNAは、ゲル電気泳動の前にグリオキサール染料によって最初に変性される(「グリオキサールゲル電気泳動」)。いくつかの実施形態では、合成mRNAは、キャッピングまたはテーリング前に特性評価される。いくつかの実施形態では、合成mRNAは、キャッピングおよびテーリング後に特性評価される。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法によって生成されるmRNAは、完全長mRNA以外、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満の不純物を含む。不純物は、IVT汚染物質、例えば、タンパク質、酵素、遊離ヌクレオチド、および/またはショートマーを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明に従って産生されるmRNAは、ショートマーまたは不全型転写物を実質的に含まない。特に、本発明に従って産生されるmRNAは、キャピラリー電気泳動またはグリオキサールゲル電気泳動によって、検出不可能なレベルのショートマーまたは不全型転写物を含有する。本明細書で使用される場合、用語「ショートマー」または「不全型転写物」は、完全長よりも小さい任意の転写物を指す。いくつかの実施形態では、「ショートマー」または「不全型転写物」は、長さが100ヌクレオチド未満、長さが90ヌクレオチド未満、長さが80ヌクレオチド未満、長さが70ヌクレオチド未満、長さが60ヌクレオチド未満、長さが50ヌクレオチド未満、長さが40ヌクレオチド未満、長さが30ヌクレオチド未満、長さが20ヌクレオチド未満、または長さが10ヌクレオチド未満である。いくつかの実施形態では、5’-キャップ、および/または3’-ポリAテールを付加した後に、ショートマーを検出または定量化する。
【0136】
送達ビヒクル
本発明によると、本明細書に記載されるタンパク質またはペプチド(例えば、タンパク質またはペプチドの完全長、断片、もしくは一部)をコードするmRNAは、裸のRNA(パッケージされていない)として送達されてもよく、または送達ビヒクルを介して送達されてもよい。本明細書で使用される場合、「送達ビヒクル」、「移送ビヒクル」、「ナノ粒子」という用語、または文法的同義語は、互換的に使用される。
【0137】
送達ビヒクルは、1つ以上の追加の核酸、担体、標的化リガンドもしくは安定化試薬と組み合わせて、または好適な賦形剤と混合されている薬理組成物中で製剤化されてもよい。薬物の製剤化および投与の技術は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,latest editionで知ることができる。特定の送達ビヒクルは、標的細胞への核酸のトランスフェクションを促進するその能力に基づいて選択される。
【0138】
いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAを含む送達ビヒクルは、静脈内、腫瘍内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、硬膜外、髄腔内、または例えば、噴霧を含む肺送達によって投与される。いくつかの実施形態では、mRNAは、送達ビヒクルが投与された組織で発現される。肺送達および噴霧化の追加的な教示は、「NOVEL ICE-BASED LIPID NANOPARTICLE FORMULATION FOR DELIVERY OF MRNA」と題された出願人によって2017年11月10日に出願された関連する国際出願PCT/US17/61100、および米国仮特許出願第62/507,061号に記載されており、これらの各々が参照によりその全体が組み込まれる。
【0139】
いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドをコードするmRNAは、単一の送達ビヒクルを介して送達されてもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドをコードするmRNAは、各々異なる組成の1つ以上の送達ビヒクルを介して送達されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAが、同じ脂質ナノ粒子内に封入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNAは、別個の脂質ナノ粒子内に封入される。
【0140】
様々な実施形態によると、好適な送達ビヒクルとして、以下に限定されないが、ポリエチレンイミン(PEI)、脂質ナノ粒子、およびリポソームなどのポリマー系担体、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム、プロテオリポソーム、天然および合成由来の両方のエキソソーム、天然層状体、合成層状体、および半合成層状体、ナノ粒子、カルシウムリン-ケイ酸塩ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、ナノ結晶性微粒子、半導体ナノ粒子、ポリ(D-アルギニン)、ゾルゲル、ナノデンドリマー、デンプンベース送達系、ミセル、エマルジョン、ニオソーム、マルチドメインブロックポリマー(ビニルポリマー、ポリプロピルアクリル酸ポリマー、動的多抱合体)、乾燥粉末製剤、プラスミド、ウイルス、リン酸カルシウムヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、ならびに他のベクトルタグ(vectorial tag)が挙げられる。また、好適な輸送ビヒクルとして、バイオナノカプセルおよび他のウイルスキャプシドタンパク質アセンブリの使用も企図される。(Hum.Gene Ther.2008 September;19(9):887-95を参照されたい。
【0141】
リポソーム送達ビヒクル
いくつかの実施形態では、好適な送達ビヒクルは、リポソーム送達ビヒクルであり、例えば、脂質ナノ粒子である。本明細書で使用される場合、リポソーム送達ビヒクル、例えば、脂質ナノ粒子は、通常、1つ以上の二重層の膜によって外部媒体から隔離された内部水空間を有する微視的ベシクルであるとして特徴付けられる。リポソームの二重層膜は、典型的には、空間的に分離された親水性ドメインおよび疎水性ドメインを含む合成起源または天然起源の脂質等の両親媒性分子によって形成される(Lasic,Trends Biotechnol.,16:307-321,1998)。リポソームの二重層膜は、両親媒性ポリマーおよび界面活性剤(例えば、ポリメロソーム、ニオソーム等)によって形成される場合もある。本発明との関連で、リポソーム送達ビヒクルは、典型的には、所望のmRNAを標的細胞または組織に輸送する役割を果たす。いくつかの実施形態では、ナノ粒子送達ビヒクルは、リポソームである。いくつかの実施形態では、リポソームは、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、1つ以上のコレステロールベースの脂質、および1つ以上のPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、3つ以下の別個の脂質成分を含む。いくつかの実施形態では、1つの別個の脂質成分は、ステロールベースのカチオン性脂質である。
【0142】
カチオン性脂質
いくつかの実施形態では、リポソームは、1つ以上のカチオン性脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、語句「カチオン性脂質」は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を有する多数の脂質種のいずれかを指す。いくつかのカチオン性脂質は文献に記載されており、それらの多くは市販されている。本発明の組成物および方法に使用するのに好適なカチオン性脂質は、国際特許公開第2010/053572号(例えば、段落[00225]に記載されているCI 2-200)および同第2012/170930に記載されているものを含み、これらの両方の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、例えば、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-l-イル)テトラコサ-15,18-ジエン-1-アミン(HGT5000)、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-4,15,18-トリエン-l-アミン(HGT5001)、および(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-5,15,18-トリエン-1-アミン(HGT5002)など、2012年3月29日に出願された米国仮特許出願第61/617,468号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたイオン化可能なカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を用いる。
【0143】
いくつかの実施形態では、提供されるリポソームは、WO2013/063468と、「Lipid Formulations for Delivery of Messenger RNA」と題する同日付けで本願と同時に出願された米国仮出願とに記載されるカチオン性脂質を含み、これらの両方の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、以下の式I-c1-aの化合物:
【化1】
、
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、式中、
各R
2は、独立して、水素またはC
1-3アルキルであり、
各qは、独立して、2~6であり、
各R’は、独立して、水素またはC
1-3アルキルであり、
各R
Lは、独立して、C
8-12アルキルである。
【0145】
いくつかの実施形態では、各R2は、独立して、水素、メチルまたはエチルである。いくつかの実施形態では、各R2は、独立して、水素またはメチルである。いくつかの実施形態では、各R2は、水素である。
【0146】
いくつかの実施形態では、各qは、独立して、3~6である。いくつかの実施形態では、各qは、独立して、3~5である。いくつかの実施形態では、各qは、4である。
【0147】
いくつかの実施形態では、各R’は、独立して、水素、メチル、またはエチルである。いくつかの実施形態では、各R’は、独立して、水素またはメチルである。いくつかの実施形態では、各R’は、独立して、水素である。
【0148】
いくつかの実施形態では、各RLは、独立して、C8-12アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは、独立して、n-C8-12アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは、独立して、C9-11アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは、独立して、n-C9-11アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは、独立して、C10アルキルである。いくつかの実施形態では、各RLは、独立して、n-C10アルキルである。
【0149】
いくつかの実施形態では、各R2は独立して水素またはメチルであり、各qは独立して3~5であり、各R’は独立して水素またはメチルであり、各RLは独立してC8-12アルキルである。
【0150】
いくつかの実施形態では、各R2は水素であり、各qは独立して3~5であり、各R’は水素であり、各RLは独立してC8-12アルキルである。
【0151】
いくつかの実施形態では、各R2は水素であり、各qは4であり、各R’は水素であり、各RLは独立してC8-12アルキルである。
【0152】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式I-gの化合物:
【化2】
、
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、式中、各R
Lは独立してC
8-12アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは、独立して、n-C
8-12アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは、独立して、C
9-11アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは、独立して、n-C
9-11アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは、独立して、C
10アルキルである。いくつかの実施形態では、各R
Lは、n-C
10アルキルである。
【0153】
特定の実施形態では、提供されるリポソームは、カチオン性脂質cKK-E12または(3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン)を含む。cKK-E12の構造が以下に示される。
【化3】
。
【0154】
さらなる例示的なカチオン性脂質は、式Iのカチオン性脂質:
【化4】
およびその薬学的に許容される塩を含み、
式中、
Rは
【化5】
であるか、
Rは
【化6】
であるか、
Rは
【化7】
であるか、または
Rは
【化8】
である
(例えば、Fenton,Owen S.,et al.”Bioinspired Alkenyl Amino Alcohol Ionizable Lipid Materials for Highly Potent In Vivo mRNA Delivery.”Advanced materials(2016)を参照のこと)。
【0155】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、N-[l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドすなわち「DOTMA」(Feigner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987)、米国特許第4,897,355号)であってもよい。DOTMAは、単独で製剤化されてもよく、または中性脂質、ジオロイルホスファチジル-エタノールアミンすなわち「DOPE」、もしくは他のカチオン性脂質または非カチオン性脂質と組み合わせてリポソーム移送ビヒクルもしくは脂質ナノ粒子に製剤化されてもよく、かかるリポソームは、標的細胞への核酸の送達を増強するために使用され得る。他の好適なカチオン性脂質としては、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミドすなわち「DOGS」、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウムすなわち「DOSPA」(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982(1989)、米国特許第5,171,678号、米国特許第5,334,761号)、l,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパンすなわち「DODAP」、l,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパンすなわち「DOTAP」が挙げられる。
【0156】
さらなる例示的なカチオン性脂質として、l,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DSDMA」、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DODMA」、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DLinDMA」、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパンすなわち「DLenDMA」、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリドすなわち「DODAC」、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミドすなわち「DDAB」、N-(l,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミドすなわち「DMRIE」、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-l-(シス,シス-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパンすなわち「CLinDMA」、2-(5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-l-(シス,シス-9’,l-2’-オクタデカジエノキシ)プロパンすなわち「CpLinDMA」、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミンすなわち「DMOBA」、1,2-N,N’-ジオレイルカルミバル-3-ジメチルアミノプロパンすなわち「DOcarbDAP」、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミンすなわち「DLinDAP」、l,2-N,N’-ジリノレイルカルミバル-3-ジメチルアミノプロパンすなわち「DLincarbDAP」、l,2-ジリノレオイルカルミバル-3-ジメチルアミノプロパンすなわち「DLinCDAP」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソランすなわち「DLin- -DMA」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソランすなわち「DLin-K-XTC2-DMA」、および2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,l 2-ジエン-1-イル)-l,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA))(WO2010/042877;Semple et al.,Nature Biotech.28:172-176(2010)を参照されたい)、またはこれらの混合物が挙げられる。(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276-287(2005)、Morrissey,DV.,et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003-1007(2005)、PCT公開第WO2005/121348A1号)。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質のうちの1つ以上は、イミダゾール部分、ジアルキルアミノ部分、またはグアニジウム部分のうちの少なくとも1つを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、XTC(2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン)、MC3(((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)、ALNY-100((3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン))、NC98-5(4,7,13-トリス(3-オキソ-3-(ウンデシルアミノ)プロピル)-N1,N16-ジウンデシル-4,7,10,13-テトラアザへキサデカン-1,16-ジアミド)、DODAP(1,2-ジオレイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン)、HGT4003(WO2012/170889、その教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ICE(WO2011/068810、その教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、HGT5000(米国仮特許出願第61/617,468号、その教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)またはHGT5001(シスまたはトランス)(仮特許出願第61/617,468号)、WO2010/053572に開示されるリピドイド(lipidoid)などのアミノアルコールリピドイド、DOTAP(1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン)、DLinDMA(Heyes,J.;Palmer,L.;Bremner,K.;MacLachlan,I.“Cationic lipid saturation influences intracellular delivery of encapsulated nucleic acids”J.Contr.Rel.2005,107,276-287)、DLin-KC2-DMA(Semple,S.C.et al.“Rational Design of Cationic Lipids for siRNA Delivery”Nature Biotech.2010,28,172-176)、C12-200(Love,K.T.et al.“Lipid-like materials for low-dose in vivo gene silencing”PNAS 2010,107,1864-1869)から選択され得る。
【0158】
ステロールカチオン性脂質
いくつかの実施形態では、ステロールベースのカチオン性脂質は、ジアルキルアミノ含有ステロールベースのカチオン性脂質、イミダゾール含有ステロールベースのカチオン性脂質、およびグアニジニウム含有ステロールベースのカチオン性脂質である。例えば、ある特定の実施形態は、イミダゾールを含む1つ以上のステロールベースのカチオン性脂質、例えば、以下の構造(II)により示される、イミダゾールコレステロールエステルすなわち「ICE」脂質(3S,10R,13R,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノエートを含む、組成物を対象とする。ある特定の実施形態では、機能性タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)の送達のための脂質ナノ粒子は、1つ以上のイミダゾールベースのカチオン性脂質、例えば、構造(II)により示される、イミダゾールコレステロールエステルすなわち「ICE」脂質(3S,10R,13R,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノエートを含み得る。
【化9】
【0159】
いくつかの実施形態では、リポソーム中のカチオン性脂質のパーセンテージは、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、または70%超であり得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、リポソームの約30~50重量%(例えば、約30~45重量%、約30~40重量%、約35~50重量%、約35~45重量%、または約35~40重量%)を構成する。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(例えば、ICE脂質)は、モル比でリポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%を構成する。
【0160】
非カチオン性/ヘルパー脂質
いくつかの実施形態では、提供されたリポソームは、1つ以上の非カチオン性(「ヘルパー」)脂質を含む。本明細書で使用される場合、語句「非カチオン性脂質」は、任意の中性脂質、双性イオン性脂質、またはアニオン性脂質を意味する。本明細書で使用される場合、語句「アニオン性脂質」は、生理学的pHなどの選択されたHで正味の負電荷を保有する多数の脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質として、以下に限定されないが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、l-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0161】
いくつかの実施形態では、こうした非カチオン性脂質は、単独で使用され得るが、好ましくは他の脂質、例えば、カチオン性脂質と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、リポソームに存在する総脂質の約5%~約90%、または約10%~約70%のモル比率を含み得る。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、中性脂質、すなわち、組成物が製剤化および/または投与される条件下で正味の電荷を保有しない脂質である。いくつかの実施形態では、リポソーム中の非カチオン性脂質の割合は、5%超、10%超、20%超、30%超、または40%超であり得る。
【0162】
コレステロールベースの脂質
いくつかの実施形態では、提供されるリポソームは、1つ以上のコレステロールベースの脂質を含む。例として、好適なコレステロールベースのカチオン性脂質として、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、l,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991)、Wolf et al.BioTechniques 23,139(1997)、米国特許第5,744,335号)、またはICEが挙げられる。いくつかの実施形態では、コレステロールベースの脂質は、リポソームに存在する総脂質の約2%~約30%、または約5%~約20%のモル比率を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のコレステロールベースの脂質のパーセンテージは、5%超、10%超、20%超、30%超、または40%超であり得る。
【0163】
PEG修飾脂質
ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質、およびN-オクタノイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)-2000](C8 PEG-2000セラミド)を含めた誘導体化されたセラミド(PEG-CER)などの誘導体化脂質の使用もまた、単独で、または好ましくは移送ビヒクル(例えば、脂質ナノ粒子)を含む他の脂質製剤と組み合わされて、本発明によって企図される。企図されるPEG修飾脂質は、長さがC6~C20のアルキル鎖を有する脂質に共有結合された長さ最大S kDaのポリエチレングリコール鎖を含むが、これに限定されない。こうした成分の付加は、複合体の凝集を阻止することができ、また循環寿命を増加させ、脂質-核酸組成物の標的組織への送達を増加させるための手段を提供することができる(Klibanov et al.(1990)FEBS Letters,268(1):235-237)。あるいは、これらの成分はインビボで製剤の外へと速やかに交換されるように選択され得る(米国特許第5,885,613号を参照のこと)。特定の有用な交換可能な脂質は、より短いアシル鎖(例えば、C14またはC18)を有するPEG-セラミドである。本発明のPEG修飾リン脂質および誘導体化された脂質は、リポソーム移送ビヒクルに存在する総脂質の約0%~約20%、約0.5%~約20%、約1%~約15%、約4%~約10%、または約2%のモル比率を含み得る。
【0164】
様々な実施形態によると、脂質ナノ粒子を含む、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および/またはPEG修飾脂質の選択、ならびにこれらの脂質の相互の相対モル比率の選択は、選択される脂質の特性、意図する標的細胞の性質、送達されるMCNAの特性に基づいて行われる。追加の考慮すべき事項は、例えば、選択される脂質のアルキル鎖の飽和度、ならびに大きさ、電荷、pH、pKa、融合性、および毒性を含む。したがって、モル比率はそれらに応じて調節され得る。
【0165】
ポリマー
いくつかの実施形態では、好適な送達ビヒクルは、担体としてポリマーを使用して、単独でまたは本明細書に記載される様々な脂質を含む他の担体と組み合わせて製剤化される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるリポソーム送達ビヒクルは、ポリマーを含むナノ粒子も包含する。好適なポリマーとして、例えば、ポリアクリレート類、ポリアルキシアノアクリレート類、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー類、ポリカプロラクトン類、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギネート、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン類、プロタミン、PEG化プロタミン、PLL、PEG化PLL、およびポリエチレンイミン(PEI)が挙げられ得る。PEIを含む場合、PEIは10~40kDaの範囲の分子量を有する分岐状PEI、例えば、25kDaの分岐状PEI(Sigma#408727)であり得る。
【0166】
本発明に好適なリポソームは、本明細書に記載のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール脂質、PEG修飾脂質、および/またはポリマーのいずれかのうちの1つ以上を様々な割合で含み得る。非限定的な例として、好適なリポソーム製剤は、cKK-E12、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K;C12-200、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K;HGT4003、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K;ICE、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K;またはICE、DOPE、およびDMG-PEG2Kから選択される組み合わせを含み得る。
【0167】
様々な実施形態では、カチオン性脂質(例えば、cKK-E12、C12-200、ICE、および/またはHGT4003)は、モル比でリポソームの約30~60%(例えば、約30~55%、約30~50%、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(例えば、cKK-E12、C12-200、ICE、および/またはHGT4003)のパーセンテージは、モル比率でリポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%以上である。
【0168】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比は、それぞれ約30~60:25~35:20~30:1~15であり得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、およそ40:30:20:10である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、およそ40:30:25:5である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、およそ40:32:25:3である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、およそ50:25:20:5である。
【0169】
個別の脂質成分の比率
脂質ナノ粒子が脂質の3つ以下の別個の成分を含む実施形態では、総脂質含量の比率(すなわち、脂質成分(1):脂質成分(2):脂質成分(3)の比率)は、x:y:zとして表され得、
(y+z)=100-xである。
【0170】
いくつかの実施形態では、「x」、「y」、および「z」の各々は、脂質の3つの別個の成分のモルパーセントを表し、比率はモル比である。
【0171】
いくつかの実施形態では、「x」、「y」、および「z」の各々は、脂質の3つの別個の成分の重量パーセントを表し、比率は重量比である。
【0172】
いくつかの実施形態では、変数「x」で表される脂質成分(1)は、ステロールベースのカチオン性脂質である。
【0173】
いくつかの実施形態では、変数「y」で表される脂質成分(2)は、ヘルパー脂質である。
【0174】
いくつかの実施形態では、変数「z」で表される脂質成分(3)は、PEG脂質である。
【0175】
いくつかの実施形態では、脂質成分(1)(例えば、ステロールベースのカチオン性脂質)のモルパーセントを表す変数「x」は、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%である。
【0176】
いくつかの実施形態では、脂質成分(1)(例えば、ステロールベースのカチオン性脂質)のモルパーセントを表す変数「x」は、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、または約10%以下である。実施形態では、変数「x」は、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約40%以下である。
【0177】
いくつかの実施形態では、脂質成分(1)(例えば、ステロールベースのカチオン性脂質)のモルパーセントを表す変数「x」は、少なくとも約50%~約95%未満、少なくとも約50%~約90%未満、少なくとも約50%~約85%未満、少なくとも約50%~約80%未満、少なくとも約50%~約75%未満、少なくとも約50%~約70%未満、少なくとも約50%~約65%未満、または少なくとも約50%~約60%未満である。実施形態では、変数「x」は、少なくとも約50%~約70%未満、少なくとも約50%~約65%未満、または少なくとも約50%~約60%未満である。
【0178】
いくつかの実施形態では、脂質成分(1)(例えば、ステロールベースのカチオン性脂質)の重量パーセントを表す変数「x」は、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%である。
【0179】
いくつかの実施形態では、脂質成分(1)(例えば、ステロールベースのカチオン性脂質)の重量パーセントを表す変数「x」は、約95%以下、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、または約10%以下である。実施形態では、変数「x」は、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約40%以下である。
【0180】
いくつかの実施形態では、脂質成分(1)(例えば、ステロールベースのカチオン性脂質)の重量パーセントを表す変数「x」は、少なくとも約50%~約95%未満、少なくとも約50%~約90%未満、少なくとも約50%~約85%未満、少なくとも約50%~約80%未満、少なくとも約50%~約75%未満、少なくとも約50%~約70%未満、少なくとも約50%~約65%未満、少なくとも約50%~約60%未満である。実施形態では、変数「x」は、少なくとも約50%~約70%未満、少なくとも約50%~約65%未満、または少なくとも約50%~約60%未満である。
【0181】
いくつかの実施形態では、脂質成分(3)(例えば、PEG脂質)のモルパーセントを表す変数「z」は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、または25%以下である。いくつかの実施形態では、脂質成分(3)(例えば、PEG脂質)のモルパーセントを表す変数「z」は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%である。実施形態では、脂質成分(3)(例えば、PEG脂質)のモルパーセントを表す変数「z」は、約1%~約10%、約2%~約10%、約3%~約10%、約4%~約10%、約1%~約7.5%、約2.5%~約10%、約2.5%~約7.5%、約2.5%~約5%、約5%~約7.5%、または約5%~約10%である。
【0182】
いくつかの実施形態では、脂質成分(3)(例えば、PEG脂質)の重量パーセントを表す変数「z」は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、または25%以下である。いくつかの実施形態では、脂質成分(3)(例えば、PEG脂質)の重量パーセントを表す変数「z」は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%である。実施形態では、脂質成分(3)(例えば、PEG脂質)の重量パーセントを表す変数「z」は、約1%~約10%、約2%~約10%、約3%~約10%、約4%~約10%、約1%~約7.5%、約2.5%~約10%、約2.5%~約7.5%、約2.5%~約5%、約5%~約7.5%、または約5%~約10%である。
【0183】
3つだけの別個の脂質成分を有する組成物については、変数「x」、「y」、および「z」は、3つの変数の合計が総脂質含量の100%になる限り、任意の組み合わせであってもよい。
【0184】
mRNAを封入するリポソームの製剤化
本発明の組成物で使用するためのリポソーム移送ビヒクルは、当該技術分野において現在公知である様々な技術により調製することができる。提供される組成物で使用するためのリポソームは、当該技術分野において現在公知である様々な技術により調製することができる。例えば、多重層ベシクル(MLV)は、適切な溶媒に脂質を溶解することにより、選択された脂質を好適な容器または器の内壁に堆積させ、次いで、溶媒を蒸発させて器の内側に薄膜を残すか、または噴霧乾燥させることなどによる、従来技術に従って調製され得る。続いて、水相を渦動運動させながら器に添加し、その結果として、MLVを形成することができる。次に、単層ベシクル(ULV)を、多重層ベシクルのホモジナイゼーション、超音波処理、または押出により形成することができる。加えて、単層ベシクルを、界面活性剤除去技術により形成することができる。
【0185】
特定の実施形態では、提供される組成物はリポソームを含み、この場合においてmRNAはリポソームの両表面上で会合し、および同リポソーム内に封入される。例えば、本発明の組成物の調製中に、カチオン性リポソームは、静電相互作用によりmRNAと会合し得る。例えば、本発明の組成物の調製中に、カチオン性リポソームは、静電相互作用によりmRNAと会合し得る。
【0186】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、リポソームに封入されたmRNAを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNA種が、同一のリポソームに封入され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のmRNA種が、異なるリポソームに封入され得る。いくつかの実施形態では、mRNAは1つ以上のリポソームに封入され、当該リポソームは、その脂質組成、脂質成分のモル比、大きさ、電荷(ゼータ電位)、標的化リガンド、および/またはそれらの組み合わせにおいて異なる。いくつかの実施形態では、1つ以上のリポソームは、ステロールベースのカチオン性脂質、中性脂質、PEG修飾脂質、および/またはこれらの組み合わせの異なる組成を有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリポソームは、リポソームを作製するために使用されるコレステロールベースのカチオン性脂質、中性脂質、およびPEG修飾脂質の異なるモル比を有し得る。
【0187】
所望のmRNAをリポソーム内に組み込むプロセスは、「担持させる(loading)」と称されることが多い。例示的な方法は、Lasic,et al.,FEBS Lett.,312:255-258,1992に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。リポソーム組み込まれた核酸は、リポソームの内部空間、つまりリポソームの二分子膜内に完全にもしくは部分的に位置するか、またはリポソーム膜の外表面と会合し得る。核酸のリポソーム内への組み込みは本明細書において「封入」とも称され、そこで、核酸がリポソームの内部空間内に完全に包含される。mRNAを、例えばリポソームなどの移送ビヒクル内に組み込む目的はしばしば、核酸を分解する酵素もしくは化学物質、および/または核酸の急速排出をもたらす系もしくは受容体を含み得る環境から核酸を保護することである。したがって、いくつかの実施形態では、好適な送達ビヒクルは、その中に含まれるmRNAの安定性を強化することができ、および/または標的細胞もしくは標的組織へのmRNAの送達を容易にする。
【0188】
本発明による好適なリポソームは、様々なサイズで作製することができる。いくつかの実施形態では、提供されるリポソームは、従来から知られているmRNA封入リポソームよりも小さく作製され得る。いくつかの実施形態では、リポソームの大きさが減少すると、mRNAの送達効率が高くなる。適切なリポソームの大きさは、標的細胞または標的組織の部位を考慮し、また作製されるリポソームの用途をある程度考慮して選択することができる。
【0189】
いくつかの実施形態では、適切な大きさのリポソームを選択して、mRNAによりコードされる抗体の全身分布を促進する。いくつかの実施形態では、特定の細胞または組織へのmRNAのトランスフェクションを限定することが望ましい場合がある。例えば、肝細胞を標的とするには、リポソームは、その寸法が肝臓の肝類洞を覆う内皮層の開窓よりも小さくなるように寸法決定されてもよく、こうした場合、リポソームは、その内皮開窓を容易に貫通して、標的肝細胞に達することができようになる。
【0190】
代替的または追加的に、リポソームは、リポソームの寸法が特定の細胞もしくは組織内への分布を制限するか、または意図的に分布しないようにするのに十分な直径であるように寸法決定されてもよい。
【0191】
リポソーム集団の寸法決定に対して、当該技術分野において既知の様々な別の方法を利用することができる。こうした寸法決定方法の1つは、米国特許第4,737,323号に記載されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。バス超音波処理またはプローブ超音波処理のいずれかによるリポソーム懸濁液の超音波処理によって、直径が約0.05マイクロメートル未満の小さいULVまでサイズ漸減する。ホモジナイゼーションは別の方法であり、大きいリポソームをより小さいものに断片化するのに剪断エネルギーを利用する。典型的なホモジナイゼーション手順において、MLVは、選択されたリポソームの大きさ、典型的には約0.1~0.5マイクロメートルの大きさが観察されるまで、標準的なエマルジョンホモジナイザーを用いて再循環される。リポソームの大きさは、Bloomfield,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421-150(1981)(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載された準電気光散乱(QELS)によって算出され得る。平均リポソーム直径を、形成されたリポソームを超音波処理することによって低減させることができる。断続的な超音波処理サイクルをQELS評価と交互に行って、効率的なリポソーム合成を導くことができる。
【実施例】
【0192】
本発明のある特定の化合物、組成物、および方法が、ある特定の実施形態に従って具体的に説明されているが、以下の実施例は、本発明の化合物を例証する役割のみを果たし、それを限定することを意図するものではない。
【0193】
実施例1.がん治療のためのmRNA担持(loaded)LNPの製剤化
本実施例は、がん治療のインビボ有効性試験で使用される、例示的なmRNA担持脂質ナノ粒子(LNP)を提供する。
【0194】
表1に示すようにコドン最適化、野生型、または変異型IL-2、IL-12、STING、GM-CSF、FLT-3L、NLRP3、またはそれらの組み合わせをコードするメッセンジャーRNAを、調製し、cKK-E12を含むLNP内に封入した。陰性対照として、ホタルルシフェラーゼ(FFL)mRNAをLNP内に封入した。
【表1】
【0195】
実施例2.MC38マウスモデルにおけるmRNA-LNPのインビボ有効性の試験デザイン
本実施例は、皮下MC38マウス結腸がん同系マウスモデルの治療におけるmRNA-LNPのインビボ治療有効性を、前臨床的に評価するための試験デザインを記載する。
【0196】
MC-38(マウス結腸直腸がん細胞株)腫瘍を、免疫能力のあるマウスに皮下移植した。腫瘍接種の3~4日前に、および屠殺時に血清を採取した。移植された腫瘍が60~80(mm
3)(1日目、d1)のサイズに増殖したとき、マウスに、実施例1に記載されるように調製された様々なmRNA-LNPを腫瘍内注射した。表2に示すように、4日間の間隔で20日間にわたって6回注射した。群BおよびCは、単一の薬剤を投与されたのに対し、群D~Hは、薬剤の組み合わせを投与された。群AおよびIは、陰性対照としてそれぞれ生理食塩水およびFFL mRNA-LNPを投与された。マウスをモニタリングし、試験全体を通じて、46日目まで、または腫瘍サイズが3000mm
3を超えるまで腫瘍体積を測定した。
【表2】
【0197】
実施例3.MC38マウスモデルにおけるmRNA-LNPのインビボ抗腫瘍有効性
本実施例は、腫瘍サイズの減少および腫瘍増殖の阻害において、本発明に従って作製されたmRNA-LNPのインビボ有効性を示す。
【0198】
腫瘍体積は、
図1および表3に示すように、示された時点で測定された。試験のエンドポイントは、動物の死亡または腫瘍体積が3000mm
3に達したことのいずれかであった。
【0199】
図1は、群B~Hのマウスの平均腫瘍体積が、グループAまたはIのマウスの平均腫瘍体積よりも有意に小さかったことを示す。群AおよびIのマウスのほとんどが、試験完了前に死亡したか、または腫瘍体積が3000mm
3を超えていた。試験終了時(d46)、完全奏功(CR)率は、群Bで100%、群C 30%、群Dで90%、群Eで80%、群Fで90%、群Gで70%、およびHで70%群であった(
図5B~5Gを参照されたい)。特に、B~H群のマウスでは、陰性対照と比較して腫瘍増殖が有意に遅延した。表3~6を参照されたい。さらに、群B~Hの体重の変化率は、群AまたはIと比較して有意に低かった(
図6)。
【表3】
【0200】
各群の平均腫瘍体積を、対照群(グループA)と比較した。具体的には、試験群の腫瘍体積(T)を、各時点における対照群の腫瘍体積(C)で割って、そのパーセンテージを
図2に示すようにプロットした。さらに、腫瘍体積の阻害率を、以下のように各群について計算し:(平均(C)-平均(T))/平均(C))×100%、
図3および表4に示すようにプロットした。46日目に測定されたグループB~Hの各マウスの腫瘍体積を、
図4に示すようにプロットした。各群の平均値が示される。
【表4】
【表5】
【表6】
【0201】
全体として、本実施例は、本発明に従って作製されたmRNA-LNPが、インビボでの抗腫瘍活性およびがんの治療に有効であることを実証している。
【0202】
μμ
実施例4.動物モデルにおいて、脂質ナノ粒子に封入した構成的活性型STING mRNAの投与により、腫瘍の増殖が遅延させ、生存が改善される
腫瘍増殖および動物に対する、脂質封入された構成的活性型STING mRNAの投与の効果を評価した。これらの研究のために、マウスモデル(N=10)にMC38腫瘍細胞を接種し、動物モデルで細胞を増殖させて腫瘍を形成させた。その後、動物モデルに、コドン最適化され、構成的活性型STINGを含む脂質封入されたmRNAを投与した。脂質ナノ粒子は、式Iのカチオン性脂質(上記の説明に示す)および1.5%のPEGを用いて製剤化した。動物は、4日ごとに5μgの脂質封入されたmRNAの腫瘍内用量投与を受けた。これらの試験からのデータを
図7に示す。
図7に示すように、構成的活性型STING mRNAを投与された動物は、ビヒクルのみの対照と比較して、かつ追加の陰性対照と比較して、腫瘍増殖が少なかった。これらのデータは、脂質封入された構成的活性型STINGの投与により、腫瘍増殖が減少しおよび腫瘍増殖プロファイルが遅延することを示す。これらのデータは、構成的活性型STINGをコードする脂質封入されたmRNAが、がんの治療に対する有望なスタンドアロン型治療薬であることをさらに示す。
【0203】
上述のMC38マウス腫瘍モデルを使用して追加の試験を実行し、脂質封入された構成的活性型STINGを動物に投与した後の動物モデルの生存を評価した。これらの試験については、試験群には、次のものが含まれた:動物の1群に脂質封入された構成的活性型STING mRNAを投与し、マウスの別群にPD-1モノクローナル抗体と組み合わせた構成的活性型STING mRNAを投与した。これらの試験からのデータは、脂質封入された構成的活性型STING mRNAの投与が、PD-1モノクローナル抗体を添加することなく、動物モデルの生存を改善することを示した(
図8)。全体として考えると、これらのデータは、脂質封入された構成的活性型STING mRNAの投与が、腫瘍増殖を低減させ遅延させ、生存を改善することを示している。
【0204】
均等物
当業者は、日常的な実験作業を越えない手法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認できるものとなる。本発明の範囲は、上記の記載に限定されることは意図されず、むしろ以下の特許請求の範囲に記述されるとおりである。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】