(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】オレフィンメタセシスフォトポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 4/26 20060101AFI20221208BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20221208BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20221208BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20221208BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20221208BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221208BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221208BHJP
C08F 232/08 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08F4/26
C08J5/00 CEZ
B29C64/112
B29C64/124
B29C64/264
B33Y10/00
B33Y70/00
C08F232/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521309
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 US2020055003
(87)【国際公開番号】W WO2021072206
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519036651
【氏名又は名称】ポリスペクトラ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POLYSPECTRA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バラスブラマニアン, アディティア
(72)【発明者】
【氏名】ワイテキャンプ, レイモンド エー.
【テーマコード(参考)】
4F071
4F213
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA69
4F071AF13Y
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
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4F071BC12
4F213AA03
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4F213WL03
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4F213WL43
4J015DA23
4J015DA26
4J100AR21P
4J100AR22P
4J100AR31Q
4J100AR32Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100JA07
4J100JA37
(57)【要約】
本明細書では、オレフィンメタセシスに基づいてフォトポリマーを加工するための組成物および方法が記載される。組成物および方法は、潜在性ルテニウム錯体、ならびに光酸および/または光酸発生剤を含む。例えば、丈夫であり、耐久性があり、機能的な3次元(3D)オブジェクトのプリンティングは、未だに困難である。例えば、3Dプリンティング技術は、例えば、プリント速度が遅く、材料コストが高く、加工コストが高く、プリンティング温度が高く、後処理技術が複雑であるなどの制限を受け得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを作製するための方法であって、
(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、(iii)前記開始剤を増感させる増感剤、および(iv)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、
(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、前記活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記開始剤が、光開始剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増感剤が、電磁放射線のエネルギーを伝達または分散し、それによって前記開始剤を増感させるように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁放射線が、300ナノメートル(nm)~3,000nmの波長である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電磁放射線が、350nm~465nmの波長である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が、20ミリジュール/センチメートル
2(mJ/cm
2)~20,000mJ/cm
2の前記電磁放射線に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、100mJ/cm
2~1,000mJ/cm
2の前記電磁放射線に曝露される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電磁放射線が、レーザー、デジタルライ卜プロセッシング(DLP)プロジェクター、ランプ、発光ダイオード(LED)、水銀アークランプ、光ファイバー、または液晶ディスプレイ(LCD)から放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記潜在性Ru錯体が、グラブス触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グラブス触媒が、第1世代触媒、第2世代触媒、ホベイダ-グラブス触媒、または第3世代グラブス触媒である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体との開環メタセシス重合(ROMP)反応を受けて、前記ポリマーの前記少なくとも一部を作製する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記潜在性Ru錯体が、
【化70】
【化71】
からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記増感剤が、コンジュゲートした芳香族分子、フェノチアジン、チオキサントン、クマリン、インドリン、ポルフィリン、ローダミン、ピリリウム、フェナジン、フェノキサジン、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記増感剤が、
【化72】
からなる群から選択される化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記開始剤が、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジカルボキシミド、チオキサントン、またはオキシムである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記開始剤が、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、またはジカルボキシミドである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記開始剤が、硫酸イオン、スルホン酸イオン、アンチモン酸イオン、トリフレートイオン、ノナフレートイオン、ホウ酸イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アンチモン化物イオン、およびホウ化物イオンからなる群から選択される1つまたは複数の対イオンを含む塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記開始剤が、
【化73】
からなる群から選択される化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記開始剤が、
【化74】
【化75】
からなる群から選択される化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記開始剤が、置換ジカルボキシミドであり、ジカルボキシアミドが、C
7~C
15ヘテロシクロアルキルであり、前記置換ジカルボキシミドが、置換スルホネートで置換されている、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記開始剤が、
【化76】
【化77】
からなる群から選択される化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記開始剤が、チオキサントンである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記開始剤が、
【化78】
からなる群から選択される化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記開始剤が、オキシムである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記開始剤が、
【化79】
からなる群から選択される化合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのポリマー前駆体が、ジシクロペンタジエン、分岐、架橋ポリ(ジシクロペンタジエン)、オリゴマー性ポリ(ジシクロペンタジエン)、またはポリマー性ポリ(ジシクロペンタジエン))、ノルボルネン、脂肪族オレフィン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、トリシクロペンタジエン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィンポリマー、およびジイミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物が、添加剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記添加剤が、抗酸化剤、フィラー、光学的ブライトナー、紫外線(UV)吸収剤、顔料、色素、フォトレドックス剤、脱酸素剤、難燃剤、衝撃改質剤、粒子、フィラー、繊維、ナノ粒子、可塑剤、溶剤、油、ワックス、加硫剤、クロスリンカー、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、重合阻害剤、貯蔵安定剤、連鎖移動剤、およびサイジング剤からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記添加剤が、
【化80】
からなる群から選択される化合物である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記添加剤が、
【化81】
からなる群から選択される化合物である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記添加剤が、
【化82】
からなる群から選択される化合物である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーが、100キロパスカル(KPa)~20ギガパスカル(GPa)の弾性率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記弾性率が、100キロパスカル(KPa)~10ギガパスカル(GPa)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマーが、10キロパスカル(KPa)~20GPaの曲げ弾性率を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記曲げ弾性率が、10MPa~10GPaである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマーが、摂氏0度(℃)~400℃の熱たわみ温度(HDT)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記HDTが、50℃~200℃である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリマーが、1メートル当たり1ジュール(J/m)~10,000J/mの衝撃強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記衝撃強度が、30J/m~700J/mである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマーが、100KPa~1000MPaの引張強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリマーが、0.1%~10,000%の降伏歪みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリマーが、最大応力において100KPa~1500MPaの曲げ歪みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリマーが、1パーセント(%)~10,000%の破断伸びを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記破断伸びが、5%~500%である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリマーが、-273℃~+300℃の温度において10%~100%の衝撃強度保持率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリマーが、ヒトへの使用に安全である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリマーが、10993-5グレード0である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリマーが、ショア00または10~ショアD100の硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記硬度が、ショアA10~ショアD100である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ポリマーが、光重合を使用して作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリマーが、1%未満の酸素(O
2)を含む雰囲気中で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記ポリマーが、不活性ガス雰囲気中で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリマーが、窒素(N
2)またはアルゴン(Ar
2)の雰囲気中で作製される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ポリマーが、0℃~150℃の温度で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記温度が、20℃~50℃である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ポリマーを作製するための方法であって、
(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップであって、前記潜在性Ru錯体が、0.1重量百万分率(ppm)~1重量%の濃度で存在し、前記開始剤が、0.1重量百万分率(ppm)~10重量%の濃度で存在するステップと、
(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、前記活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップと
を含む、方法。
【請求項57】
ポリマーを作製するための方法であって、
(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップであって、前記潜在性Ru錯体および前記開始剤が、モル比0.01:1.0~10:1.0の前記Ru錯体対前記開始剤の比で存在するステップと、
(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、前記活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップと
を含む、方法。
【請求項58】
ポリマーを作製するための方法であって、
(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)ヨードニウム塩またはスルホニウム塩である開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、
(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、前記活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップと
を含む、方法。
【請求項59】
前記開始剤が、第1の結合した配位子または第1の配位した配位子を置き換えることによって前記潜在性触媒を活性化する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の結合した配位子または前記第1の配位した配位子が、第2の配位子で置き換えられる、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記第2の配位子が、前記開始剤から誘導される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の配位子および前記第2の配位子の配位強度比または結合強度比が、1未満である、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
3次元(3D)オブジェクトをプリントするための方法であって、
(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む樹脂を提供するステップと、
(b)前記樹脂を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、前記活性化Ru錯体が、前記ポリマー前駆体と反応して、前記3Dオブジェクトの少なくとも一部をプリントするステップと
を含む、方法。
【請求項64】
前記3Dオブジェクトが、加法的製造法、ステレオリソグラフィー、コンピュータ軸リソグラフィー、インクジェット法、焼結、液槽光重合、多光子リソグラフィー、ホログラフィックリソグラフィー、ホットリソグラフィー、IRリソグラフィー、直接書き込み、マスクステレオリソグラフィー、ドロップ-オン-デマンドプリンティング、ポリジェット、デジタル光投影(DLP)、投影マイクロステレオリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー、フォトリソグラフィーを使用してプリントされる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
3Dオブジェクトが、表面上にプリントされる、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
3Dオブジェクトが、窓材料上にプリントされる、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記窓材料が、酸素透過性である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記窓材料が、最大37mN/mの表面自由エネルギーを有する、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記窓材料が、透明フルオロポリマーを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
3Dオブジェクトが、100ナノメートル(nm)~200μmの画素サイズを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記画素サイズが、5μm~100μmである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ポリマーを作製するための組成物であって、(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)前記組成物の電磁放射線への曝露時に活性化して、活性化開始剤をもたらし、前記活性化開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体をもたらすように構成されている開始剤、(iii)前記開始剤を増感させるように構成されている増感剤、および(iv)前記活性化Ru錯体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部をもたらすように構成されている少なくとも1つのポリマー前駆体を含む、組成物。
【請求項73】
3次元(3D)オブジェクトを製作するためのシステムにおいて使用するための混合物であって、
(i)少なくとも1つのオレフィンを含む1つまたは複数のモノマーを含む、重合可能なコンポーネント、
(ii)ルテニウム(Ru)錯体、および
(iii)電磁放射線への曝露時に活性化可能であり、光酸または光酸発生剤である開始剤
を含み、
前記混合物が、前記3Dオブジェクトを製作するための前記システムの供給源からの前記電磁放射線への曝露時に、生部分を固化させるように構成されている、
混合物。
【請求項74】
ポリマー前駆体を重合させるための組成物であって、
(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、
(ii)電磁放射線を受けると、前記潜在性Ru錯体と反応して、前記ポリマー前駆体を重合させるように構成された活性化Ru錯体をもたらすように構成されている光開始剤、および
(iii)前記組成物中の前記開始剤を増感させるのに役立つ増感剤
を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2019年10月10日出願の米国仮出願第62/913,526号の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、アメリカ国立科学財団によって授与されたSBIR#1758545の下で政府支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
例えば、丈夫であり、耐久性があり、機能的な3次元(3D)オブジェクトのプリンティングは、未だに困難である。例えば、3Dプリンティング技術は、例えば、プリント速度が遅く、材料コストが高く、加工コストが高く、プリンティング温度が高く、後処理技術が複雑であるなどの制限を受け得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本明細書では、環状オレフィンフォトポリマー樹脂を生成するための、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)(例えば、光開始ROMP(P-ROMP)またはフォトリソグラフィーオレフィンメタセシス重合(PLOMP))を含むことができる、オレフィン-メタセシスベースの光重合反応が提供される。光開始オレフィンメタセシスを、3次元(3D)オブジェクトの加法的製造法に適用することにより、他のプリンティング技術を上回る、例えば方法およびオブジェクトの著しい改善が可能になる。本明細書で提供されるオブジェクトは、他のプリンティング技術でプリントされたオブジェクトよりも良好な特徴または特色、例えば改善された加工温度、靱性、衝撃強度、化学耐性、生体適合性、光弾性(photomodulus)係数、より高い生強度(green strength)、より長いポットライフ、およびより長い貯蔵期間などを有し得る。本明細書で提供される方法は、他の(例えば、メタセシスベースの)プリンティング技術よりも効率的であり、対費用効果が高く、例えば、より高いプリンティング精度、より少ない臨界曝露量、プリント速度の増大、および低温でのプリント適性などを提供する。
【0005】
本明細書で提供される方法および組成物は、ラジカルベースおよび酸ベースのフォトポリマーを上回る改善された特色または特徴を有する、硬化した環状オレフィンフォトポリマーを生成することができる。本明細書で提供される方法および組成物は、他の技術よりも改善された特徴、例えば、改善された延性、改善された透明性(例えば、彩度が低く、染色が少ない)、改善された生体適合性、改善された化学耐性、改善された加工性(例えば、ガラス転移温度(Tg)、高寸法精度、低フォトポリマー収縮、低粘度、低浸出)、改善された引裂強度、改善された衝撃強度、改善された降伏歪み、改善された破断歪み、改善された吸水(例えば、低吸水)、改善された感覚刺激性、改善された熱たわみ温度、またはそれらの任意の組合せなどを有する、(例えば、硬化した環状オレフィン)フォトポリマーを生成し得る。
【0006】
本明細書で提供される方法および組成物は、例えば、アクリル系もしくはポリオレフィン系熱可塑性物質、環状オレフィンポリマー、または環状オレフィンコポリマー(例えば、Zendura、Biocryl、Essix、またはInvisacryl)を含めた、例えば熱成形された材料に類似のまたはそれよりも良好な材料特性を達成する生成物またはボディを生成する、光化学的手法を提供することができる。
【0007】
本明細書で提供される組成物および方法は、直接的な加法的製造法を使用して3Dオブジェクトを生成するための手法を提供することができる。このような生成物またはボディは、延性であり得る。このような組成物および方法は、ツーリング(tooling)、成型(例えば、熱成形)、コンピュータ数値(CNC)ミル加工(milling)、またはCNC切断を含まなくてよい。このような特色は、本明細書で提供される3Dオブジェクトを生成するための生成コストおよび時間を低減し得る。このような特色は、本明細書に記載される生成物またはボディを生成するためのカスタマイズ、パーソナライズ、または設計の自由を増大または増強し得る。
【0008】
本明細書で提供される組成物および方法は、添加剤を生成物またはボディ(例えば、フォトポリマー材料)に組み込むための手法を提供することができる。本明細書で提供されるこのような添加剤は、生成物またはボディの本明細書で提供される特色、特徴、または特性を修正し得る。
【0009】
本明細書で提供される組成物および方法は、サブコンポーネント、コンポーネントの幾何形状、またはそれらの組合せを有する3Dオブジェクトを製造するための手法を提供することができる。このようなサブコンポーネント、コンポーネントの幾何形状、またはそれらの組合せは、他の技術(例えば、成型技術)を用いて達成することが困難であるか、実現不可能であるか、または不可能な場合がある。
【0010】
本明細書で提供される組成物および方法は、例えば、売り場、オフィス、小売店、病院、または診療所などで、生産グレードの生成物またはボディを物流方式で製造する手法(例えば、加法的製造法を使用する)を提供することができる。
【0011】
ある特定の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリマー前駆体を重合させる方法であって、(a)(i)潜在性(latent)ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)混合物を電磁放射線に曝露して、開始剤を活性化させ、活性化時に、開始剤が潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、少なくとも1つのポリマー前駆体の少なくとも一部を重合させるステップとを含む方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、潜在性Ru錯体は、グラブス型触媒である。一部の実施形態では、グラブス型触媒は、少なくとも1つのN複素環式カルベン(NHC)配位子を含む。一部の実施形態では、方法は、少なくとも2つのNHC配位子をさらに含む。一部の実施形態では、Ru錯体は、16電子種を含む。
【0013】
一部の実施形態では、開始剤は、光酸(PAH)、光酸発生剤(PAG)、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、PAH、PAG、またはそれらの組合せは、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、トリアジン、トリフレート、およびオキシムスルホネートからなる群から選択される。一部の実施形態では、開始剤は、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートである。
【0014】
一部の実施形態では、少なくとも1つのポリマー前駆体は、少なくとも1つのオレフィンを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つのオレフィンは、環状オレフィンである。一部の実施形態では、環状オレフィンは、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、またはノルボルネンである。
【0015】
一部の実施形態では、電磁放射線は、10nm~10mの波長を有する。一部の実施形態では、波長は、150nm~2000nmである。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、添加剤は、フィラー、繊維、ポリマー、界面活性剤、無機粒子、細胞、ウイルス、生体材料、ゴム、衝撃改質剤、グラファイトおよびグラフェン、着色剤、色素、顔料、炭素繊維、ガラス繊維、織物、リグニン、セルロース、木材、および金属粒子からなる群から選択される。
【0017】
一部の実施形態では、方法は、安定剤をさらに含む。一部の実施形態では、安定剤は、有機または無機ルイス塩基またはブレンステッド塩基、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤(antiozonant)、界面活性剤、脱酸素剤(oxygen scavenger)、配位子、クエンチャー、および光吸収剤からなる群から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、活性化Ru錯体は、少なくとも1つのN複素環式カルベン(NHC)配位子を含む。一部の実施形態では、活性化Ru錯体は、1つのNHC配位子を含む。一部の実施形態では、活性錯体は、14電子種を含む。
【0019】
他の態様では、本開示は、3次元(3D)オブジェクトをプリントするための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む樹脂を提供するステップと、(b)樹脂を電磁放射線に曝露して、開始剤を活性化させ、活性化時に、開始剤が潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、ポリマー前駆体と反応して、3Dオブジェクトの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法を提供する。
【0020】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、(iii)開始剤を増感させる増感剤、および(iv)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、開始剤が潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0021】
一部の実施形態では、開始剤は、光開始剤(例えば、光酸発生剤(PAG)または光酸(PAH))である。
【0022】
一部の実施形態では、増感剤は、電磁放射線(例えば、300ナノメートル~3,000ナノメートルの波長を有する電磁放射線)のエネルギーを伝達または分散し、それによって開始剤を増感させるように構成されている。一部の実施形態では、電磁放射線は、300ナノメートル(nm)~3,000nmの波長である。一部の実施形態では、電磁放射線は、350nm~465nmの波長である。
【0023】
一部の実施形態では、混合物は、20ミリジュール/センチメートル2(mJ/cm2)~20,000mJ/cm2の電磁放射線に曝露される。一部の実施形態では、混合物は、100mJ/cm2~1,000mJ/cm2の電磁放射線に曝露される。
【0024】
一部の実施形態では、電磁放射線は、レーザー、デジタルライ卜プロセッシング(DLP)プロジェクター、ランプ、発光ダイオード(LED)、水銀アークランプ、光ファイバー、または液晶ディスプレイ(LCD)から放出される。
【0025】
一部の実施形態では、潜在性Ru錯体は、グラブス触媒である。一部の実施形態では、グラブス触媒は、第1世代触媒、第2世代触媒、ホベイダ-グラブス触媒、または第3世代グラブス触媒である。
【0026】
一部の実施形態では、活性化Ru錯体は、少なくとも1つのポリマー前駆体との開環メタセシス重合(ROMP)(例えば、光開始ROMP(P-ROMP)またはフォトリソグラフィーオレフィンメタセシス重合(PLOMP))反応を受けて、ポリマーの少なくとも一部を作製する。
【0027】
一部の実施形態では、潜在性Ru錯体は、
【化1】
【化2】
からなる群から選択される化合物である。
【0028】
一部の実施形態では、増感剤は、コンジュゲートした芳香族分子(例えば、ナフタレン、ペリレン、またはアセン類)、フェノチアジン(例えば、またはその誘導体)、チオキサントン(例えば、またはその誘導体)、クマリン(例えば、その誘導体)、インドリン、ポルフィリン、ローダミン、ピリリウム(pyrylium)、フェナジン、フェノキサジン、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシドである。
【0029】
一部の実施形態では、増感剤は、
【化3】
からなる群から選択される化合物である。
【0030】
一部の実施形態では、開始剤は、ヨードニウム(塩)、スルホニウム(塩)、ジカルボキシミド、チオキサントン、またはオキシムである。一部の実施形態では、開始剤は、ヨードニウム(塩)、スルホニウム(塩)、またはジカルボキシミドである。
【0031】
一部の実施形態では、開始剤は、硫酸イオン、スルホン酸イオン、アンチモン酸イオン、トリフレートイオン、ノナフレートイオン、ホウ酸イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アンチモン化物イオン、およびホウ化物イオンからなる群から選択される1つまたは複数の対イオンを含む塩(例えば、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩)である。
【0032】
一部の実施形態では、開始剤は、
【化4】
からなる群から選択される化合物である。
【0033】
一部の実施形態では、開始剤は、
【化5】
【化6】
からなる群から選択される化合物である。
【0034】
一部の実施形態では、開始剤は、置換ジカルボキシミドであり、ジカルボキシアミドは、C
7~C
15ヘテロシクロアルキルであり、置換ジカルボキシミドは、置換スルホネート(例えば、C
1~C
6ハロアルキル(例えば、フルオロアルキル)スルホネート)で置換されている(例えば、N置換されている)。一部の実施形態では、開始剤は、
【化7】
【化8】
からなる群から選択される化合物である。
【0035】
一部の実施形態では、開始剤は、チオキサントンである。一部の実施形態では、開始剤は、
【化9】
からなる群から選択される化合物である。
【0036】
一部の実施形態では、開始剤は、オキシムである。一部の実施形態では、開始剤は、
【化10】
からなる群から選択される化合物である。
【0037】
一部の実施形態では、少なくとも1つのポリマー前駆体は、ジシクロペンタジエン(例えば、ポリ(ジシクロペンタジエン)(例えば、線状ポリ(ジシクロペンタジエン)、分岐(例えば、超分枝)ポリ(ジシクロペンタジエン)、架橋ポリ(ジシクロペンタジエン)、オリゴマー性ポリ(ジシクロペンタジエン)、またはポリマー性ポリ(ジシクロペンタジエン))、ノルボルネン(例えば、アルキルノルボルネン(例えば、エチリデンノルボルネン)、ノルボルネンジイミド、多官能性ノルボルネンクロスリンカー(例えば、ジ-ノルボルネン、トリ-ノルボルネン))、脂肪族オレフィン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、トリシクロペンタジエン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィンポリマー(例えば、環状オレフィンコポリマー)、およびジイミドからなる群から選択される。
【0038】
一部の実施形態では、混合物は、添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、添加剤は、抗酸化剤(例えば、一次抗酸化剤または二次抗酸化剤)、フィラー、光学的ブライトナー、紫外線(UV)吸収剤、顔料、色素、フォトレドックス剤、脱酸素剤、難燃剤、衝撃改質剤、粒子、フィラー、繊維、ナノ粒子、可塑剤、溶剤、油、ワックス、加硫剤、クロスリンカー(例えば、二次クロスリンカー(例えば、チオールまたはペルオキシド))、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、重合阻害剤(例えば、ホスフィン、ホスファイト、アミン、キレート剤、チオール、ビニルエーテル)、貯蔵安定剤(shelf-life stabilizer)、連鎖移動剤、およびサイジング剤(例えば、有機相と無機相をつなぐための機能性)からなる群から選択される。一部の実施形態では、添加剤は、クマリン(例えば、その誘導体)、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシド)である。
【0039】
一部の実施形態では、添加剤は、
【化11】
からなる群から選択される化合物である。
【0040】
一部の実施形態では、添加剤は、
【化12】
からなる群から選択される化合物である。
【0041】
一部の実施形態では、添加剤は、
【化13】
からなる群から選択される化合物である。
【0042】
一部の実施形態では、ポリマーは、100キロパスカル(KPa)~20ギガパスカル(GPa)の弾性率を有する。一部の実施形態では、弾性率は、100キロパスカル(KPa)~10ギガパスカル(GPa)である。
【0043】
一部の実施形態では、ポリマーは、10キロパスカル(KPa)~20GPaの曲げ弾性率を有する。一部の実施形態では、曲げ弾性率は、10MPa~10GPaである。
【0044】
一部の実施形態では、ポリマーは、摂氏0度(℃)~400℃の熱たわみ温度(HDT)を有する。一部の実施形態では、HDTは、50℃~200℃である。
【0045】
一部の実施形態では、ポリマーは、摂氏-100度(℃)~400℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0046】
一部の実施形態では、ポリマーは、1メートル当たり1ジュール(J/m)~10,000J/mの衝撃強度(例えば、ノッチ付きアイゾット衝撃強度試験によって測定される通り)を有する。一部の実施形態では、衝撃強度は、30J/m~700J/mである。
【0047】
一部の実施形態では、ポリマーは、100KPa~1000MPaの引張強度を有する。
【0048】
一部の実施形態では、ポリマーは、0.1%~10,000%の降伏歪みを有する。
【0049】
一部の実施形態では、ポリマーは、最大応力において100KPa~1500MPaの曲げ歪み(例えば、1MPa~350MPa)を有する。
【0050】
一部の実施形態では、ポリマーは、1パーセント(%)~10,000%の破断伸びを有する。一部の実施形態では、破断伸びは、5%~500%である。
【0051】
一部の実施形態では、ポリマーは、-273℃~+300℃の温度で10%~100%の衝撃強度保持率を有する。
【0052】
一部の実施形態では、ポリマーは、ヒトへの使用に安全である。一部の実施形態では、ポリマーは、10993-5グレード0である。
【0053】
一部の実施形態では、ポリマーは、ショア00または10~ショアD100の硬度を有する。一部の実施形態では、硬度は、ショアA10~ショアD100である。
【0054】
一部の実施形態では、ポリマーは、光重合を使用して作製される。一部の実施形態では、ポリマーは、1%未満(例えば、約0.2%未満)の酸素(O2)を含む雰囲気中で作製される。一部の実施形態では、ポリマーは、(実質的に)不活性ガスの雰囲気中で作製される。一部の実施形態では、ポリマーは、窒素(N2)またはアルゴン(Ar2)の雰囲気中で作製される。
【0055】
一部の実施形態では、ポリマーは、0℃~150℃の温度で作製される(例えば、プリントプロセス期間中)。一部の実施形態では、温度は、20℃~50℃である(例えば、プリントプロセス期間中)。
【0056】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップであって、前記潜在性Ru錯体が、0.1重量百万分率(ppm)~1重量%の濃度で存在し、前記開始剤が、0.1重量百万分率(ppm)~10重量%の濃度で存在するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0057】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップであって、前記潜在性Ru錯体および前記開始剤が、モル比0.01:1.0~10:1.0の前記Ru錯体対前記開始剤の比で存在するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0058】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)ヨードニウム塩またはスルホニウム塩である開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0059】
一部の実施形態では、開始剤は、第1の結合した配位子または第1の配位した配位子を置き換えることによって潜在性触媒を活性化する。一部の実施形態では、第1の結合した配位子または第1の配位した配位子は、第2の配位子で置き換えられる。一部の実施形態では、第2の配位子は、開始剤から誘導される。一部の実施形態では、第1の配位子および第2の配位子は、それぞれ独立に、1未満の配位強度比または結合強度比を有する。
【0060】
ある特定の態様では、本明細書では、3次元(3D)オブジェクトをプリントするための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む樹脂を提供するステップと、(b)前記樹脂を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記ポリマー前駆体と反応して、前記3Dオブジェクトの少なくとも一部をプリントするステップとを含む方法が提供される。
【0061】
一部の実施形態では、3Dオブジェクトは、加法的製造法、ステレオリソグラフィー、コンピュータ軸リソグラフィー、インクジェット法、焼結、液槽光重合、多光子リソグラフィー、ホログラフィックリソグラフィー、ホットリソグラフィー(hot lithography)、IRリソグラフィー、直接書き込み(direct writing)、マスクステレオリソグラフィー、ドロップ-オン-デマンドプリンティング、ポリジェット、デジタル光投影(DLP)、投影マイクロステレオリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー、フォトリソグラフィーを使用してプリントされる。
【0062】
一部の実施形態では、3Dオブジェクトは、表面上にプリントされる。一部の実施形態では、3Dオブジェクトは、窓材料上にプリントされる。一部の実施形態では、窓材料は、酸素透過性である(例えば、窓界面に「デッドゾーン」を作り出す)。一部の実施形態では、窓材料は、低表面エネルギー(例えば、最大37mN/m(例えば、最大25mN/m)の表面自由エネルギー)を有する。一部の実施形態では、窓材料は、透明フルオロポリマーを含む。
【0063】
一部の実施形態では、3Dオブジェクトは、100ナノメートル(nm)~200μmの画素サイズを有する。一部の実施形態では、画素サイズは、5μm~100μmである。
【0064】
ある特定の態様では、本明細書では、3次元(3D)オブジェクトを生成するための方法であって、(i)潜在性触媒、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を合わせるステップを含み、前記3Dオブジェクトが、改善された衝撃強度、化学耐性、靱性、せん断強度、引裂強度、温度安定性、軽量性、生体適合性、光学性能、誘電透過性、曲げ強度、クリープ、風化、耐久性、ガラス転移温度、表面エネルギー、表面接着、UV安定性、耐疲労性、可燃性、剛性(引張、曲げ、および圧縮率)、強度(引張、曲げ、および圧縮)、降伏応力および歪み、密度、耐摩耗性、ガス透過性、審美性(匂い、味、平坦性)、ならびに穿刺耐性からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む方法が提供される。
【0065】
一部の実施形態では、方法は、3Dオブジェクトを作製した後、前記3Dオブジェクトを電磁放射線(例えば、熱または光)に付すことによって、前記3Dオブジェクトの少なくとも1つの特徴を変えるステップをさらに含む。一部の実施形態では、3Dオブジェクトを電磁放射線(例えば、熱または光)に付した後、弾性率、引張強度、架橋密度、ガス放出、浸出性、生体適合性、化学耐性、色、生体適合性、ガラス転移温度、粘度からなる群から選択される少なくとも1つの特徴が変わる。
【0066】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための組成物であって、(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)前記組成物の電磁放射線への曝露時に活性化して、活性化開始剤をもたらし、その活性化開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体をもたらすように構成されている開始剤、(iii)前記開始剤を増感させるように構成されている増感剤、および(iv)前記活性化Ru錯体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部をもたらすように構成されている少なくとも1つのポリマー前駆体を含む組成物が提供される。
【0067】
ある特定の態様では、本明細書では、3次元(3D)オブジェクトを製作するためのシステムにおいて使用するための混合物であって、(i)少なくとも1つのオレフィンを含む1つまたは複数のモノマーを含む、重合可能なコンポーネント、(ii)ルテニウム(Ru)錯体、および(iii)電磁放射線への曝露時に活性化可能であり、光酸または光酸発生剤である開始剤を含み、この混合物が、前記3Dオブジェクトを製作するための前記システムの供給源からの前記電磁放射線への曝露時に、生部分(green part)を固化させるように構成されている混合物が提供される。
【0068】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマー前駆体を重合させるための組成物であって、(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)電磁放射線を受けると、前記潜在性Ru錯体と反応して、前記ポリマー前駆体を重合させるように構成された活性化Ru錯体をもたらすように構成されている光開始剤、および(iii)前記組成物中の前記開始剤を増感させるのに役立つ増感剤を含む組成物が提供される。
【0069】
本開示の別の態様は、1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実行する際に、前述のまたは本明細書の他所に記載の方法のいずれかを実装する、機械的に実行可能なコードを含む非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【0070】
本開示の別の態様は、1つまたは複数のコンピュータプロセッサおよびそれに接続されたコンピュータメモリを含むシステムを提供する。コンピュータメモリは、1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって実行する際に、前述のまたは本明細書の他所に記載の方法のいずれかを実装する、機械的に実行可能なコードを含む。
【0071】
本開示の追加の態様および利点は、単に本開示の例示的な実施形態が示され記載されている以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかになろう。認識される通り、本開示では、他の様々な実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本開示から逸脱することなく、様々な明白な観点で修正が可能である。したがって、図および説明は、例示的な性質であり、限定的なものではないとみなされるべきである。
参照による援用
【0072】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的に個々に示されているのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する限りにおいて、本明細書は、このような矛盾している任意の材料に取って代わり、かつ/または優先することを意図される。
【0073】
本発明の新規な特色を、添付の特許請求の範囲における特殊性と共に記載する。本発明の特色および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明および添付の図(また本明細書では「図(Figure)」および「図(FIG.)」)を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、それぞれ左から右に、潜在性ルテニウム(Ru)錯体、開始剤、およびポリマー前駆体の例を示す。
【0075】
【
図2】
図2は、本明細書で提供される方法を実装するようにプログラムされるかまたはその他の方法で構成されているコンピュータシステムを示す。
【0076】
【
図3】
図3は、ビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)ルテニウム(II)((SIMes)
2Ru(ベンジリデン)Cl
2)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、2-イソプロピルチオキサントン(ITX)、ジシクロペンタジエン、およびトリシクロペンタジエンを含むフォトポリマー混合物の光重合挙動についてのフォトポリマー検量線を示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【
図5A】
図5Aは、フォトポリマーを使用して製作された試料の例を示す。
【0082】
【
図5B】
図5Bは、フォトポリマーを使用して製作された試料の引張歪み図の例を示す。
【0083】
【
図5C】
図5Cは、フォトポリマーを使用して製作された試料の示差走査熱量測定結果の例を示す。
【0084】
【
図6A】
図6Aは、フォトポリマーを使用して製作された試料の例を示す。
【0085】
【
図6B】
図6Bは、フォトポリマーを使用して製作された試料の引張歪み図の例を示す。
【0086】
【
図6C】
図6Cは、フォトポリマーを使用して製作された試料の示差走査熱量測定結果の例を示す。
【0087】
【
図7A】
図7Aは、フォトポリマーを使用して製作された試料の例を示す。
【0088】
【
図7B】
図7Bは、フォトポリマーを使用して製作された試料の示差走査熱量測定結果の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
詳細な説明
本発明の様々な実施形態を、本明細書に示し記載しているが、このような実施形態は、単に例示のために提供されることが、当業者には明らかになろう。当業者は、本発明から逸脱することなく数々の変動、変化、および置換を思いつくことができる。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替が用いられ得ることを理解されたい。
【0090】
本明細書では、オレフィンメタセシスに基づくフォトポリマーの組成物およびフォトポリマーを加工するための方法が記載される。組成物は、潜在性ルテニウム錯体、および光酸発生剤(PAG)または光酸(PAH)を含み得る。ある特定の組成物は、さらに、増感剤(例えば、光酸発生剤の活性の波長を修正するため)、安定剤(例えば、フォトポリマーの暗所安定性(dark stability)を改善するため)、ならびに添加剤(例えば、液体フォトポリマーの性能および最終的な硬化部品の特性を修正するため)を含み得る。
【0091】
本明細書に記載される組成物の作用機序は、酸性種の光誘起生成(photogeneration)であり得、その後、酸性種は、潜在性ルテニウム錯体から酸感受性配位子を除去する。ルテニウム錯体は、配位子の解離後にオレフィンメタセシスを受け得る。重合は、開環メタセシス重合(ROMP)を介して生じ得る。この重合機序は、環状オレフィンの光重合と関連し得る。提唱されるこの機序は、明確にするために提示され、本明細書に記載される本発明の範囲を限定することを意図されない。
ある特定の用語
【0092】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「および(and)」および「その(the)」は、文脈によって別段明示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「1つの薬剤(an agent)」への言及は、複数のこのような薬剤を含み、「その細胞(the cell)」への言及は、当業者に公知の1つまたは複数の細胞(または複数の細胞)およびその均等物への言及を含む、などである。分子量などの物理的特性または化学式などの化学的特性について、ある範囲が本明細書で使用される場合、その範囲およびその具体的な実施形態のすべての組合せおよび部分的組合せが含まれることが意図される。用語「約」は、数または数値範囲に言及する場合、言及される数または数値範囲が、実験の変動内(または統計的実験誤差内)の近似であり、したがって、その数または数値範囲は、記述された数または数値範囲の1%~15%の間で変わり得ることを意味する。用語「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有する(having)」または「含む(including)」などの関連用語)は、ある特定の他の実施形態において、例えば、本明細書に記載される物質の任意の組成、組成物、方法、またはプロセスなどの実施形態が、記載される特色「からなり」または「から本質的になり」得ることを排除することを意図されない。
【0093】
用語「少なくとも」、「よりも多い」、または「に等しいかまたはそれよりも多い」が、一連の2つまたはそれよりも多い数値のうちの最初の数値に先行している、または最後の数値に後続している場合はいつでも、用語「少なくとも」、「よりも多い」または「に等しいかまたはそれよりも多い」は、その一連の数値における数値のそれぞれに適用される。例えば、1、2、または3に等しいかまたはそれよりも多い、は、1に等しいかもしくはそれよりも多い、2に等しいかもしくはそれよりも多い、または3に等しいかもしくはそれよりも多い、と等価である。
【0094】
用語「以下」、「未満」、または「に等しいかまたはそれ未満」が、一連の2つまたはそれよりも多い数値の最初の数値に先行している、または最後の数値に後続している場合はいつでも、用語「以下」、「未満」、または「に等しいかまたはそれ未満」は、その一連の数値における数値のそれぞれに適用される。例えば、3、2、または1に等しいかまたはそれ未満、は、3に等しいかもしくはそれ未満、2に等しいかもしくはそれ未満、または1に等しいかもしくはそれ未満、と等価である。
【0095】
用語「潜在性」は、本明細書で使用される場合、一般に、活性な状態を有してはいるが、活性が低い状態または不活性な状態である分子またはその誘導体を指す。例えば、潜在性触媒、潜在性錯体、または潜在性Ru錯体は、その活性な形態よりも活性が低い分子であり得る。潜在性触媒、潜在性錯体、または潜在性Ru錯体は、不活性な状態であり得る。潜在性触媒は、触媒前駆体(pre-catalyst)であり得る。
【0096】
用語「活性な」または「活性化されている」は、本明細書で使用される場合、一般に、活性な状態である分子またはその誘導体を指す。例えば、活性触媒、活性錯体、または活性Ru錯体は、例えばポリマー前駆体などの、別の分子と反応し得るか、または反応するように構成され得る。
【0097】
用語「開始剤」は、本明細書で使用される場合、一般に、潜在性Ru錯体と相互反応し、それによって活性化Ru錯体を生成する分子またはその誘導体を指す。開始剤は、例えば、光によって活性化され得る。開始剤は、光酸(PAH)、光酸発生剤(PAG)、またはそれらの組合せであり得る。開始剤は、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、トリアジン、トリフレート、ジカルボキシミド、チオキサントン、またはオキシムであり得る。開始剤は、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、トリアジン、トリフレート、またはオキシムスルホネートであり得る。開始剤は、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり得る。
【0098】
用語「増感剤」は、本明細書で使用される場合、一般に、電磁放射線のエネルギーを伝達、分散、または変換する分子またはその誘導体を指す。増感剤は、電磁放射線のエネルギーを開始剤に伝達、分散、または変換し得る。増感剤は、例えば、電磁放射線の存在下で開始剤を活性化するやり方で、電磁放射線のエネルギーを伝達または分散し得る。増感剤は、開始剤が、例えば約350ナノメートル(nm)~約465nmなどの特定の波長範囲で活性化されるように、電磁放射線のエネルギーを分散、伝達、または変換するように構成され得る。
【0099】
用語「ポリマー」は、本明細書で使用される場合、一般に、少なくとも2つの繰り返し単位を含む分子を指す。繰り返し単位は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの任意の組合せを含み得る。ポリマーは、環状ポリマー、グラフトポリマー、ネットワークポリマーまたは分岐ポリマーであり得る。
【0100】
用語「重合させる」、「重合化」、または「重合」は、本明細書で使用される場合、一般に、少なくとも2つのポリマーサブ単位(例えば、モノマー)を反応させて、ポリマー鎖または3次元ネットワークを形成するプロセスを指す。
【0101】
用語「ポリマー前駆体」は、本明細書で使用される場合、一般に、ポリマー前駆体自体よりも大きいポリマーに重合するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを指す。ポリマー前駆体は、少なくとも1つのオレフィンを含み得る。一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、それぞれ、分子またはオリゴマー単位1つ当たり少なくとも1つのオレフィン(アルケン)結合または1つのアセチレン(アルキン)結合を含む、1つもしくは複数の分子化合物もしくはオリゴマー、またはそれらの組合せである。ポリマー前駆体は、環式もしくは脂環式cis-もしくはtrans-オレフィンまたは環式もしくは脂環式アセチレン、あるいは両方の種類の結合を有する構造(脂環式または環式エンインを含む)を含み得る。
【0102】
「アルキル」は、一般に、炭素原子および水素原子だけからなる直鎖または分岐の炭化水素鎖ラジカル、例えば1~15個の炭素原子を有するもの(例えば、C1~C15アルキル)を指す。別段記述されない限り、アルキルは、飽和または不飽和である(例えば、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含むアルケニル)。本明細書で提供される「アルキル」の開示は、別段記述されない限り、飽和「アルキル」の独立な記述を含むことを意図される。本明細書に記載されるアルキル基は、一般に一価であるが、二価であってもよい(本明細書では、「アルキレン」または「アルキレニル」基とも記載され得る)。ある特定の実施形態では、アルキルは、1~18個の炭素原子を含む(例えば、C1~C18アルキル)。ある特定の実施形態では、アルキルは、1~13個の炭素原子を含む(例えば、C1~C13アルキル)。ある特定の実施形態では、アルキルは、1~8個の炭素原子を含む(例えば、C1~C8アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~5個の炭素原子を含む(例えば、C1~C5アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~4個の炭素原子を含む(例えば、C1~C4アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~3個の炭素原子を含む(例えば、C1~C3アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1~2個の炭素原子を含む(例えば、C1~C2アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、1個の炭素原子を含む(例えば、C1アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、5~15個の炭素原子を含む(例えば、C5~C15アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、5~8個の炭素原子を含む(例えば、C5~C8アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、2~5個の炭素原子を含む(例えば、C2~C5アルキル)。他の実施形態では、アルキルは、3~5個の炭素原子を含む(例えば、C3~C5アルキル)。他の実施形態では、アルキル基は、メチル、エチル、1-プロピル(n-プロピル)、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、1-ブチル(n-ブチル)、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソ-ブチル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)、1-ペンチル(n-ペンチル)から選択される。アルキルは、単結合によって分子の残りに結合する。一般に、アルキル基は、それぞれ独立に、置換または非置換である。本明細書で提供される「アルキル」の各記述は、別段記述されない限り、不飽和「アルキル」基の具体的かつ明示的な記述を含む。同様に、本明細書で別段具体的に記載されない限り、アルキル基は、必要に応じて、以下の置換基:ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ(oximo)、トリメチルシラニル、-ORa、-SRa、-OC(O)-Ra、-N(Ra)2、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)N(Ra)2、-N(Ra)C(O)ORa、-OC(O)-N(Ra)2、-N(Ra)C(O)Ra、-N(Ra)S(O)tRa(tは、1または2である)、-S(O)tORa(tは、1または2である)、-S(O)tRa(tは、1または2である)および-S(O)tN(Ra)2(tは、1または2である)のうちの1つまたは複数によって置換されており、ここで各Raは、独立に、水素、アルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、フルオロアルキル、カルボシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、カルボシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アラルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロアリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、またはヘテロアリールアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)である。
【0103】
「アルコキシ」は、式-O-アルキルの酸素原子を介して結合したラジカルを指し、ここでアルキルは、先に定義される通りのアルキル鎖である。
【0104】
「アルケニル」は、炭素原子および水素原子だけからなり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有し、2~12個の炭素原子を有する、直鎖または分岐の炭化水素鎖ラジカル基を指す。ある特定の実施形態では、アルケニルは、2~8個の炭素原子を含む。他の実施形態では、アルケニルは、2~4個の炭素原子を含む。アルケニルは、「アルキル」基について記載される通り、必要に応じて置換されている。
【0105】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、一般に、分子の残りをラジカル基に連結する直鎖または分岐の二価のアルキル基、例えば1~12個の炭素原子を有するもの、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、i-プロピレン、n-ブチレンなどを指す。本明細書で別段具体的に記載されない限り、アルキレン鎖は、本明細書でアルキル基について記載される通り、必要に応じて置換されている。
【0106】
「アリール」は、環炭素原子から水素原子を除去することによって、芳香族単環式または多環式炭化水素環系から誘導されたラジカルを指す。芳香族単環式または多環式炭化水素環系は、水素および5~18個の炭素原子の炭素だけを含有し、ここで環系における環のうちの少なくとも1つは、完全に不飽和であり、すなわち、ヒュッケル理論に従う、環状の非局在化(4n+2)π電子系を含有する。アリール基が誘導される環系には、それに限定されるものではないが、ベンゼン、フルオレン、インダン、インデン、テトラリンおよびナフタレンなどの基が含まれる。本明細書で別段具体的に記載されない限り、用語「アリール」または接頭辞「アラ-」(例えば、「アラルキル」におけるような)は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、シアノ、ニトロ、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているアラルキル、必要に応じて置換されているアラルケニル、必要に応じて置換されているアラルキニル、必要に応じて置換されているカルボシクリル、必要に応じて置換されているカルボシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクリル、必要に応じて置換されているヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは、1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは、1または2である)から独立に選択される1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換されているアリールラジカルを含むことを意味し、ここで各Raは、独立に、水素、アルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、フルオロアルキル、シクロアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、シクロアルキルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アラルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロアリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、またはヘテロアリールアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)であり、各Rbは、独立に、直接結合または直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、Rcは、直鎖または分岐のアルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、先の置換基のそれぞれは、別段指定されない限り、非置換である。
【0107】
「アラルキル」または「アリール-アルキル」は、式-Rc-アリールのラジカルを指し、ここでRcは、先に定義される通りのアルキレン鎖、例えばメチレン、エチレンなどである。アラルキルラジカルのアルキレン鎖部分は、アルキレン鎖について先に記載される通り、必要に応じて置換されている。アラルキルラジカルのアリール部分は、アリール基について先に記載される通り、必要に応じて置換されている。
【0108】
「カルボシクリル」または「シクロアルキル」は、炭素原子および水素原子だけからなり、3~15個の炭素原子を有する、縮合または架橋環系を含めた安定な非芳香族の単環式または多環式炭化水素ラジカルを指す。ある特定の実施形態では、カルボシクリルは、3~10個の炭素原子を含む。他の実施形態では、カルボシクリルは、5~7個の炭素原子を含む。カルボシクリルは、単結合によって分子の残りに結合する。カルボシクリルまたはシクロアルキルは、飽和(すなわち、C-C単結合だけを含有する)または不飽和(すなわち、1つまたは複数の二重結合または三重結合を含有する)である。飽和シクロアルキルの例として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。不飽和カルボシクリルは、「シクロアルケニル」とも呼ばれる。単環式シクロアルケニルの例として、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。多環式カルボシクリルラジカルには、例えば、アダマンチル、ノルボルニル(すなわち、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル)、ノルボルネニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが含まれる。本明細書において、別段具体的に記述されない限り、用語「カルボシクリル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているアラルキル、必要に応じて置換されているアラルケニル、必要に応じて置換されているアラルキニル、必要に応じて置換されているカルボシクリル、必要に応じて置換されているカルボシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクリル、必要に応じて置換されているヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは、1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは、1または2である)から独立に選択される1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換されているカルボシクリルラジカルを含むことを意味し、ここで各Raは、独立に、水素、アルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、フルオロアルキル、シクロアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、シクロアルキルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アラルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロアリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、またはヘテロアリールアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)であり、各Rbは、独立に、直接結合または直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、Rcは、直鎖または分岐のアルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、先の置換基のそれぞれは、別段指定されない限り、非置換である。
【0109】
「カルボシクリルアルキル」は、式-Rc-カルボシクリルのラジカルを指し、ここでRcは、先に定義される通りのアルキレン鎖である。アルキレン鎖およびカルボシクリルラジカルは、先に定義される通り、必要に応じて置換されている。
【0110】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨード置換基を指す。
【0111】
「フルオロアルキル」は、1つまたは複数の先に定義される通りのフルオロラジカルによって置換されている、先に定義される通りのアルキルラジカル、例えばトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1-フルオロメチル-2-フルオロエチルなどを指す。一部の実施形態では、フルオロアルキルラジカルのアルキル部分は、アルキル基について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。
【0112】
用語「ヘテロアルキル」は、アルキルの1つまたは複数の骨格炭素原子が、ヘテロ原子で置換されている、先に定義される通りのアルキル基を指す(適切な数の置換基または原子価で置換され、例えば、-CH2-は、-NH-または-O-で置き換えられ得る)。例えば、置換されている各炭素原子は、独立に、ヘテロ原子で置換されており、例えば炭素は、窒素、酸素、セレン、または他の適切なヘテロ原子で置換されている。ある場合には、置換されている各炭素原子は、独立に、酸素、窒素(例えば、-NH-、-N(アルキル)-もしくは-N(アリール)-、または本明細書で企図される別の置換基を有する)、または硫黄(例えば、-S-、-S(=O)-、または-S(=O)2-)で置換されている。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、ヘテロアルキルの炭素原子において分子の残りに結合している。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、ヘテロアルキルのヘテロ原子において分子の残りに結合している。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、C1~C18ヘテロアルキルである。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、C1~C12ヘテロアルキルである。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、C1~C6ヘテロアルキルである。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、C1~C4ヘテロアルキルである。代表的なヘテロアルキル基として、それに限定されるものではないが、-OCH2OMeまたは-CH2CH2OMeが挙げられる。一部の実施形態では、ヘテロアルキルには、本明細書で定義される通りのアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルアルキルが含まれる。本明細書で別段具体的に記載されない限り、ヘテロアルキル基は、アルキル基について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。
【0113】
「ヘテロアルキレン」は、分子のある部分を別の部分に連結する、先に定義される二価のヘテロアルキル基を指す。別段具体的に記述されない限り、ヘテロアルキレンは、アルキル基について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。
【0114】
「ヘテロシクリル」は、2~12個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を含む、安定な3~18員の非芳香環ラジカルを指す。本明細書で別段具体的に記載されない限り、ヘテロシクリルラジカルは、必要に応じて縮合または架橋環系を含めた、単環式、二環式、三環式または四環系環系である。ヘテロシクリルラジカルのヘテロ原子は、必要に応じて酸化される。1つまたは複数の窒素原子は、存在する場合、必要に応じて四級化される。ヘテロシクリルラジカルは、部分的にまたは完全に飽和である。ヘテロシクリルは、環の任意の原子(複数可)を介して、分子の残りに結合している。このようなヘテロシクリルラジカルの例として、それに限定されるものではないが、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、および1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられる。本明細書で別段具体的に記載されない限り、用語「ヘテロシクリル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているアラルキル、必要に応じて置換されているアラルケニル、必要に応じて置換されているアラルキニル、必要に応じて置換されているカルボシクリル、必要に応じて置換されているカルボシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクリル、必要に応じて置換されているヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは、1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは、1または2である)から選択される1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換されている、先に定義される通りのヘテロシクリルラジカルを含むことを意味し、ここで各Raは、独立に、水素、アルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、フルオロアルキル、シクロアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、シクロアルキルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アラルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロアリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、またはヘテロアリールアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)であり、各Rbは、独立に、直接結合または直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、Rcは、直鎖または分岐のアルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、先の置換基のそれぞれは、別段指定されない限り、非置換である。
【0115】
「ヘテロシクリルアルキル」は、式-Rc-ヘテロシクリルのラジカルを指し、ここでRcは、先に定義される通りのアルキレン鎖である。ヘテロシクリルが、窒素を含有するヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは、必要に応じて、窒素原子においてアルキルラジカルに結合している。ヘテロシクリルアルキルラジカルのアルキレン鎖は、アルキレン鎖について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。ヘテロシクリルアルキルラジカルのヘテロシクリル部分は、ヘテロシクリル基について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。
【0116】
「ヘテロアリール」は、2~17個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を含む、3~18員の芳香環ラジカルから誘導されたラジカルを指す。本明細書で使用される場合、ヘテロアリールラジカルは、単環式、二環式、三環式または四環式環系であり、ここで環系における環のうちの少なくとも1つは、完全に不飽和であり、すなわち、ヒュッケル理論に従う、環状の非局在化(4n+2)π電子系を含有する。ヘテロアリールには、縮合または架橋環系が含まれる。ヘテロアリールラジカルにおけるヘテロ原子(複数可)は、必要に応じて酸化される。1つまたは複数の窒素原子は、存在する場合、必要に応じて四級化される。ヘテロアリールは、環(複数可)の任意の原子を介して、分子の残りに結合している。ヘテロアリールの例として、それに限定されるものではないが、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾインドリル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、ベンゾ[b][1,4]オキサジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、シクロペンタ[d]ピリミジニル、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、5,6-ジヒドロベンゾ[h]シンノリニル、6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-c]ピリダジニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、フロ[3,2-c]ピリジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリミジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリダジニル、5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロシクロオクタ[d]ピリジニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、5,8-メタノ-5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、ナフチリジニル、1,6-ナフチリジノニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、5,6,6a,7,8,9,10,10a-オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フラタジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル、ピリジニル、ピリド[3,2-d]ピリミジニル、ピリド[3,4-d]ピリミジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリニル、5,6,7,8-テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジニル、5,6,7,8-テトラヒドロピリド[4,5-c]ピリダジニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、チエノ[2,3-d]ピリミジニル、チエノ[3,2-d]ピリミジニル、チエノ[2,3-c]ピリジニル(thieno[2,3-c]pridinyl)、およびチオフェニル(すなわちチエニル)が挙げられる。本明細書で別段具体的に記載されない限り、用語「ヘテロアリール」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、オキソ、チオキソ、シアノ、ニトロ、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているアラルキル、必要に応じて置換されているアラルケニル、必要に応じて置換されているアラルキニル、必要に応じて置換されているカルボシクリル、必要に応じて置換されているカルボシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクリル、必要に応じて置換されているヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tRa(tは、1または2である)、-Rb-S(O)tORa(tは、1または2である)および-Rb-S(O)tN(Ra)2(tは、1または2である)から選択される1つまたは複数の置換基によって必要に応じて置換されている、先に定義される通りのヘテロアリールラジカルを含むことを意味し、ここで各Raは、独立に、水素、アルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、フルオロアルキル、シクロアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、シクロアルキルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アラルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロアリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、またはヘテロアリールアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)であり、各Rbは、独立に、直接結合または直鎖もしくは分岐のアルキレン鎖もしくはアルケニレン鎖であり、Rcは、直鎖または分岐のアルキレン鎖またはアルケニレン鎖であり、先の置換基のそれぞれは、別段指定されない限り、非置換である。
【0117】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-Rc-ヘテロアリールのラジカルを指し、ここでRcは、先に定義される通りのアルキレン鎖である。ヘテロアリールが、窒素を含有するヘテロアリールである場合、ヘテロアリールは、必要に応じて、窒素原子においてアルキルラジカルに結合している。ヘテロアリールアルキルラジカルのアルキレン鎖は、アルキレン鎖について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。ヘテロアリールアルキルラジカルのヘテロアリール部分は、ヘテロアリール基について先に定義される通り、必要に応じて置換されている。
【0118】
本明細書で開示される化合物は、一部の実施形態では、1つまたは複数の不斉中心を含有し、したがって、絶対立体化学に関して(R)-または(S)-として定義されるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体を生じる。別段記載されない限り、本明細書で開示される化合物のすべての立体異性体が、本開示によって企図されることが意図される。本明細書に記載される化合物がアルケン二重結合を含有する場合、別段特定されない限り、本開示は、EおよびZ幾何異性体(例えば、cisまたはtrans)の両方を含むことが意図される。同様に、すべての可能な異性体、ならびにそれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態、ならびにすべての互変異性体形態も、含まれることが意図される。用語「幾何異性体」は、アルケン二重結合のEまたはZ幾何異性体(例えば、cisまたはtrans)を指す。用語「位置異性体」は、中心環の周囲での構造的異性体、例えばベンゼン環の周囲でのオルト異性体、メタ異性体、およびパラ異性体を指す。
【0119】
一般に、必要に応じて置換されている基は、それぞれ独立に、置換または非置換である。本明細書で提供される必要に応じて置換されている基の各記述は、別段記述されない限り、非置換の基および置換されている基の両方の、独立な明示的な記述を含む(例えば、ある特定の実施形態では置換されており、ある特定の他の実施形態では非置換である)。別段記述されない限り、置換されている基は、以下の置換基:ハロ、シアノ、ニトロ、オキソ、チオキソ、イミノ、オキシモ、トリメチルシラニル、-ORa、-SRa、-OC(O)-Ra、-N(Ra)2、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)N(Ra)2、-N(Ra)C(O)ORa、-OC(O)-N(Ra)2、-N(Ra)C(O)Ra、-N(Ra)S(O)tRa(tは、1または2である)、-S(O)tORa(tは、1または2である)、-S(O)tRa(tは、1または2である)および-S(O)tN(Ra)2(tは、1または2である)のうちの1つまたは複数によって置換され得、ここで各Raは、独立に、水素、アルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、フルオロアルキル、カルボシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、カルボシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、アラルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロシクリルアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、ヘテロアリール(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)、またはヘテロアリールアルキル(必要に応じて、ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、またはトリフルオロメチルで置換されている)である。
プロセス
【0120】
本明細書のある特定の態様では、少なくとも1つのポリマー前駆体を重合させる方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)前記少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記少なくとも1つのポリマー前駆体の少なくとも一部を重合させるステップとを含む方法が提供される。
【0121】
本明細書のある特定の態様では、混合物の反応性を制御するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、(iii)前記開始剤の反応性を制御するように構成されている増感剤、および(iv)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0122】
ある特定の態様では、本開示は、少なくとも1つのポリマー前駆体を重合させる方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)混合物を電磁放射線に曝露して、開始剤を活性化させ、活性化時に、開始剤が潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、少なくとも1つのポリマー前駆体の少なくとも一部を重合させるステップとを含む方法を提供する。
【0123】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、(iii)前記開始剤を増感させる増感剤、および(iv)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0124】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップであって、前記潜在性Ru錯体が、0.1重量百万分率(ppm)~1重量%の濃度で存在し、前記開始剤が、0.1重量百万分率(ppm)~10重量%の濃度で存在するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0125】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップであって、前記潜在性Ru錯体および前記開始剤が、モル比0.01:1.0~10:1.0の前記Ru錯体対前記開始剤の比で存在するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0126】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマーを作製するための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)ヨードニウム塩またはスルホニウム塩である開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む混合物を提供するステップと、(b)前記混合物を電磁放射線に曝露して、前記開始剤を活性化させ、活性化時に、前記開始剤が前記潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、前記少なくとも1つのポリマー前駆体と反応して、前記ポリマーの少なくとも一部を作製するステップとを含む方法が提供される。
【0127】
潜在性Ru錯体は、多くの構造を有し得る。潜在性Ru錯体は、グラブス型触媒であり得る。グラブス型触媒は、例えば、第1世代、第2世代、ホベイダ-グラブス、または第3世代触媒であり得る。グラブス型触媒は、少なくとも1つのN複素環式カルベン(NHC)配位子を含み得る。グラブス型触媒は、少なくとも2つのNHC配位子を含み得る。グラブス型触媒は、2つのNHC配位子を含み得る。潜在性Ru錯体は、16電子種を含み得る。
【0128】
潜在性Ru錯体には、例えば、
【化14】
【化15】
【化16】
が含まれ得る。
【0129】
潜在性Ru錯体には、例えば、
【化17】
が含まれ得る。
【0130】
2つのN複素環式カルベン(NHC)配位子は、典型的にRuに最も強力に結合するので、これらの配位子を含むグラブス型触媒の例を、
図1に提示する。他の強力な配位子には、例えば、ホスフィン、ホスファイト、アミン、エーテル、チオール、およびアルコールが含まれ得る。その結果として、2つのNHC配位子を含有する16電子錯体は、オレフィンメタセシスに非常にゆっくりと関与し得る。触媒は、1つのNHC配位子が遊離して14電子錯体になると、活性となり得る。活性化Ru錯体は、少なくとも1つのN複素環式カルベン(NHC)配位子を含み得る。活性化Ru錯体は、1つのN複素環式カルベン(NHC)配位子を含み得る。活性化Ru錯体は、14電子種を含み得る。本明細書に記載される実施例1は、本開示によって具体化される、ある種類の潜在性触媒を提供する。
【0131】
潜在性Ru錯体は、混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、またはそれよりも高い濃度で存在し得る。潜在性Ru錯体は、混合物中に、最大10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の濃度で存在し得る。潜在性Ru錯体は、混合物中に、約0.1ppm(例えば、0.00001重量%)~約10,000ppm(例えば、1重量%)の濃度で存在し得る。潜在性Ru錯体は、混合物中に、約1ppm(0.0001%)~約10,000ppm(1重量%)の濃度で存在し得る。
【0132】
開始剤は、光酸(PAH)、光酸発生剤(PAG)、またはそれらの組合せであり得る。開始剤は、PAHまたはPAGであり得る。開始剤は、PAHであり得る。開始剤は、PAGであり得る。PAH、PAG、またはそれらの組合せは、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、トリアジン、トリフレート、およびオキシムスルホネートからなる群から選択され得る。開始剤は、ヨードニウム塩であり得る。開始剤は、(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり得る。
【0133】
開始剤は、第1の結合した配位子または第1の配位した配位子(例えば、潜在性Ru錯体の)を置き換えることによって、潜在性触媒を活性化し得る。第1の結合した配位子または前記第1の配位した配位子(例えば、潜在性Ru錯体の)は、第2の配位子で置き換えられ得る。第2の配位子は、開始剤から誘導され得る。第2の配位子は、開始剤であり得る。前記第1の配位子および前記第2の配位子の配位強度比または結合強度比は、1未満であり得る。
【0134】
開始剤は、混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、またはそれよりも高い濃度で存在し得る。開始剤は、混合物中に、最大100,000ppm(例えば、10重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の濃度で存在し得る。開始剤は、混合物中に、約0.1ppm(例えば、0.00001重量%)~約100,000ppm(例えば、10重量%)の濃度で存在し得る。開始剤は、混合物中に、約1ppm(例えば、0.0001重量%)~約50,000ppm(例えば、5重量%)の濃度で存在し得る。
【0135】
潜在性Ru錯体および開始剤は、混合物中に、少なくとも0.01:1.0、0.025:1.0、0.05:1.0、0.075:1.0、0.1:1.0、0.5:1.0、1.0:1.0、1.5:1.0、2.0:1.0、3.0:1.0、4.0:1.0、5.0:1.0、6.0:1.0、7.0:1.0、8.0:1.0、9.0:1.0、10:1.0、またはそれよりも高いRu錯体のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在し得る。潜在性Ru錯体および開始剤は、混合物中に、最大10:1.0、9.0:1.0、8.0:1.0、7.0:1.0、6.0:1.0、5.0:1.0、6.0:1.0、4.0:1.0、3.0:1.0、2.0:1.0、1.0:1.0、0.5:1.0、0.1:1.0、0.075:1.0、0.05:1.0、0.025:1.0、0.01:1.0、またはそれ未満のRu錯体のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在し得る。潜在性Ru錯体および開始剤は、混合物中に、0.01:1.0~10:1.0のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在し得る。潜在性Ru錯体および開始剤は、混合物中に、0.02:1.0~1.0:1.0のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在し得る。
【0136】
光の特異的波長に対するPAGまたはPAHの活性は、他の光散乱部分、例えば、増感剤、例えば2-イソプロピルチオキサントン(ITX)、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン、ならびに芳香族有機物、例えばナフタレンおよびペリレンなどによって修正され得る。増感剤、アップコンバーター、ダウンコンバーター、量子ドット、色素、フルオロフォアまたは他の光散乱部分は、本明細書に記載されるフォトポリマーの吸光度および活性をモジュレートするために使用され得る。
【0137】
安定剤は、本明細書に記載される組成物の暗所安定性を改善するために含まれ得る。安定剤には、例えば、有機もしくは無機ルイス塩基もしくはブレンステッド塩基、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、界面活性剤、脱酸素剤、配位子、クエンチャー、光吸収剤、ヒンダード-アミン光安定剤(HALS)、アミン、ホスフィン、ホスファイト、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0138】
少なくとも1つのポリマー前駆体は、モノマーを含み得る。少なくとも1つのポリマー前駆体は、少なくとも1つのオレフィンを含み得る。少なくとも1つのオレフィンは、環状オレフィンであり得る。少なくとも1つのオレフィンは、ノルボルナンベースのオレフィンであり得る。モノマーは、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、およびアルキルノルボルネン、例えばオクチルノルボルネンであり得る。環状オレフィンは、ジシクロペンタジエンまたはトリシクロペンタジエンであり得る。より高分子量のモノマーには、例えば、端末官能基化もしくは側鎖官能化ポリマーもしくはオリゴマー、またはメタセシス活性末端基を含有するクロスリンカーが含まれる。
【0139】
電磁放射線は、少なくとも約10ナノメートル(nm)、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約200nm、少なくとも約300nm、少なくとも約400nm、少なくとも約500nm、少なくとも約600nm、少なくとも約700nm、少なくとも約800nm、少なくとも約900nm、少なくとも約1マイクロメートル(μm)、少なくとも約10μm、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約200μm、少なくとも約300μm、少なくとも約400μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1ミリメートル(mm)、少なくとも約10mm、少なくとも約50mm、少なくとも約100mm、少なくとも約200mm、少なくとも約300mm、少なくとも約400mm、少なくとも約500mm、少なくとも約600mm、少なくとも約700mm、少なくとも約800mm、少なくとも約900mm、少なくとも約1メートル(m)、少なくとも約10m、少なくとも約100m、またはそれよりも大きい波長を有し得る。電磁放射線は、最大約100m、最大約10m、最大約1m、最大約900mm、最大約800mm、最大約700mm、最大約600mm、最大約500mm、最大約400mm、最大約300mm、最大約200mm、最大約100mm、最大約50mm、最大約10mm、最大約1mm、最大約900μm、最大約800μm、最大約700μm、最大約600μm、最大約500μm、最大約400μm、最大約300μm、最大約200μm、最大約100μm、最大約50μm、最大約10μm、最大約1μm、最大約900nm、最大約800nm、最大約700nm、最大約600nm、最大約500nm、最大約400nm、最大約300nm、最大約200nm、最大約100nm、最大約50nm、最大約10nm、最大約1nm、またはそれ未満の波長を有し得る。電磁放射線は、約10ナノメートル(nm)~約10メートル(m)の波長を有し得る。電磁放射線は、約150nm~約2000nmの波長を有し得る。
【0140】
電磁放射線は、例えば、レーザービーム、白熱光源、蛍光光源、紫外光源から誘導され得、それらは、例えば、ランプ、レーザー、LED、太陽光および他の光子供給源から誘導され得る。電磁放射線は、レーザー、デジタルライ卜プロセッシング(DLP)プロジェクター、ランプ、発光ダイオード(LED)、水銀アークランプ、光ファイバー、または液晶ディスプレイ(LCD)から放出され得る。
【0141】
方法は、自動化され得る。
【0142】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、アンチエイリアス技術を使用して作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、グレースケール画素を使用して作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、トップダウンで作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、ボトムアップで作製され得る。
【0143】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、窓材料上に作製され得る。窓材料は、ガス透過性であり得る。窓材料は、酸素(O2)透過性であり得る。窓材料は、窓界面にデッドゾーンを有し得る。窓材料は、低表面エネルギー(例えば、最大37mN/mまたはそれ未満(例えば、最大25mN/mまたはそれ未満)の表面自由エネルギーを有し得る。窓材料は、少なくとも37mN/mまたはそれよりも高い表面自由エネルギーを有し得る。窓材料は、透明フルオロポリマーを含み得る。
【0144】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、実質的に不活性なガスの雰囲気中で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1%に等しいかまたはそれ未満の酸素(O2)を含む雰囲気中で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、0.2%に等しいかまたはそれ未満のO2を含む雰囲気中で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、不活性ガス雰囲気中で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、窒素(N2)またはアルゴン(Ar2)雰囲気中で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、窒素(N2)雰囲気中で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、アルゴン(Ar2)雰囲気中で作製され得る。
【0145】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、またはそれよりも高い温度で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃、10℃、0℃、またはそれ未満の温度で作製され得る。3Dオブジェクトは、0℃~150℃の温度でプリントされ得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、20℃~50℃の温度で作製され得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、本明細書で提供される温度で、プリントプロセスの期間にわたって作製され得る。
【0146】
混合物は、少なくとも10ミリジュール/センチメートル2(mJ/cm2)、50mJ/cm2、100mJ/cm2、200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、500mJ/cm2、1,000mJ/cm2、2,500mJ/cm2、5,000mJ/cm2、7,500mJ/cm2、10,000mJ/cm2、15,000mJ/cm2、20,000mJ/cm2、またはそれよりも多い量の電磁放射線に曝露され得る。混合物は、最大20,000mJ/cm2、15,000mJ/cm2、10,000mJ/cm2、7,500mJ/cm2、5,000mJ/cm2、2,500mJ/cm2、1,000mJ/cm2、500mJ/cm2、400mJ/cm2、300mJ/cm2、200mJ/cm2、100mJ/cm2、50mJ/cm2、10mJ/cm2、またはそれ未満の量の電磁放射線に曝露され得る。混合物は、10ミリジュール/センチメートル2mJ/cm2~約20,000mJ/cm2の電磁放射線に曝露され得る。混合物は、100ミリジュール/センチメートル2mJ/cm2~約1,000mJ/cm2の電磁放射線に曝露され得る。
【0147】
本明細書に記載される組成物は、添加剤をさらに含み得る。多くの種類の添加剤が、フォトポリマーの性能、例えば(i)液体の特性(例えば、粘度、安定性、活性、硬化速度、吸光度、表面エネルギー、匂いなど)および(ii)最終的な硬化ポリマーの特性(例えば、弾性率、靱性、衝撃強度、色、UV安定性、延性、ガラス転移温度、耐候性など)などを修正するために使用され得る。これらの添加剤には、例えば、フィラー、繊維、ポリマー、界面活性剤、無機粒子、細胞、ウイルス、生体材料、ゴム、衝撃改質剤、グラファイトおよびグラフェン、着色剤、色素、顔料、炭素繊維、ガラス繊維、織物、リグニン、セルロース、木材、金属粒子、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0148】
本明細書に記載される組成物および方法は、適用、材料特性、および処理機構に応じて変わり得る。例として、約5cP~約50,000cPの粘度、約0.5ppm~約1wt%の潜在性触媒負荷、約1ppm~約2wt%のPAGまたはPAH負荷、約0(混合物には存在しない)~約3wt%の増感剤負荷、約0(混合物には存在しない)~約5wt%(例えば、0.1ppm~約5wt%)の安定剤、約0(混合物には存在しない)~約5wt%(例えば、0.1ppm~約5wt%)の抗酸化剤、約0~約90%の溶剤、約0(混合物には存在しない)~約20wt%(例えば、10ppm~約20wt%)の衝撃改質剤、および約0(混合物には存在しない)~約3wt%(例えば、1ppm~約3wt%)の可塑剤、約-10℃~約220℃の加工温度、約1ppb~約50%の酸素濃度、約1mJ/cm2~約1kJ/cm2の曝露線量、約1mW/cm2~約1kW/cm2の照射量、約1MPa~約20GPaの最終的ヤング率が挙げられる。
【0149】
本明細書に記載されるフォトポリマーは、多くの工業プロセス、例えば、フォトリソグラフィー、ステレオリソグラフィー、インクジェットプリンティング、紫外(UV)光で硬化した材料および接着剤、可視光線で硬化した材料および接着剤、電子線による硬化、ならびにリソグラフィー、多光子リソグラフィー、コンピュータ軸リソグラフィー、液槽光重合、ナノインプリントリソグラフィー、加法的製造法、直接書き込みリソグラフィー、ならびに方向付けられたエネルギーを使用して重合を誘発する他のプロセスなどと関連し得る。光重合は、型内で、基材上で、別の液体と接触して、回転容器内で、作動型構築(actuated build)プラットフォーム上で、押出しノズルを介して、または光重合を制御するその他の多種多様な形態のいずれかで生じ得る。電磁放射線の熱または他の形態を、硬化前、硬化中または硬化後に使用して、反応性の動態を修正するか、材料特性を調整するか、またはその他の方法で光重合プロセスを改善し得る。硬化または後硬化の環境の雰囲気は、例えば、窒素、アルゴンまたは真空を使用して、酸素および他の望ましくない反応種を取り除くことを含めて、同様に修正され得る。
【0150】
本発明の適用には、例えば、製造、加工、プリンティング、リソグラフィー、成型、加法的製造法、堆積、または例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性物質、エラストマー、レジスト、樹脂、ワックス、ゴム、エアロゲル、ガラス、複合物およびメタマテリアルを含めたポリマーの生成が含まれ得る。可能な使用事例には、例えば、歯科用製品、医療デバイス、自動車車両、消費者製品、航空宇宙用コンポーネント、運動用の機器、衣服、履物、織物、衣類、電子デバイス、半導体デバイス、組織足場、インプラント、人工装具、歯科矯正アライナー、義歯、エンクロージャー、コネクタ、筐体およびブラケットを含めた多くの産業適用のための製品、コンポーネント、部品、ツール、型、バルク材料および中間体の製造が含まれる。
プリンティング
【0151】
ある特定の態様では、本明細書では、3次元(3D)オブジェクトをプリントするための方法であって、(a)(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を含む樹脂を提供するステップと、(b)樹脂を電磁放射線に曝露して、開始剤を活性化させ、活性化時に、開始剤が潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体を作製し、その活性化Ru錯体が、ポリマー前駆体と反応して、前記3Dオブジェクトの少なくとも一部を作製またはプリントするステップとを含む方法が提供される。
【0152】
本明細書の一部の実施形態では、3次元(3D)オブジェクトを生成するための方法であって、(i)潜在性触媒、(ii)開始剤、および(iii)少なくとも1つのポリマー前駆体を合わせるステップを含み、前記3Dオブジェクトが、改善された衝撃強度、化学耐性、靱性、せん断強度、引裂強度、温度安定性、軽量性、生体適合性、光学性能、誘電透過性、曲げ強度、クリープ、風化、耐久性、およびガラス転移温度からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む方法が提供される。
【0153】
方法は、前記3Dオブジェクトを作製した後、前記3Dオブジェクトを電磁放射線(例えば、熱または光)に付すことによって、前記3Dオブジェクトの少なくとも1つの特徴を変えるステップをさらに含み得る。
【0154】
3Dオブジェクトを電磁放射線(例えば、熱または光)に付した後、弾性率、引張強度、架橋密度、ガス放出、浸出性、生体適合性、化学耐性、色、生体適合性、ガラス転移温度、および粘度からなる群から選択される少なくとも1つの特徴が変えられ得る。
【0155】
3Dオブジェクトは、任意の3Dプリンティング方法を使用してプリントすることができる。3Dオブジェクトは、光(例えば、UVまたは可視光線)を使用する任意の3Dプリンティング方法を使用してプリントすることができる。3Dオブジェクトは、加法的製造法、ステレオリソグラフィー、コンピュータ軸リソグラフィー、インクジェット法、焼結、液槽光重合、多光子リソグラフィー、ホログラフィックリソグラフィー、ホットリソグラフィー、IRリソグラフィー、直接書き込み、マスクステレオリソグラフィー、ドロップ-オン-デマンドプリンティング、ポリジェット、デジタル光投影(DLP)、投影マイクロステレオリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー、フォトリソグラフィーを使用してプリントすることができる。3Dオブジェクトは、加法的製造法を使用してプリントすることができる。3Dオブジェクトは、光活性化型の加法的製造法を使用してプリントすることができる。
【0156】
3Dオブジェクトは、支持体に隣接して作製またはプリントすることができる。3Dオブジェクトは、ロボット支援、超音波処理、振動、化学膨潤、化学エッチング、レーザーアブレーション、レーザーカッティング、ブレードカッティング、またはそれらの任意の組合せを使用して、支持体から除去することができる。
【0157】
プリンティング方法は、自動化され得る。
【0158】
本明細書で提供される方法は、本明細書で提供される生成物のためのプリントプロセスのデジタル変数の制御を提供し得る。このような変数には、例えば、レイヤーの厚さ、プリントの方向付け(orientation)、支持体構造、壁の厚さ、シェルの厚さ、またはそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0159】
電磁放射線は、レーザー、デジタルライ卜プロセッシング(DLP)プロジェクター、ランプ、発光ダイオード(LED)、水銀アークランプ、光ファイバー、または液晶ディスプレイ(LCD)から放出され得る。
【0160】
3Dオブジェクトは、アンチエイリアス技術を使用してプリントされ得る。3Dオブジェクトは、グレースケール画素を使用してプリントされ得る。3Dオブジェクトは、トップダウンでプリントされ得る。3Dオブジェクトは、ボトムアップでプリントされ得る。
【0161】
3Dオブジェクトは、窓材料上にプリントされ得る。窓材料は、ガスが、プリントされているオブジェクトを透過することを可能にし得る。窓材料は、低表面エネルギーを有し得る。窓材料は、透明フルオロポリマーを含み得る。
【0162】
3Dオブジェクトは、実質的に不活性なガスの雰囲気中でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、1%に等しいかまたはそれ未満の酸素(O2)を含む雰囲気中でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、0.2%に等しいかまたはそれ未満のO2を含む雰囲気中でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、不活性ガス雰囲気中でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、窒素(N2)またはアルゴン(Ar2)雰囲気中でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、窒素(N2)雰囲気中でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、アルゴン(Ar2)雰囲気中でプリントされ得る。
【0163】
3Dオブジェクトは、0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、またはそれよりも高い温度でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃、10℃、0℃、またはそれ未満の温度でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、0℃~150℃の温度でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、20℃~50℃の温度でプリントされ得る。3Dオブジェクトは、本明細書で提供される温度で、プリントプロセス期間にわたってプリントされ得る。
【0164】
混合物は、少なくとも20ミリジュール/センチメートル2(mJ/cm2)、50mJ/cm2、100mJ/cm2、200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、500mJ/cm2、1,000mJ/cm2、2,500mJ/cm2、5,000mJ/cm2、7,500mJ/cm2、10,000mJ/cm2、15,000mJ/cm2、20,000mJ/cm2、またはそれよりも多い量の電磁放射線に曝露され得る。混合物は、最大20,000mJ/cm2、15,000mJ/cm2、10,000mJ/cm2、7,500mJ/cm2、5,000mJ/cm2、2,500mJ/cm2、1,000mJ/cm2、500mJ/cm2、400mJ/cm2、300mJ/cm2、200mJ/cm2、100mJ/cm2、50mJ/cm2、20mJ/cm2、またはそれ未満の量の電磁放射線に曝露され得る。混合物は、20ミリジュール/センチメートル2mJ/cm2~約20,000mJ/cm2の電磁放射線に曝露され得る。混合物は、100ミリジュール/センチメートル2mJ/cm2~約1,000mJ/cm2の電磁放射線に曝露され得る。
【0165】
3Dオブジェクトは、スライス処理(slicing)によってプリントされ得る。3Dオブジェクトは、少なくとも1ミクロン(μm)、5μm、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1,000μm、2,000μm、3,000μm、4,000μm、5,000μm、6,000μm、7,000μm、8,000μm、9,000μm、10,000μm、またはそれよりも大きいスライス幅でスライス処理することによってプリントされ得る。3Dオブジェクトは、最大10,000μm、9,000μm、8,000μm、7,000μm、6,000μm、5,000μm、4,000μm、3,000μm、2,000μm、1,000μm、900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、150μm、100μm、75μm、50μm、25μm、10μm、5μm、1μm、またはそれ未満のスライス幅でスライス処理することによってプリントされ得る。3Dオブジェクトは、1μm~10,000μmのスライス幅でスライス処理することによってプリントされ得る。3Dオブジェクトは、1μm~1,000μmのスライス幅でスライス処理することによってプリントされ得る。3Dオブジェクトは、10μm~300μmのスライス幅でスライス処理することによってプリントされ得る。
【0166】
3Dオブジェクトは、少なくとも0.01ミクロン(μm)、0.05μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、またはそれよりも大きい画素サイズでプリントされ得る。3Dオブジェクトは、最大200μm、150μm、100μm、75μm、50μm、25μm、10μm、5μm、1μm、0.5μm、0.1μm、0.05μm、0.01μm、またはそれ未満の画素サイズでプリントされ得る。3Dオブジェクトは、0.01μm~200μmの画素サイズでプリントされ得る。3Dオブジェクトは、5μm~100μmの画素サイズでプリントされ得る。
【0167】
3Dオブジェクトは、少なくとも1ナノメートル(nm)、10nm、50nm、100nm、500nm、1,000nm、5,000nm、10,000nm、50,000nm、100,000nm、500,000nm、1,000,000nm、5,000,000nm、10,000,000nm、またはそれよりも高い寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、最大10,000,000nm、5,000,000nm、1,000,000nm、500,000nm、100,000nm、50,000nm、10,000nm、5,000nm、1,000nm、500nm、100nm、50nm、10nm、1nm、またはそれ未満の寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、約1nm~約10,000,000nmの寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、約1,000nm~約1,000,000nmの寸法精度を有し得る。寸法精度は、所定の寸法からの偏差パーセンテージであり得る。3Dオブジェクトは、少なくとも+/-0.0001%、+/-0.001%、+/-0.01%、+/-0.1%、+/-1%、+/-10%、または+/-100%の寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、最大+/-100%、+/-10%、+/-1%、+/-0.1%、+/-0.01%、+/-0.001%、+/-0.0001%、またはそれ未満の寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、約+/-0.0001%~約+/-100%の寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、+/-1%に等しいかまたはそれ未満の寸法精度を有し得る。3Dオブジェクトは、約+/-0.0001%~約+/-1%の寸法精度を有し得る。
【0168】
3Dオブジェクトは、少なくとも+/-0.001%、+/-0.01%、+/-0.1%、+/-1%、+/-10%、+/-25%、またはそれよりも大きいフォトポリマーの収縮率または膨張率を有し得る。3Dオブジェクトは、最大+/-25%、+/-10%、+/-1%、+/-0.1%、+/-0.01%、+/-0.001%、またはそれ未満のフォトポリマーの収縮率または膨張率を有し得る。3Dオブジェクトは、約+/-0.001%~約25%のフォトポリマーの収縮率または膨張率を有し得る。3Dオブジェクトは、+/-4%に等しいかまたはそれ未満のフォトポリマーの収縮率または膨張率を有し得る。3Dオブジェクトは、約+/-0.001%~約+/-4%のフォトポリマーの収縮率または膨張率を有し得る。
【0169】
3Dオブジェクトは、本明細書で提供される任意のポリマーまたはオブジェクトであり得る。
後処理
【0170】
本明細書で提供されるポリマー(例えば、ボディ)は、ポリマーの少なくとも一部(例えば、生部分)をプリントした後にさらに加工するために、処理することができる。方法は、前記3Dオブジェクトを作製した後に、ポリマーを電磁放射線(例えば、熱または光)に付すことによって、ポリマーの少なくとも1つの特徴を変えるステップをさらに含み得る。ポリマーを電磁放射線(例えば、熱または光)に付した後、弾性率、引張強度、架橋密度、ガス放出、浸出性、生体適合性、化学耐性、色、生体適合性、ガラス転移温度、および粘度からなる群から選択される少なくとも1つの特徴が変えられ得る。
【0171】
一部の実施形態では、方法は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)を硬化するステップをさらに含む。硬化するステップは、本明細書で提供される(a)、(b)のいずれか一方、または(a)および(b)の両方の後に行われ得る。硬化するステップは、本明細書で提供される(a)および(b)の後に行われ得る。一部の実施形態では、方法は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)を後硬化(post-curing)するステップをさらに含む。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の後硬化は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)を電磁放射線(例えば、光または熱)に付すことを含むことができる。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、紫外線放射、可視(光)放射線、対流加熱、伝導加熱、輻射加熱、またはそれらの任意の組合せに付すことができる。電磁放射線は、少なくとも1ナノメートル(nm)の波長を有し得る。電磁放射線は、最大1メートル(m)の波長を有し得る。電磁放射線は、1ナノメートル(nm)~1メートル(m)の波長を有し得る。
【0172】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の後硬化は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の少なくとも1つの特徴を変え得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の後硬化は、衝撃強度、化学耐性、靱性、せん断強度、引裂強度、温度安定性、軽量性、生体適合性、光学性能、誘電透過性、曲げ強度、クリープ、風化、耐久性、ガラス転移温度、またはそれらの任意の組合せを変え得る。
【0173】
一部の実施形態では、方法は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)を清浄化するステップをさらに含む。清浄化するステップは、本明細書で提供される(a)、(b)のいずれか一方、または(a)および(b)の両方の後に行われ得る。清浄化するステップは、本明細書で提供される(b)の後に行われ得る。清浄化するステップは、本明細書で提供される(a)および(b)の後に行われ得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、溶剤、かき混ぜ、超音波処理、撹拌、空気乾燥、エアナイフ、自動化洗浄、またはそれらの任意の組合せを使用して清浄化することができる。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、空気、超音波処理、溶剤、またはそれらの組合せを使用して清浄化することができる。清浄溶液は、3Dオブジェクトの特性を修正するための添加剤を含み得る。清浄化は、寸法精度、弾性率、表面粗さ、衝撃強度、化学耐性、靱性、せん断強度、引裂強度、温度安定性、軽量性、生体適合性、光学性能、誘電透過性、曲げ強度、クリープ、風化、耐久性、ガラス転移温度、またはそれらの任意の組合せを変え得る。
【0174】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の表面は、平坦化するか、滅菌するか、またはそれらの組合せを行うことができる。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の表面は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)を清浄化する間、その前または後に、平坦化または滅菌することができる。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の表面は、ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)を清浄化する間またはその後に、平坦化または滅菌することができる。
【0175】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の表面は、エチレンオキシド、冷却滅菌、アルコール、オートクレーブ処理、石けん、紫外線滅菌、プラズマ処理、コーティング堆積、エッチング、研磨(例えば、バイブレーション研磨(vibration polishing)、タンブリング、または溶剤艶出し(solvent polishing))、またはそれらの任意の組合せを使用して清浄化するか、平坦化するか、または滅菌することができる。
ポリマー
【0176】
本明細書で提供されるポリマーは、3次元(3D)オブジェクトであり得る。3Dオブジェクトは、多くの産業適用のための、ボディ、製品、コンポーネント、部品、ツール、型、バルク材料、中間体、またはそれらの任意の組合せであり得る。3Dオブジェクトは、本明細書で提供されるポリマーまたは3Dオブジェクトであり得る。3Dオブジェクトは、本明細書で提供されるポリマーまたは3Dオブジェクトのコンポーネントであり得る。3Dオブジェクトは、例えば、歯科用製品(例えば、義歯、歯科矯正アライナー)、医療デバイス、自動車車両もしくは部品、消費者製品、航空宇宙用コンポーネント、運動用の機器、衣服、履物、織物、衣類、電子デバイス、半導体デバイス、組織足場、インプラント、人工装具、エンクロージャー、コネクタ、筐体、ブラケット、マイクロ流体デバイス、流体チャネル、マニフォールド、レバー、レンチ、音響空洞もしくはチャネル、外科手術ガイド、カンチレバー、導波管、バックル、格子、三重周期極小曲面、熱交換器、人間工学デバイス、ハンドル、グリップ、手持ち式ツール、ペン、外科用メス、カートリッジ、または容器であり得る。
【0177】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、本明細書で提供される生部分であり得る。
【0178】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも0.00001メガパスカル(MPa)、0.0001MPa、0.001MPa、0.01MPa、0.1MPa、1MPa、50MPa、100MPa、250MPa、500MPa、1,000MPa、2,000MPa、またはそれよりも高い弾性率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大2,000MPa、1,000MPa、500MPa、250MPa、100MPa、50MPa、1MPa、0.1MPa、0.01MPa、0.001MPa、0.0001MPa、0.00001MPa、またはそれ未満の弾性率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、約100キロパスカル(KPa)~約10ギガパスカル(GPa)の弾性率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1MPa~20GPaの弾性率を有し得る。弾性率は、10MPa~10GPaであり得る。
【0179】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも0.0001メガパスカル(MPa)、0.001MPa、0.01MPa、0.1MPa、1メガパスカル(MPa)、50MPa、100MPa、250MPa、500MPa、1,000MPa、2,000MPa、またはそれよりも高い曲げ弾性率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大2,000MPa、1,000MPa、500MPa、250MPa、100MPa、50MPa、1MPa、0.1MPa、0.01MPa、0.001MPa、0.0001MPa、またはそれ未満の曲げ弾性率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1MPa~20GPaの曲げ弾性率を有し得る。曲げ弾性率は、10MPa~10GPaであり得る。
【0180】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも摂氏0度(℃)、25℃、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、またはそれよりも高い熱たわみ温度(HDT)を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃、100℃、50℃、25℃、0℃、またはそれ未満のHDTを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、0℃~400℃のHDTを有し得る。HDTは、50℃~200℃であり得る。
【0181】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも摂氏-100度(℃)、-50℃、0℃、摂氏50℃、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、またはそれよりも高いガラス転移温度(Tg)を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大400℃、350℃、300℃、250℃、200℃、150℃、100℃、50℃、0℃、-50℃、-100℃、またはそれ未満のTgを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、-100℃~400℃のTgを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、50℃~400℃のTgを有し得る。Tgは、100℃~200℃であり得る。
【0182】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも1メートル当たり1ジュール(J/m)、100J/m、500J/m、1,000J/m、2,000J/m、3,000J/m、4,000J/m、5,000J/m、6,000J/m、7,000J/m、8,000J/m、9,000J/m、10,000J/m、またはそれよりも高い衝撃強度を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大10,000J/m、9,000J/m、8,000J/m、7,000J/m、6,000J/m、5,000J/m、4,000J/m、3,000J/m、2,000J/m、1,000J/m、500J/m、100J/m、1J/m、またはそれ未満の衝撃強度を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1J/m~10,000J/mの衝撃強度を有し得る。衝撃強度は、1J/m~1,000J/mであり得る。衝撃強度は、30J/m~700J/mであり得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の衝撃強度は、ノッチ付きアイゾット衝撃強度試験を使用して得られ得る。
【0183】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の衝撃強度保持率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、またはそれ未満の衝撃強度保持率を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、10%~100%の衝撃強度保持率を有し得る。衝撃強度保持率は、少なくとも摂氏-273度(℃)、-200℃、-100℃、-50℃、0℃、50℃、100℃、200℃、300℃、またはそれよりも高い温度におけるものであり得る。衝撃強度保持率は、少なくとも300℃、200℃、100℃、50℃、0℃、-50℃、-100℃、-200℃、またはそれ未満の温度におけるものであり得る。
【0184】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも0.00001メガパスカル(MPa)、0.0001MPa、0.001MPa、0.01MPa、0.1MPa、1MPa、50MPa、100MPa、250MPa、500MPa、1,000MPa、またはそれよりも高い引張強度を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大1,000MPa、500MPa、250MPa、100MPa、50MPa、1MPa、0.1MPa、0.01MPa、0.001MPa、0.0001MPa、0.00001MPa、またはそれ未満の引張強度を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、約100キロパスカル(KPa)~約10ギガパスカル(GPa)の引張強度を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1MPa~20GPaの引張強度を有し得る。引張強度は、10MPa~10GPaであり得る。
【0185】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも0.00001メガパスカル(MPa)、0.0001MPa、0.001MPa、0.01MPa、0.1MPa、1MPa、50MPa、100MPa、250MPa、500MPa、1,000MPa、1,500MPa、またはそれよりも大きい最大応力における曲げ歪みを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大1,500MPa、1,000MPa、500MPa、250MPa、100MPa、50MPa、1MPa、0.1MPa、0.01MPa、0.001MPa、0.0001MPa、0.00001MPa、またはそれ未満の最大応力における曲げ歪みを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、約100キロパスカル(KPa)~約1500メガパスカル(KPa)の最大応力における曲げ歪みを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1MPa~350MPaの最大応力における曲げ歪みを有し得る。
【0186】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも0.1%、1%、5%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、1,000%、2,000%、3,000%、4,000%、5,000%、6,000%、7,000%、8,000%、9,000%、10,000%、またはそれよりも高い降伏歪みを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大10,000%、9,000%、8,000%、7,000%、6,000%、5,000%、4,000%、3,000%、2,000%、1,000%、500%、400%、300%、200%、100%、50%、5%、1%、0.1%、またはそれ未満の降伏歪みを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、0.1%~10,000%の降伏歪みを有し得る。降伏歪みは、1%~500%であり得る。
【0187】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも1%、5%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、1,000%、2,000%、3,000%、4,000%、5,000%、6,000%、7,000%、8,000%、9,000%、10,000%、またはそれよりも高い破断伸びを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大10,000%、9,000%、8,000%、7,000%、6,000%、5,000%、4,000%、3,000%、2,000%、1,000%、500%、400%、300%、200%、100%、50%、5%、1%、またはそれ未満の破断伸びを有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、1%~10,000%の破断伸びを有し得る。破断伸びは、1%~1,000%であり得る。破断伸びは、5%~500%であり得る。
【0188】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、ショア00または10~ショアD100の硬度を有し得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、ショアA10~ショアD100の硬度を有し得る。
【0189】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、水を吸収し得る(例えば、24時間で)。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、少なくとも1ppbまたはそれ未満の吸水量を有し得る(例えば、24時間で)。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、最大50wt%またはそれ未満の吸水量を有し得る(例えば、24時間で)。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、約1ppb~50wt%の吸水量を有し得る(例えば、24時間で)。
【0190】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、平坦、粗面、易滑性、粘着性(sticky)、粘性(tacky)、またはそれらの任意の組合せであり得る。質感は、デジタル的、機械的、物理的、化学的、またはそれらの任意の組合せで修正され得る(例えば、アンチエイリアス、研磨、コーティング、塗料、アニーリング、サンディング、デジタルテクスチャリング、またはそれらの任意の組合せなどの技術を使用する。
【0191】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、無色、透明、色付き、不透明、有色(例えば、黒色、白色、オレンジ色、黄色、琥珀色、または灰色)、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0192】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、化学耐性であり得る。
【0193】
ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、非毒性であり得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、ヒトへの使用に安全であり得る。ポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、10993-5グレード0であり得る。
【0194】
本明細書で提供されるポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、酸およびラジカルベースのポリマーと比較して、著しく改善された特性を有することができる(例えば、
図3、
図5A、
図5B、
図5C、
図6A、
図6B、
図6C、
図7A、
図7Bを参照されたい)。本明細書で提供されるポリマー(例えば、3Dオブジェクト)は、他の3Dプリンティング方法(例えば、ステレオリソグラフィーおよび関連プロセス)を使用して生成されたポリマー(例えば、酸およびラジカルベースのフォトポリマー)を上回って著しく改善された熱機械特性を有することができる。
組成物
【0195】
本明細書のある特定の実施形態では、ポリマーを作製するための組成物であって、(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)前記組成物の電磁放射線への曝露時に活性化して、活性化開始剤をもたらし、その活性化開始剤が潜在性Ru錯体と反応して活性化Ru錯体をもたらすように構成されている開始剤、(iii)開始剤を増感させるように構成されている増感剤、および(iv)活性化Ru錯体と反応して、ポリマーの少なくとも一部をもたらすように構成されている少なくとも1つのポリマー前駆体を含む組成物が提供される。
【0196】
ある特定の態様では、本明細書では、ポリマー前駆体を重合させるための組成物であって、(i)潜在性ルテニウム(Ru)錯体、(ii)電磁放射線を受けると、前記潜在性Ru錯体と反応して、前記ポリマー前駆体を重合させるように構成された活性化Ru錯体をもたらすように構成されている光開始剤、および(iii)前記組成物中の前記開始剤を増感させるのに役立つ増感剤を含む組成物が提供される。
【0197】
ある特定の態様では、本明細書では、3次元(3D)オブジェクトを製作するためのシステムにおいて使用するための混合物であって、(i)少なくとも1つのオレフィンを含む1つまたは複数のモノマーを含む、重合可能なコンポーネント、(ii)ルテニウム(Ru)錯体、および(iii)電磁放射線への曝露時に活性化可能であり、光酸または光酸発生剤である開始剤を含む混合物が提供される。混合物は、3Dオブジェクトを製作するためのシステムの供給源からの電磁放射線への曝露時に、生部分を固化させるように構成され得る。
【0198】
本明細書で提供される混合物は、200~800ナノメートル(nm)(例えば、350nm~465nm)の波長で、0℃~100℃(例えば、20℃~50℃)の温度で、1ナノ秒(ns)~1週間(例えば、1ミリ秒(ms)~1時間)にわたって活性化され得る。
【0199】
本明細書で提供される混合物は、少なくとも1センチポアズ(cP)、50cP、100cP、500cP、1,000cP、5,000cP、10,000cP、50,000cP、100,000cP、500,000cP、またはそれよりも高い粘度を有し得る。本明細書で提供される混合物は、最大500,000センチポアズ(cP)、100,000cP、50,000cP、10,000cP、5,000cP、1,000cP、500cP、100cP、50cP、1cP、またはそれ未満の粘度を有し得る。本明細書で提供される混合物は、1cP~500,000cPの粘度を有し得る。本明細書で提供される混合物は、2cP~10,000cPの粘度を有し得る。
【0200】
本明細書で提供される感光性の重合可能な組成物は、重合可能な材料マトリックスに溶解され得るかまたは混ぜ込まれ得る。このようなマトリックスは、ポリマー、ポリマー前駆体、またはそれらの組合せを含むことができる。マトリックスは、分子、オリゴマー単位、またはポリマー単位1個当たり少なくとも1個のオレフィン(アルケン)結合または1個のアセチレン(アルキン)結合を含有し得る。このような組成物は、架橋ポリマーを含み得る。重合化材料および非重合化材料の混合物は、ポリマー前駆体の不完全重合から得られ得る。重合化材料および非重合化材料は、化学的に無関係であり得る。
触媒
【0201】
触媒は、潜在性触媒であり得る。触媒は、ルテニウム(Ru)触媒またはRu錯体であり得る。Ru錯体は、潜在性Ru錯体であり得る。潜在性Ru錯体は、グラブス触媒またはグラブス型触媒であってよい。グラブス触媒は、第1世代触媒、第2世代触媒、ホベイダ-グラブス触媒、または第3世代グラブス触媒であり得る(例えば、
図1、
図4A、
図4B、
図4C、および
図4Dを参照されたい)。グラブス型触媒は、少なくとも1つのN複素環式カルベン(NHC)配位子を含み得る。Ru錯体は、16電子種であり得る。
【0202】
潜在性Ru錯体は、
【化18】
【化19】
からなる群から選択され得る化合物であり得る。
【0203】
潜在性Ru錯体は、
【化20】
【化21】
からなる群から選択され得る化合物であり得る。
【0204】
一部の実施形態では、本明細書に記載される混合物は、特に提供される化合物について、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開WO2014/055720、米国特許第9,207,532号、欧州特許第2,903,996号、国際公開WO2015/065649、米国特許出願公開第2015/118188号、欧州特許公開第3,063,592号、国際公開WO2018/045132、米国特許出願公開第2018/067393号、米国特許出願公開第2020/183276号、欧州特許公開第3,507,007号、国際公開WO2020/006345、Photolithographic Olefin Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 16817-16820、Visible-Light-Controlled Ruthenium-Catalyzed Olefin Metathesis, J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 17, 6791-6796、A Tandem Approach to Photoactivated Olefin Metathesis: Combining a Photoacid Generator with an Acid Activated Catalyst, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6, 2038-2039、Metal-Free Ring-Opening Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 1400-1403、JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, PART A: POLYMER CHEMISTRY2019, 57, 1791-17のいずれかに記載される任意の触媒を含む。
【0205】
触媒(例えば、潜在性Ru錯体)は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、またはそれよりも高い濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)は、本明細書で提供される混合物中に、最大10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)は、本明細書で提供される混合物中に、約0.1ppm(例えば、0.00001重量%)~約10,000ppm(例えば、1重量%)の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)は、本明細書で提供される混合物中に、約1ppm(例えば、0.00001重量%)~約10,000ppm(例えば、1重量%)の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。
【0206】
触媒(例えば、潜在性Ru錯体)および開始剤は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.01:1.0、0.025:1.0、0.05:1.0、0.075:1.0、0.1:1.0、0.5:1.0、1.0:1.0、1.5:1.0、2.0:1.0、3.0:1.0、4.0:1.0、5.0:1.0、6.0:1.0、7.0:1.0、8.0:1.0、9.0:1.0、10:1.0、またはそれよりも高いRu錯体のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)および開始剤は、本明細書で提供される混合物中に、最大10:1.0、9.0:1.0、8.0:1.0、7.0:1.0、6.0:1.0、5.0:1.0、6.0:1.0、4.0:1.0、3.0:1.0、2.0:1.0、1.0:1.0、0.5:1.0、0.1:1.0、0.075:1.0、0.05:1.0、0.025:1.0、0.01:1.0、またはそれ未満のRu錯体のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)および開始剤は、本明細書で提供される混合物中に、0.01:1.0~10:1.0のモル比の、Ru錯体対開始剤の比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。潜在性Ru錯体および開始剤は、混合物中に、0.02:1.0~1.0:1.0のモル比の、Ru錯体対開始剤のモル比で存在し得る。
【0207】
触媒(例えば、潜在性Ru錯体)および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.001:1.0、0.01:1.0、0.025:1.0、0.05:1.0、0.075:1.0、0.1:1.0、0.5:1.0、1.0:1.0、1.5:1.0、2.0:1.0、3.0:1.0、4.0:1.0、5.0:1.0、6.0:1.0、7.0:1.0、8.0:1.0、9.0:1.0、10:1.0、100:1.0、1000:1.0、またはそれよりも高いRu錯体のモル比の、Ru錯体対増感剤の比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、最大1000:1.0、100:1.0、10:1.0、9.0:1.0、8.0:1.0、7.0:1.0、6.0:1.0、5.0:1.0、6.0:1.0、4.0:1.0、3.0:1.0、2.0:1.0、1.0:1.0、0.5:1.0、0.1:1.0、0.075:1.0、0.05:1.0、0.025:1.0、0.01:1.0、0.001:1.0、またはそれ未満のRu錯体のモル比の、Ru錯体対増感剤の比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、001:1.0~1000:1.0のモル比の、Ru錯体対増感剤の比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。潜在性Ru錯体および増感剤は、混合物中に、0.02:1.0~1.0:1.0のモル比の、Ru錯体対増感剤のモル比で存在し得る。
【0208】
触媒(例えば、潜在性Ru錯体)およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1ppmまたはそれよりも高い重量比で存在し(例えば、合わせられ)得る。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、最大10%(例えば、10,000ppm)またはそれ未満の重量比で存在し(例えば、合わせられ)得る。触媒(例えば、潜在性Ru錯体)およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、0.1ppm~10%(例えば、10,000ppm)の重量比で存在し(例えば、合わせられ)得る。
【0209】
触媒は、活性化触媒であり得る。触媒は、ルテニウム(Ru)触媒またはRu錯体であり得る。Ru錯体は、活性化Ru錯体であり得る。活性化Ru錯体は、前記少なくとも1つのポリマー前駆体との開環メタセシス重合(ROMP)反応を受けて、例えば前記ポリマーの少なくとも一部を作製し得る。ROMP反応は、光開始ROMP(P-ROMP)またはフォトリソグラフィーオレフィンメタセシス重合(PLOMP))であり得る。
開始剤
【0210】
開始剤は、光開始剤であってよい。開始剤は、光酸発生剤(PAG)または光酸(PAH)であってよい。開始剤は、光酸発生剤(PAG)であってよい。開始剤は、光酸(PAH)であってよい。
【0211】
開始剤は、1つまたは複数のヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、ジカルボキシミド、チオキサントン、またはオキシムを含み得る。開始剤は、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、ジカルボキシミド、チオキサントン、またはオキシムを含み得る。開始剤は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジカルボキシミド、チオキサントン、またはオキシムであり得る。開始剤は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、またはジカルボキシミドであり得る。開始剤は、ヨードニウム塩であり得る。開始剤は、スルホニウム塩であり得る。開始剤は、ジカルボキシミドであり得る。
【0212】
開始剤は、塩であり得る。開始剤は、1つまたは複数の対イオンを含む塩であり得る。開始剤は、1つまたは複数の対イオンを含むスルホニウム塩であり得る。開始剤は、1つまたは複数の対イオンを含むヨードニウム塩であり得る。対イオンは、硫酸イオン、スルホン酸イオン、アンチモン酸イオン、トリフレートイオン、ノナフレートイオン、ホウ酸イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アンチモン化物イオン、およびホウ化物イオンからなる群から選択され得る。対イオンは、硫酸イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アンチモン酸塩イオン、ホウ化物イオン、カルボキシドイオン(carboxide)、トリフレートイオン、およびノナフレートイオンからなる群から選択され得る。
【0213】
開始剤は、式(I)の構造を有する化合物であり得る
(Q(G)p)(X-)q
式(I)
[式中、
Qは、硫黄(S)、S+、またはヨウ素(I+)であり、
各Gは、独立に、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているシクロアルキル、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり、
各Xは、独立に、対イオンであり、
pは、2または3であり、
qは、1または2である]。
【0214】
一部の実施形態では、Qは、S+である。
【0215】
一部の実施形態では、pは3であり、qは1である。
【0216】
一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているアルキルまたは必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、置換フェニルである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、置換フェニルであり、ここで各フェニルは、独立に、1つまたは複数の置換基で置換されており、前記1つまたは複数の置換基は、独立に、C1~C6アルキルである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、フェニルまたはC1~C6アルキルである。一部の実施形態では、C1~C6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、およびsec-ブチルからなる群から選択される。一部の実施形態では、Gは、フェニルである。
【0217】
一部の実施形態では、QはSである。
【0218】
一部の実施形態では、pは2であり、qは2である。
【0219】
一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているアルキルまたは必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、1つまたは複数の置換基で置換されているアリールであり、ここで前記1つまたは複数の置換基は、必要に応じてさらに置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換基は、S+(G1)(G2)であり、ここでG1およびG2は、それぞれ独立に、必要に応じて置換されているアルキルまたは必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、G1およびG2は、それぞれフェニルである。
【0220】
一部の実施形態では、Qは、I+である。
【0221】
一部の実施形態では、pは2であり、qは1である。
【0222】
一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールである。
【0223】
一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルまたは必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているヘテロアリールまたは必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルは、C7~C15ヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているヘテロシクロアルキルは、置換クマリンである。一部の実施形態では、置換クマリンは、1つまたは複数の置換基で置換されており、各置換基は、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、およびC1~C6アルコキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、置換クマリンは、1つまたは複数の置換基で置換されており、各置換基は、C1~C6アルキルおよびC1~C6アルコキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、置換クマリンは、1つまたは複数の置換基で置換されており、各置換基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、およびイソブトキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、各Gは、独立に、置換フェニルである。一部の実施形態では、各Gは、フェニルである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、フェニルまたは1つもしくは複数の置換基で置換されているクマリンであり、各置換基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、およびイソブトキシからなる群から選択される。
【0224】
一部の実施形態では、必要に応じて置換されているアリールは、必要に応じて置換されているジカルボキシミドで置換されている。一部の実施形態では、ジカルボキシミドは、必要に応じて置換されているジカルボキシミドのN原子を介して、必要に応じて置換されているアリールに結合している。一部の実施形態では、ジカルボキシミドは、1つまたは複数の置換基で置換されている。一部の実施形態では、ジカルボキシミドは、C7~C15ヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、C7~C15ヘテロシクロアルキルは、1つまたは複数の置換基で置換されており、各置換基は、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、およびC1~C6アルコキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、C7~C15ヘテロシクロアルキルは、ハロゲンで置換されている。一部の実施形態では、各Gは、独立に、フェニルまたはハロゲンで置換されているジカルボキシミドである。
【0225】
一部の実施形態では、各Gは、独立に、フェニルまたは1つもしくは複数の置換基で置換されたC7~C15ヘテロシクロアルキルであり、各置換基は、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ヘテロアルキル、およびC1~C6アルコキシからなる群から選択される。
【0226】
一部の実施形態では、各Gは、独立に、必要に応じて置換されているアリールである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、置換フェニルである。一部の実施形態では、各Gは、独立に、置換フェニルである。一部の実施形態では、各フェニルは、独立に、1つまたは複数の置換基で置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換基は、独立に、C1~C15アルキルである。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換基は、独立に、C1~C6アルキルである。一部の実施形態では、各Gは、フェニルである。
【0227】
一部の実施形態では、各Xは、独立に、硫酸イオン、スルホン酸イオン、アンチモン酸イオン、トリフレートイオン、ノナフレートイオン、ホウ酸イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アンチモン化物イオン、およびホウ化物イオンからなる群から選択される。
【0228】
一部の実施形態では、各Xは、独立に、
【化22】
からなる群から選択される。
【0229】
一部の実施形態では、開始剤は、
【化23】
からなる群から選択される化合物である。
【0230】
一部の実施形態では、開始剤は、
【化24】
【化25】
からなる群から選択される化合物である。
【0231】
一部の実施形態では、開始剤は、置換ジカルボキシミドである。一部の実施形態では、開始剤は、1つまたは複数の置換ジカルボキシミドを含む。一部の実施形態では、開始剤は、2つの置換ジカルボキシミドを含む。一部の実施形態では、2つのジカルボキシミドは、一般に、必要に応じて置換されているフェニルに結合している。
【0232】
一部の実施形態では、ジカルボキシアミドは、C7~C15ヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、置換ジカルボキシミドは、1つまたは複数の置換スルホネートで置換されている(例えば、N置換されている)。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、必要に応じて置換されているフェニルまたはC1~C6ハロアルキルで置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、1つまたは複数の置換基で置換されているフェニルで置換されており、各置換基は、独立に、C1~C6アルキルおよびC1~C6フルオロアルキルからなる群から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、トルエニル(toluenyl)で置換されている。一部の実施形態では、C1~C6ハロアルキルは、C1~C6フルオロアルキルである。一部の実施形態では、C1~C6フルオロアルキルは、-CF3または-C4F9である。
【0233】
一部の実施形態では、置換ジカルボキシミドは、置換3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノイソインドール-1,3(2H)-ジオン、置換1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオン、およびチオクロメノ[2,3-e]イソインドール-1,3,6(2H)-トリオンからなる群から選択される。
【0234】
一部の実施形態では、開始剤は、
【化26】
【化27】
からなる群から選択される化合物である。
【0235】
一部の実施形態では、開始剤は、置換チオキサントンである。一部の実施形態では、置換チオキサントンは、C7~C15ヘテロシクロアルキルである。一部の実施形態では、置換チオキサントンは、1つまたは複数の置換スルホネートで置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、必要に応じて置換されているフェニルまたはC1~C6ハロアルキルで置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、1つまたは複数の置換基で置換されているフェニルで置換されており、各置換基は、独立に、C1~C6アルキルおよびC1~C6フルオロアルキルからなる群から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、トルエニルで置換されている。一部の実施形態では、C1~C6ハロアルキルは、C1~C6フルオロアルキルである。一部の実施形態では、C1~C6フルオロアルキルは、-CF3、-C4F9、または-C8F17である。
【0236】
一部の実施形態では、開始剤は、置換オキシムである。一部の実施形態では、置換オキシムは、C7~C15ヘテロアリールである。一部の実施形態では、置換オキシムは、1つまたは複数の置換スルホネートで置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、必要に応じて置換されているフェニルまたはC1~C6ハロアルキルで置換されている。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、1つまたは複数の置換基で置換されているフェニルで置換されており、各置換基は、独立に、ハロゲン、C1~C6アルキル、およびC1~C6フルオロアルキルからなる群から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の置換スルホネートは、トルエニルで置換されている。一部の実施形態では、C1~C6ハロアルキルは、C1~C6フルオロアルキルである。一部の実施形態では、C1~C6フルオロアルキルは、-CF3、-C4F9、または-C8F17である。
【0237】
一部の実施形態では、置換オキシムは、必要に応じて置換されているフルオレン-9-オンオキシム、必要に応じて置換されているチオキサンテン-9-オンオキシム、および必要に応じて置換されているチオフェニリデンからなる群から選択される。
【0238】
一部の実施形態では、開始剤は、
【化28】
【化29】
からなる群から選択される化合物である。
【0239】
一部の実施形態では、本明細書に記載される混合物は、特に提供される化合物について、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開WO2014/055720、米国特許第9,207,532号、欧州特許第2,903,996号、国際公開WO2015/065649、米国特許出願公開第2015/118188号、欧州特許公開第3,063,592号、国際公開WO2018/045132、米国特許出願公開第2018/067393号、米国特許出願公開第2020/183276号、欧州特許公開第3,507,007号、国際公開WO2020/006345、Photolithographic Olefin Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 16817-16820、Visible-Light-Controlled Ruthenium-Catalyzed Olefin Metathesis, J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 17, 6791-6796、A Tandem Approach to Photoactivated Olefin Metathesis: Combining a Photoacid Generator with an Acid Activated Catalyst, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6, 2038-2039、Metal-Free Ring-Opening Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 1400-1403、JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, PART A: POLYMER CHEMISTRY2019, 57, 1791-17のいずれかに記載される任意の開始剤を含む。
【0240】
開始剤は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、またはそれよりも高い濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤は、本明細書で提供される混合物中に、最大100,000ppm(例えば、10重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤は、本明細書で提供される混合物中に、約0.1ppm(例えば、0.00001重量%)~約100,000ppm(例えば、10重量%)の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤は、混合物中に、約1ppm(例えば、0.0001重量%)~約50,000ppm(例えば、5重量%)の濃度で存在し得る。
【0241】
開始剤および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、増感剤に対して少なくとも1:1000、1:500、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、100:1、500:1、1000:1、またはそれよりも高い開始剤のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、増感剤に対して最大1000:1、500:1、100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、5:1、1:1、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:100、1:500、1:1000、またはそれ未満の開始剤のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、1000:1の開始剤対増感剤~1:1000の開始剤対増感剤のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤および増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、10:1の開始剤対増感剤~1:10の開始剤対増感剤のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。
【0242】
開始剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、ポリマー前駆体に対して少なくとも1:10,000,000、1:1,000,000、1:500,000、1:100,000、1:50,000、1:10,000、1:5,000、1:1,000、1:500、1:100、1:50、1:30、1:20、1:10、1:1、またはそれよりも高い開始剤のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、ポリマー前駆体に対して最大1:1、1:10、1:20、1:30、1:50、1:100、1:500、1:1,000、1:5,000、1:10,000、1:50,000、1:100,000、1:500,000、1:1,000,000、1:10,000,000、またはそれ未満の開始剤のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、1:1の開始剤対ポリマー前駆体~1:10,000,000の開始剤対ポリマー前駆体のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。開始剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、1:20の開始剤対ポリマー前駆体~1:100,000の開始剤対ポリマー前駆体のモル比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。
増感剤
【0243】
増感剤は、電磁放射線のエネルギーを伝達または分散するように構成され得る。増感剤は、開始剤を安定化または増感させ得る。一部の実施形態では、増感剤は、電磁放射線を散乱させ、それによって開始剤を増感させるように構成される。一部の実施形態では、増感剤は、周囲の電磁放射線を散乱させ、それによって開始剤を増感させるように構成される。一部の実施形態では、増感剤は、波長200~2000ナノメートルを有する電磁放射線を散乱させ、それによって開始剤を増感させるように構成される。増感剤は、開始剤が、例えば約350ナノメートル(nm)~約465nmなどの特定の波長範囲で活性化されるように、電磁放射線のエネルギーを分散、伝達、または変換するように構成され得る。
【0244】
電磁放射線は、少なくとも300ナノメートル(nm)、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1,000nm、1,500nm、2,000nm、2,500nm、3,000nm、またはそれよりも大きい波長を有し得る。電磁放射線は、最大3,000nm、2,500nm、2,000nm、1,500nm、1,000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、またはそれ未満の波長を有し得る。電磁放射線は、300nm~3,000nmの波長を有し得る。電磁放射線は、約350nm~約465nmの波長を有し得る。
【0245】
増感剤は、コンジュゲートした芳香族分子(例えば、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、またはアセン類)、フェノチアジン(例えば、またはその誘導体)、チオキサントン(例えば、またはその誘導体)、カンファーキノン、アミノケトン、ベンゾフェノン、金属錯体(例えば、チタン)、アミノベンゾエート、クマリン(例えば、その誘導体)、インドリン、ポルフィリン、ローダミン、ピリリウム、フェナジン、フェノキサジン、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシドであり得る。増感剤は、コンジュゲートした芳香族分子(例えば、ナフタレン、ペリレン、またはアセン類)、フェノチアジン(例えば、またはその誘導体)、チオキサントン(例えば、またはその誘導体)、クマリン(例えば、その誘導体)、インドリン、ポルフィリン、ローダミン、ピリリウム、フェナジン、フェノキサジン、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシドであり得る。増感剤は、フェノチアジン、チオキサントン、クマリン(例えば、その誘導体、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシドであり得る。増感剤は、チオキサントンであり得る。
【0246】
【0247】
増感剤は、
【化31】
からなる群から選択される化合物であってよい。
【0248】
増感剤は、2-イソプロピルチオキサントン(ITX)であり得る。
【0249】
増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、50,000ppm(例えば、5重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、150,000ppm(例えば、15重量%)、200,000ppm(例えば、20重量%)、またはそれよりも高い濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、最大200,000ppm(例えば、20重量%)、150,000ppm(例えば、15重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、50,000ppm(例えば、5重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、約0.1ppm(例えば、0.00001重量%)~約200,000ppm(例えば、20重量%)の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。増感剤は、本明細書で提供される混合物中に、約1ppm(例えば、0.00001重量%)~約20,000ppm(例えば、2重量%)の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。
【0250】
増感剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、50,000ppm(例えば、5重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、150,000ppm(例えば、15重量%)、200,000ppm(例えば、20重量%)、またはそれよりも高い重量比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。増感剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、最大200,000ppm(例えば、20重量%)、150,000ppm(例えば、15重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、50,000ppm(例えば、5重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の重量比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。増感剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、0.1ppm~200,000ppm(例えば、20重量%)の重量比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。増感剤およびポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、1ppm~20,000ppm(例えば、2重量%)の重量比で存在する(例えば、合わせる)ことができる。
ポリマー前駆体
【0251】
ポリマー前駆体は、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、脂肪族オレフィン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、トリシクロペンタジエン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィンポリマー(例えば、環状オレフィンコポリマー)、およびジイミドからなる群から選択され得る。
【0252】
ジシクロペンタジエンは、ポリ(ジシクロペンタジエン)であり得る。ポリ(ジシクロペンタジエン)は、線状ポリ(ジシクロペンタジエン)、分岐(例えば、超分枝)ポリ(ジシクロペンタジエン)、架橋ポリ(ジシクロペンタジエン)、オリゴマー性ポリ(ジシクロペンタジエン)、またはポリマー性ポリ(ジシクロペンタジエン)からなる群から選択され得る。
【0253】
ノルボルネンは、アルキルノルボルネン(例えば、エチリデンノルボルネン)、ノルボルネンジイミド、および多官能性ノルボルネンクロスリンカー(例えば、ジ-ノルボルネン、トリ-ノルボルネン)からなる群から選択され得る。
【0254】
オレフィン前駆体は、アルキン(例えば、原料混合物の一部として、または生成物ポリマーの逐次的加工において用いられる)と連携して使用され得る。歪みを有する環系は、ROMP反応にとって有益であり得る。オレフィン前駆体は、置換または非置換シクロオクタテトラエン(例えば、シクロオクタテトラエン)であり得る。
【0255】
本明細書で提供されるポリマー前駆体は、環系(例えば、歪みを有する環系)を含み得る。このような環状オレフィンは、単環式、二環式または多環式であり得る、必要に応じて置換されている、必要に応じてヘテロ原子を含有する一不飽和、二不飽和、または多不飽和C5~C24炭化水素であり得る。環状オレフィンは、歪みを有するまたは歪みを有していない環状オレフィンであり得る。
【0256】
本明細書で提供される環状ポリマー前駆体は、式(A)の構造によって表され得る
【化32】
[式中、
R
A1およびR
A2は、独立に、水素、ヒドロカルビル(例えば、C
1~C
20アルキル、C
5~C
20アリール、C
5~C
30アラルキル、またはC
5~C
30アルカリール)、置換ヒドロカルビル(例えば、置換C
1~C
20アルキル、C
5~C
20アリール、C
5~C
30アラルキル、またはC
5~C
30アルカリール)、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、C
1~C
20ヘテロアルキル、C
5~C
20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C
5~C
30アラルキル、またはヘテロ原子含有C
5~C
30アルカリール)、および置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル(例えば、置換C
1~C
20ヘテロアルキル、C
5~C
20ヘテロアリール、ヘテロ原子含有C
5~C
30アラルキル、またはヘテロ原子含有C
5~C
30アルカリール)からなる群から選択される。
Jは、飽和もしくは不飽和のヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、または置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン連結である]。
【0257】
構造(A)によって包含される一不飽和環状オレフィンは、構造(B)によって表され得る
【化33】
[式中、
bは、1~10(例えば、1~5)の範囲の整数であり、
R
A1およびR
A2は、構造(A)について先に定義される通りであり、R
B1、R
B2、R
B3、R
B4、R
B5、およびR
B6は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルおよび-(Z
*)
n-Fn(n、Z
*およびFnは、既に定義される通りである)からなる群から選択され、R
B1~R
B6部分のうちのいずれかが置換ヒドロカルビルまたは置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルである場合には、置換基は、1つまたは複数の-(Z
*)
n-Fn基を含み得る。したがって、R
B1、R
B2、R
B3、R
B4、R
B5、およびR
B6は、例えば、水素、ヒドロキシル、C
1~C
20アルキル、C
5~C
20アリール、C
1~C
20アルコキシ、C
5~C
20アリールオキシ、C
2~C
20アルコキシカルボニル、C
5~C
20アリールオキシカルボニル、アミノ、アミド、ニトロなどであり得る]。
【0258】
さらに、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6部分のうちのいずれかは、その他のRB1、RB2、RB3、RB4、RB5、およびRB6部分のうちのいずれかに連結して、4~30個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換の脂環式基、または6~18個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換アリール基、またはそれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、連結は、限定されるものではないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水物部分を含み得る。脂環式基は、単環式、二環式、または多環式であってよい。環式基は、一不飽和または多不飽和を含有することができる。環は、一置換または多置換を含有し得、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z*)n-Fn(nは、0または1であり、Z*およびFnは、既に定義される通りである)、および先に提供される官能基(Fn)から選択され得る。
【0259】
構造(B)によって包含される一不飽和の単環式オレフィンの例として、限定されるものではないが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、オクタシクロデセン、およびシクロエイコセン、ならびにそれらが置換されたもの、例えば1-メチルシクロペンテン、1-エチルシクロペンテン、1-イソプロピルシクロヘキセン、1-クロロペンテン、1-フルオロシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、4-メトキシ-シクロペンテン、4-エトキシ-シクロペンテン、シクロペンタ-3-エン-チオール、シクロペンタ-3-エン、4-メチルスルファニル-シクロペンテン、3-メチルシクロヘキセン、1-メチルシクロオクテン、1,5-ジメチルシクロオクテンなどが挙げられる。
【0260】
構造(A)によって包含される単環式ジエン反応物は、一般に、構造(C)によって表され得る
【0261】
【化34】
[式中、
cおよびdは、独立に、1~約8(例えば2~4、例えば2(したがって、反応物はシクロオクタジエンである))の範囲の整数であり、
R
A1およびR
A2は、構造(A)について先に定義される通りであり、
R
C1、R
C2、R
C3、R
C4、R
C5、およびR
C6は、R
B1~R
B6について先に定義される通りである]。
【0262】
この場合、RC3およびRC4は非水素置換基であることが好ましい場合があり、その場合には、第2のオレフィン部分は四置換されている。単環式ジエン反応物の例として、限定されるものではないが、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-エチル-1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,3-シクロオクタジエン、およびその置換類似体が挙げられる。トリエン反応物は、ジエン構造(C)に類似し得、いずれか2つのオレフィンセグメントの間に少なくとも1つのメチレン連結を含有することができる。
【0263】
構造(A)によって包含される二環式および多環式オレフィンは、一般に、構造(D)によって表され得る
【化35】
[式中、
R
A1およびR
A2は、構造(A)について先に定義される通りであり、
R
D1、R
D2、R
D3、およびR
D4は、R
B1~R
B6について定義される通りであり、
eは、1~8(例えば、2~4)の範囲の整数であり、
fは、1または2であり、
Tは、低級アルキレンまたはアルケニレン(一般に、置換または非置換メチルまたはエチル)、CHR
G1、C(R
G1)
2、O、S、N-R
G1、P-R
G1、O=P-R
G1、Si(R
G1)
2、B-R
G1、またはAs-R
G1(R
G1は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリール、アラルキル、またはアルコキシである)である]。
【0264】
さらに、RD1、RD2、RD3、およびRD4部分のうちのいずれかは、その他のRD1、RD2、RD3、およびRD4部分のうちのいずれかに連結して、4~30個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換の脂環式基、または6~18個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換アリール基、またはそれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、連結は、限定されるものではないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水物部分を含み得る。環式基は、単環式、二環式、または多環式であってよい。環式基は、一不飽和または多不飽和を含有することができる。環は、一置換または多置換を含有し得、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z*)n-Fn(nは、0または1であり、Z*およびFnは、既に定義される通りである)、および先に提供される官能基(Fn)から選択される。
【0265】
構造(D)によって包含される環状オレフィンは、ノルボルネンファミリーであり得る。ノルボルネンは、限定されるものではないがノルボルネン、置換ノルボルネン(複数可)、ノルボルナジエン、置換ノルボルナジエン(複数可)、多環式ノルボルネン、および置換多環式ノルボルネン(複数可)を含めた、少なくとも1つのノルボルネンまたは置換ノルボルネン部分を含み得る。
【0266】
ノルボルネンは、一般に、構造(E)によって表され得る
【化36】
[式中、
R
A1およびR
A2は、構造(A)について先に定義される通りであり、
Tは、構造(D)について先に定義される通りであり、
R
E1、R
E2、R
E3、R
E4、R
E5、R
E6、R
E7、およびR
E8は、R
B1~R
B6について定義される通りであり、
「a」は、単結合または二重結合を表し、
fは、1または2であり、
「g」は、0~5の整数であり、「a」が二重結合である場合、R
E5、R
E6のうちの一方およびR
E7、R
E8のうちの一方は存在しない]。
【0267】
さらに、RE5、RE6、RE7、およびRE8部分のうちのいずれかは、その他のRE5、RE6、RE7、およびRE8部分のうちのいずれかに連結して、4~30個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換の脂環式基、または6~18個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換アリール基、またはそれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、連結は、限定されるものではないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水物部分を含み得る。環式基は、単環式、二環式、または多環式であってよい。環式基は、一不飽和または多不飽和を含有することができる。環は、一置換または多置換を含有し得、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z*)n-Fn(nは、0または1であり、Z*およびFnは、既に定義される通りである)、および先に提供される官能基(Fn)から選択される。
【0268】
少なくとも1つのノルボルネン部分を有する環状オレフィンは、構造(F)を有し得る
【化37】
[式中、
R
F1、R
F2、R
F3、およびR
F4は、R
B1~R
B6について定義される通りであり、
「a」は、単結合または二重結合を表し、
「g」は、0~5の整数であり、「a」が二重結合である場合、R
F1、R
F2のうちの一方およびR
F3、R
F4のうちの一方は存在しない]。
【0269】
さらに、RF1、RF2、RF3、およびRF4部分のうちのいずれかは、その他のRF1、RF2、RF3、およびRF4部分のうちのいずれかに連結して、4~30個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換の脂環式基、または6~18個の環炭素原子を含有する置換もしくは非置換アリール基、またはそれらの組合せを提供することができ、連結は、ヘテロ原子または官能基を含み得、例えば、連結は、限定されるものではないが、エーテル、エステル、チオエーテル、アミノ、アルキルアミノ、イミノ、または無水物部分を含み得る。脂環式基は、単環式、二環式、または多環式であってよい。環式基は、一不飽和または多不飽和を含有することができる。環は、一置換または多置換を含有し得、置換基は、独立に、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、-(Z*)n-Fn(nは、0または1であり、Z*およびFnは、既に定義される通りである)、および先に提供される官能基(Fn)から選択される。
【0270】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、
【化38】
である。
【0271】
ヒドロカルビル置換および機能的置換ノルボルネンの調製のための経路は、ディールス-アルダー環化付加反応を用い得る。例えば、シクロペンタジエンまたは置換シクロペンタジエンは、高温で適切な求ジエン体と反応して、置換ノルボルネン付加物を形成し得、これは一般に、以下の反応スキーム1によって示される。
スキーム1
【化39】
[スキーム中、
R
F1~R
F4は、構造(F)について本明細書で先に定義される通りである]。
【0272】
他のノルボルネン付加物は、適切な求ジエン体の存在下でジシクロペンタジエンの熱分解によって調製することができる。反応は、ジシクロペンタジエンからシクロペンタジエンへの最初の熱分解に続いて、シクロペンタジエンおよび求ジエン体のディールス-アルダー環化付加によって進行して、以下のスキーム2に示される付加物をもたらし得る。
スキーム2
【化40】
[スキーム中、
「g」は、0~5の整数であり、
R
F1~R
F4は、構造(F)について本明細書で先に定義される通りである]。
【0273】
ノルボルナジエンおよびより高次のそのディールス-アルダー付加物も同様に、以下のスキーム3に示される通り、アセチレン反応物の存在下でシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンの熱反応によって調製することができる。
スキーム3
【化41】
[スキーム中、
「g」は、0~5の整数であり、R
F1およびR
F4は、構造(F)について本明細書で先に定義される通りである]。
【0274】
二環式および多環式オレフィンの例として、限定されるものではないが、ジシクロペンタジエン(DCPD);限定されるものではないが、トリシクロペンタジエン(シクロペンタジエン三量体)、シクロペンタジエン四量体、およびシクロペンタジエン五量体を含めた、シクロペンタジエンの三量体および他のより高次のオリゴマー;エチリデンノルボルネン;ジシクロヘキサジエン;ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン;5-エチル-2-ノルボルネン;5-イソブチル-2-ノルボルネン;5,6-ジメチル-2-ノルボルネン;5-フェニルノルボルネン;5-ベンジルノルボルネン;5-アセチルノルボルネン;5-メトキシカルボニルノルボルネン;5-エトキシカルボニル-1-ノルボルネン(5-ethyoxycarbonyl-1-norbornene);5-メチル-5-メトキシ-カルボニルノルボルネン;5-シアノノルボルネン;5,5,6-トリメチル-2-ノルボルネン;シクロヘキセニルノルボルネン;endo,exo-5,6-ジメトキシノルボルネン;endo,endo-5,6-ジメトキシノルボルネン;endo,exo-5,6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;endo,endo-5,6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;2,3-ジメトキシノルボルネン;ノルボルナジエン;トリシクロウンデセン;テトラシクロドデセン;8-メチルテトラシクロドデセン;8-エチルテトラシクロドデセン;8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン;8-メチル-8-テトラシクロドデセン;8-シアノテトラシクロドデセン;ペンタシクロペンタデセン;ペンタシクロヘキサデセンなど、ならびにそれらの構造的異性体、立体異性体、ならびにそれらの混合物が挙げられ得る。二環式および多環式オレフィンのさらなる例として、限定されるものではないが、C2~C12ヒドロカルビル置換ノルボルネン、例えば5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-オクチル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-ドデシル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、および5-ブテニル-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0275】
環状オレフィンには、C5~C24不飽和炭化水素(例えば、1つまたは複数(典型的に2~12個)のヘテロ原子、例えばO、N、S、またはPを含有するC5~C24環式炭化水素)が含まれ得る。例えば、クラウンエーテル環状オレフィンは、環にわたって多数のOヘテロ原子を含み得、これらは本開示の範囲内にある。本明細書で提供される環状オレフィンは、1つまたは複数(典型的に2つまたは3つ)のオレフィンを含有するC5~C24炭化水素であり得る。例えば、環状オレフィンは、一不飽和、二不飽和、または三不飽和であり得る。環状オレフィンの例として、限定されるものではないが、シクロオクテン、シクロドデセン、および(c,t,t)-1,5,9-シクロドデカトリエンが挙げられる。
【0276】
環状オレフィンはまた、複数(典型的に2つまたは3つ)の環を含み得る。例えば、環状オレフィンは、単環式、二環式、または三環式であり得る。環は、縮合され得る。複数の環を含む環状オレフィンの例として、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンが挙げられる。
【0277】
環状オレフィンは、置換され得、例えば、1つまたは複数(典型的に2つ、3つ、4つ、または5つ)の水素が非水素置換基で置き換えられている、C5~C24環式炭化水素であり得る。例えば、アルコール基で官能化された環状オレフィンを使用して、ペンダントアルコール基を含むテレケリックポリマーを調製し得る。環状オレフィン上の官能基は、官能基がメタセシス触媒を妨げる場合に保護され得、当技術分野で一般に使用される保護基のいずれが、用いられ得る。許容される保護基は、例えば、Greene et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed. (New York: Wiley, 1999)に見出され得る。保護基の非限定的な一覧には、(アルコールについて)アセチル、ベンゾイル、ベンジル、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル、[ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル、MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル(最も人気のあるものには、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルが含まれる、(アミンについて)tert-ブチルオキシカルボニルグリシン、カルボベンジルオキシ(Cbz)基、p-メトキシベンジルカルボニル(MozまたはMeOZ)基、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基、アセチル(Ac)基、ベンゾイル(Bz)基、ベンジル(Bn)、カルバメート基、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)基、トシル(Ts)基、(カルボニルについて)アセタールおよびケタール、アシラール、ジチアン、(カルボン酸について)メチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、2,6-二置換フェノール(例えば、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)のエステル、シリルエステル、オルトエステル、オキサゾリン、(ホスフェートについて)2-シアノエチル、およびメチルが含まれる。アルギニン(Arg)側鎖の特定の場合には、塩基性グアニジニウム基が副反応をもたらす傾向があるので、保護することが重要である。本明細書に記載される場合、有効な保護基には、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン(Pmc)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン(Pbf)および1,2-ジメチルインドール-3-スルホニル(MIS)基が含まれる。
【0278】
官能化環状オレフィンの例として、限定されるものではないが、2-ヒドロキシメチル-5-ノルボルネン、2-[(2-ヒドロキシエチル)カルボキシレート]-5-ノルボルネン、シデカノール(cydecanol)、5-n-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-n-ブチル-2-ノルボルネンが挙げられる。
【0279】
前述の特色(例えば、ヘテロ原子、置換基、複数のオレフィン、複数の環)の任意の組合せを組み込む環状オレフィンは、本明細書で開示される方法に適している場合がある。
【0280】
本明細書で提供される環状オレフィンは、歪みを有していても、歪みを有していなくてもよい。環の歪みは、開環オレフィンメタセシス反応に対する分子の反応性を決定する1つの要因であり得る。高度に歪みを有する環状オレフィン、例えばある特定の二環式化合物は、オレフィンメタセシス触媒での開環反応を容易に受け得る。歪みが少ない環状オレフィン、例えばある特定の非置換の炭化水素単環式オレフィンは、反応性が低い場合がある。ある場合には、相対的に歪みを有していない環状オレフィンの開環反応は、本明細書に開示されるオレフィン化合物の存在下で実施される場合に可能になり得る。
【0281】
複数の環状オレフィンが、本明細書で使用され得る。例えば、本明細書で先に記載される環状オレフィンから選択される2つの環状オレフィンは、両方の環状オレフィンを組み込むメタセシス生成物を形成するために用いられ得る(例えば、第2の環状オレフィンは、環状アルケノールであり得る(例えば、水素置換基の少なくとも1つがアルコールまたは保護されたアルコール部分で置き換えられて、官能化環状オレフィンをもたらす、C5~C24環式炭化水素)。
【0282】
複数の環状オレフィン(例えば、環状オレフィンの少なくとも1つが官能化されている)の使用は、生成物(複数可)内の官能基の位置付けのさらなる制御を提供し得る。例えば、架橋点の密度は、本明細書に開示される方法を使用して調製されたポリマーおよびマクロモノマーにおいて制御することができる。置換基および官能基の量および密度の制御は、生成物(複数可)の物理的特性(例えば、融点、引張強度、ガラス転移温度など)の制御を提供し得る。これらおよび他の特性の制御は、単一の環状オレフィンだけを使用する反応において可能であるが、複数の環状オレフィンの使用により、形成される可能なメタセシス生成物およびポリマーの範囲がさらに増強されることを理解されよう。
【0283】
本明細書で提供される環状オレフィンには、例えば、ジシクロペンタジエン;トリシクロペンタジエン;ジシクロヘキサジエン;ノルボルネン;5-メチル-2-ノルボルネン;5-エチル-2-ノルボルネン;5-イソブチル-2-ノルボルネン;5,6-ジメチル-2-ノルボルネン;5-フェニルノルボルネン;5-ベンジルノルボルネン;5-アセチルノルボルネン;5-メトキシカルボニルノルボルネン;5-エトキシカルボニル-1-ノルボルネン;5-メチル-5-メトキシ-カルボニルノルボルネン;5-シアノノルボルネン;5,5,6-トリメチル-2-ノルボルネン;シクロヘキセニルノルボルネン;endo,exo-5,6-ジメトキシノルボルネン;endo,endo-5,6-ジメトキシノルボルネン;endo,exo-5-6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;endo,endo-5,6-ジメトキシカルボニルノルボルネン;2,3-ジメトキシノルボルネン;ノルボルナジエン;トリシクロウンデセン;テトラシクロドデセン;8-メチルテトラシクロドデセン;8-エチル-テトラシクロドデセン;8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン;8-メチル-8-テトラシクロドデセン;8-シアノテトラシクロドデセン;ペンタシクロペンタデセン;ペンタシクロヘキサデセン;シクロペンタジエンのより高次のオリゴマー、例えばシクロペンタジエン四量体、シクロペンタジエン五量体など;ならびにC2~C12ヒドロカルビル置換ノルボルネン、例えば5-ブチル-2-ノルボルネン;5-ヘキシル-2-ノルボルネン;5-オクチル-2-ノルボルネン;5-デシル-2-ノルボルネン;5-ドデシル-2-ノルボルネン;5-ビニル-2-ノルボルネン;5-エチリデン-2-ノルボルネン;5-イソプロペニル-2-ノルボルネン;5-プロペニル-2-ノルボルネン、および5-ブテニル-2-ノルボルネンなどが含まれ得る。さらにより好ましい環状オレフィンには、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、およびシクロペンタジエンのより高次のオリゴマー、例えばシクロペンタジエン四量体、シクロペンタジエン五量体など、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、ならびにC2~C12ヒドロカルビル置換ノルボルネン、例えば5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-オクチル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-ドデシル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-ブテニル-2-ノルボルネンなどが含まれる。
【0284】
ある特定の実施形態では、これらの構造A~Fのそれぞれは、互いに架橋することができる、または添加された架橋剤と架橋することができるペンダント型置換基をさらに含み得る。例えば、RA1、RA2、RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、RB6、RC1、RC2、RC3、RC4、RC5、RC6、RD1、RD2、RD3、RD4、RE1、RE2、RE3、RE4、RE5、RE6、RE7、RE8、RF1、RF2、RF3、およびRF4は、それぞれ独立に、メタセシス条件下で、それら自体または他の不飽和部分と架橋することができるオレフィン結合またはアセチレン結合を含有するペンダント型ヒドロカルビル鎖を表し得る。構造A~F内の置換基の少なくとも一対、RB1とRB2、RB3とRB4、とRB5とRB6、RC1とRC2、RC5とRC6、RD2とRD3、RE5とRE6、RE7とRE8、RF1とRF2、およびRF3とRF4は、一緒になって、必要に応じて置換されている環外二重結合、例えば/=CH(C1~6-Fn)を形成することができる。
【0285】
本発明の方法において代替のオレフィン前駆体を考慮する場合、より好ましい前駆体は、ポリアセチレンポリマーまたはコポリマーに組み込まれると、得られるポリマーの電気的または物理的特徴を修正するものであり得る。このような前駆体のある一般的クラスは、置換アヌレンおよびアヌリン、例えば[18]アヌレン-1,4;7,10;13,16-トリスルフィドである。この前駆体は、アセチレンと共重合される場合、ここに示される通りのブロックコポリマーを形成することができる。
【化42】
【0286】
下記の通り、これらのトリスルフィドの置換類似体は、対応する置換ポリ(チエニルビニレン)含有ポリマーまたはコポリマーを提供するために使用することもできる。例えば、[18]アヌレン-1,4;7,10;13,16-トリスルフィドの2,3,8,9,14,15-ヘキサオクチル誘導体は、参照により本明細書に組み込まれるHorie, et al., ''Poly(thienylvinylene) prepared by ring-opening metathesis polymerization: Performance as a donor in bulk heterojunction organic photovoltaic devices,'' Polymer 51 (2010) 1541-1547に記載されている。
【化43】
【0287】
ある特定の実施形態では、不飽和有機前駆体は、構造
【化44】
【化45】
を有する純粋に炭化水素の化合物またはそれらの混合物を含む
[式中、
R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、およびR
fは、独立に、Hまたはアルキル(例えば、C
1~20アルキル、さらには例えばC
1~10アルキル)である]。
【0288】
不飽和有機前駆体は、ジシクロペンタジエン構造を有する炭化水素化合物、例えば、
【化46】
を含み得る
[式中、
R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、およびR
fは、独立に、Hまたはアルキル(例えば、C
1~20アルキル、さらには例えばC
1~10アルキル)である]。このような前駆体から得られるこのような1つのポリマーは、構造
【化47】
を有する単位を含む。
【0289】
これらの炭化水素前駆体が、用いられ得る(例えば、最終的な重合化生成物またはそれらから誘導された物品が、過酷な化学的条件に付されるべき場合)。例えば、ジシクロペンタジエン構造から調製された、パターンを有する生成物またはそれらから誘導された物品は、HF水溶液に耐えるのに有効であり得る(例えば、半導体または他の電子加工におけるエッチングマスクとして使用するのに魅力的である)。
【0290】
他の実施形態では、重合可能な不飽和材料マトリックスには、単官能化、二官能化、または多官能化環式または脂環式アルケンまたはアルキン(例えば、アルコール、アミン、アミド、カルボン酸およびエステル、ホスフィン、ホスホネート、スルホネートなどを含めた官能基を含む)が含まれ得る。必要に応じて置換されているビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3,ジカルボン酸ジエステル、7-オキサ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3,ジカルボン酸ジエステル、4-オキサ-トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、4,10-ジオキサ-トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、4-アザ-トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、10-オキサ-4-アザ-トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、またはビスホスフィンを含めた単純な二置換アルケンが、使用され得る。ある特定の実施形態では、これらの官能化アルケンには、
【化48】
などの構造を有するものが含まれる
[式中、
Zは、-O-またはC(R
a)(R
b)であり、
R
Pは、独立に、H;または末端において-N(Ra)(R
b)、-O-R
a、-C(O)O-R
a、-OC(O)-(C
1~6アルキル)もしくは-OC(O)-(C
6-10アリール)で必要に応じて置換されているC
1~6アルキル;または3~10個のアミノ酸の必要に応じて保護された配列(例えば、R-G-D、すなわちアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む)であり、
Wは、独立に、-N(Ra)(R
b)、-O-R
a、または-C(O)O-R
a、-P(O)(OR
a)
2、-SO
2(OR
a)、またはSO
3
-であり、
R
aおよびR
bは、独立に、HまたはC
1~6アルキルであり、
C
6~10アリールは、1個、2個、3個、4個、または5個の必要に応じて保護されたヒドロキシル基(ベンジルになるような、保護されたヒドロキシル基)で必要に応じて置換されており、
nは、独立に、1、2、3、4、5、または6である]。
【0291】
このような官能化材料の非限定的な例として、
【化49】
【化50】
が挙げられる
[式中、Bnは、ベンジルであり、tBuは、tert-ブチルであり、Pbfは、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフランである]。他の保護基も用いられ得る。
【0292】
このような官能基を組み込むことにより、重合前または重合化組成物のさらなる官能化が提供され得る(例えば、このような組成物に利用可能な実用性の選択肢を拡大する)。このような官能基は、例えば、天然または合成アミノ酸配列を含めた、他の材料の追加のための連結点として使用することができる。ある特定の実施形態では、R
Pは、さらに官能化されて、
【化51】
を含むことができる。
【0293】
重合前組成物から調製された重合化生成物(必要に応じてパターンを有する2次元コーティングまたは必要に応じてパターンを有する3次元構造のいずれか)は、薬物送達または組織再生のための足場として有用となり得る。3~10個のアミノ酸の必要に応じて保護されたペンダント型配列(例えば、R-G-D、すなわちアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を含む)を含むフィルムまたは物品は、組織再生適用において有用であることが公知であり、本発明の組成物および方法は、これらの材料に至る好都合な経路を提供する。
【0294】
触媒作用を有する有機金属材料は、このようなマトリックスに組み込まれ得る。本明細書で提供される感光性組成物は、少なくとも1つの不飽和有機前駆体および少なくとも1つの不飽和のテザーされた(tethered)有機金属前駆体、または有機金属前駆体を形成するように配位することができる配位子(例えば、ビニルビピリジン、ビスホスフィン、およびカルベン前駆体)を含む重合可能な材料マトリックス内に混ぜ込まれたもしくは溶解された酸活性化ルテニウムメタセシス触媒を含み得、それぞれの有機前駆体および有機金属前駆体は、少なくとも1つのアルケン結合または1つのアルキン結合を有する。
【0295】
不飽和のテザーされた有機金属前駆体は、重合化マトリックスに組み込まれることができるペンダント型アルケン基またはアルキン基を有する有機金属錯体であり得る。
【0296】
一部の実施形態では、有機金属部分は、第3族~第12族の遷移金属、例えばFe、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Zn、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、Au、またはHgを含む。好ましい実施形態では、有機金属部分は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Ag、Ir、Pt、またはAuを含む。有機金属部分は、これらの配位子が重合化マトリックスに組み込まれることができるペンダント型アルケン基またはアルキン基を含有するという条件で、単座、二座、または多座配位子、例えばシクロペンタジエニル、イミダゾリン(またはそれらのカルベン前駆体)、ホスフィン、ポリアミン、ポリカルボキシレート、窒素大環状分子(例えば、ポルフィリンまたはコロール)によって結合するか、またはそれらを含有し得る。この概念の非限定的な例として、
【化52】
【化53】
が挙げられる。
【0297】
このような有機金属が組み込まれた重合化生成物の代表的な化学作用は、米国特許出願第14/505,824号に例示されている。
【0298】
ある特定の実施形態では、有機金属部分は、酸化条件または還元条件下で有機基質の酸化または還元を触媒し得る。このような酸化反応には、それに限定されるものではないが、アルケンまたはアルキンを酸化して、アルコール、アルデヒド、カルボン酸もしくはエステル、エーテル、またはケトンを形成する反応、あるいは不飽和部分に水素-ハロゲン化物またはシランを付加する反応が含まれる。このような酸化反応には、それに限定されるものではないが、アルケンからアルカンへの還元、およびアルキンからアルケンまたはアルカンへの還元が含まれる。これらの有機金属部分のいくつかは、ペンダントメタセシスもしくはクロスカップリング触媒として使用され得るか、または水を脱離させるために使用され得る。
【0299】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(II)の構造を有する化合物である
【化54】
[式中、
Q
1およびQ
2は、それぞれ独立に、必要に応じて置換されているアルキレンであり、
aおよびbは、それぞれ独立に、0、1、または2である]。
【0300】
一部の実施形態では、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、C1~C6アルキレンである。一部の実施形態では、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、メチレンまたはエチレンである。一部の実施形態では、Q1およびQ2は、それぞれメチレンである。一部の実施形態では、aおよびbは、それぞれ独立に、0または1である。一部の実施形態では、aは1であり、bは0である。一部の実施形態では、aおよびbは、それぞれ1である。
【0301】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、
【化55】
からなる群から選択される化合物である。
【0302】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(III)の構造を有する化合物である
【化56】
[式中、
R
1aは、水素または必要に応じて置換されているアルキルであり、
R
1b、R
1c、R
1d、およびR
1eは、それぞれ独立に、水素、必要に応じて置換されているアルキルであるか、R
1cおよびR
1dは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているシクロアルキルを形成するか、R
1bおよびR
1cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているアルケニルを形成するか、またはR
1dおよびR
1eは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているアルケニルを形成し、
cは、1~20の整数である]。
【0303】
一部の実施形態では、R1aは、水素である。一部の実施形態では、R1bは、水素である。一部の実施形態では、R1cは、水素である。一部の実施形態では、R1dは、水素である。一部の実施形態では、R1eは、水素である。
【0304】
一部の実施形態では、R1bおよびR1cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているアルケニルを形成する。一部の実施形態では、R1dおよびR1eは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているアルケニルを形成する。
【0305】
一部の実施形態では、R1bおよびR1cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニルを形成する。一部の実施形態では、R1dおよびR1eは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニルを形成する。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニルは、アルキル(例えば、C1~C6アルキル)で置換されている。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニルは、-CH=CH-C1~C6アルキルである。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニルは、-CH=CH-CH3である。一部の実施形態では、R1bおよびR1cは、水素であり、R1eおよびR1eは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニル(例えば、-CH=CH-CH3)を形成する。一部の実施形態では、R1dおよびR1eは、水素であり、R1bおよびR1cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニル(例えば、-CH=CH-CH3)を形成する。一部の実施形態では、Ra、R1bおよびR1cは、水素であり、R1eおよびR1eは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニル(例えば、-CH=CH-CH3)を形成する。一部の実施形態では、Ra、R1dおよびR1eは、水素であり、R1bおよびR1cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているC2~C6アルケニル(例えば、-CH=CH-CH3)を形成する。
【0306】
一部の実施形態では、R1cおよびR1dは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているシクロアルキルを形成する。
【0307】
一部の実施形態では、R1aは水素であり、RcおよびRdは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているシクロアルキルを形成する。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているシクロアルキルは、必要に応じて置換されているC3~C6シクロアルキルである。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているC3~C6シクロアルキルは、少なくとも1つの二重結合を含む。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているC3~C6シクロアルキルは、シクロペンテンである。
【0308】
一部の実施形態では、R1a、R1b、R1c、R1d、およびR1eは、それぞれ水素である。
【0309】
一部の実施形態では、nは1~10である。一部の実施形態では、nは1~5である。一部の実施形態では、nは1である。
【0310】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、
【化57】
からなる群から選択される化合物である。
【0311】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(IV)の構造を有する化合物である
【化58】
[式中、
R
2a、R
2b、R
2c、およびR
2dは、それぞれ独立に、水素、必要に応じて置換されているアルキルであるか、またはR
2aおよびR
2cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているシクロアルキルを形成する]。
【0312】
一部の実施形態では、R2aおよびR2dは、それぞれ独立に、必要に応じて置換されているアルキルであり、R2bおよびR2cは、それぞれ水素である。一部の実施形態では、R2aおよびR2dは、それぞれ独立に、1つまたは複数の必要に応じて置換されている不飽和結合を含む必要に応じて置換されているアルキルである。一部の実施形態では、R2aおよびR2dは、それぞれ独立に、C1~C20アルキルであり、R2bおよびR2cは、それぞれ水素である。一部の実施形態では、R2aおよびR2dは、それぞれ独立に、C1~C10アルキルであり、R2bおよびR2cは、それぞれ水素である。一部の実施形態では、R2aおよびR2dは、それぞれ独立に、C1~C6アルキルであり、R2bおよびR2cは、それぞれ水素である。
【0313】
一部の実施形態では、R2aおよびR2cは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているシクロアルキルを形成し、R2bおよびR2dは、それぞれ水素である。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているシクロアルキルは、1つまたは複数の必要に応じて置換されている不飽和結合を含む。一部の実施形態では、R2aおよびR2cは、それらが結合している原子と一緒になって、C4~C20シクロアルキルを形成し、R2bおよびR2dは、それぞれ水素である。一部の実施形態では、R2aおよびR2cは、それらが結合している原子と一緒になって、C4~C12シクロアルキルを形成し、R2bおよびR2dは、それぞれ水素である。一部の実施形態では、R2aおよびR2cは、それらが結合している原子と一緒になって、C4~C8シクロアルキルを形成し、R2bおよびR2dは、それぞれ水素である。
【0314】
一部の実施形態では、少なくとも1つのポリマー前駆体は、
【化59】
からなる群から選択される化合物である。
【0315】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(V)の構造を有する化合物である
【化60】
[式中、
R
xおよびR
yは、それぞれ独立に、水素、必要に応じて置換されているアルキル(例えば、1つまたは複数の基で必要に応じて置換されており、各基は、独立に、ヒドロキシル、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアルキル(例えば、アミド)、および必要に応じて置換されているアルコキシからなる群から選択される)であるか、またはR
xおよびR
yは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて置換されているアルケニルを形成する]。
【0316】
一部の実施形態では、RxおよびRyは、それぞれ水素である。
【0317】
一部の実施形態では、RxおよびRyは、それぞれ独立に、水素または必要に応じて置換されているアルキルである。一部の実施形態では、RxおよびRyは、それぞれ独立に、水素または非置換アルキルである。一部の実施形態では、Rxは水素であり、RyはC1~C20アルキルである。一部の実施形態では、Rxは水素であり、RyはC1~C10アルキルである。一部の実施形態では、Rxは水素であり、RyはC1~C5アルキルである。
【0318】
一部の実施形態では、RxおよびRyは、それぞれ独立に、水素、または1つもしくは複数の基で置換されているアルキルであり、各基は、独立に、ヒドロキシル、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアルキル(例えば、アミド)、および必要に応じて置換されているアルコキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、Rxは水素であり、Ryは、1つまたは複数の基で置換されているアルキルであり、各基は、独立に、ヒドロキシル、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアルキル(例えば、アミド)、および必要に応じて置換されているアルコキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、Rxは水素であり、Ryは、ヒドロキシルで置換されているアルキルである。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているアルキル、必要に応じて置換されているヘテロアルキル(例えば、アミド)、または必要に応じて置換されているアルコキシは、リンカー(例えば、ポリマー)である。
【0319】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(V-A)の構造を有する化合物である
【化61】
[式中、
Lは、リンカー(例えば、ポリマー)である]。
【0320】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、
【化62】
からなる群から選択される化合物である。
【0321】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(VI)の構造を有する化合物である
【化63】
[式中、
Lは、リンカー(例えば、ポリマー)である]。
【0322】
一部の実施形態では、Lは、ポリマーである。一部の実施形態では、Lは、必要に応じて置換されているアルキレン(例えば、C1~C20アルキレン)、必要に応じて置換されているアルコキシ(例えば、PEG)、必要に応じて置換されているシロキサン(例えば、PDMS)、または必要に応じて置換されているヘテロアルキル(例えば、ポリアミド)である。一部の実施形態では、Lは、必要に応じてC1~C20アルキレンである。一部の実施形態では、Lは、必要に応じてC1~C10アルキレンである。一部の実施形態では、Lは、必要に応じてC1~C5アルキレンである。
【0323】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、
【化64】
からなる群から選択される化合物である。
【0324】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、式(VII)の構造を有する化合物である
【化65】
[式中、
Tは、結合(中心)点(例えば、必要に応じて置換されているアルキル(例えば、1つまたは複数の基で置換されているアルキルであり、各基は、独立に、オキソで置換されているアルキルおよびアルコキシからなる群から選択される)、必要に応じて置換されているヘテロアルキル(例えば、ポリアミドまたはポリエステル)、必要に応じて置換されているアルコキシ(例えば、PEG)、または結合(中心)点は、1つもしくは複数のケイ素(Si)を含む(例えば、必要に応じて置換されているシロキサン(例えば、PDMS)))であり、
dは、1~10の整数である]。
【0325】
一部の実施形態では、T(例えば、結合中心点)は、炭素原子である。
【0326】
一部の実施形態では、Tは、必要に応じて置換されているアルキルである。一部の実施形態では、Tは、1つまたは複数の基で置換されているアルキルであり、各基は、独立に、オキソで置換されているアルキルおよびアルコキシからなる群から選択される。一部の実施形態では、Tは、オキソで置換されているアルキル置換アルキルおよびアルコキシである。一部の実施形態では、Tは、必要に応じて置換されているヘテロアルキルである。一部の実施形態では、必要に応じて置換されているヘテロアルキルは、ポリアミドまたはポリエステルである。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、アルキル(例えば、C1~C6アルキル)で置換されている。一部の実施形態では、ヘテロアルキルは、メチルで置換されている。一部の実施形態では、Tは、必要に応じて置換されているアルコキシ(例えば、PEG)である。一部の実施形態では、Tは、アルキル(例えば、C1~C6アルキル)およびオキソで置換されているアルコキシである。
【0327】
一部の実施形態では、T(例えば、結合中心点)は、ケイ素原子である。一部の実施形態では、Tは、1つまたは複数のケイ素原子(Si)を含む。一部の実施形態では、Tは、1~15個のケイ素原子を含む。一部の実施形態では、Tは、1~10個のケイ素原子を含む。一部の実施形態では、Tは、10個のケイ素原子を含む。一部の実施形態では、Tは、1つまたは複数の酸素原子(O)に結合している1つまたは複数のケイ素原子(Si)を含む。一部の実施形態では、Tは、1つまたは複数の酸素原子(O)および1つまたは複数のアルキル(例えば、C1~C6アルキル)に結合している1つまたは複数のケイ素原子(Si)を含む。一部の実施形態では、Tは、1つまたは複数の酸素原子(O)および1つまたは複数のイソプロピルに結合している1つまたは複数のケイ素原子(Si)を含む。一部の実施形態では、Tは、必要に応じて置換されているシロキサン(例えば、PDMS)である。
【0328】
一部の実施形態では、ポリマー前駆体は、
【化66】
である。
【0329】
一部の実施形態では、本明細書に記載される混合物は、特に提供される化合物について、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開WO2014/055720、米国特許第9,207,532号、欧州特許第2,903,996号、国際公開WO2015/065649、米国特許出願公開第2015/118188号、欧州特許公開第3,063,592号、国際公開WO2018/045132、米国特許出願公開第2018/067393号、米国特許出願公開第2020/183276号、欧州特許公開第3,507,007号、国際公開WO2020/006345、Photolithographic Olefin Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 16817-16820、Visible-Light-Controlled Ruthenium-Catalyzed Olefin Metathesis, J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 17, 6791-6796、A Tandem Approach to Photoactivated Olefin Metathesis: Combining a Photoacid Generator with an Acid Activated Catalyst, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6, 2038-2039、Metal-Free Ring-Opening Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 1400-1403、JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, PART A: POLYMER CHEMISTRY2019, 57, 1791-17のいずれかに記載される任意のポリマー前駆体を含む。
【0330】
ポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1重量%、1重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%、99.9重量%、99.99重量%、99.999重量%、99.9999重量%、またはそれよりも高い濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。ポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、最大99.9999重量%、99.999重量%、99.99重量%、99.9重量%、99重量%、90重量%、80重量%、70重量%、60重量%、50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、1重量%、0.1重量%、またはそれ未満の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。ポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、0.1%~99.9999%の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。ポリマー前駆体は、本明細書で提供される混合物中に、50%~99.9%の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。
添加剤
【0331】
本明細書で提供される混合物は、1種または複数の添加剤を含み得る。添加剤は、3Dオブジェクトの少なくとも1つの特性、特色、または特徴を修正し得る。添加剤は、3Dオブジェクトの弾性率、靱性、衝撃強度、色、UV安定性、延性、ガラス転移温度、耐候性、可燃性または表面エネルギーを修正し得る。添加剤は、フォトポリマーの少なくとも1つの特性、特色、または特徴を修正し得る。添加剤は、フォトポリマー(例えば、3Dオブジェクト)の光弾性係数、生強度、ポットライフ、貯蔵期間、プリンティング精度、臨界曝露量、浸透深度、プリント速度、または最適なプリント環境もしくは温度を修正し得る。
【0332】
添加剤は、抗酸化剤(例えば、一次抗酸化剤または二次抗酸化剤)、フィラー、光学的ブライトナー、紫外線(UV)吸収剤、顔料、色素、フォトレドックス剤、脱酸素剤、難燃剤、衝撃改質剤、粒子、フィラー、繊維、ナノ粒子、可塑剤、溶剤、油、ワックス、加硫剤、クロスリンカー(例えば、二次クロスリンカー(例えば、チオールまたはペルオキシド))、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、重合阻害剤(例えば、ホスフィン、ホスファイト、アミン、ピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、キレート剤、チオール、ビニルエーテル)、貯蔵安定剤、連鎖移動剤、およびサイジング剤(例えば、有機相と無機相をつなぐための機能性)からなる群から選択され得る。
【0333】
一部の実施形態では、添加剤は、クマリン(例えば、その誘導体)、アルファヒドロキシケトン、またはホスフィンオキシドである。
【0334】
一部の実施形態では、添加剤は、
【化67】
からなる群から選択される化合物である。
【0335】
一部の実施形態では、添加剤は、
【化68】
からなる群から選択される化合物である。
【0336】
一部の実施形態では、添加剤は、
【化69】
からなる群から選択される化合物である。
【0337】
添加剤は、本明細書で提供される混合物中に、少なくとも0.1百万分率(ppm)(例えば、0.00001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、200,000ppm(例えば、20重量%)、またはそれよりも高い濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。添加剤は、本明細書で提供される混合物中に、最大200,000ppm(例えば、20重量%)、100,000ppm(例えば、10重量%)、10,000ppm(例えば、1重量%)、1,000ppm(例えば、0.1重量%)、100ppm(例えば、0.01重量%)、10ppm(例えば、0.001重量%)、1ppm(例えば、0.0001重量%)、0.1ppm(例えば、0.00001重量%)、またはそれ未満の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。添加剤は、本明細書で提供される混合物中に、約0.1ppm(例えば、0.00001重量%)~約200,000ppm(例えば、20重量%)の濃度で存在する(例えば、合わせる)ことができる。添加剤は、混合物中に、約1,000ppm(例えば、0.1重量%)~約10,000ppm(例えば、1重量%)の濃度で存在し得る。
【0338】
一部の実施形態では、本明細書に記載される混合物は、特に提供される化合物について、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開WO2014/055720、米国特許第9,207,532号、欧州特許第2,903,996号、国際公開WO2015/065649、米国特許出願公開第2015/118188号、欧州特許公開第3,063,592号、国際公開WO2018/045132、米国特許出願公開第2018/067393号、米国特許出願公開第2020/183276号、欧州特許公開第3,507,007号、国際公開WO2020/006345、Photolithographic Olefin Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 16817-16820、Visible-Light-Controlled Ruthenium-Catalyzed Olefin Metathesis, J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 17, 6791-6796、A Tandem Approach to Photoactivated Olefin Metathesis: Combining a Photoacid Generator with an Acid Activated Catalyst, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6, 2038-2039、Metal-Free Ring-Opening Metathesis Polymerization, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 1400-1403、JOURNAL OF POLYMER SCIENCE, PART A: POLYMER CHEMISTRY2019, 57, 1791-17のいずれかに記載される任意の化合物または組成物(例えば、触媒、開始剤、ポリマー前駆体など)を含む。
コンピュータシステム
【0339】
本開示は、本開示の方法を実装するためにプログラムされているコンピュータシステムを提供する。
図2は、本明細書で提供される3次元(3D)オブジェクトを加工するようにプログラムされるかまたはその他の方法で構成されているコンピュータシステム201を示す。コンピュータシステム201は、本開示の方法および組成物の様々な態様、例えば、反応性、粘度、潜在性触媒負荷、PAG負荷、PAH負荷、増感剤負荷、増感剤負荷、溶剤負荷、添加剤負荷、酸素濃度、曝露線量、照射量などを調節することができる。コンピュータシステム201は、電子デバイスに対して遠隔に位置するユーザーまたはコンピュータシステムの電子デバイスであってよい。電子デバイスは、携帯電子デバイスであってよい。
【0340】
コンピュータシステム201は、中央処理装置(CPU、また本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」)205を含み、これは、シングルコアもしくはマルチコアプロセッサ、または並列処理のための複数のプロセッサであってよい。コンピュータシステム201はまた、メモリまたはメモリ位置210(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子ストレージユニット215(例えば、ハードディスク)、他の1つまたは複数のシステムと通信するための通信インターフェイス220(例えば、ネットワークアダプター)、ならびに周辺デバイス225、例えばキャッシュ、他のメモリ、データストレージおよび/または電子ディスプレイアダプターを含む。メモリ210、ストレージユニット215、インターフェイス220および周辺デバイス225は、通信バス(実線)、例えばマザーボードを介してCPU205と通信している。ストレージユニット215は、データを記憶するためのデータストレージユニット(またはデータリポジトリ)であってよい。コンピュータシステム201は、通信インターフェイス220を活用してコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)230に動作可能に接続することができる。ネットワーク230は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、またはインターネットと通信しているイントラネットおよび/もしくはエクストラネットであってよい。ネットワーク230は、ある場合には、電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワーク230は、分散コンピューティング、例えばクラウドコンピューティングを可能にすることができる1つまたは複数のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク230は、ある場合には、コンピュータシステム201を活用して、ピアツーピアネットワークを実装することができ、それによって、コンピュータシステム201に接続されたデバイスが、クライアントまたはサーバとしてふるまうことが可能になり得る。
【0341】
CPU205は、プログラムまたはソフトウェアに具体化することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ位置、例えばメモリ210に記憶され得る。命令は、CPU205を対象にすることができ、それによってその後、本開示の方法を実装するように、CPU205をプログラムするかまたはその他の方法で構成することができる。CPU205によって実施される演算の例として、フェッチ、デコード、実行、およびライトバックを挙げることができる。
CPU205は、回路、例えば集積回路の一部であってよい。システム201の他の1つまたは複数のコンポーネントは、回路に含まれていてよい。ある場合には、回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0342】
ストレージユニット215は、ファイル、例えばドライバ、ライブラリおよび保存プログラムを記憶することができる。ストレージユニット215は、ユーザーデータ、例えばユーザーの選好およびユーザープログラムを記憶することができる。コンピュータシステム201は、ある場合には、イントラネットまたはインターネットを介してコンピュータシステム201と通信しているリモートサーバ上に位置するものなどの、コンピュータシステム201の外部にある1つまたは複数の追加のデータストレージユニットを含むことができる。
【0343】
コンピュータシステム201は、ネットワーク230を介して1つまたは複数のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム201は、ユーザーのリモートコンピュータシステム(例えば、携帯電子デバイス)と通信することができる。リモートコンピュータシステムの例として、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレートPCもしくはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、アンドロイド(登録商標)対応機種、Blackberry(登録商標))、または個人用デジタル補助装置が挙げられる。ユーザーは、ネットワーク230を介してコンピュータシステム201にアクセスすることができる。
【0344】
本明細書に記載される方法は、コンピュータシステム201の電子ストレージ位置、例えばメモリ210または電子ストレージユニット215などに記憶された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードを用いることによって実装することができる。機械実行可能コードまたは機械可読コードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用中に、コードは、プロセッサ205によって実行することができる。ある場合には、コードは、ストレージユニット215から検索することができ、プロセッサ205によって容易にアクセスするためにメモリ210に記憶することができる。一部の状況では、電子ストレージユニット215は、除外することができ、機械実行可能命令は、メモリ210に記憶される。
【0345】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有する機械で使用するように事前コンパイルし、構成することができ、または実行中にコンパイルすることができる。コードは、コードを事前コンパイルまたはアズコンパイル(as-compiled)方式で実行可能にするように選択することができるプログラミング言語で供給することができる。
【0346】
本明細書で提供されるシステムおよび方法の態様、例えばコンピュータシステム201は、プログラミングで具体化することができる。本技術の様々な態様は、典型的に機械(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/またはある種の機械可読媒体に担持されているもしくはその中に具体化されている関連データの形態の、「製品」または「製造品」と考えられ得る。機械実行可能コードは、電子ストレージユニット、例えばメモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクに記憶することができる。「ストレージ」型の媒体は、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、またはその関連モジュール、例えば、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどのいずれかまたはすべてを含むことができ、それによって、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的記憶を提供し得る。ソフトウェアのすべてまたは一部は、時々、インターネットまたは他の様々な電気通信ネットワークを介して通信され得る。このような通信は、例えば、あるコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへの、例えば管理サーバまたはホストコンピュータからアプリケーションサービスのコンピュータプラットフォームへの、ソフトウェアのロードを可能にし得る。したがって、ソフトウェア素子を保持し得る別の種類の媒体には、光波、電波および電磁波、例えばローカルデバイス間の物理的インターフェイスにわたって、有線および光地上ネットワークを介して、ならびに様々なエアリンクにわたって使用されるものが含まれる。このような波を担持する物理的素子、例えば有線または無線リンク、光リンクなども、ソフトウェアを保持する媒体とみなされ得る。本明細書で使用される場合、非一時的な有形「ストレージ」媒体に限定されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0347】
したがって、機械可読媒体、例えばコンピュータ実行可能コードは、それに限定されるものではないが、有形ストレージ媒体、搬送波媒体または物理的伝送媒体を含めた多くの形態をとり得る。不揮発性のストレージ媒体には、例えば、光学的または磁気ディスク、例えば任意のコンピュータ(複数可)のストレージデバイスのいずれかなど、例えば、図に示されるデータベースなどを実装するために使用され得るものなどが含まれる。揮発性ストレージ媒体には、このようなコンピュータプラットフォームのダイナミックメモリ、例えばメインメモリが含まれる。有形伝送媒体には、同軸ケーブル;コンピュータシステム内のバスを構成するワイヤーを含めた銅線および光ファイバーが含まれる。搬送波伝送媒体は、電気もしくは電磁シグナル、または音波もしくは光波、例えば無線周波数(RF)および赤外線(IR)データ通信中に発生するものなどの形態をとり得る。したがって、コンピュータ可読媒体の一般形態には、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード 紙テープ、孔パターンを有する任意の他の物理的ストレージ媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を伝送する搬送波、このような搬送波を伝送するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/もしくはデータを読み取り得る任意の他の媒体が含まれる。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くは、1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを、実行のためにプロセッサに搬送することに関与し得る。
コンピュータシステム201は、電子的ディスプレイ235を含むか、またはそれと通信することができ、この電子的ディスプレイは、例えばフォトポリマーの組成物およびフォトポリマーを加工するための方法に関する情報を提供するための、ユーザーインターフェイス(UI)240を含む。UIの例として、限定されるものではないが、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェイスが挙げられる。
【0348】
本開示の方法およびシステムは、1つまたは複数のアルゴリズムを用いることによって実装することができる。アルゴリズムは、ソフトウェアを用いることによって中央処理装置205によって実行される際に実装することができる。アルゴリズムは、例えば、本明細書で提供される3次元(3D)オブジェクトの設計を提供するか、本明細書で提供される3Dオブジェクトのプリントを命令するか、本明細書で提供される3Dオブジェクトのためのプリンティングパスを修正するか、またはそれらの組合せを行うことができる。
【実施例】
【0349】
(実施例1)
ジシクロペンタジエンおよびトリシクロペンタジエンの光重合
ビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)ルテニウム(II)は、(SIMes)2Ru(ベンジリデン)Cl2と呼ばれ、これをUmicoreから購入し、受け取ったまま使用した。ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートを、Sigma Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。2-イソプロピルチオキサントン(ITX)を、Lambsonから購入し、受け取ったまま使用した。
【0350】
0.9mg/mLの(SIMes)2Ru(ベンジリデン)Cl2、1.75mg/mLのビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、および1.75mg/mLのITXの懸濁液を、ジシクロペンタジエンおよび6wt%トリシクロペンタジエンの液体混合物中で調製した。得られる懸濁液は、実施例のフォトポリマーである。
【0351】
フォトポリマー検量線を使用して、この実施例のフォトポリマー混合物の光重合挙動を実証した(
図3)。検量線は、Paul F. JacobsによってRapid Prototyping & Manufacturing: Fundamentals of Stereolithographyに広範に記載されている、光重合分野における標準的技法である。検量線は、およそ1%O
2を含有する窒素充填グローブボックス中、40℃で、DLPプロジェクターを含むステレオリソグラフィー3Dプリンターで、385nm光を使用して実施した。臨界曝露量(Ec)は、172mJ/cm2であることが決定された。浸透深度(Dp)は、307ミクロンであることが決定された。
【0352】
ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートPAGの非存在下では、対応する懸濁液は、高線量の光(例えば、>2J/cm2)でも容易には光硬化しない。このことは、ITXが、(SIMes)2Ru(ベンジリデン)Cl2を直接的には増感させないことを示唆している。増感剤の非存在下では、対応する懸濁液は、385nmでは容易に光硬化しないが、より高いエネルギー波長の光で硬化することができる。
(実施例2)
3Dオブジェクトのプリンティング
【0353】
ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(PAG-A)およびビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(bis(4-tert-butylphenyl)iodonium hexaflurophosphate)(PAG-B)を含む光酸発生剤(PAG)化合物を、Sigma Aldrichから購入し、受け取ったまま使用した。2-イソプロピルチオキサントン(ITX)を、Lambsonから購入し、受け取ったまま使用した。およそ6重量パーセントwt%のトリシクロペンタジエンを含有するジシクロペンタジエンの溶液(DCPD溶液)を、Cymetechから購入し、受け取ったまま使用した。
【0354】
ビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)ルテニウム(II)(触媒A、
図4A)、ビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ルテニウム(II)(触媒B、
図4B)、ビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ブテニリデン)ルテニウム(II)(bis[1,3-bis(2,4,6-trimethylphenyl)-2-imidazolidinylidene]dichloro(buteneylidene)ruthenium(II))(触媒C、
図4C)、およびビス[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o-イソプロポキシベンジリデン)ルテニウム(II)(触媒D、
図4D)を、Umicoreから購入し、受け取ったまま使用した。
【0355】
プロトコールA:本明細書に記載される試料を製作するために使用した混合物は、触媒、PAG、ITX、およびDCPCを含んだ。試験試料を、3Dプリンターを使用して、フォトポリマーから製作した。試料を、タイプVの引張ドッグボーンおよびベンドバーの形状に形成した。レイヤー(例えば、PNGファイル形式で画像一覧として記憶されている)を、385nmのDLPプリンターに送信した。試料を、1度に1つのスライスでプリントし、スライスを互いにスタックした(zスライススタッキング)。試料の各スライスを、スライスをプリントした後に、600mJ/cm2の紫外(UV)光に曝露した。次に、試料をイソプロピルアルコールですすぎ、さらなる加工の前に、圧縮空気で乾燥させた。示差走査熱量測定および引張試験を用いて、試料の熱機械性質を評価した。
【0356】
実施例A:81ミリグラム(mg)の触媒Aを、157.5mgのPAG-A、157.5mgのITX、および90gのDCPD溶液と混合した。試料を、プロトコールAに従って記載される通りに製作した。後処理のために、試料を、ホットプレート上で約0.2%酸素含量を用いて2時間にわたって160℃に付した。
図5Aは、プロトコールAに従ってプリントした2つのASTMタイプVの引張「ドッグボーン」試料501および1つのベンドバー試料502の画像を示す。表1は、試料が、約3.2ミリメートル(mm)の平均厚さおよび約3.14mmの平均幅を有しており、共に標準偏差(例えば、精度)が0.0であったことを示している。寸法は、標的寸法と比較して<0.05mmの偏差を示し、樹脂およびプリントプロセスの精度を反映している。
図5Bは、ASTM-D638のプロトコールに従って引張試験機で試験した場合の、試料501ごとに生じた引張歪み図の例を示す。表2は、
図5Bに詳説されている引張歪み試験の結果(標準偏差(例えば、精度)を含む)を示す。試料は、平均で、約2181メガパスカル(MPa)のヤング弾性率、約58.6MPaの最大引張応力、約5.2%の降伏引張歪み、および約101.5%の破断引張歪みを有していた。試料間の曲線の変動(
図5B)および表2の破断引張歪みの大きい標準偏差は、ランダムな内部欠陥、例えば3Dプリントプロセス中に形成される場合がある気泡などに起因している場合がある。
図5Cは、3Dオブジェクトについての示差走査熱量測定結果の例を示す。フォトポリマーは、約129℃のガラス転移温度(Tg)を有することが示された。この実施例で3Dプリントし、試験したサンプルは、高剛性(>1800MPaの弾性率)、高延性(>20%の破断引張歪み)、および高Tg(>120℃)の独特の組合せを示す。
【表1】
【表2】
【0357】
実施例B:81ミリグラム(mg)の触媒Bを、157.5mgのPAG-A、157.5mgのITX、および90gのDCPD溶液と混合した。光硬化の証拠が観察されたが、硬化度は、自立試料をもたらすには不十分であった。
【0358】
実施例C:27ミリグラム(mg)の触媒Cを、157.5mgのPAG-A、157.5mgのITX、および90gのDCPD溶液を含む混合物と混合した。試料を、プロトコールAに従って記載される通りに製作した。後処理のために、試料を、窒素下で、オーブン内で2時間にわたって160℃に付した。
図6Aは、プロトコールAに従ってプリントした2つのASTMタイプVの引張「ドッグボーン」試料501および1つのベンドバー試料502の例を示す。表3は、試料が、約3.37ミリメートル(mm)の平均厚さおよび約3.86mmの平均幅を有しており、共に標準偏差(例えば、精度)が0.0であったことを示している。寸法は、標的寸法と比較して<0.05mmの偏差を示し、樹脂およびプリントプロセスの精度を反映している。
図6Bは、ASTM-D638のプロトコールに従って引張試験機で試験した場合の、試料601ごとに生じた引張歪み図の例を示す。表4は、
図6Bに詳説されている引張歪み試験の結果(標準偏差(例えば、精度)を含む)を示す。試料は、平均で、約1958メガパスカル(MPa)のヤング弾性率、約56MPaの最大引張応力、約5.9%の降伏引張歪み、および約91.2%の破断引張歪みを有していた。
図6Cは、3Dオブジェクトについての示差走査熱量測定結果の例を示す。フォトポリマーは、約165℃のガラス転移温度(Tg)を有することが示された。この実施例で3Dプリントし、試験したサンプルは、高剛性(>1800MPaの弾性率)、高延性(>20%の破断引張歪み)、および高Tg(>120℃)の独特の組合せを示す。
【表3】
【表4】
【0359】
実施例D:27ミリグラム(mg)の触媒Dを、157.5mgのPAG-A、157.5mgのITX、および90gのDCPD溶液を含む混合物30gと混合した。
図7は、プロトコールAを使用して製作した試料の例を示しており、この試料は、材料の発熱活性に起因して溶融していた。その試料では、後処理を実施しなかった。
図7Bは、3Dオブジェクトについての示差走査熱量測定結果の例を示す。このフォトポリマーは、約150℃のガラス転移温度(Tg)を有することが示された。
【0360】
実施例E:81ミリグラム(mg)の触媒C、157.5mgのPAG-B、157.5mgのITX、および90gのDCPD溶液。処理した(プロトコールA)混合物は、光硬化の証拠を示したが、硬化度は、自立試料をもたらすには不十分であった。
【0361】
本明細書において、本発明の好ましい実施形態を示し記載してきたが、このような実施形態は、単に例として提供されていることが、当業者には明らかになろう。本発明は、本明細書内において提供された具体例によって限定されることを意図されない。本発明を、前述の明細書を参照しながら記載してきたが、本明細書の実施形態の説明および例示は、限定的な意味で解釈されることを意味されない。当業者には、本発明から逸脱することなく、数々の変形、変更、および置換が思いつかれよう。さらに、本発明のすべての態様は、本明細書に記載される具体的な描写、構造、または相対的な割合に限定されず、それらは様々な条件および変数に応じて変わることを理解されたい。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替物が、本発明の実施において用いられ得ることを理解されたい。したがって本発明は、このようないかなる代替物、修飾、変形または均等物も包含するものであることが企図される。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内の方法および構造は、特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【国際調査報告】