(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】硬質金属およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/71 20060101AFI20221208BHJP
C04B 35/56 20060101ALI20221208BHJP
C22C 1/05 20060101ALI20221208BHJP
B22F 3/15 20060101ALI20221208BHJP
B22F 3/14 20060101ALI20221208BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20221208BHJP
B22F 3/04 20060101ALI20221208BHJP
B22F 10/00 20210101ALI20221208BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221208BHJP
C22C 29/00 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
C04B35/71
C04B35/56 070
C22C1/05 F
B22F3/15 M
B22F3/14 101B
B22F3/14 D
B22F3/02 S
B22F3/04 Z
B22F3/02 P
B22F10/00
B33Y10/00
C22C29/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521322
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020077837
(87)【国際公開番号】W WO2021069370
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102019127518.0
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ペチュケ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヘルマン
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AD01
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA13
4K018BA20
4K018CA02
4K018CA11
4K018CA23
4K018CA29
4K018EA01
4K018EA11
4K018EA21
4K018KA15
(57)【要約】
本発明は、硬質金属材料の分野に関し、例えば工具の切削材料として使用可能である硬質金属に関する。本発明の課題は、硬質金属の構造組成の新規の概念を含む硬質金属を規定することである。この課題は、少なくとも、粒子状の硬質材料とその間に配置されたバインダー金属とからなる硬質金属であって、高エントロピー硬質材料(HEH)は、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属(Me)から、該金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されており、HEHにおける該金属のそれぞれの割合は、実質的に等しい、硬質金属によって解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、粒子状の硬質材料とその間に配置されたバインダー金属とからなる硬質金属であって、前記本発明による硬質金属中の含有量が少なくとも50体積%である高エントロピー硬質材料(HEH)は、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属(Me)から、前記金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されており、前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の前記炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の合計におけるそれぞれの割合x、yおよびzは、MeC
xN
yO
z=0.7≦x+y+z≦1に従い、前記HEHの前記少なくとも4つの金属に対する前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の前記それぞれの割合は、実質的に等しいか、または前記1つ以上の金属の割合は、そこから最大で20原子%逸脱しており、前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の前記炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物は、各硬質材料粒子において固溶体として存在し、さらに前記硬質材料の最大で50体積%は、異なる硬質材料組成を有し、バインダー金属として、硬質金属について知られているすべてのバインダー金属が、前記硬質金属に対して、硬質金属について知られている0.1~40体積%の割合で存在する、硬質金属。
【請求項2】
前記硬質材料の50~100体積%、有利には60~99体積%、さらに有利には80~98体積%は、前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHである、請求項1記載の硬質金属。
【請求項3】
前記硬質金属中のさらなる硬質材料の0~50体積%、有利には1~20体積%は、前記元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の1つ、2つまたは3つの金属から、前記金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されている、請求項1記載の硬質金属。
【請求項4】
前記硬質材料は、前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物または窒化物から構成されている、請求項1記載の硬質金属。
【請求項5】
前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の前記炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の合計における前記それぞれの割合x、yおよびzは、MeC
xN
yO
z=0.9≦x+y+z≦1に従い、有利には、MeC
xN
yO
zにおいて、x=0~1および/またはy=0~1および/またはz=0~0.2である、請求項1記載の硬質金属。
【請求項6】
前記金属の割合は、以下に従って存在する、請求項1記載の硬質金属:
HEHが、PSEの第4および/または第5および/または第6副族のn個の金属から構成されており、ここで、n=4~9であり、
n=4~6の場合、各金属の割合は、(1/n・100)±10原子%、有利には+5原子%、さらに有利には±2原子%に従い、
かつ/または
n=7~9の場合、各金属の割合は、(1/n・100)±5原子%、有利には±2原子%に従い、
かつ/または
n-3(nマイナス3)つの金属の割合は、前記HEH中の全金属含有量に対してそれぞれ10原子%を超える割合だけ逸脱していてもよく、ここで、1つの金属の割合は、前記HEHの全金属含有量に対して最大で70原子%、有利には60原子%であってよい。
【請求項7】
金属の各割合は、n個の金属のすべての金属が等しい割合である場合の割合から最大で20原子%逸脱している、請求項1記載の硬質金属。
【請求項8】
前記硬質材料HEHは、前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の5つ、6つ、7つまたはそれ以上の金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されている、請求項1記載の硬質金属。
【請求項9】
前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成される前記HEHにおいて、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態の前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属の割合は、それぞれ実質的に等しい、請求項1記載の硬質金属。
【請求項10】
Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wが前記硬質材料の金属として存在する、請求項1記載の硬質金属。
【請求項11】
Co、Ni、Fe、Mn、Cu、Cr、Tiまたはそれらの混合物、例えば、低炭素鋼および高炭素鋼、ならびに高エントロピー金属合金がバインダー金属として存在する、請求項1記載の硬質金属。
【請求項12】
前記硬質金属中に、バインダー金属が前記硬質金属に対して5~32体積%含まれている、請求項1記載の硬質金属。
【請求項13】
硬質金属の製造方法であって、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属の炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態の粉末を混合し、合成して、HEH粉末またはHEH造粒物を形成し、その後、前記HEH粉末またはHEH造粒物に、さらなる硬質材料粉末または硬質材料造粒物を最大で50体積%添加し、前記硬質材料を、前記硬質金属に対して0.1~40体積%の割合で粉末状のバインダー金属と混合し、焼結して硬質金属粉末または硬質金属造粒物を形成し、成形後に部材とする、方法。
【請求項14】
有機バインダーとの混合物から成形プロセスで部材を成形し、前記有機バインダーを除去し、前記部材を焼結する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記成形を、プレス、押出成形、射出成形、CIP(Cold Isostatic Pressing、冷間静水圧プレス)および/または付加製造成形によって実現する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記焼結を、焼結熱間静水圧プレス、熱間静水圧プレス(HIP)、ホットプレスまたはSPSによって、無加圧または圧力支援下に行う、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態で構成される少なくとも5つまたは6つまたは7つ以上の粉末を混合し、前記混合物をバインダー金属との焼結中にその場で合成してHEH含有硬質金属を形成する、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物および/または窒化物の形態の4つの粉末を混合し、前記混合物をバインダー金属との焼結中にその場で合成してHEH含有硬質金属を形成する、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の1つまたは2つまたは3つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成される硬質材料の粉末を、0~<50体積%、有利には1~20体積%使用する、請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記HEH粉末の合成を、前記PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の酸化物から金属への還元とそれに続く共浸炭および/または窒化とから行うか、あるいは混合酸化物の直接浸炭および/または窒化によって行う、請求項13記載の方法。
【請求項21】
HEH粉末にさらなる硬質材料粉末を最大で50体積%添加し、前記硬質材料を、前記硬質金属に対して0.1~40体積%の割合で粉末状のバインダー金属と混合し、次いで焼結して、部分的または完全に焼結された硬質金属造粒物を形成する、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質金属材料、ならびにセラミックおよび/または粉末冶金プロセス工学の分野に関し、例えば旋削工具、ドリルおよびフライス工具などの工具の切削材料として、また例えば成形工具または打抜き工具における耐磨耗マトリックスとして使用可能である硬質金属、ならびにその製造方法に関する。
【0002】
硬質金属は、小粒子として存在する硬質材料を金属マトリックスで一体化した金属基複合材料である。このため、硬質金属は、純粋な硬質材料に比べると硬度はやや劣るものの、靭性ははるかに高い。一方で硬質金属は、純金属や合金、焼入れ鋼に比べると硬度は高いが、より破壊し易い(COMPREHENSIVE HARD MATERIALS, ISBN: 9780080965284)。いずれの硬質金属も、金属を形成する炭化物(硬質材料)を必ず有し、特に炭化タングステン・コバルト硬質金属(WC-Co)は標準グレードと呼ばれ、量的に最も重要である。硬質金属は、WCの他には、炭化バナジウム(VC)、炭化クロム(Cr2C3)、炭化チタン(TiC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化タンタルニオブ(Ta,Nb)Cなどの他の炭化物を含まないか、少量(1.8質量%未満)しか含まない。さらに、さらなる金属炭化物を5~25質量%添加した硬質金属もあり、これは主に熱伝導率が適合されていることが特徴である。
【0003】
サーメットとは、特に英米では硬質材料全般を指す用語である。このため、硬質金属、特に炭化タングステンを含まない硬質金属切削材料もサーメットに含まれるが、製造方法や機械的挙動、さらには複合成分間の相互作用に違いがある。サーメットのセラミック硬質材料は、炭化チタン(TiC)や炭窒化チタン(TiCN)であることが多く、金属成分としてはニッケル、コバルト、鉄などが用いられる。さらに、焼結時の濡れ性や機械的および熱的特性を向上させるために、例えば、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化タングステン(WC)、または炭化クロム(Cr3C2)などのさらなる炭化物が添加されることが多い。サーメットは通常、コア-シェル型構造をとっており、コアは、常に単相の金属炭化物、金属窒化物、または金属炭窒化物からなり、シェルにも他の炭化物が溶解している。近年、工業的に広く使用されているバインダー金属としての上述の金属成分であるニッケル、コバルト、鉄の代替物として、いわゆる高エントロピー合金(High Entropy Alloys, HEA)と呼ばれる複合バインダー合金も開発されている。(Lou: Journals of Alloys and Compounds; DOI: 10.1016/j.jallcom.2019.03.328)。このような特殊な金属バインダー合金(High Entropy Alloys (HEA))は、本発明の主題ではない。
【0004】
未焼結状態で有機バインダーの他に硬質金属の出発粉末を含む硬質金属体を、プレス加工、押出成形、MIM/CIM、または未焼結体の3D印刷およびその後の焼結により製造することは、従来技術で知られている。このプロセスでは、異なる組成の硬質金属部品を製造することができる。
【0005】
例えばWC-Co製の硬質金属の製造における組織の形成に関して、従来の製造では、理想的には、溶解したタングステンと炭素とを含むコバルトに富むマトリックス中のWC粒子からなる硬質金属の組織が形成される。
【0006】
硬質材料や硬質金属は、すでに古くから知られている。Kiefer, R. et al: Hartstoffe und Hartmetalle, Vienna, Springer-Verlag, 1953, p.196ffによれば、硬質材料として、三元系や複合系に至るまで多くの炭化物多成分系が知られている。「三元系や多元系の硬質炭化物の合金化の可能性は、極めて多岐にわたる。」。「一般に、工業的に重要な合金は2つのグループに分けられる。第4族および第5族の炭化物を組み合わせることができる。これらの炭化物はすべてイソタイプであるため、ZrCを多量に含む系を除いて、三元系や多元系の合金でも完全な混和性が期待できる。」。炭化チタン-炭化ニオブ-炭化タンタル、炭化タンタル-炭化モリブデン-炭化タングステンなどの様々な三元系に加え、炭化チタン-炭化バナジウム-炭化ニオブ-炭化モリブデン、炭化チタン-炭化バナジウム-炭化モリブデン-炭化タングステンなどの四元系も検討された。これらの系の特性や実際の用途に関する詳細な情報は得られていない。
【0007】
また、いわゆる「高エントロピーカーバイド」(HEC)の開発も知られており、これはセラミックの多元系の新しいクラスである(Zhou, J. et al: Ceram. Internat. 44 (2018) 22014-22018)。等原子(Ti,Zr,Hf,Nb,Ta)C-高エントロピー炭化物粉末を用いたHECの研究が行われた。出発粉末であるTiC、ZrC、HfC、NbC、TaCを等モル比で使用し、火花プラズマ焼結法(spark plasma sintering - SPS)により合成した。その結果、金属原子が金属副格子に統計的に分散配置された純粋な面心立方構造の固溶体を1950℃で得ることができた。このことから、HEC粉末は元の成分よりも熱的に安定であるという結論に達した。
【0008】
さらに、Sarker, P. et al: Nature Communication DOI: 10.1038/s41467-018-07160-7によって、高硬度のHECが理論的に予測され、個々のHECが実験的に研究されている。特に(Mo,Nb,Ta,V,W)C5系はより詳細に研究され、高い硬度を有することが判明している。
【0009】
Wie, X-F. et al: J.of the Europ. Ceram. Soc. 39 (2010). 2989-2994によれば、同様にHECが異なる出発粉末から製造され、研究されている。その際、特に(Ti0.2Zr0.2Nb0.2Ta0.2W0.2)Cについて、同様にSPSによって製造したものが研究されている。HEC中の各元素の均一な分布には、出発粉末の粒径が特に重要であり、より微細な出発粉末を使用すると相対密度が低下することがわかっている。
【0010】
Harrington, T.J. et al: Acta Materialia 166 (2019) 271-280によれば、HECの固溶体の相安定性および機械的特性について検討されている。PSEの第IVB族、第VB族、および第VIB族金属の5種類の金属炭化物について検討が行われた。検討された材料は、硬度の増加を示した。
【0011】
HECの既知の先行技術には、これまでのところ硬質材料として非常に脆いという欠点がある。硬質金属における硬質材料としてのその利用やその特性については、まだ実現も研究もなされていない。同様に、このようなHEC系硬質金属の製造方法も知られていない。
【0012】
本発明の課題は、機械的特性がさらに改善され、かつ硬質金属の構造組成の新規の概念を含む硬質金属を規定するとともに、その簡便かつ安価な製造方法を定めることである。
【0013】
この課題は、特許請求の範囲に記載された本発明によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の主題であり、本発明は、相互に排他的でない限り、併合的接続の意味での個々の従属請求項の組み合わせも含む。
【0014】
本発明による硬質金属は、少なくとも、粒子状の硬質材料とその間に配置されたバインダー金属とからなり、本発明による硬質金属中の含有量が少なくとも50体積%である高エントロピー硬質材料(HEH)は、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属(Me)から、該金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されており、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の合計におけるそれぞれの割合x、yおよびzは、MeCxNyOz=0.7≦x+y+z≦1に従い、HEHの少なくとも4つの金属に対するPSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属のそれぞれの割合は、実質的に等しいか、またはこれらの1つ以上の金属の割合は、そこから最大で20原子%逸脱しており、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物は、各硬質材料粒子において固溶体として存在し、さらに硬質材料の最大で50体積%は、異なる硬質材料組成を有し、バインダー金属として、硬質金属について知られているすべてのバインダー金属が、硬質金属に対して、硬質金属について知られている0.1~40体積%の割合で存在する。
【0015】
有利には、硬質材料の50~100体積%、有利には60~99体積%、さらに有利には80~98体積%は、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHである。
【0016】
同様に有利には、硬質金属中のさらなる硬質材料の0~50体積%、有利には1~20体積%は、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の1つ、2つまたは3つの金属から、該金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されている。
【0017】
さらに有利には、硬質材料は、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物または窒化物から構成されている。
【0018】
また有利には、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の合計におけるそれぞれの割合x、yおよびzは、MeCxNyOz=0.9≦x+y+z≦1に従い、有利には、MeCxNyOzにおいて、x=0~1および/またはy=0~1および/またはz=0~0.2である。
【0019】
金属の割合が、以下に従って存在することもまた有利である:
HEHが、PSEの第4および/または第5および/または第6副族のn個の金属から構成されており、ここで、n=4~9であり、
n=4~6の場合、各金属の割合は、(1/n・100)±10原子%、有利には+5原子%、さらに有利には±2原子%に従い、
かつ/または
n=7~9の場合、各金属の割合は、(1/n・100)±5原子%、有利には±2原子%に従い、
かつ/または
n-3(nマイナス3)つの金属の割合は、HEH中の全金属含有量に対してそれぞれ10原子%を超える割合だけ逸脱していてもよく、ここで、1つの金属の割合は、HEHの全金属含有量に対して最大で70原子%、有利には60原子%であってよい。
【0020】
さらに、金属の各割合が、n個の金属のすべての金属が等しい割合である場合の割合から最大で20原子%逸脱している場合に有利である。
【0021】
また、硬質材料HEHが、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の5つ、6つ、7つまたはそれ以上の金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されている場合に有利である。
【0022】
また、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHにおいて、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属の割合が、それぞれ実質的に等しい場合に有利である。
【0023】
また、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wが硬質材料の金属として存在する場合に有利である。
【0024】
また、Co、Ni、Fe、Mn、Cu、Cr、Tiまたはそれらの混合物、例えば、低炭素鋼および高炭素鋼、ならびに高エントロピー金属合金がバインダー金属として存在する場合に有利である。
【0025】
さらに、硬質金属中に、バインダー金属が硬質金属に対して5~32体積%含まれている場合に有利である。
【0026】
本発明による硬質金属の製造方法では、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属の炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態の粉末を混合し、合成して、HEH粉末またはHEH造粒物を形成し、その後、該HEH粉末またはHEH造粒物に、さらなる硬質材料粉末または硬質材料造粒物を最大で50体積%添加し、これらの硬質材料を、硬質金属に対して0.1~40体積%の割合で粉末状のバインダー金属と混合し、焼結して硬質金属粉末または硬質金属造粒物を形成し、成形後に部材とする。
【0027】
有利には、有機バインダーとの混合物から成形プロセスで部材を成形し、有機バインダーを除去し、部材を焼結する。
【0028】
さらに有利には、成形は、プレス、押出成形、射出成形、CIP(Cold Isostatic Pressing、冷間静水圧プレス)および/または付加製造成形によって実現される。
【0029】
また有利には、焼結は、焼結熱間静水圧プレス、熱間静水圧プレス(HIP)、ホットプレスまたはSPSによって、無加圧または圧力支援下に行われる。
【0030】
同様に有利には、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態で構成される少なくとも5つまたは6つまたは7つ以上の粉末を混合し、この混合物をバインダー金属との焼結中にその場で合成してHEH含有硬質金属を形成する。
【0031】
また、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物および/または窒化物の形態の4つの粉末を混合し、この混合物をバインダー金属との焼結中にその場で合成してHEH含有硬質金属を形成する場合に有利である。
【0032】
さらに、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の1つまたは2または3つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成される硬質材料の粉末が0~<50体積%、さらに有利には1~20体積%使用される場合に有利である。
【0033】
同様に、HEH粉末の合成が、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の酸化物から金属への還元とそれに続く共浸炭および/または窒化とから行われるか、あるいは混合酸化物の直接浸炭および/または窒化によって行われる場合も有利である。
【0034】
また、HEH粉末にさらなる硬質材料粉末を最大で50体積%添加し、これらの硬質材料を、硬質金属に対して0.1~40体積%の割合で粉末状のバインダー金属と混合し、次いで焼結して、部分的または完全に焼結された硬質金属造粒物を形成する場合に有利である。
【0035】
本発明による解決策により、機械的特性がさらに改善され、かつ硬質金属の構造組成の新規の概念を含む硬質金属を初めて規定することが可能となる。また、そのような硬質金属の製造方法を規定することも初めて可能となる。
【0036】
これは、少なくとも、粒子状の硬質材料とその間に配置されたバインダー金属とからなる硬質金属によって実現される。この硬質金属は、新規の構造組成を有する粒子状の新規の硬質材料(高エントロピー硬質材料、HEH)とバインダー金属とを少なくとも含む。
【0037】
ここで、バインダー金属として、硬質金属について知られているすべてのバインダー金属が、硬質金属に対して、硬質金属について知られている0.1~最大で40体積%の割合で存在する。有利には、これらは、Co、Ni、Fe、Mn、Cu、Cr、Tiまたはそれらの混合物、例えば、低炭素鋼および高炭素鋼、ならびに高エントロピー金属合金であり、これらは有利には、硬質金属に対して5~32体積%の割合で本発明による硬質金属中に存在する。焼結プロセス時に、HEHが溶解する。その結果、これらの元素は金属バインダー中にも低濃度で存在することになり、これは、従来の硬質金属のように補助バインダーが炭素やタングステンを含んでいる場合と同様である。
【0038】
しかし本発明によれば、全硬質材料の少なくとも50体積%を占める本発明による硬質金属中の新規の高エントロピー硬質材料HEHが、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属(Me)から、該金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されていることが重要である。
【0039】
固溶体とは、複数の元素や化合物からなる均質な固体を指す。この場合、結晶格子の結晶学的位置に複数の原子が統計的に配置されている。その結果、相の結晶構造は、多少なりとも広い濃度範囲にわたって維持される。このような固溶体は、例えば、立方晶のNaCl構造を有する遷移金属炭化物である。ここで、統計的に分布した構造におけるカチオンの位置を、様々な金属(Ti、Zr;V、.....)が占めることができ、アニオンの位置を、炭素が占めることができる。また、アニオンの位置が、異なる量の炭素で、または炭素、窒素もしくは酸素で占められている場合にも(たとえ化合物が例えばTiなどの金属を1つしか含んでいない場合であっても)、固溶体が存在する。このような各原子の統計的分布は、ある一定の範囲内でしか機能しない。なぜならば、原子のある比率で、統計的分布から原子の秩序ある配列への移行が起こる場合、つまり新たな相の析出や超格子の生成が起こる場合、エネルギー的に有利になり得るためである。固相の均質領域の大きさは、原子の類似度が高いほど、あるいは異なる原子種の数が多いほど大きくなる。したがって、本発明によれば、4つ以上の金属がHEH中の格子に存在することが重要であり、なぜならば、これは金属原子の統計的配置を支援し、次いで転位運動の減少、ひいては硬度の増加につながるためである。したがって、本発明によれば、金属がHEH中に実質的に等しい割合/濃度で存在し、いずれの金属も高すぎる割合/濃度で存在しないことも重要である。なぜならば、その場合、この効果はもはや十分に顕著ではなくなるためであり、すなわち、各金属は、70原子%未満、好ましくは60原子%未満の割合を有することが望ましい。したがって、本発明によれば、個々の金属の割合/濃度が実質的に等しいことが望まれるが、変動は可能である。固溶体には、例えば、ほとんどの合金や混晶が含まれる。
【0040】
本発明による硬質金属中の50~0体積%、有利には1~20体積%のさらなる硬質材料は、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の1つ、2つまたは3つの金属から、該金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されていてよい。
【0041】
有利には、硬質材料の50~100体積%、有利には60~99体積%、さらに有利には80~98体積%は、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHである。
【0042】
また有利には、本発明による硬質金属中の硬質材料HEHは、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の5つ、6つ、7つまたはそれ以上の金属から、該金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されている。
【0043】
さらに有利には、硬質材料は、硬質材料の金属として、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wを有する。
【0044】
本発明によれば、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の合計におけるそれぞれの割合x、yおよびzは、MeCxNyOz=0.7≦x+y+z≦1に従う。
【0045】
有利には、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の合計におけるそれぞれの割合x、yおよびzは、MeCxNyOz=0.9≦x+y+z≦1に従い、有利には、MeCxNyOzにおいて、x=0~1および/またはy=0~1および/またはz=0~0.2である。
【0046】
同様に、本発明によれば、少なくとも4つの金属を含むHEHにおけるPSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属のそれぞれの割合は、実質的に等しいか、またはこれらの1つ以上の金属の割合は、そこから最大で20原子%逸脱している。
【0047】
本発明によれば、金属の割合が以下に従う場合に有利であり、すなわち、HEHが、PSEの第4および/または第5および/または第6副族のn個の金属から構成されており、ここで、n=4~9であり、
n=4~6の場合、各金属の割合は、(1/n・100)±10原子%、有利には+5原子%、さらに有利には±2原子%に従い、
かつ/または
n=7~9の場合、各金属の割合は、(1/n・100)±5原子%、有利には±2原子%に従い、
かつ/または
n-3(nマイナス3)つの金属の割合は、HEH中の全金属含有量に対してそれぞれ10原子%を超える割合だけ異なっていてもよく、ここで、1つの金属の割合は、HEHの全金属含有量に対して最大で70原子%であってよい。有利には、これは、60原子%未満、さらに好ましくは50原子%未満である。
【0048】
さらに、金属の各割合が、n個の金属のすべての金属が等しい割合である場合の割合から最大で20原子%逸脱している場合に有利である。
【0049】
PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHにおいて、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属の割合がそれぞれ等しい場合にも有利である。
【0050】
本発明によれば、これらの異なる割合は、HEH中の炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族のすべての金属の割合が実質的に等しいことを意味している。
【0051】
本発明によれば、HEHにおける金属の実質的に等しい割合は、製造に起因する工業的に慣例的な偏差により等しい割合の値だけわずかに変動する割合である。
【0052】
例えば、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属が4つである場合、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族の各金属の割合は、それぞれ25%であり、金属が5つの場合にはそれぞれ20%である。この場合、本発明によれば、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属が4つである場合、金属の割合は、4つの金属の等しい割合と最大で20原子%異なることができ、すなわちHEHの25%という割合と20原子%異なることができる。
【0053】
PSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHにおいて、炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の形態のPSEの第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの金属の割合がそれぞれ等しい場合に有利である。
【0054】
本発明によれば、HEHが単相構造を有しており、個々の炭化物、窒化物または炭窒化物への高エントロピー硬質材料の溶解が生じないかまたは非常に限られたものであり、かつ高エントロピー硬質材料が種々のバインダー金属の存在下でもその固溶体に留まることが特に重要である。
【0055】
したがって、本発明による解決策は少なくとも、本発明によれば少なくとも4つの金属から構成されるHEHが硬質材料粒子もしくは硬質材料造粒物中に常に存在する点、ならび/または少なくとも4つの金属がすべてのHEH硬質材料粒子もしくはHEH硬質材料造粒物中に単相で存在する点、ならび/または硬質金属が窒化物、炭窒化物および/もしくはオキシ炭窒化物の固溶体の形態の金属をも伴って実現されている点、ならびに/または硬質材料粒子もしくは硬質材料造粒物のコア-シェル構造としての構造の場合、少なくとも4つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成される本発明によるHEHのみがコア内に存在する点で、先行技術とは異なる。
【0056】
また、硬質金属に関する本発明による解決策は、以下の式:
硬質金属=HEH+BM(+MeHS)
で記述することも可能であり、ここで、
【数1】
【0057】
BMは、バインダー金属であり、
MeHSは、金属硬質材料であり、
Meiは、金属である。
【0058】
さらに、本発明による硬質金属の製造方法では、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の少なくとも4つの異なる金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の形態で構成される粉末を混合して焼結し、HEH粉末またはHEH造粒物を形成する。この場合、HEH粉末は、元素周期表(PSE)の第4および/または第5および/または第6副族の金属の酸化物から金属への還元とそれに続く共浸炭および/または窒化から製造することもでき、あるいは混合酸化物の直接浸炭および/または窒化により合成することもできる。
【0059】
その後、HEH粉末または焼結されたHEHの造粒物に、さらなる硬質材料粉末または硬質材料造粒物を最大で<50体積%添加する。その後、これらの硬質材料を、硬質金属に対して0.1~40体積%の割合で粉末状のバインダー金属と混合し、次いで焼結して、硬質金属粉末または硬質金属造粒物を形成する。さらに、HEH含有硬質金属は、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属から炭化物および/または窒化物の形態で構成される少なくとも4つの粉末を混合し、この混合物をバインダー金属との焼結中にその場で合成してHEH含有硬質金属を形成する、HEHのイン・サイチュ形成によっても生成可能である。
【0060】
同様に、HEH粉末にさらなる硬質材料粉末を最大で50体積%添加し、これらの硬質材料を、硬質金属に対して0.1~40体積%の割合で粉末状のバインダー金属と混合し、次いで焼結して、部分的または完全に焼結された硬質金属造粒物を形成することも可能である。
【0061】
また、硬質金属粉末や硬質金属造粒物の混合物を、成形によって部材に加工し、次いで焼結することも可能である。
【0062】
有利には、成形プロセスとして、プレス、押出成形、射出成形、CIP(Cold Isostatic Pressing、冷間静水圧プレス)および/または付加製造成形法、ならびに溶射による表面構造の生成を用いることができる。
【0063】
成形では、有利には混合物にバインダーを添加し、そこから部品を成形する。その後、バインダーを除去し、部材を焼結することができる。
【0064】
有利には、焼結は、焼結熱間静水圧プレス、熱間静水圧プレス(HIP)、ホットプレスまたはSPSによって、無加圧または圧力支援下に行うことができる。
【0065】
有利には、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属から炭化物、窒化物、炭窒化物、オキシ炭化物および/またはオキシ炭窒化物の形態で構成される少なくとも5または6または7つ以上の粉末を混合し、バインダー金属との焼結中にHEHをその場で合成する。
【0066】
PSEの第4および/または第5および/または第6副族の金属から炭化物および/または窒化物の固溶体の形態で構成されるHEHを混合する場合に特に有利である。
【0067】
さらに、PSEの第4および/または第5および/または第6副族の1つ、2つまたは3つの金属から炭化物、窒化物、炭窒化物および/またはオキシ炭窒化物の固溶体の形態で構成される硬質材料の粉末を、0~50体積%、有利には1~20体積%使用することが有利である。
【0068】
以下、本発明を実施例につき詳説する。以下の例から、選択した条件下では、HEHの明確な再溶解が生じてもHEH相は驚くほど安定であることがわかる。組織内に局所的に認められた量のWCは、HEHの以前の研削によるものであり、さらなる改良処理によって回避することが可能である。部分的に認められたHf(O,C)相についても同様のことが該当し、この相は、出発粉末中に存在する比較的安定なHfO2の不完全な還元に起因している。
【0069】
実施例1
TaC、NbC、TiC、VC、およびWCの各20原子%を1950℃で真空中にて焼結し、次いでボールミルで粉砕して製造した、組成(Ta0.21Nb0.21Ti0.21V0.19W0.18)Cの単相の高エントロピー硬質材料HEHを、14体積%のコバルト(HalfMicron、UmiCore社製)と共に、ボールミルにて溶媒(ヘプタン)中で粉末対粉砕ボールの比=1:20で48時間にわたって粉砕した。乾燥後、この粉末から、200MPaで一軸プレスを用いて45×5×6mm3の形状の曲げ破壊ロッドをプレス成形した。
【0070】
これらのサンプルを、HIP圧力10MPaの焼結HIP炉にて1280℃で45分焼結した。
【0071】
光学顕微鏡で見ると、サンプルは完全に緻密であることがわかった。ISO 4505による気孔率は、>A02、B00、C00に相当していた。ビッカース硬さを測定したところ1620 HV10であり、クラック長を測定してShettyの式(Shetty 1985 - Indentation fracture of WC-Co cermets)を用いて破壊靭性(K1C)を算出したところ、8.5MPa・m1/2であった。
【0072】
密度、気孔率、磁気飽和度、保磁力、硬さ、および破壊靱性について調査した結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
焼結後の組織は、HEC硬質材料相と、5質量%未満のさらなるWC硬質材料相と、コバルトバインダーとからなっていた。
【0075】
ここで、定量X線解析(リートベルト解析)により求められたHEH含有硬質金属の割合、およびHEHについて求められた格子定数を表2に示す。
【0076】
【0077】
実施例2
実施例1に記載の、組成(Ta0.2Nb0.2Ti0.2V0.2W0.2)CのHEH硬質材料から構成される粉砕された粉末混合物を、16体積%のコバルトと共に、加圧支援型焼結装置(FCT Syteme製SPS/FAST)により温度1200℃、保持時間3分で直接でプレスおよび焼結して、直径20mm、高さ6mmのディスク状物を形成した。
【0078】
光学顕微鏡で見ると、サンプルは完全に緻密であることがわかった。ISO 4505による気孔率は、>A02、B00、C00に相応していた。ビッカース硬さを測定したところ1540 HV10であり、クラック長を測定してShettyの式(Shetty 1985 - Indentation fracture of WC-Co cermets、上記参考文献を参照のこと)を用いて破壊靭性(K1C)を算出したところ、10.1MPa・m1/2であった。
【0079】
密度、気孔率、磁気飽和度、保磁力、硬さ、および破壊靱性について調査した結果を表3に示す。
【0080】
【0081】
焼結後の組織は、HEC硬質材料相と、5質量%未満のさらなるWC硬質材料相と、Wに富むコバルトバインダーとからなっていた。
【0082】
ここで、X線解析により求められたHEH含有硬質金属の割合、およびHEHについて求められた格子定数を表4に示す。
【0083】
【0084】
実施例3
HfC、TaC、ZrC、NbC、およびVCの各20原子%を1980℃で真空中にて焼結し、次いでボールミルで粉砕して製造した、組成(Hf0.2Ta0.2Zr0.2Nb0.2V0.2)Cの単相の高エントロピー硬質材料を、16体積%のコバルト(HalfMicron、UmiCore社製)と共に、ボールミルにてヘプタン中で粉末対粉砕ボールの比=1:20で48時間にわたって粉砕した。乾燥後、この粉末を、200MPaで一軸プレスを用いてプレス成形して、45×5×6mm3の形状の曲げ破壊ロッドを形成した。
【0085】
これらのサンプルを、HIP圧力10MPaの焼結HIP炉にて1280℃で45分焼結した。
【0086】
光学顕微鏡で見ると、サンプルは完全に緻密であることがわかった。ISO 4505による気孔率は、>A02、B00、C00に相当していた。ビッカース硬さを測定したところ1520 HV10であり、クラック長を測定してShettyの式(Shetty 1985 - Indentation fracture of WC-Co cermets、上記参考文献を参照のこと)を用いて破壊靭性(K1C)を算出したところ、8.9MPa・m1/2であった。
【0087】
密度、気孔率、磁気飽和度、保磁力、硬さ、および破壊靱性について調査した結果を表5に示す。
【0088】
【0089】
焼結後の組織は、HEC硬質材料相と、2質量%未満のさらなる(Hf,Ta)C硬質材料相と、コバルトバインダーとからなっていた。
【0090】
実施例4
HfC、TaC、ZrC、NbC、およびTiC0.3N0.7の各20原子%を2000℃で窒素下にて焼結し、次いでボールミルで粉砕して製造した、組成(Hf0.2Ta0.2Zr0.2Nb0.2Ti0.2)C0.84N0.14の単相の高エントロピー硬質材料を、8体積%のコバルト(HalfMicron、UmiCore社製)および8体積%のニッケル(2800、EuroTungsten社製)と共に、ボールミルにてヘプタン中で粉末対粉砕ボールの比=1:20で48時間にわたって粉砕した。乾燥後、この粉末から、200MPaで一軸プレスを用いて45×5×6mm3の形状の曲げ破壊ロッドをプレス成形した。
【0091】
光学顕微鏡で見ると、サンプルは完全に緻密であることがわかった。ISO 4505による気孔率は、>A04、B00、C00に相当していた。ビッカース硬さを測定したところ1720 HV10であり、クラック長を測定してShettyの式(Shetty 1985 - Indentation fracture of WC-Co cermets、上記参考文献を参照のこと)を用いて破壊靭性(K1C)を算出したところ、7.7MPa・m1/2であった。
【0092】
密度、気孔率、磁気飽和度、保磁力、硬さ、および破壊靱性について調査した結果を表6に示す。
【0093】
【0094】
実施例5
HfC0.9O0.1、TaC、ZrC、およびNbCの各25原子%を2000℃で真空中にて焼結し、次いでボールミルで粉砕して製造した、組成(Hf0.25Ta0.25Zr0.25Nb0.25)C0.975O0.025の単相の高エントロピー硬質材料HEHを、16体積%のコバルト(HalfMicron、UmiCore社製)と共に、ボールミルにて溶媒(ヘプタン)中で粉末対粉砕ボールの比=1:20で48時間にわたって粉砕した。乾燥後、この粉末から、200MPaで一軸プレスを用いて45×5×6mm3の形状の曲げ破壊ロッドをプレス成形した。
【0095】
これらのサンプルを、HIP圧力10MPaの焼結HIP炉にて1280℃で60分焼結した。
【0096】
光学顕微鏡で見ると、サンプルは完全に緻密であることがわかった。ISO 4505による気孔率は、>A02、B00、C00に相当していた。ビッカース硬さを測定したところ1420 HV10であり、クラック長を測定してShettyの式(Shetty 1985 - Indentation fracture of WC-Co cermets)を用いて破壊靭性(K1C)を算出したところ、8.0MPa・m1/2であった。
【0097】
密度、気孔率、磁気飽和度、保磁力、硬さ、および破壊靱性について調査した結果を表7に示す。
【0098】
【0099】
焼結後の組織は、HEC硬質材料相と、5質量%未満のHf-Ta含有硬質材料相(オキシ炭化物の形態)と、コバルトバインダーとからなっていた。
【国際調査報告】