(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ビス(フルオロスルホニル)イミド塩及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/086 20060101AFI20221208BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20221208BHJP
【FI】
C01B21/086
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521493
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2020078765
(87)【国際公開番号】W WO2021074142
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブイジーネ, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ビョンギ
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AM07
5H029CJ12
5H029CJ14
5H029CJ28
5H029DJ17
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩及びその調製方法に関する。より具体的には、本発明は、0.01ppm~10000ppmのハロゲン化アルコールを含有するビス(フルオロスルホニル)イミドの新規な塩を提供する。本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩を製造する方法であって、少なくともハロゲン化アルコールを含む結晶化溶媒中でビス(フルオロスルホニル)イミドの原塩を結晶化させる工程を含む方法に更に関する。ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩の使用も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01ppm~10000ppmのハロゲン化アルコールを含有するビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項2】
式(I):
[(FSO
2)
2N
-]
nM
n+ (I)
(式中、M
n+は、オニウムカチオンを表し、及びnは、前記カチオンMの価数を表す1~3の整数であり;好ましくは、M
n+は、第四級アンモニウムカチオンを表し、より好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩が好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムであるようなアンモニウムカチオンである)
によって表される、請求項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項3】
式(I):
[(FSO
2)
2N
-]
nM
n+ (I)
(式中、M
n+は、アルカリ金属カチオンを表し、及びnは、前記カチオンMの価数を表す1~3の整数である)
によって表され、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムである、請求項1に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項4】
前記ハロゲン化アルコールは、フッ素化アルコールであり、好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、ノナフルオロ-tert-ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ペンタフルオロフェノール、ジフルオロエタノール及びトリフルオロエタノールからなる群から選択され、より好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、ジフルオロエタノール又はトリフルオロエタノールであり、更により好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、トリフルオロエタノールである、請求項1~3のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項5】
90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%~100%の質量パーセントの純度を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項6】
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物イオン(Cl
-)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物イオン(F
-)含有量;及び/又は
- 30000ppm未満、好ましくは10000ppm未満、より好ましくは5000ppm未満の硫酸塩イオン(SO
4
2-)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)含有量
を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項7】
99.9%超の純度を有する固体結晶化化合物、好ましくは乾燥固体結晶化化合物の形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を製造する方法であって、少なくともハロゲン化アルコールを含む結晶化溶媒中でビス(フルオロスルホニル)イミドの原塩を結晶化させる工程を含む方法。
【請求項9】
前記結晶化工程は、
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの固体原塩を提供することと、
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記固体原塩を前記結晶化溶媒中に溶解させることと、
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩を結晶化させることと、
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの再結晶塩を回収することと
からなる工程を含む再結晶工程である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化アルコールは、フッ素化アルコールであり、好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、ノナフルオロ-tert-ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ペンタフルオロフェノール、ジフルオロエタノール及びトリフルオロエタノールからなる群から選択され、より好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、ジフルオロエタノール又はトリフルオロエタノールであり、更により好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、トリフルオロエタノールである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶化溶媒は、少なくとも1種のハロゲン化アルコールと、ハロゲン化アルコールではない別の溶媒との混合物を含み、前記別の溶媒は、好ましくは、エチルメチルカーボネート及びジメチルカーボネートのようなカーボネート;酢酸エチル、酢酸ブチル及びプロピオン酸エチルのようなエステル;ジクロロメタン及び1,2-ジクロロエタンのようなハロカーボン;ベンゼン及びトルエンのような芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンのような炭化水素;バレロニトリル及びアセトニトリルのようなニトリル化合物からなる群から選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶化溶媒は、前記結晶化溶媒の総重量を基準として0.01%~20%、好ましくは0.1%~10%、より好ましくは1%~5%であり得る含有量で水を含有する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩は、式(I):
[(FSO
2)
2N
-]
nM
n+ (I)
(式中、M
n+は、オニウムカチオンを表し、及びnは、前記カチオンMの価数を表す1~3の整数である)
によって表され;及びビス(フルオロスルホニル)イミドの前記原塩は、以下のプロセス:
- ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をオニイウムフルオリドと反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を製造することと;
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記オニウム塩を沈澱させ、且つ分離することと
に従って製造される、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムであり;及び前記未加工の固体ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムは、以下のプロセス:
- ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を製造することと;
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記アンモニウム塩を沈澱させ、且つ分離することと
に従って製造される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの別の塩を製造するための出発原料としての、請求項1~7のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の使用。
【請求項16】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造する方法であって、請求項8~14のいずれか一項に記載のビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化塩を製造することと、ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記結晶化塩をアルカリ剤と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を得ることとからなる工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩及びその調製方法に関する。より具体的には、本発明は、改善された品質を有し、且つ新しい効率的な及び費用効率が高い方法によって得ることができるビス(フルオロスルホニル)イミドの新規な塩を提供する。
【背景技術】
【0002】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(一般に「FSIH」によって表される)及びその塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(一般に「LiFSI」によって表される)は、様々な技術分野において中間体化合物又は最終化合物として有用である。
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩の製造は、文献に広く記載されている。記載される様々な技術の中で、大多数は、HF又はKF、CsF、AsF3、SbF3、CuF2、ZnF2、SnF2、PbF2、BiF3等のような金属フッ化物のいずれかでのフッ素化反応を使用する。例えば、発煙硫酸及びフッ化アンモニウムの存在下でクロロスルホニルイソシアネートを使用するか、又は尿素及びフルオロスルホン酸を使用する他の技術が開発されている。
【0004】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩は、バッテリー電解質においてとりわけ有用である。このタイプの使用のために、不純物の存在が重要な問題である。
【0005】
金属不純物の汚染を抑えるために、先行技術文献米国特許出願公開第2013/0331609号明細書は、クロロスルホニルイミド化合物を式NH4F(HF)P(式中、pは、0~10である)のフッ素化剤と反応させる工程を含む、フルオロスルホニルイミドアンモニウム塩を製造するプロセスを提案している。こうして得られたフルオロスルホニルイミドアンモニウム塩は、カチオン交換反応に供されて、別のフルオロスルホニルイミド塩を生成し得る。このプロセスは、工業的に効率的であり、且つ金属不純物を提供しないと言われている。
【0006】
同様に、先行技術文献特開2016-124735号公報及び特開2016-145147号公報は、クロロスルホニルイミド化合物とNH4F(HF)P(式中、pは、0~10である)との反応を含む、フルオロスルホニルイミド化合物を製造する方法を開示している。前記フルオロスルホニルイミド化合物は、アルカリ金属化合物と反応して、フルオロスルホニルイミドのアルカリ金属塩を生成し得る。
【0007】
先行技術文献米国特許出願公開第2018/0370799号明細書は、高収率及び高純度でビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムを製造する方法を開示している。前記方法は、ビス(クロロスルホニル)イミド化合物をフッ素化剤と反応させ、次いで直ちにそれをアルカリ試薬で処理し、それによりビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムを製造し、ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムをリチウム塩基と反応させることを含む。
【0008】
生成物が高純度で得られるとこれらの文献が主張しているとしても、依然として改善の余地があると考えられる。例えば、米国特許出願公開第2018/0370799号明細書は、濃縮、精製及び再結晶されたビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム生成物の追加の再結晶が、不溶性成分を除去し、且つ最終的に99.9%以上の所望の高純度を有するビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム生成物を得るために必要であることさえ開示している。
【0009】
これに関連して、工業規模で経済的に実現可能であり、且つ高純度生成物を提供するビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩の改善された製造方法が依然として望ましいと考えられる。加えて、本発明の1つの目的は、改善された品質を有し、且つ新しい効率的な及び費用効率が高い方法によって得ることができるビス(フルオロスルホニル)イミドの新規な塩を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの主題は、0.01ppm~10000ppmのハロゲン化アルコールを含有するビス(フルオロスルホニル)イミドの塩である。前記塩は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩、より好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムである。
【0011】
本発明の1つの更なる主題は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩を製造する方法であって、少なくともハロゲン化アルコールを含む結晶化溶媒中でビス(フルオロスルホニル)イミドの原塩を結晶化させる工程を含む方法である。
【0012】
本発明の1つの更なる主題は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの別の塩を製造するための出発原料としての、ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記塩の使用である。加えて、本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造する方法であって、上で定義されたようなビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化塩を製造することと、ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記結晶化塩をアルカリ剤と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を得ることとからなる工程を含む方法を特許請求する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2において得られるEMC中の30重量%でのLiFSIの溶液を5回循環させることによって得られるサイクリックボルタンメトリー図を示す。
【
図2】実施例3において得られるEMC中の30重量%でのLiFSIの溶液を5回循環させることによって得られるサイクリックボルタンメトリー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示において、表現「...~...に含まれる」は、両端値を包含していると理解されるべきである。特に明記しない限り、百万当たりの1部は、重量で1000000部当たりの重量で1部を意味する。それは、等しく「ppm」、「ppmw」又は「mg/kg」と略すことができる。
【0015】
本発明の1つの主題は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩に関する。前記塩は、式(I):
[(FSO2)2N-]nMn+ (I)
(式中、Mn+は、カチオンを表し、及びnは、カチオンMの価数を表す1~3の整数である)
によって表され得る。好ましくは、nは、1又は2であり;より好ましくは、nは、1である。
【0016】
第1実施形態によれば、Mn+は、オニウムカチオンを表す。オニウムカチオンMn+は、第四級アンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、第四級ホスホニウム、第三級ホスフィン、スルホニウム、グアニジニウム、イソウロニウム及びイソチオウロニウムからなる群から選択され得る。より好ましくは、オニウムカチオンMn+は、第四級アンモニウム化合物からなる群、特にテトラメチルアンモニウム及びアンモニウムカチオン(そのような場合、式(I)においてn=1である)から選択され得る。更により好ましくは、Mn+は、アンモニウムカチオンNH4
+を表す。結果として、本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩、より好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により好ましくは(「NH4FSI」と言われ得る)式NH4N(SO2F)2によって表され得るビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムである。
【0017】
第2実施形態によれば、Mn+は、アルカリ金属カチオンを表す。アルカリ金属カチオンは、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン及びカリウムカチオンからなる群から選択され得、好ましくは、Mn+は、リチウムカチオンである。本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、好ましくは、(「LiFSI」と言われる)式LiN(SO2F)2によって表され得るビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムである。
【0018】
本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、ある程度の微量のハロゲン化アルコールを含有するという事実によって特徴付けられる。
【0019】
前記ハロゲン化アルコールは、フッ素化アルコール、塩素化アルコール又は臭素化アルコールであり得る。前記ハロゲン化アルコールは、好ましくは、フッ素化アルコールである。
【0020】
本文において、表現「フッ素化アルコール」は、少なくとも1個のC-F結合と共に少なくとも1個のアルコール官能基を含む有機フッ素化合物を指す。フッ素化アルコールは、部分フッ素化アルコール又は過フッ素化アルコールであり得る。それは、好ましくは、1個の炭素原子~12個の炭素原子、より好ましくは1個の炭素原子~6個の炭素原子、更により好ましくは1個の炭素原子~4個の炭素原子を含むことができる。
【0021】
好ましい実施形態によれば、本発明によるフッ素化アルコールは、式Rf-OH(式中、Rfは、フッ素化アルキル、フッ素化ヘテロアルキル及びフッ素化アリールからなる群から選択されるフッ素化部分である)の化合物である。より好ましくは、Rfは、
- C1~C4フッ素化アルキルであり得、より好ましくは、それは、CH2F、CHF2、CF3、CF3CH2、HCF2CH2、CF3CF2、CF3CH2CH2、CF3CF2CH2、CF3CF2CF2、(CF3)2CH、(CF3)2CF、CF3CF2CF2CF2、(CF3)3Cであるか;又は
- 部分若しくは完全フッ素化フェニルなどのフッ素化アリールであり得、より好ましくは、Rfは、C6F5である。
【0022】
非常に好ましくは、本発明によるフッ素化アルコールは、ノナフルオロ-tert-ブタノール((CF3)3COH)、ヘキサフルオロイソプロパノール((CF3)2CHOH)、ペンタフルオロフェノール、ジフルオロエタノール(HCF2CH2OH)及びトリフルオロエタノール(CF3CH2OH)からなる群から選択され得;より好ましくは、フッ素化アルコールは、ジフルオロエタノール及びトリフルオロエタノールであり;更により好ましくは、フッ素化アルコールは、トリフルオロエタノールである。
【0023】
本発明によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、0.01ppm~10000ppm、好ましくは0.1ppm~5000ppm、より好ましくは0.1ppm~1000ppm、より好ましくは0.5ppm~500ppm、更により好ましくは1ppm~100ppmの前記ハロゲン化アルコールを含有するという事実によって特徴付けられる。
【0024】
ハロゲン化アルコールの含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)、又はHPLC、又は質量分析法によって測定され得る。典型的には、固体化合物のためのヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いることができる。
【0025】
ハロゲン化アルコールを除いて、本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、有利には、非常に高い純度を示す。純度は、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、更により好ましくは99%~100%(質量パーセント)である。
【0026】
好ましくは、それは、以下のアニオンの含有量:
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物アニオン(Cl-)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物アニオン(F-)含有量;及び/又は
- 30000ppm未満、好ましくは10000ppm未満、より好ましくは5000ppm未満の硫酸塩アニオン(SO4
2-)含有量
を示し得る。
【0027】
これらのアニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩自体と異なる存在物であることが理解されるべきである。とりわけ、フッ化物含有量は、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の分子構造中のフッ素分を包含しない。
【0028】
好ましくは、それは、以下の金属元素の含有量:
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量
を示し得る。
【0029】
加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩がビス(フルオロスルホニル)イミドナトリウムでない場合、それは、
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na)含有量
を示し得る。
【0030】
加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩がビス(フルオロスルホニル)イミドカリウムでない場合、それは、
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)含有量
を示し得る。
【0031】
本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミド塩の含水量は、好ましくは10000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満である。それにもかかわらず、水のより高い含有量は、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩の最終用途に応じて許容することができよう。
【0032】
その非常に高い純度のため、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、バッテリーのための電解質組成物中又はバッテリーのための電解質組成物中に使用される他のビス(フルオロスルホニル)イミド塩の調製のための出発原料又は中間化合物として有利に使用され得る。
【0033】
本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、99.9%超の純度を有する固体結晶化化合物、好ましくは乾燥固体結晶化化合物の形態であり得る。
【0034】
本発明の1つの更なる主題は、上で定義されたようなビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を製造する方法である。前記方法は、少なくともハロゲン化アルコールを含む結晶化溶媒中でビス(フルオロスルホニル)イミドの原塩を結晶化させる工程を含む。
【0035】
好ましい実施形態によれば、本発明による結晶化工程は、まずビス(フルオロスルホニル)イミドの固体原塩を提供し、次いで前記結晶化溶媒中にビス(フルオロスルホニル)イミドの前記固体原塩を溶解させることと;ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を結晶化させることと;最後にビス(フルオロスルホニル)イミドの再結晶塩を回収することとからなる工程を含む再結晶工程である。
【0036】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの固体原塩は、そのようなものとして購入することができるか、又は先行技術において開示された任意の方法によってあらかじめ製造することができる。
【0037】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記固体原塩は、少なくともハロゲン化アルコールを含む結晶化溶媒中に溶解され得る。前記ハロゲン化アルコールは、本明細書で上に開示されたように選択され得る。したがって、ハロゲン化アルコールは、非常に好ましくは、ノナフルオロ-tert-ブタノール((CF3)3COH)、ヘキサフルオロイソプロパノール((CF3)2CHOH)、ペンタフルオロフェノール、ジフルオロエタノール(HCF2CH2OH)及びトリフルオロエタノール(CF3CH2OH)からなる群から選択され得、より好ましくは、フッ素化アルコールは、ジフルオロエタノール及びトリフルオロエタノールであり、更により好ましくは、フッ素化アルコールは、トリフルオロエタノールである。
【0038】
一実施形態によれば、結晶化溶媒は、1種のハロゲン化アルコール又は2種以上のハロゲン化アルコールの混合物を含む。別の実施形態によれば、結晶化溶媒は、少なくとも1種のハロゲン化アルコールと、ハロゲン化アルコールではない別のアルコールとの混合物を含む。例えば、前記別の溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジメチルカーボネート(DMC)のようなカーボネート;酢酸エチル、酢酸ブチル及びプロピオン酸エチルのようなエステル;ジクロロメタン(DCM)及び1,2-ジクロロエタンのようなハロカーボン;ベンゼン及びトルエンのような芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンのような炭化水素;バレロニトリル及びアセトニトリルのようなニトリル化合物からなる群から選択され得る。結晶化溶媒混合物の例は、TFE/EMC、TFE/EMC/DCM、TFE/DCM、TFE/酢酸ブチル/DCM及びTFE/酢酸ブチルである。結晶化溶媒中のハロゲン化アルコールの含有量は、1%~95%、より好ましくは50%~90%に含まれ得る。任意選択的に、結晶化溶媒の総重量を基準として0.01%~20%、好ましくは0.1%~10%、より好ましくは1%~5%であり得る含有量で水も結晶化溶媒に添加され得る。
【0039】
最適溶解は、典型的には、好適な撹拌手段を用いて、バッチ方式、半バッチ方式又は連続方式において、当業者に周知の手段によって実施され得る。溶解は、25℃~70℃、好ましくは40℃~70℃、更により好ましくは50℃~60℃に含まれる温度で実施され得る。好ましくは、溶解は、大気圧で実施されるが、大気圧より下又は上、例えば800mbar~1.2barで作業することは、排除されない。
【0040】
溶解後、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の結晶化は、バッチ方式、半バッチ方式又は連続方式において、当業者に周知の手段によって引き起こされ得る。結晶化装置の設計は、当業者によって決められ得る。結晶化を引き起こす手段は、固定圧力での温度の低下、圧力の低下と組み合わされた温度の低下又は結晶化溶媒の少なくとも一部の蒸留であり得る。加えて、種晶添加が実施され得る。
【0041】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化塩の分離は、当業者に公知の任意の典型的な分離手段、例えば濾過によって行われ得る。濾過は、当業者に公知の任意の手段により、大気圧、加圧下又は真空下で実施され得る。濾過媒体のメッシュサイズは、好ましくは、2マイクロメートル以下、より好ましくは0.45マイクロメートル以下、更により好ましくは0.22マイクロメートル以下であり得る。分離生成物は、適切な溶媒で1回以上洗浄され得る。
【0042】
最後に、ビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化固体塩は、好ましくは、純粋な乾燥生成物を得るために乾燥される。乾燥工程は、典型的には、減圧下において、及び/又は加熱により、及び/又は不活性ガス流、典型的には窒素流を用いて、当業者に公知の任意の手段によって実施され得る。
【0043】
本明細書による方法は、有利には、非常に高い純度を示す、本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの乾燥固体結晶化塩を提供する。上で説明されたように、その非常に高い純度のため、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、バッテリーのための電解質組成物中又はバッテリーのための電解質組成物中に使用される他のビス(フルオロスルホニル)イミド塩の調製のための出発原料又は中間化合物として有利に使用され得る。
【0044】
ここで、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩がビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩である一実施形態が記載される。前記実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドの未加工の固体オニウム塩は、以下のプロセス:
- ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をオニウムフッ化物と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウムム塩を製造することと;
- ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を沈澱させ、且つ分離することと
に従って製造され得る。
【0045】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩がビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩(ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム又はビス(フルオロスルホニル)イミドテトラメチルアンモニウムなどの)である特定の実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドの未加工の固体第四級アンモニウム塩は、以下のプロセス:
- ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩を第四級アンモニウムフッ化物と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩を製造することと;
- ビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩を沈澱させ、且つ分離することと
に従って製造され得る。
【0046】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩がビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムである1つの特定の実施形態によれば、未加工の固体ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウムは、以下のプロセス:
- ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を製造することと;
- ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を沈澱させ、且つ分離することと
に従って製造され得る。
【0047】
ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩が原料として使用される。それは、式:
(Cl-SO2-N--SO2-Cl)X+
(式中、Xは、H、Li、Na、K、Cs及びNH4からなる群からの1つを表す)
によって表され得る。
【0048】
好ましい実施形態によれば、原料は、式(Cl-SO2)2-NH(一般にCSIHによって表される)のビス(クロロスルホニル)イミドである。CSIHは、市販されているか、又は公知の方法により、例えば、
- クロロスルホニルイソシアネートClSO2NCOをクロロスルホン酸ClSO2OHと反応させること;
- 塩化シアンCNClを無水硫酸SO3及びクロロスルホン酸ClSO2OHと反応させること;
- スルファミン酸NH2SO2OHを塩化チオニルSOCl2及びクロロスルホン酸ClSO2OHと反応させること
によって製造される。
【0049】
この実施形態によれば、フッ素化剤は、オニウムフッ化物であり、より特にフッ化アンモニウム又はフッ化テトラメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムフッ化物であり得る。本発明内において、表現「オニウムフッ化物」には、オニウムフッ化物のHF付加物も含まれる。1つの特定の実施形態によれば、フッ素化剤は、フッ化アンモニウムNH4Fである。本発明内において、表現「フッ化アンモニウム」は、したがって、フッ化アンモニウムのHF付加物、例えばNH4F(HF)n(式中、nは、1~10、好ましくは1~4である)、より好ましくはNH4F・HF又はNH4F(HF)2を含む。フッ素化剤は、市販品であるか又は公知の方法によって製造され得る。
【0050】
好ましい実施形態によれば、オニウムフッ化物(より特に第四級アンモニウムフッ化物、更により特にフッ化アンモニウム)は、無水である。水分含量は、好ましくは、5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、更により好ましくは500ppm未満であり得る。
【0051】
使用されるオニウムフッ化物(より特に第四級アンモニウムフッ化物、更により特にフッ化アンモニウム)の量は、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の1モル当たり、好ましくは1~10当量、より好ましくは1~7当量、更により好ましくは2~5当量に含まれる。
【0052】
反応は、好ましくは、有機溶媒中で実施され得る。前記有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒、好ましくは、
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、
- シアノ、ニトロ、クロロ又はアルキル置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン
から選択され得る。
【0053】
好ましい実施形態によれば、有機溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択される。
【0054】
好ましい実施形態によれば、有機溶媒は、無水である。水分含量は、好ましくは、5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、更により好ましくは50ppm未満であり得る。
【0055】
反応は、0℃~200℃、好ましくは30℃~100℃の温度で実施され得る。好ましくは、反応は、大気圧で行われるが、大気圧より下又は上、例えば800mbar~1.2barで作業することは、排除されない。
【0056】
反応は、バッチ方式、半バッチ方式又は連続方式で実施され得る。好ましい実施形態によれば、オニウムフッ化物(それは、より特に第四級アンモニウムフッ化物、更により特にフッ化アンモニウムであり得る)が最初に有機溶媒に添加される。次いで、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩が反応媒体に添加され得る。
【0057】
ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩を本発明に従ってオニウムフッ化物(より特に第四級アンモニウムフッ化物、更により特にフッ化アンモニウム)と反応させることにより、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(より特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)を得ることができる。
【0058】
ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をオニウムフッ化物(又はより特に第四級アンモニウムフッ化物、更により特にフッ化アンモニウム)と反応させた後、しかし、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又はより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)を沈澱させ、且つ分離する前に、この実施形態による方法は、塩基性化合物を反応媒体に添加することを含む工程を含み得る。前記塩基性化合物は、固体、純粋な液体、水溶液若しくは有機溶液又はガスであり得る。前記塩基性化合物は、ガス状アンモニア、アンモニア水、アミン、アルカリ若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、プロピオン酸塩又はシュウ酸塩からなる群から選択され得る。アミンの中で、脂肪族アミン(エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びトリブチルアミンなど)、アルキレンジアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンなど)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンなど)、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン(ベンジルアミン及びメタキシレンジアミンなど)、これらのアミンのエチレンオキシド付加物、ホルムアミジン、グアニジン、アミジン及び複素環式アミン(ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、ピリジン及びインドールなど)を含む任意のタイプのアミンが好都合であり得る。塩基性化合物は、好ましくは、ガス状アンモニア又はアンモニア水である。
【0059】
添加される塩基性化合物の量は、最初の反応工程にロードされるビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩の初期量を基準として好ましくは0.1~10当量、好ましくは0.5~5当量、より好ましくは0.5~3当量である。
【0060】
塩基性化合物の添加中、温度は、好ましくは、0℃~100℃、より好ましくは15℃~90℃に維持される。有利には、塩基性化合物の添加のこの工程は、先行する反応工程と同じ温度で実施され得る。
【0061】
任意選択的に、本発明による方法は、反応後及び塩基性化合物の添加前若しくは塩基性化合物の添加後及びビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(若しくはより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)の沈澱及び分離前又は両方で1つ又はいくつかの中間分離工程を含み得る。この中間分離工程は、当業者に公知の任意の典型的な分離手段、例えば濾過(例えば、加圧下若しくは真空下)又はデカンテーションによって行われ得る。
【0062】
この実施形態による次の工程は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又はより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)を沈澱させ、且つ分離することを含む。ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又は特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)の沈澱は、当業者によって選択され得る異なる手段によって得ることができる。特に、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又はより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)の沈澱のための手段は、
- 蒸留によって溶媒の少なくとも一部を除去すること;
- 反応媒体の温度を下げること;
- 沈澱溶媒を添加すること;及び
- それらの任意の組合せ
から選択することができる。
【0063】
溶媒の少なくとも一部の除去は、反応媒体中のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又はより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)の濃度の増加を引き起こす。一実施形態によれば、濃縮工程は、0℃~120℃、好ましくは5℃~80℃、より好ましくは10℃~70℃に含まれる温度での溶媒の蒸留を含み得る。圧力は、溶媒の性質に応じて、典型的には大気圧~10-2mbar、好ましくは1mbar~500mbar、より好ましくは5mbar~100mbarで調整され得る。蒸留は、当業者に公知の任意の典型的な手段により、連続プロセス方式又は不連続/バッチ方式において、例えば連続バッチ方式溶媒蒸発、バッチ式蒸留、ショートパスの連続フロー蒸留又は薄膜蒸発装置で行われ得る。
【0064】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又はより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)の沈澱は、任意選択的に事前に濃縮され得る、塩を含有する反応混合物の温度を下げることによっても得ることができる。塩を含有する反応混合物の温度は、塩の溶解温度よりも低い値まで下げられ得る。好ましくは、温度は、溶媒の沸点~-20℃、より好ましくは70℃~-10℃、更により好ましくは30℃~0℃に含まれる値まで下げられる。温度の低下中、圧力は、好ましくは、一定に保たれ得る。しかしながら、圧力を同時に下げることは、排除されない。それは、反応混合物の有機溶媒の一部の蒸発を引き起こし得る。圧力は、大気圧~10-2mbar、好ましくは1mbar~500mbar、より好ましくは5mbar~100mbarに含まれる値まで下げられ得る。
【0065】
代わりに又は加えて、少なくとも1種の沈澱溶媒は、塩を含有する反応混合物に添加され得る。前記沈澱溶媒は、反応混合物の有機溶媒中に高度に可溶であり、且つビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又はより特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)の貧溶媒である有機溶媒中で好ましくは選択され得る。前記沈澱溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム及び四塩化炭素のようなハロゲン化溶媒;クロロベンゼン及びトルエンのような置換芳香族炭化水素溶媒;並びにヘキサン及びヘプタンのようなアルカン溶媒からなる群から選択され得る。沈澱溶媒は、好ましくは、ジクロロメタン及びジクロロエタン中で選択され得る。沈澱溶媒と反応混合物の有機溶媒との間の体積比は、0.1~50、好ましくは0.2~20、より好ましくは0.5~15、更により好ましくは1~10に含まれ得る。
【0066】
沈澱したビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩の(特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の)分離は、当業者に公知の任意の典型的な分離手段、例えば濾過によって行われ得る。濾過は、当業者に公知の任意の手段により、大気圧、加圧下又は真空下で実施され得る。濾過媒体のメッシュサイズは、好ましくは、2マイクロメートル以下、より好ましくは0.45マイクロメートル以下、更により好ましくは0.22マイクロメートル以下であり得る。分離生成物は、適切な溶媒で1回又は数回洗浄され得る。
【0067】
最後に、分離された固体のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(又は特に分離されたビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩若しくはより特に分離されたビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩)は、好ましくは、純粋な乾燥生成物を得るために乾燥される。乾燥工程は、当業者に公知の任意の手段により、典型的には減圧下において、及び/又は加熱により、及び/又は不活性ガス流、典型的には窒素流を用いて実施され得る。
【0068】
1つの特定の実施形態によれば、本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩は、他のビス(フルオロスルホニル)イミド塩の調製のための出発化合物として使用され得る。したがって、本発明の1つの主題は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造する方法であって、上で開示されたような方法によるビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化塩を製造することと、ビス(フルオロスルホニル)イミドの前記結晶化塩をアルカリ剤と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を得ることとからなる工程を含む方法を含む。
【0069】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩からなる群から選択され得る。好ましくは、アルカリ塩は、リチウム塩であり、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩Li+(FSO2)2N-(LiFSI)である。
【0070】
ビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化塩は、アルカリ塩の性質に応じて、そのようなものとして又は溶媒に可溶化されて使用され得る。好ましい実施形態によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドの結晶化塩は、本明細書では以下で「アルカリ化溶媒」と呼ばれる有機溶媒に可溶化される。前記アルカリ化溶媒は、非プロトン性有機溶媒、好ましくは、
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、
- シアノ-、ニトロ-、クロロ-又はアルキル-置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン
から選択され得る。
【0071】
好ましい実施形態によれば、アルカリ化溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択される。
【0072】
アルカリ塩は、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩からなる群から選択され得る。好ましくは、アルカリ塩は、リチウム塩であり、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩である。
【0073】
アルカリ剤の例としては、アルカリ水酸化物、アルカリ水酸化物水和物、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、アルカリ塩化物、アルカリフッ化物、アルコキシド化合物、アルキルアルカリ化合物、アルカリ酢酸塩及びアルカリシュウ酸塩が挙げられる。好ましくは、アルカリ水酸化物又はアルカリ水酸化物水和物が使用され得る。アルカリ剤がリチウム塩である場合、リチウム塩は、水酸化リチウムLiOH、水酸化リチウム水和物LiOH・H2O、炭酸リチウムLi2CO3、炭酸水素リチウムLiHCO3、塩化リチウムLiCl、フッ化リチウムLiF;CH3OLi及びEtOLiなどのアルコキシド化合物;EtLi、BuLi及びt-BuLiなどのアルキルリチウム化合物、酢酸リチウムCH3COOLi並びにシュウ酸リチウムLi2C2O4からなる群から選択され得る。好ましくは、水酸化リチウムLiOH又は水酸化リチウム水和物LiOH・H2Oが使用され得る。
【0074】
前記アルカリ剤は、固体、純粋な液体又は水溶液若しくは有機溶液として添加され得る。
【0075】
使用されるアルカリ剤の量は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩の(又は特にビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により特にビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の)1モル当たり、0.5~5モル、より好ましくは0.9~2モル、更により好ましくは1~1.5モルに含まれる。
【0076】
反応は、0℃~50℃、より好ましくは15℃~35℃の温度、更により好ましくは約室温で実施され得る。好ましくは、反応は、大気圧で実施されるが、大気圧よりも下又は上、例えば5mbar~1.5bar、好ましくは5mbar~100mbarで作業することは、排除されない。
【0077】
更なる処理は、非常に純粋なビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を回収するために実施され得る。反応媒体は、とりわけアルカリ剤が水溶液である場合、二相の(水性/有機)溶液であり得る。この場合、方法は、相分離工程を含み得、その工程中、水相は、除去され、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、有機相に回収される。追加の工程は、濾過、濃縮、抽出、再結晶、クロマトグラフィーによる精製、乾燥及び/又は配合を含み得る。
【0078】
有利には、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩は、非常に高い純度を有する。それは、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%~100%の塩の純度を示し得る。
【0079】
好ましくは、それは、以下のアニオンの含有量:
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満の塩化物イオン(Cl-)含有量;及び/又は
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物イオン(F-)含有量;及び/又は
- 30000ppm未満、好ましくは10000ppm未満、より好ましくは5000ppm未満の硫酸塩イオン(SO4
2-)含有量
を示し得る。
【0080】
好ましくは、それは、以下の金属元素の含有量:
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満の鉄(Fe)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のクロム(Cr)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは800ppm未満、より好ましくは500ppm未満のニッケル(Ni)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量;及び/又は
- 1000ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満のビスマス(Bi)含有量
を示し得る。
【0081】
加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩がビス(フルオロスルホニル)イミドナトリウムでない場合、それは、
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のナトリウム(Na)含有量
を示し得る。
【0082】
加えて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩がビス(フルオロスルホニル)イミドカリウムでない場合、それは、
- 10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、より好ましくは500ppm未満のカリウム(K)含有量
を示し得る。
【0083】
その非常に高い純度のため、本発明による方法によって得られる、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムは、バッテリーのための電解質組成物において有利に使用され得る。
【0084】
先行技術の方法に反して、本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を製造する方法は、ハロゲン化アルコール中で結晶化された、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩、より好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドの第四級アンモニウム塩、更により好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩から出発する。いかなる理論にも制約されることなく、本発明者らは、この方法が、要求の厳しい最終精製工程を実施する必要なしに、非常に高い純度の最終生成物を得るのに有利であると考えている。結果として、本発明によるプロセスは、全体としてより効率的であり、且つ費用がかからない一方、最終生成物は、最高品質のものである。
【0085】
一般的に言えば、溶媒、試薬等を含めて、本発明による方法において使用される全ての原料は、好ましくは、非常に高い純度基準を示し得る。好ましくは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Cr、Ni、Znなどの金属成分のそれらの含有量は、10ppm未満、より好ましくは2ppm未満である。
【0086】
加えて、本発明による方法の工程のいくつか又は全ての工程は、有利には、反応媒体の腐食に耐えることができる装置中で実施される。この目的のために、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売される、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンに基づく合金又は名称Inconel(登録商標)若しくはMonel(商標)で販売される、銅及び/若しくはモリブデンが添加されているニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より特にHastelloy C276又はInconel 600、625若しくは718合金などの耐腐食性である材料は、反応媒体と接触する部品のために選択される。オーステナイト鋼、より特に304、304L、316又は316Lステンレス鋼などのステンレス鋼も選択され得る。最大22重量%、好ましくは6%~20%、より優先的には8%~14%のニッケル含有量を有する鋼が使用される。304及び304L鋼は、8%~12%で変動するニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は、10%~14%で変動するニッケル含有量を有する。より特に、316L鋼が選択される。反応媒体の腐食に対して耐性がある高分子化合物からなるか、又はそれでコーティングされた装置も使用され得る。特に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン又はテフロン)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)などの材料が挙げられ得る。ガラス装置も使用され得る。均等な材料を使用することは、本発明の範囲外ではないであろう。反応媒体と接触するのに好適であり得る他の材料として、黒鉛誘導体も挙げられ得る。濾過のための材料は、使用される媒体に適合していなければならない。フッ素化ポリマー(PTFE、PFA)、ロードされたフッ素化ポリマー(Viton(商標))並びにポリエステル(PET)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、綿及び他の適合性材料を使用することができる。濾過膜のために使用され得る材料に関して、セルロース、PE/PP、ポリウレタン並びにPTFE及びPFAのようなフッ素化材料が挙げられ得る。
【0087】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0088】
本発明は、ここで、実例として与えられ、且つ決して本明細書又は特許請求の範囲を限定することを意図しない実施例において更に説明される。
【実施例】
【0089】
実施例1:NH4FSIの合成
このプロセスは、撹拌手段、熱調節のためのダブルジャケット、冷却器、圧力調整器手段及び液体又はガス添加手段付きのN2下の500mLのHastelloy反応器中で実施した。室温で200gのエチルメチルカーボネートを導入し、36gの無水NH4Fを懸濁させた。50gの融解CSIHを1時間中に徐々に添加し、混合物を15時間中に撹拌下において65℃で加熱した。それを室温に冷却し、12gのNH3(水性)(アンモニア水)を添加した。得られた混合物を1時間にわたり室温で撹拌し、次いで濾過した。濾液を乾固まで減圧下で濃縮して40gのNH4FSIを白色固体として得た。
【0090】
実施例2:LiFSIの合成 - 比較例
40gの実施例1に従って得られた固体NH4FSIを400gのエチルメチルカーボネートに可溶化した。LiOH・H2Oの9.2gの25重量%水溶液を添加した。得られた二相混合物を室温で1時間にわたって撹拌し、次いでデカンテーションした。有機相を回収し、減圧(5mbar)下で20℃においてロータリーエバポレーターによって濃縮した。エチルメチルカーボネート中の30重量%でのLiFSIの濃縮液が得られる。
【0091】
図1は、実施例2において得られたEMC中の30重量%でのLiFSIの溶液を5回循環させることによって得られたサイクリックボルタンメトリー図を示す。
【0092】
サイクリックボルタンメトリー(CV)は、3電極セル及びVSP(BioLogic)を用いて実施した;CVテストは、1mV.s-1の走査速度でLi/Li+に対して0~3.0Vで行った。第1CVサイクルは、還元走査でOCVからスタートする。全部で5つのCVサイクルを記録した。
【0093】
実施例3:本発明によるLiFSIの合成
実施例1に従って得られた40gの固体NH4FSIを60℃で1時間にわたり60gのTFEに溶解させ、次いで結果として生じた溶液を3時間にわたり0℃に冷却した。結晶化NH4FSIを濾別し、冷TFEで洗浄し、真空下で乾燥させて33gのNH4FSI結晶を得た。
【0094】
33gのNH4FSI結晶を300gのエチルメチルカーボネートに可溶化した。LiOH・H2Oの7.6gの25重量%水溶液を添加した。得られた二相混合物を室温で1時間にわたって撹拌し、次いでデカンテーションした。有機相を回収し、減圧(5mbar)下で20℃においてロータリーエバポレーターによって濃縮した。エチルメチルカーボネート中の30重量%でのLiFSIの濃縮液が得られる。
【0095】
図2は、実施例3において得られたEMC中の30重量%でのLiFSIの溶液を5回循環させることによって得られたサイクリックボルタンメトリー図を示す。CVテストの条件は、実施例2の条件と同一であった。
【0096】
図1と
図2とを比較することにより、実施例3(本発明による)の組成物で記録された電流範囲(約7mA/cm
2)が、実施例2(比較)の組成物で記録された電流範囲(約4mA/cm
2)よりも著しく大きいことを見ることができる。更に、実施例3(本発明による)の組成物で電流は、第1サイクルから第5サイクルまでむしろ安定したままである一方、サイクリング曲線は、実施例2(比較)の組成物で変化した。加えて、電流は、
図1(比較)のサイクリックボルタンメトリー図上で0.5V後にいくらかのショルダーを示す一方、このショルダーは、
図2(発明)の図に存在しないことが認識され得る。
【0097】
これらのデータは、本発明によるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩が、比較塩よりも、バッテリーのための電解質組成物において使用されるのにより好適であることを示す。
【0098】
実施例4:NH4FSIの合成
このプロセスは、撹拌手段、熱調節のためのダブルジャケット、冷却器、圧力調整器手段及び液体又はガス添加手段付きのN2下の500mLのHastelloy反応器中で実施した。室温で200gの酢酸ブチルを導入し、44gの無水NH4Fを懸濁させた。60gの融解CSIHを1時間中に徐々に添加し、混合物を15時間中に撹拌下において65℃で加熱した。それを室温に冷却し、15gのNH3(水性)(アンモニア水)を添加した。得られた混合物を1時間にわたり室温で撹拌し、次いで濾過した。濾液を乾固まで減圧下で濃縮して45gのNH4FSIを白色固体として得た。
【0099】
実施例5:本発明によるLiFSIの合成
実施例4に従って得られた45gの固体NH4FSIを60℃で1時間にわたり60gのTFEに溶解させ、次いで結果として生じた溶液を3時間にわたり0℃に冷却した。結晶化NH4FSIを濾別し、冷TFEで洗浄し、真空下で乾燥させて37gのNH4FSI結晶を得た。
【0100】
37gのNH4FSI結晶を300gのエチルメチルカーボネートに可溶化した。LiOH・H2Oの8.5gの25重量%水溶液を添加した。得られた二相混合物を室温で1時間にわたって撹拌し、次いでデカンテーションした。有機相を回収し、減圧(5mbar)下で20℃においてロータリーエバポレーターによって濃縮した。エチルメチルカーボネート中の30重量%でのLiFSIの濃縮液が得られる。
【0101】
実施例6:未加工のN(CH3)4FSIの合成
このプロセスは、撹拌手段、熱調節のためのダブルジャケット、冷却器、圧力調整器手段及び液体又はガス添加手段付きのN2下の500mLのHastelloy反応器中で実施した。室温で300gの酢酸ブチルを導入し、110gの無水N(CH3)4Fを懸濁させた。60gの融解CSIHを1時間中に徐々に添加し、混合物を15時間中に撹拌下において65℃で加熱した。それを室温に冷却し、15gのNH3(水性)(アンモニア水)を添加した。得られた混合物を1時間にわたり室温で撹拌し、次いで濾過した。濾液を乾固まで減圧下で濃縮して42gのN(CH3)4FSIを白色固体として得た。
【0102】
実施例7:本発明によるN(CH3)4FSIの調製
実施例6に従って得られた42gの固体N(CH3)4FSIを、58℃で1時間にわたり160gのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させ、3時間にわたり-15℃に冷却した。結晶化N(CH3)4FSIを濾別し、冷HFIPで洗浄し、真空下で乾燥させて33gのN(CH3)4FSI結晶を得た。
【0103】
実施例8:NH4FSIの合成
このプロセスは、撹拌手段、熱調節のためのダブルジャケット、冷却器、圧力調整器手段及び液体又はガス添加手段付きのN2下の500mLのHastelloy反応器中で実施した。室温で200gのジメチルカーボネートを導入し、44gの無水NH4Fを懸濁させた。60gの融解CSIHを1時間中に徐々に添加し、混合物を15時間中に撹拌下において65℃で加熱した。それを室温に冷却し、15gのNH3(水性)(アンモニア水)を添加した。得られた混合物を1時間にわたり室温で撹拌し、次いで濾過した。濾液を乾固まで減圧下で濃縮して42gのNH4FSIを白色固体として得た。
【0104】
実施例9:本発明によるKFSIの合成
42gの実施例8に従って得られた固体NH4FSIを60℃で1時間にわたり60gのTFEに溶解させ、次いで結果として生じた溶液を3時間にわたり0℃に冷却した。結晶化NH4FSIを濾別し、冷TFEで洗浄し、真空下で乾燥させて35gのNH4FSI結晶を得た。
【0105】
35gのNH4FSI結晶を300gのジメチルカーボネートに可溶化した。LiOH・H2Oの8.0gの25重量%水溶液を添加した。得られた二相混合物を室温で1時間にわたって撹拌し、次いでデカンテーションした。有機相を回収し、減圧(5mbar)下で20℃においてロータリーエバポレーターによって濃縮した。ジメチルカーボネート中の30重量%でのLiFSIの濃縮液が得られる。
【国際調査報告】