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▶ ハチソン メディファルマ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】化合物の塩及びその結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20221208BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522343
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2020120594
(87)【国際公開番号】W WO2021073494
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】201910973785.3
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519410714
【氏名又は名称】ハチソン メディファルマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】リー ウェンチー
(72)【発明者】
【氏名】フォン リン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC34
4C063DD29
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は化合物の塩及びその結晶形態に関連する。より具体的には、本発明は医薬分野に属し、化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの医薬として許容される塩及びその結晶形態、それを含む医薬組成物、並びにそれらの製造方法及びそれらの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aで表される塩:
【化1】
[式中、nは0.5または1であり、およびMは医薬として許容される酸である]。
【請求項2】
Mが塩酸、酒石酸、又はp-トルエンスルホン酸である、請求項1に記載の式Aで表される塩。
【請求項3】
nが1であり、およびMが塩酸であり;nが0.5であり、およびMが酒石酸であり;又はnが1であり、およびMがパラトルエンスルホン酸である、請求項2に記載の式Aで表される塩。
【請求項4】
nが1であり、およびMが塩酸であり、そして前記塩が5.8±0.2°、6.2±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、23.1±0.2°、および24.1±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態A-IIIであり;
好ましくは、前記形態A-IIIが、5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、16.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、および26.4±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態A-IIIが、5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、20.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、および 27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態A-IIIが、5.8±0.2°、6.2±0.2°、7.9±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、16.8±0.2°、17.4±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.2±0.2°、21.0±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、24.8±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、および27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態A-IIIが、図1で示されたX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載の式Aで表される塩。
【請求項5】
前記形態A-IIIが、約290.2~295.4°Cに吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項4に記載の式Aで表される塩。
【請求項6】
nが0.5であり、およびMが酒石酸であり、そして前記塩が7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、18.0±0.2°、および20.6±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態B-IIであり;
好ましくは、前記形態B-IIが、3.8±0.2°、7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.7±0.2°、および23.0±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態B-IIが、3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.7±0.2°、23.0±0.2°、25.1±0.2°、および27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態B-IIが、3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、11.8±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.1±0.2°、21.7±0.2°、23.0±0.2°、25.1±0.2°、および 27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態B-IIが、図4で示されたX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載の式Aで表される塩。
【請求項7】
前記形態B-IIが、約54.8~92.2°C、166.9~174.4°C、および263.3~265.3°Cに吸熱ピーク、および約194.2~202.7°Cに発熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項6に記載の式Aで表される塩。
【請求項8】
前記形態B-IIが、図6で示された熱重量分析(TGA)曲線を有し、30°C~100°Cの範囲で約4.3%の重量減少を示す、請求項6又は7のいずれか一項に記載の式Aで表される塩。
【請求項9】
nが0.5であり、およびMが酒石酸であり、そして前記塩が13.1±0.2°、14.6±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、および26.3±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態B-IIIであり;
好ましくは、前記形態B-IIIが、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、および26.3±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態B-IIIが、7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、および26.3±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態B-IIIが、7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、17.2±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、19.6±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、24.6±0.2°、26.3±0.2°、27.6±0.2°、および29.2±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態B-IIIが、図7で示されたX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載の式Aで表される塩。
【請求項10】
前記形態B-IIIが、約269.2~271.3°Cに吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項9に記載の式Aで表される塩。
【請求項11】
前記形態B-IIIが、図9で示された熱重量分析(TGA)曲線を有する、請求項9又は10のいずれか一項に記載の式Aで表される塩。
【請求項12】
nが1であり、およびMがp-トルエンスルホン酸であり、そして前記塩が7.8±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、および24.0±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態C-Iであり;
好ましくは、前記形態C-Iが、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、22.2±0.2°、24.0±0.2°、および26.1±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態C-Iが、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、24.0±0.2°、26.1±0.2°、および27.4±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態C-Iが、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、12.2±0.2°、12.9±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、25.0±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、および32.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態C-Iが、図12で示されたX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載の式Aで表される塩。
【請求項13】
前記形態C-Iが、約289.77~291.04°Cに吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項12に記載の式Aで表される塩。
【請求項14】
前記形態C-Iが、図14で示されたような熱重量分析(TGA)曲線を有する、請求項12又は13のいずれか一項に記載の式Aで表される塩。
【請求項15】
有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の式Aで表される塩、および任意に医薬として許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
FGFR活性の阻害に応答する疾患を予防、又は治療する方法であり、予防又は治療を必要とする対象に、有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の式Aで表される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌を予防、又は治療するための医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の式Aで表される塩の使用。
【請求項18】
前記癌が、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)から選択される、請求項17に記載される使用。
【請求項19】
治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の式Aで表される塩。
【請求項20】
FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌の治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の式Aで表される塩。
【請求項21】
前記癌が、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)から選択される、請求項20に記載の式Aで表される塩。
【請求項22】
請求項4~5のいずれか一項に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、塩酸とを、溶解溶媒中、又は水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態A-IIIとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記塩酸が濃度36~38重量%の濃塩酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記塩酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上であり、例えば、約1:1、又は1.2:1である、請求項22又は23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する前記溶解溶媒又は前記混合溶媒の体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約20ml/g又は約60ml/gである、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記溶解溶媒がC1-6アルカノールから選択され;好ましくは、前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記溶解溶媒がエタノールである、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記水混和性有機溶媒がC1-6アルカノールから選択され;好ましくは、前記水混和性有機溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記水混和性有機溶媒がエタノール、i-プロパノール、およびそれらの混合物から選択される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下であり;好ましくは、前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が、95%、90%、又は80%である、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記任意の工程(4)において、前記乾燥温度が50~80°Cである、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項6~8のいずれか一項に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、L-酒石酸とを、加熱および攪拌下でエタノール中で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態B-IIとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【請求項31】
前記L-酒石酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:2以上であり、好ましくは、約4:5、又は約3.4:1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する前記エタノールの体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約72ml/g又は約75ml/gである、請求項30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記任意の工程(4)において、乾燥温度が50~85°Cである、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項9~11のいずれか一項に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドとL-酒石酸とを、溶解溶媒中、水中、又は水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させ、それにより、第1溶液を得る工程、ただし、前記溶解溶媒はエタノールの単一溶媒ではない;
(2)場合により、前記第1溶液に溶解防止溶媒を添加し、第2溶液を得る工程;
(3)前記第1溶液又は第2溶液を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(4)析出した固体を形態B-IIIとして単離する工程;
(5)場合により工程(4)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【請求項35】
前記L-酒石酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上であり、好ましくは、モル比が約1:1、又は約1.5:1である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する前記溶解溶媒、前記水、又は水混和性有機溶媒および水からなる前記混合溶媒の体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約20ml/g、約30ml/g、約33ml/g、約50ml/g、約65ml/g、約98ml/g、または約286ml/gである、請求項34又は35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記溶解溶媒がC1-6アルカノール、アセトン、トルエン、炭素数8以下の有機酸エステル、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、アセトン、トルエン、n-酢酸プロピル、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、アセトン、トルエン、n-酢酸プロピル、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、トルエン、n-酢酸プロピル、および酢酸エチルのうちの2つの溶媒、例えば、n-酢酸プロピル/メタノール(体積比約3:2)、トルエン/エタノール(体積比約1:1)、または酢酸エチル/エタノール(体積比約11:15) からなる混合溶媒から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記水混和性有機溶媒がC1-6アルカノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記水混和性有機溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記水混和性有機溶媒がエタノール、i-プロパノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下、例えば、95%、90%、80%である、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記溶解防止溶媒がトルエン、炭素数8以下の有機酸エステル、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記溶解防止溶媒がトルエン、酢酸エチル、n-酢酸プロピル、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記溶解防止溶媒がトルエン、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記工程(3)において、前記冷却が、自然に冷却されるか、または制御された温度で冷却される、請求項34~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
工程(5)において、前記乾燥温度が50~85°Cである、請求項34~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項12~14のいずれか一項に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、p-トルエンスルホン酸一水和物とを、加熱および攪拌下で水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態C-Iとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【請求項45】
前記p-トルエンスルホン酸一水和物対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上であり、例えば、約1.5:1である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
工程(1)における前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する水混和性有機溶媒および水からなる前記混合溶媒の体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約36ml/g又は約43ml/gである、請求項44又は45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記水混和性有機溶媒がC1-6アルカノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記水混和性有機溶媒がi-プロパノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下であり、例えば80%である、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
工程(1)の反応完了後、工程(2)の前に溶解防止溶媒(例えばi-プロパノール)を添加する、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
工程(2)において、前記冷却が、自然に冷却されるか、または制御された温度で冷却される、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記任意の工程(4)において、前記乾燥温度が50~60°Cである、請求項44~50のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
【0002】
本出願は2019年10月14日に出願された中国特許出願番号201910973785.3に基づく優先権を主張しており、その全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、医薬分野に属し、化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの医薬として許容される塩及びその結晶形態、それらを含む医薬組成物、ならびにそれらを製造する方法及びそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
線維芽細胞増殖因子(FGF)は多くの生理学的過程において重要な伝達物質として認識されている。受容体型チロシンキナーゼの線維芽細胞増殖因子受容体ファミリーは4つのメンバー(FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4)からなる。線維芽細胞増殖因子(FGF)、およびそれらの受容体(FGFR)は細胞増殖、細胞分化、細胞遊走、細胞生存、タンパク質合成、および血管新生に重要な役割を果たす。FGFシグナル伝達とがんを直接結びつける多くの証拠が存在する。FGFRシグナル伝達の調節不全は、扁平上皮非小細胞肺癌(扁平上皮NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、および膀胱癌を含む多くの癌に関与している。例えば、FGFR1増幅は22%の扁平上皮NSCLCで見出され、FGFR2増幅は最大10%の胃癌で報告されており、そしてFGFR3変異は約50~60%の非筋肉浸潤性膀胱癌および17%の高悪性度膀胱癌で見出されている。従って、FGFR活性の阻害は、癌などの増殖性疾患の治療に有用である。
【0005】
PCT特許出願WO2014/139465A1は、初めて化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(すなわち、WO2014/139465A1中の化合物78)ならびにその製造法を開示した。化合物の構造は以下のように示される:
【0006】
【化1】
【0007】
研究により、化合物4-クロロ-3-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドがFGFR活性を効果的に阻害できることが示された。従って、FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌の予防・治療に有用である。
【0008】
多くの化合物は、様々な結晶形態またはアモルファス形態で存在し得る。しかしながら、与えられた化合物において、(1)化合物が多形を呈するかどうか、(2)そのような未知の結晶形態をどのように調製するか、および(3)そのような未知の結晶形態の特性、例えば、安定性、溶解性、流動性、薬物動態パラメータ、およびインビボバイオアベイラベリティが結晶形態によってどのように変化するかは、非常に予測不可能である。J. Bernstein "Polymorphism in Molecular Crystals", Oxford University Press, (2002) を参照されたい。
【0009】
化合物の塩を形成することは、化合物それ自体の生物学的活性を変化させることはないが、化合物の物理化学的性質を変化させ得る。与えられた化合物において、その化合物のどの塩が遊離化合物よりも優れた物理化学的特性を有するかは非常に予測不可能である。結晶形成および結晶特性の予測不可能性を考慮すると、どの塩が良好な特性を有する結晶形態を形成できるかをさらに予測することはより不可能である。
【0010】
固体物質の特性は化合物自体、および固体の微細構造に依存するので、化合物の異なる固体形態は、異なる物理化学的特性ならびに異なる生物薬剤的特性を示すことが多い。物理化学的特性および生物薬剤的特性の違いは、様々な技術手段によって決定することができ、最終的にはそれらの異なる固体形態を互いに識別するために使用されることもある。例えば、溶解性、安定性などの物理的特性、およびCmax、Tmax、バイオアベイラベリティなどの生物薬剤的特性の違いは、化合物の固体状態を記述する際にもまた重要である。
【0011】
したがって、化合物4-クロロ-3-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの開発において、その化合物の塩及びその結晶形態の研究は必要である。
【発明の概要】
【0012】
詳細な探索および研究の結果、本発明者らは、化合物4-クロロ-3-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(本発明の文脈では「化合物78」とも呼ばれる)を式Aで表される種々の医薬として許容される塩に調製することができることを見出した。遊離形態における化合物78に比べて、式Aの塩(例えば、ヘミ酒石酸塩)は溶解性が有意に増大し、化合物78の薬物動態特性及びインビボバイオアベイラベリティを改善させるのに有益である。本発明者らはまた、式Aで表される塩が異なる結晶形態で存在し得、ある特定の溶媒と溶媒和物を形成し得ることを見出した。本発明者らは、式Aの塩の多形について詳細に研究し、最終的に医薬用途の要件を満たす結晶形態を調製および決定した。これらの研究をもとに、本発明は式Aで表される化合物78の医薬として許容される塩、およびそれらの様々な結晶形態、例えば、形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-Iを提供する。
【0013】
一つの態様では、本発明は式Aによって表される4-クロロ-3-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの医薬として許容される塩を提供する:
【化2】
[式中、nは0.5または1であり、およびMは医薬として許容される酸である] 。
【0014】
一実施形態において、本発明は、Mが塩酸、酒石酸、またはp-トルエンスルホン酸である、式Aで表される塩を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、nが1およびMが塩酸であり(化合物78のモノ塩酸塩とも呼ばれる)、nが0.5およびMが酒石酸であり(化合物78のヘミ酒石酸塩とも呼ばれる)、又はnが1およびMがp-トルエンスルホン酸である(化合物78のモノp-トシル酸塩とも呼ばれる)、式Aで表される塩を提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、nが1およびMが塩酸である式Aで表される塩を提供し、当該塩は形態A-IIIである(化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIとも呼ばれ、簡潔に形態A-IIIと呼ばれる)。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、nが0.5およびMが酒石酸である式Aで表される塩を提供し、当該塩は形態B-IIである(化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIとも呼ばれ、簡単には形態B-IIと呼ばれる)。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、nが0.5およびMが酒石酸である式Aで表される塩を提供し、当該塩は形態B-IIIである(化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIとも呼ばれ、簡単には形態B-IIIと呼ばれる)。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、nが1およびMがp-トルエンスルホン酸である式Aで表される塩を提供し、当該塩は形態C-Iである(化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-Iとも呼ばれ、簡単には形態C-Iと呼ばれる)。
【0020】
別の態様では、本発明は式Aで表される塩及びその結晶形態(例えば形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-I)を調製する方法を提供し、前記方法は再現性があり、操作が容易である。
【0021】
別の態様では、本発明は、有効量の式Aで表される塩及びその結晶形態(例えば形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-I)、並びに必要に応じて医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌を予防又は治療する方法であって、前記方法は予防又は治療を必要とする対象に有効量の式Aで表される塩及びその結晶形態(例えば形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-I)を投与することを含む方法をさらに提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌を治療するための医薬の製造における式Aで表される塩及びその結晶形態(例えば形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-I)の使用をさらに提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、治療に使用するための式Aで表される塩及びその結晶形態(例えば形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-I)を提供する。
【0025】
一実施形態において、本発明は、FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌の治療において使用するための式Aで表される塩及びその結晶形態(例えば形態A-III、形態B-II、形態B-III、形態C-I)を提供する。
【0026】
前記癌には、限定されないが、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図2図2は、化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は熱流(mW)をプロットする。
図3図3は、化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIの熱重量(TG)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は重量パーセント(%)をプロットする。
図4図4は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図5図5は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は熱流(mW)をプロットする。
図6図6は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIの熱重量(TG)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は重量パーセント(%)をプロットする。
図7図7は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図8図8は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は熱流(mW)をプロットする。
図9図9は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの熱重量(TG)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は重量パーセント(%)をプロットする。
図10図10は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの動的蒸気吸着(DVS)等温線プロットを示し、ここで、水平軸(X軸)は相対湿度(%)をプロットし、垂直軸(Y軸)は重量変化率(%)をプロットする。
図11図11は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIの動的蒸気吸着(DVS)等温線プロットを示し、ここで、水平軸(X軸)は相対湿度(%)をプロットし、垂直軸(Y軸)は重量変化率(%)をプロットする。
図12図12は、化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-IのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図13図13は、化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-Iの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は熱流(mW)をプロットする。
図14図14は、化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-Iの熱重量(TG)曲線を示し、ここで、水平軸(X軸)は温度(°C)をプロットし、垂直軸(Y軸)は重量パーセント(%)をプロットする。
図15図15は、高湿条件下(25°C、相対湿度92.5%±5%)に5日間置いた後の化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図16図16は、高湿条件下(25°C、相対湿度92.5%±5%)に10日間置いた後の化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図17図17は、高湿条件下(25°C、相対湿度92.5%±5%)に3日間置いた後の化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図18図18は、水中で2日間スラリー化された後の化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図19図19は、水中で4日間スラリー化された後の化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図20図20は、水中で2日間スラリー化された後の化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図21図21は、水中で4日間スラリー化された後の化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIのX線粉末回折パターンを示し、ここで、水平軸(X軸)は回折角2θをプロットし、垂直軸(Y軸)は回折強度をプロットする。
図22図22は、WO2014/139465A1の実施例9に従って調製された化合物78の遊離形態の顕微鏡写真を示し、それが針状結晶であることを示す。
図23図23は、化合物78のヘミ酒石酸の形態B-IIIの顕微鏡写真を示し、それが平板結晶であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
別段の指示がない限り、本出願(本明細書および請求項を含む)で使用される以下の用語は、以下に示される意味を有する。本明細書および請求項中の単数形は、明確に別段の指示がない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。
【0029】
本明細書で使用される「本発明の塩(単数又は複数)」、「4-クロロ-3-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの医薬として許容される塩(単数又は複数)」、「4-クロロ-3-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの塩(単数又は複数)」、「化合物78の塩(単数又は複数)」、および「式Aの塩(単数又は複数)」という用語は互換的に使用することができ、全て、本明細書に記載される式Aの塩、すなわち、化合物78および本明細書に記載される「医薬として許容される酸」によって形成される酸付加塩を指す。
【0030】
本明細書で使用される「本発明の結晶形態」という用語は、化合物78のモノ塩酸塩の形態A-III、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-II、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-III、又は化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-I、並びにそれらの任意の比率の混合物を指す。
【0031】
本明細書で使用される「形態」、「結晶形態(crystal form)」、「結晶形態(crystalline form)」、および「多形」という用語は、互換的に使用することができる。
【0032】
本明細書で使用される「医薬として許容される酸」という用語は、化合物78の酸付加塩を形成することができ、そして動物またはヒトへの適用に望ましくない特性を有さない酸を指し、限定されないが、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜リン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸等;並びに有機酸、例えばリンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、2-ヒドロキシ-2-フェニルプロピオン酸、グルコン酸、乳酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸、エチルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、β-ヒドロキシ酪酸、安息香酸、サリチル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ステアリン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(式中nは0~4)等を含む。
【0033】
本明細書で使用される「炭素数8以下の有機酸エステル」という用語は、R1COOR2であって、R1およびR2は、独立した飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基であり、R1およびR2の炭素原子の総数は7以下であり;
好ましくは、R1およびR2は、独立した飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基であり、R1およびR2の炭素原子の総数は1、2、3、4、5、6、又は7である。
炭素数8以下の有機酸エステルの例としては、限定されないが、酢酸メチル、酢酸エチル、n-酢酸プロピルが挙げられる。
【0034】
本明細書で「約」という用語が数値とともに使用される場合、その所定の数値を10%の分散で表示値の上または下に加減する。例えば、約50%は、45%~55%の範囲を意味する。
【0035】
本明細書で使用される「実質的に純粋」という用語は、前記形態の純度が、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%であることを意味する。例えば、前記形態の純度は、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、又は100重量%である。
【0036】
本明細書で使用される「他の形態を実質的に含まない」という用語は、前記他の形態の含有量が、前記形態の総重量に基づいて、50重量%未満、好ましくは40重量%未満、好ましくは30重量%未満、好ましくは20重量%未満、好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは1重量%未満であることを意味する。
【0037】
本明細書で使用される「溶液」という用語は、1つ以上の溶媒中における1つ以上の溶質の均一相混合物を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「溶解溶媒」という用語は、物質を適切な条件下で完全に又は部分的に溶解させることができる有機溶媒を指す。本明細書で使用される「溶解防止溶媒」という用語は、前記物質の溶解度が溶解溶媒中よりも低い任意の適切な有機溶媒を指す。
【0039】
本明細書で使用される「水混和性有機溶媒」という用語は、任意の割合で水と混和させることができる有機溶媒を指す。例としては、限定されないが、C1-6アルカノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される「C1-6アルカノール」という用語は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する、完全飽和の直鎖又は分枝鎖アルキルアルコールを指す。例としては、限定されないが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール等が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、インビトロでFGFR活性を阻害するのに有効である、又は対象に投与した後にFGFR活性の阻害に応答する疾患を予防又は治療するのに有効である本発明の塩、又は本発明の結晶形態の量を指す。本発明の塩、又は本発明の結晶形態の有効量は、使用される特定の塩の種類、治療される疾患及びその重症度、対象の年齢及び健康状態、投与経路及び形態、主治医又は獣医開業医の判断などの様々な要因によって変化し得る。
【0042】
本明細書で使用される「FGFR活性の阻害に応答する疾患」という用語は、FGFR活性を阻害することにより予防又は治療され得る疾患、例えば、限定されないが、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)を含む癌を指す。
【0043】
本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物とは、哺乳動物クラスの任意のメンバーを含み、例えば非限定的にヒト;チンパンジー及び他の類人猿及びサル種のような非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタのような家畜(farm animal);ウサギ、犬、及び猫のような家畜(domestic animal);ラット、マウス、及びモルモットのようなげっ歯類を含む実験動物などが挙げられる。非哺乳動物の例としては、限定されないが、鳥類などが挙げられる。「対象」という用語は、特定の年齢や性別を意味するものではない。
【0044】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、望ましくない生理的変化または生理的障害、例えば、がんの発症又は拡大の軽減を指す。本発明の目的のために、有益な、又は所望の臨床結果としては、限定されないが、症状の寛解、疾患の重症度の軽減、疾患の安定化、および疾患の進行の遅延が含まれる。「治療する」、「治療する」、又は「治療」という用語はまた、治療を受けていない対象と比較してより長い生存を意味する。
【0045】
本明細書で使用される「予防する」、「予防すること」、又は「予防」という用語は、疾患にかかる危険性を有する対象における、疾患の発症を予防又は延期することを指す。
【0046】
実施形態
【0047】
実施形態1. 式Aで表される塩:
【化3】

[式中、nは0.5または1であり、およびMは医薬として許容される酸である]。
【0048】
実施形態2. Mが塩酸、酒石酸、又はp-トルエンスルホン酸である、実施形態1に記載の式Aで表される塩。
【0049】
実施形態3. nが1であり、およびMが塩酸であり;nが0.5であり、およびMが酒石酸であり;又はnが1であり、およびMがp-トルエンスルホン酸である、実施形態2に記載の式Aで表される塩。
【0050】
実施形態4. nが1であり、およびMが塩酸であり、そして前記塩が5.8±0.2°、6.2±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、23.1±0.2°、および24.1±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態A-IIIであり;
好ましくは、前記形態A-IIIが、5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、16.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、および26.4±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態A-IIIが、5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、20.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、および 27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態A-IIIが、5.8±0.2°、6.2±0.2°、7.9±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、16.8±0.2°、17.4±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.2±0.2°、21.0±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、24.8±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、および27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態A-IIIが、図1で示されたX線粉末回折パターンを有する、実施形態3に記載の式Aで表される塩。
【0051】
実施形態5. 前記形態A-IIIが、約290.2~295.4°Cに吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、実施形態4に記載の式Aで表される塩。
【0052】
実施形態6. nが0.5であり、およびMが酒石酸であり、そして前記塩が7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、18.0±0.2°、および20.6±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態B-IIであり;
好ましくは、前記形態B-IIが、3.8±0.2°、7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.7±0.2°、および23.0±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態B-IIが、3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.7±0.2°、23.0±0.2°、25.1±0.2°、および27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態B-IIが、3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、11.8±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.1±0.2°、21.7±0.2°、23.0±0.2°、25.1±0.2°、および 27.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態B-IIが、図4で示されたX線粉末回折パターンを有する、実施形態3に記載の式Aで表される塩。
【0053】
実施形態7. 前記形態B-IIが、約54.8~92.2°C、166.9~174.4°C、および263.3~265.3°Cに吸熱ピーク、および約194.2~202.7°Cに発熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、実施形態6に記載の式Aで表される塩。
【0054】
実施形態8. 前記形態B-IIが、図6で示された熱重量分析(TGA)曲線を有し、30°C~100°Cの範囲で約4.3%の重量減少を示す、実施形態6又は7のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩。
【0055】
実施形態9. nが0.5であり、およびMが酒石酸であり、そして前記塩が13.1±0.2°、14.6±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、および26.3±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態B-IIIであり;
好ましくは、前記形態B-IIIが、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、および26.3±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態B-IIIが、7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、および26.3±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態B-IIIが、7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、17.2±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、19.6±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、24.6±0.2°、26.3±0.2°、27.6±0.2°、および29.2±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態B-IIIが、図7で示されたX線粉末回折パターンを有する、実施形態3に記載の式Aで表される塩。
【0056】
実施形態10. 前記形態B-IIIが、約269.2~271.3°Cに吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、実施形態9に記載の式Aで表される塩。
【0057】
実施形態11. 前記形態B-IIIが、図9で示された熱重量分析(TGA)曲線を有する、実施形態9又は10のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩。
【0058】
実施形態12. nが1であり、およびMがp-トルエンスルホン酸であり、そして前記塩が7.8±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、および24.0±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有する形態C-Iであり;
好ましくは、前記形態C-Iが、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、22.2±0.2°、24.0±0.2°、および26.1±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
より好ましくは、前記形態C-Iが、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、24.0±0.2°、26.1±0.2°、および27.4±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
さらに好ましくは、前記形態C-Iが、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、12.2±0.2°、12.9±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、25.0±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、および32.8±0.2°のX線粉末回折特性回折角(2θ)を有し;
最も好ましくは、前記形態C-Iが、図12で示されたX線粉末回折パターンを有する、実施形態3に記載の式Aで表される塩。
【0059】
実施形態13. 前記形態C-Iが、約289.77~291.04°Cに吸熱ピークを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、実施形態12に記載の式Aで表される塩。
【0060】
実施形態14. 前記形態C-Iが、図14で示されたような熱重量分析(TGA)曲線を有する、実施形態12又は13のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩。
【0061】
実施形態15. 有効量の実施形態1~14のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩、及び任意に医薬として許容される担体を含む、医薬組成物。
【0062】
実施形態16. FGFR活性の阻害に応答する疾患を予防、又は治療する方法であり、予防又は治療を必要とする対象に、有効量の実施形態1~14のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩を投与することを含む、前記方法。
【0063】
実施形態17. FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌を予防、又は治療するための医薬の製造における、実施形態1~14のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩の使用。
【0064】
実施形態18. 前記癌が、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)から選択される、実施形態17に記載される使用。
【0065】
実施形態19. 治療に使用するための、実施形態1~14のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩。
【0066】
実施形態20. FGFR活性の阻害に応答する疾患、例えば癌の治療に使用するための、実施形態1~14のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩。
【0067】
実施形態21. 前記癌が、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)から選択される、実施形態20に記載の式Aで表される塩。
【0068】
実施形態22. 実施形態4~5のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、塩酸とを、溶解溶媒中、又は水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態A-IIIとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【0069】
実施形態23. 前記塩酸が濃度36~38重量%の濃塩酸である、実施形態22に記載の方法。
【0070】
実施形態24. 前記塩酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上であり、例えば、約1:1、又は1.2:1である、実施形態22又は23のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0071】
実施形態25. 前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する前記溶解溶媒又は前記混合溶媒の体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約20ml/g又は約60ml/gである、実施形態22~24のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0072】
実施形態26. 前記溶解溶媒がC1-6アルカノールから選択され;好ましくは、前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記溶解溶媒がエタノールである、実施形態22~25のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0073】
実施形態27. 前記水混和性有機溶媒がC1-6アルカノールから選択され;好ましくは、前記水混和性有機溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記水混和性有機溶媒がエタノール、i-プロパノール、およびそれらの混合物から選択される、実施形態22~26のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0074】
実施形態28. 前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下であり;好ましくは、前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が、95%、90%、又は80%である、実施形態22~27のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0075】
実施形態29. 前記任意の工程(4)において、前記乾燥温度が50~80°Cである、実施形態22~28のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0076】
実施形態30. 実施形態6~8のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、L-酒石酸とを、加熱および攪拌下でエタノール中で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態B-IIとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【0077】
実施形態31. 前記L-酒石酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:2以上であり、好ましくは、約4:5、又は約3.4:1である、実施形態30に記載の方法。
【0078】
実施形態32. 前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する前記エタノールの体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約72ml/g又は約75ml/gである、実施形態30又は31のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0079】
実施形態33. 前記任意の工程(4)において、乾燥温度が50~85°Cである、実施形態30~32のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0080】
実施形態34. 実施形態9~11のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドとL-酒石酸とを、溶解溶媒中、水中、又は水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させ、それにより、第1溶液を得る工程、ただし、前記溶解溶媒はエタノールの単一溶媒ではない;
(2)場合により、前記第1溶液に溶解防止溶媒を添加し、第2溶液を得る工程;
(3)前記第1溶液又は第2溶液を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(4)析出した固体を形態B-IIIとして単離する工程;
(5)場合により工程(4)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【0081】
実施形態35. 前記L-酒石酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上であり、好ましくは、モル比が約1:1、又は約1.5:1である、実施形態34に記載の方法。
【0082】
実施形態36. 前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する前記溶解溶媒、前記水、又は水混和性有機溶媒および水からなる前記混合溶媒の体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約20ml/g、約30ml/g、約33ml/g、約50ml/g、約65ml/g、約98ml/g、または約286ml/gである、実施形態34又は35のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0083】
実施形態37. 前記溶解溶媒がC1-6アルカノール、アセトン、トルエン、炭素数8以下の有機酸エステル、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、アセトン、トルエン、n-酢酸プロピル、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、アセトン、トルエン、n-酢酸プロピル、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、実施形態34~36のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0084】
実施形態38. 前記溶解溶媒がメタノール、エタノール、トルエン、n-酢酸プロピル、および酢酸エチルのうちの2つの溶媒、例えば、n-酢酸プロピル/メタノール(体積比約3:2)、トルエン/エタノール(体積比約1:1)、または酢酸エチル/エタノール(体積比約11:15) からなる混合溶媒から選択される、実施形態37に記載の方法。
【0085】
実施形態39. 前記水混和性有機溶媒がC1-6アルカノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記水混和性有機溶媒がメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記水混和性有機溶媒がエタノール、i-プロパノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、実施形態34~38のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0086】
実施形態40. 前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下、例えば、95%、90%、80%である、実施形態34~39のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0087】
実施形態41. 前記溶解防止溶媒がトルエン、炭素数8以下の有機酸エステル、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記溶解防止溶媒がトルエン、酢酸エチル、n-酢酸プロピル、およびそれらの混合物から選択され;より好ましくは、前記溶解防止溶媒がトルエン、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される、実施形態34~40のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0088】
実施形態42. 前記工程(3)において、前記冷却が、自然に冷却されるか、または制御された温度で冷却される、実施形態34~41のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0089】
実施形態43.工程(5)において、前記乾燥温度が50~85°Cである、実施形態34~42のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0090】
実施形態44. 実施形態12~14のいずれか一実施形態に記載の式Aで表される塩を調製する方法であって、
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、p-トルエンスルホン酸一水和物とを、加熱および攪拌下で水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態C-Iとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程:
を含む、前記方法。
【0091】
実施形態45. 前記p-トルエンスルホン酸一水和物対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上であり、例えば、約1.5:1である、実施形態44に記載の方法。
【0092】
実施形態46. 工程(1)における前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量に対する水混和性有機溶媒および水からなる前記混合溶媒の体積比が、約10ml/g以上であり、例えば、約36ml/g又は約43ml/gである、実施形態44又は45のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0093】
実施形態47. 前記水混和性有機溶媒がC1-6アルカノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択され;好ましくは、前記水混和性有機溶媒がi-プロパノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される、実施形態44~46のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0094】
実施形態48. 前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下であり、例えば80%である、実施形態44~47のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0095】
実施形態49. 工程(1)の反応完了後、工程(2)の前に溶解防止溶媒(例えばi-プロパノール)を添加する、実施形態44~48のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0096】
実施形態50. 工程(2)において、前記冷却が、自然に冷却されるか、または制御された温度で冷却される、実施形態44~49のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0097】
実施形態51. 前記任意の工程(4)において、前記乾燥温度が50~60°Cである、実施形態44~50のいずれか一実施形態に記載の方法。
【0098】
本発明の塩及び本発明の結晶形態は、良好な結晶性、高い溶解度、低い吸湿性、および良好な安定性といった特性を有する。本発明の塩および本発明の結晶形態は、再現性が良好であり、薬物の品質要件を満たす高品質の製品のコンスタントな製造と共にスケールアップすることが容易である。
【0099】
例えば、WO2014/139465A1の実施例9に従って調製された遊離形態の化合物78は針状結晶の黄色固体であるが、本発明の形態B-IIIは平板状結晶であり、針状結晶よりも小さい直径の長さ及び良好な粒状性を有しており、そのため、より小さい安息角、すなわちより良好な流動性を有している。これらの特性により、形態B-IIIは、後の製剤化手順で賦形剤と均一に混合することがより有利になり、製剤工程の簡素化、生産効率の向上、及び生産コストの節約を可能にする。
【0100】
さらに、本発明の塩および本発明の結晶形態は、より良好な溶解特性を有する。例えば、遊離形態の化合物78と比較して、本発明の塩は、異なるpH値におけるより小さな溶解度差を有し、これは、異なるpH値を伴う体液中の本発明の塩の溶解度をより安定にする。加えて、本発明の形態B-IIIは、胃酸条件下で、遊離形態の化合物78および他の塩よりも高い溶解度を有し、胃中での迅速な溶解に有益である。一方、本発明の塩および本発明の結晶形態は、胃腸管の高pH条件下でもなお高く安定した溶解度を有し、十分な吸収に有益であり、それゆえ結果としてより高いバイオアベイラベリティをもたらし、インビボでの薬剤吸収における食物の効果もまた減少させ得る。
【0101】
本発明の形態B-IIIは、低吸湿性、及び良好な安定性を有し、そのため、形態B-IIIが製剤の製造、貯蔵、輸送及び疾患の治療に使用されるのに特に便利である。
【0102】
さらに、本発明の結晶形態は、高純度かつ溶媒残留物が少なく、ICH Q3Aのような原薬の品質要件を満たす。
【0103】
当業者は、様々な国の薬局方に開示されている試験方法またはその改変などの当技術分野で公知の方法に従って、本発明の塩および本発明の結晶形態の上記の利点を検証することができる。例えば、本発明の結晶形態は、X線粉末回折、単結晶回折、フーリエ赤外分光法、示差走査熱量測定、及び/又は熱重量分析によって同定され得る。
【0104】
X線粉末回折パターンにおけるピーク強度及び/又は位置は、異なる実験条件によって変化し得ることが当技術分野で公知である。例えば、測定された2θ値は、異なる機器、異なる試験条件及び/又は好ましい配向のためにわずかに異なることがある。さらに、ピークの相対強度値は、試験試料、例えば、試料中の結晶サイズ、結晶の配向効果、および分析された材料の純度に対し、ピーク位置よりも高い感受性を示すことが知られている。したがって、ピーク強度の偏差は約±20%以上まであってもよい。しかしながら、実験誤差、機器誤差、好ましい配向などにもかかわらず、当業者は、X線粉末回折の主要なピークに基づいて、さらには他の特性評価データと組み合わせて、形態A-III、形態B-II、形態B-III、および形態C-Iを同定するのに十分な情報を得ることができる。
【0105】
形態A-IIIの定義
【0106】
本発明は形態A-IIIを提供する。
【0107】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIはX線粉末回折により同定され得る。いくつかの実施形態において、形態A-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.8±0.2°、6.2±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、23.1±0.2°、および24.1±0.2°を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、16.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、および26.4±0.2°を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、20.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、および 27.8±0.2°を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.8±0.2°、6.2±0.2°、7.9±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、16.8±0.2°、17.4±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.2±0.2°、21.0±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、24.8±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、および27.8±0.2°を含む。
【0111】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.8±0.2°、6.2±0.2°、7.9±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、16.8±0.2°、17.4±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.2±0.2°、21.0±0.2°、21.4±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、24.8±0.2°、25.2±0.2°、26.0±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、27.8±0.2°、29.8±0.2°、31.5±0.2°、及び32.7±0.2°を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIは図1で示されたX線粉末回折パターンを有する。
【0113】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIは、示差走査熱量測定(DSC)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態A-IIIは図2に示されるDSC曲線を有する。DSC曲線において、形態A-IIIの吸熱ピークは約290.2~295.4°Cである。
【0114】
いくつかの実施形態において、形態A-IIIは、熱重量分析(TGA)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態A-IIIは図3に示されるTGA曲線を有し、形態A-IIIは無水または純粋(neat)であることを示す。
【0115】
いくつかの実施形態において、前記形態A-IIIは実質的に純粋(pure)である。
【0116】
いくつかの実施形態において、前記形態A-IIIは他の形態を実質的に含まない。例えば、前記形態A-IIIの重量による含有量は、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%である。
【0117】
形態A-IIIの調製法
【0118】
本発明は、以下を含む、形態A-IIIを調製する方法を提供する:
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、塩酸とを、溶解溶媒中、又は水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態A-IIIとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記塩酸は濃度36~38重量%の濃塩酸である
【0120】
いくつかの実施形態において、前記塩酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比が、約1:1以上である。いくつかの実施形態において、前記モル比は約1:1である。いくつかの実施形態において、前記モル比は1.2:1である。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量(g)に対する前記溶解溶媒又は前記混合溶媒の体積(ml)比が、約10ml/g以上であり、例えば、約20ml/g、約60ml/gなどである。
【0122】
いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はC1-6アルカノールから選択される。いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はエタノールから選択される。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はC1-6アルカノールから選択される。いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はエタノール、i-プロパノール、およびそれらの混合物から選択される。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下であり、例えば、前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が、95%、90%、80%などである。
【0125】
いくつかの実施形態において、前記工程(1)において、加熱温度は前記溶媒系の沸点以下、例えば、75~80°C、75~85°Cなどであるべきである。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、前記冷却は自然に、又は制御された温度で冷却され、そして室温又は室温以下の温度、例えば20~25°C、15~25°Cなどで冷却される。
【0127】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、冷却後に、前記反応物を1~120時間、例えば2時間、20時間などで攪拌し、十分に固体を析出させる。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記工程(4)において、乾燥温度及び乾燥時間は、当業者により慣用的に決定されてもよく、その結果、固体は十分に乾燥し所望の結晶形態が維持される。いくつかの実施形態において、前記乾燥温度は50~80°C、例えば60°Cである。いくつかの実施形態において、前記乾燥時間は、1~24時間、例えば、2時間、18時間などである。
【0129】
形態B-IIの定義
【0130】
本発明は形態B-IIを提供する。
【0131】
いくつかの実施形態において、形態B-IIはX線粉末回折により同定され得る。いくつかの実施形態において、形態B-IIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、18.0±0.2°、および20.6±0.2°を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、形態B-IIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は3.8±0.2°、7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.7±0.2°、および23.0±0.2°を含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、形態B-IIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.7±0.2°、23.0±0.2°、25.1±0.2°、および27.8±0.2°を含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、形態B-IIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、11.8±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.6±0.2°、21.1±0.2°、21.7±0.2°、23.0±0.2°、25.1±0.2°、および 27.8±0.2°を含む。
【0135】
いくつかの実施形態において、形態B-IIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、11.8±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、17.6±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.3±0.2°、20.6±0.2°、21.1±0.2°、21.7±0.2°、22.4±0.2°、23.0±0.2°、23.4±0.2°、23.9±0.2°、25.1±0.2°、および 27.8±0.2°を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、形態B-IIは、図4で示されたX線粉末回折パターンを有する。
【0137】
いくつかの実施形態において、形態B-IIは、示差走査熱量測定(DSC)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態B-IIは図5に示されるDSC曲線を有する。DSC曲線において、形態B-IIの吸熱ピークは約54.8~92.2°C、166.9~174.4°C、および263.3~265.3°Cであり、および発熱ピークは約194.2~202.7°Cである。
【0138】
いくつかの実施形態において、形態B-IIは、熱重量分析(TGA)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態B-IIは図6に示されるTGA曲線を有し、30°C~100°Cの範囲で約4.3%の重量減少を示し、形態B-IIが多くの吸着水を含んでいることを示す。図5のDSC曲線と合わせて、図6から、形態B-IIは吸湿性の準安定形態であると識別することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記形態B-IIは実質的に純粋である。
【0140】
いくつかの実施形態において、前記形態B-IIはほかの形態を実質的に含まない。例えば、前記形態B-IIの重量による含有量は、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%である。
【0141】
形態B-IIの調製法
【0142】
本発明は、以下を含む、形態B-IIを調製する方法を提供する:
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、L-酒石酸とを、加熱および攪拌下で、エタノール中で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態B-IIとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程。
【0143】
いくつかの実施形態において、前記L-酒石酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比は、約1:2以上である。いくつかの実施形態において、前記モル比は約4:5である。いくつかの実施形態において、前記モル比は約3.4:1である。
【0144】
いくつかの実施形態において、前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量(g)に対する前記エタノールの体積(ml)比が、約10ml/g(体積/重量比)以上であり、例えば、約72ml/g又は約75ml/gなどである。
【0145】
いくつかの実施形態において、前記工程(1)において、加熱温度は前記溶媒系の沸点以下、例えば、70~75°Cであるべきである。
【0146】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、前記冷却は自然に、又は制御された温度で冷却され、そして室温又は室温以下の温度、例えば20~25°Cで冷却される。
【0147】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、冷却後に、前記反応物を1~120時間、例えば18時間などで攪拌し、十分に固体を析出させる。
【0148】
いくつかの実施形態において、前記工程(4)において、乾燥温度及び乾燥時間は、当業者により慣用的に決定されてもよく、その結果、固体は十分に乾燥し、所望の結晶形態が維持される。いくつかの実施形態において、前記乾燥温度は50~85°C、例えば50°C、65°C、82°Cなどである。いくつかの実施形態において、前記乾燥時間は、1~24時間、例えば、1時間、18時間、19時間などである。
【0149】
形態B-IIIの定義
【0150】
本発明は形態B-IIIを提供する。
【0151】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIはX線粉末回折により同定され得る。いくつかの実施形態において、形態B-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は13.1±0.2°、14.6±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、および26.3±0.2°を含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、および26.3±0.2°を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、および26.3±0.2°を含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、17.2±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、19.6±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.7±0.2°、24.6±0.2°、26.3±0.2°、27.6±0.2°、および29.2±0.2°を含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIのX線粉末回折特性回折角(2θ)は7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、17.2±0.2°、17.9±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、19.6±0.2°、20.8±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.7±0.2°、24.6±0.2°、26.3±0.2°、27.1±0.2°、27.6±0.2°、27.8±0.2°、および29.2±0.2°を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIは、図7で示されたX線粉末回折パターンを有する。
【0157】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIは、示差走査熱量測定(DSC)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態B-IIIは図8に示されるDSC曲線を有する。DSC曲線において、形態B-IIIの吸熱ピークは約269.2~271.3°Cである。
【0158】
いくつかの実施形態において、形態B-IIIは、熱重量分析(TGA)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態B-IIIは図9に示されるTGA曲線を有し、形態B-IIIは無水または純粋であることを示す。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記形態B-IIIは実質的に純粋である。
【0160】
いくつかの実施形態において、前記形態B-IIIは他の形態を実質的に含まない。例えば、前記形態B-IIIの重量による含有量は、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%である。
【0161】
形態B-IIIの調製法
【0162】
本発明は、以下を含む、形態B-IIIを調製する方法を提供する:
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドとL-酒石酸とを、溶解溶媒中、水中、又は水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させ、それにより、第1溶液を得る工程;ただし、前記溶解溶媒はエタノールの単一溶媒ではない(すなわち、他の溶解溶媒であってもよく、エタノールと他の溶解溶媒からなる混合溶媒であってもよい);
(2)場合により、前記第1溶液中に溶解防止溶媒を添加し、第2溶液を得る工程;
(3)前記第1溶液又は第2溶液を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(4)析出した固体を形態B-IIIとして単離する工程;
(5)場合により工程(4)で得られた固体を乾燥させる工程。
【0163】
いくつかの実施形態において、前記L-酒石酸対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比は、約1:1以上である。いくつかの実施形態において、前記モル比は約1:1である。いくつかの実施形態において、前記モル比は約1.5:1である。
【0164】
いくつかの実施形態において、工程(1)において、前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量(g)に対する前記溶解溶媒、前記水、又は水混和性有機溶媒および水からなる前記混合溶媒の体積(ml)比が、約10ml/g(体積/重量比)以上であり、例えば、約20ml/g、約30ml/g、約33ml/g、約50ml/g、約65ml/g、約98ml/g、約286ml/gなどである。
【0165】
いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はC1-6アルカノール、アセトン、トルエン、炭素数8以下の有機酸エステル、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、n-ブタノール、アセトン、トルエン、n-酢酸プロピル、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はメタノール、エタノール、i-プロパノール、アセトン、トルエン、n-酢酸プロピル、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される。
【0166】
いくつかの実施形態において、前記溶解溶媒はメタノール、エタノール、トルエン、n-酢酸プロピル、および酢酸エチルのうちの2つの溶媒、例えば、n-酢酸プロピル/メタノール(体積比約3:2)、トルエン/エタノール(体積比約1:1)、酢酸エチル/エタノール(体積比約11:15)などからなる混合溶媒から選択される
【0167】
いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はC1-6アルカノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はメタノール、エタノール、i-プロパノール、t-ブタノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はエタノール、i-プロパノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される。
【0168】
いくつかの実施形態において、前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合は約95%以下、例えば、95%、90%、80%などである
【0169】
いくつかの実施形態において、前記溶解防止溶媒はトルエン、炭素数8以下の有機酸エステル、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶解防止溶媒はトルエン、酢酸エチル、n-酢酸プロピル、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶解防止溶媒はトルエン、酢酸エチル、およびそれらの混合物から選択される。
【0170】
いくつかの実施形態において、前記工程(1)において、加熱温度は前記溶媒系の沸点以下、例えば、55~60°C、70~72°C、75~85°C、90~95°Cなどであるべきである。
【0171】
いくつかの実施形態において、前記工程(3)において、前記冷却は自然に、又は制御された温度で冷却され、そして室温又は室温以下の温度、例えば20~25°C、25~30°Cなどで冷却される。
【0172】
いくつかの実施形態において、前記工程(3)において、冷却後に、第1溶液又は第2溶液を1~120時間、例えば2時間、16時間、17時間、18時間、20時間などで攪拌し、十分に固体を析出させる。
【0173】
いくつかの実施形態において、前記工程(5)において、乾燥温度及び乾燥時間は、当業者により慣用的に決定されてもよく、その結果、固体は十分に乾燥し、所望の結晶形態が維持される。いくつかの実施形態において、乾燥温度は50~85°C、例えば55°C、60°C、65°Cなどである。いくつかの実施形態において、乾燥時間は、1~24時間、例えば、2時間、3時間、5時間、6時間、16時間などである。
【0174】
形態C-Iの定義
【0175】
本発明は形態C-Iを提供する。
【0176】
いくつかの実施形態において、形態C-IはX線粉末回折により同定され得る。いくつかの実施形態において、形態C-IのX線粉末回折特性回折角(2θ)は7.8±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、および24.0±0.2°を含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、形態C-IのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、22.2±0.2°、24.0±0.2°、および26.1±0.2°を含む。
【0178】
いくつかの実施形態において、形態C-IのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、24.0±0.2°、26.1±0.2°、および27.4±0.2°を含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、形態C-IのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、12.2±0.2°、12.9±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、25.0±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、および32.8±0.2°を含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、形態C-IのX線粉末回折特性回折角(2θ)は5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、12.2±0.2°、12.9±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、22.7±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、24.4±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、28.8±0.2°、32.8±0.2°、及び33.6±0.2°、を含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、形態C-Iは図12で示されたX線粉末回折パターンを有する。
【0182】
いくつかの実施形態において、形態C-Iは、示差走査熱量測定(DSC)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態C-Iは図13に示されるDSC曲線を有する。DSC曲線において、形態C-Iの吸熱ピークは約289.77~291.04°Cである。
【0183】
いくつかの実施形態において、形態C-Iは、熱重量分析(TGA)により特徴づけられ得る。いくつかの実施形態において、形態C-Iは図14に示されるTGA曲線を有し、形態C-Iは無水または純粋(neat)であることを示す。
【0184】
いくつかの実施形態において、前記形態C-Iは実質的に純粋(pure)である。
【0185】
いくつかの実施形態において、前記形態C-Iはほかの形態を実質的に含まない。例えば、前記形態C-Iの重量による含有量は、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%である。
【0186】
形態C-Iの調製法
【0187】
本発明は、以下を含む、形態C-Iを調製する方法を提供する:
(1)化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドと、p-トルエンスルホン酸一水和物とを、水混和性有機溶媒および水からなる混合溶媒中で加熱および攪拌下で混合して反応させ、塩を形成させる工程;
(2)工程(1)で得られた反応物を冷却して、固体を十分に析出させる工程;
(3)析出した固体を形態C-Iとして単離する工程;
(4)場合により工程(3)で得られた固体を乾燥させる工程。
【0188】
いくつかの実施形態において、前記p-トルエンスルホン酸一水和物対前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドのモル比は、約1:1以上である。いくつかの実施形態において、前記モル比は約1.5:1である。
【0189】
いくつかの実施形態において、工程(1)において、前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドの重量(g)に対する水混和性有機溶媒および水からなる前記混合溶媒の体積(ml)比が、約10ml/g(質量/重量比)以上であり、例えば、約36ml/g、約43ml/gなどである。
【0190】
いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒はC1-6アルカノール、アセトン、及びそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態において、前記水混和性有機溶媒は、i-プロパノール、アセトン、およびそれらの混合物から選択される。
【0191】
いくつかの実施形態において、前記混合溶媒中の前記水混和性有機溶媒の体積割合が約95%以下であり、例えば、80%などである。
【0192】
いくつかの実施形態において、前記工程(1)において、加熱温度は前記溶媒系の沸点以下、例えば、55~60°C、75~85°Cなどであるべきである。
【0193】
いくつかの実施形態において、工程(1)の反応完了後、工程(2)の前に少なくとも一つの溶解防止溶媒(例えばi-プロパノール)を加える。
【0194】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、前記冷却は自然に、又は制御された温度で冷却され、そして室温又は室温以下の温度で冷却される。
【0195】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、冷却後に、反応物を1~120時間、例えば15時間などで攪拌し、十分に固体を析出させる。
【0196】
いくつかの実施形態において、前記工程(4)において、乾燥温度及び乾燥時間は、当業者により慣用的に決定されてもよく、その結果、固体は十分に乾燥し、所望の結晶形態が維持される。いくつかの実施形態において、前記乾燥温度は50~60°C、例えば50°Cなどである。いくつかの実施形態において、前記乾燥時間は、1~24時間、例えば、4時間、20時間などである。
【0197】
同一の結晶形態を調製する方法として記載された各実施形態の特徴は、新たな実施形態を製造するために任意に組み合わせることができる。このような任意の組み合わせから得られる新しい実施形態は、そのような任意の組み合わせから得られるこれらの実施形態が、本明細書に具体的かつ個々に列挙されているかのように、本発明の範囲内に含まれる。
【0198】
医薬組成物及び使用
【0199】
本発明の塩及び本発明の結晶形態はインビボ及びインビトロでFGFR活性の阻害に有用である。
【0200】
本発明の塩及び本発明の結晶形態はFGFR活性の阻害に応答する疾患の予防又は治療に有用である。したがって、本発明は、FGFR活性の阻害に応答する疾患を予防又は治療する方法であって、予防又は治療を必要とする対象に本発明の塩及び本発明の結晶形態、並びに場合により1つ以上の他の活性成分を投与することを含む方法を提供する。さらに、本発明はまた、FGFR活性の阻害に応答する疾患を予防又は治療するための医薬の製造における、本発明の塩及び本発明の結晶形態の使用を提供する。FGFR活性の阻害に応答する前記疾患は、例えば癌であり、前記癌には、限定されないが、肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、胃癌、肝臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、尿路上皮癌、食道癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、膵臓癌、副腎癌、神経膠腫、中皮腫、および血液悪性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患)が含まれる。
【0201】
本発明の塩および本発明の結晶形態は、経口、局所(頬側および舌下を含む)、直腸内、膣内、経皮、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、皮内、皮下、くも膜下腔内、硬膜外および鼻腔内投与を含む任意の適切な様式で投与され得る。
【0202】
所望の生理効果を達成するための本発明の塩および本発明の結晶形態の投与量は、多くの要因、例えば、治療される疾患、投与経路及び投与様式、並びに患者の臨床状態に依存し得る。1日の用量は、例えば、0.01mg/日~3g/日、例えば0.05mg/日~2g/日、または100mg/日~1g/日等の範囲であり得る。前記1日の用量は、1回または数回に分けて投与することができる(例えば2~4回に分けた投与)。
【0203】
上述の疾患を予防又は治療するためには、本発明の塩および本発明の結晶形態はそのまま投与されてもよいが、典型的には、医薬として許容される担体と共に製剤化された医薬組成物の形で投与され得る。
【0204】
本発明の医薬組成物は、投与に都合のよい任意の形態、例えば錠剤、粉末、カプセル剤、溶液、分散液、懸濁剤、シロップ剤、スプレー剤、坐剤、ゲル剤、乳剤、及び貼付剤であってもよい。医薬組成物の調製に使用する医薬として許容される担体としては、医薬製剤の分野における慣用的な成分、例えば、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、pH調整剤、香味剤、充填剤、防腐剤、浸透圧調整剤、着色剤、乳化剤、懸濁化剤、及び界面活性剤を用いてもよい。前記医薬として許容される担体は、医薬組成物の他の成分と適合し、被験者の健康に有害な効果を及ぼさないものでなければならない。前記担体は、固体又は液体、もしくは両方であり得る。前記医薬組成物は、本発明の塩および本発明の結晶形態の0.05~95重量%を含有し得る。
【0205】
前記医薬組成物は、本発明の塩又は本発明の結晶形態と、医薬として許容される担体とを混合することにより、製造され得る。各剤形に適した担体は、当業者に公知であり、例えば、以下の文献に詳細に記述されている:
Ansel, Howard C. et al., Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems.フィラデルフィア:リッピンコット、ウィリアムズ&ウィルキンス、2004年;
Gennaro, Alfonso R. et al Remington: The Science and Practice of Pharmacy.フィラデルフィア:リッピンコット、ウィリアムズ&ウィルキンス、2000年;
Rowe, R.C. Handbook of Pharmaceutical Excipients.シカゴ、製薬プレス、2005年。
【0206】
いくつかの実施例において、本発明の結晶形態は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化される場合に他の形態に変換されない。その他の実施例において、本発明の結晶形態は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化される場合に、完全に又は部分的に1つ以上の他の形態に変換され得る。しかしながら、当業者は、必要に応じて結晶形態の安定性を維持するために公知の技術的手段を使用することができる。いくつかの実施例において、本発明の結晶形態は、医薬組成物に製剤化される場合に溶解され得、結果として、もはや医薬組成物中にそれぞれの形態で存在しない。
【0207】
本発明の塩及び本発明の結晶形態は、相加的または相乗的な治療効果を達成するために、又は副作用を軽減するために、一つ以上の他の活性成分と併用して投与してもよい。併用投与する場合、本発明の塩及び本発明の結晶形態、並びに前記一つ以上のその他の活性成分は、同じ又は異なる投与経路を介して、同時にまたは逐次的に投与される別々の剤形に製剤化してもよく、又は同じ単位剤形において同時に投与してもよい。
【0208】
本発明の塩及び本発明の結晶形態と併用して投与され得るその他の活性成分は、抗新生物剤及び/又は抗新生物療法であってもよい。例としては、限定されないが:放射線療法、免疫療法剤、化学療法剤、例えば、DNA損傷化学療法剤及び細胞複製干渉化学療法剤が挙げられる。
【0209】
DNA損傷化学療法剤の非限定的な例としては、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン及びそれらの類似体または代謝産物、ならびにアドリアマイシン);トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、ミトキサントロン、イダルビシン、及びダウノルビシン);アルキル化剤(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキセート、マイトマイシンC、及びシクロホスファミド);DNAインターカレーター(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン);ブレオマイシンなどのDNAインターカレーター及びフリーラジカル発生剤;およびヌクレオシド類似体(例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、アザシチジン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、およびヒドロキシ尿素)が挙げられる。
【0210】
細胞複製干渉化学療法剤の例としては、限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、および関連類似体;ビンクリスチン、ビンブラスチン、及び関連類似体;サリドマイド及び関連類似体(例えば、CC-5013およびCC-4047);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブおよびゲフィチニブ);プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);IκBキナーゼの阻害剤を含むNF-κB阻害剤;癌で過剰発現し、それによって細胞複製を下方制御するタンパク質に結合する抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、およびベバシズマブ);および、癌において上方制御、過剰発現、または活性化されることが知られており、その阻害により細胞複製を下方制御し得る他のタンパク質または酵素の阻害剤が挙げられる。
【実施例
【0211】
以下の実施例は、請求項に規定される範囲を限定することなく、本発明を説明するために使用される。
【0212】
実施例
実施例において使用される前記化合物4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミドは、WO2014/139465A1の実施例9に従って調製され、針状結晶の黄色固体であり、図22で示された顕微鏡写真を有する。
【0213】
本開示で使用される中間体を除く全ての試薬は、市販されている。試薬以外のすべての化合物の名前は、ChemDraw Professional 16.0によって生成された。
【0214】
特に断りのない限り、X線粉末回折パターンは、Germany Bruker D8 ADVANCE X線回折装置(ターゲット:Cu;電圧:40kV;電流:40mA;スキャン速度:4度/分;ステップサイズ:0.02°;スキャン範囲:3°~45°)を用いて得られた。
【0215】
特に断りのない限り、示差走査熱量測定(DSC)は、Germany NETZSCH DSC 204F1(パージガス:窒素;流量:20~60mL・分-1;昇温速度:10°C/分;温度範囲:30°C~300/350°C)で実施した。試料は、酸化アルミニウム製パンで測定した。温度較正にはインジウムを使用した。
【0216】
特に断りのない限り、熱重量測定(TG)分析は、Germany NETZSCH TGA 209F1(パージガス:窒素;昇温速度:10°C/分)を用いて行った。
【0217】
特に断りのない限り、顕微鏡写真はNikon Ci-L顕微鏡を用いて得た。
【0218】
実施例1―形態A-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.51g、1mmol)を、95%エタノール(すなわち、95:5の体積比であるエタノール:水の混合物)10mL中に懸濁し、攪拌下で75~85°Cに加熱した。塩酸(濃度36~38重量%)100μLを前記懸濁液に添加し、透明な溶液を得た。前記溶液を15~25°Cで冷却し、20時間攪拌した。前記固体をろ過し、真空下60°Cで2時間乾燥して、試料を得た。試料中の塩化物イオンの含有量は6.48%と決定し、得られた試料はモノ塩酸塩(理論含有量:6.69%)であったと判定した。
【0219】
1H NMR(400MHz、CD3OD) δ 8.11 (2H、s)、7.48-7.42(2H、m)、7.36(1H、d、J=2.0)、7.29(1H、d、J=2.0)、7.00(2H、dd、J=9.6、2.8)、3.91(3H、s)、3.73(2H、dd、J=13.3、2.4)、3.48(2H、ddd、J=9.9、6.6、3.2)、3.05(2H、t、J=7.5)、2.89(3H、s)、2.82(2H、t、J=7.5)、2.69(2H、dd、J=13.3、11.3)、1.38(6H、d、J=6.6)。
【0220】
得られた前記粉末試料は、形態A-IIIであり、図1に示されるX線粉末回折パターンを有する。前記回折パターンは、5.8±0.2°、6.2±0.2°、7.9±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、15.8±0.2°、16.2±0.2°、16.8±0.2°、17.4±0.2°、18.3±0.2°、18.5±0.2°、19.6±0.2°、20.2±0.2°、21.0±0.2°、21.4±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、24.8±0.2°、25.2±0.2°、26.0±0.2°、26.4±0.2°、27.1±0.2°、27.8±0.2°、29.8±0.2°、31.5±0.2°、及び32.7±0.2°の回折ピーク(2θ)を含み、特徴的なピーク(2θ)は、5.8±0.2°、6.2±0.2°、10.3±0.2°、12.3±0.2°、13.3±0.2°、15.0±0.2°、16.2±0.2°、22.2±0.2°、23.1±0.2°、24.1±0.2°、及び26.4±0.2°である。前記試料のDSC結果は図2に示され、形態A-IIIの吸熱ピークが約290.2~295.4°Cであることを示す。
【0221】
実施例2―形態A-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.51g、1mmol)を、無水エタノール30mL中に懸濁し、攪拌下で75~85°Cに加熱して溶解した。塩酸(濃度36~38重量%)100μLを前記溶液に加え、前記攪拌を75~85°Cで5分間続けた。前記溶液を15~25°Cで冷却し、2時間攪拌した。前記固体をろ過し、真空下60°Cで18時間乾燥して、試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例1で得られた形態A-III試料のパターンと一致した。
【0222】
実施例3―形態A-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(2.04g、4mmol)を、9:1の体積比を有するi-プロパノール:水の混合物40mL中に懸濁し、攪拌下で75~80°Cに加熱した。塩酸(濃度36~38重量%)352μLを前記懸濁液に加えた。得られた混合物を20~25°Cで冷却し、2時間攪拌した。前記固体をろ過し、真空下60°Cで2時間乾燥して、1.6gの試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例1で得られた形態A-III試料のパターンと一致した。
【0223】
実施例4―形態B-IIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(1g、1.96mmol)及び無水エタノール60mLを混合し、70~74°Cで加熱して溶解した。L-酒石酸(0.24g、1.6mmol)をエタノール(12ml)中に溶解した溶液を加え、直ちに前記固体が析出した。前記混合物を70~74°Cで30分間攪拌し;50~55°Cに冷却して1時間攪拌し;20~25°Cに冷却して18時間攪拌した。前記固体をろ過し、真空下60°Cで2時間乾燥し、次に真空下65°Cで16時間乾燥し、次に真空下82°Cで1時間乾燥して1.15gの試料を得た。
【0224】
1H NMR(400MHz、DMSO) δ 9.22(1H、s)、8.48(1H、q、J=4.4)、8.22(2H、s)、7.53(2H、dd、J=9.7、2.7)、7.43(1H、d、J=1.9)、7.40(1H、d、J=1.9)、6.88(2H、dd、J=9.7、2.7)、3.88(3H、s)、3.83(1H、s)、3.53(2H、d、J=9.8)、3.09(2H、d、J=6.6)、2.97(2H、dd、J=9.1、6.5)、2.80-2.70(5H、m、J=14.4、5.7)、2.30(2H、t、J=11.4)、1.12(6H、d、J=6.4)。
【0225】
得られた前記粉末試料は、形態B-IIであり、図4に示されるX線粉末回折パターンを有する。前記回折パターンは、3.8±0.2°、7.5±0.2°、10.1±0.2°、11.3±0.2°、11.8±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、15.7±0.2°、17.6±0.2°、18.0±0.2°、19.8±0.2°、20.3±0.2°、20.6±0.2°、21.1±0.2°、21.7±0.2°、22.4±0.2°、23.0±0.2°、23.4±0.2°、23.9±0.2°、25.1±0.2°、及び27.8±0.2°の回折ピーク(2θ)を含み、特徴的なピーク(2θ)は、7.5±0.2°、11.3±0.2°、13.9±0.2°、15.1±0.2°、18.0±0.2°、及び20.6±0.2°である。前記試料のDSC結果は図5に示され、形態B-IIの吸熱ピークが約54.8~92.2°C、166.9~174.4°C、263.3~265.3°Cであり、発熱ピークが約194.2~202.7°Cであることを示す。
【0226】
実施例5―形態B-IIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(1g、1.96mmol)及び無水エタノール60mLを混合し、70~75°Cで加熱し、高温の間に濾過して少量の不溶性物質を除去した。L-酒石酸(1g、6.66mmol)をエタノール(15ml)中に溶解した溶液を加えた。前記添加の間に、固体が析出した。前記混合物を70~75°Cで1時間攪拌し、24°Cに冷却した。前記固体をろ過し、真空下50°Cで17時間乾燥し、次に真空下82°Cで1時間乾燥して試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例4で得られた形態B-II試料のパターンと一致した。
【0227】
実施例6―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(1g、1.96mmol)及び8:2の体積比を有するi-プロパノール:水の混合物15mLを混合し、70°Cで加熱して溶解させた。L-酒石酸(0.29g、1.93mmol)を8:2の体積比を有するi-プロパノール:水の混合物(5ml)中に溶解した溶液を加え、透明な反応溶液を得た。前記溶液を70~72°Cで10分間攪拌し、固体が析出した。次に、前記混合物を30分間保温し、50~55°Cに冷却して1時間攪拌し、次に、40~45°Cに冷却して1時間攪拌し、次に、20~25°Cに冷却して17時間攪拌した。次に、前記固体をろ過し、真空下60°Cで30分間乾燥し、次に真空下65°Cで16時間乾燥して0.97gの試料を得た。
【0228】
1H NMR(400MHz、DMSO) δ 9.22(1H、s)、8.48(1H、q、J=4.3)、8.22 (2H、s)、7.55-7.50(2H、m)、7.43(1H、d、J=1.9)、7.40(1H、d、J=1.9)、6.88(2H、dd、J=9.7、2.7)、3.88(3H、s)、3.84(1H、s)、3.57-3.48(2H、m)、3.09(2H、dd、J=11.6、4.9)、2.97(2H、dd、J=9.1、6.5)、2.82-2.69(5H、m、J=14.6、5.8)、2.30(2H、t、J=11.4)、1.13(6H、d、J=6.4)。
【0229】
得られた前記粉末試料は、形態B-IIIであり、図7に示されるX線粉末回折パターンを有する。前記回折パターンは、7.6±0.2°、8.9±0.2°、10.0±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、13.1±0.2°、13.4±0.2°、13.7±0.2°、14.6±0.2°、15.9±0.2°、16.5±0.2°、17.2±0.2°、17.9±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、19.6±0.2°、20.8±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.7±0.2°、24.6±0.2°、26.3±0.2°、27.1±0.2°、27.6±0.2°、27.8±0.2°、及び29.2±0.2°の回折ピーク(2θ)を含み、特徴的なピーク(2θ)は、13.1±0.2°、14.6±0.2°、18.3±0.2°、18.9±0.2°、19.4±0.2°、及び26.3±0.2°である。前記試料のDSC結果は図8に示され、形態B-IIIの吸熱ピークが約269.2~271.3°Cであることを示す。
【0230】
顕微鏡検査により、形態B-IIIは平板状の結晶であり、図23に示すような顕微鏡写真を有すことが示された。
【0231】
実施例7―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.26g、0.51mmol)を還流下で8:2の体積比を有するアセトン:水の混合物7mLに溶解し、攪拌した。L-酒石酸(0.08g、0.53mmol)を8:2の体積比を有するアセトン:水の混合物(1.5ml)中に溶解した溶液を加えた。前記混合物を40°Cに冷却して1時間攪拌し;25°Cに冷却して2時間攪拌した。析出した前記固体をろ過し、真空下55°Cで2時間乾燥して0.21gの試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0232】
実施例8―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(51mg、0.1mmol)をメタノール1.5mLに55°C~60°Cで溶解し、高温の間に濾過した。L-酒石酸(23mg、0.15mmol)を前記濾液に加え、攪拌を55°C~60°Cで30分間続けた。次に、前記反応系を、20~25°Cに冷却して18時間攪拌した。析出した前記固体を濾過し、真空下55°Cで5時間乾燥して試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0233】
実施例9―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(51mg、0.1mmol)をn-酢酸プロピル3mLに75°C~85°Cで溶解した。L-酒石酸(23mg、0.1mmol)をメタノール(1ml)中に溶解した溶液を加え、次に、1mlの追加のメタノールを加えた。前記混合物を75~85°Cで50分間攪拌し、25~30°Cに冷却して16時間攪拌した。析出した前記固体を濾過し、真空下55°Cで6時間乾燥して試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0234】
実施例10―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(21mg、0.041mmol)をトルエン3mLに90°C~95°Cで溶解した。L-酒石酸(9.3mg、0.062mmol)をエタノール(0.5ml)中に溶解した溶液を加え;次に、2.5mlの追加のメタノールを加えた。前記混合物を80~90°Cで30分間攪拌し;20~25°Cで冷却して18時間攪拌した。析出した前記固体を濾過し、真空下55°Cで2時間乾燥して試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0235】
実施例11―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.26g、0.51mmol)を還流下で9:1の体積比を有するエタノール:水の混合物6mLに溶解した。L-酒石酸(0.08g、0.53mmol)を9:1の体積比を有するエタノール:水の混合物(1.5ml)中に溶解した溶液を加え、そして、前記固体が5分後に析出した。過熱を停止して、前記混合物を25~30°Cに冷却して20時間攪拌した。析出した前記固体を濾過し、真空下55°Cで3時間乾燥して0.27gの試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0236】
実施例12―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.26g、0.51mmol)を混合溶媒(体積比1:1であるエタノール:酢酸エチル)11mlに75~80°Cで溶解した。L-酒石酸(0.08g、0.53mmol)をエタノール(2ml)中に溶解した溶液を加え、そして、前記固体が2分以内に析出した。前記混合物を75~80°Cで1時間攪拌した。過熱を停止して、前記混合物を25~30°Cに冷却して16時間攪拌した。析出した前記固体を濾過し、真空下55°Cで16時間乾燥して0.30gの試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0237】
実施例13―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.26g、0.51mmol)を還流下で9:1の体積比を有するi-プロパノール:水の混合物6mLに溶解した。L-酒石酸(0.08g、0.53mmol)を9:1の体積比を有するi-プロパノール:水の混合物(2ml)中に溶解した溶液を加えた。前記混合物を25~30°Cで冷却して17時間攪拌した。前記固体を濾過し、真空下55°Cで6時間乾燥して0.24gの試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0238】
実施例14―形態B-IIIの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(0.26g、0.51mmol)を水15mlに懸濁し、前記混合物を75~85°Cで加熱した場合、溶解しなかった。L-酒石酸(0.08g、0.53mmol)を水(2ml)に溶解した溶液を前記懸濁液に加え、透明な溶液を得ると、その後固体が沈殿した。前記混合物を75~85°Cで2時間攪拌し;25~30°Cに冷却して19~20時間攪拌した。析出した前記固体を濾過し、真空下55°Cで3時間乾燥して0.23gの試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例6で得られた形態B-III試料のパターンと一致した。
【0239】
実施例15―形態C-Iの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(300mg、0.59mmol)を還流下で8:2の体積比を有するアセトン:水の混合物12mLに溶解した。p-トルエンスルホン酸一水和物(168mg、0.89mmol)を8:2の体積比を有するアセトン:水の混合物(1ml)中に溶解した溶液を加えた。攪拌下で約5分後、固体が析出した。前記反応物を室温に冷却して攪拌を約15時間続けた。前記固体を濾過し、真空下50°Cで4時間乾燥して試料を得た。
【0240】
1H NMR(400MHz、DMSO) δ:9.29(s、1H)、8.90(d、J=9.7Hz、1H)、8.49(q、J=4.3Hz、1H)、8.34-8.24(m、1H)、8.23(s、2H)、7.57(t、J=6.1Hz、2H)、7.46(d、J=8.0Hz、2H)、7.41(dd、J=13.0、1.8Hz、2H)、7.09(dd、J=7.9、0.5Hz、2H)、6.91(d、J=9.1Hz、2H)、3.87(s、3H)、3.69(d、J=10.9Hz、2H)、3.38(d、J=6.5Hz、2H)、3.00-2.92(m、2H)、2.74(dd、J=11.5、5.8Hz、5H)、2.51(dd、J=19.2、7.7Hz、2H)、2.26(s、3H)、1.23(d、J=6.5Hz、6H)。
【0241】
得られた前記粉末試料は、形態C-Iであり、図12に示されるX線粉末回折パターンを有する。前記回折パターンは、5.5±0.2°、7.8±0.2°、9.7±0.2°、11.1±0.2°、11.7±0.2°、12.2±0.2°、12.9±0.2°、13.5±0.2°、13.8±0.2°、14.3±0.2°、14.7±0.2°、16.6±0.2°、17.9±0.2°、18.2±0.2°、19.2±0.2°、20.0±0.2°、20.6±0.2°、22.2±0.2°、22.7±0.2°、23.5±0.2°、24.0±0.2°、24.4±0.2°、26.1±0.2°、27.4±0.2°、28.8±0.2°、32.8±0.2°、及び33.6±0.2°の回折ピーク(2θ)を含む。前記試料のDSC結果は図13に示され、形態C-Iの吸熱ピークが約289.77~291.04°Cであることを示す。
【0242】
実施例16―形態C-Iの調製
4-クロロ-3-(2-(2-((4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-イル)エチル)-5-メトキシ-N-メチルベンズアミド(4.3g、8.44mmol)を還流下で8:2の体積比を有するi-プロパノール:水の混合物155mLに溶解し、高温の間に濾過し、不溶性物質を除去した。前記濾液を再度加熱還流し、p-トルエンスルホン酸一水和物(2.4g、12.67mmol)を水(2ml)に溶解した溶液を加え、次いで50mlのi-プロパノールを加えた。攪拌下で約5分後、固体が析出した。前記反応物を室温に冷却して攪拌を約15時間続けた。前記固体を濾過し、真空下50°Cで20時間乾燥して試料を得た。測定時に、得られた試料のX線粉末回折パターンは、実施例15で得られた形態C-I試料のパターンと一致した。
【0243】
実施例17―高温、高湿、及び照明下での本発明の塩の安定性
定量方法:化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-III、及び化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIの試験サンプルをそれぞれ培養皿上に置き、続いてふたを開け、密封された清浄な容器に入れた。容器を温度60°C、温度25°C及び相対湿度92.5%±5%、及び照度4500lx±500lxの条件下でそれぞれ10日間置いた。次いで、試験サンプルをそれぞれ採取し、試料の純度及び結晶形態を決定した。その結果を表1に示した。
【0244】
【表1】
【0245】
表1のデータは、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIおよび化合物78のモノ塩酸塩の形態A-IIIの化学純度が、高温、高湿度、または照明下に10日間置かれた後も有意に変化しないことを示し;形態A-IIIサンプルの結晶形態は、高湿度条件下に置かれた後(図15及び16に示すように)に変化したが、高温および照射条件下では変化しないままであった;一方、形態B-IIIは、すべての試験条件下で有意に変化せず、より良好な安定性を有していた。
【0246】
実施例18―形態B-II及び形態B-IIIの安定性
定量方法1:化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-II、及び形態B-IIIの試験サンプルをそれぞれ培養皿上に置き、続いてふたを開け、密封された清浄な容器に入れた。容器を温度25°C及び相対湿度92.5%±5%で、3日間又は5日間置いた。次いで、試験試料の結晶形態を決定した。その結果を表2に示した。
【0247】
定量方法2:化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-II、及び形態B-IIIの試験サンプルを水に懸濁し、室温で攪拌した。試験試料を2日目および4日目に収集し、それぞれ結晶形態を決定した。その結果を表2に示した。
【0248】
【表2】
【0249】
表2のデータは、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIが、両方の試験条件下で不安定であり、水分の存在により、結晶形態の変化が誘導されたことを示した(図17~19に示すように)。対照的に、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの結晶形態は、高湿条件下に置かれた場合、又は水中でスラリー化した場合に変化しないままであった(図20及び21に示すように)。形態B-IIIは高い安定性を有する。
【0250】
実施例19―化合物78の式Aで表される塩及びその遊離形態の異なる緩衝液中での溶解度の比較
定量方法:化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-III、化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-I、及び遊離形態の化合物78の過剰量のサンプルを、異なるpHの緩衝液中及び水中にそれぞれ懸濁し、37°Cの一定の温度で30分間攪拌し、遠心分離し、及び濾過し、そして前記濾液を前記サンプルの溶解度を決定するために使用した。溶解度の結果は、全て遊離形態に基づいて計算した。その結果を表3に示した。異なるpHの緩衝液は、米国薬局方(USP40-NF35)に従って調製された。
【0251】
【表3】
【0252】
表3のデータは、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIがpH1.2の溶媒中で高い溶解度を有し、精製水中でまた高い溶解度を有することを示し、そして形態C-I及び遊離形態よりも高い溶解度を有意に示した。化合物78のモノp-トシル酸塩の形態C-Iは、すべての試験溶媒中で低いものの安定した溶解度を有していた。化合物78の遊離体は、異なる媒体によって、非常に異なる溶解度を有していた。より具体的には、化合物78の遊離体は、pH4.5の緩衝液中で最大12.6mg/mlの溶解度を有していたが、他の溶媒および精製水における溶解度は低かった。
【0253】
これらの結果は、本発明の塩及び本発明の結晶形態が、より良好な溶解度プロファイルを有していることを示した。一つの態様では、化合物78の遊離形態と比較して、本発明の塩は異なるpH値での溶解度差がより小さく、異なるpH値を有する体液における本発明の塩の溶解度をより安定にする。別の態様では、本発明の塩及び本発明の結晶形態は胃腸管における高pH条件下でも、依然として高く安定した溶解度を有しており、十分な吸収に有益であり、それゆえ、結果としてより高いバイオアベイラベリティをもたらし、及びインビボでの薬剤吸収に対する食品の影響を回避する。
【0254】
実施例20―式Aで表される塩の吸湿性
定量方法:化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIおよび形態B-IIの試験サンプルを、それぞれ動的蒸気収着装置(DVS-INTRINSIC)のサンプル皿に置いた。次に、サンプルの吸湿による重量増加を、25°Cで0~95%の相対湿度で測定した。結果を図10及び図11に示した。
【0255】
図10の曲線は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIが、周囲湿度が85%RHより低い場合に非吸湿性であり、周囲湿度が85%RHより高い場合にわずかに吸湿性であることを示した。
【0256】
図11の曲線は、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIが0~80%RHで連続的に吸湿性であり、周囲湿度が85%RHより高い場合にその吸湿性がさらに増加したことを示した。試料が水分を吸収した後、吸収された水分は脱着過程でヒステリシスを生じる。
【0257】
実施例21―イヌにおける式Aで表される塩の薬物動態学的研究
製剤の調製
IV製剤:化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-III71.48mgを、10%マクロゴール-15ヒドロキシルステアレート(ソルトール)、10%エタノールおよび80%生理食塩水の混合物(60.7ml)に溶解し、IV投与のための透明な溶液を得た。
PO製剤(遊離形態の濃度に基づいて0.5mg/ml):化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-III71.54mgを121.5mlの脱イオン水に懸濁し、1mg/kg投与群のイヌに対するPO投与のための懸濁液を得た。
【0258】
投薬及びサンプリング
実験計画を以下の表4に示した:
【0259】
【表4】
【0260】
サンプリングを行う時点を以下の表5に示した:
【0261】
【表5】
【0262】
生体サンプル分析方法
LC-MS/MS法を、イヌ血漿中における遊離形態の化合物78の濃度決定に使用した。
【0263】
データ分析
データを、非コンパートメント統計モーメント法および薬物動態学ソフトウェアPhoenix(バージョン、6.2.1.51)を用いて分析し、各群のPKパラメータを計算した。CmaxおよびTmaxを測定値として与えた。絶対バイオアベイラベリティ(F%)を以下の式により算出した:
【0264】
【数1】
【0265】
式中、AUC0-∞,POは、イヌにおける経口投与後の遊離形態の化合物78の曝露(AUC0-∞)であり;AUC0-∞,IVは、イヌにおけるIV投与後の遊離形態の化合物78の曝露(AUC0-∞)であり;DosageIVは、IV投与の投与量であり;DosagePOは経口投与の投与量である。
【0266】
結果と考察
イヌにおける化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの主要な薬物動態パラメータの平均値を表6および表7に示した。
【0267】
化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの静脈内投与後(遊離形態の化合物78の含有量は1.0mg/kgであった)、イヌにおける全体の平均曝露量(AUC0-∞)は1880±349h・ng/mlであり;全体の平均クリアランス(CL)は9.09±1.51ml/分/kgであり;全体の平均血中消失半減期(t1/2)は5.90±0.645時間であり;全体の平均定常分布容積(Vss)は2.95±0.399L/kgであった。
【0268】
化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIの経口投与後(遊離形態の化合物78の含有量は1.0mg/kgであり、絶食状態)、イヌにおける全体の最高血中濃度到達平均時間(Tmax)は0.792±0.459時間であった。全体の最高平均血中濃度(Cmax)は141±68.8ng/mlであった。全体の平均曝露量(AUC0-∞)は665±276h・ng/mlであった。全体の平均血中消失半減期(t1/2)は5.36±1.69時間であった。全体の平均絶対バイオアベイラベリティ(F%)は35.4%であった。
【0269】
【表6】
【0270】
【表7】
【0271】
結論
ビーグル犬において化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIを1mg/kgの単独投与で経管栄養により投与した後、インビボでの良好な経口吸収が、約35.4%の絶対経口バイオアベイラベリティと共に示された。化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIは、イヌにおいて約1時間のTmaxであり、迅速な吸収作用を有していた。化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIを1mg/kgの単独投与で静脈内注射により投与した後、イヌにおけるクリアランス(CL)は9.09±1.51ml/分/kgであり、前記塩が低クリアランス薬剤であったことを示す。Vssは2.95±0.40L/kgであり、広い分布を示している。要約すると、化合物78のヘミ酒石酸塩の形態B-IIIは、イヌにおいて良好な薬物動態特徴を示した。
【0272】
本明細書に記載される実施例および実施形態は説明のみを目的としており、本発明の実施形態における様々な実行可能な改良または修正が、開示によって当業者に示唆され、本出願及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内であることを理解されたい。本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、すべての目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
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【国際調査報告】