(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】造血器悪性腫瘍を治療するための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5025 20060101AFI20221208BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221208BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221208BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20221208BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K31/5025
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/706
A61K31/496
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522382
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 IB2020059556
(87)【国際公開番号】W WO2021074769
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッタースリー モーリーン
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン コートニー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ファーウェイ レイモンド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
がんの治療を行う方法であって、それを必要とする対象に有効量の(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩、及び有効量のベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血器悪性腫瘍の治療を行う方法であって、治療を必要とする対象に対して、
有効量の(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩、及び
有効量のベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩
を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩を、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩と逐次的、別個または同時に投与すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記造血器悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩と別個、逐次的または同時に投与することを含む、造血器悪性腫瘍の治療用である、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩と別個、逐次的または同時に投与することを含む、造血器悪性腫瘍の治療用である、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記造血器悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)から選択される、請求項4または請求項5に記載の使用。
【請求項7】
有効量の5-アザシチジンを投与することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項8】
前記造血器悪性腫瘍が再燃性または難治性造血器悪性腫瘍である、請求項3または請求項6に記載の方法または使用。
【請求項9】
前記造血器悪性腫瘍がBCL-2阻害剤の単剤療法に対して抵抗性である、請求項3または請求項6に記載の方法または使用。
【請求項10】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、第1医薬組成物、ならびに
ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を含む第2医薬組成物、及び
使用説明書
を含む、キット。
【請求項11】
5-アザシチジンを含む第3医薬組成物をさらに含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
i)(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩、及び
ii)ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩
を含む、医薬製品。
【請求項13】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩とが単一の剤形において存在する、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項14】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩とが別個の剤形において存在する、請求項1に記載の医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年10月14日に出願された米国仮出願第62/914,592号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張するものであり、参照によりこの全体をあらゆる目的のために本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
造血器悪性腫瘍の治療は大幅に進歩したが、そのようながんを有するこれらの患者の多くは不治の疾患と共に生きている。急性骨髄性白血病(AML)に罹患している患者は治療選択肢が限られており、60歳を上回る患者は、治療に対する応答が乏しく5年生存率がおよそ25%であり、生存期間中央値が12ヶ月未満である。したがって、不治のがんを有する患者のための新しい治療を探索し続けることが重要である。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、がん、例えば造血器悪性腫瘍、の治療を行う方法であって、それを必要とする対象に有効量のAZD5153またはその薬学的に許容される塩、及び有効量のベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、当該方法は、有効量の5-アザシチジンを投与することをさらに含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、がん、例えば造血器悪性腫瘍、の治療であってベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を別個、逐次的または同時に投与することを含む上記治療に使用するための、AZD5153またはその薬学的に許容される塩が開示される。いくつかの実施形態では、治療は5-アザシチジンの投与をさらに含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、がん、例えば造血器悪性腫瘍、の治療であってAZD5153またはその薬学的に許容される塩を別個、逐次的または同時に投与することを含む上記治療に使用するための、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩が開示される。いくつかの実施形態では、治療は5-アザシチジンの投与をさらに含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、キットであって、AZD5153またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、第1医薬組成物;ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、第2医薬組成物;ならびに使用説明書を含むキットが開示される。いくつかの実施形態では、キットは5-アザシチジンをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】AMLのDFAM-68555 PDXモデルにおけるビヒクル、ベネトクラクス(VEN)と5-アザシチジン(5-AZA)との組合せ、及びベネトクラクス(VEN)とAZD5153との組合せによる72時間の処理の後の、生存AML細胞の数を示す。
【
図2】AMLのDFAM-68555 PDXモデルにおけるビヒクル、ベネトクラクス(VEN)と5-アザシチジン(5-AZA)との組合せ、及びベネトクラクス(VEN)とAZD5153との組合せによる14日間の処置の後の、腫瘍負荷の軽減を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態では、AZD5153とベネトクラクスと任意選択の5-アザシチジンとの併用療法によってがんを治療する方法が開示される。いくつかの実施形態では、方法は、それを必要とする対象に有効量のAZD5153またはその薬学的に許容される塩、及び有効量のベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、5-アザシチジンを投与することをさらに含む。
【0009】
「AZD5153」という用語は、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンの化学名及び以下に示す構造を有する化合物を指す。
【0010】
【0011】
AZD5153は、二価トリアゾロピリダジン系のブロモドメイン及び余剰末端(BET)阻害剤である。ブロモドメイン含有タンパク質は多様な疾患に関与し、治療標的としてかなり興味深い。BETファミリーは、BRD2、BRD3、BRD4及びBRDTとして知られる4つのタンパク質からなり、これらの各々は2つの別個なブロモドメインを含有している。とりわけBRD4は、がん(例えば造血器悪性腫瘍)を治療するための潜在的な薬物標的として検討されている。
【0012】
AZD5153の調製及び用途は国際出願公開第WO2016/016618号に開示されており、これをもって参照によりその内容全体を援用する。いくつかの実施形態では、遊離塩基AZD5153、すなわち(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンを対象に投与する。いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンの薬学的に許容される塩を対象に投与する。いくつかの実施形態では、結晶AZD5153を対象に投与する。いくつかの実施形態では、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を共結晶子分子としたAZD5153の共結晶を対象に投与する。結晶AZD5153及びAZD5153の共結晶の例はWO2016/016618に記載されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、AZD5153を経口投与する。いくつかの実施形態では、AZD5153を約40mg以下(例えば、約5mg以下、約10mg以下、約15mg以下、約20mg以下、約25mg以下、約30mg以下、約35mg以下または約40mg以下のAZD5153)の用量で1日1回(QD)か1日2回(BID)かのどちらかで投与する。いくつかの実施形態では、AZD5153を、5mg BID、または10mg QDの用量で投与する。
【0014】
ベネトクラクスは、GDC-0199またはABT-199としても知られ、化学的には4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミド)として表され、以下の化学構造を有する。
【0015】
【0016】
ベネトクラクスは、選択的な、かつ経口的に生物利用可能な、抗アポトーシスタンパク質BCL-2の阻害剤である。BCL-2の過剰発現は、それによって腫瘍細胞の生存が媒介されるCLL及びAML細胞において実証されており、化学療法に対する抵抗性と関連付けられている。ベネトクラクスは、BIMのようなアポトーシス促進性タンパク質に取って代わってBCL-2タンパク質に直接結合し、ミトコンドリア外膜の透過性化及びカスパーゼの活性化を誘発することによって、アポトーシスのプロセスを回復させるのに役立つ。
【0017】
ベネトクラクスの調製及び用途は国際出願公開第WO2011/149492号に開示されており、これをもって参照によりその内容全体を援用する。いくつかの実施形態では、遊離塩基ベネトクラクスを対象に投与する。いくつかの実施形態では、ベネトクラクスの薬学的に許容される塩を対象に投与する。いくつかの実施形態では、結晶ベネトクラクスまたはベネトクラクスの薬学的に許容される塩を対象に投与する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を経口投与する。いくつかの実施形態では、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を約600mg以下(例えば、約20mg以下、約50mg以下、約100mg以下、約200mg以下、約400mg以下、約500mg以下または約600mg以下のベネトクラクス)の用量で1日1回(QD)投与する。いくつかの実施形態では、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を、5週間にわたって400mgの1日用量まで毎週漸増する計画に従って投与する。例えば、またはその薬学的に許容される塩を、1週目は1日あたり20mg、2週目は1日あたり50mg、3週目は1日あたり100mg、4週目は1日あたり200mg、及び5週目以降は1日あたり400mgの用量で投与する。
【0019】
「5-アザシチジン(5-azacitidine)」という用語は、下記構造の化合物を含み、4-アミノ-1-(β-D-リボフラノシル)-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン、またはラダカマイシン、5-アザシチジン(5-azacytidine)、アザシチジン(azacitidine)もしくはアザシチジン(azacytidine)としても知られている。
【0020】
【0021】
5-アザシタジンは、2つの機序を介して-低用量においてはDNAメチルトランスフェラーゼを阻害してDNAの低メチル化をもたらすことによって、ならびに高用量においては骨髄中の異常造血細胞に対してDNA中及びRNA中へのその組込みによる直接的な細胞毒性を有して結果として細胞死をもたらすことによって、抗新生物活性を有すると考えられている。いくつかの実施形態では、方法は、5-アザシチジン及びマンニトールを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1:1の重量比の5-アザシチジン及びマンニトール(例えば、100mgずつの5-アザシチジン及びマンニトール)を含む。いくつかの実施形態では、5-アザシチジンを皮下投与する。いくつかの実施形態では、5-アザシチジンを静脈内投与する。いくつかの実施形態では、5-アザシチジンを毎日75mg/m2で7日間にわたって投与し、その後、100mg/m2だけ増やして4週間ごとの繰り返しサイクルを続ける。いくつかの実施形態では、5-アザシタジンを、28日サイクルの1日目から7日目まで75mg/m2の用量で投与する。いくつかの実施形態では、5-アザシチジンを、28日(4週間)サイクルの1~5日目ならびに8日目及び9日目に75mg/m2の用量で投与する。
【0022】
いくつかの実施形態では、AZD5153またはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩とを連係的に投与する。いくつかの実施形態では、AZD5153またはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩とを別個、逐次的または同時に投与する。いくつかの実施形態では、治療サイクルにおいて対象にAZD5153またはその薬学的に許容される塩を、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩なしで1日以上にわたって投与し、その後、治療サイクルの残日数にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩とベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩との両方を投与する。いかなる理論にも拘泥しないが、AZD5153またはその薬学的に許容される塩は、最初にベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩なしで対象に投与された場合、AZD5153またはその薬学的に許容される塩とベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩との両方を投与する治療のために対象に準備刺激を与えることができると考えられる。いくつかの実施形態では、治療サイクルにおいて1~14日間にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩を投与し、その後、治療サイクルの残日数にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩とベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩との両方を投与する。いくつかの実施形態では、治療サイクルにおいて5~10日間にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩を投与し、その後、治療サイクルの残日数にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩とベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩との両方を投与する。いくつかの実施形態では、治療サイクルにおいて5、6または7日間にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩を投与し、その後、治療サイクルの残日数にわたってAZD5153またはその薬学的に許容される塩とベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩との両方を投与する。先行実施形態のいずれかにおいて、治療サイクルは週ベースで行われ、各治療サイクルが3週間以上である。例えば、治療サイクルは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週間、または最長52週間の治療サイクルであり得る。
【0023】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」という表現は、対象におけるBRD4、DNAメチルトランスフェラーゼもしくはがんに関係する酵素もしくはタンパク質活性の低減もしくは阻害、対象におけるがんの1つ以上の症候の改善、または対象におけるがんの進行を遅らせるもしくは遅延させることを含む。「治療する」、「治療すること」及び「治療」という表現は、対象における腫瘍の成長またはがん細胞の増殖の軽減または抑制も含む。
【0024】
「阻害する」、「阻害」または「阻害すること」という表現は、生物学的活性またはプロセスのベースライン活性の低下を含む。
【0025】
「がん」という用語は、造血器悪性腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんは、BRD4阻害剤(例えばAZD5153)による治療に対する感受性を有するがんを含む。いくつかの実施形態では、がんは、BCL-2阻害剤(例えばベネトクラクス)による治療に対する感受性を有するがんを含む。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍は、再燃性または難治性造血器悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、造血器悪性腫瘍はBCL-2阻害剤の単剤療法に対して抵抗性である。
【0026】
「医薬組成物」という表現は、活性成分及び薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤を含む組成物を含み、活性成分は、AZD5153もしくはその薬学的に許容される塩、またはベネトクラクスもしくはその薬学的に許容される塩、または5-アザシチジンである。「薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤」という表現は、当業者によって確認される過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症がなく、健全な医学的判断の範囲内で人間及び動物の組織との接触に使用するのに適した、化合物、材料、組成物及び/または剤形を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、予包剤などにされたものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の水性または非水性の無毒な非経口的に許容される緩衝系、希釈剤、可溶化剤、共溶媒または担体で作った無菌注射液の形態である。無菌注射製剤はまた、水性もしくは油性の無菌注射懸濁液、または非水性希釈剤、担体もしくは共溶媒で作った懸濁液であってもよいが、それは、適切な分散または湿潤剤及び懸濁化剤の1つ以上を使用して既知の手順に従って製剤化されたものであり得る。医薬組成物は、静脈内ボーラス/点滴注射のための液剤、または(単独で、あるいは賦形剤と共に)凍結乾燥された、他の賦形剤を含むもしくは含まない緩衝系による再構成のための系であってもよい。凍結乾燥フリーズドライ材料は非水性溶媒または水性溶媒から調製され得る。剤形はまた、後の輸注のためにさらに希釈するための濃縮物であってもよい。
【0027】
「対象」という用語は、温血動物、例えば、霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット及びマウスを含む。いくつかの実施形態では、対象は、霊長類、例えばヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、がん、例えば造血器悪性腫瘍に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再燃性または難治性の急性骨髄性白血病(AML)に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再燃性または難治性の高リスク骨髄異形成症候群(MDS)に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再燃性または難治性の慢性骨髄性白血病(CML)に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再燃性または難治性の慢性リンパ球性白血病(CLL)に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再燃性または難治性の慢性骨髄単球性白血病(CMML)に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、がんに罹患しており、治療を受けていない者(例えば、がんのための治療を受けたことがない者)である。いくつかの実施形態では、対象は、治療を必要とする者である(例えば、対象は、治療によって生物学的または医学的に利益を得るであろう者である)。いくつかの実施形態では、対象は制吐薬で予め治療される。
【0028】
「有効量」という表現は、対象における生物学的または医学的応答、例えば、BCL-2、BET、例えばBRD2、BRD3、BRD4及びBRDTのうちの1つ以上、もしくはがんに関連する酵素もしくはタンパク質活性の低減もしくは阻害;がんの症候の改善;またはがんの進行を遅らせるもしくは遅延させることを誘発することになる、AZD5153の量及び/またはベネトクラクスの量及び/または5-アザシチジンの量を含む。いくつかの実施形態では、「有効量」という表現は、対象においてがんを少なくとも部分的に和らげる、抑制する及び/または改善するためまたはBRD4もしくはBCL-2を阻害するため及び/または腫瘍の成長もしくはがん細胞の増殖を軽減もしくは抑制するために有効となる、AZD5153及び/またはベネトクラクス及び/または5-アザシチジンの量を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、キットであって、AZD5153またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、第1医薬組成物;ならびにベネトクラクスまたは薬学的に許容される塩を含む、第2医薬組成物;ならびに第1及び第2医薬組成物を併用するための使用説明書を含むキットが開示される。いくつかの実施形態では、キットは、5-アザシチジンを含む第3医薬組成物をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、i)(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩、及びii)ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩を含む、医薬製品が開示される。医薬製品のいくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩とが単一の剤形において存在する。医薬製品のいくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンまたはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスまたはその薬学的に許容される塩とが別個の剤形において存在する。いくつかの実施形態では、医薬製品は、単一の剤形において、あるいは別個の剤形において、5-アザシチジンをさらに含む。
【実施例】
【0031】
実施例1.AMLの前臨床モデルにおけるベネトクラクスと組み合わせた二価BRD4阻害剤AZD5153の有効性
DFAM-68555生体外スクリーニング:PDX細胞を、DFAM-68555異種移植片を保有する雌性NSGマウスの脾臓から単離した。PDX細胞を、HS-5細胞馴化培地とIMDM+10%FBSとの50/50混合物の中に再懸濁させた。細胞を96ウェルプレートに播種し、ベネトクラクス、AZD5153+ベネトクラクス、及び5-アザシチジン+ベネトクラクスで処理した。72時間の処理の後、生存AML細胞の数をフローサイトメトリーによって評価した。結果を
図1に示す。
【0032】
DFAM-68555 PDX有効性:雌性NSGマウスに10
6個のDFAM-68555 PDX細胞を尾静脈注射によって移植した。循環性疾患(huCD45+huCD33+細胞%によって測定される)が約4%に達した時にマウスを無作為に群に振り分け、ビヒクル、ベネトクラクス(100mpkで経口的に1日1回)+5-アザシチジン(1mpkで腹腔内に1日2回を3日間/休止を4日間)、またはベネトクラクス(100mpkで経口的に1日1回)+AZD5153(0.075mpkで経口的に1日1回)で処置した。ベネトクラクスは、10%のエタノール、30%のPEG-400、及び60%のPhosal 50 PGで製剤化された。AZD5153は、0.5%のHPMC+0.1%のTween-80で製剤化された。アザシチジンは0.9%の生理食塩水で製剤化された。動物を14日間にわたって処置した。毎週、循環性疾患をフローサイトメトリーによって追跡評価した。試験の最後に、フローサイトメトリー及び組織病理学分析のために血液、脾臓及び骨髄(胸骨)を採取した。結果を
図2に示す。
【0033】
結果:
図1及び
図2に示されるように、ベネトクラクス+5-アザシチジンはDFAM-68555 PDXモデルにおいて生体外(
図1)及び生体内(
図2)で有効性がほとんどまたは全くなかった。しかしながら、ベネトクラクス+AZD5153は、血液、脾臓及び骨において生体外及び生体内での腫瘍負荷を有意に軽減した。
【国際調査報告】