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特表2022-552360複数の相を有する同期モータを制御するための駆動システムおよび方法
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  • 特表-複数の相を有する同期モータを制御するための駆動システムおよび方法 図1
  • 特表-複数の相を有する同期モータを制御するための駆動システムおよび方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】複数の相を有する同期モータを制御するための駆動システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/028 20160101AFI20221208BHJP
【FI】
H02P29/028
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522605
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020077925
(87)【国際公開番号】W WO2021073934
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203433.8
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ-スヴェン ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ゼガー ボンティンク
(72)【発明者】
【氏名】アリ テッロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル ティハニー
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501DD03
5H501DD04
5H501EE08
5H501GG08
5H501HA04
5H501HB08
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501KK05
5H501LL22
5H501LL29
5H501LL35
5H501LL51
5H501MM11
(57)【要約】
複数の相を有する同期モータ(3)を有する駆動システム(1)を制御する方法は、次のステップ、すなわち、駆動システム(1)の入力を処理することにより、同期モータ(3)用の適切な動作パラメータを供給するステップと、複数の相のうちの1つに障害が検出される場合、検出される動作パラメータに基づくパラメータ推定アルゴリズムによって推定されるモータパラメータに基づき、中性導体用の零相電圧を計算するステップと、計算した零相電圧を中性導体に印加するステップと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動システム(1)であって、前記駆動システム(1)は、
複数の相を有する同期モータ(3)と、
動作パラメータを入力するように構成された入力インタフェース(2)と、
複数の前記相のうちの1つに障害がない動作中に、前記同期モータ(3)を制御する制御アルゴリズムを実行するように構成された第1装置(4)と、
動作中に複数の前記相のうちの1つに障害が特定される場合に、前記同期モータ(3)を制御する制御アルゴリズムを実行するように構成された第2装置(5)と、
複数の前記相のうちの1つに障害が特定されるのに応じて、前記第1装置(4)と前記第2装置(5)とを切り換えるように構成されたスイッチ(6)と、
前記同期モータ(3)用に適切な動作パラメータを供給するように構成された駆動装置(7)と、
前記同期モータ(3)の位置および電流を検出するように構成されたセンサ(8)と、
前記同期モータ(3)の検出された前記位置および前記電流に基づき、モータパラメータを推定するパラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されたパラメータ推定器(9)と、を有し、
前記駆動システム(1)は、前記同期モータ(3)の中性コネクタについて推定された前記モータパラメータに基づいて計算される零相電圧を供給するように構成されている、駆動システム(1)。
【請求項2】
複数の相を有する同期モータ(3)を含む駆動システム(1)を制御する方法において、前記方法は、次のステップ、すなわち、
前記駆動システム(1)の入力を処理することにより、前記同期モータ(3)用の適切な動作パラメータを供給するステップと、
複数の前記相のうちの1つに障害が特定される場合、検出される動作パラメータに基づくパラメータ推定アルゴリズムによって推定されるモータパラメータに基づいて、中性導体用の零相電圧を計算するステップと、
計算した前記零相電圧を前記中性導体に印加するステップと、を有する、方法。
【請求項3】
前記モータパラメータは、インダクタンスおよび相抵抗を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータ推定アルゴリズムは、モデル規範形適応(MRCA)モデルに基づく、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
複数の前記相のうちの1つに障害がない動作のための制御アルゴリズムが構成されており、
複数の前記相のうちの1つに障害が特定される場合の動作のために、前記パラメータ推定アルゴリズムを含む制御アルゴリズムが構成されており、
複数の前記相のうちの1つに障害が特定される場合、複数の前記相のうちの1つに障害が特定される場合の動作についての前記制御アルゴリズムにより、前記同期モータを制御する、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
フィードフォワード法に基づいて前記零相電圧を計算する、請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記動作パラメータは電圧、電流、および周波数のうちの少なくとも1つを有する、請求項2から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
プログラムがコンピュータによって実行される場合に前記コンピュータに請求項2から7までのいずれか1項記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の相を有する同期モータを制御するための駆動システムおよび方法に関し、特に、複数の相のうちの1つに障害がある場合に、複数の相を有する同期モータを制御するための駆動システムおよび方法に関する。
【0002】
電気モータの障害は、耐用年数の間に発生することがある。このような障害は、3相同期モータの1つの相のコイルのワイヤ周囲の絶縁体の摩耗である可能性がある。この摩耗により、短絡が発生してしまうことがある。さらに、極端な場合には、複数の相のうちの1つが切り離されてしまい、このようなモータを制御するために2つの相しか利用できないことになってしまう。
【0003】
駆動装置は、4レグインバータを備えた3相(「abc」)の星形結線式永久磁石同期モータから構成されていてよく、レグのうちの3つのレグが、複数の相に接続されており、かつ第4レグが中性点に接続されている。このような駆動装置は、複数のレグのうちの1つまたはモータの複数の相のうちの1つが動作不能になってしまった場合であっても、動作し続けることが可能である。動作を維持するために、さまざまなタイプの制御アルゴリズム、例えば、「dq0ヒステリシス制御」、「dq0-PI制御」およびVフィードフォワード制御などが利用可能である。しかしながら、相障害の後に、中性点の電流(I)の正弦波基準値を制御するためにPIコントローラを使用することは、システムの回転数の上昇などのような多くの問題を引き起こすことがある。実際に比例積分(PI)制御器を用いたVフィードフォワード制御は、障害の発生後、低トルクリプルを生成することが知られているが、この制御は、モータパラメータ、例えば抵抗RおよびインダクタンスLにおける変動に強く影響される。これらのパラメータの実際の値と、これらのパラメータの任意に想定される値との間の偏差は、モータの非効率的な制御につながり、したがってモータのトルクのリプルを生じさせてしまう。
【0004】
したがって、本発明の根底にある課題は、上記の欠点を回避し、複数の相のうちの1つに障害がある場合に、三相星型結線式永久磁石同期モータの挙動を改善する方法を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1記載の駆動システム、請求項2記載の方法、および請求項8記載のコンピュータプログラム製品によって達成される。有利な別の発展形態は、従属請求項に含まれている。
【0006】
本発明の一態様によると、駆動システムは、複数の相を有する同期モータと、動作パラメータを入力するように構成された入力インタフェースと、複数の相のうちの1つに障害がない動作中に、同期モータを制御する制御アルゴリズムを実行するように構成された第1装置と、動作中に複数の相のうちの1つに障害が特定される場合に、同期モータを制御する制御アルゴリズムを実行するように構成された第2装置と、複数の相のうちの1つに障害が特定されるのに応じて、第1装置と第2装置とを切り換えるように構成されたスイッチと、同期モータ用に適切な動作パラメータを供給するように構成された駆動装置と、同期モータの位置および電流を検出するように構成されたセンサと、同期モータの検出された位置および電流に基づき、モータパラメータを推定するパラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されたパラメータ推定器と、を有する。駆動システムは、同期モータの中性コネクタについて推定されたモータパラメータに基づいて計算された零相電圧を供給するように構成されている。
【0007】
この駆動システムにより、同期モータの制御が改善される。なぜならば、複数の相のうちの1つに障害がある場合に、任意に仮定されるパラメータよりも正確に、中性コネクタについての零相電圧を計算することができ、これにより、複数の相のうちの1つが障害を有する場合に、同期モータのトルクのリプルを回避するかまたは減少させることができるからである。
【0008】
本発明の別の態様によると、複数の相を有する同期モータを含む駆動システムを制御する方法には、次のステップが含まれる。すなわち、駆動システムの入力を処理することにより、同期モータ用の動作パラメータを供給するステップと、複数の相のうちの1つに障害が特定される場合、検出される動作パラメータに基づくパラメータ推定アルゴリズムによって推定されるモータパラメータに基づいて、中性導体用の零相電圧を計算するステップと、計算した零相電圧を中性導体に印加するステップと、が含まれる。
【0009】
推定されるモータパラメータを使用することにより、同期モータの制御が改善される。なぜならば、これらの値は、任意に仮定されるモータパラメータよりも正確であり、これにより、複数の相のうちの1つに障害がある場合に、同期モータのトルクのリプルを回避または低減することができるからである。
【0010】
この方法の有利な実装形態では、モータパラメータは、インダクタンスおよび相抵抗を有する。
【0011】
これらのモータパラメータを推定することにより、同期モータの回転数の上昇を回避するような仕方で同期モータの動作特性を制御することができる。
【0012】
この方法の別の有利な実装形態では、パラメータ推定アルゴリズムは、モデル規範形適応制御モデルに基づく。
【0013】
このモデルに基づいてモータパラメータを推定することにより、現実的なモータパラメータを適当に推定するためのモデルが提供され、適切なモータパラメータが推定される。
【0014】
この方法の別の有利な実装形態により、複数の相のうちの1つに障害がない動作のための制御アルゴリズムが構成されており、複数の相のうちの1つに障害が特定される場合の動作のために、パラメータ推定アルゴリズムを含む制御アルゴリズムが構成されており、複数の相のうちの1つに障害が特定される場合、複数の相のうちの1つに障害が特定される場合の動作についてのパラメータ推定アルゴリズムを含む制御アルゴリズムにより、同期モータを制御する。
【0015】
複数の相のうちの1つに障害がない動作について、また複数の相のうちの1つに障害が特定される場合の動作について、異なる制御アルゴリズムを使用することにより、それぞれの動作条件について最適化された制御アルゴリズムを実行することができる。
【0016】
この方法の別の実装形態では、フィードフォワード法に基づいて零相電圧を計算する。
【0017】
フィードフォワード法を用いることにより、同期モータの回転数上昇を回避することができる。
【0018】
この方法の別の実装形態によると、動作パラメータは、電圧、電流、および周波数のうちの少なくとも1つを有する。
【0019】
これらのパラメータを使用することによって、動作パラメータから正確なモータパラメータを推定することができる。
【0020】
本発明の別の態様によると、コンピュータプログラム製品は、プログラムがコンピュータによって実行される場合にコンピュータにこの方法を実行させる命令を有する。
【0021】
以下では、添付の図面を参照する実施形態によって本発明を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による方法を提供する駆動システムのブロック図である。
図2】本発明による方法の流れ図である。
【0023】
図1には、本発明による方法を提供するための駆動システム1のブロック図が示されている。
【0024】
駆動システム1は、複数の相を有する同期モータ3と、同期モータ3用の動作パラメータを入力するためのインタフェース2とを有する。この実施形態では、同期モータは3つの相を有する。択一的には1よりも大きい相の別の個数が設けられる。動作パラメータには、電圧ud,q、電流id,qおよび電気速度ωが含まれている。択一的には、これらの動作パラメータのすべてが入力されるわけではない。
【0025】
さらに、駆動システム1は、複数の相のうちの1つに障害がない動作中に、同期モータ3を制御する制御アルゴリズムを実行するように構成された第1装置4と、動作中に複数の相のうちの1つに障害が特定される場合に、同期モータ3を制御する制御アルゴリズムを実行するように構成された第2装置5とを有する。択一的には、両方の動作条件をカバーする1つの制御アルゴリズム、または両方の制御アルゴリズムを有する1つの装置が提供される。
【0026】
さらに、駆動システム1は、複数の相のうちの1つの障害が特定されるのに応じて、第1装置4と第2装置5とを切り換えるためのスイッチ6を有する。
【0027】
駆動システム1はさらに、同期モータ3用に適切な動作パラメータを供給する駆動装置7を有する。
【0028】
この実施形態では位置センサおよび電流センサであるセンサ8が、同期モータ3の位置および電流を検出するために駆動システム1に設けられている。
【0029】
最後に、駆動システム1はパラメータ推定器9を有する。パラメータ推定器9は、インダクタンスLおよび相抵抗Rを推定するために、パラメータ推定アルゴリズムを実行する。択一的には、永久磁石磁束鎖交ΨPMなどの別の動作パラメータが推定される。パラメータ推定器9は、モデル規範形適応制御(MRAC:Model-Reference-Adaptive-Control)モデルに基づいて、パラメータ推定アルゴリズムを実行する。択一的には、例えば「拡張カルマンフィルタ」に基づいて、別のパラメータ推定アルゴリズムが実行される。
【0030】
使用時には駆動システム1では、適切な動作パラメータ、すなわち電圧ud,q、電流id,qおよび電気速度ωが、ステップS1において同期モータ3用に供給される。
【0031】
複数の相のうちの1つに障害が特定される場合、ステップS2において、検出される動作パラメータud,q,id,q,ωに基づくパラメータ推定アルゴリズムによって推定されるモータパラメータ、すなわちインダクタンスLおよび相抵抗Rに基づいて、中性導体用の零相電圧が計算される。このパラメータ推定アルゴリズムは、モデル規範形適応MRACモデルに基づく。択一的には、別のパラメータ推定アルゴリズム、例えば拡張カルマンフィルタが使用される。
【0032】
複数の相のうちの1つに障害が特定されない場合には、複数の相のうちの1つに障害がない動作用の制御アルゴリズムが使用される。
【0033】
ステップS3では、フィードフォワード法に基づいて計算した零相電圧を中性導体に印加する。択一的には、別のモータパラメータ、例えば永久磁石磁束鎖交ΨPMが使用されるか、またはすべての動作パラメータが使用されるとは限らないか、または別の動作パラメータが使用されるか、または零相電圧が、別の手法に基づいて、例えば比例積分制御器によって計算される。
【0034】
入力インタフェース2からの入力は、複数の相のうちの1つに障害のない動作のための制御アルゴリズムと、複数の相のうちの1つに障害が特定される場合の動作のための制御アルゴリズムとに転送される。複数の相のうちの1つに障害があるか否かの検出に応じて、入力は、第1装置4および第2装置5のいずれかによって処理される。さらに、この検出に応じ、スイッチ6を介して、第1装置4または第2装置5の出力が駆動装置7に転送され、この駆動装置7により、適切な動作パラメータが同期モータ3に供給される。センサ8により、駆動装置7用に、ならびに第1装置4および第2装置5用に位置および電流の動作パラメータが供給される。パラメータ推定器9により、駆動装置7ならびに装置4および装置5用に、推定された動作パラメータLおよびRが供給される。
【0035】
本明細書のさまざまな実施形態に関連して本発明を説明した。しかしながら当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の実施において、図面、本開示および添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態についての他の変形形態を理解して実施することができる。このような修正は、当該技術分野においてすでに公知の他の特徴を含んでいてよく、本明細書においてすでに説明された特徴の代わりにまたはそれらに加えて使用可能である。特許請求の範囲において、「comprising(有する、含む)」という語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 駆動システム
2 入力インタフェース
3 同期モータ
4 第1装置
5 第2装置
6 スイッチ
7 駆動装置
8 センサ(位置センサおよび電流センサ)
9 パラメータ推定器
MRAC モデル規範形適応制御
図1
図2
【国際調査報告】