(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】モータパラメータを推定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H02P 31/00 20060101AFI20221208BHJP
H02P 21/14 20160101ALI20221208BHJP
【FI】
H02P31/00
H02P21/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522606
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020077928
(87)【国際公開番号】W WO2021073936
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アリ テッロ
(72)【発明者】
【氏名】カイ-スヴェン ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ゼガー ボンティンク
【テーマコード(参考)】
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
5H501DD04
5H501HB08
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ26
5H501LL22
5H501LL23
5H505DD08
5H505EE41
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ26
5H505LL22
5H505LL24
(57)【要約】
ここに示されているモータパラメータを推定するための装置(1)および方法(1’)は、電気モータの動作パラメータ(ud,q,id,q,ωe)を受け取ることと、動作パラメータ(ud,q,id,q,ωe)および最初に決定される第2モータパラメータ(Rs/0)に基づいて、推定第1モータパラメータ(ΨPM,1)を推定することと、動作パラメータ(ud,q,id,q,ωe)および最初に決定される第1モータパラメータ(ΨPM,0)に基づいて、推定第2モータパラメータ(Rs/1)を推定することと、を有する。装置(1)および方法(1’)はさらに、推定第1モータパラメータ(ΨPM,1)および動作パラメータ(ud,q,id,q,ωe)に基づいて、修正推定第2モータパラメータ(Rs/2)を推定することと、推定第2モータパラメータ(Rs/1)および動作パラメータ(ud,q,id,q,ωe)に基づいて、修正推定第1モータパラメータ(ΨPM,2)を推定することと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータパラメータを推定するための装置(1)であって、前記装置(1)は、
電気モータの動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)を受け取るように構成されている入力インタフェース(4)と、
前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)および最初に決定される第2モータパラメータ(R
s,0)に基づいて、推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,1)を推定する第1パラメータ推定アルゴリズム(5’)を実行するように構成されている第1装置(5)と、
前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)および最初に決定される第1モータパラメータ(Ψ
PM,0)に基づいて、推定第2モータパラメータ(R
s,1)を推定する第2パラメータ推定アルゴリズム(6’)を実行するように構成されている第2装置(6)と、を有し、
前記装置(1)はさらに、
前記推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,1)および前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)に基づいて、修正推定第2モータパラメータ(R
s,2)を推定する第3パラメータ推定アルゴリズム(7’)を実行するように構成されている第3装置(7)と、
前記推定第2モータパラメータ(R
s,1)および前記動作パラメータ(ud
,q,i
d,q,ω
e)に基づいて、修正推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,2)を推定する第4パラメータ推定アルゴリズム(8’)を実行するように構成されている第4装置(8)と、有する、モータパラメータを推定するための装置(1)。
【請求項2】
前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)は、検出電圧(u
d,q)、検出電流(i
d,q)、および検出電気速度(ω
e)のうちの少なくとも1つを有し、前記第1モータパラメータ(Ψ
PM)は、永久磁石鎖交磁束を有し、前記第2モータパラメータ(R
s)は、相抵抗を有する、請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記第1装置(5)および前記第4装置(8)は、前記第1パラメータ推定アルゴリズム(5’)および前記第4パラメータ推定アルゴリズム(8’)を実行する人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルを有し、
前記第2装置(6)および前記第3装置(7)は、前記第2パラメータ推定アルゴリズム(6’)および前記第3パラメータ推定アルゴリズム(7’)を実行するモデル規範形適用制御(MRAC)モデルを有する、請求項2記載の装置(1)。
【請求項4】
前記最初に決定される第1モータパラメータ(Ψ
PM,0)および前記最初に決定される第2モータパラメータ(R
s,0)は、一定値である、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第3装置(7)は、第3モータパラメータ(L
S)を推定するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項6】
前記第3モータパラメータ(L
S)は、インダクタンスを有する、請求項5記載の装置(1)。
【請求項7】
モータパラメータを推定する方法(1’)であって、前記方法(1’)は、次のステップ、すなわち、
動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)および最初に決定される第2モータパラメータ(R
s,0)に基づいて、推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,1)を推定するステップと、
前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)および最初に決定される第1モータパラメータ(Ψ
PM,0)に基づいて、推定第2モータパラメータ(R
s,1)を推定するステップと、
前記推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,1)および前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)に基づいて、修正推定第2モータパラメータ(R
s,2)を推定するステップと、
前記推定第2モータパラメータ(R
s,1)および前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)に基づいて、修正推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,2)を推定するステップと、を有する、方法(1’)。
【請求項8】
前記動作パラメータ(u
d,q,i
d,q,ω
e)は、検出電圧(u
d,q)、検出電流(i
d,q)および検出電気速度(ω
e)を有し、
前記第1モータパラメータ(Ψ
PM)は、相抵抗を有し、
前記第2モータパラメータ(R
s)は、永久磁石鎖交磁束を有する、請求項7記載の方法(1’)。
【請求項9】
前記推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,1)および前記修正推定第1モータパラメータ(Ψ
PM,2)の前記推定を人工ニューラルネットワーク(ANN)によって実行し、
前記推定第2モータパラメータ(R
s,1)および前記修正推定第2モータパラメータ(R
s,2)の前記推定をモデル規範形適応制御(MRAC)モデルによって実行する、請求項8記載の方法(1’)。
【請求項10】
前記最初に決定される第1モータパラメータ(Ψ
PM,0)および前記最初に決定される第2モータパラメータ(R
S,0)を一定値として設定する、請求項7から9までのいずれか1記載の方法(1’)。
【請求項11】
さらに、第3モータパラメータ(L
S)を推定するステップを有する、請求項7から11までのいずれか1記載の方法(1’)。
【請求項12】
前記第3モータパラメータ(L
S)は、インダクタンスを有する、請求項11記載の方法(1’)。
【請求項13】
プログラムがコンピュータによって実行される場合に前記コンピュータに請求項7から12までのいずれか1項記載の方法のステップを実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータパラメータ、特に、電気モータのモータパラメータをオンライン推定するための装置および方法に関する。
【0002】
モータのパラメータをオンライン推定することにより、電気モータの状態監視、例えば相障害の推定またはコイル温度の推定が可能になる。
【0003】
特に、コイル温度の推定には、相抵抗RSの正確な推定が必要である。しかしながら相抵抗RSの推定は、永久磁石鎖交磁束合ΨPMの値に依存する。さらに、負荷または速度が変化する間に、モデル化されない電圧損失が存在することにより、推定される相抵抗RSに偏差が生じる。
【0004】
「モデル規範形適応制御器(MRAC:Model Reference Adaptive Controller)」および「アダラインニューラルネットワーク(ANN:Adaline Neural Network)」は、よく知られたパラメータ推定アルゴリズムである。特に、MRACアルゴリズムは、相抵抗RSを推定するために使用可能であり、ANNアルゴリズムは、永久磁石鎖交磁束ΨPMを推定するために使用可能であり、これにより、これら2つのアルゴリズムを組み合わせるアルゴリズムは、要求される推定に適していると思われる。
【0005】
しかし、ランク落ちにより、永久磁石鎖交磁束ΨΡΜと相抵抗RSとの同時推定は、規範形制御下では不可能であり、これにより、直流電流は0にセットされる(Id=0A)。そのため、MRACモデルでは、相抵抗RSを推定するために永久磁石磁束連鎖ΨPMを一定値にセットし、ANNモデルでは、永久磁石鎖交磁束鎖ΨPMを推定するために相抵抗RSを一定値にセットする。しかしながらこれらのモデルは、負荷および速度が変化する間の、モデル化されない電圧損失を考慮しておらず、したがって推定パラメータは、それらの実際値から偏差する。しかしながらこれらの偏差は、コイル温度推定において誤差を生じてしまう。
【0006】
したがって、本発明の根底にある課題は、上記の欠点を回避し、発生している動作条件についてのモータパラメータの正確な推定を可能にする装置および方法を提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1記載の装置、請求項7記載の方法、および請求項13記載のコンピュータプログラム製品によって達成される。有利な別の発展形態は、従属請求項に含まれている。
【0008】
本発明の1つの態様によると、モータパラメータを推定するための装置は、モータの動作パラメータを受け取るように構成されている入力インタフェースと、動作パラメータおよび最初に決定される第2モータパラメータに基づいて、推定第1モータパラメータを推定する第1パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている第1装置と、動作パラメータおよび最初に決定される第1モータパラメータに基づいて、推定第2モータパラメータを推定する第2パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている第2装置と、を有する。上記の装置はさらに、推定第1モータパラメータおよび動作パラメータに基づいて、修正推定第2モータパラメータを推定する第3パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている第3装置と、推定第2モータパラメータおよび動作パラメータに基づいて、修正推定第1モータパラメータを推定する第4パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている第4装置と、を有する。
【0009】
このような装置により、モータパラメータのより正確な推定を提供するために、モデル化されない動作パラメータの影響を考慮することができる。
【0010】
この装置の有利な実装形態では、動作パラメータは、検出電圧、検出電流、および検出電気速度のうちの少なくとも1つを有し、第1モータパラメータは、永久磁石鎖交磁束を有し、第2モータパラメータは、相抵抗を有する。
【0011】
これらの動作パラメータおよび推定すべきモータパラメータを選択することにより、コイル温度の推定に必要なモータパラメータの推定を正確に行うことができる。
【0012】
上記の装置の別の有利な実装形態では、第1装置および第4装置は、パラメータ推定アルゴリズムを実行する人工ニューラルネットワークモデルを有し、第2装置および第3装置は、第2パラメータ推定アルゴリズムおよび第3パラメータ推定アルゴリズムを実行するモデル規範形適用制御モデルを有する。
【0013】
モータパラメータの推定のためにそれぞれのパラメータ推定アルゴリズムを構成することにより、適切なパラメータ推定アルゴリズムが構成され、モータパラメータの正確かつ効果的な推定が可能である。
【0014】
上記の装置の別の有利な実装形態では、最初に決定される第1モータパラメータおよび最初に決定される第2モータパラメータは、一定値である。
【0015】
このように決定することにより、推定のための適切な開始値が得られる。
【0016】
この装置のさらに別の有利な実装形態では、第3装置または第4装置は、第3モータパラメータを推定するように構成されている。
【0017】
別のパラメータをより正確な仕方で推定することにより、コイル温度の推定を改善することができるか、または別のパラメータの推定が可能になる。
【0018】
上記の装置のさらに別の有利な実装形態では、第3モータパラメータはインダクタンスを有する。
【0019】
インダクタンスを推定することにより、コイルの障害を特定することができる。
【0020】
本発明の別の態様によると、方法には、次のステップが含まれている。すなわち、動作パラメータおよび最初に決定される第2モータパラメータに基づいて、推定第1モータパラメータを推定するステップと、動作パラメータおよび最初に決定される第1モータパラメータに基づいて、推定第2モータパラメータを推定するステップと、推定第1モータパラメータおよび動作パラメータに基づいて、修正推定第2モータパラメータを推定するステップと、推定第2モータパラメータおよび動作パラメータに基づいて、修正推定第1モータパラメータを推定するステップと、が含まれている。
【0021】
このような方法により、モータパラメータのより正確な推定を提供するために、モデル化されない動作パラメータの影響を考慮することができる。
【0022】
この方法の有利な実装形態では、動作パラメータは、検出電圧、検出電流および検出電気速度を有し、第1モータパラメータは、相抵抗を有し、第2モータパラメータは、永久磁石鎖交磁束を有する。
【0023】
この方法においてこれらの動作パラメータおよびモータパラメータを選択することにより、コイル温度を推定するのに必要なモータパラメータの推定を正確に実行することができる。
【0024】
この方法の別の有利な実装形態では、推定第1モータパラメータおよび修正推定第1モータパラメータの推定を人工ニューラルネットワークによって実行し、推定第2モータパラメータおよび修正推定第2モータパラメータの推定をモデル規範形適応制御モデルによって実行する。
【0025】
モータパラメータの推定にそれぞれのパラメータ推定アルゴリズムを使用することにより、適切なパラメータ推定アルゴリズムが使用され、モータパラメータの正確かつ効果的な推定が可能である。
【0026】
上記の方法の別の有利な実装形態では、最初に決定される第1モータパラメータおよび最初に決定される第2モータパラメータを一定値として設定する。
【0027】
このように決定することにより、推定のための適切な開始値が使用される。
【0028】
さらに別の有利な実装形態では、方法はさらに、第3モータパラメータを推定するステップを有する。
【0029】
別のモータパラメータを推定することにより、コイル温度の推定を改善することができるか、または別のモータパラメータの推定が可能になる。
【0030】
別の有利な実装形態によると、第3モータパラメータにはインダクタンスが含まれる。
【0031】
別の態様によると、コンピュータプログラム製品は、プログラムがコンピュータによって実行される場合にコンピュータにこの方法のステップを実行させる命令を有する。
【0032】
インダクタンスを推定することにより、コイルの障害を特定することができる。
【0033】
以下では、添付の図面を参照する実施形態により、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明による装置およびアルゴリズムのブロック図である。
【
図2】本発明による装置または方法の有効性を示す図である。
【0035】
図1には、本発明による装置およびアルゴリズムのブロック図が示されている。
【0036】
装置として構成されている実施形態において、参照符号1は、電気モータ(図示せず)のモータパラメータを推定する装置を示している。
【0037】
第1モータパラメータは、永久磁石鎖交磁束ΨΡΜを有する。第2モータパラメータは、相抵抗RSを有する。択一的には、別のモータパラメータも推定可能である。
【0038】
装置1は、第1推定器2および第2推定器3を有する。さらに、装置1は、入力インタフェース4を有する。
【0039】
入力インタフェース4は、電気モータの動作パラメータを受け取る。入力インタフェース4は、検出電圧ud,q、検出電流id,qおよび検出電気速度ωeを受け取る。択一的な実施形態では、これらの動作パラメータのすべて入力されるわけではなく、または付加的な動作パラメータが入力される。
【0040】
第1推定器2はそれぞれパラメータ推定アルゴリズムを実行する、人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルを備えた第1装置5と、モデル規範形適応制御(MRAC)モデルを備えた第2装置6とを有する。択一的には、装置の別の量、ただ1つまたは3つ以上のモデル、または別の種類のモデル、例えば、拡張カルマンフィルタ(EKF:Extended-Kalman-Filter)を設けることができる。
【0041】
第1装置5は、動作パラメータud,q,id,q,ωeおよび最初に決定される第2モータパラメータRS,0に基づいて、推定第1モータパラメータΨPM,1を推定する人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルにしたがって、第1パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている。
【0042】
第2装置6は、動作パラメータud,q,id,q,ωeおよび最初に決定される第1モータパラメータΨPM,0に基づき、推定第2モータパラメータRS,1を推定するモデル規範形適応制御(MRAC)モデルにしたがって、第2パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている。
【0043】
第2推定器3は、パラメータ推定アルゴリズムをそれぞれ実行する、モデル規範形適応制御(MRAC)モデルを備えた第3装置7と、人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルを備えた第4装置8とを有する。択一的には、装置の別の量、ただ1つまたは3つ以上のモデル、または別の種類のモデル、例えば、同時学習適応制御を設けることができる。
【0044】
第3装置7は、推定第1モータパラメータΨΡΜ,1および動作パラメータud,q,id,q,ωeに基づき、修正推定第2モータパラメータRS,2を推定するモデル規範形応制御(MRAC)モデルにしたがって、第3パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている。
【0045】
さらに第3装置7により、第3モータパラメータLSを推定する。第3モータパラメータは、インダクタンスを有する。択一的には、別の第3モータパラメータが推定されるか、または第3モータパラメータは推定されない。
【0046】
第4装置8は、推定第2モータパラメータRs,1および動作パラメータud,q,id,q,ωeに基づき、修正推定第1モータパラメータΨPM,2を推定する人工ニューラルネットワーク(ANN)にしたがって、第4パラメータ推定アルゴリズムを実行するように構成されている。
【0047】
最初に決定される第1モータパラメータΨPM,0および最初に決定される第2モータパラメータRs,0は、一定値である。択一的には、最初に決定されるモータパラメータは変数値である。
【0048】
推定器2,3および装置5,6,7,8は、別々のモジュールとして図示されているが、択一的には、これらは完全にまたは部分的に、1つまたは複数のモジュールに統合されていてよい。
【0049】
方法として構成されている実施形態では、参照符号1’は、電気モータのモータパラメータを推定する方法を示している。
【0050】
使用時には、モータパラメータ1’を推定する方法により、動作パラメータud,q,id,q,ωを入力する。さらに、最初に決定される第2モータパラメータRs,0と、最初に決定される第1モータパラメータΨPM,0とを設定する。
【0051】
動作パラメータud,q,id,q,ωeおよび最初に決定される第2モータパラメータRs,0に基づき、第1パラメータ推定アルゴリズム5’により、推定第1モータパラメータΨPM,1を推定する。さらに、動作パラメータud,q,id,q,ωeおよび最初に決定される第1モータパラメータΨPM,0に基づき、第2パラメータ推定アルゴリズム6’により、推定第2モータパラメータRs,1を推定する。
【0052】
さらに、動作パラメータud,q,id,q,ωeおよび推定第1モータパラメータΨPM,1と基づき、第3パラメータ推定アルゴリズム7’により、修正推定第2モータパラメータRs,2を推定する。さらに、動作パラメータud,q,id,q,ωeおよび推定第2モータパラメータRs,1に基づき、第4パラメータ推定アルゴリズム8’により、修正推定第1モータパラメータΨPM,2を推定する。
【0053】
第1パラメータ推定アルゴリズム5’および第2パラメータ推定アルゴリズム6’は、装置でもソフトウェアモジュールでもある第1推定器2’の構成要素である。第3パラメータ推定アルゴリズム7’および第4パラメータ推定アルゴリズム8’は、装置でもソフトウェアモジュールでもある第1推定器3’の構成要素である。
【0054】
上述のように、第1モータパラメータは、永久磁石鎖交磁束ΨPMを有し、第2モータパラメータは、相抵抗RSを有する。択一的には、他のモータパラメータも推定可能である。
【0055】
人工ニューラルネットワーク(ANN)モデルにより、推定第1モータパラメータΨPM,1および修正推定第1モータパラメータΨPM,2の推定を実行し、モデル規範形適応制御(MRAC)モデルにより、推定第2モータパラメータRs,1および修正推定第2モータパラメータRs,2の推定を実行する。同様に上述したように、ただ1つの種類のモデルによって、または別の種類のモデル、例えば同時学習適応制御によって推定を実行することができる。
【0056】
最初に決定される第1モータパラメータΨPM,0および最初に決定される第2モータパラメータRs,0は、一定値として設定される。択一的には、これらは、変数値であってよい。
【0057】
第3パラメータ推定アルゴリズム7’によってさらに、インダクタンスLSである第3モータパラメータを推定する。択一的には、別のモータパラメータを推定するか、または別のモータパラメータを推定しない。
【0058】
図2には、本発明による装置および方法の有効性を示す図が示されている。
【0059】
上側の図は、第2モータパラメータRSを示し、中央の図はインダクタンスLSを示し、下側の図は、第1モータパラメータΨΡΜを示す。左側には、第1推定器(2,2’)の推定結果が示されている。右側には、第2推定器(3,3’)の推定結果が示されている。
【0060】
実線は、推定値を示し、破線は、測定値を示す。
【0061】
12秒にモータ速度が増大し、7秒および18秒に、加えられる負荷トルクが増大する。
【0062】
第1推定器(2,2’)の結果を示す図では、モータ速度および加えられる負荷における増大に起因する推定パラメータの偏差が見られる。さらに、第2推定器(3,3)の結果における右側の図に見られるように、本発明による装置およびアルゴリズムにより、結果が大幅に改善される。というのは、変化の時点における短いピークを除いて、動的な負荷変化中、修正推定パラメータΨPM,2およびRs,2は、変化しないままであるからである。
【0063】
本明細書のさまざまな実施形態に関連して本発明を説明した。しかしながら当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の実施において、図面、本開示および添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態についての他の変形形態を理解して実施することができる。このような修正は、当該技術分野においてすでに公知の他の特徴を含んでいてよく、本明細書においてすでに説明された特徴の代わりにまたはそれらに加えて使用可能である。特許請求の範囲において、「comprising(有する、含む)」という語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外するものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 モータパラメータを推定するための装置
1’ モータパラメータを推定する方法
2 第1推定器
2’ 第1推定器
3 第2推定器
3’ 第2推定器
4 入力インタフェース
5 第1装置
5’ 第1パラメータ推定アルゴリズム
6 第2装置
6’ 第2パラメータ推定アルゴリズム
7 第3装置
7’ 第3パラメータ推定アルゴリズム
8 第4装置
8’ 第4パラメータ推定アルゴリズム
ΨPM 第1モータパラメータ(永久磁石鎖交磁束)
ΨPM,0 最初に決定される第1モータパラメータ
ΨPM,1 推定第1モータパラメータ
ΨPM,2 修正推定第1モータパラメータ
RS 第2モータパラメータ(相抵抗)
Rs,0 最初に決定される第2モータパラメータ
Rs,1 推定第2モータパラメータ
Rs,2 修正推定第2モータパラメータ
LS 第3モータパラメータ(インダクタンス)
ud,q 検出電圧
id,q 検出電流
ωe 検出電気速度
ANN 人工ニューラルネットワーク
MRAC モデル規範形適応制御
【国際調査報告】