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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】多出力型マルチブリッジ電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221208BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02M3/28 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522637
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 US2020055933
(87)【国際公開番号】W WO2021076859
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/001318
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522149290
【氏名又は名称】ジュー フイビン
(71)【出願人】
【識別番号】522149304
【氏名又は名称】ジュー カレン ミン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジュー フイビン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー カレン ミン
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB83
5H730BB88
5H730FG05
5H770BA02
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA26
5H770DA30
5H770DA33
5H770DA37
5H770DA41
5H770EA01
(57)【要約】
本開示の一実施例により、直流(DC)バスに接続され、両方が非絶縁出力にパルス幅変調(PWM)電圧を生成する少なくとも2つのスイッチングブリッジと、前記2つのスイッチングブリッジの出力間に接続される一次巻線と、及び絶縁出力に接続される二次巻線とを有する絶縁変圧器とを含む、電力変換器を提供する。非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作するように構成され、前記DCバスと前記非絶縁出力の間で電力が伝送される。絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作するように構成され、前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で電力が伝送される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器であって、
電源に接続されるように構成された直流(DC)バスと、
両方とも前記DCバスに接続され、非絶縁出力にパルス幅変調(PWM)電圧を生成する、第1のスイッチングブリッジ及び第2のスイッチングブリッジと、
前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジの前記出力の間に接続された一次巻線を有し、及び絶縁出力に接続された二次巻線を有する、変圧器と、
を備え、
非絶縁モードでは、前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジは、並列モードで動作するように構成され、電力は前記DCバスと前記非絶縁出力の間で伝送され、
絶縁モードでは、前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジは、フルブリッジモードで動作するように構成され、電力は前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で伝送される、
電力変換器。
【請求項2】
少なくとも2つの異なる動作モードに従って、PWM同期及び位相シフトを用いて、前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジを動作させる制御部を備え、
前記非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、前記PWMスイッチング信号は前記2つのブリッジ間で位相が同期され、従って、電力は前記DCバスと前記非絶縁出力の間で伝送され、
前記絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作し、前記PWMスイッチング信号は前記2つのブリッジ間で位相がずれており、従って、電力は前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で伝送される、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
1つ以上の追加の断路スイッチが、前記一次側又は前記二次側で、前記絶縁変圧器の巻線と直列に接続され、少なくとも2つの異なる動作モードに従って動作し、
前記非絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチは開いたままで、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、前記PWMスイッチング信号は前記2つのブリッジ間の位相シフト角と同期してインターリーブされ、前記非絶縁出力の間で有効な前記PWMスイッチング周波数を増加させ、
前記絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチは閉じたままで、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作し、前記PWMスイッチング信号は前記2つのブリッジ間で位相がずれており、電力は前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で伝送される、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項4】
前記変換器スイッチングブリッジは、2レベル、3レベル、5レベル、又はダイオード中性点クランプ(NPC)マルチレベル変換器、アクティブNPC(ANPC)マルチレベル変換器、フライングコンデンサマルチレベル変換器、又は前記ブリッジ間の任意の異なるマルチレベルトポロジの組み合わせといった任意のマルチレベル変換器トポロジを使用する、請求項1記載の電力変換器。
【請求項5】
前記電力変換器は、3つ、4つ、又はそれ以上の数のスイッチングブリッジを含み、複数の別個の絶縁変圧器に接続されるか、複数の巻線が一緒に結合された同一の絶縁変圧器に接続されるか、又は異なる変圧器構成の混合に接続される、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項6】
絶縁型バッテリ充電システムと統合された非絶縁型PWMインバータとして更に構成され、
主接触器又はスイッチを通じて前記DCバスに接続された多数のバッテリセルを含むバッテリと、
DC-ACインバータを形成し、非絶縁出力にPWM電圧を生成するための、2つ以上の対の変換器ブリッジと、
1つ以上の絶縁変圧器であって、各対の変換器ブリッジの前記出力の間に接続された一次巻線を有し、及び前記バッテリを充電するためのDC電圧を生成する任意の種類の電力変換器に接続された二次巻線を有する、1つ以上の絶縁変圧器と、
を含み、
前記非絶縁モードでのインバータ動作中、前記バッテリ主接触器は閉じられており、変換器ブリッジの各対の内で、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、
前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開かれており、変換器ブリッジの各対の内で、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作する、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記PWMインバータ非絶縁出力は、互いに分離された2組以上のモータ巻線を有するACモータを駆動するための電力を供給し、前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、モータ巻線の同じ組に接続されたスイッチングブリッジ間で追加のPWMゲートスイッチング同期が行われ、従って、モータ巻線の各組は、意図しないモータ循環電流を低減するために、前記モータ端子間の差動電圧がほぼゼロで励起される、請求項6に記載の電力変換器。
【請求項8】
AC電源が、AC-DC整流器を通じて間接的に前記DCバスに接続され、前記AC-DC整流器のハードウェアは、前記整流器が必要とするインダクタとして前記モータ巻線を使用するか否かに関わらず、前記AC電源から電力を引き出すために、前記インバータスイッチングブリッジの一部又は全部の組を逆電力方向で動作させることによって統合されて、その力率補正機能が実現されている、請求項6に記載の電力変換器。
【請求項9】
絶縁バッテリ充電システムと統合された非絶縁DC昇圧変換器として更に構成され、
DC-DC昇圧変換器として形成された1対以上の変換器ブリッジであって、入力は主接触器スイッチ及び1以上のインダクタを通じてバッテリに接続され、出力は前記DCバスに接続されている、1対以上の変換器ブリッジと、
1以上の絶縁変圧器であって、各対の変換器ブリッジの前記出力の間に接続された一次巻線と、任意の種類の電力変換器に接続された二次巻線とを有し、前記バッテリを充電するためにDC電圧を生成する、1以上の絶縁変圧器と、
を含み、
前記非絶縁モードでのDC昇圧動作中、前記バッテリ主接触器は閉じられており、各対の変換器ブリッジ内で前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、
前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開かれており、各対の変換器ブリッジ内で前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作する、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項10】
前記昇圧インダクタは、一部又は全部が前記絶縁変圧器の設計に組み込まれており、前記バッテリ入力は、前記主接触器を通じて、前記絶縁変圧器の一次巻線の中点に接続され、従って、前記変圧器巻線は、追加の別の(単複の)インダクタの有無に関わらず、結合昇圧インダクタとして使用される、請求項9に記載の電力変換器。
【請求項11】
ACモータを駆動する前記DCバスに接続されたPWMインバータを更に備え、前記PWMインバータは、PFC整流器として逆電力潮流で動作し、AC電源から電力を引き込み、前記ACモータ巻線を前記整流器に必要なインダクタとして使用するか否かを決定する、請求項9に記載の電力変換器。
【請求項12】
電力変換器を設計する方法であって、
直流(DC)バスに電源を供給するステップと
2つのスイッチングブリッジの対を形成するステップであって、前記DCバスに両方とも接続され、非絶縁出力にパルス幅変調(PWM)電圧を生成する、2つのスイッチングブリッジの対を形成するステップと、
前記2つのスイッチングブリッジの前記出力の間に接続される一次巻線と、絶縁出力に接続される二次巻線とを有する変圧器を配置するステップと、
を含み、
非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジを並列モードで動作させ、前記DCバスと前記非絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジをフルブリッジモードで動作させ、前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
を含む、
電力変換器を設計する方法。
【請求項13】
制御部を設計し、少なくとも2つの異なる動作モードに従って前記2つのスイッチングブリッジを動作させるステップを更に含み、
前記非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジを並列モードで動作させ、前記2つのブリッジ間で前記PWMスイッチング信号を位相で同期させ、前記DCバスと前記非絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
前記絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジをフルブリッジモードで動作させ、前記2つのブリッジ間の前記PWMスイッチング信号の位相をずれるようにシフトさせ、前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
を含む、請求項12に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項14】
前記一次側又は前記二次側のいずれかにおいて、前記絶縁変圧器の巻線と直列に1以上の追加の断路スイッチを接続するステップを更に含み、
前記非絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチを開いたままにし、前記2つのスイッチングブリッジを並列モードで動作させ、前記2つのブリッジ間で前記PWMスイッチング信号を位相で同期させ、前記非絶縁出力全体で有効な前記PWMスイッチング周波数が増加するように、前記PWM信号を位相シフト角度でインターリーブさせるステップと、
前記絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチを閉じたままにし、前記2つのスイッチングブリッジをフルブリッジモードで動作させ、前記2つのブリッジ間で位相がずれるように前記PWMゲート信号を位相シフトし、前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
を含む、請求項12~13のいずれか1項に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項15】
2レベル、3レベル、5レベル、又はダイオード中性点クランプ(NPC)マルチレベル変換器、アクティブNPC(ANPC)マルチレベル変換器、フライングキャパシタ・マルチレベル変換器、又は前記ブリッジ間の任意の異なるマルチレベルトポロジの組み合わせといった任意のマルチレベル変換器トポロジを用いて、前記変換器スイッチングブリッジを設計するステップを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項16】
前記電力変換器を3、4、又はそれ以上の数のスイッチングブリッジで構成し、複数の別個の絶縁変圧器に接続するか、複数の巻線が結合された同じ絶縁変圧器に接続するか、異なる変圧器構成の混合に接続する、ステップを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項17】
電気自動車であって、
主接触器又はスイッチを通じてDCバスに接続されたバッテリと、
DC-ACインバータを形成し、非絶縁出力にPWM電圧を生成する2以上の変換器ブリッジの対と、
1以上の絶縁変圧器であって、前記変換器ブリッジの各対の前記出力の間に接続される一次巻線と、前記バッテリを充電するためのDC電圧を生成するための任意の種類の電力変換器に接続される二次巻線とを有する、1以上の絶縁変圧器と、
を備え、
非絶縁モードでのインバータ動作中、前記バッテリ主接触器は閉じており、変換器ブリッジの各対の内で、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作するように構成され、
絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開いており、変換器ブリッジの各対の内で、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作するように構成される、
電気自動車。
【請求項18】
前記PWMインバータ非絶縁出力は、互いに分離している2以上のモータ巻線の組を有するACモータを駆動するための電力を供給し、前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、モータ巻線の同じ組の間に接続されているスイッチングブリッジ間で追加のPWMゲートスイッチング同期が適用され、従って、モータ巻線の各組は、任意の意図しないモータ循環電流を低減するために、前記モータの端子間の差動電圧がほぼゼロで励起される、請求項17に記載の電気自動車。
【請求項19】
DC-DC昇圧変換器を形成するための1以上の変換器ブリッジの対であって、入力は主接触器スイッチ及び1以上のインダクタを通じてバッテリに接続され、出力はDCバスに接続される、1以上の変換器ブリッジの対と、
1以上の絶縁変圧器であって、各対の変換器ブリッジの前記出力の間に接続される一次巻線と、前記バッテリを充電するためのDC電圧を生成するための任意の種類の電力変換器に接続される二次巻線とを有する、1以上の絶縁変圧器と、
を備え、
非絶縁モードでのDC昇圧動作中、前記バッテリ主接触器は閉じており、変換器ブリッジの各対内で、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作するように構成され、
絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開いており、変換器ブリッジの各対内で、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作するように構成される、
電気自動車。
【請求項20】
前記昇圧インダクタは、一部又は全部が前記絶縁変圧器の設計に組み込まれており、前記バッテリ入力は、前記主接触器を通じて前記絶縁変圧器一次巻線の中点に接続され、従って、前記変圧器巻線は、追加の別の(単複の)インダクタの有無に関わらず、結合昇圧インダクタとして用いられる、請求項19に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気自動車で使用される電力変換器などの電力回路の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー産業は近年急速な成長を遂げており、それに伴いパワーエレクトロニクス技術の更なる改良が求められている。例えば、電気自動車(EV)の普及に伴い、モータ駆動用インバータやバッテリ充電器がEVの主要な部品となっている。コスト、効率、寸法、及び重量の継続的な改良に対する要求は、EVのモータ駆動用インバータ及びバッテリ充電器の設計における課題を提起している。
【0003】
EVに搭載されるバッテリパックは、様々な異なる定格の電圧及び容量のものを含む。従って、EVは、広範囲のバッテリ電圧及び電流値で充電するための適切な充電器を必要とし、これは特に、バッテリ充電器製品サプライヤ及び商用急速充電器ステーションにとって大きな課題となっている。
【0004】
バッテリ充電器の電力変換器は、高電圧及び大電流のために潜在的に危険である。ガルバニック絶縁は、電気安全上の危険性を低減し、電力変換器内の部品が故障した場合に、故障の伝播を止めることができる可能性がある。従って、ガルバニック絶縁は、IEC、IEEE、UL、SAE等のいくつかの安全規格で要求される場合があり、この必須要件は、オンボードバッテリ充電器(OBCs)と同様に、オフボード充電器にも当てはまる。
【0005】
EVバッテリ充電器は、交流(AC)電力を直流(DC)電力に変換するための電気回路を備え、通常2つの段階、即ち、AC-DC段階及びDC-DC段階で設計されている。AC-DC段階は、AC入力電圧(典型的には、AC商用電源から)をDCバス電圧に変換し、DCバス電圧を負荷としてのDC-DC段階に適した望ましい範囲内になるように調整することである。AC-DC段階は、様々な電磁干渉(EMI)フィルタと、複数のダイオード及びアクティブスイッチング装置を採用した力率補正(PFC)変換器回路(又は即ち、PFC整流器)とを備えることができる。
【0006】
EMIフィルタは、各種EMI規制を満たすために、EVに搭載された他の装置との干渉を引き起こす可能性のある高周波ノイズを低減するために採用される。PFC変換器回路は、入力線電流を正弦波かつAC電源の正弦波入力電圧と同位相になるように整形し、回路動作を力率1に保つことができる昇圧PFC変換器として実装することができる。一方、PFC変換器回路は、その出力を調節してDCバス電圧を所定の目標の範囲内に維持し、安定した電力潮流と安全な動作を実現する。
【0007】
EVバッテリ充電器におけるAC-DC段階に続く段階として、DC-DC段階がDCバスの出力と複数のバッテリの間に接続される。DC-DC段階は通常、1つの一次巻線と二次巻線を有する絶縁変圧器に給電する、高周波スイッチングDC-DC変換器を備えることができる。二次側には、絶縁変圧器の二次巻線の出力を、EVバッテリを充電するためのDC電圧に調整するための別の整流回路が設けられている。また、DC-DC変換器は、バッテリ充電電流を調整し、バッテリの充電状態を維持することができる。
【0008】
バッテリの電力でEV走行用モータを駆動するために、インバータ方式のモータ制御部(MCU)が使用されている。インバータは、バッテリのDC電圧をパルス幅変調(PWM)AC出力電圧波形に変換して、モータ巻線電流を必要に応じて調整するものである。その目的は、モータの低速領域で高トルクを生成させ、モータの高速領域でMCUの命令に従って高出力を供給することであり、これは通常、モータとインバータシステムの設計のトレードオフにおいて難題を生じさせる。
【0009】
通常、モータの高トルク出力には、ロータの永久磁石材料をより多く必要とし、これにより最大モータ巻線電流が減少し、従って、モータフレームの寸法が縮小する。しかし、ロータの永久磁石材料が多いということは、誘導逆起電力(EMF)がより高くなることを意味する。逆起電力がDCバス電圧値に達すると、MCUはモータに電力供給できなくなり、又はモータを更に高速回転域で駆動することができなくなる。この設計上の問題は、通常、DC-DC昇圧変換器の採用の有無に関わらず、弱め界磁制御によって解決される。
【0010】
弱め界磁制御と呼ばれる技術は、永久磁石の磁束の一部を打ち消し、モータ高速回転域において、逆起電力がDCバス電圧値を下回るように下げるために使用される。弱め界磁制御の欠点は、モータ効率が劇的に低下することで、特に深い弱め界磁の場合では数パーセントも低下し、これはEVの燃費のために明らかに大きな代償である。更に、インバータは、弱め界磁制御時に大きな無効電流を許容しなければならず、機器の定格やコストが高くなり、更にインバータ効率も低下することになる。
【0011】
DC-DC昇圧変換器は、バッテリとインバータに電力を供給するDCバスとの間に挿入するために使用することができる。モータが高速で動作する場合、昇圧変換器はDCバス電圧を上昇させることができる。その結果、インバータはモータ巻線に高い出力電圧を生成させて逆起電力を克服し、弱め界磁無しで高いモータ速度領域で連続的な電力供給を達成することができる。この昇圧変換器による解決策には追加コストがかかるが、インバータ効率やモータ効率の向上により、インバータ側でそのコストをある程度は相殺することができる。
【0012】
モータ、インバータ、及び車載バッテリ充電器等のパワートレイン部品は、EVの総材料コストのかなりの部分を占めている。一般的なEV用インバータは、モータ駆動によるピーク電力需要があるため、通常60kW~200kWの定格である。車載バッテリ充電器は、コストやスペースの制限のため、6kW~22kW程度の定格である。インバータは絶縁を必要としないが、OBC電力段階は変圧器の絶縁を必要とする。従って、絶縁の必要性と定格電力の違いにより、インバータとOBCは、通常それぞれ別々のハードウェアと異なるサブシステムによって具現化されている。
【0013】
更なるコスト削減と小型・軽量化のためには、インバータとOBCシステムを統合し、EVモータ駆動用とバッテリ充電用の間で共通の電力変換器ハードウェアを再利用する可能性を検討することが真に必要である。実際、インバータとOBCの統合については多くの論文が発表されている。しかし、電力変換器トポロジの重要な領域において、インバータとOBCシステムの必要な絶縁とコンパクトな統合を実現するための、適切で実用的な解決策はまだ見つかっていない。
【発明の概要】
【0014】
これら及び他の問題は、複数の出力を有する複数のブリッジ変換器(即ち、マルチブリッジ変換器)の新しい概念を提案する本開示の好ましい実施形態によって、一般に解決又は回避されると考えられ、技術的利点が一般に達成される。マルチブリッジ変換器は典型的には、直流(DC)バスに接続された2つのスイッチングブリッジを含み、各ブリッジは、非絶縁出力にパルス幅変調(PWM)電圧を生成させる。絶縁変圧器は、2つのブリッジ出力の間に接続された一次巻線と、絶縁出力に接続された二次巻線とを備える。同じ変換器ハードウェアを使用して、異なるPWM電圧波形を生成させ、非絶縁出力又は絶縁出力にDCバス電力を供給するために、異なるゲートタイミング制御が行われるが、両方を同時に供給することはできない。非絶縁モードでは、2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、電力はDCバスと非絶縁出力の間で伝送される。絶縁モードでは、2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作し、電力は変圧器を通じてDCバスと絶縁出力の間で伝送される。
【0015】
非絶縁モードでは、マルチブリッジ変換器ブリッジは、それらのゲートスイッチング信号が位相同期して(即ち、位相シフト無しで)並列モードで動作し、変圧器全体で同じPWM電圧波形を生成させる。このため、変圧器巻線は意図した有意な差動電圧で励起されず、変圧器全体に有意な電力が供給されることはない。従って、電力は主にDCバスから非絶縁出力に伝送され、双方向の電力潮流が可能である。
【0016】
絶縁モードでは、マルチブリッジ変換器ブリッジは、フルブリッジモードで動作するように制御され、それらのゲートスイッチング信号は、位相シフトされて位相がずれているため、変圧器巻線は意図した有意な差動電圧で励起され、電力は主にDCバスから変圧器を通じて絶縁出力に伝送され、双方向の電力潮流が可能である。この際、非絶縁負荷への電力潮流を最小化又は停止するよう注意する必要があり、そのためには負荷セグメントの構成に特別な配置が必要になる場合がある。いずれにせよ、同じハードウェアを使用することで、マルチブリッジ変換器は異なるゲートタイミング制御下で、非絶縁出力と絶縁出力に電力を伝送することができる。
【0017】
一般に、複数のスイッチングブリッジを並列に動作させる場合、同期したPWMゲートスイッチング信号において、ブリッジ間の位相シフトを伴うインターリーブ動作が行われることは周知である。その利点は、実効PWMスイッチング周波数が高くなること、出力電圧及び電流のスイッチングリップルが小さくなること、EMIノイズスペクトルが潜在的に小さくなること等である。提案するマルチブリッジ変換器でインターリーブPWM動作を実現するために、一次側又は二次側の変圧器巻線に直列に断路スイッチを追加接続する。DCバスと非絶縁出力間で電力が伝送される非絶縁動作モードでは、変圧器の断路スイッチが開かれ、ブリッジのPWMスイッチングは、位相シフト角で同期してインターリーブされる。絶縁動作モードでは、変圧器の断路スイッチが閉じられ、2つのブリッジはフルブリッジモードで動作するように制御され、PWMスイッチング信号は、2つのブリッジ間で位相シフトされて位相がずれており、電力は変圧器を通じてDCバスと絶縁出力の間で伝送される。
【0018】
本開示の同じ考えの下、マルチブリッジ変換器のスイッチングブリッジは、2レベル、3レベル、5レベル、又はダイオード中性点クランプ(NPC)マルチレベル変換器、アクティブ中性点クランプ(ANPC)マルチレベル変換器、フライングキャパシタ・マルチレベル変換器、又はブリッジ間の任意の異なるマルチレベルトポロジの組み合わせといった任意のマルチレベル変換器トポロジを使用することが可能である。
【0019】
同様に、マルチブリッジ変換器は、複数の別個の絶縁変圧器に接続されるか、複数の巻線が結合された同じ絶縁変圧器に接続されるか、又は異なる変圧器設計の混合物に接続される、3、4、又は任意のより多くのスイッチングブリッジを含むことができるという例が本開示において示される。
【0020】
本開示の様々な実施形態による例示的な回路として、マルチブリッジ変換器は、統合EVモータ駆動用及び車載充電システム用の三相PWMインバータとして構成され、DC主接触器又はスイッチを通じてDCバスに接続された、多数のバッテリセルから成るバッテリパックと、ACモータを駆動する非絶縁出力のためのDC-ACインバータ動作を形成する3つのマルチブリッジ変換器と、変換器ブリッジ出力に接続された一次コイル及びバッテリパックを充電するためのDC電源を出力する、任意の種類の整流器に接続された二次コイルを有する絶縁変圧器とを備える。電源は、DCバスに直接接続された外部DC電源、又はAC-DC整流器を通じて間接的に接続された外部AC電源のいずれかからDCバスに接続される。
【0021】
制御部は、三相マルチブリッジ変換器をPWM同期と位相シフトを行いながら動作させる。非絶縁モードでのインバータ駆動動作中、バッテリ接触器が閉じられ、外部電源が差し込まれていないとき、各マルチブリッジ変換器内で、2つのスイッチングブリッジが並列モードで動作し、電力はDCバスと非絶縁出力の間で伝送される。絶縁動作モードでのバッテリ充電動作中、外部電源が接続され、バッテリ接触器が開いている間、各マルチブリッジ変換器内で2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作し、主に変圧器を通じてDCバスと絶縁出力の間で電力が伝送される。
【0022】
ここでEVモータは、2組のモータ巻線が互いに分離されている二重巻線モータ、又は二分割巻線ACモータである必要がある。モータ巻線の各組は、Y字型構成として見られることが最も多い。絶縁動作モードでのバッテリ充電動作中、同じ組のモータ位相巻線に接続されたそれらのスイッチングブリッジの間で、追加のゲートスイッチング同期が適用され、従って、モータ巻線の各組は、意図しないモータ循環電流を低減するために、モータ端子間の差動電圧がほぼゼロで励起される。
【0023】
本開示の様々な実施形態による例示的な回路として、マルチブリッジ変換器は、統合EV駆動用及び車載充電システム用のDC-DC昇圧変換器として構成される。この装置は、EV駆動インバータとACモータに給電するDCバスに出力するDC-DC昇圧変換器として形成された2つのスイッチングブリッジと、変換器ブリッジ出力の間に接続された一次巻線、及びバッテリパックを充電するDC電力を出力するための整流器に接続された二次巻線を有する絶縁変圧器と、同じバッテリパックがDC接触器、次に昇圧インダクタ、そして変換器ブリッジの中点出力に接続されており、更に電力変換器を通じて直接的又は間接的にDCバスに接続される電源とを備える。
【0024】
制御部は、PWM同期と位相シフトを行いながら、マルチブリッジ変換器を動作させる。非絶縁動作モードでのEV駆動昇圧動作中、バッテリ接触器は閉じられ、外部電源は差し込まれておらず、各マルチブリッジ変換器内では、2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、バッテリからDCバスへ双方向に電力が伝送される。絶縁動作モードでのバッテリ充電動作中、バッテリ接触器は開かれ、外部AC電源は接続されている。各マルチブリッジ変換器内では、2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作し、変圧器を通じてDCバスと絶縁出力の間で電力が伝送される。
【0025】
更にコストを削減するために、昇圧インダクタの一部又は全部を、絶縁変圧器の磁気設計に組み込むことができ、主接触器を通じて、バッテリ入力は絶縁変圧器の一次巻線の中点に接続されるため、追加の別個のインダクタの有無に関わらず、変圧器巻線は結合昇圧インダクタとして使用される。
【0026】
本開示の様々な実施形態によれば、AC-DC変換器(即ち、PFC整流器)は、完全に追加のハードウェア一式ではなく、むしろ整流器ハードウェア及び力率補正機能は、PFC整流器が必要とするインダクタとしてモータ巻線を使用するかどうかに関わらず、AC電源から電力を引き出すために、インバータブリッジの一部又は全部を逆電力方向で動作させて統合し、実現することができる。
【0027】
任意で、前述の形態のいずれかにおいて、マルチブリッジ変換器にわたる複数の絶縁変圧器は、別個の変圧器であってもよく、又は同じコア構成上に結合された複数の一次巻線と共通の二次巻線を有する統合変圧器であってもよい。
【0028】
任意で、前述の形態のいずれかにおいて、ACモータは、別個の電機子巻線の複数の組を有してもよく、各巻線の組は、マルチブリッジ変換器の別個のインバータ位相出力によって供給される。この別個の巻線構成は、コモンモード電圧に起因するモータ巻線における潜在的な循環電流を回避する。
【0029】
任意で、前述の形態のいずれかにおいて、マルチブリッジ変換器は、複数の別個のACモータを駆動させてもよく、各モータは、マルチブリッジ変換器の別々のインバータ位相出力によって供給される。
【0030】
簡略化された形態において、上記は、以下に続く本開示の詳細な説明がより良く理解されるように、本開示の特徴及び技術的利点をむしろ大まかに概説した。以下、本開示の特許請求の範囲の主題を形成する本開示の追加の特徴及び利点が説明される。開示された着想及び特定の実施形態は、本開示の同じ目的を遂行するための他の構成又は工程を、修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。また、そのような等価な構成は、添付の特許請求の範囲に規定される本開示の精神及び範囲から逸脱しないことも、当業者によって理解されるべきである。
【0031】
例えば本開示では、非絶縁動作モードにおいて、マルチブリッジ変換器はDC-ACインバータ及びDC-DC昇圧回路として構成されることが示されている。一方、非絶縁動作モードにおいて、マルチブリッジ変換器はDC-DC降圧回路を形成するように構成されていることは、ここでは示されていない。実際、マルチブリッジ変換器をDC-DC降圧回路で構成する方が遥かに容易であり、それは本開示で教示するのと同じ概念及び正確な着想の下にあるものである。
【0032】
別の例として、より多くの機能とより良い性能を可能にするために、一次側又は二次側の絶縁変圧器巻線と直列に断路スイッチを示している。同様に、断路スイッチをマルチブリッジ変換器の非絶縁出力と直列に接続することができ、これにより意図しない電力損失を低減することができ、又は単に制御を容易にすることができる。しかし、回路の任意の場所に断路スイッチを追加するような変更は、添付の特許請求の範囲に規定される本開示の精神及び範囲から逸脱するものではない。
【0033】
別の例として、本開示で例示した絶縁型DC-DC充電回路は、主にフルブリッジ位相シフト変換器、LLC変換器、又はデュアルアクティブブリッジ(DAB)変換器である。他の絶縁型DC-DCトポロジ又は異なるトポロジの組み合わせも、マルチブリッジ変換器回路の実装に適用可能であり、十分に適していることを理解されたい。そして、他の異なるDC-DCトポロジを使用するそのような修正は、添付の特許請求の範囲に規定される本開示の精神及び範囲から逸脱することはない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本開示の実施形態は、例として説明され、添付の図によって限定されることはない。
【0035】
図1A】本開示の様々な実施形態による、マルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図1B】本開示の様々な実施形態による、マルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図1C】本開示の様々な実施形態による、マルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図1D】本開示の様々な実施形態による、マルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図2A】本開示の様々な実施形態による、追加の変圧器断路スイッチを有するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図2B】本開示の様々な実施形態による、追加の変圧器断路スイッチを有するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図2C】本開示の様々な実施形態による、追加の変圧器断路スイッチを有するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図2D】本開示の様々な実施形態による、追加の変圧器断路スイッチを有するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図3A】本開示の様々な実施形態による、3レベルブリッジトポロジを使用するマルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図3B】本開示の様々な実施形態による、3レベルブリッジトポロジを使用するマルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図3C】本開示の様々な実施形態による、3レベルブリッジトポロジを使用するマルチブリッジ変換器の回路例とその動作波形を示す図である。
図4A】本開示の様々な実施形態による、3つのスイッチングブリッジを使用するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図4B】本開示の様々な実施形態による、3つのスイッチングブリッジを使用するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図4C】本開示の様々な実施形態による、3つのスイッチングブリッジを使用するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図4D】本開示の様々な実施形態による、3つのスイッチングブリッジを使用するマルチブリッジ変換器の2つの回路例とその動作波形を示す図である。
図5A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの単相インバータの回路例を示す図である。
図5B】非絶縁動作モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する図5Aに示す回路例の等価回路を示す図である。
図5C】絶縁動作モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する図5Aに示す回路の等価回路を示す図である。
図6A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの回路例を示す図である。
図6B図6Aに示す回路の非絶縁動作モードのおけるスイッチング波形の例を示す図である。
図6C図6Aに示す回路の絶縁動作モードにおけるスイッチング波形の例を示す図である。
図6D】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図6E】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図7A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図7B】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図8A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図8B】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図8C】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図8D】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図9A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合された2つのモータを駆動するマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図9B】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合された2つのモータを駆動するマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータの別の回路例を示す図である。
図10A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の回路例を示す図である。
図10B】非絶縁動作モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する図10Aに示す回路の等価回路を示す図である。
図10C】絶縁動作モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する図10Aに示す回路の等価回路を示す図である。
図10D】非絶縁モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する追加の変圧器断路スイッチを有する図10Aに示す回路例を示す図である。
図11A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
図11B】非絶縁動作モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する図11Aに示す回路の等価回路を示す図である。
図11C】絶縁動作モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する図11Aに示す回路の等価回路を示す図である。
図11D】非絶縁モードにおける、例示的なスイッチング波形を有する追加の変圧器断路スイッチを有する図11Aに示す回路例を示す図である。
図12】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
図13】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
図14】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
図15A】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
図15B】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
図15C】本開示の様々な実施形態による、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースのDC-DC昇圧変換器の別の回路例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本開示を、一般に、例えば電気自動車で使用され得る電力回路に関する図を参照して説明する。例えば、ここで説明する回路は、外部電源からバッテリを充電するため、及びバッテリを使用して電気モータを駆動するための電力を制御するため、使用され得る。
【0037】
EV電源システムは、部品の寸法、重量、及び変換器効率に敏感である。従来の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)や絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いた主流の電力変換器設計は、その性能限界に達し、窒化ガリウム(GaN)及び炭化ケイ素(SiC)MOSFETトランジスタ等の新世代の電力デバイスが効率、寸法、及び重量上の利点から採用されてきている。また、モータ駆動とバッテリ充電のような異なる機能を実行するために、共有ハードウェア回路を使用することは効率的であり、コストを節約することができる。モータ駆動とバッテリ充電システムを統合することは、コストと寸法においてさらなる利点を提供することができる。
【0038】
一般に、EVは、少なくとも2つの異なる電力源、例えば、充電ステーションからのDC電力と、商用AC電力網からのAC電力とからバッテリを充電できることが望ましい。従って、EV車載電源システムは、駆動モード又は牽引モード中に、EVモータを動作させるインバータ回路に加えて、DC及びACの両方の充電回路を含むことができる。
【0039】
EVのバッテリの充電は、車載充電回路の使用を含むことができる。バッテリからの電力を、電気自動車を推進するために、インバータを通じて1つ以上の電気モータに電力を供給するために使用することができる。場合によっては、特定の部品をこれらの回路で共有し、コストを削減し、効率を促進することができる。高度な高周波回路トポロジを用いて、車載充電回路とインバータ回路を統合し、車載充電器とインバータの間で共通の電力変換段(例えば、電力ブリッジ)を使用すると、EV電力システム全体的なコスト、寸法、及び重量を削減することができる。しかし、統合による解決策は、異なる電力定格、絶縁要件、及び広い電圧範囲によってもたらされる技術的な課題に対処する必要がある。
【0040】
本開示の本実施形態は、多くの異なる形態で実施され得ること、及び特許請求の範囲は、本明細書に示される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではないことが理解される。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に発明的実施形態の概念を完全に伝えるように提供される。実際、本開示は、これらの実施形態の代替物、修正物、及び等価物を網羅することを意図しており、これらは、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲及び精神の範囲内に含まれるものである。更に、本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、徹底的な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、当業者にとって、本開示の実施形態はそのような具体的な詳細なしに実施され得ることは明らかであろう。
【0041】
図1Aは、DCバス130に接続され、A相ブリッジ111の出力(即ち、ポートA)とB相ブリッジ112の出力(即ち、ポートB)との間に接続された一次巻線を有する絶縁変圧器120と結合されたマルチブリッジ110(2つのスイッチングブリッジ、即ち、A相ブリッジ111及びB相ブリッジ112から構成されるが、種々の実施形態において所望のように2つ以上のスイッチングブリッジから構成され得る)を含む、マルチブリッジ変換器100の概念図である。制御部140が異なるPWMゲート制御信号を生成してマルチブリッジ変換器100に供給することで、マルチブリッジ変換器100は、(i)2つのスイッチングブリッジが並列モードで動作し、DCバス130から非絶縁ポートA及びBに電力が供給される非絶縁動作モード、及び(ii)2つのスイッチングブリッジがフルブリッジモードで動作し、DCバス130から絶縁変圧器120を通じて絶縁ポートE及びFに電力が供給される絶縁動作モード、という少なくとも2つの異なるモードで動作させることができる。一般に、マルチブリッジ変換器100は、DC-DC又はDC-ACインバータシステムで使用することができる。
【0042】
図1Bは、マルチブリッジ変換器100の非絶縁動作モードに対するスイッチング波形の一例を示す図である。簡略化のため、各ブリッジのPWM信号におけるすべてのデッドタイムは無視されており、それは本開示全体における他のすべての例示的な波形についても同様である。2つのスイッチングブリッジ111、112は、変圧器120の一次巻線の間で位相シフトの無い同じPWM電圧波形を生成するために、ゲートオンオフ信号において同期され、従って、変圧器120の一次巻線は、いかなる有意な差動電圧(即ち、ポートAとポートBとの間の電圧を表す電圧VAB)でも励起されず、電力は主にDCバスから、双方向電力潮流の能力を有する非絶縁ポートA及びBに伝送される。非絶縁動作モードにおけるスイッチングの規則は、A相ブリッジ111とB相ブリッジ112の位相が完全に同期し、A相ブリッジ111のスイッチング素子S1、S2(IGBT、シリコンMOSFET、シリコンカーバイドMOSFET等)が、B相ブリッジ112のスイッチング素子S3、S4(IGBT、シリコンMOSFET、シリコンカーバイドMOSFET等)と同じゲート信号でオン・オフされることである。つまり、A相ブリッジ111とB相ブリッジ112は、同一のPWMゲート信号によって制御されているため、通常は完全に同期して動作する。そして、共通のPWMゲート信号は、通常、変換器100のデューティサイクル制御又はスペースベクトル変調の観点から、多変数の入出力閉ループ規則によって生成される。その結果、変圧器120の一次巻線は、A相ブリッジ111からの電圧VAとB相ブリッジ112からの電圧VBとの同一の電圧波形によって励起され、従って、変圧器120の二次巻線にかかる電圧VEFは平坦になり、理想的には「0」電圧に位置することになる。そのため、電力はDCバス130から非絶縁ポートA及びBに供給されるが、絶縁ポートE及びFには供給されない。完全でないゲート信号同期を伴うこの非絶縁動作モードでは、A相ブリッジ111及びB相ブリッジ112のスイッチングデバイスが同じタイミングでオン及びオフにならない場合があり、短い電圧パルス又はグリッチが変圧器120の二次ポートE及びFに見られる場合があるが、それらの短いパルスは全電力潮流の重要な部分を供給しないという事実のために許容し得ることに注意されたい。
【0043】
図1Cは、マルチブリッジ変換器100の絶縁動作モードに対するスイッチング波形の一例を示す図である。このモードでは、2つのスイッチングブリッジ111及び112は、フルブリッジモードで動作し、PWMスイッチング信号は、180°で位相シフトされ、2つのブリッジ間で正確に逆位相であり、従って、変圧器120の巻線は、意図した有意な差動電圧で励起され、電力は主にDCバス130から変圧器120を通じて絶縁出力(即ち、絶縁ポートE及びF)へ、双方向電力潮流の能力を有して供給される。A相ブリッジ111及びB相ブリッジ112は位相がずれており、同じゲートタイミング信号でオン・オフされることはない。実際には、2つのブリッジ111、112は逆位相で動作させることができ、A相ブリッジ111のスイッチングデバイスS1とB相ブリッジ112のスイッチングデバイスS4は、典型的には同時にオンされて、A相ブリッジ111のスイッチングデバイスS2とB相ブリッジ112のスイッチングデバイスS3は、典型的には同時にオンされ、意図した位相シフトが行われないようになっている。その結果、変圧器120の絶縁ポートE及びFは、方形波又は同様の波形を生成し、従って、電力は主にDCバス130から絶縁ポートE及びFに伝送される。この絶縁動作モードでは、非絶縁ポートA及びBへの電力潮流を最小限にすることが目的であり、その目的を達成するために、非絶縁ポートA及びBに接続される負荷配線、又は負荷構成について何らかの注意、又は特別な手配が必要となる場合があることは注目すべきことである。
【0044】
図1Dは、マルチブリッジ変換器100の絶縁動作モードに対するスイッチング波形の他の例を示す図である。ここでは、2つのスイッチングブリッジは、2つの位相ブリッジ間のPWMスイッチング信号(即ち、S1/S2対S3/S4)の意図された位相シフトを有するフルブリッジモードで動作する。簡略化のため、各ブリッジのPWM信号におけるデッドタイムは無視されている。その結果、変圧器一次巻線VABにかかるPWM電圧出力は、バイポーラ波形、即ち、正と負のDCバス電圧を交互に持ち、中間にはゼロ電圧の遷移を持つ波形となる。そして、同じバイポーラ波形が、寄生効果をすべて無視した変圧器二次巻線電圧VEFに現れる。実際、正負の電圧波形のアクティブデューティサイクルやパルス幅は位相シフト角に依存する。従って、2つのブリッジのPWMゲート信号間のこの位相シフト角を調整することで、変圧器を通じて絶縁負荷に流れる電力を調整することができる。詳細なゲートタイミングは、通常、PWM、周波数変調、位相シフト制御等、変換器100の閉ループ調整方法に依存する。実際には、従来のフルブリッジ型位相シフト、又はLLC変換器のように同じように動作する。
【0045】
図2A乃至図2Bは、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジ変換器とその動作波形の一例を示す図である。図2A及び2Bの回路は、図1Aの回路とほぼ同じであるが、マルチブリッジ210の出力ポートA又はBと、変圧器220を挟んだ絶縁ポートE又はFとの間に、追加の断路スイッチ250、即ち、Kcが接続され、この断路スイッチKcは図2Aに示すように一次巻線側、又は図2Bの二次巻線側のどちらかで、変圧器と直列になり得る点だけが図1のそれと異なっている。この断路スイッチKcの助けを借りて、同期したPWM信号に位相シフト角を導入し、並列モードの非絶縁動作中にマルチブリッジ変換器200の2つのブリッジ211及び212の間でPWMインターリーブ動作を実現することが目的である。この断路スイッチKcは、接触器、リレー、半導体デバイススイッチのようなものであれば何でもよい。並列ブリッジPWMインターリーブは、出力端子の実効PWM周波数を増加させ、その結果、出力電圧及び電流リップルを低減し、電磁放射(EMI)及び可聴ノイズを緩和する可能性があるという利点で周知である。
【0046】
図2Cは、マルチブリッジ変換器200の非絶縁動作モードにおけるPWMインターリーブスイッチング波形の一例を示す図である。このモードでは、断路スイッチKcは開いたままであり、従って、絶縁変圧器は回路機能においてアクティブではない。2つのスイッチングブリッジ211及び212の間に、それらの同期したPWMゲート信号の間に180°の位相シフト角がある。このように、負荷出力電圧VABにより、実効PWMスイッチング周波数は2倍となり、PWMスイッチングリップルは小さくなり、及び負荷等にかかるEMIノイズは小さくなる。
【0047】
図2Dは、断路スイッチKcが閉じたままのマルチブリッジ変換器200の絶縁動作モードにおいて、マルチブリッジ変換器200の回路動作は、フルブリッジモードと同じであり、出力波形は断路スイッチKc無しの図1A乃至図1Cの場合と同じであることを示している。要するに、図2A乃至図2Dは、図1A乃至図1Cと同じ回路概念の下に、PWM位相シフトインターリーブに関する追加機能を備え、性能を向上させたものである。
【0048】
図3Aは、一例としての3レベルマルチブリッジ変換器300の概念回路図である。DCバス330に接続されたマルチブリッジ310は、ダイオードNPC3レベルトポロジを用いた2つのスイッチングブリッジ(即ち、A相ブリッジ311及びB相ブリッジ312)から構成されている。同様に、ANPC、フライングキャパシタ、又はハイブリッドマルチレベル変換器等の他のマルチレベルトポロジにも同じ概念を適用することができる。絶縁変圧器320の一次巻線は、A相ブリッジ311の出力及びB相ブリッジ312の出力、即ち、ポートA及びBの間に接続される。変圧器320の二次巻線は、ポートE及びFに絶縁出力を供給する。制御部340が異なるPWMゲート信号を生成することによって、3レベルマルチブリッジ変換器300は、(i)2つのスイッチングブリッジが並列モードで動作し、PWMスイッチング信号が2つのブリッジ間で位相同期し、電力がDCバス330から非絶縁ポートA及びBに供給される非絶縁動作モード、及び(ii)2つのスイッチングブリッジがフルブリッジモードで動作し、PWMスイッチング信号が2つのブリッジ間で位相シフトして位相がずれ、従って、電力が絶縁変圧器320を通じてDCバス330から絶縁ポートE及びFに供給される絶縁動作モード、を含む少なくとも2つの異なるモードで動作させることができる。3レベルマルチブリッジ変換器300は、DC-DC又はDC-ACインバータシステムで使用することができる。
【0049】
図3Bは、マルチブリッジ変換器300の非絶縁動作モードにおけるスイッチング波形の一例を示す図である。非絶縁動作モードにおけるスイッチングの規則は、A相ブリッジ311及びB相ブリッジ312が位相的に完全に同期し、同じPWMゲート信号で完全に並列に動作することである。その結果、変圧器320の一次巻線は、ポートA及びポートBからの同じ電圧波形によって励起されるため、変圧器320の二次巻線は、「0」電圧に留まることになる。そのため、電力は主にDCバス330から非絶縁ポートA及びBに供給されるが、絶縁ポートE及びFには供給されない。なお、このゲート信号同期が完全でない非絶縁動作モードでは、A相ブリッジ311のスイッチングデバイスS1乃至S4及びB相ブリッジ312のスイッチングデバイスS5乃至S8が、全く同じタイミングでオン・オフしない場合があり、変圧器320の二次ポートE及びFに短い電圧パルス又はグリッジが見られることがある。しかし、そのような短い電圧パルスは全電力潮流の重要な部分を供給しないという事実のために許容し得る。
【0050】
図3Cは、マルチブリッジ変換器300の絶縁動作モードにおけるスイッチング波形の一例を示す図である。このモードでは、A相ブリッジ311及びB相ブリッジ312は位相がずれており、同じゲートタイミング信号でオン・オフされない。その結果、変圧器320の絶縁ポートE及びFは、多段階の矩形形状の波形又は同様の波形を生成し、従って、電力は主にDCバス330から絶縁ポートE及びFに供給される。実際、2つのブリッジ311及び312は、従来の3レベルフルブリッジ位相シフト又はLLC変換器のように動作される。詳細なゲートタイミングは、通常、PWM、周波数変調、位相シフト制御等の変換器300の閉ループ調整方法に依存する。この絶縁動作モードでは、非絶縁ポートA及びBに流れる電力を最小限にすることが目的であり、その目的を達成するために、非絶縁ポートA及びBに接続される負荷構成に何らかの特別な取り決めが必要となる場合があることに注目されたい。
【0051】
図4Aは、2つの別個の絶縁変圧器420及び421に接続された3ブリッジマルチブリッジ変換器410の概念回路図を示す。DCバスに接続された3つのスイッチングブリッジ、即ち、出力ポートAを有するA相ブリッジ411、出力ポートBを有するB相ブリッジ412、及び出力ポートCを有するC相ブリッジ413がある。絶縁変圧器420の一次巻線は、ポートA及びポートBの間に接続され、絶縁変圧器421の一次巻線は、ポートC及びポートBの間に接続されている。2つの変圧器420及び421の二次巻線は、ポートE及びFと、ポートG及びHにそれぞれ絶縁出力を供給する。複数の変圧器巻線の極性は、以下に図示するスイッチング波形と一致させるために、図示するように同じように配置される必要があることに留意されたい。
【0052】
図4Bは、1つの集積変圧器422に接続された3ブリッジマルチブリッジ変換器410の概念図を示す。図4A及び図4Bの唯一の違いは絶縁変圧器にあるが、図4A及び図4Bの絶縁変圧器はいずれも基本的に同じように動作する。注目すべきは、以下に図示するスイッチング波形を一致させるために、複数の変圧器巻線の極性を図示のように同じように配置する必要があることである。
【0053】
図4Cは、図4Aの回路の非絶縁動作モードにおけるスイッチング波形の一例を示す図である。非絶縁動作モードにおけるスイッチングの規則は、A相ブリッジ411、B相ブリッジ412、C相ブリッジ413が完全に同期して、同じPWMゲート信号で完全に並列に動作することである。その結果、ポートA、Bの電圧VA、VB、及びポートC、Bの電圧VC、VBに接続された2つの変圧器420、421の一次巻線は、同じ電圧波形で励磁され、従って、変圧器420の二次巻線の絶縁ポートE、Fでの出力電圧VEF、及び変圧器421の二次巻線の絶縁ポートG、Hでの出力電圧VGHは、電圧「0」で静止する。そのため、電力は主にDCバスから非絶縁ポートA及びBと、非絶縁ポートC及びBに供給されるが、絶縁ポートE及びF、又はポートG及びHには供給されない。このようにゲート信号の同期が完全でない非絶縁動作モードでは、A相、B相、C相ブリッジが同じタイミングでオン・オフせず、変圧器420、421のポートE、F、及びポートG、Hに短い電圧パルスやグリッチが見られる場合があることに注意されたい。しかし、それらの短い電圧パルスは全電力潮流の重要な部分を供給しないという事実のために許容し得る。
【0054】
図4Dは、図4Aの回路の絶縁動作モードにおけるスイッチング波形の一例を示す図である。このモードでは、A相ブリッジ411とB相ブリッジ412は位相がずれており、同じゲートタイミング信号でオン・オフされることはない。同時に、C相ブリッジ413及びB相ブリッジ412もまた、位相がずれている。その結果、変圧器420、421の絶縁ポートE、F、及び絶縁ポートG、Hに方形波等が生成し、従って、電力は主にDCバスから絶縁ポートE、F、及び絶縁ポートG、Hに伝送される。実際、3つのブリッジ411、412、413は、従来のフルブリッジ位相シフト、又はLLC変換器とほぼ同様に動作する。詳細なゲートタイミングは、通常、PWM、周波数変調、位相シフト制御等の変換器の閉ループ調整方法に依存する。この絶縁動作モードでは、非絶縁ポートA、B、Cに流れる電力を最小限にすることが目的であり、その目的を達成するために、非絶縁ポートA、B、Cに接続される負荷配線や負荷構成に何らかの特別な配置が必要となる場合があることに注目されたい。
【0055】
図5Aは、バッテリ充電システムと統合されたマルチブリッジ変換器ベースの単相インバータの実施形態を示す図である。DCバスに接続された2つのマルチブリッジ510及び520があり、各マルチブリッジ510又は520は、2つのスイッチングブリッジを有する。マルチブリッジ510は、1A相ブリッジ及び1B相ブリッジを含み、マルチブリッジ520は、2A相ブリッジ及び2B相ブリッジを含む。2つのマルチブリッジ510及び520は、1A相ブリッジのポート1Aと2A相ブリッジのポート2Aとで非絶縁単相出力を形成し、1B相ブリッジのポート1Bと2B相ブリッジのポート2Bとで並列単相の非絶縁出力を形成する。マルチブリッジ510、520は、それぞれ絶縁変圧器530、531に接続されている。電力変換器550、551は、変圧器530、531の二次巻線に接続され、整流器として機能し、任意の接触器K2を通じてバッテリ570を充電するためのDC電圧を生成する。また、同じバッテリ570は、主接触器K1を通じてDCバスに接続されている。通常、バッテリ570は、電気安全及び熱保護のためのバッテリ管理システム(BMS)570を有する複数のセルの多数のモジュールで満たされている。更に、DCバスと外部AC電源の間には、PFC整流器580も接続されている。制御部590は、2つの異なる動作モードに従って、マルチブリッジ510及び520の位相ブリッジのゲートタイミングを制御する。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流機能によって特徴付けられることに留意されたい。
【0056】
図5Bは、非絶縁動作モードにおける図5Aに示す回路の等価アクティブ回路部分を、例示的なスイッチング波形と共に示す図である。この非絶縁動作モードでは、バッテリ570はK1を閉じた状態でDCバスに電力を供給し、マルチブリッジ510及び520は、単相インバータ出力として並列に接続されたポート1A及び2Aならびにポート1B及び2Bに、一対の単相出力を供給する。スイッチング波形例に示すように、マルチブリッジ510の1A相ブリッジ及び1B相ブリッジは同じゲートタイミング信号で完全に同期しており、また、マルチブリッジ520の2A相ブリッジ及び2B相ブリッジも同じゲートタイミング信号で完全に同期している。従って、1A相ブリッジ及び1B相ブリッジは、変圧器530の一次巻線の間で同じPWM電圧波形を生成し、従って、変圧器530の二次巻線は、理想的な条件では電力が流れない状態でポートE及びFに「0」電圧VEFを有することになる。変圧器531についても同様で、その二次巻線は、ポートG及びHにおいて「0」に留まる平坦な電圧VGHを生成することになる。なお、このゲート信号の同期が完全でない非絶縁動作モードでは、1A相ブリッジ及び1B相ブリッジ、ならびに2A相ブリッジ及び2B相ブリッジが同じタイミングでオン・オフせず、変圧器530の二次側ポートE、F、ならびに変圧器531の二次側ポートG、Hで短い電圧パルスやグリッチが見られる場合があることに注意されたい。しかし、それらの短い電圧パルスは全電力潮流の重要な部分を供給しないという事実のために、許容し得る。
【0057】
図5Cは、例示的なスイッチング波形を有する絶縁動作モードにおける図5Aに示された回路の等価アクティブ回路部分を示す図である。このモードでは、PFC整流器580は、外部AC電源から電力を引き出すことによってDCバスをサポートするために活発に動作している。マルチブリッジ510及び520は逆相で動作し、従って、絶縁変圧器530及び531は矩形状の電圧波形で励起され、電力を絶縁変圧器の間で供給され、バッテリ570を充電させる。しかし、単相マルチブリッジ510又は520の非絶縁出力ポート1A及び2A又はポート1B及び2Bは、例示的なスイッチング波形に示されるように、大きな電力潮流を有さない。マルチブリッジ510の1A相ブリッジ及びマルチブリッジ520の2A相ブリッジは、同じゲートタイミング信号で完全に同期しており、マルチブリッジ510の1B相ブリッジ及びマルチブリッジ520の2B相ブリッジも同様に、完全に同期している。従って、1A相ブリッジ及び2A相ブリッジは同じPWM電圧波形を生成し、非絶縁ポート1A及び2A間の差動電圧は「0」となる。1B相ブリッジ及び2B相ブリッジについても同様で、非絶縁ポート1B及び2B間の差動電圧は「0」となる。この絶縁動作モードでは、非絶縁ポート1A、2A、及びポート1B、2Bに流れる電力を最小限にすることが目的であり、その目的を達成するために、非絶縁ポート1A、2A、及びポート1B、2Bに接続される負荷構成にいくつかの特別な配置が必要となる場合があることに注目されたい。
【0058】
図6Aは、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータシステムの例示的な回路図である。複巻ACモータ660を駆動するために構成され、バッテリ670を充電するために3つの絶縁変圧器620、621、622、及びそれらの整流器630、631、632と結合されている3つのマルチブリッジ変換器610、611、612がある。DCバスと外部AC電源の間には、PFC整流器640とEMIフィルタ650が接続されている。また、充電用の外部DC電源のプラグポートが設けられている。制御部680により、バッテリ充電とインバータモータ駆動の機能を効率的に実行できるEV車載用集積回路の例を図6Aに示す。主電源部品(即ち、同じマルチブリッジ610、611、612のハードウェア)を、バッテリ充電モードと駆動モードとの間で共有することにより、回路の部品コスト、寸法、及び重量が削減される。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が可能な、双方向の電力潮流機能によって特徴付けられる。また、断路器Kc1、Kc2、Kc3は、それぞれ変圧器T1、T2、T3の一次巻線に直列に接続されている。そして、並列モードでの非絶縁動作時には、これらの断路スイッチにより、マルチブリッジ変換器はPWM位相インターリーブで動作し、モータ端子間のPWM電圧の実効スイッチング周波数を増加させることができる。利点は、モータのトルクリップルや可聴雑音等を低減することを含む。
【0059】
図6Bは、図6Aに示すマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータシステムの、非絶縁動作モードにおけるスイッチング波形の一例を示す図である。この非絶縁動作モード、即ち、モータ駆動モードでは、バッテリ用主接触器スイッチK1が閉じられ、3つのマルチブリッジ変換器610、611、612が協働して3相インバータとして機能し、モータ速度及びトルク閉ループ調整に従って、PWM又はSVM(スペースベクタ変調)によりリアルタイムで制御されている。各マルチブリッジ変換器内では、2つの位相ブリッジの対(例えば、1Aと1B、2Aと2B、3Aと3B)は位相が同期しており、常に同じタイミングでゲートをオン・オフすることにより、PWM出力電圧(即ち、V1A=V1B、V2A=V2B、V3A=V3B)が同じ波形となるように構成されている。また、断路スイッチ(例えば、Kc1、Kc2、Kc3)が無い場合でも、3つの変圧器一次巻線にかかる差動電圧はほぼ「0」となる。従って、その結果、絶縁変圧器の二次巻線にかかる差動電圧(即ち、電圧VEF、VGH、VJK)も「0」のままとなる。従って、バッテリの電力は、主にその二重巻線を通してモータを駆動するために供給され、3つの絶縁変圧器の間に有意な電力潮流が供給されることはない。
【0060】
図6Cは、図6Aに示すマルチブリッジ変換器ベースの三相インバータシステムの、絶縁動作モードに対するスイッチング波形の一例を示す図である。この絶縁動作モード、即ち、バッテリ充電モードでは、バッテリ用主接触器スイッチK1は開かれたままで、各マルチブリッジ変換器610、611、612の位相ブリッジは、同じタイミングでオン・オフされない。実際には、各マルチブリッジは、標準的なLLC又は位相シフトフルブリッジ変換器のように動作し、PWM調整又は周波数変調が、一般的に、バッテリ充電DC電圧及び充電電流を調整するために使用される。バッテリの充電電力は、PFC整流器によってAC電源から供給することもでき、又は外部DC電源によって供給することもできる。
【0061】
更にここで、図6Cにおいて、バッテリ充電モードについて、もう一点重要なことがある。3つのマルチブリッジ変換器610、611、612のA相ブリッジ(即ち、1A相ブリッジ、2A相ブリッジ、3A相ブリッジ)はすべて位相が同期しており、これらのA相ブリッジの出力電圧(即ち、V1A=V2A=V3A)はPWM波形において同じである。また、3つのマルチブリッジ変換器610、611、612のすべてのB相ブリッジの出力電圧(即ち、V1B=V2B=V3B)も同じ波形となるのは同様である。その結果、特に2組のモータ二重巻線が互いに分離されていることで、モータ巻線が循環電流を引き起こす可能性のある有意な差動電圧で励起されることはない。
【0062】
図6Dは、バッテリ充電システムのための2つの絶縁変圧器を有する三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図である。ここでは、3相マルチブリッジインバータの回路において、共振コンデンサCr1及びCr2を有するLLC変換器を明示的に示している。この回路は、図6Aの3変圧器型と同様に動作し、バッテリ充電電力容量の定格を低下させた点が唯一の相違点である。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられる。
【0063】
図6Eは、バッテリ充電システムのための1つの絶縁変圧器を有する三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図である。ここでは、三相マルチブリッジインバータの回路において、共振コンデンサCr1を有するLLC変換器を明示的に示している。この回路は、図6Aの3変圧器型や図6Dの2変圧器型と同様に動作し、バッテリ充電電力容量の定格を更に下げた点が唯一の相違点である。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられる。
【0064】
先に述べたように、本開示で示したすべての例示的な回路は、共振コンデンサをすべての回路図に明示的に示されていない場合もあるが、LLC共振変換器として構成することができる。実際、本開示の実施例を通じて、絶縁型DC-DC充電回路は、フルブリッジ位相シフト変換器、LLC変換器、又はデュアルアクティブブリッジ(DAB)変換器として図示されている。他の絶縁型DC-DCトポロジ又は異なるトポロジの組み合わせも適用可能であり、マルチブリッジ変換器回路の実装に十分に適している可能性があることを理解されたい。そして、他の異なるトポロジを用いたそのような変更は、添付の特許請求の範囲に規定される本開示の精神及び範囲から逸脱するものではない。
【0065】
図7Aは、バッテリ充電システムのための3つの結合された一次巻線を有する1つの絶縁変圧器720を使用する三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図である。三相マルチブリッジインバータのこの回路は、図6Aに示される3変圧器型と同様に動作し、その間の唯一の違いは、磁気変圧器の設計に関するものである。あるいは、絶縁変圧器720の二次巻線に、バッテリ充電のためにパッシブ整流器730を用いることができることが示されており、主な利点は、アクティブスイッチング整流器630と比較して低コストであることであろう。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0066】
図7Bは、バッテリ充電システムのための2つの結合された一次巻線を有する1つの絶縁変圧器721を使用する三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図である。三相マルチブリッジインバータのこの回路は、図6Dに示される2変圧器型と同様に動作し、その間の唯一の違いは、磁気変圧器の設計に関するものである。あるいは、昇圧PFC変換器にウィーン整流器741を用いて、外部AC電源から電力を引き込み、アクティブスイッチングデバイスに対する電圧ストレスと電流を低減することによって、低コスト化という利点を得ることが示されている。
【0067】
図8Aは、追加のPFC整流器ハードウェアを有しない三相マルチブリッジインバータの実施形態を示す図である。その代わりに、位相ブリッジ812が逆電力潮流で動作する昇圧PFC整流器として使用され、モータ860の巻線インダクタンスが昇圧インダクタとして使用される。これにより、充電用ハードウェアのコストを更に削減することができる。図8Aは、バッテリ充電のための2つの絶縁変圧器820、821、及び2つの整流器830、831を示している。EVモータ860の二重巻線の中性点には、EMIフィルタ850を通じて単相AC電源が接続されている。EV駆動モードでは、図8Aに示す回路は、先の説明と同様に動作し、各マルチブリッジ内では、2つの位相ブリッジが並列モードで動作する。PFC整流器を追加していないために、バッテリ充電モード上での違いがある。絶縁動作モードでのバッテリ充電中、各マルチブリッジ内では、2つの位相ブリッジがフルブリッジモードで動作する。更に、フルブリッジモードの各マルチブリッジのPWMデューティサイクルは、力率補正機能のためにAC電圧基準波形によって変調される必要がある。これは基本的に、先天的に単段のPFC対応絶縁型DC-DC変換器の仕組みと同じである。また、PWMスイッチングリップル上にAC電流の包絡線が乗るため、絶縁変圧器の磁気コアの寸法が大きくなることが欠点である。位相ブリッジ810、811、812がPFC整流器として動作して、モータ巻線を通して電流を引き出す場合、モータ巻線の循環電流を最小にするために、PWMゲートタイミングの同期の観点から、一緒に調整する必要がある。また、モータの脈動トルクを抑え、充電中にロータを動かさないようにするための制御部の設計に注意が必要である。なお、インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0068】
図8Bは、追加のPFC整流器ハードウェアを有しない三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図である。同様に、位相ブリッジ810、811、812は、逆電力潮流で動作する昇圧PFC整流器として使用され、モータ860の巻線インダクタンスは、昇圧インダクタとして使用される。AC電源は、EMIフィルタ850を通じて、モータ860の二重巻線の2つの中性点に接続される。図8Bは、バッテリ充電システムのための1つの絶縁変圧器820を示す図である。絶縁モードでのバッテリ充電中、位相ブリッジ810、811、812は、図8Aと同様に、単段のPFC対応DC-DC変換器として動作する。また、位相ブリッジ810、811、812のゲートタイミング制御は、モータ巻線の循環電流を最小にするために、位相を同期させる必要がある。モータの脈動トルクを抑え、充電中にロータが動かないようにするための制御部の設計に注意が必要である。なお、その他、この三相マルチブリッジインバータの回路は、基本的に図8Aの回路と同じように動作する。なお、インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0069】
図8Cは、充電に使用される2つの絶縁変圧器820及び821を有する三相マルチブリッジインバータの実施形態を示す図である。ここでも、追加のPFC整流器ハードウェアは使用されていない。その代わりに、位相ブリッジ812が逆電力潮流で動作する昇圧PFC整流器として使用され、2つのインダクタLa及びLbが昇圧インダクタとして使用される。位相ブリッジ810、811、812によって形成される3つのマルチブリッジ変換器は、複巻モータ860の駆動に使用され、2つの絶縁変圧器820、821、及び2つの整流器830、831は、バッテリ870の充電に使用される。EVモータ860の複巻端子3A、3Bには、EMIフィルタ850を通じて、単相AC電源がインダクタLa、Lbを通じて接続されている。EV駆動モードでは、図8Cに示す回路は、前述と同様に動作する。絶縁動作モードでのバッテリ充電時には、位相ブリッジ812がPFC整流器として動作して外部AC電源から電流を引き込み、他の位相ブリッジ810、811は、モータ860の巻線循環電流を最小にするために、PWMゲートタイミングにおいて位相ブリッジ812と合わせる必要がある。理想的には、3つのマルチブリッジ間でゲートタイミングを同期させると、ポート1A、2A、3AにおけるPWM出力電圧は同じになり、モータ860のA相巻線には循環電流が流れない。同様に、1B、2B、3BのPWM出力電圧は同じになるため、モータ860のB相巻線には循環電流が流れない。従って、バッテリ充電中にモータ860のロータが動くことはない。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0070】
図8Dは、充電に使用される1つの絶縁変圧器820を有する三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図である。同様に、ここでは、追加のPFC整流器ハードウェアは使用されていない。その代わりに、位相ブリッジ812が逆電力潮流で動作する昇圧PFC整流器として使用され、2つのインダクタLa及びLbは昇圧インダクタとして使用される。同じ理由で、3つのマルチブリッジのPWMゲートタイミングは同期され、同じPWM出力電圧が、モータ860のA相巻線(即ち、ポート1A、2A、3A)、及びB相巻線(即ち、ポート1B、2B、3B)全体に生成される。モータ860の巻線端子3A、3Bの間にAC電圧が印加されるが、モータ860の巻線を通る循環電流は励起されず、従って、バッテリ充電中にモータ860のロータは動くことはない。絶縁モードでのバッテリ充電中、位相ブリッジ812はPFC整流器として動作するが、位相ブリッジ810、811、812のPWMゲートタイミングは、充電中にモータが動かないように、モータ巻線の循環電流を最小にするために位相同期させる必要がある。なお、インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0071】
図9Aは、2つのACモータ960、961を駆動する3相マルチブリッジインバータの実施形態を示す図である。ここでは、追加のPFC整流器ハードウェアが使用されていない。その代わりに、位相ブリッジ912が、逆電力潮流で動作する昇圧PFC整流器として使用され、2つのインダクタLa、Lbが、昇圧インダクタとして使用されている。バッテリ970を充電するために、2つの絶縁変圧器920、921、及び2つの整流器930、931がある。単相AC電源は、EMIフィルタ950を通じて、インダクタLa、Lbを通じてモータ960、961の巻線端子3A、3Bに接続されている。別のインダクタLcがDCバスの中点に接続され、三相AC又は分割単相ACとしてAC入力の3線目を形成する。EV駆動モードでは、図9Aに示す回路は、前述と同様に動作する。絶縁動作モードでのバッテリ充電中、位相ブリッジ912は主にPFC整流器として動作して外部AC電源から電流を引き出し、他の位相ブリッジ910、911は、モータ960、961の巻線を通る循環電流を最小化するために、PWMゲートタイミング同期の観点から位相ブリッジ912と合わせる必要がある。ここで、再びAC電圧がモータ960、961の巻線端子3A、3Bの間に印加されるが、モータ960、961の巻線を通る循環電流は励起されず、従って、バッテリ充電中にモータ960、961のロータが動くことはない。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0072】
図9Bは、2つのACモータ960、961を駆動する三相マルチブリッジインバータの別の実施形態を示す図であり、バッテリ充電のために1つの絶縁変圧器920が使用されている。同様に、ここでは、追加のPFC整流器ハードウェアは使用されていない。その代わりに、位相ブリッジ912が、逆電力潮流で動作する昇圧PFC整流器として使用され、2つのインダクタLa、Lbが、昇圧インダクタとして使用されている。別のインダクタLcがDCバスの中点に接続され、三相AC又は分割単相ACとしてAC入力の3線目を形成する。同じ理由で、モータ960、961の巻線端子3A、3BにAC電圧が印加されるが、モータ960、961の巻線を通る循環電流は励起されず、従って、バッテリ充電中にモータ960、961が動くことはない。モータ960、961の巻線を通る循環電流のいかなる高周波部分も最小にするために、位相ブリッジ910、911、912のゲートタイミング制御を調整するために、設計上注意が必要である。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0073】
図10Aは、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジベースのDC-DC昇圧変換器及びバッテリ充電システムの回路例を示す図である。2つの位相ブリッジ1011、1012を有するマルチブリッジ1010は、AC負荷(例えば、EV走行用のACモータ負荷)をサポートするために、インバータ1040を駆動するDCバスに対して、バッテリ1070のDC電圧をより高い電圧に変換する昇圧変換器として示されている。バッテリ1070用の主接触器K1と、位相ブリッジ1011、1012の非絶縁出力ポートA、Bとの間には、2つの昇圧インダクタ1060、即ちL1、L2がそれぞれ接続されている。なお、インダクタ1060は、結合型インダクタであってもよい。双方向PFC整流器1030は、充電中に外部AC電源から電流を引き出してDCバスに供給するために設けられている。絶縁変圧器1020の一次巻線は、マルチブリッジ1010の出力ポートA及びBの間に接続されている。変圧器1020の二次巻線のポートE及びFによって形成される出力では、双方向電力変換器1050が、変圧器1020からのAC電圧をDC電圧に調整し、バッテリ1070を充電するために使用されている。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。
【0074】
図10Bは、非絶縁動作モードにおける図10Aに示す回路の等価アクティブスイッチング回路を、例示的なスイッチング波形で示す図である。非絶縁モードでのインバータ動作中、バッテリ接触器K1は閉じられ、外部電源は切り離され、マルチブリッジ1010はDC-DC昇圧変換器として動作する。マルチブリッジ1010の位相ブリッジ1011、1012は、それらのPWMゲートスイッチング信号が同位相に同期して並列モードで動作する。従って、絶縁変圧器1020の一次巻線の間で同じPWM電圧波形が生成され、変圧器巻線は有意な差動電圧で励起されない。そのため、電力潮流は主にインバータ1040に供給され、更にAC負荷に供給されるが、一部の変圧器コア損失を除いて、絶縁変圧器1020にはあまり電力が流れない。また、短いパルス又は電圧グリッチが、変圧器の二次ポートE及びFで見られる場合があるが、それらの短いパルスは、全電力潮流の重要な部分を供給しないという事実のために許容できる。
【0075】
図10Cは、絶縁動作モードにおける図10Aの等価アクティブスイッチング回路を、例示的なスイッチング波形で示す図である。絶縁モードでのバッテリ充電動作中、バッテリ接触器K1は開いており、外部AC又はDC電源が接続され、マルチブリッジ1010の2つの位相ブリッジ1011及び1012はフルブリッジモードで動作する。PWMゲートスイッチング信号は、2つのブリッジ間で位相シフトし、位相がずれている。実際には、2つのブリッジ1011及び1012は、PWM調整、周波数変調、又は位相シフト制御を備えた通常のLLC又はDAB変換器として調整することができるため、AC電源からの電力は主に変圧器1020を通じて絶縁出力(即ち、絶縁ポートE及びF)に供給されることになる。
【0076】
図10Dは、図10Aに示す回路に追加された追加スイッチを有する回路の変形例を示す図である。特に、図10Dは、非絶縁動作モードにおける修正された等価アクティブスイッチング回路を、例示的なスイッチング波形と共に示している。図10Dの回路は、マルチブリッジ1010の出力と変圧器1020の巻線端子の間に変圧器断路スイッチ、即ち、Kcが接続されている点で、図10Aの回路とは単に異なる。この断路スイッチKcにより、同期したPWM信号に位相シフト角を導入し、非絶縁動作モード中にスイッチングブリッジ1011と1012の間でインターリーブ動作を実現することが目的である。この断路スイッチKcは、接触器、リレー、又は半導体デバイススイッチ等であれば何でもよい。また、この断路スイッチKcは、図10Dに示すように一次巻線側でも、二次巻線側(図示せず)でも、変圧器と直列に配置することができる。並列ブリッジインターリーブは、負荷全体の実効PWM周波数を増加させ、従って、負荷電圧及び電流リップルを低減し、潜在的に電磁放射(EMI)及び可聴雑音を軽減し得るという利点があることで周知である。
【0077】
図11Aは、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジベースのDC-DC昇圧変換器及びバッテリ充電システムの別の例示的な回路を示す図である。図10Aに示される先の回路とは異なり、ここでは、バッテリ1180、主DC接触器K1、インダクタL1、及び絶縁変圧器1120の一次巻線の中点が直列に接続されている。非絶縁運転モードでのEV駆動動作中、変圧器1120の一次巻線は、結合された昇圧インダクタとして使用される。変圧器1120のインダクタンスを適切に設計すると、インダクタL1が不要になったり、配線やケーブル等の寄生インダクタンスとして表示されたりすることがある。
【0078】
図11Bは、非絶縁動作モードにおける図11Aに示す回路の等価アクティブスイッチング回路を、スイッチング波形例で示した図である。非絶縁動作モードでのインバータ動作中、接触器K1は閉じられ、外部電源は切断され、マルチブリッジ1110はDC-DC昇圧変換器として動作する。図10Bの場合と同様に、2つの位相ブリッジは並列モードで動作し、それらのゲートスイッチング信号は同位相で同期している。従って、同じPWM電圧波形が変圧器1120の一次巻線の間で生成され、変圧器巻線は有意な差動電圧で励起されることはない。そのため、電力潮流は主にインバータ1150に、更にAC負荷(例えば、図示のようなACモータ1160)に供給されるが、変圧器コア損失及び他の寄生損失を除いて、絶縁変圧器1120全体にはあまり供給されない。
【0079】
図11Cは、絶縁動作モードにおける図11Aの等価アクティブスイッチング回路を、例示的なスイッチング波形で示す図である。絶縁モードでのバッテリ充電動作中、接触器K1は開いており、外部AC又はDC電源が接続されている。図10Cの場合と同様に、マルチブリッジ1110の2つの位相ブリッジはフルブリッジモードで動作し、PWMスイッチング信号は2つのブリッジ間で位相シフトされ位相がずれている。実際には2つの位相ブリッジは、PWM調整、周波数変調、又は位相シフト制御を備えた、通常のLLC又はDAB変換器として動作させることができるため、変圧器1120を通じて、DCバスと絶縁出力(即ち、絶縁ポートE及びF)の間で電力が伝送される。
【0080】
図11Dは、図11Aに示す回路に追加された追加スイッチを有する回路の変形例を示す図である。特に、図11Dは、非絶縁動作モードにおける修正された等価アクティブスイッチング回路を、例示的なスイッチング波形と共に示している。図11Dの回路は、変圧器断路スイッチ、即ち、Kcが変圧器1120の二次巻線の出力端子に接続されている点で、図11Aの回路とは単に異なる。この断路スイッチKcにより、同期したPWM信号に位相シフト角を導入し、非絶縁昇圧モード中に2つの位相ブリッジ間のインターリーブ動作を実現することが目的である。この断路スイッチKcは、接触器、リレー、又は半導体デバイススイッチ等であれば何でもよい。並列ブリッジインターリーブは、負荷上の実効PWM周波数を増加させ、従って、負荷電流及び電圧リップルを低減し、潜在的に電磁放射(EMI)及び可聴雑音を軽減し得るという利点で周知である。
【0081】
図12は、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジベースのDC-DC昇圧変換器及びバッテリ充電システムの、別の例示的な回路を示す図である。PWMインバータ1230は、AC走行用モータ1240を駆動するために設けられ、モータ巻線中性点はAC電源に接続され、DCバス中点に基準回帰している。ここで、DCバスの間で接続されているのは倍電圧回路1260であり、これは2つのダイオードD1及びD2、ならびに接触器スイッチQ2と直列に接続された分割コンデンサC1及びC2を含む。制御部1290が接触器スイッチQ2を選択的に閉じることにより、電圧倍増機能を有効にすることができる(即ち、スイッチQ2を閉じているときには倍電圧は有効になり、スイッチQ2が開いているときは倍電圧には無効になる)。これにより、広範囲のAC電源電圧に対応する柔軟性が更に高まる。倍電圧器1260を使用する効果は、低AC入力の場合と高AC入力の場合の両方で、DCバスに同じ安定した高電圧を供給することである。倍電圧器1260は、インバータ動作では無効にしておく必要がある。インバータ駆動動作とバッテリ充電動作の両方が、双方向電力潮流が可能なことにより特徴付けられることに留意されたい。或いはコスト削減のために、アクティブスイッチング整流器1270の代わりに、絶縁変圧器1220の二次巻線の出力で、パッシブ整流器を使用することができる。
【0082】
図13は、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジベースのDC-DC昇圧変換器及びバッテリ充電システムの別の例示的な回路を示す図である。2つのインバータ1330、1331によって駆動される、2つのAC走行用モータ1350、1351が存在する。単相AC電源1340は、2つのモータ1350、1351の巻線中性点の間に接続され、2つのインバータ1330、1331は両方とも、双方向電力能力で充電するために使用される。三相モータ巻線間で平衡充電電流が流れるため、モータ1350、1351に大きな回転磁力は生成せず、モータ脈動トルクは無視できる程度になる。それ以外は、図13に示すマルチブリッジ回路は、基本的に図11と同様に動作する。
【0083】
図14は、マルチブリッジDC-DC昇圧変換器及び変圧器絶縁型バッテリ充電システムの別の実施形態を示す図である。図14に示す回路は、2つのインバータ1430、1431が、従来のY字型構成で二重巻線を有するAC走行用モータ1450を駆動する点が異なっている。単相のAC電源は、双方向電力能力で充電するために、EMIフィルタ1460を通じてモータ1450の二重巻線の2つの中性点に接続されている。三相モータ巻線の各組の間で平衡充電電流が流れるため、モータ1450には大きな回転磁力は生成せず、モータ脈動トルクは無視できる程度になる。そして、この回路は、前述の他の回路と同様に動作する。
【0084】
図15Aは、本開示の様々な実施形態によるマルチブリッジベースのDC昇圧変換器及び変圧器絶縁型バッテリ充電システムの別の例示的な回路を示す図である。図15Aに示す回路は、2つのインバータ1530、1531が、開放巻線構成を有するAC走行用モータ1550を駆動する点で異なっている。三相AC電源は、EMIフィルタ1560及びAC接触器スイッチQ1を通じて、双方向電力能力を有する充電用モータ1550の巻線の3つの中間点に接続されている。バッテリ1580の充電中、インバータ1530、1531は共に、昇圧PFC整流器として動作し、モータ1550のすべての三相巻線の間で均等に電流を流す。これらの平衡電流の結果、モータ巻線は大きな回転磁力を生成せず、モータ脈動トルクは無視できる程度になる。それ以外は、図15Aのマルチブリッジ回路は、図11と同様に動作する。
【0085】
図15Bは、マルチブリッジDC昇圧変換器の別の実施形態を示し、三相又は分割相のAC入力が、バッテリ充電用モータ1550の開放巻線中間点に接続されている。図15Bに示す回路は、AC接触器スイッチQ1が有効になると、モータ巻線を二重Y構成に変更できる共通の中性点を有するように構成されている点で異なっている。共通の中性点が接続されているので、二重Y構成は、六相モード対三相複巻モードでモータを動作させるという柔軟性を有する。この違いは、空間ベクトル制御の観点から、モータ巻線間の相対的な電流位相関係である。その利点は、モータ高速回転時にDCバスに反射する逆起電力電圧を低減し、モータ低速回転時にモータ電流能力を向上させることである。
【0086】
図15Cは、マルチブリッジDC-DC昇圧変換器の別の実施形態を示し、単相AC入力が、バッテリ充電のためにその開放巻線中間点で三相モータ1550に接続されている。中間点がAC入力に接続されているモータ巻線は2つだけであることに注意し、これは単相AC電源で一般的なことである。この場合、モータは特別な種類で、一般的に見られる二重巻線モータである必要があり、各相巻線は基本的に2つの半巻線があり、2重巻線が同じ溝で同じ電流方向で重なる。巻線の中間点から両方の半巻線に等しい電流を流すことで、誘導される磁力は常に均衡し相殺される。従って、PFC整流器の動作中に平衡したモータ巻線電流は、大きな脈動トルク又は振動の問題を引き起こさない。
【0087】
本技術の実施形態は、様々な配置(例えば、EV内の複数のモータ)の広範囲の電気モータに適用することができる。ここでは、いくつかの例が例示されているが、これらは限定的なものではなく、本技術は、より多くの構成におけるより多くの種類の電気モータに適用可能であることが理解されよう。
【0088】
本技術の実施形態は、いかなる単一の種類の電気モータにも限定されず、単巻線モータ、二重巻線モータ、及び開放巻線モータを含む、異なる電気モータ設計及び任意の数のモータ(同じ種類又は異なる種類のいずれか)と共に使用することができる。
【0089】
本明細書の目的のために、図に描かれた様々な特徴の寸法は、必ずしも縮尺通りに描かれていない可能性があることに留意されたい。
【0090】
本明細書の目的のために、本明細書における「ある実施形態」、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、又は「別の実施形態」への言及は、異なる実施形態又は同じ実施形態を説明するために使用されてもよい。
【0091】
本明細書の目的のために、接続は、直接接続又は間接接続(例えば、1つ又は複数の他の部品を通じて)であってもよい。場合によっては、ある要素が他の要素に接続又は結合されていると言及されるとき、その要素は他の要素に直接接続されてもよいし、介在する要素を通じて他の要素に間接的に接続されてもよい。ある要素が他の要素に直接接続されていると言及される場合、その要素と他の要素との間に介在要素は存在しない。2つのデバイスが直接又は間接的に接続され、それらのデバイス間で電子信号を通信可能であれば、「通信中」である。
【0092】
本明細書の目的のために、用語「基づいて(based on)」は「少なくとも一部に基づいて(based at least in part on)」と読み替えてもよい。
【0093】
本明細書の目的のために、追加の文脈なしに、「第1の」オブジェクト、「第2の」オブジェクト、及び「第3の」オブジェクト等の数値用語の使用は、オブジェクトの順序付けを意味するものではなく、代わりに異なるオブジェクトを識別するために、識別目的で使用されてもよい。
【0094】
本開示は、その特定の特徴及び実施形態を参照して説明されたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び組合せがそれになされ得ることは明らかである。従って、明細書及び図面は、添付の請求項によって定義される本開示の単なる例示とみなされ、本開示の範囲内に入る任意の及びすべての修正、変形、組み合わせ又は等価物にわたることが企図される。
【0095】
前述の詳細な説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。それは、網羅的であること、又は本明細書で請求される主題を開示された正確な形態(複数可)に限定することを意図していない。多くの修正及び変形が上記の教示に照らして可能である。説明された実施形態は、開示された技術の原理及びその実用化を最もよく説明するために選択され、それによって当業者が企図された特定の用途に適した様々な実施形態及び様々な修正を伴って、その技術を最もよく利用できるようにするために選択されたものである。その範囲は、本書に添付された特許請求の範囲によって定義されることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
110, 210, 310, 410, 510, 520, 610, 611, 612, 710, 711, 712, 810, 811, 812, 910, 911, 912, 1010, 1110, 1210, 1310, 1410, 1510 マルチブリッジ
111、 112、 211、 212、 311、 312、 411、 412、 413、 1011、 1012 位相ブリッジ
120、 220、 320、 420、 421、 422、 530、 531、 620、 621、 622、 720、 721、 820、 821、 920、 921、 1020、 1120、 1220、 1320、 1420、 1520 変圧器
130、 230、 330、 430、 540、 1090 DCバス
140、 240、 340、 440、 590、 680、 780、 880、 980、 1080、 1190、 1290、 1380、 1490、 1590 制御部
580、 640、 740、 741、 1030、 1130 PFC整流器
1040、 1150、 1230、 1330、 1331、 1430、 1431、 1530、 1531 インバータ
660、 760、 860、 960、 961、 1160、 1240、 1350、 1351、 1450、 1550 モータ
550、 551、 630、 631、 730、 731、 830、 831、 930、 931、 1050、 1170、 1270、 1360、 1470、 1570 変圧器の二次側の電力変換器
570、 670、 770、 870、 970、 1070、 1180、 1280、 1370、 1480、 1580 バッテリ、バッテリ管理システム(BMS)
650、 750、 850、 950、 1140、 1250、 1340、 1460、 1560 EMIフィルタ
図1A
【図
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
【図
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器であって、
電源に接続されるように構成された直流(DC)バスと、
両方とも前記DCバスに接続され、第1のスイッチングブリッジ及び第2のスイッチングブリッジの非絶縁出力にパルス幅変調(PWM)電圧を生成する、第1のスイッチングブリッジ及び第2のスイッチングブリッジと、
前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジの前記非絶縁出力の間に接続された一次巻線を有し、及び絶縁出力に接続された二次巻線を有する、変圧器と、
を備え、
非絶縁モードでは、前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジは、並列モードで動作するように制御され、電力は前記DCバスと前記非絶縁出力に結合された負荷の間で伝送され、
絶縁モードでは、前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジは、フルブリッジモードで動作するように制御され、電力は前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力に結合された負荷の間で伝送される、
電力変換器。
【請求項2】
少なくとも2つの異なる動作モードに従って、PWM同期及び位相シフトを用いて、前記第1のスイッチングブリッジ及び前記第2のスイッチングブリッジを動作させる制御部を備え、
前記非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジは、位相の同期したPWMスイッチング信号で制御され、
前記絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジは、位相がずれたPWMスイッチング信号で制御される、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項3】
少なくとも1つの変圧器断路スイッチが、前記一次側又は前記二次側で、前記絶縁変圧器の巻線と直列に接続され、少なくとも2つの異なる動作モードに従って動作し、
前記非絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチは開いたままで、前記2つのスイッチングブリッジは、前記非絶縁出力の間で有効な前記PWMスイッチング周波数を増加させるために、位相シフト角でインターリーブされたPWMスイッチング信号で制御され、
前記絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチは閉じたままで、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで制御される、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項4】
前記スイッチングブリッジは、2レベル、3レベル、5レベル、又はダイオード中性点クランプ(NPC)マルチレベル変換器、アクティブNPC(ANPC)マルチレベル変換器、フライングコンデンサマルチレベル変換器、又は前記スイッチングブリッジ間の任意の異なるマルチレベルトポロジの組み合わせといった任意のマルチレベル変換器トポロジを使用する、請求項1記載の電力変換器。
【請求項5】
前記電力変換器は、3つ、4つ、又はそれ以上の数のスイッチングブリッジを含み、複数の別個の絶縁変圧器に接続されるか、複数の巻線が一緒に結合された同一の絶縁変圧器に接続されるか、又は異なる変圧器構成の混合に接続される、請求項1に記載の電力変換器。
【請求項6】
絶縁型バッテリ充電システムと統合された非絶縁型PWMインバータとして更に構成され、
主接触器又はスイッチを通じて前記DCバスに接続された多数のバッテリセルを含むバッテリと、
DC-ACインバータを形成し、非絶縁出力にPWM電圧を生成するための、2つ以上の対の変換器ブリッジと、
1つ以上の絶縁変圧器であって、各対の変換器ブリッジの前記出力の間に接続された一次巻線を有し、及び前記バッテリを充電するためのDC電圧を生成する任意の種類の電力変換器に接続された二次巻線を有する、1つ以上の絶縁変圧器と、
を含み、
前記非絶縁モードでのインバータ動作中、前記バッテリ主接触器は閉じられており、変換器ブリッジの各対の内で、前記2つのスイッチングブリッジは並列モードで動作し、
前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開かれており、変換器ブリッジの各対の内で、前記2つのスイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作する、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項7】
前記PWMインバータ非絶縁出力は、互いに分離された2組以上のモータ巻線を有するACモータを駆動するための電力を供給し、前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、モータ巻線の同じ組に接続されたスイッチングブリッジ間で追加のPWMゲートスイッチング同期が行われ、従って、モータ巻線の各組は、意図しないモータ循環電流を低減するために、前記モータ端子間の差動電圧がほぼゼロで励起される、請求項6に記載の電力変換器。
【請求項8】
AC電源が、AC-DC整流器を通じて間接的に前記DCバスに接続され、前記AC-DC整流器は、前記整流器が必要とするインダクタとして前記モータ巻線を使用するか否かに関わらず、前記AC電源から電力を引き出すために、前記インバータスイッチングブリッジの一部又は全部の組を逆電力方向で動作させることによって統合されて、その力率補正機能が実現されている、請求項6に記載の電力変換器。
【請求項9】
絶縁バッテリ充電システムと統合された非絶縁DC昇圧変換器として更に構成され、
DC-DC昇圧変換器として形成された1対以上のスイッチングブリッジであって、非絶縁出力は主接触器スイッチ及び1以上のインダクタを介してバッテリに接続され、入力は前記DCバスに接続されている、1対以上のスイッチングブリッジと、
前記スイッチングブリッジの前記非絶縁出力の間に接続された一次巻線と、絶縁出力に接続された二次巻線とを有する絶縁変圧器であって、前記絶縁出力は電力変換器に結合されて、前記バッテリを充電するためにDC電圧を生成する、絶縁変圧器と、
を含み、
前記非絶縁モードでのDC昇圧動作中、前記バッテリ主接触器は閉じられており、前記スイッチングブリッジは並列モードで動作するように制御され、前記スイッチングブリッジの前記入力に結合されたインバータを通じて、電力は前記バッテリからAC負荷に伝送され、
前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開かれており、前記スイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作するように制御され、前記絶縁変圧器及び前記電力変換器を通じて、電力は前記DCバスから前記バッテリに伝送される、
請求項1に記載の電力変換器。
【請求項10】
前記昇圧インダクタは、一部又は全部が前記絶縁変圧器の設計に組み込まれており、前記バッテリは、前記主接触器を通じて、前記絶縁変圧器の一次巻線の中点に接続されている、請求項9に記載の電力変換器。
【請求項11】
ACモータを駆動する前記DCバスに接続されたPWMインバータを更に備え、前記PWMインバータは、PFC整流器として逆電力潮流で動作し、AC電源から電力を引き込み、前記ACモータ巻線を前記整流器に必要なインダクタとして使用するか否かを決定する、請求項9に記載の電力変換器。
【請求項12】
電力変換器を設計する方法であって、
直流(DC)バスに電源を供給するステップと
2つのスイッチングブリッジの対を形成するステップであって、前記DCバスに両方とも接続され、前記2つのスイッチングブリッジの非絶縁出力にパルス幅変調(PWM)電圧を生成する、2つのスイッチングブリッジの対を形成するステップと、
前記2つのスイッチングブリッジの前記非絶縁出力の間に接続される一次巻線と、絶縁出力に接続される二次巻線とを有する変圧器を配置するステップと、
を含み、
非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジを並列モードで動作させ、前記DCバスと前記非絶縁出力に結合された負荷の間で電力が伝送されるステップと、
絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジをフルブリッジモードで動作させ、前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
を含む、
電力変換器を設計する方法。
【請求項13】
制御部を設計し、少なくとも2つの異なる動作モードに従って前記2つのスイッチングブリッジを動作させるステップを更に含み、
前記非絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジを、位相が同期しているPWMスイッチング信号で動作させステップと、
前記絶縁モードでは、前記2つのスイッチングブリッジを、位相がずれたPWMスイッチング信号で動作させステップと、
を含む、請求項12に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項14】
前記一次側又は前記二次側のいずれかにおいて、前記絶縁変圧器の巻線と直列に少なくともの断路スイッチを接続するステップを更に含み、
前記非絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチを開いたままにし、前記2つのスイッチングブリッジを並列モードで動作させ、前記2つのブリッジ間で前記PWMスイッチング信号を位相で同期させ、前記非絶縁出力全体で有効な前記PWMスイッチング周波数が増加するように、前記PWM信号を位相シフト角度でインターリーブさせるステップと、
前記絶縁モードでは、前記変圧器断路スイッチを閉じたままにし、前記2つのスイッチングブリッジをフルブリッジモードで動作させ、前記2つのブリッジ間で位相がずれるように前記PWMスイッチング信号を位相シフトし、前記変圧器を通じて前記DCバスと前記絶縁出力の間で電力が伝送されるステップと、
を含む、請求項12~13のいずれか1項に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項15】
2レベル、3レベル、5レベル、又はダイオード中性点クランプ(NPC)マルチレベル変換器、アクティブNPC(ANPC)マルチレベル変換器、フライングキャパシタ・マルチレベル変換器、又は前記スイッチングブリッジ間の任意の異なるマルチレベルトポロジの組み合わせといった任意のマルチレベル変換器トポロジを用いて、前記スイッチングブリッジを設計するステップを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項16】
前記電力変換器を3、4、又はそれ以上の数のスイッチングブリッジで構成し、複数の別個の絶縁変圧器に接続するか、複数の巻線が結合された同じ絶縁変圧器に接続するか、異なる変圧器構成の混合に接続する、ステップを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の電力変換器を設計する方法。
【請求項17】
電気自動車であって、
請求項1に記載の少なくとも2つの電力変換器と、
前記少なくとも2つの電力変換器の前記絶縁出力に結合されたバッテリであって、前記非絶縁モード中、主接触器を介して前記DCバスに結合可能である、バッテリと、
を備える、電気自動車。
【請求項18】
前記非絶縁モードでのインバータ動作中、前記少なくとも2つの電力変換器の前記非絶縁出力は、互いに分離している2以上のモータ巻線の組を有するACモータを駆動するための電力を供給し、前記絶縁モードでのバッテリ充電動作中、モータ巻線の同じ組の間に接続されている前記少なくとも2つの電力変換器の前記スイッチングブリッジ間で追加のPWMゲートスイッチング同期が適用され、モータ巻線の各組は、任意の意図しないモータ循環電流を低減するために、前記モータの端子間の差動電圧がほぼゼロで励起される、請求項17に記載の電気自動車。
【請求項19】
DC-DC昇圧変換器を形成するための1対のスイッチングブリッジであって、非絶縁出力は主接触器及び1以上のインダクタを通じてバッテリに接続され、入力はDCバスに接続される、1対のスイッチングブリッジと、
の絶縁変圧器であって、前記スイッチングブリッジの前記非絶縁出力の間に接続される一次巻線と、絶縁出力に接続される二次巻線であって、前記絶縁出力は前記バッテリを充電するためのDC電圧を生成するための電力変換器に接続可能である、二次巻線とを有する、1の絶縁変圧器と、
を備え、
非絶縁モードでのDC昇圧動作中、前記バッテリ主接触器は閉じており、前記スイッチングブリッジは並列モードで動作するように制御され、前記スイッチングブリッジの前記入力に結合された前記インバータを通じて、前記バッテリからAC負荷に電力が伝送され、
絶縁モードでのバッテリ充電動作中、前記バッテリ主接触器は開いており、前記スイッチングブリッジはフルブリッジモードで動作するように制御され、前記絶縁変圧器及び前記電力変換器を通じて、前記DCバスから前記バッテリに電力が伝送される、
電気自動車。
【請求項20】
前記昇圧インダクタは、一部又は全部が前記絶縁変圧器の設計に組み込まれており、前記バッテリは、前記主接触器を通じて前記絶縁変圧器一次巻線の中点に接続され、請求項19に記載の電気自動車。
【国際調査報告】