(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】再生可能な樹脂組成物およびこれにより製造された物品
(51)【国際特許分類】
C08L 3/02 20060101AFI20221208BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20221208BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08L3/02
C08L67/02
C08L67/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522734
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2020014415
(87)【国際公開番号】W WO2021080319
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0130936
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522130612
【氏名又は名称】グリーン ウェイル グローバル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GREEN WHALE GLOBAL CO., Ltd.
【住所又は居所原語表記】2F,650 Eonju-ro,Gangnam-gu,Seoul,06098 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナン チ、ハ トゥック
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チヨン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB04W
4J002AD00Z
4J002BN05Z
4J002CF03Y
4J002CF05X
4J002CF19X
4J002EC056
4J002EH036
4J002EH046
4J002EH056
4J002ET016
4J002FD026
4J002FD02Z
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート(poly butylene succinate;PBS)またはポリ乳酸(polylactic acid、PLA)100~200重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(poly butylene adipate-co-terephthalate;PBAT)20~120重量部、および可塑剤10~40重量部を含む再生可能な樹脂組成物およびこれにより製造された物品が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート(poly butylene succinate;PBS)またはポリ乳酸(polylactic acid、PLA)100~200重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(poly butylene adipate-co-terephthalate;PBAT)20~120重量部、および可塑剤10~40重量部を含む、再生可能な樹脂組成物。
【請求項2】
前記再生可能な樹脂組成物が、キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート120~180重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート40~100重量部、および可塑剤15~35重量部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の再生可能な樹脂組成物。
【請求項3】
前記可塑剤は、多価アルコール、糖アルコール、糖アルコールの無水物、尿素系化合物、タンパク質、酸エステル、脂肪族酸高分子、またはこれらのうち2以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の再生可能な樹脂組成物。
【請求項4】
前記再生可能な樹脂組成物が、衝撃補強材をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の再生可能な樹脂組成物。
【請求項5】
前記再生可能な樹脂組成物が、ASTM D6866の規定に準じて35~70%のバイオコンテンツを有することを特徴とする、請求項1に記載の再生可能な樹脂組成物。
【請求項6】
前記再生可能な樹脂組成物がキャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート120~180重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート40~100重量部、およびグリセリンオイル15~35重量部を含み、ASTM D6866の規定に準じて35~70%のバイオコンテンツを有し、前記キャッサバデンプンがジャガイモデンプンまたはトウモロコシデンプンの代わりに用いられることで、価格競争力を有しながらも、大量生産が可能であり、容易で且つ完全な生分解性および堆肥化が可能であり、低い二酸化炭素排出量を有することを特徴とする、請求項1に記載の再生可能な樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の再生可能な樹脂組成物から製造された物品。
【請求項8】
前記物品が、フィルム、袋、ストロー、容器、またはトレーであることを特徴とする、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記キャッサバデンプンは、100~300重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の再生可能な樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な樹脂組成物およびこれにより製造された物品に関し、より詳しくは、生分解可能であるとともに、再加工して再生可能性に優れた、再生可能な樹脂組成物およびこれにより製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
1868年、米国のジョン・ハイアットにより象牙ビリヤードボールの代用品として初めて開発された以来、「神の贈り物」であったプラスチックは、150年ぶりに地球を脅かす爆弾となった。1個のプラスチック瓶の分解にかかる時間は約450年であり、全体リサイクル率は9%に留まっている。
【0003】
このようなプラスチックによる地球環境汚染が表面化している現在のところ、環境汚染問題を解消するための処理、もしくはその処理が可能な新素材の研究開発が求められている。
【0004】
従来の廃プラスチックによる環境汚染問題を減少させた処理方法は、例えば、熱分解や化学分解により低分子化したものを焼却または埋め立てする方法であった。しかし、焼却処理は、二酸化炭素の排出を伴うため地球温暖化の原因となり、プラスチック中にハロゲンや硫黄、窒素元素が含まれている場合には、有害ガスによる大気汚染の原因となり得る。プラスチックを埋め立てした場合、現在実用化されている大部分の樹脂は、長期間残存したままの状態となる。この期間に添加物などが流出して土壌汚染の原因の一つとなっている。
【0005】
このような問題に対し、最終処分された際に地球環境などに悪影響を与えない高分子化合物として生分解性高分子の開発が活発に行われている。
【0006】
生分解性高分子としては、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(poly butylene adipate-co-terephthalate、PBAT)、ポリヒドロキシアルカノエート(poly(hydroxyalkanoates、PHA)などの高価の材料が主をなしており、特にPBAT系の場合、流通安定性が不足し、高価であるため、商業的に使用するのに機能的且つ経済的な問題を有している。また、価格競争力を確保するためには、生分解性樹脂の中でも最も安価なポリ乳酸(polylactic acid、PLA)系を用いることが代案となり得るが、フィルムなどの成形品として適用する場合に、ポリ乳酸固有の脆性(brittleness)により、フィルムが破れやすいなどといった機械的物性に限界がある。
【0007】
近年、使用後に単に分解される性質を有する生分解性高分子では分解するのに依然として相当な時間が要求されており、制限された資源の再使用および再生が話題となっているところ、生分解性高分子の短所を克服したバイオプラスチックにそのパラダイムが変わっている。
【0008】
このようなバイオプラスチックにおいては、人体無害性、物性、強度、生産性、価格競争力、再使用、再生可能性などが、どれほど速く分解されて自然に好循環するかという問題よりもその重要性がさらに強調されている。
【0009】
したがって、従来の生分解性高分子の生分解性を有するとともに再生可能性に優れたバイオプラスチック素材の開発が依然として求められている現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとうする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、生分解可能であるとともに、再加工して再生可能性に優れた、再生可能な樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記組成物から製造された物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するために、本発明の一態様によれば、下記の実施形態が提供される。
【0013】
第1実施形態によれば、
キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート(poly butylene succinate;PBS)またはポリ乳酸(polylactic acid、PLA)100~200重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(poly butylene adipate-co-terephthalate;PBAT)20~120重量部、および可塑剤10~40重量部を含む、再生可能な樹脂組成物が提供される。前記キャッサバデンプンは、100重量部~300重量部の範囲を有することが好ましい。
【0014】
第2実施形態によれば、第1実施形態において、
前記再生可能な樹脂組成物が、キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート120~180重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート40~100重量部、および可塑剤15~35重量部を含んでもよい。前記キャッサバデンプンは、100重量部~300重量部の範囲を有することが好ましい。
【0015】
第3実施形態によれば、第1実施形態または第2実施形態において、
前記可塑剤は、多価アルコール、糖アルコール、糖アルコールの無水物、尿素系化合物、タンパク質、酸エステル、脂肪族酸高分子、またはこれらのうち2以上を含んでもよい。
【0016】
第4実施形態によれば、第1実施形態~第3実施形態のいずれか一実施形態において、
前記再生可能な樹脂組成物が、衝撃補強材をさらに含んでもよい。
【0017】
第5実施形態によれば、第1実施形態~第4実施形態のいずれか一実施形態において、
前記再生可能な樹脂組成物が、ASTM D6866の規定に準じて35~70%のバイオコンテンツを有してもよい。
【0018】
第6実施形態によれば、第1実施形態~第5実施形態のいずれか一実施形態において、
前記再生可能な樹脂組成物がキャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート120~180重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート40~100重量部、およびグリセリンオイル15~35重量部を含み、ASTM D6866の規定に準じて35~70%のバイオコンテンツを有し、前記キャッサバデンプンがジャガイモデンプンまたはトウモロコシデンプンの代わりに用いられることで、価格競争力を有しながらも、大量生産が可能であり、容易で且つ完全な生分解性および堆肥化が可能であり、低い二酸化炭素排出量を有することができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、下記実施形態の物品が提供される。
【0020】
第7実施形態によれば、
第1実施形態~第6実施形態のいずれか一実施形態に記載の再生可能な樹脂組成物から製造された物品が提供される。
【0021】
第8実施形態によれば、第7実施形態において、
前記物品が、フィルム、袋、ストロー、容器、またはトレーであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によれば、バイオコンテンツの大きいキャッサバデンプンを主材料として用い、且つ、従来の生分解性高分子として主に用いられたポリブチレンアジペート-co-テレフタレートの含量を少なく用いることで、生分解可能であるとともに、再加工して再生可能性に優れた、再生可能な樹脂組成物を提供することができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態による再生可能な樹脂組成物は、従来用いられた高価のジャガイモデンプンまたはトウモロコシデンプンの代わりにキャッサバデンプンを用いることで、価格競争力を有しながらも、大量生産が可能であり、生分解性および堆肥化が可能であり、低い二酸化炭素排出量を有するという点で有利である。
【0024】
本発明の一実施形態による再生可能な樹脂組成物は、比較的に柔らかく、粘度が高いため高い弾力および粘性を有し、糊化温度が低いため煮る時間の短縮効果がある。本発明の一実施形態による再生可能な樹脂組成物は、従来のモチトウモロコシデンプンよりも膨潤力が高いため吸収力が高く、組成物の透明性が高く、老化する性質が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態によれば、キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート(poly butylene succinate;PBS)またはポリ乳酸(polylactic acid、PLA)100~200重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(poly butylene adipate-co-terephthalate;PBAT)20~120重量部、および可塑剤10~40重量部を含む、再生可能な樹脂組成物が提供される。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0027】
したがって、本明細書に記載の実施形態に図示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態にすぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないため、本出願時点にこれらを代替できる多様な等価物および変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
【0028】
従来、環境問題を引き起こす一般的なプラスチック材料の問題を解消するために提示された「生分解性(biodegradable)樹脂」とは、高分子またはプラスチックなどの樹脂が、利用後に土壌などの環境で化学的分解が可能であって、二酸化炭素、窒素、水、バイオマス、無機塩類などの天然副産物を出す高分子を意味する。このような生分解性樹脂の多数が石油のような化石燃料から得られており、このような化石燃料は、再生が可能ではない資源であり、また、工程中に発生する炭素量も大きいため、環境親和性に限界がある。
【0029】
これとは異なり、本発明の一態様による「再生可能(renewable)樹脂」とは、使用済みであるかまたは使用されずに捨てられた後に回収されたものと副産物の全部または一部を原料物質として再び使用できる樹脂を意味する。この際、使用されるか捨てられた樹脂を基準に原料物質として再び使用できる程度が大きいほど再生可能性が高いといえる。
【0030】
このような再生可能性は、「バイオコンテンツ(biocontent)」により評価することができ、前記バイオコンテンツは、少なくとも一部が生物学的基盤の分子単位から誘導された重合体を含有する重合体または組成物を意味し得る。この際、「バイオコンテンツ(biocontent)」は、ASTM D6866(放射性炭素を用いて固形、液状および気体サンプルの生物基盤の素材を測定するための標準試験方法)によって決められることができ、材料中の総有機炭素に対して再生可能な資源からの炭素の量(生物炭素の量)の質量パーセントとして称することができる。
【0031】
具体的に、前記バイオコンテンツは、ASTM D6866の規定に準じると、材料の質量数14の炭素(C14)の含有量、および質量数12(C12)と質量数13(C13)の炭素の含有量を測定し、質量数14の炭素(C14)の含有比率を求めることで判別することができる。
【0032】
材料の全体炭素含有量のうち質量数14の炭素(C14)の含有比率が増加するほど、カーボンニュートラル(Carbon neutral)概念により、材料を燃やした場合に二酸化炭素排出量を減少できるという意味である。仮に石油由来の原料だけの材料からなった場合には、質量数14の炭素が観測されない。二酸化炭素排出量を減少させる効果を得るためには、C14の濃度値が大きいほど好ましい。
【0033】
この際、バイオコンテンツ(%)は、下記式によって計算することができる。
バイオコンテンツ(%)=[材料中の生物(有機)炭素の含量(C14の含有量)]/[材料中の総(有機)炭素の含量(C12+C13+C14の総量)]*100%
【0034】
生物学的基盤の単位は、生物学的に誘導された単量体であってもよい。生物学的基盤の単量体は、例えば、植物から誘導されてもよい。植物は、いかなる植物であってもよく、例えば、デンプン系植物、トウゴマ、パーム油、植物性油、サトウキビ、トウモロコシ、米、スイッチグラス(switch grass)などであってもよい。
【0035】
このような再生可能な樹脂は、全て生分解される性質を有しなくてもよい。一方、「再生可能な樹脂」は、用いられた物品などをそのまままたは直して再び使用するか、または生産活動に再び使用する再使用(reusable)とは差別化された概念である。
【0036】
本発明の一態様による再生可能な樹脂組成物は、キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート(poly butylene succinate;PBS)50~100重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(poly butylene adipate-co-terephthalate;PBAT)75~95重量部、および可塑剤1~20重量部を含む。前記キャッサバデンプンは、100重量部~300重量部の範囲を有することが好ましい。
【0037】
前記キャッサバデンプンは、キャッサバから採取したデンプンを意味し、このキャッサバは、南アメリカが原産地である植物であって、塊根が四方に広がり、サツマイモと同様に、太く、表面の殻は褐色であり、中身は白色の根菜である。キャッサバは、熱帯地方で活発に栽培され、栽培が非常に簡単であり、挿し木で増加し、半年で芋(根および茎)を収穫することができるため二毛作も可能である。キャッサバには、カルシウムおよびビタミンCが豊富に入っており、20~25%のデンプンが含まれている。
【0038】
キャッサバデンプンは、キャッサバを磨り潰し、デンプンを水で洗い落として沈殿させた後に乾燥させて製造される。
キャッサバは、酒精、バイオエタノール、飼料、製紙、食用などの多様な用途として用いられている。キャッサバは、南米が原産地であるが、アフリカおよび東南アジアで主に生産されており、特に東南アジアで生産が増大している。
【0039】
食品業界では、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプンを代替する需要が増加している傾向にある。気候の変化およびバイオエタノール需要の増加、国際穀物価格の上昇による飼料価格の上昇などに対応して、キャッサバに世界多くの国が関心を持っている。現在、トウモロコシ、小麦、大豆などの国際価格が連日高値を更新している状況で、キャッサバデンプンは、従来用いられたトウモロコシデンプンやジャガイモデンプンに比べて、価格競争力があり、大量生産が可能であり、容易で且つ完全な生分解性および堆肥化が可能であり、低い二酸化炭素排出量を有するという点で有利である。
【0040】
前記キャッサバデンプンは、伝統的な合成プラスチックと比べて、高い水溶解度および弱い機械的強度の短所を有する。
このようなキャッサバデンプンの水吸収特性を減少させ、機械的特性を改善させるために、本発明の再生可能な樹脂組成物においては、キャッサバデンプンとともに、ポリブチレンサクシネートおよびポリブチレンアジペート-co-テレフタレートを共に混合する。
【0041】
前記ポリブチレンサクシネートは、融点が比較的に高いため、加工性に優れるだけでなく、生分解性に優れるため、分解できない(non-biodegradable)高分子合成樹脂の代替素材として開発されている。前記ポリブチレンサクシネートは、ポリエステル系の熱可塑性重合体樹脂であり、ポリプロピレンに匹敵する特性を有する生分解性脂肪族ポリエステルであり、生分解性、半結晶性熱可塑性樹脂である。前記ポリブチレンサクシネートは、発酵によりブドウ糖および蔗糖のような再生可能な供給原料または石油系樹脂原料で生産することができる。前記ポリブチレンサクシネートの機械的特性は、広く用いられる高密度ポリエチレンおよびイソタクチックポリプロピレンの特性と比較できるため、非常に有望なバイオポリマーである。PLAと比較する際に遥かに柔軟であって可塑剤が必要ではないが、融点が低い(115℃ vs ~160℃)。前記ポリブチレンサクシネートは、最新バイオポリマーの一つであって、PLA、PBATおよびPHBのような他のバイオポリマーに対する費用効率的な代案となることができる。したがって、前記ポリブチレンサクシネートは、費用効率を考慮しないのであれば、ポリ乳酸(PLA)に代替可能である。その可能な応用分野としては食品包装、マルチフィルム、植木鉢、衛生用品、漁網および釣り糸が含まれ、また、マトリックスポリマーとしてまたはポリ乳酸(PLA)のような他の生体重合体と組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
前記ポリブチレンサクシネートは、部分的に再生可能なバイオソースであり、均質な化合物を製造するためにデンプンと容易に相互作用することができ、既存の家庭用プラスチック製品を代替できる優れた機械的および物理的特性を有する。
【0043】
例えば、1,4-ブタンジオールをジカルボン酸またはその酸無水物、例えば、コハク酸と重縮合反応させることで得られることができる。ポリブチレンサクシネート重合体は、直鎖状重合体または長鎖分岐状重合体であってもよい。長鎖分岐状ポリブチレンサクシネート重合体は、三官能性または四官能性ポリオール、オキシカルボン酸、および多塩基カルボン酸で構成された群から選択された追加の多官能性成分を用いて製造されてもよい。ポリブチレンサクシネート重合体は、関連技術分野で公知のものである。
【0044】
前記ポリブチレンサクシネートは、キャッサバデンプン100重量部を基準として100~200重量部であり、本発明の一実施形態によれば、120~180重量部、または130~165重量部であってもよく、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)に代替可能である。前記キャッサバデンプンは、100重量部~300重量部の範囲を有することが好ましい。
【0045】
前記ポリブチレンサクシネートの含量がこのような範囲を満たす場合に、前記再生可能な樹脂組成物のバイオコンテンツを増加させることができる。
前記ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)(PBAT)は、ブチレンアジペートおよびテレフタレートのランダム共重合体を含む重合体を指す。本発明の一実施形態による組成物に適したポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、最新技術で公知の任意の方法により製造されてもよい。例えば、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、1,4-ブタジエンとアジピン酸およびテレフタル酸の混合物との重縮合により製造されてもよい。
【0046】
また、前記ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、生分解性包装プラスチック製品を生産するためにPLAと混合して用いられてもよく、優れた引張物性特性を有している。前記ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、半芳香族、生分解性熱可塑性コポリエステルで容易に成形し熱成形することができる。1,4-ブタンジオール、アジピン酸およびジメチルテレフタレート(DMT)単量体のランダム共重合により生成される。前記ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、ポリエチレンと類似した多くの有用な属性を有している。例えば、破断時に相対的に高い伸び率(30-40%)と中間程度の高い衝撃およびパンク靱性を有し、多少低い引張強度および強度を有することができる。したがって、前記ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、ポリエチレンと非常に類似するため、食品包装および農業用フィルム応用分野で類似した応用分野に用いることができ、また、生分解性(堆肥化可能)であり、ポリエチレンに用いられる既存の吹き込みフィルム装置で処理することができる。前記ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)は、ポリ(乳酸)Aに対する強化剤として用いられてもよく、部分的に再生可能なバイオソースであり、均質な化合物を製造するためにデンプンと容易に相互作用することができ、既存の家庭用プラスチック製品を代替できる優れた機械的および物理的特性を有する。
【0047】
前記ポリブチレンアジペート-co-テレフタレートは、キャッサバデンプン100重量部を基準として20~120重量部であり、または40~100重量部、または50~80重量部であってもよい。前記キャッサバデンプンは、100重量部~300重量部の範囲を有することが好ましい。
【0048】
前記ポリブチレンアジペート-co-テレフタレートの含量がこのような範囲を満たす場合に、前記再生可能な樹脂組成物のバイオコンテンツを増加させることができる。
【0049】
前記可塑剤は、キャッサバデンプン、ポリブチレンサクシネート、およびポリブチレンアジペート-co-テレフタレートの高分子に添加され、柔軟性、弾性、曲げ性が増加して加工性、成形性などを改善させる。キャッサバデンプンなどは、分子量が大きいため容易に変形されないが、それに可塑性を付与すると、外力により容易に変形させることができる。
【0050】
前記可塑剤の含量は、キャッサバデンプン100重量部を基準として、可塑剤10~40重量部であり、または15~35重量部、または20~30重量部であってもよい。前記キャッサバデンプンは、100重量部~300重量部の範囲を有することが好ましい。
【0051】
前記可塑剤の含量がキャッサバデンプン100重量部を基準として1重量部未満である場合には、物性改善の効果が微々たる恐れがあり、前記含量が20重量部超過である場合には、過量含まれた可塑剤が、再生可能な樹脂組成物から物品製造後に表面にマイグレーション(migration)し得るし、この場合、シール強度が次第に弱くなって、ショッピングバッグなどのような最終的に製造される製品の品質が低下する問題が発生し得る。
【0052】
前記可塑剤の例としては、多価アルコール可塑剤、例えば、糖(例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、ラフィノース、マルトデキストロース、ガラクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、マンノース、およびエリトロース)、糖アルコール(例えば、エリトリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、およびソルビトール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、およびヘキサントリオール)など、ヒドロキシ基を有しない水素結合形成有機化合物、例えば、尿素系化合物(尿素および尿素誘導体);糖アルコールの無水物、例えば、ソルビタン;動物タンパク質、例えば、ゼラチン;植物性タンパク質、例えば、ヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質;およびこれらの混合物であるタンパク質が挙げられる。また、前記可塑剤としては、フタレートエステル、ジメチルおよびジエチルサクシネートおよび関連エステル、グリセロールトリアセテート、グリセロールモノおよびジアセテート、グリセロールモノ、ジおよびトリプロピオネート、ブタノエート、ステアレート、乳酸エステル、クエン酸エステル、アジピン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、およびその他の酸エステルなどの酸エステルが挙げられる。脂肪族酸高分子を用いてもよく、その例としては、エチレンとアクリル酸の共重合体、マレイン酸でグラフトされたポリエチレン、ポリブタジエン-アクリル酸共重合体、ポリブタジエン-マレイン酸共重合体、ポリプロピレン-アクリル酸共重合体、ポリプロピレン-マレイン酸共重合体、およびその他の炭化水素系酸が挙げられる。低分子量、例えば、約20,000g/モル未満、好ましくは約5,000g/モル未満、より好ましくは約1,000g/モル未満の低分子量の可塑剤が好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、前記再生可能な樹脂組成物が、キャッサバデンプン100重量部、ポリブチレンサクシネート120~180重量部、ポリブチレンアジペート-co-テレフタレート40~100重量部、および可塑剤15~35重量部を含んでもよい。
【0054】
本発明の一実施形態による再生可能な樹脂組成物は、衝撃補強材をさらに含んでもよい。
前記衝撃補強剤の含量は、前記キャッサバデンプン、ポリブチレンサクシネート、およびポリブチレンアジペート-co-テレフタレートの樹脂混合物100重量部を基準として0.1~5重量部、または0.1~3.5重量部であってもよい。前記衝撃補強剤の含量がこのような範囲を満たす場合に、再生可能な物品の引裂強度および機械的強度が改善されることができる。
【0055】
前記衝撃補強剤は、ポリブタジエン-グラフト-エチレン-オクテンコポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(methylmethacrylate-butadine-styrene;MBS)ターポリマー(terpolymer)、アクリルコポリマー(Acrylic copolymer)およびエチレンアクリレートコポリマー(ethylene acrylate copolymer)からなる群から選択された1種以上を含んでもよく、好ましくは、ブタジエン-スチレン共重合体がコアを形成し、メチルメタクリレートがコアの表面にグラフトされてシェルを形成したMBSターポリマーが用いられてもよい。
【0056】
具体的に、前記コア-シェルタイプのMBSターポリマーの場合、コア部は、スチレン-ブタジエン架橋ゴムからなって衝撃吸収に効果的であり、シェル部は、メチルメタクリレートからなって基材との混練性を向上させることで、衝撃補強剤の分散性を高めるのに効果的である。したがって、MBSターポリマーが衝撃補強剤として用いられる場合、前記衝撃補強剤が生分解性樹脂中に均一に分散することができ、このような優れた分散性は、衝撃効率および表面物性を改善させることができるためより好ましい。
【0057】
例えば、前記MBSターポリマーとしては、LG化学社のMB885、MB872またはMB802、そして三菱レイヨン社(Mitsubishi Rayon Co.,Ltd.)のMETABLEN(登録商標)シリーズなどが用いられてもよい。前記アクリルコポリマーとしては、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)のParaloid(登録商標)シリーズ、例えば、Paraloid(登録商標) BPM-520などが用いられてもよく、前記エチレンアクリレートコポリマーとしては、デュポン社(DuPont Company)のBIOMAX(登録商標) Strongシリーズ、例えば、BIOMAX(登録商標) Strong 120などが用いられてもよい。
【0058】
この他にも、本発明の一実施形態による再生可能な樹脂組成物は、使用目的に応じて、相溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、カップリング剤などの多様な添加剤を単独でまたは2種以上の混合物の形態でさらに含んでもよい。
【0059】
本発明の一実施形態による再生可能な樹脂組成物は、35~70%、または38.5~50%のバイオコンテンツ(biocontent)を有してもよい。この際、バイオコンテンツは、前述したように、ASTM D6866(放射性炭素を用いて固形、液状および気体サンプルの生物基盤の素材を測定するための標準試験方法)によって決められることができ、材料中の総有機炭素に対して再生可能な資源からの炭素の量(生物炭素の量)の質量パーセントとして称することができる。この際、バイオコンテンツ(%)は、下記式によって計算することができる。
バイオコンテンツ(%)=[材料中の生物(有機)炭素の含量(C14の含有量)]/[材料中の総(有機)炭素の含量(C12+C13+C14の総量)]*100%。
【0060】
本発明の一態様によれば、前述した再生可能な樹脂組成物から製造された物品が提供される。
【0061】
本発明の一態様による再生可能な樹脂組成物は、例えば、インフレーション法やTダイ法を用いてフィルム化することができる。また、紙製品などの表面にコーティングすることもできる。
【0062】
また、射出成形機、真空成形機、押出機、ブロー成形機などを用いて加工することができる。例えば、育苗植木鉢(ポット)、杭、管、壁材、板状品、エンプラ製品、包装材、農漁業用製品、日常用製品、建築材料などに加工することができる。
これらの物品は、自動車部品や土木用、医療用、スポーツ用、録画用などの資材および部品などに用いることができる。
【0063】
また、具体的には、例えば、本発明の再生可能な樹脂組成物を成形などを施し、ストロー、容器(合成洗剤用容器、薬容器、食品用トレー、電子レンジ用食品容器、防虫剤容器、石鹸用トレー、弁当容器、菓子/キャンディー類容器)、ゴルフ用品、ラップアルミホイルのカッタ刃、袋(栽培用袋、花栽培用袋、ゴミ袋など)、工業用トレー、菓子用仕切り部材、特殊パッケージなどの多様なプラスチック商品を製造することができる。
【0064】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳しく説明する。ただし、本発明に係る実施例は、種々の他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0065】
実施例1
ポリブチレンサクシネート(PTT MCC Biochem Co.,Ltd)40重量部、およびポリブチレンアジペート-co-テレフタレート(BASF、商品名Ecoflex)20重量部を混合器に投入し、予備樹脂混合物を準備した。
【0066】
次いで、二軸押出機(ChangsungP&R社製、L/D:48/1、直径:1.5mm)の1番のメイン供給器(feeder)に前記予備樹脂混合物を投入し、2番の供給器にはキャッサバデンプン27.3重量部を投入し、サイド液体供給器には可塑剤としてグリセリンオイル7.7重量部およびカップリング剤(シランカップリング剤:ビニルトリメトキシシラン)5重量部を投入した。
【0067】
前記供給器から投入された樹脂組成物材料を押出機を介してコンパウンドして押出し、次いで、40℃の水槽で冷却した後にドライ機で乾燥した。
【0068】
乾燥された押出結果をペレット化マシン(Pelletizing Machine)を介して2.4~2.5mmのペレットにカットを行い、ペレット形態に再生可能な樹脂組成物を製造した。
【0069】
実施例2
キャッサバデンプンの投入後、衝撃補強材としてエラストマー(ポリブタジエン-グラフト-エチレン-オクテンコポリマー、3重量部)をさらに投入することを除いては、実施例1と同様の方法でペレット形態に再生可能な樹脂組成物を製造した。
【0070】
比較例1
キャッサバデンプンを投入していないことを除いては、実施例1と同様の方法でペレット形態に再生可能な樹脂組成物を製造した。
【0071】
実験例:
バイオコンテンツ評価
実施例1および2と比較例1で製造された再生可能な樹脂組成物を用いて、ASTM D6866に準じてバイオコンテンツを測定した。
この際、バイオコンテンツ(%)は、下記式によって計算した。
バイオコンテンツ(%)=[材料中の生物(有機)炭素の含量(C14の含有量)]/[材料中の総(有機)炭素の含量(C12+C13+C14の総量)]*100%。
【0072】
【0073】
前記表1を参照すれば、本発明の一実施形態による実施例1および2の再生可能な樹脂組成物が、比較例1に比べて、顕著に高いバイオコンテンツ値を示すことが分かった。
【国際調査報告】