(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】多関節ローターを持つ分離型揚力推力VTOL航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 29/00 20060101AFI20221208BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20221208BHJP
B64C 11/34 20060101ALI20221208BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B64C29/00 A
B64D27/24
B64C11/34
B64C27/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536908
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 US2020046317
(87)【国際公開番号】W WO2021034640
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509082617
【氏名又は名称】テクストロン システムズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】TEXTRON SYSTEMS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】124 Industry Lane,M/S 9050/300,Hunt Valley,Maryland 21030 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】ベイティ、ショーン マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、スティーブン ダブリュー
(57)【要約】
分離型揚力推力(SLT)航空機は、縦推力エンジンと多関節電動ローターとを含み、そのうちの少なくともいくつかは、ローター位置信号に基づいて向きを変えることができる位置可変ローターである。制御回路は、VTOL、固定翼飛行、および風の強い状態で航空機をホバリングするときの揚力面の望ましい姿勢の保持をローターの向きとは関係なく行うことを含む、中間移行状態の間の航空機の指令された推力ベクトル操縦を提供するため、航空機の揚力面および縦推力エンジンに対して、縦推力エンジンの推力および各位置可変ローターの推力および方向を独立して制御する。飛行およびナビゲーション制御システムは、飛行操縦を自動化し、ステーションキーピング、追跡、回避、収束操縦の際に静的または動的座標に対して望ましい航空機の姿勢と位置を維持するシステムである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機であって:
揚力面を有する機体;
縦推力エンジン;
前記機体に取り付けられた複数のモジュール式多関節電動ローターであって、少なくとも一部の前記ローターは、そこに供給されるローター位置信号に基づいて方向可変である位置可変ローターであり;
前記電動ローターに電力を供給するための電力源;
垂直離着陸(VTOL)、固定翼飛行、および、風の強い状態で前記航空機をホバリングするときの揚力面の望ましい姿勢の保持をローターの向きとは関係なく行うことを含む、中間移行状態の間の前記航空機の指令された推力ベクトル操縦を提供するため、前記航空機の揚力面および前記縦推力エンジンに対して、当該縦推力エンジンの推力および各位置可変ローターのローター推力およびローター方向を独立して制御するように構成および操作される制御回路;および、
自律的または人間参加型補強によって飛行操縦を自動化し、前記航空機がステーションキーピング、追跡、回避、または収束操縦を実行しているときに、自律的または操作者が定義する静的または動的グローバル座標に対して所望の航空機システムの姿勢と位置とを維持することができる飛行およびナビゲーション制御システム、
を含む、航空機。
【請求項2】
前記位置可変ローターは、ローター位置に基づいてピッチとロールとの両方で可変の向きを持つ複合関節型電動ローターであり、前記制御回路は、横風状態で前記航空機をホバリングするときにローターの向きとは無関係に前記揚力面の前記望ましい姿勢を維持するために前記複合関節型電動ローターの独立制御を提供する、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
横方向移動の場合と縦方向移動の場合との両方で構成および操作され、前記横方向移動の場合、前記ローターはロールで関節連結され前記揚力面の実質的水平姿勢を保ちながら補助し、風による揚力の悪影響と変動的影響とを低減、および制御権限を維持し、前記縦方向移動の場合、前記ローターはピッチで関節連結され、前記揚力面の前記実質的水平姿勢を保ちながら補助し、風による揚力成分の悪影響と変動的影響とを低減し、および制御権限を維持する、請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記制御回路と飛行およびナビゲーション制御システムとが協調して、(a)前記縦推力エンジンの回転速度とブレードピッチ、および(b)前記ローターの、ローターアセンブリ縦チルト角、ローターアセンブリ横チルト角、ローター回転速度、ローターブレードピッチ、を含む6次元制御による推力ベクトル推進を提供する、請求項1に記載の航空機。
【請求項5】
各ローターは独立して制御される、請求項4に記載の航空機。
【請求項6】
前記飛行およびナビゲーション制御システムは、予測推力ベクトル制御のために前記航空機の物理プラントのモデルを組み込んだモデルベースのコントローラを含む、請求項4に記載の航空機。
【請求項7】
前記揚力面は、中央縦胴体から横方向に伸びる翼によって形成されている、請求項1に記載の航空機。
【請求項8】
水平推力エンジンが、胴体上に配置され、後方水平推力を供給するように配置されている、請求項7に記載の航空機。
【請求項9】
前記翼に取り付けられた2つの細長いブームをさらに含み、前記ローターが前記ブームのそれぞれの端部に取り付けられている、請求項7に記載の航空機。
【請求項10】
前記ローターには、上向きで牽引プロペラを有するフロントローターと、下向きで推進プロペラを有するリアローターとが含まれる、請求項1に記載の航空機。
【請求項11】
方向可変フロントローターと方向可変リアローターとを含む対称的な推進構成を有する、請求項1に記載の航空機。
【請求項12】
方向可変フロントローターと方向制限リアローターとを含む非対称の推進構成を有する、請求項1に記載の航空機。
【請求項13】
方向可変フロントローターと方向固定リアローターとを含む非対称の推進構成を有する、請求項1記載の航空機。
【請求項14】
少なくともいくつかの前記ローターは、飛行制御の対応する局面を提供するためにロータープロペラのピッチが動的に調整される可変ピッチ機構を含む、請求項1に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に航空機の推進に関する分野であり、より具体的には、垂直離着陸(VTOL)可能な、分離型揚力推力、固定翼機に関するものである。
【発明の概要】
【0002】
既知の分離型揚力推力VTOL可能な固定翼機は、VTOL操作中の操縦を縦推力エンジン/モーターに依存している。効果的に操縦するシステムの能力は、揚力面(翼)の姿勢または向きを維持する航空機の能力によって制限される。典型的な推力エンジンは、VTOL操作では縦方向の推力に限界があり、揚力翼が空気力学的に実行不可能な間は、より出力の高いVTOL揚力システムを操縦中に活用することができない。その結果、分離型揚力推力システムは、従来のマルチローターシステムと比較してVTOLの操縦が遅く、追加の搭載蓄積エネルギーと、より大きなエグレス/イングレスのフットプリント/ボリュームが必要になり、静的および動的ターゲットへの正確な相対位置制御と収束とを実行することは、環境条件によって制限される可能性がある。
【0003】
より具体的には、固定翼表面は、そのようなハイブリッドタイプの航空機がVTOLモードで動作している場合、航空機の操縦制御に深刻な悪影響を与える可能性がある。典型的なクワッドローターは、プラットフォームのピッチとロールとを使用して横力を生成し、風に抵抗し、回転および並進する機能を生み出す。もし翼などの大きな付属物を備えたクワッドローターにこのようなアプローチが取られると、風は翼と相互作用して、競合する水平および垂直の力を発生させ、VTOL制御機能を圧倒する可能性がある。そのため、翼を持つVTOLでは、風が強いときにピッチ角やロール角を制限して制御飛行する必要があり、そのような状況では航空機の操縦が大きく制限されることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここでは垂直離着陸(VTOL)対応の分離型揚力推力固定翼航空機が開示されており、多関節ローターによるベクトル推力推進を使用して動的ポーズと相対位置とが操られる。多関節型揚力ローターアセンブリを利用することで、航空機は追加の推力制御を活用し、操縦中の航空機の姿勢を操ることができる。より具体的には、翼を水平に保ったままVTOLシステムで縦方向と横方向の力を独立して発生させることができる能力は、開示する航空機の重要な能力である。揚力ローターアセンブリは、1つ以上の回転軸を中心に作動し、それぞれのローターを独立して制御し、縦推力エンジン/モーターと連動して、飛行プロファイルと航空機の姿勢とを積極的に操りながら結果的に操縦ベクトルを提供する。
【0005】
一般的に、開示された航空機には以下が含まれる:
揚力面を有する機体;
1つ以上の縦推力エンジン(通常、内燃エンジンまたは電気モーター/プロペラを含む);
機体に取り付けられた複数のモジュール式多関節電動ローターであって、少なくともいくつかのローターは、そこに供給されるローター位置信号に基づいて方向可変を有する位置可変ローターであり;
電動ローターに電力を供給するための電力源;
VTOL、固定翼飛行、および風の強い状態で航空機をホバリングするときの揚力面の望ましい姿勢の保持をローターの向きとは関係なく行うことを含む、中間移行状態の間の航空機の指令された推力ベクトル操縦を提供するため、航空機の揚力面および縦推力エンジンに対して、縦推力エンジンの推力および各位置可変ローターのローター推力およびローター方向を独立して制御するように構成および操作される制御回路;および、
自律的または人間参加型補強によって飛行操縦を自動化し、航空機がステーションキーピング、追跡、回避、または収束操縦を実行しているときに、自律的にまたは操作者が定義する静的または動的グローバル座標に対して所望の航空機システムの姿勢と位置とを維持することができる飛行およびナビゲーション制御システム。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、各モジュール式多関節電動ローターは、プロペラと、そのプロペラを回転させるように構成及び配置されたモーターと、モーターと結合されたベクトル制御アセンブリ(例えば、アクチュエータ又はサーボのセット)とを含む。ベクトル制御アセンブリは、制御回路から制御信号を受信し、機体に対するモーターの角変位または傾きを制御する。
【0007】
操作中、航空機(例えば、無人航空機またはUAV)は、一組の縦推力エンジンからの推進力および機体(例えば、一組の固定翼)の揚力面によってもたらされる揚力に応答して、水平に飛行することができる。水平飛行中、モジュール式多関節電動ローターの1つ以上は、水平成分(例えば、モーター軸の角変位による)を有するベクトル推力を提供することによって寄与し得る。あるいは、モジュール式多関節電動ローターの1つ以上は、(例えば、電力を節約するために)推力を提供しないことができる。
【0008】
さらに、航空機は、モジュール式多関節電動ローターの1つ以上によって提供される揚力に応じてホバリング操縦を行うことができる。ここで、縦推力エンジンは、推進力をほとんど、あるいは全く提供しない可能性がある。むしろ、モジュール式多関節電動ローターは、航空機を所望のホバリング位置に維持するための重要な垂直成分を有するベクトル推力を提供する。
【0009】
さらに、そのようなホバリング操縦の間、各モジュール式多関節電動ローターは、制御回路からの制御信号に応答して独立して関節運動し、効果的かつ効率的な位置制御(例えば、ピッチ、ロール、ヨー、他の位置保持操縦など)を提供することができる。例えば、モジュール式多関節型電動ローターの第1のサブセットは風向にわずかに向け、モジュール式多関節型電動ローターの別の第2のサブセットは実質的に垂直(機体に対して垂直)のままで、航空機を水平なホバリング位置に維持することができる。必要に応じて、航空機は、強いが変化する逆風の状況のような動的に変化する風環境でも、水平なホバリング位置を維持することができる。
【0010】
このような操作の間、一組の縦推力エンジンは、追加の位置制御および/または操縦を行うための推進力を提供することができる。例えば、一組の縦推力エンジンによる推進力で、航空機は、徐々にスキャニングまたはクリーピング操縦、風見操縦(例えば、機首または他の航空機構成要素を風に向ける)、離陸/着陸操縦などを行うことができる。
【0011】
前述および他の目的、特徴、および利点は、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかであり、添付の図面に示されているように、同様の参照文字は、異なる図全体にわたって同じ部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、当技術分野で知られているVTOL航空機の等角図である。
【
図3】
図3は、本発明によるVTOL航空機の等角図である。
【
図5A-5B】
図5A-
図5Bは、エグレス(離陸)およびイングレス(着陸)のボリュームを示す航空機の操作の概略図である。
【
図6】
図6は、推力ベクトル推進力を示す航空機の等角図である。
【
図7】
図7は、飛行制御システムのブロック図である。
【
図8】
図8は、詳細レベルでの飛行制御のブロック図である。
【
図9】
図9は、航空機の展開および使用のフローチャート図である。
【
図12】
図12は、さまざまな推進構成を持つ航空機の側面図である。
【
図13】
図13は、さまざまな推進構成を持つ航空機の側面図である。
【
図14】
図14は、さまざまな推進構成を持つ航空機の側面図である。
【
図15】
図15は、露出したペイロード/バッテリーコンパートメントを備えた航空機の図である。
【
図16】
図16は、ペイロード/バッテリーコンパートメントのペイロードおよびバッテリーセクションの配置の概略図である。
【
図17】
図17は、代替の機体タイプを採用している航空機のそれぞれ上面図、正面図、および側面図である。
【
図18】
図18は、代替の機体タイプを採用している航空機のそれぞれ上面図、正面図、および側面図である。
【
図19】
図19は、代替の機体タイプを採用している航空機のそれぞれ上面図、正面図、および側面図である。
【
図20】
図20は、代替の機体タイプを採用している別の航空機のそれぞれ上面図、正面図、および側面図である。
【
図21】
図21は、代替の機体タイプを採用している別の航空機のそれぞれ上面図、正面図、および側面図である。
【
図22】
図22は、代替の機体タイプを採用している別の航空機のそれぞれ上面図、正面図、および側面図である。
【
図23】
図23は、さまざまな推進ポッドの形状の準概略図である。
【
図24】
図24は、航空機のモジュール式の側面を示す図である。
【
図25】
図25は、航空機のモジュール式の側面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、無人航空機(UAV)とも呼ばれる、既知の配置を持つ無人航空機システム(UAS)10を示す。基本的な構造は、細長い胴体12と固定翼14とを有し、後部に取り付けられたエンジンとプロペラ16とによって水平推進力が提供される固定翼航空機の構造である。UAS10はまた、各々がそれぞれの翼14の下側に取り付けられ、それぞれの方向固定の上向きプロペラ20を搭載するブーム18を使用した、垂直離着陸(VTOL)用に構成される。プロペラ20は、この図では見えないが、ブーム18内のそれぞれの小型エンジンまたはモーターによって動力を与えられる。説明したようなVTOL構造および能力の追加により、UAS10は「ハイブリッド」UAS10と呼ばれてもよい。
【0014】
操作中、UAS10は、通常は地上位置から垂直に発進され、その後、従来の固定翼方式で飛行し、垂直に着陸することもできる。発進時および着陸時には、プロペラ20は垂直方向の推力を得るために使用され、後部に搭載されたエンジンおよびプロペラ16は作動中またはアイドル状態である。固定翼飛行中は、後部に搭載されたエンジンとプロペラ16とが水平推力を提供し、VTOLプロペラ20は通常アイドル状態である。ブーム18は固定翼飛行には好ましくない重量と抗力とを表すが、この欠点が所望のVTOL能力によって打ち負かされる適用が存在する。一実施形態では、ブーム18は、UAS10の反対側で使用されているにもかかわらず、同一の構造である。左右の依存性は、V字型テールへの接続など、必要に応じてアダプターを使用することで対応することができる。
【0015】
動的環境によっては、
図1に示す航空機10のようなハイブリッドUAVのパフォーマンスに大きな制限がある場合がある。方向固定、分離揚力推力マルチローター揚力ソリューション(ハイブリッドクアッドなど)を採用する固定翼機は、ホバー並進移動操作時に機体姿勢を制限し、操縦レートに制限を設ける必要がある。固定翼の揚力面(翼、尾翼など)が周囲の自由気流(風)にさらされることによって生じる空力的な悪影響を防ぐために、制約が必要である。
【0016】
図2Aおよび
図2Bは、この問題を模式的に説明するための図である。
図2Aは、穏やかな状態(上側の画像)と風の強い状態(下側の画像)との両方におけるハイブリッドクアッド航空機30(航空機10などとして実現されてもよい)の正面図を示している。
図2Bは、それに対応する側面図である。従来のハイブリッドクアッド30または同様の分離型揚力推力航空機の操作における上述の制約の結果は、以下の通りである:
・揚力面の有効な迎角(AoA)を維持するために、航空機のピッチ姿勢をポジティブに保つ必要がある
a.縦方向の並進移動を、一般的に固定翼の効率を考慮して設計された縦方向推力推進システムで達成可能な範囲に制限する
b.結果、前方/後方の並進移動レートが制限される
・揚力面に横風成分を与えないように、航空機のロール姿勢と制御速度とを制限
a.横方向の並進移動レートとレスポンスとが制限される
・航空機のヨー姿勢と制御レートとは、ローターの回転慣性の範囲内で制限
a.航空機は、制御権限を超えないように、卓越風に向かって風見しなければならない
b.ヨーレスポンスレートは差動回転慣性によってもたらされるものに限定される
c.慣性モーメントの増加や環境条件による悪影響により、ソリューションのスケーラビリティが制限される
・VTOL揚力ソリューションは、ホバリング/並進移動時の固定翼の悪影響に起因する悪影響を克服するために、推力マージンを維持する必要がある
a.サイズ、重量、電力割り当てを提供
・動的または困難な環境風条件下での操縦性の低下または制御の喪失
・ミッション関連の条件下での動的回復をサポートする固定または移動する相対位置の追跡が困難
【0017】
本明細書に開示されるように、上記の問題に対する一般的な解決策は、姿勢および相対位置制御のためにベクトル化された推力を使用することである。その縦推力エンジンに加えて、航空機は、航空機本体に対して制御可能な位置を備えた1つまたは複数の回転軸を備えた、独立して制御されたチルト推進アセンブリを有する。分離型揚力推力固定翼機に適用されるベクトル推力は、以下を提供することができる:
-VTOLおよび固定翼飛行中の固定翼揚力面の空力ポーズの制御;
-拡張された横方向および縦方向の推力を提供;および、
-アクティブな相対位置制御と定義された静的または動的着陸地点への収束。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態による航空機40を示す。航空機40は、中央本体または胴体42、後部水平推力エンジン44、および横方向に延びる翼46を有する。4つのモーター/ローターアセンブリ48は、2つの支持ブーム50のそれぞれの端部に取り付けられ、それぞれが縦方向に延在し、示されるように翼46の下側に取り付けられる。アセンブリ48は、本明細書では「ローター」および「推進ポッド」または「ポッド」とも呼ばれる。図示の実施形態では、フロントローター48は上向きに向けられ、リアローター48は下向きに向けられ、ローター48の少なくともいくつかは関節式または位置可変である(例えば、すべてのローター、フロントローターのみ、リアローターのみ)。図示の実施形態では、ローター48の前後の対は、図示のように、航空機40の縦方向軸に平行な線上で同一直線上にある。反対の上下のローター方向は、後部の推進プロペラと前部の牽引プロペラとを利用する。典型的な配置は、図示のように4つのローター48を含むが、他の配置も可能である。いくつかの実施形態では、いくつかまたはすべてのローター48は、飛行制御の別の態様を提供するためにローターブレードのピッチが動的に調整される可変ピッチ機構を含む。
【0019】
図4Aおよび
図4Bは、
図2Aおよび
図2Bと同じ条件での多関節ローター分離型揚力推力(SLT)航空機60の操作を再び概略的に示しており、航空機60は航空機40(
図3)などとして実現され得る。
図4Aの横移動の場合、揚力ローターはロールして翼の姿勢(実質的に水平)を保ちながら補助し、風による揚力成分の悪影響や変動的影響を軽減し、VTOL操作の間、制御権限を維持する。
図4Bの縦移動の場合、揚力ローターは、翼の姿勢を保ちながら(再び実質的に水平に)ピッチングして補助し、風による揚力成分の悪影響や変動的影響を軽減し、VTOL操作の間、制御権限を維持する。
【0020】
図5Aおよび5Bは、得られる特定の操作上の利点を示す。
図5Aは、VTOLホバーから固定翼飛行への移行を示す。航空機10のような従来のハイブリッド航空機は、離陸点から固定翼移行点(右端)までの距離である移行範囲が比較的大きいが、本明細書に開示される航空機は、固定翼飛行へのより短い移行範囲およびより速い/短い移行を享受しうる。
図5Bに示すように、逆の遷移(固定翼からホバー/VTOL)の特性も同様である。
【0021】
図6は推力ベクトル推進の性質を示すもので、縦推力エンジン44については2つ(RPMとブレードピッチ)、ローター48については4つ(ローターアセンブリ縦(ピッチ)チルト角θ、ローターアセンブリ横(ロール)チルト角φ、ローターRPMω、ローターブレードピッチφ)の6次元で制御している。Tは結果として生じる推力ベクトルを示し、数字の下付き文字は4つの別々のローター48を示す。一般に、各ローター48は独立して制御されてもよいが、以下に詳しく説明するように、一部のローターが固定されているか、他のローターに対して制限されている構成もあり得る。また、この図では、リアローター48-3、48-4のチルトは1軸のみを想定しているが、後述するように、チルトは複数軸で行うことができ、さらに高い操縦性を得ることができる。
【0022】
より具体的には、結果として生じる各推力ベクトル(T1、T2、T3、T4)は、縦ポッドチルト角(ピッチ)、横ポッドチルト角(ロール)、ローターRPM、およびローターブレード可変ピッチ角の協調作動の関数として独立して制御されてもよい。各自由度は、中央の飛行制御プロセッサ(以下で詳しく説明する)を介して分離および管理され、閉ループ制御による安定した協調飛行を実現する。縦方向のチルト(ピッチ)と横方向のチルト(ロール)の両方など、別々の軸を中心にローターのチルト角を変える機能は、複合関節と呼ばれることがある。
図6の実施形態では、後部垂直推力ローター(48-3、48-4)の自由度は、縦方向のチルト(θ)およびローター可変ピッチ(Ψ)を含むように拡張することが可能である。このローターの可動域を広げるため、機械的干渉を低減・緩和した代替の航空機の尾翼/尾翼の構成が考えられる。
【0023】
図7は、以下を含む、飛行制御に関わる主な構成要素を示す:
-エネルギー生成(例えば、ソーラーパネル)、エネルギー貯蔵(例えば、バッテリー)、エネルギー分配と監視、および関連する管理機能を含むエネルギーおよび電力関連の構成要素70。
-外部通信、ペイロード、飛行制御、ナビゲーション、ナビゲーション検知、および慣性計測の為のデータリンクを含む、ナビゲーションおよび関連する構成要素72。
【0024】
図8は、航空機のプラントダイナミクス82と相互作用するコンピュータ実装の飛行制御装置80とを含むような飛行制御の詳細を提供する。飛行制御装置80は、上述したように、値θ,ω,φ,Ψを表す信号を含む制御出力を生成し、これによって物理的な航空機がその環境に応じて相互作用する。示されるように、飛行制御装置80は、予測制御のために航空機の物理プラントのモデルを組み込んだモデルベースコントローラとして実現されてもよい。感知された効果は、状態推定、および高度と軌道の推定、ならびに対気速度および方向の推定のために制御装置80に提供され、これらの推定は、制御出力を更新するために他の入力とともに飛行制御装置80に戻される。前述のように、フラップなどの制御面に依存する他の航空機とは対照的に、制御方法はベクトル推力に基づくものである。
【0025】
図9は、航空機40の展開と使用とを示しており、VTOLおよび付随する強化された操作の柔軟性とともに、従来の固定翼の操作の特徴を含む。90は、輸送や飛行前の整備・点検などの飛行前業務である。操作は垂直離陸と水平飛行への移行92に進み、94での飛行実行が続く。これは、単に従来の固定翼飛行(例えば、ある地点から別の地点へ)であってもよく、及び/又は「ステーションキーピング」と呼ばれるVTOLホバリングの1つ以上の期間を含んでもよい。94での飛行実行の後、96で着陸のためにVTOL操作に戻る。なお、一連の場所にまたがるミッションの場合、ステップ92~96を繰り返すことができる。98は、飛行後の整備や輸送など飛行後の操作である。
【0026】
航空機40の利点の1つは、ローター48からの揚力に加えて、翼46の作用によって気流に揚力を発生させることができることである。従来の回転翼機は、上空でステーションキーピングを行う場合、一般的に耐久性が低下するのに対し、上空でステーションキーピングを行う場合、航空機の耐久性は高くなる可能性がある。
【0027】
図10~11は、ローター48とその関節をさらに詳細に示す。この配置は、並列タンデムサーボ制御を採用しており、すなわち、
図11に最もよく見られるように、2つの個別のサーボ機構100が並列に配置されている。この配置では、回転軸102は、
図10に最もよく見られるように、ローター48の重心を通って延びている。直接軸上サーボ、直列タンデムサーボ、非重心回転、空気圧・油圧機構、ベルトまたはギア駆動など、別の機構を採用することもできる。上述したように、可変位置決めは1軸に限定してもよいし、チルト/ヨーなどの多軸であってもよい。
【0028】
図12~14は、上記で簡単に述べたような異なる推進構成の例を示す。
図12は、位置可変のフロントポッド(ローター)と位置可変のリアポッドとを持つ対称的な構成で、「位置」とは角度的な関節のことである。
図13は、位置可変のフロントポッドと半固定(限定可変)位置のリアポッドとを持つ非対称の構成である。
図14は、位置可変のフロントポッドと固定位置のリアポッドとを持つ別の非対称構成である。
【0029】
以下の表は、飛行のさまざまな段階における
図12~14のさまざまな構成の機能の詳細を示したものである。
【0030】
図12の対称配置の場合,すべての推進ポッドが同等の可動域を持ち,飛行の全段階で使用されることが基本条件となる。しかし、システムは、すべての飛行制御を提供するために動作する推進システムのペア/セットだけで動作することができ、残りは1つ以上の軸で推力ベクトル機能が制限されているか全くない状態で動作する、例えば、
図13および14のような構成である。4つのローターを備えた実施形態では、前方の一対のローターまたは後方の一対のローターでこれを達成することができる。巡航中に最も効率的なプロペラ状態を実現するために、固定翼飛行では前方のローターペアを優先すると仮定すると、後方のモーターは定められた位置に収納され、固定翼飛行の段階では非アクティブになり、システムの電気効率が上がり、音響信号が減少する。また、固定翼飛行時には、リア/後方ローターを再動作させ、ダッシュ速度や上昇力を高め、飛行終了時にはVTOLに移行して回収することが可能である。さらに、この非対称制御機能により、システムは、可動域が制限されたり、チルト/ヨーの推力ベクトル機能を持たないローターペア/セットを採用したりし、搭載する推進システムの重量と複雑さとを軽減することが可能である。4つ以上の推進ポッドを持つ実施形態では、代替/制限関節機能の指定を前方および後方推進システムの間で適用することができ、前部および後部セットは、制約/固定推進ポッドと完全能力関節機能との組み合わせを持つことができるようになる。これらの代替制御モダリティの選択は、航空機の推進モジュールを交換したり、入れ替えたりすることで行うことができる。すべてのモダリティにおいて、固定翼の飛行で推力を提供する固定縦型エンジンの存在は、推進ポッドの機能を補強することも、置き換えることもできる。
【0031】
図15と
図16は、以下に詳しく説明するように、様々な異なるタイプの航空機に一般的な推力ベクトルアプローチを使用できるようにするシステム構成要素の特定のモジュール性を示す。関連するアクチュエータを有するローター48と、ベクトル化された推力運動および作動制御システム110の構成要素(エネルギー貯蔵、エネルギー分配、および図示されたその他構成要素を含む)を含む推進システムは、既存の固定翼システムの改修を含む他の機体タイプに適合させることが可能である。
【0032】
図17~22は、他の機体タイプへの適用例である。
図17~19は、航空機40(
図3)と同様に翼46の下面に取り付けられたローター48とブーム50とで構成された、典型的には単一燃焼エンジンを採用するタイプの従来の小型固定翼機体120の上面図、正面図、側面図である。
図20~22は、ブーム搭載型ローターを用いて同様に構成された第2のタイプの固定翼機130の上面図、正面図、側面図である。
【0033】
図23は、使用可能な様々な推進ポッドの形状(ブーム搭載ローターの構成)の準概略図である。140-1~140-5までの5つの構成が示されている。構成140毎に、上面図、正面図、側面図(
図23では下方向に進む)の3つの図が示されている。推進ポッドの配置や機体への取り付けの異なる実施例には、オフセットや横方向のサポートなどのバリエーションが含まれる。
【0034】
図24~25は、採用され得るモジュール性の追加的な側面を示す。
図24は、ブーム50およびローター48のモジュール式取り付けを示す。
図25は、代替のブームおよび尾部構成150の使用を示す。
【0035】
(スケーラビリティ)
一般に、開示される航空機は、ローターアセンブリのサイズと数の両方においてパラメトリックにスケーリングされ得る。一実施形態では、航空機は、例えば、翼46のより遠位の位置に、追加のブーム50および対応するローター48の取り付けを提供することができる。これにより、更なる揚力/推力を提供できる。
【0036】
本発明の様々な実施形態を特に示し、説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、そこに形態および詳細における様々な変更がなされ得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】