(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ポリアミド粉末及び焼結による粉末凝集方法におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20221209BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221209BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221209BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20221209BHJP
【FI】
C08J3/12 A CFG
B33Y10/00
B33Y70/00
B29C64/153
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521402
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 FR2020051795
(87)【国際公開番号】W WO2021069851
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソアレス・ラトゥール,エミリー-マリー
(72)【発明者】
【氏名】ゾビ,オルネラ
(72)【発明者】
【氏名】ルメートル,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ステール,エルベ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AC20
4F070AC40
4F070AC45
4F070AC46
4F070AC57
4F070AE03
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4F070DA41
4F070DC11
4F213AA29
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL43
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の連鎖制限剤を含む、焼結による粉末の凝集方法に使用するためのポリアミド粉末に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の連鎖制限剤を含む、溶融による粉末の凝集方法に使用することを意図したポリアミド粉末。
【請求項2】
前記連鎖制限剤が、100%に相当するポリアミド粉末の総重量に対して、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~4重量%、好ましくは0.01重量%~3重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%に相当する、請求項1に記載の粉末
【請求項3】
前記連鎖制限剤が、ジカルボン酸、モノカルボン酸、ジアミン及びモノアミンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記連鎖制限剤が、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、テトラデカン酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼラン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、及びオルト-フタル酸、ブタン二酸、1-アミノペンタン、1-アミノヘキサン、1-アミノヘプタン、1-アミノオクタン、1-アミノノナン、1-アミノデカン、1-アミノウンデカン、1-アミノドデカン、ベンジルアミン、及びオレイルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、及びパラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、及びピペラジンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記ポリアミドが、46、4T、54、59、510、512、513、514、516、518、536、6、64、69、610、612、613、614、616、618、636、6T、9、104、109、1010、1011、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、11、12、124、129、1210、1212、1213、1214、1216、1218、1236、12T、MXD6、MXD10、MXD12、MXD14、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記ポリアミドが、PA6、PA66、PA1010、PA11、PA12、PA1011、PA610、PA612、PA613、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
前記少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤が、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(DTDTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(DMTDP)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート又は3-ラウリルチオプロピオネート)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の粉末。
【請求項9】
前記少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤が、100%に相当する粉末の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~4重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%に相当する、請求項7又は8に記載の粉末。
【請求項10】
前記連鎖制限剤を、前記ポリアミド粉末、及び必要であれば前記少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤と乾式ブレンドにより混合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末を調製する方法。
【請求項11】
前記連鎖制限剤を、0.80以下の固有粘度を有するポリアミドプレポリマー粉末、及び必要であれば少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤と混合し、該混合物の固相重縮合の工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末を調製する方法。
【請求項12】
水処理工程及び/又は酸処理工程の後に、前記連鎖制限剤を、前記ポリアミドプレポリマー粉末、及び必要であれば少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤と混合する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の方法で得ることが可能なポリアミド粉末。
【請求項14】
請求項1~9又は13のいずれか一項に記載のポリアミド粉末を溶融により凝集する、物体を製造する方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリアミド粉末を使用して製造される物体。
【請求項16】
凝集されなかったポリアミド粉末が回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
溶融による前記粉末の凝集による物体の製造のための、請求項16に記載の方法で回収された、凝集されなかったポリアミド粉末の使用。
【請求項18】
溶融による粉末の凝集方法で使用することを意図したポリアミド粉末の粘度又は溶融温度の上昇を制御するための、少なくとも1種の連鎖制限剤の使用。
【請求項19】
溶融による粉末の凝集方法で使用することを意図したポリアミド粉末のリサイクル性を改善するための、少なくとも1種の連鎖制限剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融による粉末の凝集方法に使用されることを意図し、数回リサイクルすることができるポリマー、特にポリアミドの粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド粉末凝集技術は、層ごとに粉末を加えたり又は溶融して粉末を凝集させたりして三次元物体を製造するために用いられる。この技術は、特に、自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療、繊維、衣料及び装飾分野、電子機器用の筐体、電話通信、ホームオートメーション、コンピューティング及び照明、ファッション、スポーツ及び産業用ツールの分野などの様々な分野で、試作品及びひな型を製造するために使用される。
【0003】
溶融(又は「焼結」)による粉末の凝集は、例えば、レーザー光線(レーザー焼結としても知られる)、赤外線、紫外線、LED型放射線、又は三次元物体を製造するために粉末層を層ごとに溶融することを可能にする電磁放射線の任意の発生源のような放射線によってもたらされる。
【0004】
レーザー焼結の場合、ポリアミド粉末の薄層がポリアミド粉末の結晶化温度Tcと溶融温度Tmの間にある温度まで加熱したチャンバー内に維持された水平板上に堆積される。レーザーにより、レーザーの通過後にゆっくりと結晶化する層内の様々な箇所にある粉末粒子を、例えば、3D物体の形状を記憶し、この形状を2Dスライスの形態で再現するコンピュータを用いて、物体に対応する幾何学的形状に従って融合させることが可能になる。続いて、水平板は、粉末層の厚さに対応する値(例えば、0.05~2mmの間であり、一般に0.1mm程度)だけ下げられ、次いで、新しい粉末層が堆積され、レーザーにより、物体等に対応する幾何学的形状に従ってゆっくり結晶化するこの新しい層に対応する幾何学的形状に従って粉末粒子を融合させることが可能になる。この手順は、物体全体が製造されるまで繰り返される。チャンバー内に粉末で縁取りされた物体が得られる。凝集されなかった部分はこのように粉末状態のままである。
【0005】
レーザー焼結の場合には、粉末の少なくとも50%がレーザーの標的とならない。このため、次の造形(又は次の「稼働」)の間にこの粉末を再利用すること、すなわち、リサイクルすることができることが有利である。そのために、ポリアミド粉末は、粒径、流動性(pourability)、色、粘度などのその初期特性をできるだけ保存すべきである。
【0006】
焼結造形の間、縁取りされた粉末、すなわち放射線に触れなかった粉末はその結晶化温度(Tc)超に数時間留まり、これはポリアミドの分子量の増加、ひいては粘度の上昇につながる可能性がある。その後、連続稼働の過程で粉末粒間の融合が次第に困難となる。このように、特定のポリアミド粉末は、連続稼働中の粉末の各リサイクルにおいて、焼結装置のパラメータを変更すること、特に放射線の出力を劇的に増加させる必要がある。さらに、稼働が進むにつれて得られる部品の機械的特性の非常に著しい低下が観察される。
【0007】
ポリアミド粉末の分子量の増加を制限するため、ポリアミド粉末に金属石鹸(0.5%)を添加した(US2004106691号)。しかし、これらが特定の溶媒に接触すると、これらの粉末から製造された物体は金属塩誘導体を漏出する傾向にあり、その使用は特定の用途に限定される。
【0008】
また、処理した粉末をその後の稼働にリサイクルする前に、稼働中に使用した粉末の高温蒸気処理を行った(US20090291308号)。しかし、この方法は、連続2回の稼働の間、及び焼結装置の近くで、粉末を蒸気で処理し、それを乾燥させることを必要とし、これは、稼働の間の多数の中間工程を必要とし、経済的に実行可能ではない。
【0009】
したがって、使用が容易で、焼結装置の使用条件を修正する必要なく数回リサイクルでき、再現性のある機械的特性を有する物体を得ることを可能にする粉末を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/106691号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0291308号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明は、本発明者らは、ポリアミド粉末に、固体状態又は液体状態の少なくとも1種の連鎖制限剤、特に一酸、ジカルボン酸、モノアミン又はジアミンを加えることにより、溶融による凝集方法の連続サイクル又は稼働の間に起こる凝集されなかったポリアミド粉末の粘度及び溶融温度の上昇を制御、特に低下、安定化又は除去することが可能であることを、予想外に証明したことに由来する。これにより、凝集されなかった粉末の再利用又はリサイクルが可能となり、連続稼働の過程で再現性のある特性を有する物体を得ることが可能となる。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも1種の連鎖制限剤を含む、溶融による粉末の凝集方法において使用されることを意図したポリアミド粉末に関する。
【0013】
また、本発明は、溶融による前記粉末の凝集により物体を製造するための、上記のポリアミド粉末の使用に関する。
【0014】
また、本発明は、上記ポリアミド粉末を溶融により凝集させることによる物体の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、上記の少なくとも1種のポリアミド粉末を用いて製造される物体に関する。
【0016】
また、本発明は、凝集されなかったポリアミド粉末が回収される上記の方法に関する。
【0017】
また、本発明は、溶融による粉末の凝集による物体の製造のための、上記方法に従って回収された凝集されなかったポリアミド粉末の使用に関する。
【0018】
また、本発明は、溶融による粉末の凝集により、物体を製造する方法で使用されることを意図したポリアミド粉末の粘度又は溶融温度の上昇を制御するための少なくとも1種の連鎖制限剤の使用に関する。
【0019】
また、本発明は、溶融による粉末の凝集方法で使用されることを意図したポリアミド粉末のリサイクル可能性を改善するための少なくとも1種の連鎖制限剤の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<定義>
本説明では、「体積中央直径」とも呼ばれる粉末のD50は、正確に分析された粒子の母集団を2つに分割する粒径の値に相当する。D50は、ISO規格 9276-Part 1~6:「Representation of results of particle size analysis」又はISO規格 13319に従って測定される。
【0021】
溶液の固有粘度(特に、ポリアミド粉末又は溶融による粉末の凝集方法によって得られた物体の固有粘度)は、以下の工程を含む方法に従って測定することが好ましい。
- 0.07~0.10グラム、好ましくは最大0.15グラムの試料を採取する工程、
- 溶液の総重量に対して0.5重量%の濃度を得るように秤量してm-クレゾール溶媒を加える工程、
試料が完全に溶けるまで、100℃±5℃に調節したホットプレート撹拌器上で溶かす工程、
溶液を好ましくは少なくとも30分間室温まで冷却する工程、
- 20℃±0.05℃に調節したサーモスタットで制御した浴中でマイクロウベローデ管粘度計を用いて純溶媒の流下時間T0及び溶液の流下時間Tを測定する工程、
式1/C×Ln(T/T0)(式中、Cは濃度を表し、Lnは自然対数を表す)に従って粘度を計算する工程。
各試料について、3種類の異なる溶液から3回の測定の平均を取る。
【0022】
本発明による溶融温度は、ISO規格 11357-6に従って、特にDSC Q2000装置(TA Instruments)において、-20℃での平衡(温度変化速度20℃/分上昇を240℃まで、20℃/分低下を-20℃まで、20℃/分上昇を240℃まで)を用いて、示差走査熱量測定法(DSC)により測定することが好ましい。
【0023】
本発明の目的のために、「再現可能な機械的特性」という用語は、機械的特性、特に引張弾性率、破断点伸び及び引張強さを意味する。そして、これはそれぞれ、未使用の粉末から3D印刷によって造形された同じ形態の物体について測定されたそれらの値の少なくとも90%を超えたままである。
【0024】
特に言及しない限り、表された百分率は重量百分率である。
【0025】
特に言及しない限り、参照するパラメータは、大気圧及び室温(約23℃)で測定される。
【0026】
NF規格 EN規格 ISO規格 1874-1:2011では、ポリアミドの命名法を定義している。ポリアミド系粉末の本説明における「モノマー」という用語は、「繰返し単位」という意味でとらえるべきである。特別な場合は、ポリアミドの繰り返し単位が二酸とジアミンの組合せからなる場合である。それはモノマーに相当すると考えられる等モル量のジアミンと二酸の組み合わせ、すなわち「ジアミン-二酸」又は「XY」対である。これは、個々には、二酸又はジアミンは単なる構造単位であり、それ単独ではポリマーを形成するには不十分であるという事実によって説明される。
【0027】
<連鎖制限剤>
好ましくは、本発明による連鎖制限剤は、ジカルボン酸、モノカルボン酸、ジアミン及びモノアミンからなる群から選択され、これらはそれぞれ直鎖状又は環状であることができる。
【0028】
好ましくは、連鎖制限剤は180℃未満の溶融温度を有する。
【0029】
本発明による連鎖制限モノカルボン酸は、好ましくは、2~20個の炭素原子を有する。連鎖制限モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、安息香酸及びステアリン酸、ラウリン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン(octodecanoic)酸及びテトラデカン酸を挙げることができる。
【0030】
本発明による連鎖制限ジカルボン酸は、好ましくは2~20個の炭素原子、より好ましくは6~10個の炭素原子を有する。本発明による連鎖制限ジカルボン酸の例としては、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸、ブタン二酸及びオルト-フタル酸を挙げることができる。
【0031】
好ましくは、本発明による連鎖制限モノアミンは、2~18個の炭素原子を有する第一級アミンである。本発明による連鎖制限モノアミンの例としては、1-アミノペンタン、1-アミノヘキサン、1-アミノヘプタン、1-アミノオクタン、1-アミノノナン、1-アミノデカン、1-アミノウンデカン、1-アミノドデカン、ベンジルアミン及びオレイルアミンを挙げることができる。
【0032】
好ましくは、本発明による連鎖制限ジアミンは4~20個の炭素原子を有する。本発明による連鎖制限ジアミンの例としては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、及びパラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、及びピペラジンを挙げることができる。
【0033】
好ましくは、本発明による連鎖制限剤は、100%に相当するポリアミド粉末の総重量に対して、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~4重量%、好ましくは0.01重量%~3重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%に相当する。より好ましくは、本発明による連鎖制限剤は、100%に相当するポリアミド粉末の総重量に対して、0.01重量%~0.5重量%、0.01重量%~0.4重量%、0.01重量%~0.3重量%、0.01重量%~0.2重量%に相当する。
【0034】
連鎖制限剤は粉末形態が好ましい。
【0035】
本発明による連鎖制限剤は、既に形成されたポリアミドを含む媒体に添加することが好ましく、ポリアミドの組成物に取り込まれない。
【0036】
好ましくは、連鎖制限剤は、当業者に知られた任意の適切な方法、例えば、乾式ブレンド、液体混合、水性分散、配合による混合、拡散混合によってポリアミド粉末に組み込まれる。
【0037】
一実施形態によれば、連鎖制限剤は、好ましくは粉末形態で、ポリアミド粉末と乾式ブレンドされる。
【0038】
驚くべきことに、3D印刷方法の間に起こる連鎖制限剤とポリアミド鎖の末端との間の反応は、粉末の固有粘度の上昇を効果的に制限し、3D印刷の条件を混乱させない。
【0039】
このようにして、本発明は、使用が非常に容易な連鎖制限剤を含む粉末を提案する。
【0040】
一実施形態によれば、好ましくは粉末形態の連鎖制限剤は、0.80以下の固有粘度を有するポリアミドプレポリマーの粉末と混合される。次いで、この混合物は、所望の粘度を有するポリアミド粉末を得るために、固相重縮合工程を受ける。
【0041】
固相重縮合工程はポリアミドのガラス転移温度を超え、ポリアミドの溶融温度未満の温度で行われる。固相重縮合は典型的には乾燥機内で行われる。
【0042】
この実施形態は、以下のいくつかの利点を有する、3D印刷方法において使用する準備が整った粉末を提供することを可能にする。
- それは、固有粘度の高いポリアミド粉末では、複雑な条件がしばしば必要となる粉砕を必要としない、
- それは調製時に溶媒の使用を避ける。
【0043】
プレポリマーが重縮合工程の前に1つ以上の中間工程、例えば、水処理工程及び/又は酸処理工程を受ける場合には、該中間工程の後に連鎖制限剤を加えることが好ましい。
【0044】
このように、添加された連鎖制限剤は、重縮合工程の間にポリアミドプレポリマーの鎖末端と反応したか、又は3D印刷の間にポリアミド鎖上で反応するために利用可能な官能基と反応するかのいずれかである。
【0045】
したがって、使用される連鎖制限剤の喪失は避けられる。特に、モノマーの存在下に重合中に連鎖制限剤が添加される場合、制限剤分子の一部は、ポリアミド鎖に組み込まれ、したがって、ポリアミド鎖の伸長を制限するそれらの能力を失う。
【0046】
一実施形態によれば、連鎖制限剤は、事前に水処理工程及び/又は酸処理工程を経たポリアミドプレポリマー粉末と混合される。
【0047】
この実施形態のために、連鎖制限剤は、好ましくは、ポリアミドのガラス転移温度を上回り、ポリアミドの溶融温度を下回る溶融温度を有する。
【0048】
有利には、本発明による連鎖制限剤は、溶融による凝集方法に使用されるが、凝集されないポリアミド粉末の粘度及び/又は溶融温度の上昇を制御すること、特に、低下させ、安定化させ、又は除去することを可能にし、粉末凝集方法において該粉末を再利用することを可能にする。したがって、特に有利には、本発明による連鎖制限剤は、凝集されなかったポリアミド粉末をリサイクル又は再利用することを可能にし、連続稼働(サイクル)の過程で再現可能な特性を有する物体を得ることを可能にする。
【0049】
<ポリアミド>
本発明によるポリアミドは、ホモポリアミド、コポリアミド又はその混合物であることができる。本発明によるポリアミドはまた、ポリアミド及び少なくとも1種の他のポリマーの混合物であってもよく、ポリアミドはマトリックスを形成し、他のポリマーは分散相を形成する。
【0050】
好ましくは、本発明によるポリアミドは以下の縮合生成物である。
- 1種以上のアミノ酸、
- 1種以上のラクタム、又は
- 1種以上のジアミンと二酸の塩又は混合物。
【0051】
アミノ酸の例としては、α,ω-アミノ酸、例えば、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、n-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0052】
本発明によるラクタムモノマーは、好ましくは、主環上に3~12個の間の炭素原子を含み、置換されていてもよい。本発明によるラクタムの例としては、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、2-ピロリドン及びラウリルラクタムを挙げることができる。
【0053】
好ましくは、本発明によるポリアミドの組成に含まれるジアミンは、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、アリールジアミン及び/又は飽和環状ジアミンである。本発明によるジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ポリオールジアミン、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPDM)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタ-キシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン及びトリメチレンジアミンを挙げることができる。
【0054】
好ましくは、本発明によるポリアミドの組成に含まれるジカルボン酸は、4~18個の間の炭素原子を有する。ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム塩又はリチウム塩、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は少なくとも98%の二量体含有量を有し、好ましくは水素化されている)及びドデカン二酸HOOC-(CH2)10-COOHが挙げられる。
【0055】
好ましくは、本発明によるコポリアミドは、少なくとも2種の異なるモノマー、例えば、少なくとも2種の異なるα,ω-アミノカルボン酸、又は2種の異なるラクタム、又はラクタム及び異なる炭素数を有するα,ω-アミノカルボン酸の縮合から生じる。また、少なくとも1種のα,ω-アミノカルボン酸(又は1種のラクタム)、少なくとも1種のジアミン及び少なくとも1種のジカルボン酸の縮合から生じるコポリアミドを挙げることもできる。また、脂肪族ジアミンと、脂肪族ジカルボン酸と、先行するもの以外の脂肪族ジアミン及び先行するもの以外の脂肪族二酸から選択される少なくとも1種の他のモノマーとの縮合から生じるコポリアミドを挙げることができる。
【0056】
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末は、46、4T、54、59、510、512、513、514、516、518、536、6、64、69、610、612、613、614、616、618、636、6T、9、104、109、1010、1011、1012、1013、1014、1016、1018、1036、10T、11、12、124、129、1210、1212、1213、1214、1216、1218、1236、12T、MXD6、MXD10、MXD12、MXD14、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、少なくとも1種のポリアミド又はコポリアミドを含む。
【0057】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、PA6、PA66、PA1010、PA11、PA12、PA1011、PA610、PA612、PA613、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0058】
コポリアミドの例としては、カプロラクタムとラウリラクタムのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/66)、カプロラクタムとラウリラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/12/66)、カプロラクタムとラウリラクタムと11-アミノウンデカン酸とアゼライン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/69/11/12)、カプロラクタムとラウリラクタムと11-アミノウンデカン酸とアジピンン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA6/66/11/12)、ラウリラクタムとアゼライン酸とヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA69/12)、11-アミノウンデカン酸とテレフタル酸とデカメチレンジアミンのコポリマー(PA11/10T)が挙げられる。
【0059】
ポリアミドと他の少なくとも1種のポリマーの混合物に関しては、それはポリアミドマトリックスとの混合物の形態であり、他のポリマーは分散相を形成する。本発明によるこの他のポリマーの例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、PPO(ポリフェニレンオキシドの略称)、PPS(ポリフェニレンスルフィドの略称)、及びエーテル-アミドブロックコポリマー(PEBA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エラストメリックポリフェニレンエーテル(PPE)などのエラストマーを挙げることができる。
【0060】
ポリアミドのブレンドを用いることも可能である。これらは、例えば、脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドのブレンド、及び脂肪族ポリアミドと脂環式ポリアミドのブレンドである。
【0061】
例を挙げると、半結晶性ポリアミド(A)、非晶質ポリアミド(B)、可撓性ポリアミド(C)及び相溶化剤(D)をベースとする組成物であって、重量で以下を含み、全体は100%である。
・ 以下の縮合から本質的に生じる非晶質ポリアミド(B)5%~40%、
- 脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1のジアミン、及び脂環式二酸及び脂肪族二酸から選択される少なくとも1種の二酸であって、これらのジアミン単位又は二酸単位少なくとも1つは脂環式であり、
- 又は、脂環式α,ω-アミノカルボン酸、
- 又は、これらの2つの選択肢の組み合わせのいずれか、
- 及び、任意に、α,ω-アミノカルボン酸又は任意の対応するラクタム、脂肪族二酸及び脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1種のモノマー、
・ ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを含むコポリマー及びコポリアミドから選択された可撓性ポリアミド(C)0~40%、
・ 半結晶性ポリアミド(A)及び(B)のための相溶化剤(D)0~20%、
・ 可撓性改質剤(M)0~40%、
・ ただし、(C)+(D)+(M)が0~50%の間であることを条件とし、
・ 100%までの残余の半結晶性ポリアミド(A)。
【0062】
また、半結晶性ポリアミド(A)、任意に非晶質ポリアミド(B)、可撓性ポリアミド(C)及び相溶化剤(D)をベースとする組成物であって、重量で以下を含み、全体は100%である。
・ 任意に、少なくとも1種の任意の脂環式ジアミンと、少なくとも1種の芳香族二酸と、任意に、α,ω-アミノカルボン酸、脂肪族二酸及び脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1種のモノマーとの縮合から本質的に生じる非晶質ポリアミド(B)5%~40%、
・ ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを含むコポリマー及びコポリアミドから選択される可撓性ポリアミド(C)0~40%、
・ 半結晶性ポリアミド(A)及び任意に(B)のための相溶化剤(D)0~20%、
・ (C)+(D)は2~50%の間であり、
・ ただし、(B)+(C)+(D)は30%以上であることを条件とし、
・ 100%までの残余の半結晶性ポリアミド(A)。
【0063】
ポリアミドの一部をポリアミドブロックとポリエーテルブロックを含むコポリマーで置換すること、すなわち、先行するポリアミドの少なくとも1種及びポリアミドブロックとポリエーテルブロックを含む少なくとも1種のコポリマーを含む混合物を用いることは、本発明の範囲からの逸脱を構成しないであろう。
【0064】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを含むコポリマーは、例えば、特に以下の反応性末端を有するポリアミドブロックと、反応性末端を有するポリエーテルブロックとの共重縮合から生じる。
1) ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボキシル鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
2) ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとして知られるα,ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化及び水素化により得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
3) ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール、得られた生成物は、この特定の場合、ポリエーテルエステルアミドである。
【0065】
ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックは、連鎖制限ジカルボン酸の存在下での、例えば、α,ω-アミノカルボン酸、ラクタム又はジカルボン酸及びジアミンの縮合から生じる。
【0066】
ポリエーテルは、例えば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)であることができる。後者はポリテトラヒドロフラン(PTHF)としても知られている。
【0067】
ポリアミドブロックの数平均モル質量は300~5000g/molの間、好ましくは600~1500g/molの間である。ポリエーテルブロックのモル質量は100~6000の間であり、好ましくは200~3000g/molの間である。
【0068】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを有するポリマーはまた、ランダムに分布した単位を含むことができる。これらのポリマーは、ポリエーテルとポリアミドブロックの前駆体との同時反応によって調製することができる。
【0069】
例えば、ポリエーテルジオール、ラクタム(又はα,ω-アミノ酸)及び連鎖制限二酸は、少量の水の存在下で反応させることができる。本質的に非常に多様な長さのポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを有するだけでなく、ランダムに反応した種々の反応物質も有し、それらがポリマー鎖に沿ってランダムに分布するポリマーが得られる。
【0070】
ポリエーテルジオールブロックは、未変性形態で使用され、カルボキシル末端ポリアミドブロックと共重縮合されるか、又はポリエーテルジアミンに変換され、カルボキシル末端ポリアミドブロックと縮合されるためにアミノ化されるかのいずれかである。また、それらはポリアミド前駆体及び連鎖制限剤とブレンドして、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含み、ランダムに分布した単位を有するポリマーを製造することができる。
【0071】
ポリアミドの量に対するポリアミドブロックとポリエーテルブロックを含むコポリマーの量の重量比は、有利には1/99~15/85の間である。
【0072】
<粉末>
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末粒子は、5~200μmの間、より好ましくは10~150μmの間の体積中央直径(D50)を有する。
【0073】
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末は、結晶化温度(Tc)と第1の加熱溶融温度(Tm1)との間(Tc-Tm1)に3℃を超える差がある。
【0074】
この差は、有利には、変形現象を回避し、製造された部品の良好な形状定義を得ることを可能にする。また、この差により、ポリアミド粉末を扱うウィンドウを増大させ、焼成方法でのその使用をはるかに容易にすることができる。
【0075】
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末の溶液の固有粘度、特に本発明による粉末凝集方法におけるそれらの使用前の固有粘度は、1.90未満、好ましくは1.70未満、好ましくは1.60未満、好ましくは1.50未満である。
【0076】
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末の溶液の固有粘度、特に本発明による粉末凝集方法における最初の稼働後の粘度は、1を超える。
【0077】
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末は、溶融された時に、十分な分子量に達するために、及び好ましくは1.50を超える、部品の溶液の粘度を確保するために粘度を増加させ、その部品(3D物品)が許容可能な機械的特性を有するようにする。より好ましくは、部品の粘度は、1.60より大きく、好ましくは1.70より大きく、好ましくは1.80より大きく、好ましくは1.90より大きく、好ましくは2より大きい。
【0078】
好ましくは、本発明による粉末は、少なくとも3回、好ましくは少なくとも5回、より好ましくは少なくとも10回リサイクルすることができる。
【0079】
<追加の化合物>
本発明によるポリアミドは、少なくとも1種の他のポリマーとのブレンドとしてであるか否かにかかわらず、有機又は無機充填剤、顔料、酸化防止剤(特にチオエーテル酸化防止剤と組み合わされる)、UV安定剤、可塑剤、染料、流動性剤(pourability agent)を含むことができる。
【0080】
本発明によるポリマー粉末は、チオエーテル酸化防止剤を含むことができる。有利には、本発明によるポリマー粉末へのそのような酸化防止剤の添加により、特に本発明による粉末のリサイクル中のその黄変を制限することによって、粉末の色、特にそれが白色であるときのその白色度を安定化させることが可能になる。
【0081】
本発明によるチオエーテル酸化防止剤は、好ましくは、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(DTDTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(DMTDP)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート又は3-ラウリルチオプロピオネート)、3,3’-チオジプロピオネート、(C12~14)アルキルチオプロピオネート、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3-チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン3-(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン、チオビス(2-tert-ブチル-5-メチル-4,1-フェニレン)ビス(3-(ドデシルチオ)プロピオネート)、2,2’-チオジエチレンビス(3-アミノブテノエート)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2,2’-チオジエチレンビス3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(4,6-tert-ブチル-l-イル-2-)スルフィド、トリデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオアセテート、1,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-フェノール、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、ジステアリルジスルフィド、ビス(メチル-4-3-n-(C12/C14)アルキルチオプロピオニルオキシ5-tert-ブチルフェニル)スルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、本発明によるチオエーテル酸化防止剤は、ジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジトリデシルチオジプロピオネート(DTDTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、ジミリスチルチオジプロピオネート(DMTDP)、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート又は3-ラウリルチオプロピオネート)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、本発明によるチオエーテル酸化防止剤は、DLTDP又はペンタエリスリチルテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)である。
【0082】
そのような酸化防止剤は、Songnox社又はAdeka社によって特に販売されている。
【0083】
好ましくは、前記少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤は、100%に相当する粉末の総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~4重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%に相当する。
【0084】
本発明によれば、上記のようなチオエーテル酸化防止剤は、当業者に知られた任意の適切な方法によって、例えば、ポリアミドの合成中、特に合成の開始時又は終了時にチオエーテルを添加する方法、配合によるブレンド、特に、該ポリアミドから出発する粉末製造方法の任意の工程中の配合によるブレンドにより、特に、チオエーテルを含む溶媒中(例えば、溶媒中に分散又は溶解される)のポリアミドの溶解-析出、又は本発明によるポリアミド粉末との乾式ブレンドの少なくとも1つによって、粉末中に取り込まれる。
【0085】
一実施形態によると、連鎖制限剤は、乾式ブレンドにより、ポリアミド粉末、及び少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤と混合される。
【0086】
一実施形態によれば、0.80以下の固有粘度を有するポリアミドプレポリマー粉末に、連鎖制限剤とともにチオエーテルが添加され、これは所望の粘度を有するポリアミド粉末を得るために、固相重縮合工程を経る。
【0087】
一実施形態によれば、連鎖制限剤は、水処理工程及び/又は酸処理工程の後に、ポリアミドプレポリマー粉末、及び少なくとも1種のチオエーテル酸化防止剤と混合される。
【0088】
本発明によるチオエーテルは、粉末の形態が好ましい。
【0089】
また好ましくは、前記チオエーテル系酸化防止剤は、140℃未満、好ましくは100℃未満、好ましくは90℃未満、好ましくは70℃未満の融点を有する。
【0090】
本発明により使用されるチオエーテル酸化防止剤以外の酸化防止剤の例としては、ポリアミドの熱酸化に対抗することを意図したフェノール系酸化防止剤、例えば、特にPalmaroleよりPalmarole AO.OH.98という名称で販売されている3,3’-ビス(3,5-di-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N,N’-ヘキサメチレンジプロピオンアミド)、特にAddivantよりLowinox 44B25という名称で販売されている(4,4’-ブチリデンビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、特にBASFよりIrganox(R) 1010の名称で販売されているペンタエリスリチルテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、特にBASFよりIrganox(R) 1098という名称で販売されているN,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))、特にBASFよりIrganox(R) 1330という名称で販売されている3,3’,3’,5,5’
,5’-ヘキサ-tert-ブチル-α,α’、α’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリp-クレゾール、特にBASFよりIrganox(R) 245という名称で販売されているエチレンビス(オキシエチレン)ビス(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)、特にBASFよりIrganox(R) 3114という名称で販売されている1,3,5-トリス(3,5-di-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、特にBASFよりTinuvin(R) 312という名称で販売されているN’,N’-(2-エチル-2’-エトキシフェニル)オキシアニリド、特に3VよりAlvinox(R) 1330、ClariantよりHostanox 245 FF、Hostanox 245 Pwdという名称で販売されている4,4’、4”-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(メチレン)トリス[2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル]フェノール、特にEverspring Chemical Company LimitedよりEvernox 10及びEvernox 10GFという名称で販売されているペンタエリスリチルテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、特にEverspring Chemical Company LimitedよりEvernox 76及びEvernox 76GFという名称で販売されているオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、特にMayzoよりBNX(R) 1010という名称で販売されているテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート]メタン、特にMayzoよりBNX(R) 1035という名称で販売されているチオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート]メタン、特にMayzoよりBNX(R) 2086という名称で販売されているオクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、特にMayzoよりBNX(R) 3114の名称で販売されている1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオンを挙げることができる。
【0091】
<溶融による凝集方法>
本明細書で理解されるように、溶融による粉末の凝集方法は焼結と同義と考えられる。
【0092】
本発明による溶融による粉末の凝集方法は、好ましくは、物体又は物品、特に三次元(3D)物体又は物品を製造するための方法である。
【0093】
溶融は、放射線又は電磁エネルギーの入力を用いて得られることが好ましい。放射線は、当業者に周知の任意の放射線から選択することができる。放射線の例としては、レーザー光線、赤外線、紫外線、LED型放射線を挙げることができる。特に好ましくは、溶融はレーザー放射によって得られ、「レーザー焼結」方法を参照する。さらにより好ましくは、本発明による溶融による粉末の凝集方法は、「選択的レーザー焼結」方法又は「高速焼結」(HSS)又は「マルチジェット融合」(MJF)として知られる方法である。
【0094】
好ましくは、本発明による溶融による粉末の凝集方法は、層ごとの方法又は付加製造方法である。
【0095】
一例として、本発明による溶融による粉末の凝集方法は、以下の工程を含む。
a. 本発明によるポリアミド粉末の薄層(層1)を、該粉末の結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)の間にある温度まで加熱したチャンバー内に維持した水平板上に堆積させる工程、
b. 放射、特にレーザー放射により、製造される物品に対応する幾何学的形状に応じて粉末層(層1)内の種々の箇所で溶融による粉末粒子の凝集が可能になる工程、
c. 水平板を一層の粉末層の厚さに応じた値だけ下げた後、新たな粉末層(層2)を堆積させる工程、
d. 放射、特にレーザー放射によって、製造される物品のこの新たなスライスに応じた幾何学的形状に応じて粉末層(層2)の溶融による粒子の凝集が可能になる工程、
e. これまでの工程を繰り返し、物品が造形されるまでサイクルを形成する工程、
f. チャンバー内に粉末で縁取りされた物品が得られる工程、
g. 完全に冷却した後、物品を粉末から分離する工程。
【0096】
特に好ましくは、本発明による溶融による粉末の凝集方法は3D印刷方法である。
【0097】
本発明による溶融による粉末の凝集方法は、適切な装置によって、特に3D印刷機内で行うことができる。装置の例としては、EOS、3D Systems、Aspect、Trump Precision Machinery、Hewlett Packard、Sinterit、Sintratec、Sharebot、FormLabs、Sonda Sys、Farsoon、Prodways、Ricoh、Wematter3D、VoxelJet、又はその他Xaarが販売する焼結装置を挙げることができる。特に、EOS GmbH製のEOSINT P396及びFormiga P100装置を挙げることができる。
【0098】
本発明により再利用又はリサイクルされる粉末は、物品の製造又は造形に必要な様々な粉末溶融サイクルの間に、凝集されなかったか、又は溶融されなかった粉末である。本明細書で理解されるように、さまざまなサイクルが「稼働」を形成する。換言すると、「稼働」は造形に相当する。
【0099】
好ましくは、造形サイクル、又は「稼働」の各組において、リサイクル粉末の含有量は、各稼働で機械に使用される粉末の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。好ましくは、100%の未使用の、すなわち、リサイクルされたものでない粉末を使用する最初の稼働から開始して、各次の稼働は、各稼働において機械に使用される粉末の総重量に対して、凝集されなかった先行稼働からの粉末の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%を再利用又はリサイクルする。
【0100】
<物体>
本発明による物体又は物品は、好ましくは、3次元(3D)の物体又は物品、特に3D印刷物である。
【0101】
好ましくは、この物体は、自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(義肢、聴覚系など)、繊維、衣料、ファッション及び装飾分野、電子機器の筐体、電話通信、ホームオートメーション、コンピューティング、照明、スポーツ、及び産業用ツールの分野用の試作品、部品ひな型(「ラピッドプロトタイピング」)、少量生産シリーズの完成部品(「ラピッドマニュファクチャリング」)から選択される。
【0102】
好ましくは、本発明による物体は、X/Y、すなわち、溶融による粉末の凝集のための装置において主に2つの水平次元又は「フラット」で製造された物体について、粉末の数回のリサイクル後も、以下を有する。
- 1500MPaを超える弾性率、
- 40%を超える破断点伸び、
- 40MPa、好ましくは45MPaを超える引張強さ。
上記の機械的特性(弾性率、破断点伸び、引張強さ)は、好ましくは、全てISO規格 527-1B:2012に従って測定される。
【0103】
本発明は、以下の実施例により非限定的な方法でさらに説明される。
【実施例】
【0104】
[実施例1]
本発明者らは、3D印刷用の粉末が何回かの印刷稼働の間にさらされる条件を再現することにより、本発明による粉末の老化を研究した。
【0105】
<A.材料及び方法>
1.使用材料
1.1.本発明によるポリアミド粉末
試験した3D印刷粉末は、次リン酸(H3PO4)(粉末1)又は亜リン酸(H3PO2)(粉末2)により触媒された11-アミノウンデカン酸の重縮合から生じたポリマーを粉砕して得られ、フェノール酸化防止剤(Irganox 245(BASF))2~5重量部、チオエーテル酸化防止剤(ADK Stab AO412S (Adeka))3~8重量部、流動剤(Cab-O-Sil TS 610(CABOT))1~3重量部と混合したPA11粉末1000重量部である。セバシン酸(DC10)2重量部、4重量部、6重量部を含む3つの試料を配合した。PA11プレポリマーにセバシン酸、酸化防止剤及び流動剤を添加し、次に混合物を固相重縮合工程にかけて実施例1.1の粉末とした。
【0106】
1.2.比較例
比較例は、次リン酸(H3PO4)(粉末1)又は亜リン酸(H3PO2)(粉末2)により触媒された11-アミノウンデカン酸の重縮合から生じたポリマーを粉砕して得られ、フェノール酸化防止剤(Irganox 245(BASF))3重量部、チオエーテル酸化防止剤(ADK Stab AO412S (Adeka))5重量部、流動剤(Cab-O-Sil TS 610(CABOT))2重量部と混合したPA11粉末1000重量部からなる。酸化防止剤及び流動剤をPA11プレポリマーに添加し、次に混合物を固相重縮合工程にかけて実施例1.2の粉末とした。
【0107】
2.老化
試験は、ポリアミド粉末を、純粋なポリアミドの溶融温度Tmより10~50℃低い温度にさらすことからなる。ポリアミド粉末(比較例及び本発明によるポリアミド粉末)は、穴を開けたアルミニウムキャップによって密封されたガラス瓶に入れる。瓶を180℃に調整されているオーブン(ITEM FGE 140)に空気中で入れて老化させる。本試験は、曝露時間に応じて1回稼働又は数回稼働の間、粉末が3D装置で曝露される曝露条件をシミュレートしたものである。暴露時間は0~90時間である。
【0108】
3.ポリアミド粉末の固有粘度
固有粘度は20℃、0.5重量%のメタ-クレゾール溶液中で、上記の詳細に記載した粘度測定法に従って測定する。
【0109】
4.ポリアミド粉末の溶融温度
粉末の溶融温度は、DSC Q2000装置(TA機器)上でISO 11357-6規格に従った示差走査熱量測定(DSC)により、-20℃での平衡(温度変化速度20℃/分上昇を240℃まで、20℃/分低下を-20℃まで、20℃/分上昇を240℃まで)を用いて測定する。
【0110】
<B.結果>
以下の表1は、1.35の初期粘度を有するポリアミド粉末(比較例及び本発明によるポリアミド粉末)の粘度測定値を含む。
【0111】
【0112】
以下の表2は、1.10の初期粘度を有する本発明によるポリアミド粉末の粘度測定値を表す。
【0113】
【0114】
以下の表3は、1.10の初期粘度を有する上記本発明によるポリアミド粉末の溶融温度の測定値を含む。
【0115】
【0116】
<C.結論>
連鎖制限ジカルボン酸であるセバシン酸の存在により、連続3D印刷稼働(サイクル)を代表する老化の間に生じるポリアミド粉末の粘度及び溶融温度の上昇を制御することが可能になる。
【0117】
[実施例2]
試料を実施例1(1.1参照)に記載のプロトコルに従って調製した。
【0118】
試験を真空下で180℃で実施したことを除き、実施例1(1.2参照)に記載されたプロトコルに従って、老化試験を実施した。
【0119】
【0120】
セバシン酸の存在により、連続3D印刷稼働(サイクル)を代表する、真空下での老化中に生じるポリアミド粉末の粘度の上昇を減少させることが可能になることが観察された。
【0121】
[実施例3]
試験された3D印刷粉末は、フェノール酸化防止剤(Irganox 245(BASF))2~5重量部、チオエーテル酸化防止剤(ADK Stab AO412S(Adeka))3~8重量部、流動剤(Cab-O-Sil TS 610(CABOT))1~3重量部)を乾式ブレンドしたPA11粉末1000重量部からなる。セバシン酸(DC10)2重量部、4重量部及び6重量部、及びドデカン二酸(DC12)6重量部を含む3つの試料を配合した。
【0122】
老化試験は、実施例1(1.1参照)に記載のプロトコルに従って、真空下180℃で実施した。
【0123】
【0124】
セバシン酸又はドデカン二酸の存在により、連続3D印刷稼働(サイクル)を代表する真空下での老化中に生じるポリアミド粉末の粘度の上昇を減少させることが可能になることが観察された。
【国際調査報告】