(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】グルタチオンを生産する酵母菌株及びそれを用いたグルタチオン生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/16 20060101AFI20221209BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221209BHJP
A23L 31/10 20160101ALI20221209BHJP
A61K 36/064 20060101ALI20221209BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221209BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20221209BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20221209BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20221209BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20221209BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221209BHJP
A01G 18/40 20180101ALI20221209BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
C12N1/16 ZNA
C12P21/02 G
A23L31/10
A61K36/064
A61P1/16
A61P17/18
A61P39/02
A61K38/06
A61K8/9728
A61Q19/00
A01G18/40
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521443
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 KR2020012614
(87)【国際公開番号】W WO2021085854
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0135659
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ チョル ウン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ウン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨン ウン
【テーマコード(参考)】
2B011
4B018
4B064
4B065
4C083
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
2B011KA04
4B018LB08
4B018MD20
4B018MD81
4B018ME06
4B064AG01
4B064CA06
4B064DA01
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4B065BC03
4B065CA24
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4B065CA44
4B065CA50
4C083AA031
4C083AD411
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
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4C083CC22
4C083CC25
4C083DD08
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4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
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4C084NA05
4C084ZA75
4C084ZA89
4C084ZC37
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC12
4C087CA09
4C087CA10
4C087CA11
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZC37
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】新規なグルタチオンを生産する酵母菌株及びそれを用いたグルタチオン生産方法の提供。
【解決手段】本出願は、新規なグルタチオンを生産する酵母菌株及びそれを用いたグルタチオン生産方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタチオンを生産する寄託番号KCCM12568Pのサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株。
【請求項2】
前記菌株は、配列番号1の塩基配列を18S rRNA配列として含む、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
請求項1に記載の菌株を培養するステップを含むグルタチオン製造方法。
【請求項4】
前記培養した菌株、前記菌株の乾燥物、前記菌株の抽出物、前記菌株の培養物、及び前記菌株の破砕物から選択される少なくとも1つの物質からグルタチオンを回収するステップをさらに含む、請求項3に記載のグルタチオン製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の菌株を培養するステップと、
前記培養した菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される少なくとも1つの物質と添加剤を混合するステップとを含む、グルタチオン含有組成物の製造方法。
【請求項6】
前記添加剤は、賦形剤又は乳化剤を含む、請求項5に記載のグルタチオン含有組成物の製造方法。
【請求項7】
前記培養した菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される少なくとも1つの物質の重量は、組成物の総重量に対して3~30重量%である、請求項5に記載のグルタチオン含有組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む抗酸化機能用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む解毒用組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む免疫増強用組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む化粧品用組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む食品用組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む飼料用組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、グルタチオン欠乏に起因する疾患の予防又は治療に用いられる医薬品製造用組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、グルタチオン欠乏に起因する疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規なグルタチオンを生産する酵母菌株及びそれを用いたグルタチオン生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオン(Glutathione, GSH)は、細胞内で最も一般的に存在する有機硫黄化合物であり、グリシン(glycine)、グルタミン酸(glutamate)、システイン(cysteine)の3つのアミノ酸が結合したトリペプチド(tripeptide)の形態である。
【0003】
グルタチオンは、体内において、還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の2つの形態で存在する。一般的な状況において比較的高い割合で存在する還元型グルタチオン(GSH)は、人体の肝臓と皮膚細胞に主に分布しており、活性酸素を分解・除去する抗酸化機能、毒性物質をはじめとする外因性化合物の除去などの解毒作用、メラニン色素の生成を抑制する美白作用などの重要な役割を果たす。
【0004】
老化が進むほどグルタチオンの生成量が次第に減少し、抗酸化、解毒作用に重要な役割を果たすグルタチオンの生成量の減少は老化の主原因である活性酸素の蓄積を促進するので、外部からのグルタチオンの供給が必要である(非特許文献1)。
【0005】
このように様々な機能を有するグルタチオンは、製薬、機能性食品、化粧品などの様々な分野の素材として脚光を浴びており、呈味素材、食品及び飼料添加剤の製造に用いられることもある。グルタチオンは、原物の呈味向上と呈味持続性の維持効果が大きく、単独で用いたり、他の物質と配合することにより、コク味(kokumi)香味増強剤として用いられることが知られている。通常、コク味素材は、従来の核酸、MSGなどの旨味(umami)素材より濃厚であり、タンパク質が分解熟成されることにより生成されることが知られている。
【0006】
しかし、このように様々な分野で用いることのできるグルタチオンの需要が増加しているにもかかわらず、グルタチオンの産業的生産には多大なコストがかかるので、市場が十分に活性化されていない現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sipes IG et al, The role of glutathione in the toxicity of xenobiotic compounds: metabolic activation of 1,2-dibromoethane by glutathione, Adv Exp Med Biol. 1986;197:457-67.
【非特許文献2】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【非特許文献3】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【非特許文献4】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【非特許文献5】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【非特許文献6】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【非特許文献7】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【非特許文献8】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【非特許文献9】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献10】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【非特許文献11】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【非特許文献12】http://www.ncbi.nlm.nih.gob/blast/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意努力した結果、グルタチオン生産能に優れる新規な菌株を開発し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、グルタチオンを生産する新規サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株を提供することを目的とする。
【0010】
また、本出願は、前記菌株を培養するステップを含むグルタチオン製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本出願は、前記菌株を培養するステップと、前記培養した菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される少なくとも1つの物質と添加剤を混合するステップとを含む、グルタチオン含有組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本出願は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、抗酸化機能用、解毒用、免疫増強用、化粧品用、食品用、飼料用組成物を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、グルタチオン欠乏に起因する疾患の予防又は治療に用いられる医薬品製造用組成物又は薬学的組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本出願の菌株は、従来のグルタチオン生産菌株に比べて、グルタチオンを著しく多量に生産することができる。よって、本出願の菌株は、グルタチオンの製造に有用である。
【0015】
また、本出願の菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む組成物は、優れた活性酸素除去能を有するので、抗酸化機能用、解毒用、免疫力増強用組成物として有用である。
【0016】
よって、前記組成物は、化粧品用組成物、医薬品組成物及びその製造にも有用である。
【0017】
また、前記組成物を食品に用いると、前述した機能だけでなく、食品の呈味性を非常に良くするので、食品組成物及び飼料組成物の製造にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】Saccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5、CJ-37菌株の抽出物を含む食品組成物の官能評価結果を示す図である。
【
図2】Saccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5、CJ-37菌株の抽出物のラジカル除去能を確認した結果を示す図である。
【
図3】Saccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5、CJ-37菌株の活性酸素吸収能を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。
【0020】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本出願に含まれることが意図されている。
【0021】
本出願の一態様は、グルタチオンを生産する新規サッカロマイセス・セレビシエ菌株を提供する。
【0022】
本出願のグルタチオン生産菌株は、寄託番号KCCM12568Pのサッカロマイセス・セレビシエCJ-5菌株であってもよい。
【0023】
本出願のグルタチオン生産菌株は、同属同種の他のサッカロマイセス・セレビシエ、具体的にはサッカロマイセス・セレビシエ又はサッカロマイセス・セレビシエYJM1592の18S(ITS,5.8S)rRNA配列(配列番号3)と90%以上、具体的には91%、92%、93%、93.2%、93.5%又は93.7%以上の相同性又は同一性を有する18S(ITS,5.8S)rRNA配列を含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。さらに、本出願のグルタチオン生産菌株は、YJM1592の18S(ITS,5.8S)rRNA配列と90%以上、具体的には91%、92%、93%、93.2%、93.5%又は93.7%以上の相同性又は同一性を有し、96%、95.5%又は95.2%未満の同一性を有する18S(ITS,5.8S)rRNA配列を含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記18S(ITS,5.8S)rRNA配列は、18S rRNAと5.8S間に存在するITS(Internal transcribed spacer)配列であり、種分類に用いられる配列である。
【0024】
本出願のグルタチオン生産菌株は、配列番号1の18S(ITS,5.8S)rRNA配列を有するものであってもよい。一実施例によれば、前記菌株の18S(ITS,5.8S)rRNA配列は、配列番号1と90%以上、具体的には95%、96%。97%、98%又は99%以上の相同性又は同一性を有するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本出願における「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列が関連する程度を意味し、百分率で表される。相同性及び同一性は、しばしば互換的に用いられる。
【0026】
保存されている(conserved)ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列相同性又は同一性は標準的な配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)又は同じ(identical)配列は、中程度又は高いストリンジェントな条件(stringent conditions)下において、一般に配列全体又は全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%又は90%以上ハイブリダイズする。そのハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドがコドンの代わりに縮退コドンを有するようにするものであってもよい。
【0027】
任意の2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、例えば非特許文献2のようなデフォルトパラメーターと「FASTA」プログラムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 非特許文献3)(バージョン5.0.0又はそれ以降のバージョン)で行われるように、ニードルマン=ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献4)を用いて決定することができる(GCGプログラムパッケージ(非特許文献5)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献6,7,8)を含む)。例えば、国立生物工学情報センターのBLAST又はClustal Wを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0028】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば非特許文献9に開示されているように、非特許文献4などのGAPコンピュータプログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち短いものにおける記号の総数で、類似する配列記号(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を割った値と定義している。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは、(1)二進法比較マトリックス(同一性は1、非同一性は0の値をとる)及び非特許文献10に開示されているように、非特許文献11の加重比較マトリックス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリクス)と、(2)各ギャップに3.0のペナルティ、及び各ギャップの各記号に追加の0.10ペナルティ(又はギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)と、(3)末端ギャップに無ペナルティとを含む。
【0029】
また、任意の2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、定義されたストリンジェントな条件下にてサザンハイブリダイゼーション実験で配列を比較することにより確認することができ、定義される好適なハイブリダイゼーション条件は当該技術の範囲内であり、当業者に周知の方法で決定される。
【0030】
本出願における「グルタチオン(glutathione)」とは、「グルタシオン」、「GSH」と互換的に用いられるものであり、グルタミン酸(glutamate)、システイン(Cysteine)、グリシン(glycine)の3つアミノ酸からなるトリペプチドを意味する。グルタチオンは、製薬、機能性食品、呈味素材、食品、飼料添加剤、化粧品などの原料として用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本出願の新規なサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株は、グルタチオン生産能が高いことを特徴とする。
【0032】
前記菌株は、グルタチオン生産能が強化された菌株であってもよく、グルタチオン生産能が高い菌株であってもよく、グルタチオン生産能が向上した菌株であってもよい。
【0033】
本出願における「グルタチオンを生産する菌株」は、「グルタチオン生産能を有する菌株」、「グルタチオン生産菌株」などの用語と互換的に用いられる。
【0034】
本発明によるサッカロマイセス・セレビシエ菌株は、乾燥菌体重量に対して0.6重量%以上、具体的には0.7重量%以上、0.8重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、1.1重量%以上のグルタチオンを含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本出願の他の態様は、前記菌株を含むグルタチオン生産用組成物を提供する。
【0036】
本出願における「グルタチオン生産」又は「グルタチオン製造」には、グルタチオンを菌体内に蓄積することが含まれる。
【0037】
前記グルタチオン生産用組成物は、本出願の菌株によりグルタチオンを生産する組成物であり、例えば前記組成物は、前記菌株を含み、さらに前記菌株を用いてグルタチオンを生産する構成であればいかなるものでもよい。
【0038】
本出願のグルタチオン生産用組成物は、当該グルタチオン生産用組成物に通常用いられる任意の好適な添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、自然発生のもの、又は非自然発生(non-naturally occurring)のものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記添加剤には、賦形剤及び/又は乳化剤が含まれる。前記賦形剤は、目的とする用途や形態に応じて適宜選択して用いることができ、例えばデンプン、グルコース、セルロース、ラクトース、グリコーゲン、D-マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、コロイド性二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモゲル、アラビアガムから選択されるものであり、具体的にはデンプン、グルコース、セルロース、ラクトース、デキストリン、グリコーゲン、D-マンニトール、マルトデキストリンから選択される少なくとも1つの成分であるが、これらに限定されるものではない。乳化剤としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、スクロースエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、それらの混合物などが用いられるが、これらに限定されるものではなく、当該技術分野で公知のものを適宜用いることができる。
【0040】
前記賦形剤としては、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株を培養するステップを含むグルタチオン製造方法を提供する。前記菌株の培養により、グルタチオンが菌体内に蓄積されてもよい。
【0042】
本出願の菌株の培養に用いられる培地及び他の培養条件は、通常のサッカロマイセス属微生物の培養に用いられる培地であればいかなるものでもよく、具体的には好適な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有する通常の培地中で好気性又は嫌気性条件下にて温度、pHなどを調節して本出願の菌株を培養することができる。
【0043】
本出願における前記炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースなどの炭水化物、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などの有機酸、グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのアミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、デンプン加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米糠、キャッサバ、バガス、トウモロコシ浸漬液などの天然の有機栄養源を用いることができ、グルコースや殺菌した前処理糖蜜(すなわち、還元糖に変換した糖蜜)などの炭水化物を用いることができ、その他適量の炭素源であればいかなるものでも用いることができる。これらの炭素源は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源と、アミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類又はその分解生成物、脱脂大豆ケーキ又はその分解生成物などの有機窒素源とを用いることができる。これらの窒素源は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム又はそれらに相当するナトリウム含有塩などが挙げられる。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
【0046】
それ以外に、前記培地には、アミノ酸、ビタミン及び/又は好適な前駆体などを用いることができる。具体的には、前記菌株の培養培地には、L-アミノ酸などを添加することができる。具体的には、グリシン(glycine)、グルタミン酸(glutamate)及び/又はシステイン(cysteine)などを添加することができ、必要に応じてリシン(lysine)などのL-アミノ酸をさらに添加することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0047】
前記培地又は前駆体は、培養物に回分式又は連続式で添加することができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本出願における菌株の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などの化合物を培養物に好適な方法で添加することにより、培養物のpHを調整することができる。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。さらに、培養物の好気状態を維持するために、培養物中に酸素又は酸素含有気体を注入してもよく、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体を注入しなくてもよく、窒素、水素又は二酸化炭素ガスを注入してもよい。
【0049】
培養物の温度は、25℃~40℃であってもよく、より具体的には28℃~37℃であるが、これらに限定されるものではない。培養期間は、有用物質の所望の生成量が得られるまで続けられ、具体的には1時間~100時間であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記グルタチオン製造方法は、前記培養ステップの後に、追加工程をさらに含んでもよい。前記追加工程は、グルタチオンの用途に応じて適宜選択される。
【0051】
具体的には、前記グルタチオン製造方法は、前記培養ステップの後に、前記菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物から選択される少なくとも1つの物質からグルタチオンを回収するステップを含んでもよい。
【0052】
本出願における「培養物」とは、本出願の菌株を培養して得られた産物を意味する。例えば、菌株を培地で培養して栄養分を摂取させ、物質代謝により生じた副産物を含む培地が挙げられ、前記培地の希釈液や濃縮液、前記培地を乾燥させて得た乾燥物、前記培地の粗精製物や精製物、それらの混合物など、前記培地を用いて形成可能なあらゆる形態の培養物である。本出願の微生物の培養物は、前記微生物を含むものであってもよく、含まないものであってもよい。培養については前述した通りである。
【0053】
本出願における「破砕物」とは、前記菌株もしくはその培養物を破砕もしくは溶菌して得た結果物、又は前記破砕物を遠心分離して得た上清であってもよい。
【0054】
前記培養物、破砕物、それらの上清及びそれらの分画物も本出願に含まれる。前記方法は、前記回収ステップの前に又は同時に、菌株を溶菌するステップをさらに含んでもよい。菌株の溶菌は、本出願の属する技術分野で通常用いられる方法、例えば溶菌用緩衝液、ソニケーター、熱処理、フレンチプレスなどを用いて行うことができる。また、前記溶菌ステップには、細胞壁分解酵素、核酸分解酵素、核酸転移酵素、タンパク質分解酵素などの酵素反応が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本出願の目的上、前記グルタチオン製造方法によりグルタチオンを高含有量で含む乾燥酵母(Dry yeast)、酵母抽出物(yeast extract)、酵母抽出物混合粉末(yeast extract mix powder)、純粋精製したグルタチオン(pure glutathione)が製造されるが、これらに限定されるものではなく、目的とする製品に応じて適宜製造される。
【0056】
本出願における乾燥酵母(dry yeast)は、「菌株乾燥物」などの用語と互換的に用いられる。前記乾燥酵母は、グルタチオンを蓄積した酵母菌体を乾燥させて製造することができ、具体的には飼料用組成物、食品用組成物などに含まれるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本出願における酵母抽出物(yeast extract)は、「菌株抽出物」などの用語と互換的に用いられる。前記菌株抽出物とは、前記菌株の菌体から細胞壁を分離して残った物質を意味する。具体的には、菌体を溶菌させて得た成分から細胞壁を除いた残りの成分を意味する。前記菌株抽出物は、グルタチオンを含み、グルタチオン以外の成分としては、タンパク質、炭水化物、核酸、繊維質の少なくとも1つの成分を含むが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記回収ステップは、当該技術分野で公知の好適な方法により、目的物質であるグルタチオンを回収することができる。
【0059】
前記回収ステップは、精製工程を含んでもよい。前記精製工程は、菌株からグルタチオンのみを分離して純粋精製する工程であってもよい。前記精製工程により、純粋精製したグルタチオン(pure glutathione)を製造することができる。
【0060】
必要に応じて、前記グルタチオン製造方法は、前記培養ステップの後に、得られた菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される物質と添加剤を混合するステップをさらに含んでもよい。前記混合ステップにより、酵母抽出物混合粉末(yeast extract mix powder)を製造することができる。
【0061】
前記添加剤には、賦形剤及び/又は乳化剤が含まれてもよい。賦形剤、乳化剤は、当業者が適宜選択して用いることができ、その例示については前述した通りである。
【0062】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株を培養するステップと、培養した菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される物質と添加剤を混合するステップとを含む、グルタチオンを含む組成物の製造方法を提供する。
【0063】
本出願の組成物は、自然発生の物質、又は非自然発生(Non-naturally occurring)の物質をさらに含んでもよい。前記物質は、目的とする組成物の用途に応じて、薬学的に許容される担体、食品学的に許容される担体、化粧品学的に許容される担体などを含むものであるが、これらに限定されるものではない。前記担体は、公知の内容に基づいて、当業者が適宜選択することができる。
【0064】
前記組成物において、本出願の菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される物質の組成物全体に対する含有量は、組成物の総重量に対して3~30重量%であってもよい。
【0065】
前記添加剤には、賦形剤及び/又は乳化剤が含まれてもよい。賦形剤、乳化剤は、当業者が適宜選択して用いることができ、その例示については前述した通りである。
【0066】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、抗酸化機能用、解毒用、免疫増強用、化粧品用、食品用又は飼料用組成物を提供する。
【0067】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む、抗酸化機能用、解毒用、免疫増強用、化粧品用、食品用又は飼料用組成物の製造方法を提供する。
【0068】
本出願の目的上、前記組成物は、菌株自体を含むものであってもよく、前記菌株の培養物、前記菌株の乾燥物、前記菌株の抽出物、前記菌株の破砕物を含むものであってもよく、前記菌株の培養物、抽出物、乾燥物、破砕物からグルタチオンを回収してそれを含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。すなわち、前記菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物は、グルタチオンを含むので、組成物の具体的な用途に応じて、グルタチオンを含む形態が多少異なるものでも、目的とするグルタチオンの含有量を増加させるものであれば、いかなる形態のものであってもよい。
【0069】
前記組成物において、本出願の菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれらから回収したグルタチオンから選択される物質の組成物全体に対する含有量は、組成物の総重量に対して3~30重量%であってもよい。また、前記組成物は、組成物に通常用いられる任意の好適な添加剤をさらに含んでもよい。
【0070】
前記組成物は、本出願のグルタチオンを生産する菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含み、グルタチオン含有量が増加したものであってもよい。
【0071】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む抗酸化機能用組成物を提供する。
【0072】
本出願における「抗酸化」とは、広義には自然界で発生する酸化反応の生成を抑制、減少又は制御する作用を意味し、より具体的には体内で生成されるフリーラジカル、前記フリーラジカルから生成される過酸化水素又は過酸化物、前記過酸化水素から生成されるヒドロキシラジカルの生成又は反応を抑制、減少又は制御する作用を意味する。
【0073】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む解毒用組成物を提供する。
【0074】
本出願における「解毒」には、有害物質による毒性を除去又は減少させる作用が全て含まれる。
【0075】
グルタチオンは、細胞により生産される内因性抗酸化物質であり、フリーラジカルと活性酸素化合物の中和に直接関与するだけでなく、ビタミンC、Eなどの外因性抗酸化物質を還元型に維持するので、前記解毒には、活性酸素又はフリーラジカル、前記フリーラジカルから生成される過酸化水素又は過酸化物、前記過酸化水素から生成されるヒドロキシラジカルの生成又は反応を抑制、減少又は制御する作用が含まれる。また、グルタチオンは、細胞タンパク質のチオール基を保護することができ、アセトアミノフェンなどの薬物の過剰服用による副作用を防止することができ、代謝副産物として生成されるメチルグリオキサール(methylglyoxal)の解毒にも用いられるので、前記解毒には、化合物の毒性を緩和又は減少させることも含まれる。
【0076】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む免疫増強用組成物を提供する。
【0077】
本出願における「免疫増強」とは、抗原に対する生体防御能を向上させることを意味し、具体的には抗原に対する細胞性及び体液性免疫能を上昇させることを意味し、より具体的には前記組成物の投与前に比べて免疫能を向上させることを意味する。前記免疫増強の機序は、これらに限定されるものではないが、例えばマクロファージなどの抗原提供細胞の活性を促進したり、リンパ球に対する特異的な活性を促進することにより行われるものである。
【0078】
前述したように、グルタチオンは、強い抗酸化力を有し、肝機能を向上させ、体内毒性物質の分解を助ける役割を果たし、有害な活性酸素を除去することにより免疫系に関与する。すなわち、グルタチオンは、Tリンパ球及び白血球の活性を増加させることにより体内の免疫力を向上させ、各種慢性疾患などにより衰弱した個体の体力を回復させるので、本出願のグルタチオンを含む菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質は、免疫増強に有用である。
【0079】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む化粧品用組成物を提供する。
【0080】
本出願における「化粧品用組成物」は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーからなる群から選択される剤形に製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
前記化粧品用組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容される担体を1種以上さらに含んでもよく、通常の成分として、例えば油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適宜配合してもよいが、これらに限定されるものではない。本出願の化粧品用組成物に含まれる化粧品学的に許容される担体は、化粧料組成物の剤形に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0082】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む食品用組成物を提供する。
【0083】
一実施例として、前記食品用組成物は、本出願の菌株の菌体又は抽出物を含むものであってもよく、より具体的には、適用される食品に応じて前記菌株抽出物に添加剤を含有させて適切な形態に剤形化して用いるものであるが、これらに限定されるものではない。前記菌株抽出物については前述した通りである。
【0084】
前記添加剤には、賦形剤及び/又は乳化剤が含まれてもよい。賦形剤、乳化剤は、当業者が適宜選択して用いることができ、その例示については前述した通りである。また、食品補助添加剤、食品安定剤、水分保存剤などが含まれる。
【0085】
本出願における「食品用組成物」には、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)、食品添加剤(food additives)などのあらゆる形態が含まれる。
【0086】
上記タイプの食品用組成物は、当該技術分野で公知の通常の方法で様々な形態に製造することができる。
【0087】
前記食品用組成物には、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセル、液剤などの形態が含まれ、本出願の組成物を添加する食品としては、例えばコメ、食用穀粉(食用穀物粉)、穀物スープ、丼物、麺類、クッパ、即席飯、調味料、弁当飯、乾燥飯、パン、食用糖類、餅、タレ、ソース、香辛料、食塩、薬味、薬味粉末、加工処理、冷凍、乾燥及び調理した果物及び野菜、ゼリー、ジャム、砂糖漬け果実、卵、牛乳及びその他の乳製品、食用油脂、コーヒー、ココア、代用コーヒー、タピオカ、穀粉及び穀物調製品、ラーメン、ウドン、麺類、カルグクス、冷麺、粥、スープ、汁物、インスタント食品(即席食品)、冷凍食品、レトルト食品、その他の飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などの各種食品類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本出願の食品用組成物は、通常の食品と同様に様々な生薬抽出物、食品補助添加剤、天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。また、前記食品補助添加剤には、当該技術分野で通常用いられる食品補助添加剤、例えば香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤などが含まれてもよい。
【0089】
前記天然炭水化物の例としては、グルコース、フルクトースなどの単糖類、マルトース、スクロースなどの二糖類、デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類が含まれる通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。前述したもの以外の香味剤としては、天然香味剤(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を用いることが有利である。また、味や栄養を補充する目的で用いられる通常の食品添加物、例えば核酸、アミノ酸、有機酸などを添加してもよい。
【0090】
前記以外に、本出願の食品用組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤や天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできる。
【0091】
本出願の食品は、当該技術分野で通常用いられる方法により製造することができ、その製造時には当該技術分野で通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。また、前記食品の剤形は、食品として認められる剤形であれば限定されるものではない。
【0092】
また、本出願の食品組成物が機能性食品として用いられる場合、本出願の食品組成物は様々な形態の剤形に製造することができ、一般薬品とは異なり、食品を原料とするので、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがないという利点があり、携帯性に優れるので、本出願の食品は、補助剤として摂取することができる。
【0093】
一方、本出願の食品用組成物は、食品添加剤にも分類される香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤及び調味素材を含んでもよい。
【0094】
本出願における「調味素材(flavor)」とは、食品の風味を向上させるために添加される素材である。前記調味素材は、食品に優れた呈味性をもたらす素材であってもよい。
【0095】
前記調味素材は、呈味成分によって分けられる。すなわち、風味によって中性(neutral)調味素材、牛肉(beef)風味調味素材、鶏肉(chicken)調味素材、豚肉(pork)調味素材、コク味(kokumi)調味素材などに分けられる。
【0096】
「コク味調味素材(kokumi flavor)」とは、コク味を出す調味素材を意味し、前記「コク味」は、日本語に由来する単語であり、英語圏では「mouthfulness」、「continuity」、「thickness」、「heartiness」とも表現され、韓国語では「濃い味」、「厚い味」、「口の中に広がる味」、「濃厚な味」、「タメのある味」などと表現される味を意味する。「中性調味素材(neutral flavor)」とは、旨味(umami)を最大化させて他の風味を最小限に抑えることにより、まろやかでさっぱりした風味を出す調味素材を意味し、例えばオイルではキャノーラ油やグレープシードオイルなどのオイルが中性風味を有するといえる。「呈味性」とは、酸味、甘味、塩味、苦味、旨味などを有することを意味するが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本出願の食品用組成物は、組成物の総重量に対して本出願の酵母の抽出物を3~30重量%含んでもよく、塩化アンモニウム、マルトデキストリン、粉末グルコース及び乳化剤から選択される1種以上の成分をさらに含んでもよい。一実施例として、前記食品組成物は、組成物の総重量に対して酵母の抽出物を3~25重量%含み、塩化アンモニウム20~35重量%、マルトデキストリン25~35重量%、粉末グルコース3~7重量%、乳化剤0.1~1重量%を含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0098】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む飼料用組成物を提供する。
【0099】
具体的には、前記飼料用組成物は、本出願の菌株自体、菌株乾燥物、菌株抽出物の少なくとも1つを含むものであるか、又は前記菌株の抽出物作製過程で得られた細胞壁成分を含むものであり、例えば菌株乾燥物(dry yeast)及び/もしくは菌株抽出物(yeast extract)を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
本出願の「飼料用組成物」は、動物が食べて摂取し、消化させるための、もしくはそれに適した任意の天然もしくは人工の規定食、一食など、又は前記一食の成分であり、本出願によるグルタチオン含有量が増加した酵母を含む飼料は、当該技術分野で公知の様々な形態の飼料に製造することができ、具体的には濃厚飼料、粗飼料及び/又は特殊飼料に製造することができる。
【0101】
前記飼料の種類は特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられる飼料を用いることができる。前記飼料の例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油類、デンプン類、ミール類、穀物副産物類などの植物性飼料と、タンパク質類、無機物類、ミネラル類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類、飲食物などの動物性飼料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いることもでき、2種以上を混合して用いることもできる。
【0102】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンを含む、グルタチオン欠乏に起因する疾患の予防又は治療に用いられる医薬品製造用組成物を提供する。
【0103】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンを含む、グルタチオン欠乏に起因する疾患の予防又は治療に用いられる薬学的組成物を提供する。
【0104】
本出願における「薬学的組成物」は、疾病もしくは病理学の医学的診断、治療、処置もしくは予防に用いるための化学的もしくは生物学的化合物もしくは物質、又は2つ以上のそれらの化合物もしくは物質の混合物もしくは組み合わせである。
【0105】
本出願における「医薬品製造用組成物」は、薬学的組成物と同じ意味で用いられるか、又は医薬品製造及び/もしくは剤形化に必要な任意の追加成分をさらに含む組成物を意味する。しかし、これらに限定されるものではない。
【0106】
前述したように、グルタチオンは、活性酸素を分解、除去する抗酸化機能、解毒作用及び免疫力増強に寄与するので、前記菌株、その培養物、乾燥物、抽出物、破砕物は、グルタチオンを高濃度で含むため、医薬品製造に有用であり、前記医薬品は、グルタチオン欠乏による疾患を治療するのに有用である。
【0107】
また、前記菌株、その培養物、乾燥物、抽出物、破砕物は、グルタチオンを高濃度で含むので、それ自体がグルタチオン欠乏に起因する疾患の予防又は治療用薬学的組成物の成分に含まれてもよい。
【0108】
前記疾患は、グルタチオン欠乏に起因する疾患であれば限定されるものではない。例えば、活性酸素の蓄積及び/又は免疫力低下により発生する疾患であればいかなるものでもよく、具体的には、動脈硬化症、ルーゲーリック病、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及びハンチントン病が含まれる退行性神経疾患、心筋梗塞、狭心症、冠状動脈疾患、虚血性心疾患が含まれる心血管疾患、脳卒中が含まれる虚血性脳疾患、糖尿病、胃炎及び胃癌が含まれる消化器系疾患、癌、白血病、白内障、老化、関節リウマチ、肝炎、アトピー性皮膚炎などであるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
前記医薬品及び/又は薬学的組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。本出願における「薬学的に許容される」とは、前記医薬品に曝露される細胞やヒトに毒性がないという特性を意味する。前記担体は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤、基剤、賦形剤、滑沢剤などの当該技術分野で公知のものであればいかなるものでもよい。
【0110】
また、前記医薬品及び/又は薬学的組成物は、それぞれ通常の方法で散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エアゾール剤などの経口剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して用いられる。さらに、軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、パッチ剤、クリーム剤、散剤、懸濁剤、ゲル剤又はゲル状の皮膚外用剤の形態で用いられる。本出願の医薬品に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油が挙げられる。製剤化する場合は、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。
【0111】
経口用固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、前記組成物に少なくとも1つの賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調製される。また、通常の賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤も用いられる。経口用液体製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれ、通常用いられる通常の希釈剤である水、流動パラフィン以外にも種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが用いられる。非経口用製剤には、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられる。
【0112】
前記医薬品及び/又は薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本出願における「投与」とは、適切な方法で個体に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、標的組織に送達できるものであれば、いかなる一般的な経路で投与してもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
前記「個体」とは、ヒトをはじめとする、ラット、マウス、家畜などのあらゆる動物を意味する。具体的には、ヒトを含む哺乳動物であってもよい。
【0114】
前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用できる合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効用量レベルは、患者の性別、年齢、体重、健康状態、疾病の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与方法、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、配合又は同時に用いられる薬物が含まれる要素、並びにその他医学分野で公知の要素により当業者が容易に決定することができる。投与は、上記推奨投与量を1日1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。
【0115】
本出願のさらに他の態様は、前記菌株のグルタチオン生産への使用を提供する。
【0116】
前記菌株については前述した通りである。
【実施例】
【0117】
以下、実施例及び実験例を挙げて本出願をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は本出願を例示するものにすぎず、本出願がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0118】
グルタチオン生産に優れた菌株の選択及びグルタチオン生産能の確認
様々な菌株を含有する麹から菌株を得て、それを改良してグルタチオン生産能が高い菌株を選択した。
【0119】
具体的には、韓国京畿道龍仁、利川、平沢、華城地域などの計20の地域でコメ、オオムギ、リョクトウ、エンバクなどの穀物試料を採取して麹を作製した。採取した穀物試料を粉砕してペーストにしたものを布に包んで強く押して形を作り、次いで藁で包んで10日間発酵させ、その後徐々に乾燥させて麹を作製した。作製した麹から様々な菌株を分離するために、次の実験を行った。5gの麹に45mlの食塩水を添加し、混合機で粉砕した。酵母菌株の純粋分離は、serial dilutionしてYPD Agar(Yeast extract 10g/L,Bacto peptone 20g/L,Glucose 20g/L,蒸留水1リットル中)にspreadingし、30℃で48時間培養した。また、colony形態と顕微鏡の検証により酵母のcolonyをYPD agarにstreakingした。250ml三角フラスコにYPD brothを25ml分注し、純粋分離した菌株を接種して48時間振盪培養(30℃,200rpm)し、グルタチオン生産量を確認して菌株スクリーニングを行った。
【0120】
一次的に分離した菌株の改良のために、分離した菌株に突然変異(random mutation)を誘導した。前記麹から分離した酵母のうち、グルタチオン生産量が15mg/Lの菌株を分離し、CJ-37菌株と命名した。CJ-37菌株を固体培地で培養し、その後brothに接種して培養液を得て、UVランプを用いて菌体にUVを照射した。その後、UV照射した培養液を平板培地に塗抹し、コロニーを形成した変異菌株のみ分離して回収し、それらのグルタチオン生産量を確認した。
【0121】
その結果、変異菌株のグルタチオン生産量が最大105mg/Lであることが確認され、最も優れたグルタチオン生産量(105mg/L)を示す菌株をグルタチオン生産菌株として選択し、CJ-5菌株と命名した。それをブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms, KCCM)に2019年7月31日付けで寄託番号KCCM12568Pとして寄託した。
【実施例2】
【0122】
グルタチオン生産能の比較
実施例1で選択したCJ-5菌株のグルタチオン生産能を確認するために、従来から知られている3種の微生物(表1)と次の方法で培養し、GSH生産能を比較分析した。対照群として実施例1で得られたCJ-37菌株も共に培養して比較分析した。
【0123】
【0124】
まず、各菌株を30℃で1日培養し、その後25mlのYPD培地(Yeast extract 10g/L,Bacto peptone 20g/L,Glucose 20g/L,蒸留水1リットル中)を含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに菌株を接種し、培養開始後16時間の時点でアミノ酸(L-Cysteine, L-Glutamic acid, L-Glycine)を20mMの濃度で添加し、30℃にて200rpmで培養した。GSHの濃度測定のために、菌体を含む培養液サンプル500ulを80℃にて800rpmで10分間lysisし、その後Abcam GSH Ration Detection AssayによりGSHの濃度を測定した。OD値を換算して乾燥重量を算出し、それを用いてGSH含有量(%)=GSH重量/酵母乾燥重量を計算した。その結果を表2に示す。
【0125】
【0126】
5種の酵母のGSH生産能を評価した結果、CJ-5菌株において菌体に対するGSH含有量が最も優れることが確認された。具体的には、CJ-5菌株は、従来のGSHを生産する菌株であるカンジダ・ユチリス(Candida utilis)KCCM50667菌株、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)ATCC8585菌株及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)CEN.PK2-1Dに比べても、菌体に対するGSH含有量が約200%~300%以上とグルタチオン生産能に非常に優れ、特にCJ-37に比べては、GSH生産能が約584%向上することが確認された。
【0127】
よって、CJ-5菌株がGSH生産能に優れることが確認されたので、本出願の菌株がGSH生産に有用であることが分かる。
【実施例3】
【0128】
遺伝子シーケンシングによるCJ-5菌株の18S(ITS,5.8S)rRNAの確認
実施例1で分離したグルタチオン生産に最も優れるCJ-5菌株とグルタチオン生産量が最も低いCJ-37菌株の分類を確認するために、18S(ITS,5.8S)rRNA塩基配列を比較分析した。
【0129】
具体的には、菌株の18S(ITS,5.8S)リボソームRNA(rRNA)塩基配列は、BLAST database(非特許文献12)により類似性を比較した。CJ-5菌株の18S(ITS,5.8S)rRNA配列を配列番号1とし、CJ-37菌株の18S(ITS,5.8S)rRNA配列を配列番号2とし、Saccharomyces cerevisiae YJM1592 chromosome XII 18S(ITS,5.8S)rRNA配列を配列番号3とした。
【0130】
その結果、CJ-5菌株は、Saccharomyces cerevisiae YJM1592 chromosome XII 18S(ITS,5.8S)rRNA配列と約93.73%の類似性を示した。一方、CJ-37菌株も、Saccharomyces cerevisiae YJM1592 chromosome XII 18S(ITS,5.8S)rRNA配列と約95.20%の類似性を示した。
【0131】
よって、CJ-5菌株とCJ-37菌株のどちらもSaccharomyces cerevisiae菌株であることが確認されたので、これを実施例2の実験結果と組み合わせると、本出願のCJ-5菌株は、他の属、種の菌株だけでなく、同属同種の微生物に比べても約6倍程度GSH生産能が高く、同属同種の他の菌株であるSaccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1Dに比べてもGSH生産能が284%と、約3倍程度増加したものと分析される。
【0132】
これらの結果は、本出願の菌株がGSH生産能が高く、前記菌株、その乾燥物、抽出物、培養物及び/又は破砕物がGSHを原料とする様々な化粧品、食品、飼料などに有用であることを示唆するものである。
【実施例4】
【0133】
グルタチオンを含む組成物の製造
グルタチオンを含有する酵母抽出物を作製するために、Saccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5及びCJ-37酵母培養液を遠心分離器で1次遠心分離した。
【0134】
遠心分離した酵母に洗浄及び遠心分離を2回繰り返し、酵母を得た。その後、細胞壁分解酵素、核酸分解酵素、核酸転移酵素、タンパク質分解酵素を添加し、pH5.2、温度45℃で48時間酵素反応させた。
【0135】
前述した酵素反応後に、上清中の酵素を85℃で30分間熱処理して不活性化し、酵素が不活性化された上清を濃縮して酵母抽出物を作製した。
【0136】
その結果、Saccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5及びCJ-37酵母抽出物は、総重量に対して0.8%、2.2%、0.4%のレベルのグルタチオンを含有していた。
【実施例5】
【0137】
グルタチオンを含む食品組成物の官能評価
実施例4で作製した酵母抽出物を含む食品組成物の官能評価を行った。具体的には、前記Saccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5及びCJ-37酵母抽出物の官能評価のために、コンソメチキンスープをベースとして官能評価を行った。
【0138】
前記酵母抽出物をそれぞれ5%配合したコンソメチキンスープ混合物を作製し、官能検査員を対象に官能評価を行った。評価は、味の持続性(コク味)、味わい(旨味)、苦味(異味)、チキンの味の向上度合、まろやかな深い味及び全体的な嗜好度について評価した。
【0139】
その結果、CJ-5酵母抽出物は、CEN.PK2-1D酵母抽出物やCJ-37酵母抽出物より味の持続性(コク味)及びまろやかな深い味に優れることが確認され、全体的な嗜好度が増加することが確認された(
図1)。
【0140】
よって、本出願の酵母抽出物が呈味性に優れた食品組成物の製造に有用であることが確認されたので、前記酵母菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質も、食品組成物の製造に有用であることが分かる。
【実施例6】
【0141】
グルタチオンを含む組成物の抗酸化効果の確認
実施例6-1:ラジカル除去能の評価
グルタチオン含有酵母抽出物のラジカル除去能を評価した。
【0142】
具体的には、実施例4で作製したSaccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5及びCJ-37の酵母抽出物懸濁液5mLに0.1mMの1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl 5mLを添加して暗所で30分間反応させ、その後517nmで吸光度を測定した。2~10mg/mLの濃度範囲において、CEN.PK2-1D、CJ-5及びCJ-37抽出物は、それぞれ21~61%、40~83%、12~49%のラジカル除去効果を示した(
図2)。10mg/mLの濃度において、グルタチオン高含有CJ-5酵母抽出物の抗酸化活性は、CEN.PK2-1D及びCJ-37酵母抽出物の最大1.7倍に増加することが確認された。
【0143】
実施例6-2:活性酸素吸収能の評価
グルタチオン含有酵母抽出物の抗酸化能を評価するために、活性酸素吸収能(ORAC; Oxygen Radical Absorbance Capacity)を分析した。
【0144】
具体的には、実施例4で作製したSaccharomyces cerevisiae CEN.PK2-1D、CJ-5及びCJ-37の酵母抽出物懸濁液5mLをFluorescein 40mLと混合し、その後37℃で15分間反応させた。2,2’-azobis-(2-amidinopropane)-HCl 25mLを添加し、その後485nM及び528nMで吸光度を60分間測定した。活性酸素吸収能は、吸光度曲線下面積(AUC)を求めて比較した。CJ-5酵母抽出物の活性酸素吸収能は、CEN.PK2-1D酵母抽出物及びCJ-37酵母抽出物より高かった(
図3)。前述したように、本発明のCJ-5酵母抽出物の抗酸化能は、CEN.PK2-1D及びCJ-37酵母抽出物に比べて有意に高かった。
【0145】
よって、前記酵母抽出物が優れた抗酸化能を有することが確認されたので、前記酵母菌株と、前記菌株の乾燥物、抽出物、培養物、破砕物と、前記菌株、乾燥物、抽出物、培養物、破砕物の少なくとも1つから回収したグルタチオンとからなる群から選択される少なくとも1つの物質は、抗酸化、解毒及び免疫増強に有用であることが分かる。
【0146】
製造例1:酵母抽出物を含む食品組成物の製造
前述した実験例において酵母抽出物特有の旨味、異味及び異臭制御効果などが確認されたので、本出願の酵母の抽出物を含む食品組成物を製造した。
【0147】
具体的には、酵母抽出物3~30%、塩化アンモニウム20~40%、マルトデキストリン20~40%、粉末グルコース1~10%、乳化剤0.1~1%の含有量比で酵母抽出物混合粉末を製造した。
【0148】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【0149】
【配列表】
【国際調査報告】