(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】抗ケモカイン様受容体1ヒト化抗体及びその治療適用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20221209BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221209BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221209BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221209BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221209BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221209BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221209BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221209BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
A61P29/00
A61P37/06
A61P35/00
A61P3/10
A61P1/16
A61P3/06
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 U
A61K39/395 G
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521452
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2020078488
(87)【国際公開番号】W WO2021069709
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ・ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】シャルレーヌ・トリレオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
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4B064DA01
4C085AA13
4C085AA14
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4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA10
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、レゾルビンE1とCMKLR1との相互作用に対するアゴニスト能力を有するヒト化抗CMKLR1化合物、及び特に、炎症の消散が遅延又は破壊される疾患を処置又は予防するためのその使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケメリン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片であって、
a. 3つのCDR VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61からなる群から選択され;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;並びに
b. 3つのCDR VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)、特に、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内、又は配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド内に位置するエピトープ、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する、請求項1に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
CMKLR1のレゾルビンE1様アゴニストである、特に、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片が、炎症の消散性因子の効果を有する、特に、骨髄性細胞と相互作用することによってそのような効果を有する、請求項1又は2に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
- VHCDR1が、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択され;及び/又は
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;及び/又は
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号23からなる群から選択され;及び/又は
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号33からなる群から選択され;及び/又は
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号54、配列番号55及び配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項9】
以下のCDR:配列番号4のVHCDR1、配列番号12のVHCDR2、配列番号13のVHCDR3、配列番号19のVLCDR1、配列番号26のVLCDR2、及び配列番号35のVLCDR3を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
以下のフレームワーク:配列番号65のVHFR1、配列番号67のVHFR2、配列番号69のVHFR3、配列番号71のVHFR4、配列番号72のVLFR1、配列番号73のVLFR2、配列番号76のVLFR3及び配列番号77のVLFR4を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む、請求項9又は10に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項12】
in vitro及び/又はin vivoでCMKLR1陽性細胞中のベータ-アレスチンシグナル伝達経路を活性化しない、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項13】
in vitro及び/又はin vivoでCMKLR1陽性細胞中の有意な枯渇を示さない、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項14】
CMKLR1への結合についてケメリンと競合しない、及び/又はCMKLR1へのケメリンの結合を阻害しない、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項15】
特に、抗体軽鎖定常ドメインが、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来し、特に、軽鎖定常ドメインが、配列番号79の配列を含むか、又はそれからなり、抗体重鎖定常ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4重鎖定常ドメインに由来し、特に、抗体重鎖定常ドメインが、特に、ヒトIgG1重鎖定常ドメインに由来する、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83又は配列番号84のアミノ酸配列を含むか、又はそれかなり、特に、抗体重鎖定常ドメインが、配列番号80又は配列番号83のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、ヒト化モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項16】
CMKLR1、特に、ヒトCMKLR1に特異的に結合する、特に、キメラ、改変又はヒト化抗体からなる群から選択される抗体又はその抗原結合性断片であって、(i)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61に記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるVHCDR2、及び(ii)配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるVHCDR3を含む抗体重鎖可変ドメイン又は突然変異配列の1及び2位のアミノ酸残基が、それぞれ、L及びIであるという条件で、アミノ酸残基が置換されたその突然変異配列を含み、
抗CMKLR1化合物が、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合し、特に、化合物が、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるポリペプチド又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合し、
前記化合物が、配列番号2若しくは配列番号59の配列又は配列番号60の配列のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの、又はCMKLR1の細胞外ドメインの第3のループ(EL3)を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの結合について、配列番号37に対応する重鎖可変ドメインと、配列番号49に対応する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と競合する、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項17】
以下のCDR:
- 配列番号4のVHCDR1、
- 配列番号12のVHCDR2、
- 配列番号13のVHCDR3、
- 配列番号19のVLCDR1、
- 配列番号26のVLCDR2、及び
- 配列番号35のVLCDR3
を含む、請求項16に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項18】
以下のフレームワーク:配列番号65のVHFR1、配列番号67のVHFR2、配列番号69のVHFR3、配列番号71のVHFR4、配列番号72のVLFR1、配列番号73のVLFR2、配列番号76のVLFR3及び配列番号77のVLFR4を含む、請求項16又は17に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項19】
配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む、請求項18に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項20】
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、炎症疾患、特に、急性炎症疾患、慢性炎症性肺疾患、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症等の慢性炎症疾患、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、強皮症、抗好中球細胞質抗体関連疾患ANCA関連疾患;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、糖尿病、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患、又は敗血症等の感染症、腹膜炎、変性疾患、創傷治癒障害又はドライアイ症候群;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、がん、特に、転移がん、固形又は液性がん、例えば、癌腫、より具体的には、肝癌、特に、乳腺癌又は結腸癌、結腸直腸がん又は肺がん又は中皮腫又は白血病等の骨髄性がん、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがん
の予防的又は治療的処置における使用のための、請求項1から19のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項21】
NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、強皮症、嚢胞性線維症又は抗好中球細胞質抗体関連疾患(ANCA)の予防的又は治療的処置における使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、ケモカイン様受容体-1(CMKLR1)に対するレゾルビンE1様アゴニスト活性を有する、新規ヒト化抗ケメリン(chemerin)受容体抗体を提供する。本発明はまた、療法における、特に、自己免疫疾患及び慢性炎症疾患、感染症、がん、並びに炎症の消散期が破壊又は遅延される任意の状態を処置するための、そのような抗体の使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
健康及び疾患における炎症プロセスの重要な役割は、長く認識されてきた。炎症の進行及び消散を調節する詳細な分子メカニズム及び生物学的事象は、依然として非常に興味深い。最近の調査は、炎症の消散が、以前に信じられていたような、受動的なプロセスではないという強力な証拠を提供してきた。炎症の消散は、それよりもむしろ、生化学的メディエーター及び受容体シグナル伝達経路によって調節される、生合成的に能動的なプロセスである。消散は、したがって、特異的炎症消散性メディエーターによって駆動される。炎症は、感染、傷害又は外傷性傷害の間に起こる自発的なメカニズムである。炎症は、不可避のものであり、通常は有益なものであり、その応答は、正と負のフィードバックループ間の繊細なバランスによって調整される。炎症は通常、3つの工程:開始、増幅及び消散に分けられる。
【0003】
炎症応答の終了を可能にする消散プロセスは、細胞性(例えば、顆粒球又はマクロファージ)及び化学的(例えば、サイトカイン又は特異的炎症消散性メディエーター又は因子)エフェクターの連続的及び経時的関与を含む複雑なプロセスである。
【0004】
ChemR23としても知られる、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、及びケモカイン受容体様2(CCRL2)は、公知のGタンパク質共役受容体とのその相同性によって同定される7回膜貫通型受容体である(AJ Kennedy及びAP Davenport、2018)。ケモカイン様受容体1(CMKLR1;マウス動物ではDezとも命名されている)は、GPR-1(38%の全アミノ酸同一性)、C3a受容体(38%)、C5aアナフィラトキシン受容体(36%)及びホルミルMet-Leu-Phe受容体(35%)と関連するオーファンGタンパク質共役受容体である。ChemR23は、ケモカイン受容体サブファミリーとより距離的に関連する(Samsonら、1998)。CMKLR1は、単球、マクロファージ、樹状細胞、及びNK細胞、並びに脂肪細胞及び内皮細胞上で発現される。最近の研究により、これらの受容体に対するリガンドが同定され、その機能が明らかになり始めた。したがって、ケメリンと命名された初めての血漿タンパク質由来化学誘引物質が、CMKLR1に対するリガンドとして同定された。
【0005】
CMKLR1の第2のリガンドは、レゾルビンファミリーに属する脂質メディエーターであるレゾルビンE1(RvE1)である。抗炎症性脂質メディエーターであるレゾルビンE1は、白血球浸潤及び炎症性遺伝子発現を阻害する。
【0006】
最初に、ケメリン系(すなわち、ケメリン受容体によって、ケメリン及びレゾルビンのようなそのリガンドによって活性化される、又は活性化されないシグナル伝達経路)における興味は、乾癬性疾患におけるその発見後の炎症及び免疫細胞の走化性におけるその役割に集中した。より最近では、炎症、肥満、代謝症候群におけるその役割と関連して、心血管機能と関連するその潜在的な役割、並びに生殖生物学における役割が考慮されている。したがって、ケメリン系は、炎症プロセスにおけるその役割、特に、炎症の消散におけるその役割について大いに興味深い。いくつかの疾患は、消散プロセスの遅延又は破壊と関連する。現在公知である特異的炎症消散因子メディエーターの多くは、リポキシンを含むポリ不飽和脂肪酸、Eシリーズのレゾルビン及びDシリーズのレゾルビンを含むレゾルビンファミリー及び、プロテクチン、並びにマレシンに由来する。それにも拘わらず、炎症消散性分子は、その脂質性のため、合成が困難である。例えば、臨床試験にとって十分な量での炎症消散性分子の生産は、負担が大きく、効率的な生産を経てきたSPMは非常に少ない。その他、Gタンパク質共役受容体を特異的に標的化する抗体は、生産が困難である。したがって、特に、炎症消散性因子のような、炎症応答の消散段階を開始させるか、又は増強するのに加わる能力を有する分子が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2008068637
【特許文献2】EP1270725B1
【特許文献3】米国特許第8,536,307号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Krehenbrinkら、J. mol. Biol.、383:5、2008
【非特許文献2】Skerra、Febs J.、275:11、2008
【非特許文献3】Schlehuber及びSkerra、Biophys. Chem.、96:2-3、2002
【非特許文献4】Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY (1998)
【非特許文献5】Colliganら、Current Protocols in Immunology、Green Publishing Assoc.、NY (1992;1993)
【非特許文献6】Muller、Meth. Enzym、92:589~601 (1983)
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、ヒト化抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体に関する。
【0010】
本発明者らは、従来技術において公知の野生型抗CMKLR1抗体と比較した場合、改善されたヒト化抗体を得ることを求めた。Vernierゾーン中の残基、カノニカル残基、可変重鎖と可変軽鎖との境界面の残基等を含む、可変ドメインCDR及びフレームワーク(FR)配列中の一部の残基は、抗体の構造において重要であり、抗体の生化学的及び生物学的活性を保持するために突然変異させるべきではないことが知られているが、本発明者らは驚くべきことに、そのような重要な残基の一部を含む、野生型抗体の重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメイン配列内の一部の突然変異が、機能的特徴は、特に、改善される野生型抗CMKLR1によって共有されない、これらのヒト化抗体と関連しながら、ヒト残基含量の増加(最大99%のヒト化)を可能にすること、同時に、これらのヒト化抗体の生産を、あまりヒト化されていない、又は明確にヒト化された抗CMKLR1抗体と比較して改善することができることを発見した。これらのヒト化抗体は、候補薬物開発のために大規模に生産することができる、炎症が関与する疾患を含む疾患の処置において有用な機能的特徴を示す化合物の提供をもたらす。これらの2つの特徴の組合せは、従来技術の抗体と比較して、改善された能力を示す抗CMKLR1抗体の提供をもたらす。
【0011】
ヒト化されていない抗CMKLR1抗体から出発し、ヒト生殖系列配列を選択して、本発明者らは、特定のヒト化重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを設計した。非ヒト化抗体に由来するヒト化重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、野生型抗体の結合活性に関して増加させることもできる活性でその標的に結合する有意な収率の抗体の回収を可能にする条件で、限定されるものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、形質転換されたアフリカミドリザル腎臓線維芽細胞(COS-7)細胞株及びヒト胚性腎細胞株(HEK293)のような、異なる細胞株中での機能的抗体の生産を可能にする。一部の得られたヒト化重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを、特に、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域に対して実行された最初のヒト化工程に関して更にヒト化したところ、免疫原性が低下し、その親抗体の少なくとも機能的特徴を有する、異なる細胞株中での高収率の生産にとって好適な抗体の提供をもたらした。当業者は、本発明による重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含むこれらの抗体の生産規模を、あまりヒト化されていないか、又は異なるようにヒト化された抗体と比較して改善しながら、特に、CDRドメイン並びに重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域中のそのような位置での前記突然変異が、結合能力、特に、親和性が保持された、安定性が保持された、抗CMKLR1抗体の提供、免疫原性指標の低下と共に、CMKLR1上でのこれらの抗体のレゾルビン様アゴニスト能力の保持をもたらすとは予想しなかったであろう。特に、重鎖のCDR2中への開示される突然変異の導入が、結合特性、有利には、従来技術の抗CMKLR1抗体の他の機能的特徴を依然として保持しながら、改善された生産をもたらすことは予測できなかった。記載された特徴(CMKLR1、特に、CMKLR1の特定の第3のエクストラループに対する結合能力、特に、親和性、低い免疫原性、良好な生産規模及びCMKLR1に対するレゾルビン様アゴニスト能力)を示す抗CMKLR1抗体は、炎症が関与する疾患、より具体的には、炎症疾患を含む、いくつかの疾患の強力な処置にとって有用である。
【0012】
更に、本出願において後に説明されるように、顕著には、炎症の消散における強力な有益な作用をもたらす、特に、好中球のアポトーシス及び好中球及び/又はマクロファージの遊走及び/又は移動の減少と関連する、いくつかの非常に有利な生物学的効果が達成された。新しい化合物は、かくして、生産能力と、生物学的活性とを組み合わせることができる。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様では、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、前記抗体又はその抗原結合性断片は、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61からなる群から選択され;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む。
【0014】
特定の実施形態では、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、前記抗体又はその抗原結合性断片は、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;又はVHCDR2が、VHCDR1が配列番号3又は配列番号4ではないという条件で、配列番号12又は配列番号63のアミノ酸配列に一致し;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む。
【0015】
別の特定の実施形態では、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、前記抗体又はその抗原結合性断片は、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され、
VHCDR1が配列番号3又は配列番号4であり、VHCDR2が配列番号12のアミノ酸配列に一致する場合、好ましくは、前記重鎖可変(VH)ドメインが配列番号69のフレームワークFR3を含むという条件で、前記重鎖可変(VH)ドメインが、配列番号70のフレームワークVHFR3を含まず、
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む。
【0016】
特に有利には、抗体又はその抗原結合性断片は、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)、特に、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合する;より具体的には、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する。
【0017】
この実施形態による抗体又はその抗原結合性断片は、CMKLR1の細胞外第3ループへの特異的結合能力及びCMKLR1に対するそのレゾルビンE1様アゴニスト能力を保持しながら、薬物候補の開発目的にとって好適な生産収率での、限定されるものではないが、哺乳動物細胞株を含む様々な細胞株中での生産にとって好適である。本明細書に開示されるヒト化抗体は、したがって、効率的に生産され、その親抗体の機能的能力を共有し得る。
【0018】
そのCDRドメインによってのみ本発明の抗体の定義とは区別されるが、特定の実施形態ではそのような定義と組み合わせることができる、本発明の特定の態様では、特に、0.1mg/mlを超える収率で、特に、1mg/mlを超える収率で、より具体的には、少なくとも10mg/mlの収率で、更により具体的には、100mg/mlを超える収率で、COS又はCHO又はHEK細胞等の哺乳動物細胞中での生産にとって好適な、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、抗体又はその抗原結合性断片であって、
a)可変重鎖(VH)ドメインが、重鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については100%、FR2については少なくとも60%、FR3については少なくとも78%及びFR4については少なくとも80%である;より具体的には、FR1については100%、FR2については少なくとも80%、FR3については少なくとも85%及びFR4については少なくとも90%である、配列番号41の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する;
b)可変軽鎖(VL)ドメインが、軽鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については60%、FR2については少なくとも70%、FR3については少なくとも75%及びFR4については少なくとも80%である;より具体的には、FR1については100%、FR2については少なくとも90%、FR3については少なくとも90%及びFR4については100%である、配列番号50の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する、
抗体又はその抗原結合性断片が開示される。
【0019】
特に、前記ヒト化抗CMKLR1抗体又は前記その抗原結合性断片は、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)に特異的に結合し、特に、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する。
【0020】
本発明者らは、抗CMKLR1抗体2G1から出発して、種々の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを合成した。配列番号41のヒト化重鎖可変ドメイン及び配列番号50のヒト化軽鎖可変ドメインは、CHO細胞又はCOS細胞又はHEK細胞のような哺乳動物細胞を含む、細胞又は細胞株中でのヒト化抗CMKLR1抗体の生産にとって特に好適であった。重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインの設計のために特定のヒト生殖系列配列を選択したら、フレームワーク領域中に本明細書で定義される同一性を有するヒト化抗体を、薬物候補を生じ得る抗体を開発する目的のために、細胞又は細胞株中、十分な量で生産することもできる。治療抗体を開発するために、細胞又は細胞株、特に、哺乳動物細胞又は細胞株中、多量に生産することができるヒト化抗体の提供に非常に興味がある。本明細書で提供される特定の抗CMKLR1抗体は、配列番号41の重鎖可変ドメイン及び配列番号50の軽鎖可変ドメインを含むその親抗体と高度に類似する構造を共有し、抗CMKLR1抗体の正確な生産、コンフォメーション及び分泌を可能にし、それによって、治療目的にとって十分な量の、ケメリン様受容体1の特定のエピトープに特異的に結合し、この受容体に対するレゾルビンE1様アゴニスト能力を有する抗体の提供を可能にする。
【0021】
本発明の特定の実施形態では、特に、0.1mg/mlを超える収率、より具体的には、1mg/mlを超える収率、より具体的には、10mg/mlを超える収率、更により具体的には、100mg/mlを超える収率で、COS又はCHO細胞等の哺乳動物細胞中での生産にとって好適な、ヒト化抗ケメリン様受容体1(CMKLR1)抗体又はその抗原結合性断片であって、
a)可変重鎖(VH)ドメインが、重鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については少なくとも90%、FR2については少なくとも70%、FR3については少なくとも80%、及びFR4については少なくとも80%である配列番号41の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する;
b)可変重鎖(VL)ドメインが、軽鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については少なくとも60%、FR2については少なくとも80%、FR3については少なくとも75%、及びFR4については少なくとも70%である配列番号50の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する、抗体が提供される。
【0022】
特に、前記ヒト化抗CMKLR1抗体又は前記その抗原結合性断片は、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)に特異的に結合し、特に、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含む、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するポリペプチドに特異的に結合する。
【0023】
上で定義されたヒト化抗体又はその抗原結合性断片の特定の実施形態では、そのようなヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61からなる群から選択され;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;並びに
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む。
【0024】
上で定義されたヒト化抗体又はその抗原結合性断片の特定の実施形態では、そのようなヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;又はVHCDR2が、VHCDR1が配列番号3又は配列番号4ではないという条件で、配列番号12又は配列番号63のアミノ酸配列を含む、又はそれからなり;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;並びに
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む。
【0025】
上で定義されたヒト化抗体又はその抗原結合性断片の別の特定の実施形態では、そのようなヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され、
VHCDR1が配列番号3又は配列番号4であり、VHCDR2が配列番号12のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる場合、好ましくは、前記重鎖可変(VH)ドメインが配列番号69のVHFR3を含むという条件で、前記重鎖可変(VH)ドメインが、配列番号70のフレームワークVHFR3を含まず;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;並びに
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメインを含む。
【0026】
そのような抗体は、本発明の第1の態様及び第2の態様に従って定義された抗体と同じ有利な特徴、すなわち、高収率生産、ケメリン様受容体1の第3の細胞外ループ内に位置するエピトープへの特異的結合、レゾルビンE1様アゴニスト能力を提供する。
【0027】
開示される抗体は、炎症の消散が遅延する、又は破壊される状態の処置における使用にとって好適である。本明細書に記載の全ての抗体は、炎症の消散を誘導する、及び/又は炎症の消散を増強する、及び/又は炎症の消散を開始するのに好適である。
【0028】
以下の開示において、ヒト化抗CMKLR1化合物は、ヒト化抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体のいずれかであると考えられる。本発明の特定の実施形態では、前記化合物は、そのCDRの配列によって定義される。本発明のより特定の実施形態では、抗CMKLR1化合物は、そのCDR及びそのフレームワーク領域(FR)の配列によって定義される抗体である。抗CMKLR1化合物は、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)に特異的に結合する化合物である。以下の開示において、ケモカイン様受容体1、CMKLR1及びChemR23という用語は、互換的に使用され、全て、ヒトにおいてはCMKLR1遺伝子又は非ヒト動物においてはcmklr1遺伝子によってコードされる受容体を指す。本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1化合物は、ヒトCMKLR1に特異的に結合する、又は換言すれば、本発明は、抗ヒトCMKLR1化合物に関する。本明細書で使用される場合、用語「CMKLR1」とは、哺乳動物種に由来するGタンパク質共役受容体ファミリーのメンバーである、ケモカイン様受容体1タンパク質(chemR23とも指定される)、好ましくは、ヒトCMKLR1を指す。本出願の実施例において使用される、ヒトCMKLR1タンパク質の参照配列は、Uniprot受託番号Q99788(配列番号1)と関連する配列に対応する。
【0029】
特定の態様では、本発明は、抗CMKLR1抗体又は少なくとも1つの機能的特徴によって定義されるその抗原結合性断片若しくは抗原結合性抗体模倣体若しくは改変抗体に関する。好ましい実施形態では、前記抗CMKLR1化合物は、炎症性サイトカイン、特に、IL12の分泌を阻害するその能力、及び/又は抗炎症性サイトカイン、特に、IL10の分泌を増強するその能力によって定義される。より特定の実施形態では、抗CMKLR1化合物は、マクロファージによる、特に、炎症性マクロファージ及び/又は炎症マクロファージの炎症消散性によるサイトカイン分泌を阻害する、又は増強する。特定の実施形態では、本発明の抗CMKLR1化合物は、抗炎症性マクロファージ、特に、炎症消散性マクロファージへのマクロファージの分極化を増強する。特定の実施形態では、本発明の抗CMKLR1化合物は、対照抗体と比較して好中球のアポトーシスを増強する。
【0030】
特定の態様では、本発明は、抗CMKLR1抗体又はレゾルビンE1(RvE1)/CMKLR1相互作用に対するアゴニスト特性を有することによって、CMKLR1陽性細胞上でのRvE1のCMKLR1への結合によって誘導される効果の少なくとも1つを模倣する、その抗原結合性断片若しくは抗原結合性抗体模倣体に関する。「RvE1-CMKLR1相互作用に対するアゴニスト特性」とは、CMKLR1を標的とする、本発明の抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体が、RvE1のCMKLR1への結合によって提供される効果の少なくとも1つを模倣する効果を有し、それによって、通常はRvE1によって活性化される受容体シグナル伝達経路、特に、樹状細胞、好中球、単球及びマクロファージ上での、特に、ヒトRvE1のヒトCMKLR1への結合を活性化することを意味する。生物学的応答をもたらす受容体の結合及び活性化の結果として、本発明の化合物は、β-アレスチン経路を活性化することなく、Gタンパク質シグナル伝達経路、特に、Gαiシグナル伝達経路及び/又はGα0の活性化をもたらすことができる。特に、本発明の化合物は、β-アレスチン経路の阻害をもたらすことができる。特に、本発明による化合物の結合は、in vitro及び/又はin vivoでAkt及び/又はErkタンパク質の活性化を誘導する。特定の実施形態では、Gタンパク質シグナル伝達経路が、本発明の化合物を用いて刺激されたCMKLR1陽性細胞中で活性化される場合、より特定の実施形態では、B-アレスチン経路が活性化されない場合も、また、特定の状態では、B-アレスチン経路が阻害される場合、その化合物はレゾルビンR1様能力を有する抗CMKLR1アゴニストと考えることができる。換言すれば、レゾルビンE1様アゴニスト抗体は、対照抗体と比較して、CMKLR1に結合することができ、それによって、Akt及び/又はErkタンパク質のリン酸化を誘導することができる抗体と定義することができる。対照抗体は、CMKLR1に特異的に結合しない抗体であってもよい。タンパク質のリン酸化を、当業者には周知の方法、例えば、本明細書の実施例に開示される方法に従って決定することができる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、CMKLR1によって誘導されるGタンパク質経路の活性化を増強する。別の実施形態では、本発明の化合物は、CMKLR1によって誘導されるβ-アレスチン経路の活性化を誘導しない。別の実施形態では、本発明の化合物は、CMKLR1によって誘導されるβ-アレスチン経路を阻害する。別の実施形態では、本発明の化合物はRvE1のCMKLR1への結合の少なくとも1つのアゴニスト効果を誘導するため、及びRvE1は炎症消散性因子又は炎症消散性メディエーターであるため、本発明の化合物は、炎症消散性因子又は炎症消散性メディエーターである;例えば、炎症消散性因子は、CMKLR1と特異的に相互作用しないことが知られる対照化合物と比較して、CMKLR1陽性細胞中で、CMKLR1によって誘導されるβ-アレスチン経路を阻害する、及び/又はCMKLR1によって誘導されるGタンパク質経路の活性化を増強する化合物と定義することができる。これらの経路の活性化/阻害を、本発明の実施例に開示される方法に従って評価することができる。特定の実施形態では、アゴニスト化合物の効果は、ヒト細胞中で評価される。
【0031】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ケメリンのCMKLR1への結合を阻害しない。ケメリンは、CMKLR1の天然リガンドの1つである。換言すれば、本発明による化合物は、ケメリンとCMKLR1との相互作用のアゴニストではない、及び/又はアンタゴニストではない。そのようなアゴニスト及び/又はアンタゴニスト能力の非存在を、本発明の抗CMKLR1抗体の存在下でのCMKLR1受容体によるケメリン依存的ベータアレスチン動員を測定するための競合アッセイが開示される、本発明の実施例に従って評価することができる。好ましい実施形態では、本発明の抗CMKLR1化合物は、CMKLR1への結合についてケメリンと競合しない。本発明のCMKLR1化合物の存在下での、ケメリンのCMKLR1への結合が、同じ実験条件下であるが、本発明の抗CMKLR1が存在しない場合のケメリンのCMKLR1への結合と、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは、類似する場合、本発明の抗CMKLR1化合物と、ケメリンとの競合の非存在を決定することができる。或いは、本発明の抗CMKLR1化合物と、ケメリンとの競合の非存在を、実施例9に例示される方法に従って決定することができる。
【0032】
特定の実施形態では、抗CMKLR1化合物は、Aktシグナル伝達経路タンパク質(PI3K-Akt経路として知られる)及び/又はErkシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも1つ、好ましくは、Aktタンパク質及び/又はErkタンパク質、好ましくは、AktとErkタンパク質との両方を活性化するin vitro及び/又はin vivoでの能力を有する。経路の活性化を、当業界で公知の方法に従って、特に、本発明の実施例に開示される方法を用いて評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、患者における炎症状態、特に、慢性炎症において、特に、炎症の消散期が遅延又は破壊される炎症状態の治療的処置における使用のためのレゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストに関し、特に、前記アゴニストは、抗体又はその抗原結合性断片、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質からなる群から選択される。
【0034】
以下の説明において、矛盾する記載のない場合、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストを、「アゴニスト」と定義することができる;両方の用語は、抗体又はその抗原結合性断片(抗CMKLR1抗体とも称される)、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを含む;化合物又は抗CMKLR1化合物という用語を、「アゴニスト」(本発明の)の同義語として以下の説明において使用することもでき、それによって、抗体又はその抗原結合性断片(抗CMKLR1抗体とも称される)、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを含む。そのようなアゴニストの使用によって提供される効果のうち、以下の特定の効果が証明された:
- レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストが、多形核好中球(本明細書では単に好中球、PMN若しくはPMNとも称される)のアポトーシス、及び/又は特に、本出願において後に記載されるように、内皮を通って炎症部位に向かう移動のその能力の阻害による、これらの細胞の遊走能力の低下若しくは阻害を誘導する。
- レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストが、種々の骨髄性細胞、顕著には、マクロファージ及び/又は樹状細胞上での、細胞表面上に発現される異なる受容体の内在化を誘導し、それによって、本出願において後に記載されるように、炎症の消散を誘導する、又は持続させるプロセスを増強する;
- 特に、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストが、マクロファージ及び/又は樹状細胞の細胞表面上に発現される様々な受容体CMKLR1、並びにCXCR4及び/又はCCR7の内在化を誘導し、そのような内在化は、炎症部位に向かう細胞の遊走を誘導することが知られるサイトカインによるCXCR4、CCR7受容体のはるかに低い標的化及び認識をもたらし、結果として、炎症部位から二次リンパ臓器への、及び/又は炎症部位に向かうマクロファージ及び/又は樹状細胞の遊走の低下又は阻害をもたらす;
- レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストが、好中球及びマクロファージ及び/又は樹状細胞が遊走する能力を低下させる、又は阻害する;特に、それが、CD62Lの内在化及び/又はその細胞表面発現の減少に起因して、これらの細胞の回転能力を低下させ、内皮を通って移動するその能力を低減させることによって、炎症部位を通って移動する好中球の能力を低下させる、又は阻害する;
- 本発明の特定の態様では、本発明者らは、IgG定常ドメイン、特に、IgG1定常ドメインのようなFc受容体との相互作用にとって好適なドメインを含む、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストが、特に効率的であることを証明した。マクロファージ又は好中球のFc受容体は、特に、抗CMKLR1 IgG定常ドメイン又はIgG1定常ドメインのFc断片を非常に効率的に認識し、抗CMKLR1 IgG1抗体によって認識される好中球のアポトーシスをもたらすか、又はそれに寄与する;
- 本発明者らはここで、炎症プロセスに関与し(すなわち、炎症を持続させる)、CMKLR1、並びにCXCR4及び/又はCCR7を発現する骨髄性細胞が、病理学的炎症プロセスの処置のための、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストのための特に好適な標的であることを証明する。
【0035】
本発明は、特に、炎症状態、特に、炎症の消散が遅延又は破壊される炎症状態に罹患する患者の処置における使用のための、レゾルビンE1様能力を有する抗ケメリン様受容体1(CMKLR1)のアゴニストであって、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストが、抗体又はその抗原結合性断片、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質からなる群から選択され、
- 炎症部位での好中球のアポトーシスを誘導する、若しくは活性化する、及び/又は
- 内皮を通って炎症部位に向かう好中球の移動能力を阻害する、若しくは低下させる、及び/又は
- 炎症部位から、二次リンパ臓器への、及び/若しくは炎症部位に向かう、マクロファージ及び/若しくは樹状細胞の遊走を阻害する、アゴニストに関する。
【0036】
本発明は、炎症状態、特に、炎症の消散が遅延又は破壊される炎症状態の処置において、好中球のアポトーシスを誘導する、又は増強する、又は活性化するための、抗体、特に、ヒト化抗体、又はその抗原結合性断片のような、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストの使用に関する。
【0037】
特定の実施形態では、本発明は、ヒト化抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体に関する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は組換え抗体を含む。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、異なるアミノ酸配列の抗体の混合物を含有する「ポリクローナル」抗体調製物とは対照的に、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を有する抗体を得るための抗体分子の調製を指すことが意図される。モノクローナル抗体を、ファージ、細菌、酵母又はリボソームディスプレイのようないくつかの公知の技術によって、並びにハイブリドーマ由来抗体によって例示される古典的な方法によって生成することができる。それらを、参照としての開示されるアミノ酸配列を使用して合成することもできる。かくして、用語「モノクローナル」は、1つの核酸クローンに由来する全ての抗体を指すために使用される。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、野生型抗体と比較して改変された抗体を更に含み、キメラ抗体、ヒト化抗体、改変抗体、及び抗原結合性抗体模倣体を包含する。本発明の文脈における参照の特定の野生型抗体は、抗体2G1である。
【0040】
本発明の抗体は、組換え抗体を含む。本明細書で使用される場合、用語「組換え抗体」とは、宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体;組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子に起因してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体等の、組換え手段によって生産、発現、生成若しくは単離される抗体;又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列等)を他のDNA配列と集合させる他の任意の方法で生産、発現、生成若しくは単離される抗体を指す。組換え抗体は、例えば、キメラ及びヒト化抗体を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」とは、マウス等の哺乳動物種の生殖系列に由来する可変ドメインの配列が、ヒト等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来する定常ドメインの配列上に移植された抗体を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」とは、第1の実施形態では、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒト又は特に、ヒト化フレームワーク配列上に移植された抗体を指す。更なる実施形態では、「ヒト化抗体」とは、少なくとも1つのCDR及びフレームワーク配列の全部又は一部がヒト化された抗体を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗体の抗原結合性断片」は、抗体の一部、すなわち、場合により、その天然形態で、CMKLR1に対する抗原結合能力を示す、本発明の抗体の構造の一部に対応する分子を意味する;そのような断片は、特に、対応する4鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、前記抗原に対する同じか、又は実質的に同じ抗原結合特異性を示す。有利には、抗原結合性断片は、対応する4鎖抗体と類似する結合親和性を有する。しかしながら、対応する4鎖抗体に関して抗原結合親和性が低下した抗原結合性断片も、本発明に包含される。抗体と、標的断片との親和性を測定することによって、抗原結合能力を決定することができる。これらの抗原結合性断片を、抗体の「機能的断片」と指定することもできる。
【0044】
抗体の抗原結合性断片は、抗原のための認識部位、すなわち、CMKLR1の細胞外ドメイン、特に、CMKLR1の細胞外ドメインの第3のループ(EL3と指定される)を包含し、それによって、抗原認識特異性を定義する、CDR(相補性決定領域)と指定されるその超可変ドメイン又はその一部を含む断片である。EL3は、配列番号1のアミノ酸残基283とアミノ酸残基300との間に局在する。EL3ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列である。EL3はまた、配列番号52のポリペプチド内に含まれる。4鎖免疫グロブリンのそれぞれの軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれ、VL及びVH)は、軽鎖可変ドメインについては、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3;並びに重鎖可変ドメインについては、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3と指定される3つのCDRを有する。4鎖免疫グロブリンのそれぞれの軽鎖及び重鎖可変ドメインは、軽鎖可変ドメインについてはLFR1、LFR2、LFR3及びLFR4;並びに重鎖可変ドメインについてはHFR1、HFR2、HFR3及びHFR4と指定される4つのフレームワーク領域(FR)を有する。CDRドメイン及びフレームワークドメインを定義するために使用される命名システムは、Kabatシステムである。
【0045】
当業者であれば、参照番号システムを含む、これに関して記載される標準的な定義の参照、KABATのナンバリングシステムの参照又はIMGTの「collier de perle」アルゴリズムの適用によって、抗体の様々な領域/ドメインの位置を決定することができる。これに関して、本発明の配列の定義のために、領域/ドメインの限界は、参照システム毎に異なっていてもよいことが知られている。したがって、本発明において定義される領域/ドメインは、約+/-10%の、抗体の可変ドメインの全長配列内の該当する配列の長さ又は位置の変化を示す配列を包含する。
【0046】
かくして、4鎖免疫グロブリンの構造に基づいて、フレームワーク及び定常ドメインの位置が、様々なクラスの抗体、特に、IgG、特に、哺乳動物IgGについて良好に定義されることに留意して、利用可能なデータベース及び従来技術における抗体の配列との比較によって、特に、これらの配列中の機能的ドメインの位置の比較によって、抗原結合性断片を定義することができる。そのような比較はまた、抗体の3次元構造に関するデータも含む。
【0047】
本発明の特定の実施形態を例示するために、前記抗体のCDRを含む可変ドメインを含有する抗体の抗原結合性断片は、Fv、dsFv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2を包含する。Fv断片は、疎水性相互作用によって一緒に結合した抗体のVL及びVHドメインからなる;dsFv断片では、VH:VLヘテロ二量体は、ジスルフィド結合によって安定化される;scFv断片では、VL及びVHドメインは、フレキシブルなペプチドリンカーによって互いに接続され、かくして、一本鎖タンパク質を形成する。Fab断片は、抗体のパパイン消化によって得られる単量体断片である;それらは、ジスルフィド結合によって一緒に結合した、L鎖全体と、H鎖のVH-CH1断片とを含む。F(ab')2断片は、ヒンジジスルフィドの下での抗体のペプシン消化によって生産することができる;それは、2つのFab'断片と、更に、免疫グロブリン分子のヒンジ領域の一部とを含む。Fab'断片は、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断することによってF(ab')2断片から得られる。F(ab')2断片は、二価である、すなわち、それらは、天然の免疫グロブリン分子のように、2個の抗原結合部位を含む;他方、Fv(Fabの可変部分を構成するVHVL二量体)、dsFv、scFv、Fab、及びFab'断片は、一価である、すなわち、それらは1個の抗原結合部位を含む。本発明のこれらの基本的な抗原結合性断片を一緒に組み合わせて、ダイアボディ、トリボディ又はテトラボディ等の多価抗原結合性断片を得ることができる。これらの多価抗原結合性断片も、本発明の一部である。
【0048】
本明細書で使用される場合、改変抗体という用語は、「二重特異性」抗体を含み、第1の抗原に対して特異的である少なくとも1つの領域(例えば、第1の抗体の可変領域に由来する)と、第2の抗原に対して特異的である少なくとも第2の領域(例えば、第2の抗体の可変領域に由来する)とを有するという理由で、2つの異なる抗原を認識する抗体を指す。二重特異性抗体は、2つの標的抗原に特異的に結合し、かくして、多重特異性抗体の1つの型である。2つ以上の異なる抗原を認識する多重特異性抗体は、組換えDNA法によって生産することができるか、又は限定されるものではないが、任意の都合のよい方法によって化学的に生産される抗体を含む。二重特異性抗体は、2つの異なる抗原を認識することができる、全ての抗体又は抗体のコンジュゲート、又は多量体形態の抗体を含む。二重特異性抗体は、その二価特性を保持するために還元及び再形成された抗体及びBiME(二重特異性マクロファージ増強抗体)、BiTE(二重特異的T細胞エンゲージャー)、DART(二重親和性再標的化);DNL(ドックアンドロック)、DVD-Ig(二重可変ドメイン免疫グロブリン)、HAS(ヒト血清アルブミン)、kih(ノブイントゥホール)等のそれぞれの抗原のためのいくつかの抗原認識部位を有することができるように化学的にカップリングされた抗体を含む。
【0049】
抗原結合性抗体模倣体は、抗原に特異的に結合するが、構造的には抗体と関連しない有機化合物である。それらは通常、約3~20kDaの分子量を有する人工ペプチド又は小さいタンパク質である。核酸及び低分子は、同様に抗体模倣体と考えられることもあるが、人工抗体、抗体断片及びこれらから構成される融合タンパク質ではない。抗体を超える一般的な利点は、より良好な可溶性、組織浸透、熱及び酵素に対する安定性、並びに比較的低い生産費用である。抗体模倣体は、治療及び診断剤として開発されている。抗原結合性抗体模倣体はまた、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、DARPin、及びモノボディを含む群から選択することもできる。
【0050】
抗原結合性抗体模倣体は、より好ましくは、アフィチン及びアンチカリンを含む群から選択される。アフィチンは、抗原に選択的に結合する能力を有する人工タンパク質である。それらは、構造的には、古細菌ドメインに属する微生物であるスルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)中に見出される、DNA結合タンパク質Sac7dに由来する。Sac7dの結合表面上のアミノ酸を無作為化することによって、例えば、Sac7dの結合境界面の11個の残基の無作為置換に対応するバリアントを生成することによって、アフィチンライブラリーを生成し、得られるタンパク質ライブラリーをリボソームディスプレイのラウンドにかけ、ペプチド、タンパク質、ウイルス及び細菌等の種々の標的に対して親和性を指向させることができる。アフィチンは、抗体模倣体であり、バイオテクノロジーにおける手段として開発されている。それらは、種々の酵素のための特異的阻害剤としても使用されてきた(Krehenbrinkら、J. mol. Biol.、383:5、2008)。当業者であれば、特に、特許出願WO2008068637及び上に引用された刊行物に開示されたような、当業界で公知の方法、特に、ファージディスプレイ及び/又はリボソームディスプレイライブラリーの生成並びに本明細書に開示される抗原を使用するそれらのスクリーニングを使用して、必要な結合特性を有するアフィチンを容易に開発することができる。アンチカリンは、抗原、タンパク質又は低分子のいずれかに結合することができる人工タンパク質である。それらは、天然結合タンパク質のファミリーであるヒトリポカリンに由来する抗体模倣体である。アンチカリンは、約8分の1の大きさであり、約180アミノ酸のサイズ及び約20kDaの質量を有する(Skerra、Febs J.、275:11、2008)。特に、特異的結合特性を有するアンチカリンのスクリーニング及び選択を可能にする、アンチカリンファージディスプレイライブラリーが生成された。当業者であれば、特に、欧州特許EP1270725B1、米国特許第8,536,307号、Schlehuber及びSkerra、Biophys. Chem.、96:2-3、2002及び上で引用された刊行物に開示されたような当業界で公知の方法、特に、ファージディスプレイ及び/又はリボソームディスプレイライブラリーの生成並びに本明細書に開示される抗原を使用するそれらのスクリーニングを使用して、必要な結合特性を有するアンチカリンを容易に開発することができる。アンチカリンとアフィチンは両方とも、細菌発現系を含むいくつかの発現系において生産することができる。かくして、本発明は、特に、CMKLR1に対するその結合能力、RvE1とCMKLR1との間の結合に対するそのアゴニスト能力、本明細書に記載の特定のサイトカインの分泌を誘導又は阻害するその能力、本明細書に記載の疾患の処置又は予防におけるその使用に関して、本明細書に記載の抗体の特徴を有するアフィチン、アンチカリン及び他の類似する抗体模倣体の使用を含み、それらは全て、本発明の模倣体として企図される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「改変抗体」とは、アミノ酸配列が、少なくとも1個のアミノ酸残基の突然変異によって改変された抗体を指す。したがって、「改変抗体」は、本明細書で定義されるキメラ抗体又はヒト化抗体を包含し、「改変抗体」はまた、前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が機能的に異なる分子と結合する、抗体又はその抗原結合性断片を含む分子と一致してもよい。本発明の改変抗体は、抗体又は機能的断片の安定性及び/又は半減期の改善のために、共有的結合、移植、化学若しくは生物基との、又はPEGポリマー若しくは別の保護基等の分子又はin vivoでのプロテアーゼ切断に対する保護にとって好適な分子との化学的結合を含む、任意の好適な形態の結合から得られる融合キメラタンパク質又はコンジュゲートであってもよい。
【0052】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体の他の標的結合性サブ配列)である。一般に、ヒト化抗体は、全てのCDR領域が、非ヒト免疫グロブリンのもの及び/又はこれらのヒト化バージョンに一致し;FR領域の全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン鋳型配列のものであるか、又は対応する位置での、非ヒト残基(齧歯類残基等)の、ヒト免疫グロブリン鋳型配列中に存在するアミノ酸残基への置換を有する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、選択されるヒト免疫グロブリン鋳型のものを含んでもよい。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される重鎖可変領域と、本明細書に開示される軽鎖可変領域とを含む抗体であって、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域が定常領域、特に、Fc領域を更に含む、抗体に関する。
【0053】
用語「特異的に結合する」及び「~に特異的に結合する」とは、本発明による抗体、その抗原結合性断片、抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体が、少なくとも1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M以上の親和性でCMKLR1に結合する、及び/又は非特異的標的(例えば、CMKLR1とは別のタンパク質)に対するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性でCMKLR1に結合する能力を指す。親和性を、当業者には周知の様々な方法に従って評価することができる。これらの方法としては、限定されるものではないが、Biacore分析、Blitz分析及びScatchardプロット等のバイオセンサーが挙げられる。
【0054】
用語「治療有効量」は、処置される患者の臨床又は生理的状態の少なくとも改善にとって十分な本明細書に定義される任意の所与の化合物の量を指すために使用される。投与すべき本発明による抗体、その抗原結合性断片、抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体の治療有効量は、処置される障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医師には公知の他の因子等の配慮によって影響される。
【0055】
抗体又はその抗原結合性断片に関する本明細書に開示される全ての実施形態は、変更すべきところは変更して、本発明の高分子、特に、抗原結合性抗体模倣体及び改変抗体に置き換えられる。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、CMKLR1は、NCBIタンパク質受託番号Q99788.2に対応する、ヒトCMKLR1である。
【0057】
重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは両方とも、3個のCDR(それぞれ、5'末端から3'末端に向かってCDR1、CDR2及びCDR3)と、4個のフレームワーク領域(それぞれ、5'末端から3'末端に向かってFR1、FR2、FR3及びFR4)を含む。マウス抗体のヒト化は、軽鎖可変領域内及び/又は重鎖可変領域内又はその両方の少なくとも1つのフレームワーク領域をヒト化することからなってもよい。特定の実施形態では、いくつかのフレームワーク領域を、特に、重鎖可変領域内及び軽鎖可変領域内でヒト化することができる。野生型CDRを保存してもよいが、CDRを、本明細書に記載のCDRによって置き換えることもできる。したがって、本発明による抗CMKLR1化合物は、フレームワーク領域がヒト化される場合、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも6つの野生型CDRを含んでもよい。換言すれば、抗CMKLR1化合物は、少なくとも1つのフレームワーク領域がヒト化された、特に、少なくとも1つのフレームワーク領域及び少なくとも1つのCDRがヒト化された、親キメラ抗体2G1のヒト化バージョン(配列番号37の重鎖可変ドメインと、配列番号49の軽鎖可変ドメインとを含む)である。本発明の特定の実施形態では、抗体の可変領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常領域、特に、IgG1定常領域のような、抗体定常領域と結合してもよい。Fc受容体に対するその結合能力を改変するために、当業界で公知の方法によって、これらの定常領域を更に突然変異させるか、又は改変することができる。特定の実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合性断片は、特に、抗体軽鎖定常ドメインが、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来し、特に、軽鎖定常ドメインが、配列番号79の配列を含むか、又はそれからなり、抗体重鎖定常ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4重鎖定常ドメイン、特に、IgG1重鎖定常ドメインに由来し、特に、抗体重鎖定常ドメインが、特に、ヒトIgG1重鎖定常ドメインに由来する、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83又は配列番号84のアミノ酸配列を含むか、又はそれかなり、特に、抗体重鎖定常ドメインが、配列番号80又は配列番号83のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0058】
配列番号2及び/若しくは配列番号59の配列の、並びに/又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するアミノ酸残基を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの結合、並びに/又はCMKLR1の第3の細胞外ループへの結合について、ELISAアッセイによる結合親和性分析によって本発明の実施例に開示される例によって評価することができる。試験抗体が、2G1抗体(又は配列番号37に対応する重鎖可変ドメイン及び配列番号49に対応する軽鎖ドメインを含む抗原結合性断片)によって結合される同じ抗原又は第3のループ又は同じエピトープへの結合について競合することができるかどうかを決定するために、交差遮断アッセイ(例えば、競合的ELISAアッセイ)を実施することができる。例示的な競合的ELISAアッセイでは、エピトープ又は第3のループを含むか、又はそれからなるポリペプチドを、マイクロタイタープレートのウェル上に被覆し、候補競合抗体と共に、又はそれなしで予備インキュベートした後、本発明のビオチン標識された2G1抗体を添加する。ウェル中の、配列番号2及び/若しくは配列番号59の、並びに/又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するポリペプチドを含むか、若しくはそれからなるポリペプチド、並びに/又はCMKLR1の第3のループに結合した、標識された抗2G1抗体の量を、アビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲート及び適切な基質を使用して測定する。抗体を、放射性標識又は蛍光標識又は一部の他の検出可能且つ測定可能な標識で標識することができる。配列番号2及び/若しくは配列番号59の、並びに/又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するポリペプチド、並びに/又は第3のループに結合した、標識された抗2G1抗体の量は、同じエピトープ又は同じループへの結合について競合する候補競合抗体(試験抗体)の能力と間接的な相関を有するであろう、すなわち、同じエピトープに対する試験抗体の親和性が高いほど、抗原で被覆されたウェルに結合する標識された2G1抗体は少ないであろう。候補競合抗体は、候補抗体が、候補競合抗体の非存在下で同時に実施される対照と比較して(しかしながら、既知の非競合抗体の存在下であってもよい)、2G1抗体の結合を少なくとも20%、好ましくは、少なくとも20~50%、更により好ましくは、少なくとも50%遮断することができる場
合、本発明の2G1抗体と同じポリペプチド又は第3のループへの結合について競合する抗体と考えられる。このアッセイの変形を実施して、同じ定量値に到達することができることが理解されるであろう。
【0059】
抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、炎症の消散性因子の効果を有する、特に、骨髄性細胞系列と相互作用することによってそのような効果を有する。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、免疫原性が低下した抗体が患者に投与される場合に予想される副作用がより少ないため、特定のVHCDR2は、ヒトにおいて免疫原性の低下を呈し得る抗体中に存在することによって、治療目的にとってより強力であり得る抗体の提供を可能にする。
【0061】
本発明の特定の態様では、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片であって、
a. 3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61からなる群から選択され;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b. 3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、前記抗体又はその抗原結合性断片が開示される。
【0062】
特に、抗体又はその抗原結合性断片は、特に、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合し、より具体的には、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する。
【0063】
本発明の別の特定の態様では、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片であって、
a. 3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;又はVHCDR2が、VHCDR1が配列番号3又は配列番号4ではないという条件で、配列番号12又は配列番号63のアミノ酸残基に一致し;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b. 3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、前記抗体又はその抗原結合性断片が開示される。
【0064】
特に、抗体又はその抗原結合性断片は、特に、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合し、より具体的には、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する。
【0065】
本発明の別の特定の態様では、ケモカイン様受容体1(CMKLR1)、特に、ヒトCMKLR1に結合する、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片であって、
a. 3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;
VHCDR1が配列番号3又は配列番号4であり、VHCDR2が配列番号12のアミノ酸配列に一致する場合、好ましくは、前記重鎖可変(VH)ドメインが配列番号69のフレームワークFR3を含むという条件で、前記重鎖可変(VH)ドメインが、配列番号70のフレームワークVHFR3を含まず;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b. 3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、前記抗体又はその抗原結合性断片が開示される。
【0066】
特に、抗体又はその抗原結合性断片は、特に、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合し、より具体的には、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する。
【0067】
特に、抗体又はその抗原結合性断片が、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する場合、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープへの結合を、本明細書の上に開示された方法に従って評価することができる。VHCDR2の特定の選択は、異なるVHCDR2を有する抗体と比較して、免疫原性が低下した抗体の提供を可能にする。
【0068】
そのような抗体は、レゾルビンE1のCMKLR1への結合の効果を模倣する、すなわち、本明細書の上で定義されたレゾルビンE1様能力を有する、CMKLR1のアゴニストである。抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、炎症の消散性因子の効果を有する、特に、骨髄性細胞系列と相互作用することによってそのような効果を有する。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号3及び配列番号4からなる群から選択されるVHCDR1
を含む。
【0070】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択されるVHCDR2
を含む。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群から選択されるVHCDR3
を含む。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号23からなる群から選択されるVLCDR1
を含む。
【0073】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号33からなる群から選択されるVLCDR2
を含む。
【0074】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択されるVLCDR3
を含む。
【0075】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号3及び配列番号4からなる群から選択されるVHCDR1;及び/又は
- 配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択されるVHCDR2;及び/又は
- 配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群から選択されるVHCDR3;
- 配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号23からなる群から選択されるVLCDR1、及び/又は
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号33からなる群から選択されるVLCDR2;及び/又は
- 配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択されるVLCDR3
を含む。
【0076】
特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、以下のCDR:配列番号4のVHCDR1、配列番号12のVHCDR2、配列番号13のVHCDR3、配列番号19のVLCDR1、配列番号26のVLCDR2及び配列番号35のVLCDR3を含む。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号62、配列番号89、配列番号90及び配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインを含む。
【0078】
より特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインを含む。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号92及び配列番号93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0080】
より特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号62、配列番号89、配列番号90及び配列番号91からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメイン;並びに
- 配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号92及び配列番号93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメイン
を含む。
【0082】
本明細書に開示される特定の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの任意の組合せが、本開示によって包含される。
【0083】
より特定の実施形態では、本発明による抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号38、配列番号39、配列番号40、及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸残基を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号54、配列番号55及び配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む。
【0084】
本発明のより特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号38のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号49の軽鎖可変ドメインとを含む。
【0085】
本発明のより特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む。
【0086】
更に、前記抗体は、有利には、そのFc断片がIgG1に特徴的であることを特徴とする。
【0087】
本発明の第2の態様では、CMKLR1、特に、ヒトCMKLR1に特異的に結合する、抗体、その抗原結合性断片又はキメラ、改変若しくはヒト化抗体の群から選択される化合物であって、(i)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61に記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるVHCDR2、及び(ii)配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるVHCDR3を含む抗体重鎖可変ドメイン又は突然変異配列の1及び2位のアミノ酸残基が、それぞれ、L及びIであるという条件で、アミノ酸残基が置換されたその突然変異配列を含み、
抗CMKLR1化合物が、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合し、特に、化合物が、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるポリペプチド又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合し、
前記化合物が、配列番号2若しくは配列番号59の配列又は配列番号60の配列のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの、又はCMKLR1の細胞外ドメインの第3のループ(EL3)を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの結合について、配列番号37に対応する重鎖可変ドメインと、配列番号49に対応する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と競合する、化合物
が開示される。
【0088】
配列番号37の重鎖可変ドメインと、配列番号49の軽鎖可変ドメインとの組合せは、親抗体2G1に一致する。配列番号2若しくは配列番号59の配列の、又は配列番号60内に位置するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるポリペプチド又はCMKLR1の細胞外ドメインの第3のループ(EL3)を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの化合物の結合を、本明細書の上に開示され、本発明の実施例に例示される方法に従って評価することができる。
【0089】
より特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインを含む。
【0090】
より特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0091】
本発明のより特定の実施形態では、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む。
【0092】
更に、前記抗体は、有利には、そのFc断片がIgG1に特徴的であることを特徴とする。
【0093】
本発明は、炎症の消散が遅延若しくは破壊される疾患、及び/又は炎症疾患、特に、急性炎症疾患、慢性炎症性肺疾患(例えば、喘息)、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症、皮膚炎症等の慢性炎症疾患;糖尿病、NASH、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患;敗血症、コロナウイルス(例えば、COVID-19)等の重症の炎症状態を伴う重症ウイルス症状、腹膜炎等の感染症;変性疾患;創傷治癒障害、ドライアイ症候群;がん疾患、特に、固形及び液性がん、転移がん、特に、癌腫、特に、乳腺癌若しくは結腸癌、又は結腸直腸がん若しくは肺がん若しくは中皮腫、または骨髄性がん、特に、白血病、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがんの群から選択される疾患の予防及び/又は処置における使用のための、任意の上で定義された本発明の化合物に関する。
【0094】
線維症(特に、肺及び肝線維症)、ANCA(抗好中球細胞質性自己抗体)病理(血管炎)、及びChermR23と関連するニューロンのアポトーシスに起因する病理が、特に関心がある。
【0095】
特定の実施形態では、本発明は、炎症の消散が遅延若しくは破壊される疾患、及び/又は炎症疾患、特に、急性炎症疾患、喘息、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症等の慢性炎症疾患;糖尿病、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患;敗血症、腹膜炎、コロナウイルス(例えば、COVID-19)等の重症の炎症状態を伴う重症ウイルス症状等の感染症;変性疾患;創傷治癒障害、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、強皮症、及びドライアイ症候群の群から選択される疾患の予防及び/又は処置における使用のための、任意の上で定義された本発明の化合物に関する。本発明の別の特定の実施形態では、本発明は、がん、特に、固形及び液性がん、転移がん、特に、癌腫、特に、乳腺癌若しくは結腸癌、又は結腸直腸がん若しくは肺がん若しくは骨髄性がん、特に、白血病、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがんの予防及び/又は処置における使用のための、任意の上で定義された本発明の化合物に関する。
【0096】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、in vitro及び/又はin vivoでの消散に有利になる以下の効果のうちの少なくとも1つを惹起する:
- 炎症部位上での、頭字語PMN又はPMNの下で本明細書で参照される、多形核好中球のアポトーシスを増加させる;そのような効果は、本発明の実施例に例示される。好中球のアポトーシスの調節は、炎症関連疾患における治療介入にとって重要である。本発明の実施例に例示されるように、PMNに対するレゾルビンE1様能力抗体を有するCMKLR1のアゴニストの使用は、炎症誘導中に、対照抗体と比較して、好中球の強力なアポトーシスを誘導する。
- 好中球中でのカスパーゼ-3発現を増強し、それによって、カスパーゼ-3依存的アポトーシスをもたらす;カスパーゼ3の発現が、陰性対照と比較して、レゾルビンE1様能力抗体を有するCMKLR1のアゴニストを用いた処置の11時間後に、1log、好ましくは、2log、最も好ましくは3logを超える場合に、アポトーシスは増強又は誘導されると考えてよい;方法は、本発明の実施例に開示される。
- PMN(好中球)の内皮から炎症部位に向かう移動を減少させる、又は阻害する;それらが炎症部位に再配置され、その炎症促進効果を発揮するのを防止する。本発明の特定の実施形態では、好中球の遊走及び移動は、レゾルビンE1様能力IgG1抗体を有するCMKLR1のアゴニストの投与によって防止又は低減される。したがって、特定の実施形態では、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストは、ヒトIgG1に由来する、又はそれから生じるヒト定常領域を有するヒト化抗体である。特定の実施形態では、レゾルビンE1様能力抗体を有するCMKLR1のアゴニストは、ヒトIgG1アイソタイプのもの、すなわち、ヒトIgG1抗体定常重鎖及び軽鎖断片に由来するか、又はそれから生じる重鎖及び軽鎖の定常断片である。したがって、本発明のレゾルビンE1様能力抗体を有するCMKLR1のアゴニストは、IgG1アイソタイプのFcドメインを含む。好中球の移動を、本発明の実施例に開示される方法によって評価することができる;CD62Lの細胞表面発現が、陰性対照と比較して、染色実験において少なくとも1log減少する場合、好中球は、低減した遊走及び/又は移動能力を有すると考えることができる。本発明者らは、本発明のレゾルビンE1様能力ヒト化IgG1抗体を有するCMKLR1のアゴニストが、in vivoで細胞傷害性を示さないことを見出した;換言すれば、CMKLR1のアゴニストの使用は、in vivoでCMKLR1陽性細胞の有意な枯渇を示さない。特定の実施形態では、本発明のアゴニストの使用は、CMKLR1陽性細胞に対する細胞傷害活性を示さない。
- CMKLR1、並びにCXCR4及び/又はCCR7の細胞表面発現を低下させる。特定の実施形態では、細胞表面発現は、マクロファージ及び/又は樹状細胞上のものであると考えられる。レゾルビンE1能力を有するCMKLR1のアゴニストがその標的に結合する場合、CMKLR1、並びにCXCR4及び/又はCCR7ハンドは、ヘテロ二量体化し、内在化される。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CMKLR1陽性細胞の細胞表面上でのCMKLR1並びに/又はCXCR4及び/若しくはCCR7の内在化を誘導する、及び/又はその発現を阻害する。かくして、抗体の存在下でインキュベートした細胞中でのCMKLR1、並びにCXCR4及び/又はCCR7の細胞表面発現は、そうでなければ同一の条件であるが、レゾルビンE1様能力を有するCMKLR1のアゴニストの非存在下でインキュベートした細胞中での細胞表面発現と比較して、減少するか、又は有意に減少する。
【0097】
特定の態様では、本発明は、0.1mg/mlを超える、特に、1mg/mlを超える、特に、10mg/mlを超える、より具体的には、100mg/mlを超える収率でCOS又はCHO細胞等の哺乳動物細胞中での生産にとって好適な、ヒト化抗ケメリン様受容体1(CMKLR1)抗体又はその抗原結合性断片であって、
a)可変重鎖(VH)ドメインが、重鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については100%、FR2については少なくとも60%、FR3については少なくとも78%及びFR4については少なくとも80%である;より具体的には、FR1については100%、FR2については少なくとも80%、FR3については少なくとも85%及びFR4については少なくとも90%である、配列番号41の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する;
b)可変軽鎖(VL)ドメインが、軽鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については60%、FR2については少なくとも70%、FR3については少なくとも75%及びFR4については少なくとも80%である;より具体的には、FR1については100%、FR2については少なくとも90%、FR3については少なくとも90%及びFR4については100%である、配列番号50の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する、抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0098】
特定の実施形態では、ヒト化抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)に特異的に結合し、特に、抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含む、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するポリペプチドに特異的に結合する。この実施形態は、in vitroでの抗体(又はその抗原結合性断片)の産生を容易にし得る。抗体のこの定義は、CDRドメインによる抗体の定義を含む、本発明の抗CMKLR1抗体の他のいずれかの定義とは無関係であることに留意すべきである。本発明の特定の態様では、FR配列による本発明の抗体の定義を、CDRドメイン及び/又は機能的特徴と定義によって組み合わせることができる。このために、特定の群から選択される、そのFRドメインによって定義され、そのCDRドメインによって特徴付けられる抗体も本発明によって包含される。このために、本明細書に開示されるフレームワークドメインに対する同一性を示しても、又は示さなくてもよい、そのような抗体は、以下のCDR:
- 配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるVHCDR1;及び/若しくは
- 配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号61、配列番号63及び配列番号64からなる群から選択されるVHCDR2;及び/若しくは
- 配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択されるVHCDR3;並びに/又は
可変軽鎖(VL)ドメインは、以下を含む:
- 配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択されるVLCDR1;及び/若しくは
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択されるVLCDR2;及び/若しくは
- 配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択されるVLCDR3
のうちの少なくとも1つ、特に6つを含む。
【0099】
より特定の態様では、フレームワークドメインHFR1、HFR2、HFR3、HFR4、LFR1、LFR2、LFR3及びLFR4の少なくとも1つは、以下の群:
VHFR1については、配列番号65;
VHFR2については、配列番号66、配列番号67又は配列番号68;
VHFR3については、配列番号69又は配列番号70;
VHFR4については、配列番号71;
VLFR1については、配列番号72;
VLFR2については、配列番号73又は配列番号74;
VLFR3については、配列番号75又は配列番号76;
VLFR4については、配列番号77
から選択される。
【0100】
複数のフレームワークドメイン、又は全部を、本明細書の上に記載された群から選択することができることが理解されるべきである。
【0101】
より特定の実施形態では、上の2つの段落に記載の抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号41、配列番号38、配列番号42、配列番号43の群から選択される重鎖可変ドメインのアミノ酸配列と、配列番号50の配列である軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を有する。
【0102】
より特定の実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下のフレームワークドメイン:
- 配列番号65のVHFR1、
- 配列番号67のVHFR2、
- 配列番号69のVHFR3、
- 配列番号71のVHFR4、
- 配列番号72のVLFR1、
- 配列番号73のVLFR2、
- 配列番号76のVLFR3、及び
- 配列番号77のVLFR4
を含む。
【0103】
より特定の実施形態では、前記抗体は、以下のフレームワークドメイン:
- 配列番号65のVHFR1、
- 配列番号67のVHFR2、
- 配列番号69のVHFR3、
- 配列番号71のVHFR4、
- 配列番号72のVLFR1、
- 配列番号73のVLFR2、
- 配列番号76のVLFR3、
- 配列番号77のVLFR4
を含み、
以下のCDR:
- 配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるVHCDR1;及び/若しくは
- 配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号61、配列番号63及び配列番号64からなる群から選択されるVHCDR2;及び/若しくは
- 配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択されるVHCDR3;並びに/又は
可変軽鎖(VL)ドメインは、以下を含む:
- 配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択されるVLCDR1;及び/若しくは
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択されるVLCDR2;及び/若しくは
- 配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択されるVLCDR3
を含む。
【0104】
この実施形態は、in vitroでの抗体(又はその抗原結合性断片)の産生を容易にし得る。
【0105】
本発明は特に、高い結合活性及び安定性及び生物学的機能を維持しながら、免疫原性を低下させるように最適化された、ヒト化抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片であって、以下のCDR:
- 配列番号4のVHCDR1、
- 配列番号12のVHCDR2、
- 配列番号13のVHCDR3、
- 配列番号19のVLCDR1、
- 配列番号26のVLCDR2、及び
- 配列番号35のVLCDR3
を含む、抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0106】
特定の実施形態では、CDR配列が配列番号4、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号26及び配列番号35である前記抗体又はその抗原結合性断片は、以下のフレームワークドメイン:
- 配列番号65のVHFR1、
- 配列番号67のVHFR2、
- 配列番号69のVHFR3、
- 配列番号71のVHFR4、
- 配列番号72のVLFR1、
- 配列番号73のVLFR2、
- 配列番号76のVLFR3、
- 配列番号77のVLFR4
を含む。
【0107】
本開示は特に、in vitroでの産生にとって好適である、高い結合活性及び安定性及び生物学的機能を維持しながら、免疫原性を低下させるように最適化された抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片に関する。前記段落に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号91の重鎖可変ドメインのアミノ酸配列と、配列番号93の配列である軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列とを有する。
【0108】
更に、前記抗体は、有利には、そのFc断片がIgG1に特徴的であることを特徴とする。
【0109】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、上に開示されたフレームワークドメインのアミノ酸配列を特徴とし、更に、そのCDRドメインの少なくとも1つのアミノ酸配列を特徴としてもよい。特に、この実施形態によるヒト化抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号61、配列番号63及び配列番号64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインVHCDR2を有する。
【0110】
本発明の特定の実施形態では、
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、炎症疾患、特に、急性炎症疾患、慢性炎症性肺疾患(例えば、喘息)、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症等の慢性炎症疾患、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、肝線維症、肺線維症、抗好中球細胞質抗体関連疾患(ANCA)、血管炎、特に、ANCA媒介性血管炎、強皮症;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、糖尿病、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患、又は敗血症等の感染症、腹膜炎、変性疾患、創傷治癒障害又はドライアイ症候群、コロナウイルス(例えば、COVID-19)等の重症の炎症状態を伴う重症ウイルス症状;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、がん、特に、転移がん、固形又は液性がん、例えば、癌腫、より具体的には、肝癌、特に、乳腺癌若しくは結腸癌、又は肺がん又は白血病等の骨髄性がん、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがん
の予防的又は治療的処置のための、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;又はVHCDR2が、VHCDR1が配列番号3又は配列番号4ではないという条件で、配列番号12のアミノ酸残基に一致し;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0111】
本発明の別の特定の実施形態では、上に記載された疾患の予防的又は治療的処置のための、
a)3つのCDR、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され、
VHCDR1が配列番号3又は配列番号4であり、VHCDR2が配列番号12のアミノ酸配列に一致する場合、好ましくは、重鎖可変(VH)ドメインが配列番号69のフレームワークFR3を含むという条件で、前記重鎖可変(VH)ドメインが、配列番号70のフレームワークVHFR3を含まず、
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;
b)3つのCDR、VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、抗体又はその抗原結合性断片が提供される。
【0112】
本発明の特定の実施形態では、ヒト化抗体又はその抗原結合性断片、又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体は、
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、炎症疾患、特に、急性炎症疾患、慢性炎症性肺疾患(例えば、喘息)、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症等の慢性炎症疾患、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、肝線維症、肺線維症、抗好中球細胞質抗体関連疾患(ANCA)、血管炎、特に、ANCA媒介性血管炎、強皮症;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、糖尿病、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患、又は敗血症等の感染症、腹膜炎、変性疾患、創傷治癒障害、コロナウイルス(例えば、COVID-19)等の重症の炎症状態を伴う重症ウイルス症状、又はドライアイ症候群;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、がん、特に、転移がん、固形又は液性がん、例えば、癌腫、より具体的には、肝癌、特に、乳腺癌若しくは結腸癌、又は肺がん又は白血病等の骨髄性がん、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがん
の予防的又は治療的処置のための、
a)重鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については100%、FR2については少なくとも60%、FR3については少なくとも78%及びFR4については少なくとも80%である;より具体的には、FR1については100%、FR2については少なくとも80%、FR3については少なくとも85%及びFR4については少なくとも90%である、配列番号41の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する、可変重鎖(VH)ドメイン;
b)軽鎖可変ドメインのフレームワーク(FR1、FR2、FR3及びFR4)のアミノ酸配列を含み、それぞれのフレームワークが、それぞれ、FR1については60%、FR2については少なくとも70%、FR3については少なくとも75%及びFR4については少なくとも80%である;より具体的には、FR1については100%、FR2については少なくとも90%、FR3については少なくとも90%及びFR4については100%である、配列番号50の配列中の同じランクのフレームワークとの配列同一性を有する、可変軽鎖(VL)ドメイン
を含む。
【0113】
より特定の実施形態では、抗体は、以下のフレームワークドメイン:
- 配列番号65のVHFR1、
- 配列番号67のVHFR2、
- 配列番号69のVHFR3、
- 配列番号71のVHFR4、
- 配列番号72のVLFR1、
- 配列番号73のVLFR2、
- 配列番号76のVLFR3、
- 配列番号77のVLFR4
を含み、
以下のCDR:
- 配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択されるVHCDR1;及び/若しくは
- 配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61からなる群から選択されるVHCDR2;
- 配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択されるVHCDR3;
可変軽鎖(VL)ドメインは、以下を含む:
- 配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択されるVLCDR1;及び/若しくは
- 配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択されるVLCDR2;及び/若しくは
- 配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択されるVLCDR3
を含み、
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、炎症疾患、特に、急性炎症疾患、慢性炎症性肺疾患(例えば、喘息)、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症等の慢性炎症疾患、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、肝線維症、肺線維症、抗好中球細胞質抗体関連疾患(ANCA)、血管炎、特に、ANCA媒介性血管炎、強皮症;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、糖尿病、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患、又は敗血症等の感染症、腹膜炎、変性疾患、創傷治癒障害、コロナウイルス(例えば、COVID-19)等の重症の炎症状態を伴う重症ウイルス症状、又はドライアイ症候群;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、がん、特に、転移がん、固形又は液性がん、例えば、癌腫、より具体的には、肝癌、特に、乳腺癌若しくは結腸癌、又は肺がん又は白血病等の骨髄性がん、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがんの予防的又は治療的処置における使用のためのものである。
【0114】
上に開示された状態の1つの予防的又は治療的処置のためのそのような特定の抗体又はその抗原結合性断片は、特に、それが、以下のCDR:配列番号4のVHCDR1、配列番号12のVHCDR2、配列番号13のVHCDR3及び配列番号19のVLCDR1、配列番号26のVLCDR2、配列番号35のVLCDR3を含み、以下のフレームワーク:配列番号65のVHFR1、配列番号67のVHFR2、配列番号69のVHFR3、配列番号71のVHFR4、配列番号72のVLFR1、配列番号73のVLFR2、配列番号76のVLFR3、配列番号77のVLFR4を含むことを特徴とする。特に、抗体又はその抗原結合性断片の上に開示された予防的又は治療的使用のために、抗体の重鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、配列番号91を含むか、又はそれからなり、抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、配列番号93を含むか、又はそれからなる。
【0115】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗CMKLR1化合物を含む組成物、特に、本発明による抗CMKLR1化合物及び更なる治療剤、又は薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。特定の実施形態では、本発明は、本発明による抗CMKLR1化合物と、免疫調節剤、免疫チェックポイント遮断剤、免疫チェックポイント活性化剤、抗体、又は抗SIRPa抗体(P84-Merck Millipore社からの抗マウスSIRPa)からなる群から選択される治療剤とを含む組成物に関する。
【0116】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗CMKLR1化合物を含む化合物の組合せ、特に、本発明による抗CMKLR1化合物と、抗PD1又は抗PDL1化合物、特に、抗PD1化合物とを含む医薬組成物に関する;そのような化合物は、特に、PD1又はPDL1に結合することができる、抗体、抗原結合性抗体断片、抗原結合性抗体模倣体、アプタマー又はペプチドのような低分子、限定されるものではないが、ヒト化又はキメラ抗体のような改変抗体からなる群から選択される。
【0117】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗CMKLR1化合物を含む化合物の組合せ、特に、本発明による抗CMKLR1化合物と、抗SIRPa化合物とを含む医薬組成物に関する;そのような化合物は、特に、SIRPa、特に、ヒトSIRPaに結合することができる、抗体、抗原結合性抗体断片、抗原結合性抗体模倣体、アプタマー又はペプチドのような低分子、限定されるものではないが、ヒト化又はキメラ抗体のような改変抗体からなる群から選択される。
【0118】
本発明はまた、サイトカインであるか、又はサイトカインではなく、炎症消散性マクロファージを刺激する治療化合物を含む、例えば、線維症処置のための組合せにも関する。
【0119】
別の態様では、本発明は、炎症の延長が病的であるか、又は炎症の消散の持続期間が病的である疾患を処置することを考慮して、特に、炎症の消散を誘導する、及び/又は増強するため、特に、前記消散が遅延又は破壊された場合に炎症の消散を誘導する、及び/又は増強するための、本発明の抗CMKLR1化合物の治療的使用に関する。
【0120】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1化合物は、少なくとも10E-8Mの親和性(KD値)、より好ましくは、少なくとも10E-9Mの親和性で、CMKLR1に結合する。本発明の抗体、又はその抗原結合性断片、又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体と、CMKLR1(又は配列番号2及び配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む第3の細胞外ループを含む、若しくは配列番号60のアミノ酸配列内に位置するCMKLR1の領域)との特異的結合は、抗体がCMKLR1に対する適用可能な親和性を示すことを意味する。「適用可能な親和性」は、約10-8M(KD)又はそれより強い親和性での結合を含む。好ましくは、結合親和性が10-8M~10-12M、必要に応じて、10-9M~10-10M、特に、少なくとも10-9Mである場合、結合は特異的であると考えられる。結合ドメインが標的と特異的に反応するか、又は標的に結合するかどうかを、特に、前記結合ドメインと、標的タンパク質又は抗原との反応と、前記結合ドメインと、標的タンパク質以外のタンパク質又は抗原との反応とを比較することによって、容易に試験することができる。本発明のそのような抗体は、CMKLR1に特異的に結合し、RvE1とCMKLR1との相互作用に対するアゴニスト効果を有する。競合的阻害によって抗体特異性及び親和性を決定するための方法は、当業界で公知である(例えば、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY (1998);Colliganら、Current Protocols in Immunology、Green Publishing Assoc.、NY (1992;1993);Muller、Meth. Enzym、92:589~601 (1983)を参照されたい)。これらの方法としては、限定されるものではないが、Biacore分析、Blitz分析、フローサイトメトリー及びELISAアッセイが挙げられる。
【0121】
本発明の特定の実施形態では、抗CMKLR1化合物は、CMKLR1の第3の細胞外ループ内に位置するエピトープ、特に、配列番号2又は配列番号59又は配列番号60、特に、配列番号2に記載のアミノ酸残基配列内に位置するエピトープに特異的に結合する。CMKLR1のこの特定の領域内に結合する抗CMKLR1化合物は、CMKLR1に対するアゴニスト特性を有し、それによって、RvE1のCMKLR1への結合を模倣することができる。
【0122】
別の態様では、本発明は、医薬としての使用のための、RvE1とCMKLR1との相互作用に対するアゴニスト能力を有する、本明細書の上で定義された抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体に関する。
【0123】
別の態様では、本発明は、in vitro及び/又はin vivoでAkt及び/又はErkタンパク質の活性化を誘導する能力を有する、本明細書の上で定義された抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体に関する。これらのタンパク質の活性化を、本発明の実施例に記載される方法によって評価することができる。特に、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体は、マクロファージ、特に、ヒトマクロファージ中の、Akt及び/若しくはErkタンパク質のいずれか、又は両方を活性化する能力を有する。
【0124】
本発明はまた、それを必要とする対象における処置方法であって、前記対象に、RvE1とCMKLR1との相互作用に対するアゴニスト能力を有するか、又は換言すれば、RvE1アゴニストのような因子又はモジュレーターである、上で定義された抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体の有効量を投与する工程を含む、方法にも関する。
【0125】
抗炎症細胞を好むマクロファージの分極化の改変は、いくつかの病理又は状況において有用であり得る。上記のように、この改変は、限定されるものではないが、急性炎症疾患及び慢性炎症疾患、炎症性腸疾患、クローン病、喘息、角結膜炎、歯周病、湿疹、大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症;糖尿病、特に、I型糖尿病、腹膜炎、乾癬、癌腫、特に、乳腺癌又は結腸癌、がん、転移がん、肺がん、変性疾患、感染症、特に、敗血症、自己免疫疾患、NASH、強皮症、コルチコステロイド及び/若しくは免疫抑制処置に対して不応性である対象における大腸炎又はクローン病を含む、炎症疾患の群から選択される疾患の文脈において特に有用である。
【0126】
本発明はまた、医薬の製造における、レゾルビンE1様アゴニスト能力を有する、上で定義された抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体の使用にも関する。
【0127】
別の態様では、本発明は、慢性炎症疾患の処置における使用のため、特に、慢性大腸炎を処置するための、限定されるものではないが、本明細書の上で定義された、ヒト化又はキメラ抗体のような、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体に関する。
【0128】
別の態様では、本発明は、炎症状態、特に、その消散が遅延若しくは破壊される炎症疾患の処置における、及び/又は限定されるものではないが、急性炎症疾患及び慢性炎症疾患、炎症性腸疾患、クローン病、喘息、角結膜炎、歯周病、湿疹、大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症、糖尿病、特に、I型糖尿病、腹膜炎、乾癬、癌腫、特に、乳腺癌又は結腸癌、がん、変性疾患、感染症、特に、敗血症、自己免疫疾患を含む、炎症疾患の群から選択される疾患の処置若しくは予防における使用のための、CMKLR1の相互作用に対するアゴニスト活性を有する、上で定義された抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0129】
本明細書で定義される場合、「炎症状態の消散の遅延又は破壊」は、炎症の消散が、通常の消散(すなわち、炎症事象後に生理的消散を経験する患者において生じる消散)と比較して遅延又は破壊される場合に起こる。消散の遅延又は欠陥は、炎症部位での顆粒球の浸透の増加をもたらし得る。したがって、消散の遅延又は欠陥を、炎症部位での顆粒球の定量化によって評価することができる。例えば、組織学、血球計算又は酵素免疫アッセイによるエラスターゼ定量化若しくは顆粒球受容体1のPCRによる分子定量化等の間接的な生化学的技術によって、顆粒球集団を測定することができる。消散の遅延又は欠陥を、例えば、アネキシン5に対する特異的抗体を使用する血球計算によって測定される、顆粒球のアポトーシスの遅延の決定によって評価することもできる。炎症の詳細の欠陥又は遅延を、TNF-アルファ、IL8又はIL12等の炎症性サイトカイン及びIL-10等の抗炎症性サイトカインの合成を定量することによって評価することにより決定することもできる。サイトカイン分泌を、酵素免疫アッセイによって又はPCRによって評価することができる。炎症の消散の欠陥又は遅延を、例えば、核内移行によって、又はウェスタンブロット及び/又はIカッパBの分解レベルの定量化によって測定することができるNF-カッパB等の炎症性サイトカインの合成に関与する転写因子の活性化を評価することによって決定することもできる。炎症の消散の欠陥又は遅延を、質量分析又は酵素免疫アッセイによって、特異的炎症消散性メディエーター(リポキシン、レゾルビン、プロテクチン若しくはマレシン等)又はその前駆体(17-HDOHE若しくは14-HDOHE)を定量することによって決定することもできる。次いで、消散の欠陥又は遅延は、これらのメディエーターの1つ又は複数の合成の欠陥をもたらす。消散分子の受容体の発現が低下する場合に、消散の欠陥又は遅延を決定することもできる。これらの受容体は、ALX、CMK1R1、GPR32又はGPR18を含む群から選択することができる。或いは、又は補完的に、これらの受容体の細胞質への内在化及びプロセッシングを評価することもできる。或いは、又は補完的に、炎症性サイトカイン又は脂質の一部の受容体の発現を評価することもでき、正常状態と比較した過剰発現は、炎症の消散における有意な遅延
又は欠陥である。これらの状態を、組織学、細胞学又はPCRによって測定することができる。消散の欠陥はまた、炎症性の炎症消散性マクロファージへのスイッチの減少又は阻害、同じ細胞の食作用又はエフェロサイトーシスの損傷をもたらし得る。したがって、消散の遅延又は欠陥を、本発明の実施例に例示されるように、正常状態と比較した、特定の状態における炎症性の炎症消散性マクロファージへのスイッチを分析することによって評価することができる。
【0130】
特定の実施形態によれば、抗CMKLR1化合物を使用して、特に、がん細胞がCMKLR1を過剰発現する場合、乳腺がん、特に、乳腺癌、黒色腫、結腸がん、特に、結腸癌、白血病、特に、急性骨髄性白血病からなる群から選択されるがんを有する個体を処置することができる。
【0131】
ある実施形態では、本発明は、上で定義された使用のための、上で定義された抗ヒトCMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体であって、CMKLR1陽性腫瘍を呈する患者に投与される、本発明の前記抗ヒトCMKLR1抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体又は改変抗体に関する。
【0132】
本発明の抗体又はその抗原結合性断片を、様々な好適な経路で、例えば、静脈内(IV)、皮下(SC)、又は筋肉内(IM)によって対象に投与することができる。抗CMKLR1化合物を、単独で、又は別の治療剤、例えば、第2のヒトモノクローナル抗体若しくはその抗原結合性断片と共に投与することができる。別の例では、抗体は、治療用細胞組成物等と共に、別の薬剤、例えば、免疫抑制剤、赤血球生成刺激剤(ESA)と一緒に投与される。ある実施形態では、本発明は、抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片が第2の治療剤と組み合わされる、上で定義されたその使用のための抗CMKLR1化合物又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体に関する。
【0133】
第2の治療剤の投与は、抗CMKLR1化合物の投与と同時的であっても、またはそうでなくてもよい。第2の薬剤の性質に応じて、同時投与を、「コンボ」としても知られる、組合せ薬物(製品)の形態で調製することができる。コンボは、固定用量で製造及び配付される、単回剤形中で混合された2つ以上の活性医薬品有効成分を含む固定用量の組合せである。しかし、用量レジメン及び/又は投与経路は、異なっていてもよい。
【0134】
好ましい実施形態では、この第2の治療剤は、化学療法剤、放射線療法剤、免疫治療剤、細胞療法剤(CAR-T細胞)、抗生物質及びプロバイオティクスからなる群から選択される。
【0135】
特に、本発明の文脈において有用な免疫治療剤は、治療用ワクチン(DNA、RNA又はペプチドワクチン)、免疫チェックポイント遮断剤又は活性化剤、特に、適応免疫細胞(T若しくはBリンパ球)又は抗体-薬物コンジュゲート等のイムノコンジュゲートからなる群から選択される。
【0136】
本明細書で使用される場合、用語「免疫治療剤」とは、特に、ナイーブT細胞の数及びレパートリーを増加させるT細胞増殖因子、樹状細胞(DC)の数を増加させる増殖因子、DC及び他の抗原提示細胞(APC)を活性化するアゴニスト、がんワクチンを可能にし、増加させるアジュバント、T細胞を活性化及び刺激するアゴニスト、T細胞チェックポイント遮断の阻害剤、免疫T細胞の増殖及び生存を増加させるT細胞増殖因子、がん細胞を阻害、遮断又は中和する薬剤並びに免疫細胞由来免疫抑制サイトカインを含む、有効な治療剤に対する興味深い生物学的現象からがんワクチンを取ることができる薬剤を指す。
【0137】
いくつかの免疫チェックポイント遮断剤又は活性化剤が、当業界で公知である。本発明の文脈では、有用であり得る適応免疫細胞(B又はTリンパ球)の免疫チェックポイント遮断剤又は活性化剤の例は、抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4、抗SIRPa、抗CD137、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、及び抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L及びB細胞受容体アゴニスト、特に、抗CD137及び抗SIRPaである。本発明の特定の実施形態では、第2の治療剤は、抗PDL1又は抗PD1化合物、特に、抗PD1化合物、より具体的には、抗PD1抗体である。本発明の特定の実施形態では、第2の治療剤は、抗SIRPa化合物、特に、抗SIRPa抗体である。
【0138】
前記免疫治療剤はまた、特に、抗Her2、抗EGFR、抗CD20、抗CD19、抗CD52からなる群から選択される、腫瘍抗原を標的とする抗体であってもよい。
【0139】
抗体は、約1ng/kg体重~約30mg/kg体重、又はそれを超える有効用量で提供することができる。特定の実施形態では、投与量は、1μg/kg~約20mg/kg、必要に応じて、10μg/kg~10mg/kg又は100μg/kg~5mg/kgの範囲であってもよい。
【0140】
用語「有効用量」又は「有効投与量」又は「有効量」は、所望の効果を達成する、又は少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。用語「有効用量」は、疾患及びその合併症を治癒させる、若しくは少なくとも部分的に停止させる、又は疾患に既に罹患している患者における疾患の症状を軽減するのに十分な量を包含することを意味する。この使用にとって有効な量又は用量は、処置される状態、送達される抗体構築物、治療の文脈及び目的、疾患の重症度、以前の療法、患者の臨床履歴及び治療剤に対する応答、投与経路、患者のサイズ(体重、体表面積若しくは臓器の大きさ)及び/又は状態(年齢及び一般的な健康)、並びに患者自身の免疫系の一般的な状態に依存するであろう。適切な用量を、それを患者に1回又は一連の投与にわたって、及び最適な治療効果を得るために投与することができるように調整することができる。
【0141】
そのような目的のための投薬を、必要に応じて、例えば、毎日、週2回、毎週、月2回、毎月、又は必要に応じて再発中に繰り返すことができる。
【0142】
別の態様では、本発明は、上で定義された抗体又はその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0143】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、哺乳動物、特に、ヒト等の対象又は患者への投与にとって好適な組成物を包含することを意味する。一般に、「医薬組成物」は、無菌性であり、通常、対象内で望ましくない応答を惹起し得る夾雑物を含まない(例えば、医薬組成物中の化合物は医薬品等級のものである)。医薬組成物を、経口、頬、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内等のいくつかの異なる投与経路によって、それを必要とする対象又は患者への投与のために設計することができる。
【0144】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、一般的には安全で、非毒性的であり、生物学的にも、若しくはそうでなくても望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを包含することを意味し、獣医学的使用並びにヒトでの薬学的使用にとって許容可能である賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される」は、1つ及び1つを超えるそのような賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントの両方を含む。
【0145】
特に、本発明は、活性成分としての、上で定義された抗体又はその抗原結合性断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0146】
別の態様では、本発明は、活性成分として、上で定義された抗SIRPa抗体又はその抗原結合性断片又は抗原結合性抗体模倣体と、第2の治療剤とを含む、治療手段、特に、併用製品手段であって、前記活性成分が、個別療法、連続療法、又は併用療法のために、特に、併用的又は連続的使用のために製剤化される、治療手段、特に、併用製品手段に関する。
【0147】
特に、本発明は、医薬を同時的、個別的又は連続的に使用するための、上で定義された抗CMKLR1と、第2の治療剤とを含む併用製品に関する。
【0148】
ある実施形態では、本発明は、第2の治療剤が、化学療法剤、放射線療法剤、細胞療法剤、免疫治療剤、抗生物質及びプロバイオティクスからなる群から選択される、上で定義された併用製品に関する。
【0149】
ある実施形態では、本発明は、前記免疫治療剤が、治療用ワクチン、特に、適応免疫細胞(T及びBリンパ球)の免疫チェックポイント遮断剤又は活性化剤、及び抗体-薬物コンジュゲートからなる群から選択される、上で定義された併用製品に関する。
【0150】
ある実施形態では、本発明は、適応免疫細胞(T及びBリンパ球)の前記免疫チェックポイント遮断剤又は活性化剤が、抗PDL1、抗PD1、抗SIRPA、抗CTLA4、抗CD137、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、及び抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L及びB細胞受容体アゴニストからなる群から選択される、特に、抗PDL1、抗PD1及び抗CD137からなる群から選択される、上で定義された併用製品に関する。本発明の特定の実施形態では、第2の治療剤は、抗PDL1又は抗PD1化合物、特に、抗PD1化合物、より具体的には、抗PD1抗体である。本発明の特定の実施形態では、第2の治療剤は、抗SIRPa化合物、特に、抗SIRPa抗体である。
【0151】
一実施形態では、前記免疫治療剤はまた、特に、抗Her2、抗EGFR、抗CD20、抗CD19、抗CD52からなる群から選択される、腫瘍抗原を標的とする抗体である。
【0152】
ある態様では、本発明は、炎症消散性マクロファージへのマクロファージ分極化を改変することによって改善又は予防されやすい任意の状態の処置における同時的、個別的又は連続的使用のための、上で定義された併用製品に関する。
【0153】
ある実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における炎症消散性マクロファージへのマクロファージ分極化を改変することによって改善又は予防されやすい任意の状態の処置の方法であって、前記対象に、有効量の上で定義された併用製品を同時的、個別的又は連続的に投与する工程を含む、方法に関する。
【0154】
ある実施形態では、本発明は、炎症消散性炎症性マクロファージを誘導しやすい任意の状態の処置のための医薬の製造における、上で定義された併用製品の使用に関する。
【0155】
ある態様では、本発明は、限定されるものではないが、急性炎症疾患及び慢性炎症疾患、炎症性腸疾患、クローン病、NASH、強皮症、喘息、角結膜炎、歯周病、湿疹、大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症、糖尿病、特に、I型糖尿病、腹膜炎、乾癬、癌腫、特に、乳腺癌又は結腸癌、がん、転移がん、肺がん、変性疾患、感染症、特に、敗血症、自己免疫疾患を含む炎症疾患からなる群から選択される病理の処置における同時的、個別的若しくは連続的使用のため、又はワクチン接種における使用のための、上で定義された併用製品に関する。
【0156】
ある実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の、限定されるものではないが、急性炎症疾患及び慢性炎症疾患、炎症性腸疾患、クローン病、NASH、強皮症、喘息、角結膜炎、歯周病、湿疹、大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症、糖尿病、特に、I型糖尿病、腹膜炎、乾癬、癌腫、特に、乳腺癌又は結腸癌、がん、転移がん、肺がん、変性疾患、感染症、特に、敗血症、自己免疫疾患を含む炎症疾患からなる群から選択される病理の処置方法であって、前記対象に、有効量の上で定義された併用製品を同時的、個別的又は連続的に投与する工程を含む、方法に関する。
【0157】
本発明はまた、本明細書で定義される抗CMKLR1化合物をコードするポリヌクレオチドにも関する。このために、本発明はまた、本開示による任意の抗CMKLR1化合物をコードする、より具体的には、配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号62に記載の配列のアミノ酸残基を含む、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57及び配列番号58に記載の配列のアミノ酸残基を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとをコードする、核酸分子、又は核酸分子群、より具体的には、単離された核酸分子及び/又は組換え核酸分子に関する。特定の実施形態では、本発明は、配列番号91からなる抗体の重鎖可変ドメインと、配列番号93からなる抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列をコードする、核酸分子、又は核酸分子群、より具体的には、単離された核酸分子及び/又は組換え核酸分子に関する。
【0158】
核酸分子は、限定されるものではないが、コードされる重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインの転写及び発現のための、エンハンサー、サイレンサー、プロモーター、特に、発現プロモーター、シグナルペプチドのような調節配列を更に含んでもよい。
【0159】
本発明はまた、本明細書に開示されるポリヌクレオチドを含む、又は本明細書に開示される核酸分子を含むベクターにも関する。本明細書で使用される場合、ベクターは、遺伝物質を細胞中に導入するための媒体として使用される核酸分子であり、好ましい実施形態では、ベクター内に挿入されたポリヌクレオチドの発現を可能にする。ベクターという用語は、プラスミド、ウイルス、コスミド及び人工染色体を包含する。ベクターは一般に、複製起点、マルチクローニング部位、及び選択マーカーを含む。ベクター自体は一般に、挿入物(導入遺伝子)及びベクターの「骨格」として働くより大きい配列を含む、ヌクレオチド配列、一般的には、DNA配列である。現代のベクターは、導入遺伝子挿入物及び骨格の他に、更なる特徴:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、リポーター遺伝子、標的化配列、タンパク質精製タグを包含してもよい。具体的に、発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、標的細胞中での導入遺伝子の発現のためのものであり、一般的には、制御配列を有する。
【0160】
別の態様では、本発明は、上で定義されたベクターを含む、細胞、単離された細胞、宿主細胞、単離された宿主細胞、又は細胞株に関する。本明細書で使用される場合、細胞に関するこれらの用語は、本発明の抗体構築物をコードするベクター、外因性核酸分子、及びポリヌクレオチドのレシピエント、並びに/又は抗体構築物自体のレシピエントであってよいか、又はあった任意の個々の細胞又は細胞培養物を含むことが意図される。それぞれの材料の細胞中への導入を、形質転換、トランスフェクション等によって実行することができる。これらの用語はまた、単一細胞の子孫又は潜在的な子孫を含むことも意図される。好適な宿主細胞は、原核又は真核細胞を含み、限定されるものではないが、細菌、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、並びに昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えば、マウス、ラット、ウサギ、マカク又はヒト等の動物細胞も含む。
【0161】
本発明の特定の実施形態では、細胞又は細胞株は、CHO、COS及びHEK細胞からなる群から選択され、本発明の抗体構築物をコードする、ベクター、外因性核酸分子、及びポリヌクレオチドを含むベクターを用いて遺伝子操作された場合、少なくとも0.1mg/ml、特に、少なくとも1mg/mlの抗体、特に、少なくとも10mg/ml、より具体的には、少なくとも100mg/mlを産生する;及び/又は抗体構築物自体のレシピエントである。
【0162】
以下の図面及び実施例は、本発明を作製及び使用する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載され、本発明者らがその発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものでもなければ、以下の実験が実施された全ての、又は唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。本発明はその特定の実施形態を参照して説明されてきたが、当業者であれば、様々な変更を加えることができ、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、等価物を置換することができることを理解するべきである。更に、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセス工程又は複数の工程を、本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために多くの改変を加えることができる。全てのそのような改変は、本明細書に添付される特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0163】
特定の実施形態では、本発明は、医薬の製造のための、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに定義された抗体又はその抗原結合性断片の使用に関する。特定の実施形態では、本発明は、炎症が関与する状態を処置するのに有用な医薬の製造のための、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つに定義された抗体又はその抗原結合性断片の使用に関する。特定の実施形態では、本発明は、
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、炎症疾患、特に、急性炎症疾患、慢性炎症性肺疾患(例えば、喘息)、角結膜炎、歯周病、湿疹、炎症性腸疾患、特に、クローン病又は大腸炎、特に、潰瘍性大腸炎又は自然発症性大腸炎、嚢胞性線維症等の慢性炎症疾患、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、強皮症、抗好中球細胞質抗体関連疾患ANCA関連疾患;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、糖尿病、特に、I型糖尿病、乾癬、狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、シェーグレン症候群、セリアック病、血管炎、重症筋無力症等の自己免疫疾患、又は敗血症等の感染症、腹膜炎、変性疾患、創傷治癒障害、コロナウイルス(例えば、COVID-19)等の重症の炎症状態を伴う重症ウイルス症状、又はドライアイ症候群;
- 特に、処置の投与の結果として、炎症の消散が増強される、がん、特に、転移がん、固形又は液性がん、例えば、癌腫、より具体的には、肝癌、特に、乳腺癌又は結腸癌、結腸直腸がん又は肺がん又は中皮腫又は白血病等の骨髄性がん、特に、がん細胞がCMKLR1を発現するか、又は腫瘍の微小環境がCMKLR1を発現するか、若しくは過剰発現する細胞によって浸潤されるがん;
- NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、強皮症、嚢胞性線維症又は抗好中球細胞質抗体関連疾患(ANCA)
の予防的又は治療的処置にとって有用な医薬の製造のための、本明細書に開示された実施形態のいずれか1つに定義された抗体又はその抗原結合性断片の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【
図1-1】DCの成熟及び分化に対する抗CMKLR1バリアント1G1、2G1、3G1及び4G1キメラ抗体の効果。マウス樹状細胞を、賦形剤又はRvE1又は抗CMKLR1抗体バリアント(VH-CDR3に対応する、配列番号8の1及び2位上の突然変異:1G1(LL)、2G1(LI)、3G1(IL)又は4G1(II)又はアイソタイプ対照(hIgG1又はmIgG))と共に、成熟期中にインキュベート(24時間又は48時間)した後、分化期にインキュベートした。次いで、細胞を、FACS分析のために、細胞マーカー抗体:A.CD80-PE;B.CD86-FITC;C.CD103-PerCPCy5.5;D.I/Ab-APCで染色した。蛍光の平均を、それぞれの条件で決定した。E及びFは、それぞれ、成熟の24又は48時間後にそれぞれの条件でLife Technologies社からのLIVE/DEAD(登録商標)キットを使用するFACSによって測定された細胞の生存能力を表す。
【
図1-2】DCの成熟及び分化に対する抗CMKLR1バリアント1G1、2G1、3G1及び4G1キメラ抗体の効果。マウス樹状細胞を、賦形剤又はRvE1又は抗CMKLR1抗体バリアント(VH-CDR3に対応する、配列番号8の1及び2位上の突然変異:1G1(LL)、2G1(LI)、3G1(IL)又は4G1(II)又はアイソタイプ対照(hIgG1又はmIgG))と共に、成熟期中にインキュベート(24時間又は48時間)した後、分化期にインキュベートした。次いで、細胞を、FACS分析のために、細胞マーカー抗体:A.CD80-PE;B.CD86-FITC;C.CD103-PerCPCy5.5;D.I/Ab-APCで染色した。蛍光の平均を、それぞれの条件で決定した。E及びFは、それぞれ、成熟の24又は48時間後にそれぞれの条件でLife Technologies社からのLIVE/DEAD(登録商標)キットを使用するFACSによって測定された細胞の生存能力を表す。
【
図2-1】DSSによって誘導されるマウス急性炎症性大腸炎モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。DSS誘導の6日後に、マウスに、5日間にわたって、アイソタイプ対照hIgG1(マウス1匹あたり10μg)(x)、毎日のRvE1(マウス1匹あたり1μg)(●)、又は3回の2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)(□)を注射した。処置しなかった、野生型マウスは、▼で表される。A. 動物の体重減少。B. 動物の糞便スコア。C. 結腸の長さ。D. 消散指数。
【
図2-2】DSSによって誘導されるマウス急性炎症性大腸炎モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。DSS誘導の6日後に、マウスに、5日間にわたって、アイソタイプ対照hIgG1(マウス1匹あたり10μg)(x)、毎日のRvE1(マウス1匹あたり1μg)(●)、又は3回の2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)(□)を注射した。処置しなかった、野生型マウスは、▼で表される。A. 動物の体重減少。B. 動物の糞便スコア。C. 結腸の長さ。D. 消散指数。
【
図3】TNBSによって誘導されるマウス急性炎症性大腸炎モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。マウスは、0日目に50%エタノール中、5%のハプテン化剤TNBS 200μLを受けた後、5日間にわたって、アイソタイプ対照hIgG1(マウス1匹あたり10μg)(x)、毎日のRvE1(マウス1匹あたり1μg)(●)、若しくは3回の2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)(□)を注射したか、又は処置しなかった(野生型動物)(▲)。マウスを犠牲にし、結腸の長さをそれぞれの条件で測定した。
【
図4】IL10 KOマウス慢性炎症性大腸炎モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。IL10についてKOされたマウスは、自然発症性炎症性大腸炎を発症する。それらを、抗CMKLR1抗体(2G1)(□)又はアイソタイプ対照(hIgG1)(x)で腹腔内的に処置した(25μg/注射、週に3回)。A. 処置中及び処置後の動物の体重減少。B. 動物の糞便スコア。
【
図5】マウス1型非肥満糖尿病モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。マウスは、自然発症性糖尿病を発症する。血糖が180~234mg/dLであった場合、それらを、2週間にわたって週3回、20μg/注射で腹腔内的に、抗CMKLR1抗体(A及びBでは□、Cでは■)又はアイソタイプ対照抗体(A及びBではx、Cでは□)で処置した。A. 生存のパーセンテージ、B. mg/dLでの血中グルコース濃度の個別表示。C. mg/dLでの血中グルコース濃度のプール表示。
【
図6】マウス乾癬モデル等の自己免疫疾患に対する抗CMKLR1アゴニストの効果。4~6日連続でAldaraで処置したマウスに、腹腔内的に2G1(●)又はアイソタイプ対照抗体(x)を注射した。A. 厚さ及びB. 体重。
【
図7-1】マウス腹膜炎モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。抗CMKLR1の予防的注射を、Zymosan A注射(1mL中、マウス1匹あたり1mg)前に実施した:RvE1(マウス1匹あたり1μg)(●)、2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)(□)又はアイソタイプ対照抗体(x)。A. Zymosan A注射後、最初の50時間の間に計数したPMN。B. Zymosan A注射後、最初の50時間の間に計数したマクロファージ。C. 消散指数。
【
図7-2】マウス腹膜炎モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。抗CMKLR1の予防的注射を、Zymosan A注射(1mL中、マウス1匹あたり1mg)前に実施した:RvE1(マウス1匹あたり1μg)(●)、2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)(□)又はアイソタイプ対照抗体(x)。A. Zymosan A注射後、最初の50時間の間に計数したPMN。B. Zymosan A注射後、最初の50時間の間に計数したマクロファージ。C. 消散指数。
【
図8】4T1乳房腫瘍モデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。マウスの乳腺中に4T1細胞(25万個)を接種した。次いで、抗CMKLR1抗体(2G1)(A.□、B.●)若しくは抗41BB抗体(3H3)(●)若しくは両抗体(▲)を、4日目及び7日目に2回注射(10μg/注射)したか、又は対照抗体(IgG1アイソタイプ抗体クローン3G8)(A及びBにおけるx)を、3週間にわたって週3回注射した。A. 腫瘍面積を、腫瘍注射後8日間、次いで、2日毎に測定した。B. 腫瘍の肺転移を、アイソタイプ対照及び抗CMKLR1抗体で処置した動物(n=4)において生物発光イメージング(BLI)によって測定した。
【
図9】2つの異なる結腸癌マウスモデルに対する抗CMKLR1抗体の効果。2つのマウスモデルを試験し、動物は、3週間にわたって腹腔内的に20μg/注射でアイソタイプ対照抗体(3G8)(x)又は抗CMKLR1(2G1)(□)を受けた。A~C. p84(A)及び2G1(B)による単回処置と、両方の抗体を用いた併用療法(C)とを比較するCT26結腸癌モデルにおける結果。D:MC38結腸癌モデルにおける結果。
【
図10】抗TNFa処置の前後での潰瘍性大腸炎(UC)又はクローン病患者の生検上でのCMKLR1の発現。xは、対照を表す;□は、インフリキシマブ処置前のコルチコステロイド処置及び/又は免疫抑制処置に応答する患者におけるCMKLR1発現を表す;■は、インフリキシマブ処置前のコルチコステロイド処置及び/又は免疫抑制処置に応答しない患者におけるCMKLR1発現を表す;△は、インフリキシマブ処置後のコルチコステロイド処置及び/又は免疫抑制処置に応答する患者におけるCMKLR1発現を表す;▲は、インフリキシマブ処置後のコルチコステロイド処置及び/又は免疫抑制処置に応答しない患者におけるCMKLR1発現を表す。A. インフリキシマブ処置の前後での潰瘍性大腸炎患者におけるCMKLR1転写物の発現。B. 炎症した結腸の生検における、インフリキシマブ処置の前後でのクローン病患者におけるCMKLR1転写物の発現。
【
図11】抗α4β7(VDZ)処置の前後でのUC患者生検上でのCMKLR1の発現。A. 炎症した結腸生検における、ベドリズマブ処置の前後での潰瘍性大腸炎患者におけるCMKLR1(CMKLTR1)転写物の発現を表す。Rは、VDZ処置に応答する患者に対応し、NRは、VDZ処置に応答しない患者に対応する。
【
図12】ELISAによるCMKLR1ペプチドへの抗CMKLR1抗体の結合分析。CMKLR1 EL3ループ(配列番号18)への2G1抗体(□)の結合を、ELISAによって450nmでのODを測定することにより、アイソタイプ対照抗体(3G8)(x)と比較した。
【
図13】FACS及びウェスタンブロットによる異なる細胞株上でのCMKLR1発現の試験。A. CMKLR1の細胞表面でのタンパク質発現を、2つの異なるヒトT細胞株Thp1及びU937上で、異なる濃度(ng/ml)の2G1抗体を使用して決定した。B. CMKLR1タンパク質発現を、T細胞株(Thp1及びU937)、線維芽細胞株MRC5、NK細胞株NKL及びCMKLR1について陰性であり、形質導入されたCHO細胞上でのウェスタンブロットによって試験した。
【
図14】FACSによるマウス骨髄性細胞上でのCMKLR1の発現。分化後、マウス骨髄系列細胞を、細胞表面でのそのCMKLR1発現について分析した。A. マクロファージ単球(M0)上での発現。B及びC. マクロファージ(炎症性mM1及び炎症消散性mM2マクロファージ)上での発現。D及びE. 樹状細胞(mDC及びiDC)上での発現。
【
図15】炎症性刺激によって刺激されたヒト単球及びマウス骨髄細胞上でのCMKLR1の発現。LPS、TNFa又はIL6で細胞を刺激した16又は48時間後、CMKLR1(ChemR23)の発現をFACSによって測定した。A. ヒト血液単球上での結果。B.及びC. マウス骨髄由来骨髄性細胞及び好中球上での結果。
【
図16】CMKLR1経路活性化後の骨髄性細胞活性化マーカーの試験。賦形剤、RvE1、2G1又はアイソタイプ対照(hIgG1)中で樹状細胞をインキュベートした後、FACS分析のためにマーカー抗体で染色した:A. CD80-PE。B. CD86-FITC。C. CD103-PerCPCy5.5。D. CD40-PeCy7。E. I/Ab-APC。蛍光の平均を、それぞれの条件で決定した。
【
図17】CMKLR1経路活性化の試験:Akt及びErkリン酸化。マウス炎症性(M1)マクロファージを2G1又はRvE1と共にインキュベートした5、10及び30分後のERK及びAKT活性化経路のウェスタンブロット分析。リン酸化されたタンパク質Akt又はErkを、P-Akt抗体又はP-Erk抗体(p44/42)を使用して評価した。A. RvE1を用いたErk及びAktの活性化。B. 2G1を用いたErk及びAktの活性化。
【
図18】抗CMKLR1抗体とのケメリン-CMLKR1相互作用に関する競合試験。A. 2つの異なる供給業者、DiscoverX社(●)若しくはR&D System社(▲)からのケメリン、又は抗CMKLR1抗体(2G1)のみと組み合わせたケメリン(◇)、又はDiscoverX社からのケメリンと組み合わせたケメリン(□)によるcAMPの阻害を試験した。B. 1μMから1nMまでの様々な濃度の抗CMKLR1抗体及び2nM(◇)又は6nM(●)のケメリンの存在下でのベータアレスチンの活性化。
【
図19-1】CD45Rb
highT細胞移入慢性大腸炎マウスモデルにおける抗CMKLR1抗体の効果。A. 処置した動物の体重変動を、最大60日間追跡した。動物を、アイソタイプ対照hIgG1(x)又は抗CMKLR1抗体(■)で処置した。B. 対照(左)と比較した、抗CMKLR1(右)で処置したマウスにおける結腸組織の組織学的染色。C. 病理及び炎症の重症度を算出するために使用した解剖学的病理スコア(炎症スコア、血管炎スコア、結腸の厚さ及び線維性結腸壁)。D. CD3及びLy6G浸潤。
【
図19-2】CD45Rb
highT細胞移入慢性大腸炎マウスモデルにおける抗CMKLR1抗体の効果。A. 処置した動物の体重変動を、最大60日間追跡した。動物を、アイソタイプ対照hIgG1(x)又は抗CMKLR1抗体(■)で処置した。B. 対照(左)と比較した、抗CMKLR1(右)で処置したマウスにおける結腸組織の組織学的染色。C. 病理及び炎症の重症度を算出するために使用した解剖学的病理スコア(炎症スコア、血管炎スコア、結腸の厚さ及び線維性結腸壁)。D. CD3及びLy6G浸潤。
【
図19-3】CD45Rb
highT細胞移入慢性大腸炎マウスモデルにおける抗CMKLR1抗体の効果。A. 処置した動物の体重変動を、最大60日間追跡した。動物を、アイソタイプ対照hIgG1(x)又は抗CMKLR1抗体(■)で処置した。B. 対照(左)と比較した、抗CMKLR1(右)で処置したマウスにおける結腸組織の組織学的染色。C. 病理及び炎症の重症度を算出するために使用した解剖学的病理スコア(炎症スコア、血管炎スコア、結腸の厚さ及び線維性結腸壁)。D. CD3及びLy6G浸潤。
【
図20】肝癌マウスモデル(HCCモデル)に対する抗CMKLR1抗体の効果。抗PD1 mAb(RMP1-14クローン、8mg/kg)の4及び8日目での2回の注射と組み合わせた(▲)若しくは組み合わせなかった(●)、又は抗PD-1抗体のみの注射(週2回)(△)を用いた、2週間にわたる週3回の抗CMKLR1抗体(2G1、0.8mg/kg)のi.p.投与の抗腫瘍効果。マウスを、マウス肝がんの同所性モデルにおいて2週間処置した(2.5×10
6個のHepa 1.6細胞を、0日目に門脈を介して注射した)。アイソタイプ対照抗体を、2週間にわたって週に3回、0.8mg/kgで使用した。マウスの応答を、マウスが処置の中止後、数日から1カ月間生存する場合、部分寛解(PR)又はマウスが1カ月を超えて生存する場合、完全寛解(CR)、又はマウスが全ての対象マウスの死滅(dye)に必要な時間よりも3倍長く生存する場合、治癒したと考えた。
【
図21】異なる細胞株中での抗CMKLR1抗体の産生。IGHV3-23
*04、IGHV1-46
*01及びIGHV7-4-1(IMGT命名法)と命名された、3つのヒト生殖系列フレームワーク中に、2G1重鎖のCDRを移植した。IGKV1-13
*02、IGKV6-21
*01及びIGKV3-11
*01(IMGT命名法)と命名された、3つのヒト生殖系列フレームワーク中に、2G1軽鎖のCDRを移植した。それぞれの配列を、ヒト免疫グロブリンの定常断片に融合し、哺乳動物細胞中に同時トランスフェクトして、COS及びCHO細胞中でヒト化抗体を産生させた。産生を、上清中で評価した。VH WT及びVL WTはそれぞれ、2G1抗体の重鎖及び軽鎖に対応する。
【
図22】2G1に由来するヒト化抗体の産生。CHO細胞中での重鎖可変及び軽鎖可変ドメインの異なる組み合わせの産生及び収率。VH WT及びVL WTは、2G1抗体の可変ドメインに対応する。生殖系列は、2G1の可変ドメインのヒト化バージョンから生じ、本明細書の実施例に開示される。
【
図23】2G1に由来するヒト化された抗CMKLR1によるC7ペプチドの結合認識。様々な組合せの重鎖と軽鎖(VHWT+VLWT:配列番号37と配列番号49との組合せ;HCLC:配列番号42と配列番号52との組合せ;HDLC:配列番号43と配列番号52との組合せ;HCLD:配列番号42と配列番号53との組合せ;HDLD:配列番号43と配列番号53との組合せ)をトランスフェクトしたCHO細胞の上清中でのC7biotの結合。
【
図24】2G1抗体に由来する抗CMKLR1のED50。2G1wt:HALA:配列番号41と配列番号50との組合せ;配列番号37と配列番号49との組合せ;HCLC:配列番号42と配列番号52との組合せ;HDLC:配列番号43と配列番号52との組合せ;HCLD:配列番号42と配列番号53との組合せ;HDLD:配列番号43と配列番号53との組合せ。
【
図25】被覆された抗ChemR23抗体を用いた、in vitroでのM1マクロファージ細胞上でのCCR7発現の阻害。2G1及び全てのヒト化された2G1バリアント(HALA、HCLC、HCLD、HDLC及びHDLD)を、プレート上に固定した。アイソタイプ対照を、対照として添加した。FcRγ結合を防止する2つのアイソタイプ、すなわち、2G1-N297A(FcγR結合を減少させるためにN297Aにおいて突然変異した2G1wt)、及び2G4(ヒンジ領域を安定化するためにS228Pにおいて突然変異したアイソタイプIgG4を有するwt)も添加した。炎症性マクロファージM1を、48時間にわたって被覆されたプレート上に添加し、マクロファージの表面でのCCR7発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【
図26-1】好中球のアポトーシス:A) 好中球の生存/死滅、B) カスパーゼ-3発現、C)ROS産生。好中球を、健康なボランティアの血液から単離し、被覆されたIso ctrl(x印)、キメラ抗ChemR23 2G1(四角)又は2G1の異なるヒト化バージョン(菱形)上、24時間(死滅分析)、又は4時間、6時間、11時間(カスパーゼ-3アッセイ)、又は5時間(ROSアッセイ)にわたって培養した。PMNを死滅及び生存の特異的マーカーと共にインキュベートすることによって、PMNの死滅を分析した後、写真分析によって計数した。カスパーゼ-3は、ウェスタンブロットによって示され、シグナルの強度を、ソフトウェアを用いて決定した。ROS産生を、特異的マーカーを用いて示し、写真上で分析した。
【
図26-2】好中球のアポトーシス:A) 好中球の生存/死滅、B) カスパーゼ-3発現、C)ROS産生。好中球を、健康なボランティアの血液から単離し、被覆されたIso ctrl(x印)、キメラ抗ChemR23 2G1(四角)又は2G1の異なるヒト化バージョン(菱形)上、24時間(死滅分析)、又は4時間、6時間、11時間(カスパーゼ-3アッセイ)、又は5時間(ROSアッセイ)にわたって培養した。PMNを死滅及び生存の特異的マーカーと共にインキュベートすることによって、PMNの死滅を分析した後、写真分析によって計数した。カスパーゼ-3は、ウェスタンブロットによって示され、シグナルの強度を、ソフトウェアを用いて決定した。ROS産生を、特異的マーカーを用いて示し、写真上で分析した。
【
図27】in vitroでの好中球のアポトーシス:A)実験手順、B)ChemR23発現、C)滲出液中の好中球の頻度、D)滲出液中のマクロファージの頻度、E)好中球の死滅、F)死んだ/生きている好中球の比。滅菌空気をd3及びd6で2回注射し、カラゲナンの注射によって炎症を開始させた。滲出液を様々な時点で収集し、フローサイトメトリー分析のために染色した。
【
図28】好中球移動比:A)健康な患者におけるPMNの移動比、B)ANCAに罹患している炎症患者におけるPMNの比。内皮細胞を、100U/mLのTNFaで一晩、被覆し、+/-活性化した。次いで、100U/mLのTNFa及びAbと共に、又はそれなしで、2時間にわたってPMNを添加した。移動したPMNを収集し、フローサイトメトリーによって分析した。
【
図29】CD62L発現。健康なボランティアからのPMNを、様々な時間にわたって、10μg/mLの被覆されたAbと共に培養培地中でインキュベートし、CD62L染色のために収集し、フローサイトメトリーにより分析した(左パネル)。脱落によって放出された可溶型のCD62Lを、被覆したAbと共にインキュベートしたPMNの上清中でELISAによって検出する(右パネル)。
【
図30】中皮腫モデルの生存。AK-7細胞(3M)を、胸腔に注射し、マウスは、1mg/kgでd4で開始して、3週間にわたって週に3回、Iso ctrl又は2G1を受けた。
【
図31】CRCモデル。A)CRCの腫瘍細胞接種モデル:腫瘍発達及び生存、B)化学誘導性及び炎症誘導性CRC。腫瘍接種を、0.5MのMC38 CRC細胞株を用いて皮下的に実施した。マウスに、腫瘍誘導後、d4で開始して、3週間にわたって、週に3回、1mg/kgの2G1又はCtrl Abを注射した。シクロホスファミドを、100mg/kgで1回、I.P.注射した。腫瘍発達を週に3回評価し、マウスが1000mm3を超える腫瘍を生じた場合、生存曲線を確立した。AOM-DSSモデルにおいて、マウスは、7.5mg/kgのアゾキシメタンのIP注射を受け、5日後、3サイクルの5日-DSS及び14日-水を開始した。処置又はプラセボを、1回目のサイクル後に投与し、週に2回、終わりまで継続した。週に2回、マウスの体重を計測し、糞便を分析した。結腸及び腫瘍を、化学的注射後、80日間測定及び計数した。
【
図32】自己免疫性脳脊髄炎実験モデル。A)経時的な体重変動、B)疾患スコア。アジュバントと組み合わせた免疫原性MOGペプチドの注射によって、中枢神経系における病変を誘導した。実験の終わりまで、動物が、中枢神経系がT細胞活性によって既に影響されることを意味する、2に等しい臨床スコアを有していた場合、処置(2G1)又はアイソタイプ対照を1mg/kgで投与した。
【
図33】ELISAアッセイ(A)によるヒトChemR23ペプチドへの精製抗体の結合、及びED50濃度(ng/ml)(B)。活性ELISAアッセイのために、ロバ抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号709-005-098)を、ホウ酸緩衝剤(pH9)中、1.3μg/mlでプラスチック上に固定し、精製抗体を添加して、野生型2G1と比較した、BSA1%緩衝剤中での結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ビオチン化抗原特異的ペプチド(Biot-C7ペプチド)、次いで、ペルオキシダーゼ-ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号016-030-084)を添加し、従来の方法によって示した。
【
図34】A. ヒトChemR23 ELISAアッセイ上、4℃又は37℃で7日間インキュベートした精製抗体の結合。B. 37℃で7日間インキュベートした精製抗体のゲル濾過クロマトグラフィーによるSECプロファイル。それぞれの精製されたヒト化抗ChemR23抗体(HALA、HDLD、HD-LDT52S、HEF-LDT52S、HEF-LEF)を、4℃又は37℃で7日間インキュベートした。7日後、精製抗体の結合を、ELISAアッセイによって分析し、凝集体の形成を、ゲル濾過(Superdex 200 10/300GL、GeHealthcare社)によって分析した。
【
図35】被覆された抗ChemR23抗体を用いた、in vitroでのM1マクロファージ細胞上でのCCR7発現の阻害。ヒト化2G1バリアントHEF-LD-T52Sを、プレート上に固定した。アイソタイプ対照を、対照として添加した。炎症性マクロファージM1を、被覆されたプレート上に添加し、マクロファージの表面でのCCR7発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【
図36】被覆された抗ChemR23抗体を用いた、in vitroでの死滅したPMN好中球の増加。健康なボランティアからのPMNを、24時間にわたって、10μg/mLの被覆されたHEF-LDT52S、HEF-LEF及びHDLD抗体バリアントと共に、培養培地中でインキュベートし、死滅/生存キット(LIVE/DEAD(Invitrogen社))のいずれかを用いて染色した。陽性細胞のパーセンテージを、Fijiソフトウェアを用いて写真を分析することによって得た。アイソタイプ対照を、対照として添加した。Fc受容体(FcR)に結合しない突然変異バージョンのHEF-LDT52S抗体(HEF-LDT52S N297A)も添加した。
【実施例】
【0165】
抗CMKLR1抗体の生産及び選択
重鎖及び軽鎖可変ドメイン内に異なるCDR配列を有するいくつかの抗体を合成した。異なる抗体を、炎症性経路又は抗炎症性経路に向かう樹状細胞の成熟及び分化を誘導するその能力について試験した。本発明者らは、消散期における炎症状態に少なくとも影響する前記状態の消散におけるその特性を評価するために、抗体2G1(配列番号37及び配列番号49)を、及びin vitroでの抗体の産生を評価するために、3つの生殖系列の世代を選択した。
【0166】
図1に示されるように、2G1で処理したCD103及びIAbを発現するDCの検出レベルは、C7抗体で処理したDC細胞よりも低かったため、2G1及び1G1(別の合成抗体)抗体は、炎症性経路に向かう他の合成抗体(3G1及び4G1)細胞よりも強力な様式でDCの活性化及び/又は成熟を阻害することができた(このアッセイにおいて使用された方法は、実施例10.2に記載される)。
図1E及び
図1Fに示されるように、細胞の生存能力は、C7、又はレゾルビンE1を含む、他の抗体で処理した細胞と比較して、1G1又は2G1抗体による処理後に増強される。
【0167】
2G1を、ヒト化の方法である、in silicoでのCDR移植法を使用してヒト化した。CDR及びFR領域に由来する、並びに可変重鎖及び軽鎖に由来する、得られるヒト化配列を、以下の表に記載する。
【0168】
【0169】
【0170】
自己免疫及び炎症疾患の前臨床モデルに対する抗CMKLR1抗体処置の治療効能の例
(実施例1)
DSSによる大腸炎の誘導
2%(wt/vol)のDSSを自由裁量の滅菌飲料水に6日間にわたって添加することによって、8~10週齢のC57Bl/6オスマウスにおいて大腸炎を誘導した。処置を、腹腔内注射した:アイソタイプ対照hIgG1(マウス1匹あたり10μg)、毎日のRvE1(マウス1匹あたり1μg)、又は5日間で3回の2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)。体重及び糞便スコア(0:正常糞便;4:血便)パラメーターからなる大腸炎の追跡を、毎日実施した。マウスを安楽死させた時、病理の重症度を表す結腸の長さを測定した。消散指数を、Bannenbergら、2005に記載された様々な条件で決定した。
【0171】
結果:
図2に提示されるDSS動物モデルは、急性炎症モデルである。
図1は、対照抗体又はレゾルビンRvE1を受ける動物の状態よりも、抗CMKLR1抗体で処置した動物の良好な全体的状態を示す。抗CMKLR1で処置したマウスの体重は有意にあまり減少せず(
図2A)、糞便スコア(
図2B)は有意により良好であった。結腸の長さ及び消散指数に関して(
図2C及び
図2D)、抗CMKLR1又はRvE1を受ける動物は、類似する結果を呈した。
【0172】
(実施例2)
TNBSによる大腸炎の誘導
0日目に50%エタノール中、5%のハプテン化剤TNBS 200μLの直腸内注射によって、8~10週齢のC57Bl/6オスマウスにおいて大腸炎を誘導した。処置を腹腔内注射した;3日間で毎日のRvE1(マウス1匹あたり1μg)、又は3日間で2回の2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)。体重及び糞便スコア(0:正常糞便;4:血便)パラメーターからなる大腸炎の追跡を、毎日実施した(データは提示しない)。マウスを安楽死させた時、病理の重症度を表す結腸の長さを測定した。
【0173】
結果:TNBSにより誘導される大腸炎は、急性炎症の別のモデルである。
図3は、抗CMKLR1又はRvE1で処置した動物が、正常な動物(wt)と同じ結腸の長さを有することを示す。しかしながら、アイソタイプ対照で処置した動物は、より短い結腸の長さを呈した。これらの結果により、急性炎症マウスモデルに対する、RvE1のように作用する抗CMKLR1抗体の治療能力が確認された。
【0174】
(実施例3)
IL10-KOモデル-自然発症性大腸炎モデル
IL-10KOマウスは、多くは腸でのIL-10分泌による調節性T細胞機能が存在しないため、20週齢から自然発症性大腸炎を発症する。IL-10KOマウスを、この病理の臨床的特質である体重減少及び糞便稠度について、18週齢から週に3回追跡した。2週間にわたって、体重減少が5%高く、糞便スコアが高かったか、又は1に等しかった場合、抗CMKLR1抗体(2G1)又はアイソタイプ対照(hIgG1)を、腹腔内注射した(25μg/注射、週に3回)。
【0175】
結果:慢性炎症モデルを使用して、抗CMKLR1抗体処置の効能を試験した。
図4は、動物をアイソタイプ対照又は抗CMKLR1抗体で処置した場合の、体重減少のパーセンテージ(
図4A)及び糞便スコア(
図4B)の分析を示す。結果は、動物が、抗CMKLR1抗体で処置した場合にあまり体重減少せず、アイソタイプ対照を受ける動物よりも良好な糞便スコアを有していたことを示す。抗CMKLR1抗体は、したがって、慢性炎症疾患に対する治療能力を呈すると考えられる。
【0176】
(実施例4)
1型糖尿病の前臨床モデル:マウスNODモデル
8週齢のNODメスマウスを、Charles River laboratory社から取得した。これらのマウスは、12~20週齢で自然発症性1型糖尿病を発症する。糖尿病の開始を、高血糖によって測定することができる。血糖が180~234mg/dLであった場合、2週間にわたって週に3回、20μg/注射で腹腔内的に抗CMKLR1及びアイソタイプ対照を与えた。血糖が、不可逆性糖尿病に相当する600mg/dLよりも高かった場合、マウスを安楽死させた。
【0177】
結果:この1型糖尿病モデルは、同様にマウス自己免疫疾患モデルと考えられる。
図5A~
図5Cに提示される結果は、抗CMKLR1抗体で処置した動物が、血中グルコース濃度の測定によって示されるように、より良好な生存パーセンテージ及びほぼ正常な血糖を呈したことを示す。この回復は、長時間にわたって安定であり、以前に病気であった動物の全回復の可能性を示すと考えられる。抗CMKLR1抗体は、グルコースに対する許容状態を回復させた。
【0178】
(実施例5)
イミキモド誘導性乾癬様皮膚炎症
マウスにおいて乾癬を誘導することが知られるAldara(登録商標)クリームを、オスのC57Bl/6マウス(8~10週齢)に対して使用した。マウスは、1日局所用量のAldaraを受けた。処置(抗CMKLR1アゴニスト又は対照化合物)を、腹腔内注射した。
【0179】
結果:抗CMKLR1アゴニスト(2G1)は、Aldara投与後に、皮膚の厚さを減少させる(
図6A)(例えば、15日目を参照されたい)が、動物の体重は、アゴニストの投与によって影響されない(
図6B)。これらの結果は、自己免疫疾患を示す、乾癬マウスモデルへの抗CMKLR1アゴニスト化合物療法の適用を示唆する。
【0180】
(実施例6)
敗血症の前臨床モデル:マウス腹膜炎モデルに対する抗CNKLR1抗体の治療効能
Zymosan A(登録商標)(1mL中、マウス1匹あたり1mg)の腹腔内注射によって、一般的な腹膜炎を誘導する。抗CMKLR1の予防的注射を、Zymosan A注射の5分前に実施した:RvE1(マウス1匹あたり1μg)、2G1抗体(マウス1匹あたり10μg)。マウス腹膜多形核好中球(PMN)及びマクロファージを、Zymosan A注射後、2、4、8、16、24及び48時間で収集し、フローサイトメトリー分析によって計数して、消散指数(Bannenbergら、2005)を決定した。
【0181】
結果:PMN(
図7A)及びマクロファージ(
図7B)の数及び消散指数(
図7C)に関して
図7に提示される結果は、RvE1又は抗CMKLR1抗体で処置した動物が、アイソタイプ対照と比較して、同一の結果並びにより良好な消散指数と共に、わずかに少ないPMN及びマクロファージ細胞を呈したことを示す。敗血症では、わずかな差異であっても、療法にとって重要なものであり得る。したがって、これらの結果は、敗血症における抗CMKLR1抗体の適用可能性にとって非常に肯定的である。
【0182】
(実施例7)
がんの前臨床モデルに対する抗CMKLR1抗体処置の治療効能:
(実施例7.1)
同所性乳癌モデルにおける原発腫瘍の増殖及びその肺転移発症に対する抗CMKLR1抗体の効果
マウスを、3%のイソフルランで麻酔した。マウスの腹部の毛を剃り、4T1細胞(25万個)を、50μLのPBS中、インスリン注射筒(30ゲージ)を用いて乳腺に注射した。抗CMKLR1抗体(2G1)又は抗41BB抗体(3H3)又は両抗体を、4日目及び7日目に2回注射した(10μg/注射);対照抗体を、PBS中、腹腔内的に、3週間にわたって週に3回注射した(100μg/注射)。乳癌発症後の肺転移を測定するための第2の試験において、動物を、3週間にわたって週に3回、0.8mg/kgの抗CMKLR1抗体又は対照抗体(100μg/注射)で処置した。
【0183】
結果:
図8Aに示されるように、単一の化合物(2G1又は3H3)によって処置された動物は、アイソタイプ対照抗体を受ける動物と比較して、腫瘍増殖の改善を示さなかった。しかしながら、抗CMKLR1抗体と抗41BB抗体との組合せで処置された動物は、乳癌モデルにおいて腫瘍の増殖の有意な(p<0.01)減少を示す。乳癌のこのモデルはかなり侵攻性のモデルであるため、結果は肯定的と考えられる。生物発光イメージングによる肺転移に対する抗CMKLR1化合物の効果を示す、
図8Bに示されるように、抗CMKLR1処置が、対照抗体で処置された動物と比較して、肺転移を減少させることを見ることができる。リンパ節転移の分析は、抗CMKLR1化合物で処置された動物は転移を有しないが、対照の2匹の動物は転移を有することを示す(データは示さない)。これらの結果は、RvE1を模倣するアゴニスト活性を有する抗CMLKR1抗体が、抗転移効果を有することを示している。このモデルでは、本発明の抗体は、原発腫瘍発達に対する有意な効能を呈しない。しかしながら、結果は、動物を抗CMKLR1と抗41BB抗体との組合せによって処置した場合、改善を示す。
【0184】
(実施例7.2)
結腸癌モデルにおける腫瘍増殖に対する治療効果
8週齢のC57bl/6Jオスマウスを、3%のイソフルランで麻酔した。マウスの脇腹の毛を剃り、MC38細胞(0.5×106細胞/マウス)の細胞株を、50μLのPBS中、インスリン注射筒(30ゲージ)を用いて皮下注射した。8週齢のBalb/cオスマウスを3%のイソフルランで麻酔した別のモデルも使用した。マウスの脇腹の毛を剃り、CT26細胞(1×106細胞/マウス)を、50μLのPBS中、インスリン注射筒(30ゲージ)を用いて皮下注射した。
【0185】
アゴニスト性抗CMKLR1抗体(2G1)又は抗SIRPa抗体(Merck Millipore社からのp84-抗マウスSIRPa)(SIRPaは新しいチェックポイント阻害剤である)を、腫瘍接種後、d4で開始して、3週間にわたって腹腔内的に週1回(20μg/注射)、単独で、又は組み合わせて注射した。
【0186】
結果:
図9A~
図9Cに示されるように、CT26癌モデルでは、抗CMKLR1抗体はそのまま(
図9B)では、対照群と比較して腫瘍発達に対する臨床効果を示さず、抗SIRPaのみ(
図9A)でも示さなかった。しかしながら、驚くべきことに、両化合物の組合せは、適時に腫瘍増殖の阻害を可能にした(
図9C)。
図9Dに提示される別のマウス結腸癌モデルでは、抗CMKLR1は、アイソタイプ対照と比較して、腫瘍増殖の阻害における効能を示した。まとめると、2つの異なる結腸癌モデルに関するこれらの結果は、抗CMKLR1抗体アゴニストが、そのままで、又は別の治療剤と共に、腫瘍発達を予防することができることを示す。
【0187】
(実施例8)
抗TNFa又は抗α4β7抗体療法で処置されたUC又はCDヒト患者生検上でのCMKLR1発現のメタ分析
2つの主要な形態の炎症性腸疾患(IBD)である、クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)における慢性消化管炎症を永続させるシグナル伝達ネットワークは、ヒトにおいては依然として不明である。IBDを有するほぼ500人の患者及び100人の対照の分析により、本発明者らは、CMKLR1転写物が、免疫抑制剤/コルチコステロイド及び抗TNFα(インフリキシマブ)又は抗α4β7インテグリン(ベドリズマブ)療法等の免疫療法に応答しなかった重症IBD患者の炎症した結腸組織に蓄積されることをここで報告する。
【0188】
本発明者らは最初に、コルチコステロイド及び/又は免疫抑制に不応性の患者における抗TNF処置前(1週間以内)に実施された結腸粘膜生検を用いた、UC患者の3つのコホート(GSE16879(Arijsら、2009a)及びGSE12251(Arijsら、2009b)、及びGSE73661)の公共的に利用可能な転写データセットのメタ分析を実施することによって、粘膜CMKLR1転写物発現を分析した。これらの3つのコホートでは、抗TNF応答は、その最初の抗TNF輸注の4~6週後に分析された組織学的回復と定義された(全部で、n=18、非IBDコホート、n=41、UC非応答者及びn=28、UC応答者)。
【0189】
結果:分析により、CMKLR1転写物発現は、非IBD対照又は抗TNF前であり、抗TNF療法に応答するであろうUCを有する患者と比較して、抗TNF療法による処置の前後の原発性UC非応答患者の結腸生検において有意に増加することが示された(
図10A)。粘膜CMKLR1発現は、非IBD対照又は将来の応答者と比較して、抗TNFに応答しないであろう患者において、抗TNF療法の前後でクローン病患者の結腸又は回腸生検(n=24、非IBD対照、n=17、CD非応答者及びn=20、CD応答者;GSE16879(Arijsら、2009a))においても有意に増加する(
図10B)。最後に、抗α4β7(ベドリズマブ)療法で処置されたUC患者のコホート(GSE7366146)における結腸粘膜遺伝子発現分析により、CMKLR1発現が、ベドリズマブによる処置の前後の非応答者においても有意に増加することも確認された(
図11)。
要するに、メタ分析は、CMKLR1は、IBD患者、特に、処置の開始前であっても現在の免疫抑制剤又は免疫療法に応答しない患者の炎症組織において過剰発現されることを示す。本発明者らのメタ分析は、処置不応性であるUC又はCD患者からの、結腸、又はCDについてはむしろ回腸におけるCMKLR1発現が、対照的に、本発明の抗体等の抗CMKLR1抗体アゴニスト処置に応答するとこれらの患者を見なすことができる証拠を提供する。
【0190】
(実施例9)
CMKLR1発現及び抗体結合試験
- ELISA結合 CMKLR1(
図12)
CMKLR1ペプチド(273NH2-PYHTLNLLELHHTAMPGSVFSLGLPLATALAIA-COOH305)(配列番号60)(5μg/ml)を、ホウ酸緩衝剤中で一晩被覆した。飽和を、37℃で2時間にわたって、PBS-Tween 0.1%-ゼラチン0.25%用いて実施した。次いで、2G1又はhIgG1抗体を、37℃で2時間にわたって、異なる濃度で添加した。次いで、ペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体(0.8μg/ml)を、37℃で1時間添加し、TMB基質によって示した。比色反応を、TECANを用いて読み取った。
【0191】
- FACSによるCMKLR1発現(
図13A)
細胞を、PBS-FBS-EDTA中に再懸濁し、氷上で30分間、Fcブロック(1/50)と共にインキュベートした。単球、マクロファージ及び樹状細胞上での染色を、A488標識された2G1(5μg)又はA488標識されたhIgG1(5μg)を使用して実施した。
【0192】
- CMKLR1のウェスタンブロット分析(
図13B)
以前に記載されたタンパク質遊走及び移動後、2G1抗体(10μg/膜)を、4℃で一晩インキュベートし、ペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体(1:2000)を用いて示した。次いで、CMKLR1発現を、化学発光及びイメージリーダーを使用することによって検出した。ウェスタンブロット画像を、Multi Gaugeソフトウェアによって定量した。
【0193】
結果:
図12に示される結果は、抗CMKLR1抗体クローン2G1が、CMKLR1のループEL3を形成するポリペプチドに結合することができることを確認する。FACS及びウェスタンブロットにより2G1抗体を使用して評価した様々な細胞株上でのCMKLR1の発現は、ヒト腫瘍T細胞株Trp1及びU937が、CMKLR1を発現し、並びにCHO細胞及びヒト肺線維芽細胞株MRC5及びヒトNK細胞株NKLが形質導入されたCMKLR1を発現することを示した(
図13)。
【0194】
(実施例10)
骨髄系列上でのCMKLR1発現の試験
(実施例10.1)
ヒト単球の分化及び分極化
健康なボランティアの軟膜のPBMCから単球を収集し、磁気分離又は水簸によって単離した。次いで、単球を、様々なサイトカインカクテルと共に培養して、分化した未分極マクロファージ又は分極マクロファージを生成した。このプロトコールにより、異なるウェル中で炎症マクロファージの炎症性(M1)又は炎症消散性(M2)を有するために分極し、分化したマクロファージを生成することができた。単球を、完全RPMI(10%FBS、1%グルタミン、1%抗生物質を含むRPMI)中、0.5×106細胞/mLで播種し、ウェルあたり500μLの細胞懸濁液を、24ウェルプレート中に播種した。100ng/mLのM-CSFを、細胞の分化のために培地と共に添加した。細胞を5日間インキュベートし、3日目に、培地を、100ng/mLのM-CSFを補完した新鮮な培地と交換した。分極期について、3日の間に、100ng/mLのLPS及び20ng/mLのIFNgのLPS-IFNgの溶液に、アイソタイプ対照(mIgG1若しくはhIgG4)(2μg/ml)若しくは抗CMKLR1抗体(2μg/ml)(2G1若しくは2G4、H6、BZ332若しくは84939)又はC15ペプチド(10nM)若しくはRvE1(10ng/ml)を補完して、炎症性マクロファージを生成させた。炎症性-IFNgマクロファージを、培養培地中にIFNg(20ng/mL)のみを添加することによって生成することもできた。炎症消散性マクロファージの分極のために、細胞を、20ng/mLのIL-4と共にインキュベートした。分化及び/又は分極後、表現型及び機能的サイトカイン/ケモカイン放出を、FACS分析、ELISA及びウェスタンブロットによって試験した。
【0195】
(実施例10.2)
マウスマクロファージ及びDCの単離及び分化
- マウス骨髄由来マクロファージの単離
骨髄細胞を収集し、100ng/mLのマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含有する、10%FBS、グルタミン及び抗生物質を添加したRPMI培地中で5日間培養し、マクロファージ分化を誘導した。マクロファージを収集し、2日間、IFNg(20ng/ml)及びLPS(100ng/ml)と共にインキュベートして、炎症性分極化を誘導したか、又はIL-4(20ng/ml)と共にインキュベートして、炎症消散性分極化を誘導した。マクロファージ分極化の間に、2μg/mlで処置を添加した。
【0196】
- 骨髄由来樹状細胞の生成
骨髄細胞を収集し、10%FBS、グルタミン及び抗生物質を添加したRPMI培地中で培養し、20ng/mlのGM-CSFにより、7日間にわたって樹状細胞分化を誘導した。次いで、未熟樹状細胞(iDC)を収集し、LPS(100ng/ml)と共に24時間培養して、iDCからmDCへの成熟を誘導した。分化及び成熟の間に、2μg/mlで処置を添加した。
【0197】
上で説明したマウス炎症性又は炎症消散性マクロファージの分化後、細胞を、培地の存在下でインキュベートし、アイソタイプ対照、抗CMKLR1抗体:クローンH6及びBZ194、C15ペプチド、目的の抗CMKLR1抗体である2G1又はRvE1を使用した。次いで、IL10、CCL17及びIL12p40の分泌を、ELISAによって評価した。BD社からのELISAキットを使用して、上清中でサイトカイン分泌を測定した。上清を、IL10サイトカインについては1/10に、CCL17サイトカインについては1/50に、及びIL12p40サイトカインについては1/100に希釈した。
【0198】
- ELISAによるサイトカイン分泌試験
サイトカイン分泌を、BD社の製造業者の使用説明書に従ってELISAによって検出した。簡単に述べると、上清を適切な緩衝剤中に希釈し、捕捉抗体を用いた一晩の被覆及び飽和後、2時間にわたってインキュベートした。次いで、検出用ビオチン結合抗体を用いてサイトカインを示し、シグナルを、ビオチン-ストレプトアビジン結合ペルオキシダーゼ系を用いて増幅した。BD Bioscience社により供給されたTMBを、基質として使用し、TECANを用いて比色反応を読み取った。
【0199】
- FACSによって分析される活性化細胞マーカー
樹状細胞を、PBS-FBS-EDTA中に再懸濁し、氷上で30分間、ライブアンドデッド(LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Dead Cell Stains Yellow-Life Technologies社)と共にインキュベートした。CD11c-BV711、CD11b-APCCy7、I/Ab-APC、CD103-PerCPCy5.5、CCR7-V450、CD40-PeCy7、CD80-PE、CD86-FITC(全てBD Pharmingen社によって供給された)の染色を実施した。
【0200】
- ERK/Aktのウェスタンブロット分析
マウス炎症性マクロファージ(M1)を、M-CSFを含む骨髄から生成し、IFN-ガンマ(IFNg)及びLPSを用いて分極化した。簡単に述べると、骨髄細胞を、大腿骨を洗い流すことによって収集し、100ng/mLのmM-CSFと共に5日間培養した後、20ng/mLのIFNg及び100ng/mLのLPSを用いて24時間にわたって分極化させた。次いで、RPMI FBS2%培地を用いて24時間にわたって、それらからFBSを枯渇させた。最後に、マウス炎症性マクロファージを、様々な時間:5、10、及び30分で2μg/mLの2G1抗体を用いて処理した。細胞を、RIPA緩衝剤中に収集した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質キットアッセイによって測定した。タンパク質を、95℃で5分間加熱することによって変性させ、DTT及びLaemmli溶液中で希釈した。遊走及び移動後、ニトロセルロース膜を、TBS-T中の5%BSAで2時間ブロックした。抗ホスホ-ERK抗体及び抗ホスホ-Akt抗体(1:1000)を、4℃で一晩、膜と共にインキュベートし、ペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体(1:2000)を用いて示した。ウェスタンブロット画像を、Multi Gaugeソフトウェアによって定量した。
【0201】
(実施例10.3)
ヒト血液の単球並びにマウス骨髄の骨髄性細胞及び好中球上での炎症刺激後のCMLKR1発現
健康なボランティアの軟膜のPBMCからヒト単球を収集し、磁気分離又は水簸によって単離した。次いで、単球(CD14陽性細胞)を、培地中で培養し、16時間又は48時間、異なる炎症性刺激:LPS(100ng/ml)又はTNFa(100U/ml)又はIL6(20ng/ml)で処理した。
【0202】
マウス単球(CD11b+Ly6G-SSClow)及び好中球(CD11b+Ly6G-SSClow)を、10%FBS、グルタミン及び抗生物質を添加したRPMI培地中で収集及び培養された骨髄細胞から取得した。次いで、細胞を、培地中で培養し、16時間又は48時間、異なる炎症性刺激:LPS(100ng/ml)又はTNFa(100U/ml)又はIL6(20ng/ml)で処理した。
【0203】
CMLKR1の発現を、市販の抗CMKLR1抗体(ヒト抗ChemR23:クローン84939及びマウス抗ChemR23:クローン477806)を使用してFACSによって測定した。
【0204】
結果:
図14に示されるマウス骨髄系列中でのCMKLR1の発現の分析により、単球及びマクロファージ並びに樹状細胞上でのタンパク質の良好な発現が示された。
図15には、ヒト単球及びマウス骨髄の骨髄性細胞及び好中球上でのCMKLR1の発現が示される。この発現は、LPS、TNFa又はIL6等の炎症刺激によって明確に増加し(48時間後、対照と比較して少なくとも2倍)、骨髄性細胞系列上でのCMKLR1発現及び炎症中の過剰発現が、炎症の消散を下方調節する、及び/又は誘導するための治療的手法であり得ることを確認するものである。DC活性化マーカーを、FACSによって分析したところ、
図16に示される結果は、細胞をRvE1脂質又は2G1抗体で処理した場合、賦形剤又はアイソタイプ対照と比較して、CD80、CD86、CD103、CD40及びIAbの発現の強力な減少を示す。これらの結果は、2G1抗体がRVE1と同様にDC上のCMKLR1経路に対して活性であることを示す。次いで、本発明者らは、ウェスタンブロットによってマウスマクロファージ上のCMKLR1活性化経路を分析した。
図17は、抗CMKLR1抗体2G1が、インキュベーションの10~30分後にAktとErkタンパク質との両方の活性化を誘導することができたことを示す。これらの結果は、2G1抗体がRvE1脂質と同様、CMKLR1受容体に対するアゴニスト特性を示すことができることを示している。
【0205】
(実施例11)
抗CMKLR1抗体を用いたケメリン誘導性CMKLR1活性化に対する競合試験
方法:
抗CMKLR1抗体の存在下でのCMKLR1受容体によるケメリン依存的B-アレスチン動員を測定するための競合アッセイ:
アッセイの前日に、CHO-K1 CMKLR1細胞(Discover'X社の参照番号93-0313E2)を、予め温めた細胞試薬中に播種した後、(Discover'X社の参照番号15-103)として100μl/ウェルの細胞で96ウェルプレートに播種し、5%CO2加湿インキュベーター中、37℃で48時間インキュベートした。抗CMLKR1抗体を希釈し(1μM~1nMの3倍希釈液の7点系列で22倍)し、細胞を抗体と共に37℃で30分インキュベートした。次いで、細胞を、37℃で90分、供給業者のプロトコール(Discover'X社の参照番号92-1036)に従ってケメリン(2又は6nM)で刺激した。発光を、希釈標準検出溶液を細胞に添加した後、0.5s積分でプレートリーダーを用いて測定した。
【0206】
CMKLR1受容体によるAMPcの産生における抗CMKLR1抗体とケメリンとの競合の測定
実験の前日に、CHO-K1 CMKLR1 Gi細胞(Discover'X社の参照番号95-0080C2)を、予め温めた細胞試薬中に播種した後、(Discover'X社の参照番号15-103)として100μl/ウェルの細胞で96ウェルプレートに播種し、5%CO2加湿インキュベーター中、37℃で24時間インキュベートした。
【0207】
ケメリンアゴニスト(10-7μM~10-10Mの3倍希釈液の7点系列中の6倍)(Discover'x社の参照番号92-1036又はR&D Systems社からの2324-CM-025)と、フォルスコリン(40μM)(cAMP活性化剤)(Discover'x社の参照番号92-0005)との混合物を、37℃で30分、細胞に添加した;又は細胞を、抗CMKLR1抗体(連続希釈液:1μM~1nMの3倍希釈液の7点系列中の6倍)と共に37℃で30分予備インキュベートした。次いで、ケメリン(2nM)+フォルスコリン(60nM)との混合物を、37℃で30分、細胞に添加した。cAMPの検出のために、抗体試薬及びcAMP標準希釈検出溶液を、室温で1時間にわたってプレートに添加した後、cAMP溶液Aを添加し、細胞を、暗室中、室温で3時間インキュベートした。生物発光を、0.5s積分を用いてプレートリーダーを用いて読み取った。
【0208】
結果:本発明の抗体がケメリン誘導性CMKLR1活性化のアンタゴニストであるかどうかを試験するために、2つのアッセイを実施し、その結果を
図18に提示する。フォルスコリン依存的cAMP産生のケメリン誘導性阻害を、
図18Aに示す(黒丸又は白四角);本発明の抗CMKLR1抗体は、対照(灰色の菱形)と比較して、産生のこの阻害(黒丸又は白四角)を戻すことができなかった。
図18Bに提示されるベータ-アレスチンのケメリン誘導性活性化は、本発明の抗CMKLR1抗体が、ベータ-アレスチンのケメリン依存的活性化を有意に改変しないことを示す(黒色の菱形と比較した白丸)。本発明の抗体は、CMLKR1-ケメリン相互作用のアンタゴニスト活性を有しない。更に、本発明の抗体は、ケメリン誘導性CMKLR1シグナル伝達経路を誘導することができず、これらの抗体がCMLKR1経路のケメリンのアゴニストではないことを確認する。
【0209】
(実施例12)
CD45RbhighT細胞移入慢性大腸炎マウスモデル
方法:CD45RbhighCD4 T細胞を、ナイーブなマウスの脾臓から単離し、磁気選別によってCD4 T細胞の陰性選択後にARIA FACS上で選別した後、100μLのPBS中の0.5×106個の細胞を、6週齢のメスRag1ノックアウトマウスに腹腔内注射した。抗CMKLR1抗体(2G1)又はアイソタイプ対照を、1mg/kgで週に3回、3週間にわたるCD45RbhighCD4 T細胞移入後、32日目から投与した。体重の追跡を、週に3回評価し、体重変動を、初期体重に対して決定した。*p<0.05、**p<0.01。
【0210】
結果:
図19は、抗CMLKR1抗体又はアイソタイプ対照で処置された動物の経時的な体重変動のパーセンテージを提示する。最初の30日間にわたって同じ初期体重展開を呈した両群を、抗CMLKR1抗体又はアイソタイプ対照で処置する。抗CMKLR1で処置されたマウスは、体重が増え続けるが、対照的に、対照マウスは、体重が減少し始め、この対照群において予測されるような慢性大腸炎の発達を示す(
図19A)。結腸の修復に対応する組織の厚さの減少が、抗CMKLR1で処置されたマウスにおいて観察された。線維性組織の減少も観察された(
図19B)。異なるスコアは、病理の重症度を算出するために使用された解剖病理スコアを表す。炎症スコアを含むスコアは、抗CMKLR1で処置されたマウスにおいてより低かった(
図19C)。本発明者らは、大腸炎の第3のモデル、ここでは、慢性炎症モデルにおいて、本発明の抗CMKLR1抗体が、大腸炎等の慢性炎症及び自己免疫疾患を処置するために興味深いことを確認する。
【0211】
(実施例13)
マウス肝癌腫瘍モデルの全生存に対する抗腫瘍効果
方法:マウスを、キシラジン/ケタミンのカクテルで麻酔した。開腹後、腫瘍Hepa 1.6細胞を、PBS中、門脈を介してPBS中に注射した(2.5×10
6細胞/100μL)。処置を、腫瘍注射の4日後に開始した。抗CMKLR1抗体(2G1クローン)及びhIgG1アイソタイプ対照を、2週間、週に3回、0.8mg/kgで注射した。抗PD1モノクローナル抗体を、PBS中、腹腔内的に2週間、週に2回注射した(8mg/kg)。抗CMKLR1と抗PD1抗体との組合せも同様に試験した(それぞれ、0.8mg/kg及び8mg/kg)。全生存を、60日間追跡し、それぞれの条件での生存のパーセンテージを、
図22に報告した。
【0212】
結果:
図20に示されるように、抗CMKLR1又は抗PD1抗体で処置された動物は、7匹の処置された動物に対して1匹のみ(処置された動物の15%)について、その生存率を延長したと見られたが、これは、部分寛解(PR)を示している。しかしながら、抗PD1と抗CMKLR1抗体との組合せで処置された動物は、生存率の有意な増大(15%から45%)を可能にし、動物は処置後60日間生存したが、これは、完全寛解(CR)を示している。この結果は、HCC腫瘍モデルに対する治療的組合せ(抗PD1/抗CMKLR1抗体)の予想外の効率を示す。
【0213】
(実施例14)
異なる細胞株中での抗体産生
IGHV3-23*04(配列番号41に対応する)、IGHV1-46*01及びIGHV7-4-1と命名された、3つのヒト生殖系列フレームワーク中に、2G1重鎖のCDRを移植した。IGKV1-13*02(配列番号50に対応する)、IGKV6-21*01及びIGKV3-11*01(IMGT命名法)と命名された、3つのヒト生殖系列フレームワーク中に、2G1軽鎖のCDRを移植した。それぞれの配列を、ヒト免疫グロブリンの定常断片に融合し、哺乳動物細胞中に同時トランスフェクトして、ヒト化抗体を産生させた。より詳細には、抗ChemR23抗体の重鎖の構築のために、抗体可変ドメインVH配列を合成し、ヒトIgG1のFcを含有するpFUSE-CHIg-hG1発現プラスミド(Invivogen社、ToulouseからのpFUSE-CHIg-hG1ベクター)中にEcoRVによってクローニングした。抗ChemR23抗体の軽鎖の構築のために、可変ドメインVLを合成し、ヒトCLカッパを含有するpFuse2CLIg-hk発現プラスミド(Invivogen社、ToulouseからのpFuse2CLIg-hk)中にBsiWIによってクローニングした。哺乳動物HEK又はCHO細胞中で、本発明者らは、リポフェクタミン法により、VH-hFcG1を含有するプラスミドと、VL-CLカッパを含有するプラスミドとを同時トランスフェクトした。3~7日間インキュベートした後、上清を回収し、サンドイッチELISAアッセイによって定量した。クエン酸0.1M pH3溶出緩衝剤を用いるプロテインAクロマトグラフィー(HiTrap、GeHealthcare社)上での親和性によって、上清を精製することができた。精製された抗体を、PBS中に透析し、濃縮した。それらを、UV(A280nm)によって定量し、C7抗原特異的ペプチドに対する活性アッセイにおいて試験した。
【0214】
結果:
図21に示されるように、重鎖に関するヒト生殖系列IGHV3-23
*04は、哺乳動物細胞中で抗体を産生するのにより効率的であった。他のフレームワークに含まれる突然変異は、生産性の高い鎖を誘導しなかった。軽鎖については、ヒト生殖系列IGKV1-13
*02が、ヒト化抗体の産生において最良であり、他の生殖系列は、生産性を1log減少させた。ヒト化IGHV3-23
*04とIGKV1-13
*02との両方の組合せは、高収率のヒト化抗CMKLR1抗体の生産にとって好適である。
図22に示されるように、この組合せは、満足のいく収率で、十分な量の抗体の生産を可能にする。
【0215】
したがって、生殖系列IGHV3-23*04及び生殖系列IGKV1-13*02を、抗体の更なるヒト化のために選択した。
【0216】
いくつかの突然変異を、重鎖又は軽鎖中に付加した。重鎖では、突然変異G33A(CDR1中)、P60A(CDR2中)、R94K(FR3中)を置換して、ヒト化を増加させ、アミノ酸D61(CDR2中)を、アミノ酸E又はAで置き換えて、抗体の脱アミノ化のリスクを低下させることができた(配列バリアントvB-vD)。軽鎖では、突然変異S24R、S27Q、M33L(CDR1中)、T51A(CDR2中)、Y71F(FR3中)を置換して、ヒト化を増加させ、アミノ酸N92を、アミノ酸Qで置き換えて、抗体のグリコシル化のリスクを低下させることができた(配列バリアントvB-vD)。それぞれの配列を、ヒト免疫グロブリンの定常断片に融合し、哺乳動物細胞中に同時トランスフェクトして、ヒト化抗体を産生させた。その結果、重鎖と軽鎖との全ての組合せが抗体を産生することが示された。重鎖と軽鎖との組合せに応じて、生産性は哺乳動物細胞中で示差的に影響されるが、抗体の治療適用を考慮すると、常に効率的な生産にとって十分な量にあると考えられる。
【0217】
(実施例15)
in vitroで産生され、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインの特定の生殖系列から生じた抗CMKLR1抗体の認識能力
定量的ELISAアッセイのために、ロバ抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号709-005-098)を、ホウ酸緩衝剤(pH9)中、1.3μg/mlでプラスチック上に固定し、抗体を含有する上清を添加して結合を測定し、標準抗体と比較した。インキュベーション及び洗浄後、マウス抗ヒトカッパ抗体(Ose Immunotherapeutics社、参照番号NaM76-5F3)を添加し、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号715-036-151)によって検出した。ELISAの曝露を、従来の方法によって行った。
【0218】
活性ELISAアッセイのために、ロバ抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号709-005-098)を、ホウ酸緩衝剤(pH9)中、1.3μg/mlでプラスチック上に固定し、精製抗体を添加して、野生型2G1と比較した、BSA1%緩衝剤中での結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ビオチン化された抗原特異的ペプチド(synpeptide社によって合成された、Biot-C7ペプチド:ビオチン化NH2-PYHTLNLLELHHTAMPGSVFSLGLPLATALAIA-COOH、配列番号60)、次いで、ペルオキシダーゼ-ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号016-030-084)を添加し、従来の方法によって示した。
【0219】
VHvAv3-23
*04(配列番号41-89.8%ヒト化)及びVLvAv1-13
*01(配列番号50-82.1%ヒト化)から生じた重鎖と軽鎖との組合せは、野生型抗体2G1のような抗原特異的ペプチド(C7ペプチド)に対する良好な結合活性を有するヒト化抗体を生成した。
図23に示されるように、ヒト化抗体可変ドメイン鎖の組合せは、2G1に由来した(重鎖可変ドメインについては、HAはVHvAv3-23
*04及び配列番号4に対応する;HCは配列番号42に対応する;HDは配列番号43に対応する;軽鎖可変ドメインについては、LAは配列番号50に対応する;LCは配列番号52に対応する;LDは配列番号53に対応する)。
【0220】
全ての組合せが、野生型抗体2G1と少なくとも同じ活性で抗原特異的ペプチド(C7ペプチド)に結合した。一部の場合(HCLC、HCLD、HDLC及びHDLDの組合せ)、結合は、生殖系列抗体HALA及び野生型抗体2G1よりも更に良好である(
図23)。
図24に示されるように、ヒト化抗体のED50(ng/ml)は、2G1抗体のED50と少なくとも同等であり、多くの場合、より良好である。
【0221】
(実施例16)
CCR7内在化に対する生物学的効果
材料および方法。マクロファージを、5日間にわたって100ng/mLのM-CSFを用いて、健康なボランティアの単球から生成させた。次いで、マクロファージを収集し、20ng/mLのIFNγの存在下、10mg/mLの被覆されたmAbと共にインキュベートして、M1炎症性マクロファージを得た。次いで、M1を、フローサイトメトリーによってCXCR4及びCCR7について表現型決定し、上清中に放出されるサイトカインを、ELISAによって投薬した。樹状細胞を、6日間にわたって50nm/mLのGM-CSF及び20ng/mLのIL-4を用いて、健康なボランティアの単球から生成させた。次いで、DCを、フローサイトメトリーによってCCR7について表現型決定した。
【0222】
結果:2G1及び全てのヒト化された2G1バリアント(HALA、HCLC、HCLD、HDLC及びHDLD)を、プレート上に固定した。アイソタイプ対照を、対照として添加した。FcRγ結合を防止する2つのアイソタイプ、すなわち、2G1-N297A(FcγR結合を減少させるためにN297Aにおいて突然変異した2G1wt)、及び2G4(ヒンジ領域を安定化するためにS228Pにおいて突然変異したアイソタイプIgG4を有するwt)も添加した。炎症性マクロファージM1を、48時間にわたって被覆されたプレート上に添加し、マクロファージの表面でのCCR7発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【0223】
図25に示されるように、2G1及び全てのヒト化2G1バリアントは、炎症性マクロファージ(M1)の表面でのCCR7の発現を減少させることができた。しかしながら、CCR7の内在化は、FcRγ結合を防止するアイソタイプIgG1-N297A又はIgG4に関して観察されず、アイソタイプIgG1がこの生物活性を得るためには好ましかったことを示している。
【0224】
(実施例17)
好中球のアポトーシス及び死滅
好中球は通常、炎症部位に位置し、その存在は炎症プロセスを持続させ、それによって、炎症の消散が開始されるか、又は積極的に持続されるのを防ぎ、慢性炎症をもたらし得る。好中球アポトーシスは、好中球の組織毒性的内容物の放出を防止し、抗炎症効果を発揮する。
【0225】
図26Aに示されるように、好中球の生死比は、本発明の抗体で処理した細胞においてより高く、それにより、本発明のアゴニストのこれらの細胞に対する効果を示す。
【0226】
カスパーゼ-3発現
材料および方法:健康なボランティアからのPMNを、様々な時間にわたって、10μg/mLの被覆されたAbと共に培養培地中でインキュベートし、カスパーゼ-3染色のために収集し、ウェスタンブロットにより分析した。カスパーゼ-3発現の強度を、WB上で算出した。
【0227】
結果:
図26Bに示されるように、抗CMKLR1アゴニストの投与は、対照抗体で処理した細胞と比較して、カスパーゼ-3活性を増強する。抗体HALAは、2G1抗体と比較して、カスパーゼ3活性に対するより高い効果を示す。2G1 WT及びHALAは、カスパーゼ-3の切断を増加させるが、これは、ChemR23誘発が、カスパーゼ-3依存的アポトーシスをもたらすことを意味する。
【0228】
死滅したPMNのパーセンテージ及びROS試験(
図26C):健康なボランティアからのPMNを、24時間又は5時間にわたって10μg/mLの被覆されたAbと共に培養培地中でインキュベートし、それぞれ、死滅/生存キット(LIVE/DEAD(Invitrogen社))又は反応性酸素種(ROS)の特異的マーカーのいずれかで染色した。陽性細胞のパーセンテージを、ImageJソフトウェアを用いて写真を分析することによって得た。
【0229】
結果:2G1及び2G1の全てのヒト化バリアントは、24時間後にPMNの死滅を増加させる。48時間で、IgG1対照及びHALAバリアントと共にインキュベートした死んだ細胞のパーセンテージは類似しており、これは、抗体が、CMKLR1シグナル伝達だけを誘発することによって、PMNにおけるプログラム細胞死を促進することを示している。2G1及び2G1の全てのヒト化バリアントは、PMNの死滅を促進し、したがって、ヒト化バリアントは炎症消散特性を保持する。2G1及びHALAバリアントは、5時間後にPMNによるROS産生を増加させる。
【0230】
図27Bに示されるように、ChemR23陽性細胞(マクロファージ及び好中球)のパーセンテージは、炎症が誘導される時に増加する。しかし、滲出液中の好中球のパーセンテージは、抗CMKLR1抗体で処置した動物においては有意に減少しないが(
図27C;黒色の四角)、滲出液中のマクロファージの全体的なパーセンテージはわずかに増強される(
図27D)。これは、CMKLR1アゴニストの投与が、滲出液中の骨髄性細胞の全体数を減少させず、主に炎症部位で好中球のアポトーシスに対する効果を有することを示す。
図27E及び
図27Fに示されるように、死んだ好中球のパーセンテージは、CMKLR1のアゴニストが投与される時、並びにその死滅の時に増加する。好中球集団は滲出液中ではなく、炎症部位で影響されるため、これらの結果は、炎症の消散における遅延を処置するためのCMKLR1のアゴニストの正の効果を示す。
【0231】
結論として、炎症部位での好中球のアポトーシスの誘導を除いて、本発明の抗体による処置は、全ての好中球集団のアポトーシスをもたらさない。この特徴は、副作用を低減させるのに有利であり得る。
【0232】
(実施例18)
好中球の移動
好中球は、動員後に炎症部位に遊走し、それによって、炎症プロセスを開始、増強及び/又は持続させる。
【0233】
材料および方法
ヒト内皮細胞(HDMEC)を、ゼラチンで被覆されたトランスウェル中で24時間インキュベートし、100U/mLのTNF-アルファと共に、又は炎症状態なしで一晩活性化した。次いで、健康なボランティアまたはANCA患者からのPMNを、HDMECの単層を含有するトランスウェル中で4時間インキュベートした。4時間の移動アッセイの間に、10μg/mLの抗体(Iso Ctrl及び2G1)を、100U/mLの+/-TNF-アルファと共に添加した。トランスウェルのより低く移動した部分を収集し、移動したPMNを、計数ビーズを使用するフローサイトメトリーによって計数した。
【0234】
結果
2G1で処理された好中球は、対照化合物で処理された細胞と比較して、低い移動能力を有する(
図28A)。2G1は、PMN及び内皮細胞が健康なボランティア及びAIDS患者においてTNFaで活性化された場合、特に、炎症条件下で内皮単層を通るPMN移動を回避する(
図28B)。
【0235】
本発明の抗体は、好中球の移動能力を低下させる能力を有する。
【0236】
(実施例19)
CD62Lの発現
材料および方法:健康なボランティアからのPMNを、様々な時間にわたって、10μg/mLの被覆されたAbと共に培養培地中でインキュベートし、CD62L染色のために収集し、フローサイトメトリーにより分析した(
図29、左パネル)。本発明の抗体と共にインキュベートした細胞中でのCD62Lの細胞表面発現は、抗体の非存在下でインキュベートした細胞と比較して減少する。脱落によって放出された可溶型のCD62Lを、被覆したAbと共にインキュベートしたPMNの上清中でELISAによって検出する。抗ChemR23抗体によるPMNの処理は、アイソタイプ対照条件と比較して、可溶型CD62Lの濃度を増加させる(
図29、右パネル)。
【0237】
(実施例20)
中皮腫モデルの生存
CMKLR1のアゴニストを用いて、図面の簡単な説明に例示された方法に従って処置されたマウスは、対照抗体で処置されたマウスよりも高い生存率を有し、それによって、中皮腫を処置するための本発明による化合物の正の効果を示す(
図30)。
【0238】
(実施例21)
CRCモデル
図31Aに示されるように、腫瘍体積は、対照抗体と比較して、本発明の抗CMKLR1抗体で処置された動物において減少する。いくつかの場合、完全寛解も観察され、それにより、CRCを処置するための本発明による化合物の正の効果を示す。
【0239】
さらに、
図31Bに例示されるように、抗CMKLR1モノクローナル抗体(OSE-230)を用いた処置は、糞便スコアの低下及び腫瘍数の減少をもたらす。
【0240】
(実施例22)
自己免疫性脳脊髄炎実験モデル
このモデルでは、EAEモデルにおける本発明の抗体の治癒的投与は、対照抗体で処置された動物と比較して、体重の減少をもたらさない(
図32A)。しかし、抗CMKLR1抗体を用いて処置を実施する場合、疾患スコアは有意に減少する(
図32B)。疾患スコアはアゴニスト化合物で処置された動物において約30%低いため、抗CMKLR1抗体は、対照と比較して、処置の10日後すぐにスコアの最大の改善をもたらす。したがって、抗CMKLR1化合物による処置は、自己免疫性脳脊髄炎を処置するのに有効であることが示される。
【0241】
(実施例23)
CDRアミノ酸残基の最適化
HDLDバリアントの重鎖又は軽鎖中にいくつかの突然変異を付加して、IEDBソフトウェア及びHLA-II予測ソフトウェア(NetMHCpanII法)を用いてin silicoで予測された免疫原性に関与するアミノ酸を置換した。
【0242】
非常に多数のアミノ酸のあり得る突然変異のうち、本発明者らは、生成物の生物活性に実質的且つ不適切に影響しないいくつかの非常に有利なものを試験及び同定したことが更に強調される。専門知識は、以後記載される選択をもたらす。
【0243】
重鎖では、CDR2中のD61E(HD-61E、配列番号89)、CDR2中のR52G(HD-R52G、配列番号90)、又はCDR2中のR52aG、A49S、N52S及び Y53S(HEF、配列番号91)のアミノ酸置換を達成して、免疫原性を低下させた。軽鎖では、CDR3中のN92のアミノ酸を、アミノ酸S(LD-N92S、配列番号92)又はQ(LD-T52S、配列番号93)で置換して、翻訳後改変を防止した。CDR2中のT52Sも置換して、LD-N92Sバリアントにおける免疫原性を低下させた。CDR3中のN92Q及びCDR2中のT52S、T55E、及びフレームワーク2中のW47Lを置換して、LEFバリアント(配列番号55)における免疫原性を低下させた。それらの配列は、以下の表に示される。
【0244】
【0245】
以下の実施例に詳述されるように、全てのあり得る組合せのうち、軽鎖LDT52Sを含む抗体、特に、HEF-LDT52Sバリアントが、特に有利である。試験した他の抗体と比較して、免疫原性を低下させるように最適化されたHEF-LDT52Sは、生物学的機能を維持しながら、高い結合活性及び安定性を呈する。
【0246】
それぞれの配列を、ヒト免疫グロブリンの定常断片に融合し、哺乳動物細胞中に同時トランスフェクトして、ヒト化抗体を産生させた。その結果、重鎖と軽鎖との全ての組合せが抗体を産生することが示された。重鎖と軽鎖との組合せに応じて、生産性は哺乳動物細胞中で示差的に影響されるが、抗体の治療適用を考慮すると、常に効率的な生産にとって好適な量にあると考えられる。
【0247】
(実施例24)
in vitroで産生された抗CMKLR1抗体の認識能力
活性ELISAアッセイのために、ロバ抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号709-005-098)を、ホウ酸緩衝剤(pH9)中、1.3μg/mlでプラスチック上に固定し、精製抗体を添加して、野生型2G1と比較した、BSA1%緩衝剤中での結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ビオチン化された抗原特異的ペプチド(synpeptide社によって合成された、Biot-C7ペプチド:ビオチン化NH2-PYHTLNLLELHHTAMPGSVFSLGLPLATALAIA-COOH、配列番号60)、次いで、ペルオキシダーゼ-ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearch社;USA;参照番号016-030-084)を添加し、従来の方法によって示した。
【0248】
図33に示されるように、2G1に由来するヒト化抗体可変ドメイン鎖の組合せ(重鎖可変ドメインについては、HDは配列番号43に対応し、HEGは配列番号91に対応する;軽鎖可変ドメインについては、LDは配列番号53に対応する;LD-T52Sは配列番号93に対応し、LEFは配列番号55に対応する)は、生殖系列抗体HALA及び抗原特異的ペプチド(C7ペプチド)に対する野生型抗体2G1よりも良好な結合活性を有するヒト化抗体を生成した。
【0249】
(実施例25)
安定性アッセイ
それぞれの精製されたヒト化抗ChemR23抗体(HALA、HDLD、HD-LDT52S、HEF-LDT52S、HEF-LEF)を、4℃又は37℃で7日間インキュベートした。7日後、精製抗体の結合を、ELISAアッセイによって分析し、凝集体の形成を、ゲル濾過(Superdex 200 10/300GL、GeHealthcare社)によって分析した。
【0250】
図34Aに示されるように、全ての精製抗体は、37℃、4℃、又は-80℃で類似する結合活性を呈した。
図34Bに示されるように、凝集体のパーセンテージは、HDLD及びHEF-LDT52Sについて、37℃で7日後に変化しなかった。
【0251】
(実施例26)
CCR7内在化に対する生物学的効果
ヒト化2G1バリアントHEF-LD-T52Sを、プレート上に固定した。アイソタイプ対照を、対照として添加した。炎症性マクロファージM1を、48時間にわたって被覆されたプレート上に添加し、マクロファージの表面でのCCR7発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【0252】
図35に示されるように、ヒト化2G1バリアントHEF-LD-T52Sは、アイソタイプ対照と比較して、炎症性マクロファージ(M1)の表面でのCCR7の発現を減少させることができた。免疫原性を低下させるように最適化されたヒト化2G1バリアントHEF-LD-T52Sは、2G1抗体の機能的特性を保存していた。
【0253】
(実施例27)
PMNの生存に対する生物学的効果
健康なボランティアからのPMNを、24時間にわたって、10μg/mLの被覆されたHEF-LDT52S、HEF-LEF及びHDLD抗体バリアントと共に、培養培地中でインキュベートし、死滅/生存キット(LIVE/DEAD(Invitrogen社))のいずれかを用いて染色した。陽性細胞のパーセンテージを、Fijiソフトウェアを用いて写真を分析することによって得た。アイソタイプ対照を、対照として添加した。Fc受容体(FcR)に結合しない突然変異バージョンのHEF-LDT52S抗体(HEF-LDT52S N297A)も添加した。
図36に示されるように、2G1並びに2G1の全てのHEF-LDT52S、HEF-LEF及びHDLDヒト化バージョンは、PMNの死滅を促進し、したがって、ヒト化バリアントは、炎症消散特性を保持する。
【0254】
ヒト化HEF-LDT52Sバリアントは、免疫原性を低下させるように最適化された。この最適化されたバリアントは、生物学的機能を維持しながら、高い結合活性及び安定性を維持する。
【0255】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケメリン様受容体1(CMKLR1
)に結合する抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片であって、
a. 3つのCDR VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含む抗体重鎖可変(VH)ドメインであって、
- VHCDR1が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択され;
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61からなる群から選択され;
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16からなる群から選択される、抗体重鎖可変(VH)ドメイン;並びに
b. 3つのCDR VLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含む抗体軽鎖可変(VL)ドメインであって、
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され;
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号33からなる群から選択され;
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3
)に特異的に結合する、請求項1に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
配列番号2若しくは配列番号59のアミノ酸配列を含むポリペプチド内に位置するエピトープ、又は配列番号60のアミノ酸配列内に位置するエピトープに特異的に結合する、請求項2に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
CMKLR1のレゾルビンE1様アゴニストである
、請求項1
から3のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
- VHCDR1が、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択され;及び/又は
- VHCDR2が、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号61からなる群から選択され;及び/又は
- VHCDR3が、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群から選択される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
- VLCDR1が、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号23からなる群から選択され;及び/又は
- VLCDR2が、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号33からなる群から選択され;及び/又は
- VLCDR3が、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群から選択される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインを含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項9】
配列番号38、配列番号39、配列番号40及び配列番号62からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号54、配列番号55及び配列番号56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
以下のCDR:配列番号4のVHCDR1、配列番号12のVHCDR2、配列番号13のVHCDR3、配列番号19のVLCDR1、配列番号26のVLCDR2、及び配列番号35のVLCDR3を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
以下のフレームワーク:配列番号65のVHFR1、配列番号67のVHFR2、配列番号69のVHFR3、配列番号71のVHFR4、配列番号72のVLFR1、配列番号73のVLFR2、配列番号76のVLFR3及び配列番号77のVLFR4を含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項12】
配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む、請求項
10又は1
1に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項13】
in vitro及び/又はin vivoでCMKLR1陽性細胞中のベータ-アレスチンシグナル伝達経路を活性化しない、請求項1から1
2のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項14】
in vitro及び/又はin vivoでCMKLR1陽性細胞中の有意な枯渇を示さない、請求項1から1
3のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項15】
CMKLR1への結合についてケメリンと競合しない、及び/又はCMKLR1へのケメリンの結合を阻害しない、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項16】
ヒト化モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片である、請求項1から1
5のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項17】
CMKLR
1に特異的に結合す
る抗体又はその抗原結合性断片であって、(i)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号61に記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるVHCDR2、及び(ii)配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるVHCDR3を含む抗体重鎖可変ドメイン又は突然変異配列の1及び2位のアミノ酸残基が、それぞれ、L及びIであるという条件で、アミノ酸残基が置換されたその突然変異配列を含み、
抗CMKLR1化合物が、CMKLR1の第3の細胞外ループ(EL3)内に位置するエピトープに特異的に結合
し、
前記化合物が、配列番号2若しくは配列番号59の配列又は配列番号60の配列のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの、又はCMKLR1の細胞外ドメインの第3のループ(EL3)を含むか、若しくはそれからなるポリペプチドへの結合について、配列番号37に対応する重鎖可変ドメインと、配列番号49に対応する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と競合する、抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項18】
以下のCDR:
- 配列番号4のVHCDR1、
- 配列番号12のVHCDR2、
- 配列番号13のVHCDR3、
- 配列番号19のVLCDR1、
- 配列番号26のVLCDR2、及び
- 配列番号35のVLCDR3
を含む、請求項1
7に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項19】
以下のフレームワーク:配列番号65のVHFR1、配列番号67のVHFR2、配列番号69のVHFR3、配列番号71のVHFR4、配列番号72のVLFR1、配列番号73のVLFR2、配列番号76のVLFR3及び配列番号77のVLFR4を含む、請求項1
7又は1
8に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項20】
配列番号91のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変ドメインと、配列番号93のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1
9に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項21】
炎症疾患、自己免疫疾患、又はがんの予防的又は治療的処置における使用のための、請求項1から
20のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片
を含む医薬組成物。
【請求項22】
糖尿病の予防的又は治療的処置における使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
【請求項23】
慢性炎症疾患の予防的又は治療的処置における使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片を含む医薬組成物。
【請求項24】
NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、強皮症、嚢胞性線維症又は抗好中球細胞質抗体関連疾患(ANCA)の予防的又は治療的処置における使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載の抗CMKLR1抗体又はその抗原結合性断片
を含む医薬組成物。
【国際調査報告】