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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】漏洩検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20221209BHJP
   G01M 3/02 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
G01M3/28 A
G01M3/28 B
G01M3/02 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521488
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2020078576
(87)【国際公開番号】W WO2021069735
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102019127409.5
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】513245808
【氏名又は名称】ローゼン スイス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Rosen Swiss AG
【住所又は居所原語表記】Obere Spichermatt 14, CH-6370 Stans, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン ヘルマン
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA12
2G067AA15
2G067CC02
2G067DD02
2G067EE08
(57)【要約】
本発明は、そこを取って媒体が流れる物体、特にパイプ又はパイプラインの漏洩を検出する方法に関する。本発明によれば、媒体の流量及び圧力の変化、並びに温度変化の確認された値においてパターンが特定され、特定されたパターンに基づいて、自己学習システムに起因して漏洩の存在確率が判定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の流れ移送物体(1)、特にパイプ又はパイプラインの漏洩を検出する方法であって、前記流れ移送物体(1)の測定セクション(2)上の複数の測定ポイント(3)の各々にて、前記媒体の流量の変化、前記媒体中の圧力変化及び温度値の変化に関する値が確認され、前記確認された値が、データ処理デバイス(7)によって記録されて統計的に評価される方法において、
数値群(11)が前記確認された値から形成され、前記データ処理デバイス(7)により前記数値群(11)においてパターンが特定され、前記特定されたパターンに基づいて、前記流れ移送物体(1)の測定セクション(2)における漏洩部(8)の存在の可能性が判定される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
分類アルゴリズム及び/又はパターン分析アルゴリズムが前記特定されたパターンに適用される、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定されたパターンが、データベースにおいてデータセット(12)として格納され、及び/又はデータベースに格納されたデータセット(12)に割り当てられる、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定されたパターンが、1又は2以上の格納されたパターンと比較される、ことを特徴とする、請求項1~3のうちの1項に記載の方法。
【請求項5】
特徴的パターンが、前記流れ移送物体(1)の測定セクション(2)における漏洩部(8)の存在の基準として機能する、ことを特徴とする、請求項1~4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
前記データ処理デバイス(7)が、前記確認された値及び/又は前記数値群(11)に学習アルゴリズムを適用する、ことを特徴とする、請求項1~5のうちの1項に記載の方法。
【請求項7】
前記学習アルゴリズムは、前記確認された値及び/又は前記数値群(11)に適用される前に、格納された値及び/又はシミュレーションされた値を用いてトレーニングされ、前記格納された値及び/又はシミュレーションされた値は、前記媒体の流れ移送物体(1)上の漏洩部(8)の実際の存在及び/又はシミュレーションされた存在に関連付けられる、ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記媒体の流量の変化に関する値、前記媒体の圧力変化に関する値、及び/又は前記温度値の変化は、各々非侵襲的に確認される、ことを特徴とする、請求項1~7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
前記流量の変化が、音響、好ましくは超音波に基づく方法によって測定される、ことを特徴とする、請求項1~8のうちの1項に記載の方法。
【請求項10】
外部ソースからのデータ、特に前記測定セクション(2)及び/又は測定点(3)の周囲の天候に関するデータが、前記データ処理デバイス(7)によって処理され、特に前記数値群(11)にリンクされ、及び/又は前記数値群(11)に追加される、ことを特徴とする、請求項1~9のうちの1項に記載された方法。
【請求項11】
異なる測定点(3)からの前記確認された値は、中央データ処理デバイス(7)に好ましくは無線で送信される、ことを特徴とする、請求項1~10のうちの1項に記載の方法。
【請求項12】
媒体の流れ移送物体(1)、特にパイプ又はパイプライン上の漏洩部(8)の存在の可能性を判定するためのコンピュータプログラム製品であって、
数値群(11)のパターンを認識するための命令を備え、前記数値群(11)は、前記媒体の流量の変化、前記媒体の圧力変化及び/又は温度変化に関して前記流れ移送物体(1)の測定セクション(2)上で確認される値によって形成される、ことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による漏洩検出方法、及び請求項12の前提部分によるコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインで漏洩が発生した場合、この漏洩を迅速且つ安全に検出、発見、及びシールすることは、経済的に極めて重要であることが多い。特に、典型的にはパイプラインセグメントに分割されるが、大陸間に延びる部分を有し、潜在的に環境に有害な産出物(例えば原油)を大量に輸送するパイプラインシステムの場合、一般には、発生した漏洩を迅速にシールすることが、環境保護の点で極めて重要なことでもある。
【0003】
質量保存の原理に基づいて、漏洩検出の既知の方法は、一般に質量流量バランスが形成されることを基本的に伴っている。原理的には、パイプセクションに入る輸送流体の量がまた、関連セクションにおいて漏洩がないと仮定すると、上記パイプセクションの端部から再び完全に現れるはずである。従って、理想条件下では、流入する質量流量と流出する質量流量のアンバランスは、漏洩があることを示している。
【0004】
しかしながら、この方法では、関連のパイプセクションに沿った漏洩の正確な位置が容易には確認されない可能性がある。更に、この理想化された原理は、実際のパイプラインシステムに十分には適用されない可能性がある。特に、様々な環境要因の影響が問題となる。場合によってはパイプライン又はパイプラインセグメントの数千キロに及ぶかなりの長さの結果として、例えば大型のパイプラインのセクションは、多くの場合、複数の気候ゾーンを通過する。特に、地域ごとに異なり且つ時間と共に変化するパイプラインに沿った温度は、輸送される産出物によっては、質量流量バランスを確認するためのかなりの干渉量となる場合がある。
【0005】
各場合において個々の産出物に依存する輸送される流体の熱膨張の結果として、質量流量バランスは、漏洩が存在しなくても負又は正になる可能性がある。この場合、パイプラインの自然体積が一定の緩衝効果をもたらす。パイプラインが寒冷地を通る場合、輸送される流体はこれらのエリアでは収縮することになる。例えば、降雨の結果、或いはパイプライン上での農地利用の場合に耕運及び収穫地により様々なレベルで地面が日光を遮られる結果として、パイプラインの周囲温度が短期間に局所的に変化することにより同様の効果が生じる。質量流量バランスを確認する際にこの影響が無視された場合、漏洩がないにもかかわらず、輸送される流体の損失が記録されることになる。
【0006】
経済的な観点から、例えば、関連する全ての要因に関して大きな全ライン長及び複雑な分岐構造を有するパイプラインネットワークを完全に監視することはほとんど不可能である。従って、発生した漏洩は、センサによって直ちに検出されることはほとんどない。更に、環境要因及び媒体の熱力学的特性は、通常、測定セクションについて確認された質量流量バランスの補正に関して正確に表明を行うことを可能にするのに適切な程度まで検出することができない。このため、確認されたデータの統計的処理によって発生する変動を許容又は補正するための様々な手法が知られている。これは、実際の条件下での漏洩の特定を改善することを目的としている。
【0007】
パイプライン又は輸送される流体に沿った熱力学的変化を考慮するために、例えば、発生するプロセス及び関連の影響因子をリアルタイムモデルによってモデル化する手法が求められている。対応する方法は、例えば「リアルタイム過渡モデル」(RTTM)という名称で知られている。場合によっては、既知の方法はまた、例えば、漏洩が発生したときに現れる伝播圧力波を検出することによって、特定の領域における漏洩を突き止めることを可能にする。
【0008】
しかしながら、この場合、統計的手段によって確認される結果の信頼性が低いことが多いという欠点が常にある。このことは、特に、比較的少量のデータしか利用できない場合、又は単一の測定で評価する必要がある場合に当てはまる。誤って検出されなかった漏洩の場合、経済的及び環境的、並びに安全性に関わる高いリスクは、疑わしい場合は通常、関連のパイプラインセクションの手動検査を実施する決定がなされることを意味する。これは、多くの場合、例えば陸上パイプラインを検査するために、サービスエンジニアのチームが困難な地帯に長距離にわたって危険を冒して進む必要がある。当然のことながら、人体及び環境への関連のリスク、並びに場合によっては多大なコストを回避することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような背景から、本発明の目的は、確認されたデータに基づいて漏洩検出の信頼性を向上させることである。
【0010】
上述の目的は、請求項1による方法及び請求項12によるコンピュータプログラム製品によって達成される。有利な発展形態は、各場合において、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本提案による方法は、まず、後続の評価の基礎を形成する一連の値が確認されることを含む。この値は、少なくとも、流れ移送物体によって輸送される産出物又は媒体の流量変化及び圧力変化、並びに温度値変化を含む。構造的には、流れ移送物体(特にパイプ又はパイプライン)は、1又は2以上の測定セクションに分割される。この方法は、各測定セクションに複数の測定点が定義されることを含む。好ましくは、測定セクションの初期領域と最終領域に、それぞれ1つの測定点が配置される。ここで、上述の物理量の値及び必要に応じて更なる物理量の値が、各測定点で確認される。
【0012】
所望の値は、物理量の直接及び/又は間接的な測定によって確認することができる。この場合、記録の分解能、特に時間分解能をできるだけ高くすることが有利である。しかしながら、代替的に又は追加的に、別の方法で生成されたデータ、特にシミュレートされたデータを、本発明による方法の値として適用し、又は測定ポイントに割り当てることもできる。
【0013】
本発明によれば、関連の物理量の絶対値を確認することの代替として又はこれに加えて、それぞれの場合において相対値及び適用可能な物理量の変化も確認できることは自明である。変化、特に経時的な変化は、発生するプロセスの動力学に関する情報を提供し、従って、本方法にとって物理量の単なる絶対値よりもより重要である。
【0014】
好ましくは、媒体の体積の望ましくない損失があるか否かの評価は、本質的に、実際の状態に関する静的考慮事項に基づいていない。その代わりに、本発明による方法は、特に動的モデルの使用を含む。そのため、主として、確認された量の変化、特に時間的な変化が極めて重要である。
【0015】
媒体の流量の変化、すなわち、流れ移送物体内を輸送される流体の流量の変化は、特に質量ベースであるが、体積ベースとして理解することもできる。更に、圧力変化は、静水圧及び/又は動圧に関連することができる。基礎となる温度値又はその変化は,特に測定点の周囲温度に関するものであるが、代替的又は追加的に、測定点における媒体の温度変化を直接反映することもできる。媒体の流れは一般に、既存の温度勾配及び/又は圧力勾配に大きく依存して変化するので、圧力及び温度の変化の記録は、比較的とても重要である。
【0016】
引用した物理量以外にも、例えば媒体の流量又はその密度、或いは測定点の領域における外部周囲圧力のような、更なる量の値を確認することも可能である。
【0017】
実測値が利用可能でないか、又は入手可能な量が少なすぎる場合には、隣接又は近接する測定点からの測定値に基づいて所望の量について値を補間することができる。
【0018】
実際の測定に代わるものとして又はそれに加えて、測定点における値は、特にモデル化によって確認することもできる。特に、流れ移送物体は、この場合、好ましくは流れている媒体を含めてモデル化される。これは、例えば、関心のある物理量の特定の値の発生をシミュレートすることを可能にし、流れ移送物体及び/又は媒体に対するこれらの影響が、基礎となるモデルに基づいて確認できることを意味する。
【0019】
通常、測定値及びモデリング又はシミュレーションによって確認された値の両方は、基本的に不確定要素、すなわち確率的誤差及び/又は系統誤差の影響を受ける可能性がある。このため、本発明による方法を用いて、特に確率の形態で表明することができる。
【0020】
実時間モデルの代わりに、又はそれに加えて、フォワードモデリングによっても値を生成することができる。これは、特に反復法が採用されることを含み、これにより測定点で利用可能な値及びこのような値の影響が予測される。反復ステップの数は、基本的に、個々のケースにおいて計算の精度にどのような要求がなされるかに応じて選択することができる。
【0021】
採用されるモデリングの好ましい構成において、システム全体及び/又は個々のパラメータに対する可能な傾向は、とりわけ条件付き確率値を確認することによって近似することができる。この文脈において、特に、ベイズ統計の方法及び/又は最尤法などの推定方法を含めることができる。
【0022】
特に、流れ移送物体、好ましくはパイプライン又はパイプラインシステムの一次元モデルにおいて、確認された、モデル化された、及び/又はシミュレーションされたデータを簡易的な方法でモデル化することが可能である。これは、特に特定の範囲までのデータの選択的な削減及び/又はデータの標的化された組み合わせを伴うことがある。これは、更に、使用されるデータがモデルで採用される程度又はモデル化された結果に影響を与える程度を規定するために、重み付けに基づくことができる。一般に、一次元モデルへの対応する簡易化は、観察される必要がある重要な効果のかなり簡易化された、従ってより信頼できる検出を可能にする。
【0023】
高次元モデル及び/又は複数の1次元及び/又は高次元モデルの組み合わせもまた同等の方法で採用できることは自明である。原理的に、高度に簡易化されたモデルのための通常は広範囲な利用可能なデータの再現又は使用は、本発明による方法に関して有利である。現状又はその中の将来起こりそうな傾向に応じて低減された表現は、特にユーザにとって、パイプラインシステムの状態及び/又は動作に関する異常の極めて信頼性の高い検出又は評価を可能にする。この場合、最終的にどのようなレベルの簡易化が求められるかは、特に、個々の場合における特定の適用状況に基づいて定めることができる。
【0024】
考慮される流れ移送物体の状態のリアルタイムモデル及び/又はフォワードモデリングは、好ましくは、考慮されるべきデータを捕捉するための測定点の空間的及び/又は時間的密度に対する最適値を決定するのに使用することができる。測定点密度は、特に、考慮された流れ移送物体の全体、又は特定の測定セクションにわたって不均一に分布している。最適な密度を確認することにより、不必要に冗長な捕捉の結果として、データ量の余剰が発生して、その伝送、保存及び処理が時間及び費用を要することなく、現在及び/又は将来の状態を評価するための十分な量のデータを局所的に及び/又は事象との関連で時間的に収集することが可能となる。例えば、高リスク領域における可能性のある危機的な状況の信頼できる評価のための特別な必要性が、より高密度な測定点のための局所的な提供である場合、モデル化は、適切なデータ収集が行われるそれぞれの経済的に最適な程度が、この点に関して決定されることを可能にする。
【0025】
基礎となる物理量の値が測定セクションの異なる測定点で確認される場合、本方法は、これらの値から、少なくとも1つの数値群が形成されることを含む。数値群は、最終的に、記録された又は他の方法で確認された値の総セットを含むことができ、又はこれらの下位数値群(サブグループ)によって形成することができる。
【0026】
確認された値は、評価のためにデータ処理デバイスに供給される。データ処理デバイスは、測定セクションに近接して局所的に存在するコンピュータとすることができる。しかしながら、特に好ましいのは、共通のデータ処理デバイスによって異なる測定点及び/又は測定セクションからのデータを集中的に処理することである。データ処理デバイスは更に、複数の相互作用するコンピュータを含むネットワークとすることができる。特に、データ処理デバイスは、監視される測定セクションから物理的に離れた場所、例えば中央コンピュータセンターに設けられることが好ましい。従って、データ処理はまた、例えば、クラウドサービスの原理に基づいて実行することができる。
【0027】
数値群は、数値群内の値がパターンを形成するか、又は数値群内にパターンが形成されるかについて、データ処理デバイスによって検査される。データ処理デバイスにより数値群においてパターンが識別される場合、パターン、特にそのタイプ及びその特性強度は、流れ移送物体の測定セクションにおける漏洩の存在の可能性を判定するのに使用することができる。これは、特にヒューリスティックな漏洩検出を可能にし、その結果、既知の統計的方法を用いた利用可能なデータの評価が信頼できる結果をもたらさない場合でも、考慮中の測定セクションで発生する漏洩を検出することができる。
【0028】
特に、本発明による方法は、一方では、環境の影響の結果としての媒体の流量変化及び/又は温度変化を伴うパターンと、他方では、漏洩又は不正なタッピング(Entnahme(独)、tapping(英)、取り出し)の理由からの流れの望ましくない損失に関連するパターンとを区別するのに使用することができる。この場合の目的は、輸送される媒体の損失をできるだけ低く抑えるために、それぞれの状況にできるだけ迅速に対応できるようにすることである。
【0029】
好ましくは、分類アルゴリズムが、数値群、又は数値群において特定されたパターンに適用される。従って、存在するパターンは、特定されるだけでなく、異なるパターンクラスへの分類に関しても評価することができる。クラスは、特に、漏洩の存在の可能性に関してパターンの関連性に関するものである。
【0030】
代替的又は追加的に、パターン分析アルゴリズムはまた、パターンに適用されてもよく、当該アルゴリズムは、画像認識方法と同様の方法で、特にどの事象がパターンによって表されどの程度の可能性があるかを確認するために、その特性に基づいてパターンを解釈する。
【0031】
データ処理デバイスは、好ましくは、このような分類アルゴリズム及び/又はパターン分析アルゴリズムを実行できるように適宜設計される。
【0032】
確認された値は、データセットとしてデータベースに格納することが可能である。このようなデータセットは、特に、パターン識別のための評価を実行するのにも使用される数値群によって形成することができる。代替的又は追加的に、特定されたパターンがデータセットとしてデータベースに格納されること、及び/又はこのようなパターンが、予め又は並行して格納されたデータセットに割り当てられることが好ましい。これにより、このようなパターン及び/又は基礎となる値は、後の分析のために再びアクセスすることができる。特に、これによって更なる分析を検証することができる。
【0033】
形成された数値群における値の評価の結果、パターンが特定された場合、及び1又は2以上のパターンがデータベースに格納されるか又は既に格納されていた場合には、パターンを互いに比較することができる。複数の格納されたパターンは、特にこの場合、一種のルックアップテーブルを形成する。必要に応じて適用される分類アルゴリズムが、好ましくは、格納されたパターンのどれと新たに特定されたパターンが比較されるかを決定するのに使用することができる。好ましくはそれぞれが特定の事象に関連付けられる格納されたパターンのデータベースのサイズが十分に大きい場合、指紋比較の原理に従って、この方法で現在の事象を迅速且つ確実に識別することができる。
【0034】
全体的なパターン比較以外に、代替的又は付加的に、特徴的であると定義された特定のパターンの単なる個別的特徴を新たに特定されたパターンと比較することが可能である。この場合、特徴的パターンは、流れ移送物体の測定セクションにおける漏洩の存在の基準として使用される。特徴的パターンは、特に、漏洩の存在に関連する平均化された測定値を含むことができる。更に、特性パターンを生成するために、生成されたデータ、すなわち、計算によってモデル化及び/又はシミュレートされたデータを使用することも可能である。この場合、特性パターンは、好ましくは、漏洩がある場合に確認された値において理想的に現れるパターンに対応する。新たに特定されたパターンと特性パターンとの間の一致の度合いに応じて、データ処理デバイスは、関連する測定セクションにおける漏洩の存在の可能性について表明するのに使用することができる。この場合、規定された閾値を超えると、これは特に、漏洩の存在のためのハード基準として使用され、例えば手動チェック又は緊急停止などの適切な措置を開始することができるようにする。
【0035】
本発明による方法の特に好ましい構成は、確認された値又はこれから形成された数値群に学習アルゴリズムを適用するのに使用されるデータ処理デバイスを提供する。学習能力を有するアルゴリズムは、一般的に使用される統計的手法を用いた場合のように、場合によっては反復ごとに、本方法が現行の応用に対してより有益になるだけではない。むしろ、学習アルゴリズムは、あらゆる応用及び新しいデータの何れかの処理によってトレーニングされる。進化的な効果により、時間と共にこの種の自己学習システムの信頼性が高められる。このため、確認された値のパターンの識別、特に解釈のためのエラー率が低下する。
【0036】
漏洩検出に関するデータ分析のための一般的な統計的方法は、通常、対応する調整されたデータから所望の情報を読み取ることができるように、発生する変動を補償することに向けられたものである。特に、学習能力を有するアルゴリズムが、データ解析に使用される場合、本発明による方法は、既知の方法が失敗する条件下でも、確認された値における適切なパターンの発生に基づいて漏洩を検出することができる。これは、例えば、使用される値が著しい外れ値を有する場合、その結果として統計処理中に行われる近似がかけ離れている場合とすることができる。これに対して、本発明による方法では、新たに確認した値に対して経験的データを系統的に適用することを含む。特に、学習能力を有するアルゴリズムの適用により、厳密に適用されるそれぞれの統計アルゴリズムでは検出されない事象であっても、値に現れるパターンに基づいて特定することができる。
【0037】
本方法の特に好ましい構成では、確認された値又は形成される数値群は、人工ニューラルネットワークを使用して評価される。データ処理デバイスは、この目的のために適切な設計であることが好ましい。
【0038】
学習アルゴリズムは、好ましくは、確認された値又は数値群に適用される前に、格納された値を用いてトレーニングされ、上記格納された値は、実際に発生した事象、特に漏洩の実際の存在又はこの関連で記録されていた事象に関連する。代替的又は追加的に、学習アルゴリズムはまた、シミュレートされた値に基づいてトレーニングすることができる。このようなシミュレートされた値は、好ましくは、流れ移送物体上の漏洩をシミュレートすることによって決定されたものである。上述の方法によるトレーニングは、学習アルゴリズムに、値の特定の組み合わせ又は数値群のパターンを特定の事象に関連付けることを学ばせる。従って、適切なトレーニングの後、クエリの適切な構成によって学習能力を有するアルゴリズムを使用して、特定のタイプの事象に関連する、特に考慮中の測定セクションにおいて漏洩があることを示す、未知の又は新しい値のパターンを特定することが可能である。
【0039】
設計の観点から、本発明による方法に使用される値、特に媒体の流量、媒体の圧力及び/又は温度の変化が、それぞれの場合において非侵襲的に確認されることが好ましい。これにより、流れ移送物体の内部にセンサなどの測定デバイスを導入し、内部の媒体の流れに影響を与えることを回避することができる。これは、測定自体及びひいては後のデータ評価に歪みを与える危険性を生じさせることになる。データの適切な測定は、例えばパイプラインの壁など、流れ移送物体のシェル上又はシェル内に配置された測定デバイスによって実施されるのが好ましい。流量の場合、いわゆるクランプオン流量計が特に好適であり、これは、外部から流れ移送物体の内部の媒体の流れの変化を検出することができる。
【0040】
特に好ましくは、流量の変化は、音響的方法によって測定される。これは、外部から導入される音響信号の流動媒体中での伝播挙動に基づいて流量又はその変化が確認されることを含む。注入される音響信号が適度に高い周波数を有する超音波ベース方法が、特に好適であることが分かっている。特に、音響信号は、非接触で、すなわち流れ移送物体の壁に外部から影響を与える機械的変換器を用いることなく注入される。
【0041】
パターンを識別するために本方法に従って検査される数値群は、測定点にて確認された値から形成されるが、必ずしもこれらの値だけに限定されるものではない。例えば、流れ移送物体の周囲の現在及び/又は予測される天候に関するデータなど、更なるデータ、特に一般的に利用可能なデータを数値群に含めること又は追加することが更に可能である。これは、時として、本発明による方法の結果の重要性を更に高めることができる。
【0042】
本方法の1つの好ましい構成において、異なる測定点からの確認された値は、中央データ処理デバイスに伝送される。この場合の送信は、好ましくは無線で行われる。
【0043】
本発明は更に、媒体の流れ移送物体上の漏洩の存在の可能性を判定するためのコンピュータプログラム製品も含む。コンピュータプログラム製品は、特に、本発明による漏洩検出のための方法を実行するため、又は本発明による方法において使用するために設計されている。従って、コンピュータプログラム製品は、数値群におけるパターンを認識するための命令を含み、数値群は、流れ移送物体の測定セクション上で確認され、少なくとも媒体の流量の変化、媒体の圧力変化及び/又は温度変化に関係する値によって形成される。
【0044】
本発明は、例示的な実施形態に基づいてより詳細に以下で説明される。図面に記載及び/又は図示されている全ての特徴は、例示的な実施形態における組み合わせ又は特許請求の範囲の従属参照に関係なく、それぞれ本発明の独立した態様を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明による方法の例示的な適用状況の概略的表現を示す図である。
図2】本発明による方法の更なる適用状況の概略的な表現を示す図である。
図3】本発明による方法のデータ処理の概略的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明による方法のための典型的な適用状況を示している。特定の流体媒体の形態で産出物を搬送するためのパイプライン又はパイプラインセクションの形態において、流れ移送物体1は、一部は地上に、一部は地中に、及び屋外に敷設されている。
【0047】
図示の詳細は、かなり長い流れ移送物体1の測定セクション2を表している。測定セクション2は、本発明による漏洩検出のための方法によって監視される。これは、2つの測定点3のそれぞれにおいて様々な物理的パラメータの値を確認することによって達成される。
【0048】
図示の2つの測定点3から出発して、測定セクション2はまた、関連するより大きな数の測定点3を有することができる。様々な物理量に対する測定点3が、流れ移送物体1の測定セクション2に沿って同じ位置に配置されることは、本発明によれば更に確かに好ましいが、不可欠というわけではない。
【0049】
一般に、流れ移送物体1とは、その中を媒体が流れることが基本的に意図されている物体を意味すると理解することができる。この点で、本発明では、媒体が連続的に流れていない測定セクション2に関する値を確認することも基本的に可能である。環境温度の変化などの環境パラメータの決定及び/又は予測は、例えば、測定セクション2を通る媒体のやがて来る輸送に関して関心を持つことができる。
【0050】
原理的に、関連する全ての物理パラメータについて、適用可能な値が、可能であれば非侵襲的に、すなわち、流れ移送物体1に導入される構成要素によって流動媒体が影響を受けることなく又は別の方法で流れが乱されることなく確認されることが好ましい。
【0051】
媒体の流量の変化に関する値が確認される。これは、特に流量計4によって実行される。この事例で示される実施例では、流量計4の好ましい構成は、いわゆるクランプオン流量計として示されており、この流量計は、流れ移送物体1に外部から適用される。従って、媒体の流量、又は当該流量の変化は、非侵襲的に確認することができる。原理的には、値を確認するために他の何れかのタイプの流量測定も有用であることは自明である。流量は、質量及び/又は体積を参照するものとして理解することができる。
【0052】
図示の実施例では、流量計4は、媒体の流量の変化を測定するための音響原理に基づくものである。これは、特に超音波範囲の音響信号が、流れ移送物体1の壁を通して媒体に導入され、その伝搬速度が、媒体の流れ特性に関する結論を引き出すために測定されることを含む。好ましくは、音響信号は、注入され、及び/又は、非接触で、すなわち流れ移送物体1の壁に流量計4のトランスデューサを機械的に結合することなく、読み取られる伝播信号である。
【0053】
更に、媒体中の圧力変化の値が、各測定点3において確認される。圧力変化は、特に、適切な圧力センサ5によって測定される。
【0054】
更に、温度変化は、特に温度センサ6によって確認される。これは、特に、測定点3の位置における周囲温度又はその変化についての値である。代替的又は追加的に、測定点3から離れた場所、例えば測定セクション2の2つの測定点3の間にも値を記録することができる。この関連では、このような値は、空気温度、地面温度、流れ移送物体1の温度、又は流れる媒体自体の温度について確認することができる。従って、特に、ストレッチに沿った流れ移送物体1内の媒体に対する周囲温度の影響を考慮することができる。
【0055】
上述のパラメータ及び必要に応じて更なる物理的パラメータについての特に測定によって確認された値は、その後で更に評価されるためにデータ処理デバイス7に送信される。送信は、好ましくは、無線で行われる。代替的に又は追加的に、有線伝送で行うこともできることは自明である。
【0056】
データ処理デバイス7は、図1の表現で示されるように、測定セクション2から離れた場所に配置された中央データ処理デバイス7とすることができる。データ処理デバイス7は、単一のコンピュータの形態であってもよいが、複数の相互作用するコンピュータのネットワークの形態とすることができる。更に、データ処理デバイス7を並行して動作する複数の計算機を有する複合システムとして構成すること及び/又は階層的にリンクさせることも規定することができる。
【0057】
測定点3からデータ処理デバイス7へのデータ伝送は、特に、BluetoothやWiFiなどの一般的な伝送規格に従って、及び/又は移動無線ネットワークを介して行うことができる。更に、測定点3と、又は測定点3で提供される値を確認するための装置と、データ処理デバイス7との間の衛星ベースの通信の可能性もある。
【0058】
更に、測定点3において、適用可能な通信装置間で通信を行うことができる。例として、これは、データ処理デバイス7に確認された値を伝送するために、1つの測定点3においてのみ、又は少なくとも幾つかの測定点3において高性能な伝送設備の提供を行うことを可能にする。測定セクション2の個々の測定点3での測定値は、最初にこの種の中央測定点3に比較的短い距離で伝送され、そこからデータ処理デバイス7に転送される。適切な設計は、特定の測定点3に関連付けられないが、むしろ関連の測定セクション2の周囲に位置し、従って関連の測定点3全ての通信装置の範囲内にある別の中継ステーション10によっても実現することができる。
【0059】
本方法の1つの特定の構成は、媒体の流量又は前記流量の変化に関連する少なくとも実質的に独占的なデータを含む。これらのデータは、好ましくは、流量計4によって配信され及び/又はモデリングで確認される。
【0060】
特に好ましくは、流れ移送物体1の少なくとも一部、又は測定セクション2の一部にわたって延びる測定点3又は流量計4のネットワークが更に使用される。この場合、個々の測定点3又は流量計4は、好ましくは、相互間に配置された中継ステーション10を用いて、互いに及び/又はデータ処理デバイス7と無線で通信する。代替的に又は追加的に、本方法の他の構成と同様に、標準的な移動無線技術に頼ること、及び/又は衛星ベースの通信を提供することができる。
【0061】
以下に更に詳細に説明するように、送信されたデータは、データ処理デバイス7によって本発明による方法の一部として評価され、検査された測定セクション2における漏洩部8の存在を示すパターンの存在について検査される。このような漏洩部8が検出された場合、又は漏洩部8の存在の十分な可能性が確認された場合、改善策を提供するために適切な措置を短時間で取ることができる。
【0062】
図1の表現では、このような漏洩部8は、地下を延びる流れ移送物体1の部分に示されている。例えば原油とすることができる輸送媒体は、漏洩部8の位置で制御されない方法で土壌9に入り込んでおり、例えばそこの地下水を汚染する可能性がある。輸送媒体の損失という経済的な意義に加えて、このような漏洩部8は、深刻な生態学的結果をもたらす可能性がある。環境への甚大な被害は、輸送媒体が短時間に大量に漏出するような壊滅的な漏出8の場合だけではない。むしろ、時間の経過に伴う媒体の緩慢な漏出だけを生じる小さな漏洩部8もまた、既に著しい生態学的な危険性をはらんでいる可能性がある。
【0063】
図2は、例証として本発明による方法の更なる適用状況を示している。流れ移送物体1は、そこに比較的複雑なパイプネットワークによって形成されている。図示の詳細は、場合によっては極めて長いパイプラインの広範囲に枝状化されたネットワークを純粋に象徴的に表現することを意図している。地球の異なる地域間の長距離にわたるような供給ラインの枝状ネットワークとは別に、例えば精製所などの大きな産業設備もまた、比較的複雑なパイプラインネットワークで構成される場合がある。このような、高度に枝状化された流れ移送物体1において、様々な測定セクション2を定義することができる。測定セクション2は、必ずしも2つの測定点3間の流れ移送物体1のセクションによってのみ定義されるわけではなく、特に3以上の測定点3が設けられた更なる領域を含むことができる。測定セクション2の定義は、最終的には、どの測定点3から受信した値、又はどの測定点3について確認した値が、データ処理デバイス7による評価のために使用されるかに依存する。
【0064】
流れ移送物体1の枝状構造の複雑さがそれに応じて高い場合、上記物体は、適用可能なセンサのみにより直接監視することは困難となり得る。極めて長いパイプラインの場合と同様に、システムの完全な監視は、最終的には、適切な数のセンサに対して生じるであろうコストが問題となる。更に、流れ移送物体1の様々な分岐において、それぞれの場合に互いに流体接続されている部分容積は、輸送される媒体がパイプネットワークを伝播するときに相互作用とバッファ効果をもたらす。これはまた、質量流量バランスの評価を妨げる。
【0065】
本発明による方法は、確認された値のパターンを特定することによって、特定の測定セクション2における漏洩部8の発生のような相互干渉事象を検出することにより、ここで有利な効果をもたらす。
【0066】
輸送媒体の挙動に対する異なる温度の影響は、様々な気候帯を通過するとき、又はパイプラインに沿った異なる気象条件の理由で生じるだけでない。工業設備の例においても、パイプラインは、通常、異なる温度の構造物に沿って延在する。このため、媒体の温度は、通常、パイプライン又はパイプラインネットワーク内を流れるにつれて変化する。媒体の関連する膨張又は収縮は、質量流量バランスの確認を著しく妨害し、例えば漏洩部8又は輸送経路上の不正なタッピング(Entnahme(独)、tapping(英)、取り出し)の理由による実際の質量損失の検出を妨げる。
【0067】
この点に関して、本発明による方法は、特に、様々な影響因子が通常は異なるタイムスケールで輸送媒体、特に優勢な圧力及び/又は流量条件に影響を与えるということを許容するものである。気候又は天候に関連する影響の変化は、一般に、パイプライン、特に地下に延びるパイプライン内の媒体に時間遅延を伴って影響し、これは、システムの反応におけるある慣性を伴うものである。これとは対照的に、例えば最終消費者による媒体の所望のタッピングは、特に短期的及び特に局所的に発生する変動をもたらし、これも同様に適切な方法で考慮される必要がある。
【0068】
特に望ましくは、予定外の、例えば最終消費者による測定セクション2における媒体のタッピングは、適切な局所消費測定によってモデル化され、本発明による方法に含めることができる。この目的のために、既知のタッピングポイントの近傍に、特に流量計4を含む、1又は2以上の測定点3の適切な位置決めを規定することができる。
【0069】
本発明による方法の目的は、外部影響及び内部影響を理由とした媒体中の温度及び体積変動に基づいて発生する確認された値のパターンを、輸送経路上の流れ移送物体1からの媒体の実際の損失に関連するパターンから区別することである。媒体に与える自然な影響は多様であり、従って、一般的な統計手法だけで完全に考慮することには困難が伴う。
【0070】
発生する変動は、主として、特に流れ移送物体1に沿って時間的及び空間的に搬送される媒体の温度の変化に関連する。これは、周囲温度に大きく依存するが、他の多数の要因によって影響を受ける。空気及び地面の温度は、日射量に異なる程度で依存し、それに応じて媒体の温度に影響を及ぼす。これに対して、雨及び雲は、短期的に冷却効果を有する。更に、特に地下に延びるパイプラインの場合、地表のバイオマスは、例えば断熱効果又は太陽光を地面が遮るという形で、ライン内の媒体の温度に影響を与え得る。また、この要因は、例えば、農業に使用される領域での栽培及び収穫の結果として、時には短期的な変化を受ける。
【0071】
流れ移送物体1が、パイプライン又はパイプラインネットワークのように、十分に大きな範囲又はそれに応じて複雑な枝状構造である場合、輸送される媒体の流動特性の熱力学的変化も一般に、内部効果の理由で常に発生する。この理由は、例えば、管路の形状に起因する流動抵抗の変動又は変化である。特に、輸送媒体が様々な物質から構成されている場合、その組成の変化が更に生じることがある。これもまた、媒体の流動挙動に影響を与える可能性がある。
【0072】
大型パイプライン又はパイプネットワークは更に、いわゆる「ラインパッキング」、すなわち、媒体が特定の地点で再び外に出る前又はタップされる前に、管路に媒体を充填して作動圧力を高める間に、最初に充填されるかなりの自然体積を有することができる。流れ移送物体1の十分に大きな内部容積は更に、動作中でさえ媒体の体積に関連した変化を間接的にだけ記録することができる緩衝効果をもたらす。従って、内部及び/又は外部パラメータを更に考慮しなければ、流れ移送物体1の測定セクション2の入力及び出力における流量又はその変化の比較測定から意味のある結論を導き出すことは、ほとんど不可能である。
【0073】
広範な試験により、驚くべきことに、確認された値には異なる種類のパターンを形成できることが示された。環境パラメータを含めても、一般的な統計手法では完全に除去できない自然変動があるが、データにおいてパターンが生じる。これらは、例えば、漏洩部8、ラインの破損又は輸送経路上の媒体の不正なタッピングの結果として、実際の質量損失の場合に観察できるパターンとは区別される。
【0074】
これは、これら2種類のパターンが特定されて互いに区別されるという点で、本発明の出発点である。既に述べたように、本方法は、データ処理デバイス7を使用して、流量、圧力及び温度における変化、並びに必要に応じて更なる物理量における変化についての確認された値の評価中又は評価後にこれらの値におけるパターンを探すことを含む。
【0075】
図3に示す表現は、漏洩検出のためのデータ処理デバイス7による確認された値の評価のための基本的シーケンスを示している。最初に、確認された値から数値群11が形成され、パターンの存在についてデータ処理デバイス7によって分析される。数値群11は、測定セクション2の測定点3において確認された値の全てから構成することができ、又はその部分集合とすることができる。
【0076】
数値群11においてパターンが特定された場合、データ処理デバイス7は、このパターンを流れ移送物体1の当該測定セクション2における漏洩部8の存在の可能性を判定するための基礎とすることができる。数値群11のデータにおけるこのようなパターンは、特に、デジタル画像認識の場合と同様に、検出ルーチンの適切なアルゴリズムによって特定される。
【0077】
データ処理デバイス7は、好ましくは、分類アルゴリズムを実行するように設計され、このようなアルゴリズムを数値群11に適用する。従って、特定されたパターンは、そのタイプ、性質及び/又は特性に関して分類される。
【0078】
このような分類アルゴリズムの代替として又はそれに加えて、パターン分析アルゴリズムもまた、データ処理デバイス7によって数値群11に適用することができる。このようなパターン分析アルゴリズムは、特定されたパターンの重要性を解釈することができる。これにより、確認された値に発生するパターンがどのような現実の事象を表しているのかについて、表明を作成することができる。
【0079】
好ましい一構成では、データ処理デバイス7は、特定されたパターンがデータセット12として格納されている可能性のあるデータベースにアクセスする。確認された値、すなわち数値群11についても同様である。特に、確認されたパターン、数値群11、及び/又は特定の本当に発生した事象、例えば漏洩部8の存在は、互いにリンクされ、データセット12として、又は共同データセット12としてデータベースに格納することができる。
【0080】
分析された数値群11のパターンと、データベースのデータセット12に格納された1又は2以上のパターンとの比較により、最も単純な場合には、特定されたパターンを事象群に迅速に割り当てることができる。指紋方法によるこのような比較は、特に、データ処理デバイス7が、格納されたパターン及び/又は関連する事象に関して分類されたデータセット12にアクセスし、特定されたパターンがその特徴に基づいてこれらのクラスの1つに一意に割り当てることができる場合に可能である。
【0081】
代替的に又は追加的に、特徴的な又は理想化されたパターンは、数値群11において特定されたパターンとの比較によって、検討中の測定セクション2における漏洩部8の存在の可能性を判定するための基礎としてとられる基準として使用されることもできる。この種の特徴的パターンは、実際に発生した事象に関連する1又は2以上の測定からの測定値に基づいてもよいし、さもなければシミュレーション値に基づいてもよい。
【0082】
特定されたパターンと特性パターンとの間に十分な一致度がある場合、すなわち定義された閾値を超える場合、漏洩部8の存在に関する基準が満たされたと評価され、適切な措置が取られ得るようにしてもよい。
【0083】
データ処理デバイス7が、パターンを特定するために、確認された値、又は数値群11に学習アルゴリズムを適用する本発明による方法の構成は、特に好ましいものである。代替的又は追加的に、学習能力を有するアルゴリズムは、分類アルゴリズム及び/又はパターン分析アルゴリズムとして機能するのに使用することもできる。本質的に堅固に規定された基準に基づいて数値群11のパターンを特定及び評価する上述の方法と比較して、学習能力を有するアルゴリズムは、適切なデータによる適切なトレーニングの結果として、時間と共により強力且つより信頼性が高くなるという利点を有する。従って、漏洩部8の指標としてのパターンの誤った解釈(誤判定)、及び確認された値に基づいて既存の漏洩部8を検出しないこと(検出漏れ)に関して、誤りに対する感受性が減少することになる。
【0084】
このような学習アルゴリズムは、好ましくは、実際の事象、特に漏洩部8の存在に関連する又は関連する事象が発生したときに測定されたデータセット12によってトレーニングされる。このようなデータは、最終的に、可能な限り最善の方法で現実をモデル化するので、トレーニングされた学習アルゴリズムは、最終的に、実際の条件下で個々のケースにおける確認された値に生じ得る特定のパターンに合わせて調整される。
【0085】
代替的又は追加的に、学習アルゴリズムは、シミュレーション値又はモデルデータを用いてトレーニングすることもできる。これにより、アルゴリズムに、理想化された条件に関連する構成要素を追加することができる。
【0086】
数値群11におけるパターンの特定、分類及び/又は解釈に関して最適な検出性能のために、実データとシミュレートされた又は理想データとの組み合わせでアルゴリズムをトレーニングすることは、場合によっては、特に好都合である場合がある。
【0087】
より好ましい構成において、データ処理デバイス7は、値をモデル化するための特に反復的方法を使用することができる。これは、特定の作業及び/又は周囲条件の下で予想され得る値を確認するために、特にフォワードモデリングのための方法を使用することを含む。
【0088】
このようなモデリング方法の方法によって確認された値は、本発明による方法のために異なる方法で採用することができる。例として、このようなモデリング方法を並行して適用することにより、測定値及び/又は測定値に出現したパターンの独立した検証を行うことができる。
【0089】
フォワードモデリングの方法によって得られたデータは、更に、学習アルゴリズムをトレーニングするのにも適している。
【0090】
好ましくは、実データの評価とシステムの特定の傾向のモデリングとの比較は、パターン特定の可能なアーティファクトを判定し、特に修正することを可能にする。このようにして、好ましくは、この文脈で現れる学習アルゴリズムの欠点を補償することが可能であり、特に、アルゴリズムのトレーニング中の最適でない優先順位付けを条件とすることができる。従って、この手法の繰り返しの使用は、パターン特定の信頼性を継続的に向上させる。
【0091】
更に、本発明によるパターン認識ベースの方法を、測定値に基づいてデータをモデル化するための対応する方法と連続的にリンクさせることが可能である。これにより、例えば、既知又は測定された開始パラメータに基づいて将来の傾向をモデル化し、こうして得られた結果において、発生するパターンを特定することによって、流れ移送物体1の切迫した構造的破壊のリスクを評価することができる。
【0092】
上記で説明した方法でデータベースのデータセット12を考慮することに加えて、外部ソースからのデータ、特に一般に利用可能なデータを異なる方法で含めることも可能である。これらのデータは、特に、評価のために考慮されるために、数値群11に追加され、及び/又は数値群11とリンクされる。しかしながら、この種の外部データは、モデル化及び/又は学習アルゴリズムのトレーニングのために使用することもできる。例として、データは、天候、地面の地質学的組成、地域の特に農業的使用などに関連してもよい。
【0093】
確認された値、又はそれから形成された数値群11の評価は、数値群11におけるパターンを特定すること、及び必要に応じて、パターンを解釈すること、又はさもなければそれを特定の事象又は事象尤度と関連付けることを含むものである。好ましくは、データ処理デバイス7は、その後、ユーザに対して、先行する分析の結果、又は使用された方法の結果を伝える適切な出力13を生成する。
【0094】
出力13は、異なる方法、好ましくは、視覚的、聴覚的及び/又はテキスト形式で提供されてもよい。特に、図3に示すように、出力13は、漏洩部8の存在に関する警告で構成されてもよい。更に、例えば、ステータスレポートが生成されてもよい。
【0095】
自動的に動作するシステムに関して、代替的又は追加的に、出力13に関する改善措置が直ちに取られること、例えば、保守及び/又はサービス要員に警告が配信されることも可能である。
【0096】
この場合、基本的に、本方法による分析結果に対して、異なる出力13又は反応を組み合わせることも可能であることは自明である。
【符号の説明】
【0097】
1 流れ移送物体
2 測定セクション
3 測定点
4 流量計
5 圧力センサ
6 温度センサ
7 データ処理デバイス
8 漏洩部
9 土壌
10 中継ステーション
11 数値群
12 データセット
13 出力
図1
図2
図3
【国際調査報告】