(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】HBVおよび/またはHDV感染症、肝疾患を予防および/または処置するため、ならびにNTCPを標的化するための、コンジュゲート化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 14/02 20060101AFI20221209BHJP
C07K 1/13 20060101ALI20221209BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20221209BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221209BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221209BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C07K14/02 ZNA
C07K1/13
A61K47/66
A61K45/00
A61P1/16
A61P35/00
A61P3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521499
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2020078464
(87)【国際公開番号】W WO2021069692
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520146628
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート ハイデルベルク
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET HEIDELBERG
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】アーバン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ミアー,ヴァルター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZC331
4C084ZC422
4C084ZC751
4H045AA10
4H045BA01
4H045BA55
4H045BA56
4H045FA33
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、好ましくはB型肝炎ウイルスの疎水性修飾preS由来ペプチドまたはそれぞれの環状ペプチドである、ペプチド部分(a)、および好ましくは胆汁酸である、NTCP基質部分(b)を含む、コンジュゲート化合物に関する。本発明はさらに、少なくとも1つのコンジュゲート化合物を含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、肝疾患または肝臓の状態の診断、予防および/もしくは処置、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害等における、該コンジュゲート化合物および医薬組成物の医学的使用に関する。本発明はさらに、該疾患および/または感染症の診断、予防および/または処置の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ペプチド部分、および
(b)ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)の胆汁酸結合部位に対応するNTCP基質部分
を含むコンジュゲート化合物であって、(a)および(b)は互いに、好ましくはリンカーまたはアミノ酸側鎖を介して、共有結合している、コンジュゲート化合物。
【請求項2】
前記ペプチド部分(a)が、
一般式I:
H-[(X)
m-P-(Y)
n]-R (I)
のB型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性修飾preS由来ペプチド
(式中、
Pはアミノ酸配列NPLGFXaaP(配列番号1)であり、XaaはFもしくはLであり、
Xはアミノ酸m個の長さを有するアミノ酸配列であり、
ここでmは0もしくは少なくとも1であり;
Yはアミノ酸n個の長さを有するアミノ配列であり、
ここでnは0もしくは少なくとも1であり;
ここでm+nは5~25、好ましくは8~20、より好ましくは8~15であり;
Hは疎水性修飾であって、
PのN末端またはX内もしくはY内に位置し、かつ
アシル化および疎水性部分の付加から選択され、
RはC末端修飾であって、
好ましくは、アミド、D-アミノ酸、修飾アミノ酸、環状アミノ酸;PEG、グリカン等の天然および合成ポリマーから選択される、分解から保護する部分である);
もしくは
一般式Ia:
シクロ[(X)
m-P-(Y)
n] (Ia)
の環状ペプチド
(式中、
P、X、Y、mおよびnは上で定義された通りであり、
Xおよび/もしくはYのアミノ酸側鎖に少なくとも1つの疎水性修飾を保持し、
ここで、前記環状ペプチドは配列番号1のPのアミノ酸配列内で環状化されておらず、かつ、Pのアミノ酸側鎖を介しておらず、
前記疎水性修飾はアシル化もしくは疎水性部分の付加である);
または薬学的に許容され得るその塩
から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項3】
前記ペプチド部分(a)の前記疎水性修飾が、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)もしくはステアロイル(C18)、好ましくはミリストイル(C14)等のC8~C22脂肪酸でのアシル化であるか、または1つもしくは複数の前記疎水性部分が、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体から選択される、請求項1または2に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項4】
前記ペプチド部分(a)が前記一般式Iのペプチドであり、式中m=0~18および/もしくはn=0~7、好ましくはm=0~7および/もしくはn=0~6(m=7およびn=6等)である、または
前記ペプチド部分(a)が前記一般式Iaの環状ペプチドであり、式中m=0~18および/もしくはn=0~7、好ましくはm=0~7および/もしくはn=0~6であり、但しm+nは少なくとも1である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項5】
前記ペプチド部分(a)が、配列番号2~25、好ましくは配列番号2~17および/もしくは配列番号18~25の群から選択されるアミノ酸配列を含む、または該アミノ酸配列からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項6】
前記ペプチド部分(a)が、胆汁酸部分を共有結合するためのさらなるアミノ酸を含み、ここで前記さらなるアミノ酸は、リジン(K)、D-リジン(k)、D-チロシン(y)、システイン(C)、プロパルギルグリシン、アジドフェニルアラニン、アジドリジン、アジドフェニルアラニン、ホモアリルグリシン、ホモプロパルギルグリシン、アジドホモアラニン、アジドノルロイシン、アジドフェニルアラニン、プロパルギルオキシフェニルアラニンおよびアセチルフェニルアラニン等の、L-もしくはD-アミノ酸であり、天然もしくは非天然アミノ酸であり得、ならびに/または、
前記ペプチド部分(a)が、環状化のためのさらなるアミノ酸を含む環状ペプチドであり、ここで前記環状化のためのさらなるアミノ酸は、システイン(C)、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、アジドフェニルアラニン等の天然もしくは非天然アミノ酸であり得る、
請求項1~5のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項7】
前記NTCP基質部分(b)が、
ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)の天然基質、
好ましくは胆汁酸、胆汁酸ダイマーおよび多量体;または
NTCPの非天然基質
例えば、エゼチミブ、イルベサルタン、ロシグリタゾン、ザフィルルカスト、TRIAC、スルファサラジン等の薬物;
から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項8】
前記NTCP基質部分(b)が、
コール酸(CA);ウルソデオキシコール酸(UDCA);
リトコール酸(LCA);
タウロコール酸(TCA)
グリココール酸
タウロデオキシコール酸(TDCA)
タウロケノデオキシコール酸(TCDC)
タウロウロソデオキシコール酸(TUDCA)
等のタウリン-またはグリシンコンジュゲート胆汁酸およびその塩(タウリン-またはグリシンコンジュゲートジヒドロキシおよびトリヒドロキシ胆汁酸);
硫酸抱合型胆汁酸およびその塩;
UDCA-UDCA等のウルソデオキシコール酸のダイマー;
【化1】
等のタウロウロソデオキシコール酸(TUDCA)を含むダイマー;
CA-UDCAのような胆汁酸の混合ダイマー等の、モノマーおよび重合体胆汁酸から選択される胆汁酸を含み、
好ましくは、前記胆汁酸は、ステロイド骨格の環Aの3-ヒドロキシル基を介して前記ペプチド部分(a)に結合していない、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項9】
薬物またはそれらのそれぞれのプロドラッグ;
タグ;
蛍光色素、放射性同位体および造影剤等の標識;
組換えウイルス;
薬物、プロドラッグまたは標識のための担体またはデポー;
免疫原性エピトープ;
ホルモン;
阻害剤;
毒素、
等の1つまたは複数のさらなる部分を含み、好ましくは、リンカー、スペーサーおよび/またはアンカー基、例えば切断可能リンカー等を介して共有結合している、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物。
【請求項10】
(i)請求項1~9のいずれか1項に記載の、少なくとも1つのコンジュゲート化合物、
(ii)場合により、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項11】
医薬品における使用のための、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物または請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
肝疾患または肝臓の状態の診断、予防および/または処置における使用のための、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物または請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記肝疾患または肝臓の状態が、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシス、好ましくはA、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスによって引き起こされた肝炎もしくは複数種のウイルスによって引き起こされる同時肝炎から選択され、ならびに/または
前記肝疾患もしくは肝障害が、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、ウィルソン病等の、ウイルスもしくは非ウイルス病原体の肝臓期を伴う疾患であり、ならびに/または
前記肝疾患または肝障害が、肝腫瘍、好ましくは肝細胞がん(HCC)である、請求項12に記載の使用のためのコンジュゲート化合物または医薬組成物。
【請求項14】
前記肝疾患または肝障害が、胆汁経路内の胆汁酸塩蓄積に関する、肝移植後の移植後合併症であり、ならびに/または
前記肝疾患もしくは肝臓の状態が、肝細胞への化合物のナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)仲介輸送に関するか、または前記疾患もしくは状態の部位もしくは位置への薬物もしくは標識の化合物の送達を必要とし、ならびに好ましくは
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物性胆汁うっ滞性肝疾患、
高脂血症、
肝炎後胆汁うっ滞、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、
糖原病
から選択される肝臓関連代謝疾患であり、ならびに
NTCPを介して肝細胞に輸送される化合物が、好ましくは胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートおよび非コンジュゲート甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸に共有結合している化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である、請求項12または13に記載の使用のためのコンジュゲート化合物または医薬組成物。
【請求項15】
免疫調節剤および/またはRIG-I、MDA-5もしくはTLRのアゴニストもしくはアンタゴニスト等の別の治療剤との併用療法を含み、ならびに/または
前記コンジュゲート化合物が、治療有効量、好ましくは患者あたり約0.01mg~約50mg、好ましくは患者あたり約0.1mg~約10mgの範囲で投与される、または
1kgあたり10pmol~体重1kgあたり20μmolの範囲の用量で患者に適用され、ならびに/または
投与の経路が、経口、皮下、静脈内、経鼻、筋肉内、経皮、吸入、座薬によるものから選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物または請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはB型肝炎ウイルスの疎水性修飾preS由来ペプチドまたはそれぞれの環状ペプチドである、ペプチド部分(a)、および好ましくは胆汁酸である、NTCP基質部分(b)を含む、コンジュゲート化合物に関する。本発明はさらに、少なくとも1つのコンジュゲート化合物を含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、肝疾患または肝臓の状態の診断、予防および/もしくは処置、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害等における、該コンジュゲート化合物および医薬組成物の医学的使用に関する。本発明はさらに、該疾患および/または感染症の診断、予防および/または処置の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、約20億の人々が、HBVの血清学的マーカーを保持している。そのうち約2億6千万人が、慢性的にHBVに感染している。疾病管理センター(CDC:Center of Disease Control)によると、慢性的にHBV感染した人々の15~25%は、適切な処置を受けていない場合、10年以内に肝細胞がん(HCC:hepatocellular carcinoma)を発症しやすい(Shephard et al.,2006)。HBV関連HCCは予後不良を有し、そのためHBVは、世界保健機関(WHO:world health organization)によって、最も重要な天然ヒト発がん物質として分類されている。予防ワクチンの存在にもかかわらず、根治療法の欠如、増加する世界人口、および貧困国において未だ限定されている予防法のために、近い将来感染症の数は全く低下しないであろう。
【0003】
HBVは、主に非経口的経路を介して伝播する。実際に感染した免疫応答性の個体の90~95%はウイルスを排除し、それによって終生免疫保護(life-long immune protection)を獲得する。感染した人々の約5~10%は慢性B型肝炎を発症する(ドイツで300,000~500,000人)。対照的に、高度な流行地、特に中央アフリカおよび東アジアでは、主な伝播様式は周産期における母親から子への伝播である。不幸にも、免疫応答性が完全ではない子の感染は、90~98%の慢性的な疾患の経過をもたらす。従って、B型肝炎関連HCCは、これらの国の多くにおいて最も一般的な悪性腫瘍である。
【0004】
慢性デルタ型肝炎ウイルス(HDV:Hepatitis Delta Virus)感染症は、HBV単独感染(mono infection)と比較した場合に硬変および肝細胞がんの割合のさらなる増大をもたらす、最も深刻な形態のウイルス肝炎を表す。HDVはB型肝炎ウイルス(HBV:Hepatitis B Virus)のサテライトウイルスであり、慢性的にHDVに感染している患者が常にHBVに同時感染していることを意味する。現在、推定1500万~2500万人がHBV/HDVに同時感染している。しかしながら、これらの数は、信頼できる疫学的データの不足のために、未だ漠然としている。現在、HDV感染患者を処置するために承認された薬物はない。侵入阻害剤ミルクルデックスB/ブレビルチドは、第II相臨床試験において、見込みのある結果を示した(Mentha et al.,2019)。
【0005】
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の処置のための、現在承認されている最適治療計画は、既に確立された感染症の後のウイルスゲノムの複製ステップに対応する(ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル、テノホビル)か、または免疫系の調節因子として作用する(インターフェロンα)かのいずれかである。不幸にも、患者の10~25%しか、かかる治療の際に持続性のウイルス学的応答を維持しない。従って、ウイルス排除と感染治癒を助け得る、未感染時点での複製ステップ(例えば、ウイルス侵入)を標的化する新規の治療法を開発することが最も重要である。
【0006】
予防ワクチンおよび逆転写酵素(RT:reverse transcriptase)阻害剤の可用性にもかかわらず、世界中でHBV感染者の数およびHBV関連死の数(現在1年あたり約350,000)は増大している。原発性肝がんの約3分の2は持続的なHBV感染に起因する(Chan & Sung,2006)。
【0007】
ウイルス侵入の特異的な阻害は、異なるウイルスによる急性および慢性感染症を制御し、最終的に排除するための魅力的な治療的概念である。HBV/HDV同時感染患者における侵入阻害は、インターフェロンαと組み合わせて投与された場合の患者のサブセットにおける治療能力を含み(Myr 203試験、ClinicalTrials.gov Identifier:NCT03852719、Wedemeyer et al.,2018;Wedemeyer et al.,2019参照)、単独療法において非常に見込みのある結果を示した(Myr 202試験、Wedemeyer et al.,2017;Wedemeyer et al.,2018参照)。
【0008】
ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)は、ヘパドナウイルス科の一員である。ヘパドナウイルスは、pgRNA中間体の逆転写を介して自身のDNAゲノムを複製する、最小のエンベロープDNAウイルスである。集合の間に、ヌクレオカプシドは、ラージ(L:large)、ミドル(M:middle)およびスモール(S:small)という名の3種のウイルスエンベロープタンパク質を獲得する。それらは、1つのオープンリーディングフレーム中にコードされ、膜アンカーに必要なSドメインを共有する。Sドメインに加えて、Mは、アミノ酸55個のN末端親水性伸長部(preS2)を含有し、一方、Lは、preS1とよばれる107、117または118個のアミノ酸(遺伝子型依存性)によってさらに伸長されている(Urban et al.,2014)。D型肝炎ウイルス(HDV)は、肝細胞への侵入のためにHBVエンベロープタンパク質を利用するサテライトウイルソイドである。Lのミリストイル化preS1ドメインは、肝細胞特異的受容体であるナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP:sodium taurocholate co-transporting polypeptide)との特異的相互作用によって、HBVおよびHDVの感染性に重要な役割を果たす(Lempp & Urban,2017)。
【0009】
本発明者らは、以前に、PHHおよびHepaRG細胞のHBVおよびHDV感染をブロックするHBVのLタンパク質由来リポペプチドを同定した(Gripon et al.,2005、Schulze et al.,2010、例えばWO2009/092611 A1、US10,323,068)。それらはHBV遺伝子型DのpreS1ドメインのN末端のアミノ酸47個(HBVpreS/2-48myr)に由来し、ミリスチン酸での自然発生の修飾を含む。主な化合物はミルクルデックスBである(例えば、Bogomolov et al.,2016;Blank et al.,2016;Wedemeyer et al.,2018参照)。
【0010】
参照によって本明細書にその内容全体が援用されているWO2009/092612およびWO2012/107579において、本発明者らは、HBVの疎水性修飾preS由来ペプチド、および肝臓への化合物の特異的送達のためのビヒクルとしてのそれらの使用を記載している。
【0011】
本発明者らはさらに、これらHBVのLタンパク質由来リポペプチド、すなわちナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチドの結合の要因である受容体を同定した(NTCP/SLC10A1)(WO2014/072526、WO2014/072524およびWO2015/014830)。Ni et al.(2014)およびYan et al.(2012)も参照。参照によって本明細書にその内容全体が援用されているWO2017/102906 A1において、本発明者らは、環状形態のミルクルデックスB等の環状NTCP標的化ペプチド、および侵入阻害剤としてのそれらの使用を記載している。
【0012】
よって、NTCP仲介輸送に関する肝疾患等の肝疾患の診断、予防および/または処置のための改良された手段および方法を提供することは、本発明の目的である。
【0013】
本発明はさらに、従来技術に存在するようなHBV感染および他のHBV関連疾患の阻害、予防および/または処置のための方法および手段を改良することを狙い、よって、HBV感染および関連疾患の、標的化された有効な阻害、予防および/または処理を可能にする改良された方法および手段を提供することは、本発明の目的である。
【0014】
HDV感染およびHDV関連疾患の阻害、予防および/または処置のための改良された手段および方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0015】
本発明は、HBVおよびHDV受容体としてのNTCPならびに天然基質およびさらなる化合物のNTCP仲介輸送の阻害のための、改良された手段および方法を提供することを狙う。
【発明の概要】
【0016】
本発明によると、この課題は、
(a)ペプチド部分、および
(b)ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)の胆汁酸結合部位に対応するNTCP基質部分
を含むコンジュゲート化合物であって、(a)および(b)は互いに、好ましくはリンカーまたはアミノ酸側鎖を介して、共有結合している、コンジュゲート化合物を提供することによって、解決される。
【0017】
本発明によると、この課題は、
(i)少なくとも1つの本発明のコンジュゲート化合物、
(ii)場合により、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤
を含む医薬組成物を提供することによって、解決される。
【0018】
本発明によると、この課題は、医薬品における使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0019】
本発明によると、この課題は、肝疾患または肝臓の状態の診断、予防および/または処置における使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供することによって、解決される。
【0020】
本発明によると、この課題は、治療有効量の本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物の投与を含む、肝疾患または肝臓の状態の診断、予防および/または処置のための方法によって、解決される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を以下により詳細に記載する前に、本明細書中に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬は変化し得るので、本発明がそれらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される用語法もまた、特定の実施形態を記載する目的であるだけであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないこともまた、理解されるべきである。他に定義されなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的のために、本明細書中で引用される全ての参照は、その全体が参照によって援用されている。
【0022】
濃度、量および他の数値データは、範囲形式で表現または表示され得る。かかる範囲形式は、単に簡便性および簡潔さのためであり、よって、範囲の限定として明らかに列挙される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分範囲も、各数値および部分範囲が明らかに列挙されているかのように含むと、柔軟に解釈されるべきであることが理解される。実例として、「1~21」の数値範囲は、明らかに列挙されている値の1~21を含むだけでなく、示された範囲内の単一値および部分範囲もまた含むと解釈されるべきである。よって、この数値範囲に含まれるのは、1、2、3、4、5....17、18、19、20、21等の単一値および2~10、8~15等の部分範囲である。この同じ原則は、「少なくとも90%」等の1つの数値のみを列挙する範囲に適用される。さらに、かかる解釈は、記載されている範囲の幅または特徴にかかわらず適用されるべきである。
【0023】
<コンジュゲート化合物>
上で概説したように、本発明は、コンジュゲート化合物を提供する。
【0024】
本発明のコンジュゲート化合物は、
(a)ペプチド部分、および
(b)ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)の胆汁酸結合部位に対応するNTCP基質部分
を含む。
【0025】
該ペプチド部分(a)およびNTCP基質部分(b)は、互いに、好ましくはリンカーまたはアミノ酸側鎖を介して、共有結合している。
【0026】
<ペプチド部分(a)>
好ましい実施形態において、ペプチド部分(a)は、
一般式I
H-[(X)m-P-(Y)n]-R (I)
のB型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性修飾preS由来ペプチド
(式中、
Pはアミノ酸配列NPLGFXaaP(配列番号1)であり、XaaはFもしくはLであり、
Xはアミノ酸m個の長さを有するアミノ酸配列であり、
ここでmは0もしくは少なくとも1であり;
Yはアミノ酸n個の長さを有するアミノ配列であり、
ここでnは0もしくは少なくとも1であり;
ここでm+nは5~25、好ましくは8~20、より好ましくは8~15であり;
Hは疎水性修飾であって、
PのN末端またはX内もしくはY内に位置し、
アシル化および疎水性部分の付加から選択される
RはC末端修飾であって、
好ましくは、アミド、D-アミノ酸、修飾アミノ酸、環状アミノ酸;PEG、グリカン等の天然および合成ポリマーから選択される、分解から保護する部分である);
もしくは
一般式Ia
シクロ[(X)m-P-(Y)n] (Ia)
の環状ペプチド
(式中、
P、X、Y、mおよびnは上で定義された通りであり、
Xおよび/もしくはYのアミノ酸側鎖に少なくとも1つの疎水性修飾を保持し、
ここで、該環状ペプチドは、配列番号1のPのアミノ酸配列内で環状化されておらず、かつPのアミノ酸側鎖を介しておらず、
ここで、疎水性修飾はアシル化もしくは疎水性部分の付加である);
または薬学的に許容され得るその塩
から選択される。
【0027】
ある実施形態において、ペプチド部分(a)の疎水性修飾は、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)またはステアロイル(C18)、好ましくはミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)またはステアロイル(C18)、より好ましくはミリストイル(C14)等のC8~C22脂肪酸でのアシル化である。
【0028】
ある実施形態において、1つまたは複数の疎水性部分は、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体から選択される。
【0029】
好ましくは、ペプチド部分(a)は一般式Iのペプチドであり、式中m=0~18および/またはn=0~7、好ましくはm=0~7および/またはn=0~6(m=7およびn=6等)である。
【0030】
好ましくは、ペプチド部分(a)は一般式Iaの環状ペプチドであり、式中m=0~18および/またはn=0~7、好ましくはm=0~7および/またはn=0~6であり、但しm+nは少なくとも1である。
【0031】
ある実施形態において、
m+n=0、ペプチドはアミノ酸7個(すなわちP)の長さを有する/アミノ酸7個(すなわちP)を含む;
m+n=1、ペプチドはアミノ酸8個の長さを有する/アミノ酸8個を含む;
m+n=2、ペプチドはアミノ酸9個の長さを有する/アミノ酸9個を含む;
m+n=3、ペプチドはアミノ酸10個の長さを有する/アミノ酸10個を含む;
m+n=4、ペプチドはアミノ酸11個の長さを有する/アミノ酸11個を含む;
m+n=5、ペプチドはアミノ酸12個の長さを有する/アミノ酸12個を含む;
m+n=6、ペプチドはアミノ酸13個の長さを有する/アミノ酸13個を含む;
m+n=7、ペプチドはアミノ酸14個の長さを有する/アミノ酸14個を含む;
m+n=8、ペプチドはアミノ酸15個の長さを有する/アミノ酸15個を含む;
m+n=18、ペプチドはアミノ酸25個の長さを有する/アミノ酸25個を含む;
m+n=25、ペプチドはアミノ酸32個の長さを有する/アミノ酸32個を含む。
【0032】
好ましい実施形態において、ペプチド部分(a)は、
HBVpreS/2-21(B) G
TNLS
VPNPLGFFPDHQLDP 配列番号2
HBVpreS/-11-21(B) GGWSSKPRKGMG
TNLS
VPNPLGFFPDHQLDP 配列番号3
HBVpreS/2-21(D) G
QNLS
TSNPLGFFPDHQLDP 配列番号4
HBVpreS/-11-21(D) GGWSSKPRKGMG
QNLS
TSNPLGFFPDHQLDP 配列番号5
HBVpreS/9-16 NPLGFFPD 配列番号6
HBVpreS/8-16 PNPLGFFPD 配列番号7
HBVpreS9-17 NPLGFFPDH 配列番号8
HBVpreS8-17 PNPLGFFPDH 配列番号9
の群から選択されるアミノ酸配列、
または、P内のそれぞれの修飾:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
を有するアミノ酸配列を含むか、または該アミノ酸配列からなる。
【0033】
ある実施形態において、ペプチド部分(a)は、胆汁酸部分を共有結合するためのさらなるアミノ酸を含み、ここで該さらなるアミノ酸は、リジン(K)、D-リジン(k)、D-チロシン(y)、システイン(C)、プロパルギルグリシン、アジドフェニルアラニン、アジドリジン、アジドフェニルアラニン、ホモアリルグリシン、ホモプロパルギルグリシン、アジドホモアラニン、アジドノルロイシン、アジドフェニルアラニン、プロパルギルオキシフェニルアラニンおよびアセチルフェニルアラニン等の、L-またはD-アミノ酸であり、天然または非天然アミノ酸であり得る。
【0034】
ある実施形態において、ペプチド部分(a)は、環状化のためのさらなるアミノ酸を含む環状ペプチドであり、ここで該環状化のためのさらなるアミノ酸は、システイン(C)、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、アジドフェニルアラニン等の天然または非天然アミノ酸であり得る。
【0035】
<NTCP基質部分(b)>
好ましくは、NTCP基質部分(b)は、
ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)の天然基質、
好ましくは胆汁酸、胆汁酸ダイマーおよび多量体;または
NTCPの非天然基質
薬物、例えばエゼチミブ、イルベサルタン、ロシグリタゾン、ザフィルルカスト、TRIAC、スルファサラジン等;
から選択される。
【0036】
非天然基質は、Donkers et al.(2017)にさらに記載されている。
【0037】
好ましくは、NTCP基質部分(b)は、
コール酸(CA:cholate);ウルソデオキシコール酸(UDCA:ursodeoxycholate);
リトコール酸(LCA:lithocholate);
タウロコール酸(TCA:taurocholate)
グリココール酸
タウロデオキシコール酸(TDCA:taurodeoxycholate)
タウロケノデオキシコール酸(TCDC:taurochenodeoxycholate)
タウロウロソデオキシコール酸(TUDCA:tauroursodeoxycholate)
等の
タウリン-またはグリシンコンジュゲート胆汁酸およびその塩
(タウリン-またはグリシンコンジュゲートジヒドロキシおよびトリヒドロキシ胆汁酸塩);
硫酸抱合型胆汁酸およびその塩;
UDCA-UDCA
【0038】
【0039】
等のウルソデオキシコール酸のダイマー、
またはビス(5β-コラン-24-オイック酸3β-イル)ジエチレングリコール(例えばGouin and Zhu,1996参照)
【0040】
【0041】
;
CA-TUDCA
【0042】
【0043】
等のタウロウロソデオキシコール酸(TUDCA)を含むダイマー;
【0044】
CA-UDCA
【0045】
【0046】
等の、胆汁酸の混合ダイマー;
等のモノマーおよび重合体胆汁酸から選択される、胆汁酸を含む。
【0047】
<(a)および(b)の結合>
コンジュゲート化合物において、ペプチド部分(a)およびNTCP基質部分(b)は、互いに、好ましくはリンカーまたはアミノ酸側鎖を介して、共有結合している。
【0048】
胆汁酸部分の結合部位は、好ましくは、胆汁酸部分のカルボン酸基またはスルホン酸基である。
【0049】
結合はまた、胆汁酸部分の環構造を介しても可能である。
【0050】
好ましくは、胆汁酸は、ステロイド骨格の環Aの3-ヒドロキシル基を介してペプチド部分(a)に結合していない。
【0051】
胆汁酸部分(b)は、好ましくは、リジン(K)の側鎖に結合している。該実施形態において、ペプチド部分は、リジンへのリンカーとして働くための、D-チロシン(y)等の追加のD-アミノ酸を含み得る。
【0052】
好ましいコンジュゲート化合物は:
HBVpreS/2-21-K-myr-CA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-K-myr-CA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-K-myr-LCA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-K-myr-LCA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-K-myr-UDCA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-K-myr-UDCA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-K-myr-(UDCA)2(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-K-myr-(UDCA)2(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-CA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-CA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-LCA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-LCA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-UDCA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-UDCA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-(UDCA)2(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-yK-myr-(UDCA)2(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-k-myr-CA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-k-myr-CA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-k-myr-LCA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-k-myr-LCA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-k-myr-UDCA(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-k-myr-UDCA(遺伝子型D)、
HBVpreS/2-21-k-myr-(UDCA)2(遺伝子型B)、
HBVpreS/2-21-k-myr-(UDCA)2(遺伝子型D)、
より好ましくは
HBVpreS/2-21-K-myr-CA(遺伝子型B)
HBVpreS/2-21-yK-myr-CA(遺伝子型B)
HBVpreS/2-21-yK-myr-LCA(遺伝子型B)
HBVpreS/2-21-K-myr-UDCA(遺伝子型B)
HBVpreS/2-21-yK-myr-UDCA(遺伝子型B)
HBVpreS/2-21-K-myr-(UDCA)2(遺伝子型B)
HBVpreS/2-21-yK-myr-(UDCA)2(遺伝子型B)
である。
【0053】
【0054】
胆汁酸部分(b)は、好ましくは、リジン(K)の側鎖に結合している。ある実施形態において、アミノ酸置換が行われて、リジン(K)がペプチド部分(a)のアミノ酸配列に導入される。
【0055】
かかるアミノ酸置換に好ましい位置は:
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
である。
【0056】
好ましい環状コンジュゲート化合物の例は:
Myr-シクロ-[HBVpreS2-21(B)]-yK (配列番号2)
myr-シクロ C[GTNLSVPNPLGFFPDHQLDPyK]C
Myr-シクロ-[HBVpreS2-21(B)]-K (配列番号2)
myr-シクロ C[GTNLSVPNPLGFFPDHQLDPK]C
Myr-シクロ-[HBVpreS2-21(B)]-k (配列番号2)
myr-シクロ C[GTNLSVPNPLGFFPDHQLDPk]C
Myr-シクロ-[HBVpreS2-21(D)]-yK (配列番号4)
myr-シクロ C[GQNLSTSNPLGFFPDHQLDPyK]C
Myr-シクロ-[HBVpreS2-21(D)]-K (配列番号4)
myr-シクロ C[GQNLSTSNPLGFFPDHQLDPK]C
Myr-シクロ-[HBVpreS2-21(D)]-k (配列番号4)
myr-シクロ C[GQNLSTSNPLGFFPDHQLDPk]C
である。
【0057】
【0058】
<コンジュゲート化合物のさらなる部分>
本発明のコンジュゲート化合物は、
薬物またはそれらのそれぞれのプロドラッグ;
タグ;
蛍光色素、放射性同位体および造影剤等の標識;
組換えウイルス;
薬物、プロドラッグまたは標識のための担体またはデポー;
免疫原性エピトープ;
ホルモン;
阻害剤;
毒素
等の
1つまたは複数のさらなる部分を含み得る。
【0059】
該1つまたは複数のさらなる部分は、好ましくは、リンカー、スペーサーおよび/またはアンカー基、
例えば切断可能リンカー
等を介して共有結合している。
【0060】
本発明者らは、本発明のコンジュゲート化合物が、ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP/SLC10A1)の標的化を介した、侵入阻害の二価阻害剤であることを見出した。特に:
コンジュゲートのペプチド部分は、その必須ドメインNPLGFXaaP(配列番号1)によってNTCPとアロステリックに相互作用する;
胆汁酸はNTCPの天然基質/リガンドであるため、コンジュゲートのNTCP基質部分は、NTCPの胆汁酸部位(基質結合部位)と相互作用する。
【0061】
広範な変異解析によって、本発明者らは、ペプチド(NPLGF(F/L)P)の必須結合部位が胆汁酸結合部位と直接相互作用しないことを示した。本発明者らは、胆汁酸結合が、新しい基質の必須ペプチド性部分との相互作用を排除しないことを証明した。特に、両方の結合部位のブロックは、受容体のより遅い回転率をもたらし、従って肝細胞の表面の受容体の半減期を延長する。このことと、ペプチドによる胆汁酸塩基質の固定によって、両方の部分の相乗効果がもたらされる。
【0062】
<医薬組成物および医療用途>
上で概説したように、本発明は、医薬組成物を提供する。
【0063】
本発明の医薬組成物は、
(i)少なくとも1つの本発明のコンジュゲート化合物、
(ii)場合により、薬学的に許容され得る担体および/または賦形剤
を含む。
【0064】
上述したように、本発明は、医薬品における使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供する。
【0065】
よって、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物は、疾患の診断、予防および/または処置に適しており、そのためそれらのために提供される。
【0066】
上述したように、本発明は、HBVおよび/またはHDV感染の阻害における使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供する。
【0067】
上述したように、本発明は、HBVおよび/またはHDV一次感染の予防における使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供する。
【0068】
上述したように、本発明は、HBVおよび/またはHDV侵入阻害剤としての使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供する。
【0069】
好ましくは、任意の遺伝子型のHBV感染が阻害または予防される。
【0070】
好ましくは、任意の遺伝子型のHDV、すなわち任意のタイプのHBVエンベロープタンパク質を有するHDVの、HDV感染が阻害または予防される。
【0071】
好ましくは、侵入阻害は、ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP/SLC10A1)の標的化、すなわち「NTCP標的化」を介する。
【0072】
上述したように、ある実施形態において、コンジュゲート化合物はさらに、
(i)特に二価阻害剤として(上述したように)、NTCPに対応し、阻害し、かつ
(ii)NTCPとの相互作用によって肝臓を標的化し、その後にヌクレオカプシドに第二の活性ドメインを作用させることを介して、ウイルス複製に干渉する、
組み合わせ阻害剤として作用し得る。
【0073】
上述したように、本発明は、肝疾患または肝臓の状態の診断、予防および/または処置における使用のための、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物を提供する。
【0074】
ある実施形態において、肝疾患または肝臓の状態は、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシス、好ましくはA、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスによって引き起こされた肝炎または複数種のウイルスによって引き起こされる同時肝炎(concomitant hepatitis)から選択される。
【0075】
ある実施形態において、肝疾患または肝障害は、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、ウィルソン病等の、ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期を伴う疾患である。
【0076】
ある実施形態において、肝疾患または肝障害は、肝腫瘍、好ましくは肝細胞がん(HCC)である。
【0077】
ある実施形態において、肝疾患または肝障害は、胆汁経路内の胆汁酸塩蓄積/移植後関連肝機能障害に関する、肝移植後の移植後合併症である。
【0078】
ある実施形態において、肝疾患または肝臓の状態は、肝細胞への化合物のナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)仲介輸送に関するか、または疾患もしくは状態の部位もしくは位置への薬物もしくは標識の化合物の送達を必要とする。
【0079】
好ましくは、該肝疾患または肝臓の状態は、
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物性胆汁うっ滞性肝疾患、
高脂血症、
肝炎後胆汁うっ滞、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:non-alcoholic fatty liver disease)
糖原病
から選択される肝臓関連代謝疾患(liver involved metabolic disease)である。
【0080】
好ましくは、NTCPを介して肝細胞に輸送される化合物は、好ましくは胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートおよび非コンジュゲート甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸に共有結合している化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である。
【0081】
ある実施形態において、本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物は、
免疫調節剤(immunomodulatory)、
例えば、インターフェロン(IFN:interferon)、インターフェロンλ、
および/または
RIG-I、MDA-5もしくはTLRのアゴニストもしくはアンタゴニスト、
例えば、イナリギビル、TLR-7アゴニスト、TLR-8アゴニスト;
等の別の治療剤との併用療法において使用される。
【0082】
研究者らによる最近のインビトロ研究および臨床試験(Myr-203)研究から、IFNが侵入阻害剤と強い相乗作用を示すことを示した。HDV感染症の場合、IFNは、ミルクルデックスBによってブロックし得ないHDV-RNAの有糸分裂仲介細胞間拡散(mitosis mediated cell to cell spread)を予防する。従って、両方の薬物の投与は、ウイルス血症のより強い抑制を同時に示す。さらに、ミルクルデックスによる侵入阻害は、免疫変調成分IFNが適応免疫系の再構築を助け(Myr-203試験、Wedemeyer et al.,2019;Wedemeyer et al.,2018参照)、HBVおよびHDV排除を助けることを可能にすることが示されている。
【0083】
本発明者らは、ナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)を、標的として、ならびに、肝細胞への(胆汁酸等の)化合物のNTCP仲介輸送に関する肝疾患または肝臓の状態等の、ある肝疾患または肝臓の状態、好ましくは肝臓関連代謝疾患(例えば、肝内胆汁うっ滞、肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、薬物性胆汁うっ滞性肝疾患、高脂血症等)および心血管疾患の予防および/または処置における使用のために、同定および記載している。全体が本明細書の一部をなす、WO2014/072524およびPCT/EP2014/066262参照。
【0084】
「肝臓関連代謝疾患」は、本明細書中で使用される場合、脂質および胆汁酸の肝臓代謝の影響を受ける、内臓肥満、糖尿病および脂質異常症を含む代謝障害をいう。
【0085】
一般に、「胆汁うっ滞」は、肝細胞から胆管へ胆汁成分が分泌できないか、または胆汁が肝臓から十二指腸へ流れられない状態であり、肝細胞内での肝細胞胆汁酸蓄積をもたらす。
【0086】
「胆汁うっ滞」または「肝内胆汁うっ滞」は、本明細書中で使用される場合、胆管側膜の胆汁酸塩ポンプ(BSEPまたはMRPのような)の不十分な発現および/または活性に関する肝細胞胆汁酸蓄積の肝内毒作用をいう。
【0087】
「肝炎後胆汁うっ滞」は、本明細書中で使用される場合、大胆管の閉塞による胆汁うっ滞性肝疾患をいう。
【0088】
「肝臓の中毒」または「肝毒性」または「中毒性肝疾患」は、本明細書中で使用される場合、胆汁酸蓄積と無関係な薬物の毒作用をいう。これらの薬物は、NTCP仲介輸送を介して肝細胞に浸透し、ミトコンドリアに損傷を与えることによって、またはチトクロムP-450系において酵素を活性化し、酸化ストレスをもたらすことによって、いくつかの直接の毒作用を引き起こす。
【0089】
「薬物性胆汁うっ滞性肝疾患」は、本明細書中で使用される場合、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP:bile salt export pump)に対する薬物効果による、肝細胞からの胆汁酸の排出の阻害をいう。
【0090】
薬物性胆汁うっ滞は、リファマイシン、シクロスポリンA、リファマイシンSV、ボセンタン、トログリタゾン、エリスロマイシンエストレートおよびグリベンクラミド等の、BSEPを阻害するいくつかの薬物によって引き起こされ得る(Fattinger et al.,2001;Funk et al.,2001;Funk et al.,2001;Stieger et al.,2000;Dawson et al.,2012;Morgan et al.,2010;Ogimura et al.,2011)。BSEPは、トランスポーターのATP結合カセット(ABC:ATP-binding cassette)ファミリーの一員であり(BSEPはまた、ABCB11として同定される)、胆汁酸を肝細胞の外に排出して、そのためこれらの細胞に対するその毒性を減少させるプロセスに関与する。BSEPを介した胆汁酸の排出ができなくなるので、上述の薬物は、過剰な胆汁酸蓄積の毒作用を引き起こす。リポペプチドベースの化合物(MyrB等)およびNTCPを介したNTCP仲介胆汁酸取り込みの阻害は、BSEP阻害を相殺し、それによって肝毒性を予防するか、または、処置および/もしくは診断に適している。
【0091】
「高脂血症」(または高リポタンパク血症、または高脂血症)は、血中の、異常に上昇したレベルの任意または全ての脂質および/またはリポタンパク質を伴う。
【0092】
高脂血症は、原発性および二次性サブタイプに分けられる。原発性高脂血症は、通常、遺伝的原因によるが(受容体タンパク質の変異等)、二次性高脂血症は、糖尿病等の、他の根底にある原因によって起こる。脂質およびリポタンパク質の異常は、一般集団において一般的であり、アテローム性動脈硬化に対するその影響によって、心血管疾患の、変更可能な危険因子と見なされている。
【0093】
「高コレステロール血症(hypercholesterolemia)」(または高コレステロール血症(hypercholesterolaemia))は、血中の高レベルのコレステロールの存在である。これは「高脂血症」の一形態である。
【0094】
「高脂血症」は、本明細書中で使用される場合、好ましくは、上昇したLDLコレステロール、減少したHDLコレステロール、上昇したトリグリセリド、高血圧をもたらす詰まった動脈、心血管疾患(CVD:cardiovascular disease)、心臓発作および脳卒中を含む、高コレステロール血症をいう。
【0095】
「メタボリックシンドローム」は、以下の5つの医学的状態:腹部(中心性)肥満、血圧上昇、空腹時血糖値上昇、高血清トリグリセリドおよび低い高密度コレステロール(HDL)レベルのうちの3つの同時発生(co-occurrence)によって診断される、エネルギー利用および貯蔵の障害をいう。メタボリックシンドロームは、心血管疾患、特に心不全、および糖尿病を発症するリスクを高める。メタボリックシンドロームはまた、メタボリックシンドロームX、心血管代謝症候群、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、リーベン症候群およびCHAOSとしても公知である。
【0096】
「非アルコール性脂肪性肝疾患」(NAFLD)は、過剰なアルコール摂取によらずに肝臓に脂肪が堆積した場合(脂肪症)に起こる、脂肪肝の1つの原因をいう。これはインスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームに関する。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)は、NAFLDの最も極端な形態であり、未知の原因の肝臓の硬変の主な原因と見なされている。
【0097】
好ましくは、NTCP仲介輸送は、本発明のコンジュゲート化合物によって減少するか、またはブロックされる。
【0098】
上述したように、ある実施形態において、コンジュゲート化合物は、
(i)特に二価阻害剤として(上述したように)NTCPに対応し、阻害し、かつ
(ii)NTCPとの相互作用によって肝臓を標的化し、およびその後にヌクレオカプシドに第二の活性ドメインを作用させることを介して、ウイルス複製に干渉する
組み合わせ阻害剤として作用し得る。
【0099】
<投与の経路>
好ましくは、本発明のコンジュゲート化合物または医薬組成物の投与の経路は、経口、皮下、静脈内、経鼻、筋肉内、経皮、吸入、座薬によるものから選択される。
【0100】
好ましい投与または適用の経路は経口である。
【0101】
経鼻投与または適用のための好ましい実施形態は、鼻内噴霧である。
【0102】
<治療有効量>
本発明のコンジュゲート化合物または医薬組成物は、治療有効量の該環状ペプチドまたは該医薬組成物を含むように提供される。
【0103】
「治療有効量」の本発明のコンジュゲート化合物または医薬組成物は、NTCP受容体機能を阻害するのに十分な量をいう。さらに、該「治療有効量」は、それぞれの適用、および阻害、処置またはワクチン接種の所望の結果に依存する。
【0104】
(ii)例えば胆汁酸、薬物等のNTCP仲介輸送の阻害のため等の、NTCPの飽和を必要とする使用(例えば、患者あたり1mgまたは1~2mg/患者)と比較して、
(i)抗ウイルス使用または侵入阻害のための異なる治療有効量(例えば、患者あたり0.01~0.5mg、好ましくは0.1~1mg/患者)が必要である。
【0105】
ある実施形態において、該「治療有効量」の本発明のコンジュゲート化合物または医薬組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害する;HBVおよび/もしくはHDV一次感染を予防する;B型肝炎および/もしくはDを処置ならびに/またはインビボでHBVおよび/もしくはHDVのワクチン接種および/または侵入阻害するのに十分な量をいう。
【0106】
好ましい治療有効量は、体重1kgあたり10μg~1mg、好ましくは10μg~100μgの範囲である。
【0107】
好ましくは、治療有効量は、1日あたりに患者あたり約0.01mg~約50mg、好ましくは1日あたりに患者あたり約0.1mg~約10mgの範囲もしくは1日あたりに1kgあたり100nmol~1kgあたり2μmolの範囲の用量で患者に適用されるか、または1kgあたり10pmol~体重1kgあたり20μmolの範囲の用量で患者に適用される。
【0108】
約10nMの、使用される環状ペプチドのIC50値の場合、好ましい治療有効量は、体重1kgあたり約100μgであるか、または患者あたり1~5mgの範囲である。患者あたり1~5mgの範囲の好ましい治療有効量が、1日1回、または他の実施形態においては2~3日毎に1回のみ、投与され得る。
【0109】
当業者は、適切な治療有効量を決定することができよう。
【0110】
<疾患の診断、予防および/または処置の方法>
上述したように、本発明は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV一次感染の予防のための方法を提供する。
【0111】
該方法は、治療有効量の本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0112】
好ましくは、任意の遺伝子型のHBV感染が、阻害または予防される。
【0113】
好ましくは、任意の遺伝子型のHDV、すなわち任意のタイプのHBVエンベロープタンパク質を有するHDVの、HDV感染が阻害または予防される。
【0114】
上で概説したように、本発明は、肝疾患または肝臓の状態の、診断、予防および/または処置のための方法を提供する。
【0115】
該方法は、治療有効量の本発明のコンジュゲート化合物または本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0116】
ある実施形態において、肝疾患または肝臓の状態は、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシス、好ましくはA、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスによって引き起こされた肝炎または複数種のウイルスによって引き起こされる同時肝炎から選択される。
【0117】
ある実施形態において、肝疾患または肝障害は、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、ウィルソン病等の、ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期を伴う疾患である。
【0118】
ある実施形態において、肝疾患または肝障害は、肝腫瘍、好ましくは肝細胞がん(HCC)である。
【0119】
ある実施形態において、肝疾患または肝障害は、胆汁経路内の胆汁酸塩蓄積に関する肝移植後の移植後合併症である。
【0120】
ある実施形態において、肝疾患または肝臓の状態は、肝細胞への化合物のナトリウムタウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)仲介輸送に関するか、または疾患もしくは状態の部位もしくは位置への薬物もしくは標識の化合物の送達を必要とし、
好ましくは、
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物性胆汁うっ滞性肝疾患、
高脂血症、
肝炎後胆汁うっ滞、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
糖原病
から選択される肝臓関連代謝疾患であり、
ここで、NTCPを介して肝細胞に輸送される化合物は、好ましくは胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートおよび非コンジュゲート甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸に共有結合している化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である。
【0121】
ある実施形態において、方法は、
免疫調節剤、
例えば、インターフェロン(IFN)、インターフェロンλ、
および/または
RIG-I、MDA-5もしくはTLRのアゴニストもしくはアンタゴニスト、
例えば、イナリギビル、TLR-7アゴニスト、TLR-8アゴニスト;
等との、別の治療剤との併用療法を含む。
【0122】
本発明の方法において、および上述したように、「治療有効量」は、それぞれの適用、および阻害、処置またはワクチン接種の所望の結果に依存する。
【0123】
(ii)NTCPの飽和を必要とする使用(例えば、患者あたり1mgまたは1~2mg/患者)と比較して、
(i)抗ウイルス使用または侵入阻害のための異なる治療有効量(例えば、患者あたり0.01~0.5mg、好ましくは0.1~1mg/患者)が必要である。
【0124】
ある実施形態において、および上述したように、治療有効量は、好ましくは患者あたり約0.01mg~約50mg、好ましくは患者あたり約1mg~約10mgの範囲であるか、
またはここで、コンジュゲート化合物は、好ましくは1kgあたり10pmol~体重1kgあたり20μmolの範囲の用量で患者に投与される。
【0125】
本発明の方法において、および上述したように、投与の経路は、好ましくは、経口、皮下、静脈内、経鼻、筋肉内、経皮、吸入、座薬によるものから選択される。
【0126】
以下の実施例および図面は、本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1A】
図1Aは、胆汁酸(コンジュゲート化合物の胆汁酸部分(b)について)の例を示す図である。ペプチド部分への好ましい結合部位を示すモノマー。
【
図1B】
図1Bは、胆汁酸(コンジュゲート化合物の胆汁酸部分(b)について)の例を示す図である。ペプチド部分への好ましい結合部位を示すモノマー。
【
図1C】
図1Cは、胆汁酸(コンジュゲート化合物の胆汁酸部分(b)について)の例を示す図である。胆汁酸のダイマー。
【
図2A】
図2Aは、好ましいコンジュゲート化合物を示す図である。ペプチド部分は線状である。
【
図2B】
図2Bは、好ましいコンジュゲート化合物を示す図である。ペプチド部分は環状ペプチドである。NTCP基質部分の結合のためのリジン(K)での置換の可能な位置もまた、示される。
【
図3】
図3は、HBV/HDV感染アッセイを示す図である。胆汁酸コール酸(CA:cholic acid)およびウルソデオキシコール酸(UDCA)とコンジュゲートされたミルクルデックスB(アミノ酸2~21)の切断されたバリアントを含むコンジュゲート化合物を試験した。それらを、胆汁酸部分を含まない対照ペプチド、すなわちHBVpreS/(-11)-21
myr(遺伝子型B)、ならびに2つの胆汁酸CAおよびUDCA単独と比較した。コンジュゲート化合物は、ペプチド単独よりも有意に高い活性を示す(1~2nM対20~100nM)。
【
図4】
図4は、HBV/HDV感染アッセイを示す図である。ウルソデオキシコール酸(UDCA)とコンジュゲートされた、コール酸(CA)および環状ペプチド(アミノ酸2~21を含む)とコンジュゲートされたミルクルデックスB(アミノ酸2~21)の切断されたバリアントを含むコンジュゲート化合物を試験した。それらを、胆汁酸部分を含まない対照ペプチド、すなわちHBVpreS/2-21
myr(遺伝子型B)と比較した。
【
図5】
図5は、胆汁酸モノマーおよびダイマーとコンジュゲートされた化合物のHBV/HDV感染アッセイを示す図である。3つの化合物:ウルソデオキシコール酸(UDCA)とコンジュゲートされた2つの化合物およびウルソデオキシコール酸(UDCA)2のダイマーとコンジュゲートされた1つの化合物を試験し、ここで2つの化合物は直線状にミルクルデックスBのアミノ酸2~21を含み、1つの化合物は環状ポリペプチドとして含む。
【
図6】
図6は、本発明のヨウ素125標識化合物のインビボ平面シンチグラフィーイメージングを示す図である。未処置のマウスにおける、注射後の示された時点での
125I標識化合物のシンチグラフィーイメージング(平面イメージング)の時間経過。
【
図7】
図7は、線状ペプチド配列での胆汁酸コンジュゲートの感染阻害を示す図である。Huh7-hNTCP細胞における種々の胆汁酸コンジュゲート、対照ペプチド、ウルソデオキシコール酸およびコール酸によるHDV感染の減少。30分間細胞に基質を前処理させ、次いで基質およびHDVとともに一晩コインキュベートした。感染の5日後に、細胞内ELISAを行った(n=3)。
【
図8】
図8は、環状ペプチド配列での胆汁酸コンジュゲートの感染阻害を示す図である。Huh7-hNTCP細胞における種々の胆汁酸コンジュゲートおよび対照ペプチドによるHDV感染の減少。30分間細胞に基質を前処理させ、次いで基質およびHDVとともに一晩コインキュベートした。感染の5日後に、細胞内ELISAを行った(n=3)。
【
図9】
図9は、胆汁酸ダイマーペプチドコンジュゲートの感染阻害を示す図である。Huh7-hNTCP細胞におけるモノマー胆汁酸コンジュゲートおよび対照ペプチドと比較した、胆汁酸ダイマーペプチドコンジュゲート胆汁酸コンジュゲートによるHDV感染の減少。細胞を基質で30分間前処理し、次いで基質およびHDVとともに一晩コインキュベートした。感染の5日後に、細胞内ELISAを行った(n=3)。
【実施例】
【0128】
[実施例1:ペプチド部分の固相合成]
全てのペプチドは、以前に記載されているように(Schieck et al.,2010)、Applied Biosystems 433A合成装置での自動Fmoc/tBu固相ペプチド合成によって合成した。酸化的条件下で環化を達成して、それぞれのジスルフィド架橋を形成した。ペプチド合成の後、ミリスチン酸をペプチドのN末端に結合させた。この目的のために、NMP中のミリスチン酸(10等量)、HBTU(9.5等量)およびDIPEA(20等量)の溶液とともに、2.5時間、樹脂を振とうさせた。次いで、NMPおよびDCMで樹脂を洗浄した。
【0129】
リジン側鎖保護基(Aloc)の除去のために、DCM中の3mg Pd(PPh3)および30mg BH3NHMe2の溶液とともに、20分間、樹脂をインキュベートした。DCMおよびMeOHで樹脂を洗浄し、次いで、DCM/MeOH(10:1)中で30分間、2回インキュベートした。次いで、DCMおよびEt2Oで樹脂を洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0130】
[実施例2:胆汁酸ペプチドコンジュゲートのコンジュゲーション]
異なる胆汁酸または胆汁酸ダイマーの結合のために、樹脂をNMP中で膨らませた。次いで、NMP中の胆汁酸(10等量)、HBTU(9.5等量)およびDIPEA(20等量)の溶液を加え、2.5時間振とうした。この後、樹脂をNMP、DCMおよびEt2Oで洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0131】
コンジュゲートを95% TFA/2.5% TIS/2.5% H2Oで1時間切断し、次いで冷Et2O中で沈殿させた。次いで、それらを分取逆相HPLCによって精製し、分析的HPLC(analytical HPLC)によって純度を確認し、その後LC-MSによって解析した。
【0132】
[実施例3:HDAg細胞内ELISA(Huh7-hNTCP)]
<A.材料>
洗浄バッファー: PBS+0.05% Tween20
透過処理バッファー: PBS+0.25% Triton X-100
ブロッキングバッファー: PBS+0.05% Tween 20+1% カゼイン
白色の96ウェル細胞培養プレート: Greiner 655098
Advansta ELISABright化学発光基質(Biozym #541025を介して注文)
過酸化水素溶液(35%、Sigma 349887)
第1の抗体 マウスまたはウサギ抗HDAg(FD3A7) 1:3000
第2の抗体: ペルオキシダーゼがコンジュゲートされたヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ 1:5000
【0133】
<B.手順>
細胞を、白色96ウェルプレート中で増殖および感染させる。
1)RTで30分間、50μlの4% PFAで細胞を固定
2)PBS(洗浄バッファーではない)で2回洗浄
3)RTで30分間、100μlの透過処理バッファーで透過処理
4)RTで30分間、100μlのブロッキングバッファーでブロック
5)RTで1時間、振とうしながら、ブロッキングバッファー中に希釈した100μlの一次抗体(1:3000)とともにインキュベート
6)3×1分間、200μlで洗浄(洗浄バッファー)
7)RTで10分間、100μlの3%(Huh7由来細胞)過酸化水素溶液(PBS中のストックから3%になるように1:12)とともにインキュベート
8)4×1分間、200μlで洗浄(洗浄バッファー)
9)RTで1時間、振とうしながら、ブロッキングバッファー中1:5000の100μlの第二の抗体とともにインキュベート
10)3×1分間、200μlで洗浄(洗浄バッファー)+2×10分間、200μlで洗浄(洗浄バッファー)+1×10分間、200μlで洗浄(透過処理バッファー)[非常に重要である]
11)50μlの発光基質を加え(製造業者のプロトコルに従って混合する)、ピペッティングの後、直接プレートリーダーで測定。
(促進されたルシフェラーゼプロトコル(enhanced luciferase protocol)、0.1秒測定)
【0134】
<B.結果>
結果を
図3、4および5に示す(遺伝子型B配列)。以下のIC50値を測定した:
UDCA: 79μM
CA: 115μM
HBVpreS/2-21myr: 62.8nM
HBVpreS/2-21myr-CA: 7.27nM
HBVpreS/2-21myr-UDCA: 8.45nM
シクロ2-21-UDCA: 10.1nM
HBVpreS/2-21myr-(UDCA)
2: 3.55nM
【0135】
【0136】
図7および9に示される実験において、以下のIC50値を測定した:
UDCA: 79μM
CA: 115μM
MyrB-UDCA: 1.5nM
HBVpreS/2-21myr(コンセンサス): 70.3nM
HBVpreS/2-21myr-CA: 12.5nM
HBVpreS/2-21myr-UDCA: 9.2nM
HBVpreS/2-21myr-LCA: 7.5nM
HBVpreS/2-21myr-UDCA: 9.2nM
HBVpreS/2-21myr-(UDCA-ダイマー): 12.7nM
【0137】
環状化合物についてのIC50値は、
図8に示されるように、全て11nM~100nMの範囲であった。
【0138】
[実施例4:平面イメージング]
クロラミンT法を使用して、ペプチドのチロシン部分で、ヨウ素125での放射標識を行った。
【0139】
5μLの1mMペプチド/ペプチドコンジュゲート溶液を、25μLのリン酸バッファー(0.25M、pH7.5)に加えた。0.05M NaOH中の1~20MBqのヨウ素125を加え、5μLの新しく調製したクロラミンT水溶液(2.8mg/mL)を加えることによって、標識反応を開始させた。30秒間ボルテックスした後、10μLの飽和メチオニン水溶液を加えることによって標識反応を停止させた。水中およびアセトニトリル中の0.1% TFAの直線勾配で溶出されたChromolith Performance RP-18eカラム(100×4.6mm;Merck)を使用した半分取ラジオHPLCによって、放射標識ペプチド/ペプチドコンジュゲートを精製した。収集された画分の溶媒を真空中で除去し、標識された生成物をPBS中で再構成した。
【0140】
ヨウ素125標識化合物のインビボ平面シンチグラフィーイメージングのために、未処置のNMRIマウス(20~25g)を2%セボフルランで麻酔した。各化合物について、1~5MBqの放射能の強さを尾静脈に注射した。平行光コリメーター(parallel collimator)(35mm/1.8mm/0.2mm)を備えたGamma Imager SCT(Biospace Lab、Paris、France)を使用して、シンチグラフィーイメージングを行った。一連のシンチグラフィーイメージを、注射後の示された時点でスキャンした。
図6参照。
【0141】
前述の記載中、特許請求の範囲中、および/または添付の図面中に開示された特徴は、別々でも任意の組み合わせでも、多様な形態で本発明を実現するための材料であり得る。
【0142】
[参考文献]
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