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特表2022-552515Pr3+活性化ガーネットなどのランタニドイオンからなる青から紫外線へのアップコンバータ、およびその表面消毒用途への適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】Pr3+活性化ガーネットなどのランタニドイオンからなる青から紫外線へのアップコンバータ、およびその表面消毒用途への適用
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20221209BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20221209BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20221209BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20221209BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20221209BHJP
   C01F 17/34 20200101ALI20221209BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20221209BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221209BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C09K11/80
C09K11/08 B
C09K11/79
A61L2/10
C01B33/26
C01F17/34
C01G15/00 D
G02B5/20
C09K11/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521605
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020077796
(87)【国際公開番号】W WO2021073914
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19202897.5
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド ベーニシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジャステル
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ シュルテ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス アラッキ
【テーマコード(参考)】
2H148
4C058
4G073
4G076
4H001
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA18
4C058AA01
4C058BB06
4C058KK02
4G073BA03
4G073BA11
4G073BA17
4G073BA57
4G073BA58
4G073BA62
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BB04
4G073BB34
4G073BB58
4G073CE09
4G073FB25
4G073FB37
4G073FC07
4G073GA03
4G073UA20
4G073UB60
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB02
4G076AB07
4G076AB11
4G076BA13
4G076BA25
4G076BA38
4G076CA29
4G076DA30
4H001CA02
4H001CF02
4H001XA03
4H001XA08
4H001XA12
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA20
4H001XA21
4H001XA31
4H001XA39
4H001XA40
4H001XA71
4H001XA72
4H001YA39
4H001YA59
4H001YA60
4H001YA64
4H001YA68
(57)【要約】
ランタニドイオンでドープされたガーネットであり、前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、530nm未満の長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換する、ガーネット。さらに、前記ガーネットは、結晶性であり、前記成分の塩または酸化物の混合物をキレート剤の存在下で酸に溶かし、その後、前記ガーネットを生成し、必要に応じて特に同一工程内で粒径を調整し、粒子の結晶化度を高める特定の焼成工程に供することによって、得られる。前記ガーネットは、500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、ケイ酸塩系材料からなる表面を覆う微生物または細胞を不活化するために使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタニドイオンでドープされたガーネットであり、
前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるガーネット。
【請求項2】
i)結晶格子のとある位置にルテチウムを含み、前記結晶格子の前記位置が、異なるランタニドイオンでドープされたガーネットであり、前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される、または
ii)異なるランタニドイオンでドープされたルテチウム-アルミニウムガーネットであり、前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される、または
iii)異なるランタニドイオンでドープされたイットリウム-アルミニウムガーネット(YAG)であり、前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される、または
iv)異なるランタニドイオンでドープされたケイ酸ガーネットまたはケイ酸アルミニウムガーネットであり、前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される、
請求項1記載のガーネット。
【請求項3】
ドープ用の前記ランタニドイオンが、プラセオジム(III+)、ガドリニウム(III+)、エルビウム(III+)およびネオジム(III+)から選択され、
同時ドープ用の別の異なるランタニド(III+)イオンが、プラセオジム(III+)、ガドリニウム(III+)、エルビウム(III+)、およびネオジム(III+)から選択され、かつ必要に応じてイットリウム(III+)が使用される、
請求項1または請求項2記載のガーネット。
【請求項4】
前記ランタニドイオンが、プラセオジム(III +)から選択され、同時ドープの場合は、プラセオジム(III+)と同時ドーピング用の第2のランタニド(III+)イオンとを少なくとも有する、請求項1~請求項3のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項5】
長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換し、特に、530nm未満の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項6】
i)水和物ではなく、特に、結晶水を含まない、および/または
ii)ヒドロキシル基を含まない、
請求項1~請求項5のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項7】
結晶化度が70%を超える、請求項1~請求項6のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項8】
理想一般式I:
Lu3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (I)
(式中、a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1、u+v≦1かつd+e≦1であり、
Lnは、プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)であり、
Luは、ルテチウムであり、
Liは、リチウムである。)
から選択される、請求項1~請求項7のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項9】
理想一般式Ia:
(Lu1-x-yGd3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (Ia)
(式中、a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、x=0~1、y=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1、x+y≦1、u+v≦1、d+e≦1であり、
Lnは、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)であり、
Luは、ルテチウムであり、
Gdは、ガドリニウムであり、
Yは、イットリウムであり、
Liは、リチウムである。)
から選択される、請求項1~請求項8のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項10】
下記の理想一般式:
i)式Ib
(Lu1-x-yGd3-bLn(Al1-u-vGaSc12
(式中、Lnはプラセオジム、b=0.001~0.05、x=0~1、y=0~1、u=0~1、v=0~1である。)
ii)式Ic
(Lu1-x-yGd3-b-aLn(Mg1-zCaa+bAl5-a-bSia+b12
(式中、Lnはプラセオジム、1≧b>0、a>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1である。)
iii)式Id
(Lu1-x-yGd2-bLn(Ca1-zMg)Al(Zr1-fHf)O12
(式中、Lnはプラセオジム、b>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1f=0~1である。)
および式Id*
(Lu1-x-yGd1-bLn(Ca1-zMgAl(Zr1-fHf12
(式中、Lnはプラセオジム、0.5≧b>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1、f=0~1である。)
のうちの1つから選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項11】
下記の理想一般式:
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-uGa5-b12
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-uSc5-b12
(Lu1-x-yGd3-bPr(Ga1-uSc12
(Lu1-x-yGdPrCaAlSiO12
(Lu1-x-yGd)PrCaAlSi12
(Lu1-x-yGdPrMgAlSiO12
(Lu1-x-yGd)PrMgAlSi12
(Lu1-x-yGdPrCaAl(ZrHf)O12
(Lu1-x-yGd)PrCaAl(ZrHf12
(Lu1-x-yGdPrMgAl(ZrHfe)O12
(Lu1-x-yGd)PrMgAl(ZrdHfe)12
(式中、b=0.001~0.05、u=0~1、v=0~1、x=0~1、y=0~1である。)
のうちの1つから選択される、請求項1~請求項10のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項12】
少なくとも1つの土類アルカリイオンおよび/または少なくとも1つのアルカリイオンを含むランタニドイオンでドープされた固溶体である、請求項1~請求項11のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項13】
500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーを、230nm~400nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換し、特に、短波長の電磁放射エネルギーの最大放出強度が少なくとも1である、請求項1~請求項12のいずれか一項記載のガーネット。
【請求項14】
‐以下:
i)少なくとも1つのランタニド塩またはランタニド酸化物、特に、ランタニド硝酸塩、ランタニドカーボネート、ランタニドカルボキシレート、ランタニドアセテート、ランタニドサルフェートおよび/またはランタニド酸化物、またはそれらのうちの少なくとも2つの混合物から選択され、
前記ランタニド酸化物および/またはランタニド塩中の前記ランタニドイオンは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、およびそれらの少なくとも2つの混合物、から選択され、
ii)ルテチウム源、シリコン源、アルミニウム源、イットリウム源から選択される、前記結晶ガーネット格子用の少なくとも1つの元素であり、
前記ルテチウム源、前記シリコン源、前記アルミニウム源、前記イットリウム源が、以下:
a)少なくとも1つのランタニド塩またはランタニド酸化物、特に、ランタニド硝酸塩、ランタニドカーボネート、ランタニドカルボキシレート、ランタニドアセテート、ランタニドサルフェートおよび/またはランタニド酸化物、またはそれらのうちの少なくとも2つの混合物から選択されるもの、特に、前記ランタニド酸化物および/または前記ランタニド塩中のランタニドイオンがルテチウムである、および/または
b)Si源、および/または
c)アルミニウム源、および/または
d)イットリウム塩またはイットリウム酸化物または混合物、
から選択され、
iii)必要に応じて、少なくとも1つの土類アルカリ塩および/または土類アルカリ酸化物、および/または
iv)必要に応じて、少なくとも1つのアルカリ塩、および
v)キレート剤、
を準備する工程と、
‐前記i)、ii)、iii)、iv)およびv)を酸に溶かす工程と、
‐必要に応じて攪拌しながら、前記酸と必要に応じて前記キレート剤とを高温で蒸発させる工程と、
‐濃縮反応生成物を得て、100℃を超える温度で前記濃縮反応生成物を加熱することにより乾燥する工程と、
‐得られた生成物を、1~10時間少なくとも600℃まで加熱して、有機残留物を除去し、有機物含有量が減少した生成物を得る工程と、
‐有機物含有量が減少した前記生成物を0.5~10時間少なくとも1200℃まで加熱する工程と、
‐冷却する工程と、
‐ランタニドイオンでドープされたガーネットを得る工程と、
を含む、請求項1~請求項13のいずれか一項記載のガーネットの製造方法。
【請求項15】
以下:
a)スカンジウム塩またはスカンジウム酸化物、
b)ガリウム塩またはガリウム酸化物、および/または
c)ジルコニウム塩、ジルコニウム酸化物、ハフニウム塩、および/またはハフニウム酸化物
を準備する工程vi)をさらに含み、
前記塩または前記酸化物は、鉱酸に溶けた状態である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するための、ランタニドイオンでドープされたガーネットであり、
請求項14または請求項15記載の方法によって得られ、
前記ランタニドイオンがプラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、
ルテチウムアルミニウムガーネット、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、ケイ酸ガーネット、およびケイ酸アルミニウムガーネットから選択される、ガーネット。
【請求項17】
長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するための、ランタニドイオンでドープされたガーネットであり、
請求項14または請求項15記載の方法によって得られ、
前記ランタニドイオンがプラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、
ランタニドイオン、好ましくはLn3+でドープされている場合は、すべてのLnイオン(合計で100%)に対し、95%を超えるLn3+ランタニドイオンと、5%未満のLn4+ランタニドイオンと、を含む、ガーネット。
【請求項18】
自己消毒用途または微生物減少用途の、請求項1~請求項16のいずれか一項記載のガーネットからなる組成物、箔またはフィルム。
【請求項19】
UV滅菌用途、屋内UV滅菌用途、特に、最大放出が450~480nmであるLED、特にpcLEDからの電磁放射エネルギーを利用する屋内UV滅菌用途における、
表面のコーティングの添加剤、もしくは材料に表面をもたらす、前記材料の添加剤、または500nm未満の長波長の電磁放射エネルギー、特に、最大放出が450~480nmの範囲である500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、前記表面または前記コーティングを覆う微生物または細胞を不活化することができるコーティングとしての、
請求項1~請求項17のいずれか一項記載のランタニドイオンでドープされたガーネットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ランタニドイオンでドープされたガーネットであり、
前記ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、
530nm未満の長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換する、ガーネット。
さらに、前記ガーネットは、結晶性であり、前記成分の塩または酸化物の混合物をキレート剤の存在下で酸に溶かし、その後、前記ガーネットを生成し、必要に応じて特に同一工程内で粒径を調整し、粒子の結晶化度を高める特定の焼成工程に供することによって、得られる。
前記ガーネットは、500nm未満の長波長の電磁放射エネルギーへの曝露下で、表面を覆う微生物または細胞を不活化するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
効率的に青色または紫外線A波(UV-A)を放出するInN、GaN半導体材料(365~500nm)の発明により、無機固体光源は、白熱灯や放電ランプなどの他の照明技術を凌いでいる。それによって、屋内照明、そして屋外照明は、無機半導体材料(InN、GaN)を主要な放射線源として利用するリン光体変換発光ダイオード(pcLED)が多数派を占めている。
【0003】
この状況は今後数十年で解消し、主要放射線源として青色発光InN、GaN LEDを利用する光源が、あらゆる種類の照明用途領域(例:屋内照明、屋外照明、広告照明、建築照明、装飾照明、特殊照明、街路灯)に浸透し、多数派になると予想される。
【0004】
したがって、屋内照明は、400~480nmの発光帯域を持ち、かつ無機リン光体によって部分的に他の色に変換されて白色光が得られる半導体光源を利用するだろう。だたし、全体のパワー分布の約5~10%に照準を定めた色温度に応じて、青色のスペクトル範囲に留まるだろう。つまり、この放射によって、照射されたアップコンバータの励起が強制され、照射点でUV放射を得ることができる。
【0005】
最近、これを契機に、YSiO:Pr、Gd、Liなどの効率的な青色から放射線C波(UV-C)へのアップコンバージョン材料の特定を目的とした専門の研究開発プロジェクトが発足した。これまでに発見および公開された材料の主な課題は、アップコンバージョン効率の低さであり、検出レベルまたは検出信号対雑音比すれすれである。
【0006】
真に求められているのは、アップコンバート材料である。これによって、昼光照明の典型的な時間内、つまり数時間以内に微生物を大幅に減らすことができるため、効率的に日微生物を日々減らすことができる。さらに、当該材料は環境に無害でなければならず、そして少なくとも10,000時間の稼働寿命を示さなければならない。最後に、このような表面コーティングへ広く浸透させるには、当該材料は費用効果が高く、リサイクル可能でなければならない。
【0007】
さらに、LEDの全体的なパワー分布のうちの残りの5~10%のみが青色スペクトル範囲に残り、かつ照射されたアップコンバータの励起を強制して照射点でUV放射を得るのに使用されるべきなので、アップコンバージョン材料の効率は、既知の材料よりもはるかに優れていなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主題は、青/緑から紫外線への放射を効率良くアップコンバートする無機材料、ならびに当該材料の製造方法を提供することである。
【0009】
本課題は、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択されるランタニドでドープされ、あるいはそれらのうちの少なくとも2つもしくはガーネットの混合物で同時ドープされた、青/緑から紫外線放射へアップコンバートする開示された新規のガーネットと、当該ガーネットの製造方法と、コーティング、マトリックス材料表面、薄膜、複合層でのその適用と、により解決される。特に好ましい実施形態が従属請求項と明細書に開示されている。
【0010】
本発明に係るガーネットは、長波長の電磁放射エネルギーを、短波長の電磁放射エネルギーに変換することができ、特に、530nm未満の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~425nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換する。
【0011】
本発明の主題は、紫外線放出ガーネット、特に、220~425nmの範囲の波長、特に240~320nmの波長、最も好ましくは250~320nmの範囲に少なくとも1つの最大値を有する波長で電磁放射エネルギーを放出することができるガーネットを提供することである。本発明のさらなる主題は、自己消毒の目的で、ガーネットの光ルミネセンス無機マイクロ粒子を少なくとも1種含む組成物またはフィルムを提供することである。ガーネットの粒子は、青~緑(380~550nm)光子を紫外線光子に変換することができ、これはアップコンバージョンとして知られている方法である。
【0012】
特に、ガーネットの粒子は、70%を超える、特に95%以上の結晶化度を有している。
【0013】
本発明の主要な態様によれば、ランタニドイオンでドープされたUV放出ガーネット、特にガーネットは、220~425nm、特に240~350nmの範囲の波長(短波長)で電磁放射エネルギーを放出することができ、照射されていなくても、特に450nm以上の範囲の波長、特に450~530nmの範囲の波長で照射されていなくても、微生物に害を及ぼさないことが好ましい。ランタニドイオンでドープされたUV放出ガーネットに、450nm以上の範囲の波長、特に450~530nmの範囲の波長を照射すると、250~425nm、特に250~350nmの範囲の(短)波長で電磁放射エネルギーの放出が誘発され、これは微生物に有害である。
【0014】
本発明は、ホスト格子としてPr3+でドープされ、かつ必要に応じてGd3+で同時ドープされたガーネットを使用することによって実現された。当該ホスト格子では、
‐青色光(500nm未満の波長)が、Pr3+の基底状態配置[Xe]4f4レベルから0,1,2励起状態への遷移を介して吸収される。光子エネルギーは、440~490nmの範囲の波長を有する光子に対応する。
‐第2工程では、レベルに緩和した後、青色ポンプ光源を再度利用することにより、励起状態の吸収は、励起状態配置[Xe]4f5dの占有を生じる励起状態吸収が起こる。これには、220~250nmのスペクトル範囲にある励起状態配置[Xe]4f5dの結晶場成分が必要である。よって、適切な発光材料が、このスペクトル範囲で5d励起状態を得るために、適切な結晶場分裂を示さなければならず、かつ特許請求(claimed)されている。
‐励起後、励起状態配置[Xe]4f5dの最低結晶場成分は、光子を基底状態に放出すると戻り、UV放射をもたらす。
【0015】
特許請求されたGd3+によるガーネットの同時ドーピングは、Pr3+とGd3+間のエネルギー移動をもたらし、続いて311nmでの主放出をもたらす。
【0016】
現在、pcLEDが最も効率的な白色光源であるため、あらゆる種類の一般的照明用途で広く使用されている。最良実施例(ベストプラクティス)である青みを帯びた白色のpcLEDのウォールプラグ効率はほぼ60%であり、放射束はpcLEDあたり数光ワットの範囲である。アップコンバージョン方法では約25%の効率が得られ、屋内照明には少なくとも500lm/mまたは5W/m(100lm/Wの光源の場合)が必要であるため、この方法が、表面のいわゆる低線量消毒のために放出スペクトルの青から緑の部分を使用する点は非常に興味深い。
【0017】
本発明の好ましい実施形態の1つは、必要に応じてGd3+で同時ドープされたPr3+活性化ガーネットに関し、当該ガーネットは、ルテチウム-アルミニウムガーネット、イットリウム-アルミニウムガーネット(YAG)、ケイ酸塩[Si12]ガーネット、および/またはケイ酸アルミニウムガーネットから選択されてよい。
【0018】
好ましい実施形態によれば、ガーネットは、ランタニドイオンでドープされ、当該ランタニドイオンは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される。ドーピングとしてのランタニドイオンは、プラセオジム(III+)、ガドリニウム(III+)、エルビウム(III+)、およびネオジム(III+)から選択され、同時ドーピングには、プラセオジム(III+)、ガドリニウム(III+)、エルビウム(III+)、イットリウム(III+)、およびネオジム(III+)から選択される第2の異なるランタニド(III+)イオンを使用する。ドーピングとして特に好ましいのは、プラセオジム(III+)であるか、あるいは少なくともプラセオジム(III+)と同時ドーピング用の第2のランタニドイオン(III+)イオンとを含むものである。上記のランタニドイオン(III+)は、アップコンバージョンの活性剤である。
【0019】
さらに、本発明の一実施形態によれば、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するための、ランタニドイオンでドープされたガーネットは、本発明の方法に従って得られる。当該方法は、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンを含んでいる。ランタニドイオン、好ましくはLn3+でドープされたガーネットは、すべてのLnイオン(合計で100%)に対し、95%を超えるLn3+ランタニドイオンと、5%未満のLn4+ランタニドイオンと、を含んでいる。
【0020】
特に好ましい実施形態によれば、ガーネットは、以下のガーネットから選択される:
i)結晶格子のとある位置にルテチウムを含み、結晶格子の当該位置が、異なるランタニドイオンでドープされ、ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるガーネット、または
ii)異なるランタニドイオンでドープされたルテチウム-アルミニウムガーネットであり、ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるガーネット、または
iii)異なるランタニドイオンでドープされたイットリウム-アルミニウムガーネット(YAG)であり、ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるガーネット、または
iv)異なるランタニドイオンでドープされたケイ酸ガーネット[Si12]またはケイ酸アルミニウムガーネットであり、ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、イットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるガーネット。
ガーネットにおいて特に好ましいのは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジム、および必要に応じてイットリウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択され、ガーネットの結晶格子(結晶格子内の位置は合計で最大100モル%)の関連位置の0.1~5mol%を占めるランタニドイオンである。これは、指数、特に指数b(指数b=1/100・モル%)としてのランタニドイオンが、結晶格子内の1箇所の0.001~0.05を構成することを意味する。
【0021】
したがって、本発明に係るガーネットのXRPDは、特に、ICDDデータベースに列挙されている既知の非ドープガーネットのXRPD、または参照値として算出されたXRPDに準拠している必要がある。
【0022】
本発明の最も好ましい態様によれば、ランタニドイオンは、プラセオジム(III+)(Pr3+)、ガドリニウム(III+)(Gd3+)、エルビウム(III+)(Er3+)およびネオジム(III+)(Nd3+)、イットリウム(III+)、好ましくはプラセオジム(III+)(Pr3+)、ガドリニウム(III+)(Gd3+)およびイットリウム(III+)から選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択される。必要に応じて、ランタニドイオン(IV+)の量は、ガーネットの結晶格子(結晶格子内の位置は合計で最大100モル%)の関連位置の0.5モル%未満、特に0.1モル%未満、好ましくは0.05モル%未満または0.01モル%未満である。
【0023】
好ましい実施形態では、
i)ガーネットは水和物ではなく、特にガーネットは結晶水(water of crystallization)を含まず、および/または
ii)ガーネットはヒドロキシル基を含まない。
ヒドロキシ基を含まないのは、結晶格子のとある位置の原子に共有結合するヒドロキシル基を持たないガーネットである。ガーネットの表面の水またはヒドロキシル基は、ii)によると、ヒドロキシル基とは見なされない。とはいえ、水とヒドロキシル基の含有量は可能な限り少なくする必要がある。
【0024】
特に好ましい実施形態によれば、ガーネットの結晶化度は、70%を超え、特に80%以上、90%以上、より好ましくは95%以上、98%以上、最も好ましくは99%以上である。結晶化度は、リートベルト解析を使用して、当業者(結晶学者)に知られている方法で評価されてよい(Madsenら、X線粉末回折によるアモルファス含有量の測定方法の説明と調査、Z.Kristallographie 226(2011年)944~955頁)。
【0025】
さらに、ガーネットは、特に、アモルファス相を含まない。ガーネットにアモルファス相を含まないとは、5%未満、好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.0001%未満を意味する(解析(XRPD、リートベルト法)。
【0026】
最も好ましいのは、結晶性の純粋相(位相シフトがない)のガーネットである。
【0027】
本発明の一態様によれば、ガーネット、好ましくはランタニドイオンでドープされたガーネットは、結晶水、-OH官能性の結晶溶媒和物を含まないガーネットから選択される。特に、ランタニドイオン、好ましくはLn3+、最も好ましくは95%を超えるLn3+と5%未満のLn4+でドープされたガーネットは、化学量論的水和物および/または溶媒和物を含まず、かつ結晶化度が70%を超えるガーネットから選択される。
【0028】
ガーネットは、以下の例に従って理想式で記述することもできる。ガーネット、特にガーネットの組成は、理想一般式Iから選択されてよい。
Lu3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (I)
(式中、a=0~1、好ましくは0~0.5、1≧b>0、特にb=0.00001~0.5、好ましくはb=0.001~0.2、より好ましくはb=0.005~0.1、d=0~1、e=0~1、n=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1、u+v≦1およびd+e≦1;
活性剤またはドーピングとしてのLn=プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y);Lu=ルテチウム、Li=リチウムである。)
【0029】
さらに好ましいガーネットは、理想一般式Iaから選択される。
(Lu1-x-yGd3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (Ia)
(式中、a=0~1、好ましくは0~0.5、1≧b>0、特にb=0.00001~1、好ましくは0.0001~0.2、d=0~1、特にd=0.001~0.5、e=0~1、特にe=0.001~0.5、n=0~1、x=0~1、特にx=0.001~0.5、y=0~1、特に0.001~0.3、z=0~1、u=0~1、v=0~1、x+y≦1、u+v≦1およびd+e≦1;
Ln=プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd);Lu=ルテチウム、Gd=ガドリニウム、Y=イットリウム、Li=リチウムである。)
【0030】
すべての理想式中、指数x+y≦1、u+v≦1およびd+e≦1である。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、ガーネットの組成は、以下の理想一般式の1つから選択されてよい。
i)式Ib
(Lu1-x-yGd3-bLn(Al1-u-vGaSc12
(式中、LnにおいてLn=Prかちb=0.001~0.05であり、x=0~1、y=0~1、u=0~1、v=0~1である。)
ii)式Ic
(Lu1-x-yGd3-b-aLn(Mg1-zCaAl5-aSi12
(式中、LnにおいてLn=Pr、1≧b>0、特にb=0.001~0.5、好ましくはb=0.001~0.05、a>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1である。)
iii)式Id
(Lu1-x-yGd2-bLn(Ca1-zMg)Al(Zr1-fHf)O12
(式中、LnにおいてLn=Pr、0.5≧b>0、特にb=0.001~0.5、好ましくはb=0.001~0.05、x=0~1、y=0~1、z=0~1、f=0~1である。)
または式Id*
(Lu1-x-yGd1-bLn(Ca1-zMgAl(Zr1-fHf12
(式中、LnにおいてLn=Pr、b>0、特にb=0.001~1、好ましくはb=0.001~0.05、x=0~1、y=0~1、z=0~1、f=0~1である。)
【0032】
指数a、d、e、x、yおよびzは、小数点以下4桁までのすべての値を含む0~1の範囲で変化してよく、bは、小数点以下4桁までの0より大きく1までの間、特に0より大きく0.5までの間で変化してよい。
【0033】
好ましいガーネットは、式I、Ia、Ib、Ic、IdおよびId*で記載されてよい。式中、i)1≧b>0、好ましくは0.5≧b>0、およびa=0、ii)a+b=1およびz=1、またはiii)a+b=1およびz=0、またはiv)a+b=1および0<z<1(式中、x=0およびy=0である。)であり、残りの指数はすべて上記のとおりである。
【0034】
好ましいガーネットは、式Ibで記載されてよく、式中、i)0.05≧b>0およびy=0、ii)b>0および1>y>0、x=0、またはiii)b>0および1>y>0および1>y>0、およびx+y<1(式中、x+y≦1、u+v≦1およびd+e≦1である。)であり、残りの指数はすべて上記のとおりである。
【0035】
好ましいガーネットは、式Icで記載されてよく、式中、i)0.05≧b>0、1、ii)0.05≧b>0、1および0<z<1(式中、x+y≦1、u+v≦1およびd+e≦1である。)であり、残りの指数はすべて上記のとおりである。
【0036】
好ましいガーネットは、式IdまたはId*で記載されてよく、式中、i)0.05≧b>0、ii)0.05≧b>0および0<z<1、f=0~1(式中、x+y≦1、u+v≦1およびd+e≦1である。)であり、残りの指数はすべて上記のとおりである。
【0037】
また、本発明の主題は、プラセオジムがドープされた1つまたは複数のガーネットであり、これは、必要に応じて、以下のリストから選択されるガドリニウムで同時ドープされている。驚くべきことに、これらのガーネットは、かなり効率的な青色から紫外線へのアップコンバージョンを示すことがわかった。
【0038】
特に好ましいガーネットまたはガーネットの混合物は、以下の理想一般式から選択される。
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-uGa5-b12
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-uSc5-b12
(Lu1-x-yGd3-bPr(Ga1-uSc12
(Lu1-x-yGdPrCaAlSiO12
(Lu1-x-yGd)PrCaAlSi12
(Lu1-x-yGdPrMgAlSiO12
(Lu1-x-yGd)PrMgAlSi12
(Lu1-x-yGdPrCaAl(ZrHf)O12
(Lu1-x-yGd)PrCaAl(ZrHf12
(Lu1-x-yGdPrMgAl(ZrHf)O12
(Lu1-x-yGd)PrMgAl(ZrHf12
(式中、b=0.001~0.05、u=0~1、v=0~1、x=0~1、y=0~1である。)
【0039】
さらに好ましい実施形態は、少なくとも1つの土類アルカリイオン(earth alkali ion)および/または少なくとも1つのアルカリイオンを含むランタニドイオンでドープされた固溶体であるガーネットを含む。
【0040】
好ましいガーネットは、500nm未満、特に500nm未満~410nmの長波長の電磁放射エネルギーを、230nm~400nmの範囲の短波長の電磁放射エネルギーに変換し、特に、短波長の電磁放射エネルギーの最大放出強度は、少なくとも1・10カウント/(mm*s)、特に1・10カウント/(mm*s)を超える、より好ましくは1・10カウント/(mm*s)を超える、最も好ましくは1・10カウント/(mm*s)を超える強度である。放出スペクトルは、レーザー、特に、445nmで75mWの効率および/または488nmで150mWの効率を有するレーザーで励起される。
【0041】
変換された電磁放射エネルギーの好ましい最大値は、250~350nmの範囲であり、特に少なくとも約265nmである。また、270~330nmの範囲に少なくとも1つの最大値があることが好ましく、280~330nmの範囲が最も好ましい。
【0042】
本発明によれば、アップコンバージョンとは、長波長、特に500nm未満、最も好ましくは440~490nmの範囲の電磁放射エネルギーを、短波長、特に220~425nmの範囲、好ましくは250~350nmの範囲の電磁放射エネルギーに変換することを意味する。
【0043】
ランタニドイオンでドープされた本発明に係るガーネットは、太陽光またはLEDランプの照明時に、表面の微生物の濃度を低下させることができる可能性がある。
【0044】
本発明の別の態様によれば、ガーネットは、好ましくは、少なくとも1つのアルカリイオンまたは少なくとも1つの土類アルカリイオンを含むランタニドイオンでドープされたガーネットの固溶体であり、特に、ガーネットは、プラセオジムでドープされ、必要に応じて、ガドリニウムで同時ドープされている。特に好ましいのは、プラセオジムイオンおよび必要に応じてガドリニウムイオンから選択されるランタニドでドープされたガーネットであり、プラセオジムイオンおよび必要に応じてガドリニウムイオンは、Li、Na、K、Rb、Csから、好ましくはLi、必要に応じてNaまたはKから、最も好ましくはLiから選択される少なくとも1つのアルカリイオンを含むか、あるいは、Mg、Ca、Sr、Baから、好ましくはCaおよびMgから選択される少なくとも1つの土類アルカリイオンを含む。最も好ましいのは、結晶性が90%以上、好ましくは95%以上であり、かつ平均粒径D50が1μm~20μmの範囲、好ましくは2~15μmの範囲、より好ましくは5~15μmの範囲である上記のガーネットである。
【0045】
特に好ましいガーネットは、(Lu0.99Pr0.01Al12、(Lu0.985Pr0.015CaAlSiO12、(Lu0.99Pr0.01GaAl12、(Lu0.99Pr0.01ScAl12、(Lu0.99Pr0.01LiAlSi12である。例えば、(Lu0.99Pr0.01Al12は、275~420nmで放出し、特に300~350nmで最大値を示す(図8)。(Lu0.985Pr0.015CaAlSiO12は、275~400nmで放出し、特に300~320nmで最大値を示す(図9を参照)。(Lu0.99Pr0.01LiAlSi12は、300~340nmの範囲で最大値を示す。
【0046】
本発明の一態様によれば、ガーネットは、特に、式I、Ia、Ib、Ic、IdおよびId*のうちの1つから選択される組成物からなるガーネットは、(Ln)ランタニドイオンが、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジムから選択され、または同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから、特に好ましくはプラセオジムおよび必要に応じてガドリニウムから選択され、かつXRPDシグナル、特に17°2Θ~19°2Θの範囲および31°2Θ~35°2Θの範囲、特に17°2Θ~19°2Θの範囲および33°2Θ~35°2Θの範囲で高い強度を有するシグナルを有する。特に、シグナルは、Cu-Kα放射線を使用するBragg-Brentano型ジオメトリに従って測定される。
【0047】
放出を増やすには、特定の粒径が最も好ましい。したがって、開示された材料は、10nm~100μmの範囲のμスケール、サブμスケールからナノスケールの粒子として特許請求されている。
【0048】
ガーネットの粒径は、好ましくは1マイクロメートル~100マイクロメートル(μm)の範囲、より好ましくは1マイクロメートル~50マイクロメートル(μm)の範囲、より好ましくは1マイクロメートル~20マイクロメートル(μm)の範囲である。
【0049】
好ましくは、ガーネットの平均粒径(D50)は、好ましくは1マイクロメートル~100マイクロメートル(μm)の範囲、より好ましくは1マイクロメートル~50マイクロメートル(μm)の範囲、最も好ましくは1マイクロメートル~20マイクロメートル(μm)の範囲である。より好ましくは、シリカ系結晶性材料の平均粒径(D50)は、2マイクロメートル~20マイクロメートル(μm)の範囲、より好ましくは、5マイクロメートル~20マイクロメートル(μm)の範囲、最も好ましくは5マイクロメートル~15マイクロメートル(μm)、特に約10マイクロメートル±5マイクロメートルである。1つの特定の好ましい実施形態によれば、粒径分布は、D10が2~5マイクロメートル、D50が5~15マイクロメートル、そしてD90が20マイクロメートル未満、好ましくは18マイクロメートル未満である。別の実施形態では、粒径分布は、D10が1~2マイクロメートル、D50が2~10マイクロメートル、そしてD90が20マイクロメートル未満、好ましくは18マイクロメートル未満である。粒径分布は、Horiba LA-950-V2有機粒径アナライザを使用して、動的レーザー光散乱法で測定された。
【0050】
本発明に係るガーネットはすべて、少なくとも三価の活性剤Pr3+を含んでおり、基底状態配置[Xe]4fは、励起配置[Xe]4f5dの最低結晶場成分の下に位置する13レベルを提供する。ホスト材料を適切に選択することにより、Pr3+の励起配置の最低結晶場成分を、基底状態配置に属する基底状態レベルより35,000~40,000cm-1上に調整できる。このようにして、単一イオンでの二光子吸収プロセスが可能になり、その結果、UV光子が放出できるようになる。
【0051】
特に、本発明に係るPr3+ドープガーネットおよび本発明に従ってトレッドされた(treaded)ガーネットは、青色からUVへの放射アップコンバーター材料を提供し、これは、これまでの特許および査読済み文献に公開されたものよりもはるかに効率的である。
【0052】
本発明のさらなる主題によれば、ランタニドでドープされたガーネットまたはガーネットの混合物は、220~250nmのスペクトル範囲に位置する励起状態配置[Xe]4f5dの結晶場成分を有すると主張されている。
【0053】
また、本発明の主題は、ガーネットの製造方法、ならびに当該方法に従って得られるガーネットまたはガーネットの混合物である。当該方法は、以下の工程を含む。
‐以下i)、ii)、iii)および/またはiv)、v)を準備する工程と、
i)少なくとも1つのランタニド塩またはランタニド酸化物、特に、ランタニド硝酸塩、ランタニドカーボネート、ランタニドカルボキシレート、ランタニドアセテート、ランタニドサルフェートおよび/またはランタニド酸化物またはそれらのうちの少なくとも2つの混合物から選択されるもの。ランタニド酸化物および/またはランタニド塩中のランタニドイオンは、プラセオジミウム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジミウム、およびそれらのうちの少なくとも2つの混合物から選択される。
ii)ルテチウム源、シリコン源、アルミニウム源、イットリウム源から選択される結晶ガーネット格子用の元素。当該源は、以下a)、b)、c)および/またはd)から選択される。
a)少なくとも1つのランタニド塩またはランタニド酸化物、特に、ランタニド硝酸塩、ランタニドカーボネート、ランタニドカルボキシレート、ランタニドアセテート、ランタニドサルフェートおよび/またはランタニド酸化物またはそれらのうちの少なくとも2つの混合物から選択されるもの。好ましくは、ランタニド酸化物および/またはランタニド塩中のランタニドイオンは、ルテチウムである。
b)Si源、特に、テトライソプロピルシリケート、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、シリカ、シリケート、またはそれらのうちの少なくとも2つの混合物。
c)アルミニウム源、特に、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、カルボン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウムおよび/または水酸化アルミニウムまたはそれらのうちの少なくとも2つの混合物から選択されるもの。
d)イットリウム塩またはイットリウム酸化物または混合物。
iii)必要に応じて、少なくとも1つの土類アルカリ塩および/または土類アルカリ酸化物。
iv)必要に応じて、少なくとも1つのアルカリ塩、特に、リチウム塩または任意のリチウム化合物から選択されるもの、および必要に応じてナトリウム塩およびカリウム塩から選択されるもの。好ましくは、リチウム塩の塩は、ii)から選択され、ケイ酸リチウムである。
v)キレート剤、特に、ヒドロキシ酸、クエン酸、ヒドロキシアミノアルキル、特に、クエン酸および/またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンから選択されるもの。
‐i)、ii)、iii)、iv)およびv)、そして必要に応じてvi)を酸、特に、鉱酸または鉱酸の混合物に溶かす工程と、
‐必要に応じて攪拌しながら、酸と必要に応じてキレート剤とを高温、特に、50℃を超える、好ましくは60℃を超える温度で蒸発させる工程と、
‐濃縮反応生成物を得て、100℃を超える温度、特に、i)120℃を超える、またはii)250℃を超える温度で濃縮反応生成物を加熱することにより乾燥させ、さらなる生成物を得る工程と、
‐得られた生成物を、1~10時間、特に3~5時間、好ましくは4時間、少なくとも600℃まで、特に、好ましくは少なくとも750℃まで、好ましくは少なくとも800℃、1,000℃まで加熱して、有機残留物を除去し、有機物含有量が減少した生成物を得る工程と、
‐有機物含有量が減少した生成物を、必要に応じて0.5~10時間、好ましくは0.75~6時間、少なくとも1200℃まで、特に1,400℃まで、好ましくは少なくとも1,550℃まで加熱し、好ましくは、有機物含有量が減少した生成物を、結晶化に十分な温度で少なくとも1,200℃まで加熱する工程と、
‐冷却する工程と、
‐ランタニドイオンでドープされたガーネットを得る工程。
【0054】
2つの好ましい代替実施形態では、少なくとも1つの土類アルカリ源は、例えば、土類アルカリ塩および/または土類アルカリ酸化物であり、あるいはアルカリ源は、例えば、リチウム塩または任意のリチウム化合物から選択され、必要に応じてナトリウム塩およびカリウム塩から選択される少なくとも1つのアルカリ塩である。好ましくは、リチウム塩の塩は、ii)から選択され、ケイ酸リチウムである。土類アルカリは、アルカリ土類金属すべて、特にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムを含む。アルカリ金属は、K、Na、Li、RbおよびCs、特にK、NaおよびLiを含む。
【0055】
d)イットリウム塩またはイットリウム酸化物またはそれらの少なくとも1つを含む混合物の非限定的な例は、Y、Y(NO、Y(SO、Y(酢酸塩)、Y(シュウ酸塩)、Y(CO、Y(クエン酸塩)、Y(OH)、(NH)Y(酒石酸塩)である。iii)土類アルカリ塩および/または土類アルカリ酸化物の非限定的な例は、CaCO、CaSO、Ca(NO、CaCl、CaC、Ca(酒石酸塩)、CaHPO、MgCO、MgSO、Mg(NO、MgCl、MgC、Mg(酒石酸塩)、MgHPO、(Mg(NO・6HO)、(Mg(SO)・7HO)、MgO、(Mg(HPO)、MgHPO、(Mg(PO)、またはそれらのうちの少なくとも2つを含む混合物、またはバリウムおよび/またはストロンチウムの類似塩である。土類アルカリ塩または土類アルカリ酸化物の水和物および/または溶媒和物も含む。ただし、複塩も、特にKMgCl・6HOなどの混合物で使用できる。
【0056】
iv)アルカリ塩の非限定的な例は、LiCO、LiSO、LiNO、LiCl、Li、Li(酒石酸塩)、LiPO、LiSiO、またはそれらのうちの少なくとも2つを含む混合物、またはナトリウムもしくはカリウムの類似塩である。
有用なv)キレート剤の非限定的な例は、ヒドロキシ官能性有機酸であり、例えば、EDTAとして追加のヒドロキシ基を有するフルーツ酸またはモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-および/またはマルチ-炭酸、トリス、クエン酸、アスコルビン酸、フマル酸、シュウ酸、および当業者にヒドロキシ官能性酸として知られている他の酸である。
【0057】
特に好ましい鉱酸には硝酸が含まれるが、他の鉱酸も有用である。塩化物などのハロゲンを含まず、かつ硫酸塩を含まない鉱酸、塩および酸化物が好ましい。
【0058】
さらに、方法のさらなる元素または工程には、以下のvi)が含まれてもよい:vi)a)スカンジウム塩またはスカンジウム酸化物、b)ガリウム塩またはガリウム酸化物、および/またはc)ジルコニウム塩、ジルコニウム酸化物、ハフニウム塩および/またはハフニウム酸化物を準備する工程。これらのvi)塩または酸化物も、方法中で鉱酸に溶解する。
【0059】
抽出物は、クエン酸などの十分な量のキレート剤の存在下で鉱酸に溶解する必要がある。定量的な変換と高純度生成物を得るには、すべての抽出物を鉱酸に完全に溶解する必要がある。その後、溶液を高温で濃縮してゾルを得る。ゾルを濃縮して乾燥生成物にし、当該乾燥生成物を焼成して有機残留物を除去し、ガーネットを形成する必要がある。焼成または加熱は2つの工程で行われる:第1加熱工程では、キレート剤および酸の分解生成物などの有機残留物を除去するために、800℃超に加熱することが好ましい。第2加熱工程、特に焼成工程では、1,200℃を超える温度、特に1,500℃を超える温度、好ましくは約1,600℃でガーネットを生成する。さらに、ガーネットは、1,500℃を超える高温での単一加熱工程で得ることもできる。純度が向上したガーネットを得るための2段階または多段階の加熱工程が好ましい。加熱は空気下で行われる。別の方法では、乾燥および焼成は、規定されたプロセスまたは規定された温度プロファイルで温度が上昇する一段階工程で実施されてよい。また、加熱および/または冷却の場合、多段階工程が可能である。
【0060】
乾燥生成物または別の生成物についての約600~1,200℃、特に約900℃±150℃での第1加熱工程は1~10時間、好ましくは3~5時間より長い。約1,500~1,800℃、特に約1,600℃±100℃での最終加熱工程、第2加熱工程は、0.5~5時間、好ましくは2~4時間である。その後、生成物は冷却される。各加熱または冷却工程には、規定された加熱または冷却速度が使用される。
【0061】
材料の冷却は、100℃/時間~300℃/時間、好ましくは200℃/時間~300℃/時間の速度で冷却によって実施されることが好ましい。
【0062】
焼成または加熱工程における加熱および冷却は、それぞれ独立して、100℃/時間~300℃/時間であり、300℃/時間の加熱および冷却速度が好ましい。焼成工程2における加熱および冷却は、100℃/時間~300℃/時間の速度で実施され、好ましくは、200℃/時間の加熱および冷却速度である。線形冷却速度が特に好ましい。焼成とは、反応混合物、例えば抽出物の混合物、より好ましくは有機物含有量が減少した生成物を、融点のすぐ下の温度、好ましくは融点よりも少なくとも50度低い温度、より好ましくは100度低い温度まで加熱する工程である。
【0063】
還元雰囲気は、NまたはアルゴンとHとの混合物(例:5体積%Hまたは10体積%Hと最大100体積%の不活性ガス)などの生成ガスを使用する第2加熱工程で使用されてよい。別の還元雰囲気は、CHまたはNHなどの不活性ガスを含んでいてもよい。
【0064】
別の代替実施形態では、ガーネットまたは得られたランタニドイオンドープガーネットを粉砕する。特に、トライボロジー衝撃を受けていないガーネットと比較して、ガーネットの結晶化度を高めるのに十分な量のトライボロジー衝撃をガーネットに与える。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態は、200回転/分(rpm)の粉砕材料を1~6時間、好ましくは約4時間使用して、得られたガーネット材料に、トライボロジー衝撃を与える方法である。粉砕は、遊星ボールミル(PM 200、Retsch社)、最大37.1gのg力(g-force)、ビーカー/ジャー:コランダムおよび粉砕ボール(Al)、50mL(9個のボール、サンプル約4.5g)または125mL(24個のボール、サンプル約20g)で実施される。粉砕ビーカー/ジャーは、遊星ボールミルのサンホイール上に偏心配置されている。サンホイールの移動方向は、1:約2の比率で粉砕ジャーの移動方向と反対である。粉砕ビーカー/ジャー内の粉砕ボールは、多重の回転運動、いわゆるコリオリの力を受ける。ボールとジャーの速度の違いにより、摩擦力と衝撃力の間に相互作用が生じ、高い動的エネルギーが放出される。
【0066】
得られたランタニドイオンドープガーネットの好ましい主反射強度は、粉砕工程によって、少なくとも25%、特に30%、より好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%、または80%増加してもよい。ガーネットの場合、31°2Θ~35°2Θの範囲の主反射強度は、少なくとも20%、特に50%、より好ましくは少なくとも60%増加してよい。好ましくは、この粉砕工程は、粒径を小さくし、かつ固体中の不要相を低減するための、方法中の第1粉砕工程である。
【0067】
さらに別の実施形態は、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのランタニドイオンでドープされたガーネットであり、記載の方法に従って得ることができる。ガーネットは、プラセオジミウム、ガドリニウム、エルビウム、ネオジミウムから選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオンでドープされている。ランタニドイオンでドープされたガーネットは、ルテチウムアルミニウムガーネット、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、シリケートガーネット、およびアルミニウムシリケートガーネットから選択される。
【0068】
本発明の主題はまた、長波長の電磁放射エネルギーを短波長の電磁放射エネルギーに変換するためのランタニドイオンでドープされたガーネット、またはガーネットの混合物であり、本発明の方法に従って得ることができる。
‐ガーネットは、プラセオジム(III+)、ガドリニウム(III+)、エルビウム(III+)、ネオジム(III+)から選択され、同時ドープの場合は、それらのうちの少なくとも2つから選択されるランタニドイオン、好ましくは、プラセオジム(III+)、必要に応じて同時ドープの場合はガドリニウム(III+)でドープされ、
ガーネットの結晶化度は80%を超え、特に、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上であり、
必要に応じて、530nm未満、特に490~450nmの範囲の少なくとも1つの長波長の電磁放射エネルギーを、220~400nmの範囲、特に275~350nmの範囲の少なくとも1つの短波長の電磁放射エネルギーに変換する。
【0069】
長波長は、規定ごとに、常に短波長よりも長い。
【0070】
さらなる実施形態によれば、ガーネットを含む組成物、箔またはフィルムは、自己消毒目的で、または微生物を減らすために開示されている。
【0071】
本発明の主題はまた、UV滅菌または消毒用途での、屋内UV滅菌用途での、特に、最大放出が450~480nmの範囲であるLED、特にpcLEDからの電磁放射エネルギーを利用する屋内UV滅菌用途での、ランタニドイオンでドープされたガーネットの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、445nmおよび488nmで励起したときのYSiO:Pr3+の放出スペクトルである。
図2図2は、Cu-Kα放射線の(Lu0.99Pr0.01Al12のX線回折パターン(実験例1)である。
図3図3は、Cu-Kα放射線の(Lu0.985Pr0.015CaAlSiO12のX線回折パターン(実験例2)である。
図4図4は、Cu-Kα放射線の(Lu0.99Pr0.01GaAl12のX線回折パターン(実験例3)である。
図5図5は、Cu-Kα放射線の(Lu0.99Pr0.01ScAl12のX線回折パターン(実験例4)である。
図6図6は、Cu-Kα放射線の(Lu0.99Pr0.01LiAlSi12のX線回折パターン(実験例5)である。
図7図7は、488nmで励起したときの(Lu0.99Pr0.01Al12の放出スペクトル(実験例1)である。
図8図8は、445nmで励起したときの(Lu0.985Pr0.015CaAlSiO12の放出スペクトル(実験例2)である。
図9図9は、488nmで励起したときの(Lu0.99Pr0.01GaAl12の放出スペクトル(実験例3)である。
図10図10は、445nmで励起したときの(Lu0.99Pr0.01ScAl12の放出スペクトル(実験例4)である。
図11図11は、488nmで励起したときの(Lu0.99Pr0.01LiAlSi12の放出スペクトル(実験例5)である。
図12図12は、(Lu0.99Pr0.01Al12の放出スペクトルと、大腸菌の殺菌作用曲線(DIN 5031-10)である。
図13図13は、(Lu0.985Pr0.015CaAlSiO12の放出スペクトルと、大腸菌の殺菌作用曲線(DIN 5031-10)である。
図14a図14aは、Cu-Kα放射線の(Lu0.89Pr0.01Gd0.1CaAlSiO12のX線回折パターン(実験例6)である。
図14b図14bは、445nmで励起したときの(Lu0.89Pr0.01Gd0.1CaAlSiO12の放出スペクトル(実験例6)である。
図15a図15aは、Cu-Kα放射線のCa(Lu0.99Pr0.01)ScGaSi12のX線回折パターン(実験例7)である。
図15b図15bは、445nmで励起したときのCa(Lu0.99Pr0.01)ScGaSi12の放出スペクトル(実験例7)である。ガーネットは、280~400nmの放出範囲を有し、最大値は310nmである。
【実施例
【0073】
測定技術
Cu-Kα放射線とラインスキャンCCDセンサを使用するBragg-Brentano型ジオメトリで動作するパナリティカルX’PertPROMPD回折計を使用して、X線回折図を記録した。積分時間は、0.017°のステップ幅で20秒に達した。
Coherent社製の488nm連続波OBISレーザーと、ペルティエ冷却(-20℃)単一光子計数光電子増倍管(浜松 R2658P)と、を備えたエディンバラ装置FLS920分光計で、放出スペクトルを記録した。モノクロメーターによって引き起こされる二次反射による励起を抑制するためにフィルターを使用した。
【0074】
放出スペクトルは、レーザー、特に445nmで75mWの効率および/または488nmで150mWの効率を有するレーザーで励起される。
粉砕については、最後焼成工程の冷却後、遊星ボールミル(PM 200、Retsch社)、ビーカー/ジャー:コランダムおよび粉砕ボール(Al)、50mL(9個のボール、サンプル約4.5g)または125mL(24個のボール、サンプル約20g)で、200回転/分で4時間実施する。還元雰囲気(H/不活性ガス、特にH/Nが好ましい(H(5%)/N(95%))。
【0075】
粉末サンプル合成
比較例:
比較例として、下記の出版物に開示されている他のランタニドドープシリケート系を同じ条件下で作製および測定した(Lu:Pr3+およびYSiO:Pr3+セラミックの可視からUVCへのアップコンバージョン効率とメカニズム、Cates,Ezra L.;Wilkinson,Angus P.;Kim,Jae-Hong、Journal of Luminescence 160(2015年)202~209頁)。要約:Pr3+ドープ材料による可視からUVCへのアップコンバージョン(UC)は、光活性化抗菌表面および太陽水処理などの持続可能な消毒技術への応用の有力候補である。この研究で、Lu:Pr3+セラミックを使用して、オキシフッ化物ホストシステムでのPr3+のアップコンバージョンを初めて研究した。以前に研究したYSiO:Pr3+参照材料と比較して、オキシフッ化物ホストは、おそらく最大フォノンエネルギーが低いために、中間状態の寿命が5倍に増加した。しかし、UC強度は60%の増加しか観察されなかった。この食い違いを説明するために、発光スペクトル分布と減衰速度論を、両方のリン光体系で研究した。各リン光体のPr3+4f5dバンドのエネルギー分布は、まだ明らかにされていないUCメカニズムの発生を許可または禁止することによって、重要な役割を果たすことがわかり、これは全体の効率に重大な影響を及ぼした。
【0076】
Lu:Pr3+は、開示された温度では得られなかった。控えめなプレスを利用したために、高温および350MPaの圧力下での合成はできなかった。
SiO:Pr3+は、出版物に従って純粋相と同じように合成された(放出スペクトルは図1を参照)。
【0077】
粉末合成
実験例1:(Lu0.99Pr0.01Al12
2.3637g(5.9400ミリモル)のLuと、0.0204g(0.0200ミリモル)のPr11と、7.5027g(20.0000ミリモル)のAl(NO・9HOと、7.7530g(64.0000ミリモル)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと、を希硝酸に溶解した。激しく攪拌しながら65℃でゆっくりと蒸発させて混合物を濃縮すると、ゾルは透明で高粘度のゲルに変わった。その後、温度を300℃に上げて自動継続ゲル化燃焼プロセスを開始した。それに伴って大量のガスが発生した。中間生成物を150℃で一晩乾燥させた。有機残留物を除去するために、乾燥粉末を空気中で800℃で4時間焼成した。空気中で1,600℃で4時間の最終焼成工程を実施し、生成物相を得た。
【0078】
実験例2:(Lu0.985Pr0.015CaAlSiO12
1.5679g(3.9400ミリモル)のLuと、0.0204g(0.0200ミリモル)のPr11と、0.4003g(4.0000ミリモル)のCaCOと、6.002g(16.0000ミリモル)のAl(NO・9HOと、0.8333g(4.0000ミリモル)のSi(OCと、15.6905g(81.6680ミリモル)のクエン酸と、を希硝酸に溶解した。溶液を65℃で激しく撹拌して、ゾルを得た。ゾルを150℃で一晩乾燥させてゲルにした。その後、マッフル炉内、空気中で800℃で4時間焼成し、有機残留物を除去した。空気中で1,600℃で4時間、さらなる焼成工程を実施し、生成物相を得た。
【0079】
実験例3:(Lu0.99Pr0.01GaAl12
2.3637g(5.9400ミリモル)のLuと、0.0204g(0.0200ミリモル)のPr11と、4.5016g(12.0000ミリモル)のAl(NO・9HOと、3.7754g(8.0000ミリモル)のGa(NO・12HOと、7.7530g(64.0000ミリモル)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと、を希硝酸に溶解した。激しく攪拌しながら65℃でゆっくりと蒸発させて混合物を濃縮すると、ゾルは透明で高粘度のゲルに変わった。その後、温度を300℃に上げて自動継続ゲル化燃焼プロセスを開始した。それに伴って大量のガスが発生した。中間生成物を150℃で一晩乾燥させた。有機残留物を除去するために、乾燥粉末を空気中で800℃で4時間焼成した。空気中で1,600℃で4時間、最終焼成工程を実施し、生成物相を得た。
【0080】
実験例4:(Lu0.99Pr0.01ScAl12
2.3637g(5.9400ミリモル)のLuと、0.0204g(0.0200ミリモル)のPr11と、5.1374g(16.0000ミリモル)のAl(NO・9HOと、15.6905g(81.6680ミリモル)のクエン酸と、を希硝酸に溶解した。0.5516g(4.0000ミリモル)のScを前述の溶液に分散させた。溶液を65℃で激しく撹拌して、ゾルを得た。ゾルを150℃で一晩乾燥させてゲルにした。その後、マッフル炉内、空気中で800℃で4時間焼成し、有機残留物を除去した。空気中で1,600℃で4時間、さらなる焼成工程を実施し、生成物相を得た。
【0081】
実験例5:(Lu0.99Pr0.01LiAlSi12
3.1516g(7.9200ミリモル)のLuと、0.0272g(0.0267ミリモル)のPr11と、9.0032g(24.0000ミリモル)のAl(NO・9HOと、0.2956g(4.0000ミリモル)のLiCOと、3.3333g(16.0000ミリモル)のSi(OCと、40.3470g(192.0000ミリモル)のクエン酸と、を希硝酸に溶解した。溶液を65℃で激しく撹拌して、ゾルを得た。ゾルを150℃で一晩乾燥させてゲルにした。その後、マッフル炉内、空気中で1,000℃で4時間焼成し、有機残留物を除去した。空気中で1,600℃で1時間、さらなる焼成工程を実施し、生成物相を得た。
【0082】
実験例6:(Lu0.89Pr0.01Gd0.1CaAlSiO12
1.4875g(3.7380ミリモル)のLuと、0.1522g(0.4200ミリモル)のGdと、0.9918g(4.2000ミリモル)のCa(NO・4HOと、6.3022g(16.8000ミリモル)のAl(NO・9HOと、0.0365g(0.0840ミリモル)のPr(NO・6HOと、0.8750g(4.2000ミリモル)のSi(OCと、21.1822g(100.8000ミリモル)のクエン酸と、を希硝酸に溶解した。溶液を65℃で激しく撹拌して、ゾルを得た。ゾルを150℃で一晩乾燥させてゲルにした。その後、マッフル炉内、空気中で800℃で4時間焼成し、有機残留物を除去した。空気中で1,600℃で4時間、さらなる焼成工程を実施し、生成物相を得た。
【0083】
実験例7:Ca(Lu0.99Pr0.01)ScGaSi12
1.1819g(2.9700ミリモル)のLuと、0.8275g(6.0000ミリモル)のScと、0.0083g(0.0082ミリモル)のPr11と、1.2010g(12.0000ミリモル)のCaCOと、2.5000g(12.0000ミリモル)のSi(OCと、30.2602g(144.0000ミリモル)のクエン酸と、を希硝酸に溶解した。溶液を65℃で激しく撹拌して、ゾルを得た。ゾルを150℃で一晩乾燥させてゲルにした。その後、マッフル炉内、空気中で1,000℃で4時間焼成し、有機残留物を除去した。空気中で1,400℃で1時間、さらなる焼成工程を実施し、生成物相を得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
【国際調査報告】