(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】水分散性コポリアミド
(51)【国際特許分類】
C08G 69/42 20060101AFI20221209BHJP
【FI】
C08G69/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522017
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 FR2020051853
(87)【国際公開番号】W WO2021074543
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルジェ, ヨエル
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB02
4J001DD18
4J001EA02
4J001EA06
4J001EA12
4J001EA14
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB14
4J001EB26
4J001EB36
4J001EB37
4J001EB46
4J001EC08
4J001EC09
4J001EC15
4J001EC29
4J001EC47
4J001EC48
4J001EC65
4J001EC69
4J001EE28C
4J001EE45C
4J001JA01
4J001JA08
4J001JB01
4J001JB07
4J001JC06
(57)【要約】
本発明は、主に、少なくとも4つの異なるポリアミド単位を含む水分散性コポリアミドであり、前記ポリアミド単位の少なくとも1つは、少なくとも1つのスルホネート基を含み、前記ポリアミドスルホネート単位は、少なくとも15重量%の含有量で存在し;前記ポリアミド単位の少なくとも2つは脂肪族モノマーに由来し、前記コポリアミドは、少なくとも15重量%のスルホネートモノマーを含み、20重量%を超えないカプロラクタム系単位を含むことが理解される水分散性コポリアミドに関する。本発明はさらに、特にフィラメント形態の前記水分散性コポリアミドを含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4つの異なるポリアミド単位を含む水分散性コポリアミドであって、
-前記ポリアミド単位の少なくとも1つは、少なくとも1つのスルホネート基を含み、前記ポリアミドスルホネート単位は、少なくとも15重量%の含有量で存在し、
-前記ポリアミド単位の少なくとも2つが脂肪族モノマーに由来し、
前記コポリアミドは、20重量%を超えないカプロラクタム系単位を含み、それは、20℃/分の加熱速度で規格NF EN ISO 11357-2に従ってDSCによって測定したとき100と140℃の間のガラス転移温度、及び規格ISO 307:2007を適用するが、m-クレゾール中0.5重量%の溶液中20℃で測定して0.4dl/gを超える固有の粘度を有することが理解される、水分散性コポリアミド。
【請求項2】
少なくとも5つの異なるポリアミド単位を含む、請求項1に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項3】
コポリアミドが式(I):
A/X
1Y
1/X
2Y
2/X
3Y
3/X
4Z (I)
式中、
-Aは、少なくとも6個の炭素原子を含む少なくとも1つのラクタム又はアミノカルボン酸から得られる単位であり、
-X
1Y
1は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX
1、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y
1から得られる単位であり、
-X
2Y
2は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX
2、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y
2から得られる単位であり、
-X
3Y
3は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX
3、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y
3から得られる単位であり、
-X
4Zは、4~12個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX
4と、4~18個の炭素原子を含み、Xが水素、第四級アンモニウム基又は一価の金属であり得る式SO
3
-X
+の少なくとも1つの基を有する芳香族ジカルボン酸スルホネート、脂肪族スルホネート又はそれらのエステルから選択されるスルホネート化合物Zとから得られる単位である、請求項2に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項4】
10重量%を超える脂環式ジアミン残留物を含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載のコポリアミド。
【請求項5】
Aがラクタム又はそれぞれ10~12個の炭素原子を含むアミノカルボン酸であり、特に11-アミノウンデカン酸及びラウリルラクタムから選択される、請求項3又は4のに記載の水分散性コポリアミド。
【請求項6】
X
1、X
2、X
3及びX
4が同一又は異なり、1,2-エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン及び1,10-デカンジアミンから選択される、請求項3から5のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項7】
Y
1及びY
2が同一又は異なり、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸から選択される、請求項3から6のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項8】
Y
3がイソフタル酸である、請求項3から7のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項9】
スルホネート化合物が、5-スルホイソフタル酸のナトリウム、リチウム又はカリウム塩及び5-スルホイソフタル酸のメチルジエステルのナトリウム、リチウム又はカリウム塩から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項10】
0~30重量%の単位A、0~30重量%の単位X
1Y
1、0~30重量%の単位X
2Y
2、0~30重量%の単位X
3Y
3、及び15重量%~70重量%の単位X
4Zを含み、前記コポリアミドが少なくとも4つの異なるポリアミド単位を含むことが理解される、請求項3から9のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項11】
少なくとも40重量%の芳香族単位を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項12】
110と130℃の間のガラス転移温度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項13】
0.5dl/gを越える、中でも特に0.6dl/gを越える固有の粘度を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミド。
【請求項14】
a.ラクタム、アミノカルボン酸、並びにジアミン及び二酸からそれぞれ選択されるモノマーを適切な数及び割合で提供する工程、
b.適切な場合に、前記コポリアミドを得るのに適した条件下での1つ又は複数の触媒及び/又は鎖制限剤の存在下でのモノマーの重縮合の工程、及び
c.適切な場合に、前記コポリアミドの造粒の工程
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミドを製造するための方法。
【請求項15】
特にフィラメント形態である、請求項1から13のいずれか一項に記載の水分散性コポリアミドを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、水分散性コポリアミド、その製造方法、及び3D印刷における支持材料として有用な前記コポリアミドを含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造法では、三次元の物体は、従来の成形プロセスのような減算ではなく、材料の添加によって製造される。
【0003】
特に知られている製造プロセスの中には、材料のフィラメントを堆積させて融合させて物品を製造するFDM(溶融堆積モデル化)技術がある。このプロセスでは、一般に、製造された物品がオーバーハング部分又は空きセグメントを有する場合、支持構造を設ける必要がある。
【0004】
これらの支持構造は、同じ技術を介して構築されてもよい。支持材料又は犠牲材料として知られる使用される材料は、特定の複数の要件を満たさなければならず、特に、物品の製造に使用される材料の融点で、良好な機械的特性を有していなければならず、したがって、物品の製造に使用される材料の融点よりも高いガラス転移温度を有していなければならない。さらに、支持材料が、構築中に物品を製造するために使用される材料に接着しなければならない場合、一旦構築が完了すると、物品から容易に除去することができなければならない。
【0005】
特に認識されている支持材料は、水分散性であり、単に水を通過させることによって除去することができる支持材料である。
【0006】
この目的のために、国際特許出願公開第2016/205690A1号パンフレットは、スルホネートモノマー、より具体的には5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩又はリチウム塩との共重合によって得られるスルホポリアミド、スルホポリエステル又はスルホポリウレタンを提案している(5-SSIPA、CAS番号6362-79-4)。前記の文献には、2つの特定のスルホポリアミド、6I/6T/6SSIPA及び12/MACMI/MACMSSIPAが記載されている。しかし、それは、それらの合成又はそれらの特性、例えばそれらの固有の粘度又は水分散性に関するいずれの詳細も与えていない。必要な機械的特性を確保するのに十分なモル質量を有するこれらのポリマーを得ることは困難である。
【0007】
さらに、イオン性基の存在に関連するそれらの高いガラス転移温度(約200℃)は、非常に高い溶融粘度を示唆する。
【0008】
特定のコポリアミドスルホネートが、他の用途でさらに記載されている。したがって、国際特許出願公開第2011/147739A1号パンフレットは、ガスバリア性及び液体バリア性のために、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸の塩と、少量の5-スルホイソフタル酸のリチウム塩との重縮合によって得られるコポリアミドを記載している。米国特許第5889138号明細書は、ポリアミド繊維の耐汚染性を改善するためのコポリアミドスルホネートを記載している。具体的に記載されるコポリアミド66/6SSIPAは、大部分の材料を用いて3D印刷に使用するには低すぎるガラス転移温度(Tg)を有する。さらに、これらのコポリアミドの水分散性は、通常、目的の用途には不十分である。
【0009】
さらに、特許出願欧州特許第0696607A1号明細書は、毛髪固定剤を調製するのに有用なフィルム形成剤としてのカプロラクタム系コポリアミドスルホネートを記載している。最後に、仏国特許発明第2172973号明細書は、ポリアミド繊維の染色能力を改善するためのそのようなコポリアミドスルホネートを記載している。現在、カプロラクタムの不完全な重合のために、これらのコポリアミドは、残留モノマー、環状ダイマー及びより高次の環状オリゴマーの含有量が高い。これらの化合物の毒性のために、これらのコポリアミドの使用を制限することが望ましい。
【0010】
したがって、水分散性であり、200℃未満、特に150℃未満のガラス転移温度を有し、支持材料として機能するのに十分な機械的特性を有し、毒性残留物を含有するいかなる排出物も生成しないコポリアミドを提案することが依然として求められている。
【発明の概要】
【0011】
したがって、第1の態様によれば、本発明の1つの主題は、少なくとも4つの異なるポリアミド単位を含む水分散性コポリアミドであり、
-前記ポリアミド単位の少なくとも1つは、少なくとも1つのスルホネート基を含み、前記ポリアミドスルホネート単位は、少なくとも15重量%の含有量で存在し、
-前記ポリアミド単位の少なくとも2つが脂肪族モノマーに由来し、
前記コポリアミドは、20重量%を超えないカプロラクタム系単位を含むことが理解される。
【0012】
一実施形態により、水分散性コポリアミドは、少なくとも5個の異なるポリアミド単位を含む。
【0013】
一実施形態により、水分散性コポリアミドが、式(I)
A/X1Y1/X2Y2/X3Y3/X4Z (I)
式中、
-Aは、少なくとも6個の炭素原子を含む少なくとも1つのラクタム又はアミノカルボン酸から得られる単位であり、
-X1Y1は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX1、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y1から得られる単位であり、
-X2Y2は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX2、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y2から得られる単位であり、
-X3Y3は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX3、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y3から得られる単位であり、
-X4Zは、4~12個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX4と、4~18個の炭素原子を含み、Xが水素、第四級アンモニウム基又は一価の金属であり得る式SO3
-X+の少なくとも1つの基を有する芳香族ジカルボン酸スルホネート、脂肪族スルホネート又はそれらのエステルから選択されるスルホネート化合物Zとから得られる単位である。
【0014】
一実施形態により、コポリアミドは、10重量%を超える脂環式ジアミン残留物を含まない。
【0015】
一実施形態により、式(I)のコポリアミドは、Aがラクタム又はそれぞれ10~12個の炭素原子を含むアミノカルボン酸であり、特に11-アミノウンデカン酸及びラウリルラクタムから選択される。
【0016】
一実施形態により、式(I)のコポリアミドは、X1、X2、X3及びX4が同一又は異なり、1,2-エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン及び1,10-デカンジアミンから選択される。
【0017】
一実施形態により、式(I)のコポリアミドは、Y1及びY2が同一又は異なり、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸から選択される。
【0018】
一実施形態により、コポリアミドは、Y3がイソフタル酸である式(I)のものである。
【0019】
一実施形態により、スルホネート化合物が、5-スルホイソフタル酸のナトリウム、リチウム又はカリウム塩及び5-スルホイソフタル酸のメチルジエステルのナトリウム、リチウム又はカリウム塩から選択される。
【0020】
一実施形態により、水分散性コポリアミドは、0~30重量%の単位A、0~30重量%の単位X1Y1、0~30重量%の単位X2Y2、0~30重量%の単位X3Y3、及び10重量%~50重量%の単位X4Zを含み、前記コポリアミドが少なくとも4つの異なるポリアミド単位を含むことが理解される。
【0021】
一実施形態により、水分散性コポリアミドは、少なくとも40重量%の芳香族単位を含む。
【0022】
一実施形態により、水分散性コポリアミドは、100と140℃の間、好ましくは110と130℃の間のガラス転移温度を有する。
【0023】
一実施形態により、水分散性コポリアミドは、0.4dl/gを越える、好ましくは0.5dl/gを越える、中でも特に0.6dl/gを越える固有の粘度を有する。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、
a.ラクタム、アミノカルボン酸、並びにジアミン及び二酸からそれぞれ選択されるモノマーを適切な数及び割合で提供する工程、
b.適切な場合に、前記コポリアミドを得るのに適した条件下での1つ又は複数の触媒及び/又は鎖制限剤の存在下でのモノマーの重縮合の工程、及び
必要に応じて、前記コポリアミドの造粒の工程
を含む、前記水分散性コポリアミドの製造方法に関する。
【0025】
最後に、第3の態様によれば、本発明は、特にフィラメント形態の前記水分散性コポリアミドを含む組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
用語の定義
「共重合体」という用語は、コモノマーと呼ばれる少なくとも2つの化学的に異なる種類のモノマーの共重合から誘導されるポリマーを示すことを目的としている。したがって、共重合体は、少なくとも2つの反復単位から形成される。3つ以上の反復単位から形成されていてもよい。これは、列挙されたタイプの共重合体のいずれか、特にランダム共重合体又はブロック共重合体であり得る。好ましくは、これはランダム共重合体である。
【0027】
「ポリアミド」(ホモポリアミド又はコポリアミド)という用語は、ラクタム、アミノ酸及び/又は二酸とジアミンとの縮合生成物、一般に、アミド基を介して互いに結合した単位又はモノマーから本質的に形成される任意のポリマーを示すことを目的としている。しかし、他の基を介して、例えばエステル、ウレタン又は尿素基を介して互いに連結された単位又はモノマーをさらに含むポリマーも、これらの単位が少量である場合に標的とされる。
【0028】
「ポリアミドモノマー又は単位」という用語は、本明細書の文脈において、ポリアミドの反復単位が二酸とジアミンの組み合わせからなる場合が特別な場合であるので、「反復単位」の意味で解釈されるべきである。これは、ジアミンと二酸の組み合わせ、すなわちジアミン.二酸対(等モル量)であり、モノマーに対応すると考えられる。この理由は、個々には、二酸又はジアミンは構造単位に過ぎず、単独で重合するには不十分であるからである。ポリアミド単位は、特に脂肪族、芳香族及び/又は半芳香族であってもよい。
【0029】
「スルホネート化合物」という用語は、Xが水素、第四級アンモニウム基又は一価の金属であり得る基-SO3Xを含む重縮合によって反応することができる化合物を示すことを目的としている。好ましくは、スルホネート基はジカルボン酸によって担持される。
【0030】
「コポリアミド」(CoPAと略す)という用語は、少なくとも2つ、本発明の文脈では4つ又はさらには5つ以上、特に6つ、7つ又は8つの異なるモノマーの重合生成物を意味する。
【0031】
「水分散性」という用語は、塩基(水酸化ナトリウム)又は酸などのその崩壊又は溶解を促進する薬剤を含まない水溶液中で崩壊する材料の特徴を明らかにすることを目的としている。言い換えると、材料を崩壊又は溶解するのは水である。好ましくは、水はそのとき中性pH、すなわち約5~9のpHを有する。好ましくは、材料は、脱塩水だけでなく、様々な鉱物塩を含有する水、例えば水道水にも水分散性である。崩壊の過程で、材料は、ポリマーのより小さな断片及び/又は粒子に分解することができる。材料の一部はまた、溶解し得る。
【0032】
「固有の粘度」という用語は、溶媒が硫酸ではなくm-クレゾールである点、濃度が重量で0.5%である点、及び温度が20℃である点で、修正された規格ISO307:2007に従って測定される粘度を示す。固有の粘度は、ポリマーのモル質量を評価することを可能にする。
【0033】
「フィラメント」という用語は、3D印刷機、特にFDM技術での使用に適した、一般に10μm~10mm、好ましくは50μm~5mmの、充填剤で任意選択に強化された可溶融性材料の可変の厚さの糸を示す。
【0034】
「融点」という用語は、20℃/分の加熱速度を使用して、NF EN ISO 11357-3の規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合に、少なくとも部分的に結晶性のポリマーが粘稠な液体状態になる温度を示すことを目的としている。
【0035】
「ガラス転移温度」という用語は、20℃/分の加熱速度を使用して、NF EN ISO 11357-2の規格に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合に、少なくとも部分的に非晶質のポリマーがゴム状態からガラス状態に、又はその逆になる温度を示すことを目的としている。
【0036】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO 1874-1:2011の規格「Plastics-Polyamide(PA)molding and extrusion materials-Part 1:Designation」、特に3ページ(表1及び2)に記載されており、当業者に周知である。
【0037】
「芳香族単位」という用語は、非芳香族ジアミンと芳香族二酸との重縮合、芳香族単位を含むジアミンと非芳香族二酸との重縮合、又は代替的に芳香族単位を含むジアミンと芳香族二酸との重縮合から誘導されるポリアミド単位を示すことを目的としている。
【0038】
[コポリアミド]
本発明は、3D印刷における支持材料として特に有用な水分散性コポリアミドを提案する。
【0039】
本出願において有用であるために、材料は、好ましくは以下の特性を組み合わせる。
-水道水を含み、長期間の貯蔵後を含む、良好な水分散性、
-被印刷物のガラス転移温度に近いガラス転移温度、
-3D印刷が実行される温度において、
・印刷された部品を支持するのに十分な機械的強度及び剛性、
・被印刷物の溶融粘度に近い溶融粘度、及び
-水に分散させた後、危険を伴わずに除去することができる流出物の形成。
【0040】
現在、試験により、2つの異なるポリアミド単位を含むコポリアミドスルホネートは、高含有量のスルホネートモノマーを含む場合であっても水に分散しないことが明らかになった。さらに、ターポリアミドへの移行は水分散性を改善することができるが、これは持続性ではなく、むしろ経時的に顕著に分解していくことが観察された。この観察は、水への溶解度を低下させるポリアミドのわずかな結晶化によって説明され得る。
【0041】
他方、本出願人は、得られたコポリアミドのポリアミド単位の少なくとも2つが脂肪族であるように選択された追加のポリアミド単位をこれらのターポリアミドへ添加することが、15日間のコンディショニング後でさえ、要件、すなわち70℃の水道水中での優れた水分散性と組み合わせた高いガラス転移温度を満たすコポリアミドの調製を可能にするということを見出した。
【0042】
さらに、本出願人は、良好な水分散性を確実にするためにコポリアミドにおける必要なスルホネートモノマーの最小含有量を特定した。
【0043】
したがって、本発明によれば、少なくとも4つ、好ましくは5つの異なるポリアミド単位を含むコポリアミドが提案され、
-前記ポリアミド単位の少なくとも1つは、少なくとも1つのスルホネート基を含み、
-前記ポリアミド単位の少なくとも2つが脂肪族モノマーに由来し、
前記コポリアミドは、少なくとも15重量%のスルホネートモノマーを含み、20重量%を超えない、好ましくは15重量%を超えない、より好ましくは10重量%を超えない、特に5重量%を超えないカプロラクタム系単位を含むことが理解される。
【0044】
有利にも、コポリアミドは、式(I)
A/X1Y1/X2Y2/X3Y3/X4Z (I)
式中、
-Aは、少なくとも6個の炭素原子を含む少なくとも1つのラクタム又はアミノカルボン酸から得られる単位であり、
-X1Y1は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX1、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y1から得られる単位であり、
-X2Y2は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX2、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y2から得られる単位であり、
-X3Y3は、脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX3、及び脂肪族又は芳香族ジカルボン酸Y3から得られる単位であり、
-X4Zは、4~12個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンX4と、4~18個の炭素原子を含み、Xが水素、第四級アンモニウム基又は一価の金属であり得る式SO3
-X+の少なくとも1つの基を有する芳香族ジカルボン酸スルホネート、脂肪族スルホネート又はそれらのエステルから選択されるスルホネート化合物Zとから得られる単位である。
【0045】
本発明によれば、コポリアミドのポリアミド単位の少なくとも2つは脂肪族である。Zが芳香族ジカルボン酸に由来する場合、単位X4Yは脂肪族ではない。また、式(I)の共重合体のポリアミド単位A、X1Y1、X2Y2及びX3Y3のうちの少なくとも2つは、このとき脂肪族である。
【0046】
単位Aがラクタムから得られる場合、前記ラクタムは、カプロラクタム、オエナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム及びラウリルラクタム、特にラウリルラクタムから選択され得る。
【0047】
単位Aがアミノ酸の重縮合から得られる場合、単位Aは、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、10-アミノウンデカン酸、12-アミノウンデカン酸及び11-アミノドデカン酸並びにそれらの誘導体、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸、特に11-アミノウンデカン酸から選択され得る。
【0048】
しかしながら、前記化合物は不完全に重合し、毒性であるので、カプロラクタムの使用を避けることが好ましい。
【0049】
有利には、単位Aは、少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個、特に少なくとも9個、中でも特に少なくとも10個、特に11個、好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む少なくとも1つのラクタム又はアミノカルボン酸から得られる。
【0050】
好ましくは、Aは、10~12個の炭素原子を含むラクタム又はアミノカルボン酸から誘導される。これらのモノマーの中でも、アミノウンデカン酸、ラクタム12が特に好ましい。好ましくは、単位Aは脂肪族単位である。
【0051】
基X1、X2、X3及びX4がそれぞれ由来するジアミンは、同一又は異なる脂肪族、脂環式、複素環式又はアリール脂肪族ジアミンであってもよい。
【0052】
好ましくは、ジアミンは、互いに独立して、それぞれ2~18個、好ましくは4~12個、中でも特に6~10個の炭素原子を含む。
【0053】
有利には、ジアミンは、直鎖脂肪族ジアミン、特に1,2-エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン及び1,18-オクタデカメチレンジアミンから選択される。好ましくは、ジアミンX1、X2、X3及びX4は、1,2-エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン及び1,12-ドデカンジアミンから選択される。最も詳細には、ジアミンX1、X2、X3及びX4は、1,2-エチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン及び1,10-デカメチレンジアミンから選択されてもよい。
【0054】
ジアミンはまた、分枝脂肪族ジアミン、例えば2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン及び2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミンから選択されてもよい。
【0055】
ジアミンは、脂環式ジアミン、特にイソホロンジアミン(IPD)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(MACP)及びp-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)及び2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC)から選択することもできる。
【0056】
さらに、少なくとも特定のジアミンX1、X2、X3又はX4は、アリール脂肪族ジアミンであってもよく、メタキシリレンジアミン(MXD)及びパラキシリレンジアミン(PXD)から選択されてもよい。
【0057】
最後に、少なくとも特定のジアミンX1、X2、X3又はX4は複素環式ジアミンであり得、ピペラジン(Pip)及びN-アミノエチルピペラジン(AEP)から選択され得る。
【0058】
基Y1が由来するジカルボン酸は、特に、6~18個、好ましくは6~12個、中でも特に8~10個の炭素原子を含む脂肪族二酸であり得る。それは、好ましくは直鎖ジカルボン酸である。有利には、それはアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸及びオクタデカン二酸から選択される。好ましくは、Y1は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸から選択される。
【0059】
基Y2及びY3が由来するジカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい脂肪族又は芳香族ジカルボン酸である。好ましくは、二酸Y2及びY3は、互いに独立して、それぞれ6~18個、好ましくは6~12個、中でも特に8~10個の炭素原子を含む。脂肪族ジカルボン酸である場合、ジカルボン酸Y1について前述したリストから選択することができる。有利にも、それは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸から選択され得る。芳香族酸である場合、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びイソフタル酸から特に選択することができ、イソフタル酸が好ましい。
【0060】
一実施形態によれば、Y1及びY2は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸から選択される。一実施形態によれば、Y3はイソフタル酸である。
【0061】
ポリアミド単位X1Y1は、好ましくはPA26、PA29、PA210、PA212、PA66、PA69、PA610、PA612、PA96、PA99、PA910、PA912、PA106、PA109、PA1010、PA1012、PA2I、PA6I、PA9I及びPA10Iから選択される。
【0062】
ポリアミド単位X2Y2は、好ましくはPA26、PA29、PA210、PA212、PA66、PA69、PA610、PA612、PA96、PA99、PA910、PA912、PA106、PA109、PA1010、PA1012、PA2I、PA6I、PA9I及びPA10Iから選択される。
【0063】
ポリアミド単位X3Y3は、好ましくはPA26、PA29、PA210、PA212、PA66、PA69、PA610、PA612、PA96、PA99、PA910、PA912、PA106、PA109、PA1010、PA1012、PA2I、PA6I、PA9I及びPA10I、PA2T、PA6T、PA9T及びPA10Tから選択される。
【0064】
スルホネートモノマーは、好ましくは、少なくとも1つのスルホネート基を有するジカルボン酸又はそのエステル及びジアミンから誘導される。好ましくは、ジカルボン酸又はエステルスルホネートは、アルカリ金属(特にナトリウム、リチウム又はカリウム)、アルカリ土類金属又は第四級アンモニウムスルホネートの形態で使用される。ジカルボン酸又はエステルスルホネートはさらに、それらが芳香族ジカルボン酸である場合には1つ又は複数の芳香族環に、又はそれらが脂肪族ジカルボン酸である場合には脂肪族鎖に結合した2つの酸又はエステル官能基を有する。
【0065】
好適なスルホネート化合物の中でも、芳香族ジカルボン酸、又は無水物スルホネート、例えばスルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸又はスルホ-オルソフタル酸又は無水物、スルホ-4-ナフタレン-2,7-ジカルボン酸又は無水物、また脂肪族ジカルボン酸又は無水物スルホネート、例えばスルホコハク酸二酸又は無水物又はそれらの低級ジエステル(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル)が挙げられ得る。
【0066】
優先的なスルホネート化合物は、スルホイソフタル酸及びスルホコハク酸又は無水物のナトリウム塩、リチウム塩又はカリウム塩並びにそのメチルジエステルである。好ましくは、スルホネート化合物は、5-スルホイソフタル酸のリチウム塩(LiSIPAと略す)、5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩(以下、SSIPAと略す)、5-スルホイソフタル酸のカリウム塩(KSIPAと略す)又はそのメチルジエステル(それぞれLiSIPMe、SSIPMe及びKSIPMeと略記される)である。
【0067】
単位X4Zは、好ましくは、2SSIPA、6SSIPA、9SSIPA、10SSIPA、2LiSIPA、6LiSIPA、9LiSIPA、10LiSIPA、2KSIPA、6KSIPA、9KSIPA、10KSIPA、2SSIPMe、6SSIPMe、9SSIPMe、10SSIPMe、2LiSIPMe、6LiSIPMe、9LiSIPMe、10LiSIPMe、2KSIPMe、6KSIPMe、9KSIPMe及び10KSIPMeから選択される。2SSIPA、6SSIPA、6LiSIPA及び6SSIPMeが特に好ましい。
【0068】
適切な場合、本発明による水分散性コポリアミドはまた、他の追加のモノマーの式(I)に示されるモノマーを含んでもよい。特に、それは、上で定義したような1つ、2つ又はそれを超えるさらなるモノマーXnYnを含んでもよい。さらに、コポリアミドは、他の非ポリアミドモノマーを含んでもよい。
【0069】
本発明によるコポリアミドは、2、3、4又は5個の脂肪族ポリアミド単位を含み得る。好ましくは、2つ又は3つの脂肪族ポリアミド単位を含む。
【0070】
コポリアミド中の様々なポリアミド単位間の重量比は、大きく変化し得る。
【0071】
しかし、そのガラス転移温度を十分に高くするために、すなわち好ましくは100℃を超えるために、コポリアミドは、重量で40%を超える、好ましくは45%を超える、中でも特に50%を超える芳香族単位の質量含有量を含むことが好ましい。
【0072】
さらに、十分な水分散性を確実にするために、コポリアミド中のスルホネートモノマーの質量含有量は、全モノマーの重量に対して少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、有利には少なくとも30%、特に少なくとも35%である。
【0073】
有利には、コポリアミド中のスルホネートモノマーの質量含有量は、全モノマーの重量に対して15%~70%、特に20%~60%、特に20%~50%、好ましくは25%~40%、より好ましくは25%~35%である。
【0074】
さらに、コポリアミドは、好ましくは低い質量割合、好ましくは10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下又は脂環式ジアミンから誘導されるポリアミド単位を含む。
【0075】
一実施形態によれば、コポリアミドは、0~30%、特に5%~25%、中でも特に10%~20%の重量基準の単位A、0~30%、特に5%~25%、中でも特に10%~20%の重量基準の単位X1Y1、0~30%、特に5%~25%、中でも特に10%~20%の重量基準の単位X2Y2、0~30%、特に5%~25%、中でも特に10%~20%の重量基準の単位X3Y3、及び15%~70%、特に20%~50%、特に25%~45%、中でも特に25%~35%の重量基準の単位X4Zを含み、前記コポリアミドは少なくとも4つの異なるポリアミド単位を含むことが理解される。
【0076】
コポリアミド鎖の末端の過剰なカルボン酸基又はアミン基が水分散性に関して破壊的であることは観察されていない。それにもかかわらず、コポリアミドは、実質的に当量の鎖末端カルボン酸及びアミン基を有することが好ましい。
【0077】
一実施形態によれば、本発明によるコポリアミドの長さ及び鎖末端官能性は、少なくとも1つの適切な単官能性又は二官能性鎖リミッタを添加することによって修飾される。
【0078】
そのような適切な鎖制限剤は、特に直鎖脂肪族C2~C18モノカルボン酸及び/又は直鎖脂肪族C4~C18モノアミンであり得る。また、直鎖脂肪族C3~C36ジカルボン酸又は直鎖脂肪族C4~C18ジアミンであってもよい。
【0079】
鎖制限剤として使用される酸は、例えば、酢酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びドデカン二酸から選択され得る。
【0080】
好ましくは、本発明によるコポリアミドは、直鎖脂肪族C2~C18モノカルボン酸及び/又は直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸によって制限され、特に好ましくは直鎖脂肪族C6~C12ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカン二酸が特に好ましい。
【0081】
鎖制限剤として使用されるアミンは、例えば、ラウリルアミン、ヘキサンジアミン及びデカンジアミンから選択され得る。
【0082】
好ましくは、本発明によるコポリアミドは、C6~C12モノアミン及び/又はC6~C12ジアミンによって制限され、ヘキサンジアミン及びラウリルアミンが特に好ましい。
【0083】
鎖制限剤は、一般に、モノマーよりも著しく少ない量で添加される。一般に、モノマー混合物の中のそれらの含有量は、モノマー混合物の重量に対して、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満又はさらに0.2重量%未満である。
【0084】
十分な機械的強度を確保するために、本発明によるコポリアミドは、好ましくは0.4dl/g超、好ましくは0.5dl/g超、中でも特に0.6dl/g超の固有の粘度を有する。
【0085】
一実施形態により、コポリアミドは、100と140℃の間、好ましくは110と130℃の間のガラス転移温度を有する。より高い転移温度を有するコポリアミドは、これらのコポリアミドの高い粘度に起因して低いモル重量を有するリスクを有し、その結果、不十分な機械的特性を有するリスクを有する。
【0086】
[コポリアミドの製造方法]
第2の態様によれば、本発明は、記載のコポリアミドを調製する方法に関する。
【0087】
概して、水分散性コポリアミドの製造方法は、
a.ラクタム、アミノカルボン酸、並びにジアミン及び二酸からそれぞれ選択されるモノマーを適切な数及び割合で提供する工程、
b.適切な場合に、前記コポリアミドを得るのに適した条件下での1つ又は複数の触媒及び/又は鎖制限剤の存在下でのモノマーの重縮合の工程、及び
c.必要に応じて、前記コポリアミドの造粒の工程
を含む。
【0088】
記載されるコポリアミドは、当業者に公知であり、特にthe Nylon Plastics Handbook,Ed.Melvin I.Kohan,Hanser Publishers 1995 pages 17 to 27に記載されている重縮合プロセスのいずれかによって得ることができる。
【0089】
例えば、一実施形態では、重縮合は、重合を完了するために、200から300℃の温度、特にコポリアミドスルホネートの融点より高い温度、30バールまで上昇し、大気圧以下の圧力まで徐々に低下させることができる圧力で、同じ反応器内で単一の工程で行われる。この重縮合工程における反応温度は、撹拌を有効に行うために、コポリアミドの融点よりも高いことが好ましい。
【0090】
触媒は、特に、リン酸及び/又は亜リン酸、次亜リン酸、並びにこれらの酸のナトリウム塩又はカリウム塩などのリン系酸であり得る。鎖制限剤は、上記のものから特に選択することができる。
【0091】
したがって、反応は中間体としてオリゴマーとして生成し、これは、互いに縮合することにより、同じ反応器内でポリアミドを直接生じる。任意選択で、ポリマーは、反応器から大気圧より高い圧力で除去されてもよい。次いで、重合は、場合により、融点より高い温度で押出する工程によって、又は「固体重合」プロセスに従ってポリアミドの融点より低い温度で加熱する工程によって、完了してもよい。
【0092】
あるいは、重縮合工程は3つの工程で行われ、以下の工程を含む:
(i)200℃~300℃の温度、特に20~30バールの圧力でコモノマーを加熱してプレポリマーを得ることによって、第一の反応器内で予備重合する第一の工程であって、温度が好ましくはプレポリマーの融点より高い温度である、第一の工程、
(ii)220~280℃の温度、2~30バールの圧力で、第一の反応器から第二の反応器にプレポリマーを移送する第二の工程、
(iii)最大30バールの範囲であり得る圧力で200~300℃の温度で加熱し、重合を完了させてコポリアミドを得るために大気圧以下の圧力まで徐々に低下させることによる重合の第三の工程であって、温度は特にコポリアミドの融点より高い温度である、重合の第三の工程。
【0093】
任意選択で、工程cにおける重合の完了後のポリマーは、大気圧より高い圧力で第2の反応器から除去されてもよい。
【0094】
重合は、融点より高い温度で押出する工程によって、又は「固体重合」プロセスに従ってポリアミドの融点より低い温度で加熱する工程によって、完了してもよい。
【0095】
有利には、その後、コポリアミドスルホネートは、水と直接接触することなく冷却することによって回収される。
【0096】
[コポリアミドを含む組成物]
第3の態様によれば、本発明は、上記のコポリアミドを含む組成物に関する。このような配合物は、特に、通常の添加剤及び/又は充填剤のポリマー配合物への添加から生じ得る。
【0097】
したがって、組成物は、着色剤、顔料、染料、抗UV剤、老化防止剤、抗酸化剤、流動化剤、摩耗防止剤、剥離剤、安定剤、可塑剤、界面活性剤、蛍光増白剤又はワックスなどの通常の添加剤の中から、0~10重量%、好ましくは1重量%~8重量%、特に2重量%~5重量%の1つ又は複数を含み得る。さらに、組成物は、適切な場合には、充填剤又は補強剤を含んでもよい。
【0098】
コポリアミド単独、又は上記のように配合されたコポリアミドは、その後、その使用に適した形状に形成され得る。コポリアミドが3D印刷に使用される場合、コポリアミドは特に、例えば押出によってフィラメントに形成され得る。
【0099】
[コポリアミドの用途]
第4の態様によれば、本発明は、特に支持材料としての、3D印刷に記載されるコポリアミドの使用に関する。
【0100】
具体的には、記載されたコポリアミドは、水道水を含めた水への優れた水分散性を有し、長期間の貯蔵後であっても、ポリアミド変態温度において十分な機械的強度を与えるガラス転移温度を同様に有する。
【0101】
有利には、コポリアミドは水道水に分散され得る。
【0102】
迅速な分散を得るために、コポリアミドは好ましくは湯の中に分散される。好ましくは、コポリアミドを分散させるために使用される水の温度は、40~90℃、好ましくは50~80℃、特に60~80℃である。
【0103】
本発明は、以下の実施例において、より詳細に説明される。特に明記しない限り、パーセンテージは、最終的な組成物の重量に対する重量百分率である。
【実施例】
【0104】
実施例1
9.00gのアミノウンデカン酸、18.55gのヘキサメチレンジアミン、7.06gのイソフタル酸、5.01gのアジピン酸、5.72gのセバシン酸、14.66gの5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩、水中8.5%の0.14gのリン酸、水中60%の0.08gの次亜リン酸ナトリウム、及び18gの脱イオン水を、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で、140分後、得られたポリマーを含む管形反応器を周囲空気で冷却する。
【0105】
次いで、表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して特徴を明らかにし、これらはそれぞれ以下のように評価される。
【0106】
ガラス転移温度:20℃/分の加熱速度を用いて、規格NF EN ISO 11357-2に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0107】
水分散性:温度を70℃にした150gの水道水を含む、撹拌機を備えた適切な容器に0.5gのコポリアミドを導入することによって、評価した。評価は、合成直後及び15日間のコンディショニング後(23℃、50%RH)に一度行う。得られた分散液の外観を10分間目視することにより、水分散性を評価し、下記表1に示すカテゴリーのいずれかに分類する。
【0108】
MVI:規格ISO 1133-1(2011)に従って5kgの荷重下、220℃で評価した。
【0109】
固有の粘度:溶媒が硫酸ではなくm-クレゾールであり、濃度が0.5重量%であり、温度が20℃であるという点で、修正された規格ISO 307:2007を適用することによって、評価した。
【0110】
結果を以下の表3にまとめる。
【0111】
実施例2
9.00gのアミノウンデカン酸、18.55gのヘキサメチレンジアミン、7.06gのイソフタル酸、5.01gのアジピン酸、5.72gのセバシン酸、13.77gの5-スルホイソフタル酸のリチウム塩、水中8.5%の0.14gのリン酸、水中60%の0.08gの次亜リン酸ナトリウム、及び18gの脱イオン水を、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で、41分後、得られたポリマーを含む管形反応器を周囲空気で冷却する。
【0112】
次いで、表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを、数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、実施例1で説明したように、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して、特徴を明らかにする。結果を以下の表3にまとめる。
【0113】
実施例3
9.00gのアミノウンデカン酸、18.55gのヘキサメチレンジアミン、7.06gのイソフタル酸、5.01gのアジピン酸、5.72gのセバシン酸、16.18gの5-スルホイソフタル酸のメチルジエステルのナトリウム塩、水中8.5%の0.14gのリン酸、水中60%の0.08gの次亜リン酸ナトリウム、及び18gの脱イオン水を、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で30分後、得られたポリマーを含む管形反応器を周囲空気で冷却する。
【0114】
次いで、表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを、数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、実施例1で説明したように、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して、特徴を明らかにする。結果を以下の表3にまとめる。
【0115】
実施例A(比較例)
ヘキサメチレンジアミン22.78g、アジピン酸18.38g、5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩18.84g、水中8.5%の0.14gのリン酸、水中60%の0.08gの次亜リン酸ナトリウム、及び18gの脱イオン水を、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で120分後、得られたポリマーを含む管形反応器を冷却する。
【0116】
次いで、表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを、数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、実施例1で説明したように、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して、特徴を明らかにする。結果を以下の表3にまとめる。
【0117】
実施例B(比較例)
ヘキサメチレンジアミン23.35g、イソフタル酸5.29g、アジピン酸16.71g、5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩14.65g、水中8.5%のリン酸0.14g、水中60%の次亜リン酸ナトリウム0.08g及び脱イオン水18gを、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で130分後、得られたポリマーを含む管形反応器を冷却する。
【0118】
次いで、表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを、数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、実施例1で説明したように、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して、特徴を明らかにする。結果を以下の表3にまとめる。
【0119】
実施例C(比較例)
9.00gのアミノウンデカン酸、19.7gのヘキサメチレンジアミン、13.24gのイソフタル酸、5.01gのアジピン酸、5.72gのセバシン酸、7.33gの5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩、水中8.5%の0.14gのリン酸、水中60%の0.08gの次亜リン酸ナトリウム、及び18gの脱イオン水を、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で35分後、得られたポリマーを含む管形反応器を周囲空気で冷却する。
【0120】
次いで、得られたコポリアミドを数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して特徴を明らかにし、これらはそれぞれ以下のように評価される。
【0121】
表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを粉砕し、実施例1で説明したように、そのガラス転移温度、その水分散性、その粘度指数及びその粘度に関して特徴を明らかにする。結果を以下の表3にまとめる。
【0122】
実施例D(比較例)
24.00gのアミノウンデカン酸、13.17gのヘキサメチレンジアミン、12.36gのイソフタル酸、10.47gの5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩、水中8.5%のリン酸0.14g、水中60%の次亜リン酸ナトリウム0.08g及び脱イオン水18gを、撹拌アンカーを備えた管状ガラス反応器に入れる。反応器を窒素でパージした後、内容物を窒素気流下で30分間にわたって145℃まで加熱する。それらの状態を50rpmで撹拌しながら30分間保持した後、20分かけて徐々に245℃まで昇温する。次いで、培地を50mbarの真空下に置く。重合の進行は、撹拌軸上のトルク計によって監視される。これらの条件下で140分後、得られたポリマーを含む管形反応器を冷却する。
【0123】
次いで、表2に示す組成を有する得られたコポリアミドを、数mmのサイズの顆粒の形態で粉砕し、次いで、実施例1で説明したように、そのガラス転移温度、その水分散性、その溶融粘度指数(MVI)及びその固有の粘度に関して、特徴を明らかにする。結果を以下の表3にまとめる。
【0124】
一連の試験は、2つのポリアミド単位を有するコポリアミドが、それが高含有量のスルホネートモノマーを含む場合でも水に分散しないことを示す(比較例Aを参照)。さらに、ターポリアミドへの移行は水分散性を改善することができるが、これは保証されず、いずれの場合も持続性ではない(実施例B及びDを参照)。短鎖単位(PA66)を長鎖単位(PA11)に置き換えても満足のいくものではない(実施例Dを参照)。
【0125】
一方、本研究は、追加の主に脂肪族ポリアミド単位及び十分なスルホネートモノマー含有量を含む本発明によるコポリアミドが、15日間のコンディショニング後でさえ、70℃の水道水中で優れた水分散性を有することを明らかにしている(実施例1~3)。さらに、これらのコポリアミドは、適切なガラス転移温度及び適切な溶融粘度を有し、したがって、3D印刷のための支持材料としての優れた候補である。
【0126】
[引用文献等一覧]
国際特許出願公開第2016/205690A1号パンフレット
国際特許出願公開第2011/147739A1号パンフレット
米国特許第5889138号明細書
欧州特許第0696607A1号明細書
仏国特許発明第2172973号明細書
【国際調査報告】