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特表2022-552521新規なヒドロコルチゾンヘミスクシナート凍結乾燥物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】新規なヒドロコルチゾンヘミスクシナート凍結乾燥物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20221209BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221209BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
A61K31/573
A61P11/00
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522025
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 FR2020051850
(87)【国際公開番号】W WO2021074542
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】1911670
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326524
【氏名又は名称】ラボラトワール アゲタン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイノー ファニー
(72)【発明者】
【氏名】トナー ジェフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB13
4C076CC15
4C076DD22Z
4C076DD26Z
4C076DD38A
4C076DD43Z
4C076DD50Z
4C076DD60Z
4C076DD67A
4C076FF13
4C076FF15
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA44
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA04
4C086ZA59
(57)【要約】
静脈内注射または非経口注射用溶液を調製するための凍結乾燥粉末であって、
1~30%のヒドロコルチゾンヘミスクシナートと、
40~98%の、マンニトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ラフィノースまたはソルビトールから選択される増量剤と、
1~30%の緩衝剤と
を含む凍結乾燥粉末、および、
早産児における気管支肺異形成症の予防または治療に有用な静脈内注射または非経口注射用溶液を調製するための当該凍結乾燥粉末の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈内注射または非経口注射用溶液を調製するための凍結乾燥粉末であって、
1~30%のヒドロコルチゾンヘミスクシナートと、
40~98%の、マンニトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ラフィノースまたはソルビトールから選択される増量剤と、
1~30%の緩衝剤と
を含む凍結乾燥粉末。
【請求項2】
前記凍結乾燥粉末が5~15%のヒドロコルチゾンヘミスクシナートを含有することを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項3】
前記増量剤がマンニトールまたはトレハロースであるとして選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項4】
前記凍結乾燥粉末が60~90%の増量剤を含有することを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項5】
前記緩衝剤がシトラート、ホスフェート、TRIS、ヒスチジンまたはHEPESおよびそれらに関連する塩であるとして選択されることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項6】
前記凍結乾燥粉末が5~15%の緩衝剤を含有することを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の凍結乾燥粉末。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の凍結乾燥粉末を調製する方法であって、
乾燥凍結の前に、前記溶液の調製に必要な水全体の70~90%(v/v)の前記緩衝剤を室温で添加する工程と、
前記ヒドロコルチゾンヘミスクシナートを添加する工程と、
前記溶液のpH7.0~8.0の範囲の値に調節する工程と、
前記増量剤を添加する工程と、
前記必要な水の残りを添加する工程と、
前記溶液をフィルタにかける工程と、
前記得られた溶液を凍結乾燥する工程と
を包含する方法。
【請求項8】
早産児または超早産児に静脈内注射または非経口注射するための溶液を調製するための、請求項1~6の何れか1項に記載の凍結乾燥粉末の使用。
【請求項9】
早産児または超早産児に静脈内注射または非経口注射するための溶液を調製するためのキットであって、
請求項1~6の何れか1項に記載の凍結乾燥粉末と、
再構成溶液と
を備えるキット。
【請求項10】
早産児または超早産児における気管支肺異形成症の予防または治療において使用するための、請求項9に記載のキットから得られた静脈内注射または非経口注射用溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、新規なヒドロコルチゾンヘミスクシナート凍結乾燥物、および当該ヒドロコルチゾンヘミスクシナート凍結乾燥物の、早産児における気管支肺異形成症の予防または治療に有用な静脈内注射または非経口注射用溶液の調製のための使用である。
【背景技術】
【0002】
気管支肺異形成症(BPD)は、低出生体重であり、かつ、急性呼吸窮迫症候群のために人工呼吸を必要とする早産児または超早産児(すなわち、32週未満の無月経期間)に多くみられる慢性肺疾患である。BPDは、早産児または超早産児における、主な合併症のうちの1つであり、かつ、死亡および罹病の主な原因の1つである。
【0003】
超早産児においては、肺胞の発達が完全ではなく、非常に小さな攻撃(aggression)でさえ肺胞の成熟に変化を与え得る。特に、羊水が感染中であるときにそうなる。
【0004】
早産児においては、BPDは、新生児死亡または神経学的後遺症のリスク要因である。また、小児期に呼吸に問題が生じるリスクが増大する。成人期においてさえ換気機能が損なわれ得る。
【0005】
コルチコステロイドを静脈内投与することによって、早産児または超早産児における気管支肺異形成症の発生リスクが低減される。しかし、低用量で投与するためには、一般に、市販の溶液を高希釈する必要がある。注射の前に溶液を調製するこの工程は、注射溶液の調薬過誤または微生物汚染のリスクが著しい。
【0006】
これらのリスクを抑制するために、欧州医薬品庁(EMA)によって発行された「Directive EMA/CHMP/QWP/805880/2012 Rev. 2 relating to the pharmaceutical development of drugs for pediatric use」は、適切な濃度の有効成分を含有する調製物を開発することによって上記のような希釈物を回避することを推奨している。
【0007】
ヒドロコルチゾンヘミスクシナートは、ヒドロコルチゾンスクシナートハイドロジェン、ハイドロジェンスクシナートヒドロコルチゾン、または簡単にヒドロコルチゾンスクシナートとしても知られ、新生児の急性副腎不全や一過性副腎不全、および塩喪失症を伴う先天性副腎過形成(Debre-Fibiger症候群)の治療薬として、世界中の多くの国で市販されている合成コルチコステロイドである。
【0008】
この有効成分は、ヒドロコルチゾンとスクシナートとの間のエステル結合が不安定であるために水性媒質中で急速な加水分解を受けやすいので、現在では、再構成溶液(reconstitution solution)を付属した、100mgまたは500mgのヒドロコルチゾンを含有する凍結乾燥粉末(または凍結乾燥物)の形態で市販されている。
【0009】
しかしながら、早産児または超早産児における気管支肺異形成症の予防または治療に関して規定された薬量学では、最初の7日間は、0.5mgのヒドロコルチゾン/kg/12時間であり、そして次の3日間は、0.5mgのヒドロコルチゾン/kg/24時間であり、投与のためには、100mgのヒドロコルチゾンを含有する凍結乾燥物および再構成溶液(2ml)から再構成した後に得られた溶液を50倍希釈する(5%グルコース溶液を使用する)必要がある。
【0010】
本発明の時点において、早産児または超早産児に対するヒドロコルチゾンの静脈内(または非経口)投与を上記の用量および体積で行うことを可能にする調製物であって、単に再構成溶液を添加するだけで、その後に希釈することなく、再構成できる調製物は、存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、そのような組成物の必要性が認識されている。しかし、そのような組成物の開発は、非常に複雑である。実際に、凍結乾燥は、複雑な方法であり、一定した製造物を保証するために複数のパラメータを考慮しなければならないことが知られている。この方法は、水性媒質において不安定な製造物の安定性を著しく向上させるが、調製物の選択に特に注意を払わなければならない。特に、調製物における賦形剤のpH、性質および量などのパラメータは、最終的に調製された凍結乾燥物の安定性に特に顕著な影響を与える。加えて、異なる賦形剤の薬学的有効成分の安定化に対する影響についての相反する情報が得られ得るが、これにより、凍結乾燥物の構造とその安定性との間の関係を正確に決定することができなくなり、さらに、賦形剤の組み合わせは、それらの性質および割合に依存して、凍結乾燥物の安定性に予想外の影響を与える。最後に、上記の困難は、凍結乾燥物が含む有効成分が少量(さらには、非常に少量)である場合に、さらに大きくなる。実際に、凍結乾燥物における有効成分の量が低量(さらには、非常に低量)であることは、大量の増量剤が存在することが前提となるので、安定かつ易再構成可能な調製物の開発には更なる困難がある。
【0012】
さらに、特定の増量剤をある量の緩衝剤の添加と組み合わせて使用すると、少量(さらには、非常に少量)のヒドロコルチゾンヘミスクシナートを含有する凍結乾燥物であって、経時的に安定であり、かつ、早産児または超早産児に静脈内または非経口に注射できるように用意された溶液を調製するために少量の再構成溶液に容易に溶解させることができる凍結乾燥物を調製することが可能になることが、全く予想外に、発見された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の目的は、静脈内注射または非経口注射用溶液を調製するための凍結乾燥粉末であって、
1~30%のヒドロコルチゾンヘミスクシナートと、
40~98%の、マンニトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ラフィノースまたはソルビトールから選択される増量剤と、
1~30%の緩衝剤と
を含む凍結乾燥粉末である。
【0014】
本発明にかかる凍結乾燥粉末は、5℃で保存された場合、さらには、室温で保存された場合、経時的に安定である。加えて、本発明にかかる凍結乾燥粉末により、気管支肺異形成症を予防および治療するために早産児(さらには、超早産児)に静脈内注射または非経口注射するための溶液を、簡単な再構成によって、その後に希釈することなく、調製することが可能になる。
【0015】
本発明に関して、
「凍結乾燥粉末」または「凍結乾燥物」は、8%未満の水、好ましくは5%未満の水を含有し、かつ、そのようなレベルの水気に達することを可能にする任意の方法、特に凍結乾燥、によって調製された任意の粉末または乾燥粉末を意味し、
「ヒドロコルチゾンヘミスクシナート」は、11β,17α,21-トリヒドロキシプレグナ-4-エン-3,20-ジオン21-ヘミスクシナート、CAS番号2203-97-6(一水和物形態)または83784-20-7(無水物形態)および化学構造:
【化1】
ならびにその薬学的に許容な塩(特に、そのナトリウム塩)を指し、
有効成分の「薬学的に許容な塩」は、当該有効成分と鉱酸または有機酸との任意の付加塩であって、アルコール、ケトン、エーテルまたは塩素化溶剤などの有機または水性溶媒中でのそのような酸の作用による付加塩であり、かつ、薬学的に許容な付加塩を意味し、および
「緩衝剤」は、溶液のpHを安定な値(±1、好ましくは±0.5)に維持することが可能な任意の化合物または化合物の組み合わせを意味する。緩衝剤の例として、特に、シトラート、ホスフェート、TRIS、ヒスチジンおよびHEPESならびにそれらに関連する塩を挙げ得る。
【0016】
加えて、本発明に関し、および特に断らない限り、%で表される割合は、対象物の全重量に対する質量パーセンテージに相当する。
【0017】
したがって、本発明の目的は、上記に定義したように、少量(さらに、非常に少量)のヒドロコルチゾンヘミスクシナート、増量剤および緩衝剤を含有する凍結乾燥粉末である。好ましくは、本発明の目的は、単独でまたは組み合わせで考慮される以下の特徴を有する、上記に定義した凍結乾燥粉末である。
凍結乾燥粉末が2~20%のヒドロコルチゾンヘミスクシナート、より好ましくは5~15%のヒドロコルチゾンヘミスクシナート、最も好ましくは8~12%のヒドロコルチゾンヘミスクシナートを含有すること、
増量剤がマンニトールまたはトレハロースであるとして選択され、より好ましくは増量剤がトレハロースであるとして選択されること、
凍結乾燥粉末が50~95%の増量剤、好ましくは60~90%の増量剤、最も好ましくは75~85%の増量剤を含有すること、
緩衝剤がホスフェートまたはその塩のうちの1つであるとして選択され、好ましくは緩衝剤がナトリウム塩の形態のホスフェートであるとして選択され、最も好ましくは緩衝剤がリン酸一ナトリウムおよびリン酸二ナトリウムの混合物であるとして選択されること、
凍結乾燥粉末が2~20%の緩衝剤、好ましくは5~15%の緩衝剤、最も好ましくは8~12%の緩衝剤を含有すること、
凍結乾燥粉末がまた、水酸化ナトリウムまたはオルトリン酸などの、pHを調節可能にする1つ以上の化合物を含有すること。
【0018】
本発明にかかる凍結乾燥粉末は、当業者によって従来から使用される任意の方法にしたがって調製できる。上記に定義した凍結乾燥粉末を調製するための方法の例として、以下の工程を包含する方法を特に挙げ得る。
乾燥凍結の前に、溶液の調製に必要な水全体の70~90%(v/v)の緩衝剤を室温で添加する工程、
ヒドロコルチゾンヘミスクシナートを添加する工程、
溶液のpHを7.0~8.0、好ましくは7.0~7.4の範囲の値に調節する工程、
増量剤を添加する工程、
必要な水の残りを添加する工程、
溶液をフィルタにかける工程、
得られた溶液を凍結乾燥する工程。
【0019】
したがって、本発明にかかる凍結乾燥粉末を使用して、単に再構成溶液を添加することによって、早産児または超早産児に静脈内注射または非経口注射するための溶液を調製できる。
【0020】
それゆえに、本発明はまた、上記に定義した凍結乾燥粉末を、早産児または超早産児に静脈内注射または非経口注射するための溶液を調製するために使用することに関する。
【0021】
本発明はまた、早産児または超早産児に静脈内注射または非経口注射するための溶液を調製するためのキットに関し、当該キットは、
上記に定義した凍結乾燥粉末と、
再構成溶液と
を備えるキットである。
【0022】
好ましくは、本発明にかかるキットは、単独でまたは組み合わせで考慮される以下の特徴を有する。
キットが1~50mgの凍結乾燥粉末、好ましくは5~30mgの凍結乾燥粉末、より好ましくは10~20mgの凍結乾燥粉末、最も好ましくは13mgの凍結乾燥粉末を含有すること、
キットが0.1~10mlの再構成溶液、好ましくは0.2~5mlの再構成溶液、より好ましくは0.5~2mlの再構成溶液、最も好ましくは1mlの再構成溶液を含有すること、および/または
再構成溶液が水、または水および浸透剤(osmotic agent)の混合物、好ましくは水およびグルコースの混合物であるとして選択されること。
【0023】
したがって、本発明にかかるキットから得られた静脈内注射または非経口注射用溶液は、気管支肺異形成症の予防または治療のために、早産児(または超早産児)に直ちに注射できる。それゆえに、本発明はまた、早産児または超早産児における気管支肺異形成症の予防または治療において使用するための、上記のキットから得られる注射溶液に関する。
【0024】
最後に、本発明はまた、早産児または超早産児における気管支肺異形成症を予防または治療するための方法であって、上記のキットから調製された溶液を当該小児に投与する工程を包含する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施例によって本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0026】
実施例1 本発明にかかる凍結乾燥粉末の調製
【0027】
1.1 凍結乾燥物L1
以下の表1に示す組成を有する凍結乾燥粉末L1を以下に記載の方法にしたがって調製した。
【表1】
表1 凍結乾燥物L1
【0028】
室温で注射可能な調製物を得るために、0.23gのリン酸ナトリウムおよび2.41gのリン酸二ナトリウムを800mlの水に可溶化する。撹拌し、完全に溶解させた後、2.66gのヒドロコルチゾンヘミスクシナートを添加し、さらに撹拌する。有効成分が完全に溶解するまで、pHを7.4に調節する。次いで、20gのトレハロースを溶液に添加する。すべての粉末が可溶化した状態で、pHを目標、すなわち、7.0±0.1に調節し、かつ、水のレベルを1リットルまで上げる。
【0029】
次いで、以下の表2に示すサイクルにしたがって凍結乾燥を実行する。
【0030】
【表2】
表2 凍結乾燥サイクル
【0031】
1.2 凍結乾燥物L2
表3に示す組成を有する結乾燥粉末L2を上記実施例1.1に記載した方法にしたがって調製する。
【0032】
【表3】
表3 凍結乾燥物L2
【0033】
1.3 基準
表4に示す組成を有する、いわゆる基準凍結乾燥粉末「Lref」を上記実施例1.1に記載の方法にしたがって調製する。
【0034】
【表4】
表4 基準凍結乾燥物Lref
【0035】
2.注射溶液の再構成
1mgのヒドロコルチゾン(L1、L2またはLref)を含む凍結乾燥物に1mlの水/グルコース再構成溶液(4.5/95.5)を添加することによって注射溶液を再構成する。このようにして、1mlの1mg/mlヒドロコルチゾン溶液を得る。
【0036】
凍結乾燥物L1およびL2を用いた場合、バイアルを軽く撹拌して溶液をホモジナイズした直後に再構成が完了する。したがって、再構成は、何ら困難なく、かつ、増量剤を含有しない現在市販の凍結乾燥粉末と同程度に容易に実行される。
【0037】
次いで、シリンジおよびニードルまたはシリンジおよび転送デバイスを使用して注射用に溶液を採取でき、さらなる希釈を必要としない。それゆえに、用量過誤を招き得る計算または操作過誤のリスクおよび微生物汚染のリスクが現在市販の製品と比較して大きく低減される。
【0038】
反対に、凍結乾燥物Lrefの場合、貯蔵温度にかかわらず著しく崩壊しやすく、再構成することがより困難である。それゆえに、再構成時間は、凍結乾燥物が5℃で貯蔵された場合、約30秒であり、凍結乾燥物が25℃または40℃で貯蔵された場合、150秒まで上がる。加えて、このように著しく崩壊しやすいことは、貯蔵温度にかかわらず、凍結乾燥物が経時的に不安定であることを示す。
【0039】
3.凍結乾燥物の安定性
凍結乾燥物L1およびL2を5℃、25℃の温度で、および40℃の加速安定性条件下に貯蔵した。Tか月、T+1か月、T+2か月およびT+3か月後の時点において、不純物(すなわち、遊離ヒドロコルチゾン)のレベル、したがって、調製物の物理化学的安定性を測定することを目的に分析を行った。
【0040】
その結果を以下の表5に示す。
【表5】
表5 5℃、25℃および40℃でのTか月、T+1か月、T+2か月およびT+3か月後の時点における調製物L1およびL2についての遊離ヒドロコルチゾン不純物の進行
【0041】
許容される不純物限度比率は、6.7%(w/w)である。
【0042】
なお、凍結乾燥物L1およびL2は、5℃および25℃で貯蔵された場合、T0+3か月後の時点で安定である。凍結乾燥物L1は、40℃の加速貯蔵条件下に貯蔵された場合にも安定に維持される。
【国際調査報告】